【コラム】10代によるテスラ車のハックを教訓にするべきだ

Tesla(テスラ)をハックした19歳のDavid Colombo(デビッド・コロンボ)が騒がれるのは、当然といえば当然の話だ。彼はサードパーティソフトウェアの欠陥を利用して、13カ国にわたる世界的EVメーカーの車両25台にリモートアクセスした。ハッカーは、遠隔操作でドアのロックを解除し、窓を開け、音楽を流し、それぞれの車両を始動させることができたと話している。

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コロンボ氏が悪用した脆弱性はTeslaのソフトウェアのものではなく、サードパーティのアプリに存在するもので、そのためできることに限界があり、ハンドルやアクセルそして加速も減速もできなかった。しかし彼はドアを開け、クラクションを鳴らし、ライトを制御し、ハッキングした車両から個人情報を収集した。

サイバーセキュリティのプロにとって、このようなリモートでのコードの実行や、アプリキーを盗むのは日常茶飯事だが、私が恐れるのは、情報漏洩の開示に慣れてしまい、今回の件がコネクテッドカーのエコシステム全体の関係者にとって貴重な学習の機会であることが見逃されてしまうことだ。

今回のハッキングは、サイバーセキュリティの初歩的な問題であり、率直にいって起きてはならない過ちだ。コロンボ氏がTwitterのスレッドを投稿して通知した翌日に、Teslaが突然数千の認証トークンを非推奨にしたことから、問題のサードパーティ製ソフトウェアは、セルフホスティングのデータロガーだった可能性があるのだという。一部のTwitterユーザーの中にはこの説を支持する人もおり、アプリの初期設定によって、誰でも車両にリモートアクセスできる可能性が残されていることを指摘している。これは、コロンボ氏による最初のツイートで、脆弱性は「Teslaではなく、所有者の責任」と主張したこととも符合する。

最近の自動車サイバーセキュリティ規格SAE/ISO-21434と国連規則155は、自動車メーカー(通称、OEM)に車両アーキテクチャ全体に対する脅威分析とリスク評価(threat analysis and risk assessment、TARA)の実施を義務化している。これらの規制により、OEMは車両のサイバーリスクと暴露の責任を負う。つまり、そこが最終責任になる。

Teslaのような洗練されたOEM企業が、サードパーティのアプリケーションにAPIを開放するリスクを看過していたのは、少々らしくないような気もする。しかし低品質のアプリは十分に保護されていない可能性があり、今回のケースのように、ハッカーがその弱点を突いてアプリを車内への橋渡しとして使用することが可能になる。サードパーティ製アプリの信頼性は、自動車メーカーに委ねられている。自動車メーカーの責任として、アプリを審査するか、少なくとも認証されていないサードパーティアプリプロバイダーとのAPIのインターフェイスをブロックする必要がある。

たしかに、OEMが検査し承認したアプリストアからアプリをダウンロードし、アップデートすることは消費者の責任でもある。しかしOEMの責任の一部は、そのTARAプロセスでそうしたリスクを特定し、未承認アプリの車両へのアクセスをブロックすることにある。

私たちKaramba Securityは、2021年に数十件のTARAプロジェクトを実施したが、OEMのセキュリティ対策には大きなばらつきが散見された。しかながらOEMは、顧客の安全性を維持し、新しい規格や規制に対応するためにできるだけ多くのリスクを特定し、生産前に対処することを最重要視している点で共通している。

ここでは、私たちが推奨するOEMメーカーが採用すべきベストプラクティスを紹介する。

  1. 秘密と証明書を保護する – 広義のなりすましや身分詐称を確実に失敗させる(ファームウェアを置き換える、認証情報を詐称するなど)
  2. アクセスや機能をセグメント化する(ユーザーに対して透過的な方法で) – たとえ1つのポイントが失敗しても、被害は限定的になる
  3. 自分自身で継続的にテストする(あるいは他の人にやってもらうために報奨金プログラムを立ち上げる) – 見つけたものはすぐに修正する
  4. インフォテインメント、テレマティクス、車載充電器などの外部接続システムを堅牢化し、リモートコード実行攻撃から保護する
  5. APIをクローズアップする。未許可の第三者には使用させないこと。このような習慣があれば、今回の攻撃は免れたはずだ

消費者に対しては、OEMのストア以外からアプリを絶対にダウンロードしないことをアドバイスしている。どんなに魅力的に見えても、非公認アプリは運転者や乗客のプライバシーを危険にさらしていることがある。

EVは楽しいものだ。高度な接続性を有し、常に更新されすばらしいユーザー体験を提供しれくれる。しかし、EVは自動車であり、スマートフォンではない。自動車がハッキングされると、ドライバーの安全とプライバシーを危険にさらすことになる。

編集部注:本稿の執筆者Assaf Harel(アサフ・アレル)氏は、Karamba Securityで研究とイノベーション活動を指揮し、革新的な製品とサービスの広範なIPポートフォリオを監督している。

画像クレジット:SOPA Images/Getty Images

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(文:Assaf Harel、翻訳:Hiroshi Iwatani)

CESに登場したEV充電企業は家庭での充電を高速化、V2G、コネクティビティを推進

EV充電企業各社はここ数年間、CESで自社商品を展示してきた。2022年は、利害関係、そしてオポチュニティの度合いが若干高まっている。

数年以内に数十車種もの電気乗用車や商用車が市場に投入されると予想されており、EVはメインストリームになりつつある。より大きな市場には価格がついてくる。メインストリームの消費者は、ガスの燃料補給時間に匹敵する充電時間を期待し、優れたユーザーエクスペリエンス設計には慣れている。そしておそらく、ピーク時とオフピーク時のエネルギーグリッド時間について考える必要性はなかったであろう。

2022年のCESに登場した充電企業や小規模スタートアップはこのシフトを認識しているようで、迅速性、コネクティビティ、利便性、設置の容易性、電力網との連携において向上が図られたプロダクトのピッチを行った。特筆すべき点として、この大きな顧客基盤へのリーチに注力するEV充電企業各社は、商用車の充電から家庭での充電、Vehicle-to-Grid技術から充電器の広告スペースの収益化に至るまで、あらゆるユースケースに対応できるように設計されたプロダクトを披露している。

世界のEV充電器市場は2020年の32億3000万ドル(約3721億円)から2025年には110億ドル(約1兆2671億円)近くに成長すると予測されている。業界にはまだ新規参入者のためのスペースが残されているものの、その多くはデモやニュースでCESを飾ることはなかった。CESで技術を顕示した小規模企業は、独自のソリューション、豊富なコネクティビティ、充電速度のアップグレードという点で際立っている。

Blink Charging(ブリンク・チャージング)

Blinkは2022年、4つの新しい充電プロダクトを発表した。1つはDC高速ウォールマウント充電器であり、残りの3つはレベル2充電器で、フリートおよびマルチユニット用、家庭用、広告ディスプレイの統合用にそれぞれ設計されている。すべての充電器には、4G LTEおよびWi-Fi接続に加えて、フリート管理統合、負荷共有技術、エネルギー使用管理などのスマート性能が備わっている。

Blink MQ 200、フリートEV充電ステーション用

フリート、ワークプレイス、マルチファミリー向けに特別に設計されたこの50アンペアの充電器は、プラグアンドチャージ機能が搭載されており、車両から充電ステーションへの一意かつ暗号化された情報の流れを通じて車両の識別を自動的に行う。この機能は、その名前が示すように、ドライバーがプラグインするだけで充電セッションを開始できることを意味する。

2022年の第1四半期末までに利用可能になる「MQ 200」には、複数の充電器にまたがる直接ユーティリティ通信およびローカル負荷管理のためのスマートグリッド機能が付属しており、一回線に2〜20台の充電器を設置することができ、夜間のフリート充電に理想的である。また、Blink充電器をクラウドに接続するソフトウェアであるBlink Network(Blinkネットワーク)や、CESでローンチされたBlink Fleet Management Portal(Blinkフリート管理ポータル)とも通信する。同ポータルでは、フリート管理者向けに、充電および負荷管理、充電器、車両、ドライバーを追跡するダッシュボードを提供している。

Blink HQ 200、次世代家庭用充電器

「HQ 200」はBlinkの最新の家庭用充電器で、前世代の30アンペアから50アンペアのレベル2充電器にアップグレードされた。他のEV充電企業でも見られるように、家庭での付加的な電力供給は、各社が充電時間を短縮する方法を求めて競い合う中、2022年のトレンドとなっている。

消費者は基本的な充電器を選ぶ傾向にあるとはいえ、このスマートなWi-Fi対応バージョンは、実に私たちを魅了するものである。HQ 200はBlink初のV2G(Vehicle-to-Grid)技術搭載充電器の1つであり、ピーク以外の時間帯にはEVを充電し、ピーク時にはEVのバッテリーに蓄えられたエネルギーを電力網に戻すことができる。

HQ 200はさらに、Blink Mobile App(Blinkモバイルアプリ)に接続することで、即時の充電開始、充電時間のスケジュール設定、リマインダーの設定も可能になる。2022年の第1四半期末までに利用可能になる予定である。

同時に2台充電できるDC高速ウォールマウント

50キロワットのDC高速ウォールは、壁に取り付けたり、台座に設置したりすることができ、さらに同時に2台の車を充電することが可能で、車両、小売店、街角での充電、交通量の多い場所での使用に最適なものとなっている。最大出力150アンペア、V2G技術、10インチのタッチスクリーンディスプレイ、そして時間、キロワット時、あるいはセッションごとに課金する機能を備えている。また、Blink Networkを介したリモート管理とエネルギー使用量レポートが可能となっている。メンバーカード、RFIDクレジットカード、またはモバイルアプリを持つユーザーは、RFIDリーダーを使用して充電を開始することもできる。

「DC高速充電の予算がないと感じている店舗にとって、プライスポイントも魅力的になるでしょう」とBlinkの広報担当者はTechCrunchに語っている。「現在の既存の機器は通常3万5000ドル(約400万円)からですが、DCウォール50キロワットのコストは2万ドル(約230万円)未満です」。

Vision IQ 200(ビジョンIQ 200)、広告用

このレベル2充電器には、ダイナミックデジタルメディアディスプレイ用の30インチLCDスクリーンが1つまたは2つ付属している。小売店、ホスピタリティ事業、自治体施設や交通量の多い場所に理想的なフルサービスの広告性能を備えている。不動産保有者には充電と広告収入の両方の収益分配機会が提供され、後者はサードパーティーベンダーを通じて管理される。

「Vision IQ 200」は、80アンペアのIQ 200の充電器を1つか2つ搭載しており、RFID、Apple Pay、Google Walletおよびすべての主要クレジットカードによる支払いが簡単にできる他、リモート管理やリアルタイムのエネルギー使用状況レポートなどのスマート機能も備えている。

Blinkによると、DC高速ウォールは年内に利用可能になる予定である。

E-Lift(Eリフト)

E-LiftはCESで、カスタマイズ可能な新しいポップアップ式充電ステーション「E-LIFT GS」を発表した。このオランダの会社は、近くこれを北米でローンチすることを目指している。この小さなステーションには同時充電用のプラグが最大4つ付属しており、E-LiftのSustainable and Smart Energy Management System(SENSE、持続可能でスマートなエネルギー管理システム)に接続するセンサーを装備することができる。

SENSEプラットフォームは、ユーザーのモビリティとエネルギーのニーズを管理するシステムとして機能する。同社は声明の中で、顧客は遠隔地からログインして、モビリティとエネルギー消費データのモニタリングと管理を行うことが可能で「費用対効果の高いエネルギー転換が実現し、再生可能エネルギー資源の利用によって将来を再構築しようとしている政府や企業にとって有益なものとなる」と述べている。

JuiceBar(ジュースバー)

コネチカット州を拠点とし、Made in America基準を本格的に推進しているEV充電会社JuiceBarは、CESで同社初の家庭用充電器「Cheetah(チーター)」を発表、この名称は迅速さに由来すると同社は述べている。

Cheetahは2022年中に販売される予定で、同社によると、新しい充電器と交換される古い充電器すべてに対して1000ドル(約11万4600円)ずつ支払われるという。JuiceBarは米国とカナダで数百台の商用充電器を取り扱っており、この新しい家庭用充電器も同じ市場に投入される。

Cheetahは16、32、40、48アンペア構成で、入力電圧は120、208、240ボルトとなっている。Blinkの出力を見る限り、JuiceBarは市場で最速のレベル2にはならないが、近いところにある。CheetahはBluetooth、イーサネット、Wi-Fi、クラウド接続にも対応しており、スマートグリッドの充電に役立つ。25フィート(約7.6m)のコードが付属しており、絡まないコードリトラクターもオプションで用意されている。

家庭で充電するときの安心のために、Cheetahは二重のセーフティリレーを装備している。第1のリレーが閉じてヒューズが切れた場合に、第2のリレーが回路を開閉する。JuiceBarによると、充電器の電力は、充電器のカーボンフットプリントをオフセットする、100%認証済みのカーボン削減プロジェクトによって支えられているという。同社は初年度分のカーボンオフセットを購入することになっている。購入者はその後も、週1ドル(約115円)未満の会費でカーボンオフセットを購入できる。

Cheetahは第2四半期の終わりか第3四半期の初めに消費者向けに提供されると広報担当者はTechCrunchに語っている。当初は米国やカナダにおいて、自動車ディーラー、住宅建設業者、電力会社などの第三者を通じて販売される。

Wallbox(ウォールボックス)

Wallboxは、2022年のCESで「Quasar 2(クエーサー2)」を発表した。これは電気自動車の所有者が自宅や送電網に電気自動車を充電したり、放電したりすることを可能にするだけではなく、停電時に、それが自然災害によるものであっても、自宅を送電網から隔離し、EVをバックアップ電源として使用できる機能を提供する。Wallboxによると、Quasar 2は停電中でも3日間以上家に電力を供給できるという。

Vehicle-to-Home(V2H)機能は、特に電力料金が需要に関係する州で、EV所有者が家庭のエネルギーコストを節約するのに役立つはずだと同社は述べている。ユーザーは、レートが低いときに充電セッションが実行されるようにスケジュールを設定できる。また、太陽光発電を設置しているユーザーは、使用率が低いときにEVに余剰のエネルギーを蓄えることができる。

Quasar 2は48アンペアの電力を供給し、Jaguar I-PaceやBMW i3などの急速充電車に対応するCCS互換で、Wi-Fi、Bluetooth、イーサネット、4G経由でmyWallbox app(マイWallboxアプリ)に接続する。

Wallboxは、Quasar 2の価格を明らかにしなかったが、約4000ドル(約46万円)のQuasar 1相当になると説明した。2022年末までにローンチする予定である。

Meredot(メレドット)

この市場に出回るクルマは電気自動車だけではない。マイクロモビリティのクルマにも愛が必要だ。それこそが、Meredotが電動スクーター、電動モペッド、そしてフードデリバリーロボットや車椅子などの乗り物向けに設計された初の商用ワイヤレス充電器を発表した背景にある。この充電器は、地面の上または下に設置できる物理的なパッドの形態をとっており、受信機を搭載した車両がその上に駐車したときに充電が行われる。

Meredotは、同社のワイヤレス充電器において、マイクロモビリティOEMとフリート事業者をターゲットにしている。同社は、車を充電するための斬新で手間のかからない方法を提供したいと考えている企業向けに、自社の技術を市場に出してライセンス供与する準備が整っている。特にマイクロモビリティのフリートにとって、交換可能なバッテリーを持っていたとしても、スクーターやバイクの充電は大きなコスト削減要因の1つであり、この種の技術はゲームチェンジャーになる可能性がある。

「Meredotのワイヤレス充電器は新しい分散アーキテクチャを提供し、サイトの資本効率とスケーラビリティを向上させ、エネルギーとコストを節約します」とMeredotのCEOで共同創業者のRoman Bysko(ロマン・ビスコ)氏は声明の中で述べている。「Meredotのワイヤレス充電器は、新しいマイクロモビリティ充電エクスペリエンスのインフラ基盤となり、オペレーターとライダーの双方にメリットをもたらします」。

同社によると、従来のケーブル充電システムに比べて、同じ表面で電動スクーターを50%多く充電できるため、充電サイトのコストを大幅に削減できるという。

画像クレジット:Blink Charging

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Dragonfly)

ステランティスがアマゾンと提携、コネクテッドカー体験をアップグレード

世界的な自動車メーカーStellantis(ステランティス)は、ソフトウェアから年間225億ドル(約2兆6130億円)を生み出すという計画の一環として、2024年までに一連の車載製品とサービスを同社の車両に導入するため、Amazon(アマゾン)とタッグを組む。

米国時間1月5日に2022 CESで発表されたこの提携は、Stellantisのビジネスのほぼすべての側面に影響を与えるものと思われる。両社によると、Amazonの技術は、Stellantisの自動車開発、車載接続体験の構築、次世代の自動車ソフトウェア・エンジニアの育成に活用されるとのことだ。

この複数年契約の一環として、Stellantisは車両プラットフォームの優先クラウドプロバイダーとして、Amazon Web Services(アマゾン ウェブ サービス、AWS)を選んだ。最近、既存社員および新入社員向けのソフトウェア・アカデミーを立ち上げたStellantisは、AWSと協力してソフトウェア、データ、クラウド技術を網羅するカリキュラムの作成にも取り組んでいる。

Stellantisは12月にソフトウェア計画を発表したが、その時はAmazonには触れていない。Stellantisは、ソフトウェアと電動化に2025年までに337億ドル(約3兆9140億円)以上を投資すると発表している。この投資には、2024年までのソフトウェアエンジニア5000人の雇用も含まれる。

同社の最終目標は、2030年までに3400万台のコネクテッドカーを走らせ、消費者に販売した後も何年も収益を上げられるようにすることだ。この目標を達成するために、BMW、Foxconn(フォックスコン)、Waymo(ウェイモ)、そして今回のAmazonとのパートナーシップに傾注している。

Stellantisが自動車のソフトウェアを利用して乗客やドライバーに製品やサブスクリプションを販売する計画には、すでに開発が進んでいる3つの構成要素が含まれている。

それは、同社がSTLA Brainと呼ぶ、基盤となる電気およびソフトウェア・アーキテクチャから始まる。このシステムはクラウドと統合されており、車両内の電子制御ユニットを高速データバスで車両の中央高性能コンピュータに接続する。これにより、同社は「無線」、つまりワイヤレスで車両のソフトウェアをアップグレードすることができるようになる。

この「頭脳」に、Stellantisは「SmartCockpit」を追加した。これはFoxconnと共同で構築したプラットフォームで、ナビゲーション、音声アシスト、eコマースマーケットプレイス、支払いサービスなどのアプリケーションをドライバーに提供するものだ。最後に、BMWと共同開発した3つめの自動運転プラットフォーム「AutoDrive」で、Stellantisのソフトウェア計画は完了する。

同社は1月5日に、Amazonと協力してSmartCockpitプラットフォームをさらに発展させ、ドライバーと乗客にパーソナライズされた車内体験を提供できるアプリケーションを搭載すると発表した。Stellantisの14種の自動車ブランドのいずれにおいても、乗車する人はアプリストアにアクセスしてサービスやエンターテインメントを見つけることができるようになる。また、音声アシスタントAlexaもSmartCockpitに搭載される予定だ。

AmazonのAIテクノロジーは、顧客の行動や関心事を把握し、それに適応するのに使用される。これは、顧客が厳しい地形の道を走る前に車両を調整し、性能を最適化するのに役立つデジタルオフロード「コーチ」がJeep車に搭載される可能性があることを意味する、とStellantisは述べた。

車載ソフトウェアは、スマートホームやサービスなど、Amazonの他の製品とも連携し、ユーザーは車に乗ったまま自宅を監視・管理できるようになる。また、この機能は逆にも作用する。自宅のAlexa対応デバイスやスマートフォンのAlexaアプリにコマンドを送ることで、車に乗る前に車内の温度を設定することができるようになる。

画像クレジット: DENIS CHARLET/AFP / Getty Images

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(文:Kirsten Korosec、翻訳:Nariko Mizoguchi

Google HomeとYouTubeがVolvo Carsと統合

米国時間1月5日にCESで、Googleは、Androidデバイスをネットに接続し続けるためのさまざまな方法を披露した。そこには自動車も含まれており、多くの車両がEVになり、自動車メーカーがソフトウェアの開発者へと進化していくにつれて、自動車がコネクテッドデバイスになっていくであろうことが予想される。

その1つの例が、Volvo Carsだ。同日、VolvoとGoogleは数カ月後にGoogle Homeのエコシステムを直接統合すると発表した。この統合で自動車オーナーは、オンオフや温度調整、バッテリーの寿命といった自分のクルマの情報取得などを、Googleアシスタント対応のホームデバイスやモバイルデバイスに音声のコマンドでさせることができるようになる。また、Volvo車とGoogleアカウントをペアリングすると、車内でGoogleと直接会話することができるようになる。

Googleによるとこの機能は、当初米国とスウェーデン、ノルウェー、ドイツ、イタリア、フランス、スペインなどのヨーロッパ市場で利用できるようになるが、近いうちに他の市場にも対応していくとのこと。

またVolvoによると、今後のVolvo車はGoogleが内蔵されるため、YouTubeをダウンロードするプラットフォームにもなり、車内でビデオのストリーミングを楽しめるようになる。YouTubeはQualcommのSnapdragon Cockpitプラットフォームから利用でき、Volvoの発表によると、次期の電動SUVに搭載される。Googleとのパートナーシップは、デジタルサービスを増やし、ドライバーにより多くのエンターテインメントを提供していくという大きなプランの一環だという。そのために同社が導入を準備しているRide Pilotは、同社の新しい「監督不在」の自動運転機能であり、最初はハイウェイを走る同社の次期SUVを完全に自動運転化する。その際ドライバーは、ハンドルから完全に手を離して、他のことをしていてもいい。

関連記事:クアルコムが自動車分野へのさらなる注力を表明、ボルボ、ホンダ、ルノーなど新規顧客を発表

「顧客が充電時や子どもが学校から出てくるのを待つ間にビデオを見られることは、生活を幸福で楽しくするという私たちの約束の一環です。YouTubeなどのメジャーなストリーミングサービスを近く見られるようになれば、顧客は充電の時間を面倒と思わずに、むしろ楽しめるようになり、EVのオーナーであることが、やや気楽なものになるでしょう」とVolvo CarsのチーフプロダクトオフィサーであるHenrik Green(ヘンリック・グリーン)氏は声明で述べている。。

Volvoだけで満足していないGoogleは12月に、クルマのデジタルキーを発表した。それによりユーザーはGoogle PixelとSamsung Galaxyスマートフォンの一部機種で、2020、2021、2022年式のBMW車 / 互換車のロックとアンロックおよび始動ができる。今回のGoogleの発表では、ユーザーは年内に超広帯域無線のデジタルカーキーを使って、スマートフォンをポケットから取り出さなくてもクルマをアンロックすることができ、キーを他の人と共有することもできる。この機能が使えるのは、ヨーロッパ、アジア、北米、アフリカの一部、そしてロシアとニュージーランドとオーストラリアとなっている。

画像クレジット:Volvo Cars

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Hiroshi Iwatani)

ステランティスが車載ソフトウェアで年間約2.5兆円の収益を上げる計画を発表

Stellantis(ステランティス)はオランダ時間12月7日、同社の自動車に搭載するソフトウェアを使って乗員とドライバーにサービスや機能を販売または定額制で提供し、年間200億ユーロ(約2兆5600億円)の収益を上げるという野心的な計画を発表した。この狙いは競合他社の目標と一致するものだ。すべての自動車会社は、車両の販売、修理、融資以外の収益方法を模索している。

Fiat Chrsyler(フィアット・クライスラー)とフランスのPSA Group(PSAグループ)が合併した国際的自動車メーカーのステランティスは、2025年までに300億ユーロ(約3兆8400億円)以上をソフトウェアと電動化に投資すると発表した。その中には2024年までに4500人のソフトウェアエンジニアを雇用することも含まれる。

最終的な目標は、2030年までに3400万台のコネクテッドカーを走らせ、消費者に車両を販売した後も、そこから数年間、収益を得られるようにすることだ。この目標を達成するために、ステランティスはBMW、Foxconn(フォックスコン)、Waymo(ウェイモ)とのパートナーシップを活用する。同社によれば、現在は世界中にステランティスが販売した1200万台の「収益化可能な」コネクテッドカーが走っているという。なお、ステランティスでは「収益化可能」なのは新車で販売してから最初の5年間と定義している。

では、ステランティスは実際にどうやって収益化するつもりなのだろうか?まず、そのための基盤となるのが、同社が「STLA Brain」と呼ぶ電気 / 電子制御とソフトウェアのアーキテクチャだ。この基本システムは、車両の各部に搭載された電子制御ユニットと、その中心となる高性能コンピューターを高速データバスで接続し、それがクラウドに統合される。これによって、車載ソフトウェアのアップグレードを「OTA(over the air)」つまり無線で行うことができる。

ステランティスは、この「Brain(頭脳)」の基盤上に、Foxconnとの合弁会社であるMobile Drive(モバイル・ドライブ)が開発した「STLA SmartCockpit(スマートコクピット)」というプラットフォームを付け加え、ナビゲーション、音声アシスタント、電子商取引マーケットプレイス、決済サービスなどのアプリケーションをドライバーに提供する。なお、これとは別に、ステランティスはFoxconnと、専用のマイクロコントローラー・ファミリーを設計するための拘束力のない覚書に署名したことも発表した。このパートナーシップは、ステランティスの車両に必要とされるマイクロコントローラーの80%以上をカバーする4つのチップファミリーを開発することを目的としている。

そしてステランティスのソフトウェア計画で3つめの鍵となるプラットフォームが、BMWと共同開発した最高レベル3の自動運転を実現する「STLA AutoDrive」だ。これら3つのプラットフォーム(STLA Brain、STLA SmartCockpit、STLA AutoDrive)は、2024年以降に発売されるすべてのステランティス製の新型車に採用される。

ソフトウェアを自動車の中心的な要素とした最初の企業はTesla(テスラ)だった。同社は無線アップデートで、性能の向上やテレビゲーム機能などを提供したり、先進運転支援システムのアップグレードを可能にしている。しかし、他の自動車メーカーも以前から、日々収集される膨大なデータを利用して、オーナーに車内サービスを提供することに可能性を見出していた。

現在では、GMをはじめとする多くの自動車メーカーが、ドライバーが車内で利用したいと思うサービスを実際にサブスクリプションで提供できる技術力を備えている。しかし、これには賛否両論があることも事実だ。今まで車両購入時に一度だけオプション料金を払うだけでよかったシートヒーターやアダプティブクルーズコントロールの機能を使うために、継続的に料金を支払わなければならないサブスクリプションという方式に対し、消費者から反発の声も上がっているからだ。

関連記事:GMは2030年までにサブスクをNetflix級のビジネスにしようとしている

ステランティスは、ソフトウェアを使用して、自動車の所有者にサービスやサブスクリプションを提供するだけでなく、ある機能を使いたいときだけ使えるようにオンデマンドで提供することも計画している。また、法人顧客に対しては、データ・アズ・ア・サービス(サービスとしてのデータ)やフリート・サービスを提供する予定だ。例えば、同社はデータ収集能力を利用して、使用量ベースの保険プログラムを2022年に開始し、欧州と北米の金融部門を通じて提供すると述べている。

ステランティスによれば、今回発表されたソフトウェア戦略は、同社の車両ラインナップの電動化計画と連動するものであるという。同社は2021年7月、欧州における車両販売台数の70%以上、米国では販売台数の40%以上を、2030年までに低排出ガス車にするという目標を発表している。

画像クレジット:DENIS CHARLET/AFP / Getty Images

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(文:Kirsten Korosec、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

IoTやコネクテッドカーのセキュリティを手がけるKaramba Securityにベトナム自動車会社VinFastなどが出資

Karamba Security(カランバ・セキュリティ)は、IoTと自動車業界に特化したセキュリティをてがけるイスラエルのスタートアップ企業だ。同社は現地時間12月2日、2017年に実施した1200万ドル(約13億5000万円)のシリーズBラウンドを延長し、新たに1000万ドル(約11億3000万円)を調達したと発表した。この延長ラウンドは、ベトナムのコングロマリットであるVingroup(ビングループ)に属する新興自動車メーカーのVinFast(ビンファスト)が主導した。なお、Vingroup自身もVinFastのために10億ドル(約1130億円)の資金調達を目指していると報じられている

このラウンドには、既存投資家のYL Ventures(YLベンチャーズ)、Fontinalis Partners(フォンティナリス・パートナーズ)、Liberty Mutual(リバティ・ミューチュアル)、Presidio Ventures(プレシディオ・ベンチャーズ)、Glenrock(グレンロック)、Paladin Group(パラディン・グループ)、Asgen(アスゲン)に加えて、韓国のSamsung Venture Investment(SVIC、サムスン・ベンチャー投資)も参加した。これにより、Karamba社の資金調達総額は2700万ドル(約30億5000万円)となった。

「IoTデバイスやコネクテッドカーへのサイバー攻撃による国家的・個人的なリスクから、強力な規制要件が求められています」と、Karambaの共同設立者兼CEOであるAmi Dotan(アミ・ドタン)氏は語る。「IoTデバイスメーカーや自動車メーカーは、研究開発プロセスを変えたり、市場投入までの時間を遅らせたり、製品の製造コストを増加させることなく、こうした規制に早急に対応する必要に迫られています。Karambaがワンストップで提供する製品とサービスは、こうした自動車メーカーやIoTデバイスメーカーの強い市場牽引力となっています。これらの企業は、Karambaがデバイスのライフサイクルを通してシームレスなセキュリティを提供することに魅力を感じています」と、ドタン氏は続けた。

Karamba Securityの「XGuard」(画像クレジット:Karamba SecurityVinFast)

IoT、特に自動車業界からこのようなニーズがあることを考えれば、VinFastのような企業が同社への投資に興味を持ったのも当然と言えるだろう。Karambaは設立以来、メーカーの研究開発やサプライチェーンのプロセスを妨げることなく、デバイスのライフサイクル全体に渡って保護できるセキュリティソリューションを提供することに力を入れてきた。

最近、クラウドベースのインシデント分析サービスを起ち上げたKarambaは、現在、Fortune 500(フォーチュン500)に入る企業と80件の「成功した契約」を結んでいるという。最近の最大の案件の1つは、100カ国以上の地域で80万台のフリートのセキュリティをてがけるというものだった。

VinFastの副CEOであるPham Thuy Linh(ファム・トゥイ・リン)氏は、次のように述べている。「当社の市場に対する見解と広範な技術評価に基づきながら、Karambaのコア技術を直接目にして、さらに他のメーカーからも学んだ結果、私たちの会社がサイバーセキュリティへの道を飛躍的に進めるためには、Karambaの力を借りるのが、どんなに有利であるかということがわかりました」。

画像クレジット:Karamba Security

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(文:Frederic Lardinois、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

イスラエル発Cybellum奥田正和氏が語る「コネクテッドカーのセキュリティ」の今

2018年からの1年間でコネクテッドカーに対するサイバー攻撃が倍増した。イスラエル発のサイバーセキュリティ企業、Cybellum(サイべラム)で日本カントリーマネージャーを務める奥田正和氏は「コネクテッドカーのセキュリティは喫緊の課題ですが、対処していくスピードを上げる必要があります」と語る。コネクテッドカーが抱えるリスクとは何か。安全性はどう守られるべきなのか。同氏に詳しく話を聞いた。

コネクテッドカーのサイバーセキュリティとは

コネクテッドカーには数多くのソフトウェアが使用されている。そのため、ソフトウェアのセキュリティを守ることが重要になる。

奥田氏は「ソフトウェアの守り方は色々あります。ファイアウォールなど、防御の壁を増やすようなアプローチもありますが、ソフトウェアそのものにバグや脆弱性があったのでは、壁を足すだけでは守りきれません。そこで当社はコネクテッドカーの中のソフトウェアをスキャンし、脆弱性を見つけるツールを提供しています」と話す。

Cybellum プロダクト・セキュリティ・アセスメントのインターフェース

同氏によると、担当エンジニアは多くの場合「堅牢なソフトウェアはどんなものか」「ハッカーに攻撃される脆弱性はどんなものか」を理解しており、対応方法もわかっているという。問題は、コネクテッドカーに搭載されるソフトウェアの数が多く、すべての脆弱性に対応しきれないことなのだ。

専門家が脆弱性を発見した際、発見した脆弱性を登録するCommon Vulnerabilities and Exposures (CVE)、National Vulnerability Database(NVD)などのデータベースがある。こうした場所には年間2〜3万件の新規脆弱性が報告される。

奥田氏は「このペースで脆弱性が見つかるので、どこかの会社がソフトウェアを出したら、規模にもよりますが数カ月で数十件程度の脆弱性が見つかります。ハッカーたちは公表された脆弱性を使った攻撃も仕かけてきます。一方で、ソフトウェアには『未発見、未公表のすでに存在している脆弱性』もあります。また、1つの脆弱性を直すには数カ月〜数年かかることもあります。新しい脆弱性も後から出てきます。『脆弱性ゼロ』の日はありません。ソフトウェア提供企業は公表された脆弱性に優先的に対応しつつ、未公表の脆弱性にも対応していかなくてはなりません」と話す。

理想的には、開発段階から脆弱性データベースを参考に脆弱性が混入しないよう開発を進め、製品が出荷されてからもデータベースを見続け、公表された脆弱性が製品に該当しないかをチェックし続けることが望ましいという。

自動車サイバーセキュリティ規制

開発段階と自動車のライフタイム(開発以降のあらゆる時期)を通した脆弱性対策は、自動車サイバーセキュリティ規制(UNECE WP.29 R155)でも定められている。これは、国連欧州経済委員会の作業部会である自動車基準調和世界フォーラム(WP29)が策定したものだ。

奥田氏は「この規制で重要なのは、『自動車のサイバーセキュリティを担保する社内プロセスを保持すること』です。これを企業目線で具体的に落とし込むと、サイバーセキュリティの専門チームや専任者を設置する、開発プロセスとレビュープロセスを策定する、出荷後も脆弱性を監視し続ける、ということになります。組織とプロセスが全体的に規制されるのです」と説明。

自動車サイバーセキュリティ規制は、自動車における「安全性」の概念の変化も反映している。自動車はもはや「安全性を担保して出荷すれば良い物」ではない。自動車メーカーは企画・開発・生産から廃棄までセキュリティを監視しなければならないのだ。

さらに、この規制のステークホルダーは最終生産メーカーを筆頭に、部品メーカーやベンダーなど、サプライチェーン全体におよび、規制に対する対応の有無の説明責任は最終生産メーカーが負う。

セキュリティはコストなのか

自動車サイバーセキュリティ規制は、自動車のセキュリティをライフタイム全般にわたり担保するもので、ユーザーの利益になるものだ。だが、自動車メーカー側の負担は大きくないだろうか。

「その側面は否定できません。運転支援機能や自動運転機能のように、先端技術を追加して安全性を高めても、セキュリティ対策に関しては今はそうした付加価値を値段に転嫁しにくい状況です。『最先端のセキュリティに対応しているので、このクルマは10万円高くなります』というのは難しいのではないでしょうか」と奥田氏。

しかし、十分なセキュリティ対策を行わず、自動車がサイバー攻撃に遭い、損失や危険な事象が発生した場合、自動車メーカーの評判は落ちてしまう。

奥田氏は「攻撃が発生すれば『セキュリティをしっかりしておいてよかった』という話になりますが、そうでない時にはセキュリティはコストに見えてしまいます」とセキュリティの重要性を指摘する。

コネクテッドカー向けセキュリティの差別化

では、自動車メーカーはソフトウェアの脆弱性をどう発見すれば良いのか。

「多くの脆弱性はソースコードの中にあるので、エンジニアが集まってコードをレビューすれば、脆弱性を見つけることは可能です。ですが、今日の激増するソフトウェア量を考えるとこのやり方は非現実的です。実際には、当社が提供しているような、製品に組み込まれているソフトウェアコンポーネント群をスキャンし、脆弱性を見つけるサービスを活用して効率化を目指すのが望ましいです」と奥田氏。

しかし、ソフトウェアをスキャンするサービスならなんでもいいというわけではない。

奥田氏は「現在、多くのIT企業がソフトウェアチェッカーを提供しています。ですが、自動車の組み込みソフトウェアに十分に対応しているものはほんの一部です。組み込みソフトウェアは必ずしもサーバやPC上で動くものではないので、自動車用ではないソフトウェアチェッカーは、自動車のソフトウェアチェックに対応できない部分も多いのです」と力説する。

では、こうした企業はどうやって差別化しているのだろうか。

奥田氏によると、現在、自動車向けソフトウェアチェッカーを提供している主要な企業は、基本的に類似した技術を提供しており、差別化要素の1つが対応している半導体の種類、OSなどだそうだ。

また、ソフトウェアは使用される製品によって構造が変わってくる。そのため、ソフトウェアチェッカー提供企業の得手不得手も分野によって現れるという。

自動車業界のソフトウェア活用では、ソースコードとバイナリコードという観点も重要だ。ソースコードは、プログラミング言語で書かれたコンピュータプログラムで「どんな動作をさせたいか」を表現する。機械はソースコードをそのまま実行できないため、ソースコードは機械が読み込むことができるバイナリコードに変換される。

奥田氏は「自動車の最終生産メーカーがすべてのソースコードを保持していることは非常に稀です。自動車はサプライヤーから集めてきた多様なパーツで成り立つため、各部のソースコードが最終メーカーの手元にすべて届くとは限らないのです。むしろソースコードが送られてこない方が普通かもしれません」と話す。

しかし、最終メーカーの手元には、自動車の全体統制のために必要な全体のバイナリコードがある。そのため、実際にスキャンできるのは、バイナリコードになる。自動車のソフトウェアをスキャンするには、バイナリコードのスキャン技術と精度が重要になる。

奥田氏は「当社はバイナリコードのスキャンに対応していますが、ソースコードにしか対応していない企業もあります。バイナリコード対応の有無も差別化のポイントになりますね」と補足した。

対策すべきリスク

Uswitchの調査によると、2018年から2019年にかけてコネクテッドカーに対するサイバー攻撃が99%増加した。奥田氏はこれをどう見るのか。

「コネクテッドカーへの攻撃は、危惧されていたよりは増加していないと考えています。『実現可能な攻撃』に関する議論が活発化していますが、『実現可能な攻撃』と『実際に生じる攻撃』は別物です」と奥田氏。「『実際に生じる攻撃』は金銭的利益が発生するところで起こります。そのため、車載コンテンツ配信システムや、移動情報から得るドライバーの個人情報は狙われやすいでしょう。また、それを使ったランサムウェア攻撃もあり得ます。逆にいうと、コネクテッドカーを攻撃して、ドライバーを殺傷するようなことは金銭的利益があまり見込めないので、起こりにくいと考えられます」と話す。

コネクテッドカーを狙ったランサムウェア攻撃は誰に起こり得るのか。奥田氏はトラック運送会社など、コネクテッドカーを事業で利用している企業や組織が狙われるとみている。会社のコネクテッドカーが攻撃によりロックされてしまうと、一時的に売り上げが立てられなくなる。それなら身代金を払って一刻も早く自社のコネクテッドカーを仕事に回した方が良い、と決断する企業が出てきても不思議ではない。

奥田氏は「損失が身代金より大きいなら、払う方が良い、と考える企業はあるでしょう。今危惧されているのはこういった攻撃です」と話す。

コネクテッドカーは情報の宝庫だ。ドライバーの個人情報、家族の情報、移動情報などが蓄積される。これらの情報はそのまま売ることもできるし、銀行システムの攻撃にも悪用できる。

「自動車メーカーからすると、自社製品のセキュリティが破られたら、自社の評判が落ちます。また、過失が認められれば訴訟にも発展するかもしれません」と奥田氏は補足する。

とはいえ今のところ、コネクテッドカーのセキュリティの重要性の認知は、自動車メーカーやその周辺のエコシステムに限られており、一般の自動車ユーザーの間にはあまり浸透していない。そのため「この車はセキュリティ対策が優れています」というアピールが魅力的に映らない。

奥田氏は「自動車ユーザーのみなさんにセキュリティの大切さをお伝えできれば、車の魅力としてセキュリティをアピールすることもできます。ドライバーのみなさんを守るためにも、セキュリティ理解の促進は重要な課題です」と話した。

Eatronは「インテリジェントな自動車用ソフトウェア」を開発

電気自動車は基本的に「車輪の付いたソフトウェア」で、それは多くの可動部品を必要とする。もちろん、物理的なものではなく、仮想的なものだ。そのソフトウェアは、走行中の電気自動車の性能、効率、安全性を継続的に最適化する必要がある。しかし、そこに問題が生じている。自動車メーカーが自社のソフトウェアを公開して、改善に役立てることができないということだ。そこで、この自動車用の組み込みソフトウェアを、その土台にある電子部品のハードウェアから切り離せば、より最適化が進み、より効率的な自動車を実現することが可能になる。それはバッテリーの航続距離や性能全体に重要な影響を及ぼす。

このような理由から、英国に本拠を置き「インテリジェントな自動車用ソフトウェア」を開発しているEatron(イートロン)という企業は、英国のMMC Ventures(MMCベンチャーズ)が主導する1100万ドル(約12億5000万円)のシリーズA資金調達を成し遂げた。

この投資ラウンドには、Aster Capital(アスター・キャピタル)とベトナムの自動車メーカーであるVinFast(ビンファスト)も参加した。Eatronはこれまで、VinFastの電気自動車開発に協力してきた。また、このスタートアップ企業はドイツのHirschvogel Group(ヒルシュフォーゲルローランド・グループ)とも戦略的パートナーシップを結んでおり、同グループはEatronに150万ドル(約1億7000万円)を出資している。

同社の技術を利用することで、自動車メーカーやティア1サプライヤーは、バッテリーマネジメント、インテリジェントモーションコントロール、先進運転支援などを目的とする自動車用ソフトウェアを、自社のハードウェアから切り離すことができる。これにより、自動車メーカーにとってはサプライヤーの選択肢が増え、コスト、リスク、市場投入までの時間を減らす効果がもたらされる。

今回のシリーズA資金の一部は、サードパーティ製ソフトウェアモジュールや、半導体およびハードウェア部品のサプライヤーとの提携を増やし、プラットフォームを拡大するために使用される予定だ。また、ドイツ、インド、米国の営業チームを増強することも計画されている。

Eatronの共同創業者兼CEOであるUmut Genc(ウムット・ゲンク)博士は次のように述べている。「モビリティ、特に自動車は、劇的な変化の真っ只中にあり、その変化の一環として、ソフトウェア主導型の産業になることが必要とされています。端末に組み込まれ、クラウドに接続されたインテリジェントな自動車用ソフトウェアプラットフォームは、この変革において重要な役割を果たすでしょう」。

MMC Venturesの投資家であるMina Samaan(ミナ・サマーン)氏は次のように述べている。「自動車メーカーをサポートする興味深いアルゴリズムのコンセプトを構築するソフトウェアビジネスは数多く見てきましたが、量産市販車に必要な規制、セキュリティ、安全性の要件を満たす専門知識を持った企業はありませんでした。しかし、Eatronは例外です。同社のソフトウェアは、自動車用品質を目指して一から構築されたもので、今後の数年間で何十万台もの自動車のバッテリーや自動運転機能を推進する可能性を秘めています」。

画像クレジット:VinFast

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(文:Mike Butcher、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

グッドイヤーとポルシェ投資部門が自動車が道路を「感じる」ようにするバーチャルセンシングTactile Mobilityに戦略的投資

イスラエルのスタートアップであるTactile Mobility(タクタイル・モビリティ)は、既存の車両センサーデータを利用して、自動車が道路を「感じる」ことを可能にし、クラウドプラットフォームを介して自動車と道路の両方に関する情報を提供している。同社は米国時間10月27日、2700万ドル(約30億円)のシリーズCを発表した。CEOのShahar Bin-Nun(シャハール・ビン-ナン)氏によると、同社はこの資金を、バーチャルセンサーのさらなる開発、製品ラインナップの拡大、クラウドプラットフォームの強化のために使う。目標を達成するために2021年、研究開発部門で最大20人の新規採用が必要になるという。


今回の資金調達により、Tactileの資金調達総額は4700万ドル(約53億円)になった。今回のラウンドはDelek Motorsが主導し、Goodyear Ventures(グッドイヤーベンチャーズ)とPorsche Venturesが戦略的投資を行い、Union Group、The Group Ventures、Zvi Neta(AEV)、Giora Ackerstein(ジョラ・アッカースタイン)氏、Doron Livnat(ドロン・リヴナト)氏も参加した。

ビン-ナン氏は「当社は基本的に、データの取得とデータの収益化の2つの部分に分かれています」とTechCrunchに語った。「データの取得は、シャシーのエンジンコントロールユニットに搭載されているTactile Processor(TP)と呼ばれる非常にユニークなソフトウェアで行います。TPを使用することで、安全性、パフォーマンス、運転の楽しさを向上させる、視覚に頼らない多数のバーチャルセンサーをOEMに提供することができます」と話す。

Tactileの2つめのビジネスモデルは、Tactile Cloud(TC)と呼ばれるクラウドプラットフォームを中心に展開されている。ここにバーチャルセンサーからのデータがアップロードされ、車両のDNAまたは路面のDNAを記述した触覚マップが作成される。これらのマップは、OEM、交通局、自治体、保険会社、タイヤ会社などに販売される。

ビン-ナン氏によると、Tactileが車両に搭載している23のバーチャルセンサーのうち、同社が取り組んだ主要なものはBMWとのタイヤグリップ推定で、これはクルマが走行している間に車両と道路の間のグリップを測定するというものだ。同氏によると、TactileのTPは年間250万台のBMW車に搭載されており、数百万台のクルマが受動的に路面をマッピングしていることになる。

タイヤのグリップ力を測定して道路をマッピングすることで、Tactileは道路の穴やひび割れ、滑りやすさ、降雪などをマッピングすることができる。これらの情報はリアルタイムに収集され、特定の地域を走行する他の車両にダウンロードされる。これにより、ドライバーは前もって劣悪な道路状況を知ることができ、安全性の向上につながる。また、分析結果は地図会社、道路管理者、車両管理者などの第三者が、道路のひどい場所を特定するためのレポートを介して共有することもできる。

Tactileは、クラウド上で収集したあらゆるデータで収益をあげるために、提携するOEM企業との売上高シェアモデルを採用している。ビン-ナン氏によると、Tactileはこれまでに自動車メーカー7社と30件以上の概念実証やパイロット試験を行ってきたが、量産レベルに達したのはBMWだけとのことだ。

「これまでは25人の会社でしたが、現在は40人になり、事業を拡大するには少し限界がありました」とビン-ナン氏は話す。「小さな会社がBMWのプロジェクトを進めていると、BMWへの実装や統合、要求を満たすためのテストなどで、すっかり忙しくなってしまうことが想像できるでしょう。これからは多くのOEMと並行して仕事ができるようにしたいのです」。

これは、より多くのサービスや知見を顧客に提供できるよう、他のセンサーも開発することを意味する。例えば、一部のOEMメーカーはタイヤの健康状態に関心を持っている。Tactileによれば、センサーは走行中のタイヤの溝の深さを極めて正確に測定することができ、タイヤの交換が必要かどうか、タイヤの種類や地形に応じてドライバーがどのような運転をすべきかをOEMに伝えることができるという。

「Goodyearがこの会社に投資した理由でもありますが、もう1つ重要なことはタイヤが硬すぎるかどうかを正確に測定できることです」とビン-ナン氏は話す。「彼らは今回のラウンドで投資した直後に、我々とテストを行いました。ですから、タイヤの健全度を測るバーチャルセンサーは、私たちが開発するバーチャル・センサーの中でも重要な種類のものであることは間違いありません。他のOEMは、重量推定や重心位置などを求めますが、これらは当社のバーチャルセンサーが感知し、機械学習や信号処理を使って多くのノイズを除去しています」。

その他のセンサーとしては、重量推定、アクアプレーニング、車両のヘルスセンサー、マイクロ衝突などがある。今回のシリーズCの資金調達により、Tactileはこれらのセンサーを構築し、OEMメーカーにアピールできるようにしたいと考えている。Tactileの目標は、すべての主要な自動車メーカーに入りこむことだ。そうすることで、大量のデータを収集、分析、収益化することができ、自律走行車など急成長中の技術との連携を図ることができる。

Goodyear VenturesのマネージングディレクターであるAbhijit Ganguly(アビジット・ガングリー)氏は声明文で「コネクテッドドライビングと自律走行は、ヒトとモノの移動の未来にとって重要な鍵となります。コネクテッドかつ自律走行の安全性と効率性を向上させるためには、タイヤデータが鍵となります」と述べた。

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画像クレジット:Tactile Mobility

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Nariko Mizoguchi

自動車メーカーにクラウドベースの分析を備えたダッシュボードを提供するUpstreamがセキュリティ強化のため約68億円調達

少し前のことになるが2015年に、研究者であるCharlie Miller(チャーリー・ミラー)氏とChris Valasek(クリス・バラセク)氏が、ソフトウェアの潜在的な落とし穴について自動車業界に警告し、自動車のサイバーセキュリティに関する法律作りを促すことを目的として、WiredのレポーターであるAndy Greenberg(アンディ・グリーンバーグ)氏が運転するJeep Cherokeeを遠隔操作でハッキングしたことがあった。ことはそれだけでは済まなかった。結果として、Jeepを所有するFiat Chryslerは140万台の車両をリコールし、さらに米国運輸省道路交通安全局に対し、1億500万ドル(約115億5000万円)の罰金 を支払うことになったのだ。

自動車サイバーセキュリティ企業Upstreamの共同創設者兼CEOのYoav Levy(ヨアブ・レビー)氏は、この出来事はJeepのブランドイメージに大きな打撃を与えただけではなく、同社にリコールにかかった費用として10億ドル(約1101億円)以上の損失を与えたと考えている。2021年8月下旬、イスラエルに拠点をおくUpstreamは、こうした遠隔操作によるハッキングが起きないよう保証するため、同社の自動車クラウドベースセキュリティを強化する資金として、6200万ドル(約68億円)のシリーズC資金調達を発表した。

「当社は、車両に送られるあらゆるデータを、メーカーのクラウドから、車両が受信する前の段階でモニターします。よい仕事ができた場合には、当社はそれらが車両に到達する前にブロックすることができます。当社は車両からアップロードされるコネクテッドデータやテレマティクスデータを分析し、携帯電話のアプリケーションや無線アップデートからデータを分析し、そのデータに異常が含まれているかどうかを探します」とレビー氏はTechCrunchに語った。

またUpstreamは、セキュリティオペレーションを強化するだけでなく、この資金を使ってデータ分析、保険テレマティクス、予測分析、ビジネスインテリジェンスにおけるサービスを拡充したいと考えている。レビー氏は、Upstreamが分析するデータの中にサイバーセキュリティとは無関係の異常を見つけることがよくあると言い、これをOEMを対象としたアプリケーションを立ち上げるさらなるインサイトを提供するチャンスだと考えている。

とはいえ、自動車のサイバーセキュリティ市場は2020年の19億ドル(約2162億)から2025年には40億ドル(約4400億)に増加すると予測されており、Upstreamはこの市場に専念するだけで、十分なのではないかと思われる。この成長の要因の1つとなっているのが、強化義務である。自動車基準調和世界フォーラム(WP 29)は、ヨーロッパ、日本、韓国で自動車を販売する自動車メーカーに、車両セキュリティオペレーションセンター(VSOC)で24時間年中無休で車両を監視することを要求するサイバー車両規制コンプライアンスを発行した。VSOCとは、インフラ、クラウド、データ、ファイヤーウォールを常時監視しているアナリストが大勢詰めている制御室である。米国にはそうした自動車業界へのサイバーセキュリティ関連の義務はないが、自動車メーカーはChrysler-Fiatと同じ運命をたどらならないよう、製品とブランドイメージを作りたいと望むようになっている。

Upstreamは自動車メーカーにクラウドベースの分析を備えたダッシュボードを提供する(画像クレジット:Upstream)

クラウドベスの分析ツールとダッシュボードに加え、VSOCサービスもUpstreamが提供するサービスだ。レビー氏によると、Upstreamは現在同社のプラットフォームで米国、ヨーロッパ、日本の6つのOEMのコネクテッドカー400万台近くにサービス提供しており、路上を走るコネクテッドカーが増えるに従ってこの数字は増え続けると同氏は期待している。

「コネクテッドカーは毎年どんどん増えており、OEMが収集するデータは毎年倍増しています。これは車両やクラウドだけの話ではなく、車両対車両のインフラ、はるかに洗練されたモジュールや、車両内部でエッジコンピューティングを行っているコンピューター、ADASシステム、コンピュータービジョン、レベル2の自動運転、これはまもなくレベル3になりますが、これらを含めた話しです。こうしたコネクティビティーの複雑さにより、ハッカーが車両を乗っ取り彼ら自身のコードを注入しようとする際に、付け入る隙となるソフトウェアバグが生じるのは避けることができません」とレビー氏は語った。

誰かが車両を遠隔操作で乗っ取り、大音響で音楽を開始したり、車両を壁に衝突させる、といったことを考えると恐ろしく感じるが、レビー氏によると、ほとんどのハッカーは暴力を振るいたいのではなく、また車両に興味があるわけでさえないという。彼らが欲しいのはデータである。これは特に荷物を運ぶフリートに顕著で、ランサムウェア攻撃という形をとる。

「これは、あなたがクリスマスイブに配達会社で働いていて、突然ドアのロックが解除できなくなったり、エンジンをかけることができなくなる、といった状態だと想像してみてください。これはビジネスにとって好ましい事態ではありません」。

レビー氏は、こういう事態にこそ、クラウドベースのセキュリティが役立つという。車両を一度に1台づつ見るのではなく、フリートとコネクテッドデバイスのすべて、そしてインターネットから入ってくるデータに悪意のあるものがないかを俯瞰的に見ることができるのだ。

Upstreamのビジネスの進め方は、自動車メーカーに対しこの技術が必要であると説得することが中心となっているが、レビー氏はフリートが来年以降同社にとって大きなチャンスになるという。

今回のラウンドで、同社は2017年の設立以来、総額1億500万ドル(約115億7000万円)を調達した。シリーズCは、三井住友海上保険が主導し、I.D.I.Insurance、57 StarsのNextGen Mobility Fund、La Maison Partnersが新規に参加している。既存の投資家であるGlilotCapital、Salesforce venture、Volvo Group Venture Capital、Nationwide、DelekUSなどもこのラウンドに参加した。

レビー氏は、今まで関わりのあった投資家の一部は顧客でもあると述べた。Upstreamは、Alliance Ventures(Renault、Nissan、Mitsubishi)、Volvo Group Venture Capital、Hyundai、Nationwide Insurance、Salesforce Ventures、MSI、CRV、Glilot Capital Partners、およびManivMobilityからもプライベートに資金提供を受けている。

画像クレジット:Upstream

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Dragonfly)

GMは2030年までにサブスクをNetflix級のビジネスにしようとしている

GM(ゼネラルモーターズ)は2021年の車載サブスクリプションサービスの売上が20億ドル(約2230億円)近くに達し、2029年末には250億ドル(約2兆7800億円)とNetflixやPeloton、Spotifyに匹敵する規模になるとの予測を公表した。

GMのクルマは米国とカナダで1600万台走っている。現在その4分の1にあたるおよそ420万台のオーナーが有料サブスクリプションサービスを利用していると、米国時間10月6日の投資家向けイベントのプレゼンテーションで同社のイノベーション&グロース担当SVPであるAlan Wexler(アラン・ウェクスラー)氏が言及した。

同社はサブスク利用者の増加を見込んでいる。特に、2023年に同社のエンド・ツー・エンドのプラットフォームであるUltifiが公開されてサブスクリプションプラットフォームが強化され、Over The Airでソフトウェアをアップデートできるようになったら増加が加速するとの予測だ。

関連記事:GMが新しいソフトウェアプラットフォーム「Ultifi」を2023年から生産される次世代車に搭載

GMの現在のサブスクリプションプラットフォームは、同社の子会社で車のセキュリティ、緊急サービス、ナビゲーションを提供するOnStarなどのサービスに対応している。

同社によれば、顧客は全般に複数のサービスを選びたいと希望しているという。同社は数千人の顧客を対象とした調査で、45種類の機能やサービスのオプションを提供した。顧客が選択したプロダクトやサービスは平均で25種類だった。

ウェクスラー氏は「我々の調査では、魅力のあるサービスを適切に組み合わせれば、お客様はプロダクトやサービスに平均で月額135ドル(約1万5000円)を支払うつもりがあるとの結果が出ています」と述べた。

GMは2030年までに米国内で3000万台の車にコネクテッドカー技術が搭載され、サービスの市場は800億ドル(約8兆9200億円)規模になると予測している。ウェクスラー氏は、GMは売上をさらに200億~250億ドル(約2兆2300億〜2兆7900億円)増やすことを目指しており、そのうちの60億ドル(約6700億円)は保険、それ以外はワンタイムの購入とサブスクリプションになるだろうと述べた。

OnStarとは別に、GMは2021年4月に公開したアプリベースの車載ナビゲーションソリューションでAlexaの音声コントロールで起動できるMaps+に関心を示している顧客をターゲットにする意向だ。また、法人顧客からも売上を得る大きなチャンスがあると見ている。特に既存のサービスであるOnStar Vehicle Insightsでは、GMとGM以外の車両が混在していても車両を管理できる。

ウェクスラー氏は次のように述べた。「このサービスだけで巨大な市場のニーズに応えられます。数十万台のコネクテッドカーから何百万回、何億マイルもの移動のデータが集まり、こうしたデータがすべて多大な収益化の機会となります。当社は扱うべきデータの量で群を抜いており、これを活用する計画です」。

ウェクスラー氏は、サブスクリプションサービスが同社の「成長の機会と経常収益の基盤」になるだろうと述べた。その詳細や初期のKPIは今後公表されるものと見られる。

画像クレジット:Steve Fecht / General Motors

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Kaori Koyama)

GMが新しいソフトウェアプラットフォーム「Ultifi」を2023年から生産される次世代車に搭載

General Motors(ゼネラルモーターズ)は「Ultifi(アルティファイ)」と名付けられた新しいエンド・ツー・エンドのソフトウェアプラットフォームを、2023年から生産が始まる次世代車両の一部に搭載すると発表した。これにより、ドライバーがサブスクリプションで提供される車載機能を利用したり、無線アップデートを使って新しいアプリケーションやサービスを導入することが可能になるなど、広範囲にわたるさまざまな機能を提供できるようになると、同社の経営陣は述べている。

このソフトウェアプラットフォームによって、オーナーは車両の全体の機能やセンサーにまでアクセスできるようになる。例えば、後部座席に子どもがいることをカメラが検知すると、自動的にチャイルドロックが作動するように設定できる。また、ドライバーはUltifiを介して、ハンズフリー運転が可能なGMの先進運転支援システム「Super Cruise(スーパークルーズ)」などのサブスクリプションサービスを利用することができる。

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「これは、当社のソフトウェア戦略における大きな次のステップです」と、GMのソフトウェア定義車両担当VPであるScott Miller(スコット・ミラー)氏は、プレスブリーフィングで語った。「今日の自動車はソフトウェアによってさまざまなことが可能になっています。Ultifiではソフトウェアによって自動車が定義されることになるでしょう」。

Ultifiの機能は、GMの「Vehicle Intelligence Platform(VIP、ビークル・インテリジェンス・プラットフォーム)」上に組み込まれる。VIPは、車両のデータ処理能力を向上させるハードウェア・アーキテクチャーで、これを採用したモデルではすでに無線によるソフトウェアアップデートが利用できるが、Ultifiでは車載モジュールが1つのプラットフォームに集約されるため、より迅速なアップデートが可能になるという。

Ultifiは、GMの一部のインフォテインメント・システムに搭載されている「Android Automotive(アンドロイド・オートモーティブ)」OSとともに組み込まれることになる。なお、車載システムのOSとしての役目を担うAndroid Automotiveは、OS上で作動する副次的なインターフェイスである「Android Auto(アンドロイト・オート)」とは別物だ。UltifiとAndroid Automotiveの役割の違いは、機能と可用性にある。「Android Automotiveは、車内における機能の一部を提供するものです」と、ミラー氏は説明する。「Ultifiは、より全体に渡るアンブレラ戦略です」。

Androidと同様に、Ultifiも開発者向けのプラットフォームとして広く使われているLinux(リナックス)をベースにしている。GMがLinuxを選択した理由について、ミラー氏は「ある時点で、私たちは本当にこれをオープンにしたいと思っています」と述べ、将来的にはサードパーティの開発者が車内アプリを作成できるようにしたいと語った。

まだ開発中のUltifiは、2023年より展開を開始する予定であり、利用できるのはそれ以降に生産される車両に限られる。システムの要求する処理能力を車両が備えている必要があるからだ。ミラー氏によれば、スマートフォンに異なる購入プランが用意されているように、消費者は車両を購入するか、あるいはいくつか用意されるアクセスプランを購入するか、選べるようになるという。つまり、価格も購入プランもさまざまということだが、GMは具体的な内容を説明しなかった。また、同社はこの新しいプラットフォームがどのくらいの収益をもたらす見込みであるかということも明らかにしなかった。

今回のGMの発表は、大手自動車メーカーが新型車をこれまで以上にコネクテッドにするために行っている最新の動きの1つである。ゼネラルモーターズとFord(フォード)の両社は、ソフトウェアやサブスクリプションサービスによる収益機会について議論を重ねている。Ultifiはこれらの事業を構築するためのさらなるステップだ。

「私たちは自動車から離れようとしているわけではありません」と、ミラー氏はいう。「私たちは事業を拡大しているのです。他のアプリケーションのために、技術を拡張・活用する新しいビジネスラインの創出は、我々のコアの代わりになるものではなく、(コアに)追加されるものです」。

画像クレジット:GM

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

スマホ事業を閉鎖したLGが自動車向けサイバーセキュリティのCybellumを264億円で買収、

韓国の大手テック企業であるLG Electronics(LGエレクトロニクス)は、かつて携帯電話分野でトップシェアを誇っていたが、現在は同事業を縮小している。同社は、次世代の自動車向けハードウェアおよびサービスという新分野への意欲の表れとして、イスラエルの自動車用サイバーセキュリティ専門企業であるCybellum(サイベラム)を買収すると発表した。Cybellumは「デジタルツイン」と呼ばれる手法を用いて、コネクテッドカーのサービスやハードウェアの脆弱性を検出・評価する。

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LGによると、この買収は複数の部分からなっている。

まず、1億4000万ドル(約154億円)でCybellumの株式の64%を取得する。次に2000万ドル(約22億円)をSAFE(Simple Agreement for Future Equity)ノートの形で「第4四半期の取引プロセスの終了時に」拠出する。残りの株式は「近い将来」(日付の指定なし)に取得する予定で、これは最終的なバリエーションと投資が確定する時でもある。

現在のところ、バリエーションが一定であれば、この取引の総額は約2億4000万ドル(約264億円)になると見込まれる(市場やCybellumの業績が影響する可能性もある)。

LGは、自動車関連のスタートアップへの投資家としての実績を積み重ねているが、今回の買収は、イスラエル(Cybellumはテルアビブ拠点)での初の買収となる。この取引は、LGがハードウェアだけでなく、自動車業界にソフトウェアソリューションを提供することに興味を持っていることを示している。

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「自動車業界においてソフトウェアが重要な役割を果たしていることは周知の事実であり、それにともなって効果的なサイバーセキュリティ・ソリューションが必要とされています」とLG Electronicsのビークル・コンポーネント・ソリューションズ・カンパニーのKim Jin-yong(キム・ジンヨン)博士は語る「今回の取引は、LGのサイバーセキュリティの強固な基盤を一層強化するものであり、コネクテッドカーの時代に向けてさらに準備を進めるものです」。LGは以前からこの分野に注目していた。

この取引は、Blumberg Capital、Target Global、RSBG Ventures(ドイツの業界大手RAGのベンチャー部門)など、Cybellumの投資家にとても良いリターンとなる。Cybellumはこの取引に先立ち、1400万ドル(約15億4000万円)強を調達していた。

Cybellumは、イスラエル国防軍のサイバーセキュリティ部門のOBであるSlava Bronfman(スラヴァ・ブロンフマン)氏とMichael Engstler(マイケル・エングストラー)氏の2人が2016年に創業した。同社は長年にわたり、ジャガーランドローバーや日産自動車など、同社の技術を利用する大物顧客を数多く獲得しており、提携先にはハーマン、豊田通商、PTCなどが名を連ねている。

ブロンフマン氏は電子メールによるインタビューで、当面はこれらの企業との協力関係を継続し、独立した事業体として運営していく方針を明らかにした。

Cybellumの技術とそのLGによる買収は、コネクテッドカーとサイバーセキュリティの世界におけるいくつかの重要な傾向を示している。

コネクテッドカーは、悪意のあるハッカーにとって新たな攻撃対象だ。しかも、自動車に搭載されている複数の部品や、自動車という大きなエコシステムの中で動いている多数のOEMや自動車関連の会社を考えると、攻撃対象として非常に複雑だ。自動車がより賢く、よりつながりやすく、最終的にはより自律的に進化していけば、その複雑さは増していく一方だ。

大きな課題の1つは、これらすべてに共通するサイバーセキュリティへのアプローチを開発することだった。LGは、この市場での既存のプレイヤーとして、その地位をさらに高めたいと考えており、自社の将来のビジネスと、業界の幅広いサービスニーズに対応するための投資を行っている。

Cybellumのアプローチは、システムの「デジタルツイン」を作り出すことだ。これは、エンタープライズITヘルスケア世界でも採用されている手法で、脅威を特定・評価すべく全体像を把握するためにモニタリングを行う。個々のコンポーネントの断片化を解消する方法の1つであり、車のシステムに負担をかけずにリアルタイムでイベントを監視することができる。

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「これは何よりもまず、セキュリティへの投資です」とブロンフマン氏はいう。「Cybellumはサイバーセキュリティの会社です。LGは大手自動車サプライヤーの1つとして、現在のコネクテッドビークルの時代や、自動運転車への移行に不可欠な要素であることを理解しているため、サイバーセキュリティを優先しています」。

LGは現在、Cybellumの提携先ではないが、ブロンフマン氏は、両社の最初の統合は2022年に実現する可能性が高いと述べた。

画像クレジット:Joan Cros/NurPhoto / Getty Images 

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(文:Ingrid Lunden、翻訳:Nariko Mizoguchi

コネクテッドカーのビジネスモデル予測、日産、富士通らのキーマンはどう考える?

安全な運転の促進や効率的な保険の提供など、モビリティの安全性と利便性を向上させるコネクテッドカー。しかし、その活用方法やビジネスモデルの未来は未知数だ。そこで、フロスト&サリバンのモビリティ担当プリンシパルコンサルタントであるPaulo Mutuc(パウロ・ムトゥック)氏がモデレーターとなり、HERE Technologiesグローバル・セールス・ディレクター白石美成氏、Gojekモビリティ関連製品担当役員Vikrama Dhiman(ヴィクラマ・ディマン)氏、日産自動車コネクティド技術開発&サービスオペレーション部部長の村松寿郎氏、富士通中央および東ヨーロッパ地区コネクテッド・サービス、製造、モビリティ部門担当役員Tobias Geber-Jauch(トビアス・ガバー・ヤウ)氏がコネクテッドカー活用の未来を語り合った。

本記事はフロスト&サリバン主催『インテリジェントモビリティサミット2021 ゼロへのイノベーション』中のセッションの一部講演を編集、再構成したものとなる

日本、米国、中国で求めるものが違う

コネクテッドカーは世界的にどういった動きを見せているのだろうか。モバイルサービスにデータを提供するHERE Technologiesの白石氏によると、インドでは80%、中国では76%が「コネクテッドカーは有用」と捉えているという。

白石氏は「コネクテッドカーの活用促進には政府の政策も大きな役割を果たします。インド政府はMtoMを支援しているため、コネクテッドカーの体験も良くなっていくでしょう」と話す。

日産自動車の村松氏は、日本、米国、中国におけるコネクテッドカーの需要の違いに着目する。

村松氏は「コネクテッドカーへの取り組みは日米ではほぼ同時期にスタートしています。米国では、安心・安全のため、テレマティクスのためのコネクテッドカーという側面が強い。しかし、日本ではあまりそういう需要はありませんでした。しかし、最近ではユーザーもコネクテッドカーの有用性を理解し始めています。中国のコネクテッドカーはガジェット的な意味合いが強いですね」と話す。

Gojekのディマン氏はインドと中国の市場の性質の違いを指摘する。インドのコネクテッドカー市場は市場の期待で動き、中国の市場は政府からの支援で動くという。

コネクテッドカーは誰のためのもの?

富士通のガバー・ヤウ氏はコネクテッドカーの普及率が低いことに注目する。「コネクテッドカーはプレミアムカーの特権のようなものです。しかしながら、ユーザー全員のクルマがプレミアムカーというわけではありません。シンガポールではほとんどのクルマがプレミアムカーなので、逆にコネクテッドカーの普及率が高くなります」と解説する。

では、コネクテッドカーを普及させるには何が必要なのか。ガバー・ヤウ氏は適切なビジネスモデルとユーザー向けの価値創出が必要だと語る。

「自動車メーカーは『データを使って儲けたい』と考えます。シンガポールでは、新しい交通・物流が必要でした。だからこそコネクテッドカー活用が進んでいます。規制によっては、自動運転のトラックが街を走ることになるかもしれません。しかし、1人ひとりのドライバーには、物流の変革なんてどうでもいいことです。自動車メーカーにとって『データを使って儲ける』ことには価値がありますが、ユーザーには価値がないのです。『データを使って儲ける』にはデータが必要ですが、個人個人のユーザーに対する利益が発生しないなら、彼らがデータを渡したくなる理由も発生しません。ユーザーも利益を得るビジネスモデルが必要です」とガバー・ヤウ氏。

白石氏は「Here Technoligiesは位置データを提供する企業ですが、もし自動車メーカーのデータを利用できれば、当社のサービスに生かすことができます。これは、自動車メーカーからすれば、データのマネタイズの側面もあります。しかし、自動車メーカーのデータがユーザーから収集されるものだとしたら、そのデータの所有者は誰なのでしょうか?これも考える必要があります」と問題を提起する。

スーパーアプリはゲームチェンジャーになるか

ここでモデレーターのムトゥック氏は「スーパーアプリとコネクテッドカーの今後はどうなっていくと考えますか?」と質問した。

スーパーアプリとは、1つのアプリの中でさまざまなミニアプリを開くことができるアプリケーションを指す。1つのスーパーアプリの中で数多くのことができるため、プラットフォームとしても機能する。

ディマン氏は「公共交通のデータを使ってどこに何があるのか、どこを通るのかといったことを把握できれば、スーパーアプリの中に車の移動に関するアプリも入ってくるでしょう」と話す。さらに「こうしたデータ収集がユーザーに何をもたらすのかをきちんと見せることができれば、データを持つ企業にとって大きなリードになもなるでしょう」という。

白石氏は「スマホは顧客との最初の接点です。自動車メーカーとスーパーアプリがどう手をつなぐのかが今後重要になります。これには、自動車メーカーが社内のディスプレイを通して、どうユーザーとコミュニケーションをとるのかという問題も含まれます」と指摘する。

さらに白石氏はミニアプリの重要性にも触れた。自動車メーカーがコラボレーションするスパーアプリを選定する際、ミニアプリが手がかりになる可能性があるからだ。さらに、スーパーアプリに搭載されるミニアプリが充実すれば、スーパーアプリがプラットフォームとしてさらに強力になるため、スーパーアプリだけでなく、ミニアプリの内容も考慮することが重要だという。

村松氏は、日産が展開する「Nissan Connect」を例に、日産とアプリの関係について話す。Nissan Connectは通信機能を使い、最新の交通情報を基にした最速ルートをドライバーに提供するなど、多様な機能を備えたサービスだ。

「当社にはNissan Connectというアプリがありますが、これを自動車業界ではないところと統合するイメージはつきにくいのが現状です。外のエコシステムとどう繋がるかは大きなテーマです。例えばエネルギー業界とLeafのデータを共有することができたら、ダイナミックに電力価格を設定することも可能でしょう」と村松氏は語る。

私たちはクルマを所有しなくなる

モデレーターのムトゥック氏は最後に「今後のコネクテッドカーの行方についてどう予測しますか?」と質問した。

ディマン氏はまずコネクテッドかーには5つの側面があり、それをまず考える必要があると話す。その5つとは、「1. vehicle to Infrastracture(クルマ-インフラ)」「2. vehicle to vehicle(クルマ-クルマ)」「3. vehicle to cloud(クルマ-クラウド)」「4. vehicle to pedestrian(クルマ-歩行者)」「5. vehicle to X(everything)(クルマ-すべて)」だ。

「では、こうした側面から、コネクテッドカーをどう活用するのか。例えば夜外食するのにクルマで出てきた時、パーキングが1時間見つからなかったら、ディナーが食べれなくなります。自動車がドライバーなしでパーキングを見つけ、駐車できるなら、ユーザーはゆっくり夕食を楽しめます。コネクテッドカーの話をすると、コネクテッドシティの話になりがちですが、大事なのは今の例のようにユーザー優先の発想です。これが今後重要になるでしょう」とディマン氏。

村松氏は自動車業界ではない業界との連携の重要性を指摘。「GAFAやBATHなど、IT業界との連携が重要ですが、10年後のIT業界がどうなっているかは見えませんね」と回答。

白石氏は「クラウドデータが自動車メーカーを含めたエコシステム全体で重要になります。クラウドソースのデータは常に更新されなければいけません」という。

ガバー・ヤウ氏は「10年、20年、30年後と、ビジネスモデルはどんどん変わっていきます。私たちはクルマを持たず、病院などの『行先』が私たちのところに迎えのクルマを出すようなパッセンジャーエコノミーになっていくでしょう。さらに、何か欲しい商品があったとき、商品の販売者の方からクルマで商品が持って来られるようなこともあり得ます。クルマを所有することをやめ、サービスとしてクルマを使うような社会が訪れるでしょう」と今後の展望を予測した。

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カテゴリー:モビリティ
タグ:コネクテッドカーHERE TechnologiesGojek日産自動車富士通テレマティクス

コロナ禍でモビリティも変化、いま押さえておくべき5つのトレンドとは?

人の移動を支えるモビリティは、日々変化している。移動のあり方、移動のニーズも変わってきた。Frost & Sullivan(フロスト&サリバン)でアジア太平洋地区モビリティ部門担当アソシエイト・パートナーを務めるVivek Vaidya(ヴィヴェック・ヴァイジャ)氏は「コロナ禍はモビリティトレンドを変化させました」と語る。

ヴァイジャ氏が明かす、5つのモビリティトレンドとは何か。本記事はフロスト&サリバン主催『インテリジェントモビリティサミット2021 ゼロへのイノベーション』中のセッションの一部講演を編集、再構成したものとなる。

「三密回避」で広がった「脱通勤」のライフスタイル

ヴァイジャ氏が最初に挙げる最初のトレンドは「脱都市化」だ。新型コロナウイルスが広まってからというもの、三密回避のために多くの人が「家で働く」ライフスタイルを始めた。企業のマインドセットも変わり、ワークライフバランスの定義も変わった。

同時に、在宅ワークを可能にするツールの活用が進み、働くためのオフィスは必須ではなくなったため、オフィスの縮小やシェアオフィスの活用も進んでいる。生活エリアとして都市部ではなく、郊外を選ぶ人も出てきている。

通勤が必要なくなると、移動の目的が変わり、移動の形にも影響する。また、公共交通機関の需要も変わる。

ヴァイジャ氏は「通勤が減ると、公共交通機関で運ばれる人数が減ります。そのため、シェアードモビリティなど、需要に合わせて運用できるソリューションの必要性が高まります。さらに、より細かな目的に即したモビリティの需要が高まり、自転車やバイクなど、規模の小さな移動手段の需要も出てきます」と語る。

モビリティの競争が変革される

2つ目のトレンドは「新しい価値創造モデル」だ。

現在、モビリティ周辺の競争のありようは変化しており、ティア1企業は現状より広い役割を果たそうとしている。スタートアップの競争も激化している。さらに、製品の差別化要素はクルマ自体のパワーから、コネクティビティと自動運転へと変化しているという。

ヴァイジャ氏は「モビリティにおける競争の中心は製品そのものではなく、サービスやソリューションに移り変わっています」と指摘する。

また、テクノロジーのライフサイクルはどんどん短くなりながら、そのコストは上がってきている。研究に対するリソースの重要性は増し、自動車メーカーにとって規模の経済の重要性は増すばかりだが、同時に成功の不確実性は高まっている。

「この状況を打開するには、競合企業の協力が不可欠です。コネクティビティと自動運転はバリューチェーンとテクノロジーの中で進化していますが、競合企業同士が手を組むことで、さらに成長しようとしているのです」とヴァイジャ氏。

「新しい価値創造モデル」は、こうした競合企業同士の協力関係の構築から生まれているという。多様なバリューチェーンが集結し、企業の垣根を越えたコラボが活発化している。

モビリティもサブスクリプションモデルへ

3つ目のトレンドは「ビジネスモデルの改革」だ。

これまでの自動車産業では、クルマを販売した自動車メーカーの利益、自動車メーカーに部品を販売したティア1企業の利益というように、バリューチェーンの1つ1つがそれぞれで利益を出していた。しかし、この形に問題が生じてきている。

ヴァイジャ氏は「まず、バリューチェーンの利益が圧力にさらされています。サービスや部品に対する利益が縮小。さらに在宅ワークが増え、通勤が減ったことなどの影響で、これまでの自動車を徐々に買い替え、車種のグレードを上げていくような消費スタイルが変化しつつあります。それにともない自動車メーカーはビジネスモデルを変革する必要があるのです」と問題を指摘する。

では、どのように変革していけば良いのか。ヴァイジャ氏は「サブスクリプション型サービスの導入が鍵です」という。

実際、自動車メーカーはAndroidベースのOSや独自OSを導入してハードウェア、ソフトウェア、アプリケーションのシームレスな統合を果たそうとしている。こうした統合ができれば、自動車メーカーは顧客と長期間、直接的な関係を持つことができる、

ヴァイジャ氏は「例えば、顧客がクルマを買って、そこに駐車アプリがインストールされており、そのアプリに対してサブスクリプション料金が発生するといったモデルが可能です」という。

では自動車メーカーとティア1企業は何をすべきなのか。サブスクリプション型モビリティビジネスの鍵はコネクテッドカーとサービスだ。自動車メーカーはコネクテッドカーに焦点を当て、コネクテッドカーの普及率上昇に務める必要がある。

「コネクティビティのための装置や関連するコストは、コストではなく投資と捉えるべきです。これがあれば自動車メーカーもティア1企業も顧客とつながり続けることができ、マネタイズの機会を持ち続けられます」とヴァイジャ氏。

このような装置から得られたデータを活用し、適切なアプリケーションを提供することで、自動車メーカーとティア1企業はアプリケーションをインストールした車両から継続的なキャッシュを手にすることができる。

ヴァイジャ氏は「こうした方法で既存のビジネスモデルのリスクを回避し、キャッシュフローを改善することができます」と話す。

「自動車産業」のマインドセットから「モビリティ」のマインドセットに

4つ目のトレンドは「カスタマーインターフェイスの再構築」だ。

現在、自動車メーカーはカスタマーインターフェイスをコントロールできる立場にいる。そのため、自動車メーカーは自社のブランドの特徴などを意のままに世に送り出すことができる。しかし、EV(電気自動車)が広まることで新しいプレイヤーが市場に登場し、伝統的な自動車メーカーに挑むようになってきた。さらに、シェアードモビリティやMaaS関連企業がカスタマーインターフェイスの主導権を握ろうとしている。その上、顧客がこれまで「運転すること」で得てきたブランド体験を、自動運転車がなくそうしている。

ヴァイジャ氏は「この状況に対応するには、まず『自動車産業』のマインドセットから『モビリティ』のマインドセットに切り替えることが必要です。これはつまり、製品中心の考えから、サービス中心の考えに移行することです。スタートアップとコラボレーションし、新しいバリュープロポジションに投資し、技術と自動運転を受け入れて独自のサービスを提供することで、サブスクリプション型のビジネスに変化することができるでしょう」と対応方法を提示した。

あらゆる『ゼロ』が唯一の未来

5つ目のトレンドは「ゼロカーボンフットプリント」だ。これを推進しているのはスマートシティだ。「自動車メーカーはこれを無視することはできない」とヴァイジャ氏はいう。再生可能エネルギーへの投資額は上昇し、持続可能性は無視できないテーマだからだ。

「ICE(内燃エンジン車)も2040年くらいまでには使われなくなるでしょう。あらゆる『ゼロ』が唯一の未来です。カーボンフットプリントもゼロ。事故もゼロ。死者もゼロ。100%でリサイクルのゴミもゼロ。欠陥ゼロ。リコールゼロ。100%ESGに則る。企業は倫理を問われているのです。紹介した5つのトレンドを見直し、『何が問われているのか』『何をみられているのか』を考えながら、今後のモビリティを前進させてください」とヴァイジャ氏は語った。

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カテゴリー:モビリティ
タグ:新型コロナウイルス電気自動車自動運転サブスクリプションカーボンフットプリント二酸化炭素ESGコネクテッドカー

コネクテッドカーデータ分析のWejoが損保ホールディングスやマイクロソフトと提携

コネクテッドカーデータのスタートアップであるWejo(ウィージョ)が、世界中の何百万台というコネクテッドカーからのデータを収集・保存・分析するのにMicrosoft、Palantir、損保ホールディングスと提携すると発表した。

WejoはGMの出資を受けており、今回のニュースは特別買収目的会社(SPAC)Virtuoso Acquisition Corp.との合併を通じて上場するという発表に続くもので、SPAC合併は2021年後半に完了する見込みだ。Microsoftと損保が拠出する2500万ドル(約28億円)、そしてGMとPalantirがすでに約束している投資と合わせると、Wejoの私募増資は1億2500万ドル(約138億円)となる。

関連記事:GMやPalantirが出資するコネクテッドカーデータ分析のWejoがSPAC経由で上場へ

PalantirはWejoの戦略的投資家だった。2019年にPalantirは損保ジャパンと日本で合弁会社を設立した。この合弁会社との提携によりWejoは日本で、そしておそらくさらに広範なアジア太平洋地域でコネクテッドカーデータを収集できるチャンスを手にする。Wejoはすでに韓国で対象車両を抱えているが、同社の創業者でCEOのRichard Barlow(リチャード・バーロー)氏によると、扱うデータの95%は米国からのものだ。損保はPalantir Foundryデータ分析プラットフォームを使ってWejoのコネクテッドカーデータを分析する、とWejoは説明する。

「世界で販売されている車両の大半はつながる能力を持っています。ですので膨大なチャンスがあります」とバーロー氏はTechCrunchに語った。「サプライベースの車両約5000万台のうち1100万台が当社のプラットフォームにあります。また提携するOEM17社が当社のプラットフォームを活用していて、1日あたり160億ものデータポイント、ピーク時は1秒あたり4万のデータポイントを処理しています。だからこそMicrosoftの支援を受けてAzureクラウドプラットフォームに移行することに胸躍らせています」。

WejoはGMやDaimler、Hyundaiといった車両メーカーとの提携の元にニューヨークを走行しているクルマの70%、カリフォルニアの車の6%、デトロイトの車の20%をとらえることができる、とバーロー氏は話す。Wejoは所有者の同意を得ている車両から収集した未加工の匿名化されたデータを企業やデベロッパー、政府に提供したり、データ分析を行なったりすることができ、これはMicrosoftとの提携が役立つ分野でもある。

「Microsoftは、我々が実際にOEM、そしてコネクテッドカーのデータを使いたい鍵を握る産業にこれまでよりもすばらしいプロダクトを実際に提供するために、どのように機械学習とAI能力を活用するかについて、本当に説得力のあるソリューションを思いつきました」とバーロー氏は話した。「ですので困難な仕事をこなすMicrosoftのAzureは当社の事業を確実にスピードアップするでしょう」。

Wejoによると、初期の応用には交通ソリューション、リモート診断、統合決済、広告、小売、ロジスティックなどが含まれる。WejoとMicrosoftはまた、MicrosoftのマッピングソリューションのためにWejoを使うという潜在可能性についても協議している。マッピング企業は往々にしてWejoのデータの購入者であり、保険会社の利用も見込まれる、とバーロー氏は話す。

「車両2台が同時に、そしてリアルタイムに入ってくるケースが1100万件ありました。当社はどちらの車両からもデータを獲得します。そして衝突や、車両の関わり前後の動きの特徴をとらえて理解し始めます」と同氏は話した。

Wejoは、各ドライバーがどのようにブレーキを踏んだのか、どのエアバッグが作動したのか、衝突時のスピード、どのセンサーが壊れたのかなど、クルマの衝突を再現することができるデータを収集する。そして保険会社が保険請求や回収プロセスを迅速に処理できるよう、そしてより精度を高められるよう、こうしたデータを保険会社と共有することができるとバーロー氏は説明した。

さまざまな状況での人間のドライバーの行動を示すこのデータはすべて過去7年で集められ、このデータにより自動運転技術を開発する企業にとってWejoは魅力ある存在となっている。

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タグ:Wejoコネクテッドカー

画像クレジット:Getty Images

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Nariko Mizoguchi

GMやPalantirが出資するコネクテッドカーデータ分析のWejoがSPAC経由で上場へ

GMやPalantirが出資するコネクテッドカーデータスタートアップのWejoがSPAC(特別買収目的会社)のVirtuoso Acquisition Corpとの合併による上場を計画している。米国時間5月28日に当局に提出した書類の中で発表された合意では、合併会社の評価額は負債含め8億ドル(約879億円)となる。

この取引でWejoは3億3000万ドル(約363億円)を調達する。内訳はVirtuosoからの現金2億3000万ドル(約253億円)とPIPE(上場企業の私募増資)での1億ドル(約110億円)だ。Wejoによると、既存の戦略投資家であるPalantirとGMがこの取引をまとめた。Wejoは2社の投資額を開示しなかった。投資家へのプレゼン資料によると、現株主はWejoの64%を保有する。

第3四半期に予定されている合併処理完了後は同社はNASDAQに上場する。

Wejoは車両に取り付けられたセンサーからリアルタイムにデータを収集するために自動車メーカー、そしてトップのサプライヤーと協業している。同社のクラウドプラットフォームはデータを集めて正規化し、そうした洞察を顧客と共有する。2030年までに同社はコネクテッドカーのデータマーケットが5000億ドル(約55兆円)規模に、サービスが実際に提供しうる市場規模は610億ドル(約6兆7000億円)になると予想している。これらの数字は世界中のコネクテッドカーが6億台超という予測に基づいている。

Wejoは、取引による現金収入で5カ年計画に必要な資金のすべてを賄い、また自動車メーカーやOEMのオンボーディングの迅速化やサービス展開の継続、新規マーケットへの拡大などいくつかの成長目標達成にもあてる。
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タグ:WejoSPACコネクテッドカー

画像クレジット:Ina FASSBENDER / AFP / Getty Images

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(文:Kirsten Korosec、翻訳:Nariko Mizoguchi