デジタルと人間の間の絶妙なバランスを求められている、アドビやセールスフォース

今週ラスベガスで開催されたAdobe Summit会場の長いホールを歩いて、マーケティングとデータ統合の話を聞きながら、私はブランドとその顧客の間に起きる明らかな断絶について考えていた。膨大な量のデータや、それをまとめるための増え続けるツールセット、そして最適な顧客体験を作り上げたいという情熱。私たちはスリリングな消費者体験のための準備を整えてきたと思うかもしれないが、一方で肝心なときにかならずしもその効果が得られるわけではないということも知っている。

たぶんその問題の一部は、データベース内にあるデータが、顧客に直接向き合う従業員たちの行動に必ずしも結び付けられていないからだ。多くの場合、顧客体験はスムーズには進まない。データがあるソースから別のソースに渡されることもなく、やっと誰かにたどりついたと思っても、相手は必ずしも事情がよくわかっているわけでもなければ、気持ちのいい対応をしてもらえるとも限らない。

言い換えれば、私のデータがボットから人間の顧客担当者にスムーズに渡され、2回も3回も同じ情報を要求されなかったとしたら、感動してちょっとショックさえ受けるだろうということだ。

こうした話はおそらくAdobe(アドビ)やSalesforce(セールスフォース)のようなマーケティングオートメーションベンダーが聞きたいものではないだろう。しかしこれは、満足している顧客の話よりもはるかにありふれたものなのだ。現在のツールのゴールが、システムを接続するためのAPIを提供することであることは、私も理解している。それはさまざまなチャンネルから、リアルタイムでデータをストリーミングする。インテリジェント分析を適用することによってそのデータをより良く理解することができる。そしてある程度までそれは実現されていて、私たちを真に喜ばせようとしているブランドも存在しているのだ。

だがブランドは、現実世界で起こることよりもデジタル世界で起こることの方をはるかに上手にコントロールできるため、ここに断絶が起きる可能性がある。ブランドが、デジタルの世界で顧客と対話する際には、詳細レベルまで知ることが可能で、間違いや矛盾を可能な限り早く修正しようとしている。問題は人間とのやりとりに切り替わったとき、店舗のPOSレジやオフィス、その他のチャンネルで人間が人間と直接対話を行うときに、そうしたデータが有用でなかったり、アクセスすることさえできなかったりすることだ。

それに対する答は、私たちにさらなるデジタルツールやハイテクを与えることではなく、人間対人間のコミュニケーションを改善するための努力を行うことであり、そしておそらく人間の従業員たちを、眼の前に立つ顧客に対応するために本当に理解する必要のある種類の情報で、武装することなのだ。

もしブランドたちが、こうした人間との接触ポイントを正しく掴むことができるなら、ブランドに対するより多くの忠実な顧客を得ることができるだろう。それは究極の目標である。だが今は注力する点がよりテクノロジーとデジタル領域に偏っているように思える。それでは必ずしも望ましい結果が得られるとは限らない。

これは、Adobe、Salesforce、あるいはこうした問題を解決しようとしているテクノロジーベンダのせいではないが、人間関係の側面は、現在考えられているよりもはるかに強力な焦点になる必要がある。結局、世界中のすべてのデータをつぎ込もうとも、顧客に対応するのが乱暴だったり無知な従業員では、ブランドを守ることはできない。そして、どんなに洗練されたマーケティングテクノロジーを使っていようとも、たった1回の悪い顧客体験がブランドを長期にわたって悩まし続けることになる可能性があるのだ。

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(翻訳:sako)

Boston Dynamicsが恐竜的2輪ロボットで倉庫業務をデモ

Boston Dynamics(ボストン・ダイナミクス)がHandleロボットの最初のバージョンをデビューさせたのは2年前になる。しかしその後は横置き2輪で移動できるHandleは脇に置かれ、同社はもっと華々しい2脚、ないし4脚で移動するロボットの開発に力を入れる方向に向かった。

エンジニアリングの見地からはHandleleは同社の他のロボットに決して見劣りするものではなかったが、同社が発表するビデオはほとんどがAtlasとSpotないしSpot Miniだった。

しかし米国時間3月28日、Handleのバージョン2が活躍するビデオが公開された。もっとも、環境はやや地味だ。このビデオでは倉庫の設定でHandleロボットのパッケージ処理能力がデモされている。当初のビデオでHandleは45キログラムの荷物を運ぶことができたが、新しいバージョンは現実のロジスティクスに応用した場合が検討されている。

アップデートされたHandleは一見してオリジナルと大きく異なる。まずオリジナルよりずっと小型化され、2本のアームの代わりに先端に吸引カップを装備したグリッパーが恐竜の首のように延びている。今回のモデルでは持ち上げられる最大重量は14キロ程度で、ビデオで扱っている箱は5.5キロほどだという。それでもこのロボットの器用さ、作動範囲、自立性の高さは驚くべきものだ。

Boston Dynamicsによれば、「HandleはSKU(販売商品単位の箱)をパレットからピックアップし、移動して別のパレットに積み上げるなどの動作を自立的に遂行する。Handleにはカメラが搭載され、人工知能によるコンピュータービジョンでパレットのマーキングを読み取って箱を適切な場所に移動することができる」という。

去年TechCrunchがバークレーで開催したロボティスクス・イベントで、Boston DynamicsはSpot Miniロボットを商用化する計画があることを発表した。これによれば、同社のロボットは今年後半には一般に購入可能になるという。これは親会社がGoogleからソフトバンクに変わったこともあり、ロボットのビジネス化に力を入れていくという努力の一環なのだろう。

Handleのようなハイスペックなロボットの価格は一般的な倉庫で働かせるためには高価すぎるだろうし、このビデオはBoston Dynamicsがプロダクトの商用化を目指す動きとはいちおう別に考えたほうがいいだろう。そうではあっても、現在、倉庫で利用されているロボットはルンバのような動く台車にすぎないのに比べて、倉庫の棚から荷物をピックアップし、自分で所定の位置に運んでいくHandleの能力は驚くべきものだ。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

自動運転除草機のFarmWiseがプロトタイプ製造パートナーにミシガン州の自動車企業を選ぶ

FarmWiseは、農業で一番嫌がられる作業のひとつである除草を、ロボットにやらせようとしている。そのために、このサンフランシスコ生まれのスタートアップはミシガン州の自動車企業Roushに、自動運転ロボットのプロトタイプ作りで協力を求めた。

このコラボレーション事業の財務的詳細は公表されていない。

自動運転除草機は、除草剤を不要にし、農家の労力を減らす。この除草ロボットは1日24時間平気で精度の高い除草作業をするから、作物の反収を大幅にアップする。そもそも除草剤も、除草が大変な仕事だから発明されたのだ。

Roushは2019年に12台のプロトタイプを作り、2020年にはさらに多くを作る予定だ。でも、なぜ中国ではなくミシガン州なのか?

FarmWiseの共同創業者でCTOのThomas Palomares氏はこう語る。「ミシガン州はその優れた製造業と自動車産業で世界的に知られている。彼らは高度な技術と製造工程のノウハウを持っている。われわれのマシンを作ってテストするためにも、そのような高度な製造技術が必要だ。われわれにRoushを紹介したのはミシガン州の投資企業のPlanetMだが、うちのようなテクノロジー系のスタートアップが製造にまで手を染めるためには、年季の入った評価の高い自動車メーカーの協力が絶対に欠かせない」。

Roushは、高性能な自動車部品のメーカーとしてミシガン州で長い歴史がある。最近ではその高度な製造技術を活かして、ロボティクスや代替燃料システムにも手を広げている。

ミシガン州の産業振興や国際関係の形成にも関わっているPlanetMの、集団事業担当ハイスプレジデントのTrevor Pawl氏は次のように語る。「FarmWiseのようなスタートアップとミシガン州生え抜きの企業であるRoushの製造業ノウハウが一緒になって、前者のコンセプトを現実化する。このコラボレーションは、そんな機会づくりのモデルケースだ。その意味で、このコラボレーションが実ったことは非常に喜ばしい。プロトタイプや製造のサポートを求めている新興企業を州の有能な製造業界が支えていく、今回はそんな事業モデルのすばらしい好例だ」。

FarmWiseは2016年に創業され、これまで570万ドルのシード資金を調達している。そのときの投資家はPlayground Globalなどだ。本誌TechCrunchがFarmWiseを最初に見たのは、Alchemist Acceleratorのデモデーのときだ。

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

Googleはロボット事業を縮小し、方針転換を図る

2013年、Google(グーグル)はロボティック分野に大々的に進出した。Androidの父ことAndy Rubin(アンディ・ルービン)氏のもと、Boston Dynamicsなど複数社を買収したのだ。ブレードランナーにあやかってReplicantと名付けられたこの部門は、親会社となるAlphabetの下で密かに運営されていたが、数年以内にシャットダウンされることとなる。

近日、GoogleはNew York Timesに対して、主任サイエンティストのVincent Vanhoucke氏のもとで本社内のラボにて開発が進められている、ロボット部門の様子を公開した。

結局、Googleはルービン氏が推し進めていた壮大なロボット開発から離れることにした。そこには人型ロボットも、Big Dogs(四足歩行するロボット)もない。むしろ、製造業や倉庫運用などに必要なハードウェアに注力しているのだ。これは、Amazonの倉庫用ロボットを連想させる。どうやら、Googleはより身近な問題、とくにオートメーション分野でよく話題に上る「単調で、汚く、危険な(dull、dirty、dangerous、Ds)」を解決しようとしているようだ。

重要なことは、ソフトウェアのサービスに関わるハードウェアというカテゴリは、ずっとGoogleらしいアプローチだということだ。Google Brainとマシンラーニングは、同社が研究し開発しているイノベーションのコアとなる分野だ。たとえGoogle Xの目標だったムーンショット(壮大な挑戦)でなくなったとしても、Googleが強みとなる部門に注力するのは賢い選択なのだ。

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(文/塚本直樹 Twitter

リンゴ収穫ロボをニュージーランドの大農園が初めて本格採用

Abundant Robotics(アバンダント・ロボティクス)を、TechCrunchでは3年ぐらい前から追っている。そして今、このSRIからスピンアウトした企業が成熟期を迎えた。Abundantの今週の発表によると、ニュージーランドのT&G Globalが、同社のロボットを使ってリンゴの収穫を始める。

Abundantによると、実際には同社のロボットがこの南北両半球にまたがる大農業企業の周年収穫作業に採用される、ということであり、ニュージーランドはたまたまその開始地点だ。

AbundantのCEO Dan Steere氏は発表に伴うプレスリリースで、こう述べている。「リンゴの自動収穫機の開発は、複数の技術的難問を並列的に解いていくことを要する。収穫適期の果実をどうやって見分けるのか。それらをどうやって傷つけずに収穫するのか。果樹園の中をどうやって安全に走行するのか。これらの問題の解決に向けて開発とテストを進めるためには、生産者との密接なパートナーシップにより、現実の状況にアクセスできることが不可欠である。それによって初めて、技術の商業的利用が可能になる」。

これまで小規模なパイロット事業を進めてきたAbundantだが、T&Gとの契約は初めての商用展開だ。これまで、このベイエリアの企業は1200万ドルを調達している。その中には2017年の、GV(Google Ventures)のリードによるシリーズAの1000万ドルも含まれる。やっと商用化に向けてのスタートを切った同社は、今後、世界中の農産物の収穫作業に革命をもたらすかもしれない。

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

宇宙ロボットで人間が行う作業の72%を代替、テレプレゼンスロボのGITAIがJAXAと共同研究

宇宙空間での作業用に遠隔操作ロボットを開発するGITAIは3月25日、JAXA(宇宙航空研究開発機構)と共同研究契約を締結し、国際宇宙ステーション「きぼう」の日本実験棟模擬フィールドにおいて、GITAIロボットによる宇宙飛行士の作業代替実験を実施したと発表した。

GITAIが開発するのは、宇宙で作業コストを従来の10分の1にすることを目的に開発された作業ロボット。VR端末を使い、遠隔で操作する「テレプレゼンスロボット」だ。GITAIが今回の実験で使用したロボット(6号機)は、宇宙ステーションの限定的なネットワーク環境を前提に、これまでのロボットでは困難だったスイッチ操作、工具操作、柔軟物操作、負荷の高い作業などを1台でこなせる性能をもつという。

実験の結果、GITAIロボットはこれまで人間が行っていた作業の72%を代替することに成功。GITAIとJAXAの共同研究契約は今年度末を期限としており、両社は今後も協力して技術検討と実証実験を行うという。

GITAIは2016年7月の設立。CEOの中ノ瀬翔氏は2013年にインドで起業し、同社を売却した経験を持つ連続起業家だ。同社は2016年9月にSkyland Venturesから1500万円を調達。2017年12月にはANRIと500 Startups Japanから1億4000万円を調達している。

ソニーの「aibo」、アップデートで賢くなったが値段の割にはイマイチ

新型のaiboは素晴らしい。だが、機能が少ない割には非常に高価な“おもちゃ”だ。ロボット犬が本物の犬と比較して優れているところは、「老いたる犬に新しい芸を教えることはできない」というが、それをソフトウェアのアップデートで可能としているところ。まあ、企業がアップデートを続けるのであれば、の話だが。

ソニーは3月18日、「aiboシステムソフトウェア バージョン2.01」のアップデートを順次開始すると発表した。スマホ版の「My aibo(Ver2.0.0)も」同日に併せて公開。上記のアップデートにより、1月に発表されたaiboの新機能「aiboのおまわりさん」が各家庭で利用できるようになった。

同アップデートにより、aiboはルンバのように家の地図を作り、各部屋の名前を付けれるように。そして設定された時間に「犬のおまわりさん」のメロディーとともに指定された場所をパトロールする。

新型aiboの主な機能は「見つけてほしい人」の顔と名前を10人まで登録できたり、パトロールの状況や毎日の暮らしの中での触れ合いの様子のレポートを作成したりできるところ。このような機能では、スマートホームセキュリティを代替するのは現段階では難しいだろう。

今回のソフトウェアでは、上記に加えて、頭部の動き、姿勢、写真のクオリティなどがアップデートされ、尻尾を触られていることを感じられるようになった。良いんじゃないかとは思うが、結局、3000ドルは高すぎる。

(本稿は米国版TechCrunchの記事を翻訳・編集したものです)

[米国版TechCrunchの記事はこちら]

元ソニー技術者が創業、東大発のロボット義足ベンチャーBionicMが資金調達

「既存の義足にはまだまだ不便な部分がある。自分自身、義足のユーザーであり1人のエンジニアでもあるからこそ、もっといい義足を自ら開発しよう。そんな思いで始めた」

そう話すのは、BionicM(バイオニックエム)で代表取締役を務める孫小軍氏。同社では現在ロボティクス技術を活用した“次世代のハイテク義足”を開発している。

チームを率いる孫氏は、学生時代からの義足ユーザーだ。大学卒業後はソニーでエンジニアとして働いていたが、義足の課題点を自らの手で解決するべく、会社を辞めて東京大学の博士課程に進学。ヒューマノイド技術を応用した義足の開発に取り組んできた。

そのBionicMは3月18日、研究開発のスピードをさらに加速するべく、UTEC(東京大学エッジキャピタル)から資金調達を実施したことを明らかにしている。具体的な金額は非公開だが億単位の調達になるという。

既存の義足に課題を感じ、東大のロボット研究室へ

BionicMのメンバー。右から3人目が代表取締役を務める孫小軍氏

中国で生まれた孫氏は、9歳の時に病気が原因で片足を切断している。「当時中国では補助制度もなく、義足自体も高価なものだった」ため、それ以来は松葉杖を使ってずっと生活をしてきた。

そんな孫氏が義足ユーザーになったのは、交換留学を機に日本で暮らすようになった学生時代。「松葉杖から義足になることで両手も自由になり、生活の幅も広がった」と当時を振り返る孫氏は、東北大学、東大大学院を経てソニーに入社し、エンジニアとして勤務する。

ただ、義足を使う生活が続く中で、次第に既存の製品には改良できる点があると感じるようになった。

「階段の昇り降りが大変だったり、常に自分で力を入れていないと動かないから疲れやすい。例えば椅子から立ち上がる場合、義足は膝が曲がった状態では力が入らないのでもう一方の足にかなりの力を入れる必要があり、高齢者などは苦労する。安全性の面でも膝折れしてしまい転びやすいという問題もあった」(孫氏)

冒頭でも触れた通り、孫氏は自らの手で新たな義足を開発すべくソニーを退職。再び活動の場を東大へと移すことを決断する。

進学先として選んだのは、ヒューマノイドロボットを研究する情報システム工学研究室(JSK)。グーグルに買収されたSchaftや、産業用ロボット分野で事業を展開するMUJINの創業メンバーもルーツを持つ、この分野では日本有数の研究室だ。

まさに現在BionicMで開発するロボット義足も、ここで学んだ最先端のロボティクス技術を取り入れたもの。当時は誰も義足の研究をしておらず手さぐりで始めたそうで、本格的に義足を作る上では資金が全くなかったという。

そこで2016年にJST(国立研究開発法人 科学技術振興機構)が運営する大学発ベンチャーの支援制度「START」に応募。このプログラムでは申請フローの途中でVCなどの事業プロモーターがつく仕組みになっていて、当時からBionicMをサポートしてきたのがUTECだった。

実際にBionicMを法人化したのは2018年12月のため、同社は設立から間もない生まれたてのスタートアップと言える。ただプロジェクト自体は孫氏の熱い思いから発足して、数年に渡って続いてきたものだ。

寡占市場ゆえに、技術革新が進んでこなかった義足市場

そもそも義足は切断箇所を入れる「ソケット」と、膝や足の役割を担う「膝継手」「足部」などのパーツから構成される。

ソケットは足を切断した位置に限らず必ず必要になるもので、切断箇所と義足をつなぐ役割。体にフィットしたものを選ぶ必要があり、義肢製作所でオーダーメイドのものを作る。一方で膝継手や足部などはメーカー側が大量生産していて、BionicMもまさにこの2つのパーツを手がけている。

孫氏によると、膝継手や足部などの義足パーツは「受動式」「電子制御型受動式」「能動式」の3タイプに分かれるという。現在活用されているものの大部分はオーソドックスな受動式タイプ。自転車に例えるとシンプルなママチャリに近く、機能に限りがある分、価格も平均で数十万円〜100万円ぐらいとコスト面でメリットがある。

電子制御型受動式はギアのついた自転車をイメージしてもらえるとわかりやすいかもしれない。受動式を少しアップデートしたもので、その分価格帯も200万円前後に上がる。

そして3つ目の能動式がいわゆる電動自転車のように、最もハイスペックなものだ。ユーザーの負担が削減される一方で、高価格になりがちなのが課題。現在市場に出回っているものは1000万円ほどするという。

BionicMが手がける義足もこの能動式に分類されるもので、既存の製品よりも性能を上げつつ200万円ほどで提供することを目標にしているという。

本当にそこまで価格を下げることが可能なのか気になるところだが、実はこの市場は「全体の70%のシェアを大手3社が握っている寡占市場」であり、価格の競争や新しい技術の採用など変革がほとんど起こっていないのだそう。

だからこそ新たな義足を開発する意義もあるし、スタートアップが市場を切り開くチャンスもある。モーターやバッテリーなどロボット義足に欠かせない部品の改良が進んでいるのも追い風だろう。その考えは創業前からBionicMをサポートしてきたUTECの井出啓介氏にも共通する。

「寡占化によって義肢の市場はおかしな状況になっている上に、テクノロジーの恩恵を十分に受けられていないため市場環境的にもスタートアップが戦える余地が十分にある。そこに日本の最先端のヒューマノイド技術を応用した製品が出てくることは、価値の高いこと。今はアジアから主要なプレイヤーが1社も出てきていないが、この技術は日本に限らず中国やインドなどアジア諸国でも展開できる」(井出氏)

様々な局面でユーザーをアシストする、ハイブリッド型義足

現在BionicMが研究開発を進めているのは、ロボット技術を基に人間の自然な歩行をアシストする義足だ。複数のセンサーを搭載したこの義足は、足を降り出す際や障害物とぶつかった際など、様々なシーンにおいて歩行環境やユーザの意図を検知できる。

左が受動式の義足、右が現在BionicMが開発する能動式の義足。段差などの障害物にぶつかった際、受動式の義足では膝がカクッと折れてしまうことがわかる

歩行時であれば振り出す動作をアシストすることで、身体への負荷を抑え自然に歩けるようにサポート。段差などにつまずいて膝折れしてしまうような場面でも、その状態を把握して動力を駆動させることで転ばないように支える。

受動式の義足では負担となっていた椅子から立ち上がる動作についても、アシスト機能によって両足に均等に体重をかけながら楽に起立することができる。

もちろん能動式の義足を開発するプレイヤーは他にもいるが、上述した通りイノベーションがあまり進んでいない。実際、市場に出回っているものには値段の高さ以外にも重さを始め、使い勝手が悪い部分があるそう。

中でもネックとなるのがバッテリーが切れてしまうと“電池切れのスマホ”のように全く使い物にならなくなってしまう点だ。

その問題を解決するため、BionicMではハイブリッド型の義足を開発している。つまり普段はハイスペックなロボット義足として力を発揮し、仮にバッテリーが切れてしまった場合にも受動型の義足として使うことができるという仕組みだ。

その他バッテリーを小型化することでこれまでの製品よりも30%ほど軽量化するなど、ユーザーの負担が少なく、楽に使える義足の実用化を目指している。

「普段生活をしていて意識することはないかもしれないが、人間の足は非常によく出来ていて、それを機械を使って模倣するのはとても難しい。体に装着するものなのでできる限り小型で軽くしないと使えないし、人間に近い動きを制御するのも簡単なことではない」(孫氏)

現在作っている膝部分のプロトタイプは4代目。試行錯誤しながらアップデートを繰り返す日々で、今は10月に神戸で開催される国際義肢装具協会の世界大会で製品を披露することが目標。製品化は2020年春を目安にしているという。

「自分もそうだったが、病気や事故によって止む無く足を切断する人もいる。そんな人達が健常者と同じように自信を持って生活できるように、まずはマイナスをゼロにできるような義足の開発を目指す。また、今は義足を周りに見られたくないというユーザーも多い。ゆくゆくは見た目にもこだわり、義足の文化自体も変えられるようなチャレンジをしたい」(孫氏)

Amazonの世界最大級フルフィルメントセンターのロボット軍団を見た

第2本社の一つをクイーンズ区に建設するという計画が地元の攻撃にあって挫折する数カ月前に、Amazonは8000平方メートル近い面積を持つ巨大フルフィルメントセンターをスタテン島にオープンさせていた。昨年秋に完成したJFK8と呼ばれるロジスティクス施設の建設には1億ドルが投じられ、最終的には2250人を雇用することになる。

我々は2月にJFK8を視察するチャンスがあったが、空気にはまだ新品の匂いが漂っていた。すべては真新しくピカピカで、マシンの静かなうなり声が聞こえた。これは年中無休、24時間稼働を前提とした設備で、Amazonが目指す迅速な商品宅配を実現するためのデザインだった。

JFK8は21世紀の資本主義を象徴するある種の大聖堂だ。Amazonの政治的意味を考えるなら、JFK8のベルトコンベアのハイウェイにパッケージが迅速に積み込まれ翌日までに消費者の手元に届くように発送されていく光景を忘れてはならないだろう。

このスペースはまた人間とロボットが文字通り手を取り合って働く未来の工場の姿としても印象深い。Amazonは現在、25個所以上のフルフィルメントセンターに10万台のロボットシステムを配置している。Amazonの説明によれば、在庫商品の種類を40%アップするのに役立ったという。

スタテンアイランドの施設には、棚から所定のアイテムを取り出してコンベアに置くソーターから、Amazonと日本のオートメーション大手、ファナックが共同で開発したパレットを積み込み用の巨大なロボットアームまで、 ありとあらゆる最新のテクノロジーが導入されている。

システムの中心をなすAmazonの自社製ロボット群はすべて迅速な配送というひとつの目的のために動いている。上の階ではぎりぎりのスペースの床の上で巨大なルンバのようなロボットが厳密に制御された複雑なダンスを踊っている。

リモート操作により自由に動き回れるロボットこそ、 Amazonが2012年に7億7500万ドルで買収したマサチューセッツに本拠を置くスタートアップKivaの中心となるテクノロジーだった。3年後に同社はAmazon Roboticsと改名されたが、Kivaの痕跡はまだあちこちに残っている。人間の立ち入りを制限するロボッ作動区域を囲う柵にはいまだにKivaのロゴが見られるものの、Amazonとして2番目に巨額だ。た買収は急速に結果を出しているといえるだろう(略)。

Amazon Roboticsのソフトウェアおよびシステム・ソリューションを担当するScott Dresserは「ロボットが人間の職を奪う」という広く流布している説を否定し、TechCrunchに対し、人間とロボットのスキルセットは別物であり、相互に補完関係にあると述べた。Dresserの説明によればこうだ。

人間はプロダクトを分類しどの棚に収納すべきか即座に判断できる。コンピューターはこういう判断が苦手だ。我々は人間が得意な仕事は人間に、ロボットが得意な仕事はロボットに分担させている。このような状況はフルフィルメントセンターだけでなく、あらゆる場所で同じだ。作業をロボットによって拡張することにより、人間は全体としていっそう効率的に働けるようになる。

最近Amazonが特に重視しているのが職場の安全性だ。ニュージャージーのセンターでアウトドアでクマを撃退するためのスプレーの缶が破損し、従業員24人が病院送りとなった事件は記憶に新しい。Amazonのロボットの誤作動が当初の報じられたが、Amazonは「ロボットは無関係だった」と否定した。

ロボット区域を囲むフェンスは、人間のスタッフに危害が及ばないようにすることを目的としている。重く大型の機械が作業の一部になるにつれ、安全性はまつます重点的な配慮を要する事項となる。安全性と効率性、双方の理由から、人間は通常この区域に立ち入ること禁止されている。しかし100%完璧なシステムは存在しない。ときおりパッケージが取り落とされたり、ロボットが故障したりする。


TechCrunchでも取り上げたロボット安全ベストをAmazonが導入したのはまさにこの問題に対処するためだ。鮮やかなオレンジ色のメッシュベストには多種類のセンサーが取り付けられており、作業者にとって1、2キロの負担となる。

しかしDresserによれば、「このベストはロボットがはっきり認識できるようデザインされている。ロボットは人間のスタッフが付近にいること認識し、それに合わせて作動する。これは我々のロボットの最も基本的な機能に組み込まれている」という。

従業員がベストの機能をデモしてくれた。ボタンを押して制限区域のフェンスを開き、中に入っていくと近くにいるロボットは即座に停止し、遠方のロボットも動作を減速させた。これが何重にもデザインされた安全対策の一つのレイヤーだという。クマ撃退スプレー事件から教訓が得られるとすれば、ロボットが作動している職場での事故は、たとえロボットが関与していなくても、あっという間にトップニュースになってしまうということかもしれない。

我々はまずます頻繁にオンラインで商品を購入するようになっている。この需要を満たす上で、賛否はともあれ、ロボットの大部隊がさらに中心的な役割を果たすようになることは疑いない。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

トヨタとパナソニックが東京五輪に提供する介助ロボットをデモ

2020年東京で夏のオリンピックとパラリンピックが開催される。日本の大企業の多くはこのチャンスをとらえて最新のテクノロジーをデモしたい考えだ。中でも観客のモビリティを改善するロボディクスに注目が集まっている。

今週開催されたプレスカンファレンス「東京2020ロボットプロジェクト」で、こうしたテクノロジーの一部が公開された。日本や他の国で高齢化が大きな課題となっているが、こうしたロボディクスは自力で移動することが困難な人々を助けることを目的としている。

副事務総長の古宮正章氏はイベントで「ロボットは人間を圧迫する存在ではない。ロボットは人間と有効的な関係を築き、協力する存在であるべきだ。これがわれわれが考えるロボットの未来だ」と述べた。

このイベントの主要スポンサーとなっているトヨタは、人間を介助するロボットの開発を以前から続けてきたことで知られている。今回発表されたのは観衆の移動を容易にする介助ロボット16種類だった。共同スポンサーのパナソニックは20種類の運搬ロボットを披露した。これには装着者が大重量を運搬することを可能にする外骨格装置が含まれている。

世界のメディアの注目が集まるオリンピックはこうしたテクノロジーをデモするのに理想的な場だ。今回発表されたテクノロジーはロボティクスの中でも普段はさほど注目されない地味な部分だけに、こうしたチャンスを利用することには大きな意味がある。日々の生活で切実に助けを必要としている人々の役に立つようなロボティクスが本当に役立つテクノロジーというべきだろう。

画像:KAZUHIRO NOGI

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

サンゴ礁の破壊者、ミノカサゴを一撃で退治する次世代ロボ

ロボット研究者は意外な動物関連のプロジェクトに取り組んでいる。iRobotのCEOであるColin Angle氏にとってそれは、ミノカサゴを吸い込むロボットである。Angle氏は、Robots in Service of the Environmentの名前が示す通り、環境に奉仕するロボットの開発を目指したボランティアベースの組織であるRSEの共同創設者でもある。

2017年にRSEの最初のプロジェクトが発表された。それはサンゴ礁に棲む魚類を大量に死滅させてしまう侵入種を捕獲するロボットだ。

2万9000ドル(約320万円)のKickstarterキャンペーンの成立を経て、RSEは「Guardian LF1 Mark 3」という勇ましい名前を明らかにした。魚を吸引するこのロボットは、ミノカサゴが生息し繁殖する水深400フィート(約120メートル)でも動作する。ノートパソコンやモバイルデバイスから、最長1時間、遠隔操作をすることができる。

Angle氏はこのニュースに関する発表の中で「ミノカサゴはサンゴ礁を破壊し、大西洋の魚を減少させている」と述べている。RSEのGuardian LF1には最新の革新的な技術が組み込まれていて、ロボットは海中のより深い場所でより長時間働き、より多くの獲物を捕らえることができる。画期的な技術を組み合わせたこの新しいツールで、貴重な天然資源の保護に一歩近づいたという。

このロボットはミノカサゴを一撃で気絶させ、1回の潜水で最大10匹を捕獲する。プロトタイプはすでに動作していて、フロリダでさまざまなテストが実施されている。

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(翻訳:Kaori Koyama)

しぼんだ風船で物をつかむMITのロボットハンドは自重100倍の重さを持ち上げる

生物からヒントを得たソフトなロボットは、ロボット工学の中でももっともエキサイティングな分野だ。それらは、障害物に挟まれても壊れずに搾(しぼ)られたり、自分のまわりの世界に形を合わせることのできるマシンだ。MITのCSAILとハーバードのWyssの共同プロジェクトは、彼らのこれまでの研究成果を利用して、デリケートなオブジェクトを扱うことができ、自重の100倍の重さのものを持ち上げることのできる、ソフトロボットのグリッパー(gripper, 物を掴み上げる機能部位)を開発した。

グリッパー本体は折り紙からアイデアをもらった骨格構造をしていて、それを布やしぼんだ風船で包んでいる。それは最近チームが別のプロジェクトで、ローコストの人工筋肉を設計したときに採用したやり方だ。コネクターがグリッパーをロボットの腕に取り付け、真空装置が空気をグリッパーから吸い取って、オブジェクトのまわりにぴったり貼りつかせる。

Soft Roboticsの商用グリッパーのように、このデバイスは柔らかいので、複雑な視覚システムがなくてもいろんなオブジェクトをつかめる。また、つかむとき、デリケートなオブジェクトに傷をつけない。

MITのDaniela Rus教授がニュースリリースの中でこう言っている。「これまでの荷造りロボットはごく一部のオブジェクトしか扱えなかった。とても軽いオブジェクトや、箱や筒のような形状によくなじむオブジェクトだ。でもわれわれのMagic Ballグリッパーでは、ワインの瓶やブロッコリー、ぶどう、卵などさまざまなオブジェクトを、掴んで持ち上げて置くことができる。言い換えると、重いオブジェクトと軽いオブジェクト、デリケートなオブジェクトと頑丈なオブジェクト、定型的なオブジェクトと形がさまざまなオブジェクト、これらの両方をつかめるのだ」。

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

パーキング・ロボットがリヨン空港に登場、将来は6000台がロボット駐車に

Stanley Robotics

米国時間3月14日、リヨン・サンテグジュペリ空港の駐車場でフランスのスタートアップであるStanley Roboticsが自動走行によるパーキング・ロボットをデモした。現場で取材することはできなかったが、これは便利そうだ。今月末には実際の運用が開始されるという。下のビデオで概要がつかめる。

このスタートアップが開発したStanと呼ばれるロボット車両は、駐車場の入り口でユーザーの車を文字通り「拾い上げて」くれる。ドライバーは空きスペースを探して広大な駐車場の奥まで入っていかずにすむ。駐車など大した手間ではないと思うかもしれないが、巨大な迷路のような空港の駐車場を考えればそうではない。

実は有料駐車場は多くの空港運営企業にとって重要な収益源になっている。しかし既存の駐車スペースは有限であり、ターミナルを追加するたびに新たな駐車スペースを確保しなければならない。これは空港にとって次第に難題となっていた。

これがStanley Roboticsが自動駐車ロボットを開発した背景だ。Stanは既存のスペースに大きく手を加えることなく自動駐車場に変えてくれる。コンピューターが空きスペースを管理しロボットが正確に駐車を行うので効率は大きくアップする。ドライバーは空きを探して駐車場から駐車場へと走り回らずにすむ。実際ロボット化により、同一面積に駐車できる台数は平均50%以上アップするという。

たとえばユーザーが長期間旅行する予定である場合、Stanはユーザーの自動車を後列に駐車し、その前方に他の車両を詰めてしまう。ユーザーが戻ってくる日になるとロボットは自動車をもっとすばやくアクセスできる位置に移動する。

リヨン空港の駐車場にはStanley Robotics専用に500台分の駐車スペースが確保されている。4台のロボットが昼夜を問わず動き回って車を出し入れする。空港を運営するVinci AirportsとStanley Roboticsはすでに専用スペースの拡張を考えており、最終的には6000台がロボット駐車できるようになるという。

リヨン空港のウェブサイトから駐車スペースを予約する場合、1週間で通常料金(P5+区画)は50.40ユーロだが、ロボット駐車を利用すると52.20ユーロとなる。

現実の路上は予測不可能な状況が多いため自動走行車の導入は簡単ではない。しかしStanley Roboticsは空港にロボット駐車専用区画を確保することでそうした困難を一掃した。たとえば歩行者はこの区画に立ち入ることができない。車の受け渡しは駐車場の表にあるガレージで行われる。ドライバーは車を駐めてガレージから出る。表のドアが閉まった後でStanが裏のドアから車を運び出し、所定の駐車スペースに運んでいく。ドライバーはシャトルバスでターミナルに向かう、という仕組みだ。

Stanley Roboticsのロボット・パーキングが成功すれば、フランスだけでなく各国で空港を管理、運営するVinciはこの提携を世界的に拡大するかもしれない。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

性別不明の人工音声Qがテクノロジー世界の性差別に挑戦する

SiriやAlexa、Google Assistant、Cortana、Bixbyなど、ほとんどすべてのバーチャルアシスタントにはある共通点がある。それは、デフォルトの音声が女性の声であることだ。性別(ジェンダー)をめぐるこのようなステレオタイプはかなり前に指摘されているが、今やディストピア的なロマンスを示唆するかのように、「Her」(彼女)という言葉まで使われたりする。そこでパブリッシャーのViceが抱えるクリエイティブエージェンシーVirtueは、Qと名付けた性別のない声でこの傾向に挑戦する。

この、Copenhagen PrideとEqual AIとKoalition Interactive、それに音声制作スタジオthirtysoundsgoodのコラボレーションによるプロジェクトは、テクノロジー企業が性別という二分法の外で考えることを求めている。

QのWebサイトはこう言っている。「テクノロジー企業は消費者にとって快適と彼らが信じた声を作り続けている。男の声は銀行や保険など、権威が必要と思われる役割で使われる。そして女性の声はAlexaやSiriのような、サービス型の役割で使われる」。

Qを開発するためにVirtueは、コペンハーゲン大学の言語学者で研究者のAnna Jørgensen氏の協力を求めた。彼らは5人の二進数でない人々(本物の人間)の声を録音し、それからソフトウェアを使ってその録音を、性別的にニュートラルとされている145〜175 Hzの範囲に変調した。さらに4600名の人たちにアンケート調査をして、男女の判定に大きな差が生じないように調整した。

Virtueは、人々がQをアップルやアマゾン、マイクロソフトなどとシェアするよう勧めている。音声アシスタントは、使用する音声のオプションが変わっても、男または女と、どちらかの性別に認識されてしまう。このプロジェクトのミッション声明はこう言っている。「社会がジェンダーという二分法を打破し続け、男でも女でもないと主張する人びとの存在を認めていくかぎり、私たちが作る技術はそれについていくだろう」。

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

史上最年少の女性下院議員が主張「労働者はオートメーションを恐れるな」

オートメーションへの地殻変動的な移行を、失職について語らずに議論することは不可能だ。テクノロジーに反対する人びとは、「熟練技能を必要としない」職業分野で大規模な失業が起きることをおそれて批判する。一方テクノロジー肯定派の人たちは、その種の記事は大げさになりがちだと言う。でも労働力のシフトは、太古の昔からそうであったように今も起きている。

しかし今週行われたSXSWで、ニューヨーク州出身の女性下院議員アレクサンドリア・オカシオ=コルテス(Alexandria Ocasio-Cortez)氏は、まったく違う見解を述べた。

The Vergeによると、彼女はある質問への答でこう述べている。「自動化で仕事を失うという妖怪を怖がるべきではない。自動化は、むしろ喜ぶべきだ。でも、それを喜べないのは、私たちが、仕事がなければ死ぬという社会に生きているからだ。そして、そのことの中核にあるものこそが、私たちの本当の問題だ」。

聴衆からの質問に対するこの答は、オートメーションに関するこれまでのさまざまな会話の中で、あまり聞かれない見方だ。いちばん多いのは、業界を代弁するような人びとが、テクノロジーがこれまでの「退屈で汚くて危険な」仕事を置換すると主張する説。多くのロボット賛美派が言うには、それらは本当は誰もがやりたがらない汚れ仕事だ。

【ウィリアム・ギブスン「これは政治家が言う言葉としては衝撃的に知的だ」】

一方オカシオ=コルテス氏の答は、彼女の民主社会主義者としての見解を述べている。それは、正しく実装されたテクノロジーは労働者を資本家のシステムから解放できる、今は労働者が、自分の存在と生計をそのシステムに冷酷に縛り付けられている、と見る議論だ。

この新人女性議員は、オートメーションが社会にもたらす利益を指摘して、自分の立場を明らかにしようとする。

The Vergeの引用によると、オカシオ=コルテス氏の発言はこうだ。「オートメーションに関して、私たちは喜ぶべきだ。それによって、可能性としては、自分自身を教育する時間が増えるし、アートを創る時間や、科学にお金をかけて研究する時間、発明に集中する時間、宇宙に行く時間、自分たちが今住んでる世界をエンジョイする時間も増える。必ずしもすべての創造性が賃金に結びついていなくてもよいのだから」。

オカシオ=コルテス氏は、ビル・ゲイツ氏がQuartz誌のインタビューで語っていることを引用して、このビジョンを実現するためにはロボットに課税することもひとつの方法だ、と言う。彼女はこう言ったそうだ。「ゲイツ氏が本当に言ったのは企業に課税することだけど、『ロボットに課税する』のほうが言いやすいから」。

オートメーションに関する質問への彼女の答は、未来に関してとりわけ楽観的な一部のライターたちの喝采を浴びた。

小説家のウィリアム・ギブスンは、「これは政治家が言う言葉としては衝撃的なほど知的だ」とツイートした。それは少なくとも、今や陳腐化している話題への新鮮な観点であり、われわれ全員が共有するテクノロジーの未来をめぐる重要な会話に、生命(いのち)を吹き込むものだ。

オートメーションが向こう数十年で雇用に大きな影響をもたらすことは、疑問の余地がない。倉庫などの業種では、その多くをすでに目にしてきた。この主題に関するすべての研究が認めているのは「破壊される」雇用の数は数千万以上だが、新たに“創られる”数はその膨大な数の小部分にすぎないことだ。

でも、この女性下院議員のコメントはそれらの具体的な数とは関係なく、たぶん我々がこれまでずっと間違った問いを尋ねていたのではないかということを示唆している。

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

Tesla Model 3の組立ラインの自動化は間違っていなかった

2017年にTesla(テスラ)が、Model 3の驚くほど野心的な毎週5000台の生産目標と「生産地獄」の始まりを発表したときは、アナリストたちは慎重だった。しかしイーロン・マスク氏は、ハイパーオートメーション、すなわちロボット組立ラインが、製造スピードを上げコストを引き下げる秘密兵器だと言いながら、それを上手くやり遂げられると豪語した。そこから1年半経って、今やテスラは2018年第4四半期の時点で9万1000台を出荷している。しかし、その生産台数の増加は、無数の問題の解決や、マスクの当初の「高度に自動化された組立ライン構想」から離れることなしには達成できなかった。

何が起きたのだろう?

自動化への取り組みがうまくいかなかった理由を尋ねられたマスク氏の答えは、終始一つの大きな課題を巡っていた。それはロボットビジョンである、つまり組立ラインのロボットが行動を決めるための対象として何を「見る」のかをコントロールするソフトウェアのことだ。残念なことに、当時の組立ラインのロボットは、ナットやボルトのような物が予期しない方向を向いていることや向き、車のフレームの間での複雑な操作に対処することができなかった。そのような問題が発生するたびに、組立ラインが停止していたのだ。結局、多くの組み立て工程の中で、ロボットを人間に置き換えたことで、はるかに簡単に問題を解決できたのだ。

現在コンピュータビジョン(ロボットビジョンのより包括的な名称)は至るところに存在していて、さまざまな業界を横断するAIテクノロジと画期的なアプリケーションの、次のフロンティアを象徴している。この分野で、現在研究者や企業によって行われている進歩はとても印象的なものであり、イーロン・マスク氏の自動車組立ラインの自動化ビジョンの実現に必要だった要素も現れはじめている。その核となるのは、コンピューターやロボットが、現実の世界で発生する(ナットやボルトの間違いのような)予期せぬ厄介な出来事の大部分を、確実に処理することができるようになるという技術だ。

コンピュータビジョンの転機の瞬間

コンピュータビジョンが転機を迎えたのは、2012年に畳み込みニューラルネットワーク(CNN)を適用したときだった。それ以降、その勢いは本当に増している。2012年以前は、コンピュータビジョンのソリューションは主に手作りのものだった。基本的にアルゴリズムは、手作業で定義されたルールセットを持ち、画像の特徴を比較的効率的に数学を用いて記述することが可能だった。これらは人間によって選択され、そしてコンピュータビジョン研究者によって組み合わされて、自転車や、店頭、または顔のようなオブジェクトを画像の中で特定することに用いられた。

機械学習の台頭と人工ニューラルネットの進歩が、これらの全てを変えてしまった。画像の特徴を自動的に読み解き学習できる、大量のトレーニングデータを使用したアルゴリズムの開発が可能になったのだ。その実際の効果は2つに分けられる。

(1)ソリューションがはるかに堅牢になったこと(たとえば、顔の向きが多少違っていたり、影があっても、変わらず顔として識別できるなど)。

(2)優れたソリューションの作成は、大量の高品質のトレーニングデータに依存するようになったことだ(モデルはトレーニングデータに基づいて特徴を学習するため、トレーニングデータが正確かつ量が十分で、アルゴリズムが後で見る可能性のある、多様な状況を表していることが重要だ)。

現在研究されていることは、GANと教師なし学習、そして合成データ

GAN(Generative Adversarial Networks、敵対的生成ネットワーク)、教師なし学習、および合成グランドトゥルースなどの新しいアプローチにより、高品質のコンピュータビジョンモデルの開発に必要なトレーニングデータの量と、収集に必要な時間と労力を、大幅に削減できる可能性が出てきた。これらのアプローチで、ネットワークは実際に自分自身の学習をブートストラップし、より高い忠実度ではるかに速く、例外的ケースと異常値を識別することができるようになる。その後、人間がそうした例外的ケースを評価して解決策を再考し、高品質のモデルによりすばやく到達することができるようになる。

これらの新しいアプローチは、適用性、堅牢性、および信頼性の観点から、コンピュータビジョンの範囲を急速に拡大している。それらは、マスク氏の生産課題を解決できるだけでなく、無数の重要なアプリケーションでその境界を劇的に広げることになるだろう。そのいくつかの例を以下に挙げてみる。

  • 製造オートメーション:ロボットは、中心から20度ずれた車の座席や左に1インチずれた位置にあるネジのように、ランダムな向きのオブジェクトを扱うことが、ますます得意になって行くだろう。さらに、ロボットは、柔らかくて、折り曲げ可能な透明な物体を確実に識別することができるようになるだろう(例えば、先週Amazonで注文したビニール袋に入った靴下について考えてみよう)。現在バークシャー・グレイのような新しいロボットメーカーたちが、こうした技術の最先端を走っている。
  • 顔面検出:以前は、側面からの顔や、部分的に影が落ちていたり、隠されていたりする顔、そして赤ん坊の顔といった例外的なケースに対しては、顔面検出は堅牢に動作しなかった。現在、研究者たちは、コンピュータビジョンが、顔写真から90%の正確さでまれな遺伝性疾患を識別するのに役立つことを発見している。ある種のアプリケーションは消費者の手に渡るようになっていいる。これは、さまざまな照明条件や、画像キャプチャのコントロールが十分に行えない状況に対して、アルゴリズムがますます堅牢になったために可能になったのだ。
  • 医療用画像処理:進歩により、MRIの評価、皮膚癌の検出、 その他多数の重要なユースケースでの自動化が可能になった。
  • 運転手の支援と自動化:霧のかかっている状況では自律運転システムは機能していなかった。なぜならこれまでは濃い霧と岩を区別することができなかったからだ。現在では、教師なしの学習と(Nvidiaなどが主導する)合成データ作成機能が、数十億マイルに及ぶ路上記録映像でもカバーすることのできない例外的ケースでシステムを訓練するために、利用され始めている。
  • 農業:ジョン・ディアが買収した ブルー・リバー・テクノロジーのような企業は、現在雑草と作物を確実に区別して、選択的に除草剤を自動散布することができる。このことで、商業農業で使用される有害化学物質の量を劇的に減らすことができる。
  • 不動産情報:地理空間画像にコンピュータビジョンを適用することで、企業は洪水、山火事、ハリケーンによる風が、特定の施設に危険を及ぼす可能性がある時期を自動的に特定できる。これにより家の所有者たちは災害が訪れる前により早く行動することができる。

こうした進歩をながめていると、1つのことがすぐに明らかになる:イーロン・マスク氏は間違っていなかったのだ。単に彼のビジョン(ロボットやそれ以外のもの)が、現実から1〜2年先行していただけのことだったのだ。AI、コンピュータビジョン、そしてロボットは皆、正確性、信頼性そして効率性の転換点に近づいている。テスラにとって、「生産地獄」への次の段階(おそらくModel Y)を迎えるフレモント工場と上海工場では、大幅に異なる組立ラインを目にすることになるだろう。それらは、より上手く、ロボットとコンピュータービジョンが組み合わされたものになるのだ。

画像クレジット: Guus Schoonewille/AFP / Getty Images

この著者によるほかの記事:シリコンバレーの企業たちが人工知能の可能性を損なっている

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(翻訳:sako)

共同作業へのシフトでロボティクス・アズ・ア・サービスの時代になる

(編集部)この記事はMenlo Venturesのパートナー、Steve Sloaneの寄稿だ。

2018年のクリスマス商戦は大盛況でオンライン売上は1260億ドル近く と過去最高を記録した。しかしeコマースがが拡大し続ける中、人手不足は労働力の供給を上回った。これにより倉庫作業のオートメーションの必要性が以前に増して強くなっている。

Amazonがeコマースに占める優位性と事業規模を考えれば、同社が人間の労働をロボットで補完し始めた最初の企業の1つであることは当然だろう。2012年にKivaを買収して以後、さまざまなロボットがAmazonの施設で多様な作業を実行している。しかしロボットは人間の作業を完全に不必要とするレベルには達していない。

現在、テクノロジーの進歩と低コストの部品供給のおかげで、ロボットは企業のスケールを問わず利用しやすいものとなっている。これが共同作業ロボットまたは「コボット」の登場に道を開いた。

inVia Roboticsの倉庫作業ロボット

コボットは、高度なセンサー技術と接続性、AI、Lidar/レーダー、GPSなどの利用により正確性、柔軟性が増している。またハードウェアだけでなく機械学習を利用したフトウェアは幅広いタスクへの適応を容易にする。コボットはスタンドアローンのロボットよりより汎用性が高い。実際、多様なセンサーを装備したロボットはその場で学習して新たな課題に適応できるため現実のユースケースも拡大している。

もちろん今すぐに共同作業ロボットへの本格的移行が始まると期待するわけにはいかない。コボットはまだまだ初期段階にある。 ビック4(KUKAABB、FANUC安川電機)がほぼ独占する世界の産業用ロボット市場は$2017年には150億ドル以上の規模があったが、そのうちコボットは2億8700万ドルしか占めていなかった。しかし、倉庫のデジタル化は巨大な市場であり、スタートアップの企業価値創造に絶好のチャンスを与える。

この点では過去に起きたソフトウェアからSaaSへの移行を想起するのが役立つ。伝統的な売り切りのビジネスモデルはクラウドベースのサービス・サブスクリプションに取って代わった。これによりプロバイダーに確実な収入が定期的にもたらされるようになった。現在ロボット市場はインテグレーター企業が主導する売り切りモデルで、製品サイクルは長期にわたる。これに対し、将来のロボット産業の主流は 業種ごとのGTM(Go-To-Market)戦略と信頼性の高いソフトウェア・マネージメント・プラットフォームを組み合わせることにより、初期のSaaSプロバイダと比較できるような顧客忠実度の高いビジネスとなっていくはずだ。

6 River Systemsのロボットはアイテムを運搬するだけでなく倉庫内の必要な場所に作業員を先導する

これに加えて、コボット・テクノロジーは人間の労働を補完して明確に効率を高めつつ、低コストであるため導入の障壁を低くする効果も持つ。これはコンピューティングのクラウド化によって企業がインフラへの多額の先行投資をせずに最高のパフォーマンスを入手できるようになったのと同じ原理だ。

われわれはロジスティクス、食品、セキュリティーなど従来ロボットの導入が進んでいなかった業界にもコボットが浸透するものと考えている。これらの分野に全面的なソリューションを提供できるならユーザーにとってきわめて魅力的であり、歓迎されるはずだ。たとえば、上の写真で示した6 River Systemsのコボット、Chuckはクラウドネットワークから情報を得て目的の棚に移動し、倉庫作業を大幅に効率化する。人とロボットの関係をダイナミックに捉え直すには作業員と共同で倉庫作業を行うChuckはよいサンプルだろう。

セキュリティーの分野では、Cobalt Roboticsが自動走行ロボットによって人間がオフィスをリモートで監視することを可能にし、人件費の削減とセキュリティー強化の実現を図っている。

モノをつまみ上げることに特化したRightHand Robotics、上の写真で紹介した倉庫作業効率化のinVia Robotics、また商品の宅配に利用が開始されたミニ6輪ロボット、 Starshipも特定の環境で人間の労働に取って代わる準備を進めている。

この分野のイノベーションは急速であり、数年のうちにさまざまな部門で効率化と成長をもたらすだろう。マサチューセッツ工科大学、カーネギーメロン大学、ジョージア工科大学などの著名な大学におけるロボティクス研究プログラムはトップクラスの人材プールとなっている。こうした人々が起業家に転じ、適切なタイミングで大胆にチャンスをつかむならロボット業界全体を発展させることができる。

Menlo Venturesにおける私の同僚パートナー、Matt Murphyは「ロボティクスはいよいよ黄金時代に入りつつある。ロボティクスは産業のメインストリームに入ってさまざまな分野の効率を高めるだけでなく、場合によっては不可能を可能にするだろう」と述べている。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

手の位置が感覚としてフィードバックされるプロトタイプ義手

研究者たちが新たな義手を生み出した。それは手がどこにあり、指がどのように置かれているかを知ることのできる、固有受容感覚(proprioception)と呼ばれる感覚 を持ち主に返すことができる。このことは手足切断を受けたひとが、より効果的かつ自然にその義肢を使うことを助けることになる。

義肢への拒絶反応は、手足切断者にとって深刻な問題だ。単純化しようとするほど複雑化してしまう可能性があるために、こうした装具(電子的であれ、機械的であれ)なしで生活することを選んでしまう人は多い。その問題の一部は、自分の手足と違って、人工の手足には本当の感覚がないことである。たとえ何らかの感覚があったとしても、以前感じていたものとは似ても似つかないものなのだ。

触覚や温度の検知はもちろん重要だが、日常の動きにとってより重要なことは、単純に手足がどこにあって、何をしているかを知ることである。人間は、目を閉じたときにも、それぞれの指がどこにあって、何本を折りたたんでおり、掴んでいるものの大小などを知ることができる。たとえフィードバックを提供するために神経系と統合されている義肢であっても、現在これを実現することは不可能である。言い換えれば、義肢の利用者は、それが現在何をしているかを常に自分の目で見ていなければならない(まあ、もし腕のほうがあなたを見守っていないならということだが)。

スイス、イタリア、そしてドイツの神経内科医やエンジニアたちによって作られたこの義手は、Science Roboticsの最新号で解説されている。それは腕の神経に接続された電極を通して接触情報を脳に送るという、これまでにあったアイデアを採用し、固有受容感覚のフィードバックをリアルタイムに与えるようにしたものだ。

「私たちの研究は、神経内刺激に基づく感覚代行(sensory substitution)は、位置のフィードバックならびに触覚のフィードバックの両者を、同時にそしてリアルタイムに提供できることを示しています。脳はこの情報を問題なく統合してくれます。患者たちは両者の感覚をリアルタイムに処理することができますし、結果は素晴らしいものでした」こうニュースリリースの中で説明するのはスイス連邦工科大学ローザンヌ校のSilvestro Miceraである。

この可能性に向かって、工夫し実証するのは10年がかりの仕事だったが、この結果は極めて高い利便性を提供できる可能性がある。手、腕、または脚の位置を、自然かつ直感的に知ることができるようになることで、義肢はユーザーにとって、はるかに便利で快適なものになるだろう。

基本的にこのロボットハンドは、通常は領域への触覚を伝える神経経路を通して、その位置情報を脳に送るものだ。残念ながら、実際に固有受容経路そのものを再現するのはかなり難しいため、チームは代わりに感覚代行と呼ばれるものを使用した。これは、異なる感覚を表現する方法として、普通の触覚のような他の経路を代用として使用するやり方だ。

(上図はわかりやすさのためにオリジナルのものを修正してある。また生々しい画像も削除してある)

簡単な例として、手がどこにあるかに応じて、腕の異なる場所に触れる機械があることを想像して欲しい。この研究の場合には、それははるかに細かいレベルのものだが、それでも本質的に位置データを接触データとして表現している。それは奇妙に聞こえるが、私たちの脳は実際にはこの種のものに用意に慣れることができるのだ。

その証拠に、このシステムを使ってある程度の訓練を受けた2人の切断患者は、目を閉じて4種の異なる形の物体を掴む実験で、75%の精度でその形を正確に言うことができた。もちろん、何もわからないならその精度は25%となるはずだ。すなわち物を掴んだ際の異なるサイズの感覚が、プロトタイプとしては十分なほど、はっきりと伝わってきたということなのだ。驚くべきことに、チームは既存の経路に、実際の触覚のフィードバックを追加することにも成功したが、ユーザーはそれによって過度に混乱させられてはいない。ということで、今では義肢からの多様な感覚のフィードバックの先例が生まれている。

この研究には、情報を中継することができた指の数と種類、そのデータの粒度と種類などの、はっきりとした限界がある。そして「インストール」プロセスは、まだとても体に負担をかけるやり方を必要とする。だが、それにもかかわらず、これは先駆的な仕事である:この種の研究は非常に反復的かつグローバルなものであり、科学としての義肢装具があるとき突然大きな一歩を踏み出すまで、少しずつ進歩を続けるものなのだ。そしてそのときには、義肢を使う人たちも、大きな一歩を踏み出すことになるだろう。

画像クレジット: EPFL / Luca Rossini

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(翻訳:sako)

奈良県拠点の南都銀行が着ロボを導入、運搬・輸送業務の負荷軽減を目指す

ATOUN(アトウン)は2月18日、奈良県を拠点とする南都銀行グループに、腰用パワードウェア「ATOUN MODEL Y」を2台納入したことを発表した。同社は、松下電器産業(現・パナソニック)の社内ベンチャー制度「パナソニック・スピンアップ・ファンド」により設立された企業だ。

約20キロの荷物の運搬や輸送の進退負荷を軽減する「ATOUN MODEL Y」

ATOUN MODEL Yは、スタッフが着衣して使うパワードウェア。行内での伝票などの書類保存箱の運搬や、営業店間の100円硬貨袋などの輸送といった業務に使われる。いずれの業務も20キロ程度の荷物を上げ下ろしする作業が発生するため、繰り返しの腰の曲げ伸ばしや中腰姿勢の維持が必要になり、作業者の身体的負荷となっていた。このパワードウェアを使うことで、床面付近から腰の高さでの荷物の持ち上げ下げの際に腰の負担を軽減が可能になる。

南都銀行では2018年10月に全行員とその家族の健康の保持・増進に向けた取り組みを推進する「健康経営宣言」を発表。今回のパワードウェアの導入もその一環とのこと。

洗濯や整理整頓が得意な家事ロボ、今夏に試験導入

Mira Roboticsは2月7日、ロボットを活用した新しい家事支援サービス「ugo」(ユーゴー)を発表した。

利用者宅に設置したロボットを専門のオペレーターが遠隔操作することで家事を代行するサービス。ugoのロボットは2本のアームを搭載しており、これをオペレーターが遠隔操作することで、自律ロボットでは操作やプログラミングが難しい洗濯や整理整頓といった細かな要望にも対応できるのが強み。

ロボットにはプライバシー保護機能も搭載されており、ユーザーが専用のスマホアプリから家事を依頼することではじめて、オペレーターがロボットを操作できるようになる。ロボットは家事に必要なエリアでのみ動くように制御されているため、見せたくない部分には立ち入ることはない。もちろん、作業状況はアプリから随時確認が可能だ。

ロボットの仕様は次のとおり。外形寸法は幅45×奥行き66×高さ110cmで、高さは180センチまで伸縮する機構を備える。重さは約72キロ。カメラ×3、センサー、マイク、スピーカーを搭載しており、4G LTEとWi-Fiで通信する。バッテリーで駆動し、連続稼働時間は約4時間となっている(開発中のため変更の可能性あり)。

ugoのサービス開始は2020年初夏を予定しており、サービス料金などは未定。同社では2019年夏に試験的導入を開始するとしている。現在、テストユーザーを募集中だ。