M&Aなしに大企業は競争力を維持できるのか?

【編集部注】執筆者のJoanna GlasnerCrunchbaseのリポーター。

目まぐるしく変化するテクノロジー集約型のビジネスを行っている大企業が、スタートアップを買収するというのはよく見る光景だ。結局のところ彼らは、新市場に参入するためや革新的であり続けるために起業家精神溢れる人材を必要としており、そのために必要なお金も持っている。

これがベンチャーキャピタルやスタートアップの界隈でのM&Aに関する通説だ。もっと言えば、これこそがベンチャービジネスの在り方なのだ。IPOの方が注目を集めがちな一方で、事業売却がスタートアップのエグジット、そしてベンチャー投資のリターンの大半を占めている。

しかし、もしもこの考え方が間違っているとしたらどうだろうか?もしも血気盛んなスタートアップを買収することなく、日々変化する環境にうまく順応しながら競合に打ち勝ち、巨額の時価総額を維持することができるとしたら……

この仮説を検証するため、私たちはCrunchbaseのデータを使い、買収した企業の数が少ない大企業をリストアップした。なお、リストの作成にあたってはテック企業にフォーカスを当てながらも、テクノロジーへの投資を積極的に行なっている企業であれば、小売や消費財、物流など業界を問わず調査の対象とした。

調査結果からは、革新的だとされている企業の多くが、実際はあまりM&Aを行なっていないということが明らかになった。中には以前M&Aを行なっていた企業もあったが、彼らも最近ではその数を減らしているか、もしくは全く企業買収を行わなくなっている。さらに、これまでに一度も他社を買収しようという動きさえ見られない企業も存在した。

以下が、あなたのスタートアップを買収する可能性が少ない大企業のリストに含まれている有名企業の例だ。

Netflix

どちらかと言えば、Netflixはたくさん企業を買収していそうな感じがする。600億ドルの時価総額や革新的でリスクを恐れない企業文化に加え、さらに彼らには利益の何倍もの価格で株式を売買する投資家がついている。それでもCrunchbaseのデータによれば、カリフォルニア州ロスガトスに拠点を置く動画ストリーミングサービス大手の同社は、これまで一度もスタートアップを買収したことがない(少なくとも公開されている情報をもとにすると)。

Netflixは企業買収を行っていない一方で、コンテンツやライセンス関連の契約には多額のお金をつぎ込んでおり、4月にはストリーミングプラットフォームのiQIYIと、中国初のライセンス契約を締結した。さらに彼らは、NBC Universalを含むハリウッドのスタジオとも多数のライセンス契約を結んでいる。

Nvidia

昨年グラフィックチップメーカーの株価が急騰し、Nvidiaの時価総額も最近600億ドルを超えた。

しかし同社が過去6年間で買収した企業の数はたった1社だ。それ以前は1年に1社のペースでM&Aを行っていたNvidiaだが、公開されている情報のかぎりだと、最後に企業を買収したのは2015年のことで、しかもその内容は、TransGamingと呼ばれるシードステージのクラウド・ゲーム・スタートアップを375万ドルで買収したという小規模なものだった。

Crunchbaseの情報によれば、Nvidiaは2002年から2011年の間に、大型買収を含め1年に1回M&Aを行っていた。最後の大型案件は2011年のことで、彼らはモバイル・ブロードバンド・モデムを開発するIceraを3億6700万ドルで買収していた。

もしもスタートアップを買収していなかったらNvidiaの競争力に悪影響が出ていたかどうかというのは、なかなか証明するのが難しい。最新の収益報告書によれば、同社は2クォーター連続で売上が50%伸びており、昨年の純利益は約17億ドルだった。

Texas Instruments

Texas Instrumentsは、シリコンバレーで話題にあがらない企業のひとつだ。おそらくこれには、ダラスに拠点を置いているということや、同社が1950年代から営業しており、1970年代にリリースされた計算機のブランドとしてよく知られていることが関係しているのだろう。とは言っても、Texas Instrumentsはセミコンダクターの分野では一大企業であり、時価総額は約800億ドル、年間利益は約80億ドルを記録している。彼らも最近はM&Aに消極的だ。

最後にTexas Instrumentsが企業を買収したのは、2011年のことだとCrunchbaseには記されている。当時同社はNational Semiconductorを65億ドルで買収しており、もしかしたら彼らは未だにこの大型買収を消化している最中なのかもしれない。それ以前は、Texas Instrumentsもある程度M&Aを行っており、2002年から2011年の間には、VCから投資を受けたスタートアップを含め10社を買収している。しかし、しばらくの間彼らはM&Aの世界には戻ってきていない。

Applied Materials

Applied Materialsも昔は積極的にM&Aを行っていたが、しばらくの間新しい企業買収の話を聞かない。Texas Instruments同様、彼らの最後の買収はかなり規模の大きなもので、2011年にセミコンダクターの加工機器を製造するVarian Semiconductorを49億ドルで買収した。もともと彼らのM&Aの数は、時価総額が400億ドル強の企業としては多い方ではないが、それにしても6年間というのは長い休息期間だ。

しかしスタートアップを買収しない一方で、Applied Materialsはスタートアップへの投資は行っている。同社の傘下でVC事業を行うApplied Venturesは、2006年以降少なくとも46回も投資ラウンドに参加しており、昨年だけでも数件の投資案件に関わっている。

The Home Depot

The Home Depotといえば、フローリングやドリルをはじめとする各種ツールを販売している企業として知られているため、同社が量子コンピューティングのスタートアップを買収するとは誰も思っていない。しかし、小売業界でイノベーションを起こそうとしてるスタートアップはたくさん存在するため、1800億ドルの時価総額がついている小売企業が、競争力を保つためにスタートアップを数社買収していてもおかしくないと思う人もいるだろう。

しかし実際はそうではない。Crunchbaseによれば、最後にThe Home Depotがスタートアップを買収したのは5年前のことだった。そのとき同社はBlackLocusと呼ばれる、それまでに数百万ドルの資金を調達していた、値決めソフトを開発するアーリーステージのスタートアップを買収した。さらに同年The Home Depotは、Redbeaconという業者探し・見積もりサイトを買収している。

その他に時価総額が大きいながらも最近スタートアップを買収していない企業としては、UPSやProcter & Gamble、Citigroupなどが挙げられる。どの企業もM&Aに必要な資本はあるが、単純に企業買収に積極的ではないのだ。

M&Aを積極的に行っていない企業の情報から分かるのは、スタートアップの買収はあくまで戦略上のオプションであり、必ずしも必要ではないということだ。つまり、GoogleやMicrosoft、Oracle、Facebookといった時価総額の大きな企業が、多数のスタートアップを買収しながら株価を保持している一方で、M&Aがトップの座を守るための唯一の方法ではないということだ。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

インドよりも魅力的?――政情不安に負けず成長を続けるMENAのスタートアップ市場

テヘランからドバイへのフライトの所要時間は2時間程度で、これはニューヨーク・シカゴ間のフライトと同じくらいだ。さらにカイロからベイルートへの飛行時間も1時間15分ほど。情勢が安定しているときであれば、ベイルートからシリアのダマスクスまでは車で2時間弱で移動できる。実際に中東・北アフリカ地域(Middle East / North Africa:MENA)を移動してみると、各都市がいかにうまく接続されているかすぐにわかる。しかしお分かりの通り、政情はそのときどきだ。

そして都市間の相互接続以外にも、”中東”に関する報道内容とは裏腹に、MENA全体が現在目まぐるしい成長を遂げている。中には国内の対立に苦しんでいる国も存在するが、空飛ぶ車がなくても彼らの経済は発展しているのだ。

最近Amazonが現地のEC企業Souqを買収し、買収金額は8億ドルに達するとも言われていたことからも、MENAで大型エグジットが実現可能だということが分かる。さらに一般的に言って、MENAの外にいる人たちは同地域の経済成長の度合いを過小評価しがちだ。

MENAを、6つの”湾岸アラブ諸国”+エジプト+レバノン+ヨルダンとすると、そこには潤沢な資産を持った消費者、企業、実業家が存在する。Beco Capitalによれば、1億6000万人に及ぶ同地域の人口のうち、8500万人がインターネットにアクセスでき、5000万人が多額の現金をもった成人のデジタル消費者だという。そしてこれらの数字は、MENAが成長するにつれて増加している。

MENAの人口は世界的に見ても若く、スマートフォンやブロードバンドの普及率も高い。この若くて教養があり、インターネットにアクセスできる5000万人の富裕層に対し、総人口が10億人を超えるインドを見てみると、クレジットカードや自家用車を保有している2000~3000万人の年収は1万2000ドル以下だ。

また、MENAの企業のうち8%しかインターネット上に情報を掲載しておらず(アメリカでは80%)、小売売上におけるネット通販の割合はたった1.5%だ。つまり、同地域にはまだかなりの伸びしろがあるのだ。2020年までには、デジタル市場によってMENAのGDPが950億ドル増加すると予測されており、デジタル市場における1人分の雇用が経済全体では2~4人分の雇用の創出につながると言われている。

Souqの以外にも、ドイツのDelivery Heroが現地のTalabatを買収し、MENAへの進出を狙っていたトルコのYemeksepetiを打ち負かしたほか、”MENAのUber”と言われているCareemは、ユーザーあたりの売上額でUberを上回ると言われている。

MAGNiTTが最近行なった調査でも、MENAのテックエコシステムに関する興味深いデータが明らかになった。同社はMENAに現在3000社以上のスタートアップが存在することを発見し、さらに調達額トップ100社のファウンダーについて詳細な調査を行った。

MAGNiTTによると、昨年のスタートアップへの総投資額は8億7000万ドル強だった。トップ100社はこれまでに14億2000万ドルを調達しており、1社あたりの調達額は50万ドルを超える。

さらにトップ100社のファウンダーは、会社を設立する前に平均で9年間どこかの企業に勤めていたことが分かっている。また、約40%は単独のファウンダーによって設立され、39%が2名の共同ファウンダーによって設立された。ダイバーシティ(多様性)の観点では、順調に事業を行っているファウンダーのうち12%が女性だ。なおEUの数字は15%、アメリカは17%だった。国別で見ると、調達額上位の企業の50%がアラブ首長国連邦で登記されている。

ファウンダーの41%がハーバードやINSEAD、LBSをはじめとする大学でMBAを取得しており、35%が経営コンサルや金融業界での経験を持っている。

またMENA発スタートアップのファウンダーの68%が中東出身で、二重国籍の人も多数いる。出身地を見てみると、トップ100社のファウンダーの38%がレバノンかヨルダン出身でありながら、この2国に本社を置いているスタートアップの割合は16%しかない。これらの数値から、ドバイが中東におけるデラウェア州の役割を担い、本社や開発チームは別の国に置かれているということが分かる。

以上の通り、毎晩目にする”中東”と曖昧に括られた地域に関するニュースとは反対に、データからはMENAが素晴らしいスタートアップエコシステムを構築している様子がうかがえる。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

800社あまりのスタートアップがFCC委員長にインターネットの中立性を殺すなと陳情

今日(米国時間4/26)FCCのAjit Pai委員長が、通信業界の大企業の利益のために消費者保護を放棄する彼の計画の概要を公表した。

大手通信企業はPaiのFCC改革に期待していたが、テクノロジー業界の誰もがそうだったわけではない。Paiの発表のあと、テクノロジー業界の800名あまりのグループがPaiに、インターネットの中立性(net neutrality)を担保している規則を廃棄しようとする彼の計画を、企業経営者として非難する声明を送付した。

巨大通信企業ではないテクノロジー企業にとっては、以下が最重要の争点となる:

“… アメリカのスタートアップのエコシステムの成功は、ブロードバンドのスピードの向上以上のものに依存している。私たちは、オープンなインターネットにも依存している。それには、強制力を伴うインターネットの中立が含まれ、それによって大手ケーブル企業が私たちのような者を差別できないようにならなければならない。既存の法的枠組みを無にしようとする貴官の意図が、私たちにはとても心配である。

インターネットの中立性がなければ、インターネットへのアクセスを提供している既存企業が、市場の勝者と敗者を決められるようになる。彼らは、自分たち自身のサービスや既存の競合企業を優遇するために、私たちのサービスのトラフィックを妨害できるだろう。あるいは、彼らは私たちに新しい料金を賦課して、消費者の選択を妨げることができるだろう。そのような行動は、起業家の、“事業を創始し、ただちに全世界の顧客ベースに到達し、業界全体に革新をもたらす”能力を、直接的に妨害する。私たちの企業は既存企業と、製品とサービスの質で競合できるべきであり、インターネットアクセスプロバイダーへの料金の支払い能力によってであってはならない”。

Y CombinatorとTechstarsとEngineを発起人とするこの書簡は、テクノロジー業界にインターネットの中立性を支持する大群が存在することを示している。その大群は、投資家やインキュベーター、スタートアップ、プログラミングスクールなどから成る。全文を以下に埋め込んでおこう。

〔訳注: ここに書簡ドキュメントが見られない場合は、原文の末尾を見てください。〕

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

企業向けデータ管理スタートアップのRubrikが2億ドルを調達中、評価額は10億ドル

複数の情報源によれば、企業向けスタートアップ中で快進撃を続けるRubrikが、10億ドルの評価額の下に、1億5000万から2億ドルに及ぶ資金調達を行っているらしい。そのストレージならびにデータ管理プロダクトに人気が集まっているためだ。Rubrikはデータバックアップを手がけるスタートアップで2015年に市場に登場したばかりだ。

TechCrunchは当初、匿名の情報をきっかけにこの新しい資金調達を知った。その後、同社に近い情報源から詳細を確認した。そこから私たちが得た情報によれば、ラウンドはまだクローズしていない(米国時間24日夜の時点)。

誰がラウンドを主導しているのかははっきりしていないが、耳にした名前の1つはIVPである。これはSnapやTwitterのような有力テクノロジーをバックアップする有名なVCファームであるが、SlackやDomo、そしてDropboxといった主要企業向けスタートアップへの支援も多く手がけている。

他に噂されるところとしては、Greylock、Khosla、LightspeedといったRubrikの既存の投資家たちが挙げられる。Lightspeedは、Rubikの共同創業者件CEOのBipul Sinhaが以前ベンチャーパートナーを務めていた会社だ。他の創業者として名を連ねるのは、Arvind Jain(元Googleエンジニア)、Soham Mazumdar(FacebookにTagtileを販売したエンジニア創業者、元Google社員でもある)、そしてArvind Nithrakashyap(元RocketfuelとOracleだったストレージと分散システムの専門家)といったメンバーだ。

これまでに、同社は1億1200万ドルを調達している。

企業向けバックアップサービスの分野では、Druva、CommVault、EMCなどの多くの会社が競い合っている。これらの企業と同様に、Rubrikは障害時の回復に使われるだけでなく、一般的なITセキュリティ並びに日々のバックアップも扱う大企業向けのハイブリッド製品を売り込んでいる。

Rubrikの注目すべき点は、オンプレミスとクラウドサービス上でアプリとデータが混在する環境を用いる企業をターゲットにしているということだ。そうした環境は、最近では最も一般的なアーキテクチャである。それは、双方から同様にデータを高速に取得する手段を提供する。Rubrikはまた、ある環境から別の環境にインデックスを保ちながらデータを移行することができる(インデックスが保たれることで検索の効率が損なわれない)。

情報源によれば、この製品は現在企業の間で「本当に話題になっている」そうで、そのためRubikは「超成長モード」に入っているそうだ。したがって、資金調達はこの機会を逃さないための動きである。

Rubrikはこの件に関するコメントを拒否した。

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(翻訳:Sako)

魚群撮影などにも有益な海中ドローンのPowerRay

卵型ドローンのPowerEggの開発社が、新しいプロダクトの注文受付を開始した。新たなプロダクトとは、趣味で利用する水中ドローンだ。名前をPowerRayという。防水メカで、海の中の魚を見つけたり、追いかけたり、あるいはビデオにおさめることができる。水深30mで4時間まで動作することができる。川でも海でも、あるいはプールでも問題なく動作することができる。

PowerRayが最初に発表されたのは2017年1月のCESにおいてだった。もちろんこの時点では、テックおたくを喜ばせるためのギミックとしてのデビューではあった。しかしマリン系の人たちが興味をもつものかどうかをうかがう意味もあったのだ。

基本パッケージには、ベースステーションと繋ぐ50mのケーブルも同梱されている。水の流れに流されてしまうのを防ぐとともに、電源ケーブルおよびビデオケーブルとしても機能するようになっている。PowerRayでは、すべてのモデルで4Kカメラを搭載している。光学パーツはZEISS製だ。

ミッドレベルのパッケージとなるPowerRay Anglerには、魚を捉えるためのツールも付属している。すなわちPowerseeker Fishfinderがライトを照らして魚の注意をひき、Bait Drop Lineを使って餌をまくこともできるようになっている。

Wizardエディションになると、VRヘッドセットも付属している。これを使えばウェットスーツなしに水の中を散歩する気分を味わうことができる。PowerRayの最も安いモデルは1,715ドルで、もっとも高価なモデルが2,250ドルとなっている。まずはヨーロッパでの販売が開始されることとなっている。

ちなみに、海中で動作するドローンはPowerRayのみというわけではない。スタートアップのOpenROVが扱うTridentというモデルもある。

PowerRayがサンフランシスコ湾にて撮影した海洋写真

PowerVisionのアメリカ支部におけるCEOであるChih-Che Tsaiは、PowerVisionは趣味にとどまることなく、実用にも使えるものだとしている。これまでもソナーを使えば地形や魚群を探知することができたが、船に固定するのではなく、自在に動きまわる装置にセンサーを装着することで、新たな可能性を開くことができるのだとのこと。

PowerRayのCEOから話を聞いたのは、サンフランシスコのAquarium of the Bayで行われたローンチパーティーでのことだ。お披露目の行われた水族館では、鮫の遊泳は禁止となっていた。それはすなわち、鮫などがドローンを食べようとするのを防ぐためのことだ。

それでもパーチやバスは泳いでいて、ドローンが近くまで接近する様子を見ることができた。ドローンは流れの中でもきちんと制御されていた。なお、魚たちはドローンから逃げようとはしていなかった。きっと、魚の世界でもドローンなどの人工物が一般化しているということなのだろう。

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(翻訳:Maeda, H

HBOの人気ドラマ“Silicon Valley”、今年のキャストを見るとストーリーが分かりそう

HBOの“Silicon Valley”は、今度の日曜日(米国時間4/23)から4期目が始まる。

最初の二話を試写会で見たけど、とってもおかしい(笑える)ことは保証できる。本誌TechCrunchの名前も、頻繁に出てくる。試写会には今期の出演者たちも同席したが、その顔ぶれからどんな内容かある程度分かる。

Thomas Middleditchが演じるRichardは、自分が創った会社Pied Piperを去り、“自分だけがピボットする”〔pivot, 方向替え〕、とMiddleditchは説明する。Zach Woodsが演じるJaredとRichardとの関係に“特別の意味があり”、Richardと、Kumail Nanjiani演ずるDineshとのあいだにも“ドラマがある”。

前の3期では、Pied Piper社の一連の試練と苦難がストーリーの中心で、同社は生き残るために何度もコースを変える。スタートアップや彼らが遭遇するVCの人物像は、ここのコミュニティに実際にいる人たちと、気味が悪いぐらい似ている。

エグゼクティブプロデューサーのMike Judgeは、“Office Space”, “Beavis and Butt-Head”, “Idiocracy”などの喜劇で知られている人だが、大学を出た直後は短期間、シリコンバレーで働いていた。その体験が、“Silicon Valley”のヒントになっている。

で、このドラマがここシリコンバレーで熱心なファンを獲得しているのは分かるけど、世界中で人気があるのは、なぜだろう?

Nanjianiはこう説明する: “誰もがテクノロジーを使っているし、アプリも使っている。そんなアプリを作ってるのは、一体どんな人たちなのか、興味がある。アプリは、どのように作られているのか、どうやってヒットし、どうやって自分のところに届くのか、いわゆる楽屋裏を知りたいんだよ”。

一部の出演者たちには、実際にスタートアップで働いた経験があり、それが役作りに貢献している。女優のAmanda Crewは、数社に個人的に投資したこともある。Middleditchが今とくに好きなのは、WaterFXWright Electricだそうだ。

でも彼らは、テクノロジーのニュースに常時接してはいないようだ。TechCrunchを読んでるか、と訊(き)いたら、Nanjianiは、“読んでると言わせたいのかい?”、とこっちをからかった。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

『20 under 20』書評:ピーター・ティールの若き起業家育成プログラムを実感的に描く

TechCrunch Japanの同僚、高橋信夫さんと共訳した『20 under 20』(Kindle版)(日経BP)がこの週末から書店に並び始めたのでご紹介したい。ピーター・ティール(Peter Thiel)からの奨学金10万ドルを資金としてシリコンバレーで苦闘する若い起業家たちを描いたノンフィクションだ。

著者のアレクサンドラ・ウルフはWall Street Journalのベテラン・ジャーナリストで、家族ぐるみでティールと親しかったことからフェローシップとシリコンバレーに強い興味を持ち、2011年から2016年まで足掛け6年にわたって若いフェローたちに密着して取材した。

大学なんか止めてしまえフェローシップ

TechCrunch読者にはピーター・ティールの名前はおなじみだと思う。PayPalの共同ファウンダー、CEOからベンチャーキャピタリストに転じ、Facebookの最初の大口投資家となった。現在でもFacebookの8人の取締役の1人だ。起業の重要性を力説した著書『ゼロ・トゥ・ワン 』(NHK出版)は日本でもベストセラーとなっている。

ピーター・ティールは2011年のTechCrunch Disruptで「大学をドロップアウトしてシリコンバレーで起業させるために20歳未満の優秀な若者20人に10万ドルずつ与える」というプログラムを発表した。20 under 20というのは「20歳未満の20人」という意味で、発足当時のプログラムの名前だった。現在では22歳未満に条件がやや緩められ、ティール・フェローシップと呼ばれている。

クレージーな若者たち

このプログラムには小惑星探鉱から不老不死の研究までありとあらゆるクレージーなアイディアを追う若者たちが登場する。そうしたアイディアには結実するものもあるが中断されたりピボットしたりして消えるもの多い。しかし「失敗などは気にするな。シリコンバレーで失敗は勲章だ」というのがティールの信念だ。

ティール・フェローにはTechCrunchで紹介された起業家も多数いる。睡眠の質を改善するヘルスモニター、Senseを開発したJames Proudもその一人だ。Kickstarterで製造資金を得るのに成功したことで注目された。

KickstarterでSense睡眠トラッカーを紹介するJames Proud(2014)

シリコンバレーの生活の空気感

『20 under 20』はスタンフォード大学にほど近いベンチャーキャピタリストの本社が並ぶサンドヒル・ロードに新築されたローズウッド・サンドヒルというホテルの中庭のプールの描写から始まる。ベンチャーキャピタル、アンドリーセン・ホロウィッツの本社もこのホテルの隣だ。しかし創業パートナーの一人ベン・ホロウィッツが書いた『HARD THINGS』(日経BP)が起業や経営の困難と対処の実態を描いたのに比べて、『20 under 20』はむしろファッションから朝のコーヒーまで起業家たちとシリコンバレーで生活を共にしているような感覚を与える。

本書では政府・自治体による規制とスタートアップにも1章が割かれ、Uberなどがどのようにして規制と戦ったかが、敏腕ロビイーストの目を通じて描かれていたのも興味深かった。バイオテクノロジーにも重点が置かれている。下のビデオは『20 under 20』の主役の一人、不老長寿を研究するローラ・デミングのTEDプレゼンテーション。

TEDで不老長寿研究はビジネス化できると主張するLaura Demming(2013)

アレクサンドラは『ザ・ライト・スタッフ』(中央公論)や『虚栄の篝火』(文藝春秋 )などの作品で有名なトム・ウルフの娘だ。トム・ウルフは対象に密着して取材する「ニュージャーリズム」という手法の先駆者で、この言葉を作った本人でもある。アレクサンドラのシリコンバレーの描写はは父親ゆずりのニュージャーリズムの手法かもしれない。

10億ドル企業を作るのが目的ではない

ティールは信じることは即座に口にし、かつ実行してしまう性格のためとかく論議を巻き起こしているが、この「大学なんか止めてしまえ」というフェローシップ・プログラムにはことに激しい賛否の議論が起きた。反対派の急先鋒、ヴィヴェック・ワドワ(Vivek Wadhwa)はTechCrunchに大学教育の意義を主張するコラムを書いたので記憶している読者もいるかもしれない。この経緯も本書に詳しい。

アレクサンドラは起業家を一方的に賞賛するわけではなく、激烈な競争社会に疑問を感じて東部の大学に戻ったフェローも十分時間をかけて取材し、いわばシリコンバレーの光も闇も描いている。

またこの本にはTechCrunchも繰り返し登場する。アレクサンドラの言うことにすべて賛成だったわけではないが、シリコンバレーを中心としてテクノロジー・エコシステムをカバーするTechCrunchの影響力をあらためて感じた。

アレクサンドラ・ウルフはティール・フェローシップをこう要約している。

〔ティール・〕フェローシップはミレニアル世代の縮図なのだ。このフェローシップは「きみたちが本当に優秀ならここに来たまえ。きみたちの世代の『ベスト・アンド・ブライテスト』に何ができるか証明してもらおうではないか」という挑戦なのだ。そのうちの誰かが10億ドル企業を作れるかどうかは問題ではないのであろう。

ご覧のようになかなか目立つ装丁なので書店で見かけたら手に取っていただけるとうれしい。

滑川海彦@Facebook Google+

節水プロダクトの普及を狙うOrbital Systems、シリーズBで£15Mを調達

スウェーデンを拠点に、クリーンテクノロジーを手がけるOrbital Systemsが、シリーズBにて£15の資金を調達した。ファウンダー兼CEOのMehrdad Mahdjoubiは、NASAと共同で再生(re-purification)技術を実現し、シャワー時に消費する水およびエネルギーを大幅に節約するプロダクトを提供している。ここで用いられている技術は多方面にも展開でき、さまざまなシーンにおける節水プロダクトにも転用可能となっている。

Orbital Systemsの提供する未来派シャワーは「OAS」と名付けられている。このOASシャワーは既存シャワーにパーツを付け加える形式よびシャワーシステムを置き換えるかたちで販売される。シャワーの水をその場で再利用することで、資源効率を高めようとするものだ。核となるのはバクテリアやその他の有害物質を排除して再利用する技術だ。再利用しようとする水の品質が基準以下であれば廃棄されるようになっている。清潔な水のみを再利用しても、15分のシャワーで利用する水の量は150リットルから5リットルに減らせるのだとのこと。

Mahdjoubiのいうところでは、シャワー中に、シャンプーやソープを洗い流すのに使われる水はごく一部であるとのこと。たいていの場合は水は単に身体の表面を流れ落ちているに過ぎない。Orbital Systemsの技術では、水が綺麗な場合を正しく判定して、水の再利用を行うようにしている。

シャワーの水の再利用を行うことで、節水以外のメリットもうまれてくる。すなわち省エネに繋がるのだ。当たり前のことながら、シャワーで利用する水はたいてい温められているが、排水時にもほとんど温度は下がっていない状態となる。温めてから使用した水を再利用することで、水の状態から温めなおすよりも少ないエネルギーでお湯にすることができるというわけだ。

水もエネルギーもともに重要なものだ。宇宙空間のみならず地球上においても大切に扱うべきものだとMahdjoubiは言っている。Orbital Systemsはシャワーなど(次のプロダクトとしては洗濯機を考えているのかもしれない)の際に、省資源を心がけようとしているわけだ。Mahdjoubiは「シャワー以外に応用可能性がないのであれば、とても成功はおぼつかないでしょう」とも話している。

今回のシリーズBには、SkypeのファウンダーであるNiklas Zennström(以前にも個人の資格で投資している)も参加している。その他にもKarl-Johan Persson(H&MのCEO)、Jochnickファミリー(化粧品ブランドであるOriflameのファウンダー)、Stena Ventures、およびNils Idoffなどが参加している。

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(翻訳:Maeda, H

イタリアのメガネスタートアップQuattrocentoが、紙フレーム試着を開始

オンラインメガネ小売業者の多くは、購入の前に自宅で試せるように、選ばれたフレームのセットを送ってくる。このモデルを有名にしたのは米国のWarby Parkerと、欧州のGlassesDirectだ。とはいえ、購入したいものと全く同じフレームを送ってくることで、メガネをオンラインで買おうとする際の実際の購入率は上昇するものの、これは非常にコストのかかる手法である。

配送のコストだけでなく、フレーム返送のコストも必要で、さらに多くの余分な在庫を抱えている必要にも迫られるからだ。これがイタリアのメガネスタートアップ、Quattrocentoが直面した問題だった。そこで創業者たちはおそらく素晴らしい代替手段にたどり着いた。それが紙試着(paper try-on)だ。

具体的には、Quattrocentoは、顧客に対して最大5つの段ボール製のレプリカフレームを、自宅またはオフィスに送ってくる。このレプリカによって、実際にプロダクトを購入する前に、フレームのフィット感を試すことができる(もちろん、限られた範囲で見た目も)。

私は約1年前に、このアイデアのプロトタイプを試す機会に恵まれたが、これはとても良いものだと言える。ビジネスの観点から見た紙試着の利点には、低コストの製造と配送、そして返送が不要であるという点などが含まれる。また顧客がその手元に残ったレプリカを友人に見せたりすることもできるので、それはまたとても巧みなマーケティングツールだと考えることができる。

もちろん潜在的な欠点もあって、これは本物に比べれば購入率が良くないだろうということだ。Quattrocentoの初期のテストでは、購入率は12%だったということだ、ちなみに実際のフレームを使った場合は約37パーセントというのが業界の常識である。これは大きな違いのように見えるかもしれないが、上にも説明したように、それはリンゴとオレンジを比べているようなものだ。

「私たちが、競合他社を知っている業界の専門家と話していると、彼らはこれらのKPIに感銘を受けている」とQuattrocentoの共同創設者エウジェニオPUGLIESE氏は語る。「私たちが、このより魅力的でスマートな新しいトライアル方式を発明したのです。私たちが出荷するのは紙のメガネなので、嵩張る在庫は必要ありません。出荷のコストは手紙を送る場合と同じです。そして物流のコストや追加の顧客対応も不要になります」。

Puglieseによれば、ある顧客から特定のQuattrocentoメガネの寸法についての電話を受けた際に、このアイデアを思いついたということだ。「会話の途中でそのお客さんは、私たちのウェブサイトに掲載されたフレームの写真を印刷したと言ったのです。そのとき私は自問しました『紙のモデルを作ったらどうだろう?』と」。

もちろんそれは「ある程度の重み、厚さ、そして可塑性のある」上質の紙で作られる必要があり、そしてその紙モデルはフレームが顧客の顔の寸法にどれくらいきちんとフィットするかを知るための代理人として、送られることが必要だった。こうして、この紙試着が生まれたのだ。

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(翻訳:Sako)

ホウレンソウの葉が血管網の生成を助けるなど再生医療で大活躍

あなたがサラダは健康にいいと思っているまさにそのときに、ウースター工科大学の研究者たちは、脱細胞したホウレンソウの葉で、医師が器官を再生するときに必要とする血管網を作れることを発見した。このプロジェクトを専門誌Biomaterialsが特集しており、現状はまだ概念実証の段階だが、その真価は、別のもので前にあった血管系を代行できることを証明した点にある。

研究者たちはこう書いている: “セルロースには生体適合性があり、これまでも、軟骨組織や骨の組織の再生医療への利用や、傷の治療などに広く利用されている”。

そこで、ホウレンソウの葉のようなものを、デリケートな体組織のためのカバーや足場として利用できるのだ。このような葉は損傷した心臓の組織に酸素を送って、新しい器官や再生組織が移植後に死なないようにする。また、これらの酸素ポンプ役の葉は、シェフがすばらしいサラダを作るためにも使える。


[ホウレンソウの葉が血液を運んで人間の組織を成長させる]

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

毎週2〜4社のスタートアップが倒産―、企業清算の専門家が語る業界の現状

Marty Pichinsonと彼が共同設立したSherwood Partnersは、事業に失敗したスタートアップの資産売却や、彼らが順を追って倒産の手続きを踏めるように資金をやりくりして猶予期間を伸ばす手助けを、25年間にわたって主要事業として行ってきた。その結果、彼はターミネーターや葬儀屋といった死に関連した様々なニックネームで呼ばれている。

しかし、セールスマン魂と同じくらい気の強さで有名なイリノイ生まれのPichisonは、Sherwood Partnersの事業がうまく行く限り、そんなニックネームのことを気にかけることもない。

そんなPichisonに先週インタビューを行い、現在のスタートアップ業界に関する話を聞いてきたので、この記事ではその様子をお伝えしたい。

TC:株式市場のトレンドが上向いてきて、スタートアップの資金調達状況も順調なように見えますが、企業倒産の状況はいかがでしょうか?

MP:毎週2〜4社が清算していて、これは今まで見たことがないようなスピードです。個人的には、もしもうまく行かなければすぐに投資をやめて他の企業に目を向けるというSequoia Capitalのアプローチをとる(投資家が)増えているのではないかと考えています。

TC:投資家はこれまでもそうしていたんじゃないですか?

MP:その速度が上がってきているんですよ。MicrosoftやIntel、Facebook、Google、Appleといった企業は自分たちのテリトリーを築いていて、そこから動くことはありません。そのため、ちょっと捻りを加えた類似事業を行う企業が生き残るのが段々難しくなってきています。他の企業が新しい機能やツールを開発しても、大手企業はこれ幸いと、次のバージョンでその機能を(自分たちのプロダクトに)追加してしまうんです。

TC:ここ何年かの間は、お話を聞くたびに仕事が忙しいと仰っていましたが、たまには落ち着くこともありますよね?

MP:Sherwoodは設立時(1992年)からほぼ継続的に成長してきましたが、確かに2014年には理由も分からないまま仕事が減ったことがありました。まぁ当時のVCは、(スタートアップが資金調達する前に自分たちの投資利回りを上げるために)投資先企業をギリギリまで追い込んでいたので、2015年中には(VCが投資をストップしたため)四半期の成績としては最高額を記録しましたけどね。

TC:上場の動きが現在広がっているように見えますが、IPOを行う企業が増えるとどんな影響が生まれるのでしょうか?

MP:IPOは特に関係ありません。IPOの数が増えたというのは、各業界の勝者が決まったというだけで、それ以外の企業は成功をおさめた企業の後塵を拝するだけです。ソーシャルネットワーク業界でFacebookが勝利をおさめたときと何ら変わりありません。

その一方で、この業界へは引き続きお金が流れ込んでいて、スタートアップの株式は本当の意味でひとつのアセットクラスへと成長しました。レストランや歯医者、ショッピングモールなんかの統合を行っていたプライベート・エクイティを含め、誰もがこの業界に入り込みたいと思っているんです。これ以上ショッピングモールが増えるとも思えませんしね。このようにテック企業には注目が集まっていますが、彼らの投資先の企業全てが成功するとは限りません。

TC:もっと具体的な話として、例えばシリーズBの段階にある企業の清算を担当することが多いといった傾向はありますか?どのくらい早い段階で投資家は身をひくことが多いのでしょうか?

MP:特にこれと言った傾向はなく、シリーズBからシリーズEの段階にある企業まで担当する企業の種類は様々です。3社か4社くらいユニコーン企業をたたむ手伝いをしたこともあります。全体に関して言えば、必要以上の負債を抱えているスタートアップが多いなと感じています。まずVCからの期待があって、在庫や売掛金が加わって、さらに負債が積み上がってくるとなると、その会社は投資家だけなく債権者のことも気にしなければいけなくなります。債権者はとても具体的なものを企業から求めていますしね。

TC:特にスタートアップの割合が多いと感じる業界はありますか?

MP:ストリーミングからハードウェア、ソフトウェア、ファッションまで、業界ごとの偏りは特にありません。ただ私たちが問題視しているのは、プロダクトのコンセプトや恐らく顧客の満足度に関しても似たような企業が、それぞれ全く違うアプローチをとっているので、複数のスタートアップを統合して1つの有力企業をつくるのが難しいということです。企業統合にかかるコストが高すぎるんです。

TC:何年も前に、Sherwoodが知的財産の売却を始めたという話をされていて、当時マウンテンビューに知的財産のオークションを行うAgency IPという会社まで新設されましたよね。今でも企業を清算するときは知的財産に1番注目されていますか?

MP:Sherwoodが売却してきた特許の数は、恐らく他のどの企業よりも多いと思います。通常の場合、(債権者の)ローンを返済するためには、特許を売却するくらいしか手立てが残っていないので、企業の本当の価値に比べれば売却額は少なくなってしまいます。それでも担保付ローンを返済するのに十分なくらいの金額にはなることが多いですよ。

TC:あなたに頼ってくるVCには何とお話されていますか?投資先企業を絞るということ以外に、何か彼らに対するアドバイスはありますか?

MP:私はここ何年間もVCに対して、もっと早く私たちにコンタクトするように言っています。中には、投資先のスタートアップがランウェイの終わりを迎える1年くらい前に連絡してくるVCもあります。しかし(うまくやれば)、そこそこの企業が優良企業に勝つのは難しいことではありません。顧客が優良企業のことを知る前に、目的のターゲットに自分のプロダクトを使ってもらうことが重要なんです。

他にも、あるひとつのアイディアに固執しているスタートアップを見かけますが、そんなとき私たちは「それはアイディアでも何でもないですよ。この全体の10%にあたる事業で最近売上が出始めていますよね?他のことはやめて、この事業に集中してください」といった感じのことを伝えています。

TC:最近ロサンゼルスに拠点を移されたようですが、その理由を教えてもらえますか?

MP:ロサンゼルスには18ヶ月前に引っ越してきました。シリコンビーチは本当に素晴らしいところですね。決して安くはありませんが、まだまだ新たな建物を建てるだけの土地もありますし。これからはコンテンツとテクノロジーの融合が次々に起きると思います。AmazonとNetflixがアカデミー賞を受賞して、どの企業も他の領域に進出しようとしていますが、ひとつの企業で全てを賄うことはできません。

TC:企業の清算や再建といった観点ではどうですか?シリコンバレーの方がそういった点では良さそうに見えますが。

MP:まだシリコンバレーには大きなオフィスを持っていますよ。ニューヨークのオフィスには4人置いていて、ロサンゼルスのチームは2人から10人に増えました。

ロサンゼルスの人気が今後もっと高まっていく中で、私たちは現在なかなかいいポジションにいると思っています。家で朝食をとってからロサンゼルスに飛んで、投資先企業とランチをして、良いホテルに泊まって、次の日にまた別の会社とランチをとって、夕食までには(ベイエリアの)自宅に戻ってくる、という方がVCにとっては効率がいいですからね。街によって仕組みが全く違うので、他の街ではこうはいかないだろうな、となんとなく思っています。ボストンではロボットと医療が盛り上がっていて、ニューヨークは少し落ち着いていますが、移動が楽ということもあって、VCはロサンゼルスに来ることの方が多いです。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

データサイエンスを用いてアートへの最適投資を行うArthena

私たちは皆アートについて何らかの意見がある(例えその意見がただ、理解できない、というものであるとしても)。しかし投資対象としてのアートについてはどうだろうか?

YCombinatorに、現在在籍しているスタートアップの1つであるArthenaは、投資家がアートから確かな収益を挙げることを助けることができると言う。創業者兼CEOの Madelaine D’Angeloによれば、Arthenaは当初アートを買い付ける、投資型クラウドファンディング(equity crowdfunding)として立ち上げられた。そして最近「アート市場に対する量的戦略に対応する」ファイナンスツール群を追加した。

特に、Arthenaは、作品の作家自身、作家のキャリアと活動年数などの要素に着目して、アートオークションの結果と組み合わせ、ある作品に対するリスクと投資利回りを予測する。この分析により、投資家たちは自身のリスク許容度に基いて、異なるArthenaのファンドに投資することが可能になる。

D’Angeloによれば、Arthenaはこれらのツールを必要に迫られて作ったのだという。ウェルスマネージャーたちや、有力な投資家たちが興味を持ってくれたものの、何より先に「ヘッジファンド相当の分析結果」を提供する必要があったのだ。

D’Angeloは、美術界がArthenaの数字を基にしたアプローチに懐疑的だろうと認めた。しかし彼女は、同社はいつでも「その最終決定を助けるループの中に人間を介在させる」と語った。また彼女は、彼女自身の目標は、アートバイヤーやアーティストの価値を貶めようとするものではなく、「市場の規模を大きくしたい」というものだと語った。

「収集と投資は完全に別々の2つの活動ですが」と彼女は語る。「その情緒的側面を切り離すことはとても難しいことです。もしそれを、数字に基かない視点から眺めていたら、市場の本当に素晴らしい機会を見落とすかもしれません。あるいは、自分が引き付けられるものに対して、過剰に払いすぎてしまうかもしれません」。

結局、なぜアートに投資するのだろうか?D’Angeloは、アート市場の魅力は、株式市場の上下動にあまり縛られずに、印象的なリターンを提供してくれるところだと語った。

Arthenaは、アート市場の標準的な年間利回りである10%を、倍にすることが可能だと言う。そして投資家たちの興味を確かに引いているようだ。同社は数ヶ月前に現在のアプローチに切り替えてから、既に2000万ドルのコミットメントを受け取っている。

D’Angeloはまた、他のアートスタートアップは通常「アートの世界世界のみ、あるいはテクノロジーの世界のみ」の出身者で占められているが、Arthenaは両者を兼ね備えていると語る。アートの世界におけるD’Angeloの経験と、彼女の兄弟でありデータサイエンスのバックグラウンドを持つCTOのMichael D’Angeloが、彼らを「この問題に取り組むためのユニークな資質」を提供しているのだ。

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(翻訳:sako)

Reduced Energy Microsystemsが新しいチップで業界の雄たちに挑みかかる

あなたが所謂IoT(物のインターネット)を好きかどうかに関わらず、私たちは既にIoTに囲まれて暮らしている。そしてそれらの「物」の中にはチップが入っている。そうしたチップは、もちろんとても先進的であると同時に、様々な観点から従来の方式に従っている。Reduced Energy Microsystemsはこの現状を、日常デバイスにおけるAIやコンピュータービジョンの能力を、飛躍的に改善できる可能性のあるチップテクノロジーで、覆そうとしている。しかしその行く手には激しい競争も待ち構えている。

REMは、Y Combinatorが選んだ最新プロジェクトの1つである。Y CombinatorはREMをDraper Associatesに引き合わせる役割を果たし、技術に関心を寄せたDraper Associatesは、シードラウンドとして200万ドルを提供した。

私たちのカメラや携帯電話デバイスの性能を向上させる方法は沢山ある。まずソフトウェアの改善。例えばWindows 8からWindows 10へ移行すること。あるいはアーキテクチャの改善。例えば32bitから64bitへの移行。そして、チップレベルでの改善も可能だ。REMが望んでいるのはこのレベルの改善だ。

もちろん、チップは絶えず改善されていて、新しいものが毎年発表されている。しかし、IntelまたはARM、x64またはx86、CoreまたはRyzenのどれを選ぼうとも、それらは全て同期式(synchronous)と呼ばれるものだ。つまり、その中のどこかにクロックがあって、1秒に何100万回もの時を刻んでいる。すべての小さな動作ユニットは一斉にその時計に同期しながら、お馴染みの「ギガヘルツ」速度を達成しているのだ。

しかしこれらのCPUの全体的な速度は、クロックの速度に制限されている。もし特定の操作、たとえばとても簡単なロジックが、クロックの生み出す時間の間隔よりも短い時間で終了してしまうとしたらどうだろうか?CPUはただそこに留まり、待っているだけということになる。そして、1秒のほんの一部のさらにほんの一部というものは、あまり大したことはなさそうに響くが、もしそれが何千もの場所で。何百万回も起こるなら、あっという間に合計が無視できない量になってしまう。マルチコアやマルチスレッドというものは、この問題にアプローチしたものだが、同時に難しさも増してしまう。

もしクロックの専制政治からこれらの操作を解放する手段があったなら…いや、実際は存在しているのだ!非同期(Asynchronous)処理を使えば、計算をそれぞれのペースで進めることが可能になり、時間とエネルギーの節約になるのだ。チップメーカーは、このことについては昔から知っていた。しかし彼らはあまりにも多くのリソースを同期式のものに振り向けてきたので、非同期式のものが市場で出回るのを見ることは無かったのだ。REMが狙うのは、その状況を変えることだ。

私は同社の3人の共同創業者のうちの2人である、Eleazar Vega-GonzalezとWilliam Kovenと話し、会社の狙いと主張を尋ねた。

「組み込み携帯機器領域のこととなると、大きさについての話になりますよね?」と話すのは、同社のソフトウェア責任者であるVega-Gonzalezだ。「普通ARMを利用している場合、簡単なタスクを行っている間は低スペックのコアが用いられます、そしてユーザーがより複雑なことを始めると、より大きく強力なコアへと切り替わって行きます。それは動作しますし、現段階では良い解決方法です…でも私たちが実現したのは、1つのコアをダイナミックに加速したり減速したりすることなのです」。

非同期の持つ性質によって、その速度調整の幅は、既存のチップよりも極端に大きなものになる。同じチップをある目的に対しては僅かな電圧で動作させることもできる。そして需要に応じて消費電力をスムースに積み増していくことが可能だ。

テストボード上の試作チップ – 製品版では当然、もっと小さくなる。

しかし、それはこの分野のスタートアップを長い間邪魔してきたエキゾチックな製造プロセスを必要とするものではないし、プログラマーが学習しなければならない難解な新しい原理やアーキテクチャでもない。

「私たちは現在業界が使っているものと同じ設計ツールを使う手法を考え出しました。私たちがARMコアを実装すると、それはプログラマーの目には普通のARMコアのように見えます」と語るのはCEOのKovenだ。「そしてユーザーには違いがわかりません、単に良く実行された結果を見るだけです。私たちがやっているのは、これら2つの立場の間の部分なのです」。

結果として作られたのは、殆どの場合は動作している必要性のない、例えば家庭用セキュリティカメラを駆動するための、超低電圧で動作する標準チップである。とはいえ、一旦必要とあらば、動作は加速し、従来のチップに対して同じ電力でより効率的な顔面認識アルゴリズムを実行することができる。こうして、エネルギー効率を改善しながら、性能を上げることができるのだ。アプリケーションに依存するが、3から4倍の改善となる。

話がうますぎて、信じることがおそらく難しいかもしれない。もし非同期チップがそんなにクールなら、なぜ既存の大チップメーカーはこの分野に参入していないのか?数年をインテルで働いて過ごしたKovenは、彼らのDNAからはその考えがパージされてしまったからだと語る。

「私はこのプロジェクトを育てる場所を見出そうと、Intelの中で多くの時間を費やしました」とKoven。「非同期性は、Intelの中ではある意味禁忌の言葉なのです。それは単に彼らが組織としてやっていることとは、あまりにも違うことなのです。それらが異なっていて、恐ろしいという理由で、彼らはこのような技術の多くを放逐してきました」。

「これはこれまでも何度か試されていて、歴史的に起きたことは、こうした利点は理解されつつも、それが市場に受け容れられるには多くの困難が待ち受けていたということです」とVega-Gonzalesは語る。「私たちは、業界のどこよりも素早く動くことができるように、特に内部で使われるツールに力を入れて来ました。これはソフトウェアスタートアップが、大きな企業を打ち倒したり出し抜いたりするために行う方法と同じです」。

同社が想定しているのは、警察のボディカメラ、デジタルビデオレコーダー、ドローン、セキュリティカメラのような応用分野だ。そこでは製造業者と開発者たちが、コストを掛けずそしてバッテリー消費を増やすことなく、提供できる機能を改善する方法を探している。チップの製造はほぼ終了し、製品との統合を現在彼らはテストしている。今年の末までにはプロトタイプができる予定だ。

REMは、通常はソフトウェアに焦点を当てているY Combinatorからの初めてのチップスタートアップだが、プログラムはREMにとって役立つものであったようだ。

「素早く動き、ビジネスと顧客関係に焦点を当てるようにさせる、一貫した圧力のようなものがありました」とVega-Gonzales。驚くようなことではないが、ハードウェアスタートアップには、物作りに対するものと、ご存知のように、収益を上げることに対する、大きなリスクがつきまとう。

「Draperに関して言えば…彼らは私たちが実現しようとしている未来を本当に信じてくれています」とKoven。「彼らはこの実現のためには、ソフトウェアよりも時間がかかることを理解しています。そして半導体業界は、色々な意味で停滞しているのです」。

技術的、市場的、そして金銭的理由から、この領域への参入は簡単ではない。自身で基本的に異なるチップを設計し製造するスタートアップの構想は、容易に受け容れられるものでもない。だから、REMが敢えて戦いに乗り出す大胆な姿勢は賞賛に値するものだ。彼らは自身の製品を信じているし、それは実際市場にある何物からも異なっているように見える。運と創意(そして数百万ドル)があれば、予測可能な市場に飢餓感を感じている顧客たちの前にボールを転がすことができるかもしれない。

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(翻訳:Sako)

500 Startupsは1000万ドルのファンドでラテンアメリカへの投資を継続

500 Startups は、グローバル投資へのコミットメントを新たなラテンアメリカファンドによって積み増ししている。目標金額は1000万ドルでその名称はLuchadores IIというものだ。これはスペイン語でレスラーを意味する。このファンドは、500 Startupsによるこの地域を対象にした2番目のもので、欧州、アジア、アメリカの中で、不十分な対応しか行われていない市場を対象にして、その数を増やしつつあるシード投資の一環だ。

アクセラレーターは2010年以降、様々な形でラテンアメリカへの投資を継続してきた。新ファンドのマネージングパートナーであるSantiago Zavalaは、ラテンアメリカにおけるユニコーンの数を倍増させる希望を胸に、約120社のラテンアメリカの新星たちに投資を行う。

500 Startupsの創業パートナーであるDave McClureは、国際投資を通して得ることのできる利益に対して、長期間強気の姿勢を保っている。米国内での取引、特にシリコンバレーでの取引は、その競争力故にプレミアム価格が付き易いからだ。

「私たちは、追加投資では10倍の利益を得ることを目指しています」とMcClureは国際的な投資について語った。500 Startupsのラテンアメリカに対する投資は、追加を含めて9500万ドル以上に達する。

しかし、ラテンアメリカの新興企業への投資の課題は、彼らが強力なエコシステムのサポートを欠いていることだ。より大きなB、C、Dラウンドを、この地域で見かけることは少ない。また起業家向けエコシステムへの強みを持つローカルな買収者も限られている。

これこそ、International Finance Corporation(IFC)が、新しいファンドに対するリミテッドパートナーとして加わった理由だ。従来IFCは、より後段のステージの企業への投資を行ってきたが、過去2年以上に関しては、リミテッドパートナーとしてシードステージのファンドにも自ら関わるようになった。

「私たちは、すべての発展途上マーケットの中で、マイクロファンドの最高の種を見つけようと努力しています」と、語るのはIFCのVC投資グローバルヘッドのNikunj Jinsiだ。

McClureは、 Accel Partners、Index Ventures、Sequoia Capital、そしてTiger Globalの名を、スタートアップの立ち上げからエグジットのための国際的なパイプラインを構築しているファンドとして挙げた。

「それ以外のファンドは、始めるのが遅すぎましたし、既に出来上がった企業を相手にしようとしているのです」とMcClureは付け加えた。

ラテンアメリカの中には、他の地域よりも速く成長しているエリアが存在する。500 Startupsの拠点が置かれているメキシコシティは成熟しているが、他の都市ではまだ、強力なメンターネットワークやその他の必要なリソースが不足している。

500 Startupsは、シードプログラムを通じて、国際的な提携と共に強力な関係を保とうとしている。同社はスタートアップを指導するために、定期的に、様々な地域にパートナーを送り出して、海外の企業にシリコンバレーを訪問する機会を提供している。

McClureはコミットしていないものの、本日(米国時間3月15日)のラテンアメリカファンドのアナウンスは、アジアへの展開を強く匂わせるものだった。同社は最近、中国での存在感を増したところだ。とはいえ、まだ同地域内での特定のファンドについては発表されていない。

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(翻訳:Sako)

【ビデオ】Facebookで20名のデザイナーチームを200名に育て上げたKate Aronowitzにテクノロジー業界におけるデザイナーのキャリアパスを聞く

[筆者: Bobby Ghoshal(@ghoshal), Jared Erondu(@erondu]
昨年まで約2年間、資産運用アドバイザーWealthfrontのデザイン担当VPだったKate Aronowitzは、その前の5年あまり、Facebookのデザイナー部長だった。その間彼女はMark Zuckerbergのもとで、最初20名だったデザイナーチームを、200名の世界最高クラスのチームに育て上げた。〔LinkedIn

今回のインタビュー(上図、1時間8分)で彼女は、Facebookのデザインチーム構築の初期の苦労、デザインのリーダーと企業の上級役員たちとの認識の食い違い、テクノロジー企業に就職する若いデザイナーへのアドバイス(どんな仕事がベストか)、などを語っている。またデザイナーが目指すべきキャリアパスは、管理職になること以外にあるのではないか、とも語っている。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

ふるさと起業の典型Skuidがプログラミング不要アプリケーション開発ツールで$25Mを調達

ユーザーインタフェイスを“コードレス”で作れるので、一般社員でもBI(business intelligence, ビジネスインテリジェンス)アプリケーションを作れる、というSkuidが、新たに2500万ドルの資金を調達した。

テネシー州チャタヌーガに本社を置くSkuidは、シリコンバレーやサンフランシスコ、ボストン、ロサンゼルス、ニューヨークなど従来のイノベーションハブ以外の場所で生まれつつあるスタートアップの、ひとつの典型だ。

本誌TechCrunchは3年前に、投資家たちが予言している“逆ゴールドラッシュ”〔Uターン起業、ふるさと起業〕を取り上げたが、同社はある意味でその代表的な例でもある。

アパラチア山脈の内陸側山麓丘陵地帯がテネシー川で区切られるあたりに位置するチャタヌーガは、西半球で最速のインターネット接続を誇り、ガス・水道などと同じ公共サービスとして提供されるギガビットアクセスは、この都市(まち)を “救った”と言われる。

名曲チャタヌーガ・チュー・チューを産んだこのSouthern Railway鉄道沿いの工業都市は、もはやチャタヌーガの今の姿ではない。今やヘルスケア産業を中心に脱工業化を図るとともに、Volkswagenがこの小さな南部の都市に10億ドルを投じた大工場も抱えている。

SkuidのCEOでファウンダーのKen McElrathにとって、競争の激しいシリコンバレーではなく、のどかな田舎で起業することのメリットの大きさは、計り知れない。また1ギガのインターネットサービスに毎月250ドル払うことと、ウェストコーストで数千ドル払うことを比べれば、その違いは自明だ。

今回の25万ドルはMcElrath一家の資産管理会社Iconiq(Mark Zuckerbergにもそんな会社がある)と、前からの投資家K1 Investment Managementからだ。その主な用途は、今後の技術開発、企業のふつうの社員が、ツールバーやデータの視覚化を駆使したビジネスインテリジェンスアプリケーションを作れるようになるための、Skuidを作ることだ。

ユーザーがSkuidで作るアプリケーションは、もっぱらRest APIを駆使して、その会社が使っているBI用アプリケーション、すなわちOracle, Microsoft, Salesforce, Slackなどなどを統合する。

この、McElrathが“Skuid Model”と呼ぶ方式では、ユーザーがそのアプリケーションを一二箇所クリックするだけで、目的のデータソースを呼び出せる。そして目的のデータオブジェクトをさまざまな視覚化タブへドラッグ&ドロップすると、会社のデータを見ることができる。

McElrathによると、Skuidの次のバージョンでは、AmazonのAlexaやAppleのSiriに似た技術を導入して、音声によるインタフェイスが可能になる。

McElrathは語る: “まるでそれは、Alexaに表を作らせたり、何かの基準でデータをフィルタさせたりするような、アプリケーションになるだろうね。たとえば自動車販売店の営業なら、車を運転しながらSkuidのアプリケーションに、‘これから行くお客さんの会社のホームページを見せてくれ’、なんて…音声で…言えるだろう。そして、‘そこの担当者のXXXさんに電話をかけてくれ’、とかね”。

こうやって誰でもアプリケーションを作れるのが、プログラミングの未来だ、とMcElrathは語る。“それは、そんなに遠い未来ではない。こういったいろんな機能を統合するのは、今ならきわめて容易だ。音声機能は、来年の製品に実装できるだろう”。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

上場株式の議決権を考える―保有期間に基づく方式を再導入すべきだ

議決権制限株式の善悪についていまさら興奮して議論を始める気にはなれない。株式市場の投資家側は「議決権制限株式はファウンダー側に不当に強い支配権を与えるものだ」と憤る一方、ファウンダー側は「短期の株式保有者の近視眼的行動から会社を守るために必須の制度だ」と反論する。しかし現実に議決権制限株式を発行しているのは比較的少数の会社にとどまる。こうした仕組を採用している有名なテクノロジー企業はGoogle、Facebook、Zynga、Groupon、Snapぐらいだろう。ほとんどのスタートアップは自社に対してはるかに弱い支配権しか持たない。

もっとも議決権制限株式の活用は漸増の傾向だ。Dealogicによれば、2015年にはアメリカにおける174社の新規上場中 27社が議決権制限株式を発行している。2014年には292社中36社だった。

これがなぜ議論を呼ぶのか? 昨年、Institutional Shareholder Servicesが発表したレポートは、「1年、5年、10年、いずれの期間でも議決権制限株式を発行している企業の成績はそうでない会社の成績を下回った」と主張している。最近上場したSnapは無議決権株式の仕組を全面的に採用している。新規上場申請書の中でSnapは「われわれの知る限り、アメリカの株式市場において無議決権株式で上場を試みた会社は他にない」と認めている。

Snapの株価が長期的にどういう値動きとなるかは今後の問題だが、上場の初日には売り出し価格から44%値上がりし、その後16%ダウンするという展開となっている。アナリストは次第に悲観的な見方を強めているようだ。議決権制限株式に懸念を示す者の中にはSEC〔証券取引委員会〕の民主党系委員、カラ・スタイン(Kara Stein)が含まれる。Stein委員は3月9日(米国時間)に「投資家の権利が損なわれている疑いがある」と公に発言した。スタイン委員は「SECは一部の新しい仕組が投資家にとって有害であることを証明すべきだ」と述べた。

SECが代替策を考慮すべきであるなら、保有期間に基づく議決権(tenured voting)だろう。この仕組は以前は多少利用されていたものの、1980年代に事実上禁止されたままになっている。シリコンバレーの一部ではこの仕組の復活を望む声が強まっている。

この仕組ではその名前のとおり、「保有期間(tenure)」がカギとなる。投資家が長期間株式を保有していれば議決権が増える。「もの言う株主」の行動からファウンダーを守ると同時に公開市場の株式保有者にも一定の発言権が確保される。

利点は明らかだろう。AutodeskのCEOを長年務めたCarl Bassは昨年「もの言う株主」と衝突した。当然ながらBassはわれわれのインタビューに対して、「株式の保有期間に応じて議決権が増加する仕組を使えるようにすべきだ」と述べた。「100万株を1年保有している株主よりも100万株を2年保有している株主の方が大きな議決権を持つようにすべきだ」というのがBassの考えだ。

ベンチャーキャピタルのAndreessen Horowitzのゼネラル・パートナー、スコット・クーパーもこのアイディアを支持している。彼は「広汎な株式市場改革の一環として良い考えだ。保有期間に基づく議決権は株主の長期的利益と経営陣の利益を調整するために非常に役立つ。議決権制限株式という力づくの解決策よりずっと受け入れやすいはずだ」という。

カリフォルニア大学バークレー校ロースクールの教授Davidoff Solomonはこの仕組が実現されるには「時間がかかるだろう。また誰か率先するものが必要だという。

保有期間に基づく議決権は「〔一般に保有期間が長い〕機関投資家に有利だ。一方でテクノロジー企業の行動はレミング的だ」とSolomonは言う。つまりGoogleが議決権なしの株式を売り出したことがドアを開く結果となり、他のシリコンバレー企業もその後に続いた。保有期間に基づく議決権の仕組も同様で、誰からが先鞭を付ければそれがトレンドになるだろうという。

実現を困難にしているハードルの一つは、上場を取り仕切る証券会社にそのメリットを飲み込ませることだという。Jackson Square VenturessのGreg Gretschは「〔各地で投資家に上場意図を説明する〕ロードショーのプレゼンは30分だ。投資銀行家は貴重な時間を保有期間ベースの議決権などの説明に使いたがらない」と述べた。Gretchによれば、一般的に「投資銀行家は普通と違って見えるものを嫌う。なんであれ―ひも付きだ株式とかとひも付き融資とか―条件付きの仕組は市場ではウケが悪い」という。

有力法律事務所のWilson Sonsiniの弁護士、David Bergerによれば、もう一つのハードルはアメリカの証券取引所に保有期間に基づく議決権の仕組を認めさせることだ。証券取引所は80年代に「保有期間に基づく議決権は不必要に複雑であり、条件が守られていることを正しく確認するのが困難」だとして、すでに定款に明記して実行していた企業を除き、新たにこうした株式を発行することを禁じて現在に至っている。

Bergerによれば、「証券取引所は保有期間に基づく議決権に対して柔軟な考え方だ(Bergerは実際に話を聞いたという)。しかし投資家側の熱意が不足しているのが問題だ」だという。つまり機関投資家のような有力組織は無議決権株式に対して異議を申し立てつつ、一方でそうした株式を大量に購入して利益を上げている。

「 [一部の]企業が [議決権制限株式を]発行していられるのは、そうした企業が例外的に高いパフォーマンスを発揮しており、誰もが少しでも株式を買いたいからだ。機関投資家は議決権制限株式は企業統治の観点から問題があるという―実際にあるだろう。しかし一方で機関投資家は運用成績をアップするためにこうした会社の株式を大量に買い込んでいる」とBergerは言う。

実際、機関投資家のコンセンサスは「ボートを揺らすな」、つまり現状擁護に傾いている。 カリフォルニア州教員年金基金のポートフォリオ・マネージャーの一人は、保有期間に基づく議決権に反対して、昨年の夏、NPRで「株主の株主もまた株主だ. . .こういう状況で 株主間に区分を設けるのは非常に危険な試みだ」と述べている。

SolomonやBergerが保有期間に基づく議決権がトレンドになるためにはSnapくらいの大型で魅力的な上場が必要だと考えるのも無理はない。Snapような上場が毎日あるわけではないことを考えれば、保有期間に基づく議決権が実現するにはやはりある程度の時間が必要かもしれない。

「上場の際にファウンダーが投資銀行に対して〔自分はGoogleのように〕議決権を握っていたいと主張することはよくあるだろう。しかし十に九まで投資銀行は『そんな話をされてもお門違いだ』と答えていると思う」とGretschは言う

画像: OnBlast/iStock/Getty Images

[原文へ]

(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

いつでも、どこからでもペットと一緒に遊べるPebby登場

かわいいペットたちは、愉しみをみつけるのがとても上手だ。人間もこうだったら世の中はもっと平和になるのになどと考えてしまう人も多いだろう。Kickstarterに登場したばかり(訳注:そしてあっという間に目標額を達成した)のPebbyで遊ぶ犬をみると、あらためてペットたちの平和な世界をうらやんでしまう人もいるに違いない。

単純に紹介すれば、Pebbyはスマートフォンでコントロールすることのできる「ボール」だ。ペットは動きまわるボールと楽しく遊びまわるし、また飼い主はボールをうまく動かしてペットの場所を移動させることなどもできる。ボールはWiFiでネットワークに繋がっていて、1度の充電で90分動作させることができる(スタンバイ時間は15時間)。

このPebbyには2つのモードが備わっている。ひとつは、先に述べたようにリモードでコントロールするモードだ。またペットにとりつけるスマート首輪と連携させることもできるようになっている。こちらのモードでは、首輪をつけたペットを追いかけたり、あるいは逆に遠ざかったりという動きを自動で行わせることができる。

また、ペットがPebbyで遊びはじめたら飼い主に通知するような機能も備わっている。また首輪連動モードでペットの動きを記録しておき、フィットネストラッカーのように使うこともできる。首輪に内蔵されている電池は8日ないし12日間動作するのだそうだ。

さらに双方向のマイクや、720pの広角カメラも搭載されている。世界中のどこにいても、ペットの様子をチェックしたり絆を深めたりすることができるようになるわけだ。レーザーやLED、およびスピーカーも内蔵されていて、外装も交換可能となっている。

遊び終えたら、アプリケーションからワイヤレス充電器まで運ぶこともできるようになっている。市場価格は248ドルの予定だが、Kickstarterでは早期割引で124ドルから入手することができるようになっている。

原文へ

(翻訳:Maeda, H

WordPress.comがMediumのインポートツールを提供

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パブリッシングプラットフォームのMediumが、最近数十名を解雇した。なので、もしあなたの貴重な書き込みを、いまだにビジネスモデルを模索中のスタートアップの手に委ねたくないのなら、コンテンツをWordPress.comへわずか数回のクリックで移すことができる。

WordPress.comを運営するAutomattic社が、MediumのコンテンツすべてをWordPress.comサイトに簡単にコピーするためのインポートツールをリリースした。

Mediumは、その設定ページから、あなたの投稿と下書きを便利な .zip アーカイブとしてエクスポートしてくれる良い市民であり続けている。エクスポートが終わったら、WordPress.comの設定ページを開き、この.zipファイルをアップロードすることができる。

アップロード完了後15分ほどで、全ての投稿が正しいタイムスタンプと共に公開され、Mediumの下書きはWordPressの下書きに変換される。まあ大体はそんな感じで片付く。

Mediumは洗練されたインターフェースと、素晴らしい配布ツールを持っている。例えばもしTwitter上に既に沢山のフォロワーがいるのなら、大勢の読者を獲得するのは容易だ。

しかしMediumはテキストコンテンツを最終的に所有するプラットフォームになることを望んでいる。同社はあなたの投稿の内容に反する広告を出すことができるし、あなたの記事を用いて何でも望むことを行うことができる。WordPress.comは、何年にもわたって明確なビジネスモデルと共に、よりオープンなアプローチを採用していて、私個人はMediumよりもWordPress.comを信用している。

もしMediumに留まりたい場合でも、あなたのウェブサイトを他のプラットフォームに移行するための簡単なツールがあることをを知っていることは良いことだ。もしMediumの決定に同意できない場合には、そこをいつでも立ち去ることができる。

更新:Mediumはもはやプロモーション付ストーリーの掲載を行っていない。現在新しい収入源を探しているところだ。

名前のありません

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(翻訳:Sako)

セキュリティや特化型クラドソーシングを展開するココン、SBI FinTechファンドなどから総額5億円を調達

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サイバーセキュリティ事業と特化型クラウドソーシング事業を展開するココン。同社は2月21日、SBIホールディングスの子会社のSBIインベストメントが運用するFinTechビジネスイノベーション投資事業有限責任組合などのファンドを引受先とした第三者割当増資を1月31日付で実施。総額5億円の資金調達を完了していたことを明らかにした。ココンによると、同社はこれまでにVCや個人投資家から合計12億円以上の資金を調達しているという。

調達した資金は、サイバーセキュリティ分野でのプロダクト開発の強化、既存事業における投資およびM&Aに充てるとしている。また、同社が展開するモバイルアプリ、Webサイト、IoTデバイスのセキュリティ診断サービスなどがSBIグループ各社およびSBIグループの提携先の企業に導入される見込みだ。

ココンは2013年2月の創業。当時はPanda Graphicsという社名で、2Dイラストと3Dコンピューターグラフィックスの特化型クラウドソーシングサービス「Panda Graphics」を手がけていた。2014年6月に3DCGモーション制作を展開するモックス、2015年1月にUX設計、UIデザイン事業を展開するオハコと資本業務提携。2015年5月にGroodが展開していた音声クラウドソーシングサービス「Voip!」を譲受するなど、事業領域を拡大してきた。

事業の多角化に伴い、2015年6月に社名をPanda Graphicsからココンに変更。その後、セキュリティ診断事業を展開するイエラエセキュリティ、セキュリティなどの情報技術における研究開発支援、コンサルテーションを行うレピダムを完全子会社化。サイバーセキュリティ事業に進出するとともに、Panda Graphics、Voip!を運営するクラウドソーシング本部を分社化し、Panda Graphics(旧社名と同じだが別法人)を新設。両事業を主力事業と位置付け、事業展開を行ってきた。