AIが核融合を操る力を獲得した。でも大丈夫、これは朗報だ

とある研究グループが、核融合研究に使用される高出力のプラズマ流を磁気的に扱う方法をAIに教えた……おっと、慌てないで欲しい。慌てて手にした電磁パルス砲やドライバーはしまい込んでも大丈夫だ。これは間違いなく良い成果で、来るべきロボカリプスで人類に対して使用される恐ろしい武器ではない。

このプロジェクトは、Google(グーグル)のDeepMind(ディープマインド)とローザンヌ工科大学(EPFL)の共同プロジェクトであり、数年前に前者のAI研究者と後者の融合研究者がロンドンのハッカソンで出会ったときに始まった。そのときEPFLのFederico Felici(フェデリコ・フェリーシ)氏は、彼の研究室がトカマクのプラズマ維持に関して抱えていた問題について説明した。

何気ない日常的な愚痴に過ぎない。しかし、それがDeepMindの琴線に触れて、両者は仕事を始めた。

核融合の研究にはさまざまな方法があるが、いずれも数億度という非常に高い温度で形成されるプラズマを利用している。危険そうに聞こえるし、実際にもそうなのだが、トカマクはそれを制御し、内部で起こっている核融合活動の詳細な観察を可能にする1つの方法なのだ。トカマクは基本的にはトーラス(ドーナツ)のような形をしていて、その中を加熱したプラズマが円を描くように移動するが、その経路は磁場によって慎重に制限されている。

誤解のないように言っておくと、これはクリーンなエネルギーを無限に供給するという噂の核融合炉ではない。エネルギーを生産するわけでもないし、もし突然起動したら近くにいてはいけない。これは、不安定だが将来性のあるこれらのプロセスがどのように制御でき、有用な目的にどのように利用できるのかを、テストし観察するための研究ツールなのだ。

特に、スイスプラズマセンターの「可変構成型」トカマクは、単にリング状にプラズマを閉じ込めるだけでなく、研究者がその形状や経路を制御することができる。1秒間に磁気パラメータを何千回も調整して、リングの幅を広げたり、薄くしたり、高密度にしたり、希薄化させたりと、リングの品質に影響を与えるあらゆる要素を調整できる。

画像クレジット:DeepMind & SPC/EPFL

機械の磁場の詳細な設定は、当然ながら事前に決めておかなければならない。設定方法を間違った場合には、大きな損害を被る可能性があるからだ。この設定は、チームが長年にわたって改良してきたトカマクとプラズマの強力なシミュレーターを使って行われる。しかし、フェリーシ氏はEPFLのニュースリリースでこう説明している。「制御システムの各変数の正しい値を決定するには、今でも長時間の計算が必要です。それこそが、DeepMindとの共同研究プロジェクトの出番となる場所なのです」。

このチームは、まず機械学習システムに、ある設定がどのようなプラズマパターンを生み出すかを予測するように学習させ、次に望ましいプラズマパターンから逆算して、それを生み出す設定を特定した(と簡単そうに書いたが、このようなAIアプリケーションにありがちなこととして、実際の実現は相当大変だった)。

米国時間2月16日発行のNature(ネイチャー)に掲載された論文によれば、このアプローチは大成功を収めたという。

今回のアーキテクチャは、高いレベルで指定された制御目標を満たすと同時に、物理的および運用上の制約を満たしているのだ。このアプローチは、問題の仕様記述に対してこれまでにない柔軟性と汎用性があり、新しいプラズマ設定を生み出すための設計工数を大幅に削減できるという:私たちはこのTokamak à Configuration Variable(構成可変型トカマク)を使うことで、従来の細長い形状に加えて、負三角(negative triangularity)や「スノーフレーク」(snowflake)などの高度な形状を含む、多様なプラズマ形状の生成と制御に成功している。

以下にこのモデルが作り出せたさまざまな形状や構成の例を紹介する。

トカマクの「ドーナツ」をスライスした、内部とビームの断面図(画像クレジット:DeepMind & SPC/EPFL)

これは重要な研究だ、なぜならこのようなプラズマを使って実験するには、電力が必要なのはもちろん、非常に多く(数百万単位だ考えて欲しい)の微調整が必要であり 、すべてを手動で構成することはできないからだ。例えばある理論が2つのストリームを必要とし、一方が他方より22%大きい場合、それを生成するための理論的な設定を「従来の」手法(ご想像の通り、これもすでに非常に複雑なデジタルシミュレーションだ)を利用して案出するには、数週間または数カ月かかることがある。しかし、AIはそれに比べるとほんのわずかな時間で良い組み合わせを見つけ出し、その場で解決策を生み出したり、人間の監査役に有力な作業の出発点を与えたりすることができる。

また、安全面でも重要な意味を持つ。というのも、人間は1~2秒の間に異常を封じ込められるような設定を、即興では行えないからだ。しかし、AIならばリアルタイムに設定を変更して損傷を防ぐことができるかもしれない。

DeepMindの研究者であるMartin Riedmiller(マーティン・リードミラー)氏は、これが「初期の段階」であることを認めているが、もちろんそれは科学におけるほぼすべてのAIアプリケーション全体に言えることだ。機械学習は、数え切れないほどの学問分野で、強力で汎用性のあるツールであることが証明されつつある。しかし、優れた科学者のように、彼らはすべての成功を鵜呑みにせず、その先のより自信を持てる結果を待ち望んでいるのだ。

画像クレジット:DeepMind & SPC/EPFL

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(文:Devin Coldewey、翻訳:sako)

セールスフォース、D2CストリーミングメディアソリューションでAWSと提携

ストリーミングメディアサービスを運営するには、複雑な技術の組み合わせが必要で、大企業でも単独で管理するのは難しい場合がある。Salesforce(セールスフォース)とAWS(アマゾンウェブサービス)のメディア業界グループは、AWSのインフラソリューションとSalesforceのマーケティングおよび顧客管理ツールを組み合わせたソリューションを提供し、そのプロセスを簡素化する試みでタッグを組んだ。

Salesforceでメディアエンターテインメントとメディアクラウドを担当するVP兼GMのChristopher Dean(クリストファー・ディーン)氏によると、同氏のグループはSalesforceが2020年にVlocityを13億ドル(約1495億円)で買収した後に形成したインダストリークラウド部門に属する。VlocityはSalesforceの上に、メディアやエンターテインメントなど、いくつかの業界特化型バーティカルを構築した。

同社はメディア業界を成長させるにつれ、D2Cメディアストリーミングソリューションに対する市場ニーズが高まっていることに気づいた。ストリーミングの顧客向けにサブスクリプション、アップセル(より高額な商品の販売)、マーケティングを推進するためのツールを備えていたが、それを実行するためのインフラが不足していた。そこで、長年のパートナーであるAWSと連携することにした。

「Salesforceには、視聴者を魅了して獲得し、エンゲージを引き出し維持するためのエンド・ツー・エンドの購読者ライフサイクル機能があります。しかし、これを実現するために必要なメディアインジェスト、メディア配信のいずれも持っていなかったのです。そこで、この2つをくっつけると(私はこれをチョコレートとピーナッツバターの瞬間と呼んでいます)、実際とてもうまく機能し、エンド・ツー・エンドのソリューションができあがるのです」とディーン氏は語った。

画像クレジット:  Salesforce / Getty Images

Amazon Studiosの製品担当ディレクター、Eric Iverson(エリック・アイバーソン)氏は、AWSとSalesforceが話し合う中で、組み合わせたソリューションは大いに意味を成したと話す。「この2つのスタックは、かなり関連性の高い多くのことを行っているように思えました。何度も何度もカスタムメイドするのではなく一緒になり、必要なピースのすべてを積極的に組み合わせて、すぐに使えるソリューションにしてはどうか。それが我々自身に課したミッションのようなものでした」とアイバーソン氏は述べた。

提供を始めるにあたり、両社はメディアをビジネスとする商用ストリーミングサービスを、このようなソリューションのスイートスポットととらえているが、従来のメディア企業ではない企業がビジネスを拡大するためにストリーミングメディアに移行する傾向が強くなっている。SalesforceとAWSは、どちらの分野にも多くのチャンスがあると見ている。

「ほとんど瞬時に多くの市場機会があると思います。それは、メディアストリーミングを自社のビジネスとしてではなく、自社のビジネスを実現し強化するための手段の一部として提供したいと考えるあらゆるブランドに対して、とてもシンプルな方法でインフラサービス一式を提供するにはどうしたらいいか、ということです。これは、私たちにとって非常に大きなチャンスだと思います」とディーン氏は述べた。

Salesforceは2021年、Salesforce+というメディアサービスを開始した。これは、従来対面式のイベントで提供されていたコンテンツを、ビデオコンテンツとしてストリーミングするものだ。しかし、Salesforce+は現時点ではSalesforceとAWSのソリューション上で動作していないことに注意が必要だ。

ディーン氏によると、2社によるこのソリューションがあれば、単独でこのようなプロジェクトを管理するのに必要なエンジニアリングのリソースがない企業でも、D2Cビデオストリーミング機能を手にすることができ、そのニーズは大きいと2社は考えている。

画像クレジット:metamorworks / Getty Images

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(文:Ron Miller、翻訳:Nariko Mizoguchi

イーロン・マスク氏、米証券取引委員会が「嫌がらせキャンペーン」を行ったと告発

Elon Musk(イーロン・マスク)氏がSEC(米証券取引委員会)から頻繁に注意を受けることに腹を立てていると思ったなら……それは正しい推測だ。マスク氏とTesla(テスラ)は、ニューヨーク州南部地区連邦裁判所に、SECが「ハラスメントキャンペーン」を行っていると非難する訴状を出した。SECは、Teslaの非公開化に関するマスク氏のツイートをめぐり、2018年のマスク氏との和解の一環としてTeslaの株主に4000万ドル(約46億円)を支払うという約束を破り、代わりにマスク氏とTeslaに対する「果てしない、根拠のない調査」にリソースを割いた、と主張している。

マスク氏とTeslaは、SECが「一方的に」召喚状を送っており、和解による同意協定をマスク氏が遵守しているかをSECだけでなく裁判所が監視するものだとしている。SECは、マスク氏が「政府に対する率直な批判者」であることを理由に報復しており、法律を公正に執行するよりも、憲法修正第1条の言論の自由を阻害することに関心がある、と主張した。訴状によると、不正行為の発見はない。

マスク氏とTeslaは、SECの不払い疑惑だけでなく、度重なる調査についても話し合う会議を含む「軌道修正」を裁判所に求めた。SECに株主への支払いを強制する一方で、マスク氏らが主張するハラスメントを裁判所が「終わらせる」ことを望んでいる。

我々はSECにコメントを求めた。SECは和解後の数年間、マスク氏のツイートについて何度も問い合わせを行い、2019年と2020年には、懸念される投稿をめぐってTeslaに書簡を送った。SECがそれらのツイートについてマスク氏に落ち度があるとは判断していないのは事実だが、それでもマスク氏が2018年の合意で義務付けられている事前承認なしに主要な財務トピック(生産水準や株式評価など)について議論していた、と主張している。Teslaはこれらのツイートは和解条件の対象外だと主張したが、状況は完全に明確ではない。

編集部注:本稿の初出はEngadget。執筆者のJon FingasはEngadgetの寄稿者。

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(文:Jon Fingas、翻訳:Nariko Mizoguchi

大阪大学レーザー研究所、核融合に不可欠な固体トリチウムの新しい物性値を60年ぶりに解明

大阪大学レーザー研究所、核融合に不可欠な固体トリチウムの新しい物性値を60年ぶりに解明

大阪大学レーザー研究所(山ノ井航平助教ら研究グループ)は2月14日、固体状態の重水素トリチウム(D-T)混合体の屈折率の測定に、世界で初めて成功したと発表した。核融合発電の注入燃料として利用される予定の重水素とトリチウムの混合体だが、トリチウムが放射性物質であることから取り扱いが難しく、その物性値は60年にわたり測定されてこなかった。

固体の重水素とトリチウムの混合体は、効率的な核融合発電を行うためには、その形状と組成のコントロールが必要になる。光を用いて分析を行えば、形状と組成を一度に知ることができるのだが、もっとも基礎的なデータである屈折率の測定が困難だった。そのため、軽水素などの値から推測された経験式から得られるデータで代用するしかなかった。

レーザー研究所では、約4テラベクレル(TBq)のトリチウムと重水を1対1の割合で混合し、密封セル内でマイナス255度以下に冷やして固化し、その屈折率を測定した。さらに温度を下げることで、屈折率の温度依存性も明らかにした。これができたのは、同研究所が蓄積してきた高度なトリチウムの取り扱い技術と、レーザー測定の技術と知識のおかげだ。

この研究成果により、将来の核融合における固体重水素トリチウム燃料の検査手法が確立され、核融合炉の設計が進むことが期待されるという。また、高い安全性を確保した上での「大容量のトリチウムを取り扱った技術的知見が得られた」ことで、今後の放射性物質を使った研究開発に貢献できると研究所は話している。

ロボット遠隔制御サービスHATSを開発するキビテクが1.5億円調達、システム開発や実証実験推進・エンジニア採用強化

ロボット遠隔制御サービス「HATS」などを開発しているキビテクは2月16日、第三者割当増資による1億5000万円の資金調達を2022年1月に行ったと明らかにした。引受先は、リード投資家のSpiral Capital Japan Fund 2号投資事業有限責任組合、また九州オープンイノベーション1号投資事業有限責任組合。

調達した資金は、システムの開発推進とともに、エンジニア採用の強化と実証実験にあて、さらなる事業の加速化を図る。コロナ禍により、非対面・非接触や遠隔操作での搬送ニーズの需要が高まっていることから、ロボット導入DX化の課題解決、ロボットのマーケット拡大に貢献するという。

キビテクが開発中のHATS(Highly Autonomous Teleoperation Service)は、様々なロボットにアドオンすることで遠隔制御を実現するサービス。各ロボットにキビテクが開発した装置をアドオンしたうえでシステムに接続することで、遠隔オペレーターがロボットを制御可能となる。

自律ロボットの場合、予想外の出来事に対応できず、頻繁な停止で作業効率が低下するなどの課題があることから、ロボット導入に踏み切ることができない現場や、導入後のロボット運用に課題を感じている現場に役立つサービスを目指すという。

またHATSの場合、現場ごとに違う様々な課題・状況に応じて人がロボットを補完する半自動化が実現でき、現場フローに沿った柔軟な対応が行える。人ならではとされていた、ロボットでは難しい作業や業界の解決に取り組むとしている。

知能ロボットの開発を行うスタートアップ「キビテク」は、東京大学の人型ロボット研究室JSK(情報システム工学研究室)出身者が主となり、2011年11月に設立。ロボット遠隔制御システムの開発・販売やロボットシステム受注開発を事業として手がけている。また、ロボティクス技術の活用とロボット遠隔オペレーターという新しいリモートでの働き方を提案し、社会課題の解決とともに、現場の人手不足といった課題の解決を目指している。

駐車場管理アプリakippeが特定利用者のみに空き駐車場を貸し出せるakippe private機能追加、3月1日スタート

駐車場予約アプリ「akippa」(Android版iOS版)を運営するakippaは2月16日、駐車場のオーナーがマンション・寮など特定の住人のみに貸し出せる新機能「akippa private」(アキッパ・プライベート)の提供開始を発表した。3月1日より利用可能。マンション・アパート・学生寮などの入居者専用駐車場、公団での介護者専用駐車場、オフィスビル・商業施設の関係者専用駐車場などに活用できるという。

akippaは、駐車場のシェアリングサービス。契約されていない月極駐車場や個人宅の車庫・空き地・商業施設などの空きスペースを、ウェブかアプリから事前予約・決済して安く利用できるというもの。空きスペースを持っている人ならば誰でも登録・貸出が行えるので、費用をかけることなく副収入を得られる。2022年2月現在で会員数は累計250万人(貸主を含まない)となっているそうだ。

akippaの新機能akippa privateは、マンション入居者など駐車場オーナーが指定したユーザーのみが予約・利用できる機能。一般のakippa会員は、駐車場詳細ページの閲覧や予約を行うことはできない。そのため外部収益とはみなされずに分譲駐車場の空き駐車場をシェアすることが可能になるという。

akippa privateの活用イメージ例

  • 分譲マンションでの入居者専用駐車場
  • 賃貸マンション・アパート・学生寮などでの入居者・来客専用駐車場
  • 公社などの団地での介護事業者専用駐車場
  • オフィスビルや商業施設の関係者専用駐車場
  • バスや搬入車両など大型車両専用駐車場
  • akippaマルシェ専用駐車場

akippaによると、近年都心部のマンションなどでは、住民の車離れにより付帯駐車場に空きが出てしまう物件が増えており、課題となっているという。

分譲マンションの駐車場を住民以外に貸し出した場合、その駐車場売上は「外部収益」とみなされ各種税金や税務申告の義務が生じるため、手続きなどで新たなコストが発生する。そのため多くの収益が見込めない場合は、マンション理事会の承認などの手続きが煩雑なこともあり駐車場シェアの導入は難しい。

これに対してakippa privateは、特定ユーザーのみが予約・利用可能とすることで、外部収益とはみなされずに空き駐車情のシェアが可能となる。現在は個人宅には対応していないが、将来的には対象駐車場の拡大も見込んでいるとのこと。

また予約対象者を絞れることから、住民と関係ない第三者がマンション・学生寮などセキュリティの整った場所に立ち入ることを防止可能。このほか、akippaの予約システムを活用し利用料金を徴収するため、クレジットカード、キャリア決済(docomo、au)、PayPay決済によるキャッシュレス決済が行える。管理会社は窓口業務の管理工数を削減できるほか、現金取り扱いリスクを回避できる。

理化学研究所、機械学習・最適制御技術により人の動作意図を推定し運動を精度よく支援する装着型アシストロボット

理化学研究所、機械学習・最適制御技術により人の動作意図を推定し運動を精度よく支援する装着型アシストロボット

開発した装着型アシストロボット(黒の部分)をマネキンの両足に装着

理化学研究所情報統合本部ガーディアンロボットプロジェクト人間機械協調研究チーム(古川淳一朗氏、森本淳氏)は2月15日、膝の関節に装着する軽量な「装着型アシストロボット」を開発した。機械学習により装着者の動作の意図を推定して、適切な運動支援を行うというものだ。

カーボン樹脂のフレームに空気圧人工筋アクチュエーターを内蔵した、片足わずか810gという軽量なアシストロボットだが、装着者の意図を推定することにより、様々な身体の動きに対応して、適切に目的の動作だけを支援できるようになっている。例えば、椅子に座った状態から立ち上がる場合、従来の方法でも立ち上がる動作を支援できたが、腰を浮かして遠くのものを取ろうとしたり、座り直したりといった「紛らわしい」動作の場合も、立ち上がりと判断して作動してしまう可能性がある。そこで理化学研究所は、様々な動きの中から、いくつかの動きだけを選択して支援するアルゴリズムを提案した。

機械学習では、学習の手本となるラベルを使う。たとえば、立ち座り動作のみを支援するロボットの場合は、座った状態のラベルと、立ち上がろうとして体幹が傾き始め、ロボットの支援が必要になる状態に「立位動作」とラベルを付けて学習させればよい。ただし、これでは「紛らわしい」動作のときもロボットが作動してしまう恐れがある。それを避けるには、あらゆる動作に正確なラベル付けをしなければならないが、それは不可能だ。できるだけ少ないラベルで正確な推定を行う必要がある。

理化学研究所は、立ち上がりの動作にのみラベルを付け、その他の動作にはラベルを付けずに学習させる方法をとった。そして、機械学習を使い、筋活動と関節運動のセンサー信号から支援対象の動作意図を精度よく推定する技術と、対象動作に対して個人に合わせた適切な量で支援する制御の法則(制御則)を導き出す「最適制御技術」を組み合わせて、提案アルゴリズムを実現させた。

理化学研究所、機械学習・最適制御技術により人の動作意図を推定し運動を精度よく支援する装着型アシストロボット

装着者の動作意図を推定し適切な運動を支援するアルゴリズムの概要。PU-ラーニング(Positive and Unlabeled learning)で構築された動作分類(PU-分類器)から適切な制御戦略を選択する。支援対象の動作に関しては、最適制御技術iLQG(iterative Linear-Quadratic-Gaussian)を用いて制御戦略を算出する。装着者の動作意図がポジティブと推定された場合は、支援対象動作に対する「πtarget」でロボットを空気弁コントローラーにより駆動させる。ポジティブではないと推定された場合は、装着者の動きを妨げないようにロボットの重さを常に打ち消す「πother」で駆動させる

数名の被験者の協力で、このシステムの動作支援実験を行った。支援対象をイスからの「立ち上がり」とし、その他「脚を組む」「少し離れた物を手を伸ばして取る」「座り直す」という動作を想定し、ロボットの装着者から取得した筋活動と関節角度のデータに基づき、提案アルゴリズムでロボットを駆動させた。その結果、立ち上がりには100%の確率で支援動作の制御則が選択され、その他の動作では83.4%の確率で支援対象以外の制御則が選択された。

また、ロボットが装着者の動作を妨げたかを、ロボットの軌道と本来の関節の軌道との誤差で比較したところ、従来手法に比べて提案方法では誤差が小さいこともわかった。これらの結果から、理化学研究所が提案した手法は「精度よく装着者の動作意図を推定」していることがわかったとのことだ。このアルゴリズムを使えば、「一部のデータに対してだけ分類情報が整理されている状況」でも適切に運動を支援できるため、ウェアラブルセンサーが普及して多様な運動データが収集できるようになれば、ロボットによるさらなる支援技術に貢献できると理化学研究所は話している。

千葉工業大学の宇宙塵探査衛星ASTARISC、大面積膜型ダストセンサーを展開し軌道上実証に成功

展開した膜型ダストセンサーをオンボードカメラで撮影した自撮り画像。センサーが固定されたパドル面には、千葉 工業大学の校章とPERCのロゴが印字されている

展開した膜型ダストセンサーをオンボードカメラで撮影した自撮り画像。センサーが固定されたパドル面には、千葉
工業大学の校章とPERCのロゴが印字されている

千葉工業大学惑星探査研究センター(PERC)は2月15日、宇宙塵探査実証衛星「ASTARISC」(アスタリスク)がJAXAのイプシロンロケット5号機で高度約570kmの地球周回軌道に打ち上げられ、初期運用に移行したことを発表した。

ASTARISCは、宇宙塵や微小なスペースデブリを観測するための、サイズが30×10×10cmというU3超小型衛星。世界初の方式による、展開すると30×30cmになる膜状の粒子観測装置(ダストセンサー)を搭載している。ダストセンサーは、ポリイミド製の膜に圧電素子を接着したもの。この膜に宇宙塵やスペースデブリが衝突すると、そのとき発生する弾性波を電気信号としてとらえ、独自の信号処理によりリアルタイムで粒子を観測できる。粒子が膜に衝突しさえすれば検出できるので「膜の面積を大きくするだけで大面積のセンサーを容易に実現できる画期的な技術」とのことだ。

千葉工業大学の宇宙塵探査衛星ASTARISC、大面積膜型ダストセンサーを展開し軌道上実証に成功

ASTERISC外観写真。写真左は、展開前の衛星外観。写真右は、30×30cmの膜型ダストセンサー(左方向に広げられたオレンジ色の膜)展開後の衛星外観。膜型ダストセンサーの膜面には、受信用の8個の圧電素子と2個の試験信号用の圧電素子が接着されている

 

千葉工業大学の宇宙塵探査衛星ASTARISC、大面積膜型ダストセンサーを展開し軌道上実証に成功ダストセンサーは、センサーの健全性と展開実施の要件を確認したあと、ニュージーランド上空付近で展開された。タイマーコマンドにより自律的に展開されたが、オンボードカメラの映像などによって、設計通りの形状で展開されたことが確認できた。すでに「真の粒子観測イベント」と判定できるデータが得られているとのこと。観測された粒子は、0.1〜1μm(マイクロメートル)程度のサイズと推定され、センサーが設計通りの感度を有していることも実証された。今後は、長期的な観測により、軌道上の粒子の量・飛来方向・運動量などを明らかにできるとしている。

宇宙塵は、太陽系の形成に大きく関わる重要な微粒子で、原始の地球に降り注いだ宇宙塵由来の有機物が生命の起源ともいわれている。また、スペースデブリの定量的な観測と評価も、今後の宇宙開発において重要な意味を持つ。しかし、宇宙塵や微小なスペースデブリを地上から観察することはきわめて難しく、その分布や量などの特性を調べるには、直接宇宙で観測しなければならない。

ただ、宇宙空間での宇宙塵や微小スペースデブリは存在が大変に希薄であるため、それらを観測するには大きな検出面積を持つダストセンサーが必要となるが、これまでの方式ではコストの面などで大型化が困難だった。そこで惑星探査研究センターは、容易に大面積化できるこのダストセンサーを開発した。

ASTARISCは、惑星探査研究センターと東北大学が共同で開発したもの。今回は同時に、将来のミッションを視野に入れた国産の衛星バス技術(電源系、通信系、データ処理制御系、姿勢系)の軌道実証も行い、成功している。

AWSのミニデータセンターLocal Zonesが32増えて計48に

レイテンシーは多くのワークロードにとって重要だ。それでも大手のクラウドプロバイダーは主なデータセンターを電気が安くて税の優遇幅の大きいところに作りがちだ。しかし最近では、この問題に対する新しい取り組みとして、AWSのLocal Zonesのようなプロジェクトを見かけるようになった。これらは人口集中地区に隣接した小さなデータセンターで、レイテンシーの低い接続を必要とするゲームやビデオストリーミング、機械学習の推論などのアプリケーションに、基本的なクラウド機能を提供する。

本日(米国時間02/16)AWSは、昨年のre:Inventカンファレンスでの予告に次ぐ最初の16のLocal Zonesを大きく拡張して32を加え、合計48とした。

これら30の新しいゾーンは以下26か国の各都市にある: アムステルダム、アテネ、オークランド、バンコク、ベンガルール、ベルリン、ボゴタ、ブリスベン、ブリュッセル、ブエノスアイレス、チェンナイ、コペンハーゲン、デリー、ハノイ、ヘルシンキ、ヨハネスブルグ、コルカタ、リマ、リスボン、マニラ、ミュンヘン、ナイロビ、オスロ、パース、プラハ、ケレタロ、リオ・デ・ジャネイロ、サンチアゴ、トロント、バンクーバー、ウィーン、 ワルシャワ。これまでのLocal Zonesは、すべて米国である。

そのメリットは、これらの都市のユーザーのアプリケーションに一桁ミリ秒のパフォーマンスを提供できることだ。

AWSのインフラストラクチャサービス担当副社長Prasad Kalyanaraman氏は今日の発表でこう言っている: 「クラウドのエッジが広がっているので、今ではほとんどどこでも利用できます。合衆国のAWS Local ZonesはAWSの数千の顧客が利用して、彼らの業界向けに特別に設計され顧客のユースケースに合った低レイテンシーのアプリケーションを最適化できています。最初の16のLocal Zonesは大成功でしたから、それをもっと多くの場所に拡張して、同じ能力を求めておられる顧客のみなさまが、クラウドサービスのエッジを新しい場所へプッシュしていくお手伝いをいたします。AWS Local Zonesは今では世界中の30を超える新しい場所で利用でき、顧客に強力な新しい能力を提供して、世界中の数億のエンドユーザーが数ミリ秒以内でクラウドサービスをご利用いただけるようにしてまいります」。

関連記事: コンピュートリソースをエンドユーザーの近くに置くAWS Local Zonesが2022年から新たに30以上立ち上げ

(文:Frederic Lardinois、翻訳:Hiroshi Iwatani)
画像クレジット: Noah Berger/Getty Images for Amazon Web Services/Getty Images

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グーグルが広告の重要性を強調し、AndroidにPrivacy Sandboxを導入する計画を発表

Google(グーグル)のChrome(クローム)ブラウザに導入されたPrivacy Sandbox(プライバシー・サンドボックス)のイニシアチブは、必ずしも完璧な成功を収めているわけではないものの、オンライン・プライバシーに関して、そして広告エコシステムにおけるGoogle自身の役割について、健全な議論を巻き起こしたことは間違いない。現在、Chromeにおけるこの取り組みの多くは依然として流動的だが、Googleはこれらのツールの多くをAndroid OSにも拡大することを計画している。これは広告業界に重大な影響を与えることになるだろう。

とはいえ、まだ広告エコシステムに関わっている人たちが絶望する必要はない。Googleによると、これらの新しいシステムをテストする間、現行のシステムは「少なくとも」あと2年間は有効のままになるとのこと。

通常、Androidでは、広告主はGoogleの広告IDを利用して、パーソナライズされた広告を提供したり、アプリケーション間でユーザーの行動を追跡したりする。これによって広告主は、例えば、あなたが商品を購入したのは、あなたがクリックした広告によるものだと、判断することができるというわけだ。簡単に言えば、広告IDはAndroid版のCookieと考えてよいだろう。ユーザーはAndroidの「広告」設定から、広告IDを削除することにより、この機能をオフにして、パーソナライズされた広告を拒否することができる。広告IDを削除すると、Googleは親切にも、広告が多くのサービスの無料化に貢献していることを気づかせてくれる。そしてそれこそが、Googleが今回の変更を行う理由でもある。

この発表に先立って行われたブリーフィングで、GoogleのAndroidセキュリティ/プライバシー担当プロダクトマネジメントVPは、特に広告の重要性を強調した(もちろん、広告はGoogle自身の収益においても大部分を占めている)。

「このエコシステムにとって重要な機能を強調することは有益なことです」と、VPは語った。「広告IDのようなツールは、より適切な広告体験の提供や不正行為への対処などに役立ちます。また、現在私たちがモバイルアプリで楽しんでいる無料コンテンツやサービスの多くを可能にするためにも役立っています。ですから、次世代のモバイル技術を構築する際には、こうした機能が確実にサポートされるようにすることが重要なのです」。

ここで問題となるのは、もちろんApple(アップル)だ。アップルは、Googleのチームが極めて露骨な手段と見なすようなものを使って、本質的にトラッキングを不可能にしている。これはプライバシーにとっては好都合だが、広告主は絶望の中から必死に這い上がって、あなたの行動やデバイスを追跡する新しい方法を考え出し、有益なトラッキングデータを手に入れようとするだろうと、Googleは主張する。しかし、Meta(メタ)が、アップルのポリシー変更によって、2022年には100億ドル(約1兆1500億円)の広告収入を失うだろうと述べたという事実は、Googleの主張を否定するようにも感じられる。Metaがこの問題を回避する良い方法を見つけられないのであれば、他の誰が見つけられるというのだろう?

そこで、Chromeと同様に、Googleはユーザーのプライバシー保護と広告エコシステムの維持という両方を実現しようとしているのだ。念の為にはっきりさせておくと、Googleは自社の広告システムも、サードパーティの広告主と同じルールに従うとしている。

今回の提案の中には、GoogleがChromeで行ってきたことをベースとするものがある。その中には、FLoC(フロック、コホートの連合学習)に代わって最近導入されたTopics(トピックス)や、個体識別子に依存することなく、広告主が独自に定義した「カスタムオーディエンス」に基づいて広告を表示することができるシステムのFLEDGE(フレッジ)が含まれる。

アトリビューションレポートなくして現代の広告エコシステムはありえないため、Googleはここでも新しいシステムを提案し、広告主が必要とするデータを提供し続けながらも、ユーザーのプライバシーを改善することを約束している。

また、開発者向けのSDKでは、サードパーティの広告コードを分離し、アプリ自体のコードとは別に実行されるようにする予定だ。現時点では、これはAndroid 13のみの機能になるようだ。なぜなら、これらの新しいプライバシー機能に加えて、あらゆるSDKに追加のセキュリティ保証を提供するという両方を重視した、全体的に異なるSDKアーキテクチャが必要だからだ。

Googleは、この新しいシステムについて、広告業界と連携していきたいと述べている。これまでのところ、これをサポートする意見は、広告エコシステムではなくアプリ開発者から多く寄せられている。

画像クレジット:rylan9 / Getty Images
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(文:Frederic Lardinois、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

ディスカウント販売は危険だ、取り扱いに注意

かつて私はスタートアップをいくつか立ち上げ、いつも給与の支払いに苦労していた会社も経営していた。一度ならず、期間限定ディスカウント・セールが会社を救った、しかし、よく計算してみると、大幅値引き販売は、銀行残高を改善するかもしれないが、損益にとっては壊滅的であることがわかる。

みんなディスカウントが大好きだ。価格が20%下がれば、安い買い物ができる。顧客にとってこんなにわかりすいものはない。しかし、店やスタートアップにとって、計算結果はよろしくない。順を追って見てみよう。

あなたは小さな輸入ビジネスをやっているとしよう。安い小物を買ってきて、しゃれたブランドをかぶせ、Instagram(インスタグラム)の広告と型破りなライフスタイルのイメージで顧客を引きつける。その商品を5000個買うと、Alibaba(アリババ)なら1つあたり9ドル(約1000円)で買える。これはお買い得だ。よくやった!

5000個注文して輸入する。この時点で4万5000ドル支払い、配送にあと1500ドル、輸入税に10%を払い、そこで仕入れた商品の9%が動かないことを知る(これはAlibabaなのだ)。ラッキーなことに、まるでマジックのように、顧客に配達して交換や返金のために送り返してもらう前に、あなたはこのことを発見した(としよう)。

In any case, taking off the units that didn’t work, and the total spend of $51,000, each of the working 4,550 units cost you $11.21 each. Let’s take a look at the cost breakdown:

いずれにせよ、動かないものはよけ、総支払額は5万1000ドルなので、動作する4550個は1つあたり11.21ドルになる。コストの内訳を見てみよう。

この商品は19.99ドルで売れる、とあなたは考える、かなりの利幅だ。あとはこの商品を19.99ドルで売りまくるだけだ。これを1つ売るごとに、あなたは8.78ドルの利益を得る。素晴らしい、おめでとう、自慢していい。

もちろん何らかの広告を打つ必要がある。新規顧客1人を3ドルで手に入れる方法がわかった。それは〈すばらしく〉魅力的であり、もちろんあなたの利益を食いつぶす。

数カ月後、売上は著しく落ち始める、それは別の人々が市場に参入したからだ。〈心配無用〉とあなたは考える、〈いくつか秘策があるから〉。そして、ディスカウントというナイフを取り出す。まず、10%ディスカウントをやってみる。かなりうまくいった。これで〈大金〉が入った。しかしもちろん、ライバルたちはすぐ後に迫っているので、いっそう頑張ることを決意する。まず25%ディスカウントから。次に40%ディスカウント。すると・・・

顧客にとっては、ありがたいばかり。〈彼ら〉が見るのはこれだけだ。

顧客は価格が下がっていることに気づく。これはすごい!みんな狂ったように買う。

ある時点で、あなたはなにかに気づく。価格をほんの少し下げただけなのに、前より全然儲かっていない。何が起きているのか? さて、思い出してほしいのは、ディスカウントは販売価格にタダで与えてるものではなく、ディスカウントは自分の利益から与えているということだ。その他のコストは何も変わっていない。

数字を注意深く見てみると、なぜディスカウントがそれほど素晴らしいアイデアではなかったことに気づくだろう。確かに、19.99ドルから14.99ドルへの値下げは、5ドルの違いにすぎない。しかし、あなたの利益は5.78ドルから0.78ドルへと急降下する。これはビジネスとは言えない。

もちろん、物理的製品の物流が伴わなければ、製品コストの変化は上のグラフほど劇的ではない、しかし、SaaS(サービスとしてのソフトウェア)ビジネスでさえ、コストはかかる。カスタマー・サポート、サーバー費用、等々。価格を下げる前には、自分の売上原価(COGS、Cost Of Goods Sold)を知っておかねばならない。

ただし、これはディスカウントを決してやってはいけない、という意味でもない。倉庫に製品があって、支払いが迫っているとき、在庫を清算して支払いすることは、倒産するより理にかなっている。もしかしたら古い在庫を処分したいのかもしれないし、新しいお客さんにサービスしたいのかもしれないし、新規顧客を獲得しようとしているのかもしれない。どれも理にかなっている。しかし、ディスカウントすることが、収支にどう影響するかは常に念頭に置く必要がある。スプレッドシートを取り出し、計算をして、うっかり無意味な利幅で商品を売らないようにすることだ。

画像クレジット:TechCrunch

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(文:Haje Jan Kamps、翻訳:Nob Takahashi / facebook

テクノロジー大手に対する聴聞を重ねた米上院がネット上の子どもの安全を護る法案の審議へ

昨年、Facebookの元社員Frances Haugen氏が同社の内部文書の集積をリークし、Instagramのようなアプリがティーンにとって有害であることを明らかにした。これらの暴露事件により、インターネットの子どもに対する安全性をめぐる上院のヒアリングが5回行われ、TikTokやSnap、YouTube、Instagram、Facebookなどの役員が証言した

その結果として上院議員のRichard Blumenthal氏(民主党-コネチカット州)とMarsha Blackburn氏(共和党-テネシー州)が本日(米国時間02/16)、法案Kids Online Safety Act(児童のオンライン安全法, KOSA)を提出した。この法律は、ソーシャルメディア企業が①16歳未満のユーザーが自分の情報を護れて、②常習癖に導くような機能を無効にし、③アルゴリズムによる推奨を拒否し、④子どものソーシャルメディアの利用を親がもっとコントロールでき、⑤ソーシャルメディアのプラットホームは年1回の外部監査により若年層へのリスクを評価し、また⑥学術機関や市民団体などが企業のデータを利用して子どものインターネット利用の安全性を調査し、その結果を報告できることを要求している。

プレスリリースでBlackburn上院議員はこう語っている: 「昨年のヒアリングでBlumenthal上院議員と私は、若いユーザーの身体的および精神的なダメージの話と、ビッグテックがそれらを改めようとしないことを、数え切れないほどたくさん聞いた。Kids Online Safety Actは、これらの害への対策として、オンラインのプラットホームが従うべき安全性のガイドレールを敷き、彼らに透明性を要求し、そして親たちに安心感を与えることを目的としている」。

関連記事: 米国会議員がSnap、TikTok、YouTubeに対して子供と安全に関する公聴会を開催

KOSAと、昨年上院の消費者保護小委員会で浮上したその他の法案とは重複が多く、BlackburnとBlumenthalの両氏はそれらにも関与している。

10月には、YouTubeとTikTokとSnapの代表者たちは全員がヒアリングで、親たちが自分の子どもやティーンのオンラインデータを消せるべきだという考えに賛成した。それは、歴史的な法律であるChildren’s Online Privacy Protection Act(児童のオンラインプライバシー保護法, COPPA)にEd Markey上院議員(民主党-マサチューセッツ州)とBill Cassidy上院議員(共和党-ルイジアナ州)が提案した改定に盛られている。

またBlumenthal氏とMarkey氏は彼らのKids Internet Design and Safety Act(児童のためのインターネットの設計と安全法, KIDS)を9月に再提出し、16歳未満のユーザーを自動再生やプッシュ通知など注意を強制する機能から護り、子どもや若いティーンを対象とするインフルエンサーマーケティングを禁止し、また、フォロワー数や「いいねボタン」など人気を定量化するインタフェイスを禁ずる条項を加えた。

また、下院と上院の両方に超党派で提出されたFilter Bubble Transparency Act(フィルターバブル透明性法)は、アルゴリズムの守秘性とそれによるユーザーへの影響の懸念に対処している。この法律でソーシャルネットワークは、ユーザーに標準的な逆時系列のフィードを提供するか、それとも不透明でときにはプロプライエタリでもあるアルゴリズムを使うかを選ばせなければならない。今回提出されたKOSAにはこの二択の要求はないが、しかしテクノロジー企業はソーシャルメディアからの重要なデータセットを政府に渡すことを強制される、とこの法案の要約には書かれている。それによって研究者や非営利団体の職員は、研究調査目的でそのデータにアクセスできるようになる。

カリフォルニアでも、超党派の州議会議員たちが、英国の年齢適合設計法(Age Appropriate Design Code)を模した法案を明日提出する。この法律ではMetaやYouTubeのような同州に本社のある企業が、そのプラットホーム上での子どもからのデータ収集を制限しなければならない。ビッグテックが優勢なカリフォルニアでは、州法がプラットホームに、そのプラットホームを若いユーザーにとって安全にするためのアクションを命じなければならないこともある。

これらの法案のどれに、ソーシャルメディアの運用の仕方を変える力があるか。それを言うのは時期尚早だが、国や州の議員たちがビッグテックのコントロールに真剣になってきていることは、明らかだ。

関連記事: 米超党派グループがソーシャルメディアの推奨アルゴリズムを制限する法案を提出

(文:Amanda Silberling、翻訳:Hiroshi Iwatani)
画像クレジット: Bryce Durbin/TechCrunch

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ソニーのファンド子会社ソニーベンチャーズが始動、運用総額は600億円超へ

ソニーグループは2月17日、100%子会社としてファンド事業を行う「ソニーベンチャーズ」を2021年7月に設立し、2022年2月より新ファンド「Sony Innovation Fund 3 L.P.」の運営を開始したと発表した。同ファンドにはSMBCグループ、みずほグループ、大和証券グループ、三井住友信託銀行、横浜銀行、滋賀銀行、コーエーテクモグループ、川崎重工業、三菱地所、その他学校法人に加えソニーグループが本ファンドの第一次募集のリミテッドパートナーとして参画する。同社はこのファンドを最終的に250億円超の規模へ拡大することを目標とする。これにより、2016年に開始したSony Innovation Fundの運用総額は600億円を超える見込みだ。

同ファンドでは、注力投資分野としてヘルステック、フィンテック、エンターテイメント、ディープテックへの投資を行うほか、ESGをより重視して投資を行うとしていた。また、ソニー本社が昨今注力しているEVの分野については、「EV関連のさまざまなスタートアップのポートフォリオはすでにあり、それらの企業との協力は今後も模索していく」とソニー常務の御供俊元氏は記者会見で語った。

「これまでのコーポレートベンチャーキャピタル活動及びInnovation Growth Fundの運営、ESG取り組み支援プログラムの推進などを通じて、次世代を担う技術やスタートアップを育成し、オープンイノベーションを推進するとともに地球環境・社会発展への貢献に取り組んできました。ソニーベンチャーズ株式会社では、高成長分野・高成長企業に投資するにとどまらず、ESGへの取り組みもより一層強化し、CVCから発展した新たな形のベンチャーキャピタルとしてスタートアップの支援に取り組んでいきます」(ソニーベンチャーズ代表の土川元氏、プレスリリースより)

ツイッター、「優良ボット」を識別するラベルを正式導入

Twitter(ツイッター)は2021年秋に、自社サービス上の「優良ボット」と同社が呼ぶものが自らを優良と名乗れるようにする新しいラベルを導入した。「ボット」という言葉はしばしばネガティブな意味合いを持つが、Twitterは、新型コロナウイルス感染症のアップデート、地震警報、議会に提出された法案など、役立つ情報を自動的にツイートする有用なボットも存在すると指摘している。この「優良ボット」ラベルは、これまで一部のグループでテストされてきたが、いますべての自動化されたアカウントの保有者が利用できるようになった。

テスト中と同様、ボットとラベル付けされたTwitterアカウントは、そのTwitterのプロフィールにこの情報を表示する。アカウント名と@ユーザーネームの下に、小さなロボットアイコンが表示され「Automated by」の文字に続いて、アカウントの運営者の名前がくる。一方、Twitterの略歴には、ボットの目的が詳しく書かれる。

ボットがツイートすると、ユーザーのタイムラインにもその自動化の状況が表示される。

Twitterは、この情報はユーザーがどのアカウントをフォローし、関わり、信頼するかを決めるのに役立つとしている。

画像クレジット:Twitter

このアカウントラベルは、9月に約500のTwitter開発者アカウントで初めて利用できるようになり、@earthquakesSF@vax_progress@last100bills@AltTxtReminder@met_drawings@EmojiMashupBotなどのボットが、機能をテストしてフィードバックを提供した。これらのアカウントは、重要な最新情報から興味深い情報、楽しいコンテンツまで、さまざまなボットの使い方を示した。

「優良ボット」に加えて、多くの人が他の方法でTwitterアカウントを自動化している。例えば、IFTTTインテグレーションを使ってリンクをツイートするような方法がある。しかし、Twitterはそのような種の自動ツイートについてはあまり懸念していないという。ユーザーは自分のアカウントで使用するサードパーティーのアプリケーションを調べて、Twitterのルールに従っていることを確認する必要がある、とだけ指摘している。

画像クレジット:Twitter

ボットラベルは有用だが、Twitterのサービスにおけるボットに関するより大きな問題を必ずしも解決してはいない。

悪質なボットには、スパムをつぶやくボット(あるいは、暗号資産詐欺を宣伝するボット!)のような迷惑なものから、今後の選挙に影響を与えようとする懸念されるものまで、さまざまなものがある。オプトイン方式を採用しているため、つぶやいて良いことをしようとしているボット所有者は、ラベルを追加して、そのアカウントの所有者であることをアピールすることができる。しかし、悪質なボットはできない。

この機能は、Twitter APIを使用する自動化されたアカウントに2月16日から提供されている。しかし、Twitterによると、今のところシステムの監査は行われていない。

「Twitter上のすべてのアカウントにはTwitterのルールが適用されます」と同社の広報担当者は話す。「ラベルはオプトインのみであるため、現時点では採用を選択したアカウントの監査は行わず、アカウントがルールに違反した場合は、我々の報告プロセスに則ることになります」。

Twitterは、米太平洋時間2月16日午後3時にTwitter Safetyチーム主催のTwitter Spaceでこのニュースについてさらに議論し、同2月17日午前11時にはTwitterDevのTwitchチャンネルで開発者向けデモを行う予定だ。

画像クレジット:Bryce Durbin

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(文:Sarah Perez、翻訳:Nariko Mizoguchi

PCとウェブカメラだけで3Dキャラクターを動かせる、Vtuberツール「RiBLA Broadcast (β)」が無料提供開始

PCとウェブカメラだけで3Dキャラクターを動かせる、Vtuberツール「RiBLA Broadcast (β)」が無料提供開始

エイベックス・テクノロジーズは2月16日、ウェブカメラとPCだけでVRM形式3Dキャラクターモデル(アバター)を全自動で動かして遊べるPC用ソフト「RiBLA Broadcast (β)」の無料提供を開始した。創作物の総合マーケット「BOOTH」(ブース)上で公開している(ダウンロードにはpixiv IDが必要)。対応OSはWindows10以降、macOS 10.15.7以降(10.12以前は動作しない)。

合わせて、RiBLA初のオリジナルキャラクターのアバターを無償配布し、キャラクターグッズの予約販売も行っている。PCとウェブカメラだけで3Dキャラクターを動かせる、Vtuberツール「RiBLA Broadcast (β)」が無料提供開始

RiBLA Broadcast (β)は、ウェブカメラの撮影映像を基に、VRM形式アバターを操作できるというVtuberツール。ユーザーの動作・表情の情報をカメラ映像から自動で取得しており、骨格推定・AIによる表情認識を行っているため、専用のトラッキング機材を導入することなく、初期コストなしで全自動でアバターを動かせる。表情切り替えや細かな動きの調整については、手動でも行える。

また、任意のVRM形式アバターをドラッグ&ドロップですぐに導入できるほか、背景としてクロマキーや好きな画像を設定可能。

このほか、オープンソースソフトウェアの配信ツールOpen Broadcaster Software(OBS)と組み合わせることで、YouTubeやTwitchなど動画配信プラットフォームでの生配信に利用できる。

無償提供のオリジナルキャラクターは、「生駒ミル」(いこまみる)、「九条フレカ」(くじょうふれか)の2種類で、イラストレーターのkonomi(きのこのみ)氏がデザインしている(九条フレカは後日公開)。フォーマットはVRM形式で、今後もラインナップを追加予定という。

PCとウェブカメラだけで3Dキャラクターを動かせる、Vtuberツール「RiBLA Broadcast (β)」が無料提供開始

画像左側キャクターが九条フレカ(くじょうふれか)で、右側が生駒ミル(いこまみる)。キャラクターデザインは、konomi(きのこのみ)氏が担当している

またこれらアバターは、RiBLA Broadcast (β)以外にも、3Dモデルを扱えるソフトウェアやVR向けSNSなど、様々なサービス・用途で利用可能。


©Avex Technologies Inc.

エンジニアの満足度を重視して生産性を上げるパフォーマンス管理ダッシュボード「Okay」

雇用主が「大辞職時代」における労働者の減少を何とかしようと模索し、在宅勤務の従業員をつなぎとめようとする中、Okay(オーケー)の共同創業者兼CEOであるAntoine Boulanger(アントワン・ブーランジェ)氏は「ナレッジワーカーにとって、生産性と従業員満足度の区別がなくなってきている」ことから、同社の定量的かつ共感的なマネジメント手法への需要が伸びているという。

TechCrunchでは2年前、エンジニアリングマネージャーが効果的で積極的に従事しているチームを率いるためのエンジニアリング可視化ツール「Okay」を紹介した。当時Okayは、Y Combinator(YC、Yコンビネータ)から220万ドル(約2億5000万円)の新規資金を調達したばかりだった。ブーランジェ氏は、共同創業者のTomas Barreto(トーマス・バレット)氏とともに、Boxでの出会いをきっかけにOkayを立ち上げたと語っていた。

「この2、3年で見られたのは、完全にリモート化されたチームをどのように管理すればよいのかという、人々、マネージャー、チームにとっての移行期でした」とブーランジェ氏は付け加えた。「人々は、より多くの可視性を求めており、チームで何が起こっているのかを理解したいと考えています。パンデミック初期には会議が増えましたが、人々はさまざまなことに慣れ、今はオフィスに戻ろうとする中で、同じような移行が再び起きています」。

Okayの一連のツールは、社内で構築されたツールの大部分を置き換えることを目的としており、エンジニアが生産性を感じて仕事に取り組めない原因となっている、中断された作業や不十分なツーリングの状況を把握できるようにする。同社の製品は、Googleカレンダー、GitHub、PagerDuty、CircleCIなどのソフトウェアを含む、企業の既存ツールと統合することができる。

過去1年間で、SourcegraphやmParticleなどの顧客を含め、売上と顧客数が約10倍に増加した。これは、アウトプットを測るのではなく、開発プロセスのボトルネックを特定することに焦点を当てた、エンジニアリングの生産性に対するアプローチによるものだとブーランジェ氏は考えている。

この勢いをさらに加速させるために、Okayは新たに440万ドル(約5億円)の資金を調達した。今回はKleiner Perkins(クライナー・パーキンス)が主導し、Stripe(ストライプ)のCEOであるPatrick Collison(パトリック・コリソン)氏、Plaid(プレイド)、Brex(ブレックス)、Instacart(インスタカート)の幹部らが参加した。

今回の資金調達は、統合オプションの数の拡大、新機能の追加、人材採用などに充てられる。ブーランジェ氏は、より大きな企業をサポートすることを目指している。同社が注力しているのは数百人のエンジニアを抱える企業がいる市場だが、いずれは数千人のエンジニアを擁する企業をサポートできるようにしたいとのこと。

同氏はこうも語っている。「複雑なデータを扱う製品の構築に3年を費やしたため、シニアチームにはこれに取り組んでもらい、お客様とのパートナーシップを築いてきました。エンジニアリングチーム、市場参入のための努力、そしてデザインをさらに倍増させたいと考えています。興奮しているエリアの1つは、クエリを共有する方法を確立し、社内の誰もがデータを共有できるようにすることです」。

画像クレジット:Okay

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(文:Christine Hall、翻訳:Aya Nakazato)

香港のイベントプラットフォームEventXがシリーズBで約2.8億円調達、HTCとVRで協力も視野に

EventXのCEOであるSum Wong(サムウォン)氏(画像クレジット:EventX)

各国が新型コロナ規制を緩和するにつれ、人々の活動は対面式に戻りつつある。しかし、バーチャルイベント分野は、少なくともアジアにおいては、投資家を魅了し続けている。香港を拠点とするイベント管理プラットフォームEventXは、香港時間2月16日、シリーズBでさらに800万ドル(約9億2000万円)を調達し、このラウンドで確保した総額を1800万ドル(約20億8000万円)に引き上げた。

今回の資金調達は、Hillhouse Capital(高瓴資本)のアーリーステージ投資部門であるGL Ventures(高瓴創投)が主導した。これまでの投資家には、Hillhouse Capitalの元パートナーが設立した投資会社Gaocheng Capital(高成资本)や、近年VRに力を入れている台湾の大手電機メーカーHTCなどが含まれている。EventXは、ポストマネー評価額を公表していない。

今回のシリーズBは、EventXが設立されてから8年後に実施された。これは、中国本土のバーンレートが高いインターネット企業に比べて、異例の忍耐強い資金調達ペースだ。同社は、ユーザー登録のサポートから参加者のバーチャル名刺交換まで、現実のイベントを管理することからスタートした。2020年に新型コロナウイルスが出現したとき、デジタル化のチャンスだと考え、ウェビナーやバーチャル展示会などのライブイベントをサポートするHopin(ホピン)のような新サービスを開発した。現在では、主催者がイベントを通じて新たな顧客やパートナーを開拓するリード生成機能も備えている。

対面式イベントを封じるパンデミック規制のおかげで、Hopinは最近の記憶では最も急速に成長した企業の1つとなった。しかし先週、ロンドンを拠点とする同スタートアップは、ポストコロナにバーチャルイベントへの需要が鈍化すると判断し、スタッフの12%を解雇したと報じられた。パンデミックはEventXにも恩恵をもたらし、同社プラットフォームの2021年第4四半期のオンライン参加者数は120%増加した。また、ライブイベントが元通りになったとしても、同社は長年続いてきたオフラインビジネスを維持することができると考えています。

これまでに、同社はアジアを中心に100以上の都市でイベントの開催を支援し、そのプラットフォームには500万人以上の参加者が訪れている。同社の100人のチームは、香港、シンガポール、日本、韓国、台湾に分散している。

同社は今回の資金を、買収、製品開発、人材採用、アジア(特に台湾と東南アジア)での事業拡大に充てる予定だ。また、投資家であるHTCと協力して、イベント体験にVRソリューションを導入することも視野に入れている。

画像クレジット:

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(文:Rita Liao、翻訳:Aya Nakazato)

香港のイベントプラットフォームEventXがシリーズBで約2.8億円調達、HTCとVRで協力も視野に

EventXのCEOであるSum Wong(サムウォン)氏(画像クレジット:EventX)

各国が新型コロナ規制を緩和するにつれ、人々の活動は対面式に戻りつつある。しかし、バーチャルイベント分野は、少なくともアジアにおいては、投資家を魅了し続けている。香港を拠点とするイベント管理プラットフォームEventXは、香港時間2月16日、シリーズBでさらに800万ドル(約9億2000万円)を調達し、このラウンドで確保した総額を1800万ドル(約20億8000万円)に引き上げた。

今回の資金調達は、Hillhouse Capital(高瓴資本)のアーリーステージ投資部門であるGL Ventures(高瓴創投)が主導した。これまでの投資家には、Hillhouse Capitalの元パートナーが設立した投資会社Gaocheng Capital(高成资本)や、近年VRに力を入れている台湾の大手電機メーカーHTCなどが含まれている。EventXは、ポストマネー評価額を公表していない。

今回のシリーズBは、EventXが設立されてから8年後に実施された。これは、中国本土のバーンレートが高いインターネット企業に比べて、異例の忍耐強い資金調達ペースだ。同社は、ユーザー登録のサポートから参加者のバーチャル名刺交換まで、現実のイベントを管理することからスタートした。2020年に新型コロナウイルスが出現したとき、デジタル化のチャンスだと考え、ウェビナーやバーチャル展示会などのライブイベントをサポートするHopin(ホピン)のような新サービスを開発した。現在では、主催者がイベントを通じて新たな顧客やパートナーを開拓するリード生成機能も備えている。

対面式イベントを封じるパンデミック規制のおかげで、Hopinは最近の記憶では最も急速に成長した企業の1つとなった。しかし先週、ロンドンを拠点とする同スタートアップは、ポストコロナにバーチャルイベントへの需要が鈍化すると判断し、スタッフの12%を解雇したと報じられた。パンデミックはEventXにも恩恵をもたらし、同社プラットフォームの2021年第4四半期のオンライン参加者数は120%増加した。また、ライブイベントが元通りになったとしても、同社は長年続いてきたオフラインビジネスを維持することができると考えています。

これまでに、同社はアジアを中心に100以上の都市でイベントの開催を支援し、そのプラットフォームには500万人以上の参加者が訪れている。同社の100人のチームは、香港、シンガポール、日本、韓国、台湾に分散している。

同社は今回の資金を、買収、製品開発、人材採用、アジア(特に台湾と東南アジア)での事業拡大に充てる予定だ。また、投資家であるHTCと協力して、イベント体験にVRソリューションを導入することも視野に入れている。

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(文:Rita Liao、翻訳:Aya Nakazato)

【2月17日】掲載記事アクセスランキング・トップ5―第1位はPCやMacをChromebookに変える「Chrome OS Flex」

【2月17日】掲載記事アクセスランキング・トップ5―第1位はPCやMacをChromebookに変える「Chrome OS Flex」

掲載記事のうち、2月17日午前6時現在集計で最もアクセスのあった記事5本を紹介。

第1位:グーグル、PCやMacをChromebookに変える「Chrome OS Flex」を発表

Googleが2020年に買収したCloudReadyの上に構築されているChrome OS Flexは、既存のデバイスの寿命を延ばしたい企業や教育機関のユーザーをターゲットとしているが、USBドライブにアクセスできる人なら誰でも古いPC、あるいは低消費電力の新しいPCの寿命を伸ばすために使用することができる。そこには、明らかに持続可能性(サステナビリティ)という視点がある。

第2位:ツタンカーメンの鉄剣は隕石で作られていた―千葉工業大学がその製造法と起源を解析


千葉工業大学は2月14日、エジプト考古学博物館においてツタンカーメン王(紀元前1361年~1352年)の鉄剣の非破壊・非接触化学分析を行ったことを発表した。その結果、鉄剣の原料は隕石であり、低温鋳造で作られ、エジプト国外からもたらされたことが判明した。

第3位:Windows 11でAndroidアプリを実行可能に、米国でAmazon Appstoreプレビュー提供開始


昨年10月、Microsoft(マイクロソフト)はAmazon(アマゾン)との提携によって、Windows 11パソコンでAndroid(アンドロイド)アプリを実行するテストを開始した。ただし、その機能を利用できるのはWindows 11 Insider Program(インサイダー・プログラム)に参加しているベータ・テスターのみで、アプリは50種類ほどに限られていた。本日、米国時間2月15日、同社は利用範囲を拡大し、Microsoft Storeに登場したAmazon Appstore Previewで1000種類以上のアプリやゲームを提供開始した。

第4位:重量76g・動画視聴に特化のARグラス「Nreal Air」、ドコモとauから3月4日発売

メガネ型ディスプレイのNrealが、新モデル「Nreal Air」(エンリアル エアー)を3月4日にNTTドコモとKDDIから発売すると発表しました。メーカー希望小売価格は4万9800円ですが、ドコモでは3万9800円、auでも3万9799円で予約を受付中。なお、Nreal Airの一般販売は、日本が世界初になるとのことです。

第5位:グーグルのInboxを復活させてSlackも混ぜたメールクライアント「Shortwave」

Googleによる「Inbox」の実験は、それが続いていた間は輝かしいものだった。2014年に招待制のサービスとして開始されたInboxは、同社の次世代のメールクライアントだった。あまりにも優れていたため、Googleが2019年にサービスを終了させたことも意外ではなかった。しかし、ありがたいことに、Google / Firebaseの元従業員グループが現在、Inboxの体験を復活させている……Slackのユーザー体験も少し混ぜて。

画像クレジット:Brands&People on Unsplash

EVスタートアップFiskerが350万円切りの街乗りEV「PEAR」の予約受付を開始、納車は2024年予定

EVスタートアップFiskerが350万円切りの街乗りEV「PEAR」の予約受付を開始、納車は2024年予定

Fisker

EVスタートアップのFiskerは、5人乗りの「街乗りEV」であるPEARの予約受付を開始しました。価格は2万9900ドル(約345万円)からと非常に低価格。これはFiskerが先に発表しているSUVモデルのOceanの3万7499ドル(約433万円)や、安い安いと言われたテスラModel 3の当初価格3万5000ドル(約404万円)よりもはるかに安価です。

PEARを購入するにはまず予約金として250ドル(約2万9000円。2台目なら100ドル・約1万1000円)が必要です。また納車や記事執筆時点では2024年になる予定です。

大企業というわけでもないFiskerが、なぜPEARをこんなに安価に作れるのかとお思いの方もいるかもしれません。実は、この新しいEVはFiskerとFoxconnの提携によって開発製造されることになっています。Foxconnは昨年、オハイオ州にあるEVベンチャーLordstown Motorsの工場を買収しており、ここでLordstownのEVや提携しているFiskerの新型EVの製造を手がける予定だと発表していました。また10月には独自のリファレンスモデルとしてEV3車種を発表しています。もしかするとFiskerのEVが安価なのはこのリファレンスモデルが関係しているのかもしれません。ちなみにFiskerはPEARを年間25万台以上生産することを予定しているとし、スポーティな走りと直感的なUI、スマート充電機能その他「業界初へのこだわり」といった売り文句を並べてはいるものの、その仕様詳細はまだ明らかにしていません。

なお、Fiskerはまず2022年11月にOceanの生産を開始する予定となっています。そしてPEARが登場する2024年ごろには、既存の自動車メーカーを含め多数のEVが市場を賑わせるようになっていることが予想されます。そのなかで2万9900ドル(約345万円)という価格がどれぐらい武器になるのか、またその性能、品質や安全性などがスポイルされることなく提供されるかどうかが気になるところです。

(Source:FiskerEngadget日本版より転載)