Geolonia、ベクトルタイル形式地図開発を支援する2つのツールを国土地理院との契約により開発―オープンソースとして公開

Geolonia、ベクトルタイル形式の地図開発を支援する2つのツールを国土地理院との契約により開発―オープンソースとして公開

地図、地理空間情報、ロケーションデータの分野で事業を展開する位置情報テクノロジー・スタートアップGeolonia(ジオロニア)は3月29日、ベクトルタイル形式の地図開発を支援する2つのNPMパッケージ「itoma」(イトマ)と「kata」(カタ)を開発し、オープンソースソフトウェアとして公開したと発表した。これは、国土地理院との契約により開発されたもので、国連OpenGISイニシアチブが推進する国連ベクトルタイルツールキットプロジェクトの一部として、MITライセンスで公開されている。同社としては、政府機関からオープンソース化を前提として受注した初めての事例という。

国連OpenGISイニシアチブとは、国連の平和維持活動に必要なオープンソースのGIS(地理情報システム)を開発するための取り組み。Geoloniaは、2021年11月から、地図デザイン編集ソフトウェア「Charites」(カリテス)を提供し参画している。今回開発された2つのツールは、ベクトルタイル形式の地図データを処理するためのNPMパッケージ(JavaScriptのパッケージ管理システム)となる。

itoma」は、ベクトルタイル形式の地図をプレビューするためのコマンドラインツールだ。データで配信されるベクトルタイルを地図として表示する。これを使うことで、ウェブサイトに地図を表示させたり、地図を使ったアプリケーションの開発が楽に行えるうよになる。

kata」は、地図データのデータ形式を他の形式に変換するためのコマンドラインツール。metadata.json形式のファイルを表形式に変換したり、YAML形式のファイルを、地図開発プラットフォーム「Mapbox」がオープンソースで提供するツール「Tippecanoe」の形式に変換するといったことができる。

Geoloniaは、今後もデジタル地図のオープンソース化を進めるべく活動してゆくとのことだ。

高専10校が共同開発した人工衛星「KOSEN-1」で初の宇宙技術実証に成功、Raspberry Pi CM1を衛星の心臓部に採用

高専10校が共同開発した人工衛星「KOSEN-1」で初の宇宙技術実証に成功、Raspberry Pi CM1を衛星の心臓部に採用高知工業専門学校(高知高専)を中心とする10校の高専が開発した超小型人工衛星「KOSEN-1」が、市販のLinuxマイコンボード「Raspberry Pi Compute Module 1」(CM1)を衛星の制御に使うオンボードコンピューター(OBC)として常時運用するという宇宙技術実証に成功した。

KOSEN-1は、10センチ四方の立方体を2つ重ねた大きさで、重量は2.6kgという超小型人工衛星(2Uキューブサット。サイズ10×10×23cm)。以下に挙げる10校が共同で開発した、木星が放射する自然電波の観測のための最新技術の実証を目的とした木星電波観測技術実証衛星だ。2018年にJAXAの革新的衛星技術実証2号機の実証テーマに選定され、50名以上の高専生が参加して2年半をかけて開発。2021年11月、JAXAのイプシロンロケット5号機で打ち上げられた。

開発参加校

高知高専
群馬高専
徳山高専
岐阜高専
香川高専
米子高専
新居浜高専
明石高専
鹿児島高専
苫小牧高専

今回実証に成功したのは、超小型で省電力な市販のLinuxマイコンボード「Raspberry Pi Compute Module 1」(CM1)を衛星の心臓部となるOBCに使い、宇宙で運用するというもの。このOBCと連動したカメラによる地球の写真撮影にも成功した。

KOSEN-1から撮影された地球

CM1のプログラムには、プログラミング言語Pythonを利用しているという。そのCM1とPythonの組み合わせには、いくつもの利点がある。まずはCM1のOSがオープンソースソフトウェアのLinuxで、OS本体だけでなくソフトウェアなどの膨大なリソースが自由に使えること。CM1は安価な市販のマイコンボードなので、ハードウェアのシミュレーションが容易に行えること。さらに、やはりオープンソースのプログラミング言語Pythonを使うため、インターネットで共有しながらプログラム開発が行えること。これらにより、多くの高専生が参加する画期的な「分散型OBCソフト開発」が実現できた。

OBCに使用された「Raspberry Pi Compute Module 1」

今後KOSEN-1では、「デュアルリアクションホイールによる超高精度姿勢制御」と「木星電波観測用6.6m長ダイポールアンテナ展開技術」の実証を宇宙で行うことにしている。

Mozilla、同デベロッパーネットワークのサブスク有料会員募集を開始

Mozilla(モジラ)は米国時間3月24日、既存のMozilla Developer Network(MDN、モジラ・デベロッパー・ネットワーク)上に、サブスクリプションサービスMDN Plus発表した。MDNは、ウェブ上でCSS、HTML、JavaScriptなどのウェブ技術に関するドキュメントやコードサンプルを見つけるための、最も人気のある場所の1つだ。なおMDNは最近デザインを一新している。

新しいサブスクリプションサービスが提供するのは、通知コレクション(保存したい記事のリストなど)、利用者がオンラインでないときにMDNにアクセスしたいときのためのMDNオフラインなどだ。

サブスクリプションは3つの階層に分かれる。有料プランの無料限定版である「MDN core」、通知、コレクション、MDNオフラインへのアクセスが月5ドル(約610円)、年50ドル(約6100円)で提供される「MDN Plus 5」、そしてMDNチームへの直接のフィードバックチャネル(と「誇りと喜び」)に加えて、プラットフォームのサポートにもう少しお金を払ってもいい人たち向けの「MDN Supporter 10」だ。その名のとおり、最後の高価なプランは、月々10ドル(約1220円)、年間契約では100ドル(約1万2200円)が課金される。

画像クレジット:Mozilla

MDN Web Docsの内容に変更はない。それらは今後も無償で利用できる。「私たちは今後も無料で、誰でもアクセスできるウェブドキュメントの執筆・保守を続けていきます。これは将来変わりません。さらに、MDN Plusから得られる利益の一部を再投資し、ドキュメントやウェブサイト全体のユーザーエクスペリエンスを改善する予定ですので、MDN Web Docsも恩恵を受けることができると考えています」と、MozillaのFAQは説明している。

画像クレジット:Mozilla

MDN Plusは、米国時間3月24日、米国とカナダでローンチする。今後数カ月のうちに、フランス、ドイツ、イタリア、スペイン、ベルギー、オーストリア、オランダ、アイルランド、英国、スイス、マレーシア、ニュージーランド、シンガポールで展開される予定だ(グローバルなサブスクリプションサービスの立ち上げには、多数の弁護士の関与が必要だ)。

今回、MDN Plusがローンチされたのは、決して予想外ではない。Mozillaは2021年、この動きに向けての探りを入れ始めていた。そのときは、Mozillaが5ドルと10ドルの2種類の価格をA/Bテストしていたため、価格設定に少し混乱が起きたが、MDNがもたらす価値の大きさから、ほとんどの開発者はこの取り組みに賛同した

画像クレジット:Mozilla

また、Mozillaは2020年に行ったレイオフでMDNのスタッフをかなり削減したものの、中核となるエンジニアリングチームはほとんど手つかずのままにしておいたことも注目に値する。Mozillaの歴史を振り返ると、MDN のような無料のサービスを提供することが、Mozilla のミッションステートメントにはっきりと謳われ、他の収入源から容易に補助を受けることができていた時期もあった。今回の有料プランによって、Mozillaはやがて自立できることを望んでいるに違いない。現段階では、この収益の使い道についてMozillaがいっているのは「Mozillaの中にとどまる」ということだけだ。

画像クレジット:Benjamin Kerens /Flickr under a CC BY 2.0 license.

原文へ

(文:Frederic Lardinois、翻訳:sako)

オープンソースの機能管理ツールを構築するためオスロのUnleashが約17億円調達

ソフトウェアに新しい機能を加えていくときは、それが既存の機能を壊さないよう注意しなければならない。そのため、展開はゆっくりになりがちで、コード中にフィーチャーフラグ(機能フラグ)を置くなどして、新機能によって何が起きるのか確かめようとする。これは新機能の展開をコントロールする実証されている方法だが、管理のレベルが一段あがってしまう。そこで、オスロのUnleashの出番となる。

同社の共同創業者でCTOのIvar Østhus(イヴァル・オストフス)氏は、次のように説明する。「Unleashは機能管理のためのソリューションです。ユーザーをセグメントするルールを定義して、新しい機能を有効にする方法を完全にコントロールできるようにします」。彼によると、この方法であればより多くの実験ができるようになり、プロダクションのコードベースに、大きな問題を起こす何かが紛れ込むリスクを減らすことができる。

2014年にオストフス氏は、そのとき仕事をしていたFinnという企業で、この機能管理という問題に直面した。そこで彼は余暇の時間に、ソリューションの開発に取り組んだ。翌年、彼はUnleashをGitHub上のオープンソースでリリースし、その後数年間、エンジニアとして昼間の仕事をしながらそのプロジェクトを育てていった。

そして彼は、企業がそのツールにエンタープライズ機能をリクエストし始めていることに気づき、Unleashを企業化する可能性を見つけた。2019年にイヴァル氏と弟のEgil(エギル)氏は一緒に会社を作ることに決め、イヴァル氏が開発したオープンソースプロダクト上に商用化のレイヤーを作っていくことになった。

「2018年の終わり頃には、オープンソースの採用がとても活発になり、エンタープライズ的な機能を求める声も大きくなってきました。ある企業はメールで、自分でやるのは面倒なのでそっちでホストしてくれといってきました。その言葉に触発された私は、エギルと一緒に会社を興すことにしたのです」とオストフス氏はいう。

同社は最初の商用プロダクトであるUnleashのホステッドバージョンを2019年の春に立ち上げ、徐々に会社らしくなってきた。2人は昼間の仕事を辞めて、同社にフルタイムで関わるようになった。

CEOになったエギル氏は管理職や経営者の経験があり、2人の兄弟はいろいろな企業を訪ねて、ビジネスとしてのUnleashの売り込みを開始した。「毎日の時間の90%は顧客と話をして私たちの競合企業をよく理解し、またユーザーのニーズを理解することに費やされました」とエギル氏は語る。

今日、同社は純粋なオープンソースから徐々に離れてオープンコアモデルへ移行し、セキュリティのレイヤーを求める顧客には有料でシングルサインオンを提供するなどエンタープライズ向けの機能を充実している。

エギル氏によると、2人が同社を創業するときにはダイバーシティが重要な課題であり、彼らの中心的なKPIの1つだった。彼によるとそれはリーダーシップの課題でもあり、その責任は常に自分たちにある。取締役会への報告は月例ベースで行っており、採用候補者を抱えている者の視点で求職者について報告している。

「そこで、私たちが本当に重要だと判断したのは、候補者パイプラインの多様性について、毎月取締役会に報告することです。つまり候補者パイプラインが埋まるたびに、その数字と、その多様性の数字の内側か外側かを報告する必要があるのです」とエギル氏はいう。

同社の有料顧客は120社で、その約40%は米国とカナダの企業で、40%がEU、残りが世界各国となる。社員は16名だが年内に倍増する。

米国時間3月23日に発表した1400万ドル(約17億円)のシリーズAで、同社はビジネスとしての離陸できるだろう。今回の投資をリードしたのはSpark Capitalで、Frontline Venturesとfirstminute capital、Alliance Venture、そしてArkwright Xが参加している。

画像クレジット:AndreyPopov/Getty Images

原文へ

(文:Ron Miller、翻訳:Hiroshi Iwatani)

アップルM1チップ搭載Macで動くLinuxディストリビューション「Asahi Linux」のパブリックアルファ版が公開

アップルM1チップ搭載Macで動くLinuxディストリビューション「Asahi Linux」のパブリックアルファ版が公開

Asahi Linux

M1チップ搭載Macでの動作を目指すLinuxディストリビューション「Asahi Linux」が、初のパブリックアルファをリリースしました。アルファ版ということもあって、まだまだハードウェアの機能にすべてアクセスできるわけではありませんが、それでもまずはベータ版、そして正式リリースに向けての重要なチェックポイントに到達したと言えるでしょう。

Asahi Linuxプロジェクトはいまから約1年前、アップルが開発したM1チップシリーズを搭載したMacでの動作を目指し、Arch LinuxのARM版をベースに開発をスタートしました。ようやくのアルファ版ということで、興味のある(そして多少なりとLinuxをセットアップした経験のある)M1 Macユーザーなら誰でも(自己責任で)この新しいディストリビューション(とたくさん表示される警告メッセージ)を試すことができます。

インストールはApple SiliconとmacOS 12.3以降を搭載するMac、具体的にはMac Studioを除く、M1、M1 Pro、M1 Max搭載のMacなら、簡単なターミナルコマンドを入力するだけでインストールが可能です。インストールは管理者権限が必要ですが、デュアルブートにできるので、あくまでお試しにとどめたいニーズにも対応が可能。

現在のところはオンラインインストールのみが可能で、アンインストーラーはなく、パーティションの削除でアンインストールするとのこと。

また盛んに宣伝されているM1チップの統合GPUによる3Dアクセラレーション、Neural Engineをはじめ、DisplayPort、Thunderbolt、またはHDMIポート、カメラにタッチバーといった部分はすべて未サポート。一方USB3、スピーカーなどのサポートは間もなく追加予定とのこと。

M1 Macを手に自らすすんで人柱になりたい方は、Asahi Linuxのウェブサイトにある説明を熟読の上、自己責任でコマンドを入力、実行してみてください。

(Source:Asahi LinuxEngadget日本版より転載)

セキュリティライブラリーwolfSSLが耐量子計算機暗号(PQC)に対応、組み込み機器で通信が可能に

セキュリティライブラリーwolfSSLが耐量子計算機暗号(PQC)に対応、組み込み機器で耐量子計算機暗号による通信が可能に

米国ワシントン州を拠点に組み込みシステム向けに軽量なセキュリティライブラリーを提供するwolfSSLは3月16日、主力製品の組み込みシステム向けセキュリティライブラリー「wolfSSL」が耐量子計算機暗号(PQC。耐量子暗号、ポスト量子暗号とも。Post-quantum cryptography)に対応したことを発表した。これにより、wolfSSLライブラリーを組み込んだ製品は、インターネットセキュリティーの標準プロトコル「TLS」上で、アプリケーションに変更を加えることなく、ポスト量子暗号による通信が可能になる。

現在、米国標準技術局(NIST)では、本格的な量子コンピューターの時代を見据えた耐量子計算機暗号の国際標準化を進めている。その候補として最終的に絞り込まれた技術のアルゴリズムを、オープンソースソフトウェア(OSS)プロジェクト「Open Quantum Safe」(OQS)が「liboqs」ライブラリーとして提供しており、wolfSSLはこれを実装し、組み込みシステムで利用できるようにしたということだ。

すでに、現在提供されている最新バージョン「wolfSSL 5.2.0」で耐量子計算機暗号に対応している。TLSで試すサンプルプログラムとその使用法の説明は、「wolfSSLのポスト量子暗号対応」で公開している。

64ビットRISC-V版のキーボード一体型PC「DevTerm Kit R-01」をClockwork Techが発売、組み立て式で価格約3万円

64ビットRISC-V版のキーボード一体型PC「DevTerm Kit R-01」をClockwork Techが発売、組み立て式で価格約3万円

Clockwork Techは3月16日、64ビットRISC-V(リスク・ファイブ)チップ版のキーボード一体型PC「DevTerm Kit R-01」の発売を開始した。組み立てキットの体裁で販売しており、直販価格は239ドル(約2万8261円)。LinuxベースのOSおよびオープンソースソフトウェア関連の知識を必要とすることから実験的なモデルと位置付けており、初心者は他モデルを購入するよう呼びかけている。またサプライチェーンの状況から、納期は約60営業日を想定しているとのこと。64ビットRISC-V版のキーボード一体型PC「DevTerm Kit R-01」をClockwork Techが発売、組み立て式で価格約3万円

RISC-Vは、RISCベースおよびオープン標準の命令セットアーキテクチャ(ISA。instruction set architecture)。ISAには、x86アーキテクチャ、Armアーキテクチャなどがある。2010年にカリフォルニア大学バークレイ校においてプロジェクトが開始。オープンソース・ライセンス(BSDライセンス)として公開されており、使用料がかからない(ロイヤリティーフリー)。現在非営利団体のRISC-V Foundationが管理している。

DevTerm Kit R-01は、RV64IMAFDCVU(シングルコア、クロック周波数1GHz)、1GBのDDR3メモリーを搭載するR-01コアモジュールを採用。マザーボードにあたるClockworkPi v3.14メインボードにセットできる。

また6.8インチのIPS液晶ディスプレーを搭載するほか、別売のリチウムイオン二次電池「18650電池」をセットすることで、バッテリー駆動も可能。58mm感熱式(200dpi)サーマルプリンター付きの独自コアモジュール同梱。64ビットRISC-V版のキーボード一体型PC「DevTerm Kit R-01」をClockwork Techが発売、組み立て式で価格約3万円64ビットRISC-V版のキーボード一体型PC「DevTerm Kit R-01」をClockwork Techが発売、組み立て式で価格約3万円64ビットRISC-V版のキーボード一体型PC「DevTerm Kit R-01」をClockwork Techが発売、組み立て式で価格約3万円64ビットRISC-V版のキーボード一体型PC「DevTerm Kit R-01」をClockwork Techが発売、組み立て式で価格約3万円

「DevTerm Kit R-01」同梱物

  • ClockworkPi v3.14メインボード
  • R-01コアモジュール(RISC-V 64bit Single-core RV64IMAFDCVU @ 1.0GHz、GPUなし、1GB DDR3メモリー)
  • Ext. モジュール(拡張モジュール)
  • 6.8インチIPSスクリーン(1280×480ピクセル) モジュール
  • clockwork QWERTYキーボード(67キー+ゲーム用キー、トラックボール)
  • バッテリーモジュール(「18650電池」は別売)
  • デュアル スピーカー
  • 58mm 200dpi サーマルプリンター(DevTerm Kit A06 series)
  • シェルおよびブラケットシステム(筐体など)
  • clockworkOS搭載32GB TFカード(microSDカード)

KnativeがCNCFのプロジェクトになった

Cloud Native Computing Foundation(CNCF)は、今日の最も重要なオープンソースプロジェクトのホームであり、Kubernetesもその1つだ。米国時間3月2日、CNCFの技術監督委員会(Technical Oversight Committee)が、KnativeをCNCFのインキュベーションプロジェクトとして受け入れたことを発表した。

CNCFのCTOであるChris Aniszczyk(クリス・アニシュチェク)氏は「Knativeはクラウドネイティブのエコシステムに良質に統合された強力な技術であり、サーバーレスのコンテナを容易に動かせるようにしてくれる。このプロジェクトは当財団のオープンガバナンスモデルの下でさらに成長し、新たなコントリビューターやエンドユーザーに到達するだろう。Knativeのコミュニティと一緒に仕事をすることが楽しみであり、チームのコントリビューションを歓迎する」と述べている。

Knativeは「ケイネイティヴ」と読み、2018年にGoogleが開発したが、その後IBMやRed Hat、VMware、TriggerMesh、SAPなど業界の重鎮たちも貢献した。このプロジェクトの基本的な考え方は、Kubernetes上でサーバーレスおよびイベントドリブンのアプリケーションを容易に構築、デプロイ、そして管理できるようにすることだ。今は多くのエンタープライズがデジタルトランスフォーメーションの一環として新しいアプリケーションを開発したり、既存のアプリケーションをモダナイズするとき、まさにその方向に進んでいる。そしてKnativeは今なお極めて若いプロジェクトだが、すでにBloombergやAlibaba Cloud、IBM、VMwarenなどはプロダクションでそれを使っており、またGoogleはKnativeを使ってGoogle Cloudのサーバーレスコンピューティングプラットフォームを運用している。

関連記事
サーバーレスコンピューティングの使いどころ
サーバーレスとコンテナは両者を一緒に使うのがベストプラクティスだ

このプロジェクトは2021年11月にバージョン1.0の節目に達し、その直後にGoogleが、プロジェクトをCNCFに検討のために付託したと発表した。現在、その段階が完了したためGoogleはKnativeの商標とIPとコードをCNCFに寄贈することになる。

Knative推進委員会とDOCS-UXのリードであるCarlos Santana(カルロス・サンタナ)氏は次のように述べている。「Knative 1.0で安定に達したこのプロジェクトを、特定のベンダーに偏らないホームへ寄贈することは、プロジェクトの今後の成長とコミュニティの自己統治を可能にする次のステップです。私たちの信ずるところによれば、CNCFこそがそのベンダー不偏の団体であり、そこがKnativeを受け入れたことで今後多くの企業が採用する気になり、プロジェクトの寄与貢献や宣伝もしてくれるでしょう。また、Knativeのコミュニティが、自身が利用しているすべてのプロジェクトに限らず、このエコシステム内のその他のクラウドネイティブプロジェクトにも接近して、フィードバックと機能の善循環を確立するでしょう」。

画像クレジット:bugphai/Getty Images

原文へ

(文:Frederic Lardinois、翻訳:Hiroshi Iwatani)

SalesforceのAI開発に携わった3人がエンジニアリング業務に秩序をもたらすFaros AIを設立

Faros AI(ファロスAI)の創業者3人は、Salesforce(セールスフォース)で働いていた頃、同社の人工知能「Einstein(アインシュタイン)」の開発に携わった。Einsteinの目的は、企業がよりデータを活用できるように支援することだが、それを構築するエンジニアリングチームは、他の企業と同じように、エンジニアリングの運用データをトラッキングすることの苦しみを経験した。

Faros AIのCEO兼共同創業者であるVitaly Gordon(ヴァイタリー・ゴードン)氏は、Salesforceの膨大なリソースにもかかわらず、データの不足とそれを収集するための適切なツールがないことに悩まされていたと語る。「私たちはSalesforce内でその業務を拡大し、1万近い顧客と取引していたと思いますが、実は(データの活用に関して)私たちが技術組織として主張していることを、実践できていないと気づいたのです」と、ゴードン氏はいう。

営業やマーケティングチームがデータを活用するために、エンジニアリングチームが作っているようなツールが、エンジニアリングチームにはない、ということはまさに目からウロコだった。彼らは、サイドプロジェクトとしてこの問題に取り組み始めたが、これは誰にとっても大きな問題であると認識するようになった。

創業者の3人、つまりゴードン氏に加え、Salesforce Einsteinに携わっていたMatthew Tovbin(マシュー・トヴビン)氏とShubha Nabar(シュバ・ナバール)氏は、2019年に同社を辞め、この問題を解決するためにFaros AIを設立した。彼らは、開発者がコーディングを終えた時点から、その更新されたコードが顧客の前に製品として着地するまで、どれくらい時間がかかるかといったことなどを、エンジニアリングマネジメントがデータを見て簡単に把握できるようにしたいと考えた。

彼らは、Jira(ジラ)、Jenkins(ジェンキンス)、GitHub(ギットハブ)などのエンジニアリングシステムに接続するための製品を作り始めた。これには、データ間の論理的な接続を行い、ダッシュボードで顧客に提供できるようなインテリジェンスレイヤーが含まれる。このシステムは、例えば、GitHubにサインインしているエンジニアとJiraにサインインしているエンジニアが同じであることを確認したり、複数のシステムにわたってエンジニアリングプロジェクトの履歴や動きをトレースしたりすることができる。

Faros AIエンジニアリングオペレーションのダッシュボード(画像クレジット:Faros AI)

彼らは一般的なツールにすぐに接続できる50以上のコネクタを構築したが、Faros社がネイティブにサポートしているかどうかにかかわらず、エンジニアリングチームがあらゆるシステムに接続できるように、このコネクタ技術をオープンソース化することを決めた。最終的に、Faros CE(Community Editionの略)と呼ばれる製品全体のオープンソース版を開発することも決定し、米国時間3月2日より、一般にダウンロードとインストールができるようにした。

そのエンタープライズ版は、完全にホストされたSaaS製品であり、セキュリティコントロール、ロールベースアクセス、Oktaなどのエンタープライズ認証システムとの接続など、企業顧客に求められる種類の追加機能が備わっている。この製品は現在、Box(ボックス)、Coursera(コーセラ)、GoFundMe(ゴーファンドミー)など、多くの顧客に利用されている。

Faros AIの従業員数は現在20名だが、2022年中に倍増する見込みだという。すでに男女比50%ずつの多様な経営陣がいて、より幅広く多様なチーム作りを目指している。ゴードン氏によると、多様性のあるチームだったSalesforce Einsteinチームのネットワークや、それ以前に働いていたLinkedIn(リンクトイン)での経験が、そのために役立っているという。

同社は今回、1600万ドル(約18億5000万円)のシードラウンドについても発表した。起ち上げ直後の2019年10月に、同社は最初の375万ドル(約4億3000万円)を受け取っている。投資家との間で取り決めたいくつかのマイルストーンを達成した後、さらに300万ドル(約3億5000万円)ほど受け取り、最近になって残りを獲得したという。この資金調達は、SignalFire(シグナルファイア)、Salesforce Ventures(セールスフォース・ベンチャーズ)、Global Founders Capital(グローバル・ファウンダーズ・キャピタル)が主導し、複数の業界エンジェル投資家が参加した。

なお、Pinpoint(ピンポイント)やAcumen(アキュメン)など、他のスタートアップも同じ問題に取り組んでいることは注目に値するだろう。

画像クレジット:PeopleImages / Getty Images

原文へ

(文:Ron Miller、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

Netflixのオープンソースツール「Conductor」の開発者たちがその運用・管理を支援する「Orkes」を発表

Netflix(ネットフリックス)は「Conductor(コンダクター)」というツールを開発・アウトソースすることで、マイクロサービスを取り巻く状況を一変させることに貢献した。このツールは当初、自社の大規模なマルチチャネルでオンデマンドのビデオ・トラフィック(およびそれに対応する複雑なコードベース)をグローバルに扱うために作られたものだったが、後にTesla(テスラ)やAmerican Express(アメリカン・エクスプレス)、GitHub(ギットハブ)、Deutsche Telekom(ドイツテレコム)、VMware(VMウェア)をはじめとする約150社もの大規模な組織などが、自社のサービスを管理するために採用するようになった。そして現在、Conductorを開発したチームは、Conductorをベースにしたツールのクラウドホスティング版である「Orkes(オーケス「オーケストレーション」の短縮形)」を発表し、同時にこのミッションを推進して、オープンソースのConductorコミュニティの継続的成長をサポートするために、930万ドル(約1億700万円)の資金調達を実施した。

このラウンドは、Battery Ventures(バッテリー・ベンチャーズ)とVertex Ventures(バーテックス・ベンチャーズ)が共同で主導し、Mahendra Ramsinghani(マヘンドラ・ラムシンガニ)氏とや Gokul Rajaram(ゴクル・ラジャラム)氏などのエンジェル投資家や、Amazon(アマゾン)やFacebook(フェースブック)を含むさまざまなテック系企業の名前を明かしていない幹部が参加している。

Orkesは、CEOのJeu George(ジョー・ジョージ)氏、共同CTOのViren Baraiya(ヴィレン・バライヤ)氏 とBoney Sekh(ボニー・セク)氏、CPOのDilip Lukose(ディリップ・ルコセ)氏が共同で設立した会社だ。最初の3人は、NetflixでConductorを一緒に作ったが、その後は別々の道を歩んでいた。ジョージ氏はUber(ウーバー)でシニアエンジニアとして働き、バライヤ氏はGoogle(グーグル)でFirebase(ファイアベース)のエンジニアリングを率い、セク氏はRobinhood(ロビンフッド)で決済の責任者を務めていた。2021年、この3人が再結集し、Microsoft Azure(マイクロソフト・アジュール)の卒業生で、ジョージ氏と一緒に働いていたルコス氏も加わり、Orkesを起ち上げた。

Conductorに戻って、その上に乗るツール群を構築した理由は、ジョージ氏がいうように、非常に明確な市場のシグナルがあったからだ。

「私たちはConductorを汎用エンジンとして構築し、多くの企業がこれを使い始めると予想しました。現在、この分野は変曲点にあり、組織はマイクロサービス・アーキテクチャに移行しています」と、ジョージ氏はインタビューに答えている。「しかし、より広い今のアイデアは、その運用を支援し、その上における規模の管理を支援することです」。組織はしばしばハイブリッドクラウド環境で、複数のコーディング言語にわたって作業するため、Orkesのアイデアは管理を支援するための「すぐに使える」一連のツールを提供することだと、同氏は付け加えた。

実際、Orkesが登場する前にHacker News(ハッカー・ニュース)で行われたConductorの長所と短所に関する議論では、一部の環境における実装の難しさが強調され、それを解決する機会も指摘されている。

「企業がマイクロサービスを構築するとき、彼らは選択した言語で構築するわけですが、概して複数の言語を使用することがあります」とジョージ氏は述べ、一般的には少なくとも3つの言語が使用され、時にはそれ以上の場合もあると語った。「ConductorとOrkesのユニークな点は、まったく言語に依存しないことです」。

クラウドサービスに注力したクローズド・アルファ版が好評を得ているため、今回調達した資金は、引き続きOrkesのエンジニアリング・チームと市場参入戦略チームの増強に使用される予定だ。

Orkesの台頭は、オープンソースツールの最近よくあるルートを浮き彫りにする。開発者やエンジニアは、既存の組織で、あるいはプロジェクトとして、自らの実体験に基づく非常に直接的なニーズを解決するための、画期的なツールを構築することに多大な力を注ぐ。そして、それをどのように運用するべきかという開発者の倫理観から、これらのツールを長期的にサポートする幅広いコミュニティを構築するために、オープンソース化するのだ。

同じ開発者が、オープンソース版を使いやすく実装するためのリソースや人材を持たない多くの組織でもより簡単に使えるようにするために、結局は開発に舞い戻り、最も明白で有用なカスタマイズを行うこともよくある。

もちろん、誰でもオープンソースツールの商用版を作ることはできる(非常に成熟した技術では、その上に競合する商用製品が作られることもある)が、そのようなスタートアップ企業の創設者は、概して最初にオープンソースツールの構築をてがけた人物と同じであることが多い。彼らは誰よりも時間と力を注ぎ込んでいて、誰よりもそのツールの可能性と落とし穴を知っている。

そして、投資家も同じ理由からそのような企業を支持したがるものだ。同じテーマに沿った最近の例では、Great Expectations(グレート・エクスペクテーションズ)の開発者たちによるSuperconductive(スーパーコンダクティブ)が、先ごろ4000万ドル(約46億円)を調達した。

Conductorの場合、このオープンソースツールには熟した既存ユーザーがいて、それはOrkesにとって当然ながら顧客となる。しかし、このスタートアップの台頭は、新たな見込みのあるユーザー層への扉も開くことになる、あるいはそう考えることができる。

「Conductorの普及曲線は、私が見た中で最も速いものの1つです。そして、オリジナルの開発チームによる商品化をサポートできることは、私たちにとってすばらしい機会です」と、Battery Venturesのジェネラル・パートナーであるDharmesh Thakker(ダルメシュ・サッカー)氏は声明の中で述べている。「Orkesには、この活気あるコミュニティに、企業レベルのサポートとクラウドサービスを提供するための最適なチームが揃っています」。VertexのパートナーであるSandeep Bhadra(サンディープ・バドラー)氏は、このラウンドで同社の取締役会にも加わっている。

画像クレジット:woodleywonderworks Flickr under a CC BY 2.0 license.

原文へ

(文:Ingrid Lunden、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

thatDotがオープンソースのストリーミンググラフエンジン「Quine」を発表

米国オレゴン州ポートランドを拠点とするthatDot(ザットドット)は、イベントのストリーミング処理を専門とするスタートアップ企業だ。同社は米国時間2月23日、データエンジニアのための新しいMITライセンスに基づくオープンソースプロジェクト「Quine(クワイン)」の立ち上げを発表した。これはイベントストリーミングとグラフデータを組み合わせ、同社が「ストリーミンググラフ」と呼ぶものを作成する。

そう聞くと、複雑なものだと思われるかもしれない。それは確かにその通りであり、また比較的新しいコンセプトでもあるからだ。Quineの背景にあるアイデアは、DARPA(米国防総省)の支援を受けた長年の研究に基づき、大容量のデータストリームを、ステートフルなグラフ、すなわち処理状態を把握するためのグラフとして構築するというものだ。論理学者のWillard Van Orman Quine(ウィラード・ヴァン・オーマン・クワイン)にちなんで名付けられたQuineは、チームが「スタンディング・クエリ」と呼ぶものを使って、このグラフにクエリを実行する。基本的には入力されたデータをリアルタイムで計算し、それをQuineが他のアプリケーションに配信する。

「私たちは、現在の業界が抱える問題、つまり私たちが置かれている板挟みの状況に焦点を当てて、ストリーミンググラフを開発しました」と、Quineの生みの親であり、thatDot社のCEO兼共同設立者であるRyan Wright(ライアン・ライト)氏は筆者に語った。「一方では、膨大な量のデータがあります。この10年間、ビッグデータは当たり前のものとなり、ますます大きくなっています。しかし、その一方で、我々はこれらのデータをどのように解釈すればよいのでしょうか?」。

最近ではかつて以上に、そのデータが動いており、多くの作業負荷ではレイテンシー(遅延時間)が重要になる。オープンソースのイベントストリーミングプラットフォームであるApache Kafka(アパッチ・カフカ)と、そのストリーミングデータを分析するApache Fink(アパッチ・フィンク)を組み合わせたような既存のソリューションでは、企業はデータプラットフォームとパイプラインを構築してこれらの入力データをすべて分析するために、何十人ものエンジニアを割かなければならないと、ライト氏は主張する。他の現代的なアプローチとしては、Neo4j(ネオフォージェイ)とTigerGraph(タイガーグラフ)のようなツールがあり、開発者の間にグラフデータベースを普及させてきたが、これらのツールはいずれもデータベースの観点からこの問題にアプローチするものだと、ライト氏は主張する。

画像クレジット:thatDot

「このような考え方では、技術的な詳細や、高速化、簡単化、拡張化の難しさなど、旧来の問題に悩まされることになります。そのため、この業界では大量のデータが入ってきても、速度が遅すぎてグラフソリューションをきちんと検討できないということがよく起こるのです」と、ライト氏はいう。同氏の主張によれば、現在のほとんどのソリューションは、1秒間に数千件のイベントを処理できる程度だが、Dot社が対象としているような顧客は、1秒間に25万件のイベントを処理できるソリューションを必要としているという。ライト氏は、Quineがそれに応えられる、あるいはそれ以上の処理能力を持っていると確信している。

「私はQuineを使用することによって、複雑なカスタムロジックとSQLクエリのページを、基礎となるイベントが変更されるたびに更新されるストリーム計算されたロールアップ値へのシンプルなクエリに置き換えることができました」と、Tripwire(トリップワイア)社の上級エンジニアであるMatt Splett(マット・スプレット)氏は語る。

同社のユーザーは、セキュリティ企業、オブザーバビリティ企業、ログ処理企業、フィンテック企業、広告企業、不正検知企業など、多岐にわたると、ライト氏と彼の共同設立者でCOOのRob Malnati(ロブ・マルナティ)氏は指摘する。他のオープンソース企業と同様、thatDotの使命は、膨大なQuineの企業ユーザーをサポートすることだが、同社はQuineをプラットフォームとして利用し、その上に新しいソリューションを構築することにも取り組んでいる。

同社は2020年に、Oregon Venture Fund(オレゴン・ベンチャー・ファンド)の主導で200万ドル(約2億3000万円)を超えるシード資金を調達しており、2022年後半にはシリーズAラウンドの資金調達を見込んでいる。

画像クレジット:KTSDESIGN/SCIENCE PHOTO LIBRARY / Getty Images

原文へ

(文:Frederic Lardinois、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

オープンソースの3Dコンテンツコラボプラットフォーム、中国Taichi GraphicsがシリーズAで約57.7億円を調達

共同創業者のユアンミン・フー氏とイー・クアン氏(画像クレジット:Taichi Graphics)

長年、中国のオープンソースソフトウェアは開発者から注目されるだけで、リターンを求める投資家からの理解はなかなか得られなかった。しかしついに、欧米のような動きが現れつつある。

資金調達を果たした中国の最新オープンソースプロジェクトが、Taichi Graphics(タイチグラフィックス)だ。同社は創業10カ月のスタートアップで、3Dコンテンツを簡単に制作できるようにすることを目指している。同社は、3Dグラフィックスの制作、共有、リモートでの共同作業をするクラウドベースのプラットフォームで「3DコンテンツのためのFigma(フィグマ)」と表現する「Taitopia」を運営している。このプラットフォームの基盤は同社のオープンソースのプログラミング言語「Taichi」で、3Dビジュアルグラフィックスのような空間的にスパースなデータ構造に対してパフォーマンスの高いコンピューティングを可能にしている。

Taichi GraphicsはSource Code Capital、GGV Capital、BAI Capitalが主導するシリーズAで5000万ドル(約57億7000万円)を調達した。このラウンドには以前に投資したSequoia Capital Chinaも参加した。TechCrunchは同社の事業や評価額について問い合わせている。

Taichi Graphicsの3Dコンテンツプラットフォーム「Taitopia」を利用して、クリエイターはリモートで共同作業ができる(Taichi Graphicsのデモビデオから撮影したスクリーンショット)

同社は、米国で学んだり働いたりしてから中国に戻った中国人が創業したオープンソースソフトウェア企業の1つだ。このような創業者たちは中国市場にフォーカスするというよりは、米中双方での経験を活かして最初から世界のユーザーに向けたプロダクトを作っている。クラウドネイティブのイベントストリーミングプラットフォームで2021年にシリーズBで2300万ドル(約26億5400万円)を調達したStreamNative(ストリームネイティブ)は、Twitterの元従業員が創業し中国と米国の両方で事業を運営している。非構造化データ分析スタートアップのZilliz(ジリズ)も同様の経緯をたどっている

Taichi Graphicsを創業したのは、MITでコンピュータサイエンスの博士号を取得したYuanming Hu(ユアンミン・フー)氏と、Googleに在籍していたYe Kuang(イー・クアン)氏だ。同社は世界の開発者コミュニティで徐々に関心を集めてきた。同社のプロジェクトはGitHubで2021年現在、1万7700個のスターを獲得し、これは2020年の1万2700個からの増加であると同社は説明している。2021年までに10数カ国、152人の開発者がTaichi Graphicsにコントリビュートした。

2019年にTaichiを紹介した論文の中で、フー氏と共同執筆者は3Dコンテンツのコンピューティングにドメイン特化言語が必要である理由を次のように説明している。

3Dビジュアルコンピューティングのデータは空間的にスパースであることが少なくありません。このようなスパース性を利用するために、階層的なスパースデータ構造が開発されてきました。マルチレベルのスパースボクセルグリッド、パーティクル、3Dハッシュテーブルなどです。しかしこのようなハイパフォーマンスなスパースデータ構造の開発や利用は、本質的に複雑でオーバーヘッドであるため難しいものです。我々は、このようなデータ構造に対して効率よくオーサリング、アクセス、メンテナンスをする新しいデータ指向プログラミング言語のTaichiを提案します。

Taishi Graphicsのツールはこれまでに物理的なシミュレーション、AR、AI、ロボティクス、映画やゲームの特殊効果に使用されている。

同社は新たに調達した資金でこの並列プログラミング言語の影響力を強化し、デジタルコンテンツのクリエイター向けツールを開発する計画だ。また、研究開発、プロダクト開発、収益化、戦略、デザインの人材採用も継続する。

原文へ

(文:Rita Liao、翻訳:Kaori Koyama)

GitHubがスポンサー専用リポジトリを発表

数年前、GitHub(ギットハブ)はスポンサーシップを導入し、それによって誰もがオープンソース開発者に直接資金的援助を行えるようになった。米国時間2月2日、GitHubはこのコンセプトをさらに推し進め、スポンサー専用のリポジトリ、つまりスポンサーだけがアクセスできるプライベートなリポジトリを立ち上げた

これはある意味、現在のトレンドに沿ったものだ。Twitch(ツイッチ)やSubStack(サブスタック)などのプラットフォームも、結局はスポンサーに何か特別なものを提供することで、サブスクリプションのインセンティブを得ている。だがオープンソースの世界ではそのようなことはあまり例がなく、これはオープンソースの精神に反するものだと考える人もいるかもしれない。

GitHubによると、ここでのアイデアは、資金提供者に対してプロジェクトが構築されていく過程への早期アクセスを提供すること、あるいは、同社が「スポンサーウェア」と呼ぶ、スポンサーのためだけのプロジェクトへのアクセスを提供することだという。開発者はこのリポジトリを利用して、スポンサーとのディスカッションを行うこともできるとのこと。また、開発者が柔軟に対応できるように、特定のリポジトリを異なるスポンサーシップレベルに紐づけることも可能だ。

画像クレジット:GitHub

スポンサー専用リポジトリに加えて、GitHubでは他にもいくつかの細かい変更を行った。例えば、開発者はカスタムスポンサーシップの最低金額を設定できるようになり、スポンサーシップの階層ごとにカスタムウェルカムメッセージを書けるようになる。また、スポンサーシップ対応のリポジトリに新しいコールトゥアクション(CTA)を追加し、プログラムの可視性を高めている。

GitHubのスポンサープロダクトリードであるJessica Lord(ジェシカ・ロード)氏は、2日の発表でこう述べている。「GitHubでのディスカバリー体験を向上させ、コミュニティが依存関係を調べたり、誰をサポートするか決めたりするのを容易にし、スポンサーを利用するメンテナーがオーディエンスやコミュニティ、全体的な資金調達を拡大できるように支援するための今後の取り組みにご期待ください」。

画像クレジット:Michael Short/Bloomberg via Getty Images

原文へ

(文:Frederic Lardinois、翻訳:Aya Nakazato)

リストラから2年経ったDockerが4倍増の年間経常収益を達成してコンテナ化市場にカムバック

2013年に創業したオープンソースのコンテナ企業Dockerにとって、至近の2年は確かに波乱の年だったが、それでもやっと正常な財務基盤を再び見つけたようだ。米国時間2月1日、同社は、最前の年間経常収益(ARR)が前年比で4倍増し、5000万ドル(約57億4000万円)を超えたと発表した。

2019年以降、混迷していた同社にとってそれは見事なカムバックだ。同年、CEOのSteve Singh(スティーブ・シン)氏はその座を去り、短い期間、Rob Bearden(ロブ・ビアーデン)氏に代わった。そのすぐ後に同社は、主な収益源だったエンタープライズ事業を手放し、長い間、役員だったScott Johnston(スコット・ジョンストン)氏はCEOに昇格した。

当時、同社は新たに資金を調達して、出直しすることになっていた。実際のところ同社は、シリーズAの企業としてその投資を受け取った。同時に同社は、開発者を主軸とする新しい戦略を実装し、400名いた社員をわずか60名に減らした。その数カ月後に、パンデミックの第一波が襲った。不安定な時期を乗り切らなければならなかったジョンストン氏にとってそれは、容易な時間ではなかった。

ジョンストン氏は「2019年11月はリスクと不確実の時期だったが、私たちは市場の追い風を信じ、また弊社プロダクトへの開発者の愛を信じて、チーム一丸となってデベロッパーにフォーカスし、優れたプロダクトをお届けするとともに、まっとうなビジネスを築いていった」と述べている。

Dockerはその不確実な中にあって、いくつかの利点を抱えていた。1つは、開発者間における広範なブランド認知であり、アプリケーションのコンテナ化といえばDockerという定評があった。それはソフトウェアを、1つの一枚岩的なアプリケーションではなく、クラウド上の個々のサービスの集まりとしてパッケージし配布する方式だ。

さらに同社には大量のオープンソースのコードがあり、それは営業の糸口にもなりうるものだった。そのため同社の無料のプロダクトのユーザーを有料の顧客に変えていく可能性もあった。ARRの急増から見ると、2021年はまさにその変化が増加傾向で起きたようだ。

初期の構造改革の目標は、ブランドに対するデベロッパーの愛着や信頼を軸として、彼らに無料のオープンソースのプロダクトを提供し、彼らの何割かを時間をかけて有料のプロダクトのユーザーに変えていくというものだった。それは、Docker Enterpriseを主に企業のITに売っていた頃に比べるとまったく違うアプローチであり、デベロッパーとその管理者を顧客の中心に据えるものだった。

この、プロダクトが引っ張る形の成長は商業的にも成功し、管理者たちが関連の商用ツールを買い始めた。「デベロッパーが無料のプロダクトで良い経験をし、チーム全体としてもツールを使うようになると、そこには管理者の機能もあるから、彼らは金を払ってでも使おうという気になる」とジョンストン氏は述べる。

彼はさらに「ブログにも書いている私たちのパフォーマンスの向上は、大きな企業がそんな生産性上の利点を理解しているからこそのものだ。彼らは管理レベルのセキュリティツールを有料で利用し、その全社的な採用を可能にしています」という。

Dockerは2013年に創業し2019年にリストラしたが、そのとき、そのエンタープライズ事業をMirantisに売り、Benchmark CapitalとInsight PartnersがリードするシリーズAで3500万ドル(約40億2000万円)を調達した。そして2021年3月には、2300万ドル(約26億4000万円)のシリーズBを手中に収めた

リストラのとき、私は次のように書いた。「このやり方が有効かまだわからないが、ジョンストン氏はこれを前に進むための道だと見ている。この戦略の有効性は、時間が教えてくれるだろう」。

ARRは5000万ドルを超えたが、陪審員たちはまだ審議中かもしれない。でも確実にいえるのは、同社が正しい方向に向かっているということであり、多くの投資家たちも満足だろう。この勢いを、失わないようにして欲しい。

画像クレジット:Ron Miller/TechCrunch

原文へ

(文:Ron Miller、翻訳:Hiroshi Iwatani)

無償で働くオープンソース開発者たちは自分の「力」に気づき始めている

ほとんどの人は意識していないと思うが、日常的に使用しているデバイスやアプリの多くはオープンソースソフトウェア上に構築されており、1人か2人の開発者によって維持管理されている。開発者は自分の時間のためにお金を支払われておらず、コミュニティや情熱的なプロジェクトに還元するべく、バグを修正したりコードを改善したりしている。

例えば「cURL」は、APIなどの別のシステムのデータにソフトウェアが簡単にアクセスできるようにするオープンソースライブラリである。このライブラリは、iPhoneから自動車、スマート冷蔵庫、テレビに至るまで、ほぼすべての現代的なコネクテッドデバイスで使用されているが、基本的には1人の開発者、Daniel Steinberg(ダニエル・ステンバーグ)氏が30年近く無料で維持管理している。

多くのオープンソースプロジェクトが営利目的のソフトウェアやデバイスに含まれており、一般的に、純粋な謝意を別にすれば報酬がともわないにもかかわらず、このシステムはほぼ確実に機能している。一部のオープンソース開発者は、GitHub SponsorsBuy Me A Coffeeなどのプログラム、企業とのメンテナンス契約、あるいは自分のライブラリの維持費を支払ってくれる企業で仕事をすることで、自分の仕事を首尾よくサポートすることができるが、これは標準とは程遠い。

広範なセキュリティ侵害が発生したとき、このシステムの不公平性がしばしば表面化する。2021年12月にJavaライブラリ「Log4j」に出現したLog4Shellの脆弱性は、世界中で重大なセキュリティ脆弱性の問題を引き起こしており、一部の大企業にも影響が及んでいる。

影響を受けたライブラリの開発者たちは、問題を緩和するために24時間体制で作業することを余儀なくされたが、対価は支払われず、そもそも彼らの開発品は無料で使用されていたのだということへの認識も乏しいものであった。cURLの開発者も同じような扱いを経験している。同氏のプロジェクトに依存している企業が、コードに問題が発生した際、そのサービスに対価を支払っていないにもかかわらず、同氏に支援を求めてきたのである。

したがって、当然のことながら、自らの仕事に対する報酬がない中で自分たちが過大な力を行使していることを、一部のオープンソース開発者たちは自覚し始めている。彼らのプロジェクトは、世界最大規模の収益性の高い企業に利用されているのである。

その一例として、人気のnpmパッケージ「colors」と「faker」の開発者であるMarak Squires(マラク・スクワイアーズ)氏は、2022年1月初旬、これらのコードに意図的に変更を加え、ユーザーすべてに影響する破壊的展開を誘発した。使用時に「LIBERTY LIBERTY LIBERTY」というテキストに続いて意味不明な文字や記号を出力し、無限ループが発生するというものであった。

スクワイアーズ氏はこの変更を行った理由についてコメントしていないが、同氏は以前GitHubで「私はもうFortune 500企業(およびその他の小規模企業)を無償の仕事でサポートするつもりはありません」と発言していた。

スクワイアーズ氏が加えた変更は、Amazon(アマゾン)のCloud Development Kit(クラウド開発キット)を含む他の人気プロジェクトを破壊した。同氏のライブラリは週に2000万近くnpmにインストールされており、何千ものプロジェクトが直接的に依存している。npmは数時間以内に不正なリリースをロールバックし、GitHubはそれに応じてこの開発者のアカウントを一時停止した。

npmの対応は、過去にもライブラリに悪意のあるコードが追加され、最終的にはロールバックされて被害を抑えた事例があり、予想されるものであった。一方で、GitHubはこれまでにない反応を示した。同コードホスティングプラットフォームは、スクワイアーズ氏がコードの所有者であり、意のままに変更する権利を持っていたにもかかわらず、同氏のアカウント全体を停止したのである。

開発者が抗議のために自身のコードを取り下げる形をとったのも、これが初めてではない。2016年に「left-pad」の開発者は、自身が所有する別のオープンソースプロジェクトの命名をめぐってKik Messenger(キック・メッセンジャー)と争った後、npmから自分のコードを取り下げ、依存していた何万ものウェブサイトを破壊した。

驚くべきことに、著名なライブラリが時折業界のやり方に抗議してはいるが、この種の事象はそれほど一般的なものではない。オープンソース開発者たちは、自分たちの仕事の裏で数百万ドル(数億円)のプロダクトが作られているにもかかわらず、無償で働き続け、自らのプロジェクトの維持管理に最善を尽くしている。

ホワイトハウスでさえテクノロジー業界に対するオープンソースの重要性を認めている。Log4Jの一連の出来事を受けて2022年1月に業界と会合を持ち、次のように言及している。「オープンソースソフトウェアは独自の価値をもたらすものであり、同時に独自のセキュリティ上の課題を抱えている。その背景には、利用範囲の広さと、継続的なセキュリティの維持管理に責任を負う多数のボランティアの存在がある」。

しかし、こうした声明が出ている一方で、大規模な人気を誇るオープンソースソフトウェアでも、少なくとも世間の注目を集めるまでは、厳しい資金不足に陥っている。Heartbleedの脆弱性がインターネット全体を危険にさらす前、影響を受けたオープンソースプロジェクト「OpenSSL」への寄付は年間2000ドル(約23万円)程度であったが、問題が発覚した後には9000ドル(約102万円)に増加した。

現代的なネットワーク機器のほぼすべてで使われているOpenSSLの開発チームは当時、書面で次のように述べていた。「OpenSSLのケアと供給に専念できるフルタイムのチームメンバーは、1人ではなく、少なくとも6人は必要です」。プロジェクトチームはその代わりに、プロジェクトの維持費をカバーする契約作業を継続的に確保している。

開発者が自身のオープンソースライセンスを変更したり、自分の仕事をプロダクトに変えたり、スポンサーを増やす努力をすることはできるにしても、すべてのプロジェクトに万能のソリューションはない。この無償の仕事のすべてに資金を提供するより良い方法を業界が見出すまでは(誰もそんなことは考えていないようであるが)、より多くのオープンソース開発者が、意図的に自分たちの仕事を中断する形で不服従行動を起こすことで、自らが貢献しているものに光を当てる他ないのが現状である。

これは長い目で見れば持続可能なものではない。しかし、この混乱からどうやって抜け出すのかは不透明である。今日生み出されているあらゆるソフトウェアやコネクテッドデバイスでオープンソースの採用が急増しているが、何人かのオープンソース開発者が陰鬱な日を甘受するのではなく、すべてを破壊しようと決断することに、その行方が委ねられている。

何百万ものデバイスで使用されているcURLのようなライブラリが、洗濯機から乗用車まであらゆるものに含まれているという状況であっても、作成者がそのサポートに疲れて世界にメッセージを送ることを決断したとしたら、どのようなことが起きるであろうか。過去においては被害が回復したことは幸運であったが、将来はそのような幸運にはつながらないかもしれない。

画像クレジット:aurielaki / Getty Images

原文へ

(文:Owen Williams、翻訳:Dragonfly)

東京大学・FastLabel・Human Dataware Labが自動運転用3次元アンノテーションツールAutomanをOSSとして無償提供

東京大学・FastLabel・Human Dataware Labが自動運転用3次元アンノテーションツールAutomanをOSSとして無償提供

東京大学は1月21日、自動運転AI開発に不可欠な教師データ作成のため開発した3次元アンノテーションツール「Automan」について、オープンソースソフトウェア(OSS)として公開した(GitHub)。ライセンスはApache License 2.0。これは、アンノテーションツールの開発を行うFastLabelAutowareの開発をリードするティアフォーの子会社Human Dataware Lab.との共同研究によるもの。自動運転領域でのAIの研究開発を加速させる。東京大学・FastLabel・Human Dataware Labが自動運転用3次元アンノテーションツールAutomanをOSSとして無償提供

東京大学大学院情報理工学系研究科の加藤真平准教授を中心とする研究グループは、科学技術振興機構(JST)の戦略的創造研究推進事業「完全自動運転における危険と異常の予測」において、完全自動運転中の危険と異常について、理論と実践の両面から実用的課題に取り組んでおり、そこには、機械学習技術に人間並みの判断を求めるよりも、危険や異常を感知したらすぐに停止することのほうが社会的な価値は高いとの理念があるという。そんな彼らは、限りなく100%に近い精度で危険と異常を予測し、最小限の移動量で安全に停止できる自動運転システムのプロトタイプを完成させた。

この成果を普及させるには、第三者が研究成果を再現できることが重要だが、それには自動運転システムのAI基盤が必要、またそれを構築するには高品質な大量の教師データが欠かせない。ところが現在、そうした教師データの作成はマンパワーに頼った労働集約型で行われているため、教師データ不足や品質の問題が発生し、自動運転AIの研究はなかなか進んでいないのが現状だ。

そこで研究チームは、FastLabelが提供するアンノテーション・プラットフォームFastLabelと連携し、自動運転AIが用いる画像と点群のデータへのアンノテーションの自動化に取り組み、今回AutomanをFastlabelおよびHuman Dataware Lab.と共同で開発。OSSとして公開するに至った。

また同研究では、3次元アノテーションを自動運転システム全体のCI/CD(Continuous Integration / Continuous Delivery)に組み込めるインターフェースを設計したことで、自動運転AIの開発サイクルを改善することを可能としたという。

今後は、外部からの攻撃に備えるため、脆弱性に対する研究を進めつつ、「走れば走るほど賢くなる自動運転システム」を目指して、自動運転の実用化を加速するという。

ノーコードでWireGuardフルメッシュVPNを企業ネットワークに提供するSaaS「Wissy」がβ版ユーザー募集開始

ノーコードでWireGuardフルメッシュVPNを企業ネットワークに提供するSaaS「Wissy」がβ版ユーザー募集開始

Notchは1月24日、SaaS型でWireGuardフルメッシュVPNを提供する新サービス「Wissy」のβ版ユーザーの募集を開始したと発表した。β版への登録は、公式サイトから電子メールで行う。

Wissyは、3月初旬をめどに、招待制でのベータ版提供を開始予定。また、4月初旬〜5月にかけてプロダクトのオープンアクセスを目指し開発を進めている。今後数年で一般化するであろう、分散型のチーム・働き方を支えるインフラの基盤となるべく開発を行っているという。

Wissyは、数行のコード、もしくはノーコードでUXの高いプライベートネットワーク(VPN)を構築できるSaaS型クラウドVPNサービス。コンテナでの運用やセルフホスティングにも対応し、透明性が高い通信環境を運用可能としている。通信プロトコルにはWireGuardを採用しており、ユーザーとユーザーが直接つながるメッシュネットワークをゼロコンフィグで構築可能。サービス利用開始にあたりハードウェアの導入や既存インフラの変更を必要としないため、企業やチームの大きさに関わらず簡単に導入できるという。

また、ユーザーや通信の設定を管理するサーバーなどは希望に応じてすべて自社でホスティングすることが可能。サービスのコア技術はオープンソースソフトウェア(OSS)として公開予定のため(2022年4月頃予定)、透明性が高くより柔軟なネットワークの運用・構築を行える。ノーコードでWireGuardフルメッシュVPNを企業ネットワークに提供するSaaS「Wissy」がβ版ユーザー募集開始

ネットワークアクセス権管理については、法人メールアドレスなど既存SSOアカウントでカスタマイズ可能。部署やチーム、リソースごとのアクセス管理を既存の法人メールアドレスと紐付けて行えるほか、ダッシュボードによる統合的なアクセスコントロールが可能で、スタートアップ・エンタープライズの規模に関わらない運用が実現できるとしている。

クラウドへのアクセス制御に加えて、クラウド間のセキュアな通信環境構築にも対応し、マルチクラウドにおけるセキュリティー強化を図れる。また、IoTデバイスにおけるセキュアかつ効率的なバージョンアップデートのユースケースや、デバイス同士のセキュアなP2P通信も行える。ノーコードでWireGuardフルメッシュVPNを企業ネットワークに提供するSaaS「Wissy」がβ版ユーザー募集開始

WireGuardは、Linuxカーネル5.6.x系からサポートされているオープンソースのVPNプロトコル。2016年ごろよりJason A. Donenfeldを含む複数のコントリビューターが開発を進めている。同プロトコルの特徴は、従来のVPNプロトコルとして一般的であったIPSecやOpenVPNなどと比較して、圧倒的なシンプルさと通信速度の速さをセキュリティー耐性高く実現している点にある。

ただWireGuard単体では、個人が細かな設定ファイルを定義し、ネットワークを構築する必要がある。Wissyでは、そうしたWireGuard接続用の煩雑な設定の自動化とP2Pメッシュネットワーク化を独自の規格で行うことで、誰でも簡単にWireGuardが提供する機能の恩恵を受けることを可能としているという。

米ホワイトハウスがオープンソースソフトウェアセキュリティサミット開催、GoogleがOSS保護に官民の協力を呼びかけ

米ホワイトハウスがオープンソースソフトウェアセキュリティサミット開催、GoogleがOSS保護に官民の協力を呼びかけ

Google

Googleは1月13日(現地時間)、オープンソースソフトウェアを保護するために官民の協力が必要だと訴えました。これは、2021年12月から大きな話題となっているオープンソースライブラリのLog4jに見つかった脆弱性の問題を受け、Linux FoundationApacheソフトウェア財団(ASF)も参加する形で米ホワイトハウスが開催した、オープンソースソフトウェアセキュリティサミットで発表したもの。

この中でGoogleは、重要なインフラや国家安全保障のシステムで採用されているオープンソースソフトウェアは、そのセキュリティを維持する作業のほとんどをボランティアが行っていると指摘。オープンソースソフトウェアはコードが広く公開されており、その透明性と多くの目が監視しているために、一般的に安全だという前提で使われています。しかし、いくつかのプロジェクトには多くの目が向けられているものの、それ以外のプロジェクトにはまったく目を向けられていないとしています。

実際、SteamやiCloud、Amazon、Twitter、Mincraftなどでも利用されているロギングライブラリのLog4jの場合、Github上のメンテナはわずかに3人だったとも伝えられています。

「私たちの生活におけるデジタルインフラの重要性を考えると、そろそろ物理的なインフラと同じように考えてもいいのではないでしょうか。オープンソースソフトウェアは、オンライン世界の多くの部分をつなぐ組織であり、道路や橋と同じように注目し、資金を提供する必要があります」と、業界と政府が協力して、重要なオープンソースプロジェクトを支援すべきだと呼びかけます。

なお、オープンソースのセキュリティの優先順位を管理し、脆弱性の修正を支援するOpen Source Security Foundation(OpenSSF)がすでにありますが、Googleはこうした組織をサポートするために1億ドル(約114億円)を支出しているとのことです。

(Source:GoogleEngadget日本版より転載)

筑波大学と神戸大学、世界で初めて1万個以上の原子を含むナノ物質の超高速光応答シミュレーションを「富岳」とOSSで実現

筑波大学と神戸大学、世界で初めて1万個以上の原子を含むナノ物質の超高速光応答シミュレーションを「富岳」とOSSで実現

光と物質の相互作用のイメージ。多数の原子からなる物質(SiO2)の表面に、パルス光が入射し、光のエネルギーが表面の電子やイオンに移行する様子を表している

筑波大学と神戸大学は、スーパーコンピューター「富岳」とオープンソースソフトウェア(OSS)「SALMON」(サーモン)を用い、1万3632個の原子を含むナノ物質の光応答、つまり光と物質の相互作用の第1原理計算に成功したと発表した。1万個を超える原子を含む物質では、世界で初めてとなる。

これは、筑波大学計算科学研究センター神戸大学大学院工学研究科電気電子工学専攻からなる研究グループによる、物質に光を照射したときの光科学現象を解明するための研究だ。物質に光をあてると、振動する光の電磁場により、物質中の電子とイオンが揺すぶられる。この電子とイオンの運動が光の伝搬に影響し、光の屈折や反射を生む。このときの、光の電磁場、電子、イオンの運動は、物質科学の第1原理計算法という、物質に含まれる原子の数や種類から量子力学に基づいて電子の状態や物質の構造を調べる方法によって正確に知ることができるのだが、それにはスーパーコンピューターの力が必要となる。

また光と物質の相互作用では、様々な物理法則が関わっているため、光の伝搬、電子とイオンの運動は、それぞれ異なる方程式を用いて計算しなければならない。そこで研究グループは、同グループが開発した、これらの方程式を同時に解き進めることができるSALMONを使用した。富岳では全体の1/6にあたる2万7648ノードを使用したが、この計算のために高度なチューニングを施した。

このシミュレーションでは、厚さ6nm(ナノメートル)のアモルファス状のガラス(SiO2)に、非常に強くて短いパルス光を垂直に照射した。すると、ガラスは不透明になり、光の吸収が起きたことが認められた。また反射波や透過波では、入射光の振動数の数倍から数十倍の振動数を持つ高次高調波の発生も確認された。このことから、パルス光で起きる超高速、非線形現象を計算科学によって「実験の状況そのままにシミュレーション可能」であることが確かめられたという。

ここで使われたSALMONは、光科学実験を「丸ごと計算機の中でシミュレーションする数値実験室の役割」を果たすという。実際の実験では測定が難しいミクロな空間での電子やイオンの運動がもたらす現象の解明に役立つとのことだ。今後は、SALMONが世界標準のソフトウェアとして広く利用されることを目指すと研究グループは話している。

 

CES 2022でスマートホームデバイスの接続規格「Matter」に注目が集まっている理由

現在、ラスベガスで開催中の2022年CESテクノロジーショーで各社が新しいスマートホーム機器を発表する中、スマートホームデバイスは他のシステムとシームレスに統合され、安全で信頼できるものであるべきだという共通の信念に基づいて作られたオープンソース接続規格「Matter(マター)」が大きな話題になっている。

Deloitte(デロイト)によると、スマートホームデバイスを導入している家庭の割合は66%に上り、デバイス好きな人はおそらくきっとこの数字の中に含まれていることだろう。また、1つの会社やブランドにこだわらず、少なくとも6つの異なる会社からデバイスを購入されていることだろう。そのため、2022年スマートホームデバイスを発売する企業にとって、Matterのサポートはとても助かるものだ。

このプロトコルは、Apple(アップル)、Amazon(アマゾン)、Google(グーグル)といった大手テック企業やスマートホームデバイスメーカーによって開発されているだけでなく、断片化したスマートホームシステムに関する問題を最終的に解決し、すべてのデバイスを1つの場所から簡単にセットアップしてルーティングできるようにするために設計されている。

Matterは、ローカル・コントローラー・デバイスを介した、すべてのデバイスの通信を可能にするインフラ、パイプライン、言語となる。そのインターネットプロトコルは、デバイス認証のためのIPベースのネットワーク技術の特定のセットを定義し、メーカーがApple SiriやAmazon Alexa、Google Assistantと互換性のあるデバイスを製造できるようにしてくれる。Matterの最初のプロトコルは、Wi-FiとThreadのネットワーク層で動作し、コミッショニングにはBluetooth Low Energyを利用する予定だ。

最初のMatter認定デバイスのテストを組織しているConnectivity Standards Alliance(通信規格標準化団体、旧Zigbee Alliance)は、2022年のCESでブースや会議室、バーチャル会議においてMatterを展示または紹介している企業を20社以上特定した。その中には、NXP、Qualcomm(クアルコム)、Samsung(サムスン)SmartThings、Telink(テリンク)、Texas Instruments(テキサス・インスツルメンツ)、Universal Electronics(ユニバーサル・エレクトロニクス)が含まれている。

5月にGoogleは、MatterをAndroidとNestに導入すると発表し、米国時間1月5日、数カ月後にAndroidの「Fast Pair」機能を使って、新しいMatter対応スマートホーム機器を数クリックでホームネットワーク、Google Homeや他のアプリにすばやく接続できるようになると発表した。

関連記事:グーグルがFast Pair機能をヘッドフォン以外にも拡大、デバイスと生活で使うさまざまな機器をつなぐプラットフォームに

そして1月5日未明、Amazonは、その「フラストレーションフリーのセットアップ」ドキュメントが現在デバイスメーカーに公開され、インターネット接続がダウンしてもそれらをコントロールできるように、そのデバイスをMatterデバイスの第二管理者として追加するなど、セットアップ体験とAlexa機能の両方について多くの企業と協働していると述べている。

また、同社はシリコンベンダーと協力して、フラストレーションフリーのセットアップをサポートする「Matter System-on-a-Chip」となるものを開発中だという。これらはすべて、ほとんどのEchoデバイスがMatterをサポートし、第4世代のEchoとeeroデバイスがMatter Threadボーダルーターになるという2021年の発表に続くものだ。

その他、Matterに対応する新しいデバイスやサービスを発表した企業を紹介する。

  • Comcast(コムキャスト)は、スマートライト、スマートプラグ、スマートロックなどのIoTおよびホームオートメーションデバイスの中央コネクタとして機能するZigbeeおよびMatter互換の「未来のスマートホームのためのIoT」機能を備えた新しい「xFi Advanced Gateway Router」を発表しながらそれに言及した。
  • コネクテッドホーム製品を製造するEve Systems(イヴ・システムズ)は「Eve MotionBlinds」を制作し、同製品を「Threadに対応した市場初のコネクテッドブラインドとシェードモーター」だとアピールした。
  • ホームセキュリティブランドのArlo Technologies(アーロ・テクノロジーズ)は、セキュリティハブと統合キーパッドに対応した8種類の機能を持つセンサーセット「Arlo Security System」を、よりDIY的なセキュリティ監視ソリューションを求める小規模企業や消費者向けに発表した。また、スマートホームの分野で幅広い互換性を確保する姿勢を固めるため、Matterへのコミットメントも表明した。
  • エッジコンピューティング企業のVeea(ヴィーア)は、Matter、Thread、Wi-Fi 6のサポートを含む「Smart-home-as-a-Service」を発表した。これには「STAX」と呼ばれる家庭用Veea SmartHubメッシュ・ルーターが含まれる。
  • Belkin(ベルキン)がCESで発表した家庭向けのMatter対応製品の中には、AppleのHomeKitと連携する新しい「Wemo」スマートビデオドアベルや、Thread上でMatterと連携するスマートライトスイッチ、スマートディマーがある。
  • Mui Lab(ムイ・ラボ)は、スマートデバイスを「より落ち着いたもの」に変えるMatter対応の「muiPlatform」をデビューさせた。これにはAmazonのAlexaをより視覚的なインターフェースに変えるボードが含まれる。

Connectivity Standards Alliance(CSA)のマーケティング担当副社長であるMichelle Mindala-Freeman(ミシェル・ミンダラ=フリーマン)氏は、米国時間1月4日に発表されたSchlage(シュレージ)の新しいスマートWi-Fiデッドボルトに注目している。

彼女は、2022年はMatterにとって大きな年になるだろうと述べている。CSAとMatterの両方に関わっている企業は数百社あり、50社がすでに134の製品を持ち込んでいると、同氏ははTechCrunchに語っている。

CSAは、2022年の半ばまでに認証、仕様、テストツール、SDKをリリースする予定だ。これにより、企業は新しいハードウェアやイノベーションをより早く市場に投入することができるようになり、より幅広い消費者にリーチすることが可能になる。

ミンダラ=フリーマン氏は「根本的なレベルでは、CSAの仕事は、断片化をなくし、企業が成長し、消費者にとって価値の高い方法でそれを実現するのを支援することです。Matterのような標準規格は、それを実現するものであり、すべての船を上昇させる潮流であると信じています」。と述べている。

画像クレジット:Schlage / Schlage Encode Plus Smart WiFi Deadbolt

原文へ

(文:Christine Hall、翻訳:Akihito Mizukoshi)