配管工、電気工事士、機械工向けビジネス管理ツールを提供するFuzey

ロンドンを拠点とし、中小企業や個人事業主向けに「デジタル・ワンストップ・ショップ」と呼ばれるサービスを提供しているFuzey(フュージー)が、450万ドル(約5億1000万円)のシード資金を調達した。

このラウンドは、byFounders(バイファウンダーズ)が主導し、Flash Ventures(フラッシュ・ベンチャーズ)、Global Founders Capital(グローパル・ファウンダーズ・キャピタル)、Ascension(アセンション)の他、Index Ventures(インデックス・ベンチャーズ)のベンチャーパートナーであるStephane Kurgan(ステファン・クルガン)氏、Amplo VC(アンプロVC)の創業者兼CEOであるSheel Tyle(シール・タイル)氏などのエンジェル投資家グループが参加した。

今回のラウンドにより、同社はHenrik Lysgaard Jensen(ヘンリク・リスガード・ジェンセン)氏とAlex Boyce(アレックス・ボイス)氏が2020年に設立以来、総額520万ドル(約5億9000万円)の資金調達を行ったことになる。また、この投資の一環として、byFoundersの投資家であるSara Rywe(サラ・ライウェ)氏と、Flash VenturesのパートナーであるLorenzo Franzi(ロレンツォ・フランジ)氏が、同社の取締役に就任した。

CEOのリスガード・ジェンセン氏とCOOのボイス氏は約2年ほど前に出会い、中小企業のデジタル化を支援することで意気投合した。配管工、電気工事士、機械工などの小規模事業者をターゲットにしている理由について、リスガード・ジェンセン氏は「ローカルビジネスはすべてのコミュニティのバックボーンである」と信じているが、ビジネス管理用に開発されたツールの多くは、このような事業者には手が届かないし、またこのような事業者を念頭に置いて設計されてもいないからだ。

他にもこのような種類の事業に注目しているスタートアップ企業はある。11月に1500万ドル(約17億円)を調達したPuls Technologies(プラス・テクノロジーズ)のモバイルアプリは、職人とオンデマンドの住宅修理サービスをつなぐものだ。また、2021年初めに6000万ドル(約68億円)の資金調達を発表したJobber(ジョバー)のように、もっと規模の大きな企業もこの分野には存在する。

ボイス氏にとって、個人的にも特にこの分野には思い入れがあるという。同氏の母親は中小企業の経営者で、革製のノートを使ってビジネスを行っていたが、常にノートの紛失を恐れていたと説明する。

「これらは私たちが取り組んでいるテーマです」と、ボイス氏はTechCrunchに語った。「新型コロナウイルス感染症の流行期間中に、どうすれば私たちは変革の担い手になれるかを考えました。消費者の需要が変化し、人々がテクノロジーをより重視するようになり、地元の商店とさまざまな方法で関わりたいと思っている状況を見て目が覚めたのです」。

そうして同社が作り上げたツールは、請求書など従来は手作業で紙に書いて行っていたことを、中小企業向けにデジタル化するものだ。顧客とのコミュニケーション、支払い、マーケティング、カレンダーなどを1つのダッシュボードにまとめ、事業を管理し、オンラインのプロフィールを充実させることができる。

ユーザーの中小企業は、メッセージングからソーシャルメディアまで、さまざまな方法で顧客とコミュニケーションをとることができる。また、請求書を作成して即時に支払いを処理したり、リードジェネレーション(見込み顧客を獲得するための取り組み)を洞察する機能も用意されている。さらに、Fuzeyは文書のテンプレートやワンクリックカスタマーレビューも提供しており、簡単に顧客がレビューを残せるようにすることができる。

「レスポンスタイムは重要です。当社では、あらかじめ質問やコメントが定義されたレスポンステンプレートも用意しているので、顧客に迅速に対応することができます」と、リスガード・ジェンセン氏は述べている。「私たちは、この機能が20、30、40の時間的効果をもたらすと確信しています」。

6月に製品の販売を開始した同社は、今回の資金調達を製品開発と地域の拡大に活用する予定だ。Fuzeyはすでに、欧州、米国、カナダの一部の市場で事業を展開している。従業員数は現在10名で、顧客数、売上高ともに前月比で2桁の伸びを示している。

画像クレジット:Fuzey / Fuzey co-founders Alex Boyce and Henrik Lysgaard Jensen

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(文:Christine Hall、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

cove.toolは炭素排出の少ない建築物の設計を支援するSaaS企業、ロバート・ダウニー・Jr.のFootPrint Coalitionも支援

建築物をより持続可能なものにするためのテクノロジーは数多く存在するが、その機能を設計に組み込むことは、いうほど簡単ではない。

cove.tool(コーブ・ツール)は、設計段階から確実に建築物を持続可能にすることを目指すスタートアップ企業だ。2021年には同社のソフトウェアによって、設計・建設の専門家がTesla(テスラ)の5倍の炭素を削減できるようになったと主張している。アトランタを拠点とする同社は、Coatue(コーチュー)が主導するシリーズBラウンドで3000万ドル(約34億円)を調達した。

今回のラウンドには、Robert Downey Jr.(ロバート・ダウニー・ジュニア)氏のFootPrint Coalition(フットプリント・コーリション)が、既存投資家のMucker Capital(マッカー・キャピタル)、Urban Us(アーバン・アス)、Knoll Ventures(ノル・ベンチャーズ)とともに参加した。

CEO兼共同創業者のSandeep Ahuja(サンディープ・アフジャ)氏によると、今回のラウンドはプリエンプティブラウンドで、同社の調達総額は3650万ドル(約41億5000万円)に達したという。評価額について同氏は明らかにしなかったものの、2020年11月に570万ドル(約6億5000万円)を調達した時から「10倍」になったと述べている。

B2B(企業間取引)のSaaS(サービスとしてのソフトウェア)企業であるcove.toolは、建築家や建設業者がプロジェクトの詳細や土地を入力すると、採光、空調システム、太陽光発電、材料などの最適化方法を提案してくれる機能を備えている。cove.toolは機械学習を活用し、建築家、エンジニア、建設業者が、建築コストを削減しながら建築物のパフォーマンスを幅広く測定する方法を提供する。

「当社が存在する理由は、建築環境における二酸化炭素の排出量を削減するためです。なぜなら、二酸化炭素排出量の約40%は建築によるものだからです」と、アフジャ氏はTechCrunchに語った。「cove.toolの全体的な目標は、材料の選択と建築のシミュレーションのプロセスをよりシンプルにして、低炭素であるだけでなく、コスト的にも最適な代替材料を選べるようにすることです」。

cove.toolは、2017年8月にソフトウェアのベータ版の提供を開始した。現在では、倉庫からデータセンター、オフィスビルに至るまで、2万5000件以上のプロジェクトがcove.toolのソフトウェアを使って建設されている。同社のソフトウェアには、建設業者、建築家、エンジニア、建築製品メーカーなど、30カ国で1万5000人以上のユーザーがいる。その中には、HDR、AECOM(エイコム)、Skanska(スカンスカ)、Stora Enso(ストラ・エンソ)といった企業が含まれる。

「cove.toolは、合理的な自動分析を行うことで、建設業者、建築家、エンジニア、建築製品メーカーがデータに基づいた設計を行えるように支援し、気候変動との戦いの中で建築物を持続可能かつ効率的なものにしています」と、アフジャ氏は述べている。

驚くべきことに、cove.toolは2021年、2850万トンの炭素をオフセットしたという。これは、4億5000万本の木を10年間にわたって植え、育てることに相当する。同社は新たな資本を活用し、製品群の拡大や、現在60名のチームの増員、建築・エンジニアリング・建設業界へ炭素削減分析の提供などを計画している。

アフジャ氏によると、同社の主な競合相手は、同様の作業を手作業で行っているコンサルタントだという。

「当社の差別化要因は、データへのアクセスを民主化し、かつては2〜4週間かかっていたことを30分でできるようにしたことです」と、同氏は付け加えた。

この会社はまだ利益を出していないものの、アフジャ氏によれば事業規模の拡大をやめれば利益を出せる可能性があるという。

「今後数カ月のうちに、当社の製品群をさらに拡大し、AECエコシステム全体の統合を提供することで、パフォーマンスデータをさらに利用しやすくしていきます。当社では、炭素問題はデータ問題であると考えています」と、アフジャ氏はTechCrunchに語った。「APIフレームワークを使用することによって、建築物のデータを分析する作業を大幅に簡素化し、そのデータを建築・設計プロセスの多くの専門家と共有することができ、最終的にはシームレスな協業を可能にして、プロジェクトの成果を向上させることができます」。

同社では、米国、カナダ、英国、オーストラリア、EUでの販売・マーケティング活動を強化していくことも計画している。

FootPrint Coalitionの創設者であるロバート・ダウニー・Jr氏は、建築物の建設と運営が世界の温室効果ガス排出量の40%を占めると指摘する。

「エネルギー効率、設計、材料選択の透明性を組み合わせることで、cove.toolはこの大きな問題に取り組んでいます」と、同氏はメールに書いている。「これは、機械学習と理念的なリーダーシップを用いて、文字通りより良い未来を築く、スケーラブルなビジネスの最高の例です」。

Coatue社のパートナーであるDavid Cahn(デイビッド・チャン)氏によれば、持続可能な建設は現代の最も重要な環境課題の1つであると、同氏の会社は考えているという。

「cove.toolのソフトウェアによるアプローチは、建築をより簡単かつクリーンにする可能性を持っています」と、チャン氏はメールで述べている。

画像クレジット:Cove.tool

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(文:Mary Ann Azevedo、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

ビッグニュースに関するささやかなメモ

スタートアップとマーケットの週刊ニュースレター、The TechCrunch Exchangeへようこそ。

なんて1週間だったのだろう。いや、本当に。もう12月後半も目前だというのに、どういうわけかニュースは起き続けている。ホリデイシーズンなのにこの多さとは!今回はまず始めに、先週の重要なニュースに関するいくつかのメモ、次にベクトル検索と、2021年のお勧め本についてお話しする。さあ始めよう!

  • 私たちが知るSPACの終焉:Trump Media SPAC(トランプメディアSPAC)を取り巻く煙スモッグレベルの濃さに達している。またBuzzFeed SPAC(バズフィードSPAC)の取引は、あらゆる手を尽くしたが失敗し、結局は世間の評判を落とし、その価値を半分近くまで下げただけに終わった。
  • 暗号資産 vs 従来の金融商品:宗教戦争の真っ只中に割り込むつもりはない、しかしテクノロジー市場は、暗号資産企業に資金を提供して育成する方法を真剣に決めていく必要がある。そしてその答はおそらくベンチャーキャピタルではないのかもしれない。先週私たちは、OpenSea(オープンシー)のIPOへの期待が、ユーザーから歓迎されるのではなく、軽蔑されている様子を見た。公開だって?トークンを発行して暗号資産の世界に留まっていればいいのでは?なぜなら、大量の従来資金がOpenSeaに流れ込んだので、それらの投資家は、デジタル硬貨ではなく、彼らに対する投資家たちにドルで返済する必要がある。これを解決する方法は?はっきりしない、だが私は、長期的には、暗号資産企業は完全に従来の金融レールから外れたものになるのではないかと思っている。そうならない理由はない。
  • SaaSの状況:これを書かなかったことをお詫びしたい、だがソフトウェアの評価額に関する最近の記憶の中でも最も急激なマイナスの動きの1つが見られた。確かに価格はまだ高いものの、以前ほどではない。現在過剰高値のユニコーンは注意が必要だ。
  • そして最後に、Instacart(インスタカート)は社長が辞任した:入社してからわずか数カ月後で、Instacartは注目を集めた人材を手放した。The Exchangeは、11月にInstacartについて少し書いている。パンデミックでの急増が落ち着いたあと、Instacartの成長率が元に戻ったことを示す報告に注目したのだ。ゆっくりではあるが、会社は今でも成長している。しかし、成長が遅いままでは、理にかなった価格で会社を公開することはできない。この先なにが待ち受けるのだろう?わからない。

会社をメディアにとりあげてもらう方法、そしてベクトル検索

テクノロジー分野での記者になることの最も良い点の1つは、未来を説明してくれる賢い人たちと時間を過ごせることだ。私たちが、すぐにはメタバースの住民になるわけではないものの、将来的なの意味での情報処理方法を変えるテクノロジーがここにはある。

Semi Technologies(セミ・テクノロジーズ)の共同創業者Bob van Luijt(ボブ・ファン・ラウト)CEOをご紹介しよう。この企業はWeaviate(ウィビエイト)を開発している。現在すでに多く存在するスタートアップと同様に、Semiは営利目的のOSS企業だ。簡単にいえば、同社はオープンソースプロジェクトWeaviateの上にビジネスを構築しているのだ。

ボブは数時間の時間を割いて、彼の会社、非構造化データの検索市場、Weaviateの仕組みについて話してくれただけでなく、TechCrunchの2021年分の記事をスクレイピングして小さなGUIに入れて、私が遊べるようにしてくれた。

ちなみに、これは記者にあなたの会社のことを気にかけてもらうためのすばらしい方法だ。これはお気軽な作業ではない、実に手間のかかる厚意で、相手の記者が基礎の基礎から知りたがっているような場合でも、初歩的な質問に忍耐強く答え続けることなのだ。

とにかく、ベクトル検索だ。Weaviateで可能になるのは、非構造化データをすばやく検索することだ。Microsoftの説明によればベクトル検索とは「深層学習モデルを使用して、データセットを意味のあるベクトル表現にエンコードします。ベクトル間の距離はアイテム間の類似性を表します」ということになる。

ボブは例を挙げて、これをもう少し簡単に説明してくれた。従来のデータベースでは、自由の女神がニューヨーク市にあり、エッフェル塔がパリにあることを示すデータを持っているだろう。しかし、こうしたデータを取得するには、対象を正確に検索をする必要がある。Weaviateまたは関連するソフトウェアを介したベクトル検索を使用すると、データベースの中になるフランスのランドマークについて、データを表示するように依頼することができる。そして、エッフェル塔のデータが取得される。

クールだよね、とても。ボブと彼のチームが親切にもセットアップしてくれたTechCrunchのポータルをいじくり回したが、私は彼らが提案した質問に最もこころ惹かれた。このようなものだ「Alex Wilhelmが外出中にTecCrunchニュースレターを書いたのは誰か?」率直にいえば、これはその曖昧さゆえに楽しい質問だ。どのTechCrunchニュースレターのことだろう?そして「外出中」とはどういう意味だろうか?結局、検索結果は、私が休みを取ってAnnaがニュースレターを処理していることを書いたちょっとしたテキストをこのコラムからなんとか見つけることができた。

とてもすばらしい。Semi Technologiesはかなり若い会社だが、私がずっと注目している会社の1つだ。それにはいくつかの理由がある。第1の理由は、オープンソースのスタートアップはクローズドコードの同業者よりも多くの場合興味深いからだ。そして、OSSテクノロジーを使用した構築を進めている創業者は、ビジネスに対するアプローチにやや余裕があることが多いし、個人的にボブが好きなことも理由だ。

Semiとの対話から書き起こした未整理の約3000語のノートを、もう少し一貫性のあるものに整理できたら、さらにお伝えする。

画像クレジット:Semi

本のお勧め2021

先週2部構成になったベンチャーキャピタルからの推薦図書リストにかなりの時間を費やした後、私たちは自分たちのお気に入りの何冊かをリストに追加しようとしている。もちろん、本の好みは絵画の好みと同じように個人的なものだが、2021年読んだもののうち最高だったもののいくつかを共有せずにはいられない!

Annaの2021年のお気に入りは以下のようなものだ:

フィクション:

「Born to be Mild:Adventures for the Anxious」Rob Temple(ロブ・テンプル)著

記録によれば、これは私が2021年に読んだ最初の本だったが、12カ月経っても本当に私を魅了してやまない。著者のRob Temple(ロブ・テンプル)はご存知かもしれない。陽気なソーシャルメディアアカウントを運営し、書籍シリーズである「Very British Problems」(ベリー・ブリティッシュ・プロブレム)の作者でもある。だがこの本はこれまでとは違うテイストだ。それは彼の不安との闘いと、自身のコンフォートゾーンから抜け出そうとした努力についての物語だ。それは感動的で、非常に親しみやすく、とてもおもしろい──あなたが私のようなSue Townsend(スー・タウンゼント)のファンなら、あなたもこれを気に入る可能性が高い。

ノンフィクション:

「How to Read Numbers:A Guide to Statistics in the News (and Knowing When to Trust Them)」 David Chivers(デビッド・シバース)、Tom Chivers(トム・シバース)著

これは私が今読んでいる本で、まだ読み切っていないという注意はしておくものの、とてもおもしろい本だ。それはメディアからの反発を招くかもしれないが、重要なポイントを提示している。私たちがニュースで目にする多くの数字は注意深く吟味される必要があるということだ。これは、ジャーナリストとニュース読者の双方にとってすばらしい読み物になる。読者が数字の読み方に精通すればするほど、分析の精度も上がっていく。

Alexの2021年のお気に入りには以下のようなものがある:

「The Salvation Sequence」Peter F. Hamilton(ピーター・F・ハミルトン)著

最高の空想科学小説(SF)は、私たちが住んでいる世界の上に宇宙船を登場させて充実した1日にしてくれるだけではない。実際、最高のSFは、経済学から人類、科学、物理学に至るまで、あらゆるものを再定義するのだ。2021年私が読んだシリーズ「The Salvation Sequence」は、まさにそのような本だ。経済学やエイリアンへの対処から、真の人間である意味や将来の政治まで、すべてがここに含まれている。とんでもない読み物だ。次の巻が出るのが待ちきれない、そうしたらこのすごいシリーズ全体をもう一度読み返すことができる。

「A Memory Called Empire」「A Desolation Called Peace」Arkady Martine(アーカディ・マーティン)

未来を描く方法は1つではない。マーティンが描くのは、文明と野蛮の概念が、芸術と帝国に衝突する未来だ。そして記憶に。そして隠された技術と戦争に。短い説明文ではとても説明しきれないが、マーティンがSF世界に構築したものは、科学というよりもアートに近いものという他はない。これは激賞に値する。

「Black Sun」Rebecca Roanhorse(レベッカ・ローンホース)

ファンタジー小説は、ヨーロッパの封建時代の歴史を背景に描かれることが非常に多い。登場する公爵が◯◯野郎だって?農奴たちに反逆させたほうが良いぜ!そんな感じだ。そして登場したのが「Black Sun」だ。これはまったく異なる方向にファンタジーをとり込んだ作品だ。南米ならびに中米の伝統に触発されたように見えるものの、本作はジェットコースター並のすばらしさである。必読だ。

「The Last Graduate」、Naomi Novik(ナオミ・ノヴィク)著

ノヴィクは本当にすばらしい作家だ。「Uprooted」(邦訳:ドラゴンの塔)と「Spinning Silve」(邦訳:銀をつむぐもの)はどちらも傑作だった。しかし、私の個人的な意見では、彼女の最高傑作は「A Deadly Education」だ。これは2020年後半に発売された。そして、その続編「The Last Graduate」へのカウントダウンが始まった。本が出るまでの日数を数えることはめったにないが、そうせずにはいられなかったのだ。そして「The Last Graduate」はすばらしい作品だった。今まで読んだことのない主人公に出会い、すべてが歯を持つ世界に入りたいなら、これらの本を読もう。それらを読めば、幸せを味わえるだろう。

画像クレジット:Nigel Sussman

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(文: Alex Wilhelm、翻訳:sako)

Twilioが次世代アプリ開発を支援する約57億円のファンドを設立

Twilio(トゥイリオ)は開発者と直接仕事をする企業であり、Twilioを利用して企業を設立する開発者を支援する社内投資部門を持つことは非常に理に適っている。通信API企業であるTwilioは米国時間12月8日、同社を利用している企業や、革新的なアイデアに取り組んでいる企業への投資を目的とした5000万ドル(約57億円)のファンド、Twilio Venturesの設立を発表した。

この新しい投資部門の責任者である経営企画担当上級副社長Bryan Vaniman(ブライアン・ヴァニマン)氏は、ファンドを設立して投資を開始するというミッションを持って、3月にAdobe(アドビ)から移ってきた。多くの企業のように資金調達の仕組みを持つことは、アプリケーションをより早く構築するためのツールを開発者に提供するというTwilioのミッションの自然な延長線上にあるものだとヴァニマン氏は話す。

「このファンドは、次世代のカスタマーエンゲージメントアプリケーションを構築する開発者やスタートアップを支援するためのものです。当初から開発者を第一に考えていた当社にとって、これは自然な流れだと思います」と述べた。

同社は2020年、32億ドル(約3640億円)を投じてSegment(セグメント)を買収したが、Twilio Venturesが出資する企業を探す際には、顧客エクスペリエンスが大きな焦点となっている。

「何よりもまず、開発者と顧客エンゲージメントアプリケーションのための次世代機能を構築しているエキサイティングな企業を支援することで、そのエコシステム内での当社のリーチと影響力を拡大する機会だと考えています」とヴァニマン氏は話した。

同氏によると、Twilio Venturesは多くの場合、シリーズAラウンドに投資するが、企業との相性が良ければそれ以降、またはそれ以前にも投資する。通常、出資額は100万ドルから300万ドル(約1億1000万〜3億4000万円)の範囲となる。

画像クレジット:Twilio

予想通り、Twilio VenturesはすでにTwilioと共通点の多い企業数社に投資している。「当社が行なったいくつかの投資をみると、Algolia(アルゴリア)は我々と非常によく似た開発者の精神を共有する企業の好例です。Algoliaは、開発者がすばらしい検索推薦体験を構築できるようなAPIを開発しました」とヴァニマン氏は述べた。

これらの企業への正確な投資額は明かさないが、セカンダリーの戦略的投資家だと同氏は話す。これらの企業に対しては、社内リソースへのアクセスを提供したり、営業やマーケティングを支援したりするなど、有用なパートナーとしての役割を果たすことを計画しているが、ほとんどの場合、取締役会に役員を送らない。

投資先の企業を買収することも考えられるが、それはこのファンドの主要な目的ではない。「それは、どちらかというと副次的な利益でしょう。このプログラムの本義ではなく、投資をして企業に近づき、関係を築くことで、将来的にはより深い関係につながる可能性があるというメリットがありますが、それが主な目的ではありません」と述べた。

Salesforce(セールスフォース)、Zoom(ズーム)、Hubspot(ハブスポット)、Workday(ワークデイ)、Okta(オクタ)など他のSaaS企業も投資部門の設立という同様のアプローチを取っている。

画像クレジット:Robert Alexander/Getty Images / Getty Images

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(文:Ron Miller、翻訳:Nariko Mizoguchi

Sounding Boardが管理職向けコーチングをサービスからSaaSへ移行

組織のリーダーと彼らに指導を行うコーチを結びつけるマーケットプレイスとしてスタートしたSounding Board(サウンディング・ボード)は、新型コロナウイルス流行初期の頃に、メンターシップの刷新が必要であることに気づいた。

「私たちはこれまで、伝統的なサービス形式でコーチングを提供してきました」と、Sounding BoardのCEOで共同設立者のChristine Tao(クリスティン・タオ)氏は語る。「そう、私たちはもうオフィスにはいません。だから人材やリーダーをどのように育てていくかについて、これまでとは違った話をする必要があるのです」。この洞察は、ユーザーをコーチと結びつけるだけではなく、ユーザーが継続的に目標を追うことができるソフトウェアプラットフォームの起ち上げにつながった。

画像クレジット:Sounding Board

このビジョンに基づき、シリーズA資金調達を成功させてから1年近く経った今、Sounding BoardはシリーズBを3000万ドル(約34億円)でクローズした。Jazz Venture Partners(ジャズ・ベンチャー・パートナーズ)が主導したこのラウンドは、Gaingels(ゲインジェルズ)の他、theBoardlist(ザ・ボードリスト)のSukhinder Singh Cassidy(スキンダー・シン・カシディ)氏、Ancestry.com(アンセストリー・ドットコム)のDeb Liu(デブ・リュー)氏、Udemy(ユーデミー)のYvonne Chen(イヴォンヌ・チェン)氏、DocuSign(ドキュサイン)のTammy Aguillon(タミー・アギロン)氏などのエンジェル投資家も参加した。これまでの投資家の中には、Canaan Partner(カナーン・パートナー)、Precursor Ventures(プレカーサー・ベンチャーズ)などが含まれている。

また、今回のラウンドでは、JAZZ Venture PartnersのJohn Spinale(ジョン・スピナーレ)氏が取締役に就任し、Sounding Boardの女性ばかりのチーム(および女性ばかりの取締役会)に加わることになった。「これは冗談ですが、私たちは実際に取締役会に多様性を加えなければなりませんでした……男性です」といってタオは笑った。

この資金調達は、Sounding Boardが過去7四半期にわたって、連続した成長を着実に遂げてきた結果によるものだ。タオ氏は収益の詳細については明らかにしようとしなかったものの、同社によると、過去の収益は「数百万ドル(数億円)」で、年間の予約件数は前年同期比で350%以上増加しているという。スティッキネス(粘着性)に関しては、Sounding Boardは同社の純収益維持率が200%を超えると主張。これはつまり、既存の顧客が時間が経ってもプラットフォームへの支払いを継続していることを意味する。

Sounding Boardの最大の競合企業であるBetterUp(ベターアップ)は最近、コーチングの背後にあるソフトウェアに、同じように焦点を移していることを示すような買収を繰り返している。Motive(モーティブ)を買収したのは、BetterUpのクライアントが、エンゲージメント調査や世論調査などですでに収集しているデータの背後にある感情的な背景を理解するために役立つからだ。このユニコーン企業はImpraise(インプライズ)も買収した。Impraiseは、リアルタイムのパフォーマンスレビューや、よりシームレスなフィードバックチャネルを通じて、管理職が直属の部下をよりよくサポートできるようにするためのテクノロジーを提供している。

BetterUpの成長は、投資家の間で、エグゼクティブトレーニングの重要性を高めることに貢献しているとタオ氏は考えているが、広範なコーチングツールよりも、よりリーダーシップに特化したサービスを提供できる余地がまだあると、同氏は見ている。Sounding Boardの共同設立者であるタオ氏は、2020年の間、精神的・感情的な状態をサポートすることで個人の能力を管理することに焦点を当てた多くのソリューションを目にしてきたという。例えばBetterUpの「care(ケア)」などだ。

「しかし、それと並行して、管理や効果的なコミュニケーションができる本物のスキルと能力も実際には必要です」と、タオ氏はいう。Sounding Boardでは、エグゼクティブトレーニングの能力面を解決することにより関心を向けており、現在のところはメンタルヘルス面に注力する計画はない。もちろんこれでは、競合他社が両方面に充実したソリューションを提供すれば、Sounding Boardからシェアを奪う可能性がある。今のところ、Sounding Boardの顧客はそちらの方面を意識してはいないようだ。

「(メンタルヘルスに関する)企業の福利厚生を考えると、それはもう少し無干渉なものではないでしょうか。用意されていれば、参加するかどうかを自分で選ぶという種類のものですが、それは従業員のためのものであるはずです」と、タオ氏はいう。「一方、能力開発に関しては、企業にとっての必要性があり、自ら投資したいと思うものであり、それを行う責任があるのではないかと私は考えます」。

Sounding Boardは現在、Plaid(プレイド)、Chime(チャイム)、Bill.com(ビル・ドットコム)など約100社ほどの顧客を持っている。

画像クレジット:Francesco Carta fotografo / Getty Images

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(文:Natasha Mascarenhas、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

デジタルファースト企業のグローバル税務を支援するFonoaが約23億円調達

商品、コンテンツ、あるいはサービスをグローバルに販売すると、税務上の問題が数多く発生する。世界的にクロスボーダー取引が急増する中、デジタルファーストの企業は、国際的に成長・拡大していく中で、グローバルな税務・コンプライアンス問題を理解し、管理するという課題に直面している。

アイルランドのダブリンを拠点とするFonoa(フォノア)は、Uberの元社員であるDavor Tremac(ダボール・トレマック)氏、Filip Sturman(フィリップ・スターマン)氏、Ivan Ivankovicz(アイヴァン・イバンコビッチ)氏の3人によって創業された。設立2年の同社は、デジタル企業がインターネット販売で徴収すべき税金を決定し、計算するためのAPIを開発した。

Lime、Uber、Teachable、Zoomなどの企業の税務コンプライアンス維持をサポートしているFonoaは、オンラインで販売される商品やサービスが特に国際マーケットで増加しているのに伴い、シリーズAラウンドで2050万ドル(約23億円)を調達した。Fonoaの顧客は配車サービス、モビリティ、フードデリバリー、SaaS、eコマースなどの業界が中心で、またサブスクリプション企業も含まれる。

FonoaのAPIは顧客の既存のデータを「簡単」に統合できるため、顧客は何時間もかけて手作業で税金に関する問題を解決する必要はない、とCEOのトレマック氏は話す。自動化されたサービスへの需要の高まりを受けて、Fonoaが扱う年間税務案件は3億件を突破した。B2BのSaaS事業者として同社は「非常に健全なマージン」を確保しており、トレマック氏によると、2020年12月以降、売上高は7倍に増えた。

「デジタルの世界では、企業と顧客は世界規模で取引を行います。国の国境はもはや制限要因ではなく、テクノロジーがグローバル取引をかつてないほどのスピードで推進しています」と同氏は話す。「規制当局による監視の強化と相まって、より自動化された信頼できる方法で税務問題に対処することは、これまで以上に緊急の課題となっています」。

Fonoaによると、同社は「プラグアンドプレイ・モジュラー・プラットフォーム」を提供していて、取引が行われた後に買い手と売り手の税務上のステータスを確認して正しい税金を計算し、地域の規制に準拠した請求書を作成することができる。また、必要に応じて、その国の政府に取引内容をリアルタイムで自動報告することも可能だ。

画像クレジット:Fonoa

新型コロナウイルス感染症のパンデミックにより、Fonoaの成長は「著しく」加速したと、トレマック氏は語る。

「オンラインでの取引にはそれぞれ税金がかかるため、オンラインでの販売が増えるということは、我々の仕事も増えるということです」。

OMERS VenturesがFonoaのシリーズAラウンドをリードし、Index Ventures、FJ Labs、Moving Capitalが参加した。Indexは2020年11月に450万ドル(約5億円)のシードラウンドをリードしたが、これは未発表だった。その他の出資者には、OpendoorとUberでCOOとCFOを務めたGautam Gupta(ゴータム・グプタ)氏、Eventbriteの創業者であるKevin Hartz(ケビン・ハーツ)氏、DoorDashのCFOのPrabir Adarkar(プラビール・アダーカー)氏、GoCardlessの元COO、Carlos Gonzalez-Cadenas(カルロス・ゴンザレス・カデナス)氏、FastのCOOであるAllison Barr Allen(アリソン・バー・アレン)氏などが含まれる。

Uber出身の創業者たちは、税金を正しく計算して世界中の当局に報告することがいかに難しいかを身をもって体験した。そこで、インターネット経済全体のために税金を自動化する技術の開発に着手した。

Fonoaは現在、100カ国以上の国で税金計算の自動化をサポートしており、今回の資金調達により、年内に140カ国超に拡大することを目指している。また、今回の資金を雇用にも充てる予定だ。Fonoaはダブリンを拠点としているが、最近の他の多くのスタートアップと同様にリモートを基本としていて、現在60人のチームが15カ国で働いている。米国、欧州、アジア、中南米で、エンジニアリング、プロダクト、営業、人事、オペレーションなどの分野の人材をさらに60人採用する計画だ。また、今回の資金は、現在の製品のカバー範囲を広げるためにも「まったく新しい製品を作るため」にも使う、とトレマック氏は話す。

同氏は「目の前に膨大な機会があり、利用可能なすべてのリソースを使って、成長を倍増させようとしています」とTechCrunchに話した。「我々は、すべての地域で、すべての製品に関連するすべてのユースケースをカバーするまで、事業拡大します」。

Index VenturesのプリンシパルであるHanna Seal(ハナ・シール)氏は、Fonoaが国際的に事業を展開している企業の成長を解き放ち、そうでなければそうした企業は各国の複雑な税制で「身動きが取れなくなる」と考えている。

シール氏は「単なるバックオフィスの自動化ではなく、成長を可能にすることにFonoaが焦点を当てている点に惹かれました」とメールに書いた。「複数のマーケットでUberを運営してきたFonoaの経営陣は、国境を越えて事業規模を拡大する際の課題を深く理解しており、企業が新たな地域をシームレスに追加して拡大できるような製品を開発してきました」。

OMERS Venturesのマネージングパートナー、Jambu Palaniappan(ジャンブ・パラニアパン)氏は、Fonoaのプロダクトを「市場で最高かつ最も完全な製品」と評した。

「Fonoaは、検証からリアルタイムのレポート報告まで、税務の全工程に注力しており、コンサルティングではなくテクノロジーを製品の中核に据えています。世界中の政府がこれまで以上にコンプライアンスに関心を寄せている今こそ、Fonoaが世界に通用するプラットフォームを構築する絶好の機会です」。

画像クレジット:Fonoa

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(文:Mary Ann Azevedo、翻訳:Nariko Mizoguchi

「ブロックチェーン技術拡大のためのサービス」を展開するAlchemy、半年で評価額7倍の3990億円に

共同創業者でCEOのニキル・ヴィスワナサン氏とCTOのジョー・ラウ氏(画像クレジット:Alchemy)

半年前に5億500万ドル(約575億円)の評価額で8000万ドル(約91億円)を調達したSaaS(Software as a Service、サービスとしてのソフトウェア)スタートアップ企業、「Alchemy(アルケミー)」。ブロックチェーンおよびWeb3の開発を手がける同社は、このたびシリーズC資金調達ラウンドで2億5000万ドル(約285億円)を調達し、評価額は35億ドル(約3990億円)となった。

詳細を知る関係筋によると、Andreessen Horowitz (アンドリーセン・ホロウィッツ、a16z)が主導したこの資金調達には、多数の大手ベンチャー企業がラウンドに参加するだけでなく、主導することを求めて群がり、非常に競争の激しいものとなった。

今回の資金調達は、Alchemyの評価額が半年間で7倍という驚異的な伸びを示したことの他にも、いくつかの点で注目を集めている。1つは、a16zがこれまでに実施したWeb3 / ブロックチェーン関連の投資の中でも最大規模のものであること。a16zは、2021年6月に22億ドル(約2500億円)の暗号化ファンドを発表し、この分野に本格的に取り組んでいることを示した。参考までに、Web3とはブロックチェーンを中心とした一連のプロトコルのことで、インターネットのバックエンド機能に改革を起こすことを意図するものである。

さらに興味深いのは、Alchemyが多くのスタートアップ企業にとってなかなか実現できないもの、つまり収益性を達成したことである。

AlchemyのCEOで共同設立者のNikil Viswanathan(ニキル・ヴィスワナサン)氏によると、同社は「実際に非常に収益性が高い」という。この数カ月間で、同社の提供するサービスに対する需要が爆発的に増加し、前回4月の資金調達時と比べて収益が15倍になったことで高い収益性を実現できたそうだ。CTOで共同設立者のJoe Lau(ジョー・ラウ)氏は「シリーズBラウンドで調達した8000万ドル(約91億円)には手をつけていない」と話す。

「(シリーズBの)資金はすべて銀行に残っています」とラウ氏。「資金は必要ではありませんでしたが、私たちは、ブロックチェーンの分野で深い技術的専門知識を備えたチームを所有するホロウィッツ氏のようなすばらしいパートナーと手を組むことに価値があると考えました」。

簡単に説明すると、AlchemyはAWS(Amazon Web Services)がインターネットで実現したものを、ブロックチェーン / Web3で実現したいと考えている。Alchemyの目標は、ブロックチェーン上のサービスを検討している開発者のスタート地点となること、すなわちブロックチェーンアプリケーションのメインストリームになることである。Alchemyの開発者ツールは「必須の」開発者ツールを使ってアプリケーションを改良することで、インフラ構築の複雑さを解消し、コストを下げることを目指している。Alchemyは2020年8月にサービスの提供を開始した。

現在、Alchemyは、金融機関、取引所、1000億円規模の分散型金融プロジェクト、ユニセフを含む多国籍組織など、ほぼすべての業界におけるブロックチェーンのさまざまな取引を強力にバックアップしている。同社のテクノロジーはMakersPlace(メーカーズプレイス)、OpenSea(オープンシー)、Nifty Gateway(ニフティゲートウェイ)、SuperRare(スーパーレア)、CryptoPunks(クリプトパンクス)など、あらゆる主要なNFTプラットフォームを支える技術としても急速に普及している。その他にも、Dapper Labs(ダッパーラボズ)、Axie Infinity(アクシーインフィニティ)、最近契約したAdobe(アドビ)のようなブロックチェーン上に(サービスを)構築しているフォーチュン500企業、PricewaterhouseCoopers(プライスウォーターハウスクーパース)などが顧客として名を連ね「DeFi(Decentralized Finance、分散型金融)の大部分」にもサービスを提供している。

4月の増資時は300億ドル(約3兆4100億円)であったAlchemyと世界中の企業との取引は、現在450億ドル(約5兆1200億円)以上に増加。同社がサポートするブロックチェーンの数も拡大している。

「私たちのプラットフォームは、多少なりともEthereum(イーサリアム)に絞って対象としていましたが、多くの需要に支えられ、ポリゴン、アービトラム、オプティミズム、フローにまで拡大しています」とラウ氏は話す。

画像クレジット:Alchemy

ヴィスワナサン氏は新しい開発者も増えている、と指摘する。

同氏は次のように続ける。「Alchemyに参加するチームや企業が増え、チームや企業ごとに多くの開発者が私たちのプラットフォームを利用するようになりました」「つまり、すべての方面で成長しているのです」。

爆発的な成長にもかかわらず、Alchemyはまだ小規模なチームである。現在の従業員数は37名、本社をサンフランシスコに置き、ニューヨークオフィスの他、世界各地でリモートスタッフが業務にあたっている。

Alchemyは、新たな資本のほとんどを、ブロックチェーンを中心としたコミュニティの構築への投資に利用する予定である。同社の幹部は、市場がまだ小さく、この分野が持つチャンスが不透明だった2017年という適切な時期に事業をスタートさせることができた、と考えている。

ラウ氏は次のように話す。「私たちの究極の目標は、ブロックチェーンが持つ可能性を実現することです」「リソースを増やして、開発者がこの分野に参入し、より効果的かつ迅速にブロックチェーン上のサービスを構築できるようにすることで、これを実現したいと考えています」。

ヴィスワナサン氏は「Alchemyは近年のブロックチェーンの盛り上がりと人気に重要な役割を果たしている」と考えている。

同氏はTechCrunchの取材に対し、次のように話す。「ブロックチェーンの成長とともにAlchemyが成長しただけではありません。私たちはブロックチェーンのエコシステムの成長にも貢献しています」「私たちが良いツールを提供すれば、開発者はもっとサービスを作りやすくなります。それをより多くのユーザーが利用し、さらに多くの開発者がサービスを開発し、私たちはさらにツールを改良する……好循環ですね。Alchemyはこのサイクルの回転を支援している、と考えています」。

画像クレジット:Alchemy

a16zのジェネラルパートナーであるAli Yahya(アリ・ヤヒヤ)氏は、Alchemyをブロックチェーン / Web3の成長における「重要な推進者である」と表現し、AlchemyはすでにWeb3の「事実上(デファクト)の開発者プラットフォーム」であると話す。

ヤヒヤ氏はメールに「Microsoft(マイクロソフト)やAWSがコンピューターやインターネット業界をサポートするプラットフォームを構築したように、Alchemyのプラットフォームは、世界中で何百万、何千万もの人々が利用するブロックチェーンサービスの構築を可能にします」と記し、Alchemyの成長は関連するすべての指標で「驚異的」だと付け加えた。

Alchemyの前回のラウンドに投資した、Google(グーグル)の会長であり元スタンフォード大学学長のJohn L. Hennessy(ジョン・L・ヘネシー)氏は、ヤヒヤ氏の意見に同意し、さらにもう1つ、注目すべき比較を行った。

ヘネシー氏は「Alchemyは、AWSがクラウドを実現したのと同じように、ブロックチェーン業界の成長を後押ししています」「Alchemyのテクノロジーに対する興奮を見ていると、Googleの初期の頃を思い出します」とメールに記す。

シリーズC資金調達ラウンドには、Lightspeed Venture Partners(ライトスピードベンチャーパートナーズ)とRedpoint(レッドポイント)も新たな投資家として参加した。すでに投資を行ってきたCootue(クートゥー)、Lee Fixel’s Addition(リー・フィックセルアディション)、DFJ(ディーフェフジェー)、Pantera Capital(パンテラキャピタル)は、Alchemyへの投資を倍増させた。Alchemyは2017年の設立以来、合計で約3億4500万ドル(約393億円)を調達したことになる。

Alchemyにはこれまで、Chainsmokers(チェインスモーカーズ)のMantis(マンティス)ファンド、俳優のJared Leto(ジャレッド・レト)、Glazer family(グレイザー家、タンパベイ・バッカニアーズやマンチェスター・ユナイテッドFCのオーナー)、ヤフーの共同設立者で元CEOのJerry Yang(ジェリー・ヤン)、Coinbase(コインベース)、SignalFire(シングルファイヤー)、Samsung(サムスン)、スタンフォード大学、Charles Schwab(チャールズ・シュワブ)、LinkedInの共同設立者Reid Hoffman(リード・ホフマン)などが出資を行ってきた。

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(文:Mary Ann Azevedo、翻訳:Dragonfly)

イスラエル国防軍出身CTO開発、企業向け標的型攻撃シミュレーション・訓練プラットフォームのAironWorksが9000万円調達

サイバーセキュリティSaaS「AironWorks」を提供するAironWorksは11月12日、第三者割当増資による約9000万円の資金調達の実施を発表した。引受先は、リード投資家のALL STAR SAAS FUND、また日本ベンチャーキャピタル、京都エンジェルファンド。調達した資金により、AironWorksの特徴である企業分析により高度に最適化された標的型攻撃を生成・実行するAIの開発強化と、日本市場でのデファクトスタンダードとなることを目指して事業成長を加速させるとしている。

AironWorksサービスは、イスラエル国防軍「8200部隊」(Unit 8200)出身のエンジニアが開発した、「企業向け標的型攻撃シミュレーション・訓練プラットフォーム」。従来のような標的型メール訓練ではカバーできないSNSやSMS攻撃などの、多様なベクトルからの攻撃に対する訓練が可能。標的に応じて個別最適化された現在のサイバー攻撃に対応できるよう、継続的でより実践的な訓練を行なえるシステムとなっている。

さらに、イスラエル国防軍の教育メソッド+ゲーミフィケーションを活用した「オリジナル教育プログラム」を実装しており、高い教育効果を実現しているという。

AironWorksは、イスラエルと日本を拠点にイノベーションプラットフォーム・アドバイザリーサービスを提供するAniwoによる支援のもと、2021年8月創業。「働く人々・チームをエンパワーメントすること(Enhancing Teams with AI)」 をミッションに掲げ、イスラエルで開発した先進的な技術をコアに、日本から世界市場を目指している。

なお、共同創業者兼CTOのGonen Krak氏は、イスラエル国防軍のインテリジェンス部隊Unit 8200においてサイバーセキュリティ実務に取り組み、複数の重要プロジェクトのマネジメント、若手ハッカーの育成に従事したという。大学在学中に独自アプリ開発、フルスタックエンジニアとしてのスキルも有する。AironWorksでは、コアとなる技術開発、アルゴリズム設計、AIの開発責任者も兼任している。

イスラエル国防軍出身CTOが開発、企業向け標的型攻撃シミュレーション・訓練プラットフォームのAironWorksが9000万円調達

地上のRF信号を衛星で受信して地球を分析するHawkEye 360

Solafuneと日本マイクロソフトが衛星画像データを超解像度化する技術コンテスト実施、英語版リリースしグローバル展開も開始

地球観測業界の大手企業各社は、画像処理衛星を使って情報や分析を提供しているが、スタートアップ企業のHawkEye 360(ホークアイ360)はそれとは異なる方針を採っている。目に見えない電磁スペクトルは、目に見える世界と同じように情報に満ちているという前提のもと、同社は船舶用無線機や緊急用ビーコンが発するような無線周波数(RF)信号を監視・分析している。

投資家もこれに同意する。HawkEyeのシリーズDラウンドでは、1億4500万ドル(約164億円)もの新たな資金が集まった。このラウンドは、Insight Partners(インサイト・パートナーズ)とSeraphim Space Investment Trust(セラフィム・スペース・インベストメント・トラスト)が主導し、アラブ首長国連邦を拠点とするStrategic Development Fund(ストラテジック・デベロップメント・ファンド)が追加資金を提供。また、新規の投資家としてJacobs(ジェイコブズ)、Gula Tech Adventures(グラ・テック・アドベンチャーズ)、116 Street Ventures(116ストリート・ベンチャーズ)、New North Ventures(ニュー・ノース・ベンチャーズ)が加わった他、既存投資家のAdvance(アドバンス)、Razor’s Edge(レーザーズ・エッジ)、NightDragon(ナイトドラゴン)、SVB Capital(SVBキャピタル)、Shield Capital(シールド・キャピタル)、Adage Capital(アデッジ。キャピタル)も参加した。

2015年の設立以来、HawkEyeはすでにパートナーとの大きなネットワークを築き、9機の衛星を軌道上に打ち上げてきた。同社のコンステレーションの特徴は、衛星が3機1組のクラスターに分かれて飛んでいることで、これはJohn Serafini(ジョン・セラフィーニ)CEOによると、RF信号の地理的な位置情報を取得するためのアーキテクチャだという。現在はさらに7つのクラスター(計21機)の衛星を開発中で、2023年中頃までに軌道に乗せることを目指している。

画像クレジット:HawkEye 360

地理空間情報産業の多くは、衛星を所有してデータを収集する企業と、そのデータを購入して情報に変換する企業に二分されていると、セラフィーニ氏は説明する。しかし、HawkEyeは当初から完全な垂直統合型の企業として自らを位置づけており、自社で装置を構築し、衛星を運用し、データを処理して独自の分析を行い、その情報をSoftware-as-a-Service(サービスとしてのソフトウェア)モデルとして顧客に販売している。

また、HawkEyeは政府機関のアプリケーションに特に力を入れており、米国政府や国際的な防衛・情報機関を顧客としている。

「私たちは、防衛、セキュリティ、インテリジェンス、および一部の民間アプリケーションに適している商用RFの価値提案を、非常に明確にしたいと考えました。そして、政府関係の顧客を成功に導くために、当社のDNAを独自に構築したかったのです」と、セラフィーニ氏は語る。「私が言いたいのは、米国政府を相手にセールスするなら、片手間では無理だということです。全力で取り組まなければなりません」。

HawkEyeは、衛星メーカーであるトロントのUTIAS Space Flight Laboratory(トロント大学航空宇宙研究所スペース・フライト・ラボラトリー)と協力して、衛星に自社の装置を搭載している。直近では、6月末に3機の衛星をSpaceX(スペースX)のFalcon 9(ファルコン9)相乗りミッションで打ち上げ、Space Flight(スペースフライト)の軌道輸送機「Sherpa-FX(シェルパFX)」を使って軌道に到達させた。

2021年に入ってから、HawkEyeは合計5000万ドル(約56億4000万円)分の契約を獲得している。将来的には、今回調達した資金を利用して、計画中のコンステレーションの規模を10クラスタから20クラスタに倍増させ、地球上のほぼすべての場所を約12分で再訪できるようにしたいと、セラフィーニ氏は述べている。さらにHawkEyeは、コンステレーションの規模をより早く拡大するために、Space Flight Labとの提携と並行して、衛星の組み立てに乗り出すことも計画している。

画像クレジット:HawkEye 360

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

暗号資産取引所の新グローバル規制対応を支援するNotabeneが約11億円を調達

米ニューヨーク市を拠点とする暗号資産コンプライアンスSaaSスタートアップのNotabene(ノタベネ)は、F-Prime CapitalとJump Capitalが共同でリードしたシリーズAラウンドで1020万ドル(約11億円)を調達した。今回の資金調達により、Notabeneの評価額は4500万ドル(約51億円)となった。

新たな投資家には、資金調達前にNotabeneの顧客であった暗号資産取引所のLunoBitsoの他、BlockfiとGemini Frontier Fundのベンチャーキャピタル部門が含まれる。また、シリーズAではIlluminate Financial、CMT Digital、Fenbushi Capital、ComplyAdvantageのCEOであるCharlie Delingpole(チャーリー・デリングポール)氏も新規投資家として、Castle Island VenturesやGreen Visor Capitalなど既存投資家の輪に加わった。Notabeneは、会社設立から半年後の2020年10月に176万ドル(約2億円)のシードラウンドを実施した。

Notabeneのソフトウェアは、その多くが暗号資産取引所である50社以上の顧客が、2019年に課せられた金融活動作業部会(FATF)の「トラベルルール」を遵守するのをサポートしている。トラベルルールは、FATF加盟国の暗号資産取引所に対し、本人確認(KYC)やマネーロンダリング防止(AML)の規制を確実に守るよう、1000ドル(約11万円)以上の送金について顧客を特定する情報を交換することを求めている。FATFは10月にトラベルルールに関する新たなガイダンスを発表し、取引所がルールを遵守するために必要な事項を明確にした。

Notabeneは、ユーザーのプライバシーを保護しつつ、取引当事者間での情報伝達を可能にする技術を求める取引所のニーズに応えている。識別検証プロセスでは、ブロックチェーン上の匿名のウォレットアドレスを実際の顧客とリンクさせる必要がある。NotabeneのCEOであるPelle Brændgaard(ペレ・ブランドガード)氏はTechCrunchに、取引の当事者とNotabeneだけがこの情報を見えるようにすることが重要だと話した。

また、Notabeneが提供する本人確認サービスは、コンプライアンスを確保するだけでなく、適切な相手との取引を確実に行い、詐欺のリスクを回避したいと考えている消費者の間で暗号資産取引の信頼を築くのにも役立つ、と同氏は付け加えた。

Notabeneは今回の資金調達で得た資金を新規顧客の増加に対応するための技術開発に充てる予定だ。

Notabeneの取締役会に加わるJump Capitalのパートナー、Peter Johnson(ピーター・ジョンソン)氏がTechCrunchに語ったところによると、投資家であるJump Capitalが実施した調査に回答した25の暗号資産取引所のうち、90%がトラベルルール遵守のためにNotabeneを利用する予定だ。ジョンソン氏は、Notabeneの製品が暗号資産業界の重要な問題を解決しているという「市場からの圧倒的なフィードバック」が、Jumpの投資の部分的な動機だったと述べた。

Notabeneの最大の競合相手は、コンプライアンスのための一元化されたプロトコルを導入している業界のワーキンググループだ。Fidelity InvestmentsやStandard Charteredなどの銀行がメンバーに名を連ねるTravel Rule Protocol(TRP)ワーキンググループは、その代表的なものの1つだ。このような一元化されたプロトコルにより、メンバーである機関や取引所はデータを共有し、ユーザーはコンプライアンスに則った取引を簡単に行うことができる。

これらのグループのメンバーは米国拠点の取引所に集中していることから、排除を助長する可能性がある、とブランドガード氏は話す。

「例えば、当社はナイジェリアを拠点とする会社をいくつか顧客に抱えていますが、ナイジェリアには暗号資産に関する規制の枠組みがありません。ですので、この分野のゲートキーパーがいて、『完全に規制に則った企業のみを対象とする』と言えば、顧客企業は自動的に排除されてしまいます」とブランドガード氏はTRPのようなグループについて述べた。

同氏によると、Notabeneの創業チームと初期従業員の多くは、分散型アイデンティティのスタートアップ企業UPortの出身だという。UPortでの経験を生かしたNotabeneの分散型フレームワークによって、会員数を制限することなく、取引所全体の信頼性を高めることを期待している、と同氏は述べた。

画像クレジット:Notabene Team

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(文:Anita Ramaswamy、翻訳:Nariko Mizoguchi

旅行業界の再活性化に向け、ホスピタリティ管理ソフトウェアのCloudbedsにソフトバンクが投資

日程を決めずに宿泊チケットを買えるECサイトStay by Tripi運営のトリピが3800万円のシード調達

2021年夏、米国のホテル稼働率は新型コロナウイルス流行前の水準に達した。ホスピタリティ業界は、人々が旅行を再開することによる活動の活発化に備えているところだ。

このような状況には追い風も吹いている。「今後増える旅行者で最大の母集団は1979年以降に生まれた人々であり、この10年間により多くのお金を貯めたことで、自由裁量の支出が増え、それを旅行に使いたいと考えている」と、Cloudbeds(クラウドベッズ)の共同設立者兼CEOであるAdam Harris(アダム・ハリス)氏は述べている。

「新型コロナウイルス流行は誰もが歓迎しない状況でしたが、旅行業界は1兆ドル(約114兆円)規模の産業であり、世界でトップ5に入る規模です」と、同氏は付け加えた。「2019年にあった需要は、それから1年半も家に閉じ籠もらざるを得なかったことで、今はさらに強くなっています」。

Cloudbedsのプロダクト(画像クレジット:Cloudbeds)

ハリス氏と共同創業者のRichard Castle(リチャード・キャッスル)氏が、2012年にサンディエゴで設立したCloudbedsは、独立系ホテルからバケーションレンタル(民泊)まで、宿泊事業者向けのホスピタリティ管理ソフトウェアを提供している。このソフトウェアは、運営、収益、流通、グロースマーケティングなど、これまで別々に行われていたビジネスの機能を、1つのクラウドベースのツールに統合する。

人々の蓄積されてきたエネルギーにより、今までにない数の旅行が実施されるようになると、ハリス氏は確信している。このチャンスを活かすため、同社は新たな投資家であるSoftBank Vision Fund 2(ソフトバンク・ビジョン・ファンド2)が主導した資金調達で、1億5000万ドル(約170億円)を確保した。

Cloudbedsとソフトバンクとの関係は2年前に始まったが、ハリス氏はこの投資会社が「世界で最も優れた旅行投資家の1つ」だと述べている。最近では、Yanolja(ヤノルジャ)、GetYourGuide(ゲットユアガイド)、Klook(クルック)などの旅行関連企業に、ソフトバンクは資金を提供している。

今日の市場では、ホテルが競争力を高めるためにテクノロジーを導入することが「重要」であり、世界的な新型コロナウイルス流行がその導入を加速させる要因になっていると、SoftBank Investment Advisers(ソフトバンク・インベストメント・アドバイザーズ)のディレクターであるAndrew Zloto(アンドリュー・ズロト)氏はメールで述べている。

「Cloudbedsは、この機会を利用して、ホスピタリティ業界におけるテクノロジーの利用方法を根本的に変えたと、我々は確信しています」と、ズロト氏は語る。「これまでサイロ化され、複雑に絡み合っていたテクノロジーサービスを、Cloudbedsは単一のプラットフォームに統合し、あらゆる規模の宿泊施設に最適なソリューションを提供しています。重要なビジネスツールを統合して簡素化することによって、同社は独立系ホテル経営者が活躍できる場を広げ、絶えず進化する市場で成長するための支援を行っています」。

今回の投資ラウンドでは、ソフトバンクに加え、Echo Street(エコー・ストリート)とWalleye Capital(ウォールアイ・キャピタル)が新たな投資家として加わった。さらに既存投資家として、Viking Global Investors(バイキング・グローバル・インベスターズ)、PeakSpan Capital(ピークスパン・キャピタル)、Counterpart Ventures(カウンタパート・ベンチャーズ)も参加。これにより、Cloudbedsがこれまでに調達したベンチャー資金の総額は、2億5300万ドル(約287億円)となった。

この資金を武器に、Cloudbedsは研究開発の拡大、教育およびアドボカシー活動への投資、エンジニアリング、プロダクト、セールスの各チームの拡大を進めていく。さらにプレIPOに向けてチームを整えることに重点を置き、リーダーシップを強化していくと、キャッスル氏は述べている。

ハリス氏は成長指標を公表しようとはしなかったものの、Cloudbedsは2020年、新型コロナウイルス流行にもかかわらず成長を遂げた、ほんの一握りの企業の1つであると語っている。同社は現在、157カ国で2万2000人以上のグローバルな顧客にサービスを提供している。

「私たちは、この会社が200億ドル(約2兆3000億円)規模の企業になれると信じています」と、ハリス氏は付け加えた。「競合他社との競争を見れば、当社はリードしています。しかし、現金を投入する必要があり、そのために私たちは夜も眠れません。現在、当社のビジネスモデルには予測可能性があり、目標はIPO候補となり組織を成熟させることです」。

画像クレジット:num_skyman Shutterstock

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(文:Christine Hall、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

あるスタートアップが消費者向けトレーディングのブームを変える

スタートアップとマーケットの週刊ニュースレター「The TechCrunch Exchange」へようこそ。

みなさん、お元気でお過ごしだろうか。今回は取り上げる話題が山のようにある。消費者向けフィンテック市場における魅力的なスタートアップのラウンドに関するメモ、AppianのCEOであるMatt Calkins(マット・カルキンス)氏と決算説明会に行ったインタビューによるローコードの世界に関するメモ、そしてIPOたち、Kidas(キダス)のベンチャーキャピタルラウンド、ビルの「公開」、NFTなどをすばやく紹介していく。では始めよう!

あるスタートアップが消費者向けトレーディングのブームを変える

Robinhood(ロビンフッド)は、投資やトレーディングに対する消費者の関心の波に乗り、株式を公開するまでに至った。最近では、いくつかの失敗があったものの、同社は株式の購入だけでなく、より魅惑的なオプション取引に対する市場の関心の高さも証明している。

今回話題にしたいのは後者だ。シカゴにゆかりのある分散型スタートアップOptions AI(オプションズAI)が、410万ドル(約4億6000万円)のシードラウンドを実施した。私はこの会社の創業メンバーを知っていたので、会社についでも以前から知っていたものの、これまであまり書く機会がなかった。

だがAkuna Capital、Miami International Holdings、Optiver Principal Strategic Investmentsの3社のリードインベスターなどから資金を調達したいま、取り上げる時期にきたといえるだろう。

基本的にオプションは複雑であり、トレーディングに臨む多くの人々は、手をつけようとする時に。良い選択をするためのツールや洗練された技術を持ち合わせていない。私の意見を疑うなら、トレーディングをやっている友人にオプション戦略について聞いてみると良いだろう。きっと複雑さが理解できるやりとりになる筈だ。

Options AIは、トレーダーが執行する前に対象のトレードをよく確認して、マルチレッグオプションなどを扱う際により良い選択ができるようなツールを開発した。これは非常に優れたツールで、以前からオプション取引の仕組みや価格付けについて漠然としか理解していなかった私にとっては、しっかり理解を深めるのに役立った。

しかし、Options AIが私の興味を引いた理由は、チャートが優れているということだけではない。もう1つの理由は、トレードに課金することだ。このスタートアップは、トレードコストを一律5ドル(約567円)としているため、Robinhood(ロビンフッド)やWebull(ウィブル)などが近年追求してきた無料トレーディングの流れに逆らって泳いでいることになる。

現在、Options AIは株式オプションを扱っているが、The Exchangeには、そのうち暗号資産や先物オプションを追加するかもしれないと語っている。同社は現在の状況を、これまで開発しテストしてきた場所から頭を出した状態だと述べ、初期の人気とユーザーデータから何かを掴んだと考えている。もちろん、新しい投資家たちもそう思っているだろう。

さらに話を進める前に、オプションに関するデータを。大手消費者向けトレーディングプラットフォームが、なぜオプション取引に興味を持つのだろうか?なぜなら、めちゃくちゃ儲かるからだ。例えばオプショントレーディングのおかげで、Robinhoodは2021年第3四半期に6400万ドル(72億6000万円)の収益をあげた。一方株式トレーディングの収益は5000万ドル(56億7000万円)だった。これはビッグビジネスなのだ。

また、一律手数料とPFOF(ペイメント・フォー・オーダーフロー)の収入があることで、Option AIは十分な数の人々を集めることさえできれば、かなり魅力的な市場ポジションを得ることができる。スタートアップのターゲットユーザーは誰だろう?トレードを始めてはみたものの、もう少し専門的なツールが欲しいという人に向いていると思う。そしてRobinhoodの数字は、そのようなユーザーが相当数存在する可能性を示している。

Option AIのトレーディングの成長データを得たときに続報をお知らせする。

SaaSの価格設定を揺るがす

これまでTechCrunchは、SaaSの価格設定の議論を、サブスクリプションとオンデマンドまたは使用量ベースの価格設定レンズを通して検討してきた。現在、多くのスタートアップ企業が、(オンデマンドの価格設定がより理にかなった)APIとして誕生しているため、このレンズは市場の進化を見る上で良い視点になっている。また、市場にはSaaS疲れも見られる。

そんな中、Appian(アピアン)は少し変わったことをしている。先週、同社のCEOであるMatt Calkins(マット・カルキンス)氏を決算説明会の後でつかまえて、ローコード市場、プロセスオートメーション、プロセスマイニングについての話を中心に聞いてみた。Appianは、顧客が自動化すべき点をプロセスから抽出し、必要に応じて設計や自動化を行うことができるソフトウェアセットを提供している企業だが、私たちはその内容はもちろん、価格についても話し合った。

Appianは、利用無制限の価格設定を用意している。これは、使用量に上限のないSaaSのようなものだ。SaaSはアカウントやアプリケーションごとに価格が設定されることが多いのだが、カルキンスらはSaaSとオンデマンドの良いところをミックスしたような試みをしている。もっと簡単に言えば、1年分のサービスを定額制にして利用制限を設けないことで、顧客にAppianのサービスをたくさん使ってもらい、そのプラットフォームにどっぷりとハマってもらおうとしているのだ。

カルキンス氏は、公開企業のCEOとしては不自然なほど「無制限プランは、一部のお客様にとって非常にお得なプランになるかもしれません」と明言した。カルキンス氏は、価格設定に「イノベーション」を起こしたいと口にする。彼は、利用無制限の価格設定モデルを提供することで、顧客がAppianの技術を使って多くのものを作り、他の価格設定メカニズムで支払うよりも少ない金額で済ませる可能性があるものの、それは顧客にAppianの技術を全面的に使ってもらうためのコストに過ぎないと強調した。

上手く行けば、Appianは利益率の高い高収益を生み出すことができる長期顧客を持つことになるだろう。悪い取引ではない。

IPOまとめ

  • HashiCorp(ハシコープ)が上場を申請したので、その数字を調べてみた。結果はこちらで
  • 消費者直販のAllBirds(オールバーズ)は、IPOの価格を予定レンジよりも高く設定し、取引開始時にはさらにポイントを上昇させた。価格情報はこちら、財務情報はこちら
  • NerdWallet(ナードウォレット)は、IPOの価格を中程度に設定したが、その後高値で取引された。その後、少しずつ価格は下がったが、それでも見事なデビューを果たしている。金融関連の報道はこちらこちら。(そして、元TechCrunchのFelicia Shivakumar[フェリシア・シバクマール]氏にもエールを送りたい。彼女はかつて、私がTCのためのビデオショーを立ち上げる際に手伝ってくれた。非常に優れた人間であると同時に、現在はNerdWalletで働いている!)。
  • Nubank(ヌーバンク)が株式公開を申請したことで、その経営の数字の一端が明らかになった
  • Bird(バード)のSPAC取引が完了したが、初日は ベストではなかった
  • そして最後に、Backblaze(バックブレイズ)は自社のIPOに向けて最初の価格設定を行った。これは、同社の手堅い収益規模を考えると魅力的なことだと思う。

その他のこと

  • 先週私の目に飛び込んできたKidas(キダス)は、親と協力して子どもたちがオンラインゲーム環境で安全に過ごせるようサポートするスタートアップだ。これまでの控えめな資金調達に加えて、今回200万ドル(約2億2700万円円)を調達した。同社はThe Exchangeに対して「親御さんにとっては、他の方法では得られない新しい情報が得られ、それによって好きなものを介してお子さんたちとより良い関係を築くことができます」と語っている。
  • 私は権力者が配下の者のデジタル活動の制約を強めるようなことは、決して良いことだとは思わない。しかし、ゲームの世界ではコミュニケーション手段が急速に多様化しているため、保護者は何らかの監視を必要とするだろう。
  • 注目すべきは、そのツールがゲームプレイを妨げないことだ、つまりアンチチートソフトウェアを反応させないということである。これは本当に本当に重要なことだ。
  • 会社の詳細はまた別の機会に紹介するが、本拠地はフィラデルフィアで、私はそこに惹かれた。
  • ビルが「公開」された:私たちのIPOのセクションとは関係しないが、私が動向を薄くトラッキングしているLEX Capital Markets(レックス・キャピタル・マーケット)というスタートアップが、1つのビルを債権化して公開した。この会社は、実にすてきなモデルを提供している。覗いてみる価値があるだろう。
  • そして最後に、最近のNFT(非代替性トークン)報告の延長だが、、Mythical(ミシカル)がNFTを取り入れたゲームのために1億5000万ドル(約170億円)を調達したところだ。NFTの風はそこに向かっているのかもしれない。

画像クレジット:Nigel Sussman

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(文:Alex Wilhelm、翻訳:sako)

特定業務特化SaaSを提供する国内スタートアップをまとめた「ホリゾンタルSaaS カオスマップ 2021」公開

  1. 特定業務特化SaaSを提供する国内スタートアップをまとめた「ホリゾンタルSaaS カオスマップ 2021」公開

SaaS特化のファンドを運用する独立系ベンチャーキャピタル(VC)One Capitalは10月29日、特定業務に特化したホリゾンタルSaaSを提供する国内スタートアップをまとめた「ホリゾンタルSaaS カオスマップ 2021」を公開した。

今回は、以下条件に当てはまる企業を掲載しており、2021年版の掲載数は322になった。
・業界問わず、特定業務における課題を解決するSaaSを提供している
・未上場のスタートアップ企業(上場企業やその子会社は対象外)
・本社を日本に置いている(海外企業の日本法人は対象外)

特定業務特化SaaSを提供する国内スタートアップをまとめた「ホリゾンタルSaaS カオスマップ 2021」公開

カテゴリー別企業数。出典:One Capital

日本のSaaS市場は、2022年に約1兆円になる(富士キメラ総研調べ)とされており、今後も拡大の余地が見込まれるという。しかし、どのようなスタートアップが存在しているのかなど、海外に比べると情報がオープンになっていない。そこでOne Capitalは、2020年の「ホリゾンタルSaaS カオスマップ 2020」に引き続き、2021年版を公開した。

One Capitalは、SaaS企業へ投資するVCファンドを運用するとともに、LPのDX支援を行うユニークなVC。さらに、自社でプロダクト(SaaS)開発をすることで、起業家の視点も持ち合わせている。スタートアップと大企業の両側面から「新たな日本へ、もっと加速させる」というビジョンを実現したいとしている。

元アップル社員が起ち上げたBild、クラウド上でのハードウェア設計の共有・共同作業を行うツールを提供

Apple(アップル)でハードウェアエンジニアリング・プログラムマネージャーを務めていたPradyut Paul(プラデュット・ポール)氏は、eメールやスプレッドシートといった旧式のツールを使ってハードウェア製品を構築・共有することの難しさを身をもって体験した。

設計が遅れたせいで何十万ドル(数千万円)もの費用をかけて迅速な出荷を行った後、ポール氏はハードウェアをより早く開発し、より多くの設計を検証するために、他のチームと連携するもっと良い方法があるはずだと考えた。

このようなコラボレーションをクラウドで行えるようになれば、組織全体のチームが設計プロセスをより簡単にレビューできるようになり、製品リリースのスピードアップにつながる。そのためにポール氏はアップルを退社し、2020年にCTOのAvinash Kunaparaju(アビナッシュ・クナパラジュ)氏、COOのDerrick Choi(デリック・チョイ)氏とともに、Bild(ビルド)を起ち上げた。

Bild共同創業者のプラデュット・ポール氏とアビナッシュ・クナパラジュ氏(画像クレジット:Bild)

「私たちは、エンゲージメントをクラウドに移行するというアイデアを思いつきました」と、ポール氏はTechCrunchに語った。「それは単なるやりとりではなく、非常に多くの関係者が関わり、受信箱が基本的にコミュニケーションの保管場所になります」。

同社は米国時間10月25日、シードラウンドで300万ドル(約3億4000万円)を調達したと発表した。この資金は、顧客獲得、セールス、マーケティングの分野でチームを強化し、新規ユーザーに向けたセルフサービス体験を構築するなど、製品開発を継続するために使われる。今回の資金調達は、Tola Capital(トラ・キャピタル)が主導し、Lux Capital(ラックス・キャピタル)、Shasta Ventures(シャスタ・ベンチャーズ)、Counterview Capital(カウンタービュー・キャピタル)、Frontier Ventures(フロンティア・ベンチャーズ)、Techstars(テックスターズ)が参加した。

ユーザーは、Bildのウェブベースのビューアを使って、3D CAD、ボードファイル、部品表、回路図、図面、シミュレーションデータなどを操作することができる。従来はこれを、スクリーンショットを共有したり、対面ミーティングでやっていた。

機械系エンジニアに特化したデザインレビュー管理や、ファイルの共同編集など、個々のペインポイントに取り組んでいる企業は他にもあるが、それらをすべて考慮に入れて、しかも会社全体で管理しているのはBildだけであると、ポール氏は確信している。

「別のチームに属している人々に、可視性を提供することは困難です」と、ポール氏は続ける。「私たちが注目していることの1つは、ハードウェアの将来性とソフトウェアとの連携をどのように強化し、両者がコラボレーションできる環境をどうやって作るかということです」。

これまでBildは、25社の企業を対象としたプライベートベータテストを行っていたが、今回の資金調達の発表に併せて、そのソフトウェアを一般にも公開した。初期の顧客の一部は有料顧客に変更されたが、価格戦略についてはまだ検討中であると、ポール氏は述べている。

Bildのコラボレーションツール(画像クレジット:Bild)

次に同社が取り組んでいることは、実際に見たときとコンピューター上で見たときのギャップを小さくするために、CADモデルをさまざまな視覚や方法で見せられるようにすることだ。

ハードウェア市場は500億ドル(約5兆7000億円)から700億ドル(約8兆円)規模の産業であり、まだデジタル化が進んでいないと、Tola CapitalのプリンシパルであるAkshay Bhushan(アクシャイ・ブーシャン)氏は述べている。

例えば、Autodesk(オートデスク)のような大企業は、これまでこの分野を壁で囲っていたが、リモートで働く人が増えたことにより、ハードウェアとソフトウェアが融合し始めていると、同氏は付け加えた。

「Bildは、すべてのエンジニアが抱えているであろう問題を解決し、ペインポイントを喜びに変えています」とブーシャン氏は語る。「プラデュットとアビナッシュは顧客志向で、顧客も認識しているこれらの問題を見据えていました。誰もが同じようなメールやプロセスのトラッキングに異なる名称を与えていましたが、Bildが行っていることに価値と機会を見出したのです」。

画像クレジット:Andrey Suslov / Getty Images

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(文:Christine Hall、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

Countableは企業にエンゲージメントのためのコミュニティサイトを提供するスタートアップ

企業や団体にエンゲージメントのためのコミュニティサイトを提供するCountable(カウンタブル)が、シリーズAラウンドで1200万ドル(約13億7000万円)を調達した。同社のサービスは、企業がブランドの価値観や問題に対するスタンスを示しながら、顧客とよりエンゲージメントしやすくするものだ。

今回のラウンドは、既存投資家でのCanaan Partners(カナン・パートナーズ)が主導し、Ulysses Management(ユリシーズ・マネージメント)とGlobal Catalyst Partners(グローバル・キャタリスト・パートナーズ)が参加した。CountableのCEOであるBart Myers(バート・マイヤーズ)氏は、2014年の設立以来、同社は総額1600万ドル(約18億2000万円)を調達したと、TechCrunchに語った。

実際に、サンフランシスコを拠点とする同社は、ソリューションベースのジャーナリズムからスタートし、業績の推進を求めるコミュニティや人々を中心にコンテンツを提供してきた。2017年にCountableが方向転換した際には、Canaan Partnersがシードラウンドで出資し、同社の企業向けSaaS企業への移行を支援した。

「ソーシャルメディアでは多くのことが急速に変化しています。それはある意味で有害な存在となり、ユーザーの安全性やセキュリティに対する信頼性が低下しています。そして企業ブランドが自分の言葉で顧客と関わるために必要なコントロールが奪われつつあります」と、マイヤーズ氏はいう。「かつては、無料で口コミを広げたり、多くの閲覧を得ることができましたが、今や何をするにも有料です。これでは有機的に人々にリーチすることはできません」。

Countableは、ソーシャルメディアの良い面を規範とし、より本物のコミュニケーションを育み、ビジネスや社会の成果を促進するテクノロジーを構築している。マイヤーズ氏は「Shopify(ショッピファイ)がショッピングカートでやったようなことを、私たちはコミュニティ・エンゲージメントでやっている」と考えている。

その方法は次のようなものだ。まず、同社は顧客である企業と協力してサイトの外観を確立し、目標、タイムライン、フィードバックプロセスなどを設定する。サイトの立ち上げ後、企業は従業員、消費者、パートナーのオーディエンスを管理することができる。また、このサイトでは「いいね!」ボタンに留まらず、1億9千万人以上の人々が参加するCountableの「Causes(コーズィーズ)」ネットワークを活用して、アクションアイテムを促進することができる。

Countableはコミュニティがどのように成長しているかという分析結果や、収益、リテンション、イノベーションを促進するためのインサイトを顧客企業に提供する。コミュニティ側では、メンバーは企業ブランドとの関わりを持ち、さらには推薦ビデオを記録したり、Causesのイベントに参加することなどができる。

Countableは、Starbucks(スターバックス)、Uber(ウーバー)、Patagonia(パタゴニア)、Levi’s(リーバイス)、PG&Eなどのブランドのために、120件以上の「実装」を行ってきた。これらの企業で、Countableは従業員のエンゲージメントに利用されている。マイヤーズ氏によると、PG&Eでは、緊急事態に備えるためのヒントやリソースを、住宅所有者や企業に提供するためにこのサイトを使用しているという。

「私たちはブランドに、エンゲージメントを促進し、効果を測定するための大きな力を与えています」と、マイヤーズ氏は続ける。「ブランドは、フィードバックを求めたり、視聴者にコンテンツを友人と共有するように促したり、展開に向けたインセンティブに結びつけたりすることができます」。

過去1年間で、同社の収益は約300%増加し、年間経常収益は277%増加、顧客獲得数とサイト利用数は2倍以上になった。

このような成長に対応して事業を拡大していくために、マイヤーズ氏は今回調達した資金を、製品開発、市場開拓、国際的な事業拡大、サードパーティとの統合に投入する予定だ。また、コミュニティ・ソーシャルトークン交換のためのローンチパッドとなるサービスも提供していく。

「企業ブランドは、ますます顧客との対話を求めるようになっています。それは多く行うほど、あらゆる場所で実を結ぶことになります」と、マイヤーズ氏は語る。「独自のコミュニティを持てば、インセンティブ化の面で扉を開き、価値を測る手段となり、この体験にもっと投資する方法を顧客に提供することができます」。

画像クレジット:Jane Kelly / Getty Images

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(文:Christine Hall、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

データ資産管理支援SaaS開発運営・コンサルティングのMinittが6000万円のシード調達、開発部門・組織体制・マーケ強化

データ資産管理支援SaaS開発運営・コンサルティングのMinittが6000万円のシード調達、開発部門・組織体制・マーケ強化

データ資産管理をサポートするSaaS型クラウドサービスの開発・運営、およびコンサルティングを手がけるMinitt(ミニット)は10月14日、シードラウンドにおいて6000万円の資金調達を発表した。引受先は、Headline Asia(旧Infinity Ventures)が運営するLAUNCHPAD FUND、マネックスベンチャーズ、ビジョナルが運営するBizReach 創業者ファンド。調達した資金は、開発をはじめとする組織体制の強化、マーケティング活動にあてられる。

昨今、センシティブな情報の取り扱いについて慎重さが求められる一方で、データベースに存在するそれら情報を適切に管理・運用する余裕が企業になくなってきているという。また同社は、DXを推進する大手企業や顧客のセンシティブ情報を扱う企業の多くは、データを安全・柔軟・容易に引き出す仕組みを構築できずにおり、ビジネスを素早く拡張するための大きな阻害要因となっているとしている。

「プライバシー情報を持たずに活かせる未来を創る」をミッションに掲げるMinittは、企業が持つ顧客のセンシティブ情報などの適切な管理・取り扱いについて、運用面でサポート。情報取り扱いの責任とプレッシャーや硬直化した業務フローから現場を解放し、企業がビジネスの本質的な価値提供に集中できるプロダクトの開発を進めているという。

同事業領域は、今後日本でも大きなマーケットとなることを見据え、企業が抱える課題の解決に向けたプロダクト開発と事業展開を加速させたいとしている。

いまだExcelファィルに頼る建築業界にGraneetは財務管理SaaSを提供する

フランスのスタートアップ企業であるGraneet(グラニート)は、Point Nine(ポイント・ナイン)とFoundamental(ファンダメンタル)が主導するシードラウンドで240万ユーロ(約3億1200万円)を調達したばかりだ。同社は、建設業界とそこに存在する無数の中小企業に特化した、垂直型のSoftware-as-a-Service(サービスとしてのソフトウェア)を提供している。

Graneetは、建設会社がプロジェクトをより良く管理できるように、最も優れた財務管理ソリューションを構築したいと考えている。大半の建設会社は、いまだに複数のExcelファイルに依存しており、情報のサイロ化やデータ入力の煩雑さに悩まされているのだ。同社には他にも、Jack Newton(ジャック・ニュートン)氏、Renaud Visage(ルノー・ヴィサージュ)氏、Alexandre Guinefolleau(アレクサンドル・ギネフォロー)氏、Arthur Waller(アーサー・ウォーラー)氏、 Philippe Gelis(フィリップ・ゲリス)氏、そしてColonies(コロニーズ)の創業者たちが出資している。

Graneetの共同設立者でありCEOのJean-Gabriel Niel(ジャン・ガブリエル・ニエル)氏の母親は、建設会社を経営している。「彼女は私に、『これはおかしい、2つの建設プロジェクトのうちの1つで、利益が出るのか損失が出るのかがわからない』と言いました」と、同氏は筆者に語ってくれた。

そこでニエル氏は、受注処理や請求管理など、この会社の社内プロセスを調べてみた。彼はその時、Microsoft Excel(マイクロソフト・エクセル)が依然として主要なソリューションであることに気づいたのだ。

Graneetは見積、請求そしてリソースプランニング(経営資源計画)という、3つの基本的なことを解決する必要があると考えている。同社はまず、請求書の作成から着手した。Graneetでは、依頼主が支払う予定の金額、これまでに受け取った金額、そして次の請求予定を、信頼できる唯一の情報源として確認できるようにする。これによって未払いの請求書があるかどうかを確認し、支払いがあったものをマークすることができる。

続いて同社は、見積もりとリードジェネレーション(見込顧客の獲得)に取り組み始めた。ユーザーはGraneetのプラットフォームから直接見積書を作成することができる。依頼主が見積書を承認すると、建設プロジェクトを進めていき、完了率を入力できる。これはこの業界では重要な指標だ。

そして今回の資金調達により、Graneetは3つ目のリソースプランニングを開発したいと考えている。近いうちに、Graneetから下請け業者を管理し、複数の請負業者に向けて請求書を複数のパートに分割して発行できるようになるはずだ。

Graneetの顧客である建設会社は、このプラットフォームに下請け業者を招待できるようになる。下請け業者はすべてを見ることはできないが、自分たちが取り組んでいる部分を確認することができる。同様に、Graneetを利用している下請け業者であれば、毎月の進捗報告を依頼主の企業に送ることができるようになるというわけだ。この機能が実現すれば、Graneetは間違いなく新しい顧客を引きつけることができるはずだ。

将来的には、既存の顧客にもより多くのサービスを提供できると、Graneetは考えている。例えば、多くの建設会社は資金繰りのために、ファクタリング会社を利用している。ファクタリング会社は、未払いの請求書を買い取り、その割り引いた額を直ちに支払うが、Graneetはプラットフォーム上で直接前払いを提供することもできるようになる予定だ。

以上は、Graneetがどのように役立つかという例だ。その発想の背景には、建設会社は現在、ソフトウェアソリューションに関して、十分な備えができていないということがある。もし、Graneetがそのギャップを埋められることを証明できれば、他にも多くの製品がチャンスを得られることになるだろう。

画像クレジット:Graneet

画像クレジット:Greyson Joralemon / Unsplash

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(文:Romain Dillet、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

Instacartが事前注文とケータリングソフトウェアのFoodStormを買収

オンデマンド食料品配達プラットフォームのInstacart(インスタカート)は米国時間10月7日、食料品小売業者向けにエンド・ツー・エンドの事前注文とケータリングを提供するSaaS型オーダー・マネジメント・システム(OMS)のFoodStorm(フードストーム)を買収すると発表した。両社は取引条件を明らかにしていないが、買収の一環として、InstacartはFoodStormの技術を自社の一連の企業向け食料品eコマースソリューションに統合する。

FoodStormは、マルチチャネル注文、注文管理、決済、フルフィルメントをカバーするSaaSを開発した。FoodStormの技術は、販売時点情報管理システム(POS)を含む複数のサードパーティのシステムも統合する。また、食料品店がフィードバックを集めたり、プロモーション機能を活用するためのCRM機能も提供している。

「我々の目標は、小売店のパートナーが売上を伸ばし、小売店の顧客の毎日の食事がそうした小売店からのものになるようにすることです。そのため、FoodStormの優秀なチームをInstacartに迎え、FoodStormのエンド・ツー・エンドの事前注文およびケータリングのプラットフォームをInstacartの主要な企業向けプロダクトに統合できることをうれしく思います」と、Instacartの最高技術責任者であるMark Schaaf(マーク・シャーフ)氏は声明で述べた。

14年前に設立されたFoodStormは、Bi-Rite Market、Mollie Stone’s Markets、Uncle Giuseppe’s、Roche Brothersなど、Instacartの既存の小売パートナー数社と提携している。Instacartは、FoodStormの技術をより多くの小売店に提供していく予定だ。

この新しい企業向けソリューションによって、小売業者がより多くの在庫をオンライン化し、顧客のニーズを満たしながらeコマース機能を強化することができるとInstacartは話す。また、顧客にとっても、この技術によってレストランのデリバリーに代わる、より手頃な価格のサービスが可能になるとも指摘する。

「食料品は非常に複雑な小売カテゴリーであり、FoodStormやInstacartのような法人レベルのソリューションは、私たちが食卓を支えるために頼っているこの業界の長期的な成功に不可欠です。Instacartのチームに加わり、小売業者が事業や顧客の絶え間ないニーズに応えるための新しい方法を創造することを楽しみにしています」とFoodStormのCEO、Rob Hill(ロブ・ヒル)氏は声明で述べた。

Instacartは、事前注文技術のソリューションが、食料品小売業者に大きな成長機会を提供すると話す。例えば、調理済み食品やケータリング商品(温・冷のおかず、ケーキ、寿司など)を食料品店で購入するInstacartの顧客は、購入しない顧客に比べて購入量が多く、買い物の頻度も高くなる。また、小売店にとっても、青果やパッケージ商品などの従来の食料品よりも、事前注文した商品や調理済み食品の方が一般的に利益率が高いと説明する。

Instacartは2021年初め、Andreessen Horowitz、Sequoia Capital、D1 Capital Partnersなどの既存投資家から、2億6500万ドル(約297億円)を調達した。この資金調達により、同社の評価額は390億ドル(約4兆3760億円)に達した。また、Instacartは最近、米国とカナダの一部の市場で、より迅速な配達サービス「Priority Delivery」を開始した。これは、少量の買い物やかなり急ぎのニーズのために、これまでは店に駆け込んでいた顧客を引き付けることを目的としている。

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画像クレジット:Patrick T. Fallon / Bloomberg / Getty Images

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(文:Aisha Malik、翻訳:Nariko Mizoguchi

不動産仲介会社向け営業支援SaaS「プロポクラウド」を手がけるHousmartが7億円調達、人材採用やカスタマーサクセス強化

不動産仲介会社向け営業支援SaaS「プロポクラウド」を手がけるHousmartが7億円調達、人材採用やカスタマーサクセス強化

不動産営業支援SaaS「プロポクラウド」を手がけるHousmart(ハウスマート)は10月8日、第三者割当増資による計7億円の資金調達契約を締結したと発表した。引受先は、JIC ベンチャー・グロース・ファンド1号投資事業有限責任組合(JIC ベンチャー・グロース・インベストメンツ)、サファイア第一号投資事業有限責任組合(サファイア・キャピタル)。累計資金調達額は約14億円となった。

調達した資金は、事業拡大・開発スピードを加速させるための人材採用、導入店舗のカスタマーサクセス強化、不動産データベースの拡充、内部体制の強化などに投資する。現在、東京都・神奈川県・千葉県・埼玉県の1都3県で展開しているプロポクラウドを、近い将来エリアを拡大して提供できるよう事業を進めるという。不動産仲介会社向け営業支援SaaS「プロポクラウド」を手がけるHousmartが7億円調達、人材採用やカスタマーサクセス強化

2014年10月設立のHousmartは、「住を自由に」をミッションに掲げ、テクノロジーとデザイン、不動産の専門知識を融合させ、「住」の概念をもっと自由なものに進化させることを目指すスタートアップ。

プロポクラウドは、営業担当者に代わって顧客の希望条件に合う最新の物件情報や売却に関するコンテンツを自動でメール送信する、不動産仲介会社向け営業支援システム。対象物件は、居住用中古マンション、新築戸建、中古戸建(オーナーチェンジ物件除く)だ。

不動産業界には、従来「物件数が多すぎて最新の物件状況を把握しきれない」「自社のシステムに物件情報を入力するのは手間がかかりすぎる」「顧客の長期フォローが必要だが、人力では対応しきれない」という課題があり、同社独自のビッグデータとシステムにより解決するものという。

最新の物件情報や売却に関するコンテンツの自動メール送信機能に加え、顧客管理機能、顧客別活動履歴のチェック、最新物件情報の検索・閲覧、手動メール送付など、営業活動に必要な機能が備わっており、プロポクラウド1つで不動産営業のDXを実現できるとしている。

 

【スタートアップバトル】過去の出場企業紹介 6:STANDS

TechCrunch Tokyo 2021は、12月2、3日にオンラインで行うこととなった。そのメインとなる「スタートアップバトル」はもちろん2021年も開催する。

新進気鋭のスタートアップがステージ上で熱いピッチを繰り広げるピッチイベント「スタートアップバトル」には、例年数多くの企業が参加、熱戦が繰り広げられている。投資家や大企業の新規事業担当者も多く参加、スタートアップバトルをきっかけに出資が決まったり、優秀な人材の採用につながることも少なくなく、日本スタートアップ業界における登竜門ともいえる存在となっている。

ここでは、そんなスタートアップバトルにおいて、2020年にファイナルラウンドに進出したSTANDS(スタンズ)を紹介したい。

同社が提供する「Onboarding(オンボーディング)は、ソフトウェアのユーザー体験を変えLTV最大化を支援する、ソフトウェアサービス提供社のためのSaaS。Onboardingを導入すると、エンジニアの工数をかけずにノーコードでソフトウェアのユーザーインターフェース・ユーザーエクスペリエンス(UI/UX)を変えることができ、ユーザーごとに最適な体験を提供することで長期的な関係を築ける。

またユーザー属性や利用状況を分析し、データをもとにした施策を実行・改善といった、PDCAに必要な機能をワンストップで提供し最短でROIを実現する。

スタートアップバトルへの本登録は記事末のリンクで行える。出場登録締め切りは2021年10月11日(月)。

応募条件(詳しくはバトル応募ページに記載)

  • 未ローンチまたは2020年10月以降にローンチしたデモが可能なプロダクトを持つスタートアップ企業であること。
  • 法人設立3年未満(2018年10月以降に設立)で上場企業の子会社でないこと。

スタートアップバトルの応募はこちらから