オープンソース版の登場に対してWhat3Wordsがセキュリティ研究者に法的警告を送付

デジタル・アドレス・システムWhat3Wordsを開発しているイギリスの企業がセキュリティの研究者に法的警告を送り、オープンソースのソフトウェアの共有を他の研究者たちに持ちかけたことは著作権を侵犯していると主張している。

XMissionのシステムズアドミニストレータAaron Toponce氏は、木曜日(米国時間4/29)にWhat3Wordsを代表している法律事務所から、オープンソースの代替システムWhatFreeWordsに関連するツイートの削除を求める書簡を受け取った。その書簡は、彼がそのソフトウェアのコピーを共有した者の身元を同法律事務所に開示し、今後そのソフトウェアを作らないことと、彼が現在保有しているコピーを削除するよう求めている。

その書簡は、要求遵守の日限を5月7日とし、それを過ぎれば「貴殿に対する関連の主張を追求するいかなる資格をも放棄する」、つまり、これ以上あれこれ主張するのをやめて告訴に踏み切る、と言っている。

当のToponce氏は「これは戦う価値のない戦闘だ」とツイートし、本誌には、今後の法的影響が怖いから要求には従った、と語った。削除せよと言っているツイートのリンクをその法律事務所に尋ねたが、答はなかったそうだ。「ツイートによっては、従わないこともありうる。その内容次第だ」、と彼は述べた。


Aaron Toponceに送られてきた法的警告(画像: 本人提供)

英国の企業であるWhat3Wordsは、世界全体を一辺が3メートルの正方形に分割して、そのそれぞれに他と重複しない3語のラベルをつける。それのどこが良いのかというと、緊急時などに現場の正確な地理的座標をいちいち調べて電話するよりは、3つの言葉を共有する方が簡単だからだ。

しかしセキュリティ研究家のAndrew Tierney氏が最近発見したところによると、What3Wordsは、1マイルも離れていない二つの正方形に似た名前をつけることがあるので、人の所在などで混乱を招くことがある。その後の記事でTierney氏は、安全性がきわめて重視される状況でWhat3Wordsを使うのは適切でないと言っている。

欠点はそれだけではない。批評家たちはかなり前から、「救命」を謳っているWhat3Wordsのプロプライエタリなジオコーディング技術は、問題の性質やセキュリティの脆弱性を調べづらくする、と批判してきた。

関連記事: Extra Crunch members get unlimited access to 12M stock images for $99 per year(未訳、有料記事)

What3Wordsがオープンでないことへの懸念も、WhatFreeWordsの開発に導いた動機のひとつだ。そのプロジェクトの現在のWebサイトにはコードがないが、オープンソースバージョンはWhat3Wordsをリバースエンジニアリングして作った、と言っている。そのWebサイトは曰く、「仕組みが分かったので私たちはその実装をJavaScriptとGoで書いた。What3Words社の著作権を冒さないために、彼らのコードはいっさい使っていない。相互運用性のために必要な最小限のデータを含めただけである」。

しかしそのプロジェクトのWebサイトは、いずれにしてもWhat3Wordsの弁護士たちが提出した著作権取り下げ要求の対象になってしまった。コードのコピーのキャッシュやバックアップの所在を示すツイートも、弁護士たちの要求でTwitterにより削除された。

Toponce氏はセキュリティの研究者としてTierneyの研究に協力し、Tierney氏は彼の所見をツイートした。Toponce氏によると、彼はWhatFreeWordsのコードのコピーを他の研究者たちと共有し、What3Wordsに対するTierney氏の当時進行中の研究を助けた。Toponce氏は本誌に、コードの共有を持ちかけたことと、What3Wordsの問題点を見つけたことが合わさって法的警告という結果になったのかもしれない、と言っている。

What3Wordsは、Toponce氏宛の書簡で、WhatFreeWordsには同社の知財が含まれており、同社はそのソフトウェアの「流布を許容できない」と言っている。

しかし、そのコードのコピーはすでにいくつかのWebサイトにあり、Googleで検索できる。そして本誌が見たところによると、Toponce氏が法的警告を公表してから、WhatFreeWordsのコードのリンクのツイートがいくつか登場している。Tierney氏は自分の研究にWhatFreeWordsを利用していないが、ツイートでは、What3Wordsの反応は「今やオンラインで誰にでも簡単に見つかるものに対して法的権利を主張するなんて、常軌を逸している」、と言っている。

本誌はWhat3Wordsに、裁判所がWhatFreeWordsの著作権侵犯を認めたら本当に訴訟をするのか、尋ねてみた。What3WordsのスポークスパーソンMiriam Frank氏は、コメントの複数回の要求に、応じなかった。

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(文:Zack Whittaker、翻訳:Hiroshi Iwatani)
画像クレジット: TechCrunch(スクリーンショット)

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透明化を真剣に考えるなら広告産業はSDKをオープンソース化せよ

広告トラフィックの出所、その販売方法、測定方法は、いつまで経っても不透明のままで、いろいろな広告技術プロバイダーを利用したい広告主にとって、それがフラストレーションの元となり、参入障壁にもなっている。GDPR(EU一般データ保護規則)やCOPPA(児童オンライン保護法)などの法律により、個人データの保護やプライバシーの面では進展が見られたものの、広告マーケティングの透明性という大きな視点からすれば、状況はほとんど変わっていない。

その理由のひとつに、運用型広告やその他の広告テクノロジーの仕組みが圧倒的に複雑である点が挙げられる。毎日数十億件ものインプレッションが自動的に処理される世界では、物事をもっとシンプルに明確にするための共通のソリューションが存在しない。したがって広告業界が対処すべき課題は、透明化への意欲を持つことのみならず、透明化を実現させる手段を備えることだ。

苛立たしいことに、個人データの収集方法と一部企業の個人データの扱い方が、オンライン広告への人々の信頼を損ねる大きな要因になっている。これは一夜にして現れた問題ではない。長い間に築かれたものであり、自分の個人データの使われ方、分析のされ方、商品化のされ方に、消費者はフラストレーションを募らせてきた。同時に、支払いを要求されるクリック報酬型広告の透明性と合法性に、広告主は同様のフラストレーションを溜めている。

IAB(インタラクティブ広告協会)やTAG(トラストワージー・アカウンタビリティー・グループ)といった団体は、ads.txtのような透明性の高い指針構築の取り組みを続けている。しかし、厳格な法律がともなわなければ、責任は個々の企業に委ねられてしまう。

だがひとつだけ、大変に不評ながら比較的シンプルで、すべての関係者(ブランド、消費者、広告またはマーケティングの提供者)の利益となる透明性と信頼性を引き出せる方法がある。業界が結束して、すべての企業がそれぞれのSDKをオープンソース化することだ。

オープンソース化が広告主、パブリッシャー、広告業界に利益をもたらす理由

オープンソースソフトウェアとは、誰もが無料で使え、解析や変更や改良が許されたプログラムことだ。

プログラムを解析して、SDKの機能を個別の必要性に応じて調整するという作業は、よく行われている。アプリによる不正行為を公正に審査するセキュリティ企業や利害関係者も、同じようにプログラムの解析が行える。開発者とその依頼主にとれば、SDKを構成するプログラムがどのように記述されているかを公開することが、秘密の機能や好ましくない仕様がないことを証明する最良の手段となる。

オープンソースSDKを使う人は、誰もがその構造を正確に知ることができる。またオープンソースライセンスの元で公開されるため、誰もが修正や改良を提言できる。

オープンソースにもリスクはあるが恩恵ははるかに大きい

SDKのプログラムを公開する際の最大のリスクには、第三者が悪意あるプログラムを組み込んで悪用する恐れと、脆弱性を突いたバックエンドのサービスやデータへの不正アクセスを許してしまう恐れとがある。しかし、そこに注意を払っていれば、攻撃されやすい部分が見つかり次第、SDKの提供者は即座に修正できる。

オープンソース化の恩恵は、信頼と透明性を引き出せる点だ。それは顧客ロイヤリティーと消費者信頼感に確実につながる。結果として、広告主と開発者の全員が、誰とどのような条件で仕事をしたいかを自由に選べる市場での事業展開が可能になる。

身勝手なようだが実際の話として、SDKをオープンソース化すれば、我々の業界の企業は、自社製品の売り込みを目的とした他社からの根拠のない批判から身を守ることができるようにもなる。

オープンスタンダードの下では、宣伝目的の根も葉もない不当な非難はできなくなる。万人の目前で潔白を証明できるからだ。

アドテクノロジーはオープンソース化をどう受け入れたか

アドテクノロジーの分野では、MoPub(モーパブ)、Appodeal(アポディール)、AppsFlyer(アプスフライヤー)が、一部またはすべてのSDKをすでにオープンソースライセンスの下で公開している数少ない企業だ。

これらの企業はみな、透明性と信頼性が重要であることに気づき、オープンソース化に踏み切っている。自社ブランドの安全性と評判をアルゴリズムの手に委ねる場合は、なおさら透明性と信頼性が重要になる。だが大半のSDKは、未だ非公開のままだ。

自社の透明化のレベルを、先進的な企業に倣って設定しているようでは、業界の現状を乗り越えることはできない。今や、信頼とデータの透明性に関する精力的な行動が求められている。企業にプライバシー保護を要請し、最終的に必要とされる変革を推進するよう強要するGDPRやCOPPAの手法を採り入れ、SDKのオープンソース化を義務化すれば、広告マーケティングの世界は新たな高みへ導かれ、顧客、競合他社、規制当局そして消費者に対する新しいレベルの信頼が得られ、より高度なデプロイが可能になる。

業界全体におよぶ透明化の試みは、すぐに結果を出せるものではないが、正しい方向への動きを示す良いニュースだ。すでに実践している企業があるため、他の企業も追随しやすい。ブランドセーフティーを確かなものにする手段を備え、広告詐欺の抑制を促すことで、ブランド、広告代理店、プログラマティックパートナーとの関係は改善され、消費者の個人データの用途は明確化され、広告業界の信用は高まり、やがてはビジネスチャンスが増大する。

だからこそ私たちは、すべての広告およびマーケティング企業に対して、信頼と透明性と業界改革を引き出すSDKのオープンソース化に向けて、ともに一歩踏み出そうと呼びかけている。これは、私たちの消費者、ブランド、広告技術プロバイダーそして業界全体の利益を生む。そうすれば、ブランドとブランドの広告への信用を増した消費者から、そしてやがては、私たちを信頼し、より高度なソリューションを導入してビジネスを大きくしたいと考えるブランドから、私たち全員が恩恵を受けることになるのだ。

【編集部注】著者のErick Fang(エリック・ファン)氏はMintegral(ミンテグラル)のCEOとして、同社グローバルモバイル広告プラットフォームの経営、顧客関係、製品開発を監督している。

カテゴリー:ネットサービス
タグ:アドテックオープンソース透明性

画像クレジット:MirageC / Getty Images

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(翻訳:金井哲夫)

コンタクトセンターでの一次対応など産業向け対話AIを手がけるコトバデザインが資金調達

コンタクトセンターでの一次対応など産業向け対話AIを手がけるコトバデザインが資金調達

産業分野における音声アシスタント・コンタクトセンターにおける一次対応など対話AI実行環境「COTOBA Agent」を手がけるコトバデザインは10月2日、第三者割当増資による資金調達を実施したと発表した。引受先はSCSK。

今回の資金調達により、経営基盤の強化とともに、COTOBA Agentサービス改良のための自然言語処理技術・クラウドインフラ技術に秀でた人材の獲得、対話データ関連の投資、顧客獲得に向けたマーケティング活動の強化を実施する。

2017年8月設立のコトバデザインは、ヒトに寄りそう、対話インターフェースの創造と解放というミッションのもと、近未来では「対話」が複雑化したコンピューターシステムを使いこなす鍵となると考え、映像・音声・センサーなど多様なメディアを利用した対話プラットフォームの開発を手がけているスタートアップ企業。SCSKとは、スマートシティ分野などでの共創を推進し、快適で豊かな未来社会の創造を目指すとしている。

同社は2020年5月、産業分野向け対話AI実行環境COTOBA Agentの正式サービスを法人向けに提供開始。

同サービスは、自由度と運用の容易さを両立させたクラウドAPIサービスとなっており、自由なシナリオ作成、カスタマイズ可能な意図解釈モデル、充実した開発支援ツールや運用支援ツールといった特徴を備えている。

また目的別にシナリオを作成することで、シナリオに沿ったユーザーとの自然な対話を実現可能。産業分野における音声アシスタント、コンタクトセンターにおける一次対応、企業・自治体の窓口業務の自動化、ロボットやMaaSへの応用など、多様な用途の対話エージェントを開発できる。

コンタクトセンターでの一次対応など産業向け対話AIを手がけるコトバデザインが資金調達

コア部分については、2020年3月公開のオープンソースソフトウェア(OSS)版「COTOBA Agent OSS」と同じエンジンを用いており、高い透明性を確保しつつ、共通のエンジン故にクラウドサービスとOSSベースのローカル環境との間に高いポータビリティを確保。さらに、多言語対応が可能な設計(公開時は日本語・英語対応)となっている。

なおCOTOBA Agent OSSは、IoTからのセンサー/画像情報や外部APIとの連携も可能な、産業用で初のオープンソース対話エンジンとして提供しており、MITライセンスであるため広く商用利用が可能。

  • 外部API-I/FでIoTからのセンサー情報に応じた対話を実現できるため、産業応用が容易
  • シナリオが自由に書けて意図解釈モデルもカスタマイズ可能
  • 開発者用デバッグツールや管理者用ダッシュボードなどの開発者向け支援機能が充実
  • 実用的なサービスの実現に必須のセキュリティやスケーラビリティも備える
  • 複数言語対応に設計されており、サービス開始時は日本語と英語で利用可能
  • 5000項目以上の試験を実施し、大規模テストによって高い信頼性を実現。研究だけでなく大規模商用利用を前提としたソフトウェアを提供
  • OSSと共通のエンジンで、OSSベースの環境との間でAIMLコードや意図解釈コーパスに互換性あり

コンタクトセンターでの一次対応など産業向け対話AIを手がけるコトバデザインが資金調達コトバデザインは、「インターフェースの民主化を実現し、デジタルデバイドを終わらせ、弱者を取り残さない」という世界の実現を目指して、COTOBA AgentとCOTOBA Agent OSSの普及を通じて対話エージェント開発のコミュニティ形成を促進。対話エージェント開発・運用・流通のエコシステム形成に貢献することで、その先の対話AIのコンテンツ化と流通メカニズムの実現へと歩を進めていくとしている。

カテゴリー:人工知能・AI
タグ:コトバデザイン、IoTオープンソース資金調達日本

オープンソースのデータプラットフォームCube.js開発のCube Devが約6.5億円を調達、商用製品化を目指す

オープンソース企業のCube Devは米国時間9月29日、Bain Capital Venturesが率いるシードラウンドで620万ドル(約6億5400万円)を調達したことを発表した。既存投資家であるEniac VenturesとBetaworks、Innovation Endeavors、そしてSlack Fundも参加し、これに新規投資家としてUncorrelated VenturesとOvertime.vcが加わった。Cube Devは、開発者が社内や外部のユーザー用に分析アプリケーションを書くときのデータプラットフォームを構築するためのCube.jsツールを提供している。

Artyom Keydunov(アルチョム・キーデュノフ)氏とPavel Tiunov(パベル・ティウノフ)氏の二人の創業者は、いま成功しているCube.jsのコアを実は彼らが2016年に創業した別の企業であるStatsbotのために作った。Statsbotは、エンタープライズのレポートやダッシュボードの作成を支援するBI(ビジネスインテリジェンス)のプラットフォームで、Slackのボットを用意されていた。

キーデュノフ氏は「Statsbotを作っているとき、このアプリケーションを動かすためにいまのCube.jsを作りました。しかしユーザーがStatsbotを使うにつれて、この技術を『分析のための社内アプリケーションや顧客用のアプリケーションで使いたい』という要望を聞くようになったのです。Cube.jsのスタンドアロンの技術としての概念実証を数社の協力の下で実施し、それに関してとてもポジティブなフィードバックを得ました」と語る。

Cube.jsの基本的な目的は、データソースに接続して視覚化するとき、バックエンドのインフラストラクチャを構築する際の大量の雑務を軽減することだ。このオープンソースのツールは、基本的にはミドルウェアのレイヤーであり、データベースとフロントエンドの間に入って、SQLの生成やキャッシング、セキュリティ、オーケストレーションなどを扱う。これにより、開発者は自分のアプリケーションの開発に集中できる。また、そのキャッシング技術により、大量のパフォーマンス関連の問題を開発者に代わって解決する。

キーデュノフ氏が言うように、現在のデータアナリストやデータエンジニアにとって、市場にすでにたくさんのツールがあり、必要なことは何でもやってくれる。しかし、開発者はカスタムアプリケーションを作ることが多いので、互いに接続性のない、さまざまライブラリをツギハギで使うことになる。「分析系の特定のタイプのアプリを作るために使えるソリューションは、どこにもない」と同氏。

Bain Capital VenturesのパートナーであるStefan Cohen(ステファン・コーエン)氏は「Bain Capital Venturesはオープンソース企業に頻繁に投資しています。そんな中で非常に気になっているのが、大量の多様なデータソースに接続するアプリケーションを作るという難題です。パブリッククラウドの到来と急激なペースで開発者やエンジニアが消費している不均一なデータソースが日常化する中で、それらを統一して視覚的に魅力的で役に立つエンタープライズのためのアプリケーションを提示することが非常に困難になっているのです」と語る。

関連記事:Statsbotは、Slackにビジネスデータを取り込む際に役立つチャットボットだ

それでもエンタープライズがCube.jsのようなアプリケーションを求めるのは、新たな収益機会が開かれ、彼らのワークフローを合理化できるからだ。Cube Devは現在、このトレンドの真っ只中にいる。

多くのオープンソース企業がそうであるように、Cube Devのチームもエンタープライズに商用のクラウドとSaaSのサービスを提供することを目的にしている。もちろんそこには、セキュリティの強化とサインイン機能などの、通常のエンタープライズ機能の実装も伴う。

キーデュノフ氏は「チームはイベントやミーティングなどを通じてCube Dev関連のオープンソースのコミュニティを年内に作りたい」そうだ。コミュニティ作りは当然ながらいまは難しい時期だが、それでもCube Devは、見込みのある顧客やコミュニティのメンバーにできる限り話を持ちかけている。

コーエン氏はさらに「オープンソースから商用製品への飛躍は、大きなチャレンジであり重要な収益機会でもある。いま多くの開発者や企業がCube.jsをオープンソースで利用していることは素晴らしい光景ですが、でも私たちが本当に必要とするのは機能が完全にそろったクラウドプロダクトを提供し、その利用を促進することです。また、必ずしもそれ自身で収益化を図るのではなく、私たちのエンタープライズ機能が市場にとって正しく、重要な問題を解決していることを理解してもらえるだけでもいい。そしてその認識が正しく普及すれば、世界は私たちの思うままになります。でもとにかく、そんなプロダクトを作ることと、初期の利用を広めることが先決なのです」と語った、

当然ながら、チームがこの新たな資金でやろうとしていることも、商用化への第一歩を踏み出すことだ。

関連記事:世界を手中に収めたオープンソースソフトウェア

画像クレジット: Cube.js

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

UCバークレー発祥のDetermined AIが機械学習インフラをオープンソースに

機械学習は、ニッチな分野から無数にあるソフトウェアスタックの重要なコンポーネントへと急速に移行したが、だからといって簡単に手がつけられるわけではない。機械学習の開発と管理管理に必要なツールは企業グレードで、多くの場合企業だけを相手にしている。だがDetermined AIは、同社のAIインフラストラクチャ製品全体をオープンソース化することで、これまで以上に使いやすくすることを狙っている。

同社は、組織化された信頼性の高い方法でAIを開発するための「Determined Training Platform」を開発した。これは大企業が自分たちのために作って(秘匿している)ものと似たようなものだと、同社は昨年1100万ドル(約12億円)のシリーズA調達を行った際に説明した。

「機械学習は、今後のソフトウェア開発方法の中の大きな部分を占めることになります。しかし、GoogleやAmazonのような企業が生産性を確保するためには、こうしたソフトウェアインフラをすべて自前で構築しなければなりませんでした」とCEOのEvan Sparks(エバン・スパークス)氏は述べている。「私たちが働いていたある会社では、70人がAIのための内部ツールを構築していました。このような取り組みを続けられる企業は、地球上にそれほど多くありません」。

小規模な企業では、学術的な仕事や個人研究を目的としたツールを使って、小規模なチームによる機械学習(ML)の実験が行われている。実際の製品を開発している何十人ものエンジニアに向けてそれを拡大するには…多くのオプションは残されていない。

「そうした人たちはTensorFlowやPyTorchのようなものを利用しています」と語るのは、チーフサイエンティストのAmeet Talwalkar(アミート・タルウォーカー)氏だ。「仕事のやり方の多くは決まったやり方です。例えば、モデルはどのように訓練されるのか?どこにデータを書き留めればベストなのか?データを適切な形式に変換するにはどうすれば良いのか?これらはすべて、極めて基本的な作業なのです。それを行う技術はありますが、まだまだ開拓途上なのです。そして、それを準備するためにしなければならない仕事の量たるや。大規模なハイテク企業がこれらの内部インフラを構築するのには相応の理由があるのです」。

カリフォルニア大学バークレー校のAmpLab(Apache Sparkの本拠地)からスタートしたDetermined AIは、数年前からそのプラットフォームを開発し、有料の顧客からのフィードバックと検証を受けてきた。そして今彼らは、オープンソースデビューの準備が整ったと言う。もちろん、Apache 2.0ライセンスを使ってだ。

「私たちは、それを選んだ人たちが、あまり多くの助けがなくても、自分自身でそれを使うことができると確信しています」とスパークス氏は言う。

ローカルまたはクラウドのハードウェアを使用して、プラットフォームを自分でホストして、インストールすることもできるが、最も簡単な方法は、AWSやお好みの場所から自動的にリソースを供給して、不要になったら破棄できる、クラウドマネージドバージョンを使うことだろう。

Determined AIプラットフォームが、多くの小規模企業が同意できる基礎レイヤーのようなものになり、結果や標準への移植性が提供されることで、すべての企業やプロジェクトをゼロから始める必要がなくなることが期待される。

今後数年間で機械学習による開発が桁違いに拡大すると予想される中、パイのほんの一部に対してでも取り分を主張する価値はあるが、もし運が良ければ、Determined AIは中小企業にとってAI開発の新たなデファクトスタンダードになるかもしれない。

このプラットフォームは、GitHubまたはDetermined AIの開発者サイトで確認できる。

画像クレジット:Getty Images

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(翻訳:sako)

AWSとIBMは新型コロナ問題に挑むデベロッパーを支援する

社会が新型コロナウイルス(COVID-19)のため高まりつつある世界的な危機に直面する中、多くの企業がさまざまな方法で取り組みを強化している。米国時間3月20日、2つの大手IT企業、Amazon(アマゾン)とIBMはそれぞれ、このパンデミックに関連するさまざまな問題の解決策を見つけられるようデベロッパーを支援するプログラムを発表した。

画像クレジット:VectorMine/Getty Images

アマゾンでは、クラウド部門のAWSが「AWS Diagnostic Development Initiative」を発表した。予算として2000万ドル(約22億2000万円)を確保し、AWSクレジットとテクニカルサポートとして提供する。このプログラムは、新型コロナウイルス診断問題に取り組むチームを支援し、鼓舞するように設計されており、より優れた診断ツールが開発されることを目指している。

「AWSビジネスにおいて、緊急の必要性を突きつけられた分野の1つは、新型コロナウイルスの診断方法の研究開発です。迅速で正確な検出と診断が必要とされています。優れた診断法は、治療と封じ込めを加速し、やがてこの流行期間を短くすることにつながるでしょう」と、Teresa Carlson(テレサ・カールソン)氏は、3月20日の同社のDay Oneブログに書いている。

このプログラムは診断ソリューションの開発に取り組んでいる顧客が、製品をより迅速に市場に投入できるよう支援することを目的としている。さらに、関連する問題に取り組んでいる複数のチームが、協力して作業の奨励も目指す。

同社はまた、科学者と健康政策の専門家から構成される諮問グループを設立し、このイニシアチブに参加する企業の支援も発表した。

一方IBMは「2020 Call for Code Global Challenge」というデベロッパーコンテストに、改めて注力することにした。このコンテストの2020年における憲章は、地球規模の気候変動に関する問題を解決するというものだったが、拡大するウイルス危機に関する問題の解決も目指すことにした。いずれも、オープンソースのツールを開発することで貢献しようというものだ。

「新型コロナウイルスは、非常に短い間に私たちが当たり前のことと考えていたシステムの限界をさらけ出してしまいました。2020 Call for Code Global Challengeは、3つの主要な新型コロナウイルス対策の領域について、オープンソースのテクノロジーソリューションを開発するためのリソースを提供します。その3つとは緊急時の危機報道、遠隔学習環境の改善、地域コミュニティの協力関係の増進です」と、同社はブログ記事に書いている。

そうした領域は、かなり多くの人がウイルスを封じ込めるために屋内に留め置かれていることで、大きな負担を強いられている。IBMは、そうした問題に取り組むデベロッパーのインセンティブを鼓舞し、問題の解決につなげることを願っている。

社会のあらゆる状況が影響を受ける社会的、経済的な激変期には企業、学界、政府が協力して、このウイルスに関する無数の問題を解決する必要がある。これらは、そのほんの一例に過ぎない。

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(翻訳:Fumihiko Shibata)

Cortexならデータ科学者でも機械学習モデルをクラウドで簡単にデプロイできる

実用的な機械学習モデルを作ることも大切だが、それを現実に利用できるようにすることも重要だ。Cortex Labs(コーテックス・ラボズ)は、その最後の段階を、データ科学者たちに提供するためのオープンソース・ツールを提供するアーリーステージのスタートアップだ。

同社の創設者は、バークレーの学生だったころ、機械学習モデルを開発する際に問題となるのは、それをデプロイする手段がないことだと気がついた。当時からオープンソースのツールは山ほどあったが、データ科学者はインフラストラクチャーの専門家ではない。

CEOのOmer Spillinger(オマー・スプリンガー)氏によれば、彼自身、CTOのDavid Eliahu(デイビッド・エリアフー)氏、エンジニアリング責任者のVishal Bollu(ビシャル・ボルー)氏、そして事業成長責任者のCaleb Kaiser(ケイレブ・カイザー)氏からなる創設チーム全員が、インフラストラクチャーをよく理解しているという。

この4人の創設者が行ったのは、オープンソースのツール一式を揃え、AWSサービスでそれらを結合させ、簡単にモデルをデプロイできる手段を提供することだった。「私たちはTensorFlow、Kubernetes、Dockerといったオープンソースツールを、CloudWatch、EKS(Amazon仕様のKubernetes)、S3などのAWSサービスで結合して、モデルをデプロイしたい開発者に、基本的にひとつのAPIを提供します」とスプリンガー氏は説明していた。

データ科学者たちが、書き出したモデルのファイルをS3のクラウドストレージにアップロードするようになったと彼は話す。「それを私たちは引き出し、コンテナ化して、裏でKubernetesにデプロイします。ワークロードのスケールは自動的に調整され、大量の演算が必要なときはGPUに切り替えが可能です。私たちはロゴをストリーミングして、(モデルを)ウェブで公開します。それに関連するセキュリティー管理を我々がお手伝いします。そんな感じです」と彼は言う。

 Amazon SageMakerに似ていることを彼も認めているが、同社は、すべての主要なクラウドに対応させることを長期目標にしている。SageMakerは、当然のことながらAmazonのクラウドでしか使えない。それに対してCortexは、事実上すべてのクラウドで使える。実際、この点において、最も多い機能上の要求が、Google Cloudへの対応だとスプリンガー氏は言う。またロードマップには、Microsoft Azureへの対応もあると彼は話していた。

Cortexの創設者たちは、2018年にEngineering Capitalから調達したシードラウンドの88万8888ドル(約9700万円)のおかげで、製品化までの間、なんとか生き延びてきた。この半端な数字が気になる方のために説明しておくと、ひとつには、スプリンガー氏の誕生日が8月8日であるという内輪のジョークから、もうひとつは、評価額が有効になるのがこの数字だったという理由からだ。

現在、同社はオープンソースのツールを提供し、開発者とデータ科学者のコミュニティづくりを進めている。ゆくゆくは、クラスターの管理をしたくない企業のためにクラウドサービスを構築して収益化を計る考えだが、それはずっと先のことだとスプリンガー氏は話していた。

画像クレジット:Usis / Getty Images

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(翻訳:金井哲夫)

オープンソースプロジェクトを収益化するサブスク方式のプラットフォーム「xs:code」

オープンソースは、デベロッパーにとって無料で手に入る優れたツールの供給源だ。しかし、その中のプロジェクトが拡まり、人気が出ると、作成者は成功したものを収益化する方法を模索したくなることもある。その場合に問題となるのは、サブスクリプションベースのデュアルライセンス方式で運営するのが難しく、ほとんどの開発者は、どこから始めればよいかさえわからない。そこに登場したのが、イスラエルのスタートアップであるxs:code。このような問題を解決するために開発者を支援するプラットフォームだ。

画像クレジット:Luis Alvarez/Getty Images

「xs:codeは、オープンソースプロジェクトを収益化するプラットフォームです。現在非常に人気のある寄付方式のプラットフォームとは異なり、xs:codeでは、オープンソースの開発者は支払いに対して付加価値を提供できます。無料で提供しているものに追加できるのです。追加するのは、異なるライセンス、付加機能、サポートのサービス、その他、考えつくもの何でもかまいません」と、xs:codeの共同創立者兼CEOであるNetanel Mohoni(ネタネル・モホニ)氏はTechCrunchに語った。

そのようにしても、オープンソースとしての性格が失われることはない。自分の仕事を収益化したいと考えている開発者にプラットフォームを提供しているだけだ、とモホニ氏は言う。「多くの企業が、コードにアクセスするためにお金を払っています。自分たちの仕事に対して対価が得られることで、モチベーションも高まった開発者が作成し、品質も向上したソフトウェアを利用できるからです。私たちの方法では、コードが確実にオープンソースであり続けるようにするため、開発者は引き続きコードへの貢献を受け入れることができます。そのため、コミュニティはこれまで以上に優れたコードを利用できるのです」と彼は説明した。

写真:xs:code

さらに、プロジェクトのオーナーが望めば、コミュニティの貢献者に、サブスクリプションから得た資金を分配することもできる。それにより、プロジェクトの改善を手助けしてくれた貢献者に報いる方法を提供できるのだ。

一般的にうまくいくのは、オープンソース開発者がデュアルライセンスのモデルを作成する方法だ。1つのライセンスは、純粋なオープンソースコードとし、もう1つは営利目的のライセンスにする。後者には、顧客がサブスク方式で料金を支払いたくなるような追加機能や、サポートを含めることができる。

開発者はGitHub上にプライベートリポジトリを作成し、有料版にアクセスするためのxs:codeへのリンクも張っておく。ユーザーは、そのペイウォールにアクセスしてサブスクライブする。xs:codeは料金を徴収し、開発者があらかじめ指定した方法で支払う。同社は、プラットフォームを維持し、料金を徴収するための手数料として25%を受け取る。

このプラットフォームは、米国時間12月10日からベータ版として初公開される。登録は無料だ。xs:codeは、これまでに50万ドル(約5400万円)の事前シード資金を調達している。

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(翻訳:Fumihiko Shibata)

Kubernates利用のクラウドサービス、MirantisがDocker Enterpriseを買収

米国時間11月13日、Mirantis日本サイト)はDockerのエンタープライズ事業を買収したことを発表した。

Docker EnterpriseはDockerのビジネスの中心だった。この売却の結果、評判の高いユニコーンだったDockerのビジネスはいわば以前の抜け殻となった。 残されたDocker自体は今年初めに就任した新CEOの指揮で開発ワークフローを効率化させるツールに引き続き注力するという。一方、MirantisはDocker Enterpriseというブランドを存続させるため混乱が生じることないという。

今回の買収により、MirantisはDocker Enterprise Technology Platformおよび関連するすべての知財(Docker Enterprise Engine、Docker Trusted Registry、Docker Unified Control Plane、Docker CLI等)を取得した。Docker Enterpriseのすべてのクライアント、既存の契約、戦略的技術提携、パートナープログラムも継承する。Docker、MirantisはともにDockerプラットフォームのオープンソースプロダクトの開発を継続するとしている。

両社は買収価格を明らかにしていないが、最近の資金調達ラウンドにおけるDockerの会社評価額を大幅に下回ることは間違いない。Dockerの評価額がこのところ下降を続けてきたことは公然の秘密だった。コンテナ革命のリーダーとして出発したものの、GoogleがKubernetesをオープンソース化し、業界が一斉にに殺到した後は付録のような存在に落ち込んでいた。ただしエンターブライズ事業は多数の大企業をクライアントにもち、健全な運営を続けていた。

Dockerによれば、Fortune 100の3分の1、Global 500の5分の1の大企業がDocker Enterpriseを使用しているという。これはどんな基準からしても高く評価できる成果だろう。Dockerが今回中核ビジネスの売却を急いだということは、こうしたクライアントの大分はDockerのテクノロジーに見切りをつけようとしている同社が考えたことを意味するのかもしれない。

アップデート:Dockerの広報はBenchmark Capitalから3500万ドル(約38億円)の資金を調達したことも発表した。 これは以下の記事の内容に影響を与えるものではないが、Dockerの今後の方向性を考える上で参考になる。なおTechchCrunchはこの資金調達について事前に情報を入手していない。

Dockerは以下のように声明している。

「Dockerは、新しい時代に対応するため、アプリケーションの構築、共有、実行に際して開発者のワークフローの効率化を進めることに焦点を当てることで我々の出発点に戻る。我々のビジネスの重点を再調整する一環として、MirantisはDocker Enterpriseプラットフォーム事業を買収し、このことを発表した。今後我々はDocker DesktopとDocker Hubの役割を拡大することによってアプリの開発者ワークフローを助けていく。具体的には、クラウドサービスの拡大に注力し、開発者がアプリケーションを構築する際に使用するテクノロジーを容易に発見し、アプリを関連する部署、コミュニティと簡単に共有し、オンプレミスであれ、クラウドであれ、Kubernetesが稼働するエンドポイントでアプリをスムーズに実行できるようにしていく」。

一方Mirantis自身もこれまでに相当の波乱を経験している。 Mirantisは十分な資金を調達してOpenStackのディストリビューターとしてスタートしたが、現在ではKubernetesベースのオンプレミスクラウドプラットフォームと関連するアプリケーション配信をサービスの中心としている。CEOのAdrian Ionel(エイドリアン・イオネル)氏は今日の発表に先立って私の取材に答え、「この買収は我々にとって最も重要な決定となるかもしれない」と述べた。

ではMirantisはDocker Enterprise買収で正確に言って何を目指したのだろうか?イオネル氏は 「Docker Enterpriseは我々がすでに目指している方向完全に合致し、また加速するものだ。Mirantisは の方向に大きく踏み出している。目標はKubernetesとコンテナテクノロジーの利用により、 マルチレイヤーのクラウド、エッジコンピューティングとクラウドのハイブリッドを含むあらゆるユースケースに対応することだ。いついかなる場合にもデベロッパーのインフラを開発を助ける一貫したエクスペリエンスを提供する。デベロッパーやクラウド運用者に使いやすいツールをオンデマンドで提供しその負担となるフリクションを最小化する」と述べた。

現在Mirantisの社員は450人ほどだ。買収により新たに元Dockerの社員300人程度を組織に新しく統合する必要がある。Ionel氏によると、当面Dockerのマーケティング部門と営業部門は独立の存在となるという。「我々にとって最も重要なのはクライアントに混乱をもたらさないことだ。そのためチームの統合においても優れたカスタマーエクスペリエンスを維持しなければならない」という。

このことはつまり現在のDocker Enterpriseのクライアントにとっては当面大きな変化はないことを意味する。 Mirantisによれば「Kubernetesとライフサイクル管理テクノロジーの開発、統合を加速すると同時に将来はDocker Enterprise向けのマネージドサービスソリューションを提供していくという。

MirantisとDocker Enterpriseのカスタマーの一部は重複しているものの、この買収によりMirantisは新たに700社のエンターブライズをクライアントに追加することになる。

イオネル氏は「MirantisのライバルはVMware、IBM/Red Hatのような巨大企業だが、我々はクラウドネイティブであり、レガシーのテクノロジーにクライアントをしばりつけることなく、クライアントのコンピューティングをスケールさせることを可能にする」と主張した。

MirantisにとってDockerのエンターブライズ事業の買収が大きな勝利であると同時にDocker時代の終わりを告げるものであることも間違いない。Dockerでは将来に向けた戦略についてさらに発表するとしているが、我々はまだ説明を受けていない。

画像: Chantip Ditcharoen / Getty Images

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

オープンソースのライセンス管理ツールのFOSSAが9億2000万円を調達

多くの企業内の開発者がオープンソースを利用するようになっていることに伴い、企業がライセンス要件を遵守することの重要性が増している。セキュリティを保護するためにオープンソースのコードをアップデートする必要もある。こうした課題を解決するのがFOSSAだ。米国時間9月16日、同社はシリーズAで850万ドル(約9億2000万円)を調達したと発表した。

このラウンドはBain Capital Venturesが主導し、Costanoa VenturesとNorwest Venture Partnersが支援した。FOSSAによると、これまでの調達額の合計は1100万ドル(約11億9000万円)となった。

FOSSAの創業者でCEOのKevin Wang(ケビン・ワン)氏は、同社はここ1年半、企業が規約を守って安全にオープンソースの利用を拡大できるようにするツールの構築に集中してきたという。オープンソースの利用の増加は、開発者にとっても規模の大きい企業にとっても全般によいことだと同氏は語る。オープンソースのコミュニティで生まれている革新を利用できる一方で、企業はコンプライアンスを確実にしなくてはならない。

ワン氏は「企業はオープンソースの活用をまさに始めたばかりで、我々はそこを支援する。企業がオープンソースを大規模に利用するにあたり、その利用を管理するプラットフォームを提供する」と説明する。これには3つの要素がある。1つ目は、社内で使われているオープンソースや他社のすべてのコードの追跡。2つ目は、ライセンスとセキュリティポリシーの遵守。そして3つ目は、レポート機能だ。「我々は、オープンソースを大規模に利用することから発生する大量のレポート作成とコンプライアンス業務を自動化する」(ワン氏)。

FOSSAが企業相手に力を入れ始めたのは比較的最近だ。もともとは2017年に、開発者が自分のプログラム中で個人利用しているオープンソースを管理するツールとしてスタートした。ワン氏は、規模の大きい企業でも同じような機能が役に立つというところに大きなチャンスを見いだした。企業は、無数に使われているオープンソースのライセンスを正しく使うためのツールを求めていた。

ワン氏は「企業内でのさまざまな使われ方や本当に複雑でミッションクリティカルなコードベースを、全体にわたって大規模に管理できるツールがないことに気づいた」と語る。しかも、ツールがすでにあるとしても、十分に活用されていないか全体をカバーできていなかったという。

FOSSAは2017年にシードラウンドで220万ドル(約2億4000万円)を調達したと発表し、それ以降、従業員数は10人から40人へと成長した。今回の資金調達で会社は急速に成長し、従業員数はさらに増えるだろう。ワン氏によると、同社の収益と顧客数は前年比で3倍になったという。今回の資金で製品と市場を拡大し、成長を加速させるとみられる。

画像:scyther5 / Getty Images

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(翻訳:Kaori Koyama)

マイクロソフトがBing検索の重要アルゴリズムをオープンソース化

米国時間5月15日、Microsoft(マイクロソフト)11は、Bing検索サービスが検索結果をユーザーにすばやく返す技術の主要部分をオープンソース化したことを発表した。このテクノロジーをオープン化することによって、デベロッパーが小売業など他の巨大データ検索が行われる分野でも同様の体験を提供することを同社は期待している。

今日オープンソース化されたのは、収集したデータをより有効に活用するために同社が開発したライブラリーと、Bingのために作られたAIモデル

「ほんの数年前まで、ウェブ検索はシンプルだった。ユーザーがいくつか単語を入力し、結果ページをめくっていく」と同社が発表リリース文で言った。「今日では、その同じユーザーが携帯電話で撮った写真を検索ボックスにドロップしたり、端末に物理的に触れることなくAIアシスタントに質問している。さらに、それらしい答の書かれたページ一覧ではなく、具体的な答えを期待して質問をするユーザーもいる。

オープンソース化されたPythonライブラリーの中核をなす空間分割ツリーグラフ(SPTAG)アルゴリズムを用いることで、Microsoftは数十億件の情報をミリ秒単位で検索することができる。

ベクトル検索自体はもちろん新しいアイデアではない。Micrsoftはこのコンセプトをディープラーニングモデルに応用したこと。開発チームはまず、事前訓練済モデルのデータをベクトルにエンコードした。それぞれのベクトルは単語またはピクセルを表現している。次に新しいSPTAGライブラリーを使ってベクトルインデックスを生成する。検索クエリがやって来ると、ディープラーニングモデルがテキストや画像をベクトルに変換し、ライブラリーがインデックスから最も関連の深いベクトルを見つける。

「Bing検索では、検索エンジンがインデックスした1500億件以上のデータをベクトル化することで、伝統的キーワードマッチングを改善した」とMicrosoftは言う。「ベクトルは1つの単語や文字からウェブページの断片、検索クエリ全体、その他のメディアまで多岐にわたる。ユーザーが検索すると、Bingはインデックスされたベクトルをスキャンしてベストマッチを返す」

ライブラリーは現在MITライセンスの下で利用可能で、分散ベクトルインデックスを構築、検索するためのツールもすべて提供されている。 このライブラリーを利用するための詳細情報やサンプルアプリはここで入手できる。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

マイクロソフトは量子コンピュータ用開発ツールをオープンソース化

Microsoft(マイクロソフト)の量子コンピュータは、まだ量子ビットが実際に動作するところまではできていないかもしれない。それでも同社は、将来の量子コンピュータをプログラムするためのツールの開発に熱心に取り組んできた。ここ数年の間に、量子コードを書くためのプログラミング言語Q#、その言語のためのコンパイラ、そして量子シミュレータなどを発表してきた。そして米国時間の5月6日、Microsoftはこれらの成果を今後数カ月のうちにオープンソース化すると発表した

Microsoftによれば、この動きは「量子コンピューティングとアルゴリズムの開発を容易にし、デベロッパーにとって透明なものにする」ことを意図したものだという。さらに、オープンソース化によって、学術機関がこれらのツールを利用するのも容易になるはず。そして、もちろんデベロッパーは、自分たちのコードやアイディアを貢献できるようになるだろう。

当然のことながら、これらのコードはMicrosoftのGitHubページに掲載されることになる。実はMicrosoftのチームは、すでにいくつかのツールや使用例、さらには量子化学計算のサンプルのライブラリをオープンソース化していた。しかし、このプラットフォームのコア部分をオープンソース化するのは初めてのことだ。

「この業界の困難な問題を解決するための当社のアプローチには、新しいタイプのスケーラブルなソフトウェアツールが必要です。Quantum Development Kitが、まさにそれです。私たちの開発プロセスのすべてのステップをサポートしてくれるはずです」と、1QBitの共同創立者兼CEOのAndrew Fursman氏は、今回の発表の中で述べた。「私たちは、先進材料および量子化学の研究を加速する2つの重要なコードサンプルを提供することにワクワクしています。1つはVQE(Variational-Quantum Eigensolver)に関するもの、もう1つはDMET、つまり密度行列埋め込み理論を実証するもので、私たちのQEMISTというプラットフォーム上で動作しています」。

とはいえ、量子コンピュータに関するコードをオープンソース化するのはMicrosoftが最初というわけではない。例えばIBMは、量子コンピュータのプログラムを開発するためのオープンソースフレームワークQiskitを公開している。これにはAerというシミュレータも含まれている。またRigetti Computingも、同社のツールの多くをオープンソース化している。

ちょうど1カ月ほど前、MicrosoftはQuantum Development Kitが10万回以上ダウンロードされたと発表していた。その際には、Jupyter NotebookにQ#プログラミング言語のサポートも提供した。

このようなソフトウェアについての取り組みは、どれも賞賛に値するものながら、Microsoftの量子コンピュータのハードウェアに関する努力はまだ実を結んでいない。同社は量子コンピューティングに関して斬新なアプローチを取っている。それは長期的に見れば、競合他社に対して優位をもたらすかもしれない。しかし短期的には、すでに競合の何社かは、制限があるとは言え、現実の、物理的な量子コンピュータをデベロッパーに提供し始めている。

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(翻訳:Fumihiko Shibata)

Cloud Nextカンファレンス開幕、Googleはオープンソース提携でAWSに挑戦

米国時間4月9日、米国サンフランシスコのモスコーニ・センターでオープンしたCloud Next 19カンファレンスで、Google(グーグル)はオープンソースのデータマネジメントとアナリティクスのトップ企業多数と提携したことを発表した

これらの企業はプロダクトをGoogle Cloudプラットフォームに統合させ、マネージドサービスとして顧客に提供する。パートナー企業には、Confluent、DataStax、Elastic、InfluxData、MongoDB、Neo4j、Redis Labsが含まれる。

Googleによれば、 この試みはGoogle Cloudを通じてユーザーにオープンソースのテクノロジーをシームレスなクラウド体験として提供するものだという。しかしカンファレンスの内容を見ていくと、Googleは明言こそしていないが、意図するところははるかに大きい。今回、オープンソース・コンピューティングをめぐるGoogleの方向はAmazonとまったく異なることが鮮明になった。

AmazonのAWSクラウドは最良のオープンソースプロジェクトを取り上げ、独自のプロダクトにフォークさせてAWSブランドのパッケージとして提供していることが広く知られている。この際AWSはオリジナルのオープンソースプロジェクトに対してほとんど何も貢献しないのが普通だ。AWSのこの方式には変化の兆しが見えるものの、こうした姿勢に反発した有力なオープンソースプロジェクトのいくつはオープンソースライセンスの条項を改正してAWSのタダ乗りを防ごうとし始めている。

そしてここが興味ある点となる。このオープンソースコンピューティングのトップ企業というのがまさに、Confluent,、Elastic、MongoDB,Neo4j、Redis Labsなど今回Googleクラウドと提携した会社なのだ。ただし、今日の提携企業のうち、InfluxDataはライセンス条項の改正を行っておらず DataStaxはたしかにオープンソーステクノロジーにも力をいれているものの、独自のエンタープライズアプリケーションも提供している。

プレス発表でGoogle Cloudのインフラ提携担当の責任者、Manvinder Singh氏は次のように述べている。

オープンソーステクノロジーをクラウドサービスでどのように利用するのが最適か、多くの議論がおこなわれてきたことはよく知られている。Kubernetes、TensorFlow、Goなどのプロジェクトによって証明されてきたように、オープンソースモデルこそはGoogleのDNAであり信念だ。多大のリソースをオープンソーステクノロジーを進歩させるために投じてきた企業同志が密接に協力することが最も重要だとわれわれは確信している。

簡単にいえば、AWSはオープンソースプロジェクトを利用して独自のブランドのプロダクトを作っている。これに対してGoogleはオープンソースプロジェクトを開発してきた企業と提携し協力していく道を選んだ。Googleも提携企業も財務面の詳細に関してはコメントを避けたが、売上の共有、配分に関してなんらかの取り決めが行われたものと推定される。【略】

提供されるプロダクトの機能に関するGoogleの基本方針は、Cloud Consoleへの密接な統合の実現だ。これはMicrosoftのAzureクラウドにおけるDatabricksと比較できるかもしれない。提携各社のプロダクトはマネージドサービスとして提供される。つまりGoogle Cloudが料金の積算、請求、支払などの事務を一括して引き受ける。カスタマーサポートもGoogleが窓口となるため、ユーザーは多数のオープンソースサービスをあたかも単一のサービスのように利用することができる。

Redis Labsの共同ファウンダー、CEOのOfer Bengal氏はこの点についてこう述べた。

今回の提携でRedis LabsとGoogle Cloudはオープンソースによるイノベーションの成果をエンタープライズユーザーに提供できるようになった。ユーザーはクラウド上でどんなテクノロジーを利用してコンピューティングを行うか自由に選択できる。また必要に応じてRedis Enterpriseを利用して独自のアプリケーション開発を行い、GCP(Google Cloudプラットフォーム)上でマネージドサービスとして利用することもできる。例えば、Redis EnterpriseをGCPコンソールから実行することも可能だ。この場合、料金処理からプロビジョニング、サポートまですべての煩雑な業務をGCPが処理してくれる。

【日本版】GoogleはYouTubeでカンファレンスのキーノートを中継録画している。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

オープンソース開発者支援の「IssueHunt」に企業向けプログラム登場、ソフトバンクなどが参加

オープンソースプロジェクトのための報賞金サービス「IssueHunt(イシューハント)」を運営するBoostIO(ブーストアイオー)は4月3日、同サービスを通じて企業や組織がオープンソース開発者を支援するための支援プログラム開始を発表した。4月1日時点で、ソフトバンク、日本マイクロソフト、LINEをはじめ、計11社がこの支援プログラムへの参加を表明している。

IssueHuntは2018年6月にリリースされた、オープンソース開発者向けの支援サービスだ。GitHubのリポジトリ(プロジェクトのデータベース)に上げられたイシュー(課題、バグ報告など)に対して、誰でも好きな額を報賞金として「投げ銭」でき、イシューを解決した開発者とオープンソース運営者に対して報賞金が分配される。

リリースから8カ月ほどで170カ国のユーザーに利用され、JekyllやMaterial-UIといった世界的に有名なオープンソースプロジェクトや、フルタイムのオープンソース開発者として知られるSindre Sorhus氏らが、参加している。

今回の支援プログラムは、企業および組織によるオープンソース開発者支援を目的としている。IssueHuntを運営するBoostIOが、スポンサーからの資金を受け取り、IssueHunt掲載プロジェクトに報賞金を付与する。

支援対象となるのはIssueHunt上で受け取った報賞金リクエスト。特に、個人のオープンソース開発者が運営するプロジェクトに重点的に支援を行っていくという。支援対象のプロジェクトや開発者に対し、企業・組織やBoostIOから何らかの見返りを求めることはないということだ。

BoostIO代表の横溝一将氏はリリースで「IssueHunt上で報奨金が付いていると、貢献数(プルリクエストの数)が増えるのは実証されており、IssueHunt参加前と比較してプルリクエスト数が6倍、10倍になったプロジェクトも存在する」と説明。

その上で「IssueHunt開発チームは、世界の技術革新はオープンソースが牽引していると確信している。その中心へ、オールジャパン一丸となって大きなウネリを起こしていきたい」と述べ、オープンソース開発者が報われる世界を作るため、企業・組織からのさらなる支援を求めている。

BoostIOは2018年12月、ANRINOWと個人投資家らから総額約1億円を資金調達している。

マイクロソフトがクラウド用データ圧縮アルゴリズムとハードウェアをオープンソース化

現在、大手のクラウドコンピューティングのプロバイダが保管しているデータ量は驚愕すべきレベルに達している。そのため、ほとんどの場合、情報はなんらかの方法によって圧縮された状態で保存されているはずだ。それはフロッピーやCD-ROM、低速通信の時代に、ユーザー自身がファイルをzip圧縮していたのと同じようなもの。通常、そのようなシステムは、厳重に秘密のベールで守られている。しかし米国時間3月14日、Microsoft(マイクロソフト)はAzureクラウドで実際に使われている圧縮アルゴリズム、ハードウェア仕様、そしてその回路図を記述するVerilogのソースコードをオープンソース化した。それらすべてをOpen Compute Project(OCP)に寄託したのだ。

Project ZiplineとMicrosoftが呼ぶこのプロジェクトでは、標準的なZlib-L4 64KBモデルと比較して、2倍もの高圧縮率を達成することができる。それを実現するため、Microsoftが実際にクラウド内で扱っている大きなデータセットの性質に合わせて、アルゴリズムと、そのハードウェア実装を念入りにチューンしてある。この仕組みは、システムレベルで動作するため、実質的なオーバーヘッドはない。Microsoftによれば、現在利用可能な他のアルゴリズムと比べても、実際に高いスループットと低いレイテンシを実現できているという。

Microsoftは、これらすべてを機能させるために必要な、レジスタ転送言語(RTL)用のVerilogソースコードも寄託している点を力説する。「これだけ詳細なレベルでRTLをオープンソースとしてOCPに寄託するのは、業界を先導するものです」と、Azureハードウェアインフラストラクチャのゼネラルマネージャ、Kushagra Vaid氏は述べる。「OCPのエコシステム内の新技術に関するスムーズなコラボレーションを推進し、シリコンレベルのハードウェア革新への扉を開く、新たな先例となるものです」。

Microsoftは現在、このシステムを自らのAzureクラウドで使用しているが、Open Compute Projectに参加する他社との提携も始めている。 そうしたパートナーとしては、Intel、AMD、Ampere、Arm、Marvell、SiFive、Broadcom、Fungible、Mellanox、NGD System、Pure Storage、Synopsys、それにCadenceが挙げられる。

「そのうちに、Project Ziplineの圧縮技術が、さまざまな市場セグメントに浸透するものと期待しています。ネットワークデータ処理、スマートSSD、アーカイブシステム、クラウドアプライアンス、汎用マイクロプロセッサ、IoT、エッジデバイスなど、幅広い用途が考えられます」と、Vaid氏は述べている。

画像クレジット:JLPH/Getty Images

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(翻訳:Fumihiko Shibata)

CNCFプロジェクトへのトップコントリビューターは変わらずGoogle

ある企業が、オープンソースにどれだけコントリビュートしているかを視覚化するプロジェクトStackalyticsの最新のデータによれば、CNCFオープンソースエコシステムに対して、Googleが変わらぬ大きな影響力を保持していることが明らかになった(Stackalyticsは、Mirantisによって設立され、OpenStack Foundationによってホストされている)。確かに、このデータによれば、GoogleはCNCFプロジェクトへコミットされる全てのコードの、およそ53%を担っている。2番目に大きなコントリビューターであるRed Hatは、7.4%とはるかに引き離されている。

CNCFはKubernetesの総本山だ。KubernetesはGoogleがオープンソース化した非常に人気の高いコンテナオーケストレーションサービスである。このことを考えれば、Googleがトップコントリビューターである事実に大きな驚きはないだろう。しかし、データによれば、Kubernetesを考慮に入れなかったとしても、Googleは依然として、全CNCFプロジェクトに対するトップコードコントリビューターなのだ。その理由の一部は、同社がCNCFに寄付したキューイングプロジェクトであるGRPCと、YouTubeのために開発したデータベースクラスタリングシステムVitessの主要コントリビューターでもあることにも由来している。

それでもGoogleが主なコントリビューターではないプロジェクトも沢山ある。例えばJaegerの64%のコントリビューションはUberから提供されたものであり、LinkerDのコードコミットの84%はBuoyantのエンジニアから出てきたものだ。興味深いのは、レポートによれば、特定の1社が40%以上のコントリビュートを行っていないプロジェクトは1つしかないということだ。それはモニタリングソリューションのPrometheusである。これはSoundCloudによってCNCFに寄付されたものだが、現在その大部分がRedHatの個人開発者たちによって保守されている。

こうした統計情報を読めば、GoogleはCNCFエコシステムの中で少々支配的すぎると言いたくなるかもしれない。だがもちろんGoogleは、そうは考えていない。

「Googleは、オープンソースソフトウェアへのコントリビューションに対して、長い貢献と尊重の歴史を持っています。私たちは還元することが喜びなのです」と語るのは、GKEならびにKubernetes、そしてGoogle CloudのグループプロダクトマネージャーであるAparna Sinhaである。「まず心に浮かぶ例はKubernetesです。オープンソース史上最も速く成長したプロジェクトの1つであり、現在は活発なコミュニティと幅広い業界からの支持を受けています。Googleは、コミュニティとより広範なCNCFの中で変わらぬ推進力を発揮し、中心的な役割を果たして来ました。その勢いの主要な部分は、広範なエンジニアリングの専門知識、コードのコントリビューション、そして計算機リソースの供与、あるいはプロジェクトマネジメントや、テストならびにドキュメンテーションの提供といった、Googleによるプロジェクトの成功への深いコミットメントによるものです。私たちはこれまで同様に、プロジェクトに献身的に取り組んでおり、より広いKubernetesコミュニティがプロジェクトの未来を形作り、その長期的な成功を確実にし始めていることに興奮を抑えることができません」。

CNCFがDevStatsツールを介して自身のデータを公開していることも注目に値する。これは内容的にはStackalyticsと似たような傾向は読み取れるものの、コントリビューターとしてのGoogleの優位性をさほど大きく示してはいない。Mirantisの共同創業者でCMOのBoris Renskiにこれらの不整合について尋ねたところ、Stackalyticsがコミットそのものに焦点を当てているのに対し、CNCF自身のツールはレビュー、コメント、提出されたイシューなどへのコントリビューションに着目していることを指摘した。またStackalyticsは、Red Hatがかなりのコントリビューションを行っている、CNCFのサンドボックスプロジェクトも考慮に入れていない。2つのツールはまた、属性を異なる方法で処理している。DevStatsは、以前CoreOSから提供されていたコントリビューションに関しては、RedHatによる買収後は全てRedHadからのコントリビューションとして取り扱っている。

Twitter上でRenskiは、それぞれの組織はこうした不整合を取り除くために各データソースをマージすべきであると提案した。だが筆者の見るところ、CNCFとOpenStackが、現在どれほどきちんと共同作業を行うことができるのかはわからない。

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(翻訳:sako)

Microsoft Edge、Chromiumベースに――旧Windowsでも作動、macOS版も登場へ

噂は事実だった。 Microsoft EdgeはオープンソースのChromiumをベースにしたブラウザに生まれ変わる。 Chromiumはその名が示唆するとおり、GoogleのChromeブラウザを動かしているプラットフォームだ。同時にMicrosoftはEdgのmacOS版を開発している。MicrosoftはEdgeをWindowsから切り離し、これまでより頻繁にアップデートを行っていくという。新しいEdgeはWindows 7、8でも作動する。

Windowsのデフォールト・ブラウザの変更にはある程度時間がかかる見込みだ。現在まだベータ版は出ていないし、一般向けプレビュー版が公開されるのは数ヶ月先になるだろう。しかし2019年中にMicrosoftの独自のレンダリング・エンジン、EdgeHTMLとChakraはBlinkV8に切り替えられる。デベロッパー向けベータ版は来年早々に発表されるものとみられる。

当然ながら細部はまだ不明だ。しかしMicrosoftがChromeとChromiumがユーザー、デベロッパー双方にとって現在のブラウザのデファクト標準だと認めたことははっきりしている。

数年前、Microsofは問題を数多く抱えたInternet Explorerを捨ててEdgeに切り替えた。Edgeの機能はモダン・ブラウザとして十分使えるものに仕上がっていたがMicrosoftも認めるとおり、互換性の問題は解決していなかった。あるサイトでEdgeの作動に問題があることは発見されるとMicrosoftはリバースエンジニアリングで問題の所在を突き止めねばならなかった。Microsoftはこうした努力に膨大なリソースを割り当てる意味がないと見きったようだ。

microsoft edge on surface

こうした互換性問題が起きる原因としてはEgdeの市場シェアが低いままだったことが大きい。サイトのデベロッパーはChrome、Firefox、Safariといった主要なブラウザについては十分にコードの作動をテストするが、下位のブラウザでのテストはおざなりになりがちだ。ウェブサイトの総数を考えれば、互換性問題を起こすサイトの数も膨大なものになるのは理解できる。

さらにものごとを複雑にしてきたのは、サイトを開発するデベロッパーの多くがMacを使っているため、Edgeが作動しないという点だ。これがますます互換性問題を悪化させた。Internet Explorer for Macを中止してから15年後にEdgeをMacに移植しても意味があるほどのシェアは獲得できないだろう。しかしMicrosoftはEdgeがMacでも動くようになればデベロッパーがEdgeでの作動を確認しやすくなるだろうと考えている。

またEdgeがWindows 10でしか作動しないのも不利な要素だったとMicrosofは認めている。EdgeはWindows 10にバンドルされており、アップデートはWindowsのアップデートの一部として行われてきた。Windowsの古いバージョンを使っている何千万ものユーザーはEdgeから取り残されていた。またWindows 10のユーザーも常に最新の状態にアップデートしているとは限らない。するとEdgeのアップデートも行われていないことになる。

善悪は別として、Chromeはブラウザの事実上の標準の地位を確立している。Microsoftはこのトレンドに逆らわないことにした。もちろんMicrosoftは逆の道、つまりEdgeHTMLとJavaScriptエンジンをオープンソースにする(一部はすでにそうなっている)こともできた。このオプションも検討されたようだが、結局のところ、実行されないことになった。Microsoftによれば、EdgeはWndows 10とあまりに密接に連携しているためオープンソース化してWindows 7やMacで作動させることは困難であり、メリットも少ないと判断されたという。Edgeのオープンソース化などは無駄足に終わった可能性が高い。これは正しい決断だったと思う。

逆にEdgeをChromiumベースにすることはオープンソース・コミュニティーにおけるMicrosoftの存在感を高めるはずだ。たとえば、Edgeの大きな強みである優れたタッチスクリーン・テクノロジーがChromiumコミュニティーに輸入される可能性も出てくる。9to5Macも報じているようにMicrosoftはGoogle、Qualcommと協力して ChromeブラウザをARMデバイス上のWindows 10でネイティブに動かすための努力を始めている。現在はエミューションを多用しているため電力消費量が大きく、作動も十分速くできていない。

MicrosoftではEdgeの互換性不足問題を過去のものにできれば、ユーザーは自ずとEdgeの機能に引き寄せられると期待している。 Windows OS、Office、Cortanaなどのプロダクトに対する親和性を高くできるし、今後は新しいサービスや機能が追加されることもあり得る。たとえば大企業内での使用に際してIT管理部門の負担を軽減するようなツールなどだ。

数日前にEdgeがリニューアルされるといいう情報が流れたとき、一部の専門家はChromiumプロジェクトが力を持ちすぎることになるという懸念を示した。

この懸念には理由があることは認めるものの、MicrosoftはどのみちEdgeのシェアは低いのでChromium化がオープンソース・コミュニティーにドラスティックな影響を与えることはないという説得力のある反論をしている。MicrosoftがChromiumコミュニティーに参加してウェブの標準化を推進する側に回り、Chromiumにイノベーションを吹き込むことになればメリットは大きいだろう。

読者の多くが現在頻繁に作動させているソフトウェアの中で、ウェブ・ブラウザはサイズ、複雑性でトップクラスのアプリケーションの一つだ。Windows 10のデフォールト・ブラウザの心臓部であるレンダリング・エンジンを一新するというのは大事件だ。Microsoftはまだ詳細を発表していないものの、同社は新しいバージョンに残すべきEdgeのテクノロジーはどれかを検討しており、そうした機能はChromiumコミュニティーに還元されることになるという。

MicrosoftはEdgeを見捨てるわけではないと強調している。Edgeが消えるわけではない。現在Edgeを利用しているユーザーは使用感がさらに快適になったと感じるだろう。まだ使っていないならChromiumベースの新しいEdgeを試してみることをMicrosoftは期待している。Microsofのこれまでの独自路線とまったく異なるオープンソースの新しいブラウザだとなれば使ってみようと考えるユーザーも多いだろう。

画像: Bryce Durbin

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滑川海彦@Facebook Google+

オープンソースの存続を脅かす身勝手な企業に立ち向かう

[著者:Salil Deshpande]

Bain Capital Venturesのマネージング・ディレクターを務めつつ、インフラ・ソフトウエアとオープンソースに強い関心を持つ。

 

地平線に暗い雲が現れた。Amazonなどのクラウドインフラ・プロバイダーは、オープンソースの存続を脅かそうとしている。私は、以前、この問題を初めてTechCruncの記事で報告した。嬉しいことに、2018年になってから、何人かの指導的立場にある人たちが集結して論議を行い、いくつもの解決策を提示してくれた。ここに、先月の動きを紹介しよう。

問題

Amazon Web ServicesAWS)の画面上部にある「Products」メニューにポインターを合わせると、Amazonが開発したものではないがサービスとして提供されているオープンソース・プロジェクトがたくさん現れる。これらは、Amazonに年間数十億ドルの収益をもたらしている。誤解のないように言っておくが、違法ではない。しかし、オープンソース・コミュニティーの存続と、とくに商業ベースのオープンソースのイノベーションに貢献することはひとつもない。

2つの解決策

2018年の初めに、私は20社ほどの大手オープンソース企業のクリエイター、CEO、相談役を集め、オープンソースに詳しいことで名高い弁護士Heather Meekerも加えて、どうすべきかを話し合った。

私たちは、クラウドインフラ・プロバイダーが特定のソフトウエアを商用サービスとして使うことを禁止し、同時に、そのソフトウエアを実質的にすべての人に対してオープンソースにする、つまり、商用サービスではない形で誰もが使えるようにするライセンスを規定したいと考えた。

私たちの最初の提案「Commons Clause」(共有条項)は、もっとも直接的なアプローチだった。これは、もっとも自由で寛大なオープンソース・ライセンスに追加できる条項で、ソフトウエアの「販売」を禁止するものだ。ここで言う販売には、商用サービスとしての提供も含まれる(Common Clauseソフトウエアで作られた別のソフトウエアの販売は、もちろん許される)。Common Clauseを追加すれば、オープンソースから生まれたプロジェクトは、Source-available(ソース利用可能)に変更される。

私たちはまた、別の参加者であるMongoDBが先頭に立って提案されたServer Side Public License (SSPL)も素晴らしいと感じた。ソフトウエアをサービスとして提供することを禁止するのではなく、管理ソフトウエア、ユーザーインターフェイス、アプリケーション・プログラム・インターフェイス、自動化ソフトウエア、モニタリング・ソフトウエア、バックアップ・ソフトウエア、ストレージ・ソフトウエア、ホスト・ソフトウエアなどを含むがそれに限られないサービス提供のためのソフトウエア開発に使用したすべてのプログラムをオープンソース化し、すべてのユーザーはこのサービスのインスタンスを実行できるというものだ。これは「コピーレフト」と呼ばれている。

これらは、まったく同じ問題に対する2つの解決法だ。Heather Meekerは、FOSSAでまとめられた意見を元に、この2つについて解説している。

当初、この努力に対して、コミュニティーを「欺く」ものだという騒ぎや避難が起こったが、それはむしろオープンソース・コミュニティーが解決を必要とする深刻な問題を抱えていることを世間に知らしめ、オープンソース・コミュニティーはそろそろ現実を直視すべきであること、そして、インターネット巨大企業は、彼らが中心的に利用しているオープンソースの相応の代償を支払う時期に来ていることを理解してもらうという、よい方向に転じた。

10月には、Apacheソフトウエア財団(ASF)の役員から連絡があり、業界の需要に応える新しいオープンソースライセンスを一緒に作ろうと提案された。

MongoDBに拍手

SSPLの使用を明言し、それと並行して、オープンソース・ライセンスの認証を受けるためにSSPLをオープンソース・イニシアチブ(OSI)という組織に提出したが、その承認を待たずにSSPLライセンスのもとでソフトウエアの販売を開始したMongoDBの行動は称賛に値する。

OSIは、何がオープンソースで何がそうでないかを「判断」する神聖な立場にあると自認しているため、オープンソースか否かの視野の狭い論議に陥りがちだ。OSIへのSSPLの提出により、MongoDBはOSIのコートにボールを投げ込んだ形になる。OSIは、果たして問題解決のために一歩前進するか、それとも砂の中に頭を埋めてしまうか。

しかし実際は、MongoDBはOSIに大きく貢献している。MongoDBは、自ら問題を解決し、完璧に実用的なオープンソース・ライセンスを銀の盆に載せてうやうやしくOSIに差し出したからだ。

神聖なるオープンソース

SSPLに関するOSIの論議の公開記録は、ときに有益な内容を含み、ときに楽しく、滑稽に感じられることもある。最初にMongoDBがSSPLを提出したとき、OSIのメンバーたちは、SSPLはオープンソース・ライセンスではないと囃し立て、その理由を探しまくった。その後に賛同する声も加わった。しかし、メンバーのひとりJohn Cowanは、彼らにこう言い聞かせたOSIがオープンソースとしてライセンスを認証しなかったとしても、それがオープンソースではないとする理由はない

私が知る限り(それは非常に広範に及ぶが)、それはOSIの仕事ではない。OSIが公的に「ライセンスXはオープンソースではない」と発言したことはない。メーリングリストの人々はそうしてきたが、OSIは違う。「私たちのOSI Certified ™リストにないライセンスは、いかなるものもオープンソースではない」などとも言わない。なぜなら、それは間違いだからだ。だが、明らかにオープンソース・ライセンスであるにも関わらず、なんだかんだと理由をつけてOSIが認定しないというのは、あり得ることだ。

Eliot HorowitzMongoDBCTOで共同創設者)は、質問、コメント、反対意見について丁寧に対応し、次のように結論付けた。

要するに今の世界では、リンクは、プログラムをサービスとして提供する方式に取って代わられ、ネットワークを通じてプログラムがつながることが、プログラムの組み合わせの基本的な形になっていると思う。既存のコピーレフトのライセンスが、こうした形態のプログラムの組み合わせに明確に適用できるかは不確かだ。そこで私たちは、この不確かさに対処するために、開発者にひとつのオプションとしてSSPLを提示したいと考えている。

OSIの目的、役割、妥当性に関する議論が数多く重ねられた。そして、Van LindbergMcCoy SmithBruce Perensから、いくつかの法的な問題が提示された。

そこへHeather MeekerCommons ClauseSSPLを起草した弁護士)が歩み出て、それまでに課題とされていた法律上の問題を完全に解決した。また、その他の解釈もEliot Horowitzによって明確にされ、必要ならばライセンスの表現を変更する意思を示した。

OSIの役割、妥当性、目的に関するメンバー同士の議論は続いたが、そのひとりが鋭い指摘をした。グループの中には「フリーソフト」支持者が大勢いて、オープンソースの質を貶め、新しい指針を打ち出そうとしているという。

もしOSIが、フリーソフトの組織として生まれ変わることを決意したなら、そして「我々」の仕事がフリーソフトであり、「我々」の主眼がフリーソフトにあるなら、名称を「フリーソフト・イニシアチブ」に変更して、すべての人に門戸を開くべきだ。彼らは完全にオープンソースなのだから、彼らに仕事を譲れば、誇りを持ってやってくれる。:-)

SSPLは、ユーザーのタイプで差別をしていないかという議論がある。それはオープンソースの質に関わる問題だ。Eliot Horowitzは、そうではないと説得力のある説明をしている。それで人々は黙ったように見えた。

Heather Meekerは、法的な知識をグループの人々に与えた。それが問題の解決に大いに役立ったようだった。いわゆるオープンソースの定義の第6条を書いたBruce Perensは、SSPLは第6条にも第9条にも抵触しないと認めた。それに続いて彼は、SSPLが違反となるように第9状を改訂することを提言した。

私たちは、この問題ために自刃などしない。OSD #9は2つの言葉で修正でき、役員が集まり次第「執行」できる。それにしても面倒だ。

実績あるオープンソースの弁護士Kyle Mitchellは、そうした戦術に反対している。Larry Rosenは、一部のメンバーの主張(いかなる目的であっても、すべての人がプログラムを使えるというのがオープンソースの基本である)は真実ではないと指摘した。OSIの目的とオープンソースの意味に関する面白い議論はまだ続く。

Carlos Pianaは、SSPLが実際にオープンソースである理由を簡潔に述べた。Kyle Mitchellは、SSPLのときと同じ方法でライセンスを審査するなら、GPL v2もオープンソースではなくなるとも指摘している。

世論の高まり

一方、データベース企業ScyllaDBの創設者Dor Liorは、SSPLAGPLを付き合わせて比較し、こう異論を唱えた。「MongoDBは、もっとうまくCommons Clauseをやるべきだった。そうでなければ、ぐっと堪えてAPGLで我慢すべきだった」と。インメモリー・データベースの企業Redis Labsが、RediSearchと4つの特別なアドオン(Redis自体は含まない)をCommons Clauseライセンス化した後、Player.FMは、Common ClauseライセンスのもとでRediSearchを使いサービスを開始した。グラフデータベースの企業Neo4Jは、コードベース全体をCommons Clauseライセンス化して8000万ドル(約90億8400万円)のシリーズE投資を獲得した。

さらに、 Red Hat Ansibleを開発したMichael DeHaanも、新しいプロジェクトにCommons Clauseを選択した。彼は、オープンソースに関してOSIが「認定」した既存のライセンスを選択しなかった理由を、次のように語っている。

彼らのツイッターや誇大広告の大騒ぎの後、OSIのことはどうでもよくなった。あれは政治的な資金集めの団体だよ。

この2018年のうねりは、修正すべきは業界側の問題であることを示す証拠となった。

Eliot Horowitzは、すべての問題を要約して対処した後、発言を止めて、しばらく遠ざかった。SSPLがオープンソース・ライセンスのすべてのルールに従っているように見えていたとき、そしてメンバーの支持を集めていたときは、Brad Kuhnは、なぜOSIは必要に応じてルールを変更して、SSPLがオープンソースであると思われないように対策しないのかという的はずれな議論を一歩前に進め、こうまとめた。

「ライセンス評価の過程」には、本質的な欠陥があるようだ。

Mitchelは、明確な論拠をあげてSSPLがオープンソースであるという議論に決着を付けた。Horowitzは、改訂案に対して意見や不満を述べてくれたメンバーに礼を言うと、数日後、改訂版SSPLを発表した。

OSIには、MongoDBが新しい申請を行った後、60日以内に次の決断を下すことになった。

  1. 目を覚ましてSSPLが確かにオープンソース・ライセンスであることを認める(わずかな変更は許される)。
  2. OSIには業界の問題を解決する意思はないと世界に公表し、政治オタクとなって理論的な議論に終始する。

ここで言うオタク(wonk)は、最良の道だ。

Wonk:[名詞](口語)政治的方策のささいな事柄に必要以上にこだわる人のこと。

重要なのは、MongoDBが、いずれにせよSSPLの使用を推進するということだ。MongDBがOSIの決断を待つとなると、つまりOSIがなんらかの貢献をするならば、私たちはOSIがSSPLをオープンソース・ライセンスであると認めるか否かを、息を殺して見守ることになる。

目下のところ、OSIの決断は、業界のためというより、OSI自身のためのものだ。それは、OSIが業界の問題解決に協力する方向性を保つか、重箱の隅をつつくだけの役立たずの団体になるかを表す指標になるからだ。もし後者だった場合に備えて、私たちはリーダーシップのある他の団体に目を配り、彼らが業界のニーズに応える新しいオープンソース・ライセンスの創設を目指すときのために、Apacheソフトウエア財団(ASF)と話をしてきた。

SSPLをオープンソースだと認めるなら、それはOSIにとってよいことだが、それは決定打にはならない。John Cowanの言葉を思い出して欲しい。OSIがそのライセンスをオープンソースだと認めなくとも、オープンソースではないという理由にはならない。私たちは、さまざまな業界団体のほぼすべてのメンバーと、彼らがそれぞれの分野で重ねてきた努力に対して、大きな尊敬の念を抱いているが、自分たちを、個々のライセンスがオープンソースかどうかを「判断」する特別な存在だと思い上がっている人たちを尊敬するのは難しい。それは独裁的で、時代遅れだ。

正誤表

この問題をいち早く解決して欲しくて業界に発破をかけるつもりで、以前の記事にこう書いてしまった。「ある人が、どこかの別の人が開発したオープンソース・ソフトウエアを使って、文字通り自分だけが儲かる商用サービスを始めること」(クラウドインフラ・プロバイダーがしているように)は、オープンソースの「精神に反する」と。ちょっと言い過ぎた。率直に言って、正しい表現ではない。オープンソースの理念にこだわる人たちは、そう主張するだろう。私は彼らに喧嘩を売るつもりはないが、「精神の中にあるもの」からは距離を置いて語るべきだった。私の記事の本当の意図がぼやけてしまった。

結論

クラウドインフラ・プロバイダーの振る舞いは、オープンソースの存続を脅かした。しかし、クラウドインフラ・プロバイダーは悪ではない。現在のオープンソース・ライセンスは、元になったオープンソース・プロジェクトやそれを育てて来た人たちへの見返りを支払うことなく、 言葉どおり、それを利用できるようにしている。問題は、クラウドインフラ・プロバイダーの勝手を防ぐ、開発者のためのオープンソース・ライセンスが他にないことだ。オープンソースの標準化を行う団体は、それを邪魔するのではなく、助けるべき立場にある。私たちは、オープンソース・ソフトウエアの開発者が死なずに済むだけでなく、繁栄できる道を確保しなければならない。そのために、クラウドインフラ・プロバイダーに対してもっと強く出られる方法が必要ならば、開発者には、それを可能にするライセンスを用意するべきだ。オープンソース・コミュニティーは、これを最優先課題として早急に取り組まなければいけない。

おことわり

私はMongoDBには、直接、間接を問わず投資はしていません。私は、以下のオープンソース・プロジェクトに携わる次の企業に、直接または間接の投資をしています。SpringMuleDynaTraceRuby RailsGroovy GrailsMavenGradleChefRedisSysDigPrometheusHazelcastAkkaScalaCassandraSpinnakerFOSSAそして……Amazon

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(翻訳:金井哲夫)

オープンソースの貢献者が報われる文化を——報賞金サービス「IssueHunt」運営が1億円を資金調達

オープンソースプロジェクトの多くは、コードの改良(メンテナンス)を行うメンテナーの無償の働きにより維持されている。世界中のIT企業がオープンソースを利用して開発を行っているにもかかわらず、そのことは称賛されるどころか、あまり意識されることもない。なんなら「いいコードが“無料”で“落ちていた”」という扱いを受けていることさえある。

「世の中へ素晴らしい貢献をしてくれている彼・彼女らに、何か恩返しができないだろうか」オープンソースプロジェクトの貢献者へのこうした思いから、報賞金サービス「IssueHunt(イシューハント)」がリリースされたのは、今年6月20日のことだ。

そのIssueHuntを運営するBoostIO(ブーストアイオー)が12月3日、総額約1億円の資金調達を実施したと発表した。第三者割当増資の引受先は、ベンチャーキャピタルのANRINOWと以下の個人投資家たちだ。

  • LayerX CEO 福島良典氏(Gunosy 元CEO)
  • DMM.com CTO 松本勇気氏
  • Increments 代表取締役 海野弘成氏
  • 中川綾太郎氏
  • 古川健介氏
  • メルカリ 木下慶氏
  • Progate 代表取締役 加藤將倫氏
  • Cryptoeconomics Lab Co-founder CTO 落合渉悟氏
  • 非公開1名

IssueHuntは、GitHubのリポジトリ(プロジェクトのデータベース)に上げられたイシュー(課題、バグ報告など)に対して、誰でも好きな額を報賞金として「投げ銭」できるサービスだ。リポジトリのオーナーは自分が管理するリポジトリを指定することで、IssueHunt上にイシューを自動的にインポートすることが可能。ソースを利用するユーザーに投げ銭を依頼したり、コード改良などの貢献を求めたりできる。

報賞金付きのイシューに対して改良を行ったユーザー(コントリビューター)がプルリクエスト(レビュー・反映依頼)を行い、コードレビューを経て反映が完了すると報賞金がもらえる。金額のうち10%をBoostIOが手数料として、20%をリポジトリのオーナーが受け取り、残りの額をコントリビューターが受け取ることができる。

リリース後半年ほどだが、既に150カ国以上のユーザーがIssueHuntを利用。Alibabaの有志が開発するAnt Designや、もとはIntelで開発されていたNW.js(node-webkit)、Googleのマテリアルデザイン実装のためのReactコンポーネントを提供するMATERIAL-UIといった有名なオープンソースプロジェクトも参加している。

BoostIO代表取締役CEOの横溝一将氏は「有名プロジェクトの参加が信用の担保になっている」と好調の理由を分析。現在、約90%が国外のユーザーであり、また自分でオープンソースソフトウェアを開発するような、レベルの高いユーザーが多いそうだ。

オープンソースの世界でも開発者の貢献に応える文化を作る

“オープンソースのメンテナーたちは疲れ果てて、支払いを受けることも稀である。新世代にむけて経済を変えていこう。”
TechCrunch Japan記事「オープンソースの持続可能性」より

横溝氏はこの記事の内容に触れ、「共感しかない」とコメント。「オープンソースの環境は持続可能性に欠ける。無償ボランティアを超えて、貢献者に報酬が行き渡らないと続いていかない」と述べている。

「オープンソースソフトウェアの多くが無償のボランティアで作られている。でもそれらのソフトウェアは、いつの間にかあった、とか、機械が自動的に作っている、というわけではなくて、誰かが時間を使って、クリエイティビティや労働力をつぎ込んでいるんです」(横溝氏)

横溝氏は2014年、大学在学中に福岡で起業した。当初は受託でシステム開発を行っていたが、2016年4月にプログラマ向けのEvernoteライクな開発アプリ「Boostnote(ブーストノート)」を公開。このBoostnoteを2年ほど、オープンソースで運用したことが、IssueHunt誕生のきっかけとなった。

Boostnoteはプログラマのためのノートアプリであり、200以上の国と地域で使われているが、そのプロダクトは開発者コミュニティに支えられている。「コミュニティでイシューを上げて改修してもらうことで、とてもよいプロダクトになった」と横溝氏は言う。

今ではコアチームが開発に関わることはほとんどなく、コミュニティ主体で運営が行われているBoostnote。その体験から「貢献者にお返しができていないことを、心苦しく思っていた」と横溝氏はいう。そのBoostnoteの貢献者のために作られた報賞金プログラムが、IssueHuntの原型だった。

報賞金プログラムを開始して1週間で、レビューが追いつかないほどのプルリクエストが届くようになったというBoostnote。「これはオープンソースのエコシステムが抱える課題を解決できるのでは」との考えから、IssueHuntがスタートすることになった。

IssueHuntに登録されているプロジェクト数は、今は数百程度で、横溝氏は「まだまだ」とさらなるサービス浸透を狙う。

「IssueHuntは、オープンソースソフトウェア開発者の貢献に応える、という文化を作っていくプロダクト。だからそう簡単には利用は拡大しないとは思っているけれども、どんどん参加を増やしていきたい。1年半後には、オープンソースの開発者なら誰でも聞いたことがあるサービスに、3年後には、みんなが使っているという状況を目指したい」(横溝氏)

横溝氏は、日本のオープンソース環境についても課題感を持っている。「オープンソースプロジェクトに貢献する開発者が少ない。その理由のひとつは英語力。でも意外と壁は高くないんです。それを開発者に伝えるのも我々の務め。ミートアップや学校と連携したハッカソンなどを開催していこうと考えています」(横溝氏)

オープンソースへの貢献が少ない、もうひとつの理由として横溝氏は「隠したがること」とプログラミング文化、意識の違いを挙げる。「組織に所属するエンジニアなどは特にそうだが、隠しておく方が自分や組織のためになる、得をする、という考えが強い。これについてもオープンソースのメリットを啓蒙して、IssueHuntが先駆者となる開発者を作る土台になれば、と思っています」(横溝氏)

そうした啓蒙の取り組みの一つとして、12月1日からスタートしたのが、オンラインイベント「IssueHunt Fest 2018」だ。世界中のオープンソースプロジェクトを対象に、IssueHuntを通じてスポンサードを12月25日までの約1カ月間行う。

「企業のオープンソースに対する寄付貢献を一般化したい」ということで、今回初めて開催されるイベントだが、Microsoft、LINE、メルカリ、Framgia、Cryptoeconomics Labをはじめとした企業がスポンサーとして参加。今後、毎年12月・4月の約1カ月、それぞれ定期的に実施していく予定だという。

参加した開発者には、貢献度に応じて、例えば「プルリク3件以上でステッカーを送付」とか「上位10人にはTシャツをプレゼント」といった特典も予定されているそうだ。

海外では、オープンソースであっても商用ユーザー向けにはライセンスが発行できるというサービス「License Zero」や、プロジェクト支援のプラットフォーム「Open Collective」などが既に提供されている。「企業がオープンソースに寄付をするという文化がある。それを日本にも根付かせたい」と横溝氏は話している。

さらに横溝氏は、JavaScriptコンパイラのBabelなど、現在は世界中でも片手ほどしかいない専業のオープンソース開発者を「1万人ぐらいにしたい」と意気込みを語る。「開発者が、オープンソースへの貢献だけでも生活が担保されるようなきっかけを作りたい」と述べている。

「BoostIOのミッションは“才能だけで正当な評価が行われるようにする”こと」そう話す横溝氏。今回の調達資金は「マーケティングなどへの投資ではなく、オープンソースを持続可能にするためのチャレンジに使う」という。

「投資というよりは、コミュニティに還元したい。世界中でカンファレンスを開くことも考えていて、2019年4月にも開催を予定している。またBoostIOのチームは世界中に散らばっているので、世界で採用を進めるつもり。例えばオープンソース専業の開発者を企業として雇用する、といったことも考えている」(横溝氏)

「日本企業がオープンソースを支えるためにお金で貢献できるような文化を作る。オープンソースに貢献する会社がクールだと思われ、それが当たり前だと思われるような文化にしたい」と横溝氏は語る。

BoostIO代表取締役CEOの横溝一将氏

AWSがマネージドKafkaサービスをローンチ、難しいセットアップや管理からデベロッパーを解放

Kafka(Apache Kafka)は、データストリームの入力を〔緩衝バッファ的に〕扱うオープンソースのツールだ。しかし強力なツールだけに、そのセットアップや管理は難しい。そこでAmazonのAWSは、Kafkaの難易度を下げるために、管理をAWSが担当するクラウドサービスとしてのKafka、Amazon Managed Streaming for Kafkaをローンチした。長い名前だけどこれは、AWS上で完全に管理される可用性の高いサービスだ。今それは、公開プレビューで提供されている。

AWSのCTO Werner VogelsはAWS re:Inventのキーノートで、従来のKafkaユーザーはクラスターをAWS上にセットアップするために重労働をし、またスケーラビリティもエラー処理も自分で面倒見なければならなかった、と述べた。“失敗するたびにクラスターとメインノードのすべてをリスタートするのは悪夢だった。そんな重労働を、AWSなら肩代わりできる”、と彼は言う。

AWSには、Kafkaと似たようなストリーミングデータの入力ツールKinesisがある。しかし現状では、Kafkaを使っているアプリケーションの方が圧倒的に多い。そういうデベロッパーをAWSがユーザーとして維持しあるいは取り込むためには、マネージドKafkaが絶好の誘導路だ。

例によってAWSのサービスは料金体系が複雑だが、Kafkaのベーシックなインスタンスは1時間21セントからスタートする。しかしインスタンスが一つだけという使い方はあまりないので、たとえばKafkaブローカーが三つで大きなストレージなどが付くと、月額500ドルはゆうに超えるだろう。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa