バイオリアクターと培養細胞で、従来の肉と区別がつかないような培養肉を生み出すAnimal Alternative

従来の食肉生産はサステナブルなプロセスとは程遠いものであり、また人々に「本物」の肉を食べるのをやめてもらうという課題は先が見えていない。そんな中、バイオリアクターと培養細胞を使って、動物由来の肉と区別がつかないような肉を作ろうとしている企業の1つがAnimal Alternative(アニマル・オルタナティブ)だ。同社はデータとAIを活用したカスタマイズ可能なプロセスによって、地元の生産者にこの方法を活用してもらおうと試みている。

米国時間9月22日にTechCrunch Disrupt Startup Battlefieldで発表したAnimal Alternativeは、ケンブリッジ大学でバイオテクノロジーを専攻していた時に度々出会う機会があった2人の卒業生が考案した会社である。食肉生産業界は生まれ変わる必要があるという信念を共有していたClarisse Beurrier(クラリス・ボーリエ)氏とYash Mishra(ヤッシュ・ミシュラ)氏。2人はお互いが持つスキルがその目的のために補完し合っていることに気づく。彼らは培養肉の生産を、ハードウェアだけでなくソフトウェアの観点からも取り組むという、データを多用した新しいアプローチを追求するために会社を設立することを決めたのである。

細胞培養肉という言葉に馴染みのない読者のために説明をしておこう。細胞培養肉とは動物の組織から採取した細胞を、人工的な環境下で一般的に「肉」とみなされるだけの数になるまで増殖させたものである。しかし、牛肉をただ切り落として栄養タンクの中に入れておけば500グラムのリブロースに成長するわけではない。自然界で成長するように組織を再現するというのは非常に困難なことなのである。しかしAnimal Alternativeは、データがその答えだと考えている。

研究や医療目的で、細胞や組織の生体電気信号モニタリングを行う研究室出身のミシュラ氏。ある時、同氏とボーリエ氏はこれと同じ技術を食肉生産に応用できるのではないかと考えた。

ヤッシュ・ミシュラ氏(左)とクラリス・ボーリエ氏(画像クレジット: Animal Alternative)

「親指よりも小さなバイオリアクターを作りました。最小限の資源で多くの情報を得ることで、持続可能な方法で食肉を作るための最適なプロセスを見つけることができました」と同氏は話している。

どんな目的であれ、細胞をモニタリングするというのは非常に複雑な提案であり、多くの場合染色や他の場所でテストするためのサンプルの収集など時間のかかる旧式の技術を必要とする。彼らの革新的な技術は、リアルタイムの細胞モニタリング技術の向上と、それによって細胞成長のプロセス全体を導くことができる即時のフィードバックの両方にあるとボーリエ氏説明している。

「すべてがうまく連動しなければいけません。例えば顧客がラム肉を作りたいと思っても、そこにはあらゆるパラメータがあり、非常にダイナミックなプロセスとなっています」とボーリエ氏。特許出願中のバイオリアクターについてあまり多くを語らないようにしていた2人だが、このバイオリアクターが強力なモニタリングとAIによるフィードバックを提供するものであるということは教えてくれた。

「栄養素、流量、pH、温度など、多くのパラメータが、製造される肉の味、食感、品質に大きな影響を与えます。当社が独自に開発したバイオエレクトロニック分析によって、これまでにないレベルの洞察を得ることが可能になりました」とミシュラ氏は説明する。「また、当社の革新的なプラットフォームには、AI駆動のソフトウェアが搭載されているため、当社が持つ全データを利用してコスト削減と効率向上につなげることができます。これにより、必要なコストとエネルギー量は、開始時に比べてすでに92%以上削減されています」。

畑で作物を育てる際に、水や窒素の量が適切であるかどうかを調べるのと同様に、培養細胞が期待通りに成長しているかどうかをリアルタイムでモニターする必要がある。単に組織の成長と健康を維持するだけでなく、実際の肉にありそうな場所に脂肪や血管の組織を作るなど、これによって積極的に組織を分化させることが可能になる。今後は培養肉に関する世界で唯一のデータベースを構築し、そこからラムやポーク、さらには和牛やアンガス牛などの品種に特化した数多くのAIエージェントを育成、配備していく予定だという。

今の段階ではすべて小規模なスケールでしか実証されていないが、同社はむしろ大規模から小規模へという順序でのスケールアップを計画しているという。「バイオリアクターの設計は大規模なものですが、マイクロスケールのシステムは、そのシステムのモデルとなるように意図的に設計されており、マイクロフルイディクスとバイオエレクトロニック・モニタリングを用いて分子スケールまで再現されています」とミシュラ氏は話す。

つまり言い換えれば、現在試作している卓上スケールでできることは、もっと大きなスケールでもできるはずなのだ。そして同社は「ルネッサンス・ファーム」と呼ばれる大型のバイオリアクターを、食肉生産者がターンキープロセスとして利用できるようにしようと計画しているのである。

食肉は世界的な産業だが、すべての国や地域に食肉生産を支えるだけのスペースや資源、インフラがあるわけではない。それでもどの国でも食肉は消費されているため、多くの国が多額のコストをかけて食肉を輸入しなければならないのである。鉱物や石油には恵まれていても、牧草地には恵まれていない国が、自分たちの資源だけで肉を生産できたらどうだろう。それがAnimal Alternativeの目指すところなのである。

「私たちの目標は、最大規模の商業用工場の代替となる、実行可能な手段を提供することです」とボーリエ氏。彼らの試算によると、1000リットルのバイオリアクターなら、わずか5%の土地、水、排出ガスで、年間100万キログラムの肉を従来の農業と同程度の価格で作ることができるはずだという。

ハードウェアはAnimal Alternativeが提供するが、顧客は定期的に新しい幹細胞(動物を傷つけずに採取される)を購入する必要があるという。生産施設での主なコストは、動物以外から調達した液体培地や成長ホルモンなどの原材料である。販売した商品のレベニューシェアが同社の主な収入源となる。

自社工場に資金を投入して自社製品を作るという決断にいたらなかったのは、スケールの問題が理由だ。

「私たちだけではできない問題です。私たちは野心的ですが、これは非常に大きな挑戦となるため、エコシステムの他のすばらしい企業と協力しなければなりません」。

食肉生産の脱炭素化と民主化という目標を一刻も早く達成するためには、食品業界の大手企業と提携してこのプロセスを強化するのが一番である。培養肉を作るための商業規模のプロセスが確立されれば、本物の肉と区別がつかないサステナブルな製品として、人気商品になることだろう。

さてどの程度本当に区別がつかないのか。その結果は近日中に行われる試食会でのお楽しみである。

画像クレジット:Animal Alternative

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(文:Devin Coldewey、翻訳:Dragonfly)

今週の記事ランキング(2021.10.3〜10.7)

今週もTechCrunch Japanで最もよく読まれた5つの記事を紹介しよう。今週の1位は、「英語を母国語としない人がその発話能力を確立し自信を持てるようにするBoldVoice」というニュースだ。他のランキングについても振り返ってみよう。

  • 1位
    英語を母国語としない人がその発話能力を確立し自信を持てるようにするBoldVoice

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    Anada Lakra(アナダ・ラクラ)氏とIlya Usorov(イリヤ・ウソロフ)氏は米国に移住した当初、自分たちの声を伝えることに苦労した。彼らは英語を知っていたし、理解していた。しかし、話す時になると、アクセントがハードルになった。例えばウソロフ氏は、ロシア生まれの両親が自らを主張しようと奮闘し、そのことが仕事の機会を制限してしまうのを目にした。一方、エール大学に入学したばかりのラクラ氏は、自分の発言をもう一度と言われてしまうことが頻繁にあった。… 続きを読む

  • 2位
    Koboが電子書籍リーダーの新モデル2種類発表、Bluetoothヘッドフォンでオーディオブックを聴ける

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    Koboの新しい電子書籍リーダーとして「Sage」と「Libra 2」の2モデルが登場した。同社電子書籍リーダーのうちサイズが大きめのモデルでおなじみになった左右非対称のデザインで、新たにBluetooth接続でオーディオブックを聴けるようになった。Sageはスタイラスに対応している。従来のモデルでは数週間おきに充電が必要だが、Sageにはバッテリー内蔵のカバーが用意されたため、これを使えば電源に接続するのは数カ月おきで済む。… 続きを読む

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    フェイスブック、Messenger、Instagram、WhatsAppなどすべてがダウン中、DNS障害が原因か

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    世界中で、FacebookのMessenger、Instagram、WhatsAppなど、同社が所有するすべてのソーシャルネットワークで障害が発生している。現在、これらのウェブサイトにアクセスすると、サーバーエラーが表示される。Instagramでは「5xxサーバーエラー」と表示され、これはFacebookのサーバーに問題があることを示す… 続きを読む

  • 4位
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    米国時間9月14日に開催されたビッグイベントでデビューしたApple Watch Series 7の発売日は、「秋」という漠然としたものだった。本日、オーストラリア、カナダ、中国、フランス、ドイツ、インド、日本、メキシコ、ロシア、韓国、アラブ首長国連邦、英国、米国のユーザーを対象に、日本時間10月8日午後9時から予約受付を開始し、1週間後の15日から店頭で販売することを発表した。… 続きを読む

  • 5位
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    Googleは新スマートフォン Pixel 6 / Pixel 6 Pro の発表イベントを米国時間10月19日に開催します。日本時間では20日午前2時から。8月にプレビューとして外観や独自プロセッサ「Tensor」搭載などが明かされた Pixel 6 / Pixel 6 Pro の詳細を正式に発表するイベントです。… 続きを読む

ハイブリッド、EV、代替燃料の未来に対するランボルギーニのビジョン

自動車愛好家には、電気自動車を敬遠してきた歴史がある。電化やハイブリッド化を全面的に支持する人もいる一方で、依然としてガソリンにこだわりを持つ人もいる。Lamborghini(ランボルギーニ)のような、高尚で価格設定の高い領域では特にその傾向がある。

電動化とハイブリッドパワートレインの推進は、世界最大級のパワフルなガソリンエンジンを備えた印象的な特注車両を作ることで知られる自動車メーカーに、大きな課題を突きつけている。ランボルギーニの上層部からは、それに対する若干の抵抗感が感じ取れる。

ランボルギーニは2024年までにすべてのモデルをハイブリッドパワートレインに移行するとしている。すでにハイブリッドの限定モデルとしてSián FKP 37(シアンFKP 37)とCountach LPI 800-4(カウンタックLPI 800-4)を発表しているが、ハイブリッド化されたパワートレインを搭載した初の量産(つまり限定ではない)車両が来年までにリリースされるという。Ferrari(フェラーリ)、McLaren(マクラーレン)、Porsche(ポルシェ)などはハイブリッドパワートレイン搭載の量産車と限定車の両方を作り続けており、ランボルギーニはこの分野に参入する最後のスーパーカーメーカーの1社となる。

ランボルギーニは、同社の忠実な顧客の力を借りて、彼らの象徴的なスーパースポーツカーの未来を革新したいと考えている。

ランボルギーニの燃料の未来

「一方で、当社は極めてニッチな存在であり、CO2の方程式に占める割合はごくわずかです。しかし私たちは自分たちの役割を果たしたいと考えています」と、ランボルギーニの北米の新CEOであるAndrea Baldi(アンドレア・バルディ)氏は、今後もリリースを予定しているガソリン駆動車として同社最後のモデルとなるHuracán(ウラカン)の1つ、Huracán STO(ウラカンSTO)のローンチイベントで語っていた。「ハイブリッド、電気、そして代替のパワートレインへのシフトは、私たちにパフォーマンスの再考を迫るものであり、電動化が長期的な方向性であるかは確信が持てません」。

「ハイブリッドや電動パワートレインを搭載した4番目のモデルをリリースするにしても、異なる種類の燃料を使用する内燃機関のソリューションを見つけるにしても、私たちは今後もさらに学びを進めていきます。エモーション(感情)と真のランボルギーニ体験という、共通の目標を実現する必要があるのです」とバルディ氏は語っている。

同氏は自社が採用する可能性のある燃料や技術の詳細については語らなかったが、ランボルギーニのCTOであるMaurizio Reggiani(マウリツィオ・レッジャーニ)氏からは、ランボルギーニの将来的な完全電動化を示唆する興味深い研究についての言及があった。

「ハイブリッドパワートレインは、私たちがイノベーションを起こせると確信している次のフロンティアです」とレッジャーニ氏は分けて語っている。「当社の存在意義は、独自のDNAを有していることにあります。私たちはエモーションをエンジニアリングしているのです。例えば、振動のような物理的な事象が感情の流れにどのようなインパクトを与えるかについて、ミラノ工科大学と共同で研究を行っています」。ICEエンジンの物理的効果がジャイロスコープとオーディオトラックによってシミュレートされる世界を見ることができる。

技術的には、サンタアガタ・ボロネーゼにあるランボルギーニの工場は2015年以来カーボンニュートラルであるとバルディ氏はいう。しかし、従業員1800人のこの企業は、はるかに規模が大きく、炭素排出量の多いVW(フォルクスワーゲン)グループの一員である。自動車生産台数は少なく、イタリア政府が今後の内燃機関の規制からランボルギーニやフェラーリのような自動車メーカーを除外する動きを見せているにもかかわらず、ランボルギーニは代替燃料への移行を余儀なくされている。

バルディ氏によると、ランボルギーニは世界の自動車の1万1000台に1台を占めているが、トヨタやホンダのような巨大自動車メーカーと比べれば小さな数だ。「ハイブリッド化と電動化は、エモーションの未来を広げる機会をランボルギーニのオーナーに提供します。夢を手に入れるのです。大多数の顧客は、自分の成功を表現する車を求めています」とバルディ氏。それでもやはり、将来にわたって内燃エンジンを使い続けたいとランボルギーニの顧客がいくら望んだとしても、そうしたエンジンの時代は終わりに近づいている。

顧客との直接的なつながりの構築

ランボルギーニは一貫して、顧客のニーズに応えることをブランドの核に据えてきた。2025年のCO2排出量50%削減に向けた今後のモデルの方向性を見極めるために、忠実なオーナーたちからの協力を得ている。すでに完売したCountach LPI 800-4のペブルビーチでの最近のローンチは、ランボルギーニが顧客ベースを活用してハイブリッドパワートレイン搭載の高需要の新製品を生み出したことを物語る好例だ。

「関りを持つことなくただクルマを作るだけということはありません。顧客体験の全体を通して、顧客との絆を深めてきました」とバルディ氏は語る。「Countachで実施した特別プロジェクトは、会社と顧客の間の直接的な信頼を高めるものでした。1対1のミーティングを友人同士のように行い、Countachでの当社の取り組みを伝えることができました。エモーショナルな決断が生み出したこの車の構築は、優れたビジネスケースとなったのです」。

新型コロナウイルス感染症の発生とその結果としての旅行制限により、工場訪問は2020年の間にほぼ中止された。しかしランボルギーニは、2018年にUnicaというデジタルプラットフォームをローンチしており、オーナーが期待する特別な顧客コンタクトやサービスを提供することを可能にしている。アプリはスマートフォンにダウンロードでき、オーナーは専用のイベント、ローンチ、ソーシャルメディアへのアクセスを得る。サインアップするには、ランボルギーニのVINと所有権証明書の提出が必要だ。

このアプリは、結果的に会社と消費者間の直接販売の可能性を開いた。「直接販売は、私たちが探究する必要のある分野です。私たちは加速する時代の中にあり、顧客と直接的な関係を持ちたいと思っています。問題は、顧客との直接接触をどの程度拡大できるかです」とバルディ氏はいう。「車の価値が維持されるという感覚を確実にするためには、顧客との人間的な触れ合いが必要です。現在、車の待ち時間は平均で1年を超えています。待機時間はこれらの車を販売する時間であり、顧客との直接的なコンタクトがありますので、価値は維持されます」。

ランボルギーニの最新モデル、Huracán STOはストリートホモロゲーションレーシングカーだ。現在2022年まで売り切れの状態で、Unicaアプリと車両を介したコネクティビティが付属している。このシステムでは、ラップタイム、スロットルとブレーキのインプット、ハンドルアングルなどのドライビングセッション中のデータや、内蔵カメラが撮影したトラック上のラップの動画を記録し、アプリにアップロードすることが可能だ。ランボルギーニのオーナーにとっては一種のエリートソーシャルネットワークであり、より直接的につながる方法が会社にもたらされる。

「顧客はランボルギーニを体験するための適切なコンテキストを求めています」とバルディ氏。「スーパースポーツカー市場は拡大の一途を辿っています。このようなカーライフスタイルやモータースポーツにおける体験を提供し、人間的な触れ合いの幅を広げていくことができれば、顧客はブランドの範囲内に留まり続けるでしょう」。

関連記事:【レビュー】ランボルギーニ Huracán STO、強力なエンジンの代名詞的企業がハイブリッド化に向かうとき何が起こるのだろうか

画像クレジット:Lamborghini

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(文:Abigail Bassett、翻訳:Dragonfly)

ネットフリックスが視聴する作品選びをサポートする「ランダム再生」を全世界Androidユーザーに提供開始

Netflix(ネットフリックス)は米国時間10月4日、Androidユーザー向けの新機能を正式に発表した。この機能により、何を観たいか決められないときに、視聴する作品を見つけやすくなる。「Play Something(ランダム再生)」と呼ばれるこの機能は、シャッフルモードのオプションで、ユーザーの興味や過去の視聴行動に基づいて、好みに合いそうな別の映画や番組をNetflixが再生する。

これらのセレクションには、ユーザーがすでに視聴しているが全部観終えていない映画や番組、ウォッチリストにある映画や番組、あるいはNetflixのパーソナライゼーションアルゴリズムが提案する全く新しいシリーズや映画などが含まれる。

この機能は、一般公開される前から開発が進められていた。例えば2020年には、Netflixは「Shuffle Play(シャッフル再生)」としてテストを行っていた。また、同社は2020年第4四半期の決算で、シャッフルモードを2021年前半に全世界のユーザーに展開するとし、そのユーザーのためだけに特に選ばれた「タイトルを瞬時に視聴できる」と説明していた。

関連記事
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画像クレジット:Netflix

そのスケジュールは一部実現した。

「ランダム再生」とリブランドされたこの機能は、4月にNetflixのテレビアプリで世界中のユーザーに正式に提供開始された。このオプションは、プロフィール選択画面のプロフィール名の下、画面左のナビゲーションメニュー、Netflixホームページの10列目など、いくつかの場所に表示されている。これらは、ユーザーがブラウジングに挫折してアプリを終了してしまうようなタイミングで表示されるように設計された場所だ。また、スクリーンリーダーを使っているユーザーは、TTS(音声読み上げ)を使って「ランダム再生」を利用することもできる。

Netflixは当時、この機能のテストをAndroidをはじめとするモバイル端末で間もなく開始すると述べていた。その後、5月下旬にテストを開始した。

つまり、この「公式」デビューのずっと前から、あなたのAndroid端末にはこの機能が搭載されていたかもしれないが、グローバル市場ですべてのNetflixユーザーは、まだこの機能を試すことができていなかった。

しかし、Netflixは本日より、世界中のすべてのAndroidモバイル端末に「ランダム再生」を正式に導入する。同社は「今後数ヶ月のうちに」iOSでもこの機能をテストする予定だと述べている。

モバイル端末では「ランダム再生」ボタンは、スクロールすると携帯電話の画面下部にあるコンテンツの上に表示され、アプリ内には専用のタブもある。

画像クレジット:Netflix

Netflixによると、この機能に対するユーザーの反応は今のところ良好で、この機能を賞賛するツイートもいくつか見受けられるという。

だが、Netflixにとってこのシャッフルモード機能は、ユーザーに別のより簡単な視聴方法を提供するだけではなく、ユーザーが他のエンターテインメントの選択肢に移る前にアプリ内に留めておくための手段でもある。それがライバルアプリのストリーマーであれ、TikTok(ティックトック)のような動画ソーシャルメディアアプリであれ、だ。

実際、短編動画の脅威は深刻で、Netflixは最近、モバイルアプリ用に「Fast Laughs」というTikTok(ティックトック)のような機能を独自に開発した。この機能では、ユーザーをコンテンツに誘導するためにコメディ動画のフィードを表示する。TikTokは先週開催されたイベントで、独自の調査データを引用して、ユーザーの35%がTikTokの影響でテレビを見る機会が減っていると述べ、この潜在的な脅威をより具体的な数字で表している。

「ランダム再生」は「Downloads for You(オススメダウンロード)」と呼ばれるスマートダウンロード機能や、ダウンロード中の動画再生機能のサポート、2020年に追加されたトップ10リストなどの、同アプリの他の新しい機能に加わることになる。

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画像クレジット:Netflix

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(文:Sarah Perez、翻訳:Aya Nakazato)

【コラム】クリエイティブがグロースマーケティングの決定的なXファクター

今後、グロースマーケティングがプライバシー保護を重視した、ターゲットの曖昧なものに移行するとき、Facebook(フェイスブック)などの有料ソーシャルチャネル上のクリエイティブが最も強力な手段になるだろう。重宝しているiOS 14.5で特定機能が利用できなくなってこの傾向は加速されたが、さまざまなチャネルで広告プラットフォームの自動化に向けた取り組みが強化されている。

それで筆者は、シードステージのスタートアップであれ、Google(グーグル)のような巨大企業であれ、グロースマーケティングを推進する場合は常に、クリエイティブをテストする適切なフレームワークの準備を整えるべきだと思う。

筆者は、Postmates(ポストメイツ)で3年間働き、さまざまなスタートアップのためにコンサルティングをし、直近ではUber(ウーバー)で仕事をして、多くの点でマーケティングが変化する様子を見てきた。しかし、我々が今目にしているものは我々の制御を超えたファクターによって動いており、今まで見てきたどんなものとも異なる変化が始まっている。続いて、有料のソーシャルアカウントでクリエイティブが最も強力な手段として登場した。

基本

クリエイティブの力を活用し、有料のソーシャルマーケティングで成功を収めようと考えているなら、その考え方は正しい。必要なのは、クリエイティブをテストするフレームワーク、つまり新しいクリエイティブアセットをテストする構造化された一貫性のある方法である。

次に、クリエイティブをテストするフレームワークを成功させるために必要な基本要素を示す。

  • 決められたテストスケジュール
  • テーマを構造化したアプローチ
  • チャネルに特化した戦略

クリエイティブのテストは、決められたテストスケジュールに従った、持続的で反復的なプロセスにする。目標と構造は、毎週5つの新しいクリエイティブアセットをテストするシンプルなものにできる。逆に、複数のテーマとコピーバリエーションから成る60の新しいアセットをテストする複雑なものにもできる。

出費があまり多くないアカウントの場合、イベントシグナルが限られているのでクリエイティブのテストは比較的限定的なものにする。出費の多いアカウントの場合はその逆にする。最も重要なことは、次の「優れた」アセットを探す際、テストを継続して目ぼしいものを見つけることである。

4つのテーマ×テーマごとに3つの変化形×5つのコピーバリエーション=60のアセット(画像クレジット:Jonathan Martinez)

テストのスケジュールを設定したら、思いつきのアイデアを大量にテストするのではなく、ビジネスとバーティカル市場の主要なテーマを定義する。これは、コピーや、製品とサービスの主要な価値提案と同様に、クリエイティブアセットにも当てはまる。クリエイティブのデータ分析を始めると、この構造を活用してテストすることで、何を強化し、何をカットするか、簡単に決定できることがわかるだろう。これは、テストの過程を通じて拡張または縮小するワイヤーフレームと考えることができる。

MyFitnessPal(マイフィットネスパル)のようなフィットネスアプリの場合、次のように構造化できる。

  • テーマ(製品のスクリーンショット、製品を使っている人の画像、UGCのユーザーの声、事前・事後の画像)
  • メッセージ(セグメント化された価値提案、宣伝広告、FUD)

チャネルは、クリエイティブのベストプラクティスやテストの機能がそれぞれ異なるので、チャネルに特化したアプローチになっていることを確認することは非常に重要である。フェイスブックでうまくいくことが、Snapchat(スナップチャット)やその他多くの有料ソーシャルチャネルでもうまくいくとは限らない。クリエイティブのパフォーマンスがチャネルによって異なるとしてもがっかりすることはないが、筆者は等価性テストを推奨する。あるチャネル向けのクリエイティブアセットがすでにある場合、残りのチャネル向けにサイズ変更して体裁を整えても問題はない。

何が成功かを判断する

適切なイベント選択と、テスト全体を通じて守る統計的に有意なしきい値は、クリエイティブにとって等しく重要である。クリエイティブのテストに使うイベントを選択する際、CACのレベルによっては、必ずしも自社のノーススターメトリックを使えるとは限らない。例えば百単位のCACで高額のアイテムを売る場合、各クリエイティブアセットで統計的に有意な値に達するには、多額の出費が必要になるだろう。代わりに、ファネル上部寄りのイベントと、ユーザーの転換の可能性を示す信頼性の高い指標を選ぶことができる。

ファネル上部寄りのイベントを使うと、学習の迅速化につながる(画像クレジット:Jonathan Martinez)

使用する統計的に有意な割合を決める際、クリエイティブのテスト全体にわたって一貫した割合を選択することは重要である。経験上、筆者は80%以上の確実性を好む。それによって、十分な確認と決定の迅速化が可能になるからだ。Neil Patel(ネール・パテル)氏のA/Bテスト向け有意性計算ツールは、便利な(無料の)オンライン計算ツールである。

成否を分けるもの

ソーシャルフィードをスクロールしていて、光沢のあるゴールドのペンダントに目が留まったとしよう。しかし、メッセージはブランド名と製品の仕様だけである。注意を引かれはしたが、引き寄せられるものが何かあっただろうか。考えてみて欲しい。人の注意を引くだけでなく「クリエイティブ」、つまり有料のソーシャルグロースマーケティングで成否を分けるファクターを使って、引き寄せているだろうか。

iOS 14.5のデータロスを迂回する

iOS 14.5でユーザーデータがわかりにくくなり、モバイルキャンペーンにおいてクリエイティブのテストは厳しくなる一方だが、不可能というわけではなく、ただもっと賢くなる必要があるということである。クリエイティブのパフォーマンスに関する明瞭なインサイトを得るのに役立つアイデアはいろいろあり、長続きしないものもあれば、ずっと残るものもあるだろう。

プライバシー保護のための制限はたくさんあるが、膨大な数のAndroid(アンドロイド)ユーザーには依然としてアクセス可能であり、これを活用しない手はない。クリエイティブのテストをすべてiOSで実施する代わりに、インサイトを収集する明瞭な方法としてアンドロイドを使うことができる。プライバシー保護のための制限はまだアンドロイドデバイスに課されていないのだ。アンドロイドでのテストで収集されたデータは、次にiOSでのキャンペーンに適用できる。アンドロイドでのデータにも制限が課されるのは時間の問題でしかないので、iOSでのキャンペーンに情報を提供できるこの回避策を活用するのは今である。

アンドロイドでのキャンペーンが実行可能なオプションでない場合、手早く簡単な別のソリューションは、Webサイトのリードフォームを断念し、クリエイティブアセットから記入済みフォームへの転換率を測定することである。ユーザーエクスペリエンスは確かにエバーグリーンコンテンツと比べればまったく驚くほどのものではないが、これを使えば短期間でインサイトを得ることができる(しかも、予算のほんの一部で)。

リードフォームを作成する場合は、エバーグリーンエクスペリエンスの重要な指標となるイベントを完成させるユーザーを見極めて明らかにする質問を考えよう。ユーザーがリードフォームに記入し終えたら、コミュニケーションを取ってユーザーの転換を図り、広告費を有効に使うことができる。

アカウントステージに基づいて取り組む

クリエイティブアセットのタイプに応じたテストの取り組みはアカウントステージアカウントステージによって大きく異なり、模倣、反復、イノベーションの3つに分けることができる。

クリエイティブのテストのタイプは時間とともに変化する(画像クレジット:Jonathan Martinez)

アカウントステージが初期であればあるほど、クリエイティブの方向性が他の広告主によって有効であることが証明されたものに依存する度合いは大きくなる。それらの広告主は、アセットのパフォーマンスの証明に多くの出費をしてきており、そこから強力なインサイトを得ることができる。時間の経過とともに、他の広告主から導き出す速度をわずかに落とし、ベストパフォーマンスの反復に重点を置くことができる。筆者が割合を決めるとすれば、初期段階では取り組みの80%を模倣に置く。成功事例が明らかになるにつれて自然と反復の勢いが増し、イノベーションが大きく遅れて最後の柱になる。

これは、すばらしいアイデアがある場合でも初期段階ではイノベーションを試すことはできないということではが、一般に、十分に成長した企業の方が革新的なアイデアの検証に多額の出費をする余裕がある。また、社内にデザインチームがあるにしても、フリーランスのデザイナーと一緒に取り組むにしても、50の異なる革新的なアセットを考えてデザインするより、50のバリエーションを考える方がはるかに簡単である。模倣と反復により、初期のテストは大幅に効率的になる。

競合他社のインサイトを活用する

ブレインストーミングをして、最高に美しく、目を引いて、人を引き付けるクリエイティブを思い描くことは、必ずしも数秒でできることではなく、数分でも、数時間でもできるとは限らない。ここで、競合他社のインサイトを利用することが関係してくる。

最も充実したリソースはフェイスブックの広告ライブラリである。そこには、プラットフォーム全体であらゆる広告主が使っているすべてのクリエイティブアセットがある。実際のところ、この無料の強力なツールのことを知っている人がほとんどいないことに、筆者はいつも驚かされる。

このライブラリで競合他社やクラス最高の広告主を参照すると、広告主が長く使ってきた具体的なアセットに、優れたパフォーマンスのクリエイティブの証拠を見ることができる。どうしてそれがわかるかというと、便利なことに、広告主がクリエイティブを使い始めた日付のスタンプが各アセットにあるのだ。これは非常に役に立つ。筆者は、何時間でもクリエイティブアセットを調べていられる。それぞれの広告主が、情報とひらめきをさらに提供してくれる。

有料のソーシャルグロースマーケティングで努力を傾ける分野を考えるときは、クリエイティブをリストのトップに置く必要がある。データがますますわかりにくくなるにつれ、アイデアに富んだ考え方をする必要がある。そうした考え方が、成功と失敗の分かれ目になる。実行する戦略のタイプは時間とともに変わるが、変わらないのは、強力なクリエイティブ、つまり成功を左右するファクターの重要性である。

編集部注:本稿の執筆者Jonathan Martinez(ジョナサン・マルティネス)氏は、元YouTuberで、カリフォルニア大学バークレー校の卒業生であり、Uber、Postmates、Chimeをはじめとするさまざまなスタートアップ企業の成長を支援してきた成長マーケティングのオタク。

画像クレジット:MirageC / Getty Images

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(文:Jonathan Martinez、翻訳:Dragonfly)

仏Withingsが見た目ダイバーズウォッチで血中酸素濃度や心拍数を測れる「ScanWatch」新モデル発売

Withings(ウィジングズ)は、同社のハイブリッドスマートウォッチ「ScanWatch」をダイバーズウォッチに仕立て上げた新モデル「ScanWatch Horizon」を発表した。Horizonはケースサイズが43mmと大きくなった以外は、我々がすでに市場で最高と考えているデバイスと同じだ。心電図、血中酸素飽和度センサー、睡眠中断トラッキングなどに加え、通常モデルと同様にアクティビティや睡眠サイクルを計測する機能が内蔵されている。また、2つのサブダイヤルも同じで、1つは通知用の小さなデジタルスクリーン、もう1つはアナログのアクティビティカウンターになっている。

パリで開催されたイベントで「ScanWatch Horizon」を見る機会があり、機能しない試作品ではあったが、実際に装着してみた。手に取ってみると、写真で見た通りの美しさで、スチール製のクイックリリースバンドも付いており、価格の割にはいいクオリティーに感じた。なお、Withingsは今回初めて「ScanWatch Horizon」を他の小売店に加えて宝石店でも販売する。

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同社が語ったところによると、よりがっしりとしたHorizonモデルは、大柄な手首に合わせてより「男性的」なデザインになっており、43mmモデルのみが用意されているとのこと。初代ScanWatchでは、38mmか42mmの2種類のサイズがあった。

残念なことに、本体が大きくなり価格が高くなっても、機能面では何も追加されておらず、携帯電話を一緒に持っていない限り、時計にGPS機能はない。また、あら探しをするならば、見た目は立派なダイバーズウォッチ(正確なレーザー刻印の回転ベゼルやルミノバを施した針)だが、防水性能は10気圧に制限されている。そのため、シュノーケリングやウォーターアクティビティ、一部のスキューバダイビングは可能だが、本格的なダイバーズウォッチと比較すると見劣りする。

とはいえ、スマートウォッチの世界では、プレミアムなダイバーズウォッチのスタイリングにスマートさを加えたものが求められている。タグ・ホイヤーのConnected(コネクテッド)が、この市場で他にないからといってデフォルトになることは許されない。特に、Wear OSを搭載していることからしても。

画像クレジット:Steve Dent/Engadget

Withingsが語ったところによると、同社のECGヘルスセンサーのFDA承認がScanWatch Horizonの米国での発売を妨げているが、年内には米国での発売を目指しているという。初代ScanWatchがまだ米国で販売されていないのも、このためだ。

ScanWatch Horizonは、9月29日に英国で最初に発売される。価格は499.95ポンド / 499.95ユーロ(約7万5100円 / 約6万4900円)。フェイスカラーはブルーとグリーンの2色から選ぶことができ、どちらのモデルにもクイックリリースのステンレススチールバンドとFKMラバーバンド(水泳用)が同梱される。また、フランスとドイツでも本日より販売を開始しており、ヨーロッパの他の地域ではもう少し後に販売される予定となっている。

Steve Dent(スティーブ・デント)がこの記事を共著した。

編集部注:本稿の初出はEngadget。著者Daniel Cooper(ダニエル・クーパー)氏は、Engadgetのシニアエディター。

画像クレジット:Steve Dent / Engadget

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(文:Daniel Cooper、翻訳:Aya Nakazato)

医薬品チェック技術と偽造医薬品排除技術の拡大を目指すアフリカのRxAll、約3.5億円獲得

ある研究によれば、偽造医薬品による事故が原因で年間100万人が死亡し、そのうち10分の1はアフリカで発生している。偽造医薬品は、発見、検査、定量化、排除が難しい。これは世界的な問題で、基準に満たない医薬品による不当な利益は年間1000億ドル(約11兆300億円)を超えている。

この問題を解決するためのいくつかの技術が開発されている。製品の容器に無線ICチップが埋め込まれたシリアルナンバーを付けて、そのデータを読み取る無線識別技術はその1つだ。最近では、RxAll(アールエックスオール)の技術のような、より現代的なアプローチも採用されている。RxAllは、深層技術を活用して医薬品の品質を確保する技術を展開するスタートアップ企業で、米国とナイジェリアを拠点としている。現地時間7月21日、同社は、既存の市場での規模拡大と技術の向上を図るべく、315万ドル(約3億5000万円)の資金調達ラウンドを発表した。

RxAllはAdebayo Alonge(アデバヨ・アロング)氏、Amy Kao(エイミー・カオ)氏、Wei Lui(ウェイ・ルイ)氏によって2016年に設立された。当時イェール大学の学生だった3人がRxAllを創設したのは、自分自身、または身近な人が直面した問題を協力して解決するためだった。

アロング氏は2006年、致死量のジアゼパムが含まれた偽造医薬品を飲んで生死の淵をさまよい、3週間の昏睡状態に陥った。

アロング氏はTechCrunchの電話による取材に次のように応える。「私は15年前、ナイジェリアで3週間昏睡状態に陥りました。共同設立者のエイミーは、タイで偽造医薬品を飲んで入院しました。ウェイは、汚染された偽造医薬品のせいで家族を失いました」。

アロング、カオ、ルイの3人は、イェール大学化学学部での研究開発プロジェクトをベースに、機械学習と分子分光法を医薬品や原材料の品質、品質保証に応用する方法を検討し始めた。3人には、安全で評判の良い医薬品の販売者を認証するマーケットプレイスを構築し、まず高品質な医薬品の入手が難しいアフリカの問題を解決し、次に全世界に広げていく、という大きなアイデアがあった。

アロング氏は続ける。「調べていくうちに、私たちが経験したことが一過性のものではないことがわかりました。これは現在進行形の問題です。毎年、10万人のアフリカ人が、偽造医薬品が原因で亡くなっています。世界中では100万人です」。

画像クレジット:RxAll

RxAllの独自技術であるRxScannerは、ユーザーが医薬品を検査するための携帯型検査装置である。同社によると、RxScannerは20秒で処方薬の品質を識別し、モバイルアプリですぐに結果を表示することができるという。

RxAllは、質の良い販売者を自社のマーケットプレイスに集め、RxScannerを提供する。対象の医薬品を分光分析して、機械学習モデルで基準となる医薬品(リファレンス)と比較した場合の同一性や品質を示す検査を行い、結果を送信する。バッチテストが終わると、販売者は製品をマーケットプレイスに出して、オンデマンドの注文や受け取りだけでなく、配送サービスも利用できるようになる。販売者はフィルターを使って探すことができる。

RxAllはマーケットプレイスでの取引による手数料で収益を上げ、RxScannerには、個人や企業を対象としたサブスクリプションモデルを採用している。

同社の革新性にもかかわらず、アフリカを重要視した多くのディープテック(最先端のテクノロジー)プラットフォームと同様に、RxAllは資金調達をほとんど行っていなかった。このようなスタートアップ企業は研究から商業化までのサイクルが長く、ベンチャーキャピタルはサイクルの後半に関与するから、というのが、その主な理由だ。RxAllはこれまで、助成金やコンテストでの賞金の他、アフリカに特化したアクセラレーター、Founders Factory Africa(ファウンダーズファクトリー・アフリカ)などから新株発行で資金調達してきた。

アロング氏は、RxAllはディープテックとヘルステックを組み合わせた世界の先駆者であり、少なくとも当面は、RxScannerのシステムと直接競合する他社は出てこないと考える。

「医薬品のeコマースとは別物です。薬物検査の分野で言えば、他のソリューションには実験室用の高価な機器しかなく、RxAllの市場、応用分野、価格帯、深層学習とスマートフォンを使ったソリューションとは比較になりません」とアロング氏。

しかし、技術的な優位性だけでは製品は売れず、ビジネスも成り立たない。アロング氏によれば、RxAllの技術を拡大するための鍵は、コストがかかっても市場に受け入れられる製品を作ることだという。同社は現在、投資家にわかりやすい技術の開発に加え、この課題にも取り組んでいる。

RxAllチーム(の一部)

RxAllは、自らをグローバル市場で活躍する企業と表現する。しかし、先に述べたように、同社の顧客と収益の大部分はアフリカ、特にナイジェリアにある。現在、RxAllは10都市にサービスを展開中で、西アフリカ諸国の2000以上の病院や薬局にサービスを提供し、100万人の患者に対する医薬品の真贋を検証している。2021年中にサービス提供範囲をさらに14都市拡大し、2022年にはアフリカ全土での展開を予定している。

今回の資金調達ラウンドは、最近クローズした200万ドル(約2億2000万円)のシードラウンド(申し込みが上回り、225万ドル[約2億5000万円]のオーバーサブスクライブとなった)と、2020年末に調達した90万ドル(約1億円)のプレシードを合計したものだ。Launch Africa Ventures(ローンチアフリカベンチャーズ)が主導し、SOSV(エスオースブイ)のアクセラレータープログラム「HAX(ハックス)」と本田圭佑氏のKSKファンドが参加した。

今回のラウンドについて、Launch Africa Venturesのマネージングパートナー、Zachariah George(ザカリア・ジョージ)氏は次のように話す。「Launch Africa Venturesは、RxAllの優秀かつ経験豊富なチームに対して、この資金調達ラウンドを主導できることをうれしく思います。RxAllは、医薬品販売プラットフォームのパイオニアとして、薬局や患者が検証済みの医薬品をオンラインで購入することを可能にし、アフリカで質の高いヘルスケアを受けられるかどうかという大きなギャップを埋めていると確信しています。偽造医薬品を排除するための独自のモバイル分光計技術と、医薬品販売のサプライチェーン全体と独自の決済手段を所有することで、顧客1人あたりで高い経済性を実現し、複数の収益源を獲得しています。アフリカ全土、さらに全世界での大きな成長と規模拡大の機会が見込まれます」。

SOSVのジェネラルパートナーであり、HAXのマネージングディレクターであるDuncan Turner(ダンカン・ターナー)氏も「私たちは、RxAllの拡張性と顧客の需要に対応する能力に非常に感銘を受けています。この1年間で、RxAllのチームは、世界レベルのハードテクノロジーと卓越したオペレーション能力を結集し、100万人以上のナイジェリアの人々の、緊急の課題を解決してきました」と続ける。

では、RxAllの次の展開は?アロング氏は、RxAllが次に力を入れるのはパートナーシップだという。同氏によると、RxAllがナイジェリア、アフリカ、その他の地域でマーケットプレイスやRxScannerの提供範囲を拡大するには、パートナーシップが不可欠だ。

「RxAllは、病院や薬局、患者さんだけでなく、政府や各国のFDA(食品医薬品局)にもRxScannerを販売しています。そのため、ナイジェリアだけでなく、アフリカ、東南アジア、北米、南米など、世界各地でしっかりとしたパートナーシップを確立したいと考えています。私たちが目指すのは、これらの主要市場への規模拡大です」。

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(文:Tage Kene-Okafor、翻訳:Dragonfly)

WebOpsプラットフォームのPantheonが予定より1年前倒しでSoftBank Vision Fundから約110億円調達

WebOps SaaSプラットフォームのPantheonは何年も前にDrupalとWordPressをホストする企業として発足した。Pantheonが2021年7月中旬、Softbank Vision Fund単独によるシリーズEラウンドで1億ドル(約110億)を調達したと発表した。このラウンドでPantheonの評価額は10億ドル(約1098億円)を超え、同社はユニコーン企業としての地位を手に入れた。

Pantheonの共同創設者兼CEOであるZackRosen(ザック・ローゼン)氏は、同社は特に急いで資金調達をする必要に迫られていたわけではなかったと語った。「今回得た資金は、現在私たちが取り組んでいることにさらに弾みをつけるのに役立てることになります。当社は銀行にたくさんの現金を持っているので、今後 1年か2年で資金調達する予定ではあったのですが、今すぐに資金調達が必要だったわけではありませんでした。しかし、私たちはこの業界がどこに向かっているのかについて確信を持っており、お客様のニーズもかなり明白であることから、資金調達の時期を6カ月から1年前倒しし、すでに遂行計画に入っている事柄を加速するチャンスとしてこの機会を活用することにしました」。

ローゼン氏のいう通り、企業ウェブサイトの役割はPantheonが約12年前に発足した当時とはだいぶ変容してきている。もともと企業ウェブサイトはブランドの確立やニュース発表の経路を確保する役割を果たしていたが、昨今ではウェブサイトはダイレクトに収益に結びついている。「最近では、企業の担当者がお客様と商談する前に、購入決定の大半がなされています。あらゆる調査がウェブサイトを閲覧することで完了しているのです。広告内のリンクや電子メール内のリンクも、お客様をウェブサイトにつなぎます。ウェブサイトは最も重要なデジタル製品なのです。マーケティング担当者はウェブサイトをこのように捉え始めています」。

このため、ホスティングとパブリッシングで問題が解決することがある一方で、Pantheonは今後、企業のウェブサイトを通じて収益を上げそれを測定する、という部分に多くのチャンスがあると見ている。もちろん、同社のサービスの中心は依然としてサーバーレスホスティングプラットフォームであり、サービスの主な対象者は開発者である。しかし、同社が現在投資している多くの事柄を促進しているのはマーケティングチームと開発者によるコラボレーションである。「最高クラスのデジタルサービスを日々繰り返しお届けし、さらにデザイナー、開発者、ウェブサイトの所有者、プロジェクトマネージャーとともに作業していくには、その作業を記録するシステムが必要です。そうしたチームには確実なワークフローが必要なのです」とローゼン氏は語った。

企業は、高性能ホスティング、CDN、およびウェブサイトをホストするための重要な要素に加え、そうしたワークフローを提供してくれる信用のおけるSaaSプラットフォームを探しているとローゼン氏はいう。「チームはそうしたことを考えるのをやめたいと望んでいます。彼らが必要としているのはパートナーであり、Stripe、Twilio、SalesforceといったSaaSアプリケーションです。彼らはそれらを機能させることを望んでいるのであり、そのために気持ちを煩わせることは望んでいません。ですから、それを管理してくれるサービスがあれば、チームが関心を持っている結果を促進する物事に力を注ぐことができます」。

画像クレジット:Pantheon 

SoftBank Vision Fundの投資先にはByteDance、Perch、Redis Labs、Slack、Arm(そして悪名高いWeWork)などがある。そうしたSoftBank Vision Fundからの資金調達について、ローゼン氏はPantheonには、投資元についていくつか選択肢があったのだが、最終的にSoftBankのチームが「このカテゴリーの有力な信奉者」であり、Pantheon がWebOpsカテゴリーを明確なものにしていくにあたり必要な規模に到達するのを、SoftBankがサポート可能であると判明したのだと述べた。

SoftBank Investment AdvisersのパートナーであるVikasParekh(ビカス・パレック)氏は次のように述べている。「デジタルトランスフォーメーションが重要なビジネスインフラのクラウドへの移行を加速しました。私たちは、Pantheonの一流のプラットフォームが、SaaSサービスを通しワークフローと自力での作業を自動化することによって、最新のウェブサイトエクスペリエンスがどのように生み出されるか、その方法を変革していっていると確信しています。私たちはローゼン氏およびPantheonチームと提携して、同社の志をサポートするのをとてもエキサイティングなことだと感じています。Pantheonは、企業が結果を生み出すウェブサイトを構築するための新たな、そしてより優れた方法を提供することを目指しているのです」。

画像クレジット:Pantheon

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(文:Frederic Lardinois、翻訳:Dragonfly)

【コラム】ネットワーク効果とは本質的に反競争的なものである

Appleは、アプリ開発者に対し、App Storeを通さずに直接消費者にアプリを販売することを制限する規則を課している。米国連邦判事は先に、この規則を無効とした。

このニュースを受け、Appleの株価は3%下落した。これは、中小規模のアプリ開発者にとって、顧客に直接使用料を請求できる関係を構築できることを意味するため、朗報である。しかしAppleはこの分野を支配するビックテックの1つに過ぎない。

関連記事:アップルのApp Store外での決済方法への誘導ブロックが禁止に、Epic Gamesとの裁判で

Amazon、Facebook、Grubhubといったテックジャイアントは、リセラーに厳格な利用規約を適用して服従を強いている。判事によるこの判断がこれらのテックジャイアントにどういった影響を及ぼすかのほうが、Appleと中小規模のアプリ開発業者との小競り合いより大きな問題である。Appleとアプリ開発業者の戦いは、より規模の大きい戦いの中の小さな争いに過ぎない。

アプリ開発業者はAppleのApp Storeでアプリを売るごとに最大30%を支払う。Amazonのリセラーの場合は、毎月のサブスクリプション料金の他に、8%から15%の販売手数料、出荷手数料、その他の雑費を支払っている。またGrubhubはレストランに対し、注文ごとに15%、クレジットカード決済費、注文処理費、そして10%の配達手数料を課している。

アプリ開発業者と同じく、オンラインリセラーやソーシャルメディアのインフルエンサーはすべて「よその誰かが所有するプラットフォームを利用して、健全なマージンを稼げる持続可能なビジネスを構築できる」という大きな嘘にだまされている。実際には、市場を独占するApp Store、オンラインマーケットプレイス、ソーシャルネットワークがユーザーを一方的に排除したり搾取する力を持っているのが現実で、人々はこれに対してどうすることもできないでいる。

App Store内、マーケットプレイスのリセラー、ソーシャルメディアのインフルエンサーの間には、健全な競争が存在している。しかし、本当の問題は、ソーシャルネットワークやオンラインマーケットプレイスプロバイダー自体であるということを誰も正視していないように思われる。ある意味で、彼らは自らの領域を完全に支配するデジタル独裁者のようになっている。

これは、自分たちの業界に届けられる新しいオンラインサービスに興奮している中小企業が認識しておくべきことである。というのも、そうしたサービスが、安定したビジネスを育てる自らの能力に直接的な影響を及ぼすからである。連邦判事のこの度の決定は、デジタルビジネスにおける本当の目標とは、エンドユーザーと直接的な関係を築くことである、ということを示唆しているのだ。

インターネット上ではUber、Airbnb、Udemyといったデジタルマーケットプレイス運営者が囲い込んだ庭の外で、馬を水辺につれて行き、さらに水を飲ませることができ企業こそが、本当の競争力を持った企業なのである。コンテンツや電子商取引においてほとんどの中小企業が認識していないのはこの点である。自らが所有するウェブサイトやメディアだけが他からの拘束を受けずにエンドユーザーに直接製品を販売することのできる自由な場なのだ。

AppleのApp Storeを利用するモバイルアプリ開発業者、Amazonのリセラー、Instagram、YouTube、TikTokにコンテンツを投稿する意欲的なクリエイターたちは、みなデジタル界の巨人の絶対的な管理下にある。デジタル界の巨人は絶対的権力に裏打ちされた独自のルールで欲しいままにその領域を支配しているのだ。

オンラインマーケットプレイスやソーシャルネットワークを利用することと引き換えに、私たちは不当な扱いを受けている。私たちはいわばデジタルな世界でテックジャイアントの畑を耕す小作人のようである。Amazonのリセラーは粗利益の一部を上限を設けずに搾取する地主と収穫を分割することを余儀なくされている。TikTokの熱心なフォロワーは、TikTokが囲い込むことになる視聴者の増員に結びつく。

これらのテックジャイアント(彼らはすべてもともとは、一からユーザーを増やしたスタートアップだった)は今や自由にそして恣意的に抑圧的な規則を押し付け実施する。テックジャイアント は、小さなスタートアップに対し、ユーザーのメールアドレスをリクエストすることさえ禁じているし、都合が悪ければ彼らをプラットフォームから排除することもある。しかしSpotifyやNew York Timesが同様に振る舞えばどうなるかを考えるべきである。両者とも判決が出される前から、すでに直接的な販売とApp Storeを通した販売を行っていた。

これをどのようにみれば競争的といえるだろうか?この判決が出て以降も、ビックテックは依然として誰が利用規約に違反したか、プラットフォームから誰を削除するかを判断する役割を担っている。これは彼らのユーザーだけのことではない。これは彼らの宇宙、彼らの支配、彼らの規則、彼らによる規則の執行なのである。

1948年の米国対パラマウント・ピクチャーズの訴訟では、最高裁判所は、映画スタジオは、どの映画を上演するかを排他的に決定することができるため、自ら映画館を所有することはできないという判決を下した。パラマウント・ピクチャーズがどの映画を上映するかをコントロールすることで競争を抑圧したために、最高裁がそれを禁じたというわけだ。

今日、ソーシャルネットワークはプラットフォームでエンドユーザーが視聴する内容をコントロールし、ボタンを押すだけで、誰でもいつでも、自由に締め出すことができる。資本主義にインターネットが突きつけている大きな課題は、ネットワーク効果が本質的に反競争的であるということだ。テックジャイアントという勝者がすべてを支配する市場は、自由市場経済というよりは国家による管理経済を彷彿とさせる。

私達はウェブのおかげで、ものを売り買いするための世界規模のマーケットプレイスへアクセスすることができる。その一方で、競争力のあるウェブサイトを立ち上げるための知識やリソースを持っていないために大半の人がビジネスに利用するサービスを、少数の主要プロバイダーがコントロールしている。利用者は独自のドメインと優れた検索ビジビリティを持たない限り、実質的な保護なくプラットフォームから排除され、エンドユーザーや視聴者へのアクセスを失う危険に常にさらされているのである。

ネットワーク効果とは、あるオンラインマーケットプレイスが支配的になると、よい取引をするためにみなが支配的なサービスに引き寄せられ、他の競合するマーケットを無力化してしまう状態をいう。勝者がすべてを手にするテック企業のゴールと自由市場のゴールとの間にはそもそも本質的な対立があるのである。

支配的なオンラインマーケットプレイスにおいては、競争は、そのユーザー同士の間にのみ存在する。一方、マーケットプレイスプロバイダーが責任を問われることがない。彼らが利用規約を監視するのに不完全なAIや海外の請負業者を使うことを決定したところで、ユーザーがこれに抗う実質的な方法はない。約6万人しか社員がいないFacebookがどうやって30億人近いユーザーを適切に管理できるというのだろう?私達が目にしてきたように、それは不可能である。

アプリ開発業者、オンラインレセラー、クリエイターにとって唯一の賢い選択肢は、オープンウェブ上のオープンソースである。テックジャイアントのエンドユーザー(またはソフトウェア)に依存するのではなく、WordPressあるいはDiscordといったソフトウェアにより駆動される自分自身のオンライン領域を持てば、創設者が自社を上場したからといって、または貪欲な投資銀行がそのプラットフォームを買収したからといって、絞り上げられるのではないかと心配する必要がなくなるのだ。そうして初めて自らの利鞘を守ることができるのであり、利用規約も実質的な有効性を持つものになるだろう。

政治的な意味合いはさておき、Donald Trump(ドナルド・トランプ)前大統領がプラットフォームから追放された際に私たちが目にしたように、FacebookやTwitterの利用を禁止されてしまうと、実質上どこへも行き場がない。彼らがあなたを追放すると決定したなら、それまでである。共和党が上院の多数派でなくなったのと同じ日にトランプ前大統領がFacebookとTwitterのアカウントを失ったのは偶然ではない。共和党が上院の多数派に返り咲いたら、トランプ前大統領はソーシャルメディアのアカウントを取り戻すだろう。ソーシャルネットワークは、立法府の多数派に譲歩することよって規制当局の矛先をうまく回避しているのだ。

従って、新たに導入されたアマゾンインフルエンサープログラムにそんなに興奮しないことだ。持続可能なデジタルビジネスを築き上げたいなら、手数料を取らないソフトウェアによって自分自身のメディアプレゼンスを確立する必要があるし、顧客の連絡先情報へアクセスできること、またアルゴリズムの調整に影響を受けない顧客を持つことが大切なのである。

編集部注:本稿の執筆者Eric Schwartzman(エリック・シュワルツマン)氏は、個人や組織のデジタルマーケティングへの移行を支援するための体系的なプログラムを有するデジタルマーケティングコンサルタントで「The Digital Pivot:Secrets of Online Marketing」著者。

画像クレジット:skegbydave / Getty Images

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(文:Eric Schwartzman、翻訳:Dragonfly)

Unagiの新スクーターは音声経路案内やGPS機能付き、約27万円から

Unagi Scooters(ウナギスクーターズ)は、初のスマートスクーターとうたうModel Elevenを発表した。音声で流れる経路案内、リモートキル(遠隔オフ)、そして高度運転支援システム(ADAS)センサーなど多くの興味深い機能を搭載している。

ビルトインのBluetoothスピーカーを使って音楽やポッドキャストを流したり、目的地にたどり着くのにターンバイターンの経路案内を聴いたりすることができる。Unagiは自社のiOSとAndroidのアプリにナビゲーション機能を持ってくるのにGoogleと協業した。行き先を選んでからスマホをしまうと、オーディオシステムから経路案内の音声が流れ、ディスプレイに方向指示のシグナルが表示される。

セキュリティ面では、盗難を予防するためのモーションセンサーアラーム、そしてGPSトラッキングがある。盗難されたスクーターをアプリで遠隔から使えなくすることもできる。

おそらく、Model Elevenの最も目を引く機能は、高価格バージョンにある高度運転支援システムセンサーだ。スクーターは人、停止サイン、停止ライト、車両、その他の物体の違いを見分けることができる、とUnagiは話す。オーディオシステムとタッチスクリーンディスプレイを通じて潜在的な衝突も警告する。

UnagiはModel Elevenを開発するのに工業デザイナーYves Béhar(イヴ・べアール)氏の協力を仰いだ。カーボンファイバーを使用しているおかげで、このモデルは市販されているものの中で最も軽量のフルサスペンションスクーターだと同社は話す。折り畳み式のこのスクーターは、同社の既存のデュアルモーターシステム、交換可能なバッテリーシステム、そして必要な時に簡単に交換できる、同社がいうパンクしないタイヤを搭載している。

スタンダードのModel Elevenの価格は2440ドル(約27万円)。高度運転支援システムのモデルは2860ドル(約31万7000円)だ。UnagiはまずIndiegogoキャンペーンでプレオーダーを受け付けるが、Best Buyのようなところも現在Unagiのスクーターを販売していて、Model Elevenが今後そうした小売店で扱われたとしても驚きではない。

編集部注:本稿の初出はEngadget。執筆者のKris HoltはEngadgetの寄稿者。

画像クレジット:Unagi Scooters

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(文:Kris Holt、翻訳:Nariko Mizoguchi

埋め込みエンジニアがハードウェア部品と簡単に繋がるためのAPIを作る「Luos」

今週TechCrunch Disruptのスタートアップ・バトルフィールドに参加しているLuos(ルオス)は、埋め込みハードウェア(embedded hardware)デベロッパーがモーター、センサーなどさまざまなハードウェア部品と簡単につながり、再利用可能な設定プロファイルを作ることで、ソフトウェア・エンジニアがマイクロサービスで得ているのと同様の柔軟性をもてるようにすることを目標にしている。

LuosのCEO・共同ファウンダー、Nicolas Rabault(ニコラ・ラボー)氏は、元埋め込みハードウェア・エンジニアとして、自分たちが歴史的に行ってきたやり方を簡易化するソリューションを作りたいと考えた。「Luosのアイデアは、埋め込みシステム・エンジニアがほかの人も簡単に再利用できるものを作れるようにして、毎回全部作り直すのではなく、既存のプロファイルを組み合わせるだけでよい方法を提供することです」とラボー氏が私に話した。

このアプローチのひらめきは、マイクロサービスの世界から得たと彼は言う。「私たちのテクノロジーはウェブ世界のマイクロサービスに基づいて作りました。マイクロサービスはウェブ・デベロッパーに、世界中の誰もがどこででも使える再利用可能なソフトウェア部品を作れるようにしているからです」と彼は言った。

「Luosはあらるゆる部品(ボタン、モーター、バッテリー、カメラ、Wi-Fiなど)の標準APIを公開することで、だれもが追加の開発をすることなくこれらのサービスを利用できるようにして、デベロッパーはポータブルで再利用可能なbehavior code(行動コード)[私たちはプロファイルと呼んでいます]を作ることができます」。つまり、バッテリー・プロファイルやモーター・プロファイルを一度作れば、どのメーカーが作ったどんなタイプのバッテリーやモーターにも適用できる。

この機能をあらゆる埋め込みハードウェア・エンジニアの元に届けるために、会社はオープンソース・ライブラリを作って、デベロッパーがさまざまなジェネリック・プロファイルを作れるようにした。初めにこのスタートアップは、モーターなどのよく使われるプロファイルをいくつか種として登録し、埋め込みデベロッパーはこのオープンソース・フレームワークをダウンロードして、いつでも自分のバージョンを作り、それをまたコミュニティーでシェアすることができる。

このフレームワークを作るために、エンジニアはボード上の各コンポーネントのためにカスタム・コードを書くのが普通で、それは時間のかかる面倒な作業だ。Luosのソリューションは、その複雑さを大部分取り除き、共通プロファイルを作ることでボード上のさまざまなパーツとつなぐ共通の方法を提供する。

プロファイルをシェアするためのマーケットプレイスや中央ライブラリはまだないが、系統的にシェアする方法ができたらそういう場を作る計画だ。現在同社は、コンサルタントやサポート役として、企業が開発ライブラリを使ったりプロファイルを開発したりするのをサブスクリプション・モデルを通じて支援することで収益を得ている。

Luosは、埋め込みエンジニアが出荷済みボード上の問題を解決するために、モーターなど特定の部品に何が起こったかをリモートで把握して修理を手配するためのSaaS(サービスとしてのソフトウェア)ツールの開発にも取り組んでいる。これが完成すれば新たな収益源が加わる。

ラボー氏は2名の共同ファウンダーと共に、2018年にスタートアップを設立したが、アイデアのルーツは14年前、ラボー氏がまだ学生だった頃に遡る。彼はキャリアのすべてを直接的間接的にこの問題に捧げてきたので、会社を始めた時には、このようなソリューションを実装するのに十分なほどテクノロジーは成熟していた、と話した。

現在従業員はファウンダー3名を含む12名で、今後はこの種の企業で重要な役割となるコミュニティ管理やユーザー体験の担当者を雇、さらには埋め込みシステムエンジニアも追加する計画だ。同氏は、多様な会社を作りたいと考えていて、現在はフランス在住の社員しかいないが、リモートワークの会社でどこに住む人でも受け入れているので、会社の発展とともに多様性を高められる可能性がある。

フランスのボルドーを拠点とするこのスタートアップ、これまでにシード資金140万ドルを調達している。この初期資金の主な目標は、ターゲットである埋め込みシステム・エンジニアの間で会社がやっていることを広めることだ。

本誌のバトルフィールドに参加することで彼らのミッションが強化されることは間違いないが、さらにファウンダーたちは、会社をユーザー、顧客、投資家たちに売り込み、米国の聴衆に自分たちを紹介するための実践的アドバイスを得た。ここ米国は、拠点であるヨーロッパよりもエンジニアがこの種の新しいツールを実験することに前向きだとラボー氏は信じている。バトルフィールドはそういう聴衆と出会う重要な場だと彼は考えている。

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(文:Ron Miller、翻訳:Nob Takahashi / facebook

CameoがセレブとビデオチャットできるサービスCameo Callsの提供を開始

もしあなたが本当に今夜、昔のアメリカン・アイドルで有名になったWilliam Hung(ウィリアム・ハン)氏とビデオチャットしたいなら、20ドル(約2200円)払ってもいいと思うかもしれない? Cameo(カメオ)は9月16日、新プロダクトCameo Callsの展開を開始した。ファンがお気に入りのインフルエンサーやセレブと1対1で最大15分チャットできるというものだ。チャットリクエストを受ける側のタレントがチャット時間や日時、価格を決める。平均価格は約31ドル(約3400円)だとCameoは話す。

ビデオチャットを予約するにあたって、ユーザーはCameoのウェブサイトかアプリで購入可能なCameo Callのスケジュールをチェックできる。こうしたスケジュールは各タレントのCameoページにも表示される。Cameo Callを購入すると、コールに入るのにアプリで入力するチケットコードが発行される。

ロックダウンが世界に広がったことを受け、Cameoは2020年6月にユーザーがセレブとのZoomコールを予約できるようにしたが、4月にその機能を停止した。その代わりいま、サードパーティのソフトウェアに頼るのではなく、Cameo Callsがアプリでネイティブ・エクスペリエンスを提供している。しかし消費者にとっての欠点は、お気に入りのリアリティ番組のスターを自分のオフィスのZoomハッパーアワーに招待しづらくなっていること。しかしメリットは、Cameo Callsではコールの最後に写真撮影があることだ。なので、写真を撮ってもらえないかとおずおずと依頼しなくてもセレブとのセルフィーを入手できる。

Cameo Callsのようなエクスペリエンスは、セレブとの交流会イベントが多くのところで安全ではないかもしれない新型コロナパンデミックの状況を考えると、理にかなっている。しかしこのプロダクトは「日常」時においても典型的な交流会の代わりになるとCameoは考えている。往々にしてセレブとの交流会は、長い列に並んだ末に直接交流できるのは5秒か10秒だけというものだ。多くのCameo Callsセッションが数分ほどの長さだが、実際の列で並んで100番目である場合以上にファンはより個人的なエクスペリエンスを得ることができるかもしれない。

「Cameo Callsが音楽フェスティバルや世界ツアー、ファン集会、スポーツイベントなどでの交流会に取って代わると予想しています」とCameoの共同創業者でCEOのSteven Galanis(スティーブン・ガラニス)氏は述べた。

同社はこのプロダクトを、タレントがホストするテーマが決められた交流会、コーヒーを飲みながらのチャット、プライベートコンサート、タロットカード占いなど、コール3000件でテストした、と話す。この機能をテストしたパフォーマーには、映画「ハリーポッター」でウィーズリー家の双子を演じたJames and Oliver Phelps(ジェームズ&オリバー・エルプス)氏、ディズニーチャンネルの元スターDavid Henrie(デイビッド・ヘンリ)氏などがいる。

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画像クレジット: Cameo

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(文:Amanda Silberling、翻訳:Nariko Mizoguchi

テスラが規制当局の監視下にある中国でイーロン・マスク氏は同国自動車メーカーを称賛

中国で開催されたWorld New Energy Vehicle Congress(WNEVC)に事前収録で参加したElon Musk(イーロン・マスク)氏は、珍しく原稿どおりのスピーチの中で、中国の自動車メーカーに対して融和的かつ賛辞的なコメントを述べ、米国での発言スタイルとは一線を画した態度を取った。

「中国の多くの自動車メーカーがこのような(EVやAV)技術を牽引していることに大きな敬意を表します」と、後ろの窓にリングライトが映り込んでいる部屋から同氏は語った。もしかしたらクライシスコミュニケーションの専門家がフレームの外にいて、彼に準備した発言を続けるように促しているのではないかと疑ってしまいそうな光景だった。

しかし、おそらくマスク氏に外からの働きかけは必要ないだろう。中国は電気自動車においては世界で最も収益性の高い市場の1つであり、2020年のTesla(テスラ)の売上高全体の約5分の1(66億6000万ドル、約7321億円)を占めている(規制当局への提出書類による)。

米国は引き続きTeslaの最大の市場のひとつだが、同社は2019年に上海ギガファクトリーを開設して「Model 3(モデル3)」と「Model Y(モデルY)」を製造するなど、中国での事業拡大を積極的に進めている。Teslaは、EVスタートアップ企業であるXpengXpeng(シャオペン、小鵬汽車)や、検索大手企業のBaidu(バイドゥ、百度)など、中国の自動車メーカーとの競争に直面している。

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「私の率直な見解は、中国の自動車メーカーは世界で最も競争力があるということです。ソフトウェアを得意とする企業が揃っており、設計から製造、そして特に自律走行まで、自動車産業の未来を最も形作るのはソフトウェアです」とマスク氏はメッセージの中で述べた。

世界で最も人口の多い国のEV市場への参入は最初は波乱含みだったが、Teslaはそれを好転させることに成功した。2020年、Tesla Model 3は中国で最も売れたEVとなった。また、Teslaは中国以外の自動車メーカーで唯一、現地法人の完全所有を認められており、同国では前例のない自治権を得ている。それは、マスク氏が過去に公の場で指摘した事実だ。

2020年のBattery Dayイベントで、マスク氏はこう述べていた。「中国に100%自社工場を持つ唯一の外資系メーカーであることは、非常に注目に値すると思います。このことはあまりよく理解されず、評価もされないことが多いのですが、中国に唯一の100%出資の外資系工場を持つことは本当に大きな意味があり、それが多大な利益をもたらしているのです」。

そうは言っても、すべてがバラ色というわけではない。2021年に入ってからは、消費者と規制当局の両方から否定的な報道が相次ぎ、2月には中国政府当局が車両の安全性に関する懸念から同社の幹部を召喚して会議を開いたこともあった(これに対してテスラは「政府部門の指導を真摯に受け止め、事業運営上の欠点を深く反省している」と述べた)。

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その後、4月に開催された上海モーターショーで、Tesla車のオーナーだという女性が同社に抗議する事件が起きた。Bloombergはその数ヵ月後、Teslaがさまざまな悪いPRと闘うために、中国のソーシャルメディアのインフルエンサーや自動車業界の出版物と関係を築こうとしていると報じた。

また、マスク氏はこの事前に録画された挨拶の中で、自動運転車とデータセキュリティに関する質問に答え、それは「一企業の責任だけでなく、業界全体の発展の礎となるもの」だと述べた。この問題は、中国軍がその施設にTesla車を駐車することをドライバーに禁止したというニュースが出た後、特にセンシティブな話題となっている。Tech Wire Asiaが報じたところによると、中国は8月、コネクテッドカーにおけるデータセキュリティの強化を目的とした新しい規制を発表した。Teslaをはじめ、Ford(フォード)やBMWなどの自動車メーカーは、中国国内に現地データストレージセンターを設立する動きを見せた。

「Teslaは、インテリジェントなコネクテッドカーのデータセキュリティを確保するために、すべての国の国家当局と協力していきます」と同氏は付け加えた。

画像クレジット:JayInShanghai

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Aya Nakazato)

今週の記事ランキング(2021.9.12〜9.16)

今週もTechCrunch Japanで最もよく読まれた5つの記事を紹介しよう。今週の1位は、「アマゾンがようやくKindleソフトウェアを大幅にアップデート、より読書しやすいデザインに」というニュースだ。他のランキングについても振り返ってみよう。

iPhone 13 ProとPro Maxは120Hz画面、3倍光学ズームを加えた3眼カメラでより「Pro」に

Apple(アップル)は米国時間9月14日に行われたバーチャル発表会で、新しい携帯電話のラインナップを発表した。「iPhone 13」と「iPhone 13 mini」に加えて、同社は通常のiPhone 13にはないプレミアムな機能を搭載したProモデルを2機種リリースする。

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もちろん、Proモデルのほうが価格も高い。参考までに、 iPhone 13 Miniは699ドル(日本では税込8万6800円)から、iPhone 13は799ドル(日本では税込9万8800円)からとなっている。Proモデルについては、iPhone 13 Proが999ドル(日本では税込12万2800円)から、iPhone 13 Pro Maxが1099ドル(日本では税込13万4800円)からという価格設定。iPhone 13 Proは6.1インチ、iPhone 13 Pro Maxは6.7インチのディスプレイを搭載している。

AppleのあるTim Cook(ティム・クック)CEOはこう述べた。「当社のProラインナップは、最高のiPhoneを求めるユーザーのために、当社の最も先進的なテクノロジーで限界に挑戦します」。

iPhone 13の代わりにiPhone 13 Proを購入することにした場合、得られるものは以下の通りだ。Proモデルでは、iPhoneのケースの周りに光沢のあるステンレススチールバンドが付くため、デザインが若干異なる。3つのカメラセンサーの周りにも、ステンレス製のリングがある。背面にはマットガラスを採用している。

iPhone 13 ProおよびPro Maxの背面には、2つではなく3つの異なるカメラセンサーが搭載されている。超広角カメラと広角カメラに加えて、3倍ズーム望遠カメラが搭載される。Proモデルと通常モデルでは、広角・超広角カメラも異なるようだ。

2020年は、iPhone 12 Pro Maxだけがセンサーシフト光学式手ブレ補正を搭載していた。今回は、iPhone 13の全ラインナップにセンサーシフト光学式手ぶれ補正が搭載されている。基本的に、通常のiPhone 13に、従来はProモデルに限定されていた先進的なカメラ機能の多くが搭載されることになる。

特に、ラックフォーカスによるシネマティックモードが新たに搭載される。被写体を追跡し、リアルタイムで焦点をその被写体にロックすることができる。シネマティックモードはDolby Vision HDRで撮影される。2021年後半には、iPhone 13 ProおよびPro MaxでProResビデオを撮影できるようになる。

iPhone 13と13 Pro Maxに搭載される機能はこちら。

  • 光学3倍ズームの77mm望遠カメラ
  • ƒ/1.8絞り値の超広角カメラで「低照度でのパフォーマンスが最大92%向上」(アップルによる)
  • ƒ/1.5絞り値の広角カメラでは「低照度でのパフォーマンスが最大2.2倍向上」(アップルによる)

今回初めて、3つのカメラすべてでナイトモードが使えるようになった。これにより、どのカメラが最適な結果をもたらすか覚えておく必要はなくなった。

画像クレジット:Apple

iPhone 13 ProおよびPro Maxには、P3色域を持つPro Motionディスプレイが搭載されている。iPadの上位モデルと同様、これらのiPhoneモデルにも可変リフレッシュレートが搭載されている。必要に応じ、iPhoneのディスプレイは最大120Hzまで対応する。映画を見ているときなどは、バッテリーを節約するためにより低いフレームレートを使うこともできる。

iPhone 13 Maxはラインナップの中で最大のサイズであることから、バッテリー駆動時間も長くなる。Appleは、iPhone 12 Pro Maxと比較して、iPhone 13 Pro Maxでは2.5時間長くバッテリーが持続すると約束している。

iPhone 13と13 Miniと同様に、ProモデルにもAppleの新チップ「A15 Bionic」が搭載されている。これは5mmのデザインで、150億個のトランジスタを搭載している、2つの高性能コアと4つの高効率コアを搭載した6コアCPUだ。どのモデルもほぼ同じ性能を発揮するが、Proモデルには新たに5コアのGPUが搭載されている。

米国では9月17日から予約開始され、9月24日に発売される(日本では9月17日21時から予約開始、9月24日に発売開始)。ストレージ容量は128GB、256GB、512GB、1TBの4種のモデルから選べる。

画像クレジット:Apple

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(文:Romain Dillet、翻訳:Aya Nakazato)

Facebookがレイバンと共同でスマートサングラス「Ray-Ban Stories」発売、約3.3万円から

Facebook(フェイスブック)は米国時間9月9日朝、待望のスマートグラス分野への進出を発表し、アイウェア大手の仏EssilorLuxottica(エシロール・ルクソティカ)と提携したスマートグラス「Ray-Ban Stories(レイバン・ストーリーズ)」を発売した。

このスマートグラスは、一般消費者向けに販売されている製品の中では最も薄型のものの1つで、ユーザーは、搭載された2つの5MPカメラで写真やビデオを撮ったり、フレーム内のスピーカーで音楽を聴いたり、電話を受けたりできる。完全な機能を利用するにはiOSまたはAndroidデバイスに接続する必要があるが、ユーザーは数百枚の写真や数十本のビデオを撮影してスマートグラスに保存し、その後にメディアをFacebookの新しいアプリ「View」を使って携帯電話に転送できる。このツインカメラにより、ユーザーはアプリにアップロードした画像やビデオに3D効果を加えることができる。

この軽量なフレームには革製のハードシェル型充電ケースが付属しており、重さは50g以下だ。バッテリー駆動時間は「丸1日」とされているが、TechCrunchがこのフレームをレビューした結果、その通りだった。

ユーザーは、写真やビデオを撮影するための「キャプチャー」ボタンやオンオフスイッチなど、いくつかの物理的なボタンでフレームを操作することができる。また、右テンプルのタッチパッドでは、スワイプによる音量調整や電話への応答などの操作を行える。また、搭載されている白色LEDが光ることで、周囲の人に動画の撮影中であることを知らせる。

なお、このメガネは防水・防滴仕様ではない。

FacebookのスマートなRay-Ban Storiesと、私のクラシックなRay-Ban 2140 Wayfarersを並べてみた(画像クレジット:Lucas Matney)

Ray-Ban(レイバン)の3つの定番スタイルから選べるこのスマートサングラスは、多くのカラーとレンズの組み合わせがある。Ray-Ban Storiesは、処方箋レンズにも対応している。価格は299ドル(約3万3000円)からで、偏光レンズと調光レンズのオプションは、より高い価格帯となる。

ちなみにこのスマートグラスには、競合するSnap(スナップ)の最新のSpectaclesプロトタイプのような、デジタルARコンテンツを見ることができるレンズ内ディスプレイは搭載されていない。

関連記事:SnapがARグラス「Spectacles」の新世代バージョンを発表

2020年9月に開催されたAR・VRに特化した開発者会議で、Ray-Banとのパートナーシップと製品に関する初期の詳細を発表したFacebookにとって、今回の発表は大きな意味を持つ。同社は、このデバイスが同社のARの野望のための足がかりであり、世のユーザーにハイテクメガネのアイデアを知ってもらうための取り組みであることを示唆していた。

Mark Zuckerberg(マーク・ザッカーバーグ)CEOは製品の発表ビデオでこう語った。「Ray-Ban Storiesは、電話が生活の中心ではなくなり、デバイスと対話するか、周りの世界と対話するかを選択する必要がなくなる未来に向けた重要なステップです」。

画像クレジット:Lucas Matney

編集部注:北米とオーストラリア、英国など欧州の3カ国で当初リリース。日本での発売時期は今のところ未定。

関連記事:フェイスブックの次期新製品は待望の「レイバン・スマートグラス」

画像クレジット:Lucas Matney / TechCrunch

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(文:Lucas Matney、翻訳:Aya Nakazato)

17歳で開発、ディズニーも使うベクターデザインツール「Vectornator」が約22億円調達

企業が自社の問題を解決するためにツールを開発し、そのツールの方が実は今やっている事業よりも価値があることに気づく、というのはテック業界では昔からある話だ。Linearityは同じような状況から生まれた。17歳だった創業者のVladimir Danila(ウラジーミル・ダニラ)氏は、2017年にベクターデザインをより簡単にするために「Vectornator」ツールを考え出した。今ではApple(アップル)、Disney(ディズニー)、Wacom(ワコム)、そしてMicrosoft(マイクロソフト)でも使われている。Disney(ディズニー)は実際、ディズニーランドのホテルのアートワークを作るのにVectornatorを使っている。

このベクターに特化したプラットフォームはこのたび、EQT Venturesと468 Capitalが共同で主導したラウンドで2000万ドル(約22億円)の資金を調達した。また、Google(グーグル)の製品担当VPであるBradley Horowitz(ブラッドリー・ホロウィッツ)氏、Google ドライブ・ドキュメント・スプレッドシート・プレゼンテーションの共同創業者であるJonathan Rochelle(ジョナサン・ロシェル)氏、元Microsoftのコーポレート・ストラテジー部門責任者Charles Songhurst(チャールズ・ソンガースト)氏、GoogleのグループプロダクトマネジャーLutz Finger(ルッツ・フィンガー)氏といったエンジェル投資家も参加している。

今回の資金調達は、同社のモバイルファーストの製品であるVectornatorをさらに発展させ、AIを活用した自動化やコラボレーション機能の追加、新製品の開発、米国や欧州、アジアでの事業拡大などに充てられるという。

Linearityの創業者兼CEOであるダニラ氏は次のように述べている。「10年以上前に私が10歳でデザインを始めたころは、ツールはどれも使いにくく、取っつきにくいものでした。ベクターがピクセルよりも重要性を増してきており、写真以外のあらゆる面で優れていることから、すぐにその問題を解決する独自のツール群を作りたいと思いました。Vectornatorは、カスタマーエクスペリエンス、シンプルさ、そしてソフトウェアを複雑にしすぎないことを重視しています。テッド(・パーション)やチームと一緒に仕事をすることで、知識や市場への理解を深め、当社のプラットフォームの成長に貢献できることをうれしく思います」。

EQT VenturesのパートナーであるTed Persson(テッド・パーション)氏は次のようにコメントしている。「私にとって、Linearityチームと手を組むことには2つの明確な側面がありました。ウラジーミル(・ダニラ)は非常に明晰な創業者であり、彼は優れた製品を作り上げたということです。デザインツールは作るのが最も難しいツールの1つですが、ウラジーミルと彼のチームは何でも可能であることを示してくれました」。

デザインツールに対する投資家の関心は、現在150億ドル(約1兆6457億円)の評価を受けているCanvaの成功以来、爆発的に高まっている。

画像クレジット:Vladimir Danila

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(文:Mike Butcher、翻訳:Aya Nakazato)

不動産テックのHomeLightが収益急増に伴い110億円のシリーズDをクローズ

不動産テックプラットフォームを運営するHomeLight(ホームライト)は9月2日、シリーズDラウンドで1億ドル(約110億円)の資金を確保し、2億6300万ドル(約289億円)を負債で調達したと発表した。

今回のエクイティラウンドでは、リターンを提供したZeev Venturesがリードし、Group 11、Stereo Capital、Menlo Ventures、SoftBank Vision Fund(ソフトバンク・ビジョン・ファンド)のLydia Jett(リディア・ジェット)氏が参加した。今回の資金調達により、サンフランシスコを拠点とするHomeLightは、2012年の創業以来の累計調達額が5億3000万ドル(約583億円)に達した。今回のエクイティファイナンスにより、HomeLightのバリュエーションは16億ドル(約1760億円)となり、2019年11月に発表したシリーズCで、負債と株式で1億900万ドル(約120億円)を調達した際の約3倍となった。

今回の資金調達を担当したZeev Venturesは、2015年のシリーズAもリードした。

HomeLightの創業者でCEOのDrew Uher(ドリュー・ウーヘル)氏によると、今回の資本は、前年比「3倍」成長を待たずにやってきた。同氏は、2021年に同社の年間収益が3倍の3億ドル(約330億円)以上になると予測している。簡単な計算をしてみれば、同社は2020年に約1億ドル(約110億円)の収益を上げたと推測できる。

他の多くの不動産テックプラットフォームと同様、HomeLightは長年にわたりモデルを進化させてきた。同社の初期の製品は、人工知能を使って消費者や不動産投資家をエージェントとマッチングさせることに重きを置いていた。以降、同社はエージェントや住宅販売者へのタイトル・アンド・エスクローサービス(不動産の権利関係の調査や名義書換などを行うサービス)の提供や、販売者とiBuyersのマッチングにまで進出した。2019年7月、同社はEaveを買収し、ますます混み合う住宅ローン融資の分野に参入した。

「私たちの目標は、家を売買するプロセスからできる限りの摩擦を取り除くことです」とウーヘル氏は述べた。

HomeLightは2020年1月、同社の旗艦金融商品となるHomeLight Trade-InとHomeLight Cash Offerを提供し始めた。以降、パンデミックによる後押しもあり、いずれの商品も700%以上成長したとウーヘル氏は話す。

HomeLight Trade-Inは、顧客が引っ越しのスケジュールや取引に関する能力をより自由にコントロールできるようにする。HomeLight Cash Offerは「住宅ローンが必要な場合でも、すべて現金で住宅を購入できる」方法を提供する。

「パンデミックは、当社が創業以来解決しようと力を入れてきた不動産取引プロセスにおける多くの問題点を浮き彫りにしました」とウーヘル氏はTechCrunchに語った。「不動産業界で伝統的な情報の非対称性、時代遅れのプロセス、不合理なコスト、そして足元の記録的な在庫の少なさと史上最高の入札競争は言うまでもなく、世界的なパンデミックによる課題を抜きにしても、家の売買というものは信じられないほど困難を伴うプロセスです」

画像クレジット:HomeLight

そして2020年8月にDisclosures.ioを買収し、HomeLight Listing Managementを立ち上げた。エージェントが物件情報を共有し、買い手の関心をモニターし、オファーの一元管理を容易にすることを目指す。

同社は2021年6月、Lyft(リフト)の会長でTruliaのCFOだったSean Aggarwal(ショーン・アガワル)氏を取締役に任命した。

ウーヘル氏がHomeLightを創業したのは、同氏と妻が、競争の激しいベイエリアの市場で家を買うときに感じた苦痛がきっかけだった。

「サンフランシスコで家を買うプロセスは、壁に頭をぶつけたくなるほどイライラするものでした」とウーヘル氏はHomeLightのシリーズCの際、筆者に話した。「私は、不動産業界には多くの問題があることに気づきました。自分に合った不動産業者を見つけるまでに、何社もの不動産業者を渡り歩きました。だからこそ、見つけたときには、他の買い手と競争して勝ち取る力が湧いてきたのです」

同氏はたった1つの製品でHomeLightを始めた。それはエージェントマッチングプラットフォームだった。「独自の機械学習アルゴリズム」を用いて、何百万もの不動産取引とエージェントのプロファイルを分析するものだ。数百万件の不動産取引とエージェントのプロファイルを分析し、平均で「90秒ごと」に顧客と不動産エージェントを結びつけるという。

ウーヘル氏によると、これまでに何十万ものエージェントがHomeLight社のエージェントネットワークに応募し、米国で100万人以上の住宅購入者および販売者と取引してきた。HomeLightは、不動産業者に取って代わるのではなく、不動産業者と協力して仕事を進めることを目指している。

ウーヘル氏によると、今回の資本は、Trade-In事業およびCash Offer事業を新たな市場に拡大するために使用される予定だ。同社の2つのサービスは、現在、カリフォルニア州、テキサス州、そして最近ではコロラド州でも提供されている。

「できるだけ早く全米に拡大する計画です」とウーヘル氏は語る。「2021年以降も積極的な採用を予定しています」

同社の従業員数は、昨年末の約350人から現在は500人を超えている。現在、アリゾナ州スコッツデール、サンフランシスコ、ニューヨーク、シアトル、タンパにオフィスを構えており、今後数カ月のうちに全米各地に新たな拠点を開設する予定だ。

Zeev Venturesの創業パートナーであるOren Zeev(オレン・ジーブ)氏は、HomeLIghtが他のどの不動産テック企業よりも、エージェントとその顧客の「取引体験を刷新する」という点で優れていると述べた。

「iBuyersの登場や過去10年間に導入されたその他のテクノロジーにより、多くの不動産テック企業はエージェントを取引プロセスから完全に切り離すための製品を開発しています」とジーブ氏はメールで書いた。「HomeLightが競合他社と根本的に異なるのはこの点であり、また優れている点でもあります。彼らは業界に革命を起こすのに最適な位置にいます」。

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画像クレジットIndysystem / Getty Images

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(文:Mary Ann Azevedo、翻訳:Nariko Mizoguchi

顧客体験のリアルタイムデータから企業の進むべき方向を探るClootrack

人の行動や要求は変わるから、顧客の心を知ることは難しい。しかしClootrackは、どうやらこの難題への答えを見つけたようだ。

同社はこのほど、Inventus Capital IndiaがリードするシリーズAのラウンドで400万ドル(約4億4000万円)を調達したことを発表した。これには、既存の投資家であるUnicorn India VenturesとIAN Fund、Salamander Excubator Angel Fund、そして個人の投資家としてJiffy.aiのCEOであるBabu Sivadasan(バブシ・バダサン)氏が参加した。共同創業者のShameel Abdulla(シャミール・アブドゥラ)氏によると、これで同社の総調達額は460万ドル(約5億円)になるという。

Clootrackは、顧客の体験をリアルタイムで分析し、なぜ顧客が定着しているのか、あるいは去ってしまったのかを把握できるようにする。創業者のシャミール・アブドゥラ氏とSubbakrishna Rao(サブバクリシュナ・ラオ)氏はどちらもIT出身だが、2015年に買収されたアブドゥラ氏の2つめの企業であるJiffstoreで数年前に出会い、2017年にClootrackを起こした。

画像クレジット:Clootrack

B2Cや消費者向けのブランドは、ネットプロモータースコア(Net Promoter Score、NPS)といった顧客満足度指数を使って顧客体験を理解しようとすることが多いが、アブドゥラ氏によると、現在の方法では、そうした体験の「why」がわからないし、遅くて費用が高く、しかもエラーが多い。

「チャネルの数が増えているため、現在の顧客は複数の場所でフィードバックを表現し、語っています。しかも今やその言葉の多くがデジタルであるため、調査をする者もオンライン販売の技術をよく理解していなければなりません」。

Clootrackは、ウェブサイトのフィードバックやチャットボットなど、すべてのファーストパーティおよびサードパーティのタッチポイントから得ることができるカスタマーエクスペリエンスデータを、粒度の高い定性的なインサイトに変換する。これによりブランド数カ月後ではなく数時間後に体験の推進要因がわかるようになるため、それらへの対応も早くなり、急速に変化するトレンドの波の頂点に常に立っていられるようになる。

アブドゥラ氏が指摘するデータによると、ブランド乗り換えの最大の要因は、顧客の体験そのものだ。そしてブランド乖離を5%減らすことができれば、利益は25%から最大で95%増加する。

今回得られた資金の多くは、すべての潜在的なタッチポイントからの顧客体験データを集められるように、プロダクトの能力を強化することに投じられる。彼の究極の目標は「B2Cプラットフォームのための唯一のプラットフォーム」になることだ。

現在の同社は、リテールやD2C、銀行、自動車、旅行、モバイルアプリによるサービスなど150社以上の顧客がいる。売上は前年比9倍で伸びている。主な市場はインドだが、米国とヨーロッパにも企業を立ち上げようとしている。

InventusのマネージングディレクターParag Dhol(パラグ・ドール)氏によると、彼はアブドゥラ氏を5年以上前から知っている。かつてアブドゥラ氏の企業に投資しようとしたが、InventusはシリーズAの投資家だったのでやめた。ドール氏によると、米国に比べて相当遅れているため、インドではマーケティングリサーチの改革が必要だという。

「シャミール(・アブドゥラ)は営業の経験が豊富で、連続起業家としても多くを学んでいるためCEOとして完璧だ。そして、サブバクリシュナ(・ラオ)は技術に強い。CMOたちは自分のデータベースにある顧客のレビューなど、非定型データの価値をよく知っているから、リアルタイムのフィードバックに魅力を感じる。だからこの2人は、今後この分野に大きな影響を与えるだろう」とドール氏はいう

画像クレジット:Mykyta Dolmatov/Getty Images

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(文:Christine Hall、翻訳:Hiroshi Iwatani)

【インタビュー】数学者が紐解く偽情報の世界

偽情報に誤報、インフォテイメントにalgowars(アルゴワーズ)。メディアの未来をめぐるここ数十年間の議論に意味があるとすれば、少なくとも言語には刺激的な痕跡を残したということだろう。個人の心理的状態や神経学的な問題から、民主主義社会についてのさまざまな懸念まで、ソーシャルメディアが我々の社会にもたらす影響に関するあらゆる非難と恐怖がここ何年もの間、世間を渦巻いている。最近Joseph Bernstein(ジョセフ・バーンスタイン)氏が語った通り「群衆の知恵」から「偽情報」へのシフトというのは確かに急激なものだったと言えるだろう。

そもそも偽情報とは何なのか。それは存在するのか、存在するとしたらそれはどこにあるのか、どうすればそれが偽情報だとわかるのか。お気に入りのプラットフォームのアルゴリズムが私たちの注意を引きつけようと必死に見せてくる広告に対して我々は警戒すべきなのか?Noah Giansiracusa(ノア・ジアンシラクサ)氏がこのテーマに興味を持ったのは、まさにこのよう入り組んだ数学的および社会科学的な疑問からだった。

ボストンにあるベントレー大学の教授であるジアンシラクサ氏は、代数幾何学などの数学を専門としているが、計算幾何学と最高裁を結びつけるなど、社会的なトピックを数学的なレンズを通して見ることにも興味を持っていた。最近では「How Algorithms Create and Prevent Fake News(アルゴリズムがフェイクニュースを生み、防ぐ仕組み)」という本を出版。著書では今日のメディアをめぐる課題と、テクノロジーがそれらの傾向をどのように悪化させたり改善したりしているかを探求している。

先日筆者はTwitter Spaceでジアンシラクサ氏をお招きしたのだが、何とも儚いTwitterではこのトークを後から簡単に聴くことができないため、読者諸君と後世のためにも会話の中で最も興味深い部分を抜き出してみることにした。

このインタビューはわかりやすくするために編集、短縮されている。

ダニー・クライトン:フェイクニュースを研究し、この本を書こうと思った理由を教えてください。

ノア・ジアンシラクサ:フェイクニュースについては社会学や政治学の分野で非常に興味深い議論がなされています。一方でテック系サイドではMark Zuckerberg(マーク・ザッカーバーグ)氏が「AIがすべての問題を解決してくれる」などと言っています。このギャップを埋めるのは少し難しいのではないかと感じました。

ソーシャルメディア上の誤報について、バイデン大統領が「誤報が人を殺している」と言ったのを耳にしたことがあるでしょう。このように、アルゴリズムの側面を理解するのが難しい政治家たちはこのようなことを話しているのです。一方、コンピューターサイエンスの専門家らは細部にまで精通しています。私は筋金入りのコンピューターサイエンスの専門家ではないので、その中間にいると言えるでしょう。ですから一歩下がって全体像を把握することが私には比較的簡単にできると思っています。

それに何と言っても、物事が混乱していて、数学がそれほどきれいではない社会との相互作用をもっと探究したいと思ったのです。

クライトン:数学のバックグラウンドを持つあなたが、多くの人がさまざまな角度から執筆しているこの難しい分野に足を踏み入れています。この分野では人々は何を正しく理解しているのでしょうか。また、人々が見落としているものとは何でしょうか。

ジアンシラクサ:すばらしいジャーナリズムがたくさんあります。多くのジャーナリストがかなり専門的な内容を扱うことができていることに驚かされました。しかし、おそらく間違っているわけではないのですが、1つだけ気になったことがあります。学術論文が発表されたり、GoogleやFacebookなどのハイテク企業が何かを発表したりするときに、ジャーナリストたちはそれを引用して説明しようとするのですが、実際に本当に見て理解しようとすることを少し恐れているように見えました。その能力がないのではなく、むしろ恐怖を感じているのだと思いました。

私が数学の教師として大いに学んだことですが、人々は間違ったことを言ったり、間違えたりすることをとても恐れています。これは技術的なことを書かなければならないジャーナリストも同じで、間違ったことを言いたくないのです。だからFacebookのプレスリリースを引用したり、専門家の言葉を引用したりする方が簡単なのでしょう。

数学が純粋に楽しく美しい理由の1つは、間違いなどを気にせずアイデアを試してみて、それがどこにつながっていくのかを体験することで、さまざまな相互作用を見ることができるということです。論文を書いたり講演をしたりするときには、詳細をチェックします。しかし数学のほとんどは、アイデアがどのように相互作用するかを見極めながら探求していく、この創造的なプロセスなのです。私は数学者としての訓練を受けてきたので、間違いを犯すことや非常に正確であることを気にかけていると思うかもしれませんが、実はそれはとは逆の効果があるのです。

それから、これらのアルゴリズムの多くは見た目ほど複雑ではありません。私が実際に実行しているわけではありませんし、プログラムを組むのは難しいでしょう。しかし、全体像を見ると最近のアルゴリズムのほとんどはディープラーニングに基づいています。つまりニューラルネットワークがあり、それがどんなアーキテクチャを使っているかは外部の人間として私にはどうでもよく、本当に重要なのは予測因子は何なのかということです。要するにこの機械学習アルゴリズムに与える変数は何か、そして何を出力しようとしているのか?誰にでも理解できることです。

クライトン:アルゴリズムを分析する上での大きな課題の1つは透明性の低さです。問題解決に取り組む学者コミュニティの純粋数学の世界などとは異なり、これらの企業の多くは、データや分析結果を広く社会に提供することについて実際には非常に否定的です。

ジアンシラクサ:外部からでは、推測できることには限界があるように感じます。

YouTubeの推薦アルゴリズムが人々を過激派の陰謀論に送り込むかどうかを学者チームが調べようとしていましたが、これは良い例です。これが非常に難しいのは、推薦アルゴリズムにはディープラーニングが使われており、検索履歴や統計学、視聴した他の動画や視聴時間など、何百もの予測因子に基づいているためです。あなたとあなたの経験に合わせて高度にカスタマイズされているので、私が見つけた研究ではすべてシークレットモードが使用されていました。

検索履歴や情報を一切持たないユーザーが動画にアクセスし、最初におすすめされた動画をクリックし、またその次の動画をクリックする。そのようにしていけばアルゴリズムが人をどこへ連れて行くのかを確認することができるでしょう。しかしこれは履歴のある実際のユーザーとはまったく異なる体験ですし、とても難しいことです。外部からYouTubeのアルゴリズムを探る良い方法は誰も見つけられていないと思います。

正直なところ、私が考える唯一の方法は、大勢のボランティアを募り、その人たちのコンピューターにトラッカーを取り付けて「インターネットを普段通り閲覧して、見ている動画を教えてください」と頼む昔ながらの研究方法です。このように、ほとんどすべてと言っていいほど多くのアルゴリズムが個人のデータに大きく依存しているという事実を乗り越えるというのはとても困難なことです。私たちはまだどのように分析したら良いのか分かっていないのです。

データを持っていないために問題を抱えているのは、私やその他の外部の人間だけではありません。アルゴリズムを構築した企業内の人間も、そのアルゴリズムがどのように機能するのか理論上はわかってはいても、実際にどのように動作するのかまでは知らないのです。まるでフランケンシュタインの怪物のように、作ったはいいがどう動くかわからないわけです。ですから本当の意味でデータを研究するには、そのデータを持っている内部の人間が、時間とリソースを割いて研究するしかないと思います。

クライトン:誤報に対する評価やプラットフォーム上のエンゲージメントの判断には多くの指標が用いられています。あなたの数学的なバックグラウンドからすると、こういった指標は強固なものだと思いますか?

ジアンシラクサ:人々は誤った情報を暴こうとします。しかし、その過程でコメントしたり、リツイートしたり、シェアしたりすることがあり、それもエンゲージメントとしてカウントされます。エンゲージメントの測定では、ポジティブなものをきちんと把握しているのか、それともただすべてのエンゲージメントを見ているのか?すべて1つにまとめられてしまうでしょう。

これは学術研究においても同様です。被引用率は研究がどれだけ成功したものかを示す普遍的な指標です。例えばウェイクフィールドの自閉症とワクチンに関する論文は、まったくインチキなのにも関わらず大量に引用されていました。その多くは本当に正しいと思って引用している人たちですが、その他の多くはこの論文を否定している科学者たちです。しかし引用は引用です。つまり、すべてが成功の指標としてカウントされてしまうのです。

そのためエンゲージメントについても、それと似たようなことが起きているのだと思います。私がコメントに「それ、やばいな」と投稿した場合、アルゴリズムは私がそれを支持しているかどうかをどうやって知ることができるでしょう。AIの言語処理を使って試すこともできるかもしれませんが、そのためには大変な労力が必要です。

クライトン:最後に、GPT-3や合成メディア、フェイクニュースに関する懸念について少しお話したいと思います。AIボットが偽情報でメディアを圧倒するのではないかという懸念がありますが、私たちはどれくらい怖がるべきなのか、または恐れる必要はないのか、あなたの意見を教えてください。

ジアンシラクサ:私の本は体験から生まれたものなので、公平性を保ちながら人々に情報を提供して、彼らが自分で判断できるようにしたいと思いました。そのような議論を省いて、両方の立場の人に話してもらおうと思ったのです。私はニュースフィードのアルゴリズムや認識アルゴリズムは有害なものを増幅させ、社会に悪影響を与えると思います。しかしフェイクニュースを制限するためにアルゴリズムを生産的にうまく使っているすばらしい進歩もたくさんあります。

AIがすべてを解決し、真実を伝えて確認し、誤った情報を検出してそれを取り消すことができるアルゴリズムを手に入れることができるというテクノユートピア主義の人々がいます。わずかな進歩はありますが、そんなものは実現しないでしょうし、完全に成功することもありません。常に人間に頼る必要があるのです。一方で、もう1つの問題は不合理な恐怖心です。アルゴリズムが非常に強力で人間を滅ぼすという、誇張されたAIのディストピアがあります。

2018年にディープフェイクがニュースになり、GPT-3が数年前にリリースされた際「やばい、これではフェイクニュースの問題が深刻化して、何が真実かを理解するのがずっと難しくなってしまう」という恐怖が世間を取り巻きました。しかし数年経った今、多少難しくなったと言えるものの、予想していたほどではありません。主な問題は何よりも心理的、経済的なものなのです。

GPT-3の創造者らはアルゴリズムを紹介した研究論文を発表していますが、その中で、あるテキストを貼り付けて記事へと展開させ、ボランティアに評価してもらいどれがアルゴリズムで生成された記事で、どれが人間が生成した記事かを推測してもらうというテストを行いました。その結果、50%に近い精度が得られたと報告されています。すばらしくもあり、恐ろしいことでもありますね。

しかしよく見ると、この場合は単に1行の見出しを1段落の文章に展開させたに過ぎません。もしThe Atlantic誌やNew Yorker誌のような長文の記事を書こうとすると、矛盾が生じ、意味をなさなくなるかもしれません。この論文の著者はこのことには触れておらず、ただ実験をして「見て、こんなにも上手くいったよ」と言っただけのことです。

説得力があるように見えますし、なかなかの記事を作ることは可能です。しかしフェイクニュースや誤報などについて言えば、なぜGPT-3がさほど影響力がなかったかというと、結局のところそれはフェイクニュースがほとんどクズ同然だからです。書き方も下手で、質が低く、安っぽくてインスタントなものだからです。16歳の甥っ子にお金を払えば、数分で大量のフェイクニュース記事を作ることができるでしょう。

数学のおかげでこういったことを理解できるというよりも、数学では主に懐疑的になることが重要だから理解できるのかもしれません。だからこういったことに疑問を持ち、少し懐疑的になったら良いのです。

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(文:Danny Crichton、翻訳:Dragonfly)