なにはともあれGitLabの巨額IPO

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みなさん、こんにちは。良い週末をお過ごしだっただろうか。では始めよう!

先週スタートアップの世界でおきた重要なマネーストーリーといえば、なにはともあれ巨額のGitLab(ギットラボ)のIPOだ。

ご存じない方のために。私たちはGitLabが株式公開を申請したことを報じ、同時に現在の市場価格で、このDevOpsの巨人は約100億ドル(約1兆1400億円)の価値があることを指摘した。その後GitLabは、IPOの価格帯を当初の予想よりも大幅に引き上げ77ドル(約8790円)とした。金曜日(米国時間10月15日)の午後遅くには、一株あたり108ドル(約1万2300円)以上の価格となっている。

GitLabのCEOであるSid Sijbrandij(シッツェ・シブランディ)氏に、今回の公開についての話を電話で聞いた。私はシブランディ氏とは、この話題を皮切りに、以前からあちこちで話をしていた。ということでIPOの日に、通常のSEC規則に縛られている彼と話をするのはとても楽しかった。私が聞き出したのは以下のような話題だ。

  • なぜ今、GitLabを公開したのか?シブランディ氏は、収益規模、収益の予測可能性、コンプライアンスなど、すべての条件を満たしているからだと述べた。IPOの日は、共同創業者のDmitriy Zaporozhets(ディミトリー・ザポロゼツ)氏が同社のための初めてのコードを書いた日から10年後の同じ月となった。なので、それはいい循環のタイミングになった。なにしろ人間はキリの良い数字が大好きなので。
  • GitLabの力強い総合継続メトリクスは、収益予測に役立ったか?答えはイエスだが、シブランディ氏はそれをはっきりとは話そうとはしなかった。
  • オープンソースは今や障害ではなく利点となっている。この点は、先月スタートアップ企業に関して指摘したことと同じですが、いずれにしても指摘しておく価値がある。オープンソースのコードは、開発者との長期的な関係を築きたいと願う企業にとって、大きなメリットとなっている。敢えて言い切るならば、製品主導の成長に関してしばしば重要な意味を持つ。これは、10年前の世界とは正反対を向くものであり、おそらくMicrosoft(マイクロソフト)がオープンコードに対する考えをしばらく前に変更した理由でもある。
  • そして、将来GitLabはDevOpsだけでなくMLOpsにも参入するようになるのだろうか?おそらくは。シブランディ氏は、この件について明言はしなかったが、MLOpsの世界が加速しているいま、GitLabがそのうちにその領域に入り込んだとしても、私は驚かないだろう。確かに、いまはしたいことを何でもすることのできる資金があるのだから。

Cloudflareと世界

2021年9月下旬に発表された、Cloudflare(クラウドフレア)が「サービスとしてのストレージ」市場に参入するというニュースを振り返ってみよう。このニュースは、Cloudflareが世界中のデータセンターを束ねてクラウドストレージを提供しようとしているというものだった。この製品に関するニュースは、ウェブサイトをより速く、より安全に表示するという、Cloudflareが最も得意とするこれまでの仕事からはかけ離れていた。

関連記事:Cloudflareが「R2」でクラウドストレージ市場に参入、「第4の大型パブリッククラウド」を目指す

なぜいまさら上場企業が、ストレージというコモディティ化したものに参入したのだろうか。当時、Ron Miller(ロン・ミラー)記者は、Cloudflareは自分のために作ったものを他の人向けに転用していると書いていた。また、Cloudflareのストレージサービス「R2」は、一部の料金を省くことで、たとえばAmazon(アマゾン)が提供するインフラサービス「AWS」を介して使うストレージよりも安くなるという。

ある考えが浮かんだ。つまり、超巨大企業ではないものの、世界的に事業を展開し、特定のデジタルサービスを提供している大規模なハイテク企業が、始めはニッチと思われるインフラツールの提供に乗り出し、AmazonやMicrosoftが現在AWSやAzure(アジュール)を通じて提供しているものと、最初は控えめながら競合するようになったとしても、私はまったく驚かないだろう。

これはまったくの妄想かもしれないが、アナロジーである程度説明できる。私の主張は、Intel(インテル)が長い間、特定のCPUに関わり世界を牛耳ってきたにもかかわらず、いまや暗号資産の採掘に使われるGPUだけでなく、例えばAIにチューニングされたシリコンを作るスタートアップの台頭にも未来を奪われてしまったことに似ているというものだ。このたとえ話の中では、AWSはIntelで、AIチップはCloudflareのR2のようなものに対応している。

AWSとAzureが価格の駆け引きを繰り返していた時代は終わった。次は何だろう?

関連記事:AIチップメーカーのHailoが約155億円調達、エッジデバイスにおけるAIモジュールの機会を倍増させる

その他のこと

  • 中西部のVCが350万ドル(約4億円)を投じたPresidio(プレシド)は、一般消費者向けのデジタル情報金庫スタートアップだ。フロリダにある同社は、2022年のローンチを目指している。これについては、無数の疑問が湧いてくる。しかし、この時代にストレージを中心としたスタートアップを作っている人がいるということが私の目を引いた。
  • 資本政策表(キャップテーブル)ソフトウェア企業のCartaが、私が楽しんで触っていたデータ製品を発表しした。時代や会社の種類ごとに分類された多数の資金調達データをいじくり回したい人には、とても楽しいソフトウェアだ。
  • 英国のスタートアップが、母国での個人情報保護規則の変更を受けて、EUへの再進出をどのように進めているかというエッセイに対するメモを書こうと思ったのだが、我らがNatasha Lomas(ナターシャ・ローマス)記者に先を越されてしまった。ということで、彼女の投稿を読んで欲しい。私が思いついたものよりも良い内容だ。
  • また、英国といえば、同国のFreetrade(フリードレード)が100万人のユーザーを獲得した。この数字は、Robinhoodブームがまさに、多くのスタートアップのボートを上昇させる国際的な消費者運動であることを示しているので、とても重要だ。

画像クレジット:Nigel Sussman

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(文:Alex Wilhelm、翻訳:sako)

「強力なAI」誕生へのカウントダウン

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みなさん、お元気でお過ごしだろうか。週末はゆっくりと休んでリラックスできただろうか。

今回は楽しい話題だ。もちろん、後の方にはいつものようにベンチャーキャピタルのラウンドやメモなどが並んでいる。だがその前に、AIについて話そう。

先週私は、機械知能をもう少し確かなものにするために活動している2つの企業と話をする機会があった。1つはハードウェア、もう1つはソフトウェアを扱う企業だ。

まずハードウェアの方は、IonQ(イオンキュー)のPeter Chapman(ピーター・チャップマン)氏に話を聞いた。IonQは、最近SPACで上場した量子コンピューティング企業だ。チャップマン氏と私は、償還やその他のSPAC絡みの瑣末な問題を掘り下げる代わりに、大部分の時間をSFと「強力なAI」の本当の意味について費やした。

簡単に言えば「強力なAI」とは今のAlexa(アレクサ)の動作原理とは異なるものだ。チャップマン氏によれば、Alexaは、エンジニアがクエリに対して可能な限り多くの応答をコード化することで動作している。このやり方はある程度は拡大できる。しかし、強力なAIは自分でコードを書くことができなければならないとチャップマン氏は語り、これは人間の手で書かれた質問と回答の組み合わせとは根本的に異なるという。

このためには量子トピックがふさわしいとチャップマン氏はいう。なぜなら、量子コンピューティングは強力なAIが必要とする種類のコード生成に非常に優れているからだ。そして重要なのは、無数の確率を同時に解析し、その中から選択することも得意なことだ。

量子コンピューターは実用化の初期段階にあり、IonQ(閉じ込めたイオンを使用していることから名付けられた)のような企業が、この新しいコンピューターの時代の到来を先導しているのだ。量子コンピューティングが主流になれば、単なるMLモデルではない大規模なAIにもっと近づくことができるはずだ。

さて、ソフトウェアの方は、Intrinio(イントリニオ)のCEOであるRachel Carpenter(レイチェル・カーペンター)氏と電話で話した。彼女の会社は、APIから利用可能な巨大なファイナンシャルデータセットを構築した。金融オタクとしては、ワクワクする話だ。Intrinioが気になるかどうかは、読者がこれまでSECの書類を読むのにどれだけの時間を費やしてきたかによって決まるだろう。

だが、このスタートアップは、Thea(シーア)という名のAIサービスも開発している。これは、ニューラルネットワークを、テキストを理解できる独自の自然言語処理マシンに織り込むことで機能するAIサービスだ。膨大な量の財務報告書を解析したいと考えている者にとっては、これはすばらしい製品アイデアだ。

カーペンター氏と話していて印象的だったのは、Theaは最初、広いインターネット上でトレーニングを受けていたということだ。つまり単なる金融言語解析ツールではなく、それ以上のことができるということだ。

CEOによれば、現在同社はTheaの焦点を金融のニッチに置いているという。しかし、Intrinioが部分的にでもオープンソースのサービスを使用して複雑なものを立ち上げることができるなら、今後数年のうちにTheaのようなインテリジェントシステムがより多く市場に登場する可能性がある。それを商用化されつつある量子コンピューティング技術と融合させると、もしかしたら、いつの日か、実際の人工知能に近づけるのかもしれないと思えてくる。

そう、私たちは生まれるのが50年ほど早すぎたのだ。

VCあれこれ

予想通り、第3四半期のベンチャーキャピタルの状況は、まったくもって正気の沙汰ではなかった。びっくり仰天。前代未聞。好きなように呼んで欲しい。

そしてこれまでのところ、第4四半期もまったく同じ状況のように見える。たとえば:

  • フォーブスのAlex Konrad(アレックス・コンラッド)氏によれば、Notion(ノーション)が評価額100億ドル(約1兆1200億円)で2億7500万ドル(約308億6000万円)の資金調達ラウンドを行ったとのことだ(アレックスの最近の活躍は目覚ましい)。これは事実上のフリーキャピタルなのだ。それはなぜか?Notionは自社の2.75%の株式を2億5000万ドル(約280億5000万円)以上で売却したばかりだ。希薄化の観点から資本効率を考えれば、それは……安い。特に、収益の大きさを心配して実際には数字を公表していないスタートアップにとっては。Notionは今回のラウンドの前でも、前回のラウンドの大部分をまだ銀行に残したままだった。つまり同社は、少なくとも300億ドル(約3兆4000億円)のエグジットを果たすことに賭けるために、多額の資金を用意していた投資家たちから、2億5000万ドル(約280億5000万円)を調達したのだ。この先どうなるかを見守りたい。
  • そして先週、Modern Treasury(モダン・トレジャリー)は8500万ドル(約95億4000万円)のシリーズC調達を行った。ここでは、この「ペイメントオペレーション」フィンテック企業の価値が20億ドル(約2244億円)以上と評価されている。同社は2021年の初めにシリーズB調達を行ったが、PitchBookのデータによるとその際の評価額はおおよそ3億ドル(約337億円)だった。それは、とてもとても短い期間での価値創造だ!しかし、この数カ月間に見てきたことを考えると、かなり納得できるものでもある。

つまり、2021年の第2、第3四半期に比べて、第4四半期が減速しているようには見えないということだ。もし2022年が2021年のベンチャーキャピタルの総額を上回ることがないとすれば、このような投資が再び見られるのは何年後になるだろうか。

あとどれくらい生きている必要があるのやら。

ではまた。

画像クレジット:Nigel Sussman

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(文:Alex Wilhelm、翻訳:sako)

私がご機嫌な理由、Y CombinatorとDAO

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週末には、まだ私が完全には解明できていない大きなSPAC案件があった。まあとりあえず、その投資家向けプレゼンテーションには、世界の指導者たちの顔写真を並べたスライドが含まれていたので、少なくとも「国際SPACプレゼンテーション誇大広告オリンピック」で銀メダルを獲得する価値はあるといっておこう。また、Oyo(オヨ)が公開の申請を行った。これらについては、これから多くのことが起きることを期待している。

関連記事:ソフトバンク出資のインドの格安ホテル予約サービス「Oyo」がIPO申請、最大約1290億円調達へ

だが今回は、Y Combinator(YC、ワイコンビネーター)とDAO(Decentralized Autonomous Organization、自律分散型組織)の話をしよう。あらかじめご注意を、YCはDAOではないので、この2つは別の話題だ。詳しく見ていこう。

Y Combinator、信頼性、そして評価が気になる人へ

1文字あたりのスコヴィル値で言えば、先週は以下のようなスパイシーなツイートがは少なかった。

2021年のアーリーステージ投資で最も驚くべきことは、Tigerでもなく、5億ドル(約555億円)のシードファンドでもなく、ローリングファンドでもない。

驚くべきは、いまだにYCが、すばらしい企業の7%分を12万5千ドル(約1388万円)で買っていることだ。

少し説明するならば、アーリーステージのスタートアップ企業に資金を投入しようとする資本がますます増え、スタートアップ市場では最近評価額が上昇傾向にある中、なぜY Combinatorは、スタートアップのメカニズムに資本とコースを提供するやりかたで、これほど多くのものを得ることができるのだろうかということだ?その一部はブランドの力だ。そして、YCが提供するガイダンスにも一定の力がある。

Y Combinatorの支援を受けたスタートアップであることは、現実よりも夢と呼ぶほうが近いような設立間もない組織に、一定の信頼性を与えることになる。それは、通ったことを誇りに思える大学の卒業証書を、壁に飾ることに少し似ている。そして重要なことは、新興国のスタートアップにとっては、Y Combinatorを経由することで、自身を投資家の地図に載せることができるということなのだ。そのため、希薄化するとしても入会の価値があるのかもしれない。

とはいえ大きなコストがかかるが。スタートアップがベーシスポイント(0.01%)あたりに得られるのは200ドル(約2万2200円)を下回ることになり、これは、Y Combinatorの最近の標準的なバッチのヒット率を考えれば、安いという言葉では足りないほどだ。これは本質的に、YCグループのためにお金を印刷するライセンスなのだ。

それ自体が問題なのではなく、資本主義が働いているだけだ。しかし、Y Combinatorへの参加の実質的なコストが上昇するにつれ、つまり、YCが支援する企業の市場価格とアクセラレーターが入場税として評価する価値とのギャップが拡大するにつれ、国際的な企業の参加も増えるなかで、この取引は魅力的ではなくなってきている。ということで、インドアフリカのスタートアップたちがYCに参加するようになったことはすばらしいことだが、より希薄化されるプログラムのために、より多くの費用を支払わなければならないように見える。それは、私の脳の一部をうんざりさせる。

それにしても、Y CombinatorのシードファンドのLPになった人たちには脱帽だ。ぜひ我が世の春を楽しんで欲しい。

DAOたち

今回はあまり心地よくないスタートだったが、ここまでお付き合いいただき感謝する。こちらの方が少し気持ちのよい内容だ。

DAO(自律分散型組織)の世界では、先週2つの重要なニュースがあった。1つ目はとんでもなくおもしろかった

何の話か知らない方のためにお伝えすると、Compound(コンパウンド)がコーディングのミスで、数千万ドル(約数十億円)分のコインを送り出してしまったのだ。もちろんそれは間違いだった。そして、Compoundがそのお金を取り戻そうとする際に、タダで手に入れた金を返さないと、ユーザーをIRSに告発すると脅したのだ。

自分のミスを棚に上げて自分のユーザーを脅かすという問題はさておき、Compoundは権限を分散させる民主的な仕組みで運営されている。その仕組みについてはここを読んで欲しい。しかしここで重要なのは、Compoundのエラーケースの中で私たちは、分散型の権限が大規模かつ滑稽な方法で失敗したときに何が起こるかを目撃できたという点だ。

この先このような間違いは多発するだろう。しかもそれは同時に笑えるものとなるだろう。だが、それによってDAOの魅力が失われたとは思わない。

現在の資本主義のうんざりさせる要素の1つとして、株主の議決権の低下が挙げられる。Facebook(フェイスブック)は、ただ1人の人間がその未来を支配している企業の典型的な例だ。Snap(スナップ)も、まったく投票権を得られない株式を公開して上場したことで有名だ。シリコンバレーが投資する企業では、外部の人間よりも内部の人間に多くの投票権を与えるデュアルクラス(A、B2種類の株式を発行してB株の方により大きな投票権を持たせること)、さらにはトリプルクラスの株式発行がますます増えているように感じられる。

それは酷いやり方だ。いったい誰が資本主義をより君主制に近づけることを望んでいるのだろうか?考えただけで、吐きそうな気分になる。

それに対して、DAOはその成り立ちから、より民主的なものだ。もちろん、議決権は所有率の高い人が持つことになるだろう。それは健全な株式市場に期待されていたものなのだ。よってDAOは、少なくとも現在のIPOや、現在の責任者が生涯を通して最高の管理人となることを信頼することをみんなに求める能天気さに対して、改善手段を提供することになるだろう。

かつてのVCはそんなことを信じてはいなかった。そのころ、彼らはプロフェッショナルなCEOに大きな信頼を寄せていたのだ。その後、創業者と投資家のパワーバランスの変化により、創業者がより大きな力を持つようになり、創業者主導の企業がいくつか成功したことで、VCはこのこだわりを捨てた。

もしかしたら、DAOはビジネスを少しでも民主的にすることに成功するかもしれない。

さて今回のDAOランドからの2つ目のニュースはこれだ「Utopia Labs(ユートピア・ラボ)がDAO用のOSを開発中」。この会社名は悪くない、それどこころかとてもすばらしいと言える。なぜなら、ユートピアはファシストのパラダイスではなく、ユートピアを考えるときには、誰もが発言権を持つモデルを思い浮かべることが多いからだ。つまり、DAOはある意味、ユートピア思考のビジネス版なのかもしれない。悪くないね。

では今回はここまで。次回はCapitalGのGene Frantz(ジーン・フランツ)とのチャットのメモをご紹介する。

画像クレジット:Nigel Sussman

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(文:Alex Wilhelm、翻訳:sako)

私の新しいNFTが4万円以上の価値を持つ理由、そしてハイテク業界の魅力的な1週間の考察

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みなさん、こんにちは。先週はDisruptが開催されたので、いつもよりはゆったりとパネルやスタートアップのピッチを見る時間をとることができた。楽しい時間だったが、おかげで普段の週よりも電話の数が少なくなってしまった。だから、以下は報告というよりも観察に近い雰囲気の略式ニュースレターとなっていることをお断りしておく。では始めよう。

観察その1:NFT投機は楽しい。

私は最近NFTの世界に片方のつま先を突っ込んでみた。この分野を取り上げたので、実際にちょっとだけ実際に参加してみることにした、そうすることで単に読んでいるだけよりも多くのことを学ぶことができるからだ。もちろん、私はあらゆる倫理的な問題を避けようとしているが、低価格のJPEGを購入するために私が数十ドル(数千円)の暗号資産を所有しても破滅的なことは起きないだろう。

何もかもがうまく行かなかったが、親切なツイッターユーザーが送ってくれたNFTが現在値を上げている。まあ、特定のブロックチェーン上でデジタル署名を所有することになったこの特定の画像からは、他のほとんどのオンライン画像に比べて、より強い喜びを得ることはできなかったが、人々が私からそれを買おうとするのを見るのは楽しいことだった。

何百ドル(何万円)分に相当する入札があり(最新の入札額は382.94ドル[約4万2400円])、そのことで私は私の持つ画像を本当に欲しがっているのは誰だろうと考え込んでしまった。私はこうしたオファーの中に価値以上の投機を見ているのだと思うが、今ならNFTファンが彼らの家内工業に熱狂する理由がよくわかる。結局のところ、つい最近まで基本的に価値がゼロだった画像から、魔法のようにリアルな価値を生み出したいと思わない人はいないだろう。これはまやかしのように思える(はっきりさせておきたいが、自分のNFTを売らないのは、税金のことで煩わされることが嫌だからで、それを営利目的で売るのはとても倫理的に問題があるように思う。ということで、永遠に持ち続ける?)

観察その2:フィンテックのIPOには絶好の機会だ

ボストンを拠点とするフィンテックのユニコーンであるToastが今週、上場で熱狂的な支持を受けたことは、十分に速い成長率があれば、決済の売上に対してソフトウェア企業のような評価を得ることが可能であることを世界に示した。私たちは、Toastが株式市場に温かく迎えられたことは、フィンテックのユニコーンが現状を抜け出して株式を公開するのに最適な時期であることを示しているのだと思った。

私はそう考えている。しかし、おそらく私が見落としていたのは、どれだけの価値があるものが近くにあったのかということだ。それは評価額ではなく(それらについてはすでに知っている)、ユーザー数である。以下のツイートを見て欲しい。

私はChime(チャイム)が5位に入っているとは思っていなかったが、この数字は、最近見られるように、現在、金の川のように評価されている、単純に膨大な支払いの流れを意味している。だから、NuBank(ニューバンク)やChimeやDave(デイブ)たちも、公開を考えてもいいのでは。どうだろう?

観察3:中国の技術はますます問題に

Zoom(ズーム)によるFive9(ファイブ9)の買収は、買収企業Zoomのルーツが中国であることから、規制上の問題が発生する可能性があることが先に報じられた。もし、Zoomが中国で研究開発を行っていることで、Five9の大型買収が中止ということになれば、世界をリードする2つの経済圏の距離が広がるだけでなく、技術の流動性を生み出す可能性の扉が閉ざされることになる。

また今週、リトアニアは、中国のスマートフォン大手Xiaomi(シャオミ)のハードウェアが、中国政府が検閲を好む特定の用語を検出してブロックできると警告した。シャオミの携帯電話は、皆そのようにして作られているのかもしれないが、うれしい話ではない。The Times(タイムス)によれば、リトアニアは「中国製のスマートフォンに自動検閲ソフトなどを始めとするセキュリティ上の欠陥があることが専門家の調査で判明したために、公務員に対して中国製のスマートフォンを破棄するように指示した」という。

これもまた問題だ。

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(文:Alex Wilhelm、翻訳:sako)

お気に入りのフィンテックサブニッチの真の価値を理解しよう

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今回お話しするのは、後払い(BNPL)企業についてだ。これらは大きくて興味深いフィンテックの世界の、特定の一角を占めている。

Square(スクエア)やPayPal(ペイパル)などによるBNPLスペースでの大型買収のおかげで、私たちはこのスペース内での企業の価値が、実際には何であるのかを理解しつつある(そして市場の無数のBNPLスタートアップにとって、それはビッグニュースだ)。

しかし私が休暇中に、ゴールドマンサックスが公開BNPL企業であるGreenSky(グリーンスカイ)を買収することを決定していた(それもこれもマイケルのせいなのだが)。つまり、この取引に対する概算をすばやく行うことができるし、私たちの「BNPL評価武器庫」に最新の武器を加えることができるということだ。

私の友人であり同僚であり、かつては同窓生でもあったRyan Lawler(ライアン・ローラー)記者が、一読の価値があるゴールドマンとのインタビューを行っている。ゴールドマンによれば買収額は22.4億ドル(約2463億円)で、投資家がGreekSkyのこれまでの株価に対する潜在的なプレミアム価値を理解したために、価値がその後劇的に高くなったのだという。

個人宅のリフォームに焦点を当てたGreenSkyのBNPLは、どのような規模だったのだろうか。同社の最新収益レポートは以下の通りだ。

取引額:第2四半期の取引額は15億ドル(約1649億円)で、2020年の第2四半期と比較して14%増加しました。当四半期に承認された与信枠は、会社の歴史の中では最も多く、これはリフォームサプライチェーンと労働市場の不足が緩和される中で、前向きな主要指標の1つです。

したがって、ランレートは60億ドル(約6597億円)で評価額が22.4億ドル(約2463億円)だったというわけだ。これは、GreenSkyが処理するGMV(流通取引総額)1ドル(約110円)あたり、約0.37ドル(約40.7円)の企業価値に相当する。これは私たちがこれまでに見たなかで最も低い数字だ。

念のため、私たちが最近見た他のものを示しておく。なお以下の数字は完璧に基準を揃えて比較しているわけではないということは頭の片隅に留め置いていて欲しい。これらは絶対値というよりも傾向を示した数字なのだ。

  • Affirm(アファーム):GMV1ドルあたりの価値は2.94ドル
  • AfterPay(アフターペイ):GMV1ドルあたりの価値は1.84ドル(Squareの価格)
  • Paidy(ペイディ):GMV1ドルあたりの価値は1.80ドル(PayPalの価格)
  • Klarna(クラマ):GMV1ドルあたりの価値は0.57ドル

GreenSkyがこのリストの一番下にあるのは、おそらく成長率が理由だろうか。14%というGMV成長率は、たとえより高めのテイクレートを確保していたとしも、会社に成長の余地をあまり与えない。特に投資家向け広報ページの一番上の行で“GREENSKY, INC. IS A GROWTH COMPANY.”(「GREENSKYは成長企業です」)と謳われているなら、成長率の先頭の数字が”1″であることは好ましくない。

収益の成長ならびに収益の質の軸に沿った、SaaS企業の収益の数字がバラけているのと同じように、ここでも同様のことが起こっている可能性がある。損失率、テイクレート、GMV成長率は、BNPL企業が評価を受けるための別々のベクトルだ。

関連記事:The value of software revenue may have finally stopped rising

BNPLスタートアップは、成長とローンの質の面で自分たちの最も正確な比較基準を見つけて、現在の市場価値に反映させることができるだろう。データがあるのは良いことだ。

マンモスの話題は?

私はこのニュースレターの大部分をMammoth Biosciences(マンモス・バイオサイエンス)とそのジュラシックパーク世界に向かう計画について議論するつもりだったが、TechCrunchの別記事に出し抜かれてしまった。私は同社に対する投資家の1人の Thomas Tull(トーマス・タル)氏にこの内容について話をきいたが、そのメモの内容についてはもう少し温めておくことにしよう。使えるタイミングがあるかどうかはわからないが。

最後にちょっとした調達ラウンドの話題

今週はDisrupt(ディスラプト)の週だ。そしてIPOサイクルが1件発生し、通常の資金調達ラウンドのリズムに遅れが生じている(そしてさまざまな連絡の遅れ。申し訳ない)。そこでお楽しみいただける軽い話題をお届けする。Postal(ポスタル)だ。

同社はマーケティングテックの分野で仕事をしていて、同社のウェブサイトが「最大の」B2B型の「ギフト市場」だと主張するものを運用している。もっと簡単に言えば、企業がパーソナライズされた物理的な商品をその顧客に送る手助けをする会社だ。Postalはそれが非常に高いROIを持つという。

ところでやや皮肉な話だが、ここで少し告白をしておかなければならない。Postalの主要な投資家はMayfieldとOMERSであることが分かったが、この2社は、私の前の雇用主(Crunchbase[クランチベース])の、シリーズBとCのラウンドをそれぞれ主導した会社なのだ。だが、もし私のCrunchbaseとの関係から何らかの影響が及ぶ会社については書かないとしてしまったら、私は市場の広すぎる範囲を書くことができなくなってしまう。ともあれ必要なときにはこのことに触れ続ける。

さて、PostalはSendoso(センドソー)とやや似た分野で事業を行っているが、私の理解では、Sendosoは、顧客中心への贈り物よりも従業員への贈り物をより多く扱っている。どちらも成長し続ければ、やがて直接競争することになるだろう。Sendosoは先週初めに1億ドル(約110億円)を調達したが、もちろんPostalがそうしたからだ。

この分野の他のプレイヤーとして目立つのは、Reachdesk(リーチデスク)とAlyce(アリス、2021年初めに3000万ドル[約33億円]を調達した)である。パーソナライズされた物理的な商品を提供するための技術を構築するビジネスはかなり大規模であることがわかった (もしお好きなら、ここでNFTジョークをどうぞ)。

PitchBook(ピッチブック)は、Sendosoの新しい評価額を(ポストマネーで)6億4000万ドル(約703億7000万円)、Alyceを(ポストマネーで)1億3500万ドル(約148億4000万円)と判定している。Reachdesk(リーチデスク)とPostal.ioの現在の評価額は判明しなかった。

さて今日はこの辺で。Disruptでお会いしよう!Extra Crunchのステージに頻繁に登場する私を見かけるかもしれない。

画像クレジット:Nigel Sussman

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(文: Alex Wilhelm、翻訳:sako)

BNPLが続々と

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みなさんこんにちは。私はAnna(アナ)。今現在、当然の権利である短い休暇を楽しんでいるAlex(アレックス)記者の代わりに今回の記事をお届けする。The Exchangeも1週間お休みしたが、ニュースは止まることはない、では始めよう。

先買い後払い(BNPL、Buy Now, Pay Later)スペースは、フィンテックの中でもっともホットな業界の1つだ。少なくとも2020年8月にSquare(スクエア)がオーストラリアのAfterpay(アフターペイ)を買収するために、驚異的な290億ドル(約3兆1900億円)を費やすと発表して以来そうなったということができるだろう。しかし、今週はその状況に本当に火がついて、報道価値のあるBNPL関連の発表が続々と行われた。詳細を見てみよう。

最大のニュースは間違いなくPayPal(ペイパル)が日本のPaidy(ペイディ)を27億ドル(約3000億円)で買収するという決定だったが、Amazon(アマゾン)がMaxLevchin(マックス・レブチン)氏のAffirm(アファーム)との契約を結んだこともも大きな動きだった。米国を拠点とするAmazonの買い物客が50ドル(約5500円)以上の購入で後払いが可能になるこの機能は、BNPLが主流になりつつあることを示す明確な兆候ではないだろうか。

関連記事:米PayPalが日本のペイディを3000億円で買収、アジアで「BNPL」後払い市場に参入

そして、それは世界をリードする電子商取引市場(eコマース)のほんのひと握りのプレイヤーだけに限った話ではない。最近のラウンドに反映されているように、世界中のBNPLスタートアップが成長しているのだ。例えばヨーロッパに焦点を当てたScalapay(スカラペイ)は7億ドル(約769億円)の評価額で1億5500万ドル(約170億3000万円)を調達したが、一方コロンビアのAddi(アディ)はシリーズBを7500万ドル(約82億4000万円)拡大して合計1億4000万ドル(約153億9000万円)にしたことを公表した。

AddiのMary Ann Azevedo(メアリー・アン・アゼベド)氏はTechCrunchに対して「いまやBNPLはどこにでもあります。ラテンアメリカも例外ではありません」と書いてきた。だが、これは同じモデルをコピーアンドペーストしたものではない。市場が異なればニーズも異なり、重要な内容の調整につながる。その中で主なものは?BNPLは必ずしもeコマースと同義ではないということだ。

実際のところ、Addiのパートナーには実店舗も含まれている。これは、eコマースは急速に成長しているものの米国と同じレベルにはまだ達しておらず、それでも分割払いはすでに行われている市場では理解できる現象だ。しかしそれはまた、eコマースや小売を超えたBNPL自身の自然な拡大としても起こっている。

サンフランシスコを拠点とするスタートアップのWisetack(ワイズタック)は、この流れの良い例だ。同社はHVAC(空調システム)の修理から配管までをカバーする訪問型ホームサービス企業たちに、BNPLサービスを提供している。Wisetackはこの非常に断片化された業界に対して、業界特化型SaaSプロバイダーのHousecall Pro(ハウスコールプロ)やJobber(ジョバー)などと組んでプロを取り込むことで、巧みにアプローチしている。ああ、それから同社は4500万ドル(約49億5000万円)を調達したばかりだ

小売を超えて拡大するBNPLに特に見られがちなのは、より大きな支払いに広がっているということだ。例えばWisetackのCEOであるBobby Tzekin(ボビー・ツェキン)氏によると、サービスベースの企業に対する購入価格は平均4000ドル(約44万円)から5000ドル(約55万円)になるという。BNPL企業にとってはエキサイティングな話だ……だがその一方で、この新しいセグメントをすでに調査中の規制当局からの監視が、強化される可能性もある。

BNPLは無利子かつクレジットカード決済の代替手段として捉えられているが、公的機関や消費者保護団体は、顧客による過剰支出やリスクの過小評価を助長する可能性があるとの懸念を表明している。

この懸念は英国EUでの規制の強化につながり、そのことはBNPL大手Klarnaの(クラーナ)の「あり得るが差し迫っていない」IPOに影を落とす可能性がある。CrunchbaseによればKlarnaはこれまでに37億ドル(約4066億円)を調達している。同社がAffirmの跡を追って公開することは論理的だが、タイミングは重要だ。

関連記事:後払い販売(Buy-Now-Pay-Later)が英国で規制対象に

非常に多くの資金がこのセクターに流れ込み、統合もすでに行われているので、注目し続けておけば間違いなくおもしろいだろう。

Factorial、WaveそしてSPAC

The Exchangeは今週休止していたものの、TechCrunchとExtra Crunchで消化すべき話題はたくさんあった。以下に私の注意を最も引いたものを並べる。

Factorial(ファクトリアル)とSMB(中小企業)への賭け:スペインのHRスタートアップであるFactorialは、5億3000万ドル(約582億円)の評価額の下で、シリーズBラウンド8000万ドル(約87億9000万円)を調達した。これはそれ自体注目に値するが、Tiger Globalが主導していることでも注目に値する。しかし、私のお気に入りの部分は、SMBにサービスを提供することでお金が得られることに、スポットライトを当てていることだ。

ちょっと宣伝:これは私が数週間前に書いたExpensifyEC-1での重要なポイントでもあった。

TechCrunchのIngrid Lunden(イングリッド・ランドン)記者が指摘したように、Factorialの台頭は「エンタープライズテクノロジーの世界が、ようやく大規模な組織向けに構築されたツールを小規模な顧客向けにライトサイズ(適切なサイズ)で適用することに注意を向け始めた、はるかに長期的で大きなトレンドの一部」なのだ。

通常、ライトサイジングとは、製品の不必要な複雑さを回避することを意味する。多くの場合、既存のエンタープライズ相手の企業ではなく、それのみに焦点を当てている企業が得意としている。そして、それは単なる一時的な流行りではない。各企業がこの先もずっと集中していくことができるセグメントとして理解されているのだ。

資金調達の波:先週の初め、アフリカはこれまでで最大のシリーズAを記録した。モバイルマネーのスタートアップWave(ウェーブ)の2億ドル(約220億円)のラウンドが行われた。評価額は17億ドル(約1868億円)で、今回の調達は、米国とセネガルに拠点を置く同社を、アフリカのフランス語圏における初のユニコーンに変えた。

このマイルストーンに最初に到達したのがフィンテック企業だったことは当然のことだと、Tage Kene-Okafor(タゲ・ケネ=オカフォー)氏はいう。アフリカ大陸ではフィンテックがVC資金の大部分をずっと引き付けてきたからだ。アフリカのスタートアップシーンに関するニュースレターであるSubstack(サブスタック)のThe Big Deal(ザ・ビッグ・ディール)によれば、2021年前半にアフリカのスタートアップに流入したベンチャーキャピタルの48%がフィンテックに投資されている。今回の巨大なラウンドによって、年次集計をチェックするときには事態がさらに偏ったものになっている可能性がある。

より高いレベルから見た場合、これはアフリカのテックセクターが2021年に記録を更新するだろうという予想を裏付けているように思える。これは特に厳しかった2020年以降、より一般的には資金不足の文脈から眺めると望ましい状況だ。

関連記事:2021年のアフリカへのVC投資は史上最高額を記録するとの予測

SPACすべきか、SPACせざるべきか:ブルームバーグによると、Traveloka(トラベローカ)はPeter Thiel(ピーター・ティール)氏のBridgetown Holdings(ブリッジタウン・ホールディングス)とのSPACを介して公開する計画を撤回している公開するかしないかで迷っているのではない:旅行業界ニュースサイトSkift(スキフト)で、Travelokaの広報担当者は公開を「さらなる事業を成長させる願望を抱くカテゴリリーダーとしてのTravelokaにとって、自然な進化です」と説明している。

インドネシアの旅行大手が考慮しているのはその公開へ至る道筋だ。情報筋によれば、SPACが「支持されなくなった」ために、同社は代わりに伝統的な米国のIPOを選択する可能性が高いとブルームバーグに語っている。これらはブルームバーグによる表現で、私の意見ではない。私はそう言い切るにはまだ少し早いかもしれないと思っている。

確かにこの2月によく見かけた「SPAC投資で常に勝つのは、売り手だ、一般投資家はそうでもない」という批判的見出しの中で、規制強化が迫っているのは間違いない。

それにもかかわらず、私の同僚であるRyan Lawler(ライアン・ローラー)記者が、先週大いなる反例を持ち込んできた。Better.com(ベター・ドット・コム)が、SPACのAurora Acquisition Corp(オーロラ・アクイジション・コープ)と「約77億ドル(約8462億円)の投資後評価額」で合併する予定だ。両者のCEOによれば、従来型のIPOは、簡単に業種を分類できる企業にとっては理に適っているという。しかしSPACは、ライアン記者が書くように「他の金融サービス会社と比べて、単に住宅ローンの貸し手と見なされるよりも大きな野心を持つ」Better.comのような会社に適しているかもしれない。

これは例外的なものだろうか?おそらくはそうだろう。しかしそれはまた、SPACがまだプレイするカードを持っているというサインかもしれない。

では今回はここまで。The Exchangeは月曜日から通常のスケジュールに戻る予定だ。

画像クレジット:Nigel Sussman

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(文: Anna Heim、翻訳:sako)

情熱から趣味そしてスタートアップへ

スタートアップとマーケットの週刊ニュースレター「The TechCrunch Exchange」へようこそ。
やあみんな!アレックスだ。今週はお休みをいただく。平日のコラムで私を助けてくれている副操縦士のアンナが私が不在の間のニュースレターを扱う。最高なものになるだろう。お楽しみに!

さて数週間前、私たちは成長に焦点を当てながら、いくつかのスタートアップの結果を調べた。今回私たちは、そうして書いたスタートアップコレクションからさらにそれを1社に絞り込む。Water Cooler Trivia(ウォーター・クーラー・トリビア)だ。

関連記事:スタートアップの成長率を追う

多くのスタートアップは、何らかの問題を解決しようとして始まる。1人の開発者が世のワークフローの欠陥を見つけ、そのソリューションをコード化し、そのハッキングを拡張可能な製品に組み込む。そんな感じだ。

だがCollin Waldoch(コリン・ウォルドック)氏はこれとは違うやり方を選んだ。彼の趣味をビジネスに変えたのだ。

ウォルドック氏は、彼が競争好きと呼ぶ6人兄弟の家庭の出身である。大学時代にはバートリビアを主催し、その後、学校を卒業した後には職場で毎週トリビアの質問を送信していた。Lyft(リフト)での勤務期間を含む、社会人としての初期キャリアの間、彼はその習慣を維持し続けた。

ウォルドック氏が、企業がチーム活動に多額の費用を費やすことをいとわないことに気づいたのは、彼が企業で生活を送っている間のことだった。たとえば彼がとある仕事をしているときに参加したサッカーチームは、十分な数のレギュラー選手を確保するのに苦労していたが、彼の雇用主はそれにかなりのコストを費やしていた。企業が、その従業員のほとんどが望んでいないグループスポーツにそれだけのお金を落とすなら、おそらくトリビア製品で攻略できる予算もあるだろうと彼は考えた。

そこで、ウォルドック氏はWater Cooler Triviaを開始した。企業向け製品として、彼と友人たちが副業として開発したそのプロジェクトはARR(年間経常収益)で約2万ドル(約219万円)に達した。ウォルドック氏は、当時そのレベルの成功をビール代をまかなうのには十分だったと語る。プロジェクトの収益を助けたのは、解約率が非常に低いことだった。このことに後押しされて、ウォルドック氏はLyftでのフルタイム仕事を辞め、これまでの副業をフルタイムで行うことにした。

現在、Water Cooler Triviaは30万ドル(約3292万円)相当のARRに達し、世界中の労働者たちを楽しませている。企業は、毎週のトリビアクイズの難易度を選択し、リーダーボードを使用して従業員のスコアを追跡することができる。

ウォルドック氏の見解によれば、このアイデアの成功の要因の一部は、HR向けではなくエンドユーザー(従業員)向けに構築されていることだ。つまりそれが実際に楽しいことを意味している。現在は、ある程度の解約はみられるものの、それでも100%近くの継続率を誇っている。こうした特徴は、エンタープライズSaaSのようなグレードアップオプションを備えていない製品には大切な性質だ。

それにサービスは安価だ。率直に言って安すぎるとも言える。100人で月額100ドル(約1万1000円)というWater Coolerの利用料金は、程なく値上げされて収益を押し上げるかもしれない。ウォルドック氏は、2021年の第4四半期に料金の引き上げを始める可能性があると述べている。しかし、もし値上がなくても、Water Coolerは、コア製品から大きな成長が見込めると考えている。

私もそうだと思う。人生をちょっぴり楽しくしてくれるソフトウェアに幸あれ。

Drift、Xometry、Carrot

無数のIPO申請80億ドル(約8778億円)分のYCスタートアップピッチの忙しい週だったが、他にも話す必要のあることが起こった。

私はDrift(ドリフト)のプライベートエクイティ(PE)への売却に興味を持っている:ボストンのDriftはその株式の大部分をVista Equity Partnerに売却したことを先週発表した。同社がポッドキャストを録音するための部屋を私たちに貸してくれたので、Driftのオフィスに行ったことがある。そこの人びとはすばらしかった。しかし私は、2020年に70%のARR成長を報告した同社が、なぜより多くの資本を調達して成長を続ける道を選ばなかったのかに、非常に興味がある。同社は過去に多くの民間資金を調達することに成功している。例えば 2018年のラウンドでは6000万ドル(約65億8000万円)を調達した。このように会社の大部分を早々とエグジットさせてしまうことは、Gainsight(ゲインサイト)のPEへの売却が少々頭を悩ませたのと同じように、少し奇妙に感じられる。ボストンにとっては、このエグジットは新しいエンジェル投資家を生み出すのに役立つかもしれないので朗報である。しかし、それでも重要な詳細が欠落しているエグジットのように感じられる。

Xometry(ゾメトリー):これはメモフォルダにしばらく置かれていたのだが、今週は休みをとるのでここに含めておく。私は数週間前の業績報告会の後で、XometryのCEOであるRandy Altschuler(ランディ・アルチュラー)氏から話を聞いた。Xometryが2021年初めに公開されたことを思い出して欲しい。アルチュラー氏は、COVID-19の最中に公開を行なったことについて基本的に強気な見解を報告し、彼の会社のZoom(ズーム)ロードショーは、旅行関連の疲れを防ぎながら、より多くの人々とチャットできたという意味で効率的だったと語った。

Xometryの続き:しかし、IPO後のありがちな雑談の中で、アルチュラー氏は私の記憶にひときわ残る言葉を残していた。その1つ目は、インフレがテクノロジービジネスに影響を与える可能性があるということだ。コストの上昇は、請求コストに影響を与える中古車の価格に対応しなければならないRoot(ルート)のような企業に影響を与えている。インフレは、製造業の需要と供給を結びつけるXometryのビジネスにも影響を与える。マクロ市場の状況は、テクノロジーの世界では本当に重要で、常に簡単に確認できるようなものではないことは忘れないようにしたい。

Xometryのさらに続き:アルチュラー氏はまた、ある時点での炭素税は避けられないと考えていると述べた。この話題は、将来的な米国でのオンショア製造に関する、私たちの議論の中で浮かび上がった。現在の輸送費は高額であり、税金として炭素排出量を追加した場合にはさらに高額になるだろう。これにより、特に地元製造業の競争力が高まる可能性がある。おそらくそれは、脱工業化社会の中でより多くの工業生産を求める人たちに恩恵をもたらすだろう。物理世界の商品を扱うハイテク企業にとって、それは気に留めておくべきことだ。

そして最後に、Carrot(キャロット):メモされたさらに別の話題からCarrotの話をお届けする。同スタートアップは数週間前に7500万ドル(約82億3000万円)を調達した。そこで同社にその成長の歴史やいくつかのことについて尋ねた。Carrotは、雇用主が労働者に出産手当を提供できるようにする製品を販売している。人類の出生率が低下していることを考えると、この種の報告は時間の経過とともに、数が増していく可能性が高い。

もちろん、他の要因も働いてはいるものの、過去18カ月はCarrotのビジネスにとって加速的に働いたことが証明されている。同社によれば、過去6四半期で「全体として約5倍の成長」が見られたという。Carrotは、2021年末までに450社にリーチする予定であり、合計で約100万人の対象者がいると見込まれている。

Carrotは、シリーズBとシリーズCの評価額の差について答えることを拒んだ。幸いPitchBookにこの件に関するデータがあるので、そのデータセットを使って報告するなら、Carrotの評価額は、シリーズ2100万ドル(約23億円)を調達したシリーズB後の約6600万ドル(約72億4000万円)から、シリーズC後に2億6000万ドル(約285億3000万円)へと上昇している。これは、会社の従業員と創業者にとって良い上昇だ。

将来的な出産支援のニーズの高まりに強気な私の予想は、同社の精神と一致している。そのことを同社はその電子メールの中で「出産と家族形成に対するケアは、医療、歯科、視力に並ぶ、従業員の福利厚生とヘルスケアの第4の柱となる可能性があり、またそうあるべきなのです」と述べている。大賛成だ。

では今回はここまで。どうぞご安全に。予防接種を受け、お互いに親切にできますように。

画像クレジット:Nigel Sussman

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(文: Alex Wilhelm、翻訳:sako)

リモートワークに関する議論はすでにスタートアップ企業の勝利で決着がついている

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リモートワーク、オフィスカルチャー、分散したスタッフのチームをどう管理するかなどの議論は尽きない。新型コロナウイルス(COVID-19)のデルタ株は、多くの企業でオフィスへの復帰日を遅らせているが、未来の仕事がどうなるかについては、まだ健全な議論が続いている。

しかし、大企業が態度を決めかねている間に、この論争はほぼ収束し、スタートアップが勝利したというのが私の見立てだ。

新型コロナの出現以来、スタートアップの創業者たちと膨大な数の通話を行ってきたが、ここ数四半期はアーリーステージの企業と話をすると、ほぼ毎回、遠隔地に分散したチームを持っているように思われた。こうしたスタートアップの中には、文字通り新型コロナの時代に設立されたものもあるため、それも納得だ。しかし、こうした傾向はそうした新しい企業だけでなく、より広い範囲に及んでいる。

スタートアップ市場に限って考えてみると、現在スタートアップにとってサーバーラックを購入し、設置費用を支払うことに資本を使うことが奇妙なことであることと同じように、やがて家賃に費やすために資本を使うことは奇妙な概念になるだろう。今では私たちはAWSやAzureを手にしているし、オフィスに関してはリモートワークがあるのだ。なぜ、床面積のために資金を使うのか?

ある程度単純化して考えているものの、シードやシリーズAの資金を家賃に充ててしまうと、少なくとも、成功するスタートアップにとっては初期のオフィススペースは世界で最も高価な不動産の1つになってしまう。目鼻が利く人なら税金を回避するだろう。

理由はそれだけにとどまらない。現在、多くの重要な職務に対して、人材市場は非常に厳しい状況にある。機械学習の人材を採用しようとしている人に聞いてみると良い。あるいは、上級の開発職でも、もしくは、マーケティングチームのリーダーでも良い。リストはまだ続く。スタートアップ企業が求める人材は、不足しているしコストもかさむ。

新興のハイテク企業にとってさらに悪いことに、ビッグテック企業はかつてないほど裕福になっている。では、若い会社はどうすればいいのだろうか?大手が嫌がるような、リモート指向の仕事を提供するのだ。これにより、スタートアップ企業が大手ハイテク企業から、優れた才能をもった人材を引き抜くことも可能になる。

個人的には、やがて人事担当者の流動性が高まることで、職場に対する柔軟性がどの会社でも高まるのではないかと考えている。また、現在リモートで活動している多くのスタートアップ企業は、このモデルを固持しながら規模を拡大し、完全なリモートチームを持つ明日の大企業になるだろう。そのため、リモートワークか高額なオフィススペースに戻るべきかの会話はまだ続いているものの、それは本当の議論というよりも、沈没しようとしている船の上でデッキチェアをどう並べれば良いかを議論しているように思える。

オフィスでヘッドフォンをつけて集中できるように、本当にクルマや公共交通機関を使った通勤に戻りたいだろうか?どうだろう。私はお断りだ。

ボストンについて

The Exchangeは、世界のさまざまなスタートアップハブの調査に時間を費やしているが、その中でも特に時間を割く価値のある米国市場のいくつかに焦点を当てている。たとえばシカゴ、そして最近ではボストンも見てきた。

ボストンの記事が公開された後、いくつかのコメントが寄せられた。それらのキーポイントをかみ砕いてみよう。

Glasswing VenturesのRudina Seseri(ルディナ・セセリ)氏はボストンの近い将来の展望について「市場に出てくる企業や新しい調達ラウンドを行う企業の数は多く、それらの企業は経営的にも強いものです。なので、市場の調整が行われない限り(それはボストンよりもはるかに広い範囲で行われると思いますが)、資金調達の意欲は失われないでしょう」と語った。

このような状況が続くと、ボストンではスタートアップベンチャーの活動がさらに活発になる可能性がある。セセリ氏はメールでThe Exchangeに対して「プレシードやシードステージの企業の数は劇的に増えています。実際に、資金調達のための高度な資格を持つ人の数は、(前年比で)2倍に増加しています」という。

彼女の見解では、ボストンが生み出しているきちんとしたスタートアップの量は「アーリーテックの起業家精神と、新型コロナウイルスが初めて加速もさせた市場機会の証」だという。

最後に、ニューイングランドベンチャーキャピタル協会のAri Glantz(アリ・グランツ)氏は「2020年上半期に一旦減速した後、パンデミック時代のシフトによって新たなニーズや機会が生まれたことで、創業者も資金提供者も歴史的な資金の流れを目の当たりにしたのです」と語り、そして「企業とその支援者が適応を続けているおかげで、先行きは明るいままです」と続けた。

最後の言葉は、ほぼすべての場所に当てはまるので入れておいた。スタートアップ企業にとって、これ以上良い言葉はない!

ではまた来週。

画像クレジット:Nigel Sussman

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(文:Alex Wilhelm、翻訳:sako)

スタートアップの成長率を追う

スタートアップとマーケットの週刊ニュースレター「The TechCrunch Exchange」へようこそ。

こんにちは!先週は慌ただしいどころの話ではなかった、そのため話題がてんこ盛りだ。今回お届けするのは、ブラジルのIPO市場に関するメモ、シカゴのスタートアップシーンに関する報告、スタートアップ企業たちの最近の成長に関連する数々の数字などだ。ということで、アーリーステージレイトステージのスタートアップ、海外のスタートアップ国内のスタートアップが好きな方には、ぴったりの内容となるだろう。

先週もまた、資金調達ラウンドについてのツイッターでの会話が続いていた。簡単に言えば、他のスタートアップ活動よりも、資金調達ラウンドを優先するメディアに対する不平不満が多く聞かれたのだ。それに対する私の意見を述べるなら、私たちのようなライター稼業連中が資金調達ラウンドを取り上げる理由は、それこそがあるスタートアップがその事業の成果を実際に発表しようとする貴重な瞬間だからなのだ。

投資家は、創業者がどうやってアイデアを思いついたかを短い電話会議で聞いただけでは、その会社に投資しようとは思わないだろうということを考えると、VCが時折こうした報道に文句をいうというのは馬鹿げた話だ。しかも創業者に対しては「メディアには何もいうな」という。なんてことだ。

そんなこんなで、私はこう叫ばずにはいられない「スタートアップ企業のみなさん、データを下さい!」と。そして、それに応えてくれた企業もある!また、以前に発表されていたものの、私たちが見逃していたものについて、メモを送ってくれた企業もあった。

そこで今回は、さまざまなステージや市場などから、スタートアップの成長をダイジェストでご紹介しよう。

CopyAI(コピーAI): 最近ARR(年間経常収益)が200万ドル(約2億2000万円)を突破した。CopyAIは、ビジネスを構築するために忙しくしているが、同時にメトリクスを共有しながら進めている(それは私たち好みのやりかただ)。その一方で、外部から資金を調達して急成長を遂げており、情報を共有しスタートアップが即座に炎上することはないことを証明している。

CEOのPaul Yacoubian(ポール・ヤクービアン)氏に、期待通り成長しているのかどうかを尋ねたところ「そうだ」という答えが返された。次に尋ねたいのは、会社の規模が再び2倍になるまでにはどのくらいかかるのかという質問だ。CopyAIがARR100万ドル(約1億1000万円)に達したのは2021年の初めだったのだ。

TextNow(テキストナウ): いまやARRが1億ドル(約110億円)を超えた。同社は創業以来200万ドル(約2億2000万円)以下の資金しか調達しておらず、基本的には自力で立ち上がった企業だ。最近CFOを採用している。その意味はおわかりだろう、IPOが近いということだ。正直なところ、TextNowは私がよく知っている会社ではなかったが、情報を共有してもらえたので、もっと知りたいと思うようになった。楽しみにしておこう!

Kalendar AI(カレンダーAI): この会社は、利用者が営業会議を予約することをAIを使って支援するらしい。このモデルは一定の支持を得ていると、創業者でCEOのRavi Vadrevu(ラビ・バドレブー)氏はいう。彼は、銀行の残高や成長のチャートなどの数々の指標をThe Exchangeに示した(データ万歳!)。そしてARRは6桁(数千万円台)に達し、最近のラウンドでは70万ドル(約7680万円)を調達した。

そして、そのチャートによれば、加入者の増加が加速しているように見える。また別のデータセットによると、この8月は、同社のビジネスの主要な(非GAAP的)指標である会議予約数に関して、これまでで最も忙しい月になるようだ。同社は、この数字(予約数)が毎月30%ずつ増加しているという。

バドレブー氏自身の言葉によれば、Kalendar AIは「AWSが仮想化でイノベーションを大衆化したように、企業の成長を大衆化したい」と考えている。

Balto(バルト):Baltoはセントルイスを拠点とするスタートアップで、これまでの調達資金額が5000万ドル(約54億9000万円)を超えたばかりだ。これは、先ごろ行われたシリーズBで、3750万ドル(約41億2000万円)という良い結果を得た結果だ、同社のCOOであるChris Kontes(クリス・コンテス)氏によれば「Jump Capital、OCA Ventures、Sandalphon」がこのラウンドに参加したという。シカゴ市場に関する最近の記事を読んでいただければ、これが大変なことだとわかるだろう。

にもかかわらず、Baltoは2020年第3四半期にシリーズA調達を行って以来、顧客ベースを84%、収益を200%成長させたという。私は、同社の顧客数と売上高の伸びの違いは、NDR(Net Dollar Retention、売上継続率)や、より大口の顧客によってもたらされたものなのかと尋ねた。コンテス氏は「答は『どちらも』です、ややNDRに寄っていますけれど」と答えた。絶対的な数字は答えてもらえなかったが、Baltoの「NDRは150%を超えています」と彼はいう。すばらしい。

ちなみにこの会社はサポート要員が、コール中に何をいうべきかを知ることができる技術を開発している。どうやらそれが、大きなビジネスになっているようだ。

HostiFi(ホスティファイ): デトロイト近郊に本社を置くHostiFiは「UniFiネットワークデバイスのリモート監視と管理」をサポートしている。悲しいかな、私にはそれが何を意味するのかわからないし、今はそれを深く掘り下げる時間もない。

だがうれしいことに、HostiFiの創業者であるReilly Chase(ライリー・チェイス)氏が、私たちの受信箱にメトリクスを送ってきた。それによれば、彼の会社は「今後数週間」でARR100万ドル(約1億1000万円)に到達し「今後3年間」ではARR1000万ドル(約11億円)を達成したいと考えているということのようだ。同社は、以前私たちが取材したこともある旧Earnest Capitalグループから10万ドル(約1100万円)を調達した。HostiFiには1700の顧客がいて、完全にリモートの6人のチームで構成されている。

おもしろいね?非公開企業が財務実績をよりオープンにすることは、不透明なスタートアップの世界を少しだけ明快にするという意味で、世界にとっても良いことだと思う。

ブラジル

ブラジルのスタートアップ市場とその間近に迫ったIPOについての記事は、書いていてとても楽しいものだった。しかし記事が出た後で、TechCrunchの取材に応じたブラジルのB3証券取引所が、私たちの質問への回答を送ってきた。惜しくも締切に間に合わなかったということだが、彼らのメモを紹介しないわけにはいかない。

ブラジルのテクノロジー関連IPO市場の現状について、B3のRafaela Vesterman Araujo(ラファエラ・ベステルマン・アラウジョ)氏は次のように書いている(わかりやすくするために若干の編集を加えている)。

現在、ブラジルの資本市場は記録的な時代を迎えています。2021年8月前半までのIPO件数は44件(比較のために挙げると、2020年は全部で28件でした)で、そのうち約30%がテクノロジー企業ですが、2020年以前のB3ではテクノロジー分野の存在感が薄かったことを考えると、これは非常に興味深いことです。

これこそが、まさに私たちが強調したかったトレンドであり、それがデータによって裏付けられたことはすばらしいことだ。

次に、B3に上場するにはどれくらいの規模である必要があるのか。ベステルマン・アラウジョ氏はこういう(わかりやすくするために若干の編集を加えている)。

2020年および21年上半期のテクノロジー関連IPOの約70%は、1億1000万ドル(約120億8000万円)から3億6700万ドル(約402億9000万円)の間の調達をしていました。またこれらの企業の70%は、最大5500万ドル(約60億4000万円)の純利益を挙げています。中には、他のセクターに比べて純収入が少ないにもかかわらず、成長への期待を反映してか、多くの企業がより多くの資金を調達しているケースも見受けられました。

すごいね。成長プレミアムだ!これは、自国の市場での上場を目指すブラジルのスタートアップ企業にとって、とてもすばらしいニュースだ。Nubank(ヌーバンク)やNuvemshop(ヌービンショピ)が非上場ながら巨大化している中では、国内企業がどこに上場するかはささいな問題ではない。

シカゴ

先週私たちはシカゴのブームについて調べた。過去数四半期におけるシカゴの巨大なベンチャーキャピタルの実績を追跡し、資金調達とスタートアップ活動の波を引き起こしている正確な要因を地元の人びとに尋ねた。それを原稿に取り込んでいくなかで、読んでもらいたいまた別の答えが出てきたので共有したい。

Techstars(テックスターズ)のシカゴ事業所のマネージングディレクターであるNeal Sáles-Griffin(ニール・セイルズ・グリフィン)氏は、シカゴ地域のスタートアップが2020年後半以降資本を集めるのに長けている理由を次のように説明している。

それは(投資家が投資対象をよりリスクの低い、安全性の高いものを求める)「質への逃避」です。あまりにも長い期間、1つのハブに資本が集中してきたため、COVID(によるロックダウン)後のイノベーションの分散化にVCが流れたのです。パンデミックは、古い習慣を打ち破り、シカゴのような成熟した市場に投資家を呼び寄せました。【略】何年も前から、シカゴはスタートアップ企業にとって全米でもトップクラスの目的地として成長してきました。米国のVCコミュニティは、中西部で急速に成長している創業者のすばらしいコミュニティを探って、ようやく追いついてきたところです。

私はシカゴの学校に通っていたので、この地域の学校の密度はよく知っている。私が気にしているのは、この事実が地元のスタートアップ企業にとって有益なものなのかどうかだ。セイルズ・グリフィン氏によると、その答えは確実に「イエス」だという。

当地には、トップ5に入る2つのMBAプログラム(シカゴ大学とノースウエスタン大学)があり、トップ5に入る工学系大学(イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校)と、全米で最も多様性に富んだ工学系大学の1つ(イリノイ大学シカゴ校)があります。また、この地域で最大規模のシティカレッジを擁する地区(シティ・カレッジ)や、シカゴ州立大学のような歴史的に黒人の多い教育機関もあります。どちらも複数のエンジニアリングやITのプログラムを持ち、次世代の人材を育成しています。

シカゴ発の次世代のスタートアップはどこに注目しておけばよいのだろうか?Techstarsは、ヘルスケアやライフサイエンスの他、フードテックや、より大きな輸送産業を構築する企業を重要な市場として挙げている。

他にもいろいろある!

残念ながら、このニュースレターの文字数を大幅にオーバーしてしまったので、このあたりで止めなければならない。しかし、他にも注目すべきものはたくさんあるのだ。たとえばインディアナポリスのLessonly(レッスンリー)がSeismic(サイズミック)に買収されたことなどだ。Lessonlyは、元気の塊のようなMax Yoder(マックス・ヨーダー)氏を中心に、独立運営しながら3000万ドル(約32億9000万円)弱の資金を調達してきた。また、多くの著名な俳優が支援しているAspiration Partners(アスピレーション・パートナーズ)は、SPACを利用して株式を公開する。この取引によって、同社には数億ドル(数百億円)の新たな資本が提供される。

続きはまた来週。

画像クレジット:Nigel Sussman

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(文: Alex Wilhelm、翻訳:sako)

名刺の復活、株式公開はなぜ良いことなのか、BNPLはどこにでもある

スタートアップとマーケットの週刊ニュースレター「The TechCrunch Exchange」へようこそ。
みなさんこんにちは。昼食にグリルドチーズを堪能したあと、この記事を書きはじめている。だがアイスコーヒーをたっぷり用意したおかげで、食後の眠気をかわしながら仕事にとりかかることができているというわけだ。今回はまず、かなりすてきベンチャーラウンドについて話し、とある創業者に対象の産業分野の話を聞き、Marqeta(マルケタ)の収益レポートについてとりあげる。ということで、手元にはフィンテックとSaaSと公開企業に関するメモを用意している。では始めよう。

HiHello(ハイヘロー)の野心的なシリーズA

Manu Kumar(マヌ・クマール)氏のことはよくご存かもしれない。彼はK9 Venturesのベンチャーキャピタリストだ。しかし、彼は同時にスタートアップも立ち上げており、今回私たちが興味を寄せるのはそちらの方の取り組みだ。

HiHelloという名のそのスタートアップは、最近750万ドル(約8億2000万円)のシリーズA調達を行ったことを発表した。Foundryがラウンドを主導し、Lux Capitalが参加し、多くのエンジェルたちも小切手を切っている。ここまでは、ごく普通の話だ。しかし、このラウンドがHiHelloのストーリーのおもしろい部分というわけではない。おもしろいのは同社が作っているものだ。

ここで質問。名刺を最後に注文したのはいつだろう?率直に言って私は思い出せないが、最後の仕事からTechCrunchに戻るまでの間のどこかで、新しいカードを入手することをやめてしまった。それは、単に新型コロナの影響や、私が今サンフランシスコから遠く離れて住んでいることだけが理由ではない。実際あまり役に立っていないように見えたので、考えることもなかったのだ。

HiHelloは、インターネット用の未来の名刺といったものを構築している。クマール氏によれば、たとえデジタルの世界であっても、誰もが自分のアイデンティティを示し、自己紹介する方法を必要としているという。もちろん、予定された集会ならば事前に準備することはできるだろう、と彼はいう。しかし、どちらかといえば予定外に人と会うときには、自分のアイデンティティを伝える方法を持っていることは役に立つ。

ということで、HiHelloを使用すれば、一種の仮想名刺を自分で作成することができる。ただし1つだけではなく、ペルソナごとにそれぞれ1種類ずつ、複数の名刺を持てるようにしようというのがアイデアだ。クマール氏は、たとえば私がポッドキャスト(EQUITY)用に1つ、TechCrunch本体用に1つと複数の名刺を持つことができるという。もちろん仕事用ではない個人用名刺も作ることができる。

私は名刺は死んだと思っていたし、二度とそれを用意する必要はないと思っていた。クマール氏の意見は違う。彼は、HiHelloが事実上、コンテキストを中心とした個人的なソーシャルネットワークを生み出すことができる未来を見ているのだ。それは大胆で直感に反する主張だ。言い換えるなら、スタートアップの良いネタだ。

HiHelloは現在、消費者から収益を得ており、ビジネスプロダクトも持っている。このスタートアップがどれだけ早く成長できるか見守りたい。新しい種類のソーシャル製品に期待できる時が来たのだろう。

対象産業を選ぶ

Skyflow(スカイフロー)については何度か書いたことがある。共同創業者のAnshu Sharma(アンシュ・シャルマ)氏は長年の知り合いだ。最初に会ったのは彼がStorm Ventures(ストーム・ベンチャーズ)にいたときのことだ。その後、彼はエンジェルとして投資を続け、何社かを創業した。そのうちの1つがSkyflowだ。このソフトウェアスタートアップは、PII(個人情報)やその他の重要な情報を顧客に代わって保護し、安全な方法でアクセスできるようにする「デジタル金庫」を販売していて、情報セキュリティに全力を注げない企業が、侵害を回避できるようにしている。

このビジネスモデルは成功しており、Skyflowはかなりの速さで資本を調達している。シャルマ氏はこれまでのところ、顧客の広がりを喜んでいるようだ(シャルマ氏はまた、私が先日エッセイを書くのに役立ったメモを提供してくれた)。

そんなSkyflowが最近、ヘルスケア市場向けに特化した製品を発表した。会社の最初の立ち上げから追跡をしてきたので、私は興味を惹かれた。それで、私はシャルマ氏に電話をかけて彼の産業戦略の話を聞いた。彼がどのように追求していく市場を選んでいるのか、そして彼が次に会社をどちらへ連れて行くのかに興味があったのだ。

シャルマ氏は、彼の会社の計画は、複雑な市場でその技術を証明し、その後、時間の経過とともにその力を拡大することであるという。ということからヘルスケアを推進し、財務データの保管をSkyflowの中で扱うのだ。難しい問題を解決し、彼がいうところの複雑な顧客に販売することによって、Skyflowは他の人びとにその技術を提供するための信用を市場から得ることができる。

彼の視点からは、私たちはプライバシーを重視して、インターネットをゼロから「再配線」する必要があるように思えるのだ。初期段階から決済技術を取り込まなかったことがいかに間違いであったかを語るMarc Andreeseen(マーク・アンドリーセン)氏の言葉をシャルマ氏は引用しながら、ウェブの黎明期に2つのことが忘れられていたのだと主張する。そう、支払いプライバシーだ。

したがって、Skyflowの産業戦略は、可能な限り最も困難な問題(医療データはあらゆる種類の規則や規制に関係している)に取り組み、PIIがすべての人にとってより安全になるまで範囲を広げていくことなのだ。これは、インターネットがどこに向かっうかについての、基本的には楽観的な取り組みである。それはプライバシーが理屈の世界に留まりアドテックが永遠に残り続けるFacebookの世界ではなく、データがユーザー自身のものであり、安全に保存され外からは手の届かない世界のことだ。

Skyflowがこの先向かう環境での競争は厳しくなるだろう。しかし、個人にプライバシーを取り戻したいというスタートアップの、たとえ一部だけでも成功するならば、私は満足するだろう。

Marqetaの初の業績報告会

2021年見たIPOの波の中でやや目立たなかったのは、カード発行分野に携わるフィンテックユニコーンのMarqetaのデビューだった。同社は先週、初の公的業績報告会を行った。そこで同社CEOのJason Gardner(ジェイソン・ガードナー)氏と、その内容について電話で大いに話し合った。

簡単にいえば、Marqetaは第2四半期に急速に成長し、期待を軽々と上回った。しかし、同社は市場が予想していたよりも多くの金を失い、その結果IPO後の株価の値上がり分を事実上すべて失った。

電話からのメモをいくつか。第一に、ガードナー氏は公募価格を上回ったことに満足しているようだ。1年半にわたるIPOが終了した今、会社経営に打ち込めるチャンスを取り戻せたという。また、これまでは年に一度話していた取締役会での計画発表が、四半期報告書になったことが楽しかったという。より定期的な情報開示が会社の仕事に緊張感をもたらすからだ。

普段は非公開企業のCEOが、わずらわしい業績報告会などを心配している話を聞くことが多いので、公開企業の経営者が自分の会社の発展を褒めているのを聞くのは、少し新鮮だった。このことを聞いて、公開を好む理由は違っているもののBigCommerce(ビッグコマース)のCEOであるBrent Bellm(ブレント・ベルム)氏から聞いた公開に関するコメントを思い出した。

関連記事:ローコードの後に来るものは?そして、何故公開をする必要があるのか?

しかし、スタートアップの世界を理解する上でより重要だったのは、MarqetaのBNPL(後払い)市場に関するメモだった。Klarna(クラーナ)の台頭をきっかけに、Square(スクエア)がAfterpay(アフターペイ)を買収し、そして数多くのBNPLスタートアップのラウンドを経て、Marqetaが自社の成長市場としてBNPL(今すぐ購入、後で支払い)の分野に注目していることが私たちの関心をとらえた。BNPLが、カード発行プラットフォームの役に立つのは何故だろう?

要するに、Marqetaなどが顧客のために発行したバーチャルカードが、BNPLの取引を可能にするソフトウェアの一部として使用されることが多いことがわかったからだ。フィンテックの世界は、常に予想以上に相互につながっている。ということで、BNPLというカテゴリーを考える際には、その成長が他のどのような分野の成長と関わっているのかにも注目したいと思う。これにより、BNPLの波に乗ることができるスタートアップの数が増えるからだ。

最後にもう1つ。馴染みのない市場のダイナミズムの説明を得るには、公開されている企業のCEOに説明してもらうのが一番早い。ただ、このようなやり方の欠点は、もう少しで理解しかけていたのに、たった1つの重要な要素を見逃していただけという場合に、CEOがささやかな一言で気づかせてくれたときに、自分が理解できなかったことをとても残念に感じてしまうことだ。

とはいえ、実際には自分がとても愚かだという自覚はあるので、何かを知らないことで顔を真っ赤にすることはない。さて、今日はここまでにしよう。

ではまた、ワクチン接種が無事に終わりますように。

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(文: Alex Wilhelm、翻訳:sako)

ローコードの後に来るものは?そして、何故公開をする必要があるのか?

スタートアップとマーケットの週刊ニュースレター「The TechCrunch Exchange」へようこそ。

第2四半期の業績報告シーズンは順調に進んでいる。つまり、Exchangeのスタッフたちが、重要なトレンドやメモをお届けするために、多くの公開企業のCEOたちにせっせと電話をかけているということだ。ということで、今回はAppian(アピアン)、Paycom(ペイコム)、BigCommerce(ビッグコマース)を取り上げる。

その後、BNPL(後払い)の世界スタートアップの競争への最近の報告を強化してくれる、新鮮な素材を覗き見する。持ち帰りバッグの用意はよろしいだろうか?お土産をどっさりお渡しできますように!

まずAppianから始めよう。私がこの会社を知ったのは、多くの企業が同社のローコード技術を使用してアプリケーションを構築していた、パンデミックの最中だった。当時のAppianの評価額は現在の約半分ほどだった(同社の第2四半期のレポートはここで読むことができる)。

それ以降、同社はクラウドへの注力を継続し、プロフェッショナルサービスの売上よりも利益率の高いSaaSによる売上を優先している。似たような変革を実行しているのは同社だけではない。しかし、今回の記事のために、2020年の多くを費やして掘り下げた基本的なローコードの後に何が起こるかについて話してみたい。

Appianは、第2四半期の業績報告に関連して、プロセスマイニング会社のLana Labs(ラナ・ラボ)を買収することを発表した。プロセスマイニングとは何かって?聞いてくれてありがとう。プロセスマイニングとは、自動化でき企業内のプロセスを見つけるためのソフトウェア技術だ。会社のためにRPAサービスを導入するのは結構なことだが、もし何を自動化できるかわかっていない場合には、完全な価値を得ることは難しいかもしれない。

これがAppianの場合とても重要なものになる。なぜなら同社はいまや、企業が同じ屋根の下でアプリケーションを作成するのに役立つ、プロセスマイニング、RPA、およびローコードツールを持つようになったからだ。実際には、これらのパーツは、自動化するものを特定するプロセスマイニングと連携して機能する。そこで特定されたワークフローは、RPAやその他の形式の自動化(AI、人間)の中に取り込まれ、企業が効率的な順序で業務を遂行できるようにする。

AppianのCEOであるMatt Calkins(マット・カルキンス)氏に、ワークフローとアプリケーションの違いについて尋ねてみた。彼はそれらはほとんど同じものであるという。これにより、ローコードの世界をもう少し理解することができる。企業が本当に必要とするアプリケーションの数はいくつなのかと、私はいつも疑問に思ってきた。だが企業が自動化する必要のあるワークフローの数に関する同様の質問には、違う感覚を受ける。もっともっとたくさんの可能性があるように感じるのだ。つまり、より大きな市場の可能性があるということだ。

ローコードについての私の考えを改めたい。このダイナミクスが、単により多くのアプリケーションを作れるというだけではなく、企業が業務をデジタル化し、決まりきったタスクを自動化するのにより役立つというのなら、このソフトウェア手法を私はもっと自信をもって推せる。

次にBigCommerceの話題へ移ろう。このオープンSaaS方式のeコマースプラットフォームはここ数四半期好調で、Shopify(ショッピファイ)のグローバルな知名度が高まっているにもかかわらず、収益の伸びが順調に加速している。株式公開から1周年を迎えたばかりなので、CEOのBrent Bellm(ブレント・ベルム)氏に数分間、この1年で学んだことについて話を聞き、公開には価値があったか否かを尋ねた(会社の第2四半期のレポートはここで読むことができる)。

もちろん、と彼は答えた。彼は私が紹介したくなるような、企業上場における2つの効用を説明した。ベルム氏は、会社の最近の業績に貢献したさまざまな要素から主となる要因を分離することは不可能だとはいうものの、それら2つはBigCommerceのより速い成長に貢献している。

ともあれ、株式公開する理由は以下のとおりだ。

  • 信頼性:オープンファイナンスの公開企業であることは、市場での信頼を育むことができる。スタートアップにはやや頻繁に死にやすいという厄介な習性がある。公開企業はそれよりははるかに死ににくい。つまり、顧客が会社を信頼する可能性が高く、おそらく取引を確保する可能性が高まることを意味する。さらに、BigCommerceが公開されたことで、パートナーたちはBigCommerceに対する信頼を深めており、ベルム氏によれば、そのことがより多くのパートナーシップと成長を促しているという。
  • 注目度の向上:私は株式公開にまつわるこの側面を理解していたつもりだったが、ベルム氏が私の視野を広げてくれた。もちろん、株式公開はブランディングイベントの1つだ。しかし、私は話はそこで終わりだと思っていた。だがベルム氏は、公開したことによって、たとえば彼の会社が何かをしたときにアナリストコミュニティが注意を払うようになると説明した。そのために、BigCommerceは、スタートアップのときよりも、公開会社となったときのほうが世間の注目を集めるのが容易になる。良い意味で、自社を取り巻く市場ノイズが強調されるということだ。

ベルム氏はThe Exchangeに対して、株式公開は彼の会社にとって「圧倒的に良いこと」だったと語る。ユニコーン諸君、聞いたかね?

次はPaycom(ペイコム)の話だ。このインタビューで主に話題に出たのは、人材に関する2つの話題だ。まず最初の話題、Paycomは、他のすべての企業と同様に、競争力のある技術人材市場を扱っている。しかし同社は、従来のテクノロジーハブから遠く離れているにもかかわらず、特に必要とする人材の不足に直面している。Paycomはオクラホマ州を拠点としている(会社の第2四半期のレポートはここで読むことができる)。

しかし、現在の人材市場とその全般的な逼迫は、別の意味でPaycomに影響を与えている。このHRテクノロジー企業は、一般企業が人材を確保してその後維持し続けるのに役立つソフトウェアを販売しているからだ。同社のCEOであるChad Richison(チャド・リチソン)氏によれば、企業は採用後の必要な手続きを終えたあと、人材を手放さないことに重点を置くことで恩恵を受けているという。

2つ目の話題は、労働市場はベンチャーキャピタル市場ととても似てきたことがわかったということだ。リチソン氏は、現在は誰かを面接したら2、3日で採用するか否かを決断しなければならないのだという。以前はもっと時間に余裕があったが、現在の状況は、VCが数週間や数カ月ではなく数日で小切手を切る決断をすることを余儀なくされているのに似ている。

暑い(熱い)夏になりそうだ。

BNPL(後払い)市場を狙うスタートアップ

Splitit(スプリティット)のCEOであるBrad Paterson(ブラッド・パターソン)氏によれば、BNPL市場を狙うスタートアップにとって希望はまだ残されているという。Splititを使えば、顧客は現在のクレジットカードを使用して分割払いを行うことができる。つまり、これは従来のクレジットとBNPLの組み合わせなのだ(SplitItのCrunchbaseページはこちら)。

パターソン氏はBNPLスタートアップの現在の市場についてのコメントを話してくれた。Square(スクエア)とAfterpay(アフターペイ)の取引について多くのことを話した後、私はなぜ中小企業が、彼らの市場に参入してくる巨大企業の猛攻を凌いで、生き残ることができるのかについて彼の意見を聞きたくなった。

パターソン氏は電子メールの中で「平均購入価格、分割払いプランの長さ、業界の統合サービスなど」と説明した豊富な要因が、この世界での生き延びる余地を守っているのだと説明した。そして、BNPLソリューションは「小規模な購入から始めて拡大できる」ため、この分野にはスタートアップが入り込める余地があるのだという。

おそらくより良い質問は、消費者の信用と習慣を構築するために、あとどれほどの手間が必要なのかということだろう。それは、BNPLツール自体よりもはるかに広い問題空間のように思える。

スタートアップの競争

スタートアップの競争に関する少し前の仕事に戻ろう。Hustle FundElizabeth Yin(エリザベス・イン)氏が、共有したくなる一覧を送ってきた。スタートアップにとって市場で主導的役割を果たすことの重要性について話し合っていたときに、私たちは主に、若い企業がさまざまな関係者を結びつけようと試みているマーケットプレイス空間のことを話題にした。

たとえば配車の世界では、それは運転手と乗客だ。フードデリバリーではさらに複雑で、配達者、消費者、食品を生産する事業所が関わる。どのような話かは想像できるだろう。イン氏は、下位の市場シェアに満足していることは「一般的に非常に難しい」ことだという。彼女は続けた:

市場の価値は、通常需要と供給の両方が拡大するにつれて増加します。例えばAirbnbでは宿泊施設と顧客の数の増加が起きていますし、Uberでは運転手と乗客の両方が増えています。などなど。実際、多くの場合には、それが唯一の価値なのです。

したがって、市場で3位または4位である場合、顧客の維持は大きな潜在的課題です。なぜならより大きなネットワークを持っている1位または2位の競争相手に、現在の顧客が逃げていかないようにするにはどうすれば良いかを自問しなければならないからです。これが、マーケットプレイスが統合されていく傾向がある理由なのです。

初期からの投資家にとっては、1位または2位への売却によってうまく決着できる可能性があるものの、1位または2位に投資した場合に比べると、結果は1〜2桁低いものになってしまう可能性があります。このため、好調なスタートを切ったマーケットプレイスがすでにいくつかある場合には、アーリーステージの投資家たちは新しいプレイヤーに投資することを躊躇する傾向があるのです。

イン氏はまた、私たちの質問に答えて、スタートアップによるマーケットプレイスの競争は、一般的に少数の主要なプレイヤーがいる市場を生み出し、市場シェアが低いことで小規模な参入者が追い出されてしまうことで、他の競合他社は死に追いやられるという。彼女は資本の影響に関して興味深い視点を追加した:

一般的には、そう、投資家もこの現象に関与しているのです。いくつかの企業が立ち上がると、投資家はそれらの最初のリーダーにより注力する傾向があり、かつ他の人たちは競合他社への投資を敬遠する傾向があります。そして、お金がその分野に溢れたら、顧客獲得コストが問題になるのです。顧客獲得コスト(CAC)がトップ企業によって引き上げられてしまうのです(これは、フードデリバリー企業の台頭とともに見られた現象です)。これが、マーケットプレイス企業を簡単に立ち上げることができない理由なのです。顧客を獲得する余裕を持てないのです。

これは、ある意味で、スタートアップの世界におけるキングメイキングについての質問に対する答だ。ベンチャーキャピタルは、多くの場合誰が勝つかをあらかじめ決めてはいないものの、資本の影響は実際にマーケットプレイスの世界で結果を歪める可能性がある。さて、最初のVision Fund(ビジョンファンド)が、どのように資本を振り分けたかを話し始める前にこの話題はやめておくことにしよう!

ではまた、ワクチン接種が無事に終わりますように。

ではまた。

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(文: Alex Wilhelm、翻訳:sako)

パンデミックの影響が鈍化し始めている

スタートアップとマーケットの週刊ニュースレター「The TechCrunch Exchange」へようこそ。

先週私たちの仕事は中国で始まりアフリカのスタートアップ活動を掘り下げもう一度中国を扱い、ラテンアメリカのスタートアップエコシステムを深く掘り下げ、そしてそしてRobinhood(ロビンフッド)IPOの再考で締めくくった。言い換えれば、実際にはほとんど何も起こっていなかったのだが。

金曜日にAmazon(アマゾン)の株が急落するのをみて驚いたことだろう。なにしろ、同社はこの四半期に1130億ドル(約12兆3940億円)をわずかに超える巨額の収益を記録したのだ。そして、パブリッククラウドビジネスであるAWSは、順調に進んでいるように見えている。

しかし、投資家はそれ以上の成長を期待しており、それに応じてシアトルを拠点とするeコマースプレイヤーAmazonの価格を設定していたのだ。Amazonが収益に対する期待を裏切って、2021年第3四半期の成長を「2020年第3四半期と比較して10%から16%の間」成長となることを予測したために、投資家たちがその株を手放したのだ。

しかし、金融プレスの一部が指摘しているように、投資家からひどい目にあわされているのはAmazonだけではない。Etsy(エツィー)とeBay(イーベイ)も今週下落している。投資家たちは、新型コロナウイルス(COVID-19)のパンデミックのおかげで電子商取引にもたらされた急成長期が、少なくとも鈍化していて、実質的には終わっている可能性を予想しているようだ。つまり、スタートアップを含む多くの企業で評価額がリセットされるということだ。

パンデミックの初期段階で減速したすべての企業が苦しんでいるわけでもない、Duolingo(デュオリンゴ)は成長が鈍化しているにもかかわらず、公開企業として力強い第1週を過ごした。しかし、デルタ変異種があろうとなかろうと、投資クラスは市場の枠組みを変えている。それを心に留めておくのが賢明だろう。

関連記事:EdTechユニコーンDuolingoが株式公開を申請

それは新しい製品だ

先週から私の脳裏を離れないのは、Robinhoodが消費者投資に関するゲームをどれだけ変えたかということだ。もちろん、先週は主に同社のIPOとそのやや軟調な初期の取引実績について取り上げた。しかし、最終的なS-1/A申請書に埋もれているのは、Robinhoodの文化的影響に関する新しい証拠なのだ。

関連記事:フィンテックRobinhoodの株価が初日の取引で8%下落

同ユニコーンの申請書の冒頭に掲げられているのは2つの統計値だ。それは以下のようなものだ。

画像クレジット:Robinhood

げっ、と思ったかもしれないが、これが示しているのは膨大な投資アカウント数と、毎月のアクティブユーザー数だ。だが考えてみれば、これらは2021年3月31日の数字だ。それらはすでに古くなっている。同じ申請書内で、Robinhoodは、6月30日までの四半期に投資アカウント数が2250万に増加したことを示している。これは、1四半期で25%の成長だ。

当然のことながら、2021年の第2四半期には、二度と起こらないことがいくつか起きたが、それでもこれはなお驚くような結果だ。

Robinhoodの初期の投資家であるIndex(インデックス)のJan Hammer (ヤン・ハマー)氏は、彼の投資先の公開を受けてコメントを送ってきたが、同社の動向は、金融サービスを揺るがすためにハイテク企業によって行われている動きの一部なのだと主張している。Robinhoodのような企業は「古い金融商品に新しい塗装を施したものではない」と彼は書いている。

それは正しいと思う。そして重要な点は、時代遅れのウェブサイトや二流のモバイルエクスペリエンスを提供している市場の既存のプレイヤーたちを酷評しているところだ。たとえばZ世代が、Robinhood、eToro(イートロ)、M1 Finance(M1ファイナンス)でなければ代わりに何を使えば良いというのだろう。まあよくわからないがジョン・ハンコック(アメリカ独立戦争を資金面で支えた政治家)とか?。彼らが言うように、歯磨き粉はチューブに戻らない。

Fidelity(フィデリティ)とVanguard(ヴァンガード)は、一体どうすればRobinhoodのユーザーたちに自分たちのサービスに戻るように説得できるというのだろう?彼らはそうできるのだろうか?それともある世代の投資家たち全員が既存の金融プレイヤーを完全にスキップしてしまったのだろうか?強気のRobinhoodは後者のように考えているに違いない。そしてその見方を私も打ち消すことができないのだ。

Robinhoodの業績が、今後の何期かの四半期にどのように推移するかはわからないが、RobinhoodのMAU(月間アクティブユーザー数)や、M1のAUM(運用資産残高)などを考えると、フィンテックのスタートアップたちは信頼できる401(k)業者たちのいくつかを出し抜いたと言えるだろう。それはフィンテックたちが間もなくさらに深く掘り下げると、私が確信している市場だ。

関連記事:フィンテックM1 Financeがソフトバンク主導のシリーズEラウンドでユニコーンに

アフリカについて

アフリカに戻ってみよう、7月のデータはどうだっただろうか?私たちのアフリカ大陸の2021上半期の力強いパフォーマンスの調査は、6月で終わっていたので、いくつかのデータを追加しておこう。アフリカを情勢をウォッチするThe Big Deal(ザ・ビッグ・ディール)によれば、アフリカのスタートアップたちはこの四半期に71回のラウンドで3億800万ドル(約337億8000万円)を調達した。これは約37億ドル(約4058億2000万円)のランレートだ。よりシンプルに言えば、アフリカのスタートアップは、ベンチャーキャピタルの調達に関しては、これまでで最高の年を迎えている。

ではまた、ワクチン接種が無事に終わりますように。

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画像クレジット:TechCrunch

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(文: Alex Wilhelm、翻訳:sako)

新しいレーシングカーのためにF1がデータを収集した方法とは

スタートアップとマーケットの週刊ニュースレター「The TechCrunch Exchange」へようこそ。

こんにちは!立ち寄っていただいたことに感謝したい。今日は材料がてんこ盛りだ。資金調達ラウンドのダイジェストや、スタートアップ市場のデータ(DocSend[ドックセンド]に感謝する)などをお届けする。だが、最初は個人的に大好きなものから始めよう。レースだ。

The Exchangeは、テクノロジーマネーがF1の世界に流れ込むことに関する、さまざまなジョークを飛ばしてきた。Splunk(スプランク)、Webex(ウェベックス)、Microsoft(マイクロソフト)、Zoom(ズーム)、Oracle(オラクル)というた企業が、チームやレース、そしてリーグそのものを後援している。

F1のパートナーとして注目されているのがAmazon(アマゾン)だ。例えば同社のパブリッククラウドプロジェクトのAWS(アマゾン・ウェブサービス)は、F1中継の画面上に現れるグラフィックを動作させている。もちろん、ファンの目からはAWSグループの計算機クラスターがどのようにして特定の指標を出しているのかが正確にはわからないこともあるが、AWSによるタイヤの摩耗に関するメモは有用でタイムリーなものだ。

しかし、F1の世界の舞台裏では、Amazonがこれまで私が理解していた以上に活躍していたことがわかった。要するに、これまで述べてきたテクノロジー企業とF1のお金の話は、大きなパズルの一部に過ぎなかったのだ。それはどのようなものなのだろう?実はF1の新しい2022年型マシンの設計過程で、AWSが重要な役割を果たしていたことがわかったのだ。

マシンはこんな感じだ。

画像クレジット:フォーミュラ・ワン

なかなかいいんじゃない?

なぜこんなにスラリとした形状なのか気になっていると思う。その答えは、この車両が非常に特殊な空力目標を持って設計されているからだ。例えばF1マシンの後ろに流れる空気の影響で、後続車のコースどりが難しくなる「ダーティエア」現象を減らすことなどだ。

現在のF1マシンは、現行世代のF1ハードウェアとしては最後のシーズンを迎えているが、大量のダーティエアを発生させている(頑張れランド!)。そのため、大切なダウンフォースを失うことを恐れて、コース上のクルマ同士が近づくことができないという、少々厄介なレースになっている。ご存知のようにダウンフォースは、クルマが壁にぶつからずコース上に留まることを助ける。

F1が次の時代の競争で求めていた、ダーティエアを削減しよりクルマ同士が接近したレースを可能にするベースカーを設計するためには、CFD(Computational Fluid Dynamics、計算流体力学)に多くのコンピューターパワーが投入されなければならなかった。そのとき、AWSがF1のコンピューティングニーズに対応していることがわかったのだ。

今回、初めてAmazon Chime(アマゾン・チャイム、Amazonのウェブ会議システム)を利用して、F1のデータシステム担当ディレクターであるRob Smedley(ロブ・スメドレー)氏とこうした統合について話をすることができた。元フェラーリとウィリアムズのエンジニアだったスメドレー氏によれば、F1とAmazonは2018年から新型車のプロジェクトを進めているそうだ。F1には自社の問題を解決するための多くの頭脳が集まっており、一方Amazonはトリッキーな計算をするために大量のコアを提供した。

スメドレー氏によると、もし彼のチームが、個別のF1チームに許されているものと同じコンピューティングパワーを使っていたとしたら、2台の車が前後を走る新しいモデルを計算するのに1回あたり4日かかっていただろうという(なにしろF1レースというスポーツには、チームをある程度平等にするための、あるいはメルセデスの足を引っ張るための規制がたくさんあるのだ)。

しかし、Amazonが2500個の計算コアを提供したことで、スメドレー氏とF1のデータ科学者たちは、同じ作業を6時間または8時間で終わらせることができた。つまり、F1グループはより多くのシミュレーションを行い、より良いクルマを設計することができるのだ。時にはより多くの計算パワーを使用することもある。スメドレー氏は2020年のある時点で、彼のチームが十数種類の繰り返しシミュレーションを同時に実行したこともあるとThe Exchangeに対して語っている。これを可能にしたのは、約7500個のコアによるデータ処理だ。このシミュレーションの実行には30時間かかった。

つまり、F1にはテック系の資金が多く投入されていて、各チームが仕事をすることを助けて、財政的に余裕がある状態にさせていることは事実だが、しかし、F1の本質的な部分にも多くの技術が投入されているのだ。また、F1オタクの私にとって、自分の好きなことが仕事に結びつくのはとてもうれしいことだ。

さて、いつもの話題に戻ろう。

中西部の最新ユニコーン

M1 Finance(M1ファイナンス)は、私の取材活動の中に何度も登場する会社だ。その大きな理由は、彼らがずっと資金を調達し、新しいパフォーマンス指標を発表し続けているからだ。今週、同社は1億5000万ドル(約165億円)のラウンドを実施し、評価額は14億5000万ドル(約1595億7000万円)に達した。この消費者向けフィンテックスーパーアプリの最新の資金調達ラウンドは、ソフトバンクのVision Fund 2が主導した。

関連記事:フィンテックM1 Financeがソフトバンク主導のシリーズEラウンドでユニコーンに

さて、なぜ私たちがこの会社気にするのか?M1の超おもしろい点は、同社の収益の成長を時間軸に沿って追跡する方法を教えてくれたことだ。私がこのスタートアップを取材しはじめた頃、同社のCEOは、運用資産(AUM)の約1%程度の収益を挙げたいと語っていた。つまり、AUMの増加を追跡することで、会社の収益成長を追跡することができるのだ。

そして、同社はAUMの数字を発表し続けている(世の広報担当のみなさん、長期的なデータを提供することは、私たちにスタートアップへの興味を持たせ続けるためのすばらしい方法なのだ!)

M1のAUMを時系列で見てみよう。

1%の目標値で換算すると、年間収益はそれぞれ1450万ドル(約15億6000万円)、2000万ドル(約22億円)、3500万ドル(約38億5000万円)、4500万ドル(約49億6000万円)となる。言い換えれば、2020年6月から実質的に収益が3倍になっている。これはとても良い数字で、投資家が支持したいと思うような成長だ。それが今回のラウンドとなり、そして、M1の新しいユニコーン価格となった。

Truveta

Truveta(トゥルベータ)を覚えているだろうか? 以前、同社が計画を発表したときに、記事を書いている。Microsoft(マイクロソフト)の元幹部であるTerry Myerson(テリー・マイヤーソン)氏がチームの一員であり、私もかつてMicrosoftの取材を生業としていたため、このスタートアップには初期の頃から注目していた。Truvetaは「医療機関から大量のデータを収集し、それを匿名化して集計し、第三者が研究に利用できるようにしたい」と考えていることを、前回お伝えした。

今週、このスタートアップは、新しいパートナーシップと9500万ドル(約104億5000万円)の資金調達を発表した。これはかなり大きな調達額だ!このスタートアップは現在、17のパートナーヘルスグループを抱えている。

多くのデータを1カ所に集めることで、医療の世界をより良く、より公平にすることを目指している。そして今、その目標を達成するために大金を手に入れたのだ。この先何ができるあがるのかを見ていこう。

関連記事:データは米国の不公平なヘルスケア問題を解決できるだろうか?

その他の重要なこと

文字数を適度に抑えて編集の手間を減らしたために、他の記事では紹介しきれなかった重要なものを紹介しよう。

Cambridge Savings Bank(CSB、ケンブリッジ・セービング・バンク)がフィンテックに参入:Goldman(ゴールドマン)が一般庶民向けのデジタル銀行Marcus(マーカス)を立ち上げたことを覚えているだろうか?同じこと狙うのは1社だけではない。今回はCSBが独自のデジタル・ファースト銀行のIvy(アイビー)を構築しローンチを行った。率直に言って、長い営業の歴史と、古典的な技術スタックとサービス群を持つ銀行から始めるというアイデアを私は気に入っている。そして、そのすぐ隣にもっとモダンなものを建てるのだ。古い銀行そのものに新しい技術を習得させるよりも、その方が良い解決策となるだろう。また、多くの銀行がこのようなことをすれば、ある程度ネオバンクの勢いを削ぐこともできるだろう。だよね?

Code-X(コードX)が500万ドル(約5億5000万円)を調達、評価額を公表しても大騒ぎにはならないことを証明:「ラティスベースのデータ保護プラットフォーム」を構築したフロリダのスタートアップ、Code-Xが、最新の増資により4000万ドル(約44億円)の価値を持つことになった。いや「ラティスベースのデータ保護プラットフォーム」が何であるかは知らない。しかし、Code-Xがアーリーステージ ラウンドの一環として評価額を発表したことは知っている。それは拍手喝采に値する。よくやった、Code-X。

最後にDocSendのデータ:その名の通り「文書を送る」同社が今週新しいデータを発表したので、ご紹介しよう。以下がその主たる内容だ。

DocSendのStartup Index(スタートアップインデックス)中の2021年第2四半期のデータによると、スタートアップのピッチ資料に対する投資家の関心とエンゲージメント(需要の代名詞だ)は、前年同期比で41%増加している。一方積極的に資金調達を行っているファウンダーが作成したピッチ資料へのリンク(供給の指標だ)は、2021年第2四半期に前年同期比で36%増加している。

なぜこれがおもしろいのかって?需要が供給を上回っているからだ!あははっ!それがすべてを物語っているような気がする。

ここ数週間、ベンチャー企業の第2四半期決算を調べてきたが、どうにも簡潔にまとめることができなかった。なぜスタートアップの評価額が上がっているのか?なぜ スタートアップ企業はより多くの資金を、より早く調達しているのか?なぜなら、ベンチャーの後援対象となる企業たちに対して、投資家の需要が供給をはるかに上回っているからだ。

それが2021年だ。

きょうのみなさんは素晴らしく、楽しそうで、とてもすてきだ!

来週は、バッテリーに特化した2つのSPAC、つまりEvonix(エボニックス)とSESについてご紹介する。バッテリー技術、エネルギー密度、そして未来について、多くのことを語ることができるだろう。そして、もちろんお金についても。

ではまた。

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画像クレジット:Nigel Sussman

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(文:Alex Wilhelm、翻訳:sako)

スタートアップ、文化、ミームの波

スタートアップとマーケットの週刊ニュースレター「The TechCrunch Exchange」へようこそ。準備OK?ここではお金の話、スタートアップの話、IPOの噂話などをお伝えする。

さてさて!米国では長い週末を迎えた(7月4日は独立記念日で7月5日に振替休日)。ということでこのニュースレターは休み前のひと仕事だ。苦行も文章書きも大好きな私から、いつも以上にたくさんの話題をお届けしたい。しかし内容としては繰り返しだ。

最初の話題: スタートアップと文化について。

先週、私が非常に楽しみにしていたのは、Robinhood(ロビンフッド)のIPO申請だった。こちらの記事では最初の報告を、そしてこちらの記事では数字の詳細を紹介している。しかし、今回は文化(カルチャー)について再確認してみよう。以下の抜粋は、S-1申請書に記載された会社の目標に関するメモの冒頭から。

時間をかけて、私たちはRobinhoodを世界で最も信頼され、最も低コストで、最も文化に寄り添ったマネーアプリにすることを目指しています。

「文化に寄り添った」という言葉が入り込んでいることに驚いただろうか?では、目論見書の「概要」欄に記載されているこの内容を確認してみよう(強調は私):

文化的影響。私たちは、多くの追随者が現れた、最低取引金額を規定しない手数料無料の株式取引のパイオニアです。また、金融システムへのアクセスをさらに拡大する新商品を導入し、お客様との関係を築いてきました私たちは、投資を文化に寄り添って理解できるものとしてきましたし、私たちのプラットフォームによって、お客様が長期的な投資家となり、ご自身の財務をよりよく管理できるようにできたと考えています。2021年3月に実施した自社ブランド調査によれば、米国の18~44歳の半数以上の方がRobinhoodを知っています。現在の私たちの関わり合いの強さをさらに示すものとして、Robinhoodは2021年の第1四半期にApple App Store(アップル・アップストア)で何度も1位を獲得し、2020年から2021年の第1四半期にかけてApple App Storeのファイナンスカテゴリで頻繁に1位を獲得しました。

まあApp Storeの自慢話はどうでもいいが、 文化へのこだわりが私の注意を引いた。

私は、文化が時間とともにどんどん進化していくのを見るのが好きなのだが、TikTokがその流れをさらに加速させた。そして、世界の若者の間では、誤解を恐れずに言うならば、ブランドと文化の境界線が曖昧になってきていて、ブランドが文化的な領域にどんどん入っていこうとしていると言えるだろう。RobinhoodのS-1申請はいろいろな意味で前向きなものだが、上場する企業がこのような形で文化について議論しているのを見ると、未来を感じる。

次の話題:米国の製造業は死んでいない。

先週The Exchangeは、Xometry(ゾメトリー)のCEOとの会話から、そのことを学んだ。同社は最近上場したばかりだ。それに関連する私たちからの記事はここで読むことができる。このスタートアップは、Robinhoodのように、多額のベンチャーキャピタルを調達しており、私たちの広範な興味の対象となる。

これまで取り上げられてこなかったのは、今回の会話のおかげで知ることができたものづくりについての話だ。CEOのRandy Altschuler(ランディ・アルトシュラー)氏によれば、ものづくりを必要とする企業と、ものづくりができる人を結びつける彼のビジネスは、ほぼすべてが米国内で行われているという。つまり、まだ米国で作られているものがあるということなのだ。

実際Xometryの事業は、マーケットプレイスの仲介役として金融サービスを提供するなど、非常にすばらしいものだ。だが私たちが最も注目したのは、デジタルサービスによって、ニーズを持つ人とツールを持つひとを米国内で結びつけることができるというアイデアだった。もしXometryゾメトリー社のビジョンがうまくいけば、米国内の製造業を維持し、さらには成長させることさえできるだろう。これまで誰がそんなことができると考えただろうか?

XometryのIPOも大成功だったことも付け加えておこう。価格帯を超えたところで価格が決まり、その後上昇した。企業としてはそれこそが望みだ。

そして3つ目の話題:楽しいものをごちゃごちゃと

  • テック企業の資金がさらにF1へ: F1カレンダーの週末のレースが終わるたびに、私は、レース界の頂点に立つこの世界に、また別のテック企業が資金を投入していることに気づく。たとえば、Zoomはたくさんのブランディングを展開している。そして先週は、Crypto.com(クリプト・ドット・コム)がF1リーグと5年間で1億ドル(約111億円)の契約を結んだというニュースが入ってきた。こいつは大金だ。特に、Tezos(テゾス)はすでにいくつかのチームのスポンサーとなっているし、またあちこちにAmazon(アマゾン)とMicrosoft(マイクロソフト)のブランド名が見られる。そういえば、Splunk(スプランク)とMcLaren(マクラーレン)の提携も延長されたばかりだ。ということで新しい人生の目標:大金を稼ぎ、F1チームのスポンサーになり、パドックに入れるようになること。それで何の問題もない筈だ。
  • Unqork(アンコーク)がCRO(Chief Revenue Officer、最高収益責任者)を採用した。念の為にいうがCFOではない。ということで、大企業のアプリ構築を支援するこのノーコードサービスのIPOに関しては、あまりお話ができない。しかし、それでもこのニュースは、ノーコードファンにとっては重要なものだ。
  • 最後に、Apptopia(アプトピア)にはネオバンクのダウンロード数が掲載されている。どれが1位だったか想像できるだろうか?

関連記事:2020年に辛うじて黒字化したRobinhoodが上場手続き開始、2021年第1四半期は売上高4倍

カテゴリー:ネットサービス
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画像クレジット:Nigel Sussman

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(文:Alex Wilhelm、翻訳:sako)

誰もがオープンソースのスタートアップに投資したいと思っている

スタートアップとマーケットの週刊ニュースレター「The TechCrunch Exchange」へようこそ。

準備OK?ここではお金の話、スタートアップの話、IPOの噂話などをお伝えする。

みなさん良い週末は過ごせただろうか。先週があまり慌ただし過ぎず、週末にしっかりと充電できていることを願っている。といいつつ、お話したいことはてんこ盛りだ。

私のメール受信箱やSMSフォルダー、Twitter(ツイッター)のDMにどんどん積み上がっているのが、オープンソースをバックボーンにしたスタートアップの調達ラウンドの知らせだ。基本的にスタートアップ企業はオープンソースプロジェクトにルーツを持ち、多くの場合そのオープンテックの創始者がその企業内にいる。

スタートアップの世界での、最新の良い例がConfluent(コンフルーエント)だ。同社は先週公開されたが、その結果はすばらしいもので、IPOレンジを上回る価格が付けられて、その後さらに上昇した。Confluentは、オープンソース技術であるKafka(カフカ)をベースにしている。おそらくKafkaを耳にしたことのある人は多いだろう。

The Exchangeは同社のIPO当日に、Confluentの初期からの支援者であるIndex VenturesのMike Volpi(マイク・ボルピ)氏に、インタビューを行った。そのインタビューを通して、ボルピ氏がいうところの、この数年で劇的に変化したオープンソース(OSS)スタートアップの世界を垣間見ることができた。彼の話によれば、2015年頃のベンチャー投資家たちは、オープンソースのスタートアップにあまり興味を示しておらず、すでに1社(Red Hat、レッドハット)があるし、それでほぼ十分だろうと話していたという。

関連記事:リアルタイムデータストリーミングApache Kafkaの商用サービスConfluentが$24MのシリーズBを完了

私の計算が正しければ、Index VenturesはConfluentの今回のIPO価格から株価にして10億ドル(約1108億円)を超える価値を得たことになる。つまりOSSを嫌っていた者たちは間違っていたということだ。

とはいえ、ボルピ氏は、オープンソースに特化したスタートアップに対して相変わらず強気であるものの、より多くの投資家がこのモデルを支持するようになったことで、市場は徐々に選別が必要になってきていると付け加えた。投資家たちがより多くの資金を投入していることは、スタートアップの資金調達に関する報道を読んでいれば、驚くようなことではない。その例の1つが、2020年12月に書いたBuildBuddy(ビルドバディ)だ。また同僚のRon Miller(ロン・ミラー)記者は最近、Tecton(テクトン)とAirbyte(エアバイト)を取り上げている。

関連記事
機械学習のフィーチャーストアTectonがオープンソースの同サービスFeastを併合
必要な場所にデータを移動させるオープンソースのデータコネクタープラットフォームAirbyteが28.3億円調達

ベンチャーキャピタルがOSSに関心を持つ傾向は以前から見られていた。実際2017年には、VCたちがTechCrunchのために、オープンソーススタートアップの隆盛についての記事を書いている。しかし、ConfluentのIPOや、この領域のスタートアップ企業の最近の相次ぐ資金調達は、このような企業に対する市場の需要が、新たな高みに達したことを示しているように思える(もしOSSに特化したスタートアップを立ち上げていて、最近資金調達をしたのであれば、ひと声かけていただければ幸いだ)。

ConfluentのIPOについてさらに詳しく

また、同社のIPO当日にはConfluentのCEOであるJay Kreps(ジェイ・クレプス)氏にも話を聞いた。そこから残されたメモのいくつかは、取り上げる価値がある。ここでは、そのキーポイントをご紹介しよう。

  • 投資は決して「普通」には戻らない:ベンチャーキャピタルがZoom(ズーム)で取引を始められたことは、それだけで大変な驚きだった。つまり、平均的なVCはテクノロジーに精通しているのだろうと思うだろう。クレプス氏によれば、IPOロードショーはデジタルチャネルでうまく機能し、ジェット機で全国を飛び回って対面式のミーティングを行うよりも、より多くの人々と迅速に話をすることができたという。もしさらに保守的な公開市場の投資家たちがZoomを良しとすれば、デジタルピッチングはそれで決まりだ。
  • 公開市場はまだ熱い: Confluentは急成長しているソフトウェア企業だが、まだ利益を出していない。このIPOの高評価は、現在の市場では損をしてもまだまったく問題ないことを示している。クレプス氏によれば、もし巨大な市場(彼はConfluentの市場を500億ドル(約5兆5000億円)規模とみなしている)があり、非効率な事業とコスト構造に完全に苦しめられていないCEOの証として、資本がきちんと投資されていることを示すことができれば、損失は問題ないという。これは、現在第3四半期のIPOを希望している、当期純利益よりも成長率が高い企業にとって重要なことだ。ほとんどの企業に当てはまる。
  • 一般投資家もオープンソースを好んでいる:The Exchangeはクレプス氏に対して、公開市場にアプローチするオープンソース企業であることについても質問をした。それはプラス要因だったのかマイナス要因だったのか?CEOはプラスだったという。テクノロジーにはオープンスタンダードに基づいて構築されてきた歴史があり、OSSはそうした歴史的な流れにうまく合致している、とCEOは付け加えた。また、オープンソース・プロジェクトには有機的な強い勢いがあるため、一般投資家が企業レベルでの将来の成長を見極めるのに役立つと付け加えた。すばらしい。

OK、さらにオープンソースのニュースはいかがだろう?

実はさらにオープンソースソフトウェアのニュースがあるので、聞いていただきたい。2021年6月初めに、Prefect(プレフェクト)は3200万ドル(約35億5000万円)のシリーズBを行った。このラウンドはそのときには記事にしなかったが、先週同社に簡単に話を聞くことができた。

同社は、オープンソースプロジェクトであるPrefectCore(プレフェクトコア)を中心に活動している。PrefectCoreは、スケジューリング、モニタリング、ロギングなどに注目し、企業のデータ流入が正しく設定されているかどうかの確認をサポートしている。同社は、このような作業をネガティブエンジニアリングと呼んでおり、ある種の盲点になっている。スタートアップによれば、この種の作業は誰も本気で取り組みたいとは思っていない種類のものなのだという。

注目すべきなのは、Prefectは、オープンソースプロジェクトのホスティングバージョンを提供するのではなく、モニタリングサービスを販売している点だ。私はOSSプロジェクトそのもののホスティングは、そうしたプロジェクトを収益化するためにはやや古臭い方法であると考えている。そのため、ホスティングやフィーチャーゲーティングを販売するのではなく、PrefectCoreが管理しているものを追跡するAPIそのものが同社の製品となっている。オールグリーンなら問題がない状態だということで、そうでなければ、何か問題があるという意味だ。

今回取り上げた重要なポイントは、Confluentが、OSSスタートアップが巨大なスケールに達し、大きなIPOになることができる可能性を示したことだ。そしてPrefectが示したのは、オープンソース・ソフトウェアでお金を稼ぐための方法が、さらにあるかもしれないということである。

ということで、2021年はより多くのOSS VC案件が期待される。

カテゴリー:VC / エンジェル
タグ:The TechCrunch Exchangeオープンソース

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(文: Alex Wilhelm、翻訳:sako)

フィンテック企業Marqetaの巨額IPOの内実

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(ささやかなお知らせ:来週、6月14日-6月19日は、Exchangeコラムとニュースレターはお休みとなる。ちょっとした休暇をとって新しいアイデアとともに米国時間6月21日から通常サイクルに戻る予定だ)

The Exchangeは、先週初めに、ほぼ強気のIPO市場を調査し、Monday.com(マンデー・ドットコム)とMarqeta(マルケタ)がここ数日でかなり大きなポイントを獲得したことを指摘した。言い換えるなら、ユニコーン市場は適度に健全であり、これは第3四半期の流動性にとっても良い兆候だ。

しかし、今日は広い視野をとる代わりに、Marqetaの公開だけに絞って考えてみたい。フィンテック企業たちにとって、Marqetaの適切な価格設定と堅調な株価推移は歓迎すべき結果だ。しかし、Marqeta自身は、そのデビューをどのように感じているのだろうか?

そのことを知るために、The Exchangeは、IPOの価格が決定し取引が開始された直後に、同社の創業者でCEOのJason Gardner(ジェイソン・ガードナー)氏に話を聞いた。私の親愛なる友人であり、TechCrunchの上司であるHenry Pickavet(ヘンリー・ピカヴェット)を悩ませるためにも、多くの話題をカバーしつつ文字数を抑えられるように、箇条書きで話を進める。

  • ガードナー氏は、Marqetaのロードショー中に、34時間Q&Aを行ったという。彼はそれを気に入っていた。話の詳細は、同社のIPOとはほとんど関係ないが、CEO自身のことを少し語るものだ。同じ13の質問に答えるのに、何時間もの時間をかけている。私なら気がおかしくなってしまうだろう。
  • Marqetaは、価格を高めに設定し、予想以上に多くの資金を調達した。ガードナー氏によると、同社は特に米国以外の市場では、人工的な成長(買収)を追求していくという。それは理にかなった動きだが、ただし彼は技術の質に対しては高いハードルを設定しているという。ガードナー氏は、技術力の劣る企業は買わないという。もし買ってしまったら買収後に再構築をしなければならなくなるからだ。ドライだね。
  • MarqetaはIPOの1年半前から社内で話し合いを始めていたので、公開企業への移行は比較的スムースだった。私の想像では、ここでガードナー氏が言いたいのは、株式公開をするということは、単に会計上の仕事だというだけではなく、文化的な向上にもつながるということだと思う。このことをもう一歩掘り下げたなら、SPACの価値が多少色あせて見えるだろう。
  • 会社が成長し上場したことで、ガードナー氏にとって何が変わったのだろう?彼の視点が、数カ月単位から数年単位へと、より遠くへと広がったということだ。Marqetaがさらに拡大していく中で、この変化は続いていくだろう。

私がこの記事を書いている金曜日(米国時間6月11日)の午後の時点で、Marqetaの株価はさらに6%上昇している。

Embrokerに何が起きた?

金曜日(米国時間6月11日)の朝に報じたように、世界のインシュアテック市場は、米国でも欧州でも大いに盛り上がりを見せている。その証拠を見つけるのは難しくないが、インシュアテック市場の現在の状況をよく表しているのが、先週の初めに行われたEmbroker(エンブローカー)の1億ドル(約109億7000万円)のラウンドだ。

Embrokerは、サンフランシスコに拠点を置くインシュアテック企業で、企業向けの保険を販売している。その商品は、サイバー保険、ビジネスオーナー保険、プロフェッショナル損害賠償などだ。おそらくそれは、最近、巨額のラウンドを調達したビジネスに特化した別のインシュアテックプロバイダーNext Insurance(ネクスト・インシュアランス)と通じるところがあるのかもしれない。

関連記事:中小企業向け保険テックのNext Insuranceが276.8億円を調達、1年足らずで評価額を4428億円超に倍増

インシュアテックという大きなカテゴリーに魅せられたExchangeのスタッフが、Embrokerのスタッフにいくつかの質問を投げかけてみた。ここでは、メールで行われたQ&Aを紹介する(太字はTechCrunch側。各Q&Aはわかりやすくするために多少編集されている)。

高いレベルから見たときに、Embrokerが提供するビジネス保険商品の損害率(ロスレシオ)は、私たちがよく知っている消費者向け自動車保険の損害率と比べて良いのか、悪いのか、それとも同等なのでしょうか?

はい、当社商品の損害率は、消費者向け自動車保険や家財保険などの他の保険商品に比べて大幅に優れています。また、これまでの当社の損害率は、他の確立された中小企業向け商品と比較しても良好です。

新ラウンドの評価額(バリュエーション)を交渉する際に、最近のインシュアテックのIPOが価格決定の議論に取り上げられたのでしょうか?

最近のインシュアテックのIPOは、公開市場での評価額の基準を提供していて、これはこの分野全体にとってすばらしいことです。しかし、私たちはそれを直接の比較対象としては使用しませんでした。なぜなら当社の損害率、リテンション、セールスとマーケティングの効率性は、現在公開している他のインシュアテック企業よりも大幅に優れているからです。

Embrokerが「サイバーリスク保険」を提供していることに興味を持ちました。ランサムウェアに対する市場の関心が高まっている中で、その製品の需要も以前より高まっているのでしょうか?また、それは社内の他の保険ラインに比べて経済的に利益を生むものなのでしょうか?

最近、注目を集めているサイバー犯罪に対する保険金請求を考えると、サイバー犯罪への対応は需要面でも価格面でも急速に成長している保険種目であると考えられます。保険金請求は今後も増加すると思われますが、サイバー領域に関する当社のモデルは、リスクを適切に評価するのに効果的であり、当社のプラットフォームへの投資によって、今後もそのような評価が可能であることを期待しています。

特にスタートアップ企業向けには、技術者向けのE&O(職業賠償責任)保険とサイバー保険をセットにしています。これは多くの創業者が独立したE&Oもしくは迫りくる脅威に対してサイバーポリシーを契約しているからです。

最後に、マーケティング費用がどのように推移しているのか気になります。Embrokerがまだ小さかった頃と同じように、効率的なセールスとマーケティングが行えているでしょうか?

マーケティング費用は毎年大幅に増加していますが、ターゲットとする市場でのシェアが拡大するにつれて、売上高に対する比率は一貫して低下しています。これによって、オーガニックな成長が促進されています。例えば、当社は現在、米国で活動中のVC支援企業の多くから保険をひきうけています。このことで多くの企業から資金調達の際に、当社に保険を依頼しようと思ってもらえるのです。

確かに言葉は多い。だが、このかたまりの中に、重要な情報が詰まっているのだ。Embrokerが自社の経済性をほとんどの上場企業よりも優れていると考えていることは注目に値する。この事実は、私たちがこれまで見てきたいくつかのIPOによって想像するようになったきたものよりも、インシュアテック企業間にはより広い経済的広がりがあることを示唆している。

また、Embrokerは、少なくともセールスとマーケティングの支出に関しては、営業レバレッジを持っている。それは、インシュアテック市場はインテリジェントなビジネス運営が不可能なほどには、混み合っていないことを示しているのかもしれない。もちろん厳しい事態の変化があっても、Tiger(タイガー)やその他からの数億ドル(数百億円)の追加投資で解決できるはずだ。

最後になるが、OKRソフトウェアに関して(詳細はこちら)、Koan(コーアン)は先週、82%の顧客増を報告した。混沌とした市場の中で頑張っている企業にとって、これはすばらしい結果だ。見るべきスタートアップだと思う。

では、1回お休みの後にまた。

カテゴリー:フィンテック
タグ:The TechCrunch Exchangeインシュアテック

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(文:Alex Wilhelm、翻訳:sako)

すべてのSPACが純粋なゴミというわけじゃない

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みなさんこんにちは。先週は短い1週間だったが(米国は5月31日月曜日が祝日だった)、ここ数日のうちに扱ったニュースの多さにかなり参っている。そこで、一旦立ち止まって、愚痴をこぼしつつ、ちょっとした気休めにSPAC(特別買収目的会社)の話をしよう。

ただし、米国時間6月6日の月曜日にはBabylon Health(バビロン・ヘルス)のSPACについて掘り下げる予定だが、今回はSPACの投資家向けプレゼンテーションの分析をするわけではない。今回はその代わりに、SoFi(ソーファイ)とBarkBox(バークボックス)の白紙小切手取引(SPACのこと)について話したい。

両社とも、しばらく前に公開が行われた後、先週から取引が開始された。ものごとは順調に進んだのだろうか? SoFiの公開企業としての最初の動きについてCNBCは以下のように書いている。

Social Finance(ソーシャル・ファイナンス)の略称を名前としたSoFi(ソーファイ)が、ベンチャーキャピタル投資家のChamath Palihapitiya(チャマス・パリハピティヤ)氏が所有する白紙小切手会社(SPAC)のSocial Capital Hedosophia Corp Vと合併して上場した。株価は12%以上上昇し、22.65ドル(約2478円)で終了した。

これはSoFiにとっての勝利であるばかりでなく、ここ数カ月やや翳りの見えるSPACへの投資で、いくぶん苦戦しているチャマス・パリハピティヤ)氏にとっても良い結果だ。もちろん、SPACによる公開はすべて投機的なものだが、一部の一般投資家は企業のファンダメンタルズよりもパリハピティヤ氏の評判の方を重視していたようだ。そもそも他に何ができるだろう。

BarkBoxも、Barrons(バロンズ)が報じたように、SPAC統合が完了した後先週取引を開始したときには、まったく問題がなかった。

BarkBox(ティッカー:BARK)の株価は水曜日(米国時間5月2日)には約7.5%上昇し、午後には12ドル(約1313円)前後で取引された。これにより、同社の市場価値は24億ドル(約2627億円)近くになった。

その後、BarkBoxの株価はやや下落したが、SPAC当初の価格を下回ることなく推移している。これは、設立が発表されたときよりも市場の状況が変化していることを考えると、勝利と言えるだろう。

1週間に2つの良い結果が出たことは、SPACの世界そのものや、市場にいる白紙小切手(SPAC)側やスタートアップ側の無数のプレイヤーにとって朗報だ。もちろん、今回の2つの確たる結果がトレンドを生み出すわけではないが、着実に収益を上げている企業にとっては、SPACルートは世間が噂するほどには穴だらけの道ではないということは明らかだ。

暗号資産への賭け

SPACが基本的には胡散臭いと思っているのなら、白紙小切手(SPAC)ブームと暗号資産の組み合わせについて話を聞いて欲しい。以下にお話ししよう。

今週、暗号資産に特化しステーブルコインを特に好むCircle(サークル)が4億4千万ドル(約481億4000万円)を調達した。USDC(USD Coin)というステーブルコインで知られる同社にとって、これは多額の資金であり、SPACのIPOを検討しているとも言われている。

ところでステーブルコインとは何だろう?それは法定通貨と連動している暗号資産(仮想通貨)だ。ご想像の通り、USDCの場合には米ドルと連動している。ステーブルコインは、暗号資産の世界の中での有用な法定通貨代替物で、非常に人気があることがわかっている。

CircleのUSDCは、228億ドル(約2兆4950億円)相当が流通しており、CoinMarketCapのデータによれば、1日の取引額は数十億ドル(数千億円)だという。悪くない!しかし、この会社が一体どのようにして魅力的な粗利益率の下に莫大な収益を上げているのかは、あなたの謙虚なるしもべである私にとってそれほど明確ではない。これは、一度に5億ドル(約547億円)近い民間資金を確保した会社には、当然明確化が期待されることだ。

だから、今度ばかりは、SPACをして欲しい。もちろん莫大な数字の中身を早く見たい、という好奇心からだ。

成長は?

先日Ron Miller(ロン・ミラー)記者と私は、いくつかの公開企業の決算報告書を調査した。その結果、一部の企業では、ご自慢のデジタルトランスフォーメーションの加速本当に実現していることがわかった。

先週のニュースには、その議論の続きがあった。例えば、Zoom(ズーム)の業績は、私たちの仮説を裏づけるものだった。その2022年第1四半期の売上高は、2021年第1四半期と比較して191%増加した。それはまさに目を見張る好成績だ。

その一方で、Dropbox(ドロップボックス)とBox(ボックス)は、先週外部の投資家から新たな圧力を受けた。かつて非公開市場の寵児であった2社は、成長の壁にぶつかり、そのために攻撃を受けている。「成長かさもなくば死を」は、単なるスタートアップ向けの助言ではない。それは、ソフトウェア企業が自らの運命を握り続けるために必要なことなのだ。

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タグ:The TechCrunch ExchangeSPAC暗号資産ステーブルコイン

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(文:Alex Wilhelm、翻訳:sako)

たしかに暗号資産には多くの大量の通貨が必要だ

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こんにちは、米国では5月最終月曜日はメモリアルデーという祝日だ。今回のExchangeはメモリアルデーを記念して、新しい試みとして簡潔にまとめてみよう。

暗号資産(仮想通貨)の話は聞き飽きたという読者には、悪いお知らせだ。彼らは消えて行かないどころか、彼らの進撃のために戦場を整える役割を果たした金融砲が、さらに多くの金融弾を装填しているのだ。

少なくとも、Eric Newcomer(エリック・ニューカマー)氏は「a16z Crypto Fund Balloons to $2 Billion」(a16z(アンドリーセン・ホロウィッツ)の暗号資産ファンドが20億ドル(約2178億6000万円)に膨張)と題した先週の投稿で、そのように書いている。

ここにはいくつかのポイントがある。第1に!20億ドル(約2178億6000万円)規模の暗号資産ファンドに出資できるだけのLP(リミテッドパートナー)需要があること。第2に!20億ドルを投じる価値のある、ホットな暗号資産のアイデアが十分に存在すること。

前者の存在は確信できるが、後者はちょっと考えてしまう。ブロックチェーンの分野に優れた企業が存在しないわけではない。Coinbase(コインベース)の第1四半期の収益を見れば、暗号資産を使ってお金を稼ぐことは可能だ。しかし、これまでに最も成功を収めている企業は、従来の銀行の世界と暗号資産の世界を融合させた企業たちであり、後者に完全に属している企業ではないようだ。

関連記事:上場間近のCoinbase、絶好調の2021年第1四半期決算を読み解く

しかし、そのようなアイデアが次々に掘り起こされていく中で、より実験的な暗号資産のアイデアを追いかける資金が出てくることは予想できる。先のDaily Crunchでも述べたように、こうした市場にはすでに多くの資金が投入されている。

ノン・ファンジブル・トークン(NFT)という言葉を聞いたことがあるだろう。すでにNBA TopShot(NBAトップショット)の誇大広告をなんとかしのげたとしても、さらに気を引き締めて欲しい。NFTの世界ではさらに多くの企業が構築を進めているのだ。その中には、NFTにAR(拡張現実)を導入し、Coinbaseから新たな資金を調達したばかりのAnima(アニマ)や、NFTを実生活に取り込むために600万ドル(約6億6000万円)を調達したばかりのInfinite Objects(インフィニット・オブジェクツ)などがある。

ここが、暗号資産へのベンチャー投資、そしてあの巨大なa16zファンドが興味を持つ点だ。

確かに、暗号資産の取引でも儲けることができる。しかし、さらに未来の暗号資産経済はどうなるのだろうか?彼らは現実世界が理解できる実質的な収益を生み出し、公開企業となることができるのだろうか?(いや、そもそも彼らは公開したいと思っているのだろうか?)。

他人が、失敗するかもしれないアイデアに他人のお金を賭けるのを眺めているのは楽しいものだ。表なら彼らの負け、裏なら私たちの勝ちだ。悪くない!

関連記事:ただ1つのNFT動画を表示するディスプレイでデジタルアートの再構築を目指すInfinite Objects

Twitterのサブスクリプション(とメディア?)の盛り上がり

Twitter(ツイッター)のサブスクリプション製品「Blue」(ブルー)が、徐々に市場に迫っている。それがどのようなものだろうと使うつもりだ。

関連記事
ツイッターに月額330円サブスク「Twitter Blue」、間もなく登場か
TwitterがオランダのニュースレタープラットフォームRevueを買収、作家が報酬を得る方法を提供

しかし、私の頭から離れないのは、Twitterがクリエイターにとっての涅槃(理想の地)のようなものを生み出すのに絶好の位置にいるということだ。なにしろ作家やジャーナリスト、アーティストの多くがすでに集まっているのがTwitterという場所なのだ。すでにファンがいる場所だ。私たちのような変人たちがプラットフォームに費やす時間を、活用できるようにしない理由はない。

これがどのような規模になるかは想像できるだろう。TwitterがスタートアップのRevue(レベニュー)とScroll(スクロール)を買収したことで、Blueのサブスクライバーの収益を、プラットフォーム上のライターたちに分配するニュースレタープラットフォームを構築できるようになった。あるいは、先日友人が私に提案したように、TwitterがMedium(メディウム)を買収することも考えられる。Mediumは膨大なサブスクライバーを抱えており、TwitterはそれをBlueに統合することで、作家やその他のクリエイターたちに一種の追加SNSネットワークを提供することができる。だよね?

もし私が数十億ドル(数千億円)の資金と数千人のエンジニアを自由にできる立場で、株主たちから成長しろと命令されたら、私は猪突猛進で思い切ったことをやるだろう。Twitterが何を考え出すかが見ものだが、それが小手先の計画ではないことを期待しよう。

カテゴリー:VC / エンジェル
タグ:The TechCrunch Exchange暗号資産NFTTwitterサブスクリプション

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(文:Alex Wilhelm、翻訳:sako)

スタートアップが市場に広がっていくのを見るのは楽しい

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ユタ州を拠点とするスタートアップ企業Divvy(ディビー)がBill.com(ビル・ドット・コム)に売却されたことが、私の頭の中をずっと駆け巡っている。その理由は、25億ドル(約2723億3000万円)という巨額のエグジットが、双方の企業にとってそして地元にとっても大きな意味を持つだけでなく、そのターゲットとなる市場が刺激的であることも大きい。

Divvyは、Ramp(ランプ)やBrex(ブレック)などの、いくつかの他のユニコーン企業たちを相手に、企業支出(corporate spend)市場と呼ばれる分野で競争している。だがDivvyが去った今、2つの競合他社は重要な点での差別化を図っている。

そして、Brexは実看板広告を再開しつつある。

先週Brexは、米国のいくつかの都市で実看板広告を展開することを発表した。サンフランシスコで暮らす人たちは、Brexがまだよちよち歩きだったころ、街中にブランド広告をベタベタ掲出していたことを思い出すだろう。基本的には、それは多くのインプレッションを得る安価な手段だったのだ。

今回スタートアップはこの戦略をヒューストン、マイアミ、ワシントンD.C.にも展開しようとしている。それはなぜだろう?先週The Exchangeは、BrexのCEOであるHenrique Dubugras(エンリケ・ドゥボグラス)氏にインタビューを行い、この件について話を聞いた。ドゥボグラス氏によれば、現実世界でのマーケティングを再開するにあたり、2つの目標を掲げたという。まず、Brexは、スタートアップ企業向けのコーポレートカードという当初のブランディングを超えて、そのソフトウェアをアピールしたいと考えている。そして2つ目は、同社がサンドヒル・ロード(世界のVCの1/2が集まるカリフォルニアの通り)のVCを短縮ダイヤルに登録しているような企業(スタートアップ)だけでなく、あらゆるタイプの企業と連携していることを、ビジネスオーナーたちに知ってもらいたいということだ。

Brexがスタートアップ以外の顧客も増やしたいと考えているのであれば、彼らのスタートアップとしての活動があまり知られていない市場で、Brexの名前を広めようとすることは理に適っている。しかし、私たちが注目したのは、もちろんそのソフトウェア面での取り組みだ。

というのも、Brexは最近、年間約600ドル(約6万5400円)のソフトウェアサービスパッケージであるBrex Premium(ブレックス・プレミアム)を展開しているからだ。BrexとRampやDivvyなどのライバル企業たちは、従来のコーポレートカード製品の周囲に、ますます洗練されたソフトウェアを構築するために、特に最近多くのエネルギーと資金を費やしてきた。その結果、そうしたコードベースが、経費精算ソフトなどの他のエンタープライズソフトウェアを置き換えることができるようになってきている。

しかし、Brexが有料であるBrex Premiumを広告でアピールする一方で(ドゥボグラス氏は当初の予想よりも数字が良いという)、競合他社のRampは、その無料ソフトウェアを前面に立ててアピールしている。

RampのCEOで共同創業者のEric Glyman(エリック・グリマン)氏は、The Exchangeに対して、同社のゼロコスト・ソフトウェアを強調した新しい価格紹介のページを示した。そして、彼はこの新しいページが「これまでで最速の成長を遂げた月の原動力となっています」と電子メールで述べている。

広い視点で眺めると、Ramp、Brex、Divvy、そしてAirbase(エアベース)などの競合企業たちを見ていると、古くなった企業の問題を、より軽快で低コストの製品で解決しようとしているスタートアップの集団がいることがわかる。そしてその動きの中で、これまでとは違い、より良いものが必要とされている、未開拓の大きな需要があることが証明された。もしそうでないなら、企業支出の世界でスタートアップの王座を争うさまざまなプレイヤーたちが、ここまで急速に成長することはないだろう。

もっと詳しく知りたい場合は、DivvyとBill.comの取引についての記事がある

さらにスタートアップランドから

今週のExchangeは先週SPAC大忙しだったため、本来であればより掘り下げたいような興味深いニュースの数々を見逃してしまった。ここでは、もっと深く掘り下げられたらきっと面白かったであろう、極めて優れたベンチャーのラウンドをご紹介する。

  • ProducePay(プロデュースペイ)は、シリーズCで4300万ドル(約46億8000万円)を調達した。LAを拠点とするProducePayは、食糧生産者が資本、ソフトウェア、市場データにアクセスすることを支援し、食品購買者(輸入業者など)と結びつける。ProducePayのウェブサイトによれば、ProducePayは、メキシコのバージョ州で、労働者の雇用と栽培事業への投資のために、アスパラガスを栽培している企業に50万ドル(約5447万円)の資金を提供した。同社によれば、返済は作物が出荷された時点から開始される。
  • 農業は大変で、不確実さが多く、お金がかかり、従来の銀行の要求とは必ずしも一致しない。さらに、食糧の生産と消費のネットワークがますますグローバル化していることを考慮すれば、G2VPとIFCが共同でこのラウンドを主導した理由がわかる。
  • そうそう、ProducePayが報告した2020年の収益は、GAAPベースの収益額で倍増したようだ。このスタートアップの粗利益率は「引受方針の改善と、取引量拡大にともなう魅力的な資金コストのおかげで、2019年から2020年にかけて75%以上成長しました」と同社のPRチームは述べている。とてもクールな話だ。

先週調達を行ったまた別のすばらしい企業がPanther(パンサー)だ。調達額は250万ドル(約2億7000万円)である。Pantherが支援するのは、160カ国にまたがる企業採用だ。この会社と今回のラウンドに対する私たちの見方は、この先リモートファーストを推進する企業が増えれば、このようなサービスは必須となるだろうというものだ。またGusto(ガスト)も同じ市場で競合している。ということで、VCM&Aの両方の観点から注目を続けたい。

Pantherはフロリダを拠点としており、リリースによると「Tribe Capital、Eric Ries、Naval Ravikant、Carta Ventures」から資金を調達したとのことだ。

ラウンドをもう1つ。フリーランスに特化したネオバンクであるLance(ランス)は、先週280万ドル(約3億1000万円)を調達した。同社によれば、今回のラウンドは、Barclays、BDMI、Great Oaks Capital、Imagination Capital、Techstars、DFJ Frontier、New York Venture Partnersが主導し、数名のエンジェルが参加している。

フィンテックの世界では、Chime(チャイム)をはじめとする幅広い扱いを行うネオバンクが誕生しており、よりターゲットを絞った取り組みが行われても不思議ではない。さらにLanceのCEOであるOona Rokyta(オーナ・ロキタ)氏は、フリーランスの世界がさらに拡大することを確信している。ここ数年の労働市場の変化を考えると、彼女は賢明な賭けをしているとあえて言っても良いだろう。

今回の締めくくりとして、Alpaca(アルパカ)について簡単にご紹介しよう。TechCrunchもこれまでに、こちらや、こちらで取り上げているスタートアップだ。取り上げた理由は、API配信サービスへの私たちの関心(オンデマンドの価格設定がホットな話題となっている)にマッチすることと、消費者向けフィンテックの世界(他社の株式取引サービスを支えている)に存在している、という両方の性質を備えているからだ。今回CEOのYoshi Yokokawa(ヨシ・ヨコカワ)氏にインタビューを行い、前回成長率について尋ねたとき以降の、同社の状況について話を聞いた。

結局のところ、2020年位から見られた世界的な貯蓄 / 投資ブームの中では、消費者投資の世界について学べることは何でも(そしてRobinhoodは先週かなり多くのことを教えてくれたが)有用なのだ。

ヨコカワ氏によれば、Alpacaは今後数カ月のうちにいくつかの大陸で新しいパートナーと一緒に展開を行うなどの、グローバルな計画を持っている。同社は米国以外の地域で、毎日1000件の新規アカウントを取り扱っており、ヨコカワ氏は今後数カ月でそれが急激に増加すると予想している。また最近では、パートナー企業がユーザーをより簡単に登録できるようにする、ブローカーAPIを構築した。

私たちには成長しているように思える。さらなるミルク、もとい情報がAlpacaから得られたらお知らせする。

カテゴリー:VC / エンジェル
タグ:The TechCrunch Exchange資金調達

画像クレジット:Nigel Sussman

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(文:Alex Wilhelm、翻訳:sako)

いまビッグテックの評価額はあまりにも大きくて、驚くことさえ忘れてしまう

スタートアップとマーケットの週刊ニュースレター「The TechCrunch Exchange」へようこそ。準備OK?ここではお金の話、スタートアップの話、IPOの噂話などをお伝えする。

TechCrunch は、公開市場には力を注いではいない。注目しているのはスタートアップだ。しかし、公開テック企業たちは、時に、より広い範囲のテクノロジー市場がどのように機能しているかに関する、興味深い洞察を提供することができる。だから私たちは、すでにIPOにたどり着いた「元」スタートアップたちにも、MVA(最小実行可能注意)と呼べる程度の注意を向けている。

そこで、ビッグテックたちの登場だ。米国では、その名前はよく知られている。Facebook(フェイスブック)、Alphabet(アルファベット)、Microsoft(マイクロソフト)、Apple(アップル)、Amazon(アマゾン)だ。そして、2021年第1四半期の市場にスタートアップたちの成長が熱かったことを示す一連の結果の中で、ビッグテックたちも 同様に驚異的な結果を残した。彼らの結果に関する私たちの報告はここここで読むことができるが、それはストーリーのほんの一部に過ぎない。

ご存知の通り、ビッグテックの業績は良好だった ── まあここしばらくはずっとそうだったのだが ── しかし、いつものような決算の数字が氾濫する中で、ビッグテックの最近の業績がいかに評価額に衝撃的な貢献しているのかということが忘れられていた。

Microsoftの2020年3月の株価は、1株あたり135ドル(約1万4800円)程度まで下落した。それが今は252ドル(約2万7500円)の価値があり、さらに上昇へ向かっている。同様にAlphabetは1株あたり1070ドル(約11万7000円)程度まで下がったが、現在、検索の巨人は1株あたり2410ドル(約26万3400円)の価値となっている。

巨大な株価評価の結果として、現在Appleが2.21兆ドル(約241兆6億円)、Microsoftは1.88兆ドル(約205兆5000億円)、Amazonは1.76兆ドル(約192兆4000億円)、Alphabetは1.60兆ドル(約174兆9000億円)、Facebookは0.93兆ドル(約101兆6000億円)の価値がある。5社を合わせると8.4兆ドル(約918兆1000億円)くらいだ。

2017の7月を振り返ってみよう、私はそのとき、彼らの総計額が3兆ドルに達したことを書いている。それが2018年半ばには4兆ドルになって 、そして、その後3年かそこらで、それは再び倍以上になったのだ。

何故だろう?

Yahoo FinanceのMyles Udland(マイルス・ウランド)記者は、そのパズルの一部について先週記事を書いている。ウランド記者の記事より:

そして、ほぼすべての収益のストーリーがこの同じ筋に従っているようにみえるが、データもまたこれが私たちの単なる想像ではないことを裏付けている。これまでの企業の収益はこうした期待値から大きく外れては来なかった。

木曜日(米国時間4月29日)に発表されたRefinitivからのデータは、企業が推定値を打ち破った割合を示したが、木曜日の朝までに判明した結果が、期待を上回った規模は記録的なものだったのだ。

つまり各社の収益は、巷の予測をより頻繁に、そしてより大きな差をつけて、これまで以上に裏切っているというのだろうか?そうだとすれば、最近の株式市場評価に対する懸念は減るものと思われる。そしてそれは、なぜスタートアップたちがヨーロッパ同様に、最近米国でも多額の資金を調達できたのか、なぜ非公開市場の投資家がフィンテックスタートアップに多くの資金を注いでいるのかの理由を説明するのに役立つ。そしてそれがおそらく、Zomatoが公開に向かい、私たちがロビンフッドの公開を心待ちにしている理由だ。

これはまるで、市場に参加している企業たちが、絶好調であるかのような現象だ。ただし、終わらないビジネスサイクルはないし、永遠に続くブームもないことは忘れないように。

インシュアテックの状況

さて、フィンテックの資金調達に関するThe Exchangeの最近の記事や、先々週のインシュアテックスタートアップラウンドに関するまとめ記事に加えて、より大きなフィンテック業界の一部として眺めることができる、インシュアテックのスタートアップニッチに関していくつかのメモをお届けしよう。

今回私たちは、Accel(アクセル)のJohn Locke(ジョン・ロック)氏から、最近さらに増資を行ったThe Zebra(ゼブラ)への投資と、インシュアテック業界についての話を聞いた。

私たちはZebraのようなインシュアテックマーケットプレイスが、2020年非常に多くの資金を調達できた理由を質問した。ロック氏によれば、それは「保険会社たちが[…]ついに市場を受け入れ、市場と統合された消費者体験をデザインする意思がある」こと「比較ショッピング」をおこなう消費者が増えたこと、そして成長と収益の質の組み合わせによるものだという。

ロック氏によると、Zebraは「売上は1億2000万ドル(約131億2000万円)以上で、100%以上の成長を続けています」とのことだ。つまり、その気になれば、いつでも公開できるということだ。

しかし、その点についていえば、公開保険会社のなかには株式市場で弱みを見せているものもいくつかあった。ロック氏はそれを懸念しているだろうか?彼は中立から前向きな姿勢であり、彼の会社は「市場のすべての企業がうまく行くとは考えていないが、それでも『インシュアテック』が、今後10年間は既存勢力から市場シェアを奪い続けるだろうと考えている」という。もっともな意見だ。

そしてAccelは、他社同様に、この分野でさらに多くの取引を検討している。ロック氏は、2021年のインシュアテック投資のベンチャー市場は、2020年よりも「間違いなく積極的です」と語った。

その他のことなど

最後に、私たちが取り上げて来なかったことに関するいくつかのメモを:

  • まず、Productboard(プロダクトボード)が7200万ドル(約78億7000万円)のシリーズCを終了した。なによりまず、それは巨大なラウンドだ。第2に、ご想像通り、その取引を主導したのはTigerだ。第3に、この製品管理ソフトウェア会社(Productboard)は現在、約4000の顧客を擁している。それは大きな数だ。この会社を「これから2年以内にIPOを行う会社リスト」に追加しておいて欲しい。
  • 中国の自転車シェアリングスタートアップHello(ハロー)が米国で公開される。米国時間5月3日に、またこの話題に戻るつもりだが、そのF-1申請書類はここにある。2020年の売上高は9億2630万ドル(約1012億4000万円)となり、売上総利益は1億960万ドル(約119億8000万円)になった、これにより、これまでの累積純損失は1億737万ドル(約189億9000万円)となった。びっくりだ。
  • 先週はDarktrace(ダークトレース)が公開された。私がその会社を知っているのは、私が好きなF1チームのスポンサーだからだが、ついに英国上場企業として私たちの世界にも登場した。そして、Deliveroo(デリバルー)が成功したあと、Darktraceの上場の驚異的な成功によって、英国は1週間前よりもさらに魅力的な上場場所になる可能性がある。
  • そして。ついにドローン配達時代やってくるのだろうか?英国で上場しているベンチャーキャピタルグループDraper Espritが、Manna(マンナ)の2500万ドルのラウンドを主導した。Mannaはアイルランドで無人ドローンを使った食事配達を行おうとしている。「Mannaは、より環境に配慮し、より静かで、より安全で、かつより迅速な配送サービスを貪欲に追求しています」とUKTNが書いている

長く奇妙な1週間だった。さて最後にThe Exchange執筆チームの2人目のメンバーであるAnna Heim(アンナ・ハイム)記者のフォローをお願いしておきたい。オーケー!ではまた来週!

カテゴリー:VC / エンジェル
タグ:The TechCrunch Exchange保険株価

画像クレジット:Nigel Sussman

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(文:Alex Wilhelm、翻訳:sako)