岡山大学、ナノ立方体ブロックでリチウムイオン電池の充放電時間を大幅に短縮する技術を開発

岡山大学、ナノ立方体ブロックでリチウムイオン電池の充放電時間を大幅に短縮する技術を開発

岡山大学は12月24日、充放電時間を大幅に短縮できる技術を開発したことを発表した。電気自動車の充電が超高速になる次世代電池の開発につながることが期待される。

岡山大学大学院自然科学学域の寺西貴志准教授らによる研究グループは、産総研極限機能材料研究部門の三村憲一主任研究員らの研究グループと共同で、リチウムイオン電池の充放電時間を大幅に短縮することに成功した。リチウムイオン電池の正極材料と電解液の間にリチウムイオンを引き寄せる性質のあるナノサイズの立方体ブロック(ナノキューブ)を適量加えることで、リチウムイオンの出し入れ速度が大幅に速まった。

研究グループはすでに、誘電体からなるナノサイズの粒子を正極材料と電解液の間に導入することで、一定の条件下で誘電体ナノ粒子の表面にリチウムイオンが選択的に吸着し、その表面でリチウムイオンの動きが加速される現象を発見していた。そこでその粒子を、立方体結晶にすることを考えた。高い結晶性を有する単結晶で、サイズが揃ったナノキューブを合成し導入したところ、リチウムイオンの移動が非常に短時間で起こることがわかった。チタン酸バリウムのナノキューブを添加した小型コインセルを使い、3分間の急速充放電試験を行ったところ、従来電池の4.3倍の電気容量が得られたという。

「本研究成果は、リチウムイオン電池の電極と電解液の間にナノキューブを添加剤として少量加えるだけで、電池の充放電速度を劇的に改善できるというものであり、工業的にもその価値は極めて高いものと考えます。究極的には数秒以内での超急速充放電を可能とするような次世代電池の実現に向けて、貢献しうる画期的な研究成果であると考えます」と研究グループは話している。

ラズパイとレゴのコラボによる拡張ボード「Raspberry Pi Build HAT」をスイッチサイエンスが発売開始

ラズパイとレゴのコラボによる拡張ボード「Raspberry Pi Build HAT」をスイッチサイエンスが発売開始

Raspberry Pi財団は、LEGO Educationとのコラボレーションによる新しい拡張ボード「Raspberry Pi Build HAT」を発表。スイッチサイエンスが12月24日より同社ウェブショップでの発売を開始した。価格は3718円(税込)。

概要

Raspberry Pi Build HATは、LEGO Technicのモーターやセンサーを、ワンボードコンピューターRaspberry Piで制御するための拡張ボード。Raspberry Piのコンピューティング環境とLEGO Educationのハンズオン学習のコラボにより、「楽しくて創造的な学びの体験」が可能になるという。これは、Raspberry Pi Picoに続く2つ目のRP2040(Raspberry Pi財団によるインハウスデザインマイコン)搭載製品となる。

対応するLEGO製品は、LEGO Education SPIKEプライムセットおよびSPIKE プライム拡張セットに含まれるアンギュラーモーター、距離センサー、カラーセンサー、フォースセンサーなど(Getting Started with Raspberry Pi Build HATを参照)。なお、モーターを使う場合には追加の電源が必要。電源入力仕様は2.1mmバレルジャック、センタープラス、DC8V(±10%)となっている。

「Raspberry Pi Build HAT」の特徴

  • Raspberry Pi 4やPi ZeroからLEGO Technicのモーターとセンサーが4つまで制御可能
  • LEGO Education SPIKEプライムセットおよびSPIKE プライム拡張セットに含まれるアンギュラーモーター、距離センサー、カラーセンサー、フォースセンサーなどが利用可能
  • LEGO Technicデバイスを制御するための使いやすいPythonライブラリーを用意
  • Raspberry Pi 4およびRaspberry Pi Zeroを含むすべての40ピンGPIO Raspberry Piボードで動作

【レビュー】リモートワークの時代、Opalはウェブカメラの未来を垣間見せてくれる

2021年9月、Alexis Ohanian(アレクシス・オハニアン)氏はツイートに姿を変えた観測気球を送り出した。「私たちは密かにチーム(Apple、Beats、Uber出身)を支援し、消費者向けテクノロジーの忘れられた一角を復活させました」と776の創業者は書いている。「ベータ版は本日公開されましたが、その品質には目を見張るものがあります。ウェブカメラたち、2021年へようこそ」。

メッセージにはオープンボックスが付いていて、会社名を含むいくつかの識別情報にモザイクがかかっていた。その情報は、最終的にはそれほど難しくなく、レンズの縁の上の部分に会社名とプロダクト名であるOpal C1が白で印刷されていた。

反応は速かった。「shut up and take my money(いいから受け取ってくれ)のGIFアニメが流れた」。結局のところ、それは少なくとも1つの既知の量に裏打ちされたハンサムな装置だった。そして、さらに差し迫ったことに、それは事実上世界的に認められている技術的ペインポイントの頂点に達した。ウェブカメラたち、端的にいうと、吸引力があるね。

画像クレジット:Brian Heater

それは目新しいものではない。ウェブカメラがそれを吸い上げて解決しようというのも今に始まったことではない。それはつい最近まで、私たちが甘受してきたものに他ならない。しかし、CNN特派員のアパートをCrisco(クリスコ)のコートを通して480pで覗き見ることを50回も繰り返すうちに、世界の本質に疑問を抱くようになる。

もちろん、毎晩ケーブルニュースに出演してアップグレードを求める必要はない。Logitech(ロジクール)を買ったのかもしれないし、もしかしたらデジタル一眼レフの間に合わせとして何かにお金を使ったのかもしれない。どちらの場合も、最終的には巨大で未対応の市場が明らかになる。パンデミックが始まった当初は一瞬の出来事のように思われたかもしれないが、このすべてが終わったとしても、戻ってくるべき通常が実際にあるわけではないことは明白だ。

企業のオフィスがもたついている間に、私たちはリモートワークについての疑問のコーナーを曲がったようだ。すぐに例外というより規則的になり、多くの人が同じ質問をする。ウェブカメラが付いたiPhoneはあるか?とても単純なように思われる。スマートフォンの画像処理から得られたすべての知見を、停滞する市場に応用する。

左2020 iMac ウェブカメラ、右Opal C1(画像クレジット:Brian Heater)

Apple製はないようだ。少なくとも近い将来的には。Appleの功績は、まずM1チップのデジタル画像処理を行い、次に内蔵センサーをアップグレードしたことが挙げられる。しかし、多くの人にとって「良い」だけでは不十分である。それが事実上、Opalの創業者たちに彼らの道を歩ませた。

オハニアン氏のツイートが届いた時には、Opalは7カ月間C1に取り組んでいた。これは基本的にハードウェアのスタートアップ領域では一夜にして実現されるものだが、少なくとも、素敵なパッケージに収められた見栄えの良いハードウェアがあり、VCの神秘的な雰囲気が漂っていた。同社によると、現在1万6000人のウェイトリストを抱えているという。

「(反応は)圧倒的でした」と共同創業者兼プレジデントのStefan Sohlstrom(ステファン・ソールストロム)氏は語っている。「本当に喜ばしいことでした。私たちは自分たちが構築しているものについて最も強気な2人です。明らかに、市場が大きいだけではなく、それは明白なことですが、ニーズが非常に深いものであると感じていました。何百万人もの人々がこれを購入するということだけではありません。仕事のためにそうする人々にとって、重要な意味を持っています。これは人々が世界とコミュニケーションする方法なのです」。

画像クレジット:Brian Heater

Opalのジャーニーは2020年11月から正式に始まったが、それは素朴な疑問によるものだった。

「今日ウェブカメラを作るとするなら、iPhoneを可能な限りデジタル一眼レフに近づけるために利用できる技術にはどのようなものがあるでしょうか」と共同創業者でCEOのVeeraj Chugh(ヴィエラ・チュグ)氏は語る。「私たちは業界の人たちと話をしたり、ユーザーと話をしたり、以前競合他社で働いていた人たちと話をしたりして、多くの調査を行いました。圧倒的な反応は『それは存在すべきであり、その技術は以前のどのウェブカメラとも大きく異なって見える必要がある』というものでした」。

チームは2020年12月までに非公開のシードラウンドで資金を調達し、その1カ月後にはApple、Google(グーグル)、Magic Leap(マジック・リープ)などでの勤務経験を持つデザイナーとエンジニアからなるチームを立ち上げた。

その結果、7.8mm、4Kのソニーセンサーと、ビルトインのビームフォーミングマイクメッシュアレイを備えた、愛情を込めて作られた300ドル(約3万4000円)のハードウェアが完成した。これは間違いなく筆者がテストした中で最高の外観のウェブカメラだ。それ自体は大したことではないと認識しているが、筆者は毎日それをじっと見つめて何時間も過ごしてしまうほどであるから、注目してもいいかもしれない。

画像クレジット:Brian Heater

また、最終的には最も有能となる可能性もある。だがここでは、筆者のこのプロダクトの実地体験は、自身がこのベータ版テストを進める上で効果的な作用を及ぼしているということをお伝えしたい。Opalは、すぐに使えるプラグ&プレイ体験を目指している。そして、つい最近創立1周年を迎えたばかりの会社にとっては、その道のりは順調だ。

一般提供に向けて前進している中で、このプロダクトのレビューをより快適に感じられるようになるだろう。今のところ、他のプロダクトをレビューするよりもC1に長いリードを持たせることに満足している。エキサイティングな新会社のエキサイティングな新デバイスだ。問題を抱えていて、果たされていない約束もあるが、新しい会社の限定ベータ版に期待されるものが多かれ少なかれある。

M1 iMacのスクリーンの上部にあるデバイスが最終的なハードウェアとなる。一方、ソフトウェアはまだベータ版だ。筆者が受け取ったものは、本日から特定の顧客に展開され始めている。以下はOpalからのコメントである。

一般向けの出荷は2021年12月14日から開始されます。順番待ちのお客様は招待状を持ってカメラを購入することが可能です。私たちは、顧客満足度が期待を上回ることを確実にするために段階的にロールアウトを行っています。そこでポジティブな閾値を超え次第、数万単位で展開する予定です。

画像クレジット:Brian Heater

4Kはまだ運用されていない。「ほとんどのビデオ会議アプリと互換性がないため、4Kビデオを一時的に無効にしています」と同社は述べている。「まもなくより強力な警告を追加して再ローンチする予定で、サポートしているアプリケーションやビデオの録画などに利用できるようになります」。

デスクトップでベータ版のコントロールソフトウェアを開くとAudioタブがグレー表示される。前面のマイクアレイと背面のアンビエントマイクを使用することで、同社は将来的にいくつかの大きな計画を立てている。

私たちはノイズキャンセレーションをリードする市場の構築に注力しており、同じ学習を使ってスタジオサウンドと呼ばれるものを構築しています。スタジオサウンドを使用すると、500ドル(約5万7000円)のブームマイクなしで、プロのポッドキャストのようなサウンドを再生できます。ニューラルネットワークを介したMicMesh入力を使用することで、あなたのサウンドをプロ品質にすることができます。

このままだと音が良い。「良い」というのは仕事とミーティング的に良いという意味で、CNNに登場したりポッドキャストを録音したりするには良いとは言えない。これらのいずれかを行う場合は、専用のマイクが必要になるだろう。将来はどうなるかわからない。「スタジオサウンド」は標準的なものかもしれないし、プロが毎月のサービスパックの一部としてアンロックできるものかもしれない。ベータ版が好調な時期を迎えているが、まだ多くの疑問が残されている。

もう1つの疑問は、ユーザーに事前にどれだけのコントロールを与えるかということだ。当たり前のことのように思えるかもしれないが、画像の世界では、コントロールが多すぎると平均的なユーザーにとって必要以上に負担が大きくなる可能性がある。大多数のユーザーにとって理想的な妥協案は、すぐに使える高品質なもので、掘り下げた場合にはユーザーが手動で調整するというものだ。オートホワイトバランスとスキントーンは、いずれも同社にとって今後の課題である。

画像クレジット:Brian Heater

しかし全体的には、箱から出したイメージに満足している。あちこち微調整してみた。リングライトと窓からの自然な照明があれば役に立つが、それでも筆者は、欲しいものを手に入れるために設定をいじくり回している。

このカメラは、最近のスマートフォンのポートレートモードに似た人工的なボケ効果を利用している(ただし同社は自社開発だとしている)。とはいえ、スライダーは今のところ8分の1しかない。強すぎると、デプスカメラが搭載されていないため、耳や顔の横がぼやけてしまう。Opalによると、奥行きを出すためにステレオカメラを試してみたが、デバイスをタイムリーに世に出すためにそれを選ばなかったそうだ。

「結局のところ、ユーザーと話すときには『とにかく何でもいい。もうLogitechは扱えない』と言われます」とチュグ氏。「私たちにとってスピードは最も重要なものでした。本当に良いものを出荷できると感じたからです。優先順位をつけることについては、少し断固とした姿勢が必要です」。

C1の場合、光学ズームがないことも意味する。ウェブカメラにしては妙な不満のように思えるが、筆者はデジタル一眼レフのデスクトップ設定を使っているときに気に入った。画質を劣化させることなく、しっかりと切り抜くことができるのは非常に大きい。

画像クレジット:Brian Heater

「初代カメラでは、機械部品を増やせば増やすほど、サプライチェーン側と製造側のリスクが高まります」とソールストロム氏は説明する。「基本的には壊れることの方が多いです。Canon[キャノン]のレンズが完成するまでには50年もかかっています。それは将来的には間違いなく私たちにも実現の可能性があります」。

今のところ、このシステムは4Kセンサーのおかげで、画像を劣化させることなく1080pで2倍ズームできる。同社によると、理論的には20倍から30倍程度の処理が可能だが、画質はそれに応じて低下するという。筆者は創業者たちとのコールの中で、少し建設的なフィードバックを提供した。1つは、ストレートアップのズーム設定が欲しい。現時点で最も近いのはFacelock(フェイスロック)だ。これはAppleのCenter Stage(日本では「センターフレーム」)やFacebook(フェイスブック)、Google、Amazon(アマゾン)などのスマートディスプレイに似た機能である。

しかし、正直に言ってあまりにも敏感すぎるので、多少船酔いしてしまうかもしれない。将来のバージョンでは、ユーザーが感度を調整したり、単にズームインしたりできるようになることを期待している。これらはどちらも非常に簡単な修正だ。さらに大きな問題もある。「Google Hangouts(ハングアウト)」や「Zoom(ズーム)」といったアプリを見つけたが、カメラの電源を数回切ったり、ソフトウェアを再起動したりしなければならなかった。カメラはアクティブでなくても非常に熱くなる。同社はこれを、システムのオンボード処理と4K画像のダウンスケーリングの両方の問題だとしている。同社は上記の修正に取り組んでいる。

画像クレジット:Brian Heater

新しい会社が1年足らず前に作り始めたプロダクトとしては、比較的小さな欠点のように感じられる。人々にデジタル一眼レフから乗り換えるようにいうのはやめておこうと思う。特に仕事でビデオの品質が重要な場合は。しかし、ここには多くの可能性がある。C1は、マイクロファイバーのクロスとコイル状のUSB-Cケーブルが付いた磁気レンズキャップのようなタッチから、より複雑な加工まで、非常に思慮深いプロダクトだ。

これは確かにウェブカメラの未来のように感じられる。そこに辿り着くために対処すべき方策がまだ残されているとしても。

画像クレジット:Brian Heater

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(文:Brian Heater、翻訳:Dragonfly)

【レビュー】Amazon Glow、本当に会話相手の存在を感じる小型プロジェクターは楽しいがまだ粗削り

私が困っているのは、テーブルの上のその黒い魔法の箱がときどき私の手を見失うことだ。

しかし、うちの三歳児はまったく平気だ。彼は、300km先にいる祖母がテーブルに置いた恐竜を何度も掃除機で吸い上げながら、息ができなくなるほど激しく笑い転げている。

とい何のことだかわからないだろうから、初めからお話しよう。

私たちは今、Amazon Glowで遊んでいる。新しいやつだ。わずか2年前にAmazon(アマゾン)が「Glow」と名づけたあれではない。

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タッチスクリーンが自立し、それにプロジェクターをくっつけた。それが乗るテーブルに、画像が投射される。カメラは2つ搭載され、1つは目の前にいる人を写し、もう1つはテーブルにあるその人の手の位置を追う。これにより、テーブルに投射される画像がタッチスクリーンになる。これがGlowだ。

画像クレジット:Amazon

Glowは子どもたちを遊ばせ、絵本を読ませ、遠くの家族や友だちなど限られた人たちとビデオチャットをさせるものだ。その際、スクリーンにはチャット相手が映っている。祖母などは、テーブル上の画像を自分のタブレットでそれを見る。祖母が彼女の本のページをめくると、子どもの本のページもめくられる。一方が何かを描くと、相手もそれが見られる。なお、Amazonは推奨年齢を「3歳以上」としているが、今の状態であれば、私なら「3歳から8歳まで」というだろう。

すべてが、Amazon Kids+を軸に構成されている。それはプライムとは別の有料サブスクリプションで、子どもの本やゲーム、映画、テレビ番組などを収集している。ただしGlowで観られる / 遊べるのは本と一部のゲームだけだ。それは正解だろう。動画を観ることができたら、うちの子は1日中BlippiのYouTubeを観ているだろう。Glowを買うと1年間Kids+が無料になる。その後はプライム会員なら月額3ドル(約340円)もしくは5ドル(約570円)となる。

本のチョイスはいい感じで、特に幼児向けが充実している。ゲームは神経衰弱やチェス、卓球ゲームのポンといったアーケードゲームなど、いずれも簡単な複数プレイができるものだ、お絵描きアプリは、自分が父のコンピューターの前に長時間座ってKid Pixで絵を描いていた頃のことを、強烈に思い出させる。今回それはディスプレイではなくテーブル上だが、我が子は遠く離れた州にいる祖母と一緒に絵を描いている。祖母が恐竜のステッカーをスクリーンに置くと、子どもは掃除機ツール(消しゴム)でそれを飲み込む。そして2人が笑う。そうやってスクリーンの掃除を100万回繰り返す。

子どもが話せる相手は、完全に親が決める。親もAmazonのアカウントが必要だ。そのセットアップには、相手によっては時間がかかるかもしれない。しかし、一度行えば二度やる必要はない。このような、ホワイトリスト方式は良いものだ。子どもが偶然、知らない人と話をすることがない。

確かにGlowは、パンデミックの申し子のようなデバイスだ。家族と直接会えないことが購入動機になるだろう。特に高齢者にとっては、人とリアルに会うことが今や自分の生死に関わることもある。

「でも、おばあちゃんとリモートで話したいだけなら読書アプリとFaceTimeで十分では?」と、思うかもしれない。

もちろん、そうだけど、しかしそれでも……。

Glowには、少々異なるとことがある。うちの子にとってそれは、FaceTimeやZoomなどとはまったく違うものだった。私も、そう感じる。

像クレジット:Greg Kumparak

その違いが、会話している相手の存在感を生み出しているのだろうか。Glowは通話中に、デバイス本体をあちこち動かさないためバッテリーがなく、壁からプラグを抜けば電源はオフになる。同じテーブルに座ってる誰かと話をしていて、ふと顔を上げると目の前にその人がスクリーンに映っている。お互いに相手の目と目、顔と顔を合わせているような感覚がある。コンピューターのディスプレイを見つめている感覚ではなく、むしろテーブルに座って一緒にボードゲームをしているような感じだ。

いずれにせよ、不思議なほど効果的だ。うちの子は通常、FaceTimeを使って5分ほど祖母と過ごす。自分のおもちゃを披露したりするが、急に違うことを始めたりする。今では、祖母と話したいかいと尋ねると彼は明確に「Glowしたい」という。「glow」を動詞として使う。彼は自ら喜んでGlowの前に座り、たっぷり1時間祖母と遊んだり本を読んだりする。バグなんか、気にしない。

そう。問題はバグだ。

Glowは、発売されたような、されてないような、ちょっと不思議な製品だ。Glowは、Amazonの「Day 1 Editions」プログラムの一部で、「まだベータ版のときに買うプロダクト」という意味の、より市場性の高い言い回しになっている。「invite(招待)」を申し込むと、Amazonはそれを購入する人を選び、選ばれた人は、Amazonが調整している間、少し早く使うことができる。Day 1プログラムの一環として購入する場合は250ドル(約2万8600円)で、それ以降は299ドル(約3万4200円)だ。

このような事業では、バグも主役だ。そして2021年末現在のGlowにも、バグはある。タッチが検出されないいことが頻繁にある。子どもが長袖を着ていると、余計ひどいようだ。混乱すると「KLONK」という音がしてエラーを吐く。誰に対しても! 本やゲームはロードできないことがときどきある。ランダムにリセットが起きる。

このようなプログラムでは、バグはつきものだ。2021年末に発売される「Glow」にも、そのようなバグがある。タッチの検出に失敗することがやや多く(子供が長袖を着ているときは特に)、混乱すると「KLONK」という音を出してエラーになる(どちらのユーザーも!)。本やゲームの読み込みに失敗することもある。そしてときどきランダムにリセットされる。

また、バグというよりもただ粗削りな部分もある。例えば、こんな感じだ。

  • Glowのスクリーンに映る通話相手は、なぜか上の写真のように顔半分が切れてしまうことが多い。これは、グローの画面がポートレート(縦長)モードであるのに対し、通話相手は一般的にランドスケープ(横長)モードであるためと思われる。一方、通話をしてきた人は、自分の顔はほとんど見えず、子供の顔と、子供が見ているものが映し出されるだけなので、それが起きていることに気づかない。最初は、その人がタブレットの置き方を知らないだけだと思っていた。その後、別の人でも同じことが起こった。別の部屋から子供をGlowで呼び出したら、3分くらいで顔が切れてしまって、妻に笑われてしまった。Amazonは、このような事態を想定して、「センターフレーム」のような顔追従機能を組み込むべきだろう。
  • Amazon Kid’sのライブラリーには、文字が小さすぎて読みにくい本がたくさんある。Bubble(バブル)モードというのがあり、これは自動的に文字を拡大して読みやすくしようとするが、邪魔になることも多い。また、このモードが勝手に切り替わることもあり、初めて目にしたユーザーはとまどってしまうだろう。
  • UIは全体的に遅かったり、フォーマットがおかしい。。

いずれも簡単に修正できそうなものなので、Amazonには期待したい。もっとブラッシュアップして、今後コンテンツが増えれば、Glowは本当にすてきでかわいいデバイスだ。しかし現状では、どれだけ愛されるだろうか。我が家で数週間使ってみたが、その間にパッチはあったのだろうか。よくわからない。

しかしそれでも、愛すべき点は多い。プロジェクターでテーブルに映し出されるスクリーンは明るくてきれいだ。白いマットが巻かれた状態で同梱されており、それを使うと明るさと手触りがさらに良くなる。これを使うために部屋の灯りを調節したことはない。セットアップはとても早くすぐに使えるし、手早くしまえる。箱は、良くできた耐久性の高いケースにもなる。Amazonはこういったポイントもしっかり考えたのだろう。未使用時のための、プライバシー保護用の物理的なカメラカバーもある。壊れたときの修理は最初の2年間無料だ。子どもはモノを壊す動物だから、このポリシーもいい。

しかし、これらはどれも子どもには関係ないことだ。彼らは掃除機でもっとたくさんの恐竜を吸い込みたいだけだ。

私のこのレビューを、簡単な問いで終えよう。このレビュー機をAmazonに返却後、果たして私はGlowを買うだろうか?今回の場合、すでに買ってしまった(詳しくいうと、購入の招待状をリクエストした)。「おばあちゃんとglowできなくなる」と子どもはすごく落ち込むだろう。そして、彼が祖父母と話をしているときの、Glow独特の話し相手の「存在感」が気に入った。

あなたはどうだろう?あなたの子どもがすでに祖父母とのFaceTimeで満足しているなら、買わなくてもよいかもしれない。本やお絵描きや簡単なゲームに関心を示さないなら、やはりいらないだろう。この製品の、そしてAmazonの製品開発努力を手伝い、いくつかのバグを我慢する気がないのであればやはり難しいだろう。しかしAmazon Glowは、おもしろそう、良さそうと感じた人にとっては、とても楽しい製品だ。

画像クレジット:Amazon

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(文:Greg Kumparak、翻訳:Hiroshi Iwatani)

サムスンがPCIe 5.0対応のサーバー向けSSD「PM1743 SSD」を発表、読み取り速度は最大13GB/s

サムスンがPCIe 5.0対応のサーバー向けSSD「PM1743 SSD」を発表、読み取り速度は最大13GB/s韓国サムスンは接続インターフェイスに最新規格「PCIe 5.0」を採用したSSD「PM1743 SSD」を発表しました。

PCIeは世代を重ねるごとに転送速度をあげており、2019年に策定されたPCIe 5.0では前世代の「PCIe 4.0」の2倍となる32GT/s(ギガ転送/秒・1GT/sは1秒あたり10億回の転送)を実現しています。

PM1743 SSDでは最大13GB/sでの読み取り速度、2500Kの秒間アクセス数(IOPS)を実現。前世代のPCIe 4.0 NVMe SSDの読み取り速度(最大6.5GB/s)のちょうど2倍のスペックを実現しています。

その他のスペックとしては、シーケンシャルライトが最大6.6GB/s、ランダム書き込みは250K IOPSを実現。また、従来モデルより電力効率も30%向上しています。ストレージ容量は1.92TB〜15.36TBです。

PM1743 SSDはサーバー向けの製品で、現在サムスンは一部顧客向けにサンプル出荷しています。このように驚異的な速度でスペックを向上させるSSDですが、すでに次世代規格「PCIe 6.0」が発表されており、その性能向上はまだまだとどまるところを知らないようです。

(Source:SamsungEngadget日本版より転載)

東芝、タンデム型太陽電池向けの透過型Cu2O太陽電池で世界最高レベルの発電効率8.4%を達成

東芝、タンデム型太陽電池向けの透過型Cu2O太陽電池で世界最高レベルの発電効率8.4%を達成

東芝は12月22日、透過型亜酸化銅(Cu2O)太陽電池の発電層の不純物を抑制して、世界最高の発電効率8.4%を達成したことを発表した。これは、2つの太陽電池を積層するタンデム型で、光を透過する上層(トップセル)に使われるもの。発電効率25%の高効率シリコン(Si)太陽電池を下層(ボトムセル)にして組み合わせたCu2O/Siタンデム型太陽電池では、発電効率は合計で27.4%となり、Si太陽電池の世界最高効率26.7%を超える。電気自動車(EV)に搭載すれば、充電なしの航続距離は1日あたり約35kmになると試算されている。

現在、高効率なタンデム型太陽電池にはガリウムヒ素半導体を使ったものがあり、30%台の発電効率が報告されているが、製造コストはSi太陽電池の数百倍から数千倍にものぼる。これに対してCu2O太陽電池は、どこにでもある銅と酸素が主原料であるため、製造コストは非常に低くできる。

透過型Cu2O太陽電池は、短波長光を吸収して発電し、長波長光は透過する。その下に置かれたボトムセルのSi太陽電池は、その長波長光を吸収して発電する。そのため短波長から長波長までの光を発電に使うことができ、限られた設置面積でも低コストで効率よく発電できる太陽電池となる。

もともと透過型Cu2O太陽電池は、2019年に東芝が世界で初めて開発したもの。透過型Cu2O太陽電池単独(トップセル)では10%の発電効率を目指している。しかし、Cu2Oは半導体結晶としての性質により、結晶中に酸化銅や銅といった不純物が生成されやすく、それが発電効率と透過率の双方の低下原因になっていた。そこで東芝は、X線回折法を用いて、Cu2O発電層に含まれる微量の酸化銅や銅を検出し、不純物の量を精密に数値化した。そして、この2つの不純物が最小化する成膜プロセス条件を特定し、光透過性と発電特性の双方に優れた透過型Cu2O太陽電池の開発を成功させた。

今回開発された透過型Cu2O太陽電池と、発電効率25%のSi太陽電池を組み合わせてCu2O/Siタンデム型太陽電池を作り、例えばEVに搭載した場合(車載設置面積を3.33m2と仮定)、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の試算方法に従えば、充電なしの航続距離は1日あたり35kmとなる。もし、発電効率が30%に達すれば40kmに達する。また、蓄電池に電力を補充し続ければ、充電なしでの長距離走行も夢ではない。

電気自動車(EV)へのCu2O/Siタンデム型太陽電池搭載イメージ

電気自動車(EV)へのCu2O/Siタンデム型太陽電池搭載イメージ

発電効率10%を目指す透過型Cu2O太陽電池の開発はNEDOの委託事業だが、これとは別に、東芝は東芝エネルギーシステムズと共同で、量産タイプのSi太陽電池と同じサイズの大型Cu2O太陽電池の開発を開始したという。2023年度を目標に外部評価用サンプルの供給を開始し、2025年度を目標に実用サイズのCu2O/Siタンデム型太陽電池の製造技術の完成を目指すとしている。

NTT・東大・理研がラックサイズの大規模光量子コンピューターを実現する基幹技術「光ファイバー結合型量子光源」開発

NTT・東京大学・理化学研究所がラックサイズの大規模光量子コンピューターを実現する基幹技術「光ファイバー結合型量子光源」開発

日本電信電話(NTT)は12月22日、東京大学理化学研究所と共同で、ラックサイズで大規模光量子コンピューターを実現するための基幹技術となる光ファイバー結合型量子光源(スクィーズド光源)モジュールを開発したことを発表した。これは、冷凍装置や真空装置を必要とせず、実用的な小型化が可能な量子コンピューターとして期待される光量子コンピューターの実現に欠かせない技術だ。

光量子コンピューターは、時間的に連続的な量子もつれ状態を作ることで、集積化や装置の並列化なしに量子ビット数をほぼ無限に増すことができるというもの。光の広帯域性を活かした高速な計算処理が可能で、多数の光子で量子ビットを表す手法を使えば、理論的には光子数の偶奇性を用いた量子誤り訂正が可能になるという。

しかしこれまで、光量子コンピューターの実現に必要となる光ファイバー結合型の高性能な量子光源、つまりスクィーズ光源が存在しなかった。たとえば、大規模量子計算を実行できる時間領域多重の量子もつれ(2次元クラスター状態)の生成には、65%を超える量子ノイズ圧搾率が必要となる。

NTT・東京大学・理化学研究所がラックサイズの大規模光量子コンピューターを実現する基幹技術「光ファイバー結合型量子光源」開発

実際のサイズ感

そんな中、NTTなどからなる研究グループは、低損失な光ファイバー接続型量子光源モジュールを開発し、光ファイバー部品に閉じた系において、6THz(テラヘルツ)以上の広帯域にわたって量子ノイズが75%以上圧搾された連続波のスクィーズ光の生成に世界で初めて成功した。これにより、光ファイバーと光通信デバイスを用いた安定的でメンテナンスフリーの「閉じた系におけるラックサイズの現実的な装置規模」での光量子コンピューターの開発が可能になるという。この方式は光通信技術と親和性が高く、通信波長帯の低損失な光ファイバーや光通信で培われた高機能な光デバイスを用いることができるため、飛躍的な発展が期待できるとのことだ。

今回の実験では、1つ目のモジュールでスクィーズ光を生成し、2つ目のモジュールで光量子情報を古典的な光の情報に変換するという新しい手法を用いた。量子信号を光のまま古典的な光信号に増幅変換できるため、非常に高速な測定が可能になった。これは将来の全光型量子コンピューターに適応が可能で、「テラヘルツクロック周波数で動作する圧倒的に高速」な全光型コンピューターの実現に大きく貢献するという。

発行ライセンス数7万3000件超、こどもパソコンIchigoJam用OS「IchigoJam Basic」のバージョン1.5がリリース

子ども向けのワンボードコンピューター「IchigoJam」(イチゴジャム)のランセンス販売を行うB.Inc(ビーインク)は12月22日、IchigoJamのプログラミング学習用OS「IchigoJam Basic」のバージョン1.5をリリースした。RISC-Vチップを搭載したIchigoJamに対応し、Chromebookと連携して制御・計測・ネットワークの学習も行える。

IchigoJam Basicは、LEDの点灯などの初歩のプログラミングからゲームの制作まで、1時間程度のワークショップで習得できるプログラミング学習用のOS。現在、福井県鯖江市のすべての小中学校に採用されるなど、様々な教育現場で活用されている。2021年12月時点での発行ライセンス数は7万3000件を超える。

IchigoJamのコア部分だけを取り出して超小型化したワンボードコンピューター「IchigoDake」(イチゴダケ)の、文部科学省GIGAスクール構想に対応した機種「GIGA IchigoDake」(プログラミングクラブネットワークが販売)にも採用されている。

バージョン1.5の変更点

  • RISC-Vチップ(GigaDevice製GD32VF103CBT6)に対応
  • USBキーボードに対応
  • 保存できるプログラム数が増加(4→15ファイル)
  • すべてのIN ポート(4個)がANA入力に対応
  • すべてのOUTポート(6個)がPWM出力に対応
  • DAC出力に対応

韓国SK HynixがインテルのNAND事業買収で中国の認可を取得

韓国のチップメーカーSK Hynix(SKハイニックス)は米国時間12月22日、Intel(インテル)のNANDとSSD(ソリッドステートドライブ)事業を90億ドル(約1兆円)で買収することについて、中国の反トラスト当局から合併許可を得たと発表し、8つの管轄区域での規制認可確保完了への最終ハードルをクリアした。

2020年10月、この米チップ大手とSK Hynixは買収契約に合意した。その後、SK Hynixは韓国、米国、EU、台湾、ブラジル、英国、シンガポールの監督官庁から認可を得た。

SK Hynixは声明で次のように述べている。「SK Hynixは、国家市場監督管理総局による本取引の合併認可を心から歓迎し、感謝します。SK Hynixは、残された合併後の統合プロセスを継続することにより、NANDフラッシュメモリとSSD事業の競争力を高めていきたいと思っています」。と述べている。

SK Hynixの最大の買収案件である今回の買収は、SK HynixがNAND SSD事業を拡大し、市場リーダーのSamsung(サムスン電子)との差を縮めるのに役立つと思われる。一方、IntelはOptaneメモリ事業を継続して保持し、より高度な技術に投資していくと2020年発表した。同社はNAND部門を売却し、5Gネットワークインフラ、人工知能、エッジコンピューティングなどの技術開発を倍増させる計画だ。

SK Hynixの広報担当者は、2021年末までに最初の70億ドル(約7990億円)を支払い、2025年3月までに残りの20億ドル(約2200億円)を支払うと確認した。この取引が完了すると、この韓国のチップメーカーはIntelのNAND SSD、NANDのコンポーネント、ウエハー事業(NAND関連の知的財産と従業員を含む)、および大連のNANDメモリ製造施設を引き継ぐことになる。

米中間の緊張の中で、SK Hynixがこの取引について中国の許可を得られないのではないかという懸念があった。SK Hynixは、この取引が3カ国すべてにとって「相互に有益と考えられる」ため、大幅な遅延なしに適切なタイミングで承認されたと述べている。

中国の国家市場監督管理総局は、同日に発表した声明の中で、承認はしたが、5年間続くいくつかの条件付きでもあると述べた。

その条件とは、SK HynixがPCIeとSATAのエンタープライズクラスのソリッドステートハードディスク製品の生産量を拡大し、製品を公正、合理的、無差別的な価格で供給することであると発表している。また、SK Hynixは中国の顧客にSK HynixまたはSK Hynixが支配する会社から製品を独占的に購入するよう強制してはならないとしている。

画像クレジット:Igor Golovniov/SOPA Images/LightRocket / Getty Images

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(文:Kate Park、翻訳:Akihito Mizukoshi)

繊維強化プラスティック・FRPの耐衝撃性をしのぐゴム材料イオン性熱可塑性エラストマーを名古屋大学と日本ゼオンが開発

繊維強化プラスティック(FRP)の耐衝撃性をしのぐゴム材料イオン性熱可塑性エラストマーを名古屋大学と日本ゼオンが開発

名古屋大学は12月20日、化学メーカー日本ゼオンと共同で、繊維強化プラスティック(FRP)よりも耐衝撃性に優れたイオン性のゴム材料(熱可塑性エラストマー)の開発を発表した。その耐衝撃性は、通常の熱可塑性エラストマーの3.1〜4.4倍。同様に軽量で強度の高いガラス性繊維強化プラスティック(GFRP)の0.86〜1.22倍とほぼ同等の性能を示した。これは世界トップクラス。

熱可塑性エラストマーは自動車の内外装などに広く使われ、その市場規模は世界で年間2兆円にも上るというゴム材料だが、さらなる強度の向上が求められ、研究開発が進められている。名古屋大学大学院工学研究科有機・高分子化学専攻の野呂篤史氏らと日本ゼオンからなる研究グループは、熱可塑性エラストマーのひとつ「ポリスチレン-b-ポリイソプレン-b-ポリスチレン(SIS)ブロックポリマー」のポロイソプレン部に部分的にイオン性官能基を導入し、イオン性の熱可塑性エラストマー(i-SIS)を開発した。

繊維強化プラスティック(FRP)の耐衝撃性をしのぐゴム材料イオン性熱可塑性エラストマーを名古屋大学と日本ゼオンが開発

その引張強度は43.1MPa(メガパスカル)、靭性(粘り強さ)は1m3あたり480MJ(メガジュール)と、従来のSISの4倍以上を示した。だが構造材料として使う場合には、引張強度や靭性よりも耐衝撃性が重視される。そこで、約3kgの棒状の重りを材料に投下して亀裂やくぼみが生じるのに必要なエネルギー量を見積もる耐衝撃性の試験を行ったところ、従来のSISの3.1倍という値が出た。さらに、イオンの種類と価数を変えたi-SISでは4.4倍という結果が示された。GFRPでは、SISの3.6倍という結果だった。つまり、i-SISとGFRPは同等の性能ということになる。

繊維強化プラスティック(FRP)の耐衝撃性をしのぐゴム材料イオン性熱可塑性エラストマーを名古屋大学と日本ゼオンが開発

軽量で耐衝撃性が高く、それでいてゴム材料としての熱可塑性や強靭性を兼ね備え、工業的な生産も可能なi-SISは、車や船舶といった移動体のボディーなどに利用することで、移動体全体を軽量化でき、燃費が向上し、ひいては脱炭素社会の実現に貢献できると、研究グループは話している。

【レビュー】Mevo Multicamは手ごろですばらしいライブ配信スタジオだ……必要なのは「それを信じる」ことだけ

Mevo Multicam Appと3つのカメラがセットになったMevo Start 3パックは999ドル(約11万4000円)。これに良い照明と適当なマイクを加えれば、2000ドル(約22万8000円)以下でフルマルチカムのストリーミングセットアップが完成する。数年前ではまったく考えられなかったことだ……人類の進歩は驚くべきことだとしみじみ思う。これにしっかりとしたインターネット接続を追加すれば、このキットよりも2桁は高価な機器を満載した衛星中継車の中核的な機能が再現される。

プロの放送局のニュースクルーがMevo Startキットを使うことはできるだろうか。それは難しいだろう。もっと高い信頼性と冗長性、そして生放送のニュースレポーターのニーズに対応した機器が必要だ。しかし、同じ問題を別の視点で考えてみると、非常にわかりやすくなる。

例えば、ユーチューバーが自分のスキルを発揮したいと思ったらどうだろう?ウェブカメラとOBS(録画とライブ配信用のアプリ)を組み合わせてライブ配信を行っている人なら、もっと簡単に分解・再構築できるセットが欲しいと思うかもしれない。Twitchで音楽配信をしていたり、自分のバンドで何度かライブ配信したことがあったり、マルチカメラを使ったライブ配信の腕を上げたいと考えている人も、さまざまな会場で行われるイベントのライブ配信を始めたいと思っている人もいるだろう。この場合、Mevo Start 3パックは俄然お買い得に思える。何よりも、最初にセットアップしてしまえば、分解して再度組み立てるのも簡単だ。

少なくとも理論上は良い話だ。しかし、少しリラックスして考えてみよう。本当にこれだけのことができるのだろうか?

テクニカルレビュアーは時として不可能といってもいい課題に直面する。自分の用途ではない製品をどうやってレビューするのか、その製品が対象とするユーザーに適しているかどうかについて、どうしたら有意義なレビューをすることができるのか。Logitech for Creators(ロジテックフォークリエイターズ)のMevo MulticamアプリとMevo Start 3パックは、まさにそのような製品の1つだ。筆者はTwitchやYouTube、Facebookのストリーマーではないが、放送ジャーナリズムを中心としたジャーナリズムの学位を取得している。ニュースキャスターやテレビの生中継レポーターとして訓練を受けたことが懐かしい。BBCニュースの衛星中継車では(文字通り)熱い時間を過ごした。テレビのプロデューサーだったこともある。

問題は、ある業界で専門的な経験を積むと、普通の人とは異なる期待を持って製品に臨むようになることである。BBCに在籍していたときは、生放送中に衛星への信号がほんの一瞬落ちただけでも、ニュースルームの送受信センターにとって信じられないほどのストレスだった。一方で、端的にいえば、このキットは何百万、何千万もの人々にニュース速報を伝えるための中継車1台分の機材を置き換えるためにデザインされたものではない。ユーチューバーに使ってもらうためのものだ。

Mevo Multicamアプリは、マルチカメラを使用したライブ配信のコントロールセンターとして機能する。エレガントなすばらしい方法でマルチカメラストリーミングを行うことができる(画像クレジット:Haje Kamps for TechCrunch)

理論上はMevo Startは非常に良いアイデアのように思える。しかし、これはMevo Startが完ぺきという意味ではない。Mevo Startは明らかに、薄暗いクラブハウスでカメラ機材のセットアップに長い時間を費やしたことのない人によって設計され、その製品チームはMevo Startキットのセットアップと解体を連続して30回行うことを要求されていない。もしそうなら、製品の仕上がりに大きな影響を与えるほんの少しだけ異なる判断をしていただろう。

例えば、カメラの電源ボタンについては実に愚かだ。電源ボタンはゴム製ではあるものの、ボディに対して凹凸がなく、触っただけではどこがボタンかわからない。さらに悪いことに、マットブラックのボディに対して電源ボタンもマットブラックだ。暗闇の中で、何人ものミュージシャンに囲まれながらカメラを設置しようとしたらどうなるかを考えてみたらいい。公平を期すためにいえば、これは製品設計上よくあることである。CADで設計され、明るいハードウェアラボでテストされた製品を、誰かが「カメラが使用されるであろうユースケースに合わせて調整しよう」と考えるのが遅すぎたのだ。

カメラの背面:電源用のUSB-Cポート、ローカルレコーディング用のMicroSDカードスロット、マイク入力、そして暗闇の中では非常に見つけにくい電源ボタンがある(画像クレジット:Haje Kamps for TechCrunch)

デザイン上の特徴を1つだけ殊更に強調するのは申し訳ないとは思うが、電源ボタンはカメラの唯一のボタンであるので重要なことだ。電源ボタンが簡単には押せず、かなりの力で押さなければならない、という点はすばらしい。ライブ配信中の事故は絶対に避けたいものだが、誤って電源ボタンを押してしまうのを防ぐことができる。一方で、ライブ配信のために急いで何かを設定しようとすると、両手がふさがってしまう。筆者の場合、片手はマイクや他の機材でふさがっていて、常に片手でカメラの電源を入れたり切ったりする必要があった。(電源ボタンがかたいということは)つまり、カメラの電源ボタンを押すときには、電源ボタンの反対側の同じ位置をつかんでカメラを固定しないと力が入らない、ということである。残念ながら、電源ボタンを押す際、力をいれようとすると自然にレンズもつかんでしまうということになる。カメラの中で唯一指紋をつけてはならないのがレンズなのだが。

片手でカメラの電源を入れたり切ったりするには、このようにカメラを持つしかない。人差し指は電源ボタンを押しているが、親指はどうだ?次にやるべきことは、レンズについた親指の指紋を消すことか?(画像クレジット:Haje Kamps for TechCrunch)

電源ボタンはさておき、このカメラにはスマートなデザインも多くみられる。迷光を防ぐためにドーム型のレンズの上には小さなひさしがあり、レンズフレアの軽減に大いに役立っている。カメラ底部の三脚穴は取り外し可能で、穴の径を変えればカメラをマイクやライトスタンドに取り付けることができる。カメラ前面のライトLEDは、スタンバイ中のカメラを示す緑のLEDと、実際に撮影中であることを示す赤のLEDで構成されている。カメラにはバッテリーが内蔵されているので、電源がなくてもライブ配信を開始することが可能。外出先でのライブ配信にも適している。これらはすべて、非常に考え抜かれた機能である。

しかしながら、カメラのセットアップには非常に苦労した。3台とも使用する前にファームウェアのアップグレードが必要だった。もしかしたら筆者がAndroidデバイスを使用しているのが原因で、iOSのアプリの方がこなれているのかもしれないが、判読不能なエラーメッセージが表示されて完了までに何時間もかかった。最終的には使えるようになったものの、スマートフォンを6回も再起動する羽目になった。そのうち1回は最初に各カメラに接続するため、もう1回はファームウェアのアップグレードの失敗からリカバリーするためだ。

ファームウェアの問題が発生したことを受けて、筆者はMevoのプレスチームに連絡をしてみた。彼らは開発チームに連絡してカメラが動作するようサポートと提案してくれた。筆者はこれについて検討したが、その申し出は断ることにした。ハードウェアレビュアーとしては、製品の開発に携わった人と電話で話すことができるというメリットがあるが、消費者としては、このようなことは期待できない方が多い。

もし自分で使うためにこのカメラを購入していたなら、この時点で返品していたと思う。筆者はハードウェアのレビューを長年担当してきたが、レビューを始める前にスマートフォンを6回も再起動しなければならないような製品をテストしたことはない。数日間あきらめて、やっと重い腰を上げてカメラを本格的に試そうとしたら、またファームウェアのアップグレードがあった。今回は比較的スムーズに作業を進めることができたが、数週間のうちに2回もカメラのファームウェアをアップデートしなければならないというのは決して心強いとはいえない。

問題の核心は「信頼性」にある。製品の中には、2回、3回うまくいかなくても問題のないものがたくさんある。例えば、Google Nest Thermostatの温度を変更しようとして、最初はうまくいかなかったとしても、それはそれで問題ない。もう一度やってみる、うまくいく。それでOKだ。しかしながら、ライブ配信はエアコンをつけるようなものではない。数千人の人々がライブを観ている場合はストレスレベルが上がり、小さな技術的な問題であっても、とてつもないストレスとなる可能性がある。私の感覚は、何百万、何千万もの視聴者が観ているかもしれない衛星回線のライブや、現場からのライブレポートがニュースルームに届かずに台無しになってしまうテレビの生放送なので、おそらく他のライブストリーマーは、筆者のように技術的な問題に敏感ではないのだろう。

取り外し可能な三脚穴のデザインはありがたい。ネジは照明スタンドのサイズと三脚のサイズの2つ。ネジを外すとマイクスタンドのネジのサイズになる。非常によくできた仕組みだ。ボディに指紋がつきやすいのは指摘しておくべきだろうが、機能的には問題ない(画像クレジット:Haje Kamps for TechCrunch)

製品を完全にセットアップできたら、製品が輝くチャンス到来だ。カメラを操作するMevoのアプリは非常に優れている。Mevo Multicamアプリでは、1台のカメラで撮影を準備し、カメラ間でフェードイン / アウトすることができる。また、ズームインやオーバーレイの使用、さらにはデジタルパンニングも可能だ。基本的には非常にシンプルなセットアップでありながら、非常にパワフルな結果を生み出すことができる。

セットアップのプロセスについては不満を並べたが、それはここで打ち切るべきだろう。筆者はこのカメラをさまざまな場面でテストしたが、一度も期待を裏切られることはなかった。問題も起きなかったし、バッファリングし続けることも、遅延、切断もなかった。

マルチカメラによるストリーミングは、創作活動、音楽ライブ、実写イベントなどに最適である。Mevo Startは、小さなボディに驚くべき価値を秘めている(画像クレジット:Haje Kamps for TechCrunch)

問題は、筆者がこのカメラを完全に信頼することができなかったことであり、結果として筆者が担当するライブ配信にこのカメラを使用することはおそらくないだろう、ということだ。3台のカメラを用意して、もらったばかりの子猫たちが遊んでいる様子をライブ配信するか?もちろん、見応えのある愛らしい映像になると思う。友人が地元のバーで行う音楽ライブの様子を、何十人かのライブ配信愛好家に向けてライブ配信する際は利用するだろうか?おそらく「No」だ。ストレスレベルが高すぎる。長時間なんの問題なくライブ配信して初めて、重要な撮影にこのカメラを使ってもいいと思えるだけの信頼を置けるかどうか、といったところだ

ここに難問がある。ライブ配信は非常に危険で高ストレスなものなので、自分の機材を信頼できると感じることが重要である。私がこれまでにレビューした製品の中でも、Mevoのカメラは信頼という点で最悪のデバイスだ。とはいえ、逆もまた真なりだ。というのは、レビュアーという仕事では、ファームウェアの初期バージョンや、まだ本領を発揮していないソフトウェアを目にすることもある。Mevoは、このレビューで見つかった問題を解決してくれるかもしれないし、3カ月後、6カ月後にはカメラはすばらしいものになっているかもしれない。筆者は喜んでそれを受け入れよう。

少なくとも理論的には、マルチカメラにチャレンジしたいと考えているライブストリーマーにとって、Mevo Start 3パックは費用対効果の高い、完ぺきに近いソリューションとなるはずだ。この製品がおすすめできるかどうかは、数カ月後に再検討したいと思う。

画像クレジット:Haje Kamps for TechCrunch

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(文:Haje Jan Kamps、翻訳:Dragonfly)

イフティニーがmicro:bit向けプログラミング学習用製品「ワールド・オブ・モジュール・シリーズ」を販売開始

イフティニーがmicro:bit向けプログラミング学習用製品「ワールド・オブ・モジュール・シリーズ」を販売開始

プログラミング教育とIoT関連製品の企画開発・販売などを行うイフニティー(Iftiny)は12月21日、教育用マイクロコンピューターmicro:bitで制御できるビルディングブロックとブロック対応のモジュールセンサーがセットになった「ワールド・オブ・モジュール・シリーズ」の販売を開始した。ブロックで遊びながら、プログラミングやセンサーの知識を学べるというものだ。

micro:bitでプログラミングを行い、センサーやサーボでブロックを制御できる。あらかじめ21種類の制作例が用意されていて、簡単に学習を開始できる。基礎を学習したら、ブロックを組み立て直して発展させることが可能。ブロックは、有名ブランドのブロックとの互換性があり、それを取り混ぜて使うことができる。プログラミング言語はビジュアルプログラミング(MakeCode)とPythonに対応。ブロックの組み立ては「ブロック組み立て説明書」を見ながら行える。micro:bitへのプログラミングにはチュートリアルが用意されている。

キットの内容(micro:bit本体は別途購入)

  • micro:bit用拡張ボード:1
  • ブロック型サーボ:2個
  • センサーモジュール:10種類
    RGBライト、ボタン、ロッカー、環境光センサー、温度湿度センサー、赤外線人感センサー、色認識センサー、赤外線検出センサー、超音波距離センサー、LEDデジタルチューブ
  • ビルディングブロックパーツ:296個
  • 製品マニュアル(冊子)
  • ブロック組み立て説明書(PDF)
  • チュートリアル(ウェブ)

価格は1万7100円(税込)。購入は下記リンクから。
https://store.iftiny.com/products/yahboom-world-of-module-programmable-sensor-kit-for-microbit-v2

この他にも、音声合成モジュールやジェスチャー認識モジュールなど、単独でセンサーモジュールやサーボを購入することができる。現時点では、セットに入っているものも含めてセンサーモジュールが19種類、サーボが6種類となっている。単体の詳細は「micro:bit ビルディング ブロック」を参照してほしい。

ポリウス開発の建築用3Dプリンターを利用し排水土木構造物製造の実証試験を実施、産官学が国内初連携

建設用3Dプリンターを開発するポリウスが排水土木構造物製造で実証試験を実施、産官学が国内初連携建設用3Dプリンターを開発するスタートアップ企業Polyuse(ポリウス)は12月21日、国土交通省が主導する「建設現場の生産性を飛躍的に向上するための革新的技術の導入・活用に関するプロジェクト」(PRISM)において、加藤組と共同で建設用3Dプリンターによる施工DXの共同実証の実施を発表した。これは、国土交通省中国地方整備局広島国道事務所と広島大学も参画した、産官学による日本初の取り組みとなった。

この実証は、2021年12月13日から17日まで、令和2年度安芸バイパス寺分地区第4改良工事の現場にて行われた。加藤組の施工管理のもと、実際の工事現場で建設用3Dプリンターを使い、排水土木構造物を製造。そしてこの構造物に対して、広島大学大学院先進理工系科学研究科 半井健一郎教授主導のもと、硬化環境(外気温)による初期硬化の変化、経年劣化の推定検査、強度発言の変化に関する調査などが実施された。今後国内における建設用3Dプリンター施工での必要データの蓄積・公表を進めるという。

加藤組の加藤修司代表は、これまで日本の建設現場を支えてきた「スーパーマンのような職人たち」が時代とともに年老いて建設業から離れてゆく中、新たな感性を持ったクリエイティブ集団との協業が欠かせないと感じていたときにPolyuseと出会ったと話している。同代表によれば、Polyuseは、海外では主流のロボットアームを採用せず、単純な構造のものを提供しているとのこと。それは「強い単純な構造で安価なものこそ日本の中小建設企業のニーズにあっていることを理解しているからだ」という。

広島大学において造形した構造物に対し各検証を実施

広島大学において造形した構造物に対し各検証を実施

また半井教授は、型枠を組んで打ち込むという現在のコンクリート工法とは異なり、型枠を必要としない3Dプリントでは、「あらゆる形が自由に造形」でき、廃棄物も減ると話す。また、現在の工法では硬化後に型枠を外さなければ表面の品質がわからないが、3Dプリントなら施行中に確認でき、問題があれば硬化前に補修できることから、「施工手順も自由度が飛躍的に増加」するという。さらに、「施工方法は建設用3Dプリンターによって劇的に変化する」ものの、セメント系材料を使うために、従来のコンクリート工学分野の知見が活用できるとのことだ。

「家がない」15億人が抱える問題の解決を目指すJupe

「音楽フェスの参加者のためにグランピング用のテントを作っているわけではありません」。Jupe(ジュープ)の共同創業者でCEOであるJeff Wilson(ジェフ・ウィルソン)氏は、同社のビジョンをこのように力説する。「現時点では、食料は流通の問題で、衣類についてはほぼ解決されています。しかし、世界にはまだ適切な家を持てない人々が約15億人存在します。地球上の大きな問題を解決したいのであれば、これは取り組む価値のある問題です」。

Initialized(イニシャライズド)のGarry Tan(ギャリー・タン)氏とY Combinator(ワイコンビネーター)のメンバーはウィルソン氏に同意したらしい。彼らはシードラウンドでJupeに950万ドル(約10億8000万円)を投資した(Jupeに数カ月間のシェルターを提供したといったところか)。この資金は、Jupeのチームを強化し、住むところのない人に住居を提供するというミッションを継続するために使われる。現在までの予約注文は300件以上。多数の地域に同社のJupeシェルターを出荷し始めたところだ。

Initializedの創業者でマネージングパートナーであるギャリー・タン氏は次のようにコメントする。「Jupeの夢であるユニバーサルな自律型住宅があれば、最終的には地球上のどこにいても、衛星を介してインターネットに接続し、快適に暮らせるようになります。世界はこれを待ち望んでいました」「彼らは世界で初めてのハードテックとソフトウェアプラットフォームを構築しています」。

Jupeのミッションは確かに控えめなものではなく、創業者のウィルソン氏は風変わりで個性的だが、それをやり遂げるだけの情熱とマッドサイエンティスト的な雰囲気を持つ。

ウィルソン氏は最近のインタビューで「米国における平均的な家庭の100分の1の体積とエネルギーを使って生活しようと考え、1年間ゴミ箱に住んでいた」と語り、そこから話題を変えてJupeのアイデアを思いついた経緯を話してくれた。「私は環境科学の博士号を取得しています。気候変動で人類の活動は影響を受けています。Jupeのユニットは、基礎工事も電力網への接続も不要で、特定の土地に縛られることがありません。Jupeは年間15億人もの人々に影響を及ぼす住宅危機を解消するためのステップです。Jupeのユニットは、従来の仮設住宅や移動式住宅に比べて、十分の一のコストと期間で生産可能で、15倍効率良く出荷できます。ユニークなデザインですべての人にしっかりとした滞在場所を提供します。インターネット付きのね」。

現在、サンフランシスコのSoMa(サウスオブマーケット)の真ん中で、Jupeのユニットの1つに住んでいるというウィルソン氏は、次のように説明する。「今回の資金調達ラウンドを主導したギャリー・タン氏は「Universal Autonomous Housing(ユニバーサルな自律型住宅)」という言葉を作ってくれました。まさに私たちがやっていることを示す言葉です」「今のところ、自然の中でオフグリッドかつハイデザインの快適な体験を楽しみたい人がJupeを利用しています。長期的には、技術を発展させて、都市に住むことを望まず、広大な土地でコミュニティを作って暮らしたい人たちを対象にします。将来的には、数週間、数カ月、生まれてから死ぬまでJupeのユニットで暮らしてもらえるようにしたいと思っています」。

ウィルソン氏がMVPと称するJupeシェルターの現行バージョンは、シェルターの中核技術を使って製造されたシャーシの上に、アルミニウム製の外骨格を組み上げた頑丈な構造である。強風にも耐えるが、主に5~27℃の温暖な気候で使用されることを想定している。

「次のバージョンではハードトップが導入され、春夏秋冬などの温度変化がある環境で使用できるようになります」とウィルソン氏。「既存の構造では大雪に耐えられません。コロラドに設置したものは、冬は撤去する必要がありました。しかし、これは進化の過程であり、Jupeは創立間もない企業です。私たちは成長を目指しています。2020年4月に最初のJupeを作ってから、すでに700万ドル(約8億円)程度の収益を計上しています」。

価格決定モデルは教えてもらえなかったが、ウィルソン氏は「それは関係ない」と主張する。同社は、Jupeのネットワークを構築して敷地の区画にJupeを設置し、その区画を貸し出して収益を50対50で分配したいと考えている。

「多少のライセンス料を除けば、初期費用はかかりません。私たちの予約プラットフォームに(区画を)掲載して、ホットスワップ(アクティブ状態で機器を交換すること)で運用します。土地のJupeが古くなったら、私たちが交換をしに行きます。車の下取りのようにね。最新の技術を導入したJupeに交換して、古いものは別の用途に使用します」とウィルソン氏は説明する。「Just add land(必要なのは敷地だけ)。これが私たちのスローガンです」。

現状、最大の課題は、技術面を担当できる適切なCTOを招へいすることだ。同社は、技術プラットフォームを発展させていくために「(技術面で)創業者レベルといえるほどのCTO」を求めている。

「とにかくとんでもなく良い人材が必要です。世の中にはスマートではない人がたくさんいますが、私には本当に優秀な人材が必要なのです。15年以上の経験、スタートアップ企業と大きなチームを管理・成長させてきた人材を求めています。ソフトウェアの面で非常に優秀で、インテグレーションの面でも多くの経験を有する人材です。Jupeはガジェットであり、デバイスですから」とウィルソン氏。「見つけるのは大変だと思いますが、大金と自社株を用意して、競争力があり、私が持つビジョンの実現をサポートしてくれる人を獲得する予定です」。

ウィルソン氏の大胆なビジョン……Jupeは何億もの人に家を提供したいと考えている。

「みんなが火星に行きたがっているのは知っていますが、まだ地球を諦めるべきではありません」とウィルソン氏は締めくくる。「会社の評価なんてどうでもいい。私は残りの人生でこれをやりたいのです。優れた人間性を持つ最高の人材が必要です。一緒にミッションを達成しましょう」。

画像クレジット:Jupe

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(文:Haje Jan Kamps、翻訳:Dragonfly)

ハードウェア開発をアジャイルの時代へと導くDuro

ソフトウェア開発者にとって、ハードウェア製品の開発プロセスは、1980年代のものとまったく同じであるように見えるかもしれない。最もハイテクなワークフローであっても、表計算ソフトなどのミスが起こりやすくコストのかかる手作業、混乱、そしてハードウェア開発現場のかび臭いハンダ付けされた床板から漂う生きる気力のなさがある。そんな中、Duroは400万ドル(約4億6100万円)の資金を調達し、アジャイル手法を導入して、手間がかかりすぎている世界に正気を取り戻そうとしている。

Duroの資金調達ラウンドは、B2B SaaSの投資機関であるBonfire Ventures(ボンファイア・ベンチャーズ)がリードし、ハードテクノロジーの投資機関Riot Ventures(ライオット・ベンチャーズ)が追加資金を提供した。今回の資金調達は、営業・マーケティングチームの拡大と、Duroの製品ライフサイクル管理(PLM)ソリューションのさらなる展開のために使用される。

DuroのCEOであるMichael Corr(マイケル・コー)はこのように説明する。「私は元エレクトリカルエンジニアです。20年間、IoT、ドローン、通信機器、ウェアラブル、クリーンテックなど、あらゆる製品を設計・製造してきました。私はCADファイル、部品表、サプライチェーンデータなどのハードウェア開発の最も基本的な要素の管理にどれだけの時間が費やされているかに不満を感じていました。PLM(製品ライフサイクル管理)と呼ばれる製品カテゴリーがありますが、これは、これらの情報を一元管理するための受け皿となるものです。リビジョン管理も含まれており、自社のチームで使用するだけでなく、製造委託先と共有することもできます。しかし、私が使ったどのツールも、実際に時間を節約したり、最終的に価値を提供してくれるものではありませんでした。すべての作業が手作業で、プロセス志向であるため、スプレッドシートを使ったほうが楽な場合が多かったのです。今でもこの方法が主流です。なぜなら既存のツールは非常に複雑でエラーが発生しやすく、実際には価値がないからです」。

このような現状に個人的に疑問を感じた共同創業者のマイケル・コーとKellan O’Connor(ケラン・オコナー)は、すべての製品データを一元化し、異なるチームやツールを接続する際の摩擦をなくすためのクラウドプラットフォーム「Duro」を開発した。目標は透明性であり、製品チーム、エンジニアチーム、サプライヤーや製造チームの誰もが、常に最も正確で最新のデータにアクセスできるようにすることだ。

コーはDuroが進出している市場の状況を説明した。「少し単純化していうと、ハードウェア業界は二極化の文化に支配されています。80年代、90年代に入社して現在のツールセットを確立した上の世代がいます。その一方でギャップがあり、若いエンジニアは、ウェブやモバイル、アプリの開発が流行っていたため、それらの学習に興味を持っていました。若いエンジニアが続けてハードウェア分野に参入することはなかったのです。しかし、今は彼らが戻ってきています。ハードウェアは魅力的な製品であることが証明されたのです。IoTが実現して、ハードウェアの開発コストが劇的に下がりました。現在、若い世代のエンジニアが続々と社会に出てきています。Duroが狙っているのは、彼らです。彼らはソフトウェア開発の文化に慣れていますし、使用するソフトウェアに対する基準も違います」。

言い換えれば、SaaS、GitHub、DevOpsのプロセスがソフトウェアの継続的な提供方法を完全に変えたのと同じような仕組みで、Duroはハードウェアに関わる人々をミレニアムの時代に招待しようとしている。

「GitHubは、それが可能であることを証明するすばらしい仕事をしてくれました。GitHubはクラウド上の単一のソースでソースコード管理を行い、それを中心にツールや人々、タスクといったエコシステムを構築することができるのです。そして、誰もがGitHubに注目しています。従来のハードウェア業界はこれとは異なっていました。電気工学、機械工学、調達、製造など、複数のチームがそれぞれの役割を担っていました。一元化するという概念がなかったため、全員がそれぞれのデータを持っているのです。例えば、全員が別々の部品表を持っていると、問題が発生します。すべてのコミュニケーションチャネルを管理し、全員が確実に最新のデータのコピーを持っているようにするための諸経費が必要になります」とコーは説明した。

ボンファイア・ベンチャーズのJim Andelman(ジム・アンデルマン)は「古い企業が支配する大きな市場に新鮮なソリューションを提供するDuroと提携できたことを非常にうれしく思っています。Duroのようなスタートアップ企業がまったく新しいユーザーにとっての参入障壁を下げることで、新たな市場の大部分を獲得することができます。Duroのプラットフォームに対する顧客の親和性は非常に高く、エンジニアリング志向の企業にとってPLMソリューションとして選ばれていることは明らかです」と述べている。

Duroは製品だけでなく、SaaSを参考にしたビジネスモデルの革新にも取り組んでいる。

「これまでのハードウェアのためのソフトウェア販売には、多くの摩擦がありました。ユーザーライセンスのビジネスモデルによる非常に高価なアプリケーションで、試用版が用意されていることはほとんどなく、使いたければお金を払って、手に入れたものをただ受け入れるしかありません。そこでDuroは、そこにもちょっとした工夫を凝らしています。Duroには3つのサブスクリプションパッケージを用意しています。スターターパッケージは、スプレッドシートを使わずに、適切に管理されたデータ、集中管理された環境を求めている企業向けです。Pro版は、他の製品で必要とされる複雑な構成や設定をすることなく、入手後すぐに使えます。Pro版は、最初の生産を行う段階で、サプライヤーとの間で適切なリビジョン管理を行いたいと考えているチーム向けに設計されています。大企業向けパッケージは、これらの下位2つの層を超えて成長したチームや、より確立していて既存のワークフローを持っているチームのためのより拡張的なパッケージです」とコーは説明する。

スターターパッケージは月額450ドル(約5万1000円)、年額5,400ドル(約62万円)。Proパッケージは、月額750ドル(約8万6000円)、年間約9,000ドル(約103万円)となっている。大企業向けパッケージは、顧客のニーズに応じた柔軟な価格設定となっている。Duroのチームは、ソフトウェアの構成に応じて、2万5,000ドル(約288万円)から10万ドル(約1153万円)の契約を結んでいると話した。

Riot Venturesの共同設立者であり、ゼネラルパートナーであるWill Coffield(ウィル・コフィールド)は「フルスタックビジネスへの投資を行ってきた経験から、データの継続性に関する問題は、ハードウェアの製造においても同じであり、業界に大きな影響を与えることがわかっています。ハードウェアの設計・開発を現代化するために、手動のプロセスを自動化し、チームと情報を結びつけて知的で効率的なコラボレーションを実現するDuroのアプローチは大変好ましいと思います」と述べている。

画像クレジット:Duro

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(文:Haje Jan Kamps、翻訳:Dragonfly)

NIMSとソフトバンク、現行のリチウムイオン電池の重量エネルギー密度を大きく上回る500Wh/kg級のリチウム空気電池を開発

NIMSとソフトバンク、現行のリチウムイオン電池の重量エネルギー密度を大きく上回る500Wh/kg級のリチウム空気電池を開発

a:ALCA-SPRINGでの研究により開発したリチウム空気電池用独自材料。b:NIMS-SoftBank先端技術開発センターで開発したセル作製技術。c:500Wh/kg級のリチウム空気電池の室温での充放電反応を本研究で初めて実験的に確認

国立研究開発法人物質・材料研究機構(NIMS)は12月15日、現行のリチウムイオン電池の重量エネルギー密度(Wh/kg)を大きく上回る500Wh/kg級のリチウム空気電池を開発し、室温での充放電反応を実現したことを発表した。また、サイクル数でも世界最高レベルであることがわかった。NIMSとソフトバンク、現行のリチウムイオン電池の重量エネルギー密度を大きく上回る500Wh/kg級のリチウム空気電池を開発

リチウム空気電池は、理論上の重量エネルギー密度が現行のリチウムイオン電池の数倍という「究極の二次電池」であり、ドローンやEV、家庭用蓄電池などへの応用が期待されている。しかし現実には、セパレーターや電解液といった電池反応に直接関与しない材料が重量の多くの割合を占めるため、実際にエネルギー密度の高い電池の製作は困難だった。

そこでNIMSは、ソフトバンクと共同で、2018年に「NIMS-SoftBank先端技術開発センター」を設立し、リチウム空気電池の実用化を目指した研究を続けてきた結果、独自材料の開発に成功。この材料群をリチウム空気電池のセル作製技術に適用したところ、実際にエネルギー密度の高い電池を作ることができた。

今後は、リサイクル寿命の大幅な増加をはかり、リチウム空気電池の早期実現を目指すという。

Oppo、折り目が目立たない折りたたみスマートフォン「Find N」を発表

折り目は、どうやら避けられないようだ。それは、大きくて高価な折りたたみ式ディスプレイのちょうど真ん中あたりにある。そして、私が折りたたみ式スマートフォンについて投稿するほぼすべての記事で、必ず(そしておそらく当然ながら)最初にコメントするのがその話だ。代替案としても、MicrosoftのSurface Duoのように、2つの個別のディスプレイの間に隙間ができるのは、理想的とは言えない。

Oppoが新たに発表した折りたたみ式スマートフォン「Find N」の「N」は、正確には「No crease(折り目なし)」の略ではないが、これまですべてのレポートでは、初期の数世代の折りたたみ式スマートフォンを取り巻いていた最大の美的不満の1つである折り目の減少が指摘されている。Oppoによれば、標準的な折りたたみ式に比べて「最大80%目立たなく」なっているとのこと。シワの検出は、もちろん見る人の目にもよるが、何よりも画面の光の当たり方に左右される。

しかし、いずれにせよ、この折り目というやつは、画面の中央に切れ込むという点で、ノッチよりもはるかに始末が悪い一種の厄介者となっている。ここで注目すべきは、Oppoが舞台裏でどれだけの努力を重ねてきたかということだ。同社は明らかに、この製品の発表を急がなかった。報道によれば、これはハードウェアメーカーであるOppoが2018年から運営しているプロジェクトの一環として、6世代にわたる社内開発プロトタイプの後に続くものだという。

現在までのところ、折りたたみ式スマートフォンの全体的な状況は明らかに混とんとしており、その一部は自ら招いた失敗である。Samsungは最初の折りたたみ式で市場に出るのが早すぎたというのが大方の意見だが、その後の世代では消費者向けの製品としてより現実的なものになった。まだ普及したと言える製品はない(Samsungには申し訳ないが)ものの、同社が長い道のりを歩んできたことは疑う余地がない。「Galaxy Z Flip 3」は、私がテスト中に初めて「この携帯電話は使える」と真剣に思った製品である。

Huaweiの初代「Mate X」は、何度か使う機会があったときは期待できるものを感じたが、結局この製品も脇に追いやられ、最終的に同社は振り出しに戻ることにした。そうこうしている間に、このハードウェア・メーカーはそれとは別の大きな問題に悩まされることとなった。

一方、Motorolaの折りたたみ式スマートフォン「Razr」は、最初の試みこそ失敗に終わったものの、第2世代ではその失敗のいくつかを修正することができている。

この製品を見たところ、Oppoは待つことによって、そのような落とし穴をいくつか回避しているように思われる。実際のところ、この業界では、何かを最初に作ることが必ずしも有利とは限らない。その過程において、アーリーアダプターを相手に実質的なベータテストが広く行われるということになるのだ。私は残念ながら、先日開催されたOppoの大規模な発表会に参加できなかったが(これについてはRitaがすばらしい取材をしてくれた)、実機を試用した人たちは、同社がこの分野で成し遂げた数々のことを称賛している。

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少なくとも、Oppoが18:9のアスペクト比を採用し、他の折りたたみ式スマートフォンとは異なり、閉じたときには一般的な携帯電話のように見えるようにしたという点からも、同社が多くの適切な決定を行ったということは容易にわかる。閉じた状態ではかなり厚みがあるが、このヒンジはディスプレイを平らに保つために良い働きをしている。画面のサイズは7.1インチと、Fold 3の7.6インチには及ばないものの、このようなデバイスに惹かれる人々のほとんどにとって十分な大きさだと、私には思われる。

この折りたたみスクリーンを、Samsung Displayが開発したことも注目に値する(ただし、Oppoはその上に多くの独自作業を行ったと述べている)。つまり、Oppoがうまくいっても、Samsungは分け前を得ることができるのだ。上げ潮はすべての舟を持ち上げる。もっとも、これらすべての舟が、Samsung製のコンポーネントをその大部分に使用しているのではないかと思われるけれど。

この製品の障害は(そしてそれはかなり大きなものだ)、中国のみで販売されるということだ。Oppoにとって、世界最大のスマートフォン市場は、それだけで十分ということだろう。もちろん、OnePlusが事実上Oppoに吸収された今、おそらくそこに相乗効果が狙えるいくつかの好機があるはずだ。OnePlusが最近、独自の折りたたみ式コンセプトを手がけていることは、多くの人が知るところである。

画像クレジット:Oppo

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(文:Brian Heater、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

産総研が強磁場発生装置を用いない量子抵抗標準素子の開発に成功、国家計量標準と同等精度の電気測定が手軽に

産総研が強磁場発生装置を用いない量子抵抗標準素子の開発に成功、国家計量標準と同等精度の電気測定が手軽に

産業技術総合研究所は12月14日、強磁場発生装置を使わずに、電気抵抗の精密測定ができる新しい量子抵抗標準素子を開発したことを発表した。新材料「トポロジカル絶縁体」によって発現する「量子異常ホール効果」を応用したもので、ホームセンターでも購入できる安価な材料を使い、国家計量標準と同等の8桁の精度を持つ量子抵抗標準素子を作り上げた。

電気抵抗は、超低温の強磁場下では量子ホール効果という現象を生じる。そのときの抵抗値は常に一定(量子化抵抗値)であるため、国際的な抵抗値の基準に使われている。そうした量子ホール効果を生む量子ホール素子を使った電気抵抗の測定には強磁場が必要で、超伝導磁石などで使われる大型の強磁場発生装置を用いなければならない。

そこで産業技術総合研究所物理計測標準研究部門は、理化学研究所創発物性科学研究センター東京大学大学院工学系研究科東北大学金属材料研究所と共同で、強磁場発生装置を必要としない電気抵抗の精密測定を可能にする新しい量子抵抗標準素子を開発した。

これは、2016年にノーベル物理学賞を受賞したトポロジカル絶縁体の研究が下地になっている。研究グループは、トポロジカル絶縁体によって発現する「量子異常ホール効果」という現象に着目した。量子異常ホール効果は、量子ホール効果と同じ量子ホール素子の電気抵抗値が量子化抵抗値となる物理現象だが、一般的に使われる普通の磁石程度の磁力で発現するというものだ。世界中で研究が進められているが、電流を流すと量子抵抗値がずれてしまうという不安定さがあり、現在のところ電気抵抗値の基準としては使えていない。

不安定さの原因は、トポロジカル絶縁体を構成するビスマス、アンチモン、テルル、クロムの4つの元素の濃度の不均一さにある。研究グループは、こららの元素の比率、素子構造、製作時の温度などの条件を最適化することで不均一さを低減した。これにより、測定電流が2μA(マイクロアンペア)以下での量子異常ホール効果のずれがゼロに近づき、強磁場発生装置を使わずとも国家標準と同等の精度の抵抗標準を実現することができた。

画像左:トポロジカル絶縁体を用いて作製した量子抵抗標準素子。画像右:抵抗値の量子化抵抗値からのずれ(相対値)の測定電流依存性

画像左:トポロジカル絶縁体を用いて作製した量子抵抗標準素子。画像右:抵抗値の量子化抵抗値からのずれ(相対値)の測定電流依存性

今後は、さらに品質改良を行い、利便性と信頼性を高めるとしている。また、この新型抵抗標準素子を搭載した小型軽量の精密電気測定装置の開発にも取り組むとのことだ。

大阪大学、磁気を使ったセンサーシステムによりコンクリートに埋蔵された鉄筋の透視に成功

大阪大学、コンクリートに埋蔵された鉄筋の磁気による透視に成功

大阪大学産業科学研究所は12月13日、磁気を使ったセンサーシステムにより、コンクリートに埋蔵された鉄筋の様子を透視することに成功した。また、2次元スキャンロボットによるコンクリート内部の鉄筋の状況を可視化する計測技術を確立。老朽化した建屋の検査、施工確認などが安価にスピーディーに行えるようになるという。

大阪大学産業科学研究所の千葉大地教授らによる研究グループは、2020年「永久磁石法」という手法を開発し、新たな鉄筋探査方法になり得ることを発表している。現在、鉄筋の探査方法として広く用いられている中でコンパクトなものに、電磁波レーダー法や電磁誘導法などがあるが、電磁波レーダーは深い鉄筋も検知できるものの精度が低く、コンクリートの湿り具合や空洞に影響を受けてしまう。電磁誘導法では深い場所にある鉄筋は探知できない。また、磁性のある鉄筋以外の金属の影響を受けてしまうといった欠点がある。

研究グループが開発した永久磁石法は、永久磁石と磁気センサーを組み合わせたシンプルなセンサーモジュールで、磁性を持たない金属には反応しないため、鉄筋のみを狙って検出できる。「磁気誘導法」により、深く埋まっている鉄筋も観測でき、コンクリートの湿潤状況に左右されない。

研究グループは、このセンサーモジュールを2次元スキャンロボットに搭載して、格子状鉄筋の配筋状況の可視化を行った。永久磁石法の場合、センサーモジュールからはコンクリートは完全に透明なものに見えるため、実験用にコンクリートに覆われた鉄筋のサンプルを用意する必要がなく、さまざまな太さの鉄筋や、深さ(距離)を変えて計測結果のデータベースを容易に蓄積できるというメリットがある。

この2次元ロボットの実験では、左上が右下に比べて壁面から数mm離れてしまうという事故があった。その計測結果、鉄筋との距離によってシグナル強度が変化したのだが、これを利用すれば、鉄筋の深さや太さの情報も得られるようになるとの期待が生まれた。

今後は、2次元スキャンロボットとは別に、タブレットやスマートフォンとワイヤレス接続できる小型のハンディーセンサーの開発を進めるという。プロトタイプ機は完成しており、さらなる軽量化と使い勝手の向上を目指すとのことだ。

OPPO初の自社開発チップは画像・映像処理に特化したNPU

中国の大手スマートフォン企業であるOppo(オッポ)は、現地時間12月14日に深圳で開催された年次イノベーションイベントで、初の自社製チップセットを発表した。マリアナ海溝にちなんで名付けられたというこの「MariSilicon X(マリシリコンX)」チップは、機械学習によって写真や動画の処理性能を高めることに特化したニューラルプロセッシングユニット(NPU)だ。

この動きによりOppoは、Apple(アップル)をはじめとする独自のチップを設計しているスマートフォンメーカーのリストに加わることになる。Qualcomm(クアルコム)での豊富な経験を持つJiang Bo(ジャン・ボウ)氏が率いるMariSiliconプロジェクトは、2019年に始まったばかりだった。

このシリコンは、Taiwan Semiconductor Manufacturing Co(TSMC、台湾セミコンダクター・マニュファクチャリング)の6ナノメートルプロセス技術によって製造され、2022年の第1四半期に発売されるOppoの次期フラッグシップ機種に搭載される予定だ。現在進行中の世界的なチップ不足は、MariSilicon Xの生産には影響しないと、ジャン氏はこのイベントで報道陣に語った。

Oppoは今回のイベントで、自社開発のスマートグラスの第3世代も発表した。同社ではこれを、Augmented Reality(拡張現実)ではなく「assisted reality(補助現実)」デバイスと呼んでいる。

この表現は適切だ。この重さわずか30gのヘッドピースは「Google Glass(グーグル・グラス)」を彷彿とさせる。スマートウォッチで使用されている「Snapdragon 4100(スナップドラゴン4100)」チップを搭載しており、確かに一般的にはスマートウォッチで見られるような、ナビゲーションや翻訳などの2D情報を、厚さ1.3mmのメガネに投影することに限定されている。周囲の環境を認識するARデバイスのようなものではなく、スマートフォンの延長線上、あるいは目の前にスクリーンがあるスマートウォッチのようなものだ。発売は2022年春に予定されている。

Oppoの新しい「補助現実」メガネ(画像クレジット:Oppo)

そして3つ目の製品は、Oppo初の折りたたみ式スマートフォンだ。同社が巻き取り式スマートフォンのコンセプトを発表してから1年後に登場するこの折りたたみ式スマートフォンの詳細は、15日に発表される予定なので、また後ほど記事を更新してお伝えすることにしたい。

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これまでにわかっているのは、この新型携帯電話の開発を指揮した人物が、OnePlus(ワンプラス)の共同設立者であり、2021年OnePlusがOppoのサブブランドになった後、Oppoのチーフプロダクトオフィサーに就任したPete Lau(ピート・ラウ)氏であるということ。

OnePlusとOppoは、ともにBKK Electronics(BBKエレクトロニクス、歩歩高)の傘下にあり、合併前はサプライチェーンを共有しながらも、独立して事業を行っていた。今回の合併により、2つの携帯電話メーカーは、それぞれのブランドは別のまま、運営とOSを含めた研究開発の力を統合することになった。

OnePlusのもう1人の共同創業者であるCarl Pei(カール・ペイ)氏は、新たに設立したイヤフォンのベンチャー企業Nothing(ナッシング)で話題を集めており、投資家や初期フォロワーの大群を獲得している。

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画像クレジット:Oppo

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(文:Rita Liao、翻訳:Hirokazu Kusakabe)