香港のイベントプラットフォームEventXがシリーズBで約2.8億円調達、HTCとVRで協力も視野に

EventXのCEOであるSum Wong(サムウォン)氏(画像クレジット:EventX)

各国が新型コロナ規制を緩和するにつれ、人々の活動は対面式に戻りつつある。しかし、バーチャルイベント分野は、少なくともアジアにおいては、投資家を魅了し続けている。香港を拠点とするイベント管理プラットフォームEventXは、香港時間2月16日、シリーズBでさらに800万ドル(約9億2000万円)を調達し、このラウンドで確保した総額を1800万ドル(約20億8000万円)に引き上げた。

今回の資金調達は、Hillhouse Capital(高瓴資本)のアーリーステージ投資部門であるGL Ventures(高瓴創投)が主導した。これまでの投資家には、Hillhouse Capitalの元パートナーが設立した投資会社Gaocheng Capital(高成资本)や、近年VRに力を入れている台湾の大手電機メーカーHTCなどが含まれている。EventXは、ポストマネー評価額を公表していない。

今回のシリーズBは、EventXが設立されてから8年後に実施された。これは、中国本土のバーンレートが高いインターネット企業に比べて、異例の忍耐強い資金調達ペースだ。同社は、ユーザー登録のサポートから参加者のバーチャル名刺交換まで、現実のイベントを管理することからスタートした。2020年に新型コロナウイルスが出現したとき、デジタル化のチャンスだと考え、ウェビナーやバーチャル展示会などのライブイベントをサポートするHopin(ホピン)のような新サービスを開発した。現在では、主催者がイベントを通じて新たな顧客やパートナーを開拓するリード生成機能も備えている。

対面式イベントを封じるパンデミック規制のおかげで、Hopinは最近の記憶では最も急速に成長した企業の1つとなった。しかし先週、ロンドンを拠点とする同スタートアップは、ポストコロナにバーチャルイベントへの需要が鈍化すると判断し、スタッフの12%を解雇したと報じられた。パンデミックはEventXにも恩恵をもたらし、同社プラットフォームの2021年第4四半期のオンライン参加者数は120%増加した。また、ライブイベントが元通りになったとしても、同社は長年続いてきたオフラインビジネスを維持することができると考えています。

これまでに、同社はアジアを中心に100以上の都市でイベントの開催を支援し、そのプラットフォームには500万人以上の参加者が訪れている。同社の100人のチームは、香港、シンガポール、日本、韓国、台湾に分散している。

同社は今回の資金を、買収、製品開発、人材採用、アジア(特に台湾と東南アジア)での事業拡大に充てる予定だ。また、投資家であるHTCと協力して、イベント体験にVRソリューションを導入することも視野に入れている。

画像クレジット:

原文へ

(文:Rita Liao、翻訳:Aya Nakazato)

香港のイベントプラットフォームEventXがシリーズBで約2.8億円調達、HTCとVRで協力も視野に

EventXのCEOであるSum Wong(サムウォン)氏(画像クレジット:EventX)

各国が新型コロナ規制を緩和するにつれ、人々の活動は対面式に戻りつつある。しかし、バーチャルイベント分野は、少なくともアジアにおいては、投資家を魅了し続けている。香港を拠点とするイベント管理プラットフォームEventXは、香港時間2月16日、シリーズBでさらに800万ドル(約9億2000万円)を調達し、このラウンドで確保した総額を1800万ドル(約20億8000万円)に引き上げた。

今回の資金調達は、Hillhouse Capital(高瓴資本)のアーリーステージ投資部門であるGL Ventures(高瓴創投)が主導した。これまでの投資家には、Hillhouse Capitalの元パートナーが設立した投資会社Gaocheng Capital(高成资本)や、近年VRに力を入れている台湾の大手電機メーカーHTCなどが含まれている。EventXは、ポストマネー評価額を公表していない。

今回のシリーズBは、EventXが設立されてから8年後に実施された。これは、中国本土のバーンレートが高いインターネット企業に比べて、異例の忍耐強い資金調達ペースだ。同社は、ユーザー登録のサポートから参加者のバーチャル名刺交換まで、現実のイベントを管理することからスタートした。2020年に新型コロナウイルスが出現したとき、デジタル化のチャンスだと考え、ウェビナーやバーチャル展示会などのライブイベントをサポートするHopin(ホピン)のような新サービスを開発した。現在では、主催者がイベントを通じて新たな顧客やパートナーを開拓するリード生成機能も備えている。

対面式イベントを封じるパンデミック規制のおかげで、Hopinは最近の記憶では最も急速に成長した企業の1つとなった。しかし先週、ロンドンを拠点とする同スタートアップは、ポストコロナにバーチャルイベントへの需要が鈍化すると判断し、スタッフの12%を解雇したと報じられた。パンデミックはEventXにも恩恵をもたらし、同社プラットフォームの2021年第4四半期のオンライン参加者数は120%増加した。また、ライブイベントが元通りになったとしても、同社は長年続いてきたオフラインビジネスを維持することができると考えています。

これまでに、同社はアジアを中心に100以上の都市でイベントの開催を支援し、そのプラットフォームには500万人以上の参加者が訪れている。同社の100人のチームは、香港、シンガポール、日本、韓国、台湾に分散している。

同社は今回の資金を、買収、製品開発、人材採用、アジア(特に台湾と東南アジア)での事業拡大に充てる予定だ。また、投資家であるHTCと協力して、イベント体験にVRソリューションを導入することも視野に入れている。

画像クレジット:

原文へ

(文:Rita Liao、翻訳:Aya Nakazato)

中国のスマート製造業に注力するAInovationが香港でIPOを申請、李開復氏やソフトバンクも支援

中国では、人工知能に金銭を支払う顧客を見つけようとする情熱が続いている。中国のコンピュータビジョンと機械学習のスタートアップ企業で、Kai-Fu Lee(カイフ・リー、李開復)氏のSinovation Ventures(シノベーション・ベンチャーズ)とSoftBank(ソフトバンク)が出資するAInnovation(エーアイノベーション、創新奇智)は、中国の巨大な製造業を自動化しようとしている。設立からまだ4年しか経っていないこのスタートアップは、香港で株式公開の申請を行っており、その目論見書では、今後数年のうちに中国の産業お青写真で重要な位置を占めるスマートマニュファクチャリングの商業的実行可能性を垣間見ることができる。

2010年代、SenseTime(センスタイム)やMegvii(メグビー)などのコンピュータビジョン企業は、中国の公的なセキュリティのインフラに顔認証技術を提供することで、大成功を収めた。しかし、競争によって価格が下がり、監視技術をめぐる米国の制裁による圧力が強まるにつれ、中国の初期のAIスタートアップ企業は多角化を模索している。SenseTimeは教育分野に進出し、Sinovation Venturesの支援を受けるMegviiは無人倉庫保管ソリューションを事業に加えた。

関連記事:米小売大手が中国企業の防犯カメラを店舗から撤去、人権侵害を指摘される

AInnovationは、AIアプリケーションの分野では若い企業に入る。目論見書によると、IBM、SAP、Microsoft(マイクロソフト)での経験を持つCEOのXu Hui(シュー・フイ)氏が共同で設立したこのスタートアップは、2021年9月までの9カ月間に、収益の半分を製造業の顧客から得ているとのこと。同社のコンピュータビジョンモジュールとカスタマイズされたサービスは、溶融した鉄の輸送(写真)、自動車の生産ラインにおける異常の検出、半導体製造での欠陥発見などの場面で使用されている。

収益の3分の1は金融サービスによるもので、残りは小売業、通信業、その他の産業から得ている。

AInnovationのような企業は、研究室で機械学習モデルを実行する博士号取得者を雇うだけでは不十分だ。文字通り自ら身体を動かし、実際に顧客の工場を訪問して、鉄鋼メーカーや衣料品メーカーにとってどのような自動化が最も良い利益を生むのかを学ぶ必要がある。そこで同社は、主要なパートナーである大手製鉄グループのCISDIおよび国有建設会社のChina Railway No.4(中鉄四局集団有限公司)と、それぞれ2つの合弁会社を設立した。

AInnovationのコンピュータビジョン技術を用いてネジの欠陥を検出する(画像クレジット:AInnovation)

AInnovationはまだ、スマートシティの先行企業ほどの収益を上げていない。2020年の売上は4億6200万元(約83億2000万円)だったが、SenseTimeは同年に34億元(約612億円)を得た。しかし、AInnovationは急速に成長している。2021年9月までの9カ月間で、その収益は5億5300万元(約99億6000万円)に達し、2020年の合計額を上回った。

とはいえ、課題もある。1つは、同社がいくつかの重要な顧客に大きく依存していることだ。2019年と2020年に同社が5つの大口顧客から得た収益は、それぞれ約26%と31%を占めている。

中国の初期のAI参入企業が顔認識に集まったのには理由がある。そのほとんどがソフトウェア事業であるため、儲かるからだ。例えばSenseTimeの利益率は、2018年の約57%から2020年には70%以上に上昇した。

AInnovationも、かつてはソフトウェアファーストの企業だった。目論見書によると、同社の売上総利益率は、2018年には63%だったが、2019年には31%、2020年にはさらに29%まで急落している。これは、同社がソフトウェアの販売を中心としていたビジネスから、より多くのハードウェア部品を含む統合ソリューションに軸足を移したことが原因だ。ハードウェアは一般的に材料費がかさむ。また、収益性が低下したのは、顧客基盤を拡大するために「競争力のある価格で提供」したためだという。AIビジネスでは、データがその燃料となる。

どちらもまだ不採算事業である。AInnovationは、2019年に約1億6000万元(28億8000万円)、2020年に約1億4400万元(25億9000万円)の調整後純損失を計上している。これに対してSenseTimeは、同時期に10億元(約180億円)、8億7800万元(約158億円)の調整後純損失を計上している。

中国の製造業の各分野は、簡単に数十億規模の市場機会となる。問題は、AInnovationが持続的な成長と健全なビジネスモデルへの道を見つけることができるかどうかだ。

Bloomberg(ブルームバーグ)による事前の報道によると、AInnovationの株価は仮条件レンジ下限の1株あたり26.30香港ドル(約385円)で設定されているという。この価格であれば、同社は香港でのIPOによって約1億5100万ドル(約172億円)を調達することになる。

画像クレジット:AInnovation

原文へ

(文:Rita Liao、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

Web3のパワープレイヤー「アニモカブランズ」大解剖

ここ1年間程度でAnimoca Brands(アニモカブランズ)という名を耳にしたことがないという読者は勉強不足だ。デジタルエンターテインメント、ブロックチェーン、ゲームなどさまざまなコンテンツを提供し、香港に拠点を置く創業8年目、従業員600人の同社は、ますます多くの関係者が次世代のウェブと考える世界で最も活動的な1社となっている。

LAを拠点とするFan Controlled Football League(ファン・コントロールド・フットボール・リーグ)は、ファンがチームに関する決定をリアルタイムで投票するスポーツリーグで、米国時間1月13日、Animocaが共同リードするシリーズAの資金調達で4000万ドル(約45億9000万円)を調達したと発表した。スマートフォンやタブレット向けのゲーム開発からスタートしたAnimocaは、2017年頃にブロックチェーンゲームに進出して以来、150社以上の企業に投資を行っている。

それはまるで運命の出会いのようなもので、Animocaの創業者であるYat Siu(蕭逸)氏にとっては一目惚れともいえるものだった。当時Animocaは、ベンチャースタジオのAxiom Zen(アクシオム・ゼン)とオフィスを共有していたFuel Powered(フュエル・パワード)という会社を買収しようとしていたのだが、その際Axiomが取り組んでいた CryptoKitties (クリプトキティーズ)というブロックチェーンゲームに蕭氏は強く惹かれたのである。Axiomの創業者であるRoham Gharegozlou(ローハム・ガレゴズロウ)に助言をしていたFuel Poweredの共同創業者、Mikhael Naayem(ミカエル・ナイエム)を通してその存在を知ったという。

その直後の2018年初頭、AnimocaはAxiom Zenと1年更新の独占ライセンスおよび販売契約を結び、CryptoKittiesの出版契約を結ぶことになる。これが大反響を呼んだため、ナイエム氏とガレゴズロウ氏はチームを組んでDapper Labs(ダッパー・ラブズ)を設立し、Animocaが初期バッカーとなったのだ。現在Dapper LabsはNBA Top Shot(NBAトップショット)マーケットプレイスでさらに有名になっている。

それ以来、Animocaはすばらしい業績を上げている。パブリッシャーとして、また最近ではブロックチェーン資産やトークンの買い手としても活動しており、その膨らみ続けるポートフォリオには、10月に30億ドル(約3436億8000万円)の評価額で約1億5000万ドル(約171億9000万円)の資金調達を完了した世界的大ヒット作Axie Infinity(アクシー・インフィニティ)の開発元Sky Mavis(スカイメイビス)や、プレイヤーがゲーム内資産を作成して収益化できるゲームで、11月にSoftBank(ソフトバンク)が主導して9300万ドル(約106億6000万円)でシリーズBの資金調達を完了した人気メタバーススタートアップThe Sandbox(ザサンドボックス)などが含まれている(2022年1月初旬時点で、ユーザーがSandboxで購入できる最も小さな土地の価格は1万1000ドル[約126万円]以上だった)。

またAnimocaは、現在133億ドル(約1兆5218億円)もの評価を受けているNFTマーケットプレイスOpenSea(オープンシー)に早くから出資し、2021年ブレイクしたプロジェクトの1つであるBored Ape Yacht Club(ボアード・エイプ・ヨット・クラブ)と協力してBored Apeをテーマにしたゲームを制作するなど、常に活動的な姿勢をアピールしている。

こういったことすべてが積み上げられ、1月初旬に蕭氏と話したところによると、2021年11月下旬の時点ではAnimocaの保有資産は約160億ドル(約1兆8297億円)になっていたという。これはAnimocaがSequoia Capital China(セコイア・キャピタル・チャイナ)も参加した6500万ドル(約74億3000万円)の資金調達ラウンドで22億ドル(約2516億円)と評価されてから間もなくのことである。

興味深いのは、Sequoiaと残りのシンジケートが上場株式を買い上げたことだ。蕭氏の説明によると、Animocaは以前オーストラリア証券取引所で取引されていたのだが「Animocaが暗号を扱っていることが気に入らなかった」ため、2020年3月に上場廃止にされたという。現在同社は非上場公開会社として運営されているため、自社サイトやメーリングリストを通じて株主とコミュニケーションをとることができ、約2500人の株主が他の個人に株式を個人的に売却することができるのだ(誰がそれを所有しているかを知ってさえいれば買うことができる)。

一方、OpenSeaとDapper Labsの株式は同社の資産の一部とみなされており、その価値は今のところ理論上のものとなっている。「貸借対照表科目と同じで、基本的にAnimoca Brandsの資本価値に回っていきます」と蕭氏は話している。

Animocaの道のりに障害がなかったわけではない。米国時間1月10日、スポーツNFTを鋳造するAnimocaの子会社にセキュリティ違反があり、ユーザーは1870万ドル(約21億3700万円)相当のトークンを失い、子会社のトークン価格は92%も暴落してしまった(この華麗な新世界には独自のリスクがついてまわるのだ)。

それでも、現在Animocaのグループ執行会長兼マネージングディレクターである蕭氏は明らかにWeb3の信奉者であり、完全な分散型ビジネスを実現するための実用性を含め、最近よくささやかれている批判をあまり信用していない。

例えばBox(ボックス)のCEOであるAaron Levie(アーロン・レヴィ)氏は最近Twitter(ツイッター)で、コミュニティの意見に依存する分散型組織が常に合意形成の試みに追われていては、どう競争できるのかと疑問を呈している。

このことについて問われると、蕭氏は「全ユーザーが先見の明があるわけではありません。比較するものがあれば、何がベストなのかわかるようになるでしょう」と答えている。

蕭氏によると、現在Animocaは2022年に実行する可能性のある投資やパートナーシップに重点を置いており「ゲームスタジオをブロックチェーン上に移行させ、エンドユーザーに本質的にデジタル財産権を提供する」ためにゲームスタジオの買収を続けていると話している。また投資面では、NFTのようなデジタルプロパティのネットワーク効果を発展させ、成長させることができるインフラに惹かれているとも伝えている。

それがどういうことかというと「融資、DeFi、細分化、プロトコル、そしてレイヤー1(ブロックチェーン)、レイヤー2(ブロックチェーン)」なのである。実際Animocaは、急成長中の企業が成長を続けるために必要な「クロスチェーン」を重要視しているのだ。

「企業がゲーム資産やNFTを立ち上げる際、例えばEthereum(イーサリアム)でも立ち上げて欲しいのですが、同時に(Dapper Labsによって設計されたブロックチェーンの)Flow(フロー)も検討するべきなのです。またSolana(ソラナ)でも開始して欲しいですし、HBAR(ヘデラハッシュグラフ)も検討して欲しいのです。つまり、できるだけ多くのプラットフォームかつできるだけ多くのプロトコルで、資産を展開することを推奨しているのです。それはこの独立性が非常に重要であると私たちは考えているからで、チェーンを国と同じように考えています。もし、ある国でしか製品を発売できないのであれば、その国の文化や可能性に制限されることになるからです」。

オーストリアで中国系として育ち、若干10代でドイツのAtari(アタリ)に就職し、その後同氏が初めて立ち上げたスタートアップを魚油会社に売却した蕭氏との対談は、ここから聞いていただける。Facebook(フェイスブック)のメタバース計画、Jack Dorsey(ジャック・ドーシー)氏のWeb3に関する考え、中国が境界線を引き直す中で香港のビジネス界がどのように変化しているかなど、さまざまなことを話し合った。

関連記事:イーサリアムよりはるかに高速だと主張するトップ暗号資産投資家たちに人気のブロックチェーンプラットフォーム「Solana」

画像クレジット:South China Morning Post / Getty Images

原文へ

(文:Connie Loizos、翻訳:Dragonfly)

AndroidのゲームをWindows上で楽しめる「Google Play Games for PC」がベータテスト開始、香港・韓国・台湾で

米国時間1月19日、Googlは同社が新たに発表したGoogle Play Games for PCプロダクトの非公開ベータテストを香港、韓国、台湾の3つの海外市場で開始する。PCアプリケーションGoogle Play Gamesは2021年12月のThe Game Awardsイベントで発表され、Google Playのゲームを、これまでのモバイルとタブレットとChromeOSに加えて、Windows PCでプレイできる。対応するPCはラップトップとデスクトップの両方で、Androidスマートフォンなど別のデバイス上で途中でやめたゲームをコンピューター上で再開することもできる。

同社は前に、そのPCアプリにアクセスできる最初の市場を発表しており、その時期は2022年の初めと予想されていた。しかし正確な日付は未発表だった。

ベータにアクセスできたテスターは、人気のモバイルゲーム「モバイルレジェンド:バンバン」や「サマナーズウォー」「State of Survival:The Joker Collaboration」「Three Kingdoms Tactic」などの人気モバイルゲームをトライできる。これらはすでに、1カ月のプレイヤー数が数億に達している。ベータテスターがアクセスできるのは、Googleによると約25のゲームだ。

そのPCアプリは、ユーザーがカタログを閲覧でき、ゲームをダウンロードして大型画面でプレイできる。しかも、マウスやキーボード入力の便利さは失われていない。一方、Googleの発表によると、ユーザーのゲームプレイがどこまで進んだかは複数のデバイス間で同期され、PCでプレイしても前からのプレイポイントは継続される。

 

このPCアプリのローンチの前には、Microsoft(マイクロソフト)によるWindows 11のAndroidアプリ対応があった。それはAmazon(アマゾン)との提携でAmazon独自のAmazonアプリストアを使うやり方で、クロスプラットフォームなゲームプレイの需要と要望の過熱に応える措置だった。しかし今回のGoogle Play Games for PCアプリケーションはMicrosoftとのパートナーシップはゼロで、あくまでもGoogle独自のアプリケーションであり、Google内で開発され配布される。またゲームストリーミングサービスでもない。プレイヤー自身がゲームを自分のコンピューターにダウンロードしてプレイするものだ。

関連記事:マイクロソフトがWindows 11ベータ版でAndroidアプリのテストを開始

ベータ版の公開にともない、GoogleはAndroidの開発者向けに、既存のゲームをWindows PCと互換性を持つように最適化するための詳細を公開するとしており、これによりPCアプリが提供する拡張アクセスを利用できるようになる。Googleは2021年12月、Windowsアプリの登場により、Google Playゲームは、プラットフォームを問わず、25億人の月間アクティブユーザーを抱えるゲームエコシステムに到達することができると発表していた。

Googleはベータ版への参加に関して、開発者向けウェブサイトを開設しベータ版の継続にともなうアップデートを受け取るためのオプトインができるようにしている。

画像クレジット:Google

原文へ

(文:Sarah Perez、翻訳:Hiroshi Iwatani)

香港のグローバルアクセラレーターBrincがシリーズBで約34.2億円を調達、日韓印・シンガポールにも拡大検討

ここ数回、香港に行った際にBrincの本部を訪れる機会があったが、このアクセラレーターが扱うスタートアップの幅広さに驚かされた。私は、主にコンシューマー向けハードウェア企業を通してこの組織のことを知っていたからである。2014年に設立されたときには、その分野を主な焦点としていた。

Brincはその後、食品、健康、ディープテックなどに大きな焦点を当て、活動の範囲をかなり拡大した。Web3やNFTのようなカテゴリを視野に入れ、今後も範囲を広げていくという。香港に拠点を置くAnimoca Brandsは、この動きで大きな役割を果たしているようだ。2020年、両社はブロックチェーン / NFTアクセラレーターのLaunchpad Lunaを立ち上げた。

Animocaはまた、Brincの3000万ドル(約34億2000万円)のシリーズBラウンドを主導しており、同アクセラレーターはこの資金で提供プログラムの拡大、拠点の追加、従業員の追加雇用を予定している。Brincの共同創業者であるBay McLaughlin(ベイ・マクラフリン)氏は、TechCrunchとの電話インタビューで日本、韓国、シンガポール、インドを含むアジアの多くの市場を潜在的拡大のターゲットとして挙げ、さらに中国での存在感を高めることを目指していると明らかにした。

また、11月にはラテンアメリカで初となるブラジル事務所を開設するとのこと。現在、Brincは7つのオフィスを持ち、合計12拠点でスタッフが働いている。

Animocaは、シリーズBへの参加に加え、Brincを通じて、VCファンドのような形でスタートアップ企業に1億ドル(約113億9000万円)を直接投資する予定だ。

Animocaの創業者兼会長であるYat Siu(ヤット・シウ)氏は、このニュースに関連したリリースでこう述べている。「Brincは、新興市場と技術のためのスタートアップアクセラレーションの代表的な存在であり、その目標は、未来とサステナビリティをしっかりと見据えています。我々は、伝統的な分野と成長分野でのブロックチェーン導入によるオープンな未来という共通のビジョンを持っており、そのアクセラレーションプログラムから生まれるイノベーションに期待しています」。

画像クレジット:Brinc

原文へ

(文:Brian Heater、翻訳:Aya Nakazato)

元マイクロソフト執行副社長のハリー・シャム氏が率いる研究機関「IDEA」が深圳に誕生

IDEA(The International Digital Economy Academy、国際デジタル経済アカデミー)」は、2020年、香港との国境の川を挟んだ深圳の地の超近代的なオフィスビルの中にひっそりとオープンした。

香港とは地理的に離れているが、厳密には香港と深圳にまたがる「深圳-香港・革新技術協力区」という特別なエリアに位置する研究機関だ。名前を見れば一目瞭然だ。これは、深圳と香港の政府が、北京の支援と有利な政策を受けて、科学技術の研究を共同で行うためのものだ。

IDEAは、サッカー場540面分に相当する3.89km²の特区内に設立された組織の1つで、Harry Shum(ハリー・シャム)氏の発案によるものだ。著名なコンピューター科学者であるこの人物は、2013年から2019年までMicrosoft(マイクロソフト)の執行副社長を務めた他、Microsoftの米国外で最大の研究部門であるMicrosoftリサーチアジアを共同で設立した。

Microsoftの元同僚であるKai-Fu Lee(カイフー・リー)と同様に、シャム氏はAIの研究面とビジネス面の両方で活躍していた。現在、IDEAにいる彼のチームは「社会的ニーズに基づいて破壊的な革新技術を開発し、デジタル経済の発展からより多くの人々が恩恵を受けられるような形で社会に還元すること」を目指している。IDEAのリサーチディレクターには、Yutao Xie(ユタオ・シー)氏やJiaping Wang(ジェイピン・ワン)氏など、Microsoftのベテランが名を連ねている。

中国のインターネット企業に対する徹底的な規制強化は、北京がテック企業を敵視しているという見出しにつながっている。しかし、政府の意図はもっと微妙なものだ。金融市場のリスクやゲーム中毒、ギグワーカーの搾取などを助長してきた、社会や経済にとって有害とみなされるビッグテックを対象にしているのだ。

その一方で、中国は基礎研究を促進し、西洋技術への依存度を下げるという目標に固執している。Huawei(ファーウェイ)、DJI、Tencent(テンセント)などの巨大企業の本拠地である深圳では、政府が世界レベルの科学者らを採用している。ハリー・シャム氏と彼のチームは、その中でも最も新しい研究者の1人だ。

IDEAは、確かに話題性のある名前(そしてすばらしい頭字語)だ。習近平国家主席の演説では、テクノロジーが経済の原動力になるという意味で「デジタル経済」という言葉が出てくることがよくある。習近平国家主席は10月「デジタル経済は近年、世界経済を再構築し、世界の競争環境を一変させる重要な力となっている」と述べた。「インターネット、ビッグデータ、クラウドコンピューティングなどのテクノロジーは、経済・社会の発展のあらゆる分野にますます組み込まれています」。

IDEAは、AIが金融、製造、医療などの産業をどのように変革できるかを検討している。今週、中国の大手クオンツトレーダーであるUbiquant(九坤投資)と提携し「金融取引市場のリスクモニタリングと回避 」や「ハイパフォーマンスコンピューティングシステムの基本的なインフラ」に関する研究を行う共同ラボを設立することを発表した。

IDEAは、近年、深圳に誕生した数多くの研究機関の1つにすぎない。政府の支援を受けて香港中文大学の深圳キャンパスに設立された「深圳データ経済研究所」もまた、中国のデジタル経済の発展のために活動しているグループだ。

画像クレジット:LIAO XUN / Getty Images

原文へ

(文:Rita Liao、翻訳:Akihito Mizukoshi)

中国のAI・顔認識大手SenseTimeが香港でのIPOを準備中

中国最大級のAIソリューションプロバイダーであるSenseTime(商湯科技開発有限公司、センスタイム)は、IPOに向けて一歩前進した。メディアの報道によると、SenseTimeは香港証券取引所に上場するための規制当局の承認を受けた

2014年に設立されたSenseTimeは、Megvii、CloudWalk、Yituと並んで中国の「四大AIドラゴン」と総称されている。2010年代後半、SenseTimeのアルゴリズムは、現場のデータを実用的な洞察力に変えることを望む企業や政府から多くの需要があった。同社のAIモデルを組み込んだカメラは、24時間体制で街を監視している。ショッピングモールでは、同社のセンシングソリューションを利用して、施設内の混雑状況を追跡・予測している。

SenseTimeのライバル企業3社は、いずれも中国本土か香港での株式売却を検討している。Megviiは、香港証券取引所への申請が失効した後、中国のNASDAQ式証券取引所、STAR Board(科創板)への上場を準備している。

関連記事:中国最大級の顔認証ユニコーンMegviiが上海でのIPOを準備中

中国のデータリッチなテック企業が海外で上場する道は狭まっている。北京は、機密データを持つ企業が中国国外で上場することを難しくしており、欧米の規制当局は、大量監視を助ける可能性のある顔認証企業に対し慎重な姿勢をとっている。

しかしここ数年、中国のAI新進企業は世界中の投資家から求められていた。2018年だけで、SenseTimeは20億ドル(約2300億円)以上の投資を集めた。これまでに同社は、12回のラウンドを通じて52億ドル(約5982億円)という驚異的な額の資金を調達している。最大の外部株主には、SoftBank Vision Fund(SVF、ソフトバンク・ビジョン・ファンド)とAlibaba(アリババ)のTaobao(淘宝、タオバオ)が含まれている。ロイター通信によると、SenseTimeは香港での株式公開にあたり、最大20億ドル(約2300億円)の資金調達を計画しているという。

目論見書によると、SenseTimeは資本の大部分を研究開発に費やしており、2018年から2020年の間に50億元(7億8000万ドル、約897億円)以上の費用がかかっている。同社は過去4年間、純損失を計上しており、その主な原因は「優先株式の公正価値損失」である。その純損失は2021年の上半期に37億元(約666億円)に達した。6月時点での赤字総額は230億元(約4139億円)に迫る。

同業他社と同様に、SenseTimeは「スマートシティ」プロジェクトを収益化の柱としており、6月までの半年間の総売上高16億5000万元(約297億円)のうち、47.6%を占めている(2020年同期は27%)。同社の目論見書によると、SenseTimeのソフトウェアプラットフォームを利用している都市の数は、6月までに119に達した。

商業施設や賃貸マンションなど、企業のニーズに合わせた「Smart Business」ラインは、2021年上半期の収益の約40%を占めた。同社は残りの収益を、IoTデバイスに供給する「Smart Life」部門と、知覚知能を自律走行ソリューションに適用する「Smart Auto」から得ている。

画像クレジット:Gilles Sabrie/Bloomberg via Getty Images

原文へ

(文:Rita Liao、翻訳:Aya Nakazato)

法人設立、会計、税金、規制遵守など煩わしいバックオフィス管理を行うSleek、ビジネス構築に集中したい起業家向けサービス強化

Sleekの創業者ジュリアン・ラブリエール(右)とエイドリアン・バーゼル氏(左)(画像クレジット:Sleek)

起業家や中小企業は、カンパニーセクレタリー業務、簿記、銀行業務、税務、給与計算、雇用サービス、保険など、サイロ化された機能への対応に苦労することがよくある。

フランスの起業家Julien Labruyere(ジュリアン・ラブリエール)氏とAdrien Barthel(エイドリアン・バーゼル)氏は2017年にSleek(スリーク)を設立し、起業家がシンガポールと香港で事業を設立して運営するのを支援した。Sleekは法人設立、行政、会計、税金、ビザから規制遵守まで、すべてを処理するバックエンドのOSプラットフォームを構築した。

同社の使命は、Sleekによってバックオフィスの煩わしさをすべて取り除くことで、ビジネスの構築に集中したい起業家やビジネスオーナーにとって最適なプラットフォームになることだと、バーゼル氏は述べている。

Sleekは米国時間11月16日、White Star Capital(ホワイト・スター・キャピタル)とJungle Ventures(ジャングル・ベンチャーズ)がリードする1400万ドル(約15億9800万円)のシリーズAラウンドを獲得したことを発表した。これにより、Sleekの総調達額は2400万ドル(約27億3900万円)となった。

この資金は、技術および製品開発の強化、人員の増強、既存市場でのプレゼンスの拡大、オーストラリアや英国を含む新規市場への参入に使用される。

英国市場への参入にともない、Sleekは、英国の法人設立管理会社で、2005年の設立以来、45万社以上の法人を設立してきたLtd Companies(Ltdカンパニーズ)の買収を発表した。Sleekは、既存のLtd Companiesのサービスに同社のスタックを加え、英国の中小企業向けのオペレーティングシステムを構築する。

Sleekは設立以来、シンガポールだけでなく、香港、オーストラリア、英国、フィリピンにも拠点を拡大してきた。

同社は、パンデミック時に顧客ポートフォリオの規模を2倍にした。興味深いのは、Sleekの顧客は経済全体の混乱の影響をあまり受けていないようだ、とバーゼル氏はTechCrunchに語っている。また、2021年初めには1000万ドル(約11億4100万円)の年間経常収益を達成したとバーゼル氏は述べている。

5000社以上のポートフォリオを管理しているSleekは、2020年に140万件以上の簿記取引を処理し、約7億ドル(約799億円)の収益を計上した。

Sleekは最近、中小企業の銀行口座開設を簡素化したSleekビジネスアカウントを発表した。これにより、起業家や中小企業の経営者は、Sleekアプリを使ってわずか1日で預金口座を開設し、取引を開始することができ、口座開設前の煩わしい書類作成の必要性がなくなった。さらに、ユーザーはSleekのダッシュボード上で、他の会社の指標と一緒に口座の詳細を確認することができ、会計や簿記のための銀行照合を効率的に行うことができる。また、送金やカード発行に対応した製品のリリースも予定している。

「Sleekビジネスアカウントのリリースにより、起業家のためのオペレーティングシステム(OS)を構築するという当社の製品ビジョンに、大きな一歩を踏み出すことができました」とバーゼル氏は述べている。

また、経験豊富なCFO(最高財務責任者)がビジネスインテリジェンスツールを介してクライアントの会計データにアクセスし、クライアントへの提案や分析(予算編成、戦略、資金調達)を行うCFOサービスを試験的に開始した。

「テクノロジーが人間の超効率化を可能にする未来では、人間は手作業よりも顧客へのアドバイスに多くの時間を費やします。現在、当社のカンパニーセクレタリーは、従来の会社の4~5倍多くのクライアントにアドバイスを行っていますが、その機能の100%自動化を実現し、クライアントへのアドバイスのみに集中できるようにすることを目指しています」と、バーゼル氏はTechCrunchに語っている。

White Star Capitalの創業者兼マネージングパートナーであるEric Martineau-Fortin(エリック・マルティノー・フォーティン)氏は「我々は、Sleekの優れたパートナーとなり、我々のグローバルなカバーエリアを活用して、すべての中小企業が抱える根本的な問題を解決し、ヨーロッパやオーストラリアへの成長を加速できると信じています」と語っている。

「Sleekは、世界中の起業家や中小企業が抱えるバックオフィス管理という、まだ十分なサービスが提供されていない領域の課題に取り組んでいます。Sleekの地域を超えた成長と急速な拡大は、プラットフォームの導入が加速していることと、それがエコシステムにもたらす価値を証明しています」。とJungle VenturesのマネージングパートナーであるDavid Gowdey(デビッド・ゴウディ)氏は語っている。

原文へ

(文:Kate Park、翻訳:Akihito Mizukoshi)

香港のスタートアップエコシステム強化を目指すFoundersHKが最初のデモデーを開催

2年以上におよぶ政治的混乱、および新型コロナウイルスのパンデミックを乗り越えた香港で、FoundersHKは、香港のスタートアップコミュニティを強化するために設立された。イベントおよびメンタリングネットワークとして開始されたFoundersHKは、先日FoundersHK Accelerateの最初のデモデー(香港本拠のスタートアップの資金調達と世界市場への進出を支援するための同社のエクイティフリーのアクセラレータープログラム)を開催した。

さまざまな分野を代表する11のスタートアップ(ペットケア、フィンテック、保険、教育など)がメンターや投資家など約500人の聴衆を相手にプレゼンテーションを行った。これらのスタートアップは、150の応募チームの中からFoundersHKのクリエーターが選択したものだ。FoundersHKのクリエーターには、BEA Systems(2008年に85億ドルでOracleに売却)の共同創業者Alfred Chuang(アルフレッド・チュアン)氏、500 Startupsの前ジェネラルパートナーEdith Yeung(イーディス・ヤン)氏、Homecourt(ホームコート)の共同創業者Philip Lam(フィリップ・ラム)氏などがいる。

FounderHKの目的の1つは、香港のスタートアップエコシステムに希望を取り戻すことだ。その意味をヤン氏に尋ねると、次のような返答が返ってきた。「2019年、私が香港の空港に到着したときには、数千人の若者が抗議のデモを行っていました。私は悲しみに襲われ、この混乱で自分が感じたことを忘れないように写真まで撮りました。香港で生まれ育った人間として、何もせずにただ傍観することはできませんでした。そして、起業家精神を結集して、創業者たちがスタートアップを立ち上げるのをお手伝いするのが、今の香港に貢献する最善の方法だと感じました。そうしてFounderHKが生まれたのです」。

FounderHKの目的の1つは、スタートアップがより多くの資金を調達できるようにすることだ。「香港で活発に活動している多くの投資家たちは香港の地元の会社には投資していません。本当に皮肉な話ですが、香港で生まれたすべてのユニコーン企業は海外から資金を調達していました」とヤン氏はいう。

FoundersHKはスタートアップとメンターとのつながりを形成する。メンターの多くは香港出身で、Facebook(フェイスブック)、Microsoft(マイクロソフト)、LinkedIn、Apple(アップル)、Grab(グラブ)などの大手ベンチャー企業やテック企業に在籍している。FoundersHKは、2019年に最初にイベントを開催したが、パンデミックが発生した後は、教育イベントをオンラインで主催していた。

FoundersHKがエクイティフリーである理由の1つは、まずは香港のスタートアップカルチャーを変えることを重視したいからだ。「香港は利益第一主義の場所なので、FoundersHKが利益優先ではないと聞くと、多くの人が驚きます」とチュアン氏はいう。「私たちが何はさておき修正したいのは人と人のネットワーキングの問題です。人は他の人から学習しますが、香港のスタートアップコミュニティでは人のつながりが薄いため、学習が非常に困難です」。

チュアン氏によると、香港の創業者たちは最初自分がやろうとしていることを話すのを嫌うところがあるものの、ビジネスチャンスを活かそうとする意欲は強いという。「最初の1人が何が最大の問題なのかを話すと、すべての人がそうするようになります。皆が共通の問題を抱えていると認識するからです。そうして多くのチームがつながるようになり、カルチャーに変化が生じます」。

チュアン氏によると、数百のスタートアップがFoundersHKのメンターシッププログラムを終了したという。FoundersHKがこのアクセラレータープログラムを始めた理由の1つは、多くのチームが投資家にアプローチする前にサポートを求めていたからだ。500 Startupsの前ベンチャーパートナーBonnie Cheng(ボニー・チェン)氏はFoundersHKに引き抜かれ、FoundersHK Accelerateの運営を任された。このプログラムでは、参加スタートアップが毎週FounderHKのリーダーたちとチェックインミーティングを開く。また、Sequoia Capital(セコイアキャピタル)、Goldman Sachs(ゴールドマンサックス)、Alibaba(アリババ)、Monks Hill(モンクスヒル)、Matrix Partners(マトリックスパートナーズ)といった企業の社員で構成されるメンターシップネットワークも用意されている。

「香港のスタートアップコミュニティを支援し、どのようなスタートアップがあるのか知りたいと思っている香港出身投資家たちを世界中から集めています」とヤン氏はいう。

この数週間は、デモデーに向けたスタートアップたちの準備に費やされた。また、彼らが自分たちを必要以上に控えめに表現することのないようアドバイスも行われた。これはFoundersHKが推進したいと考えているもう1つのカルチャー面の変化だ。「資金の調達は確かにこのアクセラレーターの大きな目的ですが、本当に重要なのは、スタートアップたちに何をすべきか、つまり、自分たちの魅力とそれをプレゼンする方法を教えることです」とチュアン氏はいう。「我々の仕事の大半はスタートアップと彼らがプレゼンする相手である投資家たちをつなげることです」。

FoundersHKには、スタートアップがしかるべき市場でパートナーを見つけられるよう支援するという仕事もある。香港は小さな市場なので、ほとんどのスタートアップたちは、最初から東南アジア、米国、中国本土などの地域への進出を目論んでいる。

これらの海外市場から100人を超える投資家たちがFoundersHK Accelerateのデモデーに出席した。

「多数の香港スタートアップのプレゼンテーションに世界中から100人もの投資家たちを集めるなどということは、これまでになかったことです」とチュアン氏はいう。「これは初めての試みであり、これが今後のプログラムに繋がっていくことを願っています。立案者はボニーで、我々の目的はこうしたイベントをどんどん増やしていくことです」。

FoundersHK Accelerateのリーダーチームの面々と最初の創業者たち(画像クレジット:FoundersHK)FoundersHKの最初の創業者たち

Sleekflowはソーシャルコマース企業向けに設立されたB2B販売プラットフォームだ。大半のソーシャルコマース販売者は、WhatsAppや他のメッセージングアプリを使って顧客と対話し、取引を成立させる。中央ハブが存在しないため、ソーシャルコマース販売者は多くの面倒な業務を行う必要がある。そのため、コンバージョン率を上げることができる貴重なデータを見逃してしまう。Sleekflowは、企業向けのSaaS販売プラットフォームで、カスタマーフローオートメーション(例えば買い物かごが放置されている場合に値引きを申し出るなど)や分析を行って、販売実績を維持する。Sleekflowには、メッセージングアプリ、ソーシャルメディアネットワーク、Salesforce(セールスフォース)などのCRMソフトウェアが統合されている。Sleekflowは、主に中堅企業向け市場やエンタープライズ向けだが、チャネルパートナーと協力して、海外展開を計画している。

DimOrderは「レストラン管理用スーパーアプリ」で、現在、香港の5%のレストランで使用されているという。共同創業者のBen Wong(ベン・ウォン)氏は、レストラン経営者の家族の出で、業務に費やす労働量を削減すると同時に利益を増やすソリューションを開発したかったと話す。DimOrderのフロントエンドには、注文、香港中の物流業者との統合による配達、およびマーケティングツールが配置されている。バックエンドでは、仕入れ、支払い、分析を処理する。DimOrderは、来年には、香港の108の学校向けに集中調理施設と学校給食の注文機能をフロントエンドに追加し、運転資金貸付、在庫管理、人事システムをバックエンドに追加する予定だ。来年は東南アジアに事業拡大する。

Spaceshipは、分断化した国際宅配便、特急便、小包サービス市場に特化した物流プラットフォームで、すでに10万人を超える利用者がいる。Spaceshipを利用することで、販売業者は、各物流プロバイダーの比較、出荷荷物の内容の宣言、出荷日時の選択、支払いを行い、出荷元から配達先まで荷物を追跡できる。また、消費者向けに、物流の予約、移転、引っ越しサービスも提供しており、マーケットプレイスやトラベルプランニングなどの分野でもサービスを立ち上げる予定だ。今後は、まず台湾に事業を拡大し、その後、シンガポール、タイ、日本などの市場にも参入する計画だ。

FindRecruiterは、企業が従来の方法よりも極めて迅速に人材を見つけられるよう支援する報奨金ベースの求人プラットフォームだ。共同創業者のLawton Lai(ロートン・ライ)氏は10年間採用担当者として実績を積んだ後、このスタートアップを立ち上げた。同氏によると、現在、空いたポジションを求人で埋めるのに52日くらいはかかるという。FindRecruiterは、アジア6か国に配置された各専門分野の500人を超えるオンデマンドの採用担当者と連係することで、この期間を約17日に短縮する。FindRecruiterでは、求人を掲載し、分野、専門知識、ニーズに基づいて求人側とリクルーターをマッチングする。FindRecruiterによると、同社のリクルーターは手数料で従来の25%以上を稼ぎ、毎月の売り込み電話に要する時間を30時間節約できるという。クライアントには、さまざまなスタートアップユニコーン企業と優良企業がいる。

PowerArenaは、製造作業を監視するためのディープラーニング分析プラットフォームだ。現時点では、主に電子および自動車分野を対象としており、Wistron(ウィストロン)やJabil(ジャビル)などの顧客がいる。多数のオートメーションマシンが稼働している製造フロアでさえ、72%以上の作業が今でも手作業で行われている、とPowerArenaの創業者たちはいう。製造業者がPowerArenaを使うには、画素数1080pのカメラを設置し、プラットフォームに接続してリアルタイム分析を行う。例えば製造プロセスで急に製造速度が低下した場合、PowerArenaは原因(工場の一部でメインテナンスが実施されているなど)を突き止めることができる。

WadaBentoは、人通りの多い地域に自動販売機を設置することで、レストランの業務拡張と利益向上を支援する。これまでに、香港で14万個の弁当を販売している。業務拡張を目指すレストランには通常、新規店を開くか配達アプリを導入するという2つの方法があるが、どちらもコストが高い。WadaBentoは、レストランが用意したランチボックスを回収して、同社の特許取得済みの自動販売機に入れる。食品は、配達中も自動販売機内でも65度以上に保たれ、衛生状態もIoTデバイスで監視される。WadaBentoは日本、米国、中国で特許を取得し、最近、香港最大の食料品チェーンと契約を結んだ。また、最初の海外市場である日本にも自動販売機を出荷した。2022年上半期までに、200台以上の販売機を設置する計画だ。

Retykleは、妊婦服や子ども服の再販売を容易に行えるようにして、衣服の無駄を削減したいと考えている。LVMHなどの高級ファッションブランドで10年間経験を積んだ創業者のSarah Garner(サラ・ガーナー)氏によると、子どもたちは、成長して18歳になるまでに平均で1700着の衣服が着られなくなるという。しかし、中古市場に流れてくる子ども服は5%ほどしかない。Retykleの目的は、できるだけ多くのアイテムが循環する状態を維持することだ。Retykleは、赤ん坊から10代半ばまでのアイテムを用意している。すべてのアイテムは委託販売される。売り手がRetykleに送った衣服は、すべてチェックされてからサイトに掲載される。アイテムが売れると、ユーザーにはメールで通知され、現金または口座振替で代金が支払われる。Retykleは来月シンガポールに、2022年にはオーストラリアに進出する計画だ。

Preface Codingは、拡張可能だがカスタマイズ可能なコーディングのクラスを提供するテック教育プラットフォームだ。生徒は先生をオンデマンドで予約できる。バーチャルでも対面でもクラスを受講できる。このプラットフォームで先生のトレーニングも可能で、ほとんどのクラスはマンツーマンで行われる。生徒は、3~15歳の子ども、大学生(特に米国やオーストラリアのアジア人留学生)、金融、マネージメント、コンサルティング業界の上級プロフェッショナルまで多岐にわたる。大学や銀行とも提携しており、今後世界中に事業展開していく計画だ。

ZumVetは、動画による獣医相談、自宅訪問、薬の配達(薬の処方と自宅での診断テストを含む)を提供するペットケアスタートアップだ。共同創業者のAthena Lee(アテナ・リー)氏によると、かかりつけの獣医のいない、または動物病院の少ない地域に住んでいるペットオーナー向けにZumVetを創業したという。獣医は、相談を受け、治療計画を作成し、遠隔からのサポートや往診も行う。Zumvetは開業獣医のネットワークを活用しており、ペットケア費用を安くするためにサブスクリプションプランも提供している。

Big Bang Academyは、STEAM(科学・技術・工学・芸術・数学)教育への需要の高まりに応え、子どもたちにとって学習を「映画のように魅力的で、テーマパークのように楽しく、授業のように教育的な」ものにするために創業された。その公認カリキュラムには、各生徒向けの動画、個別レッスン計画が含まれる。また子どもたちの自宅に届けられる実験キットを使った手作業によるアプローチも行われている。現在、200の対話型セッションが用意されており、コース修了率は70%とEdTechプラットフォームとしては高い数字を残している。ビジネスモデルとしては教育機関と提携したB2B、およびB2Cサブスクリプションモデルがあり、顧客の80%は繰り返し受講している。また、コンテンツの多様化と学習用おもちゃの開発も計画している。

YAS Microinsuranceは、わずか5秒でポリシーを有効化できるインシュアテックスタートアップだ。補償範囲には、ランニング、自転車、ハイキングなどでの事故も含まれる。最近、香港最大の公共バス会社の1つKowloon Motor Busと初めて提携し、乗客の持ち物の紛失や盗難、事故発生時の医療費などを補償の対象としている。創業から4カ月で80万ドル(約8950万円)の確定収益を達成している。この2カ月間で約6,300のポリシーが有効化されており、現在も毎週約600のポリシーが新たに有効化されている。

画像クレジット:guowei ying / Getty Images

原文へ

(文:Catherine Shu、翻訳:Dragonfly)

アジア最大級のテック会議RISEは2022年、香港に戻ってくる

アジア最大級の技術系カンファレンスRISEが、2022年3月に対面式リアルイベントとして香港に戻り、少なくとも5年間は香港で開催されることを、主催者のWeb Summitは米国時間9月2日に発表した。2020年、Web SummitはRISEがクアラルンプールに移ると発表していたが、香港に戻ることで、マレーシアの首都での開催はなくなった。ただし、広報担当者はTechCrunchの取材に対して、将来的には同地で他のイベントを開催する予定だと述べている。

関連記事:Web Summitが2022年に東京で新イベント開催、RISE 2022はクアラルンプールで復活

RISEは、2022年3月14日から17日まで、アジアワールド・エキスポで開催される。

大規模な民主化デモが行われていた2019年11月、Web SummitはRISEを2021年に延期すると発表した。そして2020年12月、2021年の開催は見送り、代わりに2022年にクアラルンプールでRISEを再開すると発表している。

関連記事:アジア最大のテック会議Riseが香港デモ受け来年は中止

RISEの広報担当者はメールでの声明で「香港の政治状況は、クアラルンプールを開催地として検討するという我々の決定に影響を与えませんでした。Rise 2022は当初、クアラルンプールで開催される予定でしたが、これはもはや実現不可能です。すばらしい都市でのRISE開催に招待してくれたMDECに感謝したいと思います」と付け加え「RISEは2015年のスタート以来、すでに香港で5年の成功を収めています。この街との長年の関係から、滞在することは自然な判断でした」という。

Web Summitの発表では、共同創業者兼最高経営責任者のPaddy Cosgrove(パディ・コスグローブ)氏は「香港が過去5年間にわたってRISEをサポートしてくれたことに非常に感謝しており、2022年に戻ってくることにこれ以上ないほど興奮しています」と述べている。

今回の発表では、香港のEdward Yau(邱騰華、エドワード・ヤウ)商務・経済発展長官の声明が発表された。「世界的に有名なテックイベントRISEが香港に戻り、今後5年間は香港で開催されることを選択したことを非常にうれしく思います」。

画像クレジット:Stephen McCarthy/RISE via Sportsfile

原文へ

(文:Catherine Shu、翻訳:Katsuyuki Yasui)

アップルが台湾・香港・中国向け刻印サービスで「ダライ・ラマ」「雨傘革命」など法的義務以上に検閲していると明らかに

アップルが台湾・香港・中国向け刻印サービスで「ダライ・ラマ」「雨傘革命」など法的義務以上に検閲していると明らかに

Citizen Lab

アップルはAirPodsやiPadなどを公式ストアで注文したユーザーに対して、無料で刻印サービスを提供しています。このサービスに付き、中国や香港、台湾で政治的検閲を行っていると指摘するレポートが発表されています

この報告書は、カナダにあるトロント大学のインターネット監視団体Citizen Labが調査に基づき公表したものです。Citizen Labは中国生まれのTikTokが悪質な行為を行っている証拠はないと述べるなど、特に反中国というわけではありません。

アップルの無料刻印サービスはどの地域でも攻撃的な言葉やフレーズを禁止しており、米国でも170の単語を入力することができません。しかし中国では、禁止されている単語やフレーズの数は1000以上にのぼり、その中には政治的な言及も多く含まれているとのことです。

アップルが台湾・香港・中国向け刻印サービスで「ダライ・ラマ」「雨傘革命」など法的義務以上に検閲していると明らかに

Citizen Lab

アップルが台湾・香港・中国向け刻印サービスで「ダライ・ラマ」「雨傘革命」など法的義務以上に検閲していると明らかに

Citizen Lab

Citizen Labが行ったのも、どの単語が拒否されるかを調べるテストでした。これができたのは、アップルの刻印サイトが入力されたテキストを一文字ずつ分析し、受付できない内容に即座にフラグを立てるためです。

このテストは6つの地域で実施され、その結果アップルが国ごとに異なるAPIを使ってテキストを検証していると明らかになったそうです。さらに中国では政治的な検閲が行われていると分かり、その一部は香港や台湾にも及んでいました。

まず中国本土では、中国の指導者や政治システムに関する広範な言及、反体制派や独立系報道機関の名前、宗教や民主主義、人権に関する一般的な用語などが検閲されていると分かったとのことです。たとえば政治関係としては「政治、抵制、民主潮、人权(人権)」など、チベットやチベット宗教に関しては「正法、達賴(ダライ・ラマ)、达兰萨拉」といったところです。

かたや香港では、市民の集団行動に関するキーワードが広範囲に検閲されています。たとえば「雨伞革命」や「香港民运」「雙普選」、「新聞自由」など。はてはノーベル平和賞受賞者の劉暁波氏の妻で詩人の劉霞氏や、アーティストの艾未未氏の名前までも禁止されていることは「香港の国家安全法に基づくアップルの検閲義務をはるかに超えている」と評されています。

さらに台湾に対しても、中国に配慮したかのような政治的検閲が行われている模様です。こちらでは中国共産党の最高幹部らや歴史上の人物(毛主席など)、「外交部」などの国家機関、およびFALUNDAFAやFalun Gongなども禁止されているとのこと。台湾にはそうした言葉を取り締まる法律もなく、アップルが検閲を行う法的義務もありません。

それに加えてCitizen Labは、「8964」という数字まで検閲されていると突き止めています。この数字は中国では天安門事件の「1989年6月4日」という日付にちなんだものとして認識されているため、と推測されています。

アップルもいち民間企業に過ぎず、現地の法律には従う義務があり、Citizen Labも法律で禁止されている言葉の検閲を批判しているわけではありません。特に問題視されているのは、アップルが法的に要求されている以上を行っており、現地企業が自粛しているキーワードを検討せずに流用しているように見えることです。

今回の一件と関係あるかどうかは不明ですが、かつてiOS 11.4.1では“Taiwan”とタイプしたときに特定の言語や地域設定のiPhoneがクラッシュする問題や、日本語のiPhoneでも“たいわん”と入力して台湾の旗に変換できなかったことがあります(記事執筆時点では、どちらも修正済み)。

ちょうどアップルは、児童虐待対策として「iCloud上に保存された写真が自動スキャンされ、当局に通報されることもある」しくみの導入に対して、政府の検閲に利用されるのではないかとの懸念が寄せられているところです。アップルは「政府の要求を拒み続ける」と回答していますが、その言葉に信ぴょう性を与える行動が望まれそうです。

(Source:Citizen Lab。Via 9to5MacEngadget日本版より転載)

eコマースのグローバルな荷物追跡プラットフォームを提供する香港AfterShipが71.2円調達

AfterShipは2012年に、主に中小のネットショップのための荷物追跡サービスとしてローンチしたが、その後同社は、メールによるマーケティングや顧客維持対策などのツールなどショッピング体験の一部始終をカバーする一連のデータ分析ツールを作った。香港に本社を置く同社は米国時間4月22日、Tiger GlobalのリードによるシリーズBのラウンドで6600万ドル(約71億2000万円)を調達したことを発表した。これにはHillhouse CapitalのGL Venturesが参加した。

AfterShipのこの前のラウンドは、2014年の100万ドル(約1億1000万円)のシリーズAだった。共同創業者のAndrew Chan(アンドリュー・チャン)氏によると、同社はローンチ直後から利益があり、主に口コミによる人気とパートナーシップで成長した。特にShopifyの統合で知名度が上がった。しかし同社は最近営業チームを作り、今回の資金も営業のための国際的な雇用とカスタマーサポートに充てるつもりだ。また同社は、新しいプロダクトのローンチを進めると同時に、すでにAfterShipの顧客の約70%がいる米国へさらに拡張していきたい、という。

同社のソフトウェアでセラーは、740社以上もの運送業者に対して荷物を追跡でき、同社は年間60億以上の荷物を扱っている。同社のパートナーは約1万社いて、中には5万店の出店者を抱えるShopifyやMagento、Squarespace、Amazon、eBay、Etsy、Groupon、Rakuten(楽天)、Wish、それにリテールブランドのDysonやInditexなど大物の名もある。

荷物追跡ページはブランドごとにあり、AfterShipのソフトウェアがメールを作る。(画像クレジット:AfterShip)

AfterShipのメインのプロダクトは荷物追跡プラットフォームだが、その他にセルフサービスの返品処理と顧客のためのパッケージ追跡、営業とマーケティングなどのツールも提供していて、マーチャントは荷物からのデータをさらに有効利用できる。チャン氏の説明によると、パッケージ追跡はセラーにとってユーザーエンゲージメントツールでもあり、いろんな商品の推奨や宣伝ができる。AfterShipのツールでマーチャントは、自分のブランド専用の追跡ページや通知を作れる。その他、各輸送業者のパフォーマンスを調べたり、メールによるマーケティングキャンペーンを展開したり、顧客の維持確保を増大したりできる。

CRM的な能力もあるので、AfterShipは他の荷物追跡情報集積企業とは一味違う。

「ビジョンを考えるときは、Salesforceがやってることを見ます。そして、営業の人たちが実際に使えるような、eコマースのためのSalesforceはあるだろうか、と考えます」とチャン氏はいう。

Tiger GlobalのグローバルパートナーであるPengfei Wang(ペンファイ・ワン)氏は、プレス向けの声明で次のように述べている。「AfterShipは、配送のプロセスを消費者と企業の両方にとってもっと透明かつ信頼性の高いものにすることで先頭を走っています。現在、eコマースの成長は急上昇しているため、AfterShipとパートナーできたことはありがたいし、特にそのリーダーシップチームは、この重要かつ拡大を続けている業界で、常にその技術が進歩していることがすばらしい」。

カテゴリー:ネットサービス
タグ:AfterShip香港Tiger Globaleコマース資金調達

画像クレジット:athima tongloom/Getty Images

原文へ

(文:Catherine Shu、翻訳:Hiroshi Iwatani)

コンピュータビジョンを活用した建設現場自動監視プラットフォームの香港「viAct」が約2.2億円調達

香港を拠点とするviActは、コンピュータビジョン、エッジデバイス、モバイルアプリを組み合わせたAIベースのクラウドプラットフォームで建設現場を24時間監視できるようにしている。米国時間3月24日、同社はSOSVとVectr Venturesが共同で主導したシードラウンドで200万ドル(約2億1800万円)を調達したことを発表した。このラウンドにはAlibaba Hong Kong Entrepreneurs Fund、Artesian Ventures、ParticleXも参加した。

2016年に創業したviActはアジアとヨーロッパで建設業界の30社以上の企業にサービスを提供している。今回の資金はR&D、プロダクト開発、東南アジア諸国への事業拡大に使われる予定だ。

このプラットフォームではコンピュータビジョンを使って潜在的な危険箇所や建設の進捗状況、機材や建材の場所を検出する。そしてリアルタイムでモバイルアプリにシンプルなインターフェイスのアラートが送られる。共同創業者でCEOのHugo Cheuk(ヒューゴ・チュク)氏はTechCrunchに対し、アラートは「騒々しく動きの多い環境で仕事をしているため詳細なダッシュボードを見るのが難しい」ことの多い技術者用にデザインされていると説明した。

現場の監視のためにviActと契約した企業はコロナ禍でのソーシャルディスタンスの基準を守らなくてはならないため、viActは企業がすぐに利用を開始できるようにZoomでのトレーニングを提供した。

チュク氏によれば、東南アジアではインドネシアとベトナムで最初に利用されたという。スマートシティと新しいインフラストラクチャを作る政府の計画により、新たな建設プロジェクトが今後5〜10年間で増えるからだ。デベロッパーがAIベースのテクノロジーを取り入れたいと考えることから、今後シンガポールにも進出するという。

報道発表の中で、SOSVのパートナーでChinacceleratorのマネージングディレクターであるOscar Ramos(オスカー・ラモス)氏は「コロナ禍でデジタルトランスフォーメーション(DX)が加速し、建設など古くからある業界は生き残りに不可欠な変革を急いでいます。viActは業界の価値を上げるプロダクトを作り、しかも顧客からの信頼を得て採用を加速しています」と述べた。

カテゴリー:人工知能・AI
タグ:viAct資金調達香港建設コンピュータービジョン

画像クレジット:viAct

原文へ

(文:Catherine Shu、翻訳:Kaori Koyama)

香港のフィンテックユニコーンWeLabが保険大手Allianzなどから約82億円調達

新型コロナウイルス危機の恩恵を受けた数少ない産業の1つはオンライン金融だ。パンデミックにより世界中の消費者はデジタルバンキングの受け入れを余儀なくされた。2013年に創業されたフィンテック企業である香港のWeLab(ウィラボ)は2020年にユーザー数が20%成長し、累計ユーザーベースは5000万人に達した。

消費者にさらなる利便性や透明性、手頃価格を提供しようとしているWeLabのようなイノベーティブなプレイヤーに接すると、従来の金融機関は自らを一新せざるを得ない。これは、131年の歴史を持つ欧州の金融コングロマリットAllianzのベンチャーキャピタル部門であるAllianz XがWeLabの7500万ドル(約82億円)の最新ラウンドをリードした理由の1つだ。他の投資家も参加したシリーズC1は、1億5600万ドル(約170億円)を調達した2019年のシリーズCラウンドに続くものだ。

「明らかにAllianzは世界で最大の資産運用・保険会社の1社であり、強力な存在感と確固たる実績を持っています」と共同創業者でCEOのSimon Loong(サイモン・ルン)氏はTechCrunchとのインタビューで語った。

同氏はWeLabの直近の評価額を公開するのは却下したが、10億ドル(約1092億円)のユニコーンステータスに達して以来、その数字は大きくなっていると語った。

WeLabが2020年香港で立ち上げたデジタルバンクを設置しようとしたとき、同社が描いていたプロダクトの1つは「デジタルバンクでの新世代の資産アドバイス」だった。

「Allianzは当社が過去数年に行ったことをみて、デジタルバンク向けの資産テクノロジーを共同開発するためにかなり興味深い機会ととらえました。そしてAllianzは当社に近寄ってきました。それで、ラウンドをリードするのはどうか、と言ったのです」とルン氏は説明した。

戦略的投資を通じて、パートナーたちは投資や保険のソリューションをアジアで共同開発して展開する。そうしたプロダクトは、香港でのバーチャルバンクやレンディングプロダクト、中国本土やインドネシアでのいくつかの種類のレンディングサービスを含む、WeLabの現在のサービスを多様化する。全ユーザーのうち約4700万人が中国本土、250万人がインドネシア、そして100万人弱が人口750万人の香港の住人だ。

資産運用・保険会社としてのAllianzの役割について、そして銀行・フィンテックソリューションプロバイダーとしてのWeLabについて「興味深い4方向の法人です」とルン氏は述べた。「当社が事業を拡大するのに本当におもしろいターニングポイントになると考えています」。

巨人との協業

WeLabのチーム

ルン氏によると、WeLabの売上高にとって同様に重要なのは、既存の銀行や金融機関のデジタルの取り組みをサポートする法人向けサービスだ。この戦略は、従来の金融プレイヤーの「後援者」になるというAnt Groupの取り組みと大して違わない。

中国のフィンテックマーケットではAntとTencentの2社が巨大なマーケットシェアを握っているにもかかわらず、WeLabのような小規模で専門性を持つプレイヤーが参入する余地は残っている。これまでにWeLabは法人顧客約600社をひきつけ、その大半は中国本土の顧客だ。

WeLabがAntのような巨大企業といかに戦うのか尋ねると「Antとの間には興味深い力学があります」とルン氏は話した。Ant傘下のeコマース企業AlibabaはAlibaba Hong Kong Entrepreneurs Fundを通じてWeLabの投資家だ。

「我々が競っている事業があり、そしてともにうまく取り組んでいる分野もあります」と同氏は付け加えた。例えばWeLabはサードパーティの金融プロダクトやエンド消費者にとってマーケットプレイスのように機能するAntの旗艦アプリAlipayで初のスマホリースサービスを導入した。しかしAntも自前の金融プロダクトを持っていて、これはAntのマーケットプレイスで商品を販売している外部サプライヤーと衝突するかもしれない。

「要するに、当社はかなり独立した企業であるため、誰とでもうまくいくのだと思います」とルン氏は主張した。

グレイターベイをつなぐ

香港で創業した会社として、WeLabはグレーターベイエリア(粤港澳大湾区)と命名された地域を統合する中国政府の動きに積極的に参加している。このエリアは中国の2つの特別行政区である香港とマカオ、そして深圳を含む広東省の9市にまたがる。

グレーターベイエリアの青写真の目的はクロスボーダーの人材の流れを促進することだ。ある意味、このエリアはフィンテックスタートアップを運営するのに必要なすべての条件を満たしている。テックの人材は深圳、そして金融の人材は香港と、隣接している2つの都市で人材を獲得できる。WeLabはまさにそれを地で行っている。テック系のスタッフを香港よりも多く深圳に置き、香港オフィスには金融のプロを抱えている。同社は2021年100人ほど新たに採用して従業員数を800人に増やす計画だ。

人材源の共有はさておき、中国政府はまたグレーターベイエリアで金融の統合を促進したい考えだ。WeLabは政府の意向に留意し、今後展開する資産運用プロダクトをまず香港で、その後、資産運用コネクトという政府支援のスキームを通じてグレーターベイエリアの他の地域で展開する計画だ。資産運用コネクトでは香港とマカオの住人はグレーターベイエリアにある本土の銀行が提供している資産運用プロダクトに投資ができる。その逆もまた然りで、中国本土側のグレーターベイエリアの都市の住人も香港とマカオの資産運用プロダクトを購入できる。

「香港はすばらしいテストベッドですが、オンライン事業者にとっては成功しているビジネスモデルを多くの人々に適用する必要があります」とルン氏は同社の事業拡大計画について説明した。「グレーターベイエリアは我々にそのチャンスを提供しています。このエリアの人口は7200万人で、GDPは1兆7000億ドル(約185兆6264億円)と韓国を超えます。当然のことながら事業を拡大するのに良いエリアです」。

WeLabは2018年に上場を模索していたが「正しい時期だとは思っていなかった」ために計画を中止した、とルン氏は回顧した。同社はまた、銀行免許を取得する過程にあったため、上場前に重要な認可に取り組むことに決めた。

「現状を見れば、明らかに株式市場という点ではかなりホットです。ですので当社は多くの人と話をしています。この件については目を光らせていて、次の正しい時期の模索に我々は常に前向きです」とルン氏は述べた。

カテゴリー:フィンテック
タグ:WeLab資金調達香港

画像クレジット:WeLab CEO Simon Loong

原文へ

(文:Rita Liao、翻訳:Nariko Mizoguchi

米中貿易戦争の中、サプライチェーンの多様化需要に応える香港のスタートアップICW

米国の輸入業者にとって、困難なものになってきている。それは最近のサプライヤー探しは新型コロナウイルス(COVID-19)による渡航制限だけが理由ではない。米国政府によるエンティティリスト指定や人権関連の制裁、中国企業を対象とした貿易ブラックリストもまた、米国のサプライチェーンを揺さぶっている。

そんな中、世界中の企業の調達先探しを容易にすることを狙うInternational Compliance Workshop(インターナショナル・コンプライアンス・ワークショップ、ICW)という名の若い企業が、新たな資金調達のラウンドを完了した。この香港を拠点とするスタートアップはシリーズAラウンドとして575万ドル(約6億円)を調達したばかりだ。これによって資金調達総額は約1000万ドル(約10億5000万円)になったと、共同創業者でCEOのGarry Lam氏(ギャリー・ラム)氏がTechCrunchに語った。

ICWは、サプライヤーとバイヤーをつなぐマッチメーカーのような役割を果たすが、Alibaba(アリババ)のB2Bプラットフォームや国際的なトレードショーのような既存のオプションとは異なり、コンプライアンス、製品品質および認証に関しても、ICWがサプライヤーを審査する。同社は4万社以上(現在はそのうち80%が中国国内にある)のサプライヤーのすべての情報を、成長を続けるデータベースに集積し、個別のニーズに基づいてバイヤーに推奨を行う。

2016年に設立されたICWの現在の顧客リストにはRalph Lauren(ラルフ・ローレン)、Prenatal Retail Group(プリネイトル・リテール・グループ)、Blokker(ブロッカー)、Kmart(Kマート)、そして名前は公開できないが米国の大手薬局チェーンといった世界最大級の小売業者が含まれている。

ICWの最新資金調達ラウンドはInfinity Ventures Partnersが主導し、Integrated Capitalや既存の投資家であるMindWorks Capital、香港政府による20億ドル(約2094億円)規模のInnovation and Technology Venture Fundが参加した。

サプライチェーンのシフト

米中貿易戦争や中国内の人件費高騰などを背景に、中国以外への調達シフトが進む中で、ICWでもサプライチェーンの多様化を図る顧客が増えている。しかし、短期的な移行には限界がある。

「たとえばBluetoothデバイスやモバイルバッテリーといった特定の製品カテゴリーのサプライヤーを他国で見つけるのは、まだ非常に困難です」とラム氏は語る。「しかし、衣料品や繊維に関しては、すでに10年前から移行が始まっています」。

中国の製造業の多くの部分を置き換えてきた東南アジアでは、それぞれの国がある程度の専門性を持っている。たとえばベトナムは木製家具のサプライヤーが多いのに対して、タイはプラスチック製品で知られており、マレーシアは医療用品の良いサプライヤーだ、とラム氏はいう。

人権関連の制裁など、より扱いにくいコンプライアンスに関しては、ICWは第三者認証機関に頼ってサプライヤーのスクリーニングと審査を行っている。

「サプライヤーが企業としての社会的責任を果たしているかどうかを検証するための、(一種の)基準があります【略】たとえば工場が労働法を満たしているかどうか、最低限の労働権を満たしているかどうかや、給料を支払っているかどうか、などのすべてです」とラム氏は説明した。

ICWはこの新しい資金をコンプライアンス管理システム、製品テストプラットフォーム、B2B調達サイトといった製品の開発に使う予定だ。

カテゴリー:その他
タグ:International Compliance Workshop資金調達香港サプライチェーン

画像クレジット:STR/AFP / Getty Images

原文へ

(文:Rita Liao、翻訳:sako)

eコマース小売業者にコスト平均28%削減で物流を提供する香港発のPickupp

ロジスティクスのスタートアップPickuppの共同創業者でCEOのCrystal Pang(クリスタルパン)氏(画像クレジット:Pickupp)

小規模ビジネスにとってロジスティクスは、eコマースにおける最大の課題の1つだ。Pickuppは、柔軟でカスタマイズ可能な配送サービスを提供することで、オンデマンド経済での競争を支援する会社だ。香港を拠点とするPickuppは、マレーシア、シンガポール、台湾でも事業を展開しており、同社によれば顧客の物流コストを平均約28%削減できるという。

Pickuppは、アセットライトなビジネスモデルでこれを実現している。倉庫や自社のフリートを運営するのではなく、物流会社と提携し、独自のソフトウェアを利用することにより、注文の一括配送をより効率的にするのだ。

現在約1万社のeコマース業者にサービスを提供している同社は2020年11月、Vision Plus Capital、Alibaba Entrepreneurs Fund(阿里巴巴創業者基金)、Cyperport Macro Fund、Swire Properties New Ventures、そしてSparkLabs TaipeiからシリーズAラウンドで非公開額の資金を調達したと発表した。

Pickuppは現在、4時間以内に配達するオンデマンドクーリエ便、当日配達、1~3日配達の3種類のドア・ツー・ドア配達サービスを提供している。また、企業向けにロジスティクスや土壇場での配送ソリューションをカスタマイズすることもできる。

シンガポールでは、Pickuppは独自のeコマースプラットフォームを運営している。「Shop On Pickupp」と呼ばれるこのプラットフォームは、小売業者がその業務をよりオンラインで行うことを可能にし、新型コロナウイルス(COVID-19)のパンデミックの際には、士林夜市Singaporeのようなマーケットプレイスのデジタル化に使用された。

Pickuppを始める前、共同設立者兼 CEOであるCrystal Pang(クリスタル・パン)氏は、ソフトウェアエンジニアとして訓練を受けており、2014年に香港でUberを立ち上げたチームの一員だった。

「その頃、多くの業者がUberの車を使って、人以外のものを配達しようとしていることに気づき、物流について調べ始めました」と彼女は語っている。

しかし、配送サービスとは異なり、業者はUberのドライバーと価格交渉することができなかった。たとえば車両をより長時間待つことが可能な場合、割引料金を交渉するなど。「そこがロジスティクスの要点です。誰もが、どうにかしてコストを削減したいと思っていますから」とパン氏はいう。市場機会を感じとったパン氏は、ソフトウェアエンジニアリングの経験を活かしてソリューションを考え始めた。

Pickuppは2016年12月に設立され、翌年から運営を開始した。立ち上げ時、PickuppにはすでにGogovanやLalamoveのような手ごわいライバルがいた。しかし、それらの企業は主にオンデマンド、ポイント・ツー・ポイントでの配送に焦点を当てていたため、パン氏はサプライチェーンの他の部分に取り組む機会を見出した。

「他の物流会社と比較して、どのように自分たちを位置付けるかというと、様々なeコマースのニーズを満たすと同時に、当社は物流会社のように振る舞いますが、何も所有する必要はありません。この分野を代表するSF Express(順豊エクスプレス)やNinja Vanなどのような、倉庫をリースして自社フリートを運営する従来の物流会社の機能を果たしていますが、Pickuppはそれを実現するためにアセットライトなアプローチを選択しています」と彼女は述べている。

Pickuppは、データと技術の会社として自らを位置づけているとパン氏は付け加えた。

「当社をモニタリングシステムのような存在と考えていただくこともできます」と彼女はいう。Pickuppは、仕分け施設、国境を越えた貨物輸送業者、配送車両と提携し、サプライチェーンに沿って注文がどこにあるかを顧客に可視化している。

このシステムは、利用可能な配達員がいつどこで応対できるかを予測することでコストを抑え、注文バッチに合わせて配達員を配置することができる。また、需要が急増した際のボトルネックを防ぎ、可能な限り最大のキャパシティで配送業者を利用できるようにする。これはダブルイレブンやブラックフライデーのような、休日や大きなショッピングイベントでは特に重要だ。

Pickuppの利点の1つは、システムが柔軟に設計されているため、アジアの新しい市場に迅速に進出できることだ。パン氏はTechCrunchの取材に対し、今回のラウンドはサービスの追加や機械学習、予測分析、顧客の購買行動の理解に投資するために使われると語った。また、今後3年間で最大5つのアジア新市場への進出を計画しているという。

カテゴリー:ネットサービス
タグ:Pickupp香港物流資金調達

原文へ

(翻訳:TechCrunch Japan)

アップルが香港の国家安全法について言及

7月1日に中国政府が香港に新たな国家安全保障法を一方的に施行した後、多くの人々はこの動きを半自治区における異議申し立てや抗議行動を取り締まるための、中国政府の取り組みだと見ていた。

その直後、マイクロソフト、Twitter、グーグルなど多くの大手テクノロジ企業が、香港当局からのユーザーデータ要求の処理を中止すると発表した。一方、アップルはこのリストには加わらなかった。代わりに同社は新しい法律を 「評価する」 と述べていた。

TechCrunchの取材に対してアップルは、新しい国家安全法が施行されて以来、香港当局から何件のユーザーデータを要求されたかについては明らかにしていない。しかし同社は、香港から直接ユーザーコンテンツを要求されることはないと繰り返した。一方で米国当局は、長年確立されたいわゆる相互法的援助条約により外国政府からのさまざまな要求を検討することができる。

アップルによると、同社は香港ユーザーのiCloudのデータを米国内に保存しているため、香港当局がユーザーコンテンツを要求した場合は、まず米司法省の承認を得る必要があり、データを香港に引き渡す前に米国連邦裁判所の判事が令状を発行する必要があるという。同社によると、不正行為や盗難されたデバイスに関連してアップルが香港からコンテンツ以外の要求を受けた回数は限られているが、国家安全法の導入以降に香港当局から受けた要求の数は今後の透明性レポートに含まれる予定だという。

香港当局が2019年中に行ったデバイス情報に関する要求は604件、金融データに関する要求は310件、ユーザーアカウントデータに関する要求は10件となっている。同報告書によると、アップルは昨年下半期に米国当局から8万0235台のデバイスに関連するデータの要求を5295件受けており、これは前半年間の7倍に増加しているとのこと。

また、アップルは米国当局から3万1780アカウントのiCloudに保存されているユーザーデータに関する要求を4095件受けており、これは過去6カ月間に影響を受けたアカウント数の2倍となっている。要求のほとんどは、現在進行中の返品や修理の不正調査に関連したものだとアップルは述べている。

報告書によると、米国当局から6741件のユーザーアカウントのデータを保存するために2522件の要請を受け、法執行機関がデータにアクセスするための適切な法的手続きを取得できるようにしているとのことだ。さらに同社は、1万5500人から1万5999人のユーザーまたはアカウントに関するコンテンツ以外のデータについて、0件から499件の国家安全保障上の要請を受けたとしており、前回の報告書と比較して40%増加している。

テック企業は、司法省が定めた規則に従って国家安全保障上の要請数の範囲内で報告することしか認められていない。

同社が申請していた2019年以降の2件の米連邦捜査局(FBI)の国家安全保障書簡(NSL)も公開された。これらの書簡はFBIが司法監督なしで発行する召喚状で、多くの場合、会社がその存在を開示することを妨げる箝口令が敷かれている。2015年に自由法が導入されて以来、FBIはこの箝口令を定期的に見直し、必要ないと判断された場合には解除することが求められていた。

アップルは、同社のアプリストアから258個のアプリを削除するよう54件の要請を受けたという。要求の大部分を提出したのは中国政府だ。

画像クレジット:Iain Masterton/ Getty Images

原文へ

(翻訳:TechCrunch Japan)

香港の食品eコマーススタートアップのDayDayCook(日日煮)が21億円を調達

中国のフードブログコミュニティが活況を呈している。多くのブロガーたちが、忠実なフォロワーに食品を売り込むことで大金を稼いでいるのだ。これは投資家を魅了するビジネスモデルだ。

今週、香港を拠点とするスタートアップDayDayCook(日日煮)が、その多機能な食品プラットフォームをさらに拡張するために2000万ドル(約21億円)を調達したと発表した。同プラットフォームをアクセスしているのは主に大陸中国からの利用者たちだ。銀行家から転身した食品ブロガーで起業家のNorma Chu(ノーマ・チュー)氏によって創業された同社は、ちょっとしたことをなんでも手掛ける企業だ。レシピや食品ビデオをフィーチャーしたアプリ、高級モールでの料理教室、オンラインで販売される自社ブランドの食品プロダクトラインがその収益の80%を占めている。

ロンドンに 拠点を置くTalis Capital(タリス・キャピタル)が調達ラウンドを主導し、そこに香港のIronfire Venturesが参加した。創業8年であるこのスタートアップは、これまでに総額6500万ドル(約68億5000万円)を、Alibaba(アリババ)が設立し香港と台湾の若い起業家をサポートする非営利団体のAlibaba Entrepreneurs Fundなどから調達している。

DayDayCook製品のセールスポイントは、慎重に用意されたブランドストーリーだ。ユーザーは最初にスタートアップがソーシャルチャネルを介して公開したコンテンツを視聴し、次にDayDayCookの調理済みまたは簡易調理食品パックや、台所用品などの顧客になる。

「私たちはコンテンツツーコマースモデルを本気で信じています」と語るのは、Talis CapitalのマネージングパートナーであるMatus Maar(マティス・マール)氏だ。

彼はさらに、豊富なモバイル編集ツールによりコンテンツの作成が簡単になったおかげで、「中国の田舎に住む人でも素晴らしいコンテンツを作成して、巨大なフォロワーを生み出すことができるのです」と説明した。彼は農村での自給自足生活を描いた動画を、Youtubeや国内のサイトに投稿することでスターの座に躍り出た、中国の隠遁的なインフルエンサーであるLi Ziqi(李子柒)氏について言及した。

「これは、非常に洗練されていたり、メガエージェンシーから提供されたコンテンツを見たくない人たちの間で、共鳴するように広がっているのです。インターネット上の人々は、本物を見たいと思っています。本当のことをしている人を見たいと思っているのです」と彼は語った。

食品のインフルエンサーは多数存在するが、収益を挙げられるベンチャーを構築できる準備を全員が整えているわけではない。マール氏は、DayDayCookなら必要な要素をすべて整えていると信じている。供給元、配送手段、物流管理、発送業務などのすべてだ。自社ブランド製品を開発することにより、スタートアップは高い利益率で販売することもできる。

チュー氏によれば、彼女の会社は自社アプリ上に230万人の登録ユーザーを集めているという。JD.com(京東商城)やAlibabaのTmall(Tモール)などのeコマースチャネルを通じて注文する有料ユーザーは、前年比12倍の220万人に成長した。

DayDayCookのコンテンツはリーチが広く、マイクロブログプラットフォームのWeibo(微博)、TikTokの中国語版であるDouyin(抖音)、Tencentのビデオサイトなどで、6000万人のフォロワーを獲得している。だがこれはインフルエンサーの時代にはそれほど多いようには思えないかもしれない。なにしろ個人である前述の李子柒氏も、YouTubeだけで1200万人近くのチャンネル登録者を数えているのだ。

カテゴリー:VC / エンジェル

タグ:DayDayCook 香港 インフルエンサー

原文へ
(翻訳:sako)

クロスボーダー金融決済のEMQが21億円を調達、日本、中国、インド市場を狙う

国境を越える金融取引は個人・大企業を問わず大きな頭痛の種であり、他国の受取人に送金する際、往々にして長い待ち時間や高額の手数料に向き合わなければならない。国をまたぐ決済を迅速に行えるネットワークインフラを開発する香港のスタートアップであるEMQは7月28日、WI Harper Group(WIハーパーグループ)がリードするシリーズBで2000万ドル(約21億円)を調達したことを発表した。

EMQのテクノロジーは、オンライン銀行のデジタルウォレット、eコマースおよび加盟店向けの決済業者、認可を受けた金融機関などのクライアントの既存のネットワークに統合されるため、国境を越える送金を簡単に実行できる。

今回の資金調達にはAppWorks(アップワークス)、Abu Dhabi Capital(アブダビキャピタル)、DG Ventures(DGベンチャーズ)、Intudo Ventures(イントゥドベンチャーズ)、VS Partners(VSパートナーズ)、January Capital(ジャニュアリーキャピタル)、Hard Yaka(ハードヤカ)、Vectr Fintech Partners(ベクターフィンテックパートナーズ)、Quest Ventures(クエストベンチャーズ)、Sparklabs(スパークラボ)も参加した。資金はEMQの国際ビジネス拡大、製品開発、主要市場での免許取得のために使われる。2017年12月に発表した650万ドル(約7億円)のシリーズAと今回のラウンドを合わせたEMQの調達総額は2650万ドル(約28億円)となった。

EMQはすでに香港、シンガポール、インドネシアで免許を取得しており、カナダではマネーサービスビジネスとして登録されている。また、フィンテック企業によるイノベーションを促進する目的で台湾の金融監督委員会が立ち上げた規制サンドボックスにも採用された。

同社の共同創業者兼最高経営責任者であるMax Liu(マックス・リュー)氏はTechCrunchに対し、今後は特に中国、インド、日本で企業向け送金事業の拡大に注力すると語った。EMQのテクノロジーはすでに80カ国で企業の決済処理に利用されている。

最近まで、EMQが関わった取引の大部分は消費者間決済だった。その後5月に企業向け決済ソリューションを立ち上げた。リュー氏は「EMQにおける企業間取引は2021年には総取引量の半分を占めていると予想している」と語った。

Juniper Research(ジュニパーリサーチ)によれば、クロスボーダーのB2B取引は、主に新しいテクノロジーの採用により、2018年の150兆ドル(約1京6000兆円)から2022年までに218兆ドル(約2京3000兆円)を超えると見込まれている。クロスボーダー取引のテクノロジー(APIを含む)を提供するフィンテック企業には、Currencycloud(カレンシークラウド)、Payoneer(ペイオニア)、Transferwise(トランスファーワイズ)などもある。

リュー氏はEMQの主なセールスポイントとしてeコマース、小売業者の決済、調達、送金、給与計算など、さまざまな国での幅広い用途に対応できる柔軟なインフラの構築に重点を置いていることを挙げた。

また同氏は、EMQがわずか2つのAPI呼び出しを行うことでクライアントの既存のテクノロジーインフラに統合できることを付け加えた。EMQは模擬取引を使ってフルに機能するサンドボックス環境をクライアントに提供し、正式運用の前にテクノロジーを実験したり、EMQのカスタマーサポートチームと予行演習したりできる。リュー氏は、クライアントがEMQをビジネスオペレーションに完全に統合するには、企業の規模と要件によるが通常2週間から2カ月かかると述べている。

WI Harper Group(WIハーパーグループ)のパートナーであるEdward Liu(エドワード・リュー)氏は、投資に関する記者発表で次のように述べた。「デジタルトランスフォーメーションが世界的に盛り上がり、企業の活動はますます国際的になる中、クライアントがアジアやさらにその先にビジネスを広げるには、EMQのような高速で確実そして柔軟性と透明性を備えるネットワークインフラがに必要になる。EMQチームと提携して、クロスボーダーのビジネス決済市場をリードするポジションをグローバルに拡大できることをうれしく思う」。

画像クレジット:Chuanchai Pundej / EyeEm / Getty Images

関連記事:日本進出も果たした英フィンテックスタートアップRevolutが約85億円調達、サブスク管理ツールなどの導入も計画

カテゴリー:フィンテック

タグ:EMQ 香港 資金調達

原文へ
(翻訳:Mizoguchi