サンフランシスコ市営鉄道(MUNI)がランサムウェアに襲われる―土曜以後料金徴収できず

2016-11-29-ransomware

この週末、サンフランシスコ市営鉄道の券売機にやってきた乗客は異常なメッセージに驚いた。ディスプレイには“You hacked.”〔お前はハックされた〕と表示されていた。

サンフランシスコ市の手軽な交通システムであるMUNIはどうやら無差別のランサムウェア攻撃にやられたらしい。

土曜日以降MUNIの乗客には無料パスが配布されている。問題が解決するまでMUNIは料金が徴収できない。攻撃者はMUNIのデータは暗号化されており、身代金をbitcoinで支払えと要求している。

この攻撃の首謀者とされる人物は当初「メディアの注目を集める意図はなかった」としてMUNIが身代金を払わない場合は譲歩する姿勢だったが、その後市の交通局を30GBの乗客情報をリークすると脅迫している。

「われわれのソフトウェアは完全に自動化されており、特定の相手を狙ったわけではない。SFMTAのネットワークは開けっ放しだったので2000台のサーバーとPCが感染した! われわれはSFMTAの責任者から連絡を待っている。しかし彼らは取引に応じないだろう。われわれはこのメールメールを明日には無効化する」と攻撃者はメールに書いたとVergeは報じている

MUNIの広報担当者は「われわれは現在問題を調査中だ。すでに発表した以上の情報を明かせる段階にない」とコメントした。

画像: Bryce Durbin

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

「ボイコット・トランプ」は、消費者がドナルド帝国を避けるためのアプリ

New York City - USA - April 27 2016: Republican presidential candidate Donald Trump gestures while speaking to press after his five-state super Tuesday win

大統領選挙の結果にショックを受けているアメリカ国民は、まだドナルド・トランプに反対票を投じるチャンスがある ― 自分の財布で。反トランプ民主連合の新しいアプリはそのために作られた。

このアプリはかなり素朴なデザインだが、トランプのビジネス帝国と結びつきのある企業や組織を短い説明とともにアルファベット順に掲載していて検索もできる。何しろ次期大統領は過去に類をみない数の政府外組織との結びつきがありながら、トランプ氏も支持者も意に介する様子がない。最近では、「大統領に利益相反などあり得ない」というニクソン風の薄気味悪い宣言をして見出しを賑わした。

リストには、結びつきが特に強い企業もある。アプリに載っているアパレル会社の多くは、イヴァンカ・トランプの衣装を扱っていることで選ばれている。避けるのが容易な会社もそうでないものもある。平均的消費者にとってグッチ(トランプタワーに主力店舗を構える)の買い物を控えることは難しくないが、スターバックス(トランプタワーに店がある)に通う習慣を絶つのは少々大変かもしれない。

リストに載ったIT関連で著名な企業としては、Amazon(トランプのメンズウェアーやイヴァンカの服や靴、アクセサリー等を販売している)、PayPal(共同ファウンダーのPeter Thielは辛口のトランプ支持者で資金も提供している)、GrouponとSprint(いずれもリアリティー番組 “Celebrity Apprentice” のスポンサー)等がある。

反トランプ連合のNate Lerner代表はHuffington Postに、「このアプリはわれわれのボイコット・トランプ・キャンペーンの第一歩。いかなる形であれトランプの支援に関わる企業や個人の行動を抑制するための統一的草の根運動だ」と話した。

というわけで、多くのアメリカ人と同じく選挙以来絶望と恐怖を感じている人は、このBoycott Trump アプリを使おう。あの鈍感なオレンジ色の次期大統領を受け入れ資金を流している連中に、たとえ小さくても一撃を加えているという小さな慰めを感じられるかもしれない。

Boycott Trumpは無料。iOS版とAndroid版がある。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

VRとARはいずれ統合してMRに──オピニオンリーダーが語るVRの今と未来

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11月17日、18日に、渋谷で開催したTechCrunch Tokyo 2016。17日のTech Trendセッションには、VR界のオピニオンリーダーで、VR関連スタートアップへの投資を行う米VCのThe Venture Reality Fund(以下VR Fund)ジェネラル・パートナーのTipatat Chennavasin(ティパタット・チェーンナワーシン)氏が登壇した。ティパタット氏は、これまでに1500以上のVR/ARスタートアップを見てきており、14のVR/ARスタートアップに投資、世界中のVRインキュベーターやアクセラレーターでメンターとして支援を行う、VRのエキスパートだ。

『THE BRAVE NEW VIRTUAL WORLD〜Investing in the future of reality(すばらしき‘バーチャル’新世界〜リアリティの未来への投資)』と題されたセッションで、ティパタット氏は、VR/AR業界で起こっている近年の変化と現況、そして近い将来予想される動きについて語ってくれた。

VRとは何か──まずは体験してみてほしい

ティパタット氏は「VRで体験できていることが、ARでも実現できるようになり、VRとARはいずれ統合されて、MR(Mixed Reality)となる。VRとARが私たちの生活を永遠に変えてしまうだろう」と話し始めた。

TechCrunch Tokyo 2016では、最先端のVRが体験できる「VRゾーン」で7社による展示も行われていた。出展内容のほとんどを知っていた、というティパタット氏は、映画『マトリックス』の登場人物・モーフィアスのセリフになぞらえて、「バーチャルリアリティとは何かを知るには、VRを体験することだ。この機会にぜひ、まずは体験していってほしい」と会場に呼びかけた。

ティパタット氏は「身の回り全体にスクリーンが常にある世界がいずれ来る」と言う。「完璧なVR体験とは何か。より多くの感覚を回りの環境に浸透させることだ。視覚、聴覚、自分の動きの感覚があれば“そこにいる感じ”は実現できる。それを実現するハードウェアとして、ディスプレイとスピーカーとセンサーがあり、3次元移動×回転のジェスチャー・コントローラーがある」(ティパタット氏)

VRを説明する分かりやすい例として、ティパタット氏は2Dと3D、そしてVRを比較。「2Dディスプレイと比べれば、3Dシネマの技術では立体感のある映像は見られるが、まだ完全な3Dとは言いがたい。周りの環境全体がディスプレイ化して、からだを取り囲んでいるような体験が得られるのがVRだ」(ティパタット氏)

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ではなぜ今、VRなのか

“VRブーム”の要因をティパタット氏はこう説明する。「ひとつはハードウェアの価格が下がったこと。スマートフォンの普及で身の回り中にスクリーンとセンサーがある状況が生まれた。次に、インタラクティブ・コンテンツの充実。3Dゲームが主流となって、制作ツールの機能が向上し、アーティストや開発者も増えている。それからメディア・コンテンツの発展。Go Proなどの撮影機材の普及でジャーナリストやハリウッド・メディアがコンテンツ制作に参入し、エコシステムができあがった」(ティパタット氏)

またティパタット氏は、VRにつきものだった“シミュレーター酔い”の課題がほぼ解消されたことも、VRの浸透に貢献していると言う。「VRヘッドセットの進化により、技術的な問題は解消している。かつて『ポケモン』のアニメ放映で、激しく点滅するフラッシュ光によって体調を悪くする人が出て問題になったが、原因が分かって、あのようなコンテンツを作る者はいなくなった。それと同じで、VRコンテンツによる酔いは、作り手によって意図されたものでもなければ、VRの前提(としてどうしても外せないもの)でもない。ただし、ヘッドセットのデザインの問題はまだ残っている」(ティパタット氏)

VR業界の現況

それでは、普及へのお膳立てが整ったVR業界は、現在どのような状況なのだろうか。まずはハードウェアでの参入企業をティパタット氏に紹介してもらった。Facebook率いるOculusGear VRのSamsung、PSVRのソニー、Viveを提供するHTCといった、VRヘッドセットのメーカーをはじめ、Google、Microsoft、Appleといった巨大IT企業、そしてPCやスマホ、CPU、GPUメーカーなど、そうそうたる顔ぶれがそろう。

さらに最近はNew York Times、ABC News、Huffington Post、LIFE、Disneyなどのメディア企業の参入も進む。ティパタット氏によれば「メディアのVR業界参入は、将来のコンテンツへの投資として考えられている」という。

VR市場も年々拡大している。「2020年のワールドワイドでのVR市場規模は、404億ドルになると予測されている」というティパタット氏。米国では過去2年で40億ドルが投資されており、VR Fundも参加するVirtual Reality Venture Capital Alliance(VRVCA)で120億ドルの投資が確定。ほかOculusが5億ドル、IMAXが5000万ドルをコンテンツへ投資しており、2020年に最小でも146億ドルの市場規模となると推定されるそうだ。

VRコンテンツや関連商品・サービスは実際に、どのように提供されているのだろうか。ティパタット氏はまず、オンラインゲーム・プラットフォームのSteamの例を紹介。Steamに関する情報を提供するSteam Spyのデータによれば、Steam Storeでは、13万2000点のVive関連商品が扱われている。これは中国を除いた数字だ。Steamでは、VRのみのタイトルで2400万ドルの収入があり、インストール件数は500万。VRコンテンツのトップタイトルには、ゲームだけでなくユーティリティーアプリやIKEAのシミュレーターなども含まれている。

次にティパタット氏が紹介してくれたのは、360度動画の台頭だ。360度動画はYouTubeでもFacebookでも急激にユーザー数を伸ばし、YouTubeで10億ユーザー、Facebookでは17億ユーザーが閲覧しているという。全画面動画は、再生ディスプレイがデスクトップ、スマホのティルト、そしてGear VRなどのモバイルVR機器へと広がったことで、多くの閲覧者を獲得した。

そして、ロケーション・ベースド・エンターテインメントの流行である。ロケーション・ベースド・エンターテインメントとは、装置や設備が備わっていて場所が固定された、VR体験ができるエンターテイメント施設。ティパタット氏によると、日本でも見かけるようになったVRカフェは、中国では既に2000軒あるそうだ。VRゲームセンターも世界各地で開設されている。またIMAXは、6カ所でVRシアターの開設を予定。さまざまなジェットコースターが楽しめる米国のテーマパーク、Six FlagsとCedar Pointでは、VRローラーコースターが導入されている。

これらのVR業界の動向を、最後にティパタット氏作成の全体図で確認。3Dデータ入力のインフラ部分を担うプレイヤーから、ヘッドセットメーカー、コンテンツ制作のためのカメラ、ツール、プラットフォームの提供者、そしてコンテンツ提供者までが俯瞰して紹介された。
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さまざまなVRコンテンツとVRアプリ

ここからは、VRコンテンツのさまざまなカテゴリを少し詳細に、ティパタット氏が紹介してくれた。まずはゲームから。「PSVRでの人気ゲームはシューティングやアクションもあるが、実はジョブシミュレーションなども強い。それから、ナラティブ(物語)エンターテインメントも人気がある」(ティパタット氏)

「コンテンツとしては、先ほども紹介した、テーマパーク、ゲームセンター、カフェといった場所固定のVRエンターテイメント施設、そしてスポーツの分野もある。スポーツでは観戦や、エクストリーム・スポーツを体験するものが人気だ。中国では、スポーツ観戦会場に人が入りきれないような試合もあって、こうしたVRコンテンツのニーズは高い。コンサート、ライブのコンテンツもよく利用されている」(ティパタット氏)

ティパタット氏がこれから特に注目しているコンテンツカテゴリは、教育とのこと。「それから旅行コンテンツも面白いね。旅行したい街をゴジラの視点で歩き回ることもできるだろう。そして報道コンテンツも。シリアなどの危険な戦地をVRで体感すれば、ものの感じ方が変わると思う。New York Timesの360度動画コンテンツは毎日更新されているね」(ティパタット氏)

コンテンツに続いて、各種VRアプリが紹介された。「企業向けアプリでは、デザイン、3Dデータ体感ができるシミュレーターのほか、トレーニング用アプリも出ていて、採掘や重機操作など、すぐに実体験するのが難しい業務で使われている。MicrosoftがVRに投資するのは、こうした動きがあるからだ」(ティパタット氏)

医療分野のアプリは、手術のトレーニングなどに使われるほか、高所・閉所恐怖症などの治療にも利用されているという。「私は、自分の高所恐怖症をVRの治療アプリで克服したんだ。片目だけの視力が弱い患者が、9カ月のトレーニングで症状を改善したという例もある」(ティパタット氏)

「ソーシャル分野のアプリでは、リアルタイムで遠隔地とのコミュニケーションができることに可能性がある。Facebookのマーク・ザッカーバーグも、VRによるソーシャル体験についてコメントしているし、この分野は伸びるだろう」(ティパタット氏)

そして、VRコンテンツも含めた3Dコンテンツを制作するのに必要なのが、クリエイティブアプリだ。ティパタット氏は「(VRによる)完璧な3D環境があれば、インプットをVRで行うことが可能だ。これはコンテンツ制作に応用できる。Mindshowなどはその例だ」と言う。「VRを使えば、3Dコンテンツはより短期間で、より少額で制作できるようになるだろう」(ティパタット氏)

VR業界のこれから

このように、いま盛り上がるVR/AR業界で、今後のチャンスはどういったところにあるのか。

「現在のVRデバイスは、かつてのモトローラ製のブロックのように大きな携帯電話のようなもの。電話がiPhoneへと変わっていったように、VRデバイスも変わっていかなければならない」とティパタット氏は言う。「そのために必要なものは何か。早いスピードと大きなデータ容量を支える回線などのインフラ技術、VRネイティブなメディアや、毎日触れる機会があるVRアプリ、そしてコンテンツ制作の敷居を下げること。さらに、テクノロジー分野でもコンテンツ分野でも新しい投資家が必要だ」(ティパタット氏)

「今後、物質世界の体験とVRでの体験は重なっていく。ARはVRに比べて3年遅れで、開発キットがこれから登場する、といったところ。だが、VRでの開発の知見が生きるだろう」と今後のVR/AR界の展望についてティパタット氏は語る。「だから、VR/ARにどんどん投資しようではないか。そして一緒にVR/ARの未来を作りましょう!」(ティパタット氏)

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ソニー、ファイナルファンタジーXV発売記念のハイレゾ・ウォークマン発表―3万3880円で当面日本のみ

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われわれは人気絶大のファンタジーRPGシリーズの最新版が出るのを延々と待ち続けたわけだが、ついにコラボ版ソニー・ウォークマンと共に登場することになったのは嬉しい。ファイナルファンタジーに賛辞を呈するなら1980年代に遡る必要がある。 明日発売されるファイナルファンタジーXVを記念するソニー・ウォークマンはハイレゾ音源対応で背面にXVのロゴがある。

Engadgetの記事にもあるように、今回の FF XV ウォークマンはスクエア・エニックスのゲームをめぐるマーケティング作戦の最新の例だ。関連商品の中には、あろうことか、47万ドルもするAudi
A8 ファイナルファンタジー版が含まれる。ウォークマンについてはさほど大きなカスタマイズがされているわけではない。前述の大きな XVロゴに加えてて登場キャラ4種がドット絵で背面にエッチングされている程度だ。もちろん発売を祝う記念のボックスに入ってくる。16GB版は約300ドル(¥33,880)でまず日本で発売される。他の地域での販売価格はまだ発表されていないが、いずれにしてもAudi A8よりは安いはずだ。

ソニーではXVの発売を記念するヘッドフォンとBluetoothスピーカーも製品ラインに加えた。音源にはハイレゾ・オーディオ版のFFの音楽も用意される。これだけで53ドルというかなりのお値段だ。これらのグッズは当面日本のみの発売となる。

〔日本版〕ファイナルファンタジーXV発売記念ウォークマンのソニーの公式サイト。スクエア・エニックスのFF15サイトはこちら

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

Star Wars ローグ・ワンの新予告編公開―グッズ付き前売券も〔日本でも販売中〕

ローグ・ワンRogue One A Star Wars Story の前売り券が12月16日の公開に向けて販売中だ。この期待のスター・ウォーズ映画はルーク・スカイウォーカー、ハン・ソロ、レイア姫というメイン・プロットから離れたシリーズの第一弾となる。ローグ・ワンではメイン・シリーズで破壊されたデス・スターの設計図をいかにして反乱軍が入手したかという秘密が描かれる。

デス・スターはエピソードIV以降、シリーズのプロットの要に位置する帝国軍のスーパー兵器だった。

上のビデオはRogue Oneの新しい予告編だ。 以前の予告編になかったシーンがいくつか付け加えられており、内容がもう少し詳しく推測できる。ユーモラスな場面があるのに注目だ。全体としてプロットも雰囲気もアクションもメインのシリーズに完全にマッチするようになっているようだ。気の利いたセリフもメイン・シリーズの感じとそっくりだ。

〔日本版〕ローグ・ワンのグッズ付き前売り券は日本でも発売中。公開も12月16日が予定されており、前日まで前売り券を購入できる。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

製造業向け価格比較サイト「Aperza」などを手がけるアペルザ、GMO-VPから1.5億円の資金を調達

アペルザ代表取締役社長の石原誠氏

アペルザ代表取締役社長の石原誠氏

製造業向けに特化したインターネットサービスを提供するアペルザは11月28日、GMO
VenturePartners(GMO-VP)を引受先とした1億5000万円の資金調達を実施したことを明らかにした。

アペルザは2016年7月の設立。代表取締役社長の石原誠氏は、新卒でキーエンスに入社。同社初となるネット事業「iPROS(イプロス)」の立ち上げに参画した。2014年に同社を退職し、英語学習者向けアプリを手がけるポリグロッツを創業。さらに2014年9月にも新会社エデュートを立ち上げ、教育向けのアプリ構築プラットフォームを開発した。

石原氏はここからまた本業である製造業領域に戻って事業を始める。2014年年12月には新会社クルーズを創業。同社は製造業コンサルのFAナビ、製造業向けメディアのオートメ新聞と経営統合を経てアペルザを新設。その代表となった。

アペルザが現在手がけているのは製造業向けのニュースサイト「ものづくりニュース」や業界紙の「オートメーション新聞」、製造業向けのカタログポータルサイト「Cluez(クルーズ)」、工業用資材の価格検索サイト「Aperza(アペルザ)」など。アペルザでは、今回調達した資金をもとにCluezおよびAperzaを中心にしたサービス体制強化に充てるとしている。また、今回の調達にあわせて、GMO-VPの宮坂友大氏が社外取締役に就任する。

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アペルザが情報を扱うのは、製造業で用いられる間接資材(製造業向けの組み立て装置など)。間接資材の設備部品は文字通り星の数ほどあるそうで、大手資材商社であるミスミが扱う間接資材の部品点数はなんと800垓(はっぴゃくがい。1垓は10の20乗。億、兆、京、垓となる)にも上るそうだ(ただし製造用途にあわせてある程度の組み合わせは決まっているそう)。Cluezではそんな間接資材メーカー1500社のカタログを掲載。Aperzaでは260万点の価格情報を保持。製造業の調達部門や製造業向けの購買代行商社などに向けてサービスを提供している。

「(間接資材の)市場規模は20兆円。その市場のオンラインシフトが進んでいる。ミスミもMonotaROもAmazon、アスクルも狙っていると言われている。だが現状、買い手向けの『価格.com』的なサービスがない。そこを狙う」(石原氏)

同社は今回調達した資金をもとにCluezの営業強化、Aperzaの開発強化を進めていく。

またアペルザでは現在国内メーカーに加えて台湾、中国での営業も開始。さらに9月には米国シアトルにもラボを立ち上げ、サービスの準備を開始したという。「我々が手がけるサービスは欧米でもまだ存在しない。先行者利益は大きい」(石原氏)

VR/AR普及の鍵はモバイルとエンタープライズだ

Virtual reality simulator, communnication.

【編集部注】著者のMike Bolandは、インターネット時代におけるシリコンバレー初期のハイテク記者の1人である。現在はBIA/KelseyならびにVR/AR Associationの主任アナリストを務めている。

PCならびにコンソールVRは私たち皆を興奮させるフォーマットだが、近いうちに本当にモバイルもそのレベルに達するのだろうか?これは私が作成中の研究レポートのために、投資家やイノベーターに投げかけている質問だ。

例えば、切迫したHMDのコモディティ化にもかかわらず、IDCは今年の接続されたVRヘッドセットの売上は200万台だと予想している。それはモバイルVRがアプローチできるマーケットである、世界の26億台のスマートフォンに比べるととても少なく見えてしまう。

モバイルVRは、一般に機能を抑えたバージョン(位置追跡がないなど)だが、Google Daydreamなどのように改善され続けている。その大衆に優しい価格とアクセシビリティは、VRが必要としている、ゲートウェイドラッグ(より本格的な利用への誘い水)としての役割を果す。

同じことは、ARにも当てはまる。初歩的な形態 — ポケモンGOの類 — が大衆に、これから何が来るのかの雰囲気を伝えている。それは「真のAR」ではないけれど、同様のゲートウェイドラッグの役割をテクノロジーに対して果す。

シリコンバレーのビジネスストラテジストであるKristie Cuは私に、VRとARは5Gネットワークの展開とともにやって来るだろうということも思い出させた。その大量のデータペイロードが、大きなパイプを活用することを考えると、それは良いタイミングだ。

「2015年から2018年までの間に(Orange社は)このインフラストラクチャのために150億ユーロの投資を行うことを決めています」と彼女は言う。「なので、5Gの背後には膨大な資金が控えていて、VRはその帯域幅を必要とするもののひとつなのです」。

Cuは、現在VRとARを調査し熱心に取り組んでいるComcast Venturesや、Lenovo、その他の企業投資家たちと協力している。そしてデューデリジェンスの過程で彼らは更に多くのものを見ている。

Comcast VenturesのMichael Yangは、VRとARの、長期的な主要コンピューティングプラットフォームとしての地位に基づく投資テーマを抱えている。しかし、もっと重要なことは、それらが地理的な境界や、産業の垣根を超えるほどに成長するということだ。

「それは消費者と企業の両方に関わります、特にARは」とYangは私に語った。「それはまたグローバルへ大きく踏み出しています。私たちが投資している他の部門は、直接的にグローバルなものではありません」。

例えば、CVポートフォリオ企業のNextVRは、VRを大規模なリーチを持つメディア主力商品に持ち込んでいる:スポーツライブ中継だ。消費者の観点を超えて、スポーツライブ中継は視聴者にケーブルテレビの契約解除を思いとどまらせる1手段なのである…そしてVRがその効果を強化する。

これまでLenovoは、この機会に2つのレベルで取組んでいる;VRの重いグラフィカル処理に対応する高性能PC機器を製造すると同時に、Tango技術を採用したPhab 2 ProによるモバイルARの開拓を行っている。

Lenovoの世界技術革新ディレクターであるJoe Mikhailは、ARの未来に対する彼のビジョンを、MetaのシリーズBラウンドにおける彼の主導的役割に触れながら表明した。彼は長期的には、企業のユーティリティにチャンスがあると考えている。

これがARがVRの市場規模を追い越すことになる理由の1つである。Mikhailは、ARの真の価値は、作業場所での生産性から製造現場、そして工業デザインに至るまで(3Dモデリングを考えて欲しい)、あらゆる場所で解放されるだろうと述べている。

このゲームの名前は、運用効率の改善だ、と彼は言う。これは実際の底上げを行う手段を伴う — それ故にARの広い採用が否応なく進むことになるのだ。

Yangは、全プロセスを一貫して扱うアプローチに触れながらこの考えに同意する。「一般作業者にとって、全プロセスを理解することは困難です」と彼は言う。「私は、プロセスをより効率的かつインテリジェントにするためのARオーバーレイを思い描いている、石油/ガス、あるいは航空宇宙、もしくは建設業界の人々を探しています。それが特に私たちが期待している未来なのです」。

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(翻訳:Sako)

決済サービスのStripeが新たに1億5000万ドルを調達、評価額は90億ドルに

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ウェブサイトやアプリに、数行のコードを挿入するだけで決済機能をAPI経由で搭載できるサービスを提供しているStripeは、新たにシリーズDで1億5000万ドルを調達し、資金調達前の評価額が90億ドル、調達後の評価額は92億ドルに達した。

スタートアップ界のいわゆる”ユニコーン企業”が過大評価されているのではないか、とたくさんの人が疑問に思っている中、この調達額はStripeにとって大きな意味を持つ。なお、Visaと協力して行った昨年夏のラウンド時の同社の評価額は50億ドルだった

資金調達に加え、Stripeは合計2億5000ドル分の回転信用枠(リボルビングクレジットファシリティ)を、J.P. Morgan Chase & Co.、Goldman Sachs Group Inc.、Morgan Stanley、Barclays PLCとの間に設定しようとしている。金利が低迷している今のうちに、借入自体ではなく、借入の上限額を引き上げておこうというのが同社の狙いだ。しかし資金が必要でなければ、Stripeはこの枠を利用しなくても良い。

今回の資金調達に関するニュースは、面白いタイミングで発表された。というのも、先週の木曜日は買い物客が増える休暇の初日で、プラットフォーム経由の全ての決済から手数料をとっているStripeのような会社は、この時期に1年で一番大きな売上を期待することができるのだ。サンクスギビングデーには、売上が2016年に入って初めて20億ドルの超えると予想されている。

中には、ニュースが静かになる休暇中の週末に、このニュースが発表されたことを不思議に思っている人もいるかもしれない。なお、最初にこのニュースを報じたメディアはThe Wall Street Journalだった。

しかし、私はこのタイミングでの資金調達の発表には意義があると感じている。Stripeはいずれ株式を公開するか、同社よりも大きなEC(もしくはテック…もしかしたらGoogle?)企業に買収されることを念頭においているため、今回の発表でStripeは、オンラインショッピング界にとって大事なこの時期に、「Stripeがここにいるよ。これからEC業界を席巻していくよ」と伝えようとしているのだ。

Alphabetブランドの下に検索・モバイル事業を置くというGoogleの組織改編後に、Google Capitalから名称変更を行い、今回初めてStripeに投資した”CapitalG”と、以前から投資家として名を連ねていたGeneral Catalystの2社が今回のラウンドのリードインベスターを務めた。その他にも、Sequoia Capitalや、以前から同社に投資を行っていたものの、名前が明かされていない投資家が同ラウンドには参加していた。

2010年にアイルランド出身のPatrick・John Collison兄弟(それぞれCEOとプレジデントを務めている)によって設立され、サンフランシスコを拠点とするStripeは、今回の調達資金を含め、これまでに約4億6000万ドルを外部から調達している。

同社のビジネスの中心は決済サービスではあるものの、今後金融サービスプラットフォームへと進化していくために、Stripeは決済以外のサービスの開発も進めている。

例えば、アメリカ国外からアメリカ籍の企業を設立するためのサービス詐欺防止ツール、企業の支払をスピード化するツール、Stripeのプラットフォームを利用したマーケットプレイスなどの開発が行われている。Stripeは自社のプラットフォームを利用して、利幅を増やす(決済サービスだけでは少額の利益しかあげられない)と共に、顧客との接点を増やそうとしているのだ。

その点に関しStripeは、今回の調達資金をディベロッパー向けツールの開発や企業買収時に使えるツールなど、実業家をサポートするような機能をプラットフォームに追加するために使っていくと話している。さらにスタッフの増強も行っていく予定だ。

Stripeは次に何をローンチするのか名言していないが、詐欺防止ツールのRaderを10月末にリリースした際に、John Collisonは、EC業界にいる人たちの信頼感を高めるために、売る側・買う側両方をさらに保護していくためのサービスが今後発表されるかもしれないと、ほのめかしていた。

「この分野のサービスの開発は活発に行われており、私たちがやりたいと思っていることもたくさんあります。まだ利用者保護サービス(を単独のサービスとしてローンチするかどうか)の可能性は断念していませんが、今後ユーザーがどのようにこのサービスを利用して、何がうまくいって、何がうまくいかないかというのを観察していきたいと考えています」

ネットビジネスの運営やオンラインコマースへのアプローチとして、仕組みが複雑なサービスをシンプルにすることでPayPalのような企業へ対抗するという、Appleが得意とするやり方をStripeはもっと広く活用しようとしている。

先月Collisonに話を聞いたところ、Stripeのミッションは「ビジネスを成長させる上で直面する複雑な問題を簡素化することです。そのため、今後ローンチされるStripeのプロダクトは、そこに特化したものが多くなると思います。何がビジネス上の問題なのか、なぜ成長スピードが思うように伸びないのか、そして私たちはその状況に対して何ができるのか、というのが私たちの考え方なんです」と語っていた。

Stripeはまだ、世界中のユーザーの数や売上額、Stripeプラットフォーム上での決済総額などは明らかにしていない。しかし同社は、現在ユーザーが110ヶ国にいて、アメリカのインターネット人口の半分にあたる人々の決済をこれまで処理してきたと話している。

つまり、かなり広範囲に渡る顧客が、Stripeのサービスを少なくともひとつは利用したことがあり、そのユーザーには有名なネット企業も含まれているのだ。具体的にはSAP、Macy’s、Missguided、 GE、Adidas、Docusign、Slack、Medium、Daily Mail、Yelp、NASDAQ、UNICEF、「他にも先の大統領選の両候補者」などがStripeのサービスを利用している。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

科学出版の世界のディスラプトを狙うScienceMatters

Open books and icons of science. The concept of modern education, File is saved in AI10 EPS version. This illustration contains a transparency

【編集部注】著者のBérénice Magistretti はサンフランシスコに拠点を置くスイス人フリーランスライターである。彼女はサウジアラビア、スイスその他の新興市場におけるスタートアップに焦点を当てている。

科学者ならだれでも、自分の論文がCellNature、あるいはScienceに掲載されることを望む 。今日の科学の世界では、このような出版物に掲載していることが、威信や卓越性と同義であり、高い地位と憧れの賞への扉を開く。

それにもかかわらず、これらの雑誌の採択率は5から10パーセントであることが知られている。それが意味するのは、残りの90から95パーセントは論文掲載を拒否されて、アカデミックの世界で同様のインパクトは持たない他の出版先を探す事を余儀なくされるということである。

2月に発足したスイスを拠点とするスタートアップScienceMattersは、発見を共有したいと望む全ての科学者たちにオープンアクセスのパブリッシングプラットフォームを提供することによって、より民主的なシステムへの道を啓こうとしている。「私たちは、現在トップにある科学出版社たちが50年前に出版したときと、おなじやり方で出版を行おうとしているのです」と説明するのはSciencsMattersの創業者兼CEOのLawrence Rajendranだ。「かつてはそこで、厳格な発見が出版されていました、しかし今は、競争が恐ろしく激しくなってしまったので、それに加えて驚き因子(wow factor)が必要となってしまったのです」。

言い換えれば、科学者たちは、優れていてユニークな結果を発表するだけではなく、それを編集者たちを喜ばせる魅力的な物語の中に作り込まなければならない。したがって、今日の科学者達を突き動かしているのは、もはやなにか新しいものを発見しようとする好奇心ではなく、高いインパクトファクターによる称賛(すなわち、基本的にはジャーナルで出版した論文の被引用回数)なのである。

「ジャーナルのインパクトファクターは、それが出版している仕事の質を表すための唯一の指標と考えることはできないということは、繰り返し語られてきました」こう語るのはミラノ大学の副学長であるMonica Di Lucaだ。「しかし、大学や研究センターは皆この指標を研究者の雇用や昇進に使っているのが事実なのです。科学者たちでさえ、この指標を同僚の科学的なステータスを評価する際に有用な手段だと考えているのです」。

「この『出版かさもなくば死かの文化』が敵対的な環境を染み込ませ、若手研究者たちに研究仲間を出し抜く圧力をかけ、データ不正に繋がって行くのです」。

— Lawrence Rajendran, ScienceMatters創業者兼CEO

Rajendran自身が神経科学者としてポスドクの時代に、科学出版の世界を構成している、バイアスがかかって不当なシステムを直接経験している。「この『出版かさもなくば死かの文化』(publish or perish culture)が敵対的な環境を染み込ませ、若手研究者たちに研究仲間を出し抜く圧力をかけ、データ不正に繋がって行くのです」と彼は説明した。インドのマドラス周辺のスラム街出身であるこのチューリッヒ大学の教授は、全ての科学者(ハーバードの教授であろうが、ムンバイのポスドクであろうが身分は問わない)のための包括的なプラットフォームを構築することを決意した。

ScienceMattersで出版を行うためには、科学者は2つことを示す必要がある。まず第1に、研究は技術的にしっかりしたもの(すなわち、適切なコントロール下で実施されたもの)でなければならない。第2に、それは科学的なコンテクスト(すなわち神経科学、化学、物理学…)を持っていなければならない。論文が提出されると、それは著者と編集者の双方が匿名の、トリプルブラインド審査プロセスを通過する。「これによって、あらゆる形のバイアスが取り除かれます。私たちは科学だけが問題だと信じていますので」とRajendranは語る。

科学出版の世界の民主化の探求という意味で、類似したオープンアクセスプラットフォームは他にも存在する。そのうちの1つ、eLifeは、ノーベル賞受賞Randy Schekmanによって創設された。彼はCell、Nature、そしてScienceの選考基準を公然と非難していることで有名な人物だ。ガーディアンが、彼の発言を引用している :「ウォール街がボーナス文化による支配を打ち砕く必要があるように、科学界も高級雑誌による専制政治を打破しなければなりません」。やはりスイスに拠点を置くFrontierrsも、科学者のための別のオープンアクセスのパブリッシングプラットフォームである。

「私はeLifeやFrontiersのようなジャーナルが、例えばCell ReportsやNature Communicationsと本質的に違っているとは思いません」と説明するのはノーベル賞受賞者でありScienceMattersのアドバイザーボードの議長を務める、スタンフォード大学教授のTom Südhofである。「私はScienceMattersが、少なくとも部分的には、この世界に風穴を開けると考えています、物語ではなく単純に結果だけを述べる短い論文を出版することによって」。

これらの結果はMattericTM(2015年に特許取得済)というメトリックシステムに取り込まれている。これはある発見がどれほどインパクトのあるものなのかを、ネットワークベースのアルゴリズムを用いてスコアを算出するものである。「これらをまとめて、検証された科学のインターネットを創り出すことがScienceMattersのビジョンなのです」とRajendranは説明すした。CEOによれば、彼らの希望は、全ての研究論文をインデックスし、システム全体をより透明でアクセス可能なものにする、「科学のGoogle」になることである。

「私たちが必要としているのは、まさに新しいメトリックなのです」とDi Lucaは語る。「しかし、またこのメトリックが、科学者同士でお互いに共有され、学会や資金提供機関によって認知される必要もあります」。スイスのスタートアップは、最近MassChallenge Switzerlandのアクセラレーションプログラムとして受け入れられ、欧州委員会によっても認知されるなど、正しい軌道に乗っているように見える。Velux財団によって主導された38万ドルのシードラウンドのおかげで、チームは出版資金を得ることができた — 出版手数料を課す他のジャーナルとは対照的だ。

ScienceMattersは、ローンチ以降約60編の論文を出版している、それぞれが複数の著者の手によるもので、600人以上の編集者がレビュープロセスに関わっている。「現在、論文著者の出版料を負担してもらえるように各大学と交渉中です」とRajendranは説明している。既に彼らは、チューリッヒ大学ベルン大学、そしてローザンヌのスイス連邦工科大学(EPFL)とパートナーシップを結んでいる。

チームは現在、プラットフォームの範囲を拡大するための追加資金を調達することを望んでいる。「私たちは、このアイデアを信じてエグジットを急かさないVCや、インパクト投資家、慈善家、あるいは慈善団体を探しています」とCEO。「私たちは成長を続けたいと思います、そして先のことはわかりませんが、出版社の1つになることができれば良いなと思っています」。

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(翻訳:Sako)

慌てるな、AIは職を奪わない―しかし今後ますます定着していく

Human and robots to work together in the near future. This combination will accelerate developing technology. Businessman and cyborg organizes social media.

ディストピアSFを通じて昔から広められてきた奇妙な信念に「人工知能やロボットが人類を破滅させる」というものがある。この世間知にはイーロン・マスクやスティーブン・ホーキングのような有名人も参加しているので驚いてしまうが、人工知能が発達すると、最後には有機体生命より賢くなり地球を乗っ取るという恐るべ結果をもたらすらしい。

しかし「AIがわれわれを滅ぼす」などということはSFの世界を離れればまずありそうにない。それどころか職を奪うことさえないだろう。

実際には、われわれが何かをするのを助けてくれるだろう。なるほどAIが仕事を助けてくれるという考えはロボットの大君主が地球を征服するという夢想ほど魅惑的ではない。しかし2016年現在、人工知能を考えるうえではるかに現実的な評価だ。これは工場の組立ラインの作業員にも得意先を回るセールスパーソンにも、オフィスの知識労働者にも等しく当てはまる。

シリコンバレーのソフトウェア・デベロッパーは人々の職を奪うための完璧なアルゴリズムを開発しようとしているという考えは正しくない。実のところ、コンピューターのアルゴリズムと人間の創造的な知能を組み合わせてより良い仕事ができるようにする方法を見つけようとしているだけだ。

AIは人間を補完する

AccentureのCTO、Paul Daughertyの説明によれば、同社は「人工知能は人間の能力を強化するもので代替するものではない」と考えている。その過程で人工知能は巨大な経済成長をもたらすという。同社の努力は恐怖を撒き散らすSF的ストーリーとは無縁だ。

「AI開発におけるわれわれの目的は人類以上のスーパー知能を作ることではなく人類の知能をスーパーにすることだ」とDaughertyは言う。SF風のお話はメディアが取り上げやすいかもしれない。しかしAccentureが目指しているのは「複雑な問題を簡単にする」という地味だが実際的な目標だ。

ロボットの大君主が地球を征服するというのと比べて、AIはわれわれを助けて仕事をスマート化するというのはセクシーな話題には聞こえないかもしれない。しかしはるかに現実的な考え方だ。

Accentureではこの目標に向けて具体的に3つの課題を追求している。一つはビジネス・プロセスを知的、効率的なものにすることだ。 次に、これを実現するために、人間がコンピューターのデータ処理能力を最大限に活かせるような新しいインターフェイスを開発している(おそらくスマート・グラスのような新しいデバイスの利用が含まれるだろう)。最後に、何十年も前からビジネスにおける大きな課題であった構造を持たないデータを利用できるようにする方法を探っている。

ただしこうした努力はいわゆる知識労働者だけに関係するのではないとDaughertyは言う。AIは工場にも直接影響を与える。Accentureでは製造業のクライアントのためにAIと拡張現実ヘッドセットを組み合わせ、熟練労働者に新しい作業を学習させる方法を開発中だ。作業員はヘッドセットを通じて作業の細かい部分について適切な指示を受け取る。これによって新しい作業を学ぶスピードが非常に速くなる。作業員もこの方法を快適だとして好むことがわかった。同時に会社側も作業員に多様な業務を実施させつつ訓練教育のコストを大幅に削減できるとが判明している。

セールス業務が改善される

セールス業務は今年に入ってAIの大規模な適用が始まった分野だ。Salesforceのセールス・ツールを始め、Oracle、SugarCRM、Base等々がその例だ。セールス・チームは個々のセールス要員の業務に影響を与える可能性のある要素をすべて把握することは不可能だ。そこでこの部分を助けるためにコンピューターの出番となる。

優秀なセールスパーソンはコミュニケーションの才能に恵まれており、成約に結びつけるためにどういう駆け引きが必要かもよく知っている。しかし、SugarCRMSugarの最高プロダクト責任者、Rich Greenによれば「.いかに優秀なセールス要員であっても、成約を妨害する可能性のある無数のネガティブな要素については知識を欠いていることが多い」という。

そこでAIが現在のセールスの進行状況と他のセールスの進行状況の関連、契約の成否に関係する可能性がある外部のニュース、客先からメールの調子その他を報告してくれる。コンピューターと優秀なCRM〔顧客管理〕ソフトウェアとはこうした情報を処理してセールス・チームに伝えることができる。現場のセールス担当者は客先の人間とのコミュニケーションに集中できるわけだ。

この点はSalesforceも今年早くから力を注いでおり、APプラットフォームのEinsteinのリリースもその一例だ。来年以降この種のソフトウェアはますますポピュラーになるだろう。

AIは定着し、拡大する

AIについて個人的にどういう印象を持っているにせよ、AIはほとんどあらゆるソフトウェアの進歩の原動力となるだろう。それがソフトウェアの進展の自然な道筋だ。ソフトウェアを賢くする方法があれば誰もが利用する。Daughertyは「この特性がAIの採用をクラウド・コンピューティングの採用より急速なものにする」と考えている。

クラウド・コンピューティングの場合、企業はオンプレミスのコンピューティング資源をクラウド・ベースに置き換えるという大きな決定をする必要がある。その分だけ意思決定に時間がかかる可能性がある。AIの場合、全体としては現状のままで、ソフトウェアの一部を将来に向けて置き換えていくことができる。AIはテクノロジーとしてははるか以前から開発され、実用化の機会を待っていた。今やコンピューターの処理能力の向上とビッグデータの蓄積が企業にAI化のシナリオを選択する絶好のチャンスを与えている。【略】

Featured Image: Devrimb/Getty Images

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

SpheroのBB-8ウェアラブルがIFTTTに対応。「フォース」でスマートホームを制御可能に

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SpheroのBB-8は、昨年の大作『フォースの覚醒』に便乗した商戦の中で最も記憶に残る商品だった。それは完璧なシナジーを形成していた ― ハードウェアスタートアップの優れたリモート制御テクノロジーを活かして、映画で最大の市場価値を持つキャストに命を吹き込んだ。

今年同社はさらに一歩進めて、商品ラインにForce Bandを追加した。愛らしいロボットをジェスチャーで制御できるウェアラブルで、映画の中のフォース・プッシュ/プルを真似ている。楽しい新製品だが、使うには少々コツがいる ― 単体で80ドルという価格も少し高い(本体とのセットは200ドル)。

時期もふさわしくブラックフライデーの週に、SpheroはIFTTT (If This Then That) に対応してForce Bandの能力を新たなレベルに引き上げた。これでウェアラブルユーザーは、あらゆるものをリストバンドで制御できるようになった。ユーザーはコマンドを作成してスマートホームの機能をプッシュ、プル、あるいはストップで操作できる。見よ、ジェダイコーヒーメーカーを。

Spheroの公式ページには作成済み機能がいくつか用意されている ― Philip Hue等のスマート照明の制御は当然ある。そして、ツイートやSlackの投稿をフォース・プルしたり、音楽をフォース・ストップしたくない人などいるだろうか? おそらく胸を張って役に立つ、と言うより楽しいと言うべきだろうが、まだフォースがかなり強いことを感じさせてくれる。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

料理動画の分散型メディア「KURASHIRU」、運営元のdelyが約5億円の資金調達

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料理レシピの動画を配信する分散型メディア「KURASHIRU」を展開するdely。同社は11月28日、YJキャピタル、gumi ventures、ユナイテッドおよび個人投資家(フリークアウト取締役COOの佐藤裕介氏ともう1人)から合計約5億円の資金調達を実施した。資金はKURASHIRUのマーケティングおよび運営、開発メンバー増強に充てるとしている。

一時はスタッフが全員会社を去る事態に

delyの創業は2014年2月。当初はフードデリバリーサービスを展開していたが、2015年に入って、女性向けのキュレーションメディア運営に事業をピボットした。2016年初からは動画コンテンツに注力。料理や美容、ライフスタイルなどの領域で動画コンテンツを制作していたが、2016年春をめどに料理動画にコンテンツを集中。キュレーションメディア時代からの名称である「KURASHIRU」として、FacebookやInstagramなどのソーシャルメディアのほか、自社アプリで月間1000本ほどの動画コンテンツを配信している。ユーザーは24歳から35歳が中心。女性比率は92%だという。

メディア事業へのピボット時には、共同創業者を除く全員が会社を去るような状況にもなったというdelyだが、現在は約60人のスタッフが在席。そのうち約40人が料理動画の制作や編集に関わっている状況だという。「(調理している)スタッフはみんなユーザーから採用している。現状、自分たちの持っている媒体で募集をかけると100人ほど応募が来る状況」(dely代表取締役の堀江裕介氏)

Instagramと自社アプリが再生回数をけん引

delyは5月にシリーズAの資金調達と月間再生本数1億回という数字を発表している。この数字自体は、当時展開していた美容やライフスタイルなど別の領域の動画の本数も合算しているため、現在の月間再生本数はこれを下回るそうだが「数字は増えている。Facebookは数字が余り伸びていないが、Instagramは1本で14〜15万回再生されるなど数字が凄く伸びている」(堀江氏)

また、もともとは分散型で自社メディアを持たないことで起こるリスクを低減させようと始めた自社アプリのダウンロード、動画再生も好調だという。

アプリは現在(11月28日9時時点)App Storeの総合ランキングで9位。InstagramやAbemaTV、メルカリなどよりも上位にランクしている状況だ。「広告も出しているが、オーガニックでのダウンロードの割合が高い。僕らは超貧乏なスタートアップ。お金がないなら工夫するしかなかった。だからお金で買えない数字を伸ばそうと目指した結果が出てきた」(堀江氏)。例えばInstagramにアップした動画からアプリのダウンロードをどう促すかといった、細かなグロース施策が奏功しているのだという。アプリは今後1年で1000万ダウンロードを目指す。

動画ネイティブ広告も順調

クライアントの商品を使ったレシピを紹介するような動画ネイティブ広告の案件も増加しているという。「最初は確かに苦戦したし、不安だった。キュレーションメディア(のネイティブ広告)でも苦労したが、そもそも『このメディア(分散型の動画メディア)とは何だ』という説明からしなければいけなかった。そのため動画についての講演も各地でやってきた。だが競合(の分散型動画サービス)も含めて競って市場を広げてくれたおかげでマネタイズもそんなに困っておらず、黒字にしようと思えばできる状況。(1つの案件も)シーズンで数千万円、年間で億単位にもなる状況」(堀江氏)

ネイティブ動画広告において同社が重要視するのは再生完了率だ。堀江氏は一般的な分散型動画の動画広告の再生完了率が約3割なのに対して、KURASHIRUは5〜7割と高いと語る。「コスメやライフスタイル系の動画だとどうしても宣伝臭が出がちだが、料理だと普通のコンテンツと変わらない。僕らもPRのために以前には総再生回数を出していたが、再生数でなく再生完了数(が大事)。ポジショントークと思われるかも知れないが、言い続けないといけない」(堀江氏)。さらに、他ジャンルに比べてクリエイティブのチェックにかかる時間が少ないため、ディレクター1人単位で担当できる案件も増え、結果的に利益率の高さにも繋がるとも語った。

大きなビジョンと、それを裏打ちする成長があると語る堀江氏。だが競合を見てみれば動画領域では元LINE元代表取締役社長・森川亮氏のC Channelやグリー元取締役の吉田大成氏のエブリー、さらに料理領域ではお家騒動こそあれど月間6000万ユーザーを誇るクックパッドなど、ビッグネームが並んでいる状態。堀江氏は周辺環境についてこう語った。

「前回の事業(フードデリバリー)で失敗したことで完全に振り切れて、また今は事業が伸びたから色んな壁が見えてきた。競合がある種の『レジェンド』ばかりで、普通に戦ったら学生起業家(筆者注:堀江氏は創業当時学生だった)では勝てない。どう勝つかを考えたら僕自身が成長するしかない。経験では劣っているが他の面で勝負する。僕らのビジョンにあるのは『Make Future make history』という言葉。ナンバーワンじゃないと歴史に残らないので、今の状況は超おいしいチャンスでもある」

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dely代表取締役の堀江裕介氏

宇宙探索ゲーム「No Man’s Sky」の最新アップデートはベースビルディングの基礎を固める

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SFの世界をさまようゲーム、No Man’s Skyは一部のプレーヤーからかなりネガティブな評価を受けている。発売前の宣伝と騒動で過剰にほめられるばかりで、本来のゲームプレイを提供していないというのだ。私は、このゲームを心底気に入っているのだが、それはこのゲームが発表されて以来、メーカーのHello Gamesが言ってきた約束にあまり注目していなかったためかもしれない。

No Man’s Skyのコンソールゲームに対するユニークなアプローチを好きな人も嫌いな人も、Helloの金曜日の発表(via Engadget)は歓迎するだろう。今週公開されるHelloが言うところの「ファウンデーション・アップデート」では、ベースビルディングのための基礎が導入され、詳細なパッチ情報も提供される。

このファウンデーション・アップデートは9週間かけて開発したとHelloは言っているが、直ちにゲーム体験が変わることを期待してはいけない。開発者はこれを「何かの始まり」と呼んでおり、全く新しいプレイ方法が完全な形で提供されるのではないと説明している。

Hello Gamesはこの機会にゲームへのネガティブな反応についても言及し、自社のタイトルを巡る「真剣かつドラマチック」な議論はフォローしているが、議論に加わるよりゲームの改善に集中したいと語った。

繰り返しになるが、私はこのゲームが気に入っていて買ったことを後悔していない。ゲームプレイの大がかりなアップデートは、広大なバーチャル世界へ私を引き戻してくれるので大歓迎だ。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

ブラックフライデーのオンラインセールスが30億ドルを突破、そのうちの10億ドルはモバイルから

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ブラックフライデー(11月の第4金曜日、小売店で大規模なセールが行われる)のオンラインショッピングは成長を続けていて、今週の金曜日には更に記録が破られた。ホリディセールスを通してe-コマース取引を追跡してきたAdobeから、今夜届いた新しいレポートによれば、ブラックフライデーは初めて30億ドルを突破する新記録を達成した模様だ。また米国の小売史上、モバイルセールスが初めて10億ドルを超えた事も期待されている。

当日の終わりまでに期待されると推定された金額は30億5千万ドルであり、昨年同日に比べて11.4パーセントの増加であるとAdobeは発表している。

【2016/11/26更新:Adobeの最終的な数字は推定を上回り33億4000万ドルとなった – 前年比21.6パーセントの成長である。モバイルは12億ドルで、昨年から33パーセント増】

感謝祭の日とブラックフライデーの日に、モバイルがeコマースセールの売上に大きな影響を与えていることは、早い段階から明らかだった。Amazon、Walmart、Target、そしてeBayのような主要な小売業者は、モバイルトラフィックと売上が増加傾向にあったことを指摘した。例えば、Amazonは感謝祭の日のモバイル注文は、昨年のサイバーマンデー(11月の第4木曜日である感謝祭の次の月曜日、大規模なオンラインセールが始まることが多い)を上回ったと報告している一方、Walmartは感謝祭のウェブトラフィックの70パーセント以上がモバイルであったと発表している。またTargetは感謝祭の日の売上の60パーセントがモバイルデバイスからであったと述べている。

この傾向はブラックフライデー当日(今年は感謝祭の翌日)になっても続き、セールスイベントは現在は11億3000万ドルの収益となっていて、これは昨年比25パーセントの増加である。例えばWalmartはWalmart.comにおけるブラックフライデー当日の注文の60パーセントはモバイルから来ていると述べている。

モバイルは金曜に小売サイトを訪れたものの多数派を占めていて、その数は56パーセントだったと、Adobeは指摘している。その内訳の大部分(47%)はスマートフォンからであり、タブレット(9%)からのアクセスとは対照的だった。

さらに、モバイルの売上も40パーセントを占め、スマートフォンが29パーセント、タブレットが11パーセントという内訳になっている。東部標準時間で午後3時までには、オンラインセールスに占めるモバイルアカウントの売上は6億8000万ドルに達している。

興味深いことは、しかし、スマートフォンはタブレットやデスクトップほどのコンバージョン(実際の売上)を達成していないことだ。コンバージョンは全体的には上昇したが、スマートフォンは1.9パーセントであり、これに比べてタブレットは3.7パーセント、そしてデスクトップは4パーセントであった。比較のために挙げておくと、ホリディシーズンの平均値はスマートフォン、タブレット、デスクトップがそれぞれ1.3パーセント、2.9パーセント、および3.2パーセントである。

また、iOSがAndroidよりも大きく販売を促進している傾向は続いた。iOSデバイス上の平均注文額は144ドルで、対してAndroid上では136ドルであった。

もちろんAdobeの予想である合計30億ドルのオンラインセールスと10億ドル超えのモバイルセールという予想は、今夜最終的に〆てみるまでは正しいものかどうかはわからない【その後正しかったことが判明した、上の更新を参照】。しかし、Adobeのサンプルは、その数字がかなり近いものであると判断するのに十分な大きさである。そのレポートは、小売ウェブサイトへの220億回の訪問からの集計データに基づいていて、米国のトップ100小売業者のすべてのオンライン取引の80パーセントを含んでいる。

Adobeはまた、今年最も売れた電気製品は、AppleのiPad、サムスンの4Kテレビ、AppleのMacbook Air、LGのテレビ、そしてMicrosoftのXboxだったと述べている。

昨日の感謝祭の19億3000万ドルのオンラインセールスに加えて、2日間の合計は50億ドルに迫るものと期待されている。売れ筋のおもちゃには、レゴクリエイターセット、Razorの電動スクーター、ナーフ銃、DJIファントムドローン、そしてバービードリームハウスなどが含まれる。

こうした記録にも関わらず、e-コマース業界自体は、選挙後の低迷からいまだに回復している途上である。

「選挙後に私たちが経験したネガティブインパクトからはまだ完全に回復はしていませんが、消費者たちはオンラインに戻って買い物をしています」そのような声明を出したのはAdobe Digital Insightsの主席アナリスト兼ディレクターのTamara Gaffneyだ。「ブラックフライデーにおける消費の増加に伴って、元のレベルへ戻りつつあります。さらに私たちは、次のサイバーマンデー(11月28日)が今回のブラックフライデーを上回って、史上最高のオンラインセールである33億6000万ドルを達成することを期待しています」。

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(翻訳:Sako)

これからのUI:耳か、手か、あるいは目か

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【編集部注】著者のMichael EisenbergはAlephのパートナーである。

スマートウォッチが出て来る前でさえ、私は時計を着用していなかった。そのクールな要素にも関わらず、私はApple WatchもPebbleも買わなかった。iPhoneに関しては新機種が出て出荷が安定すると、すぐに機種変更をしている私なのにも関わらず。

腕時計を腕にしたときの感覚が好きになれない;いやそもそも私は腕時計の価値というものが分からないのだ。私の息子のように陸軍(G-Shockが推奨時計になっている)に属しているのでなければ、そこらじゅうの壁の上に時計がある(それはずっと昔からのことだ)。そして誰のポケットにも時間と日付を教えてくれる携帯電話が収まっている。

言うまでもなく、スマートウォッチ売上高の減少についての下のグラフは、私にとっては驚くことではない。

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革新的な新しいデバイスが普及しプラットフォームになるためには、これまでとは違う私たちの身体の部位もしくは感覚を活用する、新しいユーザーインターフェイスを開拓する必要があるのだろうと思う。

実際PCは、GUIとマウスを使うことで普及した。マウスとGUI以前の、Commodore 64のようなコンピューターを覚えているならば、コンピューターを実際に所有し利用する人は、ほんの一握りしかいなかったことを覚えているだろう。マウスが私の手を活用できるようにして、PCが普及したのだ。

次のプラットフォームだったスマートフォンは、タッチスクリーンを大々的に開拓した。指を使ったスワイプと、手を専有するマウスでは、体験も利便性にも大きな違いがある。これは新しい体験を可能にし、常にオンでかつ常に自分専用であるスマートフォンの性質が、次世代のプラットフォームを生み出した。

技術のそれぞれの新しいレベルや時代が、人間の地理的自由も拡大する。

AppleのiPodとそのクリックホイールは、指が別の部位でありマウスとは根本的に異なるUIであることを最初に示したものだ。タッチスクリーンはその技術革新の上に構築された。これに比べてみると、スマートウォッチも同じ指タッチ式スクリーンのインターフェースを備えている。これは、人間の新しい感覚をくすぐったり、異なる部位を使用するものではない。したがってそれは、新しいアプリケーションや、利用法や、最後にはプラットフォームを導き出す、十分な革新性を生み出さない。

さて、David Passig教授が(私よりも早く)指摘したように、考慮すべき別の次元が存在している — 技術のそれぞれの新しいレベルや時代が、人間の地理的自由も拡大するのだ。スマートフォンは確かにこれを実現した、今や私たちは外出先で全てを行うことができる;以前はインターネットが遠隔情報とサービスへのアクセスを通して同じことを実現していた;そしてそれ以前にはPCが地理的自由を拡大していた、仕事を終わらせるのに学校や会社に残っていなければならない必要性から解放したのだ。

これらの2つの次元のフレームワーク(新しい身体部位の活用と地理的自由の拡大)を組み合わせたところが、この先数年にわたる投資を望む、次世代のテクノロジーならびにコンピューティングとアプリケーションの分野だ。この先、情報革命の次世代のプラットフォームになろうと競い合う、2つのプラットフォームを見る際には、このフレームワークが有用だろうと考えている。

FacebookはOculusを買収した、基本的にはVRがコンピューティングのための次のプラットフォームになることに賭けたからだ。VRは確かに「視覚」という人間の他の感覚を活用している。それは異なるユーザインターフェイスを使っている、私の眼球とヘッドセット(おそらく私が見ているものを解釈する脳も)だ。しかし、私は今のところ(予見可能な将来も含めて)VRは2番目のテストに失敗していると思っている。それは人間の地理的自由を拡大するものではない。むしろ実際にはそれは制約をする方だ。これは実際にはある地点に留まっての経験であり、私の地理的自由を仮想的に拡大してくれているだけなのだ。仮想的自由は逃避である — それは実際の地理的自由ではない。

とはいえ、そのことは私たちに、どこに真の機会があるのかを指し示していると思っている:それは私のだ、そしてその延長線上の私の口だ。私はAmazonとAppleは、それぞれAlexaと無線AirPodsで、良いところに気が付いたのではないかと思っている。スマートフォンのタッチインターフェイス革命を生み出したAppleは、Bluetooth、センサー、無線チップ、そしてその他のスマートフォン・コンピューティングの基本に詰め込むことができることに気が付いた。Fireシリーズがあまりうまく行っていないAmazonは、世代を跳び越えて音声に移行することを決めた。

興味深いことに、Appleがそこ(音声)に辿り着くためにデバイスを手から耳に移動させている(と私が思っている)一方で、Amazonがそこに進んだ理由は、いまや買い物は常時オンの体験で、何か必要なものを発見したならば、即座にAlexaに対して私の口を使って命令させようとしているからだ(と私は思っている)。こうしてAlexaは、人間が冷蔵庫を埋めようと買い物をしている最中に口を使う際の仮想の役割を果たし、Appleは私のを解放するために私の人間のを使い、私の音を出す口を補助に使う。

AppleもAmazonも、どちらの方向から革新に近付くにせよ、どちらも他の部位をつかっている:私のだ。そして、コマンドまたはインタフェースとして音声を使用することにより、近接または長距離で、私たちは人間の自由に対して意味のある、また別の拡張を行うことができる。特に、それがハンズフリーインタフェースでもあるという事実を考えたときには。

を解放することによって、私たちにはまだ想像できない方法で、声、音、そして自由なを使うイノベーションを可能にできる。もしティーンエージャーのから携帯電話を取り上げたなら、人間の創意工夫をどれほど前に進めることができるかを想像して欲しい。

興味深いことに、音声についての同じ認識が、GoogleのPixel携帯電話の開発を導いているものと思われる。Googleが追っているのは実は携帯電話ではなく、音声駆動アシスタントの利用の推進、改善、そして拡大なのだ。私たちは複数の情報源から、今やInbox(Googleの開発した共同作業用メールアプリケーション)の返信の25パーセントはスマートリプライである話というを聞いたが、それは驚くべきことだ。これは、Googleが未来のインターフェイスのソフトウェアおよびネットワークレイヤーで優位に地位に立つことを確実にしようとする動きに合致する。それは、彼らの見解では、それは明らかに音声だ。

私は、音声および音声アプリケーションだけでなく、耳を使ったワイヤレスコンピューティングについてもとても期待している。私はそこには別の利点もあると考えている。の中の小さな画面から私たちを解放することで、現在の曲がったホモサピエンスの頭を、目の高さに戻すことになるだろう。そして、私たちはまたお互いに話し合うようになる — Alexaに対してだけではなく。

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(翻訳:Sako)

古いおんぼろ車でも簡単に多機能なインターネット接続カーになるDashbot、安価なオープンハードウェアとして登場

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今とてもクールな車を持ってるのに、誰がスマートカーなんか必要とするの? Dashbotは49ドルの車載用アクセサリで、運転中にスマートフォンやAlexaでインターネットと対話できる。手が空くから、髪をポマードで塗り固めた悪党をやっつけたり、頭上でヘリコプターが爆発する前に罪なき人びとを救える*。この製品はBluetoothスピーカー+αで、αの部分にたくさんの機能がつまっている。Alexa専用デバイスと入れ替えれば、あなたのスマートフォンに手を触れずに容易に対話ができるようになる。〔*: 30年前の電脳カー、ナイトライダーのエピソード。〕

システムは車のライター(煙草用)とステレオのAuxジャックかBluetoothで接続する。スマートフォンを車に近づけるたびにインターネットに接続し、また、完全なコンピューターなのでワイヤレスのOBD-IIセンサーにアクセスして車のセンサーデータをリアルタイムで読む。

DashbotはコンピューターボードとしてC.H.I.P. Proを使っている。それは、Raspberry Pi的な、超小型シングルボードコンピューターだ。その上でLinuxが動き、すべてが完全にオープンソースなので自由なハッキングを楽しめる。

開発チームは曰く:

DashbotはC.H.I.P. Proを使っているから、ユーザーが新しい機能を教えることができる。使っているOSのGadget OSは、Linuxベースの高速ブート型オペレーティングシステムで、わが社の主軸製品だ。Next Thing Co.のそのほかの製品もすべてそうだが、Dashbotもオープンハードウェアであり、そのソフトウェアはオープンソースだ。そしてもちろん、DashbotはAPIを公開している。

 

実はDashbotのチームはC.H.I.P. Proをリリースしたチームと同じチームで、ハードウェアスタートアップのためのアクセラレータHAXの卒業生だ。Kickstarterの締め切りまでまだ20日あるが、すでに目標額を大きく超えている。古い車でもワンタッチでスマート(電脳)になるから、きっと楽しい製品だろう、とぼくは思う。

 

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

Xbox Oneのゲームが12月12日からOculus Riftへストリーミングされ、VR擬似体験を提供

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Oculus Riftを持ってる人は12月12日から、Xobx OneのゲームをVRヘッドセットへストリーミングできるようになり、没入的なプレイを楽しめる。そもそも今やOculusとMicrosoftは深い仲で、Oculus Riftを買えばXbox Oneのコントローラがついてくるぐらいだから、こうなるのも不思議ではない。つまりRiftがあって、それをWindows 10のPCで駆動しているゲーマーは、Xbox Oneがあればただちに、そのゲームを仮想現実でプレイできるのだ。

PCで駆動するVRヘッドセットを持ってなくても、Windowsのデスクトップソフトウェアや、Netflixのようなビデオ、あるいはそのほかの2Dの平板なメディアを、仮想現実的に体験できる。Xbox Oneのストリーミングは、大画面でゲームを楽しむような擬似体験を与え、その仮想環境には“Citadel”、“Retreat”、 “Dome”の三種類がある。すべてがうまくいけば、Xbox Oneのゲームを巨大で高品質な画面でプレイでき、しかも、ディスプレイからの距離感をユーザーがお好みに設定できる。

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PlayStation VRには仮想現実アクセサリがあるので、同じことをPS4のゲームで体験できる。OculusではヘッドセットとXbox Oneゲーム機のほかに、強力なゲーム用PCが要る。でもたぶん、RiftのオーナーでXbox Oneのゲーマーでもある人は、かなり多いと思われる。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

Xiaomiはハードウェアの販売から利益を得ていない

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Xiaomiのビジネスモデルはハードウェアの販売によって成り立っているものではない。販売したハードウェアが後に生み出すサービス収益こそが彼らの収入源となる。Reutersとのインタビューでこう語るのは、Xiaomiでグローバル部門VPを務め、過去にはAndroid部門のVPも務めたHugo Barraだ。このデバイスメーカーで幹部を務める彼は、中国市場でXiaomi製スマートフォンの売上が落ちていることに対し、この売上高の下落によって同社の長期的な収益モデルが脅かされることはないと答えている。

Barraによれば、Xiaomiは「100億台のスマートフォンを売り上げることも可能だが、(同社は)そこから少しも利益を得ていない」という。さらに、Xiomiは事実上スマートフォンを顧客に無料でプレゼントしているようなもので、そこからは「まったく利益を得ていない」と彼は加える。なぜなら、同社はハードウェアの販売によってすぐに得られるマージンではなく、「その後に何年間も継続して得ることができる収益を狙っている」からだ。

また、Xiaomiはスマートホーム・デバイスなどの他カテゴリーの販売にフォーカスしつつあるだけでなく、Barraが言うように、その後のソフトウェアやサービスの提供から収益を獲得することにも注力しつつある。かつては同社の強みとされていたスマートフォンの全世界販売数は、昨年には12%下落している。IDCの市場予測によれば、中国市場におけるXiaomi製スマートフォンの売上台数はQ3で45%下落するだろうとのことだ。

ReuterとのインタビューでBarraは、XiaomiにはIPOや非公開市場での資金調達は必要ないと話し、同社にとって初参加となる次のCESで新製品を発表できることを楽しみにしていると語っている。

当初、Xiaomiは特に中国市場におけるAppleの対抗馬として見られていたが、Barraの話を聞いてみると、同社のアプローチはApple流ではなくAmazon流のハードウェア戦略に近いようだ。ただ、ハードウェア販売台数の減少は、長期的にはサービス収益にも悪影響を与えるだろう。ハードウェアなければ、そこから得られるサービス収益もなくなる。そこでBarraとXiaomiは、他カテゴリーのデバイスや既存の顧客基盤がスマートフォン事業の悪いパフォーマンスを補ってくれることに期待しているのだろう

[原文]

(翻訳: 木村 拓哉 /Website /Facebook /Twitter

糖尿病患者の健康状態を常時チェックして警報をスマホに送るSiren Careの“スマートソックス”

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糖尿病の健康チェックサービスSiren Careが、糖尿病患者が温度センサーで炎症や傷害を、リアルタイムで検出する、スマートソックス(靴下)を作った。

協同ファウンダーのRan Maは、ノースウェスタン大学にいるときに傷めた背中の皮膚を回復するため、バイオマスを育てていたとき、糖尿病患者の足の処置について勉強を始め、怪我を調べたり防ぐためにウェアラブルを作ることを思いついた。

糖尿病患者はタイプ1の人も2の人も足に問題を抱えることが多く、とくに、足がむくみがちである。それは放置すると、感染症や足の切断手術など深刻な事態になることもある。重大な合併症を防ぐためには早期発見がきわめて重要であり、そこでMaと彼女に協力する協同ファウンダーVeronica Tranは、衣服などへのセンサーの内蔵が鍵だ、と考えた。

しかし糖尿病患者の足の傷害を見つけるウェアラブルは、Sirenのソックスが初めてではない。SurroSense Rxは糖尿病患者のための靴の中敷きで、Tillges TechnologiesのPressureGuardianは、問題を検出するよう設計されたブーツだ。

でもブーツは扱いが面倒だが、Sirenのソックスは靴の中敷きよりも皮膚によく密着する。センサーはソックスの生地に織り込まれていて、炎症があるとそれを検出する。その情報はユーザーのスマートフォンにアップロードされ、問題を警報する。

ソックスが異常な高熱を検出すると、そのデータはソックスとアプリとクラウドに保存される。それは足に傷害があるというサインなので、足を調べろという警報がユーザーに送られる。

“靴紐と同じぐらい、単純でふだんは気にならない存在だけど、傷害があればそれを知らせてくれる”、とMaは語る。

ウェアラブルだけど、ソックスを充電する必要はない。最初から電池内蔵で、それは6か月もつ。またその電気が消費されるのは、実際にそれを履いているときだけだ。寝るときなどに脱げば、ソックスも寝てしまう。洗濯機で洗えるし、丈夫だから少なくとも6か月は使える。

Maは曰く、“わが社のSmart Textile(電脳織物)技術は、さまざまなセンサーや電子回路を織り込める。湿度センサー、圧力センサー、光センサー、LED、RFID、MCU、BLEなどなど、何でもシームレスに布地と一体化する”。糖尿病患者のための炎症検出ソックスは、同社のこんな大きな技術の、ひとつの利用例だ。夢はもっと大きい。

炎症や傷害の検出だけでも、ほかにさまざまな体の部位があるから、製品開発の幅は広い。

Sirenは500 startupsのバッチ18から巣立ち、ソックスは来春発売する。予約は、ここで受け付けている。週の各曜日用、という考え方で、7足がワンセットだ。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

アメリカ緑の党のJill Steinがウィスコンシン州の大統領選で票の数え直しを請願

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Green Partyの大統領候補Jill Steinと、Independent Partyの候補Rocky De La Fuenteがウィスコンシン州で、投票の集計のやり直しを求める請願を提出した。その前にSteinは、クラウドファンディングサイトNationBuilder.comで、“正しい選挙”を実現させるために、520万ドルあまりの資金を獲得した。

Steinのクラウドファンディングキャンペーンが寄付を集めたのは、法律とサイバーセキュリティの専門家たちのグループが、ウィスコンシン州など三つの州の投票結果に対して疑念を提示したあとのことだ。専門家グループは、結果はハックされたか、または操作されていたかもしれない、と示唆した。

そのグループには、弁護士のJohn Bonifazと、ミシガン大学コンピューターセキュリティセンター(Center for Computer Security and Society)のディレクターJ. Alex Haldermanがいる、とNew York Magazineが報じている

ウィスコンシン州選挙管理委員会の公式Twitterアカウントは、金曜日(米国時間11/24)の東部時間午後5時前に請願受け取った、と確認している。

Steinからまだコメントは得られていないが、彼女はGreen Partyを代表して、ウィスコンシン州のあと、他の二つの州、ペンシルベニアとミシガンでも集計やり直しを求めたい、と言っている。

[選挙管理委員会、請願受け取り確認]

Trumpはこの三つの州すべてで、僅差で勝った。国の選挙結果への異議が認められるためには、ほかのすべての州で票の集計が正しく、ウィスコンシン、ペンシルベニア、ミシガンの三州の再集計でHillary Clintonの当選が実証されなければならない。

これまでの集計では、TrumpはClintonに、ペンシルベニアでは70010票、ミシガンでは10704票、ウィスコンシンでは27257票、上回っている。

ウィスコンシンは、12月13日の締め切りに間に合うように再集計を完了しないと、その投票は無になる。それが国のセーフハーバー法の規定だ。

もちろんアメリカの選挙は一般投票の総投票数では決まらず、選挙人団(Electoral College)というもので決まる。彼らは州ごとの結果に基づいて、12月19日に最終投票を行う。

Hillary Clintonは再集計について公的声明や、その要求を行っていない。

Jill Steinの計画では、FacebookのLive Q&Aで再集計キャンペーンに関する質問に答えるつもりだ。ただしそのイベントの時間は、まだ決まっていない。

(こんなドラマを見ると、国が、選挙後の投票の監査と再集計を選挙運用の標準手続きになぜしないのか、と疑問に思う。)

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))