ロボット、チップ、完全自動運転、イーロン・マスク氏のTesla AI Dayハイライト5選

Elon Musk(イーロン・マスク)氏はTesla(テスラ)を「単なる電気自動車会社ではない」と見てもらいたいと考えている。米国時間8月19日に開催されたTesla AI Day(テスラ・AI・デー)で、イーロン・マスクCEOはテスラのことを「推論レベルとトレーニングレベルの両方でハードウェアにおける深いAI活動」を行っている企業であると説明した。この活動は、自動運転車への応用の先に待つ、Teslaが開発を進めていると報じられている人型ロボットなどに利用することができる。

Tesla AI Dayは、映画「マトリックス」のサウンドトラックから引き出された45分間にわたるインダストリアルミュージックの後に開始された。そこでは自動運転とその先を目指すことを支援するという明確な目的のもとに集められた、テスラのビジョンとAIチームに参加する最優秀のエンジニアたちが、次々に登場してさまざまなテスラの技術を解説した。

「それを実現するためには膨大な作業が必要で、そのためには才能ある人々に参加してもらい、問題を解決してもらう必要があるのです」とマスク氏はいう。

この日のイベントは「Battery Day」(バッテリー・デー)や「Autonomy Day」(オートノミー・デー)と同様に、テスラのYouTubeチャンネルでライブ配信された。超技術的な専門用語が多かったのだが、ここではその日のハイライト5選をご紹介しよう。

Tesla Bot(テスラ・ボット):リアルなヒューマノイド・ロボット

このニュースは、会場からの質問が始まる前にAI Dayの最後の情報として発表されたものだが、最も興味深いものだった。テスラのエンジニアや幹部が、コンピュータービジョンやスーパーコンピュータDojo(ドージョー)、そしてテスラチップについて語った後(いずれも本記事の中で紹介する)、ちょっとした幕間のあと、白いボディスーツに身を包み、光沢のある黒いマスクで顔が覆われた、宇宙人のゴーゴーダンサーのような人物が登場した。そして、これは単なるテスラの余興ではなく、テスラが実際に作っている人型ロボット「Tesla Bot」の紹介だったことがわかった。

画像クレジット:Tesla

テスラがその先進的な技術を自動車以外の用途に使うことを語ろうとするときに、ロボット使用人のことを語るとは思っていなかった。これは決して大げさな表現ではない。CEOのイーロン・マスク氏は、食料品の買い物などの「人間が最もやりたくない仕事」を、Tesla Botのような人型ロボットが代行する世界を目論んでいるのだ。このボットは、身長5フィート8インチ(約173cm)、体重125ポンド(約56.7kg)で、150ポンド(約68kg)の荷物を持ち上げることが可能で、時速5マイル(約8km/h)で歩くことができる。そして頭部には重要な情報を表示するスクリーンが付いている。

「もちろん友好的に、人間のために作られた世界を動き回ることを意図しています」とマスク氏はいう。「ロボットから逃げられるように、そしてほとんどの場合、制圧することもできるように、機械的そして物理的なレベルの設定を行っています」。

たしかに、誰しもマッチョなロボットにやられるのは絶対避けたいはずだ(だよね?)。

2022年にはプロトタイプが完成する予定のこのロボットは、同社のニューラルネットワークや高度なスーパーコンピューターDojoの研究成果を活用する、自動車以外のロボットとしてのユースケースとして提案されている。マスク氏は、Tesla Botが踊ることができるかどうかについては口にしなかった。

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Dojoを訓練するチップのお披露目

画像クレジット:Tesla

テスラのディレクターであるGanesh Venkataramanan(ガネッシュ・べンカタラマン)氏が、完全に自社で設計・製造されたテスラのコンピュータチップを披露した。このチップは、テスラが自社のスーパーコンピュータ「Dojo」を駆動するために使用している。テスラのAIアーキテクチャの多くはDojoに依存している。Dojoはニューラルネットワークの訓練用コンピューターで、マスク氏によれば、膨大な量のカメラ画像データを他のコンピューティングシステムの4倍の速さで処理することができるという。Dojoで訓練されたAIソフトウェアは、テスラの顧客に対して無線を通じてアップデートが配信される。

テスラが8月19日に公開したチップは「D1」という名で、7nmの技術を利用している。べンカタラマン氏はこのチップを誇らしげに手に取りながら、GPUレベルの演算機能とCPUとの接続性、そして「現在市販されていて、ゴールドスタンダードとされている最先端のネットワークスイッチチップ」の2倍のI/O帯域幅を持っていると説明した。彼はチップの技術的な説明をしながら、テスラはあらゆるボトルネックを避けるために、使われる技術スタックを可能な限り自分の手で握っていたかったのだと語った。テスラは2020年、Samsung(サムスン)製の次世代コンピューターチップを導入したが、ここ数カ月の間、自動車業界を揺るがしている世界的なチップ不足から、なかなか抜け出せずにいる。この不足を乗り切るために、マスク氏は2021年夏の業績報告会で、代替チップに差し替えた結果、一部の車両ソフトウェアを書き換えざるを得なくなったと語っていた。

供給不足を避けることは脇においても、チップ製造を内製化することの大きな目的は、帯域幅を増やしてレイテンシーを減らし、AIのパフォーマンスを向上させることにあるのだ。

AI Dayでべンカタラマン氏は「計算とデータ転送を同時に行うことができ、私たちのカスタムISA(命令セットアーキテクチャ)は、機械学習のワークロードに完全に最適化されています」と語った。「これは純粋な機械学習マシンなのです」。

べンカタラマン氏はまた、より高い帯域幅を得るために複数のチップを統合した「トレーニングタイル」を公開した。これによって1タイルあたり9ペタフロップスの演算能力、1秒あたり36テラバイトの帯域幅という驚異的な能力が実現されている。これらのトレーニングタイルを組み合わせることで、スーパーコンピューター「Dojo」が構成されている。

完全自動運転へ、そしてその先へ

AI Dayのイベントに登壇した多くの人が、Dojoはテスラの「Full Self-Driving」(FSD)システムのためだけに使われる技術ではないと口にした(なおFSDは間違いなく高度な運転支援システムではあるものの、まだ完全な自動運転もしくは自律性を実現できるものではない)。この強力なスーパーコンピューターは、シミュレーション・アーキテクチャーなど多面的な構築が行われており、テスラはこれを普遍化して、他の自動車メーカーやハイテク企業にも開放していきたいと考えている。

「これは、テスラ車だけに限定されるものではありません」マスク氏。「FSDベータ版のフルバージョンをご覧になった方は、テスラのニューラルネットが運転を学習する速度をご理解いただけると思います。そして、これはAIの特定アプリケーションの1つですが、この先さらに役立つアプリケーションが出てくると考えています」。

マスク氏は、Dojoの運用開始は2022年を予定しており、その際にはこの技術がどれほど多くの他のユースケースに応用できるかという話ができるだろうと語った。

コンピュータビジョンの問題を解決する

AI Dayにおいてテスラは、自動運転に対する自社のビジョンベースのアプローチの支持を改めて表明した。これは同社の「Autopilot」(オートパイロット)システムを使って、地球上のどこでも同社の車が走行できることを理想とする、ニューラルネットワークを利用するアプローチだ。テスラのAI責任者であるAndrej Karpathy(アンドレイ・カーパシー)氏は、テスラのアーキテクチャを「動き回り、環境を感知し、見たものに基づいて知的かつ自律的に行動する動物を、ゼロから作り上げるようなものだ」と表現した。

テスラのAI責任者であるアンドレイ・カーパシー氏が、コンピュータビジョンによる半自動運転を実現するために、テスラがどのようにデータを管理しているかを説明している(画像クレジット:Tesla)

「私たちが作っているのは、もちろん体を構成するすべての機械部品、神経系を構成するすべての電気部品、そして目的である自動運転を果たすための頭脳、そしてこの特別な人工視覚野です」と彼はいう。

カーパシー氏は、テスラのニューラルネットワークがこれまでどのように発展してきたかを説明し、いまやクルマの「脳」の中で視覚情報を処理する最初の部分である視覚野が、どのように幅広いニューラルネットワークのアーキテクチャと連動するように設計されていて、情報がよりインテリジェントにシステムに流れ込むようになっているかを示した。

テスラがコンピュータービジョンアーキテクチャーで解決しようとしている2つの主な問題は、一時的な目隠し(交通量の多い交差点で車がAutopilotの視界を遮る場合など)と、早い段階で現れる標識やマーク(100メートル手前に車線が合流するという標識があっても、かつてのコンピューターは実際に合流車線にたどり着くまでそれを覚えておくことができなかったなど)だ。

この問題を解決するために、テスラのエンジニアは、空間反復型ネットワークビデオモジュールを採用した。このモジュールのさまざまな観点が道路のさまざまな観点を追跡し、空間ベースと時間ベースのキューを形成して、道路に関する予測を行う際にAIモデルが参照できるデータのキャッシュを生成する。

同社は1000人を超える手動データラベリングチームを編成したと語り、さらに大規模なラベリングを可能にするために、テスラがどのように特定のクリップを自動ラベリングしているかを具体的に説明した。こうした現実世界の情報をもとに、AIチームは信じられないようなシミュレーションを利用して「Autopilotがプレイヤーとなるビデオゲーム」を生み出す。シミュレーションは、ソースやラベル付けが困難なデータや、閉ループの中にあるデータに対して特に有効だ。

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テスラのFSDをとりまく状況

40分ほど待ったときに、ダブステップの音楽に加えて、テスラのFSDシステムを映したビデオループが流れた、そこには警戒していると思われるドライバーの手が軽くハンドルに触れている様子が映されていた。これは、決して完全に自律的とは言えない先進運転支援システムAutopilotの機能に関する、テスラの主張が精査された後で、ビデオに対して法的要件が課されたものに違いない。米国道路交通安全局(NHTSA)は 今週の初めにテスラが駐車中の緊急車両に衝突する事故が11件発生したことを受け、オートパイロットの予備調査を開始することを発表した。

その数日後、米国民主党の上院議員2名が連邦取引委員会(FTC)に対して、テスラのAutopilot(自動操縦)と「Full Self-Driving」(完全自動運転)機能に関するマーケティングおよび広報活動を調査するよう要請した。

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テスラは、7月にFull Self-Drivingのベータ9版を大々的にリリースし、数千人のドライバーに対して全機能を展開した。だが、テスラがこの機能を車に搭載し続けようとするならば、技術をより高い水準に引き上げる必要がある。そのときにやってきたのが「Tesla AI Day」だった。

「私たちは基本的に、ハードウェアまたはソフトウェアレベルで現実世界のAI問題を解決することに興味がある人に、テスラに参加して欲しい、またはテスラへの参加を検討して欲しいと考えています」とマスク氏は語った。

米国時間8月19日に紹介されたような詳細な技術情報に加えて、電子音楽が鳴り響く中で、Teslaの仲間入りをしたいと思わない血気盛んなAIエンジニアがいるだろうか?

一部始終はこちらから。

画像クレジット:Tesla

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(文:Rebecca Bellan、Aria Alamalhodaei、翻訳:sako)

テスラはロボット「Tesla Bot」を開発中、2022年完成予定

ロボットを題材にしたWill Smith(ウィル・スミス)の奇妙な映画を覚えているだろうか?

ああ、私たちももちろん覚えていない。しかし、Elon Musk(イーロン・マスク)氏は覚えているようだ。Tesla(テスラ)は、身長5フィート8インチ(約173cm)のTesla Botを開発中で、プロトタイプは2022年中に完成する予定だという。このニュースは、米国時間8月16日夜に同社ウェブサイトで配信されたTesla’s inaugural AI Dayで発表された。

このロボットは、Teslaが取り組んでいる電気自動車以外のユースケースとして、ニューラルネットワークや高度なスーパーコンピュータ「Dojo」のを用いたものとして提案されている。

画像クレジット:Tesla

「基本的に、現在私たちが自動車で行っていることを考えると、Teslaは間違いなく世界最大のロボット企業です。なぜなら、私たちの自動車は車輪の上の半感覚的なロボットのようなものだからです」とマスク氏はいう。「完全な自動運転コンピュータ【略】は今後も進化し続け、Dojoやすべてのニューラルネットは世界を認識し、世界をどのようにナビゲートするかを理解しているため、それをヒューマノイドに搭載することは理に適っています」。

このロボットは「フレンドリーで、人間のために作られた世界を親しみやすくナビゲートすることを目的としています」とマスク氏は付け加えた。また、人間が簡単に逃げたり圧倒したりできるように開発しているとのこと。重量は125ポンド(約56.7kg)、歩行速度は時速5マイル(約8km)で、顔は重要な情報を表示するスクリーンになるという。

興味深いことに、マスク氏はこのロボットが、現在多くの人の生活を退屈な占める労働や買い物といった日常的な仕事を代わりに行うものだと考えている。彼は、肉体労働もできるようになり、それが経済に与える影響についても言及している。

「長期的には、ユニバーサルベーシックインカムが必要だと思います」とマスク氏はいう。「しかしながら、現在のところロボットがないため、それは実現できていません」。

最後にマスク氏はエンジニアに「私たちのチームに参加して、開発を手伝って欲しい」と呼びかけた。

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(文:Aria Alamalhodaei、Rebecca Bellan、翻訳:Katsuyuki Yasui)

テスラの「完全」自動運転という表現に対し米上院議員がFTCに調査を要請

2人の民主党上院議員が、今度の連邦取引委員会(FTC)の議長に、Tesla(テスラ)のオートパイロットとフルセルフドライビング両システムの自動運転能力に関する、同社の声明を調査するよう求めた。上院議員Edward Markey(エド・マーキィー)氏(民主党・マサチューセッツ州)とRichard Blumenthal(リチャード・ブルーメンソール)氏(民主党・コネチカット州)は、クルマに完全な自動運転能力があると顧客に誤解させかねないTeslaの文言に対して特に懸念を表明している。

「Teslaのマーケティングは、自社の自動車の性能を繰り返し誇張しており、こうした表現は、自動車運転者や他の道路利用者に対する脅威となっています。したがって私たちはTeslaの運転自動化システムの広告およびマーケティングにおける欺瞞的で不公正な行為の可能性について調査を開始し、道路上のすべてのドライバーの安全を確保するために適切な執行措置をとることを強く求めます」と両議員はFTCに対して述べている。

FTCの新議長Lina Khan(リナ・カーン)氏に宛てた書簡で両氏は、Teslaが2019年にYouTubeの同社チャンネルにポストしたビデオを問題視している。Teslaの自動運転を見せるそのおよそ2分のビデオは「Full Self-Driving」(完全な自動運転)と題され、1800万回以上視聴された。

両議員によると「同社の主張はTeslaのドライバーと、旅をするすべて人たちを重傷や死の危険にさらしている」という。

Teslaと公式の調査は、雨が降れば土砂降りになるといった関係だ。例えばこの書簡が発表されたわずか2日前には、米運輸省道路交通安全局(NHTSA)が、Tesla車が駐車している緊急車両に衝突した事件の予備調査を開始している。

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リナ・カーン氏は、これまで最も若いFTCの議長だ。彼女は多くの人たちから、反トラスト法で学位を持つことなどから、近年で最も先進的な起用だと考えられている。しかしFTCがTeslaを調査することになったら、そのケースは反トラスト法と何ら関係がなく、むしろ消費者保護に該当することになる。製品に関する企業の、偽のあるいは誤解を招きかねない主張の調査は、確かにFTCの守備範囲だ。

Teslaの主張に対してFTCに公開調査を求めた著名人や機関は、今回が初めてではない。2018年には、2つの特定利益団体Center for Auto SafetyとConsumer Watchdogが、やはり同委員会にAutopilot機能のマーケティングに関して書簡を送った。2019年には上記交通安全局がFTCに、TeslaのCEOであるElon Musk(イーロン・マスク)氏によるModel 3の安全に関する主張が「不公正または欺瞞的に相当しないか」調査するよう主張した。

Teslaの「Full Self-Driving」(完全自動運転)は、代価の一部またはサブスクリプションとして1万ドル(約110万円)を課金される。現在、同社はそのバージョン9のベータテストを数千名のドライバーで行っているが、上院議員たちはベータも対象にしている。「ベータ9へのアップデートの後でドライバーたちはビデオをポストしたが、それによると、アップデートされたTesla車は予想外の動作をして、衝突を防ぐためには人間の介入を必要とした。マスク氏がソーシャルメディア上に目立たないように置いた生ぬるい警告は、ドライバーを誤導し、路上の全員の命を危うくしたことの言い訳にはならない」という。

カテゴリー:モビリティ
タグ:民主党Tesla自動運転FTCオートパイロット

画像クレジット:Getty Images

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Hiroshi Iwatani)

米当局がテスラのオートパイロット機能を調査開始、駐車中の緊急車両との衝突事故受け

米国の自動車規制当局は、Tesla(テスラ)の先進運転支援システム「Autopilot(オートパイロット)」について予備調査を開始した。これは、同システムを作動させていた際に、駐車されていた救急車両に車両が衝突した11件の事故を理由としている。

米運輸省道路交通安全局(NHTSA)のウェブサイトに掲載された調査資料によると、衝突事故に関与したテスラ車は、オートパイロットまたは「Traffic Aware Cruise Control(トラフィックアウェア クルーズコントロール)」と呼ばれる機能を作動させていたことが確認されたという。事故の多くは日没後に発生しており、緊急車両のライトや道路のコーン、ドライバーに車線変更するよう知らせる照明付き矢印板などの「現場管理措置」にもかかわらず発生していた。

「今回の調査では、ダイナミックな運転タスクに対するドライバーのエンゲージメントをモニターし、支援し、強化するために使用される技術と方法を評価します」と資料には記載されている。

調査の対象となるのは、現在販売されているすべてのモデルを含む約76万5000台のテスラ車だ。14-21年型のTesla Model Y(モデルY)、Model X(モデルX)、Model S(モデルS)、Model 3(モデル3)が対象となる。11件の事故または火災により、17名の負傷者と1名の死亡者が発生した。これらの事故は2018年1月から2021年7月の間に発生した。

Teslaのオートパイロットが米国の自動車安全規制機関であるNHTSAの監視下に置かれたのは、今回が初めてではない。2017年、同局は2016年に起こった死亡事故を調査したが、その事故ではEVメーカーである同社に過失はないとされた。NHSTAはこれまで、TeslaのADAS(先進運転支援システム)が関与した事故をさらに25件調査していると、AP通信が米国時間8月16日に今回の調査に関する記事で報じた。

NHTSAは2021年6月、ADASまたはレベル3~5の自動運転システム搭載車の衝突事故の報告を自動車メーカーに義務付ける命令を出した。

「NHTSAは、現在市販されている自動車の中に自動運転が可能なものはないことをあらためて国民のみなさまに指摘します」と、NHTSAの広報担当者は16日にTechCrunchに語った。

TechCrunchは、メディアリレーション部門を解散したTeslaにコメントを求めた。同社から回答があれば記事を更新する。

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画像クレジット:Spencer Platt / Getty Images

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Aya Nakazato)

テスラが旧来のリン酸鉄リチウムバッテリーに賭けていることは、メーカーにとって何を意味するのか

Elon Musk(イーロン・マスク)氏は、鉄ベースのバッテリーに関してこれまでで最も強気の発言をした。Tesla(テスラ)は、エネルギー貯蔵製品と一部のエントリーレベルのEVにおいて、旧来の安価なリン酸鉄リチウム(LFP)セルへの「長期的なシフト」を行っていると強調した。

テスラのCEOは、同社のバッテリーは最終的に製品全体で鉄ベースが3分の2、ニッケルベースが3分の1になるだろうと思慮深く語り「これは実際に好ましいことです。世界には十分な量の鉄が存在していますから」と付け加えた。

マスク氏のコメントは、主に中国の自動車業界ですでに進行中の変化を反映するものだ。中国以外の地域でのバッテリー化学組成は大部分がニッケルベースで、具体的にはニッケル・マンガン・コバルト(NMC)とニッケル・コバルト・アルミニウム(NCA)である。これらの比較的新しい化学組成は、エネルギー密度が高いことから自動車メーカーにとって魅力的なものとなっており、OEM(完成車メーカー)におけるバッテリーの航続距離の改良に貢献している。

マスク氏の強気の姿勢がEV業界全体に真の変化をもたらしつつあるとすれば、中国以外のバッテリーメーカーが追随できるかどうかが問われるところだ。

LFP方式への回帰を示唆しているのはマスク氏だけではない。Ford(フォード)のCEOであるJim Farley(ジム・ファーリー)氏は2021年、一部の商用車にLFPバッテリーを採用すると発表した。一方、Volkswagen(フォルクスワーゲン、VW)のCEO、Herbert Diess(ヘルベルト・ディース)氏は、同社のバッテリーデーのプレゼンテーションで、VWのエントリーレベルEVの一部にLFPが使用されることを明らかにした。

エネルギー貯蔵の面では、マスク氏がコメントで言及した、Powerwall(パワーウォール)とMegapack(メガパック)でのLFPベースの化学組成の採用は、鉄ベースの処方を推進する他の定置型エネルギー貯蔵企業の潮流に沿うものとなっている。「定置型貯蔵業界は、より安価なLFPへの移行を志向しています」と、バッテリー調査会社Cairn Energy Research Advisorsを率いるSam Jaffe(サム・ジャッフェ)氏はTechCrunchに語った。

LFPバッテリーセルが魅力的な理由はいくつかある。まず、コバルトやニッケルのような極めて希少で価格が変動しやすい原料に依存していない(主にコンゴ民主共和国から調達されているコバルトは、非人道的な採掘条件のためにさらなる精査の対象となっている)。また、ニッケルベースの化学組成に比べてエネルギー密度は低いものの、LFPバッテリーははるかに安価に製造できる。電気自動車への移行を促進したいと考えている向きにとって、これは朗報となる。EVの普及には、1台あたりのコストを下げることが重要な鍵となる可能性が高いからだ。

マスク氏は明らかに、テスラにおける鉄ベースの化学組成に大きな未来を見出しており、同氏のコメントは、LFPが再びスポットライトを浴びるのに効果的な役割を果たした。ただし、それがショーのスターであり続けている場所は1つ、中国である。

中国によるLFPの独占

「LFPは中国でしか生産されていないといっても過言ではありません」と、調査会社Benchmark Mineral Intelligenceで価格・データ評価の責任者を務めるCaspar Rawles(キャスパー・ローレス)氏は、最近のTechCrunchとのインタビューで説明している。

LFPバッテリー生産における中国の優位性の一部は、大学や研究機関のコンソーシアムによって管理されている一連の主要なLFP特許に関連している。このコンソーシアムは10年前、中国のバッテリーメーカーとの間で、LFPバッテリーが中国市場でのみ使用されることを条件に、ライセンス料を徴収しないことで合意した。

こうして、LFP市場は中国が独占する形となった。

中国のバッテリーメーカーは、LFPへの構造的シフトのポテンシャルから最大の恩恵を受ける可能性がある。具体的にはBYD(比亜迪)とCATL(寧徳時代新能源科技)で、後者はすでに、中国で生産・販売されているテスラ車専用のLFPバッテリーを製造している。(一方、フォルクスワーゲンは中国のLFPメーカーGotion High-Tech[国軒高科]にかなりの出資をしている。)こうしたバッテリーメーカーの勢いはとどまる気配を見せていない。1月にCATLとShenzhen Dynanonic(深圳市徳方納米科技)は、中国の地方省の1つと、LFPカソード工場を2億8000万ドル(約307億円)の費用で3年をかけて建設する契約を結んだ。

業界アナリスト企業のRoskillによると、LFPの特許の存続期間の満了は2022年で、中国以外のバッテリーメーカーが生産の一部を鉄ベースの製品に移行し始める機は熟していることが予想されるという。しかし、LG Chem(LG化学)やSK Innovation(SKイノベーション)など、韓国の大手企業との合弁事業が多い欧州や北米のバッテリー工場はいずれも、依然としてニッケルベースの化学組成にフォーカスしている。

「米国がLFPの強みを生かすには、北米の製造業が必要となるでしょう」とジャッフェ氏は説明する。「今日、米国でギガファクトリーを建設する人々は皆、高ニッケル化学製品の製造を計画しています。現地で製造されるLFPバッテリーに対するアンメットニーズが非常に高くなっています」。

ローレス氏は、特に特許の有効期限が失効した後、数年のうちに北米と欧州である程度のLFPキャパシティが確保されると予想している。ドイツではCATLも、他のバッテリーメーカーSVOLT(蜂巣能源科技)も動きを見せているが、どちらも中国企業であり、その他のアジア企業や欧米企業がLFP市場で競争できるかについては疑問が残る、と同氏は指摘した(Stellantis[ステランティス]は2025年以降のバッテリーサプライヤーの1つとしてSVOLTを選定している)。

エネルギー貯蔵に関して、ジャッフェ氏は「定置型貯蔵システムのほとんどが最終的にはLFP系になることは避けられない」と考えているという。

しかし、米国の国内製造業にとってすべてが失われるとは限らない。「地元でLFP製造を確立するための好材料として、サプライチェーンがシンプルであることが挙げられます。リチウム以外にも、鉄とリン酸という2つの安価な材料が(米国で)大量に生産されています」とジャッフェ氏は付け加えた。

結局のところ、これはバッテリーの化学的性質の問題ではない。より有望な点は、テスラを含む自動車メーカーの動向からすでに明らかになっている。鉄ベースのバッテリーは主にエントリーレベルの低価格車に使用され、ニッケルベースのセルはハイエンドの高性能車に使用される。多くの消費者は、300マイル(約483km)から350マイル(約563km)の走行距離を持つ車よりも、数千ドル(約数十万円)安い200マイル(約322km)から250マイル(約402km)の走行距離の車の方に満足するだろう。

自動車メーカーは、垂直製造や既存のバッテリー会社との合弁事業を通じて、バッテリー供給をコントロールする方向に動き始めている。このことは、北米と欧州におけるLFPキャパシティの拡大は可能性が高いだけでなく、必然的であることを意味している。

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カテゴリー:ハードウェア
タグ:Elon MuskTeslaバッテリー電気自動車FordVolkswagenPowerwallMegapack中国エネルギー貯蔵リチウムイオン電池

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Dragonfly)

スティーブ・ジョブズ伝を著した元TIME編集長がイーロン・マスク氏の伝記を執筆中

Steve Jobs(スティーブ・ジョブズ)氏やBenjamin Franklin(ベンジャミン・フランクリン)、Leonardo da Vinci(レオナルド・ダ・ヴィンチ)などの人生を描いた伝記作家Walter Isaacson(ウォルター・アイザックソン)氏が、今度はElon Musk(イーロン・マスク)氏の人生とキャリアを記録することに取り組んでいる。Tesla(テスラ)のCEOは、米国時間8月5日のツイートでこのプロジェクトを発表した。

マスク氏は、アイザックソン氏が取材のため「これまでに数日間」自分とずっと一緒にいたと述べたが、その後、自叙伝をいつか出す可能性もまだあると付け加えた。この本がいつ発売されるのか、またこのプロジェクトがどれだけ進んでいるのかは不明だ。アイザックソン氏は、スティーブ・ジョブズ氏の伝記(タイトルはふさわしい「Steve Jobs / スティーブ・ジョブズ」)を2年以上かけて執筆し、同氏の仲間や同僚100人以上へのインタビューも行った。

マスク氏は何冊もの本の題材となってきたが、アイザックソン氏は同氏のストーリーをこれまでに書きつづってきた著者の中で、最も知名度の高い伝記作家だ。アイザックソン氏は現在テュレーン大学の教授を務めており、以前はAspen Institute(アスペン研究所)のCEOやCNNのCEOを務めていた。同氏は、2014年に開催されたTechCrunch Disruptのステージにも登場している。

マスク氏の人生とキャリアについての他の書籍には、同氏がインタビューに参加したAshlee Vance(アシュリー・バンス)氏による2015年の伝記「Elon Musk:Tesla, SpaceX, and the Quest for a Fantastic Future / イーロン・マスク 未来を創る男​​」、Ed Niedermeyer(エド・ニーダーメイヤー)氏の「Ludicrous:The Unvarnished Story of Tesla Motors(馬鹿げた話:テスラモーターズの真のストーリー)」、そして、2021年8月に発売されたTim Higgins(ティム・ヒギンズ)氏の「Power Play:Tesla, Elon Musk, and the Bet of the Century(パワープレー:テスラ、イーロン・マスク、世紀の賭け)」などがある。

マスク氏とヒギンズ氏は「Power Play」の中で、マスク氏とApple(アップル)のTim Cook(ティム・クック)CEOとの間で交わされた特に辛口のやりとりを記述した部分について、一時議論をしたことがある。ヒギンズ氏が著書の中で説明したこの会話は、2016年にクック氏がテスラの買収に興味を持ったとされることをめぐって交わされたもの。ヒギンズ氏によれば、マスク氏はクック氏に対し、興味はあるが、マスク氏がAppleのCEOに就任することが条件だと伝え、クック氏は「F—you(ふざけんな馬鹿野郎)」と答えたという。

マスク氏はツイートの中で、クック氏とは話したこともなければ、メールなど書面でやりとりしたこともないと主張した。これに対してヒギンズ氏は、この逸話は、当時のマスク氏の会話を聞いたという人たちが語ったものだと答えた。さらに同氏は、マスク氏にはこの逸話についてコメントする機会が何度も与えられたが「彼はそうしなかった」と付け加えた。

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カテゴリー:その他
タグ:イーロン・マスクTesla

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Aya Nakazato)

イーロン・マスク氏のLoopのドライバーには同社の「偉大なリーダー」に関する台本が渡される

Elon Musk(イーロン・マスク)氏がラスベガスで展開している地下システム「Loop」のドライバーたちは、同社での運転歴を尋ねる乗客の質問をはぐらかしたり、衝突事故については知らないと宣言したり、マスク氏自身についての会話を遮断したりするよう指示されている。

TechCrunchは、公文書法を利用し、6月にオープンしたLoopの通常業務を詳細に記した文書を入手した。このLoopは、ラスベガス・コンベンション・センター(LVCC)の周辺で、改造したTesla(テスラ)車を使って参加者を輸送する。文書の中には、好奇心旺盛な乗客が質問してきたときに、新入社員が必ず従う「Ride Script(乗車に関する台本)」も含まれている。

この台本は、システムを構築・運営するThe Boring Company(TBC)が、新システムやその技術、特に創業者であるイーロン・マスクのパブリックイメージをコントロールすることにどれだけ真剣かを示している。

台本のアドバイスによれば「あなたの目的は、乗客に安全なドライブを提供することであり、楽しいドライブを提供することではありません。会話は最小限にして、道路に集中しましょう」「乗客はあなたに質問を投げかけてきます。質問される可能性のある内容と、推奨される回答がこちらです」。

乗客がドライバーに勤続年数を尋ねると、次のように答えるように指示される。「このトンネルをよく分かっているくらいには運転していますよ!」と答えるように指示されている。さらに「(何百回も運転しているとしても)1週間しか運転していないと思われると、お客様は安心できません。従って、勤務年数を話すのではなく、質問をかわすか、焦点をずらす方法を考えてください」とドライバーにアドバイスしている。

このシステムでどれくらいの衝突事故が発生したか(台本では「事故」という言葉を使っている)を聞かれたドライバーは、こう答えるように言われている。「非常に安全なシステムなので、よくわかりません。会社に問い合わせてみないとわからない」。TBCの従業員やドライバーの数、トンネルの掘削費用などを質問しても、同じように曖昧な答えが返ってくるはずだ(掘削費用は合計で約5300万ドル[約57億8800万円])。

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TBCでは、Tesla(テスラ)の先進的な運転支援システムであるAutopilotの使用が明らかに弱点となっている。クラーク郡は現在、自動緊急ブレーキや障害物を認識しつつ車線内にとどまる技術を含むさまざまな運転支援機能の使用をLoopシステム内のいかなる場所でも許可していない。

群は、整備士にこれらが作動していないかどうかを確認することを義務付けているほどだ。

文書には「初期点検チェックリストに基づくアクションの完了に加えて、整備スタッフは、手動によるループ操作のため、ハンドル操作やブレーキ・加減速アシスト(通称Autopilot)などの車両の自動機能が無効化されていることを確認します」と書かれている。TechCrunchが閲覧した車両整備プランによると、その後の確認はCWPMの技術者によって毎日行われる。

万が一乗客が、Loopのテスラ車がAutopilotを使用しているかどうかを尋ねた場合は、ドライバーは回答するだろう。しかしこれに関する内容は、TechCrunchが入手した文書では「公共の安全に関わる機密事項」とされ、他の多くの技術的な詳細と同様に編集されていた。

この決定について、TechCrunchは関係者に何度も説明を求めたが、回答は得られなかった。

名前を言ってはいけないあの人

台本には、マスク氏自身に関する質問への回答も含まれている。「この種の質問は聞かれることが非常に多く、非常にデリケートな質問です。当社の創業者に対する世間の関心は必然的なものであり、会話の大部分を占める可能性があります。可能な限り簡潔に、そしてそのような会話を止めるために最善を尽くしてください。乗客がその話題を強要し続ける場合は、『申し訳ありませんが、本当にコメントできません』と丁寧に伝え、話題を変えてください」。

にもかかわらず、このスクリプトには、マスクのよくある質問に対する答えがいくつも用意されている。マスクはどんな人かと聞けば、こんな答えが返ってくるはずだ。「彼はすごい人です!刺激的 / やる気にさせてくれる、など」。

さらにこんな追い打ちをかける。「彼の元で働くのは好きですか?」と尋ねると、北朝鮮のような答えが返ってくる。「はい、彼はすばらしいリーダーです!私たちがすばらしい仕事ができるようにやる気を与えてくれます」。

乗客が、マスク氏がどのようにビジネスに関わっているのか疑問に思った場合、ドライバーは次のように答えるだろう。「彼は会社の創設者であり、非常に深く関与し、サポートしてくれています」。また、マスク氏の不規則なツイートについての質問は「イーロンは有名人なのです。私たちはただ、すばらしい移動体験を提供するためにここにいるのです!」と跳ねのけられる。

しかし、ある質問は、すべての人がマスクの下で働くことに満足しているわけではないことを示唆しているようだ。「新聞で読んだ彼についての記事で、彼は『意地悪な上司である/マリファナを吸う/従業員に休暇を取らせない / など』というのは本当ですか?」ドライバーはどちらかというと曖昧な返事をするだろう。「その記事は見ていませんが、私の経験ではそんなことはありません」。

余談だが、TechCrunchが入手した数百ページに及ぶトレーニング文書や業務マニュアルには、Loopでの薬物使用やハラスメントを防止する強いポリシーが詳細に記されているが「休暇」という言葉は出てこない。

認められている技術

クラーク郡は現在、Loop内での自動運転機能の使用を禁止しているため、しばらくは人間のドライバーがシステムの一部となる可能性がある。しかし、クラーク郡に提出された設計・運用文書によると、このシステムには他にも多くの先進技術が導入されている。地下のLoopに設置された62台のテスラには、非接触型決済システムに使用される固有のRFIDチップが搭載されており、車道、駅、駐車場に設置された55個のアンテナの上を通過すると、その位置が特定されるようになっている。

また、各車両は、速度、充電状態、乗車人数、シートベルト着用の有無などのデータを24のホットスポットに送信する。乗客が気を付けるべきなのは、車内に設置されたカメラからの映像も常時ストリーミングされていることだ。これらのデータは、Loop内に設置された81台の固定カメラの映像とともに、コンベンションセンターから数ブロック離れた場所にあるオペレーションコントロールセンター(OCC)に送られる。映像は最低でも2週間は録画・保存される。

OCCでは、オペレーターがカメラの映像やその他のセンサーを監視し、セキュリティ上の脅威や、ドライバーの携帯電話の使用やスピード違反などの問題を発見する。OCCは、Bluetoothヘッドセットや車載用iPadを使ってドライバーと通信し、メッセージや警告、トンネル内の車両の位置を地図上に表示する。車両には、駅構内での時速16.09キロメートルからトンネルの直線区間の時速64.37キロメートルの範囲で厳しい速度制限があり、前の車と6秒以上の間隔を保たなければならない。

2021年の春に行われたテストでは、クラーク郡の職員が、一部のドライバーが規則を守っていないことを発見したことが文書に記されている。「速度制限について質問したところ、何人かのドライバーは、直線および / またはカーブしたトンネルの速度を間違って答えていた。駅、急行レーン、傾斜部の速度については誰も答えられなかった」とある文書には書かれている。「ドライバーは乗客にシートベルトを締めるようにアナウンスしておらず、質問されても、任意であるまたは必要ないと『答えていた者がいた』」。

また、何人かのドライバーは、前の車との安全のための距離を6秒維持できていなかった。TBCはクラーク郡に対し、これらの分野で再教育を行うと答えた。

TBC、クラーク郡、およびLVCCを管轄するラスベガスコンベンション・観光当局は、この件に関する複数のコメント要求に答えなかった。

LVCVAは最近、Alphabet(アルファベット)がスピンアウトした都市型広告代理店Intersection Media(インターセクション・メディア)とLoopシステムの命名権を販売する契約を結び、450万ドル(約4億9100万円)の利益を見込んでいる。

TBCは現在、近隣のホテルにサービスを提供するためLoopの2つの拡張工事を行っているが、最終的にはストリップとラスベガスのダウンタウンの大部分をカバーし、40以上の駅を持つ交通システムを構築したいと考えている。このシステムは、TBCが資金を提供し、チケット販売によってサポートされることになる。

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(文:Mark Harris、翻訳:Dragonfly)

テスラの大型バッテリーシステム「メガパック」がオーストラリアの蓄電施設で発火事故

現地時間7月30日、南東オーストラリアの蓄電施設で13トンのTesla(テスラ)Megapack(メガパック)が発火した。火災は現地時間午前10時から10時15分の間に起きたことを当事者であるVictorian Big Battery(ビクトリアン・ビッグ・バッテリー)は発表した。地元消防によるとビクトリア州ジーロングの現場には特殊消火班が出動した。消防士は危険化学物質流出に対応するために作られた装置を使用して消火にあたり、特殊ドローンが大気観測を行った、とFire Rescue Victoriaは伝えている。

現場から人々は避難し、けが人はなかったとVictorian Big Batteryは声明で語った。また、設備は電力網から遮断され、電力供給に影響はないことを同社は付け加えた。同施設を運営しているフランスのエネルギー会社Neoen(ネオエン)と請負業者であるTeslaは、救急救命サービスと協力して状況に対応している。

この火災を受け、有害ガス警報が近隣のベイツフォード、ベル・ボスと・ヒル、ラブリー・バンクス、およびムアアブール地区に発令されたとThe Sydney Morning Herald(シドニー・モーニング・ヘラルド)紙は伝えている。住民は屋内に避難して窓や換気口、暖炉の煙突を閉じ、ペットを家に入れるよう警告された。

Victorian Big Batteryの施設は、300MW / 450MWhのバッテリーストレージ設備で、ビクトリア州政府の立てた2030年までに再生可能エネルギー50%を目指す目標の鍵になると見られている。NeoenとTeslaが南オーストラリアのホーンズデールに建設した 100MW / 129MWhバッテリー設備が計画よりも早く完成し、市場関係者や消費者に数百万ドル(数億円)の節約をもたらした成功を受けたものだった。いずれの設備も再生可能エネルギーが得られない時に予備電力を提供するものであり、日が照っていないときや風が吹いていない時の隙間を埋める。

2021年2月にNeoenは、Victorian Big BatteryがTeslaのMegapack(同社のギガファクトリーで製造されている地域供給規模の大型バッテリー)とAutobidder(オートビダー)のソフトウェアを利用して電力網に電気を販売することを発表した。契約の一環として同施設は、さらに既存のビクトリアのピーク容量250MWをニュー・サウス・ウェールズ・インターコネクターに供給することで、向こう10年間オーストラリアの夏にエネルギーを安定供給する。

編集部注:本稿(原文)の初出はEngadgetに掲載されている。著者のSaqib Shah(サキーブ・シャー)氏はEngadgetの寄稿執筆者。

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タグ:Teslaバッテリーオーストラリア火災Megapack

画像クレジット:Tesla

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(文:Saqib Shah、翻訳:Nob Takahashi / facebook

テスラがセミトラックの発売を2022年に延期、Cybertruckの遅延も示唆

電気自動車メーカーのTesla(テスラ)は、サプライチェーンの問題とバッテリーセルの入手可能性が限られていることから、電動セミトラックの発売を2022年に延期すると、米国時間7月26日に行われた第2四半期の決算発表の中で述べた。

テスラのElon Musk(イーロン・マスク)CEOは、以前からバッテリーの供給が限られていることについて警告しており、2017年11月にプロトタイプが初公開された電動セミトラック「Tesla Semi(テスラ・セミ)」にもその影響が及ぶ可能性があるとしていた。2021年1月、マスク氏はTesla Semiのエンジニアリング作業が完了し、2021年中に納車が開始できる見込みであると述べながらも、ただしバッテリーセルの入手状況によって生産能力が制限される可能性があるという警告を付け足した。

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この警告は、明らかに根拠のあるものだった。株式市場が閉まった後に掲載された株主への書簡には以下のように書かれている。

2021年にベルリンとオースティンで始まるModel Y(モデルY)の生産は計画通り順調に進んでいると、我々は考えています。しかし、それぞれの工場における生産量は、多くの新しい部品や製造技術の導入が成功するかどうか、サプライチェーン関連の問題が継続するかどうか、そして地域の許可を得られるかどうかによって左右されます。

これらの工場に集中するため、また、バッテリーセルの入手量が限られていることやグローバルなサプライチェーンの問題を考慮して、Semiトラックのプログラム開始時期を2022年に変更することにしました。なお、Model Yに続いてオースティンでの生産を予定しているCybertruck(サイバートラック)の製品化も進展しています。

業績発表や決算報告書の中では言及されていないものの、今回の延期は、同社の重要な幹部でTesla Semiの開発および最終的な量産に携わっていたJerome Guillen(ジェローム・ギレン)氏の退社にともなうものだ。ギレン氏が6月に退社したのは、同氏がSemiを含む自動車部門全体の社長職から、より責任の軽い大型トラック部門の責任者という職務に移されてからわずか3カ月後のことだった。ギレン氏は、2018年9月から2021年3月まで、テスラの自動車事業全体を率いていた。

一方、2021年後半に生産開始が予定されているCybertruckも、2022年にずれ込む可能性があるようだ。マスク氏は質問に答えなかったが、決算説明会ではマスク氏のコメントだけでなく、テスラのエンジニアリング担当VPであるLars Moravy(ラース・モラヴィ)氏のコメントからも、2022年にシフトする可能性が示唆されている。

電動ピックアップトラックであるCybertruckは、今のところ試作のアルファ段階にあり、車両の基本的なエンジニアリングとアーキテクチャが完成している。現時点ではModel Yが優先されるものの、2021年後半にはCybertruckをベータ段階に移行させる予定だと、モラヴィ氏は述べている。

「モデルYの生産が軌道に乗ったら、Cybertruckをテキサスで生産する準備に入ります」と、モラヴィ氏は付け加えた。

マスク氏は、おそらくCybertruckが2021年に発売されるという期待を緩和させるためか、Cybertruckを生産することの難易度について言及した。

「Cybertruckを完成させることは、新しいアーキテクチャーであるがゆえに困難が予想されます」と、マスク氏は語った。「すばらしい製品になるはずですし、もしかしたら当社のこれまでで最高の製品になるかもしれません。しかし、そこには根本的に新しい設計思想が多く含まれているのです」。

そして同氏は、これまでテスラの他の自動車が試作から量産に移る際に主張したことを繰り返した。すなわち「生産は難しい」ということだ。

「これまでの繰り返しになりますが、試作や少量生産は実際に簡単でも、大量生産されるものは、これは本当に重要なことなのですが、1万点にも及ぶそれぞれ異なる部品やプロセスの中で最も時間がかかることに合わせた速度で進みます」。

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タグ:TeslaバッテリーCybertruckトラックイーロン・マスク

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(文:Kirsten Korosec、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

ついにテスラの太陽電池・エネルギー貯蔵事業が売上原価を超える、売上げ約882.6億円

Tesla(テスラ)は、電気自動車の販売を主な収益源としているが、最新の四半期業績報告書の中では、エネルギー貯蔵と太陽光発電事業の成長が確認できる。

テスラのCEOであるElon Musk(イーロン・マスク)氏によると、エネルギー貯蔵製品のために十分なチップを入手できれば、同部門への需要はさらに明るくなるという。

テスラは米国時間7月26日、太陽光発電、家庭・企業向け蓄電装置Powerwall(パワーウォール)、大規模蓄電装置Megapack(メガパック)の3つの主要製品を含む、発電・蓄電事業から8億100万ドル(約882億6000万円)の売上を発表したが、これは120億ドル(約1兆3200億円)近くある総売上のほんの一部に過ぎない。小さいながらも、この部門は蓄電や太陽光発電の販売を強化している。この部門の売上は前四半期比で62%増え、2020年の同四半期比では116%以上の伸びを示している。テスラは太陽光発電とエネルギー貯蔵の売上を分けていない。

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さらに重要なことは、太陽電池・エネルギー貯蔵事業の売上原価が7億8100万ドル(約860億5000万円)であったことだ。すなわちエネルギー貯蔵関連製品の生産・販売にかかる総コストが、初めて売上額を下回ったことを意味する。これは良いニュースだ。

当然のことながら、総設置量も増加している。テスラは、2021年第2四半期に、前年同期比205%増の1274メガワット時(MWh)のエネルギー貯蔵装置を設置した。また、2021年の第2四半期に設置された太陽光発電量の合計は85MWhで、2020年第2四半期から214%増加している。補足すると、テスラの太陽光発電とエネルギー貯蔵の総設置量は、2019年第2四半期と2020年第2四半期の数字を比較するとほぼ横ばいだった、これはパンデミックによってビジネスが全般的に停止したためと思われれる。

大事なのは売上の伸びだ。2019年、テスラは太陽光発電とエネルギー貯蔵事業からの売上を3億6900万ドル(約406億6000万円)と報告した。2020年第2四半期時点での売上は停滞し、同事業からの収益は3億7000万ドル(約407億7000万円)にとどまった。今回の四半期は、2019年と2020年の同じ四半期にテスラが達成した売上の倍以上の数字となった。

何が変わったのだろう?新型コロナウイルス以外にも、テスラはいくつかのMegapackプロジェクトが稼働し始めていることや、太陽光発電とPowerwall(パワーウォール)を組み合わせた製品の人気が高まっていることを指摘している(太陽光発電設備を設置せずにPowerwallを注文することはできなくなった)。またテスラのウェブサイトに掲載されている概算によると、Megapack1台の価格は税抜きで約120万ドル(約1億3000万円)だ。テスラによれば、いくつかの州では、最も早い納入が2023年になるという。

だが、テスラのエネルギー貯蔵事業は困難に直面している。マスク氏によると、Megapack、Powerwallともに需要が供給を上回っており、バックログが増えているのだ。世界的なチップ不足のため、その需要に応えることができないのだという。

テスラは、Powerwallに自動車と同じチップを使用しており、マスク氏は、供給が少ない間は自動車を優先すると表明している。

マスク氏は業績説明会で「この大幅な不足が解消されれば、Powerwallの生産を大幅に増やすことができます」と語っている。「来年には、Powerwallを年100万台のペースにできるチャンスがあると思います、おそらく週に2万台のペースということです。繰り返しますが、セルの供給や半導体に依存します【略】世界が持続可能なエネルギー生産に移行する中で、太陽光や風力が注目されていますが、その不安定さを考えると、安定した電気を供給するためにはバッテリーパックが必要なのです。そして、世界中の電力事業を見れば、膨大な量のバックアップバッテリーを必要としていることがわかります」。

マスク氏は、長期的には、テスラと他のサプライヤーが蓄電需要に対応するためには、合わせて年間1000〜2000GWhが必要になると述べている。マスク氏によると、同社はセルサプライヤーに2022年に供給量を2倍にするよう要請しているが、この目標はサプライチェーンの問題に左右されるとマスク氏は注意を促している。現在の同社の戦略は、セルの供給をオーバーシュートさせて、それをエネルギー貯蔵製品に振り向けるというものだが、チップが不足した場合と同様に、その場合でも自動車の生産が優先されるだろうとマスク氏は述べている。

バッテリー計画

バッテリーの話題は、開発中の4680バッテリーに集中していたが、マスク氏は、安価なLFP(リン酸鉄リチウムイオン)を一部の製品に利用したいというテスラの意図にも触れた。具体的には、すべての固定蓄電池を鉄系電池に移行し、ニッケル・マンガン・コバルト(NMC)バッテリーやニッケル・コバルト・アルミニウムバッテリーから撤退する可能性が高いということだ。

「おそらく3分の2が鉄、3分の1がニッケルになるのではないかと思います」とマスク氏はテスラの計画について語った。「実際これは良いことなのです、なにしろ世界には膨大な量の鉄がありますから。一方、ニッケルとコバルトは非常に少ないのです」。

ニッケル系として残る3分の1のバッテリーは、より長距離巡航型の電気自動車に使用される。また、その他のEVもすべてLFPバッテリーに移行するが、これは中国で生産している車両ではすでに行われている。

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タグ:Tesla太陽電池バッテリー決算発表MegapackPowerwallイーロン・マスクエネルギー貯蔵

画像クレジット:Bloomberg/Contributor/Getty Images

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:sako)

Teslaの第2四半期の純利益は過去最高の約1257億円、決算好感で株価も上昇

Tesla(テスラ)は米国時間7月26日、第2四半期の純利益が11億4000万ドル(約1257億円)だっと発表した。アナリストの予想を上回り、同社の四半期利益(GAAPベース)としては初めて10億ドルを超えた。この決算内容を受けて同社の株価は時間外取引で2.2%上昇した。

サプライチェーン問題とビットコイン投資での損失を抱えたにもかかわらず、業績は予想を上回り、8四半期連続で黒字を達成した。営業利益は生産増とコスト削減により前年同期の3億2700万ドル(約360億円)から13億ドル(約1433億円)に増えた、と同社は述べた。そうした業績は部分的に営業経費の増加やサプライチェーン問題、規制クレジット収入減、前述のビットコイン関連の2300万ドル(約25億円)もの減損で相殺された。

サプライチェーン問題、特に世界的な半導体チップ不足と港の混雑が第2四半期の事業に影響した2大要因だった。Teslaはサプライチェーン問題が引き続き事業と2021年の納車台数増加率に影響を及ぼす、と指摘した。

「グローバルで記録的水準の車両需要があり、部品の供給は2021年残りの納車台数増加率に大きな影響を及ぼす」と株主向けのリリースで同社は説明した。

売上高は119億6000万ドル(約1兆3188億円)と2020年第2四半期の60億4000万ドル(約6660億円)から100%近く増えた。2021年第2四半期の売上高は、前四半期の103億9000万ドル(約1兆1457億円)も上回った。Factsetの調査対象のアナリストは売上高114億ドル(約1兆2571億円)、純利益6億ドル(約661億円)を予想していた。

同社の自動車関連の売上高は102億ドル(約1兆1248億円)だった。注目すべきことに、そのうち規制クレジット収入は3億5400万ドル(約390億円)にとどまり、これは前四半期より17%少なく、過去4四半期の中で最も少なかった。一方、自動車関連の粗利益は前年同期比28.4増%と過去最高となった。

11億4000万ドルという純利益は2020年同期の1億400万ドル(約114億円)から1000%近い増加だ。過去最高となった今期の数字は2021年第1四半期の4億3800万ドル(約483億円)の3倍近くだ。調整後EBITDAでは22億4000万ドル(約2470億円)で、前年同期の12億1000万ドルから100%近い増加となった。

Teslaによると、現金および現金同等物の四半期末残高は162億ドル(約1兆7856億円)に減った。減少は主に負債総額と16億ドル(約1764億円)のファイナンスリース返済によるもので、部分的には6億1900万ドル(約682億円)のフリーキャッシュフローと相殺された。

同社は7月初め、第2四半期に20万6421台を生産したと発表した。そのうち20万1250台を納車し、第1四半期に比べて9%近く増えた。

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(文:Kirsten Korosec、翻訳:Nariko Mizoguchi

テスラが高まるニッケル需要に備え鉱山大手BHPと供給契約を締結

Tesla(テスラ)は、鉱業資源の巨人BHPからのニッケル供給を確保した。今後10年で需要の急増が見込まれている原材料の直接提供元を確保しようとする同社の最新行動だ。

BHPのNickel Westディビジョンは、オーストラリア西部の同社鉱山から非公表の量のニッケルを提供する。両社はバッテリーサプライチェーンの持続可能性の向上、および再生可能エネルギーと組み合わせたエネルギーストレージを使ってそれぞれの事業運用における炭素排出量削減方法でも協力する。

ニッケルはリチウムイオン電池の主要な鉱物であり、Teslaの次世代バッテリー化学の主役だ。リチウムイオン電池の多くがニッケル、マンガン、コバルトから成るカソードを使っているのに対して、Teslaは異なる戦術を取っている。TeslaのBattery Day 2020カンファレンスでElon Musk(イーロン・マスク)氏は、一部のモデル向けに、ニッケルが多くコバルトを使わないカソードに投資すると語り、エネルギー密度を高くするためであることを理由に挙げた。

Teslaは、次の10年にバッテリー生産を増強する意向に迷いがない。2022年までに100ギガワット時、2030年までには年間3テラワット時相当のバッテリーを生産する計画だ。

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それに向けて同社は、ニッケル生産最大手との購入契約締結にすばやく動いている。2021年Teslaは、フランス領ニューカレドニアのニッケル製造企業との提携を発表した。そのわずか数カ月後、TeslaのRobyn Denholm(ロビン・デンホルム)会長は、同社がオーストラリアからだけで年間約10億ドルのバッテリー用鉱物を購入するつもりであることを認めた。

マスク氏は、鉱山会社にもっとニッケルを生産するよう再三要請してきた。7月の投資家向け電話会見で同氏は生産者に対して「Teslaはニッケルを効率よく、かつ環境を重視した方法で採掘する会社と長期の大型契約を結びます」と語った。Battery Dayカンファレンスでも同氏は同じ立場を繰り返した。「スケーリングするためには当社のニッケル総入手量が制約を受けないようにする必要があります」と彼は言った。「実際私は世界最大の鉱山会社のCEOに『もっとたくさんニッケルを作ってください、非常に重要なのです』と言ったほどです」。

しかし、環境に優しいニッケル供給源を見つけるのは容易ではない。現在の回収、精錬技術特有の問題も関係しているし、採掘会社が直接管理可能な問題もある。例えば世界最大の金属生産国であるインドネシアのニッケル採鉱事業は、石炭への依存と廃棄物処理技術に関して非難の的になっている。

BHPは同社の活動は世界最大級に持続可能だと謳っており、Teslaがパートナーとしてこの会社を選んだことはその事実を裏付けるものと見ることができる。同社は2021年2月に、あるニッケル精錬所の使用電力の50%が太陽エネルギー由来であると述べている。

現在、世界のニッケル供給の大部分が鉄鋼産業によって消費されている。現在のEVとエネルギー貯蔵分野のニッケル需要は比較的少ないが、International Energy Agency(国際エネルギー機関)は2020年の81トンから2040年には3352トンへと、今後20年間に4000%以上増加すると予測している。

歴史的にNickel Westは、BHPの鉄鉱、銅、および石油事業と比べて全事業のごくわずかな部分でしかない。BHPは2015年前後にNickel Westを数度に渡って売却しようとしたが、EVとエネルギーストレージ分野の需要の高まりから方針転換したようだ。

業界アナリストのBenchmark Minerals(ベンチマーク・ミネラルズ)は、Teslaとの契約は年間1万8000トンのニッケルに相当する価値があると推測した。

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カテゴリー:モビリティ
タグ:TeslaニッケルBHPバッテリー再生可能エネルギー持続可能性リチウムイオン電池

画像クレジット:Tesla

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Nob Takahashi / facebook

イーロン・マスク氏がテスラはビットコインが環境に優しくなれば受け入れを再開する「可能性が高い」と発言

Tesla(テスラ)のElon Musk(イーロン・マスク)CEOは米国時間7月21日、Crypto Council for Innovation(クリプト・カウンシル・フォー・イノベーション)が主催したオンラインのパネルディスカッションにおいて、暗号資産の採掘に使用される電力の50%が再生可能エネルギーになった時点で、Bitcoin(ビットコイン)による支払いの受付を再開する「可能性が高い」と述べた。これは、先月のTwitter(ツイッター)における同氏の発言と合致するものだ。

テスラは、2021年2月にビットコインによる支払いの受け入れを始めた。同時期に同社は、歴史的な15億ドル(約1650億円)分のビットコインを購入している。だが、そのわずか3カ月後には、環境問題を理由にこの決定を撤回した。

暗号資産はエネルギー使用の点で悪評を受けている。それは確かに非常に多くのエネルギーを消費するからだ。少なくとも、暗号資産の多くはそうである。世界の2大暗号資産のビットコインとEthereum(イーサリアム)は、Proof of Work(プルーフ・オブ・ワーク)と呼ばれる仕組みを使ってネットワークを動かし、それぞれの暗号資産の新しいブロックを「鋳造」している。この「Work(作業)」は、複雑な暗号の問題を解くことであり、マイナー(採掘者)はこれに取り組むためにハイエンドのグラフィックカードを組み合わせて作業を行う。大規模なマイニングセンター(採掘工場)では、何千ものGPUが24時間稼働している。

イーサリアムは、プルーフ・オブ・ワークからプルーフ・オブ・ステーク(proof-of-stake)と呼ばれるエネルギー使用量を大幅に削減する方法に移行することをすでに表明しているが、ビットコインはこの移行の可能性が低いようだ。だから「環境にやさしく」なるということは、ビットコインの根本的な部分を大きく変えるのではなく、マイニングセンターを動かすエネルギー源を変えることになる。

ビットコインのグローバルなマイニングネットワークは、明らかに再生可能エネルギーに依存しているものの、グリッドがどれほど分散化されているかを考えると、再生可能エネルギーの使用率について正確な洞察を得ることは非常に困難だ。明らかなのは、マスク氏がビットコインの現在または将来の「環境への優しさ」を判断する出発点には、グローバルネットワークからの前例のない透明性が必要だということ。そしてマスク氏はおそらく、個人の見解によるデータに基づいて、いつでもこの判断を下せるように、多くの余裕を持とうとしているだろうということだ。

マスク氏の今回のコメントは意外ではない。同氏は6月に「採掘者による適正な(~50%)なクリーンエネルギーの使用が確認され、将来的に前向きの傾向が見られるようになれば、テスラはビットコインによる決済の受け入れを再開します」とツイートしている。

コインテレグラフ

ご覧になりましたか?

イーロン・マスクがまた非難されていますが、今回は何のためでしょうか? Sygnia(シグニア)のCEOであるMagda Wierzycka(マグダ・ウィアジッカ)氏は「ビットコインで見られるのは、1人の非常に強力で影響力のある個人による価格操作です」と彼を非難しました。

イーロン・マスク

これは正確ではありません。テスラは市場を動かすことなく簡単にBTCを清算できることを確認するために、保有資産の10%以下を売却しただけです。採掘者による適正な(~50%)なクリーンエネルギーの使用が確認され、将来的に前向きの傾向が見られるようになれば、テスラはビットコインによる決済の受け入れを再開します。

しかし、マスク氏はコメントに十分な余裕を持たせている。「ビットコインの採掘者を再生可能エネルギーに移行させようとする意識的な努力があるなら、テスラはそれをサポートできます」と、同氏は会談の後半で付け加えた。ビットコインの採掘の大部分は中国で行われていた。中国では安価な石炭と水力発電により、わずかながら経済的な採掘ができたからだ。しかし、マスク氏はこれらの石炭発電所の一部が閉鎖されていることを指摘した(中国の採掘者の大部分は、中国政府による採掘の取り締まりを受けて国外へ移住し始めている)。

ビットコインの環境への影響に関するマスク氏の懸念は、ビットコインのコミュニティで議論を巻き起こしていることにも留意しておくべきだろう。ビットコインは、その実際のエネルギー消費量に比べて、過剰な監視を受けている、という意見もある。今回のオンライン討論に参加したTwitter(ツイッター)のJack Dorsey(ジャック・ドーシー)CEOは、ビットコインの再生可能エネルギーへの移行を促すことはできると実際に主張を続けている。決済企業のSquare(スクエア)の「Bitcoin Clean Energy Initiative(ビットコイン・クリーン・エナジー・イニシアティブ)」プログラムが発表した報告書では、ビットコインの採掘によって、再生可能エネルギーが現在よりもさらに安価で経済的に実現可能になると主張している。

今回のマスク氏のコメントは、これまでと同様にあいまいな表現ではあるものの、同氏が依然として暗号資産市場に大きな影響力を持っていることを示している。ビットコインの価格は、4月に6万3000ドル(約694万円)以上の史上最高値を記録した後、7月19日には3万ドル(約330万円)を下回った。しかし、この億万長者の創業者がオンライン討論会で、自分や会社の保有量をより詳細に明らかにしたところ、ビットコインの価格は反発した。

マスク氏個人やテスラのビットコイン保有に加えて、同氏の航空宇宙企業であるSpaceX(スペースX)もビットコインを保有している。マスク氏は、個人的にイーサリアムと(もちろん)Dogecoin(ドージコイン)も保有していると付け加えた。彼のコメントを受けて、3つの暗号資産の価格は上昇した。

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タグ:TeslaElon Muskビットコイン暗号資産

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(文:Aria Alamalhodaei, Lucas Matney、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

テスラのスーパーチャージャー充電ネットワークを2021年後半に他社EVにも開放とマスクCEO

Tesla(テスラ)のElon Musk(イーロン・マスク)CEOは、2021年後半に同社のグローバルな充電器ネットワークを他社の電気自動車も利用できるようにすると、米国時間7月20日にツイートした。マスク氏は以前より、テスラがこのアイデアに前向きであることを示唆する発言を繰り返していた。

これまで、同社が2万5000台の充電器からなる「Supercharger(スーパーチャージャー)」ネットワークを、いつ、どのように開放するのか、詳細は明らかになっていなかったが、現時点でもわかっている情報は少ない。例えば、最初にどこの充電ステーションを開放するのか、どの自動車メーカーがテスラと合意しているのか、テスラのオーナーが優先されるのか、などの詳細は依然として不明だ。しかし、マスク氏は2021年末までに開始すると述べ、ようやくタイムラインのようなものを明らかにした。

さらに、別のツイートでは、テスラが充電器を設置しているすべての国で、最終的には他社のEVにもネットワークを開放すると述べている。テスラのスーパーチャージャー充電器は北米、アジア、欧州に加え、中東のアラブ首長国連邦とイスラエルにも設置されている。

多くの人が、なぜテスラは他社のEVと互換性がない独自の充電コネクタを作ったのかと、疑問を抱いているのはおかしなことです。イーロン・マスクが技術を進歩させていたときに、サポートしなかったのはどういうわけでしょうか。彼のチームはフリートを充電できる信頼性の高い手段を作り出したというのに。対処してください!

テスラティーノ

当時はまだ規格がなく、航続距離の長い電気自動車を製造するメーカーはテスラしかなかったので、私たちは独自のコネクターを作ることにしました。

低電力充電と高電力充電の両方に対応した、非常にスリムなコネクターです。

とはいえ、2021年の後半には我々のスーパーチャージャーネットワークを他のEVにも開放する予定です。

イーロン・マスク

テスラのスーパーチャージャーの技術を共有するか、あるいはその充電ネットワークを他の電気自動車にも開放するかということについて、マスク氏は何年も前から語ってきた。2014年の時点では、業界全体で使用できる互換性のある規格を構築するために、設計をオープンにしても構わないとマスク氏は語っていた。これが実現すれば、テスラと競合する他社の電気自動車が、スーパーチャージャーネットワークで充電できるようになる。

マスク氏はそれ以来、さまざまなイベントや決算説明会で、この件についてあれこれ発言してきた。2018年には、決算説明会で質問に答えて「スーパーチャージャーネットワークは壁に囲まれた庭ではない」と述べ、他のEVが使えないように設計されているわけではないということを表現する意味の発言をした。しかし、現時点でスーパーチャージャーが他社のEVと互換性がないことには注意する必要がある。

「壁に囲まれた庭にするつもりはないと、私たちは常に言い続けてきました。私たちは喜んで、他の自動車メーカーを支援し、当社のスーパーチャージャーステーションを利用してもらうようにしたいと思っています」と、マスク氏は2018年に語っている。「他の自動車メーカーは、使用量に応じた費用を負担するだけでいいのです。ただし、我々の充電出力を受け入れることができる性能や、あるいは少なくとも我々の充電コネクターに対応するソケットまたは変換アダプターを備えている必要があります。このように、私たちはすっかり受け入れる用意があるのですが、今までのところ、それを望む他の自動車メーカーは1社もありません。しかし、これは私たちが反対したからではありません。けっして壁に囲まれた庭ではないのです」。

電気自動車の急速充電に使用される一般的なコネクターには、CCS(Combined Charging System、通称コンボ)とCHAdeMO(チャデモ)の2種類がある。CCSは、欧州や北米で近年普及が進んでいるオープンな国際規格の直流コネクタだ。

テスラは独自のコネクタを採用しているため、他社のEVがスーパーチャージャーネットワークを利用するためには、メーカーがそのEVのオーナーにアダプターを提供または販売する必要がある。しかし、欧州では事情が異なる。テスラは欧州で販売する「Model 3(モデル3)」には、CCS直流コネクタを採用している。つまり、欧州に設置されているテスラのスーパーチャージャー充電器は、CCSに対応したケーブルがすでに用意されているのだ。そのため、テスラが最初にスーパーチャージャーネットワークを開放する地域は、欧州になる可能性が高い。

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タグ:Tesla電気自動車Elon Musk充電ステーション

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(文:Kirsten Korosec、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

テスラがオーナーを使い安全ではない自動運転ソフトのテストを行っているとコンシューマーレポートが懸念

サンフランシスコの交通量の多い道路で、自動運転モードのTesla(テスラ)が中央車線から左折する。車両は意図していないバスレーンに飛び込んでしまう。角を曲がったところで駐車中の車の列に突っ込みそうになり、ドライバーがハンドルを握ることになる。これらのシーンは、自動車評論家のAI Addict(AIアディクト)氏が撮影したもので、他にも同様のシーンがYouTubeにアップされている。これらは、携帯電話で話し中の人間なら誰でもやってしまいそうなミスだというかもしれない。しかし、私たちはAIがもっと頼りになることを期待している。

2021年7月初めから、テスラはこれまでのADAS(先進ドライバー・アシストシステム)が行っていたような、カメラとレーダーの利用ではなく、カメラだけを使ったADASであるFSD(Full Self-Driving)バージョン9ベータ の配信を開始した。

無防備な左折などの危険な運転をしている映像や他のテスラのオーナーからの報告を受けてConsumer Reports(コンシューマーレポート)は、米国時間7月20日に声明を発表した。それは今回のソフトウェアアップグレードは、公道での安全性に問題があると考えられるというもので、必要なソフトウェアアップデートが行われた後、同社が所有するSUV「Model Y」で独自にソフトウェアアップデートの内容をテストするとしている。

試作品のソフトウェアを動かすことは、大変だが楽しみでもあります。修正すべき多くの既知の問題を抱えていたので、ベータリストは遅れていました。

ベータ9では、ほとんどの既知の問題には対処できていますが、未知の問題もありますので、ご利用時にはこれ以上ない細心の注意を。

テスラは常に安全性を最優先しています。

コンシューマーレポートは、テスラが既存の所有者とその車両を、新機能をテストするためのモルモットとして利用しているのではないかと懸念している。テスラのCEOであるElon Musk(イーロン・マスク)氏は、同社の立場を強調するように、ドライバーに対して「未知の問題もありますので、ご利用時にはこれ以上ない細心の注意を」と、運転中に気を抜かないように呼びかけた。テスラ車のオーナーの多くは、フィードバックのためにベータ版ソフトウェアを提供するテスラのアーリーアクセスプログラムに登録しているので、自分が何をしようとしているのかを理解しているが、それ以外の一般の道路利用者たちはそのような試験に同意していない。

テスラのアップデートは、全国のドライバーに向けて配信されている。コンシューマーレポートはテスラに対して、各州の個別の自動運転規制を考慮しているかどうかについての詳細な情報を求めたが、回答は得られていない。29の州が自動運転に関連する法律を制定しているが、それらは州によって大きく異なっている。Cruise(クルーズ)、Waymo(ウェイモ)、Argo AI(アルゴAI)などの他の自動運転技術企業は、コンシューマーレポートに対して、私有地でソフトウェアをテストするか、訓練を受けたセーフティドライバーを監視役として使用していると回答している。

コンシューマーレポートの安全政策担当マネージャーのWilliam Wallace(ウィリアム・ウォレス)氏は声明の中で「自動車技術は本当に急速に進歩しており、自動化は多くの可能性を秘めていますが、政策立案者たちは強力で意味のある安全規制を導入するために踏み出す必要があります」という。「さもないと一部の企業が、安全に対する責任を負わないまま公道を私的な実験場のように扱うことになります」。

2021年6月には米国運輸省道路交通安全局(NHTSA)が、SAEレベル2のADASまたはSAEレベル3、4、5の自動運転システムを搭載した車両の製造者および運用者に対して、衝突事故の報告を義務付ける命令を発令した。

NHTSAの管理代行者であるSteven Cliff(スティーブン・クリフ)博士は、声明の中で以下のように語っている「NHTSAの最大の使命は安全です。衝突報告を義務付けることで、NHTSAは重要なデータにアクセスできるようになり、これらの自動運転システムに現れる可能性のある安全上の問題を迅速に特定することができます。実際、データを集めることで、連邦政府が自動運転車の安全性をしっかりと監視しているという国民の信頼を得ることができるのです」。

FSDベータ9ソフトウェアには、ドライバーの監視下で交差点や市街地を巡航するなど、より多くの運転タスクを自動化する機能が追加されている。しかし、他の道路利用者と車の位置関係や、スクーターに乗った女性が通り過ぎる様子まで詳細に表示される優れたグラフィックによって、ドライバーは肝心な時に支援してくれるはずの技術そのものに注意を奪われてしまうかもしれない。

コンシューマーレポートのAuto Test Center(オートテストセンター)のシニアディレクターのJake Fisher(ジェイク・フィッシャー)氏は、次のように述べている。「テスラがドライバーに注意を払うように求めるだけでは十分ではありません。システムが作動しているときにドライバーが集中しているかを確認する必要があるのです。適切なドライバーサポートなしに、自動運転システムの開発をテストすることは、死亡事故につながる可能性があるというだけでなく、実際に悲劇が起きることもわかっています」。

フィッシャー氏は、テスラはドライバーが道路を見ていることを確認するための車内ドライバーモニタリングシステムを導入すべきだという。これは 2018年にフェニックスで、道路を横断していた女性をはねて死亡させたUberの自動運転テスト車両のような事故を防ぐことが目的だ

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:sako)

イーロン・マスク氏がSolarCity買収に関する訴訟で買収の正当性を主張

Elon Musk(イーロン・マスク)氏は米国時間7月12日朝、2016年の26億ドル(約2870億円)でのTesla(テスラ)によるSolarCity(ソーラーシティ)買収をめぐる訴訟で証言した。訴訟では株主のグループが、買収は業績が悪化していたSolarCityの「救済措置」だったと主張している。株主たちはSolarCity買収費用のTeslaへの返済を模索している。

2017年にデラウェア地方裁判所に提出された訴状では、SolarCityが買収当時、破産に近い状態だったと主張している。SolarCityの取締役会長で最大株主だったマスク氏は買収の恩恵を直接受け、同氏の一部の友人や家族も同様だったとも申し立てている。SolarCityの創業者のLyndon Rive(リンドン・ライブ)氏とPeter Rive(ピーター・ライブ)氏はマスク氏のいとこだ。

SolarCityは「一貫して利益を上げるのに失敗し、増大する債務を抱え、持続不可能なレートで現金を使った」と原告は主張している。訴状にはまた、SolarCityが10年で30億ドル(約3310億円)超の借金を抱え、その半分近くの返済期限が2017年末だったともある。Teslaによる買収は株主の85%が賛成して承認された。

マスク氏の弁護士は、買収はTeslaを輸送・エネルギー会社へと変えるCEOの長期的なビジョンの一部だったと話す。買収クロージングの頃にTeslaのウェブサイトに掲載された「Master Plan、Part Deux」というタイトルのブログ投稿の中で、マスク氏はSolarCityとTeslaの合体は、Powerwall(Teslaの家庭・産業用蓄電プロダクト)と屋根設置型ソーラーパネルを組み合わせたビジョンを実現するための鍵だと述べている。

カウアイ島のソーラーストレージ施設立ち上げで出席者による調査を受けるModel X。Teslaは2016年11月にSolarCityを買収した。

ワシントンポスト紙のWill Oremus(ウィル・オレマス)氏が法廷の外からツイートしたところによると、7月12日の証言の中でマスク氏はTeslaがModel 3の生産期限に間に合わせるためにソーラー事業からフォーカスをシフトせざるを得なかった、と述べた。USA Todayの記者Isabel Hughes(イザベル・ヒューズ)氏も、マスク氏が同社のソーラー事業部門の業績不振をパンデミックのせいにした、と法廷からツイートした。マスク氏は原告団の弁護士Randall Baron(ランドオール・バロン)氏の質問を受けた。バロン氏は2019年の宣誓証言でマスク氏を「恥ずべき人」と呼んだ人物だ。

マスク氏の弁護士は、同氏が買収に関する幅広い議論と交渉に関与していなかったと話すが、原告側は不関与が「表面的」だったと主張している。この訴訟の最大の疑問は、マスク氏が買収取引に過度の影響を及ぼしたかどうか、そしてマスク氏や他の役員メンバーが取引に関する情報を株主から隠したかどうかだ。

訴状に名前が挙がっている他の役員メンバー、Robyn Denholm(ロビン・デンホルム)氏、Ira Ehrenpreis(アイラ・エーレンプレイス)氏、Antonio Gracias(アントニオ・グラシアス)氏、Kimbal Musk(キンバル・マスク)氏、Stephen Jurvetson(スティーブン・ジャーベンソン)氏は2020年6000万ドル(約66億円)、そして弁護士費用と訴訟費用の1680万ドル(約19億円)を保険で支払うことで和解した。マスク氏が唯一の被告となった裁判は新型コロナウイルスパンデミックのために1年延期されていた。

裁判は10日間続く見込みだ。審理が行われているデラウェア地方裁判所は陪審員がおらず、代わりに裁判官副長官のJoseph Slights III(ジョセフ・スライツ3世)氏が審理を行う。スライツ氏が買収は不適切だったと判断しても、Teslaが当時SolarCityに払った26億ドルよりかなり少ない額を支払うようマスク氏に命じる可能性がある。

カテゴリー:その他
タグ:イーロン・マスクTeslaSolarCity買収裁判

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Nariko Mizoguchi

テスラは強力なスーパーコンピューターを使ったビジョンオンリーの自動運転アプローチを追求中

Tesla(テスラ)のElon Musk(イーロン・マスク)CEOは、少なくとも2019年頃から「Dojo」(ドージョー)という名のニューラルネットワークトレーニングコンピューターについて言及してきた。Dojoは、ビジョンオンリー(視覚のみ)の自動運転を実現するために、膨大な量の映像データを処理することができるコンピューターだとマスク氏はいう。Dojo自体はまだ開発中だが、米国時間6月22日、テスラは、Dojoが最終的に提供しようとしているものの開発プロトタイプ版となる、新しいスーパーコンピューターを公開した。

テスラのAI部門の責任者であるAndrej Karpathy(アンドレイ・カーパシー)氏が、米国時間6月21日に開催された「2021 Conference on Computer Vision and Pattern Recognition」(コンピュータービジョンとパターン認識会議2021)において、同社の新しいスーパーコンピューターを公開したのだ。このコンピューターを利用することで、自動運転車に搭載されているレーダーやライダーのセンサーを捨て去り、高品質の光学カメラを採用することが可能になる。自動運転に関するワークショップで、カーパシー氏は、人間と同じようにコンピューターが新しい環境に対応するためには、膨大なデータセットと、そのデータセットを使って同社のニューラルネットベースの自動運転技術を訓練できる、巨大なスーパーコンピューターが必要だと説明した。こうして、今回のような「Dojo」の前身が生まれたのだ。

テスラの最新世代スーパーコンピューターは、10ペタバイトの「ホットティア」NVMeストレージを搭載し、毎秒1.6テラバイトのスピードで動作するとカーパシー氏はいう。その1.8EFLOPS(エクサフロップス)に及ぶ性能は、世界で5番目に強力なスーパーコンピューターになるかもしれないと彼は語ったが、後に、スーパーコンピューティングのTOP500ランキングに入るために必要な特定のベンチマークはまだ実行していないことを認めた。

「とはいえFLOPSで考えれば、きっと5位あたりに入るでしょう」とカーパシー氏はTechCrunchに語っている。「実際に現在5位にいるのは、NVIDIA(エヌビディア)のSelene(セレーネ)クラスターで、私たちのマシンに類似したアーキテクチャを採用し、同程度の数のGPUを搭載しています(向こうは4480個で、こちらは5760個、つまりあちらがやや少ない)」。

マスク氏は、以前からビジョン(視覚)のみでの自動運転を提唱してきたが、その主な理由はレーダーやライダーよりもカメラの方が速いからだ。2021年5月現在、北米で販売されているテスラのModel YおよびModel 3は、レーダーを使用せず、カメラと機械学習を利用して、アドバンスト運転支援システムとオートパイロットをサポートしている。

レーダーとビジョンが一致しない場合、どちらを信じればよいでしょう?ビジョンの方がはるかに精度が高いのですから、センサーを混合して使うより、ビジョンを重視した方がいいでしょう。

自動運転を提供する企業の多くは、LiDARと高精細地図を使用している。つまり走行する場所の、道路の全車線とその接続方法、信号機などに関する非常に詳細な地図が必要になる。

カーパシー氏はワークショップの中で「主にニューラルネットワークを使用する、ビジョンベースの私たちのアプローチは、原理的には地球上のどこでも機能することができます」と語った。

いわば「生体コンピューター」である人間をシリコンコンピューターで置き換えることで、レイテンシーの低下(反応速度の向上)、360度の状況認識、Instagram(インスタグラム)をチェックしたりしない完璧な注意力を保ったドライバーが生まれる、とカーパシー氏はいう。

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カーパシー氏は、テスラのスーパーコンピューターがコンピュータービジョンを使ってドライバーの望ましくない行動を修正するシナリオをいくつか紹介した。例えばコンピューターの物体検知機能が働いて、歩行者を轢くことを防ぐ緊急ブレーキのシナリオや、遠くにある黄色の信号を識別して、まだ減速を始めていないドライバーに警告を送る交通制御状況に関する通知などだ。

また、テスラ車では、ペダル誤操作緩和機能と呼ばれる機能がすでに実証されている。これは、クルマが進路上の歩行者や、あるいは前方に走行できる道がないことを識別して、ドライバーが誤ってブレーキではなくアクセルを踏んだ場合に対応できる機能だ。このことによって、車の前の歩行者を救ったり、ドライバーが加速して川に飛び込んだりするのを防ぐことができる可能性が高まる。

テスラのスーパーコンピューターは、車両を取り囲む8台のカメラからの映像を毎秒36フレーム収集しており、それらは車両を取り巻く環境について非常に多くの情報を提供すると、カーパシー氏は説明する。

ビジョンオンリーのアプローチは、世界中で高精細な地図を収集、構築、維持することに比べれば拡張性が高い。しかしその一方で、物体の検出や運転を担当するニューラルネットワークが、人間の奥行きや速度への認識能力に匹敵するスピードで、膨大な量のデータを収集処理できなければならないため、課題が多いということができる。

カーパシー氏は、長年の研究の結果、この課題を教師付き学習の問題として扱うことで解決できると考えているという。カーパシー氏は、この技術をテストした結果、人口の少ない地域では人間の介入なしで運転できることがわかったが「サンフランシスコのような非常に障害物の多い環境では、間違いなくもっと苦労するでしょう」と述べている。高精細な地図や追加のセンサーなどの必要性を減らし、システムを真に機能させるためには、人口密集地への対応力を高めなければならない。

テスラのAIチームの持つ画期的技術の1つは、自動ラベル付けだ。これは、テスラのカメラでクルマから撮影された膨大な量の動画から、道路上の危険物などのラベルを自動的に付けることができるものだ。大規模なAIデータセットは、時間がかかる多くの手作業によるラベル付けを必要としてきた。特に、ニューラルネットワーク上の教師付き学習システムをうまく機能させるために必要な、きれいにラベル付けされたデータセットを手に入れようとしているときにはそれが顕著だった。

だがテスラは、この最新のスーパーコンピューターを使って、1本約10秒の動画を100万本集め、60億個の物体に奥行き、速度、加速度のラベルを付けた。これらは、1.5ペタバイトという膨大な量のストレージを占めている。確かにこれは膨大な量に思えるだろうが、テスラがビジョンシステムのみに依存した自動運転システムに求められる信頼性を実現するには、さらに多くのものが必要となる。そのため、より高度なAIを追求するために、テスラはこれまで以上に強力なスーパーコンピューターを開発し続ける必要があるのだ。

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カテゴリー:人工知能・AI
タグ:TeslaElon Muskスーパーコンピュータ自動運転コンピュータービジョン機械学習

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(文: Rebecca Bellan、翻訳:sako)

【コラム】さらなる電化の普及にはまったく新しいバッテリー技術へのアプローチが必要だ

世界経済の広範な電化への移行により、輸送、家電、医療機器、家庭用エネルギー貯蔵などの業界にわたって、長寿命で高速充電のバッテリーに対する需要が高まっている。この移行のメリットは十分理解されているものの、実際には、バッテリーのイノベーションは社会の大望に追いついていない。

世界の気温が今後5年間で「パリ協定で示された1.5℃の制限を超えて上昇する」可能性は40%と予測する報告もあり、完全に商業化するまでにさらに10年かかることも考えられる次世代バッテリーの開発には、無駄な時間を費やす余裕がほとんどないことは明らかである。

電力供給への圧力の高まりに対応する上で、充電式バッテリーを迅速に拡張して温室効果ガスの排出を世界的に抑制し、気候危機の最悪のシナリオを回避する唯一の方法は、バッテリー構築に対するまったく新しいアプローチである。

バッテリーイノベーションへの挑戦

過去数十年にわたり、バッテリーの専門家、自動車メーカー、Tier 1サプライヤー、投資家などが、主にバッテリー化学に焦点を当てた次世代バッテリーの開発に世界中で数十億ドル(約数千億円)を費やしてきた。しかし、業界は依然として、バッテリーの普及を妨げている2つの大きな技術的課題に取り組んでいる。

  1. エネルギーと電力のトレードオフ:現在製造されているバッテリーはいずれも、電力とエネルギーとのトレードオフに直面している。バッテリーは、より多くのエネルギーを蓄えるか、さもなくばより高速で充電 / 放電を行うか、である。つまり、電気自動車に関して言えば、1つのバッテリーで航続距離の長さと高速充電を両立させることはできない。
  2. アノードとカソードのミスマッチ:今日最も有望とされるバッテリー技術は、リチウムイオンバッテリーセルを構成する一対の電極の負極であるアノードのエネルギー密度を最大にする。しかし、アノードはその正極であるカソードよりもすでに大きなエネルギー密度を有している。一定のバッテリーサイズから最大のエネルギー貯蔵容量を得るには、カソードのエネルギー密度が最終的にアノードのエネルギー密度と一致する必要がある。カソードのエネルギー密度を向上させる突破口がなければ、今日最も期待されているバッテリー技術の多くは、その潜在能力を十分に発揮することができないであろう。現在のところ、一般に使用されているリチウムイオンバッテリーは、オール電化の将来の幅広い用途のニーズを満たすことができない。多くの企業が新しいバッテリー化学を通じてこれらの要求に取り組み、高電力対エネルギー密度比をさまざまな成功の度合いに最適化しようと試みてきたが、大規模化と商業化に必要な性能指標の達成に近づいている企業はほとんどない。

固体バッテリーは究極の目標だろうか?

バッテリーの研究者たちは、高エネルギー密度と安全性の向上を実現する能力を持つ固体バッテリーを、バッテリー技術の究極の目標としてきた。しかし最近まで、この技術は実用性に欠けていた。

固体バッテリーは非常に高いエネルギー密度を有し、可燃性の液体電解質を使用しないため、潜在的により高い安全性が見込まれる。しかし、この技術はまだ初期段階にあり、実用化までの道のりは長い。固体バッテリーの製造プロセスは、特に今後数年間に50ドル(約5500円)/kWhという積極的な低コスト化の実現を目指す自動車業界にとって、コスト低減に向けて改善される必要がある。

固体状態技術の具現化における別の実質的な課題は、単位体積当たりのカソードに蓄積され得る総エネルギー密度の限界である。このジレンマに対する明白な解決策は、より厚いカソードを備えたバッテリーを得ることであろう。しかし、カソードが厚くなると、バッテリーの機械的および熱的安定性が低下する。この不安定性は、層間剥離(材料が層に破壊される破壊モード)、亀裂、および分離を引き起こし、これらすべてが早期のバッテリー故障の原因となる。さらに、カソードを厚くすると拡散が制限され、電力が減少する。その結果、カソードの厚さには実用的な限界があり、アノードの電力を制限している。

シリコンを使用した新しい素材の採用

ほとんどの場合、シリコンベースのバッテリーを開発している企業は、グラファイト(黒鉛)にシリコンを30%まで混ぜてエネルギー密度を高めている。Sila Nanotechnologies製のバッテリーは、シリコン混合物を使用して高エネルギー密度を実現している。別のアプローチは、Ampriusの製品のように、非常に薄い電極と高い製造コストという制約を受ける100%純粋シリコンのアノードを使用して、さらに高いエネルギー密度を生成することである。

シリコンはかなり大きなエネルギー密度を提供するが、これまでその採用を妨げてきた重大な欠点が存在する。この材料は、充放電時の収縮と膨張に起因するバッテリー寿命と性能の制限をともない、製造業者が商業的に採用する前に解決しなければならない劣化の問題につながっている。こうした課題にもかかわらず、一部のシリコンベースのバッテリーはすでに商業的に導入されており、自動車分野ではテスラがEVへのシリコン採用をリードしている。

電化の必須条件は、バッテリー設計に新たな重点を置くことである

バッテリーアーキテクチャとセル設計の進歩は、既存および新興のバッテリー化学による画期的な改善の可能性を大いに示している。

メインストリームの観点から最も注目すべきは、おそらくTeslaが2020年のバッテリーデーに発表した「ビスケット缶(円筒形)」バッテリーセルだろう。リチウムイオン化学を引き続き採用しているが、アノードおよびカソードとバッテリーケーシングの間の正極と負極の接続点として機能するタブを外し、代わりにセル上端すべてを電極にする設計を施している。この設計変更により、航続距離を向上させながら製造コストを削減し、DC電力で高速充電する際にセルが遭遇する可能性のある熱障壁の多くを取り除くことが可能になる。

従来の2D電極構造から3D構造への移行は、業界で注目を集めているもう1つのアプローチである。3D構造により、あらゆるバッテリー化学において、アノードとカソードの両方で高エネルギーおよび高出力性能が得られる。

3D電極はまだ研究開発と検証の段階にあるものの、市場競争力のある価格で高性能製品を製造することにより、2倍のアクセス可能容量、50%の充電時間短縮、150%の長寿命化を実現する。したがって、広範な用途のためのエネルギー貯蔵の可能性を最大限に引き出すべくバッテリー性能を向上させるためには、バッテリーの物理的構造を変更することに力点を置いた解決策を開発することが重要である。

バッテリー競争を勝ち抜く

性能の向上だけでなく、生産性とコスト削減も完璧に実現することが、バッテリー競争における優位性につながる。2027年までに2797億ドル(約30兆円)に達すると予測されている、急速に拡大するバッテリー市場で大きなシェアを獲得するには、世界各国が低コストのバッテリー製造を大規模に展開する方法を見つけていく必要がある。既存の組み立てラインや材料に組み込むことができる「ドロップイン」ソリューションと革新的な生産方法の優先順位づけが鍵となる。

バイデン政権による米国の雇用計画は、野心的な炭素削減目標を達成しつつ、電化のリーダーになるという米国の目標にとって、国内のバッテリー生産の重要性を強調している。こうした取り組みは、バッテリー市場で重要な競争力を維持し、1620億ドル(約18兆円)規模の世界EV市場で最大のシェアを獲得する能力を確立する上で重要な役割を果たすだろう。

突き詰めて言えば、完全な電化に向けた競争で勝利する技術は、性能に最大の影響度を有し、低コストで、既存の製造インフラとの互換性を備えたものとなる。総合的なアプローチを採用し、最先端の化学を微調整しながら、革新的なセル設計にさらに注力することで、世界が切望しているバッテリー性能と迅速な商業化における次のステップに到達することができるであろう。

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カテゴリー:ハードウェア
タグ:バッテリーコラム電気自動車Tesla

画像クレジット:PlargueDoctor / Getty Images

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(文:Moshiel Biton、翻訳:Dragonfly)

バッテリーリサイクルRedwood Materialsが拡大の一環としてテスラギガファクトリーの近くに拠点設置

Tesla(テスラ)の元CTOであるJB Straubel(JB・ストラウベル)氏が創業した、バッテリーリサイクルのスタートアップのRedwood Materials(レッドウッド・マテリアルズ)が、Panasonic(パナソニック)がテスラと共同で運営するネバダ州スパークスのギガファクトリーの近くに、100エーカー(約40万平方メートル)の土地を購入した。これは電気自動車の普及を促進し、国内のバッテリーリサイクルとサプライチェーンの取り組みを強化しようとするバイデン政権の方針に沿った拡大計画の一環だ。

米国時間6月15日、同社はネバダ州カーソンシティにある既存の15万平方フィート(約1万4000平方メートル)の施設もまた、約4倍の広さになると発表した。Redwoodは、カーソン市のリサイクル施設にさらに40万平方フィート(約3万7000平方メートル)を追加し、年末までに稼働させる予定だ。

また、成長計画の一環として、Redwoodは数百人の従業員を雇用する。Amazon(アマゾン)の支援を受けている同社では、現在130名の従業員が働いており、今後2年間で500名以上の雇用増を見込んでいる。

Redwoodは、米国サプライチェーンの強化に触れたバイデン政権の発足100日レビューと、リチウムベースのバッテリーの国内サプライチェーンを改善する計画を記した米国エネルギー省の文書の発表を受けて、今回の事業拡大を発表した。

米国エネルギー省のJennifer M. Granholm(ジェニファー・M・グランホルム)長官は米国時間6月15日に声明を発表し「米国は、23兆ドル(約2530兆円)規模の世界的なクリーンエネルギー経済の恩恵を最大限に享受するために、国内のサプライチェーンと製造業界を再建する明確なチャンスを前にしています」と述べている。そして「このような民間企業の投資は、私たちが減速してはいけないということを示すものです。このAmerican Jobs Plan(アメリカン・ジョブズ・プラン)は、自動車用バッテリーや蓄電設備のような技術の革新と需要を呼び起こし、すべての人にクリーンエネルギー関連の雇用を創出することで、米国企業に大きなチャンスをもたらすでしょう」と語る。

2017年に創業したRedwood Materialsは、循環型のサプライチェーンを作ろうとしている。同社はB2B戦略をとっていて、バッテリウーセルを製造する際に出るスクラップや、携帯電話のバッテリー、ノートパソコン、電動工具、 モバイルバッテリー、スクーター、電動バイクなどの家電製品をリサイクルしている。そのためにRedwoodは、家電メーカーやパナソニックなどの電池セルメーカーからスクラップを回収している。そして、これらの廃棄物を処理して、通常は自然から採掘されるコバルト、ニッケル、リチウムなどの素材を抽出し、パナソニックなどの顧客に再供給している。最終的には、バッテリーのコストを削減し、採掘の必要性を相対的に減らすクローズドループシステムの構築を目指しているのだ。

Redwood Materialsは多くの顧客を抱えているが、パナソニック、アマゾン、テネシー州のAESC Envision(AESEエンビジョン)と仕事をしていることだけを公にしている。

同社によるとニッケル、コバルト、リチウム、銅などの元素を電池から約95〜98%回収しているという。現在、年間3ギガワット時相当のスクラップを受け取っているが、これは自動車約4万5000台分に相当するという。

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画像クレジット:Redwood Materials

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(文:Kirsten Korosec、翻訳:sako)

テスラが超高速モデル「Model S Plaid」の発売イベントを開催

Tesla(テスラ)はついに、待ちに待った、そして一度は予定を変更した、超高速モデル「Model S Plaid(モデルSプレイド)」の発売イベントを、カリフォルニア州フレモントの工場で開催した。同社CEOのElon Musk(イーロン・マスク)氏は「金曜日の夜に25台の納車から開始して、その後は週に数百台の規模へと拡大していき、次の四半期には週に1000台に達する予定」と、このイベントで語った。

このModel Sの最新仕様に大きなサプライズはなかった。新設計のバッテリーパック、改良されたヒートポンプ、そしてモーターにカーボンで覆われたローターを採用し、空気抵抗係数は0.208という新記録を達成した。この数値は、おそらく新進気鋭のEVメーカーであるLucid Motors(ルーシッド・モーターズ)を揶揄することになるだろうと、マスク氏は強調した。2021年末に生産開始が予定されているLucid Air(ルーシッド・エア)の空気抵抗係数は0.21だ。

Tesla Model SのデザイナーであるFranz von Holzhausen(フランツ・フォン・ホルツハウゼン)は「いくつかの記録を破る」ための準備として、ハンマーを振り回しながらイベントを開始。そして、ダブステップの心地よいサウンドに合わせて、黒く輝くモデルSでテストコースを走り、ステージに滑り込んできたマスク氏を紹介した。

「このフレモントで最初に製造されたModel Sを納車してから9年が経ちました。ほぼ10年目となる今、私たちはPlaidでまったく新しいレベルに到達したと思います」と、マスク氏は会場に集まった多くのファンに向けて語った。「ご存知の方もいらっしゃるかもしれませんが、私たちの商品企画は映画『スペースボール』から取ったもので、星が格子状(plaid)に見えるほどの高速という意味です。なぜこのように馬鹿げたほど速いクルマを作るのか。それは持続可能なエネルギーの未来にとって、非常に重要な意味があると、私は考えているからです。電気自動車が、間違いなく最高のクルマであると、示す必要があるということです。持続可能なエネルギーのクルマは、最速のクルマであり、最も安全なクルマであり、あらゆる面で最も優れたクルマになる、ということを明確にする必要があるのです」。

この4ドアセダンの電気自動車は、0-60mph(約96km/h)を1.99秒で加速する。マスク氏によれば、これまで市販車が破れなかった2秒の壁を初めて破ったという。最高出力は1020馬力。最高速度は(適切なタイヤを装着した場合)時速200マイル(322km/h)に達する。そして1/4マイル(約400m)を9.23秒で走り切ることができると、マスク氏と同社のウェブサイトは述べている。バッテリーは1回の充電で390マイル(約628km)の距離を走行可能だが、デュアルモーター構成では412マイル(約663km)まで伸びると、マスク氏は付け加えている(Model S Plaidは3モーターを搭載)。急速充電の速度が向上したことにより、わずか15分の充電で187マイル(約300km)の距離を走ることができるという。

この新型Model Sには新しいバッテリーパックも搭載されているが、マスク氏はその詳細については語らなかった。モーターのローターにカーボンスリーブを採用したことについては、かなりの時間を割いて説明した。カーボンスリーブローターは、その難しさから量産型の電気モーターに採用されたのは初めてのことだとマスク氏は主張する。その結果、モーターの最大回転数は20000rpmに達した。

Plaidの空調システムを動かす新型ヒートポンプは、寒冷地における航続距離を30%向上させ、キャビンの暖房や凍結を溶かすために必要なエネルギーが50%少なくて済むため、寒冷地でのバッテリー劣化を抑えられると、マスク氏はいう。

画像クレジット:Tesla(スクリーンショット)

Model Sのインテリアにもいくつかのアップデートが施された。米国運輸省道路交通安全局も注目する大胆な操縦桿型ステアリングホイールや、横型になった17インチ「シネマティック・ディスプレイ」、ベンチレーション機能内蔵フロントシートなど、すでに明らかになっていたものもある。GPUはPlayStation 5(プレイステーション5)レベルらしい。TechCrunchは、このイベント中に、車内でCD Projekt Red(CDプロジェクトレッド)の「Cyberpunk 2077(サイバーパンク2077)」をプレイしている人がいたことに気づいた。

このクルマのソフトウェアは、ドライバーの行動から学習し、ドライバーのニーズに適応するように設計されている。例えば、自宅の車庫から公道までドライブウェイをバックで出ることが多い人の場合、クルマはその場所をジオコーディングし、 Autopilot(オートパイロット)システムがドライバーに代わって自動的にその動作を行うようになる。

「クルマがあなたの心を読み、あなたの必要な操作は最小限で済むようになります」と、マスク氏は述べている。

12万9990ドル(約1420万円、日本での価格は1599万9000円)からという価格で販売されるModel S Plaidの最初の納車は、その性能をさらに引き上げた「Model S Plaid+(モデルSプレイドプラス)」の生産取り止めをマスク氏が正式発表したのと同じ週に行われた。テスラが5月に自社ウェブサイトで予約受付を中止したことで、Plaind+の発売は中止されたのではないかと憶測されていた。

関連記事:マスク氏がTesla Model S Plaid+発売に対し正式にブレーキ

「今週、Model Sはプレイド速度へ」と、米国時間6月6日にツイートしたマスク氏は「Plaid+はキャンセルされました。必要ありません。Plaidのスピードがあまりにも速いので」と続けた。

マスク氏はこのクルマの運転感覚が「言葉では表現できない大脳辺縁系の共鳴」のせいで宇宙船に似ているとツイートしているが、それがどういう意味なのかはわからない。

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タグ:TeslaModel SEVElon Musk

画像クレジット:Screenshot/Tesla

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Hirokazu Kusakabe)