【レビュー】アップルのiOS 15は欠けていた小さな機能をすべて追加、アップデートはユーザーに任せだが個人的にはオススメ

iOS 15のリリースは、確かにモバイルOSにおけるビッグイベントだ。しかし2021年は、目立って重要なテーマや画期的な機能はない。今回、Apple(アップル)は、自社アプリの新しい機能に加えて、日常生活的な細部の改良に力を入れている。

その結果、アップデートはとても堅実なものとなり、論争を起こすことはなさそうだ。一部の人、自分のスマートフォンをできるかぎりパーソナルなものにしたいと考え、カスタマイズに長時間を割いているような人たちにとって新しい「集中モード」はうれしいものだろう。また、そうでない人たちは、その新機能に気づかないか、もしくは無視するだろうが。

2021年のアップデートはまた、iOS 15にアップデートしなくてもよい、という点でも変わっている。iOS 14のままで十分、AppleにiOS 15へのジャンプを強いられることはない。現在のままでも、セキュリティパッチはもらえる。だから、iOS 15を完全に無視する人も存在する。

小さな変化のように思えるかもしれないが、それはiOSの現状について多くを語っている。AppleはiOSを、成熟したプラットフォームだと考えている。Macを使っていて、必要なければmacOSを最新バージョンにアップデートしない人もいるように、アップデートは自分のペースでやればよい。

またiOSは、アプリ開発者にとっても成熟したプラットフォームであるため、多くの人が今すぐiOS 15にアップデートしないのであれば、開発者の採用も遅くなるだろう。アプリは以前と比べて長い期間、古いバージョンのiOSで動くはずだ。

もちろんiPhoneそのものを新しい機種に買い替えた場合、それに合わせてiOSの「アップデート」も行われる。

画像クレジット:Apple

スマホ以上にユーザーに「集中」する

iOS 15における最大の変化は、コントロールセンターから集中モードを変更できることだ。これは意外なほど強力な機能で、いろいろなオプションや調整項目がある。Appleの機能ではないみたいだ。

しかしこれは絶対に、iOS 15で最も興味深い機能だ。現在は多くの人が、スマホを触る時間がとても長くなっており、デバイスで行うことや気になることも非常に多くなっている。しかし今度の新機能では、人が主導権を取り戻し、ユーザーである自分が主人公になる。

必要のないときに通知をナシにする「おやすみモード」は、このユーザー主導という考え方をよく表している。iOS 15でこの「おやすみモード」を使い続けたい場合は、そのまま何も変更しなくてよい。

iOS 15からは、集中モードを作成することもできる。デフォルトで仕事、睡眠、運転、フィットネス、マインドフルネス、パーソナル、読書などが用意されている。自分に合わせて、新たな集中モードを作ることもできる。

特定の集中モードをオンにすると、基本的にデフォルトで通知がブロックされる。しかし、人やアプリを追加することで、それらの人やアプリからの通知が届くようにもできる。また、アプリ開発者は、時間的に重要な通知をマークすることで、常に通知を受け取ることも可能だ。この機能が悪用されないことを願う。

さらに3つの設定を有効にすることができる。まず、メッセージや対応するサードパーティ製アプリで、通知が現在ミュートにされていることをオプションで共有することができる。2つ目は、ホーム画面のページを完全に隠せるようになる。3つ目は、ロック画面から通知を隠したり、ホーム画面からバッジを隠したりすることができるようになる。

また、特定の集中モードと自動化機能を組み合わせることで、さらに興味深いものになります。例えば、夜になると自動的に「睡眠」をオンにしたり、出社すると自動的に「仕事」をオンにしたりすることができる。

パワーユーザーは、集中モードをショートカットと組み合わせて使うのも楽しいだろう。例えば、「スリープ」をオンにしたときに「時計」アプリを開くようにショートカットを設定できる。このように、新機能は非常に奥が深く、ベータ版ユーザーはまだ表面をなぞっただけでしかない。

画像クレジット:Apple

すべてのアプリをアップデート

iOS 15では、デフォルトアプリのほとんどすべてがアップデートされた。新たに加わった機能の一部はなかなかすばらしいが、疑問符の付くものもある。

まず、論争を招いたのがSafariの新デザインだ。しかし2021年6月のWWDCで目にしたものは、今では影も形もない。結局Appleはフィードバックを聞き入れて、夏の間にウェブブラウザのインターフェースを変更したのだ。

関連記事:アップルが不評だったSafariの変更点をiOS 15 beta 6で修正、再びアドレスバーの上部表示も可能に

まず、デフォルトではアドレスバーが画面下、ブックマークを開いたり、現在のページをシェアしたり、前のページへ行ったりするボタン列のすぐ上にある。それはとても良いと思うが、アドレスバーを下に置きたくない人は、簡単に上へ戻せる。

それ以外では、Safariの変更はすべて良い改良だ。例えばこのブラウザは今や、前からあるウェブエクステンションをサポートする。Safariは次に、Google Chromeの人気エクステンションもサポートするだろうか?もう1つのすてきな新機能は、タブグループを作れることだ。そしてそのタブグループは、他のデバイスからでも確認できる。

FaceTimeが、多機能なビデオ会議サービスになった。今度からは、リンクを作って友だちと共有したり、「カレンダー」の招待に加えることができる。これで初めて、Appleのデバイスを持ってない人でもFaceTimeの通話にウェブブラウザから参加できるようになる。また、グリッドビューでZoomのビューを見られる。

しかし残念ながら、FaceTimeの機能の大成長は、中途半端だ。オーディオやビデオの再生を友だちなどと同期するSharePlay機能は、この秋の終わりごろリリースされるという。

「天気」アプリもデザインが変更された。情報量が増えて、降雨マップもあり、次の1時間の降雨予報や紫外線指数も表示される。もう、サードパーティ製の天気予報アプリに負けないかもしれない。私は今でもSnowflakeを使っているが、その差は縮まる一方だ。

「メッセージ」は、他のAppleアプリとの統合性が向上された。誰かがあなたに、記事や写真のアルバムやポッドキャストや曲を送ると、Appleの他のアプリや「Apple News」「写真」「ポッドキャスト」「ミュージック」などにそれらのレコメンデーションが出る。これもまた、私がiOS 15をテストしているときにはすてきな追加機能と感じられたが、実際に日常の中でスマートフォンを使ってるときのデバイスの使い方は何も変わらない。

「マップ」は、サンフランシスコの住民にとっては特別に良くなった。何年も使ってなかった人には、おすすめだ。「Googleマップ」の強力な代替アプリになっている。

特にサンフランシスコやロサンゼルス、ニューヨーク、ロンドンなどでは、ビルが3Dで表示され、バスレーンや歩道などもわかる詳細地図を見ることができる。まるで、ビデオゲームの中でそれらの都市を歩いているような詳しさだ。また、場所のカードや、運転者のためのユーザーインターフェース、アプリのセットアップなどもデザインが変わった。

「 写真」も、大きく改良された。毎年、同社は「メモリー」のデザインをすっきりとしたものにしている。ユーザーがそんなに多いアプリではないと思うが、とにかく前より良くなった。写真をスワイプして表示される情報にも、シャッター速度や使用レンズなどが追加され、以前より詳しくなった。

しかし写真ライブラリにおける最大の変化は、写真の中のテキストを検索できることだ。iOSは写真をスキャンしてテキストを見つけ、それをSpotlightの検索に保存する。

同じく、カメラをテキストに向けてそのテキストを指定できる。メニュー上にレストランのアドレスを探したり、旅行中に何かのテキストを翻訳したくなって友だちとシェアしたいときなどに、とても便利だ。

画像クレジット:Apple

ちょっとした特徴や使い方

iOS 14よりもiOS 15が良いといえる小さな変化は山ほどある。ごく一部をリストアップしてみよう。

  • 家のキーやホテルのキー、オフィスのキー、IDカードなどをWalletアプリに入れられる
  • 健康データを誰かとシェアできる。愛する人と遠く離れていたり、ヘルスケアのチームをアップデートしたいとき便利だ
  • iCloudで決済する人は、今やiCloud+のユーザーでもある。ストレージの他に、ベータでiCloud Private Relayを使えるので、ウェブを閲覧するときのプライバシーがアップする。また、Hide My Emailでランダムなメールアドレスを作れるので、ウェブで新しいアカウントを作れる
  • 家族がiCloudのメールアドレスを使っているなら、パーソナルなドメイン名を作ってiCloudをセットアップできる
  • iOSは音声認識機能がデバイス内にあるので、テキストの口述入力が速い
  • しかもiOSはSiriのリクエストの一部もオンデバイスで処理するため、タイマーの起動やアラームのセット、音楽の変更なども瞬間的にできる。私の場合、これでSiriの使い方が変わった
  • iCloudのアカウントにアクセスできなくなったときのために、アカウント回復の連絡先を加えられる。できるだけ多くの人に、二要素認証の利用を説得すべきだ
  • 二要素認証(2FA)といえば、Appleが内蔵しているパスワードマネージャー「パスワード」は今度から2FAの詳細を保存でき、入力欄の自動入力ができる。それは1Passwordのときの2FAとほぼ同じだ
  • 故人を自分のApple IDにすることができるが、人によってはできない場合もあるのでご注意を。Appleが、亡くなった人の写真を使わせてくれないことがあるのだ。
  • リマインダーとノートにタグが追加された。ノートでも人を@メンションできる

ご覧のように、iOS 15の変更箇所のリストはとても長い。しかしそれでも、iOS 15へのアップデートはユーザーの任意だ。昔iPhone OS 3でカット&ペーストとコピペが加わったときは、アップデートするのが当たり前だった。今度の新しい機能も、個人的には好きなので、アップデートの価値があった。「する」か「しない」、本記事がその判断の助けになれば幸いだ。

関連記事:iOS 15へのアップデート可能に、iPadOS 15、watchOS 8も提供開始

画像クレジット:TechCrunch

原文へ

(文:Romain Dillet、翻訳:Hiroshi Iwatani)

iPhone 13でデュアルeSIMを試す―自由度アップで機種変が楽に

iPhone 13でデュアルeSIMを試す―自由度アップで機種変が楽に

カメラを刷新して、Proモデルは120Hz駆動のProMotionにも対応したiPhone 13シリーズ。同モデル4機種は、iPhone 12から数えて2世代目の5G対応スマートフォンでもあります。残念ながらミリ波に対応しているのは米国版のみで、日本版はSub-6オンリーですが、Gbpsを超える通信速度は魅力的です。一足先に、その実機を試してみることができましたので、ここでは通信周りに関するレビューをお届けしたいと思います。

iPhone 13の通信関連機能をチェックした

iPhone 13の通信関連機能をチェックした

通信周りでiPhone 12シリーズまでとの大きな差分は、やはり「デュアルeSIM」への対応でしょう。発表後の記事で筆者が取り上げたように、iPhone 13は4機種とも、eSIM同士のDSDS(デュアルSIM/デュアルスタンバイ)に対応しています。これまでのiPhoneだと、主回線・副回線のどちらか一方は物理SIMにする必要がありましたが、iPhone 13であれば、eSIMだけでDSDSができてしまうというわけです。

ということで、まずはこの機能を試してみました。物理SIMを1枚も入れていない状態で、最初に楽天モバイルのeSIMプロファイルをダウンロードします。この辺の手順はeSIMおじさん……もとい、eSIMに慣れ親しんだユーザーの皆様にはおなじみなので割愛しますが、普通に1回線目としてeSIMを設定しました。ここまでは、従来のiPhoenも同じです。次に、LINEMOのプロファイルを読み込んでいきます。

いつものようにQRコードを読み込んで1回線目を設定

いつものようにQRコードを読み込んで1回線目を設定

楽天モバイルのeSIMプロファイルがダウンロードされた

楽天モバイルのeSIMプロファイルがダウンロードされた

設定途中で、どちらでモバイルデータ通信を使うかや、どちらをデフォルト回線にするかを選択する画面が出てきました。これまでは、eSIMを1回線ぶんしか有効にできなかったため、こうした設定はできませんでしたが、iPhone 13では、2つ目のプロファイルをダウンロードするだけで自動的にデュアルeSIMの状態になりました。物理的なSIMカードは1枚も入れていない状態ですが、きちんと通信は両方の回線でできています。

続いてLINEMOのeSIMをセット。こちらもQRコードを読み込んでプロファイルをダウンロードする

続いてLINEMOのeSIMをセット。こちらもQRコードを読み込んでプロファイルをダウンロードする

 

1回線目がeSIMなのにも関わらず、どちらをデフォルト回線にするかの選択肢が現れた

1回線目がeSIMなのにも関わらず、どちらをデフォルト回線にするかの選択肢が現れた

2つのeSIMがどちらも有効になっていることが分かる。これがデュアルeSIMだ

2つのeSIMがどちらも有効になっていることが分かる。これがデュアルeSIMだ

なお、現状では仕様上、5Gの通信でそのまま通話する「VoNR」という規格も存在しますが、国内キャリアは未対応。そのため、モバイルデータ通信を指定していない方のキャリアは、当然ながら4Gで待受けをすることになります。5G/5GのDSDSではなく、5G/4GのDSDSになるというわけです。

SIMカードスロットを開け閉めする必要がなく、移行も簡単でした。楽天モバイル/LINEMOの両回線は、私物の「iPhone 12 Pro」から移しましたが、SIMピンを取り出す必要なく、画面上の操作だけであっさりSIMカードの情報を移すことができました。SIMピンを挿す際にあやまって側面を傷つけてしまったり、入れ替えまくっているうちにSIMカードの端子が読み取りにくくなったりといったトラブルが起きないのは、eSIMならではと言えるでしょう。

SIMカードスロットを出し入れする必要がなく、端末に傷をつける心配がない。ケースを外さないでいいのも便利だ

SIMカードスロットを出し入れする必要がなく、端末に傷をつける心配がない。ケースを外さないでいいのも便利だ

もちろん、どちらの回線も5Gを有効にできました。5Gの設定周りはiPhone 13でも特に変わっておらず、「5Gオート」と「5Gオン」を選択可能。前者は不要な場合に自動で5Gの接続を切ることでバッテリー駆動時間を増やす設定。後者は“スピード命”のユーザーが常に5Gを有効にしておく設定です。また、5G接続時やWi-Fi接続時にFaceTimeやストリーミング動画などの画質を自動で上げる機能にも、引き続き対応しています。

ソフトバンクの転用エリアでもきちんと5Gにつながった。転用ながら、速度は速い

ソフトバンクの転用エリアでもきちんと5Gにつながった。転用ながら、速度は速い

iPhone 12発売時は、まだまだスポット的だった5Gのエリアですが、最近では都市部を中心に、かなりの広がりを見せています。特に4Gで利用していた既存周波数帯を5Gに転用しているKDDIやソフトバンクは、そうでないほか2社に比べると、5Gのアイコンを目にする機会は多いような印象があります。転用というと速度が遅いようなイメージを持たれているかもしれませんが、ユーザーの絶対数がまだまだ少ないこともあり、ご覧のようにLINEMOの転用エリアでもかなりの速度が出ます。

この点、iPhone 13は仕様が全キャリア共通なので安心です。アップルから購入しようが、4キャリアから購入しようが、変わらず全社の5Gを利用でき、主要バンドにもきっちり対応しています。5G用に割り当てられた新周波数帯のn77、n78、n79だけでなく、1.7GHz帯を転用したn3や、700MHz帯を転用したn28も利用できます。どのキャリアのSIMカードを入れても、主要な周波数でしっかり使えるのはiPhoneならではと言えるでしょう。

「5Gオート」と「5Gオン」を選択可能なのはiPhone 12のときと同じ

「5Gオート」と「5Gオン」を選択可能なのはiPhone 12のときと同じ

iPhone 13が搭載するiOS 15は、5Gの利用範囲を拡大しています。具体的には、設定の「データモード」を「5Gでより多くのデータを許容」にしておくと、今まで以上に多彩な場面で5Gを通信経路として選択するようになります。具体的には、iCloudへの自動バックアップに5Gを利用したり、十分な速度が出なかったり、セキュリティ上不安があったりするWi-Fi接続時に5Gで通信したりと、これまでよりもモバイルデータ通信でできることが増えています。

「5Gでより多くのデータを許容」をオンにすると、iCloudの自動バックアップに5Gが使われるなど、iOS 14までより用途が広がっている

「5Gでより多くのデータを許容」をオンにすると、iCloudの自動バックアップに5Gが使われるなど、iOS 14までより用途が広がっている

デュアルeSIMやiOS 15に対応したことを踏まえると、iPhone 13シリーズは5Gをより生かしやすい端末と言えるかもしれません。一方で組み合わせが多彩になった結果、思わぬトラブルが起こることも懸念されます。記憶に新しいところでは、デュアルSIMのデータ通信専用SIMで通信している際に緊急通報をすると、そのままデータSIMで発信してしまい、電話がかけられないという不具合が明らかになったばかりです。eSIM同士で挙動が違うのかどうかの確認が増えると、検証にはさらに時間がかかるようになってしまうかもしれません。

(石野純也。Engadget日本版より転載)

iPhone 13シリーズの新色「スターライト」「シエラブルー」実物の印象はどう?

iPhone 13シリーズの新色「スターライト」「シエラブルー」実物の印象はどう?

iPhone 13シリーズの新色「スターライト」「シエラブルー」実物の印象はどう?

いよいよ、2021年9月24日にiPhone 13シリーズが発売されます。先行レビューとして、新たに追加されたiPhone 13のスターライト、そしてiPhone 13 Proのシエラブルーについて、見ていきましょう。

スターライトの色味をチェック

iPhone 13シリーズの新色「スターライト」「シエラブルー」実物の印象はどう?「スターライト」と聞いて思い浮かべるのが光GENJIの人もいれば、アイカツ、アイマスの人もいたり、ジャズの名曲もあったりで、人それぞれです。

これまでiPhone、Apple Watch、iPadなどのラインアップには、「シルバー」というスタンダードカラーがありました。ガラスの背面部分は真っ白に塗られ、劣らぬ白いアルミニウムのフレームやボディを備えるカラーです。

今回のiPhone 13シリーズにはそのシルバーが用意されず、代わって「スターライト」が加わりました。シルバー同様に背面は純白で、シルバーとあまり代わらないのではないか、と思います。しかし側面は明らかに異なっていました。

シルバーが真っ白なアルミニウムの金属の色に見えていたのに対し、スターライトはやや黄色みがかった、淡いシャンパンゴールドと言えなくもない、そんな色合いの金属。見た目の印象は、環境光によって、かなり左右されるでしょう。温かみのある電球の下では、よりシャンパンゴールドに近くなるし、蛍光灯のはっきりとした白い光の下では、よりシルバーっぽく見えるかもしれません。

Appleは染料と共に酸化被膜処理を行います。金属表面の細かい孔を作り、これを埋めることで耐食性能を高め、滑らかな表面を実現、同時に色を付けます。

今までのシルバーは、アルミニウムのいわば無垢の色のように見えていましたが、これにあえて色を付けて、一手間加えたのがスターライトというカラーになります。

シエラブルーとパシフィックブルーを比較

iPhone 13シリーズの新色「スターライト」「シエラブルー」実物の印象はどう?続いて、iPhone 13 Proシリーズに新たに加わったシエラブルーを見ていきましょう。

ProシリーズではiPhone 11 Proから特別なカラーが用意されるようになりました。2019年のiPhone 11 Proにはミッドナイトグリーンが用意され、ステンレスのフレームや背面が深みのある独特の緑に染め上げられていました。

iPhone 13シリーズの新色「スターライト」「シエラブルー」実物の印象はどう?ちなみにこの染料を作ったのは埼玉県にあるセイコーアドバンスで、2019年12月にティム・クックCEOが視察に訪れた際に、ミッドナイトグリーンの染料を混ぜている様子を興味深く眺めていたのが印象的でした。

そして2020年のiPhone 12 Proにはパシフィックブルーが用意され、2021年のiPhone 13 Proでは同じブルーながら「シエラブルー」という名前で色味が変更されています。

シエラブルーのシエラは、有名なビールの銘柄にもなっているシエラネバダ山脈からきており、山です。単体で見てみると、藤にも見えるような、明るいカラー。非常に落ち着いた色合いになっています。ハイキング中にこんな色の花が見つかったら、とても豊かな気分になりそうな。

iPhone 13シリーズの新色「スターライト」「シエラブルー」実物の印象はどう?昨年のパシフィックブルーとシエラブルーを並べてみると、前者の方がより色が濃いことがわかります。若干緑の入った濃い青は、太平洋の深い青のイメージにぴったりです。シエラブルーは、やはり紫っぽさが強まっているような印象を受けます。iPhone 13シリーズの新色「スターライト」「シエラブルー」実物の印象はどう?

ただ、いずれも落ち着きのある色で、刺激がある色ではありません。

ノッチ問題

毎年専用の色味が変わってしまうので、もしミッドナイトグリーンが好き、パシフィックブルーが絶対好み、という人は乗り換えがたい難しさがあります。

その一方で、スマートフォンの性能は年々進化しており、また今年も、大きな飛躍ある進歩がありました。2021年モデルのiPhoneで注目すべき点、実はiPhone 13 Proのアップグレードです。

iPhone 13 Proは、新しいフラットなデザイン、5G対応、3つのカメラなど、iPhone 12 Proの特徴を引き継いだ製品です。一見同じデザインに見えますが、ノッチの縮小と受話スピーカーは見た目も使い勝手も大きく向上しました。iPhone 13シリーズの新色「スターライト」「シエラブルー」実物の印象はどう?

ノッチはオールスクリーンデザインのiPhone Xが登場して以来、iPhoneの前面上部に存在する「切り欠き」であり、iPhoneのデザイン上の不完全な要素でした。もちろんそれが意匠にもなっていますが、本来ない方が良いものです。

ノッチの中には、受話スピーカー、インカメラと赤外線照射ライト・センサーを備えるTrueDepthカメラシステム、その他センサー類が備わっています。iPhone 13シリーズでは、デザインの再構成でノッチの面積が20%縮小されました。

具体的には、これまでノッチの中央部にあった受話スピーカーを、エッジギリギリ、ディスプレイ表示領域の外に追いやりました。これによって画面の切り欠き部分をより小さくすることができたのです。

同時に、受話スピーカーが縁に移動したことで、iPhoneを耳に当てたときに、スピーカー位置がズレて聞こえにくいこともなくなりました。細かすぎますが、毎日通話する人にとっては、ユーザビリティ向上の効果が大きいと思います。

6.1インチのProモデル、カメラは2世代分向上

iPhone 13シリーズの新色「スターライト」「シエラブルー」実物の印象はどう?iPhone 13 Proは、iPhone 13 Pro Maxに比べて、より性能向上を実感できるはずです。その理由は、広角カメラの進歩。いってみれば、2世代分の飛躍があったからです。

昨年、iPhone 12 Pro Maxには、大型センサーとセンサーシフト式手ぶれ補正が備わりました。このセンサーは、iPhone 13、iPhone 13 miniにも採用されている17μmピクセルのものですが、昨年のiPhone 12 Proには用いられていませんでした。

つまり、iPhone 13の方が、iPhone 12 Proより大きいセンサーを使っている、ということになります。

しかしiPhone 13 Proも負けていません。2021年は、iPhone 13 Pro Maxと同じ、19μmピクセルのさらに大きなセンサーを、センサーシフト式手ぶれ補正で備えるようになりました。これが、iPhone 13 Proの広角カメラが2世代分一気に向上した、と言う理由です。

手ぶれに強く、動画も滑らかにパンすることができます。光を2.2倍多く集めることができ、森の中、夜も、撮影を楽しむ事ができました。

コンピュテーショナルフォトグラフィーも進化しています。シネマティックモードでの動画も、動画撮影が「表現」に昇華するほどのインパクトを持っています。これらの機能はiPhone 13でも利用できる、iPhone 13シリーズの共通の機能だった。また別の機会にじっくりご紹介したいと思います。

しかし光学性能はカメラの基本で、そこに妥協がなくなったiPhone 13 Proは、最もバランスの取れた魅力的な選択肢だと思いました。ところで今回の新色、どう評価しますか?

(松村太郎。Engadget日本版より転載)

カメラが楽しいiPhone 13 / 13 Pro、12からの乗り換えも「アリ」な理由

カメラが楽しいiPhone 13 / 13 Pro、12からの乗り換えも「アリ」な理由

iPhone 13シリーズ4モデル(iPhone 13、iPhone 13 mini、iPhone 13 Pro、iPhone 13 Pro Max)を試す機会を得た。

iPhone 13 Pro/Pro Max発表。120Hz画面と3眼カメラ搭載の「最もProらしいiPhone」
iPhone 13発表。「他社主要スマホより50%速い」A15 Bionic搭載、ノッチは縮小
iPhone 13 mini発表。小型サイズにセンサーシフト式手ぶれ補正、バッテリー持ちも改善

4モデルをあれこれ使って比べてみたが、改めてiPhoneは「カメラが楽しい」と思えるスマートフォンだと認識した。

9月15日未明に行われたスペシャルイベントでは動画撮影での「シネマティックモード」がやたらとアピールされていた。手前にいる人物にピントが合っているが、奥にいる人物のほうを向くと、奥の人物にピントが合うというシーンが繰り返された。

カメラが楽しいiPhone 13 / 13 Pro、12からの乗り換えも「アリ」な理由カメラが楽しいiPhone 13 / 13 Pro、12からの乗り換えも「アリ」な理由
あれを見て「別にiPhoneで映画なんて撮らないし」と思った人も多いのではないだろうか。

確かに「シネマティック」といわれれると、自分には縁遠い機能にも感じてしまう。しかし、実際に使ってみると、これが意外と楽しいのだ。

「シネマティック」というが、実際は背景がボケる静止画のポートレート撮影が動画にも対応したというのに近いかも知れない。iPhone 13シリーズでは被写体との深度もきちんと把握している上で動画撮影を行っている。

通常のビデオ撮影では深度が深く、手前も背景も比較的、しっかりととらえている感があるが、シネマティックモードにすると被写体にきっちりとピントがきて、背景がボケる感じが強調される。まさに動画版のポートレート撮影といった感じだ。カメラが楽しいiPhone 13 / 13 Pro、12からの乗り換えも「アリ」な理由

イベントでは人物が振り向くことで自動的にピント送りされる機能がアピールされたが、実際にはそんなシーンは日常生活ではあまりない。ただ、iPhone 13では画面をタッチすれば、そこにピントが合う一方、別の場所はかなりボケた感じになってくれる。カメラが楽しいiPhone 13 / 13 Pro、12からの乗り換えも「アリ」な理由

使っていて「すごい」と感じたのが、撮影した後の動画でも、自由にピントの合う場所を変えることができてしまうのだ。

実際に4歳11ヶ月の子供を撮影してみたが、背景にいる他人がボケて、子供だけにフォーカスが合う動画になるのは、ちょっとカメラ撮影が上手くなった感がある。

SNSで動画などをあげる際に、背後に映っている人が気になり、場合によって編集でぼかしを入れるなんてことも必要になるが、シネマティックモードならそうした手間も不要になる。もちろん、通常通り、背景もしっかりと記録しておきたい映像を撮りたいのならば普通のビデオで撮影すればいい。

アップルはこのシネマティックモードをiPhone 13 Pro、iPhone 13 Pro Maxだけでなく、ノーマルのiPhone 13、iPhone 13 miniにも搭載している点が太っ腹だ。より多くの人がシネマティックモードを楽しめるだろう。

ドコモの「衝撃的」購入補助で「iPhoneを毎年買い替える」が容易に

ただ、今年のiPhone 13は去年のiPhone 12と比べて小粒な進化にとどまっている感は否めない。「今年はスルーしようかな」という人もいるのではないか。

しかし、そんな空気を察知したのか、アップルとキャリアはいままで以上に気軽に機種変更できるような施策を打ち出している。

ここ数年、総務省が端末販売に対しての割引を規制しているため、スマートフォンの買い換えがしにくくなった。昨年、各キャリアで5Gが始まったにもかかわらず、5Gへの盛り上げに水を指す結果となりつつある。

そんななか、アップルはこの数年、iPhoneを購入する際、「下取り」を推している。Apple Trade Inという仕組みを紹介し、今使っているiPhoneを下取りに出しつつ、新しいiPhoneを購入する際に割引するというものだ。

海外のアップルストアではかなり前から当たり前のように展開されていたが、日本のアップルのサイトではこの数年で見かけるようになった。端末販売の割引が厳しくなる中での苦肉の策と言えるだろう。

今年、最も衝撃的なのは、NTTドコモが購入プログラムを変更してきた点だ。

いつでもカエドキプログラム」は、スマートフォンのモデルごとに残価が設定され、24回目の支払いをするか、しないで端末を返却して残価を免除してもらうかが選べるプログラムだ。しかも、2年よりも前に機種変更したかった場合、「早期利用特典」として、返済額から月に数百円から1500円程度まで割引をしてくれる。

カメラが楽しいiPhone 13 / 13 Pro、12からの乗り換えも「アリ」な理由
ソフトバンクや楽天モバイルでは、48回払いのうちの24回払い、つまり本体価格の半額は支払う必要があるが、いつでもカエドキプログラムであれば、本体の回収が前提となるが、もっと手軽な負担で最新機種を持つことが可能になる。

我々のような1年に1回、iPhoneを買い換え続ける人には十分、検討に値するプログラムだ。

これまでは、1年後に中古業者に買い取ってもらうことを考慮しながら、iPhoneを使うということをしていてたため「買い取り金額を下げないためにも絶対に傷を一つもつけない」と意識しながら1年間、過ごしてきたが、いつでもカエドキプログラムであれば、ちょっとした傷なら目をつむって回収してくれる。これだけでもいつでもカエドキプログラムを使う意味があるというものだ。

アップルやキャリアの取り組みを見ていると、もはやiPhoneは「1年もしくは2年使ったら回収されるもの」という認識で購入というか入手した方がいいのかも知れない。最新モデルを使い続けたいのであれば、そうした買い方を工夫していくのが賢いだろう。

世間で流行のSDGs的な見方をすれば、回収されたiPhoneは整備されて、「整備済みiPhone」として売られていく、いまではauやUQモバイルのオンラインショップで整備済みのiPhoneが売られるようにもなっている。リユースの観点からも「最新モデルを使いたい人は一目散に買い、1年経ったら回収してもらい、それを別の人が使う」という流れが地球にも優しかったりするのだ。

そうした「1年後の下取り前提で、最新のiPhone13を入手する」という買い方が、今の時代に合った買い方なのかも知れない。

(石川温。Engadget日本版より転載)

iPhone 13 miniは究極の手のひらスマホだ

究極の手のひらスマホ、iPhone 13 mini実機先行レビュー

9月24日発売のiPhone 13、iPhone 13 miniの実機に少し早く触れる機会がありましたので、エンガジェット日本版よりレビューをお届けします。

iPhone 13シリーズは2020年発売のiPhone 12シリーズ同様、iPhone 13│13 mini、iPhone 13 Pro│13 Pro Maxの4モデル構成で、画面サイズはiPhone 13とiPhone 13 Proが6.1インチ、iPhone 13 miniが5.4インチ、iPhone 13 Pro Maxが6.7インチとなっています。

関連記事:iPhone 13シリーズの仕様比較表

左からiPhone 13、iPhone 13 Pro、iPhone 13 mini、iPhone 13 Pro Max

左からiPhone 13、iPhone 13 Pro、iPhone 13 mini、iPhone 13 Pro Max

「無印かProか」という観点は別のレビューをご覧いただくとして、とにかく小さい・軽いスマホを求める人にはminiのアップデートポイントが何より気になると思います。ちなみに同じ6.1インチでもiPhone 13はProより約30グラム軽量になっています。

重量はiPhone 13が約173グラム、iPhone 13 miniが約140グラム(実測値も同)

重量はiPhone 13が約173グラム、iPhone 13 miniが約140グラム(実測値も同)

TrueDepthカメラ(ノッチ)の面積が約20%小さく

TrueDepthカメラ(ノッチ)の面積が約20%小さく

ピンクとミッドナイト。ほかにブルー、スターライト、レッドの全5色展開

ピンクとミッドナイト。ほかにブルー、スターライト、レッドの全5色展開

ピンクは明るめで、光の辺り加減によって印象が変わる

ピンクは明るめで、光の辺り加減によって印象が変わる

iPhone 12 miniの弱点が解消

iPhone 12同様、iPhone 13とiPhone 13 miniとの間にサイズ以外の違いはありませんが、バッテリー駆動時間はiPhone 13のほうが長くなります。iPhone 12 miniでは駆動時間に対する不満を耳にしましたが、公称値でiPhone 13 miniは約1.5時間(iPhone 13は約2.5時間)駆動時間が延長されています。まだ違いを体感できるほど試用できていませんが、1日中カメラ機能を試してもバッテリー残量が50%切らなかったので、通常使用で1日は充電しなくて十分もってくれそうな気配です。

iPhone 13|13 miniのSoCはProシリーズと同じA15 Bionic。GPUコア数は4コアですが(Proは5コア)、12シリーズで搭載していたA14 Bionicより約2割高速なので、パフォーマンスはiPhone史上最速レベルです。実際、動作はサクサクで手のひらサイズで何でもできる優越感に浸れます。究極の手のひらスマホ、iPhone 13 mini実機先行レビュー

カメラ機能がパワーアップ

カメラレンズはiPhone 12同様2眼構成ですが、センサーが大きくなったことに加え、配置が斜めに変更されました。光学センサーによる手ブレ補正や、シネマティック動画撮影といった機能も備わっています。

iPhone 12 mini(右)よりカメラ部が大型化。厚みもわずかに厚くなったため、前モデルのケースは流用できない

iPhone 12 mini(右)よりカメラ部が大型化。厚みもわずかに厚くなったため、前モデルのケースは流用できない

別売のケースはiPhone 13も同じく専用。iPhone 12とは異なり、同じ6.1インチのProともケースの互換性がなくなった

別売のケースはiPhone 13も同じく専用。iPhone 12とは異なり、同じ6.1インチのProともケースの互換性がなくなった

別売りのレザーウォレットも新しくなり「探す」機能に対応(iOS 15にアップデートしたiPhone 12でも利用可)。取り外したときの位置情報を通知してくれるようになりました。

初回装着時、「探す」に追加するダイアログが出現

初回装着時、「探す」に追加するダイアログが出現

従来のウォレットでは「探す」機能は使えない。パッケージが似ているので、購入時に注意が必要(2021の表記を要確認)

従来のウォレットでは「探す」機能は使えない。パッケージが似ているので、購入時に注意が必要(2021の表記を要確認)

超広角カメラは4倍に。ノイズリダクションにより細部を捉えることが可能に

超広角カメラは4倍に。ノイズリダクションにより細部を捉えることが可能に

ポートレートのTrueDepth(顔認証)によるボケもよりナチュラルに

ポートレートのTrueDepth(顔認証)によるボケもよりナチュラルに

スマートHDR4で、暗がりや逆光でもいい感じに撮れる

スマートHDR4で、暗がりや逆光でもいい感じに撮れる

写真撮影の機能にフォトグラフスタイルが追加。好みの画質を画面で確認しながら撮影できるようになりました。

左から「標準」「リッチなコントラスト」「鮮やか」「暖かい」「冷たい」。肌のトーンが維持されているのがポイント

左から「標準」「リッチなコントラスト」「鮮やか」「暖かい」「冷たい」。肌のトーンが維持されているのがポイント

どのスタイルで撮影したかは、写真アプリで写真を上にスワイプすると確認できます(余談ですがiOS 15から、この画面で日付などの情報を変更できるようになりました)。4つのスタイルはカスタマイズして保存しておけるので、特定のものを撮るときに自分好みのスタイルを呼び出すといったこともできます。フィルター効果とは概念が異なり、あくまで撮影時に適用されます。

なお、新機能の割にUI上では控えめな実装で、カメラの初回起動時にガイドが出るものの、有効・無効化は若干わかりにくく感じました。

カメラ撮影時、画面上部中央の矢印のような箇所をタップすると出てくるアイコン群から、ここをタップ

カメラ撮影時、画面上部中央の矢印のような箇所をタップすると出てくるアイコン群から、ここをタップ

フォトスタイル適用時は、撮影画面右上にアイコンが表示される

フォトスタイル適用時は、撮影画面右上にアイコンが表示される

シネマティックが止まらない

すっかりハマってしまったのがシネマティックという新しい動画撮影モード。簡単に言うと動画ポートレート(背景ボカシ)機能なのですが、映画でピントをどう駆使しているかを機械学習により表現に取り入れ、自動でピントが移動します。結果的に非常に「エモい」動画ができあがります。モード選択は普通にカメラモード切り替え一覧に出てきますので、すぐにわかると思います。

人物だけでなくモノでも機能する

人物だけでなくモノでも機能する

インカメラにも対応。手ブレ補正が強く働くのでジンバルを持っているかのよう。通行人のプライバシーに配慮した自撮りも動画も手軽につくれる

インカメラにも対応。手ブレ補正が強く働くのでジンバルを持っているかのよう。通行人のプライバシーに配慮した自撮りも動画も手軽につくれる

ピントやボカシの強度は写真アプリの編集機能であとから変更可能

ピントやボカシの強度は写真アプリの編集機能であとから変更可能

このシネマティックモードは、A15 Bionicでよりパワーアップしたニューラルエンジンならではの撮影機能。iPhone 13が普及したらSNSやYouTubeでよく見る表現手法になるのではないかと思うほどです。なお、シネマティックモードの撮影は現時点ではiPhone 13シリーズのみですが、AirDropによる転送でほかのiPhoneでも再生することは可能です。iOS 15にアップデートした端末上では、ピントやボカシの再調整が行なえることも確認しました。究極の手のひらスマホ、iPhone 13 mini実機先行レビュー

iPhone 13|13 miniは容量128GB〜で10万円を切る価格から購入できます。最大容量も512GBモデルまで用意され、ハイエンド志向の方でも重量・サイズを重視する人には魅力的な選択肢かと。とくにminiは、手のひらに収まるiOSデバイスとしては最も高機能が詰め込まれた作品と言えるでしょう。

iPhone 13シリーズの動画レビューも是非ご覧くださいね。

Engadget日本版より転載)

カメラ機能が同等になった「iPhone 13 Pro」「iPhone 13 Pro Max」実機先行レビュー

カメラ機能が同等になった「iPhone 13 Pro」「iPhone 13 Pro Max」実機先行レビュー

9月24日発売のiPhone 13 Pro|13 Pro Maxの実機を少し早く試す機会がありましたので、エンガジェット日本版よりレビューをお届けします。

iPhone 13 ProシリーズはiPhone 12 Pro同様、無印・miniよりもカメラ機能が上位仕様となっているほか、外装がよりゴージャスなステンレス製に、Maxは6.7インチの大画面となっているのが特徴です。

関連記事:iPhone 13シリーズの仕様比較表

重量はiPhone 13 Proが約203グラム(実測は205グラム)、iPhone 13 Pro Maxが約238グラム(実測は239グラム)と、どちらも前モデルより微増

重量はiPhone 13 Proが約203グラム(実測は205グラム)、iPhone 13 Pro Maxが約238グラム(実測は239グラム)と、どちらも前モデルより微増

こちらはゴールド。カラーバリエーションはパシフィックブルーがシエラブルーになった以外は従来通り。3眼カメラはiPhone 12と異なりProとPro Maxで同じ仕様となった

こちらはゴールド。カラーバリエーションはパシフィックブルーがシエラブルーになった以外は従来通り。3眼カメラはiPhone 12と異なりProとPro Maxで同じ仕様となった

iPhone 12 Pro Max(右)よりもカメラが大きくなっている

iPhone 12 Pro Max(右)よりもカメラが大きくなっている

これまでiPhone 12 Pro Maxのカメラは相当大きく感じていましたが、しばらくiPhone 13 Proを使ってから改めて見ると、小さく感じてしまうので慣れって不思議ですね。

ポイントはディスプレイと撮影機能

iPhone 13 Pro|iPhone 13 Pro Maxは、有機ELディスプレイも新しいものを採用しています。

関連記事: iPhone 13 Proの新OLEDディスプレイは体験レベルを引き上げる

iPhone 13シリーズ共通で、前モデル(右)よりTrueDepthカメラ(ノッチ)の面積が約20%小さくなっている。センサーだけでなくスピーカー位置も異なるため、前モデルの保護フィルムやガラスプロテクターは流用できない

iPhone 13シリーズ共通で、前モデル(右)よりTrueDepthカメラ(ノッチ)の面積が約20%小さくなっている。センサーだけでなくスピーカー位置も異なるため、前モデルの保護フィルムやガラスプロテクターは流用できない

画面輝度は、標準時で最大1000ニトに向上(HDR表示の最大値は1200ニト)。iPhone 13|13 miniも800ニトに向上しているがProはさらに明るく、炎天下でも白がクッキリと出て見やすい

画面輝度は、標準時で最大1000ニトに向上(HDR表示の最大値は1200ニト)。iPhone 13|13 miniも800ニトに向上しているがProはさらに明るく、炎天下でも白がクッキリと出て見やすい

iPhone 12 ProはiPhone 12 Pro Maxとカメラスペックが異なっていましたが、iPhone 13 Proは Maxとまったく同じ仕様になりました。iPhone 13|13 miniシリーズとのおもな違いは3眼カメラを備え、光学3倍ズームや2センチまで寄れるマクロ撮影に対応した点などです。

デジタルズームに頼らず中央のビル群をここまで拡大できる

デジタルズームに頼らず中央のビル群をここまで拡大できる

被写体に2センチまで寄れるマクロモード。近づいていくとモードが自動で切り替わる

被写体に2センチまで寄れるマクロモード。近づいていくとモードが自動で切り替わる

抹茶の粉末に寄ってみたら、未知の惑星の大地のよう

抹茶の粉末に寄ってみたら、未知の惑星の大地のよう

マクロモードはOPPO Find X3 Proの顕微鏡モードほど理科の実験的ではありませんが、モード選択も不要で日常で気軽に使えるので、新しい発見のツールになりそうです。

光学ズーム、マクロ以外の撮影機能は(レンズサイズが違うので細かい差はあると思いますが)、基本的にはiPhone 13|13 miniと同じですので、iPhone 13|13 miniのレビューも是非ご覧ください。

関連記事: iPhone 13|13 mini 実機先行レビュー

動画撮影は、デュアル光学の手ブレ補正(望遠・広角)に対応。ストレージ容量は最大1TBのモデルがあるので、最高画質の動画をたくさん撮りたい人はProを選ぶといいと思います。

とくに新しいシネマティック撮影モードは本当に使っていて興奮する楽しさがありました(iPhone 13|13 miniでも使える機能です)。被写界深度を取り込み、映画のようなピントの変化を機械学習によりiPhoneの表現に取り入れたものです。

iPhone 13 Proでは光学ズームを利用したシネマティック撮影も可能

iPhone 13 Proでは光学ズームを利用したシネマティック撮影も可能

ピントやボカシの強度は写真アプリの編集から変更可

ピントやボカシの強度は写真アプリの編集から変更可

シネマティックで撮影した動画のSNSやYouTubeでの活用が進みそうな予感がしています。

最高峰のグラフィックス性能

iPhone 13シリーズは全モデルSoCに最新のA15 Bionicを搭載していますが、ProはGPUコア数が5コア(無印・miniは4コア)になっています。これはiPhoneシリーズだけでなく、全スマートフォン中で最高のグラフィックス性能となります。また、有機ELディスプレイの描画がより高速なProMotionに対応しているのもProのみの仕様です。

画面の描画速度を状況に応じ自動で調整

画面の描画速度を状況に応じ自動で調整

ハイエンドAndroidスマートフォンで120Hz対応ディスプレイ搭載をうたっているものがありますが、ProMotionも技術的には同じもので、Apple製品ではすでにiPad Proで採用されていました。10Hz〜120Hzの可変式となっているのが特徴で、体感速度が上がっただけでなく電力効率もよくなっており、バッテリー駆動時間の延長にも貢献しています。実際に使ったうえで120Hz出ている瞬間がわかるわけではないのですが、高速スクロールや激しい動きのアクションゲームなどでは差が出ている気がします。

私の周りにはカメラ機能が同等になったことで、今回はPro MaxではなくProを選んだという方が多いのですが、個人的にはバッテリーが最も長くもち、大画面のMaxでiPhone 13の新機能をマックスで楽しみたいと感じています。

新色シエラブルーのレビューも掲載していますので、気になる方はどうぞ。

iPhone 13シリーズの新色「スターライト」「シエラブルー」実物の印象はどう?

iPhone 13シリーズの動画レビューも是非ご覧ください。

Engadget日本版より転載)

【レビュー】オフロードも走れるeバイクUBCO 2×2 Adventure Bike、キレのあるユーティリティ

最近ニュージーランドのオークランドに引っ越してきたことで、筆者はeバイク(電動アシスト自転車)に興味を持つようになった。公共交通機関があまり発達しておらず、自転車でちょっと店に出かけるだけで汗を流すワークアウトになりそうな丘陵地帯がある都市だ。

だが旺盛な需要と高騰する価格により、ここ長く白い雲のたなびく国、アオテアロア(ニュージーランドを表すマオリ語)では切望されるeバイクへのアクセスは厳しくなっている。ニュージーランドに拠点を置く電動バイクスタートアップのUBCOが最近、投資家から1000万ドル(約11億円)の資金を調達したことで、この状況に変化が訪れた。

関連記事:電動ユーティリティバイクUBCOは持続可能性に優れるサブスクモデルで世界展開と循環型経済分野のリードを目指す

同社は筆者にUBCO 2×2 Adventure Bikeを1カ月近く提供してくれたので、試してみる時間は十分にあった。

筆者自身はUBCOのターゲットユーザーとは言えないかもしれないが、設計が示唆する通りにバイクを最大限に活用しようと、配送されるガーリックブレッドや郵便その他の荷物の重さを模した、本などの重いものをバッグに詰めて荷造りした。UBCO 2×2 Adventure Bikeは都市部の公共交通機関向けに作られており、オフロード走行も可能だ。

同社のフラッグシップは、もともと農家を助けるために設計された電動ダートバイク、UBCO 2×2 Work Bikeである。同社が6月に調達した新たな資金は、食品配送、郵便サービス、ラストマイル物流などの既存の垂直市場への拡大、商業サブスクリプション事業の拡張、そして米国での売上増の目標達成に充てられる。

ここオークランドでは、また聞くところによると英国でも、ドミノ・ピザのドライバーたちがUBCOのバイクでホットピザを配達する光景が見られる。同社はNew Zealand Post、国防軍、自然保護局、Pāmu、Landcorp Farming Limited、その他地元のレストランや店舗など、さまざまな国内クライアントを擁している。

画像クレジット:Rebecca Bellan

ハンドオフ

CEO兼共同創業者のTimothy Allan(ティモシー・アラン)氏は、個人的にバイクをハンドオフするため、本社のあるタウランガから車でやってきた。筆者の家の近所は晴れていて、同氏が各種のこまごまとしたもの、マシンの使い方や充電方法を説明する様子に、筆者は辛抱強く耳を傾けた。

アラン氏の助けを借りて、携帯電話と自転車をペアリングするためのUBCOアプリをダウンロード。いくつかの機能の中から、時速約20マイル(約32km)で走行できるビギナーモードを選ぶことになった。ここに書こうと心に留めておいたのだが、すぐに最高速度の時速30マイル(約48km)に到達しようと心に決めた。

そうしたところ……やばい、最高。大げさにさわぎたてるつもりはないんだけど!実に心地いいバイク。その理由を紹介しよう。

外観

Adventure Bikeの標準カラーはホワイトで、17×2.75インチの多用途タイヤとアルミニウム製リムが装着されている。筆者のバージョンでは、ニュージーランドの先住民に敬意を表して、フレームにマオリのステッカーが貼られていた。

自転車の高さは約41インチ(約104cm)で、シートの高さは32インチ(約81cm)だ。ホイールからホイールに至る距離は約72インチ(約183cm)となっている。ライダーを含めた積載量は約330ポンド(約149.7kg)で、パートナー(188cmの男性)と筆者(170cmの女性)は、ハンドルから突き出た大きなバックミラーを調整するだけで簡単にこの自転車に乗ることができた。もちろん一緒に乗ったわけではない。このバイクはワンシーターとして設計されている。

画像クレジット:Rebecca Bellan

とはいえ、バックホイールの上には小さなカーゴラックがあり、そこにはナンバープレート(多くの場所で登録が必要なモペッドに分類されているようである)が取り付けられている。他のカーゴラックも携行できそうだ。実際には試していないが、少なくとも5つのピザの箱をバンジーコードで縛ることはできると思う。バイクラックにはサドルバッグを取り付けることも可能。UBCOは、耐候性のロールトップカーゴバッグPannier Back Packを189ドル(約2万1000円)で提供している。

アクセサリー以外のところでは、アロイフレームは軽量でステップスルー式で、これは筆者がバイクで気に入っているものだ。完全に駐車する前にシフトを開始することができ、極めて機敏で速いと感じる。駐車に関していうと、場所によってルールが違うと思うが、ここでは歩道ではなく路上や駐車場に駐車する。それを固定するためのキックスタンドがついていて、フロントホイールをロックすることができるので、誰もホイールを回して離すことはできない。ただ、わずか145ポンド(約65.8kg)なので、望むならピックアップトラックの後ろに載せることもできるだろう

バイクの外観は、筆者に対してだけでなく際立っていた。数週間にわたる試乗の間に、まさしくUBCOが目指しているターゲット層であろう、多くの商売人や自転車愛好家たちが、そのデザインを称賛しにきてくれた。

乗車性

バイクの軽さは、簡単にバランスを取ることができることを意味する。バッテリーはフレームの中央の足元近くにあり、バイクをしっかり固定して安定した重心を与えてくれる。

軽量であることは祝福であり、災いのもとでもある。道を曲がるのは簡単だが、風の強い日や道が開けているときには、ひっくり返されるのではないかと心配する瞬間があった。ただ、それは道路で10輪車の隣を走ることと関係があるかもしれない。とても軽いので、自転車専用レーンではなく、他の大きくて意地の悪い車と一緒に車道にいるのは、少し違和感があった。

高トルクのギヤードドライブトレインにより、急な坂道でもフルエレクトロニックスロットル制御ですばやく加速する。ドライブトレインには、密閉ベアリング、アクティブな熱管理、残留水分のためのアクティブベント(この湿気の多い都市では欠かせない機能だ)を備えた2つの1kWのFlux2モーターが搭載されている。

加速音は、ガソリンを動力とするダートバイクの音に似ているが、電子音はよりソフトで、意外な長所だった。UBCOに乗るまで、自分がどれだけ速く走っているかを知るのに、自分の音感にどれだけ依存しているかに気づいていなかった。

ブレーキシステムは少し敏感だ。油圧ブレーキと回生ブレーキが連動しているのか、とても繊細な感覚を覚えた。また、受動的な回生ブレーキシステムもあり、これはあの巨大な丘の1つを惰性で走ろうとしていたときにブレーキをかけたものだと思う。

画像クレジット:Rebecca Bellan

130mmのフロントサスペンションと120mmのリアサスペンションの両方に、油圧緩衝器付きのコイルスプリングと、プリロードとリバウンドの調整がある。つまり、この衝撃はすばらしい。積極的に歩道を走り、速度が上がっても、ほとんど何も感じなかった。

オフロードでの性能をテストするためにコーンウォール公園にバイクを持ち込んだ。芝生の上で全速力で走り、木々の間を横切り、木の根や岩の上を飛び、フィールドでドーナツ走行をした。それはとても楽しく、完全に車をコントロールできていると感じた。なぜ農家がワークバイクに目を向けたのか想像がつく。

配達用バイクとしての用途をテストするときには、2つのサドルバッグに本や食料品を詰め込んで一走りした。それもまたすばらしい乗り心地だったが、コツをつかむまでは少しふらついてしまった。

バリュー

UBCOのAdventure Bikeは、特定の自転車カテゴリーにうまく収まらないため、単純な価格比較とはならないだろう。Lexmoto YadeaやVespa Elettricaのような電動モペットなら、それぞれ2400ドル(約26万円)と7000ドル(約88万円)から購入できる。電動ダートバイクの価格は、KTMやAlta Motorsなどで6000ドル(約66万円)から11000ドル(約121万円)程度になる可能性がある。とはいえ、スウェーデンの電動モーターバイクスタートアップCakeは、3500ドル(約38万円)の都市専用最新モデルMakkaを発売したばかりだ。

関連記事:スウェーデンのCakeが都市部向け電動モペッド「Makka」を発表

UBCOのAdventure Bikeの価格は、2.1kWの電源で6999ドル(約77万円)、3.1kWで7499ドル(約82万円)となっている。用途にもよるが、この種の自転車にしてはミッドレンジあたりだろう。仕事関連の活動に使用する可能性が高い場合は、税金の控除を受けることができる。さらに、重いものにも対応するためダウンしたバイクの品質を求めるなら、UBCOはそれを十分に備えている。これは便利なユーティリティバイクであるだけでなく、後述するような秀逸なテクノロジーも備えている。

UBCOの推定寿命は10〜15年で、用途によって異なる。無線ソフトウェアのアップデート、部品の交換、全面的な改修によって、自転車を長持ちさせることができるだろう。同社は完全なプロダクトスチュワードシップを約束しているので、使用済みバイクを返却するようライダーに勧めている。

ただし、今バイクを購入したい場合には、予約注文となることもある(地元のUBCOディーラーに在庫がない場合)。今注文すれば、米国在住であれば9月までにUBCOを入手可能だ。同社は、需要が高く、サプライチェーンが引き延ばされて遅れが生じていることから、新型コロナの影響をまだ感じていると話す。予約には1000ドル(約11万円)の前払い金が必要だ。

UBCOにはサブスクリプションモデルもあり、現時点では主にエンタープライズ顧客向けに提供されており、ケースバイケースで価格が設定されている。一方で、このプログラムを全世界に展開する前に、オークランドとタウランガで個人向けのサブスクリプションを試行している。サブスクリプションは36カ月間、月額300ニュージーランドドル(約2万3600円)前後から開始される予定である。

航続距離

Adventure Bikeのバッテリーパックは、航続距離約40~54マイル(約64.4~86.9km)の2.1kWhと航続距離60~80マイル(約96.6~128.7km)の3.1kWhが用意されている。

バッテリーは「Scotty」と呼ばれる管理システムで稼働し、リアルタイムのパフォーマンスと安全性を監視する。バッテリーはアロイで密閉され、使用中は排気されるが、1万8650個のリチウムイオンセルで作られており、最大500回の充電サイクルに対応できる強力なバッテリーである。UBCOによると、同社のバッテリーは寿命がきたら分解できるように設計されているという。

画像クレジット:Rebecca Bellan

10アンペアのアロイ製高速充電器は、4時間から6時間でバッテリーを完全に充電できる。車両内にある状態で電源コンセントに接続するだけで充電することも、バッテリーのロックを解除してバッテリーを引き出し(少し重い)、室内で充電することも可能だ(注記:充電の音は大きい。これが標準かどうかは定かではないが、おそらくそうなのだろう)。

筆者は2〜3日ごとに充電したが、それは使用状況と場所によることになるだろう。オークランドは今冬なので少し寒く、バッテリーの寿命に影響を与えているし、丘陵地帯は過酷だからバッテリー寿命を大量に消費する。

毎日のようにダウンタウンや近所を走り回っていたが、配達ドライバーなら夜間に充電が必要になることもあるだろう。先に述べたように、バッテリーは充電のために取り外すことができるので、仕事で使う場合は、オフィスなどに持ち込んで、他の作業をしながら充電することも可能である。

テクノロジーの特徴

車両管理システム

この車両は、UBCOがCerebro vehicle management systemと呼ぶシステムで動作する。このシステムは、車両のすべての電子的および電気的機能を統合し、Bluetooth経由で制御とアップデートを提供する。UBCOは寿命を考慮して構築されているため、CANバスは隔離されており、将来のCANデバイスを簡単に統合できるようになっている。

さて、筆者が最初に疑問に思ったことの1つは、このバイクの重量と、都会の生活の中で仕事をするためにそれに乗るギグエコノミーの労働者の可能性を考えると、次のようなことだった。路上に置かれたときに、誰もこれを盗まないようにするにはどうすればいいのだろうか。5階まで引き上げることはできないだろうから。

前にも述べたように、ホイールを所定の位置に固定することができるので、ホイールを外すのはかなり難しくなる。また仮に誰かがこの扱いにくい車両を丸ごと捕獲した場合でも、UBCOが追跡してくれる。UBCOの各バイクにはテレメトリ(SIMカード)が内蔵されており、位置情報、サービス、盗難、安全性、経路計画などに利用できるデータを提供する。

このVMSアーキテクチャは、UBCOのエンタープライズサブスクリプション車両経由でフリートを処理するために作られているが、明らかに他の用途もあり、例えば心の安らぎを与えてくれる(個人的にはまだチェーンでロックしているが、筆者はニューヨーカーで誰も信用していない)。もちろん、このテレメトリが不気味だと思う人はオプトアウトすることができるが、サブスクリプションには標準装備されており、ユーザーはアプリ上で自分のバイクの位置を追跡できる。

ディスプレイ

画像クレジット:Rebecca Bellan

ハンドルバーには、速度、電力レベルなどを表示するLCDディスプレイが搭載されている。また、ハイビーム、ロービーム、インジケータ、ホーンのスイッチコントロールもハンドルバーにある。インジケータが少し厄介で、時々スリップしてクラクションを鳴らしてしまった。ハンドルバーにもスマートフォン用のマウントがあればいいのにと思った。そうすれば指示に従うことができる。ヘッドホンをつけてGoogleマップで道順を教えてもらうのを聞いたりしたが、あまり安全で効率的ではないと感じた。

電源オン

キーレスフォブで電源を入れるには、フォブのボタンかハンドルバーのボタンをクリックする。キーレスフォブボタンは奇妙に敏感だということに注目したい。何度か携帯電話やポケットに入れていたのだが、乗車中にボタンにぶつかって電源を落としていたに違いない。ありがたいことに、それは混雑したところでは起こらなかったが、注意すべきことである。

アプリ

前述の通り、アプリを使って自分のスマートフォンや他のユーザーのスマートフォンをバイクにペアリングすることができる。このアプリでは、学習者モードか制限モードを選択して、乗車設定を制御することができる。バイクとライトのオンオフの切り替えをする。メトリクスを変更する。バッテリーの寿命、速度、モーターの温度などの状態を確認する。基本的にはダッシュボード上のすべての情報だが、アプリ上にあるので、使う必要性を感じなかった。

ライト

LEDヘッドライトは、車両の電源が入っているときは常に点灯しているが、ハイビーム、ロービーム、そして周辺パーキングライトも装備されており、これらはすべて寿命後に分解するように設計されている。LEDバックライト、ブレーキライト、ナンバープレートライト、DOT認定の表示灯もある。

その他のこと

他のカテゴリーにうまく当てはまらない機能の中には、フィールドキットが挙げられる。このキットはリフトアップシートに固定されており、ユーザーマニュアルと、2×2のセットアップとメンテナンスのためのツールが含まれていて、とても使い勝手が良い。通常、UBCOのバイクを購入すると箱に入ってきて「乗る準備をするための簡単なステップがいくつかある」。UBCO Universityのコースでも設定方法の説明がある。UBCOのディーラーから購入した場合には、集荷時に開梱して設置してくれる。

メンテナンス

メンテナンスは月額サブスクリプションで提供される。UBCOでは、修理が必要な場合に備えて、同社がバイクを販売するすべての場所に技術者のネットワークを設置している。近くに正規の整備士がいない場合は、UBCOの本社が顧客と連携してバイクの修理を支援する。UBCOは、同社のネットワーク内に承認された整備士が何人いるかについては回答しなかった。

繰り返しになるが、ニューヨーク出身の筆者はこれまで、何千人もの配達人がバイクやモペッドに乗る姿を目にしてきた。彼らはプラスチックの袋に入れられたオーブン用のミットをハンドルバーに貼り、寒さの中でも手を暖かく保てるようにしていた。このバイクは荷物を運ぶための重い荷物を扱うことができ、交通の流れにすばやく機敏に対応し、乗りやすくて使いやすい。

特にエンタープライズ向けのサブスクリプションサービスは、さまざまな気象条件に対応できる優れたシティバイクに仕上がっている。雨や泥を扱えることはすでに明らかで、あらゆる兆候が、北部の都市の冬の、雪解けでぬかるむ凍てつく地獄での成功を示している。そしてこれはまた、冒険家、つまり路上やオフロードで、街を出て荒野に向かっていく、何かいいものに乗りたいと思っている人に向けた、かなり長持ちする優れた消費者向けバイクでもあるだろう。

画像クレジット:Rebecca Bellan

原文へ

(文:Rebecca Bellan、翻訳:Dragonfly)

GoPro HERO10 Black実機レビュー、新プロセッサーGP2搭載で5.3K/60フレーム撮影や4K/120フレーム撮影対応

GoPro HERO10 Black実機レビュー、新プロセッサーGP2搭載で5.3K60フレーム撮影や4K120フレーム撮影対応日本時間9月16日、GoProはアクションカムの新モデル「GoPro HERO10 Black」(以下、HERO10)を発表。GoPro.comにて販売を開始しました。GoPro.comでの価格は6万4000円(税込)となり、年額6000円の「GoProサブスクリプション」加入者、もしくは購入と同時に加入する場合は5万4000円(税込)で購入できます。

ちなみにGoProの製品ラインナップはHERO10が追加された格好となり、1世代前のHERO9に加え、GoPro HERO8 Black(以下、HERO8)やGoPro MAXも併売されるとのこと。GoPro HERO10 Black実機レビュー、新プロセッサーGP2搭載で5.3K60フレーム撮影や4K120フレーム撮影対応

そんなわけで今回は、HERO10を先行して試用させていただく機会が得られたので、実機とともにご紹介していきます。GoPro HERO10 Black実機レビュー、新プロセッサーGP2搭載で5.3K60フレーム撮影や4K120フレーム撮影対応

プロセッサーの刷新で撮影性能がアップ

GoPro HERO10 Black実機レビュー、新プロセッサーGP2搭載で5.3K60フレーム撮影や4K120フレーム撮影対応

GoPro HERO10 Black実機レビュー、新プロセッサーGP2搭載で5.3K60フレーム撮影や4K120フレーム撮影対応

HERO10(左)とHERO9(右)を並べてみました

早速ですが、やはり気になるのは「昨年のGoPro HERO9 Black(以下、HERO9)と何が違うのか」ですよね。HERO10の最も大きな進化点は、GoPro HERO6 Blackから採用されていた「GP1」プロセッサーが「GP2」へと刷新されたこと。GoPro HERO10 Black実機レビュー、新プロセッサーGP2搭載で5.3K60フレーム撮影や4K120フレーム撮影対応

これにより撮影性能が大幅に向上し、動画撮影では5.3K/60フレームまで、4Kでは120フレームまで、2.7Kでは240フレームまでに対応(静止画撮影は23MP)しました。また、高感度性能の向上により、暗所でのノイズ軽減も実現したと言います。加えて、手ブレ補正機能のHyperSmoothは「HyperSmooth 4.0」へと進化、従来よりもブレ補正が強化されているとのこと。タッチ操作の反応向上やフロントディスプレイのフレームレート向上といった操作性アップもGP2採用によるものです。

5.3K動画から切り出した静止画。切り出しでも15.8MP(5K 4:3からの切り出し時は19.6MP)と十分な解像度です

5.3K動画から切り出した静止画。切り出しでも15.8MP(5K 4:3からの切り出し時は19.6MP)と十分な解像度です

以下の動画はHERO10とHERO9でHyperSmoothの効き具合を比較したもの。そもそもHyperSmooth 3.0でもブレ補正がかなり効いているのですが、HERO10のほうがよりブレが少ないように思えます。とはいえ正直なところ劇的な差ではないかな……。

続いて下の動画は暗所撮影での比較。こちらは差がはっきりわかるレベルで、HERO9と比べるとHERO10のノイズが少ないのがわかります。ただし動きが激しくなるとHERO10でも厳しい印象でした。また、ISO感度は最大6400まで設定可能ですが、3200以上はかなりノイジーになるので注意が必要です。

5.3K/60フレームでも撮影してみましたが、解像度が高いほどファイルサイズも大きくなる(5.3K60フレームだと15秒で200MB程度)ので、なんでもかんでも5.3Kで撮影するのではなく、用途に合わせて設定変更するのが良さそうです。

GoPro HERO10 Black実機レビュー、新プロセッサーGP2搭載で5.3K60フレーム撮影や4K120フレーム撮影対応そのほか機能面でHERO9からの大きな変更はなく、耐衝撃性や10m防水対応も従来どおり。GoProをWebカメラとして使ったり、スマートフォンとGoProのみでライブ配信が行ったりといった、HERO9でできていたことは基本的にHERO10でも同様にできます。

GoPro HERO10 Black実機レビュー、新プロセッサーGP2搭載で5.3K60フレーム撮影や4K120フレーム撮影対応

基本的にはUIも変更はありません

目新しい機能として挙げられるのは、スマートフォンとGoProを有線で接続し、ファイルの転送が行えるようになったことでしょうか。HERO8以降(GoPro MAX除く)のモデルが対応しており、従来の無線接続よりも高速にスマートフォンへファイルの転送が行えます。

iOS、Androidともに対応しますが、iPhoneの場合は「Lightning - USBカメラアダプタ」などの変換アダプターが必要になります

iOS、Androidともに対応しますが、iPhoneの場合は「Lightning – USBカメラアダプタ」などの変換アダプターが必要になります

外観はほぼ変更なし。HERO9向けアクセサリーがそのまま利用可能

iOS、Androidともに対応しますが、iPhoneの場合は「Lightning - USBカメラアダプタ」などの変換アダプターが必要になります一方で外観はと言うと、なんとなくお気づきの方も多いかもしれませんが、見た目はほぼ変わらずです。

正面(左)と背面(右)

正面(左)と背面(右)

左側面(左)と右側面(右)

左側面(左)と右側面(右)

上部(左)と底面(右)

上部(左)と底面(右)

背面に2.27インチのタッチ対応ディスプレイ、レンズ側に1.4インチカラー液晶を備える点に違いはなく、本体サイズもHERO9と全く同じ(W71.0mm x H55.0mm x D33.6mm)。左側面に電源ボタン、上部に撮影ボタン、底面の格納式マウントフィンガーなども従来どおりです。変更点は重さがHERO9より5g軽い153gとなったことと、ロゴの色が青に変わったことくらいしかありません。

見た目で違いはわかりませんが、レンズカバーの撥水性が向上しているとのこと

見た目で違いはわかりませんが、レンズカバーの撥水性が向上しているとのこと

カメラ底面には格納式のマウントフィンガーを装備

カメラ底面には格納式のマウントフィンガーを装備

バッテリーはHERO9と共通で容量1720mAhのものを採用。バッテリーの充電やPCなどとの接続はUSB Type-Cポート経由で行えます

バッテリーはHERO9と共通で容量1720mAhのものを採用。バッテリーの充電やPCなどとの接続はUSB Type-Cポート経由で行えます

そのため、アクセサリー類はHERO9向けのものと共通になります。指向性マイクや3.5mmマイク端子、ミニHDMIポートなどが追加できる「メディアモジュラー」や、強力な手ブレ補正でカメラをぶん回しても水平維持をしてくれる「Maxレンズモジュラー」なども現行のHERO9向けのものがそのまま利用できます。

「メディアモジュラー」と「ディスプレイモジュラー」を装着するとこのような感じに

「メディアモジュラー」と「ディスプレイモジュラー」を装着するとこのような感じに

HERO9と同じくレンズカバーの取り外しが可能で、「Maxレンズモジュラー」にも対応します

ただし「Maxレンズモジュラー」は現段階では利用不可で、今後のファームウェアアップデートでの対応になるようです

ただし「Maxレンズモジュラー」は現段階では利用不可で、今後のファームウェアアップデートでの対応になるようです

自動編集が優秀なスマーフォンアプリ「Quik」

スマートフォン向けアプリ「Quik」と連携させればGoPro本体の操作もできます

スマートフォン向けアプリ「Quik」と連携させればGoPro本体の操作もできます

HERO9をレビューした時にも感じましたが、GoProと連携して使えるスマートフォン向けアプリ「Quik」が便利。アプリ上から、設定変更を含めたGoProのコントロール、動画 / 写真の確認、1080p 品質でのライブストリームなどが行えるほか、動画の自動編集機能まで備えています。

カメラに触れずにGoProの操作ができるのもメリットですが、動画の自動編集機能が秀逸です。複数の動画を選ぶだけで、アプリが自動的にいい感じのシーンを抜き出して音楽やモーションをつけて1つの動画に仕上げてくれます。完成した動画をスマートフォンに転送すれば、SNSなどでのシェアも簡単というわけです。

というわけで、車のダッシュボードにHERO10を設置してTimeWarpで撮影し、自動編集機能を使ってみました。編集そのものにかかった時間はわずか1〜2分でしょうか。もっと作り込むこともできますが、ある程度のクオリティの動画が気軽に作れるのは良いですね。

やっぱり使いやすい定番アクションカム

GoPro HERO10 Black実機レビュー、新プロセッサーGP2搭載で5.3K60フレーム撮影や4K120フレーム撮影対応HERO10は現状のGoProで最もハイスペックなモデル。外観は前モデルとあまり変わりませんが、中身は確実に進化していました。また、長い間進化を続けている製品なので、アプリなどを含めて使い勝手は良好です。

少しでもコストを抑えたいのであればHERO8、HERO9を選択肢に入れてもいいのかもしれませんが、HERO9との価格差が5200円(GoProサブスクリプション加入者の場合)なので、悩むならHERO10を選んでおけば後悔することもないでしょう。HERO9ユーザーであれば、アクセサリーが共有できるので買い増しして、2台体制にするというのもありかもしれませんね。

自撮りもバッチリ GoPro HERO9 Black 速攻レビュー  5K動画撮影やWebカメラ化も可能

(こばやしなおき。Engadget日本版より転載)

【レビュー】フェイスブックのスマートグラス「Ray-Ban Stories」は「おもちゃ」レベルを超えている

このFacebook(フェイスブック)初のスマートグラスは、Facebook製品のようには感じられない。

Facebookのロゴが刻印されていたり、小さな文字でその名前がシリアルコードの横に印字されていたりもしない。この製品は「Facebook Stories」でも「Ray-Ban(レイバン)のFacebook Stories」でも、あるいは「FacebookとのコラボレーションによるRay-Ban Stories」でもないのだQuest 2やPortalのような他のFacebookデザインハードウェアとは異なり、このRay-Ban Stories(レイバン・ストーリーズ)は、まるで同社がヒットのためのユースケースを正確に知っていたかのように、より自己認識し抑制されていて、余計なことをしようとするのをやめたもののように感じられる。

関連記事:フェイスブックがレイバンと共同でスマートサングラス「Ray-Ban Stories」発売、約3.3万円から

アイウェア大手の仏EssilorLuxottica(エシロール・ルクソティカ)と提携して作られたこのメガネは、Facebookがこれまで販売したものの中でも最も基本的なデバイスだ。できることも限られている。写真や動画を撮ることができ、電話をすることができ、そして音楽を聴くことができるだけだ。そう、それだけだ。しかし、フレームのアームに埋め込まれたニアイヤー(耳近傍)スピーカーを使ってオーディオを聞けるようにしたことで、これらは5年前に出荷されたSnap(スナップ)のSpectacles(スペクタクルス)よりもはるかに実用的なデバイスとなった。

左はレイバンの従来型のWayfarers(ウェイファーラー)と右はスマートグラスのRay-Ban Stories Wayfarers(画像クレジット:Lucas Matney)

ではこのデバイスの機能と、日常での使用感について少し掘り下げてみよう。

299ドル(約3万2900円)のRay-Ban Storiesの特徴の1つは、ほとんど目立たないように着用できることだ。周りの人たちはおそらく、わずかに大きめのサイズよりも、カメラに気づく可能性の方が高いだろう。それはすでに革命的な進歩で、Spectaclesが実際に乗り越えることができなかった「おもちゃ」のレベルを超えることが実現している。標準のWayfarer(ウェイファーラー)デザインのフレームが平均よりも厚いことを考えると、レイバンとのパートナーシップは特に好ましいものだ。

周囲の人が気づく可能性が高いのは、メガネのフレームをタップしてメガネを制御するときだ。右側のアーム上のボタンを押すと30秒の動画が撮影され、長押しすると写真を撮ることができる。また「Hey Facebook、take a video(ヘイ、フェイスブック。ビデオを撮影)」という音声コマンドを使うこともできるし、写真撮影時にも同じことができる(とはいえ、私は公共の場で近くの誰かがこの言葉をいうのを耳にするのが心地良いかどうかは疑問だ)。またかなり控えめな印ではあるが、カメラが映像をキャプチャしている最中は、小さなLEDライトが点灯する。

画像クレジット:Lucas Matney

メガネの写真と動画の品質は中程度だが、デバイスのサイズを考えると、十分に許せるレベルだ。2つの5MPカメラは、2592×1944ピクセルの写真と1184×1184ピクセルの正方形フォーマットの動画を撮影することができる。品質は10年ほど前のスマホカメラ並みのようで、まだまだ改善の余地があることは明らかだ。アップロード中に行われる携帯電話での後処理によって、写真の画質が改善される。露出が高くなって暗い場所がある程度明るくなり、ややポップなものとなる。

  1. B6756C19-B7B3-438D-8F00-D654D3B18179

  2. 9F275656-2E1F-4D03-AE94-2775D32E943E

  3. 4575B0BA-B1D2-4E19-915B-23884BB7FB52

  4. 00D51738-D19C-4662-B6A3-6037EAA21877

カメラを2つ持つことで、写真に3D効果を追加することができるが、現時点ではフィルターは優れたものではなく、正直なところそれほどでもない。できれば、Facebookにはこの先ソフトウェアにもう少し投資して欲しいが、写真の品質がかなり低いことを思うと、最初に2台のカメラを搭載した理由を完全には理解できない。

また、メガネを使用するには、View(ビュー)という名の新しいFacebookのアプリにリンクする必要がある。これは基本的に、外部デバイスからメディアを携帯電話にアップロードするためのシンプルなメディアビューワーアプリだ。このアプリを使って、写真やビデオをカメラロールに保存したり、FacebookやInstagram(インスタグラム)に共有したりする前に、すばやく編集することもできる。

画像クレジット:Lucas Matney

オーディオはおそらくこのメガネの中で最も興味深い部分だ。このニアイヤー(耳近傍)スピーカーは、静かな空間ではその品質に驚かされるが、騒がしい環境にいると不満を感じるだろう。Facebookにとって残念なことは、ほとんどの屋外スペースは多少なりとも騒がしいし、サングラスはほとんど屋外で使用されるものだということだ。いざというときには屋外で音楽を聴くために使うこともできるだろうが、正直なところ自分のAirPodsをすぐに置き換えられるものとは思えない。このオーディオは、通話などのローファイなアクティビティに向いているが、屋外を歩いているときには3つのマイクアレイがバックグラウンドノイズを拾いすぎるという問題もあった。

バッテリーの寿命はかなり厳しいが、ケースでバッテリーを充電することもできる。これは、メガネを保管するのにも最適な場所だ。ケースは少しかさばるものの、Facebookはレンズを保護するためのマイクロファイバーポーチも別に提供している。Facebookによれば、6時間のオーディオ連続使用が可能で、それ以外の場合には「終日」の使用が可能だという。

奇妙なことだが防水性はもちろん防滴性も備わっていない。これは、サングラスとしては優れた品質とは思えない。これは、厚いフレームのサングラスがスマートグラスのデザインにとってより理に適っていることを示す一方で、この製品が実際には屋内向けであることを示している。

画像クレジット:Lucas Matney

本製品はFacebook初のハードウェアではないが、そこに会社の成熟の歴史を見ることができる。

本製品はAR / VRデバイスではないが、Ray-Ban Storiesのデザインの中に、Oculus Goから生まれたオンイヤーオーディオ、Gear VRを彷彿とさせるタッチパッドインターフェース、Questで最初に採用されたシンプルで抑制されたオーディオコントロールなど何世代にもわたるOculus製品を垣間見ることができる。今回のハードウェアは、長年に渡って徐々に認識は高まってきたものの、基本的にはVRに無関心な人々に販売することから学んだ機能と教訓を凝縮したものだ。

一方Facebookには、マスコミで敵の機嫌をとり、平均的なインターネットユーザーからは大いなる不信を獲得してきた歴史がある。同社はこれまでそのメッセージを台無しにし、その過程でブランド名を毀損してきたその歴史もわかっている。それらがおそらく、今回Facebookのブランドをほとんど目立たせないデザインにつながったのだろう。確かにRay-Ban Storiesには批判者が出てくるだろうが、Facebookが機能性を保守的にして、将来を見越したパッシブセンサーをあまり多く搭載しないよう選択したことは、彼らに有利に働くだろう。

Facebook Viewアプリはシンプルなものであり、またFacebookはStoriesを使用してキャプチャされた写真や動画は広告には使用されないと説明している。とはいえ、2013年のGoogle Glassのデビュー以来、私たちは確かに長い道のりを歩んできたものの、顔にあるカメラは、公共の場でのプライバシーに関しては依然として不快感を覚えさせる。このデバイスは間違いなくその話を大いに再燃させるだろう。

画像クレジット:Lucas Matney

そうした議論はさておき、私の最も強調したいポイントは、 Ray-Ban Storiesが非常に重要な製品のように感じられるということだ。これは、顔に装着するウェアラブルというアイデアを実際に販売する製品なのだ。

メガネはスマートにデザインされていて、目立たないように着用できる。だが、Facebookがそのような野心的なフォームファクターを実現するために多くの犠牲を払ったことは明らかだ。このメガネは正直なところ特に何かをうまくこなせるわけではない。写真と動画の品質はかなり劣っているし、インフレームスピーカーは屋外でのパフォーマンスが低く、通話体験も最も快適とはいえない。299ドル(約3万2900円)という価格は、この第一世代製品を一部の人に売り込むことを難しくするかもしれない。とはいえ、今回Facebookは、拡張現実の未来への道のりの足がかりとなることを繰り返し示してきた製品に対して、ほぼ正しい妥協をしたと思う。

FacebookのRay-Ban Storiesと、私が持っていた旧来のRay-Ban 2140 Wayfarersを並べてみた(画像クレジット:Lucas Matney)

関連記事
アップルがAR機能も搭載した高価格VRヘッドセット開発中と報道、発売は2022年か
VuzixがマイクロLEDディスプレイを使った「普通のメガネ」のような新型スマートグラスを発表、2021年夏発売予定
レノボが企業向けARグラス「ThinkReality A3」を発表、2021年半ば発売予定
Amazonのスマートグラスが12月から一般販売、スマートリングは廃番に

画像クレジット Lucas Matney/TechCrunch

原文へ

(文:Lucas Matney、翻訳:sako)

【レビュー】Booxタブレットは拡大する電子書籍リーダー市場で歓迎される選択肢

電子ペーパーデバイスに関して言えば、Kindleはもちろん人々が最初に思い浮かべるブランドだが、筆者はKoboやreMarkableのゴスペルも広めるよう全力を尽くしてきた。中国の電子書籍端末メーカーBooxは、この分野への比較的新しい参入者であり、そのデバイスは実験的だが、モノクロタブレットというニッチ市場では有用な選択肢だ。実際、筆者のお気に入りの小型デバイスが作られている。

関連記事:あらゆる面で初代を上回りニッチを貫くE Inkタブレット「reMarkable 2」

親会社のOnyxのブランドであるBooxは、ポケットサイズから中型サイズの電子書籍リーダー、A4サイズのタブレットまで、あまりにも幅が広すぎるという人もいるかもしれないが、さまざまなデバイスを提供している。そのブランディングは特に記憶に残るものではなく、わずかにアップデートされたバージョンがかなり定期的に出てくる。筆者が試してみたいと思っていたデバイスが、実際にはこの記事を執筆するまでの間に置き換わっていた。

統合された側面はOSで、Android 10の修正版であり、読み込みと生産性のための専用アプリがいくつか搭載されている。中国の消費者を念頭に置いて作られたこのサービスは、おそらくTechCrunch読者の方でも聞いたことのないものになるだろう。

Booxのいくつかのデバイスを試したが、最もシンプルなのは電子書籍リーダーPoke 3、より大きく複雑なNote 2、そしてスリムなNote Airと巨大なMax Lumiという具合だ。最近筆者は、eインクの最新カラースクリーンKaleido Plusを採用したNova 3 Colorに注目している。

実際には、電源を入れていないと、おそらくこれらのデバイスがすべて同じ会社のものであることはわからないだろう。ハードウェアスタイルはかなり異なるが、もちろん、グレーがかった色味でスクリーンを囲んでいる黒いタブレットには、表現の余地があまりない。

小さいながら大物

画像クレジット:Devin Coldewey / TechCrunch

最もシンプルでなじみのある6インチの電子書籍リーダーから始めよう。このカテゴリーにはKindle PaperwhiteとKobo Clara HDがあり、前者はおそらくAmazonが作っている最高の製品だが、筆者は正直なところ、品質は劣るものの後者の方が好みだ。

この分野でBooxは、(数ある中で)取り立ててキャッチーな名前というほどではないPoke 3を持っているが、フォームファクターでそれを補っている。このような小さなリーダーにとってはかなりプラトン的に理想的だ。とても気に入ったので別のレビューにまとめているが、基本的なことをここで紹介しよう。

6インチ、300ppiのスクリーンはKindleやKoboと同等の品質で、Clara HDと同様にフロントライトの色温度調節が可能だ。デバイスの前面は完全に平らになっており、筆者の好みにぴったり合っている。ベゼルの幅も広すぎず狭すぎず、持ちやすい。ポケットに入れて持ち運べるシームレスなデザインで、粉粒や水こぼれにも強い(耐水性は主張していない)。上部に電源ボタン(ありがとう)、下部にUSB-Cポートが1つある。

ハードウェアに関しては、まったく批判はない。それはもっと薄くなるかもしれないが、その寸法は、人間工学に悪影響を与えることなしにこれより小さくすることはできなかったのだと思う。その厚さを1ミリ削ることも考えられるが、そうしてもほとんど気づかないだろう。

OSはAndroidの高度にカスタマイズされたバージョンで、付属するすべての長所と短所が備わっている。筆者はKoboのインターフェースのシンプルさの恩恵を常に享受してきたが、それを複雑にしようとしているかのようだ。BooxのOSはパワフルだが、入り組み過ぎていて、どのオプションを利用可能にし、ユーザーにとってわかりやすくするかを決めるのが難しい。

画像クレジット:Devin Coldewey / TechCrunch

リーダーアプリのNeoReaderは、膨大なファイルフォーマットをサポートしており、ビューの変更、ブックやPDFのハイライトやメモなどを行うための巨大なコントロールセットを備えている。これは、フォントの調整やその他の基本的なことしか必要としない小型のデバイスよりも、大型のデバイスに適している。

すでに自分のコンピューター上に置かれている電子書籍を読むだけなら、デバイスのストレージ上の「Books」フォルダにドラッグするだけで済む。このタブはデバイスの電源を入れると表示され、いつでも簡単にアクセスできる。米国では利用できないが、すべてのタブに対応したビルトインストアがあり、ディレクトリを検索するためのファイルマネージャータブと、アプリと設定のためのタブがある。

アプリは別のカスタム状況だ。これは中国のデバイスであり、最近では何と呼ばれているかはともかく、一般的なGoogle認証のあるアプリストアはない。その代わり、PocketやGoodReader、KoboやKindleアプリなど、最も利用されている多数のリーディングアプリを独自のストアで提供している。しかし、これらは本質的にサイドロードされている。例えば、Kindleアプリは数カ月古い。これは決して大問題というわけではないが、このデバイスをそのまま使うには、Booxとそのプロキシアプリストアにある程度の信頼を置く必要がある。

関連記事:【レビュー】大型化し手書きメモもできる電子書籍リーダー「Kobo Elipsa」

もちろん、設定でGoogle Playサービスを有効にすることもでき、そこに公式ストアが追加される。しかしほとんどの人にとって、これはすでに過度の作業だ。私たちは電子書籍リーダーの選択において、一般的にシンプルで極めて簡単に使える、という点で甘やかされていると同時に恵まれていない。Androidに詳しくない人は、このデバイスを使ってKoboやKindle、おそらく後者の中から読むものを選ぶだろう。

それでも思い切った行動を取ることを望む人々にとっては可能性が豊富にある。筆者としては、Poke 3のフォームファクターが非常に気に入っているので、どのOSを使っても構わない。それに、普通は時間の99%が本の中のことに費やされるだろうから、その部分がうまく機能すれば、残りは単にケーキの上にアイシングするようなものである。

画像クレジット:Devin Coldewey / TechCrunch

6インチのスケールでは、それはあまりにも多すぎるように思える。ただしBooxの大型デバイスでは、柔軟性はより意味を持ち始める。Note 2(現在は3)、Note Air、Max Lumiのアイデアは、Androidタブレットのほぼすべての機能を、電子ペーパースクリーンの利点とともに提供することだ。そのため、レーシングゲームをするのは簡単ではないが、iPadよりもreMarkableを使っている人にとっては魅力的だろう。

関連記事:色温度を調整可能なE Inkディスプレイ搭載Androidタブ「BOOX Note 2」

多くの文書を読む場合、明るいタブレットスクリーンで読むのは、あるいはもっと言えば暗いスクリーンで読むのはいただけない。電子ペーパーのスクリーンの方が作業には適しているが、それに向けた最良のデバイスであるreMarkableは、会社の哲学全体がフォーカスを中心に回っていることから、達成できることが極めて意図的に制限されている。そのため、電子ペーパーのように読みやすいAndroid端末の機能を求める人がいるのは間違いない。いずれにせよ、Booxはそう考えている。

Note 2とMax Lumiは関連しているように見える。印象的な大きさの目立たない黒いタブレットであり、筆者の限られたハードウェアの探求の中では優れた品質だと思われた。Note Airは特筆すべきものではないと言わざるを得ず、実際にそれを見たとき、reMarkable 2のクローンだと思ってしまった。

画像クレジット:Devin Coldewey / TechCrunch

その第一印象は、筆者にとってあまり寛容なものではなかった。この2つはいくつかの重要なデザイン要素を共有しているが、実際にはかなり異なっており、Boox自身の他のデバイスを作る能力が疑わしい点を好意的に解釈するように導いてくれた。青とオレンジのモチーフは秀逸というほどではないが、他のデバイスとの違いを際立たせるのに効果的で、すべてのデバイス(特にAir)は薄くてよくデザインされている。

すべてのタブレットにはフロントライトが搭載されており、このような大きなスクリーンで実現できるかどうかについて懐疑的な見方をしていたが、それは不要なことだった。Poke 3と同様、ライトは明るさと色温度の両方を調節できる(少々微妙ではあるが)。

カラー電子ペーパーは依然として十分とはいえない

画像クレジット:Devin Coldewey

Nova 3 Colorは、eインクの最新カラー電子ペーパー技術を採用した7.8インチスクリーンを搭載している。筆者は常にこの技術の可能性に期待してきたが、カラー電子ペーパースクリーンのコントラストの悪さ、リフレッシュ速度の低さ、ゴーストなどの欠点に悩まされてきた。今回の最新版は、修正に向けてある程度の動きを見せているが(ソフトウェアのアップデートもそれを後押ししている)、残念ながら妥協点は多すぎる。

ハードウェアは他のBooxデバイスと似ており、しっかりしていて控えめだ。違いはすべてスクリーンにあり、デバイスがオフのときでもカラーで表示されている。カラー電子ペーパーは、画像を形成する微小な白黒のビーズと、変更可能なカラーフィルターの層を組み合わせることで機能する。これは他のものと同様にフロントライトが付いていて、色をポップにするのに大いに役立つ。

まだゴーストの問題は残っているが、例えばコミックを読んでいるときは、すべてのページをリフレッシュするように設定することで(ほんの数秒しかかからない)問題は解消される。ウェブページのような動的なコンテンツを使ってこれを行うのは容易なことではないが、もちろん電子リーダー上でウェブをナビゲートすることはすでに目新しいものだ。

カラー電子ペーパーは、コントラストとは言わないまでも彩度が不足している(画像クレジット:Devin Coldewey)

さらに気になるのは、カラーレイヤーがもたらすコントラストの低下と解像度の顕著な低下である。カラーコンテンツを表示すると、通常のLCDエイリアシングとは異なるが、依然として視認可能な明確なスクリーンドア効果が現れる。グレースケールのコンテンツでは、モアレなどの干渉パターンが中間調になることがある。

ブックは問題ないように見えるが、普通のモノクロeインクディスプレイほど鮮明ではないスクリーンドア効果が常に存在し、コントラストが低下している。それでもかなり読みやすいが、安価なデバイスの方がうまく機能するなら、これを正当化するのは難しい。

カラースクリーンのテキストは、モノクロスクリーンのテキストよりも鮮明さとコントラストが低い(画像クレジット:Devin Coldewey)

Booxがeインクの最新スクリーンを提供してくれたことには感謝しているし、電子書籍リーダーにもう少しタブレットのDNAを入れたい人には有益かもしれない(現時点では2つのカテゴリーはあまり区別されていない)。しかし、カラーはほとんどの場合、十分に加算されず、過度に減算されてしまう。

それですべてか、それとも薄く引き伸ばしすぎか

OSは筆者の知る限り、これらすべてで同じだが、これらのデバイスでは単に読むだけでなくインタラクティブ性に焦点が移っている。BooxはWacomのようなペンを作っていて、それを使って大きなタブレットの表面に文字を書くことができるが、reMarkableのような応答性や精度には遠く及ばない。

とはいえ、スケッチやライティングの最終的な仕上がりは満足のいくものだった。ただしOSが追いついてその文字にアンチエイリアスを施すまでには少し時間がかかるだろう。特にブラシについてはグラデーションに優れていると感じた。

Booxタブレットが他の同種のタブレット(つまりreMarkable、旧Sony Digital Paper Tabletおよびその他いくつかのニッチなデバイス)の上に持っているものの1つは、PDF処理に関するものだ。Booxデバイスでは、PDFを簡単にナビゲートしてマークアップすることができ、元のファイルは単に落書きやメモが追加されたような状態で保存される。reMarkableで書類をマークアップするのは簡単だが、やや使いにくいアプリのために共有やソートが少々面倒になっている。筆者は、元のファイル(常にどこかにコピーがある)を修正して、デバイスから直接メールするというシンプルなアプローチを好む。Booxデバイスはまさにそのようなシンプルさだ。

リーダーやノートブックの他にも、タブレットユーザーにとって便利なアプリがいくつか含まれている。期待通りの機能を備えたブラウザがある。Chromiumベースで、レンダリングは良好だが、ゴーストはひどい。そしてボイスレコーダー、ミュージックプレイヤー、カレンダーなど、もちろんGoogleアプリストアやビルトインストアからもダウンロードできるものも他にたくさんある。もし望むのであれば、こうしたとても包括的なデバイスを作ることもできる。

この種の電子ペーパータブレットの市場がどれだけ大きいのか、筆者にはよくわからない。しかし、これらのデバイスは何か興味深くてユニークなものを提供していると感じている、とはいえ、iPadが大型のBooxタブレットの半分の価格で手に入り、ほとんど同じことができる、という事実を回避するのは難しいだろうと思うが。

ただし、これらの電子ペーパーデバイスにはそれなりの魅力があり、長い文書を読んだり、校正したりするつもりなら、いくつかの理由からiPadよりもこれらのデバイスの方が優れている。Booxのラインナップにはこれまで以上に多くの選択肢が用意されており、それは間違いなく良いことである。

関連記事
E-inkを搭載したAndroidタブレット「BOOX Max3」の実力は?
マンガを独自技術でローカライズし短時間で世界中の読者に配信するシンガポールのINKR
画像クレジット:Devin Coldewey / TechCrunch

原文へ

(文:Devin Coldewey、翻訳:Dragonfly)

【レビュー】Galaxy Watch 4 Classicは均整のとれたスマートウォッチ、サムスンとグーグルがそれぞれの強みを活かし協力

スマートウォッチ界は、Apple対世界という構造になっている。CounterPointが発表した最新の数字によると、Apple Watchが第1四半期の世界出荷台数の3分の1以上を占めている。Samsung / Tizenの市場シェアは8%で、遠く離れてはいるが、しかし立派な2位だ。GoogleのWear OSは4%弱で5位となっており、他のカテゴリーでは圧倒的な優勢を誇る両社が、競争上の優位性を求めて躍起になっていることがよくわかる。

Googleにとって、解決策は2つだった。まず、Fitbitの買収により、既存の市場が事実上2倍になったこと。そして長い間、Tizenの困難の中にいたSamsungにWear OSへの復帰を説得すること。Samsungにとって、GoogleのOSに戻ることは、開発者のアクセスとその結果としてのアプリを考えると理に適っている。また、Googleがサポートの問題を解決してくれるのであれば、それに越したことはない。

関連記事:サムスンは「Galaxy Watch 4」でWear OSに回帰、ヘルスケアにもフォーカス

純粋な市場シェアという点では、Samsungが明らかに優位に立っている。また、独自のTizenの開発は、世界的に注目されたわけではないが、当大手企業は2位の座を確保することができた。SamsungがGoogleに復帰するとしたら、独自の条件下で行う必要があるのは明らかだ。

画像クレジット:Brian Heater

Google I/Oで発表された、スマートウォッチ分野における両社の協力体制に続き、Samsungは先週、その成果の第一弾としてようやく「Galaxy Watch 4」を発表した。標準モデルとクラシックモデルの両方が用意されたこの新しいウェアラブル端末は「Wear OS Powered by Samsung」を搭載している。これは現実的には、SamsungがGoogleと緊密に協力して、Wear OSのカスタマイズ版-Tizenのように見え、Tizenのように泳ぎ、Tizenのように鳴くものーを構築したということだ。

これは、Samsungが何年もかけて構築してきた体験の親しみやすさを失うことなく、苦労しながらも強固なウェアラブルOSのエコシステムに向けて前進するための努力だ。正直なところ、私はこれに賛成だ。SamsungとGoogleのチームは、それぞれのエコシステムの特徴を見極め、両者の長所を活かした体験を構築するというすばらしい仕事をしている。Googleにとっては理想的な状況であり、他の大手ハードウェアメーカーを採用することで、Googleにとってもメリットがあることは間違いない。とはいえSamsungほど勢いのあるメーカーは業界にはいないのだが。

関連記事
サムスンとグーグルが次期Galaxy Watchの発売に向けウェアラブルプラットフォームをプレビュー
サムスンが2021年「Unpacked」イベントで発表した新製品まとめ

それに加え、Galaxy Watch 4は、数世代にわたるハードウェアの改良と健康機能の改善により、Appleと互角に渡り合える数少ないスマートウォッチの1つとなっている。Appleと同様に、この新しいウェアラブル端末は、Samsungのエコシステムと明確に結びついている。結局先日の発表も、どう見てもエコシステムの活動の一環だった。

画像クレジット:Brian Heater

新しいGalaxy Budsは、Samsungユーザーにとって最高のイヤフォンであることは間違いないが、同じことがSamsungの堅実な新しいスマートウォッチにも言える。Samsungは、Wear OSによって第三者にオープンになってきているが(Appleよりもその程度は低いが、正しい方向への一歩だ)、それでもこれは明らかにSamsungのスマートウォッチであり、SamsungのモバイルハードウェアやSamsung自身のアプリとの相性が最も良いのだ。これは、世界No.1のスマートフォンメーカーだからこそできるギャンブルだろう。iOS以外の残りの市場では、Huawei、Garmin、Fitbitが戦えばよい。

スマートフォンやイヤフォンと同様に、Galaxy Watchシリーズも、その仕組みは必ずしも一筋縄ではいかなかった。長年にわたり、さまざまなモデルやSKUを模索してきたが、ようやく合理的な仕組みにたどり着いたと思う。実質的には、触覚技術を用いベゼルを組み込んだ下位モデルのGalaxy Watch Activeは標準的なGalaxy Watchに、標準的なGalaxy WatchはGalaxy Watch Classicになった。

ここまで書いてきて、頭で考えていたほど簡単なことではないことがわかった。基本的には「Galaxy Watch 4 = より薄く、軽く、スポーティに」ということになる。Galaxy Watch 4 Classicは、デジタルベゼルからSamsungのトレードマークである回転式ハードウェアベゼルに変更され、少し上品な外観になっている。

画像クレジット:Brian Heater

先ほども言ったが、もう一度これを言いたい。回転ベゼルは、Samsungのエースだ。スマートウォッチ業界では、Appleに勝るとも劣らないエリアだ。Appleのクラウンもいいが、スマートウォッチのインターフェースを操作するには、現在のところベゼルが最適だ。AppleがGalaxy Watch 2でベゼルを廃止し、デジタル版を採用したときは、正直言って私は戸惑った。SamsungはGalaxy Watch 3ではそれを考え直し、復活させたのだ。

以前の私のレビューを読んだ人は、私がこれまでのSamsungの時計で一番こだわっていたのがサイズであることをご存知のことだえろう。以前のウォッチは巨大だった。私は小柄な人間ではないし、手首が異常に小さいわけでもないけれど、そんな私でも装着して歩き回るのに苦労した。大きくて不格好な時計が好きな人もいるだろうが、これらのデバイスのサイズが1つしかないというのは、最初から潜在的な利用者が大きく制限されていると言える。

関連記事:グーグルの「Wear OS」とサムスンの「Tizen」が統合、アップルのwatchOSに対抗

ありがたいことに、今回はいくつかの選択肢がある。Galaxy Watchには40mmと44mmのバージョンがあり(それぞれ250ドルと300ドル[約3万2840円])、Classicには42mmと46mmのバージョンがある(それぞれ350ドル[約3万8310円]と380ドル[約4万1590円])。デザインの違いだけなのに、かなりの金額が加算されていると思われることだろう。ClassicにLTEを追加すると、379ドル(約4万1480円)と429ドル(約4万6960円)になる。もちろん、これはApple Watch Series 6の399ドル(約4万3670円)という初値と比べると好意的に受け取ることができる。

私は中間に位置する42mmのGalaxy Watch Classicを選んだ。数日前からこのデバイスを装着しているが、とても良い選択をしたと思っている。デザインを考えると、46mmは私が日常的に使うには目立ちすぎる時計であることは間違いない。また、寝るときには大きすぎるだろう。

44mmバージョンの標準的なウォッチがどのようにフィットしたのかはまだ気になるところだが、回転ベゼルを選択できるのであれば、回転ベゼルを選ぶべきだ。Classicの40mmバージョンは、その機能性を求める手首の小さいユーザーにとっては良い選択肢となるだろう。Samsungが4つの異なるサイズを用意していることは正しい方向性だと言える。

画像クレジット:Brian Heater

多くの競争と同様に、Samsungはここでも健康面の機能でリードしている。パンデミックから1年半、私は運動量を増やそうと努力しているが、この時計は運動量をしっかりと検知してくれる。ウォーキングやランニングを自動検出するという点では、Apple Watchとほぼ同じだ。最近、ジムでボートを漕ぐようになったのだが、そこでもしっかりと仕事をしてくれる。ただし、朝のHIITになるとかなり難しく、ヨガはさっぱりだったので、Samsungの接続型のルーチンを使用している場合を除き、手動で開始するのがベストだ。

心臓の異常を検出するためのECGが搭載されている。心臓の不調の早期発見のために多くの医療関係者が推奨し始めている、いち早く標準化されたツールだ。体組成計は、2本の指をデバイスに当てると、骨格筋、体水分、代謝率、体脂肪率などの主要な健康指標を表示してくれる、目玉となる新機能だ。

睡眠トラッキングでは、血中酸素濃度、ライト / ディープ / レム、トータル睡眠スコア(ヒント:私の場合は低い)など、確かな情報が得られる。また、スマートフォンをそばに置いて寝ると、このアプリは夜中のいびきの時間も教えてくれる。これらの数値を総合すると、自分の睡眠パターンについて優れた実用的な知識を得られる。

画像クレジット:Brian Heater

もちろん、寝るときに時計を装着するのは、快適さの問題だけでなく、バッテリーの問題もある。Watch Classicのバッテリー寿命はまずまずで、標準的な使い方から軽めの使い方で、1日半を過ごすことができた。朝や昼に充電する時間を確保できれば、フィットネスや睡眠のトラッキングには十分だろう。ほとんどの用途には問題なく、特筆すべき点はない。

これらすべての要素が、確かなスマートウォッチ体験につながっている。Galaxy Watch 4は、Samsungユーザーにとって最高のスマートウォッチであると同時に、Android対応スマートウォッチとしても最高であると強く主張できる。

関連記事
【レビュー】より洗練されたサムスンのGalaxy Fold 3、メインストリームとは言えないが正しい方向には向かっている
【レビュー】サムスンのダークホース、Galaxy Z Flip 3は過去最高の折りたたみ式スマホだ
画像クレジット:Brian Heater

原文へ

(文:Brian Heater、翻訳:Dragonfly)

【レビュー】より洗練されたサムスンのGalaxy Fold 3、メインストリームとは言えないが正しい方向には向かっている

Samsung(サムスン)はGalaxy Noteの終了を宣言する準備がまだできていなかった。そのうちにという感じだ。2021年8月のUnpackedイベントの後、私たちが再び同社に質問をすると、担当者は次のように語った。

Samsungは、消費者のニーズを満たすためにプロダクトラインアップを絶えず評価し、ユーザーのモバイルエクスペリエンスを高めるテクノロジーを導入しています。新しいGalaxy Noteデバイスは2021年に発売される予定はありません。Samsungは代わりに、Noteのエクスペリエンスを拡大し続け、Sペンを含む生産性と創造性に関する多数の人気機能を、Galaxy S21 Ultraをはじめ、タブレットやノートPCなどの他のカテゴリを含むGalaxyエコシステム全体に展開する計画です。発表の準備が整い次第、今後のポートフォリオについてさらなる詳細をお知らせします。

これは正確には、2021年に新しいNoteが登場しないという前回の発表の繰り返しであり、答えとは言えない。単にチップ不足の問題なのかという質問に対して、Samsungは同様に曖昧な回答を送ってきた。

半導体市場の現在の変動性は、テクノロジー業界全体およびそれ以外の分野で認識されています。Samsungでは、そのインパクトを軽減するために最善の努力をしており、今後も供給面での課題を克服するためにパートナーと精力的に協働して参ります。

画像クレジット:Brian Heater

Galaxy Fold 3をNoteの10年にわたるファブレット王座の継承者と宣言するのは時期尚早だ。しかし、確かなこととして、Galaxy Sシリーズに導入されている新機能と同社のハイエンドなフォルダブルによって、このデバイスはかなり冗長なものになっている。一方、最も可能性が高いと思われるのは、Samsungの様子見の姿勢だ。Galaxy Fold 3の好調な売れ行きは、Noteの冗長性に対する説得力のある論拠として他に勝るものはない。しかし、それは依然として大きな「もしも」であり続けている。

Samsungが初期のFoldをエキサイティングな実験として位置づけたのは賢明だった。新技術をいち早く市場に投入することは決して容易なことではなく、特にSamsungが取引するような規模においてはなおさらだ。初代Foldには、信頼性とアダプションの両方に関して、いくつかの大きな疑問があった。ここでは前者をあまり重視せず(私たちはこれについて多くの記事を書いている)、最初のラウンドで何度か白紙に戻ったとだけ言っておこう。

後者については、同社は2019年、初年度に100万台を販売したことを明らかにした。それは驚くべき、そして印象的な数字だった。もちろん、同社がSやNoteシリーズで示しているような数字とは比べものにならないが、実証されていない2000ドル(約22万円)のデバイスが発売されて数カ月で実現したことを考えると、少なくともアーリーアダプターがこの波に乗ったことを示す良い兆候であったことは確かだ。

画像クレジット:Brian Heater

Fold2では、前機種の最大の問題のいくつかをより直接的に解決し、より堅牢でバランスのとれたデバイスを実現した。Fold3は、急進的な進化を遂げたわけではないが、重要なアップデートと改良が行われている。トップレベルの新機能は次のようなものだ。

  • Sペン対応
  • IPX8規格の防水性能
  • 少し大きめの外付けディスプレイ
  • アンダーディスプレイカメラ
  • 強化された内部スクリーンプロテクター、フレームおよびフロントガラス

では正確には、これらすべてがどのような結果になるのだろうか。Samsungにとっての答えはシンプルで、「新しいフラッグシップ機」である。これはモバイルの世界で使われている言葉の1つで、定義は曖昧だ。Samsungはこれまで、SとNoteシリーズという2つのフラッグシップ機を持っていた。これがNoteにとっての技術的な過渡期なのか、Galaxyシリーズの第3のフラッグシップの宣言なのかは、上記の言葉にかかっている。しかしながらSamsungが、同社のハイエンドなフォルダブルがメインストリームになる瞬間であると自信を示していることは示唆的である。

この製品をメインストリーム化するための最初のステップは簡単だ。価格である。Fold3は、どう考えても手頃な価格のデバイスではない。1800ドル(約19万8000円)という価格は、フラッグシップモデル2機種を合わせた価格とほぼ同じである。しかし、前機種からの200ドル(約2万2000円)の値下げは、正しい方向への大きな一歩と言える。Samsungが自身のテクノロジーをさらに拡張できるようになれば、事態は悪化し続けるだろうと考える向きもある。「手頃な」フォルダブルを求めている人は、実際には1000ドル(約11万円)を下回る価格の新しいFlipに目を向けるだろう。これについては後のレビューで詳しく説明しようと思う。

関連記事:【レビュー】サムスンのダークホース、Galaxy Z Flip 3は過去最高の折りたたみ式スマホだ

新しいフォームファクターには必ず何らかの課題がある。Samsungのようなノウハウを持つ会社のものでさえも。オリジナルのFoldを携えて、壊れないように慎重に歩き回ったことを、筆者は直感的な記憶として覚えている。レビュープロセスでは、デバイスを自分のものと同じように扱うことが期待されるが、初期のFoldではその機会に恵まれず、2000ドルのスマートフォンをうっかり壊してしまうかもしれない、という緊張感に包まれることになった。

そして、そう、やってしまった。もちろん筆者が最初ではなかった。このデバイスを広く世に送り出す前にそれを強化すべき十分な問題があった。正しい動きだったことは確かである。Foldが壊れにくいとは誰も期待していなかったと思う。しかし繰り返しになるが、最初のユニットが満たさなかった、期待される標準的な使い方が存在するのだ。

主な修正点は2つあった。1つは、Samsung(およびその他)のスマートフォンに同梱されている取り外し可能な画面プロテクターに似すぎているように見えた保護フィルムを端まで広げたこと、もう1つは、一部のごみが入ることはあるが、プロダクトを開く過程でそれを一掃するブラシ機構をヒンジ機構の内部に追加したことだ。そうすれば、画面にダメージを与える前にそれを取り除くことができる。

第2世代は、より耐久性の高い折りたたみガラスにアップグレードされた。新しいバージョンでは、こうした保護機能がさらに強化されている。これは特に、箱を開けた瞬間に制限事項を列挙したリストを提示してこないFoldの初バージョンと言える。良い兆候である。原則として、ユーザーはおそらく同じような「標準的な使い方」に固執するはずだと私は思う。そして、おそらくそうしたケースの1つに投資する。結局のところ、1800ドルの端末なのだ。

画像クレジット:Brian Heater

耐久性の面で最も注目すべき点は、IPX8規格だ。これは、最大1.5メートルの耐水性を30分持続させる。同社のフォルダブルの製品ラインは、防水性と耐水性の点でやや遅れていたが、高級機種ではほぼ標準になっている。必要とされる複雑な機構を考えれば当然のことだ。ただし、等級の「X」は、ここでは防塵がないことを示唆すると言えよう。ヒンジが実際に粒子を入れるように設計されているという単純な理由によるものだ(前述の通り)。

デバイスの前面と背面は、Corningの最新作Gorilla Glass Victusで覆われている。Corningによると「当社のラボテストにおいて、Gorilla Glass Victusは、最大2メートルの硬い粗い表面への落下に耐えました。他社製の競合アルミノケイ酸塩ガラスは、通常、0.8メートルから落下すると破損します。さらに、Gorilla Glass Victusの耐スクラッチ性は、競合アルミノケイ酸塩よりも最大4倍優れています」。一方、本体とヒンジはSamsungが「Armorアルミニウム」と呼ぶ合金で作られており「現代のスマートフォンで使われている最も強力なアルミニウム」だという。

おそらく最も重要なのは、強化されたスクリーンプロテクターを搭載していることだろう。このプロテクターは側面まで広がっているため、はがそうとするのは難しく、またそうしたいという誘惑も少ない。追加された保護機能は、標準的な使用方法(タップしすぎると壊れてしまうようなスマートフォンは避けたい)とSペン機能の両方にとって必須だ。同社には現在、スタイラスとそれに含まれるすべての生産性機能を活用する3つのラインが存在する。

画像クレジット:Brian Heater

同社ではSペンProに加えてFold専用モデルも導入した。この50ドル(約5500円)のスタイラスは小型で、画面への圧力を軽減するために特別に設計された収納可能な先端を備えている。筆者は両方のスタイラスをいじってみたが、両者の劇的な違いには気づかなかったし、SamsungもProの使用について明確な警告を発していない。しかし慎重を期して筆者はFold Editionを選ぶことにした(古いバージョンのSペンを使用しようとする際は警告表示もある)。

同社はスタイラスの互換性について以下の声明をTechCrunchに送っている。

標準のSペンとは異なる周波数に設定されているため、互換性があるのは最新のS Pen Fold EditionとSペンProのみです。ただし、SペンProは、Samsung Galaxyタブレット、Chromebook、スマートフォンなど、他のSペン対応デバイスと互換性があります。上部にあるスイッチを使ってSペンProの周波数を切り替えることができます。

7.6インチのキャンバスは、Sペンの機能に適している。もちろん、他のフォルダブル同様、Foldの中央にはまだ折り目がある。Noteと比べると、慣れが必要だ。しかし、スタイラスペンを愛用している人にとっては、複数のアクティブウィンドウやアプリの分割表示のような生産性ツールが増えていることを考えれば、この機能はぴったりだ。Samsungはここでかなりの生産性ワークハウスを構築した。

もちろんNote(およびSシリーズ)と異なり、FoldにはSペン用のスロットが内蔵されていない。これは、構造的な整合性の問題があったために搭載されなかった可能性が高い。少なくとも、折りたたんだときにすでにかなり薄いデバイスに、余計な厚みが加えられてしまうだろう。Samsungは、スタイラスを持ち歩くことを真剣に考えていて、紛失を心配している人のために、Sペンケースを提供している。

メインディスプレイは2020年からあまり変わっていない。7.6インチ、120Hzのリフレッシュレート、2208×1768の解像度、HDR10+をサポート。6.2インチのフロントスクリーンはハイダイナミックレンジではないものの、60Hzから120Hzにアップされている。Fold2は2020年、エクステリアスクリーンのサイズをアップグレードしたが、これは大きな違いだ。開いた状態で処理しなくてもいいことはたくさんある。アスペクト比は依然として非常に細身で、ほとんどの場合に利用できるが、App Continuity機能は有効なアプリの画面間をシームレスに移動できる優れものだ。

画像クレジット:Brian Heater

スクリーンフロントに追加された最大のものは、実際には引き算のようなものだ。ピンホールカメラがメインスクリーンから消えている。それに代わって登場したのが、Samsungデバイス初のアンダーディスプレイカメラだ。この技術は、企業にとって長年の聖杯であった。この機能を提供したのはSamsungが最初ではない―OppoやZTEなどの企業がこの機能を少し前から提供している。Foldも同様の技術を採用しており、ホールパンチの上にピクセルの薄い層を貼り付けている。特にスクリーン上に白い画像が表示されている場合は、スポットは見える状態になるものの、一見したところではより空間的に切れ目のない印象になっている。

画像クレジット:Brian Heater

この空間を追跡してみると、これらのカメラの画像性能はこれまでのところ理想的とは言えないことがわかる。そしてSamsungも同じ運命にある。上の写真は、フロント10メガピクセルとアンダーディスプレイの4メガピクセルのカメラでそれぞれ撮影された。画面下のカメラには曇りやぼやけがあり、2021年の高級スマートフォンに期待される水準には達していない。

Samsungとの以前の会話では、同社はこのことについて、つまりはFoldが同社のスマートフォンの中で初めてこの技術を採用した理由についてかなり率直だった。それは、自撮り用に前面カメラのオプションが追加されたことによるもので、率直に言って、標準以下のカメラに依存する必要はないのだ。確かに写真を撮るときには頼りにならないだろう。大型のフォームファクターではすでにぎこちないことは確かだ。緊急時のテレビ会議には使えると思うが、それでもフロントの方がいいだろう。基盤技術が向上するのに合わせて、Samsungが今後のアップデートで改善できるものとして、これを提起したい。

画像クレジット:Brian Heater

画像クレジット:Brian Heater

一方、メインのカメラシステムは前回のバージョンからほとんど変わっていない。

  • 12MP / F2.2超広角、ピクセルサイズ:12μm、視野角:123度
  • 12MP / F1.8広角、デュアルピクセル AF、光学手ぶれ補正対応、ピクセルサイズ:8μm、視野角:83度
  • 12MP/ F2.4望遠、PDAF、光学手ぶれ補正対応、ピクセルサイズ:0μm、視野角:45度

7.6インチと6.2インチのビューファインダーを切り替えられるという利点もあり、すばらしい写真が撮れる優れたカメラ構成になっている(正直なところ、フルスクリーンはほとんどのシーンで撮影にはやや使いにくいため、筆者は概ね小型のファインダーにこだわった)。

  1. 20210815_190340

    画像クレジット:Brian Heater
  2. 20210815_191409

    画像クレジット:Brian Heater
  3. 20210815_191914

    画像クレジット:Brian Heater
  4. 20210815_190808

    画像クレジット:Brian Heater
  5. 20210815_190800

    画像クレジット:Brian Heater
  6. 20210815_190704

    画像クレジット:Brian Heater
  7. 20210815_190623

    画像クレジット:Brian Heater
  8. 20210815_190229

    画像クレジット:Brian Heater

バッテリーは4500mAhから4400mAhへとわずかに低下し、ディスプレイの背面にある2つのモジュールに分かれている。小さいものではあるが、間違った方向への一歩である。このような大型デバイスは、電力を食う傾向がある。使い方にもよるが、1日は乗り切れるだろう。多くの人が家に閉じこもっている限り、これは大きな問題にはならないだろうが、おそらくプラグを入れずに1日中座って動画に夢中になれるようなものではないだろう。

当然のことながら、Foldには最新のSnapdragon 888が搭載されている。Samsungから送られてきたモデルには12GBのRAMと256GBのストレージが備わっていた。このストレージを倍にすると、価格は1900ドル(約20万9000円)になる。

画像クレジット:Brian Heater

SamsungがFoldを、問題を抱えたアーリーアダプターの技術から2世代の間にはるかに安定したものに変えるのを見るのは、実に印象的である。しかし同社は、フォルダブルというコンテキストの中でメインストリームのような言葉を振り回す準備はできているものの、そのような目標がまだ遠い先にあるという感覚を振り払うのは難しい。

価格は正しい方向に向かっているが、それでもこの製品は依然として、ほとんどの人にとって手に負えないほど高価だ。大型スクリーンの利点はすぐにわかるが、なぜそのような製品が必要なのかという質問には答えられない。多くの場合、このフォームファクターはまだ少し扱いにくい。

Galaxy Noteが突然冗長になるとすれば、FoldよりもGalaxy Sシリーズの方に多くの責任がある。また、もしSamsungが真に主流のフォルダブルエクスペリエンスを追求しているのであれば、Galaxy Z Flipをより長期的に検証していくことも考えられる。サイズ、価格、柔軟性、そして見た目の良さという点では、これに勝るものはない。

画像クレジット:Brian Heater

原文へ

(文:Brian Heater、翻訳:Dragonfly)

【レビュー】サムスンのダークホース、Galaxy Z Flip 3は過去最高の折りたたみ式スマホだ

土曜日に少々長めの散歩をした。パンデミックの間に、屋内で長時間過ごした後の気分転換に散歩するのが習慣となった。今までなら地下鉄に乗ってしまって見逃していた町の様子を歩きながらみる。この土曜日の散歩は、ぶらぶら歩きというよりは行き先が決まっていて、ハリケーンヘンリーが東海岸を直撃する前にと思い、新しくオープンしたTrader Joe’sに向かった。

散歩の途中に降ってきた雨を避けるため、ロングアイランドシティーでフードコートを見つけて入り、シャワルマを注文し、ポケットからGalaxy Z Flipを取り出す。電話を開き、新しいGalaxy Budsを耳に装着し、MLB.TV アプリで、野球観戦をした。こんなとき、Flipは本当に役に立つ。ランドスケープモードで135度に開くと、6.7インチのスクリーンを立てた状態で見ることができる。試合が終了したので(ネタバレだが、試合結果はよくなかった)、携帯を閉じてポケットに入れ、また歩き出す。

携帯電話が常に目新しいテクノロジーを備えているとは限らないが、幸運な場合には、自分の感性に応えてくれる電話に会えることもある。最初のFlipが登場した時には、随分前に廃れたクラムシェル型携帯電話について人々はたくさんのジョークを言い合った。もちろん、そうした風潮がすぐに消え去ることはなかったが、最初のFlipは、多くの人に、折りたたみ式携帯電話に注力するというSamsungの方向性は正しいという印象を抱かせた。

画像クレジット:Brian Heater

最初のGalaxy Foldにまつわる初期の欠陥(他の記事でそれらをすでに取り上げた)はさておき、このデバイスも扱いやすくはない。折りたたみ式スクリーンが、折りたたみ式でなくては不可能な大きさのスクリーンを持ち歩くことを可能にしてくれるのは事実だが、しかし閉じた状態のデバイスはかさばり、それを開く機会は容易には訪れない。Flipは、スクリーンのサイズと携帯性の違いをうまく切り分けている。ディスプレイサイズの観点で言えば、Flipは事実上2つにおりたためポケットにすっぽりおさまるGalaxy Noteといったところだ。

Samsungの折りたたみ式で話題の中心となっているのはGalaxy Z Foldで、この話題の発信元はSamsung自身だ。同社は、Foldを最近の主力製品と位置づけるために多くのことをしてきた。これにはNoteのラインナップを増強する、または置き換えるなどといったことも含まれる。Fold 3にS Pen機能が追加されていることで境界線が曖昧になっているが、Samsungの既存の主力製品と、同社が思い描く今後の折りたたみ式製品との橋渡し役としてはFlipの方があきらかに適役である。

関連記事:値下げされ(相対的に)手を出しやすいサムスンの新フォルダブル「Galaxy Z Flip」は約11万円から

折りたたみ式製品を主力にすることは、なかなか難しい提案である。発売した途端に、Samsungは生産の問題とともに2000ドル(約22万円)という価格設定で否定的な報道に見舞われた。この価格は、基本的に丁重に扱わなければならない製品としては高額だ。毎日の生活に必要な製品を当たり前に使用していて誤って壊してしまわないかと心配するのはいただけない。Flipは初期の折りたたみ式製品の失敗から学び、より頑丈なデザインと耐水性を備えたものになった。

しかしながら、より重要なのは、おそらく価格設定だろう。Galaxy Z FlipはSamsungの折りたたみ式製品としては初の1000ドル(約11万円)を下回る製品である。ほんのわずかではあるが、確かに1000ドルを下回っており、これはSamsungやAppleのような高価な携帯電話と似たような価格かもしれないが、折りたたみ式製品としては本当に大きな勝利と言える。最初の数世代の折りたたみ式携帯は、程度の差こそされ、いずれも目新しさだけで生き残ってきた。

画像クレジット:Brian Heater

市場に投入される折りたたみ式デバイスが増えるにつれ、目新しさよりも機能が重視されるようになってきている。しかし人気の高まりは、裾野の拡大をも意味するわけで、その結果、価格は下がっている。ここへきて初めて、 Samsungの折りたたみ式携帯を1台買おうとするなら、電話2台分の支払いをしなければならない、というわけではなくなった。これはGalaxy Foldの価格が前の世代の製品より200ドル(約2万2000円)下がったことよりも、ずっと大きな意味合いがある。

同社は次のように発表している。「Galaxy ZFold3とGalaxyZ Flip3の予約注文を発表してからわずか10日で、2021年全体でのSamsungの折りたたみ式携帯の全世界の売上をすでに上回り、またこれまでのSamsungの折りたたみ式携帯の予約注文の中で最大の売上を記録しました」。これには、低価格であること、デザインが堅牢になっていること、Noteの新機種が発表されていないこと、顧客に向けて予約注文を熱心に宣伝したことなど、さまざまな要因が関わっているとは思うが、少なくともこのシリーズが正しい方向に向かっているということはできるだろう。

予想通り、同社の数字は、FoldとFlipの売上を分けて示したものではない。確かに、 Foldには多くの機能が備わり、7.6インチスクリーンは長編映画を見るなら6.7インチスクリーンよりよいだろう。しかし、ほとんどの人にとってほとんどの場合に望ましい製品はGalaxy Flipだろう。筆者は、Samsung Galaxy Z Flipは折りたたみ式携帯市場において最も主流の製品だと断言できる。

折りたたみ式の重要性をさほど感じていないなら、当然のことながらこうした言葉もそれほど心に響かないだろう。しかし、モバイルの未来の鍵となるものに飛びつきたいと考えている人の大部分にとっては、Flipこそ、明確なチョイスだ。過去の遺物としてクラムシェルデザインをからかうのは簡単だが、そもそも電話がそのようになデザインになったのには理由があるのだ。クラムシェル型の電話が消え去っていった大きな理由の1つは、今までスマートフォンが折りたたみ式ではなかったせいだろう。

画像クレジット:Brian Heater

Samsungのデザインは的を得たものだ。The Flip 3は今のところ、同社の最も見栄えのよい折りたたみ式製品で、デュアルカラーのシェルは印象的だ。Samsungが筆者に送ってきたクリーム色のものは特に好みというわけでもなかったがグリーン、ラベンダー、 またプレーンブラック、ホワイトでさえとてもすばらしい。これらのカラーは、外部ディスプレイが設置されている部分の黒とよくマッチしている。この部分は1.1インチから1.9インチに増えた。わずかな違いに聞こえるかもしれないが、このサイズのスクリーンではなかなかの増加と言えるだろう。

もちろん、Foldで得られるような完全な外部スクリーン機能はFlipにはない。Flipのディスプレイは通知をさっと見たいときの二次的スクリーンにはなる。それを取り出せば、時間、日付、バッテリーの残存量を見ることができ、右にスワイプすると、通知を見ることができるようになっている。

左にスワイプすると、アラームやタイマー、また天気、メディアの再生(事実上オーディオの再生 / 一時停止)、Samsung Health Metricsといったウィジェットをスクリーンに追加するオプションも表示される。このリストは今は短いが、多くの人がFlipを使用するようになれば、もっと長くなるだろう。下にスワイプすると、簡単な設定をすることができ、上にスワイプするとSamsung Pauseが表示される。

多くの人が電話の使用を控えようと努力している昨今、画面を2つに折りたためるのはありがたいことだ。これは、Foldの7.6インチスクリーンを分割して6.2インチにする形態よりもメリハリのある境界線になる。つまり電話が閉じている時は、通知を確認している時であり、電話が開いている時はなにかの作業をしている時だ。Flipなら電話を開く時もずっと簡単である。片手で開ける技はまだ身につけていないが、事実上本を開くようなかたちになっているFoldよりも、急いで開くにはずっと適している。スピードということでこの形状が最も問題になるのは、写真をさっと撮る方法がないことだ。

画像クレジット:Brian Heater

写真を撮るには時間がかかり、電話をあけて内部のビューファインダーを見る必要がある。ただし、電源ボタンを二度押しすることで、小さなビューファインダーを兼ねている小さな正面スクリーンでセルフィーを撮ることはできる。左にスワイプすると静止画の切り替え、上下にスワイプすることでズームレベルを変えることができる。やや不格好で優雅さに欠けるが、12メガピクセルのカメラのペア(広角と超広角)を使用すると、ほとんどのピンホールカメラ(Flipの10メガピクセルレンズを含む)よりもはるかに優れたセルフィーを撮ることができる。

Foldと同じで、リアカメラ(見方によってはこれらも正面カメラといえる)はFlip 2以来、概ね変わっていない。2021年の今、デュアルカメラシステムは時代遅れと感じられるほどだが、Samsungが長年かけて培ったカメラソフトウェア技術と合わせ、ほとんどの目的に適った機能を持っている。22:9のアスペクト比であることから、画面の4分の1以上が制御のために割かれるのはやむを得ない。

  1. 20210815_190329

    画像クレジット:Brian Heater
  2. 20210815_190714

    画像クレジット:Brian Heater
  3. 20210815_190642

    画像クレジット:Brian Heater
  4. 20210815_190538

    画像クレジット:Brian Heater
  5. 20210815_190300

    画像クレジット:Brian Heater
  6. 20210815_191927-1

    画像クレジット:Brian Heater
  7. 20210815_191358-1

    画像クレジット:Brian Heater
  8. 20210815_190813-1

    画像クレジット:Brian Heater
  9. 20210815_190742-1

    画像クレジット:Brian Heater
  10. 20210815_190529-1

    画像クレジット:Brian Heater

 

このアスペクト比はコメントに値する。この比率だと、開いた時、大変長い。GmailやTwitterをスクロールするような場合、たくさんの件数が表示される。しかしビデオを見る時には、スクリーンの周囲のピラーボックスやレターボックスが見えてしまうことが多いだろう。ビデオ界は22:9のアスペクト比に対応できていないし、おそらく今後も対応することはないだろう。

そして当然ながら、継ぎ目がある。それも素敵な2640×1080、425ppi画面の真ん中にである。折りたたみ式の技術に予期せぬブレークスルーが起きない限り、はっきり言ってこの継ぎ目がすぐにも消えることはないだろう。これは売上の妨げになる可能性もあるが、これらのデバイスをしばらく使うと、概ね慣れてしまう。

Foldと同様、FlipはSnapdragon888プロセッサで動作している。予想できることだが、コストが低いことと、RAMおよびストレージの容量が低いことは連動しており、Foldの12および256GBに対し、Flipでは8および128GBとなっている。余計に150ドル(約1万6500円)払うと、ストレージを256GBにアップグレードすることができる。Samsung はほとんど内部を切り詰めてはいないものの、3300 mAhバッテリーは十分とは言えない。

Foldでもバッテリー寿命は問題だが、Flipではより大きな問題であり、実際のところ、Flip最大の問題である。中程度から頻繁な使用では、1日が終わる前に再度充電する必要がある。パンデミックの現在、これは大きな問題ではないかもしれないが、世界が通常運転に戻るにつれ、検討すべき問題になるだろう。充電のできない長時間のフライトなどは問題外である。

画像クレジット:Brian Heater

繰り返しになるが、筆者は残念ながらこれが売上の障害になると思う。1000ドルも支払うなら、一日バッテリーの心配をせずに使用できる電話が欲しいのは当然だ。これについては、Samsungが第4世代で焦点を当てるべき課題であることは明確だ。

現状では、Galaxy Z Flip 3には強力なアルミニウムフレーム、改良されたスクリーンプロテクター、IPX8防水(Foldレビューで概説されている理由により、防塵等級なし)など、前世代から引き継がれた強みが備わっている。この携帯電話は完璧とは言えないかもしれないが、1000ドル未満であり、Samsungの折りたたみ式携帯電話が3世代でどれだけ進化したかを示す強力な製品となっている。

SamsungがFoldを折りたたみ式携帯の主力としているために、Flipは2番手的な位置付けになっている。しかし、折りたたみ式携帯の世界に入っていこうと考えているほとんどの人にとっては、Flipがより気楽に手に取ることのできるチョイスだろう。

画像クレジット:Brian Heater

原文へ

(文:Brian Heater、翻訳:Dragonfly)

【レビュー】2022年新型トヨタGR 86はすべての愛好家を魅了するマストドライブの逸品

スポーツカー市場は排他的なクラブのように思えるかもしれない。非実用的な情熱にあふれる買い物をするのに十分なお金とガレージスペースを持つ人々の、専用クラブのようなものだ。

こうしたプレステージアイテムには大抵の場合、威圧的なパワー値と、同じように脅威的な価格が表示されており、どちらも暗黙的に購入希望者に挑戦をしかけてくる。乗りこなせるのか?手に入れる余裕があるのか?

Daft Punk風の「harder better faster stronger(よりハードに、より良く、より速く、より強く)」というスポーツカー業界のマントラは、参入するのに十分な財力がある人やサイドラインからの応援を楽しむ人にとってはすばらしいものだが、グラウンドフロアでアクションを起こそうとする人にとっては昨今、マツダのMiata(ロードスター)ではない、3万ドル(約330万円)を切るパフォーマンスに特化したクルマを見つけるのは難しいだろう。

「パフォーマンス」は高速で高馬力のマシンに限って言及するものだという過度な誤称は、まったくもって未熟なマシンや単にそれを必要としないマシンを追い払ってしまう。また会えたね、ロードスター。

初代トヨタGT 86(旧サイオンFR-S)の導入が重要な意味を持ち、その次の世代であるGR 86が期待を抱かせる理由はここにある。庶民に向けたパフォーマンス、すべての人のためのスポーツカーだ。

基本

GR 86は2+2クーペで、2.4リットルのフラットな4気筒ボクサーエンジン(水平対向エンジン)を搭載し、228馬力、184ポンドフィート(約250Nm)のトルクを生み出す。

この構成に馴染みのない方のために説明すると、従来的なV字直線よりも優れたバランスを実現するレイアウトだ。動力は6速トランスミッション、マニュアルまたはオートマチックを介して後輪に送られる。

フロントにマクファーソンストラット式、リアにマルチリンク式の独立懸架サスペンションを採用。トリムレベルに応じて、GR 86は17インチまたは18インチのホイールを備える。

トリムに関していえば、GR 86にはベースとプレミアムの2つのタイプがあり、プレミアムには前述の18インチホイール、ダックビルリアスポイラー、適応型フロントLEDヘッドランプ、ちょっとした視覚的アクセントに加えて、8ステレオスピーカーへのアップグレード(標準は6)が含まれる。

すべてのトリムとして、エンターテインメントと接続性を追求した8インチのタッチスクリーンディスプレイ、7つのエアバッグを備えた標準的な安全装置、そして安定性制御、期待されているアンチロックブレーキシステム、さらにブレーキアシストとブレーキ力配分で構成されたToyota Star safety systemが装備されている。

自動ギアボックスを搭載したGR 86には、衝突前ブレーキ、車線維持支援、アダプティブクルーズコントロールに対応する、アクティブセーフティシステムという付加的な利点も備わっている。

GR 86は、契約制のコネクテッドサービスを提供するアプリを通じて、エンジンの始動やドアのロック、クラクション鳴動などのリモート接続機能に加え、車両のヘルスレポートの提供や、クルマの基本的なペアレンタルコントロール(ジオフェンシング、スピード警告、さらには夜間外出禁止など)の設定も可能だ。

レースで培われたテクノロジー

GR 86のようなシンプルさを追求したスポーツカーには、テクノロジーを駆使したランボルギーニ・フラカンや、近縁のアウディR8のような高級な輝きはない。

こうしたクルマはゲーム用PCよりも多くのハードウェアを搭載しているのに対し、GR 86はコンピューターによる力量が少ない。「ピュアリストのスポーツカー」と銘打たれているこのクルマは確かに、活発なドライビングセッションとなるとアシストが足りない。

安定性はオフにすることができ、ドライブモードの「スポーツ」と「トラック」ではブレーキとスロットルへのインプットレスポンス性が高まる。これらのモードはまた、より積極的なエンジンマッピングに近い形で、自動ギアボックスの効果を向上する。

GR 86はこのように小型のパッケージのため、差をつけるテクノロジーを見出すには特定の領域における入念な精査が必要だ。トヨタによると、このクルマはレースで培ったテクノロジーを活かして開発され「GR」(トヨタのモータースポーツ部門GAZOO Racingの頭文字)というブランド名を冠しているという。

外部では、安定性に大きな違いをもたらすエアロダイナミックタッチが注目に値する。これは、車両の制御を補助するために空気を高速で流通させる機能的な通気口があるフロント部分から始まり、リアホイールウェルの上の成形品がバックエンドでこの作業を継続するよう形成されているリア部分に続いている。

構造的には、GR 86は前バージョンに比べてフレームの剛性を高め、前後の主要部分の補強を行うとともに、高強度鋼を採用している。

興味深いことに、このクルマは現行モデルよりも少し重くなっており、トランスミッションによって77ポンド(約35kg)から117ポンド(約53kg)程度増えている。アルミルーフやフェンダーなどの軽量化対策がこれを緩和しているものの、重量を減らすことよりも慎重に重量配分することに力が注がれた。

シートベルト装着

GR 86のハンドルを握るところから見ると、インテリアは抜本的な変更というよりもアップグレードであることがわかる。アナログゲージクラスターは姿を消し、ドライブモードによって変化する7インチTFTデジタルスクリーンが採用されている。

オートマチック仕様のGR 86sには、最適な使用のために可視情報をシフトする3つの独立したスクリーンがある。マニュアル車では2つになっている。

例えば「ノーマル」スクリーンでは1時間あたりの走行距離が表示され「トラック」スクリーンでは現在のギアが3色のRPMインジケータの上に表示される。これはトヨタを閉鎖的コースで走行させようとする人には有用だ。現在の速度と比較して「その瞬間に」知るべき重要な情報だからだ。この表示を拡大してインターフェイスに鮮明なオレンジ色の光を与えることで、データをひと目で確認できるようになっている。ドライバー周辺にも情報が届くだろう。

画像クレジット:Alex Kalogiannis

インフォテインメントスクリーンも若干アップグレードされている。視覚的にはより良く統合されている印象で、旧バージョンでその魅力を減じていたピアノブラックのプラスチック製ベゼルから解放されている。

インターフェイスはシンプルでラジオ、メディアソース、メンテナンスデータへのアクセス、ロードサイドアシスタンスへのコール、そして音楽ストリーミングサービスなどのインストール可能な他の統合アプリへのアクセスを可能にするアイコンがある。

アプリは好みに合わせて調整することができるが、全体的に見ると、真に機能するためには外部デバイスに依存している。このクルマがターゲットとしているハイパーコネクテッドオーディエンスに対して、トヨタはほとんどのユーザーがAndroid AutoとApple CarPlayを主として利用することを想定しているという感がある。

パフォーマンスのプレイグラウンド

GR 86でトラックに向かうと、捕獲された生き物を元の環境に戻すような気分を味わう。トヨタはこのGR 86とその先代モデルを試乗と連続比較のためにMonticello Motor Clubに持ち込み、全長4.1マイル(約6.6 km)のコースでクルマのパフォーマンスに挑む20周を設定した。GR 86はストリートカーではあるが、その性能を十分に発揮しながらワイルドに走ることができるトラック上に放たれた。

先代モデルのパワーは賛否両論を呼び、ファンはそのクルマの目的に合ったサイズだと感じていた一方、他の人たちはそれが不足していることに気づき、価値があると感じていたターボチャージャーをトヨタが最終的に取り付けることを期待した。

GT 86のボクサーエンジンの改良は目を見張るものがあり、両陣営を満足させるはずだ。

変位の増加やその他の機能強化は、実際にパワーをわずかに高めており、ターボを追加することなく、特にパワーの適用において、諸事をシンプルかつ均一に保持している。

さらに重要な点として、このパワーは回転バンドにおいて早期に有効になるため、GR 86はより迅速にスピードを上げることができる。比較すると、重量のあるGR 86の方が軽く感じられるのに対し、先代モデルは積み荷のレンガを引っ張っているように感じられる。

重量バランスとサスペンションの改良により、クルマの制御量が増大した。旧86の決定的な特徴の1つは、信じられないほど地面に埋め込まれているかのように感じられたことだ。

限界を超えてクルマを押し出すことは難しく、そのために新旧のドライバーたちは、自分たちの真下に何かが入り込む心配は無用の運転を促された。GR 86でも同じことがいえるが、俊敏性には若干の調整が必要だ。

画像クレジット:Alex Kalogiannis

お気に入りのビデオゲームをプレイしながら、コントローラーの設定を今までよりもずっと高くしていくような感じだ。GR 86は、ハンドルを握り、リバランスされたパワー出力と組み合わせることで、驚くほど満足感が得られる状態でコーナーを回ることができる。

ステアリングとスロットルは軽いタッチに反応するかもしれないが、ブレーキに関しては別だ。それ以外の点ではしなやかなGT 86は、大幅な減速や停止の際に重い足の踏力を必要とする。高速ブレーキだけでなく、通常のスピード調整の場合でも、ブレーキを踏むことは、見た目ほど軽くないドアを押し開けるのと同じような不確実さをもたらす。

異なるトランスミッション間において、それは最終的に、トラックまたはストリートのどちらかの好みに帰着する。

マニュアルの操作は少しゆるい感じがするが、滑らかで軽い。クルマのハンドリングと同じように、ギアボックス自体もパターン全体をすばやく動かすことができるように設計されている。それ以外の点では、マニュアルであることから、オートマチックとは対照的にドライバーはフルコントロールの状態にある。

一般的に、オートマチック車はカジュアルからスポーティーな運転に向いているが、それを超えて、使いこなすというより克服するシステムになりつつある。

「スポーツ」モードは、オートマチック式GR 86sのスロットルレスポンスとギアボックスの挙動を処理するものであり、その違いは実際の適用において顕著である。「ノーマル」で速く走ろうとすると、ペダル操作時に一気に加速するが、ギアボックスはドライバーが加速を最大にするように低い位置にとどまるのではなく、できるだけ早く高いギアに戻ろうとする。スポーツでも、しばらくはギアを入れたままだが、最終的には自らの役割を果たすようになる。運転している人のフラストレーションに大きく影響するだろう。

ストリートビート

ストリートで元気なドライブをするとき、GR 86の才能はその欠点をはるかに凌いでいく。

トランスミッションの挙動はオートマチック車ではまだ邪魔になっているが、バックロードのカーブの感覚はトラックの時とは異なり、その荒々しい加速感とハンドリングは、前方の道路がどのように見えても、ほぼ確実に良い時間を保証する。

楽しいセッションの合間に、トヨタは十分に要求に適っていることを実感した。3万ドル以下のクルマに期待される性能よりも優れているが「すごい」要素(「wow」 factor)はない。悪くいえば、そこそこの内部タッチポイントを備えた安価な通勤車のように感じられるが、決して耐えられないものではない。

オートマチックでは、アダプティブクルーズコントロールなどの運転支援機能を利用できる。アダプティブクルーズコントロールは、高度が変化したり、クルマの存在が検知されたときに、設定速度を維持すべく積極的に動作する。

車線逸脱警告などのその他の設定のほとんどは、このデジタルゲージクラスターの1つのセクションからアクセスできるメニューの中に隠され、その使い方は、特に移動中は扱いにくい。これが作動すると、検知は的外れで、時にははっきりと無視される。筆者の場合、意図的に車線を逸脱してみたところ、同じ道を戻ってくるときだけ過度に反応した。

ライバルたち

価格面では、GR 86は、当然ながらマツダのMX-5を除けば、他に対抗するスポーツカーは多くない。アクセスしやすさ、手頃な価格、動的な振る舞いは似ているが、その使命と姿勢はそれぞれ異なっている。

ミアータは、遊び心のあるドロップヘッドの表現力でドライバーに愛されている気前のいいロードスターだ。GR 86も同じように遊び心があるが、コミカルでもなければ威圧的でもなく、やや厳粛性が高い印象だ。

最終的にはユーザーの好みとユースケースによるだろう。筆者なら、沿岸部のドライブにはミアータを選び、一方でGR 86はトラック用の小型車といったところだろうか。

実際、GR 86は自らに対抗しているだけである。ある面では、それは外向的な自己よりも優れたものになろうと努力しているのであり、ほとんどのドライバーたちは、GR 86がそこで成功していることに同意するだろう。

別の面では機械式ツインのスバルBRZと真っ向から勝負している。トヨタとスバルが提携してこれを実現したのは有名な話だ。このクルマを際立たせているものには、外観やチューニングなどがあるが、それ以上のものはない。愛好家たちがどちらに惹かれるかを見るのは興味深い。

GR 86は、トヨタの現在のモータースポーツへの取り組みと、文化的に重要な意味を持つスポーツカーの遺産へのコミットメントを示す重要な車両である。これを疑問視する人は、同社の構造のトップに目を向けてみて欲しい。トヨタの豊田章男社長は、スポーツカーに熱中しているだけでなく、経験豊富なドライバーでもあり、GR 86の開発にも個人的に関わってきた。要するに、自分自身が満足しない限り車は前に進まず、個人的な投資の度合いは重要でないことには注がれないのだ。

GRというサブブランドへのエントリーポイントとして(スープラに加わり)、GR 86は、新規の、そして経験豊富な愛好家に、パフォーマンスドライブの旅へのすばらしいスターティングポイントを提供する。GR 86にはドライバーとして、全米モータースポーツ協会の1年間の会員資格が付属しており、そこではハイパフォーマンスのドライビングイベントが1つ用意されている。

この86はまた、スープラやGRの前身であるAE 86のようなクルマの改造やメンテナンスを行っているアフターマーケットのチューナーにとっても白紙の状態である。結局のところ、GR 86は路上やトラックにおいて最速あるいは最強のクルマではないかもしれないが、学習曲線と価格面の両方において、そのアクセシビリティが優れているといえるだろう。

編集部注:本稿の執筆者Alex Kalogiannis(アレックス・カロジアンニス)氏は自動車関連ライター、エディター、司会者。

関連記事
フォードが完全EV版に先駆けてハイブリッドの「2021 F-150」発表、オプション満載モデルから見える同社のEVトラック戦略
オール電化のアウディ2022年モデル「e-tron GT」と「RS e-tron GT」は未来ではなく今を見据えるグランドツアラー
ポルシェのアプローチの正しさを納得させるフルEVワゴン、パワーと実用性を備えた新型Taycan Cross Turismo
画像クレジット:Alex Kalogiannis

原文へ

(文:Alex Kalogiannis、翻訳:Dragonfly)

【レビュー】OnePlus Buds Proは高コスパイヤフォン、1.65万円で音質、フィット感ともに文句なし

ワイヤレスイヤフォンで2021年に他社製品と差異化を図るには何をすべきだろうか。良いハードウェアが市場をほぼ制覇していて、答えるのがかなり難しい質問だ。筆者は2020年あたりからかれこれ10製品ほどを試した。正直なところ、それらはすべてかなりよかった。

NuraやNothingのような企業は興味深いアプローチを取っているが、スマホも販売しているハードウェアメーカーにとっては、ときに特定のモバイルデバイスにぴったりとくるものであれば十分だ。

OnePlusは、この2つの要素の間にある。同社ももちろん自前のスマホを作っているが、Samsung(サムスン)やApple(アップル)のような超大企業に近い販売台数ではない。OnePlus Buds Proも同じ路線を行っていて、自前のデバイスにぴったりくるイヤフォンだが、いくつかひねりが加わっている。競争の激しいこの分野でいくらか差異化を図る興味深い追加要素だ。

OnePlusのこの分野での現時点までの取り組みは、よく言っても例外的ではなく、悪く言えばなんともつまらない。同社がケーブルタイプの展開を経て、2020年に最終的にワイヤレス部門に参入したとき、筆者は大して感銘を受けなかった。100ドル(約1万1000円)弱というのはよかったが、ピッキングがまったくスリムではなく、おそらく3、4年前に発売できたと思わせるものだった。

画像クレジット:Brian Heater

幸いにもProはあらゆる点で改善されている。同社の共同創業者の1人がPro発売から1カ月もしなうちに独自のヘッドフォンを立ち上げたこともあり、同社にとって改善は少し安心するものに違いない。150ドル(約1万6500円)のProは同社のスタンダードイヤフォンならびにEar (1)より50ドル(約5500円)高い。しかし現在のイヤフォン業界を見渡すと、適正な価格だ。

このレビューで筆者はこのイヤフォンをOnePlusではないAndroidスマホとiPhoneで使ってみたことを記しておくべきだろう。この組み合わせではHeyMelody OnePlus / Oppoアプリの使用が必要だが、一言でいうと使わなかった。しかしいくつかの主要機能は利用できた。良好な音質が得られるよう、フィットテストがあり、そしてカスタムのサウンドプロフィールをつくることができるOnePlus Audio IDもある。

OnePlus Audio IDは、Nuraがユーザーに再生音を聴くことができるか尋ねながら、数多くの異なるトーンを通じて調整する古いタイプのサウンドテストで提供しているもののベーシックなバージョンだ。これはやや時間がかかるが、最終的には違いを生み出す。筆者が調整した後、より大きく豊かなサウンドになっていた。残念ながらそれ以上のEQカスタマイゼーションは多くない。つまり、サウンド面でベースへの過度の依存以外に不満はさほどない。

画像クレジット:Brian Heater

アプリとヘッドフォンのステム部分の両方でコントロールできるノイズキャンセリングも効果的だ。一方、ステムを長押し(3秒)するとこのイヤフォンの最もユニークな機能の1つ、Zen Mode Airが使える。どのテック企業もマインドフルネスのことを考えている時代にあって賢い機能だ。Zen Mode Airではホワイトノイズを流し込む。「Warm Sunrise」という鳥のさえずりや虫の音がする草原のようなサウンドスケープがデフォルトになっている。その他、キャンプファイヤーやビーチなど、4つのサウンドがあらかじめ用意されている。これは、筆者がこれまでに必要だと思った機能ではないが、あらゆることがストレスフルな時代、少し掘り下げてみよう。

デザイン面では、企業はこのごろ2つの選択肢のうちの1つをとっている。AirPodのようなものか、完全に異なるものだ。OnePlusが取った方向は一目でわかる。同社がレビューのために送ってきたマットブラックのペアはあまり目立たないが、白のバージョンは明白だ。マーケットリーダーであるAirPodに酷似しないよう、ステムがメタルになっているようだ。

画像クレジット:Brian Heater

快適性の観点からは、手強いものだ。筆者は長時間使用し、ランニングにも使ったがまったく不満はない。結局のところ、AirPodのデザインには何かがあるのだろう。バッテリー駆動時間は傑出していて、イヤフォン単体で5〜7時間(ANCを使用するかによる)もち、スリムケースと合わせると28〜38時間となる。ケースはワイヤレス充電に対応し、この価格ではますますユビキタスな機能だ。

OnePlusは明らかに最初に99ドル(約1万1000円)のイヤフォンを発売することで安価路線を踏襲したかった。しかしよりプレミアムなモデルで何ができるのかを示すGoogle(グーグル)のアプローチに何か感じるところがあり、安価路線から逸れたと筆者は考えている。ProはOnePlusが1年、あるいは2年前にリリースしておくべきだったヘッドフォンだという強い主張がある。しかし遅れてでも出さないよりはいい。

関連記事
【レビュー】Nuraがパーソナライズを実現する革新的なサウンド技術をついにワイヤレスイヤフォンに搭載
【レビュー】サムスンの「Galaxy Bud 2」は派手さはないが堅実なワイヤレスイヤフォン
【レビュー】成熟した市場に参入する低価格の変わり種、Nothingのワイヤレスイヤフォン「Ear(1)」
画像クレジット:Brian Heater

原文へ

(文:Brian Heater、翻訳:Nariko Mizoguchi

フォードが完全EV版に先駆けてハイブリッドの「2021 F-150」発表、オプション満載モデルから見える同社のEVトラック戦略

フルサイズのピックアップトラックは、米国自動車業界の中核を成し、非常に注目を集める部門である。この部門では、Ford(フォード)F-150が販売台数で首位に立ち、Chevrolet Silverado(シボレー・シルバラード)とRam(ラム)のピックアップトラックが急速にシェアを伸ばしている。

しかしトップへの道は厳しい。トラックに関しては、自動車メーカー各社がオプション機能と標準機能をパッケージ化して、目の肥えた顧客を獲得しようと激しくしのぎを削っていることはあまり知られていない。そして現在、これらのパッケージ化されたバンドルは、これまで以上に車載技術に大きく依存している。

トップセラーであるフォードは、最も目の肥えたお得意様を失うことなく、オプション機能を追加しなければならない。最近の試乗で気づいたのだが「2021 F-150」はこの取り組みを象徴しており、今後発表される完全EV版ピックアップトラック「F-150 Lightning(ライトニング)」に何が搭載されるかを示唆している。

筆者は同モデルが開発・製造された場所から約32キロ離れたデトロイト郊外で、3.5L V6 PowerBoost Full Hybrid(パワーブースト・フルハイブリッド)エンジンを搭載した2021 4×4 SuperCrew Lariat(スーパークルー・ラリアット)を試乗した。

ピックアップトラックの細部へのこだわりは、自動車メーカーのカスタムパッケージング技術によって実現している。目がくらむような数のオプションパッケージがあるのもそのためだ。筆者が試乗したF-150も例外ではなかった。F-150では、6つの異なるパワートレイン、3つの荷台の長さ、3つのキャブオプション、8つのトリムレベル、二輪駆動と4輪駆動オプションを用意している。

こうしたオプション重視の戦略は、フォードのような自動車メーカーには良い結果をもたらした。しかし自動車メーカーが技術やソフトウェアを追加することにより、最も忠実な顧客に混乱を招くリスクがある。

スクリーンセーバー

フォード2021 F-150の車内(画像クレジット:Ford Motor Company)

コアとなる顧客にとって機能的テクノロジーは非常に重要である。F-150がそのラインナップの他の車両と一線を画しているのはそのためだ。筆者が試乗した新しいモデルでは、標準装備のインフォテインメントシステム「Sync4」を搭載した12インチディスプレイがダッシュボードと顧客体験の中心に据えられている。

Sync4は、Mustang Mach-E(マスタング・マックE)と新型のFord Bronco(フォード・ブロンコ)に導入された。Syncは、2007年のリリース以来、よりシンプルなユーザー体験を実現するために着実に改善されてきた。Sync4では、計算能力が倍になり、無線でのソフトウェア更新が導入された。

同システムは、2万の都市と150の国の交通、工事(ミシガン州の夏では常に行われている)、天候、駐車場の空き状況に関して、INRIXからデータを入手している。

同システムで使用されている自然言語処理は、音声ベースの問い合わせや受信したSMSメッセージに対して、かなり正確に応答した。1つ注意すべき点は、筆者の試乗車両は直近の数週間、複数のドライバーによって使用されたため、機械学習アルゴリズムの良し悪しを判断するのが難しかったことだ。

インフォテインメントについては、筆者はどの試乗でも大抵、呼び出しやすいApple CarPlay(アップル・カープレイ)をAndroid Auto(アンドロイド・オート)とともに利用している。Apple CarPlayはF-150にワイヤレスで接続し、不注意運転を最小限にしてくれるからだ。2014年にCarPlayが、2015年にAndroid Autoが量産車両に搭載され始めて以来、AppleとGoogleがミドルウェアのインフォテインメントシステム競争で優位に立つのは避けられないように思われてきた。

Syncでは、サポート対象のアプリであるWaze(ウェーズ)とFord+Alexa(フォード+アレクサ)も設定できる。

関連記事:フォードが同社全体のデジタルトランスフォーメーション推進のためGoogle Cloud採用

運転技術

フルサイズのトラックを初めて運転するときは不安を覚えるかもしれないが、フォードはカメラ技術を使用して大型トラックを操作しやすくしている。画面が分割されているため、気弱なドライバーでも自信を持って狭い空間を移動できる。

5台の車載カメラがハンドル操作と駐車を支援するガイドとして機能する。上部からの360度ビューに組み込まれた鮮やかなグラフィックにより、ミラーでは不十分な位置の確認が可能だ。

ハンドルの後ろには約30センチのデジタルクラスタがある。筆者の心の片隅には、クラシックなピックアップトラックの昔ながらの計器を懐かしむ気持ちがあるが、それはフォードが目指している方向ではない。フォードが目指しているのは、Mustang Mach-EのAppleデザインにインスパイアされた美学に象徴される、未来志向の雰囲気である。

フォードは車内のデザインを通して、フォードが第一にテック企業であり、第二に120年の歴史を誇る自動車メーカーであることを主張しようとしている。このように熱心に美学を印象付けようとすることは、時間の経過とともに製品が古くなると、少々鼻につくようになるかもしれない。

フォードは「Active Drive Assist(アクティブドライブアシスト)」と呼ばれていた先進運転支援システム「Blue Cruise(ブルークルーズ)」を、ソフトウェアの自動アップデートにより2021年後半に車両に導入する予定だ。このシステムは、筆者が6月に試乗したモデルではまだ有効になっていなかった。ただしハードウェアは塔載されていた。

フォードによると、このシステムは、北米の道路16万キロの区間でハンズフリー運転を可能にし、Ford Co-Pilot360 Active 2.0 Prep PackageオプションでF-150 Limited車両に標準搭載される。またLariat(ラリアット)、King Ranch(キングランチ)、Platinum(プラチナ)の各モデルのオプションとして販売される。このシステムでは、GMのSuper Cruise(スーパークルーズ)に対抗して、ドライバーの方を向くカメラを使用して視線の方向と頭部の位置を追跡し、集中力を監視する。

最も重要な装置

2021フォードF-150車内の作業台(画像クレジット:Ford Motor Company)

長さ約30センチのスクリーンの下には昔ながらのノブやスイッチがある。これは顧客が依然としてさまざまな操作を手動で行うことを好んでいることを、フォードが知っているからだ。その下にはシフトレバーがあり、折り畳むと約38センチの作業スペースになる。筆者はそのスペースでノートパソコンを使っていた。

車内には豊富な充電ステーションとワイヤレス充電設備がある。F-150室内は広々としており、隅々まで配慮が行き届いている。シートはフラットにできるため、車内で快適に昼寝をしたり、積み荷スペースを広げたりできる。

ダークグレーの革製シートは、特にフル装備の車両の場合、高級感よりも実用性が重視されているように感じられる(運転の楽しさと内装の美しさでは、ライバルのラムがフォードを凌ぐ傾向にある)。外装・内装とも機能性そのものを重視している。筆者は2つのカヤックを後ろに積み込んだとき、トラック荷台のバンジーコードにつなげるためのフックを見つけた。これは気が利いている。

トラック荷台の後部には240ボルトのコンセントが多数あり、車内にもさらに2つのコンセントが搭載されている。荷台のテールゲートには、メートル単位とインペリアル単位の両方の計算ができる便利な定規が組み込まれている。ハイブリッドモデルには、2.4キロワットの発電機が標準装備されており、オプションで搭載できる7.2キロワットの発電機は満タンのガソリンで32時間稼働する。

筆者はF-150の牽引能力をテストしなかったが、トラック運転手にとってはこの数字は不可欠だ。積載量は約961キロで、最大約5760キロを牽引できる(この数字は荷台の長さとドライブトレインによって多少異なる)。またトレーラーとの連結をサポートするバックアップ牽引アシスト機能も備えている。筆者が運転したモデルの価格は6万8095ドル(約749万円)で、基準価格の5万980ドル(約560万円)から大きく跳ね上がっている。その一方で、フォードはよりハイエンドなF-150トリムであるLimitedを生産しており、その価格は7万3000ドル(約800万円)からとなっている。

優れた機能性

完全に電気自動車に移行するまでの間、すでにハイブリッドモデルを販売しているラムやシボレーと競争できるようにフォードを後押しするのがハイブリッドパワートレインだ。ハイブリッドオプションは、2022年に発売予定の完全EV、F-150 Lightningを受け入れる準備ができていない顧客向けの理にかなった妥協策である。すでに注目を集めていて、予約台数は12万台に達している。筆者の試乗では約37キロメートル / 3.8リットルを記録した。これはガソリン車よりも良い記録で、ディーゼル車以外のクラスでは最高の数値である。しかしこの数値でも、優れた排出量報告には遠く及ばない。だからこそF-150 Lightningが非常に重要になる。

関連記事:フォードの電動ピックアップトラックF-150 Lightningの予約が12万件超え

新たなEV顧客を獲得するために、フォードは、現在道路で目にするあらゆる種類のトラックを購入する既存の顧客を満足させる必要がある。ピックアップトラックには2種類の顧客がいる。毎日の仕事や週末にピックアップトラックの機能を使いたい人たちと、災害時に役立つ機能を求める人たちだ。筆者が試乗したトラックは、その両方にアピールすることができる。

F-150はこれまでも、家の修繕計画、アウトドアの趣味、牽引を目的とする購入者に適していた。またピックアップトラックは頑丈で機能的な車両を必要とする労働者もサポートする。フォードがこのモデルに何か新しい機能を導入するときは、大々的に宣伝して、こうした顧客がマイナーチェンジをどのように感じるかについて大きな賭けをする。

黒で統一された2021 F-150 Lariat車内(画像クレジット:Ford Motor Company)

6月下旬にF-150を借りているとき「安全を求める買い手」という言葉が頭に浮かんだのだが、最後にそのことについて書こうと思う。実は、筆者の試乗期間中に夏の嵐がミシガン州を直撃し、主要な高速道路は閉鎖され、何日も立ち往生した車もあった。

嵐の前、大きくゆったりしたハンドル操作、幅広い旋回、ハイブリッドエンジンの回生時に起きる静けさのリズムに慣れるために、筆者は街を疾走していた。

嵐が来たとき、筆者はスロットルを緩め、安定した確実なペースで、手を2時と10時の位置に置いて運転した。ロッジフリーウェイでは、乗用車と、F-150より性能の劣るクロスオーバーSUVが約60センチの水に浮かんでいた。F-150は、泥の中を何事もないかのように突き進んだ。筆者は横滑りやエンストは経験しなかったが、筆者の友人は、Uberのドライバーが立ち往生してしまい、歩いて帰らなければならなかった。F-150は、自然災害時に安全を確保したい人にとって試験台のようなモデルだ。F-150には発電機が装備されているため、気持ちがさらに落ち着く。

フルサイズのトラックはドライバーに無敵感を与える資質がある。それが結局のところ、F-150が人々に愛される理由であり、フォードが「Ford tough(フォードはタフ)」というキャッチフレーズを多用している理由である。フォードは、余分な飾りのないシンプルさを備えながら、力強さと実力、心の平安を感じさせるトラックを顧客にとって魅力的な価格で提供するという、絶妙なバランスを保っている。

関連記事
バイデン大統領のEV販売目標達成に向けて、自動車メーカーが政府の投資拡大を要請
半導体不足解消と新車需要によりフォードは2021年の利益増加を予想
フォードの電動ピックアップトラックF-150 Lightningの予約が12万件超え
画像クレジット:Tamara Warren

原文へ

(文:Tamara Warren、翻訳:Dragonfly)

8月26日発売・税込5万1700円の「Google Pixel 5a(5G)」実機レビュー、その実力をさっそく検証

8月26日発売・税込5万1700円の「Pixel 5a(5G)」実機レビュー、その実力をさっそく検証

グーグルは、18日にPixel aシリーズの最新モデル「Pixel 5a(5G)」を発表しました。

aシリーズは、いわゆる廉価モデル。リーズナブルな価格ながらも、AIをフル活用したカメラ機能は上位モデルとほぼ同等ということで、人気を集めています。

Google Pixel 5a(5G)は日米限定発売、理由は『半導体不足』

速報:Google、1万1900円の完全無線イヤホン Pixel Buds A-Series日本投入。廉価でも音質『同等』

Pixel 5a(5G)は、その名の通り、昨年発売された「Pixel 5」の廉価版という位置づけで、これまでと同様、カメラ機能はセンサーも含めてまったく同じ。グーグル自身のオンラインストアで販売されるほか、キャリアではソフトバンクが独占提供します。グーグルの直販価格は税込5万1700円で、予約は本日(8月18日)より開始、発売は8月26日を予定します。

グーグルはPixel 5a(5G)を発表した。Pixel 5の廉価版という位置づけだ

グーグルはPixel 5a(5G)を発表した。Pixel 5の廉価版という位置づけだ

これまでのaシリーズとは違い、Pixel 5a(5G)はどちらかと言うと、かなりPixel 5寄りです。カメラ以外にも、チップセットのSnapdragon 765Gや金属を使った剛性の高いボディ、防水対応といった点がPixel 5から受け継がれています。Pixel 5がフラッグシップモデルでありながら、最上位モデル向けのSnpadragon 865を採用していなかったこともあり、廉価モデルながら処理能力が並んでしまったというわけです。

筐体には金属を採用しているが、塗装で柔らかな印象に仕上げられている

筐体には金属を採用しているが、塗装で柔らかな印象に仕上げられている

実機に触れる機会がありましたが、持ち前のレスポンスのよさは健在で、おなじみの「夜景モード」や「Live HDR+」「超解像ズーム」といった機能はそのまま使えました。以下にPixel 5a(5G)で実際に撮った写真を何枚か掲載してみましたが、その写りはPixel 5と比べても遜色ありません。HDRがしっかり効いていて、色味も鮮やかめ。超解像ズームも映像の破たんが少なく、劣化自体はするもののかなり実用的な印象です。

カメラは標準と超広角の2つ。スペックはPixel 5と同じだ

カメラは標準と超広角の2つ。スペックはPixel 5と同じだ

望遠カメラは非搭載だが、超解像ズームに対応し、最大7倍まで寄ることができる。写真は上から0.7倍、1倍、6倍望遠カメラは非搭載だが、超解像ズームに対応し、最大7倍まで寄ることができる。写真は上から0.7倍、1倍、6倍

望遠カメラは非搭載だが、超解像ズームに対応し、最大7倍まで寄ることができる。写真は上から0.7倍、1倍、6倍

望遠カメラは非搭載だが、超解像ズームに対応し、最大7倍まで寄ることができる。写真は上から0.7倍、1倍、6倍

暗めの場所でもノイズが少ない。彩度がやや高めでキレイな写真が撮れる

暗めの場所でもノイズが少ない。彩度がやや高めでキレイな写真が撮れる

バッテリーに関してはPixel 5より大型化。容量は4680mAhで、4080mAhだったPixel 5より1割以上容量が増えています。ソフトウェア側の機能としては、「自動調整バッテリー」にも対応。バッテリーの持ちは悪くありません。6.34インチと、ディスプレイも6インチだったPixel 5より大きくなっています。90Hzのスムーズディスプレイには非対応ですが、こうした点が廉価版と言えるゆえんかもしれません。

バッテリー容量はPixel 5より増え、自動調整バッテリーにも対応

バッテリー容量はPixel 5より増え、自動調整バッテリーにも対応

指紋センサーは背面に搭載していますが、これもPixel 5と同じ。マスクを着けたままでもロック解除が簡単にできます。背面のカメラよりやや下に搭載されているため、手に持ったとき人差し指が自然に当たり、使い勝手は悪くありません。ただ、側面や画面内の指紋センサーと比べると、机やテーブル、スタンドなどに置いたまま使いづらいのが難点。インカメラはごく普通の撮影用カメラのため、Pixel 4のときのような顔認証も非対応で、良くも悪くもPixel 5の特徴が受け継がれています。

ここまでは、意図的にPixel 5との比較をしながらPixel 5a(5G)を紹介していきましたが、忘れてはいけないのが、昨年はaシリーズの端末が2機種あったこと。2020年は、4G対応のPixel 4aと5G対応のPixel 4a(5G)の2モデルがリリースされています。

少々厄介なのが、Pixel 4a(5G)が単純なPixel 4aの5G対応版ではなかった点です。当時は5Gに対応させるためのチップセットがSnapdragon 700シリーズまでしかなかったためか、Pixel 4a(5G)は4aと銘打ちながらも、機能面ではPixel 5寄りでした。

左がPixel 5(左)、右がPixel 4a(5G)。どちらもスペックはPixel 5a(5G)に近い

左がPixel 5(左)、右がPixel 4a(5G)。どちらもスペックはPixel 5a(5G)に近い

例えば、チップセットはPixel 5やPixel 5a(5G)と同じSnpadragon 765G。カメラも、12メガピクセルの標準カメラと16メガピクセルの超広角カメラのデュアルで、ディスプレイにも6.2インチ、フルHDのOLEDが採用されていました。実質的に、Pixel 4a(5G)がPixel 5の廉価版に近い仕様だったため、こことの比較になると、Pixel 5a(5G)があまり進化していないようにも見えます。

バッテリー容量の増加や、防水対応、ボディの素材の3点は差分になりますが、型番の数字を4aから5aに上げるだけの進化なのかについては疑問符もつきます。

イレギュラーなPixel 4a(5G)の存在があったこともあり、何となくマイナーチェンジモデルに見えてしまうPixel 5a(5G)ですが、仕様的にはちょうどPixel 5とPixel 4a(5G)の中間に位置する端末。価格に関してはPixel 5はもちろん、Pixel 4a(5G)よりも安くなっているため、コストパフォーマンは低くありません。秋に登場する予定の「Pixel 6」や「Pixel 6 Pro」までの機能は必要ないというユーザーにとっては、十分魅力的な端末と言えるでしょう。

Pixel 6、6 Proは外観やチップセットなどを公開済み。ただし、仕様の詳細は発表されていない

Pixel 6、6 Proは外観やチップセットなどを公開済み。ただし、仕様の詳細は発表されていない

ちなみに、グーグルによると、Pixel 5a(5G)は昨今の半導体不足から、投入される市場が日本と米国のみに限定されているといいます。生産台数が抑えられているため、特に需要の高い市場に絞ったというのがその理由。Pixel人気の高い国だからこその厚遇と言えますが、裏を返せば、日米以外ではPixel 4a(5G)があればニーズを満たせていたとも考えられます。

こうした理由もあり、Pixel 5a(5G)はMostly Blackの1色展開。21年1月にCleary Whiteが追加されて2色展開になったPixel 4a(5G)とは、カラバリでも差別化が図られています。カラーはMostly(ほとんど)というように、真っ黒ではなく、どことなく緑がかったような色合いに仕上がっています。カラバリの乏しさをカバーするため、ポップなカラーリングのケースも4色発売される予定。ケースで背面が隠れてしまうのであれば本体は1色でOKという大胆な割り切りですが、こうした点も廉価端末らしい部分と言えそうです。

1色に限定されている代わりに、ポップなカラーリングのケースが4色発売される

1色に限定されている代わりに、ポップなカラーリングのケースが4色発売される

Google Pixel 4a 5G発表。「ほとんど Pixel 5」で6万円台の高コスパ5Gスマホ

(石野純也。Source:GoogleEngadget日本版より転載)

関連記事
中止の噂を否定するためグーグルがPixel 5a 5G販売を突然発表、2021年中に米国と日本で
グーグルが正式に新スマホPixel 6を公開、専用チップTnsor搭載

カテゴリー:ハードウェア
タグ:Android(製品・サービス)Google / グーグル(企業)Google Pixel(製品・サービス)スマートフォン(用語)日本(国・地域)

【レビュー】Nuraがパーソナライズを実現する革新的なサウンド技術をついにワイヤレスイヤフォンに搭載

この記事を書いている筆者の机には、最近レビューしたイヤフォンが置いてあり、その数は5つを下らない。何と、そのすべてがかなり良くできている。もちろん、程度の差はある。だから製品レビューをしたわけだ。しかし、消費者向けエレクトロニクス製品のカテゴリーは成熟しているように思えた。それらの製品はどこにでもあるものになった。一夜にしてそうなったと言ってもいいくらいだ。

ほとんどすべてのハードウェアメーカーがこのカテゴリーに参入してきた。何度か繰り返しそうしているメーカーもある。200ドル(約2万1900円)以上出せば本当にすばらしいイヤフォンが買えるし、100ドル(約1万1000円)未満でもそこそこのものが手に入る。もちろん、この価格帯の品質はさまざまだ。しかし、機能はどうだろうか。目立ったものもいくつかあるが、全体的に見ると、イヤフォンはスマートフォンと同様、どれも似たようなものになった。

画像クレジット:Brian Heater

差別化は確かに、先にNothingのEar (1)が発表された際の大きなテーマでもあった。差別化はまた、Nuraの創業以来、そのDNAの核心部分でもある。しかし、Nothingのような企業がイヤフォンを大きなエコシステムの主力製品と見ているのに対し、Nuraは、要するにヘッドフォン企業である。その背後にある理由はとてもシンプルだ。Nuraの活動はすべて、オーディオテクノロジーを中心に構築されている。筆者が大きくて不格好な回路基板の付いた試作品段階の原型のNuraphoneを試す機会を得る前から、これは真実である。

2021年7月末に発表された200ドル(約2万2000円)のNuraTrueイヤフォンによって、この会社がヘッドフォン市場に参入するのは、オーバーイヤー型のNuraphoneと連結型のNuraloopに続いて3回目になる。「True(トゥルー)」というのは、本当にワイヤレスなデザインということのようだ。2020年のNuraloopという名前の由来となった、首の後ろで連結するデザインはやめた。

Apple(アップル)が最初のAirPodsをリリースして(Nuraが創業された年)から4年後に、199ドル(約2万1800円)という価格で有線タイプのイヤフォンを売り出すという決定は奇妙に思えた。技術上・実用上の考慮事項がいくつかあったのだ。Nuraはそれを磁石式のコネクターで最大限に活用し、有線タイプのヘッドフォン / モニター(筆者がまだ月に2、3度飛行機を利用していたときに重宝した)で倍増させた。

画像クレジット:Brian Heater

完全ワイヤレスの採用について、筆者がNuraの共同創業者、Dragan Petrovic(ドラガン・ペトロビック)氏に質問すると、氏は次のように答えた。

私たちは、優れたユーザーエクスペリエンスと(最も大切なこととして)優れた音質を確保できしだい、完全ワイヤレスの製品をリリースしたいと思っていました。完全ワイヤレスのイヤフォンが登場して約5年になりますが、最近になってようやく、音楽を堪能できるレベルにまで基本的な技術が成熟しました。こうした向上は、ワイヤレスチッププロバイダーによって可能になりました。そのようなわけで、2021年登場した完全ワイヤレス製品の多くは、以前入手できたものと比べるとかなり良くなっています。NuraTrueの場合、チップメーカーが長い時間をかけて成熟させたワイヤレステクノロジーを採用し、Nuraの(またはリスナーの)パーソナライズされたサウンドを加えて、最良の音質を最も便利なフォームファクターで実現しました。

誰もがこのカテゴリーで得たものを提供してきたことは事実だが、Nuraは、既成のコンポーネントをいくつかただまとめただけで参入したわけではなかった。Nuraが提供するリスニングエクスペリエンスはよりユニークだ。それは、音を装着者の耳に投射し、帰ってくるかすかな音を再び読み取るという、基板に実装されたテクノロジーのおかげである。

Nuraによるとこうである。

帰ってくる音波の中にある、耳に入った音がどの程度聞こえたかという情報がコード化されます。Nuraphoneでは、極めて感度の良いマイクを使って、返ってくるこの音波を検出し、Nuraphoneに内蔵の自己学習エンジンを使って、ユーザーのプロファイルを作成します。ボタンやつまみはありません。すべて自動で、約60秒で処理されます。ちょっとしたマジックです。

画像クレジット:Brian Heater

3つのデバイスの体験はどれも同じであり、そのことは2、3度書いている。基本的に、返ってきた読み取り内容に基づいてカスタムメイドの音の指紋を作成し、それに応じて設定を調整する。初めて試してみると、少し不思議な感じがする。特に、デフォルト設定とカスタム設定を切り替えるとそうである。

最初のNuraphoneはすぐに、筆者が最も推奨するヘッドフォンの1つになった。この若いハードウェアスタートアップにとって確かな業績だ。しかし、筆者は最初のオーバーイヤー型ヘッドフォンの発売以来ずっと、この企業が完全ワイヤレスのフォームファクターで何を成し遂げることができるか見るときを待っていた。大方の意見では、NuraTrueのイヤフォンは成功だと言えるだろう。

優れたサウンドは大部分がそのままである。注目に値する成果だ。このヘッドフォンでは、同程度の値段の製品では聞き逃すことがあまりにも多い微妙な違いが聴ける。バランスの良くないヘッドフォンでは失われてしまう、捉えにくい細部が聴けるのだ。もちろん、聴く音楽の音源によっては、他の微妙な違いは失われる。Nuraはすばらしいことができるが、奇跡的というほどではない。

いうまでもなく、サイズが小さいと失われるものがある。Nuraphoneの大きな差別化要因は、イヤーカップのおかげで、皮膚で感じることができるほど強力な低音が加わることだ。この体験は、イヤフォンで提供される体験レベルを調整するよう設計された、アプリの没入スライダーである程度は実現できる。しかし、繰り返しになるが、オーバーイヤー型カップの音響効果に代わるものはない。

画像クレジット:Brian Heater

しかし、である。この時点で、フォームファクターが異なれば妥協点も異なることを、我々はみな暗黙のうちに理解していると思う。そうでなければ、ヘッドフォンのスタイルは1つしかないだろう。NuraTrueは相当軽い。そのサイズを考えると、本当に驚いた。イヤフォン1個の重さは7.4グラムだ。それに、極めて心地良い。他のNura製品同様、NuraTrueは最初のテストを行う際、気密が保たれているかどうか検出する。Nuraの3つの製品の中で、NuraTrueはこの点で最も問題が少なかった。

イヤフォンが変わると頻繫に耳の痛みを経験する人もいるが、筆者は、事実上1日中装着していても問題はなかった。重さの配分と耳の中にねじ込む部分のデザインによって、イヤフォンの収まりがとても良い。イヤフォンがジムで落ちたり、少し走っているときに落ちたりするという問題はなかった。

アクティブノイズキャンセリング(ANC)はまずまずだ。業界をリードするほどではないが、確かにその役割を果たしている。しかし、没入機能と同様、この機能のオンとオフを切り替えるにはアプリを操作しなければならないのが少々難点だ。これらのことは、サウンドプロファイルの基本的な重要性と相まって、NuraTrueとアプリの結びつきが他のイヤフォンの場合よりずっと強いことを意味している。これは、違いを享受するための代償だと思う(更新情報:Nuraによれば、ANCは実はアプリ内のジェスチャーとして追加できる)。

バッテリーの持続時間は、イヤフォン本体で6時間、ケースと合わせると24時間だ。超高速の充電はできない。ケースの500ミリアンペア時のバッテリーをゼロからフル充電するには、約2.5時間かかる。充電を忘れなければ、あるいは2、3回続けて長時間のフライトに出かける予定でなければ、おそらくこれは問題ではないだろう。ケースの前面にバッテリーランプが4つあるのがいい感じだ。

画像クレジット:Brian Heater

最大の不満点に自分でも少し驚いている。筆者が最近テストしたほとんどのヘッドフォンでは、Bluetoothの接続に何も問題はなかった。正直、それは過去のことだと思っていた。NuraTrueで使用しているのは、最新バージョンのBluetooth(5.2)ではなく、5.0である。これは、例えばAirPods Proの場合と同じバージョンだ(もちろんAppleには、電話、オペレーティングシステム、チップを自社で作っているというはっきりとした利点がある)。家の近くでの接続は良好だが、出歩いているときに接続が切れることがある。最近の他のイヤフォンでそのようなことはない。

世の終わりというわけではないにしても、覚えておく価値はある。確かに、Nuraが第2世代で対応を検討すべきことだ。内蔵マイクにも課題がある。電話に出ると音がひずむのだ。

これ以外には、正直あまり不満はない。NuraTrueは機能も形もよくできており、心地良い。この会社のサウンドプロファイリングテクノロジーは際立っているというに十分で、数ある類似のイヤフォンとは異なっている。筆者の個人的な必要からすれば、Nuraloopはもうほとんど不要になったのではないかとも思う。しかし、ペトロビック氏は、Nuraloopを維持していくと言っている。なぜなら、Nuraloopは「本当にワイヤレスな製品にはないもの、最も重要なものとして16時間以上のバッテリー持続時間やアナログのオーディオジャックに接続する機能を提供することで、製品ポートフォリオを補っている」からだ。

画像クレジット:Brian Heater

この2点で十分である。繰り返しになるが、何でもできるヘッドフォンがあるなら、さまざまなヘッドフォンがあっても意味がない。全体的に見ると、NuraTrueは大多数のユーザーにとって非常に大きな魅力があると思う。有線には有線の強みがあるが、現在ほとんどのユーザーにとってその魅力はかなり限定的だ。16時間持つ内蔵バッテリーはすばらしいが、大抵の場合、イヤフォン本体の6時間とケースを合わせた24時間で十分である。

しっかりしたハードウェアスタートアップが、差別化されたテクノロジーで大企業と戦い、消費者市場でいくらかの人気を集め続けているのを見るのは本当にすばらしい。最初期の頃、NuraはSamsung(サムスン)やAppleに買収されるのではないかと思っていたが、独自の道を進むことを選んだのはうれしいことだ。

関連記事
【レビュー】成熟した市場に参入する低価格の変わり種、Nothingのワイヤレスイヤフォン「Ear(1)」
新型ワイヤレスイヤフォン「Beats Studio Buds」発売、Android / iOS高速ペアリング、ノイキャン搭載で税込1万7800円
【レビュー】ソニー新型「WF-1000XM4」は高性能ワイヤレスイヤフォンの新基準、2年待っただけの価値がある

カテゴリー:ハードウェア
タグ:Nuraイヤフォンレビュー

画像クレジット:Brian Heater

原文へ

(文:Brian Heater、翻訳:Dragonfly)

オール電化のアウディ2022年モデル「e-tron GT」と「RS e-tron GT」は未来ではなく今を見据えるグランドツアラー

ラグジュアリー、テクノロジー、そして豪華さは、しばしば密接に結びついている。億万長者が宇宙を旅する時代において、最新の質の高い一流のガジェットは、未来から来たように見えるものではないかと、多くの人が考えているかもしれない。

Audi(アウディ)の観点からはそれは当てはまらない。2022年モデルのAudi e-tron GTとRS e-tron GTは、2060年から来たもののようには見えない、高貴な雰囲気を持つオール電化のグランドツーリングカーだ。見た目は洗練されたガソリン車のようだが、その外観の下には、一見したところのデザインでは想像できないほどのパワー、技術的なポップさ、そして品格が秘められている。

2022年型Audi e-tron GTとRS e-tron GTは、低めのルーフライン、広いトラック、長いホイールベースを備えている。e-tron GTとRS e-tron GTはどちらもAudi R8と並行して生産されており(ルーフラインはR8よりも低い)、その象徴的なデザインからいくつかのものを拝借しているが、これらの電気グランドツアラーは、まったく独自の、1対の馬力のある車種といえる。

基本概要

Porsche(ポルシェ)のTaycanと同じ800ボルトのアーキテクチャーをベースにしたe-tron GTは、前後輪に動力を供給する永久磁石式同期電動機(PMモーター)により、総出力469HP(オーバーブースト時最大522HP)を生み出している。RS e-tron GTは同じモーターで590HP(オーバーブースト時637HP)を出力し、Audiによると3.1秒で時速60マイル(約96km)に達するという。

どちらのクルマも能力に優れ、信頼性が高く、スピードも速く、山道や長い高速道路のような長距離走行でも停滞しない。多くの電気自動車と同じように、加速はほとんどシームレスだ。

トルクベクタリングシステムを搭載したAudiの電動「quattro」によるAWD(全輪駆動)の効果で、両車とも、車輪がきしみ始めても、安定した走行性と適切な配分を実現する。このシステムでは、急なコーナリングや車線変更、滑りやすい状態での走行時に、スリップした車輪に可変量の動力を送ることができる。

筆者が試乗した車には夏用タイヤが装着されていた。そして、ロサンゼルスのダウンタウンから北東50マイル(約80km)にあるアグアダルシーエアパークの閉鎖されたスラロームコースで、急な車線変更のテストを最後に行った。RS e-tron GTを3回連続でコーンを通過させてシステムの感触を確かめ、そのたびにクルマは安全で、しっかりと接地し、制御されていると感じた。

ステアリング、スピード、航続距離

2022年型Audi RS e-tron GT(画像クレジット:Audi)

e-tron GTとRS e-tron GTには、後輪ステアリングもオプションで付いている。時速30マイル(約48km)以下では、後輪は前輪と反対方向に最大2.8度旋回し、e-tron GTとRS e-tron GTの旋回半径を小さくする。時速30マイル以上では後輪は前輪と同じ方向に旋回する。このシステムはPorsche Taycanのシステムに類似している(回転角度が小さい)。

エアパークの平坦な滑走路では両車両のオーバーブーストを試すことはできなかったが、RS e-tron GTの起動制御を使って0-100mph(0-160km/h)の加速を連続して行ったところ、ジャーナリストの集団の中で2番手につけ、0-60を3.24秒、0-100を7.29秒で記録した。39度の暑さの中、コールドタイヤでのこの数字はかなり印象的だ。滑走路の終わりまでに、速度が時速120マイル(時速193マイル)に近づいているのを確認した。これは電子的に制限された最高時速155マイル(約249km)より32マイル(約51km)短い速度だ(e-tron GTの電子的に制限された最高時速は152マイル[約244km])。その後ブレーキを踏んだ。フル充電されたRS e-tron GTは、連続して3回走行した後、20マイル(約32km)の航続距離を失っただけだった。

RS e-tron GTのEPAによる推定航続距離は232マイル(約373km)であるのに対し、e-tron GTの推定航続距離は239マイル(約384km)である。

充電性能

2022年型Audi e-tron GT(画像クレジット:Audi)

これらのEPAの推定航続距離は、低い位置に搭載されたの93kWhバッテリーパック(両車とも同じ)の成果であり、Audiによると270ボルトの充電器(DC急速充電)では23分で最大80%を充電できるという。

価格は、e-tron GTが9万9000ドル(約1088万円)から、RS e-tron GTが13万9900ドル(約1537万円)からとなっている(いずれも1045ドル[約11万円]のdestination charge[輸送費]を除く)。この価格には1回限りの限定特典が付いている。

AudiはElectrify Americaと提携し、3年間無料で無制限の公共充電サービスを提供する(時間制限がない)。Qmeritを利用した家庭用充電ステーションもある。e-tron GTとRS e-tron GTには、標準のデュアル充電ポートと、240ボルト対応の9.6kW充電システムを装備しており、オーナーはあらゆる場所で充電が可能となる。Electrify Americaは、Dieselgateのスキャンダルを受けて、Audiを所有するVolkswagen Group(フォルクスワーゲングループ)が立ち上げた。

充電器を見つけるには「MMI」と呼ばれるインフォテインメントシステムと、センターコンソールに搭載された10.1インチのタッチスクリーンを利用する。ナビゲーションに進み、プラグと充電器のリストが表示されたアイコンをクリックすると、充電器の一覧が表示される。

筆者はワンデイドライブで充電器を探す機会はなかったが、Audiによると、同社のMyAudiアプリ(スマートフォンとデスクトップで利用可能)とMMIの両方を通じて、EA(Electrify America)の充電器とそのステータス、可用性を簡単に確認できるという。ドライバーは好みの充電レベル(レベル1からDC急速充電器)でソートし、Audiの車載インターフェイスを離れることなく充電器にアクセスできるとAudiは述べている。

ドライバーはEAのアプリやMyAudiアプリを使ってスマートフォンで検索を行い、現在利用可能なワイヤレスのCarPlayや、筆者が運転したe-tron GTやRS e-tron GTでは利用できなかったが、プロダクションモデルに搭載されるワイヤレスのAndroid Auto経由で車に道順を送ることができる。中央のアームレストにあるUSB-Cポートを介してスマートフォンに接続することも可能だ。

筆者はオーナーではないため、MyAudiアプリを使うことはできなかったが(プライバシー確保のために車両のVINをアプリに接続する必要がある)、ドライバーはMyAudiアプリでルートを計画することができ、システムが自動的に途中で充電停止を行い、十分なバッテリーを確保して確実に到着するようにするとAudiは説明している。

完全電動式の高級車にシームレスに移行するために、もう少しサポートを受けたいと考えている高級車購入者に向けて、Audiはe-tron GTとRS e-tron GTを含むEV向けのAudi Careをローンチする。参加ディーラーでは、オーナーは追加で999ドル(約11万円)と税金を支払うことで、ワイパーやブレーキパッドなどの消耗品、サービスアポイントメントのための係員の送迎、モバイルサービス(タイヤ交換、基本的なメンテナンス)の提供を受けることができ、オーナーが必要とすれば年に10回までAudiセンターに無料で行ける。Audiはまた、e-tron GTまたはRS e-tronを購入すると、Silvercar by Audiの7日間の無料レンタルも提供する。

バーチャルコックピットはもちろん優れもの

2022年型Audi e-tron GT(画像クレジット:Audi)

e-tron GTとRS e-tron GTは、e-tron (SUV) とAudi R8の両方の機能を融合させたもので、どちらのGTにもデュアルスクリーンが搭載されており、ドライバーと同乗者に多くの機能を提供する。ドライバーの前にある12.3インチのバーチャルコックピットは、現在の大部分の現代的なAudiに見られるように、高度にカスタマイズ可能だ。マップ・ビューからバッテリーステータスへのアクセスまで、ハンドルからのわずかなインプットで提供される。

このシステムはナビゲーションを簡単にする。ドライバーや同乗者はステアリングの操作ボタンを押すだけで目的地を音声で設定でき、クルマに住所や目的地、都市を伝えることができる。

この音声システムは驚くほど堅牢で、筆者が使ったときにはやや遅れ気味だったものの、自然言語のインプットを認識し、特定の言葉を発するよう話者に促す。ルートをキャンセルして目的地の変更を入力する操作を運転しながら行うか、一時停止するかという2つの選択肢にさらされるような時に使える。自分の意図をシステムに認識させるために、何度も試さなければならなかったことは一度もなかった。

センターコンソールに搭載された10.1インチのインフォテインメントシステムは、ドライブモードの選択から特定のAudiアプリ、ナビゲーションオプション、オプションのマッサージ、ヒートおよびクールシートなど、あらゆるものを提供する。

Audi MMIの中央画面はタッチ式静電容量方式で、ユーザーはアイコンをドラッグ&ドロップして自由にホーム画面をカスタマイズできる。同乗者が望む場合(そして適切な機器を持っていれば)、シートヒーター、クーラー、マッサージをすべてMMIから同時に実行することも可能だ。

豪華さはそれほど必要ない?

2022年型Audi e-tron GT(画像クレジット:Audi)

どちらのGTも10万ドル(約1100万円)程度を提示しており、そのためにもう少し華やかなものを求める買い手もいるかもしれない。

発売年は、高価だが特別なオプションとしてRS e-tron GTのワンイヤーパッケージを提供する。2万350ドル(約224万円)の「カーボンパフォーマンス」パッケージには、カーボンファイバー製のトリム、照明付きドアシル、黒のバッジ、後輪のステアリングの他、21インチの特殊ホイール、赤のセラミックブレーキキャリパー、赤のシートベルト、内側の赤のステッチなどが含まれている。

高級ブランドとしての名声、パワー、そして先進テクノロジーを手に入れたい方に、豪勢なものは一切搭載していない(必ずしも必要ではない)が、高貴な雰囲気を持つ電化されたグランドツアラーとして、2022 Audi e-tron GTとAudi RS e-tron GTは最適といえよう。どちらも現在販売中である。

関連記事
EUがBMWとVWに約1110億円の制裁金、90年代からの排ガスカルテルで
アウディの全電動クロスオーバーQ4 e-tronはダイナミックARディスプレイを搭載
フォーミュラEドライバーがアウディチームから追放、バーチャルレースで替え玉

カテゴリー:モビリティ
タグ:AudiEVレビュー

画像クレジット:Audi

原文へ

(文:Abigail Bassett、翻訳:Dragonfly)

【レビュー】成熟した市場に参入する低価格の変わり種、Nothingのワイヤレスイヤフォン「Ear(1)」

Carl Pei(カール・ペイ)氏は、周囲を見回すと同じようなものであふれているという。そう感じているのは彼だけではない。完全なワイヤレス型イヤフォンは、Apple(アップル)が初期のAirPodsで発明したわけではないが、AirPodsが一種の転換期となって、多くの競合他社がこぞって同じようなイヤフォンを発売するようになった。Bluetoothイヤフォンほど短期間で成熟し融合した消費家電のカテゴリーを他に挙げろと言われても簡単には思いつかないだろう。ただし、数あるワイヤレス型イヤフォンの中からちょっとした変わり種を見つけるということなら話は別だ。

最近は、完全な実用性を備えたワイヤレス型イヤフォンが50ドル(約5400円)くらいでワンクリックで手に入る。200ドル(約2万1000円)も出せば本当に卓越したものが手に入る。しかし、多様性となると話は別だ。どれもこれも似たような製品に思える。細長いAirPods型のデザインと少し丸みのあるデザインのどちらを選ぶかという以外に、多様性と呼べる要素は見当たらない。つい最近まで、アクティブノイズキャンセリングとワイヤレス充電などの機能を備えているかどうかによって、このカテゴリーのプロダクトは高級とそれ以外に2分されていたが、今はどちらも当たり前の機能になってきている。

画像クレジット:Brian Heater

2021年に新しい消費者向けハードウェア企業を立ち上げるとしよう。そして、最初の製品としてイヤフォンを選択したとする。どうすればよいだろうか。競合他社が乱立する市場で自社製品の差別化を図るだけでなく、Samsung(サムソン)、Google(グーグル)、Apple(アップル)といった大手と渡り合っていくには、何が必要だろうか?

価格はもちろん重要な要素の1つだ。「99ドル」(日本では税込1万2650円)というのは、かなり積極的な価格設定だ。ペイ氏は、TechCrunchの最初のインタビューでは、Ear (1)を100ドルを切る価格に設定したことを後悔しているようだった。Nothingは製品ごとに大きな利益を挙げるつもりは必ずしもないといって間違いないと思われる。ペイ氏の前の会社OnePlusと同様、同氏は低価格をその製品の最大の特徴にするのを嫌っているようだ。

関連記事:Nothingが新型ワイヤレスイヤフォン「Ear(1)」をついに公開、税込1万2650円で8月17日発売

Ear (1)発売前のインタビューで、ペイ氏は、業界の現状をある種の「機能過剰」状態だと考えていると話していた。実際、さまざまなカテゴリーで、過去数年に渡り、終わることのないスペック競争が繰り広げられていた。その結果、機能によって差別化を図るのはますます難しくなっていった。それは、ここ数年のスマートフォンメーカーの端末の売り方を見ればよくわかる。その間、ワイヤレスヘッドフォンは「ワクワクする初期の混乱」状態から「極めて高品質な製品」状態へと、ごく短期間で移行した。

画像クレジット:Brian Heater

個人的には、機能による差別化の余地はまだあると思う。例えば最近発売されたNuraTrueのイヤフォンを見てみよう。この会社は、3つのヘッドフォンモデルの特長である専用のオーディオテクノロジーを基盤として、通常とは反対のアプローチでイヤフォンにたどり着いた。

ペイ氏は、Ear (1)の発表記者会見で、Nothingは最初の製品を決定する前にまず、同社の美学的な理想を明確にしたことに触れた。そして、いつもどおり、製品の画像が表示される前に、デザイン会社Teenage Engineeringとのパートナーシップを発表した(初期の段階で我々が入手できた情報は、初期のコンセプトは、ペイ氏の祖母のタバコのパイプにヒントを得たということぐらいだった)。

他にもエコシステムに関する考えについても理想はあるが、これは、複数の製品がリリースされた後にはじめて具体的に考えるべきことだ。とりあえず現時点では、Ear (1)をあらゆる角度から見てみた。耳に装着したり、手のひらの上に置いたりしてみる(手のひらに置いたままではタイピングは難しいので、今は机の上に置いてこの記事を書いているが)。

画像クレジット:Brian Heater

形状は明らかにAirPodsのものを借用しており、耳に装着するイヤピース部分から細長い柄が飛び出した形をしている。その点では、Ear (1)はすべてがNothing独自の製品であるとはいえない。とはいえ、完全なワイヤレス型イヤフォン自体の性質からして、取れる形状が限られているということは言えるだろう。筆者はもちろん製品デザイナーではないが、イヤフォンは耳に心地よくフィットする必要があるし、大き過ぎても重過ぎても、柄の部分があまり突き出ていても駄目だ。

ペイ氏によると、この製品のリリースが遅れた理由の1つは、最初に戻ってデザインをやり直したからだという。彼らが最終的にたどり着いたのは、ひと目でイヤフォンと分かるものの、独自の少し目を引くようなデザインだった。透明であるというのは美的観点からすると最大の差別化要因だ。ケースが透明なのは、こうした製品では珍しいので、とりわけ目を引く。イヤフォン本体については、透明なのは柄の部分だけだ。

画像クレジット:Brian Heater

イヤピース部分単独で見ると、アップル製品にかなり似ている。光沢のある白の仕上がりと白のシリコン先端部が大きな部分を占めている。初期のレンダリングのとおり、イヤピース部分が透明でないのは、シンプルで現実的な理由からだ。イヤピース部分を構成するパーツが透けて見えるとあまりに見苦しいからだ。これは製品のリリースが遅れた別の要因でもある。つまり、製品を透明にすると、パーツや接着剤の見え方を考える必要があるのだ。普通なら完全に透明なケースの中央が広く白い部分で覆われているのも同じ理由からだ。充電パーツは見苦しいのだ(失礼、だが事実だ)。

スケルトン仕様にするとゴテゴテしたデザインになりがちだが、Nothingはデザイン的にもかなりよい感じに仕上がっているし、同時に異彩も放っている。それだけでもガジェット設計という単調な世界で何かを主張している感じだ。また、StockXと提携したことも、Nothingが追いかけているアーリーアダプターやインフルエンサーの影響を明らかに示している。

Ear (1)イヤフォンは、このカテゴリで、同じくスタイル重視のどのウィル・アイ・アム製品よりもずっと好感が持てる。Ear (1)は確かに目立つが、外でもひと際目を引くというほどではない。つまり、街を歩いていて「あの人の耳見て」と大声で指差されたり、止められたりすることはない(ウィルさん、失礼)。

画像クレジット:Brian Heater

外観は、個人的には、気に入っている。気の利いた工夫も施されている。赤と白の点はそれぞれ、右と左のイヤピースを表している。これはRCAおよびその他のオーディオケーブルの色分けに従ったものだ。Nothingのロゴが点線の文字で刻印されており、回線基盤プリントを思わせる。この文字は、Nothingの大半の商標にも使われている。サプライチェーンベンダーとの交渉に多くの時間を費やした経験のある人物が立案したデザインであることは明らかだ。筆者がペイ氏に話を聞いたときも、同氏は、Nothingが本拠を置くロンドンではなく深センの周辺で、サプライチェーンの末端に関する問題の詳細を詰めていることが多かった。

イヤピースの感触も抜群だ。筆者は、さまざまなデザインのイヤピースを長時間装着した後、耳の痛みを感じることが多いことは前に述べた。Ear (1)を装着してニューヨーク市内を4時間ほど散歩したが、痛みや違和感はまったくなかった。また、耳の中でも非常に安定していた。充電ケースに戻すときにも、磁石でカチッと収まるのがとても心地よい(ここでも赤と白の色分けがされている)。

画像クレジット:Brian Heater

ケースは平坦な四角形で角に丸みが付けられている。透明でなければ、ミントの缶詰によく似ている。フタを閉めるときにはカチッという音もする。数百回あるいは数千回開け閉めを繰り返した後も、このフタのかっちり感が持続するかどうか興味深いところだ。

Nothingによると、標準的な落下テストや負荷テストはすべて行っているものの、透明なプラチックは強度が高くても引っかき傷がつきやすいため、複数の鍵と同じポケットに入れた場合などは特に注意が必要だと警告している。ペイ氏は、こうした傷は最終的には魅力の1つにはなるだろうと言っているが、果たしてユーザーはどのように判断するだろうか。筆者は数日間使ってみて、鍵を同じポケットに入れるようなこともなかったが、ケースの底に長い引っかき傷がついた。この傷で別段クールな感じになったとも思わないが、みなさんはどうだろうか。

上蓋には大きなくぼみがあって、閉じたときにフタとイヤフォンがぶつからないようになっている。このくぼみは、ケースを何となくいじるときに親指を置くのにもちょうどよい。ぼんやりとフタを開け締めして、ソワソワした気持ちを落ち着かせるのにもよいのではないか。ちょっとしたことだが、よく考えられた細工だ。ケースの裏側には、USB-Cの充電ポートとBluetoothの同期ボタンがある。

画像クレジット:Brian Heater

iOSを使っている場合は、アプリを介して、またBluetooth設定で、最初にイヤフォンを接続する必要がある。自社製はイヤフォンだけで、OSもチップもスマホ端末も作っていない会社には設定に関していろいろと厄介な面もある。が、厄介といっても大したことはないし、おそらくは1回行えば済むことだ。

Ear (1)はまずまずの音質で聞ける99ドル(日本では税込1万2650円)のイヤフォンだ。驚くほど良いとまでは言わないが、Sony WF-1000XM4や新しいNuraTrueなどと互角に渡り合えないからといってがっかりする人はいないと思う。決してオーディオマニア向けではないが、音楽やポドキャストを聞きながら、街をぶらぶらするにはもってこいだ。

アプリにはTeenage Engineeringによって調整されたエコライザーが組み込まれており、balanced、treble / bass、voice(ポッドキャストなどで使用)の3つの設定が用意されている。3つの違いはわかるが、かなり微妙だ。イヤフォンではこの位が限界だろう。エコライザーのカスタマイズに関しては、デジタル一眼レフカメラよりも全自動感が強い。Nothingとしては、作り手の意図するバランスからあまりかけ離れて欲しくないということだろう。筆者は、すべての設定を試してみたが、ほとんどbalanced設定にしていた。みなさんのご意見をお聞かせいただきたい。

  1. CMC_9584

    画像クレジット:Brian Heater
  2. CMC_9587

    画像クレジット:Brian Heater
  3. CMC_9591

    画像クレジット:Brian Heater
  4. CMC_9592

    画像クレジット:Brian Heater
  5. CMC_9594

    画像クレジット:Brian Heater
  6. CMC_9598

    画像クレジット:Brian Heater
  7. CMC_9599

    画像クレジット:Brian Heater
  8. CMC_9602

    画像クレジット:Brian Heater
  9. CMC_9610

    画像クレジット:Brian Heater
  10. CMC_9612

    画像クレジット:Brian Heater
  11. CMC_9617

    画像クレジット:Brian Heater
  12. CMC_9621 (1)

    画像クレジット:Brian Heater
  13. CMC_9622

    画像クレジット:Brian Heater
  14. CMC_9625

    画像クレジット:Brian Heater
  15. CMC_9626

    画像クレジット:Brian Heater
  16. CMC_9627

    画像クレジット:Brian Heater
  17. CMC_9628

    画像クレジット:Brian Heater
  18. CMC_9631

    画像クレジット:Brian Heater

 

ANC設定にも、ノイズキャンセリング、トランスペアレント、オフの3種類が用意されている。ノイズキャンセリングは、必要に応じて、強度を調整できる。全体として、ANC機能は非常に優れており、ニューヨークの街の雑音をかなり消してくれる。しかし、一番強い設定にしても、クルマの音を完全にブロックするとまではいかない。個人的には、そのくらいでちょうどよいと感じる。

「イヤフォンを探す」設定も用意されている。こうしたものは、どうしてもソファのクッションの下などに入り込んでしまいがちだが、この設定で甲高い電子音を発するようにしておけば簡単に見つけられる。

画像クレジット:Brian Heater

一番不満に感じているのは、NuraTrueのイヤフォンでも感じた不満だ。Bluetooth接続が何度も切断されるのだ。音楽やポッドキャストに没頭していると、Bluetooth接続が切断されるのはイライラする。この現象は、イヤフォン、スマホ端末、チップ、オペレーティングシステムをすべて自社で作っている会社の製品では、あまり起こらない。新興スタートアップにとって、この点に関して競争するのはかなり厳しい。

難癖をつければ、数カ月間いろいろといじってみたものの、Ear (1)イヤフォンは過当競争気味のこの分野をひっくり返すような製品ではない。とはいえ、新興企業が消費者ハードウェアの分野に参入して、堅実な先発製品を市場から締め出すのを見るのはいつでもワクワクするものだ。ワイヤレス型イヤフォンという分野に低価格で新しい独自の製品を投入したNothingは、今後も注目していくに値する企業だ。

関連記事
【レビュー】ソニー新型「WF-1000XM4」は高性能ワイヤレスイヤフォンの新基準、2年待っただけの価値がある
【レビュー】グーグルの99ドルワイヤレスイヤフォン「Pixel Buds A-Series」はコスト削減努力の結晶
新型ワイヤレスイヤフォン「Beats Studio Buds」発売、Android / iOS高速ペアリング、ノイキャン搭載で税込1万7800円

カテゴリー:ハードウェア
タグ:カール・ペイNothingイヤフォンレビュー

画像クレジット:Brian Heater

原文へ

(文:Brian Heater、翻訳:Dragonfly)