ダッジが電動マッスルカーの発売を予告、それはどんなクルマになるのか?

「マッスルカー」という言葉は、常に譲歩の婉曲表現だった。お金をかけずに最大のパワーを手に入れたければ、Porsche(ポルシェ)やLotus(ロータス)のようなスポーツカーのことは忘れて、マッスルカーを買い、コーナーは少しゆっくりと曲がるようにすればいい。過去に多くのマッスルカーを世に送り出してきたDodge(ダッジ)は米国時間7月8日、電気自動車のマッスルカーを作り、2024年に発売すると発表した。最初に思い浮かぶ疑問。それがマッスルカーだとしたら、足りないものはなんだろうか?

マッスルカーとスポーツカーの間には違いがあり、それを知るのにダッジというブランドは最適だ。ダッジは長い間、馬力と直線の速さを連想させるブランドだった。Dodge Viper(ダッジ・バイパー)にDodge Challenger(ダッジ・チャレンジャー)、不格好なSUVのDodge Durango(ダッジ・デュランゴ)にさえ、710馬力を発揮するV8エンジンが搭載された派手な仕様が用意されている。そのパワーはポルシェのほとんどのモデルを凌ぐが、誰もサーキットでデュランゴをポルシェ911と競わせようとはしない。

電気自動車の魅力の1つは、機械的にシンプルであることだ。マッスルカーの元来の宣伝文句もそれだった。アメリカの自動車メーカーは、多大な開発コストがかかるチューニングされたシャシーや優れた空力特性を持つスポーツカーを提供する代わりに、日常的なファミリーカーに大きなエンジンを搭載したのだ。そう、マッスルカーとはそういうものだ。

ダッジがマッスルカーの鋳型を用いて、低コストでハイパワー、直線(のみ)で猛烈に速い電動レーサーを作ると仮定してみよう。Toyota Supra(トヨタ・スープラ)のようなクルマではなく、ダッジ・チャレンジャーの電気自動車版だ。このクルマにはいくつかの明確な特徴がある。

1つはバーンアウト。マッスルカーはバーンアウトをすることで知られているが、それはパワーが過剰で、シャシーが洗練されておらず、タイヤのトレッドをまったく無視した結果の副産物だ。ダッジは発表時のツイートでこの性能を予告し、4つのタイヤから煙を発生させているクルマの姿を示した。ダッジは顧客層をよくわかっている。

そして2つめ。マッスルカーのオーナーは、自分のクルマを自宅でチューニングしたり、調整したり、改造できることを期待している。それはこの種のクルマの大きな魅力の1つだ。工場出荷状態のマッスルカーは十分高性能だが、購入者は自動車メーカーが車両価格をできるだけ低く抑えるために、特定のパーツを省略していることを理解している。もっとトラクションが欲しいなら、タイヤを交換する。コーナリング性能を向上させたいなら、剛性の高いスタビライザーを装着する。電動マッスルカーにも、オーナーが改造する楽しみは残されるべきだ。だが、電気自動車の場合は、機械的なアップグレードよりも、ソフトウェアの調整によって性能を引き出すようなチューニングが多くなるだろう。

Tesla(テスラ)は以前から、オーナーが改造したり自宅で修理することを嫌う姿勢が批判されてきた。ダッジなどの自動車メーカーにとっては、そこにチャンスがある。自動車の購入者の多くは、自分のクルマに手を入れる楽しみを期待している。このような客層の支持が、ダッジの今後の成長には欠かせないと思われる。

以上のようなマッスルカーならではの特徴は、ダッジにとって魅力的なセグメントとなるはずだ。現在のダッジは、市場の変化に対応することに苦心し、古臭いクルマばかりになってしまっている。マッスルカーで培った低コストで高性能なクルマを作る方法を使えば、開発コストを抑えることができるだろう。そして、開発コストを低く抑えることは、今のダッジに必要なことなのだ。

ダッジは現在、世界第4位の自動車メーカーであるStellantis(ステランティス)の一部門となっている。ステランティスは、これまでダッジ・ブランドを所有していたFiat Chrysler Automobiles(フィアット・クライスラー・オートモービルズ)と、フランスのGroupe PSA(グループPSA)が合併して新設された多国籍自動車会社で、その本社はオランダに置かれている。それ以前の話をするとさらにややこしい。1900年代のはじめにダッジ兄弟が起こした会社から始まったダッジは、1928年にクライスラーに買収された。かつてGMやFord(フォード)と並んで「ビッグ3」と称されたそのクライスラーも、今やステランティスが所有する1つのブランドに過ぎない。ダッジとクライスラーを合わせても、現在販売しているモデルは6車種しかなく、しかもこの数年間は大幅な刷新が行われていない。

復活した「Bronco(ブロンコ)」がフォードを活性化させたように、エレクトリックマッスルカーがダッジを活性化させるかもしれない。

フォードを見て欲しい。2021年型ブロンコがヒットしているのは、消費者がブロンコに期待していることにうまく合致しているからだ。ブロンコに長く付きまとっていたエンジンやシャシーの問題を、人々はほとんど覚えていない。代わりに人々の記憶にあるのは、頑丈なオフローダーというイメージ(とアメリカンフットボール選手と警察のカーチェイス)であり、だからフォードは新型ブロンコとして、現代的な利便性を備えた頑丈そうなオフローダーを作り上げた。

ダッジも同じようにして、今後発売される電動マッスルカーを開発するべきだ。しかし、マッスルカーと呼ぶからには、それなりの期待が寄せられることは間違いないわけで、ダッジはそれを十分に承知しているだろう。

同様に、フォードも4ドアの電気自動車を「Mustang(マスタング)」という名前で販売している。Chevrolet(シボレー)も「Corvette(コルベット)」という名前の電動SUVを準備しているという噂が絶えない。ほとんどの人が電気自動車のマスタングを気に入っているが(私はそうではない)、マスタングという車名がブランディングを混乱させていることも認めている。

では、ダッジの電動マッスルカーは何という車名になるのだろうか?最近では、自動車メーカーが新しいブランディングのために、過去のカタログを利用することが多くなっている。GMは初の電気トラックとしてHummer(ハマー)ブランドを復活させた。フォードもブロンコと「F-150 Lightning(F-150ライトニング)」という名前を復活させた。ダッジは豊富なマッスルカーの歴史を持っている。例えば伝説的なCharger Daytona(チャージャー・デイトナ)や、価格を抑えた「Corone(コロネット)」とそれをベースにアップグレードされた兄弟車の「Super Bee(スーパー・ビー)」「Dodge Stealth(ダッジ・ステルス)」や「Dodge Polara(ダッジ・ポラーラ)」なんてクルマもあった(ただし、ポラーラはEVメーカーのPolestar[ポールスター]に近すぎるかもしれない)。また、ダッジはクライスラーが以前使用していたPlymouth(プリムス)ブランドの車名を使うこともできる。その中には、Roadrunner(ロードランナー)、Duster(ダスター), Fury(フューリー)そしてBarracuda(バラクーダ)などがある。

最後の疑問。ダッジはこのクルマに、どうやってマッスルカーらしい音を与えるのだろうか?個人的には、そんなことはやらないで欲しい。私はパフォーマンスについて、聞くことよりも感じることを重視しているからだ。ちなみに私は、カスタムエキゾーストを装着した大きなF-150に乗っている。

Timothy Kuniskis(ティモシー・クニスキス)「ダッジが売るのは電気自動車ではありません。アメリカン eマッスルカーです」

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(文:Matt Burns、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

EUがBMWとVWに約1110億円の制裁金、90年代からの排ガスカルテルで

環境問題が本格化した1990年代、ドイツの一部の自動車メーカーは、自社の自動車が温室効果ガス排出の点で確実に貢献し続けられるよう、秘密裏に会合を持っていた。欧州連合(EU)によると、Volkswagen(フォルクスワーゲン、VW)、Audi(アウディ)、Porsche(ポルシェ)、BMW(ビー・エム・ダブリュー)、Mercedes-Benz(メルセデス・ベンツ)の親会社であるDaimler(ダイムラー)の5社が、違法に結託し、新型ディーゼル乗用車の排ガス浄化に関する競争を制限し、よりクリーンな排ガス技術の導入を実質的に遅らせていた。EUは現地時間7月8日、排出ガスカルテルに関与したVWとBMWに対し、10億ドル(約1110億円)の制裁金を科した

「Daimler、BMW、VW、Audi、Porscheの自動車メーカー5社は、EUの排出ガス規制が法的に要求する水準以上の有害排出ガスの削減技術を有していました」と、欧州委員会のMargrethe Vestager(マルグレーテ・べステアー)上級副委員長は声明で述べた。「しかし、彼らは、この技術の可能性を最大限に活用せず、法が要求する水準を超えてクリーンであろうと競うことを避けました。つまり、本日の決定は、合法に行われた技術協力というものが、いかに間違っていたかということに関係しています。私たちは、企業が結託することを容認しません。これはEUの反トラスト規則で違法とされています。欧州が野心的なグリーンディール目標を達成するためには、自動車の汚染管理に関する競争とイノベーションが不可欠です。今回の決定は、この目標を危うくするあらゆる形態のカルテル行為に対して、私たちが躊躇なく行動を起こすことを示しています」と述べた。

すべての当事者が自社の関与を認め、和解に合意した。AudiとPorscheを所有するVWは約5億9500万ドル(約655億円)、BMWは4億4200万ドル(約484億円)を支払わなければならない。Daimlerは約8億6100万ドル(約947億円)を支払うが、同社は内部告発者であるため、罰金を免れた。つまり、Daimlerは無罪放免となる。

BMWの2020年の純利益は46億2000万ドル(約5080億円)、VWの2019年の純利益は約230億ドル(2兆5300億円)、2020年は約122億ドル(1兆3420億円)であり、今回の罰金はある意味、手首を平手打ちされる程度にすぎない。忘れてはならないのは、VWが排ガススキャンダルに巻き込まれたのは今回が初めてではないということだ。

米環境保護庁は2015年、VWがディーゼルエンジンにソフトウェアを意図的に追加して排ガス規制に従っているように見せかけていたが実際には法定量をはるかに超える排ガスを出していたとして、VWに大気浄化法違反の通告を行った。

今回の訴訟でEUが特に注目したのは、ディーゼル車の排気ガスに混ぜて有害汚染物質を中和する溶液「AdBlue(アドブルー)」のタンクの大きさについて、関係企業が合意したことだ。自動車をよりクリーンにする技術を持っているにもかかわらず、競争しないことで合意したのだ。

シュピーゲルがこのカルテルのニュースを最初に報じたのは2017年。各社はグリーンウォッシング(偽善的な環境への配慮)に着手した。同年、関係者全員とFord Motor(フォード・モーター)が手を組み「Ionity(イオニティ)」というEV用の高出力充電ネットワークを構築した。計画では、2020年までに欧州全域で約400カ所の充電ステーションを建設・運営することになっていたが、イオニティは欧州全域で300カ所しか設置できず、さらに2020年は充電料金を500%と大幅に値上げしていたようだ。

今週初めには、VWの大型トラック事業、Traton Group(トレイトン・グループ)、Daimler Truck(ダイムラートラック)、Volvo(ボルボ)グループが、約5億9300万ドル(約652億円)を投資し、欧州各地に電動大型長距離トラック・バス用の公共充電ステーションのネットワークを構築に向け協業することが決まった。

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Nariko Mizoguchi

Haloがユーザーまで遠隔地のオペレーターが運転して届ける5G利用の配車サービスをラスベガスで開始

5G技術は、遠隔オペレーターを使ってドライバーレスカーを動かすことができるという過剰な広告を振りまいてきたが、結局ここ数年はそれらは単なる誇大広告に過ぎなかった。この状況を変えるために、ラスベガスを拠点とするスタートアップHalo(ハロ)と通信事業者大手のT-Mobile(ティーモバイル)が提携し、ラスベガスで5Gを利用したドライバーレス電気自動車のサービスを2021年後半に開始する予定だ。

5台の車両でスタートするこのサービスは、ユーザーがアプリを使ってHaloの試験車両群に接続することで機能する。配車が注文されると、遠隔地のオペレーターがクルマを運転して待っているユーザーのもとへと向かう。クルマが到着したら、ユーザーはハンドルを握って、自分の旅行中普通にクルマを運転することができる。旅行が終わったら、遠隔地のオペレーターが運転を引き継ぎ、次の顧客のいる場所へ車を走らせる。

Haloのアプローチは、Waymo(ウェイモ)やCruise(クルーズ)のような、遠隔地もしくは車内の人間の関与を完全に排除することを目的とした、完全な自動運転技術スタックを開発している企業とは大きく異なる。その代わりに、Haloの車両には9台のカメラが搭載され、レーダーと超音波センサーが補助として搭載され(LiDARはなし)、T-MobileのUltra Capacity(ウルトラキャパシティ)ミッドバンド5Gネットワークを介して遠隔地のオペレーターと接続される。

HaloのCEOであるAnand Nandakumar(アナンド・ナンダクマール)は、TechCrunchに対し、このサービスは、拡張された範囲のローバンド5Gネットワークと、必要に応じてLTEでも運用できると述べている。

Haloのプレスリリースによると、同社の車両には「独自のフィードバックループを構築して、人間がクルマをコントロールしている間にバックグラウンドで学習し、時間をかけてレベル3の能力を達成できる」アルゴリズムが搭載されるとのことで、長期的には自動運転を視野に入れていることが伺える(なおレベル3とは、Society of Automotive Engineersが提唱する自動運転の5段階のレベルを意味している。レベル3は、非常に限定された条件下で人間のドライバーが運転を離れることを可能にするレベルだ)。

ナンダクマール氏はプレスリリースの中で「完全な自動運転は、技術的にも社会的信頼の観点からも大きな課題であり、今後数年間では解決できないでしょう」と述べている。「しかし、Haloのシステムはこれらの課題を解決するために、消費者のみなさまが今日から安心して使えるソリューションから始めて、時間をかけて自動化を実現できるようにデザインされています」。

また同社はその車両には、安全上の問題の可能性が検出された場合に、直ちに車両を完全に停止させる高度な安全停止メカニズムが搭載されると述べている。

Haloは2020年、T-Mobileが共同設立した5G Open Innovation Labに参加し、T-Mobileのエンジニアと対話したりミッドスペクトラム・ネットワークを利用したりできるようになった。ナンダクマール氏は、T-Mobileが同社に投資しているかどうかについては明言を避けた。

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:sako)

多国籍自動車会社ステランティスが2025年までに約3.9兆円を電気自動車に投資

Fiat Chrysler Automobiles(フィアット・クライスラー・オートモービルズ)と、フランスのGroupe PSA(グループPSA)が合併して誕生した多国籍自動車メーカーであるStellantis(ステランティス)は、内燃機関からの脱却に向けた大規模な取り組みの一環として、今後4年間で電気自動車と新しいソフトウェアに300億ユーロ(約3兆9000億円)を投資すると発表した。

世界第4位の自動車メーカーとなったステランティスは、General Motors(ゼネラルモーターズ)やVolkswagen(フォルクスワーゲン)などのライバル企業と並んで、2020年代前半に電気自動車へ数兆円規模の投資を行うことになる。同社は2024年までに、Dodge(ダッジ)ブランドのマッスルカーと、Ram(ラム)ブランドのピックアップトラックの電気自動車を製造することを計画している。また、2025年までにはJeep(ジープ)ブランドのすべてのセグメントに、電気自動車またはプラグイン・ハイブリッド車を提供すると述べている。

その最終的な目標は、2030年までに欧州で70%以上、米国で40%以上の低公害車の販売目標を達成することだと、現地時間7月8日にオンラインで開催された同社初の「EV Day」イベントで、Carlos Tavares(カルロス・タバレス)CEOは語った。

ステランティスは、競合他社に比べて電動化が遅れているが、その理由の1つは、同社のラインナップの売れ筋がパフォーマンスモデルやヘビーデューティーモデルに偏っていることだ。同社は十数ブランドの自動車を設計・製造しており、米国ではジープ、Chrysler(クライスラー)、ダッジ、ラムがそれに含まれる。欧州の主要ブランドには、Fiat(フィアット)、Peugeot(プジョー)、Citroen(シトロエン)、Opel(オペル)などがある。

その電動化戦略を実現するために、2025年までに容量130ギガワット時以上のバッテリーを製造し、2030年までには北米と欧州に建設する5つの巨大バッテリー工場で、260ギガワット時以上のバッテリーを製造できるようにすると、ステランティスの幹部は語った。また、2024年までには搭載する車両に合わせて2種類のバッテリー化学物質を使い分け、2026年までに固体バッテリー技術を開発することを目標としているという。

画像クレジット:Stellantis

この巨大自動車メーカーは現在、4つの電気自動車専用プラットフォームを開発している。主に街乗り用の「STLA Small(STLAスモール)」は航続距離が最大500キロメール、上級乗用車の「STLA Medium(STLAミディアム)」の航続距離は最大700キロメートル、そして高性能なパフォーマンスモデルやマッスルカー用の「STLA Large(STLAラージ)」と、ピックアップトラックや大型SUV用の「STLA Frame」は最大航続距離800キロメートルとなる予定だ。ステランティスのRichard Palmer(リチャード・パルマー)CFOによると、同社では2020年から2024年の間にバッテリーパックのコストを40%削減することを目指しているという。

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

空飛ぶクルマ・eVTOLのテトラが新機種Mk-5の7月末予約販売開始を発表、開発と人材育成で福島県南相馬市と連携協定

「真に価値のあるパーソナルな移動体験を開発」するとうたう航空機スタートアップ「テトラ・アビエーション」は7月7日、福島県南相馬市と連携協定を締結し、同市での試験飛行や人材教育を行うと発表。締結式では、新型eVTOL「Mk-5」(マークファイブ)のイメージ画像と模型が公開された。

これまでもテトラ・アビエーションは、福島ロボットテストフィールドでの試験飛行を行ってきた。今後は、2025年の大阪万博、2030年以降の「エアモビリティ」の実用化に向けて南相馬市と連携し、試験飛行の継続と、次世代エンジニアの育成を強化するという。

「Mk-5」10分の1の模型

テトラ・アビエーションは、7月26日からアメリカで開催される航空機の展示会「EAA AirVenture Oshkosh 2021」に「Mk-5」の実機を展示(ブース番号647)し、2022年の引渡を前提に、アメリカでの予約販売を開始する。当面は、アメリカの現行法に基づく形で、オーダーメイドキットとして販売し、ゆくゆくは日本でも自家用航空機としての販売を目指す。

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BMWがレトロフューチャーな電動スクーター「CE 04」をついに生産開始、しかし132万円で買う人はいるのか?

BMW(ビー・エム・ダブリュー)の電動シティースクーターの話は何年も前から聞いている。電動キックスクーターのことではないので念のため。ドイツの自動車メーカーは2017年にBMW Motorrad Concept Linkという未来の高級マイクロモビリティを思わせるコンセプトバイクを発表した。2020年11月に最新のコンセプトスクーター「CE 04」を披露したBMWは、このほど本格的な生産に入った。

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現地時間7月7日、同社は2022年ラインアップにCE 04が正式に加わり、第1四半期に全世界で発売する計画を発表した。かわいらしい顔立ちでレトロフューチャーな雰囲気を醸し出すこのスクーターは、70年代、80年代の人々が「未来的」乗り物はこうなると思っていたものを彷彿させる。

これはBMWにとって初の電動スクーターではない。同社は2014年にC Evolutionを発売したが、米国内ではあまりうまくいかなかった。おそらく、時代より早かったためだろう。おそらく、価格が1万3000ドル(約144万円)だったからだろう。

CE 04の価格は1万2000ドル(約133万円)から。そしてBMW Motorrad Concept Link最大のポイントは「未来の都市環境にとって何が重要かというビジョン」を提供することであり、そうすればたとえ売上が伸びなくてもBMWは気にしないだろう。しかし、BMWがガソリン車よりもずっと安いものを作るまで((Vespaなら新車が5000ドル[約55万円]以下で買える)、この自動車メーカーの新スクーターが各都市を席巻することは保証されていない。

8.9 kWhのバッテリーパックを使うことで、Evolutionの12.7 kWhパックと比べてBMWはずっと少ない台数で利益を上げられるだろう。高品質のテクノロジーと5年前と比べて安くなったバッテリーを利用できることを考えればなおさらだ。

BMW Motorradの広報担当者はTechCrunchに対しれ、CE 04はバイク市場の中価格帯の値段であり、電気自動車よりずっと安いと語った。

「一部の人にとっては、電気モビリティへのはるかにコストのかからない入り口です」と広報担当者はいう。

もちろん、熱烈なファンは飛びつくだろう。私たちが笑いの種にしないようにかなり苦労しているBMWの奇妙なプレスリリースにでてくる架空の人物のように。

早朝。町は目を覚まし始めている。ガレージへ行くまでの間に私は冷たい空気を吸った。着ているのはファッション的にも機能的にもカジュアルにカットされたパーカー。プロテクターは目立たないが安心感を与えてくれる。1日が始まる準備ができた。

ちょっと待った、まだ続きがある。

早起き鳥がさえずり、都会のジャングルが目を覚ます。町の音が高まり始める。すべてが動き始める。人々も動く、互いにそして平行に。出会いが起きる。

新しい日は何をもたらすか?川沿いの小さなバーで友達と食べるタパス?あるいは近代美術館の展示?何よりも先に、会社の予定がある。ワークショップ、ミーティング、顧客訪問。これが人生というもの。

私はスマートフォンをスクーターとペアリングし、腕をひと振りしてパーカーをアクティベートする。LEDが点灯する。私は静かだが、誰かに見てもらいたい。すべてがこんなにシンプルでスムーズ。

とうとうまた出発の時が来た。朝食の間さえも待ち遠しかった。鳥たちでさえ私に気づかない。私はほとんど音をたてることなく近所を滑走する。再び私は町の一部になる。

街との一体感

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「新しいBMW CE 04は、BMW Motorradの電気モビリティ戦略の論理的かつ考え直された延長線上にあります」とBMW CE 04のプロジェクトマネージャーであるFlorian Römhild(フローリアン・レムヒッド)氏は声明で語った。「市街地はこのクルマの要素の1つです。ここが新たな基準を作る場所です。テクノロジーとビジュアルスタイルの両方で」。

ヨーロッパとアジアの市場では、CE 04は都市向けバイクとして販売されるが、そのカテゴリーがほとんど存在していない米国では、スクーターは都市通勤者にリーチしようとしている。

CE 04の最大出力は42馬力で最高速度75マイル/時(約120 km/h)なので、米国の詰まった動脈であるハイウェイを走ることができる。推定航行距離は80マイル(約128 km)で家庭用レベル2充電器または公共充電ステーションで2時間以内で充電できる。ライダーはエコモード、レインモード、ロードモードの中から効率よく走れるモードを選ぶことができる他、パワーアップしたい人のためにはダイナモックモードが、1650ドル(約18万2000円)のプレミアムパッケージの一部として用意されている。

アバンギャルドなフォームに、車両の中間部に置かれたフラットなバッテリーが実現したスムーズで低い車高という機能性が加わり、ヘルメットと充電ケーブルのためのストレージコンパートメントが乗ったまま手の届く位置にある自由なデザインだ。エネルギーをバッテリーに戻す再生式ブレーキングシステムは、市街地を走る際に数多く使われるだろう。

最近のどの車両も同じく、10.25インチのカラースクリーンがハンドルバーに設置され、ナビゲーションとスマートフォン接続を備えている。USB-C充電ポートもある。

標準カラーは「ライト・ホワイト」だが、もっとすごい「マゼラン・グレイ・メタリック・アバンギャルド」のカラーリングを望む人はアップグレードに225ドル(約2万9800円)必要だ。どちらもブライト・オレンジのアクセントが施されている。

今後の展開は?

「当社のCEOは、これは『04』であり『4』の下にも上にもスペースがあると言っています。それは当初の未来の電動スクーターのためのスペースだと申し上げておきます」と広報担当者はいう。

BMWは他に開発中のモデルや発売のタイミングについて何も口にしていないが、CE 04は、完全電動車を2025年までに約200万台、2030年までに1000万台販売するというBMWの全体計画の一部である。

「世の中の動きがあまりにも速いため、CEシリーズへの新規追加は1~2年のうちに起きるかもしれません」と広報担当者は述べた。

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Nob Takahashi / facebook

電動化を推進する英高級車メーカーのベントレーが新型車「フライングスパー・ハイブリッド」を発表

102年の歴史を持つ英国の超高級自動車メーカーであるBentley Motors(ベントレー・モーターズ)は現地時間7月6日、最新のハイブリッドモデルを発表した。Volkswagen Group(フォルクスワーゲン・グループ)傘下の同社によれば、この最新型「Flying Spur Hybrid(フライングスパー・ハイブリッド)」は、ベントレー史上最も環境に優しい車であるという。

この新型車は、ベントレーの「Beyond100(ビヨンド100)」戦略の一環であり、同社は2023年までにラインナップをすべて電動化し、2030年までにはすべてのモデルを電気自動車のみにして、カーボンニュートラルな企業になることを目指している。ベントレー初の電気自動車が2025年に発売予定であることを考えると、これは大変な目標だ。今のところ、ベントレーの電動化モデルは、まだこのフライングスパー・ハイブリッドと、SUVのBentayga Hybrid(ベンテイガ・ハイブリッド)しかない。

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ほとんどの主要な自動車メーカーは同じような公約を掲げており、Ford(フォード)、GM、Mercedes-Benz(メルセデス・ベンツ)、Kia(起亜)、Nissan(日産)などのメーカーはすでに電気自動車を生産している。ベントレーのような自動車メーカーが目標を達成するためには、電動化モデルの生産台数を飛躍的に増加させなければならない。特に、現在はTesla(テスラ)が独占している高級EV市場に割って入ろうとするのであれば、なおさら努力が必要だ。

ベントレーの発表によると、フライングスパー・ハイブリッドの新しいパワートレインは、2.9リッターV型6気筒エンジンと1基の電気モーターを組み合わせたものであるという。エンジン単体で最高出力416psを発生し、550Nmのトルクを5650rpmまで維持する。トランスミッションとエンジンの間に配置されたモーターは、最高出力136psと最大トルク400Nmを発生。システム総合では最高出力が544ps、最大トルクは750Nmにもなる。これはベンテイガ・ハイブリッドよりも、それぞれ95psと50Nm上回る。

容量14.1kWhのリチウムイオンバッテリーは、(地域によって異なるが)約2時間半で満充電が完了する。ガソリンも満タンにすれば、700km以上の距離を走行できるという。0-100km/h加速はV8エンジン搭載バージョンのフライングスパーとほぼ同等の4.3秒(フライングスパーV8は4.1秒)。最高速度は285km/hに達する。

ドライバーは、センターコンソールに備わるスイッチで3種類のEモードを切り替えて、バッテリーの使用を管理することができる。クルマを始動させると、可能な限り電気のみで走行するEVドライブ・モードがデフォルトで選択される。ハイブリッド・モードは、ドライバーがナビゲーションシステムで目的地を設定すると、そのルートに合わせて適切なドライブ・モードを予測し、自動的に選択する。この予測に基づいてエンジンの惰性回転も積極的に利用する。システムは走行中にバッテリーの電力を最も効率的に利用するための計算を絶えず行い、例えばこれから都市部に向かう場合は、バッテリーに電気を蓄えておき、都市部に入ったら最適なEVモードで走行できるようにする。逆に高速道路ではV6エンジンをより多く作動させることができる。そして3つめのホールド・モードは、エンジンと電力をバランス良く使い分け、必要なときに電力で走行できるようにバッテリーの充電量が維持される。ドライバーがスポーツ・モードを選ぶと、デフォルトでこのホールド・モードになり、電気モーターによるブーストと減速時のエネルギー回生が確実に行われる。

フライングスパー・ハイブリッドのインフォテイメントスクリーンでは、エンジンとモーターのエネルギーフローを確認できる。航続可能距離、バッテリー残量、充電状況などのEV走行に関する情報は、センタースクリーンの他、インストルメントパネルやヘッドアップディスプレイにも表示できる。フライングスパー・ハイブリッドには使用地域にあった充電ケーブルが付属するが、家庭で充電したいオーナーには、充電ユニットと充電ケーブルを収納できるベントレーのロゴ入りウォールボックスが無償オプションとして提供される。

フライングスパー・ハイブリッドは、現在ほとんどの市場で注文可能だが、ベントレーによると、今のところ、EU加盟27カ国、英国、スイス、イスラエル、ウクライナ、ノルウェー、トルコ、ベトナムでは受注が開始されていないとのこと。

また、ベントレーは同日、シングルモルト・スコッチウィスキーのメーカーであるThe Macallan(ザ・マッカラン)とのパートナーシップも発表。「特徴的なコラボレーションを展開し、より持続可能な未来に向けた両社のビジョンを推進する」と声明で述べている。ベントレーの広報担当者によると、このパートナーシップの一環として新しいシングルモルトウイスキーが発売される予定だという。さらに「今後、両社のコラボレーションによる製品や体験が追って発表される」とのこと。体験とは…高級飲酒運転ということだろうか? より具体的な両社のコラボレーションとしては、スコットランドのストラスペイ地域にあるThe Macallan Estate(ザ・マッカラン・エステート)で、ベントレーの完全な電気乗用車のフリートを2025年までに導入することが発表された。さらに、ベントレーは2021年中に2台のハイブリッド車を、ザ・マッカラン・エステートに納車する予定だという。

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

ボルボ、ダイムラー、トレイトンが約660億円を投じて全欧的な電気トラックの充電ネットワーク構築

Volvo GroupとDaimler Truck、およびVolkswagenの大型トラック別会社Traton Groupが米国時間7月5日に、電動の大型トラックとバス用高性能充電ステーションの全ヨーロッパ的ネットワークを作るための、法的拘束力のない協定を発表した。このニュースは、最初にロイターが報じた

ヨーロッパの大手自動車メーカー3社は、5億ユーロ(約658億1000万円)を投じて、戦略的に重要な地点やハイウェイの近くに1700カ所の充電ポイントを構築し運用する。協定の締結は年内とされており、2022年に運用を開始する。また将来的にはこの合弁事業のパートナーを増やして、充電ポイントの大幅増を狙っている。

このベンチャー事業は、2050年までにカーボンニュートラルな貨物輸送を実現するというEUの目標を実現する端緒となるものだ。個人や運輸企業でEV化が遅れている大きな理由の1つが、充電インフラャが未整備であることだ。そのインフラを作ることによって3社は、自社製の電気トラックやバスの売上増を狙っている。

Daimler TruckのCEOであるMartin Daum(マルティン・ダウム)氏は、声明で次のように述べている。「2050年までに、気候の中立性を実現することはヨーロッパのトラックメーカーの共同の目標です。その鍵を握るのは、業界が一致協力して正しいインフラを作り、路上にCO2ニュートラルなトラックを送り出すことです。私たちは、Volvo GroupやTRATON GROUPとともに全欧的な高性能充電ネットワークを構築します。開拓者としての第一歩を踏み出すことに、とてもエキサイトしています」。

VolvoとDaimlerのパートナーシップには前例がある。2021年5月に、互いに競合する両社は長距離トラック用の水素燃料電池の共同開発でチームを組み、開発コストの低減と生産量のアップを狙っている。この最新のベンチャーも、業界の気候関連の問題を大企業が共同で解決していく動きの1つだ。

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ヨーロッパの自動車産業の業界団体ACEAは、2030年までに最大5万基の高性能充電ポイントを、という目標を掲げている。TratonのCEOであるMatthias Gruendler(マティアス・グリュンドル)氏はロイターの記事で、ヨーロッパのインフラを完全にEV対応にするためには100億ユーロ(約1兆3162億円)が必要、と述べている。

Volvoが発表した声明によると、今回のベンチャー事業は、自動車メーカーや政府機関など自動車産業と関連のある者全員へ向けての、気候の目標に達するために必要な迅速な事業拡大とそのためのアクションを呼びかけるものだ。

この充電ステーションには特定のブランド名は表記されず、EV群を運用する者なら誰でも、ヨーロッパの長距離輸送で義務化されている45分間の休憩時間中の高速充電と、夜間充電の両方を利用できる。

この合弁事業は独自の社名でアムステルダムに本社が置かれる。株式を3社が同量保有するが、他の製品分野では互いの競合が続く。

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タグ:VolvoDaimlerTraton電気自動車トラックバスカーボンニュートラル充電ステーションヨーロッパ

画像クレジット:Volvo Group

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Hiroshi Iwatani)

リマックがブガッティをVWグループから買収、新EV会社「ブガッティ・リマック」を設立

クロアチアの電動スーパーカー・スタートアップであるRimac Automobili(リーマック・アウトモビリ)が、フランスに本拠を置く超高級車ブランドのBugatti(ブガッティ)を、Volkswagen Group(フォルクスワーゲン・グループ)から買収することになった。Financial Times(フィナンシャル・タイムズ)の報道によると、リマックは新会社「Bugatti-Rimac(ブガッティ・リマック)」の支配的な55%の株式を所有し、フォルクスワーゲン・グループのPorsche(ポルシェ)が残りの45%を所有することになるという。

「リマックとブガッティは、互いに提供し合える有益な特色が完璧にマッチします」と、リマックの創業者でCEOであるMate Rimac(マテ・リマック)氏は、声明で述べている。「若く、機敏で、急速な自動車およびテクノロジー企業として、当社は電動技術における業界のパイオニアとしての地位を確立してきました。また、当社は先日発表したNevera(ネバーラ)によって、速いだけでなく、エキサイティングで高品質な優れたハイパーカーを開発・製造できることを証明しました。ブガッティは、1世紀以上にわたる卓越したエンジニアリングの経験を持ち、また歴史上最もすばらしい伝統を持つ自動車会社の1つでもあります」。

リマックは2021年6月初め、120kWhのバッテリーパックと4つのモーターを搭載し、1.4MW(約1914馬力)という驚異的な最高出力を実現したハイパーカー「Nevera」を発表した。同車は停止状態から時速100kmまで1.97秒で加速し、最高速度は時速412kmに達する。Neveraは、これまでブガッティの「Chiron(シロン)」が専有していた世界最速のスポーツカーの座につくことが期待される。

2009年にガレージで起業したリマックが、最も魅力的で有名な自動車ブランドの1つとして、スーパーカーを製造するまでになったことは、いかに電気自動車が高級車やスポーツカーの市場を席巻し始めているかを示している。電気自動車には環境への配慮だけでなく、自動車の未来を切り拓くスピードがある。

今回の発表にともない、リマックはバッテリーシステムやドライブトレインなどの電気自動車用コンポーネントの開発・生産・供給業務を、リマック・グループが100%所有する新会社「Rimac Technology(リマック・テクノロジー)」に分離し、別の組織として世界中の自動車メーカーと協業していくと述べている。

なお、ブガッティ・リマックの設立は、リマック・グループ内の株主構成には影響しない。同社の声明によると、マテ・リマック氏は引き続きリマック・グループの37%の株式を保有し、Hyundai Motor Group(現代自動車グループ)が同12%、その他の投資家が27%の株式を保有するとのこと。ポルシェは最近、リマックへの出資比率を15%から24%に引き上げたが、その保有株式の合計によって新しいEV会社の支配権を持つことはない、と両社はFTに語っている。

マテ・リマック氏が率いることになるブガッティ・リマックの本社は、クロアチアのザグレブに置かれるが、ブガッティの製造施設は、これまでと変わらずフランスのモルスハイムに残る。

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

市の現実的な問題を解決するオハイオ州コロンバスを「スマートシティ」に変えたテクノロジーたち

2015年、米国運輸省はSmart City Challenge(スマートシティ・チャレンジ)を主催した。米国全土の中規模都市から、データとテクノロジーを活用したスマートモビリティシステムに関する先進的な構想を募集するコンテストだ。全米から78の都市が応募し、オハイオ州コロンバス市が優勝した。

2016年、人口100万人弱のコロンバス市は、その構想を実現するための資金となる連邦助成金5000万ドル(約55億8000万円)を優勝賞金として受け取った。そのうち4000万ドル(約44億6000万円)は米運輸省、1000万ドル(約11億2000万円)はPaul G Allen Family Foundation(ポール・G・アレン・ファミリー財団)が出資している。

構想を実現するためのこのプログラムは2021年6月中旬に終了したが、コロンバス市は今後も同市の財源を使ってテクノロジーの統合を進めて「協働イノベーションの実験都市」としての役割を続け、社会問題に取り組んでいくことを発表した。とはいえ、これは具体的にはどういうことなのだろうか。

コロンバス市の「スマートシティ」は、トヨタが富士山麓で建設を急ピッチで進めている実証実験の街「ウーブン・シティ」とはまったく異なるものだ。そもそも、コロンバス市はウーブン・シティのようなものを目指しているのではない。

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Smart Columbus(スマート・コロンバス)構想の担当者であるMandy Bishop(マンディ・ビショップ)氏は、TechCrunchに次のように説明する。「私たちは、単にテクノロジーの実用化を目指してテクノロジーを導入しているのではありません。モビリティや交通についてコロンバス市が抱えている問題に注目し、それらの問題の一部に集中して取り組むためにコンテストの賞金を使っています」。

同市が抱える問題には、各種モビリティへのアクセシビリティの欠如、公共交通機関では十分にカバーされていないエリアがあること、駐車スペースに関する課題、運転マナーの悪さのせいで衝突事故が多発していることなどが挙げられる。ご推察のとおり、多くのスタートアップがこれらの問題を解決すべく取り組んでいる。本稿では、そのようなスタートアップが提供しているソリューションについて紹介する。

Etchによる「Pivot」アプリ

Etch(エッチ)は、コロンバス市を拠点とし、地理空間ソリューションを提供するスタートアップである。2018年に創業したばかりの同社にとって、スマート・コロンバス構想への参加は本格的な経験を積む機会となった。同社は、バス、配車サービス、カープール、マイクロモビリティ、個人用の乗り物を組み合わせてオハイオ州の中心部を移動するルートを検索するためのマルチモーダル交通アプリ「Pivot」を開発した。

EtchのCEO兼共同創業者のDarlene Magold(ダーリーン・マゴールド)氏はTechCrunchに次のように説明する。「コミュニティのみなさんに、どんな交通手段が使えるのかを伝えること、そして、コストや他の条件に応じてその手段を並び替えるオプションを提供することは、当社のミッションの一部でした」。

Pivotアプリは、OpenStreetMapやOpenTripPlannerなどのオープンソースツールを基に構築されている。EtchはOpenStreetMapを使って、特定のエリアの現在状況に関してコミュニティからクラウド経由で集まる最新情報を取得する。これは、Wazeに似た仕組みだ。OpenTripPlannerは、異なるモビリティ別にルートを組み立てるのに使われる。

「当社のアプリはオープンソースであるため、Uber(ウーバー)やLyft(リフト)をはじめとする他のモビリティサービスと統合することによって、個人用の乗り物(所有している場合)以外にどんな交通手段が使えるのかを可視化する点で、ユーザーに多くのオプションを提供できます。このアプリによって、バスの現在地やスクーターの場所をリアルタイムで把握できるため、移動することや複数の交通手段を使うこと、Uberの利用、自転車やスクーターのレンタルにまつわる心配事を減らすことができます」。

前述の連邦助成金のうち125万ドル(約1億4000万円)が投じられたPivotアプリは、現在までに3849回ダウンロードされている。コロンバス市はPivotアプリの開発と利用促進のための資金を引き続き提供していく予定だ。

Pillar Technologyによる「スマート・コロンバス運用システム」

コロンバス市は、スマート・コロンバス構想の既存の運用システムをさらに発展させるために、スマート化向けの組み込みソフトウェアを提供するPillar Technology(ピラー・テクノロジー)を採用した。同社は2018年にAccenture(アクセンチュア)によって買収されている。2019年4月には、コロンバス市のモビリティ関連データ(2000のデータセットと209のビジュアルデータを含む)をホストするために1590万ドル(約17億7000万円)をかけて開発されたオープンソースプラットフォームが始動した。

「このプロジェクトは最低でも2022年1月まで続く予定です。コロンバス市は今後も、モビリティや交通に関する事例を積み上げて、運用システムの価値と活用方法をさらに明確にしていきます」とビショップ氏は語る。

スマート・コロンバス運用システムは、既存のデータセットに新たなデータを追加するよう他の企業を招待している。また、衝突率を低下させる方法や、駐車スペースを最適化する方法などの課題に関するソリューションをクラウドソーシングで募集している。

ParkMobileによるイベント駐車場管理アプリ「Park Columbus」

ParkMobile(パークモバイル)は、スマートパーキングのソリューションを提供するアトランタ拠点のスタートアップだ。スマート・コロンバス構想では、駐車スペースを探し回ることを防ぐことによって渋滞と大気汚染の軽減を目指すイベント駐車場管理アプリ「Park Columbus(パーク・コロンバス)」を開発した。ユーザーは駐車場の検索、予約、支払すべてをアプリ内で完結できる。

コロンバス市の広報担当者によると、スマート・コロンバス構想のイベント駐車場管理アプリは、ParkMobileの既存ソリューションを強化する形で開発されたという。130万ドル(約1億5000万円)が費やされたこのアプリは、2020年10月から2021年3月までの期間に3万回以上ダウンロードされた。同アプリには今後、予測分析テクノロジーによって路上駐車スペースを表示する機能が追加される予定で、コロンバス市は引き続き同アプリに資金を提供していく予定だ。

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Orange Barrel Mediaによる「Smart Mobility Hubs」キオスク

Smart Mobility Hubs(スマート・モビリティ・ハブ)は、都市の風景になじむメディアディスプレイを開発するOrange Barrel Media(オレンジ・バレル・メディア)が設計したインタラクティブなデジタルキオスク端末だ。コロンバス市内で使える交通手段のオプションを1か所に集めて表示するこのキオスクは、Pivotアプリを物理的な端末にしたようなもので、キオスクから操作することも可能だ。無料Wi-Fiを提供したり、レストラン、店舗、アクティビティの一覧を表示したりするこのキオスク端末の開発にも、連邦助成金のうち130万ドル(約1億5000万円)が投じられた。

Orage Barrel Mediaは、コミュニティの情報を表示するこのようなキオスク端末から、広告やアートを表示するものまで、さまざまなディスプレイを提供している。スマート・コロンバス構想によると、同社のキオスク端末は6か所に配置され、2020年7月から2021年3月までの期間に6万5000回以上利用されたとのことだ。同市はまた、パンデミック後には利用回数が劇的に増加すると見込んでいる。このキオスク端末には、同市が展開する自転車シェアプログラム「CoGo(コーゴー)」も組み込まれている。CoGoでは、ペダル自転車、電動自転車、駐輪スタンド、ドックレススクーターシェアサービスと自転車シェアサービス専用の駐輪スペース、配車サービスの乗降車エリア、カーシェア用駐車場、EV充電ステーションに関する情報を入手できる。

Siemensとの提携による「コネクテッド・ビークル環境」

オハイオ州には他州に比べて運転マナーが悪いドライバーが多い。オハイオ州の高速道路パトロール隊が2021年発表した、州内における不注意運転に関するデータによると、2016年以降、不注意運転に起因する衝突事故が7万件発生しており、そのうち2000件以上が重傷事故もしくは死亡事故だという。コロンバス市は、2019年にとある保険会社が発表した、全米で運転マナーが悪い都市ランキングで第4位にランクインしたことがある。

コロンバス市がコネクテッド・ビークルの実証実験を行ってみたくなったのは、それが原因かもしれない。2020年10月から2021年3月にかけて、コロンバス市は、ビークルツーインフラストラクチャー(自動車と路上の通信設備との間で情報をやり取りすること、V2I)およびビークルツービークル(異なる自動車間で情報をやり取りすること、V2V)を実現するための車内用および路上設置用ユニットを提供するSiemens(シーメンス)と提携した。また、Kapsch(カプシュ)とDanlaw(ダンロー)といった企業も路上設置用ユニットを提供した。コネクテッド・ビークルは他の自動車および85か所の交差点(このうち7か所はオハイオ州中心部で衝突率が非常に高い交差点)に設置されたユニットに対して「話す」ことができる。このプロジェクトには、1130万ドル(約12億6000万円)が投じられた。

「このコネクテッド・ビークル環境の応用方法として、赤信号による警告、スクールゾーンの通知、交差点内での衝突警告、貨物車両や公共交通車両の信号優先通過など、11種類のさまざまな機能を考えました」とビショップ氏は説明する。

「住民が100万人あまりの地域に1100台の自動車を配置しました。そのため、衝突率が下がることは期待していませんでしたが、コネクテッド・ビークル環境から発信される信号無視防止のための警告をドライバーが活用しているのを見ることはできました。その結果、運転マナーの向上が見られており、長期的には路上の安全性を効果的に改善することにつながると期待しています」とビショップ氏は語る。

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Easy Mileによる自律運転シャトルバス「Linden LEAP」

スマート・コロンバス構想の自律運転車によるシャトルバスサービス「Linden LEAP(リンデン・リープ)」には230万ドル(約2億6000万円)が投じられ、2020年2月から2021年3月まで数回の休止期間をはさみながら運用された。開始当初は、リンデン地区の4つの停留所を2台のシャトルバスが運行して、公共交通機関によって十分にカバーされていないコミュニティに交通サービスを提供した。開始からわずか2週間後に、時速25マイル(約40キロメートル)ほどで走行していた自律運転バスが急停止して、乗客が何らかの原因により座席から投げ出されてしまったため、運行は停止された。そうこうしているうちにパンデミックが発生し、人を運ぶサービスの需要がなくなってしまったため、Linden LEAPは、2020年7月から2021年3月までの期間に、3598件の食材配達と13万件の出前サービスをこなした。

コロンバス市は、連邦助成金が終了した今、この自律運転シャトルバスサービスに資金を出し続ける予定はないという。

ビショップ氏は次のように説明する。「コロンバス市には、公共交通機関を運用してきた実績があまりありません。そのため、コネクテッド環境、自律運転、電気自動車に関する技術を公共交通機関に今後どのように組み込んでいくのか、中央オハイオ交通局(CoTa)の計画を注意深く見守りたいと思います。コロンバス市としては、次の取り組みは民間企業によるものになること、そして、最終的には交通局の主導へと切り替わっていくことを期待しています」。

フランス発のスタートアップであるEasy Mile(イージー・マイル)の広報担当者は、同社が前述の自律運転シャトルバスにレベル3の自律運転技術を提供したと発表している。Society of Automobile Engineers(米国自動車技術者協会)によると、レベル3の自律運転は、運転席に人間のドライバーが座ることが依然として求められるレベルだという。

コロンバス市と自律運転技術との中途半端な関係はもともと、2018年末にスマート・コロンバス構想がDriveOhio(ドライブオハイオ)およびMay Mobility(メイ・モビリティ)と提携して、同市初の自律運転シャトルバスサービスであるSmart Circuit(スマート・サーキット)を開始したときに始まった。シオトマイル地区の中心部に設けられた全長1.5マイル(約2.4キロメートル)のルートを走るSmart Circuitは、2019年9月までの期間に、特定の文化的な名所への無料乗車サービスを1万6000回提供した。

Smart Circuitにかかった費用はわずか50万ドル(約5600万円)ほどだったが、コロンバス市は、自律運転シャトルバスプログラム全体を総合的に開発するために、さらに追加で40万ドル(約4500万円)を投じた。

Kaizen Healthによる妊婦向け移動サポートアプリ「Prenatal Trip Assistance」

女性が創業したテック企業であるKaizen Health(カイゼン・ヘルス)が最初のアプリケーションを開発したのは、健康上の問題で治療に通う必要がある人々が利用できる交通手段が少ないことへの不満がきっかけだった。シカゴを拠点とする同社は、妊婦とその家族が救急時以外のときに利用できるマルチモーダルな病院搬送サービスを簡単に手配できる同社のモデルを応用してアプリを開発した。

2019年6月から2021年の1月の期間にスマート・コロンバス構想の助成金から130万ドル(約1億5000万円)が投じられたこのアプリの利用者は、パンデミックのせいでわずか143人にとどまったが、病院への移動に利用された回数は800回以上、薬局、食料品店、他のサービスを受けるために利用された回数は300回以上にのぼった。このアプリが導入された年にオハイオ州で生まれた新生児1000人あたり平均6.9人が死亡したことを考えると、スマート・コロンバス構想に参加しているメディケイド対象医療機関が、このようなモバイルアプリの導入を含め、非救急時の病院搬送サービスを近代化しようとしていることは、良い傾向だ。

Wayfinderとの提携による、認知障がい者へのモビリティ支援アプリ

最後に挙げるプロジェクトでコロンバス市が手を組んだテック企業はAbleLink(エイブルリンク・テクノロジー)のWayFinder(ウェイファインダー)という、デンバー発の企業だ。どこで曲がるかを非常に詳細に指示してくれるナビゲーションアプリを、特に認知障がいを持つ人々向けに開発するために、Mobility Assistance for People with Cognitive Disabilities(認知障がい者へのモビリティ支援、MAPCD)に関する研究がWayfinderと共同で実施され、認知障がい者がさらに安全に自立行動の範囲を広げられるようになった。

このパイロットプロジェクトには、2019年4月から2020年4月の期間に約50万ドル(約5600万円)が投じられた。31人がこのアプリを実際に使って、公共交通機関の使い勝手が向上するのを感じた。コロンバス市の広報担当者によると、同市は現在、パートナー企業各社とともに、このアプリプロジェクトを継続していく方法を探っているとのことだ。

今後の展望

スマート・コロンバス構想が注力したもう1つの分野は、電気自動車(EV)の導入と充電インフラストラクチャーだった。ポール・G・アレン・ファミリー財団と、オハイオ州の電力会社AEP Ohio(AEPオハイオ)が拠出した資金がインセンティブとして使われて、集合住宅、職場、公共の場所への充電ステーション設置が進んだ。その結果、900か所のEV用充電ステーションを設置するというスマート・コロンバス構想の目標が達成され、同時に、新車販売台数に占めるEVの割合が2019年11月に2.34%に達し、その割合を1.8%にするという目標も達成された。

「将来的には、今後も継続していくテクノロジーやサービスにより、住民が直面している問題がコミュニティにとって理にかなった仕方で解決されていくと思う」とビショップ氏は語った。

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カテゴリー:モビリティ
タグ:オハイオスマートシティ駐車場ディスプレイSiemens自動運転バス

画像クレジット:Smart Columbus

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Dragonfly)

和歌山発glafitの電動ハイブリッドバイク「GFR」が自転車・電動バイク車両区分の切り替えが認められた日本初の車体に

和歌山発glafitの電動ハイブリッドバイク「GFR」が自転車・電動バイク車両区分の切り替えが認められた日本初の車体に

和歌山県を拠点とする「glafit」(グラフィット)は7月2日、同社「ハイブリッドバイクGFR」(GFR)に「モビリティ・カテゴリー・チェンジャー」(モビチェン)機構を取り付けた場合、電動バイクと自転車の切り替えを認める通達が警察庁より2021年6月28日発出され、7月1日に公表されたと発表した(通達文)。モビチェン操作により、原動機を作動させずペダル走行する場合は、道路交通法上自転車となり、自転車が通行可能な場所(通行区分)や運転方法に従うことになる。

今後全国で運用を開始するにあたり、モビチェン装着の次期GFRシリーズ(GFR-02)の走行が始まる前に、まず都府県警と地元メディア向けにモビチェンの具体的な操作方法や安全対策などの説明とGFRの試乗のキャラバンを行って普及活動を実施する。特に利用ユーザー様が多い都府県を中心に、今後日程調整の上行うとしている。

キャラバン予定:警視庁、千葉県警、埼玉県警、神奈川県警、静岡県警、愛知県警、大阪府警、和歌山県警、京都府警、兵庫県警、福岡県警

和歌山発glafitの電動ハイブリッドバイク「GFR」が自転車・電動バイク車両区分の切り替えが認められた日本初の車体に

glafitは、内閣官房日本経済再生総合事務局(現・成長戦略会議事務局。規制のサンドボックス制度 政府一元窓口)によるサポートのもと、和歌山市と規制のサンドボックス制度に共同申請し、2019年10月17日に実証計画が認定された(経済産業省、警察庁、国土交通省認定)。

同社は、この認定に基づき2019年11月から行ってきた実証実験を経て、モビチェンを自社開発したという。関係省庁でも検討を行い、警察庁での最終確認を経て、車両区分の切り替え第1号案件として、1台の車両で電動バイクと自転車の切り替えを認める通達が発出された(2021年6月28日発出、2021年7月1日公表)。

従来「ペダル付きの原動機付自転車」は、原動機を作動させずペダル走行させる場合であっても、原動機付自転車の属性は変化せず、例えば原動機付自転車が運転可能な場所(通行区分)や運転方法に従うこととなっていた。しかし今般の改正(解釈変更)により、モビチェン機構を取り付けたGFRは、モビチェンの操作により、原動機を作動させずペダル走行させる場合は、道路交通法上自転車の取り扱いとなった(切り替えは、道路交通法上の取り扱いとして認められたもので、道路運送車両法では原動機付自転車)。

これにより、規制のサンドボックス制度を利用し、モビリティ分野で道路交通法の解釈変更が認められ、実際に運用が始まることとなる。GFRはこれら取り扱いの日本初の車体となった。

「モビリティ・カテゴリー・チェンジャー」(モビチェン)機構

モビチェンは、切り替えを認められる要件を満たすよう、警察庁の指導を受けながらglafitが開発した専用の機構。まずGFR-02へのオプション対応を行い、その後は前モデル(GFR-01)へのオプション対応を行う。さらに、今後はモビチェンを活用した新しいモビリティも開発予定。

和歌山発glafitの電動ハイブリッドバイク「GFR」が自転車・電動バイク車両区分の切り替えが認められた日本初の車体に

同社は「ハイブリッドバイク」という新ジャンルを切り開き、市場のパイオニアとして広く普及促進していくために、志を同じくする企業と特許ライセンス提供契約を結び、車両区分の切替えを伴うモビリティ分野の発展に寄与するとしている。

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カテゴリー:モビリティ
タグ:glafit(企業)電動自転車 / eバイク / 電動モペッド(用語)日本(国・地域)

米国証券取引委員会が調査中のEVスタートアップLordstown Motorsを米司法省も調査開始

Lordstown Motors(ローズタウン・モーターズ)は迷走し続けている。米国証券取引委員会(SEC)による継続的な調査に加え、苦境に立たされているEVスタートアップに対して、米国司法省(DOJ)も調査を開始したのである。

ウォールストリートジャーナル(WSJ)紙が米国時間7月2日に最初に報じたこの調査は、匿名の情報筋によるとまだ初期段階にあるとのこと。マンハッタン地区連邦検事庁によって行われているという。

同社の広報担当者はTechCrunchに対し「Lordstown Motorsは、規制当局や政府によるあらゆる調査や問い合わせに協力することにコミットしています」と述べている。「当社の新しいリーダーシップと献身的なチーム全体が、最初で最高のフルサイズ全電動ピックアップトラックである『Lordstown Endurance』の生産に専念できるよう、この章を閉じることを待望しています」とも。

今回の調査は、Lordstown Motorsの一連の苦境の中での最新の出来事だ。同社は先日、電動ピックアップトラックのデビューモデルである「Endurance」の生産台数を約2200台から1000台へと半減させたと発表した。この発表からわずか数週間後の6月14日、創業者兼CEOのSteve Burns(スティーブ・バーンズ)氏とCFOのJulio Rodriguez(フリオ・ロドリゲス)氏が辞任するという経営陣刷新のニュースが飛び込んできた。バーンズ氏は、以前に同氏が創業したスタートアップであるWorkhorse Groupの子会社としてLordstown Motorsを設立した。

LordstownはGeneral Motors(GE、ゼネラルモーターズ)からの投資により、2019年末に大手自動車メーカーから620万平方フィート(約57.6ヘクタール)の工場を購入し、好調なスタートを切っていた。Lordstownは2020年8月、特別目的買収会社(SPAC)との合併による株式公開を発表し、ポジティブな見出しを作った。この取引により同社は約6億7500万ドル(約749億円)の総収入を得て、時価総額は16億ドル(約1776億円)にまで急上昇した。しかし、それから1年も経たないうちに、Lordstownは米国証券取引委員会(SEC)に対し、Enduranceを製造するための十分な資本がないことを報告した。

さらに2021年3月にはショートセラー会社のHindenburg Researchが、Lordstownの電動ピックアップトラックの予約注文が10万台に達したという同社の主張に異議を唱えるレポートを発表した。レポートには「広範な調査の結果、同社の注文はほとんどが架空のものであり、資本調達と正当性の付与のための小道具として使われているようだ」と書かれている。これらの告発を受けて、SECは調査を開始した。

WSJの記事ではDOJ調査の範囲は不明で、同社は詳細の説明を拒否している。TechCrunchがさらに情報を得られた場合、記事を更新していく。

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カテゴリー:モビリティ
タグ:Lordstown Motors米国証券取引委員会(SEC)電気自動車米国司法省(DOJ)

画像クレジット:Lordstown Motors

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Aya Nakazato)

ポルシェ、ヤマハが電動モビリティのオンライン販売を行うRidepandaに出資

電動マイクロモビリティのオンラインディーラーであるRidepanda(ライドパンダ)が、375万ドル(約4億1600万円)の資金調達を発表した。この資金は、同社のeコマースおよびB2Bソリューションを発展させるため、エンジニアリング、プロダクト、デザインの各チームの増強に使用される予定だ。また、同社は配送業者や、電気自動車を購入した従業員に通勤手当を支給する企業との戦略的パートナーシップを強化したいとも考えている。

2020年は電動アシスト自転車や電動スクーターの販売が急増した。Bicycle Associationは、新型コロナウイルスが2020年1月から10月までの間に英国のサイクリング経済に与えた影響を詳しく調査しているが、そのリポートによると、電動アシスト自転車の販売台数は2倍以上に膨れ上がったことが明らかになった。Deloitte(デロイト)は、2023年には電動アシスト自転車の販売台数が全世界で4000万台を超え、220億ドル(約2兆4000億円)以上を生み出すと予測している。電動マイクロモビリティの選択肢増加にますます追い風が吹いている市場において、Ridepandaの事業は、一般消費者向けと商用(配達業務やレンタル事業)向けの両方で、電動アシスト自転車、電動キックスクーター、電動スクーターの販売を牽引する可能性がある。

「自動車による移動の60%は5マイル(約8キロメートル)以内です。その程度の移動であれば、もっと良い方法があると、私たちは考えています」と、Ridepandaの共同創業者でCEOを務めるChinmay Malaviya(チンメイ・マラヴィヤ)氏は、TechCrunchに語った。「電気自動車は1つの解決策ですが、私たちが提供する車両は、もっと安く、より扱いやすく、より手軽に乗れて、より実用的で、渋滞にも強く、収納しやすく、駐車しやすく、充電しやすく、環境にやさしく、健康にも良いので、より楽しく乗れると思います」。

サンフランシスコを拠点に米国48州に出荷しているRidepandaは、Segway-Ninebot(セグウェイ – ナインボット)の電動キックスクーターから、Aventon(アヴェントン)の電動アシスト自転車、Niu(ニウ)の電動オートバイまで、さまざまな電動軽車両を提供している。2019年の創業以来、同社は販売した車両の台数を明らかにしていないが、マラビヤ氏はTechCrunchに「4桁の数字」だと語った。

共同創業者でCTOのCharlie Depman(チャーリー・デップマン)氏によると、電動アシスト自転車が最も人気があり、電動キックスクーターがそれに続くという。電動スクーターにはまだ成長の余地があるが、このカテゴリの販売が伸びない理由の1つは、現在も解決されていない新型コロナウイルスの影響による部品供給不足の問題があるためではないかと、デップマン氏は考えている。

Ridepandaは、サイトに掲載している各車両を事前に審査し、すべてのパーツが高品質で修理や交換が容易であることを確認している。故障した電動キックスクーターを従来の自転車店に持ち込んで、苦い経験をした人なら、その有益性が非常によくわかるだろう。

Ridepandaのサイトにアクセスすると、洗練されたレコメンデーションエンジンが、都市部での通勤や郊外でのレジャーなど、それぞれのユーザーの用途に合った最適な乗り物を選ぶのを手伝ってくれる。

「当社のお客様の5分の1は、当社のサイトを訪れたときに、自分がどんな種類の乗り物を求めているのかを知らないのです」と、デップマン氏はTechCrunchに語った。「当社では、お客様のユースケースや好みの機能に応じて、ランク付けされたおすすめの車種を紹介します。そこからそれぞれの車種のページに移動すると、当社についての詳しい説明や、メンテナンスプランやロードサイドアシスタンスなどを提供しており、安心して所有していただくことができます。基本的には自動車を所有するのと同じくらい簡単ですが、普通はこのようなインフラの多くは、電動軽車両を所有するためには用意されていません」。

車両は顧客に直接配送され、顧客は自分で組み立てるか、訓練を受けた技術者が家に来て自宅で組み立てるかを選択できる。

同社では、今回調達した資金によって、このような受注から納車までのフルフィルメントプロセスの自動化や「PandaCare(パンダケア)」アプリによるアフターサービスの構築など、ユーザーと直接関わるアプローチを改善していきたいと考えている。

PandaCareは、メンテナンスやロードサイドアシスタンス、延長保証など、すべてのサービスを提供する当社のフラッグシップディーラーシップです」と、デップマン氏は語る。「理想としては、このアプリを使ってすべてのサービスにアクセスできるようになることです。例えば、メカニックを呼んで自分の車両の修理をしてもらったり、あるいは予防的なメンテナンスの必要を、オーナーや当社に通知することで、車両の寿命を伸ばすこともできるでしょう」。

Ridepandaは製品面でも、地域に合わせてパーソナライズすることを目指している。このような電動軽車両を取り巻く法規制は州によって違い、購入時に支給される補助金も州ごとに異なるからだ。

2021年2月、オレゴン州選出のEarl Blumenauer(アール・ブルーメナウアー)議員は、Electric Bicycle Incentive Kickstart for the Environment(環境のための電動アシスト自転車奨励金導入)法案を提出した。これは新しい電動アシスト自転車を購入する際に、30%の還付可能な税額控除を行うというものだ。この法案はまだ議会を通過していないが、もし可決されれば、これをきっかけに購入を検討する人は増えるだろう。それにともなう販売増加の促進に一役買いたいと、Ridepandaは望んでいる。

マラヴィヤ氏によると、Ridepandaはサンマテオ郡の電力会社であるPeninsula Clean Energy(ペニンシュラ・クリーン・エナジー)と提携し、地域の電動アシスト自転車奨励金を展開することで、低所得者層が購入時に利用できるようにしているという。

「私たちは、技術的なパートナーとして、また消費者にとっては、これらの奨励金をや補助金をシームレスに統合することで、その利点を簡単に利用できる精選されたプラットフォームとして、当社がどのような役割を果たすことができるかを、非常に楽しみにしています」と、マラヴィヤ氏は語っている。

マラヴィヤ氏によれば、2020年のシード資金調達の延長となる今回の375万ドルのラウンドは、Porsche Ventures(ポルシェ・ベンチャーズ)、Yamaha Motor Ventures(ヤマハ・モーター・ベンチャーズ)、Poeza Ventures(ポエザ・ベンチャーズ)が主導し、Lime(ライム)の共同創業者であるエンジェル投資家のToby Sun(トビー・サン)氏と、シリコンバレーのVCであるGeneral Catalyst(ジェネラル・カタリスト)が参加したという。

「これらのパートナーシップから私たちが得られるものはたくさんあります」と、マラヴィヤ氏は語る。「ヤマハからは、ディーラーシップやサプライチェーンの管理から、実際に自転車やスクーターを提供するまで、どのようにやっているかを学ぶことができるでしょう。ポルシェも同じです。ポルシェはハイエンドの電動アシスト自転車も発売しましたが、ディーラーシップや製品へのアクセス、さらにはブランディングの面でも協力できることを楽しみにしています。Proezaからは、サプライチェーンに関する専門知識を得られることを非常に期待しています。また、これらの企業について重要なこととして、ポルシェの本社はドイツにあり、ヤマハは日本、Proezaはラテンアメリカにあることも挙げられます。私たちが米国以外の地域に進出する際には、大きな助けとなるでしょう」。

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タグ:Ridepanda資金調達電動キックスクーター電動自転車eコマース

画像クレジット:Ridepanda

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

物体を認識して分類せずに直接意思決定を行うGhostの自動運転・衝突回避技術

自動運転システムを開発するGhost Locomotion(ゴースト・ロコモーション)は、シリーズDラウンドで1億ドル(約111億円)の資金調達を実施した。このラウンドはSutter Hill Ventures(サッター・ヒル・ベンチャーズ)が主導し、前回投資したFounders Fund(ファウンダーズ・ファンド)も、Coatue(コーチュー)とともに参加した。この資金は、同社が高速道路上の自動運転や衝突防止技術の開発を続ける上で、研究開発費に充てられる。

Ghost Locomotionは、ユニバーサルな衝突回避技術の開発に取り組んでいる。このシステムは、自動運転システムが物体との衝突を回避する前に、その物体を認識して分類する必要はないという考えを前提としている。これは大きなパラダイムシフトだ。多くの自動運転システムは、まず物体を認識し、位置を特定することで、物体の大きさや距離などを判断する。

「私たちはその段階をスキップします」と、GhostのJohn Hayes(ジョン・ヘイズ)CEOは、TechCrunchに語った。「私たちの技術は、シーンに表れたあらゆる物体、あらゆる大きさを検知し、それに対する距離と相対速度を得ることが可能です。分類を行う前に、データから直接意思決定を始めることができるのです」。

Ghostの技術では、カメラが捉えたシーンの中で、ピクセルのクラスターの動きを追跡する。ヘイズ氏は、システムが物体の分類を間違えた場合や、学習していない物体を認識してしまった場合には、不具合の原因になると指摘し、分類が衝突回避の前提条件である必要はないと説明している。重要なのはシステムが行う判断の確実性だ。画像認識から始める自動運転システムは、不確実になる機会が多く、道路における安全な行動がそれだけ少なくなると、同社は主張する。

これに対する明白な反論の1つとしては、車両と歩行者では行動が異なるため、分類することによってシステムが行動を予測できるという意見があるだろう。しかし、ヘイズ氏は「分類ではなく、衝突回避から始めるべきだ」という。「その上で予測したいのであれば、それから分類すればよいのです」。

Ghostによると、このシステムの利点の1つは、必要な計算能力が少なくて済むことだという。これは特に、電気自動車のオーナーにとって重要だ。処理要求が高いと電力消費効率が悪化するからだ。バッテリー駆動の電気自動車に搭載された自動運転システムでは、システムが必要とするコンピュータの電力が1ワット増えるごとに、走行可能距離が短くなるとヘイズ氏は指摘する。

Ghostはこれまで公道以外の場所で、物理的な障害物を設置したり、拡張現実を使ったりしながら、実際の車両を走らせて、ほとんどのテストを行ってきた。判断の複雑さが格段に増す都市部における衝突回避システムのテストには、まだ着手していない。公的な高速道路でのテストもまだ始めていないが、これは2021年中に開始し、来年には規模を拡大していく予定だと、ヘイズ氏は述べている。公道の高速道路では、安全のために人間のドライバーが運転席に座った状態でテストを行う。

この会社は、2019年にTechCrunchが取材した時から、市場展開のロードマップをわずかに変更したようだ。Ghostは当時、個人がすでに所有している乗用車に、高速道路での自動運転機能を追加することができる一般消費者向けキットを開発していた。同社によれば、そのキットは2020年に、Tesla(テスラ)のAutopilot(オートパイロット)パッケージ(当時は約7000ドル≒約80万円)よりも安い価格で発売できる見込みだった。

この製品企画は完全に中止されたわけではなく、ヘイズ氏は「お客様にお届けしたい」と語っているものの、現在では自動車メーカーと直接協力して、販売前の車両に同社の技術スタックを搭載することも検討している。

「どのような形であれ、市場に参入する方法はみつかるでしょう」と、ヘイズ氏は付け加えた。消費者に直接販売する後付けキットという形では、対応する車種が限られており、システムに必要な最低限の技術要件を満たすために、比較的新しい車であることが条件となる。

今回の資金調達のニュースと同時に、Ghostは米国道路交通安全局の元主任顧問兼長官代理だったJacqueline Glassman(ジャクリーン・グラスマン)氏を法務統括責任者として迎え入れることも発表した。4月に同社に参加したグラスマン氏は、他の自動運転技術開発企業と並んで商業化を目指すGhostにとって、重要な役割を果たすことになりそうだ。

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タグ:Ghost Locomotion自動運転資金調達

画像クレジット:Ghost

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

GMがカリフォルニアでのリチウム抽出プロジェクトに投資、優先権を獲得

General Motors(ゼネラルモーターズ、GM)は米国産のリチウムに投資する。同社は米国時間7月2日、ロサンゼルス近くのソルトン湖地熱地帯からリチウムを採取するオーストラリア企業のプロジェクトの初の投資家になったと明らかにした。リチウムは電気自動車(EV)のバッテリーの重要な要素だ。GMはControlled Thermal Resources(CTR)の「Hell’s Kitchen(ヘルズ・キッチン)」リチウム採取プロジェクトで生産されるリチウムの優先権を獲得する。

ヘルズ・キッチンプロジェクトでは2024年からリチウムを生産する見込みだ。生産されたものはGMのUltiumバッテリーセルに使用される。Ultiumバッテリーセルは現在行われている認証とテストを経てLG Energy Solutionとの合弁会社が生産する。GMの電動化戦略と電池エンジニアリング担当ゼネラルディレクターであるTim Grewe(ティム・グレーヴェ)氏は、どれくらいの量のリチウムをGMが獲得することになるのか具体的には示さなかったが「(GMの)北米のリチウムのかなりの量になる」ことを予想している、と述べた。

GMや他の自動車メーカーが、電動化の目標を達成するにはかなりのリチウムを必要とする。GMは2035年までに内燃エンジンから完全移行することを目指している。しかしそうした大規模な移行はかなりの競争に直面することを意味する。それは顧客の獲得だけでなく、バッテリーのような重要なパーツを構成する鉱物のソースについてもそうだ。

一般的に、リチウムは岩石を砕いて採掘するか、塩水から鉱物を抽出して生産される。どちらの手法も環境への負荷のために非難されている。CTRのプロジェクトが抜きん出ているのは、リチウムを生産するのにソルトン湖地熱地帯で生み出される再生可能な地熱エネルギーを使うという点だ。ソルトン湖地熱地帯は、すでに地熱発電所11カ所が稼働しているインペリアル・バレーの広い範囲を占める。

再生可能エネルギーによる給電に加え、プロジェクトは使用した塩水を地下に戻し、採掘の廃棄物など生産にかかる尾鉱を残さないクローズドループ直接抽出工程をとる、とCTRは話す。

世界のリチウムの大半はわずかな国で生産されていて、主にチリ、オーストラリア、中国、アルゼンチンだ。米国にはリチウム生産サイトが1カ所だけある。ネバダ州にある化学製造大手Albemarleが所有する塩水採取サイトだ。しかし近年、鉱物の国内生産を促進する動きが増している。これは主に2つのトレンドによるものだ。1つは、部分的にはバッテリーを搭載する電気自動車への移行により急増が見込まれる、鉱物に対する需要予想。もう1つは先端技術において米国の競争力を保ち続けるという超党派の意向だ。

カリフォルニア州エネルギー委員会によると、現在の世界のリチウム需要の3分の1をカリフォルニア州のリチウム鉱床で賄える可能性がある。CTRのプロジェクトは、ソルトン湖の広大な塩水田からリチウムを抽出することを目指している多くの取り組みの1つだ。

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画像クレジット:General Motors

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Nariko Mizoguchi

アマゾン傘下のZooxが自動運転車の事故防止のために行ったこと

自律走行車業界を取り巻く話題は通常、ベンチャーキャピタルの出資やIPO(新規株式公開)、企業買収などに集中しがちである。しかし自律走行車産業の将来は、人間のドライバーよりも安全に運転できることを証明し、一般の人々の信頼を得られるかどうかという重大な課題にかかっている。要するに、安全性が肝なのである。

Zoox(ズークス)は米国時間6月22日に発表した安全報告書の中で、同社のカスタム電動自律走行車についての新たな情報を開示し、衝突防止と衝突時の保護を目的とした様々な設計の詳細を説明している。

「AV車を導入する理由は、すべてが安全性のためだと誰もが口をそろえて言いますが、実際には誰も次の項目にたどりついていません。衝突を防いで命を救うため、実際に何をすれば良いのでしょうか」。同社の最高安全イノベーション責任者であり、元国家道路交通安全局の責任者であるMark Rosekind(マーク・ローズカインド)氏はTechCrunchのインタビューの応じ、このように話している。

同氏のよると、最新の報告書がその質問に答えているという。

Zooxは競合他社とは少し違う。同社は自動運転のソフトウェアスタックの開発だけではなく、オンデマンドのライドシェアリングアプリや車両そのものの開発を行い、さらにはロボタクシーフリートの所有、管理や運営までをも計画しているのである。

12月、Zooxは同社が一から製作した自律走行可能な電動ロボタクシーを公表した。センサーを搭載したキューブ型の車体にハンドルやサンルーフはなく、4人を乗せて時速75マイル(約120km)で走ることが可能だ。当時Zooxはこの4人乗りの車両の仕様として、列車のような対面式の座席構成や、1回の充電で最大16時間の連続運転が可能な133kWhのバッテリーなどを紹介。しかしすべてを明らかにしたわけではなく、搭乗者のほか歩行者や自転車、他のドライバーをどのようにして守るのかについては明かにされていなかったのである。

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誤解のないよう書いておくが、安全報告書を発行しているAVメーカーはZooxだけではない。自主的な安全性自己評価レポート(VSSA)は同業界において比較的一般的になってきており、NHTSAの自動運転システムVSSA開示指標に含まれ、車両の設計、衝突シミュレーションシナリオ、テストのベンチマーク、搭乗者や道路利用者の保護対策などの12の分野をカバーすることになっている。

Zooxの最初の安全性報告書は2018年に発表され、ここでは同社の「防ぎ、守る」という理念が紹介されている。今回発表された最新の安全性報告書には、車両の設計に関する具体的な詳細を含む、同社の安全目標の達成方法が記載されている。そしてこの最新報告書が示唆するところによると、衝突回避システムや、車両が他の道路利用者とのコミュニケーションに使用する照明システムの詳細など、さらに多くの安全性報告書が発表される予定だ。

Zooxはこれまでに100以上の安全技術を設計し、専用車両にそれらを搭載している。その中から「運転制御」「単一障害点の排除」「搭乗者の保護」という3つのカテゴリーに分類される9つの技術について、ローズカインド氏が詳しく説明してくれた。

運転制御

画像クレジット:Zoox

Zooxの車両は独立したブレーキとアクティブサスペンションシステムを備えている。つまり、それぞれのブレーキには独自の電子制御ユニットが搭載されており、道路上のトラクションや重量配分をより正確にコントロールすることができ、その結果制動時間が短縮できる。

同車はまた、現在市場に出回っているAV車には存在しないとローズカインド氏が指摘する四輪操舵と、双方向性を備えている。四輪操舵とは車線内の位置と進行方向を同時に調整できる機能である。

「弊社のソフトウェアが車両の進路を決定すると、たとえスピードを出して縁石を通過しても、1センチ単位の精度でその進路を維持し続けます」とローズカインド氏。

四輪操舵と左右対称な車体デザインにより、双方向の走行が可能になる。双方向走行が可能になると、複雑で時間がかかり、対向車との事故のリスクを高めるUターンや3ポイントターンが不要になる。

単一障害点の排除

ローズカインド氏によると、同社の設計目標として、安全性上重要なシステムに単一障害点を存在させないという点があるという。例えば同車両には2つのパワートレインが搭載されており、モーター、ドライブシステム、バッテリーが互いに連動している。システム内の1つのコンポーネントが故障しても、もう1つのコンポーネントがそれを引き継ぐというわけだ。

また、車両には2つのバッテリーのほか、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェアのすべてを監視する安全診断システムも搭載されている。また、車両の四隅にはライダーやレーダーなどのセンサーが配置されており、それぞれが270度の視野を確保している。

診断システムはモニタリングにとどまらず、発見された故障や性能上の問題を軽減することも可能だ。例えば損傷や破片のせいでセンサーの性能が低下した場合、車両のクリーニングシステムを作動させたり、双方向から単方向に変えてセンサーが不完全でも基本的には問題ない位置に配置させたりすることができるとローズカインド氏は説明する。

「フェイルセーフ操作なら、走行を継続し、搭乗者を降ろし、問題があればそれを解決するか、または安全な場所に停車させることができます」。

搭乗者の保護

画像クレジット:Zoox

車内のすべての座席において5つ星の衝突防止性能を満たすというのがZooxの目標だ。同社は現在衝突テストを行っており、ローズカインド氏によると「かなり順調に進んでおり、ほぼ完成している 」とのことだ。

同社は5種類のエアバッグを内蔵した新しいタイプのエアバッグシステムを設計。カーテンエアバッグが車の両サイドに配置され、また正面のものは2つに分かれており頭、首、胸を保護できるようになっている。後部座席と側部座席のエアバッグもある。

このシステムにはエアバッグコントロールユニットが搭載されており、これが衝突の場所や速度を監視して、どのエアバッグをどのような順番で展開するかを決定する。すべてのエアバッグが一斉に開くのではなく、衝突場所や衝撃の大きさに応じてエアバッグが開く仕組みとなっている。

さらに、シートやバックル、シートベルトの表面にもセンサーが設置されており、搭乗者がシートベルトを着用しているかどうかを判断することが可能だ。全員がシートベルトを着用するまでは車は動きませんとローズカインド氏はいう。

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(文:Kirsten Korosec、翻訳:Dragonfly)

ボルボが次世代自動車の方向性を示すEVコンセプトカー「Concept Recharge」を発表

Volvo Cars(ボルボ・カーズ)は、2030年までにラインナップを完全に電動化したいと考えている。それを実現するための計画と、次世代の自動車がどのようなものになるのかを、同社は中央欧州時間6月30日に明らかにした。

しかし、ボルボは単独でそれを開発するつもりはない。同社は将来のモデルラインナップを、Northvolt(ノースボルト)やGoogle(グーグル)、Luminar(ルミナー)などのパートナー企業と協力して構築する計画について詳しく説明した。そして同社の次世代電気自動車の「マニュフェスト」として、フラットなフロア、車内に備わる2つのスクリーン、観音開き式のドアを特徴とするコンセプトカー「Concept Recharge(コンセプト・リチャージ)」の画像を初公開した。

Volvo Concept Recharge(画像クレジット:Volvo Cars)

Concept Rechargeのルーフには、Luminar製のLiDARセンサーが搭載されている。これは、2021年6月初めに発表された、ボルボの次期フラッグシップ電動SUVにLuminarのテクノロジースタックが標準装備されるという発表に沿ったものだ。

バッテリーに関しては、ボルボはスウェーデンのバッテリー開発企業であるNorthvoltと共同で、航続距離1000キロメートルを可能にするパックを開発しており、Northvoltがそれを実現すれば、エネルギー密度の面で大きな功績となるだろう。両社は、2026年までに巨大バッテリー工場を欧州に建設することを目指し、新たに50%ずつの出資で合弁会社を設立する。この工場では最大で年間50ギガワット時のバッテリーパックを製造する能力を有するという。また、ボルボは2024年より、スウェーデンのスケレフトーにあるNorthvoltのバッテリー工場から、年間15ギガワット時のバッテリーを調達する予定だ。

将来のボルボの車両は双方向充電が可能になる。これは、EVを移動可能な発電機として使用したり、あるいは車載バッテリーパックに蓄えておいたエネルギーを電力網に放出し、ミニ発電所としての役割を果たせる機能だ。

ボルボは同社独自のOSである「VolvoCars.OS」が、Googleが主導するインフォテインメントシステムや、Linux(リナックス)、QNX、そして車載電子制御ユニット用のAUTOSAR(オートザー)などを含む、基礎的なオペレーティングシステムの「アンブレラシステム」として機能すると述べている。車両には最大100個の電気制御ユニットが搭載されるが、これらはNVIDIA(エヌビディア)と共同で開発した3基のメインコンピューターで構成されるコアコンピューティングシステム上で動作する。

また、ボルボは主力の電気自動車SUVに、Luminarのセンサー群と、ボルボのソフトウェア部門であるZenseact(ゼンセクト)の技術を搭載する計画についても、より詳細に説明した。ボルボの経営陣は、自動運転システムのレベル(米国自動車技術者協会が区分けした自動運転化のレベルを測る尺度)を尋ねる質問には答えず、今後導入する自動運転走行システムについては「要監視」または「監視不要」という言葉で説明したいと述べた。ボルボのシステムでは、ドライバーの監視が必要な「クルーズ」と、監視を必要としない「ライド」という2つのモードに分けられ、将来は監視不要な機能を徐々に導入していくとしている。

将来的にこのシステムは、顧客から大量の運転データを収集することになるが、ボルボはそれを無駄にするつもりはない。同社は、運転自動化機能を利用した顧客から(顧客の同意を得て)収集した情報を処理するデータファクトリーの構築を目指しているという。これらのデータを活用してシステムを改善していき、それを無線アップデートを介して顧客の車両に反映させる予定だ。

「私たちは、この会社を単なる従来型のプレミアムな会社から、急速に成長している新しいプレミアムな電気自動車セグメントのリーダー的な会社へと変えていく必要があります」と、ボルボ・カーズのHåkan Samuelsson(ホーカン・サムエルソン)CEOは語っている。「私たちは内燃機関を理解したように、電池を理解する必要があります」。

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タグ:Volvo CarsEVコンセプトモデルLiDAR

画像クレジット:Volvo Cars

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

変形し空を飛ぶ空陸両用車「AirCar」、スロバキアKlein Visionがプロトタイプの都市間飛行に成功

変形し空を飛ぶ空陸両用車「AirCar」、スロバキアKlein Visionがプロトタイプの都市間飛行に成功

Klein Vision

スロバキアのKlein Visionが開発中の空陸両用車「AirCar」が、6月28日にニトラ空港からブラチスラヴァ空港まで約35分間のフライトを行い、初の都市間飛行に成功しました。AirCarは着陸後、ボタンひとつで3分足らずのうちにスポーツカー形態に変形、ブラチスラヴァ市街地に通常の半分以下の所要時間で到着しました。

ボーイングのシニアテクニカルフェローを務めるBranko Sarh博士は、長年空陸両用車の開発に邁進するKlein Vision共同創設者のStefan Klein教授およびAnton Zajac氏を称賛し「道路を走る自動車から空を飛ぶ飛行機へ、またその逆の変形のために、自動的に翼や尾翼の展開・収納を実現することは、先駆的な情熱、革新的な精神、勇気の結果であるばかりか、優れたエンジニアリングと専門的な知識の賜でもある」と述べています。

AirCarの試作1号機は出力160HPのBMW製エンジンに固定プロペラや緊急着陸用パラシュート を備えており、民間航空局の監督のもと、45度の急旋回や安定性・操縦性試験など、合計40時間以上のテスト飛行を完了済み。その間には高度8200フィート(約2400m)への到達や最高巡航速度190km/hなども達成しています。

Klein氏は、今回の試作機に続く次のステップとして300HPエンジンを搭載する試作2号機の計画をすでに準備中。欧州の航空規制当局から一般の飛行機、実用機、曲技機、通勤機としての認証を取得すると共に、欧州M1区分(乗用車)として道路走行の許可も得る予定だとしています。

とはいえ、この試作2号機の開発にはまだ困難が伴う可能性があります。空陸両用車を実現するには、欧州の基準に合致する格好で軽飛行機として、また自動車として搭乗者の安全を確保しなければなりません。ただ、米国では連邦航空局(Federal Aviation Authority:FAA)がTerafugia製の空陸両用車にライトスポーツ機カテゴリー(S-LSA)に属することを認める特別証明書を与え、飛行を合法化するなどしており、欧州規制当局もこの流れに倣う可能性が見えてきています。

変形し空を飛ぶ空陸両用車「AirCar」、スロバキアKlein Visionがプロトタイプの都市間飛行に成功

Klein Vision

ちなみに、今回初の都市間フライトを成功させたKlein教授は、以前はAeroMobilと称するやはりスロバキアのベンチャーで空陸両用車を開発していた人物。しかし2015年にはプロトタイプ機が墜落、操縦していたKlein氏は緊急脱出システムを使用してパラシュートで生還したことがありました。Klein氏は事故の翌年にAeroMobilを離れ、その後Klein Visionを設立しました。

(Source:Klein VisionEngadget日本版より転載)

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タグ:Klein Vision(企業)

自動車の整備・修理出張サービス「セイビー」の開発・運営を行うSeibiiが総額8.4億円のシリーズA調達

自動車の整備・修理出張サービス「セイビー」の開発・運営を行うSeibiiが総額8.4億円のシリーズA調達

自動車の整備・修理出張サービス「セイビー」の開発・運営を行うSeibiiは6月30日、シリーズAラウンドにおいて、第三者割当増資による総額8億4000万円の資金調達を実施したと発表した。引受先は、リードインベスターのグロービス・キャピタル・パートナーズ、またCoral Capital、 エンジェル投資家の有安伸宏氏。調達した資金は、事業成長の核であるテクノロジー強化に向けたエンジニア採用活動、サービス認知拡大へのマーケティングに活用予定。累計調達額は約10億円となった。

2019年1月設立のSeibiiは、「人とモビリティとの新たなストーリーを創る」をミッションに掲げ、車の整備・修理・パーツ取付などの出張サービス「セイビー」を展開。スマホやPCから、日時やメニューを選んで事前予約・事前決済を行うと、予約した時間に国家資格を持つ自動車整備士が自宅などに出張する。また、車について詳しくない方やメニューに悩む方を対象に、サービスぺージから自動車整備士にチャット相談(無料)を行えるようにしている。

セイビーの特徴である「出張」を前提としたビジネスモデルにより、来店や待ち時間不要で時間を節約できる上、店舗の相場価格と同等以下という料金設定を実現しているという。

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コネクテッドカーデータ分析のWejoが損保ホールディングスやマイクロソフトと提携

コネクテッドカーデータのスタートアップであるWejo(ウィージョ)が、世界中の何百万台というコネクテッドカーからのデータを収集・保存・分析するのにMicrosoft、Palantir、損保ホールディングスと提携すると発表した。

WejoはGMの出資を受けており、今回のニュースは特別買収目的会社(SPAC)Virtuoso Acquisition Corp.との合併を通じて上場するという発表に続くもので、SPAC合併は2021年後半に完了する見込みだ。Microsoftと損保が拠出する2500万ドル(約28億円)、そしてGMとPalantirがすでに約束している投資と合わせると、Wejoの私募増資は1億2500万ドル(約138億円)となる。

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PalantirはWejoの戦略的投資家だった。2019年にPalantirは損保ジャパンと日本で合弁会社を設立した。この合弁会社との提携によりWejoは日本で、そしておそらくさらに広範なアジア太平洋地域でコネクテッドカーデータを収集できるチャンスを手にする。Wejoはすでに韓国で対象車両を抱えているが、同社の創業者でCEOのRichard Barlow(リチャード・バーロー)氏によると、扱うデータの95%は米国からのものだ。損保はPalantir Foundryデータ分析プラットフォームを使ってWejoのコネクテッドカーデータを分析する、とWejoは説明する。

「世界で販売されている車両の大半はつながる能力を持っています。ですので膨大なチャンスがあります」とバーロー氏はTechCrunchに語った。「サプライベースの車両約5000万台のうち1100万台が当社のプラットフォームにあります。また提携するOEM17社が当社のプラットフォームを活用していて、1日あたり160億ものデータポイント、ピーク時は1秒あたり4万のデータポイントを処理しています。だからこそMicrosoftの支援を受けてAzureクラウドプラットフォームに移行することに胸躍らせています」。

WejoはGMやDaimler、Hyundaiといった車両メーカーとの提携の元にニューヨークを走行しているクルマの70%、カリフォルニアの車の6%、デトロイトの車の20%をとらえることができる、とバーロー氏は話す。Wejoは所有者の同意を得ている車両から収集した未加工の匿名化されたデータを企業やデベロッパー、政府に提供したり、データ分析を行なったりすることができ、これはMicrosoftとの提携が役立つ分野でもある。

「Microsoftは、我々が実際にOEM、そしてコネクテッドカーのデータを使いたい鍵を握る産業にこれまでよりもすばらしいプロダクトを実際に提供するために、どのように機械学習とAI能力を活用するかについて、本当に説得力のあるソリューションを思いつきました」とバーロー氏は話した。「ですので困難な仕事をこなすMicrosoftのAzureは当社の事業を確実にスピードアップするでしょう」。

Wejoによると、初期の応用には交通ソリューション、リモート診断、統合決済、広告、小売、ロジスティックなどが含まれる。WejoとMicrosoftはまた、MicrosoftのマッピングソリューションのためにWejoを使うという潜在可能性についても協議している。マッピング企業は往々にしてWejoのデータの購入者であり、保険会社の利用も見込まれる、とバーロー氏は話す。

「車両2台が同時に、そしてリアルタイムに入ってくるケースが1100万件ありました。当社はどちらの車両からもデータを獲得します。そして衝突や、車両の関わり前後の動きの特徴をとらえて理解し始めます」と同氏は話した。

Wejoは、各ドライバーがどのようにブレーキを踏んだのか、どのエアバッグが作動したのか、衝突時のスピード、どのセンサーが壊れたのかなど、クルマの衝突を再現することができるデータを収集する。そして保険会社が保険請求や回収プロセスを迅速に処理できるよう、そしてより精度を高められるよう、こうしたデータを保険会社と共有することができるとバーロー氏は説明した。

さまざまな状況での人間のドライバーの行動を示すこのデータはすべて過去7年で集められ、このデータにより自動運転技術を開発する企業にとってWejoは魅力ある存在となっている。

カテゴリー:モビリティ
タグ:Wejoコネクテッドカー

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Nariko Mizoguchi