アフリカ、ラテンアメリカ、インドなどの新興市場では決済、融資、ネオバンクがフィンテック業界を掌握

ここ数年、新興市場ではテック関連の投資が活発に行われており、エコシステムの成長につながっている。

アフリカ、ラテンアメリカ、インドなど、これらの市場の一部では、それぞれの地域の傾向や投資に関する包括的な報告が出版社や企業により提供されている。しかし、地域間の傾向や投資を比較対照した報告はほとんどみられない。それも当然だろう。このような作業は骨の折れる仕事である。

そうした中、データ調査機関Briter BridgesとインクルーシブテックのグローバルアクセラレーターCatalyst Fundが発表した報告書は、この3市場の最重要セクターであるフィンテックに対して全体像の提示を試みるものだ。

本報告書「新興市場におけるフィンテックの状況レポート」は、新興市場全体にわたって投資、プロダクト、包括性という3つの指標で評価を行っている。

調査はアフリカ、ラテンアメリカ、インドの177のスタートアップと33の投資家を対象に行われた。ここで使用されているサンプルの規模はごく小さなものであるが、鍵となる所見は非常に印象的である。

それでは中身を見ていこう。

フィンテックは2017年以降、地域全体で230億ドル(約2兆5038億円)を資金調達している

新興市場に向けられた投資意欲はとどまるところを知らない。本セクターは過去5年間、前年比で最大の投資を受け続けている。

3億人を超えるアフリカの成人が、銀行口座を持たない世界人口の17%を占めている。2019年にアフリカ大陸でBranch、Tala、World Remit、Interswitch、OPayによる合計7億7500万ドル(約845億円)超に達する5つの大型取引が行われたことは理解に難くない。2020年は3億6200万ドル(約394億円)に低下したものの、Flutterwave、TymeBank、Kudaなどの企業がこの期間にかなりの額を調達している。

画像クレジット:Briter Bridges & Catalyst Fund

ラテンアメリカでは、デジタルユーザーの基盤が拡大し、規制と改革が促進され、中小企業が活況を呈している。アフリカ同様、銀行口座を持たない人の割合は70%と高い。この地域のフィンテック企業はその事業機会をとらえ、NuBank、Neon、Konfio、Clipといった企業が享受するメガラウンドを獲得した。これまでの5年間で、フィンテック系スタートアップは合計100億ドル(約1兆886億円)を調達している。

インドのフィンテック系スタートアップは、2019年だけで48億ドル(約5225億円)という記録的な額を調達したことが報告書に記されている。そして2020年、同セクターは30億ドル(約3266億円)を調達し、CRED、Razorpay、Groww、BharatPeなどの著名な大手企業を含む過去5年間の合計額は116億ドル(約1兆2627億円)に達した。

アフリカの平均シードラウンドは100万ドル(約1億885万円)、インドとラテンアメリカの平均は400万ドル(約4億3540万円)

報告書によると、アフリカでの初期段階の取引は過去5年間で累計16億ドル(約1742億円)以上増加している。特にシードラウンドの平均規模は、2017年の75万ドル(約8250万円)から2020年には100万ドル(約1億885万円)に拡大した。

ラテンアメリカにおける過去5年間の平均シード取引額は約570万ドル(約6億2040万円)であったのに対し、インドでは約460万ドル(約5億円)であった。報告書では、後者のデータはCREDの3000万ドル(約33億円)のシードラウンドにより偏りが生じているとしている。

画像クレジット:Briter Bridges & Catalyst Fund

ラテンアメリカはIPOに意欲的で、インドはユニコーンを産み、アフリカはM&Aへ向かっている

2020年StripeがPaystackを買収したことは、その規模とナイジェリアのフィンテック系スタートアップの地元出身というステータスにより、アフリカのM&Aのハイライトとなった。その他に大きな話題となったラウンドには、WorldRemitによるWaveの5億ドル(約544億円)の買収(これは大陸で最大のものである)とNetwork InternationalによるDPO Groupの2億8800万ドル(約313億円)の買収がある。

関連記事:インドのスタートアップは2020年に合計9660億円を調達、記録更新ならずも後半回復

アフリカのフィンテック市場ではメガ買収や7桁規模の未公開取引の数々に注目が集まっているが、ラテンアメリカのフィンテック市場ではIPOへの関心が高い。報告書によると、同地域のフィンテック企業は数回にわたり1億ドル(約109億円)のラウンドを行っており(Nubank、PagSeguro、Creditas、BancoInter、Neon)、M&A活動は希薄だ。しかし、Arco Educacao、Stone Pagamentos、Pagseguroなど、その多くが最近上場を果たしている。

一方、インドには25社を超える10億ドル(約1088億円)企業が存在し、毎年増え続けている。先月には8件新たに誕生した。こうしたユニコーン企業は、Paytmのような既存の企業からCREDのような新しい企業まで多岐にわたっている。

決済、クレジット、ネオバンクがフィンテック活動をリード

報告書によると、この3地域では決済企業がフィンテックへの投資の中心となっている。そのサブセット内では、B2B決済が支配的な位置を占めている。次に資金を得たフィンテックのカテゴリーは、クレジットとデジタルバンキングだ。

アフリカでは、決済スタートアップへの投資がクレジットやネオバンクを上回っている。Flutterwave、Chipper Cash、Wave、Paystack、DPOなどが挙げられるだろう。

画像クレジット:Briter Bridges & Catalyst Fund

ラテンアメリカで最も資金を得ているフィンテック企業はネオバンクである。また、3つのプロダクトカテゴリーすべてに20億ドル(約2176億円)から30億ドル(約3266億円)の資金が集まっている唯一の地域でもある。そうした企業には、NuBank、Creditas、dLocalなどが名を連ねている。

インドではトップクラスの資金力を持つフィンテック系スタートアップは決済カテゴリーに属している。しかし、Niyo、Lendingkart、InCredのような9桁のラウンドを調達する企業が、クレジットやネオバンクで注目すべき存在となっている。

投資家は保険、決済、デジタル銀行の将来に期待を寄せている

5年後のフィンテックプロダクトの将来動向については、調査対象となった少数の投資家のほとんどが、保険、決済、デジタルバンキングモデルを選択肢としている。

投資プラットフォームや組み込み型モデルにも関心が集まっている。彼らの関心は農業や送金に向けられておらず、ウェルステックプラットフォームやネオバンクも優先順位が低かった。デジタルバンキングとネオバンキングが投資家の選択範囲の両極にあるのはなぜだろうか?確かなことはわからない。

画像クレジット:Briter Bridges & Catalyst Fund

報告書の一部では、これらの地域で十分なサービスが行き届いていない消費者のことや、フィンテックスタートアップが彼らにどのようにサービスを提供しているかについて述べられている。また、これらのフィンテックスタートアップがファイナンシャルインクルージョンを促進しているかどうか、どのような機能やプロダクトがそれを可能にするかについても論じている。

そのすべてにおいて、アフリカがラテンアメリカとインドに何年も後れをとっているという明白な事実は、目新しい情報ではない。Briter BridgesのディレクターDario Giuliani(ダリオ・ジュリアーニ)氏に話を聞いたところ、アフリカ大陸がラテンアメリカとインドが現在位置しているところに到達するには5年かかるだろうと語っている。同氏はまた、現段階でインドをより良い市場にしているのは、他の市場のように大陸ではなく、オペレーションが一律的であるからだと付け加えた。

「アフリカの54カ国やラテンアメリカの20カ国よりも、1つの国を管理する方が容易です」と同氏はTechCrunchに語った。「アフリカでは、私たちは『アフリカ』というラベルを使いながら、4~6カ国にわたって言及します。ラテンアメリカでは基本的にブラジル、メキシコ、アルゼンチン、コロンビアの4カ国で大手企業が台頭しています。一方、インドは1カ国です」。

同報告書によると、新興市場のほとんどのフィンテック企業は、作物保険、流通業者やベンダー向けのクレジットライン、KYC、電子商取引決済ゲートウェイ、医療金融、保険といったさまざまな分野に進出しているという。ジュリアーニ氏は、この状況が今後も続くと予想している。

カテゴリー:フィンテック
タグ:アフリカラテンアメリカインド投資決済クレジットカード保険銀行金融

画像クレジット:Getty Images

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(文:Tage Kene-Okafor、翻訳:Dragonfly)

難民救済NPOのBuffaloGridとTechfugeesが資金募集と教育とソーラー充電で協力

電気がない環境で暮らしている人たちに、スマートフォンの充電とデジタルコンテンツを提供しているBuffaloGridが、非営利の難民救済団体Techfugeesとともに、アフリカ東部と中東の故郷に戻れない人たちに無料の教育コンテンツとデバイスの充電を提供しようとしている。

Techfugeesは最初のサービスとして、太陽光発電による「BuffaloGrid Hub」をケニアとウガンダに展開し、教育と健康関連コンテンツへの無制限の無料アクセスを提供、またその他のストリーミングサービスへのアクセスやモバイルの充電サービスも提供する。

この共同キャンペーン「Knowledge is Freedom(知識は自由だ)」は、今後2年間で300万ドル(約3億3000万円)の調達を目標にしている。

BuffaloGridのCEOであるDaniel Becerra(ダニエル・ベセラ)氏は、次のように述べている。「私たちのミッションはインターネットアクセスの障壁を取り除き、次の10億人に情報とエネルギーとデジタルのスキルを提供することです。このキャンペーンで故郷を追われた人たちへの気づきを喚起し、私たちが力を合わせれば状況を変えられることを周知したい。チーム全員がTechfugeesと協力できることを喜んでいます。一緒になることで私たちの技術力も経験も他との結びつきもより強力になり、真の違いを作り出せるでしょう」。

一方、TechfugeesのCEOであるRaj Burman(ラージ・バーマン)氏は次のように述べている。「デジタル化と気候変動がますます激しくなっている今の世界で、私たちのミッションは強制的に故郷を追われた人たちが取り残されないようにすることです。約40万の難民が、ウガンダおよびケニアのルワムワンジャとカクマ-カロベイエイ救難キャンプで暮らしています。BuffaloGridとのコラボレーションには、私たちのケニアとウガンダの支部からの支援により、革新的で責任性のあるデジタルソリューションが故郷なき人たちに力をつけ、教育と健康のコンテンツへのアクセス障壁を克服して、生計を改善していける機会があります」。

Techfugeesによると、世界の人口の約1%にあたる8000万人が、気候変動や戦争、紛争、経済の悪化、そして迫害によって難民になっている。この数は、2050年には10億を超えると予想されている。

ベルファストに本部のあるBuffaloGridは、これまで640万ドル(約7億円)を調達し、Tiny VCやADV、Seedcamp、Kima VenturesそしてLocalGlobeなどを投資家として迎えている。

情報開示:Mike ButcherはTechfugeesの議長だ。

関連記事:難民とNGOのためのテクノロジーを主体にした革新的な25のプロジェクト

カテゴリー:パブリック / ダイバーシティ
タグ:BuffaloGridTechfugees難民アフリカ中東ソーラー充電教育

画像クレジット:BuffaloGrid

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(文:Mike Butcher、翻訳:Hiroshi Iwatani)

グーグルがアフリカで4万人の開発者に奨学金を提供

Google(グーグル)は米国時間4月29日、アフリカで新たに4万人の開発者に奨学金を提供すると発表した。同社は技術系人材企業であるPluralsight(プルラサイト)およびAndela(アンデラ)と提携し、モバイルおよびクラウド開発分野の開発者を対象とした奨学金を提供する。

Googleの発表によると、同社はトレーニング終了時に上位1000人の学生(初級および中級の開発者)に全額の奨学金(とAndroidおよびクラウド開発者資格)を与えるとのことだ。

バーチャルイベントで行われた今回の発表は、Googleアフリカのブログ記事でも詳しく紹介されている。同社はアフリカのテクノロジー分野のエコシステムにおける主要な関係者を招き「インターネット経済全体で展開されている機会を検討し、この地域の開発者やスタートアップの支援に特別な注目を向けることにしました」と述べている。

Googleは開発者にチャンスを与えるとともに、アフリカのスタートアップ企業を対象としたアクセラレータプログラムの継続も発表。このGoogle for Startups Accelerator(グーグル・フォー・スタートアップス・アクセラレータ)プログラムは、2021年で6回目のコホートを迎えることになる。3カ月間のプログラムは6月21日に開始される予定で、応募受付は5月14日まで。今回のコホートも前回と同じく、バーチャルな環境でプログラムに参加することになる。

「2020年、新型コロナウイルスの流行を受けて、Google for Startups Accelerator Africaで初のバーチャルクラスが始まりました。これは初めてすべてがオンラインで行われたGoogleのアフリカ向けアクセラレータプログラムで、7カ国から集まった20社のスタートアップ企業が、メンタリングやワークショップを受けながら、自社のサービスを再定義する12週間のバーチャルな参加期間を終えました」と、Google for Startups Accelerator Africaの責任者であるOnajite Emerhor(オナジャイト・エマーホール)氏は、声明の中で述べている。「2021年の第6期生では、アフリカのテクノロジー系エコシステムの中で開発者やスタートアップを支援し、彼らが成長し続けるために必要なあらゆるアクセスとサポートを提供することで、引き続き当社の役割を果たしていきたいと考えています」。

以前はGoogle Launchpad Accelerator(グーグル・ローンチパッド・アクセラレータ)として知られていたGoogle for Startups Accelerator Africaは、アフリカの17カ国で最大50社のスタートアップを支援してきた。2020年には、ナイジェリアから8社、ケニアから6社、南アフリカから2社、ガーナ、チュニジア、エチオピア、ジンバブエから各1社、合計20社のスタートアップ企業が選ばれてプログラムに参加。今回の第6期生には、エジプト、セネガル、タンザニア、ウガンダなど、さらに多くの国からスタートアップ企業を選出する予定だ。

「起業家精神の成長は、特にアフリカという環境において非常に重要です。アフリカの開発者やスタートアップ企業は、アフリカ経済の変革に重要な役割を果たし、新たな機会を作り出して、私たちが望むアフリカ大陸の経済的・社会的発展への道を切り開きます。私たちは、アフリカのデジタル分野における並外れた可能性を認識しており、だからこそ、Googleはアフリカのスタートアップ企業にこのような重要な支援を提供することに力を注いでいます」と、Googleサブサハラアフリカ・アフリカのマネージングディレクターを務めるNitin Gajria氏は語っている。

開発者コミュニティは、アフリカにおけるGoogleの事業展開で、依然として最も重要な要素の1つだ。同社は現在、サブサハラ・アフリカの25カ国で120以上のコミュニティを運営している。発表されたばかりの奨学金プログラムの他、Google Developer Groups(グーグル・ディベロッパー・グループス)、Developer Student Club(ディベロッパー・ステューデント・クラブ)などのコミュニティに加え、ナイジェリアにはGoogle Developers Space(グーグル・ディベロッパー・スペース)を開設し、開発者と起業家や投資家が交流する場を提供している。

カテゴリー:その他
タグ:Googleアフリカ

画像クレジット:Google Africa

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(文:Tage Kene-Okafor、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

日本のVC「サムライインキュベート」がアフリカのスタートアップ向けに20億円超のファンドを組成完了

東京拠点のベンチャーキャピタルであるSamurai Incubate(サムライインキュベート)が「Samurai Africa Fund 2号」の組成を完了し、総額20億2600万円を集めたことを4月15日に発表した。

同社によると、目標額20億円のファンドには募集枠以上の応募があり、総勢54名の投資家がLP(有限責任組合員)として出資した。注目すべきLPの1つが豊田通商株式会社で、アフリカ大陸全体に多様なネットワークを持っている。同社はコーポレート・ベンチャー・キャピタル(CVC)のMobility 54を設立し、アフリカの輸送、物流、フィンテックのスタートアップへの投資を計画している。

榊原健太郎氏は2018年にSamurai Incubateを設立し、子会社のLeapfrog Venturesを立ち上げてアフリカへの投資を開始した。Samurai Incubateは新たな子会社を通じて2018年8月以来、アフリカのスタートアップ20社に250万ドル(約2億7000万円)出資した。そして2019年6月、Leapfrogの社名をSamurai Incubate Africaに変更した。

「当社は一貫してファウンダーへの価値提案を最大化するという経営方針の改善と最適化に注力してきました。しかし、いつも完璧だったわけではありません。私たちがもたらす価値は、資金や日本の投資家や企業へのアクセス以上のものであるべきだと信じています」と同社は声明で語った。

セクター無依存のファンドを提供するSamurai Incubate Africaはすでに26社に投資している。今回の第2号ファンドの投資先には、テック利用ホームサービスのスタートアップであるEden Life、オンライン融資マーケットプレイスのEvolve Credit、エネルギー・スタートアップのShyft Power Solutions、自動車レンタル向け少額融資サービスのFMG、貨物輸送会社のOneport、およびオンライン食料品プラットフォームのPricepallyら6社が含まれている。

Samuraiの会社の多くはアフリカの3つの国、ケニア、ナイジェリア、南アフリカにある。しかし、今後はそれが変わる。マネージングパートナーの米山怜奈氏によると、Samurai Incubate Africaは対象国にエジプトを加える予定だ。

画像クレジット:Bryce Durbin/TechCrunch

2018年以来、エジプトにおけるエコシステムの成長は目覚ましく、人材、スタートアップ、および地元投資家を猛烈なスピードで生み出している。Samurai Incubate Africaにとって、この成長に目をつけるのは当然であり、エジプトが加わることで、同社はアフリカ大陸のトップスタートアップエコシステムであるBig Fourすべてでスタートアップを持つことになる。

「エジプトのスタートアップエコシステムと経済は急速に拡大しており、この国には数多くの才能あるファウンダーと偉大な投資家がいることを知っています」と米山氏がTechCrunchに話した。「すでにエジプトのスタートアップ1社への投資を決めており、絶対に後悔しないことがわかっています」。

2020年にSamuraiが最初にこのファンドを発表した時、出資規模は5万ドル(約540万円)から50万ドル(約5400万円)だった。プレシードからシードラウンドまで、スタートアップは20万ドル(約2200万円)以下を獲得する。プレシリーズAとシリーズAラウンドでも50万ドル以下だった。しかしファンドの組成完了後は、投資金額を80万ドル(約8700万円)へと拡大する。

「投資先企業のプレシリーズAとシリーズAを既存出資者として支援するつもりです。そのために、投資額を企業の最近ラウンド規模と評価額に応じて増やすほうがいいと考えました」と米山氏は説明した。

セクター無依存ではあるが、同社が特に力を入れているのはフィンテック、インシュアテック、流通、医療健康、消費者、コマース、エネルギー、アグリテック、モビリティー、エンターテインメントだ。

日本のVCは、プレシードとシードステージの新規企業30~40社に加えて、投資先企業7~10社のプレシリーズAとシリーズAラウンドにも参加する計画だ。Samurai Incubateは、Kepple AfricaやUncovered Fundなどと並ぶ、日本で増えつつあるアフリカのスタートアップを対象としたVCの1つだ。

関連記事:日本のUncovered Fundがアフリカのアーリーステージ企業向けに15億円超のファンドを設立

カテゴリー:VC / エンジェル
タグ:Samurai Incubate日本東京アフリカエジプト

画像クレジット:Samurai Incubate

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(文:Tage Kene-Okafor、翻訳:Nob Takahashi / facebook

アフリカでの暗号資産の利用急増でLunoの顧客リーチは700万規模に

暗号資産(仮想通貨)は、価値の保存手段としてBitcoin(ビットコイン)を受け入れ出した機関投資家の参入による強烈な刺激を受け、全体として力強い成長の年を迎えた。2020年に起きたビットコインの急騰も、2020年第3四半期には1億人を突破した世界中の暗号資産ユーザーが、国際的にそれを受け入れ始めたことで加速された。

2013年、Marcus Swanepoel(マーカス・スウェインポール)氏とTimothy Stranex(ティモシー・ストラネクス)氏によって創設された英国の暗号資産取引企業Luno(ルノ)の場合、2020年1月から2021年1月の間に顧客が600万人に膨れ上がった。だが、それ以後さらに700万人に増えている。現在、ロンドンに本社を置く同社は、南アフリカ、マレーシア、インドネシア、ナイジェリア、シンガポールにも400人近い従業員を擁し、世界40カ国に顧客がある。

CEOのスウェインポール氏によれば、Lunoの数字はこの7年連続で前月比を上回る増加を見せているという。しかし、これだけの勢いの加速を経験するのは初めてのことだ。

Lunoの数字が急増した理由はいくつかある(どの暗号資産取引スタートアップも同じだが)。一般的に、ビットコインは暗号資産愛好家が日常的に使っているとか、BNY Mellon(バンク・オブ・ニューヨーク・メロン)、Mastercard(マスターカード)、Tesla(テスラ)などの機関投資家が興味を示しているといった話とは裏腹に、それが主流になるのはまだまだ先の話だ。

今のところ、暗号資産は主に投資目的で使われている。このたった1つの要因が、アフリカ人の間で大きな人気を呼んでいるのだ。彼らが、Lunoの成長と強大なトラクションの大半を支えるユーザー層となっている。

2020年、同社は現在の事業の対象となっている市場でアンケート調査を実施し、南アフリカ、英国、フランス、イタリア、インドネシア、マレーシア、ナイジェリアから1万5000件の回答を集めた。これによりLunoは、現在の金融システムにパンデミックがどれだけの影響を及ぼしたかを理解できた。調査の結果、アフリカ人の54パーセントは、すでに国際的なデジタル資産を1つ利用していた。これに対してアジアでは41パーセント、ヨーロッパでは35パーセントだった。

アフリカの優位性は、その数字にも現れている。同社が世界で有している700万人の顧客のうち、470万人がアフリカにいる。この数は、2020年1月には230万人だった。アフリカ大陸全体でのLunoアプリのダウンロード数は同じ期間内に271パーセント増加した。取引数は21倍に跳ね上がり、5億550万ドル(約607億円)から70億ドル(約7660億円)に拡大した。そこからわかるのは、Lunoの取引高は83億ドル(約9077億円)に達しているということだ。

だがこの成長は、市場でのLunoの初動によるところが大きい。この数年間、それまで暗号資産市場に対応できていなかった世界各地のインフラは、大幅に改善された。Lunoは、最初のプラットフォームの1つとして、現地の通貨を採り入れることで暗号資産市場の体験を向上させるという大きな役割を果たしている。また、人々にデジタル資産啓蒙のための下地作りにも貢献した。

「前回、2020年のようにビットコインが高騰したのは2017年と2018年でした。ほとんどが小売りによってもたらされましたが、そのころはまだ暗号資産の購入が困難でした。当時は信頼性の問題があり、アカウントの承認や、ウォレットの準備にさえ数日かかったものです」とスウェインポール氏はTechCrunchに話した。「今では、この3年の間に、私たちのような企業が、特にアフリカにおいて、インフラ、KYC、新しい決済方法、顧客エクスペリエンスとサポートを確立しました。エクスペリエンスはずっと向上し、教育レベルもうんと上がりました。私に言わせてもらえれば、これがあの大陸での暗号資産の受け入れに大きく貢献したと思います」。

2020年9月、Lunoはブロックチェーン企業の創設、買収、投資を行うDigital Currency Group(DCG、デジタル・カレンシー・グループ)に買収された。同社のポートフォリオ企業には、Coindesk(コインデスク)、Genesis(ジェネシス)、Grayscale Investments(グレースケール・インベストメンツ)なども含まれている。Lunoを買収する前に、DCGは2014年のシードラウンドで始めてLunoに投資した。そして2020年、とてつもない成長とプラットフォームでの取引量を目の当たりにして、Lunoの規模拡大の機会を感じたとスウェインポール氏は話している。

「最初の5年から6年は小規模な事業でしたが、今は大きく出たいと思っています。そこでDCGのようなグローバルなプラットフォームの力が役に立ちます。彼らには豊富な資本があり、他の大陸と同様に、アフリカへの投資にも取り組んでいるからです」と彼は述べた。

さらにスウェインポール氏は、DCGは暗号資産業界とそのトレンドに明るいと話す。この買収は、Lunoにとれば、単にDCGの見識を利用して時代を先取りするためのものであり、その努力は報われたように見える。買収以来、Lunoのアクティブユーザー数は167パーセント増加した。1月の時点で、ユーザーは平均してウォレットに7000ドル(約77万円)以上入れている。これは2020年12月から56パーセントの伸びだ。

永遠に続くものなどない。しかし、もし暗号資産市場の突進が続けば、暗号資産はかつて思われていたような一時的な流行などでないことがわかる。2021年第1四半期、Coinbase(米国時間4月14日に上場予定)やRobinhood(ロビンフッド)などの企業は怪物のような数字を示し、力強い成長予測が立てられた。急成長の継続を期待するLunoの場合、その軌道は2030年に顧客数10億人という大台に定められている。

関連記事:
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カテゴリー:ブロックチェーン
タグ:Luno暗号資産アフリカ

画像クレジット:Dan Kitwood / Getty Images

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(文:Tage Kene-Okafor、翻訳:金井哲夫)

Twitterのアフリカ初進出国はガーナ

TwitterのCEOであるJack Dorsey(ジャック・ドーシー)氏は米国時間4月12日のツイートで、同社がアフリカに進出することを発表した。同氏は「Twitterが大陸に登場します。ガーナ、そしてNana Akufo-Addo(ナナ・アクフォアド大統領)、ありがとう」とツイートした。

このツイートに添付された文書でTwitterは「大陸で活発に日常の会話を交わしている豊かで活気に満ちたコミュニティにもっと深く関わるために」積極的にガーナにチームを作っているところだと述べている。

同社は製品やエンジニアリング、デザイン、マーケティング、コミュニケーションの社員をガーナで募集している。ただしガーナにオフィスを構えるのはまだ先の計画であるため、これらの職に採用された人はリモートで仕事をすることになる。

ガーナのナナ・アクフォアド大統領はこのニュースに喜び「Twitterがアフリカ事業の本拠地としてガーナを選んだのはすばらしいニュースです。政府とガーナ人はこの発表と我が国に対する信頼を大いに歓迎します」と述べた。

大統領は現地時間4月7日にドーシー氏とバーチャル会議をしたことも明らかにした。この場で両者が最終合意に達したと見られる。

大統領は「2021年4月7日に私がジャックにバーチャル会議で述べた通り、これはTwitterとガーナとの間のすばらしいパートナーシップのスタートであり、ガーナにとって極めて重要なテック分野の進歩に重要な意味を持っています。ガーナに進出して事業をするにはエキサイティングなタイミングです」と述べた。

Twitterによれば、ガーナがAfCFTA(アフリカ大陸自由貿易圏)に積極的に関わりインターネットに対しオープンであることから、アフリカで最初に同国に進出する決断をしたという。

Twitterは発表の中で「ガーナは民主主義の擁護者として言論の自由、オンラインの自由、そしてTwitterも提唱しているオープンインターネットを支持しています。その上、ガーナがアフリカ大陸自由貿易圏の事務局を開設したことは、アフリカ全域でサービスを向上し適合させていく我々の取り組みを支援し、この地域でのプレゼンスを確立するという我々の包括的な目標と一致するものです」と述べている。

カテゴリー:ネットサービス
タグ:Twitterアフリカガーナ

画像クレジット:Omar Marques/SOPA Images/LightRocket / Getty Images

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(文:Tage Kene-Okafor、翻訳:Kaori Koyama)

ナイジェリアの証券取引委員会が投資プラットフォームの「未登録」外国証券取引を禁止へ

ナイジェリアの資本市場規制機関であるSEC(証券取引委員会)が現地時間4月8日に公開した発表文によると、この国で外国証券を取り扱う投資プラットフォームは危機状態に陥るかもしれない。

最近明らかになったSECの規制によると、これらのプラットフォームは国に登録されていない外国証券を取引しており、中止するよう警告を受けている。彼らと提携している資産市場運用者も、外国証券向けの仲介サービス提供に関する規則に違反しているとして警告されいる。

この3年間、ナイジェリアのフィンテック分野にはRobinhood風の証券取引プラットフォームであるBamboo、Trove、Chaka、Riseなどが次々と登場してきた。これらの会社はナイジェリア国民向けに、現地および外国市場の株式、債権その他の証券取引サービスを提供している。こうしたプラットフォームは中流階級の間で人気があり、国の通貨であるナイラの切り下げから資産を守る避難場所として利用されている。

とはいえ、その運営方法はRobinhoodとは大きく異る。Robinhoodは取引アプリであると同時にオンライン仲介(紹介・清算)を行い、ゼロ・コミッション(手数料なし)取引業者でもある。ナイジェリアの投資プラットフォームはそれとは異なる。米国ではどの取引プラットフォームでも仲介ライセンスを取得できるのに対して、ナイジェリアでライセンスを得るのは非常に困難だからだ。そこで資産市場運用者(この場合は国内および外国の仲介企業)がプラットフォームと提携を結び、その結果ナイジェリアの人々は国内および一部の外国証券を売買することができる。

さまざまな政府機関がテックスタートアップに対して一連の規制攻撃をかけた後、2020年12月にSECが続いた。SECはプラットフォームの1つであるChakaを選び出し、株式の販売と広告を行ったとして告発した。SECの定義した容疑は、Chakaが「外国企業、たとえばGoogle、Amazon、Alibabaなどの株式を購入するプラットフォームを提供し、必要な登録を行うことなく委員会の規制範囲を超えた投資活動に関与した」こととしている。

ChakaのCEOであるTosin Osibodu(トーシン・オシボドゥ)氏は一切の不正行為を否定し、2021年に入ってからこの日の発表まで、この件についてSECから何も聞いていなかったと語った。当然規制当局は途切れていた捜査を継続し、今回初めて、Chakaだけでなく、仲介企業を含むすべての投資プラットフォームを標的にした。SECの厳格な指示は、ナイジェリアに登録済みの取引所に上場していない外国証券の販売、発行あるいは販売斡旋を中止せよというものだ。

これが示唆しているのは、今後投資プラットフォームは業務を縮小し、現地の株式と証券取引だけしか個人に提供できなくなるということだ。これは、こうしたスタートアップのビジネスモデルに影響を与える。そして彼らが提供する中心的価値である、ナイジェリア人がナイラ切り下げ対策として資産を預ける行為が打ち消される危機に瀕している。

しかし、SECとの小競り合いの末、先月Chakaは当局と交渉した結果、新たに制定されたライセンスを取得すれば、規制による危機から逃れられる可能性があることを発表した。これは他の投資プラットフォームがSEC規制下で運用するためにも必要となる手続きだ。

規制当局がウェブサイトで以下の情報を公開している。

証券取引委員会(以下「委員会」)は、いくつかのオンライン投資・取引プラットフォームが、異なる法域に登録された証券取引所に上場している外国企業の証券をナイジェリア連邦共和国の投資家が直接取引する手段を提供していることを察知した。当該プラットフォームは委員会に登録されている資産市場運用者(CMO)と提携して運営しているとも主張している。

委員会は、2007年投資証券法(ISA)第67~70条、およびSEC規約第414、415項の規定により、ナイジェリアに登録された取引所に上場されている外国証券のみがナイジェリア国民に対して発行、販売、あるいは販売または斡旋可能であることを断じて宣言する。このため、当該オンラインプラットフォームと連携して働いているCMOには、委員会の立場を通知するとともに、今後行為を中止するよう勧告する。

委員会は一般投資家に対し、通常およびオンライン媒体を通じて宣伝された投資商品に関して、確立された伝達経路を通じて要求された明確な情報を取得することを強く要求する。

カテゴリー:フィンテック
タグ:ナイジェリアアフリカ

画像クレジット:George Osodi/Bloomberg / Getty Images

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(文:Tage Kene-Okafor、翻訳:Nob Takahashi / facebook

アフリカの通信会社Airtel Africaがモバイルマネー事業拡大のためにMastercardから110.6億円調達

2週間前、TPGのRise Fundはアフリカの通信会社Airtel Africaのモバイルマネー事業であるAirtel Mobile Commerce BV(AMC BV)に2億ドル(約221億3000万円)を投資した。契約完了後、Bharti Airtelの子会社であるAirtel Africaは、追加の少数株(発行株式の25%)を別の投資家に売ることを検討していると語った。

現地時間4月1日、同社は新たな出資者として国際的決済プロバイダーのMastercard(マスターカード)を発表した。この契約でAirtel Africaは、同社のモバイルマネー事業のためにさらに1億ドル(約110億6000万円)を受け取る。AMC BVはアフリカ大陸最大級の金融サービスを運営し、ユーザーにモバイルウォレット、国際送金、融資、バーチャルクレジットカードなどのサービスを提供している。企業評価額は26億5000万ドル(約2931億6000万円)だ。

2つの会社には以前からつながりがある。2019年、両社はAirtel Africaの14か国に渡る1億人の登録ユーザーが、Mastercardの国際ネットワークを利用できる契約を締結した(この提携でMastercardとAirtel Africaの間に金銭授受はなかった)。

この日Airtel AfricaとMastercadは、商業契約を延長し新たな商業フレームワークとして、さまざまな地域でカード発行、決済ゲートウェイ、決済プロセス、マーチャント向け受領送金ソリューションなどの分野の提携関係を深める契約を結んだことを発表している。

AMC BVの26億5000万ドルという売掛買掛金ゼロ状態の企業価値は前回から変わっていない。これは、TPGのRise FundとMastercardは契約完了時に、それぞれ7.55%および3.775%の株式を取得することを意味している。Mastercardの場合、 支払いは2回に分けて行われ、最初に7500万ドル(約83億円、4カ月以内に完結)、2回目に5000万ドル(約55億3000万円)投資する。

モバイルマネー事業の少数株をRise FundとMastercardおよびその他の出資者候補に売却することで、Airtel Africaはモバイルマネー事業を収益化し、4年以内の上場を目指すために必要な資金を調達できると信じている。

TPGのRise FundとMastercardからの出資に加えて、Airtel Africaは一部の資産の売却も行う。先週同社は、マダガスカルとマラウィの通信塔1424基を1億1900万ドル(約131億7000万円)でHelios Towersに売った。HeliosとAirtel Africaは、チャドおよびガボンの通信塔の売買でも合意しているが、詳細は明らかにされていない。

一連の行動は、同社の戦略的資産収益化と投資機会、そして最終的な債務削減に向けられている。

「本日、当社のモバイルマネー事業の出資者としてMastercardを迎えることを謹んでご報告いたします。2週間前に発表したThe Rise Fundの出資に続くものです」とAirtel AfricaのCEOであるRaghunath Mandava(ラグナート・マンダヴァ)氏は語った。

「これは、モバイルマネー事業の少数株主を増やして4年以内に上場を目指すという当社の戦略の一環です。現在のMastercardとの戦略的関係を大きく強化することで、当社が事業を運営する国々の金融状況を改善する重要な機会をフルに活用することができます」。

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(文:Tage Kene-Okafor、翻訳:Nob Takahashi / facebook

アフリカへの送金サービスを提供するAfriexがシード資金1.3億円を調達

米国からナイジェリアに送金するのは厄介な作業だ。Western Union(ウェスタン・ユニオン)のような送金サービスを使うと、送金手数料が必要で米国のデビットカードから送ったお金がナイジェリアの銀行口座に届くまでには1~5営業日かかる。

この国境を越えた支払いの問題を、時間と手数料を減らすことで解決しようと登場したのが仮想通貨送金プラットフォームだ。つい米国時間3月22日、本誌は現在Y Combinator 2021年冬組にいてこの問題を解決しようとしているFlux(フラックス)というナイジェリアのフィンテックを取り上げた。そして本日、3月23日にこれもYC出身のスタートアップ(こちらは2020年夏組)、Afriex(アフリークス)が1200万ドル(約13億円)のシードラウンドを完了した。

同社はTope Alabi(トープ・アラビ)氏とJohn Obirije(ジョン・オビリエ)氏が2019年に設立し、母国や離れ離れのアフリカ人たちに手数料無料の即時送金サービスを提供している。ユーザーはアプリで現金を入金し、別のユーザーの銀行口座に送金したり、登録した銀行やデビットカードに出金することができる。

仮想通貨送金プラットフォームと同じく、Afriexは自社ビジネスを米ドルとの交換レートが決められているステーブルコインに基づいて事業を構築した。要するにこの会社は仮想通貨をどこかの国で買い、レートの良い別の国で売っている。よく知られているWestern UnionやWiseのように伝統的銀行システムを使っているプラットフォームとは対照的だ。

2020年YCを卒業した時点で、このスタートアップは30か国以上にわたって月間約50万ドル(約5400万円)の手数料を稼いでいた。当時Afriexはナイジェリアと米国のみでサービスを提供していた。そしてガーナ、ケニア、ウガンダで事業を開始して以来、Afriexは毎月数百万ドル(数億円)を処理しているという。ただし同社ウェブサイトでAfriexは、利用者はナイジェリア、ガーナ、ケニア、カナダおよび米国の各国間のみで送金できると書いている。

新たな投資によってナイジェリア、ラゴスとサンフランシスコに拠点を持つ同社は、チームを拡大し、他の市場に進出することが事業規模の成長を目指している。

汎アフリカのVC会社であるLaunch Africaがシードラウンドをリードした。他に、Y Combinator、SoftBank Opportunity Fund、Future Africa、Brightstone VC、Processus Capital、Uncommon Ventures、A$AP Capital、Precursor VenturesおよびIvernet Holdingsが出資した。エンジェル投資家のRussel Smith(ラッセル・スミス)氏、Mandela Schumacher-Hodge Dixon(マンデラ・シューマッハ-ホッジ・ディクソン)氏、Furqan Rydhan(フルカン・リダン)氏およびAndrea Vaccari(アンドレア・ヴァッカリ)氏も参加した。

SoftBank Opportunity FundはSoftBankグループの子会社で、米国の有色人種ファウンダーをターゲットにしている。2020年6月の設立以来、22社のスタートアップに投資しており、Afriexは米国と他の大陸のユーザーを対象とした唯一の会社のようだ。

これはアラビ氏が移民の子として両方の世界を知っているという生い立ちによる。ナイジェリアへの送金は困難であり、Consensysでのブロックチェーン開発者としての経験から、自分なら問題を解決できると気がついた。

「当時私たちは2年毎に国に帰っていて、私はその頃から何が欠けていて、何が改善できるかを書き留めていました。あるとき、海外での出費を米国の銀行口座にあるお金で支払わなくてはいけないことに気づきました」とアラビ氏はいう。「伝統的送金会社は非常に遅い上に手数料が高く、仮想通貨でもっとうまくできることを知っていました。送金は最高かつ最重要仮想通貨の利用方法です。私たちの目標は世界最大の送金会社を作ることであり、新興国から始めます」。

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画像クレジット:Afriex

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(文:Tage Kene-Okafor、翻訳:Nob Takahashi / facebook

アフリカでAPIフィンテックを展開するStitchがステルスから脱して4.3億円を調達

この数年、世界中でフィンテックインフラストラクチャー企業が多数出現している。アフリカでは、過去3年の間に、フィンテックインフラストラクチャーを提供するスタートアップがいくつか誕生している。南アフリカのフィンテックスタートアップStitch(スティッチ)もその1つだ。このほど、Stitchはステルスモードから脱して、400万ドル(約4億3000万円)のシードラウンドを発表した。これは現時点で、アフリカのAPIフィンテックスタートアップによる最高額の資金調達ラウンドだ。

Kiaan Pillay(キアーン・ピレイ)氏、Natalie Cuthbert(ナタリー・カスバート)氏、およびPriyen Pillay(プリエン・ピレイ)氏によって創業されたStitchは、アフリカ全土の金融口座にAPIのみでアクセス可能にしたいと考えており、まずは、最初のマーケットである南アフリカからサービスを開始する予定だ。開発者はStitchのAPIを使用すると、アプリを金融口座に接続できる。これにより、利用者は、取引履歴と残高の共有、本人確認、決済の開始といった処理を行うことができる。

APIを利用した金融サービス企業が世界中で多数出現している。Plaid(プレイド)は米国の市場をリードしている。スウェーデンに本拠地を置くフィンテックTink(ティンク)は欧州全体を席巻しており、Truelayer(トゥルーレイヤー)とBelvo(ベルボ)はそれぞれ、英国と中南米で確固とした地位を築いている。

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こうした企業は、エンジニアおよび開発者向けに、アプリからユーザーの金融口座に接続する際に必要な技術面および運用面での操作を軽減するツールを提供している。APIを使うことで、通常ならゼロから構築する必要のある複雑なサービスを数行のコードを追加するだけで組み込むことができる。

企業や開発者は他の金融インフラストラクチャー同様、Stitchのサービスを使用すると、パーソナルファイナンス、融資、保険、決済、資産管理などの他のサービスにイノベーションを起こすことができる。

Stitchの創業者たちは南アフリカのマーケットでAPI製品を構築した経験に基づいて起業した。キアーン・ピレイ氏は、2017年、南アフリカの保険APIプラットフォームRoot(ルート)の運用リーダーとして勤務していた。しかしその後、サンフランシスコに本拠地を置く、ID APIを開発する企業Smile Identity(スマイルアイデンティティー)に転職する。そこで同氏は、アフリカ全土のフィンテックに取り組み、コンプライアンスとアイデンティティー周りのインフラストラクチャーに問題があることを発見する。

Stitchのチーム(画像クレジット:Pang Isaac)

この頃、ピレイ氏、カスバート氏(前職はRootのソフトウェアアーキテクト)、およびプリエン・ピレイ氏は、サイドプロジェクトとして、アフリカ向けにVenmo(ベンモ)式のウォレットを構築する作業を行っていた。そして、銀行に接続しようと8カ月間試みた結果、アフリカのフィンテックはインフラストラクチャーが欠如しているために進歩のスピードが遅いことに気づいた。

「我々はユーザーが現金をウォレットから銀行口座に移せるようにする方法を考えていた」とピレイ氏はいう。「最初は手作業でやっていたが、その後、一時しのぎの策として、このプロセスを画面スクレイピングを使って自動化してみた。そして、この手作業を自動化するという解決策自体を製品化できること、なおかつもっと洗練された方法があることに気づいた」。

そのような経緯で、ピレイ氏をCEO、カスバート氏をCTO、プリエン・ピレイ氏をCPOとして、Stitchの立ち上げに向けてチームが結成された。2019年10月にはこのアイデアに本格的に取り組み始め、1カ月後にはプレシードラウンドを確保した。Stitchによると、ステルス状態で運営している間に、 Intelligent Debt Management(インテリジェント・デット・マネジメント)、Momentum Velocity Club(モメンタム・ベロシティ・クラブ)、FlexClub(フレックスクラブ)など、数社の顧客を獲得したという。その後、Stitchは消費者向け製品を扱う企業からも注目されるようになる。

Stitchは現時点で、データおよび本人確認用API製品を提供しているが、今月には、決済用製品もラインナップに追加する予定だ。大半のAPIフィンテックスタートアップと同様、StitchもAPIコール1回ごとに課金する。ただし、予算作成やパーソナルファイナンス管理アプリなど、一部の製品では、固定料金制も導入している。

Stitchは、投資家たちから幅広く深い支援を受け、資金を調達して南アフリカで確固とした成長基盤を築くつもりだ。また、アフリカ西部や東部でも事業を展開する予定だという。

活況を呈するアフリカの金融インフラストラクチャー

アフリカの金融インフラストラクチャー市場にはすでに、APIフィンテック領域のプレイヤー(主にナイジェリアのスタートアップ)が存在している。そうした企業は大規模なラウンドで資金調達しており、うらやましいほどの支援も受けている。Mono(モノ、半年前に起業したばかりのスタートアップ)はYCの支援を受けている。また、Okra(オクラ)はアフリカ全土に展開するVC企業TLcom Capital(TLcomキャピタル)の支援を、OnePipe(ワンパイプ)はTechstars(テックスターズ)の支援を受けている。米国に本拠地を置くがアフリカに注力しているPngme(プングメ)は、アフリカ全土に展開するVC企業EchoVC(エコーVC)、とLateral Capital(ラテラルキャピタル)から投資を誘致している。

現時点では、これらのスタートアップは3か国以上には事業展開していない。例えばモノ、オクラ、ワンパイプはナイジェリア国内のみを拠点としており、プングメはナイジェリアとケニア、Stitchは南アフリカのみでサービスを提供している。こうした企業がマーケットを拡大していったとき、どのような競合関係および協力関係が展開されていくのかを見るのは興味深い。これは、そんなに先の話ではない。オクラは現在、ケニアと南アフリカで試験的にサービスを提供しているし、モノは2021年末までには、ガーナとケニアにマーケットを拡大する予定だからだ。

これらのスタートアップの創業者に以前話を聞いたところ、アフリカの市場では健全な競争が展開されると思うと答えてくれた。キアーン・ピレイ氏は次のように付け加えた。「長期的な展開としては、各企業がそれぞれ得意な分野でニッチな機能を実現していく形になるだろう」。

「プレイドが席巻している米国とは違い、アフリカのフィンテック業界には複数のプレイヤーが必要だと思う。欧州が良い例だ。多くのかなり大規模な企業が同じようなバンキングAPIサービスを提供している。アフリカでは、複数の企業が特定の機能(決済、データのエンリッチ化、店舗IDなど)を提供する形になるのではないかと思う」。

画像クレジット:Stitch

Stitchの今回のシードラウンドには錚々たる参加者が名を連ねており、主導するのは、ロンドンに本拠地を置くVC企業firstminute Capital(ファーストミニッツ・キャピタル)と米国に本拠地を置く投資会社The Raba Partnership(ラバ・パートナーシップ)だ。その他の出資者にはファンドとエンジェル投資家の両方がいる。

ファンドとしては、CRE、Village Global(ビレッジグローバル)、Norrsken(ノースケン、Klarna(クラーナ)の共同創業者Niklas Adalberth(ニクラス・アダルバース)氏が設立したファンド)、Future Africa(フューチャーアフリカ、Flutterwave(フラッターウェーブ)の共同創業者Iyinoluwa Aboyeji(リノウワ・アボイェジ)氏が設立したファンド)、500 Fintech(ファイブハンドレッド・フィンテック)などがいる。エンジェル投資家としては、ベンモの共同創業者Iqram Magdon-Ismail(イクラム・マグドンイズメール)氏、プレイドの何人かの創業メンバー、およびCoinbase(コインベース)、Revolut(レヴォルート)、Fast(ファスト)、Paystack(ペイスタック)の経営幹部らがいる。

ステルス状態のスタートアップがこれだけの投資家たちの支援を受けることができた理由について「Stitchの米国でのネットワークと各投資家の当社の製品に対する信頼が大きい」とピレイ氏はいう。

「スマイルアイデンティティーで仕事をしていたときサンフランシスコでかなりの期間過ごしたため、こうした世界クラスの創業者や投資家たちと接触することができた」とキーアン・ピレイ氏はいう。「我々にはアフリカ全土の市場で新世代の金融サービスを提供するチャンスがある。これだけの投資家たちの支援を受けることができて本当に幸運だと思う」。

ファーストミニッツ・キャピタルの共同創業者兼ジェネラルパートナーBrent Hoberman(ブレント・ホバーマン)氏によると、同社がStitchを支援する決定を下したのは、アフリカのほとんどのオンラインビジネスは、Stitchを介して自社のアプリケーションにフィンテック機能(シンプルなオンライン決済、融資能力の向上、本人確認の簡素化など)を組み込むようになると信じているからだという。

「南アフリカ人の同胞として、アフリカ全土のマーケットへの進出を見据える、優れた才能を持つ同胞エンジニアのチームと仕事ができることにワクワクしている」とホバーマン氏は付け加えた。

この1月、アフリカのVC市場は、アグリテックとクリーンテックセクターが資金調達ラウンドを席巻しており、フィンテックセクターは低調だったが、その後、フィンテックセクターが活気を呈しつつある。今週、南アフリカのデジタルバンクTymeBank(タイムバンク)が1億900万ドル(約118億1600万円)という巨額の資金を調達し、南アフリカ全土およびアジアへの進出を目論んでいる。大規模ラウンドといえばVC資金の30%以上を獲得した特定のセクターの大規模ラウンドを見たことがあるが、今回のラウンドはそれを上回る規模になっている。

過去2年間のアフリカにおけるAPIフィンテック領域で注目すべき、一連の投資案件では、すべての主要スタートアップが50万ドル(約5400万円)から400万ドル(約4億3300万円)を調達しているが、今回のStitchのシードラウンドはその中の最新の案件だ。

ブレント・ホバーマン氏のファーストミニッツ・キャピタルでの役職とラバ・パートナーシップの本拠地を更新しました。

カテゴリー:フィンテック
タグ:Stitchアフリカ資金調達南アフリカ

画像クレジット:Pang Isaac

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(文:Tage Kene-Okafor、翻訳:Dragonfly)

VCのAntlerはアフリカでどうやってアーリーステージのスタートアップを構築しているのか

企業ビルダーとは、インキュベーターやアクセラレーターとは違って、主に独自のアイデアとリソースに基づいてゼロからスタートアップを育てる組織のことをいうようだ。その過程で、テクノロジーを愛するデザイナーや開発者、マーケターなどが集められるが、彼らはスタートアップ育成の場で初めて顔を合わせることが多い。

Antler(アントラー)もそうした組織の1つだ。だがAntlerは混合型モデルを採用しており、アーリーステージのベンチャーキャピタル企業としても活動する。具体的には、創業者が補完的な共同創業チームを作るのを支援したり、ビジネスモデルの詳細な検証をサポートしたり、ビジネス拡大のためのグローバルプラットフォームを提供したりする。Antlerは現在までに、250社以上に投資して育ててきた。そのうち40%には、最低1人の女性の共同創業者がおり、創業者たちの国籍は70か国以上に及ぶ。

2017年に複数企業の経営者Magnus Grimeland(マグナス・グリムランド)氏と世界中の経験豊富な企業家、投資家、企業ビルダーが立ち上げたAntlerは、これまでに7500万ドル(約79億5500万円)以上を調達し、世界の9つの主要都市(アムステルダム、ベルリン、ロンドン、ナイロビ、ニューヨーク、オスロ、シンガポール、ストックホルム、シドニー)にある起業家ハブの起業家たちを支援してきた。

Antlerのアフリカ唯一の支店はナイロビにあり、女性によって運営されている。

エチオピアのペーパーリサイクリング企業であるPenda Paper Recycling(ペンダペーパーリサイクリング)の創業者Marie Nielsen(マリー・ニールセン)氏は、Antlerのパートナーだ。同氏はMckinsey & Company(マッキンゼーアンドカンパニー)のアソシエイトパートナーを務めた経験があり、同社のAddis Ababa(アジスアベバ)支社の設立を担当した。Melalite Ayenew(メラリテ・アイニュー)氏はAntlerのテックパートナーだ。同氏は、Oracle(オラクル)、Bain & Company(ベインアンドカンパニー)、Princeton Consultants(プリンストンコンサルタント)でキャリアを積んでいる。Selam Kebede(セーラム・ケベデ)氏は、Antlerのディレクター兼運営責任者だ。同氏は、Antlerに入社する前、いくつかのベンチャーキャピタルと起業家支援組織に勤務した経験を持つ。

プロフェッショナルたちを創業者に変える

世界中の他の場所でも同様だが、Antler East Africaでも年に2回コホートが開催される。Antlerでは「最初に人ありき」のアプローチにこだわっており、各業界で平均10年の経験を持つプロフェッショナルが集まる。創業者となるこれらのプロフェッショナルたちが、それぞれの業界での過去の経験を通して収集したインサイトや実際に直面した問題に基づいて、解決策を観念化し、反復し、作成する。その上で、6カ月のインキュベーション期間の後、支援を継続するチームに投資する。通常、プレシードステージでは、選択した各チームについてAntlerが10~20%の株式を取得する条件で10万ドル(約1061万円)の小切手を切る。しかし、Antler East Africaの場合、取得する株式はちょうど20%だ。

「私たちのプロセスは極めて実践的です。数カ月に渡って創業者たちといっしょに働くことで、ビジネスモデルを形成する機会が得られ、出資する前に広範なデューデリジェンスを実行できます」とニールセン氏はいう。

ニールセン氏のいうデューデリジェンスは、Antlerのグローバルプラットフォームによってサポートされているもので、さまざまなテクノロジーと業界にまたがる400人以上のエキスパートたちのネットワークが総動員される。プレシードフェーズの後、各チームがさらに多くの投資家から資金を調達しようと奔走する過程でも、Antler East Africaはチームのサポートを継続する。

アイニュー氏は次のように付け加える。「当社は本プログラム以外で育った既存のアーリーステージスタートアップに投資する機会も開拓しています。ただし、当社のポートフォリオに入ることで、金銭的な投資だけでなく価値を提供できるくらいに、まだ初期フェーズにあることが条件です」。

ナイロビがアフリカ唯一のAntler支社であることを考慮し、チームは、アフリカ全般の問題とその解決策に取り組んでいる創業者を探している。Antlerは15か国以上のアフリカ諸国の創業者を惹きつけており、彼らが同社のコホートの汎アフリカ的なイメージを維持するのに大きな役割を果たしている。

Antler East Africaは、これまでに、B2B、B2C、D2C(消費者直販)の各分野における広範なテック企業に投資している。その範囲は、新興セクターであるロボティクスやAIから、ヘルステック、フィンテック、不動産テックなどのセクターに至るまで幅広い。最近の2回のコホートで、同社は6つのスタートアップに投資した。

Cooked(クックド)は、サブスクリプションベースのキット食品プロバイダーだ。週額と月額のサブスクリプションで運営されており、事前に同意した曜日に顧客に食品を配達する。創業者は、ファイナンス、食品、レストラン業界で20年以上の経験をもつ。

UNCOVER(アンカバー)は、韓国でトップクラスのスキンケア研究所と提携して、アフリカで最も信頼性の高いスキンケアブランドとコンテンツプラットフォームを構築しているという。同社が実施したスキンケアのアンケートには1000人のケニア人女性から回答が寄せられた。同社によると、このデータが、急拡散する知識プラットフォームと効果的なカスタマイズ製品の開発に役立つという。

創業初期の頃をFMCG(日用品)の販売、特に小規模業者との取引に費やした経験から、ChapChapGoは、ローカルのコンテキストに合わせて調整されたシンプルで安価なツールが存在しないことが、ケニアの企業がeコマースを採用する際の大きな課題となっていることを突き止めた。ChapChapGoを使用すると、簡単な請求処理、自動照合、M-Pesa(Mペサ)による高速レジなどにより、数分でオンライン処理が可能となる。

画像クレジット:Antler East Africa

Anyi Health(アンイイヘルス)は、プライマリーヘルスケアを求めている人たちが容易に金銭的サポートを得られるようにしたいと考えている。ナイジェリアおよびその他の多くのアフリカ諸国では、病院の治療費を払えない患者たちが病院に拘留されたり、処置を受けないまま放置されたりしている。そこでAnyi Healthは、モバイルベースの必要時点クレジット機能(患者が病院で直接クレジットを申し込むことができる)によってこの問題を解決しようと取り組んでいるのだ。同社はナイジェリアのLagos(ラゴス)にある3つの病院でMVPパイロットを開始したばかりで、パイロット概念実証に基づいてシードラウンドで30万ドル(約3184万円)の調達を目指している。

AIfluence(AIフルエンス)は、AI駆動形のインフルエンサーマーケティングプラットフォームだ。広告業界のベテラン社員によって創業されたこの会社は、アフリカのブランドがインフルエンサーマーケティングキャンペーンの立ち上げや管理、評価をする際に、より良い決断を下せるように支援する。AIフルエンスは、Sony(ソニー)やSafaricom(サファリコム)をはじめとする主要な国際企業およびアフリカ企業と、合計60万ドル(約6367万円)を超える契約に署名している。

Digiduka(デジデュカ)は、自社をケニアの現金経済のデジタルサービスソリューションと位置づけている。アフリカの決済ソリューションには2つの問題があり、それが数百万人の潜在的なユーザーを門前払いにしているというのが同社の主張だ。問題の1つは、1取引あたり9%という高額な手数料、もう1つは不便な決済モードだ。Digidukaは、アフリカの大手電話会社での15年以上の経験を持つCEOと、さまざまなスタートアップの技術主任としての経験を持つCTOが連携し、ケニアの消費者と小規模店舗向けに本格的な統一デジタルサービスソリューションを構築することを目指している。

Antler East Africaの次回のコホートは4月に開催される。ケベデ氏は次のように語った。「優秀で経験豊富な人たちが集まってアフリカで傑出したビジネスを作り上げることで、人々の考え方を変える組織、つまり持続可能で革新的なだけでなく、他の人たちに自身のビジネスの目的を認識してもらえるような組織を育む手助けができればと考えています」。

カテゴリー:VC / エンジェル
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画像クレジット:Antler East Africa

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(文:Tage Kene-Okafor、翻訳:Dragonfly)

2020年におけるアフリカのスタートアップの資金調達状況

アフリカのベンチャーキャピタル業界は着実に成長を遂げており、近年、国内外の投資家からの資金流入がかつてないレベルに達している。その成長度を示す具体的な数字を挙げると、アフリカのスタートアップが2015年に調達した資金はわずか4億ドル(約420億円)だったが、2019年にアフリカ大陸に流入した資金は20億ドル(約2100億円)に達する(アフリカに傾注するファンドPartech Africa(パーテックアフリカ)の調べによる)。

ただし、この数字だけが唯一の尺度というわけではない。 WeeTracker(ウィートラッカー)やDisrupt Africa(ディスラプトアフリカ)などのメディア刊行物は、アフリカのベンチャーキャピタル市場について異なる数字を公開している。TechCrunchでは、昨年の各社の数字を比較対照してみた。その調査の結果、集計手法の相違と類似性の詳細が明らかになった。

アフリカのスタートアップの2019年における資金調達額については、パーテックは20億ドル(約2100億円)、ウィートラッカーは13億ドル(約1400億円)、ディスラプトアフリカは4億9600万ドル(約525億円)と推定している。

この数字は2020年に増加すると予想されていた。ところが、パンデミックで投資環境は完全に混乱とパニックに陥った。投資家が戦略を練り直す中、企業は規模縮小を図り、2020年の最初の数か月はデューデリジェンスも低調だった。それでも、5月には予測が上向き、AfricArena(アフリックアリーナ)は、予想された通りの取引で、年末までに12億ドル(1300億円)~18億ドル(1900億円)の資金調達ラウンドを成功させた。

投資も上向き、7月になるとアフリカ大陸でのVCファンドは活況を呈し、それが12月まで続いた。2020年は、2019年のように大型投資が続くことはなく、投資総額が20億ドル(約2100億円)に達することもなかったが、買収にとっては良い年になった。主な例を挙げると、WorldRemit(ワールドレミット)がSendwave(センドウェーブ)を5億ドル(約530億円)で、Network International(ネットワークインターナショナル)がDPO Group(DPOグループ)を2億8800万ドル(約305億円)で、Stripe(ストライプ)がPaystack (ペイスタック)を2億ドル(約210億円)以上で買収した。

2020年のアフリカにおけるVCの投資状況を把握するため、パーテックアフリカ、ブリターブリッジ、ディスラプトアフリカの3社のデータを調べてみよう。

数字が表すもの

パーテックアフリカによると、2019年におけるアフリカのスタートアップへの投資総額は20億ドル(約2100億円)だったが、2020年には14億3000万ドル(約1510億円)まで低下したという。ブリターブリッジによると、アフリカのスタートアップへの投資総額は、2019年の12億7000万ドル(約1340億円)から2020年には(公開および未公開の両方を含め)13億1000万ドル(約1390億円)まで増加した。ディスラプトアフリカによると、この投資総額は2019年の4億9600万ドル(約525億円)から2020年には7億ドル(約740億円)まで増加したという。 

昨年同様、評価対象の取引タイプからアフリカのスタートアップの定義まで、集計手法が対照的であることが数字の違いにつながっている。 

パーテックのジェネラルパートナーであるCyril Collon(シリル・コロン)氏によると、同社の数字は20万ドル(約2100万円)を超える株式資本取引をベースにしているという。また、同社によるアフリカのスタートアップの定義は「運営または収益という観点で主要市場がアフリカにある企業を指し、本社や組織の場所に基づいて考えているわけではない」という。また、「こうした企業が成長してグローバルな事業展開を始めても、やはりアフリカの企業としてカウントする」。

ブリターブリッジも同様の集計方法を採用している。同社のディレクターであるDario Giuliani(ダリオ・ジュリアーニ)氏によると、同社の研究組織は、税金、顧客、知的財産、管理チームなどが企業アイデンティティーに寄与する要因であるとの認識に基づき、アフリカのスタートアップを定義する際に地理的な要素を考慮しないという。

ディスラプトアフリカの場合、報告書で取り上げるスタートアップは、創業7年以下で、まだ成長中であり、収益性を高める潜在性を備えている企業である。「大きな企業や組織からスピンオフされた企業や、当社の定義に照らしてスタートアップ段階を過ぎている企業」は除外しているという。

フィンテックとビッグ4の優位は変わらない

パーテックによると、アフリカのスタートアップの2020年における資金調達総額は前年と比べて低下しているものの、成功した調達ラウンドの数はむしろ増えている。同社によると、2019年に完了した調達ラウンドの数は250件であったが、2020年には347社のスタートアップが359件の調達ラウンドを成功させた。これには、シードラウンドが増加したこと(2019年と比較して88%増加)、およびパンデミックによるロックダウンの中、キャッシュが不足してブリッジラウンドが増加したことが関係すると考えられる。

3社の報告書ではどれも上位5業種にフィンテック、ヘルスケアテクノロジー、クリーンテクノロジーが入っている。ただし、予想どおり、アフリカのVC資本調達額においてフィンテックの割合が圧倒的に大きい。  

パーテックによると、フィンテックは昨年のアフリカにおける資金調達総額の25%を占めているという。その後に続くのは、アグリテック、ロジスティクスおよびモビリティ、オフグリッドテクノロジー、ヘルステクノロジーといった業種だ。

ブリターブリッジによると、昨年のVC資金調達総額のうちフィンテック企業が占める割合は31%で、その後に、クリーンテクノロジー、ヘルステクノロジー、アグリテック、データ分析が続く。

ディスラプトアフリカの集計では、フィンテック分野のスタートアップがアフリカのVC資金調達総額の24.9%を占めており、その後に、Eコマース、ヘルステクノロジー、ロジスティクス、エネルギーといったスタートアップが続く。

3つの報告書のうち少なくとも2つによると、ビッグ4と呼ばれる国が2020年の投資先の圧倒的多数を占めている。

パーテックが報告した上位5か国もやはり同様である。ナイジェリアがVCの投資先としてトップで、スタートアップの資金調達額は3億700万ドル(約325億円)だった。僅差の第2位はケニアで3億400万ドル(約322億円)だ。第3位はエジプトで2億6900万ドル(約285億円)、第4位は南アフリカで2億5900万ドル(約274億円)となった。パーテックによる2019年の集計で5位だったルワンダに代わってガーナが第5位になり、資金調達額は1億1100万ドル(約118億円)だった。

ディスラプトアフリカの集計では、上位5か国が2019年と変わらなかった。1位はケニアで、スタートアップの資金調達額は1億9140万ドル(約202億6000万円)だった。これに、1億5040万ドル(約159億2000万円)のナイジェリア、1億4250万ドル(約150億9000万円)の南アフリカが続く。僅差の4位はエジプトで、資金調達額は1億4140万ドル(約149億7000万円)だった。これに対し、ガーナのスタートアップによる資金調達額は1990万ドル(約21億1000万円)となっている。

ブリターブリッジは異なるアプローチを採用している。パーテックとディスラプトアフリカは企業の創業国および運営国ごとの資金調達活動に焦点を当てていたが、ブリターブリッジは資金調達額をスタートアップの組織または本社の所在地ごとに集計した。この前提によって、ビッグ4の顔ぶれが若干変わってくる。ブリターブリッジによると、1位は米国に本社を置くスタートアップで、資金調達総額は4億7180万ドル(約499億5000万円)だった。2位は南アフリカに本社を置くスタートアップで1億1970万ドル(約126億7000万円)、3位はモーリシャスに本拠地を置く企業で1億1000万ドル(約116億5000万円)となった。次いで英国およびケニアに本社を置くアフリカのスタートアップが続き、資金調達額はそれぞれ1億760万ドル(約113億9000万円)、7710万ドル(約81億6000万円)となっている。

ジュリアーニ氏は、ブリターブリッジがこの集計方法を採用した理由について、さらなる論議を展開する際の公平な起点として自社のデータを利用したいと考えているためだと説明している。そのようなデータがあれば、より良い政策、規制、ファイナンスの可用性といったより複雑なダイナミクスを調査していくことができるためだ。

この観点から見ると、会社の主たる所在地にナイジェリアが含まれていないのも納得できる。規制、ビジネス環境、納税条件などが企業にとって不都合であるという理由で、ナイジェリアのスタートアップはセイシェルやモーリシャスといったアフリカの国やアフリカ大陸外に本拠地を置くことが多くなってきている。外国のVCのほとんどは、アフリカのスタートアップがビジネスに好都合な投資法を完備した国に本拠地を置いてほしいと思っているため、こうした傾向は続くと考えられる。

地域と性別の多様性

アフリカのフランス語圏でのスタートアップの企業活動が増えているため、同地域におけるVC資金調達額も増えるという予想もあったが、そうはなっていない。セネガルはフランス語圏トップのVC出資先だが、2019年に1600万ドル(約17億円)だった資金調達額は、2020年に880万ドル(約9億3000万円)に低下している(パーテックの調査による)。アフリカ全体で9位のセネガルと10位のコートジボワールを合わせても、資金調達額はわずか650万ドル(約6億9000万円)に過ぎない。

ただし、良いニュースもある。パーテックのデータによると、2020年には、ビッグ4以外で22か国が資金を調達できたという。この傾向は続くのだろうか。もし続くのであれば、次に資金調達額が1億ドルを超えるのはどの国になるのだろうか。

パーテックアフリカのジェネラルパートナーTidjane Deme(ティージャン・デーム)氏は、次に1億ドルを超える国がガーナになると考えている。かつてはケニア、ナイジェリア、南アフリカがビッグ3として君臨していたが、そこにエジプトが支配的な勢力として登場した。同氏は、同じことが西アフリカの国でも起こると述べている。

「投資家がより多くの市場に進出するにつれ、明らかな分散化が発生している。たとえば、ガーナは、すでに1億ドル(約110億円)を超える投資を誘致している。もちろんこの調達ができるだけ早く実現することを願っているが、同時に、これが新しい市場に参入する投資家と資金調達の仕組みを学習する創業者の双方の学習プロセスであることも分かっている」。

ガーナはジュリアーニ氏の予測にも登場していた。同氏は、エコシステムを進化させつつあり、近いうちにグローバルな投資家たちが注目すると思われる準大国として、チュニジア、モロッコ、ルワンダといった国も挙げている。

ディスラプトアフリカの共同創業者Tom Jackson(トム・ジャクソン)氏が具体的な国名を挙げることはなかった。ただ、ビッグ4以外の市場にも積極的な要素がいくつかあるものの、ビッグ4が優勢な状況は続くと考えている。

「資金は他の市場にも少しずつ移行していくだろう。その点ではすでに良い兆候が見られる。しかし、アフリカのスタートアップ業界はどちらかというとまだ初期段階であり、ビッグ4の市場は圧倒的に有利なスタートを切っているため、今後数年間はそのリードを保ち続けるだろう」と同氏は言う。

看過できないもう1つの多様性として性別が挙げられる。インクルージョンについてあらゆる議論がされているが、ブリターブリッジによると、2020年に資金を調達したスタートアップのうち、創設者、共同創設者、経営幹部に女性がいるのは15%だったという。一方パーテックは、この割合を14%としている。この割合を上げるためにはまだ多くの努力が必要だが、より多くのアーリーステージ企業がこのギャップを埋めようとしてくるだろう。

関連記事:アフリカや東欧で交通ネットワーク拡大に取り組むBoltが国際金融公社から約25.8億円調達

カテゴリー:VC / エンジェル
タグ:資金調達 アフリカ

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(文:Tage Kene-Okafor、翻訳:Dragonfly)

アフリカや東欧で交通ネットワーク拡大に取り組むBoltが国際金融公社から約25.8億円調達

Bolt(ボルト)は、欧州とアフリカで、自動車やスクーター、自転車を使って人や食料品などを輸送するサービスの国際的なオンデマンドネットワークを構築している、Uber(ウーバー)の競合企業の1つだ。このエストニアのタリンを拠点とするスタートアップは、新興市場における事業拡大を継続するために、世界銀行グループの一部門である国際金融公社(IFC)から、2000万ユーロ(約25億8000万円)の資金を調達したと、3月4日のブログ記事で発表した。

この資金を使って、Boltは東欧とアフリカでさらなるサービスを展開していくという。中でもそれぞれの地域で最大の経済規模となるウクライナとナイジェリアにおいて、これまであまり重視されず十分なサービスを受けていなかった消費者層、すなわち女性のために革新的なサービスを提供していくと、特に言及している。

IFCからの資金調達は、金額を見ればBoltの幅広い資金調達努力の中では比較的少ない方かもしれないが、同社にとって大きな信用となる。

直近では、Boltは12月に1億8200万ドル(約197億2000万円)を調達し、19億ドル(約2059億円)だった前回の評価額を大幅に引き上げた。同社の広報担当者は「私たちの評価額は、最新の資金調達ラウンドで成長していますが、私たちは更新された数字を開示していません」と繰り返し語っている。我々の計算によると、2020年12月時点における同社の評価額はおそらく43億ドル(約4660億円)前後だと予想される。これは同社の共同創業者でCEOであるMarkus Villig(マークス・ビリグ)氏から提供されたGMV(流通取引金額)の35億ユーロ(約4520億円)という数字から推定したものだが、実際にそれを確認できたわけではない。

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IFCを、SoftBank(ソフトバンク)やSequoia(セコイア)、Index Ventures(インデックス・ベンチャーズ)、Andreessen Horowitz(アンドレセン・ホロウィッツ)などの典型的なVCと同列に考える人は少ないかもしれないが、世界中のスタートアップを支援するという点では、IFCは重要な役割を果たしている。2020年だけでも220億ドル(約2兆3800億円)を企業に投資したという。

これまでIFCのテック分野に向けた関心の多くが、例えば、CurrencyCloud(カレンシークラウド)、Remitly(レミトリー)、CompareAsiaGroup(コンペアアジアグループ)、Kreditech(クレディテック)など、金融サービス関連であったことを考えると、交通機関のスタートアップであるBoltへの支援は注目すべき動きだ。

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特にBoltのような企業は、消費者の移動を支援するという最も明白なサービスに加えて、人々に収入を提供し、企業に(配送というかたちで)インフラを提供するマーケットプレイスのようなものを構築していると考えると、交通機関の改善もIFCの開発目標の1つとなる。

「私たちはIFCと提携して、アフリカと東欧の起業家精神をさらに支援し、女性に力を与え、手頃に利用できるモビリティサービスを充実させるという目標に取り組むことを楽しみにしています」と、ビリグ氏は声明で述べている。「2020年の欧州投資銀行からの投資と合わせて、大規模で戦略的に重要な機関が私たちを支援し、Boltが新興国に提供している戦略的価値を認識していることを、私たちは誇りに思います」。

新興市場におけるBoltの取り組みは長い間、同社がUberとの差別化を図るための重要な方法の1つとなっている。2013年の創業以来、同社は40カ国で5000万人以上の利用者と150万人以上のドライバーを抱えてきた。その中にはアフリカ大陸の70都市における40万人のドライバーも含まれる。

これまで光が当たっていなかった地域で、光が当たっていなかった人々に向けたサービスを展開するという同社の戦略は、時間とともに成長してきた。Boltは南アフリカで、運転手も乗客も女性に限定した「女性専用」の配車サービスを試験的に実施しており、女性の雇用機会と一般的な安全性を向上させている。これもIFCの資金が支援するプログラムの1つだという。

「テクノロジーは、持続可能な開発と女性のエンパワーメントのための新たな道を切り開くことができますし、そうすべきです」と、IFCのオペレーション担当シニアバイスプレジデントであるStephanie von Friedeburg(ステファニー・フォン・フリーデバーグ)氏は声明の中で述べている。「Boltへの投資は、テクノロジーを活用して既存の輸送業界に風穴を開け、環境に優しく、女性のためのより柔軟な仕事の機会を創出し、新興市場においてより安全で手頃な価格の交通アクセスを提供することを目的としています」。

カテゴリー:モビリティ
タグ:Bolt資金調達ライドシェアアフリカ世界金融公社

画像クレジット:Bolt under a license.

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(文:Ingrid Lunden、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

新興国市場のファウンダーを資本、資源、人材と結びつけるケニアのPariti

Startup Genome(スタートアップ・ゲノム)によると、北京、ロンドン、シリコンバレー、ストックホルムとテルアビブは、世界最高水準のスタートアップエコシステムだ。データ・調査会社の同社は、企業の業績、資産、市場活動範囲、連結性、人材、知識などを使ってランキングを作っている。

中国とインドを除き、新興国市場のスタートアップは2020年のトップ40に入っていない。それらの地域が6つの要素全部で遅れを取っていることは周知の事実であり、上に挙げたエコシステムの基準に達するまでには数十年を要するかもしれない。

しかし、Yacob Berhane(ヤコブ・ベルハネ)氏とWossen Ayele(ウォッセン・アイル)氏の2人が設立したケニアのB2BマネジメントのスタートアップPariti(パリティ)は、6要素のうち3つのギャップ、資産、知識、および人材へのアクセスを埋めようとしている。

こうした課題、中でも資産利用のハードルはアフリカでは高い。例えばサブサハラアフリカ(サハラ砂漠より南の地帯)のアーリーステージスタートアップに投資される資金は、ラテンアメリカ、MENA(ミーナ)諸国、南アジア市場の半数以上の企業とと比べてわずか25%ほどでしかない。

「必要なリソースを得られないスタートアップの成功を手助けするソリューションを作りたかったのです」とCEOのベルハネ氏がTechCrunchに話した。「この問題は、生まれたばかりのアフリカ市場で特に急を要しています。そしてこのプラットフォームは、あらゆる新興国市場のファウンダーのために作られています。つまり、まだスタートアップエコシステムが成熟していないすべての地域ということです」。

では、Paritiのチームはどうやってこの問題を解決しようとしているのか?アイル氏は、ある意味でParitiはアンバンドルされていないアクセラレータのようなものだと語った。

一般的なアクセラレーターでは、ファウンダーは集中的なプログラムを通じて、スタートアップが成長していく過程で必要になるあらゆる情報を詰め込まれる。一方Paritiでは、ファウンダーがビジネスの次のステージへ行くために今すぐ必要な情報とリソースを手に入れることができる。

3種類のマーケットプレイス

ファウンダーが入学すると、Paritiはアセスメントツールで会社を評価する。そこでは各社が売り込み資料や会社情報を共有する。Partiは各社のチームや市場、プロダクト、経済などを70項目にわたって評価する。

それが終わると、Paritiはそれぞれの会社を他社と比較するベンチマークを行う。業界、プロダクトのステージ、売上、資金調達などが同レベルにある会社同士が比較対象になる。ファウンダーは自分たちの売り込み資料へのフィードバックや、基準となる数値の詳しい評価結果を受け取り、その後のビジネス構築や資金調達に役立てる。

「このアプローチによって、各社のビジネス内容、強み、弱点などを極めて詳細に見ることができるので、会社が特に必要としているリソースを配分するための順位づけが可能になります」とアイル氏はいう。

それだけではない。Paritiはファウンダーを自らが運営する世界のエキスパートコミュニティのメンバーに1対1で引き合わせる。専門家の経歴は、さまざまな分野における金融、マーケティングからプロダクト、テクノロジーにわたる。さらにParitiは、ファウンダーがプロダクト開発にもっと支援を必要としている場合、コミュニティの中から選りすぐりのエキスパートを雇用のために紹介することもある。

アイル氏によると、ファウンダーはこの後も評価を受け、フィードバックの実践、リソースと人材とのつながりを続けることができる。

その一方で、Paritiでは投資家もプラットフォームに登録して、欲しいデータを集めることができる。つまりスタートアップが資金を調達したいとき、Partitiは投資家のプロフィールと好みに応じて企業を紹介することができる。

「アルゴリズムに基づくマッチングプラットフォームを作り、関連のある出資情報をVC投資家と共有しています。投資家がファウンダーと接触する方法も簡単にしました。これまでこのエコシステムでは特に面倒だった部分です」とアイル氏は付け加えた。

Paritiの投資家プラットフォーム

要約するとParitiは、ファウンダーが手頃な人材とつながり、資本を入手し、ビジネスを開発する手助けをする。専門家は興味深いスタートアップに助言をして、一時的収入を得る機会を得られる。さらに彼らはアーリーステージ・エコシステムとの接触を増やし成長をみてスキルを確認することで収益の可能性を広げることができる。投資家は、独自の契約フロー、自動化されたフィルタリングによって非常に効率的な運用が可能になり、デューデリジェンス、調査、ポートフォリオ管理で専門家のオンデマンド・サポートを受けられる。

COOによると、同社はこのプラットフォームを通じてこれまでに膨大な価値を生んできたという。その証言の1つが、ケニアのフィンテック・スタートアップ、FIngo AfricaのファウンダーであるKiiru Muhoya(キイル・ムホヤ)氏が本誌に語った経験談だ。同プラットフォームは彼の会社がプリシードラウンドで25万ドル(約2700万円)調達するのに役だった。

ムホヤ氏は、予定していた資金調達の前にParitiの評価を受けたことで、自分がターゲットにしていた市場が小さすぎる事に気づいた、と語った。また、成功するためにはVCが何を見ているかをもっと学ぶ必要があった。

ムホヤ氏は、自分を反対の立場に置く決断を下した。Paritiの専門家プラットフォームに参加すると、各社の状況をみて他のファウンダーにアドバイスを与え始めた。こうして彼は数カ月のオフ期間を得て、自分のビジネスをParitiで最初に受けたフィードバックや専門家プラットフォームで学んだことに基づいてピボットするきっかけにした。自分の会社を再びプラッフォームの評価にかけ、プリシードラウンドを完了した。

Paritiは2019年のスタート以来著しい発展を遂げてきた。現在42カ国で500社以上の会社を抱え、100人のフリーランスエキスパートと60の投資家が同社のプラッフォームを使っている。さらにベルハネ氏は、現在5つのファンドがParitiのオペレーティングシステムを使って取引を管理していることを付け加えた。

私たちは、新興国市場でスタートアップが作られ、スケーリングするためのレールを敷いていると思っています。パートナーはラテンアメリカやインドを含むさまざまな新興国市場にいます。米国にも強い関心を持っており、そこは私たちのプラットフォームを本当に必要としている場所です」とベルハネ氏は語った。

投資家に対してはサブスクリプションモデルで課金しているが、ベルハネ氏は数字を明らかにしなかった。いずれファウンダーからもサブスクリプション料金を取る、と述べている。もう1つの収入源は、投資家やファウンダーがParityのフリーランスエキスパートをプロジェクトで使う際に支払う手数料だ。プラットフォーム上で資金調達が実行された場合も同様だ。

資金調達といえば、最近同社は金額非公開のプレシード資金を獲得している。500 Startups、Kepple Africa、Huddle VCらのエンジェルやVCが参加した。

しかし、Paritiにとってすべてが順調だったわけではない。ファウンダーや投資家と付き合う上で重要なのは信用だからだ。ベルハネ氏は、投資家と関わる上で経験した惨劇を語ったファウンダーがいる一方で、ファウンダーが虚偽の数字を報告したと話す投資家もいたことを明かした。

Paritiはこの問題に対処すべく、両者とNDAを結び、Paritiはファウンダーが希望するまでデータを投資家に公開しないことを約束した。そして、投資家はParitiが入念に吟味するまで契約できない。

ファウンダーは2人とも東アフリカ系(ベルハネ氏がエリトリア、アイル氏がエチオピア出身)で、現在一緒に働くようになるまで何度か顔を合わせたが、それぞれ別の道を歩んできた。

COOのウォッセン・アイル氏とCEOのヤコブ・ベルハネ氏(画像クレジット:Khadija M Farah & Rebecca Ume Crook)

アイル氏は東アフリカ各地にオフィスをもつコンサルティング会社でキャリアをスタートし、その後ロースクールに通うために米国に渡った。そこで初めてアーリーステージスタートアップの世界に接し、新興市場に特化したVCファンドの仕事に就いた。

「コミュニティを助けるためにテクノロジーとイノベーションが果たす役割を見つけることができました。誰もが利用できる金融から必要な品物やサービスの利用、ピラミッドの底辺の人々を市場とつなぐことまで」と彼は言った。

アイル氏は法律学校を卒業して訓練を終えるとナイロビに戻り、成長するアフリカのスタートアップエコシステムに関わり、ベルハネ氏とともに会社を設立した。

米国で金融と投資銀行業務を学んだCEOは、アフリカに戻ってパン・アフリカ・アクセラレーターを南アフリカ、ヨハネスブルグで起業した。ベルハネ氏はAfrican Leadership University(アフリカ・リーダーシップ大学)やAjuaなどの会社で管理職として働いたが、ほとんどの時間を会社の契約仲介業務に費やしていたことが後にParitiを立ち上げるきっかけとなった。

「企業が2000万ドル(約21億7000万円)以上の資金を調達するのを助け、そのお金が雇用創生や社員の上昇志向につながっていくのを見たことで、金融分野の中で自分が役に立つ道があることを知りました。これからも、スタートアップエコシステムにおける資本入手や人材、知識の不均衡の増加や、それに対処するためのインフラストラクチャーの欠如についてずっと考えてきました。Paritiは、私たちがそれを解決したいと考えている方法です」とベルハネ氏は語った。

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タグ:Paritiアフリカケニア資金調達

画像クレジット:Khadija M. Farah & Rebecca Ume Crook

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(文:Tage Kene-Okafor、翻訳:Nob Takahashi / facebook

ナイジェリア発のIROKO、2022年にロンドン証券取引所AIMでの上場を計画

ナイジェリアに拠点を置くメディア企業のIROKO(イロコ)が、今後12か月以内にロンドン証券取引所(LSE)のオルタナティブ インベストメント マーケットで株式公開を申請するとみられている。

2011年にJason Njoku(ジェイソン・ンジョク)氏Bastian Gotter(バスチャン・ゴッター)氏によって設立されたイロコは、ナイジェリアの映画産業「ノリウッド」の映画コンテンツを配信し、そのコンテンツ数は世界最大を誇る。

この報道によると、同社は2000万ドル(約21億円)から3000万ドル(約32億円)を調達し、8000万ドル(約84億円)から1億ドル(約105億円)の評価を得ることになるという。 

ンジョク氏は2019年10月に、ロンドン証券取引所またはアフリカ大陸の現地取引所のいずれかで株式公開することになるとほのめかしている。しかし翌年、同社は激動の一年を過ごすことになり、CEOは株式公開のプロセスに関して完全な無言を貫いた。

2020年、同社はビデオオンデマンドサービス「iROKOtv」のアフリカでのユーザー1人当たりの平均収益(ARPU)を7~8ドル(約730円~840円)から20~25ドル(約2100円~2600円)に引き上げる計画を立てていた。最初の4か月間はその目標が達成できそうに思われたが、パンデミックによるロックダウンの恐れがある中、ナイジェリアやその他のアフリカ市場では一般消費財への支出額が減少した。その後、登録者数は70%減少し、5月には同社の従業員の28%が無給休暇を余儀なくされた。しかし、iROKOtvの現地市場の数字とは対称に、ロックダウン中に国際的な加入者数が200%増加し、その結果25~30ドル(約2600円~3200円)のARPUを記録した。

しかし8月、さらなる悲報が同社を襲う。CEOが150人の従業員を解雇すると発表したのだ。ンジョク氏はこの決定の理由として、ナイジェリアの通貨であるナイラの切り下げ、国の放送規制当局による規制の猛攻、アウトバウンドマーケティングチームの縮小を挙げている。

同社は成長を維持するため毎月30万ドル(約3200万円)以上を費やしていたが、アフリカ大陸における事業拡大への取り組みの停止を決め、代わりに米国と英国を中心とした国際市場に焦点を当てた。それが功を成し、年間25ドル(約2600円)から60ドル(約6300円)へと150%の値上げを実現している。ンジョク氏は、この決定によって同社が軌道に乗り、これまでの数年間よりもキャッシュポジションを高めることができたと述べている。 

「アフリカでの成長に費やすコストを劇的に減らしました。私たちはアフリカに集中していましたが、マーケティングやそれを促す何に対しても、結果的には何もできませんでした。そのため、もっと理にかなう市場に集中することにしたのです。当社の国際事業は2020年には有機的に2桁の成長を遂げており、しばらくの間はこの成長が続くと予想しています」と同氏はTechCrunchに語ってくれた。

イロコはアフリカ市場から完全に撤退したわけではなく、ステルスモードに入ったと考えれば良い。過去8年間アフリカで最も強力な独立系SVOD会社の1つとして支配的な地位を築いてきた同社は、アフリカ大陸でのあらゆる改善から必ず恩恵を受けることになるだろう。

とはいえ同社は収益の80%をアフリカ外の国から得ており、海外の取引所での上場が同社の取り組みを強化するために有益になることは間違いない。ナイジェリア証券取引所やその他の現地取引所は、アーリーステージのハイテク企業を上場させた歴史がない。そのため、ンジョク氏にとっては短期的にはロンドン証券取引所の方が理にかなっている。

また、イロコが目指す時価総額は1億ドル(約105億円)程度と一次市場にしては小規模だ。同社がLSEのオルタナティブ インベストメント マーケット(AIM)への上場を選択しているのはこのためだ。LSEのサブマーケットであるAIMは、小資本企業のために特別に作られている。それでも将来的には、英国のスポーツ賭博会社GVC(ジーブイシー)やオンラインファッション小売業者ASOS(エイソス)のように、評価額の成長に応じて主要市場に進出する計画もある。

株式を公開する際、ほとんどの企業はプライベートエクイティの時よりも多くの資金を調達する傾向にある。しかしイロコの場合はそうではない。2016年1月の最後の価格決定ラウンド(シリーズE)で総額約3000万ドル(約32億円)を確保した同社だが、2022年に株式を公開する際にはそれ以下、またはそれと同程度の金額を調達する予定だ。ダウンラウンドのように見えるが、なぜ同社はもっと調達する予定がないのか、ンジョク氏に尋ねてみた。

「これ以上必要ないのです。正直に言うと、1000万ドル(約10億5000万円)から1500万ドル(約16億円)は経営のために使用され、残りは株主のための副次的なものになるでしょう。イロコは未公開企業としての評価額が7000万ドル(約74億円)を超えたことはなかったので、目標の範囲内であればダウンラウンドにはなりません。特に、この間にイロコのために調達した資本金の総額に近い金額でROKをイグジットしたことを考えると、すでに初期投資家と株主に1100万ドル(約12億円)を返却しています。Canal+(キャナル プリュス)によるROKの買収で得た資金はまだ残っており、2023年まで半年ごとに入ってきます」とンジョク氏はいう。

イロコが2019年7月にVivendi(ヴィヴェンディ)傘下のキャナル プリュスにROK Studios(ROKスタジオ)を売却した際、取引条件は非公開のままだった。しかしCEOの発表から買収の見積もりが3000万ドル(約32億円)前後だと推測できる。この取引によって得た収益のおかげで同社は2020年の荒波を乗り越えることができた可能性が高く、2022年のIPO後も同様となる可能性がある。 

イロコと同じく今後2年以内に株式公開を予定しているのは、ナイジェリアに拠点を置く、評価額10億ドル(約1050億円)の決済会社Interswitch(インタースイッチ)だ。しかし2002年に設立されたインタースイッチとは異なり、イロコは設立からわずか10年しか経っていない。10年以内に上場したインターネット企業はJumia(ジュミア)だけで、同社は設立から7年後に上場している。イロコは創業11年目にしてこの偉業を達成させようとしており、株式の18%を保有するンジョク氏は次のステップに進むには十分な時期だと考えている。  

「非上場企業として達成できることは、上場しても同じように達成することができるでしょう。 いつも支えてくださっている会員の皆様にもIPOの機会を提供する予定ですので、会員の皆様にもその価値を享受していただけると思います。常にパイオニアであり、実験的であることを恐れないというのがイロコの特徴です。プロセス全体をオープンソース化していくつもりなので、もし私たちが成功すれば、後に続くアフリカの他の企業も私たちの経験から恩恵を受けることができるでしょう」と、同氏は今後の抱負を語る。 

関連記事:フランス語圏アフリカの消費者向け金融スーパーアプリ構築に力を入れるコートジボアールのDjamo

カテゴリー:ネットサービス
タグ:新規上場 アフリカ メディア

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(文:Tage Kene-Okafor、翻訳:Dragonfly)

フランス語圏アフリカの消費者向け金融スーパーアプリ構築に力を入れるコートジボアールのDjamo

フランス語圏アフリカの消費者向け金融スーパーアプリを手がけるDjamoは、コートジボワールのスタートアップとしては初めてY Combinatorの支援を受ける企業である。

アフリカではここ数年で膨大な数の金融サービスが出現しているが、Djamoの使命は、フランス語圏アフリカにおいてサービスが極めて不足しているという特定のギャップを埋めることにある。

この地域で銀行口座を持つ成人は25%にも満たず、銀行のターゲットは富裕層の上位10〜20%に留まっている。残りは約1億2000万人の市場の巨大なセグメントであるが、収益性があるとは認識されていない。しかし銀行が変わらぬ中、同地域の電話通信会社からのモバイルマネーがそのギャップを埋めた。過去10年で人口の60%以上がモバイルマネーを使用しており、何百万人ものフランス語を母国語とする人々が金融サービスに飢えていたことを証明している。今日、このモバイルマネーのインフラとリーチによりスタートアップは既存の支払いインフラを利用してさまざまなアプリケーションを通じたアクセスを民主化することができる。

Djamoはこの機会を利用し、手頃でシームレスな銀行取引をこの地域に提供することを目指している。

Hassan Bourgi(ハッサン・ブージ)氏は「2度目の創設者」で、ラテンアメリカを拠点とする自身のかつてのスタートアップBusportalからNaspers傘下のredBusに移った後、2019年にコートジボワールに戻った。そこで同氏は、アフリカ最大の電話会社の1つであるMTNで複数のモバイルマネープロジェクトを率いていたRégis Bamba(レジス・バンバ)氏に出会った。

両氏をはじめ多くのミレニアル世代が直面している銀行業界の不愉快な経験にフラストレーションを感じ、ブージ氏とバンバ氏は2020年、銀行業界の現状に挑戦するためにDjamoを立ち上げた。

「この地域では銀行サービスへのアクセスが非常に難しく、私たちはこれを大きなチャンスだと捉えました」とDjamoのCEOであるブージ氏はTechCrunchに語った。「設立当初から私たちは一般消費者に浸透できるモバイルファーストのプラットフォームを設計したいと考えていました。Djamoをローンチするためには、一般消費者向けの製品を開発する私たちの複合的な経験が非常に重要でした」。

ブージ氏によると、同国のミレニアル世代はテクノロジー企業と関係を築き、通常とは異なるサービスを受けようとしている。そのため、Djamoはこうした顧客に対して、より優れたフロントエンドのエクスペリエンスと迅速なカスタマーサービスの提供を進めることにした。

画像クレジット:Djamo

同社は画一的なアプローチでサービスを提供するのではなく、異なる層のさまざまなユーザーニーズに合わせて提供することに注力した。Amazon、Alibaba、Netflixなどのオンラインサービスへの支払いを可能にすることから、Visaデビットカードをタイムリーに提供することまで、Djamoは独自のカスタマイズされたアプローチにより口コミを通じて有機的に成長してきた。

両CEOによると、Djamoが登場する前はカードを受け取ったり、あるいはクレジットカードを発行したりするために銀行の支店で長い列に並ぶ必要があったという。Djamoはそのストレスを解消し、さらには幅広いサービスにおいて手数料ゼロでカードを利用することができるようにしたのだ。

「一定の限度額まで継続的に手数料がかからないゼロ料金のカードを提供することは、当社にとって重要なことでした。それ以降は、取引手数料として支払うことになります。ユーザーがより高い限度額まで取引できる月額約4ドル(約420円)のプレミアムプランがあります」とブージ氏。

現在Djamoは約9万人の登録ユーザーを擁し、毎月5万件以上の取引を処理しているという。しかしここに到達するまでに同社はさまざまな苦労と工夫を重ねてきた。

FlutterwaveやPaystackのような確立された決済インフラ企業があるナイジェリアとは異なり、コートジボワールにはそのような著名な企業は存在しない。

「プロバイダーが数社ありますが、そのほとんどは信頼性に欠けています。しかしそれはエンドユーザーに関係なく、何らかの方法でうまく機能させる必要があります」と同社のCPO兼CTOであるバンバ氏は説明する。

より優れたオプションがないため、Djamoでは運用を継続するためにプロバイダーを適宜切り替えている。同社はアフリカのフィンテック系スタートアップの多くに共通する懐疑的な見られ方にも直面してきた。Djamoの場合、創設者たちはプラットフォームがオンボーディング、KYC、取引に使用しても安全であることを銀行や顧客に長期にわたって証明しなければならなかった。

CEOのハッサン・ブージ氏とCPO兼CTOのレジス・バンバ氏(画像クレジット:Djamo)

顧客へのサービス提供を開始する際にも、同社のVisaカードの配送をどのように行うかという特有の問題に直面した。ブージ氏によると、アフリカ大陸の他の先進国とは異なり、コートジボワールで効率的な配達や物流サービスを利用することは至難の業であるという。そこで同社は、この目的のために独自の配送エージェントを使った配送アプリを作ったのだ。「私たちの顧客向けの目標は、登録完了の翌日に顧客がタイムリーにカードを受け取れるようにするということです」とブージ氏は説明する。

MVPが発表される前にも、Djamoはすでに製品の金銭的な評価を受けていた。2019年6月にプライベート投資家から35万ドル(約3700万円)のプレシード投資を調達しており、これは現段階ではフランス語圏で最大規模となる。少なくともフランス語圏のアフリカにおいては、同社のソリューションの創意工夫と創設者の実績こそがDjamoがラウンドを完了させる上で重要だったとブージ氏はいう。

フランス語圏のアフリカは、新進のスタートアップシーンの出現を示す兆候があるにもかかわらず、長い間国際投資家から過小評価されてきた。これには、言語の障壁の他、南アフリカを除く英語圏諸国がサハラ以南アフリカの平均GDPの47%を占めている一方でフランス語圏諸国のGDPはわずか19%しか占めていないという地域のGDPと1人当たりの所得が関係している。

しかし、世界銀行は2021年までに同地域がアフリカで最も急速に成長している経済の62.5%を占めるようになると予測しており、今後数年間の成長について明るい見通しを示している。

多くの未開発の事業機会に恵まれ、フランス語圏アフリカのように十分に認知されていない地域に変革の機が熟している。投資家はこのことを認識しており、彼らの評価は依然として英語圏のアフリカ向けに偏ってはいるものの、セネガルのエネルギースタートアップOoluとカメルーンのヘルステックスタートアップHealthlaneの2020年の100万ドル(約1億500万円)の資金調達が、市場に対する彼らの興味の大きさを物語っている。

両スタートアップもDjamo同様にYCの支援を受けたフランス語圏のスタートアップだ。しかし2021年この冬のバッチにより、Djamoは同地域初のフィンテック系スタートアップとなる。また2020年のHealthlaneに続いて、フランス語圏のアフリカ企業が連続して代表者を持つことも初めてとなる。

創設者たちにとってYCの支援は、フランス語圏アフリカ地域全体の金融サービスの流通がアプリケーションへと根本的に変化を遂げているというDjamoの前提を評価するものである。

「コートジボワールでは銀行業界は複雑すぎて対処できないという声が常に聞かれます。しかし私たちはこれを大きなチャンスとみなし、取り組むべき業界であると捉えていました。フラストレーションを感じたり、顧客が苦しんだりしているところには、ビジネスが成功し、向上するチャンスがあります」とバンバ氏は語っている。

3月23日のデモ・デーで締めくくられる3カ月間のプログラムに参加した後、Djamoはフィンテック大手のネットワークを活用して新しい決済体験を提供できるようにする、VisaのFintech Fast Track Programにも参加する予定だ。

カテゴリー:フィンテック
タグ:DjamoアフリカコートジボアールY Combinator

画像クレジット:Djamo

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(文:Tage Kene-Okafor、翻訳:Dragonfly)

日本のUncovered Fundがアフリカのアーリーステージ企業向けに15億円超のファンドを設立

アフリカのアーリーステージのスタートアップをターゲットにしたVC「Uncovered Fund(アンカバードファンド)」は2月16日、1500万ドル(約15億9000万円)のファンドを立ち上げたことを発表した。新ファンドは6月末にクローズする予定だという。2019年に寺久保拓摩氏が設立した東京を拠点とする同社は、アフリカのスタートアップのシードおよびシリーズAステージを対象に、5万ドル(約530万円)から50万ドル(約5300万円)の投資を実施する。

寺久保氏はUncovered Fundの前は、Leapfrog VenturesのCEOを務めていた。日本のスタートアップインキュベーターであるサムライインキュベートと共に、アフリカのアーリーステージのスタートアップに特化したファンドSamurai Incubate Fundを立ち上げた実績がある。在任中はケニア、ウガンダ、ルワンダ、南アフリカ、ガーナ、ナイジェリアのスタートアップを対象に450万ドル(約4億8000万円)以上の資金調達を行った。また、Uncovered Fundと同様の投資レベル(5万ドルから50万ドル)で10社以上のスタートアップに資金を提供した。

寺久保氏は、なぜSamurai Incubate Fundを去ったのかはコメントしていない。しかし、同氏によると、Uncovered Fundの投資手法は、資金を提供するだけではないという点で、前職の会社とは異なるという。

「散らばった一発勝負の少額投資を行うのではなく、フォローアップ投資を含めた長期的な成長支援を行います。また、投資だけでなく、日本企業の莫大な資産を掛け合わせて事業を成長させ、技術的なサポートや融資も行っていきます」と同氏。

これらの企業が誰であるかについては、寺久保氏はまだ名前を公表していないが、今後数ヶ月のうちに公表したいと述べた。

Uncovered Fundは、ケニア、ナイジェリア、南アフリカを中心に、リテール、フィンテック、ヘルステック、ロジスティクス、MaaS、アグリテック、スマートシティなどの分野で活躍するスタートアップに注力する。ゼネラル・パートナーは、「これらは人々が生活する上での基本的な行動であり、できるだけ早く利便性を向上させることが重要だと考えている」ため、これらのセクターに投資を行うと述べている。

同社は、これらのセクターや市場にまたがるスタートアップ5社へ既に出資していることも明らかにした。その中には、ケニアのeコマース・プラットフォームSky Garden、米国を拠点とし、アフリカに特化したヘルステック・スタートアップのRxAll、フランス語圏アフリカのモビリティ・スタートアップGozem、ケニアのフィンテック企業LipaLater、YCの支援を受けたナイジェリアのデジタル貨物輸送スタートアップSEND Technologiesが含まれている。

これらの企業の中には他の国でビジネスを展開している企業もある。寺久保氏によると、同社は他のアフリカ諸国のスタートアップにも資金提供を検討するという。

「我々は、複数の国にまたがって事業を拡大するアフリカのスタートアップを探しています。ですから、スケールできるビジネスであれば、どの国のスタートアップでも歓迎します」。

Uncovered Fundは、Future HubKepple Africa、そして最近立ち上げられたSherpa VenturesなどのアジアのアーリーステージVCの仲間入りをすることになる。これらの過去4年間にローンチされたファンドは、合わせて50社以上のアフリカのスタートアップに資金を提供している。寺久保氏は、今年は15社のスタートアップを支援し、アフリカの創業者とアジアの投資家との相乗効果をさらに高めることで、この数を増やしたいと考えているという。

「我々はアフリカからアジア市場までの共同開発を視野に入れており、それが将来の大きなビジョンとなっています」と同氏はいう。「VCとして、また起業家として、アフリカの起業家のみなさんと一緒にその未来を創っていくチャレンジを楽しみにしています」。

関連記事:南アフリカのVC企業Knife Capitalが資金52.5億円確保、シリーズB10〜12社への投資を計画

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タグ:アフリカ

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(文:Tage Kene-Okafor、翻訳:Nakazato)

南アフリカのVC企業Knife Capitalが資金52.5億円確保、シリーズB10〜12社への投資を計画

南アフリカのベンチャーキャピタルであるKnife Capital(ナイフ・キャピタル)は、シリーズBの資金調達を目指すスタートアップ企業のために5000万ドル(約52億5000万円)の資金を調達している。同社のKnife Fund III(ナイフ・ファンドIII)はAfrican Series B Expansion Fund(アフリカのシリーズB拡張ファンド)と呼ばれ、南アフリカのスタートアップ企業の積極的な拡大に直接投資することを目指すものだ。また、同社はアフリカの他の地域を拠点とする企業に向けた共同投資も計画している。

その最初の投資ファンドは、Knife Capital Fund IまたはHBD Venture Capital(HBDベンチャー・キャピタル)として知られ、Eben van Heerden(エベン・ファン・ヘールデン)氏とKeet van Zyl(キート・ファン・ジル)氏が運営するクローズド・プライベート・エクイティ・ファンドだった。これによって同社はいくつかのスタートアップ企業に着手資金を提供した。また、そのポートフォリオからは、VISAによるフィンテック系スタートアップのFundamo(ファンダモ)の買収や、UberEats(ウーバーイーツ)によるorderTalk(オーダートーク)の買収など、重要なエグジットも生まれた。

2016年にこのVC会社は、Knife Capital Fund IIとして現在の所得税法第12J条(アーリーステージの企業に対するVCなどからの投資については100%の税控除を行う法案)を利用した投資オファーを開始。主にシリーズAステージに投資する同ファンド(KNF Ventures)は、8つのスタートアップをポートフォリオに抱えている。同社は2020年、このFund IIを拡張して新規投資家に開放する意図をTechCrunchに語っていた。その計画は、スタートアップ企業にネットワーク、資金、拡大の機会へのアクセスを与えることだった。

「南アフリカやアフリカの企業の国際化を支援したい」と、共同経営パートナーのAndrea Bohmert(アンドレア・ボーマート)氏は当時語っていた。その証拠に、同社のポートフォリオ企業の1つであるDataProphet(データプロフェット)は、米国と欧州に進出するために600万ドル(約6億3000万円)のシリーズAを調達している。

ボーマート氏がTechCrunchに語ったところによると、第3のファンドを設立した目的は、南アフリカのベンチャーキャピタルの資産クラスを特徴づけてきた深刻なシリーズBの資金調達ギャップに対処するためだという。この問題は、南アフリカのスタートアップ企業にとって、ビジネスの潜在能力を十分に発揮できなかったり、早期に撤退せざるを得なくなる結果を招くことがあった。

「最近では、200万ドル(約2億1000万円)から500万ドル(約5億2500万円)の資金調達が可能な企業が増えています。それらの企業は、自国内で事業を展開している限り、私たちの場合は南アフリカですが、現地のコスト構造から、それだけの資金があれば成功を収めることができるでしょう」と、ボーマート氏はいう。「しかし、これらの企業が国際的な牽引力を得て、母国以外の国でインフラを構築する必要が出てくると、そのためには多額の資金調達が必要になります。現在のところ、南アフリカ企業がより大きな市場に打って出るための資金調達を積極的に展開し、500万ドル以上の小切手を書ける南アフリカのVCファンドは、おそらくNaspers Foundry(ナスパーズ・ファンドリー)以外にはほとんど存在しません」。

その結果、アフリカは国際的なVCのインキュベーターになってしまったとボーマート氏は主張している。そのような国際的なVCは、高額の小切手を書くことはできるが、多くのスタートアップがまだ現地で必要とするサポートを提供することはできない。

同様に、国際的な投資家が南アフリカで積極的に現地の共同投資者を探してラウンド投資を行っている例もあるが、現地でそのような共同投資者が見つからない場合、投資を進めるチャンスを失うことになりかねない。Knife Capitalは、このファンドを立ち上げることで、このようなギャップを埋めたいと考えていると、ボーマート氏は語っている。

「私たちは、国際化を目指す南アフリカのテクノロジー企業のために、シリーズB投資の話し合いをリードできる国際的な投資家から、共同投資を行うために選ばれる地元のリード投資家になりたいと考えています」。

Knife Capitalは先週、南アフリカに拠点を置く投資会社のMineworkers Investment Company(MIC、マインワーカーズ・インベストメント・カンパニー)から1000万ドル(約10億5000万円)を確保した。この公約により、MICは他の国内外の投資家と並んで、このファンドのアンカー投資家となる。

MICのCIOであるNchaupe Khaole(チャウプ・カオール)氏は、地元の機関投資家がベンチャーキャピタル投資にアプローチする方法を変える動きは、以前からMICのパイプラインの中にあったと説明する。そしてKnife Capitalとの提携により、このアイデアは具体化し始めている。

「我々のコミットメントは、経験豊富なプレイヤーとして当社が持つ多くの強みとともに、今回の投資を実現するものになるでしょう。その1つは、我々と提携することで南アフリカ経済に実際に目に見える変化をもたらすと、ポートフォリオ内の企業を感化させる当社の能力です。今回の資金調達ラウンドの成功の鍵となる触媒となることを嬉しく思います」と、カオール氏は述べている。

その他の詳細としては、Knife Capitalは2021年5月までに最初のクローズを行い、年末までに最終クローズを行うことを目標としている。その大半は共同出資となり、10から12社の企業が資金を受ける計画だ。

カテゴリー:VC / エンジェル
タグ:Knife Capital南アフリカ資金調達アフリカ投資

画像クレジット:Knife Capital

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(文:Tage Kene-Okafor、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

TwitterのCEOとラッパーのジェイ・Z氏がアフリカとインドにビットコイン開発基金を設立、500BTC(24.8億円相当)を投資

Twitter(ツイッター)とSquare(スクエア)のCEOであるJack Dorsey(ジャック・ドーシー)氏は、ラッパーのJay-Z(ジェイ・Z)氏とともに、当初はアフリカとインドでBitcoin(ビットコイン)開発に資金を提供するための基金を設立した、と米国時間2月12日に発表した。

2人は、現在2360万ドル(約24億7700万円)相当の価値がある500BTCを「₿trust」と呼ばれる基金に入れようとしている。この基金は白紙委任で取消不可能な信託として創設される予定で、ドーシー氏は、両氏がチームに指示を与えることはないとつけ加えた。

₿trustは、3人の理事を募集しているという。この基金のミッションは「Bitcoinをインターネットの通貨にすること」だと、応募要項には記載されている。

インド政府はこれまでのところ、Bitcoinやその他の暗号通貨の導入に消極的だった。米国時間2月12日の動きは、ニューデリーが、国内で民間の仮想通貨を禁止する法律の導入に少しずつ近づいている中でのことだ。また同国は、独自のデジタル通貨の創設も視野に入れている。

関連記事:インド政府がビットコインなどの民間発行仮想通貨を禁止する法律を提出へ

TechCrunchの取材に対し、アジア系米国人向けにインド発のデジタルバンキングプラットフォームを構築しているOnJunoの共同創業者Varun Deshpande(バルーン・デシュパンデ)氏はこう説明した。「インドは世界のソフトウェア開発の中心地であるにもかかわらず、Bitcoinのコア開発には大きな貢献をしていません」。

「インドは常に貢献するスキルを持っていましたが、適切なインセンティブがありませんでした。今回のイニシアチブは、世界最大の民主主義国の開発者がBitcoinのプロトコル開発に貢献し、Bitcoinのプロトコル開発に発言権を持ち、通貨の未来をかたち作るために多様な考えをもたらすための適切なインセンティブを提供するため、より重要なものです。皮肉なことに、インドがBitcoinを禁止する法案を準備する中、世界はBitcoinネットワークを安全に保護するために、インドの膨大な技術人材に目を向けようとしています」。

一方、アフリカ、特にナイジェリアでは、近年仮想通貨の取引が急増している。2020年、ナイジェリア人は地元の主要な仮想通貨取引所で4億ドル(約419億9000万円)以上の仮想通貨を取引しており、過去5年間のBitcoin取引量では米国に次ぐ2位となっている。

アフリカの人々は仮想通貨を取引することで、通貨の切り下げや国境を越えた取引での価値交換を防ぐことができるため、仮想通貨に依存している。ナイジェリアでは、2020年、国を揺るがした#EndSARSの抗議活動の間、Bitcoin取引が社会に定着した。抗議のための寄付金が国内各地や在外ナイジェリア人から流入し始めたとき、ナイジェリア政府は抗議活動に使われていた銀行口座を閉鎖した。しかしそのとき、Bitcoinはクラウドファンディング活動を継続させる生命線となった。

それ以来、ナイジェリア政府が国内で仮想通貨を規制する意図があるのではないかとの懸念が高まっていた。そして先週、ナイジェリアの中央銀行が銀行や金融機関に対して、仮想通貨の取引や仮想通貨取引所プラットフォームへの支払いを容易にすることを禁止する指令を出したことで、こうした疑念は現実のものとなった。

ドーシー氏は長い間、仮想通貨の採用を支持してきた。SquareはすでにBitcoinをサポートしており、2020年は約5000万ドル(約52億5000万円)相当のBitcoinを企業財務のために取得しており、Twitterは従業員やベンダーへの支払いにBitcoinを利用する可能性を検討している。

今週初めにCNBCとのインタビューで、TwitterのCFOであるNed Segal(ネッド・シーガル)氏はこう語っていた。「従業員がBitcoinでの支払いを希望した場合にどのように支払うか、ベンダーがBitcoinでの希望した場合はどうするか、また、そのようなことが起こった場合にバランスシートにBitcoinが必要かどうかを検討するために、率直に多くのことを考えてきました。それは当社が研究し続けていることであり、時間をかけて考えていきたい事項ですが、まだ何も変更はしていません」。

多くの著名な業界幹部が、各国にBitcoinの導入を呼びかけている。エンジェル投資家であり、CoinbaseのCTOを務めた起業家でもあるBalaji Srinivasan(バラジ・スリニヴァサン)氏は、2020年2月初めに、インドがBitcoinを受け入れるべき理由をこう述べた。

「インドはそれを成功させる(技術)人材を持っています。このような動きは世界のメディアで大きく取り上げられ、世界中の技術者や金融機関から支持を集め、米国や中国が推し進めるゼロサム経済政策とは一線を画し、インドを1兆ドル(約105兆円)規模の産業の最前線に立たせることになるでしょう」と同氏は書き、Bitcoinのブロック解除がインドにもたらす可能性を想定している。

一方、ケニア中央銀行は今週、対ドルでケニアシリングが乱高下する中、Bitcoinを準備通貨として使用すると述べた。同国は2020年、アフリカでのBitcoin取引ではナイジェリアに次ぐ第2位だった。ドーシー氏の計画は、2019年に同氏がアフリカ大陸を訪問した際に、主要な政治・技術関係者との会合の中で、アフリカ大陸で始まったばかりだった仮想通貨の利用について驚くべき言及をしたことに続くものだ。「アフリカが将来を決定づけるだろう(特にBitcoin分野で!)」と彼はそのときの発言だ

関連記事:テスラが約1578億円相当のビットコインを購入、将来的に仮想通貨での支払いも検討

カテゴリー:ブロックチェーン
タグ:ジャック・ドーシーJay-ZBitcoinアフリカインド

画像クレジット:Dan Kitwood / Getty Images

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(文:Manish Singh、Tage Kene-Okafor、翻訳:Aya Nakazato)

アフリカの教育テクノロジー系スタートアップ企業uLessonがシリーズAで7.8億円調達

ナイジェリアに拠点を置くEdTech(教育+テクノロジー)系スタートアップで、SDカードで学生にデジタルカリキュラムを販売するuLesson(ユーレッスン)が、シリーズAの資金調達で750万ドル(約7億8000万円)を調達した。このラウンドを主導しているのは、わずか数カ月前に5億ドル(約520億円)を超える新規投資を締結したOwl Ventures(オウル・ベンチャーズ)だ。他にもLocalGlobe(ローカルグローブ)や、TLcom Capital(ティーエルコム・キャピタル)、Founder Collective(ファウンダー・コレクティブ)などの既存の投資家が参加している。

今回の資金調達は、uLessonが2019年11月に310万ドル(約3億2000万円)のシードラウンドをクローズしてから1年あまり経っているが、当時と現在の最大の違いは、単に銀行に数百万ドル(数億円)の資金があるかどうかではなく、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行が、このスタートアップの価値提案全体に大きな影響を与えたことだ。

uLessonは、世界保健機関(WHO)が新型コロナウイルスの世界的大流行を宣言する数週間前に市場に参入した。Dカードの送付によるコンテンツの配信から始まったこのスタートアップ企業は、学生がリモート学習に適応し、アフリカ全土の家庭にスマートデバイスの波が押し寄せた時期と適合した。

「これまで見たことのないようなかたちで地面が濡れてきました」と、uLesson創業者兼CEOのSim Shagaya(シム・シャガヤ)氏は語った。「オフラインだけでは不可能だった、私たちがEdTechの世界でやりたいと思っていた本当に素晴らしいことが、すべて実現できるようになりました」と、創業者は付け加えた。

uLessonは他の多くのEdTech系スタートアップと同様に、一夜にしてリモート教育が普及したことの恩恵を受けてきた。補助的な教育ツールとしての位置づけが、前月比70%の成長を達成するのに役立ったと、シャガヤ氏は述べている。同氏によると、デジタルインフラが整ったことにより、「2021年の第2四半期までに完全オンライン化」が可能になるという。

uLessonの年会費は50ドル(約5200円)で、アプリのダウンロード数は100万回を超えている。

シャガヤ氏は、uLessonがSDカードの送付を利用したオフラインの非同期コンテンツから、ライブのオンラインプラットフォームへと進化していくことで、新たな需要があると見ている。このスタートアップはすでにライブ個別指導の実験を行っており、事前に録画された教材を見ながら学生が質問できる機能をテストしている。このスタートアップには毎日3000以上の質問が寄せられ、需要が高すぎてテスト機能を一時停止せざるを得なかった。

「ユーザーがボタンを押すだけで、自分が勉強していることを基本的にマスターしている大陸のどこかの大学生から、瞬時にサポートが受けられるようにしたいと考えています」と、シャガヤ氏はいう。Chegg(チェグ)、Quizlet(クイズレット)、Brainly(ブレインリー)などの企業を見てもわかるとおり、コンテンツに特化したスタートアップがライブ個別指導のレイヤーを追加する傾向は続いているようだ。

巨大なチャンス

新型コロナウイルスの影響で、eラーニングのスタートアップ業界は活況を呈している。これによって、家庭教師のマーケットプレイスや、学生にサービスを提供するコンテンツが続々流入しつつある。EdTechで最も価値のあるスタートアップの1つは、オンライン学習サービスを提供し、学生にテスト対策を行うByju’s(バイジューズ)だ。

しかし、シャガヤ氏は、他のどんなライバル企業も、Byju’sでさえアフリカ市場に向けてデジタルな方法でこれを行うことについて、困難を乗り越えたとは思っていない。南アフリカやケニアには家庭教師の人材紹介会社があり、学生の自宅に人材を派遣するオフラインの家庭教師市場はあるが、デジタルカリキュラムの観点で明確なリーダーはいない。

「アフリカは大きなチャンスだと誰もが思っています」と、シャガヤ氏は語る。「しかし、それを成し遂げるためには、現地のチームが必要だということも誰もが知っています」。

シャガヤ氏は、アフリカのEdTechには巨大なチャンスがあると考えているが、その理由は2つある。若い人口と、私立学校へ進む学生の深い洞察力だ。これらの事実が組み合わさることで、経済力があって補習教育にお金を払う意思のある学生の宝庫が生まれる可能性がある。

uLessonにとって、そして新型コロナウイルスの恩恵を受けたすべてのEdTech系スタートアップにとって、最大のハードルは流通と成果だ。uLessonは有効性と成果に関するデータは公表していないが、現在、ジョージア大学と共同で熟達度を把握するための研究を進めている最中だという。

「コンテンツへの取り組みと製品は、流通という聖壇で生きるか死ぬかのどちらかになります」とシャガヤ氏はいう。この創業者は、たとえばインドでは、社会的なニュアンスや文化から、事前に録画された動画がうまく機能していると指摘する。uLessonは、アフリカ周辺の市場で動画に最適なソースを見つけ、それを製品に組み込んでいこうとしている。

カテゴリー:EdTech
タグ:uLessonアフリカ資金調達

画像クレジット:uLesson

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(翻訳:TechCrunch Japan)