Slackがロシア国内のアカウント停止措置を開始、親会社Salesforceの対応に追従

Slackがロシア国内のアカウント停止措置を開始、親会社Salesforceの対応に追従

Oscar Wong via Getty Images

業務用コミュニケーションツールのSlackが、ロシア国内のアカウントを停止する措置を開始しました。Slackの親会社であるSalesforceはすでにロシアからの撤退を表明しており、これに準じた対応と考えられます。

ニュースサイトAxiosによると、Slackのアカウント停止は主に米国からの制裁対象になった会社や組織を対象に予告なく行われており、一切のデータのダウンロードやバックアップの機会も与えられなかったとのこと。

Slackは数多くの企業に浸透しており、社内におけるコミュニケーションやファイルのやりとりなど、利用する企業にとって重要なデータを多く取り込んでいます。そのためバックアップ手段を講じていない状態で突然利用できなくなった場合、業務への影響は非常に大きなものとなりそうです。

SlackはAxiosに対し「われわれは、事業を展開する他の国々における米国の制裁規制を遵守することを法律で義務付けられており、状況によっては事前通知なしにアカウントを即時停止するなどの行動を起こすことが求められている」と述べました。そして「法律で許可されている場合には、これらのアクションの影響を受ける顧客と連絡を取っている」とコメントしています。

なお、Slackとしては遮断した企業のアカウントのデータを削除はしていないものの、制裁によって遮断された組織はそれが解除復旧されるまではデータにアクセスすることもできません。

ちなみにSalesforceは、撤退は先週から開始しているものの、ロシア国内の顧客はごく少数であり「ロシアには重要な事業はない」と述べています

(Source:AxiosEngadget日本版より転載)

新型コロナの復活と米国の規制で身動きがとれなくなった中国のテクノロジー企業

中国のテクノロジー企業の多くにとって、2022年の展望はあまりよろしくない。過去1年で独占禁止関連やアルゴリズムの利用に対する制限など、サイバースペースには多くの新しい規制が導入され、インターネット企業は大小を問わずビジネスモデルと収益化方法の再編を強いられて、投資家の信頼も失った。

2022年の当初に登場した新たなチャレンジが、早くも投資家の弱気を誘っている。香港に上場している中国企業のインデックスHang Seng China Enterprises Indexは、米国時間3月14日に7.2%下げ、2008年11月以来の最大の下げとなった。Meituan、Alibaba、Tencent、Pinduoduoなどテクノロジー大手の株価は、先週にかけて落ち込んでいる。

投資家のパニックを引き起こしているマクロなリスクの1つは、中国における新型コロナウイルス(COVID-19)の復活だ。ここ数日で1日の感染者数は数千人を記録し、世界のその他の地域に比べるとそれほどでもないが過去2年間では最悪だ。

製造業の大型拠点でDJIやTencent、Huaweiなどテクノロジー大手の本社のある深圳は、1週間の全市ロックダウンに入った。iPhone組み立ての大手Foxconnは、この人口2000万の中国南部の都市における生産を休止した

長春での大発生が、中国の自動車のサプライチェーンを破壊した。中国北東部の吉林省にある同都市は、国有の自動車メーカーFAW Groupの本社があり、それは中国におけるVolkswagenとToyotaの合弁事業のパートナーだ。この都市でVolkswagenとToyotaの両社は、自動車工場の生産を停止した

新型コロナウイルスの新しい波は、Teslaのギガファクトリーのある上海を襲ったが、同市のビジネス活動はまだ健在だ。

業界は在宅勤務への備えができているため、ロックダウンは平気なのかもしれない。しかしそれでも、中国のテクノロジー株の多くが最近1年ぶりで下げたのは、米国の規制と厳しい検査が再来したせいかもしれない。

先週、米国の証券取引委員会(SEC)は、中国企業5社の名を挙げて、米国市場から下ろすと告げた。その行為は、外国の企業は外国政府によってコントロールされていないことを示す監査情報を提示すべきとする、トランプ時代の法律に根拠がある。

中国企業の米国預託証券(American depositary receipts、ADR)は厳しい板挟みに遭っている。ワシントンは米国に上場している外国企業の帳票の開示を求め、中国は監査会社が文書を海外に渡すことを禁じている。これはかなり前から、米国と中国の金融規制当局にとって難問だった。

北京は2021年また、データ企業がアウトバウンドで送ってもよいものをより厳しく制限し、米国で急いでIPOしようとした中国のライドシェア大手Didiを規制で取り締まろうとした

上場を外されるリスクと中国と米国の間の地政学的な緊張が気になる多くの中国企業、すなわちAlibabaやJD.com、NetEaseなどの大手も含む企業は、香港でに二次上場を目指した。SECが先週明らかに、中国の5つのADRを挙名したことは投資家の懸念を再燃させ、さらに多くの中国企業が別の市場の模索とそこへの上場を急ぐだろう。

画像クレジット:masterSergeant/Getty Images

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(文:Rita Liao、翻訳:Hiroshi Iwatani)

電力会社のメーターをスマート化するCopper Labsが6.5億円調達

電力会社は問題を抱えている。電力会社の「スマートグリッド」は10年前の請求問題を解決するために作られたもので、電気自動車、ソーラーパネル、そしてリアルタイムデータへのこだわりを持つ2022年の消費者のニーズや期待に応えるためのものではないからだ。この問題を解決すべく、処理能力の低いスマートメーターと消費者のインターネット接続の間を橋渡しする、エレガントで小さなハードウェアデバイスを展開するCopper Labs(コッパーラボ)が550万ドル(約6億5000万円)を調達した。

「問題は、現在最も洗練されたSmart Grid(スマートグリッド)でさえ、昨日起こったことを15分間隔でしか電力会社に伝えられないことです」とCopper LabsのCEOであるDan Forman(ダン・フォーマン)氏はいう。「多くの電力会社は、30日に1回しかそのデータを取得できません。電力だけでなく、ガスや水道の場合も、30日に1回しかデータにアクセスできないところがほとんどです。送電網のディスラプションのペースは、技術革新のペースに見合っていません。当社は、電力会社が必要なソリューションを提供するために、より費用対効果の高い方法を見つける手助けをしています」。

Copper Labsは、アーリーステージの気候に特化した技術革新に資金を提供するベンチャーキャピタルClean Energy Ventures (CEV)がリードしたラウンドで550万ドルを調達した。同ラウンドには既存投資家のNational Grid PartnersBlue Bear Capitalも参加した。新たに調達した資金により、Copper Labsは2023年にかけて営業、エンジニアリング、マーケティングの各チームを増強し、公益事業全域での浸透を加速させる計画だ。今回の資金調達に加え、同社はClean Energy Venturesのベンチャーパートナーで米連邦エネルギー規制委員会の元コミッショナーのNora Mead Brownell(ノラ・ミード・ブロウネル)氏を取締役に迎える。

ブラウネル氏は「Copper Labsのチームは、電力会社が逼迫し限られた資源で将来を計画し、目的に合った供給システムを再構築できるよう支援することを使命としています」と述べた。「このチームが顧客に力を与え、より持続可能な未来のために急速に変化する外部性に適応している成熟した産業と提携するのをサポートすることを楽しみにしています」。

Copper Labsは基本的に、電力会社がこれまでアクセスできなかったデータの宝庫を解き放つ。リアルタイムデータが行動の変化の潜在的推進力となる世界では、特に重要なことだ。例えば、11日前のピーク時にTesla(テスラ)車両を充電していたと消費者に伝えても、その時点ではエンドユーザーはなぜ車を接続したのか思い出すことができず、意味がない。充電時点で、電気代や環境に対するダメージはすでに終わっている。

「これまで家庭用の需要管理プログラムは、主にスマートサーモスタットに接続し、ピーク時の負荷を軽減することを目的としていました。そうすることで、電力会社は高価で汚れたガスで稼働する尖頭負荷発電所(電力需要が急激に高まったピーク時にだけ運転する発電所)への依存を減らすことができます。しかし、スマートサーモスタットが設置されているのは米国の家庭の20%未満であり、そのうちの半数程度がこうした制御プログラムに申し込んでいるのが現状です」とフォーマン氏は説明する。「スマートサーモスタットは例えばEVの充電器など、今後発生するであろう他の問題をすべてカバーできるわけではありません。グリッドエッジのリアルタイムな情報だけでなく、ターゲットとなるユーザーを引き込むチャンネルが必要です。例えば、ピーク時に誰がEV充電器を使っているかがわかれば、電力会社にとっては価値の高い情報です。そして、その人をターゲットにして、負荷を抑えるインセンティブを与えることができます」。

Copper Labsのモバイルアプリは、住宅所有者に電力消費の最新情報を提供し、電力・水・ガスを節約するための実行可能な洞察とインセンティブを提供する(画像クレジット:Copper Labs)

既存のスマートメーターをインターネットに接続する家庭内ブリッジや、数十軒から数千軒の住宅に対応する近隣規模のソリューションなど、いくつかのソリューションがある。

「スマートグリッドのメーターには、ZigBeeホームエリアネットワークが内蔵されているものがあります。当社は安全なハンドシェイクを行い、翌日まで待つことなく約30秒間隔でデータを取り戻すことができます。設置するには、電力会社から郵送でデバイスが送られてきます。Copperのモバイルアプリをインストールし、すべてを接続します」とフォーマン氏は説明する。「これを壁に差し込むだけで、すべてをワイヤレスで行えます」。

近隣型ソリューションも同様で、有線または既存の無線ネットワークによる独自のインターネット接続が必要だ。電柱に設置し、より多くの家庭にサービスを提供することができる。

「当社の近隣レベルの装置では、1台の装置で数百軒の家庭から約1分間隔のデータを取得します」とフォーマン氏は話す。「その価値は、明らかに家庭のハードウェアコストを劇的に削減することです。消費者に何もしてもらう必要はなく、専用のブロードバンドやワイヤレスネットワークがあるので、消費者のWi-Fiに頼る必要もありません」。

クールなのは、Copperのデバイスは、太陽光発電メーターを追跡し、どのような電気が発電されグリッドに供給されているかを示すこともできる点だ。分散型の屋根上の太陽光発電アレイを可視化できない電力会社にとって、これは特に強力な独自の視点だと同社は主張する。また、このアプリは異常検知、使用状況データ、さらなる洞察をも可能にする。

「スマートメーターの有無にかかわらず、Copper Labsは迅速な意思決定を可能にすべく消費者、電力会社、スマートホームプロバイダーにとって高頻度データの宝庫を開きます」とBlue Bear Capitalのパートナー、Carolin Funk(キャロリン・ファンク)博士は述べた。

つまり、Copper Labsが解決しようとしている課題は、メーターベンダーの遅いイノベーションサイクルを回避して、古いグリッドを最先端のスマートグリッドよりも賢くすることだ。さらに、同社のソリューションは電柱に設置するため、、家庭レベルでまったく問題なく使用できる100個の電力メーターを交換するよりもはるかに安く、早く、そして環境にも配慮したものだ。

画像クレジット:Copper Labs (Merrick Chase Photography) under a license.

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(文:Haje Jan Kamps、翻訳:Nariko Mizoguchi

「NetWalker」ランサムウェア攻撃関与の元カナダ政府職員が米国に送還、約32億円超相当のビットコイン押収

数十のランサムウェア攻撃を行ったとして起訴されたカナダの元政府職員が米国に送還され、この事件に関連して2800万ドル(約32億8500万円)以上のビットコインが押収された。

LinkedInのプロフィールによるとカナダ公共事業・政府業務省(PWGSC)でITコンサルタントとして働いていたSebastien Vachon-Desjardins(セバスチャン・ヴァション=デジャルダン)容疑者は、米国時間3月9日に米国に身柄を引き渡され、NetWalkerランサムウェアグループに参加した疑いで複数の罪に問われると、米国司法省(DOJ)は3月10日に発表した

NetWalkerは「Mailto」としても知られるRaaS(ランサムウェア・アズ・ア・サービス)で、ランサムウェアを展開するアフィリエイトを募り、身代金の一部を分配することで事業を展開している。このグループは2019年に初めて表面化し、その後、いくつかのハイプロファイルのサイバー攻撃と関連している。2020年6月にはカリフォルニア大学サンフランシスコ校を標的にし、その際に同校は100万ドル(約1億1700万円)以上の身代金を支払った。その3カ月後、NetWalkerはサイバー脅威スタートアップのCygilant(サイジアント)を襲った

このRaaS運営グループは、アルゼンチンの移民局、パキスタン最大の民間電力会社、そして新型コロナウイルスのパンデミック中には、多くの病院や法執行機関も標的にしていた。暗号資産分析会社Chainalysisによると、2019年8月から2021年1月の間に、NetWalkerが関与するランサムウェア攻撃は、4600万ドル(約53億円)にのぼる身代金を引き出しているという。

ヴァション=デジャルダン容疑者は、NetWalkerランサムウェアグループを標的とした国際法執行キャンペーンの一環として、2021年1月にカナダの警察に逮捕された。ケベック州にある彼の自宅を捜索した際、警察官は執筆時点で約2810万ドル(約33億円)相当の719ビットコインと、79万ドル(約7280万円)のカナダ通貨を発見した。米国とベルギーの当局は、NetWalkerが被害者から盗んだデータを公開するために使用していたダークウェブのサイトも差し押さえている

当時、ヴァション=デジャルダン容疑者は、カナダの裁判所で、コンピュータデータの窃盗、恐喝、暗号資産の身代金の支払い、犯罪組織の活動への参加に関する5つの罪を認め、7年の禁固刑を言い渡された。

ヴァション=デジャルダン容疑者は現在米国にいるため、コンピュータ詐欺と電信詐欺の共謀、保護されたコンピュータへの故意の損害、保護されたコンピュータへの損害に関連した要求の送信で告発され、さらなる罪に問われている。

有罪判決を受けた場合、NetWalkerランサムウェア一味との関わりにより、2700万ドル(約31億6800万円)以上の没収を求められる可能性がある。

ケネス・ポリテ・ジュニア司法次官補はこう述べている。「カナダのパートナーによる暗号資産の押収に代表されるように、我々は、国内外を問わず、ランサムウェアの収益とされるものの押収・没収を法的に可能なあらゆる手段を用いて追求します。当省は暗号資産だからといって身代金の追求と押収をやめることはなく、これにより、暗号資産を使って法執行から逃れようとするランサムウェア犯の企みを阻止します」。

ヴァション=デジャルダン容疑者の送還のニュースは、REvilランサムウェアグループのメンバーがKaseyaハッキングへの関与の疑いで逮捕され、米国で告発を受けるためにテキサス州に送還されたわずか数日後に発表された。

画像クレジット:TechCrunch(スクリーンショット)

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(文:Carly Page、翻訳:Den Nakano)

米国で自動運転車のための国家安全基準がついに決定

無人運転車や自動運転機能を備えた自動車に、独自の安全基準が定められることを米国連邦機関が米国時間3月10日に決定した。規則はまず、運転席やハンドルのない車で乗客の安全をどう定義するかを明確化している。

米国運輸省の幹線道路交通安全局(NHTSA)は、この種のものとして初めての最終規則を制定し、人間ドライバーが関与する手動制御装置をもたない車両の乗客のために安全要件を改訂した。

今回の決定は、いくつかの修正に加えて、連邦自動車安全基準(FMVSS)の用語を変更して、自動運転車の空間レイアウトを反映したもので、同局の自動運転の普及にともなう公共の安全確保の取り組みに基づいて作られている。2021年NHTSAは、自動運転車(AV)の運用会社およびメーカーに事故報告書の提出を義務付ける命令を発令し、2020年には、州や企業がAV試験に関する情報を提出し、市民が閲覧できる仕組みを立ち上げた。

「自動運転システム装備車両で運転者が人間から機械に変わっても、人間の安全を維持する必要性は変わることがなく、当初から組み込まれている必要があります」とNHTSAのDr. Steven Cliff(スティーブン・クリフ博士)局長代行が声明で語った。「この規則によって、NHTSAはメーカーが安全を最優先することを求めます」。

さまざまな意味で、この規則はすでに本格化している業界に対応しようとしている。しかし、専用に作られた自動運転車が公道に解放されたことはまだなく、今新しいタイプの車両のための規則の基盤を形成することは、正しい方向への一歩であることは間違いない。

規則ではまず、従来型自動車向けに決められた用語を変更し、曖昧さと不要な用語を排除している。「driver’s seat(運転席)」「steering wheel(ハンドル)」「passenger seat(助手席)」といった用語は、該当する機能をもたない専用自動運転車の空間的参照に用いる意味がない。たとえばCruise(クルーズ)およびZoox(ズークス)の両社が作っているカーシェアリング目的の自動運転車には、伝統的な意味の車内空間がない。

一方、 Waymo(ウェイモ)、Motional(モーショナル)、およびArgo AI(アルゴAI)が路上に送り出しているのは、自動運転システムまたは操舵制御によって操作が可能であるため区別が必要である、とNHTSAはいう。

Nuro(ニューロ)などの自動運転車は、商品の配達に用いられており、人間は乗せないため、NHTSAの基準は、これらの車両を除外するように変更され、保護すべき乗客がいない場合は元の安全要件がなくなることを規定している。

NHTSAの最終規則は、用語を改訂した結果発生するメーカー要件の変更についても言及している。例えば自動運転システム装備車両における先進的エアバッグおよび先進的エアバッグ抑制テルテール(警告表示)、ロック可能義務の扱い、中型バスと大型スクールバスのシートベルト義務の変更などが、「driver」 という用語の削除に続いて記載されている。

自動運転車メーカーは、すでに乗客の安全を考慮して新型車を設計している。たとえばZooxは、まったく新しい形のエアバッグを作りし、センサー、スイッチ、カメラなどを利用したシステムを開発して、乗客の適切なシートベルト利用を確認しているという。しかし、NHTSAの決定は、今後のガイドラインとメーカーが進化する業界の責任をもつための方法を提供するものだ。

「2020年代を通じて、米国運輸省における安全政策の重要部分は、安全基準を自動運転および運転支援システムの進歩に確実に追随させることです」と、Pete Buttigieg(ピート・ブティジェッジ)米国運輸長官が声明で語った。「この新しいルールは、自動運転システム装備車のための堅牢な安全基準を確立するための重要な一歩です」。

画像クレジット:Zoox

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Nob Takahashi / facebook

ホワイトハウスが暗号通資産に関する大統領令を発表

バイデン大統領のホワイトハウスが米国時間3月9日に、暗号資産の規制に関する新しい大統領令を発表しました。大統領令は基本的に、政府が消費者保護のバランスを取りながら、米国がこの分野のイノベーションのための空間であり続けることを保証する計画について幅広い戦略を打ち出している。

政府の強力な介入を懸念していた業界人にとって、この大統領令の言葉遣いは、バイデン政権が包括的な短期の改革には関心がなく、むしろ暗号資産産業の国防にとっての含意の調査と観察で全省庁が確実に歩みを揃えることを重視していると映るだろう。

ホワイトハウスが発行したファクトシートでは「デジタル資産の登場で、世界の金融システムと技術の最前線における米国のリーダーシップを強化する機会が生じている。しかしそれはまた、消費者保護と金融の安定性、国防そして気候の危機に関する重要な意味も持っている」と述べている。

この大統領令のプレスリリースは、7つの主要目標を詳しく挙げている。

  • 米国の消費者と投資家と企業を保護する
  • 米国と世界の金融の安定を保護し内在的なリスクを軽減する
  • デジタル資産の不法な使用による金融と国防の不法なリスクを軽減する
  • テクノロジーと経済的競争力における米国のリーダーシップを増進し、世界の金融システムにおける米国のリーダーシップを強化する
  • 安全で誰もが利用できる金融サービスへの公平なアクセスを振興する
  • 技術の進歩を支援しデジタル資産の責任ある開発と利用を確保する
  • 米国の中央銀行デジタル通貨(U.S. Central Bank Digital Currency、CBDC)の検討

暗号資産技術の投資家はこぞって安堵の吐息を漏らしたかもしれないが、この分野に対して厳しく批判的だったElizabeth Warren(エリザベス・ウォーレン)氏などは、納得しなかったかもしれない。最近ウォーレン氏は業界を批判し、特に暗号資産の環境への影響と、いわゆるステーブルコインの発行者とDeFi(分散化金融)のエコシステムのプレイヤーに対する緩い規制がもたらす、投資家のリスクへの注意を促している。

この大統領令に関するホワイトハウスのコミュニケーションは概して、特定のコインやプロジェクトへの言及を、Bitcoinの価格の乱高下を除いては避けているようだ。またDeFiやNFTのような、特定の技術分野への言及もない。

一部の業界人が特に気にしていたのは、裕福なロシアのエリートが制裁を逃れるために暗号資産を利用して取締りを招くことだが、報道陣向けの説明会に登場した某政府高官は「特にロシアでは、暗号資産の利用が、我々がロシア経済全体およびその中央銀行に科した一連の金融制裁に対する有効な回避策になることは考えられない」とそのその可能性を否定した。。

今回の大統領で特に目立つのは、いくつかの政府省庁に対して公式に、国定の暗号資産(CBDC)の開発に関する調査研究の開始を指示していることだ。これについてホワイトハウスの高官は「この調査研究は、国際的な参加と競争性に関して我々が今後開発するフレームワークとともに、世界の金融システムにおける米国の重要な役割を私たちが確実に保全することを支えるだろう」と述べている。

ホワイトハウスによると、バイデン大統領はこの大統領令に本日、米国時間3月9日に署名する。

画像クレジット:撮影:Al Drago/Bloomberg, Getty Imagesより/Getty Images

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(文:Lucas Matney、翻訳:Hiroshi Iwatani)

中国が支援するサイバー攻撃グループAPT41、「少なくとも」米国6州のネットワークに侵入

サイバーセキュリティ大手Mandiant(マンディアント)によると、金銭的動機に基づく活動と並行してスパイ活動を行うことで知られる、活発な中国のハッキンググループ「APT41」が、米国の複数の州政府のネットワークに侵入した。

このグループは、2020年にAPT41のメンバー5人が米国で起訴されたことにもめげず、少なくとも米国6州のネットワークを標的にして数カ月にわたる活動を行い、侵入に成功した。これらの州にはMandiantから通知が送られたが、州名は明かされなかった。

2021年5月から2022年2月にかけてこのハッキンググループは、脆弱なインターネット向けウェブアプリケーションを利用して、州ネットワークへの最初の足がかりを得た。これには、18の州が動物の健康管理に使用しているUSAHerdsというソフトウェアアプリケーションのゼロデイ脆弱性や、ユビキタスJavaロギングライブラリであるApache Log4jの、現在有名になっているいわゆるLog4Shellの脆弱性の悪用が含まれていた。

Mandiantによると、APT41は2021年12月にApache Foundationがこの脆弱性について公に警鐘を鳴らしてから数時間でLog4Shellを悪用し始め、2州の政府ネットワークや保険・通信業界の他のターゲットが侵害されるに至った。ネットワークへの足がかりを得たAPT41は「大規模」なクレデンシャル収集を行った。

今回の調査ではまた、APT41が使用するさまざまな新しい技術、回避方法、能力も明らかにされた。ある事例では、APT41が独自ウェブアプリケーションのSQLインジェクションの脆弱性を利用してネットワークにアクセスした後(この活動はMandiantによって阻止された)、2週間後に再び戻ってきて、まったく新しいゼロデイ・エクスプロイトでネットワークを再び侵害した。また、このグループは、マルウェアを被害者の環境に合わせ、特定のフォーラムの投稿で暗号化されたデータを頻繁に更新し、マルウェアが攻撃者のコマンド&コントロールサーバから指示を受けることができるようにしていた。

Mandiantは、ハッカーが個人を特定できる情報を流出させた証拠を確認したと述べたが、これは一般的にスパイ活動によくあることで、活動の目的は依然として不明だ。

Mandiantの主席脅威アナリストであるGeoff Ackerman(ジェフ・アッカーマン)氏は、ウクライナ侵攻を受けて世界がロシアのサイバー脅威の可能性に注目している一方で、今回の調査は、世界中の他の主要な脅威要因が通常通り活動を継続していることを思い出させるものだ、と述べた。

「特に、最も活発な脅威組織の1つであるAPT41の活動が今日まで続いているという我々の調査を踏まえると、他のサイバー活動を見過ごすことはできません」とアッカーマン氏は話した。「APT41はまさに持続的な脅威であり、直近の活動は、米国の州レベルのシステムがロシアだけでなく、中国などの国家支援ハッカーから容赦なく圧力を受けていることを改めて認識させるものです」。

画像クレジット:Getty Images

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(文:Carly Page、翻訳:Nariko Mizoguchi

トヨタが支援するロボタクシースタートアップ「Pony.ai」の評価額が約9775億円に急上昇

中国と米国を拠点とするPony.aiは米国時間3月7日、シリーズDの1回目のクローズ後に評価額が85億ドル(約9775億円)に急上昇したと発表した。自律走行車両が大量に投入されるにはまだ数年かかるこの分野を投資家が追いかけ続けていることの表れだ。

2016年に創業しトヨタが支援するPonyは、中国と米国の両方でテストと運用をしている一連のロボタクシースタートアップの1つで、同様の他のスタートアップにはWeRide、Deeproute、AutoXなどがある。Ponyの前回の評価額は2020年11月の53億ドル(約6095億円)だった。

Ponyがこの1年で直面した困難の数々を考えると、今回の評価額は驚きだ。同社ではトラック部門とロボタクシー部門を統合する経営判断が不評で、その後自律走行トラック部門の主要メンバー数人が退社し、ライバル企業数社のメンバーとなった。米国の同社トラック部門はその後解散したが、中国でのトラック事業は成長を続けている。

12月には衝突事故を受けてカリフォルニア州がPonyの無人運転テストの許可を一時停止した。

テック企業に対する中国当局の監視が厳しさを増す中、PonyはJPMorgan Chaseの幹部だった人物を最高財務責任者として迎えた直後に米国での上場計画をせざるを得なかったと報じられた

ロボタクシーの開発は費用がかかることで知られるが、Ponyは資金は潤沢だと述べている。一般に、自律走行車両スタートアップにとってはトラック事業はロボタクシーに比べると早く収益化できる手段とも見られている。同社はシリーズD-1の後に10億ドル(約1150円)近い「バランスシートの流動性」を有していると述べた。

同社は今回の調達金額を明らかにしていないが、ラウンド全体が完了したら詳しく発表するとしている。

グローバルで1000人以上の従業員を抱えるPonyは、自律走行車両を中国の主要4都市(北京、上海、広州、深セン)、そしてカリフォルニア州のフリーモントとアーバインでテストしている。同社のロボタクシーはBaidu(百度)の自律走行車両とともに、北京郊外の実験区域で乗客への課金を開始する許可も受けた。

資金の用途についてPonyの共同創業者でCEOのJames Peng(ジェームズ・ペン)氏は発表の中で次のように述べた。「我々の技術開発とバランスシートの強みの両方がそろうことで、2022年の採用を大幅に拡大し、新しい自律走行車両のテストと運用の拠点をグローバルで多数開設し、戦略的パートナーシップを進展して、車両を急速に展開します」。

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(文:Rita Liao、翻訳:Kaori Koyama)

TikTokが10代に与える悪影響について米国各州の司法長官団が調査を行うと発表

米国各州の司法長官は、現地時間3月3日、TikTok(ティックトック)が、子どもたちや10代の若者たちの心身の健康状態に与える悪影響について調査を行うと発表した

この調査では、TikTokがどのように若いユーザーに悪影響を及ぼすか、またTikTokがその悪影響について事前に知っていたかどうかを分析する。この党派を超えた司法長官のグループは、TikTokが若年ユーザーのエンゲージメントを高める方法や、TikTokがユーザーに同プラットフォームでより多くの時間を過ごすように仕向ける誘因を調査する。この調査は、TikTokが州の消費者保護法に違反し、一般市民に害を与えているかどうかを弁護士団が判断するために役立つことになる。

「子どもや10代の若者が、すでに不安や社会的圧力、抑鬱などの問題と格闘している中で、ソーシャルメディアが彼らの身体や心の健康を、さらに害することは許容できません」と、マサチューセッツ州司法長官のMaura Healey(マウラ・ヒーリー)氏は、プレスリリースで述べている。「各州の司法長官にとって、若者を保護し、TikTokのような企業が彼らの日常生活にどのような影響を与えているかについて、より多くの情報を得ることは急務です」。

このような行動が起こることは珍しくないが、それが大手テック企業に大きな変化をもたらすことは滅多にない。それでも2021年には、44人の弁護士から成る同じような団体が、同じくヒーリー司法長官を共同代表として、Meta(メタ)にInstagram Kids(インスタグラム・キッズ)の立ち上げ計画を一時停止させることに成功した。しかし、この決定はおそらく、元Facebook(フェイスブック)の幹部だったFrances Haugen(フランシス・ホーゲン)氏の内部告発があったことが深く関係している。

ソーシャルメディアが子どもの精神衛生に与える影響は、政府も気にかけている。Joe Biden(ジョー・バイデン)大統領が、米国時間3月1日夜の一般教書演説で、ソーシャルメディアに言及したほどだ。

「私たちは、ソーシャルメディアプラットフォームが利益のために、我が国の子どもたちに対して行っている国民的実験に対して、責任を持たなければなりません」と、大統領は全国的な演説の中で語った。「今こそ、プライバシー保護を強化し、子どもへのターゲティング広告を禁止し、テック企業に子どもの個人データ収集を止めるよう要求する時です」。フランシス・ホーゲン氏は、ファーストレディであるJill Biden(ジル・バイデン)博士の貴賓として出席し、バイデン大統領の演説の中で個人的な謝辞さえ送られていた。

TikTokに対する調査は、カリフォルニア、フロリダ、ケンタッキー、マサチューセッツ、ネブラスカ、ニュージャージー、テネシー、バーモントの司法長官をはじめ、全米の弁護士からなる超党派の連合団体が主導して行っていく。

画像クレジット:Bryce durbin / TechCrunch

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(文:Amanda Silberling、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

ツイッター、Birdwatchコミュニティのファクトチェックをより多くのユーザーに表示

Twitter(ツイッター)は、2020年10月に初めて明らかにしたコミュニティベースのファクトチェック構想「Birdwatch(バードウォッチ)」へのアクセスを拡大すると発表した。このサービスはこれまで、誤解を招く可能性のあるツイートにより多くの文脈を追加するためにメモを書いたり、評価したりすることに時間を投資した1万人の貢献者の小グループによってテストされてきた。しかし同社は、Birdwatchをより多くの貢献者に開放するのではなく、これらのメモをより多くの米国ユーザーが閲覧し、評価できるようにする。

米国時間3月3日から米国のTwitterユーザーの「少人数の無作為抽出された」グループが、ツイート上でBirdwatch のメモを直接見ることができ、メモを「役に立つ」「多少役に立つ」「まったく役に立たない」のいずれかで評価し、なぜそのように回答したのかを示して意見を提供できるようになると同社は述べた。このような発信はBirdwatchの改善に役立つ。

Birdwatchのもともとのアイデアは、Twitterにツイートを報告して検証してもらうことで、現在よりもはるかに速いペースでプラットフォーム上の誤情報に対抗するシステムを構築することだった。

2021年1月に正式にパイロットテストが始まった際にTwitterが説明したように、誤解を招く情報はオンラインですぐに広がってしまう。Birdwatchのメモはより迅速な方法でコンテキストを追加することが可能だ。さらに、Birdwatchのメモは、ユーザーがTwitterに報告して削除してもらうような問題のあるツイートで、実際にはルールを破っていないものについての懸念に対処するのに役立つ可能性がある。また、事実として正しいかもしれないが、問題の全体像を明らかにするための文脈を欠いているツイートの質を高めることができるかもしれない。

画像クレジット:Twitter

Twitterの発表のタイミングは、ワシントンポストの報道でBirdwatchサービスが初めて登場してから1年以上経っても、より広く展開できなかったと批判されてわずか数日後のことだ。

試験運用を開始して以来、Twitterはクリエイターツール(Super Follows)、eコマース機能、パワーユーザー向けのサブスクリプション商品(Twitter Blue)、ニュースレター(Revue)、NFTアバター、アプリ内投げ銭など、収益を伸ばすためのあらゆる種類の他のプロジェクトにリソースをさいてきた。

しかし、ロシア・ウクライナ戦争が激化する中、ソーシャルメディアにおける誤情報やプロパガンダの拡散により、より優れた(少なくともより迅速な)ファクトチェックがこれまで以上に求められている。Twitterは、ワシントンポスト紙へのコメントで、Birdwatchの試験運用を「非常に近いうちに」拡大すると述べている。つまり、今日の発表のタイミングは偶然ではない。

TwitterはBirdwatchの試験運用期間中に、メモ投稿者を嫌がらせから守るために自動生成されたエイリアスを提供したり、自分のメモが役に立つと評価されたり有り難られたりするとそれを知らせる通知を提供するなど、Birdwatchの改良を行った。ツイート上に表示されるには、まず十分な数のBirdwatch貢献者が異なる視点から評価を行う必要があると同社は述べている。また、Twitterは貢献者に出典を記載し、説明を明確にするよう促すアプリ内プロンプトリマインダーを追加し、Birdwatch貢献者がより多くのフィードバックを必要とするメモを評価するための「Needs Your Help」タブを導入した。

画像クレジット:Twitter

Twitterは2021年夏、APおよびロイターと協力して、プラットフォーム上の誤情報と戦うことを発表したが、これにはBirdwatchの投稿の評価への協力も含まれていた。

Twitterの調査によると、誤解を招く可能性のあるツイートに関するメモを見た後、その内容に同意する人の割合は、メモを見なかった人に比べて20%から40%少ないことがわかった。

Birdwatchメモは、3月3日からごく少数のユーザーに見えるようになるかもしれないが、一般公開にはほど遠い状態だ。まだ「試験的」なものだと考えられている。

また、Birdwatchの投稿者は必ずしも訓練を受けたファクトチェッカーやジャーナリスト、ある種の専門家ではないことから、コミュニティによるファクトチェックが誤情報を扱うのに正しいアプローチなのかどうかという疑問も引き続きある(さらに、ある分野の専門家であっても、別の分野の誤情報を適切に評価できるとは限らない)。その代わり、認証された電話番号を持ち、米国を拠点とする信頼できる通信会社を使っていて、最近Twitter違反をしていないことが条件とされている。

そして、あるファクトチェックが他のものと比べてどれだけ重要か、また、隠されたメモが真実を明るみに出すための正しい方法であるかどうかという問題がある。例えば、ミームアカウントが投稿したGIFでマーク・ハミルと確認された人物が、おそらく才能あるコスプレイヤーであることを知るのは良いことだが、検証済みの元スウェーデン首相や外交官がウクライナ・ロシア戦争での誤解を招く写真をツイートするとなると話は違ってくる。

Twitterは、Birdwatchメモを見て評価できるようになる米国ユーザーの数、あるいはTwitterの米国ユーザーベースの何パーセントに相当するかについての言及を避けた。

画像クレジット:Twitter

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(文:Sarah Perez、翻訳:Nariko Mizoguchi

ロシアが米国向けロケットエンジン販売禁止、「自分たちのほうき」で宇宙へ飛ぶことを提案

ロシアと米国の間で(他の国はいうに及ばず)緊張が高まる中、ロシアの国営宇宙機関Roscosmos(ロスコスモス)は米国へのロケットエンジンの出荷を停止すると発表した。Roscosmoを率いるDmitry Rogozin(ドミトリー・ロゴージン)氏は、国営放送でこう述べた。「何か他のもの、自分たちのほうきにでも乗せて飛ばせばいい、何になるかは知らないがね」。幸いなことに、我々にはほうきよりも良い方法がある。

今回影響を受ける2つのロシア製エンジンは、ULA(United Launch Alliance)のAtlas V(アトラスV)やAntares(アンタレス)ロケットの主推力として20年間使われてきた信頼性の高い強力なエンジンだ。しかし、ここ数年、AtlasとAntaresの打ち上げ、特に90年代に開発されたエンジンを使った打ち上げは、打ち上げ量と能力において非常に少数派になっていることは、ご存じのとおりだ。

長い時間軸を持つ産業に属するということは、このような事態に前もって備えるということであり、米国はかなり以前からロシアのハードウェアへの依存度を下げる努力をしてきた。具体的には、ULAは2018年に、次世代ロケットVulcan(ヴァルカン)のために、ロシアのRD-180エンジンの代替品を開発するようBlue Origin(ブルーオリジン)に依頼した。

このBE-4エンジンはまだ準備が整っていないが(Blue Originが実証した宇宙旅行フライトは、打ち上げプロファイルがまったく異なる)、ULAのトップであるTory Bruno(トリー・ブルーノ)氏は、The VergeのLoren Grush(ローレン・グラッシュ)氏に対し、ULAはその方向に向かっており、何にしろ移行期間を乗り切るのに必要なRD-180を十分に持っていると語った(同組織にコメントを求めたので、返答が得られたら更新する)。Northrop Grumman(ノースロップ・グラマン)は、今後数年間、RD-181(同じく禁輸となった)を使用するCygnus(シグナス)の飛行を計画していたため、より大きな影響を受けるかもしれない。

しかし、米国のレガシーロケットプロバイダーの備えよりも重要なのは、新しいロケットプロバイダーの急増だ。もちろんSpaceX(スペースX)は誰もが知っているし、Rocket Lab(ロケット・ラブ)も急速にお馴染みの社名になりつつある(あなたの家庭が軌道サービス産業に隣接している場合)。しかし2022年は、Relativityの「Terran 1」3Dプリントロケットの初飛行も見られるだろうし、Astra(アストラ)などの新興企業は、迅速、頻繁かつシンプルな打ち上げを行うことでコストを最低限に抑えようとしている。

さらに、米国政府はハイプロファイルで機密性の高いミッションに、こうしたより新しい商業打ち上げ業者を利用することに急速に抵抗がなくなってきている。国家偵察局(NRO)や国防総省が最新のスパイ衛星を民間のロケットでは軌道に乗せない、あるいは乗せられないという時代は終わりを告げようとしているのだ。

また、広く捉えると、打ち上げの世界は、ロシアとの新たな冷戦が始まらなかったとしても、RD-180が持続可能な選択肢であった時代からすでに脱却しているということだ。Ford(フォード)に辻馬車を売らないぞと脅している馬車メーカーと言ったら言い過ぎかもしれないが、ロケット、カプセル、発射台、インフラに至るまで、ロシアの最新鋭の宇宙技術はすでに市場から見放されていた感がある。

米国が設計し、米国が打ち上げる新世代ロケットや宇宙船に民間や政府の資金が大量に投入されたことは、政治情勢が悪化しなかったとしても、さまざまな面で現実的な判断であったといえるだろう。その投資の成果は今、明らかになりつつある。10年後、ロシアは米国のほうきに乗りたがっているかもしれない。

画像クレジット:Official U.S. Navy Page / Flickr under a CC BY 2.0 license.

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(文:Devin Coldewey、翻訳:Den Nakano)

バイデン大統領がソーシャルメディアのメンタルヘルスへの影響について訴え、一般教書演説で

ホワイトハウスは、バイデン大統領による初の一般教書演説に先立ち、米国におけるメンタルヘルスの危機に取り組む計画を発表し、特にソーシャルメディアが子どもや10代の若者に与える影響について強調した。この問題は、一部の議員の間で重要視されている。特に、内部告発者のFrances Haugen(フランシス・ホーゲン)氏がFacebook(フェイスブック、現在はMeta)に不利な内部文書を大量にリークした後はそうだ。内部文書には、10代の若者への悪影響を同社が認識している証拠も含まれていた。

ホワイトハウスによると、バイデン大統領は議会に対し、プライバシー保護の強化、子どもへのターゲット広告の禁止、テック企業による子どもの個人情報収集の停止を要請する。

一般的に、一般教書演説でテック企業が重要な役割を果たすことはない。バイデン大統領が米国3月1日夜、ロシアのウクライナ侵攻に関するより差し迫った危機を考慮し、言及さえしない可能性もある。とはいえ、大統領はソーシャルメディアのプラットフォームに対し、若いユーザーの安全を守るよう呼びかけている。ファーストレディのJill Biden(ジル・バイデン)博士がホーゲン氏を特別ゲストとしてこのイベントに招待したことは、ソーシャルメディア幹部に対する5回にわたる上院公聴会のきっかけとなったホーゲン氏の主張に、大統領が注目していることを示している。

「大統領は、子どものデータとプライバシーの保護をはるかに強化すべきと考えているだけでなく、プラットフォームやその他の双方向デジタルサービス提供者は、製品やサービスの設計において、利益や収益よりも、子どもや若者の健康、安全、幸福を優先させ確保すべきだと考えています」。ホワイトハウスのブリーフィングには、こう書かれている。

この文言は、ホーゲン氏が議会に登場した際に使っていた言い回しを彷彿とさせる。同氏は「60 Minutes」のインタビュー以来、元社員としての立場から、Facebookは安全性よりも利益を優先していると繰り返してきた。

大統領はまた、ソーシャルメディアが私たちにどのような害を及ぼすのか、およびその害に対処するためにどのような臨床的・社会的介入が可能かについての研究に、少なくとも500万ドル(5億7500万円)を投資する計画の概要を示した。また、米保健福祉省は「ソーシャルメディアとメンタルウェルネスに関する全米センター」を立ち上げ、10代のソーシャルメディア利用がもたらす影響について一般市民に啓蒙していく予定だ。

バイデン大統領はまた、子どもたちを対象とした過剰なターゲット広告やデータ収集を禁止するよう議会に要求する見通しだ。2000年に施行された児童オンラインプライバシー保護法(COPPA)は、13歳未満のユーザーの追跡やターゲティングを制限することを目的としているが、プラットフォームがユーザーの年齢を認識していることが証明されない限り、この法律を適用することはできない。つまり、子どもが「はい、私は13歳です」というボックスをクリックするだけで、子ども向けではないコンテンツにアクセスできてしまうため、COPPAは簡単に適用できないことが多い。

すでに一部の議員は、COPPAをより効果的なものにするためにアップデートを試みている。Ed Markey(エド・マーキー)上院議員(民主党、マサチューセッツ州)とBill Cassidy(ビル・キャシディ)上院議員(共和党、ルイジアナ州)は2021年、インターネット企業が13〜15歳のユーザーの個人データを本人の同意なく収集することを違法とする法案を提出した。この法案はまた「消去ボタン」を設け、ユーザー(またはその親)が、企業が収集した自らに関するデータを手動で消去できるようにするものだ。

「消去ボタン」のコンセプトは、Richard Blumenthal(リチャード・ブルメンタール)上院議員(民主党、コネチカット州)とMarsha Blackburn(マーシャ・ブラックバーン)上院議員(共和党、テネシー州)が最近提出した「Kids Online Safety Act(KOSA)」にも登場する。2021年10月には、YouTube(ユーチューブ)、TikTok(ティクトック)、Snap(スナップ)の代表者が上院の公聴会で、親が自分の子どもや10代の若者のオンラインデータを消去できるようにすべきだという意見に同意した。

ホワイトハウスのブリーフィングでは、アルゴリズムが選ぶコンテンツが、特に若い有色人種の女性の間で、メンタルヘルスに悪影響を与える可能性があることも取り上げている。

「『黒人の女の子』、『アジア人の女の子』、『ラテン系の女の子』と検索すると、ロールモデルやおもちゃ、アクティビティではなく、ポルノなどの有害なコンテンツが並ぶことがあまりにも多い。プラットフォームは、子どもたちが何が可能かを理解し、アクセスする機会に方向性を与えます」と報告書は述べている。「私たちは、プラットフォームやその他のアルゴリズムによって強化されたシステムが、差別的に子どもたちを標的にすることがないようにしなければなりません」。

ここ数年、ホワイトハウスがこのブリーフィングで説明したような問題を解決することを目指す法案がいくつか議会を通過したが、ほとんどは可決されるに至っていない。法案が成立するほどの勢いになっても、意図したことが達成されないこともある。トランプ前大統領は2018年「オンライン性的人身売買対策法(FOSTA)」に署名し、法制化した。その名の通り、人身売買を抑制するための法律だったが、かえって合意の上で働くセックスワーカーにとって、より危険な状況を作り出しただけだった。

バイデン大統領は、研究に500万ドル(約5億7500万円)を投じ、ソーシャルメディアとメンタルウェルネスに関する全米センターを設立したが、ソーシャルメディアとメンタルヘルスに関するコメントは、長年にわたって議会で議論されてきたことを繰り返したに過ぎない。しかし、これらのメッセージから、大統領が少なくとも、米国人のオンラインでの生活にいくらか注意を払っていることがわかる。

バイデン大統領は一般教書演説で、ソーシャルメディアの巨人に関する計画を示唆した。

「パンデミック以前にも、子どもたちは苦労していました。いじめ、暴力、トラウマ、そしてソーシャルメディアの害。今夜ここにいるフランシス・ホーゲン氏が示したように、我々はソーシャルメディアプラットフォームが利益のために子どもたちに対して行っている国家的な試みに対して責任を負わせなければならないのです。今こそ、プライバシー保護を強化し、子どもへのターゲット広告を禁止し、テック企業に子どもの個人情報収集をやめるよう要求するときです」。

また、ホーゲン氏は演説後、バイデン大統領の発言についてコメントした。

「バイデン大統領が一般教書演説でこの問題を提起し、これにより我々がソーシャルメディアが子どもたちの精神衛生に与えている真実の暴露を続け、この恐ろしい現実を変えるためにすべての関係者に力を与えられることに感謝しています」とホーゲン氏は報道機関にメールで送った声明で述べた。声明はTwitter(ツイッター)にも投稿された。「FacebookとInstagram(インスタグラム)は、私たちを中毒にし、また子どもと私たち自身の最悪の事態を増幅させるために設計された欠陥商品です。彼らは私たちの子どものメンタルヘルスを犠牲にして利益をあげているのです」。

【更新】3月2日米国東部時間午前9時20分、バイデン大統領とフランシス・ホーゲン氏の言葉を盛り込んだ。

画像クレジット:Al Drago/Bloomberg via Getty Images / Getty Images

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(文:Amanda Silberling、翻訳:Nariko Mizoguchi

Amazon Lunaゲームストリーミングサービスが米国で正式ローンチ、プライム会員向け無料ゲームなどを発表

Amazon(アマゾン)によるクラウドベースのゲームストリーミングサービス「Amazon Luna(ルナ)」が、米国内のすべての人に向けて正式に開始されると、同社は米国時間3月1日に発表した。Amazonは2020年9月にLunaを初めて公表した。それ以来、Lunaの招待制早期アクセスプログラムを通じて、限られた人だけが同サービスにアクセスできるようになっていた。

全米ローンチに加えて、AmazonはLunaに加えられる3つの新しいチャンネルを発表した。ちなみにチャンネルとは、ユーザーが毎月サブスクライブできるゲームのバンドルで、Lunaではそう呼んでいる。3つの新チャンネルのうち、まず「Prime Gaming Channel(プライムゲーミングチャンネル)」は、プライム会員が毎月入れ替わるセレクションの無料ゲームをLunaで楽しむことができるチャンネルだ。3月は「Devil May Cry 5(デビルメイクライ5)」「Observer System Redux(オブザーバー:システムリダックス)」「PHOGS!(犬犬)」などのセレクションが用意されている。またAmazonは「Immortals Fenyx Rising(イモータルズ フィニクス ライジング)」が3月8日から14日までの限定期間、無料でプレイできることに言及している。

2つ目の新チャンネルは、カプコンやSNKなどのパブリッシャーによるクラシックゲームを売りにする「Retro Channel(レトロチャンネル)」だ。Amazonによると、このチャンネルは「Street Fighter II(ストリートファイターII)」「Hyper Fighting(ストリートファイターⅡ ターボハイパー ファイティング)」「Metal Slug 3(メタルスラッグ 3)」などのタイトルを配信し、ユーザーに「アーケードゲームの栄光の日々を再体験してもらう」ことを目指しているとのこと。3つ目の新チャンネルは「Jackbox Games Channel(Jackboxゲームチャンネル)」で、Jackbox Gamesの全8種類のパーティーパックを収録している。このチャンネルでは「Quiplash」「Drawful」「Trivia Murder Party」などの人気パーティーゲームを配信する。Retro ChannelとJackbox Games Channelは、どちらも月額4.99ドル(約570円)で利用できる。

また、Amazonは、PC、Mac、Fire TVでLunaの最新アップデートを行い、プレイヤーがTwitch(ツイッチ)にLunaのゲームプレイを配信できるようになったことを発表した。これを可能にするため、同社は、プレイヤーが画面上にカメラフィードを重ねてゲームプレイをライブ配信できる新しいブロードキャストボタンを展開した。また、Fire TVでは、QRコードを利用して、携帯電話をウェブカメラおよびマイクとして接続することができる。

またFire TVでは、Luna Controller(ルナ・コントローラー)アプリを通じて、iPhoneやAndroid端末をコントローラーとして使用し、Lunaを試すことができるようになった。Amazonによると、オンスクリーンコントローラーは、サイドスクローラーやターンベースのRPG、トリビアゲームなどをチェックしたいユーザー、またはコントローラーを持たない初心者やカジュアルゲーマーにとっては1つのオプションだという。

Lunaは、他のクラウドサービスとは異なり、ユーザーが月単位でチャンネルごとにサブスク契約をする方式をとっている。現在、主力製品のLuna+チャンネルは月額5.99ドル(約690円)、Familyチャンネルは月額2.99ドル(約345円)で利用できる。

Luna+チャンネルは100以上のタイトルを含むライブラリーを提供し、Familyチャンネルはすべての年齢層のゲーマーに適した35以上のゲームを厳選して提供する。4月1日より、Luna+チャンネルは月額9.99ドル(約1150円)、Familyチャンネルは月額5.99ドル(約690円)で提供される予定だ。また、AmazonはUbisoft+チャンネルを月額17.99ドル(約2070円)で提供している。

AmazonがLunaを最初にリリースしてから1年以上となるが、同社はMicrosoft(マイクロソフト)のGame Pass UltimateやNVIDIAのGeForce NOWなど、他サービスとの競争にさらされてきた。Amazonがプライム会員向けに月替わりで無料ゲームを追加することを決めたのは、より多くの人に追加料金なしでLunaを試してもらうための施策のように見える。

Lunaの全米展開は、Amazonが最近、米国でプライムの料金値上げを行った後でのことだ。月額料金は12.99ドル(約1490円)から14.99ドル(約1720円)へ、年会費は119ドル(約1万670円)から139ドル(約1万5960円)へ上がった。

画像クレジット:Amazon

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(文:Aisha Malik、翻訳:Den Nakano)

米政府機関が警告、ウクライナを標的にしているワイパー型マルウェアは他国にも飛び火する可能性

米国サイバーセキュリティー・インフラセキュリティー庁庁(CISA)および連邦捜査局(FBI)は、ウクライナ国内組織の攻撃に用いられているワイパー型マルウェアが米国内の企業に影響を及ぼす可能性があると警告する共同勧告を発表した。

週末に公開された勧告は、WhisperGate(ウィスパーゲート)およびHermeticWiper(ハーメティック・ワイパー)という最近ウクライナ国内組織に対する攻撃で使われたことがわかった2つの破壊的マルウェア種に関する情報を提供している。

WhisperGateはワイパー型マルウェアの一種で、ランサムウェアを装っているが、ファイルを暗号化するのではなく、システムのマスターブートレコードを破壊の標的にしている。このマルウェアを最初に見つけたのはMicrosoft Threat Intelligence Center(マイクロソフト脅威インテリジェンス・センター)で、去る1月にウクライナの政府、非営利団体、テック企業を含むターゲットに対する複数のサイバー攻撃で使用されていた。

もう1つの破壊的ワイパー型マルウェアであるHermeticWiperは、ロシアによる侵攻が開始される直前にウクライナ企業を標的にして使用された。セキュリティ製品企業のESETが発見したこのマルウェアは、コンピュータを制御不能に陥らせる。ESETが観察したウクライナ国内数百のコンピュータを標的としたその攻撃は、国のいくつかの重要なウェブサイトをオフラインに追いやった一連の分散型サービス妨害(DDoS)攻撃の数時間後に出現した。

共同勧告は、米国企業に対する脅威でロシア・ウクライナ緊張に直接結び付くものは見つかっていないが、各企業は防御体制を強化し、警戒を強める必要があると警告している。

「破壊的マルウェアは組織の日常業務に直接的脅威をもたらし、重要な資産やデータの利用に影響を及ぼす可能性がある」とCISAおよびFBIは勧告で言った。

「ウクライナ国内組織に対するさらなる破壊的サイバー攻撃が起きる可能性は高く、意図せず他国の組織に波及することもありうる。組織は警戒を強め、そのような事象に対する計画、準備、発見、対応の能力を確認すべきだ」と付け加えた。

米国は、一連のワイパー攻撃を正式にロシアに結びつけていないが、マルウェアを拡散する脅威の行為者は、ロシアの「いわれなきウクライナ侵攻」につながっている、と勧告は述べている。

CISAとFBIは、組織が破壊的ワイパー型マルウェアから身を守るためのセキュリティ侵害インジケーター(IOC)を提供するとともに、多要素認証を有効化し、アンチウイルス・アンチマルウェア・プログラムの導入、スパムフィルターの設定、あらゆるソフトウェアのアップデート、ネットワークトラフィックのフィルタリングなどの対策を講じることで、自らを保護するよう企業に要求した。

関連記事:ウクライナがロシアにハッキングで対抗する「IT部隊」を募集し反撃、テックリーダーにも参加を呼びかけ

画像クレジット:Justin Sullivan / Getty Images

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(文:Carly Page、翻訳:Nob Takahashi / facebook

インターネットの未来を守るために米国主導のテック外交は変革が迫られている

TechCrunch Global Affairs Projectとは、ますます複雑に絡み合うテクノロジー分野と世界政治の関係性を検証するためのプロジェクトである。

米国は最近の民主主義サミットにおいて「志を同じくする民主主義国」が「インターネットの未来に向けた連合」を新たに形成し、オンラインのオープンで自由な価値観を擁護することを提案した。協調を目指す構想の長い系譜の中で最も新しいこの構想は、前進を実現する有望株である。しかし現在の様相からすると、その構想は不足をきたす恐れがある。当局者間の意見の不一致で始動が遅延している今、米国はこれを再考の機会とする必要がある。

この連合の背後にある基本的な論理は理に適っている。インターネットの自由は世界中でますます危機にさらされ、諸政府は競って自らの権限を主張し、幾十年にもわたって形成されてきたボランティア団体の統治システムからは今やきしみ音が聞こえているのだ。バイデン政権のテクノロジー政策担当アドバイザー、Tim Wu(ティム・ウー)氏は最近「我々は間違った道を進んでいる」と述べた。こうした背景をふまえると、インターネット時代のオープンで自由な価値観を奨励し、擁護する新しい構想が切に必要とされている。

しかし、現実には、米国は「志を同じくする民主主義国」による協調を重視することによって、自らの目標をむしばむ危険を冒している。なぜなら、自分たちだけで話し合う民主主義国の小さなクラブや強制だけでは、オープンなインターネットの未来は保証されないからだ。そうではなく、連合というものは、もっと包摂的で、経済や安全保障のインセンティブを適正な位置に置くことを最初から重視し、広範で持続可能な連合を長期にわたって構築するものでなければならない。

このことは、インターネット政策に対して米国が通常採用する必要のあったアプローチよりもずっと国際主義的なアプローチが必要なことを示している。何十年もの間、オープンなインターネットモデルはアメリカの並外れた管轄権限によって支えられてきた。世界のインターネットユーザーのうち、米国にベースがあるユーザーはわずか7.1パーセントにすぎないが、世界のインターネットの核となるインフラストラクチャーサービスの61パーセントは米国にある。使用許可の必要ない革新的で相互運用可能なネットワークと「ダムパイプ」(自らは伝送内容を知ることができないインフラストラクチャー)のモデルは、米国の優位性によって支えられてきたのだ。このことによって、巨大な経済的・社会的価値が生み出されてきた。世界のインターネットユーザーの19パーセントがいる中国だけが、地政学上比較可能な位置を占めている。

しかし、米国の覇権に依存して自由なインターネットを維持することはもうできなくなった。インターネットの統御の仕方において多くの国が転換点を迎えており、検閲、監視、遮断などの権威主義的なインターネットモデルが急速に勢いを増している。加えて、今日、37億の人々が依然としてインターネットを利用できない。

接続状況が向上するにつれ、このグループのほとんどの人がいる発展途上国がインターネットの未来を決めることになるだろう。そして、今のところ、それらの国は必要な資金を他のどこよりも中国から調達する可能性が高い。多極的なインターネットへのシフトは既定路線だが、その方向は、つまり開かれているか閉ざされているか、自由か権威主義的かは、定まっていない。

この傾向をふまえると、今日の民主主義国間の協調だけを重視することは、インターネットの先細りの部分を指標として過度に重視することになる。また、価値観だけで協調すると、インターネット規制のいくつかの分野に関するEUと米国の協定など、従来の協定がまだ合意されていない分野が目立つようになる。したがって、どんな連合も成功のためには「志を同じくするパートナー」という決まり文句を乗り越え、2本立てのアプローチを採用する必要がある。経済および安全保障のインセンティブの優先と、インターネットの遮断の禁止など、インターネットの開放性の確約である。そうすることで、参加国の幅を広げることができる。

この戦略は、ますます制限的なインターネット政策を検討している国を納得させる上で特に重要になる。例えば2015年以来、アフリカの54か国のうち31か国がある程度ソーシャルメディアへのアクセスをブロックしている。明らかに、こうした遮断の一部はあからさまな弾圧に起因しており、国際的に強い対応で応じる必要がある。それでも、比較的イデオロギー色の薄い介入もある。暴力的なオンラインコンテンツのために指導者が公共の安全に懸念を持つ場合、政策の混乱、国の許容度の低さ、主要なソーシャルメディアサービスによるコンテンツモデレーションへの投資の不足が相まって、もっと支援があれば回避できた可能性のある残念な行動につながってきた。

この傾向をとどめ、インターネットの核心となる自由を守るのに遅すぎることはない。しかし、そうした努力は強制だけでは成功しないだろう。権威主義に対する戦いは極めて重要であるが、あらゆる議論をひとまとめにして「民主主義対権威主義」という二極化した言葉にしてしまうと、実際には協調の機会が閉ざされて、制限と分断が加速されるだけになる可能性がある。この徐々にむしばむ過程の影響は、すでにアフリカで見ることができる。西側はアフリカの国々を米国と中国の大規模な「冷戦」の「委任状争奪戦」の現場としてしか扱わないことがあまりにも多い。こうした思考はどれも役に立たない。

中国は西側のパートナー、競合相手、対抗者のどれかなのではなく、そのすべてなのだ。米国、EU、その他の国は、中国を世界のインターネットのインフラストラクチャー市場から強制的に締め出すことはできないし、それを望むべきでもないし、そうする必要もない。どの国も供給を独占したり費用を全部負担したりすることのない、インターネットインフラストラクチャーの世界的な競争市場があれば、アフリカも米国も中国も皆、その方がメリットがあるだろう。

同様に、アフリカ諸国だけに独自の政治的な優先順位や課題があるのではなく、支援を提供することが西側自身の経済的利益になることもよくある。例えばインターネットを利用できない37億の人々をすべてつないだとしても、コストは米国、英国、韓国、日本などOECD諸国の国民総所得のわずか0.02パーセントにすぎないが、利益は25倍にもなる

それでも、G7が2022年、中国のインフラストラクチャー構想に対抗するために策定した「Build Back Better World(より良い世界再建)」プロジェクトに乗り出したとき、新たな金銭的裏付けはなかった。また、米国が影響力を持つはずの世界銀行やIMFの開発プログラムを刷新する努力もほとんど払われていない。それらのプログラムは競争がなく官僚的、リスク回避的であり、脆弱な開発過程と差し迫った雇用創出の要求に直面しているアフリカの多くの指導者にとって高くつくにもかかわらず、である。

長年にわたって我々は、この種のプログラムに関して必要な政治的リーダーシップと熱意に欠けてきた、しかし、インターネットの未来に向けた連合はリセットのための力を秘めている。成功のためには、インターネットの核心となる自由がむしばまれるままにして繫栄の道はないことを示し、同時に、さまざまなアプローチを可能にする適切なガイダンスとインセンティブも提供する必要がある。参加しようとしない国は常に存在するだろうが、こうした強力なインセンティブがあれば、インドネシア、ケニヤ、ブラジルなど、多くの「態度を決めかねている国」を参加するよう説得することができる。経済と安全保障の面で皆の持続的な利益になる幅広い国際主義的な連合を構築することでのみ、オープンで世界的なインターネットを長期にわたって真に守ることができるのだ。

編集部注:本稿の執筆者Andrew Bennett(アンドリュー・ベネット)氏はトニー・ブレア地球変動研究所のシニア・ポリシー・アナリスト。インターネット政策と地政学を専門とする。最近、共著で「The Open Internet on the Brink: A Model to Save Its Future.」を上梓。

画像クレジット:metamorworks / Getty Images

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(文:Andrew Bennett、翻訳:Dragonfly)

「デスクレス」ワーカーを対象とした企業向け学習プラットフォームの拡大に向けて英EduMeが約23億円調達

B2B市場で新たなチャンスを狙うテック企業が注目を寄せる「デスクレス」ワーカー。2022年1月、この分野を対象としたeラーニングツールのスタートアップが成長を促進するための資金調達ラウンドを発表した。

ロンドン発のEduMe(エジュミー)は、急成長中のテック企業やさまざまな場所から働く従業員やパートナーを抱える企業を対象に、企業が自由に構築できるオンライントレーニングや教育を「マイクロラーニング」モジュール形式で提供するスタートアップだ。今回のシリーズBラウンドで2000万ドル(約22億9000万円)を調達した同社は、これまで一定の成長を遂げてきた米国でのさらなる事業拡大を図るためにこの資金を活用する予定だという。

今回のラウンドはWorkday(ワークデイ)の戦略的投資部門であるWorkday Ventures(ワークデイ・ベンチャーズ)とProsus(プロサス)が共同でリードしており、EduMeのシリーズAをリードしたValo Ventures(ヴァロ・ベンチャーズ)も参加している。HRプラットフォームであるWorkdayによる投資は、企業内学習やデスクレスワーカーをターゲットにした取り組みを同社が検討しているということの表れでもあるため(どちらも同社の現在のプラットフォームにとって最適な補足要素である)非常に興味深く、また将来M&Aにつながる可能性もなきにしもあらずである。一方EduMeは、IT分野でeラーニングをより使いやすくすることができれば、そこに成長のチャンスがあると踏んでいる。

EduMeのCEO兼創設者であるJacob Waern(ジェイコブ・ワーン)氏はインタビュー中で次のように話している。「デスクレスワーカーへのサービス提供方法のエコシステムが変化しています。アプリを10個持つのは邪魔なので、CRMプラットフォームなどと統合し、従業員が簡単に繋がれるコンテンツを提供したいと考えています」。

EduMeへの投資の他にもProsusは複数のEdTech企業に注力しており、同じく1月に同社は若い消費者ユーザーをターゲットとするオンライン家庭教師プラットフォーム、GoStudent(ゴースチューデント)の大規模ラウンドを主導すると発表した。

かつては敬遠されていたものの、今や主流となったデスクレスワーカー市場への着目は、EduMe自身のDNAを反映している。

もともとは新興国(現在はラテンアメリカ、当時はラテンアメリカとアフリカ)を中心に事業を展開する通信事業者、Millicom(ミリコム)により、通信事業者の顧客層にeラーニングを提供する目的で始まったのが同サービスだ。当時Millicomに在籍し、同サービスを構築したワーン氏は、同サービスが消費者や個人事業主ではなく企業に最も支持されていることを知り、先進国も含めたより広い市場でこの機会を倍増させるために事業のスピンアウトを決行した(EduMeはMillicomからの出資を受けていないとワーン氏は話している)。

急速に規模を拡大し、多様なチームとのコミュニケーション方法を必要としていたライドシェアリングや宅配業者などの業種を初期ユーザーとして見いだした同社。その後、物流、モバイルネットワーク事業者、小売、接客業、ヘルスケアなどの企業にも導入が進められ、現在では、Gopuff(ゴーパフ)、Deliveroo(デリバルー)、Deloitte(デロイト)、Uber(ウーバー)、Vodafone(ボーダフォン)など、約60社のグローバルな顧客を有している。EduMeは、総ユーザー数、使用されている学習モジュール、その他の指標を公開しておらず、評価額についても触れていない。

同社の成長の影には、B2Bのテクノロジー市場における一大トレンドが存在する。デスクレスワーカーは従来、いわゆるナレッジワーカー層に隠れ無視されてきた。1日中パソコンに向かっているナレッジワーカーは、オンライン学習ツールを購入して使用するターゲットとしてあまりにも明白だったからだ。簡単に言えば、こういったユーザーを対象に製品を開発し、販売する方がはるかに簡単だったのだ。

それがここ数年で大きく変わることになる。最も重要なのは、モバイルテクノロジーとクラウドコンピューティングの進歩によってこの進化が促進されたという事実だ。ナレッジワーカーもそうでない人も、今では誰もがスマートフォンを使って仕事をし、より高速な無線ネットワークを利用して小さな画面での利用を想定したアプリケーションを外出先で利用している。

そして最近、その変化を加速させたのが新型コロナウイルス(COVID-19)のパンデミックだ。リモートワークが当たり前になったことで、より多くの人に向けたソリューションが民主化されるようになった。ワーン氏によると、現在世界の労働人口の約80%がデスクレスと推定されているという。

リモートワークの台頭が拍車をかけたのはそれだけでない。物理的な共通スペースでともに仕事をすることができなくなったため、オンライン学習ツールは、企業がチームとコミュニケーションをとったり、トレーニング、オンボーディングや専門的能力の開発に利用したりするための、最も重要かつ中心的な存在となった。

このトレンドの成長は非常に大きなビジネスへと変革しており、2020年の企業内学習関連の市場は、2500億ドル(約28兆6211億円)と推定されている。パンデミックの他、ビジネスや消費者の長期的な習慣の変化がもたらす成長の加速により、2026年には4580億ドル(約52兆4247億円)近くにまで膨れ上がる見込みだという。

リモートワーカーおよびデスクレスワーカーに焦点を当てているという点が、現在の市場におけるEduMe独自のセールスポイントだと同社は考えているようだが、実際はこの分野唯一のプレイヤーと呼ぶには程遠く、激しい競争に直面することになるだろう。企業内学習を促進するために多額の資金を調達したスタートアップには、360Learning(360ラーニング)LearnUpon(ラーンアポン)Go1(ゴーワン)Attensi(アテンシ)などがあり、さらにLinkedIn(リンクトイン)もこの分野に大きな関心を持っている。

「パンデミックによって私たちの働き方は、想像もつかないほどの変化を遂げました。それにともない、従来のようなデスクを持たない従業員を多く持つ急成長中の業界をサポートする必要性は高まる一方です」。Workday Ventures のマネージングディレクター兼代表の Mark Peek (マーク・ピーク)氏は声明中でこう伝えている。「EduMeの革新的なトレーニング・学習プラットフォームは、拡大し続けるデスクレスワーカーに対応しながら、組織が変化を乗り越えて成長するのを支援しており、弊社が EduMe をサポートする理由はそこにあるのです」。

画像クレジット:Smith Collection/Gado/Getty Images / Getty Images

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(文:Ingrid Lunden、翻訳:Dragonfly)

Amazon Musicが2022年中にPandoraを抜いて米国2位の音楽配信サービスに、調査会社が予測

かつてのeMarketer(イーマーケター)、現Insider Intelligence(インサイダー・インテリジェンス)の予測によると、Amazon Music(アマゾン・ミュージック)は2022年中にPandora(パンドラ)を抜き、米国で2番目にユーザー数の多い音楽ストリーミングサービスになる見込みだという。ただし、この調査では、有料プランのユーザーと広告付き無料プランのユーザーの両方が含まれている。Insider Intelligenceは、2022年末時点における各社音楽ストリーミングサービスのユーザー数を、Amazon Musicが5260万人、Pandoraが4910万人、そしてApple Music(アップル・ミュージック)は3820万人になると予想しているが、Apple Musicの利用者はいずれも有料ユーザーであり、広告付き無料プランのユーザーはいない(もちろん、無料トライアル中の可能性もあるが)。

Insider Intelligenceの予測によると、Amazon Musicは前年比5.3%の成長が予想されるが、Pandoraは2017年からユーザーを減らし続けており、このSiriusXM(シリウスXM)傘下のストリーマーのユーザー数は、2022年に6.7%の減少が予想されるという。Pandoraの担当者は、この新たなレポートに関するコメントを辞退したものの、Pandoraは米国における広告付き音楽ストリーミングサービスの首位であると語った。同社の最新の業績報告によると、Pandoraのユーザー数は現在5230万人で、前年の5890万人から減少している。

また、2021年のInsider Intelligenceの調査によると、有料会員数に関しては、Pandoraは競合他社に大きく遅れを取っている。

画像クレジット:eMarketer

Spotify(スポティファイ)は、全世界で1億8千万人のプレミアム会員を抱え、月間アクティブユーザーは有料・無料プラン合わせて4億600万人。他を大きく引き離し、米国のナンバー1音楽ストリーミング配信事業者として君臨している。Spotify独自の報告によると、北米のアクティブユーザーは約9338万人で、そのうち有料会員数は2880万人とされている。Spotifyの数字は国別に加入者数を分けていないため、Pandoraの聴取者とSpotifyの聴取者の規模を直接比較することはできないものの、Pandoraの市場シェアは下がり続けている。それでもPandoraは2021年、2020年から30%増となる7億4300万ドル(約859億円)の粗利益を上げた

Amazon Musicは成長を続けると同時に、その製品自体にも注目すべき改善が見られる。Amazon MusicApple Musicはいずれも2021年、ロスレスオーディオのストリーミング配信を全加入者に提供開始したが、Spotifyにこの機能はまだなく、その遅れについても説明できていない。Amazonはポッドキャストの配信も強化しようとしており、一部のポッドキャストに同期したトランスクリプト(文字起こし)機能を追加した。しかし、Spotifyのポッドキャストリスナーは、同プラットフォームのコンテンツに関する決定が物議を醸しているにもかかわらず、急速に増え続けている。ポッドキャスト業界における買収相次ぐ中、Spotifyがストリーミング業界において支配の手を緩めるつもりがないことは明らかだ。

画像クレジット:TECHCRUNCH

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(文:Amanda Silberling、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

ロシア宇宙機関ロスコスモスCEO、対ロシア制裁がISS運用に深刻な影響及ぼすと脅迫的ツイート―地上への落下示唆

ロシア宇宙機関ロスコスモスCEO、対ロシア制裁がISS運用に深刻な影響及ぼすと脅迫的ツイート―地上への落下示唆

3DSculptor via Getty Images

ロシアの宇宙機関Roscosmosを率いるドミトリー・ロゴージン氏は、米国政府がロシアに対する制裁を厳しくするとの報道を受けてTwitterで激しくそれを非難、バイデン米大統領が木曜日に、制裁が「ロシアの宇宙計画を含む航空宇宙産業を衰退させる」と発言したことに対して、ロシアの宇宙産業に打撃を与えるようなことがあれば、ISSが米国、欧州、インド、中国に落下することになるかもしれないと述べています。

ロゴージン氏は「バイデン大統領は理解していないかもしれないから、ISSの軌道修正や某国のビジネスマンが軌道上にまき散らしているスベースデブリとの接近を回避するのにはロシアのプログレス補給船のエンジンで行われていると誰か説明してやってくれ」「もし我々との協力関係を損なえば、誰がISSを制御不能にして米国や欧州に落下させるのか、インドや中国に500tもある構造物を落とすのか。ISSはロシア上空を飛ばないからリスクを負うのはお前たちだけだ」とツイートを連投しました。

まるで某SFアニメにある”コロニー落とし”を地で行くようなことをするのかとも思える発言ではあるものの、これがまったくの絵空事かといえばそうでもありません。ISSは低軌道に浮かんではいるものの、地球の重力にゆっくりと引き寄せられており、定期的に軌道を押し上げる必要があります。現状ではその押し上げ操作が、ISSにドッキングしたプログレス補給船のエンジンを使って行われているため、ISSはその巨体を軌道にとどめるためにロシアに頼らざるを得ないのが実際のところです。

このことに対して、SNSではSpaceXのドラゴン宇宙船やノースロップ・グラマンのシグナス補給船を利用してプログレスと同じことができないかとの意見が出ています。現在、ISSにはシグナス補給船がドッキングしており、4月にはこれを使った軌道修正のためのテストも計画されています。ただ、そうしたオプションはあくまでオプション以上の、長期的な解決策としての機能を持つものではありません。

ただ、ロシアもロシアで、ISSでの活動はNASAに大きく依存しています。NASAはISSの電力供給を一手に引き受けており、軌道上の位置制御もNASAの協力の上で成り立っています。つまり、ISSにおいてはロシアも米国も、互いに互いの力を必要としているわけです。

もちろんどちらかが一方的にISSを放棄してしまえばそれを維持することはできなくなりますが、いまのところはバイデン大統領が発表したロシアへの制裁措置も、米露の宇宙での協力関係を崩すことがないように組まれており「RoscosmosとNASAの現場はISSの安全な運用のために各国のパートナーとともに協力を継続している」とNASA広報は述べています。

さらに、もし今後もISSに関する計画が予定どおり行われるならば、やはり米露は協力関係を維持し続ける必要があります。3月18日にはソユーズ宇宙船が3人のロシア人飛行士を乗せてISSへと向かう予定であり、現在ISSに滞在するロシア人飛行士2名、NASA飛行士4名、ESAのドイツ人飛行士1名に合流します。そして、3月30日にはNASA飛行士1名とロシア飛行士2名が地上に帰還します。

ちなみに、ISSはすでに2030年での退役を見据えた時期に入っており、最近ではISSをいかにして安全に大気圏に降下させるかという計画の概要も発表されていました。ただ、その計画はプログレス補給船の推進力を利用することを念頭に作られており、仮に一方的にロシアがISSを放棄してしまった場合は、NASAはシグナスを利用する方向に計画を練り直すことになりそうです。

バイデン大統領は、今後米露関係の「完全な断絶」もあり得ると発言しており、そうなったときはロゴージン氏もISSに関ししかるべき対応を打ち出してくると考えられます。今後しばらくはウクライナで起きていることの一方で、軌道の上にいる人たちのことも頭の片隅に覚えておく必要がありそうです。

蛇足。ロゴージン氏は米国の制裁において金融資産凍結対象とされるロシアの重要人物リストに個人として名前が掲載されているとのことです。

(Source:Via the VergeEngadget日本版より転載)

【コラム】米国はシリコンバレーの力を活用して国防のイノベーションを推進すべきだ

米国防総省(DoD)をはじめとする米国政府機関および議会超党派合意は、中国が外交、インフォメーションとインテリジェンス、軍事力および経済力の戦略的活用によって、将来の世界秩序を再定義しようとしていることを認識している。

中国が宣言している目標と目的を踏まえれば、我々はこの評価が今後数十年間継続する可能性を予測すべきだ。

あらゆる公平な観察者にとって、中国の積極的な政府全体による支配、とりわけ軍事領域における支配への取り組みに対する米国の対応は、断片的かつ無効である。対応(要求、取得、予算)のために用意されたシステム(および人員)は、ライフサイクルコストと30年間におよぶDOTMLPF(教義、組織、訓練、物資、指導者育成、人事、施設)プロセス管理に最適化して設計されている。

しかし、戦略的競争に勝つためにはその正反対が必要だ。スピード、緊急性、スケール、短期ライフサイクル、およびアトリビュータブル(帰属可能)なシステムだ。既存のDoDシステムは、現在DoD関連の先端技術(AI / ML、自律、バイオテック、量子、宇宙利用、半導体、等々)のほとんどを支えている民間テクノロジー・エコシステムを効果的に利用するようには作られていない。

DoDの上級軍人および文民のリーダーの多くはこれを理解し、善意のイノベーションイニシアチブを設立してきた。しかし、こうしたイニシアチブへの長期的な資金提供とその効果は、先見性ある指導者個人の支援に依存することがほとんどあり、重要な指導者の在任期間が終わると危機に晒される。

その結果、この国のシステムも組織も人数も予算も、中国をはじめとする潜在的ライバルの挑戦を受けるためのスケーリングができない。我々の敵対者は、この国の伝統的システムが対応できるよりも速く革新している。

多くの人々が、既存のDoDシステムの刷新について記してきた。計画、プログラミング、予算、実行(PPBE)プロセスの修正、DoDアクセラレータおよびDefense Innovation Unit(国防イノベーション・ユニット)の規模拡大、既存の取得権限の活用などだ。

どれも良い考えだが、肝心の問題を見逃している、それは「DoDが民間産業と本格的に関わっていない」ことだ。米国民間セクターの並外れた潜在能力を活かし、その圧倒的に優れたリソースを持ち込むことでより効果的に前進することが、この戦略的競争に勝利するための鍵だ。

シリコンバレーはゲームに戻る準備ができている

第2次世界対戦後の最初の20年間、シリコンバレーは事実上「defense valley(防衛バレー)」だった。DoDと諜報機関のためにチップとシステムを作っていた。シリコンバレーにおけるイノベーションは、戦後スタンフォード大学への海軍研究事務所からの資金提供に始まり、さまざまな機関からの最先端の無線・電子システム開発の発注がそれに続いた。

生まれたての半導体企業にとって最初の大型契約は、大陸間弾道弾ミサイル、Minuteman II(ミニットマン2)の誘導システム、次いでアポロ宇宙船だった。冷戦期、Lockheed(ロッキード)はシリコンバレー最大の雇用主であり、3世代にわたる潜水艦発射弾道ミサイル、人工衛星、およびその他の兵器システムを製造した。シリコンバレーのリソースを結集させた我々の能力が、米国にとって決定的に重要で、最終的にソビエト連邦との冷戦に勝利をもたらしたことは間違いない。

今世紀の戦略的競争に勝つためには、同様のリソースと人材を確保する必要がある。今日、シリコンバレーはDoDを圧倒するテクノロジーエコシステムの中心に位置し、スピードと緊急性をもって動き、インセンティブが与えられれば、資金と人員を壮大なスケールで結集させ、一連の問題を解決することができる。

しかしDoDは、これを「大規模かつスピーディー」に活用すべきリソースであることをなかなか認めない。そして、完全に認めていないために、もしこのリソースを集結できれば何が可能になるのかを考えていない。

そして想像したことがないために、年間3000億ドル(34兆円)以上のベンチャー資金(対してDoDの研究、開発、試験、評価[RDT&R]プログラムは1120億ドル[約13兆円]、調達は1320億ドル[約15兆円])をこの国の安全保障を支える可能性のある軍民両用活動を支える分野に注ぎ込ませるために、どのようなインセンティブ(たとえば大規模な優遇税制など)を与えればよいのか考えたこともない。

「ハンマーにはあらゆるものが釘にみえる」ということわざは、主権と国際法への脅威のような問題の答をうまく説明している。ほとんどの思考は、既存の兵器システム(艦船、空母、原子力潜水艦)の追加 / 改良に限定されていて、代替的な軍事概念や南シナ海やバルト海やカリニングラードにおける戦争の阻止あるいは勝利に貢献した即時展開可能な兵器ではない。

どうやら、新しいベンダーによる小型、低価格、アトリビュータブル、自律型、致死的、大量、分散、短期ライフサイクルのプロジェクトを中心に作られた新しいシステムとコンセプトに関する会話は、ほぼ禁止されているようだ。しかし、これらこそが集まってくるソリューションとイノベーションエコシステムだ。SpaceX(スペースエックス)のような会社50社が、21世紀のDoDを作るのに協力するところを想像して欲しい。

米国の選りすぐりを戦略的競争に参加させよ

米国の民間セクター、特にシリコンバレーに焦点を合わせ、比類なきイノベーションと並外れた潜在投資力とともにその力を爆発させることで、中国に対する米国の能力低下を逆転させ、さまざまな主要テクノロジー分野で優位性を保つことができる。

それだけではない。我々はもっと積極的かつ意識的に、この国の世界に名だたる高等教育機構、すなわち米国主要大学に集まった才気あふれる革新的かつ創造的な学生たちと教員陣の膨大な未開発の可能性を活用しなくてはならない。

この国はかつてこれに成功したことがある。スタンフォードをはじめとする米国主要研究大学のほとんどは、冷戦期の軍事イノベーションエコシステムに不可欠な存在だった。しかし、シリコンバレーが独特だったのは、スタンフォード大学の工学部が、教授や大学院生に軍事エレクトロニクス企業を立ち上げるよう積極的に働きかけたことだった。最高の人材を集め、テクノロジーを商品化することでソビエト連邦とのレースに勝つための手助けをした。

この歴史的事例に触発され、我々は最近Stanford Gordian Knot Center for National Security Innovation(スタンフォード・ゴーディアン・ノット国家安全イノベーション・センター)を設立し、シリコンバレーのテクノロジー、人材、資産、スピード、そして困難な問題に立ち向かう情熱を駆使して米国がこの戦略的競争の新時代を勝ち抜く力になろうとしている。

我々はさらに、シリコンバレーや他のイノベーションエコシステムを横断してリソースを統合する取り組みを進めていかなければならない。トップクラスの大学では、国家安全保障イノベーションの教育を本格化する必要がある。国家安全保障イノベーターの養成、洞察力、融合、ポリシーアウトリーチの提供、最も困難な問題の解決の触媒になりうる実用最小限の製品の継続的創出などだ。

この国のすべてのリソースと至高の人的財産を活用しないリスクはあまりにも大きい。

編集部注:Steve Blank(スティーブ・ブランク)氏は、スタンフォード大学Gordian Knot Center for National Security Innovationの創立メンバーで、同大学の非常勤教授およびコロンビア大学のイノベーション担当上級フェロー。

Joe Felter(ジョー・フェルター)氏はGordian Knot Center for National Security Innovationのセンター・ディレクター、創立メンバーで、スタンフォー大学のCenter for International Security and Cooperation、Hoover Institution、およびStanford Technology Ventures Programの講師、研究職。

Raj Shah(ラジ・シャー)氏はGordian Knot Center for National Security Innovationの創立メンバー、テクノロジー企業家・投資家、スタンフォード大学非常勤教授、ペンタゴン防衛イノベーション・ユニット実験の元マネージング・パートナー。

画像クレジット:Andriy Onufriyenko / Getty Images

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(文:Steve Blank、Joe Felter、Raj Shah、翻訳:Nob Takahashi / facebook

環境再生型農業のトレンドを食肉市場に取り込む99 Counties

Christian Ebersol(クリスチャン・エバーソル)氏は、健康保険会社に勤務していたとき、炭素の回収貯蔵と植物由来の食品に関心を持つようになった。

これらの分野で何ができるかを考えるためにOMERS Venturesのアントレプレナー・イン・レジデンス(客員起業家)プログラムに参加した後、Mark Bittman(マーク・ビットマン)氏の著書「Animal, Vegetable, Junk:A History of Food, from Sustainable to Suicidal」を読み始めた。この本でエバーソル氏は環境再生型農業に出会った。環境再生型農業とは土壌や水、空気の状態を悪化させることなく、植物と動物が同じ農場で共存する方法だ。

近年、この農法は大きな投資分野として脚光を浴びていて、2019年時点で3200億ドル(約36兆8000億円)がこの分野に注がれたという報道もあり、Whole Foodsなどの大手ブランドは2020年の食のトレンドとして環境再生型農業がナンバーワンになると指摘している。

環境再生型農業は、アイオワ州の農家Nick Wallace(ニック・ウォレス)氏が、エバーソル氏がウォレス氏に出会った時に行っていたことだ。アイオワ州の99の郡の環境再生型農家と、牛肉、豚肉、鶏肉を箱買いする消費者をつなぐマーケットプレイスで、1000億ドル(約11兆4900億円)の米国食肉市場をディスラプトしようと、エバーソル氏はMike Adkins(マイク・アドキンス)氏とともに99 Counties(99カウンティーズ)を立ち上げた。

99 Countiesは、農家が家畜の飼育に専念でき、また消費者が クルマで1日で行ける地元の農家に肉を注文できるよう、加工、輸送、販売のすべてをコーディネートする。99 Countiesはまた、農家の環境再生手法の実践を認証し、農家への報酬を保証している。

画像クレジット:99 Counties

「今日、人々はほとんどの食品についてそれがどこから来たのか知りません」とエバーソル氏はTechCrunchに語った。「私たちの技術は、トレーサビリティに関するものです。我々があなたの家族に食品を届けるとき、あなたはそれがどの農場のものかを知り、バーコードをスキャンして農場についてのビデオを見ることができ、それが加工されるためにどのようにう移動したかや農場の人道的な動物の扱いを見ることができます」。

同社は現在、シカゴとアイオワ州以外でサービスを提供する予定はない。というのは、顧客に届くまでの食品の移動距離を減らすことを目的としているからだ。しかし、より多様な選択肢を提供できるよう、農家の開拓には取り組んでいる。

99 Countiesは、OMERS Venturesがリードし、Union Labs、GV、Supply Change Capitalが参加した直近のラウンドで380万ドル(約4億4000万円)のプレシード資金を獲得し、この資金をもとに9月に15の農場で正式にスタートする予定だ。

OMERS VenturesのマネージングパートナーMichael Yang(マイケル・ヤン)氏は「クリスチャンと99 Countiesのチームが構築しているのは、持続可能な食肉の単なるマーケットプレイスをはるかに超えるものです」と文書で述べた。「消費者の間で高まっている、地元産の高品質な食品を手に入れたいという欲求を満たすためのインフラを構築しているのです。これまで農家は、こうした市場に参入したいという願望はあっても現実には実現不可能で、価格も手ごろではありませんでした。このモデルがアイオワで成功すれば、全米で再現できないはずはありません」。

調達した資金は、ウォレス氏の既存の環境再生型農業事業を99 Countiesの傘下に置くなど、事業の拡大に充てられる。また、雇用やトレーサビリティ技術の確立、提携農場に関するコンテンツを消費者に提供するマーケティングにも使う予定だ。

99 CountiesはButcher BoxやCrowd Cowのような企業と競合している。Crunchbaseによると、Crowd Cowは過去4年間で2500万ドル(約28億7000万円)を調達した。しかし、何千マイルも離れた場所から肉を調達している競合他社に対し、99 Countiesはより地元に根ざしたフードシステムを奨励している点で他社と異なるとエバーソル氏は述べた。

一方でPepsiCoGeneral Millsなどの大企業が数千万エーカーの土地を環境再生型農業にする意向を表明するなど、環境再生型農業の人気が高まる中、環境再生型コミュニティは土を耕すことが少なくなり、動物を農場に戻すことで有機が再生される、というのがエバーソル氏の意見だ。

同氏は、99 Countiesを最終的にはサブスクリプション事業にしたいと考えており、開始後2022年末までに1400世帯との契約を獲得することを目標としている。平均的な購買価格は140ドル(約1万6000円)を見込んでいる。当面、正式な立ち上げ前にやるべきことがある。

「来月には、農家や加工業者と契約し、農家のストーリーを伝えるためのコンテンツ、ソーシャルメディア、マーケティングに携わる人材を投入する予定です」と、エバーソル氏は付け加えた。「また、トレーサビリティを確立し、人々が購入するための店舗も設置します」。

画像クレジット:99 Counties / 99 Counties co-founders, from left, Mike Adkins, Nick Wallace and Christian Ebersol

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(文:Christine Hall、翻訳:Nariko Mizoguchi