Uberがインドのフードデリバリーからの撤退が近いと伝えられる

Uberは、中国ロシア東南アジアからの3連続の撤退の後、決してインド(に限らずいかなる市場からも)からは撤退しないと断言したが、その対象には同社のフードデリバリービジネスも含まれているのだろうか?

雲行きは怪しい。もしメディアの報道が正しければ、Uberはインドのフードデリバリー業界からの撤退の瀬戸際にいる。

インドのEconomic Timesが伝えるところによれば、最近10億ドルを調達し一般配送にも拡大したフードデリバリーサービスのSwiggyが、その株式の10%をUberに与えることでUber Eatsを吸収する交渉の最終段階にあるという。Swiggyはごく最近の10億ドルの調達ラウンドのあと、33億ドルの価値があると言われていた。このラウンドはNaspersが主導し、新しい後援者TencentやUberの投資家のCoatueなども参加した。

Uber Eatsは同社の主要な収益源であることが喧伝されている。The Informationはかつて、2018年第1四半期だけで15億ドルの売り上げを上げていると報じていて、同社はアジアでの拡大を急いできた。Uber Eatsは2年近く前にインドに上陸したが、昨年3度の資金調達を行ったSwiggyと、Alibabaの支援を受けたZomatoとの間の、戦いの真っ只中にいる。

すでに、2017年末にUberのライバルのOlaが買収したサービスである FoodPandaなどを含む周囲に、この争いの影響が出ている。OlaはFoodPandaによってコストを削減し、より持続可能なクラウドキッチン戦略に焦点を移したと報じられている 。それでもZomatoとSwiggyは攻撃的である。

その背景と、今後予定されているUberのIPOを考えると、コストを集約しながら、市場への関与を続けることには意味がある。Uberはまさに、東南アジアにおいてGrabとの間でその取引を行った。顧客輸送とフードデリバリービジネスをGtabの27.5%の株式と交換で譲ったのだ。

私が、Uberにとっては敗戦ではなく勝利であったと主張したそのGrabとの取引は、赤字の消耗戦から会社を救い出して、成長しているビジネスへの掛け金にしたのだ。それはUberがインドのフードデリバリー事業のために、再び繰り返すレシピなのかもしれない。

注:CoatueはUberとSwiggy両方の投資家である。

[原文へ]
(翻訳:sako)

ヨーロッパとインドが共同でネットの中立性を擁護へ

ヨーロッパのBEREC(Body of European Regulators for Electronic Communications, 欧州電子通信規制者団体)とインドのTRAI(Telecom Regulatory Authority of India, インド通信業規制局)が昨日(米国時間6/15)共同会議を行い、オープンなインターネットを推進していくための共同声明に署名した

この短い文書は、ネットの中立性を保証するための規則集を記述している。それは、インターネットのトラフィックの平等な取り扱いや、ゼロレーティングの実践に関するケースバイケースの判断など、一部のベーシックなルールだ。

EUとインドは共にすでに、ネットの中立性を確保するための規制を実施している。しかし彼らは今回、その同じルール集合に関してさらに協力を深めたいようだ。ネットの中立性はつねに進化しているので、ルールも絶えずアップデートする必要がある。両者のコラボレーションが、ネットの中立性の統一に貢献するだろう。

共同声明よりもさらに重要なのは、その発表のタイミングだ。FCCは月曜日に、ネットの中立性を正式に廃止した。ヨーロッパやインドがアメリカで起きていることにいちいち対応する必要はないが、ネットの中立性だけは、自国でそれが無傷であることを、確保したいのだ。

FCCの決定がドミノ効果を惹き起こすリスクもある。ほかの国の通信企業も、規制当局にロビー活動を仕掛けて、ネットの中立性を終わらせようとするかもしれない。アメリカでやったんだから、俺らにもできるだろう!?

フランスの通信規制当局ARCEPのSébastien Soriano長官が数か月前に語ったところによると、そろそろ、別のやり方があることを実際に示すべきときだ。そのための最良の方法は、同じ原則を共有するいろんな国の規制当局が集まって、行動を興すことだ。EUとインドを合わせると世界の人口の大きなパーセンテージになるが、それだけの数が明らかにネットの中立性を擁護しているのだ。

そのほかの国もこの同盟に加わって、ネットの中立性がイノベーションと競争と最終消費者にとって重要であることを、証明していける。

[原文へ]
(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

名刺管理アプリ「Eight」がインド進出、6ヶ月で100万ユーザーの獲得めざす

法人向けと個人向けに名刺管理サービスを展開するSansanは11月22日、名刺管理アプリのEightをインド市場でも提供開始すると発表した。

2007年創業のSansanは、個人向け名刺管理アプリのEightと法人向けのクラウド名刺管理サービスSansanを展開するスタートアップ。Eightのユーザー数は150万人を超え、これまでに取り込んだ名刺データは約3億枚以上だ。

42億円の資金調達を実施したことを2017年8月に発表したSansanだが、その際、同社は調達した資金を利用してアジア諸国への展開に注力するとしていた。今回のインド進出がその第一弾となる。

進出先にインドを選んだ理由としてSansanは、「4億人を超える世界最大の潜在労働力を抱えるなど、(インドは)今後の成長性の面でも大きな期待がされている。また、インドにはビジネスのつながりを大切にし、次のビジネスに活かす文化もあり、日本と同様に日常的に名刺交換が行なわれている」と話す。

確かに、“インドとビジネスをするための鉄則55”(島田卓著)にも、「初対面の人たちとの会議では、まずあいさつし、握手をして名刺交換をします。なじみのない国では顔も名前も分からなくなりやすいので、目の前の卓上に名刺を並べて順番に確認していくといいでしょう」と書かれているように、この地では日本と同様の名刺文化が根付いているようだ。

Eightのインドローンチとあわせて、Sansanは現地における“スキャンパートナー”を募集する。これは、ビジネスマンが多く集まる場所にEight専用スキャナーを設置する事業パートナーのことを指す。今後の6ヶ月間で、Sansanはインドで100万ユーザーの獲得を目指すとしている。

Googleがインドでローカルモバイル決済サービスを始める模様

インドに本拠を置くニュースサイトKenのレポートによると、インドに焦点を当てつつあるGoogleは、来週早々にもローカライズされたデジタル決済サービスを導入する計画だ。

報告でGoogle ‘Tez’(「迅速」という意味)と呼ばれるこのサービスは、既存のGoogle WalletやAmdroid Pay以上に包括的な支払手段を提供する。例えば、Tezは、政府によって支えられた支払いシステムであるUnified Payments Interface(UPI)や、その他の消費者向け支払いサービスであるPaytmやMobiKwikなどへのサポートを提供する予定だ。明らかに最初から専用アプリとして提供されるようだ。

Googleはコメントを拒否した。

Googleは米国以外では支払いに対して大きな努力はしておらず、インドでの消費者のプレゼンスは強いものの、インドからの収益に関してはまだ特筆すべきものはない。そうした点を考慮すると、これは大変なことである。

強気に出る理由は沢山ある。インドのインターネットユーザーベースとスマートフォンセールスの急速な成長を受けて、同国は既に世界2番目の巨大スマートフォン市場になっている。そしてデジタルペイメントはロケットのように急速に上昇し2020年迄には年間5000億ドルにも達するだろうと言われている —— この予想はBCGと(…ここでドラムロール…)Googleによるものだ

その可能性は既にFlipkartWhatsAppTruecallerのようなテクノロジー企業を引き寄せ、その世界での展開が始まっている。しかしその消費者サービスと(インドでは支配的なスマートフォンOSである)Androidと組み合わさった徹底したプロダクトによって、Googleは優勢になる可能性がある。

情報源によれば、Kenは政府の書類を掘り起こして、GoogleがTezという名前のプロダクトをインドで公開する情報を掴んだのだと言う。また、興味深いことに、国際的な展開も計画されているように見える。なぜなら検索の巨人はTezの商標を少なくともインドネシアとフィリピンで登録しているのだ。

Googleは、インドで相当量の開発リソースを使っている。また最近では、それ以上に東南アジアに対してそのNext Billion Users (NBU:次の10億ユーザー)プログラムを通してリソースを投入している。この中には無料の公共/鉄道駅Wi-Fiデータ最適化バージョンのYouTube、そして手頃な価格の端末用のAndroid OneおよびAndroid Goオペレーティングシステムなどが含まれる。またNBUチーム立ち上げのためにインドシンガポールで人材を確保し地域の技術的才能を磨き上げようとしている。

[ 原文へ ]
(翻訳:Sako)

FEATURED IMAGE: JON RUSSELL/FLICKR UNDER A CC BY 2.0 LICENSE (IMAGE HAS BEEN MODIFIED)

2人の元Google社員が、AIを用いて求職活動のマッチングを行う

2人の元Google社員が、ハイテク産業界の労働者たちに対して、理想の雇用主たちとのインタビューが確実になるようにしようとしている。人工知能を活用するのだ。

この1年ほどの間に、AIは広範な課題に対して適用されてきた。元GoogleのエンジニアだったRichard LiuYunkai Zhouが設立したLeap.aiは、AIがテクノロジー業界の雇用問題を解決することに利用できると考えている。

周知のように、現在のLinkedInは、オンライン求人を代表する体重360キログラムのゴリラだ。しかし、それはとても完璧とは言えない。ほとんどのHR(人事)チームと採用チームは、積み上がるデジタル履歴書を捌くために、終わることのない苦労を続けている。昨年Microsoftに260億ドル以上で売却されたLinkedInの中ではヘッドハンティングオプションが提供されている。しかしそれほほとんどの場合、質というよりは量を担保するもので、このサービスを活用するためには、多大な時間を注ぎ込んで手作業を行う必要がある。

Leap.aiの創業者であるLiu(CEO)とZhou(CTO)は中国からやって来て、もう長い間シリコンバレーに住んでいる。そして彼らは求職者が持つスキルと経験を、彼らの希望と雇用者候補のカルチャーに対してより効率にマッチさせる方法があるに違いないと考えたのだ。

「私はおそらく、私の部門に500人ほどを雇い入れました」とLiuはTechCrunchに語った。彼はGoogleで8年間を過ごし、Project Fi(Googleの格安SIMプロジェクト)のエンジニアリング責任者となった経験をもつ「そこで雇用が難しいことを学びました」。

「学び、協力し、統率力を発揮する能力は、強いアピールポイントとなりますが、それをインタビューから読み取るのは至難の業です。好奇心や動機なども、インタビュープロセスの中では多くを測ることはできません」と彼は付け加えた。

Leap.aiは18カ月前に設立され現在10人のスタッフを擁している。候補者のより完璧なキャリア志向を様々なデータを駆使して組み上げるが、使われるデータとしては例えば、就労履歴、様々な資格やスキルといった普通のものから、個人的興味、この先のキャリアに対する希望などまでが勘案される。そのプロセスの一部には、「理想」の雇用主と自身の理想とする役割のマッピングも含まれる。

そこからシステムは、DropboxやUberなどを含む(Leap.aiの常連客である)雇用者側と、求職者をマッチングする。求職者が働くことを熱望する候補の会社の名前を2つ挙げて貰うことで、Leap.aiは少なくとも1つの企業とのインタビューは保証できると考えている(特に希望対象がスタートアップでGoogleのような巨大企業ではなかった場合)。

なぜなら、企業は自身の文化に合った候補者に本当に価値を置いていて、財務的利益を超えて彼らを採用する意欲があるからだ、とLiuは説明する。

「ご存知のように、LinkedInは(人を集めるという)最初の問題は解決しました。しかしひとりひとりがどのように優れていて、どのように組織にフィットするかは、ずっと難しくて、ずっと価値がある問題なのです」と彼は語った。

Leap.aiサービスはまた、求職側や求人側から収集したデータに基づいて、候補者が働くのに適している場所について個人的な提案を行なうサービスも提供する。

これまでのところ、得られた結果は印象的なものだ。同社は、雇用が成立したときにのみ報酬を受け取るが、Liuは8月には利益が出るようになると述べている。現在までに、提供されたマッチングのうちの70%で、対象企業の(少なくとも)最初のインタビューはパスしている。

現在は、ニューヨーク、ボルダー、オースティン、シアトル、シリコンバレーの候補者に焦点を当てているが、米国内と海外の両方に、その範囲を広げようとしているところだ。これは、現行の50以上の顧客からの要請によって推進されている部分もある。Liuによれば、Leap.aiは現在、インドや中国の会社からの興味が大きく高まっていることを感じているそうだ。この両国の会社の中には、海外から故国に帰り、ハイテクプロジェクトで働きたいと思う海外居住者を探そうと考えるものが増えつつある。

すでにLeap.aiは、そうしたアジア系企業による米国での雇用を支援するための専用機能を構築している他、中国を起点にローカル採用オプションを試す予定だ。

中国でのネットワーク公開の準備は進んでいる。Leap.aiの創業者たちは、Googleの中で腕を磨いた中国人エンジニアとしての地位の他に、中国のトップテクノロジーVCの1つであるZhen Fudから支援を受けている。これはこれまで調達した240万ドルのシード資金の一部を構成している。

「私たちは積極的に中国でのチャンスを模索してはいますが、中国に進出する前に米国で確固たる地位を確立したいと考えいます」とLiu。「創業当初から、米国、中国、インドを目標として置いていました」。

同社の野望は単に雇用を支援するだけではなく、LiuとZhouがGoogleに参加していたときのような、メンターシップを再現することも考えている。すなわち、若い被雇用者たちが、キャリアゴールを設定しその野望を達成するためにステージからステージへの移動を描き出すことを助けるということだ。それは現在の会社の中での新しい役割かもしれないし、どこか外へ出て実現されるものかもしれない。

プロダクトの観点からみれは、これは人びとがずっと一定のキャリアコンパニオンとして使い続けるリソースとなることを意味する。既にスタートアップのアプリは、単なる就職活動を超えて、既にキャリアや個人の開発にむけて焦点を当てていて、この先更に深みが加えられていく予定だ。

「私たちはGoogleで積極的にメンタリングを行ってきました」検索の巨人で10年近く働いていたZhouはそう語る。「長期的観点でのキャリアの成功を助けたいのです」。

その成功の尺度として、同社はスタッフの半分以上を自社のサービスを通して雇用している。そして今は、自分たち以外の世の雇用者と従業員の双方にもメリットを与えられことを望んでいる。

[ 原文へ ]
(翻訳:Sako)

インド発、牛乳配達サービスのSupr Dialyが150万ドル調達――国内の営業地域拡大を目指す

牛乳配達はディスラプションとは無縁なサービスのように思えるが、インド発のスタートアップSupr Dailyはまさに牛乳配達の在り方を変えようとしている。Y Combinatorのプログラムを今年修了した同社は、この度サービス提供地域の拡大を目的に複数の投資家から150万ドルを調達した。

2月のSupr Dailyに関する記事の通り、同社のサービスの目的は、カオス状態にあるインドの牛乳配達システムを整備し、付随する品質問題を解決することだ。

インド政府の調査によれば、配達される牛乳の68%が配達人のせいで”汚染されている”可能性がある。彼らは収入を増やすために牛乳をかさ増ししているのだ。そのため、配達される牛乳には洗剤や苛性ソーダ、グルコースのほか、変色を防ぐために白い塗料や精製油が含まれているとTimes Internetは報じている。そこで、Supr Dailyは新鮮な牛乳を直接供給し、配達スタッフにも普通より高い賃金を支払うことで、本物の牛乳を顧客に届けようとしているのだ。さらに顧客は、牛乳と一緒に届けられるテスターを使って品質をチェックすることもできる。

Supr Dailyの主力商品は牛乳だが、定期的に食料品店に足を運ぶのが面倒という人向けに、パンや卵、バター、ココナッツミルクなども販売されている。

2015年に設立されたSupr Dailyは、現在ムンバイ市内の15地区でサービスを提供している。共同ファウンダーのPuneet Kumarによれば、配達数は間もなく100万件に達するとのこと。ローンチ時は、サービスが受け入れられるかを試すために意図的に営業地域を絞っていたが、現在Kumarともう一人の共同ファウンダーであるShreyas Nagdawaneは市場の拡大を狙っている。まずはムンバイ全体にサービスを広げ、その後に他の主要都市にも手を伸ばそうという考えのようだ。

「(調達した)資金はスケールのほか、今後インドの主要都市にビジネスを展開するため、どうやればひとつの都市を制覇できるのかという戦略を練るために使われる予定です」とKumarは話す。

また、Supr Dialyの株主には、Soma CapitalやGreat Oaks Ventures、122 West Venturesのほか、エンジェル投資家のPaul Buchheit(Y Combinatorパートナー)、Jared Friedman、Roger Eganなど、さまざまな投資家が名を連ねている。なお、昨年Roger Eganは、シンガポールを拠点に生鮮食料品のEC事業を行っていたRedmartをAlibaba傘下のLazadaに売却していた。

「食品を扱う私たちを支えてくれるような、食料品市場のことを良く知る人たちを投資家に迎えました」とKumarは話す。

Supr Dailyの業績に関する詳しい情報は明らかになっておらず、同社はY Combinatorのプログラムに在籍中の今年のQ1に売上が4倍になったとだけ語った。その一方で、Supr Dailyは他のオンデマンド事業やデリバリー事業とは違って採算がとれているとKumarは言う。

「1件1件の配達で利益が出ていますし、ユニットエコノミクスは健全な水準です」と彼は説明する。「バーンレートもかなり低いので、今回の調達資金があればスケールに時間がかかっても問題ありません」

「ラストワンマイルの配達にかかるコストは5セント以下で、Supr Dialyには(他の配達サービスと比べて)20〜30倍のコスト優位性があるので、私たちはかなり有利な立場にあると言えます」とKumarは付け加えた。

原文へ

(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

UberEatsがインドでローンチ――まずはムンバイに住む2000万人がターゲット

Uberは現地時間5月2日より、ムンバイを皮切りにインドでUberEatsをスタートさせた。

今年中にはムンバイを含むインドの計6都市にUberEatsを展開させる予定だと同社は語っているが、今後進出を予定している都市名については明かされなかった。インドの三大ビジネスハブのひとつで2000万人の人口を誇るムンバイは、スタート地点としてはうってつけだ。

「国内外を問わず多彩な食文化が溢れるムンバイでは、食のビジネスが盛り上がっています。そんなムンバイを最初の都市としてUberEatsがインド市場に進出するというのは、世界中へのビジネス展開を目指す私たちにとって大きなステップであると同時に、インドへの私たちのコミットメントを見せる良い機会でもあります」とUberEats Indiaでトップを務めるBhavik Rathodは声明の中で語った。

1月には既にテストが行われていたインドへの進出により、UberEatsが利用できる地域は世界中で26ヶ国78都市に拡大した。2014年にパイロットプロジェクトとしてロサンゼルスで産声をあげた同サービスは、当初Uberアプリの機能のひとつでしかなかったが、その後スタンドアローンのアプリがリリースされた。昨年3月のシンガポールでのサービス開始でアジア市場への初進出を果たし、その後東京とバンコクでもUberEatsは営業している。

もちろんインドは世界的にも注目が集まっている国だが、特にUberは中国市場からの撤退後、それまでにないくらいの熱量で同国でのビジネスに力を入れている。the Internet and Mobile Association of Indiaが共著したレポートによれば、インドのオンライン人口は2017年6月までに4億5000〜4億6500万人に到達するとされており、タクシーや車、食べ物などさまざまなモノがネットを通じて消費者と繋がるようになっていくだろう。例えばEC業界だけを見てみても、2020年までには売上額が480億ドルを突破すると、調査会社のForresterは予測している。

一方で、ムンバイにはUberEatsのライバルも数多く存在し、これまで何年間もFoodPandaやSwiggy、Zomatoなどがしのぎを削ってきた。先月には、Googleでさえもがインドでフードデリバリーサービスや家事代行サービスを利用できるアプリを発表した。しかしインドにおけるUberのライバルOlaは、フード事業に手を出したものの昨年12か月も経たないうちに同サービスを終了した

Uberは競合サービスへの対策については、あまり情報を発信していない。他の街では、利用できる飲食店のキュレーションに力を入れている(逆にFoodPandaをはじめとする他社は利用できる飲食店の数に力を入れている)が、もちろん彼らはOlaと熾烈なバトルを繰り広げている配車サービスをインドビジネスの柱としていくのだろう。

どの企業が先頭を走っているのかについては明確な指標がないが、Olaは継続的に資金調達を行っているイメージがあり、評価額の低下が懸念される。最近でも30億ドルの評価額で2億5000万ドルを調達したとThe Economic Timesが報じていたが、2015年の同社の評価額は50億ドルだった。このダウンラウンドは、インドの農村部にテックビジネスを展開することの難しさのあらわれなのかもしれない。また、常にOlaにつきまとうUberの影も関係しているのだろう。

営業地域の拡大以外にも、Uberは最近UberEatsに力を入れており、最近のアップデートではユーザーごとのレコメンデーション機能や配達場所の指定機能、新しいフィルター機能などが導入された。さらに同社は飲食店向けのマネジメントサービスをスタートさせ、経営に役立つデータの配信を行っている。

原文へ

(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

Amazonがインドで電子ウォレットのライセンスを取得

Amazonがインドで電子ウォレットのライセンスを取得したとMedianamaが報じた。今後同社はインドの消費者に対して、これまでよりもスムーズな決済手段を提供できるようになる。

現在のところインドの顧客は、何かを購入するたびに2段階認証のプロセスを経なければいけない。これは法律で定められたプロセスだ。しかし今回のライセンス取得を受け、今後彼らはAmazon上の電子ウォレットにお金をチャージできるようになる。さらにAmazon側も電子ウォレットの導入によって、キャッシュバックサービスの提供、迅速な返金といったメリットを享受できる。

これまでインド事業に50億ドルをつぎ込んできたAmazonは、贈り物やギフトカードの発行を可能にするため、2014年に電子ウォレットライセンスを持つ現地企業のQwikCilverへ出資していた。昨年12月にAmazon Payへと名前が変更されたこのサービスに電子ウォレット機能が実装されるのでは、との憶測もある。

実はAmazonは電子ウォレットのライセンスを3月に取得していたが、本日その事実が明らかになった。また数日前には、インドEC界のトップを走る現地企業Flipkartが、中国企業のTencent、Microsoft、eBayなどから14億ドルもの資金を調達していた。

原文へ

(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

”デジタル・インディア”の波に乗って個人ローンの改革を目指すCredy

ソーシャルレンディングプラットフォームのCredyは、個人ローンをインド国民にとってもっと身近なものにしようとしている。Y Combinatorの2017年冬期バッチに参加している同社は、個人ローンの契約プロセスを電子化し、P2Pローンをより多くの借り主・貸し主に広めることで、市民が資本へアクセスしやすい環境をつくろうとしているのだ。

Credyは、現在インドで起きている、いくつかの大きな制度改革の波に乗りながらビジネスを展開中だ。改革の影響で、今後個人の特定や信用力の把握が容易になり、電子決済も増えていくと考えられている。そんな改革のひとつめが、Aadhaar IDシステムと呼ばれる、世界最大の生体認証IDシステムの導入で、既に10億人以上のインド市民が同システム上に登録されている。

ふたつめの改革が高額紙幣の廃貨だ。昨年末に施行されたこの政策によって、流通通貨の85%以上(金額ベース)が使えなくなった。政策の効果や施行プロセスについては未だ議論の余地があるものの、高額紙幣の廃貨により、インドは間違いなく現金中心の社会から、オンラインバンキングや送金中心の社会へと変わっていくだろう。

上記のような背景の中、Credyは500億ドルの規模で年間30%の成長を遂げている個人向けローン市場を変えるべく誕生した。市場規模は既にかなり大きいように感じるが、Credyの共同ファウンダーでCEOのPratish Gandhiによれば、平均でインド市民7人のうち1人しか個人ローンを借りられないという現状を考えると、市場規模は今後さらに拡大する可能性があるという。

Credyのチームは、全てオンラインで行われるローン申請や、電子IDとのリンクによって、ローンを利用できる市民の数は劇的に増えていくと考えている。紙の書類が中心で、申請完了までに数日から数週間もかかってしまうような現状の借入システムとは違い、Credyのサービスでは、申請者が基本情報を提出すると、すぐに承認が得られるようになっている。

一旦申請が承認され、本人確認のプロセスを完了すれば、Credyのプラットフォーム上でローン契約を結び、お金を借りられるようになる。平均的なローンの金額は500〜1000ドルで、返済期間は6〜9ヶ月といったところ。

Credy自体は貸付を行っておらず、彼らはマーケットプレイスとして、貸し主(主に高所得者層の個人)と承認済みの借り主を結びつける役割を担っている。Credyの創業メンバーは、以前Goldman Sachsのリスク管理部門で勤務しており、そのときの経験がコンシューマー向けの市場で活かされているようだ。

同社のプラットフォーム上では、これまでに合計約300万ドル分のローン契約が結ばれているが、この数字はバンガロール市内だけのものだ。Y Combinatorからの投資や、送金をスムーズに行うための銀行とのパートナーシップを通じて、Credyは今後数ヶ月のうちに速度を上げてスケールしていこうとしている。

原文へ

(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

ローンチから2週間で黒字化―、インドのビジネスメディアThe Ken

元記者や元起業家から成る4人のチームが、インドの”崩壊した”ビジネスメディアに変革をもたらすと共に、高品質のジャーナリズムに対してお金を払う個人・企業がインド国内にも存在するということを証明しようとしている。

欧米ではサブスクリプションベースのメディアの人気が高まっており、The New York Timesデジタル版のユーザー数も、トランプ大統領の当選後急増した。テック業界で言えば、元Wall Street Journal編集者が創刊したThe Informationが、トレンド情報とニュースの融合で人気を博しているほか、台湾在住のライターBen Thompsonが発行している、分析記事を中心としたニュースレター兼ブログのStratecheryも、サブスクリプションモデルが儲かるということを証明してきた

しかし今回の話は、大人気のプロダクトでさえマネタイズに苦しむと言われているインドが舞台だ。iPhoneを例にとれば、インドの年間売上台数よりも、新モデルがローンチされたときの週末の売上台数の方が多く、Netflixのような中毒性の高い(かつiPhoneよりもずっと安い)サービスでさえ、これまでのところインドでは大衆の支持を集めることができていない。

まずはビジネス報道から

そんな状況の中、バンガロール発のThe Kenはサブスクリプションベースのニュースサイトを運営しており、1日1記事を有料会員のもとに届けている。年間の利用料は、インド国外のユーザー向けが108ドル、国内ユーザー向けが2750ルピー(42ドル)。

月額10ドルや四半期額25ドル/900ルピー(13.5ドル)のプランも準備されているThe Kenのサービスは、これまでインドで誕生したサブスクリプションベースのメディアとしては、1番注目を浴びている。記事のカバー範囲は、創刊メンバーの経歴に沿って、今のところテクノロジーやビジネスが中心だが、将来的に彼らは他の分野の情報も扱っていこうとしている。

「私たちは、単にスタートアップの情報だけを扱っていると思われたくないんです。そうなってしまっているメディアは多く見かけますしね」と共同ファウンダー兼CEOのRohin DharmakumarはTechCrunchの取材に対して語った。「今後は記事のカバー範囲を拡大して、毎日読んでも退屈せず、ちょっと意外性もあるニュースを読者に届けたいと考えています」。

古い英語で「知識」を意味する「ken」という単語を名前に冠したThe Kenは、読者のコミュニティをビジネスの中心に据えている。主なコミュニケーション手段としてはメールが使われ、11人のThe Kenのライターが交代しながら、それぞれのユーモアや考察が含まれたニュースレターを、有料・無料ユーザー両方に対して毎日送付している。また、誰でも読める週刊の無料記事も発行されており、彼らはそこから新たな有料ユーザーの獲得を狙っている。

毎日ユーザーに送られるニュースレターの例

またThe Kenは、広告収益モデルを採用せずに読者を増やすため、単純な有料購読以外のモデルも色々と試している。これまでに彼らは、モバイルウォレット大手のPaytmからの支援を受けて1週間分のフリーパスを提供するなど、スポンサーの協力を得つつも、広告や販促記事を掲載せずに、無料のコンテンツを公開してきた。さらに現在は、企業向けの購読プランの導入準備も進められている。

記事を読むだけのプランや1日限定のプランは、The Kenが提供するエクスペリエンスを薄めてしまい、長期的なビジョンやコミュニティの創生を妨げることにつながる可能性があるため、そのようなプランを準備する予定はないとDharmakumarは説明する。

Make Media Great Again

実は私もThe Kenの有料ユーザーだ。情報収集が私の仕事の一部ということ以外にも、私はテクノロジーが日常生活にディスラプションを起こす様子を観察するのが好き、というのが購読の理由だ。テクノロジーが日常生活のほぼ全ての側面を刻一刻と変化させている新興市場の様子は、見てて飽きることがなく、特に10億人以上の人口と多様な文化を誇るインドでは、テクノロジーの持つ影響力が新興国の中でも最も大きいと言われている。一方で、その様子を明瞭に、面白く、そして何より正確に伝えられるメディアがインドにはほとんど存在しない。

最後の点に関連し、Dharmakumarはインドの消費者全体がメディアに対して関心を失っていると考えており、それがThe Ken誕生のきっかけになったと彼は説明する。

「インドのビジネスジャーナリズムが崩壊してしまったというのは明らかでした」と彼は話す。「市民は実質的に新聞を読まなくなり、新聞からの情報収集をやめてしまったんです。しかもこれは若い人に限ったことではなく、経験豊富な投資家でさえ、最新情報をソーシャルメディア経由で集めるようになってしまいました」。

「記事の内容は低レベルかつバイアスがかかっている上、文字がぎっしりと詰まっており、次第に消費者は報道内容に共感できなくなり、新聞に何の価値も見いだせなくなってしまったんです」とDharmakumarは付け加える。

そこで、先述のサブスクリプションベースのメディアからヒントを得た(特にDharmakumarはThe InformationとStratecheryを例として挙げている)創刊メンバーの4人は、「インドのビジネスメディアに関して誰かが何かをしなければいけない」と感じ、The Kenをはじめたのだ。当初はソーシャルメディア上にポストの形で記事を配信していたThe Kenだが、その後、読者とコンテンツの間に購読というバリアを設けようと、サブスクリプション制のニュースレターの発行を開始した。

有料ニュースレターがうまくいったことを受け、彼らは有料ユーザー向けにThe Kenのウェブサイトを立ち上げることにした。

現在どのくらいの数の購読者がいるかについては明らかにされていないが、Dharmakumarによれば、現時点で彼らが予測していた購読者数は超えているという。確かにThe Kenは、ウェブサイトのローンチから2週間で黒字化し、2月には合計40万ドルを複数の著名エンジェル投資家から調達していた。さらに投資家の中には、インドの有名テックスタートアップPaytmやTaxiForSure、Freshdeskのファウンダーも含まれていた(Paytm CEOのVijay Shekhar Sharmaは、The Kenの他にもFactorDailyを筆頭とした複数のインドのニュースサイトに投資している。なおTechCrunchでは、The Kenと並ぶ野心的なメディア系スタートアップのFactorDailyについて、以前公開された記事の中で触れていた)。

「最近のスタートアップ界の基準から見れば、40万ドルというのは大した金額ではないかもしれませんが、対象を絞った効率的なメディアビジネスをつくる上ではかなりの金額ですし、私たちは初日から売上をあげることができました。またこれまで私たちはジャーナリストとして、早い段階で多額の資金を調達した企業が、目的や情熱を失っていく姿を何度も見てきました」とDharmakumarは、読者宛の資金調達に関するニュースの中に記した。

「何年も前に方向性を失いだしたインドのビジネスジャーナリズムでは、新鮮味に欠け、一方的でレベルが低く、面白くない記事が量産されてきました。私たちは、このような既存のビジネスメディアとは全く逆の記事を読者に届けるために、どんな苦労も惜しみません」とも彼は書いている。

メインストリームメディアへの成長

現在のメディア界について批判的な意見を表明している一方で、CEOのDharmakumarは、The Kenがインドの既存のメディアシステムを壊そうとしているのではなく、むしろ既存のシステムの中でビジネスを展開しようとしていると語った。

「私たちは新聞を含む従来のメディアを完全に代替しようとしているわけではありません。The Kenは、既存のメディアを補完するような存在です」と彼は話す。「新聞やニュースで何が起きているか知った人に対して、私たちは、その次に何が起き得るのか、誰がどう関わっているのか、何が狙いなのかといった情報を提供しようとしているんです」。

これから半年程度は、現状のサービスを続けつつ、購読者数およびコンテンツ量の拡大に努める予定のThe Kenだが、その後はカバー範囲を拡大して、読者に幅広い情報やニュースを伝えられるようにしたいと考えている。

さらにDharmakumarは、当初のターゲットだったビジネスマンやテック業界に注目している人以外にも、読者層を広げようとしている。

「ビジネスニュースは自分に関係ない、と考えているような若い人にも私たちのニュースを届けていきたいと思っています」と彼は説明する。

直近のニュースとして、Android・iOS対応のアプリが近々公開予定で、読者はメールやウェブサイト以外の方法でThe Kenのニュースにアクセスできるようになる。他にも、各記事へのコメント欄の設置や、読者が記者と直接やりとりできるSlackチャンネルの開設などが予定されており、将来的にはこれらの新機能が編集の方向性や記事内容に影響を与える可能性もある。

The Kenの詳しい情報については、彼らのウェブサイトで確認してみほしい。

原文へ

(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

Microsoftが新興国向けにSkype Liteをローンチへ―、2Gでも使えるSkype

screenshot-2017-02-22-14-08-23

Microsoftは、ビジネスユーザーにおなじみのSkypeを新興国ユーザー向けに一新し、インドの現地時間2月22日に行われたFuture Decodedで、新アプリSkype Liteを発表した。

Android用アプリとして開発されたSkype Liteは、Skypeの核となる音声・ビデオ通話機能に重きを置きながら、2Gのような速度に限りのある通信規格向けに最適化されている。まずはインドでのリリースを予定しており、アプリは8言語にローカライズされているほか、SMSの送受信機能、データ通信量の確認機能も備えている。さらにMicrosoftは、インドにフォーカスしたさまざまなボットも準備しており、ユーザーはタスクの自動化に加え、ブラウザを開くよりも簡単にニュースなどのコンテンツをチェックできるようになる。また、データ通信量を抑えるために、チャットを通じて送付された写真、動画、その他のファイルは全て圧縮されるようになっている。アプリ自体のサイズも13MBしかなく、インドのような新興市場の大部分を占める、安価な携帯電話の少ない記憶容量をできるだけ食わないように作られている。

またMicrosoftは、6月以降に一部機能を有効化するために、インドの公的デジタル個人認証システムであるAadhaarとSkype Liteを連携させる予定だと話している。これが実現すれば、「Skypeユーザーは、面接時や何かを売買する際など、相手が誰なのか確認する必要があるさまざまなシチュエーションで、知らない相手の身元を確認できるようになる」とMicrosoftはブログポストに記している。

skype-lite

興味深いことに、Skype Liteは「インドユーザーのために、インドでつくられた」とMicrosoftは話しており、同社がインドのモバイル革命に大きな勝負をかけようとしているのがわかる。インドのインターネット利用者数の増加率は世界一で、さまざまな社会・経済的な変化が起きているが、まだそれもはじまったばかりだ。というのも、Counterpoint Researchの調査によれば、インドの人口約12億5000万人のうち、まだ3億人しかスマートフォンを持っていない。

一方で、Microsoft以外にもインド市場を狙っている企業は多数存在する。Googleは、公共Wi-Fiプロジェクトや、さまざまな人気アプリへのオフライン機能の搭載、メッセージングサービスAllo・Duoのローカリゼーションなど、インド市場向けにさまざまな施策に取り組んできた。しかし数々の巨大企業がインド市場を攻め込んでいるにもかかわらず、Facebookが未だにインド市場では優位に立っている。同社の情報によれば、WhatsAppのユーザー数は1億6000万人を超えているほか、メッセージ以外のソーシャル機能ではFacebookがインド市場を独占しており、そのユーザー数は1億5500万人におよぶ。

この記事(英語原文)の公開時点では、まだSkype Liteはリリースされていないが、インド国内ではこのリンクから22日中にはアプリをダウンロードできるようになるはずだ。なお、インド以外でのリリース予定については明らかになっていない。

原文へ

(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

モバイルがインドの農村部を変える

Bahour

編集部注:本稿を執筆したMelissa Jun Rowley氏は、ジャーナリストであると同時に起業家としても活動する。また、彼女はストーリーテリング、テクノロジー、ソーシャルジャスティスを専門とするアクティビストでもある。Humanise, Inc創業者兼CEOの彼女は、ミュージシャンのPeter Gabriel氏が創設したThe ToolBoxの運営を行っている。The ToolBoxは、データを活用した人道主義的なイニシアティブである。

 

インドの街、ジャーンシー郊外の農村部。そこでは、ヤギや牛が闊歩する舗装されていない道路で子供たちが遊んでいる。地味ながらカラフルな家の床は泥で固められ、女性たちは井戸に水を汲みに行く。

そこで見られる風景、そして、聞こえてくる音は、農村部ならではの典型的な姿だ。しかし、ただ1つを除いては。この地域では、スマートフォンが人々の命を救っている。この村では、「Accredited Social Health Activists(ASHAs)」と呼ばれる女性のヘルスケアワーカーたちがスマートフォンをもち、mSakiというアプリケーションを使って妊婦に出産についての知識を教えている。

Qualcomm Wireless Reachによって創業され、IntraHealth Internationalによって開発されたmSakiを使い、329人のASHAsが1万6000人の母親たちの手助けをしている。モバイルブロードバンドを利用したイニシアティブがインドの農村部でこのような活動をしているという事実は、無視できることではない。

情報格差を解消する。低い識字率、劣悪な通信環境

インドのNational Health Ministryによれば、インドでは1000人中29人の新生児が死亡するという。インド政府は、この数字を1桁台にまで抑えることを目標に掲げている。しかも、インド女性の識字率は低い。ニューヨークを拠点とするInternational commision on Finincing Global Education Opportunityが昨年10月に発表した調査結果によれば、小学校を卒業した女子児童のなかで文字の読み書きができるのは全体のたった48%だという

また、Pew Research Centerが行った2015年のアンケート調査によれば、インターネットの通信環境をもっていると答えたインドの成人は22%だった。そうは言うものの、インターネット通信環境を整えようとする努力がインド各地で行なわれていることも事実だ。Digital Indiaが実施するプログラムは、デジタルによって人々がもつ力を向上させ、農村部にブロードバンド環境を提供することを目指している。この計画の一部として、インド政府は2018年までに4万以上の村でモバイル通信を利用可能にするという方針を打ち出している。

その一方で、mSakiは現状の通信環境でも大きなインパクトを与えることができる。このアプリケーションは劣悪な通信環境にも対応できるように開発されたものだからだ。デバイスに送り込むデータはオフラインで保存され、インターネットに接続された時にはじめてデータをサーバーへアップロードする仕組みなのだ。

妊婦を診察し、彼女たちにアドバイスを与える

現場の最前線で働くRam Kumari Sharma氏は、インド各地の村を転々とする毎日だ。彼女はmSakiを使い、妊婦や出産後の母親、そして新生児の健康状態をアプリにインプットし、彼女たちの診察も行う。mSakiに表示されるテキストやアニメーションを頼りに、彼女は注意すべき病気の症状やその治療方法を妊婦たちに教えているのだ。

現場の助産婦をサポート

mSakiは現場の補助看護助産婦(ANMs)たちにも利用されている。Anita VT氏は、村のヘルスケアセンターで20年間勤務するベテランのヘルスケアワーカーだ。彼女はそこで、患者の受け入れ、出産の補助、子どもへのワクチン注射などの業務をこなす。そこは、小さな部屋に数個の手動ツールがあるだけの小規模な医療施設だが、モバイルテクノロジーは彼女に21世紀の医療を与えた。

VT氏はタブレットを指差しながら、「これがあれば何でもできます」と話す。「紙を使う理由がありません」。

IntraHealthでシニアアドバイザーを務めるMeenakshi Jain氏は、mSakiはコスト効率的な医療を可能にするアプリケーションだと語る。

「インド政府は、すべての妊婦をオンラインのシステムに登録するというプログラムを全国で展開しています」と彼女は話す。「これを実現させるのが現場で働くASHAsや助産婦たちです。それらのヘルスケアワーカーの役割は、妊婦を特定し、彼女たちの情報を登録することです。しかし、従来のやり方では、彼女たちが紙のフォームを埋め、10〜20キロの道のりを往復し、コミュニティに設置されたヘルスセンターのオペレーターと話をし、そしてデータをコンピューターに打ち込む必要がありました。mSakiは、そういった事務処理にかかる時間的なコストを大幅に削減することができるのです」。

mSakiをどうやってスケールさせるか?

mSakiプログラムに必要な資金を集めるため、IntraHealthは同アプリの実績をステークホルダー(連邦政府、州政府、ドナーなど)と共有している。実際にmSakiが母親や子どもたちの健康状態を改善していることを示すためだ。Jain氏は、政府がmSakiや他の類似のアプリケーションを導入することで、現場で働くヘルスワーカーたちに最新の技術を提供し、彼女たちの能力を一段と高めることができればと願っている。IntraHealthに十分な資金が集まれば、同社はmSakiの改善を続け、今後は家族計画のアドバイスや識字率改善にも取り組んでいきたいと話している。

より速く、より効率的なマイクロローンを

ジャーンシーから450キロほど離れたジャイプル郊外の村。ここで、非営利団体のPlanned Social Concern(PSC)は村に住む女性たちにマイクロローンを提供している。

PSCのマイクロファイナンスを利用した人々のなかには、そこで得た資金を利用して小さなビジネスを立ち上げる者もいる。また、ある女性は、PSCから借り入れた資金のおかげで新しい家を建てることができ、子どもを学校に入れることもできたと喜んでいた。

この経済的なエンパワーメントを可能にしたのは、モバイルブロードバンドだ。Qualcomm Wireless Reachとのパートナーシップを通して、PSCは2014年にすべてのローン審査プロセスをデジタル化した。今では、このプログラムは完全にペーパーレスで運用されている。

PSC COOのravi Gupta氏は、3Gネットワークにつながったタブレットと「MicroLekha」と呼ばれるモバイルアプリケーションを利用することで、スピーディで透明性のある業務を可能にしたと話す。

「ローン組成にかかる業務をマニュアルで行っていた当時、実際の融資までには17〜18日程度の時間が必要でした」とGupta氏は語る。「MicroLekhaを使えば、その時間が3〜4日にまで短縮されます」。

すべての書類はデジタルに保存されているため、顧客は借り入れごとに紙の書類を作成する必要はない。ローンを返済すると、その旨を伝えるアップデートがSMSで届く。

これは始まりに過ぎない。Digital Indiaの試みがインド各地に広まれば、ヘルスワーカーを助け、妊婦を教育し、小規模ビジネス立ち上げの機会を与えてくれる新しいモバイルテクノロジーが導入されることだろう。

農村部にインパクトを与えるプログラムが大企業から生まれ、西洋の貧しい国々でもDigital indiaなどと同様のイニシアティブが立ち上がることを、私は望んでいる。

[原文]

(翻訳: 木村 拓哉 /Website /Facebook /Twitter

インドのiPhoneの価格はすぐには変わらない―、Appleの現地生産に新情報

img_8790

どうやらAppleはiPhoneをインドで現地生産していくようだが、だからといってインド国内の製品価格が下がるという話でもないようだ。

The Economic Timesは、数ヶ月のうちにAppleが印度南西部のカルナータカ州でiPhone SEの生産をスタートさせると本日報じた。今月に入ってから、同州のIT大臣もAppleと生産の合意に至ったとのコメントを残していたが、The Economic Timesの報道にはさらなる詳細が記載されている。

現状インドのiPhoneの価格は、世界で1番高く設定されている。これは、iPhoneが中国で生産されているため、Appleが関税を支払わなければいけないからだと考えられている。そこでAppleは、インド現地でiPhoneを組み立てれば価格を下げられるのではないかと考えた。継続的にスマートフォン市場が成長している数少ない国のひとつであるインドで、Appleは思うようにシェアを伸ばせていないため、これは同社にとって大変重要なことだ。

最近のIDCのレポートによれば、中国メーカーが2016年Q4のインドのスマートフォン市場を席巻し、トップ5に現地メーカーは1社も含まれていなかった(これは初めてのことだった)。一方Appleはこれまでで最多となる250万台をインドに出荷したが、インドのスマートフォン市場における2016年Q4の総出荷台数が2800万台以上だったことを考えると、この数字はとるに足らないものだった。

またAppleが現地生産を開始すれば、すぐに価格が下がると思っている人もいるかもしれないが、実はそうとも言えないようだ。

「通常Appleが急激に価格を下げることはないため、現地生産で浮いたお金は小売網の構築やマーケティングに使われる可能性があります」とCounterpoint Researchでアナリストを務めるNeil Shahは話し、現在インドにはAppleの直営店が1軒もないと指摘する。

「一方でAppleは、お祭りのシーズンに絞って値引きをすることもあります。それでも値引き率はせいぜい4〜5%程度で、12〜13%(現地生産で抑えられるコスト)全てが顧客に還元されることはないと思います」

さらにShahは、Appleはすぐには「台湾や中国のような本格的な生産を行わないでしょう」と話し、当面はリスクを避けるために、四半期ごとの生産台数は40万台以内に落ち着くと彼は考えている。

もちろん彼の言っていることは短期的な話であり、もしもAppleがインドでの生産を拡大しプロセスを効率化できれば、製品価格が下がる可能性もある。現地生産開始はAppleにとってもインドのAppleファンにとっても良いニュースだが、消費者が現地生産の効果を十分に感じるまでには少し時間がかかりそうだ。

原文へ

(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

Uberがインドで貸切サービスをスタートへ

BEIJING, CHINA - 2016/10/08: UBER art station in Beijing CBD.  There are 8 UBER art stations in Beijing, each with a sculpture made by some of China's promising modern designers, provided especially for the carpooling riders and drivers to gather and find each other easily. (Photo by Zhang Peng/LightRocket via Getty Images)

Uberがインドで貸切サービスのパイロットプログラムをスタートさせようとしている。ここでの貸切とはドライバー込みの車を意味し、これはレンタカーとは全く異なるコンセプトだ。

8都市でテスト予定の「Uber Hire」と呼ばれるこの新サービスは、複数のミーティングをこなすためやショッピング・探索目的などで、一日中特定のUberドライバーを予約したいというユーザーのリクエストから生まれたものだと同社は説明する。

このサービスでは、ユーザーは移動ごとに別々の車を呼ぶのではなく、同じ車とドライバーをずっと利用し続け、最後に料金を支払うことになる。料金は通常通り「距離と時間」の組合せで算出されるが、支払は現金でしかできないとUberは話す。

Uberは他の地域でこのようなサービスを提供していないので、貸切のコンセプト自体は同社にとっては新しいものだが、インドでは既に似たようなサービスが存在する。200都市以上で営業しているUberのライバルOlaが、昨年の夏に貸切サービスをローンチしていたのだ。80都市以上で同時にスタートしたOla Rentalsとよばれるこのサービスは、1時間ごとの料金が設定されており、初乗りは2時間もしくは30kmで449ルピー(約750円)となっている。

Olaは声明の中で、同社が「モビリティ業界のイノベーションを先導し、昨年初めてRentalsサービスを導入した」と述べた。

さらにOlaは、これまでに「何十万件」もの予約があったというRentalsサービスを、「近日中に」合計100都市以上に展開予定だと付け加えた。

実はUberは以前、貸切に近いサービスを人気リゾート地のバリ島でスタートし、旅行者や観光客をターゲットに5〜10時間のチャーターサービスを提供している。

Uberは、Didi Chuxingへの事業売却と共に中国から撤退後、インドや東南アジアといった勝機の見込める地域へとフォーカスを移した。そして以前まで中国につぎ込んでいた年間10億ドルもの資金を、Uberは現在この2地域(特にインド)に向けていると言われてる。

また、Uberがインド国内に設立したR&D部門は、Uber Hireの他にも、ウェブ予約や代理予約機能、さらに以前には現金精算SOSボタンといったインドだけのプロジェクトを行ってきた。

原文へ

(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

Samsungと中国ブランドがインド携帯市場を席巻、2016年Q4スマートフォン出荷台数

india-phone

現在インドは中国製スマートフォン革命の真っ只中にいる。2016年Q4の販売台数ランキングトップ5に、インド企業は1社も入ることができなかったのだ。

Samsungやおびただしい数の若い中国企業は、まだスマートフォン市場に成長の余地が残されている数少ない国のひとつであるインドをしばらくのあいだ攻め込んでおり、その成果が形になってあらわれはじめた。

調査会社Canalysの最新のデータによれば、Smasungが22%のシェアで他社を先導し、その後にXiaomi(11%)、Oppo(9%)、Lenovo(9%)、Vivo(7%)が続いた。以前大きなシェアを握っていたインド企業は、1年の間にシェアを半分以上奪われてしまったことになる。

「2015年Q4には、Micromax、Intex、Lavaがそれぞれ2位、3位、5位にランクインし、合計で約30%のシェアを占めていました。しかし2016年中にその全てがトップ5から姿を消し、市場シェアも11%まで減少してしまいました」とCanalysは言う。

indian-smartphone-market-q4-2016

中国製デバイスの安い価格と中国企業の潤沢なマーケティング資金の他にも、ある別の要因がその背景にある。それはインド政府による高額紙幣の廃止だ。インド政府は、いわゆる「ブラックマネー」を締め出すために、最近500ルピー紙幣と1000ルピー紙幣を廃止した。Canalysはこの施策がスマートフォンを含む小売販売に大きな影響を与えたのだと言う。

「インド企業は、小規模小売店で製品を現金で買うような消費者をターゲットにしています。しかし今回の高額紙幣廃止によって短期的な流動性が下がり、消費の勢いも落ちてしまいました。結果的に小売店は、インドのスマートフォンから在庫の動きが速い中国・韓国のスマートフォンへとシフトしていったんです」とCanalysでアナリストを務めるRushabh Doshiは説明する。

実際にCnalaysのデータを見ると、2016年Q4のインド企業全体の出荷台数は1160万台と前年比で25%減少した。

一方で中国企業はインド市場で目覚ましい成長を遂げた。特にXiaomiは、2016年に初めてインド市場での年間売上が10億ドルを突破(前年比+232%)した。Lenovoもマーケットシェアを11%拡大し、Oppoの出荷台数も1500%以上の伸びを見せた。

以上からもインド市場は暗いニュースばかりではなく、むしろその逆だということがわかる。

Counterpointが行った最近の調査によれば、2016年にインドのスマートフォンユーザーの数が初めて3億人を突破し、出荷台数も前年と比べ18%伸びていた。これは世界平均の3%を大きく上回る数字で、中国企業やインドでの生産を検討しているとされるAppleが、インドのスマートフォン市場に力を入れようとしている理由もわかる。

ちなみにAppleはCanalysのレポートでは触れられていなかったが、Counterpointは2016年がAppleのインドビジネスにとって最高の1年だったと話す。実際にiPhoneの出荷台数は2015年の200万台から2016年は250万台に増加していた。これも素晴らしい数字ではあるものの、上記の表から分かる通りボリュームという点ではAppleは他社に遅れをとっている。一方でAppleが世界のスマートフォン市場の利益をほぼ全て手中におさめていることを考えると何ともいえないところだ。

原文へ

(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

インドのPractoが5500万ドルを調達、アジアの新興国でヘルスケアプラットフォームを展開

shashank-nd-practo-ceo-and-founder-with-ramesh-emani-insta-ceo

インドに拠点を置き、医師検索・医療情報サービスを展開中のPractoが、この度シリーズDで5500万ドルを調達し、世界中の新興国へのさらなる進出を狙っている。

今回のラウンドでリードインベスターになった中国の大手ネット企業Tencentは、2015年にPractoが9000万ドルを調達したシリーズCでもリードインベスターを務めていた。またロシアのRu-Net、日本のリクルートが運営するRSI Fund、そしてニューヨークのThrive Capitalが新規の投資家として、さらに既存の投資家であるSequoia、Matrix、Capital G(旧Google Capital)、Altimeter Capital、Sofinaもラウンドに参加していた。なお今回の調達資金を合わせると、これまでにPractoが調達した資金の合計額は1億8000万ドルに達する。

Practoのビジネスにはいつも感銘を受けてきた。というのも、同社はヘルスケアという全ての人に影響を与える課題に取り組んでおり、その中でも特に問題が深刻な新興国をターゲットとしたサービスを提供しているのだ。プラットフォームの基本機能としてPractoのユーザーは、インドやその他の新興国では簡単にはいかない医師の検索や、医師から提供された医療情報の入手、さらにはQ&A機能を使って簡単な質問への回答やアドバイスを受けることができる。

新興国では医師不足が深刻な状況にあり、Practoのサービスは大きなインパクトを持っている。世界銀行のデータによれば、インドでは国民1000人に対して内科医が0.7人しかおらず、この割合は郊外だとさらに下がる。ちなみにアメリカとイギリスを例にとると、それぞれの国民1000人に対する内科医の数は2.8人と2.5人だった。

消費者側の問題解決以外にも、PractoはSaaSモデルを採用し、診療データ管理用のソフトウェアを医療施設に向けて販売している。これにより医療関係者は、Practoの消費者側のサービスを使って、自分たちのサービスを広範囲にスケールする前に、ビジネスやプロセスをデジタル化することができるのだ。

Practoによれば、同社のサービスを通じて年間4500万件のアポイントが成立しており、現在プラットフォームには20万人の”医療関係者”と1万軒の病院、そして5000軒の診療センターが登録されている。またPractoのプラットフォームは、インド以外にもフィリピン、インドネシア、シンガポール、ブラジルで利用されており、医療従事者向けのソフトウェアは世界中の15カ国で利用されている。

Practoは今回調達した資金をさらなる海外展開に利用する予定で、既存新興市場でのビジネス拡大、新規新興市場(東南アジア、南米、中東、アフリカ)への進出を狙っている。

「既存の市場でもさらに投資を加速させていきます」とPracto CEOのShashank N.Dはインタビュー中に語った。

「昨年私たちはエンタープライズ向けのビジネスを強化するために(インドで)複数の企業を買収し、インドの消費者向けサービスの拡充も進めてきました。今後は既存市場をさらに深掘りすると同時に、中東など新市場の調査も行っていきます。私たちのビジョンは、世界中の人がより健康に長く生きるためのサポートをするということです」と彼は付け加える。

Practoは海外での業績についてあまり情報を明かさなかったが、ほとんどの海外市場へ参入したのが昨年だったことを考えるとそれも理解できる。

「SaaSとマーケットプレイスを利用し、Practoはこれまでに確かな収益構造を築いてきました。現在海外からの売上は全体の20〜25%を占めており順調に成長していますが、インドでの売上の方が大きな伸びを見せています」とShashankは話す。

さらにPractoはTencentと密に協力しながら、今後医療保険の分野へ参入しようとしている。Tencentは数ある事業のひとつとしてWeChatを運営しており、これは中国で一番人気のメッセージアプリかつ驚異的なスティッキネスを誇るモバイルプラットフォームだ。WeChatのデイリーユーザー数は7億6800万人を記録しており、そのうち半分が1日あたり少なくとも90分間このアプリを使用している。

WeChatのようなプラットフォームをつくるノウハウこそ、PractoがTencentから学ぼうとしている点であり、ほかにも医療業界にいるTencentのパートナー企業を通して、中国でテクノロジーがどのようにヘルスケアに影響を与えているかについて情報を集めているとShashankは付け加える。

「昨年は一年を通して、Practoのプラットフォーム化に注力していました。ここで言うプラットフォームとは、消費者の医療に関するニーズをワンストップで満たせるような総合プラットフォームを指しています」と彼は話す。

TencentはPractoのこの動きを、実際のアクションをもって支援している。Practoへの投資は同社にとって初めての大規模投資案件であり、次回のラウンドでもTencentはリードインベスターを務めようとしているのだ。

「Practoはこれまでに素晴らしい成長を遂げ、同社がカバーする消費者と医療従事者のニーズの幅もだんだんと広がってきました。ヘルスケアの分野でフルスタックのモデルを確立することは大変難しいことですが、Practoは実際にプラットフォームを構築して急速にスケールしています。これは世界的にみても珍しい例です」とTencentの投資・M&A担当執行取締役であるHongwei Chenは声明の中で熱く語った。

2011年のシードラウンドからしばらくが経ってビジネスが成長し、海外での業況も上向いているが、ShashankはまだPractoのエグジットは考えていないと言う。

「今回のラウンドで資金に余裕が出たこともあり、特にIPOに向けた具体的な計画も立てていません。新興国のヘルスケア市場ははじまったばかりで、テクノロジーをヘルスケア分野で活用するというコンセプトも浸透していないので、まだまだ成長の余地はあると考えています」と彼は話す。

原文へ

(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

Accel Indiaが記録的な速さで4億5000万ドルのファンドを新たに組成

shutterstock_207930679

約2年前に組成された3億2500万ドルの第4号ファンドに続き、Accel Indiaが5号目となるファンドを4億5000万ドルで設立した。これがインドのバブルを象徴しているのか、同国の本当のチャンスを表しているのかについては、未だ議論の余地があるものの、2011年からAccelに参加し、バンガロールを拠点に活動しているAccel IndiaパートナーのShekhar Kiraniに、メールで本件に関するインタビューを行ったので、その様子をご紹介したい。

TC: Kirani氏は2005年からインドでの投資活動を活発化し、不動産プラットフォームのCommonFloorやオンラインショッピングのFlipkart、カスタマーサポートサービスのFreshdesk、ファッション・ライフスタイルECのMyntraといったインドでも有名なスタートアップを含むポートフォリオを構築してきました。今回のファンドの設立にかかった期間は、これまでで最短といって問題ないでしょうか?普段Accelは、3〜4年周期でファンドを設立しているように記憶していますが。

SK: 今回のファンドは確かにかなりの速さで資金がまとまりましたね。これはインド市場の長期的なビジネスチャンスや、LPのサポート、私たちのポートフォリオに含まれる企業の質の現れであるとともに、インドにフォーカスして投資先を絞った私たちの投資戦略や、Accel Indiaのチームの力でもあると考えています。

TC: Accel Indiaのチームはこれまでにどのような変遷を辿ってきたんですか?

SK: Accel Indiaの母体となるErasmic Venture Fund(2008年にAccelが買収した)は、Prashanth Prakash、Subrata Mitra、Mahendran Balachandranによって設立されました。そしてAccelによる買収後、Anand Daniel、Dinesh Katiyar、Subrata Mitra(そしてShekhar Kirani自身)のリーダーシップもあり、チームは順調に成長しました。さらに、私たちはインド国内にポートフォリオサービスチームを立ち上げ、彼らがプロダクト管理やスタッフの採用、データサイエンス、テクノロジー、デジタルマーケティングなどの面で投資先企業のサポートを行っています。

TC: Accel Indiaは、ベイエリアのAccel Partnersとはどのくらい密接に関係しているんですか?Accel Partnersの投資家がAccel Indiaのファンドにも投資したり、ベイエリアのチームとお互いに関係のある投資案件について話をしたりすることはあっても、それ以外の面では独立して(Accel Londonのように)運営されているのでしょうか?

SK: 全てのAccelオフィスは、お互いのネットワークや情報、ベストプラクティスを共有し、投資先企業にも私たちのネットワークを活かしてもらいながら、協力し合って業務を進めています。Accelのゴールは、世界中の素晴らしい起業家を発掘し、ポートフォリオに含まれる企業を、どこで設立されたかに関わらず、全てのステージを通してサポートしていくことです。

TC: 大体いつもどのくらいの金額を各企業に投資しているんですか?また、特にどの段階にある企業にフォーカスしていますか?

SK: 私たちはアーリーステージの投資家なので、基本的には投資先企業にとって最初の機関投資家になりたいと考えています。初回の投資額は200万ドル以内に収まることが多いですね。

TC: インドのスタートアップシーンは最近盛り上がってきていますよね。スタートアップによる資金調達の加速化は、評価額にどのように反映されているのでしょうか?例えば2年前と比べて、各ステージにある企業の評価額に何か変化はありますか? 

SK: 2015年に過度な投資が行われていたとき、成長期にある企業の評価額はつり上がっていました。しかし、シードステージやアーリーステージにある企業への影響はそこまでなく、2015年を通して見ても、彼らの評価額は適正といえる範囲でした。

私たちは評価額よりも、健全なファンダメンタルを持つ、強固で統制のとれたビジネスを投資先企業と作り上げることに注力しています。ここ数年の間に、いくつかのカテゴリーのオンライン化がこれまでにない速度で進んでいます(EC、映画チケット、タクシー予約、生鮮食料品販売、フードデリバリー、ローカルサービス、マーケットプレイスなど)。さらに、以前はスケールするのに最大5年を要していたようなカテゴリーが、2〜3年でスケールし始めています。私たちはこのような企業を支援し続け、彼らの成長を促そうとしているんです。

TC: インドに過度の投資が集まっているという心配はありますか?最近アメリカの投資家のChamath Palihapitiyaは、なぜ彼の率いるSocial Capitalが、これまでひとつのインド企業にしか投資していないかという話をThe Times of Indiaにしていました。その中で彼は「採用や人材、サポート環境の観点から見て、インドのスタートアップエコシステムの大部分は、シリコンバレーに劣っています」と語り、さらにインドを拠点とするスタートアップは「適切な人材やガバナンス、メンターを持っておらずつまづいてしまっている」と話していました。彼は、”最後の審判の日”のようなものが向こう12〜18ヶ月の間に起きて、スタートアップの評価額が急激に下落すると考えているようです。このような彼の見解には同意しますか?

SK: まず、2015年には確かに過度の資金がインドに流れ込んでいました。しかし、だからといって、インドのスタートアップが健全な状態にないとは言えません。インドの起業家は、スケールと成長と利益の相互作用について理解しています。さらにスタートアップのエコシステムも、これまでにないほどしっかりしています。ファンダメンタルを見てみれば、インドのマクロ経済はとても良い状態にあると分かります。ビジネスに理解のある政府によって経済の形式化、デジタル化が進み、インド経済自体もよいペース(7%のGDP成長率)で成長してるほか、通貨もとても安定しています。さらに、市場はモバイルユーザーで溢れているので、以前に比べて、新たに設立されたスタートアップの成長スピードがかなり上がってきています。

私たちがどのサイクルにあったとしても、ファンダメンタルには常に気を配る必要があります。その点に関して言えば、インドでは消費者や大企業、中小企業の間でモバイル化が進んだ結果、8億7000万人以上がモバイル契約を結び、2億人以上がスマートフォンを利用しているほか、1億5000万人以上がソーシャルメディアを使い、6000万人以上がさまざまな商品をオンライン上で購入しています。つまり、インドにはテック系スタートアップが誕生・スケールする環境が整っているんです。

TC: 未だインドの人口の大半が住むとされる”ルーラル・インディア(インドの農村地域)”への投資は現在行っていますか?例えばMayfield Indiaは、ベンチャーレベルのリターンをベンチャー投資よりも小さなリスクで狙うことができると、建設業者などのローテクビジネスに最近投資していたと記憶しています。彼らの言うようなチャンスはまだ存在するのでしょうか?また、Accel Indiaはそのチャンスを追い求めているのでしょうか?もしもそうだとすれば、どのくらいの時間を都市部と農村部それぞれにかけているのか、理由も併せて教えてください。

SK: テック企業の投資家として、私たちはいつも、サービスの利用のしやすさ、使い道、価格を含むいくつかの側面に気を配っています。

ルーラル・インディアでも、最近モバイル端末の利用者が増えてきています。1億人以上の人々が住むルーラル・インディアは、上記の3つの側面を考慮しても、これからとても有力なマーケットになるでしょう。新しいファンドのテーマのひとつが、インドの新興地域での”next 100 million(1億人以上の新たなネットユーザーがルーラル・インディアから生まれるという予測)”です。現在投資している企業を見ても、インドの新興地域が今後伸びていくことが分かります。

例えば、近年のスタートアップエコシステムを活発化してきたインフラの大部分をつくったのは、Flipkartでした。初のオンライン・モバイル決済サービスや物流インフラといった、オンライン・オフラインに関わらず、アメリカでは当然のものとされている商業インフラのほとんどを彼らが構築してきたんです。

原文へ

(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

Olaが車内エンターテイメントプラットフォームのOla Playをローンチ

ola-play-1

インドにおけるUberの主要ライバル企業であるOlaが、インターネットに繋がったカーエンターテイメントプラットフォームをローンチし、優雅な車内環境を提供しようとしている。

誰もタクシーの中で長くて退屈な時間を過ごしたいとは思わないだろうが、特に混雑したインドの都市部では、乗車時間が長くなりがちだ。そんな状況を改善するかもしれない「Ola Play」は、以前UberがSpotifyPandoraとの連携を通して提供を開始した、車内エンターテイメントをアップグレードしたようなサービスだ。

ドライバー用と乗客用のふたつのタッチ式デバイスを利用するこのサービスには、エンターテイメントのほかにも、行程に関する情報やインターネットブラウザなどが含まれている。さらに、乗客は自分の携帯電話とデバイスを同期させて、Apple Music、Sony LIV、Audio Compass、Fyndなどのサービスを利用することもできる。

Appleのような企業との提携に加え、ハードウェア面では、インドを拠点とする自動車メーカーのMahindra and Mahindraや、通信機器・半導体の開発を行うQualcommと協力し、Olaは同サービスを提供している。

Olaは以前も、車内エンターテイメントの必要性について話していた。去年、Uberと時を同じくして、Olaは無料の車内Wi-Fiサービスの提供をスタートし、このサービスが乗客のエクスペリエンスを向上させるとともに、インド国内の携帯電話のサービスエリアにある穴を埋めるのに一役買うことになると同社は主張していた。今年に入ってからOlaは、このWi-Fiサービスを、ゆくゆくはOlaの顧客がアクセスできるような、公衆Wi-Fiネットワークへと展開していきたいという野心的なプランを発表した。

そしてOla Playの導入で、同社は再度エクスペリエンスの向上に注力しようとしているのだ。はじめは、ベンガルール、ムンバイ、デリーで高級ラインのOla Primeを利用している”一部の”顧客に対してのみOla Playが提供される予定だが、2017年3月にはインド中を走る5万台以上のOlaカーで同サービスが利用できるようになる計画だ。

ola-play-2

Olaの車内プラットフォームに、今後どのような機能が追加されていくのか楽しみだ。というのも、同社は前述のWi-Fiパッケージを含むメンバーシッププログラムである「Ola Select」向けに、ファッション系EC企業のMyntraなど、複数のブランドと既に議論を進めているのだ。乗客とサービスプロバイダーの両方が得をするように、あるブランドの商品を車内で販売するというのは、そこまで難しい話ではない。

また、Didi Chuxingへの中国事業の(近々実行予定の)売却に合意して以来、Uberは余ったリソースをインド市場にまわしており、インド市場でのOlaとUberの競争は激化している。現状、カバーしている都市数ではOlaがUberを上回っており、主要都市におけるサービス利用数でもOlaが勝っているというデータも存在する。一方でUberは、インド向け新機能の開発やマーケット拡大に力を入れていることもあり、Olaは、Uberのサービスに慣れているような富裕層を獲得するため、エンターテイメント機能の拡充に努めているのだ。

「Ola Playで、エンターテイメントを含む車内メディアを乗客がコントロールできるようになれば、彼らのエクスペリエンスが根本から変わり、ライドシェアリング業界は新たな時代に突入することになると私は信じています」とOlaの共同ファウンダー兼CEOのBhavish Aggarwalは、声明の中で語った。

「私たちの顧客は、毎日合計で6000万分もの時間をOlaカーの中で過ごしているため、彼らにとっての快適さや便利さ、生産性にOla Playが与える影響は甚大です。このサービスによって、ライドシェアを交通手段の第1候補と考える人の数が、さらに何百万人も増えることでしょう」とAggarwalは付け加える。

さらにOla Playは、Olaが近々資金調達を計画しているという噂が立つ中でローンチされた。一年前に同社は5億ドルを調達していたものの、東南アジアを拠点とする同盟企業のGrabが、インドよりも小さな市場で営業を行っているにも関わらず7億5000万ドルを調達したことから、Olaも棚ぼたを狙っているのかもしれない。今月に入ってからBloombergは、Olaがもうじき6億ドルの調達を完了すると報じており、今回の派手で華やかな発表の目的のひとつは、恐らく現在行っている投資話を前進させることなのだろう。

原文へ

(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

インドでマイクロ・ローン事業を展開するAye Financeが1030万ドルを調達

wallet-amex

インドでマイクロ・ローン(小口融資)ビジネスを展開するAye Financeは、LGTがリードするラウンドで1030万ドルを調達したことを発表した。既存投資家のSAIF PartnersAccionも本ラウンドに参加している。

2年前に創業した同社が手掛けるのは、銀行などの伝統的な金融機関から融資を受けることが難しいビジネスオーナーを対象に小口融資を行う、マイクロ・ローン事業だ。創業者で元銀行員のSanjay SharmaとVikram Jetleyは、なにか「ソーシャルインパクト」のある事業を始めたいとの想いで母国インドに戻ってきた。

Sharmaによれば、同社の典型的な融資ボリュームは20万から30万インドルピー(2900ドルから4400)の間だという。融資対象となるのは、従来の金融機関から融資を受けることが難しい小規模ビジネスだ。しかしSharma は、同社は単に銀行やローン会社が手をつけていない下位マーケットを対象している訳ではないと話す。インドのEコマース・プラットフォームであるFlipkartには多数のマイクロ・アントレプレナーが参加し、そこで生計を立てている者も多い。Aye Financeは、そのようなEコマース・プラットフォームにも参加していないようなビジネスオーナーもターゲットにしている。

「融資を実行しようにも、ビジネスオーナーが納税申告書を保管していなかったり、帳簿をつけていない場合はどうすればよいか」とSharmaは同社のビジネスが抱える問題を説明する。

その問題を解決するため、同社はインド北部を中心に31の支店を設立した。これらの支店でインドの7つの州すべてをカバーしており、サイズは小さいが人員は十分に配置してある。そこでは、Aye Financeの社員がクラウドに同期されたデジタル・プラットフォームを利用して、融資希望者の財務状況を入力していく。Aye Financeでは「業種別クラスター」と呼ばれる概念を利用することで、融資希望者のビジネスを正確に評価することができるとSharmaは語る。先ほど述べたようなビジネスオーナーを極端なケースとして扱い、業種ごとに作成されたマトリックスを利用してビジネスを評価するのだ。例えば靴の製造業者の場合、日ごとの靴の製造数や、従業員1人あたりの製造数などの指標を利用することが考えられるだろう。このように、同社は従来の金融機関が見向きもしないような指標を有効活用しているのだ。

「私たちは8つの指標を利用して様々な業種の仕組みを理解しています」と彼は説明する。

同社の見込み客の多くはインターネットにあまり詳しくないため、彼らはローカルかつオフラインな方法で見込み客を開拓している。

「通常、業種クラスターはある地域にかたまって存在しています」と彼は加える。「2キロメートル四方のエリアに1万5000人もの潜在顧客がいるかもしれません—私たちが支店を設立するのに必要な(登録済みの)顧客数はたった1000人なのです」。

Aye Financeは月ベースで見ればすでに損益分岐に達しているものの、全体的な損益分岐に達するのは2017年の終わり頃だという。また、Sharmaは今後18ヶ月から24ヶ月以内に追加の資金調達を検討しており、それによって新しいタイプの金融商品にも手を広げていく予定だ。

それについてShamaは、「業務クラスターに関連した金融サービスを提供していきたいと思っています。例えば、デリーに同社の顧客を紹介できるような大規模のバイヤーがいる場合、当社が彼らにマーケットプレイスを提供したり、業務上のアドバイスや市場データの集約サービスなどを提供することが考えられます」と説明する。

[原文]

(翻訳: 木村 拓哉 /Website /Facebook /Twitter

Furlencoが3000万ドルを調達、インドのミレニアル世代に広がる家具レンタルサービスの利用

bounce-1-2

近年、アメリカ経済の所有に関する概念が大きく変わり、以前はモノを所有するということに重きが置かれていたのを忘れてしまうほどだ。振り返って考えてみると、ほとんどの人は、両親とAirbnbやUberについて話した後に、他人のモノを使うことの危険性に関して諭されたことが一回はあるだろう。

インドに本社を置くFurlencoでCEOを務めるAjith Mohan Karimpanaは、モノの所有に関するミレニアム世代の価値観や優先順位について、インドでも同じような考え方の変化が起きていると説明する。端的に言うと、彼らはモノを所有することに全く興味を持っていないのだ。インドのミレニアム世代は頻繁に旅行をしてチャンスを探し求め、無機質なモノを所有するよりも経験を重視している。

ajith-karimpana

アメリカと同様にインドでも若者の動きに反対する意見が出ているが、もともとゴールドマン・サックスに勤めていたKarimpanaは、将来有望な若者に”モノ”という重荷を負わせないために、そもそもモノを購入しなくてすむようなサービスを提供するFurlencoの設立にこぎつけた。Furlencoは手始めに家具のレンタルサービスに注力しているが、Karimpanaはこれが終着点とは考えていない。

そしてFurlencoはこの度、大型の資金調達を完了したと発表した。総額3000万ドルにおよぶ調達資金のうち、1500万ドルはLightbox VenturesとAxis Capitalをはじめとする投資家からエクイティで調達され、残りの1500万ドルが銀行やノンバンク、個人、ファミリーオフィスからの借入で調達された。アメリカでは調達金額がこのレベルに達するとプロダクトマーケットフィットを意味するが、インドではこの金額はもっと大きな意味を持っている。1500万ドルという金額の借入はインドでは珍しく、これはKarimpanaが消費者の行動を正しく理解しているというだけでなく、レンタルモデルが本当に儲かるビジネスだということを表している。

ここで誤解してほしくないのだが、Furlencoを家具のAirbnbと呼ぶのは間違っている。Furlencoは、インドの家具市場の上流でディスラプションを起こすに足りるAirbnbの精神を持った、Jonathan Ive(アップルのチーフ・デザイン・オフィサー)とIkeaの間の子ような存在だ。実際に同社は、より良い家具を作るべく多数のデザイナーを雇用している。そしてそれぞれの家具は、長い間使えるように、修繕がしやすい無垢材をたくさん使って作られている。

他の世代の人たちは、ミレニアル世代の何でも欲しがる性格をよくからかうが、Karimpanaはこの特徴を頭痛の種ではなく、チャンスとして捉えている。現在Furlencoのチームは、高品質なリクライニングチェアーを作っており、これは見た目に美しいだけではなく、携帯電話よりも簡単に別のものと交換することができる。部屋の雰囲気に飽きたら家具を交換すればいいし、給料の良いテック系の仕事をみつけ、バンガロールからプネーに引っ越すときも家具を交換すればいいのだ。この仕組みは、人生の節目で計画が変わる度に使っている家具を売って新たな家具を購入するよりも安く、そして簡単に家具が変えられるようにするために作られたものだ。

「必要だから借りるのではなく、借りたいと思えるものを借りるべきです」とKarimpanaは語る。

float-1これまでに1万5000世帯へ2000万ドル分の貸し出しを行っていることから、Furlencoの狙いは当っていると言っていいだろう。そしてこの急速な成長にも関わらず、家具の使用率は95%以上を保っている。つまり、利益を圧迫する原因となる使われていない家具をしまっておくための大きな倉庫は、Furlencoには必要ないのだ。

他の経営者の逸話のように、Karimpanaのアイディアは30〜40社のベンチャーキャピタルに断られ、最終的に1社だけが興味をもってくれたと彼は説明する。その証拠に、FurlencoのシリーズAのクローズには一年以上かかった。結局、Lightbox Venturesが、このコスト集中型のビジネスモデルに賭けることにしたのだ。

自社で家具のデザイン・製造を行うのにはお金がかかるが、借入には役立つ。というのも、Furlencoは実質的に物理的な担保のある金融商品なのだ。さらにKarimpanaは、サブスクリプションモデルのおかげで、Furlencoの売上予測は立てやすいと言う。一般的に家具の回転率は低く、Netflixユーザーなどに比べて、家具の購入を検討している人は、その家具を購入することで得られる価値をかなり現実的にみているのだ。 work-from-home-1

レンタルサービスから成り立つ生活スタイルを試してみようと思っているが、自分の好みにあった家の雰囲気を作りだすほど十分な選択肢がないのではと心配している人がいれば安心してほしい。Karimpanaは、クォーター毎に1、2種類の新しい家具を市場へ送り出すというアグレッシブな計画を立てている。さらにKarimpanaは家具と電子機器のつながりにも何か考えをもっているようで、今後Furlencoが他の革新的なレンタルサービスを提供していく中で、その考えが具現化していくのを見るのが楽しみだ。

原文へ

(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter