Unityが570億円超を調達し、時価総額は6500億円に

Unityの評価は上昇しているが、同社のリーダーシップが15年の歴史を持つゲーミングプラットフォームを近いうちに上場させようとしているかどうかは不明だ。

Unityは米国時間7月25日、D1Capital PartnersやCanada Pension Plan Investment Board、Light Street Capital、Sequoia Capital、Silver Lake Partnersから5億2500万ドル(約570億円)の株式公開買い付けの契約書を受け取ったことを明かした。

UnityでCFOを務めるKim Jabal(キム・ジャバル)氏は、この提案が従業員に「機会の流動性を得る」と語っている。なお、調達される資金の総額は共通の株主がUnityの株式をどれだけ売却するかに左右される。

このイベントは、Unityが非上場企業として活動するなか、数年間株式を保有し続けていた従業員を喜ばせ、また同社がIPOのスケジュールを遅らせている可能性がある。注目すべきは、Unityが従業員の株を買い戻す目的で、以前に数億ドルを調達していたことだ。今年はじめには、Unityは2020年前半のIPOを目指していると報じられた

同社はまた、5月に1億5000万ドル(約160億円)のシリーズE資金調達ラウンドを完了し、時価総額が60億ドル(約6500億円)へと倍増したことを認めた。今回の発表は5月の時価総額に関する報道を裏付けるものだが、資金調達額はそれよりも多い。

この発表は、Unityの元女性幹部が現在のCEOのJohn Riccitiello(ジョン・リッチチェロ)氏からセクハラをうけていたとして、先月に訴訟を起こし注目されたものに続いている。

サンフランシスコに拠点をおくUnityは、2000人以上の従業員を抱えている。同社は、ゲームスタジオがさまざまなプラットフォームでビデオゲームを制作するために使用する開発ツールを開発している。同社によると、全ゲームの半分はUnityのゲームエンジンを利用して作られているという。

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(翻訳:塚本直樹 Twitter

AWSがSlackなどにシステムアラート用チャットボットを提供

AmazonのクラウドコンピューティングサービスAWSは米国時間7月25日、AWS Chatbotのベータローンチを発表した。それはSlackやAmazon Chimeなどのチャンネルに忍び込んで、ユーザーのAWSリソースに問題が起きたことを伝える小さなお喋り屋さんだ。

いまどきのDevOpsチームは、たいていSlackなどのツールを使っているから、前からチャットボットを構築できるすべてのツールを提供していたAWSがそのようなサービスをローンチしなかったことがむしろ意外だ。

ボットはAmazon Simple Notification Service(SNS)につながり、ユーザーはそれをそのほかのAWSサービスに統合する。今そのリストに載っているのは、Amazon CloudWatch、AWS Health、Budgets、Security Hub、GuardDuty、そしてCloudFormationだ。AWSのサービスだったら何でもとはいかないが、ユーザーのAWSデプロイメントをウォッチする機能がほとんど揃っている。

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AWSのプロダクトマネージャーであるIlya Bezdelev(イリア・ベズデレヴ)氏が、今日の発表声明にこう書いている。「DevOpsのチームはコミュニケーションのハブとしてチャットルームをよく使っている。チーム内の会話だけでなく、彼らが運用しているシステムとの対話にもチャットが利用される。ボットはそのような対話のための便宜を提供し、重要な通知の配布や、ユーザーからシステムへのコマンドのリレーに利用されている。オペレーションレベルのイベントや通知さえも、チャットルームから来るようにしているチームが多く、それらがチームの全員に見えて次のステップを議論できるというチャットルームの特徴が好まれている」。

ここでもしかしAWSの流儀に漏れず、AWSのチャットボットが動くようになるためには、セットアップに多少の手間を要する

しかし当面は、すべてのコミュニケーションが一方通行のようだ。Slackにアラートが来ても、少なくとも現状のベータでは、AWSへのコマンドをプッシュバックすることはできない。このチャットボットは、お喋りは好きだけど、聴くのは苦手らしい。でも一般公開されるころには、もっと成長しているかもしれない。

画像クレジット: Thomas Cloer/Flickr CC BY-SA 2.0のライセンスによる

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

CarPlayやAndroid Autoを使い株取引の情報を車中で収集

オンライン株取引のTD Ameritradeは、車載用ソフトウェアのプラットフォームであるアップルのCarPlay、グーグルのAndroid Auto、アマゾンのEcho Autoと統合して、運転しながらポートフォリオや最新ニュースをチェックできるようにした。

TD Ameritradeは今週、投資家が車の中で音声コマンドやタップ操作により株価などの金融情報にアクセスできるさまざまな機能を発表した。同社の最高情報責任者であるVijay Sankaran(ヴィジャイ・サンカラン)氏によれば、これは「自然な進化」であり、「複雑なテクノロジーを使って投資を日常生活にシームレスに組み込む」方法のひとつであるという。

今のところ顧客は車内で取引をすることはできない。同社のこれまでの歩みを考えると、これもまた「自然な進化」かもしれない。電話、デスクトップコンピュータかモバイルアプリ、アマゾンのAlexa対応デバイスで取引をすることはできる。

車内で利用できる機能はプラットフォームにより異なる。アップルのCarPlayの場合、TD Ameritrade NetworkがCarPlayに最適化したオーディオストリーミングでニュースライブをブロードキャストするため、TDAN Radioアプリで最新のマーケットニュースを聞くことができる。

Android AutoとEcho Autoの場合は、音声コマンドで株価の動きの概略や業界の最新情報、リアルタイムの相場、口座残高と資産運用成績をチェックできる。

TD Ameritradeの戦略的パートナーシップおよびテクノロジー活用の責任者、Sunayna Tuteja(スナイナ・ツタージャ)氏は声明で次のように述べている。「我々のようにつながりを必要とする世界では、投資家が家からでもオフィスからでも出先でもサービスを利用できるようにしなくてはならない。車載用テクノロジーによって新しいタイプのつながりを得ることができ、金融情報や市場にアクセスするハードルはさらに低くなる」。

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(翻訳:Kaori Koyama)

GoogleのGallery Goはオフラインで使える写真編集アプリ

今週ナイジェリアで行われたイベントでGoogle(グーグル)は、写真をオフラインで管理し編集できるアプリとしてGallery Goを紹介した。これはインターネットの接続が常時安定しているとは限らない途上国市場向けにGoogleが提供している、一連のアプリのひとつだ。

Gallery GoはAndroid 8.1(Oreo)以上が動いている機種で利用でき、モバイルデバイス上でわずか10MBのストレージスペースしか使わない。それでもこのアプリは、Google Photosと同じような機械学習のツールを使って写真を整理し管理する。しかも、インターネットに常時接続していなくてもよい。ユーザーはフォルダーを作ってSDカード上の画像にこのアプリから直接アクセスできる。

またこのアプリには、フィルターや強調、簡易修正、回転、トリミングなど、いくつかの基本的な写真編集機能がある。Facebookなども同様のアプリを提供しており、スマートフォンがパーソナルなコンピューターである地域にサービスを提供しようとしている。それらの地域はネットの接続が高品質でないから、そのための配慮が必要だ。

このアプリは今すでにPlay Storeから入手でき、来月以降は一部の機種でデフォルトのギャラリーアプリとして提供されるだろう。

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

データでなくアクティビティから企業を分析するHeapが約60億円を調達

HeapのCEOを務めるMatin Movassate(マタン・モヴァサト)氏は、同社を創ったときから、アナリティクスの既存勢力に挑戦すると言っていた。米国時間7月23日に同社はシリーズCで5500万ドル(約60億円)の調達を発表し、彼の挑戦にはさらなる資金が投入されたことになる。

モヴァサト氏は以前Facebookのプロダクトマネージャーだったが、HeapのシリーズBのときのインタビューでは、その頃を思い出して、あの回りくどいやり方ではもっぱらユーザーデータを集めて分析するんだとコメントしていた。それとは対照的にHeapは、ユーザーのアクティビティに関するデータを自動的に集める。目標は、文字通り何もかもを捉えて、それをセルフサービス方式で利用できるようにすることだ。自動的なデータ収集なので、ユーザーに質問をしたりするコードはまったくない。

すでに顧客は6000社以上いて、その中にはTwilioやAppNexus、Harry’s、WeWork、Microsoftなどもいる。今回のシリーズCを含めて、Heapの調達総額は9520万ドル(約103兆円)になる。資金は国際的な成長に投ずる計画であり、プロダクトとエンジニアリングと営業も拡張したい。

シリーズCをリードしたのはNewView Capitalだ。同社への投資に新たに参加したのが、DTCP、Maverick Ventures、Triangle Peak Partners、Alliance Bernstein Private Credit Investors、Sharespost、既存の投資家がNEA、Menlo Ventures、Initialized Capital、そしてPear VCとなっている。NewViewのファウンダーでマネージングパートナーのRavi Viswanathan(ラヴィ・ヴィスワナータン)氏が、Heapの取締役会に加わる。

そのヴィスワナータン氏は声明文で「Heapは企業の経営分析の自動化に革新的なやり方で取り組み、それにより組織内のさまざまなチームが、学習し、よりスマートな意思決定ができるためのデータを取得できる。最先端のソフトウェアを開発し続けているHeapと組めることは大変喜ばしく、そのアナリティクスのオートメーションは今後さらに成長して、ますます多くの顧客に奉仕していくことだろう」とコメントしている。

画像クレジット: Heap

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

Slackが高速化されたウェブとデスクトップクライアントを公開

米国時間7月22日、Slackはウェブとデスクトップクライアントのメジャーアップデートの公開を開始した。新機能はなくユーザーインターフェイスも変わらないが、内部は完全に作り直されている。2012年にSlackが登場したときにはウェブとデスクトップクライアント(この両者は基本的に同じコードベースだ)はjQueryなどのテクノロジーを使用していたが、ここ1年ほどかけてモダンなスタックに移行してきた。

Slackのプロダクトマネジメントのディレクター、Jaime DeLanghe(ジェイミー・デラング)氏は筆者に対し次のように語った。「Slackは仕事に必要なツールと一緒に、簡単にシンプルに、できれば楽しく使ってもらいたいと思っている。そのために我々はSlackがどんな環境で使われるかを考えた。また、クライアントサイドの開発のエコシステムは、ここ5年で大きく変化している。JavaScriptがアップデートされたし、ReactやReduxといった新しいテクノロジーでダイナミックなウェブアプリを以前よりも簡単に作れるようになった。モダンなパラダイムに合うようにスタックをアップデートしたいと考えていた」。

ここ数カ月、実はSlackは今回のアップデートの前段階の多くをサイレントに展開してきた。ただし全容は、クライアントを最新版にアップデートしたときに明らかになる。新しいElectronアプリですべてが統合されるからだ。

Slackは、新バージョンではメモリ使用量が最大で50%減り、起動は33%速くなるとしている。着信通話に参加するまでの時間も10分の1になるという。

こうした変化の多くは、複数のワークスペースに参加しているユーザーに特に顕著に現れる。デラング氏が強調するように、多くのユーザーが複数のワークスペースに参加しているという想定のもとに新しいアーキテクチャを設計したからだ。これまでのアプリでは各ワークスペースがそれぞれのElectronプロセスを使っていたため、ワークスペースを切り替えるときにメモリやCPUを多く必要としていた。

Slackは、Reactを使って新しいアプリのすべてのUIコンポーネントを作った。新しいアプリでは、すべてのデータがロードされてからUIに表示されるのではなく、利用できるデータを適宜ロードする。

この結果、オフラインのときに、前に開いていたチャンネルや会話を読むこともできるようになった。

さらに重要なポイントは、基盤としてのSlackがモダンなクライアントとなり、機能開発が今後高速化されると考えられることだろう。デラング氏は「無理な約束をするつもりはない。スケーリングと構築を同時に進める企業にとって、検討しなくてはならない障壁のひとつが今回のアップデートによって取り除かれる。トレードオフがこれまでよりもいくらか容易になる」と語った。

今回のアップデートは今後数週間で全ユーザーに展開される。アップデートを利用するには、デスクトップクライアントを新しくすることと、新しいバージョンを使える対象となることの、2つが必要だ。Slack側の状況だけでなく、例えば自社のIT部門がアップデートをどのように導入するかといった要因もある。

画像:Drew Angerer / Getty Images

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(翻訳:Kaori Koyama)

AdobeのプロトタイピングツールXDがAlexaを統合

このところ人気が増しているプロトタイピングとデザインのツールAdobe XDに、Echo DotやEcho Showなどの上のAmazon Alexaによる音声体験をテストする機能が加わった。そのサポートは昨年10月に発表されたXDの音声プロトタイピングツールをベースとし、Adobeの初めてのAlexaスキル、すなわち制作中のプロトタイプをテストするためのスキルもある。

音声テクノロジーに関するAdobeの最近の調査によると、ユーザーは確かに音声テクノロジーを使うことに関心があるが、しかしこれまでのXDはWebやモバイルが中心だった。しかしAdobe自身も、最近の数か月で音声アプリの構築にいくつかの投資をした。また長年通常のアプリを作り慣れているデザイナーやデベロッパーも、音声アプリを任されることが多くなっている。そこで彼らのためには、使い慣れたツールで新しい音声アプリのテストができたほうがいい。

今回の統合に含まれるのは、上述のテスト用のAlexaスキルのほかに、音声プロトタイプをAlexaへエキスポートしプレビューするためのXDのAlexaプラグインだ。Adobeの音声UI/UX担当ディレクターMark Webster(マーク・ウェブスター)氏は「自分が作っているプロトタイプを実機の上で体験すると、投資家などがデザイナーやデベロッパーの意図をよく理解できる。それだけでなく、EchoなどのAlexaデバイスの上で音声プロトタイプを体験できれば、デザインについてより具体的な議論ができるようになる。そして部分的手直しも、製品開発のサイクルを一からやり直さずにできる」とコメントしている。

XDの音声サポートの初期的な段階はとても素朴で、単語を理解したら、それに対応して話をするだけだ。初歩的な機能をデモするにはこれでよくても、本物のデバイスでスキルをテストすることの代わりにはなりえない。

でも今後は、ほかの音声アシスタントもサポートされるのではないだろうか。当面は、Alexaだけだが。

XD Amazon Alexa Plugin 01

関連記事: Adobe XD now lets you prototype voice apps (Adobe XDで音声アプリをプロトタイピングできる、未訳)

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

アップルがiOS 12.4を公開、Apple Cardに対応か

新機能満載のiOS 13はすぐそこまで来ているが、まだ準備は整っていないようだ。Apple(アップル)はiOS 12.4を公開した。安定バージョンの最新アップデートだ。大きな変更はほとんどないが、理論的にApple Cardをサポートした最初のバージョンになる。ただし機能はまだ有効になっていない。

Appleが自社製クレッジットカードのテストを始めてから数週間になる。Bloombergによると、Appleストアの店員はiOS 12.4と招待状があればApple Cardを申し込めるようだ。

ちなみに、Appleは米国ユーザー向けクレジットカードでゴールドマン・サックスと提携している。サインアップするとMaster Cardのクレジットカードをウォレットアプリで使えるようになる。

アプリでは、最近の購入一覧を見られるほか、購入商品をカテゴリー別に見ることもできる。Apple Cardで支払った場合は1%、Apple Payを使った場合は2%、Apple製品の購入なら3%のキャッシュバックがある。

キャッシュバックはApple Cashカードに直接加算される。残高はApple Payを使った各種支払いやApple Cardの支払いに使うか、自分の銀行口座に振り込むことができる。

Apple Cardが最初に発表されたのは今年の3月だった。その時Appleは夏には使えるようになると言っていた。iOS 12.4が公開された今、Apple Cardのリリース日はそう遠くないはずだ。

またiOS 12.4には、iPhoneから別のiPhoneに無線でデータ転送できる移行ツールが入った。新しいiPhoneに切り替える時、iCloudを使っていない人には特に便利だろう。

このアップデートでは、Apple News+のコンテンツを細かく調整できるようになった。たとえば、ダウンロード済みの雑誌を削除したり、ダウンロードされた雑誌のチェックなどができる。

また今日のアップデートでは、Apple Watchのトランシーバー機能が再度有効になる。Appleは同機能に脆弱性が見つかったため、一時的に無効化していた。

Appleのセキュリティー情報ページによると、今回のiOS 12.4には36件のセキュリティー修正が含まれている。

アップデートの前に、iPhoneをiCloudかiTunesにバックアップするのをお忘れなく。そのあと設定アプリで、一般 > ソフトウェアアップデートへ進む。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

Google Cloudが継続的デリバリサービスSpinnakerを正式にサポート

Google Cloudは米国時間7月21日、Spinnaker for Google Cloud Platform発表した。その名のとおり、継続的デリバリ(Continuous Delivery、CD)サービスSpinnakerをGoogleのクラウド上で容易に使えるようになる。

Spinnakerは最初Netflixが社内用に作り、それを今ではNetflixとGoogleが共同開発している。Netflixはそれを2015年にオープンソースにし、その後はオープンソースのCDプラットホームとしていちばん多く使われるようになった。今では、AdobeやBox、Cisco、Daimler、Samsung(サムスン)などもSpinnakeを使って開発工程を高速化している。

Spinnaker for Google Cloud Platformは、GoogleのKubernetes Engine上で動き、サービスのインストールはほんの数クリックで済む。インストールされたSpinnakerには、必要なツールすべてと、サービスのユーザーインタフェイスDeckが含まれている。ユーザーはGoogle Kubernetes EngineやCloud Memorystore for Redis、Google Cloud Load BalancingなどがGoogle Cloud上で使用するリソースの料金を払うことになる。

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同社はGoogle Kubernetes EngineやCompute Engine、App EngineなどでコードのテストやデプロイができるようSpinnakerを事前に構成しているが、そのほかのどんなパブリッククラウドやオンプレミスクラウド上でも使用できる。Googleが最近ローンチした継続的インテグレーション(CI)サービスCloud Buildを統合し、バックアップの自動化や監査の統合、GoogleのStackdriverによるモニタリングなどもサポートしている。

GoogleでSpinnakerの開発を指揮しているMatt Duftler(マット・ダフトラー)氏が本日の発表声明で「このソリューションはデベロッパーだけでなくDevOpsやSREの人たちにも役に立つようにしたい。デベロッパーは最小のオーバヘッドで速く仕事がしたいと願っている。プラットホームのチームは、彼らが推奨するやり方をSpinnakernの中へエンコードして、それらを安全に使用できるようにする。Spinnaker for Google Cloud Platformを最初から使っていくと、社内の開発チームによるプロジェクトの着手と進行がより速くなるだろう」と述べている。

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

アップルがwatchOSアップデートによりトランシーバーアプリの脆弱性を修正

米国時間7月22日のwatchOSのアップデートにより、トランシーバー(Walkie Talkie)アプリが復活した。watchOS 5.3のリリースノートには、「トランシーバーアプリの修正を含む重要なセキュリティアップデート」と記載されている。

この機能は、Apple(アップル)が虚弱性を見つけた2週間ほど前に無効化された。その詳細は明らかにされていないが、watchOS 5にて搭載された機能を即座に無効化するのに十分な内容だった。

トランシーバーアプリを使うと、2人のユーザーはお互いに短いチャットメッセージを送ることができる。これはApple Watchをフル機能のコミュニケーションツールとして使う複雑さを軽減し、ボイスメッセージを使うよりもスピーディーにメッセージをやり取りすることができる。

watchOSのアップデートはすでに入手可能だ。

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(翻訳:塚本直樹 Twitter

ファーウェイの新OSはAndroid置換システムではなく工業用だった

結局、ファーウェイの独自OS「Hongmeng」(鴻蒙)は最初に喧伝されたようなAndroidを置き換えるOSではなかった。確かに最初の話では、ファーウェイはGoogleがなくても生きられる道を探していたと思われるが、でもこの中国のハードウェア大手によると、そのオペレーティングシステムは主に工業用だ。

中国国営の新華社通信社の最新の記事によると、そのOSはトランプがファーウェイを禁ずるずっと前から開発されていた。上級副社長のCatherine Chen(キャサリン・チェン)氏によると、HongmengはAndroidなどに比べると比較的シンプルなオペレーティングシステムだ。このニュースは、ファーウェイはIoTデバイス用のソフトウェアを開発していたという、もうひとつの報道のこだまのようだ。

でもこれらのニュースは、ファーウェイが完全なモバイルオペレーティングシステムを開発していないとは言ってない。また、この新しいOSはほかの目的に転用できるのかもしれない。

最新のニュースを見ると同社の人的資源の分厚さがわかる。確かに、かなり前からこうなる前兆はあった。禁令は唐突に訪れたように見えるが、同社に関する疑念はセキュリティ界隈で何年も前から漂っていた。

トランプ政権によってファーウェイは、Googleなどの米企業との協働を禁じられたが、しかし一時的な規制緩和により、スマートフォンにAndroidを使えることになった。あくまでも一時的に。でも規制が再開されれば、同社の今後の健康も危ういだろう。

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

Googleがアポロ11号ソフトウェア責任者を記念し巨大モニュメント製作

アポロ11号の月面着陸、50周年を記念してGoogleはさまざまな催しを企画しているが、中でも規模最大なのはGoogleマップのチームのプロジェクトだ。アポロ11号の月面着陸を導いたソフトウェアの開発責任者であるマーガレット・ハミルトン氏に対するトリビュートとして、マップチームはモハーベ砂漠のイバンパー太陽発電施設にの巨大なポートレートを製作した。

 

ポートレートは10万7000枚の鏡からなり、3.6平方キロにもおよび、ニューヨークのセントラルパークより広い。エッフェル塔を200個並べることができるという。

巨大画像にはハミルトンのポートレートだけでなく、「Apollo 11」という文字、月着陸船の画像も含まれる。これはハミルトン氏が人類初の月着陸に果たした大きな役割を示すためだ。同氏の業績のひとつである優先表示システムは着陸操縦の最終段階で宇宙飛行士がその時点で最も必要する情報を的確に表示することを可能にした。ポートレートは1900m上空からはっきり見ることができる。

 マーガレット・ハミルトン氏は現在82歳で、最近The Guardianのインタビューを受け、アポロ計画に参加することになったいきさつ、アポロ11号のミッションで果たした役割について詳しく語っている。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

文法チェックのGrammarlyが文法以外の提案もするアシスタントに

Grammarly」は人気の文法・スペルチェックツールだ。米国時間7月16日、Grammarlyのブラウザ機能拡張、Webアプリ、ネイティブのデスクトップアプリが大幅にアップデートされた。これまでのGrammarlyは正しい文章を書くメカニズムのみを提供していた。今回のアップデートでは、標準的な綴り、句読点、文法の誤りを発見するだけでなく、より高度な提案もするようになった。

例えば、不明瞭になるおそれのある文章やフレーズに、色の異なる下線がつく。文章を適切なトーンにしたり、的確な語を選んだりして、単調でなく興味を引く文章にするのにも役立つ。同じ語が何度も繰り返し出てくるのは好ましくなく、いくつかの語を切り替えて使うと文章に変化が生まれ魅力が増す。

どんな文書を作ろうとしているかによって、提案は変わってくる。そこでユーザーが、報告書を書くのか旅行ブログを書くのかといった情報を指定できるようになった。

既存の「正確さ(Correctness)」に加え、新たに「明確さ(Clarity)」「魅力(Engagement)」「言葉遣い(Delivery)」のセクションが表示されるようになった。エディタ内では、これらがそれぞれ4色の下線で示される。いずれもアルゴリズムによって改善した方がよいと判断されたものだ。Grammarlyのチームは次のように説明している。「Grammarlyはユーザーが何を書きたいのかを知ることで、ニーズに合わせた提案ができるようになった。例えば誰が読む文章かを指定すれば、Grammarlyはその読者に対する文章を書くことに集中できるように提案を調整する」。

当然かもしれないが、こうした高度な機能のほとんどは有料のGrammarly Premiumユーザーに対してのみ提供される。月額30ドル(約3200円)だが、年間契約だと大幅な割引があり、無料ユーザーにも頻繁に割引が提供されている。明確さと簡潔さに関する提案の一部は無料ユーザーも利用できる。これ以外の機能も利用したい人は、支払いをしよう。

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(翻訳:Kaori Koyama)

マイクロソフトのTeamsがDAU1300万人でSlack超えへ

Teamsは、Microsoftが2年前から提供しているSlackのライバル製品で、同社史上最も成長の速いアプリケーションだ。と、これまでMicrosoftは言ってきたが、来週行われるパートナー会議Inspireを前に、本日初めて実際のユーザー数を公表した。Teamsには現在1300万人のデイリー・アクティブユーザーがいる。週間アクティブユーザーは1900万人。またMicrosoftは、Fortune 100企業のうち91社でTeamsが利用されていることも本日発表した。

Microsoftはこれらの数字を、数週間前にIPOを果たしたばかりのSlackと比べられることを恐れていない。Microsoft 365担当副社長のJared Spataro氏は、ブログ記事でSlackの名前は挙げなかったものの、こうした数字を公表したい意向がよくわかるグラフを掲載した。

Slackが最後に発表した公式データは今年1月のデイリー・アクティブ・ユーザー数1000万人で、その後更新されていないので、現在Teamsのユーザー数の方が多いのかどうかはわからないが、Slackの成長率がこの数ヶ月間に加速していない限り、おそらくそういうことなのだろう。

2019 07 11 1047ユーザー数の公開に加えて、MicrosoftはTeamの最新情報をいくつか発表した。たとえば優先通知機能は、チャット通知の苛立たしさを次のレベルに引き上げるもので、応答するまで2分おきに呼び続ける。既読レシートや新しいモデレーション機能、Teamsチャンネルを横断するクロスポスト機能のほか、タイムレコーダーの出勤・退勤時刻もTeamsアプリから記録できる。

InspireはMicrosoftのパートナー向けのイベントなので、リセラーやパートナーに関係するTeams機能がここで発表されるのも当然だろう。ACS、NICE、Verint Verbaなどのコンプライアンス記録パートナーや、Five9、Nice InContactなどのコンタクトセンター・ソリューション・パートナーと統合する機能もある。しかしなによりも重要な発表は、Microsoftがパートナー主導のTeamsトライアル(PDF)をスタートすることで、Microsoft 365のパートナーはExchangeオンリーまたはOffice 365ビジネスプランを使っている顧客にTeamsの6ヶ月間無料トライアルを提供できる。これで今後Teamsのユーザー数が増えることは間違いないだろう。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

アップルが中国初のデザインと開発のアクセラレーターを開設

アップルは中国初のデザインと開発のアクセラレーターを上海に開設した。重要な海外市場のひとつである中国でサービスビジネスを拡大するために、地元の開発者が優れたアプリを作れるよう支援する。

アップルは、このアクセラレーターで開発者向けに定期的な講義、セミナー、ネットワーキングセッションを開始したと発表した。これは同社が2年前にインドのバンガロールに開設したのと同様のものだ。

インドにはアップル関連のアプリ開発者が約50万人いる。アクセラレータープログラムに参加した30人以上の開発者がTechCrunchに対し、このプログラムはきわめて有益だったと語っている。アクセラレーターへの参加は無料だ。

アップルは、台湾と香港を含む中華圏に250万人以上の開発者がいて、積極的にアップルのプラットフォームのアプリをさかんに開発していると述べている。中華圏の開発者はApp Storeの売上から290億ドル(約3兆円)以上を手にしている。公表されているところによると、アップルの売上の15%以上は中華圏が占めている。

アップルの中華圏のデベロッパリレーションズ責任者、Enwei Xie氏は声明で次のように述べている。「中華圏の開発者は世界をリードしている。App Storeで最も人気のあるアプリのいくつかは彼らが作ったものだ。我々は中華圏の開発者をこれまで以上にサポートできることをうれしく思う。教育から健康、エンターテインメントまで、我々が中華圏で目にする革新は素晴らしい。才能豊かな開発者たちが次に何を生み出すか、楽しみでならない」。

中国で(そしてほかの国でも)、iPadなど一部のデバイスは引き続き好調であるもののiPhoneの販売は成長が鈍っている。そのタイミングでデザインと開発のアクセラレーターが始まった。iPhoneの成長の鈍化は米中間で続く貿易摩擦から直接影響を受けている

アップルのティム・クックCEOは2019年第1四半期の収支報告に先立ち、投資家に向けて「私たちは中国の経済環境が貿易をめぐる米国との緊張の高まりによってさらに影響を受けたと考えています。不確実性が高まる風潮が金融市場に重しとなってのしかかる中、影響は消費者にも拡がる様相を見せており、中国では直営店やチャネルパートナー店への来客数が四半期終盤にかけて減少しました」と書いている。

中国での状況が好転してアップルの第3四半期はサービスの売上が急上昇するだろうと予想するアナリストもいる。

中国の大都市にデザインと開発のアクセラレーターを開設したことで、開発者がより質の高いアプリを作れるようになる。結果としてユーザーエクスペリエンスが向上し、アップルのサービスと製品のエコシステムとの関わりを深めることにつながるだろう。

インドの開発者アクセラレーターはアップルが初めて開設した開発者の拠点で、FlipkartやPaytmといった有力企業のスタッフがこのプログラムのセッションを通じて学び、各社のアプリを改良してきた。多くのアップルの社員や専門家がセッションで開発者をコーチしている。

アップルはここ数年、多くの市場でデザインとコーディングのプログラムを実施している。3月にはシンガポールの協力校でアプリ開発カリキュラムを拡大し、インドネシアには2つめの開発者アカデミーを開設すると発表した。イタリアでも同様のプログラムを継続している。今年の初めには、女性が設立した11のアプリ開発会社をアントレプレナーキャンプに受け入れた

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(翻訳:Kaori Koyama)

盗聴の恐れありでApple Watchのトランシーバー機能を一時停止へ

Apple(アップル)は、Apple Watchのトランシーバーアプリ(米国ではWalkie Talkieアプリ)を、まだどこにも報告されていない脆弱性があるため無効にした。その脆弱性により、ほかの人のiPhoneを同意なく聞くことができる(盗聴できる)と同社は米国時間7月10日の夜に公表した。Appleはそのバグと、バグが直るまで使えない不便さについて謝罪した。

Apple Watchのトランシーバーアプリを使うと、互いにお誘いをOKした二人のユーザーが「ボタンを押して話す」という昔の携帯電話のPTT(Push-to-Talk)ボタンのようなインタフェイスを使って音声でチャットできる。

Appleは次のようにコメントしている。

Apple Watchのトランシーバーアプリに関連する脆弱性を先ほど告知し、早速そのフィックスに着手するとともにアプリを無効にした。その不便を顧客にお詫びし、できるだけ早急な回復を図りたい。この脆弱性の、顧客に害を与える使い方や、それを悪用するための特定の条件や事象の継起はないはずであるが、私たちは顧客のセキュリティとプライバシーをきわめて真剣に重視している。私たちの結論としては、アプリを無効にすることが正しい行為である。なぜならこのバグにより、べつの顧客のiPhoneを同意なく聴取できるからだ。この問題とご不便に関して、再度お詫び申し上げたい。

Appleは「脆弱性をご報告ください」と名付けたポータルで直接このバグを知らされたが、現在のところそれの悪用が広まっている証拠はないそうだ。

同社はこの機能をフィックスが完全に行われてデバイスへ展開されるまで一時的に無効にしている。そのトランシーバーアプリはデバイスにインストールされているままだが、バグフィックスでアップデートされるまでは機能しない。

今年の初めに見つかった、FaceTimeのグループ通話機能のバグでは、通話を受け入れる前に相手の声が聞こえてしまう。それを発見したGrant Thompson少年は、Appleに報告したが何も応答がなかった。Appleはそのバグをフィックスし、最終的には彼にバグ発見賞金を贈った。しかし今回Appleは、「脆弱性をご報告ください」ポータルを頻繁に見ることによって脆弱性報告に遭遇し、早めにその機能を無効にできたようだ。

米国時間7月10日、AppleはMacのアップデートを黙ってプッシュし、ビデオ会議アプリのZoomから通話の開始を簡便にする機能を削除した。その機能を使うと、メールやウェブサイトがユーザーの許可なくそのユーザーを今行われているビデオ通話(ビデオ会議)に加えてしまえるからだ。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

データウェアハウスOSを提供するDataformが2億円超を調達

Googleの元社員たちが始めた英国のDataformは、企業によるデータウェアハウスの管理を容易にする。同社はこのほど、LocalGlobeがリードするラウンドで200万ドル(約2億1600億円)の資金を調達した。この投資には、多くの無名のエンジェル投資家たちが参加した。同社はシリコンバレーのアクセラレーターY Combinatorを、2018年の後期に卒業した。

Googleの社員だったLewis Hemens(ルイス・ヘメンス)氏とGuillaume-Henri Huon(ギョーム・アンリ・フォン)氏が創業したDataformは、データの豊富な企業がデータウェアハウスに保存したそれらのデータからインサイトを取り出せるようにする。データをマイニングしてインサイトやビジネスインテリジェンスを取り出すことは、通常ならデータエンジニアとアナリストのチームを必要とする。Dataformはそのタスクを単純化して企業がもっと高速かつ安価にそれができるようにし、データの有効利用を可能にする。

フォン氏は次のように説明する。「企業はこのところますます多くのデータを作り出して、それらをGoogle BigQueryやAWS Redshift、あるいはSnowflakeのようなクラウド上のデータウェアハウスに集中的に保存している。でも、BIツールを使って分析するなど、それらのデータを利用するためには、大量の生データをノイズのない、信頼性のある、アップツーデートなデータセットに変換しなければならない」。

「しかしデータの担当チームには、ウェアハウスのデータを有効に管理するためのツールがないことが多い。その結果、彼らは独自のインフラストラクチャを作ることとデータパイプラインの管理に多くの時間を取られている」、と彼は言う。

フォン氏によると、Dataformはデータウェアハウスにあるデータを管理するための完全なツールキットを提供して、その問題を解決する。それによりデータチームは毎日もしくはもっと頻繁に、新しいデータセットを作ってデータセット全体を自動的にアップデートできる。その処理全体をひとつのインタフェイスから管理でき、新しいデータセットのセットアップは5分ぐらいでできる。また同社は、これまでのベストプラクティスを使ってデータの管理を助けるオープンソースのフレームワークを提供している。その中には、再利用できるファンクションや、テストツール、依存性管理機能などがある。

今回のシード資金は、営業と技術両面の強化と拡大に充てられる。また、製品開発にも充当される。収益はSaaSの利用料金から得られ、通常はユーザーの人数に対して課金される。

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

マンガへの危機感から「少年ジャンプ」が3期目アプリコンテストにかける思い

週刊少年ジャンプ編集部が新しいアプリ、Webサービスの企画を公募する「少年ジャンプアプリ開発コンテスト」。ジャンプ50周年を記念して2017年に開催が始まった同コンテストは、今年で第3期目となる。なぜ、コミック誌の編集部がアプリ開発コンテストを主催するのか。その狙いや、これからのマンガ業界、マンガアプリへの思いについて、コンテストの担当者に話を聞いた。

新人賞で作家と出会うようにコンテストで優れたアイデアと出会う

今回取材したのは、集英社 週刊少年ジャンプ編集部の細野修平氏と籾山悠太氏。細野氏はジャンプのWeb・アプリ版として展開されている「少年ジャンプ+」編集長を務め、籾山氏も少年ジャンプ+を担当する。

写真左から:集英社 週刊少年ジャンプ編集部 細野修平氏、籾山悠太氏

アプリ開発コンテスト実施のきっかけについて、籾山氏は「ジャンプ+を運営し、デジタル事業に取り組む中で課題を感じており、外から新たに技術やアイデアを借りたいと考えたから」と話す。そこで「週刊少年ジャンプ」刊行50周年を期にコンテストを開催。「ジャンプ50年の歴史を振り返るとともに、新しいこともやっていくという意気込みを、コンテスト開催を通じて訴えたかった」と籾山氏は説明する。

細野氏は「ジャンプ+も当時のマンガ誌や既存のマンガアプリに対する危機感から立ち上がったアプリで、ジャンプとして何がアプリにできるのかを考え、実現しようとしてきた」という。2014年に創刊したジャンプ+のアプリは現在1000万ダウンロード、WAU(週間アクティブユーザー)が250万に達しており、リニューアルなどを行いながら「成長はしている」と細野氏。だが細野氏も籾山氏と同様、「もっとやれることがあるのではないかと感じている」という。

コンテストの第1期では、合計373件の企画応募があった。最優秀賞に輝いたのは、現実のマップ上でマンガを交換できる「マワシヨミジャンプ」。ミライアプリが企画したこのアプリは、ほかのユーザーが地図上に置いた電子版コミックスや「週刊少年ジャンプ」のバックナンバーを拾って読むことができ、置くことで再び誰かが拾うことができる。昔あった、電車の網棚に置き去りになっていたマンガ誌を拾い読みして、また次の誰かに置いていくといった体験を、スマートフォンと位置情報で再現したサービスだ。

マワシヨミジャンプは受賞後、開発が進められ、今年1月にローンチした。「ユーザーからもいい評価を得ている」(細野氏)という。籾山氏によれば「マワシヨミで読まれた作品が、電子書店での売上も上がっていて、読者ももちろん、作家にも喜ばれている」とのこと。細野氏は「新しいマンガと思わぬ出会いがある、という面でよかった。どのストアにアクセスしても同じ、という横並びのアプリが多い中で、マワシヨミジャンプは新しい発想だった」と述べている。

コンテスト第1期入賞作「マワシヨミジャンプ」

「1期目の時点で、思ったよりもよい企画が集まり、想定を超えるアイデアもあった」という細野氏。初回コンテストで手応えを感じた編集部では、昨年も続けて第2期を開催した。第2期では3企画が入賞し、年内リリースに向けて現在開発が進められているという。

細野氏は「編集部にとっては、マンガ新人賞で才能のある新人作家と出会うように、コンテストで優れた開発会社や新しいアイデアとの出会いがあった」と述べている。コンテストはプロダクトや仕様ではなく、企画の段階で募集を行っているが、2次選考以降ではプレゼンテーションがあり、「そこでのコミュニケーションが面白い」と籾山氏も付け加える。「個性、人柄も含めて、コンテストを開催しなければ出会えなかった人たちと出会えた。マンガやジャンプについて、いろいろな意見交換をすることもできた」(籾山氏)

マンガ、アプリに広がる袋小路感を払拭するアイデア求む

ジャンプ編集部では、ジャンプ+のほかにもさまざまなアプリを提供している。『ONE PIECE』や『NARUTO-ナルト-』『銀魂』など人気作の単独公式アプリやジャンプのキャラクターで遊べる「きせかえジャンプ」や「ネコの大喜利寿司」といったファンアプリ、マンガ制作のための作画ツール「ジャンプPAINT by MediBang」や投稿プラットフォーム「ジャンプルーキー!」といった描き手のためのアプリ、海外向けに最新作を即翻訳して月曜に公開する「MANGA Plus by SHUEISHA」など、多様なアプローチでアプリを展開してきた。

「少年ジャンプ+」Webサイト。iOS/Androidアプリも提供されている

籾山氏はしかし「大志を持ってジャンプ+を立ち上げ、5年間、マンガが盛り上がるように運営してきたつもりだけれども、道半ば」と語り、コンテストにかける期待について次のように述べる。

「子どもの頃、月曜にみんながジャンプを読んで話題にしていたような存在感が今あるだろうか。作品でもアプリでも、日本中全員が読んでいるようなものはない。でもみんなスマホは持っている。だからチャンスも大きい。読者や作家のためにも、いろんな人の力を借りたい」(籾山氏)

籾山氏は「インターネットの普及で、読者がマンガに使う時間が減り、新連載の単行本も部数が減っている。YouTubeとマンガとの間でユーザーの取り合いが起きていて、『マンガは読まない』という人も増えている」とマンガ業界全体への危機感を表す。

「多様性が求められる時代だということは分かっている。ただ、ジャンプとして、みんなが国民的作品を楽しみにしていた世界観も大切にしたい。コンテストを開催することで、時代にあらがって、むしろ昔より大きなムーブメントにしたい。(スマホとアプリがあることで)以前より可能性はあると思っている」(籾山氏)

また、籾山氏は「ジャンプの本質は新作が生まれることにある」と述べ、「旧作を読み直すのがマンガアプリのよくある使われ方だったが、新作が生まれるアイデアをコンテストでは求めている。新作がお金になる、作家が新作をかけて稼げる、新作が世界に広まる、といったアイデアを形にすることで、作家や読者をエンパワーしたい」とも話している。

細野氏も「マンガアプリの可能性が袋小路に入りそうな予感」を抱えているという。「マンガがデジタルに変わる、というシフトによる変化がこれ以上膨らまない感じに、漠然と危機感を覚える。新しい出会いによって、全く違う可能性をつかみたい」(細野氏)

さらに細野氏は「ジャンプだけでなくマンガ、アプリ全体に広がる袋小路感を払拭したい。わくわく感やエンタメとしての見せ方、読み方、課金方法など、必ず違うアイデアがあるはず。『アプリで収益が上がればいいのでは』という考え方もあるだろうが、それではつまらない。マンガ界を変えるようなアプリがほしい」と語る。

「このままではマンガが、元気なファンがいるサブカルになりそうでこわい。SNSを通じてバズるマンガもあるが、昔、誰もがその作品なら知っている、というような幅広い人気ではない。マンガアプリ全体のダウンロード数は主要アプリの合計だけでも1億ぐらいある。MAUも大きく、ジャンプ黄金期よりもマンガは読まれているのかもしれない。でも『みんなが』『お金を払って』マンガを読み、『新しいマンガの表現が生まれ続ける』状況になければ、マンガはマイナーになっていくのではないか」(細野氏)

現在開催中のアプリ開発コンテスト第3期では、7月31日まで企画を募集中だ。今年のコンテストでは「ジャンプの枠をぶち破り、マンガのミライを切り開く」というキャッチフレーズを掲げ、ジャンプが抱える作品群などのIP(知的財産)の枠に縛られず、マワシヨミジャンプに匹敵するような斬新なアイデアを求めているという。

「ジャンプは昔から新しいことをやってきた。デジタル漫画賞なんかは早すぎたぐらい。アプリもその新しいことのひとつとしてのチャレンジ」という細野氏。「読み方、読ませ方や、リアルの本棚ではすぐに読みたい本にアクセスできるのに電子書籍だと電子本棚から探せない、といった解決できていない課題はまだまだある。マンガにもっとフォーカスして、特有の課題を解決したい」と話している。

籾山氏からも「ジャンプには人気作を生み出し続けるシステムが完成していたが、システム自体が変化している」と課題感が述べられた。「アプリ、テクノロジーがその変化に関連している。マンガ界にとってアプリ、テクノロジーが重要になりつつある」(籾山氏)

その一例として、読者アンケートの仕組みが挙げられた。ジャンプ編集部では、2000年ごろには高度なアンケートシステムが確立していたが、2000年代後半からスマートフォンにも「面が増えた」ことで変化が起きているという。

「アンケートのほかにも『ジャンプ連載を目指す』という作家たちのための漫画賞や原稿持ち込みの仕組み、マンガの表現方法や、雑誌の発行頻度、紙質、ページ数など、さまざまな面で時代ごとに最善の施策が探られてきた。それが今起きている変化によって、自由になっている。昔の人もいろいろと試行錯誤してやってきたことを、新しい形でチャレンジしていきたい」(籾山氏)

籾山氏は「完成したアプリとしての企画でなく、1つの機能でも、プロフェッショナルなアイデアなら大歓迎」という。

「先ほど挙げた読者アンケートの画期的なシステムとか、月曜の話題になるようなコミュニケーションのあり方とか、アイデアがたくさんあればあるほどいい。読まれ方や広告・課金の方法にしても、最近主流になっている『チケット制』(一定期間待てば無料で1話ずつ読めるが、すぐ読むためには課金が必要なマンガアプリの仕組み)なども、韓国発のシステムが急激に広まったもの。同じように僕らがまだ知らない展開の仕方があるなら、見てみたい」(籾山氏)

細野氏も「アプリそのものではなく、マンガを取り巻くエコシステムの企画でもいい」と話している。細野氏が一例として挙げたのは、直接コンテストとは関係がないが、アプリ向けのマーケティングツールを提供するRepro(リプロ)と少年ジャンプ+が共同で実施した実証実験だ。作品の閲覧数等を分析すると、「3話分の閲覧数があれば、そのマンガが読まれ続けるかどうか分かる」という結果が出たそうだ。この結果は、これまで編集者の間で語られていた経験知とも一致するものだったという。

「マンガ業界以外からの新たなアイデアを待っている。また、アプリ制作者でなく、自由な表現を求める漫画家からのマンガの見せ方・読み方のアイデアもぜひ寄せてもらいたい」(細野氏)

「賞金100万円とは別に、開発資金を最大5000万円まで用意している。創業したばかりのスタートアップであっても、アイデア、技術、熱意があれば、それを実現できるチャンス。ぜひ応募してほしい」(籾山氏)

IBMが約3.7兆円でRed Hat買収を完了

昨年から既定路線ではあったが、IBMのRed Hat(レッドハット)買収が完了した。買収価格は340億ドル(約3.7兆円)とテクノロジー企業のM&Aとしては史上最大級となる超大型案件だった。

IBMがLinuxの巨人を買収しようとしていることを最初に発表したのは昨年10月だった。その後、米司法省はこの5月に合併を承認し、続いて先月下旬にEUが無条件で合併を承認したことで最終的に障害が取り除かれた。

IBMは「Red Hatは引き続き、CEOのJim Whitehurst(ジム・ホワイトハースト)氏のもとで独立の企業として運営される」と述べている。 ホワイトハースト氏はIBMの経営陣に参加し、IBMのCEOであるGinni Rometty(ジニー・ロメッティ)氏の直属となる。

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滑川海彦@Facebook

メジャーのオールスターゲームでアップル開発のチャットコンシェルジェ機能が利用可能に

米国時間7月8日夜のメジャーリーグのホームランダービーに間に合わせ、MLBはアプリ、MLB BallparkにApple(アップル)のビジネスチャットを利用した新機能を追加した。個人ごとにカスタマイズされたサービスを提供できるものだ。MLBによると、この機能を利用してユーザーの位置に特有の質問ができるようにしたのは、これが最初だという。ただし、Appleのビジネスチャットは、過去にも飲み物の注文などに利用された実績がある。

関連記事:Apple Business Chatでスタジアムの座席からドリンク注文

インディアンズのセクションをクリックすれば、今週のオールスターイベントの中心、プログレッシブフィールドが表示される。そこでは、新しいオールスターコンシェルジュ機能にアクセスできる。この機能は、ニューヨークに本拠を置くAIのスタートアップSatisfi Labsと共同開発されたもの。単純な質問に答えられるように設計されている。

アプリは質問に対して、その場で答える場合もあるが地図やカレンダーといった適切なアプリを開くこともある。今週のイベントの場合、ホームランダービーの開始時間は? といった単純な質問から、自分のホテルへのシャトルバスの発着場所を教えてのようにユーザーによって答えの異なるものまであるだろう。

この新機能は、米国時間7月8日夜のホームランダービーと7月9日のオールスターゲームから使えるようになっている。しかし、オールスター明けには、他の球場でも実装され、より多くのゲームでも利用できるようになるはずだ。MLBはこれまでにも、スマホを使って野球場での体験を向上させるため、さまざまな機能を試してきた。中でも印象的なものとしては、ARを使ったデータ表示機能などがある。

画像クレジット:fstop123/Getty Images

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(翻訳:Fumihiko Shibata)