a16zが出資するウクライナ発の合成メディアアプリReface(リフェイス)は、世界中に抱える約2億人ものユーザーにロシアのウクライナ侵攻を知らせるプッシュ通知を追加し、アプリで作成した顔交換動画に透かしを入れるなど、人々に#StandWithUkraineを呼びかけている。
アプリで作成されたすべての動画には現在、ウクライナ国旗と#StandWithUkraineのハッシュタグの透かしが入る。
また、今回のアップデート後にアプリを開くと、キエフで避難する市民の画像が表示され、画像はロシアがウクライナを攻撃した「証拠」だとするキャプションが表示される。
メッセージはまた「戦争を止める」ために、ロシアを国際銀行決済システムSWIFTから排除するよう求めている。
Refaceによると、アプリの別の次期アップデートでは、すべてのユーザーに「ウクライナでの戦争に反対する声明を出す」よう促すという。
Refaceはまた、ウクライナをサポートできるリソースをユーザーに案内している。
画像クレジット:Reface
Refaceは2月最後の週末から反戦キャンペーンを開始し、これまでに900万通のメッセージが送信され、そのうち200万通はロシアのユーザーに届けられたという。
ユーザーの自撮り写真を有名人のビデオクリップにマッピングすることで、現実をファンタジーに変え、消費者に数秒間の想像上の楽しみを与えてきたこのアプリにとって、これは超現実的な展開だ。
しかし、Refaceの従業員がロシアの侵攻を直接体験していることから、チームは、この状況に対する世界的な認識を高め、人々に抗議を促すために何かする必要があると判断した。
画像クレジット:Reface
ウクライナからTechCrunchにメッセージを寄せたRefaceのCEOで共同創業者のDima Shvets(ディマ・シュヴェッツ)氏は、次のように語っている。「Refaceは大規模な情報キャンペーンを開始し、すべてのロシア人ユーザーにプッシュ通知を送り、我々の都市におけるロシアの攻撃の証拠を示し、ウクライナとともに立ち上がり、抗議行動に出るよう人々に呼びかけました。さらに、世界中のユーザーに対して、ウクライナを支援するためのアプリ内メッセージを追加し、現在、当社のアプリで作られたすべてのビデオには、#standwithukraineとウクライナ国旗の透かしが入っています」。
「我々はこのキャンペーンがいかに危険なものであるかを理解し、すべてのリスクを負っています。すでに多くの星1つのレビューや、真実を見る準備ができていなかった人たちからの報告を受けています」とも付け加えた。
Refaceは、ロシアにいる550万人のユーザーを対象に、抗議を促すプッシュ通知と、ウクライナ国内の戦争映像のスライドショー(焼け落ちた建物や爆撃を受けた建物、避難しようとする市民の写真など)へのリンクを送信する。
ロシアで展開されているスライドショーに添えられたキャプションには、次のように書かれている。「ロシアの顔に泥を塗れ」「一緒に戦争を止められる」「通りを埋め尽くせ」「我々が反対していることを世界に示せ」。
Refaceの広報担当者は「最初の目標は、ロシア人に本当の情報を広め、独立したメディアや信頼に値する情報源にアクセスできないロシアの人々に抗議を促すことです」と語った。
「リスクを理解し、そのすべてを負っていますが、それは我々の自由のために支払う小さな代償です。そして、App StoreとGoogle Playが我々をサポートすることを願っています」。
ロシア政府がロシアの主要メディアを支配しているため、ロシア国民は日常的に国家のプロパガンダにさらされている。例えば、ウクライナへの侵攻は「特別軍事作戦」であり、戦争行為や理不尽な侵略ではない、というプーチン大統領の主張などだ。
つまり、プーチン大統領の軍が隣国ウクライナを陸・空・海から砲撃し始めて以来、多くの一般ロシア人はウクライナ国内の映像を見たことがないことを意味する。
ロシア政府はまた、外国の主要ソーシャルメディアプラットフォームによって、プロパガンダの発信が制限されるのを防ごうと動いている。
同政府は2月25日、Facebook(フェイスブック)へのアクセスを一部制限すると発表した。明らかに、ソーシャルメディアプラットフォームがロシア政府とつながりのあるメディアに対して事実確認のラベルを貼ったことに対する報復だ。
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ロシアのウクライナ侵攻を非難する立場を取ることで、Refaceはロシアのインターネット規制機関Roskomnadzorから同様の措置を受ける危険性がある。Roskomnadzorは、例えば、Apple(アップル)や Google(グーグル)のモバイルストアからRefaceアプリを排除するよう働きかけるかもしれない。
地下鉄に避難しているウクライナに残ったRefaceのスタッフ(画像クレジット:Reface)
ハイテク大手2社は9月、ロシア国家からの圧力に屈し、獄中のロシア政府批判者Alexei Navalny(アレクセイ・ナヴァルニー)氏の組織が作成した戦術的投票アプリをストアから削除した。
Roskomnadzorは、Smart Votingアプリを削除しないなら罰金を科すと脅した。
Roskomnadzorは以前にも、ロシア国民がローカルのアクセス制限を回避することを困難にしようと、VPNアプリを標的にしたことがある。
しかし、ロシアの情報形成のためのサイバー活動は、アクセス制限をはるかに超えて広がっている。Refaceに反戦メッセージが追加されて以来、突然星1つのレビューが殺到したのは、ロシア政府の支援を受けた偽情報屋が、反ウクライナ政策の一環として、アプリの評判を落として利用意欲を低下させようとする協調行動である可能性が少なくともある。
また、このほど新たな制裁を発表したEUは、悪名高いロシアのトロール工場(別名:インターネットリサーチ機関)とロシアの独裁者の出資者であるYevgeny Prigozhin(エフゲニー・プリゴジン)を、制裁対象の団体と個人の拡大リストに追加したことも注目される。
しかしRefaceは、反戦メッセージを公開して以来、同社のアプリに対する否定的なレビューが、ロシア政府への協調行動かどうかを判断するのは難しいと述べた(もちろん、もともと純粋な娯楽アプリであるRefaceが、反戦メッセージを送るという決定を下して、一部のユーザーを単に困らせたということは十分にあり得るし、おそらくかなりあり得ることだ)。
否定的な反応を受け、Refaceは「ウクライナの現状について世界に情報を提供し続ける」ことができるよう、人々に「App StoreとGoogle Play Storeでの評価を高く保つ」ことへの協力を呼びかけている。
つまり、アプリの評価さえも、サイバー戦争のプロパガンダの戦場として流用することができるようだ。
Refaceのチームが直面している現場の状況について尋ねると、チームのスタッフの多くは現在紛争地帯で仕事をしており、スタッフのほとんどがまだウクライナにいる、とRefaceは話した。ただし、12月以降、出国したり、海外でリモートワークをしている人もいるという。
男性の社員は、侵攻以来、政府の規制により国外に出ることができない。
Refaceの広報担当者はウクライナにいるスタッフについて、多くのスタッフはより安全な場所を求めてウクライナ西部に移動し、他のスタッフはキエフに留まって「防空壕から情報的・技術的に支援」していると話した。
また、自主的に国防軍に参加した人もいるという。
「チームは分裂を余儀なくされたものの、これほどまでに団結したことはありません」と広報担当者は語り、こう付け加えた。「私たちは勇敢で強く、ロシアの侵略者に滅ぼされることはないでしょう。しかし、世界からの全面的な支援なしには、この戦争を止めることはできません」。
ウクライナでの戦争中の別のReface従業員の仕事場(画像クレジット:Reface)
Refaceは世界の指導者たちに対して、ロシアに対してより厳しい制裁を科すとともに、ウクライナへの支援(武器など)を強化するよう求めている。
SWIFTに関しては、EUの首脳は禁止措置をめぐって揺れているように見えたが、2月25日、EUは他の多くの措置とともに、ロシアの銀行市場の70%を排除する制裁措置に合意した(ロイターより)。
EU委員長は週末に、ロシアの国営メディアであるロシア・トゥデイ(RT)とスプートニク(およびその子会社)に対し「前例のない」さらなる措置を講じると発表した。
声明の中でEUのUrsula von der Leyen(ウルズラ・フォン・デア・ライエン)委員長は、ロシア政府の「メディア・マシンは…プーチンの戦争を正当化し、我々の連合に分裂をもたらすために、もはや嘘を流すことはできないだろう」と述べ、EUは「欧州におけるロシアの有害な情報操作を禁止するツールを開発中」だと付け加えた。
EUが何を意図しているのか、禁止令が実際にどのように機能するのか、テレビ局だけでなく、そのコンテンツをホストしているオンラインプラットフォーム(YouTubeなど)にも適用されるのか、あるいは、穴だらけの(誤)情報時代にロシアのプロパガンダマシンを阻止するという話に本当に意味があるのか、正確にはわからないが、EUが試みたいと言っているという事実は注目される。
デジタル政策の立案において、EUの議員たちは往々にして言論統制と非難される可能性のある措置を提案することに非常に慎重だ。しかし、プーチンはEUの議員たちにその一線を越えさせてしまったようだ。
画像クレジット:Alain Pitton / NurPhoto / Getty Images
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(文:Natasha Lomas、翻訳:Nariko Mizoguchi)