顧客と会計士の体験を両方改善させるフランスの会計サービスPennylaneが19億円を調達

自動化されたプロセスと人間の会計士を組み合わせた会計サービスを提供するフランスのスタートアップPennylane(ペニーレイン)が、1500万ユーロ(約19億円)を調達した。既存も投資家のGlobal Founders CapitalとPartechが再び投資を行っている。

Pennylaneは、顧客の財務データを扱うSaaS企業であると同時に会計事務所でもある。会計士と直接仕事をすることで、同社のプラットフォームを介して担当会計士と話ができるということだ。すなわち財務データを一元管理できることになる。

同スタートアップは、顧客と会計士双方の体験を改善させたいと考えている。通常、会計事務所には毎月、あるいは四半期ごとにデータが送られてくる。会計士はファイルを開いたり、会計ソフトに情報を入力したりするために、膨大な時間を浪費している。

同様に、会計報告書もCEOやCFOにとってはブラックボックスで、そのデータを財務予測と可視化に活用することができていない。Pennylaneが狙っているのは、エクセルを使って会社の損益計算書を予測する必要性をなくすことだ。

Pennylaneで作業を開始する際には、まず自分のアカウントをすでに貴重な情報を持っているStripe、Payfit、Qonto、Zoho、Sellsyなどのサードパーティサービスと接続する。こうすることで、各サービスからデータを手動でエクスポートするだけではなく、情報を常に自動的に最新の状態に保つことができる。

ローンチから1年が経過したPennylaneは、550社のクライアントを獲得し200万ユーロ(約2億5000万円)の売上を達成した。現在、30人の会計士が同社のために働いている。

次は、より多くの企業、特に社内に会計チームを持っている企業や、すでに会計事務所と連携している企業を勧誘したいと考えている。Pennylaneのソフトを、顧客が自社の会計士から利用することもできるようにする予定だ。

Pennylaneは以前、Global Founders Capital、Partech、Kima Venturesから、シードラウンドとして400万ユーロ(約5億1000万円)を調達していた。

カテゴリー:フィンテック
タグ:Pennylane資金調達SaaS

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(翻訳:sako)

インドネシアのロボット投資支援アプリBibitが約31億円を調達、セコイア・キャピタル主導

インドネシアでの投資を促進したいと考えているロボアドバイザーアプリのBibitは、Sequoia Capital India(セコイア・キャピタル・インディア)から3000万ドル(約31億円)を調達した。投資にはEast Ventures、EV Growth、AC Ventures、500 Startupsも参加した。

Stockbit Groupの一部であるBibitのユーザーの約90%は、ミレニアル世代かつ初めて投資する投資家だ。Bibitの目的は他のロボアドバイザーと同様に、各個人のリスクプロファイルや投資目標に合わせたポートフォリオを簡単に作成することだ。インドネシアの他の投資アプリには、BareksaやSoftBank Venturesの支援を受けたAjaibなどがある。

Bibitによると、この1年間で100万人以上の新規投資家が登録したという。市場のポテンシャルの例として同社はインドネシア証券取引所とインドネシア中央証券保管のデータを挙げている。同国の個人投資家の数は2020年に前年比56%増となり、新規投資家の約92%が21歳から40歳だったが、株式市場に参加したことのあるインドネシア人は約2%に過ぎない。

Bibitの最高経営責任者であるSigit Kouwagam(シギット・コウワガム)氏はTechCrunchに対して、ほとんどのインドネシア人は定期預金口座に投資するか、利回りの低い当座預金口座に預けていると語った。

「伝統的に、彼らは不動産やゴールドバーにも投資します」とコウワガム氏は付け加えたが、ミレニアル世代とZ世代の投資家は「管理が便利で、より気軽に開始できる高利回りの流動資産」にシフトしている。

またパンデミックにより、より多くのユーザーが緊急時資金を用意するようになり、多くのインドネシア人が低金利の銀行口座の代わりとして高利回の資本市場に注目している。

カテゴリー:フィンテック
タグ:Bibitインドネシア資金調達セコイア・キャピタル

画像クレジット:Bibit

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(翻訳:塚本直樹 / Twitter

株価右肩上がりのSilicon Valley BankがBoston Privateを約925億円で買収、ウェルスマネジメントをさらに強化

SVB Financial Group(SVB)は米国時間1月4日、ボストンのBoston Private Financial Holdingsを現金と株式9億ドル(約924億5000万円)で買収することに合意した。

SVBは37年の歴史の中で、ベンチャー企業やプライベート・エクイティ投資家だけでなく、新興企業にフレンドリーな銀行としての評判を得てきたが、今回の買収はSVBにとって重要な取引と言える。SVB Asset Managementの関連資産14 億ドル(約1440億円)と比較すると、1987 年に設立されたBoston Privateは、約163億ドル(約1兆6,740億円)の運用資産を有している。

2011年にウェルスアドバイザリー事業を設立したSVBは、数年前からウェルス・マネジメントへの参入をより積極的に推し進めており、2018年半ばにはCapital One(キャピタル・ワン)でウェルス戦略を率いていたYvette Butler(イヴェット・バトラー)氏を採用している。

バトラー氏はそれ以来、同行のウェルス・マネジメントチームのメンバーを増やしており、昨年のBusiness Insider誌インタビューで「自分の仕事は主にリテンション戦略だと思っています。…クライアントはすでにいるのですから。私たちは彼らのファンドやビジネスの成長を支援してきましたが、プライベートバンクとして、またウェルスアドバイザリーとしての我々の役割は、顧客を維持することだと考えています」と語っている。

すでに同行と取引のある富裕層との関係を強化するためのSVBの努力を強調し、同社の社長兼CEOのGreg Becker(グレッグ・ベッカー)氏は4日、新たな提携についてのプレスリリースの中で次のように述べている。「当社のお客様は、ビジネスと私生活の両方で成功する確率を高めるために、当社を頼りにしてくださっています。」

バトラー氏は、過去2年間Boston PrivateのCEOを務めてきたAnthony DeChellis(アンソニー・デケリス)氏と共に、プライベート・バンキングとウェルス・マネジメント事業の統合を指揮することになる。デケリス氏は、クラウドファンディング・プラットフォームOurCrowdの社長を短期間務めた後にBoston Privateに入社し、それ以前はクレディ・スイス プライベート・バンキング(南北アメリカ)のCEOを7年以上務めていた人物だ。

今回の取引の一環として、Boston Privateの株主はSVBの普通株式0.0228株と、1株につき2.10ドル(約215円)の現金を受け取ることになる。

2020年の銀行株は総じて打ちのめされたが、ボストン・グローブ紙が指摘するように、SVBの株はテック分野に注力しているため、過去3年間で60%以上も上昇しているのに対し、Boston Privateの株は45%も下落していた。

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カテゴリー:フィンテック
タグ:買収

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(翻訳:Nakazato)

活気づく企業支出管理サービス分野でDivvyが169億円を調達

米国時間1月5日、企業の支出管理に特化したユタ州拠点のスタートアップ、Divvyが、1億6500万ドル調達したことを発表した。評価額は16億ドルだった。新たな資金はHanaco、Schonfeld、PayPal Ventures、およびWhale Rockの新規出資者と、既存出資者の一部から提供された、と同社は言っている。

今回の投資はDivvyにとって初めての民間資本による大型ラウンドではない。よく知られた同スタートアップは2019年4月に2億ドルを調達している。TechCrunchは当時、そのラウンドでDivvyが約7億ドルの評価額だったと報じており、今回のラウンドでは2倍以上の価値が認められたことになる。

Divvyはユタ州テック業界の名声を高めている同州拠点スタートアップ世代のひとつだ。Podiumも同じ集団に属しており、一方Qualtricsはその一世代前のグループと言えるだろう。

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Divvyの市場である企業支出管理分野(大まかに言って、企業が支出を管理、制限するのを支援する法人カードとソフトウェア)は、企業が財務基盤の近代化を図ろうとしている今、驚くほど活発だ。たとえばDivvyの新規資金調達に先駆けて、多くの競争相手が新たな資金獲得を発表している。今回のラウンドでDivvyが誰をライバル視しているかを見てみよう。,

競合

数週間前、同じく法人カードとソフトウェアを提供するスタートアップのRamp3000万ドルの資金を調達し、設立以来18ヶ月で同サービス経由の支出が1億ドルに達したことを発表した。同じ頃Divvyは、2020年に顧客数が120%、プラットフォーム経由の支出が100%、それぞれ2019年より増加したとTechCrunchに伝えた。同じく企業支出分野で競合するBrexは当時データ公開を拒んだ。

Divvyがこれだけの資金を集めていることは、最近の成長度合いから見て驚きではない。しかし、この分野でこれほど多くの会社が同様の急成長を維持していることは注目に値する。昨年12月に本誌がRampの調達ラウンドについて報じ、同時にDivvyの業績を書いたあと、Airbase詳細はこちら)とTeampay詳細はこちら)の2社がそれぞれの数字を公開した。

Teampayは10月に、年間経常収益(ARR)が320%、総支出額が800%、当時一年前だったシリーズA以来成長したと語った。Airbaseは年間経常収益250%増(2.5倍)、支払い金額700%増を記録したと報告した。.

このように、Divvy、Teampay、Airbaseの3社は著しい成長を続けているが、その内容は少々異なっている。DivvyとRampは企業支出サービスとソフトウェアを無料で提供し、支払金額の一部を仲介手数料として受け取っている。TeampayとAirbaseも仲介手数料から収益を上げているが、ソフトウェアも有償で提供している。つまり支出〈および〉ソフトウェアの両方で収益を得ている。

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そこでDivvyの今日のニュースに注目が行く。通常私はリリース文からの引用は避けているが、今日は紹介に値する。

16億ドルの評価額と重要な出資者の新たな参加は、財務手続きを近代化し、信用、取引先、支出の管理を一つのプラットフォームにまとめるDivvyの野心的試みの正当性を立証するものです。この調達ラウンドによって、Divvyはプロダクト開発とエンジニアリングへの投資を強化して将来のロードマップを加速します。

Divvyがプロダクトへの投資を強化? それはわかる。しかしソフトウェアを永遠に無料で提供するのは少々奇異に感じる。ライバルの何社かは代価を請求している。なぜDivvyもそうしないのか?

いずれわかることだろうが、今でもはっきりしているのはDivvyの属する集団のスタートアップらに送り込まれた資金が、莫大な需要を見せているニッチに注ぎ込まれたということだ。よって、2021年にこのプロダクト分野から多くの話題が生まれることが期待できる。

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画像クレジット:Bryce Durbin/TechCrunch

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

LINE PayがApple Pay対応記念キャンペーン開始、LINEポイント最大1200ポイントをプレゼント

LINE PayがApple Pay対応記念キャンペーン開始、LINEポイント最大1200ポイントをプレゼント

LINE Payは1月6日、LINEアプリ上から「Apple Pay」を初めて設定するとLINEポイント200ポイント、またキャンペーン期間中に合計2000円以上の「Apple Pay」での支払いでLINEポイント1000ポイント、合計で最大LINEポイント1200ポイントをプレゼントする「Apple Pay」対応記念キャンペーンを開始した。キャンペーン期間は、1月6日0時から1月15日23時59分まで。LINEポイント付与時期は2021年3月頃を予定。

  • キャンペーン応募期間:2021年1月6日0時から1月15日23時59分まで
  • LINEポイント付与条件(1):期間中に初めて「Visa LINE Payプリペイドカード」を「Apple Pay」に設定するとLINEポイント200ポイントをプレゼント
  • LINEポイント付与条件(2):(1)で設定した「Apple Pay」で、期間中合計2000円以上の支払いを行うと、LINEポイント1000ポイントをプレゼント
  • LINEポイント付与時期:2021年3月頃を予定
  • キャンペーンサイトURL:https://linepay.line.me/promotion/apple-pay-202101.html

LINE Payは2020年12月、国内121万ヵ所以上の店舗に設置されたiD端末にiPhoneやApple Watch」をかざすだけでQRコード決済と共通の「LINE Pay」残高での支払いが可能なApple Payへの対応を開始した。

また、LINE Pay残高をiD加盟店での支払いに利用できるようにする仕組みとして、Apple Pay設定時にバーチャルカード「Visa LINE Payプリペイドカード」の発行も同時に開始している。こちらはVisa加盟店でのオンラインショッピングにも利用可能。

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カテゴリー:フィンテック
タグ:Apple Pay(製品・サービス)LINE PayVisa LINE Payプリペイドカード日本(国・地域)

Venmoがアプリによる小切手の現金化サービスを開始、景気刺激策給付金は手数料無料に

Venmo(ベンモ)は米国時間1月4日朝、新しい小切手現金化サービス「Cash a Check」の提供をVenmoモバイルアプリで開始すると発表した。この機能は、米国では同日より一部のユーザーを対象に展開されており、印刷された小切手、給料支払小切手、米国政府小切手(新しい景気刺激策小切手を含む)の現金化に使用できると同社は述べている。通常、Cash a Check機能には手数料がかかるが、Venmoによると、景気刺激策小切手については期間限定で手数料が免除されるとのこと。

Venmoの顧客がCash a Checkを利用するためには、アカウントでダイレクトデポジットまたはVenmoデビットカードが有効になっていること、および検証済みのEメールアドレスが必要だ。

この機能を利用した顧客は、モバイルバンキングアプリで小切手を現金化する場合と同様に、裏書がある小切手の写真を撮影してVenmoアプリに送信すれば審査を受けることができる。小切手は数秒で審査されるが、特別な状況下では、審査に数分間を要したり、承認の決定が下されるまでに1時間近くかかる場合さえある。

承認されると、ユーザーのVenmoアカウントへすぐに送金される。

Venmoは、現在および今後数週間にわたって配布される景気刺激策小切手の手数料を一時的に免除しているが、最終的にはどんな政府小切手や給料支払小切手も、署名が印刷済みの場合、アプリで現金化する際には1%の手数料が適用される。最低手数料は5ドル(約515円)だ。それ以外の小切手は、手書きで署名された給料支払小切手や政府小切手を含め、5%の現金化手数料または最低5ドルの手数料が発生すると、PayPalの規約に記されている。

Cash a Checkのサービスは、開始当初はパートナーであるFirst Century Bank, N.A.とIngo Money, Inc.によって提供される。Ingo Moneyはすでに同様の機能をVenmoの親会社であるPayPalに提供しており、ユーザーはPayPalアプリで小切手を現金化することができる。

「特に現在のような世界的な新型コロナウイルス(COVID-19)大流行の中、人々が経済的困難を経験し続ける状況では、我々のコミニティがより簡単にお金にアクセスし、管理できるようにするための新しい方法を当社では常に模索しています」と、VenmoのSVP兼GMであるDarrell Esch(ダレル・エッシュ)氏は、この新サービスについての声明で述べている。

「お客様の健康と安全を第一に考えると、多くのお客様、特に紙の小切手を受け取っていて、従来は小切手を現金化する場所に行かなければならなかったお客様にとって、景気刺激策の給付金に安全にアクセスできる方法は必要不可欠であると我々は認識しています」と、エッシュ氏はいう。「Venmo Cash a Check機能を導入することで、お客様が自宅にいながら迅速かつ安全に給付金にアクセスできるようにするだけでなく、当社は政府が発行した小切手の現金化手数料をすべて免除し、お客様が最も必要としているものの支払いに給付金を使用できるようにします」と、同氏は付け加えた。

しかし、Venmoが小切手の現金化に進出したからといって、同社のピア・トゥ・ピア決済アプリがオンラインバンキングの代替になるわけではない。Venmoにとってこれは主に、米国のユーザーに支給されている景気刺激策給付金の流入から、利益を得るための手段として機能するものだ。

フィンテック企業各社は、景気刺激策給付金への迅速かつ容易なアクセスを提供することで、顧客に自分たちの価値を証明しよう(Fortune記事)と躍起になっている。たとえばCurrent(カレント)やChime(チャイム)といった銀行系スタートアップ企業は、他の伝統的な銀行機関に先駆けて顧客に給付金の送金を開始した(WSJ記事)。

さらに、この景気刺激策給付金は、現金化手数料を請求するよりもVenmoの最終的な収益を引き上げることに貢献する可能性がある。Venmoのユーザーは、アプリ内で景気刺激策小切手や給与支払小切手にアクセスすると、オンライン加盟店への支払いやVenmoデビットカードによる支払いにそのお金を使うことができる。この取引で発生した手数料を通じても、Venmoは収益を得ることができるというわけだ。

Venmoによると、この機能は現在、iOSおよびAndroid用モバイルアプリのユーザー向けに展開されているという。最高のパフォーマンスを得るために、同社はユーザーに最新バージョンのアプリをダウンロードし、モバイルデバイスを最新のオペレーティングシステムにアップデートすることを推奨している。

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タグ:Venmo小切手

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(翻訳:TechCrunch Japan)

EarlyBirdは子ども将来のために家族が投資できるアプリ

EarlyBird(アーリーバード)という登場したばかりのフィンテックスタートアップは、家族が子供の将来のために投資できるようにしたいと考えている。EarlyBirdモバイルアプリを通じて、ものの数分で親は未成年者のための後見口座を開くことができる。この口座はUGMA (Uniform Gifts to Minors Act=未成年の子どもへの財産の移譲について規定している法律) 口座としても知られている。こうした口座では一般的に、親あるいは「保護者」が未成年の子どもに代わって株や債権、投資信託、その他の証券などに投資できる。子どもが成年になったとき、それらの投資は子どものものになる。

アプリを通じて親は子どものために口座を開き、家族のメンバーや親しい友人に口座への貢献を呼びかけることができる。

アイデアそのもの、少なくともその精神はHoneyFundのようなものとそう違うものではない。HoneyFundでは、新婚の人たちがギフトの代わりに現金のプレゼントを親しい人にお願いできる。それと同様に、EarlyBirdは家族や友人に寄付を呼びかけることで、子どもにおもちゃやぬいぐるみをあげる以外のプレゼント方法を提供している。ただしEarlyBirdでは単刀直入に募金をお願いしてはいない。結局、これは美化されたクラウドファンディングプラットフォームであり、投資を可能にしている。

特にEarlyBirdは親の後見口座開設を簡単に、そしてわかりやすいものにするのが目的だ。これに挑むフィンテックはEarlyBirdが初めてではなく、たとえばStash(スタッシュ)やAcorns(エーコーンズ)がある。

ただしEarlyBirdは、ソーシャル機能と寄付機能を持つプラットフォームを投資口座に組み合わせている。小切手やグリーティングカードと一緒に渡す現金と違って、口座への寄付を本物の贈り物のようにしようというコンセプトだ。

画像クレジット:EarlyBird

EarlyBirdのアプリでは、寄付する人は投資口座への寄付とともに短いビデオ「メモリー」を録画できる。子どもはのちにこうしたビデオで回顧でき、これにより寄付をよりソーシャルで個人的な体験にすることができる。加えて、他の家族のメンバーや友人もビデオを閲覧し、その子どもの投資口座に寄付しようという気持ちになるかもしれない。

EarlyBirdのアイデアは、AgilityIOの前COOで現在EarlyBirdのCEOであるJordan Wexler(ジョーダン・ウェクスラー)氏と、かつてYello.coで働きバイスプレジデントまで務め、いまEarlyBirdでCOOをしているCaleb Frankel(カレブ・フランケル)氏によるものだ。

ウェクスラー氏は、自身の身内の家庭に子どもが生まれたときに、実際の贈り物に代わる方法としての投資を考え始めたと説明する。

「かわいらしい姪が生まれた数年前に経験した問題からすべては始まりました。私は姪っ子に首ったけで、馬鹿馬鹿しいぬいぐるみに数百ドル(数万円)も使いました。かなりゴミのような贈り物にです」と話す。

数年前、同氏は子どもに代わってインデックスファンドに現金を投資するというアイデアを思いついた。

「私は姪っ子の人生に大きな影響を、彼女が大きくなったときに実際に使うことができるようなものを与えたかったのです」と同氏はいう。

実際、ウェクスラー氏の父親はかつて同じことを同氏のために行った。ウェクスラー氏が12才だったとき、父親はTD Ameritradeの口座を通じて彼にお金を与えた。後にウェクスラー氏はこの口座からお金を引き出して、最初のスタートアップの資金に使った。このスタートアップは中国・青島市のSucceedOverseasで、企業の従業員転勤をサポートする戦略コンサルだった(2015年にChiway Education Groupに買収された)。

ウェクスラー氏はEarlyBirdの共同創業者フランケル氏に青島市で出会い、そして米国に戻ったときに再会した。彼らは2019年、子どものために後見投資口座を開きたい親向けにそのプロセスを簡単にしようとEarlyBirdでチームを組んだ。

画像クレジット:EarlyBird

公平な観点からいうと、おそらく後見口座は子どもを持たない人にはあまり知られていない投資ビークルだ。子どもがいる人にとってもある程度そうかもしれない。これは、もう1つの選択肢である529プラン(米国の学資積み立てのための公的貯蓄制度)の方が税制上の利点があるためにもっと人気があるからだ。

いずれの口座でも未成年に代わって家族が投資できる一方で、529プランの投資は税が免除される。授業料や家賃、寮費、本など教育にかかる費用のための出金にも課税されない。これは大きな特典だ。

一方、UGMA口座はある水準になると課税される。不労年間所得1100ドル(約11万円)は非課税だが、それ以降の2200ドル(約22万円)までは子どもの税率で課税される。2200ドル以上の不労所得は、子どもの税率よりも高い信託・遺産の税率で課税される。

UGMA口座への寄付は所得税控除の対象にはならないが、個人向けなら1万5000ドル(約155万円)まで、既婚カップルまでなら3万ドル(約310万円)まで課税されない。

ほとんどの家庭が大学の費用や税金上のメリットを想定して投資しているため、529プランはよく知られている。しかしウェクスラー氏は、状況は変わりつつあると指摘する。

「多くの親が実際には15年後の教育や大学がどのようなものになっているか想像できず、もう少しフレキシブルなものを求めています」と説明する。

加えて、UGMA口座は必要なら大学のために使える。しかしもし、いつの日か米国の大学の費用が無料になったら、UGMA口座の投資は何にでも使える。そうしたフレキシビリティは、このところ一部の親にとってUGMA口座、そしてこの分野に参入しているAcornsなどの他のフィンテックが魅力的に映る理由だ。

しかしEarlyBirdは1年以内に529プランにサービスを拡大する、と話す。ただそこから開始しなかっただけだ。

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Acorns、Stashの後見プランと、EarlyBirdとの別の違いはEarlyBirdがいかにプロダクトに財務管理リテラシーを組み込んでいるかだ。

誕生から5才までの間、親は子どもの口座をすべて管理する。しかし子どもが6〜13才のとき、親は子どもに特別な「閲覧のみ」モードでアプリを見せることができる。このモードでは子どもは自分の投資を確認し、増えていく様子を見ることができる。13〜18才で子どもはアプリをダウンロードでき、親と一緒にアプリを操作できる。そして18才(州によっては21才)以降は子どもが口座を管理する。

EarlyBirdはまた、保守的なものからハイリスクハイリターンのものまでそろったさまざまなポートフォリオを提供することで投資をシンプル化している。保守的なものだとポートフォリオは100%ETF債権ベースのものになり、アグレッシブなポートフォリオは100%ETFエクイティベースのものだ。Acornsと同様、EarlyBirdは固定されたポートフォリオモデルも提供している。しかしEarlyBirdはまた、ユーザーが自分の価値観に合わせて投資できるようカスタマイズしたポートフォリオも提供する。そしてユーザーは規模を問わず再投資の自動化を選ぶこともできる。

画像クレジット:EarlyBird

ポートフォリオはEarlyBirdアドバイザーEvan List(エヴァン・リスト)氏が率いる金融アドバイザーの専門家チームがデザイン・構築した。同氏はBernstein Private Wealth Managementで12年間バイスプレジデントを務めている。ポートフォリオには、各出資比率がEarlyBirdが定めた目標とする分配の10%以内に留まるようにする調整エンジンをバックエンドに統合している、と同社は話す。必要に応じて、他のロボ投資家と同様に四半期ごとにポートフォリオをレビューし、再分配する。

現在、EarlyBirdの投資口座はApex Clearing Corporationとの提携のもとに展開されている。Apex Clearingは米証券取引委員会に登録しているブローカーディーラーで、米金融業規制機構(FINRA)と米証券投資家保護公社(SIPC)の会員だ。この提携により、計50万ドル(約5200万円)までの投資は保護される。EarlyBirdはゆくゆくはブローカーディーラーに移行することを目指している。

現在EarlyBirdは月3ドル(約310円)の管理費で売上を上げている(子ども1人増えるごとに月1ドル=約103円プラスされる)。

今後は多くのフィンテックがそうであるように収益化を追求する。Apex Clearingとの取引と決済を活用する計画だ。そしてブローカーディーラーに移行するにつれ(ユーザーベースと管理資産の規模が大きくなったとき)、他のブロケージ同様に有料貸付プログラムを展開する。

はっきりさせておくと、こうしたプログラムは現在提供されておらず、EarlyBirdは設立されてまだ1週間だ。

同社は、Network Venturesがリードし2020年11月にクローズしたラウンドで240万ドル(約2億5000万円)を調達した。本ラウンドにはChingona Ventures、Bridge Investments、Kairos Angels、Takoma Ventures、Subconscious Ventures、そのほかさまざまなエンジェル投資家が出資した。

EarlyBirdのiOSアプリは無料でダウンロードできる。

カテゴリー:フィンテック
タグ:EarlyBird投資

画像クレジット:EarlyBird

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(翻訳:Mizoguchi

NY州がGMOインターネットに初の日本円連動ステーブルコイン「GYEN」の発行を認可

ニューヨーク州金融サービス局(NYDFS)は、東京のGMOインターネットが、日本円と連動する初のステーブルコインである「GYEN」をローンチすることを認可した。

GMOインターネットは、ドメインホスティングやオンライン広告、同社が世界最大と主張する外国為替取引のプラットフォームなど多様なサービスを提供しているインターネット複合企業で、「GYEN」と米ドルと連動するステーブルコイン「ZUSD」を発行するために、GMO-Z.com Trust Company(GMO Trust)を設立する。どちらも2021年1月、日本国外で販売を開始する。

GMO Trustは発表で、同社は仮想通貨の流動性を確保するために、複数のグローバルなデジタル資産取引所と戦略的パートナーシップを結んでいると述べている。GYENの開発を始めたのは、2018年だ。

ニューヨーク州で仮想通貨の事業活動に参入するためには、2015年6月に発効したNYDFSのライセンスであるBitLicenseが必要だが、GMO Trustはこのライセンスを取得した20数社の中の1社になる。BitLicenseを取得したアジアの企業はほかに、日本のビットコイン取引所bitflyerと香港のデジタルウォレットXapoとなる。

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カテゴリー:フィンテック
タグ:GMOインターネット日本暗号資産

画像クレジット:Toshiro Shimada/Getty Images

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

LayerXとJCBが複数企業間をつなぐ次世代BtoB取引履歴インフラの共同研究開始

LayerXとJCBが複数企業間をつなぐ次世代BtoB取引履歴インフラの共同研究開始

暗号資産(仮想通貨)・ブロックチェーン技術に関連する国内外のニュースから、過去1週間分について重要かつこれはという話題をピックアップしていく。今回は2020年12月20日~12月26日の情報から。

ジェーシービー(JCB)LayerXは12月22日、複数企業間をつなぐ次世代「BtoB取引履歴インフラ」に関する共同研究の開始を発表した。共同研究において両社は、プライバシーに配慮した利用者主体の商流情報の流通を実現し、それらを活用した高度なサービスを可能にする新たなデジタルサプライチェーン構築を目指す。

近年、中央銀行デジタル通貨(CBDC。Central Bank Digital Currency)をはじめデジタル通貨による決済プラットフォーム構築に向けた動きが活発化している。これらデジタル通貨に関する試みおよびメリットのひとつに、「様々な機能・ロジックを付加できるお金」という側面があり、こうした新形態のお金は「プログラマブルマネー」と呼ばれている。契約・請求・支払いなど一連のオペレーションのデジタル化・効率化、さらには自動執行が期待される。

これを受け共同研究では、JCBの強みを生かし、地域金融機関、BtoB決済に関わるソリューションプロバイダーなどとの協業も視野に入れ、BtoB取引履歴インフラの新モデルを検討していく。次世代インフラは、オペレーションの効率化に留まらず、業種・業界を超えたサプライチェーンプラットフォームならではの、商流情報を活用した高度なサービスの実現を目指すという。

LayerXとJCBが複数企業間をつなぐ次世代BtoB取引履歴インフラの共同研究開始

また、異なる業種・業界間における取引情報の共有においては、ブロックチェーン技術を用い取引情報を記録することで改ざん困難かつ確かなデータ流通が可能になるものの、両社はこれだけでは不十分という。社会実装においては、データ保護・プライバシーの観点から、情報主体(利用者)それぞれが「金融機関など業務上必要のある事業者には開示する」「不必要な事業者には開示しない」など取引情報の閲覧権限を柔軟に設定できるデータコントロールの仕組みが、情報提供者に対して求められる。

さらに与信情報の照会・確認などでは、データを秘匿したままデータ演算を行うといった高度なプライバシー技術を必要とする。

LayerXとJCBが複数企業間をつなぐ次世代BtoB取引履歴インフラの共同研究開始LayerXとJCBが複数企業間をつなぐ次世代BtoB取引履歴インフラの共同研究開始今回の共同研究では、TEE(Trusted Execution Environment)を応用しLayerXが開発したソリューション「Anonify」(アノニファイ)とブロックチェーンを組み合わせ、取引情報の秘匿性・信頼性を担保し、利用者による開示情報の取捨選択を実現する。

TEEは、PCやスマートフォンが搭載するプロセッサーのセキュリティ機能にあたり、アプリケーションを安全な実行環境で動作させるための技術。ユーザーであってもアクセス不可能なデータ領域を端末に構築し、アクセス制限をハードウェアレベルで保証する。これにより同環境下では、クラッキングやマルウェアによる攻撃などの脅威を防ぐことができる。

LayerXとJCBが複数企業間をつなぐ次世代BtoB取引履歴インフラの共同研究開始Anonifyは、TEEを活用した、ブロックチェーンのプライバシー保護技術。ブロックチェーン外のTEEで取引情報の暗号化や復号を行い、ビジネスロジックを実行することで、ブロックチェーンの性質を活かしながらプライバシーを保護する。複数の企業や組織が共同で利用する共通基盤において、秘匿性と監査性を両立させたアプリケーションを構築可能という。詳細は、ホワイトペーパーAnonify Book(JP)ソースコードをはじめ、LayerXサイトのAnonifyに関するページを確認してほしい。

LayerXとJCBが複数企業間をつなぐ次世代BtoB取引履歴インフラの共同研究開始LayerXとJCBが複数企業間をつなぐ次世代BtoB取引履歴インフラの共同研究開始JCBは、デジタルによる取引が増えていく社会の中で、デジタル取引・送金の履歴を蓄積し、必要に応じて取り出して参照できるインフラの必要性が高まると考え、同共同研究に挑む。両社はBtoB決済におけるトランザクションの記録・活用に加えて、デジタル通貨を用いた国内外送金などの金融取引に関するマネーローンダリング(資金洗浄)防止(AML。Anti-Money Laundering)およびテロ資金供与対策(CFT。Counter Financing of Terrorism)強化に向けたトランザクション識別と追跡性担保を可能にするといった、今後は必要不可欠となるインフラへの応用も視野に入れて、研究開発に取り組んでいく。

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カテゴリー:フィンテック
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中国政府がジャック・マー氏のフィンテック帝国Ant Groupの「修正」計画を発表

Jack Ma(ジャック・マー)氏と彼のフィンテック帝国にとって、なんと慌ただしい休日だったのだろうか。中国の中央銀行である中国人民銀行は米国時間12月26日、規制に関する話し合いのためにAnt Groupを呼び出し、フィンテック企業が規制違反を「是正」するための包括的な計画を発表した。

この会合は、中国の金融当局が規制遵守問題を理由に、記録的な新規株式公開(IPO)を突然中止してから2カ月も経たないうちに行われた。Alibaba(アリババ)のオンラインマーケットプレイスにおける決済処理会社として始まり、2011年にスピンアウトした同社は、健全なガバナンス体制を欠き、規制要件に反し、裁定取引を違法に行い、市場での優位性を利用して競合他社を排除し、消費者の権利を侵害したと、中国人民銀行は述べている

同時に、ジャック・マー氏のeコマース大手であるアリババは、独占的行為の疑いで中国の市場規制当局から調査を受けている

銀行当局は、億万長者であるアリババ創業者のジャック・マー氏が支配するよって管理されているAnt Groupに対して「フィンテック企業は決済の原点に立ち返り、取引の透明性を高めること」「クレジット事業に必要なライセンスを取得し、ユーザーデータのプライバシーを保護すること」「金融持株会社を設立し、十分な資本を確保すること」「法律に従ってクレジット、保険、資産運用などの金融事業を見直すこと」「証券業務のコンプライアンスを強化すること」という5つのコンプライアンスアジェンダを提示した。

非公開会議後、Ant Groupはすべての規制要件に取り組むための社内に「従業員調整」のチームを設置したと述べている

この再編が完了するまでには数カ月かかる可能性があり、Ant Groupの評価額を下げる可能性もある(Reuters記事)。評価額は上場予定時期に3000億ドルを(約31兆円)を超えていた。たとえば政府は最近、消費者へのローンを提供するための基準を引き上げる計画(Reuters記事)。を発表していた。これはAnt Groupの年間収益の約35%を占める(未訳記事)セグメントだ。中国政府の債務リスク管理努力の一環として提案されているこの変更では、オンライン小口融資業者が銀行と共同で、融資する資金の少なくとも30%を提供することが新たな要件となり、Antのキャッシュフローを圧迫する可能性がある。

しかし、Ant Groupの将来について楽観的な意見もある「(Antは)多くの勝ちを生み出している。長い目で見れば、IPOの一時的な停止が同社のビジネスに与える影響は限定的だ」とクロスボーダー決済事業者であるXTransferの創業者であり、Antの元幹部であるBill Deng(ビル・デン)はTechCrunchに語っている。

「規制当局の観点から見ると、「(Antの)融資規模は非常に大きくなっており、従来の規制範囲を超えて拡大している。また、伝統的な金融関係者の核心的利益をある程度侵害している」とデン氏は付け加えた。

Ant Groupに対する取り締まりは、間違いなく業界全体に警告でもある。Antへの挑戦者であるJD.comのフィンテック部門は、驚くべき動きとして、元チーフコンプライアンスオフィサー(Caixin記事)を新たな最高経営責任者として同社の舵取りに任命している。

Tencentの海外フィンテック事業のパートナーの匿名希望者は、Tencentはフィンテック事業を拡大(未訳記事)しているが、このソーシャルとゲームの巨人はその推進に対して「Antほど積極的ではない」ためAnt Groupと同じレベルの調査を同社は受けていない可能性があると述べている。

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カテゴリー:フィンテック
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(翻訳:TechCrunch Japan)

米証券取引委員会のリップル訴訟を受けて暗号資産XRPが暴落

世界で最も価値のある暗号資産の1つの価格が暴落している。最近提出された米証券取引委員会(SEC)の訴状が、この急落の原因だ。CoinMarketCapによるとXRPトークンの価値は過去24時間で42%以上も下落し、過去30日間の高値である0.76ドル(約78.7円)から63%以上も下落している。現在はわずか0.25ドル(約25.9円)だ。

XRPの価格変動は、暗号資産の中で最も移り変わりやすいものに匹敵する。2018年1月に3.84ドル(約397.8円)の史上最高値に達して以来、この通貨は数セントに近づくことに過去2年間の大半を費やしてきた。2020年11月には、他の暗号資産の主要な上昇を受け、XRPはここ数年で最大の上昇を果たしたが、それらの利益は、政権の終わりにSECがRipple(リップル)社に大規模な訴訟を起こすことを計画しているという同社のBrad Garlinghouse(ブラッド・ガーリンハウス)CEOの告白によって、今週すべて消え失せてしまった。

SECの根本的な主張(SECサイト)は、XRPを証券と見なし、7年以上前の最初から有価証券登録を行っているべきだったというものだ。この訴訟の被告であるRippleのブラッド・ガーリンハウスCEOとChris Larsen(クリス・ラーセン)会長が、XRPトークンの販売から13億8000万ドル(約1430億円)以上を得たとSECは主張している。

Rippleは最近、2億ドル(約207億円)の資金調達ラウンドを経て100億ドル(約1兆360億円)の評価を受けている。RippleとXRPトークンは厳密にいうと別物だが、Rippleはこの通貨の時価総額のかなりの部分を維持しており、一時はXRPトークン自体が「Ripple」と呼ばれ、同社とロゴを共有していた。

Rippleは、XRPは証券ではなく、実際には金融機関のためのツールであるとしているが、その変動率の高さは、銀行が実際にこのトークンを採用するのを躊躇させてきた。一方で、XRPは多くの暗号資産取引所に上場されており、この事実が訴訟の範囲を拡大し、そこで取引しているさらに多くのプレーヤーに影響を与える可能性がある。

米国時間12月22日、SECの訴訟が提起された直後に公開されたブログ記事(Rippleサイト)で、ガーリンハウス氏はSECの主張が「事実と法律の上で完全に間違っている」と書き、同社は「中立的な事実調査員の前に最終的に勝つだろうと確信している」と述べている。

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(翻訳:TechCrunch Japan)

バイデン政権は新たな暗号資産規の法制化でこの世界を変えることができる

米国政府は、フィンテックとブロックチェーンの法制化を怠ってきた。

この4年間、法律の枠組みが皆無であったため、私たちの暗号通貨関連製品の開発と展開という事業は、生死の境をさまよう状態が続いている。フィンテックとブロックチェーンの業界には、個人から大手銀行から政府に至るまで、あらゆる人々が本当に困っている問題を解決する製品の構想や、それを実現する能力を持つイノベーターが控えている。しかし、明確な道が示されない限り、こうした製品は成長できず、その能力を最大限に発揮できるまでに拡大することも叶わない。

法制化は、推理ゲームであってはならない。米証券取引委員会がビットコン(BTC)もイーサリアム(ETH)も安全ではないと宣言した2019年以降、この業界は停滞したままだ。不明朗のままでは、ブロックチェーンによるイノベーションはこの2つの通貨に限定されてしまう。この業界は、そんなに狭いものではない。法律がないままでは、暗号通貨とブロックチェーンが提供できる膨大な可能性は飼い殺し状態が続く。

新政権は、政治スペクトラム全体の議員に、明確な政策と法案を策定する新たなチャンスを提供している。それにより、銀行、フィンテック業界、企業が暗号通貨を保有できるようになり、それを使った効率化と顧客体験の改善が可能になる。

私たちは身近な歴史に学ぶことができる。1991年、Al Gore(アル・ゴア)上院議員が主導する超党派の取り組みにより高性能コンピューターおよび通信法(HPCCA)が可決され、George H.W. Bush(ジョージ・H・W・ブッシュ)大統領の署名により法律として成立した。

この法律が、Amazon(アマゾン)、eBay(イーベイ)、Yahoo(ヤフー)、Google(グーグル)といった企業の躍進に道を拓き、米国を初期のインターネットリーダーに押し上げた。1993年にはウェブブラウザが登場し、その直後の1994年にはドットコム時代が到来。そこで米国はイノベーションの象徴的存在としての地位を固めた。

ブラウザはあらゆるものを変えた。新たな雇用、新しい経済的好機、新しい技術分野を生み出した。これらは、30年前には想像もつかなかったものだ。1991年の「Fortune 500」のトップ100の企業を見ると、テック企業はほとんどレーダーに映らず、IBMだけが唯一のテック企業として入っていた。2020年までの間にその景色は劇的に変化し、トップ100リストは、Microsoft(マイクロソフト)、Apple(アップル)、Alphabet(アルファベット)、Facebook(フェイスブック)、Salesforce(セールスフォース)などのテック企業が独占するようになった。

トップ100に数えられたテック企業は、300万件に迫る雇用の創出に貢献し、その多くが市場の価値を高めている。2020年は前代未聞の年であったにも関わらず、DoorDash(ドアダッシュ)、Snowflake(スノーフレーク)、Asana(アサナ)、Palantir(パランティア)のように、テック企業の順調なIPOも続いている。

Google、iPhone、Uber、Salesforce、Spotify、Postmatesなどの製品やサービスはごく当たり前のものとなったが、多くはHPCCAのお陰で実現している。そして今、私たちは、暗号通貨によるイノベーションを目指す超党派の取り組みが生まれるチャンスを目の当たりにしている。公共と民間の支援を得て、明確な法律の枠組みを作ろうというものだ。法律があれば、イノベーターは新製品が作りやすくなり、他国に対する米国の競争力が維持され、さらなる投資を呼び込むことが可能になる。

仮想通貨とブロックチェーンの導入事例が増えていることには議論の余地がない。Paypal(ペイパル)、Square(スクエア)、Robinhood(ロビンフッド)などの大手企業は仮想通貨に力を入れ、それをメインストリームに押し上げようとしている。これらのブランドによって有効性が実証されたなら、暗号通貨の利便性と暗号通貨による企業と顧客に向た優れたけサービスへの興味は、さらに増してゆくだろう。

Ripple(リップル)、Coinbase(コインベース)、Gemini(ジェミニ)、DCG、Chainalysis(チェイナリシス)といった主要暗号通貨企業は、現在米国に本拠地を置いている。ところが、法規が曖昧であるために、これらの新進企業家たちは米国でのイノベーションを起こせずにいる。一方、他の国々は法制化の枠組みを明確化する動きを見せている。起業家や企業が、そうした明確な法律のある地域を選び、米国での新たな店舗開設を思い留まってしまうことにもなりかねない。

プレイしているゲームのルールがわかれば、私たちは最良のプレイ、つまりイノベーションを継続できる。今はまだ始まったばかりだ。開発者はオープンソースのテクノロジーを元に製品を開発できる。起業家は新しい企業を立ち上げて製品を作ることができる。そして投資家はそうした企業に投資できる。

私たちには、この米国で創設され成長する、最高の暗号通貨企業とブロックチェーン企業を欲している。そこから米国国民のための価値と好機が生み出される。インターネットの黎明期と同じだ。5年後10年後にこの産業がどんな姿になるかはわからないが、柔軟な枠組みがあれば、可能性は計り知れない。

バイデン政権には、新しい政策と新しい法律の策定を刺激し、今後幾世代にもわたってフィンテックと暗号通貨のイノベーションを加速させる明確な指針を打ち出せる大きなチャンスがある。バイデン政権には、次のことが期待される。

  • デジタルバンキングのための国の免許制度を作る(シンガポールのデジタルバンキング免許のようなもの)。これによりフィンテック企業の暗号通貨の導入、貸し付け、支払いの認可が円滑化される。現在の米国企業は州ごとに免許を取得しなければならず、そのための法務関係の経費は数百万ドル(数億円)にのぼり、何年もの時間が費やされる。
  • デジタル資産、デリバティブ(スマートコントラクトを使用)、ステーブルコインの明確な分類を定義する。
  • 超党派の公共および民間セクターのグループを作る。ここでは、テクノロジーに精通したAndrew Yang(アンドリュー・ヤング)氏のようなリーダーが指揮を執り、HPCCAがインターネット企業に貢献したように、フィンテック企業に資する象徴的な法案を共同で策定する。
  • 米証券取引委員会の議長に、顧客と市場を守りつつ、本当に進歩したイノベーションを起こす方法を理解した人物を据える。私たちが証券取引委員会から聞かされてきたイノベーションに関するリップサービスは、単なるリップサービスでしかなかった。現在の証券取引委員会が関与した暗号通貨プロジェクトは、すべてが破産に追い込まれるか、役に立たないトークンを抱えて放置されるなどして、米国から逃げていってしまった。

政治家や規制当局が、私たちの業界が直面している問題をどう扱うかは別として、私たちは、フィンテックを利用する人たちの数を確実に急速に増やし、ブロックチェーン製品が消費者と市場を適切に保護しつつ、継続的に最上級のソリューションを得られるよう、政府との協力を続けなければならない。

そのテクノロジーが、今ここにあることは確かだ。議員たちが、それに巨大な金融業界の発展を促すパワーがあることを理解してくれるよう期待する。HPCCAと同じく、懸命な法律が、私たちの顧客と市場の両方を守ると同時に、誇りある米国企業による世の中を一変させてしまうようなイノベーションを可能にする。

【編集部注】著者のAsheesh Birla(アシシュ・バーラ)はRipple(リップル)のRippleNetジェネラルマネージャー。

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タグ:暗号資産ジョー・バイデンアメリカ

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(翻訳:金井哲夫)

ソーシャルな株式取引サービスのPublicがシリーズCで6500万ドルを調達

ソーシャルに特化した無料株式取引サービス、Public(パブリック)がシリーズCで6500万ドル(約67億円)を調達した。これは同社がシリーズBで1500万ドル(約15億4000万円)を調達してからわずか1年足らずのことである。

今年連続してラウンドを調達したのは同スタートアップだけではなく、Welcome(ウェルカム)やSkyflow(スカイフロー)などもこの偉業を成し遂げている。将来性のあるスタートアップに賭けるという投資家の最近の傾向が、PublicのシリーズCを実現させたのだろう。

パンデミック初期の数ヶ月間は動きがなかったものの、その後ベンチャーキャピタリストやその他の投資家は後期段階のスタートアップに小切手を切るペースを加速させている。PublicのシリーズCはこの傾向を代表するもので、これまでの同社の総資金調達額の72%強を占めている。

また、投資先企業の次のラウンドを既存投資家が先取りするという、ベンチャー界のもう一つのトレンドをPublicの今回のラウンドが例証している。このケースでは、Accel(アクセル)が新規投資を主導しているが、同社はPublicのシリーズAおよびシリーズBラウンドも主導している。

しかしトレンドだけでラウンドは調達できない。そこでTechCrunchはPublicを共同で創設したJannick Malling(ジャニック・マリング)氏とLeif Abraham(リーフ・エイブラハム)氏に電話で話す機会をもらい、投資家らがフィンテックスタートアップに何を見出しているのかについて話を伺った。

成長

同社は2020年、急成長を遂げており、年初から10倍数でユーザー数を拡大してきた。

エイブラハム氏によると同社の成長には一貫性があり、毎月約30%のペースで拡大を続けている。同氏はまたPublicのユーザーのほとんどがそのサービスを有機的に見つけていることを強調しており、同社のマーケティングコストはさほど高額なものではく、成長が人為的に押し上げられたものではないことを伝えている。

ユーザー数の成長がさらなる資金調達を可能にしたのは分かったが、なぜユーザー数が成長したのか。

創業者の2人は、前ラウンドからの資金はまだ十分に銀行に残っていたが、今回の資金調達は同社のモデルを強化するための手段として考えていたとTechCrunchに語っている。

Publicの競合他社の多くもゼロコスト取引を謳っているが、同社のモデルはソーシャルに焦点を当てたものだ(例えばTechCrunchはPublicのソーシャルプラットフォームの要素をこの記事で取り上げている)。より多くの人がPublicを利用すればするほど、Publicが優れたものになっていくというのが創業者2人の考えだ。

したがって同社は新たな資本を使い、安定性を保ちつつも製品に投資を続けていくというわけだ。

このダイナミックな自己強化型モデルの仕組みは次の通りだ。同社は投資家が無料で取引について話し合い実行できる場を提供する。こういった投資家が同社のことを友人に伝えると、その友人らも後に会話に参加するようになる。これらの会話は新たな参加者によってより豊かなものとなり、そのプロセスは延々と繰り返される。ちなみにPublicは有価証券を扱っているので、荒らしを制限するために登録したユーザーだけが参加できることになっている。

これまでのところ同モデルは順調のようだ。しかし、同社やRobinhood(ロビンフッド)、M1(エムワン)、Wealthfront(ウェルスフロント)やその他の競合が今後どのくらいの期間、彼らのプラットフォームに純新規投資家を追加し続けることができるかは知る由もない。

収益

鋭い読者は上記の段落で、筆者がPublicの成長をユーザーの視点からのみ論じたことに気がついただろう。収益に関してはどうなのか。

無料の株式取引を提供している多くの企業と同様、同社は「Payment for order flow(PFOF)」と呼ばれるものから利益を得ている。これは異なるマーケットメーカーへの取引ルーティングであり、例えばRobinhoodはこの仕組みから莫大な利益を得ている

Publicと話をする前、筆者はPFOFの額について学ぶために同社の取引パートナーであるApex(アペックス)の提出書類を掘り下げてみた。合計金額はApexが収集したクライアントを考えるとやや控えめである。したがって総額の一部であるPublicの収益指標はなおさら控えめであるということだ。

当然我々は、同社がビジネスモデルを変更し、外部資料からは見抜けないような収益が新たな投資に向かっているのではないかと気になっていた。しかし創業チームはTechCrunchにモデルは変えていないと語っており、同社は目先の収益目標よりもユーザーの成長を重視しているという。

これはある程度理にかなっている。同社はユーザーのほとんどが長期保有者であることを強調している。ユーザーが証券を保有している期間が長ければ長いほど、取引をする可能性は低下する。するとPFOFのような取引収入がそれにより限られてしまうため、同社の利益率の成長にはつながらない可能性が高い。

同社の収益化計画は不透明なままだ。つまり同社が手に入れた新たな小切手は、ソーシャル体験という点でのプロダクトワークだけでなく、将来の収益創出のための資金にもなるのではないかと推測される。

フィンテック市場を見て回れば、同社がユーザーベースを収益化するための方法例を見つけることができる。

Publicの収益が全く伸びていないと言っているわけではない。事実成長はしているのだ。筆者が一般的に取引量がユーザーの成長に比例するのかどうかを同社に尋ねると、相関関係はあると創業者は伝えている。つまり今もなお成長を続けている同社のユーザーベースは、時間をかけてより多くの取引を実行することになるだろう。

Publicが次に何を構築するのかを楽しみに待つことにしよう。そして同社がいつ、ユーザーから十分な収益を得ることができるようになるのかも乞うご期待である。

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タグ:投資 資金調達

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(翻訳:Dragonfly)

提携銀行3400行、ユーザー数2億5000万人を抱えるまでに成長したスウェーデンのオープンバンキング企業Tinkが約107億円を調達

オープンバンキングプラットフォームは、これまで同じ場所で提供されていなかったサービスをAPIによって連携させたもので、ここ数年で台頭してきたトレンドの1つになっている。そして本日、欧州でこの分野をけん引する企業が、事業拡大のための資金調達ラウンドを完了した。

Tink(ティンク)は、APIで統合させた多くの銀行や金融サービスにユーザーが新しいチャネルを使ってアクセスできるようにする、スウェーデン、ストックホルム発のスタートアップだ。同社はこの度、8500万ユーロ(約107億円)を調達し、資金調達後の評価額は6億8000万ユーロ(約857億円)となった。今回の資金は、欧州での銀行ネットワークと決済サービスの拡大に充てられる予定だ。ティンクはすでに3400の銀行と提携しており、そのユーザー数は約2億5000万人に達している。提携先にはPayPal(ペイパル)、NatWest(ナットウエスト)、ABN AMRO(ABNアムロ)、BNP Paribas(BNPパリバ)、Nordea(ノルデア)、SEBなどがあり、その中には戦略的投資家も含まれている。一方、ティンクには同社のAPIを使用する開発者が約8000人いる。

今回のラウンドは、新たに加わった投資家であるEurazeo Growth(ユーラゼオ・グロース)とDawn Capital(ドーン・キャピタル)が共同でリードして実施された。他にも、PayPal Ventures(ペイパル・ベンチャー)、HMI Capital(HMIキャピタル)、Heartcore(ハートコア)、ABN AMRO Ventures(ABNアムロ・ベンチャー)、Poste Italiane(ポステ・イタリアーネ)、BNPパリバのベンチャー部門Opera Tech Ventures(オペラテック・ベンチャー)が参加している。

2020年1月に9000万ユーロ(約113億円)のラウンドを発表してから1年もたたないうちに行われた今回の資金調達は、言ってみれば、前回のラウンドの延長線上にある。ちなみに前回ラウンド時の同社の評価額は4億1500万ユーロ(約524億円)だった。同社の銀行ネットワークはその後も着実に成長を続け、今年1月の時点で提携銀行数は2500に達していた。同社はこれで累計1億7500万ユーロ(約220億円)を調達したことになる。

世界中がパンデミックに襲われたここ1年の間に、より多くのサービスがオンライン化されクラウドに移行された。そのおかげで、人々も企業も、銀行取引や販売・ショッピングなど対面では行えなくなった活動を今でも続けることができている。サービスのオンライン化やクラウド化は、金融サービスの世界で間違いなく大きな役割を果たしており、銀行や、銀行と競合する企業、その技術パートナーは、柔軟性の高いデジタルチャネルへの需要が急増していることを実感している。

ティンクの共同創設者兼CEOのDaniel Kjellén(ダニエル・ケレン)氏は次のように語る。「2020年は、困難な状況にも関わらずティンクが大きく成長できた1年だった。今年はオープンバンキングによる決済取引が急増した。2021年には特に英国でオープンバンキングが拡大し、欧州全体へと広がっていくと予想している。今回の追加資金調達により、オープンバンキング技術を基盤とした新しいデータ製品を顧客に提供しながら、決済指図サービスの開発を欧州全域でさらに促進していきたい」。

オープンバンキングに資本を投入しようとしているのはティンクだけではない。今週初めに、突然姿を現した別のスタートアップUnit(ユニット)が1860万ドル(約19億円)を調達した。同社は、銀行機能や銀行を、これまで銀行が存在しなかった環境に統合させるという野望を抱いている。その他にもPlaid(プレイド)やRapyd(ラピッド)などの企業が、金融サービスを連携させ、他のプラットフォームやアプリに統合させることに取り組んでいる。

プレイドは現在、53億ドル(約5477億円)でVisa(ビザ)に買収される手続きの最中なのだが、この買収取引が現在、独占禁止法違反の疑いで調査されている。ラピッドは引き続きVCの支援を受けており、前回の評価額は13億ドル(約1344億円)だった。こうしたサービスの普及と成長は、プレイドによって市場が独占されるわけではないことを示す強固な論拠になるかもしれない。しかし1つの決済サービス大手がプレイドを所有すれば、市場の進化の仕方は間違いなく変わるだろう。

ユーラゼオ・グロース代表取締役のZoé Fabian(ゾーエ・ファビアン)氏は次のように述べている。「オープンバンキングの動きは加速し続けており、2021年には、実績があり信頼できるパートナーとともにオンラインサービスを顧客に提供したいフィンテックと大企業とがさらに広く提携するようになるだろう。8年前の創業以来、ティンクは欧州において業界をけん引するオープンバンキングプラットフォームとなってきた。当社の投資は、ティンクとオープンバンキングに対する当社と業界の信頼の証しであり、当社はティンクの取り組みを引き続きサポートすることを楽しみにしている」。

ティンクのビジネスは、既存の銀行サービスへの容易な統合を実現し、統合後に行われる取引から手数料を得られる決済指図テクノロジーをベースとしている。同社によると、現在5つの市場で毎月約100万件の決済取引を処理しているという。

同社は取引高や収益に関する具体的な数字を公表してはいないが、既存顧客の中に、スウェーデンで400万人のユーザーを擁するデジタルメールボックスプロバイダーKivra(キブラ)が含まれていることに言及している。また、今年前半の時点で、500万人以上の顧客を擁する決済フィンテックLydia(リディア)もティンクの顧客に含まれていた。ティンクのサービスは、スウェーデン、英国、フランス、スペイン、ドイツ、イタリア、ポルトガル、デンマーク、フィンランド、ノルウェー、ベルギー、オーストリア、オランダで提供されており、2021年にはさらに10の市場に拡大する予定だ。

同社は、今回調達した資金で提携ネットワークとフットプリントの拡大に注力すると同時に、無機的成長も積極的に進めている。同社は今年、事業拡大を目的として3社を買収した。このことは、すべての企業が現在の市場で成長するためのスケールや資産を有するわけではないため、今後もさらに統合が進む可能性が高いことを示している。ちなみにティンクが今年、信用リスク商品の拡大を目的として買収したのは、スウェーデンの信用決定ソリューション企業Instantor(インスタントア)、アカウントアグリゲーションプロバイダーEurobits(ユーロビット)、英国のアグレゲーションプラットフォームOpenWrks(オープンワークス)の3社である。

ドーン・キャピタルのジェネラルパートナーであるJosh Bell(ジョシュ・ベル)氏は次のように述べている。「ティンクは欧州を代表するオープンバンキングプラットフォームとして登場し、急速に金融テクノロジーインフラストラクチャの重要な戦略的要素になりつつある。今年は、プラットフォーム全体でオープンバンキングの製品とサービスが数多く採用、導入され、ティンクのネットワーク全体での活動が急激に加速した。我々は、今回の資金調達ラウンドをサポートできたことを嬉しく思っている。来年、ティンクのチームと協力して、すでにかなりの大きさになっている銀行ネットワークの幅と深さを拡張し、口座間の決済指図ソリューションの展開を加速させ、急成長する顧客ベースに卓越した価値を引き続き提供していけることをとても楽しみにしている」。

関連記事:中小企業向けの組み込み融資業者Liberisがさらに97.9億円を負債で調達

カテゴリー:フィンテック
タグ:ヨーロッパ 資金調達

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(翻訳:Dragonfly)

中小企業向けの組み込み融資業者Liberisがさらに97.9億円を負債で調達

英国を拠点とするフィンテックで、従来の銀行融資や当座貸越の代わりとなる方法(未訳記事)で中小企業に融資するLiberis(リベリス)が財源として7000万ポンド(約97億9000万円)の資金を補充した。同社は内訳の開示を拒否したが、このラウンドはベンチャーとそれ以外からの負債のミックスだった。したがって、Liberisが実行する融資を賄うための負債と考えてよいと思われる。

融資したのは以前からの投資家であるBritish Business Investments、Paragon Bank、BCI Europe、そして新しいパートナーであるSilicon Valley Bank(SVB)だ。Liberisが調達した資金の累計は2億ポンド(約279億6000万円)となった。この中には株式による調達額が5000万ポンド(約68億9000万円)超が含まれる。「新しい資金は会社の成長促進、新製品と新市場の立ち上げ、新しい顧客融資ソリューションを提供するために使用されます」と同社は述べた。

2007年創業のLiberisは、これまで欧州、米国、英国の1万6000の中小企業に5億ポンド(約699億2000万円)以上を融資してきた(このプロダクトは米国、フィンランド、スウェーデン、チェコ共和国、スロバキアの5つの新しい国で利用可能)。しかし最近、貸し付けはますます増加しており、過去2年間だけで2億5000万ポンド(約349億6000万円)が貸し出された。

Liberisはクレジットカードとデビットカードの予想売上高に基づき、中小企業に1000ポンド(約14万円)から30万ポンド(約4200万円)を融資する。ただしスマートなところは、融資の返済が事業のデジタルトランザクションのうち事前に合意した割合となる点だ。いい換えれば、合意された最低月額支払い額を除き、返済スケジュールはカード取引の規模とペースに直接リンクしている。

注目すべきことに、同社の市場戦略はB2B2B、つまり「組み込み融資」にシフトしている。同社は現在、主にマーケットプレイス、ソフトウェアプロバイダー、FISのWorldpayやGlobal Paymentsなどのアクワイアラ(加盟店契約会社)と提携している。こうしたパートナーはLiberisと一体となり、借入する1社1社にあわせ事前承認された売上ベースの融資をエンドカスタマーに対し実行する。

「Liberisのコアビジネスはパートナーが顧客に対し組み込み融資を実行できるようにすることです」とLiberisのCEOであるRob Straathof(ロブ・スターソフ)氏はTechCrunchに語った。「2015年に、FISのWorldpayと世界初の1つとなる法人向け組み込み融資パートナーシップを開始しました。そしてGlobal Payments、Opayo(Sagepay)、EPOS Now、Worldpay U.S.など、過去数年間で世界中にパートナーシップを大幅に拡大してきました」。

スターソフ氏は、Liberisの法人向け融資プラットフォームをパートナーの既存のエコシステムとカスタマーエクスペリエンスに統合することで、同社がパートナーおよびサポートする中小企業に対し「即座に価値」を提供できると述べる。

「当社は単一のAPI統合を通じてパートナーから守秘性の高いデータを受け取り、中小企業1社1社にしっかり合わせた事前承認融資を提供できるようにします」と同氏は説明する。「融資を中小企業にとって直感的でアクセスしやすく、1社1社にあったものにします。それにより、エンゲージメント、満足度、ロイヤルティを向上させ、パートナーがより大きな顧客価値を引き出すことができるようになり、解約率を減らします。究極的には誰にとってもメリットがあります」。

SVBのEMEAウェアハウスファイナンスの責任者であるFolake Shasanya(フォレイク・シャサーニャ)氏は次のようにコメントした。「Liberisの新しい資金調達パートナーになり、テクノロジープラットフォーム、決済プロバイダーなどにファイナンスソリューションを組み込むことができる同社の能力に感銘を受けました。SVBのDNAにはイノベーションへのサポートが組み込まれています。当社のウェアハウスファイナンスとベンチャーデットプロダクトを通じてこのグローバルな成長の機会をLiberisに提供できることをうれしく思います」。

カテゴリー:フィンテック
タグ:Liberis資金調達

画像クレジット:Liberis

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(翻訳:Mizoguchi

健康保険スタートアップ、OscarがIPO前らしきラウンドで145億円を追加調達

医療費負担適正化法(Affordable Care Act; ACA)をきっかけにベンチャーキャピタルによるヘルスケア投資の波が押し寄せている中、ニューヨークを拠点とする健康保険のスタートアップであるOscarは、1億4,000万ドル(約145億円)の資金を追加調達した。

この新たな資金調達は、2020年を通じて、同社が1日につき100万ドル(約1億円)相当の額を調達したことを意味する。

同社の前回の資金調達ラウンド、2億2500万ドル(約230億円)の大口投資は、わずか数ヶ月前の今年6月だった。

Tiger Global Managementが主導し、Dragoneer、Baillie Gifford、Coatue、Founders Fund、Khosla Ventures、Lakestar、Reinventなどを含む今回のラウンドの投資家リストを考えると、最終的に株式を公開する前に非公開市場を利用する最後の機会の一つになると思われる。

「2017年以来、Oscarは年率70%以上の会員数増加を記録しています」と、Oscarの共同設立者兼最高経営責任者であるMario Schlosser(マリオ・シュロッサー)氏は声明で述べている。「事業を急速に拡大させていく中で、この資本金は、全国のより多くのOscar会員に、手頃な価格でアクセス可能な医療を提供するというコミットメントを実現するのに役立ちます。」

新年に向けて、同社は、個人・家族プラン、メディケア・アドバンテージ、少人数グループの各商品において、18州と286郡で利用できるようになると述べている。同社によると、2020年9月30日現在、Oscarの会員数は15州で約42万人に上るという。

Oscarは、バーチャルケアサービスをいち早く提供した保険会社の1つだ(早くも2014年にオンライン診療を開始している)。現在では、Oscar会員のプライマリケア医への受診の半数近くが、Oscar推奨の医師との受診となっている。同社によれば、1回以上の受診経験がある加入会員の約38%が、バーチャルケアサービスを利用しているという。

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(翻訳:Dragonfly)

東南アジアの金融インフラ構築を進めるシンガポールのFinantierがY Combinatorから支援を獲得

「underbanked」であることは、金融サービスへのアクセスがない人を意味するわけではない。その代わり、従来の銀行口座やクレジットカードを持たないことを往々にして指す。しかしインドネシアのようなマーケットでは、多くの人がデジタルウォレットやeコマースプラットフォームを使っている。これは運転資本や他の財務ツールを確保するのに役立つユーザーデータの別のソースになっている。シンガポール拠点のオープンファイナンススタートアップFinantier(ファイナンティア)は、ユーザーデータへの金融サービスアクセスを提供する1つのAPIでそうしたデータを合理化したいと考えている。ここにはクレジットスコアやKYC(与信審査)の認証を可能にする機械学習ベースの分析も含まれる。

20超のクライアントを抱え、現在ベータ版を展開しているFinantierは正式立ち上げに向けた準備で忙しい。同社は米国時間12月22日、Y Combinatorの2021年冬季スタートアップとして受け入れられたと発表した。同社はまた、額は非公開ながらこのほどプレシードの資金を調達した。本ラウンドはEast Venturesがリードし、AC Ventures、Genesia Ventures、Two Culture Capitalなどが参加した。

Finantierは2020年初めにDiego Rojas(ディエゴ・ロハス)氏、Keng Low(ケン・ロウ)氏、Edwin Kusuma(エドウィン・クスマ)氏によって設立された。3人とも新興マーケットでオープンファイナンスを可能にすることを目的としたフィンテック企業向けのプロダクト構築の経験がある。

オープンファイナンスは、オープンバンキングから生まれた。PlaidとTinkが構築されたのと同じフレームワークだ。これは、ユーザーの金融データを銀行や他の機関の中に格納する代わりにユーザーがよりコントロールできるようにすることを意図している。ユーザーは自身の銀行口座やクレジットカード、デジタルウォレットなどを含むオンライン口座の情報へのアクセス権をアプリやウェブサイトに付与するかどうかを決定できる。オープンバンキングは主に決済アカウントと称されるが、その一方でFinantierが専門とするオープンファイナンスは商業融資、住宅ローン、保険引受などを含むさまざまなサービスをカバーする。

Finantierはまずシンガポールとインドネシアに注力するが、他の国にもサービスを拡大し、Plaidのようなグローバルフィンテック企業になる計画だ。すでにベトナムとフィリピンに目をつけていて、ブリュッセルで提携も結んだ。

Finantierを興す前にロハス氏はP2Pの融資プラットフォームLending ClubやDianrong向けのプロダクトに取り組み、東南アジアのいくつかのフィンテックスタートアップでCTOを務めた。同氏は多くの企業が他のプラットフォームや銀行からのフェッチデータを統合したり、異なるプロバイダーからデータを購入したりするのに苦戦していることに気づいた。

「人々はオープンバンキングや埋め込み型金融などについて話し合っていました」とFinantierのCEOであるロハス氏はTechCrunchに語った。「しかしそれらはもっと大きなもの、すなわちオープンファイナンスの構成要素です。特に大人の60〜70%が銀行口座を持たない東南アジアのような地域では、消費者や事業所が複数のプラットフォームに持っているデータを駆使するのをサポートしていると確信しています。それは絶対に銀行口座である必要はなく、デジタルウォレットやeコマースプラットフォーム、その他のサービスプロバイダーだったりします」。

消費者にとって意味するところは、クレジットカードを持っていなくても、たとえばeコマースプラットフォームでの完了した決済のデータを共有することで信用力を構築できるということだ。ギグエコノミー労働者は、毎日の乗車や他のアプリを通じてしている仕事についてのデータを提供することで、より多くの金融サービスやディールにアクセスできる。

東南アジアの金融インフラを構築する

東南アジアに注力している他のオープンバンキングスタートアップにはBrankasやBrickがある。ロハス氏はFinantierがオープンファイナンスに特化していること、エンドユーザー向けのサービスを構築するために金融機関向けのインフラを作っていることで差異化を図っていると述べた。

金融機関にとってのオープンファイナンスのメリットは、より消費者に適したプロダクトを作ることができ、売上高共有モデルの機会を得られることだ。これは東南アジアでは銀行口座などをもたず、さもなくば金融サービスへのアクセスがない人々にリーチできることを意味する。

Y Combinatorのアクセラレータープログラムに参加する一方で、Finantierはインドネシア金融サービス庁の規制緩和制度にも参加する。このプログラムを終了したら、大手機関を含むインドネシアのさらに多くのフィンテック企業と提携することが可能になる。

インドネシアには、銀行口座を持たないなど金融サービスを十分に利用できていない大人が1億3900万人いる、とEast Venturesの共同創業者でマネジングパートナーのWilson Cuaca(ウィルソン・クアカ)氏は話した。

インドネシアを専門とする同社はEast Ventures Digital Competitiveness Indexという年次調査を行うが、金融排除が現在存在する最大の格差の1つだと指摘した。ジャカルタが立地するジャワのような人口の多い島で利用できる金融サービスの数と、他の島々のものとではかなりの差がある。

金融インクルージョンを促進し、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミックの経済影響を軽減するために、政府は1000万の零細・中小企業が年末までにデジタルに移行するという目標を打ち出した。オンラインで販売する零細・中小企業は現在800万で、インドネシアの零細・中小企業のわずか13%にすぎない。

Finantierに出資するというEast Venturesの決定について、クアカ氏は「金融サービスへの平等なアクセスを提供することは、インドネシア経済に乗数効果を及ぼすことができます」とTechCrunchに語った。「現在、金融サービスを多くの人に提供するために何百という企業が独自のソリューションに取り組んでいます。そうした企業がより多くのプロダクトやサービスを、金融サービスを活用できていない人々に提供するのをFinantierがサポートすると確信しています」。

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タグ:FinantierY Combinator資金調達東南アジアシンガポール

画像クレジット:Finantier

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(翻訳:Mizoguchi

​LINE PayがApple Pay対応開始、バーチャルカード「Visa LINE Payプリペイドカード」も発表

​LINE PayがApple Pay対応開始、バーチャルカード「Visa LINE Payプリペイドカード」も発行

LINE Pay​は12月22日、コミュニケーションアプリ「LINE」(ライン)上で展開するモバイル送金・決済サービス「LINE Pay」において、「Apple Pay」に対応開始したと発表した。

また同社は、三井住友カードビザ・ワールドワイド・ジャパンの2社とともに、LINEアプリ上からワンタップで発行できるバーチャルカード「Visa LINE Payプリペイドカード」の提供開始も明らかにした。手数料、年会費とも無料。

Apple Payに対応開始

LINEアプリのユーザーは、アプリ上の「LINE Pay」のメインメニューにある「Apple Pay」ボタンをタップするだけで設定可能。

支払い時は、LINEアプリを起動する必要はない。Touch ID搭載の「iPhone」の場合はホームボタンを、Face ID搭載の「iPhone」および「Apple Watch」の場合はサイドボタンをダブルクリックし、「iD」端末にかざすだけで、QRコード決済と共通の「LINE Pay」残高での支払いが可能になる。2020年9月時点で国内121万ヵ所以上の店舗に設置された「iD」端末で利用できる。

​LINE PayがApple Pay対応開始、バーチャルカード「Visa LINE Payプリペイドカード」も発行

バーチャルカード「Visa LINE Payプリペイドカード」

​LINE PayがApple Pay対応開始、バーチャルカード「Visa LINE Payプリペイドカード」も発行

Visa LINE Payプリペイドカードは、LINE Pay残高をiDとして決済できるようにする仕組み。LINEアプリ上でカード番号のみ発行するバーチャルカードとなっており、プラスチックカードの発行はない。

LINEサービス内からVisa LINE Payプリペイドカードを発行することでVisa加盟店でのオンラインショッピングが可能になる。同プリペイドの発行により、オンライン・オフラインともに事前にチャージした「LINE Pay」残高で支払える箇所が大幅に増えるとしている。支払いと同時にLINEで利用通知を受け取れる。

またApple Payを設定することで、iD加盟店でiPhoneやApple Watchをかざすだけの支払いを実現できる。Google Payは順次対応予定。

なお2020年12月22日をもって、JCBのプリペイドカード「LINE Pay カード」の新規発行を終了し、QUICPay+への新規登録は順次終了する(既存会員は有効期限までは利用可能)。

  • 正式名称:Visa LINE Payプリペイドカード(LINEアプリ上でカード番号のみ発行するバーチャルカード。プラスチックカードの発行はない)
  • 国際カードブランド:Visa
  • 年会費・発行手数料:無料
  • 有効期限:5年
  • 対象:年齢制限なし(未成年者は、親権者など法定代理人の同意を得た上で申し込み)
  • 利用できる加盟店:iD加盟店およびオンラインのVisa加盟店、Apple Pay:iD加盟店、Google Pay(順次対応予定) :iD加盟店およびVisaのタッチ決済加盟店

​LINE PayがApple Pay対応開始、バーチャルカード「Visa LINE Payプリペイドカード」も発行

LINE Payは、LINEのモバイルペイメントプラットフォームとして、決済ポートフォリオの拡充や決済箇所拡大を通じて、お金の流通で生じる時間や手間をなくし、人とお金・サービスの距離を近づけるとしている。キャッシュレス・ウォレットレス社会において、モバイルペイメント領域をリードする存在になることを目指す。

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カテゴリー:フィンテック
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企業投資の獲得争いが激化する中、支出管理のRampが約31億円調達

企業の支出管理スタートアップであるRampが新しいラウンドでさらに3000万ドル(約31億円)を調達したと米国時間12月17日に発表した。TechCrunchは2020年初めにRampのプロダクト立ち上げ(未訳記事)を取り上げ、その時点までに同社が約2300万ドル(約24億円)を調達したことも詳しく述べた。

直近では2020年8月のラウンドで資金を調達した。6月に調達を開始したようだ。新しい資金は、Rampが2019年8月のシードラウンドで800万ドル(約8億3000万円)相当を調達して以来2回目のラウンド、または2020年2月に1500万ドル(約16億円)を調達後最初のラウンドで調達したことになる。D1とCoatueが新規投資家としてこの新しい投資に加わった。既存の投資家も参加した。

RampのCEOを務めるEric Glyman(エリック・グリマン)氏は、新しいエクイティはシリーズ A3といったところだといい、新しい価格が付いたにもかかわらず、前のラウンドの資料を効果的に再利用したと述べた。ベンチャー企業の歴史に関する純粋主義者なら、同社の新しい資金調達はシリーズB(シード以降2番目のバリュエーション更新ラウンド)であったか、同社のシードラウンドが2000年代ではAに相当することを踏まえシリーズCであったというだろう。

とにかく、Rampは資金を必要としていたわけではない。グリマン氏によると、同社が最後に小切手を受け取ったとき、銀行にはまだシードラウンドの資金が残っていた。これは、2020年8月の時点で同社の現金が4500万ドル(約47億円)を超えていたことを意味する。

グリマン氏は必要がないのになぜ資金を調達したのかと聞かれ、新しい投資家は「まったく信じられないほどの」投資実績を持っていた、とTechCrunchに語った。そして同氏は、ラウンドで魅力的な価格がついたため希薄化を抑えることができたと付け加えた。同氏はまた、新しい資金を持つことでRampが自信を持ってより積極的に採用に向かえると述べた。

今回のラウンドはある程度興味深いが、さらに興味をそそるのはRampが競う分野だ。そこで、ソフトウェアの力について、そして同社と競合他社が展開するコードに関して料金を請求できる可能性が出てくる時期について議論したい。

ソフトウェア

Rampは、企業の支出管理という市場のシェアをめぐり競争している。ベンチャーキャピタルの支援を受ける多くのプレーヤーがしのぎを削る領域だ。プレーヤーの密度が競争を生み出した。競争は、クレジットカードとチャージカードが企業によって利用されるために必要な基本ルールを書き直した。テーブルの賭け金は、このニッチな領域でこれまで以上に高くなっている。

なぜか。消費者や企業にクレジットカードやデビットカードを発行すること自体は大部分がコモディティ化してしまったため、決済を介し企業支出の一部を狙うスタートアップは自社の既存プロダクトを中心により強力なソフトウェアを開発しようとしている。派手なカードで新しい顧客を引き付けることができないなら、支出そのものを対象にデジタルツールを多く開発し、企業が現金の流出を管理・制限するのを支援してはどうか、ということだ。

このトレンドの例は無数にある。たとえばBrexは現金管理ソリューションと経費管理ツールを開発した。Ramp自体は2020年、独自の経費管理ソフトウェアを世に出した(未訳記事)。Divvyは他のカード関連ソフトウェアツールとともに同じようなサービスを提供している。

ベンチャーキャピタリストらはRampに5500万ドル(約57億円)を、Brexに我々の計算では負債を除き4億ドル(約420億円)強を、Divvyには2億5000万ドル(約260億円)以上を注ぎ込んだ。法人カードに関してより強力なソフトウェアを開発するゲームは注目に値する。この分野の主要なプレイヤーにベンチャーが賭ける金額の規模が非常に大きいからだ。

Rampは資金調達のニュースの中、新しいコードを書き進め上述の点を裏付けた。同社は最近、ベンダー管理ツールを加えた。また現在、同社のカードで支払わなかった経費に関して従業員が精算できるように、経費精算機能を追加した。

3社のうちどれが最高のソフトウェアを持っているのか。いずれの会社もそれぞれ「自分たちがそうだ」と思っていると我々は考えている。

Rampとその競合他社がカード関連のプロダクトを中心にソフトウェアを開発しようと努力した結果、顧客数は急速に成長した。Divvyは今週、自社の指標に関してTechCrunchに、2020年には顧客数が120%増加し、プラットフォームにおける経費の合計は2020年に100%増加したと語った。Brexは成長に関する指標の開示を断った。

Rampは自社のニュースの1つとして成長率を発表した。創業後最初の18カ月でプラットフォームにおける経費が1億ドル(約103億円)に達したこと(GAAPの時間軸ではないことは認める)、同社が企業のためにサポートした総経費の4分の1は過去30日間に記録されたことなどだ。

スタートアップが調達可能な資金が潤沢にあるのと同じように、スタートアップが成長するための市場も豊富にあるようだ。

最後に質問。企業の支出管理スタートアップがスイッチを切り替え、一連のソフトウェアへの課金を開始するのはいつか。現在、3社は主に決済から収益を稼いでおり、自社のカードがサポートする小さな取引を集めている。これは拡張性が高く、新規顧客による登録のハードルを低く抑える。結局のところ、無料の金融ツールを望まない人などいるだろうか。

だがいつかはソフトウェアの料金を請求することになる。SaaSに基づく収益の評価は高すぎて、もはやついて行けない。だがどこかの時点で。おそらくその日に「企業の支出」というロゴで顧客を引き寄せる時代が終わり、この分野のソフトウェアの成熟が始まる。その時点で新しい競合他社が次々に芽を出し、このサイクルが繰り返されることになると予想する。

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画像クレジット:William Whitehurst / Getty Images

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(翻訳:Mizoguchi

Lydiaはヨーロッパの金融スーパーアプリ構築のためにさらに8600万ドルを調達

フランスのフィンテックスタートアップのLydiaはシリーズBラウンドを延長した。全ての主要な既存株主も参加の元、Accelが延長を主導。Lydiaは2020年1月に最初の4500万ドル(約47億円)を調達したが、この投資はTencentが主導した。今回さらに8600万ドル(約89億円)を調達したことで、LydiaはシリーズBラウンドの一環として合計1億3100万ドル(約140億円)を調達したことになる。

Lydiaはこのラウンドの評価については述べなかったが、共同設立者兼CEOが筆者にヒントをくれた。「当社の企業価値はこの2つのBラウンドの間に著しく増加しました」と彼は語った。

興味深いのは、Amit Jhawar(アミット・ジャワール)氏がこのAccelの投資を進めたことだ。 彼は7月にベンチャーパートナーとしてAccelに入社し、Lydiaの取締役会に加わる予定だ。

ジャワール氏は2011年に決済代行会社のBraintreeにCOO兼CFOとして入社。間もなく、Braintreeはピアツーピア決済アプリのVenmoを買収した。「買収当時のVenmoは僅か15人。2012年にモバイルアプリをリリースしたばかりでした」とジャワール氏は電話インタビューで語った。

後にPayPalがBraintreeとVenmoを買収。ジャワール氏は2020年初頭まで残り、Venmoをアメリカで5200万人が利用する巨大なフィンテックコンシューマー向けアプリへと拡大させた。ジャワール氏はピアツーピア決済は長期的な消費者との関係の始まりだと考えている。

「消費者のアカウントに残高があれば、再度使用してもらえるので、P2Pとしては成功なのはご存知の通りです」と彼は述べた。

2014年頃に初めて本誌でLydiaを取り上げた時、筆者は同社のことをフランスのVenmoと呼んでいた。当時、彼らは60万ユーロ(約7600万円)しか調達していなかった。ジャワール氏はその見解に同意しているようだ。その後、Lydiaは大きく成長し、様々な面でピアツーピア決済を超えて拡大した。

Lydiaを使用すれば数秒で他のユーザーに送金できる。口座番号を銀行アプリに入力する必要はない。送金する側が相手の電話番号を知っていれば、相手は支払いを受け取ることができる。

アカウント内に残高があれば、Visaデビットカードを使用して直接支払うこともできる。Lydiaでバーチャルカードを作り、Apple PayやGoogle Payで利用することも可能であり、プラスチックカードの発行依頼をすることもできる。

LydiaではアプリでIBANを取得することで口座振り込みもサポート。また、マネーポットを作成し、他のユーザーへのリンクの送信、Lydiaで銀行口座の確認、病院や慈善団体への寄付クレジットラインの取得等が可能だ

他の全てを凌駕する目玉機能がある。銀行口座は硬固ではあるが画一的な傾向があり、人々のお金の使い方に対応できていない。「現在、銀行ではメインの口座を当座預金と呼んでいます。それは設計上時代遅れなものになっています」とCEOのCyril Chiche(シリル・チチェ)氏は述べている。

Lydiaは多くの様々な方法で使用できる柔軟なサブアカウントを作成した。第2サブアカウントを作成して、請求書の支払いのためにお金をいくらか取っておくことができる。第3サブアカウントを作成して、一緒に旅行する数人の友人達とシェアすることも可能だ。

アカウントのグリッド上を指でスワイプすることで、口座から口座へと資金を移動することができる。複数のコントリビューターを持つことができ、デビットカードに関連付けられているアカウントを変更できるため、お金の流れがより自然になる。まるで金融アプリではなく、メッセージングアプリを使っているみたいだ。

そして、Lydiaはフランスでは順調に事業を進めている。現在、同社には400万人を超えるユーザーがいる。過去1年間で取引きは倍増し、利用が加速している。

「PayPalを別にすれば、Lydiaにはヨーロッパ最大のP2Pネットワークがあり、モバイルファーストかつ顧客中心のソリューションで、ヨーロッパ全体で成長する可能性があります。これにより消費者金融商品の需要や支払いを受けるための業者の関心が高まるでしょう」とジャワール氏はメールで述べた。

そして、2020年はLydiaにとって忙しい年となった。同社は金融サービス向けのスーパーアプリとして優位に立つために完全に再設計したアプリを発表したばかりだ。全てのインタラクションとメインタブが変更されている。

Lydiaはまた、無料プランよりも上限が高く設定されたプランおよび、最も料金の高いプラン向けの保険パッケージを提供するプランの、2つの新しいプレミアムプランの提供を再開した。これらのプランは現在アプリが提供している内容により合致しており、企業の最終収益に貢献するはずだ。「次のステップはLydiaの収益性を高めることであり、それは当社にとって常に重要な位置を占めてきました」と最近のインタビューでチチェ氏は述べている。

Lydiaは密かに、カードの新しいインフラストラクチャへの移行、アカウントアグリゲーションに対する残高通知機能の追加、単一ユーロ決済圏内での銀行口座への即時振込みなど、多くの主要機能もアップグレードした。

2021年に、同社はさらなる金融商品の新たな基盤を足掛かりにして事業を進めて行く計画だ。「クレジット、貯蓄、投資など、ありとあらゆる商品を試してみるつもりです」とチチェ氏は述べた。

同社はまた、より多くの国々へと緩やかに拡大している。だが、受け入れ率を上げるため、現地のカードとIBANを使用することでその地域に根差していると感じられる商品の提供を望んでいる。Lydiaはそれをポルトガルから始めている。

関連記事:クレジットカード決済のSquareがスペインのP2P決済アプリVerseを買収

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タグ:P2P ヨーロッパ 資金調達

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(翻訳:Dragonfly)