IoTのベースOSとなるAndroid Things、ベータを脱して1.0をローンチ、I/O前日に発表

今日(米国時間5/7)Googleは、同社のIoT開発プラットホームAndroid Thingsがベータを終えた、と発表した。8つのリリース候補のうち、最後のは1か月足らず前にローンチし、そして今やAndroid Thingsは完熟のようだ。ベータのときから何社かが実際に製品を作り始め、またGoogleのAndroidスマートディスプレイのローンチパートナーたちも、このプラットホームがベースだ。

Android Thingsはハードウェアとソフトウェアのデベロッパーに、さまざまなIoTデバイスを作るためのSDKを提供する。またGoogleは、Raspberry Piなどハードウェアメーカー数社とパートナーしてデベロッパーキットを提供しており、さらに、デバイスを管理したり、プロトタイプや本番製品をネット経由でアップデートするためのデベロッパーコンソールも提供している。

つまりハードウェアのメーカーにIoT用のオペレーティングシステムを提供するんだけど、その管理はGoogleがやるので、デベロッパーは自分の製品づくりに専念できる。システムやそのメンテナンスを、気にせずにすむ。Googleは安定性向上のためのフィックスとセキュリティパッチを3年間提供するが、その延長契約も可能だ。

Googleによると、プレビューの段階でSDKは10万以上ダウンロードされた。そしてベータの間には、デベロッパーからのフィードバックが1万あまり得られた。

非商用のユーザーは最大100までのデバイスをAndroid Things Consoleで管理し、製品の市場展開ができる。デバイスが100を超えたり、商用製品を展開することになったら、Googleとの正式な契約が必要だ。

今日のローンチの一環としてGoogleは、二つのSystem-on-Modules for Thingsのサポートを発表した。それらのベースは、NXP i.MX8M, Qualcomm SDA212, Qualcomm SDA624, MediaTek MT8516だ。これらよりも前に、Raspberry Pi 3 Model BとNXP i.MX7Dデバイスはすでにサポートされている。ただし、NXP i.MX6ULのサポートは終了した。

GoogleのデベロッパーカンファレンスI/Oが明日から、というその一日前にAndroid Things 1.0の発表をするのは、なんか変だが、今日から行われるMicrosoftのカンファレンスBuildでもIoTが強調されるらしいから、Googleも発表をできるだけ早めたかったのだろう。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

Xiaomiが正式に香港市場にIPO申請、公開価格は推定100億ドルか

かねてより噂のあったXiaomiのIPO(株式公開)だが、この中国の巨大スマホメーカーはようやく正式に香港証券取引所にIPOを申請した

申請書類のドラフト初版には上場に伴う財務諸表といった詳細は記載していないものの、地元メディアSouth China Morning Postは「設立8年のこの会社は公開価格100億ドル、時価総額にして1000億ドルを狙っている」と報じている。これは、今年最大のIPOとなるばかりでなく、アリババが2014年にニューヨーク証券取引所に上場した時以来の規模となる。時価総額に基づくと、Xiaomiは上場により中国で3番目に大きなテック企業となる。

Xiaomiは同業他社と異なり、少ない利ざやでスマートフォンやスマートデバイスを販売し、その代わりサービスや利用料などで利益を出している。スマホ販売にとどまらず、自ら小売やオンライン支払い、ストリーミングなどの事業を展開している。CEOのLei Jun氏が言うところの「トライアスロン」戦略では、ハードウェア部門で5%という最大の純利益を達成して以来、さらに成長するためにサービス部門に最も注力している。

Xiaomiは上場申請書類に、中国では1億9000万人超がXiaomi独自開発のMIUIバージョンAndroid携帯を使用している、としたためている。これは、MIUIデバイスが何台出回ってしるのかを知る良い洞察だ。一方で、Xiaomiはこれまでスマートウォッチやフィットネス用バンド、スマート体重計など接続デバイスを1億台以上販売している。Xiaomiは、同社のユーザーが1日に4.5時間スマホを利用し、顧客140万人が5台以上の接続デバイスを使用している、と述べている。

分析会社IDCによると、Xiaomiはスマホ出荷台数で見ると世界第4位で、販売台数がこのところ低迷している中国マーケットで健闘している数少ない企業の一つだ。

Xiaomiの財政状況はまったく驚くべきものだ。

2017年には1146億人民元(約180億ドル)の売上を記録した。2016年の684億人民元、2015年の668億人民元から大幅なアップだ。

一方でXiaomiは2017年に投資家への優先株式発行(540億人民元)で439億人民元(約69億ドル)の損失を計上したが、成長路線はゆるぎない。営業利益は122億人民元(19億2000万ドル)と、前年の3倍超となっている。

売り上げの70%がスマホで、20%超がスマートデバイス、残りがサービス関連となっている。

中国というと、多くの人が収入を上げるマーケットととらえている向きがあるが、Xiaomiは中国マーケット頼りではなくなってきつつある。2017年の売上では中国マーケットが72%を占めたが、2015年は94%、2016年は87%だった。Xiaomiにとって、いま中国以外で最も成功しているマーケットはなんといってもインドだ。シェアでいえば、Xiaomiはインドでナンバーワン、他のエリアではまだ不安定な状況だ。

興味深いことに、Xiaomiはこれまで米国スマホ市場への進出について言及したことがない。しかしながら、IPOで得る資金の30%は東南アジや欧州、ロシア、そして“その他地域”での市場開拓にあてるとしている。近年、Xiaomiは世界74カ国で販売していて、そこにはアクセサリーなどスマホ関連商品を販売している米国も含まれている。

IPOで調達する資金の別の30%は研究開発や製品開発にあて、またさらに別の30%はモノのインターネットやスマート製品エコシステムに、そして残り10%は運転資金にあてる。

Xiaomiは、同社の主要投資家がどれくらいの割合で株式を保有しているのか正確な数字は明らかにしていないが、CEOのLei Jun氏が最大の株式保有者の一人だとされている。Jun氏が同社株式の75%超を保有しているとのレポートもあり、今回のIPOによりJun氏は中国で最も裕福な中国人の一人となりそうだ。

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(翻訳:Mizoguchi)

IoT会話と、文脈から意を汲み取るということ

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(日本語版注:本稿を執筆したJim Hunterは、Greenwave Systemsのチーフサイエンティスト兼エヴァンゲリストだ)

数年前、テクノロジーとコミュニケーションをとる方法について書いた。当時、身の回りにあったアプリや電話、車、半自動のコーヒーメーカーといった便利なツールを使うときに体験するちょっとした不都合が、何かしら革新的なものの登場でなくなるだろうというのは明らかだった。そうした接続機器を使うのに、たくさんタイプやスワイプしたり、アプリで管理したりする必要があったからだ。

その革新的なものというのは、ある程度、現実のものとなったといえる。

音声でのやり取りがそれだ。いまスマホの音声アシスタント、家や車と接続するスマートスピーカーを使うとき、音声操作が大きな役割を果たしている。この音声操作技術の進歩は現在進行形だ。それはすごいことではある。しかし、やり取りは会話と呼べるものではない。

というのも、この音声操作のほとんどは、友達や同僚との実のある会話のようなものではなく、むしろ4歳の子に「言われた通りにしなさい」と命令するのに近いからだ。

ツールを使うにあたっての不都合を最小限に抑え、そして音声でテクノロジーを最大限利用できるようにするためには何かが必要だ。それは、「文脈から意を汲み取る」ということだと私は考えている。

文脈から意を汲み取るというのは、会話の中で何を意図しているのかを考えることになる。誰が、何を、どこで、いつ、といったシンプルな質問に答えるのはそう難しいことではないし、IoTは私たちの暮らしに関するあらゆる情報を取り入れるようになっている。私は以前、アメリカの心理学者マズローの欲求段階説のチャートに倣って、IoTデバイスに必要とされることをピラミッド式に描いたことがある。テクノロジーが分析手法を用い、ロジックや予測することを学習し、そしてより複雑なことをできるようになるというものだ。AmazonのAlexa、AppleのHomePodなどで使われている音声操作や自然言語処理の技術は、まさしくIoTデバイスに必要とされることの実現例だ。リアルタイムに情報を収集し、複雑な機能でもって処理するという、予知解析や機械学習を取り込んでいる。

それでもまだ、AlexaやHomePodとのやり取りは会話とは呼べない。役には立っているが、コミュニケーションとしてはまだ初期段階にあり、成長の余地はある。

というのも「どのように」「なぜ」といった掘り下げた質問が、会話の中で重要な意味を持つからだ。真の双方向会話を実現するには、そうした質問に対する答えを複数用意するだけでなく、学習し記憶しなければならない。Googleはそうした手法をいくつかのオンライン検索に取り込んでいる。しかし、自然な会話を実現するためにはまだたくさんの課題がある。

文脈から意を汲む能力の開発、それが接続機器の最終目標

人の会話の多くは要約されている。会話の量がどれだけあろうが、やりとりに分解することができる。名詞や固有名詞を代名詞に置き換えるのがいい例だ。「Daveの休暇について尋ねたところ、Janeは“私が彼を空港に送って行って見送る”と言った」。こうした文章は序の口で、簡略してはダメ、となったら会話はすごく不自然なものになる。毎回、きちんとした名称を使うとなったらやりづらく、スムーズではない。

会話というのをシンプルに定義づけると、それは感情やアイデアのカジュアルなやりとりということになる。それは人々がコミュニケーションをとるために自然に行う。くだけた会話というのは、文脈的な要素が大きく、また凝縮していて包括的なものだ。物語を語るような要素も含まれる。会話はあちこちに飛ぶし、時間軸も動く。新しいことについて情報交換するとき、過去に共有したことをベースに話すこともある。推測を伴うこともあれば、厳密に会話に執着しなくてもいいこともある。こうした会話手法は、IoTに仕込まれたものとは全く正反対のものだ。機械によるコミュニケーションというのは、コードに基づいている。それは二分法であり、供給源に制約があり、杓子定規だ。情報はあるが、文脈というものに乏しい。あまりにもカチッとし過ぎていて、物語を語るにはほど遠い。

IoTを活用するときに私たちが感じる違和感は、こうしたアプローチの違いによるものだ。デバイスを操作するときに新しいアプリをダウンロードし、起動の言葉を設定する。そして別のデバイスのために違う言葉を設定し、アップデートを繰り返す。そんな調子だから、買って2週間後にはデバイスは引き出しへとお蔵入り、ということになるのだ。人が望むようなやりとりではないのだ。

不気味さプライバシー問題はさて置き、私たちの身の回りの情報を絶えず収集するデバイスに関していうと、人間が好む会話ができるよう文脈を読む技術を獲得しつつある。目指すところは、人がいつでも違和感なくデバイスを使えるようになることだ。

今後取り組むべき課題は、マシーンに人間のような会話能力を持たせることだろう。会話が自然なものとなるよう、文脈や推測、そして形式ばらないよう吹き込まなければならない。こうした取り組みをすでに始めているのが国防高等研究計画局であり、AmazonGoogleでもある。実際のところ、テクノロジーを開発するにあたって、もっとも注力されるのはインターフェースの使いにくさをいかに少なくするかという点だ。そうした意味でいうと、会話の質を高めるというのは、使いやすさに直結する。

IoT、拡張現実、アシスタント知能(AIという言葉を私はAssistive Intelligence ととらえている)、さらにはモバイル機器ディスプレイでの小型化や拡張、電気まわりの改善といったものも、全ては質の改善を追求した結果といえる。それらテクノロジーにより、文脈を読み取る、究極的には自然な会話をする機能を開発することができると考えられる。これを活用すれば私たちの暮らしは会話にあふれたものとなる。そして、ひとたびテクノロジーと有意義な会話を経験すれば、夢中になること間違いなしだろう。

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(翻訳:Mizoguchi)

Microsoftが新しいIoTサービスのために独自のLinuxカーネルを作った

今日(米国時間4/16)サンフランシスコで行われた小規模なプレスイベントでMicrosoft は、マイコンを使用するデバイスを対象とする、安全なエンドツーエンドIoTプロダクトのローンチを発表した。それらは、小型で消費電力の少ないマイコン(micro control unit, MCU)を使って最小限のコントロールやネットへの接続を行うデバイスだ。そのようなデバイスは、玩具や家庭用品、産業向けアプリケーションなど、さまざまなところで使われているが、頻繁なアップデートは行われず、セキュリティに不安のあるものが多い。

今回のAzure Sphereと呼ばれるプロダクトは、機能性能等が一定の基準を満たす一連の証明済みのMCUsを対象とする。そしてMicrosoftの法務部門のトップBrad Smithが今日の発表で強調しているのは、チップに対するAzure Sphereの認定ライセンスを無料にして、そのエコシステムの立ち上げに勢いをつける、という点だ。

アップデートや遠隔測定が困難なデバイスはセキュリティも困難だから、まずそれがインターネット接続機能を内蔵していることが重要だ。そしてその接続機能により、Azure Sphereのクラウド上のセキュリティサービスにもアクセスする。

ということは、それらのデバイスではWindowsが動くのだろうか? いや、違う。Microsoftはこのプロダクトで初めて、独自のLinuxカーネルとディストリビューションを立ち上げる。そのAzure Sphere OSと呼ばれるオペレーティングシステムは、今日のMCUsの多くが使っているリアルタイムオペレーティングシステムの、Microsoft独自のアップデートだ。

Windowsのエンタープライズとセキュリティのためのパートナー担当部長Rob Leffertsは、今日の記者発表でこう述べた: “Azure SphereでMicrosoftはまったく新しい種類のIoTデバイス、すなわちMCUに対応する。Windows IoTはMCUの少なくとも100倍のパワーのあるマイクロプロセッサーユニット(microprocessor units, MPUs)〔通常のCPU〕の上で動くが、Azure Sphere IoT OSに使われているMicrosoftがセキュリティを強化したLinuxカーネルでは、OSSのライセンスのもとにチップレベルのパートナーたちが迅速に新しいイノベーションを実現できる”。

そしてそれらのパートナーたちも、オープンソースのリリースを自分たちの製品に組み込めるので、とても気が楽である。

このプロジェクトで最初にスタートを切るのが。MediaTekの一連のMCU新製品群だ。これらは、低電力消費シングルコアのARM-A7システムで、スピードは500MHz、Wi-Fi接続機能と、そのほかいくつかのI/Oオプションを備える。

オープンなエコシステム、という点では、Smithによると、それらのデバイスはAWSやAlibaba Cloudなど、そのほかのどんなクラウドの上で動くサービスからも使用できる。

実はAmazonのAWSも昨年のre:Inventデベロッパーカンファレンスで類似のプロジェクトを発表している。デバイスが特定のクラウドに縛られず、しかしクラウドサービスと組み合わさってこそ真価を発揮するのだから、これら大手のクラウドプロバイダーたちがMCUsに関心を寄せるのも当然だ。たとえば新しいデバイスの認証や、オペレーティングシステムのアップデート、それらデバイス上で動くソフトウェアの管理、などでAzure以外のクラウドが利用されることを、彼らは期待するだろう。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

3Dモデル技術や顔認識システム開発のサイトセンシング、ニッセイキャピタルから1億円を調達

計測技術をベースに、顔認識システムなど複数の事業を展開するサイトセンシング。同社は4月6日、ニッセイキャピタルを引受先とする第三者割当増資により1億円を調達したことを明らかにした。

サイトセンシングは2012年6月の創業。同年10月に産業技術総合研究所技術移転ベンチャーの称号を与えられ、本格的に事業展開を始めた。

もともと企業が持っていた顔認識の技術を産総研が継承、それを事業化する形でスタート。現在は計測技術を核として、顔認識システム「Face Grapher」のほか、自律航法測位システム「PDRplus」や3Dモデル作成サービスを開発している。

Face GrapherではWebカメラで撮影した映像から顔を検出。性別や見た目年齢のほか、笑顔度合いを判定する。デジタルサイネージの効果測定や来店者の満足度計測などが主な活用シーンだ。

人や物の移動を自動で計測し可視化できるPDRplusも、Face Grapherと同じくリアルな空間におけるデータを取得、分析できるサービス。自律型センサに基づいて基準点からの相対移動を計測する技術を活用しているため、GPSの利用できない環境でも測位が可能。消費者や現場の従業員の行動を分析することで、マーケティングや業務改善に活用できる。

サイトセンシングによると、3Dモデル事業と自律航法事業について利用者からの支持が集まったこともあり、今回の資金調達を実施。事業の拡大に向けてより力を入れていく方針だ。

同社は今後の展開について「三次元モデル事業はモデル作成業務の生産性の大幅な向上・自動化を進め、高品質なデジタルモデルを大量且つスピーディーに提供可能な体制を構築いたします。また、自律航法事業は、計測システムの大規模化に加え、更なる付加価値向上を目指して行く計画です」としている。

Cerevo子会社をパナソニックが買収、岩佐社長「1歩ミライの生活実現へ挑む」

eng-logo-2015Cerevoは、ハードウェアのアジャイル生産を手がける新子会社「Shiftall」(シフトール)を設立。その全株式をパナソニックに売却しました。

Shiftallの代表取締役CEOには、Cerevo前社長の岩佐琢磨氏が就任。「Cerevoの持つ開発・製造ノウハウを活用し、新たにハードウェアを開発・製造・販売する新会社」としていて、パナソニック傘下で引き続きIoTデバイスの開発・製造に取り組むとのこと。なお、岩佐琢磨氏はもともとパナソニックの出身。今回の社長就任で、古巣であるパナソニックに舞い戻った形です。

一方、Cerevoの新たな代表取締役には青木和律氏が就任。同氏は大手重工業メーカーでHVAC(産業用冷凍設備及び大規模空調システム)の開発に従事。2008年に独立し、「DMM.MAKE AKIBA」でハードウェアスタートアップのプロダクトローンチに携わった経歴をもちます。

新体制となったCerevoでは、既存製品のサポートに加え、新規製品の企画・開発も継続。また、これまで培ってきたIoT家電への技術、リソース、ノウハウなどをスタートアップ企業に提供するとのこと。さらに、自社ブランドのハードウェア開発にとどまらず、共同開発・製造業務へも重点を置き、パートナー企業の事業価値を高めるべく協業するとしています。

Engadget 日本版からの転載。

超音波で眠っているスマートデバイスを覚醒させる

私たちは未来の家が、小さなセンサーたちで溢れていることを確信している。セキュリティカメラ、一酸化炭素検出器、スピーカー、その他もろもろだ。とはいえ常に実行されている必要があるものは多くない。だが、もしそれらがオフだったとして、必要な時にどうやってそれらの目を覚ましてやれば良いのだろうか?超音波を使うのだ。

ともあれ、それがスタンフォード大学のAngad RekhiとAmin Arbabianによって追求されているアイデアだ。ずっとオンにしておくことはできず、かといって完全にオフにすることもできないデバイスの問題に対する彼らのアプローチは、「覚醒」信号の送信と受信に必要なエネルギーの量を最小化することだ。そうすれば、IoT機器は実際に利用されている間だけ電力を消費することになる。

もちろん、これらの小型センサーが情報を送受信するために使用する電波は、実際には電力とスペースの面でかなり高価なものだ。もしアンテナと信号プロセッサを準備して待機させておくと、それらを1回の充電で何年も待機させようとしている場合には、デバイスが使って良い以上の量のエネルギーを使ってしまう。

一方、超音波センサーは、電力効率が非常に高く、必要最小限のスペースしか必要としない。超音波 ―― 人間の聴覚可能範囲上限の22KHz以上の音波 ―― は、はるかに物理的な現象であり、それを検出することは無線電波を検出することよりも、多くの点でより簡単だ。目に見えないX線を検知するセンサーと、通常の可視光を検知するセンサーとの違いにやや似ているかもしれない。

実験室のRekhi (左)とArbabian

Arbabianの下で働く電気工学の大学院生であるRekhiは、サンフランシスコで開催された国際固体回路会議(International Solid-State Circuits Conference)で発表されたばかりの論文で、彼らのアプローチを説明している。これはある意味簡単なアイデアである ―― より大きなスイッチを入れるために小さなスイッチを使う ―― しかしその結果は印象的だ。

このシステムの超音波受信機は、効率的な種類のセンサの中でも特に効率的なものだ。小型で超高感度のマイクも、Khuri-Yakub Groupによって、スタンフォードで開発された。この受信機は常にオンだが、消費電力は驚くほど小さな4ナノワットであり、それでも1ナノワットの強度の1信号を検知するのに十分なほどの感度を持っている。それは、消費電力と感度の点で、ほとんどの無線受信機よりもはるかに優れている。

昨年行われた他の研究の中には、消費電力と感度の両者で今回のものを凌ぐものもあるが…それは50倍以上大きなものだ。超音波センサの大きさは僅か14.5立法ミリメートルで、これに対して無線チップの大きさは900立法ミリメートルに及ぶ。組込機器の世界では、体積の小ささは貴重である。

もちろん、町の反対側からそれを使うことはできない ―― 超音波信号は壁を通り抜けて伝わることはない。しかし、それはそこら中で反射する。そして覚醒システムの感度から考えると、たとえ最低限の小さな超音波信号の断片だけでも、センサを活性化させるのには十分だということを意味する。

現在は単なるプロトタイプに過ぎないが、この種の真に効率的な技術が、電力から最後の一滴まで搾り取ろうと努力しているどこかの企業に、奪取されたり、模倣されたりしても驚くようなことではない。

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(翻訳:sako)

FEATURED IMAGE: MRTOM-UK/GETTY IMAGES

自宅の家電をスマート化する「Nature Remo」、開発元が1億円を調達、今後はエアコンの電力使用最適化も

家電をインターネットに接続することで“スマート化”できるIoTプロダクト「Nature Remo」。同製品の開発元であるNatureは2月19日、大和企業投資を引受先とする第三者割当増資により1億円を調達したことを明らかにした。

同社は代表取締役の塩出晴海氏がハーバード大学のMBA課程在籍中に立ち上げた、ハーバード大発ベンチャーだ。2016年5月にクラウドファンディングサイトKickstarterでNature Remoを発表。その後MakuakeやIndiegogoでもプロジェクトを開設し、総額2000万円以上を集めた。

2017年8月にも一度紹介したが、Nature Remoの特徴は普段使用している家電製品をスマートにできること。WiFiや赤外線の送受信機能に加えて、人感、温度、湿度、照度などのセンサーを備えている。

スマートフォンアプリとのペアリングおよびWiFi設定、リモコンの学習(Nature Remoに向けて赤外線リモコンを発信し、信号を認識させる)といった設定をすれば、アプリ経由でリモコンの操作が可能になる。帰宅前にアプリで室内の温度を確認してエアコンの電源を入れたり、出先で消し忘れたテレビを消すなんてことが可能。スマートフォンのGPSを使って、特定エリアに入る・出るタイミングで家電の電源を操作するといったこともできる。

また、強力なのが「IFTTT」を経由したスマートスピーカーとの連携だ。IFTTTはさまざまなウェブサービス同士を繋げることができるサービス。このIFTTTを利用することで、例えばスマートスピーカーの「Google Home」や「Amazon Echo」など(厳密にはこれらのスピーカーで利用できるAIアシスタント)を経由してNature Remoの機能を利用することができる。

設定には一手間かかるが、例えば「OK Google、暖房を付けて」とGoogle Homeに話しかければ、普通の家電(赤外線リモコンで操作するという意味で)だってスピーカーを通じて操作することが可能になる。2018年に入ってからAPIも公開。Nature Remoを使った様々なサービスの構築もできるようになった。

クラウドファンディングサイトだけでなく、2017年10月からは正式発売を開始。ただスマートスピーカーの日本上陸と重なったこともあり、塩出氏によると「直近まではバックオーダーがたまり、品薄状態になっていた」という。

現在はそれにあわせて家電量販店(ビックカメラ、コジマ)やAmazonでの販売も開始。今回調達した資金をもとに、開発・製造体制を強化し、プロダクトの改良を進める。

今後は「インターネットとセンサー技術を活用しエネルギーを自給自足できる未来をつくる」というビジョンのもと、まずはエアコンのIoT化により電力使用の最適化を目指す方針。昨年に続き関西電力とのバーチャルパワープラントの実証事業に参画し、電力関連事業でのアライアンスの実現に向けて取り組むという。

GoogleがクラウドサービスのIoT基盤強化のためXivelyをLogMeInから買収

Googleが今日(米国時間2/15)、LogMeInからXivelyを買収することを発表した。これによりGoogle Cloudが既成のIoTプラットホームを持つことになり、それはGoogleの正式のプロダクトポートフォリオの一員にもなる。価額など、買収の条件は公表されていない。

買収を発表するブログ記事でGoogleは、それが成長著しいIoT市場への参入の契機であることを示唆している。同社によるその市場規模は、2020年におけるインターネットに接続された‘物’の数が200億に到達するという。XivelyによりGoogleは、デバイスの設計者がその設計プロセスの中へ直接、インターネットへの接続性を構築できるためのツールを入手することになり、またエンドユーザーアプリとインターネットに接続された物との間のクラウド-モバイル接続性も得られる…それがどんな接続であれ。

“この買収は、条件をまだ詰めている段階だが、Google Cloudのこれまでの能力を補完して完全に管理されたIoTサービスを提供し、それにより、世界中に分布しているデバイスからのデータに安全に接続して、その管理と取り入れができるようになる”、とGoogleのAntony Passemardがブログに書いている。

2014年にXivelyを1200万ドルで買ったLogMeInは、Googleによる買収を同社のブログ記事で認め、同社自身はIoTから撤退する、と発表している:

“そこで、当然の疑問として、これはLogMeInがIoTを去ることを意味するのか? それが、IoTの接続性プラットホームのことなら、そのとおり、われわれはそこから去る。Xivelyのチームを手に入れたGoogle Cloudには優れた技術があり、それを支えるプラットホームも厚く、またデベロッパーとの関係性も深くて親密なため、将来のプラットホームのリーダーとして、はるかに適している”。

おそらく、同社の考え方は正しいだろう。

先週Jive Communicationsを買収したばかりのLogMeInは今後、ユニファイド・コミュニケーションに集中するものと思われる。同じブログ記事に、こう書いている: “先週、Jive Communicationsの買収を発表したが、それにより弊社の、GoToMeetingやjoin.meなどから成るコラボレーションアプリの好評なポートフォリオに、今の市場で最良のクラウドテレフォニーサービスが加わることになる”。

一方Googleにとっては、Xivelyの完成されたプラットホームと優秀な技術者たちにより、そのクラウド事業がIoTの分野により強力な足場を築き、将来的に、クラウドビジネスのさらなる構築を助けるだろう。今月初めにGoogleは、全体としてのクラウド事業が10億ドルの四半期売上を達成した、と発表した。しかし今後のさらなる成長のためには、AWSやMicrosoftなどの、クラウド市場のリーダーたちに負けないだけの、将来性の大きい商材を必要とする。今回の買収は、それを得る努力の一環だ。物のインターネットのデバイスは、その構築と運用と、それらが吐き出す膨大な量のデータの管理のために、きわめて多様なクラウドリソースを必要とする。

同社は、XivelyのプラットホームをGoogleのセキュリティやアナリティクス、機械学習、スケールの能力などと組み合わせれば、IoTアプリケーションを同社のプラットホーム上に構築するためのツールを顧客に提供できる、と考えている。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

明日のIoT==デバイスのネットワーキングと見ぬいたParticleがメッシュネットワーキングボードMeshを発売

それまでSparkと呼ばれていたParticleが、同社の小さなネットワーキングコンピューティングボードの第三世代をリリースした。その新製品は Meshと名付けられ、Wi-Fiや(携帯電話等の)セルネットワークにも接続できるが、複数のMeshデバイスでメッシュネットワークを作れる。これにより、NestやNetgearなどよく知られているIoTデバイスと同じようなメッシュネットワークを作れる。そのためのシステムはThreadと呼ばれ、利用する通信技術としてはWi-FiやLTEのほか、Bluetooth Low Energy(BLE)も使える。Threadのプログラミングは、Nestの OpenThreadを利用して行える(OpenThread Webサイト)。

Meshのモデル(機種)はArgon, Boron, Xenoの三つあり、29ドルのBoronはLTEをサポート、15ドルのArgonはWi-Fi、9ドルのXenonはBluetoothだけだ。

このParticle Meshのいちばん主な使い方は、たくさんのセンサーのある大きなメッシュネットワークを作って、その多種多様なデバイスから多様なデータをワイヤレスで集めることだ。たとえば大型農場ではガスや水道の配管網に圧力センサーを配置し、各所で土壌水分をコントロールするだろう。

発売は7月だが、すでに予約を受け付けている。

リリースノートで協同ファウンダーのZach Supallaがこう言ってる: “うちがWi-Fiとセルネットワークに接続するハードウェアを出してから5年になる今では、14万人あまりのデベロッパーが彼らのデバイスをParticleでネットワーキングしている。とくにIoTの最前線では、わが社のデベロッパーコミュニティが、IoTのローカルネットワークを作るというチャレンジに取り組んでいる。そんなネットワークの良質な接続性の実現のために設計したのが、Meshだ。IoTのネットワークが広く根付いて、さまざまな問題を解決することから始まる明日の真のIoT、そのニューウェーブの到来が待ち遠しい”。

Vimeoのビデオで見るParticleParticle Mesh

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

MozillaがIoT技術の標準化を目指してオープンなゲートウェイを発表、AlexaとSiriが仲良しに?

AppleもGoogleもAmazonも、それにSamsungも、みんな、家庭などのインターネットに接続されたデバイス(“コネクテッドデバイス”)をコントロールする独自のスタンダードを作ろうと競っている。そしてMozillaは今日(米国時間2/6)、物のインターネット(internet of things, IoT)をコントロールするためのオープンなゲートウェイを、これからは誰もが作れる、と発表した。同団体はまた、IoTが大きなテクノロジー企業が牛耳るものにならないための、フレームワークとオープンなスタンダードを作成中である、と確認した。

コネクテッドデバイスは、うちのサーモスタットはAmazon Echoの言うことしか聞いてくれない、こっちの電球はSiri、あっちの電球はGoogle Homeでしかコントロールできない、という支離滅裂な状況さえなければ、すばらしいだろう。

いろんなアクセサリのメーカーも、ごく少数の巨大テク企業がIoTの規格を支配している状態を必ずしも歓迎しない。彼ら巨人たちは、いちいち彼らから、高価なライセンス料を取るかもしれない。そしてお客には、どれかひとつを選ばなければならないという面倒が生じる。

Mozillaは、オープンなWebの熱心な支持者だ。このような非営利団体がコネクテッドデバイスの規格を考えるのは、良いことのように思える。同団体が提案するProject Thingsは、複数のプロジェクトをカバーする。ではそれは、どんな規格だろうか。

まずMozillaは、W3Cと共同でWeb of Things(物のWeb)のオープンスタンダードを作りたい、と考えている。それにより、アクセサリのメーカーとサービスのプロバイダーが、同じ標準規格でデバイス同士が対話できるようにする。その規格は、JSONとRESTとWebSockets APIで構成される。それはWeb上のデータとAPIのスタンダードであり、すべてのコネクテッドデバイスがこれを実装することによって、任意の機器やサービス間の対話を可能にする。

次は、同じくMozillaが提案するWeb of Things Gatewayによって、プロプライエタリなAmazon Echo, Philips Hue, Apple TV, Google Homeなどなどがオープンなデバイスに置き換えられる。そのゲートウェイは、Raspberry Pi 3やZigBee、USBドングルZ-Waveなどを使って、今すでに作れる

メーカー企業も、共通の規格に基づいて独自のゲートウェイを作れる。たとえばNetgear社は、今後のルーター製品にWeb of Thingsのゲートウェイを内蔵できるだろう。そしてそのルーターは365日無休で働き、物のインターネットにも奉仕する。また適当なブリッジを作れば、APIの相互通訳が可能になるから、Amazon、Google、Appleなどのスマートスピーカーが互いに会話できるようになる。つまりWeb of ThingsはこれらプロプライエタリなAPI(HomeKit API, Smart Home Skill APIなど)のための共通言語になる。

そしてさらにMozillaは、コネクテッドデバイスをコントロールするためのインタフェイスも作っている。そのためのWebアプリケーションをスマートフォンの画面に出せば、そこから家の機器をコントロールできる。たとえば声で照明をつけたり、IFTTTふうのルールで家の中を自動化したり、デバイスをレイアウトするフロアプランを加えたり、いろいろできる。

またMozillaが設計したアドオン(プラグイン)をインストールすれば、新しいデバイスやプロトコルもサポートできる。重要なのは、これらすべてが、あなたの家にあるあなたのゲートウェイで行われることだ。声で灯(あか)りを点けても、もうGoogleやAmazonにはそれが分からない。

そしてWeb of Thingsのプロトコルをデベロッパーが利用すれば、家全体をコントロールするネイティブのアプリを作れる。Mozillaはこの問題をいろんな角度から見ているので、そんな日が来るのも遠くはない。そして、今からすでにProject Thingsをいじり始めて、その開発に寄与貢献するデベロッパーがいても、かまわない。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

CES2018:FordとQualcommが車の広範な接続性実現のために提携

FordとチップメーカーQualcommは、火曜日のCES 2018で、車から全てのものへのセルラー接続技術(C2VX)技術に関しての協力を行うパートナーシップを発表した。これは自動車をスマート信号機や、路上標識、二輪車、道路、その他のものと接続する接続通信技術の円滑な展開を、検証し確実にするためのものだ。

携帯電話の接続性は、自動運転車ならびにモビリティサービスなどに向けて、フォードが展開しようとしている、充電ステーションネットワークやパートナープラットフォームなどの重要な要素となっている。Fordはまた本日(1月9日)、クラウドベースのコネクテッドスマートシティプラットフォームも発表した。この上に、都市や、運送業者、他の自動車メーカーなどが、共同で開発できるオープンスタンダードとなることを期待している。

Qualcommとの提携は、このようなことを世界規模で起こすことを狙ってのことだ。Qualcommは広範な5G展開のような先行をいくつも成し遂げており、そのモバイルとIoT接続性のおける経験からも、Fordにとっては技術開発が進むにつれて、登場するスマートシティの全てのコンポーネントと通信できることを確実にするための、自然なパートナーなのだ。

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(翻訳:sako)

デジタルトランスフォーメーションへの注力にも関わらず、2017年のGEの業績は振るわなかった

GEは、デジタル組織へのトランスフォーメーションの必要性を認識している従来型企業の、偉大な例ではあるものの、あらゆる指標から見て2017年はこの大企業にとっては苦難の年だった。

同社の株価は下落を続けており、先週には世界中の電力事業で、1万2000人の従業員のレイオフを行うことを発表した。同社の困難の原因の全てを、デジタルトランスフォーメーションに注ぎ込んだ努力のせいにはできないが(いずれにせよ困難に直面することにはなったであろう)、これは似たような道を辿ろうとしている他の企業たちの意気を、大いに損なうものには違いない。

しかし、その2017年における困難にも関わらず、GEは世界に30万人を超える従業員を抱える巨大企業が、デジタルの未来へと突き進む際の、ケーススタディの位置に踏みとどまっている。今年の財務実績にかかわらず、その動きを押し止めることはできない。

大いなるデジタルビジョン

GEは、クラウドを完全に取り入れた最初の大企業の1つであり、多くの企業がまだクラウドを概念的に探りつつあった2014年に、大部分のオンプレミスデータセンターを閉鎖する予定であることを発表していた。それはAWSのパブリッククラウドの大規模な顧客となり、2014年にはBoxとの大規模な提携によってSaaSを受け入れ、そして今年はVeraとも契約を結び、全社的なクラウド移行を敢行した事例となった。

また、風力タービン、飛行機エンジン、MRIなどの大型産業機械を単体で売ることから、産業用IoTへのシフトを行うことも明確に打ち出した。そういった大型マシンにセンサーを搭載することにより、それらのマシンの健康状態を知るために、データのデジタル記録を追跡できるようになった。同社はこのようなデータへの移行を利用するためにPredixプラットフォームを構築し、顧客たちが所有する巨大機械たちが送り出して来るデータの、理解と活用を行えるアプリケーションを、顧客たち自身が構築できるようにした。

GEの前CEOであるJeff Immelt。写真: Pool/Getty Images.

前CEOのJeff Immeltが2014年に語ったように「ある夜、製造企業として眠りについたなら、翌朝にはソフトウェアと分析を行う企業として目覚めることになるだろう」ということだ。彼は本当にそれを手に入れたように見える。だが彼の会社は、変化する市場のダイナミズムを活用するためのツールとテクノロジーを構築してはいたものの、それが構築できたからといって、すぐに成功が保証されるわけではないというのが実際のところだ。

そしてGEは明らかにトランスフォーメーション途上にある企業ではあるものの、変化して行く道のりの苦痛は、さらに増しているようだ。今年の状況が、確かにそれを示している。

新しいボスに会おう

Immeltは今年の初めに、予定よりも3ヶ月早く会社を去った。そして後任のJohn Flanneryは、引き継ぎを行い様々なものを調べ始めた後で彼が見たものを、必ずしも気に入ったわけではなかった。今年の初めにはQuartzが、膨れ上がったサラリーと常軌を逸した特典を享受する幹部優遇の空気について報告している。

先月のEconomistの記事で、この由緒ある刊行物は、革新的ではあるものの、必要なビジネス規律が欠けている上場企業の姿を描き出している。

「しかし内情に通じた者たちは、GEはImmelt氏の下で方向性を見失っていたと語る。前CEOはGEの未来についての崇高な目標を語り、多くのイノベーションに投資したが、説明責任を常に明確にしたり、厳しい目標について主張したりすることはなかったのだ」。

10月に出された最新の業績報告では大きな損失が明らかとなり、今年の株価は23%下落した。先に参照したEconomistの記事は、GEが今年ダウ平均価格で最悪のパフォーマンスを示していると指摘している。それはデジタルトランスフォーメーションを手がけている際に、目にしたいと思う結末ではない。

これを受けて、行動的投資家であるNelson Peltz(Trian Fund Management)は、同社に対してより財務規律を強化するように圧力をかけてきたが、出てきた結果に対して彼を責めることは難しい。

それでもトランスフォーメーションは続く

こうした様々な問題にも関わらず、GEはデジタルトランスフォーメーションのケーススタディとして捉えられている。これは一重に、ここ数年の間に同社が進めて来た変化の規模によるものだ。多少の減速要因にぶつかった程度で、その動きが止まるわけではない。船を正しい位置に引き戻せるか否かはFlannery次第だが、デジタルトランスフォーメーションは続く。

この春に、私はニューヨーク州ニスカユナにある、GEグローバルリサーチセンターで1日を過ごした。そこには未来に向けて力の限りの挑戦を重ねる会社の姿があった。そこはデジタルトランスフォーメーションの旗振り役であり、ロボット、ブロックチェーン、拡張ならびに仮想現実などのためのデジタル実験を行う場所だった。そこで私は、GEの次世代のツールを構築しようとしている人びと、そしてそうしたツールを世界中のビジネスユニットに対して展開しようとしている人びとと話をした。

写真: DAVID L. RYAN/THE BOSTON GLOBE/JOSH EDELSON/AFP/GETTY IMAGES

今年の初めには、GEは、Predixアプリケーションの開発速度を上げるためにAppleの開発ツールが使えるように、Appleとのパートナーシップをより幅広いものにすることを発表した。この提携については私は以下のように書いている「AppleとGEは、Appleのデザイン感性とiOSに関する深い知識を用いた開発ツールの提供と、アプリケーションの開発を共同で行う。しかし話はそこで終わりではない。Appleのセールスチームは、GEのPredixプラットフォームを企業ユーザーに対して必要に応じてプッシュしていく。そしてGEは、その33万人の従業員に対してiPhoneとiPadを標準として採用することと、コンピューターの選択肢としてMacも採用することを決定した」。

しかしEconomistは、この大企業にとっての苦難の旅路は、2018年も続くと見ている。だからといって、GEのような伝統ある大企業たちが、お手上げになり全てを諦めてしまうというわけではない。彼らの選択肢は少ないが、トランスフォーメーション文化をその組織の奥深くまでに浸透させる方法をずっと探し続けることが、より確かな業績に繋がる実質的変化の基礎を与えるに違いない。明らかにそれは容易なことではないが、何もしないという選択肢は残されていない。

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(翻訳:sako)

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スタートアップが手がける紛失防止IoTタグ「MAMORIO​」、小型で高性能の上級モデルが登場

紛失防止IoTタグ「MAMORIO(マモリオ)」を提供するMAMORIOは12月1日、新製品となる上級モデル「MAMORIO S」を発表した。本日から公式サイトや各種ECサイトにて予約受付を開始し、12月7日より一般販売も始める予定だ。

MAMORIOはBluetoothを活用した小さなタグとスマートフォンを連携することで、大切なものの紛失を防ぐサービス。スマホとタグを付けた貴重品との距離が離れた際に、場所と時間をアプリに通知する。加えて手元から離れたMAMORIOと他のユーザーがすれちがった時にその場所を通知する機能や、駅や街に設置されているMAMORIO SpotにMAMORIOが届くと通知する機能も備える。

今回発表されたMAMORIO Sでは従来モデルの機能を継承しながら、さらなる小型化と高性能化を実現した。重さを3.0gから2.4gへ、厚みを3.4mmから2.8mmへと約20%の小型化を行い、よりつけやすいサイズになっている。

性能面では紛失時に発見率の指標となるアドバタイズインターバル(電波の発信間隔)が2.53倍向上。従来モデルでは最大30mだった有効距離も約2倍の最大60m程度まで拡大するなど性能があがった。本体の電池寿命は約1年間で価格が税抜きで3980円。カラーはビジネスシーンでも使いやすい表裏ブラック1色だ。

MAMORIOはスタートアップのプロダクトのみを取り扱う特設ストア「Amazon Launchpad」に、日本版ローンチ時の2017年1月から掲載。本日発表されたAmazonランキング大賞2017Amazon Launchpadストア部門では年間1位に輝いている。

AWSがIoT専用のデータ分析ツールAWS IoT Analyticsをローンチ、機械学習にも対応

物のインターネット(Internet of Things, IOT)は、近未来のもっともホットなテクノロジー、今やどこのカンファレンスへ行っても主役級の扱いだ。IoTという技術の突出した特徴のひとつが、多くのデバイスが常時大量のデータを吐きつづけること。そしてそれらのデータの意味を知ることが、システムの重要な課題になる。そこでAmazon AWSは、独自のIoTアナリティクスサービスAWS IoT Analyticsを、今日(米国時間11/29)のre:Inventカンファレンスで立ち上げた。

AWSのテクニカル・エヴァンジェリストTara Walkerブログ記事によると、このサービスの究極の目的はIoTが吐き出すデータをすべて管理することだ: “AWS IoT Analyticsを利用して、メッセージを処理したり、大量のデバイスデータを収集保存したり、データをクェリしたりできる。このサービスはデータ視覚化サービスAmazon Quicksightや、オープンソースのデータサイエンスツールJupyter Notebooksを統合している。後者によって、データを機械学習で処理することも可能だ”。〔参考記事

上記の最後の部分は、センサーやデバイスからやってくるデータをベースに機械学習のモデルを作るときに便利だ。AWSが今日発表した、機械学習のモデル制作支援ツールSageMakerも、やはりJupyter Notebooksをサポートしている。

IoTから出てくる膨大な量のデータをユーザーが直接、QuickSightのような汎用ツールで処理するのは酷である、と考えたAmazonは、このAWS IoT Analyticsという専用ツールを作ったのだ。しかもQuickSightでは、何が起きたのかを見ることはできても、これまでのデータの傾向に基づく予測ができない。

たとえば、このIoT Analyticsを使えば、工場などの機械が実際に故障する前に、メンテナンスが必要である状態を知ることができる。本番稼働時に急に停止するのではなく、ユーザーが自分の意思で余暇時間などにメンテできる。

このIoT専用のアナリティクスツールは、IoTのセンサーからのデータを収集、保存、そしてクェリでき、特定のデータ集合を一定の時間間隔で取り出すことができる。

Amazonが汎用のBI(ビジネスインテリジェンス)サービスAmazon QuickSightを立ち上げたのは、2015年だ。

画像提供: Bloomberg/Getty Images


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Amazon AWSがIoTデバイスのセキュリティモニタリングをサービスとして提供

新しいツールや機能がぎっしり詰まった一日〔AWS re:Inventカンファレンス三日目〕の終わりに、Amazonは物のインターネット(internet of things, IoT)のための新しいセキュリティサービスをプレビューした。

IOT Device Defenderと呼ばれるそのサービスは、IoTデバイスのポリシーをモニタし、デバイスの異常動作を見つけ、顧客がそのデバイスに盛りたいと願っている独自のルールや監査のポリシーをサポートする。

顧客がルールを定義しておくと、正常値に対する変動がルールが定める大きさを超えた場合にそれをリアルタイムで検出してアラートする。

またこのサービスは顧客にコンテキスト情報を提供できるので、ダメージが起きた場所や状況を知ることもできる。

デバイスの情報やログ統計などは、それらの異状をアラートで知ることができる。そしてユーザーは、Amazonのこのサービスを通じて、リモートでデバイスをリブートしたり、そのパーミッションを取り消し〜リセットしたり、セキュリティフィックス(応急措置)を行ったりできる。

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コネクティッド・ロック「TiNK」公開――アパマン連携で2021年までに100万台設置へ、メルチャリへの提供も

TiNKを持つTsumug代表取締役の牧田恵里氏

コネクティッド・ロック「TiNK」シリーズや関連サービスを手がけるtsumugは11月9日、シリーズ第1弾となるプロダクト「TiNK C」と「TiNK E」を発表、本日より発売すると発表した。

TiNK Cは住宅各戸の玄関ドアに設置するシリンダータイプ、もう一方の「TiNK E」は集合機に設置するタイプのコネクティッド・ロックだ。出荷は2018年の初頭を予定していて、それと同時に販売パートナーのアパマンショップホールディングスグループなどと連携し製品の普及を進める。

具体的には賃貸の空き物件への設置することで内見業務の効率化を始め、オーナーと入居者者双方へのサービス提供を推進し、2021年までに100 万世帯への設置を目指していく。

写真左が「TiNK C」、右が「TiNK E」

TiNK CはスマートフォンアプリのほかテンキーやNFCを活用して解錠でき、ワンタイムキーの発行機能やキーシェアリング機能、鍵を自動で施錠するオートセキュリティ機能などを備えて基本料金は月額500円。加えてオプションとして子供の帰宅を通知する機能や、独居老人の見守りサービスなども月額300円から提供する。

またLTE通信に対応しているため家やオフィスなどのインターネト環境に依存することがないのも特徴。今後はパートナーと連携したホームセキュリティサービスや宅配配達サービス、不在時の家事依頼サービスなどの展開も検討する。なお通信にはさくらインターネットが提供するIoT プラットフォーム「sakura.io」と、米afero(Androidの父・元Googleのアンディー・ルービン氏とスマホメーカー「Danger」を立ち上げたジョー・ブリット氏の会社だ)の提供する「afero」を採用しているという。

今回tsumugはTiNKシリーズの発表に合わせて新たに資金調達を行うことも明かした。金額など詳細は非公開だが、既存株主のiSGSインベストメントワークスに加えメルカリやシャープ、さくらインターネットらが新たに投資家として参加している(tsumugはシャープの量産アクセラレーションプログラムの第1号企業だ)。

メルカリが出資しているということが興味深いが、グループ会社のソウゾウが2018年初頭にサービス開始を予定しているシェアサイクル事業「メルチャリ」において、コネクティッド・ロックの共同開発などを行うとしている。

スムージーのインターネット(IoS)がやってきた

ふだんは、プレスリリースからの直接の引用は記事中で使わない方針だけど、でもときどき、“NutriBulletはスムージー作りのアートを次のレベルへ上げました”なんてのがあると、えっ!と思って飛びついてしまう。これまで何年も、スムージー作りの未来を待ちわびていた者にとって、その答は明らかだ: スムージーのインターネット(Internet of Smoothies, IoS)だよ。インターネットに接続されたスムージーの夜明けがやってくるとき、あなたはその仲間に加わるか、それとも栄養学的退化に直面するのか。

NutriBulletは、それ自身がコネクテッドではなく、それを操作するアプリがiOS/Androidでインターネットにつながる。そのスマホへの接続は、本体内蔵のBluetoothで行う。そして情報を、ダイレクトにモバイルデバイスに送れる。これは、これまででいちばん馬鹿げたスマートデバイスか? でもない(‘いちばん馬鹿げた’はあまりにもバーが高すぎる)。でも、かなりあほらしいし、完全に不必要なデバイスだ。が、ぼくはなぜか、試してみたくたたまらなかった。

この一人用のブレンダーはセンサーを内蔵していて、食材を検知するから、材料を入れすぎたり、カロリー爆弾を作ってしまうおそれがない。ブレンダーは一般的に、糖類の過食になりやすい機材だ。Jamba Juiceから人類が得た教訓は、グリーンな食材を液状に粉砕したからといって、それが“健康食品”になる保証はない、ということだ。

このNutriBullet Balanceと呼ばれる製品は目下予約受付中で、ホリデイシーズンに定価180ドルで発売される。今Amazonで売ってるさまざまな同社製品の倍以上の価格だから、要注意。しかも、この前ぼくがAmazonで買った30ドルのブレンダーは、毎朝まじめに、ホウレンソウとケールのドリンクを作ってくれる。

その30ドルのブレンダーは、たしかにスマート(電脳)デバイスではないが、安いしよく働く。NutriBulletでは、いろんな情報をスマートフォンに手入力しなければならない。忙しくて野菜をなかなか食べられないわれわれには、それも面倒な作業だ。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

Salesforceが新しいIoTの枠組みであるIoT Explorer Editionを発表

誰もがIoTを求めている、そうしない理由もない。もし予測通りに進むなら、2020年までには何十億ものデバイスとセンサーが情報をブロードキャストし、誰かがそれを理解し、重要なデータを私たちに指摘しなければならないSalesforceはそうした会社(少なくともその中の1社)になりたいと考えている。

Salesforceは、これまでも流行りの最新技術に飛びつくことにためらいを見せたことはない。ビッグデータ、人工知能、そしてIoTでもおかまい無しだ。実際Salesforceは、2015年にはSalesforce IoT CloudをDreamforce Conferenceで発表し、IoTについて語っている。これは多くの企業よりも遥かに早い動きだった。

本日(米国時間10月10日)Salesforceは、新しいIoTイニシアチブであるIoT Explorer Editionを発表した。顧客がIoTデータを収集し活用するための仕掛けである。CEOのMarc Benioffが、IoT Cloudを立ち上げた2015年の段階では、同社が大いに将来性があると判断したテクノロジーに関して、とにかく先行することが目的だった。

IoT Explorer Editionは、そのビジョンをより多くのビジネスに広げるためにデザインされている。それはまず最初に、Salesforceが「ローコード(low code)」と呼ぶIoTビジネスワークフロー生成手段を提供する。非技術者は、何らかの自動化ワークフローを作成するために、プロセスの一覧から選択して、複数のデバイスやセンサー同士を接続することができる。

たとえば、風力タービン会社を所有していたとしよう(あり得るシナリオだ)、そしてタービンが保守を必要としている時に、通知を受けられるようにしたいとする。この場合、能力が一定レベルを下回ったときに、通知をトリガするワークフローを作成することができる。

Salesforceらしいところは、こうした情報をただかき集めて配信するだけには止まらないということだ。例えばSalesforce Service Cloudのような、他のSalesforceプロダクトにその情報を結びつけたいと考えている。もしワークフローがサービスコールをトリガーした時には、サービス担当者がこれまでのサービス履歴と、顧客が風力タービンの問題について、今週初めに電話をかけてきた事実にアクセスできることが有益だ。

そして、Salesforceは顧客のサービスコールについて、積極的に手助けをしたいと考えている。もしこのツールを使用して将来を予測し、デバイスがサービスを必要とすることを、ある程度の確実性で知ることができるなら、顧客から電話がかかってくることをただ待っている必要はない。こちらから顧客に連絡して、彼らの設備が故障しようとしていると告げ、新しい設備を売ることもできる。そんなことができるならどんなに素晴らしいことだろう。

新しいIoT Explorer Editionは、Salesforceのさまざまなクラウドへのアドオンとして、10月17日から一般的利用が可能となる。

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(翻訳:Sako)

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薬剤のリリースをコントロールして治癒を早めるスマート包帯をMITなどが共同開発

切り傷や擦り傷の治療は通常、包帯や救急絆などを何度か取り替えながら、その都度軟膏などを塗って行う。でも、傷薬(きずぐすり)の要らない包帯があったら、どうだろう?今、ネブラスカ大学リンカーン校とハーバード大学とMITが共同開発しているスマート包帯が、まさにそれなのだ。

従来からよく使われる、消毒綿などの繊維と違って、この傷口保護材は“感熱性のドラッグキャリアを含んだヒドロゲルで電熱ヒーターを包んだ複合繊維”で作られている(右図)。実は、これですべてを言い表しているのだ。

傷口を保護するなどの包帯としての機能は同じだが、そこに切手大のマイクロコントローラーが付いている。アプリやタイマーや織り込まれたセンサーなどによってそのマイクロコントローラーが起動すると、繊維に電気を送って温め、ヒドロゲルの中で寝ていた薬剤を活性化する。

その薬剤は、麻酔剤や抗生剤、あるいは治療を加速する成長ホルモンなど、何でもよい。電圧が高いとより多くの薬剤が活性化し、また、それぞれ薬剤の異なる複数の複合繊維を、ひとつのスマート包帯に使ってもよい。

“これは薬剤の投与量に依存しない治療が可能な初めての傷口保護材である”、とUN-LのAli Tamayolがニューズリリースで言っている。“リリースプロファイルの異なる複数の薬をリリースできる。これはほかのシステムに比べて大きな利点だ”。

チームはジャーナルAdvanced Functional Materialsに発表したペーパーで、動物に適用したときの良好な治癒効果を述べている(人間でのテストはまだこれから)。また、熱が薬剤の効果を妨げないことも、確認している。

ふつうの擦り傷なら普通の包帯や救急絆などの傷口保護材(bandage, 池の向こう岸のお友だち(イギリス人)ならplaster)で十分だが、人が頻繁に世話できない負傷者とか、包帯の頻繁な交換が難しい患部を持つ人には、このシステムが最適だろう。

さらにテストを重ねてFDAの認可が得られたら、今度は繊維とセンサーの統合という課題がある。血糖値やpHなど、治癒過程が分かる測度が包帯から得られれば、それを包帯の上のディスプレイに、プログレスバーで表示できるようになるかもしれない。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))