お気に入りのフィンテックサブニッチの真の価値を理解しよう

スタートアップとマーケットの週刊ニュースレター「The TechCrunch Exchange」へようこそ。

今回お話しするのは、後払い(BNPL)企業についてだ。これらは大きくて興味深いフィンテックの世界の、特定の一角を占めている。

Square(スクエア)やPayPal(ペイパル)などによるBNPLスペースでの大型買収のおかげで、私たちはこのスペース内での企業の価値が、実際には何であるのかを理解しつつある(そして市場の無数のBNPLスタートアップにとって、それはビッグニュースだ)。

しかし私が休暇中に、ゴールドマンサックスが公開BNPL企業であるGreenSky(グリーンスカイ)を買収することを決定していた(それもこれもマイケルのせいなのだが)。つまり、この取引に対する概算をすばやく行うことができるし、私たちの「BNPL評価武器庫」に最新の武器を加えることができるということだ。

私の友人であり同僚であり、かつては同窓生でもあったRyan Lawler(ライアン・ローラー)記者が、一読の価値があるゴールドマンとのインタビューを行っている。ゴールドマンによれば買収額は22.4億ドル(約2463億円)で、投資家がGreekSkyのこれまでの株価に対する潜在的なプレミアム価値を理解したために、価値がその後劇的に高くなったのだという。

個人宅のリフォームに焦点を当てたGreenSkyのBNPLは、どのような規模だったのだろうか。同社の最新収益レポートは以下の通りだ。

取引額:第2四半期の取引額は15億ドル(約1649億円)で、2020年の第2四半期と比較して14%増加しました。当四半期に承認された与信枠は、会社の歴史の中では最も多く、これはリフォームサプライチェーンと労働市場の不足が緩和される中で、前向きな主要指標の1つです。

したがって、ランレートは60億ドル(約6597億円)で評価額が22.4億ドル(約2463億円)だったというわけだ。これは、GreenSkyが処理するGMV(流通取引総額)1ドル(約110円)あたり、約0.37ドル(約40.7円)の企業価値に相当する。これは私たちがこれまでに見たなかで最も低い数字だ。

念のため、私たちが最近見た他のものを示しておく。なお以下の数字は完璧に基準を揃えて比較しているわけではないということは頭の片隅に留め置いていて欲しい。これらは絶対値というよりも傾向を示した数字なのだ。

  • Affirm(アファーム):GMV1ドルあたりの価値は2.94ドル
  • AfterPay(アフターペイ):GMV1ドルあたりの価値は1.84ドル(Squareの価格)
  • Paidy(ペイディ):GMV1ドルあたりの価値は1.80ドル(PayPalの価格)
  • Klarna(クラマ):GMV1ドルあたりの価値は0.57ドル

GreenSkyがこのリストの一番下にあるのは、おそらく成長率が理由だろうか。14%というGMV成長率は、たとえより高めのテイクレートを確保していたとしも、会社に成長の余地をあまり与えない。特に投資家向け広報ページの一番上の行で“GREENSKY, INC. IS A GROWTH COMPANY.”(「GREENSKYは成長企業です」)と謳われているなら、成長率の先頭の数字が”1″であることは好ましくない。

収益の成長ならびに収益の質の軸に沿った、SaaS企業の収益の数字がバラけているのと同じように、ここでも同様のことが起こっている可能性がある。損失率、テイクレート、GMV成長率は、BNPL企業が評価を受けるための別々のベクトルだ。

関連記事:The value of software revenue may have finally stopped rising

BNPLスタートアップは、成長とローンの質の面で自分たちの最も正確な比較基準を見つけて、現在の市場価値に反映させることができるだろう。データがあるのは良いことだ。

マンモスの話題は?

私はこのニュースレターの大部分をMammoth Biosciences(マンモス・バイオサイエンス)とそのジュラシックパーク世界に向かう計画について議論するつもりだったが、TechCrunchの別記事に出し抜かれてしまった。私は同社に対する投資家の1人の Thomas Tull(トーマス・タル)氏にこの内容について話をきいたが、そのメモの内容についてはもう少し温めておくことにしよう。使えるタイミングがあるかどうかはわからないが。

最後にちょっとした調達ラウンドの話題

今週はDisrupt(ディスラプト)の週だ。そしてIPOサイクルが1件発生し、通常の資金調達ラウンドのリズムに遅れが生じている(そしてさまざまな連絡の遅れ。申し訳ない)。そこでお楽しみいただける軽い話題をお届けする。Postal(ポスタル)だ。

同社はマーケティングテックの分野で仕事をしていて、同社のウェブサイトが「最大の」B2B型の「ギフト市場」だと主張するものを運用している。もっと簡単に言えば、企業がパーソナライズされた物理的な商品をその顧客に送る手助けをする会社だ。Postalはそれが非常に高いROIを持つという。

ところでやや皮肉な話だが、ここで少し告白をしておかなければならない。Postalの主要な投資家はMayfieldとOMERSであることが分かったが、この2社は、私の前の雇用主(Crunchbase[クランチベース])の、シリーズBとCのラウンドをそれぞれ主導した会社なのだ。だが、もし私のCrunchbaseとの関係から何らかの影響が及ぶ会社については書かないとしてしまったら、私は市場の広すぎる範囲を書くことができなくなってしまう。ともあれ必要なときにはこのことに触れ続ける。

さて、PostalはSendoso(センドソー)とやや似た分野で事業を行っているが、私の理解では、Sendosoは、顧客中心への贈り物よりも従業員への贈り物をより多く扱っている。どちらも成長し続ければ、やがて直接競争することになるだろう。Sendosoは先週初めに1億ドル(約110億円)を調達したが、もちろんPostalがそうしたからだ。

この分野の他のプレイヤーとして目立つのは、Reachdesk(リーチデスク)とAlyce(アリス、2021年初めに3000万ドル[約33億円]を調達した)である。パーソナライズされた物理的な商品を提供するための技術を構築するビジネスはかなり大規模であることがわかった (もしお好きなら、ここでNFTジョークをどうぞ)。

PitchBook(ピッチブック)は、Sendosoの新しい評価額を(ポストマネーで)6億4000万ドル(約703億7000万円)、Alyceを(ポストマネーで)1億3500万ドル(約148億4000万円)と判定している。Reachdesk(リーチデスク)とPostal.ioの現在の評価額は判明しなかった。

さて今日はこの辺で。Disruptでお会いしよう!Extra Crunchのステージに頻繁に登場する私を見かけるかもしれない。

画像クレジット:Nigel Sussman

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(文: Alex Wilhelm、翻訳:sako)

オープンバンキングを利用して信用度の低い消費者にローンを提供するKoyo

オープンバンキングを利用して、信用度の低い人にもローンを提供するフィンテックスタートアップのKoyo(コーヨー)は、Force Over Mass(フォース・オーバー・マス)が主導したデット(借入)とエクイティ(増資)の両方によるシリーズA資金調達ラウンドを5000万ドル(約55億円)でクローズした。このラウンドには既存投資家のForward Partners(フォワード・パートナーズ)、Frontline Ventures(フロントライン・ベンチャーズ)、Seedcamp(シードキャンプ)の他、新規投資家としてForce Over Massをはじめ、GoCardless(ゴーカードレス)の創業者でNested(ネステッド)の共同創業者であるMatt Robinson(マット・ロビンソン)氏や、銀行や金融業界のエンジェル投資家たちが参加した。同社は2019年に行われた前回の資金調達で、490万ドル(約5億4000万円)を調達している。新型コロナウイルス感染流行期間中に、多くの分野の人々が借金を重ねているが、通常は主要なローン会社に断られるような、この下層の消費者から、Koyoは利益を得ているようだ。

関連記事:オープンバンキングでローンの新分野を開拓するKoyoが約5億円を調達

このスタートアップ企業は、消費者向け融資のリスクを査定する際に、信用機関のスコアではなく、オープンバンキングのデータ(銀行取引データ)を使用しているという。言い換えれば、信用機関の評価ではなく、顧客が日々どのようにお金を使っているかを調べるということだ。このアイデアは、通常のサービスが十分に受けられない市場、つまり「シンファイル(thin file)」(クレジットヒストリーが短い、またはまったくない)とか「ニアプライム(near prime)」と呼ばれる顧客に、魅力的な金利と安価な借り入れを提供する。ニアプライムの市場は、英国では1300万人から1500万人に相当する。

Koyoの創業者であり、ロンドンのFrontline Ventures(フロントライン・ベンチャーズ)やベルリンのCavalry Ventures(カバルリー・ベンチャーズ)でVCを務めた経験をもつThomas Olszewski(トーマス・オルショウスキ)氏は、声明で次のように述べている。

新型コロナウイルスの世界的な感染流行が起こった頃に事業を開始したKoyoは、オープンバンキングのデータを革新的に活用することで、より良いリスク判断ができることを証明し、最終的には英国が直面した最も厳しい経済状況の中で事業を成長させることができました。伝統的な金融機関の多くが急速に融資を縮小した時期に、英国の多くの人々に競争力のある金利でクレジットの利用を提供し続けてきたことを、私は誇りに思います。

Force Over MassのパートナーであるFilip Coen(フィリップ・コペン)氏は、次のように述べている。「私たちは、変革をもたらす技術と強力なビジネスモデルを兼ね備えた企業に投資していますが、Koyoはその両方の部門で強くインデックスされました。Koyoは創業から1年半の間に一級品の基盤を築き上げており、私たちはその将来に関われることに興奮しています」。

画像クレジット:Koyo Loans team

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(文:Mike Butcher、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

送金アプリ「pring」の法人向けサービスが請求書自動化サービス「invox」とAPI連携し24時間振り込み可能に

送金アプリ「pring」の法人向けサービスが請求書自動化サービス「invox」とAPI連携し24時間振り込み可能に

「お金コミュニケーションアプリ」をコンセプトにチャット機能付き送金アプリ「pring」(プリン。Android版iOS版)を展開するpringは9月13日、請求書自動化サービス「invox」(インボックス)運営元のDeepworkと業務提携を結んだと発表した。法人から24時間365日振込ができるサービス「pring法人送金」とinvoxとのAPI連携を10月1日から開始する。

invoxは、電子化された請求書をデータで受領する場合は自動取り込み、紙の場合は取引先からどんな形式の請求書が届いても「99.9%正確に」振込データ、仕訳データ、請求データを生成し、経理の支払いや計上の業務を自動化するというクラウドサービス。2021年3月18日にサービス開始1周年を迎え、8月に導入企業数が900社を突破した。

API連携は10月1日から実施され、invoxを利用する法人は、請求書の受け取りから支払いまでがシームレスに行えるようになる。これにより、支払い業務の工数が大幅に削減され、支払いデータの作成、作成したファイルのアップロードは人を介さず行われるため、ミスや不正のリスクを低減できるとのことだ。

 

BNPLが続々と

スタートアップとマーケットの週刊ニュースレター「The TechCrunch Exchange」へようこそ。

みなさんこんにちは。私はAnna(アナ)。今現在、当然の権利である短い休暇を楽しんでいるAlex(アレックス)記者の代わりに今回の記事をお届けする。The Exchangeも1週間お休みしたが、ニュースは止まることはない、では始めよう。

先買い後払い(BNPL、Buy Now, Pay Later)スペースは、フィンテックの中でもっともホットな業界の1つだ。少なくとも2020年8月にSquare(スクエア)がオーストラリアのAfterpay(アフターペイ)を買収するために、驚異的な290億ドル(約3兆1900億円)を費やすと発表して以来そうなったということができるだろう。しかし、今週はその状況に本当に火がついて、報道価値のあるBNPL関連の発表が続々と行われた。詳細を見てみよう。

最大のニュースは間違いなくPayPal(ペイパル)が日本のPaidy(ペイディ)を27億ドル(約3000億円)で買収するという決定だったが、Amazon(アマゾン)がMaxLevchin(マックス・レブチン)氏のAffirm(アファーム)との契約を結んだこともも大きな動きだった。米国を拠点とするAmazonの買い物客が50ドル(約5500円)以上の購入で後払いが可能になるこの機能は、BNPLが主流になりつつあることを示す明確な兆候ではないだろうか。

関連記事:米PayPalが日本のペイディを3000億円で買収、アジアで「BNPL」後払い市場に参入

そして、それは世界をリードする電子商取引市場(eコマース)のほんのひと握りのプレイヤーだけに限った話ではない。最近のラウンドに反映されているように、世界中のBNPLスタートアップが成長しているのだ。例えばヨーロッパに焦点を当てたScalapay(スカラペイ)は7億ドル(約769億円)の評価額で1億5500万ドル(約170億3000万円)を調達したが、一方コロンビアのAddi(アディ)はシリーズBを7500万ドル(約82億4000万円)拡大して合計1億4000万ドル(約153億9000万円)にしたことを公表した。

AddiのMary Ann Azevedo(メアリー・アン・アゼベド)氏はTechCrunchに対して「いまやBNPLはどこにでもあります。ラテンアメリカも例外ではありません」と書いてきた。だが、これは同じモデルをコピーアンドペーストしたものではない。市場が異なればニーズも異なり、重要な内容の調整につながる。その中で主なものは?BNPLは必ずしもeコマースと同義ではないということだ。

実際のところ、Addiのパートナーには実店舗も含まれている。これは、eコマースは急速に成長しているものの米国と同じレベルにはまだ達しておらず、それでも分割払いはすでに行われている市場では理解できる現象だ。しかしそれはまた、eコマースや小売を超えたBNPL自身の自然な拡大としても起こっている。

サンフランシスコを拠点とするスタートアップのWisetack(ワイズタック)は、この流れの良い例だ。同社はHVAC(空調システム)の修理から配管までをカバーする訪問型ホームサービス企業たちに、BNPLサービスを提供している。Wisetackはこの非常に断片化された業界に対して、業界特化型SaaSプロバイダーのHousecall Pro(ハウスコールプロ)やJobber(ジョバー)などと組んでプロを取り込むことで、巧みにアプローチしている。ああ、それから同社は4500万ドル(約49億5000万円)を調達したばかりだ

小売を超えて拡大するBNPLに特に見られがちなのは、より大きな支払いに広がっているということだ。例えばWisetackのCEOであるBobby Tzekin(ボビー・ツェキン)氏によると、サービスベースの企業に対する購入価格は平均4000ドル(約44万円)から5000ドル(約55万円)になるという。BNPL企業にとってはエキサイティングな話だ……だがその一方で、この新しいセグメントをすでに調査中の規制当局からの監視が、強化される可能性もある。

BNPLは無利子かつクレジットカード決済の代替手段として捉えられているが、公的機関や消費者保護団体は、顧客による過剰支出やリスクの過小評価を助長する可能性があるとの懸念を表明している。

この懸念は英国EUでの規制の強化につながり、そのことはBNPL大手Klarnaの(クラーナ)の「あり得るが差し迫っていない」IPOに影を落とす可能性がある。CrunchbaseによればKlarnaはこれまでに37億ドル(約4066億円)を調達している。同社がAffirmの跡を追って公開することは論理的だが、タイミングは重要だ。

関連記事:後払い販売(Buy-Now-Pay-Later)が英国で規制対象に

非常に多くの資金がこのセクターに流れ込み、統合もすでに行われているので、注目し続けておけば間違いなくおもしろいだろう。

Factorial、WaveそしてSPAC

The Exchangeは今週休止していたものの、TechCrunchとExtra Crunchで消化すべき話題はたくさんあった。以下に私の注意を最も引いたものを並べる。

Factorial(ファクトリアル)とSMB(中小企業)への賭け:スペインのHRスタートアップであるFactorialは、5億3000万ドル(約582億円)の評価額の下で、シリーズBラウンド8000万ドル(約87億9000万円)を調達した。これはそれ自体注目に値するが、Tiger Globalが主導していることでも注目に値する。しかし、私のお気に入りの部分は、SMBにサービスを提供することでお金が得られることに、スポットライトを当てていることだ。

ちょっと宣伝:これは私が数週間前に書いたExpensifyEC-1での重要なポイントでもあった。

TechCrunchのIngrid Lunden(イングリッド・ランドン)記者が指摘したように、Factorialの台頭は「エンタープライズテクノロジーの世界が、ようやく大規模な組織向けに構築されたツールを小規模な顧客向けにライトサイズ(適切なサイズ)で適用することに注意を向け始めた、はるかに長期的で大きなトレンドの一部」なのだ。

通常、ライトサイジングとは、製品の不必要な複雑さを回避することを意味する。多くの場合、既存のエンタープライズ相手の企業ではなく、それのみに焦点を当てている企業が得意としている。そして、それは単なる一時的な流行りではない。各企業がこの先もずっと集中していくことができるセグメントとして理解されているのだ。

資金調達の波:先週の初め、アフリカはこれまでで最大のシリーズAを記録した。モバイルマネーのスタートアップWave(ウェーブ)の2億ドル(約220億円)のラウンドが行われた。評価額は17億ドル(約1868億円)で、今回の調達は、米国とセネガルに拠点を置く同社を、アフリカのフランス語圏における初のユニコーンに変えた。

このマイルストーンに最初に到達したのがフィンテック企業だったことは当然のことだと、Tage Kene-Okafor(タゲ・ケネ=オカフォー)氏はいう。アフリカ大陸ではフィンテックがVC資金の大部分をずっと引き付けてきたからだ。アフリカのスタートアップシーンに関するニュースレターであるSubstack(サブスタック)のThe Big Deal(ザ・ビッグ・ディール)によれば、2021年前半にアフリカのスタートアップに流入したベンチャーキャピタルの48%がフィンテックに投資されている。今回の巨大なラウンドによって、年次集計をチェックするときには事態がさらに偏ったものになっている可能性がある。

より高いレベルから見た場合、これはアフリカのテックセクターが2021年に記録を更新するだろうという予想を裏付けているように思える。これは特に厳しかった2020年以降、より一般的には資金不足の文脈から眺めると望ましい状況だ。

関連記事:2021年のアフリカへのVC投資は史上最高額を記録するとの予測

SPACすべきか、SPACせざるべきか:ブルームバーグによると、Traveloka(トラベローカ)はPeter Thiel(ピーター・ティール)氏のBridgetown Holdings(ブリッジタウン・ホールディングス)とのSPACを介して公開する計画を撤回している公開するかしないかで迷っているのではない:旅行業界ニュースサイトSkift(スキフト)で、Travelokaの広報担当者は公開を「さらなる事業を成長させる願望を抱くカテゴリリーダーとしてのTravelokaにとって、自然な進化です」と説明している。

インドネシアの旅行大手が考慮しているのはその公開へ至る道筋だ。情報筋によれば、SPACが「支持されなくなった」ために、同社は代わりに伝統的な米国のIPOを選択する可能性が高いとブルームバーグに語っている。これらはブルームバーグによる表現で、私の意見ではない。私はそう言い切るにはまだ少し早いかもしれないと思っている。

確かにこの2月によく見かけた「SPAC投資で常に勝つのは、売り手だ、一般投資家はそうでもない」という批判的見出しの中で、規制強化が迫っているのは間違いない。

それにもかかわらず、私の同僚であるRyan Lawler(ライアン・ローラー)記者が、先週大いなる反例を持ち込んできた。Better.com(ベター・ドット・コム)が、SPACのAurora Acquisition Corp(オーロラ・アクイジション・コープ)と「約77億ドル(約8462億円)の投資後評価額」で合併する予定だ。両者のCEOによれば、従来型のIPOは、簡単に業種を分類できる企業にとっては理に適っているという。しかしSPACは、ライアン記者が書くように「他の金融サービス会社と比べて、単に住宅ローンの貸し手と見なされるよりも大きな野心を持つ」Better.comのような会社に適しているかもしれない。

これは例外的なものだろうか?おそらくはそうだろう。しかしそれはまた、SPACがまだプレイするカードを持っているというサインかもしれない。

では今回はここまで。The Exchangeは月曜日から通常のスケジュールに戻る予定だ。

画像クレジット:Nigel Sussman

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(文: Anna Heim、翻訳:sako)

Mintの元社長がギグワーカーに金融商品を提供するLeanに約5億円を出資

ギグワーカーや個人事業主は、金融商品に対するニーズがサラリーマンの人たちとは異なる。

Lean(リーン)」の創業者であるTilak Joshi(ティラック・ジョシ)氏は、Mint(ミント)の代表を務めた後、American Express(アメリカン・エクスプレス)やPayPal(ペイパル)でプロダクトの責任者を務めた経験から、この課題を痛感していた。

近年、米国では個人の労働者が増えてきているが、従来の金融機関はそれに「対応できていない」とジョシ氏はいう。

「個人労働者の70%はその日暮らしのような生活をしており、30%は十分な保険に加入していません。個人労働者は、まもなく米国の労働力の大半を占めるようになり、既存のやりとり、プラットフォーム、機関は、彼らをサポートするために急速に進化する必要があります」と彼はいう。

2020年にMintを退社したジョシ氏は、Eden Kfir(エデン・クフィール)氏、Ramki Venkatachalam(ラムキ・ヴェンカタチャラム)氏と共同でLeanを立ち上げ、ギグワーカーのニーズに合わせて「カスタムビルド」された金融商品へのアクセスを提供するプラットフォームで彼らをサポートしようとしている。そして米国時間9月8日、Inspired Capital(インスパイアード・キャピタル)が主導し、Atelier Ventures(アトリエ・ベンチャーズ)、Oceans Ventures(オーシャンズ・ベンチャーズ)、Acequia Capital(アセキア・キャピタル)が参加したシードラウンドで450万ドル(約4億9400万円)を調達したことを発表した。

このラウンドには、DoorDash(ドアダッシュ)の幹部であるGokul Rajaram(ゴクル・ラジャラム)氏、Instacart(インスタカート)の共同創業者であるMax Mullen(マックス・ミューレン)氏、Uber(ウーバー)の元CPOであるManik Gupta(マニック・グプタ)氏、Postmates(ポストメイツ)の元COOであるVivek Patel(ヴィヴェク・パテル)氏、Bird(バード)のCPOであるRyan Fujiu(ライアン・フジウ)氏など、マーケットプレイス業界の多くの企業が資金を提供している。今回の資金調達により、Leanのこれまでの調達額は約600万ドル(約6億5900万円)となった。他にも、Charlie Songhurst(チャーリー・ソンガースト)氏、Lightspeed Venture Partners(ライトスピード・ベンチャー・パートナーズ)(Stripeの元幹部)のパートナーであるJustin Overdorff(ジャスティン・オーバードルフ)氏、Coinbase(コインベース)のMarc Bhargava(マーク・バルガヴァ)氏、ANGI Homeservices(ANGIホームサービス)、Coinbase、Plaid(プレイド)の幹部など、注目を集めているエンジェル投資家が同社を支援している。

「個人労働者は、米国のどこよりも厳しい経済状況に置かれています。彼らが経済的な問題を解決するためにすることは、さまざまなギグマーケットプレイスで働くことです。そして、マーケットプレイスが労働者を引き留めてインセンティブを支払おうとすると、労働者はこれをうまく利用する方法を見つけ出します。すると、マーケットプレイスは頼りになる強力な労働力を持つという安定性がなくなり、労働者側も窮地に立たされるという、双方にとって非効率な結果となってしまいます」とジョシ氏はTechCrunchに語った。

画像クレジット:Lean

Leanは、マーケットプレイスと直接提携して金融商品や福利厚生を提供することで、個人労働者を支援することに狙いをつけている。その目的は、ギグワーカーに「コストのかからない資金」「即時支払い」、そして住宅ローンや「低コストから無コストの借り入れ」、HSA(米国の医療用貯蓄口座)や保険などの金融商品の選択肢を提供することで、各マーケットプレイスが労働者の獲得と維持ができるよう貢献することにある。

Leanは、ライドハイリング(ライドシェア)、宅配、医療、建設などの業界で働く1099(個人事業主)またはW2の労働者(会社で働く従業員)を雇用するあらゆる規模のマーケットプレイスと連携している。ジョシ氏は、Leanが労働者の獲得と定着を促進するだけでなく、マーケットプレイスが労働者の手数料からではなく、金融商品やインフラを通じて収益を得る扉を「開く」ポテンシャルをもっていると述べている。

Leanのプラットフォームは、どのマーケットプレイスにも2週間以内で統合できるように設計されているとジョシ氏はいう。同氏によると、Leanはマーケットプレイスとのパートナーシップを通じて、今後数カ月の間に国内の「数十万人」のギグ・ワーカーにサービスを提供する予定だそうだ。

マーケットプレイスにはコストはかからず、労働者側にもコストはかからない。Leanは、プラットフォームを介した金銭の移動にともなう手数料によって収益を得ることができると、ジョシ氏は述べている。現在、同社は6つのマーケットプレイスと取引をしており、さらにもう6つのマーケットプレイスとも取引の話が進行中だ。

同社は、今回の資金調達により、提供サービスを拡大し、マーケットプレイス間の取引拡大を進めていく予定だ。

Inspired CapitalのパートナーであるMark Batsiyan(マーク・バトシヤン)氏は、Leanに惹かれた理由として、Leanのチーム、市場のタイミング、アプローチを挙げている。

「ギグワーカーへのサービス向上には市場で大きな追い風が吹いており、マーケットプレイスは労働者を惹きつけ、維持するための方法を模索しています。また、ティラック(ジョシ)氏はもInspiredの私たちと同じような結論にいたりました。それは、マーケットプレイスがこれらのソリューションを自分たちで構築することはないだろうということです。利益をすぐに使えるソリューションにするためには、Leanのような仲介者が必要です」。と彼はメールで語っている。

バトシヤン氏は、LeanのB2B2Cアプローチがユニークであると考えている。

「プラットフォームとしてのLeanは、そのパートナーシップを活用して、末端労働者へのより効率的な流通を実現することができます」と述べている。

2021年初め、Mintの初代プロダクトマネージャーは、消費者の金融生活の「計画と管理」を支援することを目的としたサブスクリプション型プラットフォーム「Monarch(モナーク)」のために、480万ドル(約5億2700万円)のシード資金を調達した。

関連記事:消費者が家計の「管理と計画」を行うためのサブスク式の財務プラットフォーム「Monarch」が5.3億円調達

画像クレジット:Nattanitphoto / Shutterstock

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(文:Mary Ann Azevedo、翻訳:Akihito Mizukoshi)

対面式サービス業にBNPL式後払いを導入するWisetackが約49億円調達

「Buy Now, Pay Later(BNPL、今買って後払い)」方式は、アフリカ、ラテンアメリカ、アジアなど、世界各地でさまざまな企業が展開し、グローバルに成長している。

米国では、Affirm(アファーム)とKlarna(クラーナ)が大きなプレイヤーであり、Square(スクエア)は最近Afterpay(アフターペイ)の買収を発表した。

関連記事:Squareが3.19兆円で「今買って、後で支払う」後払いサービス大手Afterpayを買収

従来のBNPLは、消費者がオンラインや店頭で分割払いをする機会を提供するものだった。しかし、国内でも、分割払いの機能は、eコマースや小売業界以外にも広がっている。

Wisetack(ワイズタック)は、このBNPLサービスを対面式のサービスに導入するスタートアップだ。Wisetackは、Insight Partners(インサイト・パートナーズ)が率いるシリーズB資金調達ラウンドで4500万ドル(約49億3900万円)を調達した。

この資金調達には、既存の支援者であるGreylock Partners(グレイロック・パートナーズ)とBain Capital Ventures(ベイン・キャピタル・ベンチャーズ)も参加し、2018年の創業以来、同社の調達総額は6400万ドル(約70億2500万円)に達した。今回のラウンドは、WisetackがシードラウンドとシリーズAラウンドで1900万ドル(約20億8500万円)を調達したと発表してからわずか6ヵ月半後のことで、いずれもGreylockが主導したものだ。

サンフランシスコを拠点とするこのスタートアップは、ひと言でいえば、対面式のビジネスが消費者に融資を提供するのを支援している。共同設立者でCEOのBobby Tzekin(ボビー・ツェキン)氏によると、Wisetackは、企業がすでに構築して業務に利用しているソフトウェア・プラットフォームに、実際に融資の選択肢を組み込んでいる点で、他社にはないサービスだという。

その対象は、HVAC(冷暖房空調設備)や配管工など、サービスを提供する企業だ。例えば、エアコンが故障して交換に数千ドル(数十万円)かかる場合でも、業者がWistackのAPIをサイトに組み込んでいれば、消費者は分割払いのオプションを利用することができる。

これまでWisetackは、Housecall Pro(ハウスコール・プロ)やJobber(ジョバー)などの垂直型SaaSビジネスと提携することで急成長を遂げてきた。これらの企業は、それぞれの顧客に融資を提供しており、その中には何万人ものホームサービスのプロが含まれている。

Wisetackは、明らかにギャップを埋めているように見える。2021年の時点で、2020年と比較して売上高と融資額が「10倍以上」に成長している。そして、ツェキン氏によれば、何千もの加盟店と提携しているという。

同氏は「明らかに大きなニーズがある」と感じたため、2018年に仕事を辞めてWisetackを立ち上げ、Liz O’Donnell(リズ・オドネル)氏とMykola Klymenko(ミコラ・クライメンコ、Varo Bankの持ち株会社であるVaroMoneyの共同設立者兼CTOだった)氏とチームを組んだ。

Wisetackは、新たな資本を得て、自動車修理、選択的医療、歯科、獣医、法律サービスなど、サービスをベースとした他の分野にも進出する予定だ。また、今後1年間で現在40名のチームを倍増させる予定もある。

ツェキン氏は、この機会は非常に大きいと考えている。

サービス業の多くは中小企業であり、これまでは大手eコマース企業に比べてサービスを提供するのが困難だった。ハーバード大学のレポートによると、米国人は住宅のリフォームや修理だけで、年間4000億ドル(約43兆9100億円)以上を費やしている。また、米国の自動車修理・メンテナンスサービス市場は、2020年の2,010億ドル(約22兆650億円)から、2026年には2,500億ドル(約27兆4400億円)に達すると予測されている。

また、ツェキン氏によると、BNPLのオンライン取引の平均は数百ドル(数万円)だが、サービスを提供する企業への購入は平均で4000〜5000ドル(約43万9000〜54万8000円)近くになるそうだ。

ツェキン氏は、クレジットカードで購入するよりも「今買って、後で払う」方が魅力的だと考えている。1つは、消費者が3カ月から60カ月までの分割払いを選択できることだ。

「時間をかけて費用を分散することができるため、お金を出してより高品質な機器を購入することできるようになることが多いのです」と同氏は語る。

また、クレジットカードで支払う場合は、金利や返済期間によって金額が変わることがある一方、この方式だと購入の時点で長期的な支払い金額がはっきりしていると、ツェキン氏は付け加えた。

同社は、加盟店には処理手数料を、消費者には金利を課すことで収益を上げている。金利は0%から29%まで「信用度の高さ」によって変わると同氏はいう。

「しかし、クレジットカードは複利で請求されるのに対し、我々は単利で請求します」と付け加えた。

Insight Partners(インサイト・パートナーズ)のプリンシパルであるRebecca Liu-Doyle(レベッカ・リュー・ドイル)氏は、Wisetackを「業界の中でも際立った存在」と評している。

「Wisetackは、eコマースよりも複雑でサービスが行き届いていないようなユースケースに対応することを目的に構築され、組み込み型BNPLという点で差別化されたプラットフォームを持っている」とメールで語っている。

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画像クレジット:

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(文:Mary Ann Azevedo、翻訳:Akihito Mizukoshi)

家賃支払いを代行、借り手に支払いの柔軟性をもたらすJettyが約25億円調達

家賃を支払う際に賃借人に柔軟性を与えることを目的としたフィンテック企業であるJetty(ジェッティー)は、Citi(シティ)とFlourish Ventures(フローリッシュ・ベンチャーズ)が共同で行う資金調達ラウンドで2300万ドル(約25億3700万円)を調達した。

今回の資金調達により、Jettyの2016年の創業以来の調達額は7800万ドル(約86億500万円)となった。今回の成長ラウンドに参加した他の投資家には、Credit Ease(クレジット・イーズ)とK5が含まれる。これまでの支援者には、Farmers Insurance Group(ファーマーズ・インシュアランス・グループ)、Khosla(コスラ)、Ribbit Capital(リビット・キャピタル)などがいる。

ニューヨークを拠点とする従業員100名のこのスタートアップは、消費者がオンラインや店頭で利用する機会が増えている「今買って、後で払う」(BNPL)モデルに似たサービスを提供することで、賃借人が家賃を滞納しないようにする方法を考え出した。

簡単にいうと、借り手は家賃の支払い期限が来たら家賃を支払うことができ、その月の24日までに、一括または分割でJettyに借りたお金を返すことができるというものだ。その際、金利や遅延金は発生せず、借り手のリスクプロファイルに応じて15〜25ドル(約1650〜2750円)の月額利用料を支払うことになる。借り手が決められた期間内に返済できなかった場合、翌月の借り増しはできない仕組みになっている。

この月額料金は、家賃が期限内に支払われなかった場合に発生する可能性のある遅延金よりも「はるかに低い」と、共同創業者兼CEOのMike Rudoy(マイク・ルドイ)氏は語っている。

「平均的な賃借人の給料の約50%は家賃に充てられています。つまり、家賃は賃借人にとって最大の支出なのです。だからこそ、ペナルティを受けないように、期日までにお金を用意できるような柔軟性を提供する、何らかの金融サービス商品があると期待されているのです」と彼はいう。

この商品は、実際のBNPLというよりも、従来のBNPLの従兄弟のようなものだと彼は語っている。

ルドイ氏は「当社が賃借人に代わって月初に家賃を全額支払うことで、不動産管理者は必要なときに必要な資金を得ることができます。賃借人は24日間、自分のニーズに合ったスケジュールで返済することができます」と説明してくれた。

Jetty Rentを立ち上げるために、同社は大手不動産投資・開発・管理会社であるCortland(コートランド)と提携し、複数の物件の居住者を対象にベータ版を提供してきた。

そして今回、一般向けに提供を開始したということだ。Jetty Rentは、同社のプラットフォームの中で最も新しい製品で「低コスト」の賃借人保険や敷金返還サービスも提供している。

「この会社のミッションは、賃貸住宅をより手頃で柔軟なものにすることです。また、当社は金融サービスのプラットフォームであり、当社が提供するすべての製品は、不動産管理者と賃借人の両方に価値を提供することを目的としています」とルドイ氏はいう。

Jettyは、今回の動きにより、Insurtech(インシュアテック)から金賃業者へと進化しているとルドイ氏はいう。同社は、Cross River Bank(クロス・リバー銀行)を通じてローンを提供している。

ルドイ氏はTechCrunchに対し「Jettyはこれまでインシュアテック企業と考えられてきましたが、私たちはこのビジネスにさらなる信用力と融資力をもたらすために取り組んでいます」と述べている。

ルドイ氏によると、同社が3つの商品すべてを不動産管理会社に提供していることが、同社の競争力の源泉になっているという。

「これは、同じ空間や問題をターゲットにしている他の金融サービス企業とは異なるものです。敷金の代替商品とフレキシブルな家賃商品の両方を同じ屋根の下に持っているのは、当社だけです。そのため、不動産管理者にとっては、統合や導入の観点からも当社を選択することが非常に容易になります。またそれは、賃借人にとっては、複数の異なるサービスを目にしなくてすむということでもあります」と彼はTechCrunchに語っている。

賃借人はすべての製品の代金を支払い、物件管理者は製品の展開におけるパートナーとなる。

現在、同社は全国で220万戸以上の賃貸住宅を運営する不動産オーナーや管理者と契約している。同社のマーケティング担当副社長のAlex Vlasto(アレックス・ブラスト)氏によると、2017年に不動産パートナーネットワークの構築を開始して以来、Jettyは契約戸数が前年比で平均193%の伸びを示しているという。Cortlandの他にも、AMLI Residential(AMLIレジデンシャル)などとも提携している。

Flourish VenturesのマネージングパートナーであるEmmalyn Shaw(エマリン・ショウ)氏は、米国人の70%以上がその日暮らしな生活をしていると指摘している。

「安定した住宅は、彼らが経済的な安定を得るための重要な要素です」と彼女はいう。

ショー氏は「単一のソリューションに留まらず、賃貸保険や敷金の代替、さらには家賃の柔軟性など、豊富で差別化された金融サービスを提供しているのはJettyだけです」と付け加えた。

「独自の消費者インサイト、差別化された価格設定、消費者のロイヤルティ向上により、Jettyは大きな競争優位性を獲得しています。さらに、Cortlandのような一流の不動産管理会社を通じた消費者へのアプローチは、他に類を見ないものです」とショー氏はメールで述べている。

最近になって、賃借人の生活を楽にするための新しい技術を考え出した他のスタートアップも資金を調達している。アパートを「インタラクティブなコミュニティ」に変えることを目指しているスタートアップSugar(シュガー)は、最近250万ドル(約2億7500万円)のシード資金を調達した。また、自動物件検査プラットフォームを構築しているスタートアップのRentCheck(レントチェック)も、先日260万ドル(約2億8600万円)のシードマネーを調達した。

画像クレジット:Indysystem / Getty Images

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(文:Mary Ann Azevedo、翻訳:Dragonfly)

米PayPalが日本のペイディを3000億円で買収、アジアで「BNPL」後払い市場に参入

米国のフィンテック企業であるPayPal Holdings(ペイパル・ホールディングス)は、日本でのビジネスを強化するために、日本の後払い(BNPL、Buy Now, Pay Later)サービスプラットフォームであるPaidy(ペイディ)を、約27億ドル(3000億円)の現金で買収することを発表した。

規制当局の承認を含む取引完了は、2021年第4四半期を予定している。

買収後、日本を拠点とするペイディは既存の事業を継続し、ブランドを維持するとともに、Paidyの杉江陸社長兼CEOと創業者兼代表取締役会長であるRussel Cummer(ラッセル・カマー)氏は引き続きリーダーとして同社に残る。

日本は世界3位のEC市場であり、今回の買収は、クレジットカードに代わる後払い決済サービスの提供という分野で、日本および地域でのシェア拡大を目指すPayPalにとって重要な動きだ。

PayPalは長年にわたり、決済カードと仲良くやってきた。ユーザーは自分のカードの詳細をPayPalにアップロードし、PayPalをデジタルウォレットのように使ってオンラインでの支払いを管理することができる。しかし、PayPalは実際には、PayPalアカウントへ入金し、そこから支払いを行う決済プラットフォームとしてスタートした。その意味でPaidyは、PayPalのファーストパーティ路線を強化し、カードネットワークを介さず、独自のインフラでお金の流れを「所有する」方法を提供するといえる。

ペイディは基本的に、日本の消費者と加盟店の間の仲介を行う双方向決済サービスだ。機械学習を利用して、特定の購買に関連する消費者の信用力を判断し、数秒でそれらの取引を引き受け、加盟店への支払いを保証する。消費者はPaidyに商品代金を後払いする。

ペイディのプラットフォームは「3回あと払い」と名付けられた月賦払いサービスを提供しており、消費者はオンラインで購入した複数の商品の代金を、毎月、コンビニエンスストアや銀行振込でまとめて支払うことができる。

Paypalの日本担当副社長であるPeter Kenevan(ピーター・ケネヴァン)氏はこう述べている。「ペイディは、日本市場に合わせたBNPLソリューションの先駆者であり、消費者とマーチャントの両サイドで大規模なプラットフォームを構築し、業界リーダーへと急成長しました」。

ペイディの登録ユーザー数は600万人を超えており、今後はPayPalをはじめとするデジタル・QRウォレットを「どこでもペイディ(Paidy Link)」に統合し、オンラインとオフラインのマーチャントをさらに繋げていく計画だ。

同社は2021年4月、デジタルウォレットとペイディアカウントを連携させることができる「どこでもペイディ」を提供開始した。PayPalは「どこでもペイディ」と統合した最初のデジタルウォレットパートナーだった。

杉江氏は声明の中でこう述べた。「PayPalは『どこでもペイディ』の創設パートナーであり、さらなる価値を生み出すために共に歩んでいくことを楽しみにしています」。

「日本は当社のこれまでの成長に貢献してきた活気に満ちた環境であり、当社チームの努力と可能性がグローバルリーダーに認められたことを光栄に思います。Paypalと協力することにより『買い物の手間を省く』という当社のミッション実現にさらに近づくことができるでしょう」とカマー氏は述べている。

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画像クレジット:Yichuan Cao/ NurPhoto / Getty Images

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(文:Kate Park、翻訳:Aya Nakazato)

「財務のためのIFTTT」、中小企業向け財務自動化プラットフォームを手がけるAurelia

財務自動化プラットフォームのAurelia(アウレリア)は、Blossom Capital(ブロッサム・キャピタル)の主導で300万ドル(約3億3000万円)のシード資金を調達した。

自らを「財務のためのIFTTT(イフト)」と称するAureliaは、銀行口座と財務ツールの統合を望む中小企業を対象としている。キャッシュフローや税金などの管理を強化し、通常は手作業で行われる作業を、コードの知識がなくても自動化することができると、同社は述べている。

今回の投資ラウンドに参加したエンジェル投資家は、Checkout.com(チェックアウト・ドットコム)の創業者兼CEOであるGuillaume Pousaz(ギヨーム・ポサーズ)氏が自身の投資会社であるZinal Growth(ジナール・グロース)を通じて出資している他、GoCardless(ゴーカードレス)の元COO兼CROだったErez Mathan(エレズ・マサン)氏などが含まれる。

Aureliaは、Transferwise(トランスファーワイズ)の主要エンジニアの1人でだったSebastian Trif(セバスチャン・トリフ)氏と、Jasper August Toes(ジャスパー・オーガスト・トーズ)氏によって設立された。

「事業のすべてを把握しようとするフィンテック系アプリや銀行はたくさんありますが、多くの中小企業は自社の財務状況を新しい製品に移すことに乗り気ではありません」とトリフ氏はいう。

Blossom Capitalの創業者であるOphelia Brown(オフェリア・ブラウン)氏は、次のように述べている。「私たち自身が中小企業の経営者であるため、中小企業にとって財務や会計を管理することがいかに苦痛であり、困難であるかを身をもって知っています。適切なソリューションを何年も探していた私たちは、その場でAureliaに出資を決めました」。

トリフ氏は次のように付け加えた。「機能ごとに見ると、当社はXero(ゼロ)やQuickbooks(クイックブックス)などの会計ソフト上に搭載されているプラグインのパックと競合しています。また、Tide(タイド)、Revolut for Business(レボリュート・フォー・ビジネス)、Wise for Business(ワイズ・フォー・ビジネス)など、より機能が限定されたスマートな中小企業向け銀行業務ソリューションとも競合しています」。

Aureliaのベータ版プラットフォームは現在、エストニア、ルーマニア、ドイツ、英国で稼働中だ。

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(文:Mike Butcher、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

日本のチャレンジャーバンク目指すナッジが次世代型クレジットカード「Nudge」の一般受付を開始

日本のチャレンジャーバンク目指すナッジが次世代型クレジットカード「Nudge」の一般受付を開始

日本におけるチャレンジャーバンク(新規に銀行免許を取得し金融サービスを提供する企業)を目指すナッジは9月2日、「少額包括信用購入あっせん業者」の登録が完了し、第1弾サービスとなる次世代型クレジットカード「Nudge」(ナッジ)の一般受付を同日開始したと発表した。Android版およびiOS版アプリが公開されている。

登録少額包括信用購入あつせん業者とは、2020年6月改正・2021年4月施行の割賦販売法により新設された登録事業者のこと。極度額(きょくどがく)10万円以下の範囲内でクレジットカード発行などの包括信用購入あっせん業を営める事業者となっている。

事前・事後チェックによる過剰与信防止措置を前提に、従来の包括支払可能見込額調査に代わるビッグデータやAIなど、先端的な技術を活用した与信審査手法が認められている。「クレジットカード番号などの適切な管理」といったセキュリティ面に関しては、従来の信用購入あっせん業者との規制面での違いはない。

次世代型クレジットカード「Nudge」(ナッジ)

サービス第1弾のNudgeは、申し込みや発行手続き・各種問い合わせなどがスマホアプリで完結可能(無料で発行できるカードのデザインは3種類)。利用状況などアプリでリアルタイム管理が可能で、不正利用や使い過ぎを防止しできる機能も採用。プリペイドカードとは異なり事前の入金は不要で、都度チャージの手間や、利用時の残高確認・使い残しの心配もない。

またすべてのカードにIC機能を搭載しており、世界中のVisa加盟店で利用が可能。日本を含む世界約200の国・地域で展開されている「Visaのタッチ決済」もサポート。

利用金額の返済は月に1度の口座引き落としではなく、好きなタイミングでセブン銀行ATM(全国2万5000台以上)から実施可能で、引き落とし日の口座残高を心配する必要がないという。また、最短で決済の翌日から返済が可能。月の途中で利用枠が足りなくなっても、返済後即時に利用枠が回復する。

なおNudgeでは、Visaブランド対応や与信システム構築、クレジットカードの製造・発行に関してはクレディセゾンおよび凸版印刷、 TISとの協業により実現。ATMからの返済についてはセブン銀行との提携により実現している。また、eKYCはLiquidの最新ソリューションを活用しているという。

好きな「クラブ」を選び、好みのチームやアーティスト、クリエーターを応援

Nudge利用者は、Nudgeと提携する企業や団体が開設する「クラブ」を選択することで、好きなチームやアーティスト、クリエーターを応援できる。

また普段の買い物でNudgeカードで支払いを行うことで、クラブからの特典を受け取られる。特典は、主にクラブに関連した画像や動画・音声データなどで、将来的にはNFT(非代替性トークン)形式での提供も検討しているという。

サービス開始時点で開設予定となっているクラブは、約20クラブ。アスリート・スポーツチーム系では、「ブラウブリッツ秋田(サッカー)」「アースフレンズ東京Z(バスケットボール)」「岩手ビッグブルズ(バスケットボール)」「福島レッドホープス(野球)」「堀口恭司(総合格闘技)」「チームケンズ(トライアスロン)」など。またアーティスト・クリエーターでは、「MILIYAH Loveheart Club」がある。「D.D.マーケット」などのECサイト、「A-TOM」のような地方創生プロジェクトなども用意されている。日本のチャレンジャーバンク目指すナッジが次世代型クレジットカード「Nudge」の一般受付を開始

サービス開始以降に開設予定のクラブには、「ラスカル(キャラクター)」「ラグナドール(オンラインゲーム)」などがあるという。今後もクラブ開拓を進め、利用者と提携先(スポーツチームやアーティストなど)双方に新たな金融体験を提供することを目指すそうだ。

2020年2月設立のナッジは、「ひとりひとりのアクションで、未来の金融体験を創る」をミッションとし、チャレンジャーバンク事業を通じて、日本におけるフィナンシャルインクルージョン(金融包摂)を実現していくことを目指している。

インドのミレニアル世代に投資の機会を与える「Jar」に投資家が注目

インドでは何億人もの人たちが銀行口座を持っているが、金融商品に投資している人はごくわずかだ。

例えば投資信託や株式に投資しているの人は3000万人に満たない。近年いくつかのスタートアップが、ユーザー、特にミレニアル世代のユーザーが投資しやすくなる環境をつくっているが、それでも数字はあまり変わっていない。

そんな中、あるインドのスタートアップがこの課題に挑戦するソリューションを見つけたと信じてサービスを立ち上げ、すでに良い感触を掴んでいる。

モビリティのスタートアップであるBounceの元ディクター、Nishchay AG(ニシュチェイ・エージー)氏と、Marsplay(マーズプレイ、後にFoxyに売却)の共同ファウンダーであるMisbah Ashraf(ミスバー・アシュラフ)氏は、2021年初めにJar(ジャー)を設立した。

公開から3カ月の社名を冠したAndroidアプリを使って、ユーザーは最低1インドルピー(約1.5円)から貯蓄を始めることができる。

Jarのユーザーは複数の方法で投資が可能で、数秒で始められる。アプリは電子決済のPaytm(ペイティーエム)と組んで定期的支払いを設定できる(PhonePe[フォンペ]のサポートも開発中)。同社はUPI 2.0定期支払いをサポートした最初のスタートアップで、貯蓄額は1日あたり1~500インドルピー(約1.5〜753円)の間で設定できる。

Jarアプリは、ユーザーのテキストメッセージを見て、それぞれの取引に応じて微小な金額を貯蓄する。例えばユーザーがある取引で31ルピー(約46.7円)使うと、Jarアプリは金額を10の位に切り上げて(この場合40)差額の9ルピー(約13.6円)を貯める。ユーザーは自分でアプリを立ち上げて自由な金額を投資することもできる。

ユーザーが一定金額をJarに貯めると、アプリはそれをデジタルゴールド(金)に投資する。

同社が金投資を使うのは、南アジア市場の人々がこの資産クラスに絶大な信頼を置いているためだ。

インドの人々には金に魅せられる独特の気持ちがある。地方の農民から都市の労働階級まで、ほぼすべての人がこの黄色い金属を隠し持ち、結婚式で宝石を誇示する。

インドの世帯には推定2万5000トンの貴金属がしまい込まれており、その価値はこの国の名目GDPの約半分にあたる。インドのこうした金需要によって、この南アジアの国は金の世界最大級の輸入国になっている。

JarのAndroidアプリ(画像クレジット:Jar)

「もし、次の5億人に機関投資を勧めることを考えるなら、市場に存在するその他の手段の有効性について説明することが私たちの責務です」とニシュチェイ氏は言った。

「私たちはお客様が最も信頼している道具を提供します、それが金です」と彼はいう。スタートアップはいずれ他の投資方法もいくつか提供する計画だ。

ファウンダーの2人は数年前、MarsPlayとBounceが何かシナジーを起こせないか両者が探っていたときに出会った。彼らは連絡を取り続け、2020年数多くの会話の中で、どちらも投資についてよく知らなかったことに気づいた。

「点と点が繋がり始めたのはその時でした」とミスバー氏はいい、子ども時代の話を語った。「私はビハール州の小さな町、ビハール・シャリーフの出身です。子ども時代、家族は深刻な借金に苦しんでいて、それは誤った金銭判断と貯蓄のないことが原因でした」と彼は語った。

「2人とも、典型的中流家庭がどんな道をたどるのかを理解しました。この階級の人たちは過去に何の手段をもったこともありませんが、その願望には終わりがありません。このため、一度稼ぐようになった人は、すぐに全部使ってしまいます」とニシュチェイ氏は言った。

「市場には、この人たちがスタートを切るのを手助けする製品が必要です」と彼はいう。

米国市場でAcorn(エイコーン)とStash(スタッシュ)がやっていることに似たそのアイデアは、受け入れられ始めている。アプリはすでに約50万ダウンロードを数える、とファウンダーたちはいう。投資家も注目している。

9月1日水曜日、Jarは450万ドル(約5億円)の資金調達を終え、Arkam Ventures(アーカム・ベンチャーズ)、Trive Capital(トライブ・キャピタル)、WEH Ventures(WEHベンチャーズ)らの著名投資家の他、Kunal Shah(クナル・シャー)氏(CREDのファウンダー)、Shaan Puri(シャーン・プリ)氏(元Twitch)、Ali Moiz(アリ・モイズ)氏(Stonksのファンダー)、Howard Lindzon(ハワード・リンゾン)氏(Social Leverageのファウンダー)、Vivekananda Hallekere(ヴィヴェカナンダ・ハレケー)氏(Bounceのファンダー)、Alvin Tse(アルビン・ツェ)氏(Xiaomi)、およびKunal Khattar(クナル・カッター)氏(AdvantEdgeのマネージング・パートナー)らのエンジェル投資家が参加したことを発表した。

「Jarのビジョンは、健全な財政へのミレニアル世代のニーズを、卓越したプロダクトイノベーションでいかに満たすかという当社の命題と共鳴します。ファイナンシャルプランニングと投資の非常に魅力的な市場において、ユーザーの行動を強く駆り立てるJarの能力に感銘を受けています」とラウンドをリードしたArkam Venturesのマネージングディレクター、Rahul Chandra(ラフール・チャンドラ)氏が声明で語った。

Jarアプリの取引量とAUM(受託資産)は毎月350%のペースで増えている、とニシュチェイ氏はいう。近いうちに提供サービスを増やすつもりだと同氏は述べた。

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画像クレジット:Jar

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(文:Manish Singh、翻訳:Nob Takahashi / facebook

フィンテックSquareが新有料サービス「Invoices Plus」発表、人気の「Square 請求書」がサブスクに

Square(スクエア)の人気が高い無料の請求書発行ソフトウェアが、同社の次の大規模なサブスクリプションサービスとなるようだ。同社は「Invoices Plus(インボイス・プラス)」と呼ばれる有料のサブスクリプションサービスを発表する準備を進めている。このサービスでは、これまで無料サービスで提供されていた機能を含め、一連の高度な機能が販売業者に提供される。このサービス自体は、個々の販売業者にはひっそりと紹介されていたものの、まだ公式には発表されていない。

すでにSquare Invoices(Square 請求書)を利用している一部の販売業者には先日、メールで近々行われる変更の知らせが届いている。

一部の販売業者に共有されたその知らせ(その詳細は、Square販売者コミュニティのフォーラムでも見ることができる)によると、新しいサブスクリプションには、過去1年間に限定的なトライアルの一環としてリリースされた一連の機能が含まれるという。

それは例えば、複数パッケージの見積書、カスタム請求書テンプレート、カスタム請求書フィールドなどで、これらの機能はInvoices Plusに含まれることになる。さらに他にも2つの機能、受領した見積書を請求書に自動的に変換する機能と、マイルストーンに基づいて支払いスケジュール(3回以上の分割払い請求書)を作成する機能が追加される。Squareの発表によると、同社ではSquare Invoicesのこれらの機能の横に「トライアル」ボタンを設置し、今後導入される機能について顧客に知ってもらうようにするとのこと(下の画像を参照)。

画像クレジット:Square website

Squareの無料の請求書作成ソフトウェアはなくならない、と発表では明記されている。販売業者は、無料プランを利用することで、無制限の請求書を無料で送付できる他、見積書や契約書なども作成することができる。請求書のトラッキング、リマインダー、レポート作成ツールなども利用できる。

これまで、無料プランの収益は、処理手数料に依存していた。Squareのウェブサイトによると、現在は小切手またはデビットカードでオンライン決済された請求書1件につき2.9%+0.30ドル(約33円)、およびACH送金1件につき1%の手数料がかかる(対面で決済の場合は手数料が若干低く「Card on File」による決済では若干高くなる)。新たな有料サービスの価格は、まだ発表されていない。

あるSquareの従業員が、コミュニティフォーラムサイトで、この変更の理由を説明している。同社ではSquare Online(スクエア・オンライン)、Appointments(アポイントメンツ)、Square for Retail(スクエア・フォー・リテール)、Square for Restaurants(スクエア・フォー・レストラン)など、Squareの他の製品の多くが、無料版と有料版の両方を提供していることを指摘している。また、SquareはSquare Invoicesの処理手数料を徴収しているものの、製品開発を推進するにはそれだけでは十分ではない。Invoices Plusでは、有料の請求書発行アプリや製品と、それらの製品によるさらに高度な機能を提供し、より直接的に収益を獲得することを目指すという。

Squareにコメントを求めたところ、同社はInvoices Plusが近日中に発表を予定しているソフトウェアサブスクリプションであることを認めた。しかし、正式に発表されるまでは詳細を明らかにしようとしなかった。

iOSデベロッパーのSteve Moser(スティーブ・モーザー)氏は、Squareのアプリのコードにも、すでにこの新しいサブスクリプションへの対応が備わっていることを発見した。このコードによると、これまで有料専用の機能を利用していたユーザーは、当面の間、その機能を利用することができるようだ。しかし、発表にもあるように、販売業者が次にSquare Invoicesで新しいファイルを作成する際には、無料版で有料機能を使用することはできなくなる。

画像クレジット:Steve Moser

この新サービスの少し前に、Squareが発表した第2四半期の決算では、総売上高46億8000万ドル(5143億円)のうち、セラー事業の売上高は13億1000万ドル(約1440億円)、売上総利益は5億8500万ドル(約643億円)となっており、引き続き好調なオンライン事業の成長が、この業績を牽引している。

また、同社は後払い決算の大手企業であるAfterpay(アフターペイ)を290億ドル(約3兆1870億円)で買収する計画を発表し、より広範な決済市場を追求することへの関心を明らかにしている。この買収は、Afterpayの顧客がSquareのCash App(キャッシュ・アップ)を通じて毎月の分割払いを行えるようにすることで、Squareの異なる製品を結びつける方法を提供することにもなる。

SquareとAfterpayの統合は、将来的にさらに進む可能性もある。このことは、Squareがコミュニティフォーラムサイトで別の販売業者への回答の中で示唆している。同社の担当者は、古い回答を更新して買収のニュースを伝え、Squareは「現時点では統合のタイムラインを公表することはできません」と付け加えている。

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画像クレジット:Smith Collection/Gado / Getty Images

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(文:Sarah Perez、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

おつり投資・ポイント投資を行える資産運用サービス「トラノコ」のTORANOTECが約29億円のシリーズC調達

おつり投資・ポイント投資を行える資産運用サービス「トラノコ」のTORANOTECが約29億円のシリーズC調達

資産運用とアプリ開発・運営を行うフィンテック企業TORANOTEC(トラノテック)は8月30日、シリーズCラウンドにおいて、第三者割当増資による総額約29億円の資金調達を実施したと発表した。引受先は、リードインベスターのJIC ベンチャー・グロース・ファンド1号投資事業有限責任組合(JIC VGI。産業革新投資機構傘下のJICベンチャー・グロース・インベストメンツ運営)、セブン銀行、Aslead Capital Pte、AG キャピタル、SUMISEI INNOVATION FUND(住友生命CVC)。

トラノテックは、おつり投資やポイント投資を可能とする資産運用サービス「トラノコ」(Android版iOS版)を運営。投資へのハードルを著しく下げ、誰もが将来に向けた資産形成を行える社会の実現を推進しており、累計で約30万の口座開設に至っているという。

調達した資金は、トラノコのサービス拡充・普及拡大の加速を目的としたマーケティング活動の推進、またより幅広く顧客ニーズに対応すべく新商品・新サービスの開発・展開に重点投資を行う予定。

トラノコは、日々の買い物データから算出される買い物のおつり分や各種ポイントを、毎日コツコツ投資に回し、少額から本格的な資産形成ができるアプリサービス。トラノテック完全子会社のTORANOTEC投信投資顧問が提供しており、3つのファンドから1つを選ぶだけで、世界中の株式・債券などに分散投資できる。

また、無料歩数計アプリ「マネーステップ」(Android版iOS版)と連携することで歩くだけで投資資金を毎日獲得できる「歩いて投資」機能など、投資が楽しくなる各種サービスを搭載。今まで投資を行ったことがない方にとっても無理なく長期的な資産形成を始められるとしている。

金融業界が機械学習を簡単に利用できるようにする「Taktile」

金融サービス企業のための機械学習プラットフォームに取り組む新しいスタートアップのTaktileを紹介しよう。機械学習を金融商品に生かそうとする企業は同社が初めてではない。しかし同社はAIモデルを簡単に使い始め、移行できるようにすることで競合との差別化を狙う。

数年前、どのピッチのプレゼンにも「機械学習」と「AI」のフレーズがあったころ、金融業界に的を絞ったスタートアップもあった。銀行や保険会社は山ほどデータを集めているし顧客の情報もたくさん知っているのだから当然だ。銀行や保険会社はこうしたデータを使って新しいモデルをトレーニングし、機械学習アプリケーションを展開できるだろう。

新しいフィンテック企業は社内にデータサイエンスチームを作って自社プロダクトのための機械学習に取り組み始めた。Younited CreditOctoberといった企業はリスク予測ツールを融資の判断に役立てている。これらの企業は独自にモデルを開発し、過去のデータに基づいてそのモデルを動かすと有効であることを把握している。

しかし金融業界に古くからある企業はどうだろうか。既存の銀行のインフラと統合できるプロダクトの開発に取り組んでいるスタートアップはいくつかある。AIを使って疑わしい取引を見つけたり返済能力を予測したり保険請求の不正を検知したりすることができる。

保険に特化したShift Technologyのように成長しているスタートアップもある。しかし概念実証をしてそこで終わってしまうスタートアップが多い。その先に、長期にわたる有意義なビジネスの契約はない。

Taktileは取り入れやすい機械学習プロダクトを開発することでこうした問題を克服したいと考えている。同社はIndex Venturesが主導するシードラウンドで470万ドル(約5億1700万円)を調達した。このラウンドにはY Combinator、firstminute Capital、Plug and Play Ventures、数人のビジネスエンジェルも参加した。

同社のプロダクトはそのまま使えるモデルでもカスタマイズモデルでも動作する。顧客は自社のニーズに応じてモデルをカスタマイズできる。モデルはTaktileのエンジン上でデプロイされメンテナンスされる。顧客のクラウド環境でもSaaSアプリケーションとしても動作する。

導入後はAPIコールを使ってTaktileのインサイトを活用できる。プロダクトに他社のサービスを統合するのと同様の動作だ。Taktileは自動で下された決定に関する説明や詳細なログを提供して、できるだけ透明性を高めようとしている。データソースとしては、データウェアハウスやデータレイクのほかERPやCRMシステムにも対応している。

まだ初期段階のスタートアップであり、Taktileのビジョンが成功するかどうか気になるところだ。同社はすでに経験豊富な支援者たちを説得している。今後に注目しよう。

画像クレジット:Taktile

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(文:Romain Dillet、翻訳:Kaori Koyama)

【コラム】Apple Cardをめぐる米国の法執行はどのように間違ったのか

編集部注:本稿の著者Liz O’Sullivan(リズ・オサリバン)氏は、企業のモデルリスクとアルゴリズムのガバナンスを自動化するプラットフォームParityのCEO。また、Surveillance Technology Oversight ProjectやCampaign to Stop Killer Robotsに対して、人工知能に関するアドバイスを行っている。

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アルゴリズム正義の支持者たちは、UHGApple Cardのような企業に対する法的調査によって、いわゆる「裁判の日々」を迎え始めている。Apple Card訴訟は、定量化可能な公正性という新たな分野において、現在の反差別法が科学的研究の急速なペースに追いついていないことを示す好例である。

Appleとその引受会社が公正貸付違反を犯していないと判断されたのは確かかもしれないが、今回の判決は、あらゆる規制区域で機械学習を利用している企業に対する警鐘となり得る、明確な警告を提示した。経営陣がアルゴリズムによる公正さをもっと真剣に受け止め始めない限り、彼らの前途は法的な問題と評判の低下に満ちたものになるだろう。

関連記事:Apple Cardプログラムは公正貸付法に違反していないとNY州金融サービス局が報告

Apple Cardに何が起きたのか

2019年後半、スタートアップのリーダーでありソーシャルメディアで著名なDavid Heinemeier Hansson(デイヴィッド・ハインマイヤー・ハンソン)氏は、Twitter上で重要な問題を提起し、大きな反響と称賛を巻き起こした。「いいね!」やリツイートが5万件近くある中、同氏はAppleと引受パートナーのGoldman Sachs(ゴールドマン・サックス)に対し、同じ金銭的能力を持つ同氏と同氏の妻に付与される信用限度額が異なる理由を説明するよう求めた。アルゴリズムの公正性のフィールドに立つ多くの関係者にとって、私たちが提唱する問題がメインストリームになるのを目にすることが重大な分岐点となり、結果的にニューヨーク州金融サービス局(DFS)からの照会に結実した。

DFSが2021年3月に、ゴールドマンの引受アルゴリズムについて、1974年に制定された女性やマイノリティを差別融資から保護する厳格な金融アクセス規則に違反していないと結論づけたことは、一見したところ、信用引受会社にとって心強く思えるものかもしれない。活動家にとっては残念な結果だが、財務部門のデータチームと密接に協力している私たちにとっては驚く結果ではなかった。

金融機関向けのアルゴリズムアプリケーションの中には、試行のリスクが利益をはるかに上回るものがあり、信用引受もその1つだ。貸付の公正性に関する法律は(古いものであれば)明確かつ厳格に施行されるため、ゴールドマンが無罪となることは予測できた。

とはいえ、ゴールドマンのアルゴリズムが、現在市場に出回っている他のすべての信用スコアリングおよび引受のアルゴリズムと同様、差別化していることは疑いの余地がない。また、仮に研究者がこうした主張を検証するために必要なモデルやデータへのアクセスを許可されたとしても、これらのアルゴリズムが崩壊することはないだろう。私がこれを知っているのは、ゴールドマンのアルゴリズムを検証するための方法論をニューヨーク州DFSが部分的に公開したからであり、ご想像の通り、その監査は、今日の最新のアルゴリズム監査人によって保持されている標準には遠く及ばないものだった。

DFSは(現行法の下で)Apple Cardの公正性をどのように評価したか

DFSは、Appleのアルゴリズムが「公正」であることの証明として、ゴールドマン・サックスが申請者の性別や配偶者の有無などの「禁止された特性」を利用していたかどうかを最初に検討した。これはゴールドマンにとってパスするのは容易だった。人種、性別、婚姻状況をモデルの入力に含めていないからだ。しかし、いくつかのモデル特性が、保護されたクラスの「プロキシ」として機能し得ることは、何年も前から知られている。

50年間の判例に基づくDFSの方法論では、この問題を検討したかについて言及されていないが、検討されなかったことは推測できる。もしそうであれば、信用スコアと人種との間に強い相関関係があることがすぐに判明するはずだ。それに関連して、一部の州では損害保険への利用を禁止することを検討している。プロキシ特性は最近になって研究の焦点になったばかりであるが、科学がいかにして規制を凌駕してきたかを示す第1の例を提供するものだ。

保護された特性がない場合、DFSは、内容は類似しているが、異なる保護クラスのユーザーに属する信用プロファイルを調査した。不正確な感じがするが、申請書で性別を「フリップ(反転)」させた場合に信用供与の決定にどのような影響があるかを明らかにしようとした。男性申請者の女性バージョンも同じ扱いになるかということだ。

直感的には、これは「公正」を定義する1つの方法のように思える。機械学習の公正性の分野には「フリップテスト」と呼ばれる概念がある。これは「個人の公正性」と呼ばれる概念の多くの尺度の中の1つであり、まさにそのように聞こえる。筆者は、AI専門の大手法律事務所bnh.aiの主任研究員であるPatrick Hall(パトリック・ホール)氏に、公正貸付の事例を調査する上で最も一般的な分析について尋ねた。DFSがApple Cardを監査するのに使用した方法を参照して、同氏はそれを基本回帰、または「フリップテストの1970年代バージョン」と表現し、不十分な法律について第2の例を提示した。

アルゴリズム的公正性のための新しい語彙

Soron Barocas(ソロン・バロカス)氏の独創的な論文「Big Data’s Disparate Impact」が2016年に発表されて以来、研究者たちは哲学の核となる概念を数学的な用語で定義することに熱心に取り組んできた。いくつかのカンファレンスが開催され、最も注目すべきAIイベントで新たな公正性の道筋が示された。この分野は高度成長期にあり、現在のところ法律が追いついていない状況だ。しかし、サイバーセキュリティ業界に起きたように、この法的猶予は永遠には続かないだろう。

公正な貸付を管理する法律は公民権運動から生まれたもので、制定以来50年以上の間にあまり進展が見られなかったことを考えると、DFSの軟式監査は容認できるかもしれない。法律上の前例は、機械学習の公正性に関する研究が本格的に始まるずっと前のものだ。もしDFSが、Apple Cardの公正性を評価するという課題に適切に対処できるように装備されていれば、過去5年間に花開いたアルゴリズム評価のための堅牢な語彙を使用することができただろう。

例えばDFSの報告書は、Joy Buolamwini(ジョイ・ブオラムウィニ)氏、Timnit Gebru(ティムニット・ゲブル)氏、Deb Raji(デブ・ラジ)氏による、2018年に発表された調査の中の有名な規準「equalized odds」の測定については触れていない。同氏らの論文 Gender Shades」では、顔認識アルゴリズムが明るい肌の被験者よりも暗い女性の顔で間違った推測をすることが多いことを証明しており、この推論はコンピュータービジョンだけでなく、予測に関するさまざまなアプリケーションにも当てはまる。

均等オッズは、Appleのアルゴリズムに対して問うべきものだろう。どのくらいの頻度で信用力を正確に予測しているか。どれくらいの頻度で間違った推測をしているか。性別、人種、あるいは障害ステータスの異なる人々の間でこれらのエラー率に違いがあるか。ホール氏によると、これらの測定は重要だが、法制度を完全に体系化するには新しすぎるという。

もしゴールドマンが、現実世界の女性申請者を常に過小評価していたり、黒人の申請者に対して実際に適用されるべきものよりも高い金利を設定していたりすることが判明すれば、こうした十分なサービスを受けていない人々が、全国規模でどのような悪影響を受けるかは想像に難くない。

金融サービスのCatch-22(落とし穴)

最新の監査人であれば、判例によって指示された方法では、マイノリティのカテゴリー内でのセクション間の組み合わせに対する公正性の微妙な差異を捉えることができないことを認識している。この問題は、機械学習モデルの複雑さによってさらに深刻化している。例えば、あなたが黒人で、女性で、妊娠している場合、あなたが信用を得る可能性は、それぞれの包括的な保護されたカテゴリーの結果の平均を下回るかもしれない。

マイノリティのサンプル数は定義上セット内のより少ない数であることを考えると、これらの過小評価されたグループは、その独自性に特別な注意を払わない限り、システムの全体的な監査から利益を享受することはないだろう。このことから、最新の監査人は、各グループの個人の人口動態を明確に把握した上で結果を測定できる「認知による公正性」アプローチを採用する傾向にある。

しかし「Catch-22(落とし穴)」が存在する。金融サービスやその他の厳格に規制された分野では、監査人は最初から機密情報を収集することができないため「認知による公正性」を利用できないことが多い。この法的制約の目的は、貸し手が差別されないようにすることにあった。運命の残酷なねじれの中で、これはアルゴリズムによる差別を覆い隠し、私たちに法的不備の第3の例を与える。

この情報を収集できないという事実は、モデルが十分なサービスを受けていないグループをどのように扱っているのかを知る上で障害となっている。それがなければ、私たちは実際的に真実であることを証明できないだろう。例えば、専業主婦は両方の配偶者の名前ですべてのクレジットベースの購入を実行するわけではないため、より薄い信用ファイルを確実に持っている。マイノリティのグループは、ギグワーカー、チップを受け取る労働者、または現金ベースの業界に属する傾向が極めて高く、マジョリティにはそれほど一般的ではないことが証明されているような所得プロファイルの共通性がもたらされることが考えられる。

重要な点として、申請者の信用ファイルにおけるこれらの相違は、必ずしも真の財務責任や信用力につながるものではない。信用力を正確に予測するには、その方法(例えば信用スコア)がどのようにブレークダウンするのかを把握する必要があるだろう。

AIを使用する企業にとってこれは何を意味するのか

Appleの例で言えば、同社が時代遅れの法律で守られている差別に対抗するために、信用ポリシーの帰結的なアップデートを行ったという話に希望に満ちたエピローグを挙げる価値がある。AppleのCEOであるTim Cook(ティム・クック)氏は声明の中で「業界が信用スコアを計算する方法に公正性が欠けている」ことを即座に強調した。

関連記事:アップルが配偶者とティーンエージャーのための「Apple Card Family」発表、ジェンダー差別疑惑を払拭

新しいポリシーでは、配偶者や親が信用ファイルを結合して、信用ファイルが弱い方が強い方の恩恵を受けられるようにしている。これは、世界に構造的に存在する差別を実際に減らす可能性のある措置を先を見越して考えている企業のすばらしい例だ。Appleはポリシーを改訂するにあたり、今回の調査の結果として導入されるかもしれない規制に先んじた。

これはAppleにとって戦略的に有利な点と言える。なぜなら、ニューヨーク州DFSはこの分野を支配する現行の法律が不十分であることに徹底的に言及しており、規制のアップデートは多くの人が考えているよりも間近かもしれないからだ。金融サービス監督官Linda A.Lacewell(リンダ・A・レイスウェル)氏の言葉を借りれば「現在の形での信用スコアリングの利用と、融資における差別を禁止する法律や規制は、強化と近代化を必要としている」。規制当局と協働した筆者の経験では、これは今日の当局が極めて熱心に追求していることだ。

米国の規制当局が、自動化と数学における平等に向けた堅牢な語彙を活用して、AIを統制する法律の改善に取り組んでいることは間違いない。連邦準備制度、OCC(通貨監督庁)、CFPB(消費者金融保護局)、FTC(連邦取引委員会)、連邦議会は、ペースが遅くとも、アルゴリズムによる差別に対処することに意欲的である。

その一方で、アルゴリズムによる差別が横行していると信じるに足る十分な理由が存在する。その主なるものとして、業界がここ数年、学術界の言葉を取り入れるのに消極的だったことが挙げられる。企業がこの新しい公正性の分野を活用できず、ある意味で保証されている予測的差別を根絶できないことに対する言い訳の余地はほとんどない。EUは、今後2年以内に採択される予定のAIに特化した法案に同意している。

機械学習の公正性の分野は急速に成熟しており、毎年のように新しい手法が生み出され、無数のツールがそれを助けている。この分野は今になってようやく、ある程度の自動化によってこれを規定できる段階に達しつつある。標準化団体は、米国の法律の採択が遅れている場合でも、これらの問題の頻度と深刻さの低減に向けたガイダンスを提供し、積極的に関与している。

アルゴリズムによる識別が意図的であるかどうかは、違法性を有する。そのため、医療、住宅、雇用、金融サービス、教育、または政府に関連するアプリケーションで高度な分析を使用している場合、誰もが知らずにこれらの法律に違反している可能性がある。

センシティブな状況下でのAIの無数のアプリケーションについて、より明確な規制ガイダンスが提供されるまでの間、業界はどのような公正性の定義が最善かを自力で判断する必要がある。

画像クレジット:SOPA Images / Getty Images

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(文:Liz O’Sullivan、翻訳:Dragonfly)

送金アプリ「pring」がアプリ上で発行できる「店舗オリジナル電子マネー」を無料で提供開始

送金アプリ「pring」がアプリ上で発行できる「店舗オリジナル電子マネー」を無料で提供開始

pringは8月24日、送金アプリ「pring」(プリン。Android版iOS版)上で発行できる「店舗オリジナル電子マネー」を無料で提供すると発表した。このアプリを使えば、初期費用や月額費用が高額で小規模店舗では導入が難しかった電子マネーを無料で導入できるようになる。しかも、申し込みから最短5営業日で発行できるという。顧客管理システム(CRM)や決済機能が利用でき、決済と連動したポイント付与や顧客分析なども行えるとしている(決済機能の利用には加盟店申込と審査が必要。また決済手数料が発生)。

pringアプリでは、対象店舗で利用できるポイントをチャージでき、チャージごとに10%のプレミアムが付与される。ポイントはチャージ当日から1ポイント1円で利用可能。店舗で決済を行うと、決済額の5%のポイントが付与され、次回来店時から使える(ただし独自電子マネーでの決済時はポイントは付加されない。pringバリュー(円)での決済が対象)。

店舗独自の電子マネーの発行にともない、pringアプリでメンバーズカードも発行できる。地域通貨、ハウスカード、ポイントカードといった使い方が設定可能で、支払に使えるポイントの付与も行える。アプリのデザインはオリジナルに変更(着せ替え)可能。デザインを変えても、アプリの「お金をおくる、もらう、はらう、チャージする、もどす」という送金機能、大手コンビニなど全国30万店舗の「pring」加盟店での支払いにもそのまま使える。さらに近々、利用履歴などからレコメンド通知やクーポンの配布なども行えるようになるとのことだ。

pringでは、送金アプリ「pring」を「お金コミュニケーションアプリ」と呼んでいる。「スマホでメッセージを送るような感覚で、簡単にお金のやりとりができる送金アプリ」ということだ。自分の銀行口座と直結することで、店の買い物でのQR決済のほか、友人との割り勘や集金などの個人間送金が行える。基本機能として、お金を「おくる、もらう、はらう、チャージする、(銀行)口座にもどす」を採用している。すべて基本的に手数料はかからない。企業から個人への報酬の支払いなど、法人向けサービスも行っている。

pringは、8月下旬までに、全株式をGoogleに譲渡することが決定している。

フリーランス向け報酬即日払いサービス「先払い」提供のyupが4.5億円調達、スモールビジネス向け請求管理SaaSを予定

フリーランス向け報酬即日払いサービス「先払い」提供のyupが4.5億円調達、スモールビジネス向け新サービスとして請求管理SaaS予定

フリーランス向け報酬即日払いサービス「先払い」を提供するyupは8月24日、第三者割当増資およびデットファイナンス(借入)による総額4億5000万円の資金調達を実施したと発表した。引受先は、リード投資家のW ventures、またインキュベイトファンド、セブン銀行、AGキャピタル、FFGベンチャービジネスパートナーズ、會田武史氏(RevComm創業者)。借入先は、プライベート・デット・ファンドを運営するトパーズ・キャピタル子会社「ブルー・トパーズ」をはじめとする金融機関。

フリーランス向け報酬即日払いサービス「先払い」提供のyupが4.5億円調達、スモールビジネス向け新サービスとして請求管理SaaS予定

調達した資金は、「人材採用への投資」「与信アルゴリズムの強化」「マーケティング・ブランディング」などの採用・組織体制の強化、「先払い」および新サービスの開発にあてる予定。先払いユーザーを対象としたアンケートの結果、シンプルでわかりやすいUI・申請方法・料金体系を評価している一方、「申込金額枠が小さい」「サービスの仕組みが理解できない」といった課題も残っていることがわかったという。フリーランスのキャッシュパートナーとして、より使いやすいサービスになるよう改善を重ねるとしている。

また新サービスは、スモールビジネス向け支払い・請求業務簡略化サービスを予定。これにより、日本にいる1670万人(ランサーズ「フリーランス実態調査2021年度版」)のフリーランスを含め、すべてのスモールビジネスに従事する人が事業やサービスに集中できる環境作りに貢献するとしている。

先払いは、取引先に送った入金前の請求書情報をyupに登録すると、報酬を即日受け取れるというサービス。2019年9月26日にβ版、2020年10月8日に本格リリースを開始した。手続きはすべてオンラインで完結し、面談・書面でのやり取りは一切不要。審査は最短60分で完了し、会員登録を行った当日から利用できる。また、利用状況を取引先に知られることもない。利用者のうち70%以上がリピートで利用しており、申込件数は1万件を突破したという。

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給料日を待たずに給与の一部が引き出せる新機能をRevolutが英国で導入

フィンテック(金融テクノロジー)スタートアップのRevolut(レボリュート)は「Payday(ペイデイ)」と呼ばれる新機能の導入を開始する。これはクレジットカードローンやキャッシングでお金を借りる代わりに、給料の一部を早期に受け取ることができるというものだ。企業がRevolutとの統合を決めれば、ユーザーは同社の金融スーパーアプリから、直接この機能を利用することができる。

現時点で、この機能は英国の企業に限定されているものの、欧州経済地域や米国でも導入が計画されているという。ここがややこしいところなのだが、給与をRevolutの口座に直接振り込んでもらっているすべての人が、Paydayを利用できるわけではない。

Revolutは、従業員がどの時点でいくら稼いでいるかを知るために、まず雇用主の給与システムに接続する必要がある。だが、Revolutによると、雇用主は給与システムを変更する必要はないという。

これが完了すると、従業員は好きなときに、これまで稼いだ給料の一部を受け取ることができるようになる。ユーザーはまだ支払われていない給料の最大50%までの金額を、給料日よりも前に引き出すことができる。この機能は企業にとっては無料だが、Revolutはユーザーに少額の定額料金を請求する。

「私たちは、すべての人が経済的健康でいられることの重要性を信じています。これには、経済的な安定が従業員の精神的な健康に与える影響を重視することも含まれます」と、Revolutの共同創業者でCEOのNik Storonsky(ニック・ストロンスキー)氏は、声明の中で述べている。「2020年の困難な状況を経て、いま従業員が最も忌むべきものは、経済的な不安やストレスです。多くの従業員が給料日ローンや高金利のキャッシングに依存している状況から脱却することが重要です。この依存は毎月の給料サイクルによってさらに悪化します」。

給料日から給料日へ綱渡りのような生活をしている人は、予定外の出費にPaydayを活用することができる。例えば急にクルマを修理しなければならなくなり、月末まで待っていられない人は、今すぐ給料の一部を引き出すことができる。

これは借金ではないし、クレジットスコアにも影響しない。自分で稼いだ給料の一部だからだ。ということは、月末の給料日には受け取る金額が少なくなるわけだが。

給料の前払い機能を使っていなくても、Paydayでは今月いくら稼いだかを確認することができる。多くの企業がこの機能を採用するかどうか、注目したいところだ。英国には何百万人ものユーザーがいるので、企業は自社の従業員からPaydayについて知ることになるだろう。

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画像クレジット:Revolut

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(文:Romain Dillet、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

オンライン完結型ファクタリングを提供するOLTAが愛媛銀行・北日本銀行とそれぞれ共同事業を開始

オンライン完結型ファクタリングを提供するOLTAが愛媛銀行・北日本銀行とそれぞれ共同事業を開始

「あらゆる情報を信用に変えあたらしい価値を創出する」をミッションにファクタリングサービスを展開するOLTA(オルタ)は8月18日、愛媛銀行、北日本銀行それぞれと共同で「クラウドファクタリング事業」を立ち上げ、順次サービスの提供を開始すると発表した。この提携は、第二地方銀行との共同事業としては初めて。

OLTAは、売掛金を早期に現金化できるファクタリングをオンラインで完結させる、オンライン型ファクタリング「クラウドファクタリング」を2017年から提供してきた。AIを活用した審査による「はやい・かんたん・リーズナブル」を特徴とするサービスとしており、個人事業主を含む小中事業者に多く利用されているとのこと。

長年にわたり地元企業を支援し信頼を得てきた地域金融機関は、2021年3月末で、民間金融機関の実質無利子・無担保融資(いわゆる「コロナ融資」)の受付が終了したことを受け、中小企業に向けた「ポスト『コロナ融資』」の対策が課題になっている。そこで、フィンテック企業と共同でファクタリング事業を始める金融機関が増え始めた。OLTAは、クラウドファクタリングのパイオニア企業として、今後も多くの地域金融機関と連携してゆくと話している。

金融機関へのOEM提供の実績

OLTAの場合、金融機関との共同事業は「互いの強みを活かした共創型の事業モデル」になるという。OLTAは、ウェブサービスの企画、開発、導入、運用におけるコンサルティングを提供し、パートナー金融機関は自社ブランドで金融商品を立ち上げ、法人や個人事業主に案内する。利用者にとっては、取引のある金融機関のサービスとして、安心して気軽にクラウドファクタリングを利用できるというわけだ。

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カテゴリー:フィンテック
タグ:OLTA(企業)銀行(用語)ファクタリング / factoring(用語)日本(国・地域)

機関投資家や富裕層を対象に暗号資産の運用・管理事業を展開するHyperithmが12億円のシリーズB調達

機関投資家や富裕層を対象に暗号資産の運用・管理事業を展開するHyperithmが12億円のシリーズB調達

日本・韓国を拠点に機関投資家や富裕層を対象とした暗号資産のウェルスマネジメント(資産の総合管理)事業を展開するHyperithm(ハイパーリズム)は8月18日、シリーズBラウンドとして第三者割当増資による約12億円の資金調達を発表した。引受先は、HashedとWemade Treeを筆頭に、ココネ、Coinbase Ventures、Guardian Fund、GS Futures、米国機関投資家(社名非公開)となっている。これにより企業評価額は約122億円となった。また、アメリカ、シンガポール、韓国などの機関投資家が新たに株主に加わった。

米国では、暗号資産を株式や債券と並ぶアセットクラスとして認める機関投資家も存在し、モルガン・スタンレーやJPモルガン・チェースなどの投資銀行は、暗号資産ファンドの販売を開始するようになっているという。2018年創業のHyperithmでも、2021年6月時点で運用資産が前年比25倍以上に増加した。上場企業、ファミリーオフィス、ベンチャーキャピタル、暗号資産取引所、マイニング会社など国内外50社以上の法人が利用している。日本においては、私募で暗号資産のレンディングサービスを運営しているそうだ。

Hyperithmは、「暗号資産を運用する時代」を見据えて「機関投資家向けの暗号資産の運用窓口」となることを目指している。トレーディングやリスク管理は、全過程が「性能と安定性を追及して設計されたマルチパラダイムのプログラミング言語Rustで開発したアルゴリズムを通じて」自動化されているとのこと。

今回調達した資金を使って、Hyperithmは、暗号資産領域の人材確保と組織基盤の強化、またレンディングサービスだけでなく、日本国内のブローカレッジ事業展開のための暗号資産交換業の登録手続きを進めると話している。

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タグ:暗号資産 / 仮想通貨(用語)ウェルスマネジメント(用語)Hyperithm(企業)Rust(製品・サービス)資金調達(用語)日本(国・地域)