今週、私はPlayStationの研究開発上級ディレクター、Richard MarksからProject Morpheusと呼ばれるソニーのバーチャル・リアリティー・ヘッドセットのデモを見せてもらった。
デモは2回あり、最初のパートはヘッドセットの能力の概要がわかるイントロだった。表示された情景を見回すと、頭の動きを検知して情景も動く。またDualShock 4コントローラーのモーション・センサーとタッチパッドを使った入力を試した。ここではPlayStationのキュートなロボットたちを操作した。
ソニーのVRで優れているのは位置対応オーディオ機能だ。ゲーム内で音の出るアイテム、たとえば携帯電話を動かすと、ヘッドフォンから出る音がそれに応じて動く。
Sony clearly understand the importance of sound when immersing a player in a scene.
2番目のデモは、伝統的なゲーム形式だった。最初のシーンではブロートーチを持った恐ろしげな男が出てきて脅し文句を言う。どうやら薄暗いガレージに閉じ込められているらしい。つづいてフラッシュバック・シーンになり、PlayStation Moveコントローラー(Wiiコントローラーに似ているが、PS4のカメラが正確に位置をトラッキングできるよう上部に明るい色のランプがついている)を握って古風なデスクの引き出しを開けるとピストルと弾倉がある。ちょっとしたパズルを解いてピストルをゲットすると、シーンは一転してアーケードの一人称シューティング・ゲームになる。私が今まで体験した中で最高に激しく、興奮させられるゲームだった。
このゲームではつっ立っていると敵の弾丸に当たりそうになる。私はデスクの陰に隠れた。普通のゲームならコントローラーを操作するところだが、私は中腰に伸び上がってデスクの上に顔を出して敵を確認した。ピストルの狙いをつけるクロスヘアは表示されない。その代わり、手にしたピストルのサイトを使って狙う。
ライバルのVRヘッドセットが強力なコンピュータや表示のためのスマートフォンを必要とするのに対して、ソニーのヘッドセットはPS4で駆動される。最新のPlayStation は基本的に2013年ごろの中位のゲーム・パソコンと同等の能力だから、パフォーマンスに何か問題が出るだろうと私は予想していた。Oculus Dev Kitも含めて、VRヘッドセットはPlay Stationに接続した場合より、GPUを搭載したパソコンに接続した場合の方がはっきり速かった。VRヘッドセットでは頭の位置のトラッキングにレンダリングが追いつかなかったり、フレーム落ちしたりすると船酔いのような吐き気のもとになる。
The headset is bulky, but distributes its weight comfortably around the top of your head. You can also use any headphones you’d like.
しかし、VRシーンのサイズを小さくし、照明も巧みにレンダリングの負担を抑えるようにデザインされているせいで、PS4のVR体験は非常に快適だった。他のVRヘッドセットでは装着者が見ている情景を他の人が見ることができなかったり、あるいはステレオ視のための左右分割画像をそのまま表示したりするのに対してソニーはPS4が接続されたテレビにフルスクリーンで通常のゲーム同様に表示する。
最初のデモは毎秒120フレームでレンダリングされている。これは私が見た他のVRデモに比べて格段に高速だ。そのため動きは非常に自然で、PlayStation 4のカメラによる正確なモーション・トラッキングと合わせて極めて説得力のある快適なVR体験となっていた。
I can see how it looks, but you don’t feel like an absolute dork as you play.
TechCrunchの同僚、Greg Kumparakが1年前に書いているが、PlayStationが5年も前からMoveコントローラーで積んできた経験は没入的環境の構築のために非常に大きな優位性をもたらしている。ValveとHTCのヘッドセットも両手に持ったコントローラーをトラッキングする方式で、まずまずの結果を出している。Oculusは専用のコントローラーが付属しないので、デベロッパー・コミュニティーはコントローラーや装着者の手をカメラで追うなどさまざまな方式を試している。しかしソニーの方式はこうした試行錯誤を一挙の飛び越して、標準的なVRコントロール・パッケージの地位を確立するかもしれない。コントローラーが一つであればデベロッパーは時間と資源を大いに節約できるわけだ。
一方でOculusは座ったままでゲームをプレイすることを主として考えているため、接続ケーブルはあまり問題にならない。しかしHTC ViveやソニーのMorpheusの場合、立ったり歩きまわったりする(もちろん限定された範囲だが)ため、ケーブルにつまづくという問題が起きる可能性がある。デモではMarksがケーブルを邪魔にならないように持ってくれた。HTCのViveのデモでは私はケーブルが足にからまないようにするハーネスを装着した。この問題がさして深刻なハードルになるとは思えないが、「VRゲームでケーブルに躓いて転ぶ」という事故が「WiiのコントローラーをTVに投げつけてしまう」という事故にとって代わるかもしれない。
2000万台以上のPS4がすでに家庭にあることを考えると、ハイエンド・パソコンを必要とするライバルに比べて、ソニーははるかに大きな潜在顧客層を持っていることになる。ソニーはMorpheusでこれまでのVRヘッドセットが持っていたハード、ソフトの問題点をほぼすべてクリアしたと感じた。最大の課題は、なんといってもコンテンツだ。ソニーが人気ゲームを揃えることができれば、VRヘッドセットが何百万という消費者の居間に現れることだろう。ソニーはMorpheusを来年出荷する予定だ。
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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+)