ソフトウェア企業の使用量ベース価格モデルへの移行を支援するMetronomeが約34億円調達

多くのソフトウェア企業が使用に応じたより柔軟な価格設定モデルに移行する中、その多くが顧客に対して使用量ベースの課金を選択している。

これは顧客にとっては簡単なものだが、使用量ベースの課金を容易に行える課金システムを備えていないソフトウェア(SaaS)企業にとっては頭痛の種となっている。

そこで登場したのがMetronome(メトロノーム)だ。このスタートアップは、大規模なデータを「確実に」処理できる課金・データインフラプラットフォームを開発し、使用量ベースの企業がコードを変更することなくビジネスモデルを反復できるようにした。顧客の利用状況や課金データをリアルタイムAPIとして提供することでこれを実現している。

Dropbox(ドロップボックス)の元社員であるKevin Liu(ケビン・リュー)氏とScott Woody(スコット・ウッディ)氏は、それぞれのスタートアップを売却した後に同社で出会い、2020年にMetronomeを設立した。2人は「使用量ベースの課金を大規模に機能させるという共通の苦労を共有する」何百もの企業と話した後、このコンセプトを思いついたという。

「ソフトウェア市場で見られるこの変化は、顧客が製品から何を得ているかという価値にマッピングされています」とリュー氏は話す。「そして、これらのモデルがいかに成功するかを証明したTwilio(トゥイリオ)、Snowflake(スノウフレーク)、AWSのような企業の市場での成功によってすべてが加速しました」。

リュー氏によると、Metronomeのプロダクトにより、企業は「どんな規模や段階でも機能する課金インフラで、迅速かつ容易に新しいビジネスモデルを立ち上げ、反復し、拡張する」ことができるという。その鍵は、企業が課金の制約をめぐる設計を回避できることだという。顧客にはCockroach Labs、Starburst、Trueworkなどがいる。

Metronomeのモデルは、投資の世界で有名な人たちを惹きつけている。サンフランシスコを拠点とする同社は米国時間2月1日、Andreessen Horowitz (a16z)がリードするシリーズAラウンドで3000万ドル(約34億円)を調達したと発表した。このラウンドには、Elad Gil(エラド・ギル)氏、Lachy Groo(ラッチー・グルー)氏、Databricksの共同創業者Reynold Xin(レイノルド・シン)氏とIon Stoica(イオン・ストイカ)氏、Confluentの共同創業者Neha Narkhede(ネハ・ナークヒード)氏、Snowflakeの製品担当SVPのChristian Kleinerman(クリスチャン・クラインマン)氏、Plaid共同創業者のWilliam Hockey(ウィリアム・ホッキー)氏とZach Perret(ザック・パレット)氏、HashiCorpの共同創業者でCTOのArmon Dadgar(アーモン・ダッガー)氏ら多数のエンジェル投資家に加え、シードラウンドで投資したGeneral Catalystも参加した。Metronomeは以前、General Catalystが主導したシードラウンドで500万ドル(約5億7000万円)を調達している。

A16zのゼネラルパートナーMartin Casado(マーティン・カサド)氏は、ソフトウェア業界全体が「使用量ベース価格をはじめとして、よりきめ細かく表現力のある価格モデル」に移行しつつあると考えている。

「それをサポートするシステムを構築するのは技術的に非常に難しい課題です」と、同氏は電子メールでTechCrunchに語った。「ケビンとスコットは、この問題に対する背景と理解を持ち、大手ソフトウェア会社の課金処理に必要な規模、正確さ、稼働時間をサポートできる唯一のシステムを構築しました」。

カサド氏はまた、この問題がソフトウェア会社にどのような影響を与えるか、直に目にしてきたと述べた。

「取締役として、製品のリリースから重要なGTM戦略の変更まで、あらゆるものが課金の複雑さのために失敗するのを目の当たりにしてきました。また私自身、創業者としてもこうした問題を経験しています」と語った。同氏はNicira Networksを共同で創業し、同社は2012年に12億6000万ドル(約1445億円)でVMwareに買収された。

より柔軟性を求める企業の進化は起こるべくして起こったと、リュー氏は話す。

「最初のサブスクリプション管理課金システムが登場した10〜15年前は、使用量ベースのモデルはもっと複雑でした」と同氏はTechCrunchに語った。「今日、ソフトウェア会社は、データを大規模かつリアルタイムに扱えるシステムを必要としています。これは、Metronomeの製品のかなり重要な特性です」。

従来のサブスクリプション管理システムは「まったく別の問題のために」作られたものだと、リュー氏は付け加えた。

ウッディ氏も同意見で、Metronomeは新製品を開発し、できるだけ早く市場に出したいと考えている企業を支援することができると説明した。Metronomeは、エンジニアリングチームにとって「できるだけ労力のかからない」統合モデルを開発し「非常に迅速に、中には1日で」稼働させることができる、と同氏は語った。

「我々が設計した課金システムは、ボトムアップ、セルフサービス、市場投入の動きと同様に、オーダーメイドの高度に特殊な企業契約モデルにも対応できます」とウッディ氏はTechCrunchに話した。「Metronomeは、両方の用途に同時に対応できるように設計されています」。

さらに同氏は、この製品は規模に応じた設計になっていると付け加えた。

「企業が成長すればするほど、顧客は増え、その顧客はますますサービスを利用するようになります。そして、その規模を拡大するためのアーキテクチャを当社は設計しました。レジリエンス(復元力)とセキュリティ(安全性)を中心に設計しています。当社の顧客のために構築しているのは、製品や顧客のダッシュボードを強化するのに役立つリアルタイムの真のデータソースであり、同時に他のビジネスシステムを直接統合することができます」。

Metronomeの従業員数は現在20人で、新資本の大部分は特に研究開発チームと市場投入チームの採用に充てる計画だ。

画像クレジット:Co-founders Kevin Liu and Scott Woody / Metronome

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(文:Mary Ann Azevedo、翻訳:Nariko Mizoguchi

チャットやビデオ会議の代わりにアバターを採用、孤独を感じない快適なデジタルワークプレイスを提供する「Pesto」

Pesto’の社員アバター(画像クレジット:Pesto)

私たちの仕事の世界がメタバースに移行しつつある中、以前はPragli(プラグリ)として知られていたPesto(ペスト)は、リモートワークを少しでも孤独を軽減しようと、アバターアプローチで参入している。

「Zoom疲れ」は、2019年に会社の構想を練り始め、1年後に正式発表したDoug Safreno(ダグ・サフレノ)氏と共同創業者のVivek Nair(ヴィヴェク・ネア)氏にとってリアルなものだった。彼らのアイデアは、従業員が職場でアバターをカスタマイズできるデジタルネイティブなヒューマンワークプレイスで、アバターがビデオの代わりとなり、疲労感が少なく、よりパーソナルになるというものだ、CEOのサフレノ氏はメールで説明した。

「workplace(ワークプレイス)」には、社員が作ったさまざまな部屋があり、スクリーンシェア、ビデオ、ゲーム、または空間的な機能を含むオーディオファーストのコラボレーションのための組織的なスペースとなる。

「私たちがPestoを設立したのは、テキストチャットとビデオ会議の間で行き詰まったからです」と、サフレノ氏は付け加えた。「テクストチャットは、やりとりが多く、時間がかかるのでイライラしますし、また、ビデオ会議は堅苦しく、スケジュールを組むのが大変でした。ビデオ会議は、やる気をなくさせるようで、楽しいものではないです。Pestoは、より人間らしいリモートワークの方法なのです」。

2年近く経った今、Enhatch(エンハッチ)、Sortify.tm(ソルティファイ.tm)、HiHello(ハイヘロー)、FullStory(フルストーリー)、aiPass(aiパス)、Tidal Migrations(タイダルマイグレーション)といった企業の1万以上のチームと連携し、ユーザーは1億分以上の音声とビデオを記録しており、同社の初期の仕事は成果を上げている。

米国時間2月1日、同社は、Headline(ヘッドライン)が主導し、K9 Ventures(K9ベンチャーズ)、Rucker Park Capital(ラッカーパークキャピタル)、NextView Ventures(ネクストヴューベンチャーズ)、Collaborative Fund(コラボレーティブファンド)、Correlation Ventures(コーリレーションベンチャーズ)、Garrett Lord(ギャレット・ロード)、Nikil Viswanathan(ニキル・ヴィスワナサン)、Joe Lau(ジョー・ラウ)が参加する500万ドル(約5億7300万円)のシード資金調達を発表した。

サフレノ氏は、世界は「産業革命以来、人々の働き方に最大の変化が起きています」と、語る。オフィスの稼働率が20%以下にとどまっている中、ほとんどの社員が対面式の仕事に戻る可能性は低いにもかかわらず、オフィスで働くために作られたツールを使わざるを得なくなっていると彼は考えている。これに対し、Pestoは、対面よりもデジタルで共同作業や交流を行う未来の仕事に適合するように設計されていると、彼は付け加えた。

利益率や売上高は明らかにしなかったが、1年前は創業者2人だけだったのが、今では従業員数は8人に増えたという。

今回の資金調達により、ペストは総額600万ドル(約6億8800万円)の投資を行うことになる。この資金は、製品設計やエンジニアリングチームの雇用、製品開発、特に職場のメタバース体験を深める機能の構築し、より複雑なコラボレーションニーズを持つ大企業をターゲットにした開発に使われる予定だ。

Pestoは現在、無料で利用できるが、2022年後半には有料ティアを導入する予定だ。

HeadlineのパートナーであるJett Fein(ジェット・ファイン)氏は「こだわりのあるユーザーベース」を持つ企業をよく探しており、Pestoにそれを見出した。

リモートワークがなくなるとは思えないので「より本格的でコラボレーション可能なツール」が求められているのだと、彼は付け加えた。Pestoは、多くの企業や従業員が抱えている、ビデオ会議疲れやコラボレーションスペースの不足といった問題を解決してくれると確信しているからだ。

このように、同社のメタバース機能は「自然で自由な人間同士の交流」を職場に取り戻すことができる点で、際立っていると感じており、今後このような従業員間の交流に投資する企業が増えていくことが予想される。

「Doug(ダグ)、Vivek(ヴィヴェック)、Daniel Liem(ダニエル・リエム)氏(創業者 / 製品責任者)の3人は、まさに未来の仕事のために作られたプラットフォームを作り上げました」とファイン氏はいう。「過去数年間、私たちは分散型チームで仕事をすることの利点と落とし穴を目の当たりにしてきました。自由と柔軟性を手に入れた反面、職場でよく見られる仲間意識や予定外の会話は失われてしまいました。Pestoはこうした課題に対する答えであり、遠隔地でのコラボレーションや共同作業が、直接会っているときと同じかそれ以上に効果的に感じられるような未来を創造するものです」。

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(文:Christine Hall、翻訳:Yuta Kaminishi)

年老いた仮想化の巨人CitrixをVistaなどが約1.9兆円で買収、TIBCOと合併してSaaSの大企業に

IT業界では、ハイブリッドな働き方が定着したこの世界で幅広いニーズに対応する「ワンストップショップ」を求める企業の新たな需要に応えるため、さらなる統合が進んでいる。

クラウドコンピューティングへゆっくりと移行を進めている年老いた仮想化の巨人Citrix(シトリックス)は、PE(プライベート・エクイティ)企業のVista Equity Partners(ビスタ・エクイティ・パートナーズ)と、Elliott Investment Management(エリオット・インベストメント・マネジメント)の関連会社であるEvergreen Coast Capital(エバーグリーン・コースト・キャピタル)に、165億ドル(約1兆9000億円)で買収されることになった。Vistaでは、2014年に43億ドル(約4900億円)で買収したTIBCO(ティブコ)と、Citrixを統合することを計画している。全額現金による取引には、Citrixの負債の引き受けも含まれると、両社は述べている。

今回の買収は、Citrixをめぐる長期の憶測の末に行われることになったもので、同社は少なくともこの5カ月間、複数の戦略的な選択肢を検討してきた。2021年12月にはこの憶測も頂点に達し、VistaとElliottが130億ドル(約1兆5000億円)で同社を買収するという報道があった。

現在、Citrixの株はNASDAQで取引されているが、今回の買収により同社は非公開企業となる。同社によると、Citrixの株主は「VistaとEvergreenによる入札の可能性に関する報道がなされる前の最後の取引日 」である2021年12月20日の終値に24%のプレミアムを加えた、1株あたり104ドル(約1万1900円)の現金を受け取ることになるという。なお、Evergreenが今回の買収の前に、すでにCitrixへの投資を行っていたことは注目に値するだろう。

PE企業は、VCと同様に、投資が必要な瞬間のために膨大な資金を抱えている。これに対処するための1つの明白な方法は、リストラや統合を必要としている大規模なテクノロジー企業を買収することだ。

CitrixとTIBCOを統合することで、後者のアナリティクスと前者の仮想化およびクラウドコンピューティングのサービスを、抱き合わせ販売することが可能になる。これは多くのバイヤー、つまり企業が、よりシンプルなサプライヤーとのパートナーシップや、新型コロナウイルス流行の影響を受けてリモート勤務が増えている従業員のためのITサービスに関する財務状況の改善を求めている時期とも合致する。

合併後の会社は、当初から大きなビジネスを展開することになる。CitrixによればFortune(フォーチュン)500社の98%を含む40万社の顧客を持ち、世界100カ国に1億人のユーザーを抱えることになるという。

Citrixの取締役会議長であり、暫定的な最高経営責任者兼社長であるBob Calderoni(ボブ・カルデローニ)氏は「過去30年間にわたり、Citrixは安全なハイブリッドワークの明確なリーダーとしての地位を確立してきました。市場をリードする当社のプラットフォームは、従業員が業務を遂行するために必要なすべてのアプリケーションと情報への安全で信頼性の高いアクセスを、どこでも必要とする場所へ提供します。TIBCOとの統合により、我々はこのプラットフォームとお客様の成果を拡大していきます」と、声明で述べている。「TIBCOと一緒になることで、我々はより大きなスケールで事業を展開することができるようになり、より多くのお客様に幅広いソリューションを提供し、デジタルトランスフォーメーションを加速させ、ハイブリッドワークの未来を実現させることが可能になります。我々は非公開会社として、DaaSなどの高成長の機会に投資し、進行中のクラウド移行を加速するための財務的および戦略的な柔軟性を高めることができます」。

VistaとCitrixは、今回の取引の前から何かと縁があった。Citrixは1年前に22億5000万ドル(約2580億円)を支払って、プロジェクト管理プラットフォームのWrike(ライク)をVistaから買収している。また、TIBCOにも売却の噂があったが、Vistaは別の道を選んだようだ。TIBCOをCitrixと組み合わせることで、企業が現代のITをどのように評価し、購入しているかを物語るような、より興味深い資産の使い方ができるかもしれない。

TIBCOのCEOであるDan Streetman(ダン・ストリートマン)氏は「コネクテッド・インテリジェント・アナリティクスのビジネスを展開する上で、今ほど良い時代はありません。業界をリードする当社のソリューションを、Citrixのグローバルな顧客に提供できることに興奮しています」と、声明の中で述べている。「勤務場所は常に変化しており、あらゆる企業が、自社と従業員、そして彼らのエコシステムで利用可能な、ますます膨らむ大量のデータから、より速く、より賢い洞察を得るために、リアルタイムにアクセスできることを必要としています。両社のビジョンの融合にはこれ以上ないほど期待しており、強力なパートナーシップが築けることを楽しみにしています」。

Vistaのフラッグシップ・ファンドの共同責任者であり、シニア・マネージング・ディレクターを務めるMonti Saroya(モンティ・サロヤ)氏は、声明の中で「私たちはCitrixのことを、業界の状況を変えた数多くのカテゴリーを構築・定義してきた真のテクノロジー・パイオニアであると考えてきました」と述べている。「非公開会社として、Citrixはより多くのリソースとサポートを利用できるようになるだけでなく、最新で安全なリモート・ハイブリッド・ワークを支持するトレンドを背景に、長期的な強い追い風を利用して、統合された顧客基盤にサービスを提供し、高成長市場に投資するためのさらなる柔軟性を持つことになるでしょう」。

画像クレジット:Blue Planet Studio / Getty Images

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(文:Ingrid Lunden、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

コラボレーション型データサイエンス用ノートブック開発のためにDeepnoteが23.1億円調達

Jupyter(ジュピター)互換のノートブックの上に、データサイエンスのためのプラットフォームを構築しているスタートアップのDeepnote(ディープノート)が、米国時間1月31日、2000万ドル(約23億1000万円)のシリーズAラウンドを実施したことを発表した。ラウンドを共同で主導したのはIndex VenturesとAccelだが両社は2020年のシードラウンドにも参加していた。今回のラウンドには、既存の投資家であるY CombinatorとCredo Venturesも参加している。

Deepnoteの共同創業者のJakub Jurovych(ヤコブ・ジュロビッチ)CEOが語ってくれたように、Deepnoteは数年前に設立されて以来、当初のビジョンにほぼ忠実であり続けている。

ジュロビッチはいう「起業したときに、私たちはデータサイエンスと機械学習のバックグラウンドを持っていました。そのときの私たちは、データサイエンスの分野で何かを変えて行く必要があると確信していました。というのも、ありとあらゆるツールを試していたのですが、何を試してもコラボレーションがうまくいかなかったからです」。

すでにJupyterノートブックに精通していた共同創業者のJan Matas(ジャン・マタス)CTOと、デザイン部門責任者のFilip Stollar(フィリップ・ストーラー)を含むチームは、この既存のツールへの、コラボレーションのためのより簡単な方法の導入に着手した。

画像クレジット:Deepnote

多くの点で、Deepnoteは共有型データサイエンスノートブックの業界標準になっている。現在、ByteDance(バイトダンス)、Discord(ディスコード)、Gusto(ガスト)などの企業が同社のプラットフォームを使用している。データサイエンス市場は急速に成長しているにもかかわらず、人材の確保が困難であるため、チームは同社のツールを学生に提供することにも力を入れている。現在、世界のトップ100大学のうち80大学が、少なくとも一部の授業でDeepnoteを使用している。

「学生や教師が感じている痛みは、他の組織で見られるものとほとんど同じです。同様のコラボレーションへの要求があるのです」とジュロビッチ氏はいう。1人の教授がこのツールを使って何百人もの学生に課題を配布できるように、企業ユーザーは自分のノートブックをトップ役員を含む社内の誰とでも共有できるようになるのだ。実際、ジュロビッチ氏は、ノートブックというフォーマットは、技術者と非技術者の間のギャップを埋めることができると考えている。そのため、Deepnoteはデータサイエンティストをターゲットにしているものの、チームの目標の1つは(Jupyter規格との完全な互換性を保ちながら)ノートブックを使用する際の参入障壁を下げることだ。

画像クレジット:Deepnote

ジュロビッチ氏は「2年前には、Pythonの書き方を知らなければ、ノートブックから何の価値も引き出すことができませんでした」という。「それが今では、チームの技術者である誰かからリンクを受け取れば、そのあと視覚化を微調整することはとても簡単なことなのです。コメントを残したり、フィードバックを行うためには、高い技術は必要ありません」。

Deepnoteには無料プランが用意されている。有料のProプランは12ドル/月/ユーザーからだが、学生や教師は無料で利用できる。

リモートファースト企業のDeepnoteは、今回の資金調達により、製品の開発とデータサイエンスコミュニティでの足場拡大を図る。ジュロビッチ氏は今後12カ月の間にチームの規模を2倍の約50人にすることを計画している。

画像クレジット:Deepnote

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(文:Frederic Lardinois、翻訳:sako)

ユーザーによる写真投稿数55万枚、美容医療の口コミ・予約アプリ「トリビュー」が10億円のシリーズB調達

ユーザーによる写真投稿数55万枚、美容医療の口コミ・予約アプリ「トリビュー」が10億円のシリーズB調達

美容医療の口コミ・予約アプリ「トリビュー」(Android版iOS版)を運営するトリビューは2月1日、シリーズBラウンドとして、総額10億円の調達を実施したと発表した。引受先は、リードインベスターの既存投資家ニッセイ・キャピタル、またKDDI Open Innovation Fund、W ventures、三菱UFJキャピタルなど。累計調達額は約15億円となった。

トリビューは、美容外科・美容⽪膚科・審美⻭科の分野から「⼝コミ検索」「施術検索」「クリニック検索」「オンライン相談・予約」がアプリ1つで完結できるサービス。

調達した資金により、トリビュー1つで情報収集から予約まで完結し、より良い美容医療の体験を拡げる美容医療の総合プラットフォームを目指す。また今後は、美容皮膚科領域へさらに注力し、男性向けにもサービスを展開。これまで以上にサービス開発、採用・組織体制の強化、マーケティングにも投資する。

2017年7月設立のトリビューは、同年10月にサービスを開始し、2018年11月にはアプリから直接美容クリニックに予約することが可能となった。また、2020年4月にはコロナウイルス感染拡大の影響により、オンラインで相談ができる「ホームカウンセリング」の提供を開始。住まいの場所や環境に捉われることなく、利用者の美容クリニック・施術選びをサポートしてきた。

現在では、累計65万ダウンロード、ユーザーによる写真投稿数55万枚(1口コミあたり平均20枚投稿)、口コミ掲載クリニック数1400件(国内クリニック数約3000院)、予約可能クリニック数556院(昨対比2倍)、トリビューからの施術数は2万件(昨対比約3倍)を突破したという。

米国35州・マイクロソフト・電子フロンティア財団がEpic支持を表明、アップル対Epic裁判はまだまだ続く

アップル対Epic裁判、米国35州・マイクロソフト・電子フロンティア財団がEpic支持を表明

CHRIS DELMAS/AFP via Getty Images

アップルとEpic Gamesが『フォートナイト』のアプリ内課金をめぐって揉めている訴訟はいったんは判決が下されました。が、両社とも判決を不服として控訴したため、法廷での戦いはまだまだ続く見通しです。

この訴訟については、米国35州の司法長官とマイクロソフト、そして電子フロンティア財団が、Epicを支持することを表明しました。各州の弁護士が控訴裁判所に提出した準備書面では「アップルによるApp Storeの管理は独占禁止法に違反しない」とする先の判決を覆すべきだと主張されています。

Epic Gamesがアップルに対して起こした「App Storeの管理が独占禁止法に違反する」ことを問う裁判では、アップルにはアプリ開発者がユーザーを独自の決済システムに誘導することを認めなければならないとの判決が下されました。

その一方でアップルが反訴した「問題は独禁法違反かどうかではなく、EpicがApp Store開発者としての契約に違反して独自の決済システムを使ったこと」に関してはアップルの主張が認められ、Epic側にはアップルが本来得るべきだった手数料の支払いが命じられています

これによりEpicは金銭的には敗北を喫した一方で、アップルに対して「12月9日までに開発者がアプリ内でユーザーを他の決済システムに誘導できるようにしなければならない」との判決が下されたことで、一定の勝利を勝ちえたはずでした。

アップルはこの命令に対して期日延期を要請し、一度は却下されたものの、12月には控訴裁判所が延期に合意したことで先送りに成功しています。つまりアップルとEpicとの控訴審が終わるまで、App Storeアプリ内に外部決済リンクを認めることは何年も先延ばしにされるかもしれないわけです。

さて今回、35の州政府が提出した準備書面では「アップルはiPhone向けのアプリ配信とアプリ内課金ソリューションを独占し続け、競争を抑圧し、年間ほぼ1兆ドル規模のスマートフォン業界で超競争的利益(競争の激しい市場で維持できる利益を超えた利益)を蓄積しています」と簡潔に書かれています。

またMSも準備書面を提出し、同社が隣接する市場で「競争を封じるためにiOSを支配する」ことを可能にすると主張。「アップルがオンラインサービスを持つ全ての企業とiPhoneユーザーの間に介入することが許されるなら、巨大なモバイル経済のほとんどはアップルの干渉と最終的な支配から逃れられられない」と述べられています。

MSは自社のクラウドゲーミングサービスをiPhone向けに展開する上で大きな制約を受けたこともあり、以前からアップルを遠回しに批判していました

アップルはEpicとの訴訟について「(先の)判決が控訴で肯定されることを楽観視している」として、勝利を確信しているとの趣旨をコメント。さらに我々は、App Storeは消費者のための安全で信頼できる市場であり、開発者のための絶好の機会であることを保証するために引き続き取り組んでいきます」と述べています。この声明は、米上院で審議されているアプリストア規制法案へのけん制も兼ねていると思われます。

しかしアプリ課金については、アップルに対して自社システム以外の決済方法を認めるようオランダや韓国ほか世界各国で圧力が高まりつつあります。そこに米国の35州も加わるとなれば、アップルもいつまでも現状を守り続けるのは厳しいかもしれません。

(Source:CNETFOSS PATENTEngadget日本版より転載)

従業員のウェルビーイングを管理、ポストコロナ期の燃え尽き症候群を防ぐQuan

新型コロナウイルス流行収束後のバーンアウト(燃え尽き症候群)の増加、リモートワークへの移行、そして「大量退職時代」が辞書に載るようになった今、企業は人材を確保するのに苦労している。

Culture Amp(カルチャー・アンプ)やGlint(グリント)のようなカルチャープラットフォームは、別の時代に構築されたものであり、人事部にインサイトやレポートを提供するが、それらの多くは2022年に適合しているとは言えない。また、従業員のウェルビーイングは、依然としてますます重要な課題になっている。

新たなスタートアップ企業のQuan(クアン)は、エンゲージメント調査とウェルビーイング手当の間にあるギャップに対処するために、Y Combinator(ワイコンビネーター)をはじめ、オランダのインパクトファンドや複数の匿名のエンジェル投資家たちから、プレシード資金として115万ドル(約1億3000万円)を調達した。

女性が主導するオランダのスタートアップとして初めてY Combinatorに採用された創業者のArosha Brouwer(アロシャ・ブラウワー)氏とLucy Howie(ルーシー・ハウイー)氏は、医師、心理学者、セラピストと一緒にこの問題を研究し、200以上の予測因子に裏打ちされた20以上のウェルビーイングの下位次元を特定したと述べている。

Quanは、2021年3月にベータ版製品を発表し、現在は12の組織と提携を結び、1000人以上の有料ユーザーを獲得しており、プラットフォームのエンゲージメント率は88%に達しているという。

ブラウワー氏は筆者に次のように語った。「あまりにも長い間、人材・行動様式プラットフォームのプレイヤーたちは、ウェルビーイングを効果的に管理する方法を提供せずに『従業員エンゲージメント』や『従業員エクスペリエンス』を測定し、それをビジネス指標に直接結び付けてきました。そのため、バーンアウトや有害な企業文化といった問題が誤った方向に進んでしまう傾向にあるのです。Quanは、社会的な問題を効果的に解決するためには、それを経済的な問題(またはインセンティブ)にもしなければならないと考えています。冷厳な事実ですが、企業に従業員を大事にさせるためには、それが企業の利益にどのように影響するかを直接測定する必要があるのです」。

Quan社は現在、企業のリーダー向けに無料のアクセストライアルを提供している。

画像クレジット:Quan founders

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(文:Mike Butcher、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

サブスクリプション収入の指標となるが不具合の危険もある「スプレッドシート」の撲滅を目指すSubscript

Sidharth Kakkar(シッダールト・カクカー)氏は、巨大なスプレッドシートに頼ることの苦痛をよく知っている。同氏が前に設立したFreckle Education(フレックル・エデュケーション)では、全員が使用していたデータの詰まったマスタースプレッドシートが読み込めなくなったり、コンピュータがクラッシュしたりする事態が発生した。

同氏の会社は最終的に買収されたが、この悩ましい問題は彼の心に残った。そこでカクカー氏は会社を離れた後、他の企業が「スプレッドシートの悪夢」と呼ばれる問題にどのように対処しているかを知るために、取材を始めた。

「私が気に入っていることの1つは、ある会社を上場させたCFOの話です。説明会の際に、人々はすべてのコーホートを要求し、彼のチームは説明会のためだけにコーホートを作ることに熱中したものの、文字通り2度とそれらを使うことはありませんでした」と、カクカー氏は振り返った。

そしてカクカー氏は、最初のBizOpsで採用したMichelle Lee(ミシェル・リー)氏とともに、2020年12月にサブスクリプション・インテリジェンスのスタートアップ企業であるSubscript(サブスクリプト)を起ち上げることにした。

Subscriptは、サブスクリプションでサービスを提供しているSaaS企業をターゲットに、CRMや総勘定元帳、課金製品からデータを取得して整理するAPIを開発し、データが見つけやすいように整理するだけでなく、最新のサブスクリプション収益指標を提供する。

カクカー氏によると、サブスクリプションビジネスは最近「馬鹿げたブーム」になっているという。しかし、顧客の再利用や継続利用という考え方は好んでも、誰もがビジネス上の意思決定にサブスクリプションという言葉を使いたがっているわけではない。

Subscriptはまだベータ版ではあるものの、First Round(ファースト・ラウンド)が主導する375万ドル(約4億3000万円)のシード資金を調達した。このラウンドには、Plaid(プレイド)のCTOであるJean-Denis Greze(ジャン=ドゥニ・グレーゼ)氏、Pilot(パイロット)の創業者であるWaseem Daher(ワスィーム・ダヘーア)氏、CircleCI(サークルCI)とDark(ダーク)の創業者であるPaul Biggar(ポール・ビッガー)氏、Postman(ポストマン)の成長部門責任者であるJesse Miller(ジェシー・ミラー)氏、Gusto(グスト)の成長部門責任者であるAllen Wo(アレン・ウォー)氏など、40人のエンジェル投資家が参加した。

Subscript製品のダッシュボード(画像クレジット:Subscript)

Subscriptでは、カスタムデータパイプラインを作成し、そのパイプラインによって、カクカー氏が「Revenue Source of Truth(真実の収益源)」と呼ぶものを作成する。例えば、誰かがSalesforce(セールスフォース)で100万ドル(約1億1500万円)の予約案件を成立させた場合、このシステムは一時的な収益と経常的な収益を分けて表示する。財務担当者はそれを見て最終的な判断を下す。

そこから、ユーザーは投資家や取締役会、リーダーシップチームがデータに基づいた意思決定を行うために必要なデータを切り分けることができる。

「リーダーシップチームが注目している大きな意思決定ポイントを把握し、それを軌道修正にも使用することができます」と、カクカー氏はいう。「四半期の途中で、数字を達成できるかどうか、どこに向かっているのか、状況はどうなっているのかが、わからなくなる時があるものです」。

Subscriptは現在、Circle(サークル)やFlipcause(フリップコーズ)など21社の顧客と提携しており、1億ドル(約115億円)を超える顧客の収益を追跡している。カクカー氏によると、社内ではこの数字をビジネスの規模を示すものとして見ているという。

Subscriptは現在、ベータ版を公開しているところで、新たな資金はチームと製品の構築に充てる予定だという。同社はまだ初期段階であり、複雑な製品を構築しているため、エンジニアリングや市場サポートを積み上げていくためには、人手を増やすことが重要だとカクカー氏は述べている。

「このモデルは非常に一般的になってきています」と、カクカー氏付け加えた。「この種のビジネスは非常に複雑なので、私たちは真っ先に取り組んでいますが、ソフトウェアなしでは不可能です」。

画像クレジット:jayk7 / Getty Images

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(文:Christine Hall、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

レガシーな会計技術スタックを一新するために仏Pennylaneが約65.7億円を調達

フランスのスタートアップ企業Pennylane(ペニーレイン)は、Sequoia Capital(セコイア・キャピタル)、Global Founders Capital(グローバル・ファウンダーズ・キャピタル)、Partech(パーテック)などの既存投資家から5700万ドル(約65億7800万円)のシリーズBラウンドを調達した。このスタートアップは、フランスで、そしてヨーロッパで、レガシーな会計ソリューションに取って代わりたいと考えている。

会計士であれば、CegidやSageのようなツールに馴染みがあるかもしれない。基本的に、Pennylaneはこれらのツールを全面的に見直し、会計事務所の技術スタックを現代化したいと考えている。

Pennylaneは、貴重な情報を保持しているサードパーティサービスと直接接続する。例えば、Pennylaneのインターフェースで銀行の明細を取得したり、Dropboxから領収書をインポートしたり、Stripeから請求情報を取得したりすることができるのだ。

また、オンラインプラットフォームであるため、会計事務所が共同でPennylaneを使用することも可能だ。クライアントもこのプラットフォームにアクセスし、領収書の一元管理、請求書の作成、一部のタスクの自動化などを行うことができる。表計算ソフトや写真の添付で情報をやり取りする代わりに、クライアントと会計事務所の双方がプラットフォーム上で直接やり取りできる。

現在、300の会計事務所がPennylaneを利用している。その中には、数人のクライアントと一緒に使い始めた事務所もあれば、完全に新しいツールに切り替えた事務所もある。興味深いことに、Pennylaneのクライアントは、このプラットフォームをもっと使いたいと思っており、つまり、彼らが新しいクライアントを連れてきているのである。

「9カ月前、90%のクライアントが直接私たちにコンタクトを取り、そのうち10%が会計事務所経由でクライアントになっていました。9カ月後、その傾向は変わりました。私たちのクライアントの81%が会計事務所からなのです」と共同創業者兼CEOのArthur Waller(アーサー・ウォーラー)氏は教えてくれた。

同社は収益の数字を共有したがらなかったが、ウォーラー氏は、この夏以降、毎月20%ずつ成長していることを教えてくれた。2020年以降、Pennylaneは9600万ドル(約110億8300万円)を調達している。

一歩後ろに下がって眺めてみると、Pennylaneには大きな市場機会が待っているということがわかる。英国や米国など、より成熟した市場では、企業はQuickBooksやXeroなどのSaaS型ソリューションを利用してきた。しかし、会計業界は断片的で、各国が独自のソフトウェアソリューションを使用している。フランスのように、会計のための決定的なSaaSソリューションが存在しない国もある。

「フランスには、約1万2000の会計事務所があります。現在では300の会計事務所と取引しています。4、5年後には150万社の中小企業と取引することが目標です」とウォーラー氏はいう。

この先、地理的な拡大だけでなく、製品チャンスもある。Pennylaneは、財務管理に関連するあらゆるものの中心的なハブとなる可能性があるのだ。

例えば、Swan(スワン)と共同で社用カードのベータテストを開始し、決済の円滑化を図っている。社用カードから発生する交換手数料を、会計事務所とレベニューシェアするようなイメージだ。同社は、フランス市場にだけでもまだやるべきことがたくさんあるため、今回の資金調達で、製品のイテレーションができるようになると考えている。

同社は、年内に従業員500人を計画している。同社は、技術と製品がこのスタートアップにとって最も重要な分野であると考えており、ほとんどの採用はこれらのカテゴリーで行われる予定である。基本的に、Pennylaneは、新しく始める会計士が何も考えなくてもよいような製品を作りたいと考えているのだ。

画像クレジット:Pennylane

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(文:Romain Dillet、翻訳:Akihito Mizukoshi)

技術者ではないチームに専門知識不要のデータ探索機能を提供するCanvas

Canvasの創業者たち。左からプライド氏、ザパート氏、ビュイック氏(画像クレジット:Canvas)

世の人たちにスプレッドシートを捨てさせようとするスタートアップがある一方で、協調データ探索ツールを開発しているCanvas(キャンバス)は、技術者ではないチームがデータチームの手を煩わせることなしに必要な情報にアクセスできるように、スプレッドシートに似たインターフェースを全面的に採用している。

Luke Zapart(ルーク・ザパート)氏は、Flexport(フレックスポート)の元同僚であるRyan Buick(ライアン・ビュイック)氏ならびにWill Pride(ウィル・プライド)氏とともに2020年末にCanvasを立ち上げた。ザパート氏はFlexportで働いていた際にデータ検索で苦労を重ねた経験から、Canvasで「Looker(ルッカー)を取り込んだFigma(フィグマ)」を開発しているのだと語る(Lookerは著名なBIツール、Figmaも著名なウェブデザインツールの名前)。

「多くのデータチームは、処理能力を溢れる量の平凡で退屈なデータ要求に忙殺され、ビジネスチームは何日も答を待つのを諦めて、結局ビジネスインテリジェンス(BI)ツールの前に座って『CSVにエクスポート』ボタンを押して、Googleスプレッドシート上でピボットしているのです」とザパート氏は説明する。「根本的に、企業内のビジネス側とデータ側の信頼関係が崩れてしまったのです。それがきっかけで、私たちはFlexportを離れ、本当にその問題を理解して解決しようと努力したのです」。

さらに、データ業界は現在「ルネッサンスを経験」しており、伝統的なビジネスインテリジェンスツールが、焦点を絞ったクラス最高のツールによって解体されている、と彼は付け加えた。しかし、ビジネスユーザーは、SQL(Structured Query Language)に精通していたり、充実したデータチームを抱えていない限り、最新のデータスタックがもたらす多くのメリットを享受することができない。

Canvasはスプレッドシートベースのワークスペースとして開発されたもので、ビジネスチームはSQLクラスを受講することなく独立した意思決定を行うことが可能となり、データチームは戦略的な作業に集中する時間を得ることができるようになる。

その仕組みは以下のようなものだ。まずユーザーは、自分の「白いキャンバス」からスタートし、データチームが提供する定義の表から探しているデータを選ぶことができる。データを見つけたら、表をキャンバスにドラッグ&ドロップして、Googleスプレッドシートと同じように操作する。例えば「ピボット」ボタンを使って、ある指標を抜き出し、グラフやチャートを作成することができる。

ビュイック氏は「チャートを対話的に操作し、キャンバスの好きな場所にドラッグすることができます」という。「ここからがFigmaのようなルック&フィールになるのですが、これはデータを扱うための新しい方法であることがわかりました。なぜなら、解決するために考えようとしている問題がどのようなものであろうとも、反復したりプロトタイプを作成したり、メンタルモデルに合わせたりすることがずっと簡単になるからです」すばらしい特徴は、ビジネスチームが行き詰まることを知っているからこそ、コラボレーションを活かせるようにしている点です。他の人をチームにタグつけしてチェックを依頼することができます」。

ビュイック氏によると、データチームへの質問の数を減らせるだけでなく、Canvasが、すでにdata build tool(DBT)でモデル化されているビジネスロジックを簡単に再利用できる手段であることを理解したスタートアップたちも、このツールを採用しているという。

Canvasの例画像クレジット:Canvas

米国時間1月28日には、Sequoiaが主導し、Abstract Ventures、SV Angel、および20数名の個人投資家グループが参加したラウンドで420万ドル(約4億8000万円)を調達し、プラットフォームを一般公開した。この投資家のリストには、データのエキスパートであるSegmentのCalvin French-Owen(カルバン・フレンチ・オーウェン)氏、FivetranのTaylor Brown(テイラーブラウン)氏、CensusのBoris Jabes(ボリス・ジャベス)氏、DataDogのOlivier Pomel(オリヴィエ・ポメル)氏、事業家であるLatticeのJack Altman(ジャック・オルトマン)氏、DoordashのTony Xu(トニー・シュー)氏、FlexportのRyan Petersen(ライアン・ピーターセン)氏、WebflowのBryant Chou(ブライアント・チョウ)氏、InstacartのMax Mullen(マックス・マレン)氏、そしてエンジェル投資家らが名を連ねている。

ビジネスチームのためのデータワークスペースを構築するのは大変な作業であることを認識した、Canvasの創設者たちは、資金調達を行う決定を下した。ザパート氏は、世界的なデータ専門家やデータ分野の企業の創業者などの、一緒に仕事をしたいと思えるような投資家を慎重に検討したと述べている。

現在、従業員は6名で、数少ない有料顧客と協力しているデザインパートナーがいる。新たな資金は、エンジニアの増員に充てられ、セルフサービスモデルを含む同社のロードマップを構築するとともに、一連の製品発売に利用され、同社はさらなる市場開拓と製品開発戦略を展開して行く予定だ。最初の10~20件の顧客を獲得した時点で、次の資金調達ラウンドを検討するとザパート氏は述べている。

SequoiaのパートナーKonstantine Buhler(コンスタンティン・ビューラー)氏によると、同社には「結束力が高く技術的に強いチーム」があり、その最新のデータスタックは、優れた企業の構築に使われ、企業顧客にサービスを提供する機会を生み出しているという。彼はCanvasの中で、そのようなスタック全体に対する協調的なフロントエンドを開発している企業を目にした。

「データをExcel(エクセル)にダウンロードしてピボットテーブルを作成するのではなく、すべてのデータを1つの場所に保存できるという利点があります」とビューラー氏は付け加えた。「ここでは、システムに接続するだけで、目の前で結果を見ることができるのです。彼のチームはFlexportでもすばらしい仕事を一緒にしてきましたが、今回は非常に重要で誰にでも関連している問題に取り組んでいます。大きなビジョンは、セルフサービスを作ることができるかどうかにかかっています。それは、データへのアクセスを民主化して、完全なアクセス権を持つ少数の人たちだけではなく、社内のすべての人たちにデータを開放することによって力を与えることのできる、非常に大きなきっかけなのです」。

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(文:Christine Hall、翻訳:sako)

社内に散らばる膨大なナレッジを検索できるサービス「Dashworks」

企業が成長すると、それにともなって、社員たちが知っているべき重要な情報が増える。テクノロジーの利用が複雑化すると、Slackのスレッドにあったり、Jiraのチケットにあったり、ファイルとしてDropboxにアップされていたりと情報はあちこちに散在してしまうことになる。

Dashworksは、そんな社内のナレッジを集約する場所を目指しているスタートアップだ。カスタマイズ可能なスタートページと検索エンジンを備え、何十種類もの企業向けサービスに接続し、必要なものを見つけるための1つのハブを提供する。

仕事用のノートPCのホームページとしてDashworksは構築されている。全社的なアナウンスやFAQの作成、ブックマークの共有など、ハンドブック、OKR、組織図など、必要なのになかなか見つからないものを見つけることができる。

しかし、それ以上に印象的なのは、ツールを横断した検索機能だ。FacebookやCrestaといった企業で自然言語処理の経験を積んだ共同創業者のPrasad Kawthekar(プラサド・カワテカール)氏とPraty Sharma(プラティ・シャルマ)氏は、Dashworksに質問をすると、前述のSlackのスレッド、Jiraのチケット、またはDropboxファイルといったすべてのナレッジから回答を得ることができるツールを構築している。ユーザーが登録したサービスの関連ファイルの検索結果ページが表示されるが、質問の答えを知っていると判断した場合は、ページの一番上にGoogleのスニペットスタイルで表示される。

画像クレジット:Dashworks

現在、DashworksはAirtable、Asana、Confluence、Dropbox、Gmail、Google Drive、Intercom、Jira、Notion、Slack、Salesforce、Trelloなど30以上の人気サービスに接続することが可能で、需要に応じて順次追加していく予定だ。

これらのサービスやナレッジに他社がアクセスすることは、不安なことかもしれない。Dashworksのチームは、それを十分承知しているようだ。SOC-2認証を取得していること、サービスを停止する場合、データはすべてサーバーから消去されること、そしてツールをホスティングできるチームには、完全なオンプレミス版を提供していることという。

今週、DashworksはPoint72 Venturesが主導し、South Park Commons、Combine Fund、Garuda Ventures、GOAT Capital、Unpopular VenturesおよびStarling Venturesが支援する400万ドル(約4億6000万円)のラウンドを調達したと発表している。また、Twitchの共同創業者であるEmmett Shear(エメット・シアー)氏やGustoの共同創業者であるJosh Reeves(ジョシュ・リーブス)氏とTomer London(トーマー・ロンドン)氏など、多くのエンジェルたちがこのラウンドを支援している。同社は、Y Combinatorの2020年冬季にも参加していた。

画像クレジット:Dashworks

画像クレジット:Dashworks

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(文:Greg Kumparak、翻訳:Hiroshi Iwatani)

イベントマーケティングは「チームスポーツ」、Vendeluxは最高の投資利益率のために企業を指導

イベントや会議、展示会などに参加し、多くのきっかけや機会を生み出すという点でうまくいった場合、それは良い経験だ。しかし、イベントがあまりうまくいかないとき、それは時間とお金の浪費という点でリスクになりえる。

Shutterstock(シャッタースクトック)の元幹部、Alex Reynolds(アレックス・レイノルズ)氏とStefan Deeran(ステファン・ディアラン)氏の2人は、APIとコンピュータビジョンの収益化に一緒に取り組み、そうしたいまいちなイベントにいくつか参加した経験から、どのイベントをリストのトップにもってくるか、会社のどのチームメンバーが行けば投資対効果を最大化できるかを判断する、より良い方法があるはずだと考えた。

「イベントマーケティングは、チーム全体で行う大規模なスポーツのようなもの、との結論に至りました」とレイノルズ氏はTechCrunchに語った。「経営陣、営業チーム、さまざまなマーケティングチーム、運営、調達が関わってきますが、そのコラボレーション、説明責任、可視性を支援するプラットフォームや記録システムがないのです」。

その結果、例えば、毎年開催される3万以上の展示会のうち、どの展示会に出展べきか、過去にその展示会でどれだけの収益を上げたかなど、企業が基本的な質問に答えるのは非常に難しい、と同氏は話す。Shutterstockのイベントチームとマーケティングチームの協力を得て、レイノルズ氏とディアラン氏は社内でプロセスを作成する方法を考え、チャネルからのROI(投資利益率)が劇的にアップするのを確認した。

そこで2人は、このアプローチが他のビジネスでも有効かどうかを検証することにした。2021年末にVendulux(ヴェンディラクス)の構築を開始し、すでにActiveCampaign、Gainsight、Gorgiasなど十数社の顧客が、講演者、スポンサー、参加者といったデータを含め、3万以上の対面およびバーチャルイベントの独自データベースにアクセスしている。

Vendeluxは、一般に公開されているソースからデータを取得し、特定のイベントにどのスポンサーや講演者が参加するかを表示することができる。また、ユーザーは、LinkedInの連絡先も含め、自分のCRM(顧客管理)から情報をアップロードすることもでき、とある企業が今後イベントに参加する予定があるか、自分のネットワークの誰かがイベントで講演するかどうかを逐一確認することができる。

1月に一般向けにサービスを開始したVendeluxは、前月比で2桁の売上増を記録している。同社は米国時間1月28日、Tenacity Venture Capitalがリードし、Earl Grey、Shafqat Islam、Avi Muchnikなどの戦略的エンジェル投資家が参加したシードラウンドで240万ドル(約2億7000万円)を調達したと発表した。

Vendeluxのエクスプローラータブ(画像クレジット:Vendelux)

今回の資金調達は、主に製品開発とチーム拡大に充てられる。このラウンドを完了する前、創業者たちは自己資金で運営していた。しかし、レイノルズ氏は、顧客からの問い合わせと機能の構築を両立させることが難しくなってきたと述べた。

「火に少し燃料を注ぐのに、そしてチームを強化するのに適した時期だと思ったのです」と同氏は付け加えた。「製品面では、統合の点でまだまだ追加したいことがたくさんあります」。

一方、レイノルズ氏とディアラン氏は、会社の成長に探索、実行、評価の3段階でアプローチしている。同社は現在、イベント・インテリジェンス分野の探索に注力しており、今回のシードラウンドで実行に移すことになる。

企業がどこに行き、誰を派遣すればよいかがわかったら、次のステップとして、創業者たちが検討しているのは、事前に十分なミーティングを予約し、発生しているデータを把握し、担当者のパフォーマンスやROIをリアルタイムで確認できるようにするすことだ。

「イベントマーケティング担当者は、大規模な計画を立て、適切な場所にすべての人を集めるという、マーケティングチームの縁の下の力持ちのような存在ですが、説明責任と可視性を促進するためのプラットフォームを持っていません」とレイノルズ氏は付け加えた。「当社はそのような記録システムとなり、企業がどこに向かうべきか、それが価値の観点から何を意味するのかについて、よりデータに基づいた決定を下すことをサポートしたいと考えています」。

画像クレジット:Vendelux / Vendelux founders Stefan Deeran and Alex Reynolds

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(文:Christine Hall、翻訳:Nariko Mizoguchi

「思いつき」をShazamのように広範な知識ベースと検索、照合、整理してくれるメモアプリ「Weavit」

同名の新しいアプリで「Shazam for your thoughts(あなたのインスピレーションをShazamのように検索)」しようと試みるWeavit(ウィービット)。同社はボタンを押すだけで自分の考えをすばやくメモツールに取り込み、それをより広範な知識ベースのコンテンツと照合するという、今までになかった手段をユーザーに提供する。Weavitアプリでは、メモを連絡先、会議、トピック、その他のウェブリンクにリンクさせ、アイデアや思いつきを、構造化して整理しなくても、書き留めておくことができる。

Weavitの創業者によると、これは脳の働きに似ている、という。

共同創業者であるKomal Narwani(コマル・ナルワニ)氏は次のように説明する。「私たちの頭の中にあるアイデアは、いずれもまったく構造化されておらず、すでにあるノートには収まりません」「思いついたことを吐き出し、機械に整理してもらえば、後からその情報を取り出し、きちんと整理し直すことができます」。

このアプリでは、アイデアをタイプ(あるいは口述)してWeavitのデータベースに入力する。

アプリは自然言語処理(NLP)技術を用いて、メモの中の特定の項目を、人や場所、イベントなど、アプリにすでに存在するトピックにリンクさせる。例えばCESで誰かに会ったと入力すると、「CES」はイベントとして認識され、「CES」が含まれる他のコンテンツにリンクされる(Weavitは6000万以上のWikipediaのトピックに接続され、このようなリンクをサポートしている)。さらに、メモに出てくる人を特定し、その人の会社、過去に会った場所や会議などにリンクさせることもできる。

画像クレジット:Weavit

このような自動リンクにより、自分の既存の知識をベースにしてアイデアを書き留めることが容易になる。Weavitはハッシュタグや@メンションなどの一般的なツールもサポートしているので、必要に応じて手動でリンクさせることも可能だ。

Weavitの共同創業者、Emmanuel Lefort(エマニュエル・ルフォート)氏は、過去の銀行勤務の経験からこのメモアプリのアイデアを思いついた。銀行では、営業担当者が顧客に金融商品を販売する際、パーソナルネットワークの中にある潜在的な情報を十分に利用できていなかった。そこで同氏は、CRM(顧客関係管理)ツールに入力しなくても、自動的に情報を結びつけることができる手段があれば面白いかも、と考えたのだ。

まだ初期段階にあるWeavitでは、ユーザーのコンテンツを社内のような分散型ネットワークに接続することはできない。これはもっと長期的な目標である。

その代わり、Weavitのアプリに記録されたものはすべて非開示で暗号化されている(データは転送中も暗号化されるという)。

Weavitは今のところiOS版のみ。まだテストの初期段階で、アクセスコードを持つユーザーだけが利用できる。

このアプリを試したいTechCrunchの読者は、コード「braincrunch」を使ってほしい。

画像クレジット:Weavit

Markdownベースの知識管理ツールであるRoam ResearchObsidianのような、グラフデータベースを搭載した(あるいはグラフデータベースに似た)ツールがある中で、ナルワニ氏によると、Weavitはより親しみやすいアプリとしてニッチを埋めることができるという。これらの生産性アプリは、より複雑で強力である反面、特に技術的な知識を持たない一般のユーザーにとっては複雑で導入が難しい。これに対し、Weavitは、仕事や研究に関するメモだけでなく、おすすめの映画や子供の先生の名前、後で見たい特定のテーマに関するウェブサイトなど、日常的な情報を記憶し、整理してリンクしてくれる。

2020年、WeavitはFluxus Ventures(フルクサスベンチャーズ)が主導したシードラウンドで125万ドル(約1億4000万円)を調達。香港を拠点に6人がフルタイムで活動している。

最低限の機能だけを備えたアプリのプロトタイプは2021年から公開されていたが、同社はユーザーからのフィードバックをもとにアプリを再編成して、2021年12月に再ローンチした。つまり、現在公開されているバージョンは、まだApp Storeに公開されてから数週間しか経っていない。同社によると、新バージョンのWeavitは、最初の10日間で1500件のサインアップを獲得したという。

Weavitチームはウェブアプリにも取り組んでいて、ブラウジング中に画像やウェブページをキャプチャするChromeの拡張機能が間もなくリリース予定。自分の考えやアイデア、インスピレーションだけでなく、ウェブ上のコンテンツも収集できるようになる。チームはAndroidアプリも開発中である。

画像クレジット:Weavit

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(文:Sarah Perez、翻訳:Dragonfly)

マイクロソフト、Windows 11のAndroidアプリ動作機能のパブリックプレビューを2月リリースと予告

マイクロソフト、Windows 11のAndroidアプリ動作機能のパブリックプレビューを2月リリースと予告

米マイクロソフトが、Windows 11の目玉的機能となる、Androidアプリ動作機能のパブリックプレビューを、2月にリリースすると予告しています。

Windows 11は、すでに市販パソコンへのプリインストールやアップグレードによって幅広く展開されていますが、発表時の特徴として挙げられた機能には、「Amazon アプリストア」で配布されているAndroidアプリが動作するというものがあります。ただし同機能は公式リリースされているWindows 11ではまだ利用できず、ベータ版OSのみが対応していました。

マイクロソフトが1月26日に公開したブログでは、Windows 11の発表時に案内されていたように米アマゾンやインテルとの協力により、Androidアプリの動作機能をパブリックレビューに導入する、と案内しています。なお、現時点ではどれだけのAndroidアプリが動作するのかは案内されていません。

さらに同時期となるWindows 11のアップデートにより、新機能も追加されます。例えば通話のミュート/ミュート解除やウィンドウ共有の簡易化、タスクバーへの天気の表示、メモ帳とメディアプレーヤーアプリへの新デザインの導入などが予定されています。

Windows上でのAndroidアプリの動作環境としては、Windows 11の後にGoogleから発表された「Google Playゲーム」のベータ版も海外にて提供が開始されています。今後も、OSやデスクトップ/モバイルという垣根を超えた、アプリやサービスの提供が進むことが期待されます。

(Source:MicrosoftEngadget日本版より転載)

ついにマスク姿でもiPhoneのロック解除可能に!アップルの最新ベータ版OSはマスク着用に対応したFace IDや待望のユニバーサルコントロールを提供

Appleは新たなOSのベータ版を大量にリリースし、待望の機能を2つ提供する。iOS 15.4はマスクをしたままFace IDでiPhoneのロックを解除できる機能を搭載、さらにiPadOSとMacOS 12.3のバージョンベータ15.4では、遅れていたユニバーサルコントロールを提供する。

マスク着用時のFace IDは、当然のことながらパンデミックになった当初から熱望されていた機能だった。2020年4月に報道されたのは、iPhoneがマスクを発見すると、パスワード入力画面にユーザーに表示するもので、2021年2月には、iOS 14.5のデベロッパーベータ版に、接続したApple Watchを介してiPhoneのロックを解除する機能(巧妙な回避策だ)が追加された。

新しいOSのベータ版のOSは、多くの人が求めてきた機能をついに提供する。有効にすると、iPhoneは目の周りで正しいユーザーであるかどうかを判断する。しかし、顔全体がないと、読み取りの精度が低くなり、安全性も定価するため、オプトイン方式になっている。

画像クレジット:Apple

iPadとMacOSでは、ついにユニバーサルコントロールのベータ版を提供されることになった。
macOS 12 Montereyと同時に発表されたこの機能は、2021年に期待されていたが、その後、著しく遅れていた。現在のところ、春頃と予想されているが、デベロッパーベータのテスターはすぐにそれを手に入れることができる。

この機能は、Sidecarに代わるものだ。SidecarはiPadを追加ディスプレイに変えるが、、ユニバーサルコントロールは自動的にMacとiPadの間でマウスカーソルとキーボードを共有する。一方のデバイスでコンテンツを選択し、マシン間でドラッグ&ドロップすることもできる。

また、iOSの新機能として、ハートの手、唇を噛む、妊婦/男性など、多数の絵文字が追加されている。ベータ版は本日から利用可能。最終的な一般へのリリース時期は未定だ。

画像クレジット:Nora Tam/South China Morning Post / Getty Images

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(文:Brian Heater、翻訳:Katsuyuki Yasui)

「思わず開きたくなる営業メール」の制作を支援するDyspatch

Dyspatchのマット・ハリスCEO(画像クレジット:Dyspatch)

マーケターの中には、より多くのお金を稼ぐためには、より多くのEメールを送らなければならないと考える人がいる。Dyspatch(ディスパッチ)の創業者でCEOのMatt Harris(マット・ハリス)氏は、これを「Eメールの法則」と呼んでいる。

「結局、そうしたEメールすべてが、開封エンゲージメント率の低下を招いています」と同氏はTechCrunchに語った。「さらに、Eメール中心ではない新しい世代が社会人になっています。彼らはそもそもEメールの使い方から学ぶ必要があります」。

ほとんどのマーケターは、Eメールマーケティングに関する研修を受けておらず、むしろ実地で学ぶスキルになっていると同氏は付け加えた。時が経つにつれて、人々は自分でデザインし、自らが使うEメールシステムにコードの行をコピー&ペーストするようになった。

Eメール配信のためのツールやリソースが複数登場し、それが課題となった。なぜなら、人々はさまざまなEメールシステムの使い方を学ばなければならず、また、頼るコードが常に機能するとは限らないからだ。

ハリス氏は、2018年にSendwithusというソリューションからスタートした。これはEメール領域における開発者向けの製品だった。その後、同氏とそのチームはEメール制作が大きな問題であると認識し、Eメールのデザインにドラッグ&ドロップのアプローチをもたらすためにDyspatchにピボットした。同社のEメール制作ツールは、基本的に、Eメールをうまくデザインしている人たちからヒントを得て、それを広く利用できるようにしたものだ。

Dyspatchは、Google(グーグル)のAMP for Emailを活用し、AMPメールの要素を非技術系ユーザーでも簡単に実装できるインタラクティブなメール製品「Apps in Email」を2021年発表した。

このツールは現在300社以上の顧客に利用されている。その中にはCanva(キャンバ)も含まれている。同社はAMPメールを利用してコメント返信通知でエンゲージメントを高めている。

「Dyspatchは、私たちのチームがEメール制作に費やす時間を大幅に削減し、コンテンツ制作の規模を拡大することを可能にしました」とCanvaのライフサイクルマーケティング担当グローバルヘッド、Megan Walsh(ミーガン・ウォルシュ)氏は声明で述べた。「私たちは週に20通以上のEメールを制作しています。このプラットフォームは、エンジニアリングの努力なしに、すべてのEメールがブランドに則り、ローカライズされ、すぐ答えが返ってくることを保証してくれます。また、AMPコメント返信メールにインタラクティブ性を持たせることもできました。Dyspatchチームは、このプロジェクトにとても協力的で、ユーザーにも大好評でした」。

Dyspatchの予約デモ(画像クレジット:Dyspatch)

Dyspatchはすでに、フル機能のインタラクティブAMPメールキャンペーンを経て、ブランドのEメールエンゲージメントが500%、Eメールコンバージョンは300%増加することを証明することができるとハリス氏は述べている。

同社は現在、新規顧客の増加をサポートするために、市場開拓チームと技術チームの規模を拡大する段階にあり、そのために600万ドル(約6億8400万円)のシード資金を調達した。Gradient Venturesがこのラウンドをリードし、Initialized Capital、Baseline Ventures、Blue Run Ventures、Scott Banister、VanEdge Partnersが参加した。Dypatchとって今回が初めての資金調達だが、前身の会社と合わせて合計1100万ドル(約12億5400万円)を調達した。

また、Dyspatchは今回の資金調達により、Oracle EloquaやSalesforce Marketing CloudなどのEメールサービスプロバイダーとの連携をさらに進め、ユーザーがどのリソースを使ってEメールを送信しても、シームレスなメールワークフローを確保できるようにする予定だ。

同社は、このアプリをどれだけの人が使っているかを重視している。顧客数はこの1年で2倍以上に増えた。ハリス氏の目に映る繰り返しのパターンの1つは、顧客が毎年戻って来て、さらにユーザーを増やす動きだ。例えば、ある有力顧客は、契約初年度に当初10席のユーザーシートを購入したが、半年でそれを10倍に増やした。

今後は、サードパーティに技術を開放し、Eメールでのカレンダー予約など、顧客から要望のあった機能を構築していく。

「今は、アプリ、アンケート、承認アプリのビルディングブロックを構築していますが、私たちのDNAはエンジニアリング会社ですので、サードパーティが私たちのマーケットプレイスでアプリを構築できるようにしたいと考えています」とハリス氏は付け加えた。

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(文:Christine Hall、翻訳:Nariko Mizoguchi

アップルがiOS 15.3をリリース「活発に悪用された可能性がある」iPhoneの脆弱性を修正

Apple(アップル)は米国時間1月26日、iOS 15.3とmacOS Monterey 12.2のリリースにより、数十件のセキュリティ問題を修正した。

iOS 15.3では、同社が活発に悪用された恐れがあるとしている不具合を含む、合計10件のセキュリティバグが修正されている。CVE-2022-22587として追跡されているこの脆弱性は、IOMobileFrameBuffer(デバイスのメモリが画面表示を処理する方法を開発者が制御できるようにするカーネル拡張)のメモリ破壊バグで、悪意のあるアプリによるカーネルコードの実行につながる可能性がある。

また、AppleはmacOS Monterey 12.2をリリースした。ユーザーの最近のブラウジング履歴やGoogleアカウント情報が、Safari 15やサードパーティ製のウェブブラウザから流出する可能性があるというWebKitの不具合を研究者が発見し公表していたが、macOS 12.2ではそのバグに対する修正が含まれている。

この脆弱性は、ブラウザのフィンガープリンティングと不正行為の検出サービスを提供するFingerprintJSによって最初に発見されたもので、ブラウザにデータを保存するアプリケーションプログラミングインターフェース(API)であるIndexedDBのAppleによる実装に不具合があったという。

CVE-2022-22594として追跡されているこの不具合は、IndexedDBを使用しているウェブサイトが自分のドメインのみならず、ユーザーのブラウジングセッション中に他のウェブサイトが生成したIndexedDBデータベース名にアクセスすることを可能にし、ひいては、ユーザーが別のタブやウィンドウで訪れた他のウェブサイトを追跡することも可能にする。また、IndexedDBのデータベース名にユーザー固有の識別子を使っているGoogleなどのウェブサイトでは、攻撃者がユーザーのGoogleアカウント情報にアクセスできる可能性があるとFingerprintJSは警告している。

また、iOS 15.3には、アプリがルート権限を取得する可能性があるセキュリティ問題、カーネル権限で任意のコードを実行する問題、およびアプリがiCloudを通じてユーザーのファイルにアクセスできる問題の修正が含まれている。

一方、macOS Monterey 12.2では、合計13件の脆弱性が修正されている。後者は、以前に報告されたSafariでのスクロールの問題を修正し、MacBookにスムーズなスクロールをもたらすことも約束している。

また、レガシーバージョンのmacOS Big SurおよびCatalinaのセキュリティ修正プログラムもリリースされた。

今回の最新セキュリティアップデートの公開は、HomeKitを介して悪用され、持続的なサービス拒否(DoS)攻撃の標的となる可能性があるiOSおよびiPadOSの脆弱性が確認されたのを受けて、それを修正するためにAppleがiOS 15.2.2をリリースしてからわずか2週間後に行われた。

関連記事:アップルがAirTagストーカー問題に対応、「Personal Safety User Guide」を改定

画像クレジット:Bryce Durbin / TechCrunch

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(文:Carly Page、翻訳:Aya Nakazato)

アップルがiOS 15.3をリリース「活発に悪用された可能性がある」iPhoneの脆弱性を修正

Apple(アップル)は米国時間1月26日、iOS 15.3とmacOS Monterey 12.2のリリースにより、数十件のセキュリティ問題を修正した。

iOS 15.3では、同社が活発に悪用された恐れがあるとしている不具合を含む、合計10件のセキュリティバグが修正されている。CVE-2022-22587として追跡されているこの脆弱性は、IOMobileFrameBuffer(デバイスのメモリが画面表示を処理する方法を開発者が制御できるようにするカーネル拡張)のメモリ破壊バグで、悪意のあるアプリによるカーネルコードの実行につながる可能性がある。

また、AppleはmacOS Monterey 12.2をリリースした。ユーザーの最近のブラウジング履歴やGoogleアカウント情報が、Safari 15やサードパーティ製のウェブブラウザから流出する可能性があるというWebKitの不具合を研究者が発見し公表していたが、macOS 12.2ではそのバグに対する修正が含まれている。

この脆弱性は、ブラウザのフィンガープリンティングと不正行為の検出サービスを提供するFingerprintJSによって最初に発見されたもので、ブラウザにデータを保存するアプリケーションプログラミングインターフェース(API)であるIndexedDBのAppleによる実装に不具合があったという。

CVE-2022-22594として追跡されているこの不具合は、IndexedDBを使用しているウェブサイトが自分のドメインのみならず、ユーザーのブラウジングセッション中に他のウェブサイトが生成したIndexedDBデータベース名にアクセスすることを可能にし、ひいては、ユーザーが別のタブやウィンドウで訪れた他のウェブサイトを追跡することも可能にする。また、IndexedDBのデータベース名にユーザー固有の識別子を使っているGoogleなどのウェブサイトでは、攻撃者がユーザーのGoogleアカウント情報にアクセスできる可能性があるとFingerprintJSは警告している。

また、iOS 15.3には、アプリがルート権限を取得する可能性があるセキュリティ問題、カーネル権限で任意のコードを実行する問題、およびアプリがiCloudを通じてユーザーのファイルにアクセスできる問題の修正が含まれている。

一方、macOS Monterey 12.2では、合計13件の脆弱性が修正されている。後者は、以前に報告されたSafariでのスクロールの問題を修正し、MacBookにスムーズなスクロールをもたらすことも約束している。

また、レガシーバージョンのmacOS Big SurおよびCatalinaのセキュリティ修正プログラムもリリースされた。

今回の最新セキュリティアップデートの公開は、HomeKitを介して悪用され、持続的なサービス拒否(DoS)攻撃の標的となる可能性があるiOSおよびiPadOSの脆弱性が確認されたのを受けて、それを修正するためにAppleがiOS 15.2.2をリリースしてからわずか2週間後に行われた。

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画像クレジット:Bryce Durbin / TechCrunch

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(文:Carly Page、翻訳:Aya Nakazato)

画面録画で情報共有、職場の生産性を高めるコラボプラットフォームCloudAppが約10億円調達

ビジュアルワークコミュニケーションツールのCloudApp(クラウドアップ)は、Grayhawk CapitalとNordic EyeがリードするシリーズAで930万ドル(約10億円)を調達した。このラウンドには、既存投資家のKickstart Fund、Cervin Ventures、New Ground Ventures、Bloomberg Beta、そして新たにPeninsula VenturesとForward VCが加わっている。また、CloudAppの顧客であるAtriumのCRO、Peter Kazanjy(ピーター・カザンジー)氏、Startup GrindとBevyのCEOであるDerek Andersen(ドレク・アンダーセン)氏も参加している。

CloudAppは、瞬時に共有できる動画、GIF、スクリーンショットを通じて、チームがより速く情報を共有できるようにすることを目的に2015年に設立された。このツールはHDビデオ、マークアップされた画像などをキャプチャしてワークフローに埋め込む、オールインワンの画面録画ソフトウェアだ。ユーザーが作成したファイルはすべてクラウド上に安全に保存され、CloudAppのネイティブMacアプリおよびWindowsアプリからアクセスできる他、パスワードで保護された安全なリンクを通じてウェブ上で共有することもできる。

同社の目標は、チームが電話や電子メールではなく、シンプルな共有可能な動画でメッセージを伝えられるようにすることだ。CloudAppは、ワークフローを中断することなくいつでも読むことができるビジュアルなボイスメールと自らを位置づけている。このツールはSlack、Atlassian、Trello、Zendesk、Asanaなど、数十のインテグレーションをサポートしている。サービス開始以来、CloudAppは400万人超のユーザーを獲得した。CloudAppの著名な顧客にはAdobe、Uber、Zendesk、Salesforceなどが含まれる。

CloudAppのCEOであるScott Smith(スコット・スミス)氏はTechCrunchに、今回調達した資金をツールの高速化、より深い統合、安全性向上のために使うと電子メールで述べた。同社はまた、より多くのチームが職場の生産性を高めるためにCloudAppに出会い、利用できるようにしたいと考えている。

画像クレジット:CloudApp

「これらの目標を達成するためには、当社がすでに持っているもの、つまりすばらしい人材がもう少し必要です」とスミス氏は話した。「スピードとユーザーエクスペリエンスを向上させるために、プロダクトチームとエンジニアリングチームを強化する予定です。また、マーケティングにも力を入れ、すべての職場でCloudAppがワークフローに欠かせない存在となるように努めます。営業チームの規模を拡大し、CloudAppを最も必要とするチームに直接提供できるようにします」。

将来については、従業員や顧客とのやりとりがこれまで以上に瞬時に検索・共有できるようになる世界をCloudAppは想定している、と同氏は話す。人工知能が最も関連性の高い重要なコンテンツを浮上させることができ、それがCloudAppのビジョンを可能にする、と同氏は指摘した。

「当初、我々はCloudAppを、共有する必要のあるものを非常に簡単かつ迅速に取り込むための方法だと考えていました。知識は力です。そこでチームは、ワークフローや統合を通じて、販売、サポート、製品、エンジニアリングチームなど、組織のあらゆる部分を助けるために使用できるコンテンツやクイックヘルプ動画のリポジトリを構築することができます」とスミス氏は書いている。「これからは非同期型の仕事です。そして、CloudAppは、すべてのチームメンバーがより生産的で超人的な存在になるのを支援できます」。

CloudAppのシリーズAは、2019年5月に発表された430万ドル(約5億円)のシードラウンドに続くものだ。シードラウンドはKickstart Seed Fundがリードし、既存投資家のCervin Ventures、Bloomberg Beta、当時Oracleの戦略担当副社長だったKyle York(カイル・ヨーク)氏も参加した。

画像クレジット:CloudApp

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(文:Aisha Malik、翻訳:Nariko Mizoguchi

無償で働くオープンソース開発者たちは自分の「力」に気づき始めている

ほとんどの人は意識していないと思うが、日常的に使用しているデバイスやアプリの多くはオープンソースソフトウェア上に構築されており、1人か2人の開発者によって維持管理されている。開発者は自分の時間のためにお金を支払われておらず、コミュニティや情熱的なプロジェクトに還元するべく、バグを修正したりコードを改善したりしている。

例えば「cURL」は、APIなどの別のシステムのデータにソフトウェアが簡単にアクセスできるようにするオープンソースライブラリである。このライブラリは、iPhoneから自動車、スマート冷蔵庫、テレビに至るまで、ほぼすべての現代的なコネクテッドデバイスで使用されているが、基本的には1人の開発者、Daniel Steinberg(ダニエル・ステンバーグ)氏が30年近く無料で維持管理している。

多くのオープンソースプロジェクトが営利目的のソフトウェアやデバイスに含まれており、一般的に、純粋な謝意を別にすれば報酬がともわないにもかかわらず、このシステムはほぼ確実に機能している。一部のオープンソース開発者は、GitHub SponsorsBuy Me A Coffeeなどのプログラム、企業とのメンテナンス契約、あるいは自分のライブラリの維持費を支払ってくれる企業で仕事をすることで、自分の仕事を首尾よくサポートすることができるが、これは標準とは程遠い。

広範なセキュリティ侵害が発生したとき、このシステムの不公平性がしばしば表面化する。2021年12月にJavaライブラリ「Log4j」に出現したLog4Shellの脆弱性は、世界中で重大なセキュリティ脆弱性の問題を引き起こしており、一部の大企業にも影響が及んでいる。

影響を受けたライブラリの開発者たちは、問題を緩和するために24時間体制で作業することを余儀なくされたが、対価は支払われず、そもそも彼らの開発品は無料で使用されていたのだということへの認識も乏しいものであった。cURLの開発者も同じような扱いを経験している。同氏のプロジェクトに依存している企業が、コードに問題が発生した際、そのサービスに対価を支払っていないにもかかわらず、同氏に支援を求めてきたのである。

したがって、当然のことながら、自らの仕事に対する報酬がない中で自分たちが過大な力を行使していることを、一部のオープンソース開発者たちは自覚し始めている。彼らのプロジェクトは、世界最大規模の収益性の高い企業に利用されているのである。

その一例として、人気のnpmパッケージ「colors」と「faker」の開発者であるMarak Squires(マラク・スクワイアーズ)氏は、2022年1月初旬、これらのコードに意図的に変更を加え、ユーザーすべてに影響する破壊的展開を誘発した。使用時に「LIBERTY LIBERTY LIBERTY」というテキストに続いて意味不明な文字や記号を出力し、無限ループが発生するというものであった。

スクワイアーズ氏はこの変更を行った理由についてコメントしていないが、同氏は以前GitHubで「私はもうFortune 500企業(およびその他の小規模企業)を無償の仕事でサポートするつもりはありません」と発言していた。

スクワイアーズ氏が加えた変更は、Amazon(アマゾン)のCloud Development Kit(クラウド開発キット)を含む他の人気プロジェクトを破壊した。同氏のライブラリは週に2000万近くnpmにインストールされており、何千ものプロジェクトが直接的に依存している。npmは数時間以内に不正なリリースをロールバックし、GitHubはそれに応じてこの開発者のアカウントを一時停止した。

npmの対応は、過去にもライブラリに悪意のあるコードが追加され、最終的にはロールバックされて被害を抑えた事例があり、予想されるものであった。一方で、GitHubはこれまでにない反応を示した。同コードホスティングプラットフォームは、スクワイアーズ氏がコードの所有者であり、意のままに変更する権利を持っていたにもかかわらず、同氏のアカウント全体を停止したのである。

開発者が抗議のために自身のコードを取り下げる形をとったのも、これが初めてではない。2016年に「left-pad」の開発者は、自身が所有する別のオープンソースプロジェクトの命名をめぐってKik Messenger(キック・メッセンジャー)と争った後、npmから自分のコードを取り下げ、依存していた何万ものウェブサイトを破壊した。

驚くべきことに、著名なライブラリが時折業界のやり方に抗議してはいるが、この種の事象はそれほど一般的なものではない。オープンソース開発者たちは、自分たちの仕事の裏で数百万ドル(数億円)のプロダクトが作られているにもかかわらず、無償で働き続け、自らのプロジェクトの維持管理に最善を尽くしている。

ホワイトハウスでさえテクノロジー業界に対するオープンソースの重要性を認めている。Log4Jの一連の出来事を受けて2022年1月に業界と会合を持ち、次のように言及している。「オープンソースソフトウェアは独自の価値をもたらすものであり、同時に独自のセキュリティ上の課題を抱えている。その背景には、利用範囲の広さと、継続的なセキュリティの維持管理に責任を負う多数のボランティアの存在がある」。

しかし、こうした声明が出ている一方で、大規模な人気を誇るオープンソースソフトウェアでも、少なくとも世間の注目を集めるまでは、厳しい資金不足に陥っている。Heartbleedの脆弱性がインターネット全体を危険にさらす前、影響を受けたオープンソースプロジェクト「OpenSSL」への寄付は年間2000ドル(約23万円)程度であったが、問題が発覚した後には9000ドル(約102万円)に増加した。

現代的なネットワーク機器のほぼすべてで使われているOpenSSLの開発チームは当時、書面で次のように述べていた。「OpenSSLのケアと供給に専念できるフルタイムのチームメンバーは、1人ではなく、少なくとも6人は必要です」。プロジェクトチームはその代わりに、プロジェクトの維持費をカバーする契約作業を継続的に確保している。

開発者が自身のオープンソースライセンスを変更したり、自分の仕事をプロダクトに変えたり、スポンサーを増やす努力をすることはできるにしても、すべてのプロジェクトに万能のソリューションはない。この無償の仕事のすべてに資金を提供するより良い方法を業界が見出すまでは(誰もそんなことは考えていないようであるが)、より多くのオープンソース開発者が、意図的に自分たちの仕事を中断する形で不服従行動を起こすことで、自らが貢献しているものに光を当てる他ないのが現状である。

これは長い目で見れば持続可能なものではない。しかし、この混乱からどうやって抜け出すのかは不透明である。今日生み出されているあらゆるソフトウェアやコネクテッドデバイスでオープンソースの採用が急増しているが、何人かのオープンソース開発者が陰鬱な日を甘受するのではなく、すべてを破壊しようと決断することに、その行方が委ねられている。

何百万ものデバイスで使用されているcURLのようなライブラリが、洗濯機から乗用車まであらゆるものに含まれているという状況であっても、作成者がそのサポートに疲れて世界にメッセージを送ることを決断したとしたら、どのようなことが起きるであろうか。過去においては被害が回復したことは幸運であったが、将来はそのような幸運にはつながらないかもしれない。

画像クレジット:aurielaki / Getty Images

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(文:Owen Williams、翻訳:Dragonfly)