マイクロソフトがEdTech戦略の強化を目指してオンラインと対面の個別指導プラットフォーム「TakeLessons」を買収

Microsoft(マイクロソフト)は2021年1月に同社のオンラインコラボレーションプラットフォームであるTeamsについて、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大で多くの学校が一部、または完全にリモートになったことにより利用者の増加が加速し、1億人以上の学生に利用されていることを公表した。そしてここにきて、教育市場における地位を今後も拡大するために買収を実施した。

MicrosoftはTakeLessonsを買収した。TakeLessonsは学生が音楽や語学、学術的なテーマ、職業訓練、趣味といった分野の個人教師とつながり、個人教師はオンラインや対面で提供するレッスンの予約や管理をするプラットフォームだ。

買収の条件は不明で、TechCrunchは取材を続けている。サンディエゴに拠点を置くTakeLessonsはこれまでに、LightBank、Uncork Capital、Crosslink CapitalなどのVCや個人投資家から少なくとも2000万ドル(約22億円)を調達した。TakeLessonsは自社サイト上でこの買収を認めるQ&A形式の短い記事を公開した。この記事によると、当面はこれまで通り運営し、これまで以上に多くの世界中の対象者に向けてプラットフォームを提供するとしている。

買収の時点でTakeLessonsを利用しているアクティブな学生や個人教師の人数は不明だが、関連する数字を挙げると、オンライン個別指導大手の1つであるヨーロッパのGoStudentは2021年前半に17億ドル(約1870億円)の評価額で2億4400万円(約268億4000万円)を調達した。Brainlyなどのオンライン指導企業も数億ドル単位の評価額となっている。

TakeLessonsの調達額がそれほど大きくないところを見ると、評価額はもっと低かったと思われる。買収はMicrosoftにとってインフラを手に入れ、マスマーケットのオンライン教育にもっと積極的に参入する準備のきっかけとなるものだが、他の大手プラットフォームと直接対決していく可能性もある。

現在TakeLessonsは音楽(これが同社のスタートだった)、語学、学術的なテーマ、テスト対策、コンピュータのスキル、手芸など幅広いジャンルの指導を提供している。2006年に創業し、地元で対面指導をする個人教師とつながるためのプラットフォームとして出発した。その後、オンラインレッスンにも進出し、ビジネスを補完している。

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大でオンラインレッスンに大きくシフトし、現在では同社のプラットフォームで提供されているサービスの大半がオンラインでの指導のようだ。レッスンは引き続き1対1で提供されているが、学生は同社のライブプラットフォームを利用してオンラインのグループレッスンにも参加できる。

世界中で起きているオンライン教育へのシフトが、Microsoftが大きなチャンスがあると見る理由だろう。

世界中の多くの学校が外出禁止や隔離中になんとかリモート学習をしようと急遽オンライン学習のプラットフォームを求め、教育者と家族、学生はさまざまなツールを使うように(そしてお金を払うように)なった。そうした中でMicrosoftはTeamsをこの分野のトップにすべく躍起になっている。

マーケットにおけるMicrosoftの牽引力(と多くの投資や買収)がすでに長年あった中で、こうした動きが続いてきた。

しかし現在の状況下で新たな激しい競争が起きている。例えばGoogle Classroomや、ビデオレッスンのような特定の目的に絞ったソリューション(Zoomが顕著な例)などの台頭だ。他にもレッスンや宿題の計画を立てるアプリ、数学や語学、科学といった特定のジャンルに関してクラスでの学習を補強するオンラインのオンデマンド指導などもある。

プラットフォームにできるだけ多くの機能を取り入れて囲い込み、ユーザーが他のアプリに行かないようにして多くの価値を提供するのがMicrosoftのやり方だ。したがって筆者は、同社がさらに買収をしてもっと多くの機能を提供し、同社の教育用ツールでまだ提供されていないサービスをすべてカバーしようとするだろうと予測している。

(例を挙げよう。筆者の子どもの学校ではオンラインレッスンにTeamsを使っている。その理由の1つは、学校のメールシステムにOutlookを使用しているからだ。学校は宿題の計画に別のアプリを使わないと発表した。先生は宿題を出したり管理したりするのに、これからはTeamsを使う。この学校のように予算が厳しければ、1つのアプリでできることなのに2つのアプリに支払いをしないのは当然だ。子どもたちには評判が良くない。これが、Microsoftが推進するプラットフォーム戦略だ)

TakeLessonsは学校を対象とした教育の戦略と近い位置にある。確かに、個別指導のクロスセルのチャンスがあると思われる学生とその家族は大勢いる。しかしTakeLessonsはマスマーケットを対象としたサービスも提供し、何かを学びたい人すべてに開かれている。Microsoftの教育関連製品をすでに使っている人たちだけが対象というわけではない。

オンライン学習を補完したい学生(これはオンライン個別指導の市場として大きい)だけでなく、何か新しいことを学びたい生涯学習者や消費者、プロフェッショナルも対象になるという点に注目だ。1人で家で過ごす時間が増えたこの1年半は特に学びへの関心が高まっている。

こうしたことから、TakeLessonsにはMicrosoftの世界における新たなチャンスも考えられる。

米国時間9月9日、MicrosoftのCEOであるSatya Nadella(サティア・ナデラ)氏とMicrosoft傘下のLinkedInのCEOであるRyan Roslansky(ライアン・ロスランスキー)氏が今後についてオンラインプレゼンテーションを配信した。このプレゼンでは教育、特に職能開発が強調して語られ、LinkedInが新しいラーニングハブを導入することが明らかにされた。

LinkedInは教育ビジネスの構築に長年取り組んでいるだけでなく、自社プラットフォームにもっと囲い込んでビデオが活用されるようにすることも目指している。

TakeLessonsのようなサービスは一石二鳥になるかもしれない。LinkedInのこれまでの教育コンテンツは「ライブ」のオンラインレッスンに特に結びつくものではなかったが、今回の買収はLinkedInが次にしようとしていることとの橋渡しになることも考えられる。

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画像クレジット:Imgorthand / Getty Images

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(文:Ingrid Lunden、翻訳:Kaori Koyama)

マイクロソフトがビデオ制作・編集ソフトウェアのClipchampを買収、Microsoft 365の生産性エクスペリエンス拡大にぴったり

ビデオ編集ソフトウェアが、Microsoft(マイクロソフト)の一連の生産性ツールに加わる次の大きなものになりそうだ。同社は米国9月7日、ウェブベースのビデオ制作・編集ソフトウェアを展開しているClipchamp(クリップチャンプ)を買収すると発表した。Clipchampのソフトウェアでは、ビデオプレゼンテーション、販促、FacebookやInstagram、YouTubeといったソーシャルメディア向けの動画を1つに集約できる。Microsoftによると、家庭、学校、企業で使われるMicrosoft 365の既存の生産性エクスペリエンスを拡大するのにClipchampは「ぴったり」とのことだ。

今回の買収は、いくつかの理由でMicrosoftにとって魅力的なものだった。今日では、プロでない人でも手軽に高度な編集を行ったり、高品質なビデオコンテンツを制作したりできる新しいツールが増えているおかげで、人々はますます動画を制作したり使ったりしている。このため、企業にとって動画はアイデアを発表したり、プロセスを説明したり、あるいはチームメンバーとやり取りしたりするための新種の「書類」としての地位を確立した、とMicrosoftは説明する。

同社はまた、いかに「GPUアクセラレーションを備えたPCの完全なコンピューティングパワーを、ウェブアプリのシンプルさ」と組み合わせているかという点で、Clipchampを興味深い買収対象会社として見ていた、と述べた。この点ではClipchampのソフトウェアはMicrosoftのWindows顧客ベースにうまくフィットする。

Clipchampはビデオ制作・編集分野で数多くのオンラインツールを作り出してきた。そのうちの1つが、トリミングや切り取り、切り出し、回転、スピードコントロール、テキスト挿入、オーディオ、画像、カラー、フィルターなどの機能を提供するビデオメーカーClipchamp Createだ。同社はまた、動画制作をより簡単なものにするテンプレート、無料のビデオ・オーディオライブラリー、スクリーンレコーダー、テキスト読み上げ、その他ブランドのフォントやカラー、ロゴのビデオでの使用をシンプル化するツールを提供している。現在はもうないClipchamp Utilitiesというユーティリティではかつてビデオ圧縮やコンバーター、ブラウザ内ウェブカムレコーダーが提供されていた。しかしこれら機能の一部は新しいClipchampアプリに移された。

Clipchampを使って動画を制作した後は人気のソーシャルメディアネットワーク向けにさまざまな出力スタイルやアスペクト比を選ぶことができるため、オンラインマーケッターにとって人気のツールとなっている。

画像クレジット:Clipchamp

2013年の創業以来、Clipchampは1700万人超のユーザーをひきつけ、39万社にサービスを提供し、前年比54%増というペースで成長してきた。パンデミックによって多くの組織がリモートワークを採用し、企業がトレーニングやコミュニケーション、レポートなどの手段としてビデオを活用するようになったのにともない、動画の使用は増加した。2021年上半期にClipchampのビデオエクスポートは186%増えた。アスペクト比16:9の動画は189%増、Instagram StoriesやTikTokなどでのシェア向けのアスペクト比9:16の動画は140%増だった。Instagram向けのアスペクト比1:1は72%増えた。スクリーン録画も57%増え、ウェブカム録画は65%増だった。

2021年7月にClipchampのCEOであるAlexander Dreiling(アレクサンダー・ドライリング)氏はこの成長についてコメントし、同社が2020年チームの規模を3倍に拡大したと述べた。

「当社は1年前に比べて平均2倍超のユーザーを獲得しています。その一方で使用頻度も2倍となっていて、これはより多くのユーザーがビデオコンテンツをこれまでになく制作していることを意味します。ソーシャルメディアビデオは常にビジネスニーズの最前線にありましたが、2020年は当社のプラットフォームで多くのスクリーンウェブカム録画が行われ、内部コミュニケーションのユースケースの急速な広がりを目のあたりにしました」とドライリング氏は話した。

Microsoftは買収額は開示しなかったが、CrunchbaseによるとClipchampはこれまでに1500万ドル(約16億5000万円)の資金を調達している。

Microsoftがビデオマーケットに足を踏み入れるのは今回が初めてではない。

トランプ氏が国家安全保障の脅威と呼んだ中国企業所有のビデオソーシャルネットワークTikTok(ティクトック)の売却を強制しようとしていたとき、MicrosoftはTikTok買収を検討した企業の1社だった(TikTokの運営を米国内で続けるためにByteDanceはTikTokの米国事業を売却する必要があった。しかしバイデン政権がその動きを棚上げし、売却は実現することはなかった)。数年前、MicrosoftはStreamというビジネスビデオサービスを立ち上げた。これは消費者がYouTubeを使うような手軽さで企業が動画を使えるようにすることを目指していた。2018年に同社は、コラボのために短いビデオクリップを使うソーシャル学習プラットフォームのFlipgridを買収した。リモートワークが当たり前になるにつれ、MicrosoftはチームコラボレーションソフトウェアMicrosoft Teamsにさらに多くのビデオ機能を追加してきた。

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Adobeがビデオ・クリエイティブの雄Frame.ioを1400億円超の巨額で買収

MicrosoftのClipchamp買収は、Adobeの12億8000万ドル(約1410億円)でのビデオレビュー・コラボレーションプラットフォームFrame.io買収に続くものだ。Frame.ioは2014年の創業以来、100万人超に使用されてきた。しかし仕事、学校、あるいは家庭で誰でも使うことを想定しているClipchampのツールと異なり、Frame.ioはどちらかというとクリエイティブなプロをターゲットとしている。

ドライリング氏は、Clipchampが多くの人にとってビデオ編集をアクセスしやすいものにすることに注力し、今後もMicrosoftで成長を続けると述べた。

「Microsoftほどレガシーを持つテック企業はそうありません。我々はみな、アイコン的なMicrosoftのプロダクトで育ち、以来ずっとそのプロダクトを使っています」とドライリング氏は説明する。「Microsoftの一部になることで我々は未来のレガシーの一部になります。我々の前途がこれほどエキサイティングなものになる他のシナリオは考えられません。機会に事欠くことはなく、ビデオ分野には絶対的にチャンスがいくらでもあるとClipchampは常に言ってきました。いかにそのチャンスをつかむか、答えを見つけ出す必要があるだけです。Microsoft内で我々は完全に新しい方法でチャンスをつかみにいくことができます」とドライリング氏は付け加えた。

いつClipchampを既存のソフトウェアに統合する予定なのかMicrosoftは明らかにせず、今後詳細を明らかにすると述べるにとどまった。

画像クレジット:Clipchamp

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(文:Sarah Perez、翻訳:Nariko Mizoguchi

クラウドインフラのDigitalOceanがNimbellaを買収してサーバーレス開発を強化

開発者はソフトウェアの作り方を単純化したいと願っているため、アプリケーションを動かすために必要なインフラを気にせずにコードを書ける「サーバーレス」と呼ばれるソリューションが人気を増している。インフラをサービスとして開発者に提供するDigitalOceanは、米国時間9月7日、サーバーレスのスタートアップNimbellaを買収し、この分野における同社の既存提供品目をさらに強化することを発表した。買収の条件は公表されていない。

DigitalOceanはNimbellaにより、オープンソースのコンテナオーケストレーションプラットフォームKubernetesと、同じくオープンソースのサーバーレス開発プラットフォームApache OpenWhisk上に構築されていサーバーレスアプリケーションを開発するためのプラットフォームを獲得する。

2年前にDigitalOceanのCEOになったYancey Spruill(ヤンシー・スプルイル)氏は、Nimbellaの機能を「サービスとしてのファンクション(Function as a Service)」と呼ぶ。その目標は、サーバーレスの開発を、オープンソースの環境の中で、ターゲットの顧客のためにより単純化することだ。スプルイル氏は「サーバーレスという呼び名でまとめられる一連の機能は、開発者や企業からあらゆるレベルのインフラストラクチャの負担を取り除き、それらを私たちのようなPaaSないしIaaSが吸収してしまうことでし。ユーザーはツールの構成がより自由になり、私たちが単純にその選択などの負担を取り除いて、彼らの開発スピードを上げます」という。

NimbellaのCEOであるAnshu Agarwal(アンシュウ・アガルヴァル)氏によると、具体的には同社が、高度なサーバーレスアプリケーションを作りDigitalOceanのサービスに接続するための、一連のツールを提供していく。「私たちがDigitalOceanのポートフォリオに加える能力は、高速なソリューション、サービスとしてのファンクションのソリューションであり、そしてそれが、マネージドデータベースやストレージなどのDigitalOceanのサービスと統合して、開発者による完全なアプリケーションの開発を容易にします。それはイベントに応じるだけでなく、完全にステートレスなものの管理も行います」とアガルヴァル氏は語る。

スプルイル氏によると、DigitalOceanがサーバーレスに本腰を入れるのはこれが初めてではないという。2020年同社が最初のサーバーレスツールセットを提供したときから始まり、その上に構築していくものとして、Nimbellaがふさわしかった。

DigitalOceanはクラウド上のIaaSであり、またPaaSのプロバイダーとして、個人デベロッパーとスタートアップ、そして中小企業を主な顧客にしている。同社の2020年の3億18万ドル(約331億円)という収益は、クラウド市場全体の1290億ドル(約14億2177億円)という収益の一部に過ぎないが、それだけ小規模でもクラウドインフラストラクチャサービスが成り立つことの証拠でもある。

今回の買収の条件や異動する人員数、アガルヴァル氏の待遇など、まだわからないことだらけだが、とにかく計画ではNimbellaをDigitalOceanのポートフォリオに完全統合し、その提供品目のブランドも2022年前半にはDigitalOceanになるようだ。

【更新】Nimbellaから12名の従業員がDigitalOceanへ移籍する。

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(文:Ron Miller、翻訳:Hiroshi Iwatani)

米PayPalが日本のペイディを3000億円で買収、アジアで「BNPL」後払い市場に参入

米国のフィンテック企業であるPayPal Holdings(ペイパル・ホールディングス)は、日本でのビジネスを強化するために、日本の後払い(BNPL、Buy Now, Pay Later)サービスプラットフォームであるPaidy(ペイディ)を、約27億ドル(3000億円)の現金で買収することを発表した。

規制当局の承認を含む取引完了は、2021年第4四半期を予定している。

買収後、日本を拠点とするペイディは既存の事業を継続し、ブランドを維持するとともに、Paidyの杉江陸社長兼CEOと創業者兼代表取締役会長であるRussel Cummer(ラッセル・カマー)氏は引き続きリーダーとして同社に残る。

日本は世界3位のEC市場であり、今回の買収は、クレジットカードに代わる後払い決済サービスの提供という分野で、日本および地域でのシェア拡大を目指すPayPalにとって重要な動きだ。

PayPalは長年にわたり、決済カードと仲良くやってきた。ユーザーは自分のカードの詳細をPayPalにアップロードし、PayPalをデジタルウォレットのように使ってオンラインでの支払いを管理することができる。しかし、PayPalは実際には、PayPalアカウントへ入金し、そこから支払いを行う決済プラットフォームとしてスタートした。その意味でPaidyは、PayPalのファーストパーティ路線を強化し、カードネットワークを介さず、独自のインフラでお金の流れを「所有する」方法を提供するといえる。

ペイディは基本的に、日本の消費者と加盟店の間の仲介を行う双方向決済サービスだ。機械学習を利用して、特定の購買に関連する消費者の信用力を判断し、数秒でそれらの取引を引き受け、加盟店への支払いを保証する。消費者はPaidyに商品代金を後払いする。

ペイディのプラットフォームは「3回あと払い」と名付けられた月賦払いサービスを提供しており、消費者はオンラインで購入した複数の商品の代金を、毎月、コンビニエンスストアや銀行振込でまとめて支払うことができる。

Paypalの日本担当副社長であるPeter Kenevan(ピーター・ケネヴァン)氏はこう述べている。「ペイディは、日本市場に合わせたBNPLソリューションの先駆者であり、消費者とマーチャントの両サイドで大規模なプラットフォームを構築し、業界リーダーへと急成長しました」。

ペイディの登録ユーザー数は600万人を超えており、今後はPayPalをはじめとするデジタル・QRウォレットを「どこでもペイディ(Paidy Link)」に統合し、オンラインとオフラインのマーチャントをさらに繋げていく計画だ。

同社は2021年4月、デジタルウォレットとペイディアカウントを連携させることができる「どこでもペイディ」を提供開始した。PayPalは「どこでもペイディ」と統合した最初のデジタルウォレットパートナーだった。

杉江氏は声明の中でこう述べた。「PayPalは『どこでもペイディ』の創設パートナーであり、さらなる価値を生み出すために共に歩んでいくことを楽しみにしています」。

「日本は当社のこれまでの成長に貢献してきた活気に満ちた環境であり、当社チームの努力と可能性がグローバルリーダーに認められたことを光栄に思います。Paypalと協力することにより『買い物の手間を省く』という当社のミッション実現にさらに近づくことができるでしょう」とカマー氏は述べている。

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(文:Kate Park、翻訳:Aya Nakazato)

EV時代を見据えてCox Automotiveがバッテリー関連サービス企業のSNTを買収

自動車関連サービス企業のCox Automotive(コックスオート・モーティブ)が、電気自動車用バッテリーのライフサイクルビジネスに参入する。

同社は米国時間9月1日、オクラホマ市に拠点を置くSpiers New Technologies(スピアーズ・ニュー・テクノロジーズ、SNT)を買収したと発表した。SNTは、EV用バッテリーパックの修理、再製造、再生、再利用などのサービスを提供している企業だ。

両社は買収額などの条件を明らかにしていない。Coxは今回の買収により、今後とりわけ「EVが中心的な存在になる」中で、バッテリーに関するサービスの提供を確立することができると述べている。同社によれば、電気自動車は、内燃機関の自動車とはサービス業務の内容がまったく異なり、その多くはバッテリーに関連するものだという。EVのバッテリーパックは車両コストの40%を占める場合もあるため、そのバッテリーをサポートすることは特に重要だ。

米連邦政府による電気自動車への投資が増加し、多くの自動車メーカーがEV事業の強化のために数十億ドル(数千億円)規模の投資を発表しているにもかかわらず、依然として一般の人々の多くはEVに対して懐疑的だ。Coxの調査によると、電気自動車の購入を検討していない人の10人中8人が、バッテリーの価値や耐用年数について懐疑的な見方をしているという。

Coxは現在、SNTのソフトウェアプラットフォーム「Alfred(アルフレッド)」を使用したバッテリー健康度診断ツールをSNTと共同で構築している。Coxは、この診断ツールを使って、電気自動車に対する信頼性を高めていくとしており、それは自動車の価値評価で知られる「Kelley Blue Book(ケリー・ブルー・ブック)」が、従来の(内燃機関で走る)自動車の状態に関する透明性を高めて消費者に提供してきたのと同じだと、同社は述べている。

今回の買収により、Coxはバッテリー再利用事業への投資も行うことになる。SNTは、自動車での使用に適さなくなったEV用バッテリーに「第二の人生」を与えることを専門とする数少ない企業の1つだ。SNTが受け取るバッテリーの約80〜90%は自動車メーカーからのもので、残りは自動車解体業者からのものだと、同社は数カ月前のTechCrunchによるインタビューで答えている。この事業分野は、EVの普及にともなって今後も拡大する可能性が高い。今回の買収によって、Coxは使用済みバッテリーの販売にも参入することになるだろう。

画像クレジット:Xu Congjun/VCG / Getty Images

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

Rocket Lab CEOインタビュー、宇宙開発のキャリアで学んだ教訓は「絶対にやらないとは絶対に言わない」こと

Peter Beck(ピーター・ベック)氏の一番古い記憶は、故郷であるニュージーランドのインバーカーギルで父親と一緒に外に立って星を見上げていたときに「その星の周りを回っている惑星にいる人たちが、お前を振り返って見ているかもしれないんだよ」と言われたことだ。

「3歳か4歳の子どもにとって、それは衝撃的な出来事で、私の記憶に刻まれ、それ以来、私は宇宙産業で働くことを運命づけられていたのです」と、Space Generation Fusion Forum(SGFF)で語った。

もちろん、後からなら何とでも言える。しかし、ベック氏のキャリアは、ロケットに一途に集中している。ベック氏は大学に行かずに貿易関係の仕事に就き、昼間は工具製作の見習い、夜はロケットエンジン作りに没頭していた。「これまでのキャリアで非常に幸運だったのは、一緒に仕事をしてきた企業や政府機関が、私が夜に施設を使って何かをすることを常に奨励してくれた─あるいは耐えてくれたと言った方がいいかもしれませんが─ことです」と彼はいう。

彼の腕前は経験とともに成熟し、ダブルワークが功を奏した。2006年、彼は宇宙開発会社Rocket Labを設立した。それから15年、21回の打ち上げを経て、同社は特別買収目的会社との合併により株式を公開し、7億7700万ドル(約853億3000万円)の資金を手に入れた。

スペースSPACの流行

Vector Acquisitionとの合併により、Rocket Labの評価額は48億ドル(約5271億5500万円)に跳ね上がり、宇宙開発企業の中ではElon Musk(イーロン・マスク)のSpaceXに次いで第2位の評価額となった。SPACは、多額の資金を確保したい宇宙産業企業にとって、上場にあたって人気のルートとなっている。ライバルの衛星打ち上げ企業であるVirgin OrbitAstraは、それぞれSPACの合併により上場しており、その他にもRedwirePlanetSatellogicなどの宇宙産業企業が存在する(一例)。

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ベック氏がTechCrunchに語ったところによると、上場はRocket Labが何年間にも渡って計画していたことで、当初の計画では、従来の新規株式公開を行う予定だったが、特にSPACルートが資本と評価を確実なものにした。SPACとの合併前に行われた3月の投資家向けプレゼンテーション(大いに半信半疑で見るべき資料だが)によると、将来は明るいとしている。Rocket Labは、2025年に7億4900万ドル(約822億7400万円)の収益を見込み、翌年には10億ドル(約1098億4600万円)を超えると予想されている。同社は、2019年に4800万ドル(約52億7200万円)、2020年に3300万ドル(約36億2400万円)の収益を報告しており、2021年は6900万ドル(約75億7900万円)程度になると予想している。

しかし彼は、収益を上げる前の宇宙産業スタートアップや、資金調達に失敗した企業がSPACを金融商品として利用することには、依然として懐疑的だ。「多くのスペースSPACが行われていますが、その品質には確実に差があると思います。民間市場での資金調達に失敗し、(SPACの合併が)最後の手段になっているものもあります。それは公開企業になるべき方法では決してありません」。

Rocket LabやSpaceXのような企業が衛星を軌道に乗せ、無数の新規参入企業がそれに加わろうとしている(あるいは、より楽観的にいうなら、主導権を握ろうとしている)現在、宇宙産業は比較的過密状態にあるが、ベック氏はその混雑は解消されると予想する。

「達成している会社、達成しようとしている会社がどれなのかは、投資家にとってすぐに明らかになるでしょう。今、私たちは興奮の渦中にいますが、結局のところ、この業界と公開市場は実行力がすべてです。使えるものと使えないものはあっという間に分かれてしまうでしょう」とベック氏はいう。

ElectronからNeutronへ

Rocket Labの収益は主に小型ロケットの打ち上げ市場からのもので、Electronロケットでトップの座を獲得している。Electronは、高さはたったの約17.98メートル、直径はかろうじて約1.21メートルと、現在宇宙に飛ばされている他のロケットよりもはるかにサイズが小さい。同社は、ニュージーランドのマヒア半島にある民間の発射場と、バージニア州にあるNASAのワロップス島施設(実際のRocket Labのミッションはまだ行われていない)の発射台の2つの場所から打ち上げを行う。

Rocket Labは、Electronの第1段ブースターを再利用可能なものに移行する作業を行っている。同社は、パラシュートを使ってブースターの降下を遅らせる、新しい大気圏再突入と海への着水プロセスを導入しているが、最終的な目標はヘリコプターを使って空中でキャッチすることだ。

これまでのところ、Rocket LabとSpaceXが市場を独占してきたが、これはすぐに変わる可能性がある。AstraとRelativityはともに小型のロケットを開発している。Astraの最新のロケットは高さが約12.19メートルで、RelativityのTerran 1はElectronとファルコン9の中間で約35.05メートルとなっている。

そのため、Rocket Labが待望の(そして非常に謎めいた)Neutronロケットで中距離ロケットに事業を拡大しようと計画しているのも納得がいく。当社はNeutronの詳細を明らかにしておらず、ベック氏はSGFFの参加者に、公開されているロケットのレンダリング画像でさえも「ちょっとした策略」であると述べている(つまり、下の画像はNeutronの実際の姿とはほとんど似ていないということだ)が、高さはElectronの2倍以上、約8000kgを地球低軌道に送ることができると予想されている。

画像クレジット:Rocket Lab

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「業界の多くの人々が、さまざまな方法で私たちをコピーしているのを目にしています。だから、私たちはもう少し先を行ってから、自分たちが行った仕事を明らかにしたいのです」と彼はTechCrunchに説明した。

Rocket Labは、エレクトロンとNeutronが2029年までに打ち上げられると予想される衛星の98%を搭載できると予想しており、追加のヘビーリフトロケットは必要ないと考える。

同社はNeutronに加えて、宇宙船の開発にも着手している。その名もPhotonで、Rocket LabではElectronロケットに簡単に組み込める「衛星プラットフォーム」として開発を進めている。Rocket Labでは、Photonを使った月やその他の場所へのミッションをすでに計画している。まず、NASAのCAPSTONE(Cislunar Autonomous Positioning System Technology Operations and Navigation Experiment)プログラムの一環として、月周回軌道に乗せる。

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2021年8月初めには、火星への11カ月間のミッションに2機のPhotonが選ばれ、ベック氏はPhoton衛星を使って金星の大気圏に探査機を送るという長期計画を公に語っている。

Rocket LabはPhotonの他にも、宇宙船製造のスタートアップであるVarda Space Industriesと契約を結び、2023年と2024年に打ち上げる宇宙船を製造している。

Neutronは、宇宙飛行士を運ぶための一定の安全基準を満たすように、最初から人間が解読できるように設計されている。ベック氏は「宇宙飛行の民主化が進む」と確信しており、Rocket Labが将来的にそのサービスを安定して提供できるようにしたいと考えている。また、Rocket Labが将来的に着陸機や有人カプセルなど、他の宇宙船の製造にも進出するかどうかについては、ベック氏は否定的だった。

「絶対にやらないとは絶対に言わないです」と彼はいう。「これが、私が宇宙開発のCEOとしてのキャリアの中で学んだ1つの教訓です」。

画像クレジット:Rocket Lab

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Dragonfly)

メルセデス・ベンツが買収したYASAの革新的な新型モーターはEV業界を変える

革新的な「axial-flux motor(アキシャルフラックス、軸方向磁束)」モーターを開発した英国の電気モータースタートアップ企業であるYASA(かつてはYokeless And Segmented Armature、ヨークレス・アンド・セグメンテッド・アーマチュアという名称だった)が、Mercedes-Benz(メルセデス・ベンツ)に買収されたのは2021年7月のことだった。この買収は、発表された情報が少なかったため、それほどマスコミの注目を集めたわけではなかった。しかし今後、YASAは注目する価値のある存在となるだろう。

2009年にオックスフォード大学からスピンアウトしたYASAは、メルセデス・ベンツの電気自動車専用プラットフォーム「AMG.EA」用の超高性能電気モーターを開発することになる。YASAは完全子会社として英国に留まり、メルセデス・ベンツの他、Ferrari(フェラーリ)などの既存顧客にもサービスを提供していく。また、YASAのブランド、従業員、施設、所在地もオックスフォードにそのまま残る。

YASAの軸方向磁束モーターは、その効率性、高出力密度、小型・軽量であることが、EV業界の関心を集めた。

対照的に、今日の市販EVでは「ラジアル」電気モーターを使った設計が一般的だ。テスラでさえラジアル型モーターを採用しているが、ラジアル型モーターは40年以上前のレガシー技術であり、技術革新の余地はほとんどない。

しかし、YASAのアキシャルフラックス型は、セグメントが非常に薄いため、それらを組み合わせて強力な単一のドライブユニットにすることができる。これによって、他の電気モーターに比べて重量は3分の1になり、より効率に優れ、出力密度はテスラの3倍にもなる。

YASAの創業者でCTO(最高技術責任者)を務めるTim Woolmer(ティム・ウールマー)氏は、電気モーターの設計にこのような新しいアプローチを考案した人物だ。TechCrunchは、同氏にインタビューして次の展開を探った。

TC:これまでの歩みを教えてください。

TW:私たちが12年前に始めた時の検討事項は「電気自動車を加速させよう」「電気自動車をより早く普及させるためにできることをしよう」というものでした。私たちは今、20年にわたる革命の10年目に入っています。10年後に販売される新車は、間違いなくすべて電気自動車になるでしょう。技術者にとって、革命の時代ほどエキサイティングなものはありません。なぜなら、そこで重要なのは技術革新のスピードだからです。私たちにとってエキサイティングなのは、革新を加速させることです。それこそがメルセデスとのパートナーシップで興味深いところです。

TC:あなたが考え出したモーターは、何が違っていたのですか?

TW:私が博士号を取得した当初は、白紙の状態から始めました。その時に考えたことは、10年後、15年後の電気自動車産業が必要とし、我々がそれに応えることができるものは何か、というものでした。それはより軽く、より効率的で、大量生産ができるものです。2000年代には、軸方向磁束モーターはあまり一般的ではありませんでしたが、軸方向磁束モーターの技術に新しい素材を使ったいくつかの小さな工夫を組み合わせることで、私はYASA(Yokeless And Segmented Armature)と呼ばれる新しい設計に辿り着いたのです。これは軸方向磁束型の軽量な配列を、さらに半分にまで軽量化したものです。これにはローターの直径が大きくなるという利点もあります。つまり、基本的にトルクは力×直径なので、直径が大きくなれば同じ力でもより大きなトルクを得ることができます。直径を2倍にすれば、同じ材料で2倍のトルクが得られるということです。これが軸方向磁束型の利点です。

TC:メルセデスによる買収は完了しましたが、次は何をするのですか?

TW:私たちは基本的に完全子会社です。メルセデスの産業化する組織力を活用していくつもりです。しかし、重要なことは、自動車業界で技術がどのように拡散していくのかを見ると、まずはフェラーリのような高級車から始まり、それから大衆車に降りてきて、そのあと大量生産されて拡がっていくということです。この分野において、メルセデスは産業化に関して世界的に進んでいる企業です。今回のパートナーシップの背景には、そのような考え方があります。

TC:ここから先は、他にどのようなことができるのでしょうか?

TW:私たちは、高出力、低密度、軽量なモーターで、スポーツ性能と高度な産業化を両立させることができます。それによって私たちは、あらゆることに対応できる類まれな立場にあります。

将来の計画については語ろうとしなかったものの、ウールマー氏が電気自動車と電気モーターの分野で注目すべき人物であることは確かだ。メルセデスによる買収後、YASAは下のようなビデオを発表した。

画像クレジット:Oxford Mail

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(文:Mike Butcher、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

オーストラリアのTechnologyOneが英国の高等教育プラットフォームScientiaを約18.2億円で買収

オーストラリアのSaaS企業であるTechnologyOne(テクノロジー・ワン)は、英国の高等教育ソフトウェアプロバイダーであるScientia(サイエンティア)を現金1200万ポンド(約18億2000万円)で買収することに合意した。

TechnologyOneは、オーストラリアの高等教育機関の75%が同社のソフトウェアを使用していると主張しており、一方、Scientiaは英国で50%の市場シェアを主張している。

この買収には、600万ポンド(約9億13000万円)の初期払いとそれ以降の支払いが含まれている。

TechnologyOneの創業者であり、会長のAdrian Di Marco(アドリアン・ディ・マルコ)氏は「今回の買収は、当社にとって初めての国際的な買収であり、高等教育分野と英国市場への貢献に対する当社の深いコミットメントを示すものです。ScientiaのユニークなIPと市場をリードする能力は、とにかく使いやすい企業向けソフトウェアを提供するという当社のビジョンを支えています」と述べている。

スウィンバーン工科大学の学籍担当事務官兼学生管理・図書館サービス部長のMichelle Gillespie(ミッシェル・ギレスピー)氏は「学生が最も気にかけているのは、自分たちの時間割です。時間割を学生生活全体に完全に統合できることは非常に重要であり、スウィンバーン工科大学のようにTechnologyOneの学生管理システムを使用している大学にとってはとてもワクワクする一歩となります」とコメントしている。

画像クレジット:Getty Images

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(文:Mike Butcher、翻訳:Akihito Mizukoshi)

Apolloによる約5500億円でのVerizon Media買収完了、新社名はYahooに

米国時間9月1日、プライベートエクイティ企業Apollo Global Managementが、Verizon(ベライゾン)からのYahoo買収を完了したことを発表した。なお、そのYahooは前日8月31日までVerizon Media Groupという名前で、さらにその前にはOathという社名だった。買収額は50億ドル(約5500億円)で、42億5000万ドル(約4675億円)がキャッシュ、7億5000万ドル(約825億円)が優先株式となる。Verizonは、この名前が変わった企業の10%を保有する。

ニュースに付随するリリースで、YahooのCEOで元VZMのトップGuru Gowrappan(グル・ゴラパン)氏は次のように述べている。「この取引の完了は、独立した事業体としての私たちにとって新たな機会となるエキサイティングな時期を告げるものです。今後数カ月、数年の間に、Yahooのビジネスおよびブランドとして、新たな成長とイノベーションがもたらされることを期待しており、新しいパートナーとともにその未来を創造していきたいと思います」。

買収完了後はゴラパン氏はYahooのCEOの座に長くとどまらないのではないか、との報道もあるが、当面は彼がトップだ。

この企業集団には、Yahoo名義のMail、Sports、Financeなどのメディア資産に加えて、TechCrunch、AOL、Engadget、インタラクティブメディアブランドのRYOTなどがある。傘下のブランドは、全世界で約9億人の月間アクティブユーザーを抱えており、Apolloの調査によると、現在インターネット上で第3位の規模を誇るという。

Verizonはオンラインメディア、特にアドテック分野への包括的な進出を目指して数年間にわたって取り組んできたが、今回の買収により、コストがかかりすぎ、ほとんど利益が出ないことが判明し、最終的には、通信事業者の大きな成長戦略にとってコアビジネスではないことが明らかなった。

このニュースは、オンラインメディアの激動の時期にもたらされたもので、業界全体の統合が進む中、多くはVerizon Media内でも感じられた。Verizonは2015年にAOLを44億ドル(約4841億円)で買収し、続いてその2年後にYahooを45億ドル(約4951億円)で買収、2つのレガシーメディアをOathという名のグループにまとめた。2018年末、Oathは合併にともない46億ドル(約5061億円)の減損処理を行っている。

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新たなオーナーがこの大きな船をどう舵取りしていくのか、まだわからないが、プライベートエクイティ企業の標準的な手法としては、Apolloが事業の一部を売却したり、他の手法で経営合理化を図ることが考えられる。

しかし、Apollo自身は、新たに取得した資産への投資を約束し、少なくとも当面は人減らしもない。巨大持株会社であるApolloの傘下には多くの情報通信、メディア、テクノロジー企業があるため、その活用も注目を集めている。

ApolloのパートナーであるReed Rayman(リード・レイマン)氏は、リリースで次のように述べている。「我々は、同社の優秀な従業員と協力して、Yahooの力強い勢いを強化し、新生Yahooを独立した消費者向けインターネットおよびデジタルメディアのリーダーとして長期的に成功させることを楽しみにしています。顧客第一主義の提供やコマース機能の加速、リーチの拡大、日々のユーザー体験の向上など、事業全体の成長に向けた投資を検討しており、Yahooの次章にこれ以上ないほど期待しています」。

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(文:Brian Heater、Ingrid Lunden、翻訳:Hiroshi Iwatani)

商用EVトータルサービスを目指すIdeanomics、今度は配送用EVメーカーVIA Motorsを約495億円で買収

ニューヨークを拠点とするフィンテック・電動モビリティ企業のIdeanomics(アイディアノミクス)は、商用EVメーカーのVIA Motorsを買収すると発表した(4億5000万ドル[約495億円]相当の全株式取得による)。

Ideanomicsは、電気自動車に移行するフリートオペレーターや交通機関向けに垂直統合型のサービスを構築することを目指して、2021年に入ってから積極的にモビリティ事業を買収している。今回のVIA Motorsの買収発表により、Ideanomicsの株価は市場開始時から6%上昇し、2.43ドル(約267円)となった。

2021年だけでもIdeanomicsは、電動パワートレイン部品と燃料電池エンジンのメーカーであるUS Hybrid、米国製の唯一の電動トラクターを製造するEVトラクターメーカーのSolectrac、ユタ州を拠点とするワイヤレス充電器メーカーのWave、権限およびエスクローサービスを提供するTimios Holdings Corp.などの買収を完了している。

VIA Motorsの買収は、Ideanomicsの歴史の中でも群を抜いて最大規模のものだ。VIA Motorsは、短距離および中距離配送用のEVバンおよびトラックの設計・製造を行っており、3つの車両モデルに「スケートボード」スタイルのモジュラー構造を採用している。

「今回の買収は、Ideanomicsにとって大きな変革のマイルストーンとなります」と、同社のAlfred Poor(アルフレッド・プア)CEOは米国時間8月30日に行われた投資家向け電話会議で述べた。この買収により「完全なOEM製造能力」を得ることになり、同社が出資し、充電するEVを製造することができるようになったと同氏は述べている。

この取引には、2026年までの車両納入を条件に、VIAの株主に最大1億8000万ドル(約198億円)のアーンアウト条項に基づく支払をもたらす可能性が含まれている。また、株主は合併後の会社の約25%を所有することになる。これとは別にIdeanomicsは、VIAの運営資金として5000万ドル(約55億円)のファイナンスノートを発行すると発表した。

Ideanomicsは現在、EVの調達から充電管理インフラの構築までをサポートしている。また、同社はフィンテック部門を通じて資金調達の他、充電サービス(charging-as-a-service)や車両サービス(vehicle-as-a-service)も提供しており、フリート企業の投資モデルを設備投資主導型から運用費主導型に切り替えることができるとしている。

プア氏は、最近の第2四半期の決算発表でこのように述べていた。「CapEx(設備投資)からOpEx(運用費)への移行は、新製品やインフラへの投資という明らかな参入障壁を取り除くことで、ゼロエミッションフリートの導入を加速させ、フリートオペレーターに大きな影響を与えると考えています」。

同社は、ユタ州に本社を置くVIAの2026年までの財務予測については明らかにしていないが、買収完了に先立ち規制当局に提出するIdeanomicsの委任状には、これらの数字が記載される予定であるとプア氏は付け加えた。

画像クレジット:Via Motors

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Aya Nakazato)

TikTok親会社のByteDanceがVRハードウェアスタートアップPicoを買収

TikTok(ティクトック)親会社のByteDance(バイトダンス)が、可能な分野でFacebook(フェイスブック)を出し抜くことを模索しているようだ。TikTokは世界で最もダウンロードされたソーシャルメディアプリという地位を獲得したが、ByteDanceは今、Pico(ピコ)というVR(仮想現実)ヘッドセットメーカーを買収し、Facebookの挑戦を追随している。

最初にBloomberg(ブルームバーグ)が報じたこの買収についてByteDanceは米国時間8月30日に認めたが、買収価格については明らかにしなかった。Picoは3月の3700万ドル(約41億円)のシリーズBなど、ベンチャーファンディングで中国企業から6200万ドル(約68億円)を調達した。OculusのようにPicoはVRデバイスのためのハードウェアとソフトウェアの両方を手がけている。そしてOculusと違ってPicoの存在感は中国では大きい。PicoはOculusやHTCほどの認知度はないかもしれないが、トップのVRハードウェアメーカーであり、中国の消費者と西欧の法人顧客に販売している。

ByteDance傘下となることで、世界最大のVRブランドの2つが今、ソーシャルメディア企業内に存在している。皮肉にも、ここ数年筆者が話を聞いてきたPicoの北米顧客の多くは、Facebookのデータと広告頼みのビジネスモデルに辟易し、Oculusもやがてその一部になるのではとの懸念から、少なくとも部分的にOculusハードウェアの代わりにPicoのヘッドセットを選んできた。

VRマーケットがしょっぱなから低調であることは誰もが知っているところだが、Facebookはテクノロジーの道を切り開き、従来の投資家の多くが関心を示さなかったエコシステムに近年大金を注いできた。

買収取引条件は明らかではなく(筆者は詮索している)、これがVRにとっての復活のときなのか、あるいは契約市場の兆しなのかは判断しかねる。最も可能性がありそうなのは、ByteDanceが消費者VRブランドの構築に真に関心を持っており、Facebookの失敗から学び、エコシステムへのFacebookの貢献を利用しながら同社の歩みをたどることだ。ByteDanceが中国の消費者マーケットに完全にフォーカスするのか、あるいは同時に米国の法人顧客もゆるく追求するのかは、同社が今後対応しなければならない大きな問題だ。

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画像クレジット:Pico

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(文:Lucas Matney、翻訳:Nariko Mizoguchi

アップルがクラシック音楽配信サービスのPrimephonicを買収

米国時間8月30日、Apple(アップル)はクラシック音楽の提供を拡大するために、Primephonic(プライムフォニック)を買収したことを発表した。2014年にスタートしたアムステルダムを拠点とするPrimephonicは、これまでApple Musicの一般的なストリーミングのアプローチでは不足していた音楽ジャンルに、特に大きな貢献をすることになる。

サービスはApple Musicのプラットフォームに吸収されるため、単独での提供は事実上終了する。米国時間9月7日にPrimephonicは終了し、Appleは自社のストリーミングサービスをベースにしたクラシック音楽アプリを2022年に立ち上げる準備を進める。

Primephonicの共同創業者でCEOのThomas Steffans(トーマス・ステファンス)氏は、Appleが発表したプレスリリースの中で「アーティストのみなさんには、Primephonicのサービスと私たちがクラシック音楽の世界で行ってきたことを気に入っていただいていると思っていますが、今回Appleと一緒になることで、より多くのリスナーのみなさんに最高の体験を届けることができるようになります」と語っている。「クラシック音楽をメインストリームにお届けし、新世代の音楽家と次世代の観客を結びつけることができるのです」。

2020年発表されたPrimephonicのCTO Henrique Boregio(エンリケ・ボレジオ)氏へのインタビューによれば、150カ国でサービスが開始されているとのことだった。また、一般的なストリーミングサービスに比べて、より高い年齢層の人々が利用しているようだ。

エンリケ・ボレジオ氏は、2020年にMixpanel(ミックスパネル)に対して「当社のユーザーの多くは55歳以上で、高学歴で比較的裕福な生活を送っていらっしゃいます」と語っている。「クラシック音楽が好きになってお金持ちになるのか、それともその逆なのかわからないね、とオフィスでは冗談を言っています」。

Appleはこの先行う提供に関して「Apple Musicのクラッシックファンのみなさまは、作曲家やレパートリーごとのより優れたブラウジングや検索機能、クラシック音楽のメタデータの詳細な表示、さらに新しい機能や特典などの、Primephonicの最高の機能を備えた体験をお楽しみいただけるようになります」とコメントしている。

新しいクラシック音楽サービスが開発されている間、Primephonicの既存のユーザーには、Apple Musicの6カ月間 無料利用という形の特別提供を行う。

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画像クレジット:Westend61 / Getty Images

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(文: Brian Heater、翻訳:sako)

電動キックスクーターの安全性をモニターするSuperpedestrianが危険運転を検知・制御のためNavmatic買収

電動キックスクーターの運営会社Superpedestrian(スーパーペデストリアン)は、マイクロモビリティ運営会社による車両の位置特定と、その動きのリアルタイム補正を助けるスタートアップNavmatic(ナヴマティック)を買収した。

両社とも、2021年6月に成立した買収の詳細を明かしていない。取引の関係者によると、買収価格はNavmaticによる2020年6月の400万ドル(約4億4100万円)の設立資金調達の、最後の資金調達ラウンドとそう変わらない。

Navmaticの買収は、Superpedestrianにとって車両の安全システムを強化するために当該スタートアップのスーパーフュージョン技術を採用できることを意味する。新しいシステムはPedestrian Defense(ペデストリアン・ディフェンス)と呼ばれ、安全でない乗り方(一方通行の道路を逆走、無茶な進路変更、歩道の走行、急ブレーキの繰り返しなど)を検知する。また、スクーターを減速または停止させてリアルタイムで利用者に知らせるか、その行動を正す。利用者は利用終了時に、カスタマイズされた安全トレーニングに使用する安全評価を受け取る。上手な乗り方をしていれば割引を受けられるが、常習的に安全でない乗り方をする利用者はブラックリストに載ってしまう。

スクーター関連の事故が増える中、クルマが関与する交通事故の大半の場面で活躍するであろう新たなテクノロジー企業を紹介する。Spin(スピン)Voi(ヴォイ)は、同様に利用者を見張り、歩行者を守るためにさらなる技術手段を導入した。といっても、Navmaticのように位置特定ソフトウェアに注力したのではなく、コンピュータビジョンのスタートアップであるDrover AI(ドローヴァーAI)とLuna(ルナ)に目を向けた。非妨害性カメラを搭載したSpinとVoiの車両は、Superpedestrianのものとは違って、ある程度の精度を伴って歩行者を検知する。Superpedestrianの良さは、スクーターの細かい動きに関するデータを通じて利用者の行動を精確に理解するところだ。

「現在の課題はスクーターに関連する弱者、つまり歩行者、障害者、ベビーカーを押す人を守ることです」と、SuperpedestrianのCEOであるAssaf Biderman(アサフ・ビダーマン)氏はTechCrunchに語る。「そのため、非常に正確な位置、利用者の行動の特徴付け、コンテキストアウェアネスが必要です。利用者が他者の通行権を邪魔していないか?利用者がデータを正しくトレーニングすれば、カメラは必要ありません」。

ビダーマン氏は、SuperpedestrianがマイクロプロセッサとNavmaticのソフトウェアをLINKスクーターのオペレーティングシステム上で実行しており、Superpedestrianのすべてのマップがそこで機能していると話す。そのソフトウェアはグラウンドトゥルースで高精度なマップの視界を含め、さまざまなセンサーでトレーニングされている。乗車中、スクーターから取得されたデータを分析するリアルタイム計算がマイクロプロセッサのエッジで行われ、GPS生データ、多次元の慣性感知、車両の動力学を組み合わせて、車両の位置と動きを非常に精確に計算する。

「Navmaticのソフトウェアがあれば、位置検知が著しく向上し、スクーター運転者や小型車両のわずかな動きでさえすぐに分析できるようになります」とビダーマン氏は語る。「現在、その反応時間は0.7秒です」。

Superpedestrianのディベロップメント&パブリックアフェア部門ディレクター、Paul White(ポール・ホワイト)氏によると、車両の位置の正確性向上は局地的な条件に応じて70~90%である。

両社は、そのような精確な位置データを車両動作の制御機能と組み合わせると、視界に関する潜在的に安価で確実に拡張可能な優れた解決策となると話す。

「1台のスクーターに1000ドル(約11万円)や2000ドル(約22万円)のLiDARを搭載するわけにはいきませんよね?」とビダーマン氏はいう。「センサーフュージョンがあれば、夜に視界が悪くなったり、カメラが汚れたり、何度も故障したりするなどの制限や、反射や影の影響を受けるGPSの制限を克服できます。できるだけ多くのセンサーを組み合わせることで、それぞれの良いところを享受し、学習と改善を続けることができるのです」。

参考に、ドローバーAIとルナの技術により、スクーター運営会社はデータに基づき利用者の動きを制御することもできる。しかしこの能力はまだSpinとVoiがコンピュータビジョンを使用しているすべての都市で利用されているわけではない。Navmaticのチップはスクーターとオペレーティングシステムを共有しているが、例えばドローバーAIのものはスクーターのOSと直接通信する個別の車載IoTユニットで稼働する。この機能は現在サンタモニカでSpinにより試験的に利用されている。Voiは警報音を用いて歩道の歩行者に知らせるルナの技術をケンブリッジで試験利用したばかりだが、今度はスクーターを減速する方法を模索している。

Superpedestrianはオペレーティングシステムからハードウェアまでフルスタックを所有することにより、オフザシェルフのオペレーティングシステムを購入する他の運営会社と比べて優れた車両の制御性を誇る。

「当社の技術を他社のものと統合する上で、たくさんの課題がありました。他社はコード行を変える必要があるたびに、製造業者に連絡しなければならなかったのです。変更まで1週間もかかります」。NavmaticのCEOで共同設立者のBoaz Mamo(ボアズ・マモ)氏はTechCrunchに語る。

この買収へのSuperpedestrianのソフトウェアファーストのアプローチは、現在会社への投資者の1人であるEdison Partners(エディソン・パートナーズ)のパートナー、Dan Herscovici(ダニエル・エルスコビッチ)氏にとっても魅力的だった。

「スクーター企業による他の買収のほとんどは、市場シェアにとって遊びのようなものです」と彼はいう。「マイクロモビリティ企業が車両を強化するためにIPとテクノロジーに頼ることは滅多にありません」。

エルスコビッチ氏は、Superpedestrianが歩行者の安全と都市の法令遵守の問題を解決するため市場で多くのソリューションを吟味し、自らも技術を開発することを検討していたと話す。製品化までの時間と速く行動する必要性のバランスを取ると、都市の許可を失う恐怖が絶えず頭をよぎる。Navmaticの買収は正しい判断のように見えた。

「マイクロモビリティ分野については3つの大きな顧客層がいると考えています」とエルスコビッチ氏はいう。「まずは利用者。マイクロモビリティ企業は一番に利用者のことを考えますね。彼らをどうやって惹きつけ、乗り続けてもらうか?次に都市や自治体。最後に忘れられがちなのは利用者以外。道路を共有している人達です。業界は安全規則に基づいて利用者の行動を修正する道を模索していて、この買収はその力を解き放つと思います」。

マモ氏は、都市が利用者の移動方法や、優れたインフラ上の決断を下す方法について見識を得る可能性を、ペデストリアン・ディフェンスが切り開くことも指摘している。

ビダーマン氏は、Superpedestrianが2021年約5万台のスクーターを製造しており、12月からすべての新車に新しいテクノロジーを搭載すると述べた。2022年はアップグレードした車両を新規開拓する都市に展開し、同社がすでに営業活動を行う都市の旧モデルと入れ替え始める。

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画像クレジット:Superpedestrian

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Dragonfly)

Zendeskがカスタマーサービス機能向上のためAIオートメーションスタートアップCleverlyを買収

カスタマーサービスの機能をさらに充実させようとしているZendeskは米国時間8月26日、アーリーステージのAIスタートアップであるCleverlyの買収を発表した。

金額などの条件は非公開で、Cleverlyの資金の規模についてもこれまで完全には明らかにされていない。2019年に創業したCleverlyの拠点はポルトガルのリスボンで、同社のサイトによるとEUの研究・イノベーションプログラムであるHorizon 2020から資金提供を受けている。

TechCrunchが2021年1月に掲載したリスボンのスタートアップシーンを紹介する記事の中で、Indico Capital PartnersのパートナーであるStephan Morais(ステファン・モライス)氏がこの地域で最も注目するディープテック企業の1つとしてCleverlyを取り上げた。

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Cleverlyの製品プラットフォームでは、寄せられたサービスリクエストに自動でタグ付けしてワークフローを分類するトリアージ機能など、AIを活用した機能が提供されている。また、同社がAIによる人間の強化と呼んでいる、カスタマーサービス担当者が問い合わせに対して適切な回答をするのに役立つ支援機能もある。同社のテクノロジーはすでにZendeskの他Salesforceとも統合されている。

ZendeskがCleverlyを買収する理由について、Zendeskの製品担当EVPであるShawna Wolverton(シャウナ・ウルバートン)氏はTechCrunchへのメールで、両社はカスタマーサービスの将来について同じようなビジョンを持っていると記した。

同氏は「CleverlyとZendeskはAIを民主化したいと考えています。両社は企業にデータサイエンティストがいなくてもすぐにAIの活用を始められる実用的なアプリケーションを開発できます」と述べている。

ウルバートン氏は、AIはカスタマーエクスペリエンスのチームが優れたカスタマーサービスを提供するのに役立つという。同氏は、インテリジェントなソフトウェアによって人とAIが緊密に連携し、次世代の優れたカスタマーエクスペリエンスが広く実現するだろうと期待する。

同氏によれば、Cleverlyのチーム全員を2021年8月30日からZendeskに迎えるという。Cleverlyの創業者であるChristina Fonseca(クリスティーナ・フォンセカ)氏は製品担当VPに、Pedro Coelho(ペドロ・コエーリョ)氏は機械学習の主任エンジニアリングリードになる。

Zendeskにはすでに顧客との対話の自動化、サービス担当者の生産性向上、業務の効率アップにAIを活用する機能がある。例えばAnswer Botは顧客の問い合わせに対する答えをZendeskのナレッジベースから引き出すチャットボットだ。ZendeskのContent CuesはAIを利用して自動でサポートチケットを検討することに加え、ユーザーの利便性を高めるためにヘルプセンターのコンテンツをアップデートした方がよいカ所を見つけることもできる。

ウルバートン氏は「Cleverlyと協力することで我々は重要なインサイトを自動化し手作業をさらに減らしワークフローを改善して、サポートチーム全体をもっとハッピーに、もっと生産的にする幅広い機能を提供できるようになるでしょう。我々のチームが動き始めたらさらにニュースをお知らせできると思います」と述べた。

Zendeskの2021年のビジネスは好調で、業績発表によれば第2四半期の売上は前年同期比29%増の3億1820万ドル(約349億7000万円)だった。

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画像クレジット:Bloomberg / Getty Images

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(文:Sean Michael Kerner、翻訳:Kaori Koyama)

2021年上半期、サイバーセキュリティ分野の資金調達が過去最高の1.2兆円超え

ご存知のとおり、パンデミックは脅威を取り巻く状況を大きく変えた。2021年のランサムウェア攻撃件数はこれまでのところ290万件を数え、欧州共同体のサイバーセキュリティ当局ENISAによると、KaseyaSolarWindsを標的にしたサプライチェーン攻撃は2020年の4倍にのぼる。ENISAはこのほど、従来型のサイバーセキュリティ保護がこうしたタイプの攻撃に対してもはや効果的ではないと警告していた

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こうした事態は新興技術に対するこれまでにない需要を生み出し、最新のサイバーセキュリティ技術を詳しく検証しようとしている組織や投資家を引きつけている。

「世界中の民間・政府組織にとってこれまでで最も攻撃的な脅威を生み出す要素が重なっているパーフェクト・ストームを我々は目にしています」とNightDragonの創業者でマネージングディレクターのDave DeWalt(デイブ・デウォルト)氏は述べた。NightDragonはこのほどマルチクラウドセキュリティスタートアップのvArmourに投資した。「投資家、そしてアドバイザーとして、組織が増大しつつあるリスクを抑制する準備ができるようサポートするのは責務だと感じています」。

米国時間8月25日に発表されたMomentum Cyberの最新サイバーセキュリティマーケット調査によると、投資家は2021年上半期にサイバーセキュリティのスタートアップに115億ドル(約1兆2650億円)のベンチャーキャピタルを注いだ。2020年同期の47億ドル(約5170億円)から大幅に増えている。

Momentumによると、全投資案件430件のうち36件が1億ドル(約110億円)を超え、ここにはパスワード不要の認証会社Transmit Securityが調達した5億4300万ドル(約600億円)のシリーズA クラウドベースのセキュリティ会社Laceworkが完了した5億2500万ドル(約580億円)のラウンドが含まれる。

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「15年超にわたるサイバーマーケットの投資家として、こうしたマーケットを取り巻く状況はこれまでに目にしたことがないものだと言えます」とAllegisCyber Capitalの創業者でマネージングディレクターのBob Ackerman(ボブ・アッカーマン)氏は述べた。同社はこのほどサイバーセキュリティスタートアップPanaseerへの2650万ドル(約29億円)の投資をリードした。「CEOや役員、投資家たちがこの分野に真剣に耳を傾け、今日そして明日のサイバーセキュリティの問題を解決するイノベーションにリソースと資金を注ぐのをようやく目の当たりにしているのは心強いものです」。

驚くことではないが、2021年上半期のM&A件数も大幅に増え、特にクラウドセキュリティ、セキュリティコンサルティング、リスク&コンプライアンスの分野の企業を対象とする案件が激増した。Momentumによると、M&Aの取引額は163件合計で過去最多の395億ドル(約4兆3440億円)に達し、2020年上半期の93件の取引総額98億ドル(約1兆780億円)の4倍超となった。

これまでのところ2021年のM&A取引の9件が10億ドル(約1100億円)を超え、ここにはThoma Bravoによる123億ドル(約1兆3530億円)でのProofpoint買収、Oktaによる64億ドル(約7040億円)でのAuth0買収、TGによる40億ドル(約4400億円)でのMcAfee買収が含まれる。

「2021年上半期を通して、M&A件数、取引金額においてこれまでにない戦略的な動きを目の当たりにしてきました」とMomentum Cyberのマネージングパートナー、Eric McAlpine(エリック・マックアルパイン)氏とMichael Tedesco(マイケル・テデスコ)氏は述べた。「このトレンドは2021年残りと2022年も続くと予想しています」。

関連記事:マカフィーが法人向け事業を約4370億円で売却、消費者向けビジネスに専念画像クレジット:Bryce Durbin / TechCrunch

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(文:Carly Page、翻訳:Nariko Mizoguchi

サラダのチェーン店SweetgreenがキッチンロボットのSpyceを買収

パンデミックでロボットの世界にも多くの変化が訪れたが、キッチンの自動化への関心が加速したこともその1つだ。結局のところ、食品とレストランの業界は、店舗などの閉鎖が相次ぐ中でもエッセンシャル(必要不可欠)と見なされたが、キッチンスタッフの確保が難しくなり、ウイルスの感染に関する疑問が多かった初期には、求職者を見つけるのも困難だった。

カリフォルニアのサラダのファストフード店Sweetgreenが、Spyceを買収して本格的に自動化を進めると発表した。2015年にボストンに登場したSpyceは当時、MITの機械工学の学生たちのスピンアウトとして話題になった。最初は学生食堂で配膳の自動化を手がけたが、その後、ボストンで自動化レストランを2店開いた。買収が決まってもSpyceのレストランは営業を続けると告知している。

最終的にSweetgreenは、Spyceの技術をレストランに取り入れるつもりだ。ただしチェーン店は全米に120以上あるため、行き渡るまでには時間がかかるだろう。

画像クレジット:Spyce

SweetgreenのCEOで共同創業者のJonathan Neman(ジョナサン・ネマン)氏は、声明で次のように述べている。「多くの人たちに本物の食べ物を提供して、健康的なファストフードの大型チェーン店を次世代のために作りたいと考えています。Spyceには、そのビジョンにぴったりの最新技術があります。両社の、各分野最高のチームが力を合わせれば、チームのメンバーの仕事の内容を高めることができ、顧客にはもっと均質な体験を提供して、本物の食べ物を多くのコミュニティに広げていけるでしょう」。

ピザと同様に、サラダも初期の食品自動化の明確なターゲットだ。人気があり、比較的簡単に自動化できる。基本的には、さまざまなシュートの材料をボウルに混ぜ合わせるだけだからだ。

Sweetgreenは、従業員がすぐにクビになることはないと声明の最後に付け加えている:

「高度なテクノロジーと一緒に仕事をすることによって、チームのメンバーは料理の調整準備やホスピタリティにより集中できるようになります。教育訓練と人材開発への投資を増やし、チームのメンバーをサポートしてヘッドコーチになってもらいます。テクノロジーに関心のあるチームメンバーは自らスキルを磨いて、Spyceの技術の運用やメンテナンスを担当してもらいます」。

買収の完了は、第3四半期を予定している。価額などの条件は公表されていない。

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SFのようにロボットがその人に合わせた料理を作る自動化食堂Karakuri
画像クレジット:Spyce

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(文:Brian Heater、翻訳:Hiroshi Iwatani)

有料ニューズレターのSubstackがサブスクソーシャルアプリ「Cocoon」のチームを買収

サブスクリプション方式のニューズレターを作れるプラットフォームとして最大のサービスであるSubstackが、同じくサブスクリプション方式で親密な友人たちのためのソーシャルメディアを提供しているCocoonを買収したことを発表した。

TechCrunchはこのY Combinatorで育ったスタートアップが、Lerer Hippeauがリードするシードラウンドで300万ドル(約3億3000万円)を調達した2019年11月に取り上げたことがある。それから間もなくパンデミックがやってきて、互いに親しい者同士がソーシャルメディアでコミュニケーションする方法も激しく変わった。Cocoonの初期の提案は「親友のためのソーシャルネットワーク」というもので、それは前から多くの人がやっていた文章によるグループの、ちょっと高級なものだと考えられていた。しかしながらやがてCocoonは進化して、ユーザーは自由に微調整できるもっとオープンなソーシャルサークルになっていった。ユーザーはアプリでテキストや写真のアップデートを共有できる他、モバイルの位置データやフィットネスの成績など、自動的に更新されるデータを友だち同士のSlackのチャンネル風フィードで共有できるようになった。

アプリの共同創業者であるSachin Monga(サチン・モンガ)氏とAlex Cornell(アレックス・コーネル)氏は、Facebookのプロダクト部門にいたときに出会った。

多くのネットワーキングアプリと違い、Cocoonは広告やユーザーデータを収益源にせず、月額4ドル(約440円)のサブスクリプションをユーザーに押し付けて収益を得ていた。Substackによると、Cocoonは今後も独立して運営されるが、買収したのは立ち上がったばかりのCocoonアプリではなく、小さなチームだという。最近のSubstackは、ニューズレターを書いている人たちのネットワークによるコミュニティ作りに熱心であるため、自らのプラットフォームの機能を進化させるためにより多くの人材を求めていることは驚くことでもない。

3月にこのスタートアップは6億5000万ドル(約715億4000万円)の評価額で6500万ドル(約71億5000万円)のシリーズBを完了した。そもそも最近ではFacebookもTwitterもニューズレターというメディアに関心を示しているため、Substackは今後ますます有望と思われる分野を支えていくに十分なキャッシュを入手できたことになる。実は、Cocoonの前にも小さなスタートアップをいくつか買収している。2021年8月初めにはディベートのプラットフォームLetterを額非公表で買収した。5月には、コミュニティづくりのコンサルタント事業People & Companyを人材取得の目的で買収している。

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(文:Lucas Matney、翻訳:Hiroshi Iwatani)

英国の競争・市場庁が、NVIDIAのArm買収に「競争を阻害するおそれがある」との懸念を示す

英国の競争監視機関は、NVIDIA(エヌビディア)が計画しているチップ開発メーカーのArm(アーム)の買収について、深刻な懸念を示した。

この評価は現地時間8月20日、英国政府によって発表された。同政府は今後、競争・市場庁(CMA)に買収案の詳細な調査を依頼するかどうかを決定することになる。

CMAが政府に提出した報告書の要旨では、この買収が実行された場合、合併後の企業は、NVIDIAと競合する半導体チップおよび関連製品を製造する企業が使用するArmのIP(知的財産権のある設計データ)へのアクセスが制限することで、競合企業NVIDIAの競争力を損なう能力と動機を得ることになるという懸念が示されている。

CMAは、競争がなくなると、データセンター、ゲーム、IoT(モノのインターネット)、自動運転車など、多くの市場でイノベーションが阻害され、その結果、企業や消費者にとっては、製品が高価になったり、品質が低下したりする損害を招く恐れがあると懸念している。

NVIDIAが提案した行動的問題解消措置は、CMAによって拒否された。CMAは合併案について競争の面で詳細な調査を行う「第2段階」に移行することを推奨している。

CMAの最高責任者を務めるAndrea Coscelli(アンドレア・コシェリ)氏は、次のようにコメントしている。「我々は、NVIDIAがArmを支配することによって、NVIDIAの競合他社が重要な技術へのアクセスを制限されるという深刻な問題を引き起こし、最終的に多くの重要かつ成長している市場におけるイノベーションが阻害されることを懸念しています。その結果、消費者が新しい製品を入手できなくなったり、価格が上昇する可能性があります」。

「チップテクノロジー業界は、数千億円規模におよび、企業や消費者が日々利用している製品に欠かせません。これには、経済全体のデジタルビジネスを支える重要なデータ処理およびデータセンター技術や、ロボット工学や自動運転車などの成長産業にとって重要な人工知能技術の将来的な開発も含まれます」。

NVIDIAにコメントを求めたところ、以下のような声明が送られてきた。

私たちはCMAの最初の見解に対応し、政府が持つ懸念を解決することができる機会を楽しみにしています。当社では依然として、この買収がArmとそのライセンス企業、市場競争、そして英国にとって有益であると確信しています。

英国のデジタル・メディア・文化・スポーツ省は、同省のウェブサイトに掲載された声明の中で、英国のデジタル担当長官が現在「報告書全文に含まれる関連情報を検討中」であり、CMAに「第2段階」の調査を依頼するかどうかの決定を「そのうち行う」と述べている。

「この決定を下すための期間は定められていませんが、不確実性を低減するため、合理的に実行可能な範囲で、早急に決定を下す必要性を考慮しなければなりません」と、声明では付け加えている。

この買収案は英国内でかなりの抵抗に直面しており、Armの共同設立者の1人を含む反対派は、合併が阻止されることを求めている。

関連記事:NVIDIAのArm買収に国家安全保障上の懸念を理由に英国政府が介入
画像クレジット:Bloomberg / Getty Images

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(文:Natasha Lomas、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

Adobeがビデオ・クリエイティブの雄Frame.ioを1400億円超の巨額で買収

米国時間8月19日、AdobeはFrame.ioをキャッシュ12億7500万ドル(約1400億円)で買収したことを発表した。ビデオレビューとコラボレーションを中心とする同プラットフォームは、現在100万以上のユーザーが利用している。

2014年に、ポストプロダクション企業のオーナーEmery Wells(エメリー・ウェルズ)氏と技術者のJohn Traver(ジョン・トラバー)氏がニューヨークで創業したFrame.ioは、駆け出しの映画作家が直面するワークフローの問題を解決することを目的としている。

今やFrame.ioのプラットフォームは、プロのクリエイターたちをサポートし、ビデオの制作過程を合理化、ラッシュや台本、ストーリーボードなどのメディア資産を集中管理したり、フレーム単位のフィードバックやコメント、注釈、リアルタイムの承認などを受け入れる。また同社は、VimeoやBox、Dropboxなどの他社よりもアップロードが速いことが自慢だ。

Frame.ioはこれまで9000万ドル(約98億9000万円)のベンチャー資金を調達し、2019年の11月にはInsight Partnersがリードする5000万ドル(約54億9000万円)のシリーズCを発表している。これには、Accel、FirstMark、SignalFire、そしてShasta Venturesが参加した。2015年に同社のシードとシリーズAのラウンドをリードしたのはAccelだった。

Adobeによると、Frame.ioはPremiere Proやビデオ編集のAfter Effectsなどのようなクリエイティブのソフトウェアと、レビューや承認などの機能性が組み合わさって、ビデオ編集の工程を動かすコラボレーションプラットフォームを作り出す。Frame.ioのウェブプラットフォームは、それが顧客の既存の工程の一部になれるように設計されており、たとえばAdobe Premiere Proのようなノンリニア編集システムの統合もできる。そういう統合があるために編集者はFrame.ioに直接アップロードでき、プロダクトを内部的にも、あるいは外部顧客と共同でも編成したり共有ができる。

Adobeは今日の声明で次のように述べている。「最新の娯楽作品のストリーミングであれ、あるいは運動に点火するソーシャルメディアであれ、また何千人ものリモートワーカーを結びつける企業のビデオであれ、今やビデオの創造と消費はとてつもない成長を経験しています。しかし今日のビデオのワークフローは複数のツールと、ステークホルダーのフィードバックを誘うために使われている複数のコミュニケーションチャネルによって分断されています。Frame.ioは映像のリアルタイムのアップロードとアクセス、そして全作業面にわたる安全でエレガントな体験としてのステークホルダーのインラインコラボレーションを可能にして、ビデオのワークフローの非効率を排除します」。

今回の買収はAdobeの2021会計年度の第4四半期中に完了すると予想され、その過程には規制当局からの承認や慣例的な完了条件が含まれる。完了後にウェルズ氏とトラバー氏はAdobeに加わる。ウェルズ氏はFrame.ioのチームの統轄を続け、Adobeのプロダクト担当最高責任者(CPO)でCreative Cloudの執行副社長でもあるScott Belsky(スコット・ベルスキー)氏が直接の上司となる。

ForresterのシニアアナリストであるNick Barber(ニック・バーバー)氏は、ビデオは人間の感情にインパクトを与える最強のメディアであり、今後ますます多くの企業がビデオを利用していくと考えている。

バーバー氏によると「Frame.ioがAdobeの傘下に入ったことによって、同僚たちと一緒に行うビデオ編集が、まるでGoogleドキュメント上のコラボレーションのようになるだろう。この買収よってAdobeはクリエイティブの工程の一段高いところに属することになるが、そんなAdobeにとってこの買収における最大のチャレンジは、大型のプロダクションハウスではなくて、ためらいや予算制限のあるブランドにこの買収の成果を積極的に採用してもらうことだ」という。

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画像クレジット:Frame.io

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(文:Mary Ann Azevedo、翻訳:Hiroshi Iwatani)

Salesforceが約3兆円で買収したSlackとの初の統合を発表

2020年12月にSalesforceSlackを277億ドル(約3兆300億円)で買収したとき、Salesforceには大きな計画があるはずだと思わずにはいられなかった。米国時間8月17日、Salesforceは同社顧客の利便性を向上させる統合の第一歩を発表した。

SalesforceのSlack担当シニアバイスプレジデントであるRob Seaman(ロブ・シーマン)氏は、Slackは同社を前進させるコミュニケーションプラットフォームであると考えている。シーマン氏は「Slackを、Salesforceユーザーとそのコミュニケーション、業務、ワークフロー、プロセスとアプリにおけるメインのエンゲージメントの場にしたいと真剣に考えています」と語る。

同氏は「我々が今回発表するのは、セールス、サービス、マーケティング、分析に適したSlackのビジョンに対応する新しい機能です。こうした分野のために我々が取り組んでいるのは、この新しい世界においてセールス、サービス、マーケティングの組織をどのような形にできるか、どのような形にすべきかをベストプラクティスと体系化の両方に関して明確に示すことです」と述べた。

外部のエンタープライズアプリを統合できるSlackの優位性を活かすことで、連携してSalesforceのさまざまなタスクの高速化と自動化を図り、状況に応じて切り替えをしなくてもすばやく簡単に使えるようにすることを目指している。

手始めとして、Sales Cloudに専用のディールルームが設けられる。これは財務などの社内部門や製造チーム、外部パートナーなど、コンプレックスセールスに携わるあらゆる人がセールスサイクル全体を通してSlack内に集まり、販売活動全体の動きに関して常に最新情報を把握できる場だ。

シーマン氏は次のように説明する。「ディールルームは、SalesforceからSlack内で顧客やパートナーも含めて誰もがつながって効果的に業務ができる、とてもシンプルな方法を表したものと考えています。このような場面でSlack Connectは(外部パートナーを接続することができ)極めてパワフルです。結果としてセールスサイクルを劇的に短くできると思います」。Slack Connectは2020年に発表されたサービスで、これを利用するとSlackユーザーが社外の人とつながることができる。

統合すれば、複雑な取引に関わっているセールスチームのメンバーが日々最新情報を得ることができる。情報は自動でSlackに集められ、これには各人の日々のタスクリスト、ミーティング、取引の優先度などが含まれる。

サービスチームは、Salesforceがスウォーム(「群れ」の意)と呼ぶ部屋に集まり、具体的な質問や問題についてお互いに助け合うことができる。取扱製品が多い企業では、回答をすばやく得ることができて特に役に立つだろう。SalesforceのAIプラットフォームであるEinsteinで関連するコンテンツを推奨することはできるが、もっと具体的な質問があってそれに関する知識を持つ人がいるならスウォームが有用だろう。サービスチームのメンバーは、すばやく質問に答えたり問題を解決したりすることのできる専門家を検索してスウォームに招待することも可能だ。

マーケティング部門にも恩恵があり、Salesforceが2018年に買収したDatoramaを活用してインテリジェントなインサイトを得られる。マーケティングキャンペーンに変更があれば、マーケッターはSlack内で定期的に最新情報を把握できる。

そして、Salesforceが2019年に157億ドル(約1兆7200億円)で買収したTableauとの統合もある。こうして改めて見るとSalesforceは買収に貪欲な企業だ。マーケッターがキャンペーンの最新情報を把握するのと同様に、Tableauで重要と思われるデータがアップデートされるとすぐにSlackがアップデートされる他、重視している指標に関するその日のまとめもSlackで見ることができる。

シーマン氏は、今回の発表は第一歩でSlackとのさらなる統合は2021年9月に開催される顧客向けカンファレンスのDreamforceで、そして今後数カ月間で公表すると約束した。同氏は「これはほんの始まりで、今回発表したセールス、サービス、マーケティング、分析の4つの分野に関するSalesforceとSlackの統合は今後広がり続けます。そしてさらにSalesforceの(製品ファミリーである)あらゆるクラウドや業界向けソリューションも統合に取り組んでいます」と述べた。

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カテゴリー:ネットサービス
タグ:SalesforceSlack買収チャットツール

画像クレジット:Bloomberg / Getty Images

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(文:Ron Miller、翻訳:Kaori Koyama)