LINEに脆弱性、トーク内容などを閲覧される恐れ–修正版アプリは配信済み

LINEの手がけるメッセージアプリ「LINE」に脆弱性が発見された。

LINEは3月16日にその詳細を報告しており、問題を修正した最新版のアプリをすでに配信している(iOS版は3月4日から、Android版は3月10日から)。直近アプリのアップデートをしていないという読者は、早急にアップデートして欲しい。

今回発見された脆弱性は、悪意のある第三者が設置した無線LANに接続した際、LINEアプリ内の「その他」にあるページを開いたり、メッセージ・タイムラインに記載されたURLにアクセスしたりした場合に、LINE内のトーク内容・友だち一覧などのデータが取得・改ざんされる可能性があったというもの。

脆弱性はセキュリティ会社のスプラウトが発見。2月3日にJPCERTコーディネーションセンター(JPCERT/CC)および情報処理推進機構(IPA)からLINEに報告があったという。

またそのほかにも、悪意のある第三者が友だち表示名に不正なプログラムを埋め込んだ状態で友だち申請をしてコードが実行されると、LINE内の情報が閲覧・改ざんされる可能性があるという脆弱性も指摘されたとのことだが、こちらは2月3日に修正を完了しているとのこと。


グルメサービスのRettyが10億円を調達、年内にも海外展開–アプリも検索ロジックを一新

Retty代表取締役の武田和也氏

実名グルメサービス「Retty」を手がけるRettyが、年内にも北米およびアジア進出を目指す。海外進出、そして組織体制強化に向けて、Fidelity Growth Partners Japanのほか、既存投資家のグリーベンチャーズ、みずほキャピタルから合計10億円の資金調達を実施した。

ユーザー数は月間100万人単位で増加

2013年12月に3億3000万円の資金調達を実施したRettyだったが、その後2014年に入りユーザー数は急増。2015年2月には月間700万人を突破。直近では1カ月100万人単位でユーザー数が増加しており、3月は800万人まで増加する見込みだという。ちなみにグルメサイト古参のぐるなびはユーザー数5200万人(2014年12月時点)、カカクコムの「食べログ」は6369万人(2014年12月時点)。どのサービスも開示された資料などを見ると、ユーザー属性は30〜40代が中心だそう。

Retty代表取締役の武田和也氏は、「ぐっと伸びているのを実感している。ユーザーだけでなく、店舗からの認知も上がっている。最近ではテレビCMをやってるサービスなども多いが、我々ははほとんど広告などを使っていない。口コミやSEOでの自然増だ」と語る。口コミは現在150万件、掲載店舗数は都市部を中心に全国25万件。「良質なコンテンツが蓄積された結果、それが価値を作っている」(武田氏)。

店舗の情報をテーマごとに複数件紹介する「まとめ」もトラフィックを集めているそうで、「『渋谷 ランチ』といった検索でも検索結果上位に入っている」(武田氏)という状況。なお全体のトラフィックはすでにスマートフォンが8割以上(ウェブ、アプリの合計。比率は非公開)で、PCは2割に満たない状況だという。

年内にも北米、東南アジアへ進出

今回の資金調達の目的の1つが海外進出だ。年内にも北米および東南アジアにコミュニティーマネージャーを置き、サービスを展開していくという。

「『英語圏』『スマートフォン』『外食文化』の3つのキーワードを重視している。Rettyは2011年6月にスタートしてここまできたので、先行投資で2年くらいはかかると思っている」(武田氏)とのこと。

すでに北米ではYelp(全世界で1億3500万ユーザーだ)が国内の食べログ的な立ち位置になっている印象もあるが、サンフランシスコやニューヨークなど、都市ごとのサービス展開を検討しているそうだ。アジアに関しては、シンガポールや香港などの名前も挙がった。

100人超の組織に、インターンも活躍

Rettyは今月中にもオフィスを移転する予定。現在は社員数は約30人、インターンも約20人(そこから新卒の社員になった人間もこれまで3人ほどいるそうだ)という規模だが、これを数カ月以内にも100人体制まで拡大する予定だという。余談だが、すでにインターンから「カウモ」「TravelBook」といったサービスを手がける起業家も生まれているそうだ。

ビジネス面では、2014年9月からネイティブアドを開始。すでに複数のナショナルクライアントから出稿があったという。「ユーザー数が数百万人となってから、店舗などからの問い合わせ件数も変わってきた」(武田氏)。また以前から語っていた店舗向けの有料機能についても、一部試験的に提供を開始しているそうで、状況を見て正式に展開していく計画だ。

アプリも刷新、ユーザーの好みを検索に反映

実は取材のたびに何度もスマートフォンアプリのユーザー数を聞いてきたのだけれども、Rettyは一度もその数字を開示していない( Google Playで確認しても「インストール数1万~5万件」とのことなので、700万というユーザー数全体から考えれば決して大きい数字ではないと思う。ちなみにぐるなび、食べログはともに「100万〜500万件」)。そんなスマートフォンアプリにもテコ入れを実施している。

iOS版はアプリをフルリニューアル。UIを一新したほか、検索ロジックについては、ソーシャルグラフやユーザーの嗜好(しこう)性を重視するように大きく変更した。Android版アプリでも検索機能が新しくなった。

例えば食べログなどで「渋谷 カレー」と検索した場合、どのユーザーであっても同じ点数順のランキングが表示されるが、新アプリでは、ユーザーがRetty上でフォローしているユーザーやブックマークしているレストランの傾向によって、独自の検索結果を表示するのだという。

「ランキング形式での表示は分かりやすいが、『高級な店』を求めている人もいれば『コストパフォーマンスのいい店』を求めている人もいる。アプリでは多様性を打ち出して、ユーザーごとに好みに合う結果を提供する」(武田氏)


テキスト郵送で有料会員増、ネット学習塾「アオイゼミ」に月額2万7000円の特進クラス

中高生向けのオンライン学習塾「アオイゼミ」が、中学3年生向けの特進クラス「サクラス(SACLASS)」を4月にスタートする。入塾テストに合格した生徒だけを対象に、偏差値65以上の公立高校合格を目指すためのライブ授業を配信する。スマートフォンやPCで使えるアオイゼミと異なり、授業はすべてiPadで配信。専属のチューターが学習管理や相談に応じて、志望校合格を後押しする。


授業は英語と数学の2教科で、アオイゼミで人気の大手学習塾出身の講師が担当。週2日・4講座をリアルタイムに配信し、アーカイブ動画も後日公開する。授業中はリアルタイムに質問を募集し、その場で答える。24時間以内に回答する「質問掲示板」も用意し、サクラスで扱う問題だけでなく、自習中に解けなかった問題にも講師やチューターが回答する。

生徒のバックアップ役となるチューターは東大や早慶、上智などの難関大学の在学生を中心に構成。「やることリスト」を用いて、生徒一人ひとりにあった学習リストを作成する。登録済みのタスクが放置されている場合にはチューターが叱咤激励するなど、家庭教師さながらにマンツーマンで学習を進めていくのだという。

ライブ授業で扱うカリキュラムは、テキスト形式で毎月郵送。ほかにも、老舗出版社「受験研究社」の教材の中から、生徒一人ひとりにあった自習用テキスト・参考書を講師・チューターが選んで届ける。

iPad限定ネット塾の勝算

オンライン学習塾というと、机に座ってPCに向かい、ノートを取りながら勉強するのを想像しがちだが、アオイゼミの受講者の大半はスマホを使っているそうだ。それだけに、なぜ、サクラスはiPadに限定したのか気になるところだ。この点についてサクラスを運営する葵の石井貴基社長は、次のように説明する。

「講義の動画とテキスト、コメントを1画面に表示できる没入感はiPadならでは。生徒と講師・チューターが密なコミュニケーションを取るにも最適なんです。iPadを持っていない生徒は利用できないわけですが、サクラスは入塾料が0円。学習塾の入塾料を考えれば、iPadの購入はネックにならないと思っています。」

「紙」が成長を後押し

石井氏はアオイゼミをスタートした当初から、「既存の学習塾をリプレイスする」と豪語してきたが、サービス開始3年目にして徐々に手応えを感じていると語る。

「これまでは塾に通いつつアオイゼミを使うか、塾に行かずにアオイゼミだけを使うユーザーの2パターンだったんですが、今年に入ってから塾を辞めて、アオイゼミ1本に絞ったという生徒が増えてきました。」

潮目が変わったきっかけは、意外にも「紙」だった。

アオイゼミは昨年12月、有料課金ユーザーに対して、授業のカリキュラムをまとめた冊子を郵送する取り組みをスタート。これまでもカリキュラムはPDFでダウンロード・印刷可能だった。だが、冊子が届くことで“塾っぽさ”が増し、生徒の保護者にもアオイゼミが塾の代わりになると認識され、無料会員から有料会員へ移行するユーザーが増えたのだと石井氏は話す。「これがアオイゼミ流のIoTですよ(笑)」。

実はサービス開始当初からテキスト郵送を考えていたと石井氏は語るが、限られたユーザー数では印刷費が高くつくために二の足を踏んでいた。現在は生徒間の口コミを中心に広がり、アオイゼミの登録ユーザー数は10万人を突破した。「中学生がTwitterで『アオイゼミで勉強だん』みたいにつぶやくんです。そうすると『え? なにアオイゼミって』と友達間で広がっている感じ」。

アオイゼミが生徒の口コミで広がったのに対して、サクラスがターゲットにするのは保護者だ。まずはアオイゼミ会員の成績上位層にアプローチするとともに、Facebook広告で集客するという。

「アオイゼミを3年間やってきて、第1・2志望校の合格率は99%に到達しました。これまでは、いわば『学習塾に追いつけ』というフェイズ。最難関校コースのサクラスは月額2万7000円とネットサービスではかなり高額ですが、通常の学習塾以上のサポート体制と、カリスマ講師のハイレベル授業によって、学習塾を本気で超えていきたいです。」


テーマは「変わる決済」 次回TechCrunch Schoolは3月23日開催、読者の質問も募集中

僕たちが不定期で開催しているイベント「TechCrunch School」では、これまでに「学生の起業」「スタートアップのマーケティング」「大企業からのスピンアウト」「IoT」「シェアリングエコノミー」などのテーマでセッションを繰り広げてきた。8回目の開催となる次回は、3月23日月曜日午後7時から「変わる決済」というテーマで開催する。参加は無料で、本日よりこちらで参加登録を受け付けている

無料の参加登録はこちらから

LINEが買収「WebPay」と決済参入「BASE」の創業者が登壇

日本のスタートアップシーンでいま、盛り上がりを見せつつあるジャンルの1つは「Fintech(フィンテック)」だろう。TechCrunch読者であればご存じだと思うが、フィンテックとはFinanceとTechnologyの造語。日本でも、金融関連のスタートアップを指す言葉として、市民権を得てきている感がある。

そんな熱いジャンルの中でも、特に動きが激しいのが「決済」まわりだ。そこで今回は、開発者向けクレジットカード決済サービスを手がけるWebPay創業者の久保渓氏と、先日決済事業への参入を発表したBASE創業者の鶴岡裕太氏をお呼びして、決済にまつわる最新動向を語ってもらうこととした。

WebPayはわずか数行のコードを埋め込むだけで、ECサイトやスマホアプリにクレジットカード決済機能を導入できる開発者向けサービス。2月には、LINEに買収されたことで大きな話題を呼んだ。イベント当日は、開発者向けクレジットカード決済の可能性だけでなく、LINEとの取り組みについてもお聞きする予定だ。

BASEはウェブの専門知識を持っていない人でも、ECサイトを無料で開設できるサービス。昨年12月にはネット決済のPurecaを買収し、WebPayの競合となるサービス「PAY.JP」を今春にリリースする。鶴岡氏には、このタイミングで決済事業に参入した理由などについて聞きたいと思っている。

BASEとWebPayの創業者に聞きたい質問を募集

イベント当日は両社のサービスにとどまらず、ApplePayやBitcoin、LINE Payなどなど、決済を取り巻く動向について、識者の2人に質問する予定だ。そこで今回は読者から質問を募集し、いただいたコメントを読者に代わって質問したいと思っている。

お2人への質問は、TechCrunch JapanのTwitterアカウント「@jptechcrunch」あてに、ハッシュタグ「#tcschool」を付けて投稿していただきたい。イベント当日に採用した質問を投稿してくれた読者には、TechCrunchのオリジナルTシャツをプレゼントする。(該当者にはスタッフからダイレクトメッセージで連絡するので、@jptechcrunchをフォローしていただければと思う)。

当日はこのほか、無料POSレジアプリ「Airレジ」を手がけるリクルートライフスタイル執行役員の大宮英紀氏も登壇。サービス開始1年で10万アカウントをAirレジのこれまでを振り返るとともに、今後の展開についても語っていただく予定だ。

今回の会場は、リクルートホールディングスが東京・渋谷に開設したITクリエイター向けの会員制スペース「TECH LAB PAAK」。会員になるには審査が必要だが、会員になれば施設の利用料だけでなく、Wi-Fi、全席完備の電源、ドリンク、スナックまで全部タダという太っ腹な施設だ。場所は渋谷アップルストアと同じビルとなっている。

TechCrunch School #8
「変わる決済」

【開催日時】 3月23日(月) 18時開場、19時開始
【会場】 東京・渋谷 TECH LAB PAAK (地図)
【定員】 80名程度
【参加費】 無料
【ハッシュタグ】#tcschool
【主催】 AOLオンラインジャパン
【内容】
19:00〜19:05 TechCrunch Japan 挨拶
19:05〜20:05 パネルセッション「変わる決済」
パネリスト
久保渓氏(ウェブペイ株式会社 代表取締役)
鶴岡裕太氏(BASE株式会社 代表取締役社長)
モデレーター
増田覚(TechCrunch Japan編集記者)
20:05〜20:20 講演セッション「Air レジの取り組みについて」
登壇者
大宮英紀氏(株式会社リクルートライフスタイル 執行役員 ネットビジネス本部クライアントソリューションユニット長)
20:20〜20:30 ブレーク
20:30〜22:00 懇親会(アルコール、軽食も出ます)
【申し込み】イベントページから事前登録必須
【事務局連絡先】tips@techcrunch.jp

photo by
Oliver Symens


リアルタイムウェブ接客ツール「KARTE」が正式ローンチ-購入率4倍の事例も

7月にフェムト・グロースキャピタルなどを割当先とする合計1億5000万円の第三者割当増資を実施したと発表したプレイド。同社は3月12日、これまでクローズドベータ版として運用を続けてきたウェブ接客プラットフォーム「KARTE(カルテ)」の正式提供を開始した。サイトから申し込めばすぐに利用できる。

KARTEは、サイトに数行のJavaScriptコードを埋め込むことで、訪問者の特徴や行動をリアルタイムに解析しダッシュボード上に可視化してくれる。そしてあらかじめ設定しておけば、ユーザーの属性(会員/非会員、累計の購入金額、コンバージョン率、興味のある商品カテゴリなど)に合わせてクーポンの発行や商品のレコメンドなどができる。同社ではこのリアルタイムな対応を「ウェブ接客」とうたっているわけだ。サービスはECサイトであれば会員IDとの紐付けも可能だ。

今後はメールマーケティングツールの「MailChimp」、チャットツール「LiveChat」、アンケート&フォーム作成ツール「Formstack」など外部サービスとの連携を進める。これらの機能は利用者を限定して段階的に提供していくそうだ。

導入後に「購入率4倍」という事例も

2014年9月から問い合わせのあった企業の一部に対してクローズドベータ版のサービスを提供していたが、3月11日時点で大手ECサイトをはじめ旅行や人材紹介、不動産など50サイト以上に導入(準備中企業含む)、解析したユニークユーザー数は4500万人、訪問数は1億2000万件を突破しているという。「ウェブで接客のアプローチをする場合、『サイトから去ったユーザーの情報をもとに、次の訪問時にどういう対応をするか』というものがほとんど。リアルタイムでユーザーを可視化できるプラットフォームは海外を含めてあまりなかった。その点を評価してもらっている」(プレイド代表取締役社長の倉橋健太氏)

KARTEの導入企業

 

倉橋氏によると、導入サイトの中には新規会員獲得率で108%アップ、購入率(サイト平均で)30%アップといった事例が出てきているそうだ。導入以前と比較して購入率が約4倍になったケースもあるという。

おもしろい事例だと、初めてログインしたユーザーにだけ「登録ありがとうございます」と感謝を伝えるメッセージを画面に表示したサイトがあったらしいのだが、それだけでコンバージョンが数十パーセントも上がったということもあるそうだ。「ウェブはそもそも効率化の延長線上にあるもの。そんな中でECサイトが『お客さん1人1人を見ている』ということを伝えるだけで、ユーザーのモチベーションは大きく変わる」(倉橋氏)

料金は月額5000円に加えて、1接客(接客のアクションを実行した回数)につき1円の従量課金となる。月間10万ユニークユーザー数を超えるサイトに対しては、月額固定料金と従量課金を選択できるエンタープライズ版も提供する。「予測値ではあるが、多くのユーザーは従量課金型プランで利用できると思う」(倉橋氏)。

2015年初には、今年のECのトレンドとしてプレイドのイイヅカアキラ氏が「ウェブ接客」についての寄稿をしてくれているが、KARTE同様ウェブ接客を実現するサービスとしては、B Dash Venturesや元ミクシィ代表取締役社長の朝倉祐介氏らが支援するSocketの「Flipdesk」なども登場しているほか、イギリスVe Interactiveの手がける「VePlatform」も2014年から日本展開を開始している。


スマホで手軽に経費精算できるアプリ「Staple」、Android版の提供を開始

会社員ならば誰もが経験するであろう経費精算。大っ嫌いな人も多いんじゃないだろうか。毎月それなりの時間を取られるし、Excelで処理するにしても、は業務システムと連携した経費精算システムに入力するにしても、とにかく1つ1つの項目を埋めていくのは手間がかかる。

そんな面倒な経費精算を、スマホで手軽に入力できるアプリがクラウドキャストの「Staple」だ。クラウドキャストでは2014年9月にiOS版をリリースした(クラウドキャストでは同時にIMJ Investment Partnersからの資金調達を発表している。調達額や出資比率は非公開)が、本日3月9日にAndroid版をリリースしている。

Stapleは個人および10〜20人規模の程度の中小企業や企業の部門、イベントなどの短期プロジェクトでの利用を想定した経費精算アプリだ。タップ操作で経費を登録したり、カレンダーとの連携機能などを実装している。経費はCSVでの出力も可能。

クラウドキャスト代表取締役の星川高志氏

「システム管理者の視点ではなく、従業員が迷わず利用できるかどうかが重要。また社員数10〜20人規模の企業だと、経費精算に使うのは紙とエクセルというケースが9割以上。いかにこれを置き換えるかを意識した」(クラウドキャスト代表取締役の星川高志氏)

個人での利用は無料。法人・チーム向けの管理機能を利用する場合、1チーム月額980円(年額で支払う場合は9800円)となっている。法人向けのユーザー登録数や保存データ容量は無制限。決裁権限を持つ人間による承認ワークフローを備える。

クラウドキャストは2014年1月に経費精算アプリ「bizNote Expense」を公開している。これはアプリでの経費入力から会計システムへの取り込みまでの機能を提供していた。Stapleはそこからユーザーのニーズにあわせて経費入力の機能を切り出した(といってもあくまで機能面での話。アプリ自体はスクラッチでおこしているのだそうだ)ものとなる。bizNote Expenseは既存ユーザーにはサービスを提供し続けるとのことだが、サイト上ではStapleにサービスを移行したと説明。Stapleの新規登録を促している。

なおAndroid版の提供にあわせて、クラウドキャストがTechCrunchの読者向けにクーポンコードを発行してくれている。クーポンコード「TechCrunch2015」を入力して年間プラン法人・チーム向けにサービスに登録した先着20チームは、年額の9800円で18カ月間サービスを利用できる。クーポンコードの有効期限は3月12日。


gumiの下方修正はスタートアップに何をもたらすのか

2015年4月期 第3四半期決算の開示日前日である3月5日に営業赤字となる大幅な下方修正を発表したgumi。同社は海外展開をはじめとした今後の方針について説明し、代表取締役である國光宏尚氏の役員報酬を6カ月間100%減額(ゼロ円)にするとした。

3Q決算は純利益が2億2500万円の赤字に

gumi代表取締役社長の國光宏尚氏

3月6日に開示された2015年4月期第3四半期業績は、売上高が206億2100万円、営業利益が4億2000万円、経常利益2億9200万円が、純利益が2億2500万円の赤字となった。

gumiは決算と合わせて金融機関から30億円の借入を実施したと発表している。3月6日の株価は前日比500円減で2081円のストップ安。時価総額は603億7900万円となった。

上場前にTechCrunchで取材した際は「クソみたいに小さいIPOはすべきではない」と語っていた國光氏。ソーシャルメディアやオンライン掲示板には、「VCや役員が上場時に株式を売り出していて、何かあると思っていた」「國光氏は報酬ゼロとは言え上場時に12万株を売り出して4億円近くを得ている」「買い支えている株主を見ていないのではないか」など、厳しいコメントが並ぶ。

僕もさすがに上場3カ月でのこの発表には驚いたし、本来「速やかに開示する」とされている下方修正が決算日前日に開示されたことに違和感は感じた。

そのあたりをどう考えているかという話は来週開催の決算説明会でも聞けるはずだ(今日はアナリスト向けのミーティングだけ開催されたようだ)。また同時に、gumiが叩かれていたとしても、ここで終わる訳ではないだろう。

gumiでは新タイトルやパブリッシング事業での業績回復を狙っていると発表している。また業界関係者からは、ゲーム以外の領域、例えば動画などに重点を置いた投資の準備をしているという話も聞こえてくる。

さらに、ゲームであればヒットタイトル1つで大きく流れも変わるはずだ(ヒットタイトル依存の体質がいいかどうかは別として)。2013年、業績不振だったミクシィだって、追い出し部屋を作ってリストラ(同社は「リストラではなく人事異動」と説明している)をしたが、その後ゲーム「モンスターストライク」で業績を大きく回復させている。

今後の新規上場はどうなる?

僕がgumiの業績以上に気になったのは、同社の下方修正が結果的に新規上場にどんな影響を与えるかということだった。

そこで投資や金融サイドの複数関係者に接触したところ、いくつかの話を聞くことができた。

まず1つ、実は昨年後半から上場審査に通らない企業が増えつつあるのだそうだ。ある関係者は「gumiは上場直前の2014年9〜12月時点で業績が下降トレンドに入っていた。そんな状況で主幹事証券会社(野村證券)が東京証券取引所に上場を押し込んだようなもの。そういった背景もあってゲームやウェブサービスに関わらず、公開審査で予実管理の審査を厳しくする傾向にあるようだ」と語る。

ちなみに今回のgumiの件とつながりがあるかは分からないが、野村證券は3月3日付けで公開引受部の人材を含めた人事異動を発表している。

gumiの決算資料。2015年4月期1Q以降、売上は減少傾向に

また別の関係者は「2006〜2007年頃の新興市場に似ている」と振り返った。メンバーズやフラクタリスト(現在は吸収合併ののちユナイテッドに)など、当時名証セントレックスや大証ヘラクレスに上場した企業は、初年度に相次いで下方修正を発表している。

関係者は「当時は事業基盤より今後の成長性を期待して上場するというケースが少なくなかった。だが各社軒並みに下方修正した結果、証券会社の審査が厳格化。2007〜2008年の新規上場数が下がることになった」と語り、来年以降の上場数が減る可能性を示唆した(ちなみに新規上場数は2006年が114社だったが、2007年は68社、2008年は54社と減少している。また2009年は23社と大幅減になったが、これは2008年9月に起こったリーマンショックの影響が大きいとみられる)。

さらに「自戒も込めて言うが、日本のベンチャーキャピタルまわりには浮ついた空気はあったかもしれない」「こういう状況で最終的に損するのは投資家。そうなるとIPO銘柄への信頼が揺らぐことになる」「ゲームセクターに対する市場の見方が厳しくなるのはやむを得ない」「マーケット全体に影響は少ないかも知れないが、IPO時のバリュエーションが下がることは想定される」とそれぞれ語る関係者がいた。

関係者に共通する意見としては、「上場はその企業や彼らに出資したベンチャーキャピタルにとっては1つの出口かも知れないが、ゴールではない。上場すれば、市場や投資家とも向き合わないといけない」ということだった。

すでに証券会社で審査を受けている企業にはまだ直接的な影響はないかも知れない。だが来年以降に上場を目指すスタートアップは、ここからその真価が問われることになりそうだ。


gumiが大幅な下方修正、黒字から一転し営業赤字4億円に

2014年12月、東証1部市場に直接上場したgumi。2013年7月にサービスを開始したスマートフォン向けゲーム「ブレイブフロンティア」はこれまで60カ国以上で配信。ダウンロード数は2015年1月時点で国内500万件、全世界合計2000万件を達成している。

そんな同社が3月5日、2015年4月期業績の下方修正を発表した。修正後の予想は、売上高は265億円(前回予想は309億7200万円)、営業利益は4億円の赤字(同13億2900万円)、経常利益は6億円の赤字(同12億7700万円)。純利益はゼロ(同8億800万円)としている。

海外でブレイブ フロンティアや新規タイトルの売上計画が未達となったほか、 パブリッシングサービスの立ち上がりが遅延したことなどが影響したとしている。今後は既存タイトルおよび新規タイトルでの売上増と海外展開の加速、コストの合理化などを進め、業績回復に努めるとした。

この責任を取るかたちで、gumi代表取締役社長 國光宏尚氏は役員報酬を3月からの6ヶ月間100%減額(つまりゼロ円に)する。同社では3月6日に第3四半期の決算を開示する予定だ。


「ムゲンブックス」はAmazonや書店で買える紙の本を無料で出版できる


ブログを書くように執筆した原稿を、紙の本として出版できるウェブサービス「∞books(ムゲンブックス)」が始まった。売れた分だけオンデマンド印刷する仕組みで、出版にかかる費用は無料。著者の印税は10%。できあがった本は、Amazonや全国の書店から買える。

専用の入力画面でタイトルと本文を入力するだけで、紙の本の出版に必要な目次やページ番号、文字組みなどを自動的に設定してくれる。完成した本にはISBNが付与され、出版社である「デザインエッグ」を通じて出版する。

ムゲンブックスは、KDDIが手がけるベンチャー育成プログラム「KDDI∞Labo」第7期プログラム採択案件。代表を務める佐田幸宏氏はかつて、4980円で紙の本が出版できる「MyISBN」を開発し、リリース1年半で250タイトルの本を出版している。

MyISBNは、PDFファイルをアップロードするだけで本を作れるのが特徴。しかし、一般ユーザーの中には、PDFを作成するのが技術的に難しい人も多かったと、佐田氏は振り返る。「文字を打つだけで出版できるムゲンブックスは、技術的なハードルをほぼゼロにした」。

出版社の「お墨付き」がなくても本を出すニーズは?

著者としては無料で出版できるのは魅力だけれど、表紙のデザインや文章の編集、誤字脱字のチェックなどは、全部自ら行う必要がある。ぼくには、知名度の高い出版社の「お墨付き」がなくても、紙の本にしたい需要がどれくらいあるのかは未知数に思える。

ムゲンブックスははどんなユーザーを想定しているのか? 佐田氏によれば、大きくわけて2つのターゲット層があると言う。

1つ目は、ニッチなノウハウを持つコミュニティだ。MyISDNでは、マシジミを飼うための本や、ライフルの弾道学について書いた本が好評だったといい、ムゲンブックスでも、一定のファンがいるコミュニティに出版需要があると見ている。

2つ目は、自分の想いや記憶を残したいと考える、50歳以上のユーザーを想定している。こうした層は自費出版を通じて本を出したりするが、費用は数十万円から数百万円と高いことから、無料で出版できることをアピールしていけるのかもしれない。

ムゲンブックスを通じて出版した本


リクルートがドイツのQuandooを271億円で買収–EUで飲食店予約サービスを展開

リクルートホールディングスの海外大型買収があきらかになった。同社は3月5日、EU圏で飲食店予約サービス「Quandoo」を展開するドイツのQuandooを買収したと発表した。

リクルートでは、2014年10月に100%出資のコーポレートベンチャーキャピタル「合同会社RGIP」を通じて発行済株式総数の7.09%を取得していたが、今回新たに92.91%の株式を取得。100%子会社化した。買収価格は271億1000万円(アドバイザリー費用5億6000万円を含む)。

Quandoo2012年の設立。ドイツからスタートし、EUを中心に急速に事業を展開。現在高級レストランからローカルダイニングまで13カ国6000 店以上が導入している。ドイツ、イタリア、オーストリア、スイス、トルコ、ポーランドでは、予約可能店舗数ナンバーワンのサービスだという。2014年12月期の売上高は429万ユーロ、純利益は 974万1000ユーロの赤字となっている。同社のこれまでの資金調達やファウンダーなどの情報はCrunchBaseも参考にして欲しい。

リクルートによると、イギリス、イタリア、スペイン、ドイツ、フランスの5カ国における飲食店のオンライン予約数は、まだ電話予約等の総予約数の約16%でしかないそうだ。そのため、今後大きな成長が予測されるとしている。そこでRGIPを経由して投資を実行したが、同社の持つ営業オペレーションやシステムの価格優位性・機能的利便性とリクルートグループの事業運営ノウハウの融合がビジネスの発展に有効であると確認できたため買収に至ったと説明している。


リアル店舗でおもてなし、アプリで住まいのサポート–お部屋探されサイトiettyの新展開

東京・恵比寿のリアル店舗

 

ユーザーが希望条件をあらかじめ入力しておけば、不動産会社のスタッフから条件に合う賃貸情報がチャット形式で提供される、お部屋“探され”サイトの「ietty」。サービスを手がけるiettyがリアル店舗を軸にさまざまなサービスの展開をはじめた。

店舗は2月26日には東京・恵比寿に正式オープン。ウェブサイトやスマートフォンアプリ同様に賃貸情報を提供するだけでなく、不動産業経験者を中心にしたiettyスタッフがオフィス賃貸や不動産売買、リフォームといった賃貸以外のニーズにも対応していく。

「リアル店舗は『オフラインの相談窓口』という意味合いが大きい。我々は不動産のプラットフォーマーになりたいと思っている。例えば単身で賃貸に住んでいた人が結婚して広い賃貸に移り、さらに戸建てを買うといったように、ライフステージが変化していくユーザーのニーズに対して、継続的に応えていける事業者はあまりいない」(ietty代表取締役の小川泰平氏)。

「ietty トータルサポート」のイメージ

 

そうは言っても、ライフタイムイベントなんて数年に一度あるかないかというペースなのが普通だし、ユーザーと継続的な関係性を持つことができないのではないかとも思う。そこでiettyでは、「今後は例えばユーザーが引っ越しすれば、それに付随するような作業やトラブル対応の支援をしていく」(小川氏)のだという。

それが3月5日に発表された「ietty トータルサポート」だ。ietty経由で物件への入居を決めたユーザーに対して、スマホアプリ上で家賃や初期費用の相談から、設備トラブル、退去時の引っ越し手配までをチャットでサポートするという。

また店舗では、3月4日より月額15 万円以上の賃貸物件のほか、住宅売買やオフィス賃貸を希望するユーザーに対して特別なプランを提供する「ietty 大人の部屋探し」をスタートした。

このサービスでは、完全個室での接客、ウェルカムドリンクの提供、50インチのモニタを使った物件紹介、店舗から帰る際には同社負担でUberを配車(都内23区限定)といった、ちょっとゴージャスなおもてなしを提供するのだとか。


ユーザベースがNewsPicksを分社化–詳細は「後日発表」

ユーザベースは、同社が提供するビジネス特化のニュースサービス「NewsPicks」を分社化する。新設分割で新会社ニューズピックスを立ち上げ、NewsPicksの事業を移管する。

NewsPicksはビジネス系ニュースサイトの閲覧や記事へのコメント投稿、ソーシャルでのシェアが可能なサービス。月額1500円で有料コンテンツの閲覧も可能。サービスをリリースした2013年9月当初は、SmartNewsやGunosyといったニュースサービスと比較されていたが、2014年7月に元東洋経済オンラインの編集長の佐々木紀彦氏をNewsPicks編集長として招聘。9月には編集部を設立し、独自コンテンツを配信すると発表。広告ビジネスをスタートさせた。

なおユーザーベースでは直近のダウンロード数や課金ユーザー数を公開していないが、2014年9月時点でのダウンロード数は21万件。SmartNewsやGunosyと比較すると小さい数字だが、20〜40代のビジネスマンが中心。

ユーザベース広報は分社化について「官報にあるとおり事実だが、詳細については後日公式に発表する」とコメントするにとどめており、現時点詳細については明らかにしていない。


「Bitcoin破たん報道は誤解も甚だしい」経済学者・野口悠紀雄氏

日本でBitcoinといえばMt. Gox(マウントゴックス)の倒産がメディアを賑わせたが、以前ほどは話題に上らなくなった。日本の現状はどうなのか? 2月23日に都内で開かれた「楽天金融カンファレンス」で経済学者の野口悠紀雄氏らが、Bitcoinが日本で普及する可能性や、規制面での課題を語った。

Bitcoinの特徴は管理主体がないPtoP型。そのメリットは手数料や為替のスプレッドなどの送金コストが低く抑えられるということだ。こうしたメリットから米国ではすでにDELLやPayPal、Expediaなどの大手企業が徐々に導入している。

一方、日本でのBitcoinに関する話題といえば、昨年2月の「Mt.Goxショック」の余波が後を引いている。事件以降、Bitcoinそのものの仕組みが破綻したという報道もあったが、パネリストの野口氏は「誤解も甚だしい」と一蹴した。

「Bitcoinは生き延びているのに誤解されている。例えばみなさんが米国から帰国して、成田でドルを円に変えようとしたら、たまたま空港の両替所が閉まっていた。そのときにドルが破綻したと言いますか? 両替所が破綻したからといって通貨そのものが破綻したと誰が考えるだろうか。Mt.Goxの事件は、いわばそういうもの。」

規制とこれからの課題は

日本では政府がBitcoin普及を後押しする動きもある。

自民党のIT戦略特命委員会の提言を受け、Bitcoinを扱うスタートアップ3社が9月に業界団体「日本価値記録事業者協会」を発足。政府主導の規制を導入するかわりに、Bitcoin交換所の監査や利用者保護を盛り込んだ自主規制ガイドラインを作成し、“風評被害”からの信頼回復を図っている。

こうした動きを、Bitcoinに詳しい弁護士の斎藤創氏は、「幸いなことに、政府の対応は今のところ暖かく見守る方向」と評価。その一方で、Bitcoinの取引を課税対象にすべきという議論があると指摘する。非課税な国が多いのにもかかわらず、日本で課税対象となれば、国内のBitcoin普及の速度は今以上に遅くなる、という意見だ。

今はとにかくBitcoinは怪しいものではないと利用者に納得していただきたいと野口氏が繰り返してセッションは締めくくられた。

 


国交省がUberに「待った」 福岡の実験は「白タク」と判断

Uberが2月に福岡で実験的にスタートした「ライドシェア」に、国交省が待ったをかけた。営業許可を受けずに自家用車で営業する「白タク」を禁止する道路運送法に抵触する可能性があるとして、実験の中止を呼びかけている。

ライドシェアは、営業許可を受けていない自家用車を共有するサービス。Uberは福岡で、ドライバーから収集した走行データをもとに、交通ニーズを検証する名目で実験を始めていた。乗客から運賃を徴収せず、一般から募集したドライバーに対しては、「データ提供料」として走行時間に応じた対価を支払っている。

Uberは運賃を徴収しないことを理由に、国交省の認可を得ずに実証実験を進めていたが、同省は「ドライバーに対価を支払っている以上、道路運送法に抵触する可能性がある」と判断し、行政指導に踏み切ったかたちだ。

Uberは今後、国交省との話し合いを通じてライドシェアの内容を伝えていきたいと言い、引き続き福岡での実証実験は進めていく。


月次売上400%増の物流アウトソーシング「オープンロジ」、IVPとコロプラ千葉氏から6000万円を調達

オープンロジ代表取締役社長の伊藤秀嗣氏

2014年11月に開催したイベント「TechCrunch Tokyo 2014」のプレゼンコンテスト「スタートアップバトル」にも登壇してくれたオープンロジ。これまで自己資本でサービスを展開してきた同社だが、3月4日にインフィニティ・ベンチャーズLLP (IVP)およびコロプラ取締役副社長の千葉功太郎氏(個人投資家として)を引受先とする総額6000万円の第三者割当増資を実施したことをあきらかにした。

今回の増資に伴い、IVPの小林雅氏が社外取締役に就任するほか、元アエリア取締役で弁護士ドットコムやクラウドワークスの監査役を務める須田仁之氏が監査役に、不動産会社のスター・マイカ代表取締役会長の水永政志氏が経営顧問にそれぞれ就任する。

オープンロジは2013年12月の設立。代表取締役社長の伊藤秀嗣氏は雑誌のオンライン販売を手がける富士山マガジンサービスの出身で、創業期から同社のロジスティクス(物流)網の構築に携わってきた人物。2014年10月に物流のアウトソーシングサービスの「オープンロジ」を開始した。

このサービスは、ECを手がける中小企業や個人事業主をターゲットにしたもの。ユーザーがECで取り扱う商品をサイト上で登録し、提携する物流会社の倉庫に入庫すれば、オンラインで商品の入出庫といった管理が可能になる。出庫時には倉庫にて梱包の上、配送までを行ってくれる。

大手ECサイトでは独自にロジスティクスのシステムを持ったり、物流事業者と個別に契約したりするが、中小規模のECサイトではそういったことをするのは難しい。オープンロジは物流事業者と独自に提携。そのスペースを商品数の少ない中小規模ECサイトが利用できるようにしている。シンプルな操作で入出庫できるウェブと、通常の宅配サービスと比較して安価な価格設定が強みとなっている。

ニーズにぴったりはまった—売上は1カ月で400%増に

サービス開始から5カ月程度だが、伊藤氏いわく「ターゲットとして想定していた中小規模のEC事業者や副業でECを手がけるような個人事業主のニーズにぴったりとはまっている」とのこと。ベースの金額はまだまだ小さいとは言え、2015年1月から2月で比較すると売上高は400%増加している。「黒字化にはまだ時間がかかるが順調なペースだ。切実なビジネス課題があったところをうまくとらえられたのではないか」(伊藤氏)

オープンロジでは今回の資金調達をもとに、人材採用や経営基盤の強化を進める。伊藤氏いわくサービスは好調だが、まだまだ運用上の課題も多く、その改善にも注力するという。「物流の業務は複雑で、実際に人が動くので、ピッキング、パッキング、配送などそれぞれの過程でいろいろなトラブルが発生する。(さまざまなECサイトが利用することもあって)商品も画一化されていないため、ある程度想定して動いていても、実際に運用しないと気付かない課題も多い。今まさに運用改善の最中だ」(伊藤氏)

同社では今春をめどに、海外発送にも対応する予定。またその後はAPIを公開して、ECサイトの構築サービスなど、各種の企業と連携していくとしている。また年内にも億単位の資金調達を検討。IVPも「事業の進捗を見て数億円の追加投資を行う予定」としている。


40億円調達のラクスル、クラウドソーシングを使ったチラシ制作の新サービス–リアルワールドと連携

ラクスル代表取締役の松本恭攝氏

先日40億円の大型資金調達を発表したばかりのラクスル。同社は3月3日、東京・虎ノ門で事業構想発表会を開催。クラウドソーシングを活用したチラシ印刷の新サービス「ラクスルデザインラボ」を発表したほか、今後の事業戦略を語った。

資金調達の発表の際にも話していたとおり、1年で登録会員が5倍にまで成長したというラクスル。会員の9割は100人未満の中小企業ということもあって、ただ印刷機を効率化して安価なサービスを提供するだけでなく、チラシを集客ツールと定義して、「印刷を通じて集客の支援をしている」と説明する。

クラウドソーシングと印刷を組み合わせた新サービス

そんなラクスルが本日から提供するのがラクスルデザインラボだ。このサービスは「デザイン制作」と「印刷前デザイン比較」の2つの機能があるのだが、まずデザイン制作パートでは、ユーザーの要望(テキストや手書きのイラストにも対応する)をもとに、クラウドソーシングでネットワーク化されたデザイナーが複数のデザイン案を提案する。

複数のデザインが集まれば、今度は印刷前デザイン比較を行う。クラウドソーシングでネットワーク化された主婦や学生などにどのデザイン案がいいかアンケートを実施して、どういったエリアのどういった属性のユーザーに好評だ、という情報を取得できる。「これまでは事後にしかできなかったチラシのデザイン評価が事前にできる。インターネットらしいアプローチだ」(ラクスル代表取締役の松本恭攝氏)

サービスはリアルワールドと連携しており、デザイナー、アンケート回答者はともにリアルワールドのクラウドソーシングサービス「CROWD」の会員だという。

ラクスルではこのラクスルデザインラボのほかにも、オンラインで申し込めるポスティングサービスの「ラクスルポスト」も提供。これらのサービスによって、チラシのデザインから印刷、さらには折り込みチラシやポスティングまでをワンストップで実現できる体制を作った。同社ではこれを集客支援プラットフォーム「チラシラクスル」と銘打って展開していく。

今後は地方需要にも対応

中小企業の支援をうたうラクスルが今後注目するのは「地域経済の活性化」。東京や愛知、大阪といった都市部以外に拠点を持つ企業は日本全体の約8割。行政や商工会議所に働きかけ、これらの企業との連携を図るという。また、地方の印刷会社との提携を拡大し、雇用創出に寄与するとした。

将来的には日本全国だけではなく、世界進出ももくろむ。「ラクスルの使命は商売革命。ベンチャーの立場から商売を変えていく」(松本氏)。同社では今後早期の100万会員達成を目指す。


愛用ブランドのサイズ感で洋服をカスタムオーダーできる「ラファブリック」

ファッション通販にありがちなのがサイズ選びの失敗。特に初めて買うブランドの洋服が、自分の体型に合っているかは賭けに近かったりする。だったら、愛用ブランドのサイズ感をベースに、好きなデザインや素材でカスタマイズした洋服を買えばいい、というのが「ラファブリックス」だ。

ユーザーはサイト上で、アウター、インナー、パンツごとに、ふだん着ているブランドのサイズを選択する。例えば、インナーでユニクロの「M」サイズを着ているユーザーであれば、そのサイズ感でシャツをカスタムオーダーできるわけだ。

便利なのは「ユニクロのMで身幅はちょうどいいけど、肩幅をもう少し狭くしたい」みたいな微調整が可能なこと。このほかにも、首回りや二の腕、ウエスト、ヒップ、パンツ丈、太ももなど14項目を1cm単位でカスタマイズできる。

デザインや生地のカスタマイズにも対応する。例えば、デザインは襟やポケットの形、裏地の色を変更できるし、生地は日本製やインポート物の中から好きな素材を選べる。なので、サイズには不満は無いけれど、デザインや生地がもっとこうだったら欲しい、というニーズも満たせそうだ。

現在はユニクロのほかにH&MやZARA、セレクトショップはUNITED ARROWSやビームスプラス、スーツメーカーはSUIT COMPANYなど、十数ブランドのサイズを収録したデータベースを構築済み。

今後も対応ブランドを増やすそうなので、ふだん着慣れているブランドのサイズ感で、デザインや生地にこだわった1点モノの洋服がオーダーしやすくなりそうだ。

オーダーメイドスーツECからのピボット

TechCrunchを毎日見ている読者なら覚えているかもしれないが、ラファブリックスは昨年2月、フォーマルなスーツやシャツのオーダーメイドECとしてスタートしている。

当時は、いくつかの質問に答えるだけで最適なサイズを提案する「フィットアルゴリズム」を通じて、日本人体型に合うスーツやシャツが注文できることを売りにしていた。引き続きスーツやシャツも扱うが、カジュアル路線強化はピボットのようにも取れる。

この点について、サービスを運営するライフスタイルデザインの森雄一郎社長は、「オーダーメイドスーツを買う層はそもそも、ECでモノを買わない傾向があった」と過去の失敗を振り返る。

さらに言えば、そもそもユーザーが入力したデータに基づいて、サービス運営側からサイズを提案するコンセプトは「満足度に個人差があった」と語る。「時として、提供者側のエゴでもあった」。

これに対してリニューアル後のラファブリックスは、顧客の価値観で「普段着るブランドとサイズ」を選べるため、「本当に自分に合った服を着たい」というニーズを実現できると説明。カジュアル路線を強化したことで、顧客層も広がると自信をのぞかせている。

価格面での優位性もあると、森氏。日本全国のアパレル工場をネットワーク化し、縫製や生地の相性やミシンの稼働率に応じて最適な工場へ発注することで、商品の価格を抑えているという。この仕組みは、全国の印刷会社をネットワーク化し、印刷機の非稼働時間を有効活用することで印刷費を抑える「ラクスル」にも似ている。

商品価格帯(いずれも税・送料込み)の一例を挙げると、フォーマルではホワイトシャツが6800円、ブラックスーツが1万9800円、カジュアルではコットンジャケットが2万9800円、ブルージーンズが3万4000円となっている。


ガチな勉強系クイズアプリ「マッチ」は対戦プレイが熱い

勉強は一人でやってもつまらない。だったら対戦ゲームにすれば面白くなる――。

こんな発想から生まれたのが、対戦型クイズアプリ「マッチ」だ。昨年6月に日本史対戦ゲームとしてベータ公開し、高校生を中心に3万ユーザーを集めたiOSアプリが、このたび正式リリースとなった。

正式版では日本史に加えて、世界史、漢字、一般常識のカテゴリーを追加。大学の入試問題や教科書、さらには漢検をはじめとする資格試験をもとに、4択のクイズ形式で出題している。高校生だけでなく社会人も楽しめる問題が増えた印象だ。

問題数は合計1万5000問。有名大学の過去問をベースにした問題も多く、現役受験生じゃないと即答できなそうなガチな問題が少なくない。どれくらいガチかというと、例えばこんな感じ。

サーマーン朝なんて、はるか昔に習った気がするけど、今となっては忘却の彼方。一部の問題には、ユーザーの回答をもとに一般正解率が表示され、低正答率の問題は得点が1.5倍になったりする。

おすすめは対戦プレイ

こうした問題は1人でコツコツ解いても勉強になるけど、おすすめしたいのは対戦型プレイだ。

Bluetoothを通じて友達と競う「ともだち対戦」や、インターネット経由で知らない人と勝負する「全国対戦」があり、合計10問の正解ポイントで争う。対戦は早く正解するほどポイントが加算されるので、いやがおうでも緊張感が高まる。

純粋に知識を競い合うだけじゃないのも、対戦プレイを熱くさせている。下の画面キャプチャーのように、劣勢時には「妨害」機能で相手の問題や選択肢を隠せるようになっている。実際に妨害されると、なかなか問題が表示されなくて、やきもきしてくる。

夢はアプリで東大合格

ゲーム性だけじゃなく「勉強」の側面も充実していて、間違った問題は1人でプレイする「トレーニングモード」から復習できる。

マッチを運営するバトンの衣川洋佑社長は、昨年11月に開催した弊誌イベント「TechCrunch Tokyo 2014」のスタートアップバトルのファイナリストとして登場。その頃から「ゆくゆくは東大合格者を送り出したい」と壮大な野望を語っていた。

さすがに4択に答えるだけで東大合格は難しそうだけど、「まずは勉強を楽しくすることが入口。今後は、苦手な問題ばかりを出題する『ダンジョン』や忘却曲線に基づいた出題を強化して、ゴールに近づけていきたい」と意気込んでいる。

6月には、ソーシャルゲーム要素を盛り込んだ新バージョンを公開する予定。現状で収益はないが、新バージョンでは、プレイできる「体力」を回復したり、対戦を有利にするアイテムで課金することも視野に入れ、勉強を熱くしていきたいという。


2014年のスタートアップ投資額、6年ぶりに1000億円超え―JVRが調査報告

リーマン・ショックの2008年以降下降線をたどっていた未公開ベンチャー企業の資金調達状況が2014年には大きく改善して、資金調達額は前年比1.58倍の1154億円となった。6年ぶりの1000億円超えとなる。2006年から継続して調査を続けているJVR(ジャパンベンチャーリサーチ)がまとめた数字だ。

1社あたりの調達額7250万円は前年比185%

1社あたりの資金調達額も中央値が7250万円と前年の4000万円から1.8倍と増えている。資金調達を行った企業の数は減少しているものの、1件あたりの金額が増えている。TechCrunch Japanでも日々お伝えしている調達額が増えていることは感じているが、この調査でも資金調達額の大型化が浮き彫りとなっている形だ。ただし、TechCrunchが主にIT関連のニュースをお伝えしているのに対して、JVRの調査にはヘルスケア、バイオ、医療、環境、エネルギー分野も含まれる。業種別の傾向としては、IT関連の企業数が増加傾向にあり、2014年は49%となっている。また、インターネットを利用したビジネスモデルを持つ企業の調達件数は2006年以来、ほぼ一貫して増加傾向にあり、2014年にその割合は80.5%となっている。

シード・アーリーからシリーズA、Bへ重心が移動

また資金調達を行った企業の設立年数を見てみると、設立1年未満の社数割合が減少する一方で、1年以上の割合が増加。1年以上5年未満が35%を占めるようになっている。調達額の大型化と合わせて、この傾向の背景には、2011年、12年に生まれたシード、アーリー対象のアクセラレーターの卒業組がシリーズAやBといった調達に成功する例が増えていることがある。以下のグラフは、それを顕著に示している。レポートでは「米国での一般的な調達額として、シリーズAで2億円、シリーズBで5億円、そしてシリーズCで10億円と言われているが、日本も同様の規模に近づいてきている」としている。

10億円以上の調達は7社→16社→25社と増加

資金調達の大型化により、10億円以上資金を調達した企業は前年比1.56 倍の25社だった。2012年に7社、2013年は16社だった。以下に資金調達ランキングの上位50社の一覧を画像で掲載する(クリックで拡大)。

以下の表は投資総額によるVCのランキングだ。投資金額のVCのランキングで上位31社中CVCが6社、外資VC7社と、CVCと外資VCが健闘しているのも目を引く。

優先株も実はすでに半数以上の63%で利用

かつて日本では優先株の利用はほとんどないと言われてきたが、ここ3、4年で一気に増えているようだ。JVRのレポートによれば、会社設立から上場までの資金調達で優先株を利用した企業数は2001年以降で1年当たり2、3社程度だった。これが今回VC9社の情報開示を受けて調査した結果、対象調査企業となった2014年に資金調達を行った127社のうち優先株の利用は59社で46.5%。この比率は、株式の種類が不明の企業を除外した場合には63%となる(調査に協力したVCは、ジャフコ、産業革新機構、伊藤忠テクノロジーベンチャーズ、グロービス・キャピタル、東京大学エッジキャピタル、DBJキャピタル、サンブリッジグローバルベンチャーズ、グローバル・ブレイン)。ある独立系VCのキャピタリストによれば、今や投資案件は「ほぼ全て優先株」といい、エンジェル投資やレイターをのぞけば、優先株の利用はもはやVC業界でデファクトではないかと話している。背景には、もともと投資家が引き受けるリスクが創業者に比べて大きかった面が優先株によって緩和されて、より大胆にリスクを取って投資しやすくなることがあるという。特に残余財産の分配権が重要で、事業立ち上げに失敗した場合に投資を回収しやすくなるなどのメリットがある。

このほか、今回のJVRのレポートで目を引くのは海外比率だ。創業メンバーから日本のスタートアップとみなされるものの法人登記を海外で行っている「海外企業」の割合が8%となり、大阪(近畿)の6%を抜いてしまっている。より大きなマーケットを目指す海外志向が1つの傾向として数値に出ている形と言えそうだ。


月額2980円で士業に相談し放題のBizer、役所提出文書の自動生成が可能に

月額2980円で士業に相談し放題」でサービスを開始したビズグラウンドの「Bizer(バイザー)」。2014年12月からは士業への相談に加えて、中小企業向けのクラウド型バックオフィス機能「会社運営のダンドリ」を提供している。

会社運営のダンドリでは、必要な情報を入力するだけで株式会社設立に必要な文書を作成できるほか、テンプレートに従って作業をするだけで総務や労務、経理の処理ができる。

作業の途中で分からないことがあれば、士業に相談したり、手続きの代行を依頼したりもできる(ちなみに作業途中の質問は課題が明確なため、士業もこれまでに比べて素早く、適切な回答をしやすいのだそうだ)。ビズグラウンド代表取締役社長の畠山友一氏によると、会社の増資や年末調整、従業員の雇用・退職など、約120件のイベント(1つのイベントにつき10〜20件の作業が含まれる)を支援してきたそうだ。

今回その会社運営のダンドリに、役所への提出文書の自動生成機能が実装された。この機能を使うと、あらかじめ登録しておいた会社や従業員の情報をもとにして、役所へ提出可能な書類を自動生成できる。

現時点では、従業員の雇用時に必要となる「健康保険・厚生年金保険 新規適用届」「健康保険・厚生年金被保険者資格取得届」「国民年金第3 号被保険者資格取得・種別変更・種別確認(3 号該当)届」「健康保険被扶養者(異動)届」「特別徴収切替申請書」「雇用保険適用事業所設置届」「雇用保険被保険者資格取得届」の合計7つの文書に対応。印刷して押印さえすれば役所に提出可能だ。今後は従業員の退職や本社移転、増資などに関わる文書も追加する予定で、1年間で100種類の文書生成に対応するという。新機能も月額2980円の有料会員であれば自由に利用できる。

Bizerのサービス開始時にも畠山氏に「Bizerは士業の仕事を奪うようなものではないのか」といった質問をしたのだけれど、正直なところ今回の機能も同じような印象を受ける(もちろんユーザーにとっては大歓迎だろう)。これについて改めて聞いてみたのだけれど、「文書作成機能には士業の協力も得ている。書類作成のような単純労働ではなく、『士業でないとできない仕事』に集中する環境を作りたい」(畠山氏)とのことだった。