かつては誰もが移民だった―、移民の子孫の視点から見た現在のアメリカ

ここ数年の間、世界は怒りで溢れている。まともに見えた国がヨーロッパ大陸から自らを切り離し、慈悲深く見えた国境警察が怒りで震え、移民は仕事を奪い、人を殺し、ドラッグや暴力事件を持たらすような存在だと言われている。

何かが間違っている。

移民賛成派の意見として、全体の数を比較すれば、移民よりもアメリカ生まれの人の方が犯罪率が高いという事実が知られている。一方反対派からは、全てを決定づけるように見える複数の凶悪事件についての話を聞くことが多い。さらに、アメリカやイギリスの労働者の苦境についても知っておかなければいけない。移民は実際にその国で生まれた人から仕事を奪っているのだが、ホワイトカラーの人たちはその影響を理解できていないのだ。『Chaos Monkeys』の著者であるAntonio Garcia-Martinezが、その様子をうまくまとめている。

青い州(民主党支持者の多い州)の人たちが、トランプや国境沿いに壁を作るという彼の発言を支持する、労働者階級の赤い州(共和党支持者の多い州)の人たちを馬鹿にするのも当然だ。というのも、ホワイトカラーにはH1ビザと言う名の壁が既に存在し、彼らはこのビザのおかげで、インド工科大学や精華大学の卒業生と職探しで張り合わずにすんでいるのだ。FacebookやGoogleのオフィスの前に、まじめで実力のある中国人やインド人のエンジニアが大挙する様子を(アメリカのHome Depotの前に集まるメキシコ人の様子のように)想像してみてほしい。無料のスペアリブを頬張っている甘やかされた社内のアメリカ人よりも低い賃金で同じ仕事をする覚悟が彼らにあるとしたら、不法移民に対する社内のエンジニアの意見はどうなるだろうか?

赤い州の人々が求めているのは、青い州の人々に与えられているような、移民労働者の制限という保証なのだ。

いつものように、政治的な意見は先を見据えた理想ではなく、権力や私欲をもとに決められてしまう。ホワイトカラーは、既に自分たちが守られているからこそ、移民を受け入れることに賛成しているだけで、Home Depotの外に列をなすメキシコ人たちを自分たちの生活を脅かす存在として(正しく)認識しながら、ルイスビルやデモインで生活する、高卒の配管工や土木作業員のことなど気にかけていないのだ。

誰もが正しいようで、誰もが間違っている。移民労働者の苦境とは無縁のハイテク業界は、プログラマーや海外のデータセンターに関しては、政府の気前の良さに頼り切っている。本来であれば、Home Depotの前に停められたトラックの中にいる男性から、Uberに乗ってGolden Gate(サンフランシスコのベイエリアにある橋)を渡っている女性まで、全ての人が現状を吟味し、移民に手を差し伸べなければいけないはずだ。

究極的に言えば、移民は国に変化をもたらす必要不可欠な存在だ。人口は高齢化し、文化は変わり、新しいテクノロジーが昔の問題を解決していく。市民に受け入れられた健全な移民制度を通じて入国してきた熟練・非熟練労働者、難民、外国人居住者がその全ての変化において、私たちを支えてくれるのだ。自分たちの問題を外から来た人たちになすりつけるというのは、人類の大きな失敗であり、これは暗黒時代から何度も繰り返されてきた。私たちは、自分と違う人を恐れると同時に必要としているのだ。だからこそ”よそ者”に対する恐怖心を払拭しなければならない。

この問題を短期的に解決するために、私がアドバイスできることはひとつかふたつしかない。まずひとつめは、自分のルーツや生き方を見つめ直し、自分と同じ道を進んでいる人に手をさしのべるということだ。例えば、私の祖父母はポーランド人とハンガリー人だ。これまで私は、自分なりのやり方でこの2国を発展させるために全力を尽くしてきた。両国の経済や各業界のエコシステムは既にかなり発達しており、私の手助けなどいらないということは重々承知しているが、彼らは依然投資や世界からの注目を必要としているため、私にもできることがある。

世界中に起業家精神を広めるというのも問題の解決に役立つだろう。数週間前に私が出会った、デンバーを訪問中のキューバ人起業家グループは、アクセラレーターについて知るためBoomtownを訪れた。男性・女性の両方から成るこのグループは、逆境や政治的陰謀に立ち向かって、キューバにネットインフラを構築しようとしているのだ。彼らは若い企業の成長を支えるアクセラレーターの仕組みを気に入ったようで、恐らくこの経験から新たな可能性に気づくことができただろう。私はせめてもの手助けとして、彼らを5月に行われるDisruptに招待した。

キューバ出身の起業家たちと出会って1番驚いたのは、ザグレブやアラメダなど世界各地の起業家と彼らの間にはかなりの共通点があるということだ。全員が明確なビジョンを持ち、変革を起こすために努力する覚悟ができていた。全員が苦境に屈さず、前に進もうとしていた。彼らは仕事を奪うためにアメリカにいるのではなく、仕事を生み出すためにここにいる。彼らは国家を崩壊させようとしているのではなく、悪人を排除して、善者を支えようとしている。そして彼らは、母国と世界の問題の両方を解決しようとしているのだ。

彼らは移民ではなく人間だ。ある場所から別の場所へと移り住みながら、少々の悪とそれよりもずっと多くの善を移住先にもたらしている。彼らは歩みを止めず、諦めることもないため、受入国は移民を抑え込むのではなく、彼らのエネルギーを有効活用するべきなのだ。

数年前ピッツバーグで行われた結婚式に出席した際に、私がポーランド人の血をひいていると知った年上の友人からある話を聞いた。その話の主人公は、1900年頃にワルシャワからグダンスク経由でアメリカに移住してきた、当時8歳、10歳、14歳の少女3人。鍛冶工で酒飲みの父親と一緒に彼女たちは海を渡り、体調不良と寒さで震えながらニューヨークにたどり着いた。そこから一家は陸路で炭鉱で有名な地域へと進み、最終的にピッツバーグに住み着くことに。父親は鉱山で働き、娘たちは学校へ通っていたが、ある日娘たちが家に戻ると、そこには父の姿がなかった。

父親は娘たちを残してポーランドに戻っていたのだ。実は父親はポーランドから妻を連れてこようとしていたのだが、娘たちはなぜ父が書き置きも残さずにいなくなったのかわからず、残されたお金もすぐに底をつきそうな程だった。結局彼女たちは、裁縫や清掃の仕事をしながら、長女が次女の面倒を、次女が三女の面倒を見ながら生活を続け、時間の限り学校へも通った。移民で溢れる近所の人たちの助けもあり、彼女たちは徐々に自立していく。しかし、彼女たちが知らないうちに両親はポーランドで亡くなっていたため、両親宛の手紙が戻ってくることはなかった。森に住む少女たちの貧しく、不安に満ちた破滅的なこの物語は、バッドエンドを迎えようとしていた。

しかし、話はここから好転する。

彼女たちはそのまま成長を続けて結婚し、かつては隅に追いやられていた新しい世界で自分たちの生活を築くことができたのだ。ピッツバーグにあるKościół Matki Boskiejの洗礼盤に浸りながら泣き声をあげる赤ん坊のように、彼女たちは目の前で次々と起こる出来事にショックを受けながらも、生き抜くことができた。父親は(もっと娘たちのことを考えた去り方があったとは言えるが)アメリカであれば彼女たちが無事に生きていけるだろうと考え、ポーランドに残した妻を迎えに行ったのだった。娘たちが住む世界は、彼が去った世界ほどは危険にあふれておらず生存の確率はずっと高いと考えた父親は、移民の流れに娘たちを託し、それが功を奏した。

話の最後に「三女が僕の祖母なんだよ」と言った私の友人は、現在ピッツバーグでエンジニアとして働くアメリカ人だ。

かつては誰もが、遠い場所から何も持たずにアメリカにやってきた移民だったのだ。だからこそ私たちの後に続く人のことを怖がってはいけない。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

お金を払って新聞を読む人が増えている

Newsboy wearing flat hat holding newspaper and shouting to sell.Megaphone in right hand, and newspapers in left hand.Model is wearing red suspenders.The image was shot with Hasselblad H4D

これからは「新聞業界は死んだ」とは言えないだろう。Nielsen Scarboroughによる最近の調査によれば、アメリカでは1億6900万人の成人が毎月、紙媒体、オンライン、そしてモバイルで新聞を購読しているという。これは全人口の約70%もの数字だ。

昨年11月、新たに13万人がThe New York Timesを購読し始めた ― 月ごとの購読者の伸び率で比べると、これまでの10倍の数字にもなる。The Wall Street Journalの購読者数は300%上昇、LA Timesでは61%、そしてVanity Fairは1日で1万3000人の購読者を獲得している。非営利のWashington Postは新たに60人のライターを雇い入れた。そしてNPRは先日、「Big Newspapers Are Booming(大手新聞社が大いに好調)」と報じていた。

もちろん、これらの新聞社に新たに加わった事業責任者たちの功績は大きい。しかし、何も政治的な要因だけが理由なのではない。あらゆる分野で、読者に支えられたパブリッシャーたちが復活の兆しを見せているのだ。

例えば、テクノロジー業界ではJessica Lessin氏が立ち上げた新進気鋭のThe Informationの好調さが目立つ(The Informationは会員限定のサービスだ)。そして彼らはいま、シリコンバレーで第2の規模のテックレポーター・チームを抱えている。また、毎年100ドルを払ってでもBen Thompson氏のニュースレター、Stratecheryを読みたいと思っている人が何千人もいる。

読者たち、そしてパブリッシャーたちは、なぜ広告ベースのビジネスモデルよりも有料会員制のモデルを好むのだろうか?その理由として挙げられるのはいくつかあるが、オンライン広告業界に漂う不穏な空気がその中でも大きな理由だ。

人間は広告が大嫌いな生き物だ。今年、アメリカでは8000万人以上の人々が広告ブロック機能を使用するといわれ、それによってメディア企業は約1000万ドルの収益を失う見込みだ。「ネイティブ・アド」という言葉を頻繁に聞くようになったが、それでもなおポップアップ広告の勢力は衰えていない。

広告に関しては、メディアが「完全に不干渉」でいることこそが購読者を増やす道だと主張する人々は多い。Googleでさえ、それを実践している ― YouTube Redを例にしてみると、同サイトの広告には狡猾とも言える手口が大いに利用されている。まるで、コンテンツのプロバイダーがクリック製造業者のように感じるほどだ。Ex-politicoのプレジデント、Jim VandeHei氏はそれを「Crap Trap(場当たり的なトラップ)」と呼ぶ。

MediumのEv Williams氏は、同社が社内の人事政策を発表したプログポストでこの問題について触れている:「私たちはこれまで、プロダクトの販売推進とサポート拡充のためにチームを強化してきました。しかし、そのプロダクトとは、良く言っても従来の広告型モデルが少し改善したくらいなもので、私たちが目指す革新的なプロダクトからは程遠いものでした。このモデルをこれ以上推進すれば、私たちは壊れたシステムを拡大するという失敗を犯してしまう可能性があります。たとえ、それがビジネス的には上手くいっていたとしてもです」。当然と言えば当然ではあるが、彼はこの後にサブスクリプション型のプロダクトをこの夏にローンチすると発表している。

広告はヒドいものだ、そして、広告収入は一定しないことで有名だというのは分かった。でも、それ以外に何がこの業界で起こっているのだろうか?

壊れた広告システムにパブリッシャーたちが厳しい目を向け始めたのと同じ頃、有料の会員制サービスに喜んでお金を支払うという新しいタイプの消費者が増えてきた ― SpotifyやNetflix、飲食品の宅配サービスやプロダクティビティ・アプリに料金を支払う消費者がその例だ。サービス内容がタイムリーかつ有益で、消費者に寄り添ったものでありさえすれば、彼らは進んでその対価を支払う。今では、ミレニアル世代の4分の1が毎日のように新聞を購読していると言われている。

「インターネットへのアクセスをもつ人々の数は膨大です。また、多くの少数派の人々が満足のいくサービスを受けていないという現状もあります。アドバタイザーにとって、それらのニッチ市場は小さすぎるからです」とBen Thompson氏は語る。

Adobe、Dollar Shave Club、Weekly Standardなど、会員制のサービスは収益予測をたてやすい。その特色を利用することで、彼らはオーディエンスに寄り添ったサービスや個性的な新機能を生み出している(The New York Timesは、クロスワードパズルのアプリだけで一定の収益をあげている)。また、それにより彼らは「Crap Trap」を避けることもできる。

Jessica Lessin氏がこう語る:「私は今でも、広告に頼らないビジネスを構築するほうがずっと安全だと信じています。そうすることで、読者に提供するバリューに100%集中することができるからです。それこそが、読者に過去よりもよりスマートで、かつ有益な情報を届けることができる唯一の方法なのです」。

もちろん、広告それ自体が無くなることはない。しかし、今後サブスクリプション型のモデルがより普及するにつれて、読者とパブリッシャーとの関係はその双方にメリットを与えることになるだろう。パブリッシャーは会員たちの行動により注目するようになり、スライドショーのようにページを表示することで稼ぐPV数などではなく、例えばユーザーの滞在時間など、より意味のある評価指標を重視するようになるだろう。

「広告は以前としてビジネスには欠かせないものではあるものの、それに対する依存度を下げることはパブリッシャーにとって重要な戦略的目標です」とNewsonomicsのKen Doctor氏は話す。「ハイクオリティなコンテンツやプロダクトを提供することによって読者から得られる収益は、広告収入よりもずっと安定した収益源なのです」。

もちろん、紙媒体の広告で収益を得る時代からデジタルな時代へと移り変わるなか、新聞業界には今も向かい風が吹いている。しかし、スマートなサービスには対価を払う消費者も徐々に増えてきているのも事実だ。健全で、かつ独立したパブリッシャーたちにとって、それは良いニュースなのだ。

[原文]

(翻訳: 木村 拓哉 /Website /Facebook /Twitter

スウェーデンの現金使用率は2%―、キャッシュレス社会への賛否

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【編集部注】執筆者のChristoffer O. Hernæsは、チャレンジャーバンクかつノルウェイ初のオンライン専門銀行であるSkandiabankenのチーフデジタルオフィサー。

銀行取引や社会の電子化に関する話の中でも、キャッシュレス社会というアイディアは熱い議論を呼びがちだ。まず現金は、汚職や税金逃れ、マネーロンダリングといった違法行為と結びつけられることが多い。しかし、現金の匿名性が地下経済を支えている一方で、その匿名性が低下してしまうと、ジョージ・オーウェルの著書「1984年」のような監視管理社会が誕生し、個人の自由が制限されてしまうのでは、と懸念している人も多くいる。

キャッシュレス社会に向けた動きの最前線にいるスウェーデンでは、国家が電子決済に関する施策を推し進めるにつれて、国民の間には現金の利用頻度が減っていくことに対するネガティブな感情が広まっている。オーストリアやドイツといった国では、今でも現金が主要な決済手段として使われているものの、世界全体で見ると現金を使う機会は減ってきている。

消費者がモノやサービスを購入する際の決済手段として、現金が全体の3分の1を占めるアメリカでさえ、現金の使用頻度は減少傾向にある。しかし同時に、現金の発行額は増えてきている。40年前は約800億ドルだった現金の流通額が、今日ではおよそ20倍の約1兆5000億ドルにまで増えているのだ。また、1970年台半ばには25%だった全紙幣の発行額に占める100ドル紙幣の割合は、今では約80%に達している。

まずインフレの影響が頭に浮かぶが、発行額の増加率はインフレ率を大きく上回っている。経済学者のKenneth Rogoffは、世界中に現金が溢れているせいで貧困が広まり、生活上の安全も損なわれてしまっていると考えている。Rogoffは彼の著書「The Curse of Cash(邦題:現金の呪い)」の中で、先述の現象はアメリカだけでなく、世界で広く使われている通貨全てに関して言えることだと主張する。さらに彼は、現金が地下経済での決済手段として好まれているいることが、その主な原因だと説明しているのだ。それではどんな解決方法があるのかというと、彼は高額紙幣の廃止を提案している。

もしかしたらインドの首相は、Rogoffの提案内容を最後まで読まずに、高額紙幣の廃止は数年かけて行わなければいけないという箇所を飛ばしてしまったのかもしれない。昨年11月にインド政府は、500ルピーと1000ルピー紙幣を廃止すると発表し、その数時間後には両紙幣が使えなくなってしまったのだ。国内には混乱が広がったものの、この政策は「ショック療法」の一部として施行され、現金重視の地下経済を解体すると共に偽札をなくし、経済の電子化をさらに進めることで、もっと多くの国民を課税対象となる正規の経済に参加させることが目的だった。

突然かつ急速な高額紙幣の廃止のせいでインド国内には混乱が生じたが、他にも同じことを行おうとしている国は存在する。ECB(欧州中央銀行)は、2018年中に500ユーロ紙幣の発行を取りやめようとしており、スウェーデンもほぼ誰にも気付かれることなく段階的に高額紙幣を廃止した。そもそも、スカンディナビア半島の国々では、現金がほとんど使われていないのだ。スウェーデンの中央銀行によれば、2015年にスウェーデン国内で発生した全ての取引の決済手段に占める現金の割合(決済額ベース)は、2%しかなかった。さらにノルウェーでは、通貨の流通高における現金の割合は3%しかないと同国の中央銀行が発表している。さらにスカンディナビア半島の各国は、世界的にも汚職が少なく、透明性が高い社会だと評価されている。

彼らのような社会を目指すには、洗練されたデジタルインフラが不可欠だ。その証拠に、ノルウェーの決済インフラはGDP比で考えると世界でも指折りの費用対効果があり、消費者や商店、そして社会全体にとって利用金額の大小に関わらず、電子決済が最も経済的な支払方法となっている。

個人の自由を守る分散型の安全機能なしに現金を廃止するべきではない。

電子決済にはさまざまな利点があるものの、現金を完全になくしてしまうには心配な点もある。今日の決済システムのまま現金が廃止されてしまうと、銀行や政府や決済業者が全ての取引内容を把握できるようになってしまうのだ。さらに現金には、マイナス金利に対抗して金融政策の効果を薄める力がある。中央銀行や政府の目からすれば、これは現金の短所として捉えられるが、逆に中央銀行や政府による支配への対抗手段として現金を見ている人も大勢いる。

現金がなくなったからといって、私たちの住む世界がジョージ・オーウェルの描くようなディストピア社会に一晩で変わってしまうことはないが、一旦完全なキャッシュレス社会に切り替わってしまうと、政府がこれまでにないほどの力で市民をコントロールできるようになる可能性がある、ということは心に留めておいた方が良いだろう。

個人の自由を脅かすことなくキャッシュレス社会を実現するため、各国の中央銀行の中には、ブロックチェーン・分散型台帳技術を電子マネーの発行に使えないか研究を進めているところもある。匿名性を保証する物理的な通貨を電子化する、というアイディアに反対する声も挙がっている一方で、ノルウェー中央銀行はこの可能性を模索している。

実際に物理的なお金を電子マネーに置き換えるとすれば、個人が必要に応じて自分のお金をコントロールできて匿名性も確保できるよう、ブロックチェーン技術を採用するのがベストな選択だろう。ブロックチェーンシステムの下では、ユーザーだけがアクセスできる口座にお金を保管することになるため、自分のお金を自分で管理できるようになる。

しかし実際にこれを実現するのはそう簡単なことではない。理論上ブロックチェーン技術には全体を管理する組織が必要ないとはいえ、実際には理想と現状の間くらいの制度に落ち着くことになるだろう。しかし市民が中央銀行の発行した電子マネーを受け入れるためには、ネットワークに参加している全員のプライバシーが保護されなければいけない。中には、ブロックチェーン技術を導入しても犯罪行為の解決にはつながらないと言う人もいるかもしれないが、ビットコインのような仮想通貨であっても、マネーロンダリングができる可能性は限られており、資金流に関する情報を完全に消すためには一旦現金を電子化して、さらにもう一度そこから現金化しなければならない。

物理的なお金を廃止するというのは、犯罪防止の観点からは名案のようにも見えるが、その先にある、まだハッキリとは見えていない可能性についてもしっかり考えていかなければならない。多数決の原則は守らなければいけないし、もはや「現金は王様」という言葉は通用しないのかもしれない。それでも、個人の自由を守る分散型の安全機能なしに現金を廃止するべきではない。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

広告効果測定から自閉症の診断まで―、アイトラッキングテクノロジーの可能性

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【編集部注】執筆者のBen DicksonはTechTalksを立ち上げたソフトウェアエンジニア。

人間の目の動きを測定したり、目の動きに反応したりするテクノロジーは以前から存在するが、最近テック業界ではアイトラッキングテクノロジーに注目が集まっている。大企業アイトラッキング関連のスタートアップを買収する動きは至るところで見られ、同テクノロジーを搭載したデバイスやソフトもいくつかリリースされている。

「アイトラッキングセンサーを使うことには、主にふたつの利点があります」とアイトラッキング企業Tobii Techでヴァイスプレジデントを務めるOscar Wernerは話す。「まず最初に、アイトラッキングデバイスは常にユーザーが何に興味を持っているかというのを把握することができます。そしてふたつめに、アイトラッキングテクノロジーによって、他のものは何も変化させずに、コンテンツとの新しいふれあい方が生まれます。つまりユーザーとデバイス間でやりとりする情報の量が増加するんです」

近いうちに、アイトラッキングが新しい世代のスマートフォンやノートパソコン、デスクトップモニターの標準機能として導入され、ユーザーとデバイスのコミュニケーションの形が変わってくるかもしれない。

「アイトラッキングテクノロジーはここ1年で、将来有望な技術という存在からさまざまな分野のコンシューマー向け製品に採用されるまでになりました」とWernerは付け加える。

デジタル広告会社Impax MediaのCEOのDominic Porcoは、安くて高機能なハードウェア、オープンソースの新しいソフトウェアプラットフォーム、そして以前よりも簡単に速くデータを収集してアルゴリズムを訓練できるような方法が誕生したことで、アイトラッキングテクノロジーが進歩したと語る。

「NVIDIAのような企業が、強力なGPUを搭載した製品を競争力のある価格で販売し、画像認識のスピードアップに貢献しています」と彼は言う。

さらにPorcoは、Amazon Mechanical Turkのような人気のクラウドソースサービスが登場したことで、これまでよりも大量で広範なデータを使って画像認識アルゴリズムを訓練できるようになったと言う。「このような技術の進歩のおかげで、アイトラッキングテクノロジーの進化の速度は大幅に向上し、研究者やディベロッパーは実験から実装までにかかる時間を短縮することができています」

特定のニーズやユースケースを満たさない限り、どんなテクノロジーも成長することはできないが、アイトラッキングに関して言えばそんな心配は無用のようだ。

仮想現実(VR)

Businessman in virtual computer room.

ユーザーがより没入できるプロダクトを開発するために、VRヘッドセットメーカーはアイトラッキングテクノロジーの分野で大規模な投資を行っている。アイトラッキングテクノロジーは、さまざま観点から見てVRを補完するような存在だと考えられているのだ。

「VRは没入感が全てです」とTobiiのWernerは語る。「しかしVRヘッドセットにアイトラッキング機能がなければ、システムが勝手にユーザーはおでこの向いている方向に立っているキャラクターへ話しかけようとしていると判断してしまいます。つまり、ユーザーの注意はおでこと同じ方向に向けられていると理解されてしまうんです。でもそうではないですよね。私たちは目で見ているものに注意を向けていて、顔の方向と目で見ているところが一致しないというのはよくあることです。そのため、没入感を高めるためには、ユーザーの目の動きを計算に入れないといけないんです」

さらにアイトラッキングはフォビエイテッドレンダリング(Foveated Rendering)に欠かせない技術だ。フォビエイテッドレンダリングとは、中心窩(細かなものを認識する網膜の一部)で認識される箇所だけを高画質でレンダリングする手法のことを指す。

フォビエイテッドレンダリングを使えば、描画しなければならないピクセル数が30〜70%減少し、処理能力を節約することができるため、フレームレートを上げることができ、人間の視界を再現するには24Kくらいの画質が必要とされる中、4K対応のヘッドセットでも高画質な映像を楽しむことができるようになるとWernerは言う。

またWernerいわく、VRグラフィックをレンダリングするときに目の動きを勘案していないと、画像に歪みが発生することがあるが、これもアイトラッキングテクノロジーを使えば抑えることができる。

KickstarterプロジェクトのFoveは、初めてアイトラッキングを標準装備したVRヘッドセットだ。他社も彼らに追いつこうとしており、ここ数ヶ月のうちにGoogleとFacebookが、アイトラッキングスタートアップのEyefluenceEye Tribeをそれぞれ買収し、今後彼らの製品にアイトラッキングテクノロジーが搭載されるようになると考えられている。

さらに、アイトラッキングテクノロジーの分野においてはリーダー的な存在にあるSMIも、スタンドアローンのVRヘッドセットやスマートフォンを挿入できるVRゴーグルに同テクノロジーを搭載するため、さまざまなプロジェクトや他社との協業に取り組んでいる。

またアイトラッキング機能は、現在開発中のKhoronos VR APIと呼ばれるオープンな規格にも含まれる予定で、OculusやGoogle、NVIDIAといった企業がこの動きを支援している。

「アイトラッキング機能が第2世代VRヘッドセットの重要な要素になる、と多くのメーカーが考えており、その結果、同テクノロジーの開発やイノベーションが促進されています」とWernerは言う。

PCゲーム

Another successful VR demo, at HTC, that showed room scale gaming that actually worked.

HTCはまた新たに、部屋全体を使ったゲームが上手く機能することを証明するようなVRデモを実施した。

何十年にもわたって、私たちはゲームパッドやジョイスティック、キーボード、マウスといった周辺機器を使って、ゲームのキャラクターの向きを変えてきた。ここでもアイトラッキングが使われれば、ゲーム機が勝手にプレイヤーの向いている方向を感知し、反応できるようになる。

「気になるモノがあれば、目を向けてボタンを押すだけでよくなります」とWernerは言う。「コンピューターはアイトラッキングテクノロジーを利用して、プレイヤーが気になっているモノが何なのかわかるので、プレイヤーはマウスやコントローラーを使ってわざわざ目で見ているものを指し示さなくてもよくなります」

気になるモノを調べるときや狙いを定めるとき、キャラクターの進む方向を決めるときや、単にカメラ位置を切り替えるときにも、アイトラッキング機能が備わっていれば、プレイヤーの操作はもっと楽になるかもしれない。マウスやコントローラーの高度な操作が必要になるゲームは、特に大きな影響を受けるだろう。

その結果、これまで難しいと思われていたゲームが急に簡単になってしまう可能性がある一方で、もっと動きの速いゲームが誕生する可能性もある。

また、UIもこれまでよりクリーンで邪魔にならなくなるだろう。

「グラフィックアーティストは、長い時間をかけて美しいゲームの世界をつくりあげていきます。その一方で、UIデザイナーは彼らの作品の上に没入感を損なってしまうようなUI要素を設置しなければいけないため、両者の間には常に争いが起きています」とWernerは語る。

しかしアイトラッキングを導入すれば、普段はUIを隠したり透明にしたりして、プレイヤーがUIの方を見たときだけ表示する、といったことが可能になるとWernerは説明する。「そうすれば没入感はさらに高まり、グラフィックアーティストとUIデザイナーの争いもなくなります」と彼は言う。

さらにゲーム内でのシミュレーションや仮想世界に関し、アイトラッキングテクノロジーを使えば、視線を感知するオブジェクトをつくることができるので、ゲーム内のアイテムやキャラクターがプレイヤーの視線に反応し、やりとりがもっとリアルになるとWernerは話す。そうなれば、お気に入りのRPGをプレイするときに、酒場で傭兵のカバンをジッと見ないように気をつけないといけない。

Tobii Techは、拡張型のアイトラッキングデバイスや、アイトラッキング機能が搭載されたノートパソコンなどを販売しているほか、ゲーム会社と協同でRise of the Tomb Raider、Deus ExWatch Dogs 2といった人気ゲームにアイトラッキング機能が追加されたバージョンをリリースしてきた。

アイトラッキングがすぐにコントローラーに取って代わることはなさそうだが、Wernerいわく、この技術のおかげで、「PCゲームは人間の目という、情報をやりとりする上で最も強力な手段を使えるようになり、プレイヤーは、マウスやコントローラーの補助として自分の目を使えるようになります。その結果、他の要素はそのままに、もっと自然にゲームをプレイできるようになるでしょう」

医学とアクセシビリティ

Medicine doctor hand working with modern computer interface as medical concept

アイトラッキングテクノロジーの長所は、コンシューマー向けプロダクトの世界を超えて、データを解析したり調査結果を得たりするのに目の動きの測定が欠かせないような分野にまでおよぶ。

「アイトラッキングを神経発達症の診断、さらには治療に使っていこうという考えが広まってきています」とバイオメトリクス関連の調査会社iMotionsでサイエンスエディターを務めるBryn Farnsworthは話す。「例えば、赤ん坊は一般的に、人の顔が大きく映ったソーシャルな要素のある画像を好む傾向にあります」

彼によれば、将来的に自閉症になる可能性の高い赤ん坊は、幾何学的図形が中心の画像を好む傾向にある一方、ウィリアムズ症候群の子どもの状況は全く逆で、通常よりもソーシャルな画像を好む傾向にある。

つまり、「目の動きを解析することで、神経発達症の初期段階での診断が可能になるかもしれない」とFarnsworthは言う。

カリフォルニア大学サンディエゴ校の生徒が発表した研究では、目の動きは年齢や発達レベルに関係なく計測することができるため、アイトラッキングテクノロジーが自閉症の初期症状を見つけるための客観的な手法になり得るとされている。

iMotionsのような企業は、効率的かつ正確に患者の状態を判断・理解するため、研究者がアイトラッキングデバイスを通じてデータを収集するサポートを行っている。

RightEyeという企業は、アイトラッキングテクノロジーを使って、単純な脳震とうからアルツハイマーや失読症まで、内科医がさまざまな疾患の検査をする際や、その兆候を見つける際のサポートをするとともに、自閉症の子どもの治療にも助力している。

さらにアイトラッキングは、身体的な障害を持つ人の生活にも大きな変化をもたらす可能性があり、特に安価なコンシューマー向けデバイスが市場に出回ればその可能性はさらに広がる。「これはアイトラッキングの発展的な使われ方で、現在も研究が進められています」とTobiiのWernerは話す。さらに彼は、目線を感知するキーボードや、アイトラッキング機能を備えたコントローラーが誕生すれば、脳性麻痺の患者や脊髄を損傷してしまった人が新たなコミュニケーション手段を手に入れることができ、彼らは身の回りのものを操作できるようになるほか、セラピーを通じて色んなスキルを伸ばせるようにもなると指摘する。

広告

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現状では、インプレッション数やクリック数が広告効果に関する最良の指標とされているが、このような数字は、広告キャンペーンの効果を正確には反映できていない。というのも、インプレッション数としてカウントされるものの多くは、人間の手によるものではないのだ。しかしこの状況も、アイトラッキングテクノロジーの導入で変わってくるだろう。

「広告効果を測定する世界共通の指標について、広告業界では現在大きな混乱が起きています」とImpax Media CEOのPorcoは言う。「広告ブロッカーが広まり、ボットによるトラフィックが増加する中、時代に合った形で広告効果が測定できるよう『可視性(Viewability)』のコンセプト全体が現在見直されています」

ここでもアイトラッキングテクノロジーを使えば、オンライン広告企業は、ウェブページに表示された広告を何人が実際にその目で見たかというのを測定できるようになる。現実的には、全てのコンピューターとモバイルデバイスにアイトラッキング機能が搭載されるまで、本当の意味で正確なデータを集めることはできないが、同技術を使うことで、少なくともユーザーと広告の関わり方についての洞察を得ることはできる。

しかし、オフラインでは既にアイトラッキングを使った仕組みが効果を見せはじめている。

「市場調査会社は、消費者調査を目的に、小売店内の広告のような家の外にある広告に触れている人から直接生体データを計測し、その人たちについて分析しようとしています」とPorcoは言う。

彼がCEOを務めるImpax Mediaは、自社で開発した屋内用の広告スクリーンからお店を訪れたお客さんの注目度を測定するために、最近アイトラッキングテクノロジーをはじめとしたコンピュータビジョンの分野に重点的に投資している。「そのうち広告業界は、インプレッションではなく注目度に関する指標を重視するようになると私たちは考えています。そして注目度を測定する上では、アイトラッキングが1番有効な手段であることは間違いありません」とPorcoは話す。

彼によれば、広告主や広告の掲載場所を提供しているお店は、アイトラッキングから得られたデータをもとに、さまざまな角度からお客さんが興味を持っていることについて知ることができる上、場所や時間、デモグラフィックといった別のデータとお客さんの関心事の相関関係も導き出すことができるようになる。「限られた予算で最大限の効果を得ようとしている広告主も、在庫やスタッフのシフトを管理しなければならない店舗のマネージャーも、アイトラッキングを使って有益な情報を得ることができます」とPorcoは話す。

小売企業は顧客情報を集めることで常に何かを得ることができるものの、顧客情報を集めること自体はグレーエリアでたびたび物議を醸しており、個人情報に関する法規制の対象となり得る。しかし個人と結びついた情報を集めなくても、年齢、性別、視点、どのくらいの間広告を眺めていたかといった匿名データを入手できれば、十分有用な洞察が得られるとPorcoは強調する。

市場調査

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マーケットリサーチャーにとっては、「全ての販路とタッチポイントで、製品やサービスに対する消費者の思いや関わり方を評価すること」が大事だとイタリアの市場調査会社TSWでUXリサーチャーを務めるSimone Benedettoは話す。

さらに彼は、最近のアイトラッキングテクノロジーの進歩によって、ニューロマーケティングの実験に(研究所内外どちらで行われる実験についても)新たな可能性が出てきたと説明する。

「製品やサービスの設計・評価にあたって、ユーザーの意見は欠かせません」とBenedettoは話す。「しかしこの意見という言葉には、ただユーザーが質問に答えた内容だけでなく、製品やサービスに触れたときの彼らの目や脳から得られる客観的なデータも含まれています」

TSWはモバイルアイトラッキング機器やその他のウェアラブルデバイスを使って、デジタル(オンライン広告、モバイルアプリ、ウェブサイト、ソフトウェアやデバイスの操作画面など)とフィジカル(印刷物、製品パッケージ、車、家具、小売店舗など)の両方で、さまざまな製品やサービスに対するユーザーや顧客の反応を正確に計測しようとしている。

ユーザーと製品・サービスの自然な触れ合いの様子を測定することができれば、ユーザビリティ上の本当の問題点や、ユーザーのフラストレーションがたまりやすい箇所を特定できるようになり、顧客満足度やエンゲージメントの向上にむけた施策や、設計に関する判断を下す根拠となるような情報を集められるようになる。

「この業界における昨年の動きで最もインパクトがあるのが、モバイルアイトラッカーから収集したデータの解析に、オブジェクトトラッキングが導入されたことです」とiMotionsのFarnsworthは話す。ここで彼が言っているのは、人の目が向いた先にあるモノを背景とは切り離して認識し、それぞれのモノがどのように観察されていたかという情報を記録するプロセスのことだ。

「例えば、ある被験者が小型のアイトラッキングメガネをかけていつも通り過ごした場合、身の回りにあるものにどのように注意を向けていたか――外を歩いているときにどのくらい地図を眺めていたかや、通り過ぎた広告に気づいたか――ということを、自動的に分析することができるんです」とFarnsworthは語る。「どこに、どのように注意が向けられているかということが自動的に分析できれば、人間についての理解が深まるだけでなく、もっとさまざまな可能性が広がっていくでしょう」

「個人的には、UXやニューロマケティングの調査にアイトラッキングテクノロジーを利用したいというニーズはかなりあると思っています」とBenedettoは言う。「アイトラッキングを使えば、バイアスをできるだけ排除した形でユーザーの行動を測定できる上、その測定結果を客観的かつ量的なデータに変換することができます。これまで長い間、私たちは主観的なデータに頼ってきましたが、この状況を変えるときがきました」

アイトラッキングテクノロジーの未来

Close Up of blue eye with computer circuit board lines, digital composite

回路が埋め込まれた青眼の拡大写真(デジタル合成)

TobiiのWernerは、この先コンピューターの使い方が大きく変化すると言う。タッチスクリーンやマウス・タッチパッド、声、キーボードに続く5つめの入力手段として目が使われるようになり、他の入力手段と目を組合せて使うことで、生産性や直感的な使いやすさがさらに向上していくと彼は考えているのだ。「マウスやキーボード、声などを使ったどんな操作にも視線は先んじるため、今後アイトラッキングを利用したもっとスマートなインターフェースが誕生すると思います」とWernerは話す。

視覚は五感の中でもっとも情報摂取量が多いため、目の動きをデジタルにトラックして測定できるようになれば、意識的かそうでないかはさておき、コンピューターへの意思の伝え方が大きく変わってくるだろう。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

出版業界の未来

Books In Library

私はDigital Readerのエディター、Nate Hoffelder氏が好きだ。彼は業界にこびない数少ないブロガーの1人だし、文章に余計な装飾を施すこともない。彼の主張は、本は素晴らしい、出版業界は破滅に向かう、書くことは非常に重要だ、というものだ。

だからこそ、彼がChip McGregor氏の主張を批判したときは嬉しかった。彼の主張とは、今後は本がモバイルに直接配信されるようになり、メインストリームの出版社がいよいよ変革に本腰を入れ始めるにつれて、インディーズ出版からユーザーが離れていく、というものだ。McGregor氏の主張のなかには正しいものある ― スマートフォンで読む電子書籍は今後ますます普及するだろう。でも、間違いも多い。

最初の間違いとは何か。彼は、Barnes & Nobleがベストセラー作品だけを集めた小規模の本屋を開店すると信じている。McGregor氏はこう主張する:

Barnes & Nobleはベストセラー作品だけを取り扱う小規模な本屋を開店するだろう。これに関する内部情報を持っているわけではないが、Amazonが従来型の本屋を始めようとしている今、B&Nもマーケットシェアを取り戻すための何らかの策を考えなければならない。

ほかに適当な言葉がないのでハッキリと言うが、B&Nはすでに死んだ。大規模ストアを構え、その中にあらゆる種類の本やぬいぐるみなどを詰め込むという彼らの戦略は失敗したのだ。コーヒーを飲みたい、または雑誌を無料で立ち読みしたいという欲求がなければ、B&Nに足を運ぶ理由などない。その点、電子書籍の誕生によって独立系の本屋は助けられ、大型本屋は破壊されたといえる。しかし、新作や中古本、そして子ども向け書籍を扱う小規模の本屋チェーンという姿を想像することはできるが、B&Nがその役割を担うとは思えないのだ。

加えて、彼の主張のなかにはインディーズ作家が大規模のパブリッシャーに戻ってくるというものがある。でも、そうはならないと思う。McGregor氏は自身のブログポストの中で、パレートの法則に従えば収益の80%は20%のライターから生まれると書いている。パブリッシャーが意思決定をするとき、彼らが持っているのは不完全な情報だけだ。それを考えれば、彼らがその20%のライターを特定することができるという考えは馬鹿げていると言わざるを得ない。

そうではなく、今後は多種多様な作家たちがインディーズ作家としての道を選ぶことになるだろう。メインストリームのパブリッシャーとしてではなく、インディーズとして成功した作家の代表例がEliot Peper氏だ。他にもたくさんいる。また、McGregor氏は99セントという超低価格なインディーズ本の価格設定にも懐疑的な見方をもっており、そういった価格設定はこれから衰退していくだろうと述べている。しかし、それも起こりそうもない。99セントの価格設定は、収益を伸ばしたり、Amazonのランキングをあげる方法としては賢いやり方だ。その価格設定をやめることは、すなわち、多くのインディーズ作家の死を意味する。

これまでに述べたことを要約する。McGregory氏の主張のなかには賛同できるものもある。モバイル・オンリーという考え方は今後も広まっていくだろうし、キリスト教SFなどのニッチなテーマは衰退していくだろう(McGregory氏は、「近年では、キリスト教SF小説をいまだに取り扱っている出版社は数えるほどしかいない。出版社の多くは、少数の人々にしか受け入れられない宗教色の強すぎる本を扱うのではなく、クオリティの高い文学小説や、広範な人々に受け入れられる女性に関するストーリーを取り扱うようになった。サスペンス系の小説を扱っているところもある」と述べている)。だが、B&Nやインディーズ作家に関する彼の意見には反対だ。伝統的な出版業界の外側では、物事が上手くまわっている。何か新しいことしたいという気持ちさえあれば、近年の出版業界の慣習に従うことなく、それを達成することも可能なのだ。

[原文]

(翻訳: 木村 拓哉 /Website /Facebook /Twitter

モバイルがインドの農村部を変える

Bahour

編集部注:本稿を執筆したMelissa Jun Rowley氏は、ジャーナリストであると同時に起業家としても活動する。また、彼女はストーリーテリング、テクノロジー、ソーシャルジャスティスを専門とするアクティビストでもある。Humanise, Inc創業者兼CEOの彼女は、ミュージシャンのPeter Gabriel氏が創設したThe ToolBoxの運営を行っている。The ToolBoxは、データを活用した人道主義的なイニシアティブである。

 

インドの街、ジャーンシー郊外の農村部。そこでは、ヤギや牛が闊歩する舗装されていない道路で子供たちが遊んでいる。地味ながらカラフルな家の床は泥で固められ、女性たちは井戸に水を汲みに行く。

そこで見られる風景、そして、聞こえてくる音は、農村部ならではの典型的な姿だ。しかし、ただ1つを除いては。この地域では、スマートフォンが人々の命を救っている。この村では、「Accredited Social Health Activists(ASHAs)」と呼ばれる女性のヘルスケアワーカーたちがスマートフォンをもち、mSakiというアプリケーションを使って妊婦に出産についての知識を教えている。

Qualcomm Wireless Reachによって創業され、IntraHealth Internationalによって開発されたmSakiを使い、329人のASHAsが1万6000人の母親たちの手助けをしている。モバイルブロードバンドを利用したイニシアティブがインドの農村部でこのような活動をしているという事実は、無視できることではない。

情報格差を解消する。低い識字率、劣悪な通信環境

インドのNational Health Ministryによれば、インドでは1000人中29人の新生児が死亡するという。インド政府は、この数字を1桁台にまで抑えることを目標に掲げている。しかも、インド女性の識字率は低い。ニューヨークを拠点とするInternational commision on Finincing Global Education Opportunityが昨年10月に発表した調査結果によれば、小学校を卒業した女子児童のなかで文字の読み書きができるのは全体のたった48%だという

また、Pew Research Centerが行った2015年のアンケート調査によれば、インターネットの通信環境をもっていると答えたインドの成人は22%だった。そうは言うものの、インターネット通信環境を整えようとする努力がインド各地で行なわれていることも事実だ。Digital Indiaが実施するプログラムは、デジタルによって人々がもつ力を向上させ、農村部にブロードバンド環境を提供することを目指している。この計画の一部として、インド政府は2018年までに4万以上の村でモバイル通信を利用可能にするという方針を打ち出している。

その一方で、mSakiは現状の通信環境でも大きなインパクトを与えることができる。このアプリケーションは劣悪な通信環境にも対応できるように開発されたものだからだ。デバイスに送り込むデータはオフラインで保存され、インターネットに接続された時にはじめてデータをサーバーへアップロードする仕組みなのだ。

妊婦を診察し、彼女たちにアドバイスを与える

現場の最前線で働くRam Kumari Sharma氏は、インド各地の村を転々とする毎日だ。彼女はmSakiを使い、妊婦や出産後の母親、そして新生児の健康状態をアプリにインプットし、彼女たちの診察も行う。mSakiに表示されるテキストやアニメーションを頼りに、彼女は注意すべき病気の症状やその治療方法を妊婦たちに教えているのだ。

現場の助産婦をサポート

mSakiは現場の補助看護助産婦(ANMs)たちにも利用されている。Anita VT氏は、村のヘルスケアセンターで20年間勤務するベテランのヘルスケアワーカーだ。彼女はそこで、患者の受け入れ、出産の補助、子どもへのワクチン注射などの業務をこなす。そこは、小さな部屋に数個の手動ツールがあるだけの小規模な医療施設だが、モバイルテクノロジーは彼女に21世紀の医療を与えた。

VT氏はタブレットを指差しながら、「これがあれば何でもできます」と話す。「紙を使う理由がありません」。

IntraHealthでシニアアドバイザーを務めるMeenakshi Jain氏は、mSakiはコスト効率的な医療を可能にするアプリケーションだと語る。

「インド政府は、すべての妊婦をオンラインのシステムに登録するというプログラムを全国で展開しています」と彼女は話す。「これを実現させるのが現場で働くASHAsや助産婦たちです。それらのヘルスケアワーカーの役割は、妊婦を特定し、彼女たちの情報を登録することです。しかし、従来のやり方では、彼女たちが紙のフォームを埋め、10〜20キロの道のりを往復し、コミュニティに設置されたヘルスセンターのオペレーターと話をし、そしてデータをコンピューターに打ち込む必要がありました。mSakiは、そういった事務処理にかかる時間的なコストを大幅に削減することができるのです」。

mSakiをどうやってスケールさせるか?

mSakiプログラムに必要な資金を集めるため、IntraHealthは同アプリの実績をステークホルダー(連邦政府、州政府、ドナーなど)と共有している。実際にmSakiが母親や子どもたちの健康状態を改善していることを示すためだ。Jain氏は、政府がmSakiや他の類似のアプリケーションを導入することで、現場で働くヘルスワーカーたちに最新の技術を提供し、彼女たちの能力を一段と高めることができればと願っている。IntraHealthに十分な資金が集まれば、同社はmSakiの改善を続け、今後は家族計画のアドバイスや識字率改善にも取り組んでいきたいと話している。

より速く、より効率的なマイクロローンを

ジャーンシーから450キロほど離れたジャイプル郊外の村。ここで、非営利団体のPlanned Social Concern(PSC)は村に住む女性たちにマイクロローンを提供している。

PSCのマイクロファイナンスを利用した人々のなかには、そこで得た資金を利用して小さなビジネスを立ち上げる者もいる。また、ある女性は、PSCから借り入れた資金のおかげで新しい家を建てることができ、子どもを学校に入れることもできたと喜んでいた。

この経済的なエンパワーメントを可能にしたのは、モバイルブロードバンドだ。Qualcomm Wireless Reachとのパートナーシップを通して、PSCは2014年にすべてのローン審査プロセスをデジタル化した。今では、このプログラムは完全にペーパーレスで運用されている。

PSC COOのravi Gupta氏は、3Gネットワークにつながったタブレットと「MicroLekha」と呼ばれるモバイルアプリケーションを利用することで、スピーディで透明性のある業務を可能にしたと話す。

「ローン組成にかかる業務をマニュアルで行っていた当時、実際の融資までには17〜18日程度の時間が必要でした」とGupta氏は語る。「MicroLekhaを使えば、その時間が3〜4日にまで短縮されます」。

すべての書類はデジタルに保存されているため、顧客は借り入れごとに紙の書類を作成する必要はない。ローンを返済すると、その旨を伝えるアップデートがSMSで届く。

これは始まりに過ぎない。Digital Indiaの試みがインド各地に広まれば、ヘルスワーカーを助け、妊婦を教育し、小規模ビジネス立ち上げの機会を与えてくれる新しいモバイルテクノロジーが導入されることだろう。

農村部にインパクトを与えるプログラムが大企業から生まれ、西洋の貧しい国々でもDigital indiaなどと同様のイニシアティブが立ち上がることを、私は望んでいる。

[原文]

(翻訳: 木村 拓哉 /Website /Facebook /Twitter

“打率”5%も当たり前―、9割のVCに断わられる前提で資金調達を効率的にクローズするには?

moneygrowth

【編集部注】執筆者のNathan Beckordは、VCの投資を受けたスタートアップFoundersuiteのCEO。同社は資金調達を行う起業家向けに、CRMや投資家とのコミュニケーションを促進するツールを開発している。

年の変わり目は、起業家の間にも新しい風を吹かせる。新しい会社を設立したり、新たなプロダクトを開発したり、資金調達したりと、彼らに何か新しいことへチャレンジさせる力が新年にはあるようだ。

もしもあなたも、新たに資金調達を行おうと思っているならば、是非この記事を参考にしてほしい。それでは、早速はじめよう。

ステップ1:投資家候補をかき集める

資金調達は数のゲームだ。設立した会社がSnapchatくらいのレベルで成長していたり、これまでに複数の企業を上場させた経験があったりしない限り、起業家はたくさんの投資家にアプローチしなければならない。

「たくさん」の投資家にだ。

そのため、資金調達における最初のステップは、150〜200人ほどの投資家リストを作ることからはじまる。

資金調達の一般的な「打率」(プレゼンの数に対するコミットメントの割合)は、5%と言われている。ここから逆算すると、10人のエンジェル投資家にシードラウンドへ参加してもらいたいとすれば、まず200人をリストアップしなければいけない。

AngelListやFoundersuiteなどの無料サービスを使えば、投資家を分野や所在地から検索することができる。またCrunchbaseを使えば、自分たちのスタートアップに似た(競合ではない)企業を検索でき、そこから投資家情報も確認できる。関連キーワード・フレーズを使って(例:SaaS企業への投資で有名なVC/エンジェル投資家は?)、Quoraから投資家を探すというのも手だろう。

PitchBookMattermarkCB Insightsといった有料データベースには、さまざまな検索・フィルタリング機能が搭載されている。他にもTechCrunchPE HubTerm SheetInside Venture CapitalVenture Pulseといった、資金調達関連の情報を掲載しているニュースサイトやウェブマガジンも参考になる。

ステップ2:候補を絞る

資金調達は営業プロセスそのものだ。そして優秀な営業マンは、誰にどのくらいの時間を使うかというのを強く意識している。

この考え方は、営業と同じくらい(もしくはそれ以上に)資金調達でも重要になってくる。サンフランシスコからメンローパークまで1時間半かけて移動したのに、会いに行った「シード投資家」は20万ドルのMRR(マンスリーランレート)を求めていたり、そもそも新規の取引をやっていなかったりすると目も当てられない。

無駄になった半日という時間は、スタートアップ界では永遠に感じられるほど長い時間だ。

だからこそ、時間の無駄や頭痛や不安の種を減らすために、ステップ1で集めた投資家候補をしっかりと評価し、絞り込んでいかなければいけない。リストから候補者を外す際には、以下のような基準を参考にしてほしい。

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もともとのリストから、大体25〜30%くらいの数まで投資家候補を絞りこめれば、まずまずといったところ。きちんと候補を絞ることで、実際に投資家へコンタクトしだしたときの打率がかなり上がるようになる。

ステップ3:アプローチ方法を考える

このステップの目的は、ステップ2で絞り込んだ各投資家へのアプローチ方法を考え出すことだ。

最も有効なのは、共通の知人を通じた紹介だ(さらにその知り合いによって、投資家が過去に儲けを出していればベスト)。

ある投資家との繋がりを確認するためには、その投資家の名前をLinkedInの検索欄に入力し、1次もしくは2次コンタクトの中にその人がいないか確認すればいい。

もしも共通の知人がいないときは、アプローチしたい投資家のポートフォリオに含まれている企業のファウンダーにメールを送ってみるという「攻略法」もある。その際は、まず信頼関係を築くために、投資家がどんな人だったかや、どんな手助けをしてくれたかといった話をして、その後に紹介をお願いした方が良い。

最後の手段が、紹介無しで直接投資家にメールを送るという方法だ。この方法をとっているスタートアップを多く見かけるが、返信が来る確率が1%以下というのもザラだ。

ステップ4:進捗管理のためのシステムとプレゼン資料を準備する

これまでのステップで、投資家のリストを作って、その絞り込みを行い、各投資家へのアプローチ方法を考えだした。次は、実際に資金調達を行うための準備だ。

各スタートアップには、進捗管理システムを構築することを私は強く勧めたい。アプローチしようとしている投資家の数が多いため、投資家の名前や交渉の段階、会話の内容、確認事項やToDoといった事項の管理がかなり複雑になってくる。

ミーティング1回当たりに3つ、4つ確認事項が出てくるとして、100〜150人/社の投資家を相手にすると考えると、その複雑さがわかるだろう。

投資家候補や彼らとの膨大な数のやりとりを管理するためのシステムが必要だ。

多くのスタートアップがExcelやGoogle Docsを使って進捗を管理しているが、1週間もすればスプレッドシートがさまざまな情報で溢れかえってしまうことがよくある。

そこで最近流行っているのが、「かんばんボード」メソッドだ。各投資家を「カード」にして、新規→プレゼン済み→デューデリジェンス→コミット(または交渉決裂)と、交渉の段階に応じてカードを動かしていくというのがこの管理方法の概要だ。ファウンダーに人気のかんばんボードを利用した管理ツールとしては、FoundersuiteやPipedriveTrelloなどがある。

他にもSalesforceなどのCRMを、投資家情報管理の目的で使っている企業もある。どのサービスであれ、投資家候補や彼らとの膨大な数のやりとりを管理するためのシステムを導入すべきだ。

もうひとつこのステップで準備するのが、10〜20ページのプレゼン資料だ。別途1、2ページで、エグゼクティブ・サマリーと予測財務諸表を入れておくことも忘れないように。

プレゼン資料は、交渉時の「主力」として常に必要になる重要なアイテムだ。アドバイスが必要な人は、このガイドが参考になる。またインスピレーションが必要であれば、ここで有名スタートアップのプレゼン資料を見ることもできる。

ここまで準備ができたら、ステップ5へ進む前に、友人やアドバイザー、弁護士、知り合いの投資家を相手に、最低5回は通しでプレゼンを行ってほしい。資金調達中はプレゼン資料を絶えず調整していくことになるので、フィードバックを集めて資料を改良するという習慣をこの段階で身に付けておいた方が良い。

ステップ5:投資家とのミーティング(複数を同時並行で)

投資家候補のリストと管理システムが整い、ようやく本格的に資金調達をはじめる準備ができた。

このステップでは実際に投資家へアプローチし、契約獲得に向けて勢いをつけていく。

まずは、投資家の紹介に応じてくれた知人へメールを送るところからはじめよう。参考メールが以下だ。

題名:投資家紹介のお願い

本文:Jeffへ

自分で立ち上げたスタートアップの資金調達を今やっていて、Jeffが<Xさん、Yさん、Zさん>とLinkedInで繋がってるのを見たんだけど、簡単に紹介してもらえない?

次に、Jeffが紹介できると答えた投資家ひとりひとりについて、新しく簡潔なメールで紹介をお願いする。<>で囲われたところには、自分の会社の情報を入れて使ってほしい。

題名:<Felicis Ventures>の<Aydin Senkut>紹介のお願い|<Acme Analytics シードラウンド:毎月28%成長中>

本文:Jeffへ

現在Acmeで<100万ドル>のシード資金を調達しています。私たちは<商業用ドローンのための解析・支払ソフトを開発しています>。既に<69社の法人顧客>がいて、売上は毎月<28%>伸びています。

<Aydin>のアプローチやポートフォリオ(<例:Flexport>)は、私たちの会社と関連性が高く、是非一度お話したいと考えています。

Acmeの資料はこちらからご覧頂けます。
以上、宜しくお願い致します。

Jennifer

上記のように、会社概要に加えて、投資家にとって魅力的だと思われる指標やアピールになりそうな情報、さらにその投資家と話がしたい理由を3つのセクションに別けて書けば十分だ。

このメールを受け取ったJeffは、転送ボタンを押して、投資家に実際に会いたいか(オプトインのアプローチ)聞くだけでいい。こうすることで、Jeffはほとんど時間をかけず、かつ彼の大事なソーシャル・キャピタルを無駄遣いすることなく、Jenniferを投資家に紹介できる。

紹介者の忙しさと人脈の広さには相関関係があるため、紹介者の負担を減らすというのは極めて重要なことなのだ。

そして、リストに含まれている投資家全員分、上記のプロセスを繰り返す。これまでのステップの各項目をしっかりと行い、投資家が求めるものとプレゼン内容がある程度合致していれば、カレンダーはすぐに投資家とのミーティングで埋まっていくだろう。

ステップ6:ミーティングを繰り返しながら前進あるのみ

ここからが資金調達の本番だ。このステップでは、さらに勢いをつけていかなければならず、そうするための1番の方法は、ミーティングをたくさん行うことだ。毎日、毎週、資金が調達できるまで投資家とミーティングを重ねよう。

投資家はファウンダーの熱を感じることができ、それがファウンダーの自信に繋がり、さらにそれがスタートアップ自体の魅力を引き立たせる。逆に、資金調達が長引いてプレゼンの勢いが落ちると、投資家もそれを感じ取ってしまう。

ミーティングの形式は、カフェでのカジュアルなものから、オフィスでの正式なもの、スカイプを通じたものまでさまざまだ。ほとんどの場合、ミーティングの時間は30分から1時間くらいになる。挨拶を終えたら、まず忘れずに紹介者の話をして、もしも紹介者と親しい関係にあれば知り合ったきっかけについても触れるようにする。

プレゼンの流れはそのときどきで変わってくるが、重要な点はしっかりカバーできるように話を進めたい。

1、2分の間小話をしたら、いよいよプレゼンを開始する。私は投資家にどんな形でプレゼンを行えばいいか尋ねることが多い。「どのようにお話すればよいでしょうか?資料に沿ってお話するか、まずデモからお見せするか、このままお話をつづけましょうか?」といった感じで質問し、投資家をプレゼンに巻き込むのも手だ。

直接会わずにプレゼンを行うときは、画面共有ソフトをしっかりと準備し、ビデオ会議システムのソフトのアップデートに10分も浪費してしまうようなことがないようにする(実際にこれはよく起きる)。

プレゼンの流れはそのときどきで変わってくるが、重要な点はしっかりカバーできるように話を進めたい。さらに投資家からも、投資先企業にどのような価値を提供しているか(一般的な「付加価値」)や、投資が決まったら自分たちのスタートアップをどのようにサポートしてくれるかなどについて話を聞くことをオススメしたい。

そして「どのくらい興味を持って頂いていますか?」や「投資を決めるまでに、どのようなプロセスをとられていますか?これ以降のステップはどのようになっていますか?」といった質問でミーティングを締めくくる。

(この時点で、ステップ4で構築した進捗管理システムの存在に感謝することになるだろう。どういたしまして)

ステップ7:クロージングに向けて

20回もミーティングを繰り返せば、資金がすぐに集まりそう(約2ヶ月)か、時間がかかりそう(3〜6ヶ月)かなんとなく掴めてくるだろう。ほとんどの企業は後者のため、心配する必要はない。

ミーティングが上手く進めば、段々と投資家からも深い話がでてくるだろう。つまり彼らが興味を持っていれば、話題が評価額や投資条件へとシフトしていくはずだ。その後、プライスドラウンド(投資実行前の評価額が決まっている場合)であればタームシートを、コンバーチブルノートを発行する場合は、コミットメントレターを投資家から受け取ることになる。

一方で、15〜20回ミーティングを繰り返した後にタームシートをもらえなくても、諦めてはいけない。資金調達は数のゲームだ。ステップ1で触れた「打率」を覚えているだろうか?プレゼン数に対するコミットメント数が5〜10%であれば問題ないのだ。この数字を逆から見ると、90〜95%の確立で投資家に断られるということになる。だからこそ、断られるのもプロセスのうちだと割り切り、まだやりきっていないうちに諦めてはならない。

意思の弱いファウンダーはすぐに諦めてしまうが、賢いファウンダーは諦めどきを知っている。一般的に言って、最低でも50人/社の投資家と話し、それでも何の興味も持ってもらえないようであれば、一旦資金調達は諦めて、もっとトラクションを獲得してから再挑戦した方が良いかもしれない。

そうでなければ、パイプラインに残っている投資家と頻繁に連絡をとって、どうにか話を進めよう。自分の会社の最新情報や新機能を知らせるメールを送っても良い。ゴールは投資家から何らかの回答を受け取ることだ。もしも答えがNOであっても、パイプラインからその投資家の名前を消すことができる。粘り強さと少々の運があれば、きっと誰かが良さに気づいてくれるはずだ。

初めてのタームシートを受け取ったら、それを利用して他のファンド(やエンジェル投資家)に決定を急がせよう。口頭でのOKをもらったら、Paul Grahamのハンドシェイクディールの手順(The Handshake Deal Protocol)に従って、確約を得るようにする。コミットメントやタームシートの数が増えるにつれて契約力が強まり、クロージングは近づいてくる。

最後に

以上が資金調達のプロセスだ。無事クロージングを迎えたあとは、同僚や紹介者と祝杯をあげるなど「クローズ後の栄光」を楽しんでから仕事に戻ろう。次のラウンドは、もう12〜14ヶ月後に控えている。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

未来のアメリカの雇用は、石炭ではなくハイテク産業が切り拓く

Rows of office workers working on computers with data streaming

【編集部注】著者のAbinash TripathyはHelpshiftのCEO兼共同創業者である。

ドナルド・トランプが選挙に勝ったとき、シリコンバレーの多くの者は当惑した。「いったいどうすれば、政治経験もなく落ち着きのないツイートを垂れ流す偏屈な億万長者が、米国大統領選挙に勝てるんだ?」彼らは自問した。

リベラル陣営は、この国に対する「私たち」(テクノロジー産業で働く上流のリベラル)のビジョンと「彼ら」(ブルーカラー労働者)のビジョンの大きな乖離にその理由を見出そうとしている。私たちが直面しているのは、集団的アイデンティティクライシスだ。この「ポスト真実」の世界で、ベイエリア政治とこれほどまでに対立する人物が、この国で最も重要な民主的に選ばれる座を勝ち取ったことに、完全に困惑しているのだ。

だが、それはシンプルなことなのだ。シリコンバレーがラストベルト(Rust Belt)から完全に切り離されていたことこそが、トランプの勝利した理由なのだ。策謀と、アウトソーシングと、そして工業化時代の決定的な終焉が彼を勝たせた。私たちのイノベーションこそが理由でトランプは勝ったのだ、「私たち」が「彼ら」に仕事を与えて来なかったからだ。

仕事はどこに消えた?

1960年には、アメリカ人の4人に1人は製造業の仕事をしていたが、現在その数字は10人に1人以下だ。工業化時代は終わった。米国の石炭採掘は2008年に比べて25%減少していて、このことで4年間に5万人の職が失われた。鉱業全体では、2014年以来19万1000以上の職が失われている。

とはいえ、これは特に目新しい話ではない。20世紀の後半に、私たちは情報化時代を迎えた。経済が伝統的な産業への依存から、コンピューターとデジタル情報への依存へとシフトしたことで特徴付けられる時代だ。アウトソーシングに加えて、中産階級の労働者は現在新しい競合相手に直面している。自動化だ。ドナルド・トランプが彼の選挙運動に用いたこの社会現象の中で、アメリカの中産階級は減少し、ブルーカラー労働者は失業している。

しかしトランプは、アメリカ人の失業の現実を、非論理的なソリューションへと導いた。私たちは鉱業を取り戻さなければならない、時間を遡り、情報化時代の前へ戻って、「アメリカを再び偉大な国にするのだ(make America great again)」と。彼は「私たちの炭鉱労働者と製鉄労働者を仕事に戻すのだ」と述べた。それこそが「この国を再建するアメリカの手だ」と。

私たちは、グローバルな競争に先んじる場所に私たちを置いてくれる、新しい革新的な産業に焦点を合わせる必要がある。

目標自身はもちろん極めて妥当なものだが、その目標を達成するために彼が取ろうとしている手段には意味がない。トランプは鉱業や石炭産業の衰退をアウトソーシングや政府施策のせいだと言うが、実際にはそれは市場の変化によるものなのだ。天然ガスと再生可能エネルギー源がますます手頃な価格となり、多くの場合、石炭に対してさえ拮抗し得るものになっている。

実際、これらの産業は、石炭産業の衰退と並行して成長してきたのだ。ソーラー業界は年に20%の率で成長し、研究によれば、ほとんどの石炭労働者はソーラー業界内の同様の仕事に向けて、容易に再訓練できることが分かっている。私たちには、石炭産業を再構築する必要はない。私たちは、グローバルな競争に先んじる場所に私たちを置いてくれる、新しい革新的な産業に焦点を合わせる必要がある。

自動化が、アメリカ本土に雇用を呼び戻している。

シリコンバレーに居る私たちにとっては、明らかなことだが、テクノロジー産業は現在670万人の人びとを雇用していて、この25年以上に渡って事実上すべての新しい民間の雇用は、創業5年未満の企業によって生み出されている。

「実際、1988年から2011年の間に、創業5年以上の古い企業は、8年分を除けば破壊した雇用の数が創出した雇用の数を上回っている」とKauffman財団のJason WiensとChris Jacksonは書いている

新興市場の方が、(石炭産業のような)伝統的な市場よりも、多くの雇用機会を創出していることは注目に値する。更に、もし歴史が未来の何かを指し示すことがあるとすれば、自動化の推進は既存の産業の中に仕事を注入していく結果に繋がるだろう。

例えばThe AtlanticのJames Bessenは、最近パラリーガルの仕事の大部分が電子的検索ソフトウェアによって自動化されたことを取り上げている。だがその結果、弁護士やパラリーガルが解雇されたかといえば、このセクターの仕事は、全体的な労働力以上に成長しているのだ。実際に、1980年以来平均して、「平均以上にコンピューターを使う職業」は、平均または平均以下の使用しか行わない職業に比べて「より速く(年0.9%)成長している」のだ。

この理由は極めてシンプルだ。「低価格化によって十分な需要が掘り起こされるなら、雇用は自動化を伴って増えるだけで、減ることはない」。言い換えれば、自動化が生産性を上げ、それにより価格が下がり、その結果需要が増加するということだ。

需要が増えるにつれ、新しい従業員が必要とされるようになる。こうした従業員はアメリカ人である可能性が高い、なぜなら(a)企業にはそうできる余裕がある、(b) これからの労働者は、これまでは(アウトソーシング先の)カウンターパートの労働者によってなされていた単純な仕事よりも、さらに高度なスキルを身に付ける必要がある。

ハイテク業界は、アメリカからのアウトソーシングを削減することができるし、そうすべきだ。

カスタマーサービス産業界の起業家の1人として、アウトソーシングと自動化(仕事を失わせる2つの主な要因)の両者は身につまされる。この選挙で、私はアウトソーシングへの政略が、(アウトソーシングで悪名高い)カスタマーサービスのミクロ経済に反映されるところを見てきた。

何年もの間、経済論理が、顧客サービスの仕事をインドやフィリピンといった海外へと移管し続けていた。世界的なコンタクトセンターが使う費用は年間3000億から3500億ドルに及び、そのうちの20〜25%をサードパーティへのアウトソーシングが占めている。

コールセンターが顧客サービス産業を支配したことで、サービスの品質は低下した。なぜなら顧客は、言語に対するしっかりとした理解もなく、適切な訓練もなされていない海外の従業員とやりとりを強いられることになったからだ。私たちは今、転換期にある。チャットやメールなどを用いた効率的な通信モードを好む消費者たちの嗜好は、電話による労働集約型のコンタクトセンターへの、企業の依存度を低めている。これはまた同時に、カスタマーサービスコストを押し下げている。

スマートフォンや、アプリ、そしてコネクテッドデバイス(インターネットに接続された車やサーモスタットなど)の時代は、顧客とその利用履歴に関する大量のデータを生成するため、顧客との対話は今やとても効率的になっている。これにより、カスタマーサービスの仕事を、アメリカ本土に呼び戻す経済的余裕が生まれたのだ。テクノロジーがカスタマーサービスをとても効率的にしたことで、企業はそれほど沢山の人を雇用する必要がなくなったのだ。500人の外国人の代わりに、40人のアメリカ人を雇用することができる。

自動化とテクノロジーが、アウトソーシングへの依存を減らす。

カスタマーサービスの自動化が離陸し始めた2012年頃、カスタマーサービスの仕事は米国への回帰を始めた。ある記事が指摘したように、カスタマーサービスの仕事は「経済の、よりサービスの行き届かないニッチな場所へフィットする。カスタマーサービスの仕事は、スキル不要の仕事ではない。基本的な電話とコンピューター操作能力に加えて、良いコミュニケーションスキルが求められるものなのだ。とはいえ、そのためには大学の卒業資格は不要で、訓練は仕事を通して行うことが可能だ。2010年には、こうしたカスタマーサービスの仕事が210万以上あったが、労働統計局は、その数が今後10年間で15%は成長すると見込んでいる」。

言い換えれば、自動化とテクノロジーがアウトソーシングへの依存を減らすのだ。ハイテク業界は、プロセスを合理化し自動化することで、アウトソーシングを止めることができるほどコストをカットできる能力を持っている。これはカスタマーサービス産業だけの話ではなく、エネルギーでも、自動車産業でも、そして共有経済のような新しい産業の中にも見出すことができるものだ。

シリコンバレーはアメリカを再び偉大な国にすることができる

複数の研究で、消費者たちは、本当にアメリカで作られた製品を購入することが好きだということが示されている。ちょうど私が、カスタマーサービスを探す人びとは、インドの誰かと電話で話すよりも、アメリカ人従業員とインスタントメッセージをやり取りすることを好むということに気が付いたように。私たちの望みは皆同じだ:アメリカ人の雇用、アメリカ製のプロダクト、そしてアメリカ人のカスタマーサポート。

唯一の課題がコストだ。そしてそれこそ、シリコンバレーが、自動化を使って米国に雇用を呼び戻す義務を、国に対して負うべき理由だ。私たちには石炭は不要だ。私たちにはカスタマーサービスが、私たちにはソーラーエネルギーが、そして私たちには自動運転車が必要なのだ。

シリコンバレーがラストベルトと切り離されている必要はない。私たちは隔離された世界に生きている訳ではないのだ。私たち双方が、問題と可能なソリューションの一部だ。私たちが現在目にしている技術革新は、全国規模の経済的な機会だ。単に経済に良い影響があるというだけでなく、企業にとっても良い結果となるからだ。自動化がアメリカ人の雇用を取り戻すことができる。そのことで、より高品質の仕事と、アメリカの偉大な新時代が生み出されることだろう。そして、それはこれまで私たちを世に知らしめていたものの存在を証明することになる。その名は「イノベーション」だ。

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(翻訳:Sako)

Elon Muskよ、自律飛行ドローンこそが未来の移動手段だ

circa 1962:  Cartoon family the Jetsons, comprised of George, Jane, Judy, Elroy, and Astro, flying in a space car in a space age city, in a still from the Hanna-Barbera animated television show, 'The Jetsons'.  (Photo by Hulton Archive/Getty Images)

【編集部注】執筆者のAdam SingoldaはTaboolaのCEO。

車が発明される前の時代の人に何が欲しいか聞いたら、”車”ではなく”速い馬”が欲しいと言っただろうというHenry Fordの有名な言葉がある。

私は今日の自動運転車が当時の速い馬にあたるのではないかと考えている。つまり自動運転車は現存するものの延長線上にあるものであって、決して新しいカテゴリーを生み出すものではない。想定の範囲内で革命的とは言えない。

こんなことを考えているとElon Muskという、おそらく自動運転車界でもっとも有名で情熱のある男に行き着く。

同じ車好きとして、私は彼を高く評価しているし、テック界の起業家としても彼を尊敬している。さらにElonは、ほとんどの場合において正しいというのも間違いない(Solar Cityに関してはもう少し時間をおく必要があるが、私は彼のことを信じている)。

そのため私は自動運転車のビジョンについて、彼と違った意見を持っていることを心苦しく思っている。将来的に人間が運転しなくなるというのは間違いないだろう。そして機械が運転手の役割を担うという意見にも賛同している。しかしその機械は、私たちの頭上から地上を見下ろしながら、州間高速道路を走っているだろう。

私たちは自動運転車をスキップして、自律飛行ドローンに乗ることになると私は考えているのだ。

Cartoon illustration of a flying car passing above other land vehicles

地上の車を飛び越えていく空飛ぶ車のイラスト

誤解しないでほしいのが、私は自動運転車のメリット自体はきちんと認識している。具体的には事故の減少、移動コストの減少、そして何より自由に使える時間の増加だ。

アメリカだけでも、車を利用した場合の通勤時間の平均は片道24分だ。つまり通勤に車を使っている人は、平均して最大20万分もの時間を会社への行き帰りだけに費やしていることになる。ここに買い物やほかの用事、旅行の際の移動時間、そして何かクリエイティブなことをする代わりに運転に脳を使っている時間を足し合わせると、膨大な量になる。

しかし自動運転車をスキップして自律飛行ドローンを採用することで、上記のような個人の問題だけでなく、社会的な課題も解決できる可能性があるのだ。

もしも自動運転車の代わりに、自律飛行ドローンで地上500メートルの高さに浮かべるとすれば、空中にドローンを停めて、いつでも好きな場所へ移動できるようになる。

一旦ここで一息ついて、私の意見に潜むバイアスを認識しておいてほしい。

私は車も好きだが、それ以上のドローン狂だ。私は自分が空を飛んでいるような気分になって、今まで見たこともないような景色を4Kで見るのが大好きだ。以前はDJI Phantom 3を使っていたが、その後4を購入し、今はMavicが到着するのを待っている(そして素晴らしいものは全てそうであるように、Mavicの到着はもちろん遅れている)。

しかしどうやらドローンに執着しているのは私だけではないようだ。Taboolaがアメリカのネットワークから抽出したデータによれば、人は1日に25万回もドローンに関する文章を読んでいる。

このあたりで話を元に戻すと、自律飛行ドローンの開発は、技術的には地上を走る自動運転車を開発するよりも簡単だ。というのも、自動運転車を開発するときには、歩行者や路面の悪い道路、突然あらわれるものなどを考慮しなければならない。

さらに自律飛行ドローンの方が安全性も高い上、そこまで高度な技術を必要としないため大量生産時のコストも恐らく自動運転車より低い。私は自律飛行ドローンが、水平に移動するエレベーターのように、ただボタンを押せば目的地に向かって飛んでいくようなシンプルなものになると考えている。将来的にはUberも、何台もの自律飛行ドローンを予め空に飛ばしておいて、ユーザーが”オンデマンド”でドローンを使えるようなビジネスをはじめるかもしれない(Wazeは乱気流レポートに差し替えなければいけないが)。

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自律飛行ドローンが誕生すれば、突然地上から500メートルの空間を自由に使えるようになる。それに対し、私たちホモ・サピエンスはこれまで20万年もの間、地上から1.5メートルの空間に全てを詰め込んできた。その結果発生した、駐車スペースの問題や渋滞、道路建設などは、自律飛行ドローンのもと、すぐに過去のものとなるだろう。

法規制も私の味方についている。ドローンを買うと、ほとんどの場合地上から500メートルより上には飛べないように予め設定されているが、500メートルもあれば十分だ。

今年に入ってから、私は実際に人用ドローンに乗ったことがある。正直少し怖かったが、未来の一部を見ることができ、とても感動する体験だった。

そろそろもっと高みを目指して考えて羽を広げ、自動運転車(速い馬)をスキップして自律飛行ドローンの考えにのっても良い頃だろう。

もしかしたら、宇宙家族ジェットソンはずっと前からそれに気づいていたのかもしれない。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

昨年苦しみを味わったウェアラブル市場の課題

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今は手首にはめるデバイスにとって「待ち」の時期だ。数年間ものすごい盛り上がりを見せていたウェアラブル業界だが、今年のCESではあまり目立っていなかった。2つ、3つ新しいスマートウォッチが発表され、パートナーシップやそこそこの出来のフィットネスバンドがアナウンスされたくらいで、業界全体のフォーカスとしては、Alexaを搭載した種々のデバイスやスマートホームへとシフトしたように感じた。

Andoroid Wear 2.0のリリースが遅れたことを主な理由として、メーカーがなかなか新製品をリリースできなかったという背景もある。現在のところ同OSは2月2日にリリースされる予定だが、ホリデイシーンズや1年で1番大きなテック系展示会を逃すなど、リリースのタイミングとしては最悪だ。

そしてリリース後は、ウェアラブル業界が傷のなめ合いに必死になることだろう。全体としてパッとしなかった(いくばくかストレスがたまるような)2016年の状況を考えると、CESの様子は当然だとも言える。IDCは昨年10月に、2016年Q3のウェアラブルデバイスの出荷台数が前年同期比で51.6%減少したという、悲惨なデータを発表していた。そして先日TechCrunchでも報じた通り、12月にはeMarketerが「特にスマートウォッチは消費者の心を掴むことができなかった」という言葉と共に、ウェアラブル業界の成長予測を大幅に下方修正した。

業界をリードするプレイヤーの中にも、昨年は苦汁をなめた企業がいくつかあった。Fitbitの株価は急落し、Intelもウェアラブル業界では以前より力を緩めたように見えた。年末にさしかかると、MicrosoftがBand 2の販売を終了し3をつくる予定もないということがわかり、Bandはほぼ亡きものとなった。Jawboneはどうしてるのかと疑問に思う人もいるだろうが、彼らのビジネスもうまくいっていない。

Jawboneに対する特許訴訟を取り下げる際に、Fitbitは同社が実質倒産状態にあるという発言を残し、Jawboneはこれを強く非難していた。しかしFitbitの発言が誇張されたものであったとしても、Jawboneが苦しんでいるのは間違いない。JawboneのCFOは、同社が資金調達を狙いながらコンシューマー向けデバイスから方向転換しようとしているという報道がなされる中、会社を去った

ほかにもクラウドファンディングから誕生し、スマートウォッチブームの最前線にいたPebbleは、2016年を生き抜くことさえできなかった。同社は最後の作戦として、新しく2つのスマートウォッチとランニング用のモバイルデバイスをリリースする予定だったが、結局実際にはそのうちひとつしか販売されず、その直後にFitbitへの吸収、そしてPebbleブランドの終焉が発表された。

一方でウェアラブル業界が完全に闇に包まれているわけではない。Canalysは昨年末にかけてスマートウォッチの販売数が伸びたと発表している。「逆を示すレポートも発表されていますが、Canalysの調査によれば2015年4月にApple Watchがローンチされて以降初のフルクォーターとなった2015年Q3と比べ、出荷台数は伸びています」と同社は話す。もちろん彼らのデータはApple Watchのおかげによるものが大きく、CanalysもAppleの功績を讃えている。

一方でCanalysを含む数社が、昨年のウェアラブル業界の不調は、AppleやSamsungの製品、そしてAndroid Wear 2.0のリリースが予想より遅れたことが主な原因だと主張する。結局のところ、大手数社がウェアラブル市場の大部分を握っているのだ。

といはいっても、ウェアラブル市場が現在岐路に立っているということは否定できない。昨年の苦境は成長痛のようなものだったかもしれないし、ウェアラブルの進化に向けた次のステップの序章だったのかもしれない。逆に今後もっとひどいことが起きる可能性もある。いずれにせよウェアラブル市場は、初期の成長が早すぎたために今苦しみを味わっているのだろう。同市場の成長速度は比較するものがないほどで、「目新しいもの」から一気に「皆が持っているもの」へと進化していった。

市場が飽和点に達したというのも十分ありえる。購入したウェアラブルデバイスを、既に押入れの隅にしまってしまった人もいるだろう。結局のところウェアラブルデバイスは、ガジェットとフィットネス製品の間という微妙な立ち位置にあり、新年の抱負のように消えてなくなりやすいフィットネスへの決意のあらわれでしかないのだ。またウェアラブルデバイスの多くは大げさな万歩計のようなもので、それなりのスマートフォンであれば全ての機能をカバーできるということは言うまでもない。

ハッキリとしていることは、何かが変わらなければならないということだ。Android Wear 2.0には現状を一手に好転させるほどの力があるようには思えないが、少なくともそのリリースをうけて新しいハードウェアが誕生するだろう。そしてメーカー側は市場のこれまでの動きからヒントを得なければならない。ユーザーが健康に関するデータに興味を持っているのは間違いなく、大手メーカーのインフラも既に整っている。

次世代のウェアラブルデバイスは、ユーザーに多くを約束せず、彼らの期待以上の結果を残さなければならない。消費者はどんな製品を買っても一晩で習慣は変えられないということに気づいているため、もしかしたら次のウェアラブルデバイスは、服に埋め込まれたものやハイブリッドスマートウォッチのように、ユーザーが必要なときにだけ使えて、それ以外のときは存在を感じさせないようなものがいいのかもしれない。

互いに似通ったスマートウォッチやスマートバンドの勢いが弱まりはじめたところで、2016年の苦境をバネに本当のイノベーションが生まれることを願っている。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

賃金格差と求人内容の関係性

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【編集部注】執筆者のTim Cannonは、HealthITJobs.comのプロダクト管理担当ヴァイスプレジデント。同社は1000件以上のヘルスケアITの求人情報を掲載する求人サイトを運営している。

テック業界で働く女性の数が男性より少ないことや、両者の間に賃金格差があることは既によく知られている。しかしComparablyの調査から、年齢が上がるほど賃金格差が縮まっていくという興味深い事実が浮かび上がってきた。

18歳から25歳の間にテック業界に入ってきた女性は、同じ年齢の男性よりも29%少ない給与を受け取っている一方、彼らの年齢が50歳を超える頃には、その差が5%まで縮まるということがわかったのだ。

ヘルスケアIT業界では経験と共に給与が大幅に増加する、ということが私の勤めるHealthITJobsの調査からも分かっていることから、これには納得がいく。しかしこれはそもそもなぜ賃金格差が存在するのかという問いへの答えにはならない。

問題は入社時からはじまる。つまり求人という採用プロセスのスタート地点から、既にこのようなトレンドの芽が生まれている可能性があるのだ。驚くかもしれないが、求人内容がテック業界における賃金格差を生み出し、固定化させている可能性がある。以下でその流れについて説明したい。

以前の給与に関する質問

ある求人に応募してきた候補者に対して、企業が希望給与やこれまでの給与について質問するという習慣が長く続いてきた。この質問はあまりに一般化しているため、候補者側も特に疑問を持たずに答えている。しかし給与の変遷に関する質問が、実は賃金格差を固定化しているかもしれないのだ。

そのためマサチューセッツ州は、企業が求人票や面接で候補者の給与の変遷を尋ねることを禁じる法案を可決した。これには新しい仕事の給与が以前の仕事の給与に基いて計算されてしまうと、特に女性は最初の仕事の給与が男性よりも低いことが多いため、それまでの賃金格差が引き継がれてしまうという理由がある。

さらに雇用者側は意図せずとも、彼らは候補者の前職での給与からその人の価値を推測したり判断したりする傾向にある。テック業界でいえば、候補者のスキルではなく前職の給与に基いた提示額が、賃金格差の拡大につながっている可能性がある。女性はスタート時に遅れをとり、そこから追いつこうとすることしかできないのだ。

闇に包まれた給与情報

企業は候補者に対して給与に関する情報を尋ねる一方で、自分たちは報酬や給与の決め方について教えないことが多い。そのような情報が与えられないために、採用前に給与交渉をしづらいと感じている女性もいる。

そのような背景もあり、Fractlが100人の市民を対象にした行った調査でも、女性は男性に比べ賃上げ交渉をしづらいと感じている人が多いことがわかっている。平均的に女性は男性よりも賃上げ交渉を行う可能性が低く、アフリカ系アメリカ人の女性が賃上げ交渉を行う可能性が1番低い。

賃上げ交渉は採用時の給与交渉とは少し異なるものの、どちらも似たようなスキルや自信が必要になってくる。さらに新しい業界での仕事を探している女性の頭の中では、最初から給与交渉することで波風を立てたくないという心理が働いている可能性がある。交渉に必要な情報が提示されていないとすればなおさらだ。

応募している職業の一般的な給与や、応募先企業の平均初任給、給与の決め方といった情報がないと、女性はどのくらいの水準の給与を希望すればいいのかわからない。

求人票の男性的なキーワード

ほとんどの人が気づいていないが、求人票の多くは男性向けにつくられている。ZipRecruiterが行った調査ではほとんどの求人で男性的なキーワードが使われているとわかったのだ。同社のウェブサイトに掲載されている求人情報を調べたところ、”assertive(積極的)”、”decisive(決断力のある)”、”dominant(支配力のある)”といった男性的な言葉が70%の求人に含まれていた。そしてテック系の仕事だと、その数は92%まで増加する。

このような言葉は採用と何も関係がないようにも見えるが、中性的な言葉が使われている求人への応募率はそうでないものに比べて42%も高い。つまり求人に男性的な言葉が含まれていると、女性の応募率が下がる可能性があるのだ。そのため、求人に使われている言葉が好ましくないという理由で、女性は高給なテック系の仕事に応募していないのかもしれない。

リクルート会社や雇用主は、給与格差を生み出そうとして意図的にそのような求人票をつくっているわけではないが、これまでに浸透したやり方がそうさせているのだ。しかし求人票の書き方を変えるだけならば大した作業ではない。どのくらいの給与情報を候補者に明かすかや、求人票に適した中性的な言葉を決めるのには少し時間がかかるだろう。ただこのような小さな変化を積み上げることで、テック業界にはびこる賃金格差を解消することができるかもしれない。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

小売店はスタートアップのマインドを取り入れよ

man with a light bulb over his head


編集部記Mona Bijoorは、衣料品の卸売オンラインマーケットプレイスJOORのファウンダーでチーフ・エグゼクティブだ。

小売店にとって、小売業界や消費者行動の劇的な変化に付いていくのが大きな課題となっている。昔ながらの販売方法では、売り上げを維持するのに苦戦し、現代のカスタマーにとって価値を提供するのが難しくなっているのだ。

成功しているブランドに共通していることが1つある。彼らは変化を恐れなかった。

生き残ることができる会社は俊敏に変化していて、新しいアイデアを取り入れている。Zara、H&M、Nikeといったブランドはそのような考え方を取り入れた。古い考え方を捨て、売り上げを底上げし、カスタマーにとって便利で価値あるものを提供し、高い満足度を引き出している。

つまりこういうことだ:スタートアップのマインドを取り入れよ

このマインドを早くに取り入れた企業が、現在の競争環境で一歩先を進んでいる。他のブランドも負けたくないのなら、同じようにしなければならない。データを使ってカスタマーが欲しいものを理解し、売り上げを維持するためにアプローチを適切に修正するということだ。伝統的なブランドは自身と戦うことをやめなければならない。

モバイルを最大限活用する

ブランドは絶滅したくなければ、デジタルに移行する必要がある。まずはモバイルコマースから始めることができるだろう。Forresterの予測では、アメリカのEコマースは2020年までに5300億ドルまで伸びるという。そして、2億600万人以上がオンラインで買い物をするようになる。

50年以上の歴史があるNikeを見てみよう。Nikeは歴史あるブランドだが、テックスタートアップの考え方を取り入れ、直接販売チャネルの拡大に注力している。このスポーツウェア大手は、競合を引き離すため、次の5年でこの分野を250%成長させる計画を立てている。モバイルに投資する企業は、コンシューマーにパーソナライズしたメッセージを伝え、ターゲット層によりパーソナライズした体験を提供することができる。

モバイル戦略を活用した企業は、自社のEコマース事業で躍進している。これは売上高を上げるのに比較的コストがかからない手段だと言うこともできるだろう。

店舗からデジタルに

昔ながらの小売ブランドは、物理的な店舗とデジタルの境界線を取っ払う必要がある。カスタマーをターゲティングし、ビーコンといったショッピングソリューションを使って、それぞれのカスタマーに最適なショッピング体験を提供することは、店まで足を運び、そこで購入するカスタマーが減っている今の時代に有効な手段となる。オンラインショッピングのスピードと効率を取り入れる店内のデジタル化施策で、古いブランドのサービス提供が改善するだろう。小売アナリストのJan Kniffenはアメリカのモールの1/3が閉店する可能性があると指摘している。

コンシューマーが求めるものはすぐに変わり、テクノロジーやデジタルの力を借りなければ追いつくことが難しくなっている。

マルチチャネルが主流の市場で、カスタマーがわくわくするような店舗を作ることは簡単なことではない。店内で購入する体験は、しぼみつつあるマイノリティーだ。しかし、企業はこの消費者の購入手段の変化を逆手に取り、店舗の役割を再定義することもできる。在庫を大量に抱え、割引で商品を売り出すのではなく、オンラインストアと物理店舗の融合を図ることができる。店舗をショールームに据え、そこでカスタマーが衣料品を試着して会社のウェブサイトから注文できるようにする。販売スペースも過剰仕入れも減れば、商品価格も下げることができるだろう。

対話に加わる

オーディエンスは変わっていて、異なるデモグラフィックとそれぞれ適切に対話するのが重要になっている。新しい世代は、誠実なカスタマーサービスを望み、大きな買い物をする前には自分で調査する。ブランドはそれを考慮しないと、売り上げの減少に直面するだろう。

カスタマーと対話するのはソーシャルメディアが中心となり、伝統的なブランドはここに力を割くことで良い方向に進むことができるだろう。ソーシャルメディアは、ただやればいいというものではない。正しく運用しなければならないものだ。従来のマーケティングとは異なるインフルエンサーマーケティングやブランデッドコンテンツは、伝統的なブランドのポテンシャルを引き出すことができるだろう。

市場が成長するほどソーシャルでメッセージを発信できないブランドは、コンシューマーの気を引き、魅力的な提案をする新たなブランドに場所を奪われることになる。Snapchatで存在感を高める、あるいはInstagramでブランディングを行うなど、カスタマーとつながる自分たちの道を見つけよう。ソーシャルは、連鎖反応を起こす。ソーシャルサイトで十分な人数がプロダクトに注目すれば、ブランドが広まっていく。カスタマーのエンゲージメントとロイヤリティを得れば、ソーシャルチャネルでのショッピング体験を確立することができるようになる。

新たな手法

カスタマーにサービスを提供するもう一つ良い方法は、テクノロジースタートアップDollar Shave Clubのようなサブスクリプションを採用することだ。Dollar Shave Clubは10億ドルでユニリーバに買収されている。このモデルが有効なのは、基本的に自動で走るモデルだからだ。オートパイロットで、支払いも自動で行われる。この手法で商品を届けるブランドは、購入者のニーズを利益に変えている。特にヘルスケアやパーソナルケアの分野で多い。サブスクリプションの簡単さと便利さがあると、他のブランドは競争しづらくなる。

小売店の生き残りは難しくなってきている。柔軟で効率的、そして活発なカスタマーサービスを提供するブランドが成功する。従来の企業が競争するには、自分たちのDNAを変えなければならない。コンシューマーが求めるものはすぐに変わり、テクノロジーやデジタルの力を借りなければ追いつくことが難しくなっている。次世代の企業は、ブランド、テクノロジーと才能を組み合わせ、コンシューマーに直接訴求している。小売関連のテクノロジーの変化する速度は目がまわるほどだ。今日良いソリューションと言えたものが、明日には変わっているかもしれない、そんな世界なのだ。

[原文へ]

(翻訳:Nozomi Okuma /Website

テクノロジーが「人間の温かみ」を置き換えることはできない

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最近、どこに行ってもオートメーションが人間の職を奪うという議論を耳にする。テクノロジーはもちろん急速に進歩し、クリックを中心とするメディア環境のなかではセンセーショナリズムが生まれる。しかし、テクノロジーが人間の代わりに働けるからといって、私たちがテクノロジーによるサービスを望むとは限らない。テクノロジーがまずまずの働きをするとしても、状況によっては、人間とやりとりしたいと思う場面があるのだ。

機械は与えられたタスクを人間よりも効率的にこなせる一方で、それらが行うアクティビティには「芸術性」が欠けている。つまり、ニーズに応える能力だ。たとえ定められた手順があったとしても、優秀な人材はいつそのプロトコルを修正するべきか、そして、そこで必要となる機微とは何かを理解している。

オバマ政権は先日、人工知能とオートメーションが与える経済的な影響をまとめた調査結果を発表している。この調査結果は、この問題を政策運営を担う立場から捉えたものだ。このレポートでは、「AIが失業を増やすのかどうか、そして長い目でみて不平等を増加させるかどうかは、テクノロジーそのものだけに依存する訳ではなく、その時の政権や政策に依存する」と述べられている。また、今後10年から20年間でオートメーションによって影響を受ける職業は全体の9%から47%程度だろうと推測している。そのレンジの大きさから分かるのは、オートメーションが与える本当の影響はまだ未知数だということだ。

スタートアップのエコシステムに関わる人々はたいてい、自分たちであればテクノロジーを存分に普及させることができるし、また自分たちであればそれが可能だと考えている。しかし、誰もがそのアプローチに賛成という訳ではない。先週、New York TImesはMcKinseyによるレポートを発表したが、その調査で明らかになったのは、オートメーションは成長している一方で、そのペースは私たちが思っていた程のスピードではないということだ。「オートメーションが人間の職に与える影響の大きさを決めるのは、多くのテクノロジストがフォーカスするような、”技術的に可能なものは何か”という問いではありません」とNew York Timesに語るのは、McKinseyのJames Manyika氏だ。

結局のところ、オートメーションが与える影響の大きさを決めるファクターは実にさまざまだ。人間との交流に対する欲求もその1つである。現金自動支払機(ATM)を例に考えてみよう。ATMが開発されたのは1960年代のことで、それが普及したのは70年代から80年代にかけてのことだった。ATMは銀行の窓口業務を置き換えるだろうと言われていたが、2017年になってもまだ銀行の窓口では人間が働いている。もちろん、銀行の営業時間外でもお金を引き出せるのは便利なことだ。最近ではスマホでお金のやり取りも完了する。それでも、いまだに銀行では人間が働いている。それはなぜなら、お金に関してはプロに相談してみたいと思う人々がいるからだ。

また、医療に関しても同じことがいえる。たとえ適切な診断結果や治療法を提案する機械があったとしても、私たちは病気になったときには優秀な医師に相談したいと思うだろう。たとえ機械が適切な医療プランを決定するとしても ― 医療の分野には絶対的な治療法は数えられるほどしかないと理解しているが ―、考えられるオプションについて患者とともに考え、治療手順を実行するように訓練された医師と一緒に治療に励みたいと私たちは思うのだ ― 科学の”アート”について理解している彼らとだ。

人間はいまだ重要な存在である。そして、そのことを心に留めておく必要がある。高度な教育を受けた医師の場合に限らず、人間である私たちは、人間の代わりに機械と交流することを望んでいるわけではないのだ。

例えば、給仕スタッフをiPadのメニューに置き換えるというテクノロジーが存在する。サンフランシスコには人間を完全に除外したレストランも存在している。iPadで料理を注文すると、注文された品が小さな棚から出てくる ― 料理を運ぶ人間もいないので、そこに人間との交流はまったくない ―。だが、誰もがその体験をしたいと思っているわけではない。人間の店員に「いらっしゃいませ」と言われたい人もいるし、メニューや出される料理について人間に質問したいと思う人もいるのだ。

同じことがUberやLyftでもいえる。ドライバーレスは明らかに実現しつつあるし、その方がコストが低くなるから企業もそれを望んでいる。だからといって、すべての顧客がドライバーレスを望んでいるわけではない。ドライバーとの会話を楽しみたいと思う人もいる。ただ単にA地点からB地点まで運んでくれればいいと思う人ばかりではないのだ。

私はラダイト(19世紀初頭のイギリスで機械化に反対した熟練労働者の組織)になりたいわけではない。テクノロジーは容赦なく進歩を続けていく。それに反対することは馬鹿げたことだろう。しかし、テクノロジーによってファンダメンタルが失われることはない。人間と人間とのあいだのコミュケーションもその1つだ。あることを可能にするテクノロジーが存在するからといって、それが最良のオプションであるとは限らないのだ。

[原文]

(翻訳: 木村 拓哉 /Website /Facebook /Twitter

映画「Hidden Figures」は、女の子たちをSTEMヒーローの道へと誘う

Girl goggles assembling electronics circuit at science center

【編集部注】著者のTracey Welson-Rossmanは 、技術職における男女格差を減らす活動を行う非営利団体TechGirlzの創業者である。

全ての世代の親たちが好んで使う格言に「あなたは食べているものになる(you are what you eat)」というものがある。同様の現象が職業選択の際にも起きることを指摘しておきたい。「あなたは見ているものになる」。

私が言いたいのは、私たちの多くが、多感なテーィンエイジャーの時代に影響を与えてくれた人に根ざす、キャリアや生涯を貫く情熱を持つということだ。おそらくそれは素晴らしい先生だったり、印象的な家族だったり、あるいは特に魅力的な映画やテレビのキャラクターだったりするだろう。

しかし残念ながら、映画の場合は、若い女の子たちのために強くて独立し魅力的な職業選択肢を示してくれる女性が登場することがとても少ないために、あまり社会に良い影響を及ぼしているとは言えない。まして科学や数学に興味を持つ女の子たちに、キャリアパスを示す女性主人公となると、その数はほとんど無いようなものだ。

これこそが、私が映画「Hidden Figures」のリリースに興奮している理由の1つだ。この映画はアフリカ系アメリカ人の数学者であるキャサリン・ジョンソンと、彼女の同僚であるドロシー・ヴォーンとメアリー・ジャクソンについての実際の物語を描き出すものだ。この女性たちは、多くの同僚たちと共に、ロシアを相手にした宇宙開発競争の最中、NASAの配下であるラングレー研究センターの一部門、West Area Computersに隔離されながら働いていた。彼らの仕事は、ジョン・グレンが米国の宇宙飛行士として初めて地球の軌道上を3周したことに直接貢献した。

これまでに私が話すことを見たり聞いたりしたたことがあるなら、メディアがハイテク業界のキャリアを描写する手法や、スマートな女性に対する社会の見方が、STEM関連分野でのキャリアを目指す女の子たちをとても少ないものにしているのだと、私が考えていることを知っているだろう。また私がテレビドラマ「Big Bang Theory 」の登場人物であるシェルドン・クーパーを、メディアによるSTEM職業人(特に技術職)への紋切り型の偏見(社会不適合で、パーカー(もしくはみすぼらしい服)を着た、白人男性たちによって占められている)の例として、呆れるくらいしつこく取り上げていることも知られているだろう。

ということで、私たちのボランティアたちや関わっている女の子たちが、Hidden Figuresの試写会に招かれたときには、私は少々緊張していた。私は、女性たちがその知性とSTEMに関連した貢献によって、重要な歴史上の人物として取り上げられる長編映画の登場を熱望していた。しかし、私はまた前述のシェルドン・クーパー役を演じていたジム・パーソンズが、映画の中に登場することにも気が付いた。ああ、この映画もまた、社会の共通の誤解に迎合することによって、その隠された強いメッセージを発信する、もう1つのハリウッド映画であることを運命付けられているのか?

映画やテレビ番組に、より多くの科学、技術、そして数学の女性リーダーを登場させることで、観ている女の子たちが自分自身の姿をその光の中に見出すことができるだろうか?

だが私は、映画がまさに待ち望んでいたものであったことを報告できることがとても嬉しい。これは本当に見る価値のある、魅力的なフィルムだ。映画の途中で、自発的な拍手で大いに盛り上がる観客たちの1人になれる経験など滅多にあるものではない!

そしてより深いレベルでも、描写は充実している。この映画の中で彼女たちは、華麗で活動的な母親、友人、そして同僚たちとして描かれている。重要なのは、当初彼らがその人種や性別故に、どれほど軽んじられていたかを描くことを躊躇していないところだ。しかしまた、宇宙に人間を送り出すという大きな目標が、こうした女性たちの能力に対する先入観を打ち砕いていく様子も描き出している。

私たちのグループは、参加する女の子たち、その母親たち、そしてボランティアで構成されているが、全員がこの映画の虜になった。彼らは、巨大な挑戦を乗り越えるために、女性たちがエンジニアや数学者としての能力を発揮し、その役割にスポットライトが当てられたこの映画を観ることを通じて、登場した女性たちの物語を知り、とても興奮した。以下に挙げるのは、映画を観た後の洞察に満ちた感想の一部だ:

「これは私の話です。それを信じて、同じようになるために、あなたもこの映画を観て下さい」。

「この映画は、エンジニアになりたいと願っている私の娘に、より一層の努力を決意させました」。

私は熱心な映画ファンとして、過去数年間で、強い女性主人公の数が増えているのは知っていた。しかしHidden Figuresで描かれたようなタイプの女性はまだ珍しい。私自身の考えや、女の子たちからの反応は脇に置くとしても、映画やテレビ番組に、より多くの科学、技術、そして数学の女性リーダーを登場させることで、観ている女の子たちが自分自身の姿をその光の中に見出すことができるだろうか?

2006年には女優のジーナ・デイビスが、この問いかけに正確に答えるために、Geena Davis Institute on Gender in Media(メディアにおけるジェンダーを考えるジーナ・デイビス研究所)を設立した。同研究所は、テレビや映画における女性キャラクターの差別的扱いにスポットライトを当て、その研究を後援している。2012年には、男女の役割や職業の描写を調べるために、映画、プライムタイムのテレビ番組、そしていくつかの子供番組の分析を行った。研究によって示されたのは、メデイア全体を通じてSTEMキャリアの描写は控えめであり、しばしばその他の分野に比べて物理学に重みがかけられているということだった。そしてスクリーン上でSTEMキャリアが描写されるとき、実世界の男女比に比べて圧倒的に高い比率で男性がその役に割当てられるのだ。研究全体の報告はここで読むことができる。

冒頭に挙げた私たちの格言に戻ろう。「あなたは見ているものになる」。Hidden Figuresは重要で啓発的な映画だが、これ1つだけで終わらせるわけにはいかない。このようなプロジェクトをもっと沢山実現していくことが大切だ。なぜならこれは若い女の子たちをSTEM関連のキャリアへと誘う強力な手段の1つなのだから。もし女の子たちのために、新しい針路を示したいのなら、ジーナ・デイビス研究所の研究で見つかった傾向を逆転させなければならない。

私はHidden Figuresが、業界の中で人びとが待ち望んでいた「目覚めの合図」となることを願うばかりだ。女の子たちに対するこの映画の影響を追跡することから始めよう。「ハンガー・ゲーム」と「メリダとおそろしの森」が世に出て以降、女性のアーチェリーに対する関心が高まっていることとの相関関係を研究した報告がある。どちらの映画も主人公は弓の使い手だ。研究によってわかったのは全国アーチェリー競技会への参加者数が前年に比べて倍増していることだ。きっとHidden Figuresの影響で、2018年に行われる調査までには、プログラミングコースを選択するアフリカ系アメリカ人の少女たちの、そして恐らく少女たち全般の数が劇的に増加するだろうと、私は確信している。

とはいえ、ボールを転がし続けるためにはどうすべきなのだろうか?エンターテイメントの中で強い女性のSTEM主人公の役割を、どうすれば増やしていけるかのアイデアを、共に考えて欲しい。ジョン・グレンは、キャサリン・ジョンソンを彼のチームの一員として信頼していた。彼は彼女がアフリカ系アメリカ人であることを全く気にしなかった。その仕事に最もふさわしいのが彼女だったというだけの話だ。これこそが、私たちが広く伝えなければならないメッセージだ。そうして行くことで、私たちは女性のコンピュータ科学者は例外ではなく普通のことなのだという認識に、社会を変えて行くことができる。ジョンソンの上司のアル・ハリスが言ったように。「私たちは皆でそこを目指すのだ、そうしなければ誰もそこには手が届かない」。

【訳注「Hidden Figures」という言葉には「隠されていた数字」(主人公たちが隔離された場所で数値計算の仕事をしていたことから)という意味の他に、「知られていなかった重要人物たち」という意味もある】

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(翻訳:Sako)

Googleの採用試験ハックに挑戦した男に話を聞いてみた

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採用試験”ハック”には本当に効果があるのだろうか?いかれた(もしくは少し変わった)行動をとることで、大企業の注意をひくことはできるのか?実際に変わった方法で企業にアピールしようとしたJohn Washamという男の物語は、結果はどうあれ面白い。

WashamはGoogley As Heckと題された自身のブログに、Googleの採用試験に挑戦するまでの道のりを記している。彼はGoogleで働くという明確なゴールのもとでソフトウェア工学を勉強し、そのマイルストーンをブログの形に残していたのだ。最終的には採用担当者から電話さえなかったという残念なメッセージでブログは締めくくられた。

ではWashamのような攻略法には効果があるのだろうか?実際に彼に話しを聞いてみた。

TC:簡単な自己紹介とあなたが行ったことについて教えてもらえますか?

John Washam:私の名前はJohn Washamです。独学でウェブディベロッピングを習得し、これまでに16年の実務経験があります。ここ8ヶ月間はフルタイムでコンピューターサイエンスとソフトウェア工学の勉強をしてきました。現在2つのインターネットビジネスを運営していますが、自動化のおかげで運営にはほとんど手がかかっていません。そのため自分のスキルを磨く時間をつくることができたんです。これまでずっとウェブの仕事をしていたため、長年の経験があっても多くのソフトウェアの分野で要件を満たすことができませんでした。大学で経済学を専攻し、コンピューターサイエンスの知識がない私には、就くことができない仕事が山ほどありました。

そこで私は、Googleにソフトウェアエンジニアとして採用されるという大胆な目標を立てることにしたんです。

TC:なぜGoogleでの採用を目標にしたんですか?

JW:毎日本を開いて、ホワイトボードにコードを書き続けられるような目標が必要だと感じたからです。最初は目標の大きさに怖気づいて、ときには眠くなってしまうこともありました。それでも時間が経つにつれて恐怖や退屈さは消えていき、だんだん簡単で面白いと思えるようになったんです。知識は恐怖心を凌駕するということですかね。ひとつひとつの内容をもっと深く学びたいと思いましたが、それでは一日に何時間あっても足りなくなりそうだったので、スケジュールに基いて次のトピックへと移っていきました。

自分のスキルを向上させて、ウェブディベロッパーからソフトウェアエンジニアになりたいと考えていた私にGoogleはピッタリでした。彼らの企業文化は研究機関と似ていて、証明できるかどうかが評価されるほか、意見よりもデータが優先されます。コンピューターサイエンスについて知れば知るほど、Googleの文化を魅力的に感じ、Googleについて知れば知るほど、さらに興味がかきたてられました。

Googleには年間約200万通もの履歴書が送られているため、私を推薦してくれる人がいるとはいえ、何か目立つ方法はないかと応募前に考えていました。そこで学習の様子をGoogley As Heckというブログに記録することにしたんです。私はウェブディベロッパーなので、ブログを立ち上げるくらい簡単なことでした。そしてGoogleの誰かに気づいてもらえることを願いながら、2〜3日に一度その日に学んだ面白いことをブログに投稿し始めました。ブログを書くのはかなり楽しかったですね。プログラマーは自分のスキルを見せつけるのが好きなんです。

学習内容の整理にあたっては、Googleの候補者用コーチングノートを参照してトピックごとのToDoリストを作りました。そして学習が進んで内容が多岐にわたるにつれて、コンピューターサイエンスのトピックも追加していきました。また当時Githubのプロフィールにはほとんど何も書かれていなかったので、ToDoリストをGithubにアップして、きちんと勉強の軌跡が残るようにしました。そして去年の10月のある日、ToDoリストの数が1600行を超えたあたりで、リストがバイラル化したんです。今ではこのToDoリストはGithubの人気プロジェクトランキングで27位になり、3万3000個のスターが付けられ、私のプロフィールも前よりずっとマシになりました。私のToDoリストは13言語に翻訳され、今でもたくさんの素晴らしい人たちがプロジェクトに貢献してくれています。

TC:実際にGoogleの誰かがブログに気づくと思っていましたか?そしてその理由はなんでしょうか?

JW:やる価値はあると思ったんです。Googleは候補者に”Googleっぽさ”を求めているので、私自身がGoogleらしい人になろうと考えました。

これまでいくつかのスタートアップをローンチしてきたので、採用までの道のりもスタートアップ風に考えることにしました。素晴らしいもの(学習内容)をつくって、狂ったように宣伝(Medium、Hacker News、RedditでToDoリストがバイラル化)して、資金が底をつく前にIPOもしくは他社に買収される(Googleに採用される)といった具合です。

もともとスタートアップの宣伝は比較的得意な方で、自分の会社となるとなおさらでした。そういう意味ではスタートアップの経営と勉強中にやったことはほとんど変わらないと言えます。

Googleに応募する1週間前にMedium上で公開した記事は、結局10万回以上も読まれ4000回もオススメされました。MediumにあるFreeCodeCampのコミュニティに私の記事を転載してくれたQuincy Larsonのおかげもあって、読者の方々からは驚くほどの数のサポートや応援を頂きました。Quicyは素晴らしい人です。

john_washam_bw-small-1TC:本当のゴールは何だったんですか?

JW:Googleは私にとってのモチベーションにすぎず、全ての努力がGoogleの採用に向けられていたとは思わないでほしいです。もちろんGoogleで働ければ最高ですが、本来の目的はソフトウェアエンジニアになるということでした。私はウェブディベロッパーを超越して、ソフトウェアデベロップメントの他の分野でのチャンスにつながるドアを開きたいと思っていたんです。さらには自分がずっとユーザーとして頼ってきた、データベース、サーバー、OSなどのテクノロジーを自分の手で作りたいとも思っていました。ウェブブラウザの向こう側には、全く別のソフトウェア工学の世界が存在するんです。

TC:最終的な挑戦の結果はいかがでしたか?面接ではどんなことを聞かれました?

JW:推薦者を通してソフトウェアエンジニアのポジションに応募したんですが、先週メールで担当者から不採用通知を受け取りました。最初は何かの間違いだと思って笑ってしまいましたよ。その後推薦者に確認して私を推してもらったんですが、結局状況は変わりませんでした。

不採用の理由を教えてもらえず、推薦者も何が理由か解明できなかったのはとても残念です。

納得いかなかったのは、電話でのスクリーニングさえ受けられなかったということです。電話で採用担当者と話をすることもできませんでした。努力して情熱を注ぎ込んだにも関わらず、自分を証明するチャンスさえもらえなかったんです。

もしも経験不足を原因に挙げられるとすれば、私は絶対に新卒者よりも経験を持っています。実際にGoogleは新卒学生を採用していますし、私は16年にわたるソフトウェアエンジニアの経験を持つベテランとして採用されようとも思っていませんでした。履歴書にも2〜3年分の経験有りとしか記載していません。

私が納得しなくても、採用担当者の判断を尊重するしかありませんけどね。彼らは私よりも採用業務のことを知っていますし。採用担当者は一日に何百という数の履歴書に目を通しているので、有力な候補者をみつけ、理想にマッチしない候補者をはじき出すのに慣れているはずです。詳細はわかりませんが、私は彼らが求めるプロフィールに合致しなかったんでしょう。もしかしたら彼らは私のためを思って不採用にしたのかもしれません。仕事内容を理解できずにチームの足を引っ張っていた可能性もありますしね。

Googleは採用過程で有力な候補者を誤って見逃してしまうことがあると聞いていますが、採用されるに足る力を持っていれば最終的にはGoogleに入り込めるはずです。

未だにGoogleのことは好きですが、将来また応募するかどうかはわかりません。私は会社を点々とするよりも、ひとつの会社に長くとどまりたいと考えています。今後私を採用することになる企業は、忠誠心があってよく働く情熱的な社員を手に入れることができるでしょう。Google以外にも良い仕事をするために努力でき、その努力が報われるような会社はたくさん存在します。私のやる気を引き出すというGoogleの役目は終わったので、今度は他の会社がその恩恵にあずかる番だと考えています。

TC:Googleがあなたの才能に怖気づいた可能性はあると思いますか?

JW:私の知識に誰かが恐れを感じていたとは思いません。そもそも私の知識量は恐ろしいほどのものではなく、Googleが候補者に期待するのと同じ程度だと考えています。

不採用の理由については色々と考えを巡らせましたが、ここではその話はしないようにします。結局は憶測に過ぎず、なんの意味もありませんからね。

TC:今後はどうされるんですか?Google以外に働いてみたい企業はありますか?

JW:最終的には、私に欠けていたコンピューターサイエンスとCTMレベルのソフトウェア工学の知識という、当初求めていたものを身につけることができました。今では連結リストや二分探索木も怖くありませんし、むしろ好きになりました。今私が面白いと感じていることは、長年の経験を持つエンジニアが退屈だと感じることなんだと思います。それでも全てが新しくて楽しいんです。ソフトウェア工学を越えて機械学習についても勉強しましたが、全て素晴らしいです。

そもそもの勉強の目的は、ソフトウェアエンジニアとしての新しいキャリアをスタートさせるということでした。現在はシアトル周辺で、情熱を持った「経験豊富ながら未熟な」ソフトウェアエンジニアを雇い、周囲のスピードに追いつくまで待ってくれるような余裕がある、規模の大きな企業を主なターゲットとして就職活動をしています。理想的にはプロフェッショナルなチームの中で、テストやデバッグやプロファイリングの業務を含め、素晴らしいソフトの開発に携わりたいです。とにかく高品質なソフトを作りたいんです。

頭が良くて、仕事熱心で知識のあるソフトウェア職人(見習い)が努力しながら成長し、色んなことを学べるような環境があればベストです。失敗することもあると思いますが、私は常にチームの迷惑にならないよう努力します。仕事にはエゴを持ち込みませんし、私が間違っているときにはそれを受け入れ、しくじったときには責任をとります。

将来私の雇用主になるかもしれない皆さん、私に難題をぶつけてください。私は何でも学べます。OSのインターナルから幾何アルゴリズム、コンパイラ開発、暗号化技術、機械学習、Intel x86の命令まで、社内に何らかの専門家が必要であれば私がその専門家になります。

それでは、コーディングの問題を解かなければいけないので、勉強に戻ります。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

未来のインターネットは、非中央集権型のインターネットだ

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編集部注:本稿を執筆したOlaf Carlson-WeeはPolychain Capitalの創業者である。同社はブロックチェーン・ベースの資産に特化したヘッジファンドを運営している。

ブロックチェーン技術は、ビットコインを超えて急速に拡大しつつある。ブロックチェーンのことを既存の支払い方法や金の競争相手であると考えている人が多い一方で、まだ見ぬ世界の訪れを知らせてくれるのがブロックチェーンなのだと私は思う。

多くのブロックチェーンとトレード可能な何百種類ものトークンが創りだす世界では、産業はソフトウェアを利用して自動化され、ベンチャーキャピタルや株式市場は利用されず、アントレープレナーシップは合理化され、ネットワークは独自のデジタル・カレンシーを通して主権を獲得する。これこそが、次世代のインターネットなのだ。

これまでにビットコイン企業へ投下されたベンチャー資金は10億ドル以上だ ― この業界はVCによって支えられている。それなのに、分散型ネットワークを利用することで誰もが複雑な金融取引をエンコードしたり、正確に実行することができるブロックチェーン・プロトコル、「イーサリアム」へ投下されたVC資金はほんの僅かである。だが、その一方でイーサリアムは不特定多数が参加するクラウドセールを利用して世界中から2億5000万ドルもの資金を調達している。

では、なぜイーサリアムに投資するVCが少ないのだろうか?リスクが高すぎるということが理由かもしれないし、ビットコイン企業への投資が失敗したことによって、この業界に投資する意欲が薄れてしまったことが理由かもしれない。恐らく、という話だが。しかし、何よりも重要なのは、起業家が従来の資金調達方法とは違ったルートで資金を調達できるようになったということである。起業家たちは独自にトークンを発行することで、彼らのネットワークに必要な資金を調達している。従来の資金調達ルートを利用せず、ベンチャーキャピタルという世界を迂回しているのだ。この重要性は千言万語を費やしても表現し得ない。 ― この新世界では、企業というものは存在しない。あるのはプロトコルだけなのだ。

この新しいモデルを利用して、起業家はブロックチェーン技術にもとづいたトークンを発行する。このトークンは彼らが構築するネットワークの所有権を表すものであり、ネットワークの拡大を加速する燃料にもなる。投資家が手にするのは企業の株式ではなく、ブロックチェーン技術にもとづいたトークンだけだ。ブロックチェーンが拡大するにつれて、トークンの所有者は多大な利益を獲得するが、企業の株式を所有する出資者はその利益を得ることはできない。これらのトークンは、あるアプリケーションに特化したものである ― このトークンはビットコインのように汎用性のある価値の単位として創られたものではないのだ。イーサリアム上のトークンであるREPとGNTを例にすると、これらのトークンはそれぞれ、非中央集権型の予測マーケットとレンティング・コンピュテーションのP2Pマーケットで利用されている。

これらのアプリケーション特化型トークン(アプリトークン)は、ビットコインやイーサリアムのような既存の汎用型ブロックチェーン上に構築される。そして、オープンソースのプロジェクトの開発者たちは、彼らが開発したオープンソースのネットワークを直接マネタイズすることができるようになる。振り返ってみると、トレント・プロトコルやTorネットワークなどの成功したオープンソースプロジェクトは、プロトコルレベルで直接マネタイズされたものではなかった。今では、非中央集権型のファイルストレージ・ネットワークの開発者は、そのネットワークの所有権を表すブロックチェーン技術にもとづくトークンを発行することができるようになった。

ソーシャルメディアに貢献しながらお金を稼ぐこともできるなら、ユーザーはどうするだろうか?

しかし、これらのトークンと、所有権を表すがそれ以外の用途を持たない株式の性質は異なる。アプリトークンはネットワークに参加するために使われるものなのだ。ファイルストレージ・マーケットの例では、ファイルの所有権を示したり、ストレージ容量の購入や売却にトークンを利用する。多くの場合、ネットワーク開発者や開発チームは発行済みトークンの約10%を所有している。ネットワークの人気が高まれば、トークンの需要も高まる。すると、トークンの供給は一定なので、その価格は上昇する。つまり、ネットワークの開発者がトークンを所有し、ネットワークの有用性を高めることで、彼らのネットワークを直接マネタイズできることを意味しているのだ。追加の資金が必要になれば、トークンを公開市場で売却すればいい。

アプリトークンは開発者に報酬を与えるだけでなく、ネットワークの参加者にはその所有権を与える。この、ネットワークにおけるエクイティ型のオーナーシップは前例のないものだ。今や欧米のインターネットユーザーがどれだけのネットワークに参加しているか、考えてみてほしい ― Facebook、LinkedIn、Twitter、Uber、Airbnb、eBay、Etsy、Tumblr ― これらはそのほんの一部だ。これらすべてのネットワークにおいて、ネットワークが持つ価値はユーザーによって生み出される。しかし、それぞれのユーザーが生み出した価値はネットワークのオーナーが手に入れることになる。一方でブロックチェーン技術にもとづくモデルでは、その価値は貢献度に応じてユーザーに還元されるのだ。

過去10年間に生まれた主要なWebサービスをディスラプトするのは企業ではなく、P2Pプロトコルなのかもしれない。これは、かつてトレント・プロトコルがメディア企業に与えた影響と似ているが、それよりももっと大きな規模のものだ。結果として、企業としての「Twitter」ではなく、プロトコルとしての「twitter」が生まれ、「Facebook」ではなく「facebook」が、「Uber」ではなく「uber」が生まれることになる。

そして、投資家たちは史上初めて、インターネットの未来のインフラストラクチャーを担うネットワークの一部を所有することが可能になる。もし、1990年台初頭にTCP/IP(パケット)、SMTP(Eメール)、HTTPS(暗号化)などの低レベルのインターネット・プロトコルへ直接的に投資ができていれば、それが生むリターンは莫大なものとなっていただろう。

この話が複雑に感じてしまうのはしょうがない。なぜなら、これは複雑な話だからだ。確認のために述べておくと、ブロックチェーンは未だほとんどの部分が実験段階の分野である。しかし、ひとたび素晴らしいアプリケーションが生まれれば、それは爆発的に普及することになるだろう。なぜなら、ユーザーにはネットワークに参加する財政的なインセンティブがあるからだ。ソーシャルメディアに貢献しながらお金を稼ぐこともできるなら、ユーザーはどうするだろうか?

過去数年間でビットコインのシェアは徐々に低下している。ビットコインはこれからも成長を続けると私は信じているが、一方でブロックチェーン・エコシステムにおける他の構成要素が今にも急速な成長を遂げつつある。

現在、ブロックチェーン・ベースの資産の時価総額は、合計で130億ドルだ。ブロックチェーンの誕生によって衰退する可能性のあるシステムの現在価値と比べれば、この数字は丸め誤差ほどでしかない。非中央集権型のブロックチェーン・プロトコルが、現在のインターネットを独占する中央集権型のWebサービスに取って代わり始めたとき、私たちは本当の意味でのインターネット・ベースの主権を目の当たりにすることになるだろう。未来のインターネットは、非中央集権型のインターネットなのだ。

[原文]

(翻訳: 木村 拓哉 /Website /Facebook /Twitter

新しいテクノロジーのデザインには倫理的側面への考慮を

Trinity was the code name of the first detonation of a nuclear weapon, conducted by the United States Army as part of the Manhattan Project. 16th July 1945. Device type: Plutonium implosion fission. Yield: 20 kilotons of TNT. The White Sands Proving Ground, where the test was conducted, was in the Jornada del Muerto desert about 35 miles (56 km) southeast of Socorro, New Mexico, on the Alamogordo Bombing and Gunnery Range. New Mexico, USA. (PHoto by Galerie Bilderwelt/Getty Images)

【編集部注】著者のGillian ChristieはVitality Instituteの健康イノベーションマネージャー(health innovation manager)、Derek Yachは同社のチーフ健康役員(chief health officer)である。

米国の大統領選挙以降の数週間、FacebookのCEOマーク・ザッカーバーグは火消しに追われている。もちろん文字通りではなく、比喩なのだが。彼のソーシャルメディア会社が、偽のニュースや「フィルターバブル」を伝播することによって選挙の予想外の結果を招くことに貢献したと、広範な非難が集中しているのだ。ザッカーバーグはこうした非難に激しく反論しているが、この案件は厄介な質問提起している:テクノロジーが社会のために役立つことを保証するにはどうすればよいのか?

第4産業革命が提起する難しい倫理的質問には、単純で白黒の答えを得やすいものは少ない。より小型で、より強力で安価なセンサー;人工知能、ロボット工学、予測分析、機械学習における認知コンピューティングの進歩;ナノ、ニューロ、そしてバイオテクノロジー;IoT;3D印刷;その他が、真の答を早急に求めている。そして、これらの技術を私たちの体と脳に埋め込んで、私たちの身体的および認知機能を強化するときに、これはもっと難しく複雑になる。

まもなく社会が自動運転車に関して下さなければならない選択肢を例にとろう。もし衝突を避けることができない場合、車の乗員に危害を加えても、通行人の死傷者を最小限に抑えるように車をプログラムする必要があるだろうか?あるいはどのような状況下でも、その乗員を保護する必要があるだろうか?

研究によれば、人びとの意見は矛盾している。消費者は交通事故での死傷者数を最小限に抑えることを望んでいるが、その一方自己防衛型ではない自動運転車を購入したくはない。もちろん、理想的な選択肢は、企業がこうした可能性を完全に回避するアルゴリズムを開発することだが、これが常に可能になるとは限らないだろう。しかし、明確なことは、消費者が正体不明のアルゴリズムに鍵を渡す前に、そのような倫理的争点を調整しておかなければならないということだ。

消費者が根本的な倫理について確信を持てない場合には、技術の普及が優先されることはない。課題は、現実的なソリューションを特定するには、さまざまな利害関係を持つあらゆる種類のステークホルダーのインプットと専門知識が必要となることだ:利益を上げながら革新を試みているテクノロジー企業のリーダーたち;一般市民を保護するための政策を策定しなければならない様々な管轄の規制当局;意図されないリスクや便益の評価を理論化する倫理学者たち;公衆の健康を追求する公衆衛生研究者たち;その他多数。

非常に多くの異なるステークホルダーが関与するなかで、テクノロジーが社会に役立つガバナンスモデルをどのように確保すれば良いのだろうか?

必要なのは、技術、健康、倫理の世界を横断する人びとによる、社会的に大きな利益をもたらす技術をどのように開発し、配備するかを決定するための強力で先を見通した指針だ。それは(ドナルド・トランプ次期大統領が主張しているような)国レベルで単独で行うアプローチではなく、分野間および政府間のアプローチをとる必要がある。最近発表された世界経済フォーラムの第4次産業革命センターは、こうした協議を始める場所の1つかもしれない。

最終的には、適切なルールと境界を特定するために、個人や社会に対する技術の効果を評価する必要がある。マーク・ザッカーバーグは、情報の配信におけるFacebookの本当の役割を確立するために、異なるセクターや国の指導者の間での公開討論や議論を考えているかもしれない。人工知能技術をどう見るにせよ、私たちはそれがもたらす結果を知っている。あるものは善く、あるものは悪く、中立なものなどないことを。

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(翻訳:Sako)

写真提供: GALERIE BILDERWELT/GETTY IMAGES/GETTY IMAGES

2016年のプログラミングのトレンドを振り返る

Aerial view of container terminal

編集部:この記事はCrunch Networkのメンバー、 Martin Puryearの投稿。Puryearは14週間でフルスタックエンジニアを養成するブートキャンプ、 Coding Dojoのカリキュラムとテクノロジーの責任者。

今年の1月、私はTechCrunchへの寄稿で2016年の主なプログラミング上のトレンドを予測した。

ソフトウェアの開発というのは非常に変化の速い分野だ。ぴかぴかの新しい開発言語、フレームワーク、ツールについての議論は賑やかだが、上位レベルのプログラミングのトレンドを正確に予測するのはたいへん難しい。まず私の2016年の予測がどの程度当たったおさらいしてみよう。

最新のJavaScriptが急成長する

JavaScript/ECMAScript version 6(通常ECMAScript 2015あるいはES6)は2015年の6月にリリースされた。私は2016年にはこの言語が広く採用され、デベロッパーが新しいバージョンに慣れるにしたがって新たサポートされた機能がウェブに普及するだろうと予測した。この予測は概ね当たった。

主要なブラウザすべてとNode.js(オープンソースのJavaScriptランタイム)の90%はES6準拠となった。この頃では、ES6は実験的、実験的な小さなシステムや内部利用に限られるツールに埋め込まれているだけでなく、さまざまな製品や主要顧客が直接触れるようなインターフェイスにも採用されている。既存のプログラミング遺産に縛られないユーザー、AirbnbGoogleなどはES6のシンタックスを社内のプログラミングのスタイルガイドとして利用している。

ただしES6は普遍的、全面的に採用されたわけではない。一部のシステムは旧バージョンのJavaScriptをレガシーとしてサポートし続ける必要がある。デベロッパーはの多くはES6の記法を使いたくても、レガシー・ブラウザを使うユーザーを置き去りにするわけにはいかない。そのためtranspilerpolyfillsといった新しいES6で書かれたコードを古いJavaScript向けにコンバートするツールが利用されている。

ただしES6の新しい機能をすべてのJavaScript環境がサポートするには至っていない。たとえば多くの環境で末尾呼び出し最適化がサポートされていない(Safari 10と iOS 10はありがたいことに例外だ)。この表はどのコンパイラやブラウザがES6のどのシンタックスをサポートしているかの一覧でたいへん便利だ。JavaScriptの旧バージョンは一夜にして消えはしない。しかし2016年を通してES6は急速に普及を続けた。新年にリニューアルされたサイトはほとんどがES6互換の環境に移行しているだろうと予想する。というわけでES6に関する予想は十分正確だったと思う。

BaaS―バックエンド・アズ・ア・サービス

BaaSつまりBackend as a serviceも予測どおり2016年のシステム開発の主要なトレンドになった。BaaSはクラウドストレージやノーティフィケーションなどプロジェクトの中で繰り返し行われる定型的処理の実行にサードパーティーのサービスを使う手法だ。BaaSを利用することによってデベロッパーは自分の得意分野に開発、運用の努力を集中することができる。バックエンドAPIの利用が盛んになっているのはフロントエンドのフレームワークがこうしたBaaSに接続しやすい形に変化してきたからだ。

デベロッパーはコンポジションと呼ばれるテクニックを多用するようになってきた。コンポジション方式の場合、システムいくつかの小さな部品(アプリケーション)から組み立てられる。このような構成の場合、小さな部品は容易にサードパーティーから入手できる。

私は特に今後ブログラミングのパラダイムがどう変化するかに興味を持っている

注意:前回の投稿で私は人気のあるBaaSの例としてParseを挙げた。記事が発表されたすぐ後にParseの所有者のFacebookはBaaSとしてのParseの運用を近く中止すると発表した。Parseを使い続けるつもりなら、ユーザーはそれぞれ独自にParseサーバーを構築し、 2017年1月28までにそちらに移行する必要がある。

イメージ管理と配布管理

2016年にはDockerPackerなどが予想どおりデベロッパーの主要なツールとなった。 これらのサービスは デベロッパーはコンテナと呼ばれるマシン・イメージを簡単かつ素早く生成ないし複製することがができる。コンテナはソフトウェア、そのランタイム、システム・ツール、言語ライブラリーなどがバンドルされどんなプラットフォーム上であれ実行するのに必要な要素をすべて備えている。デベロッパーは軽快なバーチャルマシンの上で素早くプロトタイプを作ることができる。ここにはバージョン管理機能がビルトインされているので、複数のサーバー環境であっても矛盾のないアップデートが可能だ。マニュアルでサーバーのプロビジョニングをするというのは本質的に時間がかかり間違いが起きやすい作業となる。そこでこうした面倒な作業を自動化するBaaSが急速に普及したのは当然だろう。

これに関連してVagrant(開発環境の設定の自動化)、 PuppetChefAnsible(コンフィグレーション管理)などのツールにも人気が出た。コンテナ・ベースの開発はますますデベロッパーにとってますます標準的なものとなりつつある。この傾向が今後原則するとは考えられない。

関数型プログラミング言語への依存が強まる

Haskell、Clojure、Scalaのような関数型プログラミング言語は2016年を通して普及を続けた。こうしたサーバーサイド言語を採用するプロジェクトが増えたのはスマートフォンやIoTデバイスの爆発的な増大によるものだ。コンピューター、タブレット、スマートフォン、IoTガジェットの数が増え、ますます強力になるにつれてサーバーの処理能力がシステムのボトルネックとなってきた。大量の「つながったデバイス」からのリクエストを処理するためにはサーバーの能力をアップする必要がある。処理能力の不足は反応の遅れをもたらし、ユーザー体験を著しく下げる。

関数型プログラミング・モデルは基本的にステートレスだ。 ソフトウェアの各部分を複雑な同期処理なしに多数の異なるCPUないしマシン上で効率的かつ容易に並行動作させることができるようになる。オブジェクト志向言語に比べて関数型言語のパラダイムが本質的に優位なのはウェブからのリクエストのような並列処理の場合だ。

マテリアル・デザインと共通パターンへのシフト

2016年にはビジュアル・デザインの分野でも興味ある進展があった。 予期されたことだが、Googleはすべての分野でビジュアル要素としてマテリアル・デザインを採用したプロダクトの数を増やしている。システム(ChromeOS、Android)、アプリケーション(Chrome、Drive、Google Play Music)、ウェブサイト(YouTube,、AdSense)、それにウェブ検索もマテリアル・デザインになった。サードパーティーのAndroidアプリ、Slack、Twitter、Spotify、Airbnb、Wikipediaがマテリアル・デザインを採用しており、AsanaからGeekbenchに至る多数のウェブサイトもビジュアルをマテリアル・デザインに準拠している。

ただし他のプラットフォーム((iOS、Tizen、Windows、MacOSなど)ではマテリアル・デザイン採用の動きは見られない(Ubuntuには多少の影響がある)。他のプラットフォームのデベロッパーは独自のデザイン・ポリシーを推進している。

デザイン分野での私の予測が当たったのは一部に限られるようだ。改めて2017年を予測するなら、サービスやアプリケーションにおける伝統的な視覚的デザインの役割は減少し、非視覚的なインターフェイス(Amazon Alexa、Siri、Cortana、Google Home)や別の視覚的要素(仮想現実、拡張現実)を利用したインターフェイスが普及期を迎えると思う。

結論

2016年のソフツには数々の興味ある進展があった。2017年にはさらなる発展が期待される。これにはコンテナや関数型言語の一層の普及、JavaScriptがアプリ開発に占める役割のさらなる増大などが含まれるだろう。私は特に今後ブログラミングのパラダイムがどう変化するかに興味を持っている。デベロッパー諸氏の考えを聞きたいところだ。

画像: Bernhard Lang/The Image Bank/Getty Images

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

2016年のSalesforceを振り返る

Marc Benioff, chairman and chief executive officer of Salesforce.com Inc., speaks during the DreamForce Conference in San Francisco, California, U.S., on Wednesday, Oct. 5, 2016. Salesforce isn't wasting any time putting its new acquisitions to use in a bid to strengthen its business software against larger rivals such as Microsoft Corp. New products unveiled Tuesday will blend the company's services with Quip, the document company Salesforce purchased in August for about $600 million. Photographer: David Paul Morris/Bloomberg via Getty Images

Salesforceは、自分たちはマーケットの刺激剤であると考えることを好む。現状を打破し、既存のプレイヤーに冷や汗をかかせる存在だ。しかし、ビジネスのクラウド化が主流の動きとなり、Salesforce自身も100億ドルの収益目標の達成に動き出した今、創業から17年となるSalesforceの時代がいよいよ到来したのではないかと感じざるを得ない。

今年、Salesforceによる買収案件の数は過去最大級だった。捕らえた獲物もあれば、逃した獲物もあった ― 時には、Wall Street Journalによって買収ウィッシュリストがリークしてしまうこともあった。加えて、Salesforceは人工知能を同社のプロダクトに取り入れることで、テクノロジーの最先端にとどまり続けている。

今年はSalesforceにとって躍進の年であったが、彼らは今でも地域社会への奉仕活動を続けている。2015年にインディアナ州の反LGBTQ法案をくつがえした同社は、2016年にはジョージア州とノースカロライナ州で同様の活動を行う。加えて、「責任ある資本主義」を熱心に主張するCEOのMarc Benioffは今年、

Salesforceは、自分たちはマーケットの刺激剤であると考えることを好む。現状を打破し、既存のプレイヤーに冷や汗をかかせる存在だ。しかし、ビジネスのクラウド化が主流の動きとなり、Salesforce自身も100億ドルの収益目標の達成に動き出した今、創業から17年となるSalesforceの時代がいよいよ到来したのではないかと感じてしまう。

今年、Salesforceによる買収案件の数は過去最大級だった。捕らえた獲物もあれば、逃した獲物もあった ― 時には、Wall Street Journalによって買収ウィッシュリストがリークしてしまうこともあった。加えて、Salesforceは人工知能を同社のプロダクトに取り入れることで、テクノロジーの最先端にとどまり続けている。

今年はSalesforceにとって躍進の年であったが、彼らは今でも地域社会への奉仕活動を続けている。2015年にインディアナ州の反LGBTQ法案をくつがえした同社は、2016年にはジョージア州とノースカロライナ州で同様の活動を行う。加えて、「責任ある資本主義」を熱心に主張するCEOのMarc Benioffは今年、Tony Prophetを同社初の「Chief Equality Officer」に任命した。

すべてが上手くいったという訳ではないが、概していえば、今年はSalesforceにとって悪くない一年だったと言えるだろう。Salesforceの2016年を振り返ってみよう。

数字を見せろ

事業の集中化を目指すSalesforceであるが、その目標を達成できていないのではと考える人もいるだろう。同社の2017年Q2の業績はあまり良いものとは言えなかった。しかし、今年11月に発表された2017年Q3の業績は同社の力強い成長を表し、売上高も伸び続けている。CEOのMarc Benioffは、2018年には同社の売上高が100億ドルに達するだろうと話すだけでなく、「エンタープライズ向けのソフトウェアを開発する企業のなかでは、誰よりも早く」その数字を200億ドルまで伸ばすことができるだろうと語っている(だが、その具体的なタイムラインは示されていない)。

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2014年度の収益をもとにソフトウェア開発企業をランク付けしたPwC Global 100 Software Report(PDF)によれば、Salesforceの収益は世界第9位の規模だった。彼らが掲げる高遠な目標からも分かるように、同社はその成長スピードを落とすつもりはない。つまり私が言いたいのは、SaaSベンダーであるSalesforceが収益を伸ばし続けているという事実自体が、SaaSベンダーでも成功することが可能だということの証明になっている、ということなのだ。

買収ラッシュ

今年のSalesforceは財布の紐をゆるめた。買収価格が公開されている案件を合計すると、同社は少なくとも50億ドルの資金を費やして合計10件の企業買収を完了している。その1年前の2015年にSalesforceが買収した企業は5社で、2014年はたった1社だった。2015年に買収した5社のうち、2社の買収が12月に行なわれているという点には注目で、これが2016年の買収ラッシュを予見していたと言えるだろう。

企業は他社を買収することで優秀なエンジニアを確保できるだけでなく、プロダクトの機能の拡充、収益のさらなる拡大を狙うことができる(買収による収益の拡大はあらゆる企業が目指す目標であることは明らかだが、それはSalesforceにとって特に重要な意味をもつ)。Salesforceのプレジデント、そして副会長兼COOでもあるKeith Blockは今年9月、同社が企業を買収するときに重視する項目について話している

「買収する企業がもつ文化を見ます。その企業文化と当社の企業文化はマッチするか?当社のプロダクトを上手く補完できるか?優秀な人材を抱えているか?財政的なメリットはあるか?その企業を吸収することによって当社が抱えるリスクとはなにか?」とBlockは説明する。

今年4月、Salesforceは人工知能のMetaMindを3280万ドルで買収している。同社の買収案件としては比較的規模の小さなものだったが、彼らはこの買収によりMeta Mind CEOのRichard Socherを同社に引き入れることに成功した。彼はその後Salesforceのチーフサイエンティストに就任し、ディープラーニングと自然言語処理に関する豊富な知識を同社にもたらした。TechCrunchも後になって知ったのだが、Salesforceはその頃すでに人工知能プラットフォームの開発に着手しており、今年9月にそのプラットフォームの詳細を発表している(これについては後ほど詳しく紹介する)。

Salesforceにとって最大の買収案件となったのは、今年6月に28億ドルを費やして買収したDemandwareだ。SalesforceはDemandwareのテクノロジーを元に開発したCommerce Cloudを9月末に発表し、同社のプラットフォームに存在していた大きな穴を埋めることに成功した。

2016年にSalesforceが買収した企業のなかでも特に変わった存在といえば、同社が7月に7億5000万ドルを費やして手に入れた文章処理のQuipだろう。この買収は、バーティカル・マーケットに力を入れるというSalesforceの理念に反したものだとも考えられる。しかし、今年9月に行ったKeith Blockへのインタビューによれば、同社はQuipがもつポテンシャルを見出していた。「Quipは非常に魅力的な企業です。これを変わった買収だと考える人もいるかもしれませんが、これはユーザーのプロダクティビティを向上するというコンテキストのもとで実行されたものなのです」と彼は話している。

善良な市民

Salesforceは創業当初からコーポレートシチズンシップを追求してきた。同社はコミュニティへの奉仕を企業定款に書き記している ― コミュニティに資金やソフトウェアを寄付したり、従業員がコミュニティに対して金銭的、または時間的な奉仕をすることを奨励している。

Marc Benioff, chairman and chief executive officer of Salesforce.com Inc., left, speaks with Tony Prophet, vice president of Windows marketing at Microsoft Corp., during the DreamForce Conference in San Francisco, California, U.S., on Monday, Oct. 13, 2014. Salesforce.com Inc. is entering a new business, data analytics and business intelligence, seeking to maintain growth and persuade customers to pour more of their information into its data centers. Photographer: Noah Berger/Bloomberg via Getty Images

Salesforce会長兼CEOのMarc Benioff(左)と、Chief Equality OfficerのTony Prophet(右)

今年9月に開催され、10万人以上が参加したDreamforceカンファレンスでBenioffは、環境問題や不平等、そして教育問題などについて世界はいま歴史的な転換点にあり、企業の有力者がもつ能力によって社会的問題を解決することは、彼らが果たすべき義務であると語った。

「自分の能力は仕事のためだけに使うのだと主張してみずからを孤立させることも、人種的差別をしない人生を送るのだと主張することもできます。私は自分の世界観をもとに、みずからの能力を利用してより良い世界を創っていきます」

Benioffの言葉は空約束ではない。彼は社会的問題を解決を目指すという約束を実行している。2016年、BenioffはSalesforceがもつ経済的な影響力を利用してジョージア州とノースカロライナ州の反LGBTQ法案を否決させようと試みた。そのような差別的な法案を通すことがあれば、Salesforceはそれらの州におけるビジネスから撤退すると脅したのだ。

さらに今年、彼はTony ProphetをSalesforceのChief Equality Officerに任命している。これは、これまで多様性の欠如をたびたび指摘されてきたテック業界にとって前例のないレベルの進歩だといえる。この人事を発表するプレスリリースでSalesforceは、Prophetを「基本的人権と社会正義の擁護者」だと評している。

アインシュタインがSalesforceに加わる

Salesforceは、常に最先端のテクノロジーをプラットフォームに取り込む企業であると自負している。同社による今年最大の発表は人工知能に関するものだった。今年9月にSalesforceが発表した同社初の人工知能イニシアティブは、「Einstein」と名付けられている。Einsteinは1つのプロダクトではなく、Salesforceのプラットフォームに人工知能を導入するためのアプローチのようなものである。

長らくの間、CRMツールは営業員が顧客情報を記録するためのツールだった。AIとCRMの融合によってSalesforceが目指しているのは、営業員に情報を与えることで彼らを積極的にサポートするようなツールだ。つまり、CRM(を含むSalesforceプラットフォーム)自体が営業員に指示や提案を与えることで彼らをアシストするのである。どの企業へ営業をかけるべきか、そして、その前にどのニュースに目を通しておくべきかなどを教えてくれるのだ。

その試みはまだ始まったばかりだが、前述したようにSalesforceはMetaMindの買収によって優秀な人材を獲得し、すでに人工知能を活用したツールの構築を始めている。今後、人工知能こそがSalesforceのツールによって提供される価値の大部分を占める可能性もあるだろう(もちろん、AIに力を入れているのは他社も同様だということは述べておく必要がある)。

失敗

2016年におけるSalesforceの挑戦がすべて成功に終わった訳ではない。ソーシャル企業を買収するという彼らの試みは失敗しているのだ。その1つが、6月にMicrosoftが260億ドルという巨額資金を費やして買収したLinkedInだ。このソーシャル企業がもつデータには非常に大きなポテンシャルがあり、Salesforceのような企業にとってLinkedInはとても魅力的な買収案件だった。それに気がついたMicrosoftは、LinkedInをグループに迎え入れるために巨額の資金を喜んで支払った。そのデータをMicrosoftに供給し、Salesforceがそのデータにアクセスすることを防ぐことが目的だ。

260億ドルという巨額な資金はSalesforceが支払える許容範囲をゆうに超えた金額だった可能性が高いが、Benioffによれば、同社にはLinkedInに買収金額を提示するチャンスすらもなかったという。この市場の流れに乗り遅れるのを防ぐため、Salesforceは9月に他の企業の買収を試みる。LinkedInと同じくデータを豊富にもつソーシャル企業、Twitterだ。Twitte買収の噂が即座に広がる一方で、Salesforceのシェアホルダーたちは困惑していた。彼らは、TwitterのデータにSalesforceが感じていた程の価値を見出だせなかったのだ。

株価は下落し、取締役はその買収に難色を示しはじめた。Benioffは引き下がるしかなかった。彼はのちに、この買収が広範囲に報じられるきかっけとなった情報のリークには困惑させられたと語り、そのようなリークは過去に経験したことがないと話している。

しかしその後、Twitter買収の噂以上に大きなリークが発生することになる。10月19日、Wall Street JournalはSalesforceの取締役であるColin PowellのEメールから1つのプレゼンテーション資料を発見する。そのプレゼンテーションにはSalesforceが買収を狙う大小さまざまなSaaS企業の名前が書かれていたが、そこにはTwitterの名前は無かったのだ。おそらく、BenioffはTwitterを買収できる可能性は低いと見ていて、良いチャンスがあれば買収しようというくらいに考えていたのだろう。それも結局は上手くいかなかったのだが。

どんな企業でも、まったく失敗をせずに1年を終えることなど不可能だ。企業であれ人間であれ、成功する時もあれば失敗する時もある。達成できる目標もあれば、達成できずに終わる目標もある。しかし、そのような失敗と成功を平均してみれば、Salesforceにとっての2016年は良い1年だったと言えるだろう。彼らにとっての挑戦とは、2017年もその好調さを維持することなのだ。

[原文]

(翻訳: 木村 拓哉 /Website /Facebook /Twitter

リセットボタンを押したGoogle

google-reset

Googleはこれまで8年間にわたり、1年を通して最大のイベントであるI/O開発者会議をいつでもサンフランシスコで開催してきた。

しかし、今年はキャンパスのすぐ横にあるマウンテンビューの円形劇場に移動した(しかも屋外だ)。今振り返ってみれは、その動きは象徴的なものに感じられる。多くの点で、2016年は、Googleにとって変化の年だった:驚きをもって迎えられたGoogle/Alphabet再編成以降最初の1年が経過し、Googleがハードウェア、クラウド、そしてエンタープライズ真剣に取り組んだ年でもあった。業界全体を見ると、2016年はAIと機械学習の年でもあった、そしてGoogleはそこで最先端を走っていた。

ではここで、Googleのミスを正しく認識してみよう:メッセージングアプリのAlloDuoのローンチは皆を混乱させ、殆ど使われていない;スマートウォッチには苦労を重ね、そしてAndroid Wear 2.0のの出荷を来年1月初頭に遅らせたとしても彼らのウェアラブル戦略を助けるものにはならないだろう;GoogleのレゴのようなスマートフォンプロジェクトProject Araも突然の死を迎えた

しかしGoogleが提供するプロダクトの数を考えれば、同社がしばしば的を外してしまうのも無理はない。なので、良い部分に目を向けてみよう。

昨年Googleはプロダクトポートフォリオを明確化し、以前はふわふわとうろついていた、潜在的に収益性のある市場に狙いを定めた。ハードウェアがその分かりやすい例だ。様々なハードウェア製造業者たちと、実質的にAndroid携帯のレファレンスとなるNexusブランドを何年も造り続けて来たが、Googleは今年その努力を捨てて、自身の名前とブランドの下にPixel携帯電話を立ち上げた。

それ自身大したことだったが、GoogleはさらにGoogleホーム (Amazon Echoへの挑戦)、Google Wifi 、新しいChromecastドングル、そしてDaydream VRヘッドセットなども立ち上げている。これほどの量のハードウェアがGoogleから発表された前例はない、しかもこれらのほとんどすべてがゼロから開発されたものだ。

グーグル・ホームオレンジ

Googleが独自のハードウェアを作ることについて真剣に取り組んでいるという証拠が必要な場合は、そのリストをもう一度読み直して欲しい(そこにPixel Cタブレットを追加することもできるだろう、これは2015年後半にローンチされて以来ずっと残っているものだ)。

これらの沢山のプロダクトとGoogleの全体的なAIに関する野望の中核にあるのが、自社のプロダクトラインを横断して動作する会話型パーソナルアシスタントとしてGoogleが構築しているGoogleアシスタントだ。

機械学習とAIに対する同社の関心はもちろん、新しいものではない、このアシスタントは、長年にわたるGoogleナレッジグラフや他のプロジェクト(Google開発している独自の機械学習チップなども含む)の成果の上に構築されている。

しかし、2016年のGoogleは、消費者に役立つAIの賢さを強調するための、沢山の新しい切り口を見つけた。Googleホームのアシスタントは市場に最初に出されたものではないが、私はAmazonの現在の成果よりもよりスマートでより便利だと考えている。そして、GoogleはまたTensorFlowや他のプロジェクトで、自分自身の仕事を再現し改善したツールを開発者コミュニティにバラ撒くことで、最後には自分自身に成果の戻ってくる種まきを行う方法を習得した。

GoogleはまたMicrosoftやその他の競合相手に生産性の分野で戦いを挑む際に、そのAIを自身の生産性ツールに持ち込み始めている。これらのツールは、以前はGoogle Apps for Work(あるいはEducation)という名前で呼ばれていたものだ。今年、Googleはその名前があまり良いものではないと判断し、その代わりに「G Suite」という名前を使うようになった。私はその名前を気に入ってはいないが、これもまたGoogleが期待を上回ろうと努力している証拠の1つだ。

おそらく最も明確にGoogleに起きた変化を示す1つの領域は、Googleクラウド(これも新しい名前だ)部門である。Googleは9月後半の小規模の非公開イベントで、G Suiteならびに開発者と小規模ビジネスのためのすべてのプロダクトがGoogleクラウドのもとに収まったことを発表した。内部的には、Googleはこれらの活動のすべてを指す名前として「Googleエンタープライズ」を使用していたが、どういうわけかこの名前はお気に召さなかったようだ。

そうした多くの変化、そしてAmazonとMicrosoftがここ数年で大きな前進をみせる中で、生産性ツールとクラウドプラットフォームにあまり手を掛けてこなかったGoogleが、ついにエンタープライズ市場に真剣に取り組むもうとする明らかな新しい取り組みを受けて、2015年にGoogleはDiane Greeneを取締役として迎えることになった。彼女の参加で、Googleは競合他社にそうした儲かる市場を譲るつもりがないことを示したのだ。

昨年から、AWSとAzureに対する競争力を高めるためにGoogleはそのクラウドプラットフォームのためのより多くのデータセンターの開設を始め、沢山のクラウドプロダクトを立ち上げている(一連の機械学習に基づくサービスも含まれている)、そしてコアとなる開発者プラットフォームFirebaseを立ち上げ、企業ユーザーにG Suiteアプリの使い方を教えるための教育会社も買収した。さらには企業向けの省コードアプリ開発ツールもローンチした。また、大企業のためにより役立つように、G Suiteアプリに数多くのアップデートを施した。

これらのほとんどは小さな動きだが、これらすべてを合わせてみるとGoogleがエンタープライズ市場に対しての取り組みに対してリセットボタンを押して、その市場を真剣に追い始めたことがわかる。

Alphabet/Googleの再編成は、おそらくこの変化を後押しするものだ、しかしそのことで事態を複雑にもしている。例えば、以前はGoogleの自動運転車のプロジェクトとして知られていたWaymoは、現在はAlphabetの子会社である。しかしそれはGoogle自身のプロジェクトを探す目的のためのもののようだ、実質的にすべての収益の源となり続けている広告機械以外の収益を探そうとしているのだ。

来年はどうだろう?Google I/Oは再びモスコーンで開催される、しかしGoogle自身の再発明はまだ終わっていないと思う。

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(翻訳:Sako)