Relativity Spaceは3Dプリントとクラウドベースのソフトウェアで新型コロナの嵐をやり過ごす

他のどの業界とも同様に宇宙関連の若いスタートアップや企業でも、新型コロナウイルス危機の煽りを受けてレイオフが相次いでいる。しかし、Relativity Space(レラティビティー・スペース)は、なんとかレイオフを回避できた。それどころか、世界的パンデミックにも負けず、新規に従業員を雇用している。RelativityのCEOで創設者のTim Ellis(ティム・エリス)氏は、大型3Dプリントと、クラウドベースのツールとテクノロジーの導入にフォーカスしたことが、会社を苦境に追い込まなかった大きな要因だと話している。

Relativityが間もなく完成させるロケットは、エンジンから胴体、さらにはその中間にあるものまで、ほとんどが3Dプリント部品で構成されるため、基本的にほぼ途切れることなくプロトタイプの製造を進めることができた。Relativityは、航空宇宙と防衛に携わる企業の例に漏れず、必要不可欠な事業と認知されているのだが、相当早い時期から新型コロナウイルスの潜在的な危険性に対処し、従業員の健康と安全を確保すべく手を打ってきたとエリス氏は言う。米国でこの病気が問題視され始めた3月9日、公式な規制や自宅待機の要請が出される以前に、Relativityでは早くも従業員に自宅勤務を勧めていた。

「それができたのは、一部には私たちの自動プリント技術のおかげです。工場にはごくごくわずかな人間しかいませんが、それでもプリンターを動かし続けることができます」とエリス氏はインタビューで話してくれた。「現に今はたった1人で数台のプリンターを見ていますが、実際にプリントが行われています。文字通りワンマン運転です。その一方、この2週間ほどの間に、会社の業務の大半を自宅で処理できるようにしました」。

たった1人の現場担当者で工場全体を管理できる能力は、現在の状況において、競争上、非常に大きな強みであり、同時に従業員の健康と安全を大切に守る方策でもある。エリス氏によると、同社はすでに複数の地域で業務を行っているという。ケープ・カナベラルとフロリダに加えて、ミシシッピ州のジョン・C・ステニス宇宙センターとロサンゼルス本社だ。Relativityではまた、米国内の離れた場所からも数名の従業員がテレワークしている。同社は早くから、全員が一箇所に集まらなくてもデザインや開発が行えるように体制を整えていたのだ。

「私たちはワークフローを円滑にするために、独自のソフトウェアツールを開発しました。それが大変に優れています」とエリス氏。「しかも、ITAR(国際武器取引規制)と複数の暗号プロトコルに準拠しつつクラウドに深く対応した企業ということだけでも、本当に有利なのです」。

自社開発のソフトウェアとクラウドベースのツールに集中したことに加え、エリス氏は、一番新しい資金調達ラウンド 、 2019年10月にクローズした1億4000万ドル(約152億円) のタイミングも、新型コロナウイルス危機への備えに貢献したと考えている。Relativityはレイオフを回避し、新たな求人も開始しただけではない。パートタイムも含め、全従業員に給与を全額支給し続けている。これはすべて、今思えば先を見通したビジネスモデルのおかげなのだが、現在の国際的ビジネス状況におけるこの目覚ましい優位性は、実際のところ単に幸運の賜物だとエリス氏は言う。それでもこれまでのRelativityの回復力は、一部には新型コロナウイルスのパンデミックに起因する大きな永続的変化の現れだと彼は信じている。

「それによって本当に変わるもの【中略】は、国際的なサプライチェーンへのアプローチです」と彼は言う。「もっと多くのものを米国内で生産して、サプライチェーンの過度なグローバル化への依存を減らそうという圧力が高まると思います。私たちがずっと3Dプリンターを使ってきたのは、そのためでもあります。それは、ごくわずかな作業員で、今のような状況下でもロケットの第1段が作れてしまう自動化のテクノロジーというだけではありません。サプライチェーンに関して言えば、限られた数の供給業者と、いくつもの製造方法からなる簡素なサプライチェーンを持つことで、供給業者やサプライチェーンの停止による大打撃を大幅に減らせるのです」。

新型コロナウイルス危機が、2021年に最初の3Dプリントロケットを飛ばすという予定を含めた打ち上げスケジュール全体に、どこまで影響を与えるかはまるで予測できないが、テレワークと社会的隔離指示に難なく添える製造ラインで多くの業務がこなせるとエリス氏は期待している。ジョン・C・ステニス宇宙センターのエンジン試験場といった提携施設が閉鎖されれば、確かに打撃にはなる。だがRelativityの回復力は、この危機的状況が去ったあかつきには、あらゆる種類の製造業の模範となるだろう。

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(翻訳:金井哲夫)

IoT接続用の衛星コンステレーションを展開するMyriotaがシリーズBで21億円を調達

モノのインターネット(IoT)に、人工衛星によるインターネット接続を提供するMyriotaが、HostplusとMain Sequence VenturesがリードするシリーズBのラウンドで1930万ドル(約21億円)を調達した。これにはBoeing(ボーイング)と元オーストラリア首相Malcolm Turnbull(マルコム・ターンブル)氏、Singtel Innov8などが参加した。同社の調達総額はこれで3700万ドル(約40億3000万円)になり、軌道上にはすでに4つの衛星がある。計画では、新たな資金を基に2022年までには衛星数を25に増設する。

Myriotaは、IoT向けに衛星への直接接続をローコストで提供する。それは主に機器装置類のモニタリングのような産業的利用や、地下水の水位測定のような環境保護活動で利用されている。オーストラリアのアデレードに本社を置く同社は、独自の技術で低コストのIoT通信技術を開発し、それはバッテリー寿命やセキュリティ、拡張性、および費用の点で既存のソリューションに優ると主張している。

今回の資金で同社は、次の2年間ほどで社員を5割ぐらい増やし、国際市場へのさらなる進出を目指したいと考えている。また同社のすべてのプロダクトに、リアルタイムレポート作成を可能にする製品の構築にも注力していく。

Myriotaの拡張プランは既に始まっており、最近は同社と同じく宇宙テクノロジー企業であるカナダのexactEarthを買収した。それにより同社は軌道上の衛星4つと新たな社員、そしてカナダ、米国、ノルウェー、シンガポール、パナマおよび南極にある計6つの地上局を入手した。

Myriotaは、50基のIoT用衛星コンステレーションを作ってグローバルな規模とサービスを提供することを目標としている。

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

モバイル決済アプリのLydiaが医療機関などに寄付できる機能を導入

フィンテックスタートアップLydia(リディア)は本拠地のフランスで330万人ものユーザーを抱える、同国を代表するモバイル決済アプリだ。それゆえに同社は、当初2020年夏のデビューを予定していた機能のリリースにこの10日間ほど懸命に取り組んできた。その機能とは、チャリティーや病院への寄付を行うためのものだ。

Lydiaユーザーは米国時間4月6日、17のチャリティーから選んでお馴染みのLydia決済手順で送金できるようになった。友達や家族に送金するような流れだ。

寄付は0.5ユーロ(約59円)から可能で、そのつど完了する。定期的な寄付の設定やまとめた寄付は不可だ。

Lydiaはつい最近、少額融資や携帯電話保険、火災保険・公共料金支払いのための無料クレジットといった金融商品のマーケットプレイス「the market」を導入した。マーケットのメニューはプロフィールタブの中に埋もれていた。そして現在、同社はメニューをユーザーアカウントと決済履歴の横のタブに置かれており、その中に寄付のボタンが加わった。

別の方法で寄付することもできる。決済画面で金額を入力して「次へ」をタップするときに、いつもの受取手が並んでいるリストからチャリティを選んで送金することができる。この機能は現在Android端末で利用でき、間もなくiOS端末でも使えるようになる。iOSユーザーは目下、the marketのメニューからのみの利用となる。

Lydiaは17のチャリティを選んでいるが、今後さらに増える見込みだ。リストには公立病院(パリ、ナント、ストラスブール、グルノーブル、リール、ニース)、健康にフォーカスしているチャリティ、そして一般的な公益チャリティ(フランス財団、Fondation 101、世界の医療団、Epic、Action contre la Faim、フランス赤十字社、アベ・ピエール財団、対がん連盟、Réseau Entourage、La Maison des Femmes de Saint-Denis)がある。

もしあなたがLydiaユーザーでなくても、ウェブブラウザからクレジットカードやデビットカードでLydiaの決済を使うことができる(もちろんチャリティのウェブサイトから直接寄付しても構わない)。

また多額の寄付をし、所得税で控除を受けたい場合は、チャリティに直接依頼しなければならない。Lydiaは仲介するだけなので控除を受けるための書類を発行できない。

Lydiaは最終的にはチャリティに寄付する際、その額から手数料を差し引くつもりだ。しかし新型コロナウイルス(COVID-19)危機対応として6月30日まで手数料を免除する。

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(翻訳:Mizoguchi

機械学習モデルをさまざまなハードウェアに合わせて最適化するOctoMLが16億円相当を調達

OctoMLは機械学習のコンパイラースタックプロジェクトApache TVMのチームが創ったスタートアップだ。米国時間4月3日に同社は、Amplifyがリードし、90万ドル(約4億2000万円)のシードラウンドをリードしたMadrona Venturesが参加したシリーズAのラウンドで1500万ドル(約16億円)を調達した。OctoMLとTVMの中核的なアイデアは、機械学習を使って機械学習モデルを最適化し、さまざまなタイプのハードウェアでより効率的に動くようにすることだ。

OctoMLのCEOでワシントン大学の教授Luis Ceze(ルイス・セズ)氏は「機械学習モデルの開発はかなり進歩しているが、モデルを手にした時点から例えば、それを実際にエッジやクラウドで有効に使うためにはどう活用するのかという大きな苦労が始まる」と語る。

そのためにセズ氏と彼のワシントン大学のアレンコンピューターサイエンススクール(Paul G. Allen School of Computer Science & Engineering)の仲間たちがローンチしたのが、TVMプロジェクトだ。今やそれはApacheのインキュベイティングプロジェクトであり、AWS、ARM、Facebook、Google、Intel、Microsoft、Nvidia, Xilinxなどの企業からの利用、サポートが多いことから、チームは本格的な商用化が必要と考えた。そこで生まれたのがOctoMLだ。今日では、Amazon Alexaのウェイクワードの検出にもTVMが使われている。

セズ氏はTVMを、機械学習のモデルのための新しいオペレーティングシステムだ、と説明する。「機械学習のモデルはコードではないため、そこにコンピューターが実行する命令はない。そこにあるのは、統計的なモデリングを記述する数字だ。そんなモデルを特定のハードウェアプラットフォーム上で効率的に動作させるには非常に多くの問題があります。実行性能の良い方法を決めるのは非常に困難なで、人間の直観を必要とする重要な作業です」。

そのためOctoMLと、そのSaaSプロダクト「Octomizer」が登場した。ユーザーは自分のモデルをこのSaaSへアップロードすると自動的にモデルはユーザーが指定したハードウェアとフォーマットに基づいて最適化され、ベンチマークされ、パッケージされる。さらに高度な使い方として、このサービスのAPIをCI/CDの工程中に加えるやり方もある。そうやって最適化されたモデルは、それが動くハードウェアを完全に有効利用するよう最適化されているため相当速いが、多くの企業にとってさらにありがたいのは、効率化されたモデルがクラウドの利用コストを下げてくれること。そして性能の低い安価なハードウェアを使っても、これまでと同じ結果が得られることだ。ユースケースによっては、TVMはすでに80倍のパフォーマンス向上を達成している。

現在、OctoMLのチームは約20名だ。今回の新しい資金で増員を予定している。採用されるのは主にエンジニアだが、エバンジェリストも雇いたいとセズ氏は言う。また彼によると、SaaSプロダクト「Octomizer」は出だしとしては良いが、本当の目標は機能がもっと完全に揃ったMLOpsのプラットフォームだとのこと。「OctoMLのミッションは、MLOpsを自動化する世界で最良のプラットフォームを構築することだ」とセズ氏は語っている。

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

新型コロナ対策として空港の混雑などを監視するZensorsのコンピュータビジョン

新型コロナウイルスの感染が広がる中、商用のコンピュータビジョン技術が人々の行動を観測する有益なツールになりつつある。機械学習でレストランの空き状況や行列などを追跡するスタートアップのZensorsは、感染拡大防止のために測定のシステム化を必要としている空港などで、このプラットフォームを無料で利用できるようにする。

Zensorsが創業したのは2年前の2018年だが、TechCrunchは2016年に防犯カメラの映像などから有用なデータを抽出するコンピュータビジョンのアーリーアダプターの1つとして同社を紹介した。レストランを映すカメラでテーブルの空きを数え、時間の経過に伴うデータの変化を追跡するのは可能で当然のことのように思えるかもしれないが、数年前にはなかなか思いつかないことで、実現も簡単ではなかった。

それ以来Zensorsは、空港、オフィス、小売店などそれぞれの環境に合わせたツールを作ってきた。座席の埋まり具合やゴミ、行列の見込みなどを調べることができる。偶然ではあるが、人と人との距離を注意深く監視する必要がある現在の状況において、このようなデータは空港などの管理者にとってまさに必要なものだ。

Zensorsはカーネギーメロン大学から生まれた企業だ。Zensorsの共同創業者であるAnuraag Jain(アヌラーグ・ジェイン)氏は同大学に対し、Zensorsの技術を公衆衛生に生かしたいと考える空港などから多くの問い合わせを受けたと語っている

例えば、何人が行列に並んでいるかを数えるソフトウェアを応用すれば、簡単に人々の密集具合を推計し、人が集まり過ぎていたり狭い場所に集中したりしているときにアラートを送信できる。

「これで利益を得るのではなく、無償で支援しようと考えた」とジェイン氏は言う。そこで最短でも今後2カ月間、Zensorsは同社のプラットフォームを「我々のクライアントである空港など、現在の危機に最前線で対応している一部の組織」に対して無償で提供する。

特定のエリアにいる人が多すぎないか、ある場所が最後にいつ清掃されたか、急いで清掃する必要があるか、ある集団の中で何人がマスクをつけているかなど、新型コロナウイルスに関連して知りたい情報を提供する機能がすでに強化されている。

空港ではおそらくこうした情報をすでに追跡しているが、あまり体系化されてはいないだろう。このようなシステムは、清潔な環境を維持しリスクを減らすのに役立つはずだ。Zensorsとしては無償で試用した組織の一部が料金を支払うクライアントになることを期待していると思われる。関心を持った組織は、Zensorsの通常の問い合わせフォームから相談できる。

トップ画像クレジット:Zensors

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(翻訳:Kaori Koyama)

Cue Healthが現場で使用する携帯型新型コロナ検査器の開発で米政府と契約

バイオテックのスタートアップCue Healthが、米保健福祉省(U.S. Department of Health and Human Services)の生物医学先端研究開発局(Biomedical Advanced Research and Development Authority, BARDA)と1300万ドル(約14億円)の契約を結んだ。この契約金は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)を起こしている新型コロナウイルスSARS-CoV-2の存在を検出する、片手で持てる分子検査器の開発と迅速化に使用される。

Cueは2014年に、家庭でも検査などができるインターネットに接続された超小型実験室(ミニラボ)で起業し、これまで750万ドル(約8億円)を調達している。同社が現在開発しているプロダクトは、カートリッジのような検査キットとインターネットに接続されたミニラボデバイスを結びつけて、結果をパーソナライズされたアプリベースの健康ダッシュボードに送信する。

同社は2018年にBARDAと3000万ドル(約32億円)の契約を結んでおり、インフルエンザと多重呼吸器病原体の現場および家庭用簡易検査器の開発と検証を任されていた。この既存の関係や作業は新型検査器の開発に向けた努力を早急に始めるのに役立つだろう、と同社は言っている。

CEOのAyub Khattak(アユブ・カタック)氏は、声明で「過去2年間、家庭や治療現場でインフルエンザの分子検査を20分でできる検査器をBARDAと共同開発してきた。我々のインターネットに接続するプラットフォームは、SARS-CoV-2ウイルスの検査に関しても重要なツールとして役に立つだろう」と述べている。

同社はまた同年のシリーズBで4500万ドル(約48億円)を調達し、初めてのFDA認可の臨床製品を開発する資金にした。それらは同社にとって初めての消費者向け診断ツールの評価に使われる製品でもあった。

Cueが提案している検査ソリューションは、綿棒で採取した鼻水を検体として、25分間以内に結果が出る。検体を検査専門機関などへ送らなくても治療の現場で検査することができる。

FDAの緊急時使用認可(Emergency Use Authorization)で認められた、現場使用型高速検査器はCueの製品だけではない。利用可能になる具体的なスケジュールはないが、検査器が足りない現状では、効果がある製品がなるべく多くあった方がよい。このCueの仕事は、グローバルな危機や未来のパンデミックで役に立つ、長期的な意義を持つだろう。

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

「カップル創業」はスタートアップの秘密兵器

「1人でClearbanc(クリアバンクを経営していたら、これまでに8回は失敗していただろう」と話すのは、Clearbanc共同創業者のAndrew D’Souza(アンドリュー・ドゥーザ)氏だ。

そしてもう1人の共同創業者であるMichele Romanow(ミケーレ・ロマノウ)氏は「1人でClearbancを経営していたら、今の半分の規模だったでしょう」とドスーザ氏のコメントに補足する。

そのドゥーザ氏とロマノウ氏の2人は、4億2000万ドル(約452億円)もの出資を受けたフィンテック企業を共同創業した仕事上のパートナーであるだけでなく、恋愛関係上のパートナーでもある。

2人が出会ったのはサンフランシスコで開催したイベントでのこと。その後、意気投合した2人は、情報交換も兼ねてメキシコ料理のレストランで食事をすることになる。当時のドゥーザ氏は、すでに資金調達ラウンドも経験したことのある起業家で、一方のロマノウ氏は自身のスタートアップのための資金調達方法を模索していた最中だったこともあり、彼の話を熱心に聞き入れた。結局、ロマノウ氏は自身の会社をGrouponに売却することになるのだが、この時のドゥーザ氏との会話が売却時の評価額を高く保つのに役立ったという。そして、これが彼らの恋の始まりでもあった。

2014年に付き合い始めた当時、彼らはそれぞれの武勇伝を語り合った。ドゥーザ氏はこれまで立ち上げたすべての事業で資金調達を受けてきたが、一方のロマノウ氏が起業した会社は自己資金でまかなっていた。その対照的な2人の対話から生まれたのがClearbancだ。同社は一般的なエクイティ投資ではなく、スタートアップとレベニューシェア契約を結ぶことによって、起業家の持ち分を減らすことなく企業に資金を供給することを専門としたカナダのベンチャーキャピタルとして成長中だ。

Clearbancのほかにも、共同創業者カップルが指揮をとるスタートアップが、大規模な資金調達やイグジットを達成している。Julia Hartz(ジュリア・ハーツ)氏とKevin Hartz(ケビン・ハーツ)氏は、2018年にニューヨーク証券取引所に上場したEventbrite(イベントブライトの共同創業者だ。Diane Greene(ダイアン・グリーン)とMendel Rosenblum(メンデル・ローゼンブラム)夫妻は、2015年にDellが買収したVMware(ヴイエムウェア)を創業した。仕事上と恋愛上のパートナーを兼ねるという異色の関係は、もしかするとテック系スタートアップにとっての秘密兵器なのかもしれない。でも、それには共同創業者間の意見の食い違い、極端に不均衡な持分、果ては離婚というリスクも伴う。

Andrew D’Souza氏とMichele Romanow氏

Clearbanc共同創業者のアンドリュー・ ドゥーザ氏とミケーレ・ロマノウ氏

「とりあえず電話は置いて」

スタートアップの共同創業者の誰かと話せばわかると思うが、彼らの自由時間は皆無に等しい。ビジネスを共同経営しているカップルにとって、同じ就業サイクルで仕事をすることは利点だという。「同じ日に働いていれば、何か問題が起こっても同じリズムで対処できる」と話すのはロマノウ氏。「だから、なぜロマノウがトラブル処理のために電話に出るのかははっきりとわかっています。彼がやらなければ、その役は私に回ってくるのですから」。

NEXT Trucking(ネクスト・トラッキング)共同創業者のLidia Yan(リディア・ヤン)氏とElton Chung(エルトン・チョン)氏は、シリーズCラウンドでBrookfield(ブルックフィールド)とSequoia(セコイア)から調達した9700万ドル(約104億円)を含め、合計1億2500万ドル(約134億円)の資金を調達した起業家だ。この会社は彼らの生活に組み込まれているようなものだ、と2人は言う。しかしそれはビジネスにとっては最高かもしれないが、夫婦関係にとっては常にそうだとは限らない。「いつもすごい勢いで仕事について話している。オフィスだけじゃなくて、家でも」と言うのはヤン氏。解決方法はiPhoneのアラームを使った簡単なルールだ。仕事に関する話は、毎晩20時にアラームが鳴るまで。週末の自由な時間には、2人とも大好きな食べ歩きをLAですることもある。

Lidia Yan氏とElton Chung氏

NEXT Trucking共同創業者のリディア・ヤン氏とエルトン・チョン氏

また、会社の成長期にはハネムーンや子供の世話など、他の大切なことを保留にする決意が必要だと共同創業者カップルは言う。

Leslie Voorhees(レスリー・ボーヒーズ)氏とCalley Means(キャリー・ミーンズ)氏は2016年に結婚したが、ハネムーンにはまだ行っていない。この2人は、カスタムメイドのウェディングドレスを展開するスタートアップ、Anomalie(アノマリー)の共同創業者だ。同社はこれまでに1810万ドル(約19億円)を調達している。結婚式の翌日、新婚の2人はボラボラ島へハネムーンに出かける代わりに、中国行きの飛行機に乗った。レスリーはここに数カ月滞在し、Anomalieのサプライチェーンを構築したのだ。2人は今でもプライベートの時間を持てていないことを認めている。

「結婚してから、ウェディングドレス以外の話をした時間は1時間もない。健全なことではないかもしれないけれど、毎日ウェディングドレスに夢中になってることが楽しい」とレスリーは言う。

2人にはそれぞれを補い合うスキルがある。キャリーのすばらしい才能は迅速な決断力で、レスリーはより体系的に物事を整理することができる。彼らは、共同創業者という関係は2人の絆を強めたと言う一方で、今は生活の線引きを決めているところだとも話す。起業家であるためには、会社のために人生の他の部分を犠牲にする必要があるのだ。

「シリーズDの資金調達が終わったら、子供を作ることを考え始めるよ」と言うキャリーのジョークは、実はジョークではないかもしれない。

Leslie Voorhees氏とCalley Means氏

Anomalie共同創業者、レスリー・ボーヒーズ氏とキャリー・ミーンズ氏

夫婦の共同創業者への出資に積極的な投資家

Clearbancは、スタートアップが簡単かつ素早く成長のための資金を調達する手段を提供している。同社の20分タームシートという商品は、創業者が資金を調達する際に通常では3~6カ月かかる処理を20分間でできるようにするものだ。しかし、Clearbancに出資する投資家は同社の共同創業者の関係をどのように思っているのだろうか。最初の印象は好意的ではなかった。

初期のラウンドを見送ったClearbancの投資家の1人は、それぞれ個別になら投資する用意はあるが、付き合い出して1年しかたっていないカップルへの投資には懸念があるとドゥーザ氏とロマノウ氏に説明したそうだ。

「結局、この投資家は100倍の投資額で2ラウンドも投資してくれた」とドゥーザ氏は言う。これによって、カップルへの投資にはリスクが大きいというのが錯覚であることの証明になると2人は思っている。

現在、投資家もこれに同意しているようだ。メキシコを拠点とするオンデマンド求人サイト、Apli(アプリ)の共同創業者夫婦がALLVP(ラテンアメリカのVC)のオフィスを訪問した際、このファンドは夫婦が経営する会社に投資することに確信がなかった。

Apli創業者のVera(ベラ)とJose(ホセ)はハーバード・ビジネス・スクールで出会い、それぞれRocket Internetメキシコ支社の別部門で働いた後、Apliを設立した。一般的にはビジネスモデル、製品の市場への適合性、出資金が同社に与えるインパクトなどが投資を決定する際にファンドが検討する要素だが、今回のケースでは創業者の婚姻状況も考慮された。

「話し合いの結果、通常のファンドチーム同様にチームを分析することに決めた」と言うのはALLVPのパートナー、Federico Antoni(フェデリコ・アントニ)氏。明らかな個人的な結び付き以外に、ベラとホセには職業上の特別な関係があった。「離婚の危険性を考慮した上で、投資することに決定した。プライベートとスタートアップの仕事のバランスが取れる会社に完全な投資をするチームをセットアップした」とアントニ氏は言う。

創業者の持分も、もう1つの危険要素になる。共同創業者がカップルの場合、投資家は資本構成についても懸念する。2人が結婚していて財布が共同になっている場合、創業者カップルは会社の持分の圧倒的多数を所有することができる。結婚していない2人の創業者が会社の20%ずつを所有している場合に対して、結婚している創業者カップルは40%を所有することになる。この論理でいうと、結婚している共同創業者はベンチャーキャピタルとの交渉が優勢になる可能性がある。

しかし、インタビューしたキャピタリストの中にはこの論理に同意しない者もあった。

「私にとってエクイティについて唯一重要なことは、創業者が十分な数を所有しているかどうか。ベンチャーキャピタルの投資は本質的には少額投資なので、創業者のやる気が持続し、持続性のある事業の構築に報酬を提供することが重要」と言うのはAndreessen Horowitz(アンドリーセン・ホロウィッツ)のゼネラルパートナー、David Ulevitch(デビッド・ウルビッチ)氏だ。

しかし、共同創業者の2人の関係がうまくいかない場合はどうなるか?

離婚はスタートアップの終焉とは限らない

Sara Margulis(サラ・マルグリス)氏とJosh Margulis(ジョシュ・マルグリス)氏は、2006年にハネムーン登録サイトのHoneyfund(ハニーファンド)を創業した。当時結婚していた2人は2015年にテレビ番組Shark Tank(シャーク・タンク)に出演し、Kevin O’Leary(ケビン・オリアリー)から40万ドル(約4300万円)の投資を勝ち取った。HoneyfundはZolaやThe Knotのような人気のあるウェディング系のスタートアップとは異なり、クラウドファンディングプラットフォームをコア製品として、婚約したばかりのカップルの結婚式やハネムーンの資金調達を助けるものだとサラは言う。

2019年にサラとジョシュが離婚したとき、直感的に思ったことは会社の売却だった。しかし「2人の職業上の方向性が離れていくほど、私がやりたい方法でチームを編成して、自分の優先順位で事業を進めていくチャンスが見えてきた」とサラは言う。結局、サラは元夫の会社の所有分を買い取り、CEOとして新しい方向で会社を継続した。

Sara Margulis氏

Honeyfund共同創業者兼CEO、サラ・マルグリス氏

「一緒に仕事をしていなかったら、離婚のプロセスは違っていたでしょう。私たちの関係について、辛いけど話さなければならないことがあったが、それをTargetとのパートナーシップ提携の大規模な立ち上げの最中にジョシュに言いたくなかった」とサラは言う。

彼、彼女らのビジネスの原点は、夫婦としての実際の経験に根付いている。Shark Tankの投資家から共感を得て、かつ総額720億ドル(約7兆7500億円)もの市場規模がある彼らのビジネスは、愛と婚姻の継続を商品化するものだった。しかし新婚時代は永遠には続かない。アメリカ心理学会によると、アメリカでは結婚した夫婦の50%ほどが離婚するという。

現在、マルグリス氏の共同創業者との離婚の経験は、同社の商品開発とマーケティング戦略に役立っている。

離婚後、マルグリス氏はHoneyfundでコンテンツに特化した戦略に取り組んでいる。夫婦が結婚生活をうまく続けていく方法に関する書籍の出版やポッドキャストの配信などがその例だ。彼女は心理学者や婚姻の専門家による研究に基づき、14年間にHoneyfundを利用した夫婦をインタビューし、自身が経験した結婚生活の破綻を回避するのを支援している。

秘密兵器

共同創業者カップルたちは、その関係性のメリットを熱く語る。共通する情熱とやる気、補い合うスキルセット、業界での経験が既婚、未婚に関わらずあらゆる共同創業者カップルのベースラインとなる。しかし、共同創業者同士の結婚には時間管理や、仕事とプライベートの区別などの特有の課題がある。

Initialized Capitalのマネージング・パートナーで、過去にはY Combinatorパートナーも務めたGarry Tan(ガリー・タン)氏は「共同創業者間の衝突は、初期のスタートアップをダメにする一番の原因だが、これを回避する方法もある」と自身の記事で述べている

共同創業者は、会社の大きな決定についていつも同じ考えを持っているわけではない。テレワークを許可するか、誰から資金を受け入れ、どのように資本を投じるか、主要幹部に誰を雇用するのか。

その決定に伴うリスクが高く、従業員のキャリアを危険にさらす可能性がある場合、それはいくらでも喧嘩の原因になり得る。共同創業者間の不和は、多くの苦戦しているスタートアップの主な理由だ。対立を回避するのではなく、積極的にそれに対処すること、つまりエグゼクティブコーチングやセラピストなどの専門家の助けを求めるタイミングを見極めることが重要だ。これによって不和の初期段階でトラブルを回避し、足並みをそろえることができるかもしれない。

この理論が当てはまるなら、共同創業者のカップルは2人の間にコミュニケーションツールをすでに持っているため、有利になる。

ウルビッチ氏は、共同創業者がカップルであることが投資意欲をそぐことはないと言う。

「多くの共同創業者たちが仲違いしてしまうとき、特に困難な状況ではお互いをよく理解していないことが多い。カップルはこの面をうまく解決できる」とウルビッチ氏は語る。この主張は創業者たちによって証明されている。

「会社の価値の1つは、反対することとコミットすること」と言うのはNEXT Truckingのリディア・ヤン氏だ。彼女によれば、同社では重要な決定事項について幹部の意見が一致しない状況では、投票が行われ、その後チーム全員が最終決定に全力で協力するという決まりがある。リスクを軽減するため、仕事の内容を明確に定義することが重要であると言う。自分の持ち場を守り、パートナー同士であれば互いの専門能力を理解し、信頼し合うことができているはずである。

Helena Price Hambrecht(ヘレナ・プライス・ハンブレヒト)氏とWoody Hambrecht(ウッディ・ハンブレヒト)氏は、共同創業者が夫婦であることはスタートアップの秘密兵器だと主張する。

Helena Price Hambrecht氏とWoody Hambrecht氏

Hausの共同創業者、ヘレナ・プライス・ハンブレヒト氏とウッディ・ハンブレヒト氏

ヘレナとウッディは、2012年、スワイプでデート相手を探す以前の時代にOkCupidで出会った。「オンラインデートサイトを使い出したところで、このかっこいい農夫を見つけたの。私たちは96%マッチだったから私からメッセージした」とヘレナは未来の夫との出会いを話した。

ウッディはヘレナのメッセージを「なりすましかと疑った」と言う。「こんな人が僕にメッセージしてくるわけがない。この人が実在する人物なのかどうかわからなくて、返信するまでに3〜4時間かかった」

何度かメッセージでやり取りした後、2人はサンフランシスコのリッチモンド近辺にある安いバーで会い、その後一緒に40オンスのビールを飲んだり、公園でラップのビデオをスマホで観たりするようになった。「うまく説明できないけど、すごく自然だった。この後の人生すべてで付き合っていく人だと思ったんだ。友達かそれ以上かはわからなかったけど」。2人は4年間の交友関係を経て、2018年に結婚した。

Haus(ハウズ)の起源は創業者の経歴の組み合わせにあり、このD2Cの食前酒ブランドは450万ドル(約4億8000万円)のシード資金を先日獲得したばかりだ。ウッディはワインと食前酒のブランドを所有していたが、十分な事業ができていないと感じていた。シリコンバレーでのブランディングと製造に豊富な経験を持つヘレナは、Z世代の人々は酔っぱらうことには関心がなく、ミレニアル世代は強制的で高くつくハッピーアワーに飽き飽きしていることを感じていた。何にお金を使うかを決めるとき、若い世代の消費者は健康、ブランドイメージ、透明性、持続可能性、信頼性を考慮する。

ヘレナは、なぜ同じ基準がアルコールほどの規模の業界に適用されないのかと疑問に思っていた。なぜアルコール業界にはGlossierやEverlaneのようなブランドがないのか? このコンシューマートレンドの推移には大きなチャンスがあるにもかかわらず、アルコールブランドのD2Cはできないと彼女は感じていた。Hausは「テクノロジー技術者がワイン職人と結婚した」魔法の瞬間から誕生したという。ウッディは、アルコール界のGlossierを作るための法的な抜け穴を知っていた。

「飲み物の原料の大部分がブドウでアルコール度数が24%未満であれば、ワインとして分類され直販できるわずかな食前酒の領域がある」とヘレナは説明する。このアイデアは2人の子供が3カ月のときに生まれた。「時間はないけれど、やらないといけなかった。人生でこれまでにない最高のアイデアだったから」。

「私たちにはツールキットがある。私たちは結婚している。何かに賛成できなくても、夫婦なら解決することができる。私たちのスキルセットは明確に定義されているので、衝突は少ない。互いに完全に異なる専門領域を持っているのでちょうどいいバランスになっている」とヘレナは言う。

ウッディとヘレナにはもう1つの秘密兵器がある。心理療法の経歴を持つビジネスコーチだ。すべての共同創業者はビジネス以上のかかわりが必要になるので、一緒にセラピーを受ける必要があると彼らは信じているという。

Roni Frank氏とOren Frank氏

Talkspace創業者のロニー・フランク氏とオレン・フランク氏

Talkspace(トークスペースのRoni Frank(ロニー・フランク)氏とOren Frank(オレン・フランク)氏もこの意見に同意する。彼らがメンタルヘルスの世界に興味を持つようになったのは、2人の関係が崩壊しかけたことがきっかけだった。

「私たちの結婚は崩壊寸前で、最後のチャンスにカップルセラピーを受けることを決めた」。セラピーを受けるのは、どちらにとっても初めての経験だった。コミュニケーションを改善し、お互いを思いやり、サポートする方法を学んだ。お互いの意見の衝突をコントロールする術を手に入れたのだ。

ロニーはこのセラピーの経験から、ソフトウェア開発者としてのキャリアを離れ、心理学を学ぶために大学院に戻った。これを学ぶ中で、米国のメンタルヘルスシステムがいかに破綻しているかを目の当たりにしたという。

米国人の25%が複数のメンタルヘルス疾病を患っているにもかかわらず、その3分の2はメンタルヘルスケアの治療を受けてけていないことが調査で示されているとロニーは言う。自分たちの関係修復にセラピーが役立った経験に基づき、創業者の2人はこの問題の解決に強い熱意を持った。そこで、患者とセラピストがオンラインで通信できるプラットフォームを立ち上げることを決めた。

メンタルヘルスケアへのアクセスを可能にするためのTalkspaceは、直近のシリーズDの5000万ドル(約53億7000万円)を含め、これまでに1憶1000万ドル(約118億円)を調達している。このプロダクトへの思いが2人の関係をより強固にし、現在の従業員は100人を超える。しかし従業員が10人しかいなかった黎明期のTalkspaceでは、物事は今よりずっと困難だった。自分たちの関係が非常に大きな不安を引き起こしていることにロニーは気付いた。

「寝られず、食欲は減り、極度の疲労を感じていた」。仕事に自身のすべてを使い果たし、自分で境界を設けるしかなかったとロニーは言う。しかしこの危機のおかげで、夫婦であり共同創業者である2人の間で使命と目標を共有し、結婚生活を元の健全な姿に戻すという貴重な経験ができたのも確かだ。

彼らのような共同創業者カップルは、配偶者と一緒にビジネスをすることを強く勧める。そのような企業が独自の製品を開発し、成功するマーケティング戦略を実行し、大規模なラウンドとイグジットを生み出しているのは事実だ。

夫婦でかつ共同創業者であるという特異な関係は、ビジネスにポジティブな影響をもたらしているように感じる。それが結婚生活にもうまく作用するのかどうかは、時間が証明してくれるだろう。

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(翻訳:Dragonfly)

スタートアップのグループが新型コロナと戦う医療従事者にフラットパックの防護ボックスを提供

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対処する医療機関を支援できないかと、スタートアップ企業や起業家たちがいろいろな取り組みをしている。その中に、個人用防護具の需要に応えるCOVIDボックスプロジェクトがある。トロントのボランティアが立ち上げた活動で、スタートアップの創設者やその従業員、さらに医師や医療の専門家も参加している。

このグループが作っている新型コロナウイルス感染症患者の挿管に使う箱は、ポリカーボネート製で、輸送しやすいようにフラットパックになる(平らに折り畳める)。受け取った先で即座に組み立てができ、医療機関などの医師が患者に挿管するときに使用できる。挿管とは、患者の気管にプラスティック製の管を挿入して気道を確保することをいう。特人工呼吸器を使わなければならない人には欠かせない処置だ。新型コロナウイルス感染症が重症化すると、通常は人工呼吸器による治療が必要となる。

挿管ボックスは、医療従事者を守るもう1つの防護層になる。透明プラスティックが使われているので、処置に支障はない。デザインは世界中の新型コロナウイルス感染症患者の挿管をできる限り医療従事者の安全を守りながら行うというグローバルな課題に対処するために、台湾の賴賢勇(ライ・シェンヤン)医師が考案しオープンソース化したものをベースにしている。

COVIDボックスプロジェクトでは、必要な材料がある場合に自作できる手順も公開しているが、もっと大量に配布できるように彼らは大量生産の道を探っている。まずはカナダの病院から開始して、全世界の医療機関の需要にも応じていく予定だ。Taplytics(タプリティクス)の共同創設者でCTOでもあるプロジェクトの共同創始者のJonathan Norris(ジョナサン・ノリス)氏は、チームは1週間かけてプロトタイプの作ったと話している。

「先週の初めに、Taplyticsの財務責任者Gloria Cheung(グロリア・チャン)が私たちのところへやって来て、新型コロナウイルス感染症の患者に挿管するときに医療従事者を守るための簡単なプラスティックの箱を医師たちが欲しがっていると教えてくれました」と彼はメッセージで話してくれた。「私たちは医師グループと、Taplyticsのエンジニアたち、そしてFIRSTロボティクスプログラムで指導をしてくれた私の知人たちとを引き合わせ、その目的に適ったフラットパックにできる箱のデザインを行い、いくつものプロトタイプを作ることができました。私たちはEventscape(イベントスケープ)と協力して、急いでプロトタイプを作り、最終バージョンを仕上げ、昨日、トリリアム・ヘルス・ネットワークでの使用許可をもらったところです」

グループでは、大量生産のための寄付製造を手伝ってくれる仲間を募っている。特にCNCルーターを持っているところが望ましい。むしろ、基本的にCNCルーターさえあれば作ることができるものだ。また、1/4インチ(6ミリ)厚ポリカーボネート板の提供者も探している。

新型コロナウイルス 関連アップデート

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(翻訳:金井哲夫)

植物由来の包装資材やクーラーボックス用断熱材を生産するVericoolが21億円相当を調達

プラスチックの包装資材や断熱材を植物由来の製品で置き換えようとするカリフォルニア州リバーモアのVericoolが、新たな資金調達ラウンドで1910万ドル(約21億円)を獲得した。

同社の目標は、これまで使われてきたポリスチレンなどの包装資材を植物由来の断熱性のある素材で置き換えることだという。

同社はその技術で再生紙やその他の植物性素材を使用して、歩道の縁石や漆喰(しっくい)なども作っている。

今回のラウンドの投資家はRadicle Impact PartnersThe Ecosystem Integrity FundID8 Investments、そしてAiiM Partnersとなる。

Radicle Impact Partnersのマネージングパートナーで、新たにVericoolの取締役のトップになったDan Skaff(ダン・スカフ)氏は「Vericoolをサポートできることは喜ばしいことだ。同社はイノベーションと高性能な製品と安定したパテントポートフォリオ、および回復力のある環境への注力においてすばらしい実績がある。我々は再犯に対処しや出所者の就労確保といった社会問題に取り組む同社の姿勢にも感銘を受けている」と語った。

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

Colorが新型コロナ大量検査テクノロジーをオープンソース化、自社ラボも稼働へ

ヘルス・遺伝子テクノロジーのスタートアップColorは、世界的な新型コロナウイルス(COVID-19)の流行に対処するために重要な役割を果たそうとしている。3月31日に公開されたCEOのOthman Laraki(オスマン・ララキ)氏の書簡で、新型コロナウイルスの検査を大幅に拡充するためのColorの支援内容が詳しく説明されている

稼働が計画されている高スループットの検査ラボでは、結果を病院に報告するまでのターンアラウンドタイムを24時間以内として1日あたり最大1万件の検査を処理できるという。Colorは新型コロナウイルス拡大防止に最大限に役立てるために、この検査ラボの設計や検査プロトコルを含むテクノロジーの詳細をオープンソース化し、誰でも利用できるようにするという。これにより高速、大容量の検査施設が世界各地にオープンされることを期待している。

Color自身のラボはすでに準備をほぼ完了しており、ララキ氏によれば「ここ数週間で稼働を開始」できるという。Colorのチームは、MIT(マサチューセッツ工科大学)とハーバード大学が運営するBroad Institute、コーネル大学のWeill Cornell Medicineと協力して、現在標準的に利用されている手法よりも高効率で結果が得られるテクノロジーを開発した。

Colorの重要な強みは、自動化と必要な資材をすばやく調達するテクノロジーにある。 例えば検査に必要な試薬は多数のサプライチェーンから入手可能だ。これは米国だけでなく世界的に大規模な検査体制を構築する上で極めて重要な要素となる。つまり全員が同じテクノロジー、同じ処理プロセスを利用していれば早い段階で試薬などの供給においてボトルネックに直面することになるからだ。1日に数万の検査を処理できるテクノロジーがあっても、必須試薬の1つが他のすべてのラボでも必要とされている場合、たちまち入手困難に陥ってしまうだろう。

Colorは、他の2つの重要な分野でも新型コロナウイルス対策に取り組んでいる。 最前線で仕事をしている人々のための検査と結果判明後のフォローアップ処理だ。こうした人々は社会を機能させるために必須であるが高いリスクに直面しているため検査の必要性が高い。Colorでは政府や雇用主と連携し、病院内の検査、検査ラボのロジスティクス、患者と医師のコミュニケーションなどの改善に注力するために全社的に人員を再配置した。

多くの医師や医療関係者から検査後のワークフローに関する問題が報告されている。つまり検査結果を有効かつ効率的に利用する一貫したフォローアップ体制を構築することが非常に難しいという問題だ。Colorはこの解決にも取り組んでいる。例えば同社はこれまでの経験を活かして構築した独自のワークフローのプラットフォームを開放し、他の新型コロナウイルス検査ラボが無料で利用できるようにしている。

無料で利用できるリソースには、検査結果報告書、患者向けのガイドラインと指示、接触履歴アンケート、陽性と判定された患者に接触しウイルスに暴露された可能性がある人々に連絡する方法などが含まれている。

Colorの新型コロナウイルス対策事業の一部は個人及び組織の寄付によって支えられてきたという。同社では、新型コロナウイルス対策のプロジェクトやリソースに関連して有用な貢献ないしビジネスができると考えるならcovid-response@color.comに直接メールするよう呼びかけている。

新型コロナウイルス 関連アップデート

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

言葉もわからない旅先での体調不良に困る旅行者と地元医師をつなぐAir Doctorが約8.4億円を調達

旅行者と旅先の医師をつなぐ、ヘルステックスタートアップのAir Doctor(エア・ドクター)が、シリーズAで780万ドル(約8億4000万円)を調達した。ラウンドはKamet Ventures(AXAが支援するベンチャービルダー)と、The Phoenix Insurance Companyが主導した。

2016年に設立されたAir Doctorは、海外で体調を崩し緊急ではないアドバイスや処置が必要な旅行者の力になることを目的とするスタートアップだ。同社は旅行者が旅行保険または福利厚生制度などを介してアクセスできる、ローカルな民間医師のネットワークを作り上げた。このプラットフォームは5大陸の42カ国で利用することができ、場所、言語、専門分野、および費用で検索できる。

「Air Doctorは創業者チーム自身の旅の経験から生まれました。外国で病気になって、誰に連絡すべきなのか、どうすれば必要な対応を受けることができるのかがわからず、恐ろしい気持ちになったからです」と語るのはAir DoctorのCEOで共同創業者のJenny Cohen Derfler(ジェニー・コーエン・ダーフラー)氏だ。

「製品開発責任者のYam Derfler(ヤム・ダーフラー)は、南アメリカを8カ月間旅行した際に、このアイデアを思い付きました。別々のタイミングで病気になった彼と彼の友人は、英語を理解する医師を見つけることが多く、まったくお手上げだと感じたのです」。

Air Doctorが当初、旅行中の患者に焦点を当てていたが、ダーフラー氏はすぐにこれは、旅行者一般を取り巻く医療エコシステム全体に影響を与えるものであることに気がついたと語る。

「地元の医師たちには、まったく新しい個人顧客のグループにアクセスするための信頼できる方法がありませんし、保険会社は面倒で問題のある医療サービスに莫大なお金を浪費していて、医療サービスに関連した顧客体験を向上させたいと思っています。そして旅行代理店は自社のパッケージに信頼できるサービスをバンドルしたいと思っているのです。すべての関係者にメリットをもたらすプラットフォームを構築する必要があることが、明らかになったのです」と彼女は言う。

Air Doctorは、医療専門家のグローバルネットワークとデジタルプラットフォームを組み合わせて、保険会社のコストを削減し、クレジットカード会社や携帯電話会社に付加価値の高いソリューションを提供することができる。ケア提供側から見た場合には、このシステムは医師の収入とデジタルでのプレゼンスを高めると同時に、海外旅行者にその母国語で「最高レベルの医療」を提供できると同社は主張している。

「私たちの目的は、世界中のすべての旅行者が、必要なときに経験豊富な地元の医師や専門家に連絡できるようにすることです。そうすることで、病院や観光客向けクリニックに行かなくても済むお手伝いができるのです」とダーフラー氏は付け加えた。

最初にAir Doctorの顧客となったのは、イスラエルの大手保険会社の1つであるThe Phoenixだ。同社はその後、このシリーズAラウンドに参加し投資を行った。The Phenixは、Air Doctorを自社の顧客に紹介することにより、請求コストを削減して損失率を削減することができた。これは救急サービスではなく外来診療所に患者を誘導することで支払いを削減できたからだ。

「私たちの最大のセールスポイントは、コントロールです」とAir DoctorのCEOは強調する。「旅行中に病気になったときには、自分の状況をコントロールできていると感じたいものです。私たちのオンラインプラットフォームは、患者が自分のニーズと好みに最も適した医師を選択できるように、幅広く地元の開業医に関する豊富な情報を提供することによって、患者が解決策を迅速に見つけるのに役立ちます。最も重要なのは、母国語を使った医療サービスへのアクセスを支援することです。これは、自分の状況をコントロールできると感じるという点で、最も大切なことの1つです」。

今回の最新のラウンドは、Air Doctorが2018年7月に行った310万ドル(約3億3000万円)のシードラウンドに続くものだ。今回の新たな資金は、Air Doctorの医療ネットワークと研究開発能力を強化し、保険、通信、そしてクレジットカード業界を横断した国際的な事業拡大のために使用される。

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(翻訳:sako)

フランスが新型コロナで打撃を受けるスタートアップ救済に約4780億円注入

フランスのデジタル経済担当国務長官であるCédric O(セドリック・オ)氏と公的投資銀行のBpifranceは3月25日、スタートアップ向けの包括的な支援計画を発表した。フランスの一部のスタートアップは今後数カ月のうちに売上高や資金調達の問題に直面することが予想される。

フランス政府は、借り換えや流動性で一時的に橋渡しを行うべく、43億ドル(約4780億円)の予算を組んだ。「スタートアップは経済成長を担っている。雇用という点では特にそうだ」とオ氏は声明で述べた。「スタートアップはまた、遠隔診察アポイントメントやリモートワークのソリューション・デリバリーなど、(新型コロナウイルス感染拡大による)ロックダウン時に特に役立つ刷新的なプロダクトやサービスに取り組んでいる」。

フランス政府ははすでに広範な経済支援策を発表している。売上高減の企業は納税や家賃、公共料金の支払いをスキップできる。そして流動性支援に3200億ドル(約36兆円)をあてる。この中で企業は国の支援のもとにローンを組みやすくなる。

さらに重要なことに、もしスタートアップが操業停止を余儀なくされた場合、国は解雇を回避するために短時間労働制度を用意している。従業員の給料の84%を国が補填するというものだ。

そうでなくてもスタートアップは常に破産と隣り合わせている。だからこそフランス政府はスタートアップに照準を当てた追加のサポート策に踏み込んだ。

その策とは第1に、新たな資金調達ラウンドの最中だったスタートアップは、BpifranceのPIAを通じて橋渡しの資金を調達できる。一部のVCは契約内容を撤回するかもしれず、また別のVCは投資ペースを緩やかにするかもしれない。この対策としてBpifranceは8670万ドル(約96億円)を注入する。プライベート投資家も同額を共同投資する。

第2に、政府はスタートアップ向けの流動性支援も用意している。他の企業と同じく、スタートアップも3200億ドルの流動性スキームの中で借入ができる。借入可能な額はフランスで雇用している従業員の給与2年分もしくは年間売上高の25%のいずれか多い方となる。この総費用として22億ドル(約2445億円)を見込む。

第3に、スタートアップは付加価値税の還付と研究開発投資の税還付を早く受けられる。総額は16億ドル(約1780億円)を想定している。

第4に、Bpifranceは公的支援の支払いを素早く実施する。スケジュール前倒しで2億7000万ドル(約300億円)を支払う予定だ。

画像クレジット:Ludovic Marin / AFP / Getty Images

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(翻訳:Mizoguchi

Y Combinatorが新型コロナウイルスと戦うスタートアップを急募

Y Combinatorは、スタートアップのアクセラレータとして新型コロナウイルス(COVID-19)と戦うチームを優先的に支援し、危機の解決に役立ちたいと考えている。そうしたスタートアップに迅速にベンチャー投資が行われるような環境が整備される。

Y Combinatorの最新のバッチ、2020年の冬学期のクラスのプレゼンは新型コロナウイルスの感染拡大が始まった時期にあたっていたため、急きょオンラインに切り替えられて先週実施された。 その後わずか1週間で、状況はさらに深刻化した。YCでは「パンデミックに関連する課題に取り組むスタートアップによる新しいクラスを導入する考えだ」と述べている。

YCは、特にリソースを割くべき分野をいくつか公表した。 これには、新型コロナウイルスの検査、診断、治療、ワクチン、医療設備、モニターとデータインフラストラクチャーなどが含まれる。例示された分野を目指すスタートアップは、Y Combinatorのファーストトラック(最優先コース)に乗せらる。つまり即座にリモートクラスへの加入が認められ、資金の提供が行われる。YCのCEO、 Michael Seibel(マイケル・サイベル)氏は次のようにツイートしている。

Y Combinatorの新型コロナウイルス対処を以下に公開

YCは「我々は今回の危機に役立つスタートアップを求めているが、同時に危機が一段落した後も維持可能なビジネスに投資したい」として、サイトに次のように書いている。

「現在の危機に立ち向かおうとするスタートアップがなんらかの影響を与えることに成功するためには人が可能だと考えるよりも速く動かねばならない。 創業者はその領域の専門的知識をあらかじめ持っている必要があると同時に、短期間でグローバルに大きな影響を与える方法についての準備と計画も用意されなければならない。また危機後も持続可能なビジネスへの道筋も必要だ。

Y Combinatorはスタートアップへの資金提供の詳細を説明すると同時に、すでにポートフォリオに含まれている企業の新型コロナウイルス問題への取り組みを支援するためのハブとなるサイトを開設した。

画像:Getty Images

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

未来のAR/VRヘッドセットはスイスのCrealが研究するライトフィールド技術が本命か

何年にもわたって話題になってきたARとVRはこのところ静かになっているが、一部の投資家たちは、技術的欠陥が克服されれば、それらはモバイルデバイスに取って代わるかもしれないという展望を持っている。

ディスプレイの基本的な技術を研究開発しているスイスのスタートアップCrealは、VRとARのヘッドセットをさらにリアルな光学的技術によって、今よりも快適なデバイスにしようとしている。

同社は2019年にInvestiereとDAA Capital Partnersから、シリーズAで740万ドル(約8億2000万円)を調達した。さらに今週にはEUの技術革新促進事業であるHorizon 2020から助成金を獲得して、同社のライトフィールドディスプレイ技術の研究開発を継続することになった。

関連記事: Can Apple keep the AR industry alive?… アップルはARを産業にできるか(未訳、有料記事)

ライトフィールドディスプレイは、これまでとはかなり異なる種類のディスプレイだ。今あるARやVRのヘッドセットは、右の目と左の目に若干異なる像を見せることで立体画像を表示するが、未来のヘッドセットは、目がどこを見ているかによって像のフォーカスを変える。ライトフィールドディスプレイやライトフィールドカメラは、前方でも奥でもどこにでも焦点が合う像を作り出す。この技術によって、輻輳(ふくそう)調節矛盾(vergence-accommodation conflict)に由来する目の疲れがなくなり、顔に近いオブジェクトとも対話でき、VRの視界が細部までもっとわかりやすい世界になる。

下の動画は、同社の技術を一般的なレンズで撮影した映像で擬似的にデモしている。

ライトフィールド技術の実装には、いろんなやり方がある。Magic Leapはこの技術の軽量バージョンを同社のヘッドセットに採用し、目の動きの捕捉によって切り替わる2つの焦点面を利用している。この可変焦点(varifocal)方式には、Oculusを通じてFacebookも投資しており、複数の面の間でユーザーが焦点を変えられるヘッドセットのプロトタイプを披露したことがある。

関連記事: Oculusが次世代ヘッドセットのプロトタイプを公開

Crealもライトフィールドの技術を小型化するために、Facebookのような大企業と同じ困難に対処しなければならない。それは何を犠牲にするか、という問題だ。同社の最も近い目標は、その技術を仮想現実のヘッドセットに組み込むことだが、数年後にはそれを軽量のARヘッドセットにも応用したいと考えている。

新しい技術を構築するCrealのようなスタートアップは、世界不況の影響を受けやすいだろう。最前線にある技術への投資は、不況の犠牲になりやすい。不安定な経済が今後も続けば、Facebookのような大企業がますます有利になり、同様の技術に取り組んでいるスタートアップは生き抜くためにコスト削減を強制される。

Oculusは最近、VRニッチ市場に成功しているが、拡張現実のハードウェアはスタートアップにとってもっと難題だ。2019年はMeta、ODG、 Daqriなど多くの企業が閉鎖された。3月初めにはBloombergが、Magic Leapは数十億ドル(数千億円)の資金を獲得した後、売却を視野に入れていると報じている。ARは特に売ることが難しい。

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

ライブでウェブデザインをコラボできるツールMarkUpをCerosがローンチ

デザイナーが他のチームとコラボレーションするときには、InVisionZeplinなどのツールを使うことができる。しかしCerosのクリエイティブ・ディレクターであるJack Dixon(ジャック・ディクソン)氏によると「市場にはかなり興味深いギャップがある」という。プロトタイプの段階が終わり実際に公開されて動いているライブなウェブサイトをアップデートしようとすると、工程が細分化され、スクリーンショットやメール、スマートフォン、Google Docsなどに頼ることが多くなってしまう。

かねてから対話的なコンテンツのユーザー体験(UX)の改良を目指しているCerosは、MarkUpと呼ばれる新しいプロダクトをローンチした。このプロダクトを制作したGreg DiNardo(グレッグ・ディナルド)氏とAlex Bullington(アレックス・ブリントン)氏は、世論調査やマーケティングリサーチのスタートアップArbitに在籍していたが、買収とともに同社に移籍した。

彼らが見せてくれた簡単なデモでは、ユーザーがウェブサイトの興味がある箇所をマークをつけて、コメントとタスクをそこに残し、改訂が終わるとそのマークを付ける方法を紹介してくれた。

それだけを見ると非常に単純明快だが、ディナルド氏によるとライブなサイト上でデザイン作業のコラボレーションを実現するのは、予想した以上でかなり技術的な難易度は高かったという。

それでも彼らは、極めてシンプルなプロダクトを作りたかった。ブリントン氏は「山のように大量の機能を搭載したくなかった。グラフィックデザイナーなら誰でも使えるツールにしたかった」という。

最終的にMarkUpは、デザイナーがチーム間でフィードバックをやり取りするだけでなく、一般ユーザーがフィードバックすることもできる。

Cerosによると、MarkUpは誰でも無料で使える。またCerosのメインのプラットフォームであるCeros Studioからは完全に独立している。それどころかすでにHuffington PostやCushman & Wakefield、Informaなどのデザイナーが利用している。

「今後は、初めて使う人たちにとっての障害をすべて取り除いて、文字通り誰でも100パーセント自由に使えるようにしたい。そのためには大きなコミュニティとユーザーベースの関与がぜひとも必要になる。最近わかってきたのはエンタープライズ顧客の一部は、サイトデザインのホワイトラベル化など、さらに高度な機能を求めているということだ。今後はそれらも含めて、収益化の方法を考えていきたい」とディクソン氏はいう。

関連記事: Ceros raises $14M for its interactive content platform

画像クレジット: Ceros

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

Kubernetesクラスターの構築に柔軟性と自由度を持たせるSpectro Cloud

Kubernetes(クバネティス)が非常に人気のあるコンテナ管理プラットフォームであることは広く知られているが、それを実際に使おうとしたら、管理を誰かにやらせるかそれとも自分でやるかを選ばなければならない。米国時間3月17日に750万ドル(約8億円)を調達してステルスを脱したSpectro Cloudは、両者の中間のような第三の選択肢を与えてくれる。

この投資はSierra Venturesがリードし、Boldstart Venturesが参加した。

Boldstartの創業者Ed Sim(エド・シム)氏によると、彼はSpectro Cloudのチームと技術が好きだそうだ。「Spectro Cloudは、大企業の多くが抱える重い苦痛を解決する。それは、Kubernetesのサポートをマネージドプラットフォーム上に展開したいが、大型ベンダーのなすがままにはなりたくないという難問だ」とシム氏は語る。

Spectroの共同創業者でCEOのTenry Fu(テンリー・フー)氏によると、エンタープライズはコントロールと使いやすさの間で妥協を求めるべきではない。「我々は、使いやすいマネージドKubernetes体験を提供する最初の企業でありたいが、しかしまた同時に彼らには、大規模なKubernetesインフラストラクチャスタックを自分たちで定義できる柔軟性、自由度を与えたい」とフー氏は説明する。

またフー氏によると、この場合のスタックはKubernetesのバージョン、ストレージ、ネットワーキング、さらにセキュリティやロギング、モニタリング、ロードバランシングなど、Kubernetes周辺のインフラ要素をすべてカバーする一種のオペレーティングシステムだ。それらに、ユーザーの自由度を与えたいという。

「エンタープライズの組織内ではさまざまなグループのニーズに奉仕するが、それはインフラストラクチャスタックの要素によっては、とても細かいレベルになることもある。しかしそれでも、ライフサイクルの管理は気にしなくてもよい」と彼は説明する。つまりSpectro Cloudがそれらをユーザーに代わって扱い、しかもコントロールはユーザーが手中にするからだ。

これによりエンタープライズのデベロッパーに展開に関する大きな柔軟性が与えられ、複数のクラウドインフラストラクチャプロバイダー間の移動も容易になる。今の企業は単一のベンダーに縛られるのを避けたいため、これは最上位の優先事項となる。

「インフラストラクチャのコントロールは連続的に行われるため、企業はいろいろなニーズに対してトレードオフを迫られることになる。極端な場合には、マネージドサービスは天国のような使いやすさを提供するが、しかしそれはクラウドユーザー側からのコントロールを犠牲にする。Kubernetesのバージョンの更新すら、ユーザーが自由にできないサービスもある」

フー氏と彼の共同創業者たちはこういった問題の経験者で、創業前までCliQrに在籍していた。この企業はハイブリッドクラウド環境におけるアプリケーションの管理を助ける、彼らが創業した企業だ。CliQrを2016年にCiscoに売却し、2019年の春にSpectro Cloudの開発を始めた。

まだ生まれたばかりの企業だが、すでにベータの顧客が16社抱えている。

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

インフラ構築自動化のHashiCorpが5500億円のバリュエーションで190億円を獲得

過去10年にわたるクラウドの台頭により、ソフトウェア開発者とDevOps(デブオプス)エンジニアは、最新のウェブアプリケーションの設計を一から見直しスケーラビリティ、パフォーマンス、セキュリティを確保することを余儀なくされた。手作業で行うには非常につらい仕事だ。ここでHashiCorp(ハシコープ)の出番となる。同社の一連の製品は、IT管理者からソフトウェア開発者まで、技術に関わるメンバー全員がクラウド上で極めて簡単かつ自然に操作することを可能にする。

同社の製品は長い間、技術に携わるスタッフから絶賛されていたが、一変して巨額のバリュエーションを目の当たりにすることになった。

サンフランシスコを拠点とする同社は3月16日、シリーズEで51億ドル(約5500億円)のバリュエーションをベースに、Franklin Templeton Investmentsから1億7500万ドル(約190億円)を調達したと発表した。最後にTechCrunchが同社を取り上げたのは2018年後半にグロースインベスターのIVPがリードした1億ドル(約107億円)のラウンドのときで、バリュエーションは「わずか」19億ドル(約2040億円)だった。

HashiCorpは3月16日発表のプレスリリースで、輝かしいバリュエーションの背後にある重要な理由として、4期連続で売上高と顧客数を倍にしたことを挙げた。 同社はまた小さくない要因として、GreylockでEIR(ベンチャーキャピタルなどに所属して活動する起業家)を務めた後、2016年半ばにCEOとして入社したDavid McJannet(デビッド・マクジャネット)氏が、CEOという新しい役割で成功を収めた点も挙げている。

HashiCorp CEOのデビッド・マクジャネット氏。写真はHashiCorp提供

Mitchell Hashimoto(ミッチェル・ハシモト)氏とArmon Dadgar(アーモン・ダドガー)氏が2012年に創業した同社は、マルチクラウドプロバイダー、プライベートクラウド、さらにはレガシーシステムを組み合わせた高品質のインフラ構築を支援するパイオニアだ。

最もよく知られている同社の製品はTerraformだ。これは開発者が企業のインフラ構築にあたり、繰り返し可能なルールを記述できる製品だ。作者が意図したとおりに機能しない可能性のあるさまざまなスクリプトのパッチワークとは異なる。HashiCorpの製品はその一貫したフレームワークにより、企業のコスト削減に貢献し(リソースの過剰な供給などから守る)、規模と性能のバランスもとれる。同社の他の製品にはネットワーク自動化のConsul、セキュリティのVault、アプリケーション展開のNomadなどがある。

HashiCorpは複数の競争力のある製品だけでなく、そのまとまりのある一連のツールと開発者コミュニティへの強力なパイプにより、最近の競争とは一線を画している。

Franklin Templetonはれっきとしたレイターステージの投資家で、Crunchbaseによると、2019年に公開したCloudflare、ログ管理プラットフォームのSumoLogic、サイバーセキュリティビジネスのTaniumといった企業に資金を提供している。

51億ドル(約5500億円)という巨額のバリュエーションがついたことで、同社は過去数週間にわたるSaaS企業の壊滅的な株価下落をかろうじて逃れた。新たに軍資金得たこと、成長を続ける人気の企業向け市場に焦点を合わせたことで、同社の成長の準備は整ったようにみえる。

画像クレジット:Alex Williamson / Getty Images

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(翻訳:Mizoguchi

Y Combinatorがデモデーを3月16日に1週間前倒し、ビデオプレゼンはなしに

先週、Y Combinatorは「新型コロナウイルスに対する懸念」を理由として、今年冬学期のデモデーをオンライン化すると発表した。 当初、サンフランシスコのピア48ビルで2日間にわたって実施されるはずだったが、3月23日にオンラインでホストされるということだった。

昨夜、さらに予定が変更され、YCはデモデーを1週間前倒しして開催は3月16日(日本時間3月17日)となった。

Y CombinatorのCEOでパートナーのMichael Seibel(マイケル・サイベル)氏の発表によれば、これは「投資家の動きが速まってきた」ことによるものだという。サイベル氏は次のように書いている。

この数日、投資家の多くが起業家への働きかけを加速している。投資決定を行うことが急がれており、Y Combinatorは投資家のこのようなペースに合わせてスケジュールを1週間前倒しすることとした。YC W20イベントはオンラインのデモデーとして3月16日(日本時間3月17日)に開催さる。

3月16日にYC Demo Day Webサイトが公開される。これは投資家と起業家がこれまで5年間利用してきたサイトを改良したバージョンだ。このサイトを通じて投資家はスライド1枚の事業サマリー、簡単なチームの背景、メンバーの略歴を知ることができる。またチームを事業内容や本拠地でソートすることもリスト化してスプレッドシートに出力することもできる。

これまでデモデーでは参加チームがステージ上でプレゼンテーションを行っており、Y Combinatorは当初、このプレゼンを「事前に録画して、すべての投資家に同時に公開される」と述べていた。今回の発表では「事業の概要スライド、チームの背景、略歴」だけになるようだ。スケジュールの前倒しに合わせて内容が修正されたのだろう。

TechCrunnchの取材に対して、Y Combinatorはオンラインのデモデーにはビデオプレゼンテーションは含まれないと確認した。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

RobinhoodアプリがNY市場大暴落中に再びダウン 

Robinhoodのトレーディングアプリを利用していた投資家は、同アプリがウォール街の株価暴落のためダウンした後、再び取引から締め出されることになった。

約1時間のダウンタイムを経て、アプリの機能は部分的に復旧している。

今回のサービス停止は、1年で最も忙しい取引日のうちの1つだった日にサービスが停止した1週間後に発生した。

停止の余波を受けてRobinhoodの創業者らは、サービス停止の影響を受けた投資家にはケースバイケースで補償を行うと述べている。

以前、我々が報じたように、Robinhoodは3月2日の太平洋時間午前6時30分から午後11時までオフラインだったが、今回は3月9日の午前6時30分から午前9時直前まで再び停止した。

Robinhoodは以前のサービス停止の際に、ユーザーに対して以下の補償を提示している。

9億1200万ドル(約950億円)の資金を調達した金融技術大手のRobinhoodは、Robinhood Goldのプレミアム会員のすべての顧客に、補償のために資金を借りたことに加えて、Morningstarによる調査報告書、Nasdaqのデータ、より大きな即時預金へのアクセスを提供することを明らかにした。サービスの提供期間は3カ月だ。

Robinhood Goldの1カ月の利用料は5ドル(約520円)で、それにくわえて1000ドル(約10万4000円)以上の借り主には年間5%の利子が1日ごとにつく。価格変更前であれば、月額定額料金は最大200ドル(約2万800円)になる可能性があるが、補償では月額5ドル(約520円)、合計で15ドル(約1560円)しか割引を受けられない。月曜日に9%以上値上がりしたApple(アップル)のような株式をRobinhoodのユーザーが買い戻しできなかったとしたら、この金額はとても不十分なものに思うかもしれない。なお、Robinhoodはこれを「第一歩」と呼んでいる。

Impacted Robinhoodのユーザーは、Robinhoodに連絡して補償を求めることができる。以下は、Robinhoodが昨夜遅くに顧客に送ったメールだ。

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(翻訳:塚本直樹 Twitter

Cobalt.ioの「侵入テスト」は問題発見とデベロッパー対応を直結させる

Cobalt.ioは企業がもっと正しいやり方で「侵入テスト」を行ってもらいたい、と願っている。侵入テストとは、アプリケーションを実際に稼働させる前にその脆弱性をテストする工程だ。侵入テストを提供しているCobalt.ioが、このたびプラットフォームをさらに強化した。

Cobalt.ioのCEOであるJacob Hansen(ジェイコブ・ハンセン)氏によると、従来の侵入テストは時間も費用もかかる作業で、最後にテスターが見つけた問題点をリストアップしたPDFを納めて終わる。彼と共同創業者たちが2013年に同社を立ち上げたときは、その工程全体をデジタル化したいと考えた。

「そう考えて作ったものは2つだ。まず、有能で実績のあるテスターのマーケットプレイス。そのマーケットプレイスにいるフリーランスのセキュリティテスターはすべて我々の試験に合格しており、彼らを弊社の被雇用者のようなかたちで顧客企業に派遣する。そしてテストのスケジュールと管理をするソフトウェアも制作した」とハンセン氏は語る。

彼によると、この侵入テストという工程におけるボトルネックの1つは、テストの基本的なパラメータの理解など、最初の段階が難しいことだ。これはたくさんのメールや電話で行われる。そこでCobaltはスタートアップウィザードを構築して、最初の段階を楽にした。

ハンセン氏は「それは、侵入テストの計画のためのTurbo Taxみたいなものだ。テストのための要件収集とセットアップを高速化、合理化するところが似ている。テスターと顧客の両方にとって便利だ」と説明する 。

テストがスタートすると、問題点のリストを顧客に渡すのではなく、問題点をデベロッパーに直送して彼らの開発環境に統合する。例えばテスターが問題を発見すると、自動的にフラグが付き、Jiraに送られてデベロッパーはほぼリアルタイムで必要な修正などを行う。

「この点が、従来の侵入テストサービスとの重要な違いだ。我々はサービスのプラットフォームとしてモダンな侵入テストを構築した。それはリアルタイムで統合可能であり、優れたワークフローでもある」と彼は語る。

また料金も、従来のように個々のテストに課金するのではなく、顧客は一定の前金をCobaltに払っておき、対応が必要な問題が起きればそこから適宜料金を支払うする。顧客には、コストの確実性と可用性を事前に認識させることができる。もちろんCobaltは、サービスが実際に利用される前に支払いを受けることができる。

Cobalt.ioは2013年に創業され、本社はサンフランシスコ、オフィスはボストンとベルリンにある。顧客は500社、2019年はテストを1000回行い、レポートを提供した。2020年はその3倍にしたい、と彼らは願っている。Crunchbaseのデータによると、同社はこれまで800万ドル(約8億4000万円)を調達している。

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa