AirPodsを収納できるiPhone用バッテリーケース「Power1」

PodCaseは時代を先取りしていたのかもしれない。iPhoneとAirPodsのためのワンストップポータブル充電ソリューションで、熱心なApple(アップル)ファンにとって確かに理に適っていた。血統書つきの製品でもあった。その血統には、Pebble(ペブル)の共同創業者であり、後にYCのパートナーとなるEric Migicovsky(エリック・ミギコフスキー)氏も含まれる。結局、このプロジェクトは、Kickstarter(キックスターター)での30万ドル(約3450万円)という高額な目標には届かなかった。

一方、ブルックリンを拠点とするPower1は、もっと地に足が着いた資金調達目標にとどめた。同社はKickstarterの目標額として2万ドル(約230万円)を掲げ、4万8342ドル(約556万円)を獲得した。すでに生産を開始しており、現在99ドル(約1万1500円)で予約受付中だ。

筆者は、CES会場でデビューする数週間ほど前から、いじり回している。このモデルは、まだ製品化されたわけではない。同社の創業者が筆者に語ったように「まだ継続中」だ。つまり、最終的な素材はまだ決まっていない。だがそれでも、現段階のモノを目にすれば、どんなものになるのか、かなり見えてくると思う。

ゴム製のケースまたはバンパーと、MagSafeを使ってパチンとくっつく追加の充電パーツに分かれている。このモジュール性はいい感じだ。筆者は主にバッテリーを取り外して使っている。以前のようにアパートから出ることが少なくなったからだ。

バッテリーは白と黒の2色で、輪郭のデザインは、Mophie(モフィー)のような会社が作っているバッテリーケースに似ている。バッテリーはデバイスの背面のほとんどを独占しているが、カメラモジュールのためのカットアウトがある。その右側にはAirPodsのケースがあり、フリップアップ式の透明な蓋が付いている。バッテリーはUSB-Cで充電され、底面には小さなオンオフスイッチがある。

サイズの都合上、万能なケースを作ることは不可能だ。そこで、発売当初はiPhone 12、12 Pro、13に限定され、AirPodsは最新モデルのみに対応、Proは対象外となっている。Power1がヒットすれば、製造元のAXSは販売方法を拡大するのではないかと推測される。本当に「その時がきた」アイデアなのか、すぐにわかるだろう。

画像クレジット:Brian Heater

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(文:Brian Heater、翻訳:Nariko Mizoguchi

パナソニック、テスラ・ギガファクトリーのバッテリーセル生産にRedwoodの再生材を使用へ

Tesla(テスラ)と共同で運営するギガファクトリーで製造されるパナソニックのバッテリーセルは、スタートアップRedwood Materialsとの提携拡大により、2022年末までにリサイクル素材をより多く使用することになる。

米国時間1月4日、パナソニックはCES 2022の会場でRedwood Materialsは、バッテリーセルのアノード側の重要な部材であるリサイクル素材から作った銅箔の供給を開始すると語った。Redwoodは銅箔の生産を2022年の前半に開始し、パナソニックはそれを2022年の終わりごろセルの製造に使用する。

この発表は、より多くのリサイクル素材を使っていくという、パナソニックの方針表明であり、採掘された銅鉱から作る新たな原料への依存を減少させ、さらにRedwoodの事業成長にも寄与する。

現在、市販されている電気自動車には、リチウムイオンバッテリーが搭載されている。バッテリーには2つの電極があり、一方はアノードと呼ばれる負極(マイナス)と、カソードと呼ばれる正極(プラス)だ。両極の間には電解液があり、充放電の際に電極間でイオンを移動させる運び屋として働いている。負極は通常、グラファイトでコーティングされた銅箔でできている。

自動車メーカーが電気自動車の生産を増やし、究極的には内燃機関のクルマやトラックを置き換えていくにともない、バッテリーとその素材に対する需要は急上昇していく。全車種のEV化に本気で取り組んでいる大手自動車メーカーのほとんどすべてが、そのサプライチェーンを確保するために、バッテリーセルメーカーやその他のサプライヤーとのパートナーシップに依存している。

Redwood Materialsは、2017年に当時TeslaのCTOだったJ.B.Straubel(J.B.ストラウベル)氏が創業し、循環型サプライチェーンの構築を目指している。同社は、携帯電話のバッテリーやノートパソコン、電動工具、パワーバンク、スクーター、電動自転車などの家電製品だけでなく、バッテリーセル製造時のスクラップも再利用している。そして、これらの廃棄物を加工して、通常は採掘されるコバルトやニッケル、リチウムなどの材料を抽出し、それらを再びパナソニックなどの顧客に供給する(アマゾンやテネシー州のAESC Envisionとの連携も公表している)。

最終的にはバッテリーのコスト削減と採掘の必要性を相殺するクローズドループシステムを構築することが目的だ。

Redwoodが2022年初めに発表したギガファクトリーの近くに100エーカーの土地を購入したことは、このパナソニックとの提携拡大を示唆するものだった。

Panasonic Energy of North Americaの社長であるAllan Swan氏は「バッテリーの国内循環型サプライチェーンの確立に向けた我々の取り組みは、EVがより持続可能な世界を形成するための機会を最大限に実現するための重要なステップです」と発表している。

Redwoodは2021年9月に、重要なバッテリー材料を米国内で生産する計画を発表している。同社は20億ドル(約2320億円)の工場を建設し、2025年までに年間100ギガワット時(電気自動車100万台分)の正極材と負極材を生産する予定だ。

画像クレジット:Redwood Materials

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(文:Kirsten Korosec、翻訳:Hiroshi Iwatani)

RivianがIPOで調達した資金のうち5650億円をジョージア新工場とバッテリー技術に投資

Rivian(リビアン)は、株式公開時に調達した137億ドル(約1兆5500億円)の一部をジョージア州の第2工場建設に回す。同工場は同社のイリノイ工場の2倍の生産能力を持つ。

米国時間12月16日に最初の決算報告の一部として発表した同社は、資金をイリノイ州ノーマル工場のEV生産能力を年間15万台から20万台に拡大するためにも使うという。第2工場はアトランタの東、モーガン郡とウォルトン郡に建設され、年間生産能力目標は40万台だ。

ジョージア工場ではバッテリーセルの生産も行う。建設は2022年夏に、生産は2024年に開始する見通しだ。同社は株主向けの書簡で、持続可能な事業運営、人材プール、サプライチェーンや物流への近さなどを総合して、この地を選んだと述べた。

「ジョージア工場は、持続可能な輸送手段の大規模な導入を加速するという当社の目標にとって、極めて重要になります」と書簡で述べた。さらに、同工場は同社の次世代車両の生産にも使われると付け加えた。

短期的には、次世代自動車の設計・開発にも資金を投入する。Rivianには現在、消費者向けのピックアップ「R1T」とSUV「R1S」、そして商用バンの3車種がある。同社の株式を20%以上保有するAmazon(アマゾン)は、Rivianにとって最初の商用バンの顧客で、まず10万台の注文を受けた。

また、Rivianは垂直統合に多額の投資を行うが、これは同社と創業者でCEOのRJ Scaringe(RJ・スカンジー)氏の過去数年間の戦略に従っている。具体的には、バッテリーセル化学の開発、原材料の調達、自社でのセル製造など、バリューチェーン全体にわたってバッテリー技術に投資するつもりだと、同社は株主向け書簡で述べている。そこに掲載された図を見てみると、こうした垂直統合の野望がよくわかる。

画像クレジット:Screenshot/Rivian

書簡によると、電気駆動システムも投資の優先順位の1つになるという。その目的は「より高い性能、改良されたパッケージング、低コストを提供する自社製の将来のドライブユニット」を進化させることだという。

売り上げの創出がTo Doリストの冒頭にくることはいうまでもない。Rivianは、顧客との関わりと体験に投資を続けることによって売り上げを増やす計画だ。その中には「体験スペース」、消費者向けのRivian会員プログラム、商用顧客向けのFleetOSというブランドのデジタル車両管理ソフトウェアなどが含まれる。

Rivianは、車両サービスと充電インフラの整備を計画していると明らかにした。2021年末までに60台以上の移動式サービスバンを稼働させ、カリフォルニア、コロラド、イリノイ、ニューヨーク、ユタ、ワシントンに8つのサービスセンターを設置する予定だという。

画像クレジット:Kirsten Korosec

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(文:Kirsten Korosec、翻訳:Nariko Mizoguchi

NIMSとソフトバンク、現行のリチウムイオン電池の重量エネルギー密度を大きく上回る500Wh/kg級のリチウム空気電池を開発

NIMSとソフトバンク、現行のリチウムイオン電池の重量エネルギー密度を大きく上回る500Wh/kg級のリチウム空気電池を開発

a:ALCA-SPRINGでの研究により開発したリチウム空気電池用独自材料。b:NIMS-SoftBank先端技術開発センターで開発したセル作製技術。c:500Wh/kg級のリチウム空気電池の室温での充放電反応を本研究で初めて実験的に確認

国立研究開発法人物質・材料研究機構(NIMS)は12月15日、現行のリチウムイオン電池の重量エネルギー密度(Wh/kg)を大きく上回る500Wh/kg級のリチウム空気電池を開発し、室温での充放電反応を実現したことを発表した。また、サイクル数でも世界最高レベルであることがわかった。NIMSとソフトバンク、現行のリチウムイオン電池の重量エネルギー密度を大きく上回る500Wh/kg級のリチウム空気電池を開発

リチウム空気電池は、理論上の重量エネルギー密度が現行のリチウムイオン電池の数倍という「究極の二次電池」であり、ドローンやEV、家庭用蓄電池などへの応用が期待されている。しかし現実には、セパレーターや電解液といった電池反応に直接関与しない材料が重量の多くの割合を占めるため、実際にエネルギー密度の高い電池の製作は困難だった。

そこでNIMSは、ソフトバンクと共同で、2018年に「NIMS-SoftBank先端技術開発センター」を設立し、リチウム空気電池の実用化を目指した研究を続けてきた結果、独自材料の開発に成功。この材料群をリチウム空気電池のセル作製技術に適用したところ、実際にエネルギー密度の高い電池を作ることができた。

今後は、リサイクル寿命の大幅な増加をはかり、リチウム空気電池の早期実現を目指すという。

使用済みリチウムイオン電池から99.99%の超高純度でリチウムを回収する装置を量子科学技術研究開発機構が開発

使用済みリチウムイオン電池から99.99%の超高純度でリチウムを回収する装置を量子科学技術研究開発機構が開発

国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構(量研)は12月7日、使用済みのリチウムイオン電池から99.99%という超高純度でリチウムを回収できる装置を開発したことを発表した。リチウムを100%輸入に頼っている日本において、国内資源循環への展望が拓かれる。

電気自動車(EV)の普及により世界中でリチウムの需要が急増し、今後、確保が難しくなることが予想される。2027年から2030年ごろまでに国内における需要に追いつけなくなるとの試算結果もある。現状ではリチウムのリサイクルがもっとも有力な対策となるが、既存技術では高コストとなり難しい。そこで、量研量子エネルギー部門六ヶ所研究所増殖機能材料開発グループの星野毅上席研究員らからなる研究グループは、新開発の高性能イオン伝導体を20枚積層してリチウムを回収する装置を作り、リチウム回収コストの評価を行った。

同機構の方式は、使用済みリチウムイオン電池を加熱処理(焙焼)して得られたブラックパウダー(電池灰)を水に浸し、その水侵出液50リットルを原液として、表面にリチウム吸着処理を施した高性能イオン伝導体20枚を積層した装置でリチウムを回収するというもの。そこに加える電圧、溶液の温度、流速の最適条件を導き出し、さらにブラックパウダーの中のリチウムが溶け出せる限界まで水侵出液のリチウム濃度を高めて回収速度を向上させたところ、2020年度貿易統計によるリチウムの輸入平均価格(1kgあたり1287円)の半分以下にまで製造原価を下げることができた。

99.99%という超高純度でリチウムを回収できることに加え、水素が発生すること、そして二酸化炭素ガスの吹き込みで電池原料となる炭酸リチウムを生成できるという副産物があることもわかった。これらにより、環境負荷の低い技術としての可能性も示された。

この技術により、これまでコスト面から困難とされてきた車載用大型リチウムイオン電池の工業的リサイクルが可能となる。しかも、リチウムは核融合の燃料ともなるため、核融合の早期実現にも貢献する。さらに今回開発された技術は、そもそものリチウムの供給源である塩湖かん水からのリチウムの回収も可能にする。また、塩湖かん水よりリチウム濃度は下がるものの、海水からのリチウム回収も不可能ではない。同機構は、「海水からのリチウム回収技術確立、すなわち無尽蔵のリチウム資源の確保を目指して研究開発を進めてまいります」と話している。

フォルクスワーゲンがEV生産強化のために3社と新たな提携を締結

Volkswagen(フォルクスワーゲン)が、電気自動車のバッテリーに関わる3つの新しいパートナーシップを締結した。このドイツの自動車メーカーは、2040年までに乗用車、トラック、SUVの全車種をゼロエミッション(排ガスを一切出さない)車に移行させることを目指している。

現地時間12月8日に発表されたこの3つのパートナーシップの提携企業は、素材技術グループのUmicore(ユミコア)、バッテリースペシャリストの24M Technologies (24Mテクノロジーズ)、そしてドイツでリチウム採掘プロジェクトの開設を計画しているVulcan Energy Resources(バルカン・エナジー・リソーシズ)だ。

フォルクスワーゲンとユミコアは合弁会社を起ち上げ、フォルクスワーゲンがドイツのザルツギッターに設立するバッテリーセル工場に、リチウムイオン電池の重要な構成要素である正極材を供給する。この合弁会社の初期生産能力は20ギガワット時だが、2030年までに160ギガワット時にまで拡大することを目指している。

さらにフォルクスワーゲンは、半固体の電極を持つバッテリーを開発している24Mテクノロジーズに出資すると発表した。マサチューセッツ工科大学(MIT)からスピンアウトしたこのバッテリー技術スタートアップ企業によれば、同社の半固体電池は、従来のリチウムイオン電池よりも製造工程を簡素化でき、コストも削減できるという。フォルクスワーゲンは出資額を明らかにしていない。

そしてバルカン・エナジー・リソーシズとのパートナーシップには、両社が「カーボンニュートラル」と表現するドイツ産リチウムの供給に関する拘束力のある契約が含まれている。

両社によると、このカーボンニュートラルなリチウムが得られるのは、バルカン社の塩水(塩湖かん水)からリチウムを採取する技術が、従来の塩湖かん水を蒸発させてリチウムを抽出する方法よりも環境に優しく、再生可能エネルギーを利用した工場で処理されるからだという。

バルカンは、2026年から5年間、フォルクスワーゲンに水酸化リチウムを供給する。

これら3つの提携は、フォルクスワーゲンが電気自動車に300億ユーロ(約3兆9000億円)を投資する計画の一環だ。欧州だけでも、同社は2030年までに6つの巨大バッテリー工場の建設を予定しており、それらすべてを合計した生産能力は、240ギガワット時になる見込みだという。

バッテリーのサプライチェーンを確保するために迅速に動いている大手自動車メーカーは、フォルクスワーゲンだけではない。General Motors(ゼネラルモーターズ)は2021年12月初め、韓国のPOSCO Chemical(ポスコケミカル)と同じように合弁会社を設立し、2024年までにバッテリーの正極材を製造する新工場を北米に建設すると発表した。一方、Stellantis(ステランティス)は11月、バルカンと独自のリチウム供給契約を締結している。

これらの提携は、自動車メーカーの電動化計画が加速していることを示すだけでなく、世界的なバッテリーサプライチェーンを中国から離れたところで再構築することに貢献するという点でも注目される。

Benchmark Mineral Intelligence(ベンチマーク・ミネラル・インテリジェンス)の調べによると、現在はバッテリーの正極材と負極材の大部分が中国で製造されているという。また、現在計画されている200の大規模バッテリー工場のうち、約75%にあたる148の工場が中国に建設される予定であることもわかっている。

画像クレジット:Jens Schlueter / Getty Images

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

大林組と古河電気工業がLuup協力のもと電動キックボードのワイヤレス充電ポートを開発・実証実験、2025年の製品化目指す

古河電気工業は12月7日、大林組と共同で電動キックボードのワイヤレス充電ポートシステムを開発し、実証実験を開始したことを発表した。このシステムは、電動キックボードのシェアリングサービスにおいて、機体コストの低減と人件費の削減につながるという。2025年の製品化を目指している。

電動キックボードのシェアリングサービスでは、充電の管理が重要になる。現在は、人が巡回してキックボードの電池を交換しているが、これには多くの電池を用意し、回収した電池を充電するといった労力と人件費がかかる。電池を大容量化して手間を省こうとすれば、機体が重くなり、価格も上がってしまう。ワイヤレス充電システムなら、送電装置の上にキックボードを置くだけで充電が始まるため、そうした問題が解決される。

このシステムは、古川電気工業の再生プラスチックを利用した樹脂製ケーブルトラフ(ケーブル敷設用のU字溝)「グリーントラフ」に収めた送電装置、受電機を搭載したキックボード、電源ボックスで構成されている。ワイヤレス給電には、2枚の電極を近づけて電力を伝える電界結合方式が使われている。磁界を発生させる方式と異なり、近くにある導電体が熱を持ったりしないため、安全性が高い。

実証実験は、2022年3月まで、大林組技術研究所で行われる。また、東京・大阪・横浜・京都で電動マイクロモビリティーのシェアリングサービスを展開しているLuup(ループ)が技術協力している。

数分の1のコストで何日分も電気を蓄えられるというForm Energyのバッテリー、秘密主義な同社CEOがその理由と歩みを語る

現在の数分の1のコストで何日分も電気を蓄えることができる充電池を開発していると語るForm Energy(フォーム・エナジー)は、2017年にひと握りの創業者によって設立されて以来、優良な支援者から3億6000万ドル(約410億9600億円)以上の資金を得ているにもかかわらず、秘密主義に走りすぎていると非難されてきた。

その創業者の1人であるForm EnergyのCEOであるMateo Jaramillo(マテオ・ジャラミロ)氏は、テスラのエネルギー貯蔵グループの創設を主導した人物だ。先に開催されたイベントでジャラミロ氏は、元TechCrunchの記者で現在はCNBCの特派員であるLora Kolodny(ローラ・コロドニー)に、同社が一種の社外秘を貫いてきた理由について話した。ジャラミロ氏はフォーム・エナジーの運営方法について説明した他、テスラでElon Musk(イーロン・マスク)の下で働いた7年以上の期間を振り返り、なかなか厳しい時間であったことを語った。

インタビューの全編は以下から視聴できる。以下は、そのインタビューからの抜粋となる。

なぜ今、再生可能エネルギーの波が押し寄せ、フォーム・エナジーは別としても多くの企業が注目され、投資資金を集めているのか。

現在、世界で最も安価に入手できる電力源は再生可能資源であり、つまり地域にもよりますが、太陽光や風力です。しかし最も安い電気料金を探しているのであれば、現在では再生可能エネルギーになるでしょう。もちろん、再生可能エネルギーは天候によって左右され、天候はある程度しか予測できず、しかも断続的に変化します。つまり完全に再生可能な脱炭素の送電網を実現するためには、関連するすべてのタイムスケールにおいて断続的なエネルギー源を蓄えることができなければならないのです。

そう、太陽は毎晩沈み、毎朝戻ってくるため、その間を繋がなくてはなりません。また、季節や長い期間の気象パターンに関連したギャップについても考える必要があります。再生可能エネルギーは過去15年から20年の間に非常に大きな進歩を遂げたため、現在の普及レベルでは、電力系統の最後の30%から40%について、再生可能エネルギーや発電機を使ってどのように信頼性とコストを提供するかを真剣に考えなければなりません。

画像クレジット:Dani Padgett

ジャラミロ氏は、フォーム・エナジーが採用している鉄空気の技術が、50年近く前に連邦政府機関によって調査されたが(一度も商業化されなかった)、突然エネルギー貯蔵の方法としての意味を持つようになった理由についても言及している。

まず、最も普及している技術は揚水発電です。現在、世界にあるエネルギー貯蔵技術の中では圧倒的に揚水発電が多いのです。ですがその上を行く技術は、もちろんリチウムイオンです。このイベントにいる全員が5つのリチウムイオン電池を持っていると思います。それだけリチウムイオン電池が普及しているということです。

しかし、再生可能エネルギーの普及が進むと、リチウムイオンの能力とは異なるものが必要になってきます。風力、水力、太陽光などの再生可能エネルギーを100%使用するだけでなく、数時間を超える電力供給の中断についても考えなくてはなりません。そのためには、リチウムイオンよりもはるかに安価である必要があります。

(一方)鉄は非常に豊富な金属物質です。地球上で最も多く採掘されている金属です。人間は鉄についてよく知っています。鉄をいじくり回して、鉄にちなんだ名前が付いた時代もありました。そして多くのことがわかりました。そして現在も、もちろん鉄鋼生産の主原料として使用しています。鉄はまた、非常に安価です。どの大陸にも豊富にあり、世界最大級の規模を誇る産業でもあります。そして、これは新しい化学ではないというのはその通りです。フォーム・エナジーは鉄空気を化学的に発明したわけではありません。私たちがやったことは、2つの国立研究所が最初に研究したともいえる化学物質を、50年先の未来に引っ張り出し、現代の技術と方法論、電気化学、腐食、金属工学に関する現代の知識を適用して、40~50年前に存在していた性能を今日において可能なところまで引き上げたのです。つまり、将来のリチウムイオンの10分の1のコストのデバイスに取り組んでいるのです。(つまり)深い脱炭素化、高度な再生可能性、安価で信頼性の高い電力網を実現することができるということです。

「鉄空気電池」とはどういう意味でしょうか。簡単に言えば、電気化学的に鉄を錆びさせ、錆びていない状態に戻すということです。それが私たちのやっていることです。非常に可逆的なプロセスですが、非常に優れたやり方で行わなくてはなりません。

さらにジャラミロ氏は、同社がシステムの効率性について秘密にしてきた理由についても言及した(「秘密にしてきたのだとしたら、それは私たちのやっていることが不必要に誇張されるのを避けようとしてきたからです」)。

彼は、技術がどのように機能するかについてより正確に話してくれた。現在、鉄鋼業界で年間1億トンもの大量生産が行われているブルーベリーサイズの「高純度の」鉄ペレットをフォーム・エナジーがどのように活用しているのかが気になる方は、10分前後の部分をご覧いただきたい。

さらにコロドニーは、テスラで学んだことのうち、フォーム・エナジーで再現しようとしていること、そして自動車メーカーでのキャリアから学んだことのうち、再現したくないことを尋ねた。

私はテスラに約7年半いました。2009年に入社して、2016年末に退社しました。テスラはレッスンの工場です。クルマを作っているともいえますが、実際にやっていることは人々にレッスンを提供することです。その弧の中にいるのはすばらしい場所でした。私が入社したときの社員数は数百人でしたが、私が退社するときには3万人、4万人といった規模になっていました。

私が退職したのは、当時、テスラのエネルギー事業であるPowerwall(パワーウォール)とPowerpack(パワーパック)をすでに立ち上げていたからです。私は結婚しています。妻と私の間には3人の子どもがいます。結婚生活を続けたいですし、子どもたちの人生の一部でありたいと思っています。イーロンと一緒に働いた7年半は、私にとっては十分でした。また、私は意図的にイーロンと良い関係のまま退社したいと思っていましたし、物事は良い方向に向かっていましたので、私にとってはそれで良かったのです。

画像クレジット:Dani Padgett

私は後悔なく退社しましたが、多くのことを学びました。それは一緒に仕事をする人たち、そしてその人たちの質ほど重要なものはないということです。彼らは、取り組んでいる仕事のミッションに対して、可能な限り情熱的にコミットしていなくてはなりません。

もう1つの教訓は、時には人をその人自身から守らなければならないということです。それは転倒する可能性があるからです。美徳も行き過ぎれば悪徳になります。だからこそ、会社にコミットし、ミッションに熱心に取り組んでいる人に求めることには限界があり、限界を置くべきということを認識することが大切です。フォーム・エナジーでは、現在約200名の社員が働いていますが、全員が非常に情熱的で、献身的で、使命感を持っているという文化を作り、かつ家庭などを維持できていることを願います。この2つは相反するものではありません。

画像クレジット:Dani Padgett

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(文:Connie Loizos、翻訳:Dragonfly)

トヨタが米国初のバッテリー工場をノースカロライナに建設

自動車メーカーの多くが自社のバッテリー生産工場でサプライチェーンの主導権を握ろうとしている中、トヨタ自動車は米国初のバッテリー工場をノースカロライナ州に建設する。同社と同州政府幹部が米国時間12月6日、明らかにした。

トヨタは、トヨタ・バッテリー・マニュファクチャリング・ノースカロライナ(TBMNC)という名称のこの工場に12億9000万ドル(約1460億円)を投資し、2025年に生産を開始する予定だ。この投資は、2030年までに米国で自動車用バッテリーに34億ドル(約3860億円)を投資するという広範な約束の一部だ。

稼働開始時にはTBMNCには4本の生産ラインが設置され、各ラインが電気自動車やハイブリッド車約20万台分のバッテリーを生産できるようになる。トヨタは、生産ラインを少なくとも6本に拡張し、年間120万台分のバッテリーを生産することを目指している。新工場では約1750人の新規雇用を創出し、バッテリーの生産には100%再生可能エネルギーを使用すると同社は述べている。

このニュースは、米議会が電気自動車に対する消費者税控除の見直しを検討している中でのものだ。現在、電気自動車の販売台数が20万台以下のOEMに対しては約7500ドル(約85万円)の控除が適用されている。民主党のグループは、電気自動車のバッテリーが米国内で製造されたものであれば追加で500ドル(約5万7000円)を、また組合員のいる米国内工場で生産された電気自動車についてはさらに4500ドル(約51万円)を加算することを提案している。

トヨタは、この税控除の改正に真っ向から反対しており、議員に宛てた手紙の中で「露骨に偏っている」と指摘している。この法案は、Ford(フォード)、General Motors(ゼネラルモーターズ)、Stellantis(ステランティス)の大手3社と全米自動車労組に支持されている。

トヨタは、バッテリー生産工場の設置を発表した最新の主要自動車メーカー企業だ。こうした動きは、原材料や主要バッテリー部品のサプライチェーンが逼迫する可能性を考慮した取り組みの一環だ。Rebecca Bellan(レベッカ・ベラン)がTechCrunch+に書いたように、GMがLG Chem(LG 化学)との合弁会社Ultium(アルティウム)を設立したり、Ford MotorがSK Innovation(SKイノベーション)と契約したりするなど、バッテリーサプライヤーとの提携や合弁事業は、OEMが供給をコントロールする必要性を認識していることを示している。

画像クレジット:Kirsten Korosec

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Nariko Mizoguchi

GMがポスコケミカルと合弁会社を設立、バッテリーの重要材料「正極活物質」を製造する新工場を北米に建設

General Motors(ゼネラルモーターズ)は、韓国のPOSCO Chemical(ポスコケミカル)と合弁会社を設立し、2024年までにバッテリーの正極活物質を製造する新工場を北米に建設すると発表。垂直統合型のバッテリーサプライチェーン運営への取り組みをさらに深めようとしている。

正極活物質は電気自動車用バッテリーのコストの約40%を占める重要な材料だ。Benchmark Mineral Intelligence(ベンチマーク・ミネラル・インテリジェンス)によると、正極と負極(リチウムイオン電池のもう1つの構成要素)は、その大部分が現在は中国で生産されているという。GMは今回の発表により、2025年までにバッテリー生産の大部分を北米に移すという目標に一歩近づくことになる。これは現存のバッテリーサプライチェーンと比べると、地理的な大改革を意味する。

「特にバッテリーの生産に関して、我々は自らの運命をコントロールする必要があります」と、GMの役員であるDoug Parks(ダグ・パークス)氏は、米国時間12月1日に行われた記者会見で語った。「だから我々は、独自のプラットフォームのために、北米を中心とする垂直統合戦略を追求しているのです」。

GMはすでに、LG Energy Solution(LGエナジーソリューション)との合弁事業であるUltium Cells LLC(アルティウム・セルズ)によるバッテリーセル生産や、Li-Cycle(リ・サイクル)とのバッテリーリサイクル契約など、バッテリーサプライチェーンの他の部分を積極的にコントロールしている。この新工場で生産される材料は、GMが350億ドル(約4兆円)を投じる電動化戦略基盤となる新しいニッケル・コバルト・マンガン・アルミニウム(NCMA)電池である「Ultium(アルティウム)」バッテリーのセルに直接使用される予定だ。

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同社の幹部は、工場の場所や投資額については明らかにしなかったものの、これが多額の投資であることはほぼ間違いない。なぜなら、この新工場で生産される材料は、GMがUltium Cells合弁会社の下で計画している4つのバッテリー製造施設で必要となる正極活物質の「ほとんど」を供給することになるからだ。これによって、GMは最終的に米国内で合計140ギガワット時の電池製造能力を持つことになる。

2024年までに新施設を稼働させるのであれば、この合弁会社は迅速に行動する必要があるだろう。両社によると、早ければ来年の第1四半期には立地を発表できるとのこと。

GMの垂直統合戦略の背景には、自動車から家電までさまざまな業界に影響を与え続けているチップ不足の問題がある。

「半導体の危機は、むしろ私たちが機敏性を備える必要があることを教えてくれました」と、パークス氏は語っている。

さらに同氏は、原材料の調達を含むサプライチェーンの多くを北米に移すことで、コバルト調達における人権侵害や環境への影響など、バッテリー生産におけるより厳しい現実に対処するためにも役立つと語る。

「私たちは、サプライチェーンを現在よりも改善することができると考えています。セキュリティの観点、つまり私たちが北米アプローチと呼ぶ場所的セキュリティにおいても、そして同時に、環境面においてもです」と、パークス氏は語った。

画像クレジット:GM

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

Energy Domeは太陽エネルギーの貯蔵に二酸化炭素を利用する

長時間にわたるエネルギー貯蔵は厄介だ。だが多くのバッテリー技術は「EVをさらに数百マイル走らせるために、バッテリーをどれだけ速く充電できるか」に焦点を当ててきた。急速充電は、月が夜空をゆっくりと散歩している12時間に使う電力を、昼の12時間で太陽から得ようとすることとは根本的に異なる問題だ。

米国時間11月30日、Energy Dome(エナジードーム)は、拠点を置くイタリアのサルデーニャ島での実証プロジェクトで、世界初の商用CO2(二酸化炭素)バッテリーを設置するために、1100万ドル(約12億5000万円)のシリーズA資金調達を行ったことを発表した。

同社によれば、CO2バッテリーの最適な充電 / 放電サイクルは4〜24時間であり、日次および日中のサイクルに最適だという。また、これは現在急成長している市場セグメントであり、既存のバッテリー技術が十分にカバーできていなことも指摘している。具体的には、太陽光発電の余力がある日中にCO2バッテリーを充電しておいて、電力需要が太陽光の供給量を上回る夕方や夜間のピーク時に放電することを想定している。なぜなら──まあ当たり前過ぎてわざわざ書くのもはばかられるが──夜は太陽が出ていないからなのだ。

同社は、市販のコンポーネントを使用して構築されているそのCO2バッテリーが、75〜80%の充放電効率を達成していると主張している。しかし、おそらくもっと興味深いのは、バッテリーの動作寿命がおそそ25年程度になると予測されていることだ。他の電力貯蔵ソリューションの事情をよく知っている人なら、ほとんどのソリューションの動作性能が、10年を超える頃には大幅に低下し始めることに気がついているだろう。同社は、製品のライフサイクルコスト全体を考慮した場合、エネルギーを貯蔵するコストが、同じサイズのリチウムイオン電池で貯蔵するコストの約半分になると予測している。

この技術は非常に優れており、同社はCO2をガスから液体に、そしてまたガスに戻す閉ループサイクルで利用する。ソリューションの一部となる、ガス状のCO2を充填した膨張可能なガス容器部品にちなんで、会社は「ドーム」と命名されている。

充電時には、システムは電力網から電力を引き込む。この電力を用いてドームからCO2を引き出して圧縮するコンプレッサーを駆動し、熱を発生させるのだ。この熱は蓄熱装置に蓄えられる。次に、CO2は圧力下で液化され、環境と同じ温度で液体CO2容器に保管され、充電側サイクルが完了する。放電時には、このサイクルが逆になる。液体のCO2を気化させ、蓄熱装置から熱を回収し、高温のCO2をタービンへ送り込んで発電機を駆動する。電気はグリッドに戻され、CO2は大気に放出されることなくドームを再膨張させ、次の充電サイクルに使われる準備が整えられる。このシステムの貯蔵容量は最大200MWhだ。

今回のラウンドはディープテックVCの360 Capitalが主導し、他の多くの投資家が投資ラウンドに参加した。その中には、インパクト投資アプローチを採用する大手銀行バークレイズの一部門であるBarclays’ Sustainable Impact Capital プログラム、ジュネーブを拠点とするマルチファミリーオフィスのNovum Capital Partners、そしてRMIとNew EnergyNexusによって設立されたグローバルな気候テクノロジースタートアップアクセラレーターのThird Derivativeが含まれている。

画像クレジット:Energy Dome

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(文:Haje Jan Kamps、翻訳:sako)

LG化学のバッテリー部門LG Energy Solution、韓国取引所の承認を得てIPOを計画

LG Chem(LG化学)が全額出資するバッテリー部門のLG Energy Solution(LGエナジーソリューション)は新規株式公開の予備承認を得た。韓国取引所が現地時間11月30日に声明文で明らかにした。

LG Energy Solutionは早ければ今週中にも金融監督庁にIPO申請書を提出し、2022年1月末の上場を目指している、と報じられている。

同社は6月、米自動車メーカーGeneral Motors(ゼネラルモーターズ)の電気自動車Chevrolet Boltがバッテリーセルの欠陥で発火のリスクが高まる可能性があるとして一連のリコールを行ったことを受けて、IPO手続きを一時停止した。

General Motorsは、バッテリーセル製造パートナーであるLG Chemに、推定10億ドル(約1127億円)相当の損失の弁済を求めると述べていた。LG EnergyとLG Electronics(LG電子)は、Bolt EVのリコールにかかる費用として11億ドル(約1240億円)をGMに支払うことでリコール問題を解決した。

関連記事:GMがシボレー・ボルトのリコール損失約1100億円をLG Chemに請求すると表明

9月にGeneral Motorsとリコール関連問題で合意したことを受けて、LG Energy Solutionは10月、予定していたIPOを再開すると発表した。

ソウルのアナリストは、LG Energy Solutionの評価額を505億〜589億ドル(約5兆7230億〜6兆6750億円)と見積もった上で、IPOの規模を83億ドル(約9405億円)と予想しており、これは韓国では最大級のIPO案件となる。

同社の広報担当者は、IPOの詳細についてのコメントを却下した。

LG Energy Solutionは、財務報告書に基づき、9月時点の売上高を112億ドル(約1兆2690億円)としている。

同社は、中国のCATLBYD、日本のパナソニック、韓国のSK InnovationとSamsung SDIと競合している。

LG Chemは、2025年までに52億ドル(約5892億円)を投資して米国でのバッテリー事業を強化する計画を発表している

関連記事:LG化学がEV用バッテリー生産拡大へ向け2025年までに5770億円を投資

同社は先週、LG Energy Solution Michiganが、北米に新たなEV用バッテリー生産施設を設立するため、13億6000万ドル(約1541億円)の資金調達を計画していると発表した。同社はこの資金を利用してEV用バッテリーとエネルギー貯蔵システム(ESS)の生産を増やし、増大する需要に対応する。

LG Energy SolutionとStellantisは10月、北米でバッテリーセルおよびモジュールを生産する合弁会社を設立するという予備的な取引を発表した。この取引はまだ規制当局の承認を得る必要があるが、合弁会社は年間40ギガワット時の生産能力を持つことになるという。

また、LG Energy Solutionは正極材の生産に使用される主要鉱物(コバルトとニッケル)の安定供給に関して、オーストラリアの鉱山会社と6年間の契約を結んでいる

関連記事:LG Energy Solutionが豪州企業とニッケルとコバルトの購入契約を締結、EV用バッテリー製造のため

画像クレジット:Joan Cros Garcia – Corbis

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(文:Kate Park、翻訳:Nariko Mizoguchi

プジョーやフィアットを傘下に持つStellantisがEV電池材料確保のためリチウム供給契約を締結

Fiat Chrysler Automobiles(フィアット・クライスラー・オートモービルズ)とフランスの自動車メーカーGroupe PSA(グループPSA)が折半出資で合併して誕生したグローバル企業Stellantis(ステランティス)は、リチウム生産者と拘束力のある契約を締結した。今回の合意は、EVの需要が高まる中、自動車メーカーとサプライヤーの間で相次ぎ行われている取引の1つだ。

Vulcan Energy Resourcesは、ドイツのアッパーラインヴァレー(上部ライン渓谷)にあるブラインプロジェクトからバッテリーグレードの水酸化リチウムを生産する。一般的に、リチウムは岩石を採掘して生産されるか、塩水鉱床から抽出される。どちらも環境面で問題があるが、Vulcanのサイトでは、再生可能な地熱エネルギーを利用してリチウムを抽出する。

また、このプロジェクトでは、使用済みのブラインを閉ループサイクルで再注入するため、生産滓のような残留物は発生しない。ドイツのプロジェクトは、南米などで行われている他のブラインプロジェクトに比べ水や土地の使用量が少ないため、二酸化炭素排出量が少なく、運用コストも低く抑えられる可能性があると、ドイツ・オーストラリアを拠点とする同社はウェブサイトで述べている。

この5年間の供給契約に基づき、Vulcanは2026年からドイツで抽出したリチウムをStellantisに送ることになる。契約期間中、Vulcanは8万1千トンから9万9千トンの水酸化リチウムを自動車メーカーに供給する。両社はこの取引の財務条件を明らかにしていないが、抽出サイトでの商業運転の開始と製品の適格性の両方を条件としている。

今回の契約は、Stellantisが7月に発表した、今後4年間で300億ユーロ(355億ドル、約3兆8480億円)をEVと新しいソフトウェアに充てる徹底的な電動化戦略の一環だ。同社は2025年までに130GWh、2030年までに北米と欧州の5つの工場で約260GWhのバッテリーを製造することを目標としている。

関連記事:多国籍自動車会社ステランティスが2025年までに約3.9兆円を電気自動車に投資

これは、世界の自動車メーカー各社が、EVバッテリーの主要鉱物であるリチウムのような有限の原材料を確保しようとしていることを示す最新の兆候だ。General Motors(GM、ゼネラルモーターズ)はカリフォルニア州のリチウム抽出プロジェクトに同様の投資を行っており、Tesla(テスラ)はニッケルなどの鉱物について独自の供給契約を結んでいる

一方、Renault(ルノー)は先週、欧州産リチウムを最大3万2千トン供給する契約をVulcanと締結した。

画像クレジット:Stellantis

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Aya Nakazato)

【コラム】電動スクーター事業者は34.6兆円規模の産業でどう収益化していくのか?

自動車に比べて、電動スクーターは、都市部のモビリティと環境にポジティブな影響を与えることができる低炭素で静か、かつ安価な交通手段だ。しかし、その有望な可能性にもかかわらず、都市住民の大多数は、電動スクーターをおもちゃか、公共の安全を脅かすものと認識している。

それにともない、この業界へのベンチャー投資の額もわずかなものとなっている。2010年以降、共有型マイクロモビリティは世界全体で90億ドル(約1兆円)の投資を受けたのだが、それに比べて2021年の第3四半期だけで米国のスタートアップ企業が調達したのは723億ドル(約8兆3400億円)だ。人々が一斉に自動車ではなく低炭素マイクロモビリティを選択するような、真に持続可能な都市環境を目指すのであれば、このビジネスを収益化する方法を見つけなければならない。

当初、電動スクーター事業者は、できるだけ多くの電動スクーターを市場に投入することで利用者の注目を集めようとしており、物理的な存在が成功を意味していた。都市が規制を導入してライセンスを付与するようになると、事業者の関心は市当局からの承認を得ることに移った、なぜならライセンスはエンドコンシューマーへのアクセスを確保し、長期的な計画を立てるための信頼感を与えるからだ。

このライセンスは、投資家の負担を軽減し、ライセンスを取得したスタートアップは資金調達が急増した。例えば2021年には、Tier(ティアー)、Voi(ヴォイ)、Dott(ドット)などの企業が累計4億9000万ドル(約5652億円)の資金を調達した

この事実は、市場での競争を目指す他の電動スクーター事業者に、投資を集めて成長したいのであれば、まず都市部での地位を確立しろという明確なメッセージを送っている。現在のところ、これは主に、インフラが整備されており、マイクロモビリティの輸送やビジネスモデルのテストサイトとして機能しているヨーロッパに当てはまる。

しかし、マイクロモビリティが都市コミュニティにとって効率的であることが証明されれば、これらの手法は、主要都市ですでに自転車レーンの整備が進んでいる米国など、他の地域にも広がっていくだろう。2030年には、世界のマイクロモビリティは3000億〜5000億ドル(約34兆6000億〜57兆6842億円)規模の産業になると予想されていることを考えると、努力する価値は十分にある。

しかし、単に入札に勝っただけでは十分ではない、なぜならライセンスを取得した事業者は次の競争に進むからだ。事業者は、エンドコンシューマーと投資家の両方の期待に応えなければならない。つまり、最高の製品と製品体験を提供しながら、収益性を達成しなければならない。

これまでのところ、電動スクーターのシェアリングビジネスは収益性が高いとはいえず、既存のビジネスモデルには改善の余地がたくさんある。最も顕著な問題は、コストの60%を占めるといわれる高額な充電とオペレーションであり、ここを少しでも最適化することだけでも有益になる。

では、なにができるだろうか?

オペレーションは会社によって異なるかもしれないが、充電のシナリオはほとんどない。マイクロモビリティ事業者は、1日の終わりに手作業で車両を回収して充電倉庫に持ち込むか、死んだバッテリーを手作業で新しいバッテリーに交換している。どちらも人手を要し、このコストを削減することを目的としたソリューションを提供するプレイヤーが現れている。

台湾の電動スクーターメーカーGogoro(ゴゴロ)は、充電作業をライダーに引き継ぐスワッピングステーションを展開した。今のところ、それは2つの電動スクーターブランドにしか対応していない。ドイツのTierも同様のアプローチを選択し、最近Tier Energy Network(ティア・エナジー・ネットワーク)を開始した。これにより、Tierの利用者は、地元のパートナーショップに設置されたPowerBox(パワーボックス)を使って、自分でバッテリーを交換できるようになった。しかし、バッテリー交換を行うには、自社で保有する電動スクーター1台につき最低2個のバッテリーを用意しなければならず、バッテリーセルは最も高価なハードウェア部品だ。

また、そのブランドのバッテリーがある場所での電池交換のためにルートを変更しなければならないことは、一部の消費者にとって商品体験を悪化させる可能性があり、競争が厳しいときに極めて重要な事業者のユーザー数を制限することになる。

さらに、マイクロモビリティへの需要が高まると、ステーションには同時に多数の車両を収容できることが求められるようになる。それにより、ユニバーサルなインフラの需要が生まれる。Kuhmute(クムート)やPBSC Urban Solutions(PBSCアーバンソリューションズ)などの企業は、この問題に部分的に取り組んでおり、さまざまなeモビリティ車両のタイプやブランドに対応したユニバーサル充電器を開発しているが、そのようなソリューションの多くは電気接触式であるため、一度に対応できる車両の数は限られている。その上、ステーションは2〜3カ月で接触酸化しやすく、街の景観を変えてしまう。

そうなると、次のステップとしては、駐車スペースを大幅に拡大したワンタッチ充電器を展開するのが自然だ。しかし、駐車スペースの話になると、都市が重要なステークホルダーとして登場する。都市はすでに多くの住宅用地を自動車用の駐車スペースに転用する必要があるのに、電動スクーターの充電用にも転用する必要がある。スワップステーションも充電ドックも地上に設置する必要があるからだ。

この問題に取り組み始めているプレイヤーもいるし、電気自動車の分野ではすでにそのような製品が存在している。例えば、米国のWiTricity(ワイトリシティ)は、その上に駐車すると、無線で充電することができる地上用充電パッドを開発している。この充電器には地上のハードウェアがないため、通常の道路や歩道と同じように使用することができる。また、破壊可能な部品がないため、破壊行為への対策にもなる。

この技術を電動スクーターの分野に応用すれば、余分なバッテリーや交換・接続のための手作業を省くことができ、ユニットエコノミクスの向上につながる。このような標準化は、エンドコンシューマーにとっても、マイクロモビリティ企業にとってもメリットがある。

編集部注:本稿の執筆者Roman Bysko(ローマン・ビスコ)氏は、次世代の電気充電ステーションを開発するモビリティ・インフラストラクチャ企業Meredotの共同創立者兼CEO。

画像クレジット:Inside Creative House / Getty Images

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(文:Roman Bysko、翻訳:Yuta Kaminishi)