アップルが動画や音楽をバーチャル共同視聴できる新機能「SharePlay」をiOS 15で導入

Apple(アップル)はiOS 15でのFaceTimeアップデートの一環として、新しい体験共有機能を発表した。FaceTimeコールで一緒にテレビ番組やTikTokビデオを観たり音楽を聴いたり、あるいはスクリーンシェアしたりできるというものだ。SharePlayというこの機能では、コールそのものからアプリへのアクセスを統合することで、FaceTimeを使いながら家族や友人とリアルタイムにつながることができる、とAppleは説明した。

画像クレジット:Apple

Appleは米国時間6月7日に開催したWWDC基調講演で新しい機能のデモンストレーションを行い、友達と一緒に音楽を聴くためにApple Musicで再生ボタンを押してコールに参加している人に音楽をストリームする様子を見せた。音楽共有では、コールに参加している人は誰でも再生、一時停止、曲送りができる。

また、ストリーミングサービスであるApple TV+の動画をコール参加者の間でリアルタイムに同期する様子も紹介した。パンデミックの間、人々はバーチャルで家族や友人と映画や番組を一緒に観る方法を模索し、HuluやAmazon Prime Videoといったサービスはネイティブの共同視聴機能を搭載した。

しかし AppleのSharePlayは自社サービスの音楽やビデオのストリーミング以外のものもカバーしている。

同社はDisney+、Hulu、 HBO Max、NBA、Twitch、TikTok、MasterClass、ESPN+、 Paramount+、Pluto TVなどとの提携を発表した。またデベロッパーがアプリにSharePlayを統合できるよう、APIにも着手している。

画像クレジット:Apple

ユーザーはSharePlay経由でスクリーンシェアもできる。不動産会社Zillowの物件を一緒にブラウズしたり、モバイルゲームプレイを自慢したりといったことができる、とAppleは紹介した。

「スクリーンシェアリングは、誰かの手助けをしたりその場で質問に答えたりするためのシンプルでかなり効果的な方法でもあり、 Appleの全デバイスで利用できます」とソフトウェアエンジニアリングのSVPであるCraig Federighi(クレイグ・フェデリギ)氏は述べた。

SharePlay機能はiOS 15で提供される。

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(文:Sarah Perez、翻訳:Nariko Mizoguchi

アップルがmacOS 12 Montereyを発表、PCとタブレットのギャップを埋める

この1年で、最近の記憶の中で最も劇的なMacのアップデートが行われた。2020年のWWDCで、Apple(アップル)は待望されていたIntelチップから自社のファーストパーティ製シリコンへの移行を発表。年末までに、最初となる3台のM1 Macと、macOSの最大のアップデートの1つとなるBig Surを発表している。

WWDCのキックオフにおいてAppleは、macOS 12を発表した。その名も「Monterey」。同OSに搭載される「Universal Control(ユニバーサルコントロール)」は、デスクトップとタブレット間のギャップを埋める最も重要な新機能だ。Macの隣にiPadを置くと、同じトラックパッドとキーボードを使ってデバイス間でカーソルを移動させることができるようになる。本機能は、同時に3台までのデバイスで動作する。

また「AirPlay to Mac」では、大きなデスクトップ画面にコンテンツを直接キャストできるようになっている(テレビを持たない私のような変人にはうれしい)。ショートカットもmacOSで利用できるようになり、従来のAutomaterよりも簡単に自動化できる。ユーザーは人気モバイルアプリのデスクトップ版にAutomaterのワークフローを直接インポート可能だ。移行は数年がかりのものになると思われるが、Automaterがなくなってしまうのは(少々)寂しい。さらにSiri、Spotlight、メニューバー、そしてFinderにもショートカットが追加される。

もちろん、Safariにもいくつかのアップデートがある。その中でも最大のニュースは「Tab Groups(タブグループ)」の登場だ。その名のとおり、タブをグループ化し、他のユーザーと共有できる機能だ。これは非常に多くの使い方ができるので、多くのユーザーがワークフローを見直す必要がでるだろう。しかし、少なくともタブバー自体は、よりすっきりと合理的になる。

また、iOSとiPadOSで利用できるデスクトップ拡張機能も新たに追加された。デスクトップはAirPods ProのSpatial Audioにも対応するようになり、LaunchPadにはゲームフォルダが追加、コンテンツを1カ所に集められるようになり、ログイン画面にMemojiを表示できるようになる。

いくつかのすばらしい機能が追加されたが、さすがに新macOS「Monterey」は「Big Sur」ほどの大きなアップデートではなかった。大きなニュースの多くはボンネットの中で起こっているようだ。

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(文:Brian Heater、翻訳:Katsuyuki Yasui)

iOSアプリ開発者に訊く:LiDARで空間を演出するアプリ「Effectron」 (アフェクション)

iOSアプリ開発者に訊く:LiDARで空間を演出するEffectron (アフェクション)

AFFEXION

アップルの世界開発者会議 WWDC 2021 を前に、iOS開発者にアプリを巡るストーリーやWWDCへの期待について訊きました。

今回お話をうかがったのは、iPhone 12 Pro や iPad Pro のLiDARセンサを使い、カメラ映像にリアルタイムのARエフェクトをかけるアプリ Effectron の開発元、株式会社アフェクション(Affexion)。

Effectron はカメラを向けた方向の奥行きや三次元形状を取得できる LiDAR センサをエンタテインメントに活用した最初のアプリのひとつで、2020年8月に iPad Pro 版、10月に iPhone 12 Pro 対応をリリースしています。

リアルタイムARエフェクトのアプリは以前からありましたが、Effectron はLiDARで三次元認識した床や壁に光るグリッドを引いて古典的な「サイバースペース」風に変えるといったインパクトのある映像で、搭載されたばかりのLiDARセンサの機能を示すアプリとして話題になりました。

開発元の株式会社アフェクションは、群馬県高崎市に本社を構える社員10名の企業。WebからVR・ARまでデジタルコンテンツ制作を手掛けます。アフェクションの閑 代表と、同社 CG motion 開発室 室長の金井氏にお話をうかがいました。

──Effectron はアフェクションがリリースした最初のアプリだそうですが、そもそもどういった経緯でアプリをリリースすることになったのでしょうか

閑代表:「弊社は2007年にウェブ制作からスタートしました。デザインを基点に広告やウェブ制作を手掛けておりましたが、2年ほど前から社として第二、第三の柱をどうしようか、という話になりまして」

どういったアプリが良いか?を社内で50案ほど考えたなかで、金井氏からこのLiDAR技術を使ってみたいと提案があり、Effectronにつながったとのこと。

金井氏:「提案にはマーケティング的な面と、ビジュアル的なことをやりたかったという2点があります。マーケティングとしては、これまでアプリを出したことがない会社だったので、まず使ってもらう取っ掛かりが欲しかった。新しくLiDARを搭載したiPad Proが出たところで、新機能をアプリで使い新規性を出せればと考えました」

・もう一点は、前職で建築用の測定機器で取得した点群データを見て、これをビジュアル表現やエンタメに使えたら面白いなとは考えていたこと。ミュージックビデオなどでも使われていて、インスピレーションを受けた面もある。

・LiDARセンサは高価で、以前ならば手が出なかったが、WWDCでiPad Proに搭載されたことを知り、世界中のユーザーが身近な環境で使えれば面白いだろうと制作を決めた。

──WWDCで発表を見て一番乗りを狙ったとのことですが、結果的に一番になれましたか?

金井氏:「一番乗りくらい、ですね。LiDARを使ったアプリは他にもあるにはあったのですが、機能が限定的だったり。メッシュを取得して描画するエンタメ系アプリという意味では、確認する限り初めてだったと思います」

──他の開発者もLiDARアプリを一斉に作る中で、エンタメ系で一番乗りになれた理由はどのあたりだったんでしょう

金井氏:「意外とスキャンニングのアプリは出ていたので、アプリ開発者的には実用アプリのほうが安牌だったというか。LiDARに興味を持っていたのがもともと建築系などの層だったので、エンタメに使ったアプリは初期には意外とあんまりでなかったな、という感じです」

──狙いが良かった、ということですね。スケジュール的にはどうでしたか。

金井氏:「7月から開発をはじめて、たしか8月にはリリースしました。スケジュールを間に合わせるため心がけたのは、必要な機能に絞ること。機能を増やしすぎると覚えるのが大変といった面もありますので、できるかぎりシンプルに、背景のメッシュのエフェクト切り替えと、人物のエフェクト切り替えという二点だけに絞って。あとは録画とSNS共有くらいはつけておいて」

──LiDARセンサの利用は、一般の開発者にとって学習コストが高いものなんでしょうか。

金井氏:「作りたいものが決まっていれば、ある程度アップルはサンプルを用意してくれるので、そちらを見れば作りやすいのかなと思います。あとはある程度、映像や3Dに関する知見があればすぐに取りかかれるはずです」

──Effectron は3月時点で3万ダウンロード超だったそうですが、ビジネス的なインパクトはありましたか。

「直接にEffectron を使ったビジネスというよりは、アプリの新規性が話題になったことで、たとえばいま開発している教育向けARアプリなど、開発の案件をいくつもいただけるようになりました。そうした意味で会社のビジネスにつながっています」

──WWDCに向けて、次はこんな機能やデバイスがあったら、といった期待があれば教えてください

「あまり考えたことはなかったですが、ロケーションアンカーが日本中で使えたら良いな、というのはあります。まだ限られた地域でしか使えないので。あれが使えたら、活用はコロナ後になるでしょうが観光アプリだとか、面白いものが作れるかなと考えています」

──ありがとうございました!

iOSアプリ開発者に訊く:LiDARで空間を演出するEffectron (アフェクション)

Apple

WWDC 2021 は米国時間で6月7日から、日本時間では6月8日深夜2時からのキーノートで始まります。

「Effectron」をApp Storeで

株式会社アフェクション | AFFEXION Inc.

Engadget日本版より転載)

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カテゴリー:ソフトウェア
タグ:iPad(製品・サービス)iPhone(製品・サービス)Apple / アップル(企業)アフェクション(企業)拡張現実 / AR(用語)WWDC(イベント)WWDC2021(イベント)LiDAR(用語)日本(国・地域)

アップルのWWDC 2021基調講演をライブ中継で観よう!

明日、日本時間6月8日午前2時、アップルは開発者会議の初日に(バーチャル)基調講演を行い、大量のソフトウェアアップデートを発表する予定だ。同時刻より、このイベントの様子をライブストリーミングでご覧いただくことができる。

Appleの開発者会議ではいつものことだが、同社OSの次期メジャーアップデートに関する情報が期待できる。iOS 15、iPadOS 15、macOSの新バージョン、そしてwatchOSとtvOSのアップデートも予定されている。

しかし、Appleはこの機会を利用して、開発者に特に人気のある新製品を発表することもできる。Appleはすでに、独自のARMベースのM1チップを搭載したノートPCとデスクトップPCを複数出荷している。

ハイエンドモデルはまだアップデートされていない。噂によると、アップルは今日の機会に、新しいiMac ProやMacBook Proのアップデートモデル、あるいは新しい外付けディスプレイを発表する可能性があります。

ハイエンドモデルはまだアップデートされていない。噂によると、Appleには今回、新しいiMac ProやMacBook Proのアップデートモデル、あるいは新しい外付けディスプレイを発表する可能性があります。

AppleはカンファレンスをYouTubeでストリーミングしているので、このページで直接ライブストリームを見ることができる。

Apple TVがある場合は、新たにアプリをダウンロードする必要はない。アプリ「Apple TV」を開くと「Apple Events」が表示される。今回のイベントをストリーミングしたり、過去のイベントを再視聴できる。

また、Apple TVがなく、YouTubeを使いたくない人は、AppleのウェブサイトApple Event」からイベントをライブストリーミングすることもできる。この動画配信はSafari、Firefox、Microsoft Edge、Google Chromeなどの主要ブラウザーで観ることができる。

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カテゴリー:イベント情報
タグ:AppleWWDC 2021WWDC

画像クレジット:David Paul Morris / Bloomberg / Getty Images

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(文:Romain Dillet、翻訳:Katsuyuki Yasui)

アップルが過去10年の間、業界をリードした理由がわかる1通のメール

1通のメールが、Apple(アップル)のApp Store(アップ・ストア)を巡ってEpic Games(エピック・ゲームズ)が訴えた裁判に関連して公表された文書の一部として、インターネットに出回っている。私はこのメールをさまざまな理由で大いに気に入っている。少なくともそこからは、Appleが過去10年間この業界の活力源であり続けている理由を推定することができる。

その中心は、ソフトウェアエンジニアリングSVP(上級副社長)であるBertrand Serlet(バートランド・サーレイ)氏が、2007年10月に送ったメール、iPhoneが発売されてからわずか3カ月後のことだ。そのメールでサーレイ氏は、AppleのApp Storeの概要を事実上すべて説明している。2020年に推定640億ドル(約7兆120億円)をもたらしたビジネスだ。そして、さらに重要なのは、そこから無数の巨大インターネットスタートアップとビジネスが生まれ、iPhoneのネイティブアプリを活用していることだ。

このメールの45分後、Steve Jobs(スティーブ・ジョブズ)氏はサーレイ氏とiPhone責任者のScott Forstall(スコット・フォーストール)氏にiPhoneからメールを送った。「もちろん。ただし2008年1月15日のMacworld(マックワールド)で発表できること」。

Apple University(アップル・ユニバーシティ)はこのメールの専門コースを作るべきだ。

お気に入りのInternal Tech EmailsがTwitterでシェアしたメールがここにある。アカウントの持ち主は知らせて欲しい。差し支えなければ詳しく紹介したい。

1. ユーザーを保護します。そのために誰がアプリを配布できるかをコントロールする(登録システム、ポリシーなどが必要)
2. ネットワークを保護します。そのためにアプリが安全な状態で動作することを保証する(悪用していないことの確認)
3. 開発プラットフォームを提供しよう(Leopardの走っているMacで開発、デバッガー、シミュレーターなど)
4. APIを持続可能にします(プライベートとパブリックを区別する、クリーンアップ、ハードウェアの詳細を隠蔽、APIのドキュメントなど)

これを今すぐやりましょう、正しいやり方で。まともなサポートのない中途半端なストーリーではなく。SDKを最速で出荷することに集中するために、ソフトウェア・エンジニアリンググループに必要な人材をいくらでも集めます。

サーレイ氏の書いた概要にはApp Storeの基本理念が7つの文で書かれている。ユーザー保護、ネットワーク保護、独自のデベロッパープラットフォーム、持続可能なAPIアプローチ。人的資源を明確に要求している。最速で公開するために必要なソフトウェアエンジニアリングの人材だ。

最後でも、はっきりと尋ねている「このゴールに賛成してくれますか?」。

情報に通じた読者なら、カッコ内の説明を見て、業務範囲と人月を推測できるだろう。そしてサーレイ氏はこれらの選択について「一切」の「理由〉を書いていない。彼の頭の中では、iPhoneデベロッパーにSDKを提供するためには、すべてが明白で必要な枠組なのだ。

各項目に関する詳細な論拠もない。多くの場合、論拠は互いに事情がわかっている状況では不要であり、次の2つのどちらかの精神的負担を発信する役割を果たすだけだ。

  1. プロジェクト概要を伝える相手が何もわかっていないと思っている。
  2. 自分に自信がなく、今も自分を納得させようとしている。

どちらも、仕事の初期目標を伝えるのに賢い方法ではない。大きい枠組みの中で、小さな権力しか持たない人々に根拠を説明する時間はこれから先いくらでもある。

iPhoneソフトウェア開発の歴史に詳しい人なら、Nullriver(ナルリバー)というデベロッパーが公開したInstaller(インストーラー)を知っているだろう。iPhoneにネイティブアプリをインストールすることを可能にする2007年夏にリリースされたサードパーティ製インストーラーだ。2008年には、その後ずっと有名になるCydia(シディア)が続いた。そして8月、9月にすでにこのまったく非公式な方法でアプリを配布する実験を行っていたデベロッパーがいた。Craig Hockenberry(クレイグ・ハッケンベリー)氏の偉大なるTwitterific(ツイッタリフィック)やLucas Newman(ルーカス・ニューマン)氏とAdam Betts(アダム・ベッツ)氏のLights Off(ライツオフ)などだ。

スティーブ・ジョブズ氏がiPhone上のサードパーティアプリを許すことを躊躇していたことを示す証拠は山ほど出回っているが、このメールは、決断が下され時だけでなく、完成時期の公式タイムラインも示している。そしてその時期は、いつ電話がかけられたかに関する怪しげな情報よりもはるかに前だった。ハッキング好きのサードパーティの試みが初めてiPhoneにたどり着いたわずか数週間後、最初のiPhone jailbreak(ジェイルブレイク)ツール群 が出現してから2カ月足らずだった。

そこには、このフレームワークにスティーブが自ら手をくだす必要も意志もない。部下にあらゆる場面でフィードバックを返すよう求めるリーダーを私は何度も見てきた。そもそもなぜその人たちを雇ったのか?彼らのスキルと判断力のため?細部への気配り?ものごとを成功させようとする強い願望?

だったら、彼らに自分たちの仕事をさせればよい。

サーレイ氏のメールはよく練られていて、狙いが非常に正確だ。しかし、同じように重要なのが返信だ。どうみても短すぎる時間軸(App Storeは結局2008年に発表され、その年の7月に公開された)の要求によってハードルは上がり、合わせてこのプロジェクトに関わる全チームに対する緊急性が求められた。何をおいても早く作らなければならない。

良いものを作ることにかけて、Appleが秀でている理由はこの能力にある。常に優れているわけではないが、●常に100%のものなどなく、10年間に出したソフトウェアとハードウェアのヒット率は驚くほど高い。鮮明で無駄がなく甘えも曖昧さもないコミュニケーションと、自身の能力と自分が雇った人たちの能力を確信しているリーダーが組み合わされば、自らの関与を誇示するためにプロセスの動きを止める必要はない。

人間は1人では生きられない。明確でよく練られた提案書やプロジェクト概要書も、自信のない無能な幹部に送れば、縄張り争いや説明要求の無限ループを引き起こすだけだ。そして幹部がいかに効率的で、いかに社員が有能でも、思考の明確化が「歓迎され称賛される」環境がなければ、大胆で意図を明確にしたプロダクト開発は実現できない。

このメールのやりとりは、現在のアプリエコシステム時代全体とインターネット技術の爆発的成長フェーズを支える恐ろしく重要な歴史の一片だ。そしてそれは、これほど長い期間Appleを効果的で並外れて効率的な会社にしている環境の象徴でもある。

これは学んだり真似たりできるものだろうか?おそらく。ただし、関わっている全員が上に上げた重要項目を育むのに必要な環境を作ろうという意志があるのなら。10回中9回、あなたの幹部は瀕死状態にある。成功するために大胆な取り組みをしたり、いばらの道を進むことを妨げる環境だ。しかし、10回目には、魔法が手に入る。

そうだ、この機会に乗じて次のミーティングはメールでできるかもしれない。

バートランド・サーレイとスティーブ・ジョブズがメールで世界を変えられたなら、たぶんあのミーティングはいらないだろう。

カテゴリー:ソフトウェア
タグ:AppleApp Storeスティーブ・ジョブズiPhoneアプリ

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(文:Matthew Panzarino、翻訳:Nob Takahashi / facebook

米アップルの一部従業員グループが9月からの週3日出社に反対、柔軟な対応を望む意見書を提出

米アップルの一部従業員グループが9月からの週3日出社に反対、柔軟な対応を望む意見書を提出

Pavlo Gonchar/SOPA Images/LightRocket via Getty Images

先週、米Appleのティム・クックCEOは新型コロナウィルスのパンデミックによってこれまでリモート勤務にしていた従業員に対し、9月より月、火、木曜の週3日はオフィスに出勤し、水、金の2日はリモートでの勤務とするオフィス復帰計画を従業員にメールしました。ところが、一部の従業員はオフィスへの出社をしたくない場合はそれを認める柔軟なアプローチを求めており、クックCEO宛に意見書を提出したと、The Vergeなどが伝えています。

従業員は意見書の中で「この1年間、私たちはしばしば耳を傾けてもらえないだけでなく、時には積極的に無視されていると感じました」と述べ、会社に対し誰がリモートワークをしたり、または柔軟に仕事場を選ぶことを可能にすること、またリモートやその他の仕事場にも障害者を受け入れるための「明確な行動計画」を作成するよう会社に求めています。また、Appleはこれらの問題について労働者に尋ねるアンケートを定期的に実施すべきだ、と手紙の主は記しています。

意見書を出したグループは少人数ではあるものの、リモートワーク推進の考えを持つ約2800人の従業員がSlackチャンネルを通じて集まったとのこと。

TwitterやFacebookなどは、パンデミック終息後も従業員が望めばリモート勤務を自由に選択できるようにしています。それに比べると週3とはいえ出勤を必須とするAppleは保守的な姿勢と言えそうです。

Appleと同様に、Googleもまた週3日間のオフィス出社を採用していますが、リモートだけで仕事ができるポジションも含まれており、チームのニーズに応じて変更できるようになっています。アップルは、他のIT企業の間で変化している、リモートワークに対する考え方をアップデートし、社内ポリシーを調整しなければならないかもしれません。

(Source:the VergeEngadget日本版より転載)

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WWDC 2021で期待される発表は?iOS 15、iPadOSリニューアル、もしかしたら新Macも

あらゆることを考え合わせると、Apple(アップル)は2020年、非常に洗練されたバーチャルWWDCを開催した。Microsoft(マイクロソフト)やGoogle(グーグル)のような他の企業がよりライブ感のある(あるいはライブスタイルの)体験を選択したのに対し、Appleは、スムーズなドローン撮影と巧みなトランジションを駆使して出演した幹部たちを引き立てた。そして最初の1年を経て、同社がどのように新しい境地に達するか見ものだ。

キックオフからニュースを提供するWWDCの基調講演はいつも大盛況だが、今回もその例に漏れず、さらに多くの新情報が発表される可能性が高い。iOS / iPadOS、watchOS、macOS、tvOSなど、開発者向けの標準的なアップデートに加えて、このイベントで新しいハードウェアが発表される可能性もある。

いつものようにライブでニュースをお伝えしていくが、今回はライブブログを復活させる。ライブニュースをさまざまな方法でフォローすることが可能だ。イベントは、太平洋標準時6月7日(月)午前10時(日本時間6月8日午前2時)に開始される。

YouTubeのライブストリームはここで見ることができる。

例年通り、このイベントではiOSが最大の目玉となる。なんといっても、Appleは他の何よりも多くiPhoneを販売しているからだ。2020年には特に、同社の最新5Gデバイスが低迷するモバイル市場に救いの手を差し伸べた中でその傾向が強まった。

少なくとも最初の段階では、iOS 15はAndroidの最新バージョンほど過激なアップデートには見えない。しかし、今日から6月7日の朝までの間に、多くのことが起こり得る。(少なくとも今のところ)最重要課題は通知機能のアップデートのようだ。報道によると、モバイルOSの新バージョンでは、睡眠中、仕事中、運転中などのステータスに応じてカスタマイズ可能な通知が提供されるとのこと。

また、iOS 15には、新しいアクセシビリティ機能が多数追加されると考えられている。

画像クレジット:Apple

さらに大きなニュースは、待望のiPadOS 15へのアップデートだろう。最新のiPad Proのレビューではこの古いソフトウェアが問題となっていたが、iPadOS 15は、タブレット端末用のOSをモバイルOSからさらに遠ざけるための重要なステップになりそうだ。現在のiPadOS 15は、ほとんどの意図と目的においては、iOSをタブレット向けにスケールアップしたものとなっている。

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まだ詳細は明らかになっていないが、ホーム画面はウィジェットを含めて大幅にアップデートされる予定だと言われている。これにより、大きくなったホーム画面をより有効に活用できるようになると思われる。また、新しい通知機能やiMessageの大幅な改良など、iOSの新しいアップデートも行われるはずだ。

Big Surで行われた大規模なオーバーホールの後、macOS 12はより小さな波となることが予想される。ここでのビッグニュースは、ハードウェアかもしれない。噂では、Appleの超高速M1チップがアップデートされると囁かれている。M1X(現在の呼称)は、14インチと16インチの新型MacBook Proと一緒に登場する可能性があり、そうなればAppleのラップトップ製品ラインのハイエンドとローエンドの間に、ようやく少しだけ日が差すことになる。

画像クレジット:Brian Heater

また、今のところ情報が少ないものの、watchOSも大きなアップデートの時期に来ているように見える。特に合併したばかりのGoogleとFitbit(フィットビット)と競合しているAppleにとって、新しい健康機能は確実な賭けだろう(最近発表されたSamsungのアシストはいうまでもない)。

そして、最も興味をそそられるミステリーがhomeOSだ。求人情報ではこの謎のOSが参照されていたが、これは単なるタイプミスかもしれない(その後、求人案件では「HomePod」に変更された)。

画像クレジット:Apple

噂のまとめということで、より大きなものにつながるかもしれない可能性を指摘しておく。これは、既存および近々発売されるAppleのホーム製品と連動するように設計された、より統合的なホームオペレーティングシステムだと思われる。おそらく、tvOSともう少し密接に統合するものだろう。長期にわたる噂の中心にあるのは新しいApple TVデバイスだが、これまでのところ、その点は確認されていない。

他には、新しいMac Miniの噂もある(ただしこちらは、2020年末にリフレッシュされたばかりだが)。また、Beats Studio Budsに関する噂も興味をそそられる。LeBron James(レブロン・ジェームズ)が未発表のハードウェアを身につけているのを見れば、人々は話題にせざるを得ない。しかしAppleは従来、Beatsチームに独自の発表を任せ、このような大きなイベントはAirPodsのような自社ブランドのオーディオ製品のためにとっておくことを選んできた。

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画像クレジット:TechCrunch

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(文:Brian Heater、翻訳:Aya Nakazato)

Apple Watchで心疾患発見を目指す、慶應医学部 木村雄弘先生に訊く(WWDC 2021)

Apple Watchで心疾患発見を目指す、慶應医学部 木村雄弘先生に訊く(WWDC 2021)

アップルの開発者イベントWWDC 2021は、日本時間6月8日午前2時から始まります。世界開発者会議WWDCといえば、 iOS / macOS / watchOS等の新機能に加え、これから登場するデバイスやサービスの可能性をいち早く開発者に紹介する場です。

「アップル史上もっともパーソナルな製品」として2015年に登場した Apple Watch も、世代を重ねるごとに心電計や血中酸素濃度計、睡眠計測など新たな機能を導入し、フィットネスやヘルスケアの分野で新たなアプリやサービスの可能性を開いてきました。

WWDC 2021を前に、そうしたアップルのテクノロジーで社会を変える取り組みとして、一般のApple Watchユーザーを対象にした心疾患の臨床研究アプリ Apple Watch Heart Study をリリースした慶應義塾大学医学部の循環器内科特任講師 木村雄弘先生にお話をうかがいました。

ウェアラブルで心疾患の早期発見を目指す

まずは臨床研究 Apple Watch Heart Study と同名のアプリについて。慶應義塾大学医学部が2021年2月から開始した Apple Watch Heart Study は、Apple Watch の睡眠計測・心電図記録・心拍計と、着用者が手動で回答する質問表を組み合わせて「心電図はいつ計測するのがもっとも有効なのか?」を解明するための研究。

Apple Watch は日本国内では2021年1月末に心電図アプリが解禁されましたが、常時着用するウォッチでも心電図は常時計測できないため、ユーザーが手動でアプリを起動して30秒間指を当てる必要があります。

しかし木村先生によると、たまたま心電図をとったときに異常が見つかることは稀。心筋梗塞などの予防には、異常が出ているときの心電図が手がかりとして役立ちますが、診療に役立つタイミングで都合よく取得できるとは限りません。

「調子が良いときに測っても良いと出るのは当たり前。一度計測して結果が良かったからといって、必ずしも病気がないって話にはならないんですね。いかに異常があるときを捉えるか? が非常に大事で、その心電図一枚で治療の方針が変わることもあります」(木村)。

Apple Watchで心疾患発見を目指す、慶應医学部 木村雄弘先生に訊く(WWDC 2021)

Apple Watch

Apple Watch Heart Study ではこの問題に対して、Watchの心拍計と睡眠検出、毎朝の質問票、自覚症状があった場合に手動入力する動悸記録を組み合わせて、ライフスタイルや生活パターンとの関連性を見つけ出し、将来の心疾患予防や診断に役立てることを狙います。

対象は一般のApple Watchユーザーすべて(20歳以上、日本語が理解できること。心電図記録は22歳以上)。具体的には、アプリをインストールして説明の確認と同意を済ませたら、あとは毎晩就寝時にApple Watchを着けること、毎朝質問票に答えること、もし脈が飛んだ、胸が痛い等の症状があったら手動で選択肢を選んで入力することで参加できます。今回の取り組みで収集するのは7日分のデータ。

一般のApple Watchユーザーを対象とした研究とは別に、慶応義塾大学病院で心房細動患者を対象にした研究も実施しています。そちらでは臨床の現場で使われる医療機器での計測と、Apple Watchを使ったデータとを比較し、機械学習で不整脈が発生しやすい条件を推定するアルゴリズムを構築します。一般のApple Watchユーザーを対象とした研究は、この患者グループの研究で得られたアルゴリズムが一般にどれほど適用できるのかの答え合わせともいえます。

あくまで臨床研究へ協力するためのアプリなので、参加しても個人の診療に役立ったり、健康改善につながるわけではありません。ただし記録へのモチベーション維持のために、毎日の計測結果には睡眠中・日中の心拍数などを元にシンプルなロジックで生成された「コメント」がつくため、睡眠中の心拍傾向を見て飲酒・寝不足などを見直す契機にはなるかもしれません。

医療のDXとWWDCへの期待

Apple Watch Heart Study の実務責任者である木村先生と、アプリを開発した株式会社アツラエの担当者お二方にお話をうかがいました。

Apple Watchを使った臨床研究に取り組んだきっかけは?

・個人的に、Apple Watchは心拍計が使える初代モデルから利用していた。健康のためを意識しなくても、時計として着けているだけで心拍や運動など役立つデータを常時記録できることが大事。

・一度の検査だけではなかなか分からない。「病院で良い検査結果を出そうと思うと、たとえば一週間酒を止めたとか、そういうことができてしまうんですよ」。家庭で実際にどういう生活をしているかを医療に反映させるためには、常時計測できるApple Watchを使う必要がある。

・特に心電図アプリケーションについては、医療機器ではないApple Watchである程度信頼できるデータが取得できる、本当に革命的なことが起きた。一回測って終わりではなく、継続して有意義に使ってもらうにはどうするか、が今回の研究に至る経緯。

心疾患は高齢者に多いと思いますが、Apple Watchを着けている高齢者は多くありませんね

「高齢者こそApple Watchだ!と思います」。慶應で臨床研究をする際は、意図的に高齢の方にお願いすることもある。たしかに操作から覚えてもらう必要はあり、利用者と医療従事者の双方にもっとデジタルリテラシーが必要になるが、自分の健康状態を意識するきっかけにもなる。高齢者こそ使ったほうが良いんだよ、ということを啓発していきたい。

高齢者といえば、Watchを使った「見守り」のアプリケーションについてはどうでしょうか

・ICT技術的には非常に簡単。医療者としても、電子カルテにプラスアルファのヘルスケアデータとして管理できれば非常に有用。

・ただ簡単にできたとしても、異常があったときに誰が対応するのか、具体的にどこまでの緊急性をもって対応するのか? など、リソースの配分やマネジメントをどうするかのルールが統一できていない。体制づくりが必要。

(注:Apple Watchを使った見守りサービスを独自に提供している企業はあります)

セコムがApple Watchで見守りサービスなどを開発。今年秋より順次提供

アプリ作成について。実際のアプリ開発を担当したアツラエとはどんなふうに仕事を進めたんでしょうか。苦労した点があれば教えてください

・ユーザーからすれば、医学研究って堅苦しいとか、たくさん質問票が出てきて面倒くさい! といった点が問題になる。打破するにはユーザーインターフェース、UXできれいなデザイン性を持たせることが重要。それができるデベロッパーを探していて辿り着いたのがアツラエ。研究参加にあたっての同意など、必須のステップをユーザーフレンドリーに構築していただけた。苦労としては、オンラインの打ち合わせを中心に進めざるを得なかったこと。(木村)

・アツラエは前身の会社に遡れば2008年から、クライアント向けのiOSアプリ開発をお手伝いしてきた。iOS / iPadOSと使いやすいデザインには自負もあった。苦労したのは、このコロナ禍でなかなか先生にもお会いできずオンライン打ち合わせで進めたこと。

・UI、UXの開発については、木村先生が求めるものに対してどこまで省略できるのか、遊びをもたせるか、を汲み取るのが重要だが、対面ならば表情や口調も大きな手がかりになる。オンラインでは、本当に喜んでくれているのだろうか? ユーザーに役立つものができているのだろうか? を探り探りで進める必要があった(アツラエ有海)。

・技術的には、開発時点で国内での心電図アプリケーションがまだ解禁されておらず、テストに苦労した(アツラエ早川)。

(日本国内での心電図アプリケーション解禁は1月22日、Apple Watch Heart Studyアプリ配信はわずか一週間後の2月1日)

今回の臨床研究で得られた成果は、今後具体的にどのような形で活かされるのか。「心臓病予防アプリ」への課題は

「最終的な結果はただ研究で終わらせることなく、医療のDXとして提供できるような形を考えています」(木村)。一つ大きな壁は、医学的なアドバイスや計測結果を出すとして、どこまで言えるのか、(認可的な意味で)医療機器の扱いになるか否か。診断を与えることではなく、日々の生活を見守り、自分の変化に気づかせることがおそらく一番重要。長い時間をかけて医療機器を作るんだ! ではなくても、ヘルスケアに貢献できるソリューションは色々ある。

・必ずしも医療機器の精度でないとしても、個々のユーザーに対していま測ったほうがいいのかな、いま病院にいったほうがいいかなという気づきを与えること。知らないうちに見守られていて、変化を教えてくれるものが増えていけば、早期発見や健康寿命に貢献していくことになる。今回の研究も、ソリューションはとしてはそうしたところを目指したい。

Apple Watch Series 6からは、医療機器としての数字ではないものの「血中酸素ウェルネス」でSpO2も取得できるようになりました。今後さらにこんなデータが取れればと期待しているものは

・色々とうわさはあり、今度のWWDCでもジェスチャ検出など新しいものが出てくるようだが、大事なのは同じ機械で計測し続けること。

・計測したデータに医療機器と同じ精度があるかどうかまで立ち戻らなくても、同じ機器で計測し続けた変化量は、その個人にとっては評価できるものになる。もちろん、これが欲しいあれが欲しいという期待はあるが、いずれにしても個人に紐付けられたデータであれば非常に貴重なものになると考えている。

次のWWDCへの期待をお願いします

「WWDCには毎年驚かされていて、素人ながら分かる範囲の開発者向け動画はすべて見るようにしています」。毎年大幅に変わるが、今回のアプリでも睡眠計測やウィジェットなど、新しい機能をできるだけ使うようにお願いした。うわさの血糖値やジェスチャは大変興味深いと思っている。(木村)

・アクセシビリティ・デイで発表済みのジェスチャ操作はどうなるのか、自分たちのアプリに組み込めるか? は注目。日本国内のアプリはアクセシビリティが行き届いていないことが多く、いちデベロッパーとして注目していきたい。過去でいえば、watchOS 2でガラリと変わったこと、6でできることが一気に増えたのが印象深い。Apple Watchのアプリ開発は今後もっと注目されてくるのではないかと思っている(アツラエ早川)。

・プランニングの観点から。毎年WWDCの時期には、クライアントから自社のアプリにこの新機能は使えるんじゃないか、どう変わるのかと問い合わせや提案が増える。応えるためにいち早くプロトタイピングをしたり、社内でディスカッションするのが恒例行事 (アツラエ有海)。

WWDC 2021 のキーノートは日本時間で6月8日午前2時から。Engadgetでも速報体制でお伝えします。

病院がアプリを処方する時代。iOS活用で進む未来の医療
Apple Watch Heart Study

Engadget日本版より転載)

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カテゴリー:ヘルステック
タグ:Apple / アップル(企業)Apple Watch(製品・サービス)医療(用語)慶應義塾大学(組織)ビッグデータ(用語)日本(国・地域)

アップルM1チップで「修正できない脆弱性」CVE-2021-30747が発見される、ただし悪用は困難

アップルM1チップで「修正できない脆弱性」CVE-2021-30747が発見される、ただし悪用は困難

Devindra Hardawar/Engadget

最新世代のMacが搭載するSoC 「M1」に修正不可能な欠陥が発見されました。ソフトウェア開発者のヘクター・マーティン氏が発見し”M1racles”と名付けたこの問題は、2つ以上の悪意あるアプリケーションが秘匿されたチャネルを構築して相互にやりとりできてしまうというもの。この通信はOSの機能を使わずに実行でき、異なるユーザー階層のプロセスをまたいでデータを相互にやりとり可能です。

ただ、マーティン氏によれば、この欠陥は”技術的には脆弱性”と言うことができるものの、実際にはほぼ無害と言って良いとのこと。なぜなら、この欠陥はMac内に保存されているデータを盗み出したり改ざんすることができず、外部からの感染ルートにもならないからなのだそう。

ただ、”技術的には脆弱性”であることに違いはないため、この欠陥には共通脆弱性識別子としてCVE-2021-30747が割り当てられました。マーティン氏も、この欠陥はあるプロセスから別のプロセスに密かにデータを送信できるという点で「OSのセキュリティモデルに反している」と述べています。

2018年初頭にインテル、AMD、Arm各社のCPUに発見されたMeltdown / Spectre脆弱性発見に関わった研究者のひとりマイケル・シュワルツ氏は、今回のM1チップにおける欠陥について「システム上のいかなるアプリケーションに関する情報を推測するためにも使用することはできない」と述べ「アプリケーション間の通信手段は他にもたくさんあり、それがひとつ増えたところでセキュリティに影響することはない」としました。ただし、「とはいえ、”意図しない通信経路”として想定外に使われる可能性はあるので、脆弱性と呼ぶのが妥当」だと述べ ”実質的に問題はないけど脆弱性” という、発見者と同じ認識を示しています。

ただ、もしこれがiPhoneのSoCで見つかっていれば話はまた違ってくるようです。”意図しない通信経路”はiOSアプリの安全性の要とも言えるサンドボックス構造をすり抜ける可能性があります。とはいえ、この場合2つのアプリが共にApp Storeの審査を通過して、さらにターゲットとなるiPhoneに共にインストールされる必要があるため、実際にiPhoneにこの脆弱性があったとしても、悪用の可能性は非常に低いと言えるでしょう。

要するに、この問題は問題ではあるものの問題なしと思っておいて良い、ということです。

(Source: M1raclesEngadget日本版より転載)

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カテゴリー:セキュリティ
タグ:Apple / アップル(企業)Appleシリコン / Apple Silicon(製品・サービス)Apple M1(製品・サービス)CPU(用語)SpectreMeltdown

macOSのゼロデイを悪用し密かにスクショを撮る新たなマルウェア、アカウント情報も取得可能(11.4で修正済み)

悪名高いMacマルウェアファミリーがこれまでになかった脆弱性を悪用して、macOSのセキュリティ防御を回避し、何の影響も受けずに動作していることが研究者によって明らかにされたのはちょうど1カ月ほど前だった。そして今、同じ研究者たちが、異なる脆弱性を利用した別のマルウェアがmacOSシステムに忍び込むことができると発表した。

Apple(アップル)デバイス管理を専門とするJamfによると「XCSSET」というマルウェアが、マイクやウェブカメラへのアクセス、画面の録画など、許可が必要なmacOSの一部に、許可を得ることなくアクセスできる脆弱性を悪用している証拠を発見したとのこと。

XCSSETは、Trend Microが2020年に最初に発見したApple開発者、特に彼らがアプリのコーディングやビルドに使用するXcodeプロジェクトを標的としたマルウェアだ。これらのアプリ開発プロジェクトを感染させることで、開発者たちは知らず知らずのうちにユーザーにマルウェアを配布してしまう。Trend Microの研究者たちはこれを「サプライチェーン的攻撃」と表現している。このマルウェアは継続的に開発されており、最近では新しいM1チップを搭載したMacをターゲットにしたものも存在する。

このマルウェアは、被害者のコンピュータ上で実行されると、2つのゼロデイを利用する。1つは、SafariブラウザーからCokkieを盗み、被害者のさまざまなオンラインアカウントにアクセスするもので、もう1つは、Safariの開発バージョンをこっそりインストールし、攻撃者がほぼすべてのウェブサイトを変更したり、そこから盗み見できるようにするものだ。

しかしJamfによると今回のマルウェアは、被害者の画面のスクリーンショットを密かに撮影するために、これまで発見されていなかった第3のゼロデイを悪用していたという。

macOSは、悪意のあるものであれそうでないものであれ、どんなアプリでも、画面の録画、マイクやウェブカメラ、またはユーザーのストレージにアクセスする前に、ユーザーに許可を求めることになっている。だがこのマルウェアは、正規アプリに悪意のあるコードを挿入することで認知されないように忍び込み、許可プロンプトを回避していた。

Jamfの研究者であるJaron Bradley(ジャロン・ブラッドリー)氏、Ferdous Saljooki(フェルドゥス・サリョーキ)氏、Stuart Ashenbrenner(スチュアート・アッシェンブレナー)氏は、TechCrunchと共有したブログ記事の中で、このマルウェアは、被害者のコンピュータ上でZoom(ズーム)、WhatsApp(ワッツアップ)、Slack(スラック)など、画面共有アクセス権が頻繁に与えられている他のアプリを検索し、それらのアプリに悪意のある画面録画コードを挿入すると説明している。これにより、悪意のあるコードが正規のアプリを「ピギーバック」し、macOS全体でそのアクセス権を継承する。そしてこのマルウェアは、macOSに内蔵されているセキュリティ保護機能のフラグが立たないように、新しい証明書を使用して新しいアプリバンドルを署名する。

研究者らは、このマルウェアが許可プロンプトのバイパスを「特にユーザーのデスクトップのスクリーンショットを撮影する目的で」使用したとしながらも、影響はスクリーンキャプチャに限定されないと警告している。言い換えれば、このバグを利用して、被害者のマイクやウェブカメラにアクセスしたり、パスワードやクレジットカード番号などのキーストロークを取得したりすることも可能だったということだ。

この手法でマルウェアが何台のMacを感染させることができたのかは不明だ。しかし、AppleはTechCrunchに対し、米国時間5月24日にアップデートとして提供されたmacOS 11.4でこのバグを修正したことを確認した。

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カテゴリー:セキュリティ
タグ:macOSマルウェアAppleゼロデイ攻撃スクリーンショット

画像クレジット:Made Kusuma Jaya / EyeEm / Getty Images

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(文:Zack Whittaker、翻訳:Aya Nakazato)

アップルがWWDC21のスケジュールやOSアップデートを多数発表

Apple(アップル)は米国時間5月24日、iOS、macOS、watchOS、tvOSなど数多くの新しいOSアップデートと、そして6月7日に(バーチャルで)開幕するWorldwide Developers Conference(WWDC)スケジュールに関する情報を公開した。

ほとんどのデバイスに影響を与えるという理由もあり、やはりiOSとiPadOSがアップデートの主役だ。今回公開されたiOS / iPadOS 14.6には、先日のハードウェアイベントで発表された有料ポッドキャスト配信サービスApple Card Familyの追加など、いくつかの大きな更新がある。

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前者はポッドキャスト配信者が番組の定期購読を有料化でき、アップルは初年度に30%の手数料を取る。そして1年後には手数料は半分になる。後者はApple Cardの所有者がカードを実質的に分割し、利用することを可能にする。

Tim Cook(ティム・クック)CEOは発表時にこう述べている。

(Apple Cardを立ち上げた)当初に明らかになったことの1つは、クレジットカードの所有者が2人いる場合、業界がクレジットスコアを算出する方法に公平性が欠けていることでした。1人は良好なクレジットヒストリーを構築するメリットがありますが、もう1人はそうではありません。私たちは、この仕組みを再構築したいと考えています。

macOS 11.4では追加のグラフィックカードのサポート、いくつかのバグ修正、そしてiOSと同様に有料ポッドキャスト購読のサポートが追加されている。また新バージョンのwatchOS 7.5では、前述のポッドキャストとApple Card Family機能、さらにマレーシアとペルーでの追加の健康機能のサポート、Apple Cardの支出追跡機能が追加された。一方でtvOS / HomePod 14.6では、前者ではバグの修正とカラーバランスの変更が行われている。

これらに加えて、2021年のバーチャルWWDCのプログラムも発表された。2021年の同イベントは6月7日午前10時(日本時間6月8日午前2時)より基調講演で幕を開ける。ここでは上記すべての最新バージョンのOSに関するビッグニュースだけでなく、もしかするとハードウェアも発表されるかもしれない。また午後2時(日本時間6月8日午前6時)からは、恒例の「Platforms State of the Union」でさらに詳しい情報が提供される予定だ。

WWWDCの詳しいスケジュールはこちらを参照して欲しい。

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カテゴリー:イベント情報
タグ:AppleWWDCWWDC21アップデートmacOSiOS 14iOSApple Cardバーチャルイベント

画像クレジット:Apple

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(文:Brian Heater、翻訳:塚本直樹 / Twitter

ティム・クック氏はEpic Games対アップルの反トラスト裁判でしらを切る

Apple(アップル)CEOのTim Cook(ティム・クック)氏は米国時間5月21日、初めて証言台に立った。おそらくEpic Games(エピックゲームス)対Appleの反トラスト訴訟で最も期待されていた証言だ。しかし、クック氏はEpicの偽りや申し立てを激しく非難するのではなく、重要な質問の多くに対して答えなかったり答えられないとして、注意深く準備された穏やかな無知を装った。

この期待はずれの結果は派手な報道にはならないものの、AppleのApp Store(アップ・ストア)が独占に当たるとする少々疑わしいが危険な主張を無力化する効果はあるかもしれない。

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Appleの弁護人に呼ばれクック氏は証言台に立った、と法定に入ることを許されたメディア関係者2名のうちの1名であるLaw360のDorothy Atkins(ドロシー・アトキンス)氏が自身の詳細な証言ライブツイートで言った。クック氏からの引用は報じられたものであり逐語的ではないことに注意されたい。裁判所の速記録は後にまとめられて公開される予定だ。ちなみに、アトキンス氏による舞台装置の描写は魅力的かつ人間味あふれるものだが、EpicのCEOであるTim Sweeney(ティム・スウィーニー)氏は少々風変わりに見える。

スウィーニー氏はEpicの弁護人席に座り手元のペンを見つめている。弁護士のGary Bornsten(ゲリー・ボーンステン)氏が時折耳打ちしている。クック氏はリラックスした様子で脚を組んでいる。たった今隣に座っている人の方を向き、何かを言った後、笑った。

自社の弁護士によるクック氏に対する質問は穏やかで、AppleのApp Storeが優れていてiOSユーザーにとって十分である理由を繰り返す一方で、厳しい競争が存在していることも説明した。クック氏は少数のデベロッパーとの確執が存在していることを認め、優先度のち外や発見の改善が必要であることなどを挙げたが、デベロッパーとユーザーを維持するために会社は努力を続けていると語った。

うわべだけの無邪気な無知は、クック氏がAppleの研究開発費の数字(最近3年の年額が150~200億ドル[約1兆6330億〜2兆1770億円])を尋ねられたときに始まった。具体的には、Appleはその金額のうちどれだけがApp Storeに向けられたかを推定できない、なぜなら「当社はそういう割当て方をしていないから」だと同氏は言った。つまり、個々のプロダクトのための研究予算は、それ以外と区別されていない。

いやいやそれは納得できない、そうだろう?Appleのような会社は自社の製品や研究にいくら使っているかを1セント単位で把握している。仮に完全に分類できないとしても(MacOSコードの進展がApp Storeの一機能に取り入れられるなど)、会社は自社のリソースがどう割り振られ、どんな効果を得ているかをある程度知らないはずがない。App Storeの研究開発費の控えめな見積もりとリベラルな見積もりの違いは少なくない可能性がある。おそらく数億ドル(数百億円)単位で。しかも、そうした見積もりは間違いなく社内では行われている。そうでなければ企業として愚かである。

しかし、その数字は公表されず分類されていないため、そしてその数字はある程度曖昧であるに違いないため、クック氏は「App Storeの2019年の研究開発費は5億ドル(約540億円)である」というような具体的数字はない、と堂々と語ることができる。

確かな数字がないことはEpicの拠り所をなくす。数字はどちら向きにでも使うことができた。もし大きければ、会社は金の卵を生むガチョウを守っている(市場支配力を行使している)。もし小さければ、卵を集めている(市場支配力を通じて家賃を集めている)だけだ。Appleにとって唯一勝つ方法は何も演じないことなので、クック氏は沈黙を演じ、その結果Epicの主張は憶測のように見える(そして、Appleがいうように、作り話のように見える)。

次にクック氏は、利益に関する指摘の先手を打って、競争の激しさを訴える同様の戦略を展開した。彼は約2750億ドル(約29億9380億円)の純売上高と21%の利益率だけを挙げ、AppleはApp Storeの売上を独立事業として評価していないと語った。

たしかに、App Storeが大きなビジネス構造と非常に強固に結合された部門であるというのはわかる。しかし、独立事業として評価できないという考えはばかげている。Appleのあらゆる部門や製品ラインと同じく、App Storeの業績が社内で詳細に分析され報告されていることは間違いない。しかし、法的な目的においては「App Storeの売上と利益はこれこれである」と言えるほど単純でないこともまたたしかであり、結果的にEpicの前提はくずされる。

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しかし、これはEpicが独立した調査が必要だと考えたほど重要なことだった。そしてEpicの弁護士は、証人尋問の最初に、裁判の初期に専門家が証言したAppleのApp Storeの営業利益は約79%であるという供述を持ち出した。

こうした数字を認めることも否定することもAppleの利益にはならいので、クック氏はここでも無知を貫いた。ただし、わずかに本性が覗いたのは、Epicの弁護士がクック氏に対し、MacとiOS App Storeを合わせた機密の売上数値を分割するよう依頼した時だった。Appleがこれに反論し、それは部外秘であり非公開裁判でのみ公開できるとした一方で、クック氏はiOSの数字はMacの数字より「ずっと大きい」と発言した。

ここに見られるのは、もう1つの財務上の巧妙なごまかしだ。iOSとMacの売上を混ぜ合わせることで、Appleはそれぞれいくら金が使われいくら稼いだかを曖昧にしている。それらを分離しようとしたEpicの試みは成功しなかったが、裁判官の目は節穴ではない。彼女はEpicと同じものを見ている、ただしぼんやりと。Appleは曖昧で操作しているように思われるリスクを取ってでも、Epicの法的勝利を否定しようとしている。

これは、クック氏がAppleとGoogle(グーグル)と結んでいる検索エンジンをiOSのデフォルトにする契約について質問されたときにもあらわになった。クック氏は、具体的数字は覚えていないと語った。

世界最大のテック企業のCEOが、もう1つの世界最大級のテック企業との10年に渡る数十億ドルの契約の詳細を覚えていないと言ったら、あなたは信じるだろうか?

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それ以外の証言はほとんど何も明らかにしなかった。クック氏は、中国などの現地法が技術的、政治的な障害になる地域での経営の複雑さを述べ、Appleが30%の手数料をとっているアプリ内購入の範囲を拡大したことについての議論を最小化した。非公開法廷での証言がもう少し行われたが、機密情報に関わるため我々が知ることはないだろう。

裁判は終わりに近づき、そこに驚きはほとんどなかった。双方が最初に主張を展開し、そのほとんどは裁判長による事実の解釈に委ねられる。劇的な驚きも決定的な証拠もなかった。それは何が独占的行為を構成するかに関する新たな主張にすぎなかった。AppleはAndroidとの競争は存在し熾烈であり、ゲームの世界ではWindowsとゲーム専用機とも競争していると頑なに主張した。

判決がどちらに傾いたとしても、控訴されて上級裁判所に行くことはほぼ必然だが、判決は、Epicの主張(とAppleのぼやかし)がどこまで受け入れられたかを示す強力な指標になる。いずれにせよ、EpicやAppleのApp Store手数料(会社がどう隠そうとも莫大な利益を挙げている)を批判するその他の人々にとって、目的はすでに達成されている。Appleが最初の100万ドル(約1億1000万円)に対する手数料を15%に引き下げたことは、デベロッパーの騒動とマスコミの酷評に対する答えであることは明らかであり、今Appleはソーセージがどうやって作られているかを守る立場に立たされている。

Appleの陽極酸化アルミニウムの塔を曇らせることは、少なくとも目的の一部なので、勝っても負けてもEpicは、払った金に見合うものを手に入れた気分かもしれない。ヨーロッパでの再戦はまだこれからだ。

カテゴリー:ゲーム / eSports
タグ:AppleEpic Games反トラスト法裁判ティム・クックApp StoreFortnite

画像クレジット:Josh Edelson/AFP

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(文:Devin Coldewey、翻訳:Nob Takahashi / facebook

半導体不足で新品入手が困難となる中アップルやマイクロソフトが「修理する権利」法案成立の阻止に尽力

半導体不足で新品入手が困難となる中アップルやマイクロソフトが「修理する権利」法案成立の阻止に尽力

Phone-Service-Centre via Getty Images

米国では「修理する権利」つまりユーザーが自ら選んだ方法で(主に製造メーカー非公認の修理業者に持ち込むことで)購入した製品を修理する権利に関する法案が次々と提出されています。具体的には製造メーカーに純正の修理部品や回路図を独立系の修理業者に提供することを義務づける内容です。

こと新型コロナ感染拡大によるリモートワークや自宅学習が広まったもと、タブレットやChromebookなどの需要が増えており、壊れたデバイスをメーカー修理に送ると時間や費用がかかることや、半導体不足が悪化の一途をたどり新品の入手が困難となっているため、いっそう機運が高まっている事情もあります。

しかしアップルやマイクロソフト、アマゾンやGoogleといったハイテク大手が、それらの法案成立を阻止するために数々の努力をしていることが報じられています。

米Bloombergによると、2021年だけで全米27の州にて「修理の権利」法案が検討されたものの、そのうちの半分以上はすでに否決されたり、却下されたとのことです。それはハイテク大手を代表するロビイストや業界団体が猛反発しており、特にアップルはこうした法律がデバイスの損傷や、修理しようとする消費者の自傷行為につながる可能性があると主張していると伝えられています。

例えばワシントン州の下院議員ミア・グレガーソン氏も「修理する権利」法案を提出したところ、MS、Google、アマゾン、そしてアップルを代表するロビイストに反対されたと述べています。なかでもアップルのロビイストは法案が取り下げられれば、地元の大学での修理プログラム(授業)を支持すると持ちかけたそうです。

ほかアップルはコロラド州やネバダ州でも法案に反対しており、独立系修理業者のひとりは学校で需要が高いiPad(その地域で1万3000台以上が流通し、うち10~15%が修理が必要のため)のスクリーンを調達するのに苦労しているとのこと。その人物はアップルが新しいデバイスを買ってもらうために修理プログラムに反対していると主張しています。

アップルは「修復する権利」法案と戦う一方で、日本を含む世界各地で独立系修理業者の認定プログラムを展開しています。これは非正規業者にも純正部品や工具、修理マニュアル、診断方法を提供し、アップル直営店や正規サービスプロバイダと同等の品質を受けられるようにすることが目的とされています。

このプログラムは無償で提供されていますが、やはり独立系業者はiPadのディスプレイなど一部の部品は入手できないため、アップルと正規サービスプロバイダが修理する上で唯一の選択肢となっているわけです。

ほかBloombergの記事はMSのブラッド・スミス社長がワシントン州の議員らを集めた会議を仕切って、「修理する権利」法案が自社の知的財産権を脅かすもので「存亡の危機」だと主張したこと。そうした会社そのものが関わるMSと違い、アップルは雇ったロビイストや業界団体に反対運動を任せているなど興味深い事実も伝えられています。

ある議員が発した「なぜ自分のXboxのファンが壊れたとき、ゲーム機をMSに返送し、修理のために何週間も待たなければならないのか」という疑問は、多くのゲーマーが頷けるところかもしれません。

(Source:BloombergEngadget日本版より転載)

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カテゴリー:ハードウェア
タグ:iPad(製品・サービス)Apple / アップル(企業)Amazon / アマゾン(企業)カーボンニュートラル(用語)Google / グーグル(企業)修理する権利 / Right to Repair(用語)Microsoft / マイクロソフト(企業)リサイクル(用語)

アップルがアプリ追跡の透明性をユーモラスに表現した「iPhoneのプライバシー|追跡」CMを公開

アップルがアプリ追跡の透明性をユーモラスに表現した「iPhoneのプライバシー | 追跡 」CMを公開

Apple

今年4月末に配信されたiOS 14.5ではアプリトラッキング透明性(App Tracking Transparency/ATT)が導入され、今後アプリが異なるWebやアプリをまたいでユーザーを追跡する際には、ユーザーの明示的な許可を得ることが義務づけられるようになりました。アプリがユーザーのIDFA(広告識別子)を取得する前には、プロンプトを表示してユーザーの許可をもらうことが必須となっています。

これを受けてアップルは、ATTをユーモラスに表現したテレビCM「iPhoneのプライバシー|追跡」の公開を開始しました。

アップルいわく、アプリのトラッキング透明性とは「あなたのデータを、あなた自身がコントロールできる新しい機能」とのこと。それを朝の一杯のコーヒーを買った人の一日を追うかたちで分かりやすく可視化しています。

その人がコーヒーを買ったり店で買い物するたびに後を付いてくる店員(勝手にプライバシーを追跡するアプリの擬人化)が続々と増えていき、気が付けば部屋は追跡者で満員に。そこでiPhoneに「アクティビティを追跡することを許可しますか?」というプロンプトが表示され、「Appにトラッキングしないように要求」をタップすると追跡者がドロンと消えてゆくという流れです。

アップルはプライバシーが基本的人権であり、ユーザーが自分の情報を自分でコントロールできるように製品を設計していると述べています。そうした信念は昨日今日のことではなく、共同創業者スティーブ・ジョブズ氏がCEOだった時代まで遡り長年にわたって追求されてきたものです。4月初めに公開されたプライバシー保護原則やATTに関するデジタルブックでも、ジョブズ氏の「彼らのデータで自分たちが何をしようとしているのか、正確に説明すべきです」との言葉が引用されていました。

かといってアップルは広告一般に反対しているわけではありません。ティム・クックCEOも人々がオンラインで費やす時間が長くなるなかで、デジタル広告が増えていくのは自然な成り行きであると認めていました。その上で「このような詳細なプロフィールの構築(追跡から得た情報に基づいて作ったユーザー属性)をお客様の同意なしに行うことが許されるかどうかです」として、広告関係者には事前にどんな情報を集めるかを知らせ、ユーザーが自らのデータを制御できる権利を尊重するよう呼びかけているしだいです。

iPhoneにATTが導入された直後、米国ユーザーの96%がアプリ追跡を無効にしたとの調査結果もありました。その一方でマーケティング業界団体は一時的にはiOS向けの広告費は減りながらも、いずれはユーザー追跡なしの広告が増えていくという楽観的な見通しも発表しています

無料でアプリやサービスが楽しめる対価として広告が表示されるビジネスモデルはテレビやラジオから引き継がれたものであり、もしも否定してしまえばあらゆるコンテンツが有料になりかねません。

ATTはあくまで異なるWebやアプリをまたいだユーザー追跡に同意を求めるにすぎず、自社アプリやサイト上でのデータ収集は今まで通り続けられるはず。今後はその会社の経済圏内に留まり続けるかぎり行動履歴に基づくパーソナライズド広告が表示され、一歩外に出ればテレビのスイッチを切るように追跡もオフにされる、という新たな行動様式が定着していくのかもしれません。

(Source:Apple(YouTube)Engadget日本版より転載)

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アップルが有料ポッドキャストのアフィリエイトプログラムを開始

Apple(アップル)は2021年4月、デザインを刷新したApple Podcast(アップル・ポッドキャスト)アプリで、有料のポッドキャスト配信を計画していることを明らかにした。そして今回、ポッドキャストの制作者が有料聴取者数を増やすための新しいプログラムとして、アフィリエイトマーケティングを導入すると発表している。この「Apple Services Performance Partner Program(アップル・サービス・パフォーマンス・パートナー・プログラム)」は、Apple TV、Apple News、Apple Booksなど、アップルの他のサービスでは販売を支援するためにすでに展開しているが、今回からそれが有料ポッドキャストにも拡大される

この新しいアフィリエイトプログラム「Apple Services Performance Partner Program for Apple Podcasts」は誰でも参加できるが、アップルはこれが、すでに多くの聴取者を抱えているクリエイターや、アフィリエイトリンクを共有できるいくつものマーケティングチャネルを持っているパブリッシャーにとって、最も意味のあるプログラムになると考えている。ユーザーがこのリンクをクリックして有料ポッドキャストのサブスクリプションを契約すると、パートナーは加入者が最初の月に有料サービスを利用した後、月額料金の50%を1回限りのコミッション(成果報酬)として受け取ることができる。

例えば、ある有料ポッドキャストがリスナーに月額5ドル(約540円)の課金を請求している場合、コミッションは2.5ドル(約270円)となる。このコミッションは、アフィリエイトチャンネルを通じて新規に登録したすべての加入者に適用され、上限はない。

ポッドキャストの制作者もまた、アフィリエイトリンクを使って自分の有料プログラムを宣伝することができ、それによってさらなる収益を得ることも可能になる。

このアフィリエイトプログラムには誰でも参加を申請することはできるが、承認を受けるための審査がある。これは主に、スパマーがプログラムに参加しないようにすることと、登録者がリンクを流通させることができるマーケティングチャネルを、少なくともいくつか持っていることを確認するためだ。申請フォームでは、運営しているチャネルの数や、パートナーがそのチャネルを使ってどのようにアフィリエイトリンクを宣伝しようとしているかなど、一定の基準を満たしていることが求められる。

このプログラムは、有料ポッドキャストの配信が行われる170の国と地域の誰もが利用できるようになる。

承認されてからサインインすると、アフィリエイトパートナーはオンラインのダッシュボードにアクセスでき、他のアフィリエイトプログラムと同様に、リンク(短縮URL)を作成することができる。1つのポッドキャストに対し複数のURLを作成することができるので、チャンネルごとのパフォーマンスを簡単に把握することができる。このURLは、単独で掲載することもできるし「Apple Podcastで聴く」バッジに結びつけたり、QRコードとして提供することも可能だ。QRコードは、今後ライブイベントが復活すれば、例えばライブ開催中に配布されたチラシや看板に印刷することができるので、より有用かもしれない。また、紙媒体とデジタル媒体のどちらでも、さまざまな広告に載せることができる。

有料ポッドキャストはすでに存在していたが、これまでポッドキャスターに直接支払い、プライベートなRSSフィードにアクセスするものが多かった。また、Stitcher(スティッチャー)のような小規模なサービスでは、サブスクリプションを利用して、広告なしの聴取や限定コンテンツなどの特典を、有料顧客に提供している。アップルやSpotify(スポティファイ)の新たな取り組みは、どちらもクリエイターを自社のプラットフォームに呼び込み、有料配信による収益の一部を受け取ることに重点を置いたものだ。Spotifyは最初の2年間は5%の手数料を免除しているが、アップルは通常1年目に30%、2年目には15%の手数料を徴収するという収益モデル採用している

新しいアフィリエイトプログラムへの登録はすでに可能だが、アップルによると、実際に有料ポッドキャストの配信が始まるのは今月末の予定だという。有料配信が開始されると、アフィリエイトプログラムに登録した人は、リンクを作成して、課金からコミッションを得ることができるようになる。

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(文:Sarah Perez、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

【レビュー】アップルの24インチM1 iMac、明るい色とコンパクトさで「キュート」だが最重要ポイントは「M1」

2020年9月、私たちは27インチiMac(アイマック)のレビューをこのように締めくくった

「ここでの大きな疑問は、iMacの未来がどうなるのか――そしてそれを見るために私たちはどれくらい待たなければならないのか、というものだ。それはもちろん、何年も続くハードウェアのアップグレードに関する疑問だが、Arm(アーム)ベースのシステムが差し迫っていることや、再設計にまつわる噂があることで、それはさらに切迫したものになっている」。

このような状況から、このとき発表されたAppleの最新のオールインワンマシンは全面的に支持できるものではなかった。このような評価をしたのは私たちだけではなかった。それはこのコンピューターにとっての、そしてMac一般にとっての、奇妙なポジションだったのだ。2020年6月のWWDCでは、インテルから自社製チップへの移行という異例の発表が行われたが、その際にはハードウェアは一切用意されていなかった。

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その理由はもっともなものだった。開発者たちが実際の発売前に先立って対策をできるようにと、Appleが考えていたからだ。2005年以来、Macのラインがこのように大きく変化するのは初めてのことで、それはかなり困難なものになると思われた。15年というのは長い時間であり、それだけ多くのレガシーソフトウェアと闘うことになるからだ。すべてのmacOS(マックOS)ソフトウェアが完全に壊れてしまうわけではないが、開発者にとっては、同社が提供するMac Mini(マックミニ)開発者キットを使って、新しいハードウェアに最適化することが、最重要の方法であることは間違いなかった。発表時、新しいAppleシリコンへの完全な移行には2年を要するとAppleは語っていた。

画像クレジット:Apple

2020年11月には、Appleは最初のM1 Macとして、新しいMac Mini(マックミニ)、MacBook Air(マックブックエア)、13インチMacBook Pro(マックブックプロ)を発表した。TechCrunchは3つのシステムのレビューにはそれなりの文字数を費やしたが、最終的にMatthew(マシュー)記者が「Appleの新しいM1搭載MacBookは、Intelのチップを一夜にして陳腐化させるほどの印象的なパフォーマンスの向上を見せた」と簡潔に表現している。

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これは、そのわずか2カ月前に発売されていたオールインワン(iMac)に対して、厳しい印象を与えるものだった。根本的な再設計がしばらく行われていなかったシステムであっただけに、その厳しさもなおさらだ。発売から2カ月が経過したiMac 2020は、その時点ですでに古さを感じさせ始めていた。

画像クレジット:Brian Heater

そして2021年4月になって、Appleは立て続けに行ったハードウェアニュースの中で、新しいiMacを発表した。これこそが、私たちがずっと待ち望んでいたiMacだったのだと思えた。この新システムは、この10年間で最も根本的な再設計が行われたもので、超コンパクトな新フォームファクターの提供、リモートワーク時代の大きな考慮点であるオーディオとビデオの改善とともに、おそらく最も重要なものとして新しいM1チップが導入された。

画像クレジット:Brian Heater

2020年版iMacの最大の特徴は、まあ要するに「大きい」ということだった。パンデミックの間、日々の仕事の多くを27インチiMacで行っていた私は、今回の24インチiMacを前にして、この3インチ分の余剰がどれほど恋しいものかを思い知った。当初私は、20インチを超えたら、画面の大きさの違いは無視できるだろうと考えていたのだが、実際には他のものと同様、慣れるのには時間がかかることがわかった。

もちろん、すぐにわかる良い点もある。これまでのiMacと比較して、新しいデザインがいかにコンパクトであるかに、本当に驚いた。これまでの21.5インチから2.5インチサイズアップしたにもかかわらず、新システムは11.5mm(スタンドを含めると14.7mm)という超薄型を実現している

このシステムを包み込むテーマは「キュート」(cute、カワイイ)だ。この言葉を、私がテクノロジーに当てはめることは滅多にない。こういったときに一般的好まれるのは「クール」(cool、カッコいい)や「スリーク」(sleek、均整美がある)といった言葉だ。しかし、iMac G3の精神を真に受け継ぐものと感じさせるこの製品を表現するのに、これ以外の適切な言葉を見つけることができない。あのカラフルなiMac G3たちは、フォルクスワーゲンのニュービートルによって象徴される世紀末の年に、Steve Jobs(スティーブ・ジョブズ)氏がAppleで2度目の成功を収めるきっかけとなった。

もちろん、最初のiMacが登場してから約四半世紀の間に、スタイルの変化や、当然ながら縮小を続ける部品サイズなどにより、デザイン言語は劇的に進化してきた。フラットパネルのデザインは今世紀初頭に登場し、2012年頃に最新のデザインへと落ち着いた。確かに、その後も多くのアップデートが行われてきたが、Appleのデザインが大きく更新されないまま9年が経過したのはとても長かった。

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Appleは、これまでの一見インダストリアルなデザインから、より温かみと受容性のあるデザインへと変化させている。ここでは色が大切だ。これは、TechCrunchの(仮想)オフィスで最も頻繁に議論された疑問だった。みんなが、どの色を選ぶかということを知りたがった。私はイエローを選んだ。明るく春らしくていい色だ。正直なところ、思っていた以上にゴールドがかっていて、明るい輝きがある。このシステムを購入するつもりなら、もし近くに行きやすいアップルストアがあれば、実際に訪問することをお勧めしたい。可能なら、実際に目でみることが本当に意味があるような製品なのだ。

そして、なんともすごいのがAppleはそのテーマを徹底していることだ。キーボードも、ケーブルも、かわいらしいパッケージもテーマにマッチしているし(そういう意味では開封するのも楽しい)、デスクトップの壁紙も、そしてOSボタンのようなちょっとした工夫もマッチしている。最後の2つは、当然ながら自分で少しずつ変えていくことができる。しかし、本体やキーボードまでもが、少しばかり強いこだわりを持っている。結局のところ、これはおそらく何年も持ち続けたいと思うようなものなので、決定を下す前に照明と室内装飾の両方を検討する価値がある。デスクトップパソコンの話をしているときに、このようなことを考えようというのは奇妙だとは思うが、まあ、iMacだからね。

同社は、新しいiMacが周囲の環境にどのようにマッチするかを確認するためのAR iOSアプリを提供している。これは巧妙な、そしておそらく有用なアプローチだ。また、このシステムの重さは10ポンド(約4.54kg)以下だ。これは正直なところ、これまでのデスクトップでは考えられなかった軽さだ。デスクトップの大きさを形容するのに「ポータブル」という表現は奇妙だが、特に他のデスクトップシステムと比較してみた場合は、ぴったりな表現かもしれない。少なくとも、必要に応じて部屋から部屋へと移動させる可能性が、まったくないとはいえない。

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大まかに言えば、フロントデザインはこれまでのiMacと同様だが、ボトムパネルと大きなAppleロゴは、色のついたものに変更されている。ガラス面はスクリーンとそれを縁取る白いベゼルに高さが合わされている。ベゼルと下部のパネルを合わせると、ディスプレイの下にはそれなりの場所がとられているが、ここは内蔵部品や、コンピューターの底部全長にわたって配置されている下向きのスピーカーグリルが収納されている場所だ。一番上部には、新しくアップグレードされた1080pのHDウェブカムが装備されているが、これは全Macを通して初めてのことだ。

これまでのiMacと同様に、本体はスタンドに装着されている。少なくともイエローモデルの場合には、このスタンドはシステムの前面に比べて明らかに暗い色をしている。購入時にVESAマウントオプションを選ぶことができるが、スタンド自身はユーザーが交換できないように設計されている。ヒンジの動作はスムーズだ。ウェブカムのフレームに自分がよく収まるように、システムをしばしば上下に動かしたが、それも簡単に行うことができた。

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左側には、昔からのお馴染みである3.5mmのヘッドフォンジャックがある。私は、ケーブルを側面や底面から迂回させる必要がある、ジャックの背面への配置よりも、この側面への配置の方が好きだ。

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スタンドには、特に電源ケーブルを通すための穴が開けられている。Magsafe(マグセーフ)――おっと、マグネット式充電コネクタだった――は、思いがけない登場だった。昔のMacBookで提供されていたもののような簡単な接続解除が目的ではなく、ケーブルを簡単にカチリと固定させることが主眼だ。だが移動されない(少なくとも滅多に移動されない)デスクトップのケーブルにつまずく人は少ないのではないかと思う。

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電源ケーブルの状況への大きな変化は、もちろん、電源アダプター本体にEthernetポートが追加されたことだ。特に、MacBookに慣れているユーザーには、このアダプターはかなり大きく感じられるだろう。とはいえ、たぶん邪魔にはならないだろう。このことによって、システムの背面からさらに余分なものがなくなり、コンピュータ自体の厚さをより薄くすることができた。有線接続にアクセスできる場合には、ほとんどの人にとってうれしい追加機能だ。

画像クレジット:Brian Heater

一方で、本体のポートそのものの状況は、あまりうれしいものではない。私はポート好きだ。なにしろコンピュータの背面に接続する必要があるものをたくさん持っているのだが、ポートはそれらを接続するのに最も便利な手段だ。エントリーモデルでは、Thunderbolt / USB(サンダーボルト / USB)ポートが2つ搭載されている。これは4つまでアップグレードできる。絶対にそうすべきだ。本心からそう言っておこう。そうしておいて悔やむことはない。

私はワイヤレスキーボードやトラックパッド / マウスをほとんどの時間、接続したままにしている人間だ。それがワイヤレスという目的に反していることはわかっているが、しかし、充電器の心配は、今の私には不要のストレスなのだ。これで2つのポートが必要となる。そこでAVアクセサリーをいくつかつないだら、ほーら!もうポートがないのだ。

1299ドル版(日本では税込15万4800円)のシステムには、Magic Keyboard(マジックキーボード)が同梱されている。これは最近のMagic Keyboardsとほとんど同じものだ。万人向けというわけではないと私は思っている。メカニカルキーボードが好きな人にとっては、触り心地に不満があるかもしれない。しかしそれはMacBookのものよりはステップアップしているし、私がそれを使い慣れているのも事実だ。ベースモデルにはテンキーがついていないが、カラーリングはMac本体とマッチしている。

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1699ドル(日本では税込19万9800円)以上のモデルでは、デスクトップシステムでは長らく実現されてこなかったTouch ID(タッチID)を搭載したバージョンにアップグレードされる。他のMac(および古いiPhone)と同様に、指紋認証によるログインはほぼ瞬時に行われる。しばらく前からApple Watchを身に付けていれば、それでログインすることもできるようになってはいたが、デスクトップにTouch IDが追加されたのはすばらしいことだ。基本バージョンにはMagic Mouse(マジックマウス)が付属している。トラックパッドへのアップグレードは50ドル(日本では税込5000円)、両方注文すると129ドル(日本では税込1万3800円)だ。私はトラックパッドを気に入っているのでそのアップグレードを行うだろう(両方を必要とする人は多くないと思う)。

画像クレジット:Brian Heater

これまで同様、同社が製品ラインをUSB-Cに移行させてきたたくさんの理由を私は理解している。特に、デバイスの背面にどれだけのスペースが解放されたかを見ればそれは明らかだ。でも私には、2020年版のiMacにあったレガシーなUSB-Aポートが失われたことが残念だ。ともあれ、注文確定の前に、AからCへのUSBアダプターを2つほどカートに入れておくとよいだろう。ともあれ、それがAppleとともに生きるということだ。100%勇気あるのみ。

これは、AppleがiMac Pro(アイマックプロ)の復活に向けてM1ラインを位置づけていることを意味しているのだろうか。これまでもより奇妙なことは起きてきた。もちろん今は、AppleははるかにハイエンドのMac Pro(マックプロ)に注力している。

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期待どおり、新しいM1チップがシステムに新たな息吹を吹き込んだ。Geekbench 5のスコアを見てみよう。シングルが1720、マルチコアが7606だ。これは、21.5インチシステムの、平均1200と6400という結果を吹き飛ばすものだ。当然、Rosetta(Intel)版ではそれぞれ1230、5601と落ち込むが、トランスレーションレイヤーを介してもしっかりとした性能を発揮している。しかし、Appleが開発者たちに対して、新しいAppleシリコンへの移行を積極的に呼びかけてきた理由もこれで明らかになった。全体的に、これまでに発表された他の新しいM1システムと同様の成果が得られている。これはMacの未来に向けた、健全ですばらしい飛躍といえるだろう。

画像クレジット:Bryce Durbin/TechCrunch

自分のワークフローにどの程度の影響があるのかを知りたい場合は、この資料から調べ始めると良いだろう。全体的には、私の日常的なアプリのほとんどは問題ないことがわかった。もちろん、問題も多少はある。Spotify(スポティファイ)とAudacity(オーダシティ)がそれに当てはまる。どちらもパフォーマンスに影響があるものの、全体的にはRosettaを使って動作できている。しかし、使用にはより多くのリソースが必要となる。

画像クレジット:Bryce Durbin/TechCrunch

Spotifyの場合は、このApple Musicの競合会社が新バージョンにどれだけのリソースを投入したいかという問題だし、Audacityの場合は会社が自由に使えるリソースがどれだけあるかという問題だろう。もしMicrosoft(マイクロソフト)やAdobe(アドビ)のような大手企業でなければ、徐々に不確実性は増えていく。しかし、大手企業のサポートにも問題がある。たとえば私は、Zoom(ズーム)をAppleシリコン版にアップグレードしたのだが、私が使っている「Canon EOS」のウェブカメラソフトのインテルバージョンが動作しないことがわかったので、結局Zoomをダウングレードした。

画像クレジット:Bryce Durbin/TechCrunch

これは非常に特殊な問題であるとわかっているし、ワークフローも非常に特殊なものだ。しかし、M1システムがMacの主流になるに従い、最終的には開発者にも選択の余地がなくなる。Appleシリコンに対応していないと、時代遅れになるリスクがあるからだ。このような変化にともなう成長の痛みは避けることはできないが、結果がその痛みを正当化してくれる。AppleシリコンはMacの未来であり、それはまさに、起動が速くスムーズに動く未来なのだ。

私が仕事でビデオを撮るときに使っている外部マイクやカメラの話をすると、Appleチームから怒られるのが目に浮かぶ。なにしろ新しいiMacは、これらの機能に対して久しぶりの大きなアップグレードを行ったからだ。パンデミックによって仕事や会議のやり方が変わり始めていた2020年なら、新しいマイクシステムや、Macに搭載された初の1080p HDカメラを導入するのには最善な時期だっただろう。次善の時期は、もちろん今だ。

Appleは2020年のMacBookではカメラシステムの改善を宣伝していたが、それはチップ上の画像信号処理に関係するものだった。それはホワイトバランスなどの改善にもつながるものの、本当に意味のある映像の改善には、一般にカメラの新しいハードウェアが必要となる。以下の画像を見て欲しい。

画像クレジット:Brian Heater

左が2020 iMac、右が新しいM1 iMacだ。(できれば)私のたわんで半分麻痺したような顔(2020年だよな?)は一瞬忘れて欲しい。画像は夜と昼のものだし、この後、パンデミックの日々を重ねて、多少ましになったからというわけでもない。720pから1080pへのアップグレードによる変化は、画質の違いとしてすぐに現れている。今やテレビ会議は生活の一部になっているので、Appleが全面的にシステムをアップグレードすることを期待していた。

iMac 2020

iMac 2021

カメラに加えて、マイクシステムも改良された。2020年11月に旧システムで録音したものと同じ内容のものを再び録音してみた。3つのマイクアレイはより鮮明で、バックグラウンドノイズの多くを取り除き、よりクリアなものとなった。また、6スピーカーのオーディオシステムも改善されている。音楽や映画の再生には適しているものの、リモート会議では相手のマイクの質によってはクリアさに欠けることがあった。オーディオは、私の好みとしては少し低音が強いかもしれない。

全体的に見て、ほとんどの人が日常的に使用するには、今回のオーディオとビデオのアップグレードは十分だと思う。たまにZoom通話をしたり、音楽を聴いたりする程度の用途であれば、問題ないだろう。だが、これらの製品から何を得ようとしているのかにもよるが、適切な外付けカメラ、マイク、スピーカーを買うのは決して悪い投資ではない。

新型iMacは、デスクトップ型オールインワンの基本的な部分で大きな飛躍を遂げていて、長い間改良の必要性が指摘されてきた同社の最も人気のあるシステムの1つに、新たな息吹を吹き込んでいる。繰り返すが、私は失われたポートを懐かしんでいるし、今では2020年のモデルにSDリーダーが搭載されていたことを夢のようだったと思い返している。いずれは27インチのシステムも登場して欲しいと思う(つまりiMac Proのリブートということ。賛成の人いるよね?)。全体的にみて、これまでの他のモデルに比べて、クリエイティブなプロをターゲットにしたシステムではないものの、それでもM1と搭載されたML(機械学習)は、オーディオ、ビデオ、静止画に対するすばらしい編集機能を備えている。

しかし、カラーコーディネイトされたキュートなデザインや、長い間待れていた遠隔会議機能のアップグレードはさておき、これまでのMacBookやMac Miniと同様に、ここでもApple Siliconが主役を果たしている。このシステムの価格は、発表当初、周辺ではちょっとした騒動のもととなった。すべての機能を搭載した最上位レベルでは2628ドル(日本では税込30万1600円)となるが、最小限のモデルは1299ドル(日本では税込15万4800円)なのだ。

最も基本的なレベルとして、3つの主要な構成が選べる。

  • 1299ドル(税込15万4800円):8コアのCPUと7コアのGPU、8GBのRAM、256GBのストレージ、2つのUSBポート、標準のMagic Keyboard
  • 1499ドル(税込17万7800円):GPUを8コアにアップグレード、Ethernetと2つのUSBポートを追加、キーボードにTouch IDを搭載
  • 1699ドル(税込19万9800円):ストレージを512GBにアップグレード(私たちが試用した構成)。

このシステムは現在予約を受け付けており、今週の金曜日以降顧客の手元に届く予定だ。

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カテゴリー:ハードウェア
タグ:AppleiMacApple M1Appleシリコンレビュー

画像クレジット:Brian Heater

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(文:Brian Heater、翻訳:sako)

Apple Watchに検知した手の動きで操作する「AssistiveTouch」機能が追加

Apple Watchの小さな画面を正確にタップすることには、ある種の根本的な難しさがある。障がいのある人には、純粋に不可能な場合もある。その対策として、Apple(アップル)は、手のジェスチャを検出してカーソルを制御し、画面の操作を行うことができる「AssistiveTouch(アシスティブタッチ)」という新モードを導入すると発表した。

この機能は、アップルの製品群におけるアクセシビリティに重点を置いた改良の一環として発表されたが、中でもApple Watch用のAssistiveTouchは、ユーザー層全体に大評判となる可能性が高いと思われる。

AssistiveTouchは、Apple Watchに内蔵されたジャイロスコープと加速度センサー、そして心拍センサーからのデータを利用して、手首と手の位置を推定する。ピースサインとメロイックサインの区別はまだできないものの、今のところ「ピンチ」(人差し指と親指を接触させる)と「クレンチ」(ゆるく拳を握る)を検知して、基本的な「次へ」や「確認」の操作を行うことができる。例えば、電話がかかって来た時、拳を握りしめればすぐに受けることができる。

だが、最も印象的なのは「Motion Pointer(モーション・ポインター)」と呼ばれる機能だ。これは、AssistiveTouchメニューで選択するか、手首を大きく振ると起動する。すると、画面にポインターが現れる。手を動すとその動きを検出して、ポインターを画面上で動すことができるので、画面の端に持っていって「スワイプ」したり、ピンチやクレンチして操作することが可能になる。

いうまでもなく、これは時計を操作するのに片手しか使えない人にとって非常に役に立つ機能ではあるが、どうしても必要としているわけではない人にとっても、例えばエクササイズマシンや杖などに片手を添えたまま、スマートウォッチを操作できるというのは、きっと便利であるに違いない(この操作方法は、他のプラットフォームでも使えるのではないだろうかと考えずにいられない……)。

画像クレジット:Apple

Apple WatchのAssistiveTouchは、アップルが今回のニュースリリースで発表した数多くのアクセシビリティに関するアップデートの1つに過ぎない。他にも以下のようなものがある。

  • Apple Storeでの接客やサポートで利用できる手話通訳付きビデオ通話「SignTime(サインタイム)」
  • 「Made for iPhone」認証アクセサリに新たに加わる補聴器のサポート
  • VoiceOver(スクリーンリーダー)を使った画像説明機能の向上
  • 集中したり落ち着くために役立つ「background sounds(背景音)」発生機能(私はこれを使うつもりだ)。
  • 一部のボタンやスイッチの働きを、口で発する言葉ではない音(「ポップ」や「イー」など)で代用できるSound Actions for Switch Control(言葉や動きが不自由な人のための機能)
  • 酸素チューブ、人工内耳、ソフトヘルメットを装着している人のためのMemojiのカスタマイズ機能
  • App Store、Apple TV、Apple Books、Apple Maps(「マップ」アプリ)で、障がいのある人向けのアプリや作品、有益な情報などを紹介。

これらはすべて、5月20日の「Global Accessibility Awareness Day(グローバル・アクセシビリティ・アウェアネス・デイ)」に合わせて発表されたものだ。

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カテゴリー:ソフトウェア
タグ:AppleApple Watchアクセシビリティ

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(文:Devin Coldewey、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

【レビュー】アップルのiPad Pro 2021は今回もすばらしい、だが……

これまでに複数の場所に住んだことがあるなら、新しいアパートや家に引っ越したときの感覚を知っていると思う。その部屋や空間が可能性に満ちあふれた真っ白なキャンバスのように感じられるのだ。だが大抵の十分なお金を持っていない場合には、結局その場所を古い家具で埋め尽くしてしまうことが多い。

私は何年にもわたって、このような経験を何度もしてきた。実家を出てから、私が手に入れた家具はすべて、安物を買ったり、リサイクルしたり、誰かにもらったりしたものだった。時代もスタイルもごちゃまぜだったが、私が手に入れたときには十分使えていた。結婚して引っ越しをしてからも、同じ家具をたくさん持ち歩いていた。

しかしそのうちに、多くのものに違和感を感じるようになって、それらを譲り渡し、自分たちの家庭を表現するような、そして自分たちの心に響くようなものを注意深く買ったり作ったりするようになった。しかし、表面の凹んだダッチモダンのコーヒーテーブルのように、一風変わったものもまだ持っている。それを見ると、20代の頃のカラオケパーティー後のベタベタしたカクテルの散乱や、30代の頃の子どものおやつ(これもやはりベタベタだが)を思い出す。

それが今のiPadなのだ。これは、毎年おそろしい勢いで働き続けている、Appleのエンジニアリングチームとハードウェアチームによる美しく新しいモニュメントだ。だがそこには、まだ使えはするものの、古さを感じさせるiPadOSソフトウェアが詰めこまれているのだ。そしてそれらは日に日に場違いな感じを増している。

この記事は、もちろんAppleが現在出荷している、現在注文すると手に入る製品について書いている。しかし、Appleの世界開発者会議(WWDC)がわずか2週間強後に迫っている現在、私は基本的にこのiPad Proを、もう一度新たな視点でレビューしたいと考えている。

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画像クレジット:Matthew Panzarino

皮肉なことだが、このモデルの最大のハードウェアアップグレードの1つに対する反応は、私の中では比較的控え目なものとなる。M1チップは本当にすばらしいものだ。ベンチマークテストでは、M1 MacBook Pro(M1マックブックプロ)と同等の性能を発揮しており、この意味でもAppleのラインナップは、パワーよりも大きさとユースケースの違いと考えることができる。しかし、率直に言って、たとえ2020年のモデルでも、私がテストしたほとんどすべてのアプリケーションや、私の日常的なワークフローのすべてにおいて、同じくらい速かったと感じている。

確かに新製品は超高性能で、最新のシリコンを搭載しているが、アップグレードしてもすぐには違いがわからないだろう。これはある意味、意図的なものだ。2021年4月、AppleのJohn Ternus(ジョン・テルヌス)氏とGreg Joswiak(グレッグ・ジョスウィアック)氏に、iPad Proについてインタビューした際に、彼らは新しい統一されたプロセッサー戦略と極めて優れたディスプレイは、開発者が活用することを期待して余裕を持たせているのだと語っていた。

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画像クレジット:Matthew Panzarino

新しいiPad Proのカメラはとてもすばらしく、前面と背面の両方が非常に使いやすくなっている。特に新しい前面カメラは、解像度の向上と新しい広角光学系の恩恵を受けている。この広角のおかげで、iPad Proを使ったビデオ通話がよりリラックスして行えるようになった。

これに加えて、Appleの新しいML(機械学習)駆動機能であるCenter Stage(センターステージ)が、ユーザーの頭と肩を捉えて自動的に中央に配置し、カメラの視界内で、ユーザーが体を傾けたり、立ったり、さらには部屋の中を移動したりしても、スムーズでまあまあなレベルのパンとズームでユーザーを追いかけ続ける。この機能は、機械学習フレームワークを使って、カメラフレーム内の人物のシルエットを検出し、フレーム内での移動に合わせてそのビューに「カメラムーブ」を適用するというものだ。他で見られるような自動ズーム機能とは異なり、Center Stageでは、あたかもバーチャルカメラの操作者が、適切なフレーミングを手助けしてくれているように感じられる。これは実に巧妙で、非常にうまくできており、iPad Proの使い勝手を向上させる今回の最大のポイントの1つとなっている。

画像クレジット:Matthew Panzarino

そしてまた、ご想像のように、この機能はiPad Proのカメラ配置の問題を大幅に軽減してくれる。カメラは、垂直方向に置かれたiPad Proの「上部中央」に置かれているので、キーボードを使う水平方向の配置ではカメラは「中央左」にあることになる。このため、iPadのビデオ通話にはぎこちなさがつきまとっていた。まあCenter Stageを使っても、これらの問題を完全に取り除くことはできず、手の置き場所が問題になることもあるが、より使いやすくするための大きな役割は果たしている。新しいAPIは、この機能をすべてのビデオ通話アプリで利用できるようにしている。また、Zoom(ズーム)アプリの利用中にビデオ通話を空白にすることなくマルチペイン設定が使用できるように、マルチタスクが若干改善されている。

Appleの「Pro Display XDR」で外付けのThunderbolt(サンダーボルト)接続をテストしたところ、問題なく動作した。この2つのディスプレイは非常に近い能力を持っているので、スケーリングは別として、色補正のためにXDRディスプレイを使うパイプラインで作業するプロにとって、この機能は非常に便利なものになるだろう。だがiPad Proがミラーモードにしか対応していないというソフトウェア上の制限は残念ながらまだそのままで、ほとんどの状況でこの機能の使い勝手を少し疑わしいものとしている。

画面について言えば、ミニLEDを採用したLiquid Retina XDRディスプレイは、これまでモバイルコンピューターに搭載されたディスプレイの中で、おそらく最も優れたものだ。とにかくすばらしい。日常的に使用する輝度も平均で最大600ニト(カンデラ平方メートル)と良好だが、動画や写真などのフルスクリーンのHDRコンテンツでは、平均で1000ニト、ピーク時には1600ニトまでディスプレイを明るくすることができる。これはとても「明るい」。昼光下におけるHDRコンテンツの視聴が大幅に改善されている。さらに、120Hz ProMotion(プロモーション)機能などの標準的な機能もすべて搭載されている。

1万個のミニLEDをディスプレイに搭載することで、黒の定位がより正確になり(それらを完全にオフにすることができるため)、過度の反射(ブルーム)も少なくなった(ただし極端なテストを行うとまだ表示される)。また、画面の端から端までの輝度の均一性が格段に向上し、画面上のコンテンツの斜め方向からのビューが改善された。すべての面で優れている。間違いなくディスプレイのすばらしい標準だ。

画像クレジット:Matthew Panzarino

Appleの新しいMagic Keyboard(マジックキーボード)は、基本的には従来のものと同じだが、新たにホワイトが加わった。またうれしいことに、これまでのMagic Keyboardが、新しいiPad Proモデルでもまったく問題なく動作したことを報告したい。2つのデバイスの寸法が同じではないため、古いキーボードが完全にフィットしない可能性があることをAppleが発言したために、ちょっとした騒ぎがあった。だが基本的にはまったく同じフィット感で、機能も同じなので安心して欲しい。両者の違いに気がつくのは、ケースを閉じて、開いている方の端をとても注意深く見たときに、ケースの縁とiPad Proの端の間のクリアランスが約1mm短くなっていることがわかったとき位だ。Appleは、ともかく過剰なほどの情報開示をしておいた方が良いと考えたのだろう、しかし実際には問題はない。

特にシルバーモデルのiPad Proとの組み合わせでは、ホワイトカラーの見栄えは素晴らしく、白いアンテナウィンドウがアクセントになっている。とても「2001年宇宙の旅」的だ(キューブリック監督のiPadは黒だったが)。しかし、私はこの製品がすぐに傷つき汚れていくことが予想できる。箱に「color may transfer」(色落ちすることがあります)という注意書きがあるが、私もそうだろうと思う。私のデモ機には、まだ目立った汚れはついていないが、それも時間の問題だと思う。

キーボードの全体的な使用感はこれまで同様に素晴らしく、とても快適なタイピングができる。またiPad Proの購入を計画する際には、このキーボードが必要不可欠であることを考慮に入れて価格を考慮すべきだ。

さて、あまり輝いていないコインの裏側が、老朽化したiPadのソフトウェアだ。それらは2020年にiPad Proのレビューを書いたときと同じようなままだが、その時点での私の結論は要するに「慣れることはできるが、もっと良くできたはずだ」だった。それが1年前のことだ。この2年半の間、iPad Proを唯一のポータブルマシンとして使用してきた私には、ソフトウェア機能の大きな飛躍をずっと待ち続けているのだという資格がある。

関連記事:最新iPad Proは旧モデルから乗り換えるほどではないが、マウスとキーボードは快適で便利

iPadのソフトウェアには、とてもシンプルな願いがある。ハードウェア側が見せてくれるようなエネルギーの躍動感や、ピークパフォーマンスのための純粋な能力を感じたいのだ。

AppleのiPad Proのハードウェアは、まるで身体3つ分リードしている絶好調のアスリートのようなパフォーマンスを見せてくれる。M1チップとミニLEDディスプレイは得難いものたちだ。これほどの優れたものが1つのデバイスに詰め込まれていることには感動する。

だが残念ながらソフトウェアがその能力を活かすことができないので、このiPad Proはまるで同じ古い家具を備えた完成した家のように感じられるのだ。

画像クレジット:Matthew Panzarino

Appleは、2021年版iPad Proのハードウェアについては、文句なしにすばらしい仕事をしたが、ソフトウェアについてはレベルアップが必要だ。1年の大半をiPad Proを使って過ごしている「パワー」ユーザーとして、私はその場しのぎの解決法や動きの癖には慣れている。しかしここで、必要とされているのはiPadのパラダイムにじっくりと時間をかけて取り組むことだ。現在のペインスタイルのインターフェイスは、非常に高速で流れるような作業方法として推奨できる点が多いのだが、最後までの連続性が存在していない。「これが新しい仕事のやり方だ、このやり方を学ぶべきだ」という熱意が感じられないのだ。

現在のiPad Proのソフトウェアの多くが、あまりにも「アフォーダンス(表現)の谷」にはまり込んでいる。そこでは、いまでもユーザーが、あたかもタッチファーストの仕事のやり方を習得する能力がないかのように扱われている。むしろ、そうしたアフォーダンスのやり方が逆に進歩の妨げになっているのに。

これは、iOS 7時代の頃に行われた「アニメーションを減らす」アフォーダンスを思い起こさせる。かつてAppleがiOSを刷新したとき、新しいペインベースのインターフェイスをタップしているときに何が起こっているのかをユーザーに明確に伝えるために、アニメーションを大幅に増やし過ぎたことがある。ハードウェア的には「遅い」ということはなかったが、彼らが入れたアニメーションのアフォーダンスが凝りすぎていて、遅く感じられたのだ。それらのアニメーションをオフにすると、瞬時にインターフェイスが軽快になり、使いやすくなった。

Appleは最終的に、人びとがより高度なタッチユーザーになる準備ができているのかもしれないと認めることで、これらのアニメーションを抑制した。

これが現在のiPad Proの置かれている状況で、最も腹立たしいのはそのハードウェアとソフトウェアの格差なのだ。iPad Proはこれまでに製造された中で最も優れたコンピューティングハードウェアの1つであり、現在見せているもの以上の能力を持っていることを私たちは知っている。Appleはソフトウェアに関して常に編集者的な視点を持っており、私はその点は評価している。しかし現在、iPad Proに関しては、その姿勢があまりにも保守的であるように感じられる。

だからこそ、私は固唾を飲んでWWDCを待っているのだ。ハードウェア側でこれだけの成果を上げているのだから、iPadのソフトウェア側でもAppleが真に次のステップに進む時期が来ていると考えるべきなのではないだろうか。もしそれが本当に起こり、iPadの次の仕事に対するAppleのビジョンがしっかり見えてきたら、私はまた新しい視点で議論したい。

画像クレジット:Matthew Panzarino

カテゴリー:ハードウェア
タグ:AppleiPadiPad OSApple M1レビューUI / UX

画像クレジット:Matthew Panzarino

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(文:Matthew Panzarino、翻訳:sako)

【レビュー】新しいiPad Pro 12.9インチモデルを動画でチェック!M1、5G、ミニLEDなど進化点盛りだくさん

【レビュー】新しいiPad Pro 12.9インチモデルを動画でチェック!M1、5G、ミニLEDなど進化点盛りだくさん

いよいよ発売となりますApple新iPad Pro 2021年モデルに少し早く触れる機会がありましたので、動画も交え、実機の細部を一緒にチェックしていけましたらと思います。

新しいiPad Proは、これまで同様11インチ(第3世代)/12.9インチ(第5世代)の2サイズあり、それぞれシルバー/スペースグレイの2色、Wi-Fiモデル/セルラーモデルが用意されています。価格は11インチが9万4800円〜、12.9インチモデルは12万9800円〜となっています。

本稿で紹介するのは12.9インチ、シルバーのセルラー(5G)・メモリー1TBモデルで、価格は23万1800円(税込)

本稿で紹介するのは12.9インチ、シルバーのセルラー(5G)・メモリー1TBモデルで、価格は23万1800円(税込)

パッと見は2020年発売の第4世代とさほど変わりませんが……

パッと見は2020年発売の第4世代とさほど変わりませんが……

セルラーモデルはついに5G対応。引き続きeSIMもサポートしますので、キャリアだけでなくMVNOの豊富なプランから選択できるわけですね

セルラーモデルはついに5G対応。引き続きeSIMもサポートしますので、キャリアだけでなくMVNOの豊富なプランから選択できるわけですね

関連記事:
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M1搭載の新 iPad Pro vs 前世代比較。12.9インチ版はLiquid Retina XDR搭載

最新Macと同じM1チップを搭載

AppleのM1チップを搭載し、2020年ProのA12Z Bionicと比較しパフォーマンスは約2倍、グラフィック性能は40%向上しています。2020年10月に発売されたiPad Air(第4世代)はA14 Bionicを搭載し、一部ベンチマークテストでiPad Proを超えることで話題となりましたが、M1チップの搭載で首位奪還です。

Geekbench 5によるテスト結果(平均値ではありません)

Geekbench 5によるテスト結果(平均値ではありません)

内蔵ストレージの容量は128GB、256GB、256GB、512GB、1TB。それに加え、今回は2TBのモデルも用意されます。価格は跳ね上がりますが、1TB・2TBモデルはRAM(メモリー)がほかのモデルの2倍となる16GBに。

私のような仕事(記者)で、16GBのRAM(メモリー)をフル活用するシーンがなかなか思い浮かばないのですが、解像度の高い動画を何本も編集したり、レイヤーを何重にも重ねて作業したりするプロ・クリエイターの方にとって、上位モデルはより魅力的となったのではないでしょうか

私のような仕事(記者)で、16GBのRAM(メモリー)をフル活用するシーンがなかなか思い浮かばないのですが、解像度の高い動画を何本も編集したり、レイヤーを何重にも重ねて作業したりするプロ・クリエイターの方にとって、上位モデルはより魅力的となったのではないでしょうか

関連記事:M1 iPad Pro、ストレージ1TB以上はRAM 16GB搭載。それ未満は8GB

60万円相当の画質

【レビュー】新しいiPad Pro 12.9インチモデルを動画でチェック!M1、5G、ミニLEDなど進化点盛りだくさん
12.9インチのモデルは、Liquid Retina XDRディスプレイ(ミニLED)を搭載しています。すごく簡単に言うと、液晶と有機ELの「いいとこ取り」をしたモノです。ピーク輝度は1600ニト、100万対1のコントラスト比となっており、60万円近くするAppleのPro Display XDR(32インチ)とほぼ同じクオリティーで映像を楽しんだり、実物に近い色味で写真や動画の編集作業が行なえたりします。

Liquid Retinaディスプレイを液晶を搭載した前モデル(右)と並べると、黒の部分とその周囲がよりハッキリ出ているのがわかります。肉眼だと部屋を暗くしなくてもわかるくらい結構違っています

Liquid Retinaディスプレイを液晶を搭載した前モデル(右)と並べると、黒の部分とその周囲がよりハッキリ出ているのがわかります。肉眼だと部屋を暗くしなくてもわかるくらい結構違っています

繰り返しになりますが、このLiquid Retina XDRディスプレイを搭載するのは、大きいほうの12.9インチモデルのみ。ミニLEDを採用したことで、12.9インチは従来より0.5ミリほど本体の厚みが増しています(左が新モデル)

繰り返しになりますが、このLiquid Retina XDRディスプレイを搭載するのは、大きいほうの12.9インチモデルのみ。ミニLEDを採用したことで、12.9インチは従来より0.5ミリほど本体の厚みが増しています(左が新モデル)

関連記事:12.9インチM1 iPad Pro、「Liquid Retina XDR」採用。1万個以上のミニLEDバックライト搭載

なお、厚みが増したことで、12.9インチ用の純正キーボード・カバー類に関しては、第3世代のものは非対応となっています(第4世代のものは第3世代にも対応)。

……のはずですが、第3世代用Magic Keyboardを第4世代で試したところ、問題なく使えてしまいました。カバーもちゃんと閉まります。経年劣化で緩んでいた可能性もありますし、Appleが非対応としているのですから、お高いですが本体を買い替えた方は、一緒に新バージョンを買っておくのが無難かと

……のはずですが、第3世代用Magic Keyboardを第4世代で試したところ、問題なく使えてしまいました。カバーもちゃんと閉まります。経年劣化で緩んでいた可能性もありますし、Appleが非対応としているのですから、お高いですが本体を買い替えた方は、一緒に新バージョンを買っておくのが無難かと

カメラもiPhone級に

【レビュー】新しいiPad Pro 12.9インチモデルを動画でチェック!M1、5G、ミニLEDなど進化点盛りだくさん
背面のメインカメラは、2020年モデルと同じ仕様のデュアルレンズ構成ですが、iPhone 12と同じSmart HDR 3に対応。AIが細部を自動調整してくれます。

空などをAIが判別し、より自然に見えるよう処理してくれます

空などをAIが判別し、より自然に見えるよう処理してくれます

ビデオ会話が快適に

フロントカメラは従来の700万画素から1200万画素になりました。視野角も122度と広くなっています。新たにセンターフレーム(一部地域ではセンターステージ)という機能が備わり、FaceTimeやZOOMなどのビデオ会議で、発話者が自動で中央に表示されるようになっています。

センターフレームはデフォルトでオンに(設定でオフにもできます)

センターフレームはデフォルトでオンに(設定でオフにもできます)

実際に、お友達と試してみました。

FaceTime

FaceTime

Zoom

Zoom

センターフレームは、サードパーティアプリ向けにAPIが公開されていて、ZoomやWebexなどがすでに対応しています。純正アプリのFaceTimeでは、話者に向かって迫っていく感じで、インタビュー映像のようになりましたが、Zoomだと左右調整がメインに行なわれるようです。ユーザーはオン・オフしかできませんが、デベロッパーは細かくカスタマイズできるのかもしれません。

センターフレームは、カメラが広角になり、かつ解像度が上がったため、自動で顔をトリミングしても画質が荒くならないよう常に調整できるようになったため実装できた機能です(なので、オフにすると画角が広角になります)。

モバイルデータ通信の設定で、5Gのデータ使用量を「より多く」に許可し、FaceTimeで会話してみたところ、遅延がなく画質も綺麗、そのうえ自然に顔がフォーカスされてるので、まるで実際に会って話しているような感覚。ほとんどストレスを感じませんでした。ビジネスでFaceTimeを使うシーンは少ないかもしれませんが、ご家族やお友達とぜひ試していただきたいです。

LAN直差しで10Gbps

端子は最大転送速度40GのThunderbolt 3対応に

端子は最大転送速度40GのThunderbolt 3対応に

USB端子がThunderbolt 3対応になり、外部ストレージからの高速転送や6Kディスプレイへの出力も行なえるようになりました。また、LANアダプターを介せば有線イーサネットも10Gbpsの速度で接続できます。

Magic Keyboardにホワイトが新登場

【レビュー】新しいiPad Pro 12.9インチモデルを動画でチェック!M1、5G、ミニLEDなど進化点盛りだくさん
アクセサリーは、これまで通りApple Pencil、Magic Keyboard、Smart Folioカバー、Smart Keyboard Folioが用意されます。このタイミングからMagic Keyboardのホワイトが登場しました。

【レビュー】新しいiPad Pro 12.9インチモデルを動画でチェック!M1、5G、ミニLEDなど進化点盛りだくさん

ホワイトになっただけで、雰囲気がずいぶん違ってきますね

ホワイトになっただけで、雰囲気がずいぶん違ってきますね

一緒に持ち歩くと1.4キロ近くと相変わらず重量級ではあるのですが、5Gも搭載しているので性能から考えたら十分コンパクトなモバイルワークマシンと言えるかと

一緒に持ち歩くと1.4キロ近くと相変わらず重量級ではあるのですが、5Gも搭載しているので性能から考えたら十分コンパクトなモバイルワークマシンと言えるかと

【レビュー】新しいiPad Pro 12.9インチモデルを動画でチェック!M1、5G、ミニLEDなど進化点盛りだくさんニューiPad Pro、ポイントはM1になったことによるパフォーマンスの向上と細部のパワーアップ、5G対応、そして12.9インチは液晶と有機ELのいいとこ取りとしたミニLEDを初登載している点です。

私は個人的に音楽のライブ配信をよく見るのですが、音質、画質、それと互換性(サービスによってはTVなどに飛ばせない)といったあらゆる面から、この新しい12.9インチのiPadが現状、最もライブ配信の視聴環境として優れていると確信しています。また、ゲームもよくするのですが、暗所の表現が多いゲームは、より引き締まった絵で楽しめるので大迫力です。

World of Demons - 百鬼魔道

World of Demons – 百鬼魔道

よりモバイルの機動力を重視する方には11インチモデルもオススメです。iPad Airと迷いそうですが、さらに高パフォーマンス、5G、4スピーカーシステムにセンターシフト、パワーアップポイント満載です。

<オマケ情報その1>

動画には入れてない細かいお話。フロントカメラ周りのセンサー類は、微妙に位置が変わっています。保護フィルム等を貼られる方が多いと思いますが、お買い求めの際は「2021年モデル対応」の表記を確認されることをオススメします。

前モデル用を貼ると、センサーに少し被ってしまいます

前モデル用を貼ると、センサーに少し被ってしまいます

<オマケ情報その2>

iMacに付属するMagic Keyboardを、新iPad Proとペアリングしたらフツーに使えました。ただ、Touch IDは動きません(M1 Macなら動きますが、M1 iPadはNGのようです)

いずれにせよ単体売りはされないキーボードなので、あまり意味はありませんが……

いずれにせよ単体売りはされないキーボードなので、あまり意味はありませんが……

新iPad Pro 12.9を試す、大画面とLiquid Retina XDRディスプレイは正義

iPad Pro 2021 はスマホ以上に5Gの重要性を感じた1台

Engadget日本版より転載)

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カテゴリー:ハードウェア
タグ:iPad(製品・サービス)Apple / アップル(企業)Apple M1(製品・サービス)Appleシリコン / Apple Silicon(製品・サービス)レビュー(用語)日本(国・地域)

【レビュー】新iPad Pro 12.9を試す、大画面とLiquid Retina XDRディスプレイは正義

【レビュー】新iPad Pro 12.9を試す、大画面とLiquid Retina XDRディスプレイは正義iPad Pro 12.9インチ(第5世代)をアップルから借用し、ひと足早く試す機会を得た。

12.9インチモデルを触る前は、正直言って「次に買い換えるとしたら、11インチモデルで十分かも」と思っていた。そもそも、12.9インチは携帯するにはちょっと大きすぎる。かつて12.9インチモデルを購入して持ち歩いていたが、その大きさを持て余していた。結局、出先で気軽に使うには11インチの方がしっくり来るというのが結論に辿り着いたのだ。

しかし、実際に第5世代のiPad Pro 12.9インチモデルを触ってみると、その信念が大きく揺らいでしまった。

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【レビュー】新iPad Pro 12.9を試す、大画面とLiquid Retina XDRディスプレイは正義
12.9インチが持ち歩くにはちょっと大きいというのは間違いのない事実だが、使い勝手の面において、やはり「大画面は正義」と感じてしまう。ここ最近、増えてきた動画処理をする上でも画面は大きい方がいいに決まっている。

今回、12.9インチモデルを実際に触って、信念が揺らいだ理由の一つがLiquid Retina XDRディスプレイだ。ミニLEDを1万個以上内蔵し、コントラストを100万対1に引き上げている。実際に触る前は大したことないとたかをくくっていたが、実物を目にすると確かに良い。

【レビュー】新iPad Pro 12.9を試す、大画面とLiquid Retina XDRディスプレイは正義
映像や写真などでは暗い部分がしっかりと暗くなっており、明暗がハッキリした表現になっているのだ。自分で撮った映像や写真のみならず、動画配信サイトの映画やドラマ、さらにビデオ会議や記者会見の映像までもパッキリと見えるから不思議だ。

今までのiPad Proと見比べてみると、全体的に明るくなってしまっているのだが、新しい12.9インチモデルは、黒い部分がしっかり黒い。有機ELディスプレイのiPhone 12シリーズに近いといえよう。もちろん、iPad Proの方が大画面なので、視聴しやすいメリットもある。

すでに新しい11インチモデルを予約済みであり、「12.9インチの方が良かったなぁ」とかなり迷い始めた。

そしてもう一つ、iPad Pro 12.9インチモデルを触って、悩ましいと感じたのが処理のレスポンスだ。

新しいiPad Proは、11インチと12.9インチ、いずれもM1チップを搭載している。もともと、iPadOSはサクサクと処理をこなせるのが魅力だが、チップセットがMacBook Proと同等になったことで、さらにサクサク度が増した。

LumaFusion利用イメージ

LumaFusion利用イメージ

実際にすでに使い倒しているiPad Pro 11インチモデル(第2世代、メモリ容量6GB)と、新しいiPad Pro 12.9インチモデル(第5世代、メモリ容量16GB)で動画編集(LumaFusion)を比較してみると、第5世代iPad Pro 12.9インチモデルの方が遥かに快適に動く。

第2世代iPad Pro 11インチモデルでは、写真や動画を読み込む際、最初にボケた状態で出たのちにクッキリとした写真や動画が表示されるのだが、第5世代iPad Pro 12.9インチモデルであれば、最初からクッキリとした写真が動画が出てくるのだ。一瞬の違いなのだが、このストレスがあるかないかは意外と大きい。

ちなみに今回のiPad Proは、本体容量が128GB、256GB、512GB、1TB、2TBの5モデルが存在する。容量の小さい3つはRAM容量が8GB、1TBと2GBは16GBだ。

文書作成やメール処理などであれば8GBで十分だろうが、アプリを頻繁に切り替える、例えば、写真アプリで加工し、その画像や映像などの素材を動画編集アプリで編集する、といったiPad Proの性能をフルに引き出す使い方をするのであれば、本体容量1TB以上を選ぶのが望ましいのかもしれない。

個人的にこれまでiPad Proを長年使ってきているが、iCloudを活用していることもあり、256GBモデルであっても、あと100GB以上の容量が余っている。今回も11インチモデルの256GBで十分かな、と思いつつ、今触っている12.9インチ 1TBモデルの快適さを実感すると、どれを買うべきか、改めて悩ましくなってしまっているのだ。

【レビュー】新iPad Pro 12.9を試す、大画面とLiquid Retina XDRディスプレイは正義
さらにiPad Proを選ぶ上で、絶対に揺らがないのが「買うならセルラー版」という信念。人によっては「Wi-Fiのみか、セルラーも使える方か、どちらかにしようか」と悩む人も多いだろう。

価格差が2万円弱あるので、コストを考えたらWi-Fi版となるかもしれないが、使い勝手を考えるとやはり携帯電話のネットワークに繋がった方が便利なのは間違いない。

今回のiPad Proは5Gにも対応する。自宅ではかろうじてソフトバンクの5Gが繋がるのだが、だからと言って、劇的に高速というわけでもない。どうやら、4G周波数帯の転用らしく、5Gと表記はされるが、中身は4Gみたいなものだ。とはいえ、4Gでもそれなりの速度が出るから快適だ。

今は緊急事態宣言で、自宅で5Gに繋いで喜んでいるだけだが、あと数か月もすれば、街中に出て、5Gに繋ぎ、iPad Proで仕事をしまくることだろう。公衆Wi-Fiはセキュリティ面でどうしても不安があるだけに「いつでもどこでも安心して繋がるキャリアネットワーク」にすぐにアクセスできるiPad Proのセルラー版が手放せないのだ。

【レビュー】新iPad Pro 12.9を試す、大画面とLiquid Retina XDRディスプレイは正義
iPad Proには「センターフレーム」というテレビ会議の際、自分をセンターに映し出してくれる機能が備わった。これまで自分を正面に映そうとする場合、パソコンやiPad Proを机の上だけでなく、さらに台を持ってきて、その上に置くなどの工夫が必要だった。しかし、センターフレーム機能があれば、そうした努力は不要。自動で自分の顔をセンターにして相手に映し出してくれる。コロナが落ち着いても、ビデオ会議は続きそうなだけに、これからも便利な機能として使えそうだ。

今回のiPad ProはM1チップが載り、本体容量も2TBまで選べるなど、もはやパソコンと比較する製品となった。iPadシリーズ全体で見ると幅広い価格帯となっており、エントリーモデルは、それこそ、GIGAスクール構想など、文教市場を狙った製品と言える。一方で、iPad Proはその名の通り、Proユースを意識したスペック、使い勝手となっている。

1秒でも無駄にしたくない、出先でも俊敏に仕事をこなしたい人には、iPad Proが心強い相棒になってくれることだろう。

iPad Pro 2021 はスマホ以上に5Gの重要性を感じた1台
新しいiPad Pro 12.9インチモデルを動画でチェック!M1、5G、ミニLEDなど進化点盛りだくさん

(文:石川温、Engadget日本版より転載)

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タグ:iPad(製品・サービス)Apple / アップル(企業)Apple M1(製品・サービス)Appleシリコン / Apple Silicon(製品・サービス)レビュー(用語)日本(国・地域)