スマートロックを切り口に不動産活用サービスを展開するライナフ、総額3.9億円を資金調達

ライナフ代表取締役の滝沢潔氏

ライナフ代表取締役の滝沢潔氏

スマートロックを利用した不動産活用サービスを提供するライナフは11月4日、三菱地所、DGインキュベーション、西武しんきんキャピタル、他を引受先とする総額3.9億円の資金調達を実施したことを発表した。設立からちょうど2年を迎えたライナフは、今回の調達を元にウェブサービスやハードウェアの開発と、人材採用の強化を図る。

自らも不動産投資を手がけるライナフ代表取締役の滝沢潔氏は、「保有する物件で空き室をいかに減らすかで頭を悩ませたこともある」と言い、そうした経験から、空き室活用を支援するビジネスを検討し始めた。空き室・空きスペースの活用を促すサービスとして真っ先に思い浮かぶのは「AirBnB」や「スペースマーケット」といったマッチングサービスだが、滝沢氏は「大量の物件を抱える不動産の保有者は、実際にはほとんどこうしたサービスには登録していない」という。では、大量の不動産を活用するために必要なソリューションとは何か。滝沢氏が目を付けたのは、空き部屋や空きスペースの無人運用を可能とする、スマートロックだった。

NinjaLock

サムターン錠に装着されたNinjaLock。

ライナフでは、サムターン錠の上からかぶせることで、アプリをインストールしたスマホやタブレットとBluetoothで通信して錠の開閉ができるスマートロック「NinjaLock」を開発。2015年6月には量産品をヨドバシカメラで販売開始した。2016年8月には、建物入口のオートロックの自動ドアに設置することで、遠隔開錠やアプリでの開錠が可能なIoT製品「NinjaEntrance」もリリースしている。

だが、ライナフの収益の本命は、スマートロックなどのIoTハードウェアではない。「IoT製品単体での収益化は、製品を動かすために稼働し続けるサーバーのランニングコストを考えると難しい。ウェブサービスとの組み合わせ、不動産活用のためのサービスとのワンパッケージ化によって、ハードの利用料としてではなくサービスの利用料としてなら、ある程度の金額を払ってもらえるようになり、ビジネスとして成り立つ」(滝沢氏)。

スマート内覧の鍵操作画面

スマート内覧の操作画面。

2016年2月、前回のライナフの調達発表の際、同時に発表された「スマート内覧」は、NinjaLockを利用した不動産流通を促すためのサービスパッケージのひとつ。物件の内覧希望者がウェブで内覧日時を予約しておけば、スマホや携帯電話で物件の開錠ができるため、不動産管理会社や仲介業者が同行することなく“セルフ内覧”が可能なサービスだ。室内のタブレットとスマートロックがBluetoothで通信しており、訪れた人はスマホのブラウザ経由か、音声通話の自動ガイダンスに従ってプッシュトーンで開錠する。音声通話による開錠は、仲介業者の間でまだまだスマホが普及していないことに配慮したものという。室内のタブレットのアプリは、訪問者に物件の詳しい情報を提供するほか、管理会社から室内を確認するために写真を撮影したり、訪問者が管理会社に質問をするための通話や仮申し込みにも利用できる。累計導入室数は100室を超え、2016年度のグッドデザイン賞をソフトウェア・サービス・システムの分野で受賞した。「室内タブレットには今後1年以内に、AIコンシェルジュも搭載していく」と滝沢氏は言う。

室内タブレットに表示されるウェルカム画面

スマート内覧の室内タブレットに表示されるウェルカム画面。

訪問した物件の情報もタブレットで確認できる

訪問した物件の情報も室内タブレットで確認できる。

また、住友不動産ベルサールと共同で開発し、2016年7月にリリースされた「スマート会議室」は、やはりNinjaLockを活用した、無人で貸会議室の運営が可能なシステム。スマート内覧と同様、部屋と日時を選んでウェブで予約し、予定日時になったら部屋をスマホなどで開錠して利用する。こちらは、そのまま決済まで完了できる。引き合いも増えているそうで、今年度内に導入100室突破を予定。今後、清掃手配や仕出し弁当の注文、備品レンタルなど、関連する付加価値の高いサービスを提供していくという。

スマート会議室の操作画面

スマート会議室の操作画面。

「空き室・空きスペース活用の場面は不動産流通の場面より利用頻度も高く、今後目を向けていきたいジャンル」という滝沢氏。賃貸物件としての空き室についても、内覧などがない時間帯に時間貸しができるように、とスマート内覧とスマート会議室が融合したサービスも目論んでいるそうだ。

「不動産を活用するためのテクノロジー」「不動産を活用するためのサービス」と何度となく口にした滝沢氏は、「物件オーナーやユーザー、業界それぞれの目線で見て、売れると分かっているものができたから増資した。これで営業や広告、マーケティングを強化すれば絶対に伸びる」と自信を持つ。「不動産の分野はIT化が進んでいなかった。FinTechが盛り上がって、そろそろ一段落しそうな金融の分野よりかなり遅れてはいるが、投資を考えたときに二大資産として挙がるのは、金融と不動産。FinTechと違って不動産テック(Real Estate Tech)はRTechだかReTechだか、まだ名前も定まっていないような状況だけれども、不動産テック業界は必ず盛り上がると思っている。もっと盛り上げていきたいし、新しいベンチャーもどんどん出てきてほしい」(滝沢氏)

起業家を待つのは華やかな話題だけではない——TC Tokyoで聞く「スタートアップの光と影」

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開催まで3週間を切ったスタートアップの祭典「TechCrunch Tokyo 2016」。プログラムも公開したが、まだ紹介できていなかったセッションについてここでご紹介しよう。

11月18日午後に予定されているのは、国内有力ベンチャーキャピタリストの2人に登壇いただくパネルディスカッション「投資家から見たスタートアップの『光と影』」だ。

TechCrunchを含め、オンラインメディアで目にするスタートアップのニュースは、「IPOやM&Aといったイグジットをした」「新しいサービスが登場して、こんな課題を解決してくれる」「資金を調達して、今後の成長に向けてアクセルを踏んだ」といった基本的にポジティブなものが中心だ。

だが華やかにも見えるスタートアップの裏側は、実に泥臭い努力の積み重ねで成り立っていたりする。いや、努力したところでうまくいかないケースだって多い。

起業家は企画を練り、チームをまとめ、プロダクトを立ち上げる。さらに資金が足りなければ投資家を探すし、プロダクトをより大きく育て、最終的に買収や上場を目指すことになる。この1つ1つのステップには、数多くの選択や交渉が必要とされている。例えばチームを集めれば株式の取り分や方向性で揉めることもあるし、資金を集める際には投資家との激しい交渉が待っている。時には起業家におかしな条件を提示する「自称投資家」「自称コンサルタント」だってやってくるとも聞く。M&Aによるイグジットまでたどり着いたとしても、買収先との折り合いの付けどころを調整することにだって苦労が伴う。それぞれの局面での困難さに起業家は立ち止まりそうになる、いや立ち止まってしまうことだって少なくないのだ。

このセッションでは、そんな普段メディアでは触れられない、スタートアップの「影」の部分について触れていければと思う。ただし勘違いして欲しくないのは、何もゴシップめいたことを発信していきたいわけではない。起業家の成功と失敗、その両面を見てきたベンチャーキャピタリストの生々しい経験から、成長途中にある落とし穴に落ちないよう、「○○すべき」「○○すべからず」というヒントをもらいたいと思っている。

本セッションに登壇頂くのは、グロービス・キャピタル・パートナーズ パートナーでChief Operating Officerの今野穣氏、iSGSインベストメントワークス代表取締役で代表パートナーの五嶋一人氏の2人。いずれも投資経験豊富なベンチャーキャピタリストだ。チケットの購入はこちらから。

電話カウンセリング「ボイスマルシェ」のバーニャカウダが6000万円を調達、法人向けの福利厚生サービスに軸足

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「いま、割とカウンセリング市場が熱い。注目され始めた感じ」──そう語るのは、女性専用の電話カウンセリングサービス「ボイスマルシェ」を運営するバーニャカウダのCOO 菅野彩子氏だ。同社はSMBCベンチャーキャピタル・みずほキャピタル・三生キャピタルを割当先とする第3者割当増資を実施。調達額は約6000万円で内訳は非公開。調達資金を元手にさらなるサービス拡大を図る。

ボイスマルシェは、女性ユーザー専用の電話カウンセリングサービスだ。ユーザーは、心理カウンセラーやキャリアコンサルタント、コーチなどの専門家による個別カウンセリングをうけることができる。25分で3000円、55分で1万2000円、110分で2万4000円の3プランを用意し、通話料は無料。サービス開始は2012年3月。

相談できる悩みは多岐にわたる

ウェブサイト上で相談したいカウンセラーを選ぶことができる

相談できる内容は、20代の就活から終活まで多岐にわたる。例えば友人との喧嘩・仕事のキャリア形成・婚活・結婚・子供に関する悩みなど。カウンセラーは約500人以上が登録しており、心理カウンセラーやキャリアコンサルタントなど公的・民間の有資格者がほとんどを占めている。バーニャカウダが面談と実技指導を行い、カウンセラーの一定の品質を確保しているという。

また法人向けには「ボイスマルシェforビジネス」も展開している。これは従業員向けの福利厚生サービスで、企業が窓口となって契約し、従業員は1回1時間の電話カウンセリングが受け放題だ。2015年9月より提供を開始し、すでにルミネなどが導入。こちらは女性だけでなく男性の従業員も利用できる。2015年12月から一定規模以上の事業所で従業員のストレスチェックが義務化されるなど、従業員のメンタルヘルスに関心が高まっており、法人向けサービスの企業からの引き合いも増えているという。

イメージしたのは食べログ

バーニャカウダCEOの古川亮氏は、ボイスマルシェについて「イメージしたのは食べログ」と語る。利用者は、ボイスマルシェのWEBページからカウンセラーの評価やレビューをチェックし、気に入れば日時を予約、クレジットカードで決済できる。評価から予約、決済までがウェブサイト上で完結する点が売りで「カウンセラーのプラットフォームでもある」と古川氏は説明する。

左からバーニャカウダ COOの菅野彩子氏、CEOの古川亮氏

左からバーニャカウダ COOの菅野彩子氏、CEOの古川亮氏

競合サービスとしては、エキサイトが運営する”お悩み相談室”などがある。それらと比較した強みについて古川氏は「カウンセラーの数」を挙げる。同様のオンラインカウンセリングサービスでは、カウンセラーは多くても数十人が一般的であるといい、500人以上という在籍数は「日本最大級」と古川氏は胸を張る。カウンセラーが多いために「当日上司に怒られてしんどい時に、10分前に予約してカウンセリングをうけることもできる」と菅野氏は言う。またコンシューマ向けと法人向けの両輪で展開している点も国内では珍しいという。

相談できる相手がいなかった

バーニャカウダは2010年1月に設立。創業メンバーの古川亮CEOと菅野彩子COOはともに前職がリクルートで、2人はリクルート時代の社内研修で知り合った。2人とも起業志向ということで意気投合。当初は「占い」を軸としたサービスを構想していたが、途中で「カウンセリング」に変えた。その理由について菅野氏は次のように語る。

「当時結婚を前提に交際していた人がいたが、転職を機に破談。追い詰められた時に相談できる相手がいなかった。占いだといまいちだが、専門家に相談できるプラットフォームがあればいいなと思った」

女性向けにサービスを絞る理由については、女性管理職の割合を増やすという日本政府の政策的な後押し。そして女性の社会進出が進む中で、「仕事でのキャリア形成」「家庭と仕事の両立」など、親世代が経験しなかった新しい悩みが産まれ、女性の悩みが急速に多様化している点を挙げる。

「予約と購入を抑える」のがリクルート流

前職のリクルートでは、古川氏はSUUMOやHR事業でマッチングサービスを、菅野氏はインターネットマーケティングやウェブメディアの立ち上げや運営に携わった。ボイスマルシェの立ち上げにはその経験も役立ったという。菅野氏は「既存の広告メディアでは勝てないと思った。リクルートでは、ホットペッパーのように広告よりアクション、つまり予約と購入を抑える。ボイスマルシェもこの考えで立ち上げようと思った」とも語る。

創業期には古川氏と菅野氏の自己資金でサービスを運営。2014年9月にSMBCベンチャーキャピタルから第3者割当増資により3000億円を調達した。そして2015年9月に今回の6000万円の調達に至った。資金調達の際には、500人以上のカウンセラーと密接なコミュニティを構築している点、さらに、法人向けサービスのボイスマルシェforビジネスがルミネ内で好評だという点が評価された。

バーニャカウダは今回調達した資金をもとに、サービス拡大に向け人員を拡充。現在は社員3人とパートで運営しているが、これを10名に増員。また直近ではB2CよりもB2B向けサービスに注力する方針で、そのための営業やマーケティングの人材も揃えたいとしている。

オンライン家庭教師サービスのマナボがZ会グループと資本業務提携、2.5億円を調達

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スマホやタブレットを使ったオンライン家庭教師サービス「manabo」を展開するマナボは、11月1日、Z会グループの持株会社である増進会出版社を引受先とする2.5億円の第三者割当増資の実施と、Z会の会員などを対象にmanaboサービスを提供する業務提携契約の締結を発表。また同日、Z会グループの経営管理を担うZEホールディングス取締役の下田勝昭氏、およびBloom & Co.代表の彌野泰弘氏の社外取締役就任も発表した。

manaboはスマホアプリを通じて、生徒が宿題や問題集などの分からない部分を撮影し、チューターにオンデマンドでリアルタイムに質問できるサービス。主に有名大学の学生がチューターとして2000人以上在席しており、得意科目をアプリの音声通話と手書きの画像共有で教える。

今回の資本業務提携により、Z会グループでは2017年4月より、Z会高校受験コース受講の中学3年生の全会員、栄光ゼミナール高等部“ナビオ”の全塾生、および10月26日に発表されたタブレット向けオンライン学習サービス「Z会Asteria(アステリア)」の会員を対象に、manaboのサービス提供を予定している。サービスは、マナボからZ会グループへは有償で提供される。両社は2017年度以降も対象範囲を順次拡大する方針で、サービスの共同開発の可能性について協議を進めていくという。

Z会Asteriaのティーザーサイト。

Z会Asteriaのティーザーサイト。

マナボでは、BtoCの自社サービス提供も行っているが、2015年末からはBtoBtoCの法人向けOEMサービス提供に軸足を置いている。そうした中、Z会グループの栄光ゼミナールとは2回のトライアルを実施。結果が好調であったことから、より深く提携を進めることとなり、今回の資本業務提携に結びついた。ちなみにマナボは、2014年9月にベネッセコーポレーションから資金調達を実施しているが、現在では「リアルタイム家庭教師」の名称で提供していたベネッセへのサービス業務契約は終了している。

マナボ代表取締役社長の三橋克仁氏は「自社サービスも将来的にはもちろん、テコ入れしていくが、BtoCサービスはやはり成長に時間がかかることが経験してみて分かった。今はBtoBtoCにリソースを強めに割いて、体力を付けたい。Z会はもちろん、それ以外の教育系事業会社とも多角的にやっていこうと考えている」と話す。

AI導入など、manabo以外のスタイルのオンライン教育サービス展開の可能性について質問してみると、三橋氏は「今のところはオンライン家庭教師サービスに集中してより深く、よりサービスクオリティが上がる方向でやっていく」と言う。「業界の動向を見ると、EduTechは2013〜2014年にかけて非常に盛り上がったが、その後Tech界隈の注目がFinTechやAI、IoT分野へシフトしていき、今は山を越えて下り坂の状態だと感じる。一方で、教育のリアルな現場のICTは、取り組むべき課題としてようやく浸透してきたところ。進み方は遅いけれども、先端のEduTechとの間にはまだまだギャップがあって、着実に成長している。投資対象としても働く領域としても、おもしろく、チャレンジしがいのある分野だ。我々はリアルな教育現場の中でも比較的意思決定の早い塾や私学などへアプローチして、まずは粛々とBtoBtoCでサービスを広げていくつもりだ」(三橋氏)

また、最近日本でもトレンドになってきているアクティブ・ラーニング(能動的学習)やアダプティブ・ラーニング(適応学習)などの教育手法とmanaboとの関係について、三橋氏はこう語る。「自律学習やアダプティブ・ラーニングの本質とは、“先生が生徒に(一方的に)教える”というのを“生徒が先生に(自発的に)学ぶ”という逆向きのベクトルに変えることで、それは元々manaboがサービスとしてやってきていること。あらためて大局がmanaboの目指す方向に向かっていると感じる」(三橋氏)

「AnyPay」を立ち上げた連続起業家・木村新司氏がTC Tokyoに登壇、スマホ時代の決済サービスとは

AnyPay代表取締役の木村新司氏

今、決済サービスに携わるスタートアップの動きが活発になっている。スマートフォン時代の“新しい決済”を実現すべく、さまざまなプレーヤーがしのぎを削っている状況だ。11月17〜18日開催のTechCrunch Tokyo 2016では、そんな決済の領域に挑戦する連続起業家であり、AnyPay代表取締役の木村新司氏が登壇することが決定した。

木村氏はドリームインキュベーター、シリウステクノロジーズを経て、広告配信事業を手がけるアトランティスを創業。同社をグリーに売却したのちにエンジェル投資家としてスタートアップを支援。投資先のGunosy(のちに共同経営者となり、退任)は2015年にマザーズに上場。またその他にも多くのスタートアップを支援してきた。AnyPayはそんな木村氏が新しく立ち上げたスタートアップだ。

ここであらためて決済領域のスタートアップの直近の動きを振り返ってみると、まずスマホ向けのカード決済からスタートしたコイニーが、オンライン決済ページ作成サービスの「Coineyペイジ」を発表。また、フリマアプリ「フリル」運営のFablicは楽天傘下に入ったが、今後は決済領域に進出する予定だという。さらに買収元であるスタートトゥデイからMBOしたブラケットも、「STORES.jp」に関連して決済サービスを強化するとしている。さらにBASEも15億円の大型調達を実施し、決済事業「PAY.JP」を推し進めていくことを発表した。

こういった各社の動きがある中、木村氏率いるAnyPayは果たしてどのようにしてサービスを拡大していくのだろうか。AnyPayの正式ローンチ時、木村氏はTechCrunchに対して、個人間送金やデビットカードについて興味を持っている旨を語っていた。つまり単純にスマートフォン向けの決済サービスを提供するだけでなく、その先に“新しいお金のやり取り”そのものを考えているということだろう。

木村氏が登壇するのは11月18日午後の予定。ステージでは、AnyPayのこれから、そして決済サービスのこれからについて聞いてみたいと思う。

Cerevoが閃光を放つBluetooth搭載スマート・ヨーヨー「7-Magic」を発売

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IoTハードウェアのスタートアップCerevoは10月26日、PCと連動して光を放つ、パフォーマンス用のBluetooth搭載スマート・ヨーヨー「7-Magic」を発売、11月上旬に出荷する。Cerevo直販サイトでの販売価格は2万7777円(税抜)。

7-Magicは、シルク・ドゥ・ソレイユ出演経験を持つヨーヨー世界チャンピオンのBLACK氏と同社により、共同で開発された。10月22日に開催されたTEDxTokyoでのBLACK氏のパフォーマンスにも、7-Magicが使われたそうだ。開発に当たっては、競技用でも使用されるハイエンドヨーヨーのメーカー、香港のC3ヨーヨーデザインと連携し、ベースにはC3社のヨーヨー「INITIATOR」を使用。本体に合計21個の高輝度LEDと本体制御用のBluetooth(Bluetooth Low Enegy)を搭載しており、指定のタイミングでLEDを点灯させることで、音楽や映像に合わせてヨーヨーが光るパフォーマンスを行なうことができる。

 

7-Magicには、パソコンアプリで発光する色・輝度などを設定でき、Bluetoothで接続して任意のタイミングで発光できる「ワイヤレス リアルタイム 発光モード」、パソコン上で流れる映像・音声に合わせて自動的に発光できる「ワイヤレス プリセット 発光モード」、無線環境が不安定な会場でも確実にスタートを制御することができる「USBプリセット 発光モード」の3つの発光モードが備わっている。

IoT開発モジュール「BlueNinja」

IoT開発モジュール「BlueNinja」

7-Magicは、企画から発表まで実働6ヶ月以内という短期間で発売にこぎ着けた。その背景には、簡単にIoT機器を開発できるようにCerevoで開発された、9軸センサーとBluetooth4.0を搭載するIoT開発モジュール「BlueNinja」の存在がある。量産品への組み込みまでを想定し、プロセッサ・通信部・センサ部・充放電回路が一体となったBlueNinjaをベースに、発光回路とメカ部品を組み合わせ、制御ソフトを新規開発するのみとし、短期間での製品化が可能となったという。

Cerevoでは、SIM切替デバイスの「SIM CHANGER デルタ」のような、いわゆる実用的な“ネット接続型家電”のラインアップとは別に、アニメ「PSYCHO-PASS サイコパス」に登場する特殊拳銃を再現した「ドミネーター」など、玩具にIoT要素を持たせることで新たな価値を生み出すジャンルとして「スマート・トイ」というカテゴリの製品を展開していて、7-Magicもそのカテゴリに属するそうだ。ヨーヨーとして考えれば価格は高めだが、アートやホビー、スポーツといった分野もあわせた、ライフスタイル全般における“コネクテッド・ハードウェア”メーカーとして、切り込んでいく姿勢が見える製品と言えるのではないだろうか。

日米同時上場を果たしたLINE、次の展開は? TechCrunch Tokyoで舛田氏に聞く

LINE取締役CSMOの舛田淳氏

2016年に最も大きな話題となったIPO(新規上場)といえば、7月に東証一部とニューヨーク証券取引所(NYSE)に同時上場したLINEで間違いないだろう。11月17〜18日開催のイベント「TechCrunch Tokyo 2016」にもLINE取締役CSMOである舛田淳氏の登壇が決定したのでここでお知らせする。

同社のサービスの基盤となっているコミュニケーションアプリ「LINE」は、2011年の東日本大震災を契機に生まれたという。そんなLINEも今ではMAU国内6200万人、グローバル2億2000万人(2016年6月末時点)という巨大なサービスに成長した。

同社では上場に合わせて「スマートポータル」構想を発表。このLINEというアプリを入り口にして、ニュース(LINE NEWS)や音楽(LINE MUSIC)、マンガ(LINE マンガ)といったコンテンツ領域、決済(LINE Pay)やボット(LINE BOT API)、バイト探し(LINE バイト)といったライフ領域までを1つのプラットフォームとして経済圏を作っていくとしている。

また舛田氏は先日、招待制イベントのB Dash Campに登壇。今後は「NEXT LINE」と呼ぶべき新規事業を展開するため、スタートアップを含めた外部との提携やM&Aを行う可能性があるとも言及している(ちなみに舛田氏がチャレンジする領域の1つとして挙げたのは、「特化型のSNS」だった)。

TechCrunch Tokyoでは、そんなLINEのこれからの姿について舛田氏に聞いていきたい。同氏の登壇は11月18日午後になる予定だ。興味がある人は是非とも以下からチケットを購入頂きたい。

匿名画像投稿サイトから画像SNSにピボットした「Pictory」、中高生人気を集めて月間1億PVを突破

以前にTechCrunchで紹介したカクテルの運営する匿名画像共有アプリ「Pictory」。2014年1月のサービス開始から約2年半……時間はかかったが、サービスが好調だという。10〜20代を中心にしてユーザーを拡大。2014年4月時点で月間200万だったページビューは、2016年8月に1億ページビューにまで成長した。

Pictoryは、Android向けアプリとウェブサイトでスタート。ユーザーが自らの持つ写真にエフェクトを付け、テキストを入れて「作品」として仕上げて匿名で投稿するサービスだった。ローンチ当初から10代を中心としたユーザーが多く、若いユーザーによる「ポエム」的な投稿が中心になっていった。

「Pictory」のトップ画面。さまざまなカテゴリの画像を投稿できる

「Pictory」のトップ画面。さまざまなカテゴリの画像を投稿できる

ページビュー数こそ増えたが、2015年半ばまではユーザーがあまり増えない状況に苦しんだ。「新規のユーザーが入っても、そのまま同じほどの数のユーザーが翌日離脱するような状態」(カクテル取締役CTOの天野仁史氏)だった。そのため約1年をかけて、完全匿名の画像投稿サイトから、ユーザー同士のコミュニケーションが可能な「画像SNS」へのピボットを進めた。

Pictoryの生まれた2014年頃といえば海外ではWhisperやSecret(すでにサービスを終了)といった、匿名で画像やテキストを投稿できるサービスが流行の兆しを見せていた時期。Pictoryも当初はそういったサービスを狙っていたのかも知れない。だが前述の通りで、結果的にできあがったのは、10代を中心にした小さいながらも濃いユーザーのコミュニティだった。

「当時は匿名で書きやすい、投稿しやすいというもの……いわば『今風の2ch』を目指していた。だが結果的に、狙った訳ではないがサービスが若者に受け入れられた。若者は自分の周囲、家族などに言えないことを投稿する。そんな内向的な投稿は匿名との食い合わせが悪かった。若者の『熱さ』はすごくあるが、読む人には価値がないということもあった」(天野氏)——そんな背景もあって、若いユーザーの熱量をより生かせるサービスへ転換を図った。

ピボット後、月間1億PVを達成

画像SNSへのピボットは成功。ユーザー数は非公開ながら、10代を中心にしたより大きなコミュニティが生まれつつあるという。ユーザーの8割は女性。また、全体の7割が中高生だ。夏休み期間でもある2016年8月には月間の画像投稿数60万件、登校への「いいね!」数は1億8000万回(Pictoryの仕様上、1人複数回のいいね投稿が可能。ユニーク数では約900万回)、月間1億ページビューを達成した。

Pictoryのアクティブユーザー数(実数は非公開)

Pictoryのアクティブユーザー数(実数は非公開)

投稿される画像はセルフィ(自撮り)のほかライフログ(外出時、食事時、購入物などライフスタイルに関する画像)、友達と撮影した写真(プリクラなど。コスプレしてプリクラを撮る「コスプリ」、ファッションを友人と合わせた「双子コーデ」なんていうものが人気だ)など。画像投稿するユーザーのフォロワー数は平均100以上。1万人超のフォロワーを抱えるユーザーも数多いという。ちなみに全ユーザーの3割が画像を投稿しているという。

「リニューアル後は継続率を純粋に追いかけていった。『いいね!』も(1つの投稿に対して)何度でも押せるようにすることで、ユニークユーザーが増えた」(カクテル代表取締役の水波桂氏)。「(いいね!を何度も押せる設計について)批判はあるかも知れないが、ポジティブなアクションを気軽にするのは正しいと思う。例えばFacebookで一番いいのは、『いいね!』ボタンによってコメント以外でも気軽にリアクションができることだ」(天野氏)

新規ユーザーの反応も好調だ。「(投稿がサイト上に露出される)評価軸をさまざまにしている。新しいユーザーでも面白い画像を投稿したならトップに表示される仕組み」(水波氏)。ネガティブな投稿に対しても抑止力が出てきたという。「ユーザーは名前を出すほどに悪口を言わなくなる。ここはコンテンツの見せ方ひとつで変わるところなので、調整を日々やっている」(天野氏)

今後は広告でのマネタイズも

カクテルは2012年の設立。これまでにインキュベイトファンドやメルカリ代表取締役の山田進太郎氏のほか、East Ventures、iSGS Investment Works、ベンチャーユナイテッドなどから約1億円の資金を調達している。

1年間作り込んだサービスの手応えを感じ始めたというPictory。今後は人材を拡大し、開発をさらに強化していく狙いだ。マネタイズについても広告の導入を検討しているが、「単なるバナーでなく、『テキスト+文字』でどんな広告ができるかチャレンジしていく」(天野氏)という。将来的には動画投稿についても検討中だ。

カクテル代表取締役の水波桂氏(左)と取締役CTOの天野仁史氏(右)

カクテル代表取締役の水波桂氏(左)と取締役CTOの天野仁史氏(右)

 

サイバーエージェント藤田社長がTechCrunch Tokyoに登壇、ネットテレビ局「AbemaTV」のこれからを聞く

開催まで1カ月を切った日本最大級のスタートアップイベント「TechCrunch Tokyo 2016」。ここでまた新たな登壇者をご紹介したい。サイバーエージェント代表取締役の藤田晋氏だ。

藤田氏はインテリジェンスで活躍した後、1998年にサイバーエージェントを設立。2000年には当時最年少となる26歳で東証マザーズ市場に上場した。2014年には東京証券取引所市場第一部に市場変更を実施している。

広告営業の代理店業からスタートしたサイバーエージェントだが、当時堀江貴文氏が率いていたオン・ザ・エッヂとの協業でネット広告事業に進出。広告事業を走らせつつ、ブログサービスの「Ameba」、FX(2012年にヤフーに譲渡)、アドネットワーク、アバターサービス「アメーバピグ」、モバイルゲームやアプリ、定額制音楽配信サービス「AWA」など、グループ会社を含めてさまざまな事業を展開してきた。

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サイバーエージェント代表取締役の藤田晋氏

ブログやアプリなど、これまでも注力する領域を見つけては一気に踏み込み、事業を成長させてきた印象もあるサイバーエージェント。そんなサイバーエージェントが今最も注力しているのが、テレビ朝日と組んで展開するインターネットテレビ局「AbemaTV」だ。AbemaTVでは現在27のチャンネルで情報番組からニュース、アニメまでさまざま番組を配信している。4月の開局(サービスローンチ)から6カ月で、スマートフォン向けアプリのダウンロード数は900万件を突破している。

2016年は動画サービスが躍進した1年でもあった。エブリーの「DELISH KITCHEN」、delyの「Kurashiru」、スタートアウツの「もぐー」といった国産の分散型料理動画メディアが勢いを増し、その一方では、海外で潜行する料理動画メディア・Buzzfeedの「Tasty」が日本版をローンチした。また女性に強いC Channelの「C Channel」、HowTwoの「HowTwo!」、10代の支持を集めるDonutsの「MixChannel」、さらに動画広告プラットフォームのOPEN8やFIVE、YouTuberを束ねるUUUMやスリーミニッツなど、動画に関わるスタートアップの活躍がいろいろと聞こえてきた。AbemaTVはそんな各社の動きとは異なり、テレビ局と組み、リアルタイムでオリジナルコンテンツなどを配信する「インターネットテレビ局」というアプローチを行っている。

このセッションでは、AbemaTVの話を中心に、動画ビジネスを取り巻く環境、そしてサイバーエージェントの今後の展開について聞いていきたい。藤田氏はTechCrunch Tokyo 2016初日の11月17日午後に登壇予定だ。

生命科学分野の画像解析ソリューションを提供するエルピクセルが総額7億円を資金調達

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ライフサイエンス領域の画像解析ソリューションを提供する、東大発のベンチャー企業エルピクセルは10月24日、ジャフコが運営管理する投資事業組合、Mistletoe東レエンジニアリングの各社、ほか個人投資家を引受先とする、総額7億円の第三者割当増資の実施を発表した。

エルピクセルは、東京大学の画像解析に精通した生命科学の研究者が中心となって、2014年3月に設立した技術ベンチャー企業。主に、国内研究機関や医療機関向けの画像解析ソリューションの受託開発を行ってきたほか、研究画像不正の検出、植物の成長解析、動体解析、3次元画像計測、色解析のソフトウェアなど、研究者のニーズに合わせた画像解析ソフトを自社開発し、提供している。また、国立がん研究センターとの生物画像自動分類の共同特許を活用し、人工知能を用いたがん診断支援ソフトウェアの開発も進めている。

日本では、100万人あたりのCTやMRIの台数、医療画像が世界で最も多いにもかかわらず、画像診断医は減少傾向にあると言う。「ライフサイエンス領域における画像データが増える一方で、それを扱う研究者や医師の体制や教育機会は十分ではないのが現状」という。

エルピクセルでは今回調達した資金を、これまでの全国の医療機関との共同研究に基づく、現場に即した画像解析ソリューションをさらに洗練させたより高度なソリューションを、より早く、より多くの国内外の機関に提供するための研究開発・展開の体制強化に活用していく、としている。

具体的には、ライフサイエンス研究の高度化・高速化を支援する、画像解析のクラウドサービス「IMACEL」などの自社製品や、がんなどの疾患を高精度で検知する画像診断ソリューションの研究開発を強化。さらに海外を含めた積極的な事業展開も進めるという。

画像解析クラウドサービス「IMACEL」デモ動画

またエルピクセルは、今回の資金調達と同時に、東レエンジニアリングと人工知能を活用した画像解析技術の研究開発に関する包括提携契約を締結。細胞などの生物の工業製品化を見据え、ライフサイエンス画像解析技術の開発や実用化に取り組んでいく。

VR/AR界のオピニオンリーダー、VR FundのTipatatもTechCrunch Tokyoに来て話すぞ

VR/AR/MR関連の動きは早く、同時多発的に多くのプレイヤーが異なるレイヤーでデファクトの地位を取ろうと走り出している。その状況を表す下のような「カオスマップ」を見たことがある人は多いだろう。VR関連に取り組むプレイヤーのロゴを、ハードウェア、配布プラットフォーム、作成ツール、アプリ・コンテンツ、入力デバイスなどに分けて一覧できるようにした図だ。

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The Venture Reality Fundジェネラル・パートナーのTipatat Chennavasin氏

この図はVR関連にフォーカスした米VCのThe Venture Reality Fund(The VR Fund)が定期的に更新しながら公開しているVR Industry Landsapeだ。この図の作者でVR界のオピニオンリーダーであるVR Fundジェネラル・パートナーで投資家のTipatat Chennavasin(ティパタット・チェーンナワーシン)氏がTechCrunch Tokyo 2016に登壇してくれることになったのでお知らせしたい。VR業界の現段階での見取り図と未来図を示してくれる人物として、ティパタット以上に適した人物はいないだろう。2016年秋の来日ということで、ティパタット自身、PSVRにとても注目していると話している。

ティパタットはモバイルゲームのスタートアップ企業Big Head Modeの共同ファウンダー兼CEOとして自ら起業経験もある投資家だ。VRに注力するためにBig Head Modeを売却してからは、VR関連企業やVR関連アクセレレーターへの投資、助言などをしている。gumiが設立したVR特化のインキュベーションプログラム「Tokyo VR Startups」のメンターとしても知られる。

ティパタットのセッションはTechCrunch Tokyo 2016初日の11月17日の14時開始を予定している。

あのポケモンGOの開発リーダー野村氏が来日してTechCrunch Tokyoに登壇!

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米NianticポケモンGOゲームディレクターの野村達雄氏

日本が関係するテック業界ニュースで2016年に最も世界的に話題になったのは、何といっても「ポケモンGO」だろう。Googleから2015年10月にスピンアウトして、Googleと任天堂、そして株式会社ポケモンから出資と協力を受けてポケモンGOを生み出したのが、米Niantic(ナイアンティック)だ。

スピンアウト時にGoogleからNianticに移籍した日本人が何人かいる。米Naianticの1人目の日本人社員は川島優志氏(アジア統括本部長)で、川島氏はポケモンGOプロジェクトが動き出すために日米それぞれでキーとなる人物を引き合わせた立役者だ。そして2015年にGoogleを退社し、2人目の日本人としてNianticに入社してゲームディレクターとなったのが野村達雄氏だ。その野村氏にTechCrunch Tokyo 2016に登壇いただけることとなったのでお知らせしたい。11月17日、18日のTechCrunch Tokyo 2016の初日17日木曜日の朝一発目のキーノートセッションで、野村氏に話をうかがう。

7月のリリース以降のポケモンGOの快進撃は、TechCrunchをご覧の皆さんなら、もうご存知のとおりだ。読者の多くはポケモンGO片手に外へ飛び出したことだろう。ぼくもそう。寝起きが悪かったはずの小学生のムスメに揺り起こされて、ポケモンGO片手に朝の爽やかな散歩をするようになったりしたものだ。

App Store情報を解析するApp Annieの調査によれば、ポケモンGOはローンチ後3カ月で世界1億ダウンロードを突破。1日当たりの売上が1000万ドル(約10億円)となっていた。売上5億ドル(約500億円)突破に要した日数は、わずか2カ月。これはそれまでの記録だったCandy Crush Sagaの200日強という記録の3.3倍速い達成スピードだったという。驚異的なのはダウンロード数や売上といった数字ばかりでない。9月頭時点で世界中のトレイナー(プレイヤー)たちは総計46億キロメートルも踏破したとNianticは明かしている。地球を11.5万回も回れる計算だ。

TechCrunch読者ならポケモンGOの前身とも言えるNianticの人気ゲーム「Ingress」についてもご存知だろう。ちょっと複雑で壮大なゲームシステムと、近未来SF的世界観で知られるIgressにはコアなゲーマーにファンが多い。Ingressの熱狂的ファンたちが世界中を走り回って撮影した各スポットが今、ポケモンGOの「ポケストップ」となっている。だから振り返って考えてみると、Ingressは「まずコアなゲーマー層を獲得してクラウドソースした」という、ポケモンGOを生むためのステップだったようにも見える。ここにこんな面白いモノがあったのか! というポケストップの発見がポケモンGOの面白さの1つだが、あれはIgressのエージェントと呼ばれるプレイヤーたちが足で稼いだ写真と名称なのだ。

IngressとポケモンGOとの類似点と相違点を見ると、まだまだポケモンGOにはゲームシステムでも、コミュニティーという意味でも発展の可能性がありそうだ。Nianticのジョン・ハンケCEOも9月のブログ投稿で「これは私達が創造したいと思っているゲーム体験のごく一部で、まだまだ始まったばっかりだと思っています」と語っている。

さて、まだこれからの発展が楽しみなポケモンGOだが、ポケモンGOは日米合作という興味深い側面も持っている。Googleのクラウド・インフラやGoogleに買収されたKeyhole(後のGoogle Earth)の位置・画像処理技術、そして任天堂とポケモンが20年にわたって培ってきた文化が合わさって生まれたのがポケモンGOだったからだ。

前出のNiantic川島氏は、今年7月の北米市場リリース時のGoogle+へのコメント投稿で、 ポケモンGOのプロジェクトが2014年4月のエイプリルフールネタにまでさかのぼることを明かしている(このエイプリルフールネタを作ったのが当時Google Mapsのエンジニアだった野村氏だ)。そして川島氏は日米キーパーソンがどう出会ってプロジェクトが動き出したのかを振り返り、アメリカ版ポケモンGOの「公開ボタン」をNianticのジョン・ハンケCEOに促されて押したことなど回想している。

川島氏にしても野村氏にしても、まだ当たるかどうか分からないスピンアウト企業へ移籍するのは大きな決断だったことと思う。Ingressに熱狂的ファンがいる一方、ポケモンGOのヒットについてはリリース前には懐疑的にみる人も少なくなかったから、なおさらだ。野村氏には最初にジョークを思いついたときの話からプロジェクトが転がり始めたころの話、日米で協力してプロジェクトを推進することの難しさや意味、今後創造しようと考えているゲーム体験などについて語っていただければと考えている。特にグローバルで活躍したいと考える若い人たちには、ぜひ聞きに来てほしいセッションだ。

LINEでメール送受信・タスク管理ができるチャットボット「SwingBot」がリリース

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日本のスタートアップであるBHIが、本日10月20日よりLINEでメールの送受信やタスク管理ができるチャットボット「SwingBot」をリリースする。LINE上で動作するパーソナルアシスタントによって、非実用的で重要度の低い情報を自動的に省き、重要度の高い情報だけを届けることが目的だ。

SwingBotの機能はLINEで直接メールの送受信をする機能と、タスク管理機能だ。

LINEで直接メールの送受信、タスク管理も

Gmailやキャリアメールを受け取ると、チャットボットがLINEで通知してくれる。メールアプリに移動することなくLINE上で直接メールに返信することも可能だ。BHI株式会社のCEOである日昔 靖裕氏によれば、「チャット上で直接メールの送受信ができるのは、これが世界初」だという。

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もう一つのメイン機能であるタスク管理機能では、Googleカレンダーなどのサービスと統合することでチャットボットがその日の予定やタスクを教えてくれる。「今日の予定は?」などと質問することでチャットボットが回答したり、「〇〇をタスクに追加」と伝えれば、LINEから直接タスクを追加することが可能だ。
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既存サービスとの連携でチャットボットの精度アップ

スケジュール管理ができるチャットボットのx.aiなど、最近ではプロダクティビティ系のチャットボットが次々に誕生している。そのような状況のなかで、SwingBot独自の強みとは何だろうか。それは、BHIが提供する既存サービスのSwingmail(メールアプリ)とSwingdo(タスクアプリ)の存在だ。

メールアプリのSwingmailでは、メールとFacebookメッセージ、TwitterのDM、アプリ経由でかけたFaceTimeなどの通話履歴を全部まとめて見ることができる。他のメールアプリとの違いは、コミュニケーションする相手ごとにアプリ横断的にすべての履歴を管理することができるという点だ。現在、Swingmailは連携アカウントが計10万、メール総数は6000万通という実績を持っている。Swingmailについては過去にTechCrunchでも紹介している

Swingmailの特徴の一つに、重要度の高いメールを自動で認識するという機能がある。例えば、Swingmailでは「ユーザーがその相手とすでに連絡を取っている」という事実によってメールの重要度を認識するようになっている。このSwingmailと連携してSwingBotを利用することで、チャットボットが重要度の高いメールだけを通知することが可能なのだ。

また、タスクアプリのSwingdoではタスクと位置情報が紐づけられている。これにより、ユーザーの現在位置情報をもとにボットが自動的にタスクの優先順位を変更し、それを通知するということが可能になっている。「将来的には、他社と連携してユーザーの位置をもとにレストランをオススメしたりなどの機能が可能になると考えている」と日昔氏は話す。

つまり、「過去を管理するSwingmail、未来を管理するSwingdo」があるからこそSwingBotが生きてくるのだ。「SwingBotがもつ一番の参入障壁とは、私たちはすでにサーバーサイドで複数のサービスを同期をして、リアルタイムで通知をするという形をすでに構築しているということなのです」。

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また、既存サービスを運用するなかで、当初の想定とは違ったユーザーから受け入れられていることが分かったと日昔氏が教えてくれた。

「最近受け入れられているのが、キャリアメールを捨てられない人達。それと、最近ではMVNOに乗り換えた人たちが結構いて、そこで付与されたメールをSwingmailで連携するという例が多いです。これは、30代の主婦などのユーザー層です」。

既存サービスが必ずしもフリーランサーなどの「仕事をするユーザー」だけでなく、主婦層などにも受け入れられているという点を考えれば、どちらかと言えばプライベート用のチャットという感が強いLINEで動作するSwingBotも広く受け入れられる可能性は高いだろう。

こうしたユーザー層のさらなる取り込みを目指し、Swingmailでは最近、mineo、Y!mobile、 楽天メールなどのMVNOメールとの連携も可能になった。同社は今後もMVNOとの連携を進めていくとしている。

海外へも積極的に展開

既存サービスのSwingmailでは、北米やイギリス、オーストラリア、北欧などの海外にも積極的に展開してきた。今回リリースするSwingBotについても、「言語の問題があるので英語圏に限られてしまうが、海外展開は積極的に狙っていきたい」とのこと。また、それに併せて他のチャットアプリへの対応も進めていく。まずは10月第4週目にSlack、12月にはFacebook Messenger版をリリースする予定だ。

SwingBotは「年内に20万アカウントの獲得」を目標としており、「そこまでくれば、サブスクリプション型や広告型のマネタイズも見えてくる」と日昔氏は語る。

既存サービスおよびSwingBotの更なる拡大のため、同社は11月に資金調達を予定している。

スペースレンタルサービス「Instabase」運営のRebaseがベネフィット・ワンと業務提携

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この数年バズワードになっている「シェアリングエコノミー」。その中でも「スペース」のシェアにチャレンジするスタートアップとして、これまで「スペースマーケット」のスペースマーケットや「SHOPCOUNTER」のカウンターワークス、「eichiii」のエイチなどを紹介してきた。今回紹介するRebaseもそんなスペースのシェアに注目したスタートアップの1社だ。

Rebaseは2014年4月の設立。レンタルスペースの予約プラットフォーム「Instabase(インスタベース)」を提供している。Instabaseでは現在、全国1400件の貸しスペースを掲載。掲載料、登録料はともに無料で、成約ごとに代金の一部を手数料として取得する(金額は非公開だが、業界標準程度とのこと)。

Rebase代表取締役の佐藤海氏

Rebase代表取締役の佐藤海氏

スペースの中心となるのは、10人前後で利用できる会議室、女子会やママ会向けの多目的スペース、ヨガやダンスといった習い事向けのスタジオ、料理・菓子教室向けのキッチンなど「日常でも利用できる汎用的なスペースが中心」(Rebase代表取締役の佐藤海氏)だという。

ローンチしてからこれまでステルスでサービスを展開してきたが、佐藤氏によるとすでに月間数千人ペースでの予約が発生している。少人数のチームということもあるが、すでに1期、2期ともに黒字での運営を続けている。

そんなRebaseだが、10月19日はベネフィット・ワンとの業務提携を発表している。今後はベネフィット・ワンが運営する福利厚生サービス「ベネフィット・ステーション」において、サービス契約者向けに特別価格を設定し、レンタルスペースの予約・利用サービスの提供を開始する。将来的にはベネフィット・ワンと契約する企業を通じたスペースの確保も狙う。

Rebaseは今後、1年間で1万スペースの確保を狙う。現状都心部が中心になるが、将来的には地方展開も検討しているという。

英単語の高速暗記アプリ「mikan」、高校生10万人が使う必須の学習アプリに

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英単語を高速で暗記するためのアプリ「mikan」は、高校生の間で人気を博しているようだ。mikanは2回目となる「全国高等学校英単語選手権」を開催し、さらに多くの高校生ユーザーを獲得したい考えだ。

以前TechCrunch Japanでも紹介しているが、mikanは次々と繰り出す英単語のカードをスワイプして覚えていくアプリだ。知っている単語を右に、知らない単語は左にスワイプする。一回で覚えられず左にスワイプした単語は、ユーザーが覚えるまで何度も登場する。短時間でテンポよくスワイプすることで、効率的な英単語の学習を促進する仕組みだ。

mikanは当初、この「カードめくり学習」を押し出していたが、英単語の意味を4択から選択するテスト式も実装している。ユーザーは設定から自分に合った勉強法を選べるようになった。

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左がテスト式、右がカードめくり学習のUI

今回、mikanは高校生を対象とした「第二回全国高等学校英単語選手権」を開催する。mikanで学習するごとに獲得できるポイント数を学校別で競い、各都道府県から10月末時点で獲得ポイントの多い3校が決勝へと進む。決勝ではテストを実施し、優勝を決める。優勝校には100万円を贈呈し、優勝校の学生は学習した分に応じた金額を受け取る形だ。

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この記事の執筆時点での第二回全国高校学校英単語選手権のランキング

mikanは今年の6月に第一回全国高等学校英単語選手権を開催した。その影響で、mikanの高校生ユーザーは10万人を突破したとmikanの代表取締役、宇佐美峻氏は話す。特に大学受験を目指す進学校で多く利用されているという。第一回選手権の結果も1位は三重県の暁高校、2位開成高校、3位筑波大学附属駒場高校と上位に進学校が並んだ。

選手権に参加するにはmikanに通っている高校を入力する必要があるが、1人でも登録している学生がいる高校の数は4700近いと宇佐美氏はいう。これは全国の9割以上の高校にmikanユーザーがいる計算だという。

通常の広告出稿に100万円を使うより、マーケティング施策として良い効果が得られていると宇佐美氏は話す。

2回目となる今回は賞金100万円に加え、企業が提供するスポンサー賞も用意しているそうだ。レアジョブからは「Skype英会話」コース半年分を10名に、スクールウィズからは「セブ島留学」コースを1名に贈る。また勉強を記録・共有するSNS、Studyplusのスポンサーも受けている。

もともとmikanは高校生向けに特化したアプリではない。今でもmikanのアプリではセンター試験や大学受験を想定した英単語の他にTOEICやTOEFL対策の英単語も用意している。ただ、大学受験に向けて勉強している高校生がアプリの一番のボリュームゾーンとなると考え、高校生にアプリを訴求することにしたと宇佐美氏は話す。

高校生がメインのターゲットとした場合、彼らに直接課金してマネタイズすることは難しいだろう。宇佐美氏はマネタイズについて、学校や塾向けのサービスや機能開発を検討していく計画と話す。例えば、学校で勉強している内容とmikanでの学習コンテンツが連動する機能や教師から生徒に課題を設定する機能などを検討しているという。「mikanで英単語を学ぶだけでなく、高校生たちが英語ができるようになってほしい」と宇佐美氏は話している。

B Dash Campのプレゼンコンテスト「ピッチアリーナ」、優勝は仮想化SIMソリューションのSimgoに

北海道・札幌で10月17〜18日にかけて開催中の招待制イベント「B Dash Camp 2016 Autumn in Sapporo」。2日目にはスタートアップのプレゼンバトル「ピッチアリーナ」のファイナルラウンドが開催された。前日に開催されたファーストラウンドに登壇した全20社から選ばれた6社がプレゼンテーションを繰り広げた。見事優勝を果たしたのは仮想化SIMソリューションを提供するシンガポール発のスタートアップ・Simgoだった。準優勝にはCombinatorが、PayPal賞およびgumi賞にはウィンクルがそれぞれ選ばれた。各社のプロダクトは以下のとおり。

ウィンクル「Gatebox

GateboxはAR、IoTを組み合わせた世界初(同社発表)のバーチャルホームロボット。専用筐体内にバーチャルなキャラクターを表示。ユーザーとコミュニケーションできる。動画は60万再生、メール会員1万人、仮予約者1300人。うち7割が海外だという。すでにプロトタイプで「初音ミク」とのコラボレーションも果たしている。2016年冬に限定販売を開始する予定で、価格は「婚約指輪相当」の数十万円程度だという。今後はキャラクターの種類の拡大も予定している。

Combinator「Refcome

リファラル採用を行う際の施策設計の支援から、人事担当者、社員、社員の友人(採用の対象)向けの機能を提供するクラウドサービス。利用料は月額7万〜10万円程度。正式公開から3カ月で約30社9000人が利用する。今後はタレントマネジメントや組織改善、SNSを通じたダイレクト採用機能などの提供も予定する。

Maverick「ALIVE

韓国発のスタートアップが提供するALIVEは、スマートフォンで利用できる動画の編集アプリ。スマートフォン上でエフェクトをかけ、30秒の動画を作成してSNSに投稿できる。クラウドベースのレンダリングエンジンを採用することで高度なエフェクトを付けることができるという。200カ国、300万件のダウンロード実績を誇る。MAUが50万人、週間コンテンツクリエーターは15万人。アクティブユーザーは半分が米国となっている。

NURVE「NURVE

友人、無人でのオペレーションを実現するVRシステム。CADデータや360度動画などをVRコンテンツ化する。現在は池袋の不動産屋に対して専用端末を提供(初期0円、月額1万8000円)で導入。VRをベースに下内見サービスを提供している。今後は不動産だけでなく、旅行、ウェディング業界への導入も進めている。

Mobingi「Mobingi

東京、米国に拠点を置くMobingi。同社が提供するのはクラウドサービスのメンテナンスを自動化を実現するサービス。クラウドサービス利用時の教育コストや運用コストを最小化する。

Simgo「Simgo

シンガポールに拠点を置くSimgoが提供するのは、モバイルデバイスに利用するSIMカードを仮想化するソリューション。このsimgoを導入することで、時と場所に応じて動的にSIMカードを割り当てることができる。

SPOT、独自センサーにより駐車場の満空情報がスマホで分かる「Smart Park」を提供開始

Smart Park

駐車場上部の空きスペースを店舗として活用する「空中店舗」事業を運営するフィル・カンパニー創業者の松村方生氏が2014年に設立したSPOTは、駐車場IoT事業のスタートアップだ。そのSPOTが10月18日、独自のセンサーで駐車場の満車・空車情報をリアルタイムにスマホアプリに配信するサービス「Smart Park」を発表した。まずはiOS版アプリが提供開始され、Android版アプリの公開も予定されている。

Smart Parkでは、コインパーキングなどの満車・空車を表示するLED掲示板に、ソーラーパネルで充電できる独自センサーを設置し、LEDの表示切り替わりを感知して、無線で満空情報を送信。駐車場の空きを探すユーザーは、駐車場の場所や価格などの情報と合わせて、スマホアプリで空き情報を確認することができる。

Smart Park solar panel

Smart Park センサー

SPOT COOの花房寛氏は「日本国内の駐車場事業者は多岐にわたり、大手10社でも過半数未満で中小零細事業者が多く、細分化されている。また、精算機メーカーもバラバラで、駐車場の満空情報を一元的なデータとして収集するのは、これまで困難だった」と話す。「Smart Parkの満空検知ハードウェアは電源不要で約20分で設置でき、精算機データに頼らず、駐車場事業者をまたいで広くリアルタイムに情報を収集、配信できる点が特徴だ」(花房氏)

スマホアプリでは、ユーザーは地図上の駐車場の場所と空き情報を確認できるほか、駐車予定時間から算出される料金順に、近隣のおすすめ駐車場がチェック可能。また、駐車料金が高くなりすぎる前に出発できるよう、時間で料金をシミュレートした結果に基づき、アラームをセットすることもできる。Smart Park App

花房氏によれば「駐車場の位置や料金、車高・車幅制限などの情報はIMJとの提携により取得している」という。「現在、全国4万件以上の駐車場をアプリで検索でき、そのうち1万件以上について満空情報が確認できる。Smart Parkのセンサーは約1000台設置済みで、残りの満空情報については駐車場事業者との提携で情報を提供してもらい、カバーしている」(花房氏)

Smart Park事業の収益については、駐車場事業者からの手数料などを予定。「3〜4カ月ほど、都心部でのアプリの実証実験を行ったうえで、今後、ユーザーの利用状況がわかるビーコンをアプリへ搭載することや、それらを使ったポイント還元によるタイムセールなど、広告的な事業展開も検討している」(花房氏)

SPOTでは、2015年6月の1億円の増資により、駐車場IoT事業を本格化。満空検知ハードウェアの開発、量産を経て、2016年6月にさらに1.6億円を増資した。この調達により「2017年3月までにSmart Parkのハードウェア5000台を都内に追加設置する」(花房氏)という。「精算機データでは、稼働状況を把握できるまでにタイムラグがあるところを、Smart Parkならリアルタイムで満空状況のモニタリングができるので、時間別の価格設定など、駐車場の収益向上につながる対策を早いサイクルで実施することができる点も事業者にとって強みになる。また将来的にはコインパーキングだけでなく、商業施設や店舗の駐車場などとも連携し、駐車スポットの総合ポータル化を目指す」(花房氏)

日本国内の時間貸し駐車場は駐車場件数、台数ともに増え続けており、コインパーキング市場は約1兆円。一方で、ドライバーは駐車場探しに平均10分〜20分かけているという。花房氏は「駐車場探しにかかる無駄な時間や狭い道で探し回ることによる事故、CO2排出量などを、IoTを利用した“スマートパーキング”で削減することができると考えている」と話す。Technavioのスマートパーキング市場に関するレポートによれば、欧米各都市でスマートパーキングサービスが立ち上がり、市場も拡大している。「自動運転社会へ向かう時流の中で、都市の駐車場の満空状況や価格などの情報もセットで考えられるべきだ。自動運転社会のプラットフォームとして、駐車場IoTはスマートシティを構成する要素となるだろう」(花房氏)

パナソニック、Tesla向け太陽光発電システム生産へ―TeslaのSolarCity買収承認が条件

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Teslaとパナソニックは家庭用の太陽光発電(PV, photovoltaic)システムの生産で提携することに合意した。 このシステムはTeslaの家庭用Powerwall、企業向けPowerpackバッテリー・システムに給電することができる。現時点ではこの契約に拘束力はないが、今後TeslaのSolarCity買収が株主に承認され、効力を得るようになればその限りではない。

SolarCity/Teslaの合併が最終的に効力を得ればパナソニックは2017年にバッファローの工場でTesla向けPVシステムの生産を開始する計画だ。Teslaではこうした発電部品の供給に関しては長期的な提携を考えているという。パナソニックはすでにTeslaの自動車および家庭、企業向けエネルギー蓄積システムに使われるバッテリーを生産しているパートナーだ。

公式ブログでTeslaは同社とパナソニックとの継続的なパートナー関係は「家庭用の維持可能な再生可能エネルギー・システムを作り上げ、しかもユーザーの負担を最小限に押さえるという大きな目標を達成する上で重要なもの」と書いている。

TeslaとSolarCityの経営陣はどちらもTeslaブランドでの両社の統合を望んでいる。ただしこの買収提案には一部の株主が反対の訴訟を起すなどの問題が起きている。一方、TeslaのCEOでSolarCityの会長を務めるイーロン・マスクは10月28日に、電気自動車を供給するTeslaと太陽光発電事業のSolarCityがTeslaブランドの下に合併することがいかに両社にとって不可欠であるか説明することを計画している。TeslaとSolarCityの株主は11月17日にTeslaのSolarCity買収に対する賛否の投票を行う。

[原文へ]

(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

興味あるのは「SNS」、一番怖いのは「固定化すること」——取締役・舛田氏が語るLINEのこれから

B Dash Ventures代表取締役社長の渡辺洋行氏(左)、LINE取締役CSMOの舛田淳氏(右)

B Dash Ventures代表取締役社長の渡辺洋行氏(左)、LINE取締役CSMOの舛田淳氏(右)

10月17日から18日にかけて北海道・札幌で開催中の招待制イベント「B Dash Camp 2016 Fall in Sapporo」。初日最初のセッションにはLINE取締役CSMOの舛田淳氏が登壇。B Dash Ventures代表取締役社長の渡辺洋行氏とのセッションを繰り広げた。

日本、NY同時上場の意味

2016年7月に日本(東証1部)、ニューヨーク(ニューヨーク証券取引所:NYSE)に同時上場したLINE。渡邊氏は舛田氏に改めて同時上場の意図を尋ねた。

「2016年の年頭までは悩みに悩みまくっていた。東証とNYSE両方なのか、東証だけに上場するのか。テクニカルなこと(株価上昇など)をしたかったという観測もあったが、全然そんなことはない」

「仮に今の経営陣がくたばったとしても——呪詛のように『LINEという会社は世界を意識しないといけない。10年後20年後にもそういう意識を持たさないといけない』と考えた。普通に考えたら『日本だけでいいんじゃないか』と(今後)我々以外の経営者が言うかも知れない。それでは困るのでニューヨークとの同時上場をした。これまで無茶をしてきたので、(上場も)無茶をするのがLINEらしいところもある。海外の投資家の理解度も高い。Twitter、Facebookと同じようなポテンシャルで見てもらっている」(舛田氏)

同時上場については、決定しなければいけない期限まで話し合ったのだという。「明日決めるという日の前日も、仕事の帰り際に出澤(LINE代表取締役社長CEOの出澤剛氏)と『どうする』と話していた。全ての選択肢は持ち続けた」(舛田氏)

そして迎えた7月15日の日米同時上場。ニューヨークで上場を迎えた舛田氏は、その様子を振り返る。

「同時上場ではなく、アメリカで上場するのもアリだと思う。文化の違いというのもあるが、チャレンジする人がサクセスするということ対して、『ウェルカム』と言ってくれる国だ。上場日、マーケットの前で車を下りた瞬間から、ある種のショーが始まっている。映画のように掃除をする人や警備をする人から『今日はいい日になるといいね』言われたり、ハイタッチされたりする」

「(取引所も)もう全てシステム化されているので、本来はディールの場に人が必要ない。ただ初値が付くまでは、(スタッフが)『40ドルだ。(LINEの株価は)そんな価値ではない』と言ってくれる。我々がしびれを切らすと『大丈夫だ。水を飲め』と語りかけるなど、エンターテインメントとして演出してくれる。TIMES SQUAREのショーなども決して我々が仕込んだのではない。セレモニーをやってもらった」(舛田氏)

一方で東証での上場については、出澤氏はじめとして参加者から「少し寂しかった」という声が出たそうだ。舛田氏は「ちょっとした演出でチャレンジする人(のモチベーションが)上がる。その日1日誇れれば、継続して成長するプライドも持てるのではないか」と提案する。

LINEは上場して何を目指す?

LINEは上場以降、「スマートポータル」という構想を掲げてサービスを展開している。渡辺氏はその進捗について舛田氏に尋ねる。舛田氏は次のスライドをもとに現状を語る。

LINEの「スマートポータル」構想

LINEの「スマートポータル」構想

「コンテンツやメディアの領域で1番成長著しいのはLINE NEWS。10代、20代はYahoo! ニュースに迫る勢い。MAUは4100万人で、スマートポータルのメディア戦略の中核中の中核。LINE LIVEは動画プラットフォーム。よく比較されるのはAbema TVだが、全然違うことを考えている。我々はスマホらしいプラットフォームを考えた時に、縦(縦向き動画のUI)だろうと考え、縦向きでコミュニケーションしやすいプラットフォームとして舵を切った。LINEのプッシュ通知などもあるので視聴も配信も増えてきた」

「(サブスクリプション型音楽配信サービスの)LINE MUSICも着実に伸びている。通常のサブスクリプションだとなかなか厳しいところがあったので、LINEの呼び出し音などに(利用できるように)力を入れたところ、サブスクライバーの数も売上も伸びてきた」(舛田氏)

このほか、インフラの面でも、LINE Payやメッセージング、BOT APIなどの提供も進めている。舛田氏は、LINEの本質は「カンバーセション」の会社だと続ける。「日本もタイも台湾もだが、そこで(メッセージングサービスの)リーディングカンパニーは間違いなくLINE。そこにUI、データ、カンバセーションといったものをOSのようにしてさまざまに展開しようとしている」(舛田氏)

スマートポータル構想について語る舛田氏。だが、渡辺氏からはより具体的な戦略について知りたいという質問が飛ぶ。

「さっきニュース(LINE NEWS)の話をしたが、ポータルサイトで必要なコンテンツというのはいろいろある。だが(ポータルと)スマートフォンを掛け合わせた時に必要なバーティカルなコンテンツやサービスはまだLINEにはない」(舛田氏)

LINEにまだ欠けているコンテンツやサービス、その1つの答えが先日発表された「出前館」運営の夢の街創造委員会の株式取得だろうか。舛田氏は「(コンテンツと比較して)サービスに近いところだがそうだ」と語る。

さらに、「コンテンツやメディアはまだ(LINEに)ない」として、他社との提携、株式の取得、協業などに力を入れていくとした。同時に、内製して開発していた内容についても、テクノロジー系のスタートアップと組んで補完していくと語った。「出資もするし、必要であれば100%(LINEの)中に入ってもらうものもある」(舛田氏)

舛田氏はLINEの戦略は分かりやすいと語る。「引いたところから見ると、光が強い(注目しており、サービスを提供しているという意味)ところ、弱いところがある」(舛田氏)。そしてまだ光が当たっていない領域については、すでに外部と連携に関する話をしていたりするとした。ビジネスとしては広告事業にも注力していくが、さらにLINEらしい非連続のチャレンジも続けていくという。

「例えば『NEXT LINE』というところにも張っていこうとしている」(舛田氏)

一番怖いのは「固定化すること」

その「NEXT LINE」としてチャレンジする領域の1つが「SNS」だという。LINEは現在、動画SNSのSNOWに出資したり、写真SNSの「B612」を提供したりしている。舛田氏は「LINEは基本的な連絡をすべてやっているのでアクティブ率は落ちない」とした上で、InstagramやSnapchatを例に挙げつつ、「ただ、(LINEが)みんなにリーチしてるからこそ、逃げたくなるようなもの(コミュニケーション)もある。そういうニーズをどうくみ取るかが大事」と語る。今後もこの領域でのチャレンジがあるということだろうか。

「社内で言っているが、一番怖いことは固くなること、固定化すること」——舛田氏はこう続ける。LINEは1兆円規模の会社になったが、ここまでのプロセスでの強みが、今後は弱点になることはある。そうやって終わっていく企業は多い。なのでどこまで固くならず、変な前提を持たず、新しいことにチャレンジできるのか(が大事)。IPOしたからこそ、きちんとやるべきだと思う。

VR特化の広告ネットワークを手がけるVRizeが資金調達、VR動画アプリ制作用CMSも提供へ

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8月にVRコンテンツ特化のアドネットワーク「VRize Ad」のクローズドベータテストを開始したVRize。同社が10月17日、B DASH VENTURES、Speeeを引受先とした第三者割当増資を実施したことを明らかにした。調達額や出資比率は非公開。VRizeはこれまでにTLM、East Venturesから資金を調達しているが、累計での資金調達額は数千万円後半になるという。同社はこの資金を元に開発体制の強化を図るとしている。

VRizeでは、今回の発表にあわせてVR動画アプリ制作環境の「VRize Video」を発表している。このVRize Videoはマルチプラットフォーム対応のVR動画アプリ制作用CMSで、作成したアプリでは360度動画の閲覧、VR空間内に設置した大型スクリーンによる2D動画の閲覧、ライブストリーミングの配信などが可能。解析機能も提供するとしている。VRizeにとっては、CMSにアップロードされる共通のフォーマットの素材でVR動画アプリを制作できるというコスト上のメリットもあるようだ。料金は問い合わせ。

VR特化のアドネットワークを提供するVRizeがVR動画アプリの制作環境までを提供する背景には、広告ネットワークの配信先を拡大するという意図があるようだ。VRize代表取締役の正田英之氏に聞いたところによると、VRize Adの発表以降、同社には問い合わせは多く来ているのだそう。だが一方で広告の配信先——すなわちVRのコンテンツ自体——はまだまだ多くないという状況。同社としては創業時からアドネットワークの提供とあわせてVRコンテンツの制作環境までを展開することを検討していたのだという。

「『VRize』という会社名のとおり、VRを普及させていくというミッションがベースにある。その実現のためにはマネタイズの手法を確立することと、優れたVR体験を提供するアプリ作りを支援するという2つが必要だと考えている。VRize Adは前者、VRize Videoは後者のソリューションに当たる」(正田氏)