ロシアYandexがYandex SDGなどのUberの持ち株を1102億円で買収、4事業を完全に所有

ロシアのインターネットおよび配車サービス大手のYandex(ヤンデックス)は、Uber(ウーバー)が保有するYandex Self-Driving Group(SDG、セルフドライビンググループ)の株式、およびUberが間接的に保有するYandex.Eats(ヤンデックスイーツ)、Yandex.Lavka(ヤンデックスラブカ)、Yandex.Delivery(ヤンデックスデリバリー)の株式を取得した。買収総額は10億ドル(約1102億円)で、Yandexが4つの事業を完全に所有することになる。

Yandex SDGとは、Yandexが2018年にYandex.Taxi(ヤンデックスタクシー)とUberのロシア事業を統合する形でUberと共同で設立した、配車サービスとフードデリバリーのジョイントベンチャー(JV)であるMLU B.V.から自動運転の技術をスピンアウトした企業だ。その当時、Uberは新会社MLU B.V.に36.6%の出資を行っていた。2020年SDGが分離独立したときには、Uberはその18.2%の株式を保有することになったが。この持ち分が今回Yandexに買われたということになる。またYandexは、Uberが保有していたYandexのフードデリバリーサービス、ラストマイル物流サービス、15分コンビニエンスストア配送サービスの、合わせて33.5%の持分を買い取った。

関連記事:ロシアYandexがUberとのJVから自動運転事業をスピンアウト、159億円を新会社に投資

2019年当時にYandexとUberは、モルガン・スタンレーが約77億ドル(約8484億円)の価値があると見積もっていたMLUのIPOを検討していると報じられていた。Yandexは、自動運転技術のことを「配車サービス、eコマース、フードテック事業を含むYandexのエコシステムとの相乗効果が高い技術です」と評価している。よってYandexが、その成長可能性のすべてをコントロールしたいと考えるのは自然な話だ。2021年の第2四半期に、EBITDA前5億900万ドル(約560億7000万円)の損失を計上したUberは、有利なエグジットを求め、より身近なところに優先順位を置き直そうとしているのかもしれない。

関連記事:Uberがドライバーへのインセンティブ支払いによる第2四半期の赤字からの業績回復を計画

Yandexの広報担当者は「今回の買収により、Yandexは自動運転技術に対する戦略的管理能力と柔軟性をさらに高めることができます」とTechCrunchに語っている。「このことは、YandexとYandex SDGの両者にさらなる成長の可能性をもたらし、株主のみなさまに新たな価値をご提供することができるでしょう」。

今回の買収は、MLU B.V.とYandex SDGの合弁会社の大規模な再編の一環であるということが、月曜日(米国時間8月30日)にUberがSECに提出した書類に記載されている。それらは2段階で行われる予定だ。第3四半期末までに完了する予定の第1段階では、Yandexは、新たに再編されて配車サービスやカーシェアリングなどのモビリティ事業に注力する予定のMLUの4.5%の株式を新たに取得することになる。これにより、YandexはMLUの合計71%を所有することになるが、そのうち2.8%は従業員の株式報奨制度のために確保されている。また、Uberが保有していたSDGの株式18.2%も第1段階で売却される予定だ。

そして年内に完了する予定の第2段階には、Yandex.Eats、Yandex.Lavka、Yandex.DeliveryのMLUからの分離と、それに続くこれらの事業に対するUberの持分の取得が含まれている。

Yandexは、Uberが保有するMLUの残りの持分を、合意された範囲内での増額が織り込まれたおよそ18億ドル(約1983億円)程度の、期限2年の米国型(期限内にいつでも行使可)コールオプションとして受けとることも決めている。この数字は、もし2023年に行使されれば20億ドル(約2203億円)にまで増加する。またYandexは、2030年8月まで、ロシアおよびその他の国でUberブランドを独占的に使用する。

Yandexは、ロシアおよびその他の一部の国におけるUberブランドの独占的使用権に関する現行ライセンスを、オプションの行使を前提に2030年8月まで延長する予定なのだ。Yandexの株価は、火曜日(米国時間8月31日)の市場終了時に5.16%上昇した。

関連記事:ロシアYandexの自動運転部門がGrubHubと提携、米国の大学キャンパスにロボット配達を展開

画像クレジット:Alexander RyuminTASS/Getty Images/Getty Images

原文へ

(文:Rebecca Bellan、翻訳:sako)

ギグワーカーを非従業員とするカリフォルニアの条例Prop 22を高裁が憲法違反と判決

UberやLyftなどギグワーカーを軸とする企業に米国時間8月20日の夜遅くショックが訪れた。高等裁判所の判事が、2020年に成立してギグワーカーの雇用ステータスに対する論争の多かったAB-5法を、否定する目的で成立させたカリフォルニア州第22条令(Prop 22)は州の憲法に違反していると裁定した。

関連記事:ギグワーカーの権利を護る法案がカリフォルニア州上院を通過

オークランドやバークリーなどイーストベイの多くをカバーするアラミダ郡の高裁判事Frank Roesch(フランク・ローシュ)氏は「その法(Prop 22)が、将来の議会がギグワーカーの雇用ステータスを定義する力を制限する」と裁定した。この訴訟は2021年1月にService Employees International Union(SEIU)(サービス業被雇用者国際組合)が起こし、同様の訴訟がフォルニア州最高裁で却下されてから下級審へ回されたものだ。

この法廷の決定はほぼ確実に控訴されるであろうし、今後の法的議論が当然あるだろう。

しかしSEIUのカリフォルニア州評議会の議長Bob Schoonover(ボブ・スクーノーバー)氏は、声明で次のように述べている。「ローシュ判事によるProp 22を無効とする本日の裁定は極めて明確である。ギグ業界が金で買った住民投票は憲法違反であり、したがって施行不可能である。2年にわたりドライバーたちは、民主主義は金で買えないと言い続けてきた。そして本日の判決は、彼らが正しかったことを示している」。

高裁の判決は、UberやDoorDashのようにギグワーカーに大きく依存している企業と、労働者を代表する組合や活動家との間の戦いの、勝ちと敗けの長い々々列の最新のひとコマにすぎない。その議論の中心にあるのは、フリーランサーと従業員との法的な区別であり、それぞれのワーカーに対して企業はどの程度の福利厚生の責任を負うか、という点だ。

その区別がビッグビジネスになっている。UberやLyftなどの企業は2020年Prop 22を勝ち取るために、総額で2億ドル(約220億円)あまりを費消した。カリフォルニアの有権者はその条例を、ほぼ59%対41%で通過させたが、それはギグワーカープラットフォームの大勝利と多くの人びとが受け止めている。

しかしこのような戦いはシリコンバレーの本拠地である州だけの現象ではない。2021年初めに英国では、Uberが従業員の位置づけをめぐる法廷闘争で負けて、その数万人のドライバーが労働者と見なされた。そしてその判決により彼らには、それまで保証されなかった多様な福利厚生が提供された。

画像クレジット:ejs9 / Getty Images / Getty Images

原文へ

(文:Danny Crichton、翻訳:Hiroshi Iwatani)

Uberがドライバーへのインセンティブ支払いによる第2四半期の赤字からの業績回復を計画

Uber(ウーバー)は第2四半期に予想を上回る損失を計上した。パンデミックによるドライバー不足を解消するため、4月に2億5000万ドル(約275億円)の大規模な刺激策を実施したことが大きな要因だ。

調整後EBITDAは5億900万ドル(約560億円)の損失だった。一方、Lyft(リフト)は前日、当四半期の調整後EBITDAを2380万ドル(約26億円)の黒字で計上した。Uberの損失は、アプリベースの配車業界が抱えるより大きな問題を指し示している。それは、ドライバー供給の遅延、ドライバーを集めるためのコスト、迫り来る新型コロナウイルスのデルタ変異株という3つの脅威だ。

関連記事
Uberがコロナ収束後のドライバー不足対策で総額約274億円の報奨金を用意
Uberの第2四半期は配車、配達事業の売上高は成長するも赤字幅は拡大
Lyftが調整後EBITDAで初の黒字を達成、事業がコロナ打撃からリバウンド

「ドライバーたちが道路に戻りたいと思う気持ちは強くなっています」とCEOのDara Khosrowshahi(ダラ・コスロシャヒ)氏は、米国時間8月4日の決算会見で述べた。「6月には、活動休止中のドライバーの60%が、1カ月以内に運転を再開するつもりだと回答しました。4月の40%から増加しました。また、90%のドライバーが9月までに運転を再開すると回答しています。さまざまな指標が複数の市場で上昇しながら通常の水準へと回復し、マイアミ、アトランタ、ダラス、ヒューストン、フェニックスでは待ち時間がほぼ正常に戻りました。しかし、ニューヨーク、サンフランシスコ、ロサンゼルスなどの大都市では需要が供給を上回る状態が続いており、遅い時間帯の価格は快適な水準を超えています」。

コスロシャヒ氏は、Uberがドライバーに対する「ポスト・パンデミック」のインセンティブを縮小したとしても、ここ数カ月で回復してきたドライバーの勢いは続くと予想していると語った。だが問題は、パンデミックはまだ終わっていないということだ。米国でのワクチン完全接種は人口の50%にとどまる。CDC(米疾病予防管理センター)によると、7月の最後の2週間で、感染力の高いデルタ型が米国内の新型コロナ感染者の80〜87%を占めた。多くのコンピュータモデルは、8月中旬〜9月上旬に感染者数がピークに達し、1日あたりの感染者数が45万人に達すると予測している。

ドライバー不足の原因はロックダウンだけではない。ドライバーらは、微々たる報酬で、パンデミック中に命をかけてまで働きたくないと考えている。Uberが損失を出しながらもドライバーを増やそうとしているのは、Uberがギグワーカーの働く権利を脅かす存在として再び注目されているからだ。Uberは、アプリベースの配車やオンデマンド配送を行う企業連合の一員であり、マサチューセッツ州で今週、ドライバーを従業員ではなく独立した契約者であると定義する投票法案を通すための請願書を提出した。2020年のカリフォルニア州での提案22号と同じことが起こっている。

2013年から運転しているジェイというUberのドライバーはTechCrunchに「私は、人を呼び戻すために使われたインセンティブを受け取りました。脳みそがあるドライバーならほとんどが同じことをしたと思います」と語った。「インセンティブがなくなったところで私は運転をやめました。今や運転をすれば持ち出しになってしまうからです。Uberが料率を大幅に引き下げたので、もはやUberで働くことは意味をなしません。Uberの車をつかまえるのが難しい理由はここにあります。途方もなく遠い存在である億万長者たちが、この会社を潰しつつあるのです」。

こうした状況にもかかわらず、コスロシャヒ氏は、同氏はおそらくジェイ氏がいう「遠い存在である億万長者」の1人だと思われるが、Uberが年内に会社としてEBITDA黒字化を達成する見込みだと投資家に請け合った。同社は「働き手の体験」と呼ぶものへの投資が、労働者のつなぎ留めに役立つと期待している。

「アプリの品質向上に力を注ぐことから、ターゲットを絞り個々人にあわせた関係再構築キャンペーン、安全に稼ぐという目的のためにこれまで以上に簡単かつ迅速になったオンボーディングフローの全面的な再設計、ロゼッタストーンを利用した無料の語学学習、ASU(アリゾナ州立大学)を授業料無料で利用できることなどのユニークなプログラムの展開まで、当社が提供する働き手のためのスーパーアプリは、世界中のドライバーや宅配業者に提供できる収益機会の深さと幅広さにおいて独自性があります」とコスロシャヒ氏は話す。

豪州のシドニーなどの都市での最近のロックダウンのように移動手段が打撃を受け続けることになっても、Uberは貨物、Uber Eats、宅配便などの他の事業に頼ることができるとコスロシャヒ氏は語る。同氏によると、乗車数が減るとUber Eatsや宅配便の注文が増える傾向にあるという。

Uberは2020年11月、オンラインフードデリバリーアプリのPostmates(ポストメイツ)を買収した。同社によると、買収により約500万人の利用者が加わり、16万人の宅配業者と2万5000以上の加盟店がPostmatesからUber Eatsに移行した他、ロサンゼルスとニューヨークでUberがカテゴリーリーダーとしての地位を確立するのに役立ったという。

関連記事:UberがフードデリバリーPostmatesの買収を完了

また、Uberは最近、食料品、コンビニエンス、アルコール類の配達など、新たな分野にも進出しており、6月の米国でのグロスブッキング(予約総額)は2020年12月の水準から約3倍、英国とフランスでは2倍に増加した。

「私たちが持っている差別化要因はオーディエンスとUberプラットフォームです」とコスロシャヒ氏は述べる。「私たちは、Uberブランド、マーケットプレイスマッチング技術、価格設定技術、ルーティングなどを基盤にデリバリー事業を立ち上げた、最も新しいプレイヤーの1社です。【略】私たちは、他の誰よりも大きなデータセットを持ちあわせています。これにより、マッチング、ルーティング、インセンティブ、マーケティングなど、より個々人に合わせたエンジンを構築することができますし、他の誰よりも優れた機能を備えています」。

「Uberはすべての市場にオペレーションチームを配置しているため、市場ごとに適切な在庫を把握することができます」と同氏は語る。

「その結果、顧客獲得コストの削減、ライフタイムバリューの向上、間接費の削減、技術力の向上が可能になります。これらが差別化につながるのです」。

第4四半期までにEBITDAの目標を達成することに加え、コスロシャヒ氏によると、Uberは会社全体のグロスブッキングが220億〜240億ドル(約2兆4200億円〜2兆6400億円)となり、調整後EBITDAは第3四半期の1億ドル(約110億円)の損失から改善すると見込んでいる。

カテゴリー:シェアリングエコノミー
タグ:Uber新型コロナウイルス労働問題

画像クレジット:Bloomberg / Contributor / Getty Images

原文へ

(文:Rebecca Bellan、翻訳:Nariko Mizoguchi

Uberの第2四半期は配車、配達事業の売上高は成長するも赤字幅は拡大

Uber(ウーバー)は米国時間8月4日、取引開始直後に第2四半期決算を発表した。前日には米国内でのライバルであるLyft(リフト)も同期決算を明らかにしていた

Lyftが調整後EBITDAで黒字をなんとか達成した一方で、Uberはそうではなかったのは注目に値する。しかしUberはDidiやAurora Innovationなど他社への投資のおかげで第2四半期に11億4000万ドル(約1250億円)の純利益を生み出した。

上から順に、Uberのグロスブッキング(取扱高)は計219億ドル(約2兆4015億円)で、前年同期に比べて114%増えた。売上高におけるグロスプラットフォーム支出は39億3000万ドル(約4310億円)となり、前年同期の19億1000万ドル(約2090億円)から105%増となった。

第2四半期の業績は、Uberが税引前で黒字化を達成するという目標に向けて順調に歩むに足るもので、決算発表によると、同社は第4四半期までに調整後EBITDAで黒字を繰り返す。

Yahoo Financeが集めたデータによると、アナリストはUberの売上高を37億4000万ドル(約4100億円)、1株あたり利益はマイナス0.51ドル(約55円)と予想していた。売上高はアナリスト予想を上回ったものの、調整後EBITDA損失額は予想よりも大きくなった。アナリストは、調整後EBITDAで3億2450万ドル(約355億円)の赤字を予想していたが、実際には5億900万ドル(約560億円)の赤字だった。

Uberの株価は時間外取引で8%超下落した。その後は持ち直したが、それでも6%超落ち込んでいる。

Uberの各事業の取扱高に目を向けると、配車部門は第2四半期にこれまでで最大の伸びとなる前年同期比184%増の88億4000万ドル(約9690億円)だった。取扱高全体のかなりの部分を占める配達部門は同85%増の129億1000万ドル(約1兆4155億円)だった。

消費者支出額で大きな差があったにもかかわらず、配達部門の取扱高における売上高の割合は配車部門のものよりも少なくなり、売上高は配達部門が19億6000万ドル(約2150億円)、配車部門が16億2000万ドル(約1780億円)だった。

Uberの中で最も売上高が少ないFreightは前年同期比64%成長し、3億4800万ドル(約380億円)だった。小規模ではあるが、同社はFreight部門をを拡大し、2022年末までに調整後EBITDAベースで収支が合うようにするための手段として戦略的買収や提携を行ってきた。

Uber Freightは7月にプライベートエクイティグループTPG Capitalから22億5000万ドル(約2470億円)でTransplaceを買収した。この取引にはUber株での7億5000万ドル(約820億円)が含まれ、残りは現金で支払われた。

Uberの主要事業である配車事業と配達事業はいずれも黒字ではなく、Uberを調整後の赤字から救うことはできなかった。しかし、同社の配車事業は調整後EBITDAで2020年同期を下回ったものの1億7900万ドル(約200億円)の黒字を達成した。その一方で、配達事業は調整後EBITDAで1億6100万ドル(約180億円)の損失と、またも赤字となった。

Uberの配車事業の調整後EBITDAは、同社の未割り当て費用に比べればわずかなものだ。調整後EBITDAは5億900万ドル(約560億円)の赤字で、赤字幅は前年同期から39%縮小した。それでも収支が合うようになるまでの道のりは長い。

しかしUberの第2四半期には、他からの収入という点で特筆すべきものがあった。同社の11億9000万ドル(約1300億円)という営業損失は、19億3000万ドル(約2115億円)もの営業外収入でかなり改善した。営業外収入の大半は、Didiへの投資での14億ドル(約1535億円)の含み益、Aurora Investmentsへの投資での4億7100万ドル(約520億円)の含み益など、計19億1000万ドル(約2090億円)が「債券と持株」からのものだっった。

Didiは第2四半期に上場した。

地域別業績に目を向けると、Uberの事業が最も早く立ち直ったのはAPAC(アジア・太平洋)地域で、同地域の売上高は前年同期の2億1700万ドル(約240億円)から227%増加し、7億900万ドル(約780億円)に達した。次いでEMEA(欧州・中東・アフリカ)地域の成長幅が大きく、売上高は前年同期の3億5800万ドル(約390億円)から159%増の9億2900万ドル(約1020億円)となった。米国とカナダの売上高は前年同期の11億3000万ドル(約1240億円)から76%増の19億8000万ドル(約2170億円)で、南米はより控えめな44%成長だった。

関連記事
Lyftが調整後EBITDAで初の黒字を達成、事業がコロナ打撃からリバウンド

カテゴリー:シェアリングエコノミー
タグ:Uber決算発表配送

画像クレジット:JOSH EDELSON/AFP / Getty Images

原文へ

(文:Alex Wilhelm、Kirsten Korosec、翻訳:Nariko Mizoguchi

ギグカンパニーが労働者の身分をめぐりマサチューセッツ州でも住民投票を画策

LyftやUber、Doordash、Instacartなど、アプリによるライドシェアやデリバリーのサービスを提供している企業の連合が、住民投票でギグエコノミーの労働者を独立の契約業者と認めるよう、マサチューセッツ州に請願を提出した。これまで同業界は、カリフォルニア州で同様の住民投票を主導して、勝った経験がある。

その連合の正式名であるMassachusetts Coalition for Independent Work(マサチューセッツ州独立労働連合)が今回住民投票を提案したその約1年前には、労働者の権利を擁護する団体とギグエコノミーの企業が対立し、業界側が数百万ドル(数億円)を投じた高価な宣伝活動により、カリフォルニアの有権者は、Proposition 22と呼ばれる同様の住民投票により、業界の主張を認めた

関連記事:カリフォルニア州でのギガワーカー法案通過を見込んでUberとLyftの株価が高騰

LyftやUberなどからなるこの連合のメンバーには、地元各地の商工会議所も含まれ、彼らは米国時間8月3日に、2022年11月に行われる州政府選挙に住民投票の可否が含まれることを要求した。投票にかけられる質問は司法の審査を要し、また住民投票が政府選挙に含めること自体も、有権者の十分な数の賛成票を要する。

8月3日に行われたLyftの決算報告で、共同創業者のJohn Zimmer(ジョン・ジマー)氏は次のように述べている。「私たちの第1目標は、マサチューセッツ州で合法的な解決を見出すことです。私たちが一貫して主張してきたことは、圧倒的多数のドライバーが求めていることでもあり、それは私たちのプラットフォームが提供してきた柔軟性のある所得機会、それ加えて福利厚生です。また私たちは住民投票という方法を求めるだけでなく、マサチューセッツ州議会と緊密に協力して、法律に基づく解決も求めていきたい」。

同連合によると、提案されている住民投票の質問は、アプリを用いるライドシェアやデリバリーのワーカーを独立の契約労働者としながらも、健康保険料の給付など、新たな福利厚生を提供するものになっている。

連合の提案の中には、ドライバーやデリバリー労働者の最低賃金をマサチューセッツ州の最低賃金(同種のアプリベースの労働に対し2023年に、チップを除き時給18ドル、約1960円)の120%であったり、週の労働時間が15時間以上のドライバーへの健康保険料給付などがある。これらの計算にチップは含まれず、チップは全額ドライバーのものになる。また車の維持費や燃料費として走行距離1マイルにつき0.26ドル(約28.35円)以上が保証される。

労働運動家たちは、早くも反発している。NAACPニューイングランド支部やマイノリティ近隣社会組合、マサチューセッツ州移民難民連合など、さまざまな団体からなるCoalition to Protect Workers’ Rights(労働者の権利保護連盟)は8月3日に、住民投票方式には労働者を傷つける問題の文言があると反論した。

同団体によると、それらの文言には抜け穴が多いため実質賃金が最低賃金を下回ることが可能であり、また健康保険の内容が極めて貧弱である。さらにまた、反差別主義者に対する保護が取り去られたり、労働者の補償規則が排除されたり、また企業が何億項にものぼる州の失業対策をごまかすこともありうるという。

UberやLyftを軸とするこの幅広い連合は、労働者の独立契約業者化に関して、住民投票や法制化をロビー活動しているが、同時にまた、2020年提出された訴訟にも直面している。その原告であるマサチューセッツ州司法長官Maura Healey(マウラ・ヒーリー)氏は、賃金と労働時間に関する複数の州法に基づき、UberとLyftのドライバーは会社の従業員(被雇用者)である、と主張した。

州の司法長官事務所によると、UberとLyftは、ドライバーを独立の契約業者と認めるために必要な、州法が定める3つの要件を満たしていない。1つは、独立の契約事業者であるためには労働者は会社の指示やコントロールから自由でなければならない。ビジネスの通常のコースから外れたサービスでも実行できる。そして、同様の仕事を自分自身でやっていてもよい。

Uberは2020年以来、カリフォルニア州のProposition 22に似た州法をマサチューセッツ州でも成立させたい、と匂わせていた。UberのCEO、Dara Khosrowshahi氏は2020年の11月の決算報告で、アナリストたちとともに、同社は「Prop22のような法律を強力に推していく」と言明した。その後彼は「米国と世界のすべての政府と協力してこれを実現したい」と付言した。

関連記事
ギグワーカーやクリエイターに金融サービスとしての福利厚生を提供するCatch
【コラム】21世紀型の搾取となっている「ギグエコノミー」
バイデン政権の労働長官はギグワーカーを従業員待遇にすべきと考えている

カテゴリー:シェアリングエコノミー
タグ:マサチューセッツギグワーカーギグエコノミー労働LyftUberDoordashInstacartProposition 22

画像クレジット:Al Seib/Los Angeles Times/Getty Images

原文へ

(文:Kirsten Korosec、翻訳:Hiroshi Iwatani)

UberがドライバーにRosetta Stoneの語学レッスンを無料で提供へ

Uber(ウーバー)は、配車を依頼するときに顧客が時々直面する言葉の壁をなくしたいと考えている。同社はDriverアプリを通じた無料の語学レッスンを提供するためにRosetta Stone(ロゼッタストーン)と提携したとThe Vergeが報じている。UberとUber EatsのドライバーはRosetta Stoneの24言語から選んで学習するのにこの機能を使うことができる。配車に関するよくあるシナリオのためにつくられた教材も利用できる。

この語学レッスンを利用するには、ドライバーは対象の国(北米・南米の大半、英国、インド、スペイン)でゴールド、プラチナ、ダイアモンドいずれかのステータスに達している必要がある。

語学レッスンは、他のキャリアイニシアティブとともに導入される。一部の国のドライバーは求職活動に使える成績証書をリクエストできる。

Uberは語学レッスンとキャリアイニシアティブについての論拠を公にしてきた。同社のドライバーの多くは移民か(ローカルの言語に通じていないことが多い)、言語とライドシェアの仕事をチャンスを広げるための鍵としてとらえている。Uberは、同社のサービスのための運転はキャリアパス上の「一時的な立ち寄り」にすぎないかもしれないことに気づいている。一時的な立ち寄りで労働者はワンランク上のステージに進むための良いチャンスを手にする。

Uberにとっては実用的なメリットがある。同社のドライバーがより多くの言語を話すほど、そうしたドライバーは高評価のレーティングを獲得しやすくなり、取引増につながる。キャリア・インセンティブも、より多くのドライバーに、たとえ最終的にドライバー業務をあまり行わないことになったとしても、まずUberに登録しようと思わせるかもしれない。

編集部注:本記事はEngadgetに掲載されている。

カテゴリー:シェアリングエコノミー
タグ:UberRosetta Stone語学学習

画像クレジット:Getty Images

原文へ

(文:Jon Fingas、翻訳:Nariko Mizoguchi

Uber Freightが物流管理ネットワークのTransplaceを約2475億円で買収

規制当局への提出書類によると、2018年にUber(ウーバー)からスピンアウトした物流事業のUber Freight(ウーバー・フレイト)は、プライベート・エクイティ・グループのTPG CapitalからTransplace(トランスプレイス)を約22億5000万ドル(約2475億円)で買収した。7月22日に発表されたこの取引では、7億5000万ドル(約825億円)がUberの株式で、残りは現金で支払われる。

Transplaceの買収はUber Freightの事業増強を象徴する動きだ。同社は既存市場でのシェア獲得とメキシコでの事業拡大を目指している。また、今回の買収は、Uber Freightの収益性向上を加速させ、2022年末までに調整後EBITDAベースでの収支均衡を実現する手段であると考えている。

今回の買収により、貨物の配送を必要とする荷主とトラックドライバーを結びつけるUber Freightのプラットフォームに、最大級の輸送・物流管理ネットワークを組み入れることになる。Uber Freightによると、同社の仲介業務はTransplaceのサービスとは独立して運営を続けるという。

「これは、Uber Freightだけでなく、物流エコシステム全体にとって大きな前進です」と、Uber Freightの責任者であるLior Ron(ライオー・ロン)氏は声明で述べた。「これは、一流企業2社の相互補完的な、業界内で最高クラスの技術ソリューションと卓越したオペレーションを結集し、荷主のサプライチェーン全体を変革し、最も重要な時期にオペレーションの回復力を実現し、コストを削減する業界初の荷主間プラットフォームを構築する機会です」

TransplaceのCEOであるFrank McGuigan(フランク・マクギガン)氏は、買収によって荷主がより高い効率性と透明性を享受できるようになると期待している。「全体として、荷主および輸送業者の空荷を大幅に削減し、高速道路や道路インフラ、環境に利益をもたらすと期待しています」と話した。

Uber Freightは2017年にスタートした。2018年8月には独立した事業部に分離されたが、すぐに勢いを増し、より多くの資金を必要とすることになった。Uberからスピンオフした後、拡大を続けた。Uber Freightはアプリのデザインを変更し、荷物の検索やフィルタリングをカスタマイズしやすくする新しいナビゲーション機能を追加するなどの改善を行った。

Uber Freightはカナダと欧州にも進出し、またシカゴに本社を設置した。これは、数百人の労働者の採用を含め、シカゴ地域に年間2億ドル(約220億円)以上を投資するという親会社の広範な計画の一環だ。Uberは2019年9月に、今後3年間で2000人の従業員を同地域で新たに雇用し、そのほとんどがUber Freightで働くと発表した。

Uberは昨年、貨物事業(Uber Freight)の株式を売却した。同時に、ニューヨークに拠点を置く投資会社Greenbriar Equity Groupが率いる投資家グループが、同事業のシリーズA優先株式による資金調達に対し、5億ドル(約550億円)の投資を約束した。この取引では、ポストマネーベースで同事業が33億ドル(3630億円)と評価された。

UberはUber Freightの過半数の所有権を維持し、Greenbriarから得た資金を使って、トラックドライバーと運送会社との連携を支援する物流プラットフォームの拡大を続ける。

カテゴリー:
タグ:

画像クレジット:Uber Freight

[原文へ]

(文:Kirsten Korosec、翻訳:Nariko Mizoguchi

ウーバーが食料品宅配サービスを全米400以上の市や町に拡大

Uber(ウーバー)が、米国における同社の食料品配送サービスで初となる大規模な拡大を発表した。同社は米国時間7月19日、サービスエリアを従来の倍以上に拡大し、サンフランシスコ、ニューヨーク、ワシントンDCなどの主要都市を含む全米で400以上の市や町に、UberおよびUber Eatsアプリを通じてサービスを提供すると発表した。

この急速な拡大は、Albertsons Companies(アルバートソンズ・カンパニー)との提携と、同社が全米に展開する1200もの食料品店の存在によるところが大きい。Albertsonsは、Safeway(セーフウェイ)、Jewel-Osco(ジュエル・オスコ)、Acme(アクメ)、Tom Thumb(トム・サム)、Randalls(ランドールズ)などのブランドを所有している。また、Uberは、Southeastern Grocers(サウスイースタン・グローサーズ)やニューヨークのRed Apple Group(レッド・アップル・グループ)などの地域チェーンでも配達を行っている。「Uber Pass(ウーバー・パス)」と「Eats Pass(イーツ・パス)」の加入者は、30ドル(約3300円)以上の食料品の注文であれば配送料を支払う必要はない。

新型コロナウイルス感染拡大の最も厳しい時期には、人々の乗車数が大幅に減少したため、食料品の配達がUberの重要なビジネス要素となった。同社はまた、乗車料金の値上げを招くドライバー不足にも対処を迫られている。Uberはここ2、3年の間に、Cornershop(コーナーショップ)、Postmates(ポストメイツ)、Drizly(ドリズリー)など、デリバリー分野のスタートアップ企業をいくつか買収することで、この分野での成長を促進させている。

編集部注:この記事はEngadgetに掲載されている。

関連記事
複数デリバリー・テイクアウトサービスからの注文を一元管理できる飲食店向けSaaS「CAMEL」のtacomsが資金調達
Amazonとライフが生鮮食品の最短2時間配送サービスの対象エリアを千葉県13市・大阪府19市に拡大
インドでUber Eatsを買収したフードデリバリー「Zomato」が1200億円規模のIPO申請

カテゴリー:ネットサービス
タグ:UberフードデリバリーUber Eatsアメリカ

画像クレジット:NurPhoto / Getty Images

原文へ

(文:Kris Holt、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

Uberが中南米の食料品配達スタートアップCornershopを完全子会社化

Uber(ウーバー)は中南米のデリバリースタートアップであるCornershop(コーナーショップ)の全株式を取得した。同社株の過半数を取得してからわずか1年後のことだ。現地時間6月21日、ライドシェアの巨人は規制当局への提出書類で、Cornershopの残る47%の株式をUber株2900万株と引き換えに取得すると語った。契約は2021年7月中に完了する予定。

2019年にUberは、Cornershopの過半数所有権を取得する計画を発表した。実際に契約が完了したのは2020年第3四半期になってからで、メキシコでは2021年1月に完了した。今回6月18日に合意に達し、6月21日に報じられた契約によって、CornershopはUberの完全子会社になる。これはUber-Cornershopの関係における当然の成り行きだと本件に詳しい筋が本誌に語った。

この取り引きは、Uberの拡大志向が衰えていないことを示すものだ。Cornershopを完全子会社化することで、パンデミック下に人気が高まっている食料品デリバリー分野を強化できる。Uberは2020年夏にPostmates(ポストメイツ)を企業価値26億5000万ドル(約2920億円)で買収した後、中南米、カナダ、および米国の一部の都市で食料品配達事業を開始した。UberのCEO、Dara Khosrowshahi(ダラ・コスロシャヒ)氏は声明で、同社の食料品および特定分野事業の年間予測取扱高が30億ドル(約3300億円)を超えたと語った。

「Cornershopのチームとのつながりを深め、世界規模への拡大を目指す同社のビジョンを支援するとを大いに楽しみにしています」と同氏は付け加えた。「両社一体となって、食料品の即日配達を世界中のUberプラットフォームで実現する戦略をいっそう強化していきます」。

Cornershopはチリに拠点を持ち、2015年にOskar Hjertonsson(オスカー・ヘルトンソン)氏、Daniel Undurraga(ダニアル・ウンドゥラガ)氏、Juan Pablo Cuevas(ファン・パブロ・クエバス)氏の3名が共同設立した。同社は事業範囲をチリ、メキシコ、ブラジル、コロンビア、コスタリカ、ペルー、米国、およびカナダの南北8カ国へと拡大した。4回の調達ラウンドを通じて計3170万ドル(約35億円)を調達しており、Accel(アクセス)とJackson Square Ventures(ジャクソン・スクエア・ベンチャーズ)らの投資家が参加している。

Cornershopに目をつけていた食料品サービスはUberだけではない。元々Walmart(ウォルマート)に2億2500万ドル(約248億円)で買収されるはずだったが、メキシコの反トラスト規制当局の介入によって結局成就しなかった。今回の契約が同様なリスクの対象になるかどうかは不明だ。

Uberは食品小売業との厳しい戦いに直面しており、ライバルの多くはDoorDash(ドアダッシュ)やFavor Fleet(フェイバー・フリート)などのスタートアップと提携することで配達を行っている。

関連記事
Uberがドライバーの顔認識チェックの利用で圧力を受ける
Uberがコロナ収束後のドライバー不足対策で総額約274億円の報奨金を用意
UberとLyftが新型コロナワクチン接種促進のための無料乗車提供を米国で開始

カテゴリー:シェアリングエコノミー
タグ:Uber中南米Cornershop

画像クレジット:Cornershop

[原文へ]

(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Nob Takahashi / facebook

KiaとUberが提携し欧州20マーケットのドライバーにEV車両を割引価格で提供

Kia(起亜自動車)のe-Niroとe-Soulの購入、リース、ローン、レンタルにかかる特別ディールを欧州の20マーケットに住むUberドライバーに提供するためにUber(ウーバー)とKia Europeがタイアップする。配車サービス大手Uberの二酸化炭素排出抑制の目標達成に向けた最新の取り組みだ。

Uberは2030年までに欧州全体でゼロエミッションモビリティプラットフォームになることに注力していて、同年までにドライバー3万人にKiaのBEV車両に乗り換えて欲しいと考えている。KiaはUberがドライバーに電気自動車の割引価格を提供する取り組みに加わる最新の自動車メーカーとなる。2021年5月にUberは、配車サービスドライバー向け専用電気自動車の生産でEVメーカーArrivalとの提携を発表した。そして2020年9月にはUberはカナダと米国のドライバーに全電動Chevrolet Boltを割引価格で提供すべくGM(ゼネラル・モーターズ)と提携した

関連記事:配車サービス用のEV生産に向けUberとArrivalが提携

欧州連合が最近制定した法律は、2030年までに二酸化炭素排出量を1990年代に比べて少なくとも55%削減することを目指している。UberのKiaとの提携は、欧州で二酸化炭素排出に関する規制がますます厳しくなることを予想してのことだ。規制に対応するためにUberはまた、2025年までに欧州のプラットフォームでEV10万台超を所有し、アムステルダム、ベルリン、ブリュッセル、リスボン、ロンドン、マドリッド、パリでの走行の半分をゼロエミッション車によるものにすることを目指している。

Kiaは2026年までに11種のEVモデルを発売する準備を進めていて、自社のBEV普及のために今回の提携を活用したいと考えている。e-Niroクロスオーバーは航続距離239マイル(約384km)で、DC急速充電を使えば54分でリチウムイオンバッテリーの80%を充電できる。可愛らしい小型デザインのサブコンパクトクロスオーバーe-Soulの航続距離は243マイル(約391km)だ。

しかし割引があっても、Uberのロンドン拠点ドライバーがEVを購入できるポータルのPartnerPointで提供されているKiaモデルはまだかなり高価だ。Kiaが提供している割引幅は8%で、一方日産の割引幅は13%、Hyundai(現代自動車)は22%だ。Kiaの割引後の車両価格は2万9877.40ポンド(約463万円)〜3万6471.40ポンド(約565万円)で、これはロンドンのドライバーの年間給与とほぼ同額だ。

にもかかわらず、ドライバーはこの割引と、5%のローン利子やClean Air Feeなどその他のインセンティブを活用しているようだ。Clean Air FeeはEVのコストにあてるために1回の乗車あたり3ペンスを集めるというもので、Uberによるとドライバーは年平均3000ポンド(約46万円)を節約できる。

2019年にClean Air Planが導入されて以来、ロンドンでは完全電気自動車の乗車が350万回以上あった。ロンドンのプラットフォームに加わる新しい車の50%ほどが今では完全EVで、広域マーケットではこの数字は8%だ。過去1年でUberプラットフォーム上のEV台数は700台から2100台に増えた。同社は2021年末までにさらに倍増させたいと考えている。

今回の発表ではUberはまた、乗客が排気ガスの少ない車両の配車をリクエストでき、一方でドライバーがそうした乗車にかかるサービス料金の15%割引を受けられるUber Greenという取り組みを2021年末までに欧州60都市に拡大する計画だと述べた。このサービスは現在、ロンドンのゾーン1内から乗車する客にのみ提供されているが、今こそドライバーがプラットフォームを通じて安い維持費とさらなる潜在的な収入を手にするときだとUberは話す。

欧州のUberドライバーはドライバーアプリ、ダイレクトメール、ドライバー向けウェビナーでEVについての情報を収集できる、と同社は述べた。車両の価格はドライバーのローケーションによって異なることはない。

カテゴリー:モビリティ
タグ:UberKia電気自動車二酸化炭素ヨーロッパ

画像クレジット:Kia

原文へ

(文:Rebecca Bellan、翻訳:Nariko Mizoguchi

UberとLyftが新型コロナワクチン接種促進のための無料乗車提供を米国で開始

Uber(ウーバー)とLyft(リフト)が新型コロナウイルスワクチンを接種しに行く人に無料乗車の提供を正式に開始した。これら配車サービス2社は2週間前にホワイトハウスとのプログラム合意を発表していた。

バイデン大統領は米国の全成人70%のワクチン接種を7月4日までに達成することを目標としていて、無料乗車は同日まで提供される。UberとLyftは以前TechCrunchに、無料乗車のコストをカバーすると話していた。ホワイトハウスはプロダクトの開発と立ち上げをアドバイスした。ホワイトハウスはまた、米国の8万カ所超のワクチン接種会場のデータを共有したともUberの広報担当はTechCrunchに述べた。

Uberはそれぞれ最大25ドル(約2700円)割引の片道乗車4回を提供する。これらの2往復の乗車は7月4日までの間に3週間の間隔を空けなければならない、とUberはブログで説明している。乗客はUberアプリを立ち上げて「ワクチン」をタップし「無料乗車を利用する」をタップしてプログラムに参加できる。提供時間は午前6時から午後8時までだ。利用する人は行き先、あるいは乗車する場所を検索するのに郵便番号を入力しなければならない。そしてワクチン接種会場と乗車オプションを選ぶ。

画像クレジット:Lyft

Lyftは最大15ドル(約1600円)の乗車を2往復分提供する。乗車の料金が15ドルを超えた場合、あるいは乗客がドライバーにチップをあげる場合は乗客に課金される、とLyftは述べた。また、無料乗車は3週間の間隔を要する。

ワクチン接種アクセスプログラムは、十分なサービスを受けられていないコミュニティに無料あるいは割引の乗車を提供し、またワクチン情報やワクチン接種会場へのアクセスを簡単なものにする機能の展開に続く取り組みだ。Uberはまず2020年3月に無料乗車を提供する新型コロナ救済プログラムを展開し、12月に追加で1000万回の無料・割引乗車を提供すると述べていた。

同社は2021年4月にユーザーがWalgreensでのワクチン接種を予約し、接種場所までの移動の乗車を予約できる機能を含む6つ以上の新機能を立ち上げることを発表した。

Lyftは12月にJPMorgan Chase、Anthem、United Wayなどを含むパートナーと、低所得者、保険に加入していない人、そしてリスクの高いコミュニティにワクチン接種にともなう行き来のために乗車6000万回を提供するというユニバーサルなワクチンアクセスキャンペーンを開始した。

関連記事
ワクチン接種普及のためにホワイトハウスはデートアプリと協力
グーグルがインドでワクチン接種センター、病床や医療用酸素情報の表示を開始
フェイスブックが緊急事態のインドでコロナワクチン接種場所探しツールを展開、11億円寄付も
SmartNewsの新型コロナ「ワクチンアラーム」日本で提供開始から1週間でユーザー数100万人を突破

カテゴリー:パブリック / ダイバーシティ
タグ:UberLyft新型コロナウイルスワクチンアメリカ

画像クレジット:Lyft/Uber

原文へ

(文:Kirsten Korosec、翻訳:Nariko Mizoguchi

配車サービス用のEV生産に向けUberとArrivalが提携

組立ラインを廃止し、高度に自動化されたマイクロファクトリーを選んだ電気自動車メーカーのArrival(アライバル)がUber(ウーバー)と提携し、ライドシェアのドライバー向けEVを作ろうとしている。

Arrivalは年末までにクルマの最終的なデザインを明らかにし、2023年第3四半期に生産を開始する予定だ。Uberのドライバーらを設計プロセスに関与させ、ニーズに合わせた車両の製造を目指す。

Uberは2020年、ロンドンで2025年まで、北米と欧州で2030年まで、プラットフォーム全体では2040年までに完全な電気モビリティプラットフォームになると約束し、それを実現しようとしている。最近立ち上げた「Uber Green」で、乗客には追加費用なしでEVを選ぶ機会を、ドライバーにはサービス手数料軽減の機会を提供する。より多くのドライバーにEVを提供する8億ドル(約870億円)の計画の一環だ。

関連記事:2040年の完全ゼロエミッションを約束するUberが車両の電動化に850億円を投入

2021年末までにEVドライバーの数を倍増するという目標を達成するために、Uberはドライバーの新車購入や借り入れを支援し、ドライバーへのインセンティブを厚くする。Arrivalの車両は、EVへの切り替えを希望するUberのドライバーへ推奨される車の1つとなるかもしれない。特に同社が2018年に始めたClean Air Plan(クリーンエアプラン)の「EVアシスタンス」の対象となるロンドンのドライバーに推奨される可能性がある。Uberの広報担当者は、Arrivalの車がどのような形で利用可能になるかについて明言を避けた。2020年9月、Uberは同様の取引でGeneral Motors(ゼネラルモーターズ)と提携し、米国とカナダのドライバーに2020年シボレーボルトを割引価格で提供した。

「Uberは、ロンドンのすべてのドライバーが2025年までにEVにアップグレードできるよう支援すると約束しました。クリーンエアプランのおかげで、この野心的な目標を達成するために1億3500万ポンド(約180億円)以上が調達されました」とUberの北欧および東欧地域ゼネラルマネージャーのJamie Heywood(ジェイミー・ヘイウッド)氏は声明で述べた。「私たちが現在注力しているのは、ドライバーに対しこの資金でのEVへのアップグレードを奨励することであり、Arrivalとの提携はこの目標の達成に役立ちます」。

Arrivalの拠点であるロンドンは、輸送システム全体を2050年までにゼロエミッションにすることを目指している。2025年からロンドンと町の中心部にゼロエミッションゾーンを設け、2040年までにロンドンの中心部の周辺に、2050年までにロンドン全体に拡大する。Uberのドライバーがロンドンの最もホットな地域で働きたいならEVに変えるしかない。

Uberとの提携によりArrivalは乗用の電気自動車の開発に初めて参入することになる。Arrivalは商用販売ではなく商業車分野に重点を置いているため、既存の車両モデルはバンとバスとなっている。すでにUPSから1万台の専用車を受注している。

Arrivalは商用電気自動車の設計・製造の方法を変えたいと考えている。同社独自のバッテリーやその他の部品を社内で設計し、従来の製造工場よりもはるかに小さい複数のマイクロファクトリーで車両を製造することにより、車両をより速く、安く、はるかに少ない環境コストで製造するとArrivalは述べている。

同社の株式は2021年3月から公開市場で取引されている。従来の遅いIPOルートではなく、SPACであるCIIGと合併し、SPACルートにより公開市場に参入する多くのEV企業の1つとなった

関連記事:英国のEVメーカーArrivalが米国で2つ目のマイクロファクトリーを建設、UPS向けEVバンを製造

カテゴリー:モビリティ
タグ:UberArrival電気自動車

画像クレジット:Arrival

原文へ

(文:Rebecca Bellan、翻訳:Nariko Mizoguchi

バイデン政権の労働長官はギグワーカーを従業員待遇にすべきと考えている

米国時間4月29日、バイデン政権の労働長官Marty Walsh(マーティ・ウォルシュ)氏は、ギグエコノミーという白熱している問題に言及して、福利厚生を欠いて働く多くの人びとは企業の従業員扱いになるべきだ、と主張した。

ロイターのインタビューでウォルシュ氏は、労働省はギグエコノミーに注目しており、その労働者の位置づけを変えることがバイデン政権の優先課題になりうると暗示した。

「ギグワーカーを従業員として待遇すべきと思われるケースが多い。現状では、労働者の待遇は場所や項目などによってまちまちであり、一貫性がない。全面的に一貫性があるべきだと私は考える」とウォルシュ氏はいう。

ウォルシュ氏によると、労働省はギグワーカーから利益を得ている企業に対して、それらの企業の非従業員に米国の平均的従業員並の福利厚生を確保するよう促すかもしれない、という。

「企業が売上と利益を得ることは、米国では普通のことであり、何も問題ではない。従業員に平均的な福利厚生を与えてなおかつ利益を得ている企業なら、何もいう必要はない。しかし私たちが一般的に求めるのは、企業の成功が確実に労働者の待遇にも反映することだ」とウォルシュ氏はいう。

ウォルシュ氏のコメントは現在のところ、国の施策によって認められてはいない。しかしそれらは、非従業員の労力を利用しているテクノロジー企業で、今だに大きな波風を惹き起こしている。4月29日のこのニュースで、UberとLyftそれにDoordashの株価は下がった。

そのインタビューでウォルシュ氏は、雇用主からの失業保険や健康保険がないギグワーカーのパンデミック関連の心配についても触れた。連邦政府はパンデミックの間に、ギグワーカーに対する福利厚生を認める2つの大型法案を成立させて、施策の緩みを修復した。しかしそれ以外では、彼らにはほとんどセーフティーネットがない。

労働法の改正はバイデン氏の選挙公約でもあり、大統領になってからは労働者保護の強化と労働者の組織化の支援を強調してきた。バイデン氏の政権移転サイトには、労働者保護の拡張に捧げられた部分があり、従業員を契約労働者扱いする誤りを「伝染病」と呼んでいる。

バイデン氏は米国時間4月28日夜の下院との合同会議で、以前からの労働組合の支持を繰り返し、労働者の組合結成や組合への参加を保護する法律であり組織化する権利の保護法(Protecting the Right to Organize Act)を賞揚した。その法律も拡張され、国の悪政を暴露する者にも適用されるようになる。

「ミドルクラスがこの国を作った。そして、組合がミドルクラスを作った」とバイデン大統領は語っている。

関連記事:バイデン大統領が「がんを撲滅」するために医療高等研究計画局の設立を提案

カテゴリー:パブリック / ダイバーシティ
タグ:ギグワーカーギグエコノミージョー・バイデンUberLyftDoorDash労働

画像クレジット:Jeenah Moon/Bloomberg/Getty Images

原文へ

(文:Taylor Hatmaker、翻訳:Hiroshi Iwatani)

Uberがコロナ禍後を見すえてワクチン予約やレンタカーデリバリーなど新サービスを発表

Uber(ウーバー)は最終的に収益につながるビジネスモデルに的を絞る中で、6つを超える機能を新たに立ち上げる。ここには、ユーザーがWalgreensでのワクチン接種を予約し、接種会場への乗車を手配できる機能が含まれる。

米国時間4月28日に発表された機能は、Uberが「go get」戦略と呼ぶものの一環だ。新型コロナウイルスパンデミックで14カ月にわたり閉鎖された事業を「ノーマル」に戻すことも意図している。ワクチン予約や、レンタカーを必要な場所にまで持っていくバレットサービス、最大1時間まで待機する空港での乗車の予約、乗車ルートの途中で食品をピックアップするオプションなど、数多くの機能は同社の基幹サービスであるデリバリーと配車に集中している。

2020年初め、同社は空飛ぶタクシーや自動運転車、デリバリー、ライドシェアリング、貨物予約プラットフォーム、電動自転車とスクーターのシェアリングなど広範にわたって事業を手がけ、異なる会社のようだった。2020年、Uberはマイクロモビリティシェアリングの部門Jumpを切り離し自動飛行エアタクシー事業Uber Elevateを売却した。そしてUber ATG自動運転部門と、ロジスティック部門Uber Freightの一部株式も売った(Uberはこれら事業の株式保有は維持している)。

関連記事
Uberが空飛ぶタクシー事業ElevateをJoby Aviationに売却、最後の夢の事業から撤退
Uberが自動運転部門Uber ATGを売却、購入したAuroraの企業価値は1兆円超え
Uberが貨物運送事業で優先株を発行して約530億円を調達、キャッシュ確保の一環

しかし配車事業についてはそうはしなかった。同期間、UberはPostmatesDrizlyを買収し、ライドシェアとデリバリーが収益化に向け最善の道だとしてこの2つの分野に賭けた。同社のGo Getの取り組みはそうした戦略の延長だ。競合他社もそうだったが、新型コロナでライドシェアは減った一方で、デリバリー事業は爆発的に成長した。

関連記事
UberがフードデリバリーPostmatesの買収を完了
Uberがアルコール宅配サービスのDrizlyを約1150億円で買収へ、Uber Eatsの収益性アップを狙う

画像クレジット:Uber

「2020年Uberは2つのことにかなりフォーカスして取り組むプラットフォームに進化しました」と同社のCPOであるSundeep Jain(サンディープ・ジャイン)氏は最近のインタビューで述べた。「この2つは、ユーザーが「行く」のと「手に入れる」のをサポートしています。当社はこのプラットフォームを、ユーザーがどこにでも移動し、何でも入手できるものへと真に進化させました」。

Uberにとってこれは、クルマやスクーター、バス、その他の公共交通など多様な移動手段を使って人々をどこかに「行く」ようにする、あるいはレストランで調理された食品や、最近扱うようになったグローサリー、処方薬、アルコールなどを「入手」するようにするプロダクトの構築を意味する。この「行く」「手に入れる」の方針は同社の商品開発、そして買収戦略にも影響を及ぼしている。Postmates買収でUberはiPhoneすら配達している、とジェーン氏は一例として挙げた。

新たな機能には、Uber Rent with Valetというものがある、これは、米国のユーザーがUberのアプリ内で直接クルマをレンタルできるようにするものだ。レンタカーはユーザーの自宅、あるいは空港などに届けられる。Uber Reserve機能は全米で展開されて、ここにはフライト追跡と最大60分の待ち時間、カーブサイドピックアップが含まれる。

「手に入れる」の面では、同社はPick Up and Goを立ち上げた。ライドシェアのユーザーがピックアップ用の商品を注文をし、最終目的地に向かうまでの間に注文したものを受け取るために立ち寄りを加えることができるというものだ。同社はまた、販売店舗が閉まっているときでも注文できるオプションを含む新しい「スケジュール」ボタンの提供も開始した。配達料金の割増なしで精算時に2つめの販売業者からのアイテムを追加できる機能も加わる。

Uberはまた、ユーザーが利用できるオファー、ディール、割引を表示するお買い得ハブ、アプリ内ノーティフィケーション経由で配達のリマインダーを送る新機能、Eats Passメンバーシップの延長も加えた。

さらには、1回の移動ではなくドライバー付きで数時間クルマを利用できるサービスなど、他の既存プログラムも拡大した。「米国ではあまり普及していませんが、アジアや中南米ではかなり人気です」とジェーン氏は話した。

もちろんこうした取り組みはすべて「収益化」という聖杯を目的としている。そして1年前よりは聖杯に近づいたように見える。2021年4月初め、Uberは2021年に四半期の調整後EBITDAが黒字となるとの予想を維持しているSEC書類を公開した。また、3月のグロスブッキング(受注契約の総額)が同社の12年の歴史の中で月間として最高レベルに達した、と明らかにした。モビリティ事業は年間グロスブッキングランレートが300億ドル(約3兆2583億円)を超え、1日あたりの平均グロスブッキングは前年同月比9%増と2020年3月以来の好成績となった。配達事業はまたも過去最高を記録し、年間グロスブッキングランレートは520億ドル(約5兆6479億円)超と前年比150%増だったとSEC書類にある。

結論:Uberプラットフォームでの総売上という点で3月は過去最高となった。しかし、TechCrunchのAlex Wilhelm氏が最近指摘したように、Uberの配達事業は規模を拡大したが、それでもメインのライドシェア事業より収益性は良くない。総プラットフォーム支出額は過去最高を達成したが、以前よりも儲けの少ない売上高で構成されている。

Go Getプログラムは、配車事業を立て直す新たな方法を模索し、一方で追加のコストをかけずにデリバリー事業を拡大するのが目的のようだ。配車事業は以前、調整後EBITDAで黒字となるなどすばらしい業績をあげていた。

「これまで人気のなかったユースケースである高度な予約商品にユーザーが引き寄せられるのを目にしてきました。以前は大半がオンデマンドでした」とジェーン氏は話した。「ですので当社は、先払いのドライバー配置や高度な信頼性、保険など、ユーザーエクスペリエンスを改善するために意義のある投資を行いました。だからこそ、真に人気のユースケースになった予約に関する大々的な発表を行なっているのです」。

カテゴリー:シェアリングエコノミー
タグ:Uber

画像クレジット:Uber

原文へ

(文:Kirsten Korosec、翻訳:Nariko Mizoguchi

Uberがコロナ収束後のドライバー不足対策で総額約274億円の報奨金を用意

新型コロナウイルス感染症が拡大し始めた頃、配車サービスのドライバーは「不可欠な労働者」とされていたにもかかわらず、2020年4月にUber(ウーバー)のビジネスは80%も落ち込んだ。運転手たちは、1日数回の乗車で得られるわずかな収入のために、新型コロナウイルスに感染したり、それを広めたりするリスクを負いたくないと考えた。米連邦政府のCARES法(コロナウイルス支援・救済・経済保証法)が失業支援をギグワーカーにも拡大したため、多くのUber運転手はクルマのキーを置くことにしたのだ。

米国では人口の4分の1以上がすでにワクチンを接種しているため、Uberは現在、ドライバーの数よりも送迎を希望する乗客の数の方が多いという、困った状況におかれている。そこでこの配車サービス大手企業は、ドライバーに再び仕事があることを知ってもらうだけでなく、インセンティブ(報奨金)を用意して契約に誘い込みたいと考えている。

Uberは米国時間4月7日、パンデミックが収束に向かいつつある中、ドライバーの復帰を歓迎し、新しいドライバーを募集するために、総額2億5000万ドル(約274億円)のドライバー刺激策を開始すると発表した。同社の広報担当者によると、復帰したドライバーと新たに就業したドライバーの両方とも、今後数カ月にわたってボーナスを受け取ることができるという。

「2020年には、多くのドライバーが、自分の就労時間に見合うだけの乗客が期待できないため、運転業務を止めてしまいました」と、この刺激策を発表したブログ記事には書かれている。「2021年には、送迎を希望する乗客数が、移動を提供できるドライバーの数を上回っています。ドライバーになるには絶好の時期です」。

乗客の需要が高く、ドライバーの供給が少ないことで、フィラデルフィア、オースティン、シカゴ、マイアミ、フェニックスなどの都市における現在のドライバーの時給は、2020年3月と比べると25%から75%も高く、中央値は26.66ドル(約2930円)となっている。Uberは「これは一時的な状況である可能性が高い」として、ドライバーに今の高収入を利用して欲しいと考えている。つまり、国全体が新型コロナウイルスから回復し、より多くのギグワーカーがハンドルを握るようになれば、収益は現在のレベルよりも低下する可能性が高いということだ。

この現在の高い時給に、さらにドライバー刺激策のボーナスが上乗せされると、同社の広報担当者はTechCrunchに語った。このインセンティブの仕組みは、各人の活動状況と場所に基づいて決定される。例えば、オースティンでは、現在のドライバーが115回の乗客移送を完了すると、1100ドル(約12万円)の出来高ボーナスが保証される。フェニックスでは、200回の運転業務で1775ドル(約19万5000円)の追加報酬を得ることができる。

「これらの都市だけでなく、我々が米国で対象としている他のすべての市場で、より多くの保証金を提供する予定です。金額や送迎回数は、地域的な要因によって若干変わる可能性があります」と、広報担当者は述べている。

この資金は、最低賃金の保証や、新規ドライバーの導入にも充てられる予定で、2億5000万ドル全額がUberの金庫から直接支払われる。この発表を受け、同社の株価は水曜日の取引中に3.6%も下落した。

Uberはまた、米国の薬局チェーンであるWalgreens(ウォルグリーン)と提携し、アプリ内の予約ポータルで、ドライバーがワクチンを接種するプロセスを能率化するための支援も行っている。

カテゴリー:シェアリングエコノミー
タグ:Uber配車サービス新型コロナウイルスギグワーカー

画像クレジット:Uber

原文へ

(文:Rebecca Bellan、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

Uberがドライバーの顔認識チェックの利用で圧力を受ける

Uberがドライバーの識別システムに顔認識テクノロジーを使用していることが英国で問題になっている。ドライバーが誤って識別され、ロンドン交通局(TfL)から営業ライセンスを取り消されたケースが複数見つかったことから、App Drivers & Couriers Union(アプリ運転手および配送業者組合、ADCU)とWorker Info Exchange(労働者情報取引所、WIE)は、Microsoft(マイクロソフト)に対しこの配車サービス大手へのB2B顔認識サービスの提供を停止するよう求めている。

同組合によると「顔認識やその他の身元確認の失敗」により、TfLによるライセンス取り消し処分を受け、ドライバーが職を失ったケースが7件確認されたという。

Uberは、2020年4月に英国で「リアルタイムIDチェック」システムを立ち上げた際「ドライバーのUberアカウントが、強化されたDBS(開示および禁止サービス、いわゆる無犯罪証明)チェックに合格したライセンス保持者以外に使用されていないことを確認する」としていた。またその際、ドライバーは自分の自撮り写真を「写真照合ソフトによる検証か、人間の審査員による検証かを選択できる」とも述べていた。

ADCUによると、ある誤認のケースでは、ドライバーはUberに解雇され、TfLにライセンスを取り消されたという。同組合は、この組合員の身元証明を支援し、UberとTfLの決定を覆すことができたと付け加えている。しかし、マイクロソフトが2020年夏のBlack Lives Matter(黒人の命の大切さを訴える)運動を受けて、米国の警察へのシステム販売を見合わせたことを挙げ、同社の顔認識テクノロジーの精度に対する懸念を訴えている。

顔認識システムは、識別の対象が有色人種の場合、特に高いエラー率になることが研究で明らかになっており、ADCUは、マイクロソフトのシステムが20%ものエラー率になる可能性があるという2018年のMIT(マサチューセッツ工科大学)の研究結果を引用している(肌の色が濃い女性の場合に最も悪い精度となった)。

同組合は、ロンドン市長に書簡をお送り、ハイブリッドリアルタイム個人認証システムの結果を根拠としたUberの報告書に基づく、TfLのプライベートハイヤーに対するライセンスの取り消しを、直ちにすべて見直すことを要請しているという。

マイクロソフトは、Uberに対する顔認識テクノロジーのライセンスの停止が要請されたことについて、コメントを求められている。

【更新】Microsoftの広報担当者は「MicrosoftはFace APIのテストと改善に力を入れており、あらゆる年齢層における公平性と精度に特に注意を払っている。また、お客様がシステムの公平性を評価できるよう、最適な結果とツールを得るための詳細なガイダンスも提供しています」と述べた。

ADCUによると、Uberは英国の首都での営業ライセンス回復のために実施した対策パッケージの一環として、労働力の電子監視および識別のシステムの導入を急いだという。

2017年、TfLはUberに営業ライセンスの更新を認めないという衝撃的な決定を下した。当局はUberの営業形態に対する規制圧力を強め、2019年にはUberがプライベートハイヤーライセンスを更新するのは「適切ではない」と再び判断し、この決定を継続した。

関連記事:安全性懸念でUberのロンドンでの営業免許更新を当局が認めず

TfLは、Uberのライセンス更新を保留した主な理由として、安全性とセキュリティの欠如に言及した。

UberはTfLの決定に対して法廷で異議を唱え、2020年に別のライセンス停止に対する控訴で勝訴したが、その際に与えられた更新期間はわずか18カ月だった(正規の5年ではない)。しかも数多くの条件が並べ立てられており、Uberは依然としてTfLの品質基準を満たすよう強い圧力を受けている。

関連記事:英裁判所がUberのロンドンでの事業継続を許可、ただし18カ月のみ

しかしADCUによると、現在、労働運動家らは、TfLがUberに導入を促した労働力の監視テクノロジーにおいて、規制基準が設定されていないことを指摘するなど、別の方向からもUberに圧力をかけているという。また、TfLによる平等性インパクト評価も行われていないと、同組合は付け加える。

WIEはTechCrunchに対し、UberのリアルタイムIDチェックの後に解雇され、TfLから免許を取り消されたImran Raja(イムラン・ラジャ)氏というドライバーのケースで、同団体がUberを相手取り、同氏への差別的扱いに対する訴えを起したことを明らかにした。

同氏のライセンスはその後回復したが、それは、ADCUがこの措置に異議を唱えた後のことだ。

WIEによると、Uberの顔認識チェックで誤認された、他の何人かのUberドライバーらも、TfLによるライセンス取り消しを英国の裁判所に訴えるとのことだ。

TfLの広報担当者は、顔認識テクノロジーの導入はUberのライセンス更新の条件ではなく、Uberが十分な安全システムを備えていることが条件だと話す。

「ドライバーの身元確認」に関する暫定ライセンスの関連条項には、次のように記されている。

ULL(Uber London Limited、ウーバー・ロンドン有限責任会社)は、アプリを使用するドライバーがTfLからライセンスを取得した個人であり、ULLからアプリの使用を許可された個人であることを確認するために、適切なシステム、プロセス、手順を維持しなければならない。

また、TechCrunchでは、TfLと英国情報コミッショナーズオフィス(ICO)に、UberがリアルタイムIDチェックを開始する前に実施したというデータ保護影響評価のコピーを求めており、入手した場合にはこのレポートを更新する。

一方、Uberは、ドライバーの個人認証に顔認識テクノロジーを使用することは、失敗を防ぐために手動(人間)で審査するシステムを導入しているため差別を自動化する危険性がある、という組合の主張に異議を唱えている。

しかし、同社はそのシステムがラジャ氏のケースでは明らかに失敗したことを認めている。同氏は組合が介入したことでUberのアカウントを取り戻し、そして謝罪を受けた。

Uberによると、同社のリアルタイムIDシステムでは、ログイン時にドライバーが送信する自撮り写真の「画像照合」が自動で行われ、システムがその自撮り写真とファイルに保存されている(1枚の)写真を比較する。

自動照合で一致しない場合は、システムは3人の人間による審査委員会に照会し、手動でチェックが行われる。Uberによると、最初の審査委員が承認できない場合は、2番目の審査委員にチェックが委ねられるという。

このテクノロジー大手は声明の中で次のように述べている。

当社のリアルタイムIDチェックは、正規のドライバーや宅配業者が本人のアカウントを使用していることを確認することで、アプリを利用するすべての人の安全と安心を守るように設計されている。今回提起された2つの事例は、技術的な欠陥によって引き起こされたものではない。実際、そのうちの1つは当社の不正防止ポリシーに違反していることが確認され、もう1つは人為的なミスだった。

テクノロジーやプロセスに完璧はなく、常に改善の余地があるが、ドライバーの抹消を決定する前に最低2回の人間による手作業での審査を保証する徹底したプロセスと併用されるこのテクノロジーは、公正であり、当社のプラットフォームの安全性にとって重要であると考えている。

Uberは、ADCUが言及した2つのケースのうち、1つのケースでは、リアルタイムIDチェックの際に、ドライバーがライブIDチェックに必要な自撮り写真を撮る代わりに、写真を見せていたという。つまり、ドライバーが正しい手順に従っていなかったため、IDチェックが失敗したことは間違いではないと主張している。

もう1つのケースについて同社は、人手による審査チームが(二度にわたって)誤った判断を下したヒューマンエラーに責任を負わせている。ドライバーの外見が変わり、自撮り写真を送ってきた(現在はひげを生やした)男性の顔が、同社がファイルしていた、きれいにひげを剃った顔写真の人物と同一人物であると審査委員が認識できなかったと述べている。

Uberは、ADCUが言及した他の5つのIDチェックの失敗で何が起こったのか詳細を説明できなかった。

また、同組合がIDチェックで誤認されたとしている7人のドライバーの民族性についても明言を避けた。

Uberは、将来起こりうる人為的ミスによる誤認識を防ぐためにどのような対策をとっているのかという質問に対しては、回答を拒否した。

Uberは、ドライバーがIDチェックに失敗した場合、TfLに通知する義務があると述べている。これは、ラジャ氏のケースのように、規制当局がライセンスを停止することにつながる措置だ。したがって、IDチェックプロセスに偏りがあると、その影響を受けた人の働く機会に不均衡なインパクトを与える危険性があることは明らかだ。

WIEは、顔認識チェックのみに関連してTfLのライセンスが取り消されたケースを3件把握しているという。

また同団体は「[Uber Eats]の宅配業者には、他にも契約を解除された者もいるが、TfLのライセンスを取得していないため、それ以上の措置はとられていない」と話す。

TechCrunchもまた、Uberに、ドライバーの契約解除が何件行われ、TfLへの報告で何件が顔認識に基づいたかを尋ねたが、ここでもこのテクノロジー大手は回答を拒否した。

WIEは、Uberが地理的な位置情報に基づいて行う契約解除に、顔認識のチェックが組み込まれている証拠があると話す。

あるケースでは、アカウントを取り消されたドライバーは、Uberから位置情報のみに関する説明を受けていたが、TfLがUberの証人調書を誤ってWIEに送ってしまったことがあり、その証人調書には「顔認識の証拠を含めていた」と述べている。

このことは、UberのIDチェックにおける顔認識テクノロジーの役割が、同社がリアルタイムIDシステムの方法を説明する際に示したものよりも広いことを示唆している(やはり、Uberはこの件に関するフォローアップの質問には答えず、公式発表やそれに関わる背景以上の情報を提供することを拒否した)。

しかし、UberのリアルタイムIDシステムに限ってみても、機械の提案に加えて、より広いビジネス上の責務(安全性の問題で規制順守を証明する緊急の必要性など)の重さを前にして、Uberの人間の審査スタッフが実際にどれだけのことを言えるか疑問が残る。

WIEの創設者であるJames Farrer(ジェームス・ファラー)氏は、差別問題が指摘されている顔認識テクノロジーのセーフティネットとしてUberが講じている人間によるチェックの質について疑問を呈する。

「Uberは、自動化された意思決定に対して法的にもっともらしい否認機能を用意しているだけなのか、もしくは意義のある人間の介入があるのか」と同氏はTechCrunchに語り「これらすべてのケースで、ドライバーは停職処分を受け、専門家チームが連絡を取ると言われる。そして大抵、1週間ほど過ぎると、誰とも話すことなく永久に停止されてしまう」と続ける。

「顔認識システムが不一致と判断すると、人間には機械を追認するようなバイアスがかかるという研究結果がある。人間は、機械を無効にする勇気を持つ必要がある。そのためには、機械を理解し、その仕組みと限界を理解し、機械の判断を覆す自信と経営陣のサポートが必要だ」とファラー氏は述べ「ロンドンで仕事をするUberのドライバーには、Uberのライセンスに対するリスクが付きまとうが、その対価は何だろうか。ドライバーには何の権利もなく、過剰に存在する消耗品だ」と続ける。

同氏はまた、Uberが以前法廷で、疑わしいケースではドライバーに有利な判断よりも、顧客の苦情を避けられる判断を優先すると証言したことを指摘する。そして「そうであれば、Uberが顔認識についてバランスのとれた判断をすると本当に信頼できるだろうか」と問いかける。

さらにファラー氏は、UberとTfLが、アカウントを無効にする根拠とした証拠をドライバーに開示せず、決定の実際の内容について不服を申し立てる機会を与えないことに疑問を呈している。

同氏は「私見だが、結局すべてテクノロジーのガバナンスの問題だ」とし「マイクロソフトの顔認識が強力でほぼ正確なツールであることを疑っているわけではない。しかし、このテクノロジーのガバナンスは、知的で責任のあるものでなければならない。マイクロソフトは極めて賢明であり、この点に限界があることを認めている」と付け加える。

「Uberが自社の営業ライセンスを守るための代償として監視テクノロジーの導入を強いられ、94%のBAME(Black、Asian and minority ethnic、黒人・アジア人・少数民族)の労働者を不当解雇から守る労働者の権利を無力にする施策など本末転倒だ」と語気を強める。

この顔認識に関わるUberのビジネスプロセスへの新たな圧力は、ドライバーは英国法における労働者ではなく「自営業者」であるというUberの言い逃れに対する長年の訴訟の末、ファラー氏をはじめとする元Uberドライバーや労働権運動家が大きな勝利を収めた直後のことだ。

現地時間3月16日火曜日、Uberは、2021年2月に最高裁がUberの上告を棄却したことを受け、今後はドライバーを市場での労働者として扱い、同社からの福利厚生を拡大すると述べた。

関連記事:Uberは最高裁判所の判決を受けて英国のドライバーを「労働者」待遇にすると発表

しかし、訴訟当事者は、Uberの「取引」ではドライバーがUberアプリにログオンしたときから労働時間を算出すべきとの最高裁の主張を、Uberが無視していると即座に指摘した。対するUberは、ドライバーが仕事を引き受けたときに労働時間を計算する資格が発生すると述べている。つまり、Uberは依然として、運賃収入を待つ時間についてはドライバーへの支払いを避けようとしているのだ。

そのためADCUは、Uberの「オファー」は、ドライバーが法的に受け得る報酬から40~50%下回ると見積もっており、Uberドライバーが公正な取引を得られるように法廷で闘い続けると述べている。

EUレベルでは、EUの議員らがギグワーカーの労働条件を改善する方法を検討しているが、このテクノロジー大手は現在、プラットフォーム業務に有利な雇用法を作り上げるために動いており、労働者の法的基準を下げようとしていると非難されている

2021年3月のUberに関わる他のニュースとしては、オランダの裁判所が、ADCUとWIEの異議申し立てを受けて、同社にドライバーに関してより多くのデータを引き渡すように命じたことだ。ただし、裁判所は、さらに多くのデータを求めるドライバーらの要求の大半を却下している。しかし注目すべきことは、ドライバーらがEU法の下で保証されたデータ権を利用して情報をまとめて入手し、プラットフォームに対する団体交渉力を高めようとすることに裁判所が異議を唱えなかったことだ。これは、ファラー氏が労働者のためにデータ信託を立ち上げたことで、より多くの(そして、より慎重に言葉を選べば)挑戦への道が開かれたことを意味する。

請求人はまた、Uberが不正行為に基づくドライバー解雇の判断にアルゴリズムを使用していることについて、法的または重大な影響がある場合、自動的な決定のみに左右されない権利を規定する、EUのデータ保護法の条項に基づいて検証を求めた。このケースで裁判所は、不正に関わる解雇は人間のチームによって調査され、解雇の決定には有意な人間の意思決定が関与しているというUberの説明を言葉通りに受け入れた。

しかし、プラットフォームのアルゴリズムによる提案・決定から始まり人間による「有意な」ぬれぎぬ・見落としに至る問題は、新たな争点となりつつある。そこではユーザーのデータを神のように崇め、完全な透明性にアレルギーを持つ、強力なプラットフォームがもたらす人間への影響や社会的不均衡を規制するための重要な戦いが繰り広げられるだろう。

Uberの顔認識にともなう解雇に対する直近の異議申し立ては、自動化された判断の限界と合法性に対する調査が始まったばかりであり、審判が下るまでには程遠いことを示している。

Uberがドライバーのアカウント停止に位置情報を使用していることも、法的な問題として挙げられている。

現在、欧州連合の機関で交渉が行われているEU全体に適応される法規制は、プラットフォームの透明性を高めることを目的としており、近い将来、規制当局による監視やアルゴリズムによる監査さえもプラットフォームに適用される可能性がある。

2021年3月第2週、Uberの訴訟に判決を下したアムステルダムの裁判所は、インドの配車サービス会社Ola(オラ)に対しても、UberのリアルタイムIDシステムに相当する顔認識ベースの「Guardian(ガーディアン)」システムに関するデータの開示を命じた。裁判所は、オラは現在提供しているものよりも広範囲のデータを請求人に提供しなければならないとし、その中には、同社が保持しているドライバーの「詐称が疑われるプロファイル」や、同社が運営する「ガーディアン」監視システム内のデータの開示も含まれている。

こういった状況からファラー氏は「いずれにせよ、労働者は透明性を手に入れることができる」と自信を示す。それに、Uberの労働者への対応をめぐって英国の裁判所で何年も闘ってきた同氏のプラットフォームとのパワーバランスを正そうとする粘り強さは疑うべくもない。

カテゴリー:パブリック / ダイバーシティ
タグ:Uberイギリス顔認証

画像クレジット:Getty Images

原文へ

(文:Natasha Lomas、翻訳:Dragonfly)

1000億円超を調達しながら失敗に終わったEVのバッテリー交換ビジネスを復活させるAmple

今をさかのぼること13年とわずか、当時世界で最も力のあるソフトウェア企業の1つだったSAPでCEOへの道を歩んでいたShai Agassi(シャイ・アガシ)氏は、それまで専門的なキャリアを積み重ねてきた会社を離れ、Better Place(ベター・プレイス)というビジネスを始めた。

そのスタートアップは、勃興期の電気自動車市場に革命を起こし、電気自動車のバッテリー切れという恐怖を過去のものにするはずだった。消耗したバッテリーを充電されたばかりのものに交換する、自動化された電池交換ステーションのネットワークというのが同社のうたい文句だった。

アガシ氏の会社は、世界でもトップレベルのベンチャーキャピタルやグロースエクイティファームから約10億ドル(現在約1080億円。当時としては相当な額)を調達することになっていた。だが、2013年に会社は清算され、クリーンテック投資が受けた最初の波による多数の犠牲者の1つとなった。

今になって、シリアルアントレプレナーであるJohn de Souza(ジョン・デ・ソウザ)氏とKhaled Hassounah(ハレド・ハッソウナ)氏が、Ample(アンプル)というスタートアップによってバッテリー交換のビジネスモデルを復活させようとしている。彼らの提唱するアプローチは、電気自動車の定着によってはるかに大きな市場が出現しつつある今、Better Placeでは決して対応できなかった問題のいくつかを解決するものだ。

Statista(スタティスタ)のデータによれば、2013年に22万台しかなかった電気自動車が、2019年には480万台を数えるまでに増加した。

Ampleはすでに、投資家から約7000万ドル(約76億1366万円)を実際に調達している。投資家には、Shell Ventures(シェル・ベンチャーズ)、スペインのエネルギー企業Repsol(レプソル)に加えて、Moore Strategic Ventures(ムーア・ストラテジック・ベンチャーズ)も名を連ねている。ムーア・ストラテジック・ベンチャーズは数十億ドル(数千億円)規模のヘッジファンドであるMoore Capital Management(ムーア・キャピタル・マネジメント)の創設者であるLouis M. Bacon(ルイ・M・ベーコン)が個人で所有するベンチャーファームだ。調達した額には、2018年に報告された3400万ドル(約36億5670万)の投資、および日本のエネルギー・金属企業であるENEOSホールディングスから最近調達した資金を含め、その後のラウンドでの投資も含まれる。

Better Placeのビジネスとの類似について、ソウザ氏は「Better Placeへの投資案件に関わったためトラウマになってしまった、という人がたくさんいましたよ」と話した。「関わっていなかった人も、その件について調べた後は決して近寄らないようにしていました」。

AmpleとBetter Placeの違いは、バッテリーパックのモジュール化と、Ampleの技術を利用する自動車メーカーとの関係がバッテリーパックのモジュール化によって変化することにある。

Ampleの共同創設者兼CEOであるハッソウナ氏は「私たちのアプローチは、バッテリーをモジュール化してからバッテリーの構造部品であるアダプタープレートを用意し、アダプタープレートとバッテリーの形状、ボルト仕様、ソフトウェアインターフェースを共通にすることです。Ampleが提供するのは、これまでと同様のバッテリーシステムですが、タイヤ交換と同じようにAmpleのバッテリーシステムは交換可能なのです」と述べた。「実質的に、私たちが提供するのはプレートであって、クルマなどには変更を加えません。今や、固定式のバッテリーシステムを搭載するか、Ampleの交換可能なバッテリープレートを搭載するかという選択肢があるのです。当社はOEMと提携し、重要なユースケースを実現するために交換可能なバッテリーな開発しています。車の側はまったく変更しなくてもAmpleのバッテリープレートは搭載できます」。

Ampleは現在、5社のOEMと共同開発を進めており、すでに9モデルの車を使ってバッテリー交換のアプローチを検証した。それらのOEM企業の1社には、Better Placeとのつながりもある。

AmpleがUber(ウーバー)とのパートナーシップについて発表したことから、同社が日産のリーフにも関わっていることは明白になっている。ただし、Ampleの創設者たちは、OEMとの関係についてコメントを控えている。

Ampleが日産とつながっていることは明らかだ。日産は2021年初めにUberとのゼロエミッション・モビリティに関する提携成立について発表している一方、AmpleによればUberはAmpleがベイエリアの数カ所に設けるロボット充電ステーションを利用する最初の企業でもある。日産との協力関係は、同社のもう1つの部門であるルノーとBetter Placeとのパートナーシップを彷彿とさせる。失敗に終わった以前のバッテリー交換スタートアップにとって、それは最大の取引になったのである。

Ampleによれば、ある施設に充電設備を設けるのに、わずか数週間しかかからないという。また、料金システムは1マイルあたりに供給されたエネルギーに対して料金を徴収するというものだ。「ガソリンより10~20%安くなる経済性を達成しています。営業初日から利益が上がります」とハッソウナ氏は述べた。

Ampleにとって、Uberが最初のステップになる。Ampleはまとまった数の車両を持つ組織を重視し、名前は非公表ながら複数の公共団体とも、車両群をAmpleのシステムに加入させるよう交渉中だ。ハッソウナ氏によれば、まだUberのドライバーだけだとはいえ、Ampleは現在までにすでに何千回ものバッテリー交換を実施しているという。

ハッソウナ氏によると、車両には従来の充電施設でも充電が可能だ。同社の請求システムでは、同社が提供したエネルギーと、他の充電口から供給されたエネルギーを区別できるのだという。

「これまでのユースケースの場合、ライドシェアでは個人ドライバーが料金を支払っていました」とソウザ氏はいう。Ampleでは、2021年これから配置される5つの車両群について、車両群の管理者や所有者が充電料金を払うようになることを期待している。

Ampleのインスピレーションの源の1つとなっているのが、ハッソウナ氏が以前One Laptop per Child(ワン・ラップトップ・パー・チャイルド)というNPOで働いていた頃の経験だ。そこでは、子どもたちの間でノートパソコンがどのように使われているのか思い込みを考え直さざるをえなかったという。

「最初はキーボードとディスプレイの問題に取り組んでいましたが、すぐに課題は子どもたちが置かれている環境にあるということを実感するようになり、インフラ構築の枠組みを開発するようになりました」とハッソウナ氏は述べた。

問題だったのは、当初ノートパソコンを供給する仕組みを設計した時点で、子どもたちの家にはノートパソコン用の電源がないことを考慮に入れていなかったことだった。そこで、バッテリー交換用の充電ユニットを開発したのだ。子どもたちはその日の授業でノートパソコンを使い、家に持ち帰り、充電が必要になればバッテリーを交換できるようになった。

「企業が所有する車両群にはこれと同じソリューションが必要です」とソウザ氏は述べた。とはいえ、個人でクルマを所有している人にもメリットがあるという。「自動車のバッテリーは徐々に劣化していくため、所有者はこのようなサービスがあれば、クルマにフレッシュなバッテリーを搭載できます。また、時がたつにつれて、バッテリーで走行可能な距離も伸びるでしょう」。

ハッソウナ氏によれば、現時点ではOEMからAmpleにバッテリー未搭載の自動車が届き、Ampleが自社の充電システムをそこに取り付けるかたちになっている。それでも、Ampleのシステムを利用する車両の数が1000台を超える中で同社が期待しているのは、Ampleから自動車メーカーにバッテリープレートを送り、メーカーサイドでAmpleが独自のバッテリーパックを取り付けるようになることだ。

Ampleが現時点で対応しているのはレベル1とレベル2の充電だけであり、同社と提携する自動車メーカーにも急速充電オプションを提供していない。おそらく、そうしたオプションを提供することは自社のビジネスの首を絞めることになり、Ampleのバッテリー交換技術の必要性を排除してしまう可能性すらあるからだろう。

現在問題となっているのは、車両への充電にかかる時間だ。高速充電でも満タンまで20~30分かかるが、この数字は技術の進歩とともに下がっていくだろう。Ampleの創設者たちは、たとえ自社のバッテリー交換技術よりも高速充電の方が優れた選択肢として進化することがあるとしても、自分たちのビジネスを電気自動車の普及を早めるための補足的な段階だとみなしている。

「10億台のクルマを動かそうとすれば、あらゆるものが必要になります。それだけたくさんのクルマを走らせる必要があるのです」とハッソウナ氏は述べた。「問題を解決するために、あらゆるソリューションが必要だと思います。バッテリー交換技術を車両群に応用する場合、必要なのは充電スピードではなく、料金面でガソリンに対抗することです。今のところ、高速充電を誰にでも利用できるようにすることは現実的ではありません。5分間でバッテリーに充電できるかどうかは問題ではないのです。それだけの電力を供給できる充電システムの構築コストが、割に合わないのです」。

Ampleの創設者2人は、充電にとどまらず、グリッド電力市場にもチャンスを見いだしている。

「電力のピークシフトは経済に組み込まれています。この点でも私たちが役に立てると思います」とソウザ氏は述べた。「これをグリッド蓄電池として使うのです。私たちは需要に応じた電気料金システムに対応できますし、グリッドに電力を供給するようにという連邦指令もありますから、エネルギーを戻すことでグリッド電力の安定に貢献できます。Ampleの充電ステーションの数はまだ大きな効果を上げられるほど多くはありませんが、2021年事業を拡大すれば、貢献できるようになるでしょう」。

ハッソウナ氏によると、同社の蓄電容量は1時間あたり数十メガワットで運用されている。

「このちょっとした蓄電池を使って、交換ステーションの発展を促進できるでしょう」とソウザ氏は述べた。「ステーションの設置に驚くほど巨額の投資は必要ありません。これまでとは別の資金調達方法も活用しながら、複数の方法でバッテリーの資金を調達できると思います」。

Ampleの共同創設者、ジョン・ソウザ氏とハレド・ハッソウナ氏(画像クレジット:Ample)

カテゴリー:モビリティ
タグ:Ample電気自動車バッテリー資金調達日産Uber

画像クレジット:Ample

原文へ

(文:Jonathan Shieber、翻訳:Dragonfly)

UberがEUで「Prop 22」スタイルのギグワーク基準を求めロビー活動を展開

Uber(ウーバー)は、ギグワーカーの労働条件を改善する新しい規則が必要かどうか判断するためにギグプラットフォームの労働条件の精査に乗り出したEUの議員に接触している。

配車サービスとオンデマンドのフードデリバリーの巨人は現地時間2月15日、白書を発表し、プラットフォーム業務の「新しい基準」と称するものに関して、欧州の政策立案者に対しロビー活動を展開している。

白書の中でUberは、ギグワーカーが得るメリットの一部を拡大する必要性を説き、ドライバーとライダーが労働者・従業員として再分類された場合、労働者としての権利のフルスイートに資金を供給しなければならないという (Uberにとっての)悪夢のシナリオを回避しようとしている。

Uberはまた、団体交渉の問題を切り離して、政策の議論の方向性を誘導しようとしている。白書では、アプリベースの労働者がより「意味のある」代表権を必要としているという考え方を提案し、その代表は、Uberのいう多様な(つまり個別化された)ニーズを反映するために必要であり、プラットフォームと労働者の間の継続的なエンゲージメントのさまざまなチャンネルを介して実現できることを示唆している。

Uberの白書は、タイトルの「A Better Deal(より良い取引)」を基軸に構成されている。アプリベースの労働者にとってより公平な取引を確保するために新しい法律が必要かどうかを議員が検討しているため、配車サービスの巨人は紛れもなく、自社のビジネスにとって可能な限り最善の取引を引き出そうとしている。

EUの議員が今後数カ月の間に注意を払う必要があるのは、プラットフォームで働く労働者がどのような取引をしているのか、そして大手テクノロジー企業の詳細かつ基調的なPR文書を掘り下げていく中で、欧州お得意の社会契約を損なうことなく、大勢の「契約社員」の条件を改善するための法的枠組みを作る必要があるのか、作るならどのように作るのかという点だ。

Uberは2020年、同社の専門領域に属するギグワーカーを再分類しようとする法案の打破に成功した後、カリフォルニア州の「Prop 22(プロポジション22)」がもたらした成果を世界的に推し進めていくと述べている。

しかし、欧州の法的、社会的な状況は米国とは大きく異なっている。欧州では、多くのプラットフォーム企業が雇用分類の問題で訴訟に直面しており、裁判所は労働者に有利な判決を下すことが多い。

金曜日(2月19日)には、英国最高裁判所が、元Uberドライバーらのグループによる、Uberの自営業者としての分類に関わる長期の係争に対して判決を下すと予想されている。つまりUberは、欧州の裁判所における、これまでで最大の試練に直面しているということだ(英国は現在EU圏外にあるが、この訴訟の結果は欧州全体の裁判に影響を与える可能性が高い)。

既存の雇用法をより明確にし、施行することは、社会を犠牲にし(税収の損失)、安定した雇用(とそれに付随する権利)を奪われた個々の労働者の労働力から利益を得るために、アルゴリズムによるマイクロマネジメントという利己的な分類を利用して法制度の隙間をハイテクハッキングしてきた大手プラットフォームを、欧州の政策立案者が取り締まるための方法になり得る、と批判的な人々はいう。

同時に、オンデマンド空間での統合化が進むことにより、大手ギグ企業の力がさらに強くなっている。では、ひと握りのメガプラットフォームが競争相手との統合を急ぎ、改善の可能性が閉ざされていく中で、労働者を守るための法の介入がなければ、プラットフォームの労働者は「意味のある」代表権や「改善された」条件をどのように期待できるのだろうか。

2月15日、Uberの白書に付随するブログ記事の中で、CEOのDara Khosrowshahi(ダラ・コスロシャヒ)氏は、ギグワーカーの権利に関する大手テクノロジー企業の好ましい「新しい基準」は「ドライバーや宅配業者が最も重要だという原則に基づいていることであり、その原則とは、働きたいときに、働きたい場所で働ける柔軟性とコントロール、適正な賃金を得ること、適切な福利厚生と保護を受けること、そして意味のある代表権を得ること」であると繰り返し述べている。

「実質的な変化をもたらすためには、改革は業界全体を対象としたものでなければならず、すべてのプラットフォーム企業は、どのアプリを使っていても労働者が保護されるように、業界全体で標準化された福利厚生と保護を提供することが求められる」とコスロシャヒ氏は続ける。

プラットフォームの福利厚生に関する普遍的な基準は進歩的に聞こえるかもしれないが、ギグワーカーのための「妥当な」福利厚生という概念は、合意された雇用基準をはるかに下回る水準にこの労働力を固定してしまい、アルゴリズムによって永続的な管理の対象となる労働者にとって、より良い取引の可能性を閉ざす危険性がある。

このような業界全体の基準は、ギグプラットフォームが労働者へのより良い取引の提供をめぐってお互いに競争する必要性を損なうことにもなりかねない。そのため、政策立案者は、支援されるべき労働者にとって不利な取引が固定化されることのないように、慎重に事を進める必要がある。

Uberの白書は、労働者のための詳細な「取引」モデルを定義するのではなく、現時点ではいくつかの主要な原則を提唱し、利害関係者と協議して推し進める必要があると同社は述べている。

また同社は、プラットフォームが依然としてEU各国の寄せ集め規則の影響下に置かれる可能性が高いことも認識しているという。また、欧州委員会が法制化を決定したとしても、そのような法律が施行されるまでには何年もかかるため、判例が非常に重要であることに変わりはない。しかし、加盟国がギグワークの分野に関して取るアプローチや適用する政策に対してトップダウンの圧力となり得る包括的なEUガイダンスを、Uberが自社に有利になるように誘導しようとしていることは明らかだ。

大手プラットフォームは長い間、雇用の分類を「柔軟性と利益」の問題に落とし込もうとしてきた。労働者は何よりも柔軟性(プラットフォーム各社は「いつ働くかを選択できる能力」を意味すると定義している)を重視していると主張しているものの、同時にデータフィケーションやトラッキングを駆使して非雇用労働力のハイテクなマイクロマネジメントによる個人のサービス提供を管理している。

実際には、確かにそのようなプラットフォームにログオンして「好きな時に」働くことはできるが、強制最低賃金のような法的保護がなければ、ギグワークの「柔軟性」が個人の生活を支えるだけの収入になる保証はない。見方を変えれば、頼れる他の収入源がない限り、プラットフォームの労働者には、いつ、どのように働くかを選択する柔軟性や自由は、事実上ないかもしれないことを意味する。

そのため、プラットフォーム各社はしばしば「故意に搾取するように設計されている」と非難されているビジネスモデルの逆説的な防衛を推進している。批判的な労働組合はそれを人間の労働力の搾取や抽出だと指摘し従来型の雇用によってもたらされる社会契約と安定性を蔑ろにするプラットフォームを非難している。

Uberの白書の中で「雇用はプラットフォームの労働者が求める答えではない」と主張を展開するセクションでは、このテクノロジー界の巨人は「柔軟性」がそのてがかりだと述べている。つまり、そのモデルは「ドライバーには、需要に応えるためアプリに接続する自由や、望めばより静かな時間を過ごす選択権がある」ことを意味するという。しかし、ギグワークで収入を得て生計を立てる必要がある人たちは、より静かな時間を過ごす「選択」はできないかもしれない。そんなことをすれば収入が減ってしまう。ではUberは、実際にどの程度の柔軟性(つまり良識的な賃金)を提供しているのだろうか。

(関連する点として、これらの大手ギグ企業の多くは、自動化技術の開発推進のために多額の資金を投入してきた。雇用にともなう税金を払わないことで節約したお金が、完全に人間の労働者に取って代わろうとすることに注ぎ込まれているということだ。そのような所に尊厳はあるのだろうか)

関連記事:Uberの自動運転車部門は月に22億円超を費やしていた

決断を迫られるギグエコノミー

2019年12月の雇用委員会委員へのミッションレターで、欧州委員会のUrsula Von der Leyen(ウルズラ・フォン・デア・ライエン)委員長は、Nicolas Schmit(ニコラス・シュミット)氏に、現行法の執行が機能していることを確認することを含め、プラットフォーム労働者の労働条件を改善する方法を検討するように依頼した。またレターには「尊厳があり、透明性があり予測可能な労働条件は、EUの経済モデルにとって不可欠である」とも書かれている。

シュミット氏は指示を受けてすぐに、プラットフォーム(利益)VS労働者(権利)という構図の論争について、Euractiv(ユーラクティブ)に「プラットフォームに反対しているわけではない」と、バランスのとれた見方を語り、プラットフォームを「EUの新しい経済の一部」とみなし「ギグエコノミーでの優位性を失わないことが欧州にとって重要である」とも主張した。

しかし同氏はまた、ハイテクツールが、新たな「恵まれない」下級労働者を固定化するために使用されることをEUは許してはならないと警告し「19世紀に存在していたような労働条件で21世紀の経済を実現するわけにはいかない」と述べている。

欧州委員会が、不明確なプラットフォーム業務の「改善」のループをどのように政策の中に組み入れていくのかは、まだまったく分からない。しかし、フォン・デア・ライエン委員長が指示を出してからは、ここで良い仕事をしなければならないという責務が増しただけだ。新型コロナウイルス感染症のパンデミックは、プラットフォーム労働者のための適切な社会的セーフティーネットの欠如がもたらす個人的および社会的なリスクに容赦なくスポットライトを当てているが、同時にその副作用として、オンデマンドのプラットフォーム業務(特に食品や食料雑貨の配達のような分野)は、活況を呈している。

Uberの白書では「独立請負人が最も必要としているときに、福利厚生と保護を確実に受けられるようにする」と記しているように、パンデミックの問題とプラットフォーム事業者が労働者を支援するために「さらに進んで」いく必要性について繰り返し述べている。しかしその一方、同社は、雇用のすべての権利と利益を提供することに反対するロビー活動を行っている。

国際的な法律事務所Taylor Wessing(テイラー・ウェッシング)の雇用グループのシニアアソシエイトであるJoe Aiston(ジョー・エイストン)氏は、Uberが白書の中で、ギグワークの「新しい基準」を求めてロビー活動を行っていることについて「同社が最低基準の福利厚生を求めるのは理に適っている」と話す。そして「適当かつ最低限の保護であれば、ビジネスモデルに大きな影響を与えずに容易に提供できる」と続ける。

「全員を従業員や労働者として再分類することを強いられれば、ビジネスモデルは大きく混乱することになり、ビジネスの面では当然、相当のコストアップにつながるだろう。最低賃金や休日出勤手当のような直接的な影響だけでなく、税金の観点でも、間接的に波及的影響を受けるはずだ」。

そして、労働者の状況分析によってギグワーカーが自動的に税務上の目的で従業員として分類されるわけではないが、エイストン氏は、判断基準は「かなり類似している」という。したがって、雇用の分類をめぐる訴訟は、Uberの税務上の立場、ひいてはその(潜在的な)収益性に明らかなリスクをもたらす。

ギグワークをどのように改善するかという問題について、欧州委員会は2020年9月にプラットフォーム業務に関する会議を開催するなど、最善の進め方を模索しながら情報を集めてきた。しかし2021年、EUの議員には大きな決断の時が迫りつつある。

今月末、欧州委員会は労働者と雇用主の代表者による正式な協議を開始する予定だ。そして、Uberの白書は、明らかにそのプロセスを対象としているため、プラットフォームの労働条件の「改善」に影響を与えようと、いくつもの私利的な画策が本格的に始まることになるだろう。

政策的に何が行われるのか、確かなことはまだ明らかになっていない。しかし、2020年3月、欧州委員会は285ページに及ぶ調査結果を発表し、プラットフォーム労働者の労働条件に関して特定された「主な」課題として以下のようなものを挙げた。雇用の状況、労働条件について労働者が利用できる情報、紛争解決、集団的権利および差別禁止などだ(つまり、考えられるほぼすべての課題が挙げられたということだ)。

実際に研究結果を掘り下げてみると、低報酬と不安定な収入についても、非常に詳細に議論され、それらはプラットフォーム労働者にとっての「重要なストレス要因」とされている。

賃金は、確かに議論の重要な争点として提起されているようだ。特に、フォン・デア・ライエン委員長はシュミット氏への指示の中で「EUのすべての労働者が公正な最低賃金を確保できるよう」法的手段の提案を求めていた。

収入が労働者の法定最低賃金を下回る可能性があるというのは、プラットフォーム業務に対するよくある批判である(ギグワークによる賃金は、通常、ギグの注文や商品の受け取りを待つために費やしたダウンタイムすべてが対象となるのではなく、仕事をしている間や配達の完了時にのみ収益が上がるためだ)。したがって、EUの公正な最低賃金の対象となる「すべての労働者」が「プラットフォーム労働者を除く」という意味に終われば、欧州委員会はテクノロジーを利用した「恵まれない」労働者層を固定化してしまうことになる(シュミット氏が、そうなってはいけないと言ったことに反して)。

白書での賃金問題に対するUberのアプローチは、プラットフォーム労働者の「公正で透明性のある収益」(または「適正な」賃金)についてのみ語ることで、最低賃金の問題を回避している。

このテクノロジー界の巨人はまた「プラットフォーム労働者の報酬のあり方における変革を提言し業界をリードする準備がある」と述べている。しかし、業界全体で利用できる(「すべてのプラットフォーム企業が独立請負人に提供しなければならない業界全体の福利厚生と保護を備えた柔軟な収入の機会のための」)枠組みが求められていない限り、報酬については譲歩しないことを明らかにしている。

「これには、最近カリフォルニア州で導入されたProposition 22法のような普遍的な基準が含まれるかもしれない。または、プラットフォーム労働者、政策立案者、業界の代表者が協力し合い、業界のために報酬の原則を設定するという、社会的対話の欧州モデルに基づいたものかもしれない」とUberは示唆している。

関連記事:Uberが「ギグワーカーは個人事業主」というカリフォルニアの住民立法を世界展開へ

Uberは次のように述べている。「例えば、イタリアでは、フードデリバリー業界と一般労働組合が、配送の自営業者の地位を確認する合意に署名する一方、業界に対して、収入、傷害、第三者保険、訓練に関する規定を含む配送業者の労働基準を提供することを要求している」。

Uberはさらにこう付け加えている。「重要なことは、どのような報酬モデルであっても、どのプラットフォームで働くことを選択したとしても、すべての独立請負人に一貫した収益のベースラインを保証するために、業界全体に渡る公平な競争の場に基づいていなければならない」。

そして、この問題があらゆる面で大きな賭けであることは明らかだ。ギグワーカーの権利、大手プラットフォームの利益、そして社会的に進歩的なアジェンダを主張するEUの議員の信頼性がかかっている。

しかし、現時点でEUが法案を提出するかどうかについても100%確証があるわけではない。欧州委員会の広報担当者は、プラットフォームと労働者がこの不明確な労働における「より良い」労働形態のあり方について合意に達することができれば、政策決定は見送られる可能性があると示唆した(しかし、まあ、本当にそうなるのかどうかは運次第だ)。

2021年2月後半の開始が予定されている「社会的パートナー」の正式な協議は、欧州委員会の広報担当者によると、2つの段階で構成されている。

「第1段階では、プラットフォームを介して働く人々の労働条件を改善するためのEUイニシアチブの必要性について意見を求める。第二段階では、そのようなイニシアチブの内容について協議される」と同報道官は述べ、欧州委員会は「社会的パートナーの回答を慎重に評価する」と指摘した。

「社会的パートナーが、協定の交渉を行うことを決定しなければ、欧州委員会は2021年末までに立法的なイニシアチブを打ち出す予定だ」と同報道官は付け加えた。

報道官は、課題が特定され「改善が必要かもしれない」政策分野には「不明確な労働条件、契約の約定の透明性と予測可能性、安全衛生上の課題、社会保護への適切な利用機会」が含まれていることを確認した。

「不明確な労働条件」に低く不安定な報酬が含まれるかどうか尋ねられた同報道官は「申し訳ないが、このイニシアチブに関して、現段階で私たちが言えることは[前述のリスト]だけだ」と言って、明確な回答を避けた。

雇用形態

欧州委員会が主導したギグワーカーの状況に関する調査の最後にまとめられた、いくつかの政策的考察の中には、雇用形態が依然として中核的な課題であるとの記述がある。

「一部のプラットフォームは、自営業者と従業員の狭間で運営され、明確に雇用主の責任を負わず、プラットフォームの労働者を最大限にコントロールすべく業務形態を調整しているようだ」と報告書は所見を述べ、雇用分類の境界がどこにあるのかを明確にする判例の(緩慢な)ペースと「プラットフォーム業務を特徴づける急速に変化するビジネス慣行」との間にギャップがあることを指摘している。

「加盟国が[法律や判例を通じて]従業員の概念を拡大するか、プラットフォーム労働者の雇用形態に関する反証を許す推定を導入しない限り、プラットフォームは、自営業者の労働力への依存を継続または拡大する可能性が高い」と続けている。

「個々のケースでの再分類は、EU法や国内法に基づいて行われる可能性があるが、それが主要な動向を劇的に変える可能性は低い」。

また「プラットフォームに経済的に依存している自営業のプラットフォーム労働者の保護を目的とした措置は、『労働条件』に関する最低基準を確保することが望ましいと思われる」と報告書は付け加えている。さらに、関連する「政策的含意」は、EUと加盟国が「どのプラットフォームの業務形態が自営業のプラットフォーム労働者に適合しないか明確にすることを検討すべきである」と示唆している。

自営業審査の明確化、あるいは審査で不合格とすべき業務形態の明確化は、EU全体の政策立案者が取り掛かるべき法案の1つだ。とはいえ、この件についても、ギグエコノミーに関するフィードバックを受けて欧州委員会がどのアイデアを支持するかは、今後の動向を見守る必要がある。

雇用分類の判例の面では、まもなく英国で、Uberの配車サービス事業に関連する大きな判決が下される。Uberのドライバーを自営業者として分類することに関して2016年に始まった雇用法廷での係争が2月19日に最終判決を迎えるのだ。英国最高裁は、Uberが過去5年間に何度も控訴しては敗訴してきたこの種の訴訟に対して判決を下す。

最高裁の判決は、ロンドンのプラットフォーム上で営業しているとUberがいう約4万5000人のドライバーのみならず、英国全体にも影響を及ぼす可能性が高い。

また、EUの政策立案者がギグワーカーの労働条件の改善に積極的に取り組んでいることを考えると、この判決の影響はそれ以上に波及する可能性もある。

2020年、フランスの終審裁判所は、元Uberの運転手を自営業のパートナーではなく従業員とみなすべきだとの判決を下した。この判決では、会社とドライバーの間に従属関係があることを認め、ドライバーは、価格設定、顧客基盤の構築、業務の遂行方法に関する選択の権限がないなどの問題が指摘された。そして「ドライバーは管理された輸送サービスに参加しており、Uberは一方的に運営条件を定義している」と書かれている。

関連記事:「Uberドライバーはフランスでは従業員」と仏最高裁判所が裁定

しかし、Uberは、2017年に提訴されて以来、ドライバーがUberの利用方法をコントロールできる範囲が広がり、今では「より強力な社会的保護」(無料の傷害保険など)を受けることができるようになったことを挙げて、自社の業務形態に多くの変更を加えてきたと主張し、この事例が前例となることを否定した。

この事例は、苦情ベースの判例に頼るだけでは複数のプラットフォーム労働者に対応する首尾一貫した成果を得ることは難しいことを浮き彫りにしている。

このような係争において、最終的な判決が下されるまでに時間がかかることは、プラットフォームにとっては、少なくとも対象となる争点はもはや適用されないと主張できるよう、業務形態を再構成するのに十分な時間を得ることにもなる。

そのため、ギグワーカーの労働条件の改善を確定するための法整備が確かに必要かもしれない。

エイストン氏は、そのような状況において、結局のところ要求される変更はUberにとって「受け入れられる」ものではないかもしれないとしつつも「状況が変わる可能性があるのは事実だ。もしUberが『最高裁の判決』を受けてビジネスモデルを機能させる方法を大幅に変更した場合、同社はドライバーの定義を再び都合の良いように変えてくる可能性がある」と語る。

「我々は、最高裁がどの争点についてどのような措置を命じる判決を下すか見守る必要があるが、Uberはビジネスモデルにおいて、業務の機能に重大な影響を与える恐れがある変更を加えることが有効かどうかの判断をしなければならないだろう」と同氏は続け「私は、Uberが、おそらく判決に備えて、ビジネスモデルが機能する変更をすでに整備しているのではないかと見ている」と付け加えた。

「つまり、判例は背景に特化しているので、非常に特殊な判例に頼るのではなく、実際の法律と具体的な定義が鍵を握っていると言えるのではないだろうか」と同氏は語った。

委員会の調査では、この分野での政策立案を阻むいくつかの課題にも言及されている。そこには、プラットフォーム業務の明確な定義や、エビデンスに基づいた政策立案のための十分かつ包括的なデータ収集など、基本的なことも含まれている。

エイストン氏は「一旦、誰かが独立請負人ではなく労働者として分類されると、労働者の能力と団体交渉の権利を強化させる可能性が生じる。そのため、最高裁の判決がUberに不利なものとなった場合、それは別の潜在的波及効果をもたらす」と述べ「ドライバーやライダーの団体交渉能力の向上につながる可能性があるため、関連する組合が強い関心を示していることでもある」と続ける。

一方、欧州では、国レベルでの規制や法制化の試みが始まっている。例えばスペインでは、政府が数年前から「falsos autonomos(不当な自営業者扱い)」を受けている労働者を利用するプラットフォームの厳重な取り締まりを目指しており、プラットフォーム業務に適用し摘発するための労働法の改革を進めているところだ。

最近の報道によると、そうした国家的な労働改革プロセスは、配送労働者の雇用をプラットフォームに対して義務化する結果となる可能性がある。そのような動きがあるため、大手プラットフォームは、EU全体に適用される「もっと柔軟な」規制を求めて、欧州委員会へのロビー活動をさらに熱心に行うようになっている。少なくとも国内法が別のEU加盟国の規制に及ぼす影響の範囲を制限し、プラットフォームのビジネスモデルへの潜在的なダメージを限定することを狙っているのだ。

英国政府もまた、法制化が近づいていることを示唆している。政府は2017年まで遡り、ギグワークの調査を含め、近年の労働慣行に関する大規模な調査を実施した。Taylor Review(テイラー・レビュー)と呼ばれるこの調査は、ギグワークをより適切に反映させるために、現在の(英国の)「労働者」の法的分類を更新すべきだと提言している。また、同調査の報告書は「従属契約者」がより適切な枠組みであることを示唆しており、プラットフォームが労働者に対して行使するコントロールに、より大きな焦点を当てるべきとしている。

テイラー・レビューは華々しく公開され、労働者の権利を強化するための政府の計画につながった。しかし、2018年末に発表された改革パッケージ「Good Work Plan(良質な労働計画)」は、貧弱で実体を欠いていると労働組合によって即座に却下された(対して政府はこの計画を労働者の権利の大規模な拡大として宣伝している)。今のところ、ギグワークの問題について具体的に取り組むために多くを成し遂げたようには見えない。

英国政府が2018年に計画の一環として発表した「現代の雇用関係の現実を反映させる」ために雇用形態審査の明確性の向上を目的とした法整備を進めるという公約は、まだ何も実現していない

計画されていた立法がパンデミックの影響で遅れている可能性はある。エイストン氏はまた、Uberの裁判で最高裁が判決を下すまで、政府が方針の公表を控えている可能性もあると示唆している。したがって、政策決定に影響を与えようとUberがEUに対して行っている巧妙なPRにもかかわらず、欧州の判例や世論が下す判断に比べれば、Uberはこの問題について大した口出しはできないかもしれない。

「最高裁が、ドライバーは労働者だとする『Uber』に不利な判決を下した場合、同社にとっては、少なくとも今より少し困難な状況になるだろう。なぜなら、同社は、少なくとも英国では、すべてのドライバーが労働者であることを受け入れるか、判決の根拠を精査し、その根拠から逃れられるようにビジネスモデルを調整するかのどちらかを決定しなければならないからだ」とエイストン氏は話す。

「Uberは明らかにドライバーを労働者ではなく自営業者として扱い続けたいと考えているので、後者を検討しているかもしれないが、PRの観点から考えると、それは同社にとって良いことではないと思う。ドライバーが労働者であると判断されたら、今はそれを受け入れ、ドライバーがその権利を持っていることを認めて先に進む必要があるというのも1つの考え方だ」。

同氏は、ギグエコノミー企業の典型例として、Uberは欧州でドライバーやライダー向けの無料または低価格の保険などの福利厚生パッケージを整備し「良い」会社であり、人を大切にする姿勢を示すことで「自営業」の請負業者が労働者として再分類されるリスクの「芽を事前に摘み取ろうとしている」と指摘している。

このような取り組みでは、再分類されたプラットフォーム労働者が得るであろう権利を網羅することはできず、配車サービスの利用者を味方につける必要もあるため、ここでさらに動きがあるかもしれない。

「ギグエコノミー企業は極端なことは避け、ドライバーが労働者であることは認める、だから最低賃金や休憩時間などの権利があることも認める、という傾向がある。ギグエコノミーのビジネスにも気を配る必要がある。そういった観点から見ると、競争は激化するなるだろう」とエイストン氏は示唆する。

「人々が労働者であることを認めるかどうかは別として、ギグエコノミービジネスは、人々を大切にする義務があることを認識し始めているのだろう。明らかにそれは、人々がいくらかの利益を得ることにもつながるが、同時に、PRの面や会社の企業イメージの観点でもプラスに働く」。

また、注目すべき点は、英国の雇用法がいくつかの国の雇用法よりもニュアンスに富むものということだ。それは、英国ではすでに「労働者」(すなわち、従業員でも自営業者でもない)の概念を持っているからだ。一方、エイストン氏は、他の欧州諸国(そして米国も)での分類は、より限定されている(つまり、被雇用者または自営業者の分類のみ)と指摘する。

「欧州の裁判所は、英国の最高裁判決などに注目するだろう。その判決に縛られるわけではないが、その行方は欧州全域で同様の判決の方向性に少なくとも何らかの波及効果を及ぼすことは想像に難くない」と同氏は示唆する。「留意すべき興味深い点は、英国には労働者の中間的な分類があるということだ。一方、ほとんどの欧州諸国では、自営の請負業者か従業員のいずれかしかない。つまり、欧州の他の国ではもっと大きな二分法になる」。

「英国には、この中間的な定義があるため、ある意味ではより良い状況にある。そのため、英国の裁判所は再分類を命じやすい立場にあるという意見もあるかもしれない。最高裁が[Uberの雇用裁判の係争に関して]ドライバーは事実上労働者であるという控訴裁判所と同様な判決を下した場合、最高裁による判決と控訴裁判所による件の判決との間に相違があるかどうかを見きわめることが重要だ」と同氏は付け加える。

「英国の場合は、上記のような背景があるため、裁判所がドライバーを、一部の保護が適用されるこの中間のカテゴリーに当てはめるべきだという判断を下すのが、他国よりも容易だった」と同氏は説明する。

EUの政策立案者が「労働者」に似たEU全体の基準を策定することを決定した場合、そのような決定はUberなどに大きなチャンスとリスクをもたらすことになるだろう。雇用訴訟が業界の中核的なビジネスモデルに与える脅威を軽減する手段として、利益に関する主要なパラメータに効果を及ぼす(そして、税負担の増加を回避する)チャンスがある。

ギグワーカーに提供される保護レベルの拡大には明らかにコストがかかるだろう。しかし、大手テクノロジー企業にとっての問題は、これらのコストをどれだけ削減できるか、つまり欧州全域で営業を行う際に「問題に直結する」最低限の基準は何か、ということになる。

あるいは、EUの議員は、適切に「公正な」運用上の雇用の制限を確立する方法として、プラットフォームの労働者に対する「やるべきこと」と「やってはいけないこと」のリストを規定し施行することを試みることもできるだろう。これは逆に、その利益(多くの場合、この時点ではまだ理論的なものである)が、従業員ではないとされる多くの人々から提供される豊富で低コストの労働力に依存している大手オンデマンド企業のビジネスモデルを破壊する可能性がある。

プラットフォームに対する具体的な運用要件のリストを設定することは、欧州委員会が12月にEUの議員らによって策定された包括的なプラットフォーム規制(デジタル市場法)の中で提案していることとまったく同じであり、他のビジネスとの公正な取引(およびデジタル競争の促進)を推進するために最も市場力のあるプラットフォームに介入することを目的としている。

ギグプラットフォームについても、労働者のために公正な取引の確保を目的とした同様の介入が考えられる。

Uberなどにとっては、何十万人ものオンデマンド労働者を従業員名簿に載せることを法的に要求されることに比べれば、確かに望ましいことだろう。しかし、それは、これらの大手企業が規模拡大のために利用してきた、ドライバー労働力のタダ乗りともいうべき手法に終止符を打つことにもなるだろう。

今回の件で欧州におけるプラットフォーム経済が終わりを迎えることはないだろうが、調整にかなりの時間がかかることは避けられないように見える。ビジネスモデルは雇用法の変化(および、またはより良い施行)に適応する必要があるだろう。

価格など、コントロール可能な条件を減らしつつ従業員や労働者とは別の業務形態を維持しようとするのか、あるいは人々が労働者であることを受け入れ、それに応じてビジネスモデルと価格構造を適応させるのか(例えば、ライバルのプラットフォームで働く権利を制限するなど)、ギグエコノミー企業はビジネスモデルを調整することの長所と短所を秤にかけなければならないだろう、とエイストン氏は語った。

カテゴリー:シェアリングエコノミー
タグ:UberEUProp 22ギグワーカー

画像クレジット:Bloomberg / Contributor / Getty Images

原文へ

(文:Natasha Lomas、翻訳:Dragonfly)

Uberは最高裁判所の判決を受けて英国のドライバーを「労働者」待遇にすると発表

Uber(ウーバー)は現地時間3月16日、英国で同社の配車アプリを利用し営業しているドライバーを「労働者」として扱うと発表した。これによりドライバーたちは、有給休暇などの福利厚生を受けられることになる。ただ、Uberは最高裁判所の2021年2月の決定に従ったかに見えるものの、アプリ上のドライバーの記録に関わらず、乗客を乗せた時点から就業時間を計算するという同社の決定に対して、新たな闘争ののろしはすでに上がっている。

Uberは、3月17日から英国のすべてのドライバーに、収入の12.07%を基準に算出された有給休暇中の給与を、2週間ごとに支払うと話している。またドライバーには、乗車を受け付けた場合、経費を差し引いた上で、少なくとも最低賃金(いわゆる国民生活賃金)が支払われるとUberはいう。さらに英国での年金受給資格を持つドライバーは、Uberの費用補助を受けた年金制度に自動的に組み込まれる。この補助額は、ドライバーの収入のおよそ3%に相当する。

英国では、働き方がSelf-employed(自営業者)、Employed(被用者)、Worker(労働者)の3つに分類されている。「労働者」は雇用されないものの、最低賃金、有給休暇、受給資格を持つ者には年金が保証される。

Uberが3月16日に話したところによれば、現在の予測に基づき、同社は先に発表した第1四半期または2021年の調整EBITDAの予測値は変更しないとのことだ。

Uberは、2016年から英国での「労働者」の定義を巡る争いに巻き込まれてきた。2021年2月、英国の最高裁判所は、Uberの控訴を棄却し、アプリを利用するドライバーは「労働者」であり、独立した業務請負人ではないという先の判断を再確認した。逆転の見込みはなく、Uberはある意味、しぶしぶ承諾するかたちになった。Uberは、ドライバーの就業時間はドライバーが業務開始をアプリに記録した時点からではなく、乗車を受け付けた時点からとしており、福利厚生も乗車を受け付けて初めて発生するとしている。すでに労働活動家たちは、その点に憤慨している。

「最低賃金と有給休暇と年金をやっと認めたことは歓迎しますが、Uberがこの提案の話し合いに応じた時期が遅すぎました」と、App Drivers & Couriers Union(アプリ運転手および配送業者組合)の声明は述べている。これには、Uberに対して訴訟を起こしたドライバーのJames Farrar(ジェームズ・ファーラー)氏とYaseen Aslam(ヤッセン・アスラム)氏が署名している。「最高裁判所は、ドライバーは労働者として認められるべきであり、最低賃金と有給休暇は、Uberが主張する乗客を乗せてから降ろすまでの時間ではなく、ドライバーの就業開始と終了の記録に基づく就業時間に応じて発生するべきだとの判断を下しました。つまり、Uberのドライバーは、いまだに40〜50%ほど釣り銭を誤魔化されているのです。さらに、最低賃金に基づいてドライバーの経費をUberが一方的に決めることも承諾できません。これは労働協約で話し合われるべき問題です。

今回、Uberが1つ前進したことに間違いはありませんが、法律に定められた最低要件に完全に準拠しない部分は、一切受け入れられません。また私たちは、Uberが労働組合の認定、公正な解雇不服申し立て手続き、データアクセスに関する合意に向けても前進することを期待します」。

ファーラー氏はTechCrunchに対して、この問題はまだ解決していないと話した。次なるステップは、労働裁判所に立ち返り、ドライバーが法的に与えられた権利に基づいて確実に給与が支払われるようにすることだ。

英国での労働問題への対応が継続しているUberだが、ヨーロッパの他の国々の裁判所で争われている問題にも注意を向けなければならない。裁判所の決定によっては、Uberの収益に大きく響く。その一方で、EUの議員たちはギグワーカーの待遇改善のための調査も行っている。英国でのUberの譲歩が、ヨーロッパ全体の協議に影響を及ぼす可能性がある。

カテゴリー:シェアリングエコノミー
タグ:Uberギグワーカー労働イギリス

画像クレジット:Matthew Horwood/Getty Images / Getty Images

原文へ

(文:Kirsten Korosec、Natasha Lomas、翻訳:金井哲夫)

Uberが配達ロボット事業を独立会社Serve Roboticsとしてスピンアウト

Uber(ウーバー)が2020年に26億5000万ドル(約2830億円)で買収したオンデマンド配達スタートアップのロボティクス部門Postmates Xが正式にServe Robotics(サーブロボティクス)という会社としてスピンアウトした。

TechCrunchはディールが投資家に密かに示されたと2021年1月に報じている。

関連記事
UberがフードデリバリーPostmatesの買収を完了
UberがフードデリバリーPostmatesの自律型宅配ロボット部門のスピンアウトを計画中

Postmates Xが開発し、パイロット運用した歩道を自動走行するロボットにちなんだ社名のServe RoboticsはベンチャーキャピタルファームNeoがリードしたラウンドでシード資金を調達した。本ラウンドに参加した投資家はUber、Lee Jacobs(リー・ジェイコブス)氏とCyan Banister(シアン・バニスター)氏のLong Journey Ventures、Western Technology Investment、Scott Banister(スコット・バニスター)氏、Farhad Mohit(ファルハド・モヒット)氏、そしてPostmatesの共同創業者Bastian Lehmann(バスティアン・レーマン)氏とSean Plaice(ショーン・プレイス)氏だ。

Serve Roboticsは、まだクローズしていないシリーズAとなる本ラウンドを認めただけで具体的な内容は明らかにしなかった。スピンアウトの資金調達は最初のトランシェは立ち上げ時に、残りはIPが移行したときに、と段階を踏んで行わることがある。

新会社はPostmates Xを率いていたAli Kashani(アリ・カシャニ)氏が運営する。他の共同創業者にはPostmates時にServeのチームに加わった最初のエンジニアであるDmitry Demeshchuk(ドミトリー・デメシュチュク)氏、元Ankiプロダクト責任者でServeでプロダクト戦略を率いてきたMJ Chun(MJ・チュン)氏がいる。Serve Roboticsの従業員は60人で、本社をサンフランシスコに置き、ロサンゼルスとカナダ・バンクーバーにもオフィスを構える。

画像クレジット:Serve Robotics

「自動運転車がドライバーを不要にした一方で、ロボット配達はクルマそのものを不要にし、配達を持続可能なものに、そしてすべての人がアクセスしやすいものにします」と共同創業者でCEOのカシャニ氏は話した。「次の20年で新しいモビリティロボットはまずは食品の配達、それからその他のものへと我々の暮らしのあらゆるところに入ってきます」。

Postmatesの歩道配達ロボットへの参入は、カシャニ氏のスタートアップLox Incをひっそりと買収した後の2017年に本格的に始まった。Postmates Xのトップとしてカシャニ氏は「なぜ重さ2ポンド(907グラム)のブリトーを重量2トンもあるクルマで運ぶのか」という疑問に答えようと試みた。Postmatesは初のServe自動走行配達ロボを2018年12月に発表した。デザインはほぼ同じだが異なるLiDARセンサーを搭載し、他にもいくつかアップグレードされている第2世代は、ロサンゼルスでの商業立ち上げ前の2019年夏に登場した。

事業拡大に目を向けているとはいえ、歩道の自動走行を専門とする配達ロボットをデザイン・開発・運用するという同社のミッションは続いている。Serveはロサンゼルスでの配達事業を継続する。そしてサンフランシスコ・ベイエリアでのR&Dを強化し、新たな提携を通じてマーケットリーチを拡大する。

スピンアウトは、採算性に向け配車と配達の事業に焦点を絞るというUberの目的に適うものだ。この戦略はUberが2019年5月に上場した後に具体化し、新型コロナウイルスパンデミックが同社にプレッシャーをかけた2020年加速した。2年前、Uberは配車からマイクロモビリティ、ロジスティック、公共交通機関、フードデリバリー、そして自動運転車やエアタクシーといった未来的なものに至るまで、交通全般に会社を持っていた。CEOのDara Khosrowshahi(ダラ・コスロシャヒ)氏は会社の収益化を追求していて、何でもかんでも解体するというアプローチを取っている。

2020年にUberはLimeとの複雑な取引でスクーター・自転車シェアリング部門のJumpを切り離し、ロジスティックスピンオフUber Freightの5億ドル(約534億円)分の株式を売却した。そして自動運転車部門Uber ATGとエアタクシー部門Uber Elevateを切り離した。Auroraが、JumpとLime間の取引と同じような構造のディールでUber ATGを買収した。AuroraはUber ATG買収を現金で行わなかった。代わりにUberがATGの株式を引き渡し、そしてAuroraに4億ドル(約427億円)投資し、これによって合併会社の持分26%を得た。同様に細工されたディールでUber Elevateは2020年12月にJoby Aviationに売却されている。

関連記事
Uberが貨物運送事業で優先株を発行して約530億円を調達、キャッシュ確保の一環
Uberが自動運転部門Uber ATGを売却、購入したAuroraの企業価値は1兆円超え

カテゴリー:ロボティクス
タグ:Serve RoboticsUber資金調達

画像クレジット:Serve Robotics

原文へ

(文:Kirsten Korosec、翻訳:Nariko Mizoguchi