アップルが日本時間3月9日午前3時から製品発表イベント開催

太平洋時間3月8日午前10時(日本時間3月9日午前3時)に開催されるApple(アップル)の次のビッグイベントの招待状が配られた。Apple Parkから中継されるオンラインイベントとなる予定だ。誰でもAppleのウェブサイトで視聴することができる。

招待状には、ネオンカラーをしたトンネルの入り口のようなAppleのロゴが描かれている。「Peek performance」と書かれていて、Appleは2022年、発表するハードウェアをたくさん準備しているという噂がある。

Appleが3月8日にイベントを開催する予定だとBloomberg(ブルームバーグ)が最初に報じた。ウクライナで悲惨な事件が起きているが、それでも同社はオンラインイベントを進めたいようだ。

同社はこのイベントで、5G接続対応のリフレッシュされたiPhone SE、全体的にスペックが向上したiPad Airアップデート版、Appleシリコンを搭載した新しいMacモデルなどを発表する可能性がある。

同社は、インテル製CPUを自社製チップに置き換えるため、Macの全ラインナップを刷新している。エントリーレベルの新MacBook Pro、よりパワフルなMac Mini、デザインを一新したMacBook Air、あるいはMac ProやiMac Proの新モデルなど、新しいコンピュータに関してはさまざまな可能性がある。しかし、一度にすべてのMac新モデルを発表するつもりはないようで、詳細はもう数日待たなければならない。

TechCrunchはこのイベントをカバーする。乞うご期待。

画像クレジット:Apple

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(文:Romain Dillet、翻訳:Nariko Mizoguchi

香港のイベントプラットフォームEventXがシリーズBで約2.8億円調達、HTCとVRで協力も視野に

EventXのCEOであるSum Wong(サムウォン)氏(画像クレジット:EventX)

各国が新型コロナ規制を緩和するにつれ、人々の活動は対面式に戻りつつある。しかし、バーチャルイベント分野は、少なくともアジアにおいては、投資家を魅了し続けている。香港を拠点とするイベント管理プラットフォームEventXは、香港時間2月16日、シリーズBでさらに800万ドル(約9億2000万円)を調達し、このラウンドで確保した総額を1800万ドル(約20億8000万円)に引き上げた。

今回の資金調達は、Hillhouse Capital(高瓴資本)のアーリーステージ投資部門であるGL Ventures(高瓴創投)が主導した。これまでの投資家には、Hillhouse Capitalの元パートナーが設立した投資会社Gaocheng Capital(高成资本)や、近年VRに力を入れている台湾の大手電機メーカーHTCなどが含まれている。EventXは、ポストマネー評価額を公表していない。

今回のシリーズBは、EventXが設立されてから8年後に実施された。これは、中国本土のバーンレートが高いインターネット企業に比べて、異例の忍耐強い資金調達ペースだ。同社は、ユーザー登録のサポートから参加者のバーチャル名刺交換まで、現実のイベントを管理することからスタートした。2020年に新型コロナウイルスが出現したとき、デジタル化のチャンスだと考え、ウェビナーやバーチャル展示会などのライブイベントをサポートするHopin(ホピン)のような新サービスを開発した。現在では、主催者がイベントを通じて新たな顧客やパートナーを開拓するリード生成機能も備えている。

対面式イベントを封じるパンデミック規制のおかげで、Hopinは最近の記憶では最も急速に成長した企業の1つとなった。しかし先週、ロンドンを拠点とする同スタートアップは、ポストコロナにバーチャルイベントへの需要が鈍化すると判断し、スタッフの12%を解雇したと報じられた。パンデミックはEventXにも恩恵をもたらし、同社プラットフォームの2021年第4四半期のオンライン参加者数は120%増加した。また、ライブイベントが元通りになったとしても、同社は長年続いてきたオフラインビジネスを維持することができると考えています。

これまでに、同社はアジアを中心に100以上の都市でイベントの開催を支援し、そのプラットフォームには500万人以上の参加者が訪れている。同社の100人のチームは、香港、シンガポール、日本、韓国、台湾に分散している。

同社は今回の資金を、買収、製品開発、人材採用、アジア(特に台湾と東南アジア)での事業拡大に充てる予定だ。また、投資家であるHTCと協力して、イベント体験にVRソリューションを導入することも視野に入れている。

画像クレジット:

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(文:Rita Liao、翻訳:Aya Nakazato)

香港のイベントプラットフォームEventXがシリーズBで約2.8億円調達、HTCとVRで協力も視野に

EventXのCEOであるSum Wong(サムウォン)氏(画像クレジット:EventX)

各国が新型コロナ規制を緩和するにつれ、人々の活動は対面式に戻りつつある。しかし、バーチャルイベント分野は、少なくともアジアにおいては、投資家を魅了し続けている。香港を拠点とするイベント管理プラットフォームEventXは、香港時間2月16日、シリーズBでさらに800万ドル(約9億2000万円)を調達し、このラウンドで確保した総額を1800万ドル(約20億8000万円)に引き上げた。

今回の資金調達は、Hillhouse Capital(高瓴資本)のアーリーステージ投資部門であるGL Ventures(高瓴創投)が主導した。これまでの投資家には、Hillhouse Capitalの元パートナーが設立した投資会社Gaocheng Capital(高成资本)や、近年VRに力を入れている台湾の大手電機メーカーHTCなどが含まれている。EventXは、ポストマネー評価額を公表していない。

今回のシリーズBは、EventXが設立されてから8年後に実施された。これは、中国本土のバーンレートが高いインターネット企業に比べて、異例の忍耐強い資金調達ペースだ。同社は、ユーザー登録のサポートから参加者のバーチャル名刺交換まで、現実のイベントを管理することからスタートした。2020年に新型コロナウイルスが出現したとき、デジタル化のチャンスだと考え、ウェビナーやバーチャル展示会などのライブイベントをサポートするHopin(ホピン)のような新サービスを開発した。現在では、主催者がイベントを通じて新たな顧客やパートナーを開拓するリード生成機能も備えている。

対面式イベントを封じるパンデミック規制のおかげで、Hopinは最近の記憶では最も急速に成長した企業の1つとなった。しかし先週、ロンドンを拠点とする同スタートアップは、ポストコロナにバーチャルイベントへの需要が鈍化すると判断し、スタッフの12%を解雇したと報じられた。パンデミックはEventXにも恩恵をもたらし、同社プラットフォームの2021年第4四半期のオンライン参加者数は120%増加した。また、ライブイベントが元通りになったとしても、同社は長年続いてきたオフラインビジネスを維持することができると考えています。

これまでに、同社はアジアを中心に100以上の都市でイベントの開催を支援し、そのプラットフォームには500万人以上の参加者が訪れている。同社の100人のチームは、香港、シンガポール、日本、韓国、台湾に分散している。

同社は今回の資金を、買収、製品開発、人材採用、アジア(特に台湾と東南アジア)での事業拡大に充てる予定だ。また、投資家であるHTCと協力して、イベント体験にVRソリューションを導入することも視野に入れている。

画像クレジット:

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(文:Rita Liao、翻訳:Aya Nakazato)

バーチャルイベントで急成長したユニコーンHopinが「持続可能な成長」を理由に12%の人員削減

複数の情報筋によると、パンデミックの中で急速に規模を拡大したことでしばしば称賛されるバーチャルイベントプラットフォームのHopin(ホピン)が、スタッフの12%に当たる138名のフルタイム従業員と、一部の契約社員を削減したとのこと。TechCrunchに対しリストラを認めたHopinの広報担当者は、影響を受けた従業員には、3カ月分の報酬、健康保険、およびラップトップを支給することも確認している。また、株式の権利確定条件となっている1年間の対象勤務期間を取り除き、人材紹介会社のRiseSmart(ライズスマート)を利用して就職活動を支援するとのこと。

「前例のない成長といくつかの買収を経て、当社はより効率的で持続的な成長のための目標に沿って組織を再編します」と同社はTechCrunchへの声明で述べている。「チームメイトと別れるのは簡単なことではありませんが、彼らがHopinに与えてくれたインパクトに深く感謝しています」とも。

TechCrunchが入手したスクリーンショットによると、HopinのCEOであるJohnny Boufarha(ジョニー・ブファラート)氏は、同社のSlackにこの組織再編に関する声明を投稿している。

同氏は「当社は必要な財務規律と組織的な厳密さを確保しつつ、より効率的になることを約束します」と記している。また、今回のリストラは、急速な成長と買収に伴い「ビジネスに忍び寄るオーバーラップや重複を解決するため」と指摘している。注目すべきは、HopinはStreamYardを2億5000万ドル(約290億円)で買収したのを含め、2021年だけで5社を買収していることだ。

この声明は、Hopinが56億5000万ドル(約6548億円)の評価額で4億ドル(約464億円)の資金調達を完了したわずか11カ月前とは異なるトーンを示している。当時、ブファラート氏はTechCrunchに対し、彼の会社は「2022年には運用面でIPOの準備を整えていくつもりだ」と述べていた。ベンチャー支援を受けたこのスタートアップは、Crunchbaseによると、Tiger Global(タイガー・グローバル)、Andreessen Horowitz(a16z、アンドリーセン・ホロウィッツ)、General Catalyst(ゼネラル・カタリスト)、Accel(アクセル)、Slack Fund(スラック・ファンド)、Coatue(コートゥ)、Salesforce Ventures(セールスフォースベンチャーズ)などのトップ投資家から、2年間で最大10億ドル(約1159億円)の既知のベンチャーキャピタルを集めている。

このユニコーン企業でリストラが行われているというニュースを最初に報じたレポーターのGergely Orosz(ゲルゲリー・オロッシュ)氏は、記事の中で「Hopinの最大の問題は、パンデミック時の需要に目を奪われ、アフターコロナの世界への準備ができていなかったことだ」と指摘している。

パンデミックで増幅された需要に追いつくために、スタートアップが急成長を求めて規律を失ったというよく似たストーリーは、ここ数週間で他の業界にも波及している。

Peloton(ペロトン)は、この「得やすいものは失いやすい」トレンドを最も顕著に示しており、今週、2800人の雇用を削減し、CEOのJohn Foley(ジョン・フォーリー)氏を会社の指揮から外した。この動きは、フィットネス機器メーカーであるPelotonが、消費者からの需要の低迷により、トレッドミルやバイク製品の生産を停止せざるを得なくなったことを受けての措置だ。

画像クレジット:AndreyPopov / Getty Images

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(文:Natasha Mascarenhas、翻訳:Aya Nakazato)

LinkedIn、インタラクティブなClubhouseスタイルの音声イベント機能を2022年1月開始、動画版は今春登場予定

8億人以上の人々がキャリアを積むために仕事用のプロフィールを掲載しているLinkedInは、次のステップとして、プラットフォームをより多く使ってもらう狙いだ。同社は新しいイベントプラットフォームを展開し、インタラクティブなバーチャルライブイベントの掲載、主催、マーケティングを行う予定だ。まず、音声のみの製品をベータ版として2022年1月に発表し、その後、春に動画版を発表する。最初は、LinkedInをオーガナイザーやホストとして利用しているクリエイターをターゲットにする。

ここ数年の新型コロナ生活の中で、オンラインイベントが多くの支持を得ていることから、現在の計画では、LinkedInの新しいイベント製品はすべてオンラインで提供し、フォーマットをオープンにしてイベントの運営者自身がフォーマットを作ることができるようにする予定だ。

プロダクトマネージャーの Jake Poses(ジェイク・ポーズ)氏はインタビューで次のように答えている。「私たちの理念は、主催する人が管理できるようにすることです。オンラインの円卓会議、炉辺談話などを簡単に開催できるようにしたい。フォーマルなイベントを開催したい人もいれば、インフォーマルなイベントを開催したい人もいるでしょう。また、リスナーとコミュニケーションをとりたい、質問を受けたいという要望もあるでしょう。私たちは、プロフェッショナルな人々にインタラクティブな機能を提供し、サポートします」。

2022年1月開始するオーディオイベント機能には聞き覚えがあるかもしれない。これはClubhouseに匹敵するもので、LinkedInの取り組みが最初に記事となったのは2021年3月だった。LinkedInは2021年、このイベントサービスに追加する可能性のある他の機能を試してきた。例えば、2021年9月にテストを開始した有料のチケットオプションなどだ。しかしポーズ氏によると、今のところインタラクティブイベントは無料サービスとして開始され、現時点ではチケット制にする計画はないとしている。

(LinkedInは近いうちにチケット制を導入すると思われる。私が尋ねたところ、Clubhouseの広報担当者は「クリエイターファーストというマントラの一環として」、当スタートアップ企業は「クリエイターが自分の作品をさらにマネタイズできるよう、チケット制イベントを含む複数の選択肢を模索している」と言っていたが、時期は特定できなかった。また、動画に関しては今のところロードマップにないことも確認した。彼女は「当社は、ソーシャルオーディオ体験に引き続き注力しており、オーディオ中心の新機能がコミュニティの体験をどのように強化できるかを引き続き模索しています」と付け加えた。)

オーディオイベントのモデルはこちら。

2022年1月末に開始されるこの新しいイベントプラットフォームには、他のサードパーティ製のソフトウェアを使用せずにインタラクティブなコンテンツをエンド・ツー・エンドで実行できるツールが含まれる。ホストはLinkedInから直接イベントを記録・実行できる他、オンラインの参加者とホストがライブで会話し、議論を進行できるツールや、イベント開催中と終了後に参加者が互いにコミュニケーションするためのツールが備わる予定だ。また、LinkedInは当然ながらイベントをリストアップし、プラットフォーム間でイベントに関する情報発信のサポートを行う。

これらのイベントのホストについては、まず、LinkedInを利用してすでに多くの人々とつながっている個人、つまり、TikTokなどの他のソーシャルプラットフォームで見られるような独自のクリエイターをターゲットとし、キャリア開発、専門的な話題、その他のLinkedIn中心の専門分野に向けたコンテンツを構築していく予定である。

LinkedInはここ数カ月、より広く、より活発なクリエイターコミュニティの育成に取り組んできた。この目的のために、2021年秋には2500万ドル(約28億6407万円)の資金とインキュベーターを立ち上げた。ポーズ氏によると、現在配信製品であるLinkedIn Liveを利用できるクリエイターは150万人とのことだ。イベントの企画と開催は、その戦略を拡張するための自然な流れといえる。

LinkedInは時間とともに、企業や大きな組織にもLinkedInでイベントを構築してもらいたいと考えているとポーズ氏は付け加えた。しかし大きな組織では、より大きな予算、より高い生産価値を目指したインフラ、そしてチケットやその他のサービスが必要になることが多い。同氏は、必要な人、あるいは希望する人は、サードパーティのアプリケーションやソフトウェアを製品に統合することができるようになると語った。(実際、今のところツールのほとんどはLinkedIn自身で構築されていることも認めていた。LinkedInを所有しているMicrosoftとの統合もあるのは確かではあるが)。

フィードに表示される動画機能のモデルはこちら。

LinkedInがイベントへの尽力により大きな関心を持ったのは、やや時代をさかのぼり、パンデミックの時期より前の2019年に初めてデビューし、対面での集まりに焦点を当てていたEventsハブに始まる。新型コロナウイルス感染症のパンデミックが起こってから数カ月後、LinkedInはバーチャルエンゲージメントを目的としたオンライン投票や配信スタイルの動画イベントの開始により、それまでオンラインイベントシナリオで使用されていた方法の一部を公式化した。

同社にとって、これらのイベントは成功を収めている。ポーズ氏は、年間のオンラインイベント作成が2021年1年間で150%増加し、同じ期間にLinkedIn Liveのバーチャルイベント参加者が231%増加したと述べた。取り上げられたトピックは、AIイノベーション基調講演ファイナンシャルプランニングライブ住宅施工メンターシップサイバーセキュリティ授賞式などだ(これらによっても、長期的にLinkedInがこれらのイベントの運営者として個人のクリエイター以上を抱え得る可能性が伝わる)。

LinkedInはまた、その規模と資金力を利用して、イベント分野で活躍する他の興味深い企業への投資や買収も行っている。2021年6月、LinkedInは、オンラインイベントの大企業であるHopin(2021年8月の直近の資金調達ラウンドで77億5000万ドル(約8874億6025万円)と評価された)に投資していることを明らかにした。また2021年8月には、クリエイターがハウツーやその他のメンタリング動画を作成・共有できるJumpropeというスタートアップ企業を買収している。(実際、これがポーズの入社の経緯であり、クリエイター、イベント、動画を網羅する製品をリードすることになった。)

これらのことは、LinkedInのコンテンツ戦略における次の論理的なステップであるだけでなく、パンデミックから2年経った今でも多くの人が在宅勤務をしており、新型コロナウイルス感染症が多くの人にとって脅威であることを考えると、明らかに時代の兆しのように感じられるのである。

だが、オンラインビデオ会議、そして率直に言ってオンラインなものすべてに対して私たちの多くが抱く疲労の影響をLinkedInはどのように受けるのか、また、オンラインイベントの選択肢が1つ増えて、結局多すぎるということが判明した場合、LinkedInは調整できるのかということを考えざるを得ない。

ポーズ氏の答えは、オンラインイベントはさらなる民主化のために必要なものであるが、イベント企画者の中にはハイブリッドなアプローチを取る人もいるかもしれない、というものだった。

オンラインやハイブリッドなものは「この先の時代」かもしれないが、インタラクティブイベントが解決しようとしているものはまったく異なるものだとポーズ氏はいう。

「物心ついたときから、私は講演やミートアップに出かけていました。これらは、社会人がコミュニケーションし、物事を学ぶ方法の主軸です。しかし、これらのイベントには、お金と移動時間、部屋に入って話す勇気、そしてイベントを運営するスペースが必要です。私たちの狙うところは、対面からバーチャルへ移行することで、実際にアクセスを民主化し、より多くの人々にそれを開放することです」と彼はいう。

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(文:Ingrid Lunden、翻訳:Dragonfly)

息を呑むような没入型バーチャルコンサートの未来を切り開くAmazeVRが約17億円調達

コンテンツ生成ツールでお気に入りのアーティストのVRコンサートを体験できるバーチャルリアリティコンサートプラットフォームAmazeVR(アメイズVR)は、1500万ドル(約17億円)を調達した発表した。このラウンドでは、3週間で募集枠を超える申し込みがあった。

Partners InvestmentMurex Partnersがこの資金調達ラウンドを共同でリードし、Smilegate Investment、Quantum Ventures KoreaABC Partners、Everrich Group、GS Groupのコーポレートベンチャーキャピタル部門のGS Futures、We Ventures、Base Investment、Dunamu&Partners、そして既存投資家のMirae Asset Venture Investment、Mirae Asset Capital、Partners Investment、Timewise Investmentが参加した。

AmazeVRは2015年の創業以来、合計3080万ドル(約35億円)を調達しており、急成長を推進するために2022年初めにシリーズBを調達する計画だという。同社の共同CEOであるErnest Lee(アーネスト・リー)氏はTechCrunchに対し、新たな資金をさらなる従業員の採用に充てる予定だと語った。リー氏によると、AmazeVRは2021年を12人の従業員でスタートしたが、現在はハリウッドとソウルに3倍の41人を抱えている。

「当社は、関わっている(音楽、エンターテインメント、テック、ゲーム)業界から、優秀な人材を集めることができました」と同氏は話した。「これにより、VRとメタバースの人気の高まりを最大限に活用し、主要アーティストの息を呑むようなVRコンサートを、まず映画館に、そして世界中の家庭に届けるのに理想的な位置につけています」 。

ソーシャルメディアの登場で、ファンはお気に入りのアーティストにかつてないほどアクセスできるようになったが、それでもスクリーンで隔てられているのが現状だ。AmazeVRによるVRコンサートは、ファンをスクリーンの向こう側に連れて行き、お気に入りのアーティストと対面させることで人間的なつながりを生み出す、とリー氏は語る。ユーザーはアバターとして参加し、他のユーザーとぶらついたり、一緒にVRコンサートを体験したりする。

「ファンの記憶に残るのは、すばらしいVR体験ではなく、幻想的な没入感の中で好きなアーティストと実際に対面し、現実との境界線を曖昧にする、目に見えないような優れた技術を構築することが当社のゴールです」とリー氏はTechCrunchのインタビューで述べた。

ロサンゼルスに本社を置き、ソウルにオフィスを構えるAmazeVRは、JB Lee(JB・リー)氏、Steve Lee(スティーブ・リー)氏、Jeremy Nam(ジェレミー・ナム)氏、Steven Koo(スティーブン・クー)氏という、韓国のメッセージングアプリKakao(カカオ)の元幹部が設立した会社だ。Kakaoの株式市場デビュー後、グローバルなインパクトを持つ企業の設立に再挑戦しようと考えた共同創業者4人は、ソウルを離れ、VRで未来を切り開くためにシリコンバレーに移住した。

リー氏によると、AmazeVRは2015年からVR技術を開発していて、2019年末にVRコンサートに完全に方向転換したという。

同社はパンデミック以前から、VRコンサートを通じたより没入感のある音楽体験の必要性を信じていた。しかし、音楽業界は少し距離を感じ、懐疑的だった。その主な理由は、最も収益性の高い収入源であるライブコンサートのカニバリゼーション(共食い現象)に対する懸念だったとリー氏はいう。

最近では、新型コロナウイルスの大流行によって市場での採用が加速し、AmazeVRは製品とマーケットの適合性を迅速に見つけられるようになっている。音楽業界も新しい技術に対して考え方が柔軟になり、そしてVRコンサートがライブコンサートではなく、新しいカテゴリーのエンターテインメントであることに人々が気づき始めたと、リー氏は続けた。

「音楽業界はパラダイムシフトを迎え、多くの企業が次の大きなものを取り入れようとしています。ライブストリームからバーチャルコンサート、Fortnite(フォートナイト)のショーまで多くの試みを目にしました。パンデミックはこのシフトを加速させただけです」とリー氏は語った。「これらの他のすべてのソリューションは、すでに存在するものから増分価値を提供するだけであり、他のソリューションはファンにとってカバーする価値、すなわち人間的なつながりを真に捉えていません」

AmazeVRは2022年春、グラミー賞を3回受賞しているMegan Thee Stallion(ミーガン・ジー・スタリオ)氏とともに、米国内の一部のAMCシアターを巡演する初の商業VRコンサートを展開する。AmazeVRはすでに2人目のアーティストとして世界的な一流アーティストを確保し、3人目のアーティストを最終決定しているとリー氏は語った。同社初のVRコンサートツアーは、長年の研究開発の結果、独自の9Kカメラと、複雑なUnreal EngineベースのVRコンサート視覚効果(VFX)モジュールを自動化し、一度に100台以上のヘッドセットを駆動できるソフトウェアによるものだ。同社は、コンテンツ制作の規模を拡大し、2024年までに新しいVRコンサートをシアター内と自宅の視聴者の両方に毎週リリースする予定だ。

「VRコンサートがいかにインパクトがあるかは、実際に体験してみないとわかりません。VRはついに2Dの体験をすべて吹き飛ばすことができるのです。当社の技術のおかげで、スクリーンからは得られないリアルな臨場感、お気に入りのアーティストがすぐそばにいて、あなたと向かい合っているような感覚を呼び起こすことができます」とリー氏は話した。「これは音楽の新しい次元を切り開くもので、録音が登場して以来、アーティストとファンがつながる初の新しい方法の1つです。投資家がこのことを理解し、当社の革新と成長を支援してくれることに感激しています」。

画像クレジット:AmazeVR

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(文:Kate Park、翻訳:Nariko Mizoguchi

【コラム】パンデミックで再び変化したCESを振り返る、テックの進化に合わせて家電ショーの進化も必要だ

CES開催までの数週間、私たちは難しい決断を迫られた。年末年始の旅行シーズンに向けて、オミクロンの感染者が全米で急増したため、飛行機をキャンセルして戦略を練り直したのだ。そのため、年末の数週間は混乱した。しかし、CESが毎年第1週に開催され続ける限り、ハードウェアに関する記事を生業とする私たちは、今後どちらにしても年末年始にあまり休みを取ることはできないだろう。

確かに、数字を見てこの決断に至ったのは我々だけではない。Engadget、The Verge、PCMag、CNETなど、2022年はリスクに見合うリターンが得られないと判断した企業が続々と登場した。決して簡単な選択ではなかった。CESの仕事は大変で、ストレスが多く、時には悲惨なこともあるため、私たちもよく不満を漏らす。しかし、CESは長い間、その年のトレンドを直接見て、触ることができる貴重な機会なのだ。

それは、近い将来やってくるコンシューマー向けテクノロジーと空想的なSFが混在する魅力的なイベントで、エウレカパークのスクラムの中で業界のリーダーと会ったり、スタートアップと交流したりする機会でもある。風邪やインフルエンザにかかるかもしれないし、スーツケースいっぱいに洗濯物や業界グッズ(コミック業界の友人たちは、愛情を込めて「the con crud(コン・クラッド)」と呼んでいる)を詰め込んで持ち帰ることになるだろうが、それは真冬のコンベンションセンターに大勢の人が詰め込まれた結果だ。

もちろん、パンデミック時には、費用対効果の分析が大きく変わる。現在までに、米国内だけで5700万人の感染者が報告され、83万1000人が死亡している。そしてもちろん、後者の数字だけを見ていると、新型コロナウイルスが人体に与える永続的な影響などは考慮されていない。また、休暇を利用した旅行が感染者の総数に与える影響も、まだ十分に見えていないようだ。結局のところ、私たちにとって意味のある決断はただ1つ、CESをリモートで取材し、再び取材することだったのだ。

CESに参加することを選んだ人たちを恨むつもりはない(確かに、比較的参加者の少ない展示会について記録することが、どれほど魅力的なのかを考えていた)。 パンデミックも3年目になり、このウイルスが何であるか、どのように広がるかについて、前回CESが直接開催された2020年1月よりもはるかによくわかるようになった。今はワクチンやブースターもある。ショーの運営団体であるCTAは、義務づけやマスクのルールなどを規定した。しかし、私たちだけで決断したわけではなかった。

参加を見送ったメディアに加え、多くの大手企業が訴訟に参加した。その不完全なリストには、GM(ゼネラルモーターズ)、Google(グーグル)、Lenovo(レノボ)、Intel(インテル)、T-Mobile(Tモバイル)、AT&T、Meta(メタ)、Twitter(ツイッター)、Amazon(アマゾン)、Microsoft(マイクロソフト)、Peloton(ペロトン)、TikTok(ティックトック)、Mercedes(メルセデス)、BMW、Velodyne(ベロダイン)、IBM、Proctor & Gamble(プロクター・アンド・ギャンブル)、OnePlus(ワンプラス)、Pinterest(ピンタレスト)などが含まれている。数週間にわたり、CESから発信される主要なニュースは、有名企業の辞退についてだった。テクノロジーカンファレンスの凱旋となるはずだったCTAが、このような報道を期待していたわけではないことは、ほぼ明らかだろう。

CTAの会長であるGary Shapiro(ゲーリー・シャピロ)氏は、クリスマスの日にLas Vegas Review-Journal紙に「CESはラスベガスで継続されるだろうし、継続しなければならない」という見出しで、激しい論説を寄稿した。もちろん、シャピロ氏のいう「go on(継続)」とは、直接会うという意味である。イノベーションは我々の未来に必要であり、そのイノベーションを促進するために対面式のCESが必要である、という一線を引いたのである。シャピロ氏は、CESの辞退者を「事件や有名企業のレンズを通してしか語れないマスコミや評論家の太鼓持ち」と一蹴し、直接参加しないことを選んだ人たちに同情を示した後、対面式のイベントを中止する考えを「恐怖の中で生きること」と同等だと表現した。

CTAのような組織はコンシューマー向けテクノロジーにとって重要であり、CESのようなショーはその存続のために必要である、という現実的な議論も可能だったはずだ。しかし、この論説は、CESのようなイベントに対して、ありえないほど高いハードルを設定した。バーチャルカンファレンス全盛の時代にCESは必要なのか、という疑問はすでにあっただろうし、このような論説で語られるような、人生を変えるような期待を抱かせることができなかったことは、その疑問をさらに深めるにすぎない。

実は、テクノロジーというものは、ほとんどが反復的なものだ。CESのようなイベントでは、少なくとも理論上、市場に出ることを前提とした製品に焦点が当てられるので、なおさらそうだ。つまり、毎年目にする製品のほとんどは、少し速くなったプロセッサーや、少し解像度が高くなったスクリーンなのだ。私は長い間この業界を取材してきたが、毎年革命に期待していると、失望する人生を送ることになると断言できる。

これは、私たち全員が本質的に認識していることだが、多くの流行語(「メタバース」という言葉を目にするたびに、会場のホール1から出られるかどうか試してみて欲しい)やHyundai(現代自動車)のような空想的なSFのプレゼンテーションによって見えなくなってしまっているのだ。最終日に向けて、私は午前中、このショーで「人生を変える」と思えるような何かを最後に見たのはいつだっただろうと考えていた。しかし、今のところ、そのようなものは見つかっていない。

結局のところ、CESが始まると同時に、出展を見合わせた企業の話題が実際のCESのニュースより多くなるのではという懸念は払拭された。CESを取材するメディアは、多くの場合、遠隔地からではあるが、CESを取材した。これまで多くのCESに直接参加してきた身としては不思議な体験だったが、2021年のオールバーチャルショーで予習していたことでもある。

しかし、その結果はやはり賛否両論なものだった。ありがたいことに、オンライン版のショーは、2021年よりも混乱が少なかった。プレスカンファレンスは、プラットフォーム上でより見やすくなった。しかし「真の発見」という点ではまだ問題があり、それがオンラインに移行したときに結局不足している点だ。突然、エウレカパークでおもしろいスタートアップに出くわす機会が、底なしの受信トレイに投げ込まれるただのメールへと姿を変えてしまうのだ。

これは、私がCTAに同意する点だ。私たちが対面式のイベントから完全に離れた場合、プラットフォームを持たないスタートアップ企業が最終的に最も多くを失うことになってしまうのだ。そのため、私も、直接会って話をする必要性を感じている人たちに確実に共感することができる。それに、デポジット代やホテル代、飛行機代は、GMやGoogleよりも、新しいスタートアップ企業の収益に大きな影響を与えるという事実もある。

その数週間の間に、私は、スタートアップ企業から、彼らもまた出席しないことを選択したというメールを何通も受け取った。また、参加する企業からも発表を延期するというメッセージが届いた。製品が発表されても、それをカバーする人がいなければ、それは本当に発表と言えるのだろうか?1年で最も忙しい週に製品を発表することに疑問を持つ人は多く、その疑問は、それをカバーする人がいないとなると、さらに顕著になる。このようなことから、従来はCES後の数週間が不作であったのが、2022年はそうでもなくなりそうな気がしている。

CESの真実は、常に進化しているということだ。間近で見るのは難しいが、一歩下がって見ると、そのマクロなトレンドがはっきりと浮かび上がってくる。CES 2012の最大のニュースを振り返ることは、そうしたトレンドを追う上で興味深い訓練となった。中でも、モバイル中心の展示会から脱却し、自動車関連の展示が大きな比重を占めるようになったことが大きな特徴だ。今やショーのかなりの部分を占めている。

CTAの細則には「世界的なテクノロジーイベントの正式名称は『CES』です。このイベントを指すのに、『Consumer Electronics Show』や『International CES』は使わないでください」と記されている。このように、Consumer Electronics AssociationからConsumer Technology Associationへの変更も、このショーがそれまでの枠を超えて成長しようとしていることを明確に示している。そして、正直なところ、その試みは成功していたと言っていい。

13年前、私は「CES 2009、来場者数22%減」という記事を書いた(この記事は長くなってしまったが)。その2012年の回顧録で述べたように、その年のショーは最高の参加者数だった。この成長はその後数年間続き、2019年にピークを迎えることになる。

以前にもCESは死んだと宣言した人がいる。実際、彼らは何度もそう言ってきた。しかし、CESを成長させ続けるということは、進化し続けるということであり、ショーのあり方に関する期待の変化に対応することでもあるのだ。2022年、私は友人や同僚に会うことができなかった。エウレカパークのホールを歩いたり、コンベンションセンターの向かいにある、金曜と土曜に女優のPia Zadora(ピア・ザドラ)がショーを行う暗い小さなイタリアンレストランで食事をしたり(ラスベガスは実に不思議なところだ)することもできなかった。

しかし、今週は毎晩10時(東部標準時)には家でベッドに入れているのも嫌じゃなかった。また、2022年のショーに直接参加しなかったことで、私たちや他のサイトの取材が必ずしもうまくいかなかったと言えるかどうかもわからない。これまで述べてきたように、私のCESの楽しみ方は他の参加者とは違う。もし、このパンデミックが終息したら、またいつか行ってみたいと思っている。しかし、1月初旬の寒い冬の日に、ミラージュでiPhoneケースを見ている自分がいないとしても、それについてもそれほど怒ることはきっとないだろう。

画像クレジット:Alex Wong / Getty Images

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(文:Brian Heater、翻訳:Akihito Mizukoshi)

【コラム】10年前のCES 2012を振り返る「Ultrabook、Noka Windows、全家庭に3Dプリンターを!」

家電製品(consumer electronics)は時間の経過を図る「ものさし」としてはよろしくない。そして、正直にいってConsumer Electronics Show(コンシューマー・エレクトロニクス・ショー)はさらによくない。これまで私がCESに行った回数はゆうに2桁に達しているが、だいたいが同じような体験だった。1週間続くニュースとピカピカのガジェットの山。トレーラーやプレスセンター、ホテルの部屋、コンベンションセンター会場などからは、ときとして非現実的なその年のトレンドを決めようとするニュースが飛び込んでくる。

ラスベガス・コンベンションセンターと数多くの博覧会会場とホテルのスイートルームは、善意と計画的陳腐化の亡霊で溢れかえる。それはこの業界の特質だ。今や日常となったデバイスのいくつかは、過去10年にCESでデビューしたものだが、ほとんどの場合、デバイスは現れては消える、そもそも店の陳列棚にたどりつけばの話だが。

CES 2022は奇妙なイベントになりそうだ。その理由はフロアで起ころうとしているどんなことでもなく、世界的にやむを得ない状況によるものだ(ただし、聞くところによるとBackstreet Boys[バックストリート・ボーイズ]のメンバーの1人は自宅のボクシング器具を見せびらかすために登場するらしい)。新型コロナウイルス感染症が蔓延する前の対面カンファレンスの意義を問う声はもちろんある。もっとも、いつだってCESは例外的であり、それはハードウェアが発表されるのと同じ部屋にいることの重要性によるものだ。

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2020年のパンデミックるによるイベント中止をかろうじて逃れたCES 2021は、オールバーチャルの未来を予見するためのリハーサルだった。その結果はといえば、中途半端なものだった。それに対して、CES 2012にそんな問題は一切なかった。その前数年間の(世界同時不況による)わずかな落ち込みの後、その年の参加者は史上最多の15万3000人を記録した。成長はその後数年間ラスベガスを席巻し続け、2019年には18万2000人と再びピークを迎えた、と主催者であるCTA(全米民生技術協会)は述べている。

2012年のCESは、もはや存在しない形の携帯電話ショーのようだった。Mobile World Congress(モバイル・ワールド・コングレス)を翌月に控え、多くの大物企業はApple(アップル)にならって主力製品を自分たちの時間に発表するようになった結果、CESはかつてのような携帯電話の中心地ではなくなった。しかし、その後の10年間、その空間は別の分野の製品によってすぐに埋められた。中でも最も目立っているのが自動車で、今やショーの中心となっている。

Sprint Corporationの通信機器8T8Rの無線ユニットに接続されたカラーコードケーブル。1つの基地局の8基の受信機と8基の送信機を組み合わせて、SprintのLTE TDD 2.5 GHz回線の性能を向上させる。2014年8月13日水曜日、イリノイ州シカゴのビルの屋上にて。Sprintは7月に6年ぶりの四半期黒字を報告し、予測以上の契約者を獲得してアナリストの売上予測を上回った(画像クレジット:Daniel Acker/Bloomberg via Getty Images)

LTEはCES 2012会場のいたるところにあり、数年前の5G襲来のようだった。CNETは「4G騒動」とまで見出しに書いた。SprintがラスベガスのショーでWimax(ワイマックス)をデモしてから5年、会社はLTEの世界に踏み込む準備を整えた。Sony Xperia S(ソニー・エクスペリアS)が見出しを飾り、初代iPhoneがBlackBerryの時代の終焉の幕開けを運命づけた5年後、Motorola(モトローラ)はDroid 4(ドロイド4)で勇敢にも物理的キーボードを復活させた。

画像クレジット:TechCrunch

しかし、実際のところこのショーは、発表された2種類のLTE対応Windows携帯端末のうちの1台のものだった。HTC Titan II(HTCタイタン2)は、次世代ワイヤレステクノロジーを同OSで採用した最初のデバイスだったが、4.3インチAMOLED(アクティブマトリクス有機EL)ディスプレイ、8メガピクセル背面カメラ、512MB RAMと人目を引くデザインで参加者の興味をかきたてたのはNokia Lumia 900(ノキア・ルミア900)だった。

その1年前、Nokiaの歯に衣着せぬCEOだったStephen Elop(スティーブン・イロップ)氏は、会社の苦悩を氷の海に取り残されて燃え上がる船になぞらえた。Microsoft(マイクロソフト)との提携はNokiaの決断だった。1年後、Nokiaはモバイル部門をMicrosoftに売却した。

QWERTYキーボードにしがみつこうとしたDroid 4の勇気(結局運は尽きたとしても)に似て、Sony(ソニー)のbloggie(ブロギー)は、スタンドアロン型ブロギングカムコーダーの最後のあがきだった。それはCisco(シスコ)が、2009年に当時絶大な人気だったポケットカムコーダーを5億900万ドル(約509億円)で買収したFlip Video(フリップ・ビデオ)事業から撤退してから1年後のことだった。死んでいくカテゴリーの最後の燃えさしを「どうにでもなれ」とばかりに拾うのはSonyに任せた。

画像クレジット:TechCrunch

そして、あのUltrabook(ウルトラブック)があった。このカテゴリーの時代があったとすれば、それはラスベガスでの5日間だった。その年の半ばまでに、カテゴリーの終焉に関する話題はすでに始まっていた。Intel(インテル)が命名し、Copmutex 2011(コンピュテックス2011)で発表されたそのカテゴリーは、最新の薄くて軽い分類だったが、実際のところPCメーカーそれぞれによるMacBook Air対抗の試みだった。

Intelはそのカテゴリーに厳格なガイダンスを設け、薄さ、軽さ、バッテリー寿命などに焦点を当てた。結局、法外なコストと絶え間なく変わるゴールとスペックに加え、スマートフォンとタブレットの台頭によってUltrabookの運命は尽きた。

画像クレジット:TechCrunch

CES 2012では、デスクトップ3Dプリンティングは未来であり、MakerBot(メーカーボット)はその中心だった。ニューヨーク市拠点でオープンソースプロジェクト、RepRap(レップラップ)のスピンアウトだった同社は、ショーの場を利用してReplicator(リプリケーター)を発表した。前機種のThing-O-Matic(シング・オー・マチック)を飛躍的に改善したシステムは、Star Trek(スター・トレック)に由来する名前を擁し、すべての家庭に3Dプリンターをという夢に向かう大きな一歩を感じさせた。

価格、技術的限界、そしてFormlabs(フォームラブス)などのライバルのより高度なテクノロジーの到来によって、この分野の多くの企業が財を失い、結果的にかなりの規模のテック・ハイプ・バブルを明確に示すことになった。1年後、MakerBotは3Dプリンティングの巨人、Stratasys(ストラタシス)に買収された。同社は教育市場向けの3Dテクノロジーに焦点を合わせていた。

いつものことだが、CESはコンセプトであり続ける運命と思われる多数のコンセプトをもたらす。Samsung(サムスン)のSmart Window(スマート・ウィンドウ)も当然のごとくその1つだった。透明な窓型ディスプレイにタッチスクリーンを備えたデバイスは、誰もがあらゆるものを巨大スクリーンにしたがっていると思われた時代に多くの参加者の目を引いたが、CESブースの飾り以上にはなることはなかったようだ。付け加えておくと、それ以来同社は社内インキュベーター「C-Lab」の一環として、人工スマートウィンドウに投資している。なぜなら、繰り返しになるが、消費者エレクトロニクスはこと前進に関する限り、異様なほど繰り返しの多い業界だからだ。

10年がすぎ、CES 2012は成功よりも失敗に見えるかもしれない。たしかに、最も騒がれた製品は、後々最もダメージを受けている。すべての家庭に3Dプリンターもスマート・ウィンドウもまだない。でも、そうだ、LTEはちょっとした成功だろう。

画像クレジット:MANDEL NGAN/AFP / Getty Images

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(文:Brian Heater、翻訳:Nob Takahashi / facebook

CES 2022会場出展を断念する企業が続出、オミクロン株感染拡大受け

ここ数日、CESが懸念している件はかなり静かだった。休日だったためだ。参加断念を発表した最新の主要企業はMicrosoft(マイクロソフト)で、同社はクリスマスイブの日にラスベガスの会場に足を運ぶことはないと発表した。このニュースはGM(ゼネラルモーターズ)、Google(グーグル)、Lenovo(レノボ)、Intel(インテル)、T-Mobile(T-モバイル)、AT&T、Meta(メタ)、Twitter(ツイッター)、Amazon(アマゾン)、TikTok(ティクトック)、Pinterest(ピンタレスト)からの同様の発表に続くものだった。

米国時間202年21月5日から始まる展示会には、Samsung(サムスン)、LG、BMW、Qualcomm(クアルコム)、ソニーなど、多数のビッグネームがまだ参加を予定している。12月23日時点で、全米民生技術協会(CTA)は「2200社以上」の企業が展示会に参加する予定だとしていた。ちなみに、多くのスタートアップが参加を見合わせ、また、多くの企業がまだ会場に出展する予定だと筆者は聞いている。

AMD、MSI、OnePlus(ワンプラス)、Proctor & Gamble(プロクター&ギャンブル)など、いくつかの主要企業が米国12月28日、出展見合わせ企業リストに加わった。AMDの広報担当者は、TechCrunchへの声明の中でその事実を認めた。

慎重に検討した結果、AMDはラスベガスで開催されるCES 2022への会場出展を取り止め、代わりにバーチャル体験に移行することにしました。AMD 2022 Product Premiereは、デジタル専用のライブストリームとして計画されていましたが、当社の従業員、パートナー、コミュニティの健康と安全を第一に考え、対面でのエンゲージメントはバーチャルへと移行することになりました。1月4日に予定どおり、当社のエキサイティングなニュースをすべてお伝えすることを楽しみにしています。

OnePlusはこのイベントの公式出展者ではなく、この大きな展示会に合わせてラスベガスでイベントを開催する予定だった。同社はその後、オミクロン変異種をめぐる懸念の高まりから、ラスベガスでの会場イベント開催を中止することをTechCrunchに認めた。

ゲーム会社のMSIは、プレスリリースを通じてこの展示会に出展しないことを明らかにした。「12月以降、急速に広がっているオミクロン変異種によって、米国では新型コロナウイルスの感染者が急増しています」と副社長のSam Chern(サム・チェン)氏は声明で述べた。「当社の従業員、顧客、ファンの健康と福祉は、当社の最優先事項です。よって、当社はCES 2022にリアルで参加しないことを決定し、オンライン製品発表という形でバーチャル参加する予定です」。

画像クレジット:Proctor & Gamble

Gillette(ジレット)やOral-B(オーラルB)といったブランドのテクノロジーをデビューさせるのにこのイベントを利用してきたProctor & Gambleは、声明の中で同社の決定を発表した。

CES 2022の計画を開始して以来、P&Gの社員とパートナーの健康と福祉を最優先事項としてきました。全米民生技術協会がかなりの安全プロトコルを導入したことは認識していますが、新型コロナウイルスの感染が急速に拡大していることから、最善の注意を払い、全バーチャル体験に移行することにしました。

CTAの代表、Gary Shapiro(ゲイリー・シャピロ)氏は、クリスマスの日にラスベガス・レビュージャーナル紙に掲載された論説で、展示会から撤退したテック大企業に関するメディアの報道を「ドラマや有名企業のレンズを通してのみ物語を語るプレスやその他の評論家によるドラムビートのようなものだ」と反論した。

画像クレジット:David Becker / Getty Images

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(文:Brian Heater、翻訳:Nariko Mizoguchi

マイクロソフトもCES 2022へのリアル出展を中止、インテル、GM、アマゾン、グーグルに続き

GM、Google(グーグル)、Lenovo(レノボ)、Intel(インテル)、T-Mobile(T-モバイル)、AT&T、Meta(メタ)、Twitter(ツイッター)、Amazon(アマゾン)、TikTok(ティックトック)、Pinterest(ピンタレスト)、そして今回はMicrosoft(マイクロソフト)。ソフトウェアの巨人である同社は、開催まで2週間を切っているCESへの現地参加取りやめを発表する最新のビッグネームとなった。

「急速に進化する新型コロナ環境の最新データを検討した結果、MicrosoftはCES 2022での直接参加を見送ることを決定しました」と同社はThe Vergeに送った声明の中で述べた。

2年近く続いたバーチャルショーからのコンシューマーエレクトロニクス業界の復帰とみなされていた同イベントは、オミクロン株に関する懸念がホリデーシーズンの旅行者数の増加と相まって高まる中、この1週間で急速に勢いを失いつつある。

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GMもCES出展を中止、主催者は今も対面式イベントを計画中

CESの運営団体である全米民生技術協会(CTA)は、物理的な展示会を予定どおり開催するという決定に変わりはないと述べている。米国時間12月23日夜、GoogleとGeneral Motors(ゼネラル・モーターズ)が相次いで参加中止を表明したことを受けて、CTAはTechCrunchの取材に応じ、同協会の会長兼CEOであるGary Shapiro(ゲーリー・シャピロ)氏から新たなコメントを発表した。

ラスベガスで開催されるCES 2022には、2200社以上の企業が対面で参加することを確認しています。私たちの焦点は今も、テック業界が集結し、対面で参加できない人たちにCESのマジックをデジタルで体験してもらうことです。CES 2022は、規模の大小を問わず、世界中の企業が製品を発表し、ブランドを構築し、パートナーシップを結ぶ機会を提供します。CESにおけるワクチン接種の義務化、マスク着用、PCR検査提供といった包括的な健康対策に加え、参加人数制限と社会的距離対策により、参加者、出展者はラスベガスの会場で社会的距離を置きながら、あるいはオンラインで体験する場合も、有意義で生産的なイベントに参加できると確信しています。

2日前に発表されたCTAの声明では、バックアウトの影響は出展スペースの約7%に止まっているとのことだった。CTAは、大手企業や、同様に慎重な姿勢をとっているより小規模なスタートアップ各社が急速に撤退していることを考慮し、まだ最新の数字を発表していない。

現在、Samsung(サムスン)、LG、BMW、Qualcom(クアルコム )、ソニーなど、多くの大手企業が対面式の参加を続ける姿勢を見せている。

画像クレジット:Akio Kon/Bloomberg / Getty Images

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(文:Brian Heater、翻訳:Aya Nakazato)

GMもCES出展を中止、主催者は今も対面式イベントを計画中

更新:CTAの責任者であるGary Shapiro(ゲーリー・シャピロ)氏からTechCrunch宛に以下の最新情報が送られてきた。

2200社以上の企業がCES 2022に対面で参加することを確認しています。私たちの焦点は今も、テック業界が集結し、対面で参加できない人たちにCESの魔法をデジタルで体験してもらうことです。CES 2022は、世界中の企業、大企業にも小さな会社にも、プロダクトを発表し、ブランドを構築し、パートナー契約を結ぶ機会を提供します。CESにおける徹底した健康管理とワクチン接種義務、マスク着用、PCR検査の提供に加えた参加人数制限とソーシャルディスタンス対策を踏まえ、私たちは参加者と展示者がソーシャルディスタンスを保ちながら価値ある生産的イベントをラスベガスで、そしてオンラインでも体験できると確信しています。

過去数年、CESには自動車の存在感が急速に高まっている。ここは厳密には自動車ショーではないが、多くの自動車メーカーがテクノロジーファーストのアプローチを導入している今、まさにその方向に向かっていることを感じる。しかし、米国時間12月23日夜、General Motors(ゼネラル・モーターズ)は、多くの第一線企業に続き、Consumer Electronics Showへの対面式出展を中止することを決めた。

「当社は2022年1月のCES 2022にオールデジタル方式で参加することにいたしました」と声明で発表した。「1月5日に大きな発表を行い、Chevrolet Silverado EV(シボレー・シルバラードEV)を披露する予定は変わりません」。

これは大規模な展示を予定していた企業にとって大きな変更だ。イベントではCEOのMary Barra(メアリー・バラ)氏の注目の基調講演と電動のChevy Silveradoのリアルの場でのデビューが予定されていた。バラ氏は講演をリモートで実施する予定だと同社は言っている。GMは計画を変更した最初の自動車メーカーではないが、最大の会社だ。Mobieye(モービルアイ)で大きな注目を集めているWaymo(ウェイモ)とIntel(インテル)も、すでに同様の発表を行っている。なお現時点では、米国運輸長官Pete Buttigieg(ピート・ブティジェッジ)氏をQualcomm(クアルコム)のプレジデント兼CEO、Christiano Amon(クリスティアーノ・アモン)氏がインタビューする予定だ。

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他に最近参加を取りやめた大物には、Google(グーグル)、Lenovo(レノボ)、T-Mobile(ティー・モバイル)、AT&T(エーティー・アンド・ティー)、Meta(メタ)、Twitter(ツイッター)、Amazon(アマゾン)、TikTok(ティックトック)、Pinterest(ピンタレスト)、Casio(カシオ)他、大手メディアも数多くいる。NVIDIA(エヌビディア)のように、当初からバーチャル・ファーストの参加を予定していた会社もある。2020年初めに新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の第一波が迫ってきて以来、CESは最初の主要対面テックイベントの復活と期待されていた……かつてほどの勢いはないにせよ。

しかし、オミクロン株の感染力によって、大小数多くの企業が予定変更を余儀なくされた。TechCrunchが米国時間12月23日に主催者であるCTAと話した際、彼らはワクチン接種義務をはじめとする安全措置を強化して、まだイベント開催を決行する予定だった。

画像クレジット:GM/ Photo by Steve Fecht

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(文:Brian Heater、翻訳:Nob Takahashi / facebook

インテルもCESへの対面式参加見送りを決定、バーチャル体験に転換

米国時間12月23日、Lenovo(レノボ)とAlphabet傘下のWaymo(ウェイモ)がCES 2022の対面イベント参加を見送るというニュースに続き、Intel(インテル)は、オミクロン変異株に関する懸念が高まっていることから、同イベントでの存在を「ミニマイズ」する方向で動いていると発表した。

チップの巨人である同社は、TechCrunchに提供した声明の中でこう述べた。「当社の従業員、パートナー、お客様の健康と安全は常に最優先事項です。今回のCESでは、保健当局者との協議の結果、Intelのの安全ポリシーに基づき、現場スタッフを最小限に抑え、デジタルファーストのライブエクスペリエンスに移行します。CESのすべてのコンテンツと体験を、Intelニュースルームを通じてバーチャルにお届けしますので、ぜひご参加ください」。

Lenovo(レノボ)やWaymo(ウェイモ)とともに、Intelは、T-Mobile(T-モバイル)、AT&T、Meta(メタ)、Twitter(ツイッター)、Amazon(アマゾン)、TikTok(ティックトック)、Pinterest(ピンタレスト)など、増え続ける企業のリストに仲間入りした。CESの運営団体であるCTAは、TechCrunchに提供した最新の声明の中で、展示会は計画どおり開催されると述べている(同団体は健康プロトコルと、これまでに脱落者が比較的少なかったことを挙げている)。

「ワクチン接種の義務化、マスク着用、新型コロナ検査提供といったCESの包括的な健康対策に加え、出席者数の抑制と社会的距離対策により、参加者、出展者は社会的距離を置きながらラスベガスでの有意義で生産的なイベントに参加し、我々のデジタルアクセスで実りある体験ができると確信しています」と同団体は述べている。

大企業だけでなく、数多くのスタートアップ企業もオミクロン株への懸念から同様の計画を発表している。

画像クレジット:Bloomberg / Getty Images

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(文:Brian Heater、翻訳:Aya Nakazato)

グーグルがCES出展を取り止め、オミクロン株への懸念で

Lenovoのビッグニュースから始まり、Waymo、Intelと続いた。GoogleはCESへのリアル出展から完全に撤退するようだ。同社の広報担当者はTechCrunchに対して次のように語っている。

慎重に検討した結果、我々はCES 2022の会場で存在感を示すことを控えることにしました。オミクロン株を注意深く観察してきましたが、私たちのチームの健康と安全を考えると、これが最良の選択であると判断しました。私たちは、CTAとパートナーの両方との密接な協力を継続し、バーチャルな機会を特定しサポートし続け、最新のGoogleのイノベーションをみなさんと共有できることを楽しみにしています。

Alphabetの子会社Waymoの先のニュースから判断すると、Googleがバーチャルに進出したのは驚くことではない。それでも、ソフトウェアの巨人は近年、家庭用製品のNestシリーズやPixelスマホを通じてハードウェアにますます力を入れており、その存在感は増している。ここ数年、Googleの複雑な屋外展示は、ラスベガス・コンベンション・センターの駐車場での目玉となっていた。

関連記事:レノボがCESのリアル参加を見送り、 オミクロン懸念で計画変更するハードウェア大手1号に

昨日の時点で、CESの運営団体であるCTAは、2022年1月初旬のイベント開催の決定に揺るぎはないが、ビッグネームの損失は積み重なり続けている。オミクロン株への懸念からラスベガスから撤退する企業のリストにはT-Mobile、AT&T、Meta、Twitter、Amazon、TikTok、Pinterest、そしてTechCrunchなど多くのメディアも含まれている。

私たちは、この最新のニュース(長い連休に向かう荒れた前兆)を踏まえて、CTAに連絡をとった。CTAの最後のコメントではキャンセルは42件で、展示フロアの約7%を占めている。その後も大手と新興企業の両方が出展を検討しているため、現在、変わってきていることは間違いないだろう。

画像クレジット:TechCrunch

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(文:Brian Heater、翻訳:Katsuyuki Yasui)

オミクロン株でCES出展者が参加を迷う中、主催は断固開催の意向

少々MWCのようになってきた。もちろん、2020年にバルセロナで開催が予定されていたMobile World Congress(モバイル・ワールド・コングレス、MWC)とは、これまでのところ少し異なる展開になっている。その理由は明らかだ。当時、パンデミックは事実上、未知のものだった。2年近く経った現在、我々は少なくとも、パンデミックをより把握しており、より効果的なツールを手に入れている。たとえ、すべての人がそうした方法を選択していないとしてもだ。

CES 2020は、世界的な封鎖という点では、ぎりぎりのところで間に合った。2021年の展示会では、主催者のCTA(全米民生技術協会)は(非常に賢明にも)そのリスクを回避し、完全にバーチャルで開催することを選択した。CES 2022は、多くの関係者にとって一種のハイブリッドイベントとして、控えめながら復活の道を歩んできた。

これまでのところ、バルセロナで見られたような根本的なドミノ倒しにはなっていない。しかし、オミクロン変異株の急速な広がりは、主催者にとって大きな脅威となっている。ホリデーシーズンの旅行関連の感染者急増(その数値的な影響はCESが終わるまでわからない)が非常にあり得ること、そしてラスベガスの一般的な予測不可能性(友人が最近述べたように、カジノを通らないと中心地のストリップのどこにも行けない)と相まって、なぜ最近多くの人が怖じ気づいたかは理解できる。また、イスラエルなどの国々の渡航制限も難しさに拍車をかけている。

CTAは声明の中で、計画どおり進めることを堅持している。CTAはTechCrunchに、これまでのところ、出展者のキャンセルはフロアスペースの7%に達しており、最新の変異株にもかかわらず、展示会に出展する企業は増え続けていると語った。

CES 2022は、強力な安全対策を取りながら米国時間1月5日から8日までラスベガスで開催されます。また、ラスベガスに行きたくない、あるいは行けない人々のために、デジタルでの参加も用意されています。私たちの使命は、業界を結集させ、実際の会場で参加できない方々にもCESの魅力をデジタルで体験していただくことにあります。

このほど42社の出展キャンセル(展示フロアの7%未満)がありましたが、12月17日以降、実際の会場への出展で新たに60社が加わりました。デジタルアクセスとラスベガスでのイベントの両方への登録はここ数日で数千件増え、力強い勢いを見せています。

CES 2022では世界の健康と安全、モビリティ、問題解決のための重要なイノベーションが展示されるため、計画通り進めます。さらに、何千もの中小企業がビジネスのためにCESに依存しています。出展者数は2200社以上に増え、12月21日に発表したように、両政党から選出された多くのトップがCESに参加します。

ワクチン接種の義務化、マスク着用、新型コロナ検査提供といったCESの包括的な健康対策、そして出席者数の抑制、社会的距離対策と合わせて、参加者、出展者は社会的距離を置きながらもラスベガスでの有意義で生産的なイベントに参加し、我々のデジタルアクセスで実りある体験ができると確信しています。

T-Mobile(Tモバイル)は米国時間12月21日、この展示会会場から撤退する最初の主要スポンサーとなった。同社は、資金面でのスポンサーとしての役割を果たし続けるが(おそらく契約無効化のようなことはまだ起きていない)、チームの大半を派遣しないことにし、CEOのMike Sievert(マイク・シーベルト)氏は対面でもバーチャルでも基調講演を行わない予定だ。奇妙なことに、WeezerはどうやらT-Mobileの祝福を受けながら、中心地ストリップで無料コンサートを行う

WeezerのボーカルであるRivers Cuomo(リヴァース・クオモ)氏のプレスリリースには「大好きなラスベガスに戻り、2021年の壮大なドローンレーシングリーグのラスベガス選手権レースにT-Mobileと一緒に参加できることにとても興奮しています」とある。

Meta(メタ)、Twitter(ツイッター)、Amazon(アマゾン)、Pinterest(ピンタレスト)は最初から手を引いている。しかし、いずれもビッグネームではあるものの、伝統的にこの展示会では目立つ存在ではない。

12月20日の週の初めには、The Verge、CNET、Engadget、PCMag、Gizmodo、Tom’s Guide、TechRadarと同様、TechCrunchもこの展示会にチームを派遣しないことを発表した。私たちとしては、簡単な決断ではなかった。この2年間でオンライン会議の世界へ移行するという著しい変化があったことは事実だが、我々にとってCESのような展示会にはまだ価値がある。

特に、Eureka Park(エウレカパーク)を歩き回り、そうでもしなければ騒音に満ちた受信トレイに埋もれてしまうような新しいスタートアップを直接見ることができるのは、大きな価値がある。筆者は、Venetian(旧Sands)エキスポホールのフロアで多くの企業を発見してきたので、前年の休みを経て再び同じことができることを非常に楽しみにしていた。

CES 2021は、世界(より具体的にはCTA)がすべてオンラインで開催されるハードウェア展示会に対応できるかどうか、大きな試金石となった。自身の体験からいうと、時期尚早だったと思う。バーチャルCESの体験はさほど良いものではなかった。特に、これらの展示会で最も難しく、重要な要素である「発見」に関してはそうだった。

2022年の展示会でどれだけのものが実際に展示されるかは別として、効果的なオンライン開催が必要だ。すでに多くのメディアが遠隔からの取材を計画している。また、このパンデミックが終息すると仮定した場合、今後どのように展示会をカバーするのか、多くの人が疑問に思っているはずだ。

CTAはこれまでのところ、こうした事態に揺るぎない態度を示している。CTAは、新しい健康プロトコルを導入しつつ、予定どおり展示会を開催すると繰り返している。ワクチン接種証明とマスク着用に加え、参加者には無料の迅速検査キットを配布し、参加者は会場に入る前の検査で陰性であることを証明する必要がある。

CESのソーシャルメディアアカウントは、ラスベガス・コンベンション・センター内部の画像や新しい講演者の発表に専念している。講演者には現在のところ、運輸長官のPete Buttigieg(ピート・ブティジェグ)氏や「NFT、WTF?!?!」というパネルでブロックチェーンについて話すことになっているParis Hilton(パリス・ヒルトン)氏などがいる。

Google(グーグル)、HTC、John Deere(ジョン・ディア)、TCL、BMWなどは「状況を注視し続けている」と語っている。NVIDIA(エヌビディア)を含む他の企業は、バーチャルの記者会見を行い、出展は行わないという、十分に警戒することを最初から選択した。

画像クレジット:Photo by ROBYN BECK/AFP / Getty Images

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(文:Brian Heater、翻訳:Nariko Mizoguchi

5カ月でGitHubスター2000獲得、LiveKitはメタバースにはオープンなインフラが必要だと考える

世界的なパンデミックが発生したとき、Medium(ミディアム)でプロダクト部門を担当していたRussell d’Sa(ラッセル・ダサ)氏は、全員が自宅で仕事をしているため、企業カルチャーがインパクトを受け、社員間の交流にも大きな影響を与えていることに早くから気づいていた。

「なくなったのは、同僚同士の会話や、金曜日の夜に飲むこと、一緒にコーヒーを淹れて飲むことなどでした」とTechCrunchに彼は語った。「職場で友人になるということは、最終的にどのようにコラボレーションするかを下支えします」。

2020年、Clubhouse(クラブハウス)がアルファ版で公開されたとき「すべてを変える新しい参加型メディア」として話題になったが、ダサ氏は仕事仲間のためにもそのようなものを求めていたという。

関連記事:隔離生活で求められる自然発生的なコミュニケーションを生むソーシャルアプリ

彼は、ClubhouseアプリがAgora(声網)を利用していることを知り、自分のアイデアを実現するためのデスクトップアプリの開発を始めた。ダサ氏がこのアプリをリリースすると、すぐに1300社がウェイティングリストに登録した。同氏は最終的にこのアプリを棚上げにしたが、企業は「この新しい環境では何でも試してみたい」と考えていることがわかった。

実際、ある大手ソーシャルメディア企業からは、傘下の1000人規模の企業でそのアプリを使ってみないかと持ちかけられたが、Agoraのセキュリティが心配だったという。ダサ氏は代替手段を検討し始めたが、多くは会議に特化したもので、ネイティブモバイルに対応する柔軟性を備えていなかった。

そこで生まれたのがLiveKitだ。共同設立者のDavid Zhao(デビッド・ザオ)氏を含むダサ氏のチームは、WebRTCと呼ばれるリアルタイムのオーディオ・ビデオ体験をアプリケーションで構築しスケーリングするための、無料でオープンソースのインフラを開発した。

7月にこのツールをリリースした同社は、米国時間12月13日、Redpoint Venturesと、Justin Kan(ジャスティン・カン)氏、Robin Chan(ロビン・チャン)氏、Elad Gil(エラッド・ギル)氏などの個人投資家からの支援を得てシードラウンド700万ドル(約7億9000万円)を調達したと発表した。

公開からわずか5カ月の間に、同社のツールはGitHubでトレンドを生み出し、ゼロから始まって約2000スターを獲得したとダサ氏は述べている。また、メタバースの話題が増えている中で、製品の市場適合性も証明された。

「新型コロナは私たちの世界を、オンラインで生活し、ネット上で結婚式を挙げるような世界に変えました」と彼は語る。「私たちはすでにメタバースの中で生活しており、それは2年以上前から続いています」。

同氏は、会議通話は未来のものではなく、仮想現実(VR)や拡張現実(AR)によってより現実のように感じるものになると考えている。しかし、課題は、インターネット上でいかにすばやくデータを移動させ、カメラやマイク、3Dオブジェクトに対応したインフラを持つかということだ。

LiveKitによるライブオーディオ・ビデオ体験の初期のユースケースはイベント会場のカメラだったが、あるドローン会社もこの技術を使っている。LiveKitを利用したプロジェクトが100件を超えるなど、採用が進むにつれ、ダサ氏は、ベンチャーキャピタルの支援を受けてチームの規模を拡大することを決意した。立ち上げ当初は3人だったチームが今では15人に増えたという。

現在、同社は収益を上げていないが、分析、遠隔測定、スパムや不正使用の監視、音声転写、翻訳、音声や顔の機能など、基本的な機能以外にも提供されるサービス、新しいツールが登場すれば収益を上げることができるだろう。

目下、LiveKitチームは、ツールの信頼性と柔軟性を高め、デベロッパーや彼らが構築するユースケースへのアクセシビリティを改善するための技術開発に注力していきたいと考えている。

「目標は、ネットワークの状態が悪くても動作する方法を見つけることです」とダサ氏はいう。「当社は大小さまざまな企業と話をしていますが、最大手の企業は、100万人規模のイベントをすべてインタラクティブに行うための大規模なスケールを求めています」。

画像クレジット:NurPhoto / Contributor / Getty Images

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(文:Christine Hall、翻訳:Aya Nakazato)

「地球上で最もプログラマブルな自動車」の実現を目指すウーブン・プラネット

2日間にわたってオンラインで開催された「TechCrunch Tokyo 2021」で、初日冒頭の「Keynote」セッションに登場したのが、ウーブン・プラネット・ホールディングスでソフトウェアプラットフォーム担当シニア・バイス・プレジデントを務めるNikos Michalakis(ニコス・ミハラキス)氏だ。

「Programmable Mobility」(プログラム可能なモビリティ)と題したこのセッションでは、

  • ウーブン・プラネットの戦略の概要
  • モビリティのプログラミングをよりオープンにするためのArene(アリーン)プロジェクト
  • ウーブン・プラネットが切り開こうとしているビジネスチャンス

の3点を取り上げるとミハラキス氏は述べ、Keynoteが始まった。

技術と投資にフォーカスするウーブン・プラネット

ミハラキス氏はギリシャで生まれ、米国に渡って電気工学とコンピュータサイエンスを学んだ。さまざまな分野のスタートアップやNetflixで働いた後、シリコンバレーのトヨタ・リサーチ・インスティテュートに入社。その後、東京のウーブン・プラネットに移った。

ウーブン・プラネットのビジョンは「Mobility to love, Safety to live」で、技術にフォーカスした2つの会社と投資にフォーカスした1つの会社で構成されている。

技術にフォーカスした会社の1つがウーブン・アルファで、イノベーティブなプロジェクトを推進している。ミハラキス氏のチームが取り組んでいるプロジェクトもここに含まれる。

もう1つがウーブン・コアで、自動車メーカーとサプライヤーが協力しながら自動運転や新しい車載電子プラットフォームを提供している。

そして投資にフォーカスしたウーブン・キャピタルは投資や協業を通じて、スタートアップだけでなく大企業ともパートナーシップを構築しているという。

モビリティは古典的な考え方と現代的な考え方が交差するところに生まれる

モビリティについてミハラキス氏は「自動車に関する古典的な考え方と、ソフトウェア、つまりウェブ、モバイル、インターネットといった現代的な考え方が交差するところに生まれるものです」と語る。

同氏は「(新しい技術ゆえに)モビリティ構築に必要なスキルを持つ人材は今のところいません」とし、ウーブン・プラネットは日本のモノづくりにおけるクラフトマンシップとシリコンバレーのイノベーションの考え方を融合させた文化を構築しようとしていると述べた。また、社内に「DOJO(道場)」を作り、新しいモビリティ・スキルセットを身につけた人材を育成しているそうだ。

快適にソフトウェアを開発できる環境を目指すAreneプラットフォーム

「私たちは地球上で最もプログラマブルな自動車を実現したいと考えています」とミハラキス氏はいう。それを実現するプラットフォームがAreneだ。

Areneのビジョンを、同氏は「開発者が快適に開発を行えるようにしたいのです。最適なツールとプラットフォームを提供し、イノベーションを実現できるようにするのです」と説明する。

このビジョンを実現するためのミッションについては「ソフトウェア開発をシンプルにし、開発頻度を上げて、車載コードをシームレスにアップデートできるようにします。また、そのために安全性が損なわれることもないようにします。これを実現できれば、自動車のプログラミングは誰でもできるものになると考えています」と述べた。

スマートフォンと同じように自動車のプログラミングができるようになる

自動車のプログラミングが誰でもできるとはどういうことか。ミハラキス氏は10〜15年前の携帯電話の状況と対比して説明する。

「かつては電話機をプログラミングできるのは電話機メーカーだけでした。しかし現在は誰もがスマートフォンをプログラミングできます。何千ものアプリケーションが利用可能で、何千もの開発者がこのプラットフォームに参入し新しいアイデアを生み出しています。それにより投資家たちの関心が高まり、利益が見込まれるアイデアには資金が集まるようになりました」と同氏は述べ、このようなポジティブなサイクルが生み出された結果、モバイルエコシステムが成長していると携帯電話の状況を位置づけた。

これと同じように「現在のところ、自動車のプログラミングを行えるのは自動車メーカーだけですが、将来は誰もが車のプログラミングをできるようになるべきです」とミハラキス氏はいう。

オープンな開発プラットフォームで開発者の参入を促し、自動車業界に影響を与える

ウーブン・プラネットの目的は「オープンな開発プラットフォームを構築して、そこでクラウドベースのツールやソフトウェア開発キットを開発者に提供すること」で、自動車の各機能にアクセスするためのVehicle APIも提供する。

ツールを提供するだけでなく「自動車自体についても再考する必要がある」とミハラキス氏はいう。現在の自動車は複数の異なる領域ごとにコンピューティングが活用され、各コンピュータが特定の機能を実行するための専用のものとなっている。これに対し、ウーブン・プラネットは複数のECU(電子制御ユニット)を横断するArene OSにフォーカスする。「アプリケーションがコンピューティング全体に作用していくようにする」と同氏は説明した。

こうした取り組みは業界に大きな影響を与えて「車載アプリ開発者」という職種が生まれる、起業家がモビリティ分野に参入する際の障壁が少なくなる、車載ソフトウェアをアップデートできることで自動車自体のLTV(顧客生涯価値)も高まると同氏は見ている。

アプリ、Arene OS、ECU、ハードウェアの概念図

新しいビジネスチャンスのアイデアは?

このプラットフォームにより「新しいビジネスチャンスが得られると考えています」とミハラキス氏は述べ「ともに考え、創造性を磨いていきましょう」と呼びかける。そして、ビジネスチャンスのアイデアをいくつか挙げた。

まず、アプリのパーソナライズ機能を構築すれば、カーシェアで誰が乗ったかに応じてアプリや構成をロードできるようになる。

また、企業のブランディングも考えられる。企業が実店舗からウェブ、モバイル、ソーシャルメディアにプレゼンスが求められるようになったのと同じで、モビリティにもプレゼンスが求められるようになるだろうという。その例として同氏は、ホテルの送迎車内でチェックインやシャンパンのサービスを提供できるかもしれないと述べた。

分散型アプリケーションの可能性もある。同氏は「すべての自動車に最先端のパワフルなコンピューティング能力とセンサーが搭載されているのを想像してみてください。データの力を活用したすばらしいアプリケーションを構築できるでしょう」と述べ、リアルタイムのマップ構築を例として示した。

そしてビジネスチャンスとして同氏は最後に、これまでにないハードウェアへの期待を挙げた。同氏は個人的に、マッサージチェアがあればいいなと思っているという。

エッジコンピューティングによるマップのイメージ

ミハラキス氏は「成功するものもあれば失敗するものもあるでしょう。結果はわかりません。それが起業というものです」と述べ「自動車のプログラミングをよりオープンなものにしていけば、アイデアを繰り返し実験し、より容易にできるように改良し、実験にかかるコストを低減し、アイデアをさまざまな方法で応用してみるといった活動を通じて、エコシステムを成長させる機会が得られると思っています」と強調して、Keynoteを締めくくった。

(文:Kaori Koyama)

視覚障がいに関する最先端技術を語るバーチャルイベント「Sight Tech Global」のメインプログラムを公開

2020年に続いて2021年が2回目となる参加無料のバーチャルイベント「Sight Tech Global」が米国時間12月1〜2日に開催される。2021年も視覚障がい者にとってのアクセシビリティや支援技術を実現する高度なテクノロジー、特にAIに関して、世界トップクラスの専門家がこのイベントに集う。

この記事ではメインステージのプログラムを紹介しよう。メインステージのセッションは専門家が進行し、現在この分野の大手4社と言えるApple、Microsoft、Google、Amazonをはじめとする各社の注目すべき取り組みが語られる。メインステージの他に分科会セッションを予定しているが、そちらは後日紹介する予定だ。

この無料のバーチャルイベントに、今すぐ参加登録しよう。スクリーンリーダーの対応も十分に準備している。

12月1日のSight Tech Global

Designing for Everyone:Accessibility and Machine Learning at Apple(すべての人のためのデザイン:Appleのアクセシビリティと機械学習)

AppleのiPhoneとVoiceOverはアクセシビリティにおける最大級のブレイクスルーだが、Appleはその成果に満足して歩みを止めているわけではない。次のイノベーションにはAIのサブセットである「機械学習」が加わり、スマートフォンのセンサーなどから得たデータを用いて周囲の状況を理解できる。アクセシビリティのための実装が姿を見せ始めている。

Jeff Bigham(ジェフリー・ビガム、Apple、AI/MLアクセシビリティリサーチ責任者)
Sarah Herrlinger(サラ・ヘルリンガー、Apple、グローバルアクセシビリティポリシー&イニシアチブ担当シニアディレクター)
進行:Matthew Panzarino(マシュー・パンザリーノ、TechCrunch編集長)

Seeing AI:What Happens When You Combine Computer Vision, LiDAR and Audio AR?(Seeing AI;コンピュータビジョン、LiDAR、オーディオARを組み合わせるとどうなるのか)

MicrosoftのSeeing AIアプリには周囲の物体を認識して3D空間に配置する最新機能が搭載された。物体が室内に置かれている、まさにその場所から読み上げが聞こえる。つまり「椅子」という語が椅子そのものから発せられているように聞こえる。ユーザーはバーチャルのオーディオビーコンをオブジェクトに配置して、例えばドアの場所を把握し、近接センサーで部屋の様子を触覚で知ることができる。

AR、コンピュータビジョン、iPhone 12 ProのLiDARセンサーといった最新の進化を組み合わせればこのようなことが可能になる。この取り組みは始まったばかりだ。

Saqib Shaikh(サーキブ・シャイフ、Seeing AI、共同創始者)
進行:Devin Coldewey(デヴィン・コールドウェイ、TechCrunch、編集者)

W3C ARIA-AT:Screen readers, Interoperability and a New Era of Web Accessibility(W3C ARIA-AT:スクリーンリーダー、相互運用性、ウェブアクセシビリティの新時代)

スクリーンリーダーは、ウェブブラウザとは違って相互運用性がないことをご存じだろうか。ウェブサイト開発者は自分の書くコードがSafariやChrome、あるいはその他のブラウザで動くかどうかを心配する必要はない。しかしアクセシビリティを真剣に考えると、JAWS、VoiceOver、NVDAなどのスクリーンリーダーをテストしなくてはならない。この状況がW3C ARIA-ATプロジェクトのおかげで変わりつつある。

(このセッションの後、12月2日にキング氏とフェアチャイルド氏、W3C ARIA-ATのメンバー数人が参加するライブの分科会セッションを予定している)

Matt King(マット・キング、Facebook、アクセシビリティ技術プログラムマネージャー)
Mike Shebanek(マイク・シェバネク、Facebook、アクセシビリティ責任者)
Michael Fairchild(マイケル・フェアチャイルド、Deque、シニアアクセシビリティコンサルタント)
進行: Caroline Desrosiers(キャロリン・デロジエ、Scribely、創業者兼CEO)

The “Holy Braille”:The Development of a New Tactile Display Combining Braille and Graphics in One Experience(「神」点字:点字とグラフィックスの両方を扱える新しい触覚ディスプレイの開発)

現在、視覚障がい者が点字で書かれたものを利用できる機会は、見える人が紙に書かれたものを利用する機会よりもずっと少ない。その都度更新しながら1行ずつ表示する点字ディスプレイが長年使用されてきたが、一度に1行しか読めないのでリーディングのエクスペリエンスは極めて制限されている。この制限は、長い書類を読むときや書籍に表やグラフといったコンテンツがある場合に、特に顕著に感じられる。American Printing House for the Blind(APH)とHumanWareは共同で、点字を複数行表示したり、点字と同じ面に触図を表示したりすることのできる触覚デバイスを開発している。Dynamic Tactile Device(DTD、動的触覚デバイス)と呼ばれるこのツールは、視覚障がい者が利用する複数行のブックリーダーや触図ビューアーを目指している。

(このセッションの後、グレッグ・スティルソン氏、HumanWareの点字プロダクトマネージャーであるAndrew Flatres[アンドリュー・フラトレス]氏が参加するライブの分科会Q&Aセッションを予定している)

Greg Stilson(グレッグ・スティルソン、APH、グローバルイノベーション責任者)
進行:Will Butler(ウィル・バトラー、Be My Eyes、バイスプレジデント)

Indoor Navigation:Can Inertial Navigation, Computer Vision and Other New Technologies Work Where GPS Can’t?(屋内ナビゲーション:GPSが使えない場所で慣性ナビゲーションやコンピュータビジョンなどの新しいテクノロジーはどう機能するか)

スマートフォン、GPS、ナビゲーションアプリのおかげで、視覚障がい者は1人で屋外を歩き回れる。しかし屋内となると話は別だ。

まず、GPSは屋内で使えないことがある。そしてドアの場所を知り、階段を見つけ、誰かが移動させたソファを避けるのは難しい。プロダクト開発者が屋内スペースをマッピングし、屋内の位置を提供し、アクセシブルなユーザーインターフェイスを用意すれば、慣性ナビゲーション、オーディオAR、LiDAR、コンピュータビジョンといったスマートフォンとクラウドのテクノロジーの組み合わせは解決の基盤となるかも知れない。

Mike May(マイク・メイ、GoodMaps、チーフエバンジェリスト)
Paul Ruvolo(ポール・ルボロ、オーリン・カレッジ・オブ・エンジニアリング、コンピュータサイエンス助教授)
Roberto Manduchi(ロベルト・マンドゥチ、カリフォルニア大学サンタクルーズ校、コンピュータサイエンス教授)
進行:Nick Giudice(ニック・ジュディチェ、メイン大学、空間情報科学教授)

12月2日のSight Tech Global

Why Amazon’s vision includes talking less to Alexa(Amazonが話しかけないAlexaを考える理由)

家庭でテクノロジーが多く使われるようになると、Teachable AIやマルチモーダル理解、センサー、コンピュータビジョンなど、さまざまなソースからのインプットによって周囲の環境が作られる。すでにAlexaスマートホームでのやりとりの5回に1回は、話し言葉以外から開始されている。Alexaは利用者や利用者の家を十分に理解してニーズを予測し、利用者に代わって有効なやり方で動作する。こうしたことは、アクセシビリティにどのような影響を及ぼすだろうか?

Beatrice Geoffrin(ベアトリス・ジェフリン、Amazon、Alexa Trustディレクター)
Dr. Prem Natarajan(プレム・ナタラジャン、Amazon、Alexa AI担当バイスプレジデント)

Inventors Invent:Three New Takes on Assistive Technology(発明家たちの発明:支援テクノロジーに関する新たな3つの成果)

発明家たちは、その才能を視覚障がい者の支援に生かすことに長年取り組んできた。Mike Shebanek(マイク・シェバネク、AppleのVoiceOverを開発)氏やJim Fruchterman (ジム・フルヒターマン、BenetechのBookshareを開発)に代表されるイノベーターが思い起こされるだろう。現在イノベーターにとっては、LiDAR、コンピュータビジョン、高速データネットワークなどほとんど奇跡といってもいいようなテクノロジーが手ごろにそろっている。その結果、イノベーションは目のくらむほどの速さで進む。このセッションでは、こうしたコアテクノロジーを新しい注目のツールに生かす最前線にいる3人のイノベーターに話を聞く。

Cagri Hakan Zaman(カグリ・ハカン・ザマン、MediateおよびSuperSense、共同創業者)
Kürşat Ceylan(クルサット・セイラン、WeWalk Technology、共同創業者)
Louis-Philippe Massé(ルイ・フィリップ・マセ、HumanWare、プロダクトマネジメント担当ディレクター)
進行:Ned Desmond(ネッド・デズモンド、Sight Tech Global、創業者兼エグゼクティブプロデューサー)

Product Accessibility:How Do You Get it Right? And How Do You Know When You Have?(プロダクトのアクセシビリティ:どうすれば効果的か、そして効果をどう知るか)

アクセシビリティの認知度は上がっているが、高い意識を持っているチームでさえも効果的なアプローチを見つけるのには苦労する。ポイントの1つは、適切なユーザーコミュニティと緊密に連携し、フィードバックを得たりニーズを理解したりすることだ。するとトレードオフではなく、すべての人にとってより良いプロダクトになる。このセッションで、プロダクト開発においてアクセシビリティの最前線にいる専門家から話を聞こう。

Christine Hemphill(クリスティン・ヘンフィル、Open Inclusion、創業者兼代表取締役)
Alwar Pillai(アルウォー・ピライ、Fable、共同創業者兼CEO)
Sukriti Chadha(スクリティ・チャダ、Spotify、プロダクトマネージャー)
Oliver Warfield(オリバー・ウォーフィールド、Peloton Interactive、
アクセシビリティ担当シニアプロダクトマネージャー)
Brian Fischler(ブライアン・フィシュラー、All Blind Fantasy Football Leagueコミッショナー、コメディアン)
進行:Larry Goldberg(ラリー・ゴールドバーグ、Yahoo、アクセシビリティ責任者)

For Most Mobile Phone Users, Accessibility Is Spelled Android(多くのスマートフォンユーザーにとって、アクセシビリティはAndroidで実現する)

世界の携帯電話ユーザーの4分の3は、AppleのiPhoneではなく、GoogleのAndroidで動作するスマートフォンを使っている。視覚障がい者にとって重要なアプリはGoogleのLookoutで、これはコンピュータビジョンのデータベースやGoogleマップなど、GoogleのAIインフラストラクチャが備える莫大なリソースを活用している。GoogleはLookoutに代表される多くのアクセシビリティの機会にどのようにアプローチしているかを聞く。

Eve Andersson(イブ・アンダーソン、Google、アクセシビリティ担当ディレクター)
Andreina Reyna(アンドレイナ・レイナ、Google、シニアソフトウェアエンジニア)
Warren Carr(ウォーレン・カー、Blind Android User Podcast、制作者)

Getting around:Autonomous Vehicles, Ridesharing and Those Last Few Feet(外出する:自動運転車、ライドシェア、そしてラスト数メートル)

スマートフォンで車を呼び出すという多くの人の夢はかなったが、ほんの数メートルしか離れていなくてもその車を見つけるのが難しいとしたら、悪夢であり危険だ。ライドシェアや自動運転タクシーの企業は、視覚に障がいがある利用者から車までの数メートルをもっと安全で利用しやすくするためにどんな取り組みをしているのだろうか。

Kerry Brennan(ケリー・ブレナン、Waymo、UXリサーチマネージャー)
Marco Salsiccia(マルコ・サルシッチャ、Lyft、アクセシビリティエバンジェリスト)
Eshed Ohn-Bar(エシェド・オン・バー、ボストン大学、助教授)
進行:Bryan Bashin(ブライアン・バシン、サンフランシスコLightHouse、CEO)

この無料のオンラインイベントに、ぜひ参加登録して欲しい

Sight Tech Globalは、シリコンバレーで75年にわたって運営されているNPOのVista Center for the Blind and Visually Impairedが主催する。現在、Ford、Google、Humanware、Microsoft、Mojo Vision、Facebook、Fable、APH、Visperoがスポンサーとして決定し、感謝している。本イベントのスポンサーに関心をお持ちの方からの問い合わせをお待ちしている。スポンサーシップはすべて、Vista Center for the Blind and Visually Impairedの収入となる。

画像クレジット:Sight Tech Global

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(文:Ned Desmond、翻訳:Kaori Koyama)

視覚障がいに関する最先端技術を語るバーチャルイベント「Sight Tech Global」のメインプログラムを公開

2020年に続いて2021年が2回目となる参加無料のバーチャルイベント「Sight Tech Global」が米国時間12月1〜2日に開催される。2021年も視覚障がい者にとってのアクセシビリティや支援技術を実現する高度なテクノロジー、特にAIに関して、世界トップクラスの専門家がこのイベントに集う。

この記事ではメインステージのプログラムを紹介しよう。メインステージのセッションは専門家が進行し、現在この分野の大手4社と言えるApple、Microsoft、Google、Amazonをはじめとする各社の注目すべき取り組みが語られる。メインステージの他に分科会セッションを予定しているが、そちらは後日紹介する予定だ。

この無料のバーチャルイベントに、今すぐ参加登録しよう。スクリーンリーダーの対応も十分に準備している。

12月1日のSight Tech Global

Designing for Everyone:Accessibility and Machine Learning at Apple(すべての人のためのデザイン:Appleのアクセシビリティと機械学習)

AppleのiPhoneとVoiceOverはアクセシビリティにおける最大級のブレイクスルーだが、Appleはその成果に満足して歩みを止めているわけではない。次のイノベーションにはAIのサブセットである「機械学習」が加わり、スマートフォンのセンサーなどから得たデータを用いて周囲の状況を理解できる。アクセシビリティのための実装が姿を見せ始めている。

Jeff Bigham(ジェフリー・ビガム、Apple、AI/MLアクセシビリティリサーチ責任者)
Sarah Herrlinger(サラ・ヘルリンガー、Apple、グローバルアクセシビリティポリシー&イニシアチブ担当シニアディレクター)
進行:Matthew Panzarino(マシュー・パンザリーノ、TechCrunch編集長)

Seeing AI:What Happens When You Combine Computer Vision, LiDAR and Audio AR?(Seeing AI;コンピュータビジョン、LiDAR、オーディオARを組み合わせるとどうなるのか)

MicrosoftのSeeing AIアプリには周囲の物体を認識して3D空間に配置する最新機能が搭載された。物体が室内に置かれている、まさにその場所から読み上げが聞こえる。つまり「椅子」という語が椅子そのものから発せられているように聞こえる。ユーザーはバーチャルのオーディオビーコンをオブジェクトに配置して、例えばドアの場所を把握し、近接センサーで部屋の様子を触覚で知ることができる。

AR、コンピュータビジョン、iPhone 12 ProのLiDARセンサーといった最新の進化を組み合わせればこのようなことが可能になる。この取り組みは始まったばかりだ。

Saqib Shaikh(サーキブ・シャイフ、Seeing AI、共同創始者)
進行:Devin Coldewey(デヴィン・コールドウェイ、TechCrunch、編集者)

W3C ARIA-AT:Screen readers, Interoperability and a New Era of Web Accessibility(W3C ARIA-AT:スクリーンリーダー、相互運用性、ウェブアクセシビリティの新時代)

スクリーンリーダーは、ウェブブラウザとは違って相互運用性がないことをご存じだろうか。ウェブサイト開発者は自分の書くコードがSafariやChrome、あるいはその他のブラウザで動くかどうかを心配する必要はない。しかしアクセシビリティを真剣に考えると、JAWS、VoiceOver、NVDAなどのスクリーンリーダーをテストしなくてはならない。この状況がW3C ARIA-ATプロジェクトのおかげで変わりつつある。

(このセッションの後、12月2日にキング氏とフェアチャイルド氏、W3C ARIA-ATのメンバー数人が参加するライブの分科会セッションを予定している)

Matt King(マット・キング、Facebook、アクセシビリティ技術プログラムマネージャー)
Mike Shebanek(マイク・シェバネク、Facebook、アクセシビリティ責任者)
Michael Fairchild(マイケル・フェアチャイルド、Deque、シニアアクセシビリティコンサルタント)
進行: Caroline Desrosiers(キャロリン・デロジエ、Scribely、創業者兼CEO)

The “Holy Braille”:The Development of a New Tactile Display Combining Braille and Graphics in One Experience(「神」点字:点字とグラフィックスの両方を扱える新しい触覚ディスプレイの開発)

現在、視覚障がい者が点字で書かれたものを利用できる機会は、見える人が紙に書かれたものを利用する機会よりもずっと少ない。その都度更新しながら1行ずつ表示する点字ディスプレイが長年使用されてきたが、一度に1行しか読めないのでリーディングのエクスペリエンスは極めて制限されている。この制限は、長い書類を読むときや書籍に表やグラフといったコンテンツがある場合に、特に顕著に感じられる。American Printing House for the Blind(APH)とHumanWareは共同で、点字を複数行表示したり、点字と同じ面に触図を表示したりすることのできる触覚デバイスを開発している。Dynamic Tactile Device(DTD、動的触覚デバイス)と呼ばれるこのツールは、視覚障がい者が利用する複数行のブックリーダーや触図ビューアーを目指している。

(このセッションの後、グレッグ・スティルソン氏、HumanWareの点字プロダクトマネージャーであるAndrew Flatres[アンドリュー・フラトレス]氏が参加するライブの分科会Q&Aセッションを予定している)

Greg Stilson(グレッグ・スティルソン、APH、グローバルイノベーション責任者)
進行:Will Butler(ウィル・バトラー、Be My Eyes、バイスプレジデント)

Indoor Navigation:Can Inertial Navigation, Computer Vision and Other New Technologies Work Where GPS Can’t?(屋内ナビゲーション:GPSが使えない場所で慣性ナビゲーションやコンピュータビジョンなどの新しいテクノロジーはどう機能するか)

スマートフォン、GPS、ナビゲーションアプリのおかげで、視覚障がい者は1人で屋外を歩き回れる。しかし屋内となると話は別だ。

まず、GPSは屋内で使えないことがある。そしてドアの場所を知り、階段を見つけ、誰かが移動させたソファを避けるのは難しい。プロダクト開発者が屋内スペースをマッピングし、屋内の位置を提供し、アクセシブルなユーザーインターフェイスを用意すれば、慣性ナビゲーション、オーディオAR、LiDAR、コンピュータビジョンといったスマートフォンとクラウドのテクノロジーの組み合わせは解決の基盤となるかも知れない。

Mike May(マイク・メイ、GoodMaps、チーフエバンジェリスト)
Paul Ruvolo(ポール・ルボロ、オーリン・カレッジ・オブ・エンジニアリング、コンピュータサイエンス助教授)
Roberto Manduchi(ロベルト・マンドゥチ、カリフォルニア大学サンタクルーズ校、コンピュータサイエンス教授)
進行:Nick Giudice(ニック・ジュディチェ、メイン大学、空間情報科学教授)

12月2日のSight Tech Global

Why Amazon’s vision includes talking less to Alexa(Amazonが話しかけないAlexaを考える理由)

家庭でテクノロジーが多く使われるようになると、Teachable AIやマルチモーダル理解、センサー、コンピュータビジョンなど、さまざまなソースからのインプットによって周囲の環境が作られる。すでにAlexaスマートホームでのやりとりの5回に1回は、話し言葉以外から開始されている。Alexaは利用者や利用者の家を十分に理解してニーズを予測し、利用者に代わって有効なやり方で動作する。こうしたことは、アクセシビリティにどのような影響を及ぼすだろうか?

Beatrice Geoffrin(ベアトリス・ジェフリン、Amazon、Alexa Trustディレクター)
Dr. Prem Natarajan(プレム・ナタラジャン、Amazon、Alexa AI担当バイスプレジデント)

Inventors Invent:Three New Takes on Assistive Technology(発明家たちの発明:支援テクノロジーに関する新たな3つの成果)

発明家たちは、その才能を視覚障がい者の支援に生かすことに長年取り組んできた。Mike Shebanek(マイク・シェバネク、AppleのVoiceOverを開発)氏やJim Fruchterman (ジム・フルヒターマン、BenetechのBookshareを開発)に代表されるイノベーターが思い起こされるだろう。現在イノベーターにとっては、LiDAR、コンピュータビジョン、高速データネットワークなどほとんど奇跡といってもいいようなテクノロジーが手ごろにそろっている。その結果、イノベーションは目のくらむほどの速さで進む。このセッションでは、こうしたコアテクノロジーを新しい注目のツールに生かす最前線にいる3人のイノベーターに話を聞く。

Cagri Hakan Zaman(カグリ・ハカン・ザマン、MediateおよびSuperSense、共同創業者)
Kürşat Ceylan(クルサット・セイラン、WeWalk Technology、共同創業者)
Louis-Philippe Massé(ルイ・フィリップ・マセ、HumanWare、プロダクトマネジメント担当ディレクター)
進行:Ned Desmond(ネッド・デズモンド、Sight Tech Global、創業者兼エグゼクティブプロデューサー)

Product Accessibility:How Do You Get it Right? And How Do You Know When You Have?(プロダクトのアクセシビリティ:どうすれば効果的か、そして効果をどう知るか)

アクセシビリティの認知度は上がっているが、高い意識を持っているチームでさえも効果的なアプローチを見つけるのには苦労する。ポイントの1つは、適切なユーザーコミュニティと緊密に連携し、フィードバックを得たりニーズを理解したりすることだ。するとトレードオフではなく、すべての人にとってより良いプロダクトになる。このセッションで、プロダクト開発においてアクセシビリティの最前線にいる専門家から話を聞こう。

Christine Hemphill(クリスティン・ヘンフィル、Open Inclusion、創業者兼代表取締役)
Alwar Pillai(アルウォー・ピライ、Fable、共同創業者兼CEO)
Sukriti Chadha(スクリティ・チャダ、Spotify、プロダクトマネージャー)
Oliver Warfield(オリバー・ウォーフィールド、Peloton Interactive、
アクセシビリティ担当シニアプロダクトマネージャー)
Brian Fischler(ブライアン・フィシュラー、All Blind Fantasy Football Leagueコミッショナー、コメディアン)
進行:Larry Goldberg(ラリー・ゴールドバーグ、Yahoo、アクセシビリティ責任者)

For Most Mobile Phone Users, Accessibility Is Spelled Android(多くのスマートフォンユーザーにとって、アクセシビリティはAndroidで実現する)

世界の携帯電話ユーザーの4分の3は、AppleのiPhoneではなく、GoogleのAndroidで動作するスマートフォンを使っている。視覚障がい者にとって重要なアプリはGoogleのLookoutで、これはコンピュータビジョンのデータベースやGoogleマップなど、GoogleのAIインフラストラクチャが備える莫大なリソースを活用している。GoogleはLookoutに代表される多くのアクセシビリティの機会にどのようにアプローチしているかを聞く。

Eve Andersson(イブ・アンダーソン、Google、アクセシビリティ担当ディレクター)
Andreina Reyna(アンドレイナ・レイナ、Google、シニアソフトウェアエンジニア)
Warren Carr(ウォーレン・カー、Blind Android User Podcast、制作者)

Getting around:Autonomous Vehicles, Ridesharing and Those Last Few Feet(外出する:自動運転車、ライドシェア、そしてラスト数メートル)

スマートフォンで車を呼び出すという多くの人の夢はかなったが、ほんの数メートルしか離れていなくてもその車を見つけるのが難しいとしたら、悪夢であり危険だ。ライドシェアや自動運転タクシーの企業は、視覚に障がいがある利用者から車までの数メートルをもっと安全で利用しやすくするためにどんな取り組みをしているのだろうか。

Kerry Brennan(ケリー・ブレナン、Waymo、UXリサーチマネージャー)
Marco Salsiccia(マルコ・サルシッチャ、Lyft、アクセシビリティエバンジェリスト)
Eshed Ohn-Bar(エシェド・オン・バー、ボストン大学、助教授)
進行:Bryan Bashin(ブライアン・バシン、サンフランシスコLightHouse、CEO)

この無料のオンラインイベントに、ぜひ参加登録して欲しい

Sight Tech Globalは、シリコンバレーで75年にわたって運営されているNPOのVista Center for the Blind and Visually Impairedが主催する。現在、Ford、Google、Humanware、Microsoft、Mojo Vision、Facebook、Fable、APH、Visperoがスポンサーとして決定し、感謝している。本イベントのスポンサーに関心をお持ちの方からの問い合わせをお待ちしている。スポンサーシップはすべて、Vista Center for the Blind and Visually Impairedの収入となる。

画像クレジット:Sight Tech Global

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(文:Ned Desmond、翻訳:Kaori Koyama)

プレイも開発も、Manticoreのゲーム制作プラットフォームCoreは「メタバースの入り口」

自称「終わりなきアーケード」のCoreは、90年代のサイバーパンク熱の夢が現実のものとなったようだ。プレイ可能なゲームライブラリでもあり、ノーコードのゲームクリエイターでもある。すべてがネオンライト。この新しいプラットフォームは、誰もが最近話題にしていそうなこのメタバースのビジョンを驚くほど巧みに具現化している。

「マルチバースへのポータル」と謳うCoreは、長年の命題をテストする準備が整っている。構築すれば実現に向かう。RobloxやFacebookのような巨大企業は大規模なプラットフォームを確立しているかもしれないが、Coreはクリエイターにとってもプレイヤーにとっても非常に魅力的な基盤を築いている。

ログインすると、プレイヤーはコアの中心的なハブに移動する。そこはテーマパーク、ハイテクモール、カジノがちょうどよく交差した場所で、エンターテインメントやショッピングは重力の影響を受けずにあらゆる方向に広がっている。巨大なネオンサインに誘導され、プレイヤーは多種多様なユーザー生成バーチャルワールドに飛び込んでいく。服やゲーム内のギアを交換したり、友人を誘って自分と一緒に参加させたりするのも、ほんの数回クリックするだけで実行できる。

Coreが「Fortnite」(フォートナイト)によく似ているとしても、それは偶然ではない。Manticore Games(マンティコア・ゲームズ)が作ったCoreは、FortniteのメーカーであるEpic(エピック)のUnreal Engine(アンリアル・エンジン)で動く。Epicは2019年に同社への1500万ドル(約17億円)の投資ラウンドを主導しており、同プラットフォームはPC向けのEpic Games Store(エピック・ゲームズ・ストア)を通じてのみ提供されている。Manticoreは2021年3月、大手投資家からさらに1億ドル(約114億円)を調達し、クリエイタープラットフォームを公開した。

画像クレジット:Manticore Games

Coreはまだ誰もが知っている名前ではないかもしれないが、メタバースを熱望する人なら克服しなければならない課題の1つをすでに解決している。Coreでプレイしていたとき、ある場所から別の場所への移動の体験があまりにもシームレスで、間違った場所に迷い込んでしまったことがよくあった。これはユーザーのミスだろうと思うが、Deadmau5(デッドマウス)のショーや、肥大化したディストピアの荒れ地、アイソメトリックな海賊ゲームなど、さまざまなポータルを経由して瞬時に移動することは、こうしたゲームに10年以上携わってきた中で、最もシームレスなオンラインマルチプレイヤー体験といえるものだった。

Coreはすばらしい。メタバースのビジョン構築で最も成功した企業の1つRoblox(ロブロックス)に対して際立つ攻撃力を示している。Fortniteと同様、Coreのグラフィックは非現実的ながら、あまりにも非現実的というものでもない。Robloxの13歳以下の層は年齢を重ねている。この層はRobloxが意欲的に構想を練っているファクターだ。そしてそれほど若くないプレイヤーたちは遠からず、より成熟した雰囲気のある新しいバーチャルハウスを探すようになるかもしれない。

野心的なedgelord(背伸びをした思春期の若者のような意味のスラング)なら、Coreの豊富なカスタム衣装やアバターのセレクションに自分が真剣になるような要素を見出すだろう。あるいは子猫になるかもしれない。

画像クレジット:Manticore Games

Deadmau5、メタバースの住人

Coreのコンテンツのほとんどは、UGC、つまりユーザー生成コンテンツである。これは時代を定義するオンライン現象を象徴している、やや新しい呼称だ(頭字語から総合格闘技を連想しても自分を責めないで欲しい)。しかしManticoreには、ミュージシャンやブランドと提携し、テーマを絞ったゲーム内体験を提供する余地も十分にある。

DJとEDMのフェスティバルの常連であるDeadmau 5は先に「メタバースの恒久的居住地」として描かれた広大でカラフルな一連の体験をローンチした。Coreはその大部分がユーザー作成のゲームで構成されているが、エンターテインメントや教育にも適している。一部のユーザーはゲーム開発の講座をホストし始めたと同社のチームは指摘する。

RobloxのLil Nas X(リル・ナズ・X)やFortniteのAriana Grande(アリアナ・グランデ)のような他のバーチャルワールドの最近のショーとは異なり、Deadmau 5をテーマにしたコンテンツはデビューした後もライブのままで、探索の可用性を広げている。Manticoreのチームはこれを、コメディグループPenn and Teller(ペン&テラー)のようなパフォーマーがラスベガスで進行中のショーのためにキャンプする様子になぞらえている。しかしラスベガスと違って、パフォーマーは同時に2つの場所に滞在できる。Deadmau 5は2021年10月半ば、Ethereum(イーサリアム)ベースのバーチャルプラットフォームDecentraland(ディセントラランド)で開催される音楽フェスティバルに参加することを発表した。

筆者は早めの内覧として、Deadmau 5ことJoel Zimmerman(ジョエル・ジマーマン)氏と一緒にこのショーを鑑賞した。同氏は自身のトレードマークである巨大な動物のヘルメット(ネコだろうか?)とサイボーグの天使の翼を身にまとい、一方筆者はメタバースの小さな黒いドレスともいえる地味な黒のパーカーを選んだ。

ジマーマン氏は、Deadmau 5マウスが飾られたゲーミングチェアに座って現実世界でくつろぎながら、Coreの中をあちこち飛び回り、筆者にこう語った。「私がこれに惹かれたのは、すべてがモジュール化されていて、クリエイターたちにより多くのツールを提供しているからだと考えています」。

画像クレジット:Manticore Games

バーチャルコンサートに期待されるように、このインタラクティブなパフォーマンスには、溶けるようなサイケデリック感のあるビジュアル、ミニゲーム、ターンテーブルの耳がついた威嚇的なChain Chump(ワンワン)風マウスなどがそろっている。ジマーマン氏、そしてCoreの共同創業者であるFrederic Descamps(フレデリック・デスキャンプス)氏とJordan Maynard(ジョーダン・メイナード)氏も、筆者と一緒にこのショーを少なくとも10回は回ったが、全員が本当に楽しんでいるようだった。

ある時、筆者は溶岩に落ちたか、巨大な金属の拳の一撃を受けてコンベヤーベルトにぶつかってしまったようで、近くにはDeadmau 5をテーマにした悪役がそびえ立っていた。「死ぬことを疑似体験できる唯一のインタラクティブコンサートになると思います」とメイナード氏。このショーは、視覚的にも楽しく、創造的にもインタラクティブで、最終的にはFortniteのコンサートのようなものになっていた。

Oberhasli(オーバーハスリ)と呼ばれるこの精巧なバーチャル体験は、薄気味悪いジャングルの廃墟から、浮遊する宇宙ゴミでいっぱいの不気味な世界まで、ゲーム開発の経験のないファンたちによるユニークな世界も見せてくれる。Core Deadmau 5のパフォーマンスは10月中旬に行われ、現在はオンデマンドで、EDMをバックにたくさんの要素が詰め込まれた世界に浸りたい人たちに向けて配信される。

画像クレジット:Manticore Games

クリエイターのためのCore

後にDiscord(ディスコード)で行われた電話会議の場では、Coreツアーはあらゆる人に寄り添う形で展開されており、破壊可能な壁の裏の秘密の門を走り抜けたり、ゲームのジャンルを超えて世界を飛び回るような体験が、コードやゲーム開発経験を必要としない、驚くほど洗練されたものに仕上がっていた。Wi-Fi接続が悪かったとしても、ゲームの世界から別の世界へと移動するのにほんの数秒しかかからない。World of Warcraft(ワールド・オブ・ウォークラフト)の暗いポータルのようなものを通り抜けて、最後にはアイソメトリックな海賊船で航海に出た。

このWoW(World of Warcraft)に向けた賛同は、おそらく偶然ではないのだろう。デスキャンプス氏は、真剣な長年のプレイヤーにしかできないような、キャプチャされたゲームプレイで構築されている物語風のムービー、WoWマシニマの全盛期への郷愁に満ちていた。デスキャンプス氏とメイナード氏は以前、10年以上にわたって忠実に支持されているファンタジーMMOのRift(リフト)にも関わっていた。(メイナード氏は7人目の従業員だった。)最近では誰もがそのメタバースを称賛しているが、驚くべきことに、この分野において、何年も前から人々を結びつけてきたシームレスなバーチャルゲームの世界にルーツを持つ企業はほとんどない。

画像クレジット:Manticore Games

Coreで何かを作ることがいかに簡単かを強調すべく、メイナード氏は、私たちがプレイできる1人称視点のシューティングゲームを手早く作成した。それはドラッグ・アンド・ドロップのプロセスで、Coreのシステムを使って作られたオリジナルのゲーム内アセットの膨大なライブラリに、おそらく2分ほど入り込むだけだった。いくつかの3Dオブジェクトが用意されており、テンプレート(バトルロワイヤル、レース、ダンジョンクローラーなど)からゲームモードを選ぶと、Coreのモジュール式サンドボックスに組み込まれている洗練されたプレイ可能なゲームにほぼたどり着く。冷たい雪景色や不毛な砂漠の中でのゲーム設定も、ドラッグ・アンド・ドロップと同じくらいシンプルな操作で、環境に広がりを与えてくれる。

ゲームプレイはさておき、Robloxで目にするUGCよりCoreゲームの方が何光年も先を行っているように見えるが、プラットフォームのユーザーはそのことを特に気に留めていないようだ。ビジュアルスタイルやゲームのジャンルの広さも、他のプラットフォーム上の同じようなUGCから抜け出してきた人たちにとっては驚きに値するだろう。

コンテンツを作成するコアユーザーには、Manticoreが「perks」と呼ぶ収益化のオプションがかなり充実している。これには、ゲーム内のコスメティックアイテムの提供だけでなく、プレミアムゲームへの課金、Fortniteのようなバトルパスの販売、サブスクリプションモデルの導入などが含まれている。収益の配分は50対50で、Robloxがクリエイターに渡す25%と比べると寛大だ。また、Coreでは他のモジュール式ゲーム制作プラットフォームと同様に、誰もがクリエイターであり、開発経験は必要ではない

現在のところCoreはPC限定だが、Manticoreは2022年からiOSを含む他のプラットフォームにも展開する予定だ。ゲーム制作はPCに限定されるだろうが、同社は誰もがどこでもCoreのゲームをプレイできるようにしたいと考えている。プラットフォームにとらわれないビジョンは、初期のFortniteや最近のRobloxを確実に後押ししたものだ。

「ゲーム開発はお菓子作りに似ています。非常に正確な手順と技術が必要で、何週間もかけて繰り返し行うものです」とデスキャンプス氏はいう。しかしCoreでは、技術的なことを抜きにして、通常は長引いてしまうプロセスを数分で終わらせることが可能。残りの時間を実験やプレイに充てることができる。

「マリオカートにポータルガンを取り入れたらどうだろう?」というメイナード氏の質問にも、間違いなくその場で答えが出ただろう。

画像クレジット:Manticore Games

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(文:Taylor Hatmaker、翻訳:Dragonfly)

「映像やテキストよりもリアルな人そのものを届けたい、残したい」、Voicyが目指す世界観

Voicyとスタディプラスが「大学に特化した」音声配信サービス開始、初期導入大学として新潟医療福祉大学が決定

2021年10月27日~31日の5日間にわたり、音声プラットフォーム「Voicy」は「Voicy FES ’21」を開催した。これは、総勢70人以上のパーソナリティによる50以上のセッションを「放送」する声の祭典だ。

なぜこのような大がかりなフェスを行うに至ったのか、またVoicyというサービスそのものや、それが生まれた背景について、Voicy代表取締役CEOである緒方憲太郎氏と参加パーソナリティの1人、国家資格キャリアコンサルタント / フリーアナウンサー 戸村倫子氏に話を聞いた。

織田信長のような魅力ある人のエッセンスを声で残したい

Voicyは「声のSNS」「声のブログ」ともいえる音声プラットフォームだ。配信者はVoicyアプリを使い10分未満の音声を録音して配信、リスナーはVoicyアプリまたはウェブブラウザを通じて番組を聴取できる。

利用時の基本料金は無料だが、お気に入りを含む任意のパーソナリティへねぎらいや感謝の気持を持って「差し入れ」を贈る機能や、特定のパーソナリティに毎月課金することで特別な放送の聴取権を得られる、いわゆる「推し」との強い絆を結べる「プレミアムリスナー」機能もある。

通常、「月額制」といえば、サービス全体に課金するものが多い。パーソナリティとリスナーが結びつくような仕組みは一風変わっている。

これが、単なる音声ブログではなく、音声SNSとも呼べる理由である。リスナー側から音声を発信することはできないが、コメントや「いいね」でリアクションできるうえ、プレミアムリスナーにはそれとわかるシンボルがコメントに付され、応援している、応援されている、という感覚をお互いに持つことができるからだ。

では、Voicyはどういった背景で誕生したのだろうか。

緒方氏は、Voicyという音声プラットフォームを「コンテンツではなく、人を届けるツール」と位置づけている。「魅力的な昔の人、例えば織田信長の声を聞けるのであれば、聞きたいですよね?未来のある地点から現在を振り返ってみて、魅力的だと思われる人の声を残し、聞くことのできる、人を届けられるサービスだと考えている」と説明した。

Voicyの収録アプリでは、音声を編集できない。そのことには2つのメリットがある。

1つは、「人そのもの」をリスナーに届けられること。「生活音が聞こえることで、その人の日常に想いを馳せられるし、その人の感情が生々しく伝わる」と緒方氏。「テキストや動画では、加工できるから加工された人物像しかユーザーには伝わらない。Voicyは、画像なしの動画ではなく、その人そのものをさらけ出し、人を届けられる」という。

もう1つは、配信者に負担を強いることがないというもの。

「魅力的な人、魅力的な情報を持っている人が、受信者が簡単に時間をかけず楽しめるよう、多くの時間をかけて配信用コンテンツを作っているのが、既存サービスの欠点だった。そのようなことでは、ただでさえ忙しい魅力あるリアルが充実している人が、配信サービスから離れてしまう。しかし、Voicyでは、10分のコンテンツを作るのに必要な時間は10分だけ。配信者に負担を強いることなく、またリスナー側も簡単にサービスを利用できるようになっている」と緒方氏はいう。

音声プラットフォームにこだわるのには、緒方氏の背景が関係している。というのも、緒方氏の父親はプロのアナウンサーとしてテレビ局やラジオ局で、いわゆる「声の仕事」をしていたからだ。

「父親も含め、アナウンサーたちが声だけで人々を魅了している場面を目にしてきたが、話す枠がなければ、その魅力を発揮できません。1人1枠、自分のチャンネルを持つことができれば、いつでも自分のリスナーに声を、自分の魅力を届けられるのにと考えました」。

また、公認会計士という緒方氏のキャリアも関係している。ベンチャー企業のブレインとして国内外問わず情報収集で回っているうちに、声を届けるプラットフォームがないと感じ「世の中にまだない新しいものを作りたい。ITの力で、声による人の魅力を届けるものを作りたい」とのことで、Voicyを2016年に創業したのだ。

ニューノーマル時代の聴取スタイルの変化

創業から4年ほど経過し、世の中を新型コロナウイルス感染症が襲った。人々は、外出を控えるようになり、自宅にこもることを余儀なくされた。このことは、Voicyのリスナーやサービスに影響を与えたのだろうか。

「通勤時間帯に聴取してくれているリスナーが多かったため、その部分で若干、利用率が下がったこともあった」と緒方氏。しかし「家の中で聞いてもいいんだ、という気づきがあってからは、家事など、何かをしながら聞いてくれるリスナーが増えたし、バラエティに富んだ放送が増えてきた」と振り返る。

また緒方氏は「生活しながらでいい、手を止めなくていい、ということで、むしろ聴ける時間が増え、わたしたち側ではパーソナリティの人となりをたくさん届けられるようになったと、好影響があったのではないかと感じている」という。

届けられる「人」を応援したい人たちが集まったVoicy FES ’21

そのような中、大規模なフェスが行われたわけだが、これにはどのような意図があったのだろうか。

緒方氏は、2つの理由を挙げた。

1つは、ある文化を作るには熱量が重要であると考えていること。もう1つは理解や認知を得たい、ということだ。

「声で人を届けるという文化を作り上げる中で、一極に熱量を集中させるタイミングが必要だと感じた。そこで、チケットを購入すれば、誰でも全プログラムを生で、またアーカイブで聴取できるフェスを開催することにした」と緒方氏。また「新しいものを作ると、理解されないことが多い。存在感を主張することで、理解や認知を深めたいと考えた」と説明する。

Voicyでは、2018年から2020年の間、「Voicyファンフェスタ」としてファンと配信者の交流イベントを行ったが、今回は参加パーソナリティ数、セッション数、期間などの規模をアップ。チケット購入で参加(聴取)できるようにした。

結果、参加者は6600人。これはリアルイベントでいえば東京国際フォーラムのAホールを埋め尽くすほどの人数だ。また公式Voicyフェスグッズなどの特典付きで、通常チケットより高額なスペシャルサポーターやサポーター枠もすぐに完売したという。

緒方氏は「それぞれ40人ずつの募集だったが、即完売。それほどパーソナリティたちを支えたい、応援したいというユーザーが多いんだなと実感できた」と想いを語った。

戸村氏は、Voicyの人気番組「ながら日経」の月曜日を担当するパーソナリティ。セッションへの登壇を直後に控えているタイミングだったが、Voicyのパーソナリティになったきっかけや、その影響、またフェスへの想いについて聞くことができた。

もともと、ラジオ局とテレビ局など3社で報道に関わる仕事をしていたという戸村氏。ライフスタイルの変化により、仕事との両立が難しくなり、いったん離れたが、ニュースを発信したいという想いを抱き続けていた。

そのようなときに、ながら日経パーソナリティの募集があることを知り、応募し、見事、オーディションを通過した、というわけだ。

「音声でニュースを届けられるため、高いクオリティを持ちつつ機動力もあるのが魅力」とVoicyというプラットフォームについて語る戸村氏。Voicyで配信するようになってから「子ども向けの話し方講座や学生向けキャリアセミナーなどで、聞いているよと声をかけてもらうことが増え、認知度の高まりを実感している」という。

フェスについては「普段は、音響のことを考え、ウォークインクローゼットの中で収録しているが、フェスでは他のパーソナリティに会える。同窓会のような、文化祭のようなこの雰囲気を楽しみたい」と語っていた。

作り手も楽しんでいるからこそ、リスナーも楽しめるし、応援したくなるのか、と話を聞きながら感じることができた。

音声市場はオワコンではない

2021年に入り、海外製音声サービスが上陸し、国内では熱狂的に迎えられた。それに追随するかたちで、Twitterなど古参のSNSサービスでも、音声でのやり取りに力を入れるようになった。

早い段階で海外製音声サービスが冷めてしまったことについて、緒方氏は「あれは、音声というよりオープンなミーティングサービス。リアルタイム性が求められるので、仕方ないところはあるだろう」と分析。そのうえで「音声業界は伸び続けているし、音声会話サービスを始めたTwitterなど他のサービスとは、音声SNS文化をともに作り上げていく仲間だと考えている」と思いを述べた。

事実、Voicyの年間UUは1100万人。実に、日本人口の10分の1近くに上る。また、配信登録者数は1000人を超えており、さらに毎月の応募者の中から3%ほどが審査を通過しているため、今後も増加が見込まれる。

「今は、トップスピーカーに牽引してもらいたいため、応募からの審査という流れになっているが、数年先には誰でも自分の番組を持てるようにしたい」と緒方氏。「音声での『人』のエッセンスをどんどん蓄積していけたら」と抱負を述べた。

最後に、Voicyの今後の展開について語ってもらった。

「今は、テキストにしろ、動画にしろ、情報を得るためにいったん立ち止まる必要がある。しかし、近い将来、耳さえ空いていればいつでも情報を取り入れられる、自分の好きな“人を聴ける”ようになる。

海外では、音声市場がかなり活性化してきているので、国内でも、耳から取り入れる「note」と言われるような立ち位置を目指していきたい」。

なお、Voicy FES’21を聞き逃した、あるいは興味が出てきた、という人は、今からでもチケット購入により、11月いっぱいはアーカイブを聴取できるとのこと。人そのものが声で届くという感覚を味わってみるのはどうだろうか。