15億円超を調達したSpatialは没入的VR/ARでオフィスのバーチャル化を狙う

VR/ARはまだ一般消費者向けプロダクトとしてはメインストリームとなっていないが、MR(混合現実)テクノロジーによってバーチャルオフィスを実現しようとするスタートアップが資金を調達することに成功している。

Spatialが提供するのは「ホログラフィック・オフィス」だ。これは共同作業のプラットフォームで 複数のオフィスワーカーが同一の3D仮想空間を共有し、人々をアバターで表示することにより少ないリソースで相手があたかも同じ部屋にいるような体験を可能にする。会話したり図表をバーチャルな壁に掛けて示すことも可能だ。いわばGoogle Hangoutや Zoomのバーチャル・リアリティー版というところだ。

以下のSpatioalの紹介ビデオは私が今月のCESで撮影したものだ。

このSpatialは米国時間1月30日、シリーズAのラウンドで1400万ドル(約15億2700万円)のベンチャー資金を確保したことを発表した。同社はサービスに新機能を追加すると同時にサポートするハードウェアを拡大する。またSDKなどを通じてサードパーティが容易にサービスを利用できるようにしていくとしている。

今回のラウンドは、WhiteStar Capital、iNovia、Kakao Venturesがリードし、Baiduと個人投資家が加わった。Instagramの共同創業者であるMike Krieger(マイク・クリーガー)氏、ZyngaのMark Pincus(マーク・ピンカス)氏も参加している。Spatialは 2018年8月のシードラウンドで800万ドルを調達しているので合計2200万ドルとなる。「会社評価額は公開していない」と共同創業者でCEOのAnand Agarawala(アナンド・アガラワラ)氏は述べている。最高プロダクト責任者のJinha Lee(リー・ジンハ)氏がもうひとりの共同創業者だ。

投資家には、Expa、Lerer Hippeau、 Leaders Fund、Samsung NEXTなどのほかにMacintoshの開発で知られるAndy Hertzfeld(アンディ・ハーツフェルド)氏も加わっている。

VR、ARマーケットではMagic Leapだけでも30億ドルの資金を集めている。この市場の会社評価額総額は450億ドルにも上り、Facebookに買収されたOculusのように 高額のエグジットも記録されている。 しかしVRデバイスの販売台数はさほど急激に成長しておらず、昨年の販売は600万台にとどまったもようだ。

【略】

アガラワラ氏はBumpTopの創業者でもあり、2010年にGoogleに買収されて以後、Googleの幹部を長く務めてきたSpatialをSDKを通じて普及させ、多くの人々が使うプラットフォームにしようとする同社の考え方はこうした同氏の経歴によるところが大きい。

「Spatialではアバターを利用し、ハンドジェスチャーで直感的に制御できる複数OSをサポーするバーチャル・オフィスという我々のフレームワークを利用したアプリケーションが多数生まれてプラットフォーム化することを目指している。しかしこの目標を実現するには何年もかかるだろうと覚悟していた。つまり現実のニーズがないところでAR/VRプラットフォームのマーケットもまた立ち上がらないからだ。しかし最近はエンタープライズ向けVR/ARに強い関心が寄せられるようになったので、今年にもブレークできるだろうと期待している」と同氏は言う。

Spatialへの投資家の一人のMike Krieger(マイク・クリーガー)氏は、Loom、Figma、Pitchなど他のエンタープライズ向け共同作業プラットフォームにも投資している。同氏によればSpatialは単なるVR/ARテクノロジー企業ではなく、バーチャルオフィスを作って広くエンタープライズに提供するというビジョンを持っている点が重要だという。これは企業向けチャットサービスのSlackが驚くべき急成長を遂げたのと比較できるかもしれない。

「SpatialのMR(混合現実)ソリューションは将来の効率的オフィスのカギとなるはずだ。ZoomやSlackなどに代表される現在のコミュニケーションのレベルを超えて、未来の共同作業のフレームワークを作るものだ。こうした試みを支援することができることに興奮している」とクリーガー氏は声明で述べている。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

NASAは天文学とエンジニアリングでのVRとARの本当の使い道を発見

実用的なVRハードウェアが登場して数年が経つが、ゲームや見世物以外で、この技術を用いた、これでなければといった利用法はまだわずかしかない。だがNASAでは、あるチームが、科学やエンジニアリングに利便性をもたらすリ方法の研究を続けており、有望でユニークな結果を生み出している。

我々の銀河系に存在する天文学的数の恒星の研究は、一般に古くさい道具や拡散したデータベースに頼っている。紙と鉛筆が活躍している場合すらある。それでは非常に優れた汎用パターン認識エンジン、つまり人間の脳の効率を最大化して情報処理に当たらせるのは難しい。

NASAゴダード宇宙航空センターのTom Grubb(トム・グラブ)氏は、この種のデータの調査や処理にはVRとARが有用なツールになると何年も前から感じていたのだが、彼のチームは、これらの技術を使って直接得られた結果に関する最初の論文を発表した。

彼は、同僚たちとVR環境を使い、アニメーション化した近隣の恒星の調査を行ったところ、他の天文学者が存在を否定していた新しい恒星グループの特定に成功した。恒星の軌跡と位置を三次元空間で直感的に観察できるため、決定的な洞察力が得られるのだ。

PointCloudsVRの恒星データの表示例

「プラネタリウムでは、入手可能なあらゆるデータベースから情報をアップロードでき、人々を宇宙の中に案内できるようになります」と天文学者Marc Kuchner(マーク・クチナー)氏はNASAのニュース記事に書いていた。「私のオフィスの中にプラネタリウムを作るわけではありません。でも、ヘッドセットを装着すれば、もうそこがプラネタリウムです」

グラブ氏とそのチームは、天文学用データベースのみならず、エンジニアリングの作業をVRで行うためのソフトウェアをいくつも開発した。重工業界は、安全対策、メンテナンス、訓練といった日常的作業にVRとARを活用する方法を研究しているところでもあり、NASAはエンジニアリングでの活用とクロスサイト・コラボレーションの可能性を探っている。

彼らの研究には、データの閲覧と操作のための基本ツールの確立も含まれている。

関連記事:NASAの有人商用宇宙飛行をiOSとウェブアプリで疑似体験

「ハードウェアはすでにあります。サポートもあります。ソフトウェアは、仮想世界とのインタラクションの統一と同様に遅れています」とグラブ氏は説明する。「ピンチやズームのような操作方法、マウスの右クリックや左クリックがみな同じ動作をするといった、簡単な決まりすらありません」と続ける。

しかし、三次元の星図や探査船の内部を再現した仮想環境に人を送り込みさえすれば、新たな発見の機会が開かれる。

「私たちはみな同じ環境の中にいます。そこで誰かが何かを指さしたり、動かしたりすると、みんなでそれを見ることができます」とグラブ氏。そして「モックアップの製作はまだ必要ですが、実際に作る前の段階で何度も練り直しができます。ケーブルの取り回しなんていう話は一般の人は興味を示さないでしょうが、エンジニアにとって、仮想環境でそれができて、どれだけのケーブルが必要で、配線がどのように見えるかを事前に把握できるのは、とっても有り難いことです」とのことだ。

研究は今も続けられている。彼らの最初の天文学的成果を解説した論文は間もなく出版される。もちろん、彼らが作ったものは、折に触れて一般公開もされている。例えば、彼らが恒星やライダーのデータを見るのに使用しているPointCloudsVRツールは、GitHubですべてダウンロードできる。

画像クレジット:Chris Gunn / NASA

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(翻訳:金井哲夫)

スマホAR対戦アプリのGraffityがプレシリーズAラウンドで1億円を資金調達

AR対戦アプリ開発のGraffity(グラフィティ)は1月20日、プレシリーズAラウンドで総額約1億円の資金調達を実施したことを明らかにした。引受先はディープコア、East Venturesと複数の個人投資家で、J-Kiss方式での調達となる。

Graffityメンバーと投資家。写真前列中央がGraffity代表取締役の森本俊亨氏

高校体育で採用されたスマホARゲーム「HoloBreak」

Graffityは、2017年8月の創業。2017年11月に3000万円の資金調達を発表している同社は、これまでに空間に落書きできるAR SNSアプリ「Graffity」AR対戦ゲーム「ペチャバト」といった、スマートフォンで遊べるtoC向けのARアプリを提供してきた。

現在同社は、ARシューティングバトル「HoloBreak(ホロブレイク)」を手がけている。HoloBreakは仮説実証フェーズにあり、一部教育機関やアミューズメント施設に提供しながら、検証・開発を進めている最中だ。

HoloBreakは、スマホで画面の向こう(画面の先の見知らぬ誰か、という比喩的な意味ではなく、リアルに画面の目の前)にいる相手と撃ち合う対戦ゲームだ。どういうゲームか、というのは動画を見てもらえると、よりわかりやすいかもしれない。

同社から以前リリースされたペチャバトも、対戦相手のスマホを的として、雪合戦のように「弾」をタップして投げ合い、当たると得点できるゲームだった。ペチャバトが4人対戦でHPを削り合う、勝ち残りバトルロワイヤル形式だったのに対して、HoloBreakはチーム戦で得点を重ねていくゲームになった。

また、HoloBreakではアメリカンフットボールのように攻守の役割があり、使う武器が選択できるなど、戦略を立てて挑むことになるため、思考力・判断力とチームワークが要求され、よりスポーツ性の高いゲームに仕上がっている。

その先端技術とスポーツ性が評価され、HoloBreakは、2019年11月には筑波大学附属高校の体育選択科目に採択された。同校の体育選択科目では生徒が授業内容を提案する方針になっており、ペチャバトのユーザーだった生徒の発案で、HoloBreakが取り上げられることになったそうだ。

Graffity代表取締役の森本俊亨氏は「バットやボールといった道具不要で、スマホさえあれば体を動かして遊べるARゲームを作っていく」と話している。ARスポーツでよく名前が挙がる対戦ゲームの「HADO」の場合は、フィールドが設置された施設で遊ぶことが前提となっている。スマホだけでも遊べるHoloBreakは「その点が、ちょっと違っている」と森本氏は説明する。

「Graffityが目指すのは、ARを軸に人と人とのつながりを変えていくこと。ARプロダクトのゲーム性を生かして、新しいコミュニケーションを作りたい」という森本氏。競合として見ているのは、同じスマートフォンで遊べて、画面と可処分時間を取り合う可能性があるソーシャルゲームだ。

「スマホARはARバトルという形で最も広まるだろう」

HoloBreakはこれまでに、教育機関2カ所、エンタメ施設2カ所に提供されている。森本氏によれば「いずれも満足度は高い」ということだ。高評価を踏まえ、今回の資金調達により、HoloBreakをスマホアプリとして広く公開できるように開発を進めていくという。2020年秋には日本のアプリストアでリリース予定で、その後、海外にも展開を図る。

森本氏は「スマホARは、ARバトルという形で最も広まるだろう」と話す。「『AR×バトル』は世界でもまだ確立されていない市場。多くのARアプリは『ARならではの体験』ではなく、使われ続けるものではないが、ARバトルは『ARならではの体験』をうまく生かし、日常に浸透するプロダクトになる可能性が高いため、ARアプリの本命になると考えている」として、「そのARバトルの領域で、No.1を取りたい」と語る。

そのためにも、まずはHoloBreakのようなARシューティングバトルゲームを国内外にリリースし、教育機関やテーマパークなどにも導入していきたいという森本氏。またHADOのようにeスポーツ化も考えているとのことで、いずれは大会を開けるようにしたいとのことだ。「HoloBreakで実績を作れたら、キャラクターなどのIP保有者と組んで、別タイトル展開も狙っていきたい」とも話している。

「ARを軸に人と人とのつながりを作りたい、というのがミッションに『ARで、リアルを遊べ。』を掲げる我々の目指すところ。これからも、人と人とのコミュニケーションを大切にしていく」(森本氏)

マネタイズについては、基本的にアプリ内課金を中心としていくというGraffity。BtoCで創業しながらも、技術を核にBtoB事業へピボットしていくスタートアップも多い中、森本氏は「当面、BtoCでがんばっていく」と話していた。

Graffity代表取締役 森本俊亨氏

AR謎解きゲーム「PSYCHO-PASS サイコパス 渋谷サイコハザード」が1月21日より開催

プレティア・テクノロジーズとフジテレビジョンが共同開発したAR謎解きゲームの「PSYCHO-PASS サイコパス 渋谷サイコハザード」が1月21日から6月30日まで開催される。現在予約受付中だ。

2019年7月に資金調達を発表した際に「大型IPとの連動企画や全国展開」を目指していると説明していたプレティア・テクノロジーズ。同社は2020年、最高な形でスタートを切った。

同社は以前より同じAR謎解きゲームである「サラと謎のハッカークラブ」シリーズを展開しているが、他社のIPを扱うのはこれが初めてだ。

プレティア・テクノロジーズ代表取締役CEOの牛尾湧氏は「サイコパスという作品は、AR技術のバイブルのような存在。『このような形で世の中に実装されていくんだ』というのを示している。IPと我々のテクノロジーの相性は非常に良かった」と話す。

AR謎解きゲームでは、プレイヤーはスマホを使い、主人公として登場する仲間たちと協力しながら、実際の街を歩き、謎を解いていく。

PSYCHO-PASS サイコパス 渋谷サイコハザードでは、舞台は実際の渋谷の街。監視官候補生となり、チャット機能で狡噛慎也や常守朱などの登場人物たちと連携を取りながら、ゲームを進めていく。

サラと謎のハッカークラブの第2弾をプレイした際には、謎解きゲーム初心者としては少し難易度が高く感じられた。だが、今回のPSYCHO-PASS サイコパス 渋谷サイコハザードに関しては、普段謎解きゲームをプレイしない人でもクリアできる程度に、常守朱よりヒントが与えられるので安心だった。

監視官候補生として登場人物と謎を解いたり、ARでドミネーターを撃ったりすることができるのは、作品のファンにとってはたまらない。ネタバレになるので多くは語れないが、AR技術を駆使した謎解きが展開されている点も要注目だ。プレイ時間も90から120分となっており、映画を観にいくような感覚で、気軽に遊びに行ける。

PSYCHO-PASS サイコパス 渋谷サイコハザードの価格は平日は2900円、土日祝は3400円。ストーリーは以下のとおりだ。

211X年、シビュラシステム運用下にある東京のS区でガス兵器による事件が発生したとの情報が入った。公安局刑事課一係に配属された監視官候補生(プレイヤー)は、狡噛・常守とともに犯行現場へ向かう。謎を解き明かして、隠された真実を知ったとき、監視官候補生の下す「正義」とはー。

サムスンがARグラスを披露し、その開発を示唆

Samsung(サムスン)の記者会見は奇妙だった。Galaxyや洗濯機といったおなじみの製品はほとんど採り上げられなかった。代わりに中心となったのは、ワークアウトに使用する外骨格と親しみやすいロボットのコールアシスタントだった。

そしてARの発表があった。しかしそれは、ARについてのはっきりした説明ではなく、示唆だった。ARが登場したのは、ワークアウトに利用された外骨格、GEMS(Gait Enhancing and Motivation System)のデモだった。外骨格の着用者は「サムスンARグラス」を取り出した。このデモには、かなり気味の悪いARアシスタントが登場ている。

ARはいったんその出番を終えたが、少し後にまた登場した。視覚に障がいがあるユーザーが、大切な人に会う際のサポートとしてGear VRが利用されるという(涙を誘う)映像が流れた後、フレームの中央にカメラを備えたARグラスによる別テイクと思われる映像が続いた。

もちろん、このステージで披露された不思議なものはすべてプロトタイプであることに注意しなくてはならない。良くて可能性のあるロードマップ、悪ければ不確かなフィクションだ。いずれにしても、私は2020年にサムスンがGear VRからARサングラスに乗り換えるとは思わない。

とはいえ、業界の大きな流れを考えると、サムスンがこうした可能性を探っている理由は十分理解できる。

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(翻訳:Kaori Koyama)

VRプラットフォーム運営のクラスターがKDDIやテレ朝から総額8.3億円を調達

VRを活用したイベントプラットフォーム「cluster」を運営するクラスターは1月6日、総額8.3億円の資金調達を発表した。第三者割当増資による調達で、引き受け先はKDDI(KDDI Open Innovation Fund 3号)、テレビ朝日ホールディングス、Wright Flyer Live Entertainment(WFLE)、三井不動産/グローバル・ブレイン(31VENTURES Global Innovation Fund 1号)、個人投資家となってる。また、テレビ朝日とWFLEの2社との業務提携も明らかにした。WFLEは、バーチャルアーティスト(バーチャルYouTuber)に特化したライブエンターテインメント事業を展開する2018年4月設立の企業。バーチャルアーティスト専用ライブ視聴・配信アプリ「REALITY」を開発・配布しているほか、バーチャルアーティスト専用スタジオ「REALITY Studio」を所有している。

clusterは、インターネット経由で音楽ライブ、カンファレンスなどのイベントを開催できるVRアプリ。VRデバイスのOculus Rift、HTC VIVE、HTC VIVE Proのほか、MacやWindowsマシンで利用・視聴できる。数千人と同時接続可能なのが特徴で、これまで開催した多数の有料イベントに大勢の観客が集まるなど人気のプラットフォームとなっている。今後テレビ朝日とは、バーチャルイベント事業や映像配信事業などで協力し、コンテンツの企画・開発を検討していくという。WFLEとは、REALITYのサービス上で作成したアバターをclusterで簡単に利用できる機能を共同開発する予定だ。

今回の注目はやはりテレビ朝日との業務提供だろう。すでにテレビ局では、関東、関西のキー局を中心に放送の一部でバーチャルなキャラクターを使った情報番組やバラエティ番組が放映されている。しかし、今回テレビ朝日がバーチャルアーティストのプロモーションや演出に長けたクラスターを組むことで、同局はもちろん、資本参加しているAbemaTVで、アナウンサーやキャスターのキャラクターに左右されない、天気予報やストレートニュースなどでもバーチャルアーティストが活躍するかもしれない。

センサー満載のハイテクグローブ開発の「HaptX」が13億円を追加調達

ハイテクグローブを開発している会社が新たな資金を手にした。HaptXが作っているのはVRやロボティクスアプリケーション向けのセンサー満載のグローブで、企業ユーザー向けに触覚のシミュレーションや抵抗力のフィードバックも行う。

米国シアトルを拠点とする同社は1200万円の資金調達ラウンドを完了した。参加したのは、Mason Avenue Investments、Taylor Frigon Capital Partners、Votiv Capital、Keiretsu Forum、Keiretsu Capital、Amit Kapur of Dawn Patrolの各社。HaptXの総調達額はこれで1900万ドル(約20億8100万円)になった。同社は、この資金を次世代グローブハードウェアの開発に向けるとのこと。

私は昨年このグローブを使ってみる機会を得た。繋がれた圧縮空気ユニットを使って手袋形状の内側にある空気ポケットを拡大縮小することで、VR空間でつかんでいるものが実際に手の中にあるように感じられるちょっと奇妙な体験だった。

関連記事:HaptX is bringing touch to VR with a pair of scary-looking gloves and a pneumatic suitcase

ここで言うまでもないことだが、バーチャルリアリティー業界の消費者市場への参入は期待どおりには進んでいない。業務分野での利用の方がやや期待が持てそうだが、それでも社内イノベーションプロジェクトの域を出ていないものがほとんどだ。HaptXは他のVRスタートアップと同じ企業ユーザー基盤をターゲットにしているようで、顧客の多くはデザインやビジュアル化のプロセスでこのグローブを使っている。HaptXは自らをVR専門の会社として売り出すことを避け、ロボティクス分野へと拡大してリアル世界の入力と出力に基づくソリューションを提供しようとしている。

今回の資金調達の発表とあわせて、HaptXはAdvanced Input Systemsと製品開発、製造、市場開発で協力することを発表した。HaptXは企業向けに特化しているので、残念ながらJeff Bezos(ジェフ・ベゾス)氏のメカスーツは作っていないようだが、今年のカンファレンスでベゾス氏がこのテクノロジーをデモしている素晴らしいGIF動画を送ってきてくれた。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

キング牧師の「私には夢がある」をVRで再現、1963年8月28日を蘇らせるタイム誌の挑戦

リンカーンの奴隷解放宣言から100年目の1963年8月28日、キング牧師ことマーティン・ルーサー・キング・ジュニアは、人種差別の撤廃を求め、リンカーン記念堂前で「I Have a Dream(私には夢がある)」と演説。それから50年以上が経つ今、タイム誌はキング牧師による歴史的なスピーチをVRで再現した作品「The March」を公開すると発表した。この作品は、フォトグラメトリー、モーションキャプチャー、3Dアニメーションにより、歴史を蘇らせる。

タイム誌のMia Tramz氏は「このプロジェクトを通じて、我々は前世代と現世代を引き合わせた。若者たちはアメリカの歴史における公民権運動の重要性を理解することとなる」とコメント。

The Marchでは、20万人もの人々が参加した「ワシントン大行進」を再現するため、80人もの人物をモーションキャプチャー。若者から実際にキング牧師のスピーチを目の前で見た彼らの曾祖父にあたる世代までもが参加している。

「教科書で読んだ昔話が、突如、自分ごとに。一人称体験は人の心を揺さぶる」(Tramz氏)

The Marchは、2020年2月28日、シカゴのDuSable Museum of African American Historyで実験的に公開されるが、同年中にはアメリカ中の博物館で展開される予定だ。

Facebookが脱Googleへ、ハードウェアのソーシャル化に向けて新OSを開発中

Facebookのハードウェア製品は、現在のところAndroid OSで作動している。しかしFacebookはOculusやARヘッドセットなどをGoogleの支配下から脱出させようと決心している。

FacebookはMicrosoft(マイクロソフト)のWindows NTの共同開発者として著名なMark Lucovsky(マーク・ルコフスキー)氏をオペレーティングシステム担当ジェネラル・マネージャーに任命した。Informationによれば、Facebookはまったく新しいソーシャル・オペレーティング・システムをゼロから開発しているという。もちろんFacebookのスマートフォンアプリは将来もAndroidデバイス向けに提供される。

Facebookのハードウェア担当バイスプレジデントのボズことAndrew Bosworth(アンドリュー・ボスワース)氏 は「次世代のコンピューティング環境に我々の場所を確保したい。市場やライバルに100%任せておくわけにはいかない。Facebook自身でそれをやる必要がある」と述べている。

Eye OS

独自OSを持てばFacebookはハードウェアにソーシャルな対話やプライバシーをさらに深く焼き込むことができるだろう。GoogleとFacebookが衝突した場合でも独自ガジェットの開発が挫折する危険を避けられる。FacebookはTechCrunchに対し「現在の目的はARヘッドセットを駆動(するOSの開発)だ」と述べた。ARデバイスの作動させるためにFacebookは独自開発だけでなく、他社との提携を含めてあらゆる選択肢を検討している。

Facebookが独自OSを持つこのメリットはほかにもある。Facebookへの囲い込みだ。FacebookはInstagramブランドのARヘッドセットを開発しているが、これが独自OSで作動するようになれば、買収した企業のエンジニアがスピンアウトすることを防ぐにも効果的だ。

Facebook Portal Lineup

FacebookはこれまでもVR/AR分野で独自のOSを所有していないことで痛い目にあってきた。 最大のライバルであるApple(アップル)やGoogleの好意に頼るしかないのはFacebookにとって極めて不利だ。プライバシーやデータ収集に関してアップルのCEOであるTim Cook(ティム・クック)氏は繰り返しFacebookとマーク・ザッカーバーグ氏を批判してきた。 Voxの記事によれば、Facebookは2013年ごろモバイルOSの研究を進めていたという。これはOxygenと呼ばれる極秘プロジェクトで、Google Playストアを経由せずにFacebookアプリをAndroidデバイスに配布する方法を探るものだった。

しかしこうした試みは失敗に終わった。中でも目立ったのはFacebookがHTCと共同で開発したAndroidをフォークさせたOSの場合で、スマートフォンのHTC Firstもスマートホームを目指したFacebook Homeもきわめて評判が悪く、すぐに棚上げとなった。

テクノロジーの未来、AR/VRへの投資

こうした失敗からAR/VR開発の困難さを学んだFacebookは、独自デバイスの開発に本腰を入れることになった。本社の北24kmのバーリンゲームに、巨大なハードウェア開発キャンパスを建設したのだ。3500平方mにもおよぶこの施設は4000人の社員を収容できる。

TechCrunchの取材に対してFacebookは「ハードウェア開発チームは2020年下半期にこちらに移転する」と確認した。バーリンゲームにはラボ、プロタイプ製作施設、テストエリアなどが用意されている。現在FacebookのAR/VRチームはカリフォルニア州、ワシントン州、ニューヨーク州など全米各地に散在している。

PortalとOculusデバイスのセールスもさして爆発的でないこともあり、これまでFacebookのハードウェアに対する取り組みがどの程度真剣なものか疑問視する声もあった。Facebookはこの点についてコメントを避けている。

しかし来年は状況が大きく変わりそうだ。AR/VRデバイスのフラグシップがいよいよマーケットに登場する。私は一人称シューティングゲームの「Medal of Honor」(メダル オブ オナー) のOculus Quest版(2020年リリース予定)のプレビューを体験した。プレイしたのは1時間ほどだったが、第二次大戦の欧州戦線を舞台にしたこのゲームは私が体験した中で、単なるテクノロジーのデモに終わらず、何週間も楽しめそうな最初のVRゲームとなっていた。Medal of Honorは多くのゲーマーをOculus Questの購入に踏み切らせるのキラーアプリとなるかもしれない。

ソーシャルハードウェア

Facebookはエンタープライズ向けハードウェア体験の向上にも力を入れてきた。ビジネス向けFacebookのWorkplaceは今年始めに200万人のユーザーが登録しており、10月にはビデオコールをPortalに対応させた。発言者に自動的にズームするスマートカメラを利用すればとビジネスミーティングをリモートで開催するのも簡単になる。Informationの記事によれば、FacebookはVRを利用したビデオカンファレンスのプロトタイプを開発中で、ボスワース氏が自らテストしているという。

私の取材に対してFacebookはボスワース氏は、部内のイベントに2回VRで登場したことを認めた。またボスワース氏のチームのリーダー100人ほどがFacebookが開発したVRのQ&Aソフトを利用している。FacebookではVRを誰もが簡単に使えて信頼できるビジネスツールに仕上げ、VRでミーティングが可能になるよう努力している。

またハードウェア開発はFacebookのコアである広告事業にもフィードバックされている。OculusPortalのユーザー行動のデータを広告ターゲティングに利用する試みも始まっている。VRゲームでどんなアイテムを好んだか、バーチャル観光アプリでお気に入りのバケーションスポットはどこだったかなど、収益に結びつく広告の可能性は多数考えられる。

Facebookに取材したところでは、Portalディスプレイもログインしたユーザーの行動データを収集しており、通話回数や時刻、利用した機能などが広告ターゲティングに活用されている。例えば、ユーザーがビデオ通話をたびたび利用しているならそれに関連した広告が表示されることになるかもしれない。Oculusについても同様だ。

Facebookはユーザーが行動に移す前に頭の中で考えていることも知ろうとしている。脳とコンピュータを直結するインターフェイスサもかなり小型化してきた。これはセンサーで微弱な脳波を検知し、解析して言葉として認識できるようにしようというもので、当初冷蔵庫くらいのサイズがあったのが現在はノートパソコン程度になっている。もっともスマートフォンに導入できるのはまだだいぶ先だろう。

【略】

Facebookでは1分間100語程度のペースで「頭脳入力」ができるようにすることを目指しているという。

Oculusヘッドセット、スマートスクリーンのPortal脳直結入力システムなどの販売はFacebookが毎年広告から上げていている何十億ドルもの収入をもたらさないかもしれない。しかしこうしたハードウェアは明日のコンピューティング環境からFacebookが締め出されるリスクを大きく減らすものだ。VRのように完全に没入的であろうと、チャットに特化した便利なディスプレイであろうと、あらゆる場所に入り込める超小型センサーだろうと、Facebookはあらゆるデバイスをソーシャル化しようと考えている。どんなガジェットであれ、友達と一緒ならもっと楽しめるというのがFacebookの信念だ。 Facebookはテクノロジーデバイスが人間を孤立させるのを防ぎながら、当面少しずつでも利益を上げていく方針のようだ。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

京急アクセラレータープログラムの第3期募集を開始、デモデイは2020年9月上旬

京浜急行電鉄とサムライインキュベートは12月10日、新規事業創出を目指した「KEIKYU ACCELERATOR PROGRAM」(京急アクセラレータープログラム)の第3期の募集開始を発表した。取り組みの成果を発表するデモデイは2020年9月上旬を予定している。

同プログラムは2017年からスタートしており今回が3回目。ベンチャーキャピタルのサムライインキュベートは第2期から運営に参加しており、これまでに京急グループと8件の実証実験を実現してきた。ちなみに第2期の採択企業は、TechCrunch読者におなじみの手荷物預かりサービス「ecbo cloak」を運営するecbo、タクシーの相乗りのマッチングサービスを運営するNearMe、傘シェアサービス「アイカサ」を運営するNature Innovation Group、AIチャットボットを活用したホテルのカスタマーサポート支援サービスを提供するtripla、ヘリコプターのライドシェアサービス「CodeShare」などを展開するAirXの5社だった。

関連記事:京急がアクセラレータープログラムのデモデイ開催、社長賞は手荷物預かりサービスのecbo

募集からデモデイまでのスケジュールは以下のとおり。

  • 募集開始:2019年12月10日(火)
  • 個別相談会:2019年12月12日、19日、2020年1月9日、23日、30日
    ※場所:AND ON SHINAGAWA、専用ウェブサイトから予約
  • AND ONパートナーミートアップ:2020年1月15日
    ※場所:AND ON SHINAGAWA
  • 募集締め切り:2020年2月3日
  • 書類・面談選考、事業共創プランの議論:2020年2月~3月
  • 事業審査会・採択企業決定:2020年4月
  • テストマーケティング期間:2020年4月~8月
  • 成果発表会(デモデイ):2020年9月上旬

第3期のテーマは「リアルとテクノロジーの融合による新しい顧客体験」で、、沿線地域にこれまでにない新しい体験を付加するもの、既存事業領域をデジタルテクノロジーでアップデートするものの2つの方向性でスタートアップとの事業共創を進める。テーマとなる領域は、Mobility、Living、Working、Retail、Entertainment、Connectivityの6つが設定されている。具体的には以下のとおりだ。

  • Mobility(移動)
    1.パーソナルモビリティ、デマンド型交通、水上交通、エアモビリティなど
    2.配車、案内、チケッティング、点検業務などにおけるテクノロジーの活用
  • Living(暮らし)
    1.地域情報の統合、防犯・防災、住宅向けモビリティ、シェアリングサービスなど
    2.賃貸仲介、新規物件の販売・分譲、タウンマネジメントなどにおけるテクノロジーの活用
  • Working(働く)
    1.オフィスとモビリティの連動、出張の手配、オフィス向けの飲食サービスなど
    2.リーシング、点検業務、警備、清掃などにおけるテクノロジーの活用
  • Retail(買い物)
    1.体験型店舗、パーソナル・リコメンド、デジタル広告、無人店舗など
    2.リーシング、需要予測・分析、仕入れ、配達、物流などにおけるテクノロジーの活用
  • Entertainment(遊び)
    1.観光資源の発掘・活用、パーソナル・リコメンド、位置情報やVRを活用したゲームなど
    2.宿泊・娯楽施設の需要予測、分析、ガイド、警備、清掃などにおけるテクノロジーの活用
  • Connectivity(つなぐ)
    1.複数領域をまたぐ検索・予約・事前決済、リコメンド、送客など
    2.各事業領域におけるデータの統合、分析、予測などにおけるテクノロジーの活用

なお、採択企業はもちろん応募したすべての企業は、AND ONパートナーとの個別協業やサムライインキュベート(Samurai Incubate Fund 6号投資事業有限責任組合)からの出資の検討対象となる。

FacebookがVR造形ツール「Oculus Medium」をアドビへ売却

Facebookは、クリエーター向けの3Dバーチャルリアリティ彫刻ツール「Oculus Medium」をAdobe(アドビ)に売却した。Facebook傘下のOculusは、このチームに多大なエネルギーを注ぎ込んできた。それを売却することは、Facebookが社内でのVRプロジェクトの取り組み対し、広範囲に再考中であることを意味している。

Oculusは、長年にわたって非常に多くの資金をMediumにつぎ込んできたことは明らかだ。今回の売却は、Oculus Mediumチームにとって、歓迎すべきことではないだろう。このかなりニッチなソフトウェアに対する買収額が、その投資に見合った金額だったとしても。契約の条件は明らかにされていないので、Adobeがどのような取引を成立させたのかは不明だ。

幸いなのは、FacebookがあえてMediumをうまくスピンアウトさせる方策を取ったこと。以前FacebookがOculus Story Studioを廃棄した際には、同社は従業員をひそかに解雇していた。Mediumは小さなコミュニティで好まれている。Adobeが、これを自ら同社の他の製品と統合することは、かなり理にかなっている。間違いなく、より良いソフトウェアになるはずだ。今後もMediumが生き続けることが分かって、ほっとしている。

「Beat Saber」のメーカー、Beat Gamesの買収後にMediumを売却したのは、現時点でOculusのVRコンテンツ戦略を要約するような動きだ。つまり、ゲーム以外のクリエイティブツールには新たな投資は行わず、映画レベルのVRコンテンツの優先順位は低く、Facebookはタイトル数を増やすためにもっと多くのゲームスタジオを買収する準備をしているということ。長年にわたって、遠い未来のことだけを語ってきた部門にとって、これはおそらく実際のハードウェア上での見栄えを重視するという、現実的な戦略なのだ。

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(翻訳:Fumihiko Shibata)

Magic Leapの最初の製品は売れ行きがあまりにも不振

Magic Leapがさきほど、シリーズEの資金調達ラウンドをもうすぐ完了すると発表したが、でも同社はその投資に、市場における同社の唯一のデバイスの売れ行き不振を組み合わせることになりそうだ。

The InformationのAlex Heath氏の記事によると、Magic Leapは同社の2300ドルのヘッドセットMagic Leap Oneを発売後6か月で6000台売ることはできたが、その数字の与える印象は、CEOのRony Abovitz氏が初年度の売上目標として言っていた100万台に比べてあまりにも微小すぎる。Abovitz氏自身もその後考えを変えざるをえなくなり、初年度の目標を10万台に修正した。

今本誌は、同社にコメントを求めている。

Magic Leap Oneのリリースまでの同社の道のりが派手な評価と期待に彩られていただけに、これほど低い出だしの売上は、Apple(アップル)やMicrosoft(マイクロソフト)に負けない拡張現実グラスを作るという同社の究極の目標に水を差すことになるだろう。そのほかのARヘッドセットも売上を明言しているものは少ないが、でもMagic Leapは、最初の製品のリリースまでに調達し費消した金額ではどの他社よりも多い。

同社はこれまでに、GoogleやAlibabaを初め多数の投資家からおよそ26億ドルを調達している。Heath氏の記事は、Googleの、そして今やAlphabetのCEO Sundar Pichai氏がMagic Leapの取締役会を降りて、Googleの他の役員に入れ替えられた、と報じている。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

ナイアンティックとクアルコムが共同で拡張現実グラスを開発

Pokémon GO(ポケモンGO)を作ったNiantic(ナイアンティック)が、今の拡張現実にできることに限界を感じていることは、かなり前から知られていた。4Gのセルネットワークでは避けられないレイテンシーやARではプレーヤーがスマートフォンを振る必要があることなど、その技術はとうていナイアンティックが望むものではない。4月の同社に関する記事では彼らはもっぱら、5GとARグラスでできることを精力的に探求していた。CEOのJohn Hanke(ジョン・ハンケ)氏は、スマートフォンの次はARグラスの時代だと確信していた

だからナイアンティックがQualcomm(クアルコム)と組んで5G対応のARグラスを作っていることは、当然の成り行きだ。米国時間12月5日の朝、クアルコムが発表した新しいチップセットであるXR2は、拡張現実と仮想現実のデバイス専用のプラットホームだ。

その発表のあとナイアンティックのCTOであるPhil Keslin(フィル・ケスリン)氏がステージに立ち、同社はこのプロジェクトでクアルコムとの複数年のコラボレーションに取り組む、と発表した。で、結局それはどういう意味か?

至近のビッグプロジェクトは何もない。今年のクリスマスにクアルコム/ナイアンティック製のARグラスでポケモンGOを遊べるわけではない。

しかしもうちょっと先には、両社共作拡張現実グラスの参照ハードウェアが世に出て、一部のユーザーによるベータテストが始まったりするだろう。

同時にナイアンティックは、同社のこれまでのすべてのゲームのベースであるReal World Platformを、これまでのように徐々にサードパーティに対して公開するだけでなく、XR2向けにチューンアップするだろう。ナイアンティックはこの数年間、過去に作ったすべてのアーキテクチャをARグラス向けに秘かに改造してきた。そしてこれからは、具体的なチップへの対応を図り、より現実性のある取り組みになる。ケスリン氏によると、その次の段階としては、それらの技術のすべてをReal World Platformへ集約し、誰もがNiantic Creator Programで利用できるようにする。その最終ローンチは2020年の年内を予定している。

クアルコムは安心してパートナーできる企業だし、AR世界のよそ者でもない。同社はこれまで1年以上、AR/VR専用のチップを研究開発してきた。昨年の5月にはXR1プラットホームを披露した。またVuforia SDKの立ち上げにより、拡張現実の開発プラットホームの構築にも深く入り込んでいる。ただしそのプロジェクトは、チップにフォーカスするために2015年に売却された

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

クアルコムが5GサポートのAR/VRプラットフォーム「XR2」を発表

Qualcomm(クアルコム)は豪勢にも、太陽輝くハワイのマウイでSnapdragonサミットを開催した。同社はSnapdragon 865/765という新しいチップをお披露目して注目を集めているが、またXR2プラットフォームを発表し、「世界最初の5G接続をサポートするXRプラットフォーム」だと説明した。

クアルコムのXR1プラットフォームはすでに多数のVR(仮想現実)、AR(拡張現実)デバイスの駆動に用いられており、引き続きメインストリーム向けテクノロジーとして提供される。クアルコムでは新しいXR2は「体験をこれまでになかったまったく新しいレベルに引き上げる」ものだとしている。

XR2には同社の5Gモデムと高度なAIが用いられてり、例えばHoloLens式の透過表示式複合現実カメラを7台まで同時にサポートできる。スタンドアロンのVRも動きがはるかにスムーズになり現実感がアップするということだ。またXR2はユーザーの手を動きを26カ所のトラッキングポイントでモニターでき、もちろん環境の3Dマッピング精度も向上する。

XR2は既存デバイスであっても90フレーム/秒で縦横3000ピクセルの3Dディスプレイをサポートし、60フレーム/秒の8K 360度ビデオを表示できる。レイテンシーは「極めて低い」という。

近い将来AR/VRがどの程度普及するかについては議論の余地があると思うが、クアルコムではAR、VRは消費者向けゲームの世界では2019年にメインストリーム参入に向けてスタートが切れたと考えている。同社のバイスプレジデントでXRの最高責任者であるHugo Swart(ヒューゴ・スワット)氏はサミットで以下のように述べている。

「 2014年や2015年にAR/VRがバズワードになり始めたとき、その応用はもっぱらゲームが考えられていたと思う。しかし我々はエンタープライズアプリケーションに普及していくと見通していた。2019年はこれがはっきりと実現に向かう重要な年となった。一般消費者向けでもエンタープライズ向けでも数多くのAR/VRテクノロジーが導入された」。

ずいぶん前から5Gネットワーク最大のメリットは高精細度のビデオを低いレイテンシーでストリーミング可能であり、これによってAR/VRのような没入的体験を提供できることだと言われてきた。クアルコムのプロダクトマネジメントのディレクターであるHiren Bhinde(ハイレン・ビンデ)氏は次のように主張した。

「5GはXRにとって決定的に重要な要素だ。この点については過去に繰り返し述べてきたが、 XRプラットフォームを利用する(没入型高精細度)ビデオは5Gネットワーク普及のカギとなるキラーコンテンツを提供する。(XR2は)世界最初の5Gアクセスを前提とするプラットフォームだ。来年は圧倒的に広い帯域と接続速度の5Gネットワーク上で、コンテンツのデベロッパーやビデオストリーミングのサービスが従来とはまったく異なる革命的なビデオ体験を、XR2を利用して実現していくものと期待している」。

【Japan編集部注】トップ画像はQualcommデザインによるSnapdragon XR2チップを利用するARグラスのコンセプトモデル。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

Google AIのチームが開発した卵型LEDルームが人間の3Dモデルを見事に捉える

人の動きを高品質な3Dで捉えることは難題であり、特に難しいのがライティングだ。ここで紹介するGoogleの研究者によるプロジェクトは、プリズム状に配置したLED製の卵の中に運動主体を置き、見事な結果を得ている。このやり方の特に重要なのは、あとからライティングを変えられることだ。

従来の立体捕捉(Volumetric Capture)と呼ばれる方法は、運動主体の360度の周囲に複数のカメラを置き、写真のようにリアルな絵画風の表現を捉える。服のしわも髪の髪の毛1本も完璧に捉える。しかし深刻な欠点が2つある。ひとつは、モデルのデータというよりは3Dムービーみたいで、人の姿勢や特徴、衣服などを自由に変えられない。もうひとつはそのために、ライティングもいろいろ変えられない。捕捉したときのライティングがすべてだ。

この問題を克服するために今回Google AIのチームが試みたThe Relightables(ライトを変えられる)という方法は、上記の第2の問題に挑戦する(第1の問題は多くのものがすでに決まりすぎている)。彼らのシステムは動いている人の詳細な3Dモデルを作るだけでなく、仮想の光源により一見リアルな光を当てるので、ゲームやムービーなどライティングが変わる状況に人を置くことができるのだ。

Google AIの研究論文に掲載されている画像。左から、捕捉の過程とその結果の3Dモデル、照明のある仮想環境に置かれた状態

それを可能にしたのがプリズム状の卵だ(もちろんそのためのコードも)。その卵は331個のLEDライトで描かれ、それらは色を変えられるだけでなく、人を捕捉している間にある特別な構造パターンで変わることにより、ライティングを特定しないモデルが作られる。

そうやって得られるモデルは、どんな仮想環境に置いても、捕捉したときのライティングではなくその小さな世界のライティングを反映する。動画を見ればハリウッド映画ほどすごくはないものの、このプロジェクトの成果はわかるだろう。

立体捕捉はその制約のために映画では使いづらかった。しかし、さまざまなライティングに変えられれば、動きが通常の3Dモデルにとても近くなる。もちろん演技そのものは、すべて巨大な卵の中で演じなければならない。

The RelightablesはSIGGRAPH Asiaでチームがプレゼンする。

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

家具小売のWayfairのアプリに写真を利用したAR機能などが登場

家具小売のWayfairは、購入前の顧客が家具類を家に置いたらどうなるかを視覚化して確かめられるようにAR技術をいち早く取り入れてきた。米国時間11月13日、同社はARによる視覚化の機能を強化した。顧客が現実の店舗で買い物をしていて自分の部屋の写真を撮れない時でもARを利用できる。

これは「インタラクティブフォト」という機能で、買い物客は自分の部屋の写真を撮っておくと、家にいない時でもその写真の中に複数の商品を視覚化できる。この機能自体は、写真から部屋の空間の情報を把握してARのような体験を得る技術を使っている。

この機能のほかに、今回のアップデートではカメラツールがアプリのエクスペリエンスにもっと生かされるようになった。Amazonアプリで検索フィールドの横にあるカメラのアイコンをタップしたときと同じことがWayfairのアプリでもできる。カメラベースの機能であるビジュアル検索とARの「室内で表示」はスワイプ操作で切り替えることができ、このAR機能の中に前述のインタラクティブフォトも含まれる。

Wayfairのモバイルショッピングアプリには、室内デザインツールの「Room Planner 3D」も登場した。買い物客はこのツールでインタラクティブな3Dの室内を作り、レイアウトやスタイル、部屋の大きさなどを変えながら、あらゆる角度から見ることができる。

このアップデートは、Amazonが今年1月に「Showroom」というビジュアルショッピング体験の提供を開始したのに追随するものだ。AmazonのShowroomでは、オンラインやモバイルで購入するユーザーが、壁の色やフローリング、カーペットなどを設定したバーチャルルームに家具や装飾品を配置できる。

Wayfairのプロダクトマネジメント、エクスペリエンスデザイン、アナリティクス担当バイスプレジデントのMatt Zisow(マット・ジソウ)氏は発表の中で「Wayfairアプリの最新版では、高度なARと機械学習機能を反復し、革新的な空間認識技術をeコマースの体験に取り入れることで、できることの範囲をさらに広げ、想像と現実のギャップを埋めた」と述べている。

Wayfairはつい先ごろ、第三四半期の収支報告を発表したばかりだった。それによると同社の1株あたりの損失は2.33ドル(調整後。約253円)で、予想の2.10ドル(約228円)よりも大きい損失となった。ただし売上は前年同期比より35%多い23億ドル(約2500億円)で、予想の22億7000万ドル(約2470億円)を上回った。同社は損失について「関税による短期的な逆風」によるものとしている。

年末のショッピングシーズンがヒートアップする中、Wayfairは消費者がアプリをアップデートしたくなるような魅力的な機能をアピールして、買い物をしてもらわなくてはならない。何と言っても昨年のブラックフライデーに、米国でのスマートフォンからの売上は21億ドル(約2280億円)に達したのだ。

新しいWayfairアプリはiOS版とAndroid版が公開されているが、インタラクティブフォト、カメラ、Room Planner 3Dといった新機能はiOS版のみで利用できる(訳注:本稿公開時点でこのアプリは日本では配信されていない)。

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(翻訳:Kaori Koyama)

ARエンタメ開発のENDROLLが施設向け集客ソリューション「CIRCUS KIT」提供開始

東京・渋谷ヒカリエで開催中のTechCrunch Tokyo 2019で11月14日、スタートアップバトル グループCに出場したAR×エンタメ企業のENDROLLは、商業施設向けのAR集客ソリューション「CIRCUS KIT」の提供開始を発表した。本日からティザーサイトを公開し、実証実験のパートナーを募集している。

ENDROLLは2017年12月設立。AR技術を用いたエンタメコンテンツを企画・開発している同社は、今年の5〜6月には東京急行電鉄などと共同で渋谷の街を使ったAR×リアル謎解きゲーム「渋谷パラレルパラドックス」を開催。また、今夏には横浜・アソビルとのコラボによるAR周遊ゲーム、池袋PARCOとのコラボによるARパズルゲーム型アート展も開催している。

今日発表されたCIRCUS KITは、商業施設やデベロッパーなどが保有するリアルな空間を、AR技術を使うことで、設備投資を抑えて低コストで“ゲーム的に書き換える”、つまり体験型エンターテイメントをどこにでも導入することができるソリューション、「GaaS(Games as a Service)」として提供される。

CIRCUS KIT導入イメージ

施設の「全体を回遊してもらえない」といった悩みにも応え、集客が難しいフロアやテナントへの導線づくりや、二次購買の促進、館内周遊データの取得などに活用することが可能だという。

ENDROLLでは、CIRCUS KITにより「ゲームの力をARによって解放し、確かな『体験』を来館者に届ける。またコンテンツの体験とユーザーの消費導線を合わせることで、これまで可視化されづらかった来館者の回遊データを精緻に取得し、ただ『楽しい』に止まらないゲームを提供する」とコメントしている。

マイクロソフトが「HoloLens 2」を出荷開始、日本でも

今年スペインのバルセロナで行われたMobile World Congressで、Microsoft(マイクロソフト)は拡張現実バイザー「HoloLens」(ホロレンズ)の第2世代を発表した。米国時間11月7日、HoloLens 2は3500ドル(参考価格38万円)で発売が開始される。発売される国は予約時と同じで、米国、日本、中国、ドイツ、カナダ、英国、アイルランド、フランス、オーストラリア、ニュージーランドの各国。

私はバルセロナで行われたデモのあと発売前の最新モデルに触れる機会があった。ユーザーは視界の広さにまず驚く。まだ全視野をカバーしてはいないが、初期バージョン(鍵穴からバーチャルオブジェクトを覗いている感覚だった)と比べてはるかにすぐれた体験だ。

開発チームは、デバイスの装着感も大きく改善した。1.3ポンド(590g)と軽くはないが、跳ね上げ式のフロントバイザーと新しいマウンティングシステムでずっと快適になった。

もうひとつ既存ユーザーがすぐに気づくのはスタートメニュー(そう、これはWindows 10なのだ)を開くための新しいジェスチャーだ。誤動作の多かった「Bloom」(手のひらを上にして握り、手を開く)の代わりに、手のひらをタップするだけでよく、そこにマイクロソフトのロゴが現れるようになった。

アイトラッキングも大幅に改善されて長い距離でも機能するようになった。新しい機械学習モデルの採用によって指のトラッキングもずっと くなった。これらを支えるのがカスタムハードウェアで、マイクロソフトの第2世代「ホログラフィック・プロセッシングユニット」もそのひとつだ。

HoloLens用に作られたクラウドツールも拡張され、Azure Spatial Anchorsを使うと任意の位置に恒久的なホログラムを置くことが可能で、他のホログラフィックアプリを使っている人にも同じ場所で見える。こうした変更の結果、デバイスは快適で賢くなり、周囲のさまざまなオブジェクトを見たり、触れた時の遅延も少なくなった。

関連記事:マイクロソフトのHoloLens 2を実機テスト、やはりすごかった

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

アドビからARオーサリングアプリ「Aero」が登場

Adobe(アドビ)が、拡張現実(AR)に真剣に取り組んでいることは、よく知られている。ARデベロッパーのための優れたデザインツール開発するための、十分なポテンシャルを備えていることも間違いない。昨年のMaxイベントで、同社はAero ARというオーサリングアプリを初めて披露した。そして米国時間の11月4日、そのアプリをリリースした。iOS版は無料アプリデスクトップ版は今のところプライベートベータとなっている。

Aeroの基本的な方針は、デザイナーがプログラムを書くことなくAR体験を開発できるようにすること。ビジュアルなUIによって、ARシーンを構築する手順を1ステップずつ指示してくれる。また、ユーザーのCreative Cloudライブラリから、2Dや3Dのアセットを取り込むことができる。完成したシーンをエクスポートするのも数ステップで済んでしまう。

「ARは、マーケティングやブランディング、小売や商取引全般、旅行やレジャー、学習や芸術など、あらゆる業界に広がっています。しかしながら、現状では、高品質のARコンテンツの作成は、多大な費用、長大な時間がかかる複雑な作業となっています。私たちのビジョンは、このプロセスを変革し、すべてのデザイナーが、3DとARの可能性を探求できるようにすることです」。

iOS版のアプリを使えば、基本的なAR体験を作成できるが、ARデザインツールとしてのフル機能を利用するには、デスクトップ版のアプリが必要となる。アドビによれば、デスクトップ版を使うことで、対話的なインターフェースを使って、カスタムな体験を設計できるという。

私が見たデモでは、もちろんAeroはかなり使いやすそうだった。たとえば、レイヤーを含むPhotoshopファイルを背景として取り込み、必要に応じてレイヤーの間隔を空けるように配置して、3Dっぽいシーンにすることも簡単にできる。オブジェクトの操作は、メニューなどを使わずに、タッチ操作だけで可能だ。基本的なアニメーションを追加したり、動きのトリガーを設定することもできる。

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(翻訳:Fumihiko Shibata)

マーケティング向けARコンテンツを気軽に作れるクラウドエディター

スマートフォンの拡張現実(Augmented Reality、AR)には大きな将来性があったが、しかしこれまでは段階的な進化が多くて、新しいプラットホームの登場は少なかった。しかしモバイルのARに注力していたスタートアップにとっては、ユーザーに負担をかけないもっと軽いAR体験を作り出すことが、長年の課題だった。

8th Wallは、モバイルのAR体験を実現する開発ツールを作っており、同社はこれまで1000万ドルあまりの資金を調達して、デベロッパーたちを拡張現実の世界に誘い込もうとしてきた。

関連記事:Augmented reality developer tools startup 8th Wall raises $8 million…拡張現実開発ツールの8th Wallが800万ドルを調達(未訳)

同社は今週、8th WallがホストするAR体験を一般ユーザーが作れるワンストップの制作プラットホームを発表した。それは、同社がこれまでやろうとしていたことの一歩前進であり、顧客がマーケティング目的で気軽にARを作れることが、スマートフォンの単純なARを収益源にするための最適の方法であることの兆候でもある。

そのARエディターは、ウェブで人気のある没入体験のフレームワークであるA-Frameやthree.js、そしてBabylon.jsをサポートしている。「開発プラットホームではあるが、ゲームエンジンのUnityのように重厚なレンダリングを目指すものではなく、とにかく『軽いプロジェクトをどんなスケールでも素早く作る』ことが狙いだ」とCEOのErik Murphy(エリック・マーフィー)氏は語っている。

8th Wallは最初、ARKitやARCoreのような拡張現実プラットホームで、デベロッパーが作るコンテンツができる限り多様な機種をサポートすることを目指していた。今の8th Wallの14名のチームは、スマートフォンからブラウザ上のウェブ体験を呼び出せるWebARと呼ばれる技術にフォーカスしている。

WebARのメリットは、Webアプリケーションと同じだ。ユーザーは何もダウンロードせず、単純にリンクでコンテンツにアクセスできる。企業のマーケティングで行われる消費者や顧客との対話には、最適の方法だ。そんなところでユーザーにアプリのダウンロードを求めたりしたら、まるで笑い話だ。リンクやQRコードでWebへのリンクを提供したほうがずっと人生は楽だ。

8th Wallのクラウドベースの制作およびホスティングプラットホームは、広告/マーケティング代理店や企業のユーザーなどが本日10月31日から利用できる。

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa