AWSがマネージドKafkaサービスをローンチ、難しいセットアップや管理からデベロッパーを解放

Kafka(Apache Kafka)は、データストリームの入力を〔緩衝バッファ的に〕扱うオープンソースのツールだ。しかし強力なツールだけに、そのセットアップや管理は難しい。そこでAmazonのAWSは、Kafkaの難易度を下げるために、管理をAWSが担当するクラウドサービスとしてのKafka、Amazon Managed Streaming for Kafkaをローンチした。長い名前だけどこれは、AWS上で完全に管理される可用性の高いサービスだ。今それは、公開プレビューで提供されている。

AWSのCTO Werner VogelsはAWS re:Inventのキーノートで、従来のKafkaユーザーはクラスターをAWS上にセットアップするために重労働をし、またスケーラビリティもエラー処理も自分で面倒見なければならなかった、と述べた。“失敗するたびにクラスターとメインノードのすべてをリスタートするのは悪夢だった。そんな重労働を、AWSなら肩代わりできる”、と彼は言う。

AWSには、Kafkaと似たようなストリーミングデータの入力ツールKinesisがある。しかし現状では、Kafkaを使っているアプリケーションの方が圧倒的に多い。そういうデベロッパーをAWSがユーザーとして維持しあるいは取り込むためには、マネージドKafkaが絶好の誘導路だ。

例によってAWSのサービスは料金体系が複雑だが、Kafkaのベーシックなインスタンスは1時間21セントからスタートする。しかしインスタンスが一つだけという使い方はあまりないので、たとえばKafkaブローカーが三つで大きなストレージなどが付くと、月額500ドルはゆうに超えるだろう。

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韓国検察、サムスンの折り曲げディスプレー技術を中国企業に流出させたグループを起訴

韓国の検察は、サムスンのフレキシブルOLEDディスプレーに関する情報を中国企業に売り渡したとして、韓国企業Toptecの最高責任者と社員8人を起訴した。情報提供によりToptecは1380万ドル超を受け取ったとBloombergは報じている。

ディスプレイ関連の装置を製造するサムスンのサプライヤーであるToptecは声明で容疑を否認した。「我々の会社は決してサムスンディスプレーのテクノロジーまたは企業秘密を中国のクライアントに提供していない。法廷で真実を証明するために、あらゆる法的手続きをとる」。Toptecの株価はこの記事執筆時点で20%下落している。

サムスンのフレキシブルディスプレーと聞くと、今月初めに披露されたばかりのサムスンのまだ発売されていない奇妙な折りたたみスマホをおそらく思い浮かべるだろう。その折りたたみ角度が、かなり前の端末Galaxy S6 Edgeほど鋭角でなくても、サムスンはここしばらくフレキシブルディスプレーの開発に注力してきた。

かなりの中国企業がフレキシブルディスプレースマホの開発に取り組んでいるが、今回の起訴には中国企業は含まれていない。

韓国の国家的関心はサムスンの商取引と深く絡み合っていて、知的財産の中国への流出という脅威を、韓国は深刻に受け止めているようだ。我々はサムスンにコメントを求めている。

イメージクレジット: Justin Sullivan

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(翻訳:Mizoguchi)

AWSがサーバーレスLambdaの機能を多様化、複数のプログラミング言語をサポート

AWSは2015年にLambdaをローンチし、それによってサーバーレスコンピューティングが広く利用されるようになった。ユーザーはイベントトリガーとなるコードを書き、それを動かすための計算処理やメモリ、ストレージなどの手配はすべてAWSが担当する。今日(米国時間11/29)ラスベガスで行われたAWS re:Inventで同社は、Lambdaをもっとデベロッパーフレンドリーにするいくつかの新しい機能を発表した。サーバーレスは複雑性を減らしてくれるが、でもそれが成熟するためにはより高度なツールが必要なのだ。

デベロッパーは、コードは書くけどその実行に必要なサーバーの心配はしない。だからサーバーレスと呼ばれる。すべての面倒をクラウドベンダーが見てくれて、イベントの実行に必要なリソースの手配をすべて行なう。デベロッパーは、インフラストラクチャまわりのコードを書く必要がなくなり、アプリケーションが仕事をするために必要なコードだけを書けばよい。

AWSのやり方は、とにかく最初に何かをベースサービスとしてリリースし、顧客の利用とともに要求が増えてくると、サービスの機能を増やしていく。AmazonのCTO Werner Vogelsが木曜日(米国時間11/29)のキーノートで指摘したように、デベロッパーたちはツールについてよく議論をするが、それを聞いていると、誰もが自分の仕事のためにほしいツールのアイデアを持っていることが分かる。

そこで最初に同社は言語に着目して、新しい言語のサポートを導入した。たとえばRubyを使っているデベロッパーは、これからはRuby Support for AWS Lambdaを使って、“LambdaのファンクションをRubyに合ったコードで書き、それらをAWSの上で実行できる。Ruby用のSDKはLambdaの実行環境にデフォルトで含まれている”、とAWSのChris Munnsが、この新しい言語サポートを紹介するブログ記事で述べている。

C++派の人たちのためには、C++ Lambda Runtimeが発表された。また、これら以外の言語のためには、Lambda Runtime APIが新たに用意された。AWSのDanilo Pocciaはブログ記事でこれを、“ファンクションの開発に、さまざまなプログラミング言語やその特定のバージョンを使えるための、シンプルなインタフェイスだ”、と説明している。

またIDEに関しては、PyCharm, IntelliJ, そしてVisual StudioのサポートがLambdaに導入された(現状はプレビュー)。

AWSは、言語とIDEのサポートだけで満足していない。たしかにLambdaは(一般的にサーバーレスは)デベロッパーのためにあるレベルまでの複雑性を取り去ってくれるが、でもサーバーレスのアプリケーションは簡単なイベントトリガーだけではない。より高度なサーバーレスアプリケーションでは、システムレベルの要素を持ち込んだり、複数の部位をまとめたりしなければならない。Vogelは今日のキーノートで、このことを指摘した。

そこで複雑高度なサーバーレスアプリケーションのためにAWSが導入したのが、Lambda Layersだ。それは、彼らの説明によると、“複数のファンクションが共有するコードとデータを管理する方法”だ。それは複数のファンクションが使用するカスタムコードでもよいし、ビジネスロジックを単純化するためのコードを共有するような場合でもよい。

Lambdaの成熟と共に、デベロッパーの要求もうるさくなる。今回のさまざまな発表は、それらのニーズに応える努力の一環だ。

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ロボティック外骨格のRoam、ヤマハ発動機などから1200万ドル調達

ベイエリア拠点のロボティック外骨格会社Roamは、シリーズAで1200万ドルを調達したと発表した。このラウンドはヤマハ発動機が主導し、Boost VC、Heuristicsキャピタルパートナーズ、Menloベンチャーズ、R7パートナーズ、Speroベンチャーズ、Valorエクイティパートナーズそしてベンチャー インベストメントアソシエイツが出資した。これによりRoamの累計調達額は約1500万ドルとなった。

投資家たちは当然のことながら産業労働者やモビリティへの応用がきくこの分野について強気だ。もちろんRoamにはロボティック外骨格分野で有名なEksoやSuitXといった競合相手がいる。しかしながら、これまでのところRoamはスキーヤーにフォーカスした製品でもってニッチ分野を開拓したようだ。

3月に発表されたElevateは、今度のクリスマス休暇にタホ湖のいくつかのロケーションで、その後プレジデント・デーの祝日にはユタ州・パークシティでデモレンタルを行う。今回の資金は、初の製品のセールスやマーケティングを後押しするのに使われる。

資金調達に加え、ヤマハのパートナーAmish ParasharとSperoのジェネラル・パートナーShripriya MaheshがRoamの取締役会に加わる。今回のディールについてのコメントは以下のとおりだ。「ロボティック外骨格を入手しやすい価格にし、またスケール展開できるものにし、さらにはパワフルにすることで、Roamは広範に受け入れられるための最大の障壁を取り払うことができた。我々は、このプロダクトがいつの日か新たなスリリング体験をつくりだしたり、人のモビリティをサポートしたりするのに普通に使われるようになると想像している」。

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(翻訳:Mizoguchi)

駐車場予約アプリ「akkipa」、他ユーザーよりも早く予約可能な有料会員プラン開始

駐車場予約アプリ「akippa(あきっぱ)」を運営するakippaは11月30日、会員向けサービスとして、駐車場を通常ユーザーよりも1〜3時間早く予約できる新サービス「先行予約オプション」を開始すると発表した。

akippaは、ユーザー間で駐車場を貸し借りするシェアリングエコノミー型のサービスだ。使っていない自宅駐車場やちょっとした空き地など、遊休スペースを保有する個人や事業所は、そのスペースを駐車場として貸し出すことで収益を得ることができる。一方、駐車場を探しているユーザーは、アプリから自分の目的地に近い駐車場を検索して15分単位で予約することが可能だ。

TechCrunch Japanが2018年11月に取材したところによれば、akippaの無料会員数はサービスリリースから約4年半で100万人を超えた。サービスに掲載されている駐車場の数も順調に増え、全国24000箇所となった。akippaは駐車場料金の50%を手数料として受け取り、残りの50%は遊休スペースオーナーの取り分となる。

今回発表した先行予約オプションでは、1ヶ月プラン、3ヶ月プラン、6ヶ月プラン、12ヶ月プランの4種類を用意。それぞれ月額換算で300円の値段設定となっている。このプランに申し込むと、1ヶ月プランのユーザーは通常ユーザーよりも1時間早く、3ヶ月以上のプランに申し込んだユーザーは通常より3時間早く予約できるようになる。

akippaによれば、スポーツの試合やアーティストのコンサートなどの周辺では需要が極端に高くなり、駐車場がすぐに満車になってしまうという。そういったシチュエーションでは便利なオプションとなる。

ただ、一見するとakippaが新しいマネタイズ手段として月額課金を初めたかのように思うニュースだけれど、実はそうじゃない。akippaによれば、この課金プランはマネタイズのための施策ではないと話す。

その証拠に、akippaは先行予約オプションに加入するユーザーに対し、プランの月額換算料金である300円以上のクーポンを渡す。だから、ユーザーは実質無料で利用でき、akippaの実入りもない。akippaは「休日やイベントの際など、限られたシチュエーションだけ使うユーザーも多い」と話し、そういったユーザーに先行予約というメリットを提供してプランに加入してもらい、彼らにクーポンも渡すことで日常的な利用も促したい構えだ。

Nintendo Switch、2019年に販売台数でPS4を上回るとの予測(Strategy Analytics)

NintendoのSwitchは、あらゆる意味で怪物ヒット商品だ。この2ウェイコンソールは、Wii Uの失敗とスマートフォン参入の遅れで数年間苦闘にあえいでいた同社にとって真の成功といえる。

Strategy Analyticsの予測はさらに明るく、Nintendoは来年ゲームコンソールの販売でSonyを超えるという。その差はごく僅かで、NintendoがSwitchを1730万台売り、SonyがPS4/PS4 Proを1710万台売るという予想(Microsoftは大きく離れた3位で1000万台) だが、印象的な出来事であることに違いない。

Nintendoにとってトップに立つのは10年ぶりでWii/PS3/Xbox 360の日々以来だ。同社はこのゲームコンソール最大のタイトル発売を準備している。新作のSuper Smash Bros.[大乱闘スマッシュブラザーズ SPECIAL]は来週発売予定で、2019年にハードウェア改訂の噂もある。Nintendoにとってはごく標準的な流れだ。

こうした販売状況はNintendoをトップに押し上げる力になっているが、ユーザーベース全体では依然としてSonyが大きくリードしており、現在のゲーム機ユーザーの約半数を占めている——その84%がPS4だ。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

Spikeは糖尿病患者をソーシャルに見守るアプリ

糖尿病患者にとって、自分の血糖値レベルを常に監視しておくことは容易ではない。 Spike Diabetesは、家族と医者が患者の状態をリアルタイムで本人に通知できるようにするサービスだ。さらに患者がレストランに入ると、AI機能を使って糖尿病に優しい食事をアプリが推奨する。

本日(米国時間11/19)TechCrunch Disrupt Berlinのスタートアップバトルフィールドに登壇したSpike Diabetesは、許可を受けた家族が患者の詳細データを見て、健康を維持するための助言を与えられるGuardian Portalを公開した。

「糖尿病は不治の慢性疾患で、患者は生涯糖質とインシュリンの管理と共に過ごさなくてはならない」とSpikeの共同ファウンダーZiad Alameは言う。「糖尿病患者は生涯にわたってその日常的な作業を強いられるため、その厳しさゆえに道を外れてしまうことがある。そして家族は愛する人について何も知らない状態に置かれてしまう」

医者は年に2~4回の定期検診でデータを知るだけで、患者は一人で戦わなければならないことが多い。生涯続く管理は非常にストレスがたまる——命がかかっていればなおさらだ。

このスタートアップは、患者の生命徴候をモニターすることを謳う文字通り数百ものアプリとの厳しい競争に直面している。MySugr、Diabetes Connect、Health2Syncらが主要なライバルだ。しかし、多くのアプリでユーザーは複雑なスプレッドシートで自分の数値を管理しなくてはならない、とAlameは言う。

Spikeはカスタマイズ可能なグラフに加えて、データの音声読み上げ機能も提供して、日々の生活を安全に過ごせるようにしている。Spikeは招待制でiOSのみだが、Apple Watchアプリも提供されていて、バッテリー消費を最小限にしていると自慢している。

「Spikeは私自身が糖尿病生活で危機を迎えたあと、正しい服薬を助けるための個人プロジェクトとしてスタートした」とAlameが私に話した。彼はその問題を、慈善プログラムGivilngLoop、TeensWhoCodeサマーキャンプ、アラブ世界のためのクラウドファンディングサイトZoomalなどのCTOとしての経験と結びつけた

Alameは糖尿病患者、エンジニア、研究者らを集め、20万ドルのシード資金をMEVP、Cedar Mundi、およびPhoenician Fundsから調達した。彼らは愛する家族と医者を輪の中に取り込むことで、Spikeのフリーミアムアプリの有料プレミアム版が口コミで広がって長く続いてきた競争に打ち勝つことに期待している。

このアプリでもっとも興味深い機能の一つが事前情報の配信だ。「たとえば、午後2時頃にマクドナルドに入ると、Spikeは昼時だと知って適切な糖質量メニューのトップ3を推奨する」とAlameは言った。

「一定時間(~25分)経過後、Spikeはインシュリンの通知を与え、糖分測定装置と同期してデータを記録する。時間とともにアプリは患者の嗜好を理解し、Spikeはちょっとした行動の改善を提案する。例えば歩行経路の変更や、患者の好みにあった食事をより少ないインシュリン消費で食べられる店を推奨する。

Alameは冗談まじりにこう言った。「Spikeにとって最大のリスクは、最良の結果でもある——糖尿病の治療法が見つかることだ」。しかし、たとえそれが起きたとしても、Spikeの監視と助言の機能は別の病気にも役立つだろう。しかし現時点では、このアプリを使えば糖尿病を簡単に管理できることをユーザーに確信させる必要がある。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

ホワイトハウス、テック大企業トップと‘世界を変えるアイデア’で話し合いへ

Google、Microsoft、Qualcomm、そしてOracleのトップは来週の木曜日、米国のイノベーションに焦点を当てて‘大胆かつ世界を変えるアイデア’について話し合うためにホワイトハウスに足を運ぶ。

The Wall Street Journalによると、‘円卓会議式’のミーティングは5GからAI、量子コンピューティングに至るまで、ホワイトハウスの電子メール言うところの‘未来の産業において米国がリーダーシップを確保するのを手伝うような’幅広い最先端技術について話し合われる見込みだ。

トランプ政権と多くのテック大企業との間では、LGBTQの人権や入国管理といった社会的問題から関税に至るまでの政策決定をめぐり、緊張が長く続いた。そうした経緯を踏まえての今回のミーティングだ。

以前あったホワイトハウスでのミーティングに参加し、その後トランプがワシントンポスト紙のオーナーJeff Bezosを特に攻撃するにつれて政権との不和が深まったAmazonの不在が目立つ。TwitterやFacebook、Googleもメディアの偏見と‘シャドーバンニング’ について大統領の攻撃対象となっている。

Satya NadellaやSundar Pichai(Pichaiは前日に議会で証言もする予定だ)といったCEOとともに、カーネギーメロン大学の学長Farnam Jahanian、プライベートエクイティ会社BlackstoneのSteve Schwarzmanも出席する。

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(翻訳:Mizoguchi)

ユーザーが自分のクラウドの正しい使い方をチェックできるAWS Well Architectedツール

2015年からAWSは、システム設計のチームを顧客元へ派遣して、彼らのAWSの使い方の正否をチェックしてきた。今日(米国時間11/29)同社が発表したツールWell Architectedを使うと、顧客はそのチェックを、自動化された方法で自分でできるようになり、人間コンサルタントの助力が要らなくなる。

AmazonのCTO Werner Vogelsがラスベガスで行われたAWS re:Inventのキーノートで述べたように、同社社内の人間チームが何千もの顧客のニーズに対応して、彼らのAWSベストプラクティスをチェックすることは困難である。資格を与えた複数のパートナーの起用も試みたが、それでも需要の大きさには対応できなかった。

そこで、いかにもAWS的なやり方として同社は、顧客が自分で、オペレーションやセキュリティ、信頼性、費用の最適化、性能効率などを測定できるサービスを作ることにした。顧客はこのツールを自分が使っているAWSサービスに対して動かし、上記5つのチェック項目に関する完全な測定レポートを得ることができる。

AWSのチーフエヴァンジェリストJeff Barが、このサービスを紹介するブログ記事でこう言っている: “これは、あなたがクラウドを確実に正しく、そして上手に使うためのツールだ”。

人間がユーザーのシステムを分析するのではなく、ユーザーが一連の質問に答えていくと、その答に基づいてレポートが生成される。そのPDFのレポートには、ユーザーの現状に応じた勧奨事項がすべて書かれている。

画像提供: AWS

人間コンサルタントとの会話に比べるときめ細かさに欠けるのでは、という疑念もあるが、これをもっと詳細な問題解決に向けてのスタートラインと考えてもよい。サービスは無料だから、ユーザーが費用的に失うものはないはずだ。

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AIが1秒で契約書をレビューする「LegalForce」が5億円を調達、β版は約3ヶ月で70社が導入

AIを搭載した契約書レビュー支援サービス「LegalForce」を提供するLegalForceは11月30日、ジャフコ、京都大学イノベーションキャピタル、ドリームインキュベータを引受先とした第三者割当増資により約5億円を調達したことを明らかにした。

今回の資金調達は8000万円を調達した4月のシードラウンドに続く、シリーズAラウンドという位置付け。同社では開発体制や人材採用を強化し、正式版のリリースに向けてプロダクトの拡充に力を入れてる。

AI活用のレビュー支援と契約書データベースで法務の負担を削減

以前紹介した通りLegalForceは森・濱田松本法律事務所出身の2人の弁護士が2017年に創業したスタートアップだ。弁護士としての経験に、京都大学と共同で研究開発を進める自然言語処理技術、万単位の契約書を分析することで得た知見を統合。法務担当者の契約書レビュー業務を支援するソフトウェアを開発してきた。

メインの機能は、サービス上にアップロードされたWordの契約書を瞬時にレビューする「レビュー支援」と、契約書データベース内での「キーワードによる条文検索」の2つ。これらによって契約書に潜むリスクの判定から、条文例のリサーチまでを一括でサポートする。

実際に使う際はLegalForce上に契約書をアップロードした後に、契約書の類型や自社の立場などレビュー条件を指定する。その上でレビューを実行すると自社に「不利な条文がないか」「欠落している条項がないか」を約1秒でチェック。リスクや抜け漏れのある部分が検出されるとともに、該当する箇所の修正文例が提示される。

8月のオープンβ版リリース時には秘密保持契約(NDA)のみが対象で、レビュー結果もCSVでダウンロードする必要があったけれど、現在は業務委託契約など5類型に対応。結果もブラウザ上ですぐに確認できるようになった。

また代表取締役CEOの角田望氏の話ではレビューの精度もリリース時より向上しているそう。たとえば初期から提供していたNDAの場合、8割ぐらいだった精度が今では9割5分くらいまで上がってきているという(精度は類型によっても異なる)。

LegalForceには類型ごとにチェックリストが搭載されていて、アップロードした契約書が各項目にヒットするかどうかをAIが判定する構造。精度が8割の場合だと10個コメントが表示された時、そのうち2つが間違えているようなイメージだ。

「自分自身もレビュー業務で使ったりするが、8割の精度では『まぁまぁ間違えているな』という感覚だった。これが9割5分まであがると『基本的には大丈夫』に変わる。実際に使ってもらっている現場のユーザーからも、かなり業務が楽になったという声が多い」(角田氏)

同サービスはそもそも支援ソリューションであり、法務担当者を完全に代替するわけではなく「単純な繰り返し業務をサポートする」もの。人間のチェックとAIのチェックを合わせることで、効率的かつ抜け漏れのない契約書レビューを実現するサービスだ。

そのためAIだけでレビューが完結するわけではないけれど、精度があがることでレビュー業務全体のスピードも上がり、法務担当者がより多くの時間を他の業務に使えるような効果が生まれている。

もうひとつのキーワードによる条文検索機能は、あらかじめ過去の契約書や自社のひな形をアップローしておくことで「社内に蓄積されてきた契約書のナレッジ」を有効活用できる仕組みだ。

たとえば損害賠償に関する条項を検討している際に「損賠賠償」で検索すると、データベース内のそ雲外賠償に関連する条文を一覧で表示することが可能。従来は過去のファイルをひとつひとつ開きながら実施していたリサーチ業務の工数を大幅に削減できる点が特徴だ。

3ヶ月で大手企業や法律事務所など約70社が導入

オープンβ版の提供を始めてから約3ヶ月で大手企業や法律事務所を含む約70社が導入(2018年11月時点)。業界問わず、特に上場企業など法務部の専任スタッフが複数名いる規模の企業での活用が進んでいるという。

「特に大企業の法務部ではグローバル展開に向けた海外のリーガルサポートや、ガバナンスに関する難易度の高い仕事が増え、法務の仕事がどんどん拡大している。その一方で日常的な契約書関連の業務も疎かにはできず、各担当者の負担を軽減する仕組みが必要だ。人口減少などもあり法務部の人材を簡単には採用できないような状況だからこそ、LegalForceでは『法務部をどれだけ楽にさせられるか』をテーマにプロダクトを開発してきた」(角田氏)

β版のリリース以降も現場の担当者の負担を少しでも減らすという視点で随時プロダクトのアップデートを実施。新たに追加されたWordのアドイン機能も、その考え方から生まれたものだ。

これは簡単に言ってしまうとLegalForceの機能をWord上でそのまま使えるというもの。裏側ではクラウドと紐づいているので、Wordのアドイン機能を通じてレビューした履歴がクラウド上に残るほか、クラウド版と同じようにWord上でデータベースを活用した条文検索もできる。

実際に顧客にプロダクトを試してもらう中で、1台のPCを使ってブラウザとWordの契約書ファイルを何度も行ったり来たりする担当者の様子を見ていて「単にリスクをAIで判定するだけでは足りないと感じた」(角田氏)ことが背景にあるそう。

法務部の業務フローにギリギリまで寄り添いながら、一方でテクノロジーの恩恵もしっかりと受けられる形を考えた結果として、Wordのアドイン機能というアイデアが生まれたのだという。

今回調達した資金もプロダクトのさらなるアップデートに向けた開発体制や人材採用の強化に用いる方針。レビュー精度の向上のほか、対応類型の拡充や多言語対応、カスタマイズオプションの追加などに取り組む。

現在のβ版は無料で提供しているけれど、2019年の上旬にはいよいよ有料の正式版をローンチする予定。まずはスタートアップ向けのプランを先行で提供した後、大企業の法務部に対応したプランも整えていく計画だ。

フィンテックRevolut、日本とシンガポールで間もなくサービス開始

フィンテックのスタートアップRevolutがアジアマーケットでの事業拡大を吹聴して1年以上になるが、いよいよ実行に移されるようだ。Revolutはシンガポールと日本での事業許可を取得した。2019年第一四半期のサービス開始が見込まれている。

シンガポールでは通貨当局から送金の事業許可が与えられ、プリペイドカード業の承認も得たーこの2つによりRevolutユーザーは預金や送金、使用ができる。日本では金融庁から事業許可を得た。

Revolutによると、こうした許可により当該国でサービスを立ち上げることができる。しかしこれでもって日本とシンガポールで全ての機能が使えるわけではない。規制は国によって異なり、すでに展開している他の国と同じ限度額や機能を提供できないかもしれない。

事業立ち上げにあたっては、Revolutは電子財布と支払いカードにフォーカスしていて、暗号通貨の購入やビジネス口座の開設はできない。こうしたサービス制限は多かれ少なかれ当地の同業者と同じだ。

Revolutによると、日本では楽天、損保ジャパン(SJNK)、凸版とすでに契約を結んでいる。これから想像するに、新たな保険プロダクトや特別なカードデザインなどが提供されるのかもしれない。

RevolutはシンガポールにAPACオフィスを開設する計画だ。Revolutが国外駐在組にサインアップするように呼びかけて終わりとなるのか、それとも本当に欧州外のマーケットにインパクトをもたらすことができるのかみてみよう。

もしあなたが米国かカナダの居住者でRevolutを使ってみたいと思っているのなら、もう少し待つ必要がある。数週間以内に新たなニュースが届けられるとのことだ。

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(翻訳:Mizoguchi)

あらゆるアプリとデバイスに顔認識能力を与えるBanubaが700万ドルを調達

ロンドン中心部の公園を見下ろすViktor Prokopenya(ヴィクトル・プロコペニア)のオフィスに足を踏み入れると、その質素さのあまり、そこがロンドンのビクトリア駅のすぐ南という最上の立地であることをつい忘れてしまう。巨大企業が拡張現実(AR)を「現実の産業」にするために世界で戦っている中、ベラルーシ出身のこの温和なビジネスマンは、その業界に革新的な新技術を投げ込む準備をここでしている。それは、世界最大の企業が今すぐにでも飛びつきたい技術ではあるが、キッチンに立って私にコーヒーを入れてくれたこの人は、そうした大企業の上に立ってもおかしくない人物だ。

目前の将来像が明確であるか否かは別として、十分な投資がなされれば、ARの未来は確かだ。

2016年、ARとVRの業界は、23億ドル(約2億6100億円)相当の投資を引き寄せた(2015年に比べて3倍の伸びだ)。2021年までには1080億ドル(約12兆2500億円)に達すると期待されている。その25パーセントはAR分野に向けたものとなる。しかし、数々の予測によれば、ARは5〜10年後にVRを追い抜くという。

Appleは、明らかにAR開発の先陣を切っている。先日、ARレンズの企業Akonia Holographicsを買収し、今月公開されるiOS 12からは、開発者はARKit 2を完全に使えるようになる。カメラを中心としたアプリの新しい波を起こそうという狙いがあることは、明らかだ。今年、Sequoia Capital Chinaとソフトバンクは、ARアプリ「Snow」に5000万ドル(約56億7600万円)を投資した。Samsungは、独自バージョンのARクラウドを発表し、ワコムとの提携により、Samsung製のSペンをARの魔法の杖に変えた。

IBMとUnityとの提携では、UnityのアプリケーションにWatsonのクラウドサービスを統合することで、開発者は、視覚認識、音声の文字化など、数多くの機能が使えるようになった。

こうした多額の投資やM&Aを見るに、ARの重要性が増していることは疑いようがない。

この戦場に参戦するのが、ProkopenyaのBanuba(バヌーバ)プロジェクトだ。もうすでに、App Storeから「Banuba」というSnapchatに似たアプリをダウンロードできるが、そのベースには、Prokopenyaが資金提供をしているツール一式がある。彼は、AIとARの専門家を擁する投資チームと密接に行動し、ものすごく大きなビジョンを実現しようと努力している。

Banubaの売り文句の中心にあるのは、アプリだけでなく、ハードウエアにも「視覚」を与える技術のアイデアだ。これはAIとARの完璧なマリアージュだ。たとえば、AmazonのAlexaが声を聞くだけでなく、ユーザーの表情や気分を読み取ることができたとしたらどうだろう? それが、この成長途中の企業の、人々の心を掴む強力な戦略になっている。

一般消費者向けのアプリとして名前を売ったBanubaは、去年1年をかけて、彼らのコンセプトを実際の市場で効率的に試すことができたわけだが、これからいよいよ、新しいBanuba 3.0 mobile SDKで、開発ツールの世界に本格参入する(SDKはiOS用がApp Storeで、Android用がGoogle Play Storeでダウンロードできる)。また同社は、Larnabel Ventures、ロシアの起業家Said Gutseriev、そしてProkopenyaのVP Capitalから700万ドル(約7億9500万円)の追加投資を受けた。

これにより、投資総額は1200万ドル(約13億6200万円)となる。ARの世界は、ロミュランのウォーバード戦闘艦がスタートレックの場面に登場したときのような雰囲気になっている。

Banubaは、そのSDKを使うことで、ブランドやアプリメーカーは、そのアプリに3D顔認識ARを埋め込み、ユーザーは最先端の顔の動作追跡、表情の解析、さらに肌を滑らかにしたり顔色を整えたりといった機能が利用できるようになると期待している。BanubaのSDKには、背景を除去する機能もある。映画やテレビ番組でよく使われている「グリーンスクリーン」のようなものだ。これにより、ユーザーが作り出せるARのシナリオの幅が広がる。オフィスの背景を取り除いて、代わりにバハマの海岸の風景を入れるといった魔法のような画像処理が可能になるのだ。

Banubaの技術はデバイスに「視覚」を与えるものであるため、デバイスは人間の顔を3Dで「見て」、たとえば年齢や性別といった、ニューラルネットワークに基づく有用な主題分析結果を抽出できるようになる。他のアプリでは不可能だったことを可能にするのだ。さらに、心拍数をモニターしたり、スペクトル分析で時間ごとの顔色の変化を知ることもできる。

この技術はすでに、「Facemetrix」というアプリに採用されている。これは、子どもの目の動きを追跡して、スマートフォンやタブレットに表示された文章を呼んでいるかを確かめるというものだ。この技術を使えば、人の目の動きを「追跡」するだけでなく、人の目の動きでスマートフォンの機能を操作することも可能になる。それを実現させるために、このSDKは、人の目の微細な動きをサブピクセルのレベルで、リアルタイムに感知できるようになっている。目の特定の位置を検出することもできる。Facemetrixが目指すのは「教育のゲーム化」だ。子どもが電子ブックを本当に読んだかどうかをアプリが正確に検知し、その結果を両親に報告し、子どもにはご褒美のゲームや娯楽アプリを提供する。

この話からドラマ『ブラック・ミラー』のエピソードを思い出した人もいるだろう。脳のインプラントによって特定のものを見えなくされた少女の物語だ。その心配は、そう外れてはいない。ただし、こちらは安全なバージョンだ。

BanubaのSDKには「アバターAR」も含まれている。すべてのiOSとAndroidデバイスで、アバターと会話したりカスタマイズできる機能を提供し、クリエイティブなデジタル・コミュニケーション方法を、アプリ開発者に生み出してもらおうという考えだ。

「私たちは今、既存のスマートフォンから、進化したメガネやレンズといった未来のARデバイスへと切り替わる微妙なところにいます。そのため、カメラを中心としたアプリの重要性は、これまでになく高まっています」とProkopenyaは話す。彼によれば、ARKitやARCoreでは最上位機種のスマートフォンを対象にした機能が作れるが、BanubaのSDKなら、下位機種でも使える機能を開発できるという。

このSDKには、楽しいアバターと会話したり、自分だけのアバターを作ったりできるアバターAR機能があるが、これはすべてのiOSデバイスとAndroidデバイスに対応する。アニ文字が楽しめるのはiPhone Xだけだなんて、面白くないではないか。

Facebookは、Messengerでの企業向けの商品紹介機能に続き、ニュースフィードでのAR広告のテストを開始した。この知らせも、Banubaにとっては有利なものだ。

Banubaの技術は、娯楽アプリ専用ではない。2年足らずの間に、同社は25件の特許申請をアメリカの特許商標庁に出願している。そのうち6件は、平均よりも短い期間に記録的な早さで手続きされた。ミンスクにある同社の研究開発センターには、50名のスタッフが技術ポートフォリオの作成に力を入れている。

面白いことに、ベラルーシはAIと顔認識技術で知られるようになった。

たとえば、2016年を思い出してみると、当時、App Storeで大人気だった動画フィルターアプリ「MSQRD」を開発したミンスクの企業MasqueradeをFacebookが買収している。2017年には、別のベラルーシの企業AIMatterがGoogleに買収されている。200万ドル(約2億2700万円)の資金調達をした数カ月後だ。AIMatterも、モバイル上で写真や動画のリアルタイム編集を行うプラットフォーム「Fabby」を公開し、SDK戦略をとっていた。これは、ニューラルネットワークをベースにしたAIプラットフォームの上に構築されたものだが、ProkopenyaがBanubaに抱いている計画は、もっと大胆だ。

2017年の初めに、彼とBanubaは「Technology-for-Equity」(平等のための技術)プログラムを立ち上げ、世界中のアプリ開発者やパブリッシャーに参加を呼びかけた。これには、また別のベラルーシのスタートアップが加わり、ARベースのモバイルゲームを開発することになった。

AR関連の技術は「実質的にあらゆる種類のアプリを発展させます。どのアプリも、カメラを通して、男性か女性か、年齢、人種、ストレスの度合いといったユーザーの様子を知ることができます」とProkopenyaは話す。そしてそうしたアプリは、さまざまな方法でユーザーに関わってくるという。文字通り、アプリは私たちを見張ることになるのだ。

たとえば、フィットネス・アプリなら、BanubaのSDKを使ってユーザーの顔を見るだけで、どれだけ体重が減ったかがわかるようになる。ゲームも、ユーザーの表情から手がかりを読み取り、そこから得られた情報に基づいて内容を変えるといったことが可能になる。

ロンドンのオフィスに戻り小さな公園を見下ろすと、Prokopenyaは「多様性とエネルギーとチャンスが信じられないほど集中した」ロンドンに、叙情的な気分を抱く。「でも、ひとつだけ気になるのは、イギリスのUK離脱にまつわる不透明さと、今後、イギリスでビジネスをしていく上で、それがどういう意味を持つかです」と彼は懸念する。

ロンドンは偉大な都市かも知れない(これからもそうあるだろう)、しかし彼の机の上に置かれたノートパソコンは、ミンスクに直結している。そこは、今まさに、未来の顔認識技術が生まれようとしている場所だ。

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(翻訳:金井哲夫)

wiARframeはAR体験の開発を容易にすることを狙う

AR(拡張現実)は何年にもわたってバズワードであり続けてきたが、そのほとんどは、ただ物珍しいものというだけに留まっている。本日Disrupt BerlinにおけるStartup Battlefieldに参加したwiARframeは、私たちがまだARゲームの入り口に立っているに過ぎないと考えている。そして市場がさらに進歩するためには、ツールがもっと使いやすくなること、そしてデザイナーたちがAR体験に対してよりよい刺激を得る手段が得られる必要があると考えているのだ。

WiARframeは、こうした問題に、ARデザイナーに対して使いやすいウェブベースを提供してAR体験の構築を行わせ、さらに同社のiOSまたはAndroidアプリをダウンロードした者同士でコミュニティ機能を使ってノウハウを共有できるようにすることで取り組もうとしている。

同社の創業者であるJeremiah Alexanderは、実際のシーンエディターは、他の3Dモデリングツールに似たものになっていると語った。その中では、シーンをレイアウトすることができるだけでなく、それを対話的なものにすることができる。通常開発者たちは、この作業を複雑で多機能なUnityのようなツールの中で行う。しかしAlexanderは、そうしたものを使い始めるためのハードルは、多くの非開発者たちにとってはまだとても高いと主張する。それに対してwiARframeは、AR体験を開発することに特化したツールを提供することで、多くの複雑さを取り除くのだという。「Unityはデザイナー向けではないのです」と彼は私に語った。

3Dモデルを取り込むことができることに加えて、ツールはまたデザイナーたちに、設定や他のアプリ内体験として利用することのできるメニューをシーンに付け加えることを可能にする。

だがAlexanderが強調するように、サービスのコミュニティ面が劣らず重要なのだ。ここでのアイデアは、デザイナーたちに既存のシーンを使って、リミックスすることを可能にするということである。それはMicrosoftがPaint 3DやRemix 3Dで行っていることと似通ってはいるものの、AlexanderはそれをGitHubに喩えることを好んでいる。

GitHubはまた、長期的にはwiARframeのビジネスモデルにインスピレーションを与えるものである。GitHubのように、wiARframeのユーザーはサービスを無料で利用できるが、その場合作品はパブリックなものになる。それらをプライベートなものにするためには、ユーザーは利用料金を支払う必要がある。長期的には、同社はおそらく、さらに機能を追加した企業向けプランを提供することになるだろう。

wiARframeはAlexanderがひとりで創業した会社だが、現在は3人のフルタイム従業員を抱えている。チームは今年の初めにComcast NBCUniversal Techstarsプログラムに参加した。そしてAlexanderはゲームのデザインやその他のデジタル製品に対する広範な経験を持っている。実際に、そのキャリアの初期には、彼はAtariで開発者のためのツールを開発していた。

AlexanderはARの現状を、始めるためには高い技術力が必要とされたウェブの初期の頃になぞらえた。wiARframeの背後にある動機は、ARコンテンツを作成する能力を大衆化することだ。この先消費者のARへの需要が具体化するかどうかが鍵である。もしそうなるならば、もちろんwiARframeのようなツールは、誰にとっても、新しい体験に飛び込みそれを生み出すことを容易にするだろう。

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(翻訳:sako)

AWSが新しい機械学習チップInferentiaを発表

AWSは、いかなる市場のいかなる部分といえども、他社に譲るつもりはない。だが現在機械学習チップと言えば、NvidiaやGoogleのような名前が心に浮かぶ。しかし本日(米国時間11月28日)ラスベガスで開催中のAWS re:Inventにおいて、同社はInferentiaという名前の独自の専用機械学習チップを発表した。

「Inferentiaは非常に高スループットで低レイテンシ、そして安定したパフォーマンスを発揮する非常にコスト効果の高いプロセッサです」とAWSのCEOであるAndy Jassyは発表の中で説明した。

Constellation Researchのアナリスト、Holger Muellerは、Amazonはかなり遅れてはいるものの、多くの企業が将来的には機械学習アプローチを差別化しようとしているため、これは良いステップだと指摘した。

「機械学習操作(理想的には深層学習)を実行する速度とコストが、企業にとっての競争力を与える差別化要因となります。速度による優位性が、企業の(そして紛争を考えたときには国家の)成功を左右するのです。そうした速い速度は、カスタムハードウェアでのみ実現することが可能です。Inferentiaはそうしたゲームに参加するためのAWSの最初のステップなのです」とMuellerはTechCrunchに語った。彼が指摘したように、GoogleはTPUインフラストラクチャを用いて、この件に関しては2年から3年先行している。

InferentiaはINT8(8ビット整数)、FP16(16ビット浮動小数点)および混合精度をサポートする。さらに、それは複数の機械学習フレームワークをサポートする、例えばTensorFlow、Caffe2、そしてONNXなどが含まれる。

当然、Amazonの製品の1つとして、EC2、SageMaker、そして本日新しく発表されたElastic Inference Engineといった通常のAmazon製品からのデータを扱うことが可能だ。

チップは本日発表されたものの、Andy Jassyは、チップが実際に使えるのは来年からになると述べた。

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(翻訳:sako)

Microsoft、軍用ARテック搭載ホロレンズで4.8億ドルの受注

Microsoftは戦闘用のホロレンズARテックの準備をしている。同社は、米軍の兵士が使う一連の武器にARヘッドセット技術を持ってくることを目的とした4億8000万ドルの契約を米政府から獲得した。

契約は2年だが、入札プロセスの書類によると、その後10万台超のヘッドセット注文があるかもしれない。契約の中にあるARに関する文言の一つが、“初の戦闘の前に25の無血戦闘”を可能にする能力を持つこと、だったようだ。これは実戦のトレーニングがARヘッドセットで行われることを意味している。

「AR技術は判断するために多くの高度な情報を軍隊に供給するだろう。今回の契約は我が社と国防省との長期的な信頼関係を未知の分野に広げるものだ」とMicrosoftの広報はTechCrunchあての声明でこう述べた。

Bloombergの報道によると、Magic Leapもこの契約受注に動いていた。軍事契約の入札はおそらくMagic Leapにとって少し荷が重かっただろう。というのもMagic Leapはこれまでコンシューマー向けのものに注力していたからだ。このスタートアップは初のデベロッパー向けキットをリリースしたばかりで、かたやMicrosoftの技術は2年以上にわたってデベロッパーに提供されてきた。

今回の入札に関するいくつかの書類(PDFダウンロード)は極めて興味深く、AR技術がいかに兵士のトレーニングと戦闘環境を変えうるかについて軍がかなり広範に研究していることを如実に示している。

明らかに、Microsoftは工場労働者向けに販売してきたものを戦闘向けに持ってくるはずがなく、すでに契約で示されているシステムの要件は、最新のホロレンズ光学の性能をしのぐもののようだ。たとえばデバイスの必須FoV(視野角)は55〜100度とされている。

そのほかの条件としては、デバイスの重量は1.5ポンドより重くなってはいけない、軍のヘルメットに適合するもの、というものが含まれる。頭につけるこのデバイスでは、完全な模擬環境でジャベリン(対戦車ミサイル)システムのような武器を使ったトレーニングができ、兵器を追跡したりき、兵士が実際の武器からシミュレーションの炎が出るのを目にしたりすることができる。

まだ初期の枠組みの段階ではあるが、Microsoftは米軍をAR最先端に置く技術を開発することになる。これは企業向けソリューションにも同様に恩恵をもたらすことになりそうだ。

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(翻訳:Mizoguchi)

Instagramは、オブジェクト認識技術を使用して視覚障碍者のための写真説明を追加する

Instagramはビジュアルなサービスだ。利用者が撮影した写真や動画をフィードする。だが同社はいくつかの新しい機能を導入することで、視覚障碍をもつユーザーに向けてのサービスを充実させようと再検討を行っている。

本日行われたアクセシビリティに重点を置いたアップデートでは、視覚障碍のあるユーザーのために、投稿内容に関する代替テキスト説明を提供する2つのオプションが用意されている。1つはユーザーによる代替テキスト入力を利用するもので、もう1つはFacebookのオブジェクト認識技術を使って説明を生成させる方法だ。

入力/生成された説明は、画面読み上げ機能を利用しているユーザーは聞くことができる。写真を投稿する際には、「詳細設定」の中に、ユーザーによる代替テキスト入力オプション(英語版では”Write Alt Text”という項目)が提供される(もちろんそれは少しばかり遠回りの方法だが)。もちろん人間が記入することでしか達成できないレベルのビジュアルな説明がある一方で、同社によって使われているオブジェクト認識ソフトウェアが、メインフィード、検索、そしてプロフィールといったセクション内に対する、ほぼ全ての項目へのテキストによる説明を生成する。

これは、これまでビジュアルに熱中させるフィードを推進しながら、テキストや外部へのナビゲーションは避けて、ほぼ完全にビジュアルであることで有名になったサービスとしては興味深い方向性だ。これまでは、Instagramは主流ユーザーを相手にしており、視覚障碍者(この機能を発表したブログ記事によればその数は2億8500万人である)も相手にはしてこなかったからだ。

(訳注:日本時間2018年11月30日0時の時点では、訳者のiOSアプリケーションはまだアップデートされていない。全部に行き渡るにはある程度の時間がかかるものと思われる)

写真クレジット:Getty Images

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(翻訳:sako)

紙の帳票のデジタル化に今でも使われているOCRをやや賢くするAmazon Textract

ほとんどの企業が困ってることのひとつが、各種の伝票をはじめ、いろんな書式(フォーム, form)をデジタル情報に変えて、保存したりソフトウェアで処理したりすることだ。よくあるやり方は、人間の事務職員がコンピューターにデータ入力すること。最新技術を使う方法としては、OCRに書式を自動的に読ませるやり方がある。

しかしAWSのCEO Andy Jassyに言わせると、OCRは要するに無能な読み取り機にすぎない。それはテキストのタイプなどを認識しない。それを変えたいAmazonは今日(米国時間11/28)、Amazon Textractという、ややお利口なOCRツールを発表した。これなら書式上のデータを、もっと使いやすい形でデジタル化してくれそうだ。

Jassyが例として見せたのは、表のある書式だ。通常のOCRは表を認識しないから、表の各欄の枠を超えて、ひとつのテキストとして読み出す。Textractは、表などの、よく使われる成分を認識して、妥当な形でデータを取り出す。

Jassyによると、書式はよく形が変わるので、OCRの無能を補うためにテンプレートを使っていても、形が変わるとテンプレートは役に立たない。一方Textractは、よく使われるデータタイプ、たとえば社会保障番号、誕生日、住所などなどを知っているので、それらがどんな形で収まっていても正しく解釈できる。

“Textractには、この形の文字集合なら誕生日、これなら社会保障番号、等々と教えてあるので、書式が変わってもそれらを見逃さない”、とJassyは説明した。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

推論過程をGPUで加速するAmazon Elastic Inferenceはディープラーニングのコストを75%削減する

Amazon Web Servicesが今日、Amazon EC2のどんなインスタンスでもGPUによる推論の加速ができるサービスAmazon Elastic Inferenceを発表した。これにより、ディープラーニングのコストが最大75%削減できるという。

AWSのCEO Andy Jassyは、今朝のAWS re:Inventのステージでこう述べた: “従来のP3インスタンス(GPU常備のインスタンス)では通常、GPUの利用率がせいぜい10%から30%ぐらいで、エラスティックな推論用としては無駄が多い。それだけの費用やGPUを、無駄に使うべきではない。Amazon Elastic Inferenceでは、もっと費用効率の良い方法で推論エンジンを動かせるから、きわめて画期的なサービスだ”。

Amazon Elastic Inferenceは、モデルの作成/学習ツールAmazon SageMakerのノートブックインスタンスとエンドポイント用にも利用でき、“内蔵アルゴリズムとディープラーニングの環境を加速できる”、と同社はブログ記事で言っている。機械学習のフレームワークは、TensorFlow, Apache MXNet, そしてONNXをサポートしている。

[顧客の皆様には、仕事の性質に合った正しいツールを使っていただきたい。このたび発表するAmazon Elastic Inferenceを使うと、エラスティックな(伸縮性のある)GPUサポートを加えて、どんなEC2インスタンスの上でもスケーラブルな推論ができ、大幅な経費節約が可能だ。]

三つのサイズが提供されている:
(混合精度, mixed-precision, FP16とFP32の併用使い分け)

  • eia1.medium: 8 TeraFLOPsの混合精度パフォーマンス
  • eia1.large: 16 TeraFLOPsの混合精度パフォーマンス
  • eia1.xlarge: 32 TeraFLOPsの混合精度パフォーマンス

この新しいサービスを詳しく知りたい方は、こちらへ

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

任天堂が個人のゲーム実況動画と収益化を解禁。著作物利用ガイドラインを発表

Associated Press

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任天堂が11月29日、公式サイトに「ネットワークサービスにおける任天堂の著作物の利用に関するガイドライン」を掲載しました。

その主な内容は「ゲームからキャプチャした動画や静止画等をネットで収益化しても、公式ガイドラインに従う限り、任天堂は著作権侵害を主張しない」というもの。かなり緩やかな約束事のもとで、ゲーム実況動画などが解禁されることになります。

これに伴って、同社のコンテンツを収益化するために必要だった「Nintendo Creators Program」のサービス終了も公式サイトにて告知されています。

ゲームをプレイしていない視聴者向けに自社コンテンツの内容を明かすゲーム実況動画に対しては、各ゲームメーカーやパブリッシャーにより賛否があり、様々なスタンスが取られています。

そんななか、任天堂は今回の発表で「その体験が広く共有されることを応援したいと考えております」と、”公開したい人”を基本的には後押しする姿勢を謳っており、時代の節目になる可能性も秘めていると言えるでしょう。

任天堂の姿勢が端的に言い表されているのが、冒頭にある次のくだりです。

任天堂は、個人であるお客様が、任天堂が著作権を有するゲームからキャプチャーした映像およびスクリーンショット(以下「任天堂のゲーム著作物」といいます)を利用した動画や静止画等を、適切な動画や静止画の共有サイトに投稿(実況を含む)することおよび別途指定するシステムにより収益化することに対して、著作権侵害を主張いたしません。

ただし、その直後に続けて、その投稿に際しては、このガイドラインに従っていただく必要があります……と、約束事がリストアップされています。

他の注目点としては、「任天堂以外の第三者が有する知的財産権」については権利者から別途の許諾が必要な点、「事実に反して、任天堂や任天堂の関係者から、協賛や提携を受けているようなことを示唆したり、誤信させたりしないでください」というところ。これらは常識の範囲内と言えます。

そして動画や静止画の内容については、Nintendo Switchのキャプチャーボタン等の機能によるもの以外は「お客様ご自身の創作性やコメントが含まれた動画や静止画が投稿されること」という期待も表明されています。
単なるネタバレの垂れ流しではなく、任天堂へのフィードバックやファン同士の交流を促す意図でしょう。

時節柄、目を引くのが「正式な発売日またはサービス開始日を迎えていないものに関しては、任天堂が公式に公開した任天堂のゲーム著作物のみを投稿に利用することができます」という一文でしょう。
ちょうど「大乱闘スマッシュブラザーズSPECIAL」が発売2週間前にスポイラー(ネタバレ動画)などがネットに大量流出している事態が念頭にあるのかもしれません。

このように、基本的には寛大なスタンスですが、一方でこうした姿勢を打ち出しながら「任天堂は、違法または不適切な投稿や公序良俗に反する投稿、このガイドラインに従わない投稿に対して、法的措置を講じる権利を保持しています」と、万が一の際には同社の法務部がお仕事をする可能性も示唆し、釘を刺しています。

ほかQ&Aでは、プレイ動画やスクリーンショット以外に同社の知的財産権に基づいて創作された、いわゆるファンアート(最近だとクッパ姫等でしょうか)についても言及しています。

それらはガイドラインの対象外として「各国の法令上認められる範囲内で行ってください」としつつ、「お問い合わせにはお答えいたしかねます」と述べて、ファン同士の通報合戦をエスカレートさせない配慮も伺えます。

そして先にも触れましたが「Nintendo Creators Program」のサービスも終了します。これはゲームプレイ動画の広告収益を投稿者が60%、任天堂が40%の割合で分配する仕組みでしたが、今後は投稿者が収益の100%を得られることになります。

関連記事:任天堂、YouTube動画の広告収益を投稿者と分配するNintendo Creators Program ベータ開始 (2015年1月)

ゲーム実況動画に対して様々なメーカーの姿勢がある中で、あえて全面支持を決断したと言える任天堂の公式ガイドライン発表。この施策により、共有されたゲーム体験を通じてファンの交流が促進され、任天堂ばかりか国内ゲーム市場の売上も活性化される……といった好循環が生み出されることを願いたいところです。

Engadget 日本版からの転載。

サイト改善の王道手法「A/Bテスト」を行う際のマインドと組織づくりとは

サイト改善の王道手法になりつつある「A/Bテスト」。A/Bテストツール導入のメリットからテストを運用するための心構えと、また、弊社メディア「Appliv」で行った組織を巻き込んだ強化方法について紹介します。

 

今回は「Googleオプティマイズによるウェブテストの教科書 ~A/Bテスト、リダイレクトテスト、多変量テストの実際~」(マイナビ出版)の執筆に参加した弊社メディア「Appliv」の責任者である針替健太と、デジタルマーケティング事業部でA/Bテストのコンサルティング・代行支援を行っているスペシャリスト飯野佐知子に話してもらいました。

A/Bテストツール導入で実装工数の削減とデータドリブンを実現

飯野:A/Bテストのメリットとしてよく言われていることは、大きなリニューアルを行う際に、失敗してしまった際の人的・資金的なリソースが無駄になってしまうリスクを事前にA/Bテストを行うことで回避できるという点ですよね。

針替:あとは、数値に基づいて改善案を出すことで改善案の精度もだいぶ上がります。数値など根拠がなにもない中で、リニューアルを行ってしまうと感覚や気持ちでリニューアルをやりがちになってしまうA/Bテストを行うことで、データに基づいてリニューアルの改善案を考えることができます。

飯野:A/Bテストを行うことで、実際にApplivでもあったような感覚的な意見の効果検証を行う事ができる点はメリットですね。以前まではA/Bテストツールも高価で手が出しにくいものだったけれど、Googleが無料(※一部機能は有料版のみ)でGoogleオプティマイズを公開したことでA/Bテストツール導入のハードルは下がりましたよね。

針替: ApplivでもGoogleオプティマイズを導入したことですごく手軽にテストすることができるようになりましたもともとA/Bテスト自体はやっていたんですが、ツールを使わないでA/Bテストを行おうとすると施策を実装するだけで開発工数が掛かっていました。Googleオプティマイズを導入することで、テストの工数は大きく下げられました

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針替:効果検証も以前は検定を行わずに、Google アナリティクスで集計してなんとなく「コンバージョンが上がってるから成功」みたいな程度で採用することもありましたが、レポーティングや効果検証をするのもGoogleオプティマイズで楽になったし、データドリブンで日々の改善精度も上がりました。

ユーザー視点で仮説を立てCTR145%改善

飯野:Applivももちろんですがクライアントなどの事業をされている方は日々の改善活動が必要で、A/Bテストで確実に成果を積み上げることは必須になってきていますよね。
コンサルティング業務では、A/Bテストを始める前にサイト全体のアクセス解析を行い、改善対象ページの優先度を見極めてA/Bテストを行っています。
Applivではどうやってテストを実施しているんですか?

針替:改善インパクトが大きいところから取り組むべきなので、ユーザーの流入元の大多数を占めているアプリの一覧ページを重視しています。常に何かしらのテストが回っている状態です。
このページでどういう訴求をすれば、Applivの重要視している指標であるアプリストアへの遷移に繋がるか、自然なカタチでおすすめアプリをクリックしてくれるのかを考えています。

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飯野:アプリストアの遷移先バナーの文言はCTRに影響してきますよね。

針替:サイトに来たユーザーが自分にあったアプリを探す時にどういう情報を求めているのか、あとは情報量が多すぎないかなど、ユーザー視点で仮説を立て、テストを行ってます。最近でも、おすすめアプリ枠に「Applivおすすめ」というラベルを追加するだけで、CTRが145%改善と成果が出ています。

スピードを落とさずA/Bテストを運用するコツは「決めの問題」

針替: 最近思うことは、うまく行っているときはスピード感をもって改善出来ているが、サンプル数の問題などで、結果に傾向が出にくいテストが重なってしまった時に、慎重になりすぎてしまいスピード感が下がってしまうなと感じてます。

飯野:分かりやすい結果が出ることってそう多くは無いし、逆にそういったパターンのほうが多いですよね。そういう時ってどう判断していますか?

針替:基本的には、「決断する期間を事前に決めておく」ということは常に心に留めています。期間を設定しておかないとズルズルとテストしてしまうので、期間を決めて、関係者で集まって結果について話し合い、次のテストを決めてます。

飯野:私も期間を決めるようにしていて、そのうえでテスト結果に統計的に有意な差が出ていなくても常に安定した傾向が出ていたら、勝ち負けを判断して、次のテストにいくようにします。累積データだけではなく、デイリーのデータも見て、問題ないかと思えるかどうかも参考にすることがあります。

針替:うちもいくつかの指標をみて、他の指標にも悪影響がなく、良い傾向があれば割り切ります。そこはもう「決めの問題」ですよね。

飯野:そう。あと、いい結果が出ないときは一度施策の仮説に立ち返って、結果を突き詰めることを大事にしています。テスト結果では仮説が正しかったかどうかを考えるようにしていて、仮説が棄却できたならそもそもの仮説を見直すように考えてます。

大前提として「仮説ありきの施策」を行えているか

飯野:針替さんがA/Bテストを行う上で、重要だと思うことって他になにかありますか?

針替:A/Bテスト案は大胆に変えないとテスト結果がでないことが往々にしてあるので、これは意識しています。でも、やっぱり「仮説ありきでテストを進めないと意味がない」という点です。とりあえずボタンをオレンジ色に変えてみようと施策を行っても結果は出ないです。

飯野:そもそも仮説がないと何で良くなったのかという原因が分からないし、振り返りや次の施策に活かすこととかもできないです。また、いい結果が得られなかった場合には、テストが終わったらまた別の新しいテスト案をどこかから捻出する必要が出てくるので、PDCA回らなくなっちゃうことってよくありますよね。

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針替:あるあるですね。

飯野:でも、仮説が重要ではあるんですが、仮説がないアイデアをだからといって全くダメということにしないようにしています。

みんなの”勘“から出てくるアイデアも意外と当たっていることはよくあります。もちろん施策を行う前にそのアイデアに対して仮説の裏付けをする必要はありますけど、まずやってみてPDCAを回すサイクルを作ることに主眼をおいて、「導入のためのテスト」を行うこともあります。

A/Bテストを組織に浸透させることで様々な視点でアイデアが出てくる

飯野:コンサルティング業務のA/Bテストの初期段階では社内のアナリストを集めて施策案のブレストを行います。最終的な施策の実行、優先度の判断は担当アナリストが行ってますが。
Applivでは施策案の案出しから、実行可否の判断はどうされてますか?

針替:似たような感じで決めてます。今のApplivの運用体制はプロジェクト単位で動いていて、そのプロジェクトの中にマーケッター、エンジニア、デザイナーがいます。

プロジェクトメンバーで話し合い施策案を決めてますが、最終的に、プロジェクトリーダーが優先度つけています。実施決定した施策をプロジェクトメンバーの誰かがGoogleオプティマイズを設定してテストを動かしてます。

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飯野:「誰かが」ということは、プロジェクトメンバー全員がA/Bテストの実装や設定ができるんですか?すごいですね。

針替:一通りできるはずです。社内にエバンジェリスト的な人がいないとみんなができるようにならないと思っていました。自分が勉強会を開きA/Bテストの面白さや成果に繋がるといった点をメンバーに伝えてA/Bテストを浸透させてきました
やっぱり一人で施策案出しをやってると限界が出てくるんですよ。みんながA/Bテストを行える状態を作ることで、自分に無かったアイデアが出てくるようになりました。

ユーザーの気持ちの汲み取りや曖昧な結果は人の判断が必要

針替:基本的には、ウェブテストはどのサイトでもやったほうがいいと思います。だから、A/Bテストはwebでビジネスをしている人全員が導入してもいいと思ってます。

 

針替:ただし、A/Bテストツールを導入することが目的になってはいけない。目標達成に向けて仮説ありきのテストを行わないと、成果がでなくなってしまった時に結局モチベーションが無くなってABテストを行わなくなってしまいます。

飯野:A/Bテストツールはすごいですし、AIが流行って今まで人がやっていた仕事がなくなると言われてます。ただ、A/Bテストの施策案の仮説立てを行うために、ユーザーの気持ちを考えるとか想像するというところは、まだまだ人の頭で考えないといけないなと思ってます。

針替:Googleオプティマイズは便利ですが、所詮ツールなのでA/Bテストを行う上で一番大事になる「仮説を立てる」「レポート・結果を判断する」といったことは人間が行うことになります

「仮説ありきの施策を立てる」「レポートとの向き合い方」「テスト結果の判断の仕方」などA/Bテストを行う上でのマインドを本書で紹介しています。そういったマインドを醸成させるためにも本著を読んでもらえると嬉しいです。

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「Googleオプティマイズによるウェブテストの教科書 ~A/Bテスト、リダイレクトテスト、多変量テストの実際~」(マイナビ出版)>

収益改善A/Bテスト代行サービス

サイト改善の王道手法「A/Bテスト」を行う際のマインドと組織づくりとはナイル株式会社 - SEO HACKSで公開された投稿です。