中国デジタル人民元「e-CNY」ウォレットアプリの個人ユーザー数が2億6千万人超に、五輪に向け実証実験を加速

中国で今、インストール数が急増しているアプリの1つが、中央銀行のデジタル人民元ウォレットだ。中国人民銀行(中央銀行)の金融市場担当責任者であるZou Lan(ゾウ・ラン)氏は、中国時間1月18日のプレスイベントで、人口の約5分の1に相当する2億6100万人の個人ユーザーが「e-CNY」ウォレットをセットアップし、875億元(約1兆5780億円)相当の取引が行われていると述べた

中国では過去2年間にわたり、深圳を含む10の主要都市でデジタル人民元の実証実験を行ってきた。人々は当初、抽選に参加して初期ユーザーになるための申請をする必要があった。そして2022年1月4日、中銀は実証実験を加速させる明確なサインとして、e-CNYウォレットを中国国内のiOSおよびAndroidストアで利用できるようにした。

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デジタル人民元は、中国で禁止されている暗号資産の一種では決してない。中央銀行は、ビットコインなどは変動性が高く、投機的で本質的な価値を持たないと判断し、暗号資産がマネーロンダリング(資金洗浄)の道具になる可能性を指摘している。

e-CNYは、異なる結果を目指している。中央銀行が発行するe-CNYは、中国で流通している現金通貨(M0)の法定デジタル版であり、規制当局はNFC技術を用いてインターネットがなくてもデジタル人民元の決済ができるようにすることを意図している。

2021年、中央銀行のe-CNY研究開発ワーキンググループが発表した研究論文によると、デジタル人民元の目的は以下のとおりだ。

  • 中央銀行が国民に提供する現金の形態を多様化し、国民のデジタルキャッシュに対する需要を満たし、金融包摂を支援する。
  • リテール決済サービスの公正な競争、効率性、安全性を支援する。
  • 国際的なイニシアティブに足並みをそろえ、国境を越えた決済の改善を模索する。

e-CNYウォレットは現在、中国のアプリストアでダウンロード可能だが、実際に登録してアカウントを補充し、Alibaba(アリババ)での買い物やDidi(ディディ)の乗車料金の支払いなど、800万件の「試験シナリオ」でデジタル通貨を使うことができるのは、試験的に導入された都市と冬季オリンピックの会場にいるユーザーだけだ。

現金をe-CNYに交換するには、Tencent(テンセント)が出資するWeBankやAnt(アント)が出資するMyBankなどのデジタルバンクを含む、中銀がデジタル通貨の運用・流通を認可した商業銀行のいずれかから資金を移動させる必要がある。

中国の人気決済サービスとの関係について、中央銀行は報告書の中で、e-CNYはWeChat Pay(ウィーチャットペイ、微信支付)やAlipay(アリペイ、支付宝)に取って代わるものではなく「補完」するものであると述べている。例えば、小額の取引では、e-CNYは物理的な現金と同じように匿名性をサポートすることができる。また別の例では、地方政府から市町村に送られる多額の資金をe-CNYで支払うことで、デジタル通貨の追跡機能を利用して汚職を防止することもできるという。

しかし結局のところ、e-CNYが本格的なアクティブユーザー基盤を獲得するには、ユーザーエクスペリエンスの面で大手民間決済企業に対抗する必要がある。

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(文:Rita Liao、翻訳:Aya Nakazato)

科学的根拠に基づくADHDサポートアプリ「Inflow」がシードで約2.6億円を調達

注意欠陥・多動性障害(ADHD)の症状には、不安、慢性的な退屈、衝動性、集中力が続かない、怒りのコントロール、さらにはうつ病などがある。しかし、ADHDの患者は、評価を受けるための長い待機期間や、非常に高価な治療に直面することが多い。

2020年に設立されたあるスタートアップは、臨床医やコーチのチームの知識をアプリに注ぎ込み、ADHDの症状に対処するためのガイド付きプログラムを提供することで、この問題を解決しようとしている。そのために、Inflowは、ユーザーが認知行動療法(CBT)の対処ストラテジーを日常生活に導入できるようにすると主張している。

2020年、InflowはRhythm VCとエンジェル投資家から68万ドル(約7800万円)を調達した。同社は今回、ロンドンのHoxton Venturesが主導するラウンドでシード資金として230万ドル(約2億6400万円)を調達した。

Y Combinatorr(YC、Yコンビネータ)の21バッチ卒業生であるInflowは、米国を拠点とするRoute 66 Venturesの参加も得ている。

また、複数の著名なエンジェル投資家が同社を支援しており、その中には、依存症デジタルクリニック「Quit Genius」の共同創業者Yusuf Sherwani(ユスフ・シェルワニ)氏、Maroof Ahmed(マルーフ・アーメド)氏、Sarim Siddiqui(サリム・シディキ)氏や、法律サービスのチャットボット「DoNotPay」のCEOであるJoshua Browder(ジョシュア・ブラウダー)氏らが含まれている。

ただし、このアプリはまだ独立した臨床試験を経ていないことを指摘しておかなければならないが、同社によれば、それは年内に予定されているという。

同社の広報担当者は次のように述べている。「臨床試験の準備として、米国リッチモンド大学のLaura Knouse(ローラ・ノウス)博士と共同で、ユーザビリティとフィージビリティの研究を行いました。この研究では、事前と事後の症状と機能障害の評価を行い、Journal of Attention Disordersに投稿しました」。

Seb Isaacs(セブ・アイザックス)氏、元Babylon HealthのプロダクトマネージャーであるLevi Epstein(リーバイ・エプスタイン)氏、ADHDの専門家であるGeorge Sachs(ジョージ・サックス)博士によって2020年に設立されたInflowは、今回の資金調達によりチームを拡大し、追加ツールやサービスを展開していく。

InFlowのアプリ

Inflowは「SimpleMind Pro」「Brain Focus」「Focus@Will」などのアプリが存在するADHDアプリ市場の中で競合することになるが、実際のところ、ほとんどのアプリは、ADHDの当事者が使用できる可能性のある生産性向上アプリとして宣伝されているに過ぎない。

Inflowの仕組みは、ユーザーが毎日の短いエクササイズや課題をこなすことで健康的な習慣を身につけ、スキルを学び、ADHDに特化したマインドフルネス技術を実践し、自分の神経学的な差異を知り、ネガティブな思考をリフレーミングするというものだという。

Inflowは、毎月1万5千回以上ダウンロードされているとしている。

共同創業者のSeb Isaacs(セブ・アイザックス)氏はこう述べている。「私たちは、ADHDのケアプロセスを簡素化し、ケアが行き届いていない何百万人ものADHD患者にリーチできると確信していました。Inflowは、すでに多くの課題を抱えているメンタルヘルスシステムでは実現できない、即時かつ手頃な価格のオンデマンドサポートを提供することができます。ウェイティングリストや紹介の必要もなく、複雑な受け入れプロセスもありません」。

Hoxton VenturesのパートナーであるHussein Kanji(フセイン・カンジ)氏は次のように述べている。「ADHDを持つすべての人に成功して欲しいというミッションをInflowが果たすのを見守ることができて光栄です」。

画像クレジット:InFlow founders

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(文:Mike Butcher、翻訳:Aya Nakazato)

ミレニアル世代やZ世代を惹きつけたいインスタ風アプリSupernovaはSNS大手の「倫理的オルタナティブ」になれるか

Supernova(スーパーノヴァ)は新しいアプリで、Apple(アップル)とAndroid(アンドロイド)のアプリストアで公開されており、広告収入の大部分を慈善事業に寄付している。Instagram(インスタグラム)とFacebook(フェイスブック)の新しい「倫理的オルタナティブ」と謳う同アプリに、チャンスはあるだろうか?

Facebookがパノプティコン(一望監視施設)のような刑務所になり、米国政府の権力を覆そうとするプライベートグループに参加することを軽々しく提案するのを何年も見てきたか、あるいはInstagramをドゥームスクローリング(ネット上で悲観的なニュースや情報を読み続けること)して、自身や10代の子どもたちのメンタルヘルスが徐々に損なわれていくのを経験した後であれば、多くの人々は、より高潔な原則を持つ代替のソーシャルメディアプラットフォームに大きな満足を覚えるだろう。こうした代替のいくつかは何年にもわたって現れたり消えたり(RIP Path)しているが、Zuckerberg(ザッカーバーグ)氏の悪徳のような支配から大衆を遠ざけることに成功した者はいない。

おそらく人々は忘れてしまっているかもしれない。Facebook(その延長線上でInstagram)がこれほど大きい唯一の理由は、広告収入がこうした無料サービスを支えているからだということを。もし広告主が、十分に魅力的なアプリでソーシャルメディアの群衆を取り込むことができる他の場所を持っていれば、FacebookとInstagramはある程度プレッシャーを感じ始めるだろう。少なくとも、理論上はそうなっている。

広告業界を知り尽くしている英国の起業家が、ミレニアル世代やZ世代にアピールするために設計された独自のソリューションを使って、これらの大手企業に対抗しようと計画している。これらの世代は一般的に、前世代よりもはるかに大義を支援したいという欲求に導かれている。

Supernovaの創業者でCEOのDominic O’Meara(ドミニク・オメーラ)氏(画像クレジット:Supernova)

Supernovaの創業者でCEOのDominic O’Meara(ドミニク・オメーラ)氏は、かつてSaatchi(サーチ)に在籍した広告の第1人者で、英国アカデミー賞の受賞歴もあり、同スタートアップを主に自己資金で運営している。同氏は次のように語っている。「ASICS(アシックス)のようなスポンサーやMQのような慈善団体は、このアプリに備わる、ユーザーの安全を中心に据えた包括的なソーシャルネットワークという要素を評価して、今回のローンチに参加することを選んでいます。Supernovaが補完するのはまさにそこに存在するギャップであり、私たちは今後数カ月から数年のうちにこのギャップを縮小し、社会に成果を還元するソーシャルネットワークとなることを目指しています」。

「私たちの技術とアクセシビリティは、ソーシャルメディアと広告の力を使って世界がお互いに心から助け合うこと、そしてそれらの行動がどこでどのように役に立っているのかを常に透過的かつ正確に見ることを可能にします」と同氏は付け加えた。

Supernovaはこれを、同社のプラットフォーム上で有害性を防止することにより実現しようとしており(その方法については後述)、ユーザーが「安全かつセキュアであり、友人たちとの前向きで、刺激的で、人生を肯定するようなインタラクションを持つことを推奨されていると感じることができ【略】ヘイト、人種差別、ホモフォビア(同性愛嫌悪)、極端な政治思想などを目の当たりにすることのない場所を作ろうとしている」。

ビジネスモデルはシンプルである。同社は広告収入の60%を世界の慈善事業に寄付し、寄付金は気候変動、動物福祉、緊急事態の対応、健康と福祉、ホームレス支援、人権、メンタルヘルス、海洋清掃の各項目について、会員の希望に応じて配分される。どの要因が最も多くの資金を得るかは、ユーザーによって決定される。

Supernovaによると、世界のソーシャルメディア広告市場の1%以上を獲得できれば、年間6億ポンド(約925億円)を慈善団体に寄付することになるという。対照的に、FacebookとInstagramからの相当額は510億ポンド(約7兆9000億円)となる。しかし当然ながら、その現金は現在すべてザック氏の金庫に入っている。

FacebookやInstagramがヘイトスピーチを禁止していることはよく知られているが、もちろん、実際に行われることはほとんどないことも私たちはわかっている。Supernovaはまず最初に、自社のコミュニティ基準に基づいて「100%人間によるモデレーション」を行うとしており、さらにはユーザー向けに完全な憲章を約束している。

Supernovaアプリ(画像クレジット:Supernova)

どのようなアプリなのだろうか?

Instagramとの類似点はすぐにわかるだろう。ユーザーはコメントやメッセージングとともに写真やビデオを共有できる。ユーザーはフォローすることもフォローされることも可能である(1つか2つのバグが残っており、筆者のプロフィールは選択していないユーザーを自動的にフォローしているようだ)。

ユーザーはアカウントに対して、非公開、検索、フォロー、不要なユーザーのブロックなど、私たちが慣れ親しんできたソーシャルメディアツールのほとんどを設定することもできる。

ここで異なるのは、基礎となる仕組みである。

まず、ユーザーは自身のプロフィールで、Supernovaが広告パートナーから調達した資金を使って支援したい慈善分野を指定できる。

次に、ユーザーにナルシシズムを誘発することなく「Like」が慈善事業の広告収入の一部を得るための票のような働きをする。ユーザーの投稿に「Like」がついた場合、彼らが選んだ慈善団体は寄付として「Supernova Action Fund(Supernova活動基金)」のより大きな部分を得ることになる。

Superlikeや「Supernova」を獲得した投稿は、通常の「Like」の10倍の票を獲得する。ただし1つ難点がある。Supernovaを提供するには、まずユーザーが十分な「Karma Point」を獲得しなければならない。おそらくこれは、エンゲージメントを促進するためであろう。

今のところ、世界的なスポーツブランドであるASICSがSupernovaのスポンサーとなり、メンタルヘルスの慈善団体MQ Mental Health(MQメンタルヘルス)が最初に選ばれた慈善事業となっている。

また、Instagram(というよりFacebookのようなもの)とは異なり、Supernovaにはユーザーがグループに集まることのできる「グループ」機能がある。

オメーラ氏によると、Supernovaへの投資は「友人、家族」による資金調達ラウンドで100万ポンド(約1億5000万円)を超えており、2022年前半には機関投資家からのさらなる資金調達を予定しているという。

人間によるモデレーションについてオメーラ氏に尋ねたところ、次のように回答してくれた。「英国に拠点を置く訓練を受けたチームで、24時間体制で私たちが管理するシフト制を採用しています。彼らは若くて聡明な人材であり、主にコンピュータサイエンスの大学院や学部出身者です。会社の成長に合わせて社内で育成することで、チームが最初からコミュニティに親近感と共感を持てるようにしています」。ただし、同社の規模拡大に伴い、機械学習の支援を受けることになるだろうと同氏は言い添えた。

「Supernovaは、AIによって他のプラットフォーム上で活発に宣伝されている、有害で急進的なコンテンツから解放されます。その結果、Supernovaが万人向けではなく、熟慮される存在になることは間違いありません」とオメーラ氏は語っている。

Instagramでは禁止されていることで知られる乳首は同プラットフォーム上で許可されるのだろうか。

「すべては、投稿の内容や性質、投稿内のテーマによって異なりますが、コミュニティ基準に準拠しているかどうかは確実にチェックされます。違反した場合は削除されます」と同氏。

もし女性が母乳育児について説明しているのなら、それは許されるだろうかと筆者は尋ねた。

「その意図が明らかに有益であり、主題の真の側面を扱っている限りは、おそらくそうなるでしょう。もしその意図や内容が、その主題や私たちのコミュニティに対して、私たちの考えでは失礼であるか、有害であるか、あるいは否定的であるならば、コミュニティ基準や憲章を侵害することになり、削除されるでしょう」と同氏は回答した。

広告主にとってのメリットは何であろうか?

オメーラ氏は次のように語っている。「正しいことをしている『新時代』のソーシャルメディアの一部であることは、ブランドに害を与える可能性のある古い有害な秩序の一部であることとは対照的に、彼らのブランド(PR)にとってすばらしい価値があります。Deloitte(デロイト)によると、ミレニアル世代の80%は、他人の利益を自分の利益よりも優先するブランドからのみ購入したいと考えています。大手広告主は、ソーシャルメディアの現状に辟易しているようです。私は昨日、100億ドル(約1兆円)を超えるグローバル予算を投じている広告主に会い、そのことを明確に伝えられました」。

「当社のプロダクトは完全にスケーラブルで、ミレニアル世代のわずか1%にリーチすれば、毎日4000万人にスポンサー広告を届けられるでしょう。広告主たちが『量より質』を求めている今、これで十分です。1000社以上の広告主による42億ドル(約4822億円)規模のFacebookのボイコットは、その初期の兆候であり、今も消え去ってはいません。代替のオファーは今のところ提供されていません。そこにSupernovaが登場したのです」と同氏は付け加えた。

Supernovaが生き残れるのか、それともDavid Beckham(デイビッド・ベッカム)氏がローンチし、痕跡を残さず沈んだストリーミングソーシャルメディアアプリ、MyEyeになるのかはまだわからない。

タフで物議を醸す話題がこれまでほとんど登場してこなかった、一種の「バニラ(ありきたりな)」ソーシャルネットワークであるだけで、ユーザーを惹きつけるのに十分かどうかという疑問が残る。そして、潜在的に偏った人間によってコンテンツがモデレートされた場合、Supernovaはその決定を好まない人々から訴えられることになるのだろうか?

しかし、少なくとも今回の初公開からは、Supernovaは好調なスタートを切ったようだ。

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(文:Mike Butcher、翻訳:Dragonfly)

友人グループみんなで36枚撮りのロールを撮影、24時間後に現像されるアプリ「Lapse」が12.6億円調達

ソーシャルメディアアプリでは、アルゴリズムによる広告表示、インフルエンサーを活用したソーシャルグラフ、際限なくスクロールするよう促すUXなどが執拗に行った結果、大手ソーシャルメディア企業のバイラル的な成功と大衆市場でのエンゲージメントにつながっている。しかし、この市場には依然として入り込むすき間が残されており、写真を撮影して自分が選んだ友人と共有できるアプリには、従来のソーシャル的な一連の機能を排除したものが登場している。そうしたアプリの1つLapse(ラプス)が、リリース早々に投資家たちの強い関心を呼び、このたび大規模なシードラウンドを発表した。

Lapseでは、ユーザーがグループを形成し、グループの存在場所に関係なくグループ間で協力して、36枚ショットの「ロール」に即興で(アドリブで)写真を撮る。写真は現像され、撮影開始後24時間でグループにのみ公開される。そのLapseがシードラウンドで1100万ドル(約12億6000万円)を調達した。

今回のLapse(会社名もアプリ名と同じ)のラウンドを率いたのはOctopus Ventures(オクトパスベンチャーズ)とGV(旧称Google Ventures)で、他にもSpeedinvest(スピードインベスト)や個人投資家たちが参加した。個人投資家の中には、初期のFacebookのデザイナーSoleio Cuervo(ソレイオ・クエルボ)氏もいる。クエルボ氏はソーシャルエンゲージメントという点では実績がある。彼はFacebookの「いいね」ボタンをデザインしたチームの一員だった。

今回のラウンドでLapseの総調達額は1240万ドル(約14億2300万円)に達する。これには、同社が創業前の9月にプレシードで調達した140万ドル(約1億6000万円)が含まれる。このプレシードはスピードインベストが率い、Claire Nooriala(クレア・ノーリアラ)氏(Snap Inc.ヨーロッパ・中東・アフリカ担当副社長)、Matt Robinson(マット・ロビンソン)氏(NestedとGoCardlessの創業者)、Ian Hogarth(イーアン・ホガース)氏も参加した。

9月の創業後、Lapseは1万人のベータテスターを獲得した。その後短期間で、Appleのダウンロード件数トップの座に躍り出て、15万人がキャンセル待ちの状態になっている。ほんの数カ月で大規模なシードラウンドを実施してそうそうたる投資家たちを集めることができたのは、15万人という大量のユーザーを獲得できたからだ。

画像クレジット:Ingrid

Lapseは、ソーシャルメディア特有の仕組みを一新しようとしているため、ユーザーや投資家の間で注目を集めている一連のアプリに属する。

Instagram(インスタグラム)、TikTok(ティックトック)などが数百万人のユーザーを獲得しているが、そうしたユーザーはアプリの常用者だ。その一方で、こうしたソーシャルメディア企業とその策略を警戒しているユーザー層(とその親たち)が確かに存在している。これらの企業は大量の有害なコンテンツを配信していることがわかっているが、その使い方(および悪用方法)をコントロールするのは極めて難しいため、解決策はこれらの企業を廃業させるしかないと信じている人たちもいる。

そこまで厳しい話でなくとも、こうした大衆市場向けのソーシャルメディアアプリを大いに楽しんでいる、あるいはビジネスに活用している人たちでさえ、執拗にエンゲージメントとエクポージャーを求めてくる彼らのやり方にうんざりしており「ソーシャル」を実現するもっとプライバシーに配慮した、あるいはインパクトの強い方法を求めている。

同じカテゴリーに属するアプリは他にもある。IRLは、創業者によると、互いにメディアを共有したり、知らない人が投稿したメディアを延々とスクロールしながら観る代わりに、ユーザーたちがもっと有意義なソーシャルインタラクションを生み出すという前提で創業された。

IRLは、現実のイベントを重視するよう設計されたものの、パンデミックが発生しダラダラと続く中、皮肉にもバーチャル(つまりIRLではない)イベントにも拡張することで何とかユーザーを確保してきた。2022年始めに10億ドルを超える評価額で大規模な資金調達ラウンドを実施したIRLは「Digital Nutrition」アプリを2021年12月初めに買収した。このアプリによって、よりエシカルを重視したレコメンデーションを開発できるようになるという。

Lapseに近いコンセプトのアプリとしてDispo(ディスポ)がある。Dispoも使い捨てカメラロールという方向性を認識しており、体験を重視するといいつつ単に何かを体験した写真を共有するだけという方向性からは距離を置いている。Dispoでは、撮影した写真は翌日にならないと見ることができない。

Dispoも2021年初めに資金調達を行った。しかし、口コミでどんどん広がる状態にまで推進した(Dispoの共同創業者は人気のユーチューバーDavid Dobrik[デビッド・ドブリック]氏)原動力が悪い方向に転じて(ドブリック氏のチームが性的暴行で告発された)、多くの人たちが後味の悪い思いをした(初期の投資家たちは手を引き利益を断念した上、ドブリック氏もこの件に関わったとして辞任に追い込まれた)。とはいえ、Dispoは流行りのソーシャルメディアトレンドから外れたわけではない。9月に同社は、写真をNFTとして販売することに対するユーザーの関心を判断するためのテストを始めた。

LapseはDan Silvertown(ダン・シルバートン)とBen Silvertown(ベン・シルバートン)の兄弟によって創業された。シルバートン兄弟はベトナムを一緒に旅行した際に、ネットから離れてゆっくり過ごすために全自動カメラを使った。この体験からインスピレーションを得た2人は、写真を撮影して友人たちと共有するという機能はそのままで、あまりやきもきせずにソーシャル投稿するというアイデアを再現するアプリを構築できないかと考えた。

Lapseは、撮影した写真をすぐには見れなくするという点ではDispoと同じだが、撮影した写真を本当に親しい仲間以外の誰とも共有しないという点が異なる。

(今は廃業してしまったが、初期のFacebookの社員David Morin[デビッド・モリン]氏が、Facebookによって撮影された広角ビューとバランスをとる方法として小グループ内で共有する方法を提供するために創業したPath[パス]は、非常に先見の明があったということになる。少し時代の先を行き過ぎてしまったのかもしれない)

Lapseはまだアーリーステージの初期なので、これから発展する余地が大いにある。Lapseにはカメラの背面からスチール写真を撮るためのレンズしか用意されていない。しかし、創業者によると、このレンズは多くの試行錯誤の末に生まれたものだという。

画像クレジット:Ingrid

「30人のプロの写真家と協力して当社独自の画像処理エージェントを開発しました」とベン氏はインタビューで語ってくれた。「しかし、これは、当社が20段階の処理と考えているアナログフィルムを再現する取り組みの第1段階に過ぎません」。

このフィルターの効果は、昔ながらの全自動カメラで撮影したスナップ写真の画質という説明が一番近いだろう。古風に聞こえるが、平均的なスマートフォンで実現されるようになった極めてパワフルなカメラ体験を意図的に制限して、それを即興的な味で置き換えるおもしろい方法だ。もちろん、たくさんの失敗作も生まれることになるが。

人はどこかへクルマで行く代わりに積極的に歩く選択をしたり、どこかで出来合いの料理を買う代わりに意図的に複雑な料理の多くの手順を体験するほうを選ぶことがある。Lapseはさしずめ、これのカメラ版といったところだろう。不便で面倒くさいと感じるかもしれないが、おかげで従来とは異なる結果が得られるかもしれない。

個人的には、Lapseフィルターを使うことによって予期せぬ、また管理が難しい副作用が生じることがあるものの、それは救いようのないものではなく、むしろおもしろいものだ。

例えば焦点を合わせられないためひどいピンぼけになることがあるし、前向きレンズがないため不正確なセルフィーしか撮れない(あるいは私は結局そうしたのだが、鏡に映った自分を撮るくらいしかできない)。ビデオ機能はないし、画像にいたずらする「フィルター」もない。スナップを撮る機能は驚くほど簡単だ。自分でも気づかないうちに写真を撮っている。撮り直しはできない。

筆者の息子アベルは3枚構成の写真を撮る方法を見つけてしまった。筆者もやってみようとしたがどうしても方法が分からなかった。

こうして撮影された写真は現像されてグループチャットに配信される。チャットでは超高速スライドショーが再生される。スピードを落としてもう少しじっくりと見ることもできる。もちろん、カメラロールの写真を保存して別の場所で共有するといった従来のソーシャルメディアと同じ仕かけも用意されている。

ダン氏によると、この機能は当初、Lapseのうわさを広めてもらうために用意したのだという。ティックトックは他のプラットフォームとビデオを簡単に共有できるようにすることでユーザーを引き寄せ成長したが、これを真似たものだ。まだ初期段階なので、この機能を維持するのか、最終的にオフにしてしまうのかはまだ決めていないという。

収益化に関する具体的な内容もまだ決まっていない。ただ、広告から収益を上げる方法は避けたいとしている。

「収益化についてはざっくりと考えてはいますが、具体的なことはまだです」とダン氏はいう。「ただ、おそらく広告ベースの収益モデルは使わないと思います。というのは、広告ベースのモデルは、可能なかぎり多くのユーザーに動機を与え、現在の画面を表示するために費やされる時間を最適化しますが、これは有害な行動が生じる原因の1つだからです。我々は量ではなく質を重視したいと考えています」。1つのアイデアとしてフリーミアムモデルがある。「あるレベルでユーザー向けにアプリを構築し、ユーザーが大変気に入って、追加機能に対して料金を支払うようにする方法です」。例えば共有された写真に表示される商標を消去する機能がある。現在、共有された写真のフレームにはLapseという商標が表示されるようになっている。

何より、Lapseは誇大広告なしでゆっくりと成長していくという考え方を受け入れているようだ。

Lapseはアクティブなユーザー数を公開していないが、キャンセル待ち15万人という数字は現在のLapseのアクティブな全ユーザー数ではないと思われる。GVのような投資家が支援しているということは、数字は良いという1つの証だ。複数の招待を受けることを許可されているユーザーがそのうちの1人から招待を受けるとキャンセル待ちリストをスキップできる。エンゲージメントはかなり高く、Lapseをダウンロードしたユーザーの15%がアプリを使い続けている、とベン氏は説明する。現在のところ、ユーザーの大半はZ世代の女性であり、ユーザーの実に79%が女性、71%が24歳以下である。現在のところ、ユーザーの約80%が米国居住者だ。

こうしたすべての数字は、アプリが成熟するにつれて変わってくるだろう。ソーシャルアプリに対するさまざまなアプローチの中から現実的な選択をするという流れの中で、そう願いたいものだ。

「Lapseは、ユーザーが従来の大手ソーシャルメディア企業との関係を根本的に考え直している時期に登場した次世代のプライベート型ソーシャルネットワークです」とオクトパスベンチャーズの投資マネージャーMatthew Chandler(マシュー・チャンドラー)氏は語った。「Lapseでは、ユーザーはもう製品ではなくなります。このメンタル面での劇的な変化により、ユーザーはプライベートなグループ内で自由にやり取りし、生活の中の今この瞬間を撮ることができます。また、Lapseの製品設計では、ユーザーは自分を特定の方法で演じるというプレッシャーから開放され、本当の自分であるように促されます。これは私達のコミュニケーション方法に重大な影響を与えます。ダン氏とベン氏は、画像ベースの記憶のための新しいプラットフォームの構築に取り組んでいます。当社は彼らとパートナー関係を結ぶことができたことに大きな期待を寄せています」。

画像クレジット:Lapse

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(文:Ingrid Lunden、翻訳:Dragonfly)

Venmoがギフトラッピング機能を導入、お金の受取時に楽しいアニメーションを表示

Venmo(ベンモ)は、友人や家族にお金を贈る新たな方法として、ギフトラッピング機能を導入した。米国時間1月13日に展開が開始されたこの新機能により、ユーザーは送金時に8種類のアニメーション付きギフトラップのデザインを支払いメモに追加できるようになる。

この新機能を利用するには、まず「Pay or Request(支払いまたは請求)」ボタンをタップし、受取人を追加する。そこから、ギフトラップのアイコンをタップして、支払いと一緒に送りたいギフトラップを選択する。ギフトラップを選ぶと、支払いを確定して送信する前に、アニメーションをプレビューするオプションが用意されている。

受け取った人には、アプリ内でギフトが届いたことが通知され、ギフトを開封してアニメーションを見ることができる。Venmoによると、送信者と受信者の両方が、支払いの詳細画面からいつでもアニメーションを見返すことができるとのこと。Venmoの新しいギフトラッピング機能は、米国時間1月13日より一部の顧客から展開が始まっており、今後数週間のうちにすべてのユーザーが利用可能になる。

画像クレジット:Venmo

「プレゼントの絵文字は、2021年にお客様が支払いメモに使用した絵文字のトップ10に入っていました」と、Venmoのシニアバイスプレジデント兼ゼネラルマネージャーのDarrell Esch(ダレル・エシュ)氏は声明で述べている。「私たちは、この体験を強化するために新しいギフトラッピング機能を導入し、お客様が金額の大小に関わらず、その瞬間を大切な人と一緒にお祝いできるようになったことをうれしく思います」。

Venmoによると、過去1年間にVenmoやその他の個人間(P2P)決済サービスを利用して、ギフトとして送金したことがあると回答したユーザーは78%に上るという。ユーザーはホリデーや特別な時だけでなく、相手を思っていることを示す手段として、Venmoを使って相手にお金を贈ることが増えているとのこと。特に新型コロナウイルス感染拡大時には、Venmoを利用してお金を贈った顧客の半数以上が「感謝」や「単なるお礼」の印として送金していたことから、このような行動が増加したと同社では考えている。

今回の新機能導入に先立ち、Venmoは2021年、大規模なデザイン変更を行っている。アプリのプライバシー管理機能を拡張し、新機能の一部をより明確にすることに重点を置いた大幅なデザイン変更の一環として、同社はユーザーの取引がグローバルに公開されるフィードの提供を廃止した。現在はユーザーに「フレンドフィード」のみが表示されるようになっている。これはアプリのソーシャルフィードのことで、友達の取引だけを見ることができる。

画像クレジット:Venmo

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(文:Aisha Malik、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

有名アスリートと一緒にトレーニングできるアプリ「Masters」

Mastersアプリのアスリートたち(画像クレジット:Masters)

2022年の現在は、スマートフォンのアプリの中でレッスンを受けて有酸素運動をしたり、筋肉を鍛えたりするアプリが実にたくさんある。(IPOした)Peloton(ペロトン)のようなプラットフォームの成功はよく知られているが、もちろん、900万ポンド(約14億円)を調達したFiiT(フィット)や、990万ドル(約11億3000万円)を調達したFitplan(フィットプラン)などの新興企業もある。加えて、コーチが自分でコースを作成するMoxie(モクシー)もある。しかし、いまだにあまり開拓が進んでいないのが、セレブリティフィットネスのクラスだ。MasterClass(マスタークラス)は、ハイアートの分野ではほぼ市場を掌握しているが、セレブリティフィットネスは相対的に未踏の分野である。もちろん、有名人が自分のフィットネスアプリを作ることはあるが、その魅力は限られており、有名人にとっては副業に過ぎない。

しかし今、2021年にベータ版を公開した新しいスタートアップ企業が、エリートアスリートから筆者のような凡人がトレーニングを受けられるプラットフォームになることを目指している。

Masters(マスターズ)」は、ユーザーが世界で最も有名なアスリートたちと一緒にトレーニングを行い、4週間のガイド付きオンデマンド・トレーニング・プログラムを通じて、彼らの仕事の秘訣を学ぶことができるアプリだ。

このスタートアップ企業は先日、シードラウンドで270万ドル(約3億900万円)の資金を調達した。このラウンドはKing.com(キング・ドットコム)創業者のファンドであるSweet Capital(スイート・キャピタル)が主導し、Mucker Capital(ムッカー・キャピタル)、Goodwater Capital(グッドウォーター・キャピタル)、Luxor Capital(ラクサー・キャピタル)が参加した他、Shaun White(ショーン・ホワイト)選手、Bam Adebayo(バム・アデバヨ)選手、Kai Lenny(カイ・レニー)選手、A’ja Wilson(エイジャ・ウィルソン)選手などのアスリートや、Anton Gauffin(アントン・ガウフィン)氏、Jakob Joenck(ヤコブ・ヨーンク)氏、Henrik Kraft(ヘンリク・クラフト)氏、Greg Tseng(グレッグ・ツェン)氏、Prerna Gupta(プレーナ・グプタ)氏、Hank Vigil(ハンク・ヴィジル)氏、Janis Zech(ジャニス・ツェッヒ)氏、Andreas Mihalovits(アンドレアス・ミハロビッツ)氏などのプロフェッショナル技術系エンジェル投資家もエンジェルキャッシュを投じた。

同社はすでに何人もの世界的に有名なアスリートと契約を結んでいる。例えば、X GAMES(エックスゲームズ)と3度のオリンピックに出場したスノーボードチャンピオンのショーン・ホワイト選手、3000メートル障害の世界チャンピオンで9度の全米チャンピオンであるEmma Coburn(エマ・コバーン)選手、サーフィンの世界チャンピオンであるカイ・レニー選手、サッカー界のスーパースターでゴールデンボールを獲得したAda Hegerberg(エイダ・ヘガーバーグ)選手、ウィンブルドンで2度の優勝を果たしたテニスチャンピオンのPetra Kvitova(ペトラ・クビトバ)選手などだ。

MastersのCEO兼共同設立者であるGreg Drach(グレッグ・ドラック)氏は次のように述べている。「学習の将来性とは『最高の人から学ぶ』ことであり、同じようにトレーニングの将来性は『最高の人と一緒にトレーニングする』ことです。優秀なトレーナーが指導する対面式のグループエクササイズクラスに10人が参加できるなら、オリンピックメダリストやNBAレジェンドが指導するバーチャルクラスには1000人、1万人が参加できるはずです。私たちの目標は、そんな勝利の方法を、誰もが取り入れることができる実践的なプログラムに変換することです」。

Mastersアプリ 画像クレジット:Masters

Mastersは現在、iOSアプリとして配信されている。各コースはコホートベースで、同じ道のりを歩む同輩と一緒に参加することになる。レッスンは高品質の動画で提供される。

このスタートアップ企業は、都市型ランニングコミュニティ「Midnight Runners(ミッドナイト・ランナーズ)」創業者のグレッグ・ドラック氏とChristian Dorffer(クリスチャン・ドーファー)氏、そして2020年にReddit(レディット)に買収されて2021年廃止された動画共有アプリ「Dubsmash(ダブスマッシュ)」の元CTO / 共同創業者だったDaniel Taschik(ダニエル・タシク)によって2021年に設立された。

Sweet CapitalのRiccardo Zacconi(リカルド・ザッコーニ)氏は次のようにコメントしている。「私はいつも、最高のプロスポーツ選手がトップに立つためにどんなことをやっているのかを知りたいと思っていました。例えば、彼らは実際にジムに行って何をしているのか?Mastersは、彼らのルーティンを、誰にでもできる具体的なプログラムに落とし込むことに成功し、多くの人の心に強く訴えたのです」。

Mastersが今回のラウンドで調達した資金は、新たなアスリートとの契約、Androidアプリの立ち上げ、製品の改良のために使われる予定だ。

ドーファー氏は筆者にこう語った。「人々は、テレビやソーシャルメディア、印刷物、オーディオブックなどで、スポーツ界のアイドルを追いかけるのが好きです。Mastersはまったく新しい出版フォーマットであり、私たちはこれを『インタラクティブ・トレーニング・ドキュメンタリー』と呼んでいます。私たちは、このプレミアムな教育フォーマットこそが未来であり、従来の悠長に構えたビデオフォーマットは競争に苦戦することになると信じています」。

 

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(文:Mike Butcher、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

「フォートナイト」がiOSで復活(ただしApp Store経由ではない)

「Fortnite(フォートナイト)」がiOSに帰ってきた……まあ、言ってみればだが。NVIDIAのストリーミングゲームサービスGeForce NOWを通じて、iOSおよびAndroidのモバイルユーザーは、クラウドゲーミングを通じてタッチコントロール版のFortniteをプレイできるようになる。プレイヤーはNVIDIAサイトから、Fortniteの新しいモバイル向け回避策のクローズドベータテストに参加するためのウェイティングリストに登録できる。有料アカウントを持っていなくてもプレイすることは可能で、有料アカウントがあっても優先権は得られない。しかし、モバイルでFortniteを1時間以上プレイしたい場合は、アップグレードする必要に迫られるかもしれない。

Fortniteは2020年8月以降、iOSデバイスではプレイできなくなっている。アプリ内課金に対するApple(アップル)の30%手数料を回避しようとしたため、App Storeから追放されたのだ。その後、Fortniteの開発元であるEpic Games(エピックゲームズ)は、テック巨人が独占禁止法に違反していると主張してAppleを訴えた。9月、カリフォルニア州の裁判所は、Appleは開発者がApp Store以外の代替決済リンクを追加することを禁止できないという判決を下した。しかし、この判決では最終的にAppleが優位に立った。裁判所は、Epicが主張するような独占的な行為はAppleはしていないと判断したのである。

AppleもEpicもこの判決に満足しなかったため、両者は控訴した。また、Appleは、差止命令が発効するまでの時間を延期するよう控訴裁判所に認めさせた。これによりAppleは、当初の判決で裁判所が指示したApp Storeの変更を行う必要がなくなった。

Epic GamesのTim Sweeney(ティム・スウィーニー)CEOは、相変わらずAppleに対し反体制派の旗手として声をあげているため、たとえ両社が合意に達したとしても、すぐにFortniteのiOSアプリが復活するかどうかは不明だ。

画像クレジット:Kyle Grillot/Bloomberg / Getty Images

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(文:Amanda Silberling、翻訳:Aya Nakazato)

Instagram、2021年第4四半期に世界総ダウンロード数でTikTokを抑え再びトップに

Instagram(インスタグラム)は、インドでのTikTok(ティクトック)禁止の恩恵を受けており、2021年第4四半期時点の世界総ダウンロード数で首位に返り咲いた。アプリインテリジェンス会社Sensor Tower(センサータワー)が発表した新しいデータによると、Instagramにとって2021年第4四半期は少なくとも2014年以来最高のものとなり、インストール数は第3四半期から10%増えた。また、Instagramは、2019年第4四半期にWhatsAppがその座を占めて以来、ダウンロード数ランキングで1位を獲得した初のMeta傘下アプリとなった。

実際、過去2年でTikTokが世界ダウンロード数で1位でなかったのは2021年第4四半期が2回目だったとSensor Towerは指摘している。

その前にTikTokが首位から転落したのは新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行が始まった頃で、2020年第2四半期にZoom(ズーム)がTikTokを破ってダウンロード数1位のアプリとなった。

画像クレジット:Sensor Tower

Instagramが世界の(ゲーム以外の)アプリ市場でトップに躍り出たのは、Androidユーザーによるインストールが増加したためだ。Google Playアプリの世界ダウンロード数トップチャートでは、2四半期連続でMeta傘下のアプリが1位と2位を獲得した。1位はInstagram、2位はFacebook。一方、TikTokは3位だった。

画像クレジット:Sensor Tower

Apple(アップル)のApp Storeで最もダウンロードされたアプリを示すチャートでは、状況はかなり違っているようだ。

TikTokとYouTubeがそれぞれ1位と2位をキープしており、2020年第2四半期以降、その座を守り続けている。第4四半期にTikTokは、8四半期連続でApp Storeでのインストール数が5000万回を突破したとSensor Towerは指摘している。

残りのトップ5は、3位WhatsApp、4位Instagram、5位FacebookとMetaのアプリで占められている。一方、6位には、国家キャンペーンで宣伝されたことを受け、中国の国家詐欺防止センターアプリが異例のランクインを果たした。その他は、ソーシャルアプリ、チャットアプリ、エンターテインメントアプリという典型的なセレクションで占められている。

画像クレジット:Sensor Tower

興味深い補足として、2021年第4四半期には、TwitterがApp Storeで最もダウンロードされたアプリのトップ20に2020年第1四半期以来初めて入った。2020年以降、4度目のランクインだ。ダウンロードは前四半期比34%増と急増し、その後も成長は続いている(製品開発活動の活発化がようやく実を結び始めたのかもしれない)。

TikTokは米国のApp StoreとGoogle Playの両方でダウンロード数第1位のアプリだが、世界第1位からの転落は、少なくとも部分的にはインドが2020年6月に「国家安全保障」の懸念から、中国企業の他のアプリとともにインド国内で禁止する決定を下したことに起因している。

Sensor TowerがTechCrunchに語ったところによると、禁止措置が取られて以降、Instagramのグローバルダウンロードにおけるインドの割合は着実に増えているという。

画像クレジット:Sensor Tower

例えば、2020年第2四半期には、Instagramのダウンロード数の約21%がインドからのものだったが、2021年第4四半期にはそのシェアは39%に拡大した。また、通年で見ると、2020年にはInstagramのダウンロード数の約25%がインドからで、2021年には約36%に増えた。

InstagramはTikTokの脅威に対処すべく動画に注力するようになり「Reels」というTikTokクローンの普及に努めてきた。Instagramは競争が激化する中で牽引力を回復しようと、2021年にReelsに投稿するクリエイターに巨額のボーナスを提供し始め、中には1万ドル(約115万円)という高額な支払いもあった。

直近の四半期はInstagramが勝利したものの、Sensor Towerのデータによると、通年(2021年)の両アプリストアのグローバルダウンロード数ではTikTokがトップで、次いでFacebook、Instagramの順となっている。

ちなみに、Sensor Towerのライバル会社App Annieは、少し異なるランキングを発表している。App Annieのデータでも世界的なダウンロード数ではTikTokがトップだが、次いでInstagram、Facebookの順となっている。このことから、FacebookとInstagramのダウンロード数は近いと考えられる。Sensor TowerとApp Annieのダウンロード数推定方法が異なるため、結果的に異なる数字になったものと思われる。

画像クレジット:Bryce Durbin/TechCrunch

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(文:Sarah Perez、翻訳:Nariko Mizoguchi

Tumblr、App Storeルールに準拠するためiOS版にセンシティブコンテンツのトグルを追加

Tumblr(タンブラー)は数週間にわたり、Apple(アップル)App Storeのガイドラインに準拠するため、iOS上でさまざまなタグの検索結果を隠していた。米国時間1月11日、Tumblrはこの問題を解決するべく、iOS版アプリにセンシティブコンテンツのトグルボタンを導入し、ユーザーがセンシティブなコンテンツの表示をオプトインできるようにした(デフォルトでは、センシティブコンテンツは表示されない設定になっている)。

関連記事:Tumblrが「大人向け」コンテンツを巡って再びアップルと闘争中

アップデートされたTumblrのiOSアプリでは、センシティブなタグ(たとえば「マリファナ」など)を検索すると、検索結果が非表示になる。代わりにポップアップが表示され、検索結果を見たい場合はセンシティブコンテンツフィルターをオフにするよう促される。センシティブなコンテンツを見るために「設定を表示する」をクリックすると、アプリ内メニューではなく、モバイルブラウザ上のTumblrのウェブサイトにリダイレクトされる。設定を変更したら、その変更を有効にするためにiOSアプリを再起動する必要がある。そしてついに、ベビーヨーダがマリファナでハイになっているファンアートを含む検索結果を見られるようになる(本当の話だ)。

画像クレジット:Tumblr

Tumblrによると「センシティブコンテンツを非表示にする」トグルを有効にすると、センシティブなタグが付いたおすすめ投稿、露骨なコンテンツのブログ、センシティブなタグが付いた検索が非表示になるという(Tumblrの定義では、セックスや性器を描写したGIF、画像、動画、イラストなどのアダルトコンテンツまでいかなくても露骨と分類され得る。現在、アダルトコンテンツは禁止されている。TechCrunchは、アダルトコンテンツと露骨なコンテンツの区別についてTumblrに明確な説明を求めたが、まだ回答は得られていない)。

この新しいトグルを無効にすると、ユーザーは、コミュニティガイドラインに違反していないセンシティブな内容の検索結果を表示したり、オーバーレイをタップして露骨だと判断されたブログにアクセスできるが、iOSでは露骨なコンテンツは非表示のままだ。トグルを無効にしたユーザーは、センシティブな可能性のあるコンテンツのレコメンデーションを受けることもできる。

一方、トグルを有効にすると、一見大丈夫そうなタグでも警告ポップアップが表示される場合がある。例えば「submission(投稿、提出、または服従)」というタグは、性的なコンテキストになり得るため、センシティブコンテンツフィルターを無効にしない限り、禁止されることがテストしてわかった。このタグはTumblrのプラットフォーム上で、性的ではない別の意味で使用されることが多いため、問題となっている。他のユーザーが自分にあてて投稿したコンテンツを自分のブログに投稿すると、自動的に「submission」というタグが付けられるのだ。

以前、Tumblrは同様のトグルスイッチを提供しており、ユーザーがアダルトコンテンツを表示することを選択しない限り、iOSの設定でサイトのアダルトコンテンツを直接ブロックすることができた。しかし、このトグルは、2018年にTumblrがプラットフォームからすべてのポルノを公式に禁止することを決定する前は、Tumblrがホストするポルノコンテンツを禁止することに重点を置いていた。

Tumblrは、同社のブログ記事でこう述べている。「これらの最新のアップデートは、iOSアプリ上の我々のコミュニティで、自分に最適な体験を構築し、自分がおもしろいと思うコンテンツを探索するためのコントロールを提供するものです。コミュニティの体験を最優先する一方で、AppleのApp Storeガイドラインおよび当社のガイドラインも遵守しなければなりません」。

画像クレジット:MARTIN BUREAU/AFP / Getty Images

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(文:Amanda Silberling、翻訳:Aya Nakazato)

アップルが韓国でサードパーティ製アプリの決済オプションを許可

韓国放送通信委員会(KCC)は現地時間時間1月11日、開発者が韓国でサードパーティ製の決済手段を、少なくした手数料で利用できるようにするための遵守計画をApple(アップル)が提出したと発表した。

KCCはまた、手数料の料金体系やその支払いオプションが有効になる正確な日程など、さらなる詳細についてAppleと協議するとも述べている。

この発表は、韓国当局が10月に、Google(グーグル)やAppleなどのグローバルなアプリストア運営会社に対し、アプリストア運営会社が開発者に自社の決済システムを使用するよう強制することを禁止した、同国の新法に対する詳細な計画の提出を求めたことを受けたものだ。

Appleは2021年10月、KCCに対し、同社はすでに新法を遵守していると説明し、Googleは9月に施行された「反グーグル法」とも呼ばれるこの新法に従う動きとして、韓国のアプリストアで代替決済システムを提供する戦略の概要を11月に明らかにした。

Googleはブログで、開発者の手数料を4%引き下げると述べた。例えば、これまでGoogle Playの課金システムを通じて取引に15%を支払っている開発者は、Googleの代替課金システムを通じて11%を支払うことになる。

一方、Appleの韓国におけるトップで、アプリストアのシステムを担当していたBrandon Yoon(ブランドン・ユン)氏が、11月上旬に突然、同社を退社している。メディアの報道によると、ユン氏の離職はアプリの代替決済システムとは関係がないようだ。

2021年8月下旬、韓国の国会で、世界的なハイテク大手企業が開発者にアプリ内課金システムの利用を強制するのを防ぐための世界初の法案が可決された。

関連記事:世界初、韓国がグーグルとアップルのアプリ内課金手数料を抑制する「反グーグル法」可決

Appleの広報担当者は「我々は、韓国のユーザーのためになる解決策について、KCCおよび開発者コミュニティと協力することを楽しみにしています」と述べている。

Appleは声明の中で、韓国で活動するアプリ開発者の数は約58万人に増え、2008年以降、韓国のApp Storeで140万以上のアプリが利用可能になったと述べている。同社はApp Storeを通じて、韓国の開発者が世界約200カ国の市場と顧客にアクセスするのを支援してきたという。

「Appleは、韓国の法律を尊重し、韓国の優秀なアプリケーション開発者と強い協力関係を築いてきました。私たちの仕事は、App Storeをユーザーのみなさまが愛するアプリケーションをダウンロードするための、安全で信頼できる場所にし続けることを常に念頭に置いています」と広報担当者は述べている。

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(文:Kate Park、翻訳:Akihito Mizukoshi)

2021年、モバイルアプリは新型コロナパンデミックにどう適応したのか

アプリ情報分析会社のSensor Tower(センサー・タワー)が米国時間1月10日に発表した年次報告書によると、新型コロナウイルス感染拡大は、引き続きモバイルアプリのエコシステムに影響を与えているようだ。

ウイルス感染拡大初期の頃には、オンラインショッピング、エンターテインメント、ビジネス、教育などを目的とした多くのアプリの利用が急増した。その後、世界の多くの地域で日常が戻りつつあるが、アプリストアではまだ通常の状態には戻っていない。アプリのカテゴリーによっては、依然としてウイルス感染拡大前の水準をはるかに上回るダウンロード数を記録しているものもあれば、まだ以前の状態には完全に回復していないカテゴリーもあることが、今回のレポートで明らかになった。

旅行系アプリは、各国が国境を閉鎖したり、対面式のイベントが中止になったりしたため、当然ながら新型コロナウイルスの影響を大きく受けた。また、リモートワークの増加にともない、ライドシェアアプリなど、毎日の通勤に関連するアプリのニーズも減少した。その結果、新型コロナウイルス感染拡大の影響を最も大きく受けたカテゴリーは、旅行系アプリとナビゲーション系アプリであり、2020年4月のインストール数は2019年の月平均と比較して約40%減少した。

画像クレジット:Sensor Tower

旅行カテゴリー全体が、ウイルス感染状況の波に左右されていることは明らかだ。例えば、夏の間に状況が好転し始めると、旅行アプリは成長を取り戻し始めた。そして夏の旅行がピークに達する2021年7月には、旅行アプリは2019年の平均値にほぼ達していたと、Sensor Towerは述べている。しかし、オミクロン株が出現すると、旅行アプリは増加が収まり始め、2021年12月の時点では2019年の水準と比べて再び14%減少、ナビゲーションアプリは22%減少している。

他のアプリカテゴリーは、ウイルス感染の急上昇との日々の戦いによる影響が少なく、むしろ長期的にシフトする傾向を表している可能性がある。ビジネス系アプリはその最たる例だ。このカテゴリーのインストール数は、多くの企業がフルタイムのリモートワークを導入したり、オミクロン株の急増を受けてオフィスへの復帰計画を延期したりする中、高い水準を維持している。2021年のビジネスアプリのダウンロード数は、ウイルス流行前の2倍以上(102%)の伸びを示した。

画像クレジット:Sensor Tower

ウイルス感染拡大時には、当然ながら医療用アプリの利用が増えた(そしてそれが新型コロナウイルスとの戦いにおける成果を代弁しているのであれば、状況は良くないといえるだろう)。このカテゴリーは、2019年のレベルから大きく上昇しており、2021年12月のダウンロード数は、2019年の月平均と比較して187%増となっている。

他にもウイルス感染拡大による成長の恩恵を受け続けているカテゴリーはあるものの、その程度は低くなっている。ゲーム、健康・フィットネス、教育の各アプリカテゴリーは、2019年の水準と比較して、それぞれ39%、31%、19%の増加となっている。スポーツ系アプリは、2020年後半にリーグ戦が再開されるとすぐに立ち直り、2021年には2019年の水準よりも3%と控えめながら増加した。

アプリのダウンロード数が正常化したかどうかは、国によって異なると報告書は指摘している。北米では、他の地域に比べて最も早く2019年の合計数に戻っている。一方、新型コロナウイルスの影響が長く続いたのはアジア市場で、2021年第4四半期の時点で、ゲームはウイルス感染拡大前の水準よりもまだ40%近く増えており、旅行アプリのインストール数はまだ25%も減少している。

また、米国では、ナビゲーションアプリやライドシェアアプリが依然として低迷しているにも関わらず、航空会社、バケーションレンタル、旅行代理店など、一部の上位の旅行アプリはウイルス流行前の水準を上回っている。欧州市場は成長が復活しつつあるものの、旅行系の各サブカテゴリーの上位アプリは、ナビゲーションアプリやライドシェアアプリと同様に、ウイルス流行前の合計値を下回っている(以下参照)。

画像クレジット:Sensor Tower

画像クレジット:Sensor Tower

なお、この数字にはApple(アップル)やGoogle(グーグル)が提供するプリインストール・アプリや、Google Play(グーグル・プレイ)以外のサードパーティによるAndroidアプリストアからのダウンロード数は含まれていないことを、Sensor Towerは注記している。

同社の報告書では、2021年のその他の注目すべきトレンドについても詳しく説明している。例えば、過去1年の間に暗号資産がモバイルに移行したことから、金融カテゴリーでは2021年第4四半期までに前年比35%の成長が見られた。ゲームでは「Garena Free Fire」が、2020年の最大ヒット作だった「Among Us」や、2019年のトップゲーム「PUBG Mobile」を抑えて、ついにダウンロード数でトップに立った。

もちろん、インストール数の増加は、新型コロナウイルス感染拡大がアプリ経済に与える影響を検証するための1つの方法に過ぎない。アプリ全体の利用率が高まったことから、アプリに対する消費者の支出も新たなレベルに達している。2021年第3四半期、アプリストアは消費者支出から280億ドル(約3兆2300億円)という記録的な収益を上げ、通年では1330億ドル(約15兆3500億円)に達する勢いを見せた。

画像クレジット:TechCrunch

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(文:Sarah Perez、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

アップルは2021年、アプリ開発者に約7兆円支払う

数々の反トラスト訴訟や特定マーケットでの規制強化に直面しながらも、Apple(アップル)は米国時間1月10日、2021年のApp Storeの成長率が記録的なものであることを示す新たなデータを公表した。同社はプレスリリースの中で、App Storeが登場した2008年以来、アプリ開発者に支払った金額は現在2600億ドル(約29兆9710億円)を超えたと明らかにした。この数字は同社が2020年末に報告した2000億ドル(約23兆550億円)から増加している。つまり、2021年だけでも開発者に少なくとも総額600億ドル(約6兆9165億円)を支払ったことになる。

この数字は、過去に報告された支払い額よりもずっと大きい。

ちなみに、Appleは2019年末までに、App Storeのデビュー以来、開発者に計1550億ドル(約17兆8680億円)を支払った。その前年は、約1200億ドル(約13兆8335億円)だったと明らかにした。行間を読むと、開発者への支払いは2018年から2019年にかけて350億ドル(約4兆330億円)増え、その後2019年から2020年にかけてさらに450億ドル(約5兆1855億円)増加したことになる。

残念ながら、個々のアプリによって支払われる割合が異なるため、Appleが共有した支払額の数字は、もはやApp Store全体の経済状況を明らかにする助けにはならない。

App Storeのビジネス慣行に対する規制当局による監視の強化、独占禁止をめぐる苦情、訴訟(現在控訴中のEpic Gamesとの裁判を含む)が増すなかで、Appleは近年、開発者収益の自社の取り分を減らすために手数料体系を調整してきた。

2020年11月に発表されたAppleのSmall Business Programの開始にともない、同社は対象となるアプリ(年間売上高が100万ドル[約1億1520万円]以下)に対して、手数料を30%から15%に引き下げた。2021年にはまた、一部のメディアアプリを対象に、Apple News Partner Programに参加することを選択した場合に手数料を引き下げた。Appleは、実際にこうした機会を利用した開発者やメディアの数については明らかにしていないが「大多数」のアプリが零細事業割引の対象となると指摘している。

Appleは、App Storeの新たな記録を発表するにあたり、通常の自社宣伝と、膨大な利益に対する過剰な注目との間の微妙なラインを行き来しているようだ。同社は、2021年のクリスマスイブから大晦日にかけて、App Storeの顧客が「これまで以上に」お金を使い、前年から2桁の伸びを記録したと明らかにした。

しかし、Appleは2021年同様、このマイルストーンを記録する明確な数字を提示しなかった。2021年は2020年のクリスマスイブから大晦日までの1週間に消費者はデジタル商品とサービスに18億ドル(約2070億円)を費やし、これは主にゲーム支出によるものだと指摘していた。

1月10日に発表された数字は、App Storeにとって過渡期の1年だったことを示している。

App Storeは、米議会の公聴会で取り上げられたApp Store詐欺や、App Reviewプロセスに現在も伴っている難しさについて、開発者からの反発をこれまで以上に受けている。Appleは2022年、Epic訴訟の判決により、サードパーティの決済方法へのリンクを許可するようApp Storeの変更を命じられたが、その後、この訴訟が上訴されている間、裁判所から土壇場で猶予を与えられた。しかし、日本韓国など他のマーケットでは、規制当局がAppleに外部ウェブサイトへのリンクを許可するよう迫り、手数料を抑制するためのその他の措置を取ったため、同社はApp Storeに対する支配力を緩めざるを得なくなった。

App Storeの数字に加えてAppleはApple Arcade、Apple Fitness+、Apple Music、Apple TV+、Apple News+、Apple Podcasts、Apple Books、Apple PayとWallet、Apple Maps、iCloud+といった他のサービス事業に関する最新情報も提供した

特筆すべきは、Arcadeが今や200以上のゲームを扱い、Apple Musicには9000万曲超のロスレスオーディオがあり、Apple TV+は190の業界賞を獲得したことだ。また、Apple Fitness+には2000セッション近くのワークアウトコンテンツがあり、Apple Newsは提供されているすべてのマーケットで引き続きナンバーワンのニュースアプリとなっている。Apple Payは約60カ国・地域で提供されていて、ユーザーは2021年にApple Walletで3000万枚のNFCチケットを利用した。

画像クレジット:Apple

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(文:Sarah Perez、翻訳:Nariko Mizoguchi

MetaのOculus VRコンパニオンアプリ、クリスマス以降にダウンロード200万回

サードパーティのアプリ分析会社、Apptopia(アップトピア)とSensor Tower(センサータワー)の新しいデータによると、Quest 2を含むOculus VRデバイスのモバイルコンパニオンであるMeta(メタ)のOculusアプリは、クリスマス以降、世界中でおよそ200万回ダウンロードされた。クリスマスの日にOculusアプリがAppleのApp Storeで初めて首位を獲得し、米国のGoogle Playでも最も人気のある無料アプリとなったことから、Quest 2が人気のホリデーギフトだったことがすでに示唆されていた。

米国でのクリスマスの1週間(2021年12月23日~29日)、Oculusアプリのダウンロードは前週比517%増となり、インストール150万回に達したことがSensor Towerのデータで明らかになった。

その後の12月30日から1月5日までの1週間で、これらのインストール数は77%減の34万5000回となったが、それでもこの数字は2021年のクリスマス前の週よりも42%も多い。また、こうした直近のダウンロードには、最近ホリデーギフトとして新しいOculusデバイスを受け取っていたが、まだセットアップしていなかった人が含まれているようだ。

クリスマス後のインストールは米国が大半を占めているが、ApptopiaとSensor Towerは、クリスマスの日から現在までにApp StoreとGoogle Playを合わせて全世界で約200万回のインストールがあったと推定している。

Sensor Towerはやや保守的な分析をしており、2021年12月31日から2022年1月5日までに全世界で約180万回インストールされたと推定している。一方、Apptopiaは、クリスマスから現在までにOculusアプリが全世界で218万9000回ダウンロードされたとしている。この200万回超のインストールのうち、約79%(172万7000回)が米国の消費者によるものだったと指摘した。

Apptopiaのデータでは、2021年のクリスマスに急増している

この数字をより広い視野で見ると、2021年ホリデー期間中のアプリインストール数は、アプリの初期に見られた年間総ダウンロード数に近い。

2018年4月にリリースされたOculusアプリは、初年に120万回ダウンロードされ、その後2019年には240万回を記録している。2020年にはさらに勢いを増し、Apptopiaのデータによると、世界の消費者440万人がこのアプリをインストールした。その後、Quest 2の2020年秋発売の恩恵を受け、Oculusアプリのインストールは2021年に1062万回に跳ね上がった。そのうち7218万回、つまり68%を米国が占めた。

Sensor Towerのデータはここでも少し保守的で、2021年のアプリのダウンロード数は、App StoreとGoogle Playを合わせて1060万ではなく800万回を少し上回るというものだった。

しかし、どちらの数字がより正確かはともかく、クリスマスからわずか数日の間に、Oculusアプリが200万回ほどのダウンロードを獲得したことは共通する。

Metaは、サードパーティ推定値に関するコメントのリクエストにまだ答えていないが、直近のQuest 2の浸透は、Qualcomm(クアルコム)のチップセットが新しいVRデバイスに搭載されていることが貢献している。Qualcommは2021年11月に、Metaがこれまでに1000万台のQuest 2を出荷したと明らかにした。

Oculusアプリは同社のレガシー製品(RiftとRift S)でも動作するが、これらの新しいダウンロードは生産が終了した製品のためではなく、Quest 2のためのものだろう。MetaがQuest 2を初めて出荷したのは2020年10月で、同社の旗艦デバイスとして丸1年以上、299ドル(約3万5000円)というエントリーレベルの価格帯でVR導入をより手頃にするためのデバイスが出荷されていることを意味する。また、Facebookが2021年にMetaへの大きなブランド変更を発表し「メタバース」の計画を詳述したことで、初めてVRに興味を持った消費者が増え、最近のインストール数の増加につながっている可能性がある。

アプリのダウンロードは概して実世界での普及を示すものではないが、Oculusの場合、最近新しいOculus VRデバイスを購入した、または贈られた消費者が何人いるかを把握するのに役立つ。このアプリは、消費者が新しいVRアプリやゲームをダウンロードしたり、VRでつながる友人を見つけたりすることを可能にするため、Quest 2の所有者のほとんどがインストールを選択する。

米国時間1月5日現在、Oculusアプリはインストール数と勢いなどを考慮した米国のApp Storeランキングで順位を下げている。現在は総合で111位だが、振り分けられているエンターテインメント部門では10位と健闘している。

また、Apptopiaによると、このアプリは新規ユーザーの一定のエンゲージメントを得ているようだ。同社によると、Oculusアプリのデイリーアクティブユーザーは241万人で、以前のレベルを上回っている。この数字は、ユーザーが一度アプリをセットアップしてから放棄するのではなく、今も積極的にVRの世界を探求していることを示している。

画像クレジット:Facebook

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(文:Sarah Perez、翻訳:Nariko Mizoguchi

Tumblrが「大人向け」コンテンツを巡って再びアップルと闘争中

「Tony the Tiger(トニー・ザ・タイガー)」や「Eugene Levy(ユージン・レヴィ)」のパロディは今すぐ隠すこと。これらをはじめとする数百件のフレーズは、現在、Tumblr(タンブラー)のiOSアプリから排除されている。

現在、自らを「mature(大人向け)」と称したいかなる個人ブログもiOSアプリでアクセスできない。ユーザーには「思わせぶり、あるいは露骨である可能性のあるコンテンツ」のために隠されている旨を説明するポップアップが表示される。Tumblrによると、一部の投稿は、検索機能やおすすめ投稿やフォローしているユーザーのコンテンツを表示するユーザーダッシュボードでも隠されるという。

「私たちがAppleのApp Store(アップ・ストア)に存続し、TumblrのiOSアプリを利用できるようにするためには、慎重に扱うべきコンテンツに関するAppleのポリシーにこれまで以上に厳格に従うよう修正する必要があります」とTumblrは公式ブログで述べている。

画像クレジット:Tumblr

Tumblrユーザーたちは、iOS版Tumblrアプリが一連のポリシーを守るために禁止したタグの非公式クラウドソースリストを作った。禁止されたタグの中には、繊細なコンテンツに関して潔癖でいようとするプラットフォームとして理にかなったものもあり、たとえば「porn(ポルノ)」「drug(ドラッグ)」「sex(セックス)」などが禁止されている。それ以外は理解不能(あるいは、それについて考えすぎると頭が痛くなる)であり、上にもあげた「Tony the Tiger」や「Eugen Levy」などがある。数字の「69」と「420」も禁止されている。

サイトには多くのTumblrユーザーが集まり、自分たちの体験について匿名で語り合っているが、タグの禁止によって、その会話も実質的に検閲状態にある。stimming(自己刺激行動)という自閉症患者にとって一般的な対処行動に関わるいくつかのタグ、例えば「depression(うつ病)」「PTSD(心的外傷後ストレス障害)」「bipolar(躁うつ)」なども禁止されている。

「これらの調整によって、ユーザーが当社のiOSアプリを使って慎重に扱うべきコンテンツをアクセスできるかどうかに影響を与えることがあり、いらだたしいこともあることを理解しています」とTumblrの広報担当者がTechCrunchに伝えた。「現在もっと考慮された解決方法を検討中で近いうちに公開する予定なので、逐次状況をお知らせします」。

元TumblrのiOSエンジニアがsreegs(スリーグス)というブログで、この問題が起きた原因や、効果のないバンドエイドのような解決方法につい説明している。

「レビュー担当者がアプリを動かしてみて、ポルノが見つかればそのアプリは拒否されて、開発者は修正するようにいわれます」とブログに書かれている。そのエンジニアは、おおよそ「5回に1回のアップデート」でそれは起きるが、問題の投稿(スクリーンショットがTumblrに提供される)が削除されると、アプリは公開OKになる、と述べている。

「時おり、Tumblrが特別頑固なレビュー担当者に当たることがあります。ゴーサインをもらうまでにはいくつものポルノ粛清と再提出が必要になります」。同じようなことが今のTumblr iOSアプリでも起きているとエンジニアは考えている。

TumblrはiOS App Storeで承認を得るために、1年近く苦闘したことがある。2018年、TumblrのiOSアプリはApp Storeから削除され、それは児童性的虐待資料(CSAM)がアプリのフィルタリング機構に組み込まれた後のことだった。1カ月後、Tumblrはあらゆるポルノおよび性的に露骨なコンテンツを禁止し、ほぼ直後にトラフィックが29%減少した。それ以来、同プラットフォームのウェブトラフィックは低迷を続けている。

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もちろん、ユーザー生成コンテンツのプラットフォームからあらゆるアダルトコンテンツを排除するのは果てしない無駄な作業だ。

「何かと言いたくなる気持ちもあるんです。Instagram(インスタグラム)やTwitter(ツイッター)はあまりに巨大なので、Tumblrよりも許されることが多いのでしょう」と、その元Tumblr iOSエンジニアは理論づけた。「それとTumblrが2018年の終わりまでポルノをあからさまに許していた歴史とを合わせてみてください。もちろん証明はできませんが、もしTumblrのAppleでの評判というものがあるなら、それは良いものではありえません」。

それとは別に、Tumblrコンテンツは「#rule 34」から「#long post」まで、あれこれのタグを禁止されている。

Tumblrは米国時間12月28日、同社のChangesブログで、iOSアプリで利用できないタグのリストをレビュー中であり、1月までに完了する予定だと書いた。

そして「現在、iOSアプリで繊細なコンテンツを許容することをユーザーが選択できるウェブベースのスイッチを開発しています」と付け加えた。

Tumblrユーザーはしばしば、このプラットフォームをインターネットの荒れ地と呼ぶ。Tumblr自身、あるときApp StoreでiOSアプリの副題に「hellsite (affectionate)」(地獄サイト[愛情をこめて])と書いていたこともある。だったらなぜ使い続けるのか?

「サイトは死んだと思われていますが、この手のことには超簡単な回避方法があるものです」とあるTumblrのヘビーユーザーがTechCrunchに話した。「tab ban」をサイトで検索すればそういう抜け道を見つけるのは難しくないが、常連ユーザーはTumblrの検索機能がバグだらけなことも知っている。「実際、壊れた検索機能はこのピンチに役立っています。使った時の半分は欲しい物を見つけられませんが、Appleも見つけられませんから」。

しかし、TumblrがiOSアプリと検索機能で不足している部分は、アルゴリズムというかそれが欠けていることで補われている。TikTok(ティックトック)、Twitter、YouTube(ユーチューブ)、Facebook(フェイスブック)、Instagramなどのプラットフォームが上院に呼ばれて、彼らの謎の多いコンテンツの扱い方について釈明していた一方で、Tumblrは、昔風のやり方で仕事をしている。フォローしているユーザーのコンテンツを、逆時間順に表示するだけだ。

「正直、収拾不可能な状態でいることが、今はTumblrにとって完全に有利方向に働いていると私は信じています」とその熱心のTumblrユーザーは言った。「そこにアルゴリズムはないので、今でも自分の欲しいままの体験を収集することができています」。

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(文:Amanda Silberling、翻訳:Nob Takahashi / facebook

いつでも家族の思い出を整理・共有できる、プライベートソーシャルアプリ「Honeycomb」

Honeycombの共同創業者Amelia Lin(アメリア・リン)氏とNicole Wee(ニコル・ウィー)氏(画像クレジット:Honeycomb)

Honeycomb(ハニカム)という女性主導のスタートアップが、Stellation Capital(ステレーション・キャピタル)のPeter Boyce(ピーター・ボイス)氏主導によるシード資金400万ドル(約4億5200万円)の支援を受け、家族向けのプライベートソーシャルアプリをローンチする。今回プライベートベータが終了した同アプリは、Facebook(フェイスブック)やグループメッセージといった、写真や動画を見失いやすい、よりパブリックなソーシャルメディアプラットフォームを利用する代わりに、スマートフォンを介してお気に入りの瞬間や思い出を収集し共有する手段を家族に提供する。

注目すべきは、ボイス氏がGeneral Catalyst(ジェネラル・キャタリスト)を去った後に2021年設立した新しい会社Stellation Capitalが支援する最初のスタートアップがHoneycombであることだ。今回のラウンドには、Kyle Lui(カイル・ルイ)氏のDCM、Ben Ling(ベン・リン)氏のBling Capital(ブリング・キャピタル)、Charles Hudson(チャールズ・ハドソン)氏のPrecursor Ventures(プレカーサー・ベンチャーズ)、そしてAncestry(アンセストリー)のCEOであるDeborah Liu(デボラ・リュー)氏、Giphy(ジフィー)の創業者であるAlex Chung(アレックス・チャン)氏、Twitter(ツイッター)のエンジニアリングVPで以前はReddit(レディット)で同職務を務めていたNick Caldwell氏(ニック・コールドウェル)などのエンジェル投資家も参加した。

Honeycomb自身は、Udacity(ユダシティ)とOptimizely(オプティマイズリー)の元CEOであるAmelia Lin(アメリア・リン)氏と、Instagram(インスタグラム)の元プロダクトマネージャーNicole Wee(ニコル・ウィー)氏によって共同設立された。共同創業者たちは、プライベートなソーシャルネットワークを通じて家族をつなぐアプリを作ることに着想を得ていたが、当初はSagaという別のプロダクトでアプローチしていた。この最初のアプリは、家族が自分たちの人生のストーリーを記録できるソーシャルオーディオ体験だった。例えば、祖父母が最初に出会ったときの話や、子どもの誕生日の願い事を後で聞くことができるオーディオ日記のようなものだ。

しかし、このアプリは初期多くメディアに取り上げられたものの、必ずしも家族が望んだものではなかった。その代わりにチームは、アーリーアダプターたちから、音声だけではなく写真やビデオも保存したいという要望を聞いていた。そこでチームはこの秋、アプリの方向性を転換し名称をHoneycombに変更した。

画像クレジット:Honeycomb

この新しい体験は、9月にプライベートベータテストがローンチされたところで、家族がお気に入りの写真やビデオを保存し、それをテキストと組み合わせ、一種のデジタルストーリーに仕立て上げる方法を提供する。現時点用意されている体験は必ずしも、例えばiMessage上のグループチャットと比べてはるかに堅牢だとは言い切れないが、テキストメッセージングを使用するときには難しいような、古いシェアに立ち戻るための簡単な方法を提示している。ユーザーはリマインダーを設定して、その日のお気に入りの思い出のキュレーションを忘れないようにすることもできる。この機能は、赤ちゃんが新しいマイルストーンに達するのを見守りながら、毎日何十枚もの新たな写真をスマートフォンに次々とアップしていくような新米の親たちには最適かもしれない。

画像クレジット:Honeycomb

「その日の最高の思い出を整理していく、とても簡単な日課となるように手助けしています」とリン氏は説明する。「お気に入りを選択すると、自動的にこのストーリーに編集され、家族と共有されるだけではなく、このコレクションに永久に保存されます」。ただし、この体験はGoogle(グーグル)フォトやApple(アップル)の写真アプリ、あるいはDropbox(ドロップボックス)のようなユーザーの既存の写真サービスを置き換えるものではない、と同氏は指摘する。

「私はそれを、家族と交流するような、キュレーションされた美しい場所だとは思いません」とリン氏。「そしてFacebookやInstagram(を持つユーザーもいるかもしれませんが)、それは自分の赤ちゃんの写真をまさに公にさらしているように感じられます」。一方、Honeycombはデフォルトでプライベートだ。

「家族だけがここにいる人を選ぶことができる、それはかなり異なる哲学的アプローチだと思います」とリン氏は語り、次のように言い添えた。「ユーザーの写真やデータをサードパーティに販売するようなことはしていません」。

画像クレジット:Honeycomb

Honeycombは、広告で収益化するのではなく、サブスクリプションベースのサービスになるという点でも、主流のソーシャルアプリとは異なる。ただし同スタートアップは今のところ、新しいアプリを軌道に乗せるという観点から無料提供を行っている。

同社は、家族の年配ユーザーをどのようにプラットフォームに取り込むかについて検討を進めている。コンテンツをエクスポートして他の場所で共有できるようにすることも考えられるだろう。一方でチームは、赤ちゃんや子どもの新しい写真という魅力的な要素が、祖父母たちに対して、テクノロジーに詳しくなくても、スマートフォンにアプリをインストールする方法を理解する必要性を促すだろうと考えている。

ユーザーはHoneycombをダウンロードすると、まず基本的な機能セットへのアクセスを得る。しかしそう遠くない時点で、家族や友人と思い出を共有するためのより魅力的なストーリー形式を含む新しいベータ版へのオプトインを促される。(このオプトインは即時には行われないが、すでに展開されていることを同社は明らかにしている。)

AIではなく人間のキュレーションに立ち返り、ユーザーが最高の写真やビデオを見つけられるようにするという発想は、最近では確かに違いのあるアイデアだ。しかし、人々が日々のスナップ写真を整理したいのかどうか、特に「赤ちゃんが生まれた」という話題が消えた後にそうするのかは、依然として未知数である。

画像クレジット:Honeycomb

さらに、AIが役に立つこともある(おそらくスマートAIなら、筆者がアプリで誕生日の写真アルバムを作成した後、カバー写真としておもちゃの写真ではなく人物の写真をフィーチャーすることを知っていただろう)。AIはまた、照明の弱い写真や露光量が低い写真を廃棄することで、ユーザーが写真を自動的に分類することにも貢献する。

一般的にユーザーが望まないことは、自分の「最高の」写真についての最終決定権をAIに持たせたり、自らの生活や自身が重要だと考えていることに関するコンテキストなしにAIがアルバムを作成したりすることだ。そして自動化された「記憶」を通じて、自分たちが忘れたいと思う時間をAIに思い出させたくはないのである。

だが最良の解決策は、AIと手動キュレーションとのバランスを取ることかもしれない。ただしプライベートな社会的環境で行われるものとなろう。

Honeycombは事実上新しいアプリであるため、同スタートアップはユーザー数を公開していない。ただリン氏によると、Sagaから方向転換して以来、エンゲージメントは3倍になったという。

「Honeycombは、私たちの最も基本的かつ長期的な人間の欲求の1つ、家族の思い出をアーカイブし共有したいという願いを実現するためにテクノロジーを利用する、真にミッション駆動型の企業です」と、Stellationのピーター・ボイス氏はこのスタートアップへの投資について語った。「Honeycombはファミリーアルバムを21世紀にもたらす可能性を秘めています。イノベーションの段階的な機能変更の機に熟している、これほど大きな問題空間を見出すことは希少です。家族は、個人に向けた、親密になることを意図したソーシャルアプリの次の進化への準備が整っています。そしてこのチームはそれを構築しているのです」と同氏は付け加えた。

Honeycombは現在7人で構成されているが、この新たな資金を、同社のサンマテオオフィスで直接働くエンジニアを含む雇用に充てる計画だ。約10人の増員を見込んでいる。

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(文:Sarah Perez、翻訳:Dragonfly)

Womboの「Dream」は言葉で絵を描くことができるAI搭載のアートアプリ

この10年間、AIの現実を変える力はますます忙しくなっている。コンピュータービジョンを利用した3Dジオラマ、流行を仕掛けるスタイル転写、バイラルな写実的自撮りチューニング自撮りレタッチフェイススワップ、そしてもちろんディープフェイク、その他にも自撮りフィルター(ああ、「Disneyfying=ディズニー化する」カートゥーンレンズ!)による軽薄な(そして愉快な)楽しいものもたくさんある。

AIを使ったビジュアルリミックスは、注目を集めることができることを繰り返し証明してきた。しかし、AIが生成した効果の目新しさがなくなると、「注目」を維持することが難しくなる(自撮りレタッチアプリにはそのような問題はなく、リアリティを高める機械学習の需要は絶え間なくある)。

この間のAIを利用した合成メディアの発展で最も注目すべきは、これまで以上に強力なモバイル処理ハードウェアに助けられ、これらのビジュアルエフェクトの速度が向上したことだ。

完成までの待ち時間を大幅に短縮できるようになったこと。これは、ニューラルネットワークやGAN(Generative Adversarial Networks、敵対的生成ネットワーク)の創造性とパワーを製品化(そして潜在的には収益化)するためのゲームチェンジャーだ。つまり、機械学習のフレームワークが、レタッチやリフレーミング、あるいは生成的なモデリングを行い、そのインスピレーションを人間のプロンプトから得ている。

過去10年間、アプリを使ったビジュアルリミックスのほとんどは、AIを使った純粋な画像生成に対して、レタッチ、リスタイリング、オーグメンテーションに焦点を合わせてきたが、これも変わりつつある。

カナダのスタートアップWombo(ウォンボ)は、社名を冠したAI活用リップシンキング・ビデオ・アプリで注目を集めたが、最近、DreamiOSAndroid)という別のアプリを立ち上げた。この新アプリはAIを使って、テキストのプロンプトに基づいてオリジナルの「アートワーク」を制作する。

超、超シンプルだ。何を描いてほしいか、ただ言葉で表現する。例えば「恐ろしい木」とか「史上最悪のサンドイッチ」などと言って、提供される選択肢(神秘的、バロック、ファンタジーアート、スチームパンクなど)からスタイルを、あるいは「スタイルなし」を選び、作成を押すだけだ。

すると、文字通り数秒(筆者が数えたのは20秒以下)で、完成した「アートワーク」が表示される。

待っている数秒間は、AIの動きを垣間見ることができるので、退屈することはない。アプリにはモデリングが急速に進化していく様子が映し出される。スターターマークから、人間離れした速さでキャンバスに肉付けされ、あっという間に別の完成した構図に到達する。

生成された作品の中には、ちょっと感動するようなものもある。そうでないものもある。

しかし、もちろん、2つのプロンプトが同じ画像を生成することはない。なので、気に入ったものができるまで、同じプロンプトで新しい画像を求め続けることができる。

要するに、クリスマスカード作家やパルプフィクションのイラストレーターは、もう引退できる。

今や誰もが「アーティスト」だ。

とはいえ、実際のアーティストが心配することはあまりないはずだ。というのも、人間の頭脳と身体によって作られた芸術は、世界中に「マシンアート」が溢れれば、その価値は高まる一方だからだ(NFTが作られるたびに「デジタルアート」という言葉の意味が薄れていくように…)。

Dreamアプリの「アート」の質は確かにばらつきがある。長くて複雑なプロンプトはアプリを困惑させるようだ。なので、要求する内容によって、アウトプットの質が変わることがある。

「スタイル」は、多くの模倣がある中でひとつの包括的なスタイルがあるとすれば、具体的で正確というより、抽象的で歪んだものになる傾向があるようだ。ポートレートを依頼しても、写実的に描かれることはない。また、現実よりも幻想的に描かれる(例えば、「聖母子像」のプロンプトでは、暗号化されたボッティチェリではなく、悪名高いスペインの教会の修復に失敗したものに近い作品が提供された)。

しかし、その制作の速さには感心させられる。恐ろしいほどだ。

  1. Dream1

  2. Dream2

  3. Dream3

  4. Dream4

  5. Dream5

  6. Dream6

 

新鮮なアートワークが表示されるとすぐに、このアプリはそれを売ろうとする。「プリントを買う」というオプションがポップアップ表示される。ウェブショップにリンクする、視覚的なトリックを実際の売上に変える巧妙な方法のように見える(「カスタムWomboドリームプリント」を提供しており、マットポスターは20ドル=約2300円から、フレーム付きプリントは45ドル=約5200円からだ)。

もし、このスタートアップが、20秒もかからない処理を20ドル以上の売上に変えることができれば、ちょっとしたお金のパイプラインを作ることになる。

11月末までに、1000万枚以上の画像がすでにユーザーによって作成された。(一方、Google Playアプリは提供開始から1カ月ほどで100万回超のダウンロードを記録している)。

とはいえ、どんな種類のアートでも、ましてや心ない機械が生成した画像であっても、ほとんどの人はそれを飾るための壁のスペースは限られている。なので、こうしたランダムな作品の大半は、しっかりとバーチャルに留まることになる(「AIアート」は、NFTの完璧なネタになるかもしれないが…)。

「AIアート」がファッションや文化的価値においてどのような位置づけになるかは、もちろん興味深い問題だ。

クリップアートやストックフォトより優れているのは確かだ。Dreamアプリが出力する作品は、Ikea(イケア)で買える平均的な「アート」プリントよりも興味深いものになる可能性もある。しかし、その結果は、むしろ気持ち悪いもの、あるいは派生的なもの、あるいは下品なもの、あるいはただ単に奇妙なものであることもある。

そして、それはアートなのか? それとも、数学的プロセスの視覚的出力に過ぎないのか? コードにはそのようなものがないため、本当の感情やアイデンティティあるいは魂の感覚を解釈することができない、人間の創造的スキルの抽象化だろうか? アプリは、ただ言われたことをやっているだけだ。

そして、あなたは本当にコード化された抽象的なものを壁に飾りたいだろうか?

おそらくそうかも? 特に美的感覚に優れていれば。しかし、それはアートなのか、それともただの壁紙なのか? Womboは「アート」プリントではなく、Dream AIの壁紙や印刷されたマウスマット、Tシャツ(商品)を販売すべきなのかもしれない…。

あれこれ考えることがある。

いくつかはっきりしているのは、AIが生成するアートは、遊んでいてとても楽しいということだ。それは、ある種の視覚的な刺激だ。想像力のためのおもちゃだ。

また、間違いなくこの先も存在し続ける。芸術という主観的なテーマにおいて、「より良い」とはどういう意味かにもよるが、AIモデルは今後も「さらに良くなり」続ける(おそらく、生成的なアートのモデルは、その人がイメージしているものに近づいたり、個人的にユニークあるいは意味があると感じるまで微調整できるよう、機械が出力したものをカスタマイズ調整するツールを提供して、ユーザーをクリエイティブなプロセスに完全に参加させることによって、より成功的な結果をおさめるかもしれない。言い換えれば、よりハイブリッドな創作プロセスが、よりパワフルで感動的なアート的結果を生み出すかもしれない)。

また、このような芸術的なAIが今後多数存在し、それぞれが学習データから異なる「フレーバー」や「キャラクター」の視覚的出力を生成することになるだろう。あるいは、異なる「スタイル」を持つアート系AIも出てくるだろう(しかし、おそらく「専門性」の方がコード化されたマークに近い)。

GANベースの画像生成AIツールは他にもたくさんあり、処理速度はずっとずっと遅いのだが、筆者はPixrayのシステムの大ファンであることを白状する(ピクセルアートの出力は特にかわいい)。だが、Womboはこの技術を応用して収益を上げるのが最も早かったようだ。

現実を変える機械学習の次の10年は、かなりの旅になることだろう。

画像クレジット: Natasha Lomas/TechCrunch

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(文:Natasha Lomas、翻訳:Nariko Mizoguchi

Dapper Labsも支援するTiblesがドクター・スースのキャラをNFTトレーディングカードに

2012年、ブルックリンに拠点を置くモバイルアプリ開発のスタートアップ企業が、83年の歴史を持つトレーディングカード会社Topps(トップス)に仕事を依頼された。UCLAで経済学を専攻し、トレーディングカードをこよなく愛していた社長のErich Wood(エリック・ウッド)氏にとって、この仕事は楽しいだけでなく、彼の人生を大きく変えるものとなった。

その当時、Toppsは、メジャーリーグベースボール、ナショナルフットボールリーグ、スターウォーズとライセンス契約を結んでいた。当時の同社デジタル部門責任者に見出されたウッド氏の小さな会社は、これら3つの最初のデジタルトレーディングカードプラットフォームを構築するために招かれたのだった

このデジタルトレーディングカードはすぐに好評を博した。実際、ウッド氏によると、あまりにも上手くいったので、同氏は2016年、デジタル部門責任者だったMichael Bramlage(マイケル・ブラムレッジ)氏と一緒に、自分たちのデジタル収集品会社Quidd(クイッド)を設立することに決めた。

それから現在にまで早送りすると、ブラムレッジ氏はまだQuiddのCEOを務めているが、Quiddは2019年にAnimoca Brands(アニモカ・ブランズ)に買収され、現在は独立した子会社として運営されている。一方、ウッド氏は静かにTibles(ティブルズ)という新しい事業を13人で起ち上げており、
Cadenza Ventures(カデンツァ・ベンチャーズ)が主導するシード資金調達で300万ドル(約3億4300万円)を調達したばかりだ。このラウンドには、2021年初めに「NBA Top Shot(NBAトップショット)」で世界に旋風を巻き起こしたDapper Labs(ダッパーラボ)も、前回に続いて参加した。

関連記事:NFTとは何か?デジタル収集家たちのなぜ今、熱狂しているのか?

興味深いことに、TiblesはQuiddとあまり変わらないように見えるが、Quiddはまだコレクターズアイテムを「オフチェーン」、つまり中央のサーバーに保管しているのに対し、TiblesはDapper Labsが開発したブロックチェーン「Flow(フロー)」のみで動作するNFT(非代替性トークン)マーケットプレイスを構築している(ちなみにQuiddは、ホームページ上で「間もなくブロックチェーンに移行する」と言っている)。

また、Tiblesがポップカルチャーやエンターテインメント系のブランドに特化しているのに対し、Quiddはスポーツに関するコレクターズアイテムも販売しているという違いもある。

だが、おそらく最も重要な点は、ウッド氏の話から推察すると、TiblesはQuiddや他のデジタル収集品マーケットプレイスとは異なり、既存の画像をデジタル化してNFTにするだけではなく、ブランドと協力して、オリジナルのライセンスを受けたアート、トレーディング体験、コミュニティを備えたエコシステムの構築を計画しているということだ。同社の究極的な目標は、デジタルでの収集体験を、物理的な収集体験と同じくらい本物にすることだという。

それが計画通りにうまくいくかどうかはまだわからないが、まずはその出発点としてTiblesは、同社とDr. Seuss Enterprises(ドクター・スース・エンタープライズ)、Dapper Labsが協力して制作する「Seussibles(スースィブルズ)」を発表した。これはTheodor Geisel(セオドア・ガイゼル)のファンが、ドクター・スースの生み出したキャラクターであるLorax(ロラックスおじさん)や、Grinch(いじわるグリンチ)、Horton the Elephant(ぞうのホートン)などのNFTを所有し、他のファンと交流できるというものだ。

ウッド氏の説明によると、このNFTはPokémon(ポケモン)カードのような5枚組のブラインドパックとして販売されるという。「ステッカー」と呼ばれるこれらのカードは「ステッカーブック」で閲覧でき、他のユーザーたちとお互いのコレクションを見せ合うことができる。

また、ファン同士の交流の場であるクラブハウスや、保有しているカードを交換することができるトレーディングエリアも用意される。

今のところ、すべてのパックの価格は同じで「限定版」のNFTはないが、Tiblesはファンにとってどのキャラクターが他のキャラクターよりも価値があるのかを知るために、人々がどんなふうに交換するかを調べるに違いない。

このスタートアップ企業のロードマップでは、当然のことながら、まずは雇用が優先される。また、TiblesはDapper Labsと緊密に協力して、より多くのコンテンツを生み出せるように、より多くのライセンス契約を獲得する予定だ(具体的な内容を聞かれたウッド氏は「ライセンス契約のロードマップは長い」「秘密だらけだ」と答えている)。

開発面に関しては、ウッド氏によれば、計画は非常に単純だという。Tiblesは「他のApple(アップル)アプリ内課金と同じように、誰もが簡単に購入できるようなユーザー体験を提供することに非常に注力している」とのこと。また、ウッド氏は、ユーザーがコミュニティに参加したり、共有したり、整理したり、交換したりすることを、非常に簡単にしたいと考えている。「私たちは、これを楽しいものにして、(その成功を)いくつかの異なるパブリッシャーやライセンス、異なる体験で再現することに力を入れています」。

確かに、ウッド氏はデジタル収集品市場における長年の経験から、ファングループごとに評価が異なる傾向があることを知っている。Dapper LabsとDr. Seuss Enterprisesとの契約は、カードのようなステッカーを中心とするものだが、他のクライアントのための将来のプロジェクトでは「動画やアニメーション、あるいはインタラクションになるかもしれません」と、同氏は語る。

共通しているのは、すべてが収集可能なウェブオブジェクトになるということだ。あとはプロパティ次第である。「私たちは、IP、ブランド、ファン、そして彼らが好むものを理解することに多くの時間を費やします」と、ウッド氏はいう。「そして、それがうまくいくことはほとんどありません」。

Tiblesの最近の資金調達は、2021年初5月に実施された119万ドル(約1億3600万円)のシードラウンドに続くものだ。

前回のラウンドを主導したDapper Labsに加え、CoinFund(コインファンド)とWarburg Serres(ウォーバーグ・セレス)が両ラウンドに参加している。

画像クレジット:Tibles

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(文:Connie Loizos、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

Go Discoは地元のリアルイベントをキュレーションし、サービスで人と人とのリアルな共感関係を作るアプリ

Go Discoアプリ

Foursquareの全盛期はとっくに過ぎたが、自分の地元のクールな催しを見つけるという問題は健在だ。口コミとFacebook(フェイスブック)やInstagram(インスタグラム)を組み合わせるという、面倒な方法に頼っている人も多いようだが、実際には、アプリを離れて世界に出ていくことを助けてくれる良いアプリは少ない。Go Discoはここに注目した。

Go Discoの共同創業者であるSean Conrad(ショーン・コンラッド)氏は次のように語る。「簡単にいうとこれは、あなたをオフラインにして、日頃気にかけている人たちと一緒に過ごすためのアプリなんだ」。つまりGo Discoはイベントレコメンデーションエンジンだが、コンラッド氏によるとこのアプリは、エンゲージメントを注入してユーザーをつなぎとめるソーシャルネットワークに対する解毒剤でもある。

「テクノロジーは、医療やロジスティクスや運輸・交通に利用されて人の命を救い世界を効率化したけど、悪い面もある。それは、人間の社会生活に市場原理を強要したことだ。ポケットの中の、人を元気にする魔法のようなデバイスが、我々の社会生活にとって悪夢になっている」とコンラッド氏はいう。

コンラッド氏は以前、消費者アプリのデベロッパーで、もう1人の共同創業者であるJesse Berns(ジェシー・バーンズ)氏はデータサイエンティストだ。iOSバージョンは米国時間12月17日にローンチしたが、Androidは2022年半ばになる。ローンチ時のGo Discoは、ロサンゼルスのクールなイベントを紹介するだけだが、2022年内にはニューヨークとワシントンD.C.、サンフランシスコ、マイアミ、ポートランド、そしてオースチンも対象となる。

 

Go Discoは、ローカルイベントの検索や分類を自動化システムと人力を併用して行っている。人の編集チームは、他では見つからない特定のコミュニティに結びついたアンダーグラウンドな催しを見つける。

同社のイベント集積技術は、公開されているイベントのリストを特定の用語でふるいにかけ、それを65種類の関心のリストに割り振る。アプリにサインアップすると、まずそのリストから関心を選ぶ。ロッククライミングもあれば、書籍もあり、LGBTQのコミュニティや活動もある。

コンラッド氏は、Go Discoのレコメンデーションで人間的な感触の重要性を強調している。それによりレコメンデーションが格差や差別に陥ることなく、思いやり豊かなものになる。またそれは、そこから選ぶのが大変な何でもありのイベントのカレンダーではなく、個人とコミュニティに配慮し、意思決定の面倒をユーザーに押し付けない。

Go Discoにとっては、「少ない」ことが「良い」ことだ。ユーザーが住んでいる都市で行われるすべてのイベントを載せるのではなく、そのユーザーにとって楽しめると思われるイベントだけを選別する。コンラッド氏は「何もかも載せる必要はない。3つから5つの本当にニッチなイベントを紹介すればいい。完全なアプリとは、ユーザーがそれを開いたら必要なものだけがそこにある、それを見たら終わりというアプリだ。何かを見つけるのに時間がかかるのはダメなことです」。

アプリの最初のバージョンは米国時間12月17日にローンチするが、今後はユーザー体験を深めるためにソーシャルなレイヤーを追加する計画だ。2022年3月頃に、Go Discoは今後のイベントについてユーザー同士がコミュニケートし、リプライがスレッドになるような機能を加える。それまでは、一般的なシェアとカレンダー的な機能だけとなる。

ソーシャルのレイターを加えるとGo Discoは、友だちと日程などを調整するためにテキストのスレッドを探しまくるという困難からユーザーを解放し、特定のイベントに群がる人たちを、そのイベントの周りに集めるようになる。そして会話がイベント固有になれば、ユーザーは単純にその会話に参加すればよく、1つの巨大なテキストの塊の中から特定のスレッドを苦労して探さなくてもよくなる。

コンラッド氏によると「私にはロッククライミング好きの友だちもいるし、グルメな友だちもいる。そして音楽の友だちもいる。一部は重複しているが、そうでない人たちもいる。そえを3つの極端にノイズの多いテキストのスレッドにはしたくない。それぞれの友だちグループとエンゲージして、接続した状態を維持したい。それと同時に、私のライブの音楽友だちが参加するようなライブすべてに行きたいわけでもない」。

Go Discoはまだ初期の段階だが、収益化については一定の考えを持っている。このアプリはユーザーデータは販売しないが、チケットを売って手数料を取ったり、特定のユーザーに有料の機能を提供することは行うだろう。コンラッド氏が強調するのは、イベントの宣伝を載せるような場合も、思いやりを忘れないことだ。なぜなら、このプロジェクトの全体が思いやりのある選択と編集方針をベースにしているからだ。健全なS/N比を維持することも重要だ。また、多くの人たちのリアルでの結びつきを尊重し、彼らをより幸福にしたいと考えている。

「子どもたちが、Mark Zuckerberg(マーク・ザッカーバーグ)が作ったフェイクの世界で成長することを想像すると、とても悲しくて怖ろしい。その世界は、私たちをお互いに戦わせるために作った奇妙なアルゴリズムの増幅にすぎない。私たちが何度も考えたのは、他者への共感が今のこの状態を緩和できるということです。そして、人が一緒にいることが共感を強制的に作り出す関数だと考えています」。

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(文:Taylor Hatmaker、翻訳:Hiroshi Iwatani)

ZillowがFaceTimeのSharePlay機能を追加、通話中に家族や友人と一緒に物件を閲覧できるように

不動産テックのZillow(ジロウ)は、iOS 15のiPhoneおよびiPad版アプリをアップデートし、SharePlayに対応したことを発表した。iOSユーザーは、グループでFaceTime通話を開始し、SharePlayを有効にしてZillowのフォトギャラリーを閲覧することで、通話中の全員が物件を見ることができる。

「米国人はZillowサーフィンをするのが大好きで、そのほとんどは誰かと一緒に物件を探していますが、新しい方法でそれができるようになりました」とZillowは述べている。「iPhoneやiPadでZillowアプリを使って家を探している人は、家族や友人、不動産エージェントと一緒にシームレスな同期体験で、売家や賃貸物件を検索・閲覧できるようになりました」。

Zillowによると、ユーザーの86%がパートナーや配偶者、同居人と一緒に住宅を閲覧しているとのことで、実際に一緒にいられない場合には、この新機能は理に適っていると言えるだろう。また、ZillowのCTOであるDavid Beitel(デビッド・ベイテル)氏は「不動産業者にとっても、顧客とつながるすばらしい新たな方法」だと述べている。

この機能を利用するには、各参加者が、iOS / iPadOS 15.1以降を搭載したiPhoneまたはiPadでZillowアプリを起動する必要がある。ユーザーは、Zillowでさまざまな場所を検索し、コンテンツが同期された状態で購入・賃貸可能な物件を閲覧することができる。ライバルの不動産アプリであるRedfin(レッドフィン)は、10月に同様の機能を導入している。

編集部注:本稿の初出はEngadget。著者Steve Dent(スティーブ・デント)氏は、Engadgetのアソシエイトエディター。

画像クレジット:Zillow

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(文:Steve Dent、翻訳:Aya Nakazato)

リコーのアクセラレータープログラムTRIBUS採択企業ユニフィニティーが現場効率化アプリの自動作成サービスβ版を無償提供

ゼロワンブースターは12月17日、リコーとともに運営するアクセラレータープログラム「TRIBUS」(トライバス)において採択されたユニフィニティーが、現場効率化ノーコードアプリの自動作成サービスβ版の無償提供を発表した。

同サービスにより、現場効率化用途のカスタムアプリを無料で試作し、DXプロジェクトの検証や新規事業のPoCをスムーズに進められるという。申し込みは、「無料アプリを申し込む」より行える。

TRIBUSは、リコーが社内外からイノベーターを募り、リコーのソースを活用してイノベーションにつなげるプロジェクト。資金や先進技術にとどまらず、リコーグループ社員が社内外で得た知見を活かしサポートする。ユニフィニティーは、これまでに蓄積したアプリ開発のノウハウに加え、サービス企画、プロジェクトマネジメントや製品デザイン、販売・開発体制の構築に至るまでTRIBUSから多くの支援を受けて、現場効率化ノーコードアプリの自動作成サービスを実現した。

同サービスでは、カメラやバーコードリーダー、GPSなどを活用して現場を効率化するモバイルアプリが無料で作成できる。豊富な画面パターンとカスタム機能を組み合わせることで、様々なアプリを表現可能という。また、1カ月間無料で試用可能なUnifinity Platformの専用開発ツール「Unifinity Studio」を用いれば、さらに細かい部分のカスタマイズも行える。


ユニフィニティーは、「テクノロジーの力をもっと身近に」をキーワードに掲げてアプリのノーコード開発プラットフォーム「Unifinity」を提供するスタートアップ。AIやクラウドといった様々な先端テクノロジーを誰でも活用できるアプリを、誰でも作れるようにすることで、あらゆる人が自分だけのアプリで働くことができる社会を目指している。

ゼロワンブースターは、「日本を事業創造できる国にして世界を変える」という企業理念のもと、大手企業とスタートアップ企業が相互に補完し合い、イノベーションを共創して事業の成長を加速するオープンイノベーションプログラム「コーポレートアクセラレーター」や、社内起業家を発見・育成するプログラム「イントラプレナーアクセラレーター」を展開している。