現代のクルマでは、ダッシュボードの中央にフォトフレームのような独立したディスプレイを設置するのがデフォルトのようになっている。しかし、BMWは次世代の「iDrive(アイドライブ)8」システムで、このデザイン言語から脱却し、中央のディスプレイをコクピット全体に拡大した「BMW Curved Display(BMWカーブド・ディスプレイ)」と呼ばれるアイデアで、次の段階に進むことを明らかにした。ドライバーの眼前に広がるスクリーンは、実際には12.3インチのインフォメーションディスプレイと14.9インチのコントロールディスプレイを組み合わせたものだが、まるで1枚の曲面ディスプレイのように見える。BMWはそれを「ほとんど浮いているように見える」と表現している。
この新しいカーブドディスプレイを採用した第8世代のiDriveシステムは、2021年後半に発売予定の新型電気自動車「iX」と「i4」に搭載される。
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BMWは、基盤となる技術スタックの詳細についてはまだ公開していないものの、この新型システムでは従来の20~30倍のデータを処理できると述べている。BMWの開発責任者であるFrank Weber(フランク・ウェーバー)氏は、米国時間3月15日に行われたプレス会談で、技術的詳細を7月以降に発表する予定だと語った。
画像クレジット:BMW
同社は2020年11月にiXを発表した際に、この新しいディスプレイが写っている車内の画像を公開したが、当時は新世代のiDriveシステムについて詳細を明らかにしなった。その核となるのは、当然のことながら、ユーザーインターフェースの全面的な刷新だ。例えば、ドライバーはさまざまなレイアウトを選択できるようになる。標準の「Drive(ドライブ)」レイアウトでは「インフォメーションディスプレイの中央に動的に変化するエリアを設け、個別に選択可能な情報を表示する」ことができる。他に「極めてダイナミックな運転をする状況」に合わせてデザインされた「Focus(フォーカス)」レイアウトや、運転に関する情報を最小限に抑え、メディアソースなどアプリのウィジェットを多く表示する「Gallery(ギャラリー)」レイアウトが用意されている。3つのレイアウトのどれを選んでいても、気を逸らす表示は消して落ち着いて運転に集中したくなったら「Calm(カーム)」モードに切り替えれば、インフォメーションディスプレイの中央に走行速度のみをデジタルで表示し、他にはほぼ何も表示されない状態にすることもできる。
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「My Modes(マイモード)」と呼ばれるドライビングモードも「Efficient(エフィシェント)」「Sport(スポーツ)」「Personal(パーソナル)」の3つから選択可能。パワーユニットのスロットル特性、ステアリング特性、シャシーの設定など、走りの核となる車両の設定やオーディオの設定を変更することができる。
また、おそらく車内で最も頻繁に使用されるアプリケーションである地図についても、3つの異なるモード(アダプティブ、縮小、拡大)が用意されている。これらはすべて、ドライバー自身がどの程度の情報を見たいかを決められるようにするべきだという基本的な理念に基づいている。
個人の好みに合わせてパーソナライズできる多くのオプションも用意されており、ウェーバー氏もそれを認めているものの、BMWはドライバーに負担をかけないように使いやすくデザインしたと同氏は主張している。多くのドライバーも実際にこの機能を望んでいるという。
「中国で我々のシステムをテストすると、パーソナライズできる機能はいくら用意しても足りないほど、同国の人々はほとんどすべてをパーソナライズしたがります」と、ウェーバー氏は説明する。「その一方で、『私はただクルマを運転したいだけで、そんなものは見たくない』という人もいます。そこで私たちはMy Modesという機能を搭載し、表面上は非常にシンプルにまとめました。My Modesのボタンを押すと、 Sport、Efficient、Personalという3種類のモードに切り替わります。これによって『非常に整理されたものを求めるか』あるいは『すべてをできるだけパーソナライズしたいか』を簡単に決めることができます。このシステムは非常に巧妙な仕組みを備えています。それでいて、非常にシンプルな選択肢も用意されています」。
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パーソナライゼーションといえば、BMWはパーソナライズされた設定をスマートフォン上の新しい「My BMW」アプリに保存する「BMW ID」という新しいシステムも採用する。
今度のアップデートで、BMWは数年前にTechCrunch Disruptで公開したBMW Intelligent Personal Assistant(BMWインテリジェント・パーソナル・アシスタント)の次世代版も導入する。Microsoft(マイクロソフト)のAzure Cognitive Services(アジュール・コグニティブ・サービス)の上に構築されたこの改良版車載アシスタントは、より自然な対話を通じてドライバーとやり取りできるだけでなく、BMWは音声認識に加えて多くの視覚系コンポーネントを搭載することで、このアシスタントシステムにジャスチャー認識機能も統合させた。これがどのように機能するかは、実際に見てみないとわからない。現時点でBMWは、これらの機能に関して多くを明らかにしていない。
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「人と人とのコミュニケーションでは、多くの情報が非言語で伝達されます」と、同社は説明する。「そこで、BMWインテリジェント・パーソナル・アシスタントでは、視覚的な表現により重点を置いた改良を施しました。この新しい視覚化アプローチは、大きさと明るさのレベルが異なる光の球体によって、アシスタントに空間認識と新たな表現方法を与えました。この視覚的なイメージは、焦点とジャスチャーによる動きが明確にわかる『顔』にもなっています」と、BMWは述べている。
現行の第7世代iDriveシステムと同様、この新しいオペレーションシステムは、車両に内蔵されたSIMカードと携帯電話通信網(iXでは最大5G)またはMy BMWアプリを介した無線通信アップデートに対応する。
iDrive 7を搭載する現行モデルも、継続してアップデートが行われ、次世代のiDrive 8から移植可能な一部の新機能が搭載される予定があることを、ウェーバー氏は指摘した。
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「スマートフォンの世界と少し似ていますね」と、ウェーバー氏はいう。「iDrive 8の興味深い新たな機能のうち、iDrive 7に移植可能なものは、すべてiDrive 7にも採用されます。しかし、携帯電話の特定の機能のように、そのすべてが前世代でも利用可能というわけではありません。多くの機能が移植できますが、すべての機能ではありません。しかし確かに、前世代のアップデートには引き続き取り組んでいきます。それをや止めることはありません」。
なお、これは余談だが、ウェーバー氏は一部の自動車メーカーで生産が遅れる原因となっている現在のチップ不足についても言及した。BMWではクリスマス頃から「1日ごとに生産台数を守るように奮闘している」が、まだ1日も生産を休止したことはないという。今後の見通しについては明言しようとしなかったものの、BMWでは技術面における代替案の開発に着手しているという。「これまでのところ、当社では実際にパイプラインを調整することができているので、現時点では生産を停止させる必要はありませんでした」と、ウェーバー氏は語った。
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(文:Frederic Lardinois、翻訳:Hirokazu Kusakabe)