Linked Idealがナレッジベース構築プラットフォーム「Toposoid」をオープンソースとして公開

Linked Idealがナレッジベース構築プラットフォーム「Toposoid」をオープンソースとして公開

人工知能を活用したデータ分析を行うLinked Ideal(リンクトイデアル)は10月10日、ナレッジベース構築プラットフォーム「Toposoid」をオープンソースソフトウェア(OSS)として公開した(GitHub)。ナレッジベース(知識ベース)とは、人の知識を可視化して蓄積し、検索可能にしたデータベースのこと。

Toposoidには次の3つの特徴がある。

文章を入力するだけでナレッジベース構築が可能

普通に文章を入力するだけで、文章が解析され、ナレッジグラフ(知識グラフ)構造としてデータベースに蓄積される。ナレッジグラフデータは、グラフデータベース「Neo4J」で管理している。

文章入力でナレッジベースを探索し説明可能性のある結果が得られる

ナレッジベースと照合したい文章をそのまま入力すれば、解釈、照合が行われ、真偽判定結果を得ることができる。同時に、その判定が論理的に支持される理由の説明も示される。

オープンソースを活用したプラットフォームで推論エンジンを拡張

OSSなので、開発者による拡張が可能。推論エンジンのプログラムは、開発者が使い慣れている言語で拡張や差し替えが自由に行える。

アメリカの市場調査会社IDCの2020年5月の調査では、2020年のデジタルデータ総量はおよそ59ZB(
ゼタバイト。59兆GB)に相当し、2000年から比べると1万倍に増えたとのこと。Linked Idealは、「ヒトは文章という情報に限ってもその膨大な情報の理解をコンピューターにサポートしてもらわざるを得ない時代に入った」と話す。そこで、文章を加工せずそのまま入力して知識の蓄積が行え、また文章で探索が行えて、説明可能性のある結果が得られるToposoidのようなツールがますます重要になるとしている。

今後は、OSSで提供される機能に加え、商用ライセンスの形でさらに高度な推論機能を備えたバージョンをリリースする予定だとLinked Idealは話している。さらに大規模なデータ処理機能、高負荷の耐用性および高可用性を持たせるために、クラウドから利用できるサービスを構築中。「社会課題に対してより安定したサービスを提供できるよう進化してまいります」とのことだ。

Airbyteが統合プラットフォームのホスティング版を発表

Airbyteは、資金状態の良いオープンソースのデータ統合化プラットフォームで、企業のデータチームが自分のELT(Extract, Load and Transform)パイプラインのセットアップを容易にできるようにしてきた。しかし、それまではあくまでもセルフホスティングの自己管理型サービスで、付随する面倒くさい作業もすべてユーザーが行わなければならない。

米国時間10月12日、同社は、Airbyte Cloudの公式ローンチを発表し、Airbyteのホステッドサービスがオープンソースバージョンのすべての機能を持ち、さらにホスティングと管理があり、そしてサポートの各種オプションと、チームに代わってアクセス管理もするようなエンタープライズ機能もあるというサービス体系の提供を開始した。現状で未実装なのはシングルサインオンだが、提供は「もうじき」という。

現状では、6000社ほどの企業が何らかのかたちでAirbyteを使っている。2021年1月にはわずか250社だった。2021年の1年で同社はシードとシリーズAの両方をこなし、合わせて3100万ドル(約35億円)超の資金を獲得した。シードとシリーズAがわずか2カ月間であることから、この分野は投資家にとっても熱いことがわかる。

画像クレジット: Airbyte

お金の話といえば、Airbyteは料金体系を今度のクラウドバージョンとそれまでのオンプレミスバージョンで同一にしようとしている。一般的にこの種のサービスは、処理量が課金のベースとなるが、同社は一連のジョブにかかる計算時間に応じて課金する。

これなら、ワークロードをめぐってよく起きるトラブルが少なくなるだろう。Airbyteのチームによると、従来、エンタープライズはFivetranのような複数のシステムを使って、共通のAPIソースと、データエンジニアリングのチームが彼らの1回限りのユースケースのために作ったスクリプトに接続していた。そしてその上にデータベースのレプリケーションのためのシステムがある、という構成だ。

料金体系について、AirbyteのCOOで共同創業者のJohn Lafleur(ジョン・ラフルール)氏によると「データの統合という問題はありふれた日常的な処理、つまりコモディティにしてしまって解決したい。そうするための唯一の方法は、インフラストラクチャのベンダーがやてるような料金体系にすることです。たとえばSnowflakeのように、クレジットを買い、計算時間に基づいてそのクレジットを消費する。すると、データベースのレプリケーションのスループットはとても高いからそれが可能になりますい。だから、計算時間をベースにしてきたんだ」。

さらにAirbyteのCEOで共同創業者のMichel Tricot(ミシェル・トリコット)氏は、それにより企業は、実質的に彼らのデータサービス料金のすべてを同じ1つの計算時間として捉えるようになるという。

現在、Airbyteは、Instagramのような消費者向け製品から、GoogleのLookerのようなBIシステム、そしてほぼすべての主要なデータベースシステムに至るまで、約130のサービスとのコネクターを備えている。また、チームが指摘するように、多くの顧客がAirbyteのオープンソースコードを利用して独自のカスタムコネクタを構築している。さらに、自社の顧客のためにコネクタを構築するベンダーも登場しており、チームは、何らかのかたちでレベニューシェアを行うことで、コミュニティが長期間にわたってコネクタを維持するインセンティブを与える方法を検討している。

関連記事:必要な場所にデータを移動させるオープンソースのデータコネクタープラットフォームAirbyteが28.3億円調達

画像クレジット:koto_feja/Getty Image

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(文:Frederic Lardinois、翻訳:Hiroshi Iwatani)

OpenStackがパンデミックで大幅成長、稼働コア数が1年で66%増加し24度目のメジャーリリース

大企業やパブリッククラウドプロバイダーが、自社のデータセンターでAWSのようなプライベートクラウドを運用するためのツールを提供するオープンソースプロジェクトOpenStackは米国時間10月6日、「OpenStack 24」のリリースを発表した。コードネーム「Xena」と名づけられた今回のリリースでは、特にシステムの周辺部分を磨き上げている。

現在、OpenInfra Foundationの傘下にあるOpenStackプロジェクトが浮き沈みを繰り返していることは周知の事実だ。そのため、最近の利用者数が大幅に増加していることは、多くの人にとって驚くべきことだ。財団が発表したとおり、OpenStackで管理されている総コア数は、2020年の1年間で66%増加している。

OpenStackは現在でも多くの通信企業のバックボーンであり、最大手通信企業10社のうち9社がOpenStackを利用している。最近Verizonで5Gの通話をした人は、OpenStackがその通話を支えたのだ(なおVrizon傘下のVerizon MediaはTechCrunchのオーナーだったが、最近そうでなくなった。明らかにそれは、同社の損失だ)。通信以外にも、例えばWorkdayとWalmartは、OpenStackをデプロイして動かしており、その総コア数は100万を超えている。しかしそれでも、たとえばChina Mobileは、独自に突出して600万コアを抱えている。

OpenInfra FoundationのCOOであるMark Collier(マーク・コリアー)氏は次のように語っている。「これまでで最大の飛躍だと思います。パンデミックの影響でインフラへの需要が大幅に増加したことはよく知られています。また、ハイパースケールのパブリッククラウドについても多くの記事が書かれていますが、彼らは突然、より早い成長を必要とします。私は、このことがOpenStackの需要を確実に促進していると考えています。私たちは1年で1000万コアを追加しました。これはすごいことです。この1年で100の新しいクラウドが構築されました。現在、7つの組織が100万コア以上を稼働させています」。

画像クレジット:OpenInfra Foundation

さらに注目すべきは、数週間前にMicrosoftが、年会費35万ドル(約3900万円)という最高位のプラチナ会員としてOpenInfra Foundationに参加したことだ。同社を迎え入れる既存のプラチナ会員は、Ant Group、AT&T、Ericsson、Facebook、FiberHome、Huawei、Red Hat、Tencent CloudそしてWind Riverなどとなる。

OpenStackはリリースを24回も重ねており、コンピューティング、ストレージ、ネットワーキングなど、プライベートクラウドを動かすために必要なコアツールはすでに完備している。しかしそれでも、ありとあらゆるPCIデバイスをサポートするためには欠けている機能がある。たとえば企業は、OpenStackのコンピュート部位NovaとネットワーキングサービスNeutronに、プログラマブルなネットワーキングデバイスであるSmartNICsを接続することを求めている。

OpenStackで、上流開発のデベロッパーたちに対応しているKendall Nelson(ケンダル・ネルソン)氏は次のように説明する。「この度のリリースにおける特定のテーマとなるのは、1つは複数のプロジェクトの統合です。ハードウェアアクセラレーターをサポートするOpenStack CyborgやNova、Neutronなどでは、このPCIデバイスを中心とする周辺的部位の相互接続をサポートする柔軟性という部分で作業量がとても多くなり、OpenStackはその各部を組み合わせて総合的に使う方がベターであることを証明しようと努めました」。

これには、統合されたOpenStackコマンドラインツールに、より多くのコンポーネントから、より多くの機能のサポートを追加することも含まれる。

関連記事:Open Stack FoundationがOpen Infrastructure Foundationに改称、AntGroupなど4社がプラチナティアに追加

「これまでは、1つのサービスに対して個別のクライアントという対応でした。彼らはAPIに近い位置にいて、個々のプロジェクトごとにそのメンテナンスをしました。特に過去2回のリリースでは、OpenStackのクライアントとその下のOpenStack SDKにフォーカスしていたため、プロジェクト固有のクライアントを大量に取り去ることになり、ユーザーがたった1つのコマンドラインでインタラクティブな操作をし、何でもできるようにしました」とネルソン氏はいう。

その他のアップデートも多いが、それらに関しOpenInfra Foundationのエンジニアリング担当副社長Thierry Carrez(ティエリー・カレス)氏は、それらのアップデートはハードウェアの新しい要件が契機になっているものが多く、OpenStackのユーザーの多くが現在運用しているスケールに対応するためのものもあると述べている。

「興味深いことに、開発のプライオリティが最近は変わっています。現時点においては、コア機能はかなり安定していますが、今回の開発で忙しかったのはハードウェアの有効化の部分でした」とティエリー・カレス氏はいう。

また、この開発サイクルでは、過去10年間に蓄積された技術的負債に対処するために、長い間使われていなかったAPIのサポートを削除するなどの取り組みも行っている。

Kata Containers、CI/CDプラットフォームのZuul、エッジ・コンピューティング・プラットフォームのStarlingX、ライフサイクル管理ツールのAirshipなどのプロジェクトを支援しているOpenInfra Foundationは、本日、対面式のカンファレンスを再開することを発表した。6月7日から9日までベルリンで開催される。それに先立ち、2021年11月にはバーチャルイベント「OpenInfra Live: Keynotes」を開催する。

画像クレジット:TechCrunch

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(文:Frederic Lardinois、翻訳:Hiroshi Iwatani)

日本IBMが量子コンピューター活用のハッカソン「IBM Quantum Challenge Fall 2021」を開催、高校生以上参加可能

日本IBMが量子コンピューター活用のハッカソン「IBM Quantum Challenge Fall 2021」をオンライン開催、高校生以上参加可能

日本IBMは10月6日、量子コンピューターを使って産業分野の具体的な課題に挑戦するハッカソン「IBM Quantum Challenge Fall 2021」を10月27日(日本時間10月28日9時)より10日間開催すると発表した。「量子コンピューティングの産業応用に向けて」をテーマに、量子コンピューターが「実際に何に使えるのか?」を考えるための、産業応用の課題にチャレンジする。高校生以上の人なら、経験の有無を問わず参加が可能。

参加者は、IBMが運用している量子コンピューター・プラットフォーム「IBM Quantum Lab」上で、オープンソースの量子ソフトウェア開発キット「Qiskit」を使い、金融、量子化学、AI機械学習、最適化という、将来量子コンピューティングの活用が期待される4つの重要な産業分野の課題に挑戦する。「チャレンジを通じて基礎から応用まで学ぶことができるとともに、産業応用を意識した量子コンピューティングの活用に取り組むことができます」とのことだ。

IBM Quantum Challenge Fall 2021における4つのチャレンジ

金融では、「どの会社の株をどれくらいの比率で持てばベストな資産運用ができるか」といったポートフォリオの最適化など、量子コンピューターを使用した財務上の課題解決法を考える(Qiskit Finance documentationチュートリアル参照)。

量子化学では、量子コンピューターによる分子シミュレーションをもとに、変分量子アルゴリズムを用いた有機EL発光材料の励起状態の計算方法を考える(Qiskitテキストブックの4.1.2章Qiskit Global Summer SchoolのLecture22〜27Qiskit Nature documentationチュートリアル参照)。

量子機械学習では、従来型機械学習アルゴリズムの量子拡張版を使い、機械学習においてもっとも基本的な問題となっている特定クラスの分類問題をいかに解決するかを考える(Coding with Qiskit season 2のエピソード6Qiskit Machine Learning documentationチュートリアル参照)。

最適化では、巡回セールスマン問題、最大カット問題、ナップサック問題といったNP困難問題に、量子コンピューターで挑戦する(Qiskitテキストブック「QAOA を利用して、組合せ最適化問題を解く」Qiskit Optimization documentationチュートリアル参照)。

演習問題については、東京大学と慶應義塾大学の学生が検討し、出題する予定。

「IBM Quantum Challenge Fall 2021」概要

このハッカソンは、2019年から4回開催されている。2020年5月に開かれた第2回では、45カ国から1745人が参加。2020年11月の第3回では、85カ国3320人以上から応募があった。各回の概要は下のリンクで見ることができる。

第1回:2019年9月 https://github.com/quantum-challenge/2019
第2回:2020年5月 https://www.ibm.com/blogs/research/2020/05/quantum-challenge-results/
第3回:2020年11月 https://www.ibm.com/blogs/think/jp-ja/quantum-challenge-2020-fall-results/
第4回:2021年5月 https://research.ibm.com/blog/quantum-challenge-2021-results

デベロッパーのウェブアプリ開発をスピードアップするクロアチアのWaspが約1.7億円調達

アプリケーションの開発における、コーディングの複雑さから開発者を解放しようと努力しているスタートアップは少なくない。先にはRunXのシードラウンドを取り上げたが、そこは開発者がバックエンドのクラウドリソースを迅速にコーディングできるようにしている。米国時間10月4日、Y Combinatorの2021冬季を卒業したWaspが150万ドル(約1億7000万円)のシードラウンドを発表して、アプリケーションのビジネスロジックの部分のコーディングを迅速化しようとしている。

このラウンドはLunar VenturesとHV Capitalが共同でリードし、468 CapitalとTokyo Black、Acequia Capital、Abstraction Capital、そして多くの個人エンジェルが参加した。

WaspのCEOであるMatija Sosic(マチヤ・ソシッチ)氏によると、双子の兄弟Martin(マーティン)氏と一緒に2019年にクロアチアでスタートし、複数のサービスを縫い合わせて1つのフルスタックウェブアプリケーション作る開発者の仕事を、もっと簡単にしようとした。容易化する方法は、開発者がすでに使っているプログラミング言語がReactであれNode.jsあれ、何であっても、その上に構成(コンフィギュレーション)の層を設けることだ。

ソシッチ氏によると「非常に高いレベルで、Waspは少ないコードと内蔵のベストプラクティスでフルスタックのアプリケーションを作るためのシンプルな言語です。私たちは開発者に個別の言語にとらわれない統一的な体験を提供しますが、それは私たちの考えでは彼らに最大の価値を与えるエスクペリエンスです。なぜなら、開発者がいろいろなソリューションを自分で組み立ててアプリケーションを作る必要がありません」。

RunXと同様、Waspもオープンソースのツールで、開発者は無料で使える。そしてソシッチ氏によると、これまでにWaspを使って約300のアプリケーションが開発された。当面はオープンソースに徹して正しいツールを作っていくが、その後、最終目標として収益化の方法を考えたいという。

ソシッチ氏と彼の弟は2年前に、自費で会社を作った。Waspの初期のバージョンをProduct Huntでリリースしたのは2021年初めだ。彼らはその後、最初の関心事だったことを始めた。それはY Combinatorに入学し、シードラウンドを調達して、プロダクトの開発を続けることだ。

現在、プロダクトはアルファで、GitHubでダウンロードできる。今回得た資金は、機能を増やしてベータへ移行し、最終的にはバージョン1.0をリリースすることにつぎ込みたい、という。

画像クレジット:Wasp

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(文:Ron Miller、翻訳:Hiroshi Iwatani)

これがGoogleの本気だ!? その気になれば寿司をワンキーで注文できる湯呑み型Gboard対応キーボードがオープンソース化

これがGoogleの本気だ!? その気になれば寿司をワンキーで注文できる湯呑み型Gboard対応キーボードをオープンソース化

Googleは10月1日、文字入力アプリ「Gboard」(ジーボード)に対応した湯呑み型の物理キーボードを発表した。「キーボードにお茶をこぼす。Gboard湯呑みバージョンを使えばそんな日常茶飯事のトラブルが解決するだけでなく、難しい魚編の漢字もワンタッチで入力できるようになります」とのこと。

手になじむ円筒形キーボードの配列は、JISではなくSSI(スシ)。魚偏の漢字が縦にあいうえお順に並べているほか、スペース、カーソルキー、エンターキーなどを合わせて58キーが装備されている。これで、ひらがな入力が可能となる。

おもな仕様は以下のとおり。

インターフェース:USB Type-C
キー数:SSI(スシ)配列 58キー
キー仕様:ロープロファイルメ カルスイッチ
キーピッチ:もちろんピッチピチ
ストローク深さ:やけどしない深さ
押下圧:リラックスしながら押せる強さ
サイズ:一息つくのに丁度いいサイズ
本体重量:手に馴染む重さ
容量:125ml
動作時温度(回路部):-10〜60℃
湯呑み部温度範囲:-20〜140℃(熱い飲み物を注ぐ際はやけどにご注意ください)

販売はしていないが、ハードウェアの作り方とソフトウェアはオープンソース化され、Githubで公開(ライセンスはApacheライセンス 2.0)されている……って、これエイプリルフールのあれ? 実はGoogleでは、毎年4月1日におかしなキーボードを発表してきた。ざっと以下のごとし。

これがGoogleの本気だ!? その気になれば寿司をワンキーで注文できる湯呑み型Gboard対応キーボードをオープンソース化でもなんで10月1日に? Googleによれば、10月1日は「北野大茶湯」が開かれた日とのこと。天正15年の10月1日に、豊臣秀吉が北野天満宮で開催したお茶会だ。何でもいいから茶道具を持参すれば、身分に関わりなく参加できた。それを記念してのことのようだ。

これまでのものは、ほぼジョークネタといえるのだけど、この湯呑み型キーボードはホントに作れてホントに使える。だんだん本気になってきたみたい。しかも、エイプリルフールだけでは物足りなくなってきたようだ。それは大いに結構。こういうことは、いつでもどんどんやってほしい。

アルファベットが気球ネット企業Loonの特許を一部ソフトバンクに譲渡、飛行データはオープンソース化

Alphabet(アルファベット)のLoonは、高高度気球を飛ばして対象地域にセルラーネットワークを提供するという、成層圏でのムーンショットだった。このプロジェクトは、気球が自律的に航行し、1つのエリアに長時間とどまることができる技術を開発するなど、多くの新境地を開拓したが、最終的には終了した。現在、AlphabetはLoonのアセットを分割しており、その多くは業界の他の企業に無料で提供されたり、重要なパートナーや戦略的投資家に引き渡されたりしている。

ソフトバンクはこのプロセスで、知的財産を手にする企業の1つとなる。日本のテレコム大手である同社は、Loonが保有する成層圏での通信、サービス、オペレーション、航空機に関する約200件の特許を取得し、自社の高高度プラットフォームステーション(HAPS)事業の開発に活用するという。ソフトバンクはかつて、Loonのパートナーとして「HAPSアライアンス」を設立し、業界の発展に貢献してきた経緯がある。ソフトバンクのHAPS事業は自律型グライダーを中心に展開していたが、通信用のペイロードをLoonの気球にも搭載できるように適応させた。ソフトバンクはLoonの投資家でもあり、2019年にはAlphabet傘下にあった同社に1億2500万ドル(約139億2000万円)を出資している。

Loonの閉鎖によって、ある種の利益を得ることになったもう1つの企業がRavenだ。Ravenはもう1つのパートナーであり、Loonが運用していた高高度気球の製造に特化した企業だ。同社は、気球の製造に特化した特許を取得する。

落雷がLoonのハードウェアに与える影響を実験室で検証(画像クレジット:Alphabet)

Loonの残りの研究内容の大部分は、成層圏の科学と産業の技術水準を向上させるために一般に公開される。Alphabetは、GPSやセンサーのデータを含む、Loonの約7000万kmの飛行データをオープンソースとして提供している。また、気球の打ち上げ、飛行中のナビゲーション、気球の管理など、270件の特許および特許出願について、権利を主張しないことを表明している。成層圏気球の専門家を目指す人々や一般大衆のために、Loonは同社の経験をまとめた本を出版した。この本は以下に埋め込まれた無料のPDFから入手できる。

このプロジェクトをICARUSと比較して論じたくなるところだが、Alphabetのムーンショットには最初から一定レベル以上の失敗の可能性が織り込まれているため、それほど適切な比較ではない。また、これらのIPやデータがすべて公開されることは、科学界にとっても非常に良い結果となるだろう。

画像クレジット:Alphabet

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(文:Darrell Etherington、翻訳:Aya Nakazato)

自動車業界の競技プログラミング、自動走行車を制御し走行タイムを競う「第3回自動運転AIチャレンジ」エントリー開始

自動走行車によるサーキット走行タイムをオンライン・シミュレーター上で競う「第3回自動運転AIチャレンジ」エントリー開始

公益社団法人自動車技術会は9月27日、CASE(コネクテッド、自動化、シェアリング、電動化)の推進が急がれる自動車業界を担う、AIおよびIT人材育成を目的とした「第3回自動運転AIチャレンジ(2021シミュレーション)」大会の参加者募集を開始した。「第3回はオンライン環境における自動運転車のシミュレーション競技とし、コンピューターサイエンス、AI、ソフトウェアや情報処理に関わる技術者・研究者・学生等のチャレンジの場、また学習機会を提供致します」とのことだ。

シナリオやルールなどの詳細は10月12日に発表されるが、参加者は、課題に沿ってソースコードを構築し、ローカルでシミュレーションを行い改良を重ねた後、11月2日から12月17日まで、オンラインシミュレーター上で競技を行う。

まだ詳細は明らかにされていないが、公式サイトで公開されいてる2020年の「第2回自動運転AIチャレンジ」のオンライン表彰式の動画を見ると、シナリオの説明や受賞者のシミュレーション映像があり、どんな感じのものかがわかる。シミュレーションには自動運転システム用のオープンソースソフトウェア「Autoware」と、自動運転シミュレーターLGSVL Simiulatorが使われている。

自動走行車によるサーキット走行タイムをオンライン・シミュレーター上で競う「第3回自動運転AIチャレンジ」エントリー開始

Indianapolis Motor Speedway(全長約4km)

応募概要

  • 開催日程:2021年11月2日〜12月17日
  • 競技内容:オンラインシミュレーター上のシナリオを走破できるソースコードを作成、自動運転車両を制御しサーキット走行タイムを競う(スタート地点からゴール地点までの時間を競うタイムアタック)
  • 参加資格:制限なし
  • 参加費:無料

エントリーはこちらから

自動走行車によるサーキット走行タイムをオンライン・シミュレーター上で競う「第3回自動運転AIチャレンジ」エントリー開始

「Guardian」のオーナー企業がサブスクやメンバーシップ用に設計されたNFTプロトコルUnlockに投資

クリエイター経済における収益化は大きな課題であると同時にチャンスでもある。だがクリエイターがその価値を実体化するためには、Patreon(パトレオン)のようなプラットフォームに閉じこもるしかないのが現状だ。だがもっと良い方法は、複数のプラットフォームにまたがるクリエイターのための会員制システムを作ることだ。

このたび、GMG Ventures(「The Guardian」の親会社)が、コミュニティのメンバーシップを収益化・管理するために設計された、イーサリアムベースのオープンソースプロトコルの開発者であるUnlock(アンロック)に投資を行った。

今回の400万ドル(約4億4500万円)の資金調達ラウンドは、Betaworks、Cygni Labs、GMG Ventures、Metacartel Ventures ChinaなどのVC企業が主導し、初期投資家たちも参加している。

Unlockによれば、そのメンバーシップ / マネタイズソリューションは、アーティスト、ミュージシャン、ゲーム開発者(Decentralandも含まれている)、ライター、Discordコミュニティなどに利用されているという。また、同社のプロトコルを採用している大手メディアブランドとの提携も予定している。

UnlockのCEOであるJulien Genestoux(ジュリアン・ジェネストゥ)氏は「これまでに調達した資金で、Unlockは目標を達成するために、最も完全なオープンソースのプラットフォームになるための成長を続けます」と語る。

ジェネストゥ氏は、Medium(メディウム)が買収したRSSフィードAPIであるSuperfeedr(スーパーフィーダー)を開発した経験を持つ。

2018年に設立されたUnlockは、イーサリアムのブロックチェーンにすべての取引を記録するNFTベースのプロトコルだ。考えられる利用例としては、たとえばWordPressのプラグインを使うことで開発者が会員制 / 購読制のオプションを追加することができたり、コミュニティが作成したShopifyのプラグインを使えば小売業者は自分のウェブサイトにUnlockを利用した購入オプションを追加することができたりする。

Cherry VenturesのThomas Lueke(トーマス・ルーケ)氏は「Unlockが開発するクリエイターコミュニティメンバーシップためのオープンソースプロトコルは、今後数年間でクリエイターがファンと交流し、成長していく方法を再定義するものとなるでしょう」という。「私たちは、この分野での活躍を続けるUnlockの成長を祝えることを楽しみにしていますし、同社に投資できたことをうれしく思っています」。

画像クレジット:Julien Genestoux, Unlock Protocol

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(文:Mike Butcher、翻訳:sako)

Mirantisがクラウドネイティブなデータセンター・アズ・ア・サービス・ソフトウェアを発表

Mirantis(ミランティス)はOpenStackのスタートアップとして始まったクラウドコンピューティングの古参だが、数年前にはコンテナやマイクロサービスやKubernetesといったクラウドネイティブの開発技術への方向転換を開始した。米国時間9月16日、同社が発表したMirantis Flowは、完全な管理をともなうオープンソースのサービス集合で、企業のクラウドネイティブなデータセンター環境の管理を助ける。そのインフラストラクチャはオンプレミスでも、あるいはパブリッククラウドでも、どちらでもよい。

MirantisのCEOで共同創業者のAdrian Ionel(アドリアン・イオネル)氏は「私たちの仕事は顧客に、データセンターやエッジにおけるパブリッククラウドとの相互運用性のある、クラウドツークラウドのエクスペリエンスをお届けすることです」という。

彼の指摘によると、FacebookやNetflix、Appleといった超大手は、ハイブリッドなクラウドネイティブ環境の管理のノウハウを自力で見つけているが、多くの企業はそんな大企業のリソースを欠いている。そこでMirantis Flowは、そういう超大手が持っているものと同じタイプの能力をほどほどの規模の企業に導入することを狙っている。

AmazonやMicrosoft、Googleなど、大きなインフラクラウドのベンダーたちも、まさに同じ問題の解決を目指しているが、しかしイオネル氏によると、それらはあまりオープンでなく、むしろプロプライエタリだ。したがってロックインが生じ、それを今日の大企業は懸命に避けようとしている。

イオネル氏は次のように主張する。「大手のインフラストラクチャベンダーは、ユーザーを彼らのスタックとAPIにロックインします。彼らのベースはオープンソースのスタンダードや技術ではないので、ユーザーは単一のソースにロックインされるが、一方で今日の大企業の多くがマルチクラウド方式で進もうとしています。つまり彼らが欲しいのは、インフラストラクチャの柔軟性です。そこで私たちのやり方では、完全にオープンで柔軟性に富み、ロックインがゼロのオルタナティブを、彼らと同じクラウド体験および同じイノベーションのペースで提供します」。

そのために同社は、オープンソースソリューションのフルスタックを単一のサービスで提供する。そしてイオネル氏は「同じファブリックの一部としてその上に仮想化の層を置く。また、ソフトウェア定義ネットワーキングとソフトウェア定義ストレージ、さらにその上にサービスとしてのDevOpsをともなうCI/CDの技術がある。これによって企業は、ソフトウェア開発のパイプラインの全体を自動化できる」という。

同社はこのサービスを、今日公開したブログ記事で説明している。その主要なサブシステムはMirantis Container CloudとMirantis OpenStack、およびMirantis Kubernetes Engineであり、元々が従来的な仮想マシンのワークロードであれ、あるいはコンテナ化されたワークロードであれ、それをクラウドネイティブのインフラストラクチャへ移行するためのワークロードを、今やすべて利用できる。

VMWareの仮想マシンからこのソリューションへの移行で悩む企業もあると思われるが、しかしIonel氏によると同社は初期の顧客に対して、そういうVMsからMirantisのソリューションへの移行を実装したことがある。彼によると「VMwareのスタンダードからオープンスタンダードへの仮想マシンの変換はものすごく簡単で、どんなアプリケーションやワークロードでも、このインフラストラクチャの上で動かない理由がない。非常に多くの顧客でそれを何度も繰り返し見てきました。今すぐにでも移行したいという人たちにとって、ボトルネックになるようなものは何もありません」。

なお、このソリューションにはハードウェアが含まれていない。それは、フィジカルでもサービスでも自分のハードウェアでよいし、あるいはEquinix(エクイニクス)のようなMirantisのパートナーを使ってもよい。このサービスは月額1万5000ドル(約165万円)もしくは年額18万ドル(約1979万円)で利用でき、Mirantisのソフトウェアスイートの全製品へのアクセスの1000コア/vCPU分のライセンスと、仮想マシンのマイグレーションまたはアプリケーションのオンボーディング20件、そして無制限の24/7サポートが提供される。コントロールプレーンと管理ソフトウェアのライセンスに関しては課金されない。

画像クレジット:Yuichiro Chino/Getty Images

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(文:Ron Miller、翻訳:Hiroshi Iwatani)

Googleが手話認識技術開発で協力、ゲーム感覚で手話を学びろう者への理解を深める「手話タウン」をプレイしてみた

9月23日は「手話言語の国際デー」だ。これは、手話言語(以下、手話)が音声の言語と対等であることを認め、ろう者の人権が保証されることを目的に、国際連合が2017年12月19日に決議したもの。手話について意識を新たにする日となる。

とはいえ、「手話はよくわからない」「やったことがない」「学んだものの試す機会がない」という人も少なくないだろう。

そのような人たちにぜひとも試してもらいたいのが手話学習オンラインゲーム「手話タウン」だ。

手話タウンとは?―日本財団が香港中文大学・関西学院大学・Googleの協力によって開発

手話タウンとは、公益事業をサポートする社会貢献財団「日本財団」が、香港中文大学、関西学院大学、Googleの協力によって開発したウェブブラウザー上でプレイできるゲーム。現在はベータ版だが、手話言語の国際デーに正式公開することを目指してテストや開発が進められている

香港中文大学はプロジェクト全体の日本財団との共同統括、手話言語学における学術的見地からの監修、手話データの収集、ろう者に関する知見の提供を、関西学院大学は日本手話の学習データ収集とろう者に関する知見の提供、Googleはプロジェクトのコンセプト立案、AIによる手話認識技術の研究開発をするといった役割を担う。日本財団は、手話・ろう者についての知見の提供ならびに開発に必要な資金の提供を行っている。

また手話タウンプロジェクトでは、2Dしか認識できない一般的なカメラでも立体的な手話の動きを、上半身、頭、顔、口も含めて認識できる機械学習モデルを開発。日本と香港で手話を日常的に使用しているろう者の手話映像データを収集し、学習させることで、手話学習者が正しく手話を表現できているかの判断を可能にしているという。基盤となっている手話認識技術はTensorFlowを活用し3つの機械学習モデル(PoseNet、Facemesh、ハンドトラッキング)を組み合わせており、ソースコードについてはオープンソースとして公開している。

ウェブカメラ、PCとウェブブラウザー、そして手話を学びたい心があればすぐに始められる

ゲームに必要なのは、ウェブカメラを搭載してネットに接続されているPCとウェブブラウザー、そして手話を学びたいという心だ。アカウントの登録も、課金も必要ない。また、あらかじめ手話を覚えておく必要もない。

手話タウンにAndroidおよびiOSのウェブブラウザーでアクセスしたところ、PC用ブラウザーを利用するようメッセージが表示された

手話タウンにAndroidおよびiOSのウェブブラウザーでアクセスしたところ、PC用ブラウザーを利用するようメッセージが表示された

プレイヤーは手話タウンと呼ばれる架空の町を旅行しながら、少しずつ手話のアイテムを集めていく。例えば、色や服飾小物、食べ物などだ。

学べる手話は、日本手話と香港手話のいずれか。小学生の頃に手話に親しんだ筆者が、ベータ版手話タウンに挑戦してみた。選んだ手話言語は日本語手話だ。

荷づくりからチェックインまで体験

手話タウンにアクセスしたら、まずは表示する言語を選ぼう。日本語、英語、中国語(繁体字)から選べる。

ついで、手話言語を日本語手話と香港手話のいずれかを選ぶ。

ゲームは、出発前の荷づくりからスタートする。アイテムをどんどん選んでいき、荷造りを完成させる。なお、始めると、2つのアイテムを示す「お手本動画」が流れる。どちらかを手話で表現することで、アイテムを「選んで」いける。

2つのお手本動画が同時に流れるので、最初は自分にとってわかりやすいものを選ぼう。「できた」という達成感が重要なのだ

正しく手話を表現できると「手話で表そうとしたのは……?○○?」と表示され、その手話が表すアイテムの“バッジ”を集められる。表現が不明瞭だと「ごめんなさい!どの手話単語か分かりませんでした。」と表示される。スキップすることも、やり直すことも可能だ。

正しく表現できると「手話で表そうとしたのは……?○○?」と表示される。意図したものであれば「はい」を選んで次へ進もう

「腕時計」「ハイヒール」をなかなか表現できず、心が折れそうになる場面も

ゲームは、アイテムのバッジを集めていくことで進んでいくが、途中で次の場面に移動することも可能。もっとも、挑戦中のステップを完成させたほうが達成感を味わえるのは言うまでもない。

荷づくりのステップで集められるアイテムは6つだが、何回もチャレンジすれば、覚えられる手話単語はその倍の12に増やせる

ゲーム内では、手話タウンにあるレストランで食事をし、ホテルにチェックインするところまで体験する。レストランではメイン料理名、食材、飲み物などの手話単語を、ホテルでは喫煙・禁煙室、現地払い、カード払いといった、実際に宿泊する際に必要になる手話単語を覚えられる。

ゲームが進むにつれ、表現が複雑になってくるのだが、何度もお手本動画を確認したり、カメラに向かって表現することでクリアできるようになる。

また、何度もプレイしているうちに、「なぜワインは『3』を表す指で表現するのだろう」「なぜレモンは……」などと疑問が浮かんでくることだろう。能動的に調べることで、「そういうことか」と謎が解け、もっと手話を学びたいと思うようになるかもしれない。

ろう者についてもっと知ることができる工夫も

手話タウンでは、手話単語だけでなく、ろう者の文化を学べる工夫もなされている。場面が進んだときに現れる白いキャラクターをクリックすると、目覚ましのアラームはどうしているのか、ろう者がいたらどのように声がけすればいいかといったプチ情報が表示され、ろう者への理解を深めるのに一役買っている。

白いキャラクターのうち、線が赤く点滅しているものをクリックしてプチ情報を表示できる

ノックの代わりに電気を点けたり消したりする、という目からうろこの情報

各場面でのプチ達成感が、手話を学びたいという意欲をかきたてる

まだベータ版ということもあり、「荷づくり」「食事」「宿泊」の3場面だけだが、各場面をコンプリートしたときに得られるプチ達成感が、手話を学びたいという意欲をかきたてる。

なお、手話は手だけでなく、顔の表情や上半身も使う。そのため上半身全体が収まるよう、カメラとの距離が必要になる。また、AIが表現した手話を認識しやすいよう、プレイするときには柄物より無地に近い服を選んだほうがよいだろう。さらに、手話を表現するときに、それが表す単語を口にすると、口の形も読み取れるため認識率がアップする。

手話タウンにチャレンジする人が増えることで、ろう者への理解が深まり、手話への抵抗感が少ない社会の醸成されることが期待したい。

Diver-Xが寝ながら使う据え置き型VRデバイスHalfDiveの開発発表、3000万円の資金調達も

人が基底状態にいながらにして(つまり布団の中で寝ながら)最大限の行動、体験ができるような世界を目指すというDiver-X(ダイバーエックス)は9月13日、寝ながらの使用に最適化したVRデバイス「HalfDive」(ハーフダイブ)を発表した。2021年11月6日から、クラウドファンディングKickstarterでの支援者募集を行う予定。価格はベーシックモデル(8万円程度)、フルセット(12万円程度)、可変焦点機能対応モデル(40万円程度)を想定している。ハンドコントローラーは9月末にYouTubeで情報公開予定。また同時に、DEEPCOREを引受先とし、シードラウンドにおいて第三者割当増資による3000万円の資金調達実施も発表した。

現在普及しているVRヘッドマウントディスプレイ(VR HMD)は、そのほとんどが装着して動き回ることが想定されているため、小型化・軽量化に重点が置かれている。それに対してHalfDiveは、寝ながら使うことに最適化した据え置き型なので、小型軽量のための性能上の制約を受けない。

主な特徴は次のとおり。

最大134度の視野角と映像美を実現する可変焦点機能(最上位モデル)に対応する独自光学系

フレネルレンズを使用した通常のVR HMDとは異なり、10枚の非球面レンズを組み合わせることで、フレアや映像の歪みをなくし、最大134度の視野角と鮮明な映像を両立。最上位モデルには可変焦点機能も搭載される。

球状の筐体を活かした没入型サウンドシステム

頭全体を覆う球状の筐体に合計4つのスピーカーを配置し、没入感のあるサウンドを提供。

多数の感覚フィードバック

2基のファンによる風フィードバックにより、顔に風を感じさせることで没入感の高いVR体験を提供する。送風で装着者の快適性を保つこともできる。

またワイヤーを用いた力覚フィードバックにより、VR空間内で物に触れる感覚、剣で切った感覚、摩擦感などを表現する。

エキサイターを用いた振動フィードバックでは、モンスターの足音、銃声、環境音などの振動を伝える。

足コントローラーおよびエミュレーションシステムでは、左右の足首の傾きでアバターの動作をエミュレート。寝ていても立っているときと同じ動作表現が行える。

モジュラーおよびオープンソース設計

据え置き型なので、感覚フィードバックモジュール、無線通信モジュールなどの拡張モジュールによる増設が可能。筐体側面には拡張モジュールを接続するためのRJ45端子とねじ穴が存在する。

モジュールの設計や通信プログラムはオープンソース化する予定なので、サードパーティーやユーザーが独自のモジュールを開発できる。これにより「より質の高いVR体験の実現に向けたエコシステムの構築」を目指す。

「布団に入ったまま学校に行きたい、仕事を終わらせたい。誰しも一度は考えた事があると思います」とDiver-Xは話す。さらに「完全据え置き型という時代に逆行した、寝ながらに最適化しているからこその長所を最大限に生かし、これまで小型化軽量化のトレードオフの中で切り捨てられきた多くの機能やインターフェイスを実装し、新たな体験を生み出す」という。

だが、単に楽をするための機器ではなく、想定されるユースケースには医療や介護のための利用法も含まれている。寝たきりの人が社会活動できる機会が広がる可能性がある。

Diver-Xは、慶応義塾大学在学中の迫田大翔氏とコロンビア大学在学中の浅野啓氏が2021年3月に共同創業したスタートアップ。「布団の中に居ながらにして学校にいるのと同等の体験、職場にいるのと同等の生産ができるようになれば、人類のQOLは大きく向上するはず」と彼らは言う。「そこで得られる価値、体験が同じであるならば、人はよりモチベーションが低くとも実行できる手段をとるはずであり、必要なモチベーションが低ければ低いほどより多くの物事に対して働きかけられるようになると仮定するならば、寝ながらという人間にとっての基底状態は、もっとも行動に適した状態である」とのことだ。

仕様

    • 自由度:4.5dof
    • 光学系:合計10枚の非球面レンズを用いた独自の光学系(可変焦点機能に対応)
    • 最大視野角:水平約134度
    • 解像度:片目1600×1440px 両目3200×1440px
    • リフレッシュレート:90Hz以上
    • ダイアル式物理IPD調節:58~82mm
    • オーディオ:4つのスピーカーを用いた没入型サウンドシステム
    • マイク:単一指向性コンデンサマイク
    • コントローラー:両手・足コントローラー
    • トラッキング:LightHouse対応・足コントローラーよるアバター動作エミュレーションシステム
    • カメラ:キーボードオーバーレイシステム
    • インターフェース:DisplayPort 1.2、USB 2.0/3.0、3.5mmオーディオジャック、12V電源、RJ45(I2C:モジュール接続)
    • プラットフォーム:SteamVR完全対応(OpenVR・OpenXR)
    • SDK:Unity(VRchat専用機能あり)、Unreal Engine

オープンソースのバックエンド・アズ・ア・サービスSupabaseが約33億円調達

バックエンド・アズ・ア・サービス(backend-as-a-service)のSupabaseは今週、シリーズAで3000万ドル(約33億円)を調達したことを発表した。

Supabaseはよく、GoogleのFirebaseのオープンソース版だと説明される。Firebaseを知ってる人にはそれでもよいが、そうでない人にとってSupabaseはデベロッパーによるプロジェクトの構築を助けるツールの集まりであり、開発の楽屋裏で行われる大量の仕事( 例:データベースのデプロイ)を自動化して高速化する。

プロジェクトを作成すると、Supabaseは、Postgresデータベース、データベースの変更に応じて自動的に進化(ドキュメント化)するデータベースとのやりとりのためのAPI、一般的なログインプロバイダー(Facebook、Twitter、Google、Appleなど)と親和性のあるユーザー認証システム、画像や動画のアップロードなどを処理するストレージシステム、そしてそれらすべてを監視・管理するためのUIを提供。最新のアプリケーションやサービスを構築するために必要な多くの作業を、数回のクリックで済ませることができる。

Supabaseはホビーで使う(あるいは試用する)のは無料だが、大きなデータベースやデータのバックアップなどが必要になれは、月額の利用料金は1プロジェクトにつき25ドル(約2750円)からとなる。デプロイを自分で行って¥もよいが、面倒な作業が多いし、今のところ管理用のUIは提供されない。

2020年12月の600万ドル(約6億6000万円)から数えると、今度のシリーズAはかなり早い。同社によると、このラウンドは主にCoatueがリードし、一部はGitHubの共同創業者であるTom Preston-Werner(トム・プレストン-ウェルナー)氏や、PagerDutyの共同創業者Alex Solomon(アレックス・ソロモン)氏、Dockerの共同創業者Solomon Hykes(ソロモン・ハイクス)氏などの、新たに参加した高名なエンジェル投資家たちが投資した。

関連記事:Firebaseなどのオープンソース代替製品を提供するSupabaseがモバイル開発環境向けに6.2億円調達

Supabaseの共同創業者であるPaul Copplestone(ポール・コプルストーン)氏によると、チームは現在24名で、世界中に散らばっている。「うちは最初からリモートだよ」と氏はいう。

その理由は2つある。パンデミックが広がり始めたときに同社の成長が始まった。そして同社は主に、Supabaseを構成しているツールを作って寄与、貢献している人たちを雇用している。彼らがすでに良い仕事をしているときに、わざわざ引っ越しをしてオフィスにきてもらう必要はない(Supabaseの本社はシンガポール)。

「私たちはおそらく製品で6種類ほどのツールを使っています。そしてそれらの1つ1つに、リードメンテナーがいます。その場合、オープンソースのコントリビューターがいれば、世界のどこに住んでいてもその人にお願いしています」とコプルストーン氏はいう。

Supabaseは、Y Combinatorの2020年夏を卒業したが、実はこの学期からYCのクラスは全員がリモートになった。それでも大人気で、夏季は200社ほどが参加した。それだけ多いと目立つのも難しいが、でもSupabaseは、最初からあちこちで話題になっていた。

関連記事:Y Combinatorが2020年夏季からアクセラレータークラスを全面的にリモートへ移行

Supabaseのバックエンドは、こんな画面で立ち上がる。

画像クレジット:Supabase

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(文:Greg Kumparak、翻訳:Hiroshi Iwatani)

オープンNDRプラットフォームのCorelightがネットワーク防御製品を強化するため約82.4億円調達

業界初のオープンNDR(Network Detection and Response、ネットワーク脅威検知・対応)プラットフォームの提供を謳う、サンフランシスコを拠点とするスタートアップのCorelight(コアライト)は、Energy Impact Partnersが主導するシリーズDラウンドで7500万ドル(約82億4000万円)を調達した。

今回のラウンドは、Capital One Ventures、Crowdstrike Falcon Fund、Gaingelsからの戦略的投資も含まれており、2019年10月の5000万ドル(約55億円)のシリーズC、2018年9月の2500万ドル(約27億5000万円)のシリーズB、2017年7月の920万ドル(約10億1000万円)のシリーズAを含め、Corelightの調達総額は1億6000万ドル(約175億7500万円)に達した。

ここ数年で十分な資金を調達してきたように見える同社だが、まだイグジットを計画しているわけではない。CorelightのBrian Dye(ブライアン・ダイ)CEOはTechCrunchに対し、Corelightの市場機会とパフォーマンス(このスタートアップは、規模的に最も急速に成長しているNDRプレーヤーであると主張している)を考慮して、成長のための投資を計画しており、将来的に追加の資本を調達する予定だと述べている。

ダイ氏は「株式公開の時期を予測することは常に困難であり、短期的には非公開市場が魅力的だと考えています。そのため、今後数年間は非公開の状態を維持し、その後の市場状況を見て次のステップを決めたいと考えています」と述べ、Corelightは今回の投資を、グローバル市場での存在感を高め、新しいデータ・クラウドベースサービスを開発するために使用する予定であると付け加えた。

「市場開拓に加えて、当社が提供するインサイトが業界をリードし続け、あらゆるタイプのお客様に手軽に利用していただけるように投資していきます」とも。

FireEye(ファイア・アイ)やSTG傘下のMcAfee(マカフィー)などと競合するCorelightは、2013年にカリフォルニア大学バークレー校のコンピュータサイエンスの教授であるVern Paxson(バーン・パクソン)博士が、Robin Sommer(ロビン・ソマー)氏およびSeth Hall(セス・ホール)氏と共同で、Zeek(旧BRO)と呼ばれるオープンソースフレームワークの上にネットワーク可視性ソリューションを構築するために設立された。

パクソン博士は、ローレンス・バークレー国立研究所(LBNL)に勤務していた1995年にZeekの開発を開始した。このソフトウェアは現在、ネットワークセキュリティ監視とネットワークトラフィック分析の両方において業界標準として広く認められており、米国エネルギー省、米国政府のさまざまな機関、インディアナ大学、オハイオ州立大学、スタンフォード大学などの研究系大学を含む、世界中の何千もの組織で導入されている。

画像クレジット:Joe Raedle / Getty Images

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(文:Carly Page、翻訳:Aya Nakazato)

LinkedInのメタデータツールDataHubを商用化するAcryl Dataが約10億円を調達しステルスを脱却

2019年、LinkedInのエンジニアリングチームは「DataHub」を発表した。同社の膨大なデータコレクションからインサイトを整理、検索、発見するのに役立つように構築されたメタデータツールだ。LinkedInは2020年にこれをオープンソース化している。そしてこのたび、DataHubの開発者の1人と、Airbnbのデータポータルの開発に貢献した元上級エンジニアが共同で設立したスタートアップがステルスを脱し、LinkedInなどの支援を受けて、DataHubプラットフォームをその最新チャプターとなる商用化へと導こうとしている。

Acryl Dataと名付けられた同社は米国時間6月24日、8VCが主導し、LinkedInとInsightも参加した900万ドル(約10億円)でローンチした。企業が自社のビッグデータのニーズに合わせてこのツールを利用できるように支援していく。

Acryl Dataの推進力は、ビッグデータが、運用に大規模なデジタルコンポーネントを有する組織にインパクトを与える難しい課題を抱えているという、顕著な事実から生み出されている。具体的には、ビッグデータの組織化や理解を促進し、断片化されたビッグデータの宝庫(SnowflakeやDatabricks、Lookerなどの複数の場所から取得されたり、そこで利用されている情報を含む)を最大限に活用できるようにすることだ。従来、大手テック企業はこの問題に対処する上でより革新的な存在となっており、その多くは自社の技術をオープンソース化して他の企業が利用できるようにしている。

Acrylの創業者たちにとってのブレークスルーは、メタデータがビッグデータ情報を整理するための鍵を握ると認識したことを契機に訪れた。同社を立ち上げる前、まだ彼らがそれぞれの大手テック企業で働いていた頃のことだ。

「メタデータに関して興味深い側面は、それが事実上ビッグデータにおける解決すべき問題になっていることです」と、LinkedInでCEOを務め、Swaroup Jagadish(スワロウプ・ジャガディシュ)氏(AirbnbのCTO出身)と共同で同社を設立したShirshanka Das(シャルシャンカ・ダス)氏は語る。「つまり、私たちが保有するデータインフラのDNAはすべて、大規模なデータコレクションの構築、ストリーミング、インデックス作成、検索といった点で、現代の企業の要求に実際に対応できるメタデータ管理ソリューションを必要としているのです。それこそが当社が提供する、解決の鍵となる妙策であると考えています。私たちは、データインフラを適切に運用するためのベストプラクティスを取り入れたメタデータプラットフォームを構築し、それをメタデータインフラの運用に適用することを可能にしました」。

オープンソースプロジェクトとして、DataHubは大きな牽引力を得ている。LinkedIn自身に加えて、Expedia、Saxo Bank、Klarnaをはじめとする多くの企業が、本質的には一般化されたメタデータ検索および発見ツールであるこのフレームワークを利用しており、独自のメタデータグラフを構築して、さまざまなデータエンティティを相互接続している。プロジェクト全体でGitHubのスターは3200人を超え、100人以上のコントリビューターがいる。

Acryl Dataは、他のオープンソースの商用化の取り組みと同様、フレームワークのスケールアップを容易にし、より多くのユースケースに適用できるようなツールセットの構築に着手している。特に、これらの実装を独自に構築するリソースが不足している企業に向けたものだ。その第1弾は、Airbnbのデータポータルから得た設計情報に基づくデータカタログになるという。LinkedInは、今後の製品に関して、より広範なオープンソースコミュニティに加えて、Acryl Dataとの協業を進めていく予定だ。

LinkedInの最高データ責任者であるIgor Perisic(イゴール・ペリシク)氏は、声明の中で次のように述べている。「LinkedInの世界経済に対する独自の見解は、データ駆動型のインサイトとAIを活用した製品を通じて、世界中の何億人もの人々の経済的成果を改善する機会をもたらします。適切なデータを発見して、研究者やエンジニアが毎日使用する何万もの派生データセットをナビゲートし、それらを適切に管理するために、DataHubの存在は欠かせないものです。Acryl Dataと提携して、DataHubをさらに進化させていくことに、私たちは大きな期待を寄せています」。

これは意義深い好機といえるだろう。同じ分野の競合であるCollibraは、2020年に23億ドル(約2540億円)の評価額でラウンドを行った。別の競合、Alationは2021年6月初めに12億ドル(約13330億円)と評価された。しかし、イノベーションの余地は十分に残されており、この分野で最も基礎的なツールを開発した人財がこの課題に取り組むために起業家として留まっているのを見るのは、とても興味深いことだ。

「最新のデータスタックにおいては、メタデータの管理方法を根本的に見直す必要があります」と、Insight PartnersのMDであるGeorge Mathew(ジョージ・マシュー)氏は声明の中で語っている。「次世代のリアルタイム・メタデータ・プラットフォームが求められています。Acryl Dataは、DataHubでの先駆的な活動をベースに、この変革をリードしていく最高のチームです」。

画像クレジット:Who_I_am / Getty Images

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(文:Ingrid Lunden、翻訳:Dragonfly)

ZOZO研究所が分布シフト研究促進に向けファッションの流行変化を検証するデータセット・実装基盤をオープンソースで公開

ZOZO研究所が分布シフト研究促進に向けファッションの流行変化を検証するデータセット・実装基盤をオープンソースとして公開

ZOZOテクノロジーズの研究開発組織「ZOZO研究所」は9月2日、同所研究員が研究において使用している大規模データセット「Shift15M」および実装基盤をオープンソースとして公開したと発表した。データセットおよび実用基盤をGitHub上に公開し、データセットの概要説明を同研究所上に掲載している。

また、同データセットを使用した研究結果をまとめた研究論文「SHIFT15M: Multiobjective Large-Scale Fashion Dataset with Distributional Shifts」をarXivに公開している。

ZOZO研究所は、「ファッションを数値化する」をミッションに掲げるZOZOグループの研究機関。ZOZOグループが保有するファッションに関する情報資産を基に、ファッションを科学的に解明するための研究開発を行っている。

同データセットは、ZOZO研究所が2020年公開した「Open Bandit Dataset」に続くオープンデータプロジェクトの第2弾。同データセットを公開することで、データの分布シフトが起こることによって生じる新たな課題を見出し、解決策を探るための研究開発を促進する一助となることを目指しているという。

Shift15M

Shift15Mは、ファッションアプリ「IQON」に投稿されたコーディネートを基に構成された大規模データセット(IQONは2020年4月にサービスを終了。公開データは商品やユーザーの特定が不可能なよう十分に匿名化しており、利用規約とプライバシーに配慮している)。

同データセットは、IQONのサービス提供期間である2010年から2020年までに投稿されたコーディネート約255万件のほか、これらのコーディネートを構成する約1500万件のアイテムに関する特徴量、アイテムカテゴリに関するデータやコーディネート投稿への「いいね」数などの関連データも含む。

データセットの詳細

  • アイテムの特徴量
  • コーディネートに含まれるアイテムの情報
  • アイテムやコーディネートの付加情報(投稿日時、「いいね」の数、ジャンル・カテゴリー、統計情報、学習のための教師信号など人間が付与したラベル)

データに収録されるアイテム数の詳細

  • コーディネートの数:2,555,147
  • コーディネートを構成するアイテム数(重複あり):15,218,721
  • コーディネートを構成するアイテム数(重複なし):2,335,598

あわせて公開する実装基盤では、コーディネートデータの年ごとに異なる傾向を認識し、その変化によって生じるデータ分布のシフトを再現実験で確認することが可能という。これによって、年々変化するファッションの流行をより正確にとらえ、研究のさらなる発展に役立てられるとしている。また、回帰問題、分類問題、集合マッチングなど、データ分布のシフトが生じる条件のもとで様々なタスクを検証するためのコードが整備されている。

分布シフト研究の発展を支える新たな研究基盤

ZOZO研究所による研究開発の1つに、ファッションの流行が変化しても、継続的に認識精度を高く保つことができるAI技術の実現を目的とするものがあるという。

ファッションに関連するデータは、流行の変化による影響を受け、分布シフトと呼ばれる数理的現象が生じると考えられている。分布シフトは、流行・時間などの変化に伴って入力データの分布が変化することで生じ、ファッションに限らず多くの分野に共通して現れる現象とされる。この分布シフトによって、AIの認識精度が低下することから、近年注目を集めているそうだ。ZOZO研究所が分布シフト研究促進に向けファッションの流行変化を検証するデータセット・実装基盤をオープンソースとして公開

ただ分布シフトの検証は、AI技術の実用性にかかわる重要なテーマである一方、検証に用いる実用的なデータセットの不足により、学術界における当該分野の研究の進展はこれまで制限されてきたという。

そこで、分布シフト研究の発展を支える新たな研究基盤として、ZOZO研究所が保有する実データで構成された大規模データセット「Shift15M」と実装基盤を公開することを決定した。

同データセットと実装基盤は、ファッションに限らず幅広い分野での活用が可能としている。分布シフトの再現実験と典型的なタスクにおける効果検証や比較検証など、目的に合わせて利用できる。

機械学習のデベロッパーツールを開発するExplosionはオープンソースと商用プロダクトを併用

オープンソースの機械学習ライブラリと一連の商用のデベロッパーツールを併用してサービスを提供するExplosionは米国時間9月2日、1億2000万ドル(約131億7000万円)の評価額による600万ドル(約6億6000万円)のシリーズAを発表した。SignalFireはこのラウンドをリードし、同社は投資額は評価額の5%に相当するという。

この投資にともない、SignalFireのOana Olteanu(オアナ・オルテアヌ)氏が取締役会に加わる。なおこのラウンドには、同じ評価額による1200万ドル(約13億2000万円)の追加投資の保証が含まれている。

Explosionの共同創業者でCEOのInes Montani(イネス・モンタニ)氏は、次のように語っている。「基本的にExplosionはソフトウェア企業であり、AIと機械学習と自然言語処理のデベロッパーツールを開発しています。目標はデベロッパーの生産性を上げ、自然言語処理をもっと利用していただき、大量のテキストを理解できるように機械学習のモデルを訓練し、それによって工程の一部を自動化していただくことです」。

同社が発足したのは2016年で、モンタニ氏がベルリンで共同創業者のMatthew Honniba(マシュー・ホニバ)氏に会ったときだ。そのときモンタニ氏はオープンソースの機械学習ライブラリspaCyを書いていた。その後、そのオープンソースのプロジェクトは4000万回以上ダウンロードされた。

2017年、同社は機械学習のモデルのためにデータを生成する商用プロダクトProdigyを加えた。モンタニ氏は次のように語っている。「機械学習はコード、プラス、データであるため、その技術を有効に利用するためには、常にモデルを訓練してカスタムのシステムを作らなければなりません。なぜなら、最も価値があるものは、ユーザーにとって固有の問題(一般性汎用性のない)と、そのビジネスそして、何を見つけたいのかということです。そのため訓練用のデータを作って機械学習のモデルを訓練するという部分には、ほとんど注意を払いません」。

今回資金を調達した最大の理由が、Prodigy Teamsと呼ばれる同社の次のプロダクトだ。モンタニ氏によると「Prodigy Teamsはユーザーに対しホスティングされるサービスで、ユーザー管理とコラボレーションの機能をProdigyに追加します。しかもそれをセキュリティ完備のクラウドで動かすため、Prodigyが好まれている最大の理由、すなわちデータの守秘が損なわれず、いかなるデータもサーバーがそれを見る必要性がありません」。そのためには、データをプライベートクラウドにある顧客のプライベートクラスターに置き、それからパブリックなクラウドサービスにあるProdigy Teamの管理機能を使っていく。

今日では、MicrosoftやBayerなどおよそ500社がProdigyを利用し、また数百万のオープンソースユーザーによる大きなコミュニティもある。Explosionわずか6名の初期の社員たちで、これらのシステムをすべて開発したが、年内には20名に増員したいとのこと。

ダイバーシティに関して、モンタニ氏の意見では雇用に際してこだわり過ぎると、それ自体が問題になる。「何も考えずに結果的にダイバーシティが実現するのはいいけど、義務感に駆られてダイバーシティを気にするようになると、それ自体が問題になる」と彼女はいう。

「現在、自分の会社に20代の白人男性が50名いて、そこにいわゆるダイバーシティのために20代の非白人男性を入れようとすると、なかなかうまくいかずそれ自体が問題になります。しかし私たちの場合、いい人を雇おうとしているだけなので、いい人だけを採用していたら自然にダイバーシティになる。スタートアップの教科書のようなものを気にし始めたら、いろいろなことで制約にぶつかる」。

彼女によると、彼女自身はこれまで、出来合いの教科書のようなものを気にしたことがない。「資金を調達するのも今回が初めてだし、チームは自然に成長した。外部資金を導入するまでは、会社の利益と独立性だけを気にしていた」と彼女は言っている。

しかしお金以上に問題になるのが、モンタニ氏によると、オープンソースに対する投資家の理解だ。会社のあらゆる部分を大きくできるだけの資本を持っているだけでなく、そのビジネスのオープンソースの側面を理解できる投資家を見つける必要がある。「オープンソースはユーザーと顧客と従業員のコミュニティです。彼らは今生きてる人間であり、スタートアップというゲームの『歩(ふ)』ではなく、しかもゲームですらありません。リアルな人間のリアルな営みです」とモンタニ氏はいう。

「彼らは単なる私の手足ではない。だから資本と引き換えに少量の株を売ったからといって、オープンソースは依然として私たちの企業の核であり、妥協できない部分です」とモンタニ氏は言っている。

画像クレジット:Usis/Getty Images

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(文:Ron Miller、翻訳:Hiroshi Iwatani)

rinnaが日本語に特化したGPT-2とBERTの事前学習モデルを開発しオープンソース化

rinnaが日本語に特化したGPT-2とBERTの事前学習モデルを開発しオープンソース化

rinnaは8月25日、日本語に特化したGPT-2とBERTの事前学習モデルとその学習を再現するためのソースコードを、GitHubおよびNLPモデルライブラリーHuggingFaceにオープンソースソフトウェア(OSS)として公開したと発表した。ライセンスはMIT。製品開発のための実験過程で開発したもので、日本語の自然言語処理(NLP)の研究・開発コミュニティに貢献するためという。

rinnaは、2021年4月に日本語に特化した中規模サイズのGPT-2(GPT2-medium)をOSS化しており、今回はモデルサイズが異なる2つのGPT-2(GPT2-small、GPT2-xsmall)を公開したことになる。モデルサイズの違いはパフォーマンスとコストのトレードオフとしており、研究者や開発者は最善のモデル選択可能となるという。また、GPT2-mediumも、学習データと学習時間を増やし、より高性能なモデルへとアップデートしているそうだ。

またGPT-2に加え、BERTを改良したモデルであるRoBERTaも公開した。 GPT-2とBERTの公開により利用者は目的に合わせたモデル選択や、追加学習により多様なタスクへの応用が可能となる。

GPT-2は、予測したい単語より前の単語を考慮して次の単語を予測する言語モデルとなっており、BERTについては、予測したい単語の前の単語だけでなく後の単語も考慮して予測を行う。例えばGPT-2では以下図のように「吾輩」「は」を考慮して「猫」を予測するが、BERTでは前の単語「吾輩」「は」と後ろの単語「で」「ある」を考慮して「猫」を予測する。

rinnaが日本語に特化したGPT-2とBERTの事前学習モデルを開発しオープンソース化

また、今回公開のRoBERTaはBERTを改良したモデルにあたり、BERTより高い性能が報告されているという。RoBERTaを用いて、「4年に1度、[MASK]は開催される。」の[MASK]部分を予測すると、オリンピックやワールドカップといった4年に1度開催されるイベントが上位に予測される。

rinnaが日本語に特化したGPT-2とBERTの事前学習モデルを開発しオープンソース化

文章生成タスクにおいては、文章を1単語ずつ順次予測するGPT-2が用いられるものの、文章分類タスクなどの文章全体を考慮したタスクにおいては、BERTが利用される。文章分類タスクの他にも、質問応答タスクや固有表現認識タスクなど多様なタスクに適用することが可能という。

rinnaの研究チームが開発する大規模な事前学習モデルは、すでに同社製品で広く利用しているという。同社は今後も、AIに関する研究を続け、高性能な製品を開発するとともに、研究・開発コミュニティに貢献するために、研究成果を公開していく予定としている。他社との協業も進めることで、AIの社会実装の拡大を目指す。

rinnaの日本語事前学習モデルの特徴

    • 学習データとして、日本語CC-100と日本語Wikipediaの計75GBのオープンソースデータを使用
    • 8つのNVIDIA Tesla V100 GPUを用いて、75GBの日本語テキストを最大45日間かけ学習。その結果、すべてのモデルにおいて、十分に学習された汎用性があるモデルとなっているという。学習された事前学習モデルはHuggingFaceにおいてMITライセンスで公開
    • 事前学習モデルの学習に用いたソースコードはGitHubにMITライセンスで公開。利用者は、日本語CC-100とWikipediaのオープンソースデータを用いることで、自分のマシンでrinnaによる結果を再現可能
    • GPT-2ではモデルサイズが異なるGPT2-medium(3.36億パラメータ)、GPT2-small (1.10億パラメータ)、GPT2-xsmall (0.37億パラメータ)の3つのモデルを公開。またBERTを改良したRoBERTa (1.10億パラメータ)も公開
    • 利用者の目的に沿った多様なタスク(ドメインに特化した文章生成、文章分類、質問応答など)について、rinnaが公開した事前学習モデルを用いた追加学習により実現できる

米国政府によるITオープンソースソフトウェア採用への取り組み

編集部注:著者のVenky Adivi(ベンキー・アディビー)氏は、Ubuntu(ウブントゥ)の配布元であるCanonical(カノニカル)の戦略獲得および提案マネジメントディレクター

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近年、民間企業たちは、オープンソースのソフトウェアや開発手法を選び、プロプライエタリソフトウェア利用を避けている。それには理由がある。オープンソースを採用することで、新しいコードを書く代わりに、自由に利用できるコンポーネントを使うことができるので、コストと開発時間を削減できる。これにより、新しいアプリケーションを迅速に展開することが可能になり、ベンダーロックインを排除することができる。

しかし、米国連邦政府によるオープンソースの採用はそれほどは進んで来なかった。何百万人もの人々にサービスを提供し膨大な量の機密データの管理責任を担うために、多くの政府機関が大規模なレガシーITインフラならびにシステムを採用しているという事実が、変革への取り組みを難しいものとしてきたのだ。米国政府は毎年莫大なIT投資を行っているが、各省庁は基本的に独自の組織として活動しているため、意思決定はたとえば大手銀行などとは比較にならないほど分散して行われている。

近年、政府はよりオープンな方向に向かっていくつかの動きを見せているものの、連邦政府のITシステムのためのオープンソースの話は、現実というよりも可能性の話であることが多かった。

しかし、この状況は変わりつつあり、政府もオープンソース採用への転換点を迎えつつあることを示す兆候をいくつかみてとることができる。デジタルに精通した市民に対してサービスを提供できるアプリケーションの作成コストは上昇し続けているが、各省庁にとって、納税者からの税金を節約しながらサービスを向上させる方法を見つけるための予算は限られている。

経済的な観点からもオープンソースの役割は大きくなっているが、他にもさまざまなメリットがある。オープンソースソフトウェアは、ソースコードが公開されているため、開発チーム以外の人による継続的なレビューが行われ、ソフトウェアの信頼性やセキュリティの向上が図られる他、コードを共有して他の機関で再利用することも容易となる。

以下では、米国政府がますますオープンソースに向かっていることを示す5つの兆候を紹介する。

オープンソースイノベーションのための専用リソースの拡充

政府機関によるオープンソースへの取り組みを支援するために、2つの取り組みが行われている。

米連邦政府一般調達局(GSA、General Services Administration)の中に設けられた18Fは、他の政府機関がデジタルサービスを構築する際のコンサルティングを行っているが、熱心なオープンソース支援者でもある。その活動の中には、連邦選挙委員会(FEC、Federal Election Commission)のデータにアクセスするための新しいアプリケーションの開発や、GSAの委託業者採用プロセスを改善するためのソフトウェアも含まれている。

18F(その名称の由来はGSA本部の住所である1800 F St.を略したもの)は、民間企業におけるオープンソースの勃興と勢いに拍車をかけている草の根的な精神を反映している。同グループのウェブサイトには「私たちが作成したコードは、パブリックドメインとして一般に公開されています」と記載されている。

今から5年前の8月に、オバマ政権は新しい連邦ソースコードポリシーを導入した。それはすべての機関に対して、オープンソースのアプローチを採用し、ソースコード資産を生み出し、書かれたコードの少なくとも20%をオープンソースとして公開することを求めるものだった。また政権はCode.govも立ち上げて、他の省庁がすでに使用しているオープンソースソリューションを各省庁が探せるようにした。

しかし、その結果は玉石混交である。Code.govの追跡調査によれば、ほとんどの省庁が連邦政府の方針に沿った対応をしているものの、多くの省庁では実装上の課題が残されている。また、Code.govのスタッフが行ったレポートによれば、オープンソースを他の機関よりも積極的に取り入れている機関もあるという。

それでも、Code.govによれば、連邦政府におけるオープンソースの成長は、当初の予想よりもはるかに進んでいるという。

新政権からの働きかけ

2021年3月初旬にバイデン大統領が署名した、1兆9000億ドル(約208兆7000億円)のパンデミック対策法案の「米国救済計画法(American Rescue Plan)」には、連邦政府の新規技術プロジェクトに資金を提供するために、GSAから「技術革新基金(Technology Modernization Fund)」として90億ドル(約9883億8000万円)が計上されていた。1月にホワイトハウスは、たとえば最近のSolarWinds(ソーラーウインズ)事件のような情報漏えいに対処するために、連邦政府のITインフラをアップグレードすることを「待ったなしの国家安全保障上の緊急課題」であると発表した

これらの取り組みの多くが、オープンソースソフトウェアを基盤にすると考えてよいだろう。なぜならホワイトハウスのテクノロジーディレクターであるDavid Recordon(デビッド・レコードン)氏は、長年にわたってオープンソースの支持者であり、かつてはFacebookのオープンソースプロジェクトを率いていたことがあるからだ。

スキル環境の変化

キャリアの大半をレガシーシステムとともに過ごしてきた連邦政府のIT職員が退職し始めたが、その後継者はオープンソースの世界で育ち、それに慣れ親しんだ若い世代だ。

Linux Foundation(リナックス財団)の調査によれば、民間企業の採用担当者の約81%が、オープンソースの人材を採用することが優先事項であり、資格を持つプロフェッショナルを求める傾向がこれまで以上に強くなっていると回答している。オープンソースの普及を支える人材の必要性を認識している公共部門が、この傾向を反映するようになってきているのは間違いない。

ベンダーのより強力な役割

適切な商用オープンソースベンダーと提携することで、政府機関はインフラコストを削減し、アプリケーションをより効率的に管理することができる。例えば、FISMA(Federal Security Modernization Act、連邦情報セキュリティマネジメント法)、FIPS(Federal Information Processing Standards、連邦情報処理標準)、FedRamp(Federal Risk and Authorization Management Program、米国連邦リスク承認管理プログラム)などのポリシーで定められたセキュリティ要件への対応は、ベンダーが大きく先行しており、コンプライアンスへの対応も容易になっている。

さらに、ベンダーの中には強力なインフラ自動化ツールや手厚いサポートパッケージを提供しているところもあるため、連邦政府機関がオープンソース戦略を加速する際に単独で対応する必要はない。UbuntuのようなLinuxディストリビューションは、ノートブック/ デスクトップからクラウド、そしてエッジに至るまで、パブリッククラウド、コンテナ、物理 / 仮想インフラストラクチャに対して一貫した開発者体験を提供している。

これにより、アプリケーション開発は、24時間365日の電話およびウェブサポートを含む十分なサポート体制を得られるようになっており、ウェブポータル、ナレッジベース、または電話を介して世界クラスの企業サポートチームにアクセスすることができる。

パンデミック効果

新型コロナウイルスによって在宅勤務者の増加や市民のオンラインサービスへの要求が増大したことで、連邦政府の大部分がデジタルゲームの向上を迫られている。オープンソースを使うことで、レガシーアプリケーションをクラウドに移行したり、新しいアプリケーションをより迅速に開発したり、ITインフラを急速に変化する需要に適応させることができる。

こうした兆候が示しているように、連邦政府はオープンソースの採用に向けて、単なる話題から実際の行動へと急速に移行しようとしている。

勝者は誰かって?もちろん全員だ!

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(文:Venky Adivi、翻訳:sako)

Solo.ioがそのエンタープライズプラットフォームにクラウドネイティブAPIゲートウェイとサービスメッシュを統合

最新のクラウドネイティブエンタープライズアプリケーションが必要とする、すべてのサービスやマイクロサービスに接続するのは複雑な作業かもしれない。それこそが、スタートアップのSolo.io(ソロアイオー)がGloo Mesh Enterprise(グルーメッシュエンタープライズ)プラットフォームの新しいリリースで、破壊的に変革しようとしている分野だ。

マサチューセッツ州ケンブリッジに拠点を置くSoloは、創業以来、サービスメッシュと呼ばれるコンセプトに重点を置いてきた。サービスメッシュは、異なるコンポーネントを自動化された最適なアプローチで接続する。これはしばしばKubernetes(クバネテス)によるクラウドネイティブ環境の中で提供される。

Soloの創業者でCEOであるIdit Levine(イディット・レバイン)氏がTechCrunchに説明したところによれば、2017年に会社を立ち上げた当初から、サービスメッシュのコンセプトとその必要性が市場に理解されるまでには数年かかるかもしれないと考えていたという。そのため彼女の会社は、異なるデータソースやサービスであるAPIを開発者が接続できるようにするAPIゲートウェイ技術も構築してきたのだ。

これまでは、このAPIと、SoloGloo Mesh Enterpriseのサービスメッシュのコンポーネントは別の技術であり、構成や制御も異なっていた。それが今では、APIとサービスメッシュの両方の機能が統合された、統一されたサービスに変わりつつある。この統合された機能により、Kubernetes上で動作するクラウド上のあらゆるサービスのセットアップと設定が容易になるはずだ。

Gloo Meshという名で知られるSoloのサービスメッシュは、もともとGoogleが作成したオープンソースのIstio (イスティオ)プロジェクトをベースにしている。またAPI製品はGloo Edge(グルーエッジ)と呼ばれ、オープンソースの Envoy(エンボイ)プロジェクトを利用しているが、このプロジェクトはもともとライドシェア企業のLyft(リフト)が作成したものだ。レバイン氏は、現在彼女のチームがIstioのプラグインアーキテクチャを使用して、最適化されたアプローチでEnvoyと接続していると説明している。

関連記事:サービスメッシュIstioがバージョン1.0に到達、マイクロサービスアーキテクチャの成熟を推進

レバイン氏は、多くのユーザーがAPIゲートウェイから始めて、サービスメッシュの利用へと拡大していると指摘する。今回のGloo Mesh Enterpriseのアップデートにより、SoloはサービスメッシュとAPIマネジメントの両市場で、競合他社との差別化を図ることができるようになり、顧客の導入がさらに加速することを期待していいる。

サービスメッシュの分野はまだ始まったばかりだが、たとえばライバルTetrate(テトレート)はより成熟したAPIゲートウェイ技術を提供している。またAPI管理の分野には、7100万ドル(約78億円)の資金を調達した、Kong(コング)のようなライバルがいる。2016年にGoogleはAPI ベンダーの Apigee(アピジー)を6億2500万ドル(約687億2000万円)で買収し、それ以来数年をかけてその技術の拡張を続けてきた。その中には2021年2月に発表されたApigee X(アピジーエックス)プラットフォームも含まれている。

関連記事:Google Cloudが次世代API管理プラットフォーム「Apigee X」を発表

API管理のためのGloo EdgeをGloo Mesh Enterpriseに統合したことで、SoloがAPI技術のすべてのベースをカバーできたわけではない。Gloo Edgeは、現在最も一般的なRESTベースのAPIをサポートしているが、最近徐々に存在感を増しているGraphQL(グラフキューエル) API規格には対応していない。レバイン氏は、SoloプラットフォームのためのGraphQLの発表については、これからに「期待していてください」と語った。

Soloはこれまで2回のラウンドなどから合計3650万ドル(約40億1000万円)を調達している。2018年には1100万ドル(約12億円)のシリーズAを、2020年10月には2300万ドル(約25億3000万円)のシリーズBを発表している。RedpointやTrue Venturesなどが同社の投資家として名を連ねている。

画像クレジット:Laurence Mouton/Getty Images

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(文: Sean Michael Kerner、翻訳:sako)