空撮動画だけじゃない、ドローンが開く来年の国内関連ビジネスとは?

「この1年でビジネスになるドローンビジネスは何か? 法律的課題は?」。こうした問いかけに対して日本でドローン関連ビジネスに詳しい専門家がディスカッションをするセッションが、インフィニティ・ベンチャーズ・サミット 2015 Fall Kyoto(IVS)で行われた。

IVSはネット業界の経営者が集まる招待制イベントで、年に2回行われている。今回は12月7日、8日、9日の予定で京都で開幕した。

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会場では実際に複数のドローンを操縦して空撮の様子もデモ

美しい空撮動画と6機種のデモ

初日午後に行われたセッション「IoT、ドローンの未来」には多くの聴衆が集まった。モデレーターを務めたのは「クイズRPG 魔法使いと黒猫のウィズ」「プロ野球PRIDE」などのゲームで知られるコロプラ取締役副社長、千葉功太郎氏だ。

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コロプラ取締役副社長 千葉功太郎氏

ネット業界で千葉氏といえば、2015年3月にドローンに目覚めてからは趣味といえるレベルを超えてドローンを飛ばしまくっていることで知られている。前置きでも「今日は本業とは全然関係のない話で来ました」と千葉氏。といいながら、今や「慶應義塾大学SFCドローンコンソーシアム上席研究員」という肩書きも持っているそう。千葉氏はセッション会場となったホテルのボールルームで代表的なドローン6機種を次々と飛ばしながら現在市場で入手可能なドローンの特徴を紹介した。

千葉氏によれば、120グラムくらいの小さなドローンは姿勢制御などを自分で行う必要があるほか、200グラム以上が規制の対象であることもあって「練習に向いている」。一方、ある程度のサイズを超えたドローンだと気圧センサーやビジュアルポジショニング、GPSなどを使った自律姿勢制御をするために操縦自体はやりやすいという。屋外での遠隔操作飛行にも向いていて、例えばParrotのBebopならiPhone利用時に200m、専用リモコンだと2kmくらいが操作可能範囲という。

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中国発スタートアップで世界のドローン市場で70%という大きなシェアを持つDJIの「Inspire 1」だと、遠隔操縦だけでなく、カメラの制御を別の人が担当する「2オペレーター撮影」が可能といい、かなり本格的な空撮動画の制作が可能だそうだ。

日本でも急ピッチで進む法整備

セッションに登壇したDJI JAPAN代表取締役の呉韜氏によれば、日本のドローン市場、関連ビジネスの立ち上がりは遅れている。DJIは2007年に創業していて、当初は日本と米国が2大市場だったが、スマホが登場して空撮写真や動画をシェアするといった用途で米国が先行したのに対して、「日本はB2Bの利用が進んでいる。飛ばす場所がないので一般ユーザーの利用が遅れているのではないか」(呉氏)という。DJIはグローバルに市場を持っているが、日本が占める割合は5%に過ぎないという。

一方で、ちょうどいま日本では官民によるドローン関連の環境整備協議会が霞が関でスタートしたことや、この12月11日にも改正航空法が施行されて法整備が本格化することもあって、急ピッチでドローン関連ビジネスが立ち上がろうとしていると話す。

改正航空法で市街地の飛行は不可能になるほか、目視外飛行も禁止となるが、逆にこうした法整備によって「飛ばしやすくなる」。そう話すのは、すでにドローンのよる空撮ビジネスやコンサルなどを手掛けるORSO代表取締役社長の坂本義親氏だ。ORSOはこれまで全国80箇所で100台以上保有するドローンを使って1700フライトをしてきた実績があるといい、独自にテスト項目や安全確認項目を策定するなどリスク管理やマニュアル整備を進めてきた。「これまで通報されたりすることもあった。今後は届け出をした上で土地の所有権のある人に連絡し、安全飛行マニュアルにそってやっていく」ことで、すでにある空撮ビジネスの置き換えなどは特に問題がないだろうという。ORSOは安全管理や操縦テクニックなどを教程として提供していくこともビジネスにしていくそうだ。

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ORSO代表取締役社長 坂本義親氏

カメラで生育状況を把握して、ドローンで農薬散布

空撮ビジネスの代替というのは自明だし、趣味としてのドローンでも空撮が注目されてきた。では、それ以外の用途にはどういう可能性があるのだろうか?

DIJ JAPANの呉氏は、「ケータイは人間の時間軸を埋めた。ドローンは3次元の空間を埋める道具になっていく」といい、例えば「来年は農業方面で発達する」と話す。すでに無人機による農薬散布などは日本でも市場があるが、既存システムが機体だけで2000万円もするのに対して、ドローンなら100万円程度で機体が入手できる。農薬以外にも種の散布もあるし、農地の状態や農作物の生育状況をスペクトラルカメラを使った空撮によって把握して、どこに農薬を重点散布すべきなどといったことを、ドローンの自律操縦と機械学習の組み合わせで無人化していくことが、早ければ来年にもできるようになってくるだろうという。もともと先物取引での価格付けなどは衛星を使った映像解析が使われていたこともあって、すでにアメリカではドローンで生育状況を把握するという試みが始まっているそうだ。

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DJI JAPAN代表取締役 呉韜氏

このほかにも呉氏は、フィールド・スポーツでのフォームチェック用途として、日本のラグビーチームがInspire 1を利用していることや、災害時の救済ツールとしての応用があり得ることなどを紹介した。

もしもドローンにSIMカードが搭載されたら?

パネルディスカッションに参加したソラコムの玉川憲氏は、「もしドローンにSIMカードを搭載したら?」という議論を展開した。ソラコムはTechCrunch Japanでも何度かお伝えしているようにクラウド制御可能なSIMカードを提供している。

今のところSIMカードを搭載できるのは基地局のみで、空中に飛ばす飛行物体へのSIMカード搭載は法的にはNG。ただ、もしもドローンが広域のワイヤレスネットワークに繋がったら、というのは興味深い視点だ。玉川氏は100歳になる祖母が「高野山に行きたい」というのぞみを叶えてあげたいといい、ネットワークカメラをドローンに搭載して遠隔地のスマホから操作する、あるいはVRカメラを使って仮想体験するようなことが可能なのではないかと話した。

「いまのドローンは操縦者がいて2kmの範囲でしか動かせません。でもモバイル通信にはハンドオーバーという仕組みがあって、基地局から基地局へ移っていける。そうなると問題はバッテリーだけになる」。

完全自律制御と遠隔制御の両方が使えるようになったとき、ドローンを使った新しいビジネスが生まれてくるのではないかという指摘だ。ちなみに、DJI呉氏によると、ドローンのバッテリー持続時間は一般に30分程度。ガソリンを使うと1〜3時間程度なのだそうだ。

ドローンは完全無人化するのか? 群制御の応用は?

パネルセッションの終盤にモデレーターの千葉氏から興味深い論点が2つ出た。1つは、今後ドローンは完全自律制御となって操縦者がいなくなっていくのかという点。もう1つは、複数のドローンが昆虫の群れのようにグループとして行動する「群制御」にはどういう未来があるのか、という点だ。3年後や5年後にはどうなっているのだろうか。

DJIの呉氏は、そもそも障害物がない空であれば、クルマの自動運転よりも簡単だと指摘する。「クルマは2次元で逃げ道がありません。でも3次元だとやりやすいので自律飛行は今でも可能です。例えば向こうの島まで荷物を運ぼうというのは、今でもできる。でも、密集地での飛行はまだ先の話。街なか荷物配達をやるのは簡単じゃない」。

ドローンのリスク管理アセスメントなども手掛けるORSOの坂本氏は「人間も自動も両方あったほうがいい。いかなる場合でも人間がいるというように冗長化しておいたほうがいい」と話す。ドローン市場立ち上がりのカギは、安全と安心の確保というのは登壇者の一致した見解のようだった。

複数のドローンが、まるでリーダーの統率に従うかのようにフォーメーションを組んで飛行するような「群制御」の動画はTechCrunchの読者なら1度は見たことがあるだろう。この群制御にはどんな可能性があるのか?

呉氏は2つの使い方があるという。1つはドローン同士が助け合うこと。1台のドローンだと積載重量やぶら下げられる荷物の重量が決まっているが、複数のドローンを協調させることでより重たいものでも運べるという。もう1つの利用は「認識しあう」という方向性。呉氏は10年後にはドローンがビュンビュン周囲を飛び交っていて、それを現在の子どもたちが全く不思議に思わないようなインフラとなっているだろうとした上で、互いに衝突しないような制御をしているのではないかと話す。

「道路があるクルマより、ドローンは制御がしやすい。ドローンが飛びまくっている世の中になる。アメリカはすでに動き始めています。もしかすると人間が乗れるドローンが出てくるかもしれない。ただ、クルマも、車検や保険、免許など社会インフラの整備が必要で普及に時間がかった。ドローンも技術的には時間はかからないが、インフラ整備には10年ぐらい時間がかかると思う」(呉氏)

玉川氏は別の例として、ソラコムの利用顧客であるセーフキャストという放射線量を計測するプロジェクトを応用例として可能性があるのではないかと紹介する。セーフキャストは、ガイガーカウンターをばらまいて放射線マップを作る活動をしているが、原子力発電所で事故が起こった際に、多数のドローンを飛ばして近隣のマップをいち早く作るようなことが民間レベルでもできるのではないか、という。「群制御で大量に飛んでいって、たとえ何台か落ちたとしても情報を取れるようになる」。災害時の映像を異なるアングルからリアルタイムで取得するような応用例については、DJI呉氏は3年以内に実現することだと指摘した。

もともとゲームなどエンタメコンテンツでビジネスをしてきたORSOの坂本氏は、「人々の生活を豊かにしてくれるドローンの未来とは?」との問いに対して次のように話した。「ルンバが部屋の端っこで引っかかる。それをドローンが助けたら楽しいと思うんですよ。エンタメな人間なので、そういう発想をします。部屋の中で、常に周囲にいて写真を撮っているようなドローンはいいですよね。私は絶対にドローンに名前を付けると思いますね」

メルカリはすでに黒字化、数億円の利益を生んでいる

メルカリの山田進太郎氏

僕は現在、12月8〜9日に京都で開催されている招待制イベント「Infinity Ventures Summit 2015 Fall Kyoto」(IVS)に参加中だ。セッションの内容をはじめとして気になる話はあると思うが、注目集まるCtoCコマースサービスのメルカリについて新しい数字を聞いたのでここで紹介しておこう。

先日開催したイベント「TechCrunch Tokyo 2015」にも登壇してくれたメルカリ代表取締役の山田進太郎氏。登壇の際にも、日米で2500万ダウンロード(米国は500万DL以上)という数字や、世界展開について語ってくれた。今日山田氏に聞いた話によると、メルカリはこの数カ月で数億円規模の単月黒字体制になっているのだという。

ちなみにメルカリは11月24日に第3期の決算公告を出している。それによると売上高は42億3779万円、営業損失11億432万円、経常損失10億9996万円、当期純損失11億460万円。

ただし同社はこの数字以上の成長をしているのだそう。どういう意味かというと、同社の第3期というのは、2014年7月から2015年6月末まで。一方で同社がサービス手数料を取得するようになった、つまり売上が出るようになったのは2014年10月から。それまでに出品されていたアイテムに関しては手数料をかけていないのだという。メルカリの手数料は10%のため、同社の売上高が42億円であれば、プラットフォーム上での取引額はその10倍の420億円と単純計算できそうだが、手数料無料の商品も売れているわけで、その取引額は420億円以上(山田氏いわく、420億円の百数十パーセント程度)になるのだそうだ。

また海外(米国)事業だけを見ると目下グロース中で、赤字を掘り続けている状況。業界関係者から「海外事業がなければすぐにでも上場できる業績ではないか」なんていう話も聞いたのだが、山田氏もそれを否定することはなく、「海外戦略も含めた『エクイティストーリー』をどう描くかが課題」だと語っていた。米国では競合サービスである「Poshmark」が事業規模としては大きいそうだが、これも「来年にはゲームチェンジできるのではないか」(山田氏)としている。

CTO・オブ・ザ・イヤー2015は「疎結合で非同期なチーム」を率いるソラコム安川健太CTOに

TechCrunch Tokyo 2015の1日目である2015年11月17日、今年で2回目となる「TechCrunch Tokyo CTO Night powered by AWS―技術によるビジネスへの貢献:CTO・オブ・ザ・イヤー選出LT」が催された。スタートアップのビジネスに技術で貢献するCTO(最高技術責任者)を称えようという趣旨の場である。

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まず結果をお伝えする。今年の優勝者はIoT向けモバイル通信サービスをクラウド上に構築して提供するスタートアップであるソラコムの安川健太CTOである。司会からは「非常に接戦でした」のコメントがあった。ソラコムは抜群の事業アイデアと鮮やかな事業立ち上げが強い印象を残した。とはいうものの「接戦」との表現は、他社のCTOも高水準のトークを繰り広げたことを示している。以下、その内容を紹介していこう。

このCTO Nightの審査員は次の面々だ。グリー 藤本真樹CTO、DeNA 川崎修平取締役、クックパッド 舘野祐一CTO、はてな 田中慎司CTO、サイバーエージェント 白井英 SGE統括室CTO、アマゾン データ サービス ジャパン 松尾康博氏(ソリューションアーキテクト)。以下、LT(ライトニングトーク)の登壇順に内容を紹介する。

「書いたことがなかった」Pythonベースの決済サービスを立ち上げ―BASEの藤川真一CTO

オンラインショップ開設サービスのBASEの藤川真一CTOは「Pythonを書いたことないCTOがPythonベースの決済サービスを始めるまで」と題して発表した。

同社はオンライン決済サービスPAY.JPをこの2015年9月に立ち上げた。PAY.JPは、RESTful Web APIでカード決済をしてくれる。「米国の決済サービスStripeやWebPayと互換性があるのでスイッチングコストがほぼゼロで移行できる」。スタートアップに対して手軽な決済サービスとして提供するだけでなく、将来的には「日本のエスタブリッシュ金融パートナーとの連携」も視野に入れる。単に同社のオンラインショップで活用するだけでなく、いわゆるFinTechの文脈で野心的な展開を考えているのだ。「新しいインターネットの経済を創りたい」。

同社は2014年12月にオンライン決済サービスのピュレカを買収し、そのチームとソフトウェア資産を継承してPAY.JPを立ち上げた。CTOの藤川氏によれば「CEOからメッセージが来てピュレカを知り、7分で買収の決定をした」そうだ。

この買収により直面した課題は、プログラミング言語と開発者文化が異なるチームとソフトウェア資産の評価とマネジメントだ。BASEの構築には言語としてPHP、フレームワークとしてCakePHPを使っていたのに対して、ピュレカの決済サービスはPythonで構築されていた。「CTOとして、それまで知らなかった技術、プロダクトをどうするか」という課題を乗り越えるためのチャレンジについて藤川氏は語った。

異なる開発者文化で作られたピュレカのソフトウェア資産を評価するため、「ピュレカ創業者と仲良くなったり、(Pythonに詳しい)柴田淳さん、寺田学さんにコードレビューをお願いしたり」と藤川氏は言う。日本のソフトウェア開発者コミュニティの人脈を活用して技術のデューデリジェンスを行った格好だ。

次に藤川氏は、「Pythonという技術を好きになる」ための行動を始めた。日本国内のPythonコミュニティで最大のカンファレンスであるPyCon JP 2014にBASEとして出展した。ただし、この時点では自社のPython活用プロダクトはまだできていなかったため、「脆弱性診断ということで、CakePHPのプロダクトを好きにクラックしていいよ」という出展内容とした。ここでPythonコミュニティと「仲良くなった」ことで、藤川氏は翌年のPyCon JP 2015ではある企画のモデレータ役を担当している。

このLTで、藤川氏は「買収する技術への包容力」として次の3点を挙げる。(1) チームメンバーを信頼する。(2) 開発技術を好きになる。(3) 最後はケツを持つ覚悟。企業をプロダクトごと買収するということは、相手のチームと、そのバックグラウンドにある技術文化を受け入れることだ。文化が異なる企業を買収し、無事サービス開始までこぎつけた藤川氏のトークは「やり遂げた」自信を感じさせる内容だった。

「Qiitaを良くする」ことに注力―Incrementsの高橋侑久CTO

エンジニア向け情報共有サービスのQiitaのIncrementsは、2013年4月に高橋CTOが参加した時点で、エンジニアはCEOとCTOの2名だけという会社だった。「1人CTO」から始めた高橋氏は、少人数組織でのCTOの役割は「まずプロダクトを作ること。次にチームを作ること」と語る。また「同じことをずっとやっているのはつらいので、何かを自動化することを意識的にやっていた」とも語る。チーム作りは「大事にしたい価値観を共有できて、それを求める能力を持っている人を、なんとかして連れてくる」ことを続けた。そのために「どういう人と一緒に働きたいか」をリストにした。自律的に行動でき、オープンソースに積極的、といった基準だ。そして求める能力は、「学習能力と意欲があって既存のメンバーにない能力を持っている人だと考えた」。

最近、元Googleの及川卓也氏がIncrementsにジョインしたことが話題になった。「やったな! という感じです」。このようにプロダクトへの思い、チームへの思いをストレートに語り、最後に「俺達のチームビルディングは始まったばかりだ!」と高橋氏は締めくくった。審査員からの「(チームが大きくなって)CTOの仕事を他のメンバーに委譲していくとして、最後に残るものは?」との質問に対しては「Qiitaを良くしたいという気持ちです」と返した。

Webの力でものづくりを加速―フォトシンス (Akerun) 本間和弘CTO

スマートフォンでドアを解錠でき、デジタルな「合鍵」を共有できるサービスAkerunを提供するフォトシンスの本間和弘CTOは、「プレゼンボタン」と呼ぶガジェットを手にして登壇した。ボタンを叩くと、その情報がBLE Notificationによりスマートデバイスに飛び、MQTT経由でAWS IoTが中継してパソコンに渡りWebSocket経由でプッシュ、プレゼンスライドのページ送りを実行する──この一連の動作説明で審査員の笑いを取ることに成功した。いかにもテックな人たち向けの掴みだ。

本間氏は、同社のスタイルについて「ハードウェアの開発期間を、通常2年かかるところを半年に短縮したかった」と表現する。その解決方法として、次の各種を説明した。1番目は、後から変更可能なファームウェアを採用したことだ。スマートデバイスと同様に、アップデートによりファームウェアを進化できるようにした。これにより、製品出荷前に仕様や評価工数が膨らむことを抑制した。「その機能は今は必要ないよね、と言えるようにした」。また機能の一部、例えば電池の電圧をパーセント表示に変換する機能をデバイスではなくクラウドに置き、ファームウェアの仕様を増やさないようにした。

2番目は、ハードウェアの耐久試験を自動化してスピードアップしたことだ。10万回のテストを実施している。iOSでテストスクリプトを書き、Akerunの情報をBLEで取得してWeb APIでサーバーに送りグラフ化、リアルタイムで各種情報を可視化・確認できるようにした。

3番目は、ハードウェアの製造工程を「Web化」したことだ。例えば、ファームウェア書き込みの工程ではChromeブラウザで動くアプリ「ファーム書き込みくん」を活用する。エラーが発生すればSlackへ通知する。こうした工夫により、2014年9月に創業した同社は、翌年の2015年3月に記者会見で量産品のデモを見せ、同4月には出荷開始に至っている。「Webのちからをものづくり自体に組み込む」ことによりハードウェア製品の製造をスピードアップすることが同社のやり方だ。

2人CTO体制のメリットを説明したトランスリミット 松下雅和CTO

トランスリミットの松下雅和CTOは「2人CTO」についてプレゼンテーションを行った。同社はエンジニアが8割を占め、主要事業は、2本のゲームアプリ──対戦型脳トレのBrain Warsと物理演算パズルのBrain Dotsだ。累計ダウンロード数は3000万ダウンロードの実績を持つ。松下氏は2人目のCTOだ。もう一人の工藤琢磨CTOと、それにエンジニア出身の高場大樹代表取締役社長の3人による技術経営の体制を取っている。

同社は、最重要課題として「技術力を向上したい」と考え、2人CTO体制を導入した。工藤氏はクライアント側、新規事業の創出を担当する。「工藤は0から1を作るタイプ。Brain Warsをほとんど1人で作り上げたスーパーエンジニア」と紹介する。一方の松下氏は、「1をスケールするタイプ」でサーバー側と開発体制の強化を担当する。「攻めの工藤、守りの松下です」。ダブルCTO体制のメリットとして、得意分野を分担して注力できること、多様な視点で技術選択ができること、技術軸と事業軸で経営判断できることを挙げる。「分業ではなく、分担です」と、いわゆる縦割りとは違うことを強調した。

松下氏が個人として大事にしていることは、「自走できるチーム、スケールできるチーム」と説明。そのための「会社で一番の球拾い」を自認している。審査員からは「2人CTOでケンカはしないんですか?」と質問が飛んだが、「一緒にテニスをしたり仲良くやっています」とのことだった。

技術的チャレンジが会社の強み―Vasily (iQON) 今村雅幸CTO

「女の子のためのファッションアプリ」iQONを展開するVasilyの今村雅幸CTOは、同社にとって「技術的チャレンジが、ビジネスの源泉、会社の強みになっている」と語る。

今村氏は、同社の事業を支える3本柱と、それぞれの技術的チャレンジについて説明した。(1) iOS/Androidアプリはすべて内製し、特にUIにはこだわった。iOSアプリはApp Store BEST OF 2012を、Android版はGoogle Playストア2014ベストアプリに選出された。(2) ECサイトクローラーも内製し、AWS上で動かしている。カテゴリ分けの自動化も徹底し、精度97%を実現。700万アイテムと「日本一のファッションデータベースを構築できた」。OEM販売で数千万円の売上げに結びつけている。(3) ネイティブアド配信では、開発期間3週間でiOS/AndroidのSDK、配信ツール、入稿ツールなどをすべてAWS上で内製した。「iQONが持つビッグデータと統合することで効率的に売上げを上げることができた」。このように、技術的チャレンジが同社の活力の元になっているというわけだ。

今村氏は技術を活性化するため、「技術でユーザーの課題を解決する」「技術的チャレンジをし続ける」ほか全5項目の「VASILYエンジニアリングマニフェスト」を作った。「毎日マニフェストを口にする。目が合ったら言う」。「CTOの仕事は技術的チャレンジが生み出されやすい環境を生み出すこと」と表現する。

チームもアーキテクチャも疎結合で非同期―ソラコム安川健太CTO

IoTプラットフォームを提供するソラコムの安川健太CTOは、以前は大手通信機器メーカーの研究機関であるEricsson ResearchでIoT関連の研究開発に従事していた。「クラウドのことをもっと知りたい」とAmazonにジョイン、AWSのソリューションアーキテクトとして活動、その後米シアトルのAWS開発現場も目にした。その過程で「テレコムのコアネットワークをクラウド上で実現できるはずだ」と思った。ある晩、ある人(ソラコムCEOの玉川憲氏のこと)と飲みながら思いをつぶやいたことがきっかけとなり(関連記事)、「世界中の人とモノをつなげよう」という思いを持つに至った。こうして立ち上げたのがソラコムである。

2015年9月30日に、2サービスをローンチした。SORACOM Airは、「一言でいうとプログラマブルなセルラー通信サービス」だ。特徴として、コアネットワークをソフトウェアで独自に構築、AWS上で運用している。帯域制御や回線の開け閉めもAPIでコントロールする。APIは公開しているので、自動化も容易だ。「例えば監視カメラで静止画を低速で送っているが、アラートが上がったときに通信帯域を広げて動画を送るシステム」も作ることができる。

DSC00015SORACOM BeamはIoTデバイス向けのデータ転送支援サービスだが、インターネットを経由する通信を、デバイスではなくクラウドのリソースを使い暗号化する。APIによる操作も可能なので、データの送り先を、APIで切り替えることもデバイスの設定を変えることなく実現可能だ。

クラウドサービスとしてプログラマブルなこと、すなわちAPIにより操作可能なことが同社サービスの大きな特徴だ。そこで開発者支援は同社にとって重要となる。先日開催されたデベロッパーカンファレンスも大盛況のうちに終了した。プラットフォームなのでエコシステム形成も重要だ。そこでSORACOMパートナースペース(SPS)と呼ぶプログラムを立ち上げ、すでに100社近くの企業が参加している。

安川氏は「ソラコムの裏側」として同社のチームを紹介した。同じチームが開発し、運用し、サポートも手掛ける。「これはAWSの開発チームと同じ運用で、フィードバックを生かした素早い改善ができる」。チームは1日1回30分の全体進行のシェアをするが、それ以外はSlackで連携しつつ非同期で動くチームとなっている。サービスローンチ後も、次々と新しい機能の追加、改善を続けている。システムはマイクロサービス群として作られており、独立して開発、運用できる。「チームもアーキテクチャもふだんは疎結合で非同期、でもインテグレートすると大きな力を発揮する」と締めくくった。

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2015年、CTOオブ・ザ・イヤーに選ばれたソラコムCTOの安川健太氏

「技術的に大変だったところは?」との質問には「ユーザーのネットワーク通信をソフトウェアでターミネートしている。これは世の中には出回っていない、技術者が多くない技術。本来はアプライアンスでやることが多い。そこを一から設計してクラウドネイティブにしたところが、我々の一番の成果」と説明した。

「ゴール駆動開発」を提唱―airClosetの 辻亮佑CTO

女性向けファッションレンタルのairClosetの辻亮佑CTOは、「DevOpsとゴール駆動開発」について語った。

「ゴール駆動開発は私が作った言葉。DevOpsという言葉にはよく分からない部分がある。本質は、開発者と運用者による自動化および効率化。それを実現する手段がゴール駆動開発だ」と辻氏は話す。

同社のサービスは「服を扱う」という固有の事情からヒューマンエラーが必ず発生する。そこでエラーの発生を監視するシステムを作った。またデータベース分析のためのツールを導入、非エンジニアでも分析できるようにした。アパレル業界では「シーズン」の概念があり、服に対して「どのシーズンで着るのか」という情報が必ずある。ここで1つの服に複数のシーズンを設定できるようにし、服のライフサイクルの長期化、検索の最適化を実現できた。

辻氏によれば、同社では「エンジニアがハブになってビジネスを動かしている」。「エンジニアは効率化が得意。最適な解を見つける上でゴール駆動開発はわかりやすい」。

紙という強敵と戦う―トレタ増井雄一郎CTO

レストランの予約管理、顧客管理サービスを提供するトレタの増井雄一郎CTOは、同社のサービスについて「競合は、紙です」と表現する。飲食店の受付、予約管理は「紙」を使う場合が多い。「紙は直感的で誰でも使えて応答速度が速く安価。でも処理ができないので、入力内容をコピー&ペーストもできなければ、バックアップを取ることも難しい」。コンピュータ操作に慣れていない人も多い飲食店の分野でいかに使ってもらうかが同社にとって最大の課題だ。「紙という強敵と戦っています」。

同社のサービスはリリースして2年で約4000店舗に導入されている。初めて使う人でも紙と同様に使えることを目指した。端末はiPadだ。紙がライバルなので課題の解決も独特のために方法を採る場合がある。例えばレストランにはたいていファクスが置いてある。そこで、iPadにトラブルが発生したときのバックアップや、印刷が必要な時に備えてファクスに情報を出力できるようにした。バックアップの一環としてマルチクラウド対応も予定している。

「顧客目線を持ったエンジニアであること」が同社のチームのスタイルだ。ユーザーニーズをエンジニア主導で吸い上げて開発を進めている。「エンジニアはお客さんのことを知りたいと考えている。エンジニア自らが現場に行って使い方を見る。こうした主導性を持っていることがチームの特徴」。例えばiPadアプリがクラッシュしたときには、実際に店舗に行ってどのような状況でクラッシュしたかをヒアリングすることもする。ちなみに、同社は24時間サポートを実施しており、夜間のエスカレーションは増井氏のところに電話がかかってくる。これからのトレタについて「(レストラン向け情報サービス)ハブとして使われるようになりたい」と話す。

以上、8人のCTOによる熱いトークを紹介した。審査員らのコメントを見ても、新しいスタートアップ企業のCTO、エンジニアのチームがそれぞれの工夫を追求している姿は刺激になっていたようだ。「僕らがあの規模の会社だったときより、ずっと凄い」とグリー 藤本真樹CTOはコメントした。

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審査員を代表して総評したグリーの藤本真樹CTO

FiNCがANAほか東証一部上場企業などから第三者割当増資を実施、今後は事業提携も

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スマートフォンを活用したダイエット指導サービスなどを手がけるFiNCは12月7日、ANAホールディングス、全日空商事、クレディセゾン、第一生命保険、三菱地所、吉野家ホールディングス、ロート製薬、キユーピー、 ゴルフダイジェスト・オンライン、ネオキャリア、Fenox Venture Capital、グッドパッチおよび、既存株主から第三者割当増資を実施したことを明らかにした。調達額や出資比率は非公開。

FiNCでは今回の資金調達をもとに、人工知能による新サービスおよびプロダクト開発を行うとしている。今後はプロダクト開発に向けての人材を採用するほか、ウェルネスプラットフォームを強化するためM&Aや事業出資、マーケティングやプロモーションなどを進める。

ソフトバンクが10月に開催した新製品発表会の中で、IBMの人工知能「IBM Watson」を活用したヘルスケアサービス「パーソナルカラダサポート」(2016年3月以降提供予定)をFiNCとソフトバンクの共同開発で提供することが発表されていた。今後はこの製品や新プロダクトの開発を進めるということだろう。

またFiNCは10月にソフトバンクやANA、ネスレ日本、みずほ証券など発起人20社による「ウェルネス経営協議会」を設立すると発表している。今回の出資企業の一部はその発起人企業でもある。

予約台帳サービスのトレタがセールスフォースと資本業務提携、CRM機能を強化

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11月に累計登録店舗数4000店舗、登録社数2000社を超えたと発表している飲食店向け予約/顧客台帳サービス「トレタ」。サービスを提供するトレタは12月3日、米セールスフォース・ドットコムと資本業務提携を実施したことを明らかにした。

資本提携ではセールスフォース・ドットコムの投資部門であるセールスフォース ベンチャーズを引受先とする第三者割当増資を実施しているが、調達額やバリュエーション等は非公開。ただしトレタが公表している2015年7月時点での資本金が1億7995万円、今回の増資後の資本金は2億3991万円であることから、資本準備金に組み入れる金額を考慮しても最大でも1億数千万円程度の調達である可能性が高そうだ。

トレタは今回の資本により、営業体制や開発力の強化を図る。また具体的なスケジュールに関しては現時点では公開していないものの、セールスフォース・ドットコムが提供するクラウドCRMサービス「Salesforce Sales Cloud」とトレタの連携を進めて行くという。これにより、トレタに蓄積された顧客属性や予約行動などのデータを活用した顧客サービスを提供していく。

トレタと言えば、ITリテラシーの低い飲食店ユーザーでも利用できるシンプルさをウリにしてきた印象が強かったので、正直なところどこまでユーザーからCRMに対するニーズが高いのかはかりかねるところがあった。だが同社代表取締役の中村仁氏いわく、この1年でそのニーズは急激に高まっているのだという。

「たとえ今まで新規集客に重きを置いていた店舗でも、トレタを使ってどんどん顧客情報が貯まっていくのを見たら、それは『宝の山』だと直感的に理解してくれる。顧客情報をもっと活用したいという声は、日に日に高まっている。 ただ、CRMといっても単に『DMを送りたい』というレベルの要望にとどまっているのも事実。今回の提携を機に、より簡単で高度なCRMソリューション(による常連作り)を提案していきたい」(中村氏)

ユーザーと配送業者をアプリでマッチング——ネット印刷のラクスルがシェアリング型の新サービス「ハコベル」

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印刷サービスの価格比較や見積もりからスタートし、印刷所の遊休資産を活用したネット印刷、そしてチラシを使った集客サービスを展開するラクスル。同社が新たに配送事業に参画する。同社は12月1日、新サービス「ハコベル」を公開した。

ラクスル代表取締役の松本恭攝氏

ラクスル代表取締役の松本恭攝氏

ハコベルはウェブサイトおよびスマートフォンアプリを使って、配送の予約が可能なサービス。ユーザーと、その周辺にいる配送業者のドライバーを直接マッチングする。集荷は最短1時間で、24時間365日予約申し込みが可能。GPSをもとに配送車両の位置情報を確認できるほか、5段階のドライバー評価制度といった機能を備える。

またラクスルが印刷会社の空き時間を利用して安価な印刷を実現しているように、配送会社の空き時間に配送をすることで安価な価格設定を実現した。一般的な運送サービスであれば最低価格で5000円程度だが、ハコベルは4500円からとなっている。また、GPS情報を利用して、明瞭な価格設定を実現しているのが特徴だ。サービスには冷蔵・冷凍便などのオプションも用意。当初のサービス提供エリアは東京、神奈川、埼玉、千葉、福岡。大手業者では集荷センターに荷物を集めて効率的な配送を行うため、段ボールのサイズや重さなどに規定があるが、ハコベルはいわばチャーター便。荷物のサイズ等はかなり融通がきくそうだ。

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配送を担当する車両は、一般貨物自動車運送事業の貨物自動車利用運送のためのもの——というとややこしいが、ようは認可を得た業者が保有する、黒字に黄色文字が入ったナンバープレートをつけた軽自動車だ。日本の運送業者は5万7440社。ただしトラック物流市場14兆円の50%は上位10社で占められている。ハコベルでは大手ではなく、中小・個人運営の業者とパートナーを組んでサービスを展開する。ちなみにこの仕組みは弁護士および国土交通省にサービスの適法性を確認しているという。

運転手には専用のアプリを提供。配送の依頼があるとアプリに通知が届き、内容を検討した上で仕事を引き受けることができる。逆にいうと、通知がきてもほかの配送をしている最中だったりして引き受けない場合は、依頼を断ることができる。なお、運転手に断られた依頼は、周辺にいるほかの運転手に通知される仕組みになっている。料率は今後調整していくが、ほかのシェアリングエコノミー系サービスと同様になる見込みだ(大体20〜30%程度と考えればいいのではないだろうか)。

同社では8月21日〜11月30日にかけて試験的にラクスルの既存顧客などに向けてサービスを提供していた。配送件数は433件、ドライバー173人で、もっとも多く運んだのは企業の「チラシ」。ラクスルの顧客は中小企業を中心とした20万社。このネットワークがすでにできあがっていることは、ハコベルを展開する上でも大きな力になる。もちろん個人利用も可能。これまでにソファーや自転車を配送するといったケースがあったそうだ。

海外にはGoGoVanなどの先行事例も

「○○版Uber」という表現は僕自身食傷気味なのだけれども、いわゆるシェアリングエコノミーの文脈のサービスという意味では「配送版Uber」なサービスだ。ただしそのUberもすでに香港では自動車をつかった「Uber Cargo」、ニューヨーク市では自転車を使った「Uber Rush」なる配送サービスをスタートさせている。

実はこの「配送×シェアリング」という領域、アジアでは「lalamove」「GoGoVan」といった先行者がいる状況だ。CrunchBaseにもあるが、2013年12月にローンチしたlalamoveは、これまでに2000万ドルを調達。香港のほか、中国やシンガポール、台湾(台北)、タイ(バンコク)でサービスを展開している。一方のGoGoVanは2013年6月のローンチ。これまでに2654万ドルを調達し、香港、台湾、シンガポール、中国、オーストラリア、韓国でサービスを展開している。

なお同社は本日発表会を開催している。TechCrunchではその様子とラクスル代表取締役の松本恭攝氏への個別取材もお届けする予定だ。

日米2500万DL突破のメルカリ、スケールの理由は「ピュアなC2Cサービス」

11月17、18日に、渋谷のヒカリエで開催したTechCrunch Tokyo 2015。初日のファイアサイド・チャットの1つでは、フリマアプリ「メルカリ」の創業者でCEOの山田進太郎氏とTechCrunch Japan編集長西村賢がセッションを行った。

2013年にリリースされ、翌年には北米に進出、2015年11月には日米通算2500万ダウンロードを突破したメルカリ。これまでTechCrunch Japanでは何度か山田氏に取材を行ってきていた。今回のセッションでは山田氏に改めて、C2Cサービスを始めた理由、メルカリ成長の秘訣、そしてC2Cサービスの本質とは何かを語ってもらった。

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メルカリ創業者でCEOの山田進太郎氏

スタートアップ当時の楽天で学んだ起業の原点

山田氏が大学4年生の時に就職活動をして入ったのは、現在の楽天。当時はまだ社員数が20人程度だった。山田氏がいた1990年代後半の頃の楽天といえば、楽天オークションを立ち上げる前の時期で、現在起業家やエンジェルとして活躍する人物が集まっていた。今となってはコードを書くようにもなった山田氏だが、当時はWord、Excel、PowerPointの扱い方も分からなかった。しかし、何かウェブサービスを作りたい、という思いはあった。本人いわく、「丁稚みたい」だったそうだが、楽天が上場したのは2000年。それまで毎週スタッフが1人か2人増え続けていたという状況の中で、ウェブサービスの作り方を学んでいった。今でも当時の楽天の盛り上がっていた雰囲気は原体験としてあるという。

大学卒業後に起業、そして連続起業家に

大学卒業後の2001年に創業したWebサービス企業のウノウでは、いくつもヒットサービスを生み出した。映画のレビューサイト「映画生活」は、後に「ぴあ映画生活」になるのだが、これが山田氏最初のバイアウト。その額は数千万円規模だったという。「映画生活」だけでなく、「フォト蔵」「まちつく!」などの成功もあり、ウノウはZyngaに数十億円で買収された。買収提案を受けずに会社としての独立性を維持するという選択肢もあったが、「世界で通用するインターネットサービスを作る」こと、というウノウで掲げたミッションのためには、Zyngaとやったほうが良いと考えたのだそう。Facebook上で圧倒的に強かったZyngaなら世界で通用するものが作れる。Zyngaだからこそ、ウノウの売却を決めたのだそうだ。「より多くの人に、より楽しく使ってもらえるサービスをやりたかった」(山田氏)

Zyngaへのウノウの売却はスタートアップとしては成功した「エグジット」ではあったものの、結局日本での事業は終了せざるをえなかった。GREE、mixi、モバゲーという三つどもえの中で、日本からFacebook上で何かパブリッシュすることは難しかったからだ。エグジットから2年、山田氏はZynga Japanを退職することになる。しかしこの時すでに、何か新しいことやろうと決めていたという。ネタは全く決めていなかった。ただ、せっかくウェブサービスをやるのだったら、より多くの人に、便利に、楽しく使ってもらうサービスをやりたい、と思っていた。

その思いを持ちつつ、1年間の充電期間を経てできたのが、メルカリだった。

ピュアなC2Cがスケールにつながる

メルカリでは、基本的に、企業がアカウントを持つことはできない。完全に一個人のユーザー同士がやりとりをするフリマアプリだ。その理由について聞かれると山田氏は、

「僕個人としては、いかにスケールするかを重要視しています。Bが入ってしまうと、在庫とか、物理的に限界があるような気がしています。Airbnbとか、Uberとか、一見Bっぽいですけど、あれだけスケールしているのはピュアなC2Cだからじゃないのかと思っています」(山田氏)photo02

面倒なやりとりは仕組み化してあげること

セッションの中で、テキストを打ったり、誰かとやりとりしたりすることをしたくない人も増えているのではないか、という質問が出た。ソーシャルネットワークやシェアリングエコノミーとは言うものの、実際には人とのコミュニケーションが面倒だということもある。

これに対して山田氏は次のように話した。

「住所や振込先などのやりとりは確かに面倒。でも、そういうのを仕組み化してあげて、オートマチックになっていったら、需要と供給が爆発的に増えるんじゃないか、それがメルカリで今起こっていることなんじゃないかと思っています。オートマチックなやりとりの後に、ご購入ありがとうございます、ってくるわけなんですけど、そういう心のやりとりというか、そういう人間的なやりとりにほっこりする、みたいな構造があるんじゃないかな、と」

北米進出から1年半、これまでの成果が見えつつある

アメリカと日本とでプラットフォームとしてのメルカリのスケールの仕方に、実はそんなに差はないという。メルカリは、リテラシーの高くない地方ユーザーから立ち上がってきているが、これは北米でも同様という。

現在アメリカでのダウンロード数は500万を超えているという。アメリカ単体では、まだまだ赤字だが、アメリカを攻略すれば、その次は世界が見えてくる。現在40人いるプロダクト製作チームは、ほとんどがアメリカ市場に専念しているという。今後、北米市場で存在感を出して世界市場へと広げていけるかどうか注目だ。photo03

LINE NEWSがプラットフォームを開放、第1弾として24メディアが公式アカウントでニュースを配信

LINE NEWSの「アカウントメディアプラットフォーム」でメディアが記事を配信した際のイメージ

LINE NEWSの「アカウントメディアプラットフォーム」でメディアが記事を配信した際のイメージ

5月にMAU(月間アクティブユーザー・アプリとLINEの公式アカウント合算。重複ユーザーありの数字)1200万人という数字を発表したLINEの「LINE NEWS」。このサービスが新たな展開を迎える。

LINEは12月1日、公式アカウントを利用したニュース配信機能を外部メディアに開放する「アカウントメディアプラットフォーム」を発表した。パートナーとなるメディアはそれぞれ自らが選んだコンテンツを、自由にダイジェスト記事として配信することができる。

第1弾として、テレビ、新聞、ウェブの24メディアが公式アカウントの提供を開始する。メディアリストとアカウントは以下の通り。ちなみに僕らTechCrunchもこのタイミングで公式アカウントを提供することになっている。

朝日新聞デジタル @oa-asahishimbun
毎日新聞 @oa-mainichi
産経ニュース @oa-sankeinews
時事通信ニュース @oa-jiji
BBC News @oa-bbcnewsjapan
AFPBB News @oa-afpbb
テレビ朝日 @oa-tvasahi-geinou
スポーツニッポン @oa-sponichi
日刊スポーツ @oa-nikkansports
サンスポコム @oa-sanspocom
スポーツ報知 @oa-sportshochi
デイリースポーツ @oa-dailysports
ORICON STYLE @oa-oriconstyle
ダイヤモンド・オンライン @oa-diamondonline
ニューズウィーク日本版 @oa-newsweekjapan
PRESIDENT @oa-president
現代ビジネス @oa-gendaibusiness
映画.com @oa-eigacom
サッカーキング @oa-soccerking
TechCrunch Japan @oa-techcrunchjapan
アスキー @oa-ascii
クックパッドニュース @oa-cookpadnews
Fashionsnap.com @oa-fashionsnap
All About @oa-allabout

アカウントは今後も順次拡大する予定。また、各メディアのダイジェストにはLINE側から広告を配信し(コンテンツの枠にPRのリンクを入れるほか、インフィード広告、動画広告も準備する)、LINEとメディアで50:50の割合でのレベニューシェアを行う。メディアが独自に広告を配信する仕組みなども提供する予定だという。

外部メディアによるコンテンツ配信のイメージ

外部メディアによるコンテンツ配信のイメージ

LINEアカウントの提供でユーザー数を拡大

2013年7月にスマホアプリとしてスタートしたLINE NEWSだが、2014年4月からはLINEの公式アカウントを設置。このアカウントからニュースを1日3回ダイジェスト形式でプッシュ配信する「LINE NEWS DIGEST」をスタートした。

このアカウント経由のプッシュ配信では、別のアプリやブラウザ等を立ち上げることなくニュースを受信できる点や、イメージ画像とシンプルなテキストで同社の編集部がピックアップしたニュースを配信する点などが評価されたそう。この延長線上の施策として2015年4月、「東京トレンド」「野郎メシ」といった特定のテーマの情報だけを選んで受信できる「LINE NEWSマガジン」をスタート。マガジンは1カ月で累計登録数636万件を達成するなど、ユーザーの評判も高い。

LINE NEWSのチームを率いるLINE 執行役員の島村武志氏は、以前にもこのNEWSマガジンのプラットフォームを開放すると語っていたのだが、それが今回実現したかたちだ。

LINEでは12月1日に発表会を開催し、アカウントメディアプラットフォームの詳細を説明している。TechCrunchではその様子や島村氏への個別取材の内容についても追ってお伝えする予定だ。

2016年はVR元年となるか——普及のカギは「コンテンツ」にあり

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「2016年はVR元年になる」——業界関係者が期待する声は大きい。すでに発表されているOculus RiftPlayStation VRといったコンシューマー用のVR機器が発売されることもその後押しになると考えられている。11月17〜18日に東京・渋谷で開催された「TechCrunch Tokyo 2015」でも、そんなVRに関するセッション「VR最戦前:360度動画が開く新しい世界とビジネス」が開催された。

セッションに登壇したのは1000円のダンボール製VRデバイスとコンテンツプラットフォームを提供するハコスコ代表取締役の藤井直敬氏と、VR向けの「360度動画」を制作しているHOME360代表取締役の中谷孔明氏。いずれも国内VR業界のキーパーソンだ。VR専門メディア「PANORA」編集長の広田稔氏がモデレーターを務めた。

VRはまだアーリーアダプターも食いつくせていない

ハコスコ代表取締役の藤井直敬氏

ハコスコ代表取締役の藤井直敬氏

「VRはもう体験した? あれはすごいよね」—そんな声が新しいモノ好きの間で聞こえはじめてから2年ほど経った。しかし、実際にデバイスを持ち、日常的にVRを体験している人はごくわずかだ。

ハコスコの藤井氏も「未だにアーリーアダプターさえ食いつくせていない」と現状を語る。エベレット・M・ロジャーズが掲げた「イノベーター理論」でいうところのイノベーター(全体の2.5%)には波及しているが、アーリーアダプターと呼ばれる比較的流行に敏感な層(全体の13.5%)までは届いていないという。

ゲームやエンタメから始まり、さまざまな領域で利用できると考えればVRのマーケットは巨大だと言える。しかし果たして本当にVR浸透していくのか? 今回のセッションではその一般化に向けた「キー」はVRの「コンテンツ」だという話が強調されていた。

「10カ月視聴され続けるコンテンツ」に普及の可能性

ハコスコで1月にリリースされたコンテンツで、未だに人気を博している動画がある。男性3人組アイドルグループ「Lead」のプロモーションビデオだ。動画を撮影したのはありきたりな普通のスタジオ。演出も凝っているわけではなく、ただひたすら3人が360度から自分に歌いかけているように見えるという動画だ。藤井氏は、この動画にVRが普及する可能性があると語った。

HOME360代表取締役の中谷孔明氏

HOME360代表取締役の中谷孔明氏

「普通、アーティストのプロモーションビデオは続けて見られることは少ない。それが実際に今でも見られ、視聴者からは『出勤前に見て元気を貰ったと』いうコメントがきている。この動画のヒットには、一般化に向けた可能性があると感じ、深堀していきたいと考えている」(藤井氏)

また、アーリーアダプターやイノベーターではなく、Leadのファンというセグメントにリーチすることができたこと。そしてVRの最大の魅力である没入感のみで感情を動かすができたことは、一般の人々にどのようにコンテンツをしかけていくべきかのヒントになるだろう。

4分の動画で1TBに……高品質化に課題

VRコンテンツでは、実写動画の場合360度動画が必要となる。この360度動画は実際にヘッドマウントディスプレイを通すと、中心以外は解像度が下がって見えてしまうという特徴がある。没入感や臨場感を高めるためには、より高い解像度の動画が求められるわけだが、高品質化には大きな課題があるとHOME360の中谷氏は指摘する。

VRコンテンツの、あくまで「現状」最適なフォーマット

セッション中に提示された、VRコンテンツの(あくまで“現状”)最適なフォーマット

 

「普段4Kや8Kで撮影、編集をするが、これらを再生するにはハイスペックなPCが必要となる。また、8Kの360度動画の場合、1分の動画でデータ容量が250GB程度あるため、編集作業に時間がかかる。そもそもまだAdobeの編集ソフトが対応していなかったりする」(中谷氏)

1分で250GB、つまり4分動画で1TBということだ。このデータ容量の大きさは、編集だけでなく配信するときにも大きな障壁となることは間違いない。ただ中谷氏もVR普及のために重要なのはコンテンツの解像度より内容のほうが重要であると語った。

「一番大事なのはコンテンツの内容だ。いくら8Kでも単に撮りっぱなしのコンテンツはつまらないですから」(中谷氏)

TechCrunch Tokyo 2015内でデモを行ったH2Lの「UnlimitedHand」は、筋肉への電気刺激でユーザーに触覚を与える、VRとの連携を想定したデバイスであった。そんな周辺機器の開発も進むなど、VRの波はそこまで来ている。2016年のVR元年からはじまる産業が数年で廃れてしまうことのないようにまずはコンテンツの発展に期待したい。

50億円を捨ててまで起業した男が語る「今、スタートアップに携わるべき理由」

後ほんのわずかな時間、その立場にとどまっていれば手に入ったであろう大金を顧みず、起業した男がいる。それがマネックスグループ代表執行役社長CEOの松本大さんだ。

11月18日、東京・渋谷が会場となったTechCrunch Tokyo 2015において、当時、史上最年少で外資系金融ゴールドマン・サックス証券のゼネラル・パートナーになり、その後、オンライン証券会社マネックス証券を設立した松本さんが数十億円を「捨てた」その裏側について語った。

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評価された社内「スタートアップ」

外資系金融機関を就職先に選んだ理由は「異端児だったから」という松本さん。「普通の会社に就職しても、きっと受け入れてもらえないだろう。それなら多様性を受け入れてくれ、かつ実力主義の会社で働きたい」と判断し、ソロモン・ブラザーズに1987年に入社。その3年後の1990年、ゴールドマン・サックスに移籍した。

ところが、着手したかった仕事(円のデリバティブ)をしようにも、計算技術において遅れており、商品開発ができない。そこで松本さんは「大好きな秋葉原に行って、PCを購入し、ゴールデンウィーク中、マクロを多用したスプレッドシートを書き上げ」ポートフォリオを管理するようにしたという。

「自分のデスクに新卒、中途も含め若い人たちをどんどん集めてモデルを書いて、ビジネスのアイデアも考えて実現して。そうしたらすごい儲かったんですよ。当時、外資系金融の上司たちは日本人がそんなに仕事できると考えていなかったので、あまり重用していませんでした。でも、そんなことはない。結果を出して日本の若い人が優秀だということを明らかにしたところ、社内で評価されるようになったんです」(松本さん)

開発した新商品が成功しただけではなく、そのような取り組みの結果、松本さんはわずか30歳という異例の若さでゼネラル・パートナー(共同経営者)の仲間入りを果たしたのだ。
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「一(いち)場所、二(に)餌、三(さん)仕掛け」タイミングを見逃すな

そんな松本さんに、大金を手にするチャンスが訪れた。1999年5月、パートナーとして働いていたゴールドマン・サックスが上場することになったのだ。上場すれば、プレミアム報酬として松本さんにも数十億円が手に入るはずだった。

しかし、松本さんは大金ではなく、起業の道を選んだ。株式売買委託手数料の完全自由化、インターネットの普及を見越して、個人にとって必要になると考えたオンライン証券会社を設立するというヴィジョンを取ったのだ。

「パートナーになってから4年目でした。50億は手にできたかもしれませんね」と、こともなげに松本さんは語る。「当時35歳。そんな若さで大金を手にしたら、働かなくなるかもしれない、と思ったんです。きっと遊んで暮らす道を選んでしまって、自分の可能性を追求しなくなってしまうんじゃないかと。人間、そんなに強くないですからね」(松本さん)

1999年という年は金融業界において、「クリティカルなタイミング」でもあったという。その年の10月に株式売買委託手数料の完全自由化がなされたからだ。

「下りエスカレーターに乗った状態と、上りエスカレーターに乗った状態で駆け上がっていくのとでは、断然上りエスカレーターに乗っている方がスピードはアップしますよね。完全自由化の波は“上りエスカレーター状態”。そのタイミングで開業していなければマーケティング的に意味がないと考えました。ゴールドマン・サックスの規定上、パートナーだったわたしが辞められるタイミングは1998年11月末。半年後に大金を手にできる、と分かっていても辞めるしかなかったんです」(松本さん)

「それに」と松本さんは言葉を続ける。

「釣りでは『一(いち)場所、二(に)餌、三(さん)仕掛け』といって、一番重要なのは場所だと言われています。どこでやるか、どこを釣り場に決めるか、ですよね。それと同じで、エリアを決めたらどのタイミング、という場所でビジネスをするかが重要になってくるのです。規制が変わる、そのタイミングを逃す手はありません」。

相手を信じてぎりぎりまで攻める

マネックス証券スタートにまつわるストーリーの中で外せない人物がいる。それは元ソニー社長 出井伸之さんだ。

「顧客がいないと始まりません。私がいくら『ゴールドマン・サックスで史上最年少ゼネラル・パートナーをやっていました』と言っても、”Nobody Knows Me”ですよね。でも、『ソニーが出資しています』と言えば信頼してもらえる。それで、100万人を説得するより、出井さんを説得することにしました」(松本さん)

その甲斐あって、全体の49%出資をソニーから勝ち得たが、松本さんの攻めはそれで終わらない。何と、東京・銀座にあるソニー本社のビルの壁を記者会見前夜から6日間借り、“SONY”のサイネージとその下に垂らされているマネックス証券の懸垂幕を1枚の写真に収め、記者会見で配布するプレスキットに入れたというのだ。松本さんは当時を振り返ってこう語った。「これにはソニー側の広報も真っ赤になって怒っていましたね。でも、社長の出井さんは、記者会見の最後にこんなボーナストークをしてくれたんですよ。『今日というこの日は象徴的な日で、まるでソニーがマネックスに乗っ取られたかのように、銀座のソニービルにマネックスの垂れ幕がかけられていた。これからマネックスはソニーというプラットフォームを使って、大きく羽ばたいていってほしい』」。

「ギリギリのところを攻めていくわたしに対して『あっぱれ』という気持ちで受け入れてくれ、ウィットに富んだ返しをしてくれたんだと思います」(松本さん)

そういう経験からも、スタートアップで組むことに選んだ相手がたとえ大企業だったとしても萎縮せず、失礼にならない形で利用するという気概をもってぶつかってほしい、と会場に集まった起業家たちに勧めていた。

生存確率は極めて低いが、社会のステップアップになくてはならない

「来場している起業家、また起業家予備軍にアドバイスを」と求められた松本さんは、最後にこう締めくくった。

「起業というのは大切なプロセス。それは突然変異のようなもの。ほとんどは死に絶えるが、生き残れば一気に社会を変化させます。もしくは社内のスタートアップであれば、会社を次のステージへとステップアップさせていきます。進化の過程での突然変異と違い、ビジネスにおける突然変異種は、たとえうまく行ってもまたすぐ誰かに真似されます。それでもなお誰かがやらないと、社会は退化してしまうのです。社会を次のステージに持っていくんだ、という気概でぜひとも取り組んでいただきたいですね」

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Rinkak運営のカブクが7.5億円のシリーズA資金調達、「工場デジタル化」で追い風

3Dプリンタを使ったデジタルものづくりプラットフォーム「Rinkak」を運営するスタートアップ企業、カブクが今日、総額7.5億円のシリーズAの資金調達をクローズしたことを発表した。すでに4億円分についてはリードインベスターとなったグローバル・ブレインから2015年8月に先行して発表があったが、今回のラウンドには電通デジタル・ホールディングス三井住友海上キャピタルも投資に参加している。カブクは2013年1月創業で、TechCrunch Tokyo 2013スタートアップバトルのファイナリスト。これまでサイバーエージェント・ベンチャーズフジ・スタートアップ・ベンチャーズから2014年6月に2億円を調達するなど、エンジェル投資によるシードも含めると総額約10億円の資金を調達している。東京・渋谷に拠点を置き、社員は15人。

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Rinkakは、iPhoneケースやアクセサリ、フィギュアの3Dデータをクリエイターがアップロードし、それを消費者が購入するというマーケットプレイスだ。成果物の物珍しさと3Dプリンタという話題性からコンシューマー向けの印象も強いカブクだが、いまビジネスとしての伸びに手応えを感じ始めているのは、C向けのRinkakではなく、むしろデジタル工場向け(BtoF)のクラウド基幹システム「Rinkak 3D Printing Manufacturing Management Service(MMS)」なのだそうだ。

デジタル工場向けのセールスフォースのようなもの

カブク創業者の稲田雅彦CEOによれば、Rinkak 3D Printing MMSは「デジタル工場向けのセールスフォースのようなもの」で、製造業におけるサプライ・チェーン・マネジメントに相当する部分を担うシステム一式をクラウドで提供している。

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3Dプリンタの普及はプラスチックを溶かして造形するプロトタイピング向けのものからスタートしているが、2014年に産業3Dプリンタ関連の特許が切れて、キヤノンやリコーが産業プリンタを出荷し始めたことで現在は転回点を迎えているという。レーザーで溶かす、紫外線で硬化させるといった方式などにより、プロトタイピングではなく最終製品を作れる段階になってきている。

例えば、カブクがトヨタと共同で取り組んだi-Road関連のOpen Road Projectでは、パーツの一部は3Dプリンタによる「打ち出し」となっているが、素人目にはそれが従来のような金型や削りだしによって製作されたパーツなのか3Dプリンタによるものなのか区別が付かないレベルという。素材価格の低下とあいまって、3Dプリンタが適する領域が「プロトタイピング→少量生産→大量生産」と徐々に広がってきている。3Dプリンタを製造の本番に使おうという「マス・カスタマイゼーション」は、最近「インダストリー4.0」と言われはじめたトレンドにおける重要な1つのピースで、カブクの大型資金調達の背景には、この流れがある。

「弊社顧客の中に、例えば北米市場だと航空宇宙とか医療といった単価の高い領域で顧客がいて、年率50%以上伸びている工場もあります。最終製品を、従来のように削り出しで作ってロボットでアセンブリするというのではなく、3Dプリンタで作るという流れが出てきています。数千ロット以下なら3Dプリンタのほうが安いという現在の採算分岐点は、今後2、3年で数万とか、数十万ロットになっていくでしょう」(カブク稲田CEO)

コスト低下はコンシューマー領域でも起こっていて、2年前だとiPhoneケースを作るのに原価2000円強、売値5000〜6000円といった相場だったものが、現在では原価数百円で売値が1500〜2000円となりつつあるという。

ただ、コンシューマー領域はボリュームが大きくならないとビジネスとしては成立しないため、まだ市場の立ち上がりに時間がかかりそうだ。カブクがロフトと組んで多店舗展開している「ロフトラボ3Dフィギュアスタジオ」も、そうだ。これは102台のカメラと3Dプリンタを使って人物をまるごとフィギュア化する面白い取り組みで、将来的には、かつて駅前の写真館で写真を撮ったように、子どもの成長の記念として利用する可能性など市場の広がりが感じられるものの、まだまだこれから。

一方C向けに比べると、デジタル工場向けソリューションは、すでにニーズも市場の伸びも大きい。

背景にあるのは、3Dデータを扱う工場で、これまで利用されていたソフトウェアパッケージが、年間ライセンスだけで数千万円かかっていた上に、それを稼働させるPCが高スペックである必要があったこと。ちょうど、既存会計パッケージ市場にクラウドサービスのfreeeやマネーフォワードなど安価で使いやすいものが登場してきているのと同じ構図で、Rinkak 3D Printing MMSは、既存の専門パッケージソフトの領域をクラウドで置き換えつつあるのだという。このパッケージソフトの役割は、営業案件の管理に始まり、3Dデータの整合性チェック、製造装置の運用管理、後工程の処理、梱包作業などといった一連の業務を管理する統合システムだ。3Dデータのチェックについては、クラウドによる分散処理などにより、多くの資金を集めている米国スタートアップ企業のShapewaysにも負けていないと稲田CEOはいう。

既存パッケージ市場があるとはいえ、そもそも工場の受注・生産管理がデジタル化されていないケースも多く、紙のメモを使っている工場などもまだまだあるという。現在Rinkak 3D Printing MMSの顧客数は数百工場で月間30%ずつ伸びているというが、このうち8割は欧米顧客。日本の工場はデジタル化への対応が遅れていて、電話やファクスが現役ということも。トヨタやオリンパスといった企業の先進的な取り組みを横目に、徐々に製造業のマインドセットが変わりつあるのが現状だと稲田CEOは見ている。

カブクでは工場側を「サプライ・サイド」、法人であるか個人であるかを問わず製作を依頼する側を「デマンド・サイド」と定義していて、その両者が集まるマーケットを作っていくことで「モノづくりの民主化」を目指すという。ちょうど証券取引所をモデルにしてAdTechが興隆したように、デジタルモノづくりもマーケットとなるだろうという。もしマーケットとなって世界中のデジタル工場を繋げていくことができれば、データだけをやり取りして「現地生産」することで物流も最適化できるだろうと話している。

YouTuberと企業をマッチングするルビー・マーケティングが8000万円の資金調達、今後はアジア展開も

ルビー・マーケティングのメンバー。手前中央が代表取締役の平良氏

ルビー・マーケティングのメンバー。手前中央が代表取締役の平良真人氏

 

YouTubeに動画をアップし、その広告収入で生計を立てる「YouTuber」。そんなYouTuberと、彼らに自社のプロダクトを紹介してもらいたい広告主をマッチングするプラットフォームが「iCON CAST」だ。このプラットフォームを提供するルビー・マーケティングが、11月24日、日本ベンチャーキャピタルおよびGenuine Startupsから第三者割当増資を実施。合計8000万円の資金調達を実施したことをあきらかにした。

ルビー・マーケティングは2014年1月の設立。ソーシャルメディアを活用したオンラインマーケティングのコンサルを行いつつ、自社プロダクトの開発を進めてきた。同社の代表取締役である平良真人氏はグーグルで日本の中小企業向けの広告営業部門を立ち上げた人物。社員は十数人だが、グーグル出身者が多い。

同社が提供するiCON CASTは、広告主が動画広告の案件を、YouTuberが自身の実績をそれぞれ公開し、案件への応募をしたりYouTuberの検索をしたりできるプラットフォームだ。日本にもYouTuberは数多くいるが、トップの数人を除いて、広告主から指名で仕事を受けるというのは難しい状況。だがiCON CASTでは、広告主がYouTuberを探すだけでなく、YouTuberの側からも案件を探せる仕組みを採用。そのため、ターゲットとするYouTuberも上位でなく中堅層が中心になっている。

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現在登録するYouTuberは約1000人。案件は当初ゲームやアプリの紹介が中心だったが、現在ではECや旅行、新作映画などその幅を広げている。また1人でなく、複数のYouTuberを起用するケースが増えてきた。人気YouTuberを1人利用すると圧倒的な数のユーザーにリーチすると考えがち。だが平良氏によると、「10万人のファンを持つ1人のYouTuber」よりも、「1万人のファンを持つ10人のYouTuber」で広告を展開する方がROIがよくなる事例もあるのだという。

「前職でGoogle AdWordsをやっていて学んだが、大手企業がビッグワードを購入してCPCを上げてでも戦う一方、中小企業は安価でコアなキーワードを買って効果を出していた。小さいが『原石』のYouTuberがいっぱいいるプラットフォーム」(平良氏)。もちろん紹介するプロダクトの性質にもよるのだろうが、ファンがそこまで多くなくとも自社のプロダクトと親和性の高いファンを持つYouTuberを複数起用すれば、より効果的なマーケティングができるという主張だ。

同社では今回の調達を契機に、YouTuberに加えて、VineやTwitter、Instagramなどで動画や写真を投稿するインフルエンサーの取り込みを進める。また、東南アジアを中心にして、海外展開を進める。実はiCON CASTに登録するYouTuberの2割は、日本以外のアジア圏で活動している人物だそうで、この人数拡大、クオリティの向上に注力する。

日本のウェアラブル技術スタートアップMoffが、米教育テレビ局PBS KIDSと提携

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セサミストリートや”Wild Kratts” 等の子供番組を制作している由緒ある教育テレビ局、Public Broadcasting Serviceの一部門であるPBS KIDSが、初めてウェアラブル技術に参入する。PBS Kidsが今日(米国時間11/19)公開した新しいアプリ、PBS KIDS PartyはMoff Bandと連携して動作する。東京拠点のMoffにとって、PBSは米国で最初の主要パートナーであり、これは大きな収獲だ。

Moffは2ヵ月前にシード資金130万ドルを調達し、その殆どは米国での市場シェア獲得に使用される。このBluetoothリストバンドは、活動のトラッキングだけでなく、ゲームコントローラーとしても働くことでライバルと差別化し、スラップ式ブレスレットは子供でも簡単に使えるよう作られている(PBD KIDS Partyアプリは5~8歳児が対象)。

Moffが最初にPBS KIDSとつながったのは2月のニューヨーク・トイフェアだった。ファウンダーの高萩昭範氏は、知名度の高いブランドと提携することが、Moff Bandが米国で認知度を高める助けになることを願っている。

「PBS KIDSは米国の子供や親たちの間で存在感が高く、そこと提携できる幸運に恵まれたことを嬉しく思う」と彼はメールで言った。「この提携は、Moff Bandおよびわれわれの技術プラットフォームを、子供たち、親たち、そして未来の協同パートナーに売り込むための確固たる信用を当社に与えてくれる」。

PBS KIDS Partyアプリには現在4つの教育アプリがあり、Moff Bandなしでも利用できる。


アプリを開くと子供たちにMoff Bandを使えば機能を強化できることが示される。高萩氏はこれがウェアラブルに54.99ドルを費やす説得材料になることを期待している。

「Moffのことをまだ聞いたことがない人たちにとって、このアプリがMoff Bandを買う真のインセンティブになると信じている。子供も親も、このアプリと共に利用できるウェアラブル技術に価値を見出すはずだ」と高萩氏は語った。

[原文へ]

(翻訳:Nob Takahashi / facebook

ゲームのスタープレーヤーたちによるライブストリーミングをメディアコンテンツととらえるKamcordが、日本韓国を皮切りにグローバル進出を開始

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モバイルで自分のゲームプレイを録画したりストリーミングできる、という合衆国のサービスKamcordは、1年近く前に1500万ドルを調達してアジア市場の開拓に着手したが、ついに今日(米国時間11/19)、日本と韓国でそのサービスを開始した。

Y Combinatorを2012年に卒業したKamcordは、この二か国の人気上位のゲームストリーマーの多くと組んで、両国におけるライブストリーミングサービスを立ち上げた。

同社のライブストリーミングは合衆国でも、始まったのはやっと今年の夏だ。スタープレーヤーのデバイス上で行われていることをリアルタイムでブロードキャストすると、ファンたちが自分のモバイルやWeb上でそれを見て楽しむ。合衆国でKamcordはスター級のプレーヤーをたくさん囲い込み、サービスの立ち上げを飾った。たとえばClash Of Clansが得意なChief Patは、YouTube上の視聴会員が140万人もいる。日本(明日ローンチ)や韓国(今日ローンチ)でも、やり方は同じだ。

Kamcordの協同ファウンダAditya Rathnamによると、韓国での立ち上げ記念に参加したライブストリーマーたちは100万名あまりの視聴を稼いだ。スターたちの代表格がMinecraftをプレイするDottyだ。日本では参加ストリーマーたちの、YouTube等におけるファンの累計が60万だ。

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“合衆国と同じく、パートナーたちはライブストリーミングのできるデスティネーションを求めている。Twitchを試してみたが、だめだった、という人が多い”、とRathnamは言っている。

合衆国でもライブストリーミングは始めてまだ4か月だが、すでに手応えは十分だそうだ。

だいたい一人のユーザがストリーミングを見る時間は平均20分ぐらいだが、これまでで一番人気のストリームは視聴者計が19万2000に達した。Kamcordの上位8名のパートナーの合計フォロワー数は、これまでの計で30万、Clash of ClansをプレイするGaladonは、Kamcordのフォロワー数(64000)の方がTwitch(22000)よりも多い。

東京のオフィスには5名、ソウルには2名の社員を置くが、Rathnamによれば、これは世界進出のほんの端緒にすぎないという。まだ当面は、合衆国が主力になりそうだ。

“でもポテンシャルは、世界の方が大きいからね”、と彼は語る。“言語はまだ英語だけなのに、すでに英語以外の国からのダウンロードがとても多い。ライバルたちの多くがまだ国際市場にあまり手を出していないから、そのことを好機と捉えて、各国の高品質なローカルコンテンツをどんどん出していきたい”。

Rathnamによると今同社は、合衆国、日本、韓国に次ぐ第四の市場を模索中だ。

“たぶん、中国かまたは、ヨーロッパのどこかだろうね”、とRathnamは言うが、まだ現時点では決まっていない。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa)。

グローバルな出張の多いビジネスマン/ウーマンよ喜べ、日本でもApple SIMが使えるようになった

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iPadのユーザが加入キャリアを変えるためのSIMカードApple SIMが、KDDIとのパートナーにより日本でもローンチした。AppleのWebサイトによると日本語〕、このカードは日本ではKDDIのモバイルネットワークauをサポートする(出典: AppleInsider)。

適用機種はiPadのWi-Fi + Cellularモデル、Apple SIMは主に旅行者の便宜のために提供されている(今のところ世界90か国のセルラーデータプランをサポート)。多くの国がGigSkyとのパートナーシップによるもので、この企業は多くの国のデータプランを提供している。AppleがApple SIMで同社とパートナーしたのは今年の6月だ。それまではApple SIMは、AT&TやEE、Sprint、T Mobileとのパートナーシップにより、合衆国とイギリスでのみ利用できた。

Apple SIMのWebページによると、アジア太平洋地区の対応国、インド、バングラデシュ、カンボジア、日本の中で、東アジア地区は日本だけだ。最近は地球上のほとんどの国が旅行者にとって重要だが、Apple SIMの可利用性はそれらの国のキャリアとAppleとのパートナーシップの如何にかかっている。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa)。

グーグルでChrome開発に関わった及川卓也氏が「Qiita」開発元Incrementsの14人目の社員に

元グーグルの及川卓也氏といえば、日本のソフトウェアエンジニアの中でも抜群の知名度を持つ人物だ。各種の開発者カンファレンスへの登壇も多く、ブログは書籍化されており(『挑まなければ、得られない』2012年)、2012年1月には地上波テレビ(NHK)のドキュメンタリー番組『プロフェッショナル 仕事の流儀』で取り上げられている。

その及川氏が10月21日、グーグルを辞職したことを告げる文章をFacebookにポストし、IT業界の話題になった。次の職場はどこなのか? その答えが本日11月17日に明らかとなった。及川氏はソフトウェアに関する知識を共有するサービスとして伸びつつあるサービス「Qiita(キータ)」の開発元であるIncrementsの14人目の社員となる。今後は、プロダクトマネジメントを中心に手腕を振るう。

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元グーグルの及川卓也氏(右)と、Qiita運営のIncrements共同創業者で代表取締役の海野弘成氏

及川氏は、日本DECからキャリアをスタートし、マイクロソフト、グーグルと、ITの名門企業をそれぞれ9年ずつ勤め上げてきた。その及川氏の転職先が社員数13人のスタートアップだと聞けば、「なぜ?」と聞きたくなるのが人情というものだろう。

「驚く人もいるかもしれないが、グーグルからスタートアップに行くのはよくある話だ」と及川氏は話す。実際、クラウド会計「freee」創業者の佐々木大輔氏やモバイルビデオ広告「FIVE」共同創業者の菅野圭介氏、予約システム「クービック」創業者の倉岡寛氏などグーグル卒業生が起業した事例は日本でも増えている。それにしても、知名度抜群の及川氏がまだまだ小さな会社であるQiita開発元のIncrementsを選んだのはなぜなのか。

やりたいことが一致、Qiitaはエンジニアから愛されている

及川氏の話を聞いてみよう。

「自分は何をやりたいのかをよく考えた。自分自身で起業することも含めて考えたし、グーグル卒業生にも相談した。その中で出てきたのは、自分がやりたいことはバーティカルなものではなくホリゾンタルなものだということ。Google Developer Day(GDD、グーグルが運営する開発者カンファレンス)、デブサミ(Developer Summit、翔泳社が主催する開発者カンファレンス)、HTML5 Conference(html5jが主催する開発者カンファレンス)などエンジニアを元気付ける、支える活動に関わることは面白く感じていた。そういう方向性の『あること』をやりたい、と(Increments代表取締役の)海野(弘成)さんと話をしたら、考えていることがほとんど同じだった」。

残念ながら「あること」の中身はまだ秘密とのことだが、及川氏が考えていた次の一手とQiitaのIncrementsが考えていたことが近かったことが、今回の決断の背景にはあるらしい。「それならば、今から新しいものを作り上げるより、すでに土台があって優秀なエンジニアが集まっている会社に参加した方が夢の実現が早いだろうと」。

取材に同行したTechCrunch Japan編集長の西村賢がこう聞いた。「給料は上がりました、下がりました?」。及川氏はこう返す。「下がりました。でも、それは前職が良すぎたというべき。スタートアップとしては非常にがんばってもらいました」。そして、こう付け加えた。「お金じゃないと思っているんです。小さい組織じゃないとできないこと、ビビッドに製品の運命を左右するようなことをやりたい」。

及川氏はこうも言う。「Incrementsから声がかかった時には嬉しかった。Qiitaはすでにエンジニアから愛されるプロダクトとなっている。自分が参加して、何ができるだろうとワクワクもした」。

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及川氏が入る直前の時点で、Qiitaは社員数13名、平均年齢28歳の若くて小さな会社だ。約20歳も年齢が離れたエンジニアと一緒にやっていくことについては「楽しみだ」と語る。若い才能を集めたスタートアップに“いい感じ”にベテランが参加できそうな予感はある。

グーグルで経験を積んだ及川氏の目から見てもIncrementsは興味深い会社だという。「Incrementsでは、開発や組織管理に実験的な手法を取り入れて、成果を上げている。これはQiitaのブログにもけっこう書いてあるが、例えば海野さんは書籍『Team Geek ―Googleのギークたちはいかにしてチームを作るのか』のコアのエッセンスを実践したいと言っている。そこに加えて自分の経験も共有していきたい」。

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及川氏は、同社が「目標を持っているが採用で妥協しない」点も気に入っている。Incrementsの海野氏は「エンジニアは増やしたいが、入社のハードルが結構高くて、なかなか増えません」と話す。

そしてIncrementsの大きな魅力は、開発者向けのサービスとしてQiitaの存在感が増している点だ。今や200万UUで、「国内のほとんどのエンジニアが毎月1回は見ている計算になる」(海野氏)。

及川氏は次のように話す。「Qiitaは、ドキュメントにおけるGitHub的なものになりうるポテンシャルがある。今はブログに技術記事を書く例が多いが、内容が陳腐化した記事をメンテナンスし続けることを求めるのは責任が大きすぎる。Qiitaなら次に興味を持った人が引き継いでいけばいい。Forkしてもいいし、コメントを足してもいい」。技術ドキュメントを集積する場として、Qiitaはデファクトスタンダードになりうる可能性があると及川氏は見ているのだ。

3社の名門IT企業を9年ずつ勤め、スタートアップへ

ここで及川氏の経歴を簡単に振り返っておこう。1988年に早稲田大学を卒業する。学生時代から新しいソフトウェア技術が好きだった。卒業研究では、地下資源の探査に関する構造シミュレーションのプログラムをPrologで書いて「指導教官を困らせた」(及川氏)という。

卒業後、日本DECに入社した。若い世代には説明が必要かもしれないが、DECは当時世界2位のコンピュータメーカーであり、特に大学、研究機関では絶大な信頼と人気を誇っていた。AT&Tベル研究所で作られた最初のバージョンのUNIXも、カリフォルニア大学バークレイ校で作られたBSD(TCP/IPとsocketを実装し、インターネットの発展に重要な役割を果たした)も、ターゲットはDEC製マシンだったのだ。DEC出身のエンジニアは今もIT業界の要所要所で活躍している。

日本DEC時代の後半は、同社が開発したRISCチップ「Alpha」向けのWindows NTの開発を手掛けていた。

1997年にマイクロソフトに転職する。DEC時代からWindows NTの開発に関わっていた及川氏は、Windows NTのエキスパートとしてマイクロソフトでのキャリアを築く。やはり念のために説明すると、Windows NTのことを単なるWindowsのバージョン名だと思ってはいけない。DEC出身のDavid Cutlerがカーネルから新規設計したOSであり、中核技術はWindows XP以降のWindowsシリーズのコアテクノロジーとして今も引き継がれている。もしWindows NTが成功していなければ、Windowsが今日まで存続していたかどうかは分からない──それぐらいに重要なテクノロジーである。

2006年にグーグルに転職する。当時のグーグル日本法人は社員数100人に満たない小さな所帯だった。グーグルでの主な仕事はChromeの中核部分の開発だ。Blinkレンダリングエンジンはもちろん、Web技術そのもの──例えばHTML5の実装と普及活動にも関わった。また「Google日本語入力」にも、“20%プロジェクト”で作られた時代からAndroid版を作る頃まで関わっている。

前述したように開発者コミュニティでの活動も目立つ。Google Developer Day(GDD)での及川氏はいわばグーグル日本法人の“顔”だった。HTML5 Conferenceでの及川氏は、「グーグルの人というより、HTML5の人」だった。2011年の東日本大震災を機に立ち上がった開発者コミュニティ「Hack for Japan」では中心的な役割を果たした(例えばこの講演)。「被災地をITで支援できないか」という大きな課題に取り組んだ。Hack for Japanのハッカソンがきっかけで登場したサービス、スマートフォンアプリも数多くある。

及川氏のキャリアを振り返ると、米資本の一流企業での開発マネジメントの経験を持つだけでなく、開発者コミュニティでの活発な活動が目立つ。開発者向けサービスQiitaを軸にビジネスを展開するIncrementsで及川氏がどんな仕事ぶりを見せてくれるのか。多くの開発者の視線が集まっている。

楽天が1億ドル規模のFinTechファンドを立ち上げ——欧米での投資を加速

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楽天代表取締役会長兼社長の三木谷浩史氏

昨日の話になるが、注目集まるFinTech領域で少し大きな動きがあったので紹介しておく。楽天は11月12日、最新の金融テクノロジー、いわゆるFinTechを対象としたベンチャーキャピタルファンド 「Rakuten FinTech Fund」の運用を開始したことを発表した。ファンド規模は1億ドルに上る。

Rakuten FinTech Fundでは、初期段階から中期段階のFinTechスタートアップに対して、世界規模で投資を行うという。楽天ではこれまでにもCurrency CloudWePayなどFinTech領域への投資を行っているが、新ファンドはこれをさらに発展させたものになるという。当初は北米および欧州——特にロンドン、サンフランシスコ、ニューヨーク、およびベルリン——の企業に対して投資を行い、その後は他の地域に規模を拡大する見込み。

楽天では直近、グループの「インターネット金融事業」(楽天カード、楽天証券、楽天銀行、楽天生命など)の名称を「FinTech事業」と変更しているが、今回のファンドはそのFinTech事業で組成されたものだという。同社では「FinTechのスタートアップ企業に投資することによって、世界のイノベーションを先取りし、FinTech企業を支援して世界規模でインターネット上の金融サービスに強く影響を与えることができる。また、日本および海外で迅速に成長する楽天のFinTech事業と起業家の橋渡しをする役割も担う」としている。

日本発・非ネット分野の「世界基準ベンチャー」がTechCrunch Tokyoに登壇

ネット系のスタートアップではメルカリやスマートニュースが米国進出したり、海外ユーザー比率が95%の対戦型脳トレ「BrainWars」が国境を超えた感があるが、“非ネット”な分野にも世界を狙えるスタートアップはある。

11月17日、18日に開催するTechCrunch Tokyoでは、そんな非ネット分野の「世界基準ベンチャー」にスポットを当てる。登壇するのは、工場の生産ラインなどに導入される産業用ロボットの制御機器を手掛けるMUJINの滝野一征さんと、電気自動車(EV)を開発するGLMの小間裕康さんの2人だ。

GLM小間裕康さん(左)とMUJIN滝野一征さん

GLM小間裕康さん(左)とMUJIN滝野一征さん

産業用ロボットに“考える力”を与える

MUJINをざっくり言うと、産業用ロボットの“脳みそ”を作る研究開発型ベンチャーだ。ロボットと聞いてガンダムのような人型ロボットを思い浮かべる人にはピンとこないかもしれないが、通常、産業用ロボットを稼働させるには、専門のオペレーターがロボットを手作業で動かし、その動作をプログラミングする「ティーチング」が必要となる。この作業は膨大な時間とコストがかかるうえ、教えた動作以外に応用がきかないのだ。

こうした産業用ロボットに“考える力”を与えるのがMUJINだ。主力製品のひとつ、「ピックワーカー」は、ティーチングせずにバラ積みの部品を取り出せるのが特徴。対象部品を3次元で認識し、その情報をもとに産業用ロボットを制御するコントローラが瞬時に動作プログラムを計算する。ロボットや3次元センサーは汎用品が使用可能で、MUJINはコントローラを開発している。

ばら積みピッキングを可能にする「ピックワーカー」

ばら積みピッキングを可能にする「ピックワーカー」

MUJINの設立は2011年7月。今年5年目のベンチャーだが、すでに自動車工場や物流、食品仕分けなどで導入実績があり、取引先にはキヤノンやデンソー、日産、三菱電機といった大企業が名を連ねる。海外からの問い合わせも多く、世界展開を見据えている。2012年7月には東京大学エッジキャピタル(UTEC)からシリーズA資金として7500万円、2014年8月にはUTECとJAFCOからシリーズB資金として6億円を調達している。

最後にピックワーカーの動画をご紹介する。産業用ロボットが自律的に考えてばら積みの部品をピックアップする様子は、まるでSF映画を見ているような気にもなる。

「日本版テスラ」国内で初めてEVスポーツカーを量産

登壇するもう1社、GLMは2014年4月に設立した京都大学発のベンチャーだ。電気自動車(EV)向けの独自プラットフォームを開発している。プラットフォームというのは、ギアやドライブシャフトで構成されるドライブトレイン、そしてシャーシのこと。GLMはこのEV向けプラットフォームを利用した完成車を販売し、一部では「日本版テスラ」と呼ばれたりしている。

2014年7月には、量産を前提としたEVスポーツカーとしては国内で初めて、国土交通省の安全認証を取得。公道での走行が可能となった。これを受けて同年8月から、国内初の量産EVスポーツカー「トミーカイラ ZZ」の納車をスタートしている。トミーカイラ ZZは静止状態から3.9秒で時速100キロに達する加速性能がウリ。価格は800万円ながらも、限定生産の99台は受付初日で限定数を超える予約が集まった。

静止状態から3.9秒で時速100キロに達する加速がウリの「トミーカイラ ZZ」

静止状態から3.9秒で時速100キロに達する加速がウリの「トミーカイラ ZZ」

GLMはEVスポーツカーだけでなく、資金調達でも話題を呼んだ。2012年10月の増資では元ソニー会長の出井伸之氏や元グリコ栄養食品会長の江崎正道氏らが出資。2013年12月にはグロービス・キャピタル・パートナーズなどVC4社と日本政策金融公庫から約6億円、2015年5月には既存株主や複数国の政府系ファンドから約8億円、8月には総額17億円のシリーズB資金調達を完了するなど、すでに多額の資金を集めている。

産業用ロボットと電気自動車。どちらの業界も、いちベンチャーが参入するには障壁が高そうに思えるが、MUJINもGLMも夢物語ではなく、テクノロジーで世界市場をつかもうとしている。イベントではそんな世界基準の研究開発ベンチャーの魅力をお伝えできればと思う。

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開催まで1週間を切ったTechCrunch Tokyo、LINE元代表・森川氏が語る動画ビジネスと“シンプル”な組織論

開催までいよいよ1週間を切ったスタートアップの祭典「TechCrunch Tokyo 2015」。タイムテーブルも今週発表しているが、また新たな登壇者をご紹介する。

1日目の11月17日午後のセッションに登壇するのは、LINE元代表取締役社長CEOで現在はC Channelの代表取締役を務める森川亮氏だ。

森川亮氏

森川亮氏

森川氏は筑波大学を卒業後、日本テレビに入社。MBAを取得したのちソニーに入社。さらに2003年にはハンゲームジャパンに入社することになる。そして2007年に同社の代表取締役社長に就任。同社は社名変更やグループ会社との合併などを経て今のLINE株式会社となった。

そんな森川氏だが、2015年3月にLINEの代表取締役社長を退任。4月にはC Channel株式会社代表取締役に就任し、動画事業を展開すると発表した

TechCrunchでの取材を通して僕がこの春以降感じていたのは「動画関連スタートアップの隆盛」。C Channelの発表と時を同じくして、オンライン動画関連のビジネスが大きく成長してきた感がある。YouTuberのキャスティングや動画メディアを展開する3Minute、動画広告プラットフォームのオープンエイトをはじめとして、メディア・広告・制作など動画に関わるあらゆる領域のプレーヤーが生まれている状況だ。本セッションではその中におけるC Channelの立ち位置やこの半年弱での成長などを森川氏に聞いてみたいと思う。

また森川氏と言えば、LINEの代表退任後に複数のスタートアップの外部取締役に就任したほか、母校・筑波大学でも起業志向の学生を支援するなどしている(11月11日には担当する自由科目の「筑波クリエイティブ・キャンプ」の起業プラン発表会も開催された)。こういった場を通じて、経営者としての経験を若き起業家、そしてその候補生に伝えているのだという。そのノウハウは5月に発売された同氏の著書「シンプルに考える」でも触れられている。

このセッションでは、そんな森川氏の経営哲学や組織論などにも触れたいと思っている。自らスタートアップする起業家だけでなく、組織の中でビジネスを組み立てる事業家、そして若きビジネスマンや学生まで、幅広い人に同氏の話を聞きに来て欲しい。

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十億円を捨てて起業―、マネックス証券創業者の松本大CEOがTechCrunch Tokyo登壇

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matsumoto-photoいよいよ来週の11月17日、18日に迫ったTechCrunch Tokyo 2015だが、国内ゲスト登壇者をもう1人ご紹介したい。マネックス証券の創業者で、現在マネックスグループの代表執行役社長CEOを務めている松本大(まつもと・おおき)氏の登壇だ。

Fintechが盛り上がりを見せる日本のスタートアップ界だが、マネックス証券は、その草分け的存在と言える。マネックス証券が創業したのは、まだFintechなんていう呼び方がなかった今から16年前のこと。1999年のマネックス創業当時、インターネット接続はめんどうで高かった。電話回線をインターネットに流用するダイヤルアップ接続が一般的だったために、電話料金が安くなる夜間以外は、電話料金を気にしながらにネットを利用するのが一般的だった。今じゃ信じられないけど、必要のないときにはPCはネットに繋がってなかったのだ。ネットというのは「よいこらしょ」という感じで繋げ、それから利用して、そして用事が済んだらそそくさと「切断」するものだった。

そんな時代に松本氏は「オンライン証券」という業態で創業した。個人がインターネットを使って株式をはじめとする金融商品の売買をする時代が必ず来る、という信念があったという。

あと半年待てば受け取れたはずのプレミアム報酬は数十億円とも

いくら時代が動くという直感があっても行動に移せない人が多いだろう。まして、それなりの待遇で会社勤めをしていたら迷うのが普通だ。松本氏の場合、それなりの待遇などではなかった。起業時に捨てた待遇は文字通り破格だった。外資系金融業界でスピード出世をした松本氏は、1994年に史上最年少の30歳という若さでゴールドマン・サックスのゼネラル・パートナーに抜擢されている。1998年に退社してマネックスを創業する決意をしたタイミングというのは、実はゴールドマン・サックスは上場を間近に控えていた。実際同社は1999年5月に上場を果たしていて、松本氏がゼネラル・パートナーとして受け取れたはずのプレミアム報酬は10億円以上とか数十億円と言われている。ここは守秘義務があるから松本氏自身が過去に正確な数字を口にしたことはないが、関係者や当時の報道からすると二桁億円以上だったのは間違いなさそうだ。

翌年の春に上場が控えていて、個人としては莫大な報酬を受け取れることがほとんど確定していた。なのに、なぜその半年前の1998年の秋に松本氏は、それを捨ててまでゴールドマン・サックスを去ってマネックスを創業したのか。

松本氏自身は、この決断の背景にあったのは「タイミング」と「クレダビリティー」の2つだとしている。

1999年10月というのは株式委託売買の取引手数料が自由化されたタイミング。1996年に始まった金融ビッグバンという大きな金融制度改革の流れにおける、千載一遇のチャンスでもあった。当時の松本氏には、個人金融資産の行き先が銀行と郵便貯金に異常に偏りすぎていて、日本経済が歪んでいるという強い問題意識があった。そういう問題意識を抱えたまま、金融の専門家として何もしないという選択肢はなかったのだろう。規制緩和のようにゲームのルールが変わる時というのは、たった半年の参入タイミングの差で勝敗が付くことがある。たとえ半年でも待てなかった、ということだ。

「クレダビリティー」というのは信じるに値するかどうかのことだ。ビジネスマン、あるいは一人の人間として、どれだけ人から信用されるかこそが最も重要だと考えたということ。口でいくら日本経済や個人資産の問題を指摘し、「あるべき論」を展開していたとしても、やるべきタイミングを逃し、やるべきだと言ってることをやらないようでは、しょせんその程度と思われる。逆に、目の前の莫大な報酬を捨ててでもゼロから起業したとなれば、その覚悟は言葉で説明しなくても周囲に伝わる。クレダビリティーというのは作り上げていくのに年単位の時間がかかるのに対して、崩れるときは一瞬。長い目で見れば、目の前の利益を捨ててでも守るべきモノがあるというのは傾聴に値する話だ。

スタートアップ創業期の話でいえば、松本氏はこんなことも言っている。自分たちが守るべき理念は最初から作れ、組織やビジネスができてからと後回しにするなと。創業期はカオスになりがちだし、売上もまともに立たずに必死にもがくもの。そうした中、オレたちはこの一線だけは守るのだというのを最初から決めておかないと、より大きて強いものに降参したりすることが起こり得る。心当たりのある人はいないだろうか? 立ち上げ期の溺れるような環境にいたことがある人なら心当たりの1つや2つはあるだろう。「受注するしかないよ……、だって売上どうすんの!?」「でも、これをやるためにオレたち集まったんじゃないよね?」「だってしょうがないじゃん!」「そもそも倫理的にマズくね?」「じゃあ、お前はほかにどうするって言うんだッ!」。

ぼくは松本氏にTechCrunch Tokyoに登壇していただくにあたって聞いてみたいことがたくさんある。創業期、成長期を経て、現在マネックスグループとしてアメリカや中国へとビジネスを広げつつある拡大期にある。多段ロケットのように異なるステージを駆け抜けてきた起業家、経営者としての松本氏のストーリーや、それぞれの段階における洞察もお聞きしたいし、創業から16年が経過してみて結局個人金融資産は動かなかったんじゃないですか、問題は実は解決できてないんじゃないですか、ということも是非聞いてみたいと思っている。いくら「貯蓄から投資へ」といったところで過去にそれほど大きく動いてこなかったのは、何かもっと本質的な問題があるからではないのか。

同じくFintechの文脈でいえば、証券会社とユーザーの間にある本質的な利益相反についても聞ければと思っている。金融商品取引プラットフォームというのは、その性質上プラットフォーマーにはトランザクションを増やすインセンティブが強く働く。証券会社の売上である手数料収入というのは、預かり資産残高に売買回転率を掛けたものだから、回転率を上げれば上げるほど売上はあがる。一方、回転率を上げてパフォーマンスが確保できる個人投資家などほとんどいないだろう。投資信託にしても金融庁が指摘するとおり日本では投信の保有期間が平均2年程度と短く、何かがおかしい。リスクの高いジャンク・ボンド債が人気商品として上位にランクし、証券会社の売上は伸びていても個人投資家のパフォーマンスは良くない。日本の証券会社はユーザー利益に主眼など置いていないのではないか。こういう構造的問題は、霞が関と金融村の阿吽の呼吸のようなクローズドな環境でルール決めをやっているから解決が難しいのではないか。と、そんなことも、最近ぼくがFintechや「霞が関ハック」が必要なスタートアップ領域で気になっていることの1つだ。

ちょっと紹介がFintech寄りになってしまったが、松本氏には起業論や組織論、仕事論といったことも話していただければと思っている。マネックス証券の創業時にはソニーを巻き込み、設立記者会見では当時ソニー社長だった出井伸之氏が舌を巻くほどの演出を仕込むなど痛快なエピソードも多い。大企業や官庁とうまく付き合っていきたいスタートアップの人たちには参考になる話もあるだろう。日本で生まれて世界に羽ばたきつつあるマネックスグループの祖、松本大氏の生の声を来週のTechCrunch Tokyoへ、ぜひ聞きに来ていただければと思う。

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