ノーコードプラットフォームAirtableがWalrus.aiの創業チームスカウト、「ソフトウェア開発をもっと簡単なものにしたい』

米国時間12月21日、Airtableは2021年の早い時期にWalrus.aiを秘かに買収していたことを発表した。

しかしながら、「買収」は少々言い過ぎかもしれない。しかし少なくとも、Walrus.aiのホームページが数カ月前からなくなり、Airtableが私に、同サービスの技術を使うつもりはないと述べていることは事実だ。「人刈り(Acqui-hire)」という表現のほうが適切かもしれないが、AirtableのCPOであるPeter Deng(ペーター・デング)氏も、Walrusの共同創業者であるScott White(スコット・ホワイト)氏も、そうは言わない。

「結局のところ、私たち以前からやりたかったことに合ってるという言い方になるでしょう。Airtableは、もっと大きな規模でやりたいと思っていたことの自然な進化というか、そのビジョンを満たす機会なのです。そのため私たちがずっとやってきたことの進化でもあり、それの次の段階だともいえます。すばらしいチャンスです」とホワイト氏はいう。

ホワイト氏と共同創業者のJake Marsh(ジェイク・マーシュ)氏とAkshay Nathan(アクシャイ・ネイサン)氏がAirtableに参加し、ホワイト氏はAirtableでソリューション担当のプロダクトリードになる。ネイサン氏は同社のエンタープライズ部門のエンジニアリングマネージャー、マーシュ氏はソフトウェアエンジニアだ。つまり、共同創業者だけがAirtableに加わる。Walrus.aiは以前、HomebrewやFelicis Ventures、Leadout Capitalなどから400万ドル(約4億5000万円)のシード資金を調達している。

両社によると、彼らの全体的なビジョンは極めて整合している。Walrusのチームは、ユーザーがテストを普通の英語で書くことによって、エンド・ツー・エンドのソフトウェアの試験を容易にする。一方Airtableは、ユーザーを全員、アプリケーションの開発者にする。

デング氏に買収のいきさつについて尋ねると、次のように答えた。「ソフトウェアの創造を民主化すること、つまりソフトウェアの開発をもっと簡単にしたい、すべてはそこから始まっています。スコットとWalrusのチームに紹介されたとき、私たちが同じビジョンを共有していることがすぐにわかりました。Walrusのビジョンは、高品質なソフトウェアの構築をデベロッパーにとって容易にすることでした。実際に話し合ってみると、『ソフトウェアの開発を、誰にとっても簡単なものにしたいんだ』といったやりとりで、お互い話は通じました。両社の共同創業者たちのDNAに直接触れる部分があり、また両社がやってきたことも、お互いの話の内容も、これから両社が一緒に仕事をするのは極めて自然、といえるものです」。

Airtableでデング氏とホワイト氏は話し合い、Walrusのチームはその最初のビジョンをさらに広げていき、そのスキルを生かして新しいプロダクトも作る、というところに落ち着いた。ホワイト氏がいうように、Airtableは、ユーザーに非常に複雑なことを簡単にさせて、そのプロセスを容易かつシームレスにしている。そしてそれと同時に、今のAirtableの最速成長部門はエンタープライズであるため、同社のサービスは非常に複雑なワークフローの管理にも利用されている。

「私たちの仕事は、この2つの側面から考えています。そして、私たちの中核的な能力とインフラが、こうした大規模な企業との取引に対応できるようにすることです」と、ホワイト氏は現在Airtableで行っている仕事について述べる。ホワイト氏もデング氏も、Walrusチームが現在取り組んでいることについて、具体的には何も語らず、デング氏は、「エンドユーザーの問題を非常にエレガントな方法で解決するための多くのイニシアチブを含む、大きなことに一緒に取り組んでます」という。

画像クレジット:Airtable

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(文:Frederic Lardinois、翻訳:Hiroshi Iwatani)

ソフトウェア販売の未来を加速させるTackleがシリーズCで114億円調達、ユニコーンの仲間入り

アイダホ州に拠点を置くスタートアップで、AWSのようなクラウドマーケットプレイスでソフトウェア企業の販売を支援するTackle.io(タックル・アイ・オー)は米国時間12月21日、シリーズCで1億ドル(約114億円)を調達したとを発表した。CoatueAndreessen Horowitzが共同でラウンドをリードし、Bessemer Venture Partnersも参加した。

Tackleの調達総額は1億4800万ドル(約169億円)に達した。今回のシリーズCで12億5000万ドル(約1425億円)と評価され、ユニコーンになった。報道関係者に送った文書で、その数字は、わずか9カ月前に3500万ドル(約40億円)を調達したシリーズBにおける非公表の評価額から「大幅に上昇」したと説明されている。

Tackleによると、新しい資金は製品ロードマップの遂行加速、GTM(Go to Market)チームの拡大、グローバルリーチの拡大、イノベーションの継続に使う予定だという。かなり長いリストだが、1億ドル(約114億円)あれば可能かもしれない。

だが、リストは少し漠然とした感じがするため、Tackleが何に取り組んでいるのか、より深く掘り下げてみたい。

筆者の同僚であるRon Miller(ロン・ミラー)が2020年3月に報じたところでは、同社は、よくあるように、起業家のかゆいところに手が届く会社としてスタートしたという。Tackleの共同創業者でCTOのDillon Woods(ディロン・ウッズ)氏が以前勤めた複数の会社で気づいたのは、AWSのマーケットプレイスに製品を投入するためには、2名のエンジニアを専属にしても数カ月かかり、しかも毎回似たようなタスクの集合になるということだ。

Tackleは、独立系ソフトウェアベンダー(ISV)が、Amazon(アマゾン)のAWS、Microsoft(マイクロソフト)のAzure、Google Cloud Platform、IBM傘下のRed Hatといった主要なクラウドマーケットプレイスに載るためのソリューションを考え出し、これを解決した。

あなたはまだ気づいていないかもしれないが「クラウドマーケットプレイスはソフトウェアを売るための単なるチャネルの1つではなく、唯一のチャネルになりつつある」と、a16zのMartin Casado(マーチン・カサド)氏は2020年3月に書いている。同氏は、a16zがTackleのシリーズBラウンドをリードしたときに同社の取締役会に参加した。a16zはこのスタートアップをカテゴリーリーダーとして見ている。「Tackleは、企業がクラウドを通じてソフトウェアを販売することを可能にするリーディングプレイヤーです」と同氏は話す。

カサド氏は当時、Tackleの顧客数は200社以上だと述べていた。その数は、現在350社に増えているという。この中にはAppDynamics、Auth0、CrowdStrike、Dell、Gitlab、HashiCorp、Looker、McAfee、NewRelic、Okta、PagerDuty、Talend、VMwareといった会社がある。

顧客はスタートアップから成熟した企業まで多岐にわたるが、共通しているのは、ソフトウェアを作っているということだ。では、なぜ彼らは「ゼロエンジニアリング」ソリューションを使って、マーケットプレイスの統合を構築・維持するのだろうか。Tackleによれば「ソフトウェア会社はソフトウェアを売るためにソフトウェアを作る必要はない」ためだ。ソフトウェア会社の人的資源は別のところに使った方が良いというわけだ。

Tackleの顧客であるローコードプラットフォームOutSystemsの、Robson Grieve(ロブソン・グリーブ)氏はこう話した。「Tackle Platformは、マーケットプレイスの活用をプロダクトやエンジニアリングチームにとって邪魔なものではなく、ビジネス上の意思決定にしてくれます」。

このビジネス上の意思決定、つまりクラウドマーケットプレイス経由の販売は、ますます一般的になりつつある。

Bessemerは「State of the Cloud 2021」レポートの中で、ニューノーマルの下でGTMを行う企業にとって、クラウドマーケットプレイスの採用はベスト3に入る施策だと強調する。ベンチャーキャピタルである同社は、シードラウンドからTackleに投資している。2020年に725万ドル(約8億3000万円)のシリーズAラウンドをリードし、その際にパートナーのMichael Droesch(マイケル・ドローシュ)氏が取締役に就任した。

知り得る限り、Tackleに投資していない同業のベンチャーキャピタルのBattery Venturesも、その見解を支持している。Battery Venturesは「State of the Open Cloud 2020」レポートの中で、新しいクラウドマーケットプレイスを活用して顧客を発見し、開拓することを業務上のベストプラクティスとして挙げている。

TackleのState of the Cloud Marketplaces Reportで、67%の調査対象者が、2022年に市場参入の手段としてのマーケットプレイスにさらに投資する予定だと答えた。また、このレポートは、クラウドマーケットプレイスでの取り扱い金額が2023年末までに100億ドル(約1兆1400億円)を、2025年末までに500億ドル(約5兆7000億円)を超えると予測している。

クラウドマーケットプレイス台頭の背景には複数の要因があるが、要は、B2B販売がB2C販売のようになりつつあるということだ。「Tackleは、クラウドマーケットプレイスとデジタル販売への移行を加速する、あらゆる販売者を支援する最適なポジションにいると確信しています」とCoatueのゼネラルパートナーであるDavid Schneider(デービッド・シュナイダー)氏は述べた。同氏は、今回のラウンドの後、オブザーバーとしてTackleの取締役会に参加する。

もちろん、Tackleの収益についてもっと知りたいところだが、同社は2021年にARR(年間経常収益)を倍増させたとしか述べていない。「Tackleにとって2021年はとてつもない年でした」とCEOのJohn Jahnke(ジョン・ジャンケ)氏は語った。2022年にはいよいよ「爆発的な成長が期待できる」という。

確実に成長するといえるのは、同社のチームだ。2021年、従業員は56人から160人に増え、2022年には倍増させる計画だ。

画像クレジット:Tackle

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(文:Anna Heim、翻訳:Nariko Mizoguchi

履歴書や面接ではわからない候補者の潜在的な強みや弱みがわかるSearchlightの人材採用ツール

学歴や職歴は、山積みになっている他の履歴書と同じようなものかもしれない。だが、Searchlight(サーチライト)という会社は、企業が個人のソフトスキルを測定する方法を改善することで、差別化要因を提供するだけでなく、その人が最終的に組織にどれだけ適合するかを示せるようにすることも目指している。

Kerry Wang(ケリー・ワン)氏と彼女の双子の姉妹であるAnna Wang(アンナ・ワン)氏は、同じ仕事に応募する際に自分たちを差別化しようとして、この問題に直面した。面接の過程では、自分たちがどう違うのかを十分にアピールする時間がないと感じることが多かったと、ケリー・ワン氏はTechCrunchに語った。

「企業が採用した全人材の半数近くが18カ月以内に辞めてしまうことからも、私たちを同一人物と決めつける現在の人材ソフトウェアを変えたいと思いつきました」と、ケリー・ワン氏はいう。「今、この『大退職時代』を考えると、人材獲得競争に勝つためには、早く採用するだけではなく、うまく採用しなければなりません。人材の質を測る方法に食い違いがある場合、これは難しくなります」。

彼女たちは2018年にSearchlightを起ち上げ、行動参照データとプリスクリプティブ分析を用いて、履歴書や面接時には現れない、候補者の潜在的な強みや弱みを、雇用者が360度見渡せるようにする技術を開発した。

Searchlightの新機能をベータ版として使用した企業は、過去12カ月間に数千人の候補者を採用しており、多くの場合、プロセスが迅速化され、偏りが少なく、定着率が向上したと、ワン氏は述べている。実際、ユーザー企業では、他の方法で採用した場合と比べて、定着率が45%向上し、採用までの時間が40%短縮され、採用した社員は平均で72%長く在籍しているという。

米国時間12月20日、SearchlightはシリーズAとして1700万ドル(約19億3000万円)の資金調達を発表した。同社はこの資金を活用し、提供するサービスを拡大していく。その中には、ワンクリックで作成できる推薦状、15分以内にできる候補者評価、今後の採用を改善するための可視性を高める採用品質ダッシュボード、採用前に収集した行動データを従業員の成果に結びつけることで、採用のベストプラクティスを示し、優秀者のプロファイルを強調する「ピープルサイエンスエンジン」などがある。

今回の資金調達は、Founders Fund(ファウンダーズ・ファンド)が主導し、Accel(アクセル)、Shasta(シャスタ)、Kapor Capital(ケイパー・キャピタル)、Operator Collective(オペレーター・コレクティブ)の他、Coda(コーダ)、Confluent(コンフルエント)、Plaid(プレイド)などの企業の幹部を含むエンジェル投資家グループが参加した。これにより、同社が今まで調達した資金は、2019年に実施した250万ドル(約2億8000万円)のシードラウンドも含め、総額2000万ドル(約22億7000万円)となった。

人材にはさまざまな形や大きさがある。Searchlightはそのアプローチが、ベンチャーキャピタルに支援された最新の企業だ。他にも、最近資金調達を発表したリクルートテクノロジー企業には、フラクショナルワーカー(フルタイムではない人材)のマーケットプレイスであるContinuum(コンティニュアム)、Sense(センス)、Karat(カラット)などがある。

Searchlightによる行動データの収集(画像クレジット:Searchlight)

Searchlightの独自性として、ワン氏は、ユーザーに提供されるデータやインサイトのレベルが高く、より優れたレコメンデーションが可能であることを挙げている。また、同社は企業が候補者に求めるべき特性を示すこともでき、さらに企業が労働力の構成について抱いている仮定を否定することさえできるという。

「何が成功につながるかを認識する必要があるのですが、それは通常、直感に頼ることが多いものです」と、ワン氏は付け加えた。「当社ではソフトスキルに基づいて、定着率を高めることにつながる成功プロファイルを作成します」。

同社は現在、Udemy(ユーデミー)、Talkdesk(トークデスク)、Zapier(ザピアー)など100社以上の企業と取引しており、従業員は2020年の4人から15人に増えた。顧客数もこの1年で3倍以上に増えている。ワン氏によれば、多くの顧客はSearchlightを使用した後、この製品への投資を倍増させているという。

今回の資金調達により、Searchlightは、2022年に向けてチーム規模を2倍にするための追加雇用や、製品開発およびGo-to-Market戦略への投資が可能になる。

今回の投資の一環として、Founders FundのジェネラルパートナーであるKeith Rabois(キース・ラボイス)氏がSearchlightの取締役に就任した。

ラボイス氏は、テクノロジー企業の設立、資金調達、経営に携わってきた20年のキャリアの中で、共通していたのは優れた人材の必要性であると述べ「あなたが作るチームが、あなたが作る会社である」と語っている。

「Searchlightに共感しました」と、ラボイス氏は付け加えた。「私はこれまで15以上の役員を務めてきましたが、どの会社でも人材の定着と、定着率を高めるために何をすべきかについて話し合っています。常に人材を入れ替えていては、良い会社は作れません。私は常に自分自身を向上させたいと考えていましたし、自分が向上するためのデータやツールを持っています。Searchlightは、そのような採用の判断をするための最高のデータを提供しています」。

画像クレジット:Searchlight / Searchlight co-founders Kerry Wang and Anna Wang

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(文:Christine Hall、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

ストリーミングビデオをインタラクティブにするAdventrが約5.7億円のシード資金調達

創業者でCEOのDevo Harris(ディーボ・ハリス)氏がAdventrを思いついたのは、音楽業界の大物アーティストたちと仕事をしていたときだ。

「AdventrはKanye West(カニエ・ウェスト)やBritney Spears(ブリトニー・スピアーズ)やNas(ナズ)といったアーティストのコンテンツを作っているときに思いつきました。インタラクティブな要素を導入したミュージックビデオは人気を博し、視聴者を惹きつけるのは高価な映像や編集だけではないことが証明されました」とハリス氏はいう。

そこでハリス氏は、グラミー賞まで取ったメディアプロデューサーとしての地位を捨て、一介のアーリーステージスタートアップの創業者になった。現在、Adventrはインタラクティブなメディアを作成、閲覧、共有するためのドラッグ&ドロップSaaSツールで、ユーザーはタッチスクリーンやクリック、さらには自分の声を使ってビデオを操作できる。Adventrは、「SmartListen」という音声制御技術の特許を取得し、音声コマンドに基づいてメディアコンテンツを流れの途中で変更することができる。この技術は広告に応用可能で、視聴者が「緑のシャツを買って」などということができるようになるかもしれない。また、クリエイターがAdventrで映画を作る場合、ホラー映画の主役に「あの廊下を進むな」というように、観客から登場人物に指示を出すよう呼びかけることもできる。

その特許を取ったSmartListen機能はまだ未完成だが、Harris氏によると、2022年の初めには一部のパートナーが利用できるようになる。

「これはゲームチェンジャーであり、動画内のクリックを超えたコネクテッドメディアの可能性にクリエイターの心を開くことになるでしょう」とハリス氏はいう。

関連記事:動画に話しかけることでユーザーがストーリー展開を変えるAdventrのボイスコントロール技術

立ち上げからわずか1年のAdventrは、2021年秋のTechCrunch Disrupt、Startup Battlefieldに登場し上位5社のファイナリストに残った。その後、同社はベータでプロダクトを磨き、ユーザーは8000社になっている。その中にはAsiaNet NewsやMSI Gaming、SK Interactive、そしてニューサウスウェールズ州政府もいる。これらの顧客はユーザーが動画と対話している際のアナリティクスを確認できるので、消費者についていろいろ知ることができる。

Disrupt後、AdventrはPaladin Capitalがリードするシード投資で500万ドル(約5億7000万円)を調達し、それにReinventure CapitalやIn/Visible Ventures、そしてアカデミー賞受賞者John Legend(ジョン・レジェンド)氏らが参加した。レジェンド氏はハリス氏の長年の協力者で、カレッジのルームメイトでもある。

「Disruptの直後から6桁ドルの収益が上がり、今でもオンラインでピッチビデオを見た人からインバウンドがきています」とハリス氏はいう。

Adventrは今回の資金をチームの構築に使っていきたいという。Disruptに出たときは5人の社員しかいなかった。最近同社はVimeoのゼネラルマネージャーだったPeter Gerard(ピーター・ジェラルド)氏をプロダクトのトップに招いた。Adventrはまもなくソーシャルメディア・プラットフォームとの統合を開始し、顧客がそれらのプラットフォーム上でインタラクティブビデオをネイティブに共有できるようにする予定だ。

画像クレジット:Adventr

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(文:Amanda Silberling、翻訳:Hiroshi Iwatani)

PubNubがメッセージ、プレゼンス、「仮想空間」の他リアルタイム機能のためのデータストリーム構築と実行に向け73億円調達

継続的なリアルタイムの情報更新をともなうデータストリームは、今日のアプリとサイトがどれくらい機能するかという点で重大な要素である。そのようなデータストリームを強化するプラットフォームを構築したPubNub(パブナブ)が、幅広いユースケースにつながる、その事業の強力な成長の裏で伸びる資金調達のラウンドについて発表している。サンフランシスコに拠点を置くこのスタートアップは、アプリや他のデジタル企業にメッセージとデータ更新を強化するAPIを提供している。今回、シリーズEで6500万ドル(約73億円)を調達し、そのプラットフォームにおける機能の継続的拡張と拠点拡大に使用する予定だ。その第1弾として、シンガポールにアジア太平洋オフィスが開設される。

PubNubは、その今日のメッセージ機能、プレゼンス機能、他のデータに基づくAPIが、70を超える国の6億台のデバイスで、月に21ペタバイトのデータを生成する90万件のデベロッパプロジェクトで使用されていると筆者に語った。その「何千もの」顧客にはAdobe(アドビ)、Atlassian(アトラシアン)、DocuSign(ドキュサイン)、RingCentral(リングセントラル)などが含まれる。広くいうと、ゲーミング、仮想イベント、エンタープライズコラボレーション、チャット、スライド共有/配信サービス、遠隔医療アプリケーション、コネクテッドフィットネス、スマートホーム製品などのバーティカルにおいて魅力を増している。この幅広い分野は、データストリームが定期的に更新される「仮想空間」の概念に依存している。配信の進み具合、いくつの手順が必要だったか、どれくらいエネルギーを使ったか、誰がオンライン会議に参加しチャットしているか。それらがユーザーエクスペリエンスの核となる部分である。

「顧客がPubNubを利用して行っていることが爆発的に増えています」。と、PubNubのCEOで共同設立者であるTodd Greene(トッド・グリーン)氏はインタビューで述べた。「PubNub創設時から、『仮想空間を強化するために必要なソフトウェアは何か』をビジョンとしていました。当初それはメッセージ機能でしたが、時間が経つと、コミュニケーションだけでは不十分であることが顧客を見ていて分かりました」。

資金調達はRaine Group(レイングループ)が主導し、Sapphire Ventures(サファイアベンチャーズ)、Scale Ventures(スケールベンチャーズ)、HPE、Bosch(ボッシュ)も参加している。PubNubはその企業価値評価を明らかにしていないが、ある文脈では調達額は1億3000万ドル(約147億円)以上におよび、PitchBook(ピッチブック)によると2019年の最終エクイティラウンドでは2億2000万ドル(約248億円)と推定された。

グリーン氏に、このサンフランシスコを拠点とするスタートアップの企業価値評価が現在それより「はるかに高い」ことを確認したが、PubNubの成長を数値化することは難しい。月間のデータ取扱量を公開しておらず、メッセージ数が2019年に1兆3000億通に上ったことのみを公開したからである。今回はこの数値を更新していない。顧客予約は2021年に前年比で200%増加した。

PubNubは陰でせっせと働いている。同社のAPIを使用中に「powered by PubNub」メッセージを画面で見ることはないだろう。しかしすべてのデジタルサービスが運用されるうえで中心的で重要になった部分でも機能している。

デジタル体験でより多くの日常生活の側面が行われ、あるいは場合によってはそれに依存しているが、だからこそデジタル体験自体が大きく発展してきた。アプリ、サイト、コネクテッドサービスにはこれまでより多くの機能、データ、ユーザーエクスペリエンスが組み込まれているため、私達は結果的にそれをさらに使用(依存)するのである。当然、そのすべてが機能するような基盤は事業成長を遂げ、それに対する投資家の関心が高まっている。

それに加えて「メタバース」は最近の概念として間違いなく誇大宣伝されている。それがPubNubと同様に仮想空間を強化する企業を後押しするかもしれない。しかしより大局的な見地はもう少し落ち着いたもので、これらのサービスがいかに進化し、すでに運用されているかということである。

その文脈で日の目を見たのはPubNubだけではない。Twilio(トゥイリオ)、 SendBird(センドバード)、MessageBird(メッセージバード)、Sinch(シンチ)もサードパーティアプリ、サイト、他のデジタル企業により使用されるAPIに基づくメッセージ機能と他のコミュニケーションサービスを提供している。PubNubともっと直接的に競争しているのは、どのリアルタイムサービスでも推進する、何らかのデータ更新、メッセージ機能その他を構築するAPI基盤のルートを提供する、ロンドンのAbly (エイブリー)、Techstarsが考え出したCometchat(コメットチャット)、Google(グーグル)のFirebase(ファイアーベース)などがある。

より広い意味で、PubNubのセールスポイントは世界中のPOPへのその地理的範囲であり、HIPAA、GDPR、SOC 2 Type 2などのさまざまな地域のデータ保護規則に準拠していること、そしてネイティブに、また他のサービスとの統合により機能を追加しているということであり、そのすべてによりデベロッパが一元化されたダッシュボードを通して制御および監視することができる。それは現在、アプリ内チャット、位置情報取得、仮想イベント、プッシュ通知、IoTサービスなどのサービスに対応している。

現在のデジタル文化において通知を減らすことへの移行は、すべてPubNubのような存在にとって困難な風潮の証明だと思うかもしれない。結局、情報オーバーロードはもはや議論の対象となる話題でも、あなたのデータを垂れ流したり使用中か否かを問わず常時あなたを見張っているアプリの概念でもない。どれほどこれらの問題にうまく対処しても、全体的な効果が悪くても良くても、やはりそうなのかもしれない。しかしグリーン氏は、それは当てはまらないという。

「ただメッセージを送り、プッシュ通知機能しかなかった時も、メッセージの99%がアプリ内で行われていました。クルマを注文し画面上で動くのを見ていると、効果的に多くのメッセージ(データプッシュ)がそれを知らせに来るのです。Apple(アップル)やGoogle(グーグル)などの企業はそれをブロックしていないため、通知をともなう移行は私達にまったく影響しませんでした」。彼は付け加えた。「良い方に影響を与えました。過去のアプリではプッシュ通知で何かが起きたことを知らせていました。現在は、(デフォルトで)それを観察していないため、アプリ内の体験に重点を置くことがより重要になっています」。

主要な投資企業のレイングループは、成長するこのスタートアップの興味深い支持者である。同社は単なる実り多い投資企業ではない。それが助言を行う膨大な顧客リストの中でも、アップル、Tencent(テンセント)、ByteDance(バイトダンス)、Warner Music(ワーナーミュージック)、SoftBank(ソフトバンク)、Uber(ウーバー)他多数のM&A取引に関与してきた。これによりPubNubは事業開発にそのネットワークを活用し、より多くの顧客を獲得するための道を開く。

「PubNubと連携し、デベロッパーの時間とエンジニアリングのリソースの誓約によりソフトウェアソリューションとAPIへの需要が増している世界で、リアルタイムのデジタルおよびソーシャル体験の未来を強化することが楽しみです」。レイングループのマネージングディレクター、Christopher Donini(クリストファー・ドニーニ)氏は声明で述べた。「PubNubの主要なソリューションは、簡単に実装できる信頼性、セキュリティ、低レイテンシーを提供します。私達はこれが、レイングループの技術、メディア、遠隔通信が交差する所に広く蔓延した問題を解決すると信じています」。ドニーニ氏とマネージングパートナーのKevin Linker(ケヴィン・リンカー)氏はこのラウンドでPubNubの取締役会に参加している。

画像クレジット:matejmo / Getty Images

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(文:Ingrid Lunden、翻訳:Dragonfly)

配管工、電気工事士、機械工向けビジネス管理ツールを提供するFuzey

ロンドンを拠点とし、中小企業や個人事業主向けに「デジタル・ワンストップ・ショップ」と呼ばれるサービスを提供しているFuzey(フュージー)が、450万ドル(約5億1000万円)のシード資金を調達した。

このラウンドは、byFounders(バイファウンダーズ)が主導し、Flash Ventures(フラッシュ・ベンチャーズ)、Global Founders Capital(グローパル・ファウンダーズ・キャピタル)、Ascension(アセンション)の他、Index Ventures(インデックス・ベンチャーズ)のベンチャーパートナーであるStephane Kurgan(ステファン・クルガン)氏、Amplo VC(アンプロVC)の創業者兼CEOであるSheel Tyle(シール・タイル)氏などのエンジェル投資家グループが参加した。

今回のラウンドにより、同社はHenrik Lysgaard Jensen(ヘンリク・リスガード・ジェンセン)氏とAlex Boyce(アレックス・ボイス)氏が2020年に設立以来、総額520万ドル(約5億9000万円)の資金調達を行ったことになる。また、この投資の一環として、byFoundersの投資家であるSara Rywe(サラ・ライウェ)氏と、Flash VenturesのパートナーであるLorenzo Franzi(ロレンツォ・フランジ)氏が、同社の取締役に就任した。

CEOのリスガード・ジェンセン氏とCOOのボイス氏は約2年ほど前に出会い、中小企業のデジタル化を支援することで意気投合した。配管工、電気工事士、機械工などの小規模事業者をターゲットにしている理由について、リスガード・ジェンセン氏は「ローカルビジネスはすべてのコミュニティのバックボーンである」と信じているが、ビジネス管理用に開発されたツールの多くは、このような事業者には手が届かないし、またこのような事業者を念頭に置いて設計されてもいないからだ。

他にもこのような種類の事業に注目しているスタートアップ企業はある。11月に1500万ドル(約17億円)を調達したPuls Technologies(プラス・テクノロジーズ)のモバイルアプリは、職人とオンデマンドの住宅修理サービスをつなぐものだ。また、2021年初めに6000万ドル(約68億円)の資金調達を発表したJobber(ジョバー)のように、もっと規模の大きな企業もこの分野には存在する。

ボイス氏にとって、個人的にも特にこの分野には思い入れがあるという。同氏の母親は中小企業の経営者で、革製のノートを使ってビジネスを行っていたが、常にノートの紛失を恐れていたと説明する。

「これらは私たちが取り組んでいるテーマです」と、ボイス氏はTechCrunchに語った。「新型コロナウイルス感染症の流行期間中に、どうすれば私たちは変革の担い手になれるかを考えました。消費者の需要が変化し、人々がテクノロジーをより重視するようになり、地元の商店とさまざまな方法で関わりたいと思っている状況を見て目が覚めたのです」。

そうして同社が作り上げたツールは、請求書など従来は手作業で紙に書いて行っていたことを、中小企業向けにデジタル化するものだ。顧客とのコミュニケーション、支払い、マーケティング、カレンダーなどを1つのダッシュボードにまとめ、事業を管理し、オンラインのプロフィールを充実させることができる。

ユーザーの中小企業は、メッセージングからソーシャルメディアまで、さまざまな方法で顧客とコミュニケーションをとることができる。また、請求書を作成して即時に支払いを処理したり、リードジェネレーション(見込み顧客を獲得するための取り組み)を洞察する機能も用意されている。さらに、Fuzeyは文書のテンプレートやワンクリックカスタマーレビューも提供しており、簡単に顧客がレビューを残せるようにすることができる。

「レスポンスタイムは重要です。当社では、あらかじめ質問やコメントが定義されたレスポンステンプレートも用意しているので、顧客に迅速に対応することができます」と、リスガード・ジェンセン氏は述べている。「私たちは、この機能が20、30、40の時間的効果をもたらすと確信しています」。

6月に製品の販売を開始した同社は、今回の資金調達を製品開発と地域の拡大に活用する予定だ。Fuzeyはすでに、欧州、米国、カナダの一部の市場で事業を展開している。従業員数は現在10名で、顧客数、売上高ともに前月比で2桁の伸びを示している。

画像クレジット:Fuzey / Fuzey co-founders Alex Boyce and Henrik Lysgaard Jensen

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(文:Christine Hall、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

cove.toolは炭素排出の少ない建築物の設計を支援するSaaS企業、ロバート・ダウニー・Jr.のFootPrint Coalitionも支援

建築物をより持続可能なものにするためのテクノロジーは数多く存在するが、その機能を設計に組み込むことは、いうほど簡単ではない。

cove.tool(コーブ・ツール)は、設計段階から確実に建築物を持続可能にすることを目指すスタートアップ企業だ。2021年には同社のソフトウェアによって、設計・建設の専門家がTesla(テスラ)の5倍の炭素を削減できるようになったと主張している。アトランタを拠点とする同社は、Coatue(コーチュー)が主導するシリーズBラウンドで3000万ドル(約34億円)を調達した。

今回のラウンドには、Robert Downey Jr.(ロバート・ダウニー・ジュニア)氏のFootPrint Coalition(フットプリント・コーリション)が、既存投資家のMucker Capital(マッカー・キャピタル)、Urban Us(アーバン・アス)、Knoll Ventures(ノル・ベンチャーズ)とともに参加した。

CEO兼共同創業者のSandeep Ahuja(サンディープ・アフジャ)氏によると、今回のラウンドはプリエンプティブラウンドで、同社の調達総額は3650万ドル(約41億5000万円)に達したという。評価額について同氏は明らかにしなかったものの、2020年11月に570万ドル(約6億5000万円)を調達した時から「10倍」になったと述べている。

B2B(企業間取引)のSaaS(サービスとしてのソフトウェア)企業であるcove.toolは、建築家や建設業者がプロジェクトの詳細や土地を入力すると、採光、空調システム、太陽光発電、材料などの最適化方法を提案してくれる機能を備えている。cove.toolは機械学習を活用し、建築家、エンジニア、建設業者が、建築コストを削減しながら建築物のパフォーマンスを幅広く測定する方法を提供する。

「当社が存在する理由は、建築環境における二酸化炭素の排出量を削減するためです。なぜなら、二酸化炭素排出量の約40%は建築によるものだからです」と、アフジャ氏はTechCrunchに語った。「cove.toolの全体的な目標は、材料の選択と建築のシミュレーションのプロセスをよりシンプルにして、低炭素であるだけでなく、コスト的にも最適な代替材料を選べるようにすることです」。

cove.toolは、2017年8月にソフトウェアのベータ版の提供を開始した。現在では、倉庫からデータセンター、オフィスビルに至るまで、2万5000件以上のプロジェクトがcove.toolのソフトウェアを使って建設されている。同社のソフトウェアには、建設業者、建築家、エンジニア、建築製品メーカーなど、30カ国で1万5000人以上のユーザーがいる。その中には、HDR、AECOM(エイコム)、Skanska(スカンスカ)、Stora Enso(ストラ・エンソ)といった企業が含まれる。

「cove.toolは、合理的な自動分析を行うことで、建設業者、建築家、エンジニア、建築製品メーカーがデータに基づいた設計を行えるように支援し、気候変動との戦いの中で建築物を持続可能かつ効率的なものにしています」と、アフジャ氏は述べている。

驚くべきことに、cove.toolは2021年、2850万トンの炭素をオフセットしたという。これは、4億5000万本の木を10年間にわたって植え、育てることに相当する。同社は新たな資本を活用し、製品群の拡大や、現在60名のチームの増員、建築・エンジニアリング・建設業界へ炭素削減分析の提供などを計画している。

アフジャ氏によると、同社の主な競合相手は、同様の作業を手作業で行っているコンサルタントだという。

「当社の差別化要因は、データへのアクセスを民主化し、かつては2〜4週間かかっていたことを30分でできるようにしたことです」と、同氏は付け加えた。

この会社はまだ利益を出していないものの、アフジャ氏によれば事業規模の拡大をやめれば利益を出せる可能性があるという。

「今後数カ月のうちに、当社の製品群をさらに拡大し、AECエコシステム全体の統合を提供することで、パフォーマンスデータをさらに利用しやすくしていきます。当社では、炭素問題はデータ問題であると考えています」と、アフジャ氏はTechCrunchに語った。「APIフレームワークを使用することによって、建築物のデータを分析する作業を大幅に簡素化し、そのデータを建築・設計プロセスの多くの専門家と共有することができ、最終的にはシームレスな協業を可能にして、プロジェクトの成果を向上させることができます」。

同社では、米国、カナダ、英国、オーストラリア、EUでの販売・マーケティング活動を強化していくことも計画している。

FootPrint Coalitionの創設者であるロバート・ダウニー・Jr氏は、建築物の建設と運営が世界の温室効果ガス排出量の40%を占めると指摘する。

「エネルギー効率、設計、材料選択の透明性を組み合わせることで、cove.toolはこの大きな問題に取り組んでいます」と、同氏はメールに書いている。「これは、機械学習と理念的なリーダーシップを用いて、文字通りより良い未来を築く、スケーラブルなビジネスの最高の例です」。

Coatue社のパートナーであるDavid Cahn(デイビッド・チャン)氏によれば、持続可能な建設は現代の最も重要な環境課題の1つであると、同氏の会社は考えているという。

「cove.toolのソフトウェアによるアプローチは、建築をより簡単かつクリーンにする可能性を持っています」と、チャン氏はメールで述べている。

画像クレジット:Cove.tool

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(文:Mary Ann Azevedo、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

アップル、iPad上でアプリ開発ができるSwift Playgrounds 4をリリース

Apple(アップル)が、Swift Playgrounds 4の公式ローンチを発表した。最初の発表と予告は、2021年6月のWWDCで行われている。今回のローンチにより、ユーザーはSwiftUIによるiPhoneやiPadのアプリの作成を直接iPad上で行えるようになり、アプリに変更を加えた場合、その結果をリアルタイムでプレビューできるようになる。Appleによると「App Store Connect」が統合されているため、完成したアプリをApp Storeにアップロードすることもできる。

「Swift Playgroundsは、プログラミングを学ぶ最良で、最も簡単な方法です。あなたが書いたコードは、アプリの制作と並行してライブの(リアルタイムの)プレビューにすぐ反映され、アプリをフルスクリーンで表示しながら実行できます。Swiftのパッケージに基づく新しいオープンプロジェクトフォーマットは、iPad用のSwift Playgroundsの中でオープンしエディットできますが、同じくMac上のXcode内でも行えるため、iPadとMacの両方で使用できるアプリを開発できる幅広い多機能性が提供されます」とブログで語られている。

画像クレジット:Apple

Appleによると、このソフトウェアにはインラインコードの提案機能があるため、コードをより速く正確に書くことができる。検索機能は個別のファイルではなくプロジェクト全域を対象とするので、一度に複数のファイルを検索できる。また、Swiftパッケージのサポートにより、ユーザーは公開されているコードを含めてアプリを強化することができるとしている。なお、このソフトウェアの「Snippets Library」は、何百種類ものSwiftUIのコントロールやシンボル、カラーなどをユーザーに提供する。

Swift Playgrounds 4の狙いは、iPhoneとiPadの新人デベロッパーがMacを使わなくても容易にアイデアを試せることだ。新機能を利用するためには、iPadOS 15.2以上が必要となる。Swift Playgrounds 4は、現在、iPad向けのApp Storeでアクセス可能だ。

画像クレジット:Apple

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(文:Aisha Malik、翻訳:Hiroshi Iwatani)

難聴ケアを身近なヘッドフォンやテレビで、Mimiが聴覚ウェルネスプラットフォームのボリュームを上げる

TechCrunch Battlefield NY 2014の最終選考に残ったMimi Hearing Technologiesは、シリーズBラウンドで2500万ドル(約28億5000万円)を調達し、聴覚の健康というミッションを世界中の耳に囁き続けている。同社は最近、Skullcandy(スカルキャンディー)、Cleer(クレール)、Beyerdynamic(ベイヤーダイナミック)との一連の注目すべきパートナーシップを発表し、MIG CapitalATHOSからの新たな資金注入により、さらに前進しようとしている。

関連記事:オーディオを「パーソナライズ」するMimi、Skullcandyなどの本技術搭載ヘッドフォンを徹底検証

Mimiの創業者の1人で、同社の研究開発を率いるNick Clark(ニック・クラーク)氏は、しばらく前に私にこう語った。「聴覚障害だけでなく、より幅広いことに対応できるソフトウェアベースのソリューションの可能性は大いにあります。ユーザーの聴力の違いによって、より多くの人々に役立つ微妙なことを始められます」。

Mimiは、毎月約5万人が聴力検査をするのに使う、最も人気のある家庭用聴力検査アプリの1つだ。同社は、同じ技術をSDKとしてヘッドフォンメーカーに提供した。それにより、同アプリはユーザーの聴覚プロファイルを利用して、聴力に合わせてカスタマイズされた音声出力を実現できる。つまり、難聴と思われる部分を補うため、音量を上げなくてもよく聞こえるようにすることが可能なのだ。これにより、さらなる難聴を防ぐことができるという理論だ。

「例えばSkullcandyのヘッドフォンを購入し、アプリをダウンロードすると、そこで自分のプロフィールを作成することができます」と、Mimiの創設者兼CEOであるPhilipp Skribanowitz(フィリップ・スクリバノヴィッツ)氏は説明する。「このプロフィールは、他のパートナーとも互換性があり、他でも使うことができます。Philips(フィリップス)のテレビでのテストも開発しましたので、その場合ソファーに座ってテレビでテストできます」。

今回の資金は、同社の技術へのさらなる投資、特にヘッドフォンやテレビとの統合を通じた提供の拡大に充てられる。また、米国とアジアでの販売・マーケティング業務の拡大も強化する予定だ。

「シリーズBコンソーシアムの主要投資家であるMIG、ATHOS、Salviaは、2020年、NASDAQに上場しているドイツのバイオテック企業であり、Pfizer(ファイザー)と共同で最初の新型コロナウイルスワクチンを開発し、現在約700億ドル(約7兆9840億円)の評価を受けているBioNTech(バイオンテック)の設立投資家として国際的に注目されました」と、MimiのMoritz Bratzke(モーリッツ・ブラッツケ)CFOは指摘する。「彼らのMimiへの投資は、ドイツのベンチャーキャピタル環境の深さと幅だけでなく、Mimiのビジョンの重要性と多大な商業的可能性を示すもう1つの証といえます」。

画像クレジット:TechCrunch

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(文:Haje Jan Kamps、翻訳:Aya Nakazato)

グローバルな政府入札プラットフォームで発見・申請・管理を支援するCube RMが約9.1億円調達

世界各国の政府が毎年発表する入札や公共セクターの契約は数百万件にのぼる。その金額は約5兆ドル(約570兆4600億円)と推定され、2025年には、PaaS(Procurement as a Service、サービスとしての調達)の市場規模は90億ドル(約1兆264億円)に達すると予想されている。そしてもちろん、パンデミックは政府調達のデジタル化の必要性を急速に高めている。

しかし、政府調達のポータルをナビゲートすることは、容易な作業ではない。現在、これらの入札をすべて閲覧できるグローバルなプラットフォームは存在せず、申請プロセスを支援するのはレガシーツールだけだ。だが数年前、欧州と北米のほとんどの国がオンライン入札ポータルを作成し、大規模なスクレイピングが可能になった。そして、あるスタートアップがそれをやってのけた。

Cube RMは、入札の申請と管理を1つのプラットフォームに統合している。同社は、企業が世界中の入札を発見し、入札し、落札するのを助けると主張している。このたびCube RMは、Runa Capitalが主導し、既存の投資家であるMarathon Venture Capitalの参加を得て、800万ドル(約9億1000万円)のシリーズAラウンドを完了した。

同スタートアップは製薬・医療機器のグローバル企業を主なターゲットとしており、今後、他の業種への展開も予定している。これまでのところ、Boston Scientific(ボストン・サイエンティフィック)、Takeda(武田薬品工業)、Kemira(ケミラ)、Bavarian Nordic(バヴァリアン・ノルディック)などが顧客として名を連ねている。

同社はグローバルに入札案件の発掘を支援するだけでなく、自然言語処理による入札の優先順位付け、公開される入札の予測、Salesforce.comでの入札機会の提供、入札準備と提出の促進、落札者と競合情報の追跡なども行うとしている。

共同設立者のCostas Economopoulos(コスタス・エコノポウロス)氏はこれまでB2Bソフトウェア企業を数社設立し、データサイエンティストのGeorge Boretos(ジョージ・ボレトス)氏はビジネスソフトウェア業界で、Philip Kytinos(フィリップ・カイティノス)氏は経験豊富なソフトウェアエンジニアとして活躍してきた。

エコノポウロス氏は次のようにコメントしている。

グローバルなライフサイエンスのお客様と仕事をする中で、売上の25~60%が公的機関向けの入札によるもので、数兆ドル(数百兆円)規模の市場を考えると、非常に重要であることがわかりました。以前は、世界規模で日々公開される新しい入札を発見し、それらの企業が最新のAI技術を駆使して見積書作成のプロセスを管理し、落札するための最適な価格を見出すためのソフトウェアシステムは存在しませんでした。

入札のニーズは、これまでModelN、Apttus/Conga、SAPなどの大規模な収益管理ソリューションのいずれかでカバーされていた。

Runa CapitalのパートナーであるKonstantin Vinogradov(コンスタンチン・ビノグラードフ)氏は、次のように述べている。

当社は2011年から規制産業向けのソフトウェアソリューションに投資していますが、今こそライフサイエンス産業における入札の自動化に最適な時期だと考えています。一方では、パンデミックによって予算が増え、この業界全体の重要性が高まったこと、他方では、大企業におけるデジタル化の欠如と非効率的な官僚的プロセスの多さが浮き彫りになったことが挙げられます。我々は、これを大きなチャンスと捉えています。

画像クレジット:designer491 / Getty Images

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(文:Mike Butcher、翻訳:Aya Nakazato)

アマゾンがAlexaの「スキル」開発者への手数料引き下げ、2022年から

Amazon(アマゾン)は、他の大手テック企業と同様、開発者が得る収益からの取り分を引き下げる。開発者が、スマートスピーカーやその他のAlexa(アレクサ)対応デバイスで動作する音声アプリ、いわゆるAlexaの「スキル」から得る収益が対象だ。

同社は今週、スキル購入(有料インストール)、スキル内購入(アプリ内購入のAlexa版)、スキルサブスクリプションなどの収益が100万ドル(約1億1400万円)未満のAlexaスキル開発者の手数料を2022年、30%から20%に引き下げると発表した。この変更は2022年第2四半期から適用される。サードパーティーの開発者がトラフィックを生み出し、スキルの認知度を高められるよう、開発者特典も拡充する。Amazonによると、新しくプログラムの対象になるのは、前年の収益が100万ドル未満の開発者や、新規のAlexa開発者だ。

AmazonによるAlexa開発者の収益に対する手数料体系の更新は、Apple(アップル)、Google(グーグル)、Microsoft(マイクロソフト)など他の大手テック企業による同様の動きに続くものだ。

ちょうど1年前、AppleはApp Store事業に対する規制当局の監視強化に対応し、1年間のApp Store収益が100万ドル未満の小規模開発者の手数料率を15%に引き下げた。以前は、Appleの標準的な30%の手数料を支払わなければならなかった。Googleもすぐにその動きを追い、Google Playで同様のプログラムを実施し、手数料を15%に引き下げた。ただし、引き下げ後の手数料適用時の計算方法には若干の違いがあった。両社はその後、ニュース出版社やその他のサブスクリプションアプリなど、特定のカテゴリのアプリについて、標準の手数料率にさらに例外を設けることにした。

また、Microsoftは2021年、収益分配の条件をより開発者に有利なものに更新し、同社の決済プラットフォームを利用するアプリ開発者の収益分配を85対15、ゲーム開発者の収益分配を88対12とした。

しかし、AmazonのAlexaプラットフォームは、そうした他の大規模なアプリのエコシステムとまったく同じカテゴリにあるわけではない。

同社は当初、他のアプリストアに匹敵する音声アプリのカタログを計画していたが、現実には、米国の消費者家庭におけるAlexaの大きな足がかりを利用してビジネスで利益を生み出すことができた開発者はほとんどいなかった。

実際、Amazonは長年にわたってスキルの発掘に苦心してきた。調査によると、Alexaデバイスの所有者は、スマートスピーカーやスクリーンを主に内蔵機能のために使用していることがわかっている。すなわち、スマートホーム機器の制御、音楽の再生、買い物リストの作成、タイマーの設定、ニュースの視聴、天気やスポーツ試合結果などの最新情報の取得などだ。Alexaデバイスを通じて行われると期待された音声ベースのショッピングが本格的に普及することはなかった

つまり、Amazonの手数料率の調整を、他のアプリストアのポリシー変更と同じようにとらえることはできないということだ。Amazonは、ある程度、市場動向に追随しなければならないというプレッシャーを感じている。他方、手数料引き下げが、Alexa開発者による自社プラットフォーム向け開発を促すことを期待していることも明らかだ。

Amazonは同じ発表の中で、2022年から始まる新しいプログラムのもとで、開発者の収益を増やすために設計された、さらなる特典を展開するとも述べた。追加特典は、開発者の収益の「最大10%」に相当する可能性があると同社は指摘している。特典には、インセンティブプログラム、開発者のスキルを最適化するための個別フィードバック、マネタイズの機会を見出すための支援などが含まれる予定だ。

Amazonはこれまでにも、優秀なスキル開発者に対し、直接支払う試みをを繰り返してきた。新しいインセンティブがこれまでと異なるものなのか、それとも同じことの繰り返しなのかは、今のところわからない。同社は、このプログラムの詳細について、2022年の開始前に詳細を公表すると述べた。

同社は2020年、Alexaスキルを収益化する機会を増やすことで、スキル開発への関心を呼び戻そうとしてきた。消費者が前払いしてアドオン音声アプリにアクセスする「Paid Skills」の開始、開発者がスキル内でAmazon.comから販売できる(そしてアフィリエイト収入を得られる)「Alexa Shopping Actions」の導入、スキル内購入にアクセスできる海外の開発者の範囲拡大、スキルのホスティングコストのほぼ0ドルへの引き下げなどがある。

画像クレジット:Amazon

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(文:Sarah Perez、翻訳:Nariko Mizoguchi

AIを活用したVFXスタートアップ「Wonder Dynamics」がシリーズAで11.4億円を調達

Wonder Dynamics(ワンダー・ダイナミクス)は、AI(人工知能)とクラウドサービスを使って「リビングルームレベル」のクリエイターが「ブロックバスターレベル」のビジュルエフェクトを作れるようにすることを目標にしているが、その内容はベールに包まれている。豪華なアドバイザーを誇る秘密主義の同社は、2022年の製品公開を前に1000万ドル(約11億4000万円)のシリーズAラウンドを完了した。

同社を創業したのは、Nikola Todorovic(ニコラ・トドロビッチ)氏と俳優のTye Sheridan(タイ・シェリダン)氏だ。2人は数年前、映画で一緒に仕事をした際に映画製作ツールの民主化が必要だという信念を共有したことから力を合わせることになった。もちろん、高解像度カメラとコンピューティングパワーによる編集や色調整など、すでに多くのツールは価格も難易度も下がっている。

しかし、本格的VFX(ビデオエフェクト)は別物であり、昨今のカメラとディスプレイの高解像度化とCG(コンピュータグラフィックス)の質向上によって、費用と参入障壁は高いままだ。

Wonder Dyanamicsは、AIとクラウドサービスを利用して、この状況を改善するVFXプラットフォームだが、その正確な内容は未だ秘密裏に隠されている。

「私たちのプラットフォームはまったく新しいプロセスを利用していて、CGやVFXコンテンツを作るのに必要な技術知識をもたないコンテンツクリエイターのための完全なソリューションです」とトドロビッチ氏は説明した。「プロフェッショナルなアーティストのために、制作物は既存のワークフローやソフトウェア(Unreal、Blender、Mayaなど)にエクスポートすることができる。機能はポストプロダクション(撮影後の編集作業)に特化していますが、ハードウェア要件や制作に必要な追加作業を劇的に減らします」。

関連記事:インディーズ映画制作者にAIを活用したVFXを提供するWonder Dynamicsが2.7億円を調達

2022年のSXSW(サウス・バイ・サウスウエスト)で実物を見れば詳細がわかるだろうが、心配な人はそれまでの間、アドバイザーとしてSteven Spielberg(スティーブン・スピルバーグ)氏とJoe Russo(ジョー・ルッソ)氏の名前があることに慰められるかもしれない。もちろん、2人ともベテラン監督であり、作品の見栄えにはうるさい。特にルッソ氏(および兄のAnthony Russo[アンソニー・ルッソ]氏)は、絶対必要な場面以外、CGよりも操演(特撮の一種)を好むことで知られている。

「開発を進めるにつれ、これはビジュアルエフェクトだけのソフトウェア以上のものになるとわかりました」とシェリダン氏がプレスリリースで語った。「当社のプラットフォームは映画、テレビだけでなくビデオゲームやソーシャルメディア・コンテンツ、さらにはメタバースでも利用できる可能性があります」。

後半の用途は、新たな出資者であるEpic Games(エピックゲームズ)とSamsung Next(サムスン・ネクスト)にとってさらなる正当化材料になるだろう。今回1000万ドルのラウンドをリードしたのはHorison Ventures(ホライゾン・ベンチャーズ)で、シードラウンドで出資したFounders Fund(ファウンダーズ・ファンド)とMaC Venture Capital(マック・ベンチャー・キャピタル)も参加した。

画像クレジット:Hiretual

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(文:Devin Coldewey、翻訳:Nob Takahashi / facebook

店舗の場所探しやサプライチェーンの最適化など、マップ上でのデータ可視化と活用を支援するCartoが約69億円調達

空間分析プラットフォームCarto(カート)がシリーズCラウンドで6100万ドル(約69億円)を調達した。多くの企業は、何らかの位置情報が結びついたデータを大量に収集している。Cartoは、そのデータをインタラクティブな地図上に表示し、より簡単に比較、最適化、比較検討、意思決定ができるようにする。

米国時間12月14日のラウンドは、Insight Partnersがリードしている。またAccel、Salesforce Ventures、Hearst Ventures、Earlybird、Kiboといった既存投資家の他、European Investment Foundも参加した。

多くの企業がデータ戦略に取り組み、何らかの知見を得ようとしている。まず、データウェアハウスを採用し、現在と過去のすべてのデータを1カ所に集約する。企業はAmazon Redshift、Google BigQuery、Snowflakeといった製品を利用している。

その後、ウェアハウスに蓄積されたデータを活用するために、さまざまなビジネスインテリジェンス、レポーティング、データ可視化ツールが用意されている。そのうちの1つが、空間分析に特化した製品を展開するCartoだ。

Cartoは、複数のソースからデータを取り込むことができる。過去のデータをローカルファイルとしてアップロードすることもできるが、ライブデータに直接接続することも可能だ。データベース(PostgreSQL、MySQL、Microsoft SQL Server)、クラウドストレージサービス(Dropbox、Box、Googleドライブ)、データウェアハウス(Amazon Redshift、Google BigQuery、Snowflake)との接続を提供する。

「この3年間で、データウェアハウスが台頭し、データウェアハウスをベースにしたアーキテクチャはほとんどなかったところから、支配的な実装になりました」と、CartoのCEOであるLuis Sanz(ルイス・サンズ)氏は筆者に語った。「そのため、我々はすべての主要なデータウェアハウスの上に空間的な拡張としてCartoを構築することに注力してきました。というのも、この傾向はちょうど加速しているところだからです」。

その後、顧客はSQLクエリを使ってデータを調べ、データを充実させることができる。特に、Carto独自のデータカタログを活用することができる。同社は、オープンデータソースと民間プロバイダーの両方から約1万のデータセットをコンパイルしており、約3600のデータセットがオープンデータだ。

すべての設定が完了すると、インタラクティブなダッシュボードが表示される。地図上を移動したり、レイヤーを選択・解除したり、実際の数字を見たりすることができる。まるで「シティーズ・スカイラインズ」をプレイしているような感覚になるはずだ。

顧客はCartoを使って、次の店舗を開くべき場所を探したり、屋外広告の予算を一部の地域に優先配分したり、サプライチェーンを最適化したり、適切な地域に携帯電話の基地局を配備したりしている。

地方自治体、銀行、消費財メーカー、クレジットカードネットワーク、そして交通機関、公共事業、通信事業といったインフラ企業など、さまざまな顧客を納得させることができるのはそのためだ。

「データウェアハウスの台頭により、企業はすべてのデータを1カ所で統合し、接続することができるようになりましたが、地理空間データも例外ではありません。そして今、我々のクラウドネイティブサービスによって、その上で空間分析を行うことができるようになりました。当社のSpatial Extensionは、主要なデータウェアハウスの上で動作し、その利点を最大限に活用します。そしてユーザーに高いパフォーマンス、拡張性、安全性を備えた地理空間分析のための完全なツールを提供します」とサンズ氏は声明で述べた。

基本的に、Cartoはデータウェアハウスへの移行と一般的なデジタルトランスフォーメーションの恩恵を受けている。より多くの企業がクラウドに移行すれば、そうした企業はCartoの潜在顧客となる。

画像クレジット:Timo Wielink / Unsplash

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(文:Romain Dillet、翻訳:Nariko Mizoguchi

5カ月でGitHubスター2000獲得、LiveKitはメタバースにはオープンなインフラが必要だと考える

世界的なパンデミックが発生したとき、Medium(ミディアム)でプロダクト部門を担当していたRussell d’Sa(ラッセル・ダサ)氏は、全員が自宅で仕事をしているため、企業カルチャーがインパクトを受け、社員間の交流にも大きな影響を与えていることに早くから気づいていた。

「なくなったのは、同僚同士の会話や、金曜日の夜に飲むこと、一緒にコーヒーを淹れて飲むことなどでした」とTechCrunchに彼は語った。「職場で友人になるということは、最終的にどのようにコラボレーションするかを下支えします」。

2020年、Clubhouse(クラブハウス)がアルファ版で公開されたとき「すべてを変える新しい参加型メディア」として話題になったが、ダサ氏は仕事仲間のためにもそのようなものを求めていたという。

関連記事:隔離生活で求められる自然発生的なコミュニケーションを生むソーシャルアプリ

彼は、ClubhouseアプリがAgora(声網)を利用していることを知り、自分のアイデアを実現するためのデスクトップアプリの開発を始めた。ダサ氏がこのアプリをリリースすると、すぐに1300社がウェイティングリストに登録した。同氏は最終的にこのアプリを棚上げにしたが、企業は「この新しい環境では何でも試してみたい」と考えていることがわかった。

実際、ある大手ソーシャルメディア企業からは、傘下の1000人規模の企業でそのアプリを使ってみないかと持ちかけられたが、Agoraのセキュリティが心配だったという。ダサ氏は代替手段を検討し始めたが、多くは会議に特化したもので、ネイティブモバイルに対応する柔軟性を備えていなかった。

そこで生まれたのがLiveKitだ。共同設立者のDavid Zhao(デビッド・ザオ)氏を含むダサ氏のチームは、WebRTCと呼ばれるリアルタイムのオーディオ・ビデオ体験をアプリケーションで構築しスケーリングするための、無料でオープンソースのインフラを開発した。

7月にこのツールをリリースした同社は、米国時間12月13日、Redpoint Venturesと、Justin Kan(ジャスティン・カン)氏、Robin Chan(ロビン・チャン)氏、Elad Gil(エラッド・ギル)氏などの個人投資家からの支援を得てシードラウンド700万ドル(約7億9000万円)を調達したと発表した。

公開からわずか5カ月の間に、同社のツールはGitHubでトレンドを生み出し、ゼロから始まって約2000スターを獲得したとダサ氏は述べている。また、メタバースの話題が増えている中で、製品の市場適合性も証明された。

「新型コロナは私たちの世界を、オンラインで生活し、ネット上で結婚式を挙げるような世界に変えました」と彼は語る。「私たちはすでにメタバースの中で生活しており、それは2年以上前から続いています」。

同氏は、会議通話は未来のものではなく、仮想現実(VR)や拡張現実(AR)によってより現実のように感じるものになると考えている。しかし、課題は、インターネット上でいかにすばやくデータを移動させ、カメラやマイク、3Dオブジェクトに対応したインフラを持つかということだ。

LiveKitによるライブオーディオ・ビデオ体験の初期のユースケースはイベント会場のカメラだったが、あるドローン会社もこの技術を使っている。LiveKitを利用したプロジェクトが100件を超えるなど、採用が進むにつれ、ダサ氏は、ベンチャーキャピタルの支援を受けてチームの規模を拡大することを決意した。立ち上げ当初は3人だったチームが今では15人に増えたという。

現在、同社は収益を上げていないが、分析、遠隔測定、スパムや不正使用の監視、音声転写、翻訳、音声や顔の機能など、基本的な機能以外にも提供されるサービス、新しいツールが登場すれば収益を上げることができるだろう。

目下、LiveKitチームは、ツールの信頼性と柔軟性を高め、デベロッパーや彼らが構築するユースケースへのアクセシビリティを改善するための技術開発に注力していきたいと考えている。

「目標は、ネットワークの状態が悪くても動作する方法を見つけることです」とダサ氏はいう。「当社は大小さまざまな企業と話をしていますが、最大手の企業は、100万人規模のイベントをすべてインタラクティブに行うための大規模なスケールを求めています」。

画像クレジット:NurPhoto / Contributor / Getty Images

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(文:Christine Hall、翻訳:Aya Nakazato)

コードを一行も書かずにWeb3プロジェクトを構築・立ち上げ・管理できるツール「Thirdweb」

Web3プロジェクト用のソフトウェアスタートアップ「Thirdweb(サードウェブ)」は、Gary Vaynerchuk(ゲイリー・ヴェイナチャック)氏やMark Cuban(マーク・キューバン)氏など、著名なビジネスリーダーや起業家、クリエイターたちから500万ドル(約5億7000万円)の資金調達を完了した。

同社は、デベロッパーがコードを一行も書かずにWeb3プロジェクトを構築、立ち上げ、管理できる無料ツールを3カ月前に発表した。Thirdwebは、Social Chainの創業者であるSteven Bartlett(スティーブン・バートレット)氏と、BeboやAppLovinの創業CTOを務めたFurqan Rydhan(フルカン・ライダン)氏によって設立された。

ロンドンとサンフランシスコにオフィスを構えるThirdwebは、NFT、ソーシャルトークンや通貨、さらにトークン、NFTのルートボックスやドロップを売買するマーケットプレイスなどの機能を、数クリックで追加することを可能にする。

Thirdwebの共同設立者であるスティーブン・バートレット氏とフルカン・ライダン氏(画像クレジット:Thirdweb)

バートレット氏は、Web3と暗号資産に興味を持ち、4年以上にわたってこの分野を追いかけていたとTechCrunchに語った。同氏が初期の暗号投資家だというライダン氏と出会ったとき、2人はWeb3のことで意気投合した。

「私たちは、起業家たちがこのスペースでものを作りたいと思っていること、そして彼らがツールを必要としていることを知っていました」とライダン氏は語る。「私たちはベースとなるアイデアからスタートし、1年かけてThirdwebを構築し、今では数百社のお客様にSDKをご利用いただいています。Stripeが簡単にプラグインできるようにしたように、当社のコードも、誰にでも提供できるように書きました」。

彼らはアーリーアダプターたちと一緒に機能を開発しており、中には1年以上Thirdwebを使い続けているケースもある。また、Nike(ナイキ)、Disney(ディズニー)、Bumble(バンブル)、Meta(メタ)などの企業が、メタバース、Web3、NFTの空間に向けて、ブロックチェーンゲーム、NFTプラットフォーム、DAO、クリエイタープロジェクトなどのアプリや製品の構築を始めたくて、すでにうずうずしているという。

まだ初期段階だが、同社のツールを使って作られた独自なプロジェクトは500件を超えた。当初はアート分野での利用が多かったが、今ではより複雑なWeb3アプリの構築や、スペースを作りたいと考えているゲーテッドコミュニティなど、様々な用途で利用されている。

Thirdwebの目標は、1000以上のデベロッパー、チーム、企業にツールを使ってもらうことであり、ライダン氏は「それに向けて順調に進んでいる」と述べている。

新しい資本は、技術チームと成長チームの両方の雇用に使用され、ユーザーにツールを紹介するためのマーケティングとビデオ資産にフォーカスする予定だ。Thirdwebは、発売されたNFTの売上にロイヤリティや手数料がプログラムされるまでは、無料で使用することができる。その後、同社は二次販売のロイヤリティの5%を取ることになる。つまり、同社の報酬は顧客の成功に直接比例することになる、と共同設立者は述べている。

ヴェイナチャック氏は、メールで次のように述べた。「Web3は始まっており、NFTは私たちが生きている間ずっと存在するでしょう。1995年から2000年にかけて『インターネット』で何が起こったかを見て、その歴史的教訓をもとに、今後5年の間にWeb3でどれだけのことが『修正』されるかを展開してみましょう。Thirdwebがこの変化を加速させてくれることを期待しています。15年前、世界がソーシャルメディアのクリエイターやアーティストで溢れかえるとは誰も信じていませんでした。Web3は今、彼らに自分の創作物を所有し、利益を公平に分配する機会を与えています。私はこのスペースとこのチームを信じています。彼らのビジョンを信じ、機会を信じ、エグゼキューションを信じています」。

画像クレジット:Thirdweb

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(文:Christine Hall、翻訳:Aya Nakazato)

新興ブランドと小売業者を繋ぐPod Foodsが食料品のサプライチェーンを改革

Pod Foods(ポッドフーズ)は、消費者が求める新興の食品ブランドを小売店の棚に並べている企業間デジタル卸売市場だ。同社はそのサービスの開発を継続するため、シリーズAラウンドによる1000万ドル(約11億4000万円)と未発表のシードラウンドにおける300万ドル(約3億4000万円)、合わせて1300万ドル(約14億8000万円)の資金調達を行ったと、米国時間12月9日に発表した。

オースティンを拠点とする同社の創業者、Larissa Russell(ラリッサ・ラッセル)氏とFiona Lee(フィオナ・リー)氏については、2019年にMoment Ventures(モメント・ベンチャーズ)が主導し、M12も参加したラウンドで300万ドルを調達した際にTechCrunchでも紹介した。同社の技術は、データを活用したアプローチで、小売店がブランドから調達するプロセスを効率化するとともに、新進気鋭のブランドを含むより多様な商品と消費者を結びつけるものだ。

シードラウンド後、Pod Foodsはシカゴ、ニューヨーク、ロサンゼルスでサービスを開始。また、適切な商品を適切な小売店にマッチさせる在庫管理をより容易にするモバイルアプリも発表した。

その後、新型コロナウイルス感染流行が世界中を襲った。小売店では店頭の在庫を確保するために、Pod Foodsが注力しているニッチな新興ブランドの品が、有名ブランドに押されて店頭から消えていることに同社は気づいた。そこで同社は、ブランドの認知度を高めることに乗り出した。

「それは加速度を生み、私たちが変えようとしたすべてのことを増幅させました」と、ラッセル氏はTechCrunchの取材に語った。「私たちは2020年、ウイルス感染流行拡大の結果として生じた課題に取り組み、事業に邁進したのです」。

Industrious Ventures(インダストリアス・ベンチャーズ)が主導した今回のシリーズAでは、M12とMoment Venturesが再び参加した他、Unshackled Ventures(アンシャックルド・ベンチャーズ)、Barrel Ventures(バレル・ベンチャーズ)、Relish Works(レリッシュ・ワークス)、X Factor Ventures(Xファクター・ベンチャーズ)、XRC Labs(XRCラブズ)、K2 Global(K2グローバル)、Graphene Ventures(グラフェン・ベンチャーズ)などの投資家が参加。Pod Foodsが調達した資金の総額は1600万ドル(約18億2000万円)となった。

今回の投資は、Pod Foodsの成長軌道に沿ったものだとラッセル氏は述べている。同社はすでに7都市で展開しており、今後10都市に拡大する予定だ。ウイルス感染流行前のデータと比較すると、現在はブランドのリピート購入が20%増加しているという。

Pod FoodsはこのシリーズAで調達した資金を使って、2020年12月には33名だった従業員を58名に増員することができた。さらに同社は、Google(グーグル)、Amazon(アマゾン)、Walmart(ウォルマート)での経験を持つTimothy Wee(ティモシー・ウィー)氏という最高技術責任者も確保し、新しいサービスや製品を構築するためのデータにも投資していくと、リー氏は述べている。

デリバリーサービスは、より早く商品を届けて欲しいという消費者の期待を背景に、過去2年間で急速に成長し、小売業者が需要に追いつくのに苦労する原因となっている。その結果、Pod Foodsは2019年以降、売上高と顧客数の両方が前年比で3倍に増加したという。同社では、何が売れて何が売れないかというデータに基づき、小売業者がより早く商品をリセットできる状況が作れるように支援していると、ラッセル氏は述べている。

「私たちは適応する必要がありました」と、リー氏は付け加えた。「以前は買ったらそのまま食べられるような食品が売れていましたが、ウイルス感染流行の際には、冷凍食品や飲料などの商品が売れました。迅速に方向転換する必要がありましたが、私たちは小規模で機動力があるため、お客様の要望をすぐに伝え、ブランドを採用し、小売店の棚を確保することができました」。

Pod Foods 2021 from Blank Space Studio on Vimeo.

Pod Foodsは今後、太平洋岸北西部や、同社最大の市場であるニューヨークとシカゴの拠点周辺、さらにはフロリダでの事業拡大を計画している。

Industrious VenturesのパートナーであるChristian Gammill(クリスティアン・ガミル)氏は、Pod Foodsのアプローチについて「食料品のサプライチェーンを全面的に見直し、小売店とブランドの両方が繁栄できる真のエンド・ツー・エンドのシステムを構築するために必要な物流インフラを提供する初めての企業」であると述べている。

コマースがサプライチェーンの基調を決定づける中、Pod Foodsはデジタルを最優先し、データを活用したインテリジェントなオペレーションを構築することで、差し迫った変曲点を利用しようとしている。同社のような企業がデータプレーを正しく行うことができれば、顧客やブランドの助けになるだろうと、ガミル氏はいう。

「ラリッサとフィオナはすばらしい2人組で、互いに相性の良いスキルを持っています」と、ガミル氏は付け加えた。「この分野はあまり注目されていませんでしたが、他のサプライチェーンは多大な注目を集めています。だからこそ、私たちはこの分野に参入しようと思ったのです」。

画像クレジット:Pod Foods / Pod Foods co-founders Fiona Lee and Larissa Russell

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(文:Christine Hall、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

新興ブランドと小売業者を繋ぐPod Foodsが食料品のサプライチェーンを改革

Pod Foods(ポッドフーズ)は、消費者が求める新興の食品ブランドを小売店の棚に並べている企業間デジタル卸売市場だ。同社はそのサービスの開発を継続するため、シリーズAラウンドによる1000万ドル(約11億4000万円)と未発表のシードラウンドにおける300万ドル(約3億4000万円)、合わせて1300万ドル(約14億8000万円)の資金調達を行ったと、米国時間12月9日に発表した。

オースティンを拠点とする同社の創業者、Larissa Russell(ラリッサ・ラッセル)氏とFiona Lee(フィオナ・リー)氏については、2019年にMoment Ventures(モメント・ベンチャーズ)が主導し、M12も参加したラウンドで300万ドルを調達した際にTechCrunchでも紹介した。同社の技術は、データを活用したアプローチで、小売店がブランドから調達するプロセスを効率化するとともに、新進気鋭のブランドを含むより多様な商品と消費者を結びつけるものだ。

シードラウンド後、Pod Foodsはシカゴ、ニューヨーク、ロサンゼルスでサービスを開始。また、適切な商品を適切な小売店にマッチさせる在庫管理をより容易にするモバイルアプリも発表した。

その後、新型コロナウイルス感染流行が世界中を襲った。小売店では店頭の在庫を確保するために、Pod Foodsが注力しているニッチな新興ブランドの品が、有名ブランドに押されて店頭から消えていることに同社は気づいた。そこで同社は、ブランドの認知度を高めることに乗り出した。

「それは加速度を生み、私たちが変えようとしたすべてのことを増幅させました」と、ラッセル氏はTechCrunchの取材に語った。「私たちは2020年、ウイルス感染流行拡大の結果として生じた課題に取り組み、事業に邁進したのです」。

Industrious Ventures(インダストリアス・ベンチャーズ)が主導した今回のシリーズAでは、M12とMoment Venturesが再び参加した他、Unshackled Ventures(アンシャックルド・ベンチャーズ)、Barrel Ventures(バレル・ベンチャーズ)、Relish Works(レリッシュ・ワークス)、X Factor Ventures(Xファクター・ベンチャーズ)、XRC Labs(XRCラブズ)、K2 Global(K2グローバル)、Graphene Ventures(グラフェン・ベンチャーズ)などの投資家が参加。Pod Foodsが調達した資金の総額は1600万ドル(約18億2000万円)となった。

今回の投資は、Pod Foodsの成長軌道に沿ったものだとラッセル氏は述べている。同社はすでに7都市で展開しており、今後10都市に拡大する予定だ。ウイルス感染流行前のデータと比較すると、現在はブランドのリピート購入が20%増加しているという。

Pod FoodsはこのシリーズAで調達した資金を使って、2020年12月には33名だった従業員を58名に増員することができた。さらに同社は、Google(グーグル)、Amazon(アマゾン)、Walmart(ウォルマート)での経験を持つTimothy Wee(ティモシー・ウィー)氏という最高技術責任者も確保し、新しいサービスや製品を構築するためのデータにも投資していくと、リー氏は述べている。

デリバリーサービスは、より早く商品を届けて欲しいという消費者の期待を背景に、過去2年間で急速に成長し、小売業者が需要に追いつくのに苦労する原因となっている。その結果、Pod Foodsは2019年以降、売上高と顧客数の両方が前年比で3倍に増加したという。同社では、何が売れて何が売れないかというデータに基づき、小売業者がより早く商品をリセットできる状況が作れるように支援していると、ラッセル氏は述べている。

「私たちは適応する必要がありました」と、リー氏は付け加えた。「以前は買ったらそのまま食べられるような食品が売れていましたが、ウイルス感染流行の際には、冷凍食品や飲料などの商品が売れました。迅速に方向転換する必要がありましたが、私たちは小規模で機動力があるため、お客様の要望をすぐに伝え、ブランドを採用し、小売店の棚を確保することができました」。

Pod Foods 2021 from Blank Space Studio on Vimeo.

Pod Foodsは今後、太平洋岸北西部や、同社最大の市場であるニューヨークとシカゴの拠点周辺、さらにはフロリダでの事業拡大を計画している。

Industrious VenturesのパートナーであるChristian Gammill(クリスティアン・ガミル)氏は、Pod Foodsのアプローチについて「食料品のサプライチェーンを全面的に見直し、小売店とブランドの両方が繁栄できる真のエンド・ツー・エンドのシステムを構築するために必要な物流インフラを提供する初めての企業」であると述べている。

コマースがサプライチェーンの基調を決定づける中、Pod Foodsはデジタルを最優先し、データを活用したインテリジェントなオペレーションを構築することで、差し迫った変曲点を利用しようとしている。同社のような企業がデータプレーを正しく行うことができれば、顧客やブランドの助けになるだろうと、ガミル氏はいう。

「ラリッサとフィオナはすばらしい2人組で、互いに相性の良いスキルを持っています」と、ガミル氏は付け加えた。「この分野はあまり注目されていませんでしたが、他のサプライチェーンは多大な注目を集めています。だからこそ、私たちはこの分野に参入しようと思ったのです」。

画像クレジット:Pod Foods / Pod Foods co-founders Fiona Lee and Larissa Russell

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(文:Christine Hall、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

アドビ、同社コアアプリの機能やAIツールをそれぞれ必要十分なだけ利用する新ツール「Creative Cloud Express」を発表

Adobe(アドビ)は米国時間12月13日、Creative Cloud Expressの提供を開始した。これは、広範をカバーするCreative Cloud SuiteとAcrobat PDFツールの優れた機能を1つに統合したモバイルとウェブの新アプリで、ソーシャルメディアへの投稿からプロモーション用のポスターや動画まで、あらゆるものをすばやく作成することができる。

Creative Cloud Expressは、テンプレートファーストのアプローチを採用し、ストック画像やその他のアセットへのアクセスが組み込まれているため、個々のCreative Cloudアプリよりもはるかに利用しやすいものとなっている。このアプリには、無料版と、より複雑なテンプレートのライブラリや機能を追加した月額9.99ドル(約1130円)の有料版が用意されている。この新しいアプリへのアクセスは、AdobeのCreative Cloud All Appsとフラッグシップのシングルアプリプランにも含まれる。

画像クレジット:Adobe

ウェブアプリの他に、無料のアプリがAppleのアプリストア、Google Play、Microsoft Storeで提供されている。

Creative Cloud Expressの一般的な考え方は、プロではない人に自分のビジョンに命を吹き込むために必要なツールを提供することだ。AdobeのAshley Still(アシュリー・スティル)氏が指摘したように、同社は近年、プロではないユーザーを増やしてきた。しかし、これらのユーザーの多くは、最初はCreative Cloudのフルアプリの精度とコントロールが欲しいと考えるかもしれないが、実際には同じタスクを迅速かつ簡単に実行できる方法を求めていることが多い。

「Creative Cloud Expressで行っていることは、幅広いウェブアプリやモバイルアプリ、そしてPhotoshopや画像、動画などのCreative Cloudのコアテクノロジーから得られた知見を、Creative Cloud Expressという統一されたサービスに集約することです。これは、プロセスではなく結果を重視する人たちのためのものです。彼らは真っ白なページからではなく、1億7500万ものAdobe Stockライブラリから画像を選んで始めたいのです。フォントを作成するのではなく、Adobe Fontライブラリにある2万種類のすばらしいフォントにアクセスするのです。チラシを作るために複数のアプリを使い、そして印刷できるようPDFを作成したりはしたくありません。1つの場所ですべての作業ができるようにしたいのです」。

画像クレジット:Adobe

実際には、膨大な数のテンプレートにアクセスできるようになるだけでなく、画像から背景を削除したり、Photoshopスタイルのフィルターやエフェクトを適用したりするツールも利用可能だ。また、Creative Cloud Librariesとの統合により、同僚が作成したPhotoshopやIllustratorの作品を、Creative Cloud Expressアプリで再利用することもできる。

また、動画をGIFに変換したり、文書をPDFに変換したりするツールもある。ここで興味深いのは、Adobe Stockの統合だ。Adobe Stockには無料プランはないが、Creative Cloud Expressの無料版に(いくつかの制限付きで)統合されている。無料プランのユーザーは、約100万点の画像やその他のアセットにアクセスできる。プレミアムプランのユーザーは、1億7500万点のAdobe Stockの写真、2万点のフォント、Photoshop ExpressとPremiere Rushへのアクセスが可能になる。

「Creative Cloud Expressでは、『Less is more(少ない方が豊か)』です」とスティル氏は話す。「Photoshopですべてのことができる必要はありません。例えば、ニューラルフィルターは必要ではなくても、背景の削除や画像の簡単な編集など、いくつかの簡単なことができなければなりません。Acrobatでは、PDFをパスワードで保護する必要はなく、PDFを作成したり編集したりすることができれば十分です。シンプルさの多くは、人々が達成しなければならない最も重要なことは何かということを、私たち自身が編集することで実現しています。彼らの意図は何なのでしょう?」。

Creative Cloud Expressは、ソーシャルグラフィックスや短編動画、ウェブサイトを構築するツールであるSparkを少しだけ進化させたようなもののように感じるかもしれない。Adobeはそうは言わないだろうが、もしSparkが強化されたものとあなたが考えるなら、それは大きな間違いではないと筆者は思う。なぜなら、Creative Cloud Expressは、ユーザーインターフェイスのデザインや全体的な哲学の多くを共有しているからだ。実際、発売前にadobe.com/expressにアクセスすると、Sparkのホームページにリダイレクトされていた。

しかし、スティル氏が述べたように、同社はこれをSpark、Photoshop Express、Premiere Rushなどのアプリの代替とは考えていない。これらのアプリはすべて、Adobeのコア機能やAIツールをより利用しやすくするためのものでもある。

また、Creative Cloud Expressの対象ユーザーはもう少し広い。Adobeは、Creative Cloud Expressを、学生から中小企業の経営者まで、誰もが気軽に利用できるコンテンツ制作ツールにしたいと考えている。

AdobeのCreative Cloud部門の最高製品責任者で執行副社長のScott Belsky(スコット・ベルスキー)氏は「誰もが伝えたいストーリーを持っており、誰もが自分のアイデアを表現できるようにすることが我々の使命です。何百万人もの人々が個人やプロフェッショナルのブランドを構築しているこのユニークな時代に、Creative Cloud Expressを発表できることをうれしく思います。創造、コラボレーション、共有のプロセスを統一するシンプルなテンプレートベースのツールで、誰もが簡単に作成できるようになります」。

画像クレジット:Adobe

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(文:Frederic Lardinois、翻訳:Nariko Mizoguchi

アドビ、同社コアアプリの機能やAIツールをそれぞれ必要十分なだけ利用する新ツール「Creative Cloud Express」を発表

Adobe(アドビ)は米国時間12月13日、Creative Cloud Expressの提供を開始した。これは、広範をカバーするCreative Cloud SuiteとAcrobat PDFツールの優れた機能を1つに統合したモバイルとウェブの新アプリで、ソーシャルメディアへの投稿からプロモーション用のポスターや動画まで、あらゆるものをすばやく作成することができる。

Creative Cloud Expressは、テンプレートファーストのアプローチを採用し、ストック画像やその他のアセットへのアクセスが組み込まれているため、個々のCreative Cloudアプリよりもはるかに利用しやすいものとなっている。このアプリには、無料版と、より複雑なテンプレートのライブラリや機能を追加した月額9.99ドル(約1130円)の有料版が用意されている。この新しいアプリへのアクセスは、AdobeのCreative Cloud All Appsとフラッグシップのシングルアプリプランにも含まれる。

画像クレジット:Adobe

ウェブアプリの他に、無料のアプリがAppleのアプリストア、Google Play、Microsoft Storeで提供されている。

Creative Cloud Expressの一般的な考え方は、プロではない人に自分のビジョンに命を吹き込むために必要なツールを提供することだ。AdobeのAshley Still(アシュリー・スティル)氏が指摘したように、同社は近年、プロではないユーザーを増やしてきた。しかし、これらのユーザーの多くは、最初はCreative Cloudのフルアプリの精度とコントロールが欲しいと考えるかもしれないが、実際には同じタスクを迅速かつ簡単に実行できる方法を求めていることが多い。

「Creative Cloud Expressで行っていることは、幅広いウェブアプリやモバイルアプリ、そしてPhotoshopや画像、動画などのCreative Cloudのコアテクノロジーから得られた知見を、Creative Cloud Expressという統一されたサービスに集約することです。これは、プロセスではなく結果を重視する人たちのためのものです。彼らは真っ白なページからではなく、1億7500万ものAdobe Stockライブラリから画像を選んで始めたいのです。フォントを作成するのではなく、Adobe Fontライブラリにある2万種類のすばらしいフォントにアクセスするのです。チラシを作るために複数のアプリを使い、そして印刷できるようPDFを作成したりはしたくありません。1つの場所ですべての作業ができるようにしたいのです」。

画像クレジット:Adobe

実際には、膨大な数のテンプレートにアクセスできるようになるだけでなく、画像から背景を削除したり、Photoshopスタイルのフィルターやエフェクトを適用したりするツールも利用可能だ。また、Creative Cloud Librariesとの統合により、同僚が作成したPhotoshopやIllustratorの作品を、Creative Cloud Expressアプリで再利用することもできる。

また、動画をGIFに変換したり、文書をPDFに変換したりするツールもある。ここで興味深いのは、Adobe Stockの統合だ。Adobe Stockには無料プランはないが、Creative Cloud Expressの無料版に(いくつかの制限付きで)統合されている。無料プランのユーザーは、約100万点の画像やその他のアセットにアクセスできる。プレミアムプランのユーザーは、1億7500万点のAdobe Stockの写真、2万点のフォント、Photoshop ExpressとPremiere Rushへのアクセスが可能になる。

「Creative Cloud Expressでは、『Less is more(少ない方が豊か)』です」とスティル氏は話す。「Photoshopですべてのことができる必要はありません。例えば、ニューラルフィルターは必要ではなくても、背景の削除や画像の簡単な編集など、いくつかの簡単なことができなければなりません。Acrobatでは、PDFをパスワードで保護する必要はなく、PDFを作成したり編集したりすることができれば十分です。シンプルさの多くは、人々が達成しなければならない最も重要なことは何かということを、私たち自身が編集することで実現しています。彼らの意図は何なのでしょう?」。

Creative Cloud Expressは、ソーシャルグラフィックスや短編動画、ウェブサイトを構築するツールであるSparkを少しだけ進化させたようなもののように感じるかもしれない。Adobeはそうは言わないだろうが、もしSparkが強化されたものとあなたが考えるなら、それは大きな間違いではないと筆者は思う。なぜなら、Creative Cloud Expressは、ユーザーインターフェイスのデザインや全体的な哲学の多くを共有しているからだ。実際、発売前にadobe.com/expressにアクセスすると、Sparkのホームページにリダイレクトされていた。

しかし、スティル氏が述べたように、同社はこれをSpark、Photoshop Express、Premiere Rushなどのアプリの代替とは考えていない。これらのアプリはすべて、Adobeのコア機能やAIツールをより利用しやすくするためのものでもある。

また、Creative Cloud Expressの対象ユーザーはもう少し広い。Adobeは、Creative Cloud Expressを、学生から中小企業の経営者まで、誰もが気軽に利用できるコンテンツ制作ツールにしたいと考えている。

AdobeのCreative Cloud部門の最高製品責任者で執行副社長のScott Belsky(スコット・ベルスキー)氏は「誰もが伝えたいストーリーを持っており、誰もが自分のアイデアを表現できるようにすることが我々の使命です。何百万人もの人々が個人やプロフェッショナルのブランドを構築しているこのユニークな時代に、Creative Cloud Expressを発表できることをうれしく思います。創造、コラボレーション、共有のプロセスを統一するシンプルなテンプレートベースのツールで、誰もが簡単に作成できるようになります」。

画像クレジット:Adobe

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(文:Frederic Lardinois、翻訳:Nariko Mizoguchi

「5年分のリクエストキューが初めてゼロに」社内ツール作成の負担を軽減するAirplaneが約9.6億円を調達し飛び立つ

Airplane(エアプレーン)は米国時間12月9日、内部ワークフローを自動化する開発者向けツール「runbooks(ランブックス)」のプライベートベータ版の提供を開始し、Product Huntに投稿した。

Airplaneのrunbookでは、エンジニアがタスクとビルトイン統合機能(SQL、REST API、Slackなど)を組み合わせて、複雑なマルチステップのワークフローを構築することができる。独自のJavaScriptコードを実行し、それをSQLデータベースに投入したり、Stripe(ストライプ)からデータを結合し、その結果をSlack(スラック)で送信するワークフローを迅速に構築でき、エンジニア以外のチームメンバーもアクセスできるようになっている。

Airplaneは、Benchmarkが支援しているBenchlingの元CTOであるJosh Ma(ジョシュ・マー)氏と、デジタルインサイトのスタートアップHeapの共同創業者であるRavi Parikh(ラヴィ・パリク)氏によって2020年に設立された。開発者を念頭に置いた2人は、エンジニアが社内ツールの構築に費やし、製品エンジニアリングから離れていた時間を取り戻そうと考えた。

Airplaneの共同創業者ジョシュ・マー氏とラヴィ・パリク氏(画像クレジット:Airplane)

パリク氏はTechCrunchに次のように語った。「私たちはアイデアのブレーンストーミングに時間を費やしましたが、自分たちの会社で見た大きな問題点の1つは、社内ツールの不足でした。(既存の)ツールによって顧客データを扱い、データの削除やアカウント統合などの問題を解決することはできましたが、カスタマーサクセスチームは、最終的にエンジニアリングチームにタスクをエスカレーションしなければならないこともありました」。

それによって、毎日何十枚ものチケットが積み重なり、エンジニアリングチームの業務に支障をきたす可能性もある。同社の最初の製品は、ダクトテープで貼られたようなつぎはぎのスクリプトやcronジョブを安全で再利用可能なツールに変換する「Airplane tasks」だったとパリク氏はいう。

リモートファーストの同社は、サンフランシスコとニューヨークに拠点を持ち、設立から間もないにもかかわらず、すでに数社の有料顧客と数百人のユーザーが、管理業務、顧客のオンボーディング、承認フロー、長期的なタスクなど、さまざまなユースケースでAirplaneを使いタスクを構築・実行している。

今回の製品発表は、Benchmarkが主導したシリーズAラウンドで同社が850万ドル(約9億6000万円)の資金を得たことが後押しとなった。今回の投資の一環として、Eric Vishria(エリック・ヴィシュリア)氏がAirplaneの取締役に就任する。

この1年間で、SaaS企業である同社は3カ国で10名のチームに成長した。今回の資金調達により、Airplaneは従業員数を2倍に増やし、セルフサービス製品の構築など、製品や技術の開発に投資することができる。

「以前は数時間、数日、あるいは数週間かかっていたことが、Airplaneでは2分から5分でできるようになりました」とパリク氏は語る。「エンジニアは、デプロイコマンドを実行し、ユーザーインターフェースを設定するだけです。あるお客様からは、当社の製品を採用したことで、5年にわたり積み重なっていたリクエストのキューを初めてゼロにすることができたと言われたこともあります」。

画像クレジット:Cavan Images / Getty Images

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(文:Christine Hall、翻訳:Aya Nakazato)