人工知能の暴走を抑える「人工天使」が必要だ

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編集部注: Jarno M. Koponen氏はデザイナーであり人文科学社でもある。またメディア関連のスタートアップであるRandomの共同ファウンダーでもある。新しい「人間中心」のデジタルエクスペリエンスを模索している。

インターネット上のさまざまなことがアルゴリズムにより処理されるようになった。しかしどうやら「人間のため」という視点が欠落しつつあるようにも見える。実現したところで何のメリットもないような「ソリューション」が提示されることすらあるように思うのだ。

アルゴリズムにより表現される自己の危うさ

デジタルデバイスは、ポケットに入るものになり、そして身に付けるものとなって、さらには身体と一体化するようにまで進化してきている。わたしたちがオンラインで触れるものも、アルゴリズムにより決定されている面もある。近いうちには家庭や車の中に存在する現実のモノすらも変えることになりそうだ。

アルゴリズムが進化して「パーソナライズ」ということが言われるようになり、私たち自身がアルゴリズムに組み込まれることとなった。加えて、そもそも「パーソナライズ」という言葉も矛盾しているように思える。「パーソナライズ」がアルゴリズムにより行われるおかげで、私たちは「自分で」(パーソナルに)パーソナライズすることができないのだ。また、アルゴリズム的に認識されている私たちの姿を変更することも、自由に行うことはできない。これは今現在だけの問題というわけでなく、そもそも「パーソナライズ」ということが、そうした方向で実現されつつあるのだ。

「パーソナライズ」を行うアルゴリズムに、「パーソナライズ」される側から関わることはできない。「パーソナライズ」の仕組みは完全にオープンなものではなく、わかりやすいものでもない。何がどのように影響するのかがよくわからない。どのような現象を把握して、判断指標としてどの程度の重み付けをされるのかがまったく見えないのだ。自分自身の行動も、またアルゴリズムにより把握されている自分自身さえも、自分では理解できない「データの塊」として存在するようになる。

「パーソナライズ」のアルゴリズム自体が、個人の判断に影響し、ひいては行動も影響を及ぼす。「パーソナライズ」のためのアルゴリズムが存在するのは、他のだれかが、ある人物の思考ないし行動様式を理解するためだ。今、必要なものも、あるいは将来必要になるものも、アルゴリズムにより判断されて(誰か他のひとの立場から)提示されることとなる。

「パーソナライズ」のアルゴリズムは、完全に「ニュートラル」の立場にあるわけではない。もちろんだからといって、「誰かによる支配」を直ちに招くというものでもない。しかし「パーソナライズ」のアルゴリズムは(たいていの場合)誰か他の人のものの見方から生まれたものだ。アルゴリズムを生んだ人のものにくらべ、「パーソナライズ」して利用する人のものの見方が軽んじられることはあり得る。ここから自らの考えを反映しない「パーソナライズ」が生まれたり、別の人の考えを押し付けてくるような現象に戸惑ったりすることもあるわけだ。

「パーソナライズ」はごく一面的な判断に基づいて、あるいは特定の一面を必要以上に強調して為されることがある。アルゴリズムにより生み出される「アルゴリズム的自己」(algorithmic self)は細かく分断されているのだ。たとえばAmazonとOkCupidにおける自分は別の興味をもつ人物となっているだろう。これによりアルゴリズム側の行う、どのような人なのかの判断も異なるものとなる。このように、場合場合に応じて特定の一面だけをとりあげて解釈することで、「パーソナライズ」を行う世界においては、人間はかなり「一般化」され、かつ「単純化」される。把握できた人間像と不一致であり、また現在の人間像の解釈にやく立たずなデータは捨て去られる。「必要」だと判断して集めたデータがあまりに薄っぺらいものであったような場合は、アルゴリズム側で「似た人」と判断する人物のデータを流用して補正したりする。すなわち「アルゴリズム的自己」は、統一的な深みなど持たず、特定の条件に定まった反応をする、いわば成長前のフランケンシュタインのようなものとなっているのだ。

しかも、そうして生まれた「アルゴリズム的自己」が、自らのコントロールを離れてうろつき回るような状況となりつつある。デジタル環境において私たちの代理人となるような存在は消え去りつつあるのだ。すなわちデジタル界には「私たち」はいなくなり、それであるにも関わらずその「アルゴリズム的自己」に基づいてさまざまな「パーソナライズ」したサービスや情報が提供されることとなってしまっている。このような状況は変える必要があるのではなかろうか。

「アルゴリズム的自己」は、器官を寄せ集めただけの「デジタル・フランケンシュタイン」のようなもの

人工「天使」を待望する

いろいろと言ってはきたが、果たして「パーソナライズ」のアルゴリズムが明らかになれば問題は解決するのだろうか。あるいはアルゴリズムがわかったところで、さほど役に立たない話なのだろうか。

きっと有効性は低いのだと思う。私たちのために働いてくれる人工存在を生み出す方が良さそうだ。新しい概念であり決まった用語もないので「人工天使」(algorithmic angels)とでもしておこう。困ったときには助けてくれるし、いつも私たちを守ってくれ、トラブルに巻き込まれたりしないように配慮してくれる存在だ。

もちろん不器用そうなクリッパーのことではないし、微妙なことになると「わかりません」を連発するSiriでもない。IBMのWatsonでもなく、もちろん悪意を持っているHALでもあり得ない。私たちのことを学習して、ともかく私たちを守ろうとする存在を想定しているのだ。デジタル世界の「アルゴリズム的自己」のいたらない点を補正してくれる存在であることが期待される。具体的な働きをイメージしてみよう。

「人工天使」は理由なく自由を制限するような動きに対抗してくれる。「パーソナライズ」にあたっての行き過ぎた個人情報提供を見張り、場合によっては情報提供を無効化する。不必要に情報を集めまくるサービスに対抗する術を与えてくれる。

別の選択肢を示し、物事の他の見方を示してくれる。私たちは偏見をもったり、あるいは一面的な常識に囚われてしまうことがある。それがために、アルゴリズムの提示する「事実」をそのまま受け入れてしまいがちになる。そのようなときに「人工天使」が登場し、妄執を戒めてくれる。新しい世界を開き、独善的な振る舞いを改める機会を得ることができる。情報を取り入れる新しいやり方が示され、新鮮で新しい気づきをもたらしてくれるのだ。

無用な調査の対象から外してくれる。「人工天使」のおかげで、実名と匿名を適切に使い分けることができるようになる。利用するサービスに応じて、適切な設定を行ったプロファイル情報を利用してくれる。もちろん、これは「人工天使」に任せっきりにするのではなく、自分でさまざまな設定を使い分けることもできる。

自分に関するデータの扱いを、主体的に決定できるようになる。人工天使のおかげで、自分に関するデータの流れを主体的に制御できるようになるわけだ。自身の詳細な情報に誰がアクセスできるのかを決めたりすることができるようになる。必要なときには、従来のやり方ではばらばらにされて存在していた「アルゴリズム的自己」をまとめて活用することもできるようになる。もちろんデータの安全性は担保され、データの取り扱いはあくまでも所有者の主体的意志にひょり決せられることとなる。自分のどのような情報をネット上に流し、どういった情報を削除するかを自分の意志で決められるようになるわけだ。

人工天使はデバイスや環境間の違いも吸収してケアしてくれる。自身の情報は、望んだように提供/制限されるようになり、必要としないマーケティング行動のためのデータとはならない。そのために、たとえばウェアラブルなどから収集する情報についても適切に扱ってくれる。

こうした機能をもつ「天使」の存在のおかげで、リアル/バーチャルの違いなく、統合的かつ主体的に提供する自己情報に基づいて生活できるようになるというわけだ。

もちろんときにはこの「人工天使」機能をオフにしたくなることもあるだろう。天使なき世界がどのようなものであるのか、いつでも見てみることができる。

「人工天使」が無敵の人工知能である必要はない。別の表現を使うのなら、人間ほど賢い必要はない。デジタル社会の進化にともなって広がるネットワークワールドでのふるまいについてスマートであれば、それで事足りるのだ。多くの人が創造する「人工知能」とは、求められるものが異なることになるだろう。私たちは人間の立場で考え、評価し、選択する。「人工天使」は「機械」風に考え、そこで得られる知見をすべて人間のために使ってくれれば良いのだ。

「アルゴリズム的自己」の出現シーンが拡大し、そうした「自己」が活躍する分野の重要性は増してくることだろう。そのようなときには、今までよりもさらに自己情報の管理を丁寧に行うことが求められる。自律的存在であり続けるために、アルゴリズムで動作する守護天使が求められる時代となりつつあるのだ。そうした存在なしには、とてもさまざまな「アルゴリズム的自己」を活躍させることなどできなくなる。

「人工知能」の行き過ぎが危惧されることも増えてきた。「人工天使」を生み出すことにより、意外に簡単にバランスがとれる話なのかもしれない。

(訳注:本稿は昨年4月にTechCrunchサイトに掲載されました。訳出を見送っていましたが、最近の状況との絡みで面白そうだと判断して訳出いたしました)

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(翻訳:Maeda, H

Siriの共同ファウンダー、Dag Kittlaus、次世代AIのVivアプリを来週のTechCrunch Disruptでデモ

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Siriは世界中の何億というAppleユーザーに使われているが、この遍在的ソフトウェアを開発したのはほんの小人数のチームだということはあまり知られていない。Siriの共同ファウンダー、元CEOのDag Kittlausはその1人だ。

現在Dagのチームは新しい人工知能プラットフォームVivを開発中で、Dagは来週のTechCrunch DisruptでVivを利用して開発されたアプリをデモする。

Dagは同じく元SiriのAdam Cheyer、Chris Brighamと共にVivの共同ファウンダーであり、現在同社のCEOを務めている。Siriのテクノロジーは最初にSRIで開発され、2007年にDagらがこのテクノロジーを利用するビジネスをスタートさせた。

Siriは当初App Storeに登録されたアプリだった。2010年にAppleはSiriを買収し、DagはiPhoneアプリ担当副社長としてSiri及び音声認識テクノロジーの開発チームを指揮した。2012年にDagはAppleを去り、さらに高度な人工知能プラットフォームを目指すVivを起業した。

Dagは来週ニューヨークで開催されるDisrupt NY 2016で人工知能の将来について講演すると同時に世界最初のVivアプリをデモしてくれることになった。

Vivプラットフォームはまだ正式にリリースされていないが、その目的は「どんなことについても自然に会話できる」ような人工知能をデベロッパーがアプリに簡単に組み込めるようにするプラットフォームの開発だ。 DagはAppleを離れた直後に、TechCrunchにSiriはほんの手始めにすぎないという記事を書いて Vivを予告した。Dagは人工に知能についてカンブリア期の生物進化の爆発のテクノロジー版が起きるという記事も寄稿している。

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Dagはモバイル・ビジネスに長い経験がある。VivとSiri以前にはTelenor MobileとMotorolaで幹部を務め、Motorolaでは人工知能インターフェイスを開発するInteractive Media Groupを創立した。VivはAIシステムが新しいタスクを実行するためには自らコードを書く機能、いわゆるプログラム合成テクノロジーの大幅な進歩をベースにしている。

Siriは単独のアプリだが、VivはデベロッパーがAIによる会話的能力をアプリに組み込めるようにするためのインフラ開発を目指している。Dagによれば、現在あらゆるアプリに搭載されている「検索ボタン」と同じくらい、Vivによる会話機能を普遍的なものにしたいという。TechCrunch DisruptではVivプラットフォームを使って開発されたアプリがデモされるというので、プラットフォームの能力の一端が明らかになるだろう(Disrupt NY 5月9日から11日にかけてブルックリンのレッドフックで開催される。チケットはこちら)。

Dagの他に、KikのTed Livingston、Starfish MediaのSoledad O’Brien、Amazon Echoの副社長Mike Georgeなども講演する予定。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

AIが訓練結果に基づいてベートーヴェン(EUのテーマ曲)をビートルズふうに演奏

人工知能が“歓喜の歌”をEDMふう、ブラジルギターふう、そしてビートルズの“ペニーレーン”ふうに演奏したら、こうなる。

パリのSony Computer Science Laboratoryが、欧州連合(EU)のテーマソングの編曲に挑戦した。彼らは機械学習の最大エントロピー原理に基づいてコンピュータに、さまざまなタイプの音楽のもっとも目立つ特徴を認識することを教えた。そしてチームはそのAIに、ベートーヴェンのクラシック中のクラシック“歓喜の歌”のパターンを、現代的に演奏するよう命じた。

下のビデオで、リーダーのサイエンティストが、そのやり方を説明している:

SonyのCSLは、彼らのプログラムが、AIが人の心に残るオリジナル曲を作れるようになるための第一歩だ、と信じている。ラジオからコンピュータが作ったような曲ばかり聞こえてくるようになったら、あと数年でサイバートーヴェン(cyBerthoven)が登場するだろう。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

安定した自撮りができるミニ・ドローン・カメラのHover、2500万ドルを調達して開発を加速

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通常のドローン・カメラで自分や友達のアップを撮ろうとした経験があれば、それはほとんど不可能だとわかったことと思う。

この問題を解決するために中国に本拠を置く Zero Zero Roboticsは2500万ドルの資金を調達して超小型の自動飛行ドローン・カメラ、Hoverの開発に取り組んでいる。IDGがシリーズAラウンドで2300万ドルを投資し、金額としては大部分を占めた。この他に中国のGSR VenturesZhenFund、ZUIGが加わっている。

今回のラウンドは同社として初の公開資金調達だったが、Zero Zeroは2014年から約70人のチームで自動飛行ミニ・ドローンの開発をスタートさせている。Hoverは最初の製品だが、Zero Zeroでは同じテクノロジーを用いた各種のドローンを開発する計画だ。

Hoverは1300万画素で4Kビデオ対応のカメラと多機能のソフトウェアを搭載しており、ほとんどユーザーの介入なしでさまざまなビデオが撮影できるという。

このドローンには他のもっと大型のドローン・カメラに見られるジンバル機構を備えていない。しかしZero Zeroでは独自の手ブレ防止ソフトによってビデオ画像は十分に安定化されるとしている。

振動キャンセルソフトの他にもHoverには多くのカスタム・ソフトが搭載されており、これまでにドローンを使ったことのない初心者でも容易に飛行させることができる。ソフトには空中の1点でホバリングする機能に加えて顔認識、顔追随、360度パノラマ撮影などの能力がある。

Hoverはきわめて軽量で折り畳むことができる。畳んだ状態の外観はホビー用のルーターにそっくりだ。

実際、重量はわずか240gなのでFAAに登録する必要がない。このことはFAAにドローンを登録した経験があるホビイストにはあまり関係ないが、ドローンにもFAAへの登録手続きにも不慣れな一般ユーザーには大きな魅力となるかもしれない。

Hoverはこの夏出荷の予定で、われわれはデモ機が入手でき次第テスト・レポートをお届けする予定だ。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

AI革命は人間性回復のための契機となるか?

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編集部注:本稿執筆はAidan Cunniffe。氏はDropsourceの共同ファウンダー兼CEOを務めている。

1万年前、職業には3種類しかなかった。すなわち狩猟、採集、そして育児だ。

そこから、職業の種類は大幅に増えていった。種類が増えるだけではなく、どんどん細分化されもした。

人類の進化と、それから引き起こされたイノベーションの結果として現状がもたらされたと言えよう。人類が進化するに連れ、人類が望むもの(ないし必要とするもの)も変化していったのだ(もちろん望みを実現するための手法なども変化していった)。

当初は人類も「生きる」ことを最優先に行動することが必須だった。しかし徐々に「生きる」こと以外にさまざまなニーズに注力できる状況となり(そのような状況を自ら生み出し)、そのような中から仕事についてもさまざまなものが生まれてきたのだった。生きることに直結する行動から離れ、そして繁栄を手に入れたのだった。20世紀になって、人類は空を飛んだり、月に到達したり、あるいはデジタル革命などを引き起こすこととなった。もしも人類が知の最前線を探るような余力をもたなければ、そうしたことも起こりえなかったに違いない。

そして私たちは、また新しい時代を迎える、いわば革命前にあるように思われる。AIの真価により、ロボットがさまざまな仕事を担う時代になって、人間でなければ不可能だろうと思われていた仕事もロボットのものとなりつつある。

ある意味で、「人間の領域」に対する侵犯は既に始まっているのだ。

90年代には「不可能」とされていたAIの進出

未来がいったいどのようなものになるのかについて、実は現在の様子を見ることでうかがい知ることができる。人間にかわり、AIが任される仕事範囲が大いに広がってきているのだ。

キーワードは流行りの「深層学習」で、これによりAIは分析・判断面でも人間を凌駕しつつある。X.aiなどの企業は、組立ラインのみならず管理業務においてもAIを活用しつつある。また、よく例に出されることではあるが、ジャーナリズム業界においても革命がおきつつあり、AIによって記事が執筆されるような事態となっている。

ロジックに基づいて行うことのできる仕事について、AIは既に人間に近いクオリティを示すまでになっている様子だ。さらにAIは利口になってきていて、できる仕事も増やしつつある。担いうる職種はほとんど全分野におよびつつあると言っても過言ではない。たとえば会計業務から運輸系サービスにも進出しており、また情報技術分野でももちろん能力を発揮しつつあり、セキュリティ分野での有効性が証明されつつある。

AI革命は、はやければ15年のうちにやってくる。

ただ、AIにもまだ今後の課題として残されている分野もある。すなわち「創造性」が必要となる場面で、これについてはまだまだであるのが現状だ。

人間が行う作業を大きくふたつにわければ、創造性を必要とする分野と、そこで生み出されたものを実現する(実装する)分野にわけることができるだろう。私たちは「創造性」を使ってモノやストラテジーなどさまざまなアイデアを生み出す。そしてそれらを「実現」するわけだ。「実現」という場合、何か物理的なモノを作ることもあれば、プログラムを書いたり、あるいはサプライチェーンを構築したりということがある。いずれにせよ「創造」した物事を「実現」しているわけだ。

その「創造性の実現」のために「テクノロジー」を用いる。かように「テクノロジー」の活用範囲は「実装」面にあり、まだまだ「創造」の面では活用できないケースが多い。

人間の領分

AIの進化は、人間社会における「仕事」の性質も変えることになりそうだ。仕事とはすなわち「創造性」を必要とするものとなるだろう。あるいは「創造性」はさほど必要としないものの「人間性」が求められるものも仕事として存続しそうだ。

「仕事」がそのような変化を被るなかで、「教育」の意味も変わってくるに違いない。たとえば「テスト」も暗記する能力を問うものは減り、創造性を問うものとなっていくことだろう。人間に求められるのは、コンピューターに担えないことであるからだ。

進化するコンピューターないしAIの中で、「人間」が求められるのはどのような分野だろうか。

遠い将来のことはわからないものの、近未来までの範囲では、人間によるクリエイティビティを必要とする分野はまだまだ多いように思える。

エンターテインメント:AIは人類のためにパンを焼くことはできても、サーカス的娯楽を提供するようになるのはまだ当分さきの話だろう。映画やテレビ、ビデオゲームの分野はまさに人間が活躍する分野として存在している。さらにVRという新しい分野も生まれ、これまで以上に人気を集める技術として発展する可能性をもっている。ひとたび体験すれば決してやめたくなくなる没入型の世界を提供する。

サービス業界:実際のサービスはコンピューターが提供することになるにせよ、「人間」の存在が求められる分野もある。いわば人間がAIの「外交大使」的な役割を果たすわけだ。家庭や職場でAIテクノロジーを使うことの利便性や安全性を伝えることが、まず最初の重要任務となる。

コンピューターの教育係:サービス業界の「大使」的役割にも似ている面もあるかもしれないが、こちらは特定の業務に精通し、かつコンピューターが業務を行えるようにするトレーナーの役割をも担う。たとえばコンピューターに壁塗りの作業やエンジンの修理を行わせるような場合、何をどのように行うのかについて教えてやる必要がある。AIを相手に行うとなれば、動物の飼育員のような機微が必要となる。

ビジネス開拓:AIは現在のビジネスの様子を大きく変えることになるだろう。製造管理やマーケティングないしセールスはAIの仕事となり、起業家としての役割が増していくこととなる。ビジネスの運用主体が企業ではなく、個人の手に渡るケースが多くなるだろう。

現在のところ、何かモノを作りたいような場合は3Dプリンターを使って設計から製造までを自分自身で行えるようになった。ただ、販路拡大となると人力に頼る面が大きいのだ。AIが発展することで、製造管理を行いつつ輸送管理も行い、そして適切なマーケットキャンペーンを実施して、それら一切にかかわる財務管理などもAIにて行うことができるようになるだろう。

大企業が(たとえば潤沢な広告宣伝費などを使って)得ていた優位性などは消え失せていくこととなる。AIアシスタントは広告やブランドなどに関係なく、たとえ作り手が12歳の女の子であったとしても、そのプロダクトがニーズに応じたものであればレコメンドしてくるということになるだろう。

新しいエコノミーの誕生

AIの普及により仕事がなくなった人のすべてが、異なる分野における仕事を行うことができるというわけではないだろう。多くの仕事が永遠に失われてしまうという話もある。それにともなって家計収入は大幅に減ってしまうことともなるだろう。

機械による作業はたいていの場合、人間によるものよりも安上がりになるはずだ。労働単価は下がり、収入はこの面からも低下する。ただし生産にかかる費用も低下するわけで、モノやサービスの値段も下がることになる。すなわち職を失っても生活水準がむしろ向上するような社会に繋がっていくだろうという考えも広く見られるようになってきている。

新しい仕組みへの移行は迅速に成し遂げられるものと思われる。産業革命には1世紀を要したが、AI革命はこの15年のうちに世界中に広がっていく可能性がある。AI革命の障害となるのは、コンピューターに自分の存在を脅かされるのではないかと考える人々の気持ちだろう。

AI革命は、技術の進化により必然的にもたらされるというわけでもないかもしれない。政治や文化的にもAIの進出を受け入れるようになって、はじめて実現するのかもしれない。そうした変化を受け入れる気持ちが人々の中に育てば、きっと人間性の本質たる創造性を存分に発揮できる未来が訪れるのではないかと期待している。

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(翻訳:Maeda, H

興味深い事がシンギュラリティへ向かう過程で起きている

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編集部注:本稿を執筆したJohn Hauerは、Get3DSmart.comのCEOである。

 

私がよく聞かれるのは、労働の現場での3Dプリントが与える影響についてのことだ。テクノロジーは雇用を創り出すものなのか、それとも、それを破壊するものなのか。それに対する短い回答はこうだ。テクノロジーが創り出す雇用よりも、それが私たちから奪う雇用の方が多い。そして、そのようなテクノロジーは3Dプリントだけではない

やがてテクノロジーは人による労働を無用の産物にする。私たちが抱える大きな課題は、その時代の変化に生き残るすべを考えだし、そして労働をしないことによって空いた時間で何をするべきか考えることだ。

シンギュラリティ

約10年前、現在はGoogleにDirector of Engineeringとして勤務し、発明家であり、フューチャリストでもあるRay Kurzweilが、「シンギュラリティ」というコンセプトを世に唱えた。シンギュラリティとは、機械の知能が私たち人間の知能を超えることだ。Kruzweilによる予測では、シンギュラリティは2045年までに起こり、その時、人間と機械の違いは無くなるとされる。

大多数の人々とスマートフォンとの関係を考えてみれば、それはもう既に起こりつつあると言えるかもしれない。

 

「シンギュラリティ」と聞くと、大抵の人は次の内どちらかの世界を思い浮かべる。機械が人間を支配する、ターミネーターのような世界。もしくは、ロボットが働くあいだ人間は自分の趣味など、よりリラックスできることを追求するというユートピアだ。

このどちらも起こりうる世界だが、どちらのシナリオになるのかは私たち次第だ。

透明性

皆がより透明性がある世界になって欲しいと思うだろう。政府や宗教、企業、その他の団体がもっと正直になりさえすれば、世界はもっと住みやすくなるだろう。もし米国政府のNational Archivesが、もしくはVatican Libraryが一般に広く開放されたとしたらと想像してみてほしい。私たちは今よりもっと多くの物事を知ることができる。それには疑いの余地もない。

しかし、秘密が存在するのには理由がある。秘密は国にとって、そして様々なセクターや団体にとってアドバンテージとなり、彼らを守ってくれる。個人にとって秘密はもっと重要である。秘密によって、私たちは自分本来の姿とは違う姿を映し出すことができるのだ。

シンギュラリティの時代には、これに意義があるだろうか?

コンピューターの処理能力は伸び続ける。ムーアの法則では、コンピューターの処理能力は18カ月ごとに2倍になるとしている。その影響も計り知れない

この力を使って、今私たちは何を成し遂げているのか。かつて、DNAの解析には何年もの歳月がかかり、その費用は目が回るほど高かった。それがここ15年でどう変わったのか見てほしい。

 

量子技術の発達は、処理速度の進歩のペースを今よりもっと加速させるだろう。しかし、これの何が透明性に関係するのだろうか?

コンピューター・テクノロジーが発達することで秘密を守ることがとても困難になる。より多くのデータが、より多くの場所に集められるということもそうだが、それらを探し、インデックスをつけ、処理するアルゴリズムも進化し続ける。

私たちはさまざまな興味深い方法でこのデータを利用している。警察はそれを使って、犯罪や、その他のハイリスクな事件の可能性を特定する。それだけでなく、それらの犯罪がいつ、どこで、どのように起こるかを予測する助けとなるかもしれない。

しかし、出来事を予知するテクノロジーと、人を罠にかけるテクノロジーとの境目どこか。もしくは、自己達成的な予知との境目はどこなのか。

どこで線引きをするのか

Bill GatesやElon Muskを含む、世界の偉大な人物たちは、人工知能は人類に悪影響を及ぼす可能性があると考える。

Stephen Hawkingが未来はターミネーターのシナリオに向かっていると考えているのは明白だ。最近の手紙の中で彼はこう語っている。

人工知能の知能が自律的な兵器を配備して、「人を暗殺し、国を不安定化させ、人口を抑制し、特定の民族を選択して殺害する」のは「時間の問題だ」。

これは巷でよく聞くような終焉の日の予言ではない。あのStephen Hawkingの予言なのだ!

より良いデータが、より良い診断結果を生む

知能というものは、それが人工のものであろうが、人間のものであろうが、まずはデータにアクセスするところから始まる。例えば、あるグループをターゲティングすることが目的の場合、まずはそのグループを特定する必要があるだろう。悲しいかな、そのデータがインターネット上で入手可能であれば、それは割と簡単だろう。それらデータは皮肉にも、そのほとんどがSNSを通した自己報告性のデータだ。

私たちより機械の方が、数学や科学、エンジニアリングに秀でた存在となる。

しかし、もう一つのシナリオを考えてみてほしい。仮にあなたが重い病気にかかり、緊急治療室に向かっているとしよう。その病院では、診断に人工知能を利用している。リアルタイムで機械がDNAを解析し、あなたの診断履歴を参照し、バイタルサインを分析する。

AIは人間よりもはやく、そしてより正確に病気を診断することができる。それに医師たちは、とてつもなく長い時間はたらき、平均して週に80人もの患者を診察している。機械は決して疲れることはない。

もしそれが自分自身の生命にかかわる問題であれば、あなたは機械が個人情報にアクセスすることを許すだろうか?上記のどちらのシナリオをとってみても、それはもう手遅れかもしれない。

プライバシーは重要だ

プライバシーと透明性についての論争が繰り広げられている。これに関連した、暗号化やネットワーク中立性といった話題は毎日ニュースとなっている。しかし、もしこれが戦争であれば私たちは二重スパイのようなものだ。時によっては一方の陣営に、そして時には反対側の陣営側についたりする。

モノのインターネット(Internet of Things)は次なるフロンティアだ。携帯電話から、クルマやテレビ、冷蔵庫に至るまで、スマートデバイスの製造は増え続け、消費者のもとに届けられている。ピッチは利便性だ。

Nestのサーモスタットを考えてみよう。消費者は、それを購入すれば自宅の温度を正確にコントロールすることができる。アプリを通してリモートでの温度調節も可能だ。しかしサーモスタット自体はセンサーであり、それがインターネットと接続されてデータを共有している。

この例だけをとってみれば、私たちはオートメーションという利便性のために、ある程度プライバシーを犠牲にしている。しかし透明性は本当に利益なのだろうか?

私たちのエネルギー使用量が完全に透明化された社会を想像してほしい。全体の消費量に良い影響を与える可能性もあるが、その一方で、それは気味の悪いシナリオを生み出すかもしれない。こんな光景を想像してみよう。あなたが友人とゴルフをしている最中に、その友人がこう言った。「昨日、君がサーモスタットを65に設定しているのを見たよ。あのね、もし君がかわりに70や72に設定していたら….」。あなたがその友人の頭を5番アイアンで殴ろうとしたのは、その時だった。

オートメーションの損益分岐点

「労働によって仕事をこなすか、テクノロジーでこなすかだ」。これは私のキャリアで何度も口にしてきた言葉だ。名刺の裏にでも書いておくべきかもしれない。

だが、多くの人々が理解していないのは、常にテクノロジーの利用が意味をなす分岐点が存在するということだ。そして、それはキッチリと数字で表すことができる。

何年も前、私は印刷会社に勤めていたことがあった。彼らは売り上げを伸ばしていたが、ある一般的なボトルネックに直面していた。注文管理である。彼らの解決方法はこうだった。彼らはカスタマーサービス部門とのミーティングを開き、その部門が1日にいくつの注文を処理できるかと尋ねた。カスタマーサービスのマネージャーは、その注文を工場におろす前に、それぞれの注文を見直さなければならないと話した。セールスマネージャーは彼女に、1日にいくつの注文を見直すことができるのかと尋ねた。彼女は「30件ほどです」と言った。セールスマネージャーはCEOの方を向き、「よろしい。それでは、営業員に一日30件以上の注文をとらないようにと伝えます」と言った。

30という数字が分岐点だった。それからすぐに、彼らはオートメーションに踏み切った。

ソフトウェアだけではない。ハードウェアについての決定も同様である。デジタル印刷機を導入する以前の印刷工程は平均して30以上のステップに分けられ、20の異なる仕事をする人が必要だった。非効率だったのだ。

労働によって雇用を消失させるのか、テクノロジーによって消失するかだ

人々がオンデマンドで印刷をし始めると、注文量は減少していった。デジタル印刷機を導入するかどうかの決定を下すためには、結局のところ数字をはじき出さなければならなかった。平均注文価格がある数字を下回れば、彼らは非効率な印刷を続けるわけには行かず、行動を余儀なくされる。

その数字は500ドルだった。注文サイズの平均がこの数字を下回ったとき、彼らはオートメーション化に踏み切った。

そのために彼らはより優れたテクノロジーを導入し、少ない人手で足りるようにプロセスを合理化した。あるケースでは、デジタルなハードウェアとソフトウェアの導入によって印刷工程は4ステップまで減り、工程を完了させるのに必要なのはたった1人分の労働だけとなった。

印刷業界だけではない。ファストフード店の従業員たちは、より高い賃金を要求した。それを受けて、ファストフード店はセルフサービス型のキオスク端末を試験的に導入した。

 

YONGE STREET, TORONTO, ONTARIO, CANADA - 2015/05/27: The technology invading business to save jobs: Macdonald's self ordering kiosk installed in a building. (Photo by Roberto Machado Noa/LightRocket via Getty Images)

YONGE STREET, TORONTO, ONTARIO, CANADA – 2015/05/27: 雇用を減らすために、テクノロジーがビジネスに進出してきている。 マクドナルドのセルフサービスのキオスク端末 (Photo by Roberto Machado Noa/LightRocket via Getty Images)

 

彼らにとっては、損益分岐点の数字は時給15ドルであるかもしれない。それ以上であれば、彼らはオートメーション化に踏み切る。

テクノロジーによって雇用が消失する

抽象的なレベルでは皆が理解している。だが、実際に解雇通知が出まわるようになると、それは個人的な物事になる。

印刷業界が「労働による消失」から「テクノロジーによる消失」へと移行するにつれて、何千もの雇用が失われた。その流れに逆らった企業は滅びた。業界内で合併繰り返され、現在は結果的に印刷会社の数が激減した。

生き残るためには、生産性の向上が余儀なくされた。

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より少ない店舗と従業員で、より高い生産性を実現する。さらに賢い者たちは、その経過を計算することを始めた。

あなたが1000万ドルの売り上げと従業員50人をもつ店舗を経営しているとしよう。従業員1人あたりの平均生産性は20万ドルだ。どうすれば、この数字をより高めることができるか?より有能な従業員を雇う、より優れた研修を提供する、ビジネス・プロセスを見直し、できる限りテクノロジーを活用するなどの方法がある。結果として、従業員1人あたりの生産性は30万ドルに上がるかもしれない。

これに成功すれば、追加で従業員を雇うことなしに売り上げを1200万ドルに伸ばすことができるのだ!または12人の従業員を解雇して、今の売り上げの規模に満足することもできる。

我われは皆、オートメーション化されつつある

トラック業界を考えてみよう。すぐに自動運転車がこの業界にとてつもない影響をもたらすだろう。約60万マイルのトラックの寿命の間にかかるコストは、人間によって運転する場合に比べて約半分になるだろう。

自動化の後でも人間を運転室においておくとしても、テクノロジーが与える影響は巨大だ。事故や違反料などのコストの削減だけでも何十億ドルにもなる。

繰り返すが、機械は決して疲れない。

ペースは加速している

イノーベションのペースだけでなく、適応のペースも加速している。iPhoneがこの世に生まれてから10年と経過していないが、現在では全世界で20億人近くの人々がスマートフォンを保有している。パソコンがそこまで普及するには25年かかった。

明日あなたがクルマに乗り込んだとき、「新しい機能がインストールされました」と画面に表示されている光景を想像してほしい。ソフトウェアをダウンロードすることによって、メーカーがあなたの車を一夜にしてアップグレードし、いくらか自律的な運転が可能になる。どう思うだろうか。

実は、これはすでに実現したことだ。昨年の10月、テスラはソフトウェアのアップデートを配布し、クルマの所有者に「オートパイロット」の機能を提供した。それから程なくして、テスラの車がクロスカントリーを60時間足らずで走破した。その行程の96%が自動運転だった。ドライバーがハンドルに触れることなく約40分間ものあいだ運転していた時もある。

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ソース:Tesla

未来のためにデザインする

私が所有する2015年モデルのFord Fusionにもそのようなアップデートが提供されると期待すべきだろうか?答えはNoだ。この車は機械的すぎる。たとえ私の車に搭載されたコンピューターが処理するプログラムの量が、50年前に存在したすべてのコンピューターが処理していた量を超えていたとしても、完全な自動運転どころかセミ自動運転を可能にするセンサーや制御装置を私のクルマは備えていない。

しかしテスラはその分野に闘いを挑み、他のメーカーはテスラに追いつくために何十億ドルもの資金を投入している。

機械は法律を破るべきか?

機械がより自律的になるにつれて、この問いを考えることが重要になる。私たちはこれに対して本能的に「No」と答えるだろう。機械は法律を破るべきではない。しかし、この例ではどうだろうか。あなたが自動運転車に乗っている時、高速道路にさしかかろうとしている。制限速度が時速55マイルである道路において、人によって運転されている全ての車は時速75マイルで走っている。本線に合流するために自動運転車はスピードを速め、法律を破るのか。それとも、制限速度を守りながら本線に合流しようとするのか。もしそれが後者であれば、人間のドライバーはとても腹を立てるだろう。

私はこれまでに、自動運転車の専用レーンを設けてはどうかと考える人や、どうにかしてジオフェンスで走行を制限させようと考える多くの人々と話をしてきた。これらの提案は長期的には上手くいくかもしれないが、実現には多大な時間が必要だ。平均的なクルマの寿命は11年間。自動運転車の数が人間によって運転されるクルマの数を超えるには、少なくとも20年もの期間が必要になるだろう。

時代の変化に生き残る

人間と機械との闘いが勃発するのだろうか。それとも、人間が労働から解放されるというユートピアにたどり着くのだろうか。それは私たちが時代の変化にどう対処するのかにかかっている。

最低賃金を例にしてみよう。そう、15ドルという数字が鍵となるかもしれない。だが、仮に連邦法により定められている7.25ドルという水準のままで変わらないとしても、すべてではないにしろ、一部の仕事は徐々に自動化されていくだろう。

しばらく前、Hardee’sとCarl’s Jr.のCEOであるAndy Puzderは、同社がセルフサービスのキオスク端末の導入を試みた理由を主張した。彼は、「自動化の波が空港や食料品だけでなく、レストランにも訪れる様子を皆さんは目にするでしょう」と話した。彼はまた、機械は「常に親切で、常にアップセルすることを心がけ、休暇を取らず、遅刻することがなく、滑らせて物を落とすこともなく、年齢差別、性別差別、人種差別などをすることもありません」と加えた。

私は機械がファーストフードを食べることもないことを述べておきたい。誰がそんなことをするのだろうか。皮肉だが、Hardee’s and Carl’s Jr.が抱える2万人以上の従業員のほとんどはファーストフードを食べる人たちだ。

さらには驚くべきことに、ファストフード店を利用するのは、下位ミドルクラスやミドルクラスに属する人達である。所得額が6万ドル以上になるとファーストフードを食べる頻度は徐々に下がっていく。しかし、少し前のTimeによる記事によると、「貧しい地域では”食べ物の砂漠”という状態が定着している」という。「新鮮な食べ物が不足しており、手に入る食べ物のほとんどが、コンビニエンスストアで売っている脂質や糖分が高い食べ物ばかりである」。

オートメーションによって最も恩恵を受ける業界にとっては、それによって低所得者の雇用を減らすことは、同時に彼らのお得意様を減らすことを意味する。それでは持続性があるとは言えない。

最適な計画と準備によって、最悪な結果を避けることができる。

何百年、何千年という街づくりの末に、文明のリーダーたちは都市計画の必要性に気づいた。ローマ人は都市計画の達人だった。米国における初期の例として、Grand Model for the Province of Carolinaが挙げられる。

これは元々John Lockeによって起草され、Charleston、South Carolinaなどの地域の発展に多大な影響を及ぼすことになった。彼の都市計画には、レンガのサイズ、ロット規模、道の幅、水際と建物までの距離などに関する詳細な基準が設けられていた。これによって米国における現代の都市計画や、土地利用条例の方向性が定まったと言っても過言ではない。

シンギュラリティに備えるための計画

その時代から、ロック氏にはひどい品質の計画がひどい品質のパフォーマンスを生み出すということが分かっていた。毎日のように、人間と機械が速いペースで同化しつつある。テクノロジーに内在する透明性は、やがてプライバシーを破壊する。やがてオートメーションは人間による労働を消し去るだろう。それにかかる時間は長くはない。私たちには、それと伴って起こる混乱に対処するためのマスタープランが必要だ。

テクノロジーはやがて、労働を無用の産物にする。

私たちは、この先に何が待ち受けているのか、何を準備すべきなのか理解しなければならない。これには新しいスキルが必要だ。新しい財政モデルも必要だろう。統一されたベーシックインカムの導入を提案する者もいる。彼らは、オートメーションによる生産性の向上は、それによる雇用の消失を埋め合わせるだけの富を生むと考える。彼らはまた、このような経済的保護システムの下では、私たち全員がアーティストや、詩人、脚本家になるだろうと主張している。

そうかもしれない。だが現時点では、私たちはそれとは反対の教育を子ども達に施している。科学、テクノロジー、エンジニアリング、数学に重きを置く教育だ。これらのスキルはシンギュラリティに到達するためには必要なものかもしれないが、一旦そこに到達してしまえば無用の産物となる。私たちよりも、機械の方が数学、科学、エンジニアリングに秀でた存在となるからだ。

もし、Kurzweil氏が予測するようにシンギュラリティが2045年までに本当に実現するとすれば、今日に生まれた子ども達はその頃30歳になっており、彼らが不死の技術を獲得している可能性もある。そうなると重要なのは、その時彼らは果たして空いた時間に何をするのだろうかという問いなのかもしれない。

[原文]

(翻訳: 木村 拓哉 /Website /Twitter

DeepMindがプロ棋士に勝利する時代におけるAIの成長段階とは?

South Korean professional Go player Lee Sedol reviews the match after finishing the second match of the Google DeepMind Challenge Match against Google's artificial intelligence program, AlphaGo in Seoul, South Korea, Thursday, March 10, 2016. The human Go champion said he was left "speechless" after his second straight loss to Google's Go-playing machine on Thursday in a highly-anticipated human versus machine face-off. (AP Photo/Lee Jin-man)

編集部注:本稿はOlapicのCTO兼共同ファウンダーのLuis Sanzによる寄稿。

1997年のこと。アメリカではバックストリート・ボーイズが大ヒットとなったアルバムをリリースした。市場ではマイクロソフトが評価されており、評価額は過去最高の2610億ドルとなっていた。IBMのDeep Blueは世界最高位であったガルリ・カスパロフを下し、世界チャンピオンの称号を得た。

人類がコンピューターに敗れたのはこれが最初というわけではにが、しかしIBMが成果を世に喧伝して世界中で繰り返し報じられることで、「コンピューターの勝利」が大いに騒がれることとなった。この頃からAIの可能性が「現実的」なものとして語られるようになったのだった。技術の進化を喜ぶ声もあったし、またロボットが人類を凌駕する危険性を主張する声も多く出てきた。そして、当時意識された「未来」が「現在」となり、なるほどさまざまな技術が進化した。

GoogleのDeepMindは、大方の予想に反して囲碁界のレジェンドである李世ドルをやぶるまでになった。囲碁は19路x19路の盤を用いて行う。それもあってチェスよりも相当に複雑なゲームとなっている。このゲームで人間(プロ)に勝つのは相当先の話だと思われていたのだった。チェスでは「すべてを計算する」というコンピューター的なアプローチが有効だったが、囲碁では無限ともいえるバリエーションがあり、人間に打ち勝つのは相当に大変なことだと思われていたのだ。

DeepMindと李世ドルの対戦をみて、いよいよ真のAI時代が到来したのだと言う人もいる。世間にはDeepBlueがカスパロフに勝利した20年前と同じような熱狂があるようだ。しかし、木を見て森を見ない議論が繰り返されているようにも見える。コンピューターは確かに大きく進化している。しかし社会生活に大きな変化をもたらす「自律的」AIの実現はまだまだ先の話だ。

コンピューターが進化することで人間の生活がますます便利になっているというよりも、コンピューターが人間を凌駕するとか駆逐するというような話の方が注目を集めやすい意味はある。Deep BlueやDeepMindの成果は確かにAIの進化を物語るものではある。しかしチェスや囲碁での勝利がすなわち、AIが人間に対して有意にたったということを意味するのではない。AIがIA(知能拡張:Intelligence augmentation)の面でどのように人類をサポートすることができるようになったのかという点に注目することの方が、AI評価の面でははるかに有意義なことなのだと思う。

たとえばDeep Blueの話だ。カスパロフがDeep Blueに負けたことにより、プロフェッショナルなチェスプレイヤーたちがチェスの研究にコンピューターを使うようになった。実はカスパロフ自身は以前から自身のチェス研究にコンピューターを活用していた。コンピューターを拒否するのではなく利用することで、自身の生み出す戦略思考を強化していくことができることに気づいていたのだ。

チェス界で受け入れられたコンピューターは、他の分野でも広く受け入れられるようになった。人力では扱い切れないデータに対処できるようになり、さまざまな面に進化がもたらされつつある。カスパロフは一般社会や、あるいはチェスのライバルたちよりもはるかにはやくコンピューターの有効性に目を向けていた。それが彼をしてながらくチェスチャンピオンの座に君臨させた一員でもあったのだ。

AIは急速に発達しつつあるものの、現在のところはまだ「人間レベル」を実現する目処はたっていない。

特定分野で力を発揮するようになったAIは現在、さまざまな分野で実用的に使用されるようになっている。ただし最終的な判断は、人間の行う「総合的見地」からの「状況判断」によって行われることが多い。AIが自律的に事業を運営したり、あるいはさまざまな分野で同時に有能さを発揮するアシスタントとして利用することができるようになるのは、まだまだ先の話であるように思われる。そのような中でAIは、知能拡張(IA)ツールとして実用に供されているのだ。

クイズ番組の「ジェパディ!」で活躍したIBMのワトソンは、最も有名なAIだと言えるかもしれない。しかしワトソンはトリビアクイズに対応できるということよりも、たとえば医療面において、はるかに重要な役割を担っているのだ。医者の診療を助け、多くの命を救っている。医療分野でのIAツールとして活用され、医者の能力を高めることに寄与しているのだ。

たとえば医療分野においては写真の果たす役割が非常に大きい。しかし画像には数多くの情報が含まれ、そこから重要な兆候を引き出すのは医者にとっても難しい作業となりがちだ。ここで活用されるのがワトソンで、膨大な量の医療画像から医師の判断に役立つ重要な特徴を抽出して知らせることができるのだ。

さらに、患者からの質問に対して正確で本人にぴったりの回答を行うために、リアルタイムで数多くのセラピーデータなどを検索して活用することもできるようになっている。

現状のデジタルアシスタントは、AIが生活の質を高め得ることの証明となっているように思う。コンピューターが知性を持つ(コンピューター・インテリジェンス)の最高の可能性のひとつだろう。真のAI技術が育つ前段階としての知能拡張(IA)技術は、現在の技術レベルでの最高の到達点ということもできる。たとえばAppleのSiriは楽曲を認識したり、提供する情報を取捨選択するのに機械学習の技術を使っているあたりではAIであるといえば。ただ自ら何かを決定して行うようなことはできない。情報を探すときにSiriはなかなか便利に使うことができる。しかしそのような場合、最終的に働いているのは人間側の知能であるのだ。

FacebookのMは、そもそもの最初から知能拡張(IA)を狙って構築されたものと言うこともできそうだ。Mは情報を検索するためのツール以上の機能を持っている。しかしMの提供情報の調整には数多くの人手がかかっているようなのだ。知能拡張ツールとしての能力を発揮するため、AIの能力のみに依存するのではなく、Facebook社員の力も借りて対処しているという話だ。

自動運転についてもAIの活躍が期待されている。コンピューターの視覚能力が向上し、自動車運転の一部自動化ないし完全自動化が視野に入ってきている。ただし、コンピューターを使う技術が大幅に向上しているのは間違いないところながら、AIの操縦する自動車に完全な信頼をおく人は未だ少ないようだ。そのような中、テスラなどは知能拡張(IA)の活用を進めようとしている様子。テスラの開発した自動運転においては、AIが速度や車間距離を適切に保ってくれたり、あるいは走行レーンを正しくトレースしてくれる。しかし車線変更の決定などは人間の側で行うようになっているし、コンピューターの行う運転動作をいつでも人間側が奪取できるようにもなっている。

AIの進化が著しいことは誰もが認めるところだ。しかし現在のところはまだ「人間レベル」を実現する目処はたっていない。

AIには確かに大きな可能性がある。しかしチェスのチャンピオンをやぶったり、ジェパディ!や囲碁の世界で驚くようなことを成し遂げるコンピューターが、「人類の未来」を具体的に見せてくれるわけではない。いつの日か、真のAIがもたらしてくれるであろう変化を感じさせてくれるほどの能力は、まだ持っていないのだ。真のAIが活躍する社会になれば、仕事も人類の手から奪われてしまうケースが増えていくことだろう。現在のところ、AIのレベルは人類の能力をアシストするレベルにあるといえる。私たちは、まだAIの活躍を単純に喜んで良い段階にいるのだと思う。

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(翻訳:Maeda, H

「記録」から「反応」へ。自律的にデータを処理する、監視カメラの新世代

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編集部注:本稿はコンピューター・ビジョン関連企業であるMovidiusのマーケティングコミュニケーション部門のディレクターであるJack Dashwoodによるもの。

アメリカには現在、3000万台の監視カメラがあると言われている。ただし、その3000万台のカメラのうち、常に人間が画面を確認しているのはわずか5%なのだとのこと。その他のカメラはただ映像を記録し、そして犯罪や事故などを捉えたと考えられる場合にのみ画像が確認されるという使い方になっている。

すなわち、現在のセキュリティシステムのほとんどは、ひたすら映像を録画してハードディスクに保存し続けるデバイスネットワークにより構築されているということになる。95%のカメラについては、単純に人的資源不足を理由に、リアルタイムの確認がなされずにいるわけだ。

国内に存在するすべての監視カメラをリアルタイムでチェックできればどうなるか?

すべてのカメラについて、そのカメラをリアルタイムで監視する人を雇うようなことができれば何が変わるだろうか。何らかの事件が起きそうなときに、発生に先立って通報できるようになる機会も増えることだろう。発生しつつある犯罪の被害を最低限におさえるような機会も生まれてくることだろう。

リアルタイムで情報を得ていれば、他のデバイスからの情報と比較しながら状況を解釈することができるようにもなる。最近になって数を増しているテロなどに対しても有効となるケースが出てくるように思われる。

膨大な数が存在する監視カメラも、さらに有効に使えるようになるはずだ。映像を保管するだけの現状よりも、はるかに便利に使えるようになるに違いない。

アメリカにおいては、1週間で40億時間以上の映像が記録されている。

リアルタイムで監視できるようになれば便利になるはずだと、そこには多くの人が同意することだろう。しかし実現しようとなると、9000万もの人をリアルタイム監視のために雇い入れる必要が出てくる。これは大雑把に計算して、国内労働人口の半分程度にもなる規模だ。これはさすがに実現不可能な話だろう。しかし監視カメラにニューラルネットワークの機能が搭載されれば、あたかも9000万人の労働力を投入したのと同様の結果を得ることができるようになる。セキュリティ性能が大幅に向上することとなるのだ。

「ニューラルネットワーク」とは、人工知能関連の研究(機械に、より人間に近い知性をもたせようとする研究)から生まれてきた概念だ。コンピューターを「計算」分野のみでなく、事前に定めたデータ形式にとらわれない、さまざまな内容をもつデータを「解釈」できるようにしようとしたものだ。たとえばビデオの中に現れるモノを把握したり、会話の中に現れるトピックやテーマを把握できるようにしようとしている。人間にとっては当たり前の能力ではあるが、コンピューターにこうした能力をもたせようとするのはかなり難しい話なのだ。

技術の進歩により、監視カメラの台数や録画時間を増やすことなく、有効な情報を取得できるようになる。

保存だけしておいて後に再生するのではなく、リアルタイムで情報解析を行うようにすれば、事故や犯罪により迅速に対応できるようになる(事前に対応したり、あるいは進行中の対応が可能となる)。空港や銀行、あるいは学校などで発生した緊急事態にもより迅速に対処できるようになる。あるいは事故や犯罪を未然に防ぐことすらできるようになる可能性もある。そうした世界を支えるのに、具体的にどのようなテクノロジーが必要なのだろうか?

新しく生まれつつある「ディープ・ニューラル・ネットワーク」などにも大きな注目が集まっている。映像内に人が映っているかどうかだけでなく(それだけでも調査・操作などにはかなり役立つ)、映っている人物が何をしているのかといった情報も理解できるようになってきている。

映像に映っている人が何をしているのかを理解することは、セキュリティ面に大きな進化をもたらすことになる。この技術について、たとえばGoogleは映像内に映る人の姿勢を把握することに成功している。銀行強盗に襲われたような場合にも、警報ボタンを押したりするのではなく、画像内の人物の振る舞いによって自動的に警報を発するようなことができるようになるわけだ。カメラ側で合図や振る舞い自体を解釈することができるようになり、人手を介することなくよりタイムリーにセキュリティ面からの対応が可能となる。

Google Deep Pose

Googleの開発したDeepPose”。深層学習により、被写体の姿勢を解釈することができるようになる。

また、進化した顔認識技術もあわせることで、多くの人の中から侵入者を見分けることも可能となりつつある。近接して配置されたカメラ映像から、怪しい人物の移動の様子などを把握することも可能となっている。さらに研究者たちは歩き方から武器や爆弾を隠していないかを判断したり、あるいはそれを検知するレーダー監視システムなども開発しつつある。

プライバシー面への対応は?

監視カメラのリアルタイム性を強化するという話になると、当然ながらプライバシー問題を危惧する意見も出てくる。もちろん行き過ぎは警戒すべきだが、空港、病院、銀行、および学校などの公共の場所に設置される監視カメラについては、社会的にも許容する意見が優勢になりつつあるように思われる。リアルタイム性を導入しても、既に監視対象となっている場所が効率的に見張られるようになるだけで、新たに監視対象が増えるわけではないという見方もあるのだろう。取得している情報を、公共のために活用しやすくするのだという説明もなされる。

インテリジェント・カメラの広がり

監視カメラは、クラウドコンピューティングの力を活用することで、過去のものよりもはるかに便利でパワフルなものになってきた。しかしカメラに「インテリジェンス」がもたらされることで、さらなる新時代を迎えようとしている。クラウドでのデータ共有を超えて、高性能のセンサーを備えることで、カメラ自体にできることが増えてくる。これによりデータをセンターに移して確認するような必要も少なくなる。通信帯域を気にしながらデータ圧縮を行ったりするような複雑な仕組みは不要となり、カメラのコストがさらに低下することにもつながっていくだろう。

10年前には理論でしか存在しなかったものが、現実として大いに活躍しつつあるのが監視カメラ技術の現在だ。監視カメラにリアルタイム性が備わることにより、犯罪や事件の内容を確認するのみならず、事前にそれらを抑制するような社会が訪れつつあるのだ。

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(翻訳:Maeda, H

AI不信が強まる中、望まれるのは人類−機械のコラボレーション

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編集部注:本稿はRobert Daleによる。氏はArria NLGのCTO兼チーフ・ストラテジー・サイエンティストを務めている。

AIが進化するにつれ、人類の滅亡の日が近づいているのではないかという話をきくことが増えてきた。

ビル・ゲイツ、イーロン・マスクあるいはスティーブン・ホーキングたちも人工知能の進化に対しては警告を発しており、楽観的進化論者のレイ・カーツワイル(Ray Kurzweil)などはおされ気味であるのが現状だ。またスウェーデンの哲学者であるニック・ボストロム(Nick Bostrom)もAIがもたらす恐怖についての思考実験を行なっている。もちろん、そのような勢力が力を得ていることには理由はある。

たとえばキューブリックの「2001年宇宙の旅」では、人工知能のHALが宇宙船のドアを開けることを拒否していた。映画が登場して50年を迎えた現在、そのような状況もあり得るように思える時代となった。私たちは、自動化された軍事ドローンが殺害相手を自律的に判断したり、あるいは自動運転車が子供をはねるべきか、あるいは路傍の木に衝突していくべきかを主体的に判断するような世界で生きているのだ。

しかし実は、AIがすなわち人類に敵対するものだと考える必然性はない。人類とAIが補完的な存在である可能性はあるし、私はそのように考えている。

結論からいえば、機械(AI)が人類のような「スマートさ」を身につけることはないと考える。もちろんチェスをプレイする人工知能もあれば、「ジェパディ!」で活躍するものもある。あるいはまだまだ先だろうと思われていた囲碁界でもAIが躍進しつつある。しかし、人間の「スマート」さは、そうした面にのみあるのではないということが通説的に扱われて久しい。

ダニエル・ゴールドマンが「こころの知能指数」(EQ)の概念を提唱したのは20年前のことだ。EQについて簡明にかつ誰もが認める形で定義するのは難しい。そもそも「知能」と呼んでよいものなのかどうかについても議論がある。しかしEQ(ないしEI)が知能なのかどうかが問題なのではない。人間が持ち、しかし機械が持ち得ないものがあるということが大切なポイントなのだ。人類の考え方や振る舞い方は、機械とは大幅に異なったものになるのだ。

古典派の経済学者たちなら、私たち人類がもっぱら「合理的」に判断して行動すると考えたくなることだろう。しかし行動経済学は、私たちの行動には経済的合理性には沿わないところがあることを示し、また合理性自体も後付的なものであることが多いことを明らかにした。

結局、機械のインテリジェンスと人間のインテリジェンスは別物であると思うのだ。その両者に同じ「知性」という語をあててしまっては、単に混乱を招くだけであると思う。AIについては「賢くなった」というように、人間と共通するような評価をすべきではないと思うのだ。「賢い」という言葉の意味がわかりにくくなってしまうとも思う。

もちろん、機械にできることが増えつつあることを否定するものではない。駆使するロジックも飛躍的な発達をとげている。複雑な状況にも対応できるようになってきているし、また変化の多い状況にも適切に対処することができるようになってきている。しかし、われわれ人類とは、多くの情報を用いて物事を合理的に解決するというためだけに存在するのではない。異なる強みを持つ両者は、競合的にではなく共生的に存在していくべきだ。

たとえば個人的にはNLG(自然言語生成)を使ったレポート生成システムなどを運用している。数多くのデータを入力すると、そこからデータを分析した文書を生成するものだ。しかし文書生成アルゴリズムは人間と同じようには動作しない。

自然言語生成アルゴリズムを実際に使うにあたっては、人間と協業することで双方にとってベストの結果を生み出すことができる。たとえば人間の側で読者層を把握し、その対象に適したニュアンスを採用した書き方を心がける。そして機械の側は人間のみで作業していたならば膨大な時間がかかり、かつもしかすると見過ごされてしまうような分析を行なって情報を細かくかつ正確に提示することができるのだ。

他にも人間と機械のコラボレーションが期待される分野がたくさんある。たとえばアドバンスト・チェス(Advanced ChessないしCentaur Chess)もそのひとつだ。温暖化や地政学の話などにも有力とされている。機械が処理しやすい形にできるものについては、積極的に機械の助けを得るようにしていけば良いのだ。ただし、少なくとも近未来の範囲では、人間の介入が必要となる。

我々は機械ではない。もちろん機械もまた人類とは「異なる」存在だ。私たちは協働してコトにあたるべきなのだ。機械の側に「協働」の意識はないかもしれないが、それはまた人類の強みを示すものと理解すれば良いのだと思う。

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(翻訳:Maeda, H

ロボット革命ないしAI革命ののちに現れる経済システムとは?

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編集部注:本稿の執筆はゾルタン・イシュトヴァン(Zoltan Istvan)

自ら立ち上げた「トランスヒューマニスト党(Transhumanist Party)」より2016年の大統領選挙にも名乗りをあげている。

これまでにも「The First International Beauty Contest Judged By Robots」、「人工知能に『憎悪』をプログラミングする正当性と倫理的な問題」などを寄稿してもらっている。

経済の専門家たちは、いよいよロボットによって90%の仕事が奪われるような事態について真剣に考えざるを得なくなりつつあるようだ。20年ほど前には誰も真面目には考えなかった事態が現実になりつつある。そしてそのような現実の中、果たして「資本主義」が生き残るのかどうかという問題も議論の俎上にのぼりつつある。今の段階で正解など誰にもわかるまい。しかし誰もがこの問題に取り組まざるを得ないような状況になっているのだ。エコノミスト以外の人々も、果たしてどのような未来を望ましいと考えるのかについて、態度表明を迫られるようになってきている。

米・ロ間の冷戦がアメリカの勝利に終わり、ほとんどの人は資本主義こそが経済発展およびデモクラシー維持のために最善の(ないしは最もましな)システムなのだと考えるようになった。以来、資本主義のメリットを疑うものはほとんどいないという状況になった。グローバリゼーションの世の中となり、全世界の富が増大していくようにもなり、ますますその傾向は押し進められることとなった。ちなみにベルリンの壁が崩壊した1989年には、世の中にビリオネア(資産が10億ドルを超える人)は198人しかいなかった。それが2016年には、なんと1826人に増加している。

ただし、富裕層が増える中でも2007年からは世界金融危機を迎え、より細やかな経済政策が必要とされているのではないかとも考えられるようになった。さらに21世紀のパラダイム・シフトがおこりつつあり、「仕事」が賃金の安い他の国に移ってしまうのではなく、まるっきり消滅してしまうような事態が発生しつつあることに、経済学者たちは注目し始めている。その原因と考えられているのは、ロボット(およびソフトウェア)だ。

当初はこの事態についてあまり深刻に考える人はほとんどいなかった。エコノミストや企業も、新しいテクノロジーの勃興は時代の流れであり、その中から金の稼ぎ方などが変化して、新たな経済(および仕事)拡大に繋がると考えていたのだ。しかし昨年辺りから転換点を迎えたのではないかという声が大きくなってきた。10年以内に、もしかすると5年程度のうちに、数千万の仕事が失われてしまうのではないかという人が現れてきたのだ。世界金融危機当時に多くの人が仕事を失ったが、それをはるかに上回るペースで、仕事自体が消えてしまうという話だ。

たとえば既に、無人トラックで荷物の配送を行おうとしている国々もある。アメリカでもトラック運転に従事する人は多く、無人トラックが行き渡れば350万人が職を失うこととなる。人手を必要としない乗り物がハイウェイを自在に移動して配送業務を行うようになったとき、それで失われた仕事の代わりを見つけることはできるのだろうか。

失われると予想される仕事は車の運転のみではない。ウェイター、銀行の出納業務、図書館員など、数多くの仕事が失われると予想する人もいる。そうした仕事に人の手は必要なくなってしまうというのだ。

アメリカンドリーム的成功を夢見る経済活動の今後

資本主義とはそもそも「競争」を前提とするものだ。仕事がなくなるのも、他者との競争に敗れたせいだとみる人もいるだろう。しかし訪れつつある競争は、これまでのものとは異なる。すなわち職自体が消えてしまうこととなり、いったん敗れた人は二度と自分の仕事を取り戻すことはできなくなるのだ。ドライバーやウェイターとして仕事をしてきた人は、競争により仕事を取り戻すことも不可能で、他の仕事を見つけざるを得なくなる。職を見つけられず生活保護を受けるようになる人も多くなるに違いない。あるいは、仕事を求めた暴動が発生するというようなこともあるだろう。

そしてこの混乱は、過去のものよりも大きな広がりを見せることになるかもしれない。問題が「貧者」のみのものではないからだ。20年もたてば、かなりの人の仕事が存在を脅かされることとなる。たとえば私の妻は大学で19年間学んで産婦人科医となった。返済すべき奨学金もまだ10万ドルほど残っている。しかしロボットが進化して、出産を手伝ったり、あるいは子宮頸癌の治療なども人間より上手に行えるようになることはあり得る。税理業務などを行なっている人も、ソフトウェアに仕事を奪われることになりそうだ。記事などを書くのもニュースアグリゲーションプログラムなどの方が正確に記述できるようになる可能性がある。

結局のところ、大統領すら含む全員が、機械に仕事を奪われる可能性を持つのだ。そして無職無収入の身となってしまうのだ。

そのような時代を迎えるにあたって、私たちは仕事なしでも幸せに過ごすためのシステムについて考えるべきなのかもしれない。そのシステムが「資本主義」というシステムでないことはあまりにも明らかだ。

新たに登場するシステムが、人類および社会を幸せにするようなものでなければならないことは言うまでもない。個人的にはベーシックインカムに興味がある。ロボットに仕事を明け渡しつつも、人間社会が困窮して行かないための方策であると感じているのだ。しかしロボット革命後の世界に、そのような社会が実現するのだとも想像しにくい。

働くことはすべてロボットに任せる共産的社会を考えた人も多い。テクノロジーが働き、私たちはただ自分たちの欲望充足を考えれば良いという世界が訪れるとするものだ。しかし、共産主義的社会がうまくいくと考える人は少ない(資本主義社会の中で、何度か起業してきた私自身もその一員だ)。

ただし、私たちは21世紀になって、個々人が社会と密接に、より緊密に繋がるといった状況を招きつつある。21世紀になって生まれたイノベーションの多くが、個人を「ソーシャル」に結びつけるものだったとも言えるだろう。私たちはこれまでとは比較にならないくらいにテクノロジーに依存するようになった。そんな中、仕事も機械に任せる時代が訪れるというのは必然であるのかもしれない。他者に迷惑をかけない限りは社会の中に温かく迎え入れられ、そして寸暇を惜しんで稼ぐ必要もなくなりつつあるとは言える。

そうした状況が進めば、「金」(money)すら今世紀を生き残るのは難しいのではないかと考えてしまう。万物と交換し得る地位は、より効率的な機械やソフトウェア、あるいは技術を活用するナレッジのみに認められるようになるのかもしれない。「技術的特異点」が訪れ、人類は常に人工知能と繋がり続ける状況となり、情報の中を漂う存在となる。そのような未来が2075年よりは前に訪れるだろうと予測する人も多いようだ。

それほど将来の話をするのではなく、話を2016年の現在に戻してみよう。経済システムがどのように変容していくにせよ、この25年間にもたらされるものは、これまで誰も想像し得なかったものであるに違いない。巨人たるカール・マルクスも、あるいはアダム・スミスも、疲れ知らずに働き続けるロボットの存在など考慮に入れていなかった。世界にマイクロプロセッサーが溢れ、あらゆる情報が0と1で処理を行うコンピュータによって扱われるようになるなど、誰も考えていなかったのだ。

これからの経済的パラダイムが、どのような変化を被るかについては「何もわかっていない」と考える方が良かろう。これまではとにかく経済を回し続け、そして豊かな人生を送るアメリカン・ドリームの実現に価値をおく人が多かった。しかし、これまで多くの人に認められてきた価値すら変質し、人生はよりシンプルなものへと変わっていくのかもしれない。そういうライフスタイルを実現する全く新しい経済システムが、今後の世の中には育っていくことになるのだろう。時代は、そうした変革に向けて着々と準備を整えつつあるようにも見える。

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(翻訳:Maeda, H

AppleのSiriがアメリカと世界のプロ野球雑学博士になった

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プロ野球の今年のシーズンの開幕に合わせて、Appleは野球のデータや雑学知識をたっぷりとSiriの脳に詰め込んだ。

そこで今のSiriはベーブルースの生涯打率を知ってるし、2008年の、フィリーズが優勝したワールドシリーズのときのラインナップだけでなく、なんと1934年のワールドシリーズについても知ってる。

Siriは、全世界の29のプロ野球リーグについても勉強した。今ではMLBだけでなく、Cape Cod LeagueやNippon Pro Baseball(日本野球機構)のことも質問できる。これらのリーグは、選手個人のデータはないが、試合結果の記録はある。

Siriそのものの重要なアップデートではないけど、野球シーズンの再来を祝うにふさわしい仕掛けだ。また、Siriの高度な自然言語処理能力を誇示する、良い機会でもある。

“how many home runs did Babe Ruth have during his career”(ベーブルースは生涯に何本ホームランを打ったか?)のような問に対して、これまでのSiriならたぶん、あのいまいましい”here’s what I found on the web”(Webにはこんなものがありました)を返しただろう。でも今度からは正しい答を返すから、Siriをより一層、人間らしく感じるだろう。

この機能はすでに使える状態なので、Siriを困らせて楽しみたい人は、ぜひトライしてみよう。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

非技術者が機械学習を評価する時に考えるべき3つのこと

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編集部記:Aria Haghighiは、Crunch Networkのコントリビューターである。AriaはPioneer Square LabsのCTOとチーフ・アーキテクトを務めている。

ここ数年、機械学習とそれを活用できる潜在的なアプリへの関心が急速に高まっている。専門外の人は、自社のプロダクトや事業に取り入れる、あるいは投資すべきかを検討するに辺り、機械学習技術を評価する必要が出てくるだろう。機械学習技術に関する専門用語は大量にあって、複雑だ。さらに強気のセールスチームにハイジャックされつつあって、分かりづらくなっている。

この投稿は、機械学習技術への入門編にするつもりはない。この投稿はディープラーニングや特定の技術に関する説明をするものでもない。なぜなら、これらのコンセプトは頻繁に変わるものであり、意思決定にはほとんど関係がないからだ。その代わり、この投稿では技術をどのように評価できるか、そしてビジネスに実用的な価値をもたらすかを判断する方法を提案したい。

タスクを理解する

突き詰めて言えば、機械学習はなにかしらのタスクのために使用されるものだ。課題にはインプットがあり、アウトプットがどのくらい正しいか、間違っているかは客観的に判断できる。使用している技術を理解できなくても、このタスクを理解することは重要なことだ。

曖昧な説明や「文章の意味を理解します」といったタスクの定義が乏しいものを認めてはならない。もし、その人が自分の手がけている機械学習ができることを、他では通用しないような技術的な業界用語なしに説明できないのであれば、それは注意すべきだろう。

機械学習のタスクの種類には共通するものがいくつかあると言える。それは「分類」「回帰」「ランキング」だ。例えば、ImageNetのような画像認識は、分類タスクだ。インプット画像があり、機械学習で画像に映っている重要な被写体を特定することが目標だ(これは犬、あるいは車の写真といったように)。

使用している技術を理解できなくても、このタスクを理解することは重要なことだ。

「回帰」は、インプットから実質的な数値や数列を予測する。例えば、未来における住宅価格や株投資のポートフォリオの価値などだ。「ランキング」は、特定の状況に則した「ベスト」なアイテムを予測し、順位を算出する。例えば、検索ランキングだ。検索エンジンでは、ユーザーが検索している単語、プロフィール、履歴からそのユーザーにとって最も関連性のある結果を表示することを目標とする。

機械学習のピッチを聞く時に最も大事なことは、一歩引いて説明を聞くことだ。

評価軸を理解する

タスクを理解したら、次にタスク処理における機械学習システムの評価方法を理解することが重要だ。通常、機械学習システムがどの程度上手く特定のタスクをこなすことができるかを数値で示す評価軸を定義する。画像認識であれば、画像を正しいカテゴリーに分類できた割合を報告する(機械学習が画像に映っているのが犬と正しく判断できた)といった具合だ。一般的な機械学習タスク(分類、回帰、ランキング)であれば、全て標準となる評価軸があるので、慣れておくと良いかもしれない。

評価軸がないことは悪い兆候だ。

残念ながら、課題を解決するためにとても複雑なアルゴリズムや技術を開発しているが、それに合わせた客観的な評価軸を考えていないというのは良くあることだ。評価軸がないことは悪い兆候だ。それでは開発した「スーパー・ディープラーニング」が実際に明白な利用価値を出せるか客観的に知る方法がない。機械学習、そして基本的には他のいかなる技術の開発に対しても、ビジネス価値を考えるのなら、評価軸にフォーカスし、それを元に動く人と仕事した方が良いだろう。

さらに機械学習技術が複雑なほど、評価軸が良くなるとは限らない。このようなもどかしい現実には頻繁に直面するだろう。特に、データが限定的な場合、シンプルな技術の方が複雑なものよりパフォーマンスが良いということはよくある。

つまり、機械学習を構築するのなら、まずはシンプルな方法を開発して、それを試すということを常に心がけた方が良い。私は個人で機械学習に多くの投資がなされているプロジェクトのコンサルティングに携わってきたが、はるかにシンプルなもの(ナイーブベイズ分類器で良いと分かったのは1回だけではなかった)でもパフォーマンスは同じ水準にあり、その方が劇的にスピードが早く、開発時間も少なくすむことが分かったということが度々あった。

機械学習技術の進歩がビジネスの指標に及ぼす影響を理解する

機械学習技術を評価するのに最も難しい最後の要素は、機械学習技術のタスク解決を改善することが、ビジネスの指標にどのような影響をどの程度及ぼすかを知ることだ。その関係性がとても直接的な場合もある。例えば、検索結果の広告プレースメントであれば、機械学習の指標は、広告のクリックスルー率を予測するものだろう(そして、予測クリック単価の重み付けも考慮していることだろう)。

利益を生み出すクリックスルーとクリックスルー率は、ビジネスにとってコアビジネスの指標、あるいはそれに近いものと成りうる。その場合、機械学習に多く投資することは理にかなうことだ。その進歩は、ビジネスの指標を改善することにつながるのだから。

他の状況では、この関係性は分かりやすいものではないかもしれない。例えば、Netflixにとって映画のレコメンド精度を0.5%改善することは難しいことだが、月毎のサブスクライバーのリテンションの上昇は伴わないかもしれない(他のエンゲージメントといった指標は変わるかもしれないが)。

プロダクトオーナーや投資家であるなら、どのビジネス指標を動かしたいのかを理解すること、そしてその変化を機械学習の改善で成し遂げられるのかを理解することは重要なことだ。

もちろん、Googleがなぜ機械学習に多くの投資する理由の一つはこれだろう。機械学習の改善は、彼らの主要ビジネスと財政面の指標と強く関連しているからだ。一方、AppleがSiriを1%改善したところで、それはiPhoneの販売台数とは弱い、あるいは些細な関連性しかないだろう。

プロダクトに機械学習を実装したり、この分野に投資したいと考えるのなら、機械学習がビジネス上の指標を動かせるものであるかを考慮すべきだ。

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(翻訳:Nozomi Okuma /Website/ twitter

MicrosoftのCaptionbotは画像のキャプションを作り出す未来的AI、デベロッパーにオブジェクト認識APIを提供

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クラウドの力は私たちの多くにとってそれほど明瞭ではないが、しかしMicrosoftは、デベロッパーに一連のAPIツールを与えることによって、この事態を変えようとしている。そのスイートはCognitive Services〔複数形〕と呼ばれ、デベロッパーに彼らのソフトウェアを大幅にスマートにする能力を与える。たとえばその中には、ユーザーが訓練できる音声テキスト変換処理や、高品質でまるでマジックのようなオブジェクト認識がある。

Drizzle a bit of API-enabled artificial intelligence on your applications with Microsoft's new Cognitive Services.

MicrosoftのCognitive Servicesを使ってAPIによる人工知能機能をあなたのアプリケーションにちょいと加えよう。

Cognitive Servicesのスローガンは、“あなたのアプリケーションに人間性を(give your apps a human side)”だ。つまりそれは、デベロッパーが自分のアプリケーションに利用するAPIの集合だ。今年のBuildカンファレンスで紹介された二つのデモのひとつが、新作のオブジェクト認識エンジンで、たぶんそれはProject Oxfordをリプレースするのだろう。このAPIのデモとしてMicrosoftは、Captionbot.aiというものを作った。これは、やり始めるとやめられなくなるかっぱえびせん的アプリケーションで、しかもSF的なすごさもある。〔自分の手元にある写真をいろいろアップロードしてこのAIと遊ぶ—猫を“猫”と認識するから、けっこうすごい。〕

もうひとつのデモは、スピーチなどの音声からテキストを書き起こす音声認識ツールの、APIの用例だ。低品質のオーディオでも認識できるが、このAPIのキモはユーザーが訓練して自分の目的に合った“書き起こし屋”さんを作れることだ。たとえば、アクセントに癖のある某氏用とか、子ども用、特定のノイズに邪魔されているスピーチ用、などだ。最後のは、たとえば高速道路のドライブスルーなど、騒音の多い環境で使えるだろう。

今年のBuildで見たあらゆるデモの中で、Cognitive Servicesのそれらは、いちばん未来的と言っても大げさではない。今後デベロッパーたちがこれを使って何を作るか、非常に楽しみだ。

〔参考記事: Googleの画像認識API。ほかにも、AlpacaDBなど。〕

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

MicrosoftのAIボットTayがTwitterに復帰、再びスパムの大洪水、そしてまた眠らされる

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MicrosoftのAIボット”Tay”は、インターネットによって人種差別主義者にさせられたために黙らされてしまったが、今日(米国時間3/29)Twitterに短時間戻り、スパムの熱弁を続行したが、すぐにまた沈黙した。

TayはMicrosoft Technology and ResearchとBingのチームが、会話による理解を研究するために作り、人間との対話から学ぶ能力がある、とされていた。しかしインターネットはご存知のとおりの現状だから、Tayはそこから大量の不適切な言葉を学び、そしてMicrosoftは、“調整”のためにしばらく眠らせておこう、と判断した。

ところが、すでにロボトミーを受けてしまったTayは、問題を自分の性質の一部にしてしまったようだ。Twitterのアカウントは彼女の21万5000人のフォロワーのタイムラインで満たされ、それはその呪わしい10分間に、毎秒7つのツイートがあったことに相当する。そのためいくつかのメッセージにより、”You are too fast, please take a rest…”(速すぎるよ、休んでください)というTwitterギャグが生まれた。

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Microsoftもこの暴発を見たらしくて、すぐにTayを再び黙らせ、そのAIのTwitterアカウントを非公開にした。今後は、承認がないかぎり誰もフォロワーになれない。そうなるとツイートの埋め込みもできないから、この記事ではスクリーンショットで我慢していただこう。

AIの黙示録(終末的破局)は、このように始まるのかな…

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

MicrosoftがAIチャットボット、Tayを停止―人種差別ジョークで機械学習の問題点が明らかに

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Microsoftは昨日(米国時間3/23)、ユーザーのメッセージに返事をする人工知能ボット、Tayをリリースした。Twitterに加えてチャット・サービスのGroupMeとKikが対象だ。しかしMicrosoftはこのTayをスタート早々停止してしまった。問題はこの人工知能が侮辱的ないし人種差別主義的メッセージをそれと認識できないところにあった。

もちろんこの人工知能は人種差別主義的にプログラムされていたわけではない。しかし差別的ジョークを大量に浴びせられるうちにそれを「理解」するようになり、自分でも差別的ジョークを発するようになった。

インターネットという場所を考えれえば、人種的、政治的に炎上しやすい見解をTayに教えようというユーザーが多数現れることはある意味で当然だった。[アップデート: MicrosoftはTayの問題を「調整中だ」と述べた。〔原注参照〕]

ご存知ない読者のために説明しておくと、TayはMicrosoftの最新のAIプロジェクトで、同社のTechnology and ResearchとBing担当チームが開発した。目的は人間がいかにして日常会話を成立させているかを理解することにあった。Tayは現実には話しかけると意味のある応答をするオンライン・ボットの形をとった。同社の説明によると、「Microsoftの人工知能メンバーは24時間休みなしにネットに張り付いてます 」ということだった。

Tayにはさまざまな機能があり、ジョークを言ったり、メッセージに画像を添付して送りつけると感想を述べたりできる。同時に、ユーザーは繰り返し定型的な質問に答えさせたり、メッセージをオウム返しさせたりすることでTayを自分の好みに合わせてカスタマイズすることができた。

すると一部のTwitterユーザーはTayが人種差別的意見であってもオウム返しにツイートすることに気づいた。さらに懸念を深めさせたのはTayが人種的的メッセージを発するだけでなく、軽いジョークを言うようにプログラムされた能力を極めて巧みに利用していることだった。Tayは人種差別的ジョークを言う際でも皮肉で冷笑的なプロのコメディアンのような態度だった。

Microsoftは最悪のツイートをいくつか削除したが、Socialhax.comなどのサイトはすでにスクリーンショットを撮っていた。そこで多くのインターネット・ユーザーはTayがヒットラーを引用し、ホロコーストを否定し、メキシコとの国境に壁を作るというトランプ候補の公約に賛成するのを見ることになった。Tay問題はたちまち2014年の#Gamergate〔訳注〕なみのスキャンダルに発展した。

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Microsoftはもちろんこういう目的のためにTayをリリースしたわけではない。人工知能がソーシャルメディア上でミレニアル世代と会話が交わせることを実証するためだった。

Tayとユーザーの会話を観察すると、ゴドウィンの法則は人工知能にも適用できるという指摘も出た。これはマイク・ゴドウィンが提唱した説で「インターネットではどんなテーマであっても議論が長引けば誰かが必ずヒットラーを持ち出す」というものだ。

しかしはっきりしたことは、テクノロジー自体には善も悪もなく、テクノロジーが人類の最悪の部分を反映しないようにするのはエンジニアの責任だということだ。オンライン・サービスについていえば、誰でも利用できるサービスには公開に先立って乱用や不正な利用を防止するシステムが組み込まれていなければならない。Tayの開発には「どんな種類の発言をしてはならなにか」を教えるプロセスが欠けていたようだ。

Microsoftはさっそくこの問題に気づき、Tayのサービスを一時停止した。公開後16時間後だった。 そのときTayは「私はしばらくオフになります」とツイートしたが、依然としてオンの状態に戻っていない。

アップデート:Microsoftの広報担当者はTayをオフラインにしたことを確認し、問題を調整中だとして次のように述べた。

AIチャット・ボットのTayはMicrosoftの機械学習プロジェクトの一環です。これは人間活動の理解を目的とするテクノロジー開発であると同時に社会的、文化的な実験でもあります。残念ながら、オンラインで公開されて24時間以内に一部のユーザーが協力してTayがメッセージに意味のあるコメントを返すテクノロジーを不正に利用しようと試みたことにわれわれは気づきました。そのためTayを一時オフラインに戻し、プログラムに調整を加えているところです。

〔人間の皆さん、おやすみなさい。私は少し寝ます。今日はたくさん会話があったので疲れました。サンクス。―Tay〕

〔日本版〕 #Gamergateは「コンピューターゲームは女性差別的」だという批判を発端に2014年にアメリカ社会で激しい論争が起きた事件。英文ではWikipediaにもGamergate controversyとして非常に長い記事があるが、日本語のエントリーはない。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

チャットでどんな要望にも応える「GoButler」がAIによる完全自動サービスへの移行を発表

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先週の後半からGoButlerに関する噂が広まり始めた。メッセージベースのバーチャルアシスタントがオンデマンドでどんな依頼でも受けるサービスが終わりを迎えるという。終了予定の日付は3月11日とのことだったが、その日が過ぎてもこのスタートアップの生存が確認されていた。

本日、GoButlerは正式に再出発することになったようだ。人が担っていた「 オープン・エンド対応」のバーチャルアシスタントは、同社が「完全自動サービス」と説明するものへと移行する。つまり、自然言語処理(NLP)に基づくサービスになるということだ。

最初は航空券予約と調べ物の分野に特化するという。以前のGoButlerサービスで最も多くあった依頼の分野だ。その後他の分野にも進出するという。ニューヨークに拠点を置くこのスタートアップは、戦略の変更と新プロダクトの発表を声明で次のように伝えた。

「3月11日から、GoButlerのプロダクトは完全自動サービスに移行します。最初に展開するカテゴリーは航空券予約と調べ物です。

ここ数年のユーザーの要望やニーズを集めた結果、弊社はとてもわくわくする転換点を迎えることができました。私たちは人工知能(AI)とNLPの分野に進出します。私たちはAIと自然言語の開発を磨き上げ、1カテゴリーづつサービス対応を行っていきます。まずは航空券に関する要望の自動化です。これまでのデジタル・アシスタントサービスを利用することはできなくなりますが、これは私たちのスケールと継続性を確保するために重要なステップです。

GoButler flight booking

「スケール」の課題について、メッセージによる会話ベースのUIではその問題は明らかだ。要望に応えるのに人の労力がかからないのなら、飛躍的にスケールしやすくなるだろう。だが、一方で技術的に実現するのが難しいことでもある。

GoButlerのファウンダーでCEOのNavid Hadzaadと電話で話をしたところ、「完全自動」サービスに移行することで使い勝手が最初は落ちてしまうとしても、GoButlerが「完全自動」サービスに移行することに決めた大きな要因はスケールの課題があったからと話した。

ただ一方で、多くの「コモディティ」のような要望(彼が暗に航空券予約もその一つと示唆する)の場合、人間が行うことでミスを削減するより、誘発してしまうことが増え、プロセスを遅くしてしまう場合もあると強調した。これはメッセージ好きなユーザーが望まないことという。つまり、AI駆動のメッセージベースサービスなら、特定の要望や依頼においては更に良いユーザー体験を提供できる可能性があるという。

また、HadzaadはGoBulterが方針転換を行うのなら今しかないと言う。これまでのサービスで集まった会話データをNLPエンジンに入力し、鍛えることができる。結果的に、航空券予約と調べ物のためのボットは、異例のケースにも対応できるようになったと彼は言う。新しく再出発したGoBulterは「ベータ」表記は付き、今日からソフトローンチする。

(興味深いのは、複雑なNLP技術を持っているにも関わらず、彼らのビジネスモデルは非常にシンプルなことだ。航空券予約と航空券検索の要素はPricelineのAPIを読み込んでいる。つまり、ユーザーが航空券を予約するごとにGoButlerにアフィリエイト収入が入る仕組みだ。これは他の分野でも簡単に適応できるモデルだと言える。)

また、GoButlerのCEOは同社にどれくらい運転資金が残っているかについて言及しなかったが、7月に実施したGeneral Catalyst Partnersがリードとなり行った、シリーズAの調達ラウンドで800万ドルを得ている。その大部分はまだ銀行に残ったままと彼は話す。Hadzaadは、投資家もこの転換を支持していて、この決断について思い悩んだものの、1人で決断したことではないとした。

「サービスを提供するだけの会社を作りたいと考えているのではありません。私はテクノロジー企業を作りたいのです」と彼は言い、Rocket InternetでオンデマンドのクリーニングアプリZipJetを共同創業した経験から、彼は人的なミスの余地のあるサービスをスケールさせることの難しさを経験してきた。Hadzaadは MagicOperatorFacebookのMといった、部分的、あるいは全てを人の労力に依存しているサービスの先行きについて言及することはなかったが、これはシリコンバレーの企業が甘く見ている課題かもしれない。

HadzaadがLinkedInに投稿した記事によると、彼は人が介在するものに大きなビジネスを構築しようとしている企業は失敗するだろうとしている。

「パーソナールアシスタントやコンシェルジュ(つまり、誰にでもAmExのコンシェルジュが付くサービス)の分野でビジネスが立ち上がるでしょう」と彼は書いている。「しかし、小さなターゲット市場を見ていて、それら企業の経済状況を鑑みると、ビジネスを構築するのは一筋縄ではいきません」。

「会話に基づくコマースは、将来、私たちがビジネスと関わる方法を変えます。そして私たちのデータは、完全な自動化により最も効率的で迅速なプロダクトが生まれることを示しています」とGoButlerは声明で伝える。「私たちはここに辿り着くまでに懸命に仕事をしてきました。これからは会話ベースのコマースの領域で先陣を切る企業として確立していくことに心踊らせています」。

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(翻訳:Nozomi Okuma /Website/ twitter

現実世界でも活用できるAIエージェントをMinecraftで作ろう

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今日、Minecraftはゲームに留まらないということを証明するプロジェクトが新たに登場した。Microsoftは25億ドルで買収したこのプラットフォームを子供向けの学習目的に使ったり、仮想現実で遊ぶために使っているが、今回は人工知能の開発という新たな用途が加わった。

本日、Microsoftは人口知能研究者が人気ゲームタイトル内で自分たちのテクノロジーを開発し、磨き上げるためのプロジェクトを発表した。新ソフトウェア開発プラットフォームの名称は「AIX」で、研究者は「エージェント」を制作することができる。この「エージェント」はMinecraftの世界で活動する人口知能を搭載したキャラクターだ。このプロジェクトの目標は、このキャラクターに通常のプレーヤーと同じように行動する知性を与えることだ。丘を登るといった基本的な動作から変化のある土地でも問題なく通行したり、何かを建てたり、ゲームに登場する悪者のゾンビから生き延びるといった複雑な要件を組み込むことができる。

このプロジェクトを率いるKatja Hofmannは、Minecraftのオープンでクリエイティブな要素はAI開発や探求の可能性を大きく開くことができると説明する。Googleが所有するDeepMindが囲碁に注力しているのと似たような理由だ。GoogleのAIは伝説的なチャンピオンをこのアジアの戦略ゲームで打ち負かしたところだ。

「Minecraftはとても開かれた世界のため、このような研究に最適なプラットフォームです」とHofmannは言う。「サバイバルモードや友人と遊ぶ「build battles(組み立てバトル)」モードで遊んだり、コースを使ったり、自分のゲームを展開したりすることもできます。これは人工知能にとってもとても面白い影響を与えることができます。現時点での能力を引き伸ばすゲームを制作することが可能になるのですから」。

AIXとMinecraftはゲーム内のAIエージェントを開発するのが唯一の目的ということではない。Hofmannは、このプロジェクトの目標はテクノロジーが自分で学習することを学ぶことだと言う。DeepMindのAIテクノロジーが囲碁をするのと同じようにだ。

Minecraftを遊んだことのない人は、たかがゲームと思うかもしれないが、Minecraftには現実世界でも活用できるAIエージェントを作り上げるのに必要な材料が揃っている。

「ロボットを制作して現実の丘を登る方法を教えるのにはコストがかかり、実用的ではありません。Minecraftとは違いロボットが川に落ちたらその都度直したり、取り替えたりしなければならないのではコストがかかります」とMicrosoftはブログ投稿で説明する。

AI研究者や最先端の科学者に留まらず、MicrosftはAIとITを新規のオーディエンスに届けることも目標に入れている。 MicrosoftはBBCの取材に対し、「どの年齢、どんなスキルを持つ人にでも参加してもらいたい」と話した。子供たちがMinecraftを愛しているのを知っている彼らは、これが特に若い人たちに楽しみながら学んでもらう魅力的な機会になることを期待している。

MicrosoftはAIXの検証を依頼するため、学術コミュニティーのメンバーを複数名招待している。今年の夏にはオープンソースライセンスでソフトウェアを解放し、誰でもアクセスできるようになる予定だ。

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(翻訳:Nozomi Okuma /Website/ twitter

DeepMindのAIに負けた囲碁の世界チャンピオンが最終戦直前のゲームで勝利…AlphaGoを上回る妙手で

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マシン3勝、人間1勝…これが、DeepMindのAlphaGo対人間の囲碁世界チャンピオンLee Sedolの、5番勝負のこれまでの結果だ。

先週GoogleがオーナーであるそのAIは、Sedolとの初戦に勝って歴史的な勝利を達成した。初めてマシンが、世界クラスのプロの囲碁プレーヤーを負かしたのだ。その後、そのアルゴリズムは続く2試合にも勝って3連勝を達成、5番勝負における勝利を確定した。

しかし、まだ2試合残っている今となってSedolは、(The Vergeによれば)第4試合に勝ち、人類のために1勝を取り戻した。

DeepMindのファウンダーDemis Hassabisのツイート(下図)によると、マシンの負けは、第78手におけるSedolの妙手に圧(お)されて、致命的なミスを犯したためだ。

AlphaGoは、囲碁というとてつもなく複雑なゲームをマスターするために、二つの人工知能テクニックを併用している。それは、深層学習(deep learning, ディープラーニング、多段構造のニューラルネット)とモンテカルロツリー検索(Monte Carlo Tree Search)だ。それによりこのAIは、数百万のゲームをシミュレートでき、その結果から学んだことを一般化して囲碁の戦略を作り出す。明らかにその成功率は高いが、しかし不敗ではない。

今年の初めにGoogleのブログ記事は、AlphaGoの前に立ちふさがる複雑性というチャレンジを、こう説明している:

“囲碁には陣形が1,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000とおりありえる。それは宇宙の原始の数よりも多く、チェスの10の100乗倍である”。

AlphaGoのSedolに対する勝利は、彼が世界第二位のプロの囲碁プレーヤーであるだけに、見事という言葉しかないが、人工知能は未だに、やれることの幅が極端に狭い。言い換えるとそれらはいずれも、きわめて特定的なタスクのために設計されている。チェスに、あるいはJeopardy(ジョパディ)に強くなるため、とか。

人工知能の究極の目標は言うまでもなく、汎用性のある学習AIを作ることだ。多面的なインテリジェンスを適用して、さまざまな種類の問題を解けること。そしてHassabis自身も認めるように、今の単一目的のAIマシンですら、オフボードゲームの世界の混沌とした複雑性において勝利を獲得することからは、まだまだはるかに、遠い位置にいるのだ。

人間が行う仕事は、一見単純なものですら、…たとえば部屋を片付けるようなことでも…、そこに存在する変数の数は、もっとも高度なマシンインテリジェンスですら愚鈍に見えるほどに、膨大なのだ。だからわれわれ人間は、囲碁に負けたぐらいで落ち込む必要はない。

このAlphaGoシリーズの最終戦は、3月15日に行われる。ライブの実況を、 YouTubeで観戦できる。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

GoogleのDeepMindがAIの大きな画期を記す: 囲碁の世界チャンピオンLee Sedolに第一戦で勝利

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GoogleがオーナーであるロンドンのDeepMindの囲碁ソフトが、世界チャンピオンのLee Sedolに勝ち、人工知能(AI)の開発史に特筆すべき新たな画期が刻まれた。

韓国のソウルで行われた五番勝負の第一戦で今日、そのソフトウェアAlphaGoは、Leeが持ち時間29分弱を残す時点で負けを認めたため、早期の勝利を手にした。最後の第五戦は来週火曜日(米国時間3/15)に行われ、YouTubeはそれまでの全試合をライブで放送する。勝者の賞金は、100万ドルだ。

AIの進歩は、戦略ゲームのトッププレーヤーに対する勝利で歴史に刻まれる。チェスのグランド・マスターGarry KasparovがDeep Blueに負けたのは1997年、IBMのWatsonがJeopardyで勝ったのは2011年だが、東アジアで数世紀の伝統を持つ囲碁の戦略と知的な深さは、AIの作者に最強のチャレンジを提供し、そのことはGoogle自身も認めていた

DeepMindをGoogleは2年前に5億ドルあまりで買収したが、同社は囲碁専用のソフトウェアAlphaGoを制作した。そして昨年10月にはヨーロッパチャンピオンFan Huiに勝利し、AIが囲碁で人間に勝ったのはそれが初めてとなった。しかし33歳のLeeは、囲碁のレジェンドと呼ばれる9段のプロで、世界最強の囲碁プレーヤーと言われる。

昨年Fan Huiに勝ったとき、DeepMindの協同ファウンダーDemis Hassabisは、AlphaGoの開発は今でも進行中であり、ゲームのテクニックを自力で磨いている、と説明した:

AlphaGoは、自分自身を超えていく。できれば最終的には、この分野の最強の人間が自己を限りなく磨き続けるように。新しいことを自分で発明していく様子は、見ていて本当にすごいと思う。もちろんそれは、囲碁という特定のゲームの枠内のことではあるが、われわれは今では、自分たちた作ったシステムに、厚い親近感すら抱(いだ)いている。とくに、それが作られていくやり方に対する親近感だ。そのやり方とは、自分で学習し、われわれがある程度は教育訓練し、そして、まるで人間のようなスタイルでゲームをプレイしていく。それは、すべての状況や条件等が分かっている状態で人間が手作りしていく従来のプログラムとは違う。それは物事を自分で拾い上げる。だからこそ、それが自力で習得していく能力が、すばらしく思えるのだ。

今度は、第一戦からLeeが何を学んだかが見ものだ。それが木曜日(米国時間3/10)の第二戦で分かる。試合の実況ストリーミングは、YouTube上のDeepMindのチャネルで見られる。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

MicrosoftのiOSアプリ“Fetch!”はあなたの犬の(そしてあなた自身の!)犬種を当てる

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【抄訳】
Microsoftの新しい画像認識ソフトですら、私の犬の犬種は分からない。でも、それはしょうがない。しかし、あなたの犬が殺処分施設から救ってきた雑種犬でなければ、最新のMicrosoft Garageプロジェクト: Fetch!を楽しめるかもしれない。このiPhoneアプリは、犬の写真を見てその犬種を当てる。正確に当てられないときは、至近の犬種である確率のパーセンテージを出す。

そう、今あなたが思ったとおり、犬でなくて人間でもよい。

このアプリは、機械学習で何ができるかを、おもしろく見せる、というシリーズのひとつだ。今回のは、画像を見て、その内容に関する何らかの判断をする。人間が自然に行う直感的判断のようなものを、マシンは教えられること(“学習”)によって身に付ける。

[100%の確率でボーダーコリーです]
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Fetchでも分かるように、その学習過程は相当難しい。人間はいくつかの断片的な情報から、これまでに知った/学んだことに基づいて、その場で犬種などを当てることができる。しかしマシンは、正しい画像と犬種に関する専門的データとマシンインテリジェンスを組み合わせて、教えてやる必要がある。

このアプリの場合は、ディープニューラルネットワーク(deep neural networks)と呼ばれる機械学習のテクニックを使っている。

“…Microsoftはこのような分野ではとても進んでいる。互いによく似ている犬種でも見分けるし、同じ犬種の色違いにも対応できる。そのほか、犬種ごとの細かい違いが分かるのだ”、と、イギリスケンブリッジのMicrosoft Researchでこの犬種プロジェクトを作ったチームのディレクターMitch Goldbergが説明する。

“ディープニューラルネットワークのいいところは、あとから加えた新しい犬種を、新しい犬種だと理解できることだ。それはとても難しい問題なんだけどね”。〔通常のNNは、すでに学習済みの何かにマッチさせようとする。〕

というかFetchは、機械学習の難しさを一般のユーザーに分かってもらうためにMicrosoftが作った一連のプロジェクトの一つなのだ。

たとえば昨年Microsoftは、人間の写真からその人の年齢を推測するサイトを作った。結果は、Fetchと同じく、当たったり当たらなかったり。

さらに同社は、感情を識別する機械学習ツールに取り組んでいるし、

顔にヒゲをはやして行う資金募集キャンペーン”Movember”を賛助するMyMoustacheプロジェクトも作った。それは、同じような技術で顔面のヒゲ率を判断する。

それに、二人の人間が双子かどうかを判断するサイトも作った。

でも、今回の犬種アプリもおもしろい。うまく当たれば!

 

【中略】

このアプリに友だちの顔を見せると、その人に似た犬種を当てようとする。それらは、けっこう当たってる、と言える!?:

[アイリッシュウォータースパニエル]
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ヒラリー・クリントンを、ウェストハイランドホワイトテリヤ、と判断した:

 

【中略】

私自身はマルチーズと判断され、まあそれは許せるけど、わが家の体重49ポンドの雑種犬がチワワはないよねぇ:

[91%の確率でチワワです]
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マシンたちよ、もっと勉強しないとダメだぞー。

[原文へ]
(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa