人体とテクノロジーの融合のこれまでとこれから

A man with a computer chip inside his head

【編集部注】執筆者のDaniel Waterhouseは、Balderton Capitalのジェネラル・パートナー。

”人間”と”機械”の距離が縮まりつつある。機械学習によって、仮想現実はより”リアル”に感じるようになり、これまで人間の脳でしか処理できないとされていたことも、AIがどんどん再現できるようになってきている。このような技術の力によって、テクノロジーはこれまでにないほど人間の体に近づいており、だんだんと奇妙な感じさえしてくる。

しかし、これからもっと奇妙なことが起きようとしている。

まずはこんな問いからスタートしてみよう。VRモードのMinecraftで教会の屋上の端っこに立っているのと、ノルウェイの山の絶壁に立っているのではどちらの方が怖いだろうか?私は両方を体験したが、Minecraftをプレイしているときの方が強いめまいを感じたのを覚えている。

私たちの脳は、進化を通して私たちが住む世界を理解し、種の保存を念頭に置いて数々の判断を下せるようになった。この仕組みのおかげで高さを恐れる感覚が養われていき、「高い場所の端には寄るな、落ちて死ぬかもしれないぞ」と感じられるようになったのだ。

実際のところ私たちが見ているものは、目を通して得た情報を脳が処理したものだ。つまり、私たちが見ているものは現実ではなく、私たちが進化の中で有用と考えるようになった現実の一部を脳が読み取ったものなのだ。そのため、私たちがどのように”見るプロセス”を”見ているもの”に変換していくのかが分かれば、VRが作り出す幻想を現実よりもリアルに感じられるようになる。その例が先ほどのMincraftとノルウェイの山の話だ。

VR内で教会の屋根の上に立つことが生死に関わるリスクだと人間が認識しないようになるには、かなりの時間がかかると予想されている。むしろ今後数年の間に、脳が特定のパターンで物事を認識するように仕向けるテクノロジーが発展していくだろう。

同時に、私たちの脳に関する理解も日を追うごとに深まっている。神経の可塑性に関する最近の研究の結果、脳の一部が損傷しても、トレーニングを通じて他の部分がその機能をカバーできることが分かっている。今後さらに脳の詳細が明らかになれば、そのうち人工的な刺激の処理方法をプログラムで調整し、今日のVRよりもリアルな体験ができるようになるかもしれない。

さらに新たな種類のスマートイヤホンや音声ソフトの登場で、聴覚を欺く方法も明らかになってきた。OculusはOculus Rift用のイヤホンを最近発表し、没入感の提供に力を注いでいる一方、以前H__rと名付けられていたアプリは、音声フィルタリングの技術を使ってノイズを心地良い音に変える機能を備えている。

VRが作り出す幻想を現実よりもリアルに感じられるようになるかもしれない。

自分たちのことを”人工嗅覚の専門家集団”と呼ぶThe eNose Companyは、人間の鼻の機能を再現できるテクノロジーの開発に成功した。彼らの技術は、肺のテスト機器警察犬の代わりとしての応用が検討されている。

このようにさまざまなテクノロジーが発展していく様子を見ていると、仮想世界と現実の境界が分からなくなるほどのフルVR装置(ヘッドセット、イヤホン、グローブ、さらには嗅覚や味覚の代わりになるセンサーのセット)がそのうち誕生しても不思議ではない。

それどころか、記憶に関連したシナプスの結合を強化する脳内物質を発生させる方法がみつかれば、現実ではできない体験をVR上でできるようになる可能性もある。トランセンデンスの世界やマイノリティ・リポートのVRポッドも、そう遠い話ではないのかもしれない。

このような技術が発達した結果、テクノロジーが私たちの体と密接に絡み合うようになってきた。しかし、テクノロジーと人体の相互作用は、VRの中だけで力を発揮するわけではない。機械上で脳の作用を再現しようとしているAIの技術がここに混ざりあうことで、テクノロジーと人体の融合はさらに面白くなっていく。

技術者は何十年にも渡り、脳の仕組みを利用してとても複雑な問題を解くことができるアルゴリズムを構築しようと努力してきた。そして、コアアルゴリズムの進化やコードのスマート化、さらにはコンピューターの機能が向上したことで、最近ではこの分野でも大きなブレイクスルーが起きている。

脳全体を再現した汎用AIまでの道のりはまだまだ遠く、実現までにどのくらいの時間がかかるかや、実際に汎用AIを作ることができるかどうかさえも現時点では分かっていない。そもそも、脳を再現した機械を作る前に、私たちは自分たちの脳のことを完全に理解しなければならない。

画像認識や言語学習など、脳のさまざまな機能を研究することで、脳でどのような処理が行われているかや人間の学習プロセスについて解明することができる。脳は新しい概念について学ぶとき、似たような例をたくさん確認必要があるのか、または自力で新たな概念を学ぶことができるのだろうか?言い換えれば、脳のアルゴリズムは教師あり(Supervised)なのか、それとも教師なし(Unsupervised)なのだろうか?

本当の意味で教師なし学習を行えるAIの開発にあたって、今後何年間も関係者が頭を悩ませることになるだろう。そして、関係者の中にはこの新たな分野を受け入れはじめた(=数多くの企業買収を行っている)大手テック企業も含まれている。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

AIの発展および不平等の拡大に関するホワイトハウス・レポート

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ホワイトハウスはAIの今後について記した10月のレポートの続編を公開した。今回のものも、アメリカが人工知能にどのように取り組むべきなのか、そして人々や組織にどのような影響を与えるのかについて分析を行なったものだ。今回とくに力を入れているのは、AIの経済面への影響に関する分析だ。将来を暗いものとして描いてはいないが、取り扱い方を間違えてしまうと、すでに広がっている不平等がさらに拡大していくことになると警告している。

「ここ20年ほどの間で、社会には不平等が広がってしまいました」と、大統領経済諮問委員会(Council of Economic Advisers)のチェアマンであるJason Furmanはレポートの発表説明の場で述べた。「原因のひとつはテクノロジーにあると考えています。テクノロジーの世界で生まれるイノベーションは、より高いスキルをもつ人に役立つものとなる傾向があります。そうして一部の人の利便性にのみ寄与することで、テクノロジーが不平等の拡大を進めてしまったという面もあるのです」。

さらにレポートでは、AIがこのトレンドをますます推し進めるものとなる可能性についても言及している。インターネットないし携帯電話(スマートフォン)の普及に力を注いだように、AIが普及する社会にも、きちんと適応できるようにするための施策が必要であると主張している。

そして、数多くの仕事にもたらされるオートメーションの波が、労働者にとっての不利益に繋がらないために必要な3つの施策について論じている。

AIへの投資。この点については10月のレポートの方に詳しく記されていた。簡単にまとめるなら、アメリカは、発展していくAI分野において他国ないし私企業の後塵を拝するようなことになってはならないということだ。そして問題解決やプランニングを担うことになるAIに多様性をもたせることが大事だとしている。人工知能に偏見などのバイアスを持たせないように注意しなければならないとも言及している。この点につき、オフィシャルなベスト・プラクティスが存在するのか、あるいはガイドラインの策定などを行うつもりなのかを問うてみた。

「データサイエンスおよびコンピューターサイエンス教育の分野に『倫理』を導入すべきと考えています。そうすることで、AIの決定ロジックを考慮する際にも、それが社会にどのように影響するのかを意識するようになるでしょうし、またそうした『倫理』を実装するためのツールなども育ってくると思うのです」とアメリカ合衆国科学技術政策局(Office of Science and Technology Policy)のEd Feltonが答えてくれた。「ただし、現段階で政府が具体的な方策をもって現場に介入していく予定はありません」とのこと。

将来の職に関する教育とトレーニング。レポートには、今後のアメリカ合衆国のことを考えるにあたり、現在の教育システムについて厳しい意見も記されている。

AIドリブンな社会に適応する教育を、子供にはもちろん大人にも提供していく必要がある。この教育を疎かにすれば、100万単位のアメリカ人がグローバルエコノミー社会において、その立場を失うことに繋がるだろう。

実のところ、これまでに成し遂げた(それなりの)成果を認めて、学校運営やカリキュラムについては肯定的な評価も下している。しかし確立した優位性をさらに伸ばしていかなければ、せっかく獲得した立場を失っていくことになるだろうともしている。

失業者に対する復帰支援トレーニングプログラムも重要であるが、しかしアメリカ国内における対応は後手に回っているとのこと。

fig9whr現在の予算規模を6倍にまで拡大すべきだと、レポートは主張している。失業者に再トレーニングの機会を与えて職場復帰させることができれば、生産性の拡大は十分見合う規模になるはずだとのこと。再トレーニングの機会がなければ、失業してしまった人はずっと再雇用の機会を失うことに繋がる。そうして国力を低下させることに繋がっていくのだ。

セイフティーネットの拡充。テクノロジーの進化が、失業者の増大に繋がってしまうという面もある。社会はそうした状況に対応するために、失業対策ならびにヘルスケアの拡充を行うべきだとしている。そうした施策が充実していれば、次の仕事をみつけたり、あるいは新しい仕事のためのトレーニングをする際にも安心していることができる。

グローバル社会にあっても、個々人を守るための政策を機能させ続けることが大切だ。また、失業者に対しては新しい職につくためのトレーニングプログラムを充実させることも大いに重要になってくる。さらに、消えてしまう職についていたエキスパートに対して、新たな職につく場合に給与保証を行うという政策も有効となるだろうとしている。

すなわち、労働というものの意味を改めて見直すことが必要な時代になりつつある。AIの台頭のみならず、不平等の拡大に対しても対処していく必要がある。最低賃金を引き上げ、時間外労働に対する正当な扱いや、労働組合の役割などに対しても見なおしていく必要があるだろう。

具体策については触れられていないが、レポートには以下のような提言も記されていた。

勝者がほとんどすべての果実をとっていく傾向の強い情報技術社会においては、成功をおさめるプレイヤーはごくわずかということにもなる。生産性の向上が給与の増加にも繋がらず、AIによりもたらされる新しい世界の豊かさは、ごく一部の人のものとなる可能性もある。

AIがすべての人のために働くようにしていかなければ、結局、ごく一部のひとのみが恩恵をうけるような社会になってしまう。そのような未来を招かないために、動き出す時期がやってきているようだ。

レポートの全文はこちら(PDF)で読むことができる。

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(翻訳:Maeda, H

アメリカ海軍、港湾・艦船の防御のためにドローン警備艇SWARMをテスト中

2016-12-21-usnavy-swarm

アメリカ海軍は多数のドローン警備艇を協調させて内外の港湾を防御する実験を行っている。使用されるドローンは自動航行機能を備えたリジッド・ハルのゴムボートだ。CARACaSと呼ばれる人工知能システムを通じて操縦される。2014の実験ではドローンは単独で艦船や港湾施設の防御に当たったが、新しい人工知能システムは一群のドローンを統合運用して脅威を無力化する。

システムには自動目標判別機能があり、外洋でも探知した目標が味方か脅威かを評価できる。

ボートの自動航行は車両の場合より問題が少ない。海上には込み入った障害物が少ないからだ。このボートは防御すべき区域に敵が侵入するのを防ぐのに効果的だ。多数のボートが自動操縦で協調動作する。分散して広い区域を監視し、脅威が発見された場合に集合して排除に当たるというような運用が可能だ。もうひとつのメリットとして、ボートを新たに建造する必要がない。利用されたドローンは通常の監視艇で、海軍はこれにAIによる自動航行システムを搭載した。後付は容易にできるようデザインされているので、海軍は最小限の費用で既存の「ダム・ボート」を「スマート・ボート」に再艤装しロボット艦隊に加えることができる。

〔日本版〕ビデオで開発者は海軍のドローンについて「港湾警備以外にも護衛、機雷掃討、補給などさまざまな応用を計画している」と述べている。また港湾警備は「単調な任務であるにもかかわらず突発的に生命の危険が生じる可能性があり、乗員に過酷なものとなりやすい」としてドローン警備艇のメリットを挙げている。イェメンのアデン港に停泊中、ボートによる自爆テロで大損害を受けた駆逐艦コールが資料映像で紹介されている。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

ザッカーバーグ家でホームAIが作動中―声はモーガン・フリーマンだった

FacebookのCEO、マーク・ザッカーバーグが「2016年の決意」として自分でプログラミングしたホームアシスタントAIのJarvisが作動中だ。ザッカーバーグは月曜日にこの開発について詳しく書いた記事を投稿しているが、火曜には作動の様子を収めたビデオを公開した。Jarvisがザッカーバーグ家でマーク、妻のプリシラ、娘のマックスをそれぞれ認識してさまざまな機能を発揮しているようすがよく分かる。

このビデオを見るとJarvisプラットフォームはかなり有能な音声認識と自然言語処理システムを備えた家庭用コマンドセンターのようだ。ザッカーバーグが自分で書いただけあってザッカーバーグ家の状況に合わせて高度なカスタマイズがされている―それとJarvisの声は他ならぬモーガン・フリーマンだ。この大スターを自分専用の声にできたのは、いかにザッカーバーグであるにしても大ヒットだろう。

Fast Companyによれば、ザッカーバーグがホームAIの計画を公表したとき、「誰の声がいいか?」という人気投票をしたところ、モーガン・フリーマンがトップだったのだという。ザッカーバーグは自身が加わって設立したBreakthrough賞の授賞式でフリーマンに会ったときに声の出演を依頼した。出演料が支払われたのか、払われたとすればその額や時期といった詳細は明らかにされていない。

お金といえば、ビデオの中で「ニッケルバックの曲はない」と言っているところをみると、Jarvisは5000万人の人間より賢いに違いない。

〔日本版〕 ビデオでJarvisは訪問者を顔認識してマークの両親と判断している。また娘のマックスが部屋から出ようしていることも認識している。 記事末のNickelbackはカナダの人気ロックバンド。バンド名はカナダの5セント硬貨の通称から付けられたとされる。ジャスティン・ビーバー同様、一部のロックファンからはとかく批判されがち。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

ザッカーバーグが作ったホームAIのJarvisは、あなたの音楽の好みを学習する

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2016年、マーク・ザッカーバーグは野心的な個人的プロジェクトを設定していた。照明の制御、訪問者の監視、家電の操作など、自宅での作業を自動化するための人工アシスタントを構築することだ。ザッカーバーグはFacebook上で、ある意味「想像していたものよりも簡単」だったと述べている – この記事を読んでいる人のそれなりの割合が、そんなことはAmazon Echoのような既存のデバイスでできるのだから驚くほどのことでもないと考えることだろう。

公平を期すために言うならば、ほとんどの(全員?)Echoオーナーは、自分自身のためのAlexaサービスを最初から構築したりはしないが、まさにそれこそがザッカーバーグのやったことだ。彼自身のパーソナルJarvisをPython、PHP、そしてObjective Cを使ってコーディングし、言語処理や音声認識、そして顔認識などを組み込んだ機械学習技術とりこんでいる(Jarvisはコミック「アイアンマン」に登場する人工知能キャラクター)。

FacebookのCEOはまた、Sonos、Spotify、Samsung TV、Crestronのスマートホーム照明システム、Nestのビデオカメラなどの、買ってきた状態では必ずしも相互に通信をすることが想定されていない沢山のコネクトデバイスを取り扱う必要があった。これらのデバイスをすべて接続したあと、ザッカーバーグはあたかも他の人に頼むように話す言葉で機器を制御できるようにするために、自然言語要求を翻訳する手段を構築する必要があった。さらに、これらの要求は文脈で理解されなければならなかった。たとえばザッカーバーグの妻でChan Zuckerberg Initiativeの共同議長であるプリシラ・チャンが「私のオフィスで」何かをするよう頼んだ場合、それは彼女の夫がまったく同じ要求をした場合とは違うアクションを引き起こさなければならない。

ザッカーバーグがJarvisにやってもらうことのできるより面白いことの1つは、まだ市場には存在していない機能だが、実際に音楽の彼の好みを認識し、わずかな入力で再生する適切なトラックを自動的に選択することだ。Jarvisは以前に演奏された音楽をチェックして選択を行う。またザッカーバーグがより具体的な指示をしたい場合は「何か明るい曲を再生」といったような一般的な用語を使用して雰囲気を変えるよう求めることもできる。このシステムはまた、チャンの好みを別途追跡し、彼女のためにも同じことをすることができる。

ザッカーバーグがJarvisとテキストでやりとりするFacebookメッセンジャーボットを構築したことも注目に値する。そして全体的には声を使うよりもテキストを使ったコミュニケーションの方が望ましいと述べている、これは主に家の中にいる他の人の邪魔にならないようにするためだ。

ザッカーバーグはプロジェクトのまとめとして「AIは私たちが想像しているよりもさらに近く、同時にさらに遠いものです」と書いている。こう書いた理由は主に、特定のドメイン機能では大きな進歩を遂げているものの、あるドメインでの学習結果を他のドメインの問題に適用しようとする際にはあまり上手くいかないからである。言い換えれば本当に有能な汎用AIはまだまだ遠い道のりだということだ。

それでもザッカーバーグは、彼が2016年にJarvisの構築に100時間前後を費やして、かなり有用なシステムを生み出したことに触れ、さらに彼の特定のセットアップに縛られないより多くのホームオートメーション機能を実現することができたときには、最終的にはシステムを公開するかもしれないと述べている。彼はまた、これが新しい将来のFacebook製品の基礎を証明する可能性があるとも述べている。とはいえこれはちょっと生意気な態度だろう、なにしろFacebookの技術者たちが少なくともある種のAlexa型の競合相手をいろいろ研究しているのはほぼ確実なのだから。もし彼らがそうしていないとしたら、それは相当に近視眼的だ。

そして、 悲しいことにロバート・ダウニー・Jrへの言及もなかった

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(翻訳:Sako)

人工知能が企業のセールス業務に利用される例が増えている

Asian woman over microchip circuits

2016年は人工知能(AI)が非常に注目された年だった。人工知能の開発は何十年も前からはじまっていたが、パワフルなコンピューターを安価で利用できるようになったことと、アクセスできるデータの量が飛躍的に伸びたことで、今年になってやっと人工知能の時代が訪れたようだ。

AIによるビジネスの効率化が最初に始まったのは企業のセールス業務だった。毎日のように繰り返される営業ワークフローをAIによって効率化させようという試みだ。考えてみれば、企業の収入を直接的に左右するこの分野でAIの応用がはじまったのは、当然の成り行きだったと言えるだろう。AIがビジネスに与える影響を調査する、Constellation ResearchアナリストのAlan Lepofskyは、ベンダーたちがこの動向に注目しているのは確かだと話す。

彼によれば、人間は情報オーバーロードに苦しめられているという。私たちがより多くのデータを集めるにつれて、そのデータがもつ意味を理解するために私たちはコンピューターの処理能力に頼らざるを得なくなる。「AIが情報をフィルタリングしたり、タスクを自動化することで、その負担を軽減してくれることが期待されます」とLepofskyは話す。

AIはスタートアップ・コミュニティにも多大な影響を与えている。TechCrunchでも今週、AIによる営業アシスタントを開発するConversicaが3400万ドルを調達したことを報じたばかりだ。このAIアシスタントには自然言語処理(NLP)、推論エンジン、自然言語生成などの技術が使われている ― なかなか洗練されたテクノロジーだ。このAIが見込み客との初期コンタクトを自動化し、その後に人間の営業員に引き継ぐという仕組みだ。

一方、CRM業界のベテランが創業したTactは、営業員のスケジューリング管理などにAIを活用するスタートアップだ。同社もまた、今月初めに1500万ドルを調達したことを発表している。営業員が「CRMの奴隷」になってしまうことを防ぎ、AIを活用して彼らにロジカルで効率的な営業法を提供するというアイデアだ。

これらのスタートアップは、営業という分野のなかにある様々な側面をAIによって効率化させようとしている一方で、SalesforceOracleBaseなどといったCRM業界の巨人たちは単に顧客情報を記録するためのツールではなく、それに内蔵された「知性」によって営業活動を強化するというCRMツールを開発している。

従来型のCRMは顧客と営業員とのやり取りを記録するためのツールだったが、AIによってそれ以上のことが可能になったと話すのは、Bluewolfでカスタマー・エクスペリエンス部門のSVPを務めるVenessa Thompsonだ(BluewolfはSalesforceと提携するコンサルティング企業である)。

「AIはカスタマー・インタラクションがもつ力を引き出し、新たなデータが追加されるたびにツールはより賢くなります」と彼女は語る。

プラットフォームがもつ力を有効活用することで、営業員は顧客と接する時間を増やし、契約を獲得することだけに集中することができる。「営業員がどこに時間を費やすべきか、そして次に何をすべきかを予測するためには ― 彼らに適切なデータを、適切なときに与える必要があります。営業員はあらゆるソースからデータを取得する必要があり、彼らがそのデータを利用して意思決定をするためにはコグニティブなプラットフォームが必要なのです」と彼女は説明する。

AIをカスタマーサービスの分野に適用する企業も増えている。ボットを利用した初期コンタクトの自動化などがその例である。シンプルなタスクはボットにまかせ、より複雑なタスクは人間のオペレーターが対応するというアイデアだ。今週、SalesforceはLiveMessageをリリースした。これは、同社のService Cloudプラットフォームにメッセージング・アプリを組み込み、人間のオペレーターとボットの力を組み合わせるためのツールだ。

AIを営業やカスタマーサービス分野に適用する動きは、AIによるビジネス効率化の初期事例にすぎないだろう。コンピューターによって従業員の能力を拡張することが主流になりつつある今、今後数年間のうちにAIがさまざまなビジネス分野に適用される事例が増えていくことだろう。

[原文]

(翻訳: 木村 拓哉 /Website /Facebook /Twitter

人工知能が企業のセールス業務に利用される例が増えている

Asian woman over microchip circuits

2016年は人工知能(AI)が非常に注目された年だった。人工知能の開発は何十年も前からはじまっていたが、パワフルなコンピューターを安価で利用できるようになったことと、アクセスできるデータの量が飛躍的に伸びたことで、今年になってやっと人工知能の時代が訪れたようだ。

AIによるビジネスの効率化が最初に始まったのは企業のセールス業務だった。毎日のように繰り返される営業ワークフローをAIによって効率化させようという試みだ。考えてみれば、企業の収入を直接的に左右するこの分野でAIの応用がはじまったのは、当然の成り行きだったと言えるだろう。AIがビジネスに与える影響を調査する、Constellation ResearchアナリストのAlan Lepofskyは、ベンダーたちがこの動向に注目しているのは確かだと話す。

彼によれば、人間は情報オーバーロードに苦しめられているという。私たちがより多くのデータを集めるにつれて、そのデータがもつ意味を理解するために私たちはコンピューターの処理能力に頼らざるを得なくなる。「AIが情報をフィルタリングしたり、タスクを自動化することで、その負担を軽減してくれることが期待されます」とLepofskyは話す。

AIはスタートアップ・コミュニティにも多大な影響を与えている。TechCrunchでも今週、AIによる営業アシスタントを開発するConversicaが3400万ドルを調達したことを報じたばかりだ。このAIアシスタントには自然言語処理(NLP)、推論エンジン、自然言語生成などの技術が使われている ― なかなか洗練されたテクノロジーだ。このAIが見込み客との初期コンタクトを自動化し、その後に人間の営業員に引き継ぐという仕組みだ。

一方、CRM業界のベテランが創業したTactは、営業員のスケジューリング管理などにAIを活用するスタートアップだ。同社もまた、今月初めに1500万ドルを調達したことを発表している。営業員が「CRMの奴隷」になってしまうことを防ぎ、AIを活用して彼らにロジカルで効率的な営業法を提供するというアイデアだ。

これらのスタートアップは、営業という分野のなかにある様々な側面をAIによって効率化させようとしている一方で、SalesforceOracleBaseなどといったCRM業界の巨人たちは単に顧客情報を記録するためのツールではなく、それに内蔵された「知性」によって営業活動を強化するというCRMツールを開発している。

従来型のCRMは顧客と営業員とのやり取りを記録するためのツールだったが、AIによってそれ以上のことが可能になったと話すのは、Bluewolfでカスタマー・エクスペリエンス部門のSVPを務めるVenessa Thompsonだ(BluewolfはSalesforceと提携するコンサルティング企業である)。

「AIはカスタマー・インタラクションがもつ力を引き出し、新たなデータが追加されるたびにツールはより賢くなります」と彼女は語る。

プラットフォームがもつ力を有効活用することで、営業員は顧客と接する時間を増やし、契約を獲得することだけに集中することができる。「営業員がどこに時間を費やすべきか、そして次に何をすべきかを予測するためには ― 彼らに適切なデータを、適切なときに与える必要があります。営業員はあらゆるソースからデータを取得する必要があり、彼らがそのデータを利用して意思決定をするためにはコグニティブなプラットフォームが必要なのです」と彼女は説明する。

AIをカスタマーサービスの分野に適用する企業も増えている。ボットを利用した初期コンタクトの自動化などがその例である。シンプルなタスクはボットにまかせ、より複雑なタスクは人間のオペレーターが対応するというアイデアだ。今週、SalesforceはLiveMessageをリリースした。これは、同社のService Cloudプラットフォームにメッセージング・アプリを組み込み、人間のオペレーターとボットの力を組み合わせるためのツールだ。

AIを営業やカスタマーサービス分野に適用する動きは、AIによるビジネス効率化の初期事例にすぎないだろう。コンピューターによって従業員の能力を拡張することが主流になりつつある今、今後数年間のうちにAIがさまざまなビジネス分野に適用される事例が増えていくことだろう。

[原文]

(翻訳: 木村 拓哉 /Website /Facebook /Twitter

営業アシスタントAIのConversicaがシリーズBで3400万ドルを調達

Business woman sending email marketing

見込み客から何らかのコンタクトがあれば、営業員の出番だ。通常、自己紹介もかねた挨拶メールを送ることから始めることだろう。人工知能システムのConversicaは、このようなコンタクト初期のメールを自動化し、その後に人間の営業員に引き継ぐというシステムを開発している。現地時間14日、同社は3400万ドルの資金調達を完了したと発表した。

本調達ラウンドのリード投資家は、Providence Strategic Growthだ。その他にも、Tobo Capital、Wellington Financial LP、Recruit Strategic Partners、そしてシリーズAにも参加したKennet Partnersなどが参加している。これにより、本調達ラウンドをあわせた合計調達金額は5600万ドルとなる。

Conversica CEOのAlex Terryは、「Conversicaは会話型AIプラットフォームです」と話す。同社の主力プロダクトは、AIを利用した営業アシスタントだ。このアシスタントは人間ではないものの、自分の名前はもちろん、専用のメールアドレスを持ち、まるで人間のように企業の代表として顧客と接することができる。

Conversicaの役割は、企業のホワイトペーパーをダウンロードしたり、企業が主催したコンファレンスに参加したり、Webサイトから問い合わせがあった顧客とのコミュニケーションだ。コンタクト済みの顧客情報は営業部門に手渡され、営業プロセスが開始する。リストに顧客の名前が表示され、営業員がそれぞれの顧客の担当につくことになる。通常であれば、AIによる初期コンタクトはその後、各企業ごとに定められたワークフローへと移行する。

Conversicaの目標は、このような営業タスクを人間にとって自然な形で自動化することである。「連絡している相手がAIアシスタントであるとは気づかないでしょう。自然なコミュニケーションなのです」とTerryは話す。ConversicaのAIアシスタントは、顧客からの質問に答えたり、質問に答えられない場合には人間の営業員による電話へ顧客を引き継ぐことなどができる。

Conversicaには様々なAI関連技術が利用されている。その1つが自然言語処理(NLP)で、この技術によってAIアシスタントは顧客の言葉を「読む」ことができる。見込み客が発した言葉の背後にある意味を理解するのだ。

2つ目は推論エンジンだ。これにより、アシスタントは顧客の言葉に含まれるキーワードを探すだけでなく、そこから顧客が求めていることを正確に理解することが可能になる。言葉の内容を理解し、その内容の裏側にある感情を理解するという考え方だ。例えば、AIアシスタントが「すぐには売上につながらない」と判断した場合には、後々アプローチできるようにその顧客を「後から連絡するリスト」に加えることもできる。

最後に、このAIアシスタントは顧客からのメールの内容に対応した自然な返答を生み出すことができる。「このシステムには様々なテクノロジーが利用されています。よくある”自動応答システム”よりも、はるかに優れたカスタマーエクスペリエンスを生み出すのです」とTerryは語る。

これまでにConversicaは1000社以上のユーザーを獲得しており、同社は今後、このAI技術をカスタマーサポートの分野にも適用することを目指している。このプロダクトは現在開発中だ。

Terryによれば、Conversicaの従業員は現在140名で、年間の経常収益は1800万ドルにものぼるという。

同社は今回調達した資金を利用して、営業部門とマーケティング部門の人員を強化していく。それに加えて、新たなソフトウェア・パッケージとの統合や、パートナーシップの拡大も目指す。そして、おそらく2018年頃にはグローバル展開を開始する予定だ。

[原文]

(翻訳: 木村 拓哉 /Website /Facebook /Twitter

人工知能に潜む5つのバイアス

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【編集部注】著者のKristian HammondはNarrative ScienceでR&Dに従事する主任科学者兼共同創業者である。Krisはまた、ノースウェスタン大学のコンピュータサイエンスの教授でもある。

私たちは何かと、マシン、特にスマートマシンを、冷静に計算しバイアス(偏り、偏見)がないものと考える傾向がある。私たちは、自動運転車は、運転手と無作為な歩行者の間の生死の決定に対して、好みを持っていないと考えている。また私たちは、信用調査を実施するスマートシステムは、収入やFICOスコアなどの真にインパクトのある指標以外は無視しているものと信頼している。そして私たちは、学習システムは、バイアスのないアルゴリズムによって動作しているのだから、常に真理に基づいた地点に達するものだと考えている。

機械の厳格な視点の外側は感情的であるはずはないと考える人もいる。また機械は人間のバイアスから自由であるはずだと思う人もいる。そしてその中間として、機械は客観的だという見方がある。

もちろん、そんなことは全くない。現実には、純粋にバイアスのない知的システムは非常に少ないだけでなく、バイアスにも複数の源泉がある。これらのバイアス源には、システムを訓練するために使用するデータバイアス、「現場」でのインタラクションを介したバイアス、偏向出現バイアス、類似性バイアス、そして相反する目標に対するバイアスが挙げられる。これらの源泉のほとんどは意識されることがない。しかし、インテリジェントシステムを構築して展開する際には、意識しながら設計し、可能なら潜在的な問題を避けるためにも、そうしたバイアス源を理解することが不可欠だ。

データ駆動型バイアス

自ら学習するシステムの場合、出力は受け取ったデータによって決まる。これは別に新しい洞察ではなく、文字通り何100万ものデータによって駆動されるシステムを私たちが見る際に、忘れられがちなことである。圧倒的な量のデータは、任意の人間のバイアスを圧倒するだろうというのがこれまでの考えだった。しかしトレーニングセット自身が歪んでいたときには、結果も同じように歪んでしまうのだ。

最近では、この種のバイアスは、ディープラーニング通した画像認識システムに見ることができる。ニコンのアジア人の顔に対する混乱や、HPの顔認識ソフトウェアにおける肌色認識の問題といったものは、どちらも歪んだトレーニングセットからの学習の産物であるように思える。どちらも修正可能であり、かつ意図的ではないが、これらはデータのバイアスに注意を払わない場合に発生する可能性のある問題を示している。

顔認識以外にも、現実世界に影響を及ぼす厄介な例が他にもある。仮釈放者、犯罪パターン、または従業員候補者の再犯率の予測のためのルールセットを構築するために使用される学習システムは、潜在的に負の影響を与える。歪んだデータを用いてトレーニングを受けた場合、あるいはデータはバランスが取れていても意思決定にバイアスがかかっていた場合には、バイアスも永続化する。

インタラクションを介したバイアス

サンプルセットを一括して調べて学習するシステムもある一方で、インタラクションを通じて学習する種類のシステムも存在する。この場合には、システムとインタラクションを行うユーザーのバイアスによって、システムのバイアスが引き起こされる。このバイアスの顕著な例は、ユーザーとのやりとりから学ぶように設計されたTwitterベースのチャットボットであるMicrosoftのTayだ。残念なことにTayは、Tayに人種差別主義者と女性差別を教え込んだユーザコミュニティの影響を受けた。要約して言えば、コミュニティはTayに対して攻撃的な発言を繰り返しツイートし、その結果、Tayはそれらの攻撃的発言を反応のための材料として使うようになったのだ。

Tayがひとかどの人種差別主義者になって、Microsoftがシャットダウンするまでには、わずか24時間しかかからなかった。Tayの人種差別的暴言はTwitterの中に限られていたが、それは実世界への影響の可能性を示唆しているものだ。人間のパートナーと共同で意思決定を行い、そして学ぶインテリジェントなシステムを構築する際には、更に問題のある状況で、同様に悪いトレーニング問題が発生する可能性がある。

ではその代わりに、インテリジェントなシステムに、時間をかけて指導する人たちとパートナーシップを結ばせればどうだろうか?融資の可否を決定する、あるいは仮釈放の可否を決定するマシンに対する、私たちの不信を考えて欲しい。Tayが教えてくれたことは、そのようなシステムが、それらを訓練する人々の意見を反映して、良くも悪くも、その環境と人びとの偏見を学ぶことである。

偏向出現バイアス

ときには、パーソナライゼーションを目的としたシステムによる意思決定が、私たちの周りにバイアスの「バブル」を作り出すことがある。このバイアスが働いている様子を見るためには、現在のFacebook以上に相応しい場所はない。Facebookのトップページで、ユーザーは友人たちの投稿を見て、彼らと情報を共有することができる。

残念ながら、データフィードの分析を使用して他のコンテンツを提示するアルゴリズムは、ユーザーが既に見た好みのセットに一致するコンテンツを提供する。この効果は、ユーザーがコンテンツを開いたり、 「いいね!」したり、共有したりするにつれて増幅される。その結果得られるのは、ユーザが既に「信じていること」に向かって歪められた情報の流れである。

それは確かにパーソナライズされ、しばしば安心もさせるものだが、それはもはや私たちがニュースと考えるようなものではない。これは情報のバブルであり、「確証バイアス」(仮説や信念を検証する際にそれを補強する情報ばかりを集め、それに反する情報を無視または集めようとしない傾向)のアルゴリズムバージョンなのだ。システムが自動的にそれを実行してくれるので、ユーザは自分の信念と矛盾する情報から自分で身を守る必要はない。

理想的な世界では、インテリジェントなシステムとそのアルゴリズムは客観的なものだろう

ニュースの世界に対しては、こうした情報のバイアスの影響は厄介だ。しかし、企業における意思決定を支援する方法としてソーシャルメディアモデルを考えた場合、情報バブルの出現をサポートするシステムは、私たちの思考を歪める可能性がある。自分のように考える人々からの情報しか得ていないナレッジワーカーは、対照的な視点を決して見ることはなく、選択肢は無視して拒否する傾向がある。

類似性バイアス

時にバイアスは、単に設計されたように動作するシステムの生産物そのものである。例えばGoogleニュースは、ユーザーの問い合わせに合致するストーリーを、関連するストーリーとセットで提供するように設計されている。これはまさに設計された通りの結果で、とても上手く働いている。もちろん、得られた結果は、お互いの確認と裏付けをする傾向のある、類似したストーリーのセットになる。つまり、Facebookで見たパーソナライズバブルと似ている、情報のバブルを得ることになる。

ここには確かにこのモデルによって強調される、ニュースの役割とその拡散に関連する問題が存在している — 最も明白な問題は情報へのバランスのとれたアプローチだ。「編集制御」の不在は、幅広い状況を調べることになる。類似性は、情報の世界では強力なメトリクスだが、それは決して唯一のものではない。異なる視点は、意思決定のための強力なサポートを提供する。問い合わせや既存の文書に「類似する」結果しか提供しない情報システムは、独自のバブルを生成する。

例えイノベーションと創造の視点に対する、縮小、反対、矛盾であっても、類似性バイアスは、特に企業では受け入れられる傾向にあるものの一つだ。

相反する目標バイアス

時には、特定のビジネス目的のために設計されたシステムが、全く予期されなかったバイアスを持つことがある。

たとえば、求職者に対して仕事の説明を提供するように設計されたシステムを想像してみて欲しい。ユーザーが仕事の説明をクリックすると、システムによって収益が発生する。当然、アルゴリズムの目標は、最高のクリック数を得るジョブ記述を提供することになる。

結局のところ、人びとは自分のセルフイメージに合った仕事をクリックする傾向があり、そのイメージは単に選択肢を示すだけでステレオタイプの方向に強化することができる。例えば、「看護」と「医療技術者」というラベルが付けられた仕事を提示された女性は、最初の方に向かう傾向がある。仕事が彼らのために最適という理由ではなく、ステレオタイプがイメージされて、自分自身をそのイメージに重ねるからである。

ステレオタイプの脅威が行動に及ぼす影響は、仕事に結びついたステレオタイプ(例えば、性別、人種、民族)に関する個人の知識に合致する仕事の提示が、より多くのクリックに結びつくことである。その結果、クリックスルーの行動に基づく学習コンポーネントを持つサイトは、ステレオタイプをより強化する機会を提示する方向に変化する傾向がある。

マシンのバイアスは人間のバイアスだ

理想的な世界では、インテリジェントなシステムとそのアルゴリズムは客観的なものだろう。残念なことに、これらのシステムは私たちによって構築され、その結果、私たちのバイアスを反映してしまう。バイアス自体と問題の源泉を理解することで、わたしたちはシステムを積極的に設計してバイアスを回避することができる。

おそらく、完全に客観的なシステムやツールを作成することはできないだろう、しかしそれらは、少なくとも私たち自身よりはバイアスが少なくなるだろう。そうなれば、おそらく選挙が私たちに不意打ちを食らわすこともないだろうし、通貨はクラッシュしないだろうし、パーソナライズされたニュースのバブルの外の人たちと、コミュニケーションを行うことができるだろう。

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(翻訳:Sako)

BenevolentBioの人工知能はALSのもっと良い治療法を見つけるかもしれない、新薬開発よりもデータの発掘で

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あの、バケツ一杯の氷水を頭から浴びるキャンペーンで大きく知名度を上げた麻痺性の神経症状、 筋萎縮性側索硬化症(amyotrophic lateral sclerosis, ALS)の治療に有効な薬が、すでに存在しているとしたら、どうだろう?

それが、BenevolentBioのCEO Jackie Hunterが直面している疑問だ。Hunterは人工知能企業BenevolentAIの生物医学部門を任され、医学研究の膨大なデータベースに機械学習を適用して、データを高速にスキャンし組織化しようとしている。過去の科学研究を掘り返して新たな発見にたどり着くことなど、ありえないように思えるが、しかし生命科学の分野では新しい研究が30秒に一本の割合で公開されており、そのあまりにもの多さのゆえに、価値ある研究が見過ごされることも少なくない。

Hunterは今日(米国時間12/6)の本誌TechCrunch主催Disrupt Londonのステージで、BenevolentBioのAIがすでに成功している、と語った。BenevolentBioのAIは、ALS治療に関する未知の情報があるかもしれない研究を探しだす。“最終的に5種類の化合物をテスト対象として選定した”、とHunterは説明した。BenevolentBioはその5種類の化合物を、ALSの患者の細胞からクローンした細胞に対してテストした。

“ある化合物は、だめだった。二つは効果があり、それらはALS治療の基準としては最高の水準だった。そして他の二つはさらに良好で、これまでの研究の中では最良だった。5つの化合物のうち4つは、これまでの研究者たちがまったく見ようとしなかった化合物だった”、とHunterは語る。

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BenevolentBioがテストした薬はすでに開発が始まっているので、実際に患者に対して使えるようになるのは一般の新薬より相当早いと期待される。

“私も前は製薬業界にいたが、そのR&Dのやり方は数十年前からまったく変わっていない。ひとつの新薬の開発に、20億ドルの費用を要している”、とHunterは述べる。薬の開発者たちがAIを利用すると、既存の薬の別の用途を見つけることができるので、新薬に膨大な投資をするよりも効率的である。またAIは、研究者たちにより早く、もっとも有望な発見の方向性を示すことができる。

しかしながらAIは、それ自身で新しい科学的突破口に到達することはできない。Hunterは、そう主張する。データをチェックするためには依然として、経験豊富な人間科学者が必要である。“しかしAIは科学者たちの〔発想の方向性の〕健康診断ができる。AIは科学者を補助しその能力を拡張するが、科学者をリプレースすることはない”、と彼女は語る。

BenevolentBioはそのAIをさらに拡張して、親会社を介して他の分野にも応用したい、と期待している。Hunterによると同社の技術は、コンピューティングのパワーとデータ分析と、インサイトと、そして需要の理想的な組み合わせであり、“イノベーションのパーフェクトな波を作り出して、本当にこの業界を変えてしまう、と私は思っている”。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

AragoのAIは囲碁よりも複雑なシヴィライゼーション類似のゲームで人間のプレイヤーを上回り始めた

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AragoのフラッグシッププロダクトHIRO AIは、Freeciv(長年人気を誇っているシド・マイヤー監修のシヴィライゼーションシリーズにインスパイアされた無料の文明構築シミュレーションゲーム)をプレイすることができる – そしてそれはますます巧みになってきている。Freecivは膨大な数の戦略が成功へと導く、複雑で広がりのあるゲームで、とくに予測できない人間相手だとその特徴が際立つ。しかし現在HIROは対戦する人間の8割を圧倒することができるようになったことがTechCrunch Disrupt London 2016の壇上でAragoから発表された。

ビデオゲーム勝つことは、どれほど複雑なのだろうか?まあ、それはあなたが選んだオプションや、Freecivのゲームで普通に起こる多くのターンの間に劇的に変化する可能性のある変数にも依存している。個々のゲームの可能な順列は10の15000乗にも達し、これが意味することは、個別の調整やターンの進め方を本当に「学習」するには、極めて可塑性の高いAIを必要とするということだ。

ゲームは、AIの能力をテストし証明するための共通のプラットフォームであることが明らかになっている;GoogleのAlphaGoは、その成功によって多くの注目を集めている例だ。Aragoは、Freecivをプレイする際に可能な打ち手の数が、実際に囲碁よりも指数関数的に大きかったことを指摘している。最高の人間相手に対戦を開始する前でも、まだHIROは小さいデータプールから少ないトレーニングを受けているだけだった。

ハンス・クリスチャン・ブーイング・アラゴ

HIROは既に、ゲームに同梱されているFreeciv内蔵の 「AI」相手には負ける事はなくなっていた(これは言いすぎかもしれない、内蔵AIに関しては追加情報を持っていないので)が、人間のプレイヤーを打ち負かすことができたのは初めてのことだ。まだ人間の対戦相手全員を負かすことはできないが、それでもプラットフォームの進歩を示す顕著な指標だ。

プロのようにゲームを行うことは素晴らしいことだが、それがHIROの唯一の目的ではない。このAragoのAIサービスは、まず第1にビジネス全体のIT自動化を改善しようとする企業に提供され、HIROは企業の人間のITエキスパートの能力拡張のために用いられ、時間の経過とともに、人間もAI自身も良くなっていく。

Aragoによれば、HIROは他のAIエージェントとは異なるやりかたでスマートになっていく。創業者兼CEOのHans-Christian Boosがステージ上で語ったことによれば、同社はHIROを「トレーナー」を使って教えているという。トレーナーは実際の言葉を使ってHIROに人間の手本を伝える、これが意味していることは彼らの機械学習は機械推論コンポーネントも含んでいるということだ。それによって機械はFreecivの例題の中で「タイル」とか「都市」といった概念を学んでいくことができる。これらの概念を想起して再結合することで、科学的(ゲームプレイ)能力とプロフェッショナル(エンタープライズIT)能力の両方に適用されるパフォーマンスの最適化に最終的につながっていく。

Aragoの目標は、具体的で狭いAIを作成することではなく、幅広いタスクを学び、実行できるより一般的なツールを作成することだ。シヴィライゼーション(そしてFreeciv)は、その目標をさらに進める上で役立ち、Boosは無償、戦略、そして莫大なコミュニティフィードバックという重要な要素が、前進の要素としてのFreecivの利用に役立ったということも指摘した。

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(翻訳:Sako)

Uberが人工知能のスタートアップGeometric Intelligenceを買収し、AI Labを設立

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タクシー配車サービスは競争力を保つためにも、機械による知性を必要としている。Uberが人工知能分野のスタートアップを戦略的に買収したことは意外なことではないだろう。Uberは、AIに知見のある学術研究者が共同創業したスタートアップGeometric Intelligenceを買収した。Geometric Intelligenceは、Uberがサンフランシスコ本社に新設したAI研究所の中核チームになる。

Uberがピッツバーグに置く研究チームでも、すでに機械学習の研究に取り組んでいる。ただ、ピッツバーグのチームが注力するのは自動運転に関連した問題だ。今回の新しいチームは、より広範に適用できるAIについて研究する。例えばルート検索など、AIを適用可能な広い分野に影響する基礎的な研究だ。UberはGoogleやApple、Microsoftといった1つの領域以外にも関心を持つ大手テック企業と肩を並べることを視野に入れているのだろう。

Geometric Intelligenceの創業チームにはニューヨーク大学の認知科学の研究者Gary Marcus、ケンブリッジ大学で機械学習の教授を務めるZoubin Ghahramani、セントラルフロリダ大学のコンピューターサイエンスの教授Kenneth Stanley、ニューヨーク大学の神経言語学の博士Douglas Bemisらを含む。Geometric Intelligenceの社員は15名で、データサイエンスや人工知能の領域で高名な学者が揃っている。契約では、社員はそれぞれが所属する学術機関とのキャリア面でのつながりも保持することができる。

GIが主に研究しているのは、通常のAIで必要となるデータより少ない量で物や景色の認識ができるAIシステムやエージェントを作成する方法だ。これまで大量のデータセットを解析する処理能力を持たせることでAIシステムを進化させてきたが、Uberの新チームは別の角度から問題をみている。限定的なデータ入力でシステムを賢くする方法だ。これはUberにとって解析するのに十分なデータセットを持っていない分野のプロダクトでも、その効果を素早く高める助けになるだろう。

UberのチーフプロダクトオフィサーJeff Holdenはブロク投稿に、会社のビジネスのどの分野を見ても「現実世界との交渉」という共通した課題があり、それは「高次の知性の課題」であると記している。基礎的な研究でAIの能力を高めることは、どの分野の問題を解決するために最も効果的な方法だろう。

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(翻訳:Nozomi Okuma /Website

TC Disrupt London―DeepMindのMustafa Suleyman、汎用人工知能は「遠い先の話」

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Googleが 2014年に買収したApplied AIの共同ファウンダーであり、現在DeepMindの責任者を務めるMustafa Suleymanは今日(米国時間12/5)、ロンドンで開催中のTechCrunchカンファレンス、Disrupt Londonに登壇し、スペシャルプロジェクト編集長のJordan Crookのインタビューを受けた。Applied AIという会社、DeepMindのGoogle内での役割、AIの未来などがテーマだった。

SuleymanによればDeepMindの目標は「知性を解明し世界をもっと良い場所にする」ことだという。われわれ人間の知性とまったく同様に作動するシステムを創ることがDeepMindの目標だという。「われわれは複雑な社会的課題の多くはますます解決が困難になるだろうという予測の下に会社を創立した」。この複雑な課題とはたとえば、気候変動や食料問題だという。

しかしSuleymanは汎用学習システムの実現は「数十年も先」だと考えている。「科学者が何かの実現が20年先だとか、もっと先だとか言うとき、実はあまりに遠い先なので時期を正確に予測することはできないという意味だ。当面われわれは個別の問題の解決に集中する」とSuleymanは述べた。

これに関連してSuleymanはまた「映画で見るような人間そっくりのAIはわれわれが研究しており、おそらく数十年後に実現するであろう汎用AIとはほとんど類似点がないだろうという。

またJordan CrookはSuleymanに機械学習に関する重要な点について訊ねた。「機械学習アルゴリズムはわれわれ人間の知性の欠陥もそのまま受け継いでしまうのだろうか?」とCrookは尋ねた。Suleymanは「この点についての私は、われわれの判断は偏見も含めてコンピューター・システムに組み込まれてしまうよう運命づけられていると考えている」と答えた。「デザイナーとしてまたエンジニアとして、こうした問題を意識的に考える努力をしないなら、われわれはそれと気づかぬまま偏見を含めたシステムを構築してしまうだろう」という。

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DeepMindとGoogleの関係についてSuleymanはあまり具体的なことを明かすのを好まないようだった。「われわれが人工知能のスタートアップとして成功を収めた理由の一つはロンドンに本拠を置いており、シリコンバレーとその流儀からかなり離れていたこともある」と述べたが、つまり組織上親会社になる組織に対して細かいことを話したくないという意味に受け取れた。とはいえ、Suleymanは「Googleのおかげで買収された後は各種のコンピューター資源を潤沢に使えるようになったという。また「〔Googleによる買収後も〕独立の組織として運営することができ、従来通り研究が続けらたのははわれわれにとって非常に大きな意味があった」という。

もうひとつの話題はDeepMindのヘルス関連事業についてだった。DeepMindはイギリスの 国民保険サービス(NHS)と協力して急性腎臓障害の早期発見に関する研究を行っている。一部ではNHSとDeepMindの協力範囲は公表されている部分よりずっと広いはずだという批判も聞かれている。またMoorfields眼科病院と協力して病院における眼底検査のアルゴリズムを改良して高速化と診断精度の改良を図っている。NHSのプロジェクトでは、診断に関しては主としてNHSが開発したアルゴリズムが用いられ、DeepMindは主としてフロントエンド・アプリの開発を担当している。Suleymanはこの点について「NHSとの協力プロジェクトは歴史が新しい。12ヶ月前に始まったばかりだ」と説明した。

DeepMindとGoogleの関係は個人情報の取扱に関してユーザーからの疑念を招くおそれがあるのではないかとCrookは質問した。Suleymanは「われわれのシステムはデータのコントロール権限について明確な基準を定めており、このプロジェクトの場合、データの所有権は完全に病院側にある」と述べた。またDeepMindは可能な限りの透明性を目標としており、第三者の監査を受けていることを強調した。DeepMindはまた「透明性確保のための汎用アーキテクチャー」を開発中で、これによればデータがアクセスされた場合、アクセス元など詳細なログが記録されるようになるという。

今日、こうした議論に加えてDeepMindはステージでDeepMind Labを発表した。 これはゲーム的な3Dプラットフォームで、エージェントによるAI研究に役立てられる。DeepMindでは社内ですでにこのシステムを利用していたが、今回オープンソースで公開された。すべてのAI研究者、開発者がこのプラットフォームを利用することができる。ソースコードとゲームのプレイに必要な多数の付属マップは数日中にGitHubにアップロードされる。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

感情知性を持つコンピューターは、ひょっとすると既にあなたよりも高いEQを持っているかもしれない

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【編集部注】著者のAndrew Thomsonはロンドンを拠点とする技術スカウティングスタートアップVentureRadarの、創業者兼最高経営責任者(CEO)である。同社はビッグデータを利用し企業と顧客を結びつけている。

映画 I, Robotから、 Ex Machina、そしてMorganに至るまで、人間の感情を理解し、計算し、反応できるロボットを生み出すというアイデアは、何十年にも渡って映画の中で検討されてきた。しかし、感情的に知的なコンピューティングシステムを作成するという課題は、すぐには解決されないだろうというのが、よくある誤解である。現実には、コンピュータはすでに、人間の感情知性(EQ)を拡張する、あるいはそれを置き換えることができることを実証している。

おそらく驚くべきことに、他者を読み取る力にいつでも優れているわけではなく、感情的なサインを見落としがちで、嘘によって騙されてしまう人間とは違い、コンピューティングシステムは感情が欠けているからこそ、それらは感情知性という面で優れた立場に立つことができるのだ。

Tomas Chamorro-Premuzicによれば 、「ロボットが感情的にインテリジェントな方法で行動するためには、感じることができるようにする必要はありません。実際には、人びとの想像とはうらはらに、たとえ人間の場合でも高いEQは、高度ではない、より低いレベルの情動と結びついているのです。(高いEQは)自分の衝動を制御したり、合理的に行動し感情的な干渉を最小限にするために、強い感情を抑制する程度なのです」ということになる。

感情コンピューティング(affective computing)の分野では 、感情知性の中のもう一つの重要な要素である、顔の特徴、身体の姿勢、身振り、言葉や身体の状態を観察し解釈する、センサーや他の装置も非常によくなってきている。さまざまな業界の革新的な企業は、現在、人間の感情知性を強化し、さらに改善することができるコンピューティングシステムを使用している。

マネジメント

ウォール街の高プレッシャの環境下で、株式トレーダーは彼らの雇用者の数百万ドルを超える資金を扱い、一瞬の判断が、彼らのキャリアを作るか、あるいは破壊してしまう。

従業員の感情的な状態を使って、費用のかかる間違いをする危険性が高まっていたのか、あるいは単に1度きりの間違いを犯しただけなのかを判断することができる。歴史的に、いくつかの産業における経営文化は、従業員の感情的な健康を考慮するようには必ずしも最適化されていない。
しかし、JP モルガン・チェースやバンク・オブ・アメリカのような大手銀行は、技術企業と協力して、労働者の感情をモニタし、パフォーマンスとコンプライアンスを向上させるためのシステムを設置している。

ブルームバーグによれば、多くの銀行がHumanyzeと提携している、これはMITの卒業生によって設立されたスタートアップで、会話や、活動、そしてストレスパターンなどを送信するセンサーを組み込んだバッジを製造している。まるでオーウェルの1984のシーンのように聞こえるかもしれないが、バッジには、雇用側が行動データを分析して、チームの生産性を向上させるのに役立つマイクと近接センサーも含まれている。これらのデバイスを使用することで、マネージャは「深みにハマった」従業員を支援して、適切な行動をとることができ、そして、チームのトレーニングで使用できるポジティブな行動を取り上げることもできる。

おもてなし運転

もしこれまでに、タクシーの後部客席に座って、ドライバーのきわどい運転に手に汗握った経験があるならば、ルールに従って安全に運転するようにプログラムされた「自動運転」車の可能性については、とても期待していることだろう。自動運転車は有人運転を置き換え始めようとしているが、私たちのロボットドライバーはあなたが彼らの運転に関して感じることについて、より反応的である。

BRAIQは、乗客の快適レベルをどのように読み取り、乗客が好む運転方法をどのように学ぶかを、自動運転車に対して教えるスタートアップだ。このパーソナライゼーションは、乗客の快適さを向上させるとともに、自己運転技術に対する信頼を育むことを目的としている。

既成の車内センサーが、乗客がアクセル、ブレーキ、ステアリングなどの車の動作をどのように感じているかに関するデータを提供する。収集されたバイオメトリックデータは、集約され、分析され、その結果、運転スタイルが乗客の快適さに適合したAIが得られる。BRAIQのソフトウェアは、人工知能の上に感情知性の層を効果的に追加している。

コンピュータはすでに、人間の感情知性(EQ)を拡張する、あるいはそれを置き換えることができることを実証している。

自動運転車にこちらの意思を相手に伝えるように教える新技術も開発されている。あなたの前の車や、後ろにいる車に先に行けと手を振ったり、ハイウェイで他の車に追い越しの意思を伝えるためにライトを点滅したりする代わりに、Drive.aiは、自動運転車が他の車輌に対して、ライト、音、そして動きを使って意図を伝えることのできるディープラーニングAIを作成した。

新しいテクノロジーは、ディープラーニングプログラミングを使用して、センサを介し車の周りで何が起こっているのかを評価し、状況に適切に対応する。歩行者や他の運転手と効果的に対話するために、車は動きや音を使って次の行動を示すことを学ぶことができる。たとえば、誰かを先に通すようにライトを点滅させたり、これから前に動き始めることを知らせるために、前後に軽く動いたりする。

顧客サービス

Cogitoはコールセンターの担当者と顧客との間の会話のパターンとダイナミクスを分析し、対応のプロたちに顧客に対するよりよい対応と会話を行わせるためのリアルタイムガイダンスを提供する。

担当者は、顧客の話し方によって検出された感情に応じて、より多くの共感、信頼、プロフェッショナリズムおよび効率性で話すようにガイドされ、一方顧客の不満や購入意向の初期の兆候の検出はサービスの改善や取引の成功を助ける。リアルタイムのダッシュボードを使用すれば、上司はライブコールをモニタし、積極的に介入することができる。上司は顧客が良くない会話経験を受けている際には、自動的に警告を受け取る。

Cogitoの分析機能は、会話毎に、担当者の会話行動や顧客の経験を客観的に把握し、顧客体験のスコアを、実践的なベストプラクティスや将来の訓練の傾向を特定することに活かすのに役立つ。

法執行機関

世界中の法執行機関や政府機関がいまだにポリグラフ「嘘発見器」を使っている。 しかし、多くの専門家は、このテクノロジーの継続的な使用を疑問視していて、ポリグラフマシンは不正確で、だますことができると主張している。

Nuralogixは、人間の目では認知できない感情的な反応を読み取る技術を開発した。経皮光イメージングと高度な機械学習アルゴリズムを組み合わせて、顔の血流情報を評価し、隠れた人間の感情を明らかにする。法執行機関において職員が直接質問をし、物理的に制御できない要素、すなわち顔の血流に基づいて回答者の真の感情を評価することができる。

MITの研究者は同じように血管を使うEQ-Radioを発表した。開発者によれば、EQ-Radioは、その瞬間のユーザーの気持ちを87%の精度で評価できるデバイスである。レポートによれば、そのデバイスは、人の身体に無線信号を反射させ、アルゴリズムを用いて個々の心拍や呼吸パターン、そして脳の覚醒のレベルを文書化する。現時点ではこの技術は、被験者が嬉しいのか、悲しいのか、あるいは怒っているのかを評価するためにのみ使用されているが、技術が発展するにつれて、ポリグラフテストと同様に使用するように訓練することができるだろう。

将来的に感情を検出できるマシンによってモニタされると考えるのは気味が悪いかも知れないが、感情知性を備えたコンピューティングシステムはすでに人間の能力を上回っている。サイエンスフィクションの世界でうろうろしているのかと思っていたのに、それらはすぐに私たちの家庭、自動車、そしてオフィスで実現化される可能性があるのだ。

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(翻訳:Sako)

AIを活用してロゴデザインを行うLogojoy

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ロゴをデザインしようと考えたことのある人なら、デザインにあたってはロゴを利用する組織の特徴やテイストの理解、また何年もの経験やさまざまな関連知識が必要であることに同意してもらえることと思う。そうした制作者の負担をすべて取り除いてしまおうとするのがLogojoyだ。AIおよび機械学習のノウハウを活用し、膨大なバリエーションも提示してロゴデザインを助けてくれる。実際に使ってみたが、なかなかのクオリティだ。

使い方はいたって簡単だ。ロゴを作りたい組織(モノ)の名前を入力して、アイコンや色などを選んでボタンを押すだけだ。あとはコンピューターの方が着々と仕事をこなして、できあがったデザインを見せてくれる。その中に最高のできだと思うものがなくても、「more」ボタンを押せば疲れ果ててしまうまで無限にロゴ候補を提示してくれる。

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細かな修正を指示して、コンピューターにそれに基づくバリエーションを提示させることもできる。

お気に入りのものが見つかれば、そのロゴをクリックすると実際にロゴをあしらったビジネスアイテムのサンプルが表示される。

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利用例もおしゃれで使ってみたい気分を盛り上げる。

実際に利用すると決めたなら「Buy」ボタンで即座に購入することができる。Basic版、Premium版、Enterprise版があり、さまざまな用途で使うのであればPremium版を購入することになるだろう。価格は65ドルだ。この価格を高いと思う人もいると思うが、正直な話、このサービスから提供されるもののクオリティは価格に十分見合うものとなっている。Fiverr99designsでデザイナーを探すよりもはるかに簡単で、かつハイクオリティのものを即座に入手できるのがすばらしい。もちろんさまざまなサンプルをみたあとでも購入しないことを選択することもできる。

もしこのサービスから購入しない場合でも、デザイナーに方向性を示すためのツールとして利用することもできるだろう。いくつかサンプルを選んで提示すれば、デザインプロセスに必要な時間を大幅に節約することもできるだろう。

ともかく、ロゴデザインに興味のある人はぜひこのツールを使ってみて欲しい。触ってみるだけで楽しくなることまちがいなしだと思う。

原文へ

(翻訳:Maeda, H

Facebook Engeneeringの責任者が機械学習を解説―ビデオ・チュートリアル公開

2016-12-02-facebook-math

数学を勉強すること。もっと数学。さらに数学―というのが人工知能に興味ある学生に対するに対するFacebookの人工知能ラボの責任者、 Yann LeCunと応用機械学習グループの責任者、Joaquin Quiñonero Candelaのアドバイスだ。

テクノロジー企業は必要な能力としてよくSTEMという頭文字語を使う。 科学、テクノロジー、工学、数学(science, technology, engineering, math)の略だ。今回公開された人工知能と機械学習に関するチュートリアル・ビデオは学生に対するアドバイスとしても大いに役立つだろう。Facebookによれば、学生がやるべきことは野菜を残さず食べる他に数学 I、 II、 III、線形代数、統計をできるだけ速い時期にマスターすることだという。

このリストの中では特に統計学が目立つ。私の高校時代にはこの教科は一流大学を目指す生徒にはAP〔進学に有利となる高度授業〕の点数計算で有利でないとして無視されることが多かった。

微分方程式が機械学習の原動力となるエンジンなら統計は器械の歯車そのものだ。記事末にFacebookのAIのビデオ・チュートリアル(AI explainer)をエンベッドした。

本当のことを言えば、 LeCunと Candelaのビデオの対象は大学生以上だろう。しかし「どの科目がどのように重要なのか」は教育のあらゆるレベルで動機づけに欠かせない。それに加えて、われわれの日常生活でも統計の知識はこの上なく役立つ。Facebookの2人の科学者が「数学。もっと数学」と述べているとおり、数学は科学、工学一般ばかりでなく、コンピューター科学、経済学、神経科学など今日非常に重要になっている分野でも必須だ。広告の効果を強化するためにニューロン・ネットワークと認知科学を機械学習に応用するなどということは数学なしに実現できるはずがない。

統計学は知識と学習の本質を理解するという哲学上の重要課題の入り口でもある。最近Facebookのニュースフィードのバイアスの有無について議論されているが、忘れてならなないのは、たとえ機械学習だろうと、すべてのアプリの背後にはそれを作った人間がいるという点だ。われわれは人工知能の進歩によるコンピューターのブラックボックス化という問題に対する効果的な対策をまだ見つけていないが、それを見つけようとしているのはまさしく人間だ。またデータをやみくもにいじる前に、学習の本質がどういうものであるかを理解しておくことが重要になる。

最後の方でFacebookは機械学習の分野でどのような職に就けるか簡単に説明している。といっても説明のほとんどは自明だ。機械学習を実際にマスターしようとするならまず適切な指導教授を見つける必要がある。PhD課程の院生は教授より時間に余裕があるからいろいろ指導してもらえるかもしれない。企業でインターンとして働いてみるのは現実世界でAI(がどのように使われているかを知るのによい方法だ。

実のところ、実際にPhD課程に応募する場合、大学のランキングなどより指導教授の方がはるかに重要になるとFacebookの2人は注意している。一度博士課程に入学を許されたら、未解決の問題を探し、それを解決するコードを書きオープンソースで発表するのが大切だという。

〔日本版〕以下のビデオの音声は英語だが、アニメーションや図解だけでも理解の助けになる。また日本語で説明する際のヒントにもなりそうだ。

AI入門

機械学習とは


勾配降下法(Gradient Descent)


ディープラーニング

誤差逆伝播法(Back Propagation)


畳み込みニューラルネットワーク(Convolutional Neural Network)



Featured Image: Getty Images/Yuri Khristich/Hemera (modified by TechCrunch)

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

会話AIの発展のため、Amazonがアクセラレータープログラムを新設

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大手テクノロジー企業は、 どこかしこもブランドの認知向上やAPIの紹介、あるいは他のオープンソースの取り組みを促進するためにアクセラレータープログラムを立ち上げている。本日、Amazonも会話AIを開発するスタートアップ向けにアクセラレータープログラムを新設することを発表した。

Amazonは1億ドルのAlexa fundを持ち、この領域で展開する22社に出資している。投資しているのは多様な業界のスタートアップで、ステージもバラバラだ。だが、アクセラレータープログラムはAmazonにとって初の試みだ。Amazonは他にも優れた会話AIに贈るAlexa Prizeを立ち上げ、実際に会話が成立するボット制作を行う大学生を募っている。

Amazonの経営企画のVP、Doug Booms(彼がAmazon M&Aの責任者でもあるのには何か意味がありそうだ)は、この新しいアクセラレータープログラムはAlexa Fundの投資先探しやAlexa Prizeに参加したチームの次のステップという位置付けではないとTechCrunchに話す。

今のところAmazonのアクセラレーター戦略に制約は少ないようだ。プログラムに参加するスタートアップの種類に確かな制限はない。コネクテッドカーからスマートホームを手がけるチームまで幅広く迎い入れるという。

Amazonは単独で行うのではなく、Techstarsとパートナーシップを組んで13週間のプログラムを実施する。Amazonは当初、Techstarsに会話AIを支援するためのパートナーシップを提案していた。AmazonとTechstarsは、プログラムに参加するすべての参加者に対して2万ドルの初期投資を行う。

選ばれたスタートアップは、ワシントン大学に借りたスペースに集められる。ファウンダーはAmazonとTechstars、両方のメンターと接点を持つことができる。プログラムの最後にはコンバーチブル・ノート形式でさらに10万ドルの投資を受ける資格が得られるという。

アクセラレータープログラムの受付は1月から開始する予定だ。AmazonとTechstarsはプログラムが始まる7月までに世界中の主要都市で合同説明会を実施する。多くのアクセラレータープログラムで行われているデモデーも10月に開催予定だ。投資家がスタートアップのプレゼンを聞いたり、ファウンダーと接点を持つ機会となる。

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(翻訳:Nozomi Okuma /Website

Amazon AIがローンチ、Alexaのような音声アプリが開発可能に

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Amazonは本日、ラスベガスで開催している 開発者イベントre:InventでAmazon AIプラットフォームのローンチを発表した。Amazonが何年もかけて開発した機械学習の知性を社外の開発者でも利用できるようにする。最初の段階では3つのツールを提供するが、今後新たなツールを追加していく計画だという。

Amazonは機械学習の取り組みについてあまり発表してこなかったが、この分野において多くの知見があるとAmazon Web ServiceのCEO、Andy Jassyは強調する。「長くAIに取り組んできました。私たちのビジネスにはAI専任の人員が何千人もいます」という。

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Amazon AIのツールの1つは画像認識サービス「Rekognition」だ。GoogleやMicrosoftなどが提供するサービスと同じように画像に写る物を特定することができる。Amazonのツールでは、画像に写っている犬の犬種まで認識できるとAmazonは主張する。ただ、他の競合サービスでもたいてい同じことができることは明記しておきたい。Amazonのサービスはとてもコスト効率が良いとJassyは説明しているが、実際の価格帯をまだ発表していない。

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2つ目は Amazon Pollyで、これはテキストを音声に変換するサービスだ。裏では機械学習の知性を多く活用しているという。人が話しているかのような音声が作成できるとJassyは話す。「Pollyは、音声生成でこれまで課題だった部分を解決します。例えば、『live』の言葉の発音は文章によって異なります。『I live(リブ) in Seattle』と『Live(ライブ) from New York』のようにです。Pollyは同形異義語を認識して、スペルが同じでも発音が違うことを知っています」。

Pollyは男性と女性の47の音声を備え、24言語に対応している。

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3つ目のサービス「Lex」で、これが一番重要な新サービスだろう。基本的にはAmazonが手がけるAlexaを動かしているテクノロジーと同じとJassyは言う。複数回のやりとりを要するコミュニケーションにも対応する会話型アプリケーションをこれで開発することができる。開発者はLex Consoleから会話を設計し、サンプルの会話文でボットを訓練することができる。

Amazon Lexを使用してチャットボット、あるいはユーザーと生き生きとしたインタラクションを持つウェブやモバイルアプリを制作することが可能になります」とAmazonは本日の発表で伝えた。「ボットは情報を提供したり、アプリを動かしたり、作業を効率化したり、さらに他のロボット、ドローンやおもちゃの操作するのにも活用することができます」。

本日のキーノートでAmazonは、声の指示だけで航空券を予約する様子を見せた(なぜか航空券の予約がこういったサービスの定番のデモになっている)。LexはLambdaや他のAWSのサービスと深く連携し、また他の法人向け連携サービスにも対応している。他にもFacebook Messenger、Slack、Twilioとも連携可能で、これによりAmazonの端末にとどまらず、基本的に他のどのデバイスでもこれらのサービスを使ってアプリを開発することができる。

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(翻訳:Nozomi Okuma /Website

慌てるな、AIは職を奪わない―しかし今後ますます定着していく

Human and robots to work together in the near future. This combination will accelerate developing technology. Businessman and cyborg organizes social media.

ディストピアSFを通じて昔から広められてきた奇妙な信念に「人工知能やロボットが人類を破滅させる」というものがある。この世間知にはイーロン・マスクやスティーブン・ホーキングのような有名人も参加しているので驚いてしまうが、人工知能が発達すると、最後には有機体生命より賢くなり地球を乗っ取るという恐るべ結果をもたらすらしい。

しかし「AIがわれわれを滅ぼす」などということはSFの世界を離れればまずありそうにない。それどころか職を奪うことさえないだろう。

実際には、われわれが何かをするのを助けてくれるだろう。なるほどAIが仕事を助けてくれるという考えはロボットの大君主が地球を征服するという夢想ほど魅惑的ではない。しかし2016年現在、人工知能を考えるうえではるかに現実的な評価だ。これは工場の組立ラインの作業員にも得意先を回るセールスパーソンにも、オフィスの知識労働者にも等しく当てはまる。

シリコンバレーのソフトウェア・デベロッパーは人々の職を奪うための完璧なアルゴリズムを開発しようとしているという考えは正しくない。実のところ、コンピューターのアルゴリズムと人間の創造的な知能を組み合わせてより良い仕事ができるようにする方法を見つけようとしているだけだ。

AIは人間を補完する

AccentureのCTO、Paul Daughertyの説明によれば、同社は「人工知能は人間の能力を強化するもので代替するものではない」と考えている。その過程で人工知能は巨大な経済成長をもたらすという。同社の努力は恐怖を撒き散らすSF的ストーリーとは無縁だ。

「AI開発におけるわれわれの目的は人類以上のスーパー知能を作ることではなく人類の知能をスーパーにすることだ」とDaughertyは言う。SF風のお話はメディアが取り上げやすいかもしれない。しかしAccentureが目指しているのは「複雑な問題を簡単にする」という地味だが実際的な目標だ。

ロボットの大君主が地球を征服するというのと比べて、AIはわれわれを助けて仕事をスマート化するというのはセクシーな話題には聞こえないかもしれない。しかしはるかに現実的な考え方だ。

Accentureではこの目標に向けて具体的に3つの課題を追求している。一つはビジネス・プロセスを知的、効率的なものにすることだ。 次に、これを実現するために、人間がコンピューターのデータ処理能力を最大限に活かせるような新しいインターフェイスを開発している(おそらくスマート・グラスのような新しいデバイスの利用が含まれるだろう)。最後に、何十年も前からビジネスにおける大きな課題であった構造を持たないデータを利用できるようにする方法を探っている。

ただしこうした努力はいわゆる知識労働者だけに関係するのではないとDaughertyは言う。AIは工場にも直接影響を与える。Accentureでは製造業のクライアントのためにAIと拡張現実ヘッドセットを組み合わせ、熟練労働者に新しい作業を学習させる方法を開発中だ。作業員はヘッドセットを通じて作業の細かい部分について適切な指示を受け取る。これによって新しい作業を学ぶスピードが非常に速くなる。作業員もこの方法を快適だとして好むことがわかった。同時に会社側も作業員に多様な業務を実施させつつ訓練教育のコストを大幅に削減できるとが判明している。

セールス業務が改善される

セールス業務は今年に入ってAIの大規模な適用が始まった分野だ。Salesforceのセールス・ツールを始め、Oracle、SugarCRM、Base等々がその例だ。セールス・チームは個々のセールス要員の業務に影響を与える可能性のある要素をすべて把握することは不可能だ。そこでこの部分を助けるためにコンピューターの出番となる。

優秀なセールスパーソンはコミュニケーションの才能に恵まれており、成約に結びつけるためにどういう駆け引きが必要かもよく知っている。しかし、SugarCRMSugarの最高プロダクト責任者、Rich Greenによれば「.いかに優秀なセールス要員であっても、成約を妨害する可能性のある無数のネガティブな要素については知識を欠いていることが多い」という。

そこでAIが現在のセールスの進行状況と他のセールスの進行状況の関連、契約の成否に関係する可能性がある外部のニュース、客先からメールの調子その他を報告してくれる。コンピューターと優秀なCRM〔顧客管理〕ソフトウェアとはこうした情報を処理してセールス・チームに伝えることができる。現場のセールス担当者は客先の人間とのコミュニケーションに集中できるわけだ。

この点はSalesforceも今年早くから力を注いでおり、APプラットフォームのEinsteinのリリースもその一例だ。来年以降この種のソフトウェアはますますポピュラーになるだろう。

AIは定着し、拡大する

AIについて個人的にどういう印象を持っているにせよ、AIはほとんどあらゆるソフトウェアの進歩の原動力となるだろう。それがソフトウェアの進展の自然な道筋だ。ソフトウェアを賢くする方法があれば誰もが利用する。Daughertyは「この特性がAIの採用をクラウド・コンピューティングの採用より急速なものにする」と考えている。

クラウド・コンピューティングの場合、企業はオンプレミスのコンピューティング資源をクラウド・ベースに置き換えるという大きな決定をする必要がある。その分だけ意思決定に時間がかかる可能性がある。AIの場合、全体としては現状のままで、ソフトウェアの一部を将来に向けて置き換えていくことができる。AIはテクノロジーとしてははるか以前から開発され、実用化の機会を待っていた。今やコンピューターの処理能力の向上とビッグデータの蓄積が企業にAI化のシナリオを選択する絶好のチャンスを与えている。【略】

Featured Image: Devrimb/Getty Images

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

Googleが$3.4Mの学術投資によりモントリオールにAI研究チームを立ち上げ、とくにディープラーニングに焦点

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Googleが、モントリオールのInstitute for Learning Algorithms(アルゴリズム学習協会)におけるAI研究に450万カナダドル(340万USドル)を投資した。この学術ファンドは、モントリオールやMcGillなど、モントリオールのさまざまな学術機関の教職スタッフ7名による3年間の研究開発活動をカバーする。またこの投資は、ディープラーニングのエキスパートYoshua Bengioの仕事に対する支援の継続であり、機械学習とAI研究におけるカナダの強力な専門的能力への賭けの継続でもある。この二つの研究開発分野は最近ますます、同社の中核的事業にとって重要になりつつある。

そのためGoogleは投資と並行して、モントリオールの同社オフィスに、ディープラーニングとAIに関する新しい研究グループを立ち上げる。その新しいチームは、本社のあるマウンテンビューのGoogle Brainチームの遠隔支部になり、Hugo Larochelleが指揮する。このディープラーニングのエキスパートは、ボストンでTwitterの仕事をしたのち、まさにこの新しい職責のために、故郷のモントリオールに帰還していた。

Googleによると、同社のこれまで10年間のカナダの学術研究への投資は、総額で1300億カナダドルぐらいになる。とくに今回の投資は、モントリオールでこれまで進めてきたAIスーパークラスターの形成を支援し、今それはAIスタートアップと学術研究の双方にとって、彼らが育つ温床になりつつある。Googleは、ウォータールーのエンジニアリングオフィスによっても、カナダにおける重要なプレゼンスを維持し、また多くのディープラーニング研究においてトロント大学のコンピューター科学教授でAIのエキスパートであるGeoffrey Hintonと協働している。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))