AIでがん患者に最適な治療法を見つけるMendel.aiが200万ドルを調達

Dr. Karim Galilはうんざりしていた。がんで患者を亡くすことにうんざりしていた。散乱する医療記録にうんざりしていた。として、様々な効果をうたう数多くの臨床試験を掌握することにうんざりしていた。多くの患者を失い、忍耐力も失いつつあったGalilは、AIシステムを構築して担当する患者を、最適な治療方法とマッチングさせようと考えた。

彼はこの新システムを、近代遺伝学の父、Gregor Mendel[グレゴール・メンデル]に因んでMendel.aiと名付け、DCM Ventures、Bootstrap Labs、およびLaunch Capitalから200万ドルのシード資金を調達してプロジェクトを立ち上げた。

Mendel.aiは、英国拠点のBenevolentBioに多くの面で似ている。大量の科学論文に目を通して最新の医療研究の情報を収集するシステムだ。ただし、Mendel.aiは、キーワードデータの代わりにアルゴリズムを用い、clinicaltrials.gov の医療文書にある構造化されていない自然言語の内容を理解して患者の診療記録と突き合わせる。この検索プロセスによって完全にパーソナライズされた一致を見つけ、候補となる治療方法と患者の適合度を評価する、とGalilは説明した。

このシステムは、膨大な臨床データの最新動向を把握しきれない医者にとって有用かもしれない。

患者もまた、数多くの臨床試験の結果を読むのは大変だ。例えば、ある肺がん患者について、clinicaltrials.govにある試験結果が500種類見つかり、それぞれに適用分野が詳しく書かれたリストが付いてくる」とGalilは言う。「臨床データは毎週更新されるので最適な適合を人間が把握するのは不可能だ」。

Mendel.aiは適合に必要な時間を短縮することで、もっと多くの命を救おうとしている。現在同社は、カリフォルニア州ベーカーズフィールドのComprehensive Blood & Cancer Center (CBCC) のシステムと統合することで、同センターの医師は患者にあった治療法を数分のうちに見つけられるようにしている。

今後はCBCCのような病院やがん遺伝子企業とさらに提携を結び、Mendel.aiを改善し、システムを提供していく計画だ。間近の目標としては、IBMのWatsonに挑戦して、どちらが良い患者の適合を見つけるかを比べてみたい、とGalilは言う。

「これは、人が生きるか死ぬかの違いだ。冗談ではない。」とGalilはTechCrunchに語った。

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インテリア写真SNS「RoomClip」が8億円調達――「2年後の上場目指す」

インテリア写真SNSの「RoomClip」を運営するTunnelは7月3日、合計9社を引受先とした第三者割当増資を実施し、総額8億円を調達したと発表した。投資家リストは以下の通り:

Tunnelは今回調達した資金を利用して、アプリリニューアル、人員強化、ECサイト向けの新サービス提供などを実施する予定だ。

RoomClipは、家具や雑貨などのインテリアの写真を投稿することができるSNSアプリ。写真を共有したり、その写真にコメントをつけてコミュニケーションをとることができる。現在、RoomClipのMAUは270万人で、累計で約240万枚の写真が投稿されている。投稿された写真の表示回数は1カ月あたり2.5億回だ。

この2年間はマネタイズにフォーカス

前回TechCrunch JapanがTunnelを取材したとき、彼らのテーマは“グロースからマネタイズへの転換”だった。2013年頃は10万件だった写真投稿数を100万枚までに増やし、これから収益化を目指すというフェーズだ。

Tunnel代表の高重正彦氏は、「これまではグロースに注力してきたが、過去2年間はマネタイズにフォーカスしてきた」と語り、現在Tunnelの売上高は「数千万円規模」だと明かした。

Tunnelのマネタイズ手段は大きく分けて2つある。

1つ目はアフィリエイト手数料だ。RoomClipでは、ユーザーが写真に写っているインテリアなどのアイテムをタグ付けできる。それぞれのアイテムページに設置されたリンクを通して商品が購入された場合、Tunnelに手数料が入る仕組みだ。現在、アフィリエイトの流通総額は数億円程度だという。

ユーザーに報酬が入ることはないが、それでも全体の20%の写真にタグがつけられている。高重氏は、「RoomClipのユーザーには“人の役に立ちたい”というモチベーションがある」と語る。2016年から本格化したこの取り組みだが、Tunnelはこの数字を早期に今の20%から100%に近づけていくことを目標にしている。「はじめは人力でタグをつけて教師データをつくる。そのデータでトレーニングした画像認識アルゴリズムでタグ付けを自動化する予定だ」(高重氏)

2つ目のマネタイズ手段は、インテリアや家具をあつかう企業やECサイトへの写真販売。これが同社にとってメインの収益源だ。

一般のユーザーが投稿した実例写真は、商品購入の決め手になるほど説得力を持つものだ。これらの実例写真が消費者の購買意欲をかき立て、クライアントのECサイトではコンバージョン率が3倍になった例もあるという。

RoomClipに投稿された写真の著作権は投稿したユーザーが保有しているが、二次利用権はTunnelにある。実際に写真をカタログなどに利用する場合はユーザーに確認をとるが、「これまで一度も断られたことはない」(高重氏)という。自慢のインテリアの写真が企業に利用されるということで、投稿したユーザーのモチベーションも上がるというわけだ。

ECサイト向けの新サービス開始

Tunnelは今回調達した資金を利用して、2017年8月よりECサイト向けの新サービス「おすすめショップ」の提供を開始する。

このサービスを利用するECサイトには、RoomClip内に専用のアカウントが与えられる。ユーザーはそれらのアカウントをフォローすることが可能だ。そして、RoomClipにそのECサイトが取り扱う商品が写った(タグ付けされた)写真が投稿されると、アカウントのフォロワーにその写真が自動で配信される仕組みだ。

これにより、ECサイトは集客プロセスを半自動化することが可能になる。

RoomClipと同様の写真SNSを手がけるInstagramは、Facebookに買収された。しかし、高重氏が目指すのは、M&Aによるエグジットではなく、上場だ。「2年後までに2500万人のユーザー数を目指す。また、同じく2年後の上場を目指すために動いているところだ」と彼は話す。

ステークホルダーへの責任を考えれば、サステイナブルな企業を目指すのは当然であり、それを実現する手段が上場であると高重氏は考えている。

B-Shoesは、高齢者の転倒を未然に防ぐ靴

米国では毎秒ひとり以上の高齢者が転倒して、年間2万7000人以上が亡くなっていると、CDC[疾病対策センター]は報告している。

しかし、イスラエルの都市ハイファのある企業が、転ぶことそのものを防ぐ方法に取り組んでいる。

B-Shoe Technologiesがプロトタイプを開発中の靴は、一歩踏み出すごとにバランスの乱れを検知して、ミニランニングマシンのようなシステムを使って自動的にバランスを取り戻す。

この靴は、圧力センサー、マイクロプロセッサー、移動検知器にソフトウェアを組み合わせて、履いている人が滑ったことを検知するとローラーを前後に動かして転倒を未然に防ぐ。

B-Shoe Technologiesは、現プロトタイプはごく初期段階にあり、デザインの無駄を省いて2年以内に量産する計画だと話している。

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Facebook、「Wi-Fiを検索」機能を全世界で提供開始

Facebookは、モバイルユーザーがWi-Fiネットワークを探すための新機能を正式提供する。同社は昨年、近くにある無料の公開Wi-Fiネットワークを見つける “Find Wi-Fi”[Wi-Fiを検索]機能のテストを開始した。当時利用できたのは一部の国のiOSユーザーだけでテスト的な運用だった。今日(米国時間6/30)Facebookは、近々全世界のiOSおよびAndroid端末で “Find Wi-Fi” が使えるようになると発表した。

同社は、この機能が追加されることで、旅行中、とくに携帯電波が入りにくい場所での利用が便利になる説明した。

米国をはじめとする先進国では、遠隔地や農村地帯での利用を意味するかもしれないが、データプランの制限が厳しく、一般に対応地域の狭い途上国では、さらに強力なツールになる。

新しい機能は、その他の新機能と同じくFacebookモバイルアプリの「その他」タブにある。「Wi-Fiを検索」を開くと「機能をオンにする」ボタンを押すように言われる。オンにすると近くのWi-Fiスポットとサービス提供者の説明が載った地図が表示される。
[日本語版注:位置情報サービスの設定変更が必要になる場合もある]

これは、月間20億人を超えたFacebookユーザーを常時接続状態にしてアプリで過ごす時間を増やす(Facebookの収支に直結する)だけでなく、地域の店舗を見つける新たな方法でもある。つまり、ユーザーはWi-Fiを使える近くのコーヒーショップを見つけるのに、GoogleマップではなくFacebookを使うようになるかもしれない。

But the feature isn’t as of yet as reliable as it should be, we found – though it easily picked up Wi-Fi hotspots at nearby restaurants and malls, for example, it didn’t include the closest Starbucks or McDonald’s in our list of suggestions. (Your mileage may vary.)

ただ、われわれが使ってみた限り、この機能はまだ十分に信頼できるとは言えない。近くのレストランやモールのWi-Fiスポットはすぐに見つけてくれるが、近くのスターバックスやマクドナルドは候補リストに載っていなかった。

This is because, for the feature to work, a business must first claim their Wi-Fi network by navigating to their “Edit Page Info” on their Facebook Page. Or, more simply put, it’s an opt-in setting. That being said, the feature has seen good adoption during the tests starting last year. And now that businesses know it’s a globally available feature, that adoption may increase.

その理由は、このしくみが機能するためには、まず店舗が自分のFacebookページへ行き「ページ情報の編集」でWi-Fiネットワークを登録する必要があるからだ。つまり「オプトイン」方式をとっている。それでも昨年始めたテストでの利用状況は良好だった。今回全世界で公開されたことで、利用者はさらに増えるだろう。

Wi-Fiネットワーク一覧を見るためのツールは、 モバイルユーザーの接続を改善しようとするFacebookの大きな取り組みの一つにすぎない。Internet.orgを通じての途上国でのモバイル接続の拡大、世界各地でのインフラストラクチャーへの投資、さらにはソーラー電力ドローンの活用計画もある。

“Find Wi-Fi”[Wi-Fiを検索]機能は、iPhoneおよびAndroidアプリで世界中に提供を開始したとFacebookは言っている。


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「LAで最初のセクションを完了」イーロン・マスクがついにトンネル掘削機を始動

eng-logo-2015

イーロン・マスク氏がロサンゼルスの交通渋滞に嫌気を起こし設立したトンネル掘削会社The Boring Companyが、巨大掘削機”Godot”の 最初のひと搔き を完了しました。

 

マスク氏は5月、入手はしたものの長らく出番がない掘削機にサミュエル・ベケットの戯曲「ゴドーを待ちながら」に引っ掛けた名前”Godot”を与えていました。そして6月29日、「もう待つ必要はない。GodotはLAにトンネルの最初のセクションを掘り進めた」とツイート、ようやくその巨大な掘削機を始動させたことを明らかにしました。

ただ、現在のところはGodotがどこからどこへ向けて穴を掘り始めたのかは明かしていません。

イーロン・マスクは2週間ほど前、ロサンゼルス市長と会談を持ち「有望な会話ができた」としつつも技術は問題ないが、許可を得るのが大変だとして、LAの地下に穴を掘り進める正式な許可が出たかどうかは明らかにしませんでした。とはいえ、それからしばらくして「最初のひと掻き」を報告するということは、少なくとも必要な公的手続きが進んでいると考えられます。

マスク氏は4月、LA市街の地下にトンネルを張り巡らせ、自動車やバイク、歩行者などを乗せて高速移動するライド式の地下交通コンセプト動画を公開しています。また5月には最初の路線として、ロサンゼルス国際空港からカルバーシティ、サンタモニカ、ウェストウッド、シャーマンオークスを結ぶルートを計画しているとInstagramに投稿していました。

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Engadget 日本版からの転載。

倉庫会社のOmniが友人たちとのアイテム共有を可能に

オンデマンド倉庫(実際のピックアップとデリバリーを行ってくれる荷物保管サービス)のスタートアップOmniは、お気に入りのアイテムに、クローゼット内のスペースを占めることなく簡単にアクセスできるようにするサービスだ。しかし、同社は今、そうしたアイテムを友人たちや、ローカルコミュニティのなかで共有できるようにするための、大きな一歩を踏み出そうとしている。

Omniだけがオンデマンド倉庫マーケットのプレイヤーではない。ClutterMakeSpaceTroveといった企業も、こうしたサービスをオンラインで提供している。しかし、Omniが他の倉庫スタートアップと差別化を図ろうとしている点は、アイテムレベルの分類と、ユーザーの持ち物への個別のアクセスの提供だ。

あなたが持ち物をOmniに保管すると、それは単に倉庫のどこかの埃を被った箱やケースの中にしまい込まれるのではない。同社は、ユーザーはモバイルアプリで管理できるように、受け取ったアイテムをそれぞれ写真をとり、識別タグを付け、カテゴリーに分け、在庫として保管する。ユーザーは、少なくとも2時間前に同社に通知すれば、いつでも倉庫からアイテムを取り出すことが可能だ。

このことで、週末にサーフィンや自転車やゴルフを楽しみたいOmniのユーザーは、スポーツ用具を不要な間は倉庫に預けておき、必要なときに取り出すことが可能になる。しかし、今や同社は、ある程度以上のアイテムを集めることができたので、今度はアイテムを預けているユーザーたちに、それらを友人たちやローカルコミュニティの中で、共有して使えるようにさせたいと思っている。

「私たちが立ち上げようとしているのは、アイテムのオーナーが、その持ち物を友人たちやローカルコミュニティに対して共有できる機能です」こう語るのはOmniのプロダクトVPであるRyan Delkである。立ち上げ以来18ヶ月で10万点以上の品物を集めたOmniにとって、これはもともと計画されていた内容なのだ。

「私たちは倉庫業という姿を、トロイの木馬のような見せかけの姿として位置付けていました」とDelkは私に語った。彼によれば、Omniが今回のサービスを実現できたのは「すべてがアイテムレベルで起こる」からだ。

振り返ってみれば、その計画はおそらく明らかだったはずだ。結局のところ、なぜわざわざ倉庫保管用のアイテムをピックアップして、個別にタグをつけカテゴリーに分け、品物のクラウドデータベースに登録するといった手間をかけていたのだろうか?もちろんユーザーが個別のアイテムに対して何かをすることができるようにだ。

Omniではユーザーは1ヶ月あたり、小物なら50セント、大きい品物はら3ドルで保管することができる。またユーザーがどれほど素早く在庫中の品物にアクセスしたいかによって、ピックアップとデリバリーの費用が変化する。本当に急ぐ(3時間以下)場合でない限り、品物のピックアップは無料だ。反対にアイテムを配達して貰う際には、翌日配達で3ドル、2時間以内の配達を指定すると20ドルが必要となる。

ビジネスの経済性を考えると、Omniで保管するものは、地元のセルフ保管倉庫で使っているような、箱に放り込んでお終いという種類のものではない。Omniでは独自の分類に基づき、商品の29%は「家庭用品と工具」に分類され、25%がアパレルに、そしてスポーツやレクリエーションが全商品の13%を占めていると語る。

  1. request-flow.png

  2. item-availability.png

  3. accept-flow.png

  4. search-flow.png

  5. friend-management.png

これら3つのカテゴリーだけで、Omniユーザーが手持ちの電動工具を隣人に使わせたり、友人にイベント用ドレスを貸したり、キャンプその他のアウトドア用品を共有したりという用途が想像可能だろう。

Omniは既にこのコンセプトを、ベイエリアの限られた数のベータユーザーに対してテストしており、これから一般公開をしようとしているところだ。ユーザーが保管したすべてのアイテムは、デフォルトではプライベートになるが、もし友人たちと共有したり、コミュニティで利用可能にしたいと思った時には、今や簡単にそれを行うことができる。

もしここまで読んで、まだ先も読むつもりなら神の祝福を。このサービスがこの先狙っているところを次に説明したい。Omniは単純な「借り入れ」と「貸し出し」からこのサービスを開始する。しかし考えてみて欲しい…ここからユーザーが普段使っていないものをレンタルしてお金を稼ぐまではほんの1歩に過ぎない。そうなったらOmniはそこから手数料を抜けば良い。

実際Delkは、友人や隣人からアイテムを借りるときにピアツーピアのVenmoまたはPayPal支払いを使ってシステムに取り込み、すでにこのようなことを行っているユーザーがいることを認めている。そして同社が、既にプラットフォーム上で起こっているこうした商取引の一部を、どれほど取り込みたいと思っているかを想像することもできるだろう。

とはいえ、それはいつの日かやってくる別のアップデートの話だ。Omniは、こうしたものが人びとが本当に求めているものであることを、証明していかなければならない。そして時間と支持だけがそれを証明する。また数ヶ月後に戻ってきて、その時このシステムがどのように運営されているかをチェックしてみたい。

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(翻訳:Sako)

今回のマルウェア攻撃の標的は半数以上が工業分野

今週の大規模マルウェア攻撃の標的 ―― および意図した効果 ―― を調査しているサイバーセキュリティ会社、Kaspersky Labsの最新レポートが、いくつか興味深い洞察を与えている。

当初Petyaという名前で知られる商用マルウェアの変種と考えられていたその攻撃は、大規模なランサムウェアスキームの一つとみられた。しかし事態が進むにつれ、攻撃は金目当てより破壊目的であることが明らかになってきた。身代金を支払っても影響を受けたシステムのロックを解除すの復号キーが手に入らなかったからだ。,

しかも、本稿執筆時点でこの攻撃が 生み出したのはわずか3.99 BTC(約1万ドル)にすぎない。一方、大規模なシステム麻痺によって主要空港、銀行、さらには チェルノブイリの放射能監視システムまでもが運用を停止した。一見ランサムウェアに見えるこの攻撃の影響を受けたシステムは、60%以上がウクライナに存在している。

Kaspersky Labsの報告によると、金融分野の被害が最も大きいものの、ほかの標的の50%以上が製造、石油、およびガスの分野に分類される。

「これはこのマルウェア作戦が経済的利益を目的としたランサムウェアではないという説を支持している」とKaspersky Labsがブログで分析している」。これはランサムウェアを装った「ワイパー」(データ破壊プログラム)と見られている。

Kasperskyはブログでこう説明している:

ExPetr(Petya)のような脅威は、重要なインフラストラクチャーや工業部門にとって著しく危険であり、攻撃の標的になったオートメーションや制御システムなどの技術プロセスが影響を受ける可能性がある。その種の攻撃は企業の生産や金融だけでなく人間の安全にも影響を与えかねない。

分析によると、多くの製造業がExPetr(Petya)マルウェアの攻撃を受けている。工場制御システムが影響を受けた事例もあるが、ほとんどのケースは企業のネットワークのみが被害を受けている。

このマルウェアをどう呼ぶかについては数多くの議論がなされているが、Kasperskyらは“ExPetr”と呼び、良く知られているランサムウェアのPetyaの変種であるPetrWrapと区別している。McAfeeの研究者らもマルウェアがPetyaに関係しているという説に懐疑的だ。「たしかにPetyaに似ているが、逸脱している部分もある」とMcAfeeのチーフサイエンティスト、Raj Samaniが今週TechCrunchに伝えた。

かつてPetyaと呼ばれたこのランサムウェアの分析に結論を出すにはまだ早いが、事態が複雑化していることは間違いない。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

AIでヘイトコメント問題に取り組むInstagram

Instagramは、敵意があったり、攻撃したり、あるいは嫌がらせをするようなコメントを自動的に検出し、人びとがそれらを見ないようにする仕掛けを導入しようとしている。この新しいシステムはFacebookとInstagramがDeepTextを使って行った成果に基づくものだ。なおDeepTextとは、スパムと戦うために言葉を文脈の中で解釈するテキスト分類エンジンだ。

Wiredが最初に報告したように、Instagramのシステムは、Facebookがスパム対策に上手く適用できた技術を、昨年10月から取り込んでいる。どのようスパムを識別すべきかを人間の入力によって教える訓練を経て、チームは満足できる結果を得ることができた。ただしこのことによって、対策前に比べて正確にはどれ位の効果が出たのかについては発表されていない。

このシステムの成功に基づいて、チームは更により強烈な問題に適用できるかを探りたいと思っていた。すなわち敵意に満ち、嫌悪感むき出しで、嫌がらせを狙ったコメントを識別するということだ。さて、おそらく読者はインターネットには詳しいと思う。もしそうなら、インターネットという場所が、その最終的な効果をほとんど考慮しない、言いっ放しの、傷つける罵りや攻撃が、大量に拡散される手段となっていることに気がついているだろう。

Wiredによれば、DeepTextの訓練を請け負った評価者たちは、ネガティブなコメントを識別して、それらを「いじめ、人種差別、性的嫌がらせ」のような幅広いカテゴリーに分類するような訓練を行った。評価者たちは、現在の公開に至る前に、少なくとも計200万件のコメントを分析したと言われており、分類の正しさを確実にするために、それぞれのコメントは最低2回評価された。

レポートによれば今日(米国時間6月29日)からシステムは稼働し、今後は敵対的なコメントを入力してもただ消されることになる(ただしそのコメントを投稿した人には表示され続ける。これは表示されるまで投稿を繰り返すような、フィルターをすり抜ける努力をさせないためだ)。このフィルタは、最初は英語のみに適用されるが、このプロジェクトのために雇われた評価者たちは皆少なくともバイリンガルであり、Instagramはそのスパムフィルターを他言語にも広げつつある。よって他の地域にこのツールが展開されるのも時間の問題だろう。

個人的には、Instagramは既に多くの友人がやってくるソーシャルネットワークになっていると思う。なぜなら大部分のインターネットソーシャルフォーラムよりもより親しみやすいものだからだ。もし今回のシステムが効果的だということが分かったら、長期的には利用者を長く留める避難所になることもできるだろう。

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(翻訳:Sako)

暗雲立ち込める中、Uberが乗車回数50億回を突破

Uberの乗客は延べ50億回このサービスを利用して移動したと本日(米国時間6/29)同社が発表した。2016年に達成した20億回の2倍以上だ。50億乗車の節目を実際に越えたのは5月だった。5月20日 7:29:06 AM GMT、156台の乗車がスタートし、相乗りサービスを大台に乗せた。

これはUberにとって実に大きな数字だが、暗雲立ち込める中での祝福となりそうだ。CEOが辞任、社内カルチャーの第三者調査でいくつもの問題を指摘され、山ほどの法的トラブルを抱えている。ただし現時点でそれがどれほどUberのビジネスに影響を与えているかはわからない。Uber自身は2017年も乗車回数は伸びていると強気だが、アプリのダウンロード数を含め最近の第三者データをみると、LyftらのライバルがUberのリードを縮めつつあることを示している。

Uberの50億回目の乗車は、窮地に立たされた同社に一筋の光をさす明るいニュースであるだけではない。同社は、50億回の節目を越える乗車を提供したドライバー156人全員に、50ドルのボーナスを渡した。Uber利用者は、乗車履歴をチェックして自分がその時乗っていたかどうか調べてみよう。この栄えある記録達成に参加したという事実を知ることがごほうびだ。

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Facebook、新しい広告測定基準を導入。今後も追加していくことを約束

Facebookは、同サービスの広告 やFacebookページを利用している企業のために、新たな測定基準を導入すると発表した。

昨年Facebookは、一部の測定値を誤って報告していたことを認めた ―― 個々の間違いはさほど問題になるものではなかったが、全体として広告主に対する透明性を確保する努力が必要であるという印象を与えた(メディア評価委員会の監査を受けるきっかけにもなった)。

同じように、今日Facebookが発表する新たな測定基準も、一つ一つは大きな違いを生むものではないが、今後に向けた大きな取り組みの一環であると同社は言っている。

「各企業からはFacebookの実績について透明性を高め理解を深められるようにしてほしいという要望が寄せられている」とFacebookがブログに書いている。「測定値に関する取り組みの一環として、ほぼ毎月新しい指標を公開して、様々なデータを企業が一か所で見られるようにしていくことを約束する」。

新たな測定基準の中でも特に興味深いのが「ランディングページビュー」で、広告をクリックした後、実際に企業のモバイルランディングページに到達したユーザーが何人いたかを広告主に知らせる。

Facebookによると、この測定値は「よりよいモバイルウェブ体験に向けた最適化の重要性を企業が認識する」ために役立つという。これはFacebookにとって何度も繰り返されているテーマであり、これまでもInstant Articles(ニュース提供者向け)やCanvas(広告主向け)といった方式を使って、コンテンツをFacebook内部に取り込むことによって、ウェブレスポンスの悪化を回避しようとしてきた。

ほかの新しい指標には、広告をクリックしたユーザーが、以前その広告主のウェブサイトやアプリを利用したことがあるかどうかを報告するものがある。

そしてFacebookページにも新しい測定基準が追加された ―― フォロワーの増減、ページの情報を(ページ自体をクリックせずに)プレビューで見た人数、誰かのおすすめの中にFacebookページが入っていた回数などだ。

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Petyaの蔓延を受け、下院議員がNSAに要請、「方法を知っているなら攻撃を阻止してほしい」

今日(米国時間6/28)、テッド・リュウ下院議員(カリフォルニア州選出/民主党)はNSAに対して、昨日から世界を襲っているランサムウェア(ランサムウェアを装った別物の可能性もある)の蔓延阻止を要請する書簡を送った。

リュウ氏は、EternalBlueという攻撃ツールをリークさせ有害ソフトの蔓延を助長した責任はNSAにあると主張している。先月、WannaCryというランサムウェアが同じくEternalBlueを用いて、脆弱性を保護するためにMicrosoftが発行したパッチMS17-010)を適用していないコンピューターに侵入した。

「複数の報告によると、2つの世界的ランサムウェア攻撃が発生したのは、NSAのハッキングツールがShadowBrokersという組織によって世間に公開されたためだ」とリュウ氏は書いている。

「私の何よりも緊急な要望は、もしNSAがこの世界的マルウェア攻撃の止め方、あるいは止めるのに役立つ情報を知っているなら、直ちに公開してほしいということだ。もしNSAがこの最新マルウェア攻撃のキルスイッチを持っているなら、今すぐ配備すべきだ」

リュウ氏は、NSAが自分たちのシステム内に発見した脆弱性についてもっと広くテクノロジー企業に伝えるよう要請した。EternalBlueに関して、NSAは何年も前からその存在を知っていたと言われている。NSAがほかにも重要なツールを隠し持っていること、新たなShadow Brokersのリークによって容易にそれが暴露されるあろうことは当然想像できる。

[これについて記事を書くつもりのジャーナリストは、マルウェアの蔓延はNSAが何年もの間放置してきた脆弱性によるものであることを忘れてはならない]

「現在も脅威が進行中であることを踏まえ、NSAはMicrosoftを始めとする各企業と積極的に協力し、同局が認識しているソフトウェア脆弱性について知らせるよう要請する。さらには、NSAが作ったマルウェアによる将来の攻撃を防ぐために、各企業に知っている情報を公開すべきだ」とリュウ氏は言った。

昨日のランサムウェア攻撃には、前回のWannaCry以上に厄介な問題がある。IEEEのシニアメンバーでアルスター大学のサイバーセキュリティ教授のKevin Curranは次のようにTechCrunchに説明した:「WannaCryとの重要な違いの一つは、Petyaがディスク上のファイルをいくつか暗号化するのではなく、ディスク全体をロックして一切プログラムを実行できなくすることだ。ファイルシステムのマスターテーブルを暗号化することによって、オペレーティングシステムがファイルをアクセスできなくしている」。

もう一つの大きな違いは、WannaCryにはキルスイッチがあったことだ。偶然の産物ではあるが

「PetyaはWannaCryと同じ恐ろしい複製能力を持っており、内部ネットワークを通じて直ちに広がってほかのマシンに感染する」とCurranは言った。「感染したコンピュータ上のパスワードも解読し、それを使って感染を広げているらしい。今回キルスイッチはなさそうだ」。

本誌はNSAに連絡を取り、現在のランサムウェアの蔓延を止めることができるのか、今後の責任はNSAにあるのかを質問している。

リュウ議員の書簡全文を以下に埋め込んだ。

( function() {
var func = function() {
var iframe_form = document.getElementById(‘wpcom-iframe-form-82ed389bbd1284535660dc8d1b3a6bdb-595465cfcdac1’);
var iframe = document.getElementById(‘wpcom-iframe-82ed389bbd1284535660dc8d1b3a6bdb-595465cfcdac1’);
if ( iframe_form && iframe ) {
iframe_form.submit();
iframe.onload = function() {
iframe.contentWindow.postMessage( {
‘msg_type’: ‘poll_size’,
‘frame_id’: ‘wpcom-iframe-82ed389bbd1284535660dc8d1b3a6bdb-595465cfcdac1’
}, window.location.protocol + ‘//wpcomwidgets.com’ );
}
}

// Autosize iframe
var funcSizeResponse = function( e ) {
var origin = document.createElement( ‘a’ );
origin.href = e.origin;

// Verify message origin
if ( ‘wpcomwidgets.com’ !== origin.host )
return;

// Verify message is in a format we expect
if ( ‘object’ !== typeof e.data || undefined === e.data.msg_type )
return;

switch ( e.data.msg_type ) {
case ‘poll_size:response’:
var iframe = document.getElementById( e.data._request.frame_id );

if ( iframe && ” === iframe.width )
iframe.width = ‘100%’;
if ( iframe && ” === iframe.height )
iframe.height = parseInt( e.data.height );

return;
default:
return;
}
}

if ( ‘function’ === typeof window.addEventListener ) {
window.addEventListener( ‘message’, funcSizeResponse, false );
} else if ( ‘function’ === typeof window.attachEvent ) {
window.attachEvent( ‘onmessage’, funcSizeResponse );
}
}
if (document.readyState === ‘complete’) { func.apply(); /* compat for infinite scroll */ }
else if ( document.addEventListener ) { document.addEventListener( ‘DOMContentLoaded’, func, false ); }
else if ( document.attachEvent ) { document.attachEvent( ‘onreadystatechange’, func ); }
} )();

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

日経FinTechがイベント開催、給与前払いサービスやアルゴリズムトレードなどが登壇

専門情報誌の日経FinTechが6月23日、全日イベント「Nikkei FinTech Conference 2017#2」を東京・神田で開催した。イベントには官公庁や金融機関、Fintechスタートアップなどが集まったが、ここでは主にスタートアップ企業が登壇したNikkei FinTech Startups Awards 2017の参加企業を紹介しよう。

登壇7企業は既存企業の子会社も含まれるため「スタートアップ企業」の枠に入れて良いのかどうかという議論はあるが、Fintechに関連する新サービスに取り組みはじめたばかりのところだ。

優勝したのはマネーフォワード子会社の「MF KESSAI」。2位は「Studio Ousia」、3位は「Smart Trade」だった(これを書いているTechCrunch Japan編集長の西村賢は審査員の1人として審査に参加している)。

MF KESSAI代表の冨山直道氏(右)と審査員の岩下直行氏(左、京都大学公共政策大学院 教授)

 

・MF KESSAI(優勝)
今回見事に優勝を勝ち取ったのはマネーフォワードが100%出資する子会社として設立したMF KESSAIだ。すでにTechCrunch Japanでも発表時に記事にしているが、MF KESSAIは企業間の売上代金の回収を代行してくれるサービスを提供する。売掛債権を現金化する、いわゆる「ファクタリング」にも見えるが、むしろ狙いは請求業務のアウトソーシングという部分だと代表の冨山直道氏はいう。与信審査、請求内容の入力など一連の売掛金回収のフローをクラウドで提供する。親会社のMFクラウドで得た知見と日々動いている支払い実績のデータから精度の高い与信審査ができることがキモで、98%という高い審査通過率と、1.5〜3.5%という低い料率を実現できたカギだという。例えば業種ごとの未入金率なども常時データを更新しているそうだ。ネットやECの興隆によって一次産業の直販化という流れがあるが、農家や漁師が直接飲食店に食材を卸すといっても、小規模な事業者は回収リスクを取れなかったり、請求業務になれていなかったりする。冨山氏はそうした地方企業にこそ、MF KESSAIを使って欲しいと話した。

・Studio Ousia(2位)
TechCrunch Japanでも何度か紹介したこのあるStudio Ousiaは自然言語処理による質問応答システム「QA Engine」を開発している。特徴はディープラニングやエンティティリンキングといった自然言語処理の中でも最先端の成果を取り入れていること。Studio Ousiaは国際学会における人工知能クイズコンテストで優勝した実績もある。ディープラニングは表現・表記の揺れに強く、通常の質問応答システムでは1つの回答に対応する質問文を10個ほど用意しなければならないところ、もっと少ない質問文で十分な精度を出せるという。すでに導入しているクラウド会計「freee」の例だと、例えば「家事按分」について説明する回答というのは、この用語を知っている人にとっては未知語。直接このキーワードを含まない質問文でこの回答が引き出せるのが強みだという。QA Engineの差別化要因は、日本語で精度が出ること、学習データが少なくても精度が出ること、質問文を入れるためのツールが揃っていて業務が分かっている担当者であれば、1日数千の質問文を作れるとのこと。

・Smart Trade(3位)
システムトレードのアルゴリズムを売買できるマーケットを提供するのが「Smart Trade」だ。米国ではアルゴリズムによる売買が証券市場の30%程度、3.2兆ドルにも膨らんでいて「クオンツトレード」と呼ばれている。一方の日本を始めとするアジア市場は、まだこれから。海外にはQuontopianという似たサービスがすでに存在しているが、Smart Tradeの差別化は日本株を扱うことと、開発したアルゴリズムを過去データに適用した場合にどの程度のパフォーマンスとなるのかを検証する「バックテスト」が高速である点。Smart Tradeは公開2週間後ですでに70個程度のアルゴリズムを集めているそう。2つのアルゴリズムが合成可能な場合には、機械的にアルゴリズムを生成することで自動化と最適化を進めていくという。

・enigma
ネオキャリアの子会社であるenigmaが取り組むのは、非正規労働者向けの前払い給与サービス「enigma pay」だ。勤怠打刻データや給与データを参照して、アルバイトの給与データを前払い申請に基づいて企業に代わって振り込むサービスを展開する。enigma代表取締役COOの小口淳士氏によれば求職者の検索キーワードの上位には「日払い」が常時入っているほど若年層非正規労働者は自由に使えるお金が減っているという。こうした層には給料日にまとめて1カ月ぶんの支払いをするよりも、いつでも引き出せるということのほうが歓迎される。現在バブル期を超える求人難となっていることもあり、導入企業にはアルバイト人材確保という面でメリットがある、という。現在20社、10万ユーザーで導入企業しており、今後2000万人いるとされる非正規労働者の25%をユーザーとして獲得していく、という。親会社のネオキャリアが持つ勤怠管理システム「jinger」の20万社という導入基盤があるからできるサービス展開とも言えそうだ。

・App Socially
接客チャットサービス「ChatCenter iO」を展開し、日米双方に顧客のを持つ。App Socially自体は2013年の設立で日本人起業家としては数少ないシリコンバレーのアクセラレター、500 Startupsの参加企業でもある。AI、チャット、というと導入して失望した人も多いのではないか、とApp Sociallyの高橋雄介CEO。ChatCenter iOではAIによる接客の代替ではなく「会話の50%を自動化」するような半自動化の部分をユースケースごとに増やしていく取り組みを大手企業と組んで行なっているという。ホテル予約で日時を調整するとき、空き部屋の提示や支払い方法の提示を半自動化するといったことや、タクシーであれば配車時の位置情報の提示で機械学習の支援を接客担当者が活かせる仕組みを作っているそう。現在はむしろ大手企業との取り組みの中で受託コンサル的にユースケースから自動化する部分を増やしているフェーズ。そうした半自動化や自動化のユースケースは同一業界内であれば比較的容易に横展開できるだろうという。

・Emotion Tech
「感情xテクノロジー」を掲げるEmotion Techは、接客業におけるサービス品質改善のためのデータ分析プラットフォームを提供している。創業者の今西良光氏はユニクロでフロアマネージャーを務めたことがある。それは組織マネジメントを学ぶためだったが、結果としてスタッフ各人が顧客からどう評価されているのかは管理者には分からないことがある、ということを苦い体験から学ぶこととなった。そこで仕組みで解決しようと創業しようと設立したのがEmotion Techだそうだ。現在は説明時間がある窓口業務でのアンケート調査の分析を中心に200社ほどで導入されているという。今後は顧客の感情的変化をさまざな形で集めていくそうだ。

・atone
ネットプロテクションズの「atone」(アトネ)は個人向け審査不要のスマホ活用後払いサービスだ。現在スマホの普及で個人間取引や小規模事業者と個人との間での決済が増えているが、同時に売手には未回収リスクがある。そこで独自の与信データ・アルゴリズムにより数万円から数十万円のクレジットを買い手に与えるのがatoneの狙い。具体的にはスマホのケータイ番号とパスワードで会員登録をして利用を開始する。スマホで買えば、翌月にコンビニ払いができる。売り手の料率は1.9%+30円とカード決済などと比較すると安く、売上代金も100%保証する。未払い顧客の利用を停止するほか、継続利用客の与信枠を実績に応じて拡大することで、利用者全体の7割をリピーターとすることで実現できる数字だという。ネットプロテクションズは15年に渡って法人向けのコンビニ後払い決済サービス「NP後払い」を展開していて、累計1億人のユーザー基盤と取引データーを持つ。非会員であるにもかかわらず流通総額は1500億円となっている。こうしたデータと知見を生かす。

Facebook Messenger、チャットボット発見プラットフォーム、Discoverを公開

Facebookはチャットボットをまだ諦めていない。今日(米国時間6/28)同社は、メッセージを送りたくなるような面白いチャットボットを見つけるためのハブ、DiscoverをMessengerの中に作った。

これはFacebookが F8カンファレンスで発表したもので、このたび米国ユーザーに公開された。Facebookはこれをユーザーが企業やブランドともっと便利にやり取りする新しい機会と位置付けている。Discoverは、面白そうなチャットボットを見つけるための場所だ。カテゴリー別にロボットを眺めて機能を調べ、最近使ったボットを確認することもできる。

ボットを見つけやすくなることは確かだが、この機能はむしろチャットボットというメディアを改めて宣伝するためであるように思える。

Messengerは、新機能に関して「とにかくやってみる」という手法で知られている。更新頻度はFacebookのメインアプリ以上で、昨年は約2週間ごとだった。そしてMessengerではチャットボットを強く推している。チャットボットの基本となる考えは非常に興味深いが、あまりにも賢くないので使っている人が多いようには見えない。

友達とのメッセージスレッドの中にこの機能が入ることで、これが音声アシスタント型ロボットというよりも、便利なツールとして扱われることをFacebookは期待している。

すでにFacebookは、AIアシスタント「M」によってMessengerにDNAレベルでチャットボット風機能を実現しているが、ユーザーと企業が自動的に対話できる環境を作ろうとしている。Facebookページをブランドの標準ホームページとして推進するとともに、Messengerを企業との標準コミュニケーション手段にしたいとFacebookは考えている。

Discoverという新しいプラットフォームが導入されることで、チャットボットへの関心が高まることは間違いない。果たしてデベロッパーはこれに乗るのか、それともトレンドは消えてしまうのか今後に注目したい。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

Facebook、MessengerのAIアシスタント ‘M’ を改善

Facebook Messengerの中に住むAIアシスタントの 「M」は、今年4月に一般公開されユーザーの会話の文脈に基づいて助言を与えている。今日(米国時間6/27)、Mが少し賢くなり、少し社会性を身につけた。

おそらく最も目につくのは、ユーザーが “Saved” オプションを使って記事やビデオやFB投稿などのコンテンツを保存して、後で読んだり、メッセージスレッドでシェアするよう、AIアシスタントが事前に薦めるようになったことだろう。友達からしょっちゅう記事が送られてくる人は、どう思ったか後で聞かれたときうそをつかずに済ませるのに役立つかもしれない。

Mは、ユーザーが社会的な礼を欠くことがないよう教え込まれている点が興味深い。状況によっては大いに役立つだろう。助言の中には誕生日に関するものもあり、チャットしている相手を祝福するのを忘れないように教えてくれる。

Mは、音声またはビデオの会話を勧めるようになる。1対1あるいはグループで会話中に誰かが「かけてくれる?」と言うと、Mがポップアップを出すのでタップするだけでMessengerから通話できる。これで何が呼び出されるのか、他社の成功ブランドに乗って、ユーザーがFacetimeやSkypeをリクエストしたときにMがMessengerのビデオ通話を薦めるのか興味深い。

Mはまだ始まったばかりで、Facebookは会話をわずかに改善するちょっとした機能を提供するだけで、ユーザーの邪魔にならないようにしている。機能が追加されるにつれて、Mのガイドが不可欠なものになるのか、それとも、またひとつ設定時にオフにされる機能が増えるだけなのか、今後に注目したい。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

Petyaはデータ破壊が目的――ランサムウェアではないと専門家が指摘

世界で猛威をふるったマルウェア、Petyaを「ランサムウェア」に分類するの間違っていたかもしれないと専門家が指摘している。Petyaのコードそのものおよび感染が拡大した経緯などの分析によると、Petyaの目的は利益を得ることではなかった可能性があるという。実際にはウクライナのコンピューター・ネットワークをターゲットにしたサイバー攻撃の一種だったらしい。

ランサムウェアは「被害者が身代金を払えばデータを回復できる」という仕組みで成り立つ。もし攻撃者が金を受け取ったのにデータを返さなければ、その情報はたちまち広まり、誰も金を払わなくなる。攻撃側としてこれでは利益を得られない。

ではそもそも「データを回復することが不可能」な攻撃だったらそれをランサムウェアと言えるだろうか?

もちろん答えはノーだ。では身代金を得るのが目的でないとしたらPetyaの目的は何だったのか? Petyaが最初に確認されたのがウクライナのネットワーク上だったことを考えると、ウクライナのコンピューター・ネットワークに打撃を与えることが目的だったとしてもおかしくない。

Petyaに関するデータが明らかになるにつれてセキュリティー専門家の間でもこの考え方を取るものが出てきた。ComaeのMatt Suiche他のアナリストはPetyaのコードを昨年の同種の攻撃のコードと比較している。 2017年のPetyaはマスター・ブート情報を上書きして破壊し、ユーザー情報が回復不能となるるよう改造されているという。攻撃者のメール・アドレスも実際は無効にされており、身代金を振り込むこと自体不可能だった。

Brian Krebsのブログによれば、バークレーのInternational Computer Science InstituteのNicholas WeaverはPetyaは「意図的にデータ破壊を目的とした攻撃であり、ランサムウェアに偽装した何らかのテストだろう」と考えている。WiredはキエフのInformation Security Systems Partnersを引用して「このマルウェアはウクライナのネットワークに数ヶ月前から存在していたが、感染したコンピューターのデータが破壊されてしまうため同定が困難だった」としている。

マルウェアの拡散過程を正確に予測するのは不可能に近い(もちろんサーバーのファームウェアに焼きこむような場合は別だが)。そのためドイツが攻撃のターゲットの場合にフランスでマルウェアを拡散しても効率的ではない。逆にターゲット地域で拡散をスタートさせるのは効果的だ。しかも有名になったランサムウェア、WannaCryに表面的に似せて煙幕を張ったのであればきわめて巧妙だ。

もちろん部分的な情報しか利用できないため、こうした分析はすべて暫定的なもので、断定は困難だ。しかし「WannaCryタイプのランサムウェアで世界的に利得を得ようとした」というこれまでの報道は不正確かもしれない。

画像: Bryce Durbin

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

lang-8、外国語学習者向けのQ&Aアプリ「HiNative」が100万人を突破

外国語学習者向けのQ&Aアプリ「HiNative」や、ネイティブによる英語添削アプリの「HiNative Trek」を開発するLang-8(ランゲイト)。同社は6月28日、HiNativeの登録ユーザー数が100万人を突破したことを明らかにした。

これまでもTechCrunchでお伝えしてきたとおりだが、HiNativeは、ユーザーがお互いに母語を教え合う語学学習アプリ。例えば、英語を学んでいるユーザーが「英語で○○というのはどう表現するか」という質問を投稿すると、その英語を母語に持つユーザーがテキストや音声で回答するというもの。

サービスは2014年に11月スタート。2017年1月時点で39万人だった登録ユーザー数は直近で急増。2月には50万人、6月26日には100万人を突破したという。現在、110言語に対応しており、231の国と地域から利用されているという。

実はlang-8は今月で創業10周年になる。当初は京都に拠点を置き、外部資本を入れずにサービスを開発していたが、Open Network LabのSeed Accelerator Programに採択されたことをきっかけに上京し拠点を東京に移転。外部資金を調達し、いわゆるスタートアップ的な成長を目指すようになった。

「ユーザー獲得についてはほとんど事業計画通りに進んでいる。2017年前半はHiNative内での回答のスピードと品質を強化してきた。平均回答時間も年初の平均40分という数字が20分にまで短縮されている。またiOS版のみだがユーザーの評価制度も導入し、品質向上に努めた。2017年後半は課金のチューニングを進めていく」(lang-8代表取締役・喜洋洋氏)

lang-8では、2017年末にユーザー数250万人、2018年末に1000万人、最終的には1億人の登録ユーザー数を目指すとしている。

害虫をレーザーで撃ち落とす「Photonic Fence」もうすぐ実用化――農作物を見えない電撃柵で保護

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元マイクロソフトCTO、ネイサン・マイアーボルド氏が設立したIntellectual Ventures Lab(IVL)が、飛んでくる害虫だけを識別して撃ち落とすレーザー機器「Photonic Fence」を、もうすぐ実用化します。2009年から開発を始めたPhotonic Fenceは現在、米農務省での実地検査中とのことで、承認が出ればまずは害虫被害に悩む農家向けに商品化する計画です。

Photonic Fenceのすごいところは複数の光学測定器を使用して、飛んできた虫の羽ばたく周波数、形状、大きさ、対気速度(大気の流れとの相対速度)を測り、狙撃対象かどうかを判別できるところ。たとえば蚊のような小さな虫でもその雌雄までを判別可能です。

検出距離は100mと長いうえ幅30m、高さ3mの射程範囲を備えるため、田畑をカバーするように配置すれば、まさに見えない電撃フェンスを構築できます。さらに毎秒20匹の速度で識別、狙撃が可能なため、IVLは虫が群れでやってきた場合でも99%は駆除できるとしています。

IVLはPhotonic Fence開発の動機はアフリカ・サハラ砂漠周辺での公衆衛生の改善を目的としていました。しかし、開発中に米国ではミカンキジラミ被害が深刻化しており、フロリダでは過去15年で70%も柑橘類の生産量が減少していることを知り、現在はまず害虫被害に悩む農家に向けた商業プロジェクトへと進路変更しています。

IVLは農務省の検査が問題なく完了し次第、いろいろな害虫に悩む農家に向けてPhotonic Fenceを売り出したいとしています。

ちなみに、IVL共同設立者のマイアーボルド氏は料理研究の大家でもあり、科学的に料理を解説する2438ページ(英語版)の著作「Modernist Cuisine」シリーズを各国で出版しているほか、2011年にはTEDカンファレンスでも料理本出版のためにあらゆる調理器具を真っ二つにした話が好評を得ていました。

Engadget 日本版からの転載。

この「スターウォーズ:最後のジェダイ」予告編は、1984年製Apple IIcだけで作られた

時として、グラフィック技術が1980年代から進歩しなければよかったのに、と思わせるものを見ることがある。この「スターウォーズ:最後のジェダイ」予告編を場面ごとに再現した作品はその一つだ。

作ったのはTwitterユーザー、Wahyu Ichwandardiで、1984年製のヴィンテージApple IIと、同じ年に発売されたビットマップペイントソフト、Dazzle Drawを使って制作した。このプロジェクトはフロッピーディスク48枚に保存され、6MBという当時なら破壊的なデータ量になった。

比較のために、スターウォーズ エピソード8の公式トレーラーを載せておく ―― ネタバレ注意:Ichwandardiは完璧だった。


彼はわずか3週間でこの短編ビデオを作った。制作過程では透明なプラスチックシートをモニターに重ねることもあったという。Kickstarterかなにかで同じことを映画全編について彼にやらせたら ―― 数十年しかかからないだろう。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

Google Newsが化粧直し、ニュースサイトの未来を見据えてローカルニュースを重視

Google Newsが今日、違うサイトに見える。それは、Googleが今日からそのニュース集積サイトのデザインを大幅に変えて、同社のそのほかのサービスと統一し、 長年ためてきた大量のゴミを整理したからだ。

何年も同じデザインでやってきたから、そろそろデザインを変えるのも悪くない。同社のそのほかのサービスはこのところ大きくモデルチェンジしているのに、Google Newsは忘れられた存在のようになり、ゴミ屋敷に近くなっていた。それが、今日から変わる。

Google NewsのプロダクトマネージャーAnand Pakaによると、デザイン一新にあたってのコンセプトは、すっきりとしたユーザーインタフェイスを作り、メインストリームのニュース読者にとってアクセスしやすいプロダクトにすることだった。

そのためにチームが採用したのが、たとえば、メインページにおけるカード形式のインタフェイスで、そこではメインニュース(ヘッドライン)、地方版(ローカルニュース)、個人化ニュース集(おすすめ)、の各セクションがそれぞれタブになっている。前のデザインで目立った長めのテキスト片はなくなり、Facebookなどの共有ボタンは、マウスが各記事の上をホバリングしないと出ない。

しかしニュースサイトとしての中心的な機能は、大きく変わっていない。最近加えてきた、リアルタイム、ファクトチェック、ビデオ、などの新しい機能も残っている。ただし最近は元のニュースにビデオありが増えているので、結果的にGoogle Newsでもビデオが多くなっている。

Pakaによると、Googleのユーザーはすでにカード式のインタフェイスに慣れているので、多くのユーザーが大きな変化とは感じないだろう、という。前のデザインでも、カードをクリックすると、やや詳しい記事や、そのほかのソース、ビデオ、ファクトチェック記事などを見れた。

ローカルニュースに単独のタブを与えたのは、地域ニュースをもっと拡大したいという意向が前からあったからだ。“それは次の段階の準備なんだ”、とPakaは説明する。取材中彼は、この言葉を何度も言った。つまり、今度の新しいデザインも今後次々と、“次の段階”へ向けて改良されていく、という意味だろう。その過程でユーザーには何度もA/Bテストをお願いする、とも言った。

なお、パブリッシャーがGoogle Newsに記事を送るときは、何も変える必要はない。変わったのはインタフェイスだけで、元ネタのレベルでの変更はない。でも一般的な傾向としては、今後ビデオつきの記事がますますユーザーから期待されるだろう。各パブリッシャーにおいて、そのぶんの投資は必要だ。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

“質草”の写真を撮れば審査なしで資金提供——STORES.jp創業者の新レンディングサービス「CASH」

バンクのメンバー。左から2人目が代表取締役の兼CEOの光本勇介氏

オンラインストア作成サービス「STORES.jp」をはじめとしたサービスを提供するブラケットの創業者である光本勇介氏。同氏が今年2月に立ち上げた新会社「バンク」の第1弾となるサービス、「CASH(キャッシュ)」が6月28日にリリースされた。App Storeより無料でダウンロードできる。

CASHは、“目の前のアイテムを一瞬でキャッシュ(現金)に変えられる”をうたうレンディングアプリだ。アプリをダウンロードし、SMS認証を行えば準備完了。あとはアプリ下部のメニューから「キャッシュ」を選択、現金化したいアイテム(当初はアパレルを中心としたファッションアイテム)のブランドや商品を選択し、写真を撮れば完了。アプリには査定額が表示され、その額で納得した場合、その金額のキャッシュ(仮想通貨)が瞬時にアプリにチャージされる。SMS認証以上の審査や手続は必要ない。

チャージされたキャッシュは銀行やコンビニで受け取り(ローソンのみ)で現金として出金可能。そしてユーザーはキャッシュを2カ月以内に返金(手数料15%がかかる)するか、返金をせずに、写真を撮ったアイテムをCASHに送付する必要がある(集荷依頼票が表示されるので記入すると、ヤマト運輸が引き取りに来る)。言ってみれば現代版の「質屋」的なサービスだ。質草を入れて(写真を撮って)お金を借り、利子を付けて返済するか、もしくは質草を処分して返済するか——ということをスマートフォン上で実現しているのだ。

ただ普通の質屋や消費者金融と違うのは、CASHでは次のようなスキームを用いていること。これによって貸金業法や質屋営業法といった法律を回避してサービスを提供するのだという。

まずアプリ上でキャッシュにするという処理を行うタイミングで、CASHがユーザーからアイテムの買い取りを行う。そのために、買取アイテムのキャッシュを即座に支払いする。実際の買い取りまでには2カ月の猶予を置いており、その期間内に商品を送る(キャッシュを返さない)か、買取をキャンセル(手数料をつけてキャッシュを返す)するか、ということなのだという。このスキームを実現するために、バンクは古物商許可を取得している。

このスキームについて「監督省庁とは話していない」(バンク)そうだが、弁護士とも法律上問題ないことを確認した上でサービスを提供しているという。このあたりは、AnyPayの割り勘アプリ「paymo」が、資金決済法の制限を受ける「個人間送金」ではなく、割り勘という行為で「個人間の弁済」としたのと同じような印象を受けた。

FinTechをより簡単に

「CASH」のスクリーンショット

「FinTechという言葉をよく聞くようになりましたが、まだちょっと小難しくて、固い印象があります。ですがFinTechなんて言葉が分からない人達にとっても、もっとカジュアルに利用できる金融サービスは必要です。STORES.jpを立ち上げたときもそう、当時ECサイトを作るというのは難しいことでした。だからこそECのど素人のためのサービスを作った。そこに意味がありました」バンク代表取締役兼CEOの光本勇介氏はサービス提供の経緯についてこう語る。

ソーシャルレンディングに再び注目が集まり、一方ではAIを使った与信サービスの開発といった話題を耳にすることも増えたが、現状レンディングに関わる多くのサービスはB向け、つまり法人ニーズを満たすためのものがほとんど。一方でコンシューマー向けのレンディングサービスといえば、銀行ローンに消費者金融と、新しい動きはあまり起きていない。この領域に変化を起こすことこそがバンクのチャレンジだという。

「借金」のイメージを変える

「そもそも『借金』というとイメージが良くありません。ですが、お金を借りるということ自体は、必ずしも悪ではありません。この領域のイメージを変えられればと思っています」(光本氏)

光本氏は、レンディングの意味について、バングラディシュのグラミン銀行を例に語る。グラミン銀行は、貧困層向けに低金利、無担保で少額の融資を行い、彼らがビジネスを興すきっかけを作り、その生活の向上を支援している。2006年には、ノーベル平和賞も受賞した。「(グラミン銀行は)少額をマスに貸して、小さな一歩のための手助けをしています。少額を貸すというニーズはある」(光本氏)。

もちろん消費者金融的なレンディングサービスとソーシャルビジネスに近いグラミン銀行を同じように考えていいのかというとまた違うだろうし、2カ月で15%という金利(正確には、CASHにおける買取キャンセルの手数料)の是非もあるだろう。気軽にお金を借りられるというところには負の側面がないとは限らない。だが、光本氏は批判が起こることも想定している、とした上でこう語る。

「とある雑誌のQ&Aコーナーで『ウェブデザイナーになるために、アルバイトで1年お金を貯めてPCを買う』という相談者に対して、『もしお金を借りてでも今すぐPCや参考書を買って、ウェブデザインを学べば、1年後にはPCを買う以上のお金を稼げる、そんな成長機会が得られるのではないか』という回答がありました。例えば奨学金だって借金のひとつ。瞬間的なお金のニーズを満たすことで、小さな一歩を踏み出すことができればいい。僕たちは質屋をやりたいわけでなありません。資金需要を解決したいのです」

CASHは統計学、性善説のビジネス

バンクがCASHで狙うのは、1万〜3万円程度の少額のレンディングだ。これまでの消費者金融や銀行ローンなどで求められていた与信を人力で行わずアプリ化して工数を下げることで、少額でもスケールするレンディングサービスの構築ができると判断した。

だが逆に言えば、与信を取らないことで貸倒率が上がるのであれば、ビジネスとして成立しなくなるのではないだろうか? 光本氏はそれに同意した上で、「CASHは統計学、性善説のビジネスだ」と語る。

「お金を提供して、一定の割合がきっちりと返してくれれば儲かるモデル。悪い人がブラックリストに入っていくが、返せる金額だからこそ、ブラックリストに入るくらいなら返す方がメリットがある。サービスとして“攻めている“ものだし、我々がリスクも取っている。だがこれが仮にビジネスになれば、相当大きなモノになると思っている」(光本氏)。そんな話を聞くと、ある意味ではイグジットした起業家による、壮大な社会実験のようにも見えてくる。ちなみに、その貸倒率の“一定の割合”やアイテムの返送率の想定は非公開。

バンクでは今後、CASH以外にも身近な資金ニーズを解決するサービスを提供していくという。すでに第2弾として、給与の前借りを実現するレンディングサービス「Payday」のティザーサイトを公開している。