5Gネットワーク上で動作するアプリの開発を容易にするプラットフォーム「Shabodi」

市場の多くが5Gインフラストラクチャの構築と販売に注力している一方、見落とされている重要な部分として、5Gネットワーク上で動作するアプリケーションの開発があると、SineWave Ventures(サインウェーブ・ベンチャーズ)のゼネラルパートナーであるVivek Ladsariya(ヴィヴェック・ラドサリヤ)氏は述べている。だからこそ、Shabodi(シャボディ)のような企業を支援することに興奮していると同氏はいう。

「アプリケーション開発者は常にネットワークの複雑さを取り除きたいと考えており、Shabodiはそんなニーズに応えるための準備を整えています」と、ラドサリヤ氏はメールで語っている。

Shabodiは、企業やシステムインテグレーター、通信事業者が5G上での次世代アプリケーションの開発・展開を加速できるようにするために、シード資金として337万5000ドル(約3億8000万円)を調達した。

トロントを拠点とするこの会社は、通信業界のベテランであるVikram Chopra(ヴィクラム・チョプラ)氏とHarpreet Geekee(ハープリート・ギーキー)氏によって2020年に設立され、まずはそのアプリケーション・イネーブルメント・プラットフォームによる5Gの展開に注力している。2人が一緒に働くのはこれが二度目になる。

Shabodiはすでに顧客と協力し、5Gの展開を収益化して投資収益率を高め、そのネットワークの可能性を最大限に活用している。

「5Gはすべての人にとっては2〜3年先の話ですが、事業としては今、機が熟しています」と、チョプラ氏はTechCrunchに語った。「企業は複数の拠点に5Gを展開していますが、その上でアプリケーションを構築するには新たなスキルセットが必要であり、今のところ当社はそれに対応している数少ない企業の1つです」。

Shabodiでは、決済の分野でSquare(スクウェア)がやったことになぞらえて、シンプルなAPIを提供することで5Gを解きほぐし、開発者が予想外のコストや複雑さ、ドメインの格差なしに、インダストリー4.0のアプリケーションを構築できるようにすることを目指していると、チョプラ氏は述べている。

今回のシードラウンドは、Blumberg Capital(ブラムバーグ・キャピタル)が主導し、Counterview Capital(カウンタービュー・キャピタル)、Shasta Ventures(シャスタ・ベンチャーズ)、SineWave Ventures、MAVA Ventures(マヴァ・ベンチャーズ)、Green Egg Ventures(グリーン・エッグ・ベンチャーズ)、Maccabee Ventures(マカビー・ベンチャーズ)、CEAS Investments(シアス・インベストメント)、Supernode Ventures(スーパーノード・ベンチャーズ)、Lorimer Ventures(ロリマー・ベンチャーズ)が参加した。Shabodiは2021年初め、 Forum Ventures(フォーラム・ベンチャーズ)とCisco(シスコ)やYahoo(ヤフー)の元幹部が主導するプレシードラウンドを実施し、20万ドル(約2300万円)を調達している。

同社は15人の従業員と2つの特許を有しており、2022年には3つ目の特許を取得する予定だ。

チョプラ氏は、他の顧客については明らかにできないとのことだが、約10社ほどの企業と交渉中であると述べている。同氏によれば、今回の資金調達によって製品チームと営業チームを強化し、年内にはShabodiの最初の製品を公開する予定だという。

「この10年で最も影響力のある開発の1つである5Gの展開を加速させるために、業界の専門家からなるShabodiの先見性のあるチームに協力できることを誇らしく思います」と、Blumberg Capitalのマネージング・ディレクター、Bruce Taragin(ブルース・タラギン)氏はメールで語っている。「5Gはエンタープライズ・テクノロジーの多くの側面を崩壊させるでしょう。Shabodiのプラットフォームは、アプリケーション開発者、組織、業界全体が5Gを実現する方法を大幅に改善する可能性を有しています」。

画像クレジット:Bryce Durbin / TechCrunch

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(文:Christine Hall、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

元SpaceXエンジニアたちのFirst Resonanceは製造OSをハードウェアメーカーに提供

First Resonance(ファースト・レゾナンス)は、ハードウェア製造のためのソフトウェアを作っている企業だ。同社のIon(イオン)プラットフォームは、製造ライン、サプライチェーン、エンジニアリング、デザインなどを管理しなければならない人々に、オールインワンの選択手段を提供する。今回、新たに1400万ドル(約15億9000万円)の資金を調達したことで、同社はその営業力を拡大し、世界のハードウェアメーカーに全面攻勢を仕かけることを目指している。

First Resonanceは、元SpaceX(スペースX)のエンジニアたちによって設立された。彼らは、SpaceXで開発に携わったプロセスが、ドローンや玩具、そして……他のロケットを作っている人々の役に立つと感じたからだ。

2020年夏に我々が初めて取材したとき、同社はまだ始まったばかりだった。今では勢いのある会社となり、より多くの大規模な顧客をターゲットとしながら、その勢いを維持したいと考えている。

「2020年、First Resonanceは最初の顧客を獲得したばかりでした。その年は、メーカーやハードウェアを製造している人たちが、自宅で仕事をしている人たちと工場をつなぐ手段や、複数の種類の工場をつなぐ手段を必要としていた時期でした。ちょうど私たちがこの会社で作っている製品が、それにぴったりはまったのです」と、共同創業者兼CEOのKaran Talati(カラン・タラティ)氏は語る。

2020年末には15社の顧客を獲得し、現在はその2倍の顧客に利用されているIonプラットフォームは、本格的にハードウェアを製造している人々にとって、価値があることを示している。その顧客には、電動垂直離着陸機をてがけるJoby Aviation(ジョビー・アビエーション)、自動操縦貨物飛行機運行を目指すReliable Robotics(リライアブル・ロボティクス)、小型静止通信衛星企業のAstranis(アストラニス)などがいる。

「このような洗練された製品の製造方法を管理するだけでなく、部分組み立ての複雑さやそれにともなう高度な複数段階におよぶBOM(部品構成表)を管理することの複雑さ。【略】Ionが行っているのは、これらの企業がその複雑さを定義し、理解して、設計や製造プロセスを迅速かつ反復的に調整できるような粒度で支援することです」と、タラティ氏は述べている。

画像クレジット:First Resonance

その鍵となるのが、部品やプロセスの自動化された強力なトラッキングだ。同社のチームは、かつてSpaceXでロケットの再利用可能性に取り組んでいた際に、これを得意とした。

「SpaceXが他の企業と比べて決定的に違う点は、所定のロケットにどのシリアルナンバー、どのロットナンバーが付いているかを徹底的に把握していることです。どの部品が特定の条件にあてはまるか、あるいはエラーが出る可能性が高いかということが、わかっているのです」と、タラティ氏は説明する。「これこそが、私たちの顧客が直面している課題なのです。自動車メーカーは、すべての車両をリコールする必要があるため、何十億ドル(数千億円)もの費用がかかります。しかし、Tesla(テスラ)は最近、わずか3000台のModel Y(モデルY)をリコールしました。それはテスラが、そのレベルの粒度を持っているからです」。

初期の顧客は、この機能が非常に価値のあるものであることを理解し、より多くの要望を寄せている。部品の購入から納品、取り付け、サービスまでをトラッキングすることで、テスラのようなコスト削減の機会が生まれるだけでなく、洞察を掘り出すことができるデータベースも構築できる。

企業はずっと以前からこのような管理を行ってきたが、一般的には、レガシーなものから最先端のものまで、互いに連携していない5〜6種類のシステムを使用している。例えば、デザイン作業はライブのARコラボレーションセッションで行われ、クラウドに保存されて、最新の生産性スイートを介して配信されるが、それが工場や部品のワークフローに行くと、90年代から進化しておらず、そこですべてが滞ってしまう。それは決して優れた仕組みとは言えず、新型コロナウイルスが流行した2020年と2021年のプレッシャーによって、限界を超えてしまった企業もあるだろう。

「一般的なトラッキングツール、電子メールのテンプレート、スプレッドシート、断絶されたプロセスなどで乱雑な状態です。このような長く使っていた古いシステムから離れ、デジタルトランスフォーメーションを検討している顧客がますます増えています」と、タラティ氏は語る。

共同設立者でCOOのNeal Sarraf(ニール・サラフ)氏(左)とCEOのKaran Talati(カラン・タラティ)氏(右)(画像クレジット:First Resonance)

自社で新しいスタックを構築できるような大規模で資金力のある企業でさえ、Ionを利用することを選択していると、タラティ氏はいう。これは、1年と数千万ドル(数十億円)をかけて独自のスタックを設計するのではなく、市場で通用するプロセスの追加を選択して成功した他の企業を見習うためだという。

今回の1400万ドルを調達したシリーズAラウンドは、Craft Ventures(クラフト・ベンチャーズ)が主導し、Blue Bear Capital(ブルー・ベア・キャピタル)、Fika Ventures(フィカ・ベンチャーズ)、Stage VP(ステージVP)、Wavemaker(ウェーブ・メーカー)が参加した。この資金は、会社の規模拡大と改善、特に「市場参入チーム」の強化に充てられる予定だ。しかし、その製品も進化している。開発チームは、変化があったときに数秒で実行可能な洞察が得られるようにするため、より多くのデータソースをインテリジェンスストリームに統合することに取り組んでいる。また、SDKを拡張して、より多くの工場やハードウェアの種類に対応することも視野に入れている。

「当社の顧客は、柔軟でデータ駆動型のアプローチを非常に重視しており、Ionはまさにその要求に適っているのです」と、タラティ氏は述べている。

画像クレジット:Teera Konakan / Getty Images

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(文:Devin Coldewey、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

ハイブリッドチームがSlackで各々のオフィスタイムを調整可能に、Officelyが2.3億円を調達

会社が在宅 / 通勤のハイブリッドに移行するんだって?いい話だね!たとえ管理上の決定や、あなたの役割の特殊性によって、毎日は不可能だったとしても、在宅勤務はより主流になっている。

では、誰がいつオフィスに行くかをどのように調整すればよいだろう?毎週同じ日である必要があるだろうか?ランダムに日を選んで、机が使えることを期待するだろうか?もしその日に行ったのがあなただけだったらどうだろう?本当に通勤する必要はあったのだろうか?これらすべてをスプレッドシートで追跡すべきだろうか、それとも追跡するためだけにまったく別のツールが必要だろうか?

Officely(オフィスリー)は、多くのチームがすでに使用しているツールのSlackを介して、それらをすべて上手く処理したいと考えている。彼らは成長を始めるために200万ドル(約2億3000万円)のシードラウンドを行ったところだ。

Officelyの主な売りはデスクの予約機能だ。これにより、どのオフィスにあるデスクか、または多数のデスクがある場合は、オフィス内の「どの付近にあるか」でデスクをグルーピングすることができる。ある日に何人の人がオフィスに行くのか、使えるデスクがあるのかを確認し、もし使えるなら予約することができる。他にもいくつかのカスタマイズ項目がある。例えば誰かが犬をオフィスに連れてくる場合にフラグを立てる機能などだ。アレルギーのためにその日は家にいたい人や、私のようにオフィスに少なくとも1匹は犬がいるときに出社したい人のために役立つ。

画像クレジット: Officely

カスタマイズ可能な健康診断調査表を設定して、熱を持っていなかったり既知の接触履歴がないことを確認したり、出社予定の朝に調査表に記入するように自動的に通知することができる。もし誰かが病気になった場合には、Officelyは連絡先の追跡を支援して、同じ日にオフィスにいた従業員のリストを作成することもできる。

彼らはまた「Officeチャット」機能の実験も行っている。この機能は、1日の初めに新しいSlackルームを自動的に作成し、その日に出社が予定されているすべての人を招待し、1日の終わりにルームをアーカイブする。家にいる同僚を悩ませることなく、ランチプランを計画するのに最適だ。

Officelyのテストインスタンスを起動してみたが、非常に円滑に使うことができた。デフォルトからカスタマイズするためのUIは、少々目立たないように感じられるが、それは主にSlackアプリの範囲内で動作しているからだ。しかしその一方で彼らは私がSlackアプリでできるとは知らなかったすばらしいこともたくさんしてくれている。チームTCは現在、オフィスで多くの時間を費やしていないので、ストレステストを行うことはできなかったが、見た限りでは、この先多くの人たちがオフィスに戻ったときにも上手く機能できるだろう。

Officelyは現在、小規模チーム用は無料だ(10人までの従業員と1カ所のオフィスに限定)。より多くの従業員または複数のオフィスがある場合には、月額でオフィス従業員1人あたり2.50ドル(約280円)が請求される(「Officelyを使用してオフィスを予約する従業員に対してのみ請求します」と彼らはいう)。500人以上の従業員がいる場合には、カスタム料金プランが提供される。

ところで、なぜSlack内ですべてを構築するのだろうか。共同創業者のMax Shepherd-Cross(マックス・シェパード=クロス)氏は私に「デスク予約ツールの興味深い挑戦課題は、ソフトウェアを効果的に使用するには、社内の全員が同じソフトウェアを採用する必要があることです」と語る。だが新しいウェブアプリに参加するように全員を説得するのは困難だ。一方、Slackなら企業のチームあれこれがすでに集まっている。

Officelyはピボット(方向転換)を行った企業だ。同チームは2017年に、ホテルの部屋の予約という別の焦点でスタートした。「私たちは新型コロナに押しつぶされました。一夜にして、私たちはすべての顧客を失ったのです」とシェパード=クロス氏は語る。「数週間眠れない夜を過ごしたあと、私たちはこれからのオフィスがこれまでのホテルのように運営されることに気づきました。【略】過去4年間ホテル用に構築していた予約インフラストラクチャ全体が、今ではオフィスに必要なのです」。

今回のラウンドはTEN13が主導し、エンジェル投資家のVu Tran(ブー・トラン。学習プラットフォームGo1の共同創業者)とAdam Schwab(アダム・シュワブ、travel co. Luxury EscapesのCEO)が参加した。

画像クレジット:Officely

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(文: Greg Kumparak、翻訳:sako)

人の意思決定が必要なワークフローをより簡単に構築できるようにするIkigaiが約15億円調達

MITの研究をベースにしたスタートアップIkigai(イキガイ)は、人間が関与するワークフローの構築をシンプルにしたいと考えている。従来のロボティック・プロセス・オートメーション(RPA)が反復的な作業のためのボットを構築するものであるのに対し、同社はプロセスの一部として人間が意思決定をしなければならないワークフローを簡単に構築しようとしている。

同社は米国時間12月9日、Foundation Capital、8VC、Underscore VC、およびさまざまな業界のエンジェル投資家から集めた1300万ドル(約15億円)のシードラウンドを発表した。

同社の共同創業者でCEOのVinayak Ramesh(ヴィナヤク・ラメシュ)氏は、MITでの研究や、2021年12月に買収したデジタルヘルスケアのスタートアップであるWellframe(ウェルフレーム)での研究で、RPAでは対応できない複雑なワークフローが存在することを発見したと話す。

「ユースケースがあることを目の当たりにしました。基本的には人間がデータに基づいて判断や意思決定を行い、データやルールが頻繁に変更されるために自動化が非常に困難な、組織でのマニュアルプロセスなどです」とラメシュ氏は筆者に説明した。

日本語で「あなたの目的」を意味するIkigaiはこの問題を解決するためのツールで、異なるデータソースを含むドラッグ&ドロップのワークフローを作成し、その一方で人間が判断するステップを組み込み、その結果をダッシュボードやスプレッドシートで表示することができる。ラメシュ氏らは、これを「AI-Charged」スプレッドシートと表現している。

画像クレジット:Ikigai

しかしラメシュ氏らは、Power BIやAirtableといった他の超高機能スプレッドシートのアプローチとは異なると考えている。「(それらのツールは)ワークフローに人間を必要としますが、意思決定やデータに基づくワークフローではありません」とラメシュ氏は述べ、決定ループを構築できることが自社製品の重要な差別化要因だとする。

現在、同社の従業員はエンジニアを中心に20人で、2022年には倍増させる計画だ。創業者たちは、会社の規模を拡大するにあたり、多様性のある包括的なチームを構築する必要性を確実に認識しているようだ。

「多様性があることで、さまざまな視点を持ち、さまざまなタイプの人たちが毎日出社してくるので、すべてが働きやすい環境になります」とラメシュ氏は話す。また、初期の従業員の多くが移民であり、彼らが米国で働くためのビザを取得するという困難なプロセスを乗り越えるための支援を行ってきたことも指摘する。

この会社のアイデアは、ラメシュ氏がMITの学生時代に行っていた研究から生まれた。実は、共同創業者でCTOのDevavrat Shah(デバブラット・シャー)氏は、MITのコンピュータサイエンスの教授で、ラメシュ氏の教授でもあった。シャー氏は、2019年にNike(ナイキ)が買収したCelect(セレクト)という別の会社も立ち上げている。

Wellframeの設立に協力した後、ラメッシュ氏は大学院に戻り、そこでシャー氏とつながった。このような製品のアイデアは時間の経過とともに顕著になるばかりで、彼らはさらに研究を始め、2020年に製品を作った。

画像クレジット:Sean Gladwell / Getty Images

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(文:Ron Miller、翻訳:Nariko Mizoguchi

Gadgetはeコマースアプリ開発者の生産性を高めるプラットフォームを提供

カナダのオタワに拠点を置くGadget(ガジェット)は、Shopify(ショッピファイ)の元社員2名によって設立された開発者の生産性向上を支援する企業だ。同社はシード資金として、850万ドル(約9億6700万円)を調達したことを発表した。この資金調達ラウンドは、Sequoia Capital(セコイア・キャピタル)とBessemer Venture Partners(ベッセマー・ベンチャー・パートナーズ)が主導し、OpenAI(オープンAI)の共同創業者兼CTOであるGreg Brockman(グレッグ・ブロックマン)氏、Klarna(クラーナ)のCTOであるKoen Koppen(コエン・コッペン)氏、Shopifyのデータサイエンス・エンジニアリング部門の責任者を務めるSolmaz Shahalizadeh(ソルマズ・シャハリザデ)氏などが参加した。

2020年にHarry Brundage(ハリー・ブランデージ)氏とMohammad Hashemi(ムハンマド・ハシェム)氏が設立したGadgetは、eコマースアプリの開発者がコードを書く時間を削減する方法を提供することを目的としている。同社のプラットフォームを利用することで、開発者は作業にともなう無駄な仕事を省くことができ、アプリの構築と拡張をより効率的に行うことができる。

「私たちがGadgetを起ち上げた理由は、自分たちでさまざまなものを作ろうとしていた時に、何かを実現するまでには、どれほど長い時間がかかるかということに不満を感じたからです」と、CEOのブランデージ氏は、TechCrunchによるインタビューで語っている。「発売前の準備に何週間もかかるのは、フラストレーションがたまります。私たちは他の多くの人が同じ問題を抱えていると考え、それを解決するものを構築したいと思いました」。

Gadgetは、開発者が必要とするツール、ライブラリ、API、そしてベストプラクティスを1つにまとめ、開発者が、内蔵ステートマシン、自動アクセス制御、即時のAPI生成、他のSaaSプラットフォームとの統合など、一連の高度なプリミティブにアクセスしながら、データモデルを定義し、コードを書くことができるようにした。

画像クレジット:Gadget

今回調達した資金を使って、Gadgetはサーバーレススタックを公開し、Shopifyを手始めにサードパーティのAPIとの接続を構築する予定だ。ブランデージ氏とハシェム氏は、Shopifyの製品やエンジニアリングに関する専門的な知識を活用するために、まずはこの大手eコマース企業に注力する。

将来について、ブランデージ氏とハシェム氏は、重要なソフトウェアをより容易に開発できるようにするために、息の長い永続的な会社を作りたいと望んでいる。ブランデージ氏は、まだ作られていない実現可能な役に立つツールがたくさんあると指摘し、Gadgetは同社でそれらのツールを実現したいと考えている。

「ソフトウェア開発は転換期を迎えています」と、SequoiaのパートナーであるMike Vernal(マイク・ヴァーナル)は声明で述べている。「私たちが使用するソフトウェアに多くを期待するようになったことで、開発者はその要求に追いつくために、構築に使うツールに多くを求めるようになりました。Gadgetのプラットフォームは、eコマースの開発者が拡張性の高いソフトウェアを驚くほど速く構築できるように支援するという約束を果たしています」。

画像クレジット:Gadget

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(文:Aisha Malik、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

人と人とのつながりを視覚化するConnect the DotsがシリーズAで17.1億円を調達

営業が常に求めているのは、見込み客との接触を上手く進める何かだ。ターゲット顧客に勤める人を知っている誰かに紹介してもらえれば、その顧客が関心をもってくれる可能性は高まる。

Salesforce(セールスフォース)の元幹部は、そうしたコネクションを簡単に見つけられるようにしたいと考え、Connect the Dots(コネクト・ザ・ドッツ)というスタートアップを立ち上げた。

仕組みはこうだ。登録すると、Connect the Dotsは手元にあるメールアドレスをすべてスキャンし、さまざまな企業とのつながりを探す。データを収集したら、相互に関連付ける。企業を指定すると、知り合いがいるかどうかがわかり、そのつながりの強さが3つの色がついた点で示される。すべて緑色であれば、それは確かなつながりであり、メールでの紹介をリクエストできる。

Salesforceの36番目の社員として1999年に入社したDrew Sechrist(ドリュー・シークリスト)氏は、Marc Benioff(マーク・ベニオフ)氏の初期の営業チームにいた。Salesforceが何者で、ホステッドソフトウェアとは何なのかを、誰も知らなかった時代に、それらを売り込んでいた。同氏は、人脈が販売促進につながることを早くから認識していた。同氏はベニオフ氏を「ナンバーワンのアルファネットワーカー」と呼んだ。初めの頃は、ベニオフ氏のところに行けばいつも誰かを紹介してくれた。そうすればプレゼンが首尾よく運んだし、飛び込みに比べ、売れるチャンスもかなり高くなった。

関連記事:20歳になったSalesforceから学ぶ、スタートアップ成功の心得

シークリスト氏は、電子メールが重要なコネクターになると考えている。「私たちには、人間関係を表す、延々と増える電子メールがあります。それをまとめて、価値あるものにする方法がなかっただけなのです。しかし、機械学習やその他の高度な技術により、データから価値を抽出し、誰が誰を知っているかを示す関係性をグラフに表せるようになりました」と説明する。

同氏は、LinkedIn(リンクトイン)も同じことができるように設計されていると認めるが、あまりにもノイズが多く、それゆえに信頼性に欠けるという。

「営業や採用担当者などがLinkedInで誰かに人の紹介を頼んでも、頼まれた側が実際にはその人をよく知らないということが続くため、疲れてしまうのです」。

そこでシークリスト氏は、もっと良い方法を開発したいと考えた。現在、Connect the Dotsでは、リクエストに応じてソーシャルグラフのベータ版を提供している。また、ソーシャルグラフを利用している人を知っていれば、Clubhouse(クラブハウス)方式でユーザーベース構築を始めることもできる。

同社は、500万ドル(約5億7000万円)のシードラウンドを使って製品を開発した。先にNorwest Venture Partnersがリードする1500万ドル(約17億1000万円)のラウンドを完了した。既存投資家であるCloud Apps Capital PartnersとVelvet Sea Venturesも参加した。これで累計調達額は2000万ドル(約22億8000万円)となった。

現在、同社の従業員は55名。本拠地はサンフランシスコだが、従業員は分散しており、セルビアには大きなエンジニアリングチームがある。シークリスト氏は現在、マイアミに住んでいる。同氏は、新たな資金で来年中にチームを倍増させる計画だ。

Salesforce出身の同氏は、最近チームにV2MOMを作らせた。この文書のアイデアはSalesforceから持ちこんだものだ。SalesforceによるとV2MOMとは「ビジョン、バリュー、ミッション、目標、手段を表すマネジメントプロセスとそれらの頭文字をとったもの」だという。

「ちょうどV2MOMを完成させたところです。先週、ヨーロッパと米国からメキシコに人を送りました。1週間かけて当社のコアバリューを定義しましたが、その1つが『インクルーシブ』です。私たちは、すべての人を受け入れることのできる会社と製品を作りたいと思っています」。

特に、従業員の大部分がセルビア人であることから、人種的な多様性を確保するのは難しいと認めている。それでも、来年には従業員数を2倍にする計画の下、多様性の確保に取り組んでいる。シークリスト氏の計画では、職場はこれからもほぼリモート環境のままだ。そのため、どこからでも人を集めることができるはずだ。

シークリスト氏は、パートナーシップのためのネットワーク企業であるCrossbeamと同様、ネットワークが「ネットワークのネットワーク」へと成長していけば、フライホイール効果が生まれ、多くの人々が製品を使い、製品の価値が高まっていくと期待している。2022年前半には、この製品を一般に販売したいと考えている。

画像クレジット:Yuichiro Chino / Getty Images

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(文:Ron Miller、翻訳:Nariko Mizoguchi

アプリストアの2021年消費者支出は過去最高約15兆円、新規インストールは1436億回を記録

アプリエコノミーは、2021年に再び新しい記録を打ち立てようとしている。米国時間12月7日に発表された、Sensor Towerによる2021年のグローバルアプリエコシステムのレビューによると、アプリの初回インストール回数は2021年、1436億回に達し、前年比0.5%増となったが、アプリでの消費者支出は同19.7%増の1330億ドル(約15兆円)と大幅に増加した。この数字には、Apple App StoreとGoogle Playにおけるアプリ内購入、プレミアムアプリ、サブスクリプションでの支出が含まれるが、中国にあるようなサードパーティのアプリストアは含まれない。

画像クレジット:Sensor Tower

この成長率は、消費者支出が21%急増して1111億ドル(約12兆6400億円)に達した2020年とほぼ同じだとSensor Towerは指摘する。

もちろん2020年には新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の直接の影響を受けて消費者は自宅で仕事をしたり、オンラインで買い物をしたり、友人とバーチャルにつながったり、より多くの娯楽コンテンツをストリーミングしたり、オンラインで授業を受けたりと、さまざまな行動上の変化を余儀なくされたためだ。こうした変化は、2020年には消費者のアプリ利用と支出の面で現れた。パンデミックがモバイルアプリの世界に影響を与えたこともあり、世界のアプリ収入は2020年上半期に500億ドル(約5兆6900億円)にまで急増したと、当時TechCrunchは報じた。

画像クレジット:Sensor Tower

こうしたパンデミックに起因する個人消費の変化は、2020年の新型コロナによる政府のロックダウンを超えて、2021年のモバイルトレンドに影響を与え続けるだろうというシグナルが早くからあった。例えば米国では、iPhoneアプリでの消費者支出は、2020年の平均136ドル(約1万5500円)から2021年には平均180ドル(約2万500円)に達する見込みだと、Sensor Towerは指摘していた。しかし、最終的には165ドル(約1万8800円)にとどまったとのことだ。また、2021年上半期の消費者支出はすでに新記録を達成し、世界全体では649億ドル(約7兆3900億円)に達した。

Sensor Towerが発表したところによると、世界全体で1330億ドルという記録的な支出の内訳は、App Storeでの支出が851億ドル(約9兆6900億円)で、2020年の723億ドル(約8兆2300億円)に比べて前年比17.7%増となった。また、Google Playの消費者支出は479億ドル(約5兆4500億円)で、2020年の388億ドル(約4兆4200億円)から23.5%増加している。App Storeの売上高はGoogle Playの約1.8倍と引き続き上回り、これは例年通りだ。

ゲーム以外では、2021年に世界で売上最多だったアプリは、中国版Douyinを含むTikTokだった。ByteDanceの短編動画アプリの各バージョンを合わせると、2021年は11月までに20億ドル(約2280億円)の売上高を突破し、年末までに23億ドル(約2620億円)に達する見込みだ。これにより、累計売上高は38億ドル(約4330億円)に達する。

同アプリは、App Storeのグローバルの支出額でもトップだったが、Google Playでは、TikTokは消費者支出額で第4位にとどまった。Googleの自社サービスであるGoogle Oneが第1位だった。年末までにGoogle Oneの消費者支出は10億ドル(約1140億円)に達し、2020年の4億4850万ドル(約510億円)から123%増だ。

画像クレジット:Sensor Tower

一方、世界のアプリのダウンロード数は伸び悩み始めている。全体としては、2020年の1429億回から1436億回へと0.5%増えているが、これは主にGoogle PlayでのAndroidアプリのダウンロードの伸びによるものだ。Google Playでのインストール数は、2020年の1085億回から2.6%増の1113億回に達した。

しかし、AppleのApp Storeでは、新規アプリインストール数が減少した。2021年のダウンロード数は、2020年の344億回から323億回へと6.1%減少するとSensor Towerは予想している。

TikTokのインストール数は、2020年の9億8070万回から減少したものの、世界全体で7億4590万回となり、引き続き最もダウンロードされたアプリだった(Appleは先日、iPhoneの無料アプリチャートで、TikTokが米国で年間トップのダウンロード数を記録したことを明らかにした)。Google Playでは、Facebookが5億90万回でトップとなり、Androidが普及している多くの新興市場で、同アプリが人気を博していることを示している。しかし、2つのアプリストア合計で2021年のFacebookのインストール数は6億2490万回で、2020年の7億780万回に比べて12%減となる見込みだ。

関連記事:アップルが2021年の米App Store Award受賞者と年間最もダウンロードされたアプリを発表

画像クレジット:Sensor Tower

モバイルゲームは、例年通り世界のアプリ売上高の中で大きなシェアを占めている。2021年のモバイルゲームへの支出は、App StoreとGoogle Playを合わせて896億ドル(約10兆2000億円)に達し、2020年の796億ドル(約9兆620億円)から12.6%増となる見込みだ。

しかし継続的な流れとして、パイ全体に占めるゲームの割合は縮小している。2019年には、アプリ全体の支出のうちゲームが74.1%を占めていたが、2020年には71.7%に低下した。2021年は再び低下し、アプリ内支出全体の67.4%にとどまっている。この変化は、ゲーム以外のサブスクリプションベースのアプリの増加によるもので、2021年は特にパンデミックから経済的恩恵を受けたストリーミングやエンターテインメントアプリの成長が顕著だ。

画像クレジット:Sensor Tower

App Storeでは、ゲームの2021年の消費者支出は523億ドル(約5兆9540億円)で、2020年から9.9%増だ。iOSにおけるゲームマーケットを牽引するのは、Tencentの「Honor of Kings(王者栄耀)」で、2020年の25億ドル(約2850億円)から16%増の29億ドル(約3300億円)だった。

Google Playでは、最高の売上を記録したのはやはりMoon Activeの「Coin Master」で、前年比13%増の約9億1200万ドル(約1040億円)に達した。全体として、Google Playでのゲーム支出はグローバルで2020年の320億ドル(約3兆6400億円)から16.6%増の373億ドル(約4兆2480億円)となる。

画像クレジット:Sensor Tower

ゲームのインストール数は、他のモバイルアプリのインストール数と同様に、App Storeでは前年比で減少し、2020年の101億回から2021年は86億回に減った。中国版「Game of Peace」を含む「PUBG Mobile」は、最多のダウンロード数(4750万回)を獲得した。Google Playでは、ゲームのインストール数は、2020年の461億回から2021年は467億回へと1.3%増加し、Garena Free Fireがダウンロード数最多となった(2億1880万回)。

2021年のトレンドは、2020年に異常なほどの盛り上がりを見せた後、ある程度、少し正常化した。しかし、例えば、消費者支出のうちゲームが占める割合が減少していることや、ダウンロード数ではAndroidがiOSを上回っているが売上高ではそうではないことなど、その他の傾向は変わっていない。

画像クレジット:TechCrunch

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(文:Sarah Perez、翻訳:Nariko Mizoguchi

Sounding Boardが管理職向けコーチングをサービスからSaaSへ移行

組織のリーダーと彼らに指導を行うコーチを結びつけるマーケットプレイスとしてスタートしたSounding Board(サウンディング・ボード)は、新型コロナウイルス流行初期の頃に、メンターシップの刷新が必要であることに気づいた。

「私たちはこれまで、伝統的なサービス形式でコーチングを提供してきました」と、Sounding BoardのCEOで共同設立者のChristine Tao(クリスティン・タオ)氏は語る。「そう、私たちはもうオフィスにはいません。だから人材やリーダーをどのように育てていくかについて、これまでとは違った話をする必要があるのです」。この洞察は、ユーザーをコーチと結びつけるだけではなく、ユーザーが継続的に目標を追うことができるソフトウェアプラットフォームの起ち上げにつながった。

画像クレジット:Sounding Board

このビジョンに基づき、シリーズA資金調達を成功させてから1年近く経った今、Sounding BoardはシリーズBを3000万ドル(約34億円)でクローズした。Jazz Venture Partners(ジャズ・ベンチャー・パートナーズ)が主導したこのラウンドは、Gaingels(ゲインジェルズ)の他、theBoardlist(ザ・ボードリスト)のSukhinder Singh Cassidy(スキンダー・シン・カシディ)氏、Ancestry.com(アンセストリー・ドットコム)のDeb Liu(デブ・リュー)氏、Udemy(ユーデミー)のYvonne Chen(イヴォンヌ・チェン)氏、DocuSign(ドキュサイン)のTammy Aguillon(タミー・アギロン)氏などのエンジェル投資家も参加した。これまでの投資家の中には、Canaan Partner(カナーン・パートナー)、Precursor Ventures(プレカーサー・ベンチャーズ)などが含まれている。

また、今回のラウンドでは、JAZZ Venture PartnersのJohn Spinale(ジョン・スピナーレ)氏が取締役に就任し、Sounding Boardの女性ばかりのチーム(および女性ばかりの取締役会)に加わることになった。「これは冗談ですが、私たちは実際に取締役会に多様性を加えなければなりませんでした……男性です」といってタオは笑った。

この資金調達は、Sounding Boardが過去7四半期にわたって、連続した成長を着実に遂げてきた結果によるものだ。タオ氏は収益の詳細については明らかにしようとしなかったものの、同社によると、過去の収益は「数百万ドル(数億円)」で、年間の予約件数は前年同期比で350%以上増加しているという。スティッキネス(粘着性)に関しては、Sounding Boardは同社の純収益維持率が200%を超えると主張。これはつまり、既存の顧客が時間が経ってもプラットフォームへの支払いを継続していることを意味する。

Sounding Boardの最大の競合企業であるBetterUp(ベターアップ)は最近、コーチングの背後にあるソフトウェアに、同じように焦点を移していることを示すような買収を繰り返している。Motive(モーティブ)を買収したのは、BetterUpのクライアントが、エンゲージメント調査や世論調査などですでに収集しているデータの背後にある感情的な背景を理解するために役立つからだ。このユニコーン企業はImpraise(インプライズ)も買収した。Impraiseは、リアルタイムのパフォーマンスレビューや、よりシームレスなフィードバックチャネルを通じて、管理職が直属の部下をよりよくサポートできるようにするためのテクノロジーを提供している。

BetterUpの成長は、投資家の間で、エグゼクティブトレーニングの重要性を高めることに貢献しているとタオ氏は考えているが、広範なコーチングツールよりも、よりリーダーシップに特化したサービスを提供できる余地がまだあると、同氏は見ている。Sounding Boardの共同設立者であるタオ氏は、2020年の間、精神的・感情的な状態をサポートすることで個人の能力を管理することに焦点を当てた多くのソリューションを目にしてきたという。例えばBetterUpの「care(ケア)」などだ。

「しかし、それと並行して、管理や効果的なコミュニケーションができる本物のスキルと能力も実際には必要です」と、タオ氏はいう。Sounding Boardでは、エグゼクティブトレーニングの能力面を解決することにより関心を向けており、現在のところはメンタルヘルス面に注力する計画はない。もちろんこれでは、競合他社が両方面に充実したソリューションを提供すれば、Sounding Boardからシェアを奪う可能性がある。今のところ、Sounding Boardの顧客はそちらの方面を意識してはいないようだ。

「(メンタルヘルスに関する)企業の福利厚生を考えると、それはもう少し無干渉なものではないでしょうか。用意されていれば、参加するかどうかを自分で選ぶという種類のものですが、それは従業員のためのものであるはずです」と、タオ氏はいう。「一方、能力開発に関しては、企業にとっての必要性があり、自ら投資したいと思うものであり、それを行う責任があるのではないかと私は考えます」。

Sounding Boardは現在、Plaid(プレイド)、Chime(チャイム)、Bill.com(ビル・ドットコム)など約100社ほどの顧客を持っている。

画像クレジット:Francesco Carta fotografo / Getty Images

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(文:Natasha Mascarenhas、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

AWS、ローコードのアプリ開発ツール「Amplify Studio」を発表

2021年のre:InventカンファレンスでAWSは米国時間12月2日、Figmaに接続されるノーコード / ローコードサービスで、これによりデベロッパーはクラウドに接続されたアプリケーションを迅速に開発することができるAmplify Studio発表した。Amplify Studioは既存のAWS Amplifyサービスの拡張で、ウェブアプリケーションやモバイルアプリを作れるという基本機能は同じだが、Amplify Studioはドラッグ&ドロップのインターフェースなので使いやすい。

AWSは、Studioを人気のあるユーザーインターフェースデザインツールFigmaに接続するという、おもしろいことをしている。これによりデザイナーはインターフェースをFigmaで作り、そのあとデベロッパーがそれを自分のバックエンドデータに接続してStudioの中でアプリケーションのロジックを作る。そのためAWSが自分のツールを作る必要がなく、Amplify StudioがFigmaのデザインをReact UIのコンポーネントのコードに翻訳する。

画像クレジット:AWS

AWSのRene Brandel(ルネ・ブランデル)氏は、声明で「Studioの新しい『UI Library』(プレビュー)で、FigmaとAmplify Studioのコンポーネントを同期できます。またAmplifyには便利なFigmaファイルがあるため、仕事の開始が早い。AmplifyのFigmaファイルには、UIのプリミティブと既成のコンポーネントの両方があります。さらにStudioは、Figmaで作られた新しいコンポーネントも同期できます」。

画像クレジット:AWS

AmazonのWerner Vogels(ワーナー・ヴォゲルス)CTOによると、同社はこれを今でもデベロッパーファーストのサービスと見なしており、特にフロントエンドのエンジニアが対象だ。つまり、まだあちこちにコードを少し書かなければならないということだが、それによりデベロッパーは自分のアプリケーションを既存のDevOpsのパイプラインにエクスポートすることが容易にできる。

Amplify Studioでは、必要なら一部の既成コンポーネントを、AWS Cloud Development Kitを使って、デベロッパーがAmplify Studioの中でオーバライドしてもよい。AWSによると、これのおかげでデベロッパーは、ニーズや成長に応じてアプリケーションをスケールできないといった壁にぶつかることがない。

画像クレジット:AWS

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(文:Frederic Lardinois、翻訳:Hiroshi Iwatani)

アップルが2021年のApp Store Award受賞者と年間最もダウンロードされたアプリを発表

Apple(アップル)は米国時間12月2日、iPhone、iPad、Mac、Apple TV、Apple Watchの各分野において、楽しみにされていた年間で最も優れたアプリとゲームを紹介するリストを発表した。2021年は、子ども向けアプリメーカーのToca Bocaが「Toca Life:World」でベストiPhone Appを受賞した他、Riot Gamesの「リーグ・オブ・レジェンド:ワイルドリフト」がベストiPhoneゲームを受賞した。

その他、ベストiPad AppをLumaTouchの「LumaFusion」、ベストiPad ゲームをNetmarbleの「MARVELフューチャーレボリューション」、ベストMac AppをLuki Labs Limitedの「Craft – ドキュメントとメモエディタ」、ベストMacゲームをCyanの「Myst」、ベストApple TV AppをDAZN Groupの「DAZNスポーツをライブ中継」、ベストApple TVゲームをPixelbiteの「Space Marshals 3」、ベストApple Watch AppをGrailrの「Carrot Weather」、そしてベストApple ArcadeゲームをMistwalkerの「FANTASIAN」が受賞した。

通常、受賞作品は、App Storeに登場して間もない作品や、Appleのテクノロジーを興味深い形で活用した作品、あるいはその年に特に注目を集めた作品などが対象となることが多い。例えば、2020年の受賞作品は、パンデミックの影響がアプリの業界にも反映しており、iPhoneではホームワークアウトアプリ「Wakeout! – 運動療法」、iPadでは「ZOOM Cloud Meetings」が受賞した。

しかし、2021年のベストiPhone Appに選ばれた「Toca Life:World」は、別の理由で興味深い作品だ。このアプリのメーカーであるToca Bocaは、2021年の3月で10周年を迎えたことを祝っていた。最初のアプリをリリースして以来、同社は40以上の子ども向けアプリをリリースしてきた(Toca Bocaではデジタルトイと呼んでいる)。「Toca Life:World 」は、これまでの「Toca Life 」アプリを1つにまとめた集大成とも言える作品だ。

Appleは、この賞を受賞したToca Bocaについて「10年経った今でも、子どもたちの遊びと自己表現の芸術を見事に反復している」と賞賛している。

今回の受賞は、App Storeへの反発や動揺が見られたこの年に、デベロッパーがApp Storeで長期的なビジネスを構築していること、そしてAppleはこのような賞の受賞を含め、その成功をサポートする役割を果たしていることをさりげなく示すものでもある。

また、ストリーミングサービスの「DAZNスポーツをライブ中継」がローカルのスポーツ文化を世界的に広めたことを紹介するなど、他の受賞者も称賛した。一方で、AppleはApple TVやiOSアプリ向けのSportsKitフレームワークを静かに構築しており、DAZNもいつか活用することができるかもしれない。

Appleはまた「Carrot Weather」が誇る最高峰の気象予報精度をアピールした。これは、Appleのデフォルトの天気予報アプリと競合するもので、Appleが所有する「Dark Sky Weather」のデータを使用している。Appleは「LumaFusion」のより速く、煩わしさなくビデオ編集ができるようになる能力を紹介し、ドキュメントエディタの「Craft – ドキュメントとメモエディタ」が「効率性と芸術性」を兼ね備えていることについてもアピールした。しかし、これらのアプリがApple製品(それぞれiMovieとiWorkのPages)と競合していることも無視できない。どちらかというと、このリストの多くは、サードパーティ製アプリの運命が、Appleのソフトウェア開発といかに密接に結びついているかを思い起こさせるものでもある。

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2020年は、App Storeにとって過渡期の年だった。規制当局の監視が強化され、世界各地で新たな法律が制定され、App Storeのコミッションベースのビジネスモデルをめぐるさまざまな訴訟に直面した(現在、控訴中のEpic Gamesとの訴訟を含む)。その結果、Appleは、市場の要求や和解合意に応じて、ポリシーを調整明確化し、場合により手数料の引き下げも行った。

このような変化にもかかわらず、アワード受賞者を含む多くのアプリの成功と品質は依然として高い水準にある。

また、Appleは年末の受賞者を発表するにあたり「つながり」を2021年のトレンドのトップに掲げ、このテーマを念頭に置いて人々の生活に長く続く影響を与えた数多くのアプリやゲームを称えた。このリストには、InnerSlothの協力・対戦型ゲーム「Among Us!」、デート・ネットワーキングアプリ「Bumble – 誠実なマッチングアプリ」(そのトップライバルである「Match 婚活・マジメな出会いマッチング アプリ」は、たまたまApp Storeの批評家として注目されている)、デザインリソース「Canva-インスタストーリー,年賀状デザイン作成や写真編集」、黒人経営のビジネスに焦点を当てた地元の食べ歩きガイド「EatOkra」、2021年から音声チャットルームを開始した女性向けソーシャルネットワーク「Peanut:Find Friends & Support」などが含まれている。

AppleのCEOであるTim Cook(ティム・クック)氏は、声明の中で「2021年にApp Store Awardsを受賞した開発者たちは、自らの意欲とビジョンを活かして、その年の最高のアプリやゲームを提供し、世界中の何百万人ものユーザーの創造性と情熱を刺激しました。独学で学んだインディーズのコーダーから、グローバルビジネスを構築する刺激的なリーダーまで、傑出したデベロッパーの方々はAppleのテクノロジーで革新を起こし、その多くが2021年必要とされた深い一体感の醸成に貢献しました」と述べている。

受賞者には、Apple製品の製造に使用されている100%リサイクルのアルミニウムに、App Storeの象徴である青いアイコンがはめ込まれ、反対側に受賞者の名前が刻まれた現物のApp Storeアワードが届くことになっている。

また、Appleは例年通り、その年に最もダウンロードされたアプリのリストも発表した。米国では、最もダウンロードされたアプリは以下のとおりだ。

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  • Cut the Rope Remastered
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画像クレジット:Apple

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(文:Sarah Perez、翻訳:Akihito Mizukoshi)

シドニーのQ-CTRLは量子センシングを活用した「サービスとしてのデータ」市場を目指す

Q-CTRLは、量子制御エンジニアリングソリューションを提供するシドニーのスタートアップ企業だ。同社はオーストラリア時間11月30日、Airbus Ventures(エアバス・ベンチャーズ)が主導するシリーズBラウンドで、2500万ドル(約28億円)の資金を調達したことを発表した。このラウンドには、Ridgeline Partners(リッジライン・パートナーズ)、Main Sequence Ventures(メイン・シーケンス・ベンチャーズ)、Horizons Ventures(ホライズンズ・ベンチャーズ)、Square Peg Capital(スクエア・ペグ・キャピタル)、Sierra Ventures(シエラ・ベンチャーズ)、DCVC、Sequoia Capital China(セコイア・キャピタル・チャイナ)、In-Q-Tel(インキューテル)も参加した。

Q-CTRLの創業者兼CEOであるMichael Biercuk(マイケル・ビアキュック)氏は、この資金調達がスタッフの雇用を支援し、量子センシングを活用した新しいデータ・アズ・ア・サービス(サービスとしてのデータ)市場を実現すると述べている。同社はまた、量子コンピューティングのための量子制御や、加速度、重力、磁場を計測する量子センシングの開発にも引き続き投資していく。同社はこれまでに、総額6000万豪ドル(約49億円)以上の資金を調達している。

「Q-CTRLのビジョンは常に、量子技術のあらゆる応用を可能にすることです。今回の新たな資金調達は、宇宙、防衛、商業の分野に真の価値を提供するという当社のミッションを実現するために不可欠なものです」とビアキュック氏は述べている。

Q-CTRLは、この分野で最も差し迫った課題であるハードウェアのエラーや不安定性に対処し、量子コンピューティングのパフォーマンスを向上させるインフラストラクチャソフトウェアを提供していると、ビアキュック氏はTechCrunchに語った。

今回のシリーズB資金調達は、Q-CTRLが最近行った主要な技術および製品開発の発表に続いて実施されたものだ。それらの中には、量子論理ゲートとして知られるQ-CTRLのコア技術を用いて、実際の量子コンピューター上で実行される量子アルゴリズムのパフォーマンスを2680%向上させる技術デモが含まれている。

同社はまた、Fleet Space Technologies(フリート・スペース・テクノロジーズ)を中心としたオーストラリア企業のコンソーシアムと共同で、宇宙に適した量子センサーや、地球と月や火星の探査技術を開発している。その量子センサーの顧客には、Advanced Navigation(アドバンスド・ナビゲーション)、オーストラリア国防総省、空軍研究所、オーストラリア宇宙庁などが含まれる。

「このチームのすばらしい量子制御ソフトウェア群は、量子産業全体が急速に加速している今、速さと機敏さを可能にします」と、東京に本拠を置くAirbus Venturesのパートナー、Lewis Pinault(ルイス・ピノー)氏は述べている。「Q-CTRLは、月面開発、地理空間情報、地球観測など、先進的なアプリケーションやソリューションの幅を広げています。これらはすべて、現在我々が直面している加速的な惑星システムの危機に対処するための世界的な取り組みにおいて、ますます重要になっているものです。私たちが特に期待しているのはそこです」。

ビアキュック氏によれば、Q-CTRLの2020-2021年度の収益は前年比3倍となり、2020年後半に開始したばかりの新しい量子センサー事業の売上と予約で900万ドル(約1億円)以上を計上したとのこと。

多くの企業がそうであるように、新型コロナウイルスの影響で成長が大幅に停止したため、予定していた海外での販売・マーケティング活動に大きな損失が発生したと、ビアキュック氏は述べている。にもかかわらず、同社のチームは2020年1月以降、約20人から60人に増えたという。

ビアキュック氏は、同社が量子制御の専門家による大規模なチームを運営しており、30人以上の博士レベルの研究者が、量子コンピューティングと量子センシングの研究と製品開発を推進していると付け加えた。

Q-CTRLは最近、誰でも量子コンピューティングを学ぶことができるインタラクティブでアクセスしやすいオンライン学習プラットフォーム「Black Opal(ブラック・オパール)」を起ち上げた。ビアキュック氏によると、これは10日間の販売目標を2日半で突破したという。

Q-CTRLは2017年に、ビアキュック氏が量子物理学および量子技術の教授として勤務するシドニー大学からスピンオフした。

マイケル・ビアキュック氏(画像クレジット:Jessica Hromas)

現在はシドニーとロサンゼルスにオフィスを構えているが、年内にはベルリンにもオフィスを開設し、最初の従業員を雇用する予定だと、ビアキュック氏は述べている。

Boston Consulting Group(ボストン・コンサルティング・グループ)の報告書によると、量子コンピューティング産業は、2040年までに年間評価額で8500億ドル(約9兆6000億円)以上になると推定されている。BCC Research(BCCリサーチ)の報告では、世界の量子センサー市場は、2019年の1億6100万ドル(約182億円)から、2024年には2億9990万ドル(約338億5000万円)に増加すると予測している。

画像クレジット:Q-CTRL

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(文:Kate Park、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

日々のプロセスを自動化、開発者が重要なタスクに集中できるようにするツールのRaycastが約16.9億円調達

開発者向け生産性向上ツールのRaycast(レイキャスト)は、Accel(アクセル)とCootue(クーチュ)を中心としたシリーズAで1500万ドル(約16億9100万円)の資金を調達した。また、このラウンドには、エンジェル投資家として、Hopin(ホピン)のCEO兼創業者であるJohnny Boufarhat(ジョニー・ブファルハット)氏、Stripe(ストライプ)の製品責任者であるJeff Weinstein(ジェフ・ワインスタイン)氏、GitHub(ギットハブ)の元CTOであるJason Warner(ジェイソン・ワーナー)氏、Checkout.com(チェックアウト・ドットコム)のCTOであるOtt Kaukver(オット・カウクバー)氏などが参加した。

Raycastは、元Facebook(フェイスブック)のソフトウェアエンジニアであるThomas Paul Mann(トーマス・ポール・マン)氏とPetr Nikolaev(ペトル・ニコラエフ)氏によって2020年に設立された。彼らは、異なるSaaSツール間で開発者が継続的にコンテキストスイッチを行うことで日々失われる時間を取り戻す方法を模索していた。

「私たちが会社を始めたのは、コンピューターとの向き合い方を改善したいと思ったからです。私たち自身も開発者として、ほとんど価値を提供しない忙しい作業に多くの時間を費やしていることに気づきました。むしろもっと重要な仕事に時間を費やしたいと思ったんです。これがRaycastの前提であり、仕事を早く終わらせるためのツールを提供します」RaycastのCEOであるトーマス・ポール・マンは、TechCrunchのインタビューに答えている。

Raycastは、コマンドラインにインスパイアされたインターフェースにより、開発者が情報を見つけ、更新することを容易にすることを目的としている。このプラットフォームは、日々のプロセスやタスクの自動化を可能にし、開発者が重要なタスクに集中できるようにする。このデスクトップソフトウェアは「Superhuman」や「Command E」などの同業他社を参考にしており、ユーザーはキーボードショートカットを使ってすばやくデータを引き出し、修正することができる。ユーザーは、Jiraでの課題の作成や再修正、GitHubでのプルリクエストのマージ、ドキュメントの検索などを簡単に行うことができる。基本的に、Apple(アップル)のSpotlight検索の開発者向けバージョンであり、ソフトウェアエンジニアが開発作業以外のすべての部分を単一のツールを使って操作できるようにすることを目的としている。

Raycastの成長に関して、わずか12カ月で、2020年10月に130人だったデイリーアクティブユーザーを現在までに1万1000人以上に増やし、その間に2000万以上のアクションがプラットフォーム上で実行されたと述べている。チームは現在12名のメンバーで構成されており、年内にはさらに多くの人材が入社する予定だ。

また、Raycastは、エクステンションAPIとストアをパブリックベータ版として公開し、開発者がカスタムエクステンションを構築し、チームやコミュニティで共有できるようにした。同社によると、このベータ版では、1カ月間にコミュニティが100以上のエクステンションを構築し、Figma、GitHub、Chrome、Notion、YouTube、Twitterなどのサービスにも接続しているという。Raycastは現在、エクステンションAPIとストアを公開し、世界中の開発者に開放している。

画像クレジット:Raycast

マン氏は、今回の資金調達について、Raycastは開発者の生産性向上分野のリーダーになりたいと語っている。「それが、今回の資金調達の目的です。今回の資金調達は、チームの規模をさらに拡大するために使用します。私たちは、このプラットフォームを誰もが利用できるようにして、誰もが望むツールを構築できるようにしたいと考えているんです」と述べている。

Raycastは今回の資金調達を利用して、開発者やツールのコミュニティの構築に注力し、プラットフォームの成長を加速させるとともに、チームレベルでのRaycastの導入も計画している。同社は今後も個人の開発者に重点を置いていくが、生産性向上のためのツールやワークフローを他の人と簡単に共有できるようにすることにも可能性を見出している。米国時間11月30日より、企業は早期アクセスプログラムに登録して、チーム向けの新機能を利用できるようになる。ユーザーは、チームのニーズに合わせてカスタムエクステンションやリンクを構築・配布できる、独自の社内ストアを作成することができるようになる。

「チームはエクステンションを構築し、それをチームメンバーと個人的に共有することができます。カスタムセットアップで生産性を向上させる社内ツールがあれば、チームメンバーも恩恵を受けることができるよう、それをチームメンバー内に共有することができます。これにより、チームとしての生産性を維持し、普段抱えている忙しい業務に費やす時間を節約することができます」とマン氏は語る。

RaycastのシリーズA資金は、2020年10月に行われた270万ドル(約3億円)のシードラウンドに続くものだ。今回のラウンドは、Accelがリードし、YC、Jeff Morris Jr.(ジェフ・モリスJr.)氏のChapter One(チャプター・ワン)ファンド、さらにエンジェル投資家のCharlie Cheever(チャーリー・チーバー)氏、Calvin French-Owen(カルヴィン・フレンチ・オウエン)氏、Manik Gupta(マニック・グプタ)氏が参加した。

AccelのパートナーであるAndrei Brasoveanu(アンドレイ・ブラソヴェアヌ)氏は「Raycastへのシード投資を担当して以来、Raycastが開発者コミュニティで成長し、牽引していることに感銘を受けてきました。これは、Raycastが開発者にとって不可欠なツールになる可能性を秘めているという当初の確信を裏付けるものであり、APIやストアの立ち上げやチームへの拡大によって、チームがさらに前進することに期待しています。我々は、トーマス氏とペトル氏の野心的な冒険を引き続きサポートできることをうれしく思います」と述べている。

画像クレジット:Raycast

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(文:Aisha Malik、翻訳:Akihito Mizukoshi)

AWS、モノや環境のデジタルツインが簡単に作れる新サービス「IoT TwinMaker」を発表

米国時間11月30日、AWSのre:Inventカンファレンスにおいて同社はAWS IoT TwinMakerを発表した。この新サービスを使うと、現実世界のシステムのデジタルツインの作成と利用が容易にできるようになる。

デジタルツインとは、例えば建物、工場、生産ライン、設備などを仮想的に表現したもので、実世界のデータを定期的に更新することで、表現したシステムの動作を模倣するものだ。

この新サービスにより、ユーザーはビデオフィードやアプリケーションなどのソースからデータを接続することで、単一のリポジトリにデータを移動させることなく、デジタルツインを作成することができると同社はいう。

「次のAWSサービスの内蔵データコネクタを使用できます。機器や時系列のセンサーデータ用のAWS IoT SiteWise、ビデオデータ用のAmazon Kinesis Video Streams、ビジュアルリソース(例えばCADファイル)やビジネスアプリケーションからのデータの保存用のAmazon Simple Storage Service(S3)です。また、AWS IoT TwinMakerは、他のデータソース(SnowflakeやSiemens MindSphereなど)と併用する独自のデータコネクタを作成するためのフレームワークも提供しています」と、AWSは新サービスに関するブログ記事で説明している。

同社は、デジタルツイングラフが作成されると、ユーザーは物理的環境のコンテキストでデータを可視化したいと考える可能性が高いと指摘している。これに対応するため、AWS IoT TwinMakerは、ユーザーの物理システムの仮想表現と接続されたデータソースの関係を組み合わせたデジタルツイングラフを作成する。これにより、ユーザーは実世界の環境を正確にモデル化することができる。また、ユーザーは既存の3Dモデルをインポートして、工場などの物理的空間の3Dシーンをアレンジすることができる。そこから、接続された機械学習サービスからのインサイトとともに、インタラクティブなビデオやセンサーデータのオーバーレイを追加することもできる。

AWSは、このサービスには、Grafana Labsが提供するオープンなダッシュボードおよび可視化プラットフォームのマネージドサービスである「Amazon Managed Grafana」のプラグインが付属していると指摘する。

AWS IoT TwinMakerは、バージニア州北部、オレゴン州、アイルランド、シンガポールでプレビュー版が提供されており、今後、他のAWSリージョンでも提供される予定だ。

画像クレジット:AWS

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(文:Aisha Malik、翻訳:Hiroshi Iwatani)

コンテナ化されたアプリをオンプレミスまたはクラウドで実行できるようにする新しいAWS Marketplaceオプション

コンテナが急増するにつれ、開発者はコンテナを使用してソフトウェアを配布するようになっている。だがオンプレミスかクラウドかの環境によって、ユーザーにはコンテナのインストールに関わる一連の課題が残される可能性がある。この問題を解決するために、AWSは米国時間11月30日、ラスベガスで開催中のAWS re:Inventで、AWS Marketplace for Containers Anywhere(AWSマーケットプレイス・フォー・コンテナズ・エニウェア)を発表した。

製品の名前はあまりクリエイティブではないかもしれないが、それは何をするものかを正確に説明している。開発側がコンテナをAWSのマーケットプレイスで提供すれば、ユーザーはそれをどこにでもデプロイできるのだ。ここでの狙いは、AWS Marketplace上で、コンテナ化されたアプリケーションを検索する手段を提供し、それらをサブスクライブして、任意の環境のKubernetes(クバネティス)クラスターに簡単にデプロイする方法を提供することだ。

AWSのChanny Yun(チャニー・ヤン)氏は、新機能を発表したブログ投稿で「このリリースによって、Amazon EKS Anywhereを使ったオンプレミス環境や、Amazon Elastic Compute Cloud (Amazon EC 2) やオンプレミス環境上でお客様ご自身で管理されているKubernetesクラスターに対して、サードパーティのKubernetesアプリケーションをデプロイできるようになりますので、最終的にどこにデプロイするかに関係なく、単一のカタログを使用してコンテナイメージを検索することができるようになります」と書いている。

ヤン氏が指摘するように、これにより、柔軟な請求オプション、アプリケーションのセキュリティスキャンが済んでいるという情報、管理の簡素化など、マーケットプレイスを使用する際のすべての利点がユーザーに提供される。なにより大きな利点の1つは、ライセンスを変更するだけでさまざまな環境に展開できる柔軟なライセンス方式だ。

またヤン氏は「この機能を使用してアプリケーションをサブスクライブすれば、独立系ソフトウェアベンダー(ISV)が提供するHelm(ヘルム)チャートを、AWS上のISVのKubernetesクラスタにデプロイすることで、ご自身のKubernetesアプリケーションをAWSに移行できます」とも書いている。

AWSは、AWS Marketplace for Containers Anywhereが、AWS Marketplaceをサポートしているすべてのリージョンで利用できるようになったと発表した。

画像クレジット:Jason Alden/Bloomberg/Getty Images

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(文: Ron Miller、翻訳:sako)

量子コンピューティングAWS Braketが量子 / 古典ハイブリッドアルゴリズムのサポートを強化

AWS(アマゾン・ウェブ・サービス)は2019年に、パートナーであるRigetti(リゲッティ)、IonQ(イオンキュー)、D-Wave(ディーウェーブ)のハードウェアとソフトウェアのツールを自社のクラウドで利用できるようにする量子コンピューティングサービス「Braket(ブラケット)」を開始した。量子コンピューティングの世界がいかに早く進んでいるかを考えると、それから多くのことが変化しているのも当然かもしれない。

とりわけ、古典的なコンピューターを使って量子アルゴリズムを最適化するハイブリッドアルゴリズム(機械学習モデルのトレーニングに似たプロセス)は、開発者にとって標準的なツールとなっている。AWSは米国時間11月29日、このようなハイブリッドアルゴリズムをBraket上で実行するためのサポートの改善を発表した

これまで開発者は、ハイブリッドアルゴリズムを実行するために、古典的なマシン上で最適化アルゴリズムを実行するためのインフラを設定・管理し、それから量子コンピューティングハードウェアとの統合を管理しなければならず、加えて、結果を分析するための監視・可視化ツールも必要だった。

画像クレジット:AWS

しかし、それですべてではない。「もう1つの大きな課題は、(量子処理ユニットは)共有された非弾力的なリソースであり、アクセスのためには他の人と競合するということです」と、AWSのDanilo Poccia(ダニロ・ポッチア)氏は、この日の発表で説明している。「これは、アルゴリズムの実行を遅らせる可能性があります。他の顧客の大規模なワークロードが1つでもあれば、アルゴリズムが停止し、総実行時間が何時間も延びる可能性があります。これは不便なだけでなく、結果の質にも影響します。というのも、現在のQPUは定期的な再キャリブレーションが必要であり、それがハイブリッドアルゴリズムの進捗を無効にする可能性があるからです。最悪の場合、アルゴリズムが失敗し、予算と時間が無駄になります」。

新たに提供される「Amazon Braket Hybrid Jobs(アマゾン・ブラケット・ハイブリッド・ジョブズ)」機能では、開発者が古典的マシンと量子マシンの間のハードウェアおよびソフトウェアの相互作用を処理する完全なマネージドサービスを利用できる。また、開発者は量子処理ユニットへの優先的なアクセス権を得られ、より高い予測性を取得できるようになる。Braketは、必要なリソースを自動的に立ち上げる(ジョブが完了するとシャットダウンする)。開発者は、アルゴリズムにカスタムメトリクスを設定することができ、Amazon CloudWatch(アマゾン・クラウドウォッチ)を使って、ほぼリアルタイムで結果を可視化することができる。

「Braket Hybrid Jobsは、私たちアプリケーション開発者に、ハイブリッド変分アルゴリズムの可能性を顧客とともに探求する機会を与えてくれます」と、QCWare(QCウェア)のエンジニアリング責任者であるVic Putz(ヴィック・パッツ)氏は語っている。「私たちは、Amazon Braketとの統合を拡大できることに興奮しています。独自のアルゴリズムライブラリをカスタムコンテナで実行できるということは、安全な環境で迅速に革新を起こせることを意味しています。Amazon Braketの成熟した運用と、さまざまなタイプの量子ハードウェアへ優先的にアクセスできる利便性は、我々が自信を持ってこの新しい機能を我々のスタックに組み込めることを意味します」。

画像クレジット:krblokhin / Getty Images

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(文:Frederic Lardinois、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

米Google Playベストオブ2021でメディテーションアプリ「Balance」が年間ベストに、「ポケモンユナイト」がベストゲームに

Google(グーグル)は米国時間11月29日、同社とユーザーが選んだ過去1年間のベストアプリとゲームを紹介する「Best of 2021(ベスト オブ 2021)」の受賞アプリを発表した。2021年はアワードのラインナップが拡大され、タブレットやWear OS、Google TV向けのアプリやゲームを対象とした賞も増設された。米国ではメディテーションアプリ「Balance(バランス)」が年間ベストアプリに、そして「Pokémon UNITE(ポケモンユナイト)」がベストゲームに選ばれた。一方、ユーザーの投票によって選ばれるユーザーズチョイス賞は「Paramount+(パラマウントプラス)」と「Garena Free Fire MAX(ガレナ・フリー・ファイア・マックス)」が受賞した。

2020年には、新型コロナウイルス感染拡大に見舞われた世界を反映し、ベストアプリに選ばれた睡眠アプリ「Loóna(ルーナ)」や、逃避的なゲームの「GENSHIN IMPACT(原神)」など、ストレスを抱えたユーザーがリラックスするために利用するようなアプリやゲームの人気が高かった。

コロナ禍の初期段階が過ぎた2021年は、リラックスや逃避ではなく、自己成長や創造性に焦点を当てたアプリも受賞作に含まれている。これもまた、我々の社会的な状況を反映しているように思われる。この1年、米国では、やりがいのない仕事や低賃金の仕事を自発的に辞めてもっと良い仕事を探す「大辞職」が起こり、情熱を追求する人々によるクリエイター経済のブームが巻き起こり始めた。

2021年の最優秀賞に選ばれた個人向け瞑想アプリのBalanceの他にも、受賞作には自己開発をテーマにしたアプリが多く含まれている。「月の満ち欠け周期に生活を調和させる」アプリの「Moonly(ムーンリー)」「コメディによるリラクゼーション」アプリの「Laughscape(ラフスケープ)」、女性向け催眠療法アプリの「Clementine(クレメンタイン)」、快眠アプリの「Sleep Cycle(スリーブ・サイクル)」、メンターシップコミュニティ「Mentor Spaces(メンター・スペイシズ)」、習慣追跡・計画ツール「Rabit(ラビット)」、喪失の悲しみを癒すアプリ「Empathy(エンパシー)」などだ。

その他の受賞作にも、音声チャットルーム「Clubhouse(クラブハウス)」や、スクリーンの使用時間を短縮する「Speechify(スピーチファイ)」のようなツール、自然とのつながりを取り戻すための「Blossom(ブロッサム)」など、我々がコロナ禍の生活にどのように適応しているかを示すものが含まれている。

ベストアプリのBalanceの他、米国版Google Play Best of 2021の各部門で受賞したアプリは以下の通り。

Best Apps for Good(生活向上アプリ部門)

Best Everyday Essentials(生活に必須なアプリ部門)

Best for Fun(楽しみのためのアプリ部門)

Best Hidden Gems(隠れた名作アプリ部門)

Best for Personal Growth (自己改善アプリ部門)

Best for Tablets(最優秀タブレット向けアプリ部門)

Best for Wear (最優秀ウェアブルデバイス向けアプリ部門)

Popular on Google TV(Google TV向け人気アプリ部門)

2021年のベストゲームは、クロスプラットフォームに力を入れた当てたポケモンユナイトが受賞した。

「ポケモンユナイトは、 The Pokémon Company(株式会社ポケモン)とTiMi Studios(ティミ・スタジオ)が共同開発した、ポケモン初のチーム戦略バトルゲームです。私たちは、MOBAというジャンルの良いところを抽出して、新しいゲームを作ろうとしましたが、正直いうと、それが世界中のプレイヤーに受け入れられるかどうかはわかりませんでした」と、ポケモンユナイトのプロデューサーである星野正昭氏は声明文に記している。「今回の受賞は、私たちのゲームがファンやメディアから好意的に受け止められていることを示しており、大変安心したと同時に、今後もポケモンユナイトが、プレイヤーのみなさまの期待に応えられるような、よりエキサイティングな体験を提供できるように、最善を尽くしていく決意を新たにしています」と、星野氏は続けている。

その他の受賞作には「世界で最も孤独な鳥」と友達になることに挑戦する、内省的な「Bird Alone(バード・アローン)」などのインディーズゲームも含まれている。Annapurna Interactive(アンナプルナ・インタラクティブ)の「Donut County(ドーナツ カウンティ)」は、物理ベースのパズルゲームとして評価された。

米国版Google Play Best of 2021の各部門で受賞したゲームは以下のとおり。

Best Competitive(対戦ゲーム部門)

Best Game Changers(ゲームチェンジャー部門)

Best Indies(インディー部門)

Best Pick Up & Play(ピックアップ&プレイ部門)

Best for Tablets(最優秀タブレット向けゲーム部門)

各国の受賞アプリやゲームは、Playストアに新たに表示される「ベスト オブ 2021」セクションに掲載されている。上記はGoogle Playの米国における受賞作だ。

画像クレジット:Google

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(文:Sarah Perez、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

どんな企業でもAIが使えるようになるツールを提供するH2O.ai、約1810億ドルのプレマネー評価で約123億ドルを調達

H2O.aiは、オープンソースのフレームワークと独自のアプリケーションを開発し、あらゆる企業が人工知能ベースのサービスを簡単に構築、運用できるようにするスタートアップである。AIアプリケーションがより一般的になり、テック企業以外の企業もAIを取り入れたいと考えるようになっていることもあり、同社への関心が一気に高まっている。そんなH2O.aiが今回、同社の成長を促進するために1億ドル(約122億8000万円)を調達。今回の資金調達により同社の価値は、ポストマネーで17億ドル(約1918億4000万円)、プレマネーで16億ドル(約1805億5000万円)となった。

今回のラウンドはシリーズEで、戦略的支援者であるCommonwealth Bank of Australia(CBA、オーストラリア・コモンウェルス銀行)がリードしている。CBAは同スタートアップの顧客でもあるのだが、今回の支援を利用して両者のパートナーシップを深め、新しいサービスを構築していく予定だ。今回の資金調達には、Goldman Sachs(ゴールドマン・サックス)、Pivot Investment Partners(ピボット・インベストメント・パートナーズ)、Crane Venture Partners(クレーン・ベンチャー・パートナーズ)、Celesta Capital(セレスタ・キャピタル)などが参加。今回の資金調達を活用し、H2O.ai全体の製品をさらに充実させ、同社のH2O AI Hybrid Cloudプラットフォームの拡大を続けるために人材を採用することなどが計画されている。

顧客が戦略的支援者としてラウンドをリードしたのは今回が初めてではなく、2019年にはGoldman Sachsが同社シリーズDの7250万ドル(約81億8000万円)をリードしている。PitchBook(ピッチブック)のデータからも見られるように、H2Oの評価額は4億ドル(約451億3000万円)と評価されていた前回のラウンドから飛躍的に上昇しており、同社の成長率、そして同社が行っていることに対する一般的な需要の大きさがうかがえる。マウンテンビューに本社を置くH2O.aiは、これまでに2億4650万ドル(約278億円)を調達している。

関連記事:AI利用のハードルを下げるH2O.aiがゴールドマンサックスのリードで約77億円調達

直近2回のラウンドがいずれも、H2O.aiの顧客でもある大手銀行が主導しているという事実は、同スタートアップにとってのチャンスがどこにあるかを物語っている。以前、Workday(ワークデイ)に買収されたPlatfora(プラットフォラ)の共同創業者で、同社創業者兼CEOのSri Ambati(スリ・アンバティ)氏がメールで筆者に話してくれたところによると、現在同社のレベニューの約40%は、非常に広範で包括的な金融サービスの世界からもたらされているという。

「リテールバンキング、クレジットカード、ペイメントなど、PayPal(ペイパル)からMasterCard(マスターカード)までのほとんどすべての決済システムがH2Oの顧客です」と同氏。株式の分野では、債券、資産運用、住宅ローン担保証券などのサービスを提供している企業の数々がH2Oの技術を利用しており、MarketAxess(マーケットアクセス)、Franklin Templeton(フランクリン・テンプルトン)、BNY Mellon(バンク・オブ・ニューヨーク・メロン)も「強力な」顧客であると述べている。

また、他の業種からのビジネスも増えているという。Unilever(ユニリーバ)やReckitt(レキットベンキーザー)、P&G(プロクター・アンド・ギャンブル)などの消費財、UPS(ユナイテッド・パーセル・サービス)などの物流配送、Chipotle(チポトレ)などのフードサービス、そしてAT&T(エーティーアンドティー)は「当社の最大の顧客の1つです」と話している。

同社の成功には新型コロナウイルスの存在もひと役買っている。

パンデミックを振り返り「製造業はサプライチェーンの混乱とデマンドセンシングにより、急成長を遂げました。我々はH2O AI Healthを立ち上げ、病院やプロバイダー、Aetna(エテナ)のような支払会社、製薬会社の顧客を支援したのです」と話している。

注目すべき点は、自社のワークフローにAIを導入して、自社の顧客にサービスを提供したいと考えている他の技術系企業との連携をH2O.aiが強化しようとしていることである。「バーティカルクラウドとSaaS ISVが最近の私たちの勝因です」。

同社は設立当初からH2Oと呼ばれるオープンソースのサービスを提供しており、現在では2万社以上の企業に利用されている。人気の理由の1つはその柔軟性にある。H2O.aiによると、同社のオープンソースフレームワークは、既存のビッグデータインフラ、ベアメタル、または既存のHadoop、Spark、Kubernetesクラスタの上で動作し、HDFS、Spark、S3、Azure Data Lakeなどのデータソースから、インメモリの分散型キーバリューストアに直接データを取り込むことができるという。

「当社のオープンソースプラットフォームは、お客様が独自のAIセンターオブコンピタンスとセンターオブエクセレンスを構築するための自由と能力を提供します。AIを山に例えると、私たちはお客様が山を征服するのを支援するシェルパのTenzing Norgay(テンジン・ノルゲイ)氏ようなものです」とアンバティ氏は同社のオープンソースツールについて話している。

エンジニアはカスタマイズされたアプリケーションを構築するためにこのフレームワークを使用することができるが、一方でH2O.ai独自のツールは、次に何が起こるかについてより良い洞察を得るために大量のデータを取り込むことで利益を得ることができる不正検知、解約予測、異常検知、価格最適化、信用スコアリングなどの分野においてより完成度の高いアプリケーションを提供している。これらのアプリケーションは、人間のアナリストやデータサイエンティストの仕事を補完するものであり、また場合によっては人間が行う基本的な作業を代替することも可能だ。現在、トータルで約45のアプリケーションが存在する。

将来的にこのようなツールを増やしていき、各分野の「アプリストア」でそれぞれの需要に合わせた独自の事前構築済みツールを提供していく計画だとアンバティ氏は話している。

H2O.aiの成長の原動力となっているトレンドは数年前から勢いを増している。

人工知能にはエンタープライズITの世界から大きな期待が寄せられている。機械学習、自然言語処理、コンピュータビジョンなどのツールをうまく活用すれば、生産性を向上させることができるだけでなく、企業にとってまったく新しい分野を切り開くことも可能となるからだ。長期的には、企業の運用コストやその他のコストを何十億ドルも削減することができるだろう。

しかし大きな問題として、多くの場合、組織にはAIを使ったプロジェクトを構築および遂行するための社内チームが不足していることが挙げられる。ニーズやパラメータの進化に伴い、インフラもすべて更新する必要があるのである。今やテクノロジーは企業のすべてに関わっているが、すべての企業がテック企業というわけではない。

H2O.aiは市場におけるこのギャップを埋めることを目的とした最初の、あるいは唯一のスタートアップではないが、他のスタートアップよりもこのタスクにおいて幾分か先を行っている。

Microsoft(マイクロソフト)やNVIDIA(エヌビディア)などの大手テック企業からの多額の資金提供と賛同を得て設立されたのがカナダのElement.AIだ。同社はAIを民主化してAIツールを構築・運用するためのリソースが不足していても企業がAIから恩恵を受けることができるようにし、AIを推進する多くのテック企業にビジネスを奪われないようにするというアイデアに取り組んでいた。同社はインテグレーションに重点を置いていたものの(AccentureのAIサービスのように)、コンセプトからビジネスへと大きくジャンプすることができず、最終的には2020年にServiceNow(サービスナウ)に買収され、企業向けのツールを構築する同社の取り組みを補完することになったのである。

アンバティ氏は、H2O.aiのビジネスのうちサービス分野はわずか10%程度で、残りの90%は製品によるものだと話しており、あるスタートアップのアプローチが成功し、別のスタートアップが失敗する理由を説明してくれた。

「データサイエンスやAIのサービスに魅了されるのは当然です。私たちの製品のメーカー文化に忠実になり、なおかつお客様の深い共感を築いて耳を傾けることが成功には欠かせません。お客様は当社のメーカー文化を体験し、自らもメーカーになる。私たちは継続的にソフトウェアをより簡単にし、AI Cloudを通じてローコード、再利用可能なレシピ、自動化を民主化してデータパイプライン、AI AppStoresを構築し、お客様が顧客体験、ブランド、コミュニティの改善に利用できるサービスとしてAIを提供しています」。

「私たちは単なる木ではなく森を育てているということが他社との大きな違いです。H2O AI Cloud、ローコードアプリケーション開発であるH2O Wave、H2O AI AppStores、Marketplace、H2O-3 Open Source MLは、すでにAIアプリケーションとソフトウェアの中核をなしており、私たちは顧客とそのパートナーや開発者のエコシステムと提携しています」。

これは投資家にも好評なプレーであり、ビジネスでもある。

CBAのCEOであるMatt Comyn(マット・コミン)氏は、声明中で次のように述べている。「オーストラリア・コモンウェルス銀行は、毎日収集される数百万のデータポイントという大きな資産を保有しています。H2O.aiへの投資と戦略的パートナーシップは、人工知能における当行のリーダーシップを拡大し、最終的には当行が最先端のデジタル提案や再構築された商品およびサービスを顧客に提供する能力を高めてくれることでしょう」。CBAのチーフデータ&アナリティクスオフィサーであるAndrew McMullan(アンドリュー・マクマラン)博士が、H2O.aiの取締役会に参画する予定となっている。

画像クレジット:Mario Simoes / Flickr under a CC BY 2.0 license.

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(文:Ingrid Lunden、翻訳:Dragonfly)

要点をもとにAIが流れるようなEメール用文章を生成、受信トレイをゼロにするライティング生産性向上ツール「Flowrite」

TechCrunchがFlowrite(フローライト)に「強化されたGrammarly」ではないかと尋ねると、共同創業者でCEOのAaro Isosaari(アーロ・イソサーリ)氏は笑いながら、2020年夏の終わりから構築しているAIライティング生産性向上ツールに対しいつもそのようなコメントが返ってくると答えた。

このAIを搭載した相棒がいれば、電子メール作成のスピードアップによる「受信トレイゼロ」を目指すことも容易になりそうだ。少なくとも、毎日のように定型的なメールを大量に送信しているような人にとってはそうだろう。

Flowriteは具体的に何をするのか?Flowriteは、いくつかの指示(これを入力しなければなならない)を、本格的で読みやすい電子メールに変える。つまり、Grammarlyが文法や構文、スタイルなどの調整を提案して(既存の)文章を改善するのに役立つのに対し、Flowriteは電子メールやその他の専門的なメッセージングタイプの通信である限り、そもそも文章を書くのに役立つ。

電子メールは、FlowriteのAIモデルが訓練されたところだ、とイソサーリ氏はいう。そして、メール作成にどれだけの時間を費やす必要があるかという不満が、このスタートアップのインスピレーションとなった。そのため、GPT-3が使用されているコピーライティングなど、AIが生成する言葉の幅広い使用例ではなく、プロフェッショナルなコミュニケーションに焦点を当てている。

「以前の仕事では、電子メールやその他のメッセージングプラットフォームでさまざまな関係者とのコミュニケーションに毎日数時間を費やしていたので、これが自分の抱える問題であることはわかっていました。これは共同設立者である私たちだけの問題ではなく、何百万人もの人々が日々の仕事でより効果的かつ効率的なコミュニケーションをとることで恩恵を受けることができるのです」。

Flowriteの仕組みは次の通りだ。ユーザーが言いたいことの要点を箇条書きにした基本的な指示を出す。すると、AIを搭載したツールが残りの作業を行い、必要な情報を流れるように伝える完全な電子メールのテキストを生成してくれる。

丁寧な挨拶や署名を記入したり、求められているトーンや印象を伝えるための適切な表現を考えたりといった、文字数の多い作業は自動化されている。

電子メールテンプレート(電子メール生産性向上のための既存技術)と比較すると、AIを搭載したツールは文脈に適応し「固定されていない」ことが利点だとイソサーリ氏はいう。

当然のことだが、重要なポイントとして、ユーザーは送信する前にAIが提案した文章を確認し、編集や微調整を行うことができるので、人間はしっかりとエージェントとしてループに参加したままだ。

イソサーリ氏はセールスの電子メールを例に挙げる。この場合「すばらしい・電話で詳しい話をしよう・来週月曜日の午後」と指示を入力するだけで、必要な詳細情報に加えて「すべての挨拶」や「追加の形式」を含むFlowriteが生成したメールが送られてくる。

補足:FlowriteのTechCrunchへの最初の売り込みは電子メールによるものだったが、そのツールの使用は明らかに含まれていなかった。少なくとも、その電子メールには「この電子メールはFlowrittenされました」という開示はなかったが、後にイソサーリ氏から送られてきた(依頼されたPRを送るための)メールにはあった。これはおそらく、(AIを使って)スピードライティングしたい電子メールと、人間の頭脳をもっと使って作成したい(少なくとも自分で書いたように見せたい)電子メールの種類を示しているのではないだろうか。

イソサーリ氏はTechCrunchに次のように話した。「私たちは、あらゆる種類のプロフェッショナルが、日々のワークフローの一環として、より速く文章を書き、コミュニケーションを図ることができるよう、AIを搭載したライティングツールを構築しました。何百万人もの人々が、内外のさまざまな関係者との仕事上の電子メールやメッセージに毎日何時間も費やしていることを知っています。Flowriteは、人々がそれをより速く行えるようにサポートします」。

また、このAIツールは、失読症や英語が母国語ではないなどの特定の理由で文章を書くことが困難な人にとっても大きな助けとなる可能性があると、同氏はいう。

Flowriteは英語の電子メールしか作成できないという明らかな制約がある。GPT-3は他の言語のモデルを持っているが、イソサーリ氏は、そうした英語以外の言語の「人間らしい」反応の質は、英語の場合ほど良くないかもしれないと示唆し、よってFlowriteは当面の間、英語にフォーカスすると話す。

GPT-3の言語モデルを中核のAIテックとして使用しているが、最近では、自社で蓄積したデータを使って「微調整」を始めていて、イソサーリ氏は「すでに私たちは、GPT-3の上にラッパーを作るのではなく、さまざまなものを構築しています」と説明する。

また、この電子メール生産性向上ツールでは、AIがユーザーの文体に適応することを約束している。これにより、メールが速くなったからといって、無愛想なメールになることはない(「大丈夫?」と尋ねる新鮮な電子メールにつながるかもしれない)

この技術は、電子メールの履歴をすべてマイニングしているわけではなく、電子メールのスレッドの中で(ある場合は)直前の文脈だけを見ているとイソサーリ氏は話す。

Flowriteは、GPT-3の技術を利用しているため、現在はクラウド処理に依存しているが、今後はデバイス上での処理に移行したいと考えているという。当然ながら機密保持の問題にも対応できるはずだ。

今のところ、このツールはブラウザベースで、ウェブメールと統合されている。現在はChromeとGmailにしか対応していないが、今後はSlackなどのメッセージングプラットフォームにも対応していく予定だ(ただし、少なくとも当初はウェブアプリ版のみ)。

このツールはまだクローズドベータ版で、Flowriteは440万ドル(約5億円)のシード資金調達を発表したばかりだ。

同ラウンドはProject Aが主導し、Moonfire Venturesとエンジェル投資家のIlkka Paananen(イルッカ・パーナネン)氏(Supercellの共同創業者でCEO)、Sven Ahrens(スヴェン・アーレン)氏(Spotifyのグローバル・グロース・ディレクター)、Johannes Schildt(ヨハンズ・シルト)氏(Kryの共同創業者でCEO)が参加した。また、既投資家であるLifeline VenturesとSeedcampも今回のラウンドに参加した。

Flowriteは、どのようなタイプの電子メールや専門家に適しているのだろうか?コンテンツ面では「一般的に、返信する際に何らかの既存の文脈がある場合の返信」だとイソサーリ氏はいう。

「Flowriteは状況をよく理解し、自然な形でそれに対応することができます」と同氏は話す。「また、売り込みや提案のようなアウトリーチにも適しています。Flowriteがうまくいかないのは、非常に複雑なものを書きたい場合です。というのも、そのためには指示にすべての情報が必要だからです。そして、最終的な電子メールに近いかもしれない指示を書くのに多くの時間を費やす必要があるとしたら、その時点でFlowriteが提供できる価値はあまりありません」。

また「本当に短い電子メール」を送る場合には、明らかに実用的ではない。なぜなら、2、3の単語で答えるだけなら、自分で入力した方が早いからだ。

どのような人がFlowriteを使うのかという点では、ベータ版を利用しようとする幅広い層のアーリーアダプターがいるとイソサーリ氏はいう。しかし、同氏は主なユーザー像を「日常的に多くのコミュニケーションをとるエグゼクティブ、マネージャー、起業家」、つまり「自分自身について良い印象を与え、非常に思慮深いコミュニケーションをとる必要がある人」と表現している。

ビジネスモデルの面では、Flowriteはまずプロシューマー / 個人ユーザーに焦点を当てているが、イソサーリ氏によると、そこから拡大していく可能性があり、まずはチームをサポートすることになるかもしれない。また、将来的には企業向けに何らかのSaaSを提供することも想定している。

現在、ベータ版では料金を徴収していないが、来年初めには課金する予定だ。

「ベータ版が終了したら、収益化を開始します」と同氏は付け加え、2022年半ばにはベータ版からの完全なリリース(つまり、待機者がいなくなる)が可能であることを示唆している。

イソサーリ氏によれば、今回の資金調達は、主にエンジニアリング面でのチーム強化に充てられる。初期段階での主な目標は、AIと基幹プロダクトを中心としたツールアップだ。

また、機能の拡充も優先事項の1つだ。ここには、さまざまな電子メールクライアントとの併用など、ブラウザ間でツールを使用する「水平方向の方法」を追加することが含まれる。

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(文:Natasha Lomas、翻訳:Nariko Mizoguchi

絶えず変化するモバイルアプリ開発を支援、特化するBitriseが約68億円調達

世界中でますます多くの人々が、スマートフォンからあらゆることを行うようになっているため、それに合わせて、より優れたアプリをiOSおよびAndroid向けに構築する能力も必要とされている。Bitrise(ビットライズ)は、このような人々のモバイルに対する需要と、企業がアプリを迅速に提供する能力との間にあるギャップを解消し、すべての調整要素と複雑さのバランスをとるために役立つ最適な企業となることを目指している。

モバイルDevOps(デブオプス)企業のBitriseは、米国時間11月23日、シリーズCラウンドで6000万ドル(約68億円)の資金を調達したことを発表した。このラウンドは、Insight Partners(インサイト・パートナーズ)が主導し、既存投資家のPartech(パーテック)、Open Ocean(オープン・オーシャン)、Zobito(ゾビト)、Fiedler Capital(フィードラー・キャピタル)、Y Combinator(Yコンビネータ)などが参加した。

このリモートファーストの会社は、2014年10月にBarnabas Birmacher(バルナバ・バーマチャー)氏、Daniel Balla(ダニエル・バッラ)氏、Viktor Benei(ヴィクター・ベネイ)氏が共同で設立した。2017年に320万ドル(約3億6000万円)のシリーズAラウンドを実施し、2019年にはシリーズBで2000万ドル(約22億7000万円)の資金を調達している。今回の新たな調達は数週間で計画・実行され、Bitriseの資金調達総額は1億ドル(約113億円)近くになったと、CEOのバーマチャー氏はTechCrunchに語った。

ブダペストに本社を置くBitriseは、2年前にY CombinatorのGrowth Program(グロース・プログラム)を経て会社の規模を拡大。現在では従業員を3倍に増やし、ロンドン、サンフランシスコ、ボストン、大阪にオフィスを開設している。

「モバイルは、この12カ月で2年分も3年分も進歩しました」と、バーマチャー氏はいう。「このことは、企業が競争力を維持するために、モバイルを利用しなければならないことを意味します。しかし、モバイルの開発はますます複雑になっています」。

開発者はプロセスの実行に追われ、顧客のために新しい価値を創造することに十分に集中できないと、同氏は付け加えた。

Bitriseが目指しているのは、モバイル開発のためのエンド・ツー・エンドのプラットフォームを構築することだ。このプラットフォームは、中核となるワークフローを自動化して、リリースサイクルを短縮し、新しいコードの部分が、実行中のアプリにどのような影響を与えるかをリリース前に把握できるようにすることで、企業が次のビッグリリースを顧客に提供することに集中できるようにする。

現在までに、6000以上のモバイル企業から、10万人以上の開発者がBitriseを利用している。同社の収益は前年比で倍増しており、エンジニアリング、プロダクト、セールス、グロースの各チームで働く従業員を、現在の160人から300人に増やすことを計画している。

新たに調達した資金を使って、Bitriseは人材の採用に加え、開発者が継続的インテグレーションとデリバリーの領域で、より容易に業務を行うことができるように、また、DevOpsのライフサイクル全体で可観測性を高められるように、製品を拡大していく予定だ。

今回の投資の一環として、Insight PartnersのバイスプレジデントであるJosh Zelman(ジョシュ・ゼルマン)氏がBitriseの取締役に就任し、同じくInsight PartnersのバイスプレジデントであるMatt Koran(マット・コラン)氏が取締役会のオブザーバーとして参加する。

「Bitriseは、8年前に設立されて以来、モバイルにおける現在の状況に向けて事業を築き上げてきました」と、ゼルマン氏は書面による声明の中で述べている。「モバイルは、世界中の人々にとって、コミュニケーション、エンターテインメント、商取引の主要な手段となっています。そしてBitriseは、企業がかつてないほどのペースでモバイルのイノベーションに対応していくことを可能にしてきました。Bitriseはモバイルのために設立された企業であり、同社はモバイルDevOps分野のリーダーとなっています」。

画像クレジット:Anna Lukina / Getty Images

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(文:Christine Hall、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

Fractionalは友人(あるいは見知らぬ人)と一緒に不動産投資を行えるプラットフォーム

後払い決済のフィンテック企業であるAffirm(アファーム)で同僚だったStella Han(ステラ・ハン)氏とCarlos Treviño(カルロス・トレビーニョ)氏は、不動産業を営む家庭で育ったという共通のバックグラウンドで意気投合した。そこでAffirmの「自分のペースで支払う」というミッションと、不動産を所有することにともなう時間的な負担やコストの高さという実体験がぶつかり合い、その軋轢からFractional(フラクショナル)のアイデアが生まれた。

Fractionalは、サンフランシスコを拠点とするスタートアップ企業で、不動産の所有をより身近なものにしたいと考えている。Y Combinator(Yコンビネータ)2021年冬のバッチに参加した同社のプラットフォームは、友人や見知らぬ人と投資用不動産を共同所有することを可能にするというものだ。これは不動産を探す際のロジスティックな問題を解決するとともに、小額の小切手を集合体に預けて、その集合体が不動産に投資するという方法によって、経済的な障壁を取り除くことができる。

このビジョンを掲げたベータ版には400人以上のユーザーが参加し、95件の不動産に共同投資を行った。そして会社には数百万ドル(数億円)の初期資金をもたらすことになった。Fractionalは先日、3000万ドル(約34億円)の評価額で総額550万ドル(約6億2000万円)の資金調達を実施したと発表した。同社のシードラウンドはCRVが主導したが、Y Combinator、Will Smith(ウィル・スミス)氏、Kevin Durant(ケビン・デュラント)氏、Goodwater Capital(グッドウォーター・キャピタル)、Unusual Ventures(アンユージュアル・ベンチャーズ)、Global Founders Capital(グローバル・ファウンダース・キャピタル)、On Deck(オン・デック)、Contrary Capital(コントラリー・キャピタル)、Soma Capital(ソマ・キャピタル)が参加した。

Fractionalは、住宅所有のプロセスを3つの主要部分に分けている。まず最初に、共同所有者をマッチングするか、友人たちのグループに参加してもらって、引受プロセスを開始する。これには共同創業者のAffirmでの経験が生かされている。次に、法律や金融関連のソフトウェアサービスを通じて、不動産の購入を支援する。そして最後に、不動産管理会社やその他のサービスと提携して、共同所有する家屋が良好な状態を保てるようにする(新たに共同所有者となった人々には、時間的負担が掛からない)。

確かに、Fractionalは不動産を所有する際の経済的な負担を軽減してくれるが、友人同士でビジネスを始めることは、人間関係に大きなプレッシャーを与えることになるため、敬遠されるかもしれない。もし、その中の1人が生活的事情から先に売却したくなったらどうするか? あるいは、誰かがキッチンのアップグレードを拒否したらどうする?

Fractionalの共同創業者たちは、自分たちのバックグラウンドから、不動産業界でサービスとしてのアクセスの提供を拡大することは、他に類を見ないほど複雑であることを知っていた。そこで、ハン氏とトレビーニョ氏は、このプロセスをより深く理解するために、実際に資金を出し合ってメキシコに土地を購入することにした。トレビーニョ氏の家族がメキシコで建設業を営んでいたこともあり、2人は市場に出回らない好条件の土地を見つけ、最終的にはその土地に店舗を建てることができた。しかし、ハン氏は「手続きは非常にスムーズというわけにはいかなかった」と振り返り、手続きの仕組みを理解するために1時間750ドル(約8万5000円)ほどの弁護士費用を支払わなければならなかったと語る。

「私たちは弁護士を雇わなければなりませんでしたが、それは私たちが2人でどのように意思決定を行い、どのように対立を解決するかということの、良い実例をきちんと作っておきたかったからです」。

Fractionalの共同創業者ステラ・ハン氏とカルロス・トレビーニョ氏(画像クレジット:Fractional)

CRVのジェネラルパートナーであるSaar Gur(ザール・グール)氏は、Fractionalのソーシャルネットワーキング機能が「新しい投資家と経験豊富な投資家が共生する環境」であることが、同社の特徴的な要素の1つであると考えているという。「また、これによってFractionalは、実際の取引に留まらず、プラットフォーム上で一定のエンゲージメントを促進でき、積極的な有料マーケティングを使わず、有機的な口コミを通して成長を勢いづけることができます」と、グール氏は声明で述べている。

NFT(非代替性トークン)購入やプライベート・エクイティ・ファンドなどのオルタナティブ投資の台頭は、さらなる採用のきっかけとなるかもしれない。消費者は、伝統的な公開株式からポートフォリオを分散させるという考え方に慣れてきている。Fractionalは、世の中でよく知られている資産クラスの1つである不動産を活用したプラットフォームだ。

Fractionalのエンジェル投資家であるNot Boring Capital(ノット・ボーリング・キャピタル)のPacky McCormick(パッキー・マコーミック)氏は、Fractionalについて、拡張性が高くて利益率の高いビジネスを、一般的には拡張性が低くて利益率の低いビジネスにもたらすと考えている。投資家であり作家でもあるマコーミック氏は、TechCrunchに次のように語った。「私が最も感銘を受けたのは、家を買って改築してからそれを売ったり、あるいは資産を買って人々に投資してもらうといったことを必要とする、非常に資産偏重の業界において、Fractionalは純粋なソフトウェアによるアプローチを採り、プロセスの容易さを妥協せず、しかも人々に家を所有する実感を与えることです」。

画像クレジット:Fractional

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(文:Natasha Mascarenhas、翻訳:Hirokazu Kusakabe)