YouTubeにインターネットテレビの広告でもっと買い物しやすくなる新機能追加、Z世代をターゲットに

米国時間5月4日、YouTubeは広告主たちに、同社の動画プラットフォームで視聴者が買い物できる機能を予告的に紹介した。同社が近く導入するその新しい対話的機能は「ブランドエクステンション」と呼ばれ、広告主がそれを利用すると、動画の視聴者がボタンをクリックして画面に映っている商品の詳しい情報が得ることができる。

広告主はその新しい広告形式を使って、自分のウェブサイトのリンクや、インターネットテレビの広告中のその他のアクションを高輝度で表示できる。視聴者が「電話へ送る」をクリックすると、その宣伝やURLそのものがモバイルデバイスへ飛ぶが、その際、動画の視聴そのものは邪魔されない。

消費者はモバイルデバイスから、商品を閲覧したり、カートに品物を加えたり、決済を完了したりの買い物体験を通常どおりできる。しかもそのショッピング機能のある商品情報は、動画の視聴を中断されずにモバイルへ送れる。

広告主は、その動画の内容によって広告をターゲティングできる。たとえばフィットネスの動画なら、そこには新商品のランニングシューズのブランドエクステンションが出るだろう。

YouTubeによると、ブランドエクステンションのコンバージョンレートはGoogle Adsで直接見られるようになる。

eコマース関連のもう1つの取り組みとして、これからはブランドがそのダイレクトレスポンスビデオ広告に商品の閲覧用画像を加えられる。つまり、関心を持ったショッパーがその画像をクリックすると、その商品のウェブサイトやアプリへ飛ぶことができる。

YouTubeが自らをeコマース化しようと努力している機能はさらに多く、ここで取り上げているのはごくわずかな例にすぎない。

消費者、特に若いZ世代は、動画を見たりその他の関わり行為をしながらついでにショッピングする傾向があり、Popshop LiveNTWRKShopShopsTalkShopLiveBambuserといったたくさんの動画ショッピングサービスが登場している。Facebookも、FacebookとInstagramの両方でライブのショッピング(何かをしながら見ながらのショッピング)や動画からのショッピングに投資している。

一方、TikTokはWalmartとともに動画によるeコマースのホームになり、最近の数カ月でショッピングのライブストリームを複数ホスティングした。TikTokの中国資本からの切り離しと売却をトランプ元大統領が強制しようとしたときは、Walmartも買い手の名乗りを上げた。他にも、eコマースにおけるTikTokの成功例には、動画にウェブサイトのリンクを統合するツールや、Shopifyの統合などがある。

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Comscoreのデータによると、YouTubeは今でも、広告入りストリーミングサービスの全視聴時間の40%を占めているため、動画ショッピングの見込み客の数も大きい。YouTubeによると、米国のインターネットテレビの市場では上位5社のストリーミングサービスが80%のシェアを占めている中で、広告入りはわずか2社だ。

しかも広告は、YouTubeのeコマース振興努力の一部にすぎない。クリエイターの役割も大きい。

2020年秋のBloombergの記事によると、YouTubeはクリエイターたちに、彼らの動画クリップに商品が登場するとき、それにタグと追跡機能を持たせることを求めた。その後YouTubeは2021年の2月に対する説明を行い、視聴者が自分の好きなクリエイターから買い物できる機能をベータテスト中で、その本番展開は年内と発表した。

ただし、ブランドエクステンションはそれとは別であり、動画からショッピングできる機能を広告主に与える。YouTubeによると、ブランドエクステンションのある広告は、同社が他にもいろいろ用意している対話的機能の第1弾にすぎない。そしてそれは、2021年後半にグローバルで展開される。

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(文:Sarah Perez、翻訳:Hiroshi Iwatani)

テスラがカナダ企業の特許を使い安価で環境に優しい新バッテリーを開発中

Elon Musk(イーロン・マスク)氏は2020年9月にTesla(テスラ)のBattery Dayのステージに立ったとき、リチウムイオンバッテリーの価格を半分にすると約束し、ニッケル金属電極を作る際の汚れた、そして複雑な過程を最初から作り直すことで価格を抑制できると主張した。

「溝を掘って、溝を埋め、そしてまた溝を掘ってと、とてつもなく複雑です」と同氏はイベントで述べた。「それで我々は全体のバリューチェーンに目をやり、どうやってこれを可能な限りシンプルにできるのか、と言いました」。

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最もシンプルなルートにはカナダの小さなバッテリースタートアップ、あるいは少なくとも同社の特許出願が含まれているようだ。

公開記録によると、Battery Dayの2週間前、Teslaはトロント近くに拠点を置く小さな会社Springpower International(スプリングパワー・インターナショナル)から数多くの特許出願を計3ドル(約330円)で購入した。

それらの特許出願の1つは、Teslaの上級副社長Drew Baglino(ドリュー・バッリーノ)氏がBattery Dayにカリフォルニア州フリーモントにある同社工場に設けられたステージで描写したものに似ている、イノベーティブなプロセスの詳細をつづっている。特許出願の購入は、特許そのものが最終的に2021年1月認められたとき、特許にはSpringpowerの記載はなく、Teslaに発行されたことを意味する。

電気自動車バッテリー向けの電極製造は従来、かなりの量の汚染水を生み出す。電極材料1トンを製造するのに、アンモニアや金属粒子、有毒な化学物質を含む4000ガロンもの汚染水が出る。Springpowerのプロセスは費用のかかる水処理を排除し、賢くも薬液を再循環させる

バッリーノ氏のプレゼンテーションでも、水を再利用し、排水を作らない手法が述べられた。事業費の75%以上の抑制に加え、同氏は次のように述べた。「当社はまた、同じプロセスをリサイクルされた電気自動車とグリッドストレージバッテリーから出る金属粉の消費に持ってくることができます」。

TeslaはSpringpowerの知的財産以上のものを獲得したようだ。Battery Dayの1週間前に、Springpower Internationalのウェブサイトは1つのホールディングページに変わった。それから数カ月して、何人かのSpringpowerの研究者は彼らのLinkdInプロフィールを変えた。それからするに彼らは現在、Teslaで働いているようだ

Springpower InternationalのCEOであるMichael Wang(マイケル・ワン)氏はコメントの求めに応じず、同社の電話交換台へのコールにも応答がなかった。同氏のLinkedInのページには現在、Teslaのスタッフ(バッリーノ氏含む)からの何十ものアップデートが表示されている。

電話で連絡をとったSpringpower Internationalの上級役員はTeslaによる買収を認めも否定もしなかったが、TechCrunchにTeslaの広報チームを案内した(Teslaは広報担当者を置いておらず、同社に送ったメールに返事はなかった)。

Springpower Internationalは、部分的には中国のバッテリー会社Highpower Internationalによって、Springpowerの子会社の研究部門として2010年3月に深圳で創業された。しかしHighpowerは6カ月もせずして、Springpower Internationalのテクノロジーが商業化から程遠いと判断して10万ドル(約1090万円)の投資を取り消してSpringpower Internationalと手を切った。

カナダ政府が出資したプログラムの「客員起業家」であるJames Sbrolla(ジェームズ・スブローラ)氏が、創業されて間もなかったSpringpower Internationalを指導するために介入した。同氏は同社が少額の補助金を、そして最終的に2018年に340万カナダドル(約3億円)の持続可能テクノロジー賞を獲得するのを手伝った。しかし同氏は2020年後半以降、Springpower Internationalの誰とも連絡をとっていないとTechCrunchに語った。

スブローラ氏は同社が買収されたかもしれないと聞いても驚かなかった。

「スマートな人たちのグループです。それについて疑う余地はありません」と同氏は話した。「Springpowerのもののようなテクノロジーは環境への負荷の削減で大きなメリットがあります。そして大企業を引きつけることでずっと早く、そしてより簡単にスケール拡大できます」。

ありそうなことだが、Springpower InternationalがTeslaによって買収されたのなら、2019年に同じように密かに買収された別のカナダのバッテリー会社Hibarを含む12社ほどの企業の仲間入りをしたことになる。

マスク氏はリチウムイオンバッテリーの専門的な部分に関しては長らく国境の北に目を向けてきた。2015年にTeslaはカナダ・ノバスコシア州にあるダルハウジー大学の主任バッテリー研究者で教授のJeff Dahn(ジェフ・ダーン)氏と5年間の独占的パートナーシップを結んだ。ダーン氏の名は同社の数多くのバッテリー特許に掲載されており、2021年1月に同社はダーン氏とのパートナーシップをさらに5年間更新した。

マスク氏は自社バッテリー生産を実現し、現在のサプライヤー(パナソニック、LG化学、 CATL)への依存を小さくしようと取り組んでいる。「いま当社はこのプロセスを手にしていて、独自の電極の設備を北米に建てようとしています」とバッリーノ氏はBattery Dayで述べた。

マスク氏はTeslaの新しいバッテリーテクノロジーの複合的なメリットによって2万5000ドル(約270万円)の車両が実現するかもしれない、と付け加えたが、あまりに多くをすぐには期待しないよう警告した。「こうしたアドバンテージを実現させ始めるのにおそらく1年から18カ月、完全に実現するのに3年ほどかかるでしょう」。

おそらくそれまでにSpringpower Internationalの役割はもう少し明らかになるだろう。

カテゴリー:モビリティ
タグ:TeslaバッテリーSpringpower Internationalカナダ電気自動車イーロン・マスク

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(文:Mark Harris、翻訳:Nariko Mizoguchi

マイクロソフトの新アプリReading Progressは教師、子どもの読解能力の評価を楽にするアプリ

山ほどの仕事を抱えている小学校教師にとって、児童の読解能力を測ることは骨の折れる仕事であり、通常は時間を要し強いプレッシャーのかかる1対1のテストを通じて行われる。Microsoft(マイクロソフト)の新しいアプリであるReading Progress(リーディング・プログレス)は教員の肩の荷を少しでも軽くしようとするもので、子どもたちは自宅で読書ができて、AIによる自然言語理解を利用した障害と進歩の確認もできる。

2020年はほとんどの教育プランが台なしになり、読解力は子どもたちが学校にいる時のようには向上しなかった。Amira(アミーラ)などの会社が読書の様子をAIで観察することによってギャップを埋めようとしているのに対して、Microsoftは教員のためのツールを増やそうとしている。

Reading ProgressはMicrosoft Teams(ティームズ)のアドオンで、教師がより柔軟に読解テストを実施できるようにすることで、人前で読んで失敗することを心配する児童へのプレッシャーを軽減し、読み飛ばしや言い直しなどの重要な読み上げ事象を発見、追跡することができる。

教師は児童毎に(あるいはクラス全員に)課題読み物を与え、子どもたちは好きな時間に読むことができる。テストを受けるよりも宿題をやるのに近い。アプリ内で直接動画を撮影し、音声はよくあるつまずきを観察するアルゴリズムによって解析される。

4年生のBrielle(ブリーレ)さんによるビデオ証言のように、多くの子どもがこのやり方を好むかもしれない。

ブリーレさんのように聡明で自信に満ちた少女がこのやり方の方がよいと感じているとして(彼女は自分の学年より2年上の課題を読んでいる、よくやったブリーレさん)、失読症や訛りが心配だったり、内気なだけで読むのに苦労している子どもたちにはどうなのか?自分の家で自分ひとりで自分のカメラに向かって話せることで、ずっと上手に読めるようになり、正確な評価も可能になる。

これは教師をそっくり置き換えようとするものではもちろんない。忙しすぎる教育者が優先順位をつけ、ものごとを客観的に見て追跡することに集中しやすくなるためのツールだ。これはAmiraが対面のグループ読書(パンデミック下では不可能)を置き換えようとするものではなく、よくある間違いをすばやく修正して読者を励ますというこれも有用なプロセスを提供すると同じだ。

この日MicrosoftはReading Progressに関連する情報を数多く公開した。誕生の物語と基本的概要や、プロダクトハブ解説ビデオ同社のアプローチを支持する引用などだ。この新しい教育関係プロダクトに関するまとめ投稿にも詳しく書かれている。

カテゴリー:EdTech
タグ:MicrosoftReading Progressオンライン学習Microsoft Teams

画像クレジット:Microsoft

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(文:Devin Coldewey、翻訳:Nob Takahashi / facebook

インド通信省が5G試験を承認、中国企業は含まれず

インドの通信省は5月4日、通信サービスプロバイダーに6カ月にわたる5Gテクノロジー試験の実施を許可したと明らかにした。中国を除く複数の国の12以上の企業に承認を与えた。

承認された通信会社にはJio Platforms、Airtel、Vodafone Idea、MTNLが含まれる。これらの企業は元々の設備メーカーやテックプロバイダーのEricsson、Nokia、Samsung、C-Dotと協業する、と通信省は述べた。加えてJio Platformsは自社開発のテクノロジーを使っての試験実施も認められた。

プレスリリースで通信省は中国について特に言及はしなかったが、この件に詳しい人物は中国大手企業HuaweiとZTEは承認を与えられなかったと明らかにした。

同省は、インドの優先順位とテクノロジーパートナーを選んだ通信サービスプロバイダーに承認を与えた、と述べた。実験スペクトルはミッドバンド(3.2〜3.67GHz)、ミリ波帯(24.25〜28.5GHz)、サブGHz帯(700GHz)などさまざまな周波数帯域が与えられている。プロバイダーはまた、5Gの実験を行うのに自社が所有する既存のスペクトル(800MHz、900MHz、1800MHz、2500MHz)を使うことも認められる。

「承認のレターには、5Gテクノロジーの恩恵が都市部だけでなく国中に行き渡るよう、各通信サービスプロバイダーが都市部に加えて過疎地や準都市部でも実験を行わなければならないと明記されています。通信サービスプロバイダーはすでに知られている5Gテクノロジーに加えて、5Giテクノロジーを使った試験も行うことが推奨されています」と通信省は声明で述べた。

「5G実験実施の目的には、特にインドの状況を踏まえた5Gスペクトル伝搬の特性の試験が含まれます。モデルチューニング、選んだ設備やベンダーの評価、在来技術のテスト、(遠隔診療や通信教育、AR・VR、ドローンベースの農業モニタリングなどの)応用テスト、5Gのスマホやデバイスのテストなどです」。

2020年Airtelは世界の企業と部品で協業するという考えにオープンだと述べた。「過去10〜12年、Huaweiのプロダクトは少なくとも当社が使ってきた3G、4Gにおいては、EricssonやNokiaよりも大いに優れていると私が自信を持って言えるところにまできました。当社はこれら3社すべてのプロダクトを使っています」とAirtelの創業者であるSunil Mittal(スニル・ミタル)氏は2020年の会議で述べた。同じパネルで、米商務長官Wilbur Ross(ウィルバー・ロス)氏はインドや他の同盟国にHuaweiを避けるよう促した。

インドと中国の間では2020年、国境での小競り合いで地政学的緊張が高まった。同年初めに中国企業がインドの企業に投資しにくくなるよう法律を改正したインドはその後、TikTokやUC Browser、PUBG Mobileなど中国企業の200以上のアプリを禁止した。

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カテゴリー:その他
タグ:インド5G

画像クレジット:Sanjit Das / Bloomberg / Getty Images

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(文:Manish Singh、翻訳:Nariko Mizoguchi

フォードとBMWが全固体電池のSolid Powerに142.2億円を投入

BMWグループならびにFord Motor Company(フォード・モーター・カンパニー)向けの、20アンペア時(Ah)の全固体電池セルを両手に持つSolid Power(ソリッド・パワー)の製造エンジニア。この全固体電池セルはコロラドにあるSolid Powerの試作ラインで製造された。

固体電池(SSB)システムは、長い間、電池技術の次のブレークスルーだと考えられてきたもので、複数のスタートアップが最初の製品化を競い合っている。自動車メーカーたちが、この技術に対するトップ投資家群の一角を占めている。各社とも電気自動車(EV)をより安全に、より速く、そして航続距離を拡大するための突破口を求めている。

そんな中、Ford Motor CompanyとBMWグループが、電池テクノロジー企業Solid Powerへ資金を投入した。

コロラド州ルイスビルを本社とする、SSB開発のSolid Powerは、米国時間5月3日に、その最新のラウンドとなる1億3000万ドル(約142億2000万円)のシリーズBが、FordとBMWによって主導されたと発表した。このことは、その2社がSSBが将来の輸送を支えるものだと考えていることを示している。今回の投資で、FordとBMWは対等な株式所有者となり、両社代表者はSolid Power の取締役会に参加する。

また今回のラウンドで、Solid Powerは米国エネルギー省のアルゴンヌ国立研究所からスピンアウトしたベンチャーキャピタルのVolta Energy Technologies(ボルタエナジー・テクノロジーズ)からも追加投資を受けた。

固体電池という名前は電解溶液を使わないことに由来している(Mark Harris記者が年頭のExtra Crunch記事で説明している)。通常の電解溶液は、可燃性で過熱の危険があるため、一般的にSSBは比較的安全だと考えられている。ライバルである電解溶液を使うリチウムイオン電池と比べたときのSSBの真の価値は、そのエネルギー密度だ。Solid Powerは、同社の電池は、既存の充電式電池に比べて50~100%エネルギー密度を向上させるとできるという。理論的には、よりエネルギー密度の高い電池を搭載した電気自動車は、1回の充電でより長い距離を移動することができる。

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この最新の投資ラウンドは、Solid Powerが自社史上最大のアンペア時間(Ah)出力を持つ電池セルを生産するために、製造力を強化するのに役立つ。FordならびにBMWとの個別の共同開発契約に基いて、同社は2022年以降、テストよ車両統合のために100Ahのセルの納入を開始する予定だ。

これまで同社は、2Ahと20Ahの出力を持つセルを製造してきた。Solid Powerはその声明の中で、2020年後半にFordとBMWによって、2Ahバッテリーセル「数百個」が検証されたと語っている。一方、同社は現在、標準リチウムイオン用の機器を使い、20Ahの固体電池をパイロットベースで生産している。

Solid Powerの広報担当者Will McKenna(ウィル・マッケナ)氏はTechCrunchに対して、9×20センチ22層で構成されてる20Ahパイロットセルとは対照的に、100Ahセルは、より大きな底面積とさらに多くの層を持つことになると語った(「レイヤー」とはカソードの数を指していると、マッケナ氏は説明した。20 Ahセルの中には22枚のカソードと22枚のアノードがあり、それぞれの間に全固体電解質セパレータが挟まれていて、すべてが単一のセルの中ににまとめられている)。

Solid Powerの製造法とは異なり、従来のリチウムイオン電池では、製造プロセスで電解質の充填と循環を行う必要がある。Solid Power によると、一般的なGWh規模のリチウムイオン製造施設における設備投資の5%から30%が、そうした追加工程に投入されている。

Solid Powerが自動車メーカーからの投資を受けたのは、今回が初めてではない。2018年に行われた2000万ドル(約21億9000万円)のシリーズAでは、BMWやFordの他、Samsung(サムスン)、Hyundai(ヒュンダイ)、Volta(ボルタ)などからの資本金を集めた。同社は、OEMたちの注目を集めている新しい企業群の1つなのだ。他の注目すべき例としては、Volkswagen(フォルクスワーゲン)が支援するQuantumscape(クアンタムスケープ)とGeneral Motors(ゼネラルモーターズ)によるSESへの資金投入がある。

Fordは自身でも先進的な電池技術を研究していて、1億8500万ドル(約202億円)で電池R&Dラボを開設する予定であることを先週発表している

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タグ:BMWFord全固体電池電気自動車Solid Power資金調達バッテリー

画像クレジット:Solid Power

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:sako)

ツイッターが予定するサブスクサービスの充実を狙い広告を取り除きページを読みやすくするScrollを買収

Twitter(ツイッター)は、米国時間5月4日朝、Scroll(スクロール)の買収を発表した。Scrollはウェブ上の長いコンテンツを読みやすくするためのサブスクリプションサービスで、記事を読む邪魔になる広告やその他のウェブサイトの飾り部分を取り除く。Twitterによれば、このサービスはTwitterによる大規模なサブスクリプション投資の計画の一部であり、やがてTwitterがサブスクユーザーに提供する機能の1つになるという。

サブスクユーザーはScrollを用いることで、ニュースサイトや、Twitter独自のニュースレタープロダクト、そして最近買収されすでにTwitterのサービスに統合されているRevue(レビュー)を楽に読むことができるようになる。サブスクユーザーがTwitterを通してScrollを利用すると、そのサブスクリプション料金の一部が、パブリッシャーやコンテンツライターへ支払われるのだと、Twitterは説明している

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現在、Scrollのサービスは、The Atlantic(アトランティック)、The Verge(ヴァージ)、USA Today(USAトゥデイ)、The Sacramento Bee(サクラメント・ビー)、The Philadelphia Inquirer(フィラデルフィア・インクワイラー)、The Daily Beast(デイリー・ビースト)など、何百ものサイトに対して動作する。読者にとっては、Scrollの利用体験はいわゆる「リーダービュー」に似ている。つまり広告、トラッカー、その他のウェブサイトのゴチャゴチャが取り除かれ、読者がコンテンツに集中できるようになるのだ。

画像クレジット:Twitter

パブリッシャーに対するScrollからのアピールは、Scrollに対応することで、広告だけよりも収益を上げることができる、クリーンなコンテンツを配信できるようになるということだ。

取引条件は公開されていいないが、Twitterは合計13名のScrollスクロールチーム全体を取り込む。

当分の間Scrollは、Twitterのサブスクリプション作業に自社製品を統合し、予想される成長に備えることに焦点を当てることができるように、新しいユーザーのサインアップを一時停止する。ただし買収終了後も、Scrollのネットワークに参加したい新しいパブリッシャーの登録は引き続き行われる。

そしてScroll自体は、チームが製品をTwitterに統合する作業を行うので、プライベートベータ状態に戻る。

画像クレジット:Twitter

Twitterはまた、ScrollのニュースアグリゲーターNuzzel(ナッツェル)プロダクトも縮小されるが、やがてNuzzelの中核機能の一部がTwitterの中に組み込まれるようにするという。Nuzzelのブログ記事には、Twitterとともに拡大するためにはプロダクトを再構築する必要があることがより詳しく説明されている。

「Twitterは開かれた対話を提供するために存在しています。ジャーナリズムは対話のミトコンドリアです。それは起点であり、増幅を行い、そして知らしめます。それは視点を転換し裏返します。理想的には、お互いの立場に立たせ、お互いの共通の人間性を理解するのに役立つことでしょう」とScrollのCEOのTony Haile(トニー・ハイレ)氏は、同社の買収に関する同社のポストで語った。

そして彼は「(Twitter CEOの)ジャック(・ドーシー氏)とTwitterチームによって与えられた使命はシンプルです。Scrollが構築してきたモデルとプラットフォームを切り出し、それをスケールすることです。つまり、ニュースを愛する人たちのすばらしい集まりがその金銭的支援を続けてくれるように、Twitterを使用するすべての人が面倒やフラストレーションなしでインターネットを体験する機会を得られるようにすることです」と付け加えた。

Twitterは2021年の初めに、自社のビジネスを広告収入以外へ多様化する手段として、サブスクリプションに向かう計画を詳述した。同社は「Super Follow」(スーパーフォロー)構想を発表したが、これは、サブスクユーザーに、限定コンテンツ、プレミアムユーザー専用のニュースレター、お得情報、バッジ、有料メディアなどの幅広い特典を提供する、クリエイター中心のサブスクリプションサービスだ。Twitterは、この新機能を提供することで、2020年の37億ドル(約4042億円)から2023年には75億ドル(約8193億円)以上に、収益を倍増することを目指している

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カテゴリー:ネットサービス
タグ:Twitter広告買収サブスクリプション

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(文:Sarah Perez、翻訳:sako)

Instagramがストーリーに自動キャプション機能を追加、近々リールにも(英語のみ)

Instagramは、動画によるStories(ストーリー)とReels(リール)機能をもっと使いやすくするために、”caption sticker”(キャプション・スタンプ)を公開する。これを使えばユーザーは音声がなくても動画を見ることができる。新機能は聴覚が不自由な人が動画コンテンツを見るのを便利にするだけでなく、音を鳴らしたくない場所で、ヘッドホンやイヤホンがなくても動画を見る方法としても使える。

本機能を使うために、クリエイターはまずInstagramアプリのStoriesかReelsのカメラを使って新規にビデオを撮影するか、スマートフォンのギャラリーからビデオを選んでアップロードする。次に、スタンプトレイを開いて「キャプション」スタンプを選ぶと、会話がテキストに変換される。キャプションのスタイルや位置、テキストの色等をコンテンツに合わせて編集することもできる。投稿すると、キャプションが動画と一緒に全員に表示される。

開始当初、新機能は英語のみで、英語を話す国でのみ利用できるが、Instagramは他の国や言語でも近いうちに提供する予定だと言っている。また、キャプション・スタンプはまずStoriesで提供されたあとReelsでテストを開始し、その後全面公開される。

キャプション・スタンプは開発中だった昨年に< Collab sticker(コラボ・スタンプ)やLink sticker(リンク・スタンプ)やReshare sticker(リシェア・スタンプ)などとともに発見された。Instagramの親会社であるFacebookも、独自のスタンプを開発中らしい。キャプション・スタンプは今年の春になってテストが開始された

今回の機能追加は、TikTokが独自のキャプション機能である “auto captions”(自動キャプション)を発表したわずか数週間後のことだった。自動キャプションは、TikTok動画内のアメリカ英語と日本語の会話を自動的にテキスト変換する。ただし、テキストそのもののカスタマイズはできず、視聴者はアプリのシェアパネルからキャプションをオン/オフできる。同機能はまだ広く公開されていないため、多くのTikTokクリエイターは今も自分でキャプションを作ったりサードパーティー・アプリを使って作っている。

Instagramは、キャプションは以前からスレッドとIGTV向けに公開されていたが、StoriesとReelsに拡張したことでより大きなインパクトを与えるだろうと話した。InstagramではStoriesだけで毎日5億人以上に使われている。

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画像クレジット:Instagram

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(文:Sarah Perez、翻訳:Nob Takahashi / facebook

2021年Q1のChromebook出荷は前年同期比275%増の1200万台、パンデミックで好調維持

パンデミックで多くの人がどのように、そしてどこで働くかを再考することを余儀なくされ、2020年から2021年にかけてのPC出荷台数は引き続き成長した。調査会社Canalysの新たなデータで明らかになった。PC出荷は4期連続で成長し、2021年第1四半期は全体で前年同期比53%増だった。

データによると、主な成長要因はChromebookだ。Chromebookの出荷は第1四半期に275%増え、1200万台に達した。HPがかなりの割合を占め、マーケットシェアは前年の18.6%から36.4%にアップした。そしてLenovo、Acer、Samsung、Dellがトップ5を占めた。

画像クレジット:Canalys

PC出荷の成長は引き続き主に教育部門によるものだ。これまで主流の使用法に割り込めなかったデバイスにとって教育部門は長い間、足がかりだった。多くの学校がオンラインへの移行を迫られ、この部門はかなり成長した。そしていま、教育以外にも拡大している。

Chromebookはいま真に主流のコンピューター製品です」とCanalysのBrian Lynch(ブライアン・リンチ)氏はニュースリリースで述べた。「教育部門が出荷の大半を占めている一方で、一般消費者や従来の商用顧客の間でのChromebook人気は昨年これまでになく高まりました」

ここしばらく停滞していたタブレット端末の販売も第1四半期は好調だった。活用方法は多様だが、この部門でも教育が主要な成長要因だった。タブレット端末部門はAppleがリードしていて、マーケットシェアは38.2%だった。そしてSamsungとLenovoがトップ3に入った。PCの分野ではLenovoが第1位で、以下Apple、HPと続いた。

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画像クレジット: Savusia Konstantin / Getty Images

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(文:Brian Heater、翻訳:Nariko Mizoguchi

製造業の米国回帰を目指して溶接ロボットのPath Roboticsが56億円相当を調達

オハイオ州コロンバスのPath Roboticsが今日(米国時間5/3)、5600万ドルのシリーズCを完了したことを発表した。このラウンドはAdditionがリードし、Drive CapitalとBasis SetとLemnos Labが参加して、この溶接ロボットの企業の総資本を7100万ドルとした。

製造業の自動化という大きなパズルに、同社は溶接ロボットというピースを加えた。そのシステムはスキャン操作とコンピュータービジョンとAIを利用して、自分自身をさまざまなパーツに適応させる。パーツのサイズを理解するだけなら、それは不完全な科学だ。さらに難しいのは、反射性の強い金属を相手にするときは、ロボット工学のちょっとおもしろい問題を解かなければならないことだ。

CEOのAndrew Lonsberry氏がこのニュースに付随するリリースで次のように述べている: 「今の工業ロボットは自分の環境とやるべき仕事を理解する能力が乏しい。多くのロボットが単に言われたことを繰り返すだけで、自分を良くしていく能力がない。弊社の目標は、これを変えることだ。製造業の未来は、能力の高いロボットにかかっている」。

同社は、溶接工の不足に対応したい、と言っている。全米溶接協会によると、2024年には不足数が40万に達するそうだ。パンデミックによって多くの企業が仕事を国内でこなしたい、と思うようになっている。ここ数十年続いたオフショアリングの傾向に、そろそろ歯止めをかけたいのだ。

関連記事: Enhanced computer vision, sensors raise manufacturing stakes for robots as a service(未訳、有料記事)

(文:Brian Heater、翻訳:Hiroshi Iwatani)
画像クレジット: Path Robotics

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Dellがまた大きなアセットを売却、BoomiをFrancisco PartnersとTPGに約4360億円で譲渡

Dell(デル)が2016年にEMCを巨額で買収した結果、負債の問題を抱えていることは広く知られているが、2021年数十億ドル(数千億円)規模で負債の一部削減に動いているようだ。最初のステップとして2021年4月、VMware(VMウェア)を別会社にスピンアウトした。この動きにより100億ドル(約1兆900億円)近くが削減されると見込まれる。

関連記事:DellがVMwareを分離する計画が明らかに、これにより同社は9000億円以上を得る

米国時間5月2日夜、長く観測があった第2のステップへ踏み出した。Boomi(ブーミー)をプライベートエクイティ2社に40億ドル(約4360億円)で売却すると発表したのだ。TPGによるこの統合プラットフォーム会社の買収にFrancisco Partnersが加勢する。

Boomiは、Salesforceが2018年に65億ドル(約7090億円)で買収したMuleSoftと似たような会社だが、歴史は少し長い。どちらも異種システム間を接続し、統合の問題を抱える企業を支援する。Dellが何年にもわたるさまざまな買収で得た多数の会社を統合し機能させるためには非常に有用な資産のように見えるが、その必要性にキャッシュが勝った。

企業がサイロ化したシステムに閉じ込められたデータをより有効に活用する方法を模索する中、統合サービスの提供がますます必要とされている。Franciscoの幹部によると、Boomiがその役割を果たせる可能性があり、それが買収の主な理由の1つだ。

「アプリケーションとドメインのどんな組み合わせに対してもデータとワークフローを統合・接続できることはビジネスにおいて重要な機能です。あらゆる規模の企業がデータを最も価値のある資産に変えようとするとき、Boomiはその支援ができるポジションに位置していると確信しています」と、FranciscoのCEOであるDipanjan Deb(ディパンジャン・デブ)氏とパートナーのBrian Decker(ブライアン・デッカー)氏は声明で述べた。

ご想像のとおり、BoomiのCEOであるChris McNabb(クリス・マクナブ)氏は、新しい上司が同社の成長をどのように促進するかについて、前向きな姿勢を示した。「Francisco PartnersとTPGという一流の投資会社2社と提携することで、顧客がデータを使用して競争上の優位性を推進する能力を加速させることができます。これからの成長フェーズでBoomiは、顧客にさらに多くの価値を提供しながら、イノベーションと市場をさらに前進させる強みを持つポジションに立ちます」とマクナブ氏は声明で述べた。

上記のすべてはある程度真実なのかもしれないが、同社はまとまりのない大規模企業から離れ、プライベートエクイティ2社という機械装置に吸収される。この先どうなるのかは予測し難い。

Boomiは2000年に設立され、2010年にDellに売却された。現在1万5000人の顧客を抱えるが、Dellの負債については詳しく報じられている。Dellが最近実施したような数十億ドル(数千億円)の取引をつなぎ合わせてみれば、即座にカネの話になる。同社はVMwareの発表のときのように、この取引から得るキャッシュを負債の返済に充てるとは表明していないが、もちろん同じことが起こるはずだ。

買収取引は2021年後半に完了する予定だが、その前に通常要求される規制当局の審査を通る必要がある。

カテゴリー:その他
タグ:Dell売却

画像クレジット:David Becker / Getty Images

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(文:Ron Miller、翻訳:Nariko Mizoguchi

アマゾンのオーバーザトップ事業IMDb TVやTwitchなどが好調、総視聴者数1億2000万を突破

Amazonの広告入り無料ストリーミングサービスIMDb TVに、モバイルアプリが登場した。Amazonは同社初の、広告主向けプレゼンテーションNewFrontsでニュースを発表し、そこでは同社のオーバーザトップ(独自配信)のストリーミングサービスIMDb TVやTwitch、Thursday Night Footballのようなスポーツ中継、Amazonのニュースアプリなど全部合わせると月間ユーザーが1億2000万を超えたという。

このオーバーザトップビジネスであるAmazon OTTは、IMDb TVではコンテンツと並行して、Twitchではゲームのストリーミングで、スポーツ中継ではAmazonのPrime Videoのストリーミングや同社の3Pネットワーク、そしてブロードキャストアプリで、それにFireTV用のAmazonのNewsアプリでそれぞれ、どこにでも広告が入る。

Amazonによると、特にIMDb TVは視聴者数が前年比で138%増加したという。

広告入りのサービスは、2020年ストリーミングサービスの視聴を押し上げたのと同じく、パンデミックのために伸びたと思われるが、その他の無料で広告入りのストリームであるFoxのTubiやViacomCBSのPluto TV、RokuのThe Roku Channelがライバルになる。しかしAmazonはRokuのハブのように、IMDb TVを自社のメディアデバイスを売り込むために利用し、無料のストリームコンテンツへのアクセスのしやすさを訴えている。

そのため今日では、IMDb TVの大半がFire TVで視られているが、Amazonによると、最近数カ月ではRoku、ChromecastとGoogle TV、ゲーム機PlayStation 4、Xbox One、Series X、LG Smart TV、NVIDIA、Sony Android TV、TiVo Android TVなど、さまざまなデバイスでも視られるようになっている

これまではIMDbアプリの小さなセクションで、サービスのコンテンツをスマートフォンでも視られたが、今後はモバイル専用アプリが使える。AmazonによるとiOSとAndroidの両方に対応しているそのアプリは、今夏に登場するという。

Amazonはまた、広告主たちに対して、IMDb TVの現在のユーザーベースについて報告している。視聴者の62%は18歳から49歳までの層、アプリで過ごす平均時間は5.5時間だという。

本日のNewfrontsプレゼンテーションでは、IMDb TVのモバイル専用アプリだけでなく、その他の発表も行われた。

まずIMDb TVの今後の番組だが、予定になかったものは「Luke Bryan:My Dirt Road Diary」「Bug Out」。以前からの予定にあるものは「Blessed and Highly Favored」「Greek Candy」「Primo」「The Fed」「The Pradeeps of Pittsburgh, PA」となる。音楽デュオTeganとSaraの思い出「High School」は、IMDb TVのオリジナルシリーズとして改作された。IMDb TVはまた、新作の犯罪ドラマ「Leverage:Redemption」と、警察ドラマ「On Call.」も発表した。

一方、IMDb TVの親会社であるAmazonは、Thursday Night FootballのNFLとの契約を拡大し、2022年のシーズンからは、翌年だけでなく11シーズン放送する。

カテゴリー:ネットサービス
タグ:AmazonIMDb TV動画配信

画像クレジット:IMDb TV

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(文:Sarah Perez、翻訳:Hiroshi Iwatani)

ツイッターが音声会議「スペース」をフォロワー600人以上のユーザーに公開、チケット、リマインダーなども追加

Twitter Spaces(ツイッター・スペース)は、Twitterの新しいライブオーディオルーム機能だ。同社は米国時間5月3日、Twitter Spacesがフォロワーが600人以上いる全アカウントでiOS、Androidともに利用できるようになると発表した。また他にも、現在準備中の新機能として、Ticketed Spaces、スケジューリング機能、リマインダー、共同ホスト、アクセシビリティの改善などを合わせて発表している。

この機能拡張で、TwitterはSpacesを以前より目立つようにする。現在、ホームタイムラインで誰かのプロフィール写真の周りにある紫色のバブルから直接スペースに参加できる機能をテストしているという。

画像クレジット:Twitter

Twitterは、初期のテストに基づいてTwitter Spacesを利用できる最低要件を600フォロワーに決めたという。600人以上フォロワーのいるアカウントは、ライブ会話を主催するための「十分な体験」を持っている傾向がある、なぜなら、参加できる既存の読者がたくさんいるからだとのこと。ただし、将来はSpacesを全ユーザーに公開することを今も考えているとTwitterは述べた。

Twitterは新機能の開発も加速している。Twitterは公開の場でSpacesを開発しており、機能やアップデートの優先順位づけの際にユーザーのフィードバックを考慮に入れている。すでに、参加者管理機能をユーザーの要望に沿って拡張しており、ホストが全参加者を同時にミュートする機能や、リアクションに笑いの絵文字を追加したのもユーザーの声によるものだ。

関連記事:ClubhouseがいよいよAndroidアプリの外部テストを開始

そして今回クリエイターにも焦点を当てる。近くTwitter Spacesは複数共同ホストに対応し、クリエイターは販売しやすくなり、Twitter Spaces上での自分たちのライブイベントを有料公開することもできるようになる。今後数週間のうちに公開される新機能では、ユーザーが見逃したくないSpacesをスケジュールしてリマインダーを設定できる。これは、イベントを事前販売するクリエイターにとっても有用で、RSVP(出欠確認)プロセスの一環として、次期イベントの「リマインダーを設定する」ようユーザーに勧めることもできる。

Twitter Spacesのライバル、Clubhouse(クラブハウス)も、米国時間5月2日のタウンホールイベントでリマインダー機能とAndroidアプリの外部テストを開始したことを発表したばかりだ。2つのプラットフォームは、今後熾烈な機能争いを演じそうだ。

画像クレジット:Twitte

しかし、Clubhouseが最近、お気に入りのクリエイターを支援する方法としてアプリ内寄付機能を公開したのに対し、Twitterは近く、ライブイベントのより伝統的な収益化方法を導入する。チケットの販売だ。Twitterは、現在ホストがイベントのチケット価格と入場可能人数を設定できる機能を開発中で、彼らが各自のTwitter Spacesで売上を立てる方法を提供するという。

近日公開予定のTicketed Spacesは、限られた人数のテスターが利用できる、と同社は述べている。Clubhouseがクリエイターの収益にまだ手を付けていないのに対して、Twitterはチケット売上から少額の手数料をとるという。ただし、売上の「大部分」はクリエイター本人に渡ると指摘している。

画像クレジット:Twitter

Twitterはアクセシビリティ機能であるライブ字幕を改善し、一時停止やカスタマイズを可能にするとともに、もっと正確にする努力をしていることも話した。

同社は、自身のTwitter Spaceを太平洋時刻5月3日午後1時から開催し、一連の発表について詳しく説明する。

カテゴリー:ネットサービス
タグ:TwitterTwitter Space音声ソーシャルネットワークClubhouse

画像クレジット:TechCrunch

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(文:Sarah Perez、翻訳:Nob Takahashi / facebook

アバターを作るスタートアップGeniesがNFT人気に乗って65億円相当を調達

これまで数年間、全員が同じ夢を追っている新進のアバター企業を私も人並みに取り上げてきた。その夢とは、ゲームやデジタル空間で広く採用される架空の登場人物(ペルソナ)になるための、カスタマイズ可能なプラットホームを作ることだ。これまで私が取り上げたものの中で、生き残っているのは少ない。でもロサンゼルのGeniesは、有名ミュージシャンたちとのパートナーシップを成功させて、とても広い範囲のアバタープラットホームという大きなビジョンの実現に、初めて近づいている。

同社は今日(米国時間5/3)、Mary Meeker氏のBondがリードする6500万ドルのシリーズBを完了したことを発表した。それにはNEAやBreyer Capital、Tull Investment Group、NetEase、Dapper Labs、Coinbase Venturesなどが参加した。Mary Meeker氏はGeniesの取締役会に加わる。同社の最新の評価額は、公表されていない。

この財源は、創業4年目を迎えた同社のちょうど転換期に投じられた。そのことを、NFTデジタルカードNBA Top ShotのメーカーであるDapper Labsや、暗号通貨大手Coinbaseの参加が証明している。先週発表されたように、同社はDapper LabsのFlowブロックチェーン上のNFTプラットホームを展開して同スタートアップと密接に提携している。それによりDapper Labsは、Genesisのアバターアクセサリーのオンラインストアの、バックエンドを構築することになる。Dapper Labsがプロスポーツのリーグと独占契約してNFTとそれらの公式サポートを提供しているように、Genesisもその名簿に載っているJustin Bieber、Shawn Mendes、Cardi Bなどのセレブたちとのパートナーシップを活用して、アバターアクセサリーを大衆的に売買するためのプラットホームを作っていきたい心算だ。

同社は10月にGucciとのパートナーシップを発表して、自分の目の前に大きな新しい市場機会を切り開いた。

関連記事: Genies updates its software development kit and partners with Gucci, Giphy(未訳)

Geniesのビジネスの大半は、まず有名チームや有名タレントなどとパートナーして、それらが提供するエンターテインメントの顧客にアバターというデジタルの存在を与えることが主体だ。顧客はソーシャルメディアなどの上で、アバターによって自分を目立たせることができる。同社はモバイルアプリのベータで全ユーザーにアバターの創造を展開したから、Genesisは彼らよりも前のアバター企業が明確に持っていた夢の一つにフォーカスしてきたことになる。それは、同社のSDKで、アバターのユーザーの大きなネットワークと、同社の形式と互換性のある多くのプラットホームのネットワークを作っていく、という夢だ。


画像クレジット: Genies

GeniesのCEO、Akash Nigam氏は本誌の取材に次のように語った: 「アバターは本来の自分をもっと積極的に見せていくためのメディアだ。それは別の自己の表現だから、現実世界の制約にとらわれる必要はない」。

NFTというトレンドがGenesisに新たな探究の分野を与えているが、同じくパンデミックというもっと大きなトレンドが、ユーザーを何もかもがデジタルという世界に追いやり、そこでお互いが社交し結びつくようになっている。そこでNigam氏は曰く、「パンデミックはあらゆるものを加速した」。

Nigamが念を押すのは、近い将来、NFTという大きな機会があるとしても、Genesiはあくまでもアバター企業でありNFTのスタートアップではないことだ。ただし、暗号技術に支えられたデジタルグッズとその市場は今後長年存在するだろう、と。デジタルグッズをめぐる現在の環境がGenesisの資金調達を助けた、という説には、彼は納得していない。彼によるとそれは、投資家にとって倍率6〜8倍の投資機会であり、スタートアップへの日和見主義的な投資にすぎなかった。「うちは何年も資金調達をせずにやってきた企業だから」、と冷静な言い方をする。

同社によると暗号化製品のマーケットプレースは、早ければ今年の夏ごろにローンチするそうだ。

関連記事: The NFT market is just getting started, but where is it headed?(未訳、有料記事)

(文:Lucas Matney、翻訳:Hiroshi Iwatani)
画像クレジット: Genies

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ボルボとダイムラーが長距離トラック向け水素燃料電池生産で提携

ライバル同士であるVolvo AB(ボルボAB)とDaimler Truck(ダイムラートラック)が長距離トラック向けの水素燃料電池の生産でタッグを組む。共同生産は開発コストを下げて生産量を押し上げる、と両社は話している。Cellcentric(セルセントリック)という合弁会社は、2025年までに水素燃料電池の「ギガファクトリー」レベルの大規模生産を欧州で行うことを目指す。

両社は合弁会社を通じて燃料電池生産でチームを組むが、トラック生産の他の部分は別のままだ。今後建設されるギガファクトリーの立地場所は来年発表される。工場の生産能力についても明らかにしなかった。

Volvo ABとDaimler Trucksは「ギガファクトリー」という野心剥き出しの言葉を使ったが(工場の大規模な生産能力を表現する、Teslaによって普及した言葉だ)、幹部は目標にいくつかの注意事項を加えた。欧州の水素経済は、欧州連合が充電ステーションや他のインフラのコストをさらに削減したりインフラに投資したりすることにつながる政策的枠組みをつくるかどうかに少なからず左右される、と幹部は記者会見で述べた。言い換えると、水素に投資しようとしているDaimlerやVolvoのようなメーカーは「鶏と卵、どちらが先か」的な問題に直面している。燃料電池の生産をアップするのは、充電ステーション、水素を輸送するパイプライン、そして生産するための再生可能エネルギーリソースを含む水素ネットワークの構築と並行して進められた場合のみ理にかなう。

「長期的に、これは他の全てと同様、ビジネス主導の取り組みでなければなりません」とVolvoのCTO、Lars Stenqvist(ラース・ステンクヴィスト)氏はTechCrunchに語った。「しかしまず第1段階では、政治家からのサポートがなければなりません」

他の欧州トラックメーカーと共に2社は、欧州中に水素充電ステーションを2025年までに約300カ所、2030年までに約1000カ所展開することを求めている。

2社は炭素税や二酸化炭素ニュートラルテクノロジーに対するインセンティブ、あるいはエミッション取引システムのような政策が、化石燃料に対してコスト競争力を持てるようにするのに役立つかもしれない、と示唆した。大型トラックは水素需要においてはわずか10%を占めるにすぎず、残りは製鋼業や化学工業のような産業によって使用される、とも同氏は指摘した。これは、他の分野も水素支持の政策を推進することが大いにありえることを意味する。

新しい合弁会社にとって最大の課題の1つは、水素を電気に変える際の非効率性の低減だ。「それは車両のエネルギー効率を改善するための、トラックにおけるエンジニアリングの中核です」と同氏は話した。「我々の産業のエンジニアのDNAに常にあったものです。エネルギー効率は電動化の世界ではさらに重要になるでしょう」。費用対効果の良いディーゼル代替にするために、水素のコストは1キロあたり3〜4ドルの範囲に収まる必要がある、と同氏は推定した。

Volvoはまたバッテリー電動テクノロジーにも投資していて、再生可能なバイオ燃料で動く内燃エンジン(ICE)を潜在的ユースケースとみていると話した。同氏は、将来においてICEを有望視しているとこのほど語ったBosch(ボッシュ)の役員に賛成している。「私はまた、長期的には内燃エンジンにも可能性があると信じていて、内燃エンジンが終わりを迎える、あるいはなくなる日がくるとは思いません」と述べた。

「政治サイドからテクノロジーを禁止するのは完全に間違いだと私は思います。政治家は禁止すべきではなく、テクノロジーを承認すべきでもありません。彼らは方向性を示し、何を成し遂げたいかについて語るべきです。その後、テクニカルなソリューションを考え出すのは我々エンジニア次第です」。

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画像クレジット: Volvo

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Nariko Mizoguchi

Epic GamesがアーティストコミュニティのArtStationを買収、直ちに手数料を12%に引き下げ

Fortnite(フォートナイト)のメーカーであるEpic Games(エピックゲームズ)は、Apple(アップル)のApp Storeのビジネスモデルに対して史上最大の訴訟を起こしたその同じ日に、アーティストポートフォリオコミュニティのArtStation(アートステーション)を買収し、直ちに販売手数料を値下げしたことを発表した。今後ArtStationの一般クリエイターは、Epic自身のPC向けGames Storeと同じ12%の手数料で利用できる。これまでは30%だった。この値下げは、幅広いコミュニティに対して「適切な」手数料率の見本を示す狙いがある。つまり今後の裁判で、Apple App StoreがEpicなどの大規模デベロッパーに課している30%の手数料との比較基準になる可能性がある。

現在ArtStationは、ゲーミング、メディア、エンターテインメントなどのクリエイターが自分たちの作品を披露し、新しい仕事を見つけるための場を提供している。同社はEpic Gamesと長年の関係があり、AirStationのクリエイターの多くがEpicのUnreal Engineの仕事をしている。しかし、ArtStationは、Unreal Engineを使わないさまざまな分野の2Dおよび3Dクリエイターの居場所でもある。

買収によってそれが変わることはない、とチームは発表文の中で述べている。むしろ、この契約によってクリエイターが作品を収益化する機会は広がる。中でも大きいのが、手数料引き下げだ。一般クリエイターの手数料は30%から12%に下がる。Pro(プロ)メンバー(月額9.95ドル、約1086円のサブスクリプション料金を払っている)の場合、手数料はさらに低く、20%から8%に引け下げられる。そしてセルフプロモーションによる販売では、手数料はわずか5%だ。ストリーミングビデオサービスのArtStation Learning(アートステーション・ラーニング)も2021年いっぱい無料だと同社はいう。

しかし手数料の引き下げこそが、EpicのArtStationに対する最も重要な変更だ。なぜならそれは、Epicが自身のクリエイターコミュニティをどう扱っているかを示す具体例になるからだ。同社はこの買収と手数料変更と自身のEpic Games Storeの低い手数料率を、Appleとの裁判で引き合いに出すに違いない。すでにEpicの動きはMicrosoft(マイクロソフト)のゲーム販売における取り分減少へと波及しており、最近同社は同様に手数料を30%から12%へと引き下げることを発表した

Epic Gamesは裁判で、AppleがiOSアプリのエコシステムを独占していることによる市場支配力を濫用し、デベロッパーにAppleの決済システムを使用することを強制し、販売およびシステムを通じて行われるアプリ内購入で手数料を支払わせていると主張するつもりだろう。Epic Gamesは、他の大手アプリメーカー同様、自らの決済システムを使用して手数料を回避したいと思っている。あるいは、最低でもユーザーが直接支払いできるウェブサイトへと誘導できるようにしたい。しかし、Appleはこれを許していないことがApp Storeガイドラインに記されている。

2020年Epic Gamesは、モバイル端末で直接支払って大幅な割引を受けられる方法を新たに導入したことで、FortniteがApp Storeから追放される事態を招いた。それは計算された行動だった。その結果AppleとGoogleは両社ともに、それぞれのApp Storeのポリシーに違反したとして同ゲームを排除した。そしてEpicが訴訟した。

Epicの戦いは厳密にはAppleとGoogleを相手にしているが、エネルギーの大部分は前者に集中している。なぜならAndroidはアプリのサイドローディング(ストア外でのインストール)を許しているのに対して、Appleは違うからだ。

一方Appleの主張は、Epic GamesはAppleの規約とガイドラインに同意しながら、意図的に違反して特別な特典を得ようとしたというものだ。Appleは、ガイドラインは全デベロッパーに公平に適用されるものであり、Epicが例外になることはないと言っている。

しかし大手テック企業に対する一連の米国反トラスト捜査の結果、実際にはAppleが過去に特別契約を結んでいたことが発見されている。下院司法委員会が捜査結果の一環として公開したメールは、AppleがAmazon Prime Videoアプリの手数料をスタート時から15%とすることに同意していたことを暴露した。通常サブスクリプション・ビデオ・アプリの手数料は1年目が30%で、2年目以降は15%になる(AppleはAmazonが新たなプログラムの要件を満たしただけだと言っている。さらに別の古いメールは、Appleが手数料を30%以上に上げる交渉を何度か行っていことも明らかにしており、Appleが手数料率に柔軟性があると考えていたことを示している。

今回のEpic Gamesによる買収以前に、ArtStationはパンデミックさなかの不確実な期間を乗り切るために、Epicから「MegaGrants」と呼ばれる巨額の資金提供を受けている。これがその後両社の繋がりを強くするきっかけになった可能性がある。

「過去7年間、私たちはクリエイターが自分の作品を世に紹介してチャンスを掴み、大好きなことをなりわいにできるための努力を続けてきました」とArtStationのCEOで共同ファウンダーであるLeonard Teo(レオナルド・テオ)氏が声明で語った。「Epicの一員となることで、私たちはこのミッションを推し進め、自分たちだけではできなかった形でコミュニティに還元し、かつArtStationの名前と精神を維持することができます」

カテゴリー:ゲーム / eSports
タグ:Epic GamesArtStation買収Apple

画像クレジット:ArtStation

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(文:Sarah Perez、翻訳:Nob Takahashi / facebook

NASAのアーカイブでドキュメント理解の経験を積むDocugamiの新モデル

最近はデータについての話題が多いため、膨大な量の処理が世界中のドキュメントで行われていることを忘れてはいないだろうか。ドキュメントは多様なファイルや形式が混在する動物園のようなものだ。非常に大きな価値はあるが、クリーンな構造化データベースの時代にはまだ適合していない。Docugami(ドキュガミ)はこの状況を変えようとしている。Docugamiのシステムは、任意のドキュメントを直感的に理解した上で、内容に対してインテリジェントな方法でインデックスを作成する。NASAはこの計画に賛同している。

Docugamiのプロダクトが計画どおり機能すると、何年にもわたり積み上げられたドキュメントの山を、誰でも瞬時に使いやすいデータに変換できるようになる。

どんな会社でも、運営していればドキュメントが大量に発生する。契約書や法的書類、不動産の賃貸借契約書や同意書、マーケティング関連の提案書やリリースノート、医療のカルテなどがある。形式もさまざまで、Word(ワード)ドキュメント、PDF、ワードからエクスポートしたPDFを印刷してスキャンしたものなど、多岐にわたる。

この問題に対応しようと何年にもわたって努力が払われたが、すべてのドキュメントを1カ所に集め、社内で共有したり編集したりできるようにするなど、大部分は組織側の対応だった。ドキュメントを理解するということは、それを扱う人間に委ねられてきたケースが多い。ドキュメントを理解するのは難しいので、これはもっともな話だ。

関連記事:自然言語処理ライブラリをオープンソースで提供するHugging Faceが43.6億円調達

賃貸借契約を考えてみよう。借主の名前がJill Jackson(ジル・ジャクソン)だとする。その契約書に「借主」と書かれているのを人間が読むと、借主が誰かは理解できる。また、他に100件の契約書があるとする。そのようなドキュメントに「借主」とあれば、ドキュメントの文脈からそれが先ほどと同じ概念を意味するが、同1人物ではないことを理解できる。一方で、機械学習や自然言語理解システムにとって、このような概念を理解して適用するのは非常に難しい。それでも、もしシステムがこのような概念を理解して応用できるのであれば、世界中の膨大なドキュメントから有用な情報を山のように抽出できる可能性がある。

.docxへの貢献

Docugamiの創業者であるJean Paoli(ジャン・パオリ)氏によると、同社では問題を全面的に解決できたという。大胆な主張ではあるが、彼はそう言える数少ない人間の1人だ。パオリ氏はMicrosoft(マイクロソフト)で何十年も重要な人物だった。とりわけXML形式の作成に力を入れていた。.docxや.xlsxなどの「x」で終わるファイルをご存じだろう。パオリ氏は、そのようなファイル形式の発展に少なからず貢献している。

「データとドキュメントは同じではありません。人間が理解できるものがドキュメントで、コンピューターが理解できるものがデータです。なぜ違うのでしょうか。(マイクロソフトでの)私の最初の仕事は、ドキュメントをデータとして表せる形式を作ることでした。業界の友人たちと一緒にXMLを作り、それをBill(ビル)が承認しました」(そう、あのビル・ゲイツが)と彼は説明した。

このときに作られた形式は広く使われるようになったが、20年経った現在でも問題は解決されていない。さまざまな業種がデジタル化され、問題の規模は大きくなっているが、パオリ氏にとって解決策は同じだ。XMLのコンセプトは「ドキュメントはウェブページのように構造化されるべきだ」である。つまり、ボックス内にボックスがあり、メタデータで明確に定義されているという、コンピューターが処理しやすい階層モデルだ。

画像クレジット:Docugami

「数年前にAIに関わっていた時に、ドキュメントをデータに変換するというアイデアが浮かびました。階層モデルを参照するためのアルゴリズムが必要でしたが、そんなアルゴリズムは存在しないと他の人に言われました。XMLモデルではあらゆる要素が他の要素内にあり、各要素の持つ固有の名前から、そこに含まれるデータが分かります。このモデルは、現在使用されているAIモデルと互換性がありません。これが現実です。AIの専門家がこの問題に取り組むことを期待していましたが、そうはなりませんでした」と彼は説明した(「自分は他の分野で忙しかった」と彼は言い訳を加えた)。

コンピューティングの新しいモデルに互換性がないことは、驚くことではない。新しい技術には特定の条件や制限がつきものだ。AIは音声認識やコンピュータービジョンなど、重要な他の分野に焦点が当てられている。その分野でのアプローチは、ドキュメントを体系的に理解するニーズとは異なる。

「多くの人が、ドキュメントは猫に似ていると考えています。AIをトレーニングすることで、目やしっぽを見つけられるようになるというわけです。しかし、ドキュメントは猫には似ていません」と彼は言った。

当たり前のようだが、ここに制限があるのだ。セグメンテーション、シーンの理解、マルチモーダルのコンテキストなどの高度なAIの手法はすべて、ある意味で非常に高度な猫検出機能であり、猫だけでなく犬、車の種類、表情、場所なども検出できる。一方で、ドキュメントはそれぞれがあまりに異なっている、もしくは似すぎていると言えるかもしれない。そのため、同じようなアプローチでできるのは、せいぜいおおまかに分類することだ。

言語理解については適している面もあるが、パオリ氏が必要とする方法としては不適切だった。「AIは英語の言語レベルのように機能しています。AIは参照するテキストを、そのテキストが含まれているドキュメントと切り離して考えています。私は神経言語プログラミング(NLP)の専門家が好きです。私のチームの半数はNLPの専門家ですが、NLPの専門家はビジネスのプロセスについては考えません。XMLの専門家(コンピュータービジョンを理解している人たち)とNLPの専門家にチームで共同してもらう必要があります。そうすると、違うレベルでドキュメントを見ることができるようになります」と彼は言った。

Docugamiの仕組み

画像クレジット:Docugami

パオリ氏が既存のツール(光学文字認識のような従来の成熟した機能を超えるもの)を採用しても、目標を達成できなかっただろう。そのため彼は独自のAIラボを作り、幅広い専門分野のチームが約2年間いろいろな改造を進めた。

「我々は自己資金でコアサイエンスをこっそりと研究し、特許事務所にかなりの数の特許を提出しました。その後ベンチャーキャピタルと会合を持ち、SignalFireが1000万ドル(約10億8000万円)のシードラウンドを自発的に主導してくれました」と彼は言った。

Docugamiを実用段階まで開発を進めるところまではシードラウンドに含まれなかったが、パオリ氏は作業中のドキュメントでプラットフォームについて説明してくれた。私はアクセス権を付与されず、スクリーンショットや動画も提供してもらえなかった。統合とUIの対応が途中だということで、ここからは想像してもらう必要がある。何かしらの企業向けSaaSサービスを想像してもらえれば、ほぼ間違いない。

Docugamiのユーザーは、任意の数のドキュメントを好きなだけアップロードできる。マシンが理解できるワークフローにドキュメントを移動すると、ドキュメントが解析される。スキャンされたPDFやワードファイルなどが、コンテンツに固有の階層構造にXMLのような形式で解析される。

「例えば、500個のドキュメントを複数のグループに分類するとします。こちらの30個は同じカテゴリー、20個は似ているから同じカテゴリー、そちらの5個をまとめるという感じです。ドキュメントの見た目、内容、使用方法などの手がかりを組み合わせてグループ化します」とパオリ氏は言った。あるサービスでは賃貸借とNDAの情報を区別できるかもしれないが、ドキュメントの種類は多岐にわたるため、事前にトレーニングされたカテゴリーの内容に合わせて分類して解決することはできない。どのドキュメントも内容が重複しない可能性があるため、Docugamiでは毎回トレーニングをやり直す。ドキュメントが1つしかない場合もやり直す。「ドキュメントを分類したら、ドキュメントの全体的な構成と階層を理解します。そうすることで、ドキュメントの内容全体を有効活用できます」。

画像クレジット:Docugami

この作業で可能になるのは、見出しのテキストを選択してインデックスを作成したり、単語が検索できるようになったりすることだけではない。ドキュメントに含まれるデータ(支払元、支払先、金額、支払日、支払いの条件など)がすべて構造化され、同じようなドキュメントの文脈で編集が可能となる(推定された内容を再確認するために多少の入力が必要)。

わかりにくいと思うので、会社で進行中の融資に関するレポートを1つにまとめることを考えてみよう。必要な作業は、サンプルドキュメント内の重要な部分をハイライトするだけだ。「Jane Roe(ジェーン・ロー)」「2万ドル(約210万円)」「5年」などの部分をクリックしたら、対応する情報を取得する別のドキュメントを選択する。すると、ドキュメントから取得された名前、金額、日付などが記載されている整理されたスプレッドシートが、数秒後にできあがる。

当然、このデータはすべて移動可能である。ビジネスで一般的に使用される他のさまざまなパイプやサービスとの統合も計画されている。実現すれば、レポートの自動化、特定の条件下でのアラートの発出、テンプレートや標準ドキュメントの自動作成が可能になる(古いドキュメントを保管したり、重要なカ所に下線を引いたりする必要がなくなる)。

このような処理が、ドキュメントのアップロード後30分で行われることに注目できる。データのラベリングや前処理、クリーニングは不要だ。事前に決まっている特定の概念や、賃貸借ドキュメントの形式に基づいてAIが処理するわけではない。関連がある構造、名前、日付などの必要な情報を、アップロードしたドキュメントからすべて学習するのだ。加えて、異なる業種への対応も可能で、誰でも直感的に理解できるインターフェースを使用する。ヘルスケアデータや建設関係の契約管理など、どんなデータを入力してもツールは処理可能だ。

ウェブインターフェースは、ドキュメントを取り込んで新しいドキュメントを作成できる主要ツールの1つであるが、ワードには別のツールがある。ワードを使用する場合にDocugamiは、使用するドキュメントがどのような形式でも内容を完全に認識するアシスタントのように機能する。そのため、新しいドキュメントを作成したり、標準的な情報を入力したり、規制に準拠したりすることができる。

機械学習の適用対象として法律文書を処理するのはあまり楽しいものではないが、重要ではある。そうでなければ私はこの記事を書いていないだろう(記事の長さはともかく、記事を作成することはなかったかもしれない)。このような深い理解が必要なタイプのドキュメントは、既存業種で使用されている標準のドキュメントタイプ(警察や医療のレポートなど)で一般的となっているが、カヤックレンタルサービス向けに運用できる特注モデルを誰かがトレーニングするまで待っているのは楽しいものである。中小企業のドキュメントにも、大企業のドキュメントと同じような価値が眠っている。中小企業ではデータサイエンティストを雇う余裕がなく、大企業でもすべて手作業で行うことはできない。

NASAのお宝

画像クレジット:NASA

極めて難しい問題でも、人間にとっては些細なことがある。似たような20個のドキュメントに名前と金額のリストが含まれていても、誰でも簡単に目を通せるだろう。おそらくDocugamiがクロールしてトレーニングするよりも短い時間で、内容を把握することが可能だ。

AIを活用する目的は、人間の能力を模倣してそれを超えることにある。経理担当者が20件の契約に対するレポートを毎月作成することと、1000件の契約に対するレポートを毎日作成することは別問題だが、Docugamiではその両方をどちらも簡単に実現できる。このような運用を調整できることが重要な企業システムにとっても、ドキュメントのバックログに埋もれたデータからクリーンなデータやインサイトを集めることを望んでいるNASAにとっても、Docugamiは適していると言える。

NASAが大量に保有しているもの、それはドキュメントだ。合理的かつ適切に管理されたアーカイブは、設立当初までさかのぼれる。数多くの重要なドキュメントをさまざまな方法で利用できる。私は長い時間をかけて、楽しみながら歴史あるドキュメントの情報を精査した

NASAは、アポロ11号に関する新しいインサイトを探しているわけではない。今に至るまでのプログラム、募集、補助金プログラム、予算、エンジニアリングプロジェクトを通じて、膨大なドキュメントが生成されている。これは結局のところ、連邦政府の官僚制度の大部分を占めている。さらに、何十年にもわたって書類を管理してきた他の大規模組織と同じように、NASAのドキュメントにはさまざまな可能性が隠されている。

ファイル内には専門家の意見、研究の産物、エンジニアリングのソリューション、その他さまざまなカテゴリーの重要情報が存在しており、簡単なワードで検索できると思われるが構造化されてはいない。例えばファイルに保存されている情報をジェット推進研究所で働いている人が理解し、ノズル設計に取り入れることができれば有用ではないだろうか。また、あるトピックについて、種類、日付、作成者、ステータスごとに整理された包括的なリストの最新版を数分で入手できたらどうだろう。特許アドバイザーが、従来の技術に関するNIAC助成金の受領について、情報を提供する必要がある場合はどうだろう。特定のキーワードで調べた場合よりも具体的に、特許や申請に関する古い情報を取得できるのではないだろうか。

2020年授与されたNASAのSBIR助成金は「Johnson Space Center(ジョンソン宇宙センター)の特定の種類のドキュメントをすべて収集する」ような、特定の業務を対象とするものではない。これは、このような助成金の多くと同様に探索や調査を目的とした契約であり、DocugamiはNASAの研究者と協力して、アーカイブにテクノロジーを適用する最もよい方法を見つけるよう取り組んでいる(優れた適用方法として、SBIRとその他の中小企業向け資金提供プログラムが挙げられるかもしれない)。

米国立科学財団(NSF)が提供する別のSBIR助成金とは次の点で異なる。NASAでは、さまざまな種類のドキュメントに重複する情報が含まれていても、チームで適切に整理することを検討している。その一方でNSFでは「小さなデータ」を適切に特定することを目指している。「我々は小さなデータに注目しています。非常に細かい点です。例えば名前が記載されている場合、貸主の名前か借主の名前か、医者の名前か患者の名前かに注目します。患者の記録にペニシリンに関する記載がある場合、それが処方されているか禁止されているかに注目します。アレルギーという欄と処方という欄がある場合に、そのような項目を関連付けることができます」とパオリ氏はいう。

「私がフランス人だからかもしれません」

SBIR助成金の予算がやや少ないため、その金額では会社の経営に影響がある可能性を指摘すると、彼は笑った。

「我々は助成金に頼って運営しているのでも、助成金が重要なのでもありません。私にとって、助成金は世界最高のラボで科学者と働くための方法なのです」と彼は言った。一方で彼は、助成金によるプロジェクトがいくつも予定されていることにも言及していた。「私にとって科学は燃料です。ビジネスモデルは非常にシンプルです。Docusign(ドキュサイン)やDropbox(ドロップボックス)のような、サブスクリプション形式のサービスです」。

この会社はビジネス運営を開始したばかりであり、インテグレーションパートナーやテスターとの多少のつながりを作っている。しかし今後1年で、独自のベータ版を展開した上で一般公開する予定だ。ただし明確な日程は決まっていない。

「我々は新興企業です。1年前は社員が5~6人でしたが、このシードラウンドで1000万ドル(約10.8億円)を獲得し、波に乗っています」とパオリ氏は言った。彼はこれが儲かるビジネスであるというだけでなく、企業の仕組みを大きく変えるものになると確信している。

「人々はドキュメントが好きです。私がフランス人だからかもしれませんが、テキストや本、文書は重要だと考えています。人間にはそういうものが必要です。人間は機械が上手に考えることを助け、機械は人間が上手に考えることを助けるもの。我々はそう考えています」と彼は言った。

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カテゴリー:人工知能・AI
タグ:Docugami機械学習NASA

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(文:Devin Coldewey、翻訳:Dragonfly)

コロナ禍で押し進められたDXの中、AIに期待される今後の役割とは

コロナ禍で押し進められたDXの中、AIに期待される今後の役割とは

アフロ

編集部注:この原稿は、MIN SUN(ミン・スン)氏による寄稿である。同氏は、AppierのチーフAIサイエンティストを務めている。Appierは、AI(人工知能)テクノロジー企業として、企業や組織の事業課題を解決するためのAIプラットフォームを提供している。

2020年、新型コロナウイルスの存在が確認されて以来、その猛威は世界中に広がり、2021年になった今でも終息のめどが立っていない。

新型コロナウイルス感染症の流行により、人々の健康に対する意識はもちろんのこと、社会のあり方そのものに対しても大きな影響を与え、ミクロレベルからマクロレベルにいたるまであらゆるものごとが変革を余儀なくされたことに疑いの余地はない。

特に、営利企業において新型コロナウイルスの影響は甚大で、これまで遅々として進まなかったデジタルトランスフォーメーション(DX)が事業規模の大小を問わず急速に押し進められている。

この状況下、にわかに注目を集めているのが業務の自動化や省力化を得意とするAI技術の活用だ。

これまで、AIという技術に対する疑心や懸念をもっていたために活用に消極的だった企業においても、AIソフトウェアパッケージの導入やシステム開発が加速している。

新型コロナウイルスの流行が5年分のDXを1年で押し進めた

新型コロナウイルスの流行拡大により、企業内で最も大きく変わったことといえば、従業員の働き方だろう。新型コロナウイルスの流行以前は「仕事をする」ことは「オフィスにおもむく」ということに直結していた。しかし、コロナ禍で避けるべき3つの密と呼ばれる密閉、密集、密接の全条件に当てはまってしまうケースがあり、多くの企業が従業員を健康維持のため、出社制限を設けざるを得なかった。

このことにより、在宅勤務が急激に増加したわけだが、すべての業務をいきなりリモートで実施するのは当然難しい。そのため、自粛期間の合計が1年を超えてくる中でオフィスへの出社を要する業務においてもDXに取り組む企業が増加している。

バックオフィス業務における契約対応業務を例にあげると、これまでは紙媒体に押印し、それを送付するという流れが一般的だったのに対し、コロナ禍でDXが進められたことにより、契約書類がデータで渡されるようになり、押印もデジタル環境で実施した上で、契約書類の返送もオンライン上で完結させるケースが増加している。

ただ、このような業務のデジタル化に必要な技術やサービスの多くは、コロナ禍で生まれたものではなく、以前から存在していたが導入が先送りされていたものだ。つまり、企業における大規模なDXを推進したのはCEOでもCTOでもなく、新型コロナウイルスということになる。

コロナ禍で価値を発揮するAI

現在社会で起こっているDXは一過性のものではなく、さらなる推進に向け多くの企業が取り組んでいる。その中でもAIは、どのような価値を発揮しているのだろうか。

AIは様々な分野で活躍しており、その中でも特に医療分野では大きな価値をもたらしている。

医療分野におけるAI活用に関するひとつ目の事例は創薬の迅速化だ。従来、新薬が臨床試験に至るまでには4~5年以上の研究期間が必要だといわれてきた。だが、イギリスのオックスフォードを拠点とするAIスタートアップのExscientiaはAIを用いて新薬に用いる化合物を設計し、12カ月という短い期間で新薬の臨床試験にこぎつけた。また、通常の創薬では莫大な投資コストが発生することが多々あるが、AIの活用がその圧縮にもつながっている。

また、このような創薬ノウハウは新型コロナウイルスに効果的な薬品の特定にも用いられているという。したがって、過去に開発された薬品から新型コロナウイルスの予防や治療に効果的なものを特定する作業にはAIが少なからず貢献しているということになる。

AIを医療分野に活用する事例はもちろんこれだけではない。中国や台湾、韓国などでは、新型コロナウイルスへの感染予防に向け、AIを用いた陽性者のマッピングなども行われているという。

AIに期待される今後の役割とは

コロナ禍においても、AIが一定の価値を生んでいるが、AIがより大きな価値をもたらすのはこれからだろう。というのも、AIには学習のためのトレーニングデータが必要なため、中長期的な問題解決に適しているからだ。新型コロナウイルスの感染拡大が終息したとしても、いずれ人類は新たな感染症の流行に見舞われる。その際には、AIはより大きな価値をもたらすことは間違いない。

たとえば、感染症の予防においては電子医療記録をデータとして用いることで感染時の重症化リスクを予測できるようになる。また、新型コロナウイルスの感染経路を記録しておくことで、どのような場所で、誰を、どのように検査すれば感染症拡大の防止に役立つかを分析することも可能だ。

なお、上記の電子医療記録と地理空間に関するデータを組み合わせることで、検査、隔離、その他リソースの割当に関する優先順位の策定を支援するという構想は将来的な期待が高まっている。

さらに、ウイルスの遺伝子配列を分析し、変異をモニタリングすることにより、製薬会社による医薬品開発のターゲット明確化やウイルスの拡散速度予測、変異体の有害性の特定など、これまでは専門家が時間をかけて実施していた一連の取り組みの迅速化も期待されている。検査においても、現状ではPCR検査による感染の判断が主流だが、早期にウイルスの特性を明らかにできれば、CTスキャンデータなどを基に感染判断ができるようになる可能性はある。

今回の新型コロナウイルスの感染拡大は突発的だったため、AIが価値を発揮することが間に合わなかったケースも見受けられるが、私達が今直面している問題が、将来的なAI活用の礎として生かされるはずだ。

もちろん、技術を活かすも殺すも結局は人によるところが大きいため、将来的に期待されているAI活用が机上の空論で終わる可能性もある。

だが、政府や企業が主体となり、将来的な感染症に備えた仕組みを整え、人々がコロナ禍で得た教訓をしっかりと学習しパンデミックに備えることができれば、感染症拡大による社会的なリスクは大きく減少することだろう。

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カテゴリー:人工知能・AI
タグ:医療(用語)AI / 人工知能(用語)新型コロナウイルス(用語)創薬(用語)

インドネシアのクラウドキッチンHangryが約14億円調達、レストラン展開も

グローバルな食品・飲料会社になることを目指すインドネシアのクラウドキッチンスタートアップHangry(ハングリー)がシリーズAで1300万ドル(約14億円)を調達した。同ラウンドは既存投資家のAlpha JWC Venturesがリードし、Atlas Pacific Capital、Salt Ventures、Heyokha Brothersが参加した。調達した資金は、他国に進出する前にまず今後2年で初の店内食事型レストランなどインドネシアでの店舗拡大に使われる。

Alpha JWCとSequoia CapitalのSurgeプログラムから300万ドル(約3億円)を調達した以前のラウンドを含め、Hangryの累計調達額は1600万ドル(約17億円)となった。Hangryは現在、ジャカルタ首都圏とバンドンでクラウドキッチン40店を展開していて、そのうち34店は2020年に立ち上げた。同社は2021年、店内食事型のレストランを含め、120店以上に拡大する計画だ。

Abraham Viktor(アブラハム・ビクトール)氏、Robin Tan(ロビン・タン)氏、Andreas Resha(アンドリアス・リシャ)氏が2019年に創業したHangryは、インドネシアで急成長中のクラウドキッチン産業の一角を占める。テック大企業Grab(グラブ)とGojek(ゴジェック)もフードデリバリーサービスを統合したクラウドキッチンネットワークを運営しており、その他にスタートアップのEverplateやYummyもこの業界にはいる。

Hangryが他社と差異化を図っている主な方法の1つが、クラウドキッチン施設やサービスをレストランやその他のサードパーティの顧客に提供するのではなく、自社ブランドへの注力だ。同社は現在、インドネシア鶏料理(Ayam Koplo)や日本食(San Gyu)など4つのブランドを展開している。各料理の価格は約1万5000〜7万ルピア(約110〜530円)だ。Hangryのアプリに加えてGrabFood、GoFood、ShopeeFoodを通じて注文できる。

「Hangryがインドネシアで広範なクラウドキッチンネットワークを築いたことを踏まえ、当然のことながら当社のネットワークを活用しようと他のブランドから関心が寄せられました」とCEOのビクトール氏はTechCrunchに語った。「しかし当社は自社ブランドを成長させることにフォーカスしています。というのも、当社のブランドはインドネシアで急速に人気を得ていて、全潜在能力を現実のものとするのに欠かせないキッチンリソースすべてを必要とするからです」。

新型コロナウイルスによるロックダウンと社会的距離の維持が実施された間に、Hangryはフードデリバリーの提供で成長した。しかし10年以内にグローバルブランドになるためには複数のチャンネルで展開する必要がある、とビクトール氏は付け加えた。

「いつの日か、店内での食事も含めてすべてのチャンネルで顧客にサービスを提供しなければならないと認識しています。当社はまずデリバリー事業という難しい分野でスタートし、顧客の家まで良い味で届けるという難題に直面しました。そしていま、当社はレストランで顧客にサービスを提供する用意ができています。店内食事型のコンセプトは配達分野で行ってきたあらゆることの拡大となります」。

報道機関向けの発表文の中で、Alpha JWC VenturesのパートナーであるEko Kurniadi (エコ・クルニアディ)氏は「1年半という期間でHangryはさまざまな味やカテゴリーの複数のブランドを立ち上げ、それらのほぼすべてが複数のプラットフォームでのレーティングでベストセラー入りしているというのは、プロダクトマーケットに適していることを如実に示しています。これは始まりにすぎず、Hangryがインドネシアでトップの食品・飲料会社に成長すると予見できます」と述べた。

カテゴリー:シェアリングエコノミー
タグ:Hangry資金調達インドネシアクラウドキッチン

画像クレジット:Hangry

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(文:Catherine Shu、翻訳:Nariko Mizoguchi

ソニーがDiscordに出資と提携、PlayStationにチャットアプリ搭載へ

Sony(ソニー)とDiscord(ディスコード)は、ゲームに特化した人気のDiscordチャットアプリをPlayStation独自のソーシャルツールに統合する提携を発表した。Discord買収の交渉がごく最近打ち切られたことを考えると、大きな、そしてかなり驚くべき動きだ。噂されているDiscordのIPOを前に、ソニーはDiscordの少数株を取得するのにMicrosoft(マイクロソフト)よりも良い条件を提示したようだ。

関連記事:Discordがマイクロソフトによる買収を固辞、独自に新規株式公開を目指す

短い発表文の中で提携の正確な中身は示されなかった。実際に何が起きるのかTechCrunchが耳にしたことはというと、両社が「2022年初めにDiscordとPlayStationのエクスペリエンスをコンソールとモバイル上で一体化させる」ということで、これは少なくとも簡単に想像できることだ。

Discordは以前にもコンソールプラットフォームと提携しているが、その相手はMicrosoftで、特に深い統合ではなかった。今回の提携は「あなたがPS5で何をプレイしているのかを友達が見ることができる」「ソニーのシステムを利用するあらゆる人のための代替チャットインフラ」以上のものであることはほぼ確実だ。システム全域に及ぶ深い統合となる可能性があるが、あなたが友達を自分のゲームに招待したり、あるいは友達のゲームにあなたが参加したりするときに「Discordでのボイスチャットで開始する」というような、明らかにDiscordブランドのオプションだ。

2022年初めというタイムラインはまた、統合が主要なプロダクト変更であり、おそらくソニーの長期的なPS5ロードマップにおける大きなプラットフォームアップデートと同時に行われることを示唆している。

ボイスチャットに関しては新しいPlayStationが古いものよりも優れている一方で、古いものはそもそも良くなかった。そしてDiscordは扱うのは簡単というわけではないが、何百万人というゲーマーがすでに毎日使っている。そして最近ではゲームが排他的でなければ、しっかりとクロスプラットフォームであるというのが次善のオプションだ。というわけで、PS5プレイヤーがPCプレイヤーとシームレスにチャットできるのはその部分での弱点を減らすことになる。

もちろんMicrosoftはXboxとWindowsエコシステムの両方を展開しているというアドバンテージがある。しかし同社は繰り返し機会を模索してきた。Discordの買収はすべてをつなぎ合わせる欠けていたピースだったのかもしれないが、相手に逃げられてしまった。報道されたところではMicrosoftの買収交渉ではDiscordの企業価値を100億ドル(約1兆907億円)と評価したが、成長中のDiscordはIPOで自由に展開し、珍重されるペットになるよりも支配的なボイスプラットフォームになるという挑戦を選んだようだ。

金銭面に関していえば、ソニーはDiscordの直近の1億ドル(約109億円)のHラウンドに参加してすでに同社と関わっている。ソニーの拠出額は明らかにされていないが、引受額とトータルの評価額を考えたときに、必然的に少数持ち分以上とはなり得ない。

カテゴリー:ゲーム / eSports
タグ:DiscordSonyPlayStation

画像クレジット:Discord

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(文:Devin Coldewey、翻訳:Nariko Mizoguchi

ClubhouseがいよいよAndroidアプリの外部テストを開始

音声ベースのネットワーキングアプリClubhouse(クラブハウス)は、現在すべての主要テックプラットフォームに押され気味だが、ようやくそのサービスをAndroid(アンドロイド)に展開しようとしている。同社は、毎週恒例のタウンホールイベント中に、Android版アプリがベータテストに入ったことを発表した。外部の少数の人間がテストに参加し、公開に先立つ初期フィードバックを会社に提供する予定だ。

Clubhouseはリリースノートの中でこのテストを「フレンドリーなテスター」グループへ展開中の「ほぼベータ版」を含んだものだと説明している。つまり、より広範囲のユーザーが、Android版アプリにサインアップする手段はまだないということだ。

Androidクライアントの欠如は、招待システムと組み合わせられて、当初はClubhouseに排他性のオーラをまとわせた。参加するには誰か招待してくれる人を知っていなければならなかったし、iOSデバイスも必要だった。しかし、Androidユーザーへのアクセス提供が遅れたため、強力な競合相手たちがClubhouseに追いつく時間を与え、同時に取り残されていたユーザーたちに訴求することを許してしまった。実際、最大のライバルの1つであるFacebook(フェイスブック)は、最近そのすべてのプラットフォームとサービスでClubhouseに挑戦状を叩きつけた。

Facebookは、短いオーディオスニペットからFacebookとMessenger(メッセンジャー)全体で動作するClubhouseクローンなどのさまざまな新製品を含んだ、フルオーディオ戦略を発表した。また、Instagram Live(インスタグラム・ライブ)ユーザーが、自分のビデオをオフにしてマイクもミュートする方法も発表した。これはClubhouseに似通った機能だ。Facebookの研究開発部門でさえ、Clubhouseの代替品であるHotline(ホットライン)をテストしている 。HotlineはQ&A用途に焦点を当てていて、ClubhouseとInstagram Liveの一種のマッシュアップ機能を提供している。

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一方Twitter(ツイッター)は、音声ルーム機能であるTwitter Spaces(ツイッター・スペース)を拡張し続けている。他にもReddit(レディット)、LinkedIn(リンクトイン)、Spotify(スポティファイ)、Discord (ディスコード)、Telegram(テレグラム)、その他の企業が、Clubhouse相当品の提供を目指して開発を進めている。

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Clubhouseにとっては、特に初期の過剰な期待がすでにしぼみつつある兆候の見えるいま、成長をプッシュすべきときがやってきたことを意味している。アプリストア情報会社のApptopia(アプトピア)によれば、ClubhouseはこれまでにiOS上で推定1350万回ダウンロードされているが、日次ダウンロード数は減少しており、これは日次アクティブユーザー数の減少を反映している。

画像クレジット:Apptopia

Apptopiaのデータによると、Clubhouseの日次アクティブユーザーは、2021年2月の頂点から68%減少している、とはいえこれは必ずしもClubhouseが終わったことを意味するわけではない。単に毎日の習慣としての頻度が少なくなっているだけだ。それでももし同社が、同社のアクセラレータープログラムを使って狙う、クリエイターコミュニティの構築や、多くの人気ショーの確立に成功できたなら、引き続き週次もしくは月次の単位でユーザーを引き戻すことができるだろう。そしてそうしたセッションは他のソーシャルアプリに比べて長くなる可能性がある(たとえ他のタスクをしながらアプリを開きっぱなしにしているのだとしても、Clubhouseのユーザーはしばしば1時間以上行われているショーに参加している)。

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さらにClubhouseは、最近使用量が減少しているかもしれない人の、再エンゲージメントに関する課題に取り組んでいる。また、タウンホールイベント中に、Clubhouseは、ユーザーが招待されたイベントについて気が付けるようにするために、イベントのベルアイコンを導入すると発表した。これは、イベントを宣伝するクリエイターにとっても重要な機能だ。

Clubhouseは、そのAndroidアプリがより多くのテスターやより広い範囲の一般ユーザーの手に渡る時期については、はっきりしたことを語っていない。ただ「今後数週間」でより多くのAndroidユーザーを招待したいと述べただけにとどまっている。Clubhouseは2021年3月に、Androidのリリースには2、3カ月かかると語っていた

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カテゴリー:ネットサービス
タグ:ClubhouseAndroid音声ソーシャルネットワーク

画像クレジット:SOPA Images / Getty Images

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(文:Sarah Perez、翻訳:sako)