手持ちのファッションアイテムから最適なコーディネートを提案する「ベストスタイルミー」

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エモーシブは6月5日、男性向けのファッションコーディネート提案アプリ「ベストスタイルミー」のiOS版を正式公開した。Android版は2014年10月に公開されている。

人力とアルゴリズムで最適なコーディネートを提案

ベストスタイルミーは、ユーザーが質問に回答して自分の服の好みを選択した上で、所有している、もしくは購入を検討しているファッションアイテムの写真を撮影すると、24時間以内にそのアイテムを使った最適なコーディネートを提案してくれるサービス。

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コーディネートの提案は、人力での画像判定と、独自のアルゴリズムを組み合わせて行う。アップロードされた写真に対して、そのファッションアイテムがシャツなのかジャケットなのかという「種類」やアイテムの「色」、半袖か長袖かといった「袖丈」などをまず人力で判定。その上で機械的に最適なコーディネートを提案する。

人力でのチェックが入ることもあって、ECサイトで見かけるような背景白抜きできっちり撮影した写真でなくとも利用可能。例えばコーディネートを知りたいアイテムを着た自分自身の写真をアップしてもいいのだそうだ。写真を数多くアップデートすることでユーザーの好みを学習し、さらに最適なコーディネートを提案してくれる。ただ、人力ということでどこまでの件数を処理できるかというのはちょっと気になるところだけれども。

サービスを提供するエモーシブは2012年11月の設立。これまでにインキュベイトファンドおよびディー・エヌ・エー、プライマルキャピタルから資金を調達している(金額は非公開)。

スタイリストの「ロジック」をシステムに落とし込む

エモーシブ代表取締役の坂本慧氏は、新卒でホリプロに入社。3年2カ月芸能人のマネージャーを務めたのちに起業を志した。インキュベイトファンドが主催する起業支援プログラムの「Incubate Camp 4th」にも参加している。papeboy&co.(現GMOペパボ)創業者の家入一真氏が自由な発想で次々とサービスをリリースしているのを見て、自らもサービスを立ち上げたいと思ったという坂本氏だが、前職で出会ったスタイリストとのやりとりがベストスタイルミーの企画に繋がったと説明する。

「スタイリストはセンスや感覚でファッションアイテムを選んでいるように見えるかも知れないが、実は何と何が似合うのかということを非常にロジカルに考えている。ロジカルなのであれば、その考え方をシステムに落とせないかと考えた」(坂本氏)

僕もそのアルゴリズムのベースになっているスタイリストへのヒアリングシートの一部を見せてもらったのだけれども、「○○の柄は××な体型には合わない」といったことからファッションアイテムの区分、配色の組み合わせに関する内容まで幅広い。坂本氏いわく「スタイリストには合計100時間以上話を聞いている」(坂本氏)とのこと。これに季節ごとのトレンドなどの情報を追加してアルゴリズムをアップデートしている。

ダウンロード数は4万件に満たない程度でまだまだこれからという数字だが、「リテンションは高い」(坂本氏)とのこと。コーディネートアプリと聞くと、スタートトゥデイの「WEAR」などを思い浮かべるが、坂本氏は利用のニーズが違うと説明する。

「ゼロベースでコーディネートを考えるのであればWEARでいいと思うが、ベストスタイルミーは自分の持っているファッションアイテムを軸にコーディネートを提案してくれる」(坂本氏)。今はアップロードした写真以外、ユーザーの所有していないファッションアイテムを組み合わせてコーディネートを提案しているが、「自分が持っているファッションアイテムだけでのコーディネートを提案する機能が欲しい」という要望も少なくないという。

現状、収益源はファッションアイテムのアフィリエイトのみ。今後はオプション機能の提供などでユーザー課金をする予定だという。

医薬品配達スタートアップのPillPackが5000万ドルを調達し、薬局に取って代わる

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調剤製薬の配達スタートアップ PillPackは、今回行ったシリーズCのグロースラウンドで5000万ドルを調達した。医薬品の小売店事業を開始し、RiteAidやWalgreensといった既存の薬局に取って代わる計画だ。

このスタートアップは2013年にローンチし、ユーザーのドアの前まで定期的に医薬品を届けるサービスを展開している。ユーザーは毎回薬局に足を運んで、医薬品を取りに行く必要がなくなる。PillPackは、保険会社と医師と組み、必要な医薬品をまとめ、独自のパッケージに封入する。個別のユーザーに合わせた処方薬やビタミン剤、その他のカウンター越しに受け取る医薬品を分類し、2週間ごとにユーザーが指定する配達先へと届ける。

PillPackはこれまでの2年間、堅実で順調なグロースを見せてきた。アメリカの48の州に渡りサービスを展開し、100万を超える医薬品のパッケージを送付した。彼らは配達分野でのサービスを展開しているが、今回新たに物理的な薬局をサービスの一環に加える。スタートアップとしては珍しい取り組みで、従来の小売販売を行うドラッグストアに対抗する。

しかし、医薬品の配達を行う潜在的な競合は多い。Healのような医者のオンデマンドサービスでも、医者の診療を受けた後に、必要な医薬品が自宅まで届けられる。忘れられているかもしれないが、タクシーを呼ぶサービスと類似したスタートアップのSidecarも近い内に、医薬品をユーザーの自宅まで届けるサービスを開始すると伝えている。医薬品関連のサービスで物理的な店舗の展開は、PillPackにとって他の競合にはないサービスの差別化につながるかもしれない。

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CEOのTJ Parkerは、この新しいドラッグストアは、見逃されている既存の薬局での体験に更にプラスするものだと話す。彼の目標は、昔ながらの近所の気さくな薬剤師を取り戻し、「カスタマーにとって更に心地よい体験」を提供することだとTechCrunchの電話取材に応えた。

資金のほとんどは、物理的な薬局を大きな都市部に設置することと、今後の業務拡大を見据えて、セールス、エンジニア、オペレーションの拡充に使用する予定だ。設置する薬局には2つの役目がある。PillPackが自宅に送付するより早くユーザーが医薬品を手に入れられるようににすることと、知識豊富な薬剤師にいつでも相談することができるようにすることだ。

Parkerは具体的にどこに薬局を設置するかについては口を閉ざしたが、大きな都市であるサンフランシスコかニューヨーク辺りを検討しているそうだ。PillPackの初の薬局は今年の終わり頃までには出店し、運営を開始したいという。

Charles River Ventures (CRV)が今回のラウンドを牽引し、Accel Partners、Menlo Ventures、Atlas VentureとSherpa Venturesも参加した。PillPackは昨年、累計1275万ドルを調達している。今回の調達額を合わせると、累計で6275万ドルを調達したことになる。

PillPackの役員にCRVのGeorge ZacharyがAccel PartnersのFred Destin、Atlas VentureのJon KarlenとFounder CollectiveのDavid Frankelらに加わり、ディレクターを務めることになった。

[原文へ]

(翻訳:Nozomi Okuma /Website/ twitter

カード決済だけやるのではなく、金融システムを作りたい—メタップスが電子マネーを提供する理由

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2月に43億円の資金調達を実施し、人工知能によるデータ解析を元にしたアプリの分析・広告配信事業を展開しているメタップス。今では広告のほかに宇宙やロボット、オンライン決済などの事業を展開している。

そのオンライン決済プラットフォームである「SPIKE(スパイク)」に関するアップデートがあった。メタップスは6月2日、SPIKE上でプリペイド型電子マネー「SPIKEコイン」の提供を開始したことを発表した。

SPIKEは、ウェブサイトにリンクを設置するだけで利用できるオンライン決済サービス。月額100万円までの決済であれば無料で利用することができる。2014年3月にクローズドベータを開始。同年4月から一般公開をしている。

SPIKEコインはそのSPIKEユーザー向けの電子マネーとなる。大きな特徴は、毎年保有額の1%の電子マネーをユーザーに付与すること。また、SPIKEで決済した金額の最大5%の電子マネーが付与されるという。

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カード決済をしたいのではなく金融のシステムを作りたい

さてここまでが昨日発表されたリリースの内容。それではなぜメタップスが電子マネーを提供するのか? 代表取締役の佐藤航陽氏に聞いたところ、「そもそもSPIKE自体、決済だけをやりたかったのではない。金融のシステムを作りたかった」という答えが返ってきた。

SPIKEを立ち上げた際にも、「現在の『お金』が作り出した世界全体の矛盾を解消するのが目的」「通貨や経済システムも競争にさらされたほうが切磋琢磨してより健全になると考えていた」と語っていた佐藤氏。決済サービスは、そんな世界を実現するための第一歩だったのだという。「ポイント・電子マネーは加盟店が大事。まずはカード決済でその面を取れないか考えた。加盟店も増え、そろそろ(SPIKEコインの提供に向けて)いい時期になった」(佐藤氏)

メタップスがSPIKEで考えている金融のシステムだが、楽天の掲げる「楽天経済圏」のようなモノを作ることが当面の目標のようだ。加盟店の決済をおさえ、ポイントで顧客を囲い込みをする。顧客は共通のIDで、さまざまなサービスを利用していくというものだ。

とはいえ、SPIKEコインを提供する理由はそんな構想をぶち上げるためだけではない。SPIKEコインの流通によって、決済手数料が削減できるというメリットがあるという。通常カード決済を行うのであれば、トランザクションごとにカード会社の手数料がかかる。しかしそれがポイントに置き換われば同社のサーバ上での処理で済むため手数料がかからなくなる。

またメタップスでは、SPIKEコインで商品を購入したり、商品購入時にSPIKEコインが付与される「SIPKEマーケット」も立ち上げている。現状では商品数が20点もなくて寂しい状況なのだが、今後は希望があればSPIKE加盟店の商品も販売していく予定だ。「集客に困っている店舗もいる。店舗が希望すればその支援もしていきたい」(佐藤氏)

48億円のファンドで「大阪発、世界」を支援—投資独立系VCのハックベンチャーズ

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地方創生というキーワードを聞くようになって久しいが、大阪をはじめとした関西のスタートアップを取り巻く環境もこの2年でかなり変化したんだそう。2013年に大阪市が起業家支援の拠点「大阪イノベーションハブ」がオープン。そこを拠点に多くの人材が交流しており、現在も週に数回テック系のイベントが開催されている(TechCrunchでもハッカソンを開催している)。

そんな活動の中から生まれる「大阪発、世界」のスタートアップへ投資する独立系ベンチャーキャピタルのファンドがスタートした。

大阪市や中小機構、銀行のほかに阪急電鉄などが出資

大阪市に拠点を置くハックベンチャーズが組成した投資ファンド「ハック大阪投資事業有限責任組合」。5月に一次募集を終了したこのファンドの規模は48億円。最終的には総額100億円規模まで拡大する予定だ。LP(有限責任組合)には大阪市のほか、独立行政法人中小企業基盤整備機構、みずほ銀行、三井住友銀行、三菱東京UFJ銀行、積水ハウス、阪急電鉄、日立造船、Mistletoeの名前が並ぶ。

5月28日に発表されたプレスリリースによると、このファンドでは、「関西を基盤としつつ、米国シリコンバレーなどの最先端地域と密な連携を取ることにより、ITによる産業革新の波を引き寄せ、日本/関西に世界的に競争力のある事業を創造することを目指す」とのこと。直接ハックベンチャーズに聞いたところ、「大阪をベースにしながらも、地域の制限はせず、グローバルに進出するスタートアップを支援していく」との回答を得た。

パートナーを務めるのは、コンサルを経てシリコンバレーでシード投資やインキュベーションを手がけて来た校條浩氏のほか、東レでCVCを立ち上げたのち米国スタートアップと日本企業のマッチングなどを手がける山舗智也氏、日本テクノロジーベンチャーパートナーズの金沢崇氏の3人。校條氏や山舗氏は大阪とシリコンバレーを行き来して活動することもあり、「シリコンバレー経由でアジアや世界に出たいスタートアップも歓迎」(ハックベンチャーズ)する。

投資対象とするのはシード・アーリーステージからシリーズAのスタートアップまで。投資額は1社数千万円〜数億円程度を想定する。投資対象となるのはIoTのほか、住宅や自動車、医療といった、「ITによりスマート化が急速に進む領域」が中心となる。

LPとともに投資対象を育成

関西では最大規模の独立系VCファンドが誕生したワケだが、気になるのは投資対象となるスタートアップの数だ。冒頭のとおり、大阪のスタートアップ環境が変化しているのは事実だけれども、資金を調達して、Jカーブを掘って、早いスピードでの成長を目指すような起業家がはたしてどれだけ居るのだろうか。

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ハックベンチャーズでもそのあたりは課題として認識しているようで、「(スタートアップの)数は正直あまり多くない」と語る。そこで同社では「ハックラボ」というラボ機能を用意。単に出資をするだけでなく、LPの支援のもとで事業創造・育成をしていくそうだ。例えば阪急電鉄であれば鉄道から不動産まで様々なビジネスがあるし、積水ハウスならばスマートホームなんかも興味があるところだろう。詳細はこれから決めていくようだが、企業と組むことで具体的なビジネスの「ネタ出し」もしたいという。

「関西には中小企業気質の会社が多いが、一方でグローバルに出たいという声も聞く。そういう人たちにはハックラボを使ってもらいたい。ありきたりなキーワードだが、『大阪のものづくりとシリコンバレーのIoT』を組み合わせていきたい」(ハックベンチャーズ)

photo by
Yoshikazu TAKADA

クレディセゾン、FinTech特化のコーポレートベンチャーキャピタルを設立

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screenshot_371先日のGoogle I/Oでも決済サービスのAndroid Payが発表されたばかりだが、金融(Finance)とIT(Tech)を掛けあわせたいわゆる「FinTech」に注目が集まっている。そんなFinTech関連のスタートアップにも影響のありそうな動きがあった。

クレディセゾンは6月1日、国内カード業界初となるコーポレート・ベンチャーキャピタル、「セゾン・ベンチャーズ」の設立を発表した。資本金は1億円で、クレディセゾンの100%子会社となる。

クレディセゾンでは、これまでにもOrigamiやコイニーをはじめとしてスタートアップに積極的な出資をしてきた。新設したセゾン・ベンチャーズでは、シード・アーリーステージのベンチャーを対象により機動的に活動したいとする。

主な投資対象はFinTechの分野で新世代の金融・決済ソリューションに取り組むスタートアップ、もしくはカード会員資産や永久不滅ポイントなど、クレディセゾン固有の資源を活用し新たな経済活動を生み出すポテンシャルを持つスタートアップ。クレディセゾンでは、3500万人の顧客基盤、30年以上のカードビジネス経験でスタートアップを支援するとしている。

企業の規模やアイデアにもよるが、1社あたり数百万円〜数千万円をイメージしているとのこと。将来的には、数年で数十億円規模にまで投資規模を拡大していきたいと意気込む。

YouTuberキャスティングの3 MINUTE、女性向け動画メディア「MINE」ベータ版をローンチ

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LINE元代表の森川亮氏が立ち上げた女性向け動画メディア「C CHANNEL」が好調だという話は先日聞いたばかり。その森川氏の古巣であるLINEが投資ファンド「LINE Global Gateway」のほか、B Dash Venturesなどが出資する3 MINUTEも女性向けの動画メディアを展開する。同社は6月1日、「MINE by 3M」ベータ版を公開した。

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MINEでは、ファッションやライフスタイルといったテーマの女性向けの短編動画を配信していく。3 MINUTEの社内にコンテンツの制作チームを用意。配信企画から撮影、音源制作、編集までを基本的に自社で行う。月300本ペースでの動画制作と予定しており、初月100万ページビュー。MAU(月間アクティブユーザー)10万人、再生回数1000万回を目指す。

YouTuberキャスティングとメディア運営を事業の柱に

3 MINUTEは2014年11月の設立。女性YouTuberのマネジメントや動画制作を手がけてきた。同事業はすでに月間売上数千万円というところまで来ているそうで、1000本近くの動画が作られているという。

MINEでは、「YouTuberの事業でウェブ動画のノウハウがたまってきた。その検証結果を生かしていく」(代表取締役の宮地洋州氏)という。具体的な話を1つ挙げると、彼らが関わったYouTube動画の平均視聴時間は1分12秒と短い。そのため、動画は長くても3分程度に編集しているのだそうだ。

現在はベータ版として、「まずはユーザーの動向を見て今後の方向性を決めていく」(宮地氏)ということだが、将来的には動画広告や視聴データの収益化を進める予定だという。今夏にはスマートフォンアプリも提供する予定。このタイミングで本格的なビジネスを進めていく予定で、字幕付き動画の配信や、独自の動画配信プラットフォーム(動画は現在YouTubeで配信している)なども準備中だという。

UUUM、C CHANNELとは別の属性がターゲット

YouTuberのキャスティングという点ではUUUMなどがあるし、女性向けの動画メディアとしては冒頭に紹介したC CHANNELもある。どちらの事業も明確に競合が存在しているように見える。

宮地氏はまずUUUMについて「我々は女性YouTuberが中心で、ファッション系のタイアップ企画を担当することが多い。分野が違っている」と説明。C CHANNELについては、「10代〜20代の女性をターゲットにしているようだが、我々がターゲットにするのは25歳〜35歳の女性。狙っている属性が違う」とした。なによりもまず、動画メディアの市場自体がこれから作られていくものだとして、「一緒に盛り上げていきたい」と語った。

広告詐欺対策製品を開発するMomentum、SMBCやみずほなどから資金調達

クラッキングなどサイバー犯罪が攻撃者と対策者のいたちごっこになっているなんて話はよく聞くが、アドテクノロジーの進化につれて、不正に広告を出稿させる「アドフラウド(広告詐欺)」という行為が増えていることはご存じだろうか?

そんなアドフラウド対策で広告のパフォーマンスを向上させるサービスを展開するのがMomentumだ。同社は5月29日、SMBC ベンチャーキャピタル、みずほキャピタル、VOYAGE VENTURES、GMOベンチャー通信スタートアップ支援を引受先とした第三者割当増資による資金調達を実施した。調達額は約7000万円。GMOベンチャー通信スタートアップ支援はシードラウンドでも同社に出資をしており、今回は追加出資となる。

Momentumが提供するのは、アドネットワーク向けのアドフラウド対策プラグイン「Black Heron」と、広告主・広告代理店向けのアドフラウド・アドベリフィケーション(ブランド保護)機能を備える第三者配信ツール「Black Swan」。

アドフラウドとはどんな行為を指すのか? 具体的には、悪意のある媒体(広告出稿先)の運営者の指示でボットや人を使って意図的に広告を複数回表示・クリックするといったことから、インラインフレーム内などでの広告の大量表示、誤操作での広告クリックを促すなどさまざま。

海外では大きな問題になっているようで、2014年にはMercedes-BenzがRocket Fuelを通じて配信した広告は、人間よりも不正な出稿を促すボットに見られていたなんてニュースもあった。Momentumによると、米国ではインプレッションの10〜20%以上が不正な広告出稿だという調査データもあるそう。日本ではまだここまでアドフラウドは多いという状況ではないが、「(疑いがあるという意味で)グレーなものを含めると、インプレッションの5〜8%はアドフラウド」(Momentum代表取締役社長の大久保遼氏)なんだそう。

アドフラウドのイメージ

アドフラウドのイメージ

MomentumのBlack Heronでは、IPのチェックからはじまって約90種類の判断基準でアドフラウドの可能性の高さをスコア化してアドネットワークに提供。効果を生まない広告出稿を防ぐことで、アドネットワーク全体のパフォーマンスを向上させるのだという。

一方でBlack Swanではアダルトサイトや違法ダウンロードサイトなど、ブランドによっては出稿が不適切だと判断され、価値毀損が起こる可能性のサイトへの出稿を避けることができる。そのほか、アドフラウドに関する情報を広告主や広告代理店に提供するツールも展開している。

また現在、全自動のアドフラウド対策ツールも開発しているとのこと。このツールとBlack Swanによって、オンライン広告のCPAが3〜7%以上削減することが期待できるという。

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現在BlackSwanを利用できるのは、Google AdWordsやフリークアウトなど。詳細は以下のとおり。

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なお海外では、White OpsDoubleVerifyといったサービスも登場している。ただし大久保氏いわく、「海外ではボット対策が中心になっているが、日本では日本ならではの手法のアドフラウドも多い。人間への対策も必要になってくる」とのこと。

ロコンドがアルペンと資本業務提携、10億円の資金調達と同時にスポーツアイテムのECを開始

ロコンド代表取締役の田中氏()

ロコンド代表取締役社長の田中裕輔氏(左)とアルペン執行役員の白鳥明氏(右)

ロコンド代表取締役社長の田中裕輔氏(左)とアルペン執行役員の白鳥明氏(右)

靴を中心にアパレルやコスメを取り扱うECサイト「ロコンド」。運営のロコンドが5月28日、アルペンとの資本業務提携を実施した。

これにともないロコンドはアルペンを引受先とした第三者割当増資を実施し、10億円を調達した。出資比率は非公開だが、20%以下のマイナー出資となっている。同社はこれまで、Rocket Internetをはじめ、みずほキャピタル、ネオステラ・キャピタル、エキサイト、リード・キャピタル・マネージメント、伊藤忠テクノロジーベンチャーズ、ジャフコから合計35億円の資金を調達している。ロコンドでは、今回調達した資金で商材の調達や人材確保、システム開発、倉庫の拡大、プロモーションなどをすすめる。

あわせて、ロコンド内にスポーツファッションECサイト「LOCOSPO(ロコスポ)powered by Alpen Group」を立ち上げると同時に、ロコンドがアルペンの自社ECサイトの開発・運営を行う。

ローンチ時の体質を改善し、今期黒字へ

2011年2月に“日本版Zappos”をうたってサービスを華々しくスタートさせた靴のECサイト「ロコンド」。商品の当日無料配送、商品を自宅で試したあとでもOKな返品対応、電話・メールで相談を受け付けるコンシェルジュサービスなど、ユーザー目線のサービスを提供し、また同時にテレビCMも積極的に放映。Grouponなどへの出資でも知られるドイツのベンチャーキャピタルであるRocket Internetが出資し、「ECサイトの垂直立ち上げ」をうたっていた。

だが2012年2月期の決算は—東日本大震災の影響や、商材確保で苦戦したとも聞いたことがあるが—売上高約12億円、純損失約15億円。厳しい船出となった。

「売上は12億円(2012年2月期)から30億円、50億円と成長し、2015年2月期には75億円となった。今期には黒字化も見えるところまできた」——ロコンド代表取締役社長の田中裕輔氏はこう語る。

サービス開始当初は商品を自社で商品を確保し、定価で販売。さらに倉庫もアウトソーシングしていたが、体制を刷新。インポート商品を除いて消化仕入れ(委託)のモデルに変更し、倉庫のオペレーションも自社で行うなど、体質改善に取り組んできた。

「我々の最初の失敗は初年度で資金を突っ込みすぎたところ。(業績について)メディアで取り上げられることもあったが、徐々に体制を見直してきた。だが一方で、送料・返品無料やコンシェルジュ、即日配送というサービスについては最初から変えずにやってきた」(田中氏)

そんなロコンドだが、現在は靴を含めた「SBICS(Shoes:1.4兆円市場、Bag:1兆円市場、Inner:9000億円市場、Cosme:2.3兆円市場、Sport1.4兆円市場)」の7兆円市場に進出することを目指しているのだという。すでにアパレルでは海外ブランドと提携。さらにサマンサタバサのサイト運用支援でバッグの販売を開始しており、4月にはコスメの販売も始まった(試供品付きで、試供品が合わなければ返品無料なんだそう)。そして今回のアルペンとの提携でスポーツ領域の強化を進めることになる。

「ガチのスポーツ用品」しか売れなかったアルペン

アルペン執行役員でデジタル推進本部副部長 兼 戦略企画室長の白鳥明氏に聞いたところ、同社で課題だったのは「デジタル戦略」。ロコンドと組む前のアルペンのコーポレートサイトは、良く言えば古き良きWebデザイン、テック業界の言葉でいえばWeb 0.8ぐらいのデザインだった。ECも楽天市場などに出展する程度。「『ガチスポーツ』の商品では強みがあるが、ファッションやアパレル、スニーカーというものが売れなかった」(白鳥氏)

それを示す面白い例が、ファッション性の高いスニーカーの売れ方だ。最近人気のNewBalanceのスニーカーなどは、型番次第でファッション系のECサイトでは定価でもすぐに売り切れてしまう。だがそんな商品でもアルペンでは4割引でも商品が売れ残っていたのだそう。それを試しにロコンドで販売したところ定価で完売したそうだ。そんな背景もあり、ロコンドと組み、ファッションという切り口でECを展開することに活路を見出したというわけだ。またアルペン社内では3月にデシタル部門を再編している。

LOCOSPOとアルペンの自社ECサイトでは在庫を共有しており、サイトローンチ時には約1万点の商品をラインアップする。将来的には20万点まで拡大を見込む。

ビズリーチが求人検索エンジン「スタンバイ」公開、企業は無料で求人掲載

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年収1000万円クラスの人材と企業をマッチングする会員制転職サイトを運営するビズリーチが26日、ネット上の求人情報を横断検索できる「スタンバイ」を正式リリースした。業種、業態、雇用形態を問わず、全国の求人サイトに掲載されている約300万件が検索対象。検索結果ページからは掲載元ページに誘導する。PCやスマートフォン、タブレット、iOSAndroidアプリから利用できる。

求職者は職種や会社名などのキーワード、勤務地を入力すれば、著名な求人サイトが掲載する正社員からアルバイトまで求人情報を一括で探せる。給与や雇用形態、最寄駅でも絞り込める。例えば、キーワードに「AOLオンライン・ジャパン」、勤務地に「東京都」と入力すると、いくつかのサイトで募集中の求人が出てくる。検索結果をクリックすると各サイトに飛ぶ仕組みで、求人情報に特化したGoogle検索のようなイメージだ。

企業や店舗は、無料でスタンバイに直接求人を申し込むことも可能。専用の管理画面に求人情報を入力するだけで、PCとスマホに最適化した求人ページを作成、スタンバイ上に公開できる。特徴的なのは、求人情報の作成から採用希望者の管理までが無料なことだ。求人ページがクリックされるたびに料金を払う必要もなければ、採用決定時の手数料もない。

AOLオンライン・ジャパンで検索すると、いくつかの求人サイトに掲載されているページがヒットする

AOLオンライン・ジャパンで検索すると、いくつかの求人サイトに掲載されているページがヒットする

リクルート傘下のindeedと何が違う?

求人市場に詳しい読者であれば、リクルートが2012年9月に買収したindeedに似ていると思ったかもしれない(実際に検索結果ページはよく似ている)。

indeedでAOLオンライン・ジャパンと検索した画面

indeedでAOLオンライン・ジャパンと検索した画面

indeedは無料で求人ページを掲載できるが、クリックされるたびに料金が発生するクリック課金型の料金体系を採用している。さらに、掲載自体が有料の「スポンサー求人」を利用すれば、検索画面の目立つ位置にハイライト表示できる。これらの点が「完全無料」をうたうスタンバイとは異なる。

スタンバイの収益源は、検索結果ページに表示されるヤフーの「スポンサードサーチ」による売上のみ。ビズリーチの南壮一郎社長は「黒字化は5年目を見込み、それまでは投資フェイズ」と意を決している。同社はハイクラス層を対象とした「ビズリーチ」、20〜30代の若手をターゲットにした「キャリアトレック」という転職サービスを手がけるが、「既存事業で稼いだ収益をスタンバイに再投資する。シナジーも一切考えていない」という。

「求人メディアのあり方をディスラプトしたい」

2015年版中小企業白書によれば、人材採用に悩んでいる企業の56%は「コストに見合う効果が期待できない」と回答。特に地方の中小企業の採用課題は深刻だと、南氏は指摘する。

「採用コストがないからハローワークを使うが、母集団が少なくて良い人材が獲得できない。この無限ループに陥っている。全国の求人情報が探せるスタンバイが無料で採用できるようにすることで、この流れが変わる。求人メディアのあり方をディスラプトしたい。」

完全無料かどうかの違いはあれど、競合はindeedだろう。55カ国以上、28言語で展開、世界で1億5000万人以上の月間アクティブユーザーを抱えるindeedだが、日本での存在感はまだまだ。スタンバイも将来的にはクリック課金を導入するかもしれないが、無料モデルを武器に2016年5月末までに求人掲載社数5万社、登録求人掲載数20万件を目標に掲げている。

ビズリーチ南壮一郎社長は、求人メディアのあり方をディスラプトしたいと語る

ビズリーチ南壮一郎社長は、求人メディアのあり方をディスラプトしたいと語る

レジャー予約サイト「アソビュー」と提携、地方事業者の採用支援

26日にはレジャーの予約サイト「asoview!」を運営するアソビューと業務提携契約を締結。asoview!を利用する全国のレジャー事業者に対して、無料の採用サービスを提供することも発表している。

アソビューは2700店舗の事業者と提携し、ラフティングや陶芸体験といった約300ジャンル、約6000プランのレジャーを掲載。今年4月にはJTB、YJキャピタル、グロービス・キャピタル・パートナーズ、ジャフコを引受先とする総額約6億円の第三者割当増資を実施している。

資格講座を半額以下で、オンライン予備校「資格スクエア」が1億円調達

資格スクエアはこれまで手元に置いていた分厚い本が不要になると語る、サイトビジットの鬼頭政人社長

「資格スクエア」は司法書士や行政書士、弁理士といった資格試験のオンライン予備校だ。教室の賃料や教材の印刷費といった運営コストがない分、一般的な予備校の半額以下でオンライン講義を提供している。

例えば、国家試験の最難関と言われる司法試験の予備試験コースは19万8000円、行政書士コースは9万6000円、宅建コースは3万2400円といった感じだ。わかりやすく言えばTACやLECといった資格取得学校のオンライン版で、「リアルを超えるオンライン予備校」を目指している。

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「従来のeラーニングはリアル予備校の劣化コピー」

2013年12月に開校。講義の動画は4000本を超え、毎月100本ペースで増えている。

今年2月には、資格試験勉強に必要な要素をオンライン化した学習システム「資格スクエアクラウド」を導入。司法試験の予備試験コースでは、オンライン上でレジュメ(教材)を閲覧・編集したり、条文や判例を参照するページヘのリンクを追加した。従来は紙の教材にメモしたり、気になる条文や判例が出てくれば動画を一時停止して、手元に置いてある参考書で調べていたのが、すべてオンライン上で完結するというわけだ。

各受講者の単語帳を共有する「クラウドスタディ機能」も追加した。例えば、司法試験で覚えておきたい規範をまとめる単語帳(論証集)であれば、最新判例のエッセンスなどを盛り込めるようになる。「最新判例を踏まえることで、採点者から『こいつ知ってるな』と思われる答案が作れる」と、資格スクエアを運営するサイトビジットの鬼頭政人社長はその効果を強調する。

従来のeラーニングについて鬼頭氏は、「リアル予備校の劣化コピーに過ぎない。せいぜいレジュメがPDF化されている程度」と辛辣だ。「時間や金銭的にリアル予備校に行けない人が、やむなく選んでいる部分もある」。

各受講者の単語帳を共有する「クラウドスタディ機能」

各受講者の単語帳を共有する「クラウドスタディ機能」

忘却曲線に基づいた復習システムで記憶の定着図る

5月26日には、教育領域に特化した独立系VCのVilingベンチャーパートナーや複数のエンジェル投資家を引受先として、約1億円の第三者割当増資を実施。調達した資金をもとに、講義終了後に答える演習機能を追加する。

演習は単なるマルバツ問題ではなく、「もちろんマル」「たぶんマル」「たぶんバツ」「もちろんバツ」という選択肢を提示。マルバツ問題に「自信の有無の要素」を加える。現在開発中の忘却曲線に基づいた復習システムでは、不正解だった問題だけでなく、自信がなくて正解した問題も出題し、記憶の定着を図る。

現在の会員数は約3000人。ネット経由の申し込みに加え、月1〜2回ペースで開催するセミナーを通じても受講者を募り、今年度中に1万人を目指している。なぜリアルのセミナーを開くのかというと、実際に会ってから入会した受講者のロイヤルティが格段に高いからなのだとか。

「確かにセミナー経由の会員獲得はスケールしませんが、参加者の方が学習継続率が高く、口コミで広めてくれたりします。SEOやリスティングだけじゃ語れない世界が、そこにはあるんです」。

資格スクエアはこれまで手元に置いていた分厚い本が不要になると語る、サイトビジットの鬼頭政人社長

資格スクエアはこれまで手元に置いていた分厚い本が不要になると語る、サイトビジットの鬼頭政人社長

受託から再びスタートアップ、「新設分割」でSprocketが分離独立して資金調達した理由

photo02「2000年創業で15年ほど走ってきました。2013年で年商10億円程度と、それなりにビジネスは安定してましたが、受託ビジネスはスケールしない。このまま行くのか? ホントは自分は何がやりたかったんだっけ? そういうことで悩んでいたとき、投資家から会社を3社に分けてはどうだとアイデアをもらったんです」

こう語るのは2014年4月に法人登記し、最近新たに1.2億円の資金調達をしたSprocketの創業者で代表取締役の深田浩嗣氏だ。Sprocketは、深田氏が2000年に創業した「ゆめみ」から分離独立した「スタートアップ企業」だ。

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スタートアップにとって受託は麻薬

スタートアップ企業にとって受託ビジネスは麻薬に似ている。創業チームがエンジニアリングに強いと、つい受託案件に手を出してしまう。大きなビジネスを立ち上げようという志で創業したものの、プロダクトの収益化の道筋が見つからないとか、資金が底を尽きそうとか、さまざまな理由で受託案件を取ってしまう。もともとエンジニアリングに自信があるチームであれば、いつでも自分たちの食い扶持を確保する売上ぐらいは作れたりする。

「麻薬」などと不穏な例えはしたが、受託開発ビジネス自体に悪いことは何もない。上手く回せば顧客は喜ぶし、収益もあがる。ところが、受託案件を回し始めると一定のリソースが費やされることになって、肝心の自社プロダクトがなおざりになる。しかも、受託ビジネスの収益がPL上インパクトを持ち始めると簡単にはヤメラレナイ体質になりがちだ。こうした理由から、成功しているスタートアップ企業の創業者が「受託は麻薬。絶対手を出してはダメ」というのを聞くことは少なくない。

10年以上に渡って受託ビジネスをしてきて、「新設分割」という耳慣れないスキームを使ってスタートアップ企業として再スタートを切ったSprocketの深田氏。その歩みは、多くの起業家やスタートアップにとって参考になる話だと思うので、少し長くなるが、まとめてみたい。

iモードブームで受託ビジネスは順調に

ゆめみは「モバイルをやろう」という方向性だけを定めて2000年に創業した。ちょうど1999年2月にiモードが登場したころで、すぐにケータイブームの波に乗った。「最初は自己資金で、ほとんど受託をやっていた」といい、企業の公式サイトを受託で作った。「作った瞬間に、ユーザーが一気に大量にくるような感じ。月額300円の有料サービスでも、すぐに数十万単位でユーザーが集まった」。まだケータイが小さなモノクロ画面で、着メロも単音という時代だ。同時期にケータイブームの波に乗ったIT企業にインデックスやサイバードなどがある。占いコンテンツや着メロなどがビジネスになっていた。

photo01ゆめみが知られるようになったのは、ケータイ向けショッピングサイト「ガールズ・ショッピング」を他社と協業で立ち上げた2001年から2005年のこと。「すぐに月商2、3億円になった。グローバルで見るとモバイルECの先進事例だった」(深田氏)という。ただ、レベニューシェアに絡んだ金銭問題で2005年に協業会社との関係が悪化。ゆめみは開発を受け持っていたが、「ECなので先方に売上が入る。システム開発のスピードが遅いというので、いきなり支払いが止まった。先方は金をもらいたかったら軍門に降れという感じだった。うちもキャッシュリッチでもなかったし、何カ月か入金が止まると苦しい。この人達のものを作るために会社を始めたわけじゃない」ということで、裁判にこそならなかったものの、合意の上で決裂するという結果になった。

事業会社やVCから資本を入れて、2005年にまた受託に業態を転換した。営業はおらず、社長の深田氏自らが案件を獲得していたが、「ニッチだったのもあって営業で案件を取るのに困ったということはなかった」という。当時の様子を深田氏はこんな風に振り返る。

「2004年、2005年にVCにお金を入れてもらった。エンジニアが多い会社なので、そこは評価を受けていたと思う。ただ、「こいつは助けてやらないと」という意識があったのではないかと思う。投資だから、もちろんビジネス的な判断もあったのだとは思うが、個人的にはVCに助けてもらったという風に感じている」

「まだ20代でワケが分からない状況だったこともある。40人の社員がいたが、いろいろとプロジェクトをやっている中で大型プロジェクトがあって、それが終わると、いきなり社員のうち半分の仕事がなくなるようなことが起こった」。

Badgeville、ゲーミフィケーションとの出会い

2007年ごろから風向きが変わった。スマホの波がやってきて、大手ファーストフードチェーン向けに「かざすクーポン」など先進的なシステム開発に携わることになる。いまでいうオムニチャネル・マーケティングの走りで、ビックカメラやトイザらスといった大手から受注し、事業基盤が安定してきた。

2010年頃、ゆめみに投資していたインキュベイトファンドの赤浦徹氏に「ゲームをやってみたら」とアドバイスを受けた。グリーやKLabが伸びていたし、mixiやMobageといったプラットフォームがあったので自明の選択ではあった。一方で、深田氏自身はゲーマーではなく、「なんでみんなゲームやるのかな」と疑問に思って敬遠していたタイプだそうだ。

結局、ゆめみでは3、4本のタイトルを出しはしたものの、企画・運用の両面でメンバーのスキルセットの不一致や市場参入のタイミングとして最後発だったことなどから、ゲーム事業は上手く行かずに撤退した。ただ、ゲームをやってみたことで見えてきたものがあるという。

photo03「自分でもゲームをやり始めたら、そのうち1つにハマった体験があるんです。カヤックが出した野球のゲーム。トータルのメカニズムがあって、良くできている。達成感や上達感、そのサイクルが良くできていて、なるほど、こういうことか、ゲームって良くできてるなと、その仕組に関心をもったんです。例えば、ただ煽るだけだとユーザーはお金を使いません。でもゲームをやり続けていくうち、例えば通勤の行き帰りに、このキャラを育てるのに1週間かかる。それを100円買えるなら、それは安いとなる。あ、なるほど、こうやってハマるんかと」。

「要するに心理学だなと直感的に理解できた。これはゲームじゃなくてもいいんじゃないのかって思った」

2010年というのは、ちょうどゲーミフィケーションという言葉が出てきたころでもある。深田氏は2011年にサンフランシスコで開催されたTechCrunch Disruptに行き、Badgevilleというスタートアップを知ったそうだ。Badgevilleは2010年創業の企業向けゲーミフィケーションプラットフォームを提供する企業だ。創業者のところに話をしに行き、2012年には「Sprocket」というサービス名でOEMとして国内事業を開始。

ただ、「Badgevilleは作りが荒かった」という。「規模が大きいと耐えられない。それで自分たちで作り始めたのが1年半前。2013年終わりぐらいです」。

これなら自分たちのほうがイケてるのでは?

2013年の夏ぐらいから深田氏は悩み始める。「本当の意味での事業ポテンシャルを追いかけるのに、これがベストな座組だろうかと。チャンスは大きいと思っていました」。Badgevilleは2010年創業だが、2012年までに5回のラウンドで合計4000万ドルほどの資金を調達していたり、Oracleからバイスプレジデント級の人材を引っ張ってきたりしていた。そういうアメリカのスタートアップ企業のダイナミックな成長をOEMパートナーとして目の当たりにして、「プロダクトの成長の仕方とか、サービスの品質を見ていて、なるほど、こんな感じと肌感覚で分かった」と深田氏は言う。「開発速度だったり、機能の強化だったり、ビジョナリーがどうディスカッションして、どうやってビジョンを形にしていくかといったことですね。最初は40億円ぐらいお金を集めてるし、開発スピードも速いし、これはかなわないなと思っていました。でも成果の出し方とか、もっとやり方があるのになとも思った。われわれがやってるほうがイケてるんじゃないのって」

Badgevilleは様々な要素を含むゲーミフィケーションのプラットフォームだが、実際に企業で導入して効果を出し、売上を立てるためには、啓蒙もしないといけないプロダクトだ。アメリカでは、ここをパートナー戦略でやることが多い。BadgevilleもAccentureやOracleと一緒にやろうとしていた。「ひと工夫すれば成果がでるタイプのプロダクト。これは日本的じゃないかと思ったんです。彼らにできないやり方で勝負できると思った」。

Badgevilleはその後、シリーズCの調達をしたところで、創業CEOが数億円のエグジットで辞めてしまい、また別のスタートアップ企業を始めた。ビジョンを語る人間がいなくなったことで、深田氏はBadgevilleが成長するわけがないと読んだ。そういうときに、じゃあ自分はどう成長の機会をとらえるんだ、と考えたのが現在のSprocketに繋がっている。

Sprocketはゲーミフィケーションを取り入れたオムニチャネルマーケティングツールで、今まで深田氏が日本の大企業を相手に提供してきたノウハウを実装した「エンジン」となる製品だ。「Sprocketは3、4割の完成度。人間がカバーしないといけない部分があって、スケーラブルじゃない。これを8割、9割と自動化していく」のが目標だという。受託ビジネスとは開発のアプローチも異なってくる。「受託をやってる中では、各プロジェクトで共通する要件ってなんだろうか、どうまとめるかっていうのは、あまり考えない」からだ。せいぜいノウハウのある人材がスタート時に全体像を描くのが早くなるとか、コードの流用が少しあるとか、そういう程度だったという。新しくSprocketを作るに当っては、改めて要件の洗い出し、壮大なマインドマップを描いたそうだ。何を入れて何を入れないのか、整理してみると受託とは全然違うものになったという。

3つに分割したうち新設2社の評価額は元の1社を上回る

Sprocketは「人的分割型新設分割」と呼ばれる方法で、ゆめみから分離独立した。実はネイル写真共有アプリの「ネイルブック」を提供するスタートアップ企業のスピカも、ゆめみからスピンアウトしていて、外部から2014年4月に5000万円の資金を調達し(その後、追加で1億円を調達)ている。だから、ゆめみは3社に分裂した形になる。「人的」とある通り、3グループに社員を分けた形だ。面白いのは、3つの会社の資本構成は全く同じで、既存投資家に影響はないこと。一方で、分離したSprocket単体で1.2億円の資金を調達できたのは成長性に対する評価が高かったからだ。もし分割せず、ゆめみのまま資金調達をしようと思っても「受託の会社として評価されるので、時価総額が付かない。ゆめみ単体だと10億円も行かなかったと思う」という。スピカとSprocketの新設2社の評価合計額だけで、すでに元のゆめみより大きくなっている。スモールビジネスと、スタートアップという2つの異なる成長モデルの違いがより評価額の違いに出ているわけだ。

ちなみに深田氏は「第二創業の覚悟にプレミアムが乗っているのかもしれません」としつつ、ぬるま湯でやるわけじゃないとコミットメントを示す意味でも、今回の資金調達では個人で資金を入れたそうだ。

深田氏は現在38歳。新たなスタートとはいっても、ゆめみ時代からB2C領域で実績とコネクションがあり、書籍の出版経験もある。Sprocketは創業1年にして社員12人、クライアント数20社、年商1億円も見えているという。「大手のクライアントが多いので、与信で落とされるまくるかと思ったら、意外にそうでもなかった」と順調なスタートのようだ。

マーケティング・オートメーションという大きな市場でみれば、マルケトEloquaHubSpotなど、グローバルで見れば競合や類似サービスがひしめしている。日本市場だとFlipdeskKARTEといった新しいところが出てきているところ。深田氏の分析だと、この市場ではこれまで、日本国内では日立やIBMといったSIerが競合となることもあったが、過去にITシステムといえばCIO予算だったものが、今はマーケティング部門にシフトしていることから追い風が吹いているそう。狙っているのは、マーケティングオートメーション市場の中でも中規模から大規模で、単一ツールではなく多種サービスを提供する統合型の市場。具体的には、カスターマージャーニー設計、リピートプログラムの設計・導入、ユーザー行動促進施策の設計・導入、データ分析による検証・最適化といった領域で、アナログ時代に当然だった「おもてなし」をデジタルで提供していくのだという。

「おもてなし、というと言葉として陳腐なニュアンスも出てしまうが、ぼくが京都生まれ京都育ちということもあって、本来の意味でのおもてなしとは何かということは深く考えているつもりがあります。「奉仕」的な意味ではなくて、むしろ主客間の切磋琢磨におもてなしの本質があるのですが、デジタル時代においてはこれがむしろ企業と消費者の関係のスタンダードになっていくだろうと。そして企業が消費者の自己実現を支えるような存在になっていくと考えています。個人的にも、値段勝負、クーポン勝負で決まっていくような社会にはぜんぜん魅力を感じませんし、もっと多様で豊かな勝負の仕方があっていいよな、と思っています。Sprocketは最終的には導入企業を通じてこういう世界観を実現するためのプラットフォームに育てていくつもりです」(深田氏)

以下にSprocketが提供するサービスのパーツ一覧とも言えるチャートを添付しておく。ここに企業での導入事例がある。

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フリークアウト1号社員が立ち上げたのはポップアップショップのマッチングサービス「SHOPCOUNTER」

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ポップアップショップというものをご存じだろうか? 空き店舗や普段は何もないスペースに一定期間限定で出店する仮店舗のこと。今までになかった場所に店舗を出すことで、商品やサービスの認知を高めたり、ユーザーとより密な関係を作ったりできるというものだ。また店舗側としても、空きスペースから収益を得られるという側面もある。

そんなポップアップショップ開設のためのスペースを探すことができるオンラインマーケットプレイス「SHOPCOUNTER(ショップカウンター)」が正式サービスを開始した。

SHOPCOUNTERでは、展示や販売、プロモーションなどに最適なスペースの検索から問い合わせ、予約、決済までが可能。現在都内を中心に60以上のスペースを掲載している。来年3月までに都内300スペースを目指すという。

代表はフリークアウトの1号社員

サービスを手がけるCOUNTERWORKSは2014年10月の設立。代表取締役の三瓶直樹氏は、学生時代にマーケティング会社を立ち上げ、その後CAモバイルを経て、昨年上場したフリークアウトの1号社員として入社。その成長に貢献してきた人物。

COUNTERWORKS代表取締役の三瓶直樹氏

 

「日本で店舗を出そうとすると、その準備だけで500万円ほどかかるという話になる。もちろんそれで需給のバランスがうまく成り立っているのであればいいが、全国の空き店舗の割合は14%という数字もあり、決していい状況ではない。ただ一方でEC事業者などがプロモーションとして期間限定で出すというニーズはある」(三瓶氏)

スペースのマッチングからマーケティングの支援まで

三瓶氏によると、SHOPCOUNTERではスペースのマッチングにとどまらず、店舗のマーケティング支援に向けたサービスを手がけることを検討しているという。

「スペースブッキングは第1弾の展開だと考えている。お店を作るためにはスペースがないと始まらない。今後は『その次』として、繁盛させる仕組み、マーケティング支援のサービスを載せていく。例えばだけれども、すごく販売の上手な売り子をお店に送り込むということだっていい」(三瓶氏)

場所のマッチングサービスというくくりで言えば、僕も何度か取材した「スペースマーケット」なんかを思い浮かべるかも知れないが、彼らがターゲットとするのは社員総会だったり、会議議室だったり、イベントスペースというものが中心。SHOPCOUNTERに近いのは国内では軒先の「軒先ビジネス」あたりだろうか。海外では、ポップアップショップのスペースであることを全面に出している米国の「StoreFront」やイギリスの「appear」、フランスの「PopUpImmo」といったサービスも注目を集めている。

解析ツールのユーザーローカル、YJキャピタルとEast Venturesから約2億6000万円の資金調達

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ヒートマップに対応したアクセス解析ツール「User Insight」やソーシャルメディア解析ツール「Social Insight」などを提供するユーザーローカルが5月25日、YJキャピタル、East Ventures引受先として約2億6000万円の第三者割当増資を実施したことを明らかにした。同社は今回調達した資金をもとに、ビッグデータ分析事業強化進める。

ユーザーローカルは2007年の設立。代表取締役を務める伊藤将雄氏は、もともと楽天のエンジニア・プロデューサーで、「みんなの就職活動日記」を事業化、法人化した人物。その後早稲田大学大学院にウェブ上の行動解析を研究し、その成果をベースにした製品を提供すべく、ユーザーローカルを設立した。これまで国内外25万サイト以上への無料解析ツールを提供しているほか、国内700社以上へ商用アクセス解析ツールを導入。月間70億PV以上のデータを分析しているという。

同社によると、顧客増による分析対象となるデータ量増大、スマートフォン・マルチデバイス領域やO2O分野での分析ニーズの高まりを受けて資金調達を実施したという。今後は大規模なインフラ投資のほか、業種に特化の解析サービスも提供していくという。すでに4月から、メディア業界に特化した「Media Insight」なども提供している。

LINE元社長・森川氏の動画メディアC CHANNEL、「黒字化はやろうと思えばすぐに」

「黒字化はやろうと思えばすぐになります。(再投資して事業を成長させるので)すぐにするつもりはありませんが」——LINE代表取締役社長の座を離れ、4月に自らスタートアップの起業家として動画プラットフォーム「C CHANNEL」を立ち上げた森川亮氏。完成間もないオフィスで、こう語ってくれた。

森川氏の新会社C Channelは5月21日、東京・原宿にオープンしたばかりのオフィス兼スタジオで戦略発表会を開催した。冒頭のコメントは、その発表会の後の懇親会でのものだ。

女性向けメディアとの提携、同時にコンテンツも強化

まずは戦略発表会の内容から。森川氏が語ったところによると、サービス立ち上げから1カ月が経過したC CHANNELは100万ページビュー、コンテンツ(動画)数は800件、全視聴時間の合計は4300万時間。ユニークユーザー数は非公開だが、「数十万人」(森川氏)とのこと。

森川氏に100万ページビューという数字をどう評価しているのか尋ねたところ、「世の中的には決して高い数字ではない」とした上で、「動画コンテンツはこの短期間で800も集まったし、これからもっと増えると思う」と説明した。

すでに各所からC CHANNELの動画を配信して欲しいという相談があるそうで、「いろんなメディアに出ることでトータルでのブランドが作れる。縦長のモニタはすべてC CHANNELのコンテンツになっていく。将来的には(プラットフォームではなく)、ブランドを作っていきたい」とのことだった。

森川氏の言葉通り、C Channelでは積極的な提携を進めている。5月20日にはロケットベンチャーの手がける女性向けキュレーションメディア「4meee!」とのコンテンツ提携を発表。今回の発表会でも、Tokyo Girls Collectionを手がけるF1メディアとの提携が発表された。これにとどまらず、今後も広く外部との提携を進めていく予定だという。

コンテンツも引き続き強化していく。発表会では、モデル・タレントの三戸なつめさんや、カナダ生まれのモデルのテイラーさん(ようかい体操第一のYouTubeへの投稿は89万回再生だそうだ)がC CHANNELの動画投稿者である「クリッパー」として参加することが発表された。

さらにネイリストや皮膚科医師など、専門家によるワンポイントレッスン動画の配信も開始する。クリッパーとして参加を希望する女の子も増えているそうだが、現在はその枠を100人に限定して、まずは品質の担保に努めるということだった。

会場となったC Channelのオフィス

会場となったC Channelのオフィス

縦長動画とデジタルサイネージの親和性

質疑応答の場で広告のニーズについて聞いたのだが、今まで動画プラットフォームと比較して、投稿を限定してクオリティコントロールができていること、C Channelが社内で撮影から編集、配信までを実現する体制があること、そしてLINE元代表によるスタートアップという自身の話題性があることなどから、「期待され、応援されている」(森川氏)状況なのだという。具体的な社名は挙がらなかったが、すでに複数社の広告配信が決定しているそうだ。

森川氏が主張するのはデジタルサイネージとの親和性。C CHANNELでは、スマートフォンでの閲覧を想定して、縦横費で横長の動画ではなく、縦長の動画を制作している。これが駅や複合ビルの柱などに設置されるデジタルサイネージにぴったりだそうで、そのニーズは「想定以上」なんだとか。その理由は、柱のように縦長な場所に設置するサイネージは、もちろん画面も縦長だからだ。テレビでもウェブでも、基本横長の動画が求められているため、そのままサイネージで流すのは難しいのだ。

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C Channelでは以前からECなんかも展開する予定だとしているが、冒頭に紹介した森川氏のコメントは、コンテンツの多面展開、そして動画広告ですでに収益化が見えているということだろうか。

発表会の最後に森川氏はこう語った。「つい最近までは渋谷のヒカリエで仕事をしていたが、若い人のメディアを作りには文化を知らなければいけないと慣れない原宿に来た。ビルの上から見下ろすのではなく、地上で時代の流れ、最先端のはやりを勉強するためにここに来た。小さいスペースではあるが、ここから情報を発信していく」

老舗黒板メーカーとカヤックが生み出した新しい黒板「Kocri」はiPhoneとApple TVを利用

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政府が発表している「 世界最先端IT国家創造宣言工程表(2014年6月改定)」によると、教育環境のIT化に向け、2019年をめどに電子黒板の導入が進められているのだとか。

2014年6月に日本教育情報化振興会(JAPET)が発表した調査結果によると、電子黒板が学校に1台以上あるというのは全体の75.3%。それなりの普及率にも見えるが、全教室に設置しているというのはわずか4.6%(全教室に設置、全教室と特別学級への設置の合計)という数字。製品価格の高さが導入のボトルネックになっているという。

じゃあ手っ取り早く電子黒板の良さを取り入れるにはどうすればいいのか? 愛媛県にある1919年設立の老舗黒板メーカーであるサカワが出した回答は、既存の黒板と既存のガジェットを組み合わせるというものだった。同社は5月20日、カヤックとともに新しい黒板システム「Kocri」を発表した。

Kocriは画像ファイルや動画ファイルなどの教材を用意し、iPhoneに転送。その内容をApple TVにミラーリングし、さらにプロジェクターを通じて黒板に投影するという仕組みだ。まずは以下の動画をご覧頂きたい。

 

実際の授業では、アプリを通じて黒板に図形や五線譜などを投影。投影された図形に、チョークでの板書を継ぎ足すようなかたちで使っていく。投影には専用のアプリを利用。料金は5000円を想定するが、5月22日までに申し込めば無料になる。なお実際の提供は7月頃を予定している。

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サカワでは、カヤックとともに「みらいのこくばん」プロジェクトというものを進めてきた。その様子はTechCrunchの姉妹サイトであるEngadgetなんかでも紹介されている。Kocriはこのプロジェクトで得られた知見も数多くフィードバックされているそうだ。

現在Kocriのサイトでは前述のアプリの無料提供キャンペーンに加えて、機材一式の無料貸し出しも実施している。こちらの貸し出しも7月からスタートする予定だ。

生活密着型クラウドソーシングのエニタイムズが高野真氏、グリー、DeNAなどから2.3億円の資金調達—リアルでのマーケティングなど強化

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生活密着型のクラウドソーシングサービス「Any+Times(エニタイムズ)」を運営するエニタイムズ は5月21日、元ピムコジャパンリミテッド取締役社長でアトミックスメテディア代表取締役CEOおよびフォーブス ジャパン編集長の高野真氏、グリー、ディー・エヌ・エー(既存投資家)、その他個人投資家を引受先とする、総額2億3000万円の第三者割当増資を実施したことを明らかにした。今回調達した資金をもとにシステムの強化を進めるほか、マーケティングや人材の採用・育成を進める。

また、今回の調達とあわせて、高野真氏のほか、既存投資家であるインキュベイトファンドの和田圭祐氏が社外取締役に就任する。さらに、3月から同社のエバンジェリストとして活躍しているジャーナリストの佐々木俊尚氏がメディア顧問に就任する。

Any+Timesは、日常の家事や旅行の間のペットの世話、家具の組み立て、語学レッスンなど、生活に密着した「手伝って欲しいこと」「得意なこと」を提供しあえるクラウドソーシングサービス。同社はこれまで「生活密着型クラウドソーシングサービス」「生活密着型シェアリングエコノミーサービス」銘打ってサービスを展開してきたが、今回の発表にあわせて、Any+Timesを「サービス ECのマーケットプレイス」と再定義したそうだ。最近はスタートアップによる家事代行サービスなども増えているが、クラウドソーシングを使うことで、そういったものよりも柔軟な仕事の依頼ができるというわけだ。

ユーザー数は非公開とのことだったが、スマートフォンアプリのダウンロード数はiOS、Android合わせて13万2000件。現在は東京・多摩地区で慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科などと協力した地域人材活性化のための取り組みも進めるなど、リアルでのマーケティング活動も強化している。

犬の飼い主と預かり先をマッチングするペット版Airbnb、CAV出資先のDogHuggyがサービス開始

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国内では法律上はグレーゾーンだと指摘されるAirbnbだが、検索してみると、すでに国内でも数多くの代行業者がいることは分かる。日本のホスト数は8000件以上だと聞くし、僕の周囲ではサービスを利用した、よく使っているなんて話を聞くことも増えた。

そんなAirbnbやUberなどが代表格に挙げられるシェアリングエコノミー関連の新しいサービスにチャレンジしているのが、ペット版Airbnbとも言える「DogHuggy」だ。同社は5月20日にサービスを正式公開した。

ペットの飼い主とホストをマッチング

DogHuggyは、旅行や外出などでペット(主に犬)を預けたい飼い主と、現在、もしくはこれまでに犬を飼うなどして飼育経験のあるホストをマッチングするサービスだ。

サービスを利用するにはまず、飼い主が住んでいる地域の近所にいるホストを検索。条件等を確認して予約。あとは当日ペットを預けに行けばいい。決済もサイト上で行う。

料金はホストが設定できるが、想定単価は1泊あたり5000〜6000円程度。その30%をDogHuggyが手数料として徴収する。ホストは収益をNPO寄付することもできる。

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2014年末から試験的にサービスを開始。現在のホストは首都圏を中心とした数十人。獣医やペット飼育経験者、さらにはペット関連の有資格者を中心に、面接などを行った上でホストとして認定しているという。ホストは1日数回ペットの写真を飼い主に送ることになっているため、状況の把握もできるという。また将来的には預けている最中のトラブルに対応するよう、保険の適用も検討中だそうだ。

ちなみにいわゆるペットシッターとしてホストが犬を預かるとなると、第一種動物取扱業の認可が必要になる。だが、DogHuggyでは動物取扱業の保管と貸出の免許を取得しており、まずDogHuggyが飼い主の犬を預かり(保管)、今度はDogHuggyがその犬をホストに預ける(貸出し)というかたちにすることで、法律上の課題をクリアしているという。

獣医を目指した高校生が起業

ペットの飼い主とペットシッターのマッチングサービスとしては、米国では「DogVacay」などが有名なのだそう。CrunchBaseにもあるが、同社は2014年11月に2500万ドルという大規模な資金調達を実施している(これまでの合計調達額は4700万ドル)。国内でも「inDog」など、サービスを準備しているスタートアップがあるようだ。矢野経済研究所の調査によると、国内のペット市場は2014年度で1兆4288億円。美容室や医療、保険、ホテルなどの各種サービスでは前年度比100.9%の7314億円となっている、大きな市場だ。

DogHuggy代表取締役の長塚翔吾氏

DogHuggy代表取締役の長塚翔吾氏

DogHuggy代表取締役の長塚翔吾氏は現在18歳。日本でも数少ない獣医学部のある麻布大学附属高等学校をこの春に卒業したばかり。もともとは獣医を目指していたそうだが、高校で動物保護について学んでいる中で、自らができることを模索した先にあったのがこのサービスでの起業だったのだという。

飼い主が長期で外出する際に利用するペットホテル。しかし狭いケージは犬にストレスを与え、価格も決して安くない。そんな環境に対して罪悪感を感じると答える飼い主もいたそうだが、他にソリューションがないというのが現状だ。

代々木公園などで実際にペットを散歩させていた飼い主などにも数多くヒアリングしたが同様の意見が出たという。そこで考えたのが、すでに適切な環境で犬を飼っているホストに犬を預けるという仕組みだった。

「目の前の困っている犬1匹を救うことも大事。だが、目先のことだけを考えるのではなく、飼い主にもっと動物保護とはどういうことか知ってもらって、人とペットの真の共存を実現していきたい」(長塚氏)

CAVからシードマネーを調達

DogHuggyは3月にサイバーエージェント・ベンチャーズ(CAV)のシード投資枠「Seed Generator Fund」からシードマネーを調達している。金額や出資比率は非公開。ただしシードの投資枠は3億円で、基本的には1社1000万円を上限にしているという話だから、数百万円というところだろう。

ちなみに、高校生だった長塚氏は、検索エンジン経由でCAVのシード投資について知り、その門戸を叩いたのだそうだ。そして親を説得した上、高校生だった2月に起業している。その後、東京大学獣医学科出身でサイバーエージェントの広告や開発を担当していた染谷洋平氏がCTOとして参画した(僕はこの染谷氏の経歴にも驚いたのだけれども)。

同社が目指すのは「動物後進国の日本を先進国にすること」。その第一歩となる目標は、DogHuggyのホスト500人までの拡大だという。

視線追跡機能付きVRのFOVEがKickstarterキャンペーンを開始

FOVE」(フォーブ)はOculus VRのようなヘッドマウントディスプレイ(HMD)に視線追跡機能を付加したものを開発している日本発のスタートアップだ。今回のKickstarterキャンペーンに伴い FOVEについてアップデートしておこう。

fove FOVEは仮想現実(virtual reality, VR)の第3世代といわれている。第1世代はユーザーを受動的な仮想空間へと導いた。 第2世代はハンドセットとモーションセンサーを使ってユーザー側から仮想空間側への単方向の制御を可能にした。第3世代は視線追跡機能を使ってユーザー側と仮想空間側の双方向の制御が可能となった。従来のOculus Riftなどのヘッドマウントディスプレイで3次元空間内を見るとき、奥行きがわからないという問題があった。例えば、ヘッドマウントディスプレイで3次元ゲームをするときにマウスで位置をポインティングする場合、マウスは元来2次元平面上の位置をポインティングするためのデバイスなので3次元の奥行きを ポインティングするときには困るわけだ。手前の物体を選択するのか、奥の物体を選択するのかに困る。 FOVEは視線追跡機能でこれを可能にしたヘッドマウントディスプレイである。ロンドンのMicrosoft Ventures Londonアクセラレータープログラムに採択されたり、3次元ゲームや医療での利用について熱い視線を受けている。

fove3エンジェル投資家と東京大学の産学連携施設「Intellectual Backyard」からプロトタイプが作れる程度の数千万円の資金を調達して開発を進めていたが、今回5月19日から25万ドルの資金調達を目指して349ドルの予約販売価格にてKickstarterで募集を開始する。

 

小島由香CEO・共同創業者は「我々の視線追跡機能は非常に繊細なユーザーの視線を読み取ることが可能で、それを仮想空間でのユーザーの意図や感情としてうまく変換することができる。この追加認識により、仮想空間内のオブジェクトを制御するだけでなく、人間と仮想空間とのコネクションをよりリアルなものにすることができ、多くのオーディエンスに資する一つの継目のない体験に仕上げることができた」とコメントしている。

ロックラン・ウィルソンCTO・共同創業者は「我々は視線追跡機能、方向センシング、ヘッドポジショントラッキングを最先端のディスプレイに融合することができた。ゲームの他にも我々は学校や研究機関と連携し、アイプレイ(目によるピアノ演奏をする)プロジェクトで身体障害者でもピアノを弾くことを可能にした」とコメントしている。

fove2FOVEは2015年Q3に開発者向けキットを出荷する予定。 FOVEプラットフォームはUnity、 Unreal、 Cryengineとコンパチブルとなっている。開発者が既存のコンテンツに難なくFOVEエコシステムを導入でき、また安定したサポートを提供する。Kickstarterキャンペーンに伴い、 FOVEはVRコンテンツのホスティングサイト「Wear VR」とのパートナーシップも同時にアナウンスしている。 FOVEユーザーは、Wear VRのVR app storeにアクセスが可能となる。

日本発スタートアップであり、視線追跡機能をヘッドマウントディスプレイに付加した FOVEがOculus VRのつくり上げた市場にどこまで食い込めるか注目しよう。

Hiroki Takeuchi / POYNTER CEO Ph.D

短期的な採算性ではなく長期的な協業に——中小企業バックオフィス支援のBizerと法律事務所のAZXが資本提携した理由

中小企業のバックオフィス業務をクラウドで支援するサービス「Bizer」。このサービスを提供するビズグラウンドが5月18日、AZX Bizer Support Fund なるベンチャー投資ファンドを割当先とする第三者割当増資を実施したと発表した。投資額等は非公開だが、数百万円程度だと聞いている。

このAZX Bizer Support Fund 、実は今回の出資に向けて組成されたファンド。AZX 総合法律事務所を筆頭に、士業によるスタートアップ支援を手がけるAZX Professionals Groupがパートナーとなっている。外部資本も入っておらず、その名の通りビズグラウンドへの投資だけを行うファンドだ。

両者は今回の投資を契機に業務提携も実施。Bizerのユーザーは、AZXの弁護士に初回30分無料相談ができるようになるほか、AZXの契約書作成サービス「契助」の割引利用が可能になる。今後については、ビズグラウンド代表取締役の畠山友一氏いわく、「今のBizerのサービス範囲だけにとどまらず、新たな事業領域での協業も検討していく」のだそう。

法律事務所がスタートアップ投資をする意味

Bizerのユーザーからすれば弁護士によるサポートが強化されるワケだし、AZXからすれば投資先の支援をすることで将来的なキャピタルゲインも期待できる。さらにはスタートアップのクライアント獲得にもつながる話だ。ただスタートアップの法務に強いとは言え、法律事務所が投資まで行うというのは日本ではあまり聞かない。

ちなみに、米国シリコンバレーに拠点を置く大手法律事務所のWilson Sonsini Goodrich & Rosati Professional Corporation(ウィルソン ソンシーニ)もクライアントであるスタートアップに積極的に投資してきていることで知られている。これはスタートアップへの支援の強化につながる一方、士業として客観性を欠くことになるということで賛否両論あるようだ。

「もともとはBizerをAZXのクライアント向けに利用できないかという点を検討したことが最初の契機。だが出資をすることで、短期的な収益面での採算性ではなく、長期的な視点で一緒に協業していくことができると考えた」—AZX Professionals Group CEOで弁護士の後藤勝也氏は語る。

実はAZXでは1月頃からスタートアップへの投資を検討していたのだそうで、これが初の案件となる。「以前からフィーベース(都度士業に料金を支払って相談などをするという形式)でサービスを受けるのはまだ厳しい状況なので、株式を持ってもらえないかというような相談もあった。今回の出資は、フィーベースのサービスを無料・低額にするという趣旨ではなく、連携してサービスを作るためのものだが、今後はこのような趣旨でも投資していきたい」「我々もビジネスとしてやっている以上、お金をもらっていないとできないこともあったが、投資先であれば組織としてきっちりと支援していける」(後藤氏)

具体的な投資目標などは聞けなかったが、「ベンチャーキャピタル等が想定する資本政策を乱さないよう了解を得つつ投資を進める」(後藤氏)とのこと。また投資先ごとにファンド(ただし、基本的には外部のLPを入れない)を組成する予定だという。

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Simon Cunningham

 

交通系ICカードをAndroid端末にかざせば処理完了、経費精算サービス「Staple」がバージョンアップ

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クラウドキャストのスマートフォン向け経費精算サービス「Staple」。2014年10月(iOS版のみ。Android版は2015年3月)にスタートしたこのサービスがバージョン2にアップデート。新たに、NFC/おさいふケータイ対応のAndroid端末を使った交通系ICカードの自動読み取り機能を実装した。

Stapleは面倒な経費精算を、専用のスマートフォンアプリを使って手軽に入力できるサービスだ。個人および10〜20人規模の程度の中小企業のほか、各種イベントをはじめとした短期プロジェクトでの利用を想定している。

今回のリニューアルにあわせて、新アプリの「Stapleリーダー」を公開。ユーザーがNFC/おさいふケータイ対応のAndroid端末上でこのアプリ起動し、交通系ICカードをタッチすれば、カードの使用履歴を自動で取得。データはStapleのクラウド上にアップロードする。

あとはStapleのウェブサイトにアクセスするかアプリを起動し、勤怠に関わるデータを選択すれば、自動的に経費精算の一覧に反映される。これでもう、Excelにいちいち移動の記録を書き込んでいくという手間から開放されるわけだ。取り込んだデータは修正不可能なため、不正な処理も起こらない。また定期区間なども自動で処理され、二重に経費を申請するといったこともなくなる。

利用手順

実はこの機能、Staple開発時からユーザーから要望が高かったのだそう。「この機能さえあれば導入したいという声もよく聞いていた」(クラウドキャスト代表取締役の星川高志氏)

またこの機能のほか、外部サービスとの連携を強化。すでに連携済みの弥生会計に加えて、freeeやMFクラウド会計、A-SaaS、FreeWay、勘定奉行の合計5サービスに対して、経費データのインポートが可能になった。