カースタント王者が5G回線とVRでグッドウッド・ヒルクライムに挑戦

スタントドライバーのVaughn Gittin Jr.(ボーン・ギッティン・ジュニア)氏は、リンカーンMKZを駆ってGoodwood Festival of Speedに参加し、得意のドリフトを駆使して名物のヒルクライムコースを試走した。ただし、ギッティン氏は車に乗っていなかった。

Samsung(サムスン)のVRヘッドセットを着用したギッティン氏は、会場から何千マイルも離れた場所で、オレゴン州ポートランドのスタートアップ、Designated Driverの開発した遠隔操作システムとVodafoneの5Gネットワークを使って車を操縦していた。

この特別装備されたリンカーンMKZ、通称S-Droneは、窓ガラスがすべて塗りつぶされている。車の「目」は、屋根に固定された複数のGalaxy S10 5G端末だ。ビデオはVodafoneの5Gネットワークを使ってDesignated Driver社の遠隔操作室に送られる。そこではGittin氏が椅子に座って車を制御している。

Samsung Goodwood Designated Driver

通常、Designated Driverの遠隔操作ドライバーの前には6台のスクリーンが置かれ、ハンドルとペダルのような装置を使って車を操作する。米国時間7月4日にGoodwoodイベントが正式に開会する前に行われたこのデモンストレーションでは、さらにバーチャルリアリティーと5Gネットワークを加えて次のレベルへと発展させた。

ギッティン氏は7月5日と週末を通して、Goodwood Arenaのイベントで遠隔スタントドライブをする。下のビデオでデモンストレーションを見られる。

5Gに関わるマーケティングは概してテクノロジーに無頓着だ。しかし5Gは、自動運転車と遠隔操作システムに大きな期待をもたらしている。車両を遠隔操作するためには車からのビデオと入力を遅延なく安定して送り続ける必要がある。1秒でもずれがあれば安全確実に操作することはできない。この種の操作を正しく行うためには無遅延ビデオ接続が不可欠だ。

「我々は5Gを活用して最先端遠隔操作技術のパイオニアになった」とDesignated Drive CEOのManuela Papadopal氏はコメントした。「モビリティーの限界を押し上げるていることを誇りに思う」。

Goodwoodで行われるこのデモンストレーションの目的は、5Gがさまざまな課題を解消し、車のリモートドライビングという安全が最重視されるアプリケーションに不可欠なテクノロジーであると示すことにある。これはDesignated Driverの技術を披露する最新のテストでもある。最近同社はオレゴン州ポートランドのオフィスからGoodwoodの車を遠隔操作した。海を挟む8000 kmの彼方からだ。大西洋越しの遠隔操作デモンストレーションは世界初だと同社は信じている。

テクノロジー重視のこのデモンストレーションは、人間の運転する車が干し草とレンガを並べた狭い道を走る毎年恒例のヒルクライムイベントには場違いと思われるかもしれない。この歴史的イベントには未来が垣間見える。昨年は、Roboraceがヒルクライムを完走した最初に自動運転車になった。ただ、人間より少し運転が慎重だった。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

ハリー・ポッター:魔法同盟がカナダやドイツと23カ国で追加配信

棒や巨大な蜘蛛が登場する「Pokemon GO」ともいえる「ハリー・ポッター:魔法同盟」(Harry Potter:Wizards Unite)は先週にローンチされたが、サービス対象地域は米国、英国、オーストラリア、そしてニュージーランドだけだった。

これはなぜだろう。例えば、国ごとにサービスを展開することで、Niantic(ナイアンティック)はサーバーの安定性を確保することができる。ローンチ展開に時間をかけることで、世界中からTwitter上で苦情を受ける前に、どこがサーバー展開の問題であることを(願わくば)知ることができるのだ。

ナイアンティックはPokemon GOで同様の展開戦略を用いたが、それでも現在まで、サーバーの稼働に問題がある。このゲームの爆発的な人気は、まだ検証されていない初期ネットワークアーキテクチャに直撃し、数週間にわたってサービスが停止した。数週間後にPokemon GOはサービス提供国を拡大したが、それでも多くの国では数ヶ月にわたってサービスが展開されなかった。

幸いなことに、ハリー・ポッター:魔法同盟の展開はもうすこし早くなりそうだ。ローンチから2日後となる米国時間6月22日、同ゲームは以下の25カ国にて新たに展開される。

  • オーストリア
  • ベルギー
  • ブルネイ
  • カナダ
  • デンマーク
  • フィンランド
  • フランス
  • ドイツ
  • アイスランド
  • インド
  • インドネシア
  • アイルランド
  • イタリア
  • ルクセンブルク
  • マレーシア
  • メキシコ
  • オランダ
  • ノルウェー
  • パプアニューギニア
  • フィリピン
  • ポルトガル
  • シンガポール
  • スペイン
  • スウェーデン
  • スイス

TechCrunchがナイアンテックでCEOを務めるJohn Hanke(ジョン・ハンケ)氏に、このゲームのローンチについてインタビューした記事はこちらの記事(一部有料)から。

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(翻訳:塚本直樹 Twitter

Facebookが9月25日、26日に「Oculus Connect 6」イベントを開催

多忙な1年の後、Facebook(フェイスブック)によるVR(仮想現実)の祭典がカリフォルニア州のサンノゼに帰ってくる。9月25日〜26日に6回目となるOculus Connectが開催されるのだ。

OculusはQuestやRift Sをリリースし、メインストリームの顧客の要望に応えることに注力するハイエンドゲーミング企業へと変貌を遂げた。Oculus Connect 6は欠けているハードウェア機能に影響されることなく、コンテンツとソフトウェアの改良を前進させる機会を同社に与えるだろう。

Oculusは短いブログ投稿にて、「QuestとRitf Sはこれまで以上に多くの人々をVRに参加させており、OC6はより大きく、スマートに構築し、私達がともに作っている物の潜在価値に気づくための完璧な瞬間となるだろう」と伝えている。

フェイスブックのトップエンドのVRデバイスは、特定のコンテンツしかストアにて販売されていない閉鎖的な状況であることから、開発者にとってはより議論を呼ぶミーティングとなるかもしれない。Apple(アップル)は過去2年間、トップゲームデベロッパーを獲得し、初めてVR分野に踏み込むインディーズにはあまり金銭を与えない方向へと遷移している。

ティザー投稿では、Apex Legendsの開発元であるRespawn Entertainmentが開発したファースト・パーソン・コンバットタイトルが、主要な発表の1つであることを強調している。

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(翻訳:塚本直樹 Twitter

Oculusがヘッドセット用コンテンツを2週間で500万ドル販売

Facebookのスタンドアロン型VRヘッドセット、Oculus Questが発売されてからまだ日は浅いが、AR/VR担当副社長のAndrew Bosworth(アンドリュー・ボスワース)氏によると、同社はすでに相当数のVRコンテンツを販売している。

Vox MediaのCodeカンファレンスでボスワース氏は、Quest発売から2週間で500万ドル相当のコンテンツが売れたことを詳しく話した。デバイスの販売台数については具体的な数字を出さなかったが、FacebookはこれまでどのVR製品の販売データも一切口外していない。

399ドルのヘッドセットはPCやスマートフォンなしで動作し、カメラベースの位置トラッキングはこれまでハイエンドのPC用ヘッドセットに使われていたものと同等だ。ヘッドセットが発売された時点では、同社のストアでダウンロードできたのは50タイトルを少し超える程度だったが、無料のタイトルから最高30ドルのゲームまで各種揃っている。

VR分野にいる会社は、Facebookでさえも、デバイスの販売台数を語りたがらない。それだけサクセスストーリーが少ないということだろう。FacebookはQuestの発売に全社体制で臨み、マーケティングキャンペーンも大がかりに展開してきたので、今回の成功について詳しく語りたがるのも当然だろう。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

エンタープライズ向けVRに徹するHTCがアイトラッキング機能搭載のVive Pro Eyeを発売

HTCは、2016年に当時最もホットなVRヘッドセットを発売した。しかし、消費者向けVRハードウェアはOculusのおかげで市場にゆとりがないため、その後同社はエンタープライズへ方向を変えた。

米国時間6月6日に同社がリリースした最新のエンタープライズ用VRヘッドセット「Vive Pro Eye」は、アイトラッキングカメラがあるので、それがユーザーにとって新たな入力モードになり、自分が選びたい対象を目で操作できる。ベースステーションSteamVR 2.0とコントローラー込みで1599ドルだ。

1399ドルだったかつてのVive Proとの唯一の違いは、このアイトラッキングだ。そのために200ドルは大きいが、企業に請求書を送るとき、いちいち言い訳はいらないだろう。

しかし消費者として見れば、これを買うべき理由はあまりない。消費者向けの低価格のVRヘッドセットがすべてアイトラッキングを実装するまでは、その機能を有効に使ったゲーム作品もほとんど出まわらないだろう。価格をほかのヘッドセットと比べてみると、Valve Indexはこれより数百ドル安いし、Rift Sは1200ドルも安い。

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

アップルは新しいツールでAR機能を増強

拡張現実(Augmented Reality、AR)は、iOSの消費者が恋焦がれている機能ではないかもしれない。しかし、Apple(アップル)の最新のツールを見ると、同社の長年の夢であるARの偏在性(どこにでもARがあること)を、デベロッパーにとってより取っ付き易いものにしているようだ。

同社はARKitの最新バージョンでおもしろいアップデートをいくつか行ったし、またデベロッパーのための新しいプラットホームとしてRealityKitを導入した。

アップルはRealityKitで、現在UnityやUnrealのテリトリーである領域を攻略したいようだ。UnityやUnrealはデベロッパーが3Dのコンテンツを作るためのツールだが、最初からゼロからARを作ることは当然ながら狙っていない。そのため、現実世界の機能性との統合が難しくなることもあるが、RealityKitとRealityComposerはこの関係をより円滑にする。

これらのツールを使うと、シーンの設定や3Dのアセットと音源のインポートができて、それらとユーザーの入力やその環境との対話を詳しく定義できる。極めてiOS専用の設計になっているので、デベロッパーはARのシーンをiPhoneやiPadでテストでき、最終製品の感覚を早い段階で得ることができる。

ARKit 3では、コンピュータービジョンの超難問であるリアルタイムのオクルージョン(Occlusion)をサポートしたことがビッグニュースだ。それは、人間の姿形がどこからどこまでであるかをシステムが常時正しく認識して、自分の目の前にいる人の動きに正しく対応できる能力のことだ。

これは、アップルがこれまで挑戦してきた問題の中でも最高難度の難問かもしれないが、デモを見たかぎりではまだ完璧とは言えず、また環境オブジェクトのオクルージョンは今回のアップデートではサポートされていない。

さらにもうひとつ、ARKitには全身のモーションキャプチャーが加わった。たぶんそれは、オクルージョンと同じ基本技術を低レベルでは使っているのだろう。InstagramやSnapchatのセルフィー・フィルター(自撮りフィルター)が顔だけでなく全身対応になるのかもしれない。

RealityKitは現在ベータ、そしてARKit 3はiOS 13に含まれる。

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

Intel RealSenseで手軽にバーチャルアーティスト、バルスが「どこでもVTuber」を公開

VRやARのプラットフォームやキャラクターの開発を手がけるバルスは6月3日、小型カメラとPCだけで身体の動きを捕捉してバーチャルアーティストと連動させることが可能な「どこでもVTuber」のサービスを発表。事業会社向けに販売を開始する。

通常のバーチャルアーティストは、専用のスタジオなどで演者(中の人)に数十個のセンサーを取り付け、モーションキャプチャーによって動きを解析・反映する。一方のどこでもVTuberでは、インテル製のRealSense CameraとPCだけで手軽にモーションキャプチャーを実現可能だ。専用スタジオのカメラに比べるとさすがに精度は低下するが、手を挙げる、首をかしげる、姿勢を変える、目や口を開けるというった動きならほぼリアルタイムにバーチャルアーティストに反映される。

同社としては、バーチャルアーティストを使った配信イベントや店舗での接客、研修や講義などの利用を想定している。バーチャルアーティストが接客や講義を担当することで、実際の演者は衣装やメイクに時間をかける必要がないほか、ボイスチェンジャーを使えば性別にこだわる必要もなくなるというメリットがある。今夏以降はどこでもVTuberを使ったイベントの定期開催も計画中だ。将来的には、個人にもサービスを展開する予定とのこと。

どこでもVTuberの料金プランは、月額5万円のライトプランから。バーチャルアーティストの作成費用は別途必要になる。キャラクターは6〜7頭身ほどの美少女キャラはもちろん、2〜3頭身のゆるキャラなどもOK。

Google Lensのレストラン機能と翻訳フィルター機能が早くも実装展開

iOSとARCore対応のAndroidスマートフォンでGoogle Lensを使ってる人たちは今後、レストランでのオーダーや外国語のリアルタイム翻訳が便利になる。

その発表は今月初めのGoogle I/Oで行われたが、これからのユーザーはGoogleアシスタントやGoogleフォト、そしてGoogleの検索の中でLensを使える。またPixelスマートフォンでは、その機能がカメラアプリにもある。

その新しいダイニング機能では、ユーザーがスマートフォンをメニューに向けるとLensアプリが人気料理をハイライトしたり、食材の情報を表示したり、そのレストランのGoogleマップのプロフィールにある写真を見せたりする。請求書を撮影して、その分割を即座に計算することもできる。

関連記事: Snap a photo of a menu and Google Lens can tell you what to order(メニューを撮るとGoogle Lensが料理を推薦、未訳)

外国語の翻訳に関しては、前からGoogle Translateアプリには看板や標識などの特殊な書体でも翻訳できる機能があった。今回はそれの軽量バージョンが、Lensに実装された。

関連記事: Googleレンズは外国語を読み取って翻訳結果を合成音声で読み上げてくれる

GoogleがI/Oで発表したLens関連の機能は、展開が遅れることが多かった。今回のように、発表の数週間後というのは、ちょっと珍しい。

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

VR用触覚デバイスのexiiiがOculus Quest発売を受け勝負に出る、商品を半額の30万円に

低価格で本格的なVR体験を可能とするスタンドアロンのヘッドセットOculus Questの登場はVR領域のスタートアップにとっては大きなチャンスだ。

VR用触覚デバイスを開発し提供するexiiiは「触覚に欠かせないハンドトラッキングや6DoFコントローラを含んだスタンドアロンのヘッドセットが普及価格帯で市場に出始めており、触覚を扱うための環境が整いつつある」と説明した上で、同社のプロダクト「EXOS Wrist DK2」を半額にすると発表した。

EXOS Wrist DK2はVR/AR内でバーチャルオブジェクトに触れることを可能とする、触覚ウェアラブルデバイス。手首の前後方向と左右方向の二方向へ力を加えることで、さまざまな触覚を提示する。Vive ControllerやOculus Touchなどのコントローラーと組み合わせて使用することもでき、これにより既存のVRコンテンツに触覚を付与するような拡張にも対応可能だ。

EXOS Wrist DK2は「製造業におけるデザインレビュー」や「作業トレーニングなどの用途」で主に大企業が導入。だが、これまでは、EXOS Wrist DK2以外にもVR用のヘッドマウントディスプレイやVR対応PCの購入が必要だったため、企業にとって「気軽に導入するにはハードルが高い状態」だった。

そのため、exiiiにとってQuestの登場はある種のパラダイムシフトだと言えるだろう。

exiiiのCOO、金子大和はTechCrunchの取材に対し、「VR空間での触覚体験において、手の位置の正確なトラッキングはとても重要な要素となる。今回のOculus Questの発売は普及価格帯でそれを実現する、業界でも重要なマイルストーンだ」と話した。

「空間を自由に動けるVR体験がより多くの方に届いていくであろうこのタイミングで「VRに触れる」という更に一歩先の没入体験も同時に広げていければと思う」(金子)

これまでEXOS Wrist DK2の販売価格は60万円だったが、本日より半額の30万円となる。レンタルの場合は、これまでと変わらず月額5万円。exiiiは近日中にQuest対応のソフトウェアをリリースする予定だ。

exiiiは「2019年7月には触覚分野における代表的な国際会議であるIEEE World Hapticsが日本で開催されるなど、触覚技術は大きな盛り上がりを見せている」と説明していた。

VRの夢実現のためFacebookはOculusが築いてきたものを捨てるのか

マーク・ザッカーバーグ氏は、Facebook(フェイスブック)が所有する、その仮想現実(VR)の夢のための新しいプラットフォームに、数十億ドルを注ぎ込んできた。

Oculus(オキュラス)を買収したFacebookは、過去5年間のうちにそれを解体し、Facebook規模の企業として再構築を行った。共同創業者の大部分を解雇し、最も重要な意思決定を握るためにザッカーバーグ氏の意向を汲む人物を送り込み、Oculusの初期の支持者たちを満足させることよりも、より幅広い入手容易性の実現にシフトした。

今回Facebookが行った最新の製品リリースは、こうしたことすべてを実現したものだ。

先週発売された同社のQuestは、時間をかけて練り上げたソフトウェアを用いて、設定と利用を限りなく簡単にしながらも、洗練されたハイエンド仮想現実を提供できる製品だ。おそらくこれは、これまで構築されたものの中では最高のVR製品であり、主流となることをしっかり視野に入れたものである。

Facebookは新しい機器に注力し、これまで手に入れたものからは離れて行く必要がある。

これまでのVR製品のリリースには常に、キーテクノロジー上の問題や、足りない主要機能が存在していた。だがもし今度のOculus Questが失敗したなら、Facebookは自身が期待しているような大衆へのアピールを行うことが、これらの製品カテゴリーでは実現できないという認識を持つ必要があるだろう。すぐに浮かぶ疑問は、Questは彼らが欲するメインストリームの顧客に対してアピールするための製品ではあるものの、なぜそのようなこれまでとは違う個別の製品ラインを生み出さなければならないのかということだ。

Oculus買収が5年目を迎える日が近付くにつれて、人びとは、Facebookの仮想現実10カ年計画の成功の兆しは、どこに現れ始めているのだろうかと考えるだろう。これまでVRゲーマーたちのニッチなグループを作り上げ、数百万台のヘッドセットを出荷しているものの、Facebookは依然として、大衆をひきつけ投資したものを取り戻すために、苦労を重ねている。

Questが成功するかどうかに関わらず、Facebookからの気前の良い投資が先細るにつれて、彼らが現在の製品ラインをどのように合理化していくつもりなのかと疑問に思うことになる。

非力だった199ドルのOculus Goは、その価格にしては優れたハードウェアだったことは証明されたが、1年経っても新規ユーザーにとって、忘れられがちな媒体のままである。Netflixをスタンドアロンで鑑賞できることが最高のユースケースであるような製品のユーザーベースの拡大から、Oculusは一体幾ら収入を得ることができるのだろう?またサムスン(Samsung)とOculusは、Gear VRの推進で協調し、無料のヘッドセットをユーザーに配った。にもかかわらず開発者たちはこのプラットフォームに対して投資することはなく、その流れは変わらないままだ。

一方、同社を支えるPCベースのヘッドセットラインの未来もまた不透明だ。今週控え目に発売された最新のRift Sは、Oculusにとってはこれまでのものに比べて大きな変化ではなく、同社は主流に乗ることを狙いながらも、ハイエンド製品としての限界を押し上げようとはしていないことが示唆されている。Questが成功するか失敗するかにかかわらず、時間の経過とともにハイエンドがスタンドアロンラインの中に溶け込んで行っても驚きはない。これからもPCは、常に最もハイエンドな体験を推進する役割を果たすだろう。しかしそこは、依然として自分自身の価値が世間一般では確立していないVRプラットフォームを、委ねておける場所ではない。

3つの異なる製品ラインを維持することは、ハードウェアの研究開発の観点から見て単に高コストであるだけでなく、遊んでもらう価値のあるものの開発を支援する観点からも、会社と開発者との関係をとても複雑なものにしてしまう。VRゲーム開発者の景気は既に最悪である。もしOculusがPCはハードウェアでイノベーションを起こしたい場所ではないと決心したならば、このクラスの製品は成り行きに任せ、将来のスタンドアロン製品に最新のモバイルチップセットを採用することに、力を注ぐことになるだろう。

Oculusは大きな組織であり、新しいプラットフォームの準備をする通常の企業に許される以上に余力がある。任天堂は、長期にわたる価値の低下に直面して、そのモバイルデバイスと家庭用コンソールを単一の製品へと作り直した。Oculusも同じことをする必要があり、そして彼らはそれを行ったのだ。

VRをキックスタートし、その未来を形作ることを約束していたOculusを、Facebookが2014年に買収した。ハイエンドにアピールすることで、PC上で何百万人もの熱狂的な初期ユーザーと、プラットフォームの初期の雰囲気を味わった何百万人ものモバイルユーザーを獲得した。FacebookがOculusをその組織の中に深く取り込み、一般ユーザーを取り込むための独自のビジョンを推進する中で、同社はQuestを使って重要なことを成し遂げた。おそらくそれはこれまでの製品ラインを犠牲にする価値のあるものなのだろう。

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(翻訳:sako)

ARによるビジュアルな遠隔会議をサポートするStreemが類似企業のSelerioを買収

遠隔会議のソフトウェアにコンピュータービジョンの技術を組み合わせたAR企業Streemが、同じく拡張現実の応用企業であるイギリスの小企業Selerioを買収した。

両社は昨年共に、Betaworksのアクセラレーター事業VisionCampに参加し、コラボレーションをしたり、別々にARにおけるコンピュータービジョンの問題に取り組んだりした。

Streemの持ち味はパワーアップしたSkype通話みたいなところにあり、たとえば各種ホームサービスのプロバイダーが家の持ち主とチャットする場合、多くのビジュアルデータを得られる。たとえば電話口で機器の30桁のシリアルナンバーを口頭で伝えるのではなく、画像や映像で分かる。それらのビジュアルデータから間取りを計測したり、その家の特徴に関するノートを取ったりできる。

ポートランドに本社を置く同社は、これまで1000万ドルあまりの資金を調達しているが、最近も新しいラウンドを完了したばかりだ(詳細情報は未発表)。

Selerioの専門技術は、空間の意味的な構造を理解することだ。同社は、ケンブリッジ大学における研究から生まれた。すでにシード資金を獲得しているが、額は公表していない。投資家はBetaworks、Greycroft Partners、GGV Capitalなどだ。同社の3名の社員は全員Streemに加わる。

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

現実でも仮想現実でも殴ってくるロボットが爆誕

ロボットエンジニアでユーチューバーのJames Bruton氏が現実でも仮想現実でも殴ってくるロボットをポーツマス大学の学生たちと共に製作した。VRの格闘ゲームで相手に殴られると現実世界でもロボットに殴られる。

ロボットはArduino Megaを使用しており、ロボットのアームと土台、そしてプレイヤーの剣と盾にはHTCのVIVE Trackerが取り付けてある。

このロボットがゲーセンにあれば面白そうだ。ニューガンダムでサザビーと対戦してみたい。

ロボットを製作するBruton氏やロボットと対戦する学生を見たいなら以下の動画を。

Magic Leapがホログラム遠隔会議システム開発のベルギーのスタートアップを買収

レイア姫からオビ=ワンへのホログラムメッセージが、現実になりそうだ。少なくとも、拡張現実に。

Magic Leapは米国時間5月16日、ベルギーのスタートアップであるMimesysの買収で合意に達したことを発表した。そのチームはこれまで、スター・ウォーズのような立体ビデオ(Volumetric Video)通話をMagic Leapのプラットホームで実現しようとしていた。そして買い手であるフロリダのARスタートアップMagic Leapは、彼らがやってることを気に入ったようだ。まだ、その取引の詳細は得られていない。

Mimesysのウェブサイトによると、チームはMagic Leapに加わるがBNP ParibasやOrangeなどのエンタープライズクライアントへのサービスは継続する。同社のビデオ会議技術は、今年のCESで初めて紹介された。そのビデオ通話では、Magic Leapのヘッドセットに通話相手の3D表現が視覚化される。

立体ビデオの技術には、まだかなり欠陥がある。Mimesysが研究開発してきたソリューションはIntel(インテル)の奥行きカメラであるRealSenseを使って映像をPC上で収集編集し、それをユーザーのヘッドセットへストリーミングする。今の立体ビデオ映像のほとんどがそうだが、Mimesysの初期の成果もノイズを排除できない。でもMagic Leapが買収したということは、同社はもしかして、エンタープライズの顧客にアピールする独自の外付け奥行きカメラを作ったのかもしれない。

今は、ビデオ通話に革命をもたらすと称するプラットホームがとても多いけど、どこも問題を抱えている。要求する帯域が、これまでの通常のネット利用に比べて桁外れに大きいからだ。人間のリアルタイムの3D映像を送るARでは、なお一層難しいだろう。Magic Leapが約束している技術の多くがそうであるように、この立体映像によるビデオ通話も、実現の鍵を握るのは5Gの普及ではないか。

関連記事: なぜMagic Leapに大金を投ずるのか?

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

AR用ディスプレイのメーカーがサムスンとナイアンティックから追加資金調達

広義のAR市場は大部分が誇張や空騒ぎだが、本質的な部分ではそれは、導光板ディスプレイ(Waveguide Display)がますます薄くなり同時に良質で安価になるという技術開発の動きだ。

導光板のメーカーであるDigiLensは、その高価な部品のコストダウンに励んでいる。同社は最近、Universal Display Corporationのベンチャー部門とSamsung Venturesから、シリーズCで5000万ドル(約55億円)を調達した。また前の発表では、Pokémon GOを作っているNiantic(ナイアンティック)と三菱がこのラウンドで戦略的投資を行っている。同社の調達総額は8500万ドルになった(日本語参考記事)。

カリフォルニア州サニーベールに拠を置く同社は、最近では2017年に2200万ドルを調達し、ほかにFoxconn(フォックスコン)やソニー、パナソニックなども投資している(調達履歴:Crunchbase

導光板ディスプレイはディスプレイのガラスの側面から画像をロードし、その光をエッチングが反射させて見る人の目の前に完全な像を作り出す。AR画像用に別のハードウェアを必要とする方式は使いづらいから、この導光板方式はARにとって理想的だ。その光学系は画像を曲面ディスプレイに反射させるだけだから大変安い。しかしそれを消費者向けの薄くて高解像度の製品に仕立てようとすると、相当な開発努力を要する。

DigiLensはARグラスのほかに、シースルーディスプレイの市場として自動車市場にも目を向けている。

CEOのChris Pickett氏は声明の中で「弊社の製造工程は、消費者向けの価格設定が可能な導光板だけを作っている」と述べている。

競合企業は、大手テクノロジー企業の中にも、そして他のスタートアップにも、決して少なくない。Magic LeapとMicrosoft(マイクロソフト)は、彼らの最新のARヘッドセットのために独自の導光板ディスプレイを設計している。昨年Apple(アップル)は、コロラド州デンバーで同様の技術に取り組んでいるAkonia Holographicsを買収した。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

人気VRゲーム「Beat Saber」が「アーリーアクセス」を脱して値上げ

VR(バーチャルリアリティー)で一番人気のゲームが、今月中に値上がりしプレイ可能なヘッドセットが増える。

先週TechCrunchでは、Beat Saberの詳細な長文記事を書いた。チェコ・プラハの小さなVRスタジオが作ったベストセラーゲームは大きな収益をメーカーにもたらしている。Guitar HeroとFruit Ninjaを合わせたようなゲームで、EDM(エレクトロダンスミュージック)の流れる中をライトセーバーをもって進んでいく。100万本以上売れている。

今週Beat Game社は、ほとんどのバグを修正したという確信を深め、さらに売上を伸ばすに違いないアップデートを発表した。

来る5月21日に、Beat GamesはValveのSteamストアバージョンおよびOculus Homeプラットフォーム向けバージョンの価格を20ドルから30ドルに上げ、PS VRバージョンと同価格にする。今回の価格改定に伴い、同社はこれまでゲームに冠していた「アーリーアクセス」のタイトルを外した。これはゲームがまだベータ版であり不具合が残っていることを意味していた。同社はMediumの投稿にそのことを詳しく書き、ゲームが「安定バージョン」のレベルに達し、「フルゲーム」になったと感じていることを述べた。

ゲームがアーリーアクセスを脱すると、長らく約束されていたレベルエディターが加わり、ゲーマーは自分のオーディオトラックに合わせてカスタムレベルを作れるようになる。

価格改定の5月21日というのは任意の日付ではなく、Oculusの新しいヘッドセットであるRift SとQuestの発売日だ。

Questと言えば、OculusはRift用のゲームをすでに持っているユーザーがQuestのゲームを無料でダウンロードできるクロスバイというシステムを導入した。しかしBeat GamesはTwitterで、このシステムに対応しない旨を発表したので、Questユーザーは代金を払わなくてはならないが、メーカーは追加のミュージックパックなどのアドオン機能が使えると言っている。

今後Beat Saberは全プラットフォームで統一されていくので、一部の機種だけがアップデートされることはなくなる。これはクロスプラットフォームのマルチプレーヤーゲームの可能性が開かれることを意味している。

価格改定は来週で、5月21日まではアーリーアクセス価格でゲームを購入できる。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

xRプラットフォーム構築のバルスが3.5億円調達、B向けへの応用にも期待

VRやARなどのxRテックを活用したライブエンターテイメントプラットフォームを開発・運営しているバルス(Balus)は5月13日、GMOベンチャーパートナーズ、三井住友海上キャピタルなどの3社より計3.5億円の資金調達を実施した。

同社は今回の資金調達によって、ライブエンタテインメント分野における技術開発および設備への投資、全国・海外のライブ会場の拡大、手軽なバーチャルキャラクターの制御技術の開発などを進めるとのこと。

同社の強みは、都内にモーションキャプチャスタジオを有しており、そこからバーチャルアーティストのライブパフォーマンスを全国のライブ会場へリアルタイム伝送できる点。もちろん、映画館などのリアル会場側にもカメラやマイクを設置するため、アーティストは会場内の様子をリアルタイムに把握でき、双方向のコミュニケーションも可能となる。

最近では、東京・池袋にあるHUMAXシネマズで月2回のペースで有料のVRライブイベントを実施中だ。モーションキャプチャスタジオからのVRアーティスト伝送だけでなく、チケット購入者がバーチャルな花束やスタジオ演出を購入する機能なども提供する。VR、ARなどのコンテンツ作成や運営も手がけており、自社キャラクター以外にも、他社IPのキャラクターなどの制作・運営も委託されているとのこと。

直近では、5月11日、12日には、茨城県のつくば市で開催されたメディア/アート制作体験会「MAXTOUR」に「誰でもVTuber」と名付けたシステムを出展。このシステムでは、PCとカメラを用意するだけで、両手や両足、頭の傾きなどをリアルタイムキャプチャーして、画面上のキャラクターの動きを追従させることが可能だ。写真では二頭身のキャラクターだが、実際は首や胸などの胴体がある長身のキャラクターのほうが動きを正確に捕捉しやすいとのこと。

同社代表の林 範和氏によると「国内ではVtuber、国外ではバーチャルアーティストと呼ばれることが多いこれらのキャラクターは、日本だけでなく中国などのアジア各国でも盛り上がりを見せており、著名なバーチャルアーティストの場合はファン比率の過半数を海外のユーザーが占めるケースも増えてきた」と語る。

「国内では女性ユーザーの比率が増えてきた」と林氏。これまでは女性のバーチャルアーティストが多かったこともあり男性ユーザーが大半を占めていたが、バルスが制作・運営している男性二人組ユニット「MonsterZ MATE」(モンスターズメイト)は、男性、女性のいずれからの支持も高い、珍しいバーチャルアーティストに育ちつつあるとのこと。MonsterZ MATEは、5月8日にユニバーサルミュージックからメジャーデビューを果たし、オリコン総合デイリーチャートでトップ10入りを果たすなどリアルでも注目だ。

さらに「B向けの問い合わせも増えてきた」とのこと。当初はエンターテイメントを主軸に考えていた同社だが、各種イベントに出展したところ、自社のモーションキャプチャスタジオで実現しているバーチャルアーティストの制御・伝送技術について、エンターテイメント業界以外の企業からの問い合わせが増加しているそうだ。現在、金融機関や販売店などの窓口業務をバーチャルキャラクターで代行できないかといった検討も進められている。

2020年に向けて、国内でも超高速で低遅延、それでいて多数の同時接続が可能な通信技術である5Gが話題の中心になりそうだ。つまり、バルスのxR技術が生かせる環境がさらに整うことになる。同社ではNTTドコモとの5G実証実験なども手がけており、今後の事業展開が楽しみだ。

スマホ上で作ったコラージュをARにするGoogleのアートツール

Googleのアーツ&カルチャー部門は、世界中のアートや遺跡の保存に加えて、アーティストとコラボしてテクノロジーとアートの統合を実験している。その最新の実験事業である「Weird Cuts」と呼ばれるARアプリが米国時間5月8日夜、同社のデベロッパーカンファレンスであるGoogle I/Oで公式に紹介された。このアプリはコンセプトをアーチストのZach Lieberman氏とMolmol Kuo氏が作り、Googleアーツ&カルチャー部門の協力で開発された。それはまさしく、拡張現実で遊ぶための奇妙だけど楽しいツールで、難しいことは何も考えずに「ARでおかしなコラージュを作る」ことだけを考えればいい。

このような実験は、一見気楽だけど新しいテクノロジーと人間との対話のあり方を理解する手段として有効だ。今は、実用目的のARアプリが多い。部屋の中の家具の配置を検討するとか、ふだん見られないものを接近して見るなど。昨日のGoogle I/Oのキーノートでは後者の例として、大きな白いサメのARが現れた。

でもWeird Cutsは、楽しいものを作ってやろうというクリエイティブな意図しかいらない。

このアプリには、切り抜きモードとコラージュモードという2つのモードがある。

まず、切り抜きモードでは、カメラのファインダーに映るものを何でも、いろんな形に切り抜く。そしてコラージュモードでは、それらの切り抜きをスマートフォンの画面をタップしながら現実の3D空間の中に貼っていく。上の画像は、そうやって作った3つの作例だ。

切り抜いた図形の位置や向きは、指をすべらせて変えられる。回転や大きさの縮小拡大も自由に変更できる。

出来上がった作品は、一種の多次元アート、もしくは単なるナンセンスかもしれない。そこらにあるものを素材にして即興的に作ったアートだ。

このアプリはアーチストたちの作品だが、クレジットはGoogle Arts & Cultureになっている。Google Playで無料でダウンロードできる。

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

GoogleマップのAR案内がPixelで本日から順次利用可能に

昨年のGoogle I/Oで見た奇妙だが興味をかきたてられるデモが、一般ユーザーにも公開された。GoogleマップのAR歩行経路案内が本日からPixelユーザーに順次提供される。

拡張現実を使った経路案内は、ユーザーがGoogleマップを開いたとき、視覚的なヒントによってユーザーが迷子にならず目的地に到着できるようにする。経路情報がカメラ画面上に表示され、物理空間上に方向を示す矢印が表われる。

このモードを使うと、端末のGPSが少し位置を外れたときでも、ユーサー空間の視覚情報を認識し、クラウド上にあるユーザーの位置情報とマッチさせることによってユーザーを正しく導くことができる。

TechCrunchでは今年、このARマップ機能を実際に使う機会があり、全体的に好印象だった。

Googleはこれを「早期プレビュー」と位置づけており、Pixel以外の端末でいつ利用できるかについては言及しなかった。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

Google I/O最大のVRニュースはVRニュースがなかったこと

GoogleがVRの白昼夢から覚めつつある。人々がすでに所有しているスマートフォンを利用してVR体験を実現するという同社の意欲的計画はI/Oカンファレンスで言及されなかった。

2016年と2017年をかけて、モバイルVR市場形成の壮大な計画を掲げ、プラットフォームのDaydreamが市場を支配することを約束してきたGoogleが、ヘッドセットの生産とPlay StoreでのVRコンテンツの販売計画をほぼ断念した。

唯一のバーチャルリアリティーに関するニュースは、Googleの最新スマートフォンであるPixelが、同社自身のVRプラットフォームをサポートしないことだった。The Vergeが伝えた。

Googleは2016年と2017年に、2世代のDaydream Viewヘッドセットを発売したが、昨年は新製品もなく、今年のステージではプラットフォームにもヘッドセットにも一切言及がなかった。

GoogleはI/O 2017のVR中心の基調講演で、HTCおよびLenovo(レノボ)との提携によってスタンドアロンデバイスを提供する計画を詳しく話した。HTCはその後プログラムを離脱し、Lenovoが予想から大きく遅れてMirage Soloを発売したあとも、Googleは新しい追跡技術のWorldSenseを利用するためのアップデートもコンテンツの優先提供をも行わなかった。現在同社はこのデバイスを開発キットであることをうたっているが、具体的に何のための開発なのかはわからない。

FacebookのVR部門であるOculusは、Googleが最後にVRハードウェアを発表して依頼、2種類のスタンドアロンVRヘッドセットを発表、発売した。

「VRに関して、現在当社はサービスおよびVRが真に活用できる分野に焦点を合わせている」とGoogleのVR/AR責任者のClay Bavor氏がCNETのインタビューで語り、同社がまだハードウェアの実験中であることを説明した。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

今行動しなければ拡張現実はディストピアを招く

アクション俳優のジェット・リーが映画「マトリックス」の出演を断り、とうとう銀幕に登場しなかったのは、自分の格闘の動きを3Dキャプチャーされて他の人に所有されるのを嫌ったからだ。

もうすぐ、誰もが3D撮影機能のあるカメラを持ち歩き、AR(拡張現実、複合現実とも呼ばれる)アプリを使うようになる。そうなれば、みんなが日々の生活のさまざまな局面、つまりジェット・リーが重要な役どころを拒否し、Napsterの登場以来ミュージシャンが頭を悩ませてきたようなデジタルキャプチャー問題に対処しなければならなくなる。ARとは、誰もが現実そのものをリッピングし、ミキシングし、焼けるようになることを意味している。

アップルのティム・クックCEOは業界に対して「データ産業複合体」に関する警告を発し、人権としてのプライバシーの保護を訴えた。ARが、不愉快な視覚的雑音で世界を満たし、あらゆる目の動きや情緒的反応が監視され広告ターゲティングに利用されるというディストピアを、ハイテク業界の一部の企業が予言していたとしても不思議はない。しかしクック氏は「気味の悪い未来は避けられる」とも言っている。業界は、今日の技術的基盤を築くために、誤ったデータ収集をしてきた。それを繰り返さないことだ。

日常生活にいて、ARが何を意味するのか、(皮肉なことだが)それが現実に根ざしてることを、どうしたらわかるのだろうか?

ARを可能にしている技術スタックを見る場合、ARに固有の新しいタイプのデータ収集について知っておく必要がある。それはコンピュータービジョンによって生成され、機械が読み取り可能な世界の3Dマップだ。ARは、それを使って3D空間との(そしてARシステム同士の)同期や位置の確認を行う。このデータに基づくオペレーティングシステムのサービスは「ARクラウド」と呼ばれている。このデータは、これまで大きな規模では収集できなかったのだが、ARが大きな規模で有効に働くためには絶対に欠かせないものだ。

持続性、マルチユーザー、屋外でのオクルージョンといった基礎的な機能は、すべてがこれを必要とする。人用ではなく機械用の、Google Earthのもっとすごいやつと考えればいい。このデータセットは、ARアプリが使用するコンテンツやユーザー情報(ログインアカウントの詳細やユーザー分析、3Dアセットなど)とは完全に切り離される。

ARクラウドのサービスは、このデータを管理するための簡単なソリューションを導き出す「ポイントクラウド」だと考えることができる。データは、実際にはいくつものレイヤーにわかれていることがあり、そのすべてで利便性や使用事例の度合いが異なる。「ポイント」という言葉は、三次元空間の中の点という概念をひと言で示したものだ。そのポイントを選択し説明するためのデータ形式は、最新のARシステムでは、各社ごとに固有のものが使われている。

特に重要なのは、ARシステムを最適に運用するために、コンピュータービジョンのアルゴリズムとそのデータとを密接に結びつけ、実質的に一体化することだ。AppleのARKitアルゴリズムでは、GoogleのARCoreデータは使えない。たとえGoogleにアクセスを許可してもらったとしてもだ。HoloLensやMagic Leapなど、この分野のスタートアップもすべて同じだ。オープンソースのマッピング方式は、最新の商用システムに比べると数世代遅れている。

そのため私たちは、こうした「ARクラウド」を、しばらくの間は独自のものにしておくつもりで構築してきたのだが、具体的にどんなデータがそこにあるのか、はたしてデータを収集できるのかが心配になるところだ。

ARはあらゆるものをキャプチャーできる

保存できるデータは数多い。少なくとも、コンピュータービジョン(SLAM)マップデータは必ず含まれる。その他に、ワイヤーフレームの3Dモデル、写実的な3Dモデル、人の「ポーズ」のリアルタイムの更新データ(正確な居場所や何を見ているか)、その他たくさんのデータが対象となる。ポーズだけをとってみても、歩いた軌跡を辿ることで、商品の最良の展示場所や、店内の(または自宅での)広告の最良な掲示場所を提案するためのデータを小売業者に提供できるだろう。

このスタックの中の低層のレイヤーは機械にとってのみ有用なものだが、レイヤーを重ねてゆくほどに、それはたちまち非常にプライベートなものと化す。たとえば、自分の子どもの部屋の写実的な3Dモデルが、廊下を歩くお客さんにキャプチャーされ、ARグラスで中の様子が見られてしまうということもあり得る。

こうした問題を一発で解決する決定打はない。解決のために何度も挑戦することが必要だが、その挑戦の種類を増やすことも大切だ。

解決された技術的問題と解決が待たれるもの

ARクラウドのデータの大半は、普通のデータだ。他の普通のクラウドが行っているのと同じ方法で管理できる。強力なパスワード、強力なセキュリティー、バックアップといったGDPRの規制が有効に働く。事実、自主規制に消極的な巨大プラットフォームの行いを正すには、規制を課すしかない。この点において、欧州が一歩先を行っている。中国では、事情がまったく異なる。

ARデータに関する興味深い課題を3つほど紹介しよう。

  • マップやストリートビューのデータには「新鮮さ」が求められるが、歴史的なデータはどれほど残しておくべきか。先週、長椅子が配置された場所のマップを保存する必要はあるか。どの縮尺、どの解像度で保存するべきか。世界のマップにはセンチメートル単位のモデルは必要ないが、身の回りの環境なら必要になる。
  • 難しいが実現可能な最大の課題は、個人が特定される情報をスマートフォンから外に出さないということだ。スマートフォンのシャッターボタンを押す前に、画像が処理されてアップロードされてしまう状況を考えて欲しい。ユーザーは、何がアップロードされるのか、なぜそれをキャプチャーしても大丈夫なのかを把握している必要がある。個人が特定されるすべてのもの(3Dスキャンのカラーテクスチャーなど)は、事前の許可と、そのデータの利用目的の丁寧な説明が必須だ。デバイスから外に出るすべてのデータには、人が読める、または識別できる要素をすべて取り除くための準同型変換が適用されるべきであり、それでもデータは、ごく限定された再局在化機能のためにアルゴリズム(デバイスで実行される)が解釈できる状態にしておかなければならない。
  • 「プライベートクラウド」の問題もある。企業は従業員のプライベートで正確なARクラウドを欲しがることが考えられる。プライベートクラウドはプライベートサーバーで簡単に開設できる。厄介なのは、一般の人がARグラスを装着してその企業の近所を歩いたときに、新しいモデル(別の業者のプラットフォームに保存されている可能性がある)を取得できてしまうことだ。

AR業界が解決しなければならない技術的課題

問題であることは認識していても、その解決策がまだ見つかっていない課題がある。例を示そう。

  • 部屋の仕切り。自分のアパートのモデルをキャプチャーしたとき、中の壁の片側は自分の家だが、その裏側は他人の家だ。現在は、ほとんどのプライバシー対策は、自分のGPS位置を中心とした円形のプライベートな範囲に依存している。しかしARでは「自分の空間」をもっと正確に探知できなければならない。
  • 空間の権利を特定することは大変に難しい。幸いなことに、社会契約や既存の法律で、その問題の大半に対処できている。ARクラウドのデータも、ビデオの録画と非常によく似ている。空間には、公的な場所があり、準公的な場所(ビルのロビーなど)、準プライベートな場所(家の居間など)、プライベートな場所(寝室など)がある。問題は、ARデバイスに、自分の立場と、キャプチャーすべきものを教える方法だ(例えば、私のグラスは私の家をキャプチャーできるが、他の人のグラスでは私の家をキャプチャーできないというように)。
  • 複数の人間からの場所のキャプチャーを管理する場合、そしてそれをひとつのモデルに適用して、影になったり重複した部分を取り除いたとき、その最終的なモデルの所有権が誰にあるかは、大変に難しい問題となる。
  • ウェブにはrobots.txtファイルという概念がある。ウェブサイトの所有者は、自分のサイトでrobots.txtを使い、ウェブデータの収集エンジン(Googleなど)が読み出せるデータを、そのファイルが許可したものに限定することができる。しかし当然なことながら、それぞれのサイトに明確な所有者がいるウェブの世界で、これを徹底させるこは難しい。robots.txtのようなもので同意を取り付け、現実世界の場所に適用できたなら、素晴らしい解決策になる(非現実的ではあるが)。ウェブクローラーと同様、デバイスにこれを強制するのは難しいだろう。しかし、クッキーや数々の広告トラッキング技術で人々がそうしているように、少なくともどうして欲しいかをデバイスに告げることができれば、市場の力や未来のイノベーションによって、プラットフォームにそれを尊重するよう要求できるようになるかも知れない。この魅力的なアイデアの本当に難しい点は、「その場所に対して権限を持つのは誰のrobots.txtか」ということだ。ニューヨークのセントラルパークに私がrobots.txtを書くことはできないが、自分の家用のrobots.txtは書くべきだろう。これをどうすれば立証して実施できるだろうか?

社会契約が現れ合意されることが必要

ARのプライバシー問題を解決するにあたり、大いに役立つであろうものが、いつどこでデバイスを使うのが適切かを規定する社会契約の生成だ。2000年代の初頭、カメラ付き携帯電話が登場したとき、その乱用が心配されて、ちょっとしたパニックが起きた。例えば、トイレで盗撮されたり、公の場で知らない間に自分の写真が撮られるといった問題だ。OEM各社は、カメラを使うとシャッター音が鳴るようにして世間の不安を解消しようと考えた。その機能を追加した結果、その新技術は社会に受け入れられ、急速に浸透していった。技術を消費者の手に持たせたことで、世の中は社会契約を受け入れた。つまり、携帯電話を取りだして写真を撮影してよい場所はどこか、不適切な時間とはいつかを人々は学んだのだ。

プラットフォームはあらゆるデータを
取得する必要はない

企業も、この社会契約に参加した。Flickrなどのサイトは、プライベートな場所や物の写真を管理し、どのように公開するか(可能ならば)を定めたポリシーを打ち出した。Google GlassとSnap Spectaclesとの間でも、同様の社会学習が行われた。SnapはGlassから教訓を得て、社会問題の多くを解決した(たとえば、Spectaclesはサングラスなので屋内では外すようにするとか、録画中ははっきりとわかる表示を出すなど)。それは、広く世間に受け入れてもらうための問題解決に、プロダクトデザイナーも参加すべき分野だ。

業界が予測できない課題

ARは新しいメディアだ。新しいメディアは、およそ15年ほど待たなければ現れず、それがどのように利用されるかは、誰も想像ができない。SMSの専門家はTwitterを予想できなかったし、モバイルマッピングの専門家はUberを予測できなかった。善意に満ちたプラットフォーム企業ですら、過ちを犯す。

これは未来の世代が背負う未来の課題ではない。SFめいた理論に基づく話でもない。AR業界が製品開発において、今後12カ月から24カ月のうちに行う意志決定が、次の5年間を方向付けるのだ。

以下の仕事を立派に遂行するために、ARプラットフォーム企業が依存すべきは、そこにある。

  1. ビジネスモデルの誘因が、データを提供してくれた人々の正しい行いに沿うようにする。
  2. 企業の価値観を伝え、データを提供してくれた人々の信頼を得る。その価値観は、プロダクトデザインのより明確な側面となる。Appleは、これに関していつもうまくやっている。技術系製品がパーソナルになればなるほど、誰もがより真剣にならなければいけない。

不気味な存在にならないよう今のAR関係者がすべきこと

これは、高いレベルで行うべきことだ。ARの先駆者たちの最低限の方針を列挙する。

  1. デバイスからの個人データの持ち出し禁止。事前の許可があった場合のみ可能:サービスの提供に必要不可欠な非個人データのみデバイスの外に出られる。それ以上の個人情報の収集は、ユーザーがよりよいアプリが使えるようになる見返りとして、事前の許可により可能とするか否かをユーザー自身が決められるようにする。技術を運用する目的で、個人データをデバイスの外に持ち出す必要はない。これに異論を唱える者は技術的スキルが足りない証拠であり、ARプラットフォームを開発するべきではない。
  2. IDの暗号化。大まかなロケーションID(Wi-Fiネットワーク名など)はデバイス上で暗号化する。一般性を超えて、特定のSLAMマップファイルのGPS座標から位置を知らせることはできない。
  3. 位置を示すデータは物理的にその場にいるとき以外はアクセス不可。アプリは、本人がその物理的位置にいない場合は、その物理的位置のデータにアクセスすることができない。そこに物理的に入ることが社会契約によって許されるかどうかが、これに大きく貢献してくれる。肉眼で物理的に見ることができる光景なら、プラットフォームは、その光景がどのように見えるかを示すコンピュータービジョンのデータに自信を持ってアクセスできる。
  4. 機械が読めるデータのみ。スマートフォンから外に出るデータは、専用の準同型アルゴリズムによって解釈できるもののみとする。現状の科学では、このデータを人が読める形に逆変換できないようにする。
  5. アプリ開発者はユーザーのデータを自分たちのサーバーで管理。プラットフォームではない。ARプラットフォームを提供する企業ではなく、アプリ開発者が、アプリとエンドユーザーに固有のデータ、つまりユーザー名、ログイン、アプリの状態などを管理する。ARクラウドプラットフォームが管理できるのは現実のデジタル複製のみとする。ARクラウド・プラットフォームはアプリユーザーの個人データに触れたり見たりできないため、それを乱用することがない。
  6. データを売るのではなく利用料で利益を上げるビジネスモデル。開発者とエンドユーザーが利用の対価を支払うビジネスモデルにすることで、プラットフォームは販売目的で必要以上のデータを回収することがなくなる。第三者に販売するためのデータを集めることへの金銭的報償を生まない。
  7. 最初にプライバシー保護の価値観を。プライバシーに関する価値観を一般に伝える。方針を示すだけでなく、それに対する説明責任を持つよう求める。未知の事態には何度も遭遇することになる。人々は、過ちが起きたときの誠実な対応を見て、そのプラットフォームが信頼できるかどうかを判断する。MozillaやAppleのような価値観を原動力とする企業は、価値観が知られていない他の企業に比べて、信頼度では優位に立っている。
  8. ユーザーと開発者の所有権と管理権。デバイスが取得したデータの所有権と管理権を、どの程度ユーザーと開発者に渡すのかを明確に決めておく。とても複雑な問題だ。目標は、GDPRの標準に世界中で準拠することだ(まだ達成されていない)。
  9. 持続的な透明性と教育。市場の教育に力を注ぎ、方針と、既知の問題と未知の問題をできる限り透明にし、新しく生まれたグレーゾーン全体で、人々の意見からどこに「線引き」すべきかを考える。データをやりとりして利益を得る場合には、ユーザーと交わした契約のあらゆる面を明確にする。
  10. 常にインフォームド・コンセント。データを取得する際には、丁寧に説明して同意を得るために誠実に努力する(広告ベースのビジネスモデルを採用している企業は3倍努力する必要がある)。これはエンドユーザー向け使用許諾契約を超えるものであり、平易な言葉を使い、解説図なども含めるとよいと思う。そこまでして初めて、エンドユーザーに何が起きるかを完全に理解してもらえる。

気味が悪い要素を排除したとしても、プラットフォームが取得したデータをハックされたり、政府機関から合法的にアクセスされる可能性があることを忘れてはいけない。取得していないものを出すことはできない。そもそも取得する必要がない。そうしておけば、データが見られたところで、個人マップファイルが正確にどこを示しているかを知ることはできない(エンドユーザーが暗号化するので、プラットフォームは鍵を持たない)。もし、正確な位置情報を含むデータが見られたとしても、それは決して解読できない。

こうした問題を一発で解決する決定打はない

ブロックチェーンは、こうした問題の万能薬にはならない。とくに、基礎的なARクラウドSLAMデータセットに対しては有用ではない。そのデータは独自規格で中央集権化されているので、適正に管理されていれば、データの保護は確実に行われ、正当な人間が必要なときにだけアクセスできる状態になっているはずだ。私たちが把握してるブロックチェーンには、エンドユーザーに恩恵をもたらすものはない。だが、ARコンテンツのクリエイターには価値があると私は考える。ブロックチェーンがモバイルやウェブのために製作されたあらゆるコンテンツに価値をもたらすのと同じだ。ARコンテンツと言えども、本質的には他のコンテンツと変わらないからだ(ロケーションIDがより正確になるだけだ)。

ちなみに、W3CとMozillaのImmersive Web(没入型ウェブ)グループは、さまざまなリスクとその緩和方法を探る努力を開始している。

望みをどこに持つ?

それは難しい質問だ。ARスタートアップは、生き残るために金を稼がなければならず、Facebookが実証したように、顧客にOKをクリックするよう促しすべてを収集するビジネスモデルが有利だった。ビジネスモデルとしての広告は、データ取得に関して本質的に間違った誘因を生んだ。その一方で、取得したデータがよりよい製品を生んだ例は無数にある(WazeやGoogle検索など)。

教育と市場への圧力、そして(おそらく必須となるが)プライバシーに関する規制は助けになる。それ以外では、私たちが互いに受け入れた社会契約(適正な利用など)に準拠して行動することになる。

重要なポイントは2つ。ARはあらゆるデータの取得を可能にするということ。そして、ARのユーザーエクスペリエンスを高めるためでも、プラットフォームはあらゆるデータを取得する必要はないということだ。

どのコンピューターに、ウェブクローラーがデータを読み出せる許可を与えるかというGoogleの努力に習うなら、コンピュータービジョンを広く分布させるARでは、どのコンピューターに見る権利を与えるかを、私たちは決めなければならない。

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(翻訳:金井哲夫)