無人配達スタートアップのNuro(ニューロ)は、カリフォルニア州車両管理局(DMV)から認可を受け、同州の公道で無人配達サービス事業の開始が許可されることになった。同社はこのハードルをクリアした最初の企業となる。
Google(グーグル)出身のDave Ferguson(デイブ・ファーガソン)氏とJiajun Zhu(ジアジュン・ジュー)氏によって2016年6月に設立されたNuroは、2021年早々に商用配達業務を開始する予定だ。いわゆる「Autonomous Vehicle Deployment(自動運転車両展開)」許可を取得することで、Nuroはサンマテオ郡とサンタクララ郡で商業的なサービスを運営することができるようになる。つまり配達料を請求できるようになるということだ。同社は2021年の早い時期に、1つのパートナーと1つの都市で、トヨタ・プリウスの自動運転車を使ってサービス開始を目指すと、同社の最高法務・政策責任者を務めるDavid Estrada(デビッド・エストラーダ)氏はいう。最終的には、無人配達専用車両として開発された「R2」と呼ばれるデリバリーボットに移行し、さらに多くのパートナーを追加して、地理的に拡大していく計画だ。
Nuroはパートナーや都市の名前を特定していないが、同社がマウンテンビューに本社を置き、以前から本社の近くで事業を開始する意向を表明していたことは注目に値する。
「初の展開許可証の発行は、カリフォルニア州における自動運転車の進化において、重大なマイルストーンです」と、車両管理局のSteve Gordon(スティーブ・ゴードン)局長は現地時間12月23日に発行されたプレスリリースで述べている。「この技術が発展していく中で、我々は引き続き公道の安全を念頭に置いていきます」。
この展開許可証はアサートン、イーストパロアルト、ロスアルトスヒルズ、ロスアルトス、メンロパーク、マウンテンビュー、パロアルト、サニーベール、ウッドサイドといった各都市を含むサンタクララ郡とサンマテオ郡の指定された区域の路上において、商業配達サービスで小型の無人運転車両の一群を使用する許可をNuroに付与するものだ。DMVによると、この車両の最高速度は時速25マイル(約40km/h)で、晴天時に制限速度が時速35マイル(約58km/h)以下の道路でのみ、運行が認められているという。
今回の発表は、米国時間12月23日に自動運転トラックのスタートアップ企業Ike(アイク)を買収したことを発表したNuroにとって、節目の年を締め括ることになった。
さらにNuroは5億ドル(約518億円)を調達し、資金調達後の評価額を50億ドル(約5180億円)に押し上げ、州や連邦政府の規制において重要な勝利をいくつか確保した。
この展開許可証を獲得するために、Nuroはこれまで長く曲がりくねった道のりをたどってきた。2017年、カリフォルニア州で自動運転車を規制する機関である同州のDMVは、運転席に人間のドライバーが乗車することを義務づけた自動運転車試験許可証をNuroに発行した。同社は当初、改造したトヨタ・プリウスをこの公道テストで使用し、同時にアリゾナ州とテキサス州では試験的な食料品の配達を行った。
2018年12月に同社は、テスト車両を荷物配達用に設計された車両の第一歩となる「R1」に移行させた。その第2世代にあたるR2と呼ばれる車両は2020年2月に発表された。ミシガン州に拠点を置くRoush Enterprises(ラウシュ・エンタープライゼス)との提携により、米国で設計・組み立てが行われたR2はLiDAR、レーダー、カメラを搭載し、「ドライバー」に周囲360度の視界を与える。重要なことに、NuroはR2の車両について米国運輸省道路交通安全局(NHTSA)から無人運転車の安全規定免除を受けた。この免除により、R2はサイドミラー、フロントガラス、前方走行時にシャットオフされるバックカメラを装備しなくても運用が可能になった。
Nuroは2020年4月に、カリフォルニア州DMVから無人運転車両をテストするための許可証を取得したが、これはついに同社が、R2デリバリーボットを公道で走らせることができるようになったということを意味していた。数十社もの企業がカリフォルニア州DMVから、安全のために人間の運転手を乗せた自律走行車のテストを行う許可を積極的に取得しているが、カリフォルニア州の公道で無人運転車をテストすることを許可されている(カリフォルニア州DMVサイト)のは、AutoX(オートエックス)、Cruise(クルーズ)、Nuro、Waymo(ウェイモ)、Zoox(ズークス)だけだ。
それでも、Nuroは12月23日に発行された展開許可証を受け取るまで、配達料を請求することができなかった。
無人運転タクシーで人を運ぶことを目指している自動運転の企業に比べると、Nuroの場合は商業運営の実現に向かう道がまだ少しだけ平坦だ。無人運転車を使う商用ライドシェアリングサービスは、乗客を運ぶためには、カリフォルニア州公益事業委員会(CPUC)からも認可を取得しなければならない。また、乗車料金を請求するためには、CPUCによる追加の許可が必要となる。
乗客から運賃を徴収するための許可を得ることは、先月までは可能ですらなかった。CPUCは11月に、認可を受けた企業に自動運転車によるライドシェアの提供と課金を許可する2つの新しいプログラムを承認した。自動運転車技術業界は、運用者による運賃の請求と無人運転車両を使ったライドシェアの提供を可能にする規則変更を検討してもらうために、何カ月もCPUCに働きかけてきた。この決定は広く喝采を浴びたが、業界の一部では、この承認プロセスが商業的な自動運転タクシーの運用をさらに遅らせる可能性があると警告している。
自動運転タクシー事業者になる可能性のある企業は、CPUCとカリフォルニア州陸運局から適切な許可を受け、いくつかの報告要件を満たさなければならない。また、このプログラムに参加する企業は、安全計画と四半期報告書のほか、個々の運用区間における乗車場所と降車場所、車いす乗車可能な車両の有無と数、恵まれないコミュニティへのサービスレベル、そして車両が使用した燃料の種類、走行距離、乗客の移送距離などのデータを集計し匿名化した情報を、CPUCに提出する必要がある。
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カテゴリー:モビリティ
タグ:Nuro、自動運転、カリフォルニア
画像クレジット:Nuro
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(翻訳:TechCrunch Japan)