フォードが約200億円かけてEV向けバッテリーセル開発ラボを新設

Ford Motor Company(フォード・モーター・カンパニー)はバッテリーセルとバッテリーを開発して製造するために1億8500万ドル(約201億円)のR&Dバッテリーラボを設置する。おそらく自社でバッテリーセルをつくることに向けた最初のステップだ。またラボの設置は、同社がバッテリーで走る電気自動車への移行において、もはや賭けではないという、消費者や他の自動車メーカーに向けた別のシグナルだ。

同社の幹部は、Fordがいつバッテリー製造をスケール展開するのか、タイムラインを示すのは却下したが、同社がこの施設をそうした未来の基礎を築くためのものとする意向であるのは明らかだ。

ミシガン州の南東に立地するFord Ion Parkでは、従業員150人超がバッテリーテクノロジー開発や研究、製造に取り組む予定だ。施設の面積は約20万平方フィート(約1万8580平方メートル)で、2022年末に開所する。同施設は近くのミシガン州アレンパークにある同社のバッテリーベンチマークテストラボのサポートを受ける。アレンパークのラボではすでにバッテリーセル製造と化学をテストしている。また、周辺ではディアボーンに同社の製品開発センターが、ロスビルにバッテリーセル組立と電動モーターのプラントがある。

新設する施設は、電動システムエンジニアリング担当ディレクターを務めるAnand Sankaran(アナンド・サンカラン)氏が率いる。サンカラン氏は施設について、次世代のリチウムイオンとソリッドステートのバッテリーを含む「ラボスケールとパイロットスケールのセル組立」のための「学習実験室」と形容した。

Fordは段階に分けてのBEV(Battery Electric Vehicle、二次電池式電気自動車)への移行を考えている、と同社のプロダクトプラットフォームオペレーション責任者のHau Thai-Tang(ハウ・タイ-タン)氏は説明した。BEVがアーリーアダプターに購入される最初の段階では、Fordは外部のサプライヤーパートナーと取り組んでいる。同社は現在、さらに多くのプロダクトをマーケットに投入し、BEVがマーケットシェアを拡大する第2段階に備えている。「第2段階に向けた次のトランジションの準備では、我々はFordが最終的に垂直統合へ向けたフレキシビリティと選択を持てるようにしたいと考えています」とタイ−タン氏は話した。

「電動革命をリードするための当社の計画は明らかに、当社がバッテリーエネルギーの密度における達成進捗具合とコストに左右されます」と同氏は4月27日に記者団に述べた。

「Ford Ion Parkチームの結成は、Fordが垂直統合して将来バッテリーを製造することにおける成功要因です」とも話した。「すばらしい走行距離、低コスト、高い品質を備えた大容量のバッテリーセルの供給と展開をうまくコントロールするのに役立ちます」。

これはバッテリーセルの米国内製造にとって大きな後押しとなりそうだ。バッテリーセル製造は現在、パナソニック(Teslaの主なサプライヤー)や、韓国拠点のLG化学、Fordの現在のバッテリーサプライヤーであるSK Innovationなどアジアの企業に独占されている。経営陣は、グローバルパンデミックと半導体不足によって、国内で管理されたサプライチェーンを持つことの重要性が浮き彫りになった、と述べた。

「バッテリーに関しては、かなり資本集約的な事業となることはわかっています。世界トップのサプライヤーは売上高の大きな部分をR&Dにあて、バッテリープラントを建設して動かすのに必要な資本的支出はかなりの額です。ですので、これを踏まえると、Ford専用の施設を持つために必要なスケールとボリュームは大きな考慮事項です。このトランジションの進行をどれくらい強気にとらえているかについてこれまで語ってきました。我々はいま、どこかの地点で垂直統合がすばらしいレベルであることを楽しむために十分なスケールがある、という地点にいます」とタイ-タン氏は述べた。

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Nariko Mizoguchi

エアバスとLuminarが提携を発表、LiDARを使い航空機の自動操縦や安全向上を目指す

Luminar Technologies(ルミナー・テクノロジーズ)は、Airbus(エアバス)と提携を結ぶことで、そのLiDAR技術を、自動車のみならず航空分野にも拡大しようとしている。米国時間4月26日朝に発表されたフランス大手航空会社との提携は、LuminarにとってDaimler(ダイムラー)、Volvo(ボルボ)、Mobileye(モービルアイ)に続く企業との協業となる。これまでLuminarは、同社の光による検知および測距技術を、地上を走る自動運転車に適用することに専心してきた。

この提携によって直ちに民間航空機にLiDARが搭載されるわけではない。ダイムラーやボルボ、モービルアイと結んだ契約と異なり、今回は生産契約ではないからだ。とはいえ、最終的には生産化に結びつくことを目指している。今回の提携ではエアバスの子会社であるUpNext(アップネクスト)と協力して、新しい技術的なブレイクスルーを開発し、最終的には航空分野に応用することに注力する。

この取り組みは、民間航空機からヘリコプター、防衛、宇宙まで、エアバスのビジネスライン全体に試験飛行プラットフォームを提供するAirbus Flightlab(エアバス・フライトラボ)に組み込まれる。Luminarとエアバスは、最終的に安全な自律飛行を実現するために、LiDARを使って検知、認識、そしてシステムレベルの能力を向上させる方法を開発・テストする予定だという。

Luminarの創業者でCEOを務めるAustin Russell(オースティン・ラッセル)氏は、4月26日に発表した声明の中で「私たちは自動車産業で成し遂げたことを、約1兆ドル(約108兆円)の産業として確立されている航空産業に直接再適用することができます」と述べている。「自動化と安全性の向上により、当社の技術が道路から空へと広がることで、あらゆる交通における移動の仕方が一変すると、私たちは信じています。飛行の未来を定義するという共通のビジョンを加速させることを楽しみにしています」。

LiDARはレーザー光を用いて距離を測定し、精度の高い3次元マッピングを作成するもので、自動運転車業界では商用展開に不可欠なセンサーと考えられている。また、自動車メーカーも、消費者向け乗用車、ピックアップトラック、SUVの新型モデルに搭載する先進運転支援システムの機能と安全性を向上させるために、LiDARは重要なセンサーであると考え始めている。

エアバスは、都市部向けエアモビリティのような航空機の自律操縦運用において重要なステップである障害物の自動検出に、LuminarのLiDARと認識システムをどのように役立てることができるかに関心を持っている。両社は、このセンサーが「既存の航空機アプリケーションの安全性を大幅に向上させる」可能性もあると述べている。

ヘリコプターの安全性を高めることは、エアバスの使命の1つだ。同社は月曜日、コードネーム「Vertex(バーテックス)」と呼ばれるプロジェクトを通じて、ヘリコプターのFlightlabに数々の新機能を投入すると発表した。これらの技術は、LiDARなどのセンサーと障害物検知用ソフトウェア、自動操縦を強化するフライ・バイ・ワイヤ、機内の監視・制御を行うタッチスクリーンと頭部装着型ディスプレイなどで構成されており、ヘリコプターのパイロットの作業負荷を軽減し、安全性を高めることを目的としている。エアバスによると、これらのシステムを組み合わせることで、ナビゲーションやルートの準備、自動離着陸、事前に設定した飛行経路に沿った運行などが管理できるようになるという。2023年の完全なデモンストレーションに向けて、これらの技術をヘリコプターのFlightlabに段階的に組み込む作業が始まっている。エアバスは、同社のアーバン・エア・モビリティ・プロジェクトにおいても、自律飛行に向けたステップとして、この技術が活用されるだろうと述べている。

数年間の秘密裏な活動を経て、2017年4月に自動運転車の業界に突如出現したLuminarは、2020年末に上場企業となった。2021年3月には、Volvo Cars(ボルボ・カーズ)と協力して高速道路用の自動運転システムを開発し、最終的には他の自動車メーカーに販売することを目指すと発表した。この協業は、ボルボとの間で結ばれた既存の提携のもと、同社の自動運転ソフトウェア子会社であるZenseact(ゼンセアクト)とともに行うことになる。Luminarの創業者でCEOを務めるAustin Russell(オースティン・ラッセル)氏は、両社の技術を組み合わせて、市販車向けの「ホリスティック(全体論的)な自動運転車スタック」を開発すると述べており、ボルボはその最初の顧客となる。発表当時、ラッセル氏とZenseactのCEOであるÖdgärd Andersson(オッドガード・アンダーソン)氏は、このシステムを他の自動車メーカーにも提供する予定だと語っていた。

また、Luminarは2020年、株式上場に先駆けて、インテルの子会社であるMobileyeの自動運転車にLiDARを供給するサプライヤー契約を締結。この契約によって、LuminarのLiDARはMobileyeの第1世代の無人運転車に搭載され、ドバイ、テルアビブ、パリ、中国、韓国の大邱市で試験運転が始まっている。

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(文:Kirsten Korosec、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

あらゆるテクノロジーが詰め込まれたメルセデス・ベンツEQS 2022年モデル、350ものセンサーで実現された数々の新機能

Mercedes-Benz(メルセデス・ベンツ)は、数週間かけてじらし広告、発表、生産開始前の試乗イベント(TechCrunchも参加)を重ねた後、ついに米国時間4月15日、カモフラージュを取り去り、テクノロジーを詰め込んだフラッグシップ超高級セダンEQS(メルセデスSクラスの電気自動車版)を公開した。

注目の大半はその外観に向けられているが、TechCrunchが注目しているのは、そのテクノロジーだ。マイクロ睡眠警告システム、142cmのハイパースクリーン、超大型のHEPAエアフィルター、運転者の要望やニーズを直感的に学習するソフトウェアなど、さまざまな技術が搭載されている。No.6 MOOD Linenと呼ばれる新しい香料まで採用されており、その香りは「イチジクの新緑とリンネルに包まれている」ような感じ、と説明されている。

「何か1つを取り上げることはできません。この車は100の様々な要素で構成されているからです」とDaimler AG(ダイムラー)の取締役会会長でメルセデス・ベンツ社長のOla Källenius(オラ・ケレニウス)氏はいう。「そして、その100の小さな要素にこそ、メルセデスのメルセデスたる所以があります」。

メルセデスは、このテクノロジーにパフォーマンスとデザインを組み合わせれば、買い手は惹きつけられると確信している。この車はメルセデスにとっていちかばちかの賭けだ。同社は、北米でEQSが成功を収めることによって、全米での販売開始時に問題を起こした(今はすべて解決済み)EQCの記憶を払拭できると踏んでいる。

基本概要

最新のテクノロジーについて説明する前に、基本事項について概説しておこう。EQSは、メルセデスの新しいEQブランドとなる超高級純電気自動車で、米国市場に導入される最初のモデルは、329馬力のEQS 450+と516馬力のEQS 580 4MATICだ。メルセデスはこれらのモデルの価格を公開していないが、パフォーマンス、デザイン、レンジについて詳細な情報を提供している。

米国で販売予定のEQSの車長は5.2mを若干超える(正確には5.217m)くらいで、メルセデスSクラスのバリエーションに相当するサイズだ。

メルセデスEQS 580 4MATIC

このモデルの空気抵抗係数は0.202で、Tesla Model SとLucid Motors Airより若干低く、世界で最も空気抵抗の少ない量産車となっている。すべてのEQSモデルは後車軸に電動パワートレインを備えている。EQS 580 4MATICは前車軸にも電動パワートレインを備えており、全輪駆動を実現している。EQSの最高出力は329~516馬力で、車種によって異なる。メルセデスによると、最大630馬力の高パフォーマンス車種の生産も計画されているという。EQS 450+とEQS 580 4MATICのどちらも、最高速度は時速209kmだ。EQS 450+の時速96kmまでの加速時間は5.5秒だが、高出力の上位車種は4.1秒で同じ速度に達する。

EQSでは、2種類のバッテリーのどちらかを選択できるが、メルセデスが詳細を明らかにしているのは1つのバッテリーのみだ。最高負荷構成のEQSには使用可能エネルギー含有量107.8 kWhのバッテリーが搭載されており、European WLTP(国際調和排出ガス・燃費試験方法)による概算では1回の充電で769キロメートルまで走行できる。より厳しい基準であるEPAによる概算では、この数字を下回る可能性が高い。

メルセデスによると、EQSは、直流高速充電ステーションで最大200kWまで充電できるという。自宅または公開の充電ステーションでは、オンボードの充電器を使用して交流で充電できる。

それでは、EQSで使用されている注目すべきテクノロジーをいくつか紹介しよう。

ADAS(先進運転支援システム)

EQSにはさまざまな運転者支援機能が搭載されている。この機能を実現しているのは、車に組み込まれている超音波、カメラ、レーダー、ライダーなどの多様なセンサーだ。ADAS機能として、適応走行、加速動作調整機能、車線検知、自動車線変更、ハンドル操作補助(最大時速209kmで車線走行)などが組み込まれている。このシステムは、速度制限標識、オーバーヘッドフレームワーク、工事現場の標識も認識し、一時停止や赤信号を無視すると警告する機能もある。

さらに新しい機能として、時速19kmに達すると自動的に作動するマイクロスリープ警告機能がある。この機能は、運転車のまぶたの動きをドライバー用ディスプレイのカメラで分析することで実現されており、MBUX Hyperscreen搭載車種でのみ利用できる。

必要に応じて運転操作に介入するアクティブ補助機能もある。アクティブ死角補助では、時速9.6~199kmの速度範囲で側面衝突の可能性があることを視覚的に警告する。それでも運転者が警告を無視して車線変更を開始すると、速度が時速30kmを超えている場合は、衝突直前に一方的にブレーキ操作を介入させて修正操作を実行するという。この機能は駐車中でも作動し、車や自転車が近くを通過している場合に車を発進させないよう警告する。

緊急停止補助機能も用意されており「運転者が交通状況に反応しない時間が続いている」とセンサーとソフトウェアが認識すると、ブレーキを稼働して走行中の車線で車を停止させる。ブレーキ操作は急には行われない。運転者が反応していない場合は、まず音声で警告し、その後、計器群に視覚的な警告が表示される。車が徐々に減速される間、これらの警告が継続的に発出される。ハザードランプが点灯し、触覚による警告として運転席のシートベルトが一瞬締まる。最後に、追加の警告としてメルセデスのいう「短く強いブレーキ操作」が適用され、車は減速して停止する。必要に応じて、1回車線変更することもある。

また、オプションでDRIVE PILOT(ドライブパイロット)機能も用意されている。これは、SAE Level 3対応の条件付き自動運転システム機能で、これによりハンズフリーの運転が可能となる。欧州では規制により、公道を走行する量産車にこのレベルの自動化を実施することは禁止されている。この件について、ケレニウス氏はドイツのメディアに次のように語っている。「2021年下半期にドイツで最初の量産車向けLevel 3システムの認可を取得する寸前まできている」(Automotive News Europeの記事より抜粋)。

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学習するクルマ

EQSには驚くべき技術的な仕かけが数多く搭載されているが、その多くは運転者の動作を学習するよう設計された基盤AIに依存しており、ソフトウェアと、驚くほど多数のセンサーで実現されている。メルセデスによると、機器にもよるが、EQSには最大350のセンサーが組み込まれる予定で、距離、速度、加速、ライト点灯条件、降雨、気温、座席専有率、運転者のまばたき、同乗者の話し声などが記録される。

これらのセンサーによって取得された情報は、電子制御ユニット(コンピューター)によって処理され、その後、ソフトウェアアルゴリズムが処理を引き継いて判断を下す。TechCrunchの試乗レビュー担当者Tamara Warren(タマラ・ウォーレン)によると、半日試乗しただけで、EQSが運転者の好みを学習する能力に気づいたという。

メルセデスは、これらのセンサーとソフトウェアの連係動作について、例えば、対話型で、さまざまなパラメーター(アクセルの位置、速度、回復動作)に反応するオプションの走行音など、さまざまな例を使って説明した。

直感的な学習機能が明白にわかるのは、MBUX情報システムとのやり取りを介して学習される場合だ。このシステムは、ユーザーにしかるべき機能をしかるべきタイミングで予測的に表示する。センサーは環境とユーザーの動作の変化を感知し、変化に応じて反応する。メルセデスは、第1世代MBUX(2019年型Mercedes A Classに搭載)から収集したデータで学習した結果、大半のユースケースはナビゲーション、ラジオ / メディア、電話の各カテゴリーに当てはまることがわかった。

このユーザーデータに基づいて、第2世代MBUZ(EQSに搭載されるもの)のレイアウトが決められた。例えば、ナビゲーションアプリは常に、ビジュアルディスプレイユニットの中央に表示される。

画像クレジット:Mercedes-Benz

MBUXでは自然言語処理を採用しているため、運転者はいつでも自分の声でラジオ局を選択したり、社内環境を制御したりできる。しかし、メルセデスは、EQSの直感的学習機能を強く推奨している。この機能では、運転者がクルマを使い込むにつれて、通常はメニューの深い階層に埋もれている項目が前面に表示されるようになったり、時間や場所に応じて前面に出てきたりする。

「このクルマは運転者を人として認識し、運転者の好みや動作を学びます。次に使いたいオプションを、運転者が考える前に提示してくれるような感じです」とケレニウス氏は説明する。

「お腹が空く前にピザが配達されるようなものです」とケレニウス氏は冗談交じりに続け「直感的という意味ではまさに画期的です」と付け加えた。

メルセデスによると他にも20を超える機能があるという。例えば誕生日リマインダー機能は、ユーザーに関係のある人の誕生日を人工知能の助けを借りして自動的に知らせてくれる。階層なしのインターフェイスに表示されるこうした提案モジュールは「マジックモジュール(Magic Modules)」と呼ばれ、次の原理で動作する。運転者が数日続けて、夜帰宅途中に特定の友人や親戚に電話すると、今日この時刻にこの相手に電話をするかどうか提案してくる。名刺は、連絡先情報と写真(保存されている場合)付きで表示される。MBUXが行うすべての提案は、ユーザーのログインプロファイルと関連付けられる。つまり、他の誰かが自分のプロファイルでログインして、同じ夜にそのEQSを運転したとしても、この推薦は表示されないということになる。

運転者が帰宅途中にいつも特定のラジオ番組を聴く場合は、その番組を聴くかどうかが提案される。定期的にホットストーンマッサージを利用している場合は、低温でマッサージ機能を作動させるかどうか自動的に提案してくる。

こうした提案は運転機能にも適用される。例えば、自宅車庫までの私道が急勾配だったり、同じような減速バンプを通過して自宅近くに入っていく場合、MBUXはそのことを記憶する。そして、GPSの位置がその区域に近づくと、車体を上げて地面からの距離を確保するよう提案してくる。

健康とウェルネス

上述の各種センサーにはさらに高度な用途がある。運転者はさらに一歩進めて、スマートウォッチ(Mercedes-Benz vivoactive 3、Mercedes-Benz Venu、またはその他のGarmin互換ウォッチ)をEQSの「エナジャイジングコーチ」に接続できる。エナジャイジングコーチは運転者の動作に反応し、1人ひとりの気分に応じて「Freshness(リフレッシュ)」「Warmth(暖かさ)」「Vitality(活力)」「Joy(喜び)」などの中から1つのプログラムを提案してくる。スマートウォッチは、Mercedes meアプリを介して、ウォッチ装着者のバイタルデータ(心拍数、ストレス度、睡眠の質など)をエナジャイジングコーチに送信する。組み込みのGarminウェアラブルによって記録された心拍数は中央ディスプレイに表示される。

これが実際にどのような役に立つかというと、実は、ユーザーの要望とAIシステムが判断したユーザーの要望に合わせて、ライト、車内環境、サウンド、座席などが調整されるのだ。もちろん、これはすべて、音声アシスタント「Hey Mercedes(ヘイ、メルセデス)」に統合されているため、運転者は、自分の気分をいうだけで望みのプログラムを起動できる。

運転者が「ストレスを感じている」というと「喜び」プログラムが起動され「疲れている」というと「活力」プログラムで休憩をとるよう促される。

メルセデスSクラスのオーナーには、こうしたオプションはすでにお馴染みかもしれないが、メルセデスによると、EQSではシステムがさらに強化されているという。具体的には、新しい3つのエナジャイジングネイチャープログラムとして、森の中の空き地、海の音、夏の雨が追加され、トレーニングとヒントも用意された。各プログラムでは、音響生態学者Gordon Hempton(ゴードン・ヘンプトン)氏の助言を受けて作成された、異なる没入型サウンドが再生される。例えば「森の中の空き地」では、鳥のさえずり、葉の擦れる音、そよ風を組み合わせた音が再生され、温かみのある音風景と淡い香りが車内に満ちる。

海の音では、柔らかい音楽風景、波の音、カモメの鳴き声が生成される。これに空調システムからの風が加わってプログラムが完成する。一方「夏の雨」では、落ち葉の積もった屋根に落ちる雨粒の音、遠くの雷鳴、パタパタと音を立てる雨、環境音景などが生成される。

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さらに、休憩が必要な長距離ドライブ向けに、パワーナップ(積極的仮眠)機能が追加された。パワーナップを選択すると(間違っても運転中に選択しないよう注意)、入眠、睡眠、目覚めの3つのフェーズからなるプログラムが実行される。運転者の座席は安静位に移動し、窓とパノラマサンルーフが閉じて、空気イオン化が起動される。心地よい音と中央ディスプレイに映し出される満天の星空によって入眠が促される。目覚めの時刻がくると、音楽景が起動され、香りが立ち、簡単なマッサージと座席シートの通気が開始される。座席が元の位置に戻り、サンルーフの裏張りが開く。

音声

先ほど述べたとおり「へイ、メルセデス」音声アシスタントは、自然言語処理を使用しているため、多くの要求を処理できる。メルセデスによると、音声アシスタント機能はさらに強化され「へイ、メルセデス」という起動キーワードを言わなくても電話を受けるなどの特定のアクションを実行できるようになったという。また、クルマの機能説明もできるようになった。

音声アシスタントは同乗者を音声で識別することもできる。実際、車内の各座席には個別のマイクが設置されている。同乗者の音声を学習したアシスタントは、そのユーザーの個人データと職務を参照できる。

EQSの音声アシスタントは後部座席からでも使用だ。

これらの個人プロファイルは「Mercedes me」の一部としてクラウド上に保存される。つまり、プロファイルは新世代のMBUXを搭載した他のメルセデス車でも使用できるということだ。セキュリティは組み込まれており、PINも使用でき、顔認識と音声認識を組み合わせて認証を行う。これにより、個人設定へのアクセスやデジタル決済処理の確認を車から実行できるという。

スクリーンとエンタテイメント

最後に、画面について触れておこう。すべての画面についてだ。142cmのハイパースクリーンが最も注目を浴びているが、EQSでは車内に複数の画面が設置されている。重要なのは、これらの画面が相互にやり取りする方法だ。

ハイパースクリーンは実は3つの画面で構成されているのだが、3つとも共通のガラスカバーに接着されているため、見た目には1つのディスプレイに見える。運転席ディスプレイは31cm、中央ディスプレイは45cm、助手席のディスプレイは31cmだ。MBUXハイパースクリーンはタッチスクリーンになっており、触感フィードバックと力フィードバックを返すこともできる。

「最初のデザインと実際の完成品についてときどき考えるのですが、『1メートル41cmの曲面ガラスを車内に搭載するなんて、突拍子もないアイデアだ』と思うことがあります」とケレニウス氏はいう。「それ自体が1つの作品であり、テクノロジーアートなのです」。

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後部座席に多くの注目が集まっているが、これはEQSが同グレードのSクラスと同様、オーナーが運転手を雇って使うことが多い車だからだ。後部座席はすべてシステムに接続されているため、メルセデスはこれを後部座席エンタテイメントシステムとは呼ばず、マルチ座席エンタテイメントシステムと呼んでいる。

運転者が2人の後部座席同乗者に異なる映画を見せたい場合は、メインスクリーンで映画をドラッグし、それを見たい同乗者の方へスワイプするだけで、後部座席のプログラムが調整される。後部座席の同乗者も、隣の同乗者のスクリーンに映画をいわば「投げる」ようにスワイプして渡すことができる。

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(文:Kirsten Korosec、翻訳:Dragonfly)

スマホ不要のタクシー手配「タクシーダッシュボタン」と電脳交通のクラウド型配車システムが連携開始

スマホ不要のタクシー手配「タクシーダッシュボタン」と電脳交通のクラウド型配車システムが連携開始電脳交通モバイル・コマース・ソリューション(MCS)は、誰でも簡単にタクシーの配車依頼ができる手配環境を目指し、電脳交通が開発・提供するクラウド型タクシー配車システム「電脳交通」と、MCSが開発・提供する配車注文支援用のIoT機器「タクシーダッシュボタン」のシステム連携を発表した。タクシー利用者は、同機器のボタン操作だけでタクシーの配車依頼が可能となるとともに、タクシー事業者側は低コストで円滑な配車業務が行えるようになる。

現在、電話での配車リクエストには、聞き間違いによるトラブルや、配車受付を行うオペレーターの空き時間のコストという課題があり、解決策のひとつとしてタクシーダッシュボタンが活用されているそうだ。同機器は「ボタンひとつでタクシーが呼べる」など高齢者でも使いやすい設計となっており、個人利用に加えて、接客中に操作ができると店舗や病院・薬局などで導入が進んいるという。

スマホ不要のタクシー手配「タクシーダッシュボタン」と電脳交通のクラウド型配車システムが連携開始

今回の連携により、タクシー事業者がタクシーダッシュボタンと電脳交通の配車システムを導入すると、同機器からの配車リクエストが電脳交通の配車システム上にダイレクトに取り込まれ、オペレーターや自動配車機能によるシステム上での配車指示が可能となる。タクシー事業者は、コスト負担と業務負荷を最小限に押さえた形で、近隣の生活者・施設向けに「ボタンひとつでタクシーが呼べる」サービスを提供できるようになる。これにより、タクシーの活用場面が広がるとともに利便性も向上し、利用者数増加や地域交通の安定化・活性化の支援につながるとしている。

スマホ不要のタクシー手配「タクシーダッシュボタン」と電脳交通のクラウド型配車システムが連携開始

今後は両社による導入促進に向けたサポート連携や、タクシーダッシュボタン経由での完全自動配車を目指したシステムの強化を通じ、利用者・事業者双方のタクシー配車コストが低減された「ボタンひとつでタクシー配車完了」という世界の実現および、新しい地域交通サービスの提供に取り組むとしている。

電脳交通は、導入後も最新機能を使い続けられるタクシー事業者向けのクラウド型システム。タクシー事業者の意見をもとにした年100回を超えるシステムアップデートと導入前後の手厚いサポートにより、最新の配車システムを低コストで安心して利用することが可能。2021年4月時点で32都道府県の事業者が導入しているという。

近年、アプリ配車の広まりによりタクシーの配車注文方法が大きく変わり、タクシー利用者また事業者の双方に効率的な配車受付が可能となったものの、依頼回数が多い高齢者においては、いまだに電話注文による割合が大きく占めているという。その背景としては、スマートフォンなどへのデジタル機器への抵抗感や、アプリのインストール・アップデートなどでITリテラシーが必要な点が挙げられ、電話注文への手軽さから離れられない状況もあるとしている。

MCSは、アプリ配車と同等の注文依頼が可能で、高齢者にとっても簡単に操作できるIoT機器としてタクシーダッシュボタンの設計・開発・製造を行っており、事業者・利用者に提供しているという。

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トヨタのウーブン・プラネットが配車サービスLyftの自動運転部門を約600億円で買収

配車サービスのLyft(リフト)は、その自動運転車部門をトヨタの子会社であるWoven Planet Holdings(ウーブン・プラネット・ホールディングス)に5億5000万ドル(約600億円)で売却した。自動運転車技術の商品化にかかる大量の費用と時間に対処しようと各企業の買収合戦が続いているが、これはその最新の動きだ。

米国時間4月27日に発表された買収の条件によると、LyftのLevel 5(レベルファイブ)と呼ばれる部門がWoven Planet Holdingに統合される。Lyftは5億5000万ドルを現金で受け取るが、そのうち2億ドル(約220億円)が先払いされる。残りの3億5000万ドル(約380億円)は5年をかけて支払われることになる。LyftのLevel 5に所属していたおよそ300人の従業員は、Woven Planetに移行する。2020年初頭には、米国、ミュンヘン、ロンドンで400人以上を数えていた同チームのメンバーだが、彼らは引き続きカリフォルニア州パロアルトのオフィスに勤務する。

2021年第3四半期に締結完了を予定しているこの契約により、4年近くにおよんだLyft独自の自動運転車開発は、公式に終了することとなる。

この買収で、Lyftは膨大な年間経費を削減できる。同社は、Level 5を売却することで、年間のnon-GAAP(公式な会計基準に沿わない)運営費は純額1億ドル(約108億円)の削減を期待しているという。収益性を追求するLyftにとって、この節約は極めて大きい。共同創設者で社長のJohn Zimmer(ジョン・ジンマー)氏は今回の発表で、この点を特に強調していた。

「契約が予定期間内に完了し、新型コロナからの回復が順調に続けば、2021年の第3四半期の調整EBITDA(償却前営業利益)では収益性が向上すると確信しています」とジンマー氏は声明で述べている。

この年間経費から解放されがLyftは、同社が創設以来ずっと本気で目指してきたもの、つまり、頼りになる配車ネットワークと、種類を問わずあらゆる商用ロボタクシーサービスが利用できる車両管理プラットフォームになることに資源を集中できるようになる。Lyftはすでに、自動運転車の開発企業数社との提携関係を結んでいる。とりわけ、40億ドル(約4340億円)規模のHyundai(ヒュンダイ)とAptiv(アプティブ)の合弁事業Motional(モーショナル)とWaymo(ウェイモ)だ。その目的は、他者の封じ込めだ。今回の買収では、Woven Planetは、Lyftのプラットフォームと車両管理データを使う商業契約も交わしている。

Lyftは、このWoven Planetとの取り決めは、独占契約ではなく、Motioalなど他企業との提携は今後も継続されると話している。MotionalとLyftは、すでに3年以上も提携を続けているが、これはそもそも、2018年にラスベガスで開催された技術見本市CESの期間中に、Lyftネットワークの自動運転車の試乗会を1週間だけ共同で行うことを想定したパイロット・プログラムだった(実際この提携は、Hyndaiとの合弁事業よりも前からある)。安全のために人間のドライバーを乗せて行われたこの短期の実験は、結局今日まで延長され、継続している。2020年2月には、同プログラムが提供したLyftのアプリを使ったAptive(今はMorional)の自動運転車による賃走が、10万回を超えた。Motionalは2020年12月、Lyftの配車ネットワークを使ったロボタクシーによる完全な無人運転での運行を米国の主要都市で2023年に開始すると発表している。

Lyftは、この新しくなった目標に向けた組織改編の最中だ。自動運転車の配車手配と乗車の顧客体験開発に取り組むエンジニア、製品マネージャー、データサイエンティスト、UXデザイナーは社内に残し、Jody Kelman(ジョディー・ケルマン)氏が彼らを率いることになる。このチームはLyft Autonomous(オートノマス)と呼ばれ、レンタカーとExpress Drive(エクスプレス・ドライブ)プログラムで使われる1万台以上の車両を管理する同社のフリート部門に組み込まれる。2019年に設立され、Cal Lankton(キャル・ランクトン)氏が率いていたLyft Fleet(フリート)は、2030年までに同社ネットワークの車両を100パーセント電気自動車に移行する事業も牽引することになる。この組織改編の狙いは、シェア、電動化、自動運転への取り組みをすべて1つ屋根の下で行うことにある。

その他にも、戦略的な改変がトヨタのWoven Planetで起きている。Level 5、Toyota Research Institute(トヨタ・リサーチ・インスティテュート)、Woven Planetは、1200人の従業員からなる1つのチームに統合される。Woven Planetは、Level 5の買収はLyftから自動運転部門を切り離し、自動運転技術の安全性の加速的な向上に注力させるためのものであり、自動運転スタートアップAurora(オーロラ)など、トヨタの他のパートナーとの関係には直接影響しないと話している。

Woven Planet Holdingsは、すでに大きな波紋を呼んでいる新企業だ。これは、Toyota Research Institute Advanced Development Inc.(TRI-AD)に組み入れられた持ち株会社であり、Woven Capital(ウーブン・キャピタル)として知られる投資会社、相互接続されたスマートシティーの実証都市Woven City(ウーブン・シティー)もここに含まれている。2021年2月、トヨタは富士山の麓、静岡県裾野市にある東富士工場跡地でWoven Cityの建設を開始した。

2021年の初め、Woven Capitalは8億ドル(約866億円)の戦略的ファンドを開設し、自動配送車両のメーカーNuro(ニューロ)への投資を発表した。

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カテゴリー:モビリティ
タグ:トヨタウーブン・プラネットLyft買収自動運転

画像クレジット:Lyft

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(文:Kirsten Korosec、翻訳:金井哲夫)

テスラの第1四半期売上高は74%増の1.1兆円、EV生産台数も大幅増

米国時間4月26日の株式取引開始直後に米国の電気自動車会社Tesla(テスラ)は2021年第1四半期決算を発表した。その後、同社の株価は下げた。

ここ数カ月多くのSPAC(特別買収目的会社)との合併を模索してきた電気自動車(EV)・バッテリースタートアップのマーケットにとって、一般的にポジティブなTeslaの決算はこの分野のハードウェアに対するマーケット需要が続いていることを強調し、業界にとって大きな恩恵となり得る。

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数字に目を向けると、2021年第1四半期にTeslaは103億8900万ドル(約1兆1237億円)を売り上げ、粗利益は22億1500万ドル(約2396億円)、純利益は4億3800万ドル(約473億円)だった。

修正後純利益は10億5200万ドル(約1137億円)で、非GAAPベースで希薄化後の1株あたり利益は0.93ドル(約100円)となった。マーケットは売上高102億9000万ドル(約1兆1132億円)、修正後の1株あたり利益は0.79ドル(約85円)を予想していた。同社が収支を発表した後、同社の株価は時間外取引で約1%下げている。

Teslaは前年同期に比べ急激に成長した。前年同期は売上高59億8500万ドル(約6475億円)で、純利益はわずか6800万ドル(約73億円)だった。2021年第1四半期の売上高は前年同期比で74%成長し、車部門の粗利益率は1%近く(0.95%)改善した。粗利益総計の改善はわずかに少なかった(0.70%)。純利益は1850%増と爆発的に増え、修正後純利益も304%増と驚くべき成長を見せた。

第1四半期にTeslaの営業活動によるキャッシュフローは16億4100万ドル(約1775億円)だった。同社はキャッシュを生み出すペースで快適に自社で資金をまかなうことができる。これは、現金・現金同等物計171億ドル(約1兆8501億円)で第1四半期を終えたという事実によって強調されている。

売上高75%成長を分析すると、自動車生産の売上高は76%成長した。同社は18万338台を生産し、前年同期の10万2672台を大きく上回った。納車台数は前年同期比109%増の18万4877台だった。

Teslaの太陽光発電・蓄電事業もしっかりと成長した。太陽光発電の展開は163%増の92MWで、蓄電の方は71%増の445MWhだった。

同社はスライドで投資家に対し「今後複数年にわたって納車台数は平均年50%増となると予想しています」と説明した。同社はまた、Tesla Semiの納車が2021年始まり、複数展開しているプロダクトに加わることで売上ソースが追加される、とも述べた。

今後について、投資家は調整後の希薄化後1株あたり純利益0.99ドル(約107円)、売上高113億9000万ドル(約1兆2323億円)を予想している。

カテゴリー:モビリティ
タグ:Tesla電気自動車決算発表

画像クレジット:TechCrunch

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(文:Alex Wilhelm、翻訳:Nariko Mizoguchi

空飛ぶクルマ「ASKA」でNFT Inc. が都市と郊外の在り方を新たなものに

ここ数年、多くのスタートアップが空飛ぶクルマを市場に投入すると約束してきたが、現在のところこれを実現した企業はまだない。NFT Inc.は他社が実現し得なかったことを達成すると表明し、米国時間4月15日から、同社の最初の電気空中移動車であるASKAの先行予約を開始した。

SUVサイズのASKA(日本語で「飛ぶ鳥」の意味)は、空飛ぶクルマ、というよりは路面走行可能な飛行機というほうが正しいかもしれない。6つあるロータを完全に格納した時でも、ASKAの外見はまぎれもなく飛行機のそれである。フロントグラスはヘリコプターを思わせる丸みのある形状で、後部には、飛行機に乗ったことのある人なら誰でも知っている特徴あるテールがついている。

NFTは、一般消費者の空中移動車の使用に対応する安全規制および交通規制が2026年までには整備されると予測しており、それまではASKAの納入を行わない予定である。同社の広報担当者はすでに先行予約で注文が入り始めていることを認めており、値段は操縦トレーニングも含め、78万9000ドル(約8600万円)となっている。

消費者向け空中移動車を最初に市場に投入した会社となることは、野心的な目標である。NFTは、同社の後ろ盾である資金提供者を公表することは拒んだが、先行予約に必要な5000ドル(約55万円)は、100%返金可能だと述べた。

NFTの共同創設者であるGuy Kaplinsky(ガイ・カプリンスキー)氏と Maki Kaplinsky (マキ・カプリンスキー)氏は TechCrunchに、 ASKAをはじめとする空中移動車は、都市と郊外の生活を根本的に変えることになるだろう、と語った。

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ガイ・カプリンスキー氏が「これにより都市のダイナミクスは変化するでしょう」と述べ、マキ・カプリンスキー氏は「空中移動車の出現で郊外と農村地域の在り方は変わり、富は周辺地域に移行するでしょう【略】そしてそれは周辺地域の郊外に住む人々にとって非常に興味深いものになると確信しています」と付け加えた。

どういった変化が起こるかは簡単に想像がつく。超富裕層は、都市生活やそれにともなう交通パターンの束縛から逃れ、郊外といわず、さらに遠くに居を構えることができるだろう。ASKAの航続距離が250マイル(約400km)であることを考えると、彼らは必要な時、あるいはそうしたい時だけ、都市に飛んでくることが可能になる。

共同創設者の2人によると、ASKAが他の競合他社製品と違うところは、ASKAを運転するために空港へ行く必要がない点である。同様に、規制当局も郊外の空中移動車ユーザーがどっと空港になだれ込むことを心配する必要がない。NFTでは、ASKAをドア・ツー・ドアの乗り物として設計してきた。ユーザーに必要なのは、ウィングとローターブレードを広げるためのスペースだけである。ASKAは従来の飛行機のように滑走路を使って離陸することも可能だが、ヘリコプターのように垂直離陸することもできる。ガイ・カプリンスキー氏によると、滑走路を使った離陸のほうがエネルギーがかからないため、ユーザーはスペースのある郊外では滑走路を使い、都市では垂直離陸を選択するだろうと考えている。

それぞれのローターには、個別のバッテリーパックが装備されるが、NFTでは冗長性を確保するため、ガソリンで動力を供給するレンジエクステンダーを2つ設置することも決定した。ASKAの2つのミドルローターはウィングとしての役割も果たし、緊急時には滑空をサポートする。

「ASKAユーザーのほとんどは、新米パイロットということになりますから、当社では安全を第一に考えています。現在のところ、問題は(バッテリー)セルです。化学電池開発者で、その製品が空中で故障しないと断言する開発者はどこにもいません。したがって当社ではそのようなリスクを取ることはできません」。とガイ・カプリンスキー氏。彼によると、ASKAは将来的に全電気式製品になる可能性があるが、それはバッテリーテクノロジーに左右されるとのことである。

ASKAは、従来のガレージやガレージ前のスペースに保管できるコンパクトなサイズで、電気自動車用に設置された充電ステーションで充電できる製品になる。一部の電気自動車メーカーと同様、ASKAはサードパーティーによる半自律型テクノロジーを搭載する予定だ。「当社がターゲットにしているお客様にはプロではないパイロットも含まれるため、半自律型テクノロジーである程度のコントロールができるほうが、完全自律型の「ロボット」のような車に乗っているよりも、快適であると確信しています」。と同社の広報担当者はTechCrunchに語った。仮に規制当局が将来のある時点で完全自律型テクノロジーの使用を許可したとしても「多くのお客様は、半自律型である程度の操縦ができることを望まれると考えます」と彼は付け加えた。

またNFTは、4月15日にオープンするカリフォルニア州ロスアルトスのASKAショールームを通し、購入体験を新たなものにしたいと考えている。同社の顧客はショールームで空気力学や操縦装置の専門家と話すことができる。また先行予約で最初の1500人に入った顧客は、NFTの株式を一株付与され、同社が「創設者クラブ」と呼ぶものに加入することになる。クラブのメンバーになると、同社の幹部に3カ月から6カ月ごとに会うことが可能だ。

カテゴリー:モビリティ
タグ:NFT Inc.飛行機eVTOL

画像クレジット:NFT Inc.

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Dragonfly)

ファーウェイは自動車メーカーになることを否定し一次サプライヤーを目指す

ここ数カ月、中国のハイテク企業が次々と自動車分野への進出計画を発表している。検索エンジンを提供するBaidu(バイドゥ)をはじめとするインターネット企業の中には、自動車を生産するために従来の自動車メーカーと協力することを決断した例もある。Xiaomi(シャオミ)は(自社でスマートフォンを製造しているにもかかわらず、)ソフトウェアサービスで収益を上げるライトアセット企業であることを何年も強調してきたが、ここに来て自動車製造に参入する。業界関係者の間で次は誰かという話になれば、Huawei(ファーウェイ)の名前が挙がるのは当然だろう。

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通信機器やスマートフォンのメーカーであるHuaweiは、製造業としての歴史やサプライチェーン管理の経験、ブランド認知度、広大な小売ネットワークなどの点で、いくつかの純粋なインターネット企業よりも自動車の製造に適しているはずだ。しかし、同社は自動車ブランドを立ち上げるという報道を繰り返し否定し、Huaweiの役割は、自動車メーカーやOEM(相手先ブランドによる製造)企業の一次(ティア1)サプライヤーであることだとしている。

同社の輪番制会長であるEric Xu(エリック・シュー)氏は、最近、深圳で開催された同社の年次アナリスト会議で、Huaweiは自動車メーカーではない、と繰り返し述べている。

「2012年以来、中国の主要な自動車OEM企業の会長やCEO、ドイツや日本の自動車メーカーの幹部と個人的に関わってきた過程で、自動車業界にはHuaweiが必要だと気づきました。Huaweiのブランドが必要なのではなく、彼らは未来志向の自動車を作るために私たちのICT(情報通信技術)を必要としているのです」とシュー氏は語り、2018年に発案されたこの戦略に変わりはないという。

自動車の製造業は主に3つの役割で構成されている。1つ目はAudi(アウディ)、本田技研工業、Tesla(テスラ)といったブランド力のある自動車メーカー。間もなくApple(アップル)もここに名を連ねるであろう。そしてBosch(ボッシュ)やContinental(コンチネンタル)などの老舗やここで取り上げているHuaweiなど、自動車の部品やシステムを自動車メーカーに直接供給するティア1企業。さらにNVIDIA(エヌビディア)、Intel(インテル)、NXP(エヌエックスピー)などのチップサプライヤーで、業界のプレイヤーたちが高度な自律運転車に向けて邁進する現在、その役割はますます重要になっている。Huaweiも自動車用チップを自社で製造している。

中国でロボタクシーを開発するスタートアップの幹部は「Huaweiは、次世代のBoschになることを狙っています」と、匿名でTechCrunchに話す。

Huaweiは、ティア1サプライヤーとしての地位を明確にしていて、これまでにBAIC(北汽集団)、Chang’an Automobile(長安汽車)、Guangzhou Automobile Group(広州汽車集団)という3つの主要な顧客を獲得している。

「このような綿密な協力関係は、あまり多くはないでしょう」とシュー氏は断言する。

レベル4の自律走行は実現したか?

画像クレジット:Arcfox Alpha S

中国国営自動車メーカーBAIC傘下の新しい電気自動車ブランド、Arcfox(アークフォックス、極狐)は、現時間4月17日、(「Powered by Intel」ではなく)Huawei Insideの略語であるHuaweiの「HI」システムを搭載したAlpha Sモデルを初公開した。価格は38万8900~42万9900元(約650万~720万円)で、HuaweiのKirinチップを搭載したOS、HarmonyOS上で動作するアプリ、自動運転、急速充電、クラウドコンピューティングなど、Huaweiの機能を複数搭載している。

おそらく最も注目されるのはAlpha Sがレベル4を達成したことで、この点はHuaweiがTechCrunchに断言している。

ほとんどの場面で人間の介入を必要としない、つまりドライバーがハンドルから手を離してうたた寝することができることを意味する大胆な発言だ。

しかし、この主張にはいくつかの含みが残る。Huaweiの自律走行担当ゼネラルマネージャーであるSu Qing(スー・チン)氏は、最近のインタビューで、Alpha Sは「スキル」の面ではレベル4だが「法的」責任の面ではレベル2だと話している。中国では、安全運転者のいない自律走行車のテストが許可されているのは、制限された地域でごく少数の企業に限られており、都市部の道路を走る消費者向け無人走行車にはほど遠い。

結局、Huaweiの「レベル4」機能はデモの中で示されたに過ぎない。デモでは、Arcfoxの車両が(安全を確保するためにドライバーを乗せた状態とはいえ)人の介入なしに中国の混雑した都市を1000km走行している。この車の自動化を実現するのは、3つのLiDAR、6つのミリ波レーダー、13の超音波レーダー、12のカメラなどのセンサー群と、Huawei独自の自動運転用チップセットだ。

シュー氏はこの車の能力について「Teslaよりもはるかに優れている」と語る。

Huaweiの車両は、厳密な意味ではレベル4ではないという意見もある。この議論は、言葉の問題のようにも見える。

シュー氏は「あなたが今見ているHuaweiの車はレベル4であると断言できますが、あえてドライバーを乗せています」と話す。「レベル4のことは、あなたが長距離のMPI(Miles per intervention、ドライバーの介入を必要としない平均走行距離)を達成してから議論しましょう。これはただのデモです」。

前述のロボタクシー企業の幹部は「ドライバーを排除できなければ、レベル4ではありません」と主張する。「デモは簡単ですが、ドライバーの排除は非常に難しいのです」。

「Huaweiが主張するテクノロジーは、レベル4の自律走行ではありません」と、別の中国自律走行車スタートアップの役員は話す。「レベル4の現在の課題は、ドライバー不在にできるかどうかではなく、どうすれば常時ドライバー不在にすることができるか、ということです」。

レベル4であろうとなかろうと、Huaweiは自動車の未来への投資を止めるつもりはないようだ。シュー氏はアナリスト会議で、2021年はスマートカーの部品や技術に10億ドル(約1080億円)以上を投じる予定だと話している。

5Gの未来

5Gが無人運転車の開発を加速する上で重要な役割を果たすと考える人も多く、世界最大の通信機器メーカーであるHuaweiは、世界各地の5Gの展開で多くの利益を上げるだろう。しかし、シュー氏は、5Gは自動運転車にとって必須ではないと主張する。

「自律走行を実現するためには、クルマ自体が自律的である必要があります。つまり、外部からのサポートなしに車両が自律的に走行できなければならない、ということです」とシュー氏。

「自律走行のために5Gや5.5Gに完全に依存すれば、必ず問題が生じます。5Gの基地局に問題が起きたらどうなるか、想像してみてください。モバイルネットワーク事業者は、自社のネットワークをエリア全域に隈なく広げ、どのような状況でも絶対に問題が起こらないようにして、高いレベルの耐障害性を確保しなければなりません。モバイルネットワーク事業者にとっては非常に高いハードルとなり、非現実的です」。

Huaweiは、Boschの市場を乗っ取ることができれば、ティア1サプライヤーとしては十分に満足なのかもしれない。多くの中国企業が、将来の制裁を見越して、あるいは単に堅牢性に劣らない安価な代替品を求めて、欧米の技術サプライヤーから中国国内のサプライヤーへとシフトしている現在において、ArcfoxはHuaweiの自動車分野における野心の切っ先に過ぎない。

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タグ:中国電気自動車Huawei自動運転5GBosch

画像クレジット:Baidu’s autonomous driving car

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(文:Rita Liao、翻訳:Dragonfly)

NYでドック型の電動自転車シェアリングをJOCOが開始、私有地にステーション設置

Citi Bike(シティバイク)よりも一歩進んだ、ドック型の新しい自転車シェアリングサービスが登場した。自転車はすべて電動だ。JOCO(ジョコ)は来週、一般利用のために電動自転車ステーションを私有地に置くネットワークを立ち上げる、ニューヨーク市では初の自転車シェアリングオペレーターとなる。

シェアリングモビリティプラットフォームVulogで動くこのサービスは、まずはマンハッタンに設置するステーション30カ所と電動自転車300台で始まり、2021年6月までにステーションを100カ所に、電動自転車を1000台に拡大する。2021年ニューヨークでモビリティシェアリングを提供するオペレーターはJOCOが初めてではない。先週ニューヨーク市はブロンクスで展開する電動スクーター試験事業に参加する企業を選んで発表した。しかしBird、Lime、Veoがブロンクスで事業を展開できるエリアは限られており、 Citi Bikeの範囲には遠く及ばない。だが、JOCOにはそうした制限はない。

JOCOの自転車はまず、ニューヨーク最大の駐車場オペレーターIcon Parkingのガレージを含め、街のあちこちにある駐車場に駐輪される。しかし近い将来、住宅ビルや商業ビルにも拡大したいとJOCOは話す。同社は駐車場の利用料金を駐車場のオーナーに支払い、駐車場オーナーたちは運営したり電動自転車のメンテをしたりする必要はない。

「Citi Bikeと異なるのはまず、当社の自転車は100%電動で、100%プレミアムであるという点です」と共同創業者でニューヨーク育ちのJonathan “Johnny” Cohen(ジョナサン・“ジョニー”・コーエン)氏はTechCrunchに語った(2人の共同創業者はいずれもジョナサン・コーエンという名前で、1人はニューヨーク出身、もう1人はロンドン出身だ。それでJOCOという社名だ)。「ユーザーは自転車を事前に予約できます。ステーションは私有地にあり、ステーションには手指消毒液も用意されています。自転車は夜間に雨に濡れることはなく、少しは綺麗でアクセスしやすくなっています」。

JOCOのニューヨーク市内にある電動自転車ドック30カ所のマップ(画像クレジット:JOCO)

Citi Bikeの自転車は約30%が電動だ。電動自転車を充電するのにLyft傘下のCiti Bikeは人を配して自転車をステーションから移動させているが、JOCOの自転車はステーションで充電される。Citi Bikeと同様、自転車はフル充電で約30マイル(約48km)走行できる。

「マンハッタン内を何回か駆け回るのには十分です」とロンドン出身のジョー(2人のコーエン氏を区別するためのもう1つの名前だ)は話した。「当社の自転車は常に充電されていて、いつでも利用できる状態にあるはずです。かなり持続可能である自転車に関し、バッテリーを交換するのにガソリン車でやって来るというのは本末転倒です。当社は真に環境フレンドリーな会社になり、より一貫性があって信頼できるサービスを提供することを目指しています」。

2019年に創業され、Fortune 500企業の元CEOのグループ、特にテクノロジーや不動産のバックグラウンドを持つ投資家から出資を受けているJOCOは、Citi Bikeと同じような価格帯で電動自転車を提供する。自転車を解錠するのに1ドル(約108円)、そして乗車1分当たり25セント(約27円)かかり、つまり10分の利用は3.5ドル(約378円)になる。Citi Bikeでは解錠に3.5ドル、そして1分あたり18セント(約19円)で、10分の利用は5.30ドル(約570円)になる。

「当社の真新しくゴージャスなフル電動のプレミアムな自転車の方がずっと安くなります」とニューヨーク出身のジョーは話した。

JOCO、Citi Bikeのいずれも会員には解錠料金を課さない。JOCOの会員費は月49ドル(約5285円)で、無制限に利用できる。Citi Bikeの会員費は月20ドル(約2157円)だが、会員も利用1分あたり18セント払わなければならない。年間会費を払う人の場合、1分あたり12セント(約13  円)となる。Citi Bikeの年間メンバーシップでは10分の利用が1週間に平均5回あれば、毎月の支出額はJOCOと同じくらいのものとなる。

「Citi Bikeは2013年からサービスを展開していて、ニューヨーク市における自転車の浸透にかなり貢献しました」とVulogの北米マネージングディレクターMonica Wejman氏はTechCunchに述べた。「そしていまVulogで動くJOCOが、Citi Bikeを補い、電動自転車へのアクセスに対する急増している需要を満たすために参入します。当社はモビリティオペレーターがモビリティプログラムを大規模展開するのをサポートしています」。

JOCOはドッキングステーションのスペース確保で通りや歩道を削るためにニューヨーク市の交通局に頼ることはないが、それでも市当局と良い協調関係を確保するための方策を取っている。当局はニューヨーク市内におけるすべての自転車シェアリングシステムは交通局からの事前の承認文書が必要だとTechCrunchに述べたが、その一方でJOCOの弁護士Matthew W. Daus氏の声明には、それは同社が「明確にしようとしている単純な誤解」だとある。

「クライアントのJOCOは2020年秋、そして最近もNYC DOT(ニューヨーク市交通局)の上層部と純粋にプライベートな電動自転車レンタルの取り組みコンセプトを共有するために連絡を取りました。市の持続可能な目標を推進するのをサポートするための情報事項です。このバイクレンタルイニシアチブはニューヨーク州の法律で許されているものであり、特にレンタルのために市道ではなく私有地を使っています。NYC DOTからの許可や承認は必要ではないと思われます。JOCOは来週初めにサービスを開始する計画です」と声明には書かれている。

ロンドン出身のジョーは、JOCOの自転車は破壊行為の影響を受けにくいようにする隠れたケーブル、パンクしないエアレスタイヤ、自転車追跡など安全性を重視した機能を搭載していることを知ると市当局は安心できるだろうと話す。自転車追跡はVulogのバックエンドによるものだ。

「加えて、私有地で展開することで、当社は市のために自転車が歩道に散らかる問題をなくしています。そして市は新たに自転車50台を通りにもってくるにはどうしたらいいのか頭を悩ませる必要はありません。市の大きな頭痛の種を当社は取り除いていて、これによりよくコントロールされた状態を維持し、市に頼る必要はありません」とロンドン出身のジョーは話た。

カテゴリー:モビリティ
タグ:JOCO電動自転車ニューヨーク

画像クレジット:JOCO

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Nariko Mizoguchi

ホンダは2040年までに北米における販売の100%EV達成を目指す

本田技研の新しい目標は、2050年までにカーボンニュートラルを達成するという大目標の一環として、2040年までに北米における販売台数の100%をEVにすることだ。CEOの三部敏宏氏は、内燃機関からの移行計画を4月23日の記者発表で述べたが、それは彼が2021年4月初めに同社最高位役員になってから初めての発表だった。

このところ伝統的な自動車メーカーは相次いで、無公害車の生産比率を上げてカーボンニュートラルを達成すると発表しているが、今回はその最新のケースとなる。GM(ゼネラルモーターズ)は2035年までに北米規格の軽負荷車輌からガソリン車とディーゼル車を廃止する計画だ。マツダ、三菱および日産はいずれも、2050年までに炭素排出量をゼロにすると述べている。本田技研の目標は日本の電化計画にも沿うものであり、そこでは2030年までに排出量を46%カットするとなっている。

本田技研はこの計画にすぐに着手し、2030年までに販売台数の40%、2035年までに主要市場のすべてで80%をEVにする予定だ。2020年代の後半には、この日本で2番目に大きい自動車メーカーは北米で、同社のプラットフォームに基づく一連の新しいEV車種を立ち上げる。このプラットフォームは、ホンダの広報担当者によれば「ボディーとEVの三大部位であるバッテリーとモーターとインバーターの共用性を増し、同時に高いスペース効率とバッテリー搭載効率を実現した」というものだ。

本田技研と同社アキュラ事業部はまた、2024年にGMのUltium(アルティウム)バッテリーを用いる大型EVを2車種を導入する。同社とGMのコラボレーションは今後さらに深まり、本田技研は商用トラックや電源装置など一連の製品にGMの燃料電池技術を適用していく予定だ。

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カテゴリー:モビリティ
タグ:honda電気自動車カーボンニュートラルGM二酸化炭素

画像クレジット:Drive Oregon

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Hiroshi Iwatani)

自動走行車両の遠隔操作ソフトウェアOttopiaが住友商事のVCなどから9.7億円調達

イスラエル空軍やイスラエルの諜報機関、Microsoftでのサイバーセキュリティプロダクト開発の責任者など、ミッションクリティカルな環境でキャリアの大部分を送った後、Amit Rosenzweig(アミット・ローゼンツワイグ)氏は自動走行車両に注意を向けた。

この技術には、他のミッションクリティカルなシステムに必要なもの、つまり人間が必要だとすぐに気づいた。

「AIや機械学習で完全に解決されない境界ぎりぎりのケースが数多くあり、人間参加型の介入のようなものがあるべきだと考えています」とローゼンツワイグ氏は最近のインタビューで語った。「人間による監視のないミッションクリティカルなシステムは1つもありません。原子力発電所や飛行機も然りです。自動走行モビリティが存在するには、人間が必ずループに加わっているか、何らかのかたちでそこにいなければなりません。10年後、20年後でもそうです」。

その「ヒューマン・イン・ザ・ループ(人間参加)」の結論は、ローゼンツワイグ氏が2018年に遠隔操作のスタートアップOttopia(オットピア)を設立することにつながった(同氏の兄弟であるOren Rosenzweig[オレン・ローゼンツワイグ]氏もまた自ら創業したInnovizというLiDARの会社を通じて自動走行車両業界に携わっている)。Ottopiaの初のプロダクトは、人間のオペレーターがあらゆるタイプの車両を何千マイルも離れたところからモニター・操作できるユニバーサルな遠隔操作プラットフォームだ。遠隔操作センターを作るために、Ottopiaのソフトウェアはモニターやカメラなどすぐに購入可能なハードウェア製品と組み合わされている。同社のソフトウェアにはアシスト機能も搭載されていて、遠隔から車両を操作することなくAVに「道順」を示す。

立ち上げ以来、従業員25人の小さな会社はBMWや固定ルートAVスタートアップのMay MobilityBestmileなどの投資家やパートナーを獲得してきた。Ottopiaは米国時間4月23日、Hyundai Motor Group(現代自動車グループ)やMaven、イスラエルのスタートアップ投資にフォーカスしている住友商事のベンチャーキャピタル部門IN Ventureなどから900万ドル(約9億7000万円)を調達したと発表した。既存投資家のMizMaaとイスラエル企業NextGearも参加した。

HyundaiとIN Ventureは取締役の座席も確保した。Hyundaiの自動運転センターの代表を務めるWoongjun Jang(チャン・ウンジュン)氏と、IN VentureのマネージングパートナーEyal Rosner(エヤル・ロスナー)氏は現在、Ottopiaの取締役会に名を連ねている。

Ottopiaはこれまでに1200万ドル(約13億円)を調達し、そしてローゼンツワイグ氏はすでに会社の成長の資金を確保しようとさらに大きなラウンドに目を向けている。

差し当たって、同氏は2021年末までに従業員を50人に倍増させ、米国にオフィスを開設することにフォーカスしている。また、国防や鉱業、ロジスティックなど他の分野へと遠隔操作ソフトウェアの応用を拡大させていると同氏は述べた。しかしOttopiaのリソースの大半は引き続き自動車業界、特に自動走行の乗用車、トラック、シャトルの展開に向けられている。

「モチベーションは極めてシンプルです。シンプルですが、行うのは難しいのです。そのモチベーションとは、安価な自動走行輸送を実現に近づけることです」とローゼンツワイグ氏は述べた。「もちろん問題はAVがいかなるバックアップ、あるいは遠隔操作というかたちでのいかなる種のセーフティネットも持たずにな立ち往生したとき、乗客は『一体どうなっているんだ、なぜだ、なぜこれは動かないのか』と不安になるということです」。

別の問題は、AVが効率的な運輸サービスと組み合わされる必要があることだと同氏は指摘した。同社の最新パートナー企業である、オンデマンドシャトルと輸送ソフトウェアのViaが取り組んでいる分野だ。

今週発表されたこの提携の下、Viaは車両管理ソフトウェアをOttopiaの遠隔操作プラットフォームと組み合わせた自動走行車両を提供する。Viaは自前の自動運転ソフトウェアシステムを開発していない。2020年11月に同社は、オンデマンドの乗車シェアリング、公共交通、アクセスのしやすさを要する乗客のための交通機関の選択肢を統合した自動走行車両プラットフォームを立ち上げるためにMay Mobilityと提携したと発表した

カテゴリー:モビリティ
タグ:自動運転Ottopia資金調達

画像クレジット:Ottopia

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(文:Kirsten Korosec、翻訳:Nariko Mizoguchi

航空業界の水素燃料電池普及を目指すUniversal HydrogenがシリーズAで約22億円調達

脱炭素化に向けた競争がアースデイ(4月22日)に加速した。ロサンゼルスに本拠を置き、民間航空機用の水素貯蔵ソリューションと変換キットの開発を目指すUniversal Hydrogen(ユニバーサル・ハイドロジェン)というスタートアップ企業が、シリーズA投資ラウンドで2050万ドル(約22億1200万円)を調達したと発表したのだ。

同社創業者でCEOを務めるPaul Eremenko(ポール・エレメンコ)氏は、TechCrunchによるインタビューに「水素は航空業界にとって、パリ協定の目標を達成し、地球温暖化防止に貢献するための唯一の手段です」と語った。「私たちは、航空用のエンド・ツー・エンドの水素バリューチェーンを、2025年までに構築するつもりです」。

今回の投資ラウンドは、Playground Global(プレイグランド・グローバル)が主導し、Fortescue Future Industries(フォーテスキュー・フューチャー・インダストリーズ)、Cootue(クートゥー)、Global Founders Capital(グローバル・ファウンダーズ・キャピタル)、Plug Power(プラグ・パワー)、Airbus Ventures(エアバス・ベンチャーズ)、Toyota AI Ventures(トヨタAIベンチャーズ)、双日株式会社、Future Shape(フューチャー・シェイプ)などの投資家シンジケートが参加した。

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    700マイルまでのリージョナルフライトが可能なターボプロップ機
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    「グリーン水素」を輸送するための軽量モジュール式カプセル
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Universal Hydrogenの最初の製品は、水素燃料電池を搭載した航空機に、再生可能エネルギーで製造された「グリーン水素」を輸送する軽量なモジュール式カプセルになる。このカプセルは最終的に、VTOL(垂直離着陸機)エアタクシーから長距離用の単通路機まで、さまざまなサイズの航空機に対応する予定だ。

「現在の民生用電池のように、航空機のクラスごとに互換性を持たせたいと考えています」と、エレメンコ氏は語る。

このカプセルの市場を立ち上げるため、Universal Hydrogenは、40~60人乗りのターボプロップ機を改造して、700マイル(約1127キロメートル)までのリージョナルフライトが可能な飛行機を自身で開発している。この取り組みは、シード投資家で水素と燃料電池を供給するPlug Power(プラグ・パワー)と、電動航空機用モーターを開発するmagniX(マグニックス)との共同で行われている。

エレメンコ氏は、2025年までに50席以上の大型機で乗客を乗せて飛行させ、最終的にはリージョナル航空会社が自社の航空機を改造するためのキットを製造したいと考えている。

「Boeing(ボーイング)とAirbus(エアバス)が2030年代初頭に製造する航空機を決定する前に、水素の認証と乗客の受け入れにおけるリスクの顕在化を回避するため、2、3年はサービスを提供したいと考えています」と、エレメンコ氏はいう。「少なくとも両社のどちらかが水素航空機を作らなければ、航空業界は気候変動対策の目標を達成できないでしょう」。

水素に賭けているのはUniversal Hydrogenだけではない。英国のZeroAvia(ゼロアヴィア)は、より野心的なスケジュールで独自の燃料電池リージョナル航空機を開発しており、エアバスは水素航空機のコンセプトに取り組んでいる。

エレメンコ氏は、シンプルで安全な水素ロジスティックスのネットワークを構築すれば、新たに参入する企業を呼び込むことになるのではないかと期待している。

「Nespresso(ネスプレッソ)システムのようなものです。私たちがまず、最初にコーヒーメーカーを作らなければ、私たちのカプセル技術に誰も興味を持ちません。しかし、私たちはコーヒーメーカーの製造をビジネスにしたいと思っているわけではありません。私たちのカプセルを使って、他の人たちにコーヒーを作ってもらいたいのです」。

Universal Hydrogenは、今回のシリーズAラウンドで調達した資金を使って、現在12人のチームを40人程度まで拡大し、技術開発を加速させたいと考えている。

Plug Powerの水素燃料電池とMagniXのモーターを搭載したUniversal Hydrogenの航空用パワートレインの30kW縮小デモンストレーション。

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画像クレジット:Universal Hydrogen

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(文:Mark Harris、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

キャデラックのフラグシップ全電動車「リリック」は約650万円から

全電動クロスオーバーCadillac Lyriq(キャデラック・リリック)は、GMの高級車ブランドのフラグシップだ。2022年初めに米国市場に投入されるが、最低価格は6万ドル(約650万円)を少し下回ることに決まった。

諸費用を除いたこの車両価格は、リリックの量産モデルに関して発表された具体的な内容のうち、最後に残されていたものだ。GMが最初にリリックの展示用モデルと公開したのが2020年8月だった。水曜日、同社は量産モデルの最終仕様とともに、価格も発表となった。

リリックは、GMが2025年までに販売を予定している電気自動車30車種のうちの1つに過ぎない。これはキャデラックにとって極めて重要な車両であり、販売が低迷しているこのブランドの新たな標準になることを目指している。GMが大々的に発したメッセージは、この車の発売は間近であり、2021年9月より予約販売の招待状を含むメッセージを送信する、というものだ。

リリックは当初、2022年後半から米国で生産される予定だった。しかし、仮想開発ツールと車両の土台となる柔軟なUltium(アルティアム)プラットフォームを使えば開発をスピードアップできると幹部たちは考えた。

このUltium電気アーキテクチャーとUltiumバッテリーは、GMのキャデラック、ビュイック、シボレー、GMCの各ブランド、さらにCruise Origin(クルーズ・オリジン)自動運転シャトルにも幅広く使われることになっている。このモジュラー式アーキテクチャーは、19種類の異なるバッテリーとドライブ系の設定変更が行える。400ボルトと800ボルトのパックに対応し、容量は50キロワット時から200キロワット時まで。前輪駆動、後輪駆動、全輪駆動の構成も選べる。

2023年型キャデラック・リリックの充電ポート(画像クレジット:Cadillac)

後輪駆動のリリックは、100キロワット時のバッテリーパックを搭載し、キャデラック内部の見積もりでは300マイル(約483キロメートル)以上の走行が可能だという。EPA電費はまだ公開されていない。またリリックは190キロワットでの急速充電にも対応する。10分間で76マイル(約122キロメートル)走れるだけの充電ができる計算になる。家庭での充電用には、19.2キロワットの充電モジュールが用意される。同社によれば、これを使うと1時間の充電で52マイル(約83キロメートル)走れるという。

GMでは「ブラッククリスタル」グリル、33インチの縦型LEDタッチスクリーン、AKGサウンドシステムなど、そのエクステリアとインテリアに豪華さがにじみ出るクルマを目指した。流れるようなルーフラインと幅広のボディーは、現代的で挑発的な外観をかたち作っている。この「ブラッククリスタル」グリルには、オーナーが近づくと歓迎の気持ちを表す「振り付けされた」LED照明など、ダイナミックな機能が組み込まれている。LED照明は、分割されたテールランプ・デザインでリアにも続いていく。

エクステリアとインテリアのカラーは2種類。ボディーはサテンスティールメタリックまたはステラ・ブラックメタリック。内装はスカイクールグレーまたはノワールとなる。また、金属の装飾にレーザー彫刻を施した木材をあしらい、内装を仕上げている。

画像クレジット:Cadillac

リリックには、GMのハンズフリー運転支援機能であるSuper Cruise(スーパー・クルーズ)も装備される。これは、ライダーによるマップデータ、高精度GPS、カメラ、レーダーセンサー、さらにハンドルを握る人の集中力を監視するドライバーアテンションシステムを組み合わせたものだ。Tesla(テスラ)のAutopilot(オートパイロット)と違い、Super Cruiseのユーザーはハンドルに手を置いておく必要がない。ただし、視線はまっすぐ前を向いていなければならない。

GMのシボレー・ボルトのように、リリックにも、ワンペダルドライブと説明される機能が装備される。電気自動車には、通常回生ブレーキ機能が備わる。リリックでも、車両の減速率や完全停止の状態を、ハンドルに設けられた感圧パドルでコントロールできる。

このクルマは、テネシー州スプリングヒルにあるGMの組み立て工場で生産される。GMによれば、この工場を電気自動車の生産に対応させるために20億ドル(約2160億円)を投じたという。GMと合弁事業パートナーであるLG Energy Solution(エナジー・ソリューション)は2021年4月、23億ドル(約2480億円)をかけて、バッテリーセル生産工場をスプリングヒルの組み立て工場の隣に建設するとも発表している。

関連記事:GMとLG化学の2つめのEVバッテリー工場は2023年後半開所予定

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画像クレジット:Cadillac

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(文:Kirsten Korosec、翻訳:金井哲夫)

電動スクーターの台湾Gogoroが世界最大規模のインド二輪メーカーHero MotoCorpと提携

Gogoro(ゴゴロ)の交換・再充電可能なバッテリーで動く電動スクーターは現在、同社のホームマーケットである台湾の月間販売の約4分の1を占めている。しかし共同創業者でCEOのHorace Luke(ホレイス・ルーク)氏が頻繁に聞かれる質問の1つが、Gogoroがいつ他国でスクーターを展開するのか、というものだ。

「私はいつも『準備してます、準備してます、準備してます』と言ってきました」とTechCrunchに語った。そしてGogoroは現地時間4月21日、世界最大の二輪車メーカーの1社で、本社を置くインドでマーケットリーダーであるHero MotoCorpとの戦略的提携を発表することでその質問に答えた。

GogoroとHero MotoCorpの提携にはインドにおけるバッテリー交換ネットワークを構築する合弁会社の設立が含まれる。Hero MotoCorpはまた、Gogoroのテクノロジーをベースとする電動二輪車をHero MotoCorpブランドで立ち上げる。これはHero MotoCorpにとって初の電動車両となる(この提携はHero Electricとではない。Hero ElectricはHero MotoCorpの創業者の親戚が運営している別会社だ)。

提携では、Hero MotoCorpの他のマーケットに拡大する前にまずインドにフォーカスする(同社は世界40マーケットで事業を展開している)。初の車両がどのようなものになるのか、立ち上げ都市、価格など詳細は今後発表されるが、ルーク氏はGogoroとMotoCorpが「かなり急速に準備中」だと述べた。

ルーク氏は戦略的提携を、エネルギー効率のい車両を生産したい企業にとってのターンキーソリューションとして、バッテリー交換とスマートモビリティプラットフォームになるというGogoroの目標の認証だと表現した。

「当社は、いつかHeroのような大手企業を誘うことができると期待してテクノロジー、能力、ビジネスモデルをデザインしました」とルーク氏は語った。

最初のGogoroスマートスクーターは2015年に立ち上げられた。以来、提携企業が電動スクーターを自前のブランドで生産できるようヤマハ、PGO、A-Motorなどのメーカーと提携を結んだが、Gogoroの海外展開はかなり遅々としたものだった。例えば韓国での納車すでに廃止となった欧州のシェアリングサービスCoupとの提携などだ。米国での初の製品展開はスクーターではなく、電動自転車Eeyoだった。

GogoroとMotoCorpは1年以上協議してきた。ルーク氏は戦略的提携を同社がこれまでに結んだ契約の中で最も重要なものの1つだとした。

「大きな変化を起こすために、我々は本当に大規模な採用を必要としています。軽量のパーソナルモビリティを発進させるために、台湾は当社にとってテクノロジーを開発して改良し、プラグをつなげて充電するのではなく交換して乗車するテクノロジーが可能であることを世界に示すための最高のパイロットマーケットでした」とルーク氏は話した。

しかしインドは明らかに、地理的、そして人口という点でも台湾よりかなり大きなマーケットだ。インド政府は補助金プログラムで電動車両を推進したいと考えており、人々にとって同国の燃料コストの高さもガソリンから電気へと切り替えるインセンティブとなっている。しかしながら、多くの消費者にとって大きな障害は「航続距離の心配」、つまり1回のフル充電でどのくらい長く走行できるかについての懸念だ。

だからこそGogoroとMotoCorpの交換ステーション合弁会社は重要だ。台湾ではGogoroは37万5000人超のライダーを抱え、バッテリー交換・充電ステーション2000カ所で1日あたり26万5000回のバッテリー交換が行われる。この割合は鍵を握るセールスポイントだ。というのも、ライダーはGogoroのスマホアプリを通じてすばやく近くの交換ステーションを探し出せる。

Gogoroのバッテリー交換ステーションの1つ

Gogoroのバッテリーと充電ステーションはGogoroのネットワーククラウドサービスにつながっていて、バッテリーの状態を監視し、いかに早くバッテリーが充電されるかを管理している。これにより、バッテリーは長持ちする。立ち上げ後の6年間でスマートバッテリーをまだ1つもリタイアさせていない、とルーク氏は話した。Gogoroネットワークのデータはまた、どこにステーションを設置すべきかも示す。インドではGogoroとMotoCorpは人口密度の高いエリアでまず事業を開始し、その需要に基づいてステーションを加える。台湾のネットワークで取ったアプローチに似ている。

インドの後、GogoroとMotoCorpは他のマーケットへの進出も計画しており、Gogoroの海外展開を一層促進する。

「この提携で本当に重要なことは、二輪マーケットにおけるMotoCorpの影響力、そして新興マーケットにおける二輪マーケットの重要性です」とルー氏は話した。

報道機関向けのリリースの中で、MotoCorpの会長兼CEOのPawan Munjal(パーワン・ムンジャル)博士は戦略的提携は研究の延長であり、開発によってすでに電動車両のポートフォリオが作られつつある、と述べた。

「二輪におけるHeroのリーダーシップ、グローバル展開、イノベーションの原動力、そして台湾と世界で過去数年にわたって展開されてきた交換ビジネスモデルにおけるGogoroのリーダーシップを持ち寄り、今日は我々の旅におけるもう1つの大きなマイルストーンです」とムンジャル氏は付け加えた。

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タグ:GogoroHero MotoCorp台湾インドバッテリー電動バイク

画像クレジット:Gogoro

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(文:Catherine Shu、翻訳:Nariko Mizoguchi

カラフルなシェア電動スクーターDottが約92億円調達、スペイン・英国やバイクシェアへ拡大

Dott(ドット)は中央ヨーロッパ時間4月20日、新たに8500万ドル(約91億9000万円)のシリーズB資金調達を完了した。今回のラウンドは、エクイティと資産担保デットファイナンスを組み合わせたもので、ベルギーの投資会社Sofinaが主導した。Dottは、ヨーロッパの都市で見かけるカラフルな電動キックスクーターで知られるマイクロモビリティのスタートアップだ。

同社は、5カ国で3万台の電動スクーターを運用している。ユーザーはモバイルアプリをダウンロードすると、アプリを通じてスクーターのロックを解除できる。同社は、ロック解除料と1分ごとの料金を徴収している。

Dottは設立当初、自らを資本効率が高く、持続可能な電動スクーター企業と位置づけていた。Dottは、Bird(バード)やLime(ライム)に比べて資金調達額が少なく、運営面でも異なるアプローチをとっている。

例えばDottはこれまで、車両の充電や修理を行うための倉庫を自社で保有してきた。同社はサードパーティのロジスティクス業者とは提携していない。Dottは、ロジスティクス担当従業員の自社チームを独自に採用している。

また、Dottはスクーターの修理、再利用、リサイクルを可能な限り行っている。交換可能なバッテリーと電気トラックにより、同社は事業を展開する都市でのCO2排出量を可能な限り低く抑えようとしている。

その結果Dottは、パリとリヨンで入札を経て営業許可を獲得した。全体では、フランス、イタリア、ベルギー、ドイツ、ポーランドの十数都市で事業を展開している。欧州の競合企業であるTier(ティア)はより積極的に事業を拡大しており、2020年11月に2億5000万ドル(約270億2000万円)を調達した

Sofinaに加え、EQT Ventures、Prosus Ventures、Aberdeen Standard Investments、Estari、Expon Capital、Felix Capital、FJ Labs、Invest-NL、McRock Capital、Quadiaなどの新規および既存投資家が今ラウンドに参加している。

このたびの資金調達により、同社は電子スクーターにとどまらず、新たにバイクシェアサービスを展開する予定だという。Dottはすでにそのeバイクの画像を公開している。このサービスは2021年夏に開始される予定だ。

またDottは、スペインや英国を皮切りに他の都市や国への展開も計画している。このように、Dottは一度に100の都市でサービスを立ち上げようとは思っていない。徐々に新しい都市でのサービスを展開している。現在同社は、すべての都市でEBIT(利払前・税引前利益)黒字となっており、Dottはおそらくその状態を維持したいと考えているのだろう。

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批判が高まる中、テスラが中国向けの新車両を検討中

Tesla(テスラ)は、その電気自動車の品質に関する苦情の衝撃が中国のインターネット上で広がる中で、中国の消費者に合わせた車両の開発に取り組んでいる。

Teslaの副社長であるGrace Tao(グレース・タオ)氏は、今週開催された上海モーターショーの中で、中国のビジネスニュースの21st Century Business Herald(21世紀ビジネスヘラルド)に対して、Teslaが中国向けにゼロから設計した新製品を検討していると述べた。この中国で開発された車両は、世界でも販売される予定だと彼女は付け加えた。

中国時間4月19日に開催された同イベントでは、1人の女性がTeslaのブースに現れ、Tesla車の上によじ登って、同社製のブレーキに欠陥があると叫んだ。その後、この女性は車両を傷つけたとして拘束されたが、TeslaはマイクロブログプラットフォームWeibo(ウェイボー、微博)上で、彼女のクルマが事故を起こしたのは品質上の問題ではなく、制限速度を超過したためだと書き込んだ

しかし、その様子を撮影した動画がネット上で拡散されたため、当の抗議者は多くの人の共感を集めることになった。それに乗じて多くのユーザーが、Teslaの問題を訴えたのだ。「Tesla stand turned into stage for defending rights」(Teslaのブースが権利を守る舞台となった)というハッシュタグを付けた投稿が、Weibo上で2日間に2億2千万回以上の閲覧回数を記録した。

Tesla中国は、事件を受けてWeiboに掲載した声明の中で「私たちは当初から、国や権威ある第三者機関と協力して、みなさまから寄せられた問題を徹底的に検証したいと考えています。そのようにすることで、消費者のみなさまのご安心いただきご理解いただきたいと願っています」と述べている

「しかしながら、まだその願いは叶えられていません。それは、お客さまとの私たちのコミュニケーション方法に問題があるのだと思われます。また、お客様がこれらの問題をどのように解決なさりたいのかを、私たちが決めることはできないのです」。

欧米同様、中国でもTeslaはカルト的な人気を博している。また同社は、Apple(アップル)と並んで、中国で確固たる地位を築いている数少ない米国のハイテク企業の1つだ。2020年Teslaは、全世界で約50万台の自動車を出荷し、中国は同社の収益の20%を占めている。

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しかし、その一方で、中国国産車メーカーたちとの競争も激化している。Xpeng(シャオペン、小鵬)、Nio(ニオ)、Li Auto(リオート、理想汽車)などの資金力のあるスタートアップや、Huawei(ファーウェイ)などのハイテク企業の支援を受けた既存の自動車メーカーが、Teslaの市場を奪う準備をしている。中国でデザインされた車両はすでに、愛国心の強い人たちの間で受け入れられつつある

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中国政府がTeslaに対してより厳しい目を向けていることも同社にとって不利な材料だ。2021年1月には、中国内で数万台のリコールを実施した直後に、品質問題の件で現地の規制当局に召喚されている。中国政府は、国家安全保障上の懸念から、軍事施設でのTeslaの使用を制限していると、2021年3月にThe Wall Street Journalが報じている。それを受けてElon Musk(イーロン・マスク)氏は、もし自社のクルマがスパイに使われたら、会社は閉鎖されるだろうと述べた

関連記事:運転席に誰も乗っていないテスラ車が事故を起こし後部座席と助手席の2名が死亡

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(文:Rita Liao、翻訳:sako)

運転席に誰も乗っていないテスラ車が事故を起こし後部座席と助手席の2名が死亡

米国時間4月17日、テキサス州ヒューストン郊外で、誰も運転席に座っていない状態で走行していたTesla(テスラ)の車両が立木に衝突し、男性2人が死亡した事故について、米国運輸省道路交通安全局(NHTSA)は調査を開始した。

地元CBS系列のKHOU-TVが報じたところによると、この2019年型Tesla Model S(テスラ・モデルS)は、ゆるいカーブを曲がり切れず道路外に飛び出したという。ハリス郡第4分署のMark Herman(マーク・ハーマン)保安官は、このような事故は前例がないと地元記者に語った。

「我々の署では、このような事故現場を経験したことがありません」と述べた同氏は「通常、消防隊が到着すると、車両火災は数分で鎮圧されますが、今回は4時間近くも続きました」と続けた。この長時間の火災は、電気自動車のバッテリーが再発火を繰り返していたためと報じられている。

消火には11万リットル以上の水が使われた。犠牲者の1人は助手席に、もう1人は後部座席に座っており「事故当時、(運転席には)誰もいませんでした」とハーマン氏は述べている。

事故当日、テスラのCEOであるElon Musk(イーロン・マスク)氏は、同社が2021年第1四半期の安全報告書を発表した際のニュースをリツイートし「Autopilot(オートパイロット)を作動させたテスラは現在、平均的な車両よりも事故の確率が10分の1近くまで減少しています」と述べた。テスラは、Autopilotを「一連の運転支援機能パッケージ」と表現し「積極的なドライバーの監視」が必要だとしている。

「NHTSAは、テキサス州ヒューストン郊外で発生したテスラ車の悲劇的な事故を認識しています」と、広報担当者はTechCrunchに語った。「NHTSAは直ちに特別事故調査チームを起ち上げ、この事故を調査しています。我々は、地元の法執行機関およびテスラ社と積極的に連携し、事故の詳細を調べており、より多くの情報が得られ次第、適切な措置を取る予定です」。

TechCrunchはテスラにコメントを求めており、同社からの回答があれば記事を更新する。

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画像クレジット:Spencer Platt / Getty Images

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

GMが高性能なリチウム金属バッテリー開発SESの約150億円資金調達をリード

General Motors(ゼネラルモーターズ)は、リチウム金属電池デベロッパーSESの1億3900万ドル(約150億円)の資金調達をリードすることで、大手車メーカーが繰り広げているさらに高性能な電気自動車向けバッテリーの開発競争に加わる。

VolkswagenにはQuantumScapeがあり、FordはSolidPowerに投資し(Hyundai、BMWとともに)、そして今、米国と欧州で最も大きな自動車メーカーであるGMがSESに賭ける。

「当社はR&D開発を超えています」とSESのCEOであるHu Qichao(フー・チーチャオ)氏はTechCrunchとのインタビューで述べた。「この資金調達の主な目的は1つには主要材料である陽極と陰極のリチウム金属電解液の改良を図ることです。2つめに、現在のセルの大きさをiPhoneのバッテリーサイズから車で使えるものへと改善することです」。

そして3つめの要素もあるとフー氏は話した。それは、同社のセルのパフォーマンスを監視・管理するアルゴリズムの能力を高めることだ。「これは当社、そしてOEMパートナーが気にかけていることです」とフー氏は説明した。

GMからの投資は、GMとの6年近くにわたる協業の集大成だと同氏は述べた。「当社は2015年にGMとの協業を始めました。今後3年間で我々は標準の自動化承認プロセスに取り組みます。『Dサンプル』を通じて『A』サンプルから『B』サンプルへと移行するものです」。SESの車載バッテリーの商業化前の最終テスト段階だ。

一方、米国のEV販売で首位を走るTeslaはバッテリーをよりパワフルで効率的なものにするためにバッテリーのフォームファクターに目を向けていて、使っている化学はさほど違わないとフー氏は話した。全固体電池は、バッテリーをよりパワフルでリサイクルしやすく、潜在的に一層安定したものにするバッテリーテクノロジーにおける段階的な変化を示している。

Mark Harris(マーク・ハリス)氏は2021年初めにTechCrunchで次のように述べている

多くの種のSSB(全固体電池)がありますが、 それらはすべてバッテリーの陽極と陰極の間で動く電子(電気)のための液体電解質を欠いています。リチウムイオンバッテリーの液体電解質は電極の構成物質、バッテリーの形やサイズを制限します。液体電解質は通常は可燃性であるため、リチウムイオンバッテリーは熱で暴走しやすく、爆発さえします。SSBはさほど可燃性ではなく、より多くのエネルギーをためて早く動かすために、金属電極や複雑な内部デザインを使うことができます。これにより高パワー、そして急速充電対応となります。

SESの取り組みは、GMからだけではなくバッテリーパック大手SK Innovation、シンガポール拠点の政府系投資会社Temasek、半導体メーカーApplied Materialsのベンチャーキャピタル部門Applied Ventures、中国大手自動車メーカーShanghai Auto、投資会社Vertexなど以前の投資家の注意も引きつけた。

「GMは急速にバッテリーセルのコストを下げ、エネルギー密度を改善しています。SESのテクノロジーとの取り組みは、低コストで走行距離を延ばしたい顧客により良いEVパフォーマンスを提供する、驚くほどの潜在的可能性を秘めています。GMや他企業による今回の投資によってSESは取り組みを加速させ、事業を拡大することができます」とGMエグゼクティブバイスプレジデントでGM Venturesのテクノロジー担当最高責任者兼プレジデントのMatt Tsien(マット・ツィン)氏は述べた。

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タグ:General MotorsSES資金調達バッテリー電気自動車

画像クレジット:Getty Images

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(文:Jonathan Shieber、翻訳:Nariko Mizoguchi

事故の根本的問題解決のため超高解像度レーダーを自動運転車に搭載、中国AutoXがArbe Roboticsと提携

テルアビブに拠点を置く超高解像度レーダーのスタートアップArbe Roboticsに、新たな顧客が加わった。中国の自動運転会社AutoXが、同社のレベル4自動運転車に搭載するArbeベースのレーダーシステムを40万台調達したのだ。

両社は声明の中で、Arbe Roboticsのプラットフォームは自転車や歩行者などの交通弱者を正確に認識したり、静止物を検出したり、レーダー画像のあいまいさによる誤警報の除去など、最近の自動運転車事故の原因となっている「根本的な問題」を解決すると述べた。

Arbe Roboticsは独自の2K解像度、毎秒30フレームの画像処理技術を用いて、現在市販されているどのレーダーよりも100倍詳細な画像を提供するとしている。

Arbe RoboticsのKobi Marenko(コビ・マレンコ)CEOは最近のウェブウェブキャストで、同社はすでにティア1の自動車サプライヤー5社と提携しており、チップメーカーのNVIDIAとも提携していると述べた。さらに著名でない配送ロボット会社と「世界最大級の自動車会社」の2社から、追加発注を受けていると付け加えている。

AutoXはAlibaba(アリババ)、Shanghai Motors(上海汽車)、MediaTek(メディアテック)などの支援を受け、中国での自動運転車展開の最前線に立ってきた。同社は本社がある中国最大の都市の1つである深圳で、安全運転手のいない公道での自動運転のテストを行った中国初の企業だ。また、上海では自動運転タクシー「RoboTaxi」のサービスを開始している。

関連記事:自動運転ユニコーンAutoXが中国初のロボタクシーのテストを深センでスタート

またAutoXはカリフォルニア州で人間のセーフティードライバーをともなわない自動運転テストを開始するための許可を得ており、これはWaymoとNurに次いで3社目の許可となった。

今回の提携はテルアビブを拠点とするArbe Roboticsが、特別目的買収会社であるIndustrial Tech Acquisitionsとの合併により、7億2200万ドル(約780億円)の株式評価額で上場すると発表した数週間後に発表された。この動きはM&G Investment Management、Varana Capital、Texas Ventures、Eyal Waldmanなどの投資家による1億ドル(約110億円)のPIPE(非公開投資)によって支えられた。

マレンコ氏はウェブキャストの中で、Arbe Roboticsの収益は2021年にはわずか700万ドル(約7億6000万円)に止まると見積もっており、投資家が同社の技術に期待をよせていることは明らかだ。さらに同氏は2025年には収益が3億ドル(約320億円)を超え、わずか4年間で4185%も増加すると予想している。

関連記事:自動運転車両開発のAutoXがカリフォルニア州で無人運転テスト許可を取得

カテゴリー:モビリティ
タグ:Arbe RoboticsAutoXレーダー

画像クレジット:AutoX

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:塚本直樹 / Twitter

運送業向けクラウドのhacobuが9.4億円調達、物流業界初のビッグデータ・ガバナンス体制立ち上げ

運送業支援クラウドのhacobuが9.4億円調達、物流業界初のビッグデータ・ガバナンス体制立ち上げ

「運ぶを最適化する」をミッションとして、企業間物流の最適化を目指すHacobu(ハコブ)は4月19日、第三者割当増資による総額約9億4000万円の資金調達を発表した。引受先は、JICベンチャー・グロース・ファンド1号投資事業有限責任組合、NREGイノベーション1号投資事業有限責任組合(野村不動産グループ)、豊田通商、Logistics Innovation Fund投資事業有限責任組合(セイノーホールディングスをアンカーLPとするSector-Focused Fund)、SMBC社会課題解決投資事業有限責任組合、ダイワロジテック(大和ハウスグループ。既存株主)、三井不動産(既存株主)。

これを機にHacobuは、社会課題解決に賛同するステークホルダーとのパートナーシップ強化とともに、アプリケーションの開発・販売にかかる人員の増強、物流ビッグデータ分析基盤の強化にかかる人員の増強、また物流業界初となるビッグデータ・ガバナンス体制の立ち上げ・運用などの施策を推進し、物流ビッグデータ活用に向けた体制を強化する。

外部専門家で構成する物流ビッグデータ・ガバナンス委員会では、委員長として國領二郎氏(慶應義塾常任理事、慶應義塾大学総合政策学部教授政策・メディア研究科委員 経営学博士)、委員として岩田彰一郎氏(フォース・マーケティングアンドマネージメント代表取締役社長CEO)、水越尚子氏(レフトライト国際法律事務所 弁護士)が就任する。

また資金調達と同時に、野村不動産および豊田通商と、物流業界における公正なビッグデータ活用を通じた社会課題解決と相互の事業発展を目的として、業務提携契約を締結した。野村不動産とは物流施設とそれに関わるサービスを活用したオープンイノベーションの推進、豊田通商とは、物流業界が抱える課題解決やカーボンニュートラル社会の実現に向けて、自動車業界を中心とした物流およびサプライチェーンにおけるビックデータの活用と最適化の実践を中心的な取り組む。

資金使途:物流ビッグデータ活用に向けた体制強化

  • アプリケーションの開発・販売にかかる人員の増強:企業間(発着荷主、物流企業、運送会社)のやり取りや物流現場の業務をデジタル化するアプリケーション群「MOVO」(ムーボ)の機能増強、物流業界向け他社サービスとのAPI連携によるプラットフォームとしての成長の加速、新アプリケーション開発推進に向けたエンジニア・デザイナー・プロダクトオーナーの採用を加速。また、顧客の物流DX推進パートナーとなるセールス・カスタマーサクセス・マーケティング・企画系職種の採用を加速
  • 物流ビッグデータ分析基盤の強化にかかる人員の増強:Hacobuでは、MOVOに蓄積された物流ビッグデータを分析・活用し、業務効率化の提案を複数企業に対し展開。抜本的な物流コストの削減や現場の生産性向上につながる示唆を顧客に提供している。この取り組みをけん引するHacobu Strategies(コンサルティングサービス)の物流DXコンサルタント・データエンジニア・データアナリストの採用を加速する
  • 物流業界初となるビッグデータ・ガバナンス体制の立ち上げ・運用:サプライチェーン全体の最適化の実現に向けて、個社の枠を越え、公正性・客観性を確保しつつ物流ビッグデータの活用を進めるために、外部専門家で構成する物流ビッグデータ・ガバナンス委員会を設置する。第三者の視点や意見を取り入れ、物流ビッグデータ活用に関するガイドラインを策定、運用する体制を構築する

現在物流業界は、トラックドライバーの人手不足に陥っている一方で、企業間のやり取りが電話やFAX、紙帳票などの非効率なツールが中心になっており、DXによる業務の効率化が急務となっている。

これに対してHacobuは、物流現場の業務をデジタル化するアプリケーション群MOVOを提供することで、事業者・業界の垣根を超えた「モノと車両と場所」にかかわる物流情報をビッグデータとして蓄積し、物流全体が最適化された持続可能な社会を目指すという。

MOVOでは、トラック予約受付サービス「MOVO Berth」(ムーボ・バース)、動態管理サービス「MOVO Fleet」(ムーボ・フリート)、流通資材モニタリングサービス「MOVO Seek」(ムーボ・シーク)、配送案件管理サービス「MOVO Vista」(ムーボ・ヴィスタ)の4アプリケーションを提供しており、メーカー、小売、物流企業など、すでに500社以上の企業に導入されているそうだ。

またHacobuによると、MOVOの導入企業の広がりとともに物流ビッグデータの蓄積が進んでおり、この個社の枠を越えた物流ビッグデータを分析・活用し、物流業界に還元することでサプライチェーン全体の最適化を図りたいと考えているという。

同社は、物流の最適化には、個社内に閉じた取り組みだけではなくサプライチェーン内のステークホルダー間での調整が必要で、複数のステークホルダーで議論する際にはデータが不可欠と指摘。Hacobuは、担当者間の属人的なつながりだけに頼るのではなく、データを基盤とした議論によって、業界や会社の枠を超えた物流の協調が進むとした。また、ひとつの会社内でも物流部と他部署が建設的な議論をするために、データがあると本質的な課題の抽出と部署間での連携が行われるとしている。

データがあることで、事実を共有しかつ見つ直し、建設的な解決策を考え、新しいロジスティクスの在り方を考えていく、そのようなロジスティクスの世界を「Data-Driven Logistics」と定義し、Hacobuはその実現に邁進するとしている。

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カテゴリー:モビリティ
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